05/11/29 第1回院内がん登録のあり方に関する検討会議事録                      照会先 健康局総務課生活習慣病対策室                              村重(内線2397)                              友永(内線2339)           第1回院内がん登録のあり方に関する検討会                    議事録               日時  平成17年11月29日(火) 10:00〜11:45               場所  国立がんセンター 特別管理室(管理棟1階)  村重補佐  定刻になりましたので、ただいまから第1回院内がん登録のあり方に関する検討会を 開催いたします。  皆様方には御多忙のところ御出席いただきましてまことにありがとうございます。  私は、健康局総務課生活習慣病対策室の村重でございます。しばらくの間、進行役を 務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、議事に入ります前に健康局長の中島よりごあいさつ申し上げます。  中島局長  おはようございます。健康局長の中島でございます。先生方におかれましては、日頃 大変お忙しい中、本日は第1回院内がん登録のあり方に関する検討会に御出席いただき ましてまことにありがとうございます。  厚生労働省では、御承知のように、平成16年度から「第3次対がん10か年総合戦略」 をスタートさせておりまして、この戦略の中でも特に重要な「がん医療の均てん化」と いうことがございます。そして、このために、垣添先生を座長として「がん医療水準均 てん化推進に関する検討会」を行いまして、昨年9月から御議論いただき、今年の4月 に報告書が取りまとめられたところでございます。これを受けて、がん診療の拠点病院 のあり方に関する検討も行ったところでございます。  この検討会を契機として厚生労働省としまして、この5月に大臣を本部長とする「が ん対策推進本部」を設けて、がんの発症予防、検診、治療、緩和ケア等のがんの病態に 応じた部局横断的な連携を踏まえ、がん対策を推進していくこととしております。  がん対策を推進するためには、全国あるいは都道府県レベルにおけるがん患者の罹患 数、あるいは、生存率等、わが国のがんの実態の把握ということが大変重要でございま す。これらのデータを収集するためのがん登録ということが出てまいるわけでございま す。  このため現在、地域がん診療拠点病院において実施されております院内がん登録につ いて、登録項目の妥当性、あるいはその実現可能性について御検討いただきたいという ふうに考えております。  本日は先生方の専門的かつ大局的な見地からの御意見をいただきますようお願いを申 し上げまして私からのごあいさつとさせていただきます。よろしくお願いします。  村重補佐  それでは、メンバーの紹介に移らせていただきます。お手元の座席表をごらんくださ い。  本日は山口委員が御都合により御欠席との御連絡をいただいております。  浅村尚生委員。  浅村委員  浅村でございます。  村重補佐  土屋了介委員。  土屋委員  土屋でございます。よろしくお願いいたします。  村重補佐  西本寛委員。  西本委員  西本でございます。  村重補佐  武藤徹一郎委員。  武藤委員  よろしくお願いします。  武藤委員  行政側から出席の中島健康局長ですが、他の用務のため途中で退席させていただきま す。また、梅田大臣官房参事官はおくれて出席することになっております。  次に、本検討会の座長でございますが、資料1「院内がん登録のあり方に関する検討 会」設置要綱で示すように、構成メンバーのうち座長を1名置くものとする。とされて おります。座長の選出についてですが、互選で行いたいと思いますが、いかがでしょう か。  武藤委員  一番経験がおありの土屋先生にお願いしたらと思います。  村重補佐  よろしいでしょうか。それでは土屋委員に座長をお願いいたします。  以降の議事進行につきまして、土屋先生にお願いいたします。  土屋座長  それでは今回の座長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。それで は始めに資料の確認をお願いいたします。  村重補佐  事務局から本日の資料の確認をします。  資料1   院内がん登録のあり方に関する検討会設置要綱  資料2   がん医療均てん化の推進に関する検討会報告について  資料3−1「地域がん診療拠点病院のあり方に関する検討会」について  資料3−2 地域がん診療拠点病院のあり方に関する検討会での意見要旨        (がん登録部分)  資料4   主要検討課題に係る論点整理(たたき台)  資料5   がん登録の流れ  資料6   地域がん診療拠点病院の整備に関する指針  資料7   健康診査管理指導等事業実施のための指針の策定について  資料8   健康増進法(抜粋)  資料9   疫学研究に関する倫理指針  資料10  「疫学研究に関する倫理指針」とがん登録事業の取り扱いについて  資料11   学会等による臓器がん登録の事例  資料12-1  英文の資料 【浅村委員提出資料】  資料12-2  肺癌外科切除例の全国集計に関する報告【浅村委員提出資料】  資料13-1  地域がん診療拠点病院 院内がん登録標準項目 2006年度版について        (変更の概要)【西本委員提出資料】  資料13-2  地域がん診療拠点病院 院内がん登録標準項目 2006年度版        【西本委員提出資料】  資料14   がん診療拠点病院のあり方に関する検討(修正案)  資料15   院内がん登録をはじめるにあたってのハンドブック  参考資料1「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会」報告書(抜粋)  参考資料2 都道府県における地域がん診療拠点病院の指定状況一覧  参考資料3 地域がん診療拠点病院一覧表  参考資料4 地域がん登録事業に関する「個人情報の保護に関する法律」、行政機関        の保有する個人情報の保護に関する法律」及び「独立行政法人等の保有        する個人情報の保護に関する法律」の取り扱いについて  参考資料5 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイ ドライン   以上となっております。  土屋座長  どうもありがとうございました。それではこの資料に沿ってやりたいと思います。資 料、不足の方いらっしゃいませんか。  それでは、まず、資料2と3−1、3−2について事務局からご説明をお願いしま す。  村重補佐  資料2「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会報告について」ですが、こちら の検討会は、平成16年9月より開催されまして、平成17年4月に報告書が提出されてお ります。この検討会で御議論いただきました内容、提言の中で、2ページの(3)がん登 録制度で、・地域がん診療拠点病院を中心に標準様式に基づく院内がん登録の促進・院 内がん登録データの地域がん登録事業への活用 ということが提言されました。  この検討会の提言によって、地域がん診療拠点病院の指針を見直す必要があるという 御指摘を受けまして、資料3−1「地域がん診療拠点病院のあり方に関する検討会」が 今年、平成17年の7月、8月に開催され、こちらでの御意見の要旨が資料3−2「地域 がん診療拠点病院のあり方に関する検討会での意見要旨(がん登録部分)」ですが、ざ っとごらんいただきまして、3つ目の○ 拠点病院であっても、求められる登録項目数 があまり多いと対応しきれない。4つ目の○ 当該様式においては特に症例のフォロー アップ部分の項目が多く、登録は容易ではない、との意見が医療現場にはある。このよ うな御意見があります一方で、6つ目の○ 標準様式における必須項目はそれほど多く ない。従前の登録様式に比べると登録に際してのハードルは比較的低い。といった御意 見もありました。  一番下の◎ 以上の議論を踏まえ、「地域がん診療拠点病院のあり方に関する検討会 」として、以下のように提言しております。 「地域がん診療拠点病院は、標準様式に基づく院内がん登録を実施すること。ただし、 標準様式項目の医学的・統計学的妥当性および実現可能性について、今後、臨床医を含 めた検討会等で議論し、必要に応じ項目の見直し等を行う」  これに基づきまして、この検討会が設置されております。  土屋座長  どうもありがとうございました。地域がん診療拠点病院のあり方の検討会から出てき た問題であるということですが、この資料3について、委員から御質問ございますか。 よろしいですか。  では、引き続きまして、資料4.主要検討課題に係る論点整理、事務局から御説明を お願いします。  村重補佐  資料4.主要検討課題に係る論点整理をごらんください。  この論点整理は、今までの検討会等の御議論の中からこのようなところが論点になる であろうというところを整理したものです。 1.がん登録の定義について (1)がん登録事業は、都道府県が実施主体となって、管内の医療機関とともに実施す る   ものであり、医療機関内のデータ集積を行う「院内がん登録」と、それらの提供を 受け都道府県のデータ集積を行う「地域がん登録」とが含まれる。   資料5の絵をごらんいただけますでしょうか。がん登録の流れということで、デー タ  の流れがごらんいただけると思います。患者さんが病院を受診します。それぞれの病 院  の中でのデータが集積されます。これが院内がん登録に当たります。これらのデータ を都道府県の地域がん登録といったところに提供することによってその地域のデータを 集積していくといったデータの流れです。  このがん登録がどんなものに位置づけられているかということですが、資料6、7、 8になりますが、まず資料6.地域がん診療拠点病院の整備に関する指針、これは現行 の拠点病院に関する指針です。この2ページ目をごらんいただきますと、(5)院内が ん登録システムで、院内がん登録システムが確立している、または今後数年以内に当該 システムが確立する見込みが確実である医療施設であること。ということが拠点病院の 指針の一つに上がっています。  資料7をごらんいただきますと、○健康診査管理指導等事業実施のための指針の策定 について、ですが、この4ページ目の第五 成人病登録・評価事業等の二 成人病登録 ・評価事業の(一)登録方法というところに「がん等の登録の方法については、地域の 実状を考慮しつつ、関係諸機関の協力を得て決定するものとする。なお、登録を実施す るに当たっては、(1)「地域がん登録の手引改訂版第二版」、(2)「地域がん登録標準方 式」を参考とするものとする。という記載がございます。  次、資料8は、健康増進法の抜粋ですが、第十六条 国及び地方公共団体は、国民の 健康増進の総合的な推進を図るための基礎資料として、国民の生活習慣とがん、循環器 病その他の政令で定める生活習慣病との相関関係を明らかにするため、生活習慣病の発 生の状況の把握に努めなければならない。といった表現がございます。  資料4に戻ります。(2)こういったがん登録事業に対して「臓器がん登録の方は学 会等が実施主体となって医療機関とともに実施し、各臓器がんの病態解析に有用なデー タを収集・提供するもの、ということができるかと思います。 2.院内がん登録の目的について (1)院内がん登録のデータが地域がん登録に寄与することにより、地域がん診療連携 拠点病院(仮称)におけるがんの診療実態把握と経年的モニタリングや、地域特性の把 握に寄与し、行政施策の企画・立案・重点化等、がん対策の評価・モニタリングに必要 なデータを収集する。つまり、行政的に必要なデータを集める目的であるということで す。  資料9.疫学研究に関する倫理指針、というものがございますが、これに関する取り 扱いということで、資料10「疫学研究に関する倫理指針」とがん登録事業の取扱いにつ いて、というものがございます。こちらの1 がん登録事業については、本指針は適用 されない、ということが書いてありまして、実施主体での運用に資するよう、専門委員 会で基本的考え方を以下のとおり整理して公表することとする。とあります。  その1つ目の○ がん登録事業は、都道府県が実施主体となって、管内の医療機関と ともに全県的に実施するものである。がん登録事業が計測するがん罹患数・率やがん患 者生存率は、がんの実態把握や対策に必須の指標であり」というところが、資料4の行 政的に必要な、というところに当たるかと思います。  続いて、また、がん登録資料は、がんの予防のための疫学研究に有用である」とあり まして、これが、資料4の2.の(2)院内がん登録のデータが地域がん登録に寄与す ることにより得られたデータは、医学の発展や国民の健康の保持増進に多大な役割を果 たす疫学研究に活用される。というところに当たると思いますが、これは行政に必要な 目的で集めたデータを疫学研究に活用するという目的というふうに考えられるかと思い ます。  続きまして、(3)がん登録事業の目的と、学会等が実施している臓器がん登録や全 国がん(成人病)センター協議会によるデータとの目的の違い(役割分担)を考慮に入 れる必要がある。臓器がん登録の目的は、主にがんを扱う病院等について、我が国のが んの特性等に必要なデータを収集する、ことだと思います。  資料11をごらんください。学会等による臓器がん登録の事例をいくつか挙げておりま す。肺がんの登録は呼吸器外科学会、肺癌学会から、食道がんについては日本食道学会 から、肝がんについては日本肝癌研究会から、乳がんについては、日本乳癌学会から、 それぞれ報告が出されています。  こちらの肺がんの登録について、浅村委員から御説明をいただきたいのですが、よろ しいでしょうか。  浅村委員  がんセンターの浅村です。私はこの肺がんの登録に関与しましたので、少しお話をし ます。  肺がんの臓器がん登録というのは、日本肺癌学会と日本呼吸器外科学会が合同登録委 員会というのをつくりまして登録事業をしております。  もともとは日本呼吸器外科学会が肺がんの切除について5年ごとに過去に振り返って データを取っていたわけです。1989年、94年、99年の5年ごとにその年に切除された症 例を5年後に症例登録をして解析をして、どのような予後であったか等々の報告を行っ てまいりました。お手元の資料は1994年1年間に切除された肺がんを5年後に解析し て、その成績を公表したものです。94年には7,408例が303施設から、99年には11,476例 が333施設から登録されていまして、これを現在解析中です。  多分これらの症例は、30〜50%、我が国で行われている肺がん切除をカバーできてい る、そういうデータであります。  それと同時に、日本肺癌学会と呼吸器外科学会は前向きな調査もしようということに なっていまして、2002年度にその年に、これは外科症例だけでなく、内科症例も含め て、登録をしていただいて、これを今、前向きに経過を追っているところです。今度は 前向きに5年でどういうデータになるかを出そうとしています。これが18,547例を360 施設から登録していただいて前向き調査中です。  臓器がん登録のあり方は、今ここにあるように、少しずつ学会によってスタンスも違 いますし、やり方も違います。日本肺癌学会としては、切除例については5年ごとに同 じような方式で登録をしながら、予後はどのように変遷していくか等々を、それから新 たに、前向きの登録もして、内科症例も含めた予後はどうかということを把握して、学 会として責任を持って成績を世に問いたいという趣旨でこれをやっております。  現在は、日本呼吸器外科学会、日本肺癌学会、日本呼吸器学会がそれぞれ予算を負担 してこれを実行しているということです。  村重補佐  では続きまして、資料4の2ページ目に戻って、3.地域がん診療連携拠点病院(仮 称)における院内がん登録の標準登録項目について、ですが、(1)厚生労働科学研究 班により提示された地域がん診療拠点病院、院内がん登録標準項目2003年度版は、現在 2006年度版に改訂中であり、今後の標準項目への後者の活用について検討する。  こちらについては、西本委員よりご説明いただきたいのですが、よろしいでしょう か。  西本委員  国立がんセンターの西本です。それでは資料13-1、13-2の付表をごらんいただきたい と思います。  拠点病院事業が始まりました際に、院内がん登録を進めていくということが目的に掲 げられておりましたので、2003年度版として、いくつかの研究班が集まりまして、標準 的な項目を決めて、院内がん登録をしようということで、2003年度版の拠点病院用の院 内がん登録の標準項目が策定されました。その中で、3年をめどに現状に合わせて少し ずつ改訂をしていこうということがうたわれておりまして、ちょうど来年2006年が改訂 の時期に当たるということで、班研究の中で「地域がん診療拠点病院の機能向上に関す る研究」という国立がんセンターの池田先生が主任研究者の研究班の中で、院内がん登 録の標準項目をどういうふうに改訂するかということで検討をさせていただく。当然の ことながら、これはまだ案の段階ですので、こちらの検討会を含めて十分検討していた だいた上で、2006年度版をどういうふうに扱っていくのかということは決めていってい ただきたいというふうに考えています。  2003年版がつくられて、その中では必須項目、推奨項目、そして、オプション項目と いう3段階の分け方をさせていただいています。そのあたりについては付表を見ていた だきたいと思います。  付表に、2006年版に改訂された内容、変更点については赤で記しております。黒で示 されている部分は基本的に2003年版と変わっていないというふうに御了解いただければ と思います。  付表の右の方の欄を見ていただきますと、拠点病院運用 必須・推奨・オプションの 別という欄がございます。必須項目については●、推奨項目は○、オプション項目は△ がつけられています。2006年版において新しく出た項目については印がつけられている もの、つけられていないものがありますけれども、基本的には必須項目のうちの一部分 を全国協議会、これは拠点病院の院内がん登録のデータを集めていくという目的でつく られるのですが、そちらの方に集計するために出していただく項目はもう1つ右の欄の 拠点病院集計への提出が●で示されているということになっております。  2006年版では、大きな変化をさせないというのが今回検討の基本ポリシーでございま す。13の1の2ページに検討メンバーがありますが、疫学、病理、臨床医も含めて加わ って2006年版の検討をさせていただいたという点も御留意いただきたいと思います。  検討いたしました一番大きな目的は、地域がん登録の標準票項目というのが決まりま して、これは対がんの祖父江班で決まったわけですが、地域がん登録を全国的に広げて いく場合に、項目の標準化をしませんと比較ができないということで、標準項目を決め て、それにしたがったシステムを組んで、それを導入して各地の地域がん登録を決まっ たフォーマットで集積をしようということでありまして、地域がん登録の標準票項目が 決まっております。それが、集計への提出の右の欄、●で示された部分です。これが決 まりましたので、2006年版においてはこことの間で整合性を取らないといけないという ことで、院内がん登録の標準項目を入力すれば、そこから地域がん登録の標準票項目が きちんと網羅できるようにという形での項目の変更を加えたということです。  コメントとして付表に吹き出しでつけております【地域がん登録】にあわせ追加、と いうのが、項目番号でいいますと、31番、32番の姓名フリガナ、41番、42番の姓名等、 地域がん登録に合わせて追加をしております。  152番の発見経緯についても【地域がん登録】との間で若干異なった部分がありまし たので、その部分を追加しております。  その1つ上の151番、これは議論の中で自覚症状があって検診を受けた場合などをど ういう形で分類するかという議論が出てまいりまして、そこで、発見前の自覚症状の有 無の項目を追加させていただいて、これはオプション項目でよかろうという議論になっ たということです。  追加項目について話を進めてまいりますが、付表の2枚目、181番、受診目的が追加 になっています。これは、拠点病院等においては昨今、セカンドオピニオン目的で受診 されるケースがかなり増えておりまして、その部分をとらえたい。つまり、セカンドオ ピニオンで来られた例がどれぐらいあって、場合によってはセカンドオピニオン目的で 来られながら、その後その施設で治療されるケースもあるということですので、もとも との受診の目的が如何様のものであったかということを把握しておく必要があろうとい うことで追加になっております。  190番の告知状況につきましては、11、12という項目が追加になっております。生命 予後まですべて説明したのかどうか。これは、私自身実は10月まで呼吸器内科の臨床医 をしておりましたのでよくわかるのですが、どっちとも言えない例が当然あるわけで す。微妙な言い方をしているケースがありますので、そういう分類できない場合は10に するということで、告知状況を少し分別化したということです。  さらに、腫瘍検査の230番以下ですが、これについては、2003年版では非常に粗い分 類、つまりステージに関しても、0期、I期、II期、III期、IV期、というような分類の 登録を標準項目としておりましたが、実際にはIaとか、Ib、IIa、IIb等の亜分類も 当然ございますので、亜分類のコードも提供した。ただし、つけていただくのは基本的 には0期、I期、II期、III期、IV期というような分類で結構です、という形です。T、 Nについても、T1、T2、N1、N2、そういうものの、例えば、N1aとかという ような分類がある腫瘍もありますので、そういうものについても、コード表は提供しま すけれども、登録そのものは、転移であればN1、N2という形で出していただくとい うことです。ですから、ここはコード表を参照していただいて詳しいところまでつけら れますよ、という形にしております。  次のページの351番、病理組織標本由来ですが、これは地域がん登録の項目が原発巣 の組織学的な検査であったのか、転移巣の組織学的検査であったのかを区別したという 項目がありましたので、両方合わせて地域がん用に変換できるように351番の項目が追 加になったということです。  次のページの629番、その他の治療、これは地域がん登録にもともとございましたの で、その他の治療を項目として追加をさせていただきました。  そして、最後の870番ですが、2003年版で登録されてあったのか、2006年版で登録さ れてあったのか、今後変更があった段階で、どのバージョンで登録されていたかを明記 するために定義バージョンというものを項目として追加しています。  ですので、根本的には2003年版の定義を踏襲した形で2006年版の検討を行ったという ことでございます。  あと、多重がんの定義については、少し異なっておりまして、これはSEERのルー ルにしたがうという形に変更になっておりまして、細かい点については、きょうここで すぐ御議論いただくのは難しかろうということで、2006年版の詳細な冊子は資料として お持ちしておりません。こういう形で2006年版について検討を加えてきたということで ございます。  もちろん、これは今後も登録をしていただく中で、検討を加えていかなければいけな い問題でございますし、現実にあとで少し出るかと思いますが、メーリングリスト等 で、この場合はどうなのか、というような疑問が多々上がってきておりますので、その 辺に回答するFAQというのはインターネットサイト等も今後つくって対応していく予 定でございます。2006年版の変更については以上でございます。  土屋座長  それでは引き続き事務局から。  武藤委員  よろしいですか。検討メンバーを見ると十分いろんな方が入っているのでいいと思う んですが、これに関する班会議がいくつかありますよね。たまたま私、この間、猿木班 に出席したんですけど、そういうところの御意見は伺って、いいということになってい るのか。そうならば、これでゴーサインが出てもいいわけで、いつからこれを始める予 定なのか、今後の予定はどうなのかということをお願いします。  西本委員  2003年版が決まる経緯のところに少し戻らせていただいて話をする方がいいと思いま す。きょうは山口先生が御欠席なので、本来、山口先生からお話いただくのがよろしい かと思いますが、もともと2003年版は山口先生が主任研究者の山口班と、全がん協のデ ータを出している猿木班の前身の岡本班、それからあと2つございますが、院内がん登 録の標準化とがん予防面での活用に関する研究ということで大阪府立成人病センターの 津熊先生が主任研究者の津熊班、それから津熊先生がもう一つ、助成金で地域がん登録 の登録精度の向上に関する研究班を組織しておられまして、この4班が合同で2003年版 を決めていただいたという流れがございます。  その中で、全国協議会を立ち上げて集積をするという予定であった、その全国協議会 が残念ながら今のところまだ立ち上がっていないという状況ですので、猿木班の中でそ の項目と合わせながら、今までの全癌協のデータと整合性が取れる項目でデータの集積 が行われているという状況です。ですので、拠点病院で集積する項目と、全がん協で集 積する項目との間には全く関係がないわけではなくて、実は参加しておられる先生方の 顔振れの多くは重なっている部分がありますので、そういう部分では、また猿木班の方 で拠点病院の項目がどうこうという議論はありませんが、拠点病院の項目はこうです よ、というお話については、猿木班の班会議で毎年御報告をさせていただいているとい う状況です。  今後どうするか。全国協議会を立ち上げて集計をしていく上で、2006年版をどうする かというのは、逆に言いますと、この検討会で方向性を出していただきたいというふう に思っております。  土屋座長  よろしいですか。  武藤委員  ちょっとまだよくわからない。この案を例えば、猿木班に持っていって、これでどう ですか、といって、それで通ればそれでよろしい。これを検討して何回もやる仕事じゃ なくて、決めてやらなくちゃいけないんだから、そこら辺のところはよく見えて来な い。ここでOKされれば通るのか。それとも猿木班で通した方がよろしいのか、その辺 の部分ははっきり決めておいた方がよろしいと思いますね。いつスタートするかという ことをドキュメントを決めておかないと、班会議を延々とやっていてもしょうがない。  土屋座長  実際の作業は続くにしても、この決定は早目に決めないと整合性が合わないまま進め ても、その辺の調整も併せて議論していけばと思います。  引き続き、お願いします。  村重補佐  では、資料4の3.の(2)ですが、「地域がん診療拠点病院のあり方に関する検討 会」における議論を踏まえ、医学的・統計学的妥当性および実現可能性に関する観点か ら標準登録項目について検討する。ということで、冒頭に御説明しました資料3−2検 討会での意見要旨と、資料14.あり方に関する検討会報告書の見直しの方向性をまとめ たものの2枚目の一番下の(注)にこの文章があります。  次に(3)ですが、登録対象がん種について、その範囲について検討するということ で、資料14の3.と最初の●各施設が専門とする分野において、集学的治療(手術・抗 がん剤・放射線治療・他科コンサルト・緩和医療通の組み合わせ等)及び各学会の診療 ガイドラインに準ずる標準的治療並びに応用治療を行うこと。と書かれていますので、 これに沿って、あと、拠点病院が専門とする分野によって指定を受けていますので、こ れを踏まえて登録対象がん種について検討をお願いいたします。  (4)実務に関するノウハウのサポート体制には、研究班が行っている研修やメーリ ングリストや手引き等があるので参考とする。としていますが、こちらは西本委員から 御説明いただけますでしょうか。  西本委員  それについては資料15「院内がん登録をはじめるにあたってのハンドブック」という 形で国立がんセンター情報研究部で作成させていただいた冊子です。これは地域がん診 療拠点病院の院内がん登録を支援するホームページがございます。そちらからもダウン ロードができるようになっております。  その内容については、まず、院内がん登録というのは一体どういうものなのか、とい うことから話が始まっています。このあと少し御議論いただきたいと思いますが、院内 がん登録そのものの目的というのは、基本的には院内、その施設の中でデータをきちん と集積をして、そのデータをもとに、自分の病院のがん診療の状態がどうなのかという ことをきちんととらえるというところに基本がございます。ですので、1ページに「院 内がん登録とは?」の後に「院内がん登録があると? 何人の患者さんが、どのような 病態で、どのように受診し、どのような医療を受け、どうなったのかを知ることができ ます。」  これは要するに、昨今よくいわれるクリニカル・インジケータのがん診療に関する部 分に特化したものと考えていただいていいかと思います。アメリカにおいて院内がん登 録がきちんとしているのは、アメリカの外科学会から診療情報管理を含めて情報を院内 できちんとまとめていろんなインジケータを出して診療の質を上げるにはどうすればい いかという、そういうところへ向かってどうしていくかという、その基本展開なるもの として院内がん登録があるという、アメリカの場合も診療情報管理の中でのがん登録と いうのはそういう考え方でまず行われてきたわけです。  そのあたりから、解き起こしまして、実際の院内がん登録の作業も、現実に行われて おります、医者が全部やるという方法もありますし、さらには、例えば、今の拠点病院 の多くは診療録管理体制加算を貰っているところも結構ありますので、診療録管理体制 加算であるということは、そこには診療情報管理士がいて診療情報の管理もある程度や っている。そういう基盤の下に院内がん登録を進めていくこともできますよ、というこ とで、作業の内容も実際にいわゆる、昔の言い方で言いますと、病歴室、今は診療情報 管理室という施設が非常に増えておりますけれども、診療情報管理室を中心に、アメリ カ的なやり方でやれば、腫瘍登録士がいてやるというような形まで、幅の広い中で自施 設にあった登録の仕方はどうすればいいのかということをこの中に書いてあるというこ とです。  そして、6ページで、そのデータをどういうふうに利用するのかということで、当 然、がん診療の実態を把握することができて、そういうデータをもとにして、臨床研究 にも応用できますし、例えば、臓器がん登録の基本情報の部分は院内がん登録のデータ で共有ができるというような形です。これが自施設での利用で、地域での利用として、 地域がん登録へそのデータを出すこともできます。そして、全国集計にもつなげられま す、というような形の説明をさせていただいています。  あとは、実際の院内の情報システム、いわゆるHISと呼ばれるようなシステムとど ういうふうにリンクするかというような話を含めて書かせていただいています。  10ページ目からは、院内がん登録を始めるにあたって、何を、どういうステップでし ていけばいいのかということを具体的に1stステップから、登録作業の開始、そして、 登録を始めてどういう作業が発生してくるのかということを書いてあるような冊子で す。  もちろん、非常に粗っぽい部分もありますので、現実にはいろんな質問も上がってく るわけですが、こういう冊子をつくることで、院内がん登録を立ち上げるに当たっての 支援をさせていただいているというのが一つです。  それから、資料にはございませんが、院内がん登録の支援のページからメーリングリ ストの登録ができるようになっております。そこでは、質問を投げていただいたり、そ れに対してこちらからお答えするという形で、拠点病院ないしは、拠点病院でなくても 今後、拠点病院として院内がん登録を始めていきたいというような御希望のある施設か ら参加をいただきまして、いろんな情報提供ですとか、質問に対してメールでお答えす るという形の仕掛けは今のところ運用させていただいているというところでございま す。  もう一点は、そういう仕掛けだけではなくて、実際に標準項目で登録をしていただく 場合には、いろいろ疑問が出てまいります。この患者さんの場合はどうなんだ、という ことがありますので、そのあたりの疑問点についても、かなり集積しておりますので、 来年度にかけて、それのFAQのサイトを構築しようというふうに考えております。キ ーワードないしはフリーワードで検索をすれば、この場合はどういう登録項目であるの かというのが、今まで質問されていた内容については、集積をして見れるような、いわ ば、院内がん登録の解釈に関するデータベースを公開の形でつくっていこうという構想 のもとに動いているところでございます。  土屋座長  今までのところでよろしいですか。では、引き続き御説明ください。  村重補佐  資料4の3枚目、(5)厚生労働科学研究班によって現在改訂中の院内がん登録標準 項目2006年度版は、先ほど西本委員から御説明ありましたように、地域がん登録との整 合性を考慮して作成されることを踏まえ、院内がん登録と地域がん登録の登録項目の整 合性について御検討をいただくということです。  4.院内がん登録により得られた各種指標の評価およびその利用について  (1)院内がん登録により得られる5年生存率の医学的・統計学的限界、使用目的    等、解釈上の留意点についても御検討をお願いします。  (2)院内がん登録により得られる指標の発信方法、各病院へのデータのフィードバ    ック、がん登録事業以外の研究における活用等についても御検討をお願いしま    す。  5.その他  (1)個人情報保護及び疫学研究等研究活動とがん登録事業(院内がん登録及び地域    がん登録)の関係について、確認いたします。  資料9をごらんください。先ほど御説明しました疫学研究に関する倫理指針ですが、 これとあわせて資料10「疫学研究に関する倫理指針」とがん登録事業の取扱いについて で、こちらで、がん登録事業については、本指針は適用されない、として、少し細かく 解釈が書いてありますので、お確かめいただければと思います。  (2)地域がん診療連携拠点病院(仮称)以外の病院におけるデータ収集のあり方に   ついても御検討をお願いします。  土屋座長  はい、どうもありがとうございました。大変膨大な資料で読むだけでも大変ですが、 これ以外にもいろいろ出てくると思いますが、その都度やっていただきたいと思いま す。  本日は、最終的にはがん登録の項目の検討でありますけれども、一番大事なのは、が ん登録の定義をどう解釈していくか。それに基づいたがん登録の目的は何であるかとい うことをもう一度御議論いただいて、次回、項目について、その目的に合った項目はど ういうものであるか、という形でお話いただければと思います。  まず、がん登録の定義、たたき台の最初に書いてありますが、がん登録事業は、都道 府県が実施主体となって、…… ということですが、この定義について、何か御意見ご ざいますか。  西本委員  確かに健康増進法の中で生活習慣病等に関しての情報の分析が必要だ、ということ は、資料にもあるとおり、いわれておるわけですけども、一般的に、地域がん登録と院 内がん登録との間ではそのあたり、少し色合いが違うのではないかと思うんです。  一つには、院内がん登録の実施主体はあくまでその医療機関であるもので、都道府県 が院内がん登録の実施主体というのは、このあとの目的とも絡むとは思うんですけど も、少し違うのかなというふうに個人的には思います。地域がん登録は当然都道府県が 主体になって集めるんだと思いますが、院内がん登録というのは医療機関の中で集め て、それが結果的に都道府県側がいろんな形で利用することは当然あると思いますが、 実施主体なのかな、と私自身は思います。  土屋座長  今の西本委員の御意見、いかがですか。西本委員、地域がん登録は院内がん登録をや った各施設から集めたものの集積という解釈ですか。  西本委員  いえ、地域がん登録は、各施設、その地域にある医療機関がすべて院内がん登録を持 っていて、なおかつ、診療所の先生も全部出していただくという状況になれば、それで いいと思いますけれども、地域がん登録と院内がん登録、それから臓器がん登録、日本 ではこの3つが一応3類型としてあるわけですけれども、それぞれ大きな目的は異なる のではないかと思います。  一つには、地域、院内、臓器となるにしたがって、悉皆性と申しますが、どれだけ、 がんの患者さん全部をきちんととらえて数として把握しているかという、その状況がお そらく違うかと思います。地域がん登録の目標はあくまでその地域で発症された患者さ んの全数を把握するというのがトータルの目的になります。それに対して、臓器がん登 録というのは、浅村先生の御説明もございましたが、全症例を把握するというのは正直 なところ、おそらく難しいのではないか。ただ、逆にそれぞれの症例についての情報の 粒度といいますか、臓器がん登録が一番細かい、とにかく臨床で捉えた細かい部分の項 目までをすべて網羅する形で臓器がん登録は行われる。その中間的なものとして院内が ん登録が存在して、院内がん登録の目的は、その施設のある意味ではベンチマーキング につながっていく部分が一番の目的でありますけれども、最終目的はそうであるにして も、情報の粒度にしても、悉皆性にしても少し落ちる。ただ、院内がん登録の普及を進 めていくことによって、当然、悉皆性を要求される地域がん登録のデータの精度も上が ります。それから、院内がん登録を進めていくことで、院内で集積されたデータをもと に臓器がん登録のデータの集積も比較的簡単になる。だから、その途中にあって、2つ をつないでいってすべてのがん登録の精度を上げていくという役割が院内がん登録には あるんじゃないか、というように考えます。  土屋座長  よろしいですか。院内がん登録はよくわかったんですけども、それを利用して地域が ん登録に反映させよう。地域がん登録というのは、がんの登録ですから医療施設から来 るだけですよね、患者さんが自分で登録するというのはないんですから。院内がん登録 は、全施設がやるとすれば、地域がん登録はそこの集約ということにはならない?  西本委員  はい。ただ、私、滋賀県の地域がん登録にずっとかかわってきた経験から、最近の傾 向から言いますと、実は施設で100%カバーできていればいいんですけれども、診療所 のレベルで把握されるケースも当然ございます。地域がん登録にはいろいろな問題があ りますが、例えば、近隣の地域で診療を受けて最終的に在宅でお亡くなりになるケース もあります。そういう場合の把握というのもまた難しくなりますので、地域がん登録の 目的はそこの住民の方全体のがんの罹患を見ていくということになりますと、診療所を 完全に抜かしては成り立たないと考えます。そうすると、診療所では院内がん登録とい うのは正直不可能ですから、それを含めた意味での悉皆性を求めるのが地域がん登録、 ただ、そこに至るまでの間、精度を上げる役割として院内がん登録はかなり大きな役割 を果たすだろうとは思います。  土屋座長  しつこいようですけど、先生が院内とおっしゃるのは病院という解釈でいいんです か。  西本委員  診療所でできればいいんですけど、現実には難しいと思いますから。  土屋座長  ただ、このたたき台には、管内の医療機関とともに実施するものと。医療機関といっ た場合には診療所も病院も全部含まれますね。ですから、その中であえて、院内がん登 録という場合には病院だけを指すのか、診療所でも入院設備のあるところも。  西本委員  入院設備がある施設はそうだと思います。英語でも、ホスピタルベースドですから、 いわゆるホスピタル、ベッドがあれば、基本的にはその対象にはなると思います。  土屋座長  インペイシェントの施設を指して院内がん登録。  西本委員  というふうに考えております。  土屋座長  診療所は含んでない? そうであればわかるんですよね。医療機関の云々だと、医療 機関を全部集めれば、当然ながら地域がん登録になってしまう。ここでいう院内がん登 録は、あくまで入院施設を持った施設が対象である、という解釈でよろしいですね。  西本委員  できるところは、そこまでやっていただいてもいいんでしょうけど、原則としては、 土屋先生のおっしゃったとおりだろうと思います。  土屋座長  よろしいですか。その辺、しっかり小分けした場合、院内がん登録、地域がん登録、 どこからということになるので、とりあえず、これから議論するときには、インペイシ ェントの施設というところで分けると。  もう一つ、がん登録の定義に入る前に、がん拠点病院について、事務局から、おさら いの意味で、どういう定義で、どの程度進んでいるかという説明をもう一回お願いでき ますか。  村重補佐  資料6をごらんいただけますでしょうか。これが現行の地域がん診療拠点病院の整備 に関する指針でございます。これはかなり大まかな指針で、見直す必要があるという御 意見を受けて、7、8月の検討会で話し合われた結果が資料14の修正案になっていま す。こちらをもとにして新しい指針を近々出そうということになっておりますので、資 料6の指針がもう少し詳しい、資料14に近い形で新しい指針が出されることになってお ります。  現在の指定状況ですが、参考資料の2と3の一覧表をごらんいただけますでしょう か。  参考資料2が、都道府県における地域がん診療拠点病院の指定状況一覧になっており ます。各都道府県の2次医療圏数と、そのうち指定済みの地域がん診療拠点病院数で す。  参考資料3は、現在既に指定されております135の地域がん診療拠点病院の一覧とな っております。  土屋座長  どうもありがとうございます。そうしますと、今現在は資料6の指針で、近い将来、 資料14の修正案に沿って修正されるということですね。私がお聞きしたかったのは、特 定機能病院は地域拠点病院まではまだ及んでいないということですね。  村重補佐  参考資料3の中に入っているんですが、現在、特定機能病院の指定は89だったと思い ます。数字は確かではありませんが、入っています。  土屋座長  将来的にはそこまで含めた範囲で拠点病院での院内がん登録を考えているということ ですね。  よろしいですか。これで大体アウトラインが見えたかと思うんですが、そうします と、ここでいうがん登録、特に院内がん登録の定義としては、入院施設を持った病院で のがん登録で、したがって、地域がん診療拠点病院が当然含まれるわけですし、診療所 も含めて集積することによって地域がん登録にも寄与するものであるということでよろ しいですか。  そうしますと、そういうことでいったときに、院内がん登録の目的をどのように考え るか。この点について、委員の皆さんの御意見を伺いたいと思います。  武藤委員、いかがでしょう。  武藤委員  目的ですか。いろいろあると思いますけども、一つは、データベース化というか、各 がんに責任ある病院にどれだけの患者さんが集まっているか。そういうシステムをつく ること自体ががん医療に対する知識のフォローアップに資するということで、一定の診 療レベルを上げるための条件としてこれがなければだめだということになる。そして、 最終的にはいろいろな対外的な比較にも関係するんですけども、日本ではそういう持続 的な統計が何もないんですから、外国と比較するときにまったく負けっていう感じで、 韓国なんかはすごいのがある。そういう対外的なことも含めて、必須のものだと、私は そういうふうに考えています。  土屋座長  ありがとうございます。浅村先生。  浅村委員  地域がん診療拠点病院における院内がん登録という枠組みの話ですよね。そうします と、これの目的ということを議論するということは、もともとこの地域がん診療拠点病 院がどういう目的で設置されて、それを設置することによってどういうことをやるかと いうことに、そこで行われる院内がん登録の目的はまったくリンクしているということ になると思います。  さっきからお話があるように、院内がん登録が出されて、それが地域がん登録になさ れるのであれば、がんの実態を把握するという意味だけだったら、地域がん登録がちゃ んと出されていれば、それで十分なはずです。だけれども、地域がん診療拠点病院にお ける登録をどうすうかということを考えるということは、指定した拠点病院で実際にど ういう診療が行われるということに依拠していると思うので、地域がん診療拠点病院を 設置する目的がそのままここにおける登録の目的ということと反映すると思うので、そ の議論が必要なのかなと私は思います。  土屋座長  西本委員、今までを踏まえて。  西本委員  基本的には、去年行われました均てん化の推進検討会の報告書がございますね。参考 資料1がその抜粋ですが、ここに要約されていると思うんですね。1.の(1)に院内 がん登録の現状とあって、各診療所のがん医療の実態と水準を評価する。これが当然拠 点病院の、というのは、ある意味では日本のがん医療を推進して、引っ張っていく病院 であろうと思うんですが、それらの実態と水準をまず評価する必要があって、そのため に院内がん登録を実施する必要がある、ということに、目的としてはなろうかと思いま す。ですので、そこがおそらく議論の土台になっていくというふうに考えています。そ のデータがあって、均てん化がどうだということの評価につながっていくのではないか と考えております。  土屋座長  ありがとうございます。およそ、がん診療拠点病院の定義に基づいて、そこでの院内 がん登録ということですから、おのずからがん診療拠点病院のデータベースがその基礎 データをもって診療の実態を把握して、さらに改善策、あるいは患者さんへの情報提供 になる。それによって、当然地域の特性とか、行政への反映ということになっていく。  今ちょっと気になったのは、参考資料1で、治療成績、5年生存率等が出てくるんで すが、登録の時点ではそういうベータはいきなりは出ないので、そこはちょっと飛躍が あるかなという気がするんですね、文章に。基礎データと、調査・解析が必要なデータ と分けて考える必要があるかなと思うんですが。  西本委員  基本的には、院内がん登録を拠点病院でやることによってアウトカムをどこに置くか という問題に当然なると思うんですね。アウトカムの1つに5年生存率というのはある と思います。ただ、それは当然すべてではありませんし、5年生存率はアウトカムの1 つである。例えば、実際に緩和ケアにどれくらいの患者さんが回ったとか、在宅でどれ ぐらい亡くなったかということだって、これは特に今回の拠点病院のあり方に関する検 討会で出てきた患者さん自身のライフサイクルといいますか、どういう形で、どういう 最後を迎えていかれるのかということを含めて、その中で拠点病院がどういう役割を果 たしていくのかということも大きな視点になると思いますので、そうすると、5年生存 率だけ出したからそれでその拠点病院の評価ができたというわけではなくて、本来は、 地域との連携がどういう形で進んでいるかといった指標も含めて出さないといけないと 思うんですね。ただ、残念ながら、今そういう、クリニカル・インジケータと俗に呼ば れるものの標準化が日本ではまだまだ遅れている状況があります。それについては、今 後おそらく、このがん登録の中でそういう項目をどうするかという問題も当然あると思 います。  あくまでアウトカムの1つではありますけども、結局、そのデータ一つずつを取って も、例えば、どういう予後調査をやったかによって5年生存率も変わってしまうわけで すね。要は、そのあたりをきちんとレベルを合わせてやったデータを出さないと、予後 調査が全然できていないデータをそのまま出して生存率ですよといっている施設と、予 後調査を100%やって出している施設ではおのずとデータの重みが違いますし、数字的 にはおそらく予後調査をしない施設の方がよくなってしまうというような問題点がある ので、そのあたりを国民の皆さんにもきちんと理解していただいた上で、この数字はこ ういう意味ですよ、という解釈をつけて、施設によって、地域によって、土屋先生おっ しゃったように、特性当然ございますので、仮に施設ごとに公表するのであれば、当然 コメントもつける形で出すというようなガイドラインがおそらく必要なんだろうと思い ます。  今、全がん協の加盟施設が参加している猿木班の中で公表指針も案として出ています のでそういうものをベースにしながら、どういう形でデータを公表していくかというこ とは今後検討していかないといけない問題であろうと思います。  土屋座長  ありがとうございました。そうしますと、たたき台の2の(1)の最後の方に「地域 特性の把握に寄与し、行政施策の企画・立案・重点化等、がん対策の評価・モニタリン グに必要なデータを収集する」とあって、アウトカムとして今、先生がおっしゃったよ うなことがあって、そのために必要なデータを収集するところが院内がん登録であると いうことになると、先ほどから問題にしている5年生存率とかそういうのは、狭い意味 のがん登録の業務に入るのか、その先の問題なのか、そこをかなり明言しておかない と、狭い意味での登録業務プラス調査・解析とそういう段階を追っていかないで、ごち ゃごちゃになって議論されると、がん登録の定義とは一体何なのか、アウトカムまで含 めるのがいいのか、その辺は班会議ではどういう議論ですか。  西本委員  基本的に、登録するところで終わっても意味がないわけで、それはあくまで解析まで 含めてきちんとやるというのががん登録全般そうだと思います。地域がん登録もそうで すし、浅村先生がなさった臓器がん登録もそうですね。アウトカムとして生存率なら生 存率をステージ別に出して、そのステージ別の生存率とステージがきちんと分別できる のか。そのステージをどういうふうに分け直せばいいのかということの基礎資料になる というのが一つ大きな目的だと思うんですが、そういうふうにアウトカムを出して、そ れの要因を解析してはじめてがん登録の役割が果たせるわけです。  ですから、単純に項目を絞り込んで、例えば、予後だけが出ている。例えば、肺がん なら肺がんのオーバーオールの予後が施設ごとに出ました、ではほとんど意味がないの で、施設ごとなり、地域がん登録であれば地域ごとなりの差がどこから出てくるのかと いう要因分析をするための項目もその時点で既に入っていなければ解析のしようもない わけです。ですから、その部分のミニマムのデータの項目が必要になるであろうという のが私の考え方です。  土屋座長  私も現場の人間として、最初の狭義の登録よりも、後の追跡あるいは調査・解析、そ この作業量の方がはるかに多いんですね。その辺を見据えて、定義あるいは目的を考え ていかないと初期に予想したより膨大な作業量になるということになるんじゃないかな と思ったんですが、よろしいですかね。  西本委員  予後解析については、常々がん登録の場合特に問題になりますし、私自身も一般病院 で働いておりましたときに、全がん協の生存率を出してくださいといわれますと、基本 的にリストが挙がってきて、これこれこういう患者さんの予後がどうなっているかを調 べてくださいと。病院情報システムから拾える部分は拾います。例えば、外来で受診さ れたので、この日がいわゆる生存の最終確認日である。ないしは、院内でお亡くなりに なったのでこの日が死亡日である。この部分は出せますけど、在宅に行かれた方、ない しは他院に転院された方、ここまで拾えないわけです。そのあたりをどうするかという のは各施設ごとの取り組みが違うかと思います。現実に、土屋先生おっしゃいますよう に、私がいたある施設では、それは診療科の部長に投げられて、診療科の部長はその作 業のためにそのときから一生懸命電話をして、患者さんがお宅でどういう状況でおられ ますかと聞いて情報を集めるというような作業を実際にしていた科もございます。  それは本来的にドクターがやるべき業務なのかということにもなってきます。そのた めにも、一つは、病院の診療情報の管理をやる部門がしっかりしないといけない。おそ らく、今回の拠点病院のあり方検討会の中でいくつか項目が出てきていたと思うんです が、資料14の表、がん診療拠点病院のあり方に関する検討の見直し案の1枚目の下から 6行目に、○診療録管理に携わる者(がん登録実務者を含む)が1人以上確保されてい ること。という、このあたりの視点がまさに診療情報管理をやるディビジョンが病院に あって、そこが予後調査の業務を担うというような部門を想定されているのかなと思い ます。  そしてもう一点は、地域がん登録における予後調査をどういうふうに扱うかです。  地域がん登録の方は、基本的には個人情報保護法の適用除外を受けておりまして、そ こで登録されている内容について、予後調査は人口動態統計とか、保健所の持っている 死亡小票とか、そういうものをベースに死亡の段階の情報は捉えられる仕掛けになって いるわけで、そのあたりの情報提供をどうしていくのかというのは、今そういう研究班 で法的に大丈夫かというような検討も行われておりますので、今後、予後調査が比較的 スムーズに、円滑に進むようになればいいなと思っておりますけど、そういう連携がう まくできるようになれば、地域がん登録の側からの予後調査のデータが院内がん登録に 反映させられるという仕掛けもおそらくつくれると思います。  ただ、現場でドクターが全部やるというのは、私の経験から言ってもほとんど不可能 に近いと思いますので、そのための仕掛けを拠点病院としてつくっていただくというこ とが最低限必要かなと思います。  浅村委員  先生が言われたことは非常に重要だと思いますが、実態として、診療録管理に携わる 者が1人以上確保されている、というのは、がんの登録に特化してできる人が既に指定 されている拠点病院にどれくらい整備されているかという実態を踏まえないと、業務量 から考えて、先生が今いみじくもおっしゃったけれども、医者がやるのは無理だと言わ れているわけだから、そこに現実性ということも考えないといけない大きな問題で、実 際それはどうなっているんでしょうか。  西本委員  その点については、今、拠点病院の機能向上に関する班の中で、腫瘍登録士の制度を 整備しようという形でそういう業務を進めているところです。実際に、診療情報管理士 という民間の資格がありますけれども、そういう方たちを対象にがん登録に関する研修 会をやりますと、かなりの方が実際集まられます。現実に、診療情報管理士の任意団体 で全国3か所で行った研修会に私、講師として参加させていただきましたけど、トータ ルで300名近くの診療情報管理士ないしは担当として携わっている人間が参加していま す。昨年は研究班で拠点病院のワークショップを各ブロック拠点病院で行っております けれども、それにもかなりの実務者が参加しています。  もちろん、アメリカのがん登録士といわれる資格のレベルに今たちまち達していると いう状況ではありませんけれども、当然それに向けて今事業を開始しているわけで、な んとか来年には試験をして認定までもっていきたいという計画ではおりますので、その あたりについては、おそらくこの何年かの間に、人材養成という点はできるだろう。た だ、それを雇用していただかないといけないというのは別の問題として存在しますが、 拠点病院として、自分たちの病院のがんの診療状況をきちんと把握しないといけないと いう認識をそれぞれの病院がお持ちになれば、そこの部分については重要であるという ことは当然次のステップとして出てくるのではないかということです。もちろん、イン センティブの問題は均てん化検討会のときからずっと言われておりますけど、そのあた りがどうなのかというのは行政側の問題だと思います。  土屋座長  臨床の現場の医師がさらに詳しいがん登録を熱心にやっている人がいて、その必要性 は重々臨床の方はわかっているだろうと思います。浅村先生が紹介してくれたデータが 出ていて、大変な作業量になっていると思います。  先ほどから話題になったのは、実際に陣容はどうか。学問的な興味で医師がやること はあるでしょうけれども、ここで討議しているのは行政レベルで反映させていくとなる と、現在の診療録管理の加算が果たして、西本先生が言った最後のアウトカムのところ までカバーできるだけの体制なのかどうかということにみるべきだと思います。私がわ ざわざ分けたのは、今の加算というのは入り口の、まさに機械的な登録のところを想定 した加算ではないか。追跡調査、解析、さらにアウトカムの評価のところにはとても及 んでないんじゃないかと、現場で見ていて思いますので、西本先生のおっしゃるのは、 理論的にはわかるんですけど、現実にそれを動かしていくのはかなり大変じゃないかと 思いますが、武藤先生、いかがですか。先生のところはかなり大規模で。  武藤委員  登録で数字を出すことが一生懸命語られているんですけども、これは一つの目的では あるけども、本当の目的ではないんですよね。そうすることによって、病院のステイタ スというか、内容がよくなって、いろんな意味でプラスになるというインセンティブが 全然見えて来ない。おそらく拠点病院クラスの病院の院長及び執行部はそう考える人が ほとんどだと思うんですね。基本的に我々は疫学とかこういうことを習ってきていませ んから、その重要性を全く知らないといっていいんですね。そこに突然、拠点病院にす るから院内がん登録をしろと言われても、それをやると何がプラスになるの? という ことがありますから、とりあえずは、例えば、調査の加算はつけるということで厚労省 がサポートしてくだされば、それはインセンティブになりますね。それから、やること によって、将来的にこういうことがプラスになるんだよということを目に見える形で追 加してあげないと、ただデータを出せ、出せといっても、なかなか出て来ない。  そういうことでちゃんと助成事業をつくらないと、日本のがん医療、めちゃくちゃに なったまんまですよね。だから、お金のことは厚労省がとりあえず考える必要があると 思います。  土屋座長  おそらく、施設の成績というのは皆さん見たいと思いますし、特に新しい化学療法云 々ということになるとさらに重要度が増すと。これについての意欲は皆さんあると思い ますが、やはり裏付けがないと取り組めない。それが臨床の現場に還元されて患者さん に返ってくるというところが目に見えて来るような仕組みが欲しいということですね。 ほかにございませんか。  事務局の方で何かこの辺について。  村重補佐  おっしゃるようなお金の面でのインセンティブというのは、前回の拠点病院の検討会 でも随分御意見出たところでありまして、来年度からの補助金なり診療報酬なりといっ たことはもちろん検討しておりますし、今まさに議論が進んでいるところですが、た だ、どれだけの金額が実際につくかということはまだ申し上げられませんが、できる限 り前向きに検討しますとしか申し上げられないのですが。  御議論を中断して申しわけないんですが、遅れてまいりました大臣官房参議官を御紹 介させていただきます。  梅田参事官  8月26日より大臣官房参事官、健康局担当の梅田と申します。よろしくお願いいたし ます。  土屋座長  よろしくお願いします。  大分、定義、目的が見えてまいりましたが、さらにこれについて追加の御発言ござい ますでしょうか。  武藤委員  都道府県が関与してやるというのは地域がん登録ですか。この都道府県の役所の認識 が実はかなり問題で、場所によって全然こんなこと理解してない。それから個人情報保 護法が出てきてから、ますます予後調査がやりにくくなって、この資料によると関係な いということで大変有難いことなんですけど、こういうことを理解してない人がたくさ んいるんですね。おそらく現場では、都道府県の役所にいってもなかなか返事が返って 来ない。そしてノーの言われたり。実際に癌研が江東区に移ったので、区を通して都庁 に伺いを立ててるんだけどなかなか返事が来ない。非常に動きが悪い。噂によるとがん センターは特別措置で全然そういうこと問題なくさっと通っているという話も聞くんで すけども、これは日本の国民にとって重大な、重要な仕事なんだからということで、厚 労省から各役所に通達でも出して、さっさと許可するように、そういうことをやってい ただけませんか。現場で大変苦労していると思います。  村重補佐  個人情報保護法が施行されまして以降、かなり皆さん注意を払っていただいていると いうか、ある意味ちょっと過剰なほどに御留意いただいて、かえって動きがしづらくな ってしまったというような話を聞いております。  おっしゃるように、がん登録についてはこれに当たらないという解釈が出されており ますので、こちらをぜひ普及していって。  武藤委員  全国のお役所にこれをちゃんと回していただきたい。この間、高松の国際シンポジウ ムの話では、韓国では今年か来年、法律をつくって、個人情報よりもがん登録の方がプ ライオリティがあるということでそういうのは一切大丈夫だということを決めると言っ てました。ですから、実に徹底してやられていますね。日本は完全に遅れています。  武田補佐  ただいまの個人情報保護法関連のことでございますが、資料4.たたき台で先ほど事 務局から御説明させていただきましたが、5.その他の(1)でもこの関係について確 認するということで、1つ項目を設けさせていただいております。今後の検討会の御議 論の中であらためましてここのあたりを確認させていただきまして、このような項目を 含めて検討会での議論内容というようなものをあらためて都道府県、自治体に情報提供 させていただければと考えております。  確認事項ということですが、情報提供をさせていただければと考えております。  土屋座長  よろしくお願いします。現在のところは本籍地調査が生きているわけですね。私ども は設立当初から国立がんセンターも中に入っていたので大変助かったわけですけど、現 時点ではあれを通じて病院に御返事をいただかないと予後調査もできないということに なっていますので、よろしくお願いしたいと思います。  ちょっと脱線するようですけど、地域がん登録は、先ほどの西本先生のご説明でいき ますと、いわゆる診療所レベルができないとその地域のがん登録が完璧なものにならな いわけですね。そうしますと、いつまで待っていてもできないので、モデル的なところ はできるでしょうけれども、日本全体完璧にやるというのはなかなか難しそうで、登録 というのは悠長なことではなくて、感染症みたいに届出制にでもしてくれれば容易で把 握ができるということですが、その辺、西本先生、班会議ではどういう議論でしょう か。  西本委員  アメリカのがん登録、それから、武藤先生がお話になられた韓国の登録は法制化して やるという方向になって、それ以降急速に精度も上がるし、進んでいるという状況は当 然ありますので、がん登録に関係しているものはみんな、がん登録法の制定というの は、ある意味非常に希望している部分ではあるわけです。  武藤先生がおっしゃった韓国の場合は基本的に国民に全部IDがきちんとついてい る。それと保険がリンクしていますから、診療した時点で全部そこで情報は拾い上げら れるというような仕掛けが実際にあるわけです。  日本の場合は、原則フリーアクセスの中で保険番号だけでは必ずしも同定できない。 ですから、地域がん登録の業務の中で実は非常に大変なのは名寄せといいまして、患者 さんの情報が集まってきた中で実際に同一人物なのかどうかという部分で、かなりの困 難を要しているのは事実です。ですから、そのような部分を法制化することで、まず登 録もそうだし、名寄せをする仕掛けをつくるということをすれば、おそらく飛躍的に日 本のがん診療の情報は集まってくると思います。それは厚生労働省を含めてぜひ進めて いただきたいと思っております。  それと、予後調査に関しては、戸籍の照会もなかなか厳しくなりました。住民票照会 に関しても、法的には今まで認められていましたが、個人情報保護法施行以降は、役場 の方でもなかなか難しいという反応をいただくことが現場で多々ありましたので、住民 票照会の部分で何らかの制限をかけるという総務省で今検討をされているようですの で、がん登録にかかわる部分とか、生活習慣病にかかわる部分についての住民票照会に 関しては、公的に認めていただくとかいうようなアクションを起こしていただければと 思います。  土屋座長  せっかく院内がん登録を一生懸命やって、それが集約されて地域がん登録に結びつく のが望ましい姿だと思いますが、施設側で診療所がないということで片手落ちですと、 地域全体の把握ができないということがありますので、その辺も含めて、院内がん登録 の威力を高めるという意味でもその裏付けがあった方がよろしいかなと思います。  大分皆さんの御意見伺ってまいりましたが、その他、定義、目的について御意見ござ いますか。よろしいでしょうか。  そうしましたら、きょうの御議論を事務局でまとめていただきまして、次回検討した いと思います。  事務局から次回以降の予定について。  村重補佐  予定の前に、先ほど武藤委員より御質問のありました新しい登録の標準フォーマット はいつから使用するのかという予定ですけれども、基本的に来年度から適用を考えてお ります新しい拠点病院の整備指針の中にがん登録も引き続き盛り込むこととされており ますので、本検討会で御議論いただいた結果をもとにしまして、新しい標準フォーマッ トも来年度よりスタートさせていただければと考えております。  土屋座長  来年度というのは1月? 4月?  村重補佐  4月です。  土屋座長  年内になんとかめどをつけて1、2、3月で検討して。  武藤委員  めどをどうやってつけるつもり。このままオッケーというのか、それとも、班会議の 班長さんたちに回して一応見てもらうのか。  村重補佐  そのあたりも検討会の御議論の結果ということで。  土屋座長  この検討会であと1回、2回やってある程度指針を出して、班会議へ場合によっては 戻さないと。  武藤委員  今の段階で班会議に回して、班長さんよりも、実際に使う人たちがどうか、それを聞 く必要があるんですね。  浅村委員  それと、私がさっき御質問させていただいたように、各拠点病院における運用という のが、実際に登録に当たる人の実態が現在どうなっているのかということは、時間を切 ってもしこれをやるのであれば、一番問題だと思う。西本先生いみじくもおっしゃった ように、陣容の教育が終わるのに2、3年はかかるでしょうと。もし、その人たちを待 つということになると、これは4年後しかできないということになりますね。だから、 そういう登録士ができるのを待ってやるのか、現在の陣容でどれだけのことができるの か。その調査というか、基礎資料が必要だと思いますね。  西本委員  教育に関していうと、あるレベルに達するまでという意味合いでは、私さっき言った ように何年かかかります。ただし、それは、先生御承知だと思いますけど、実際に登録 していく中でレベルは当然上がっていくわけで、それが完成するのを待ってというのは 多分遅いと思うんですね。ですから、現実には、フォーマットを決める、その状況でで きるだけそういう人たち、当然実務者がいないとできないわけですから、実務者を拠点 病院で養成をしながら進んでいく。その中で精度が上がっていくというプロセスを取ら ざるを得ないんじゃないかと思います。  ですから、来年の4月から新フォーマットでスタートするということであれば、その 時点から、今までの研修ももちろん踏まえながら、その流れの中で研修は今後の班会 議、それから国立がんセンターの情報研究部の中で実務者研修をやっておりますので、 そういうものを進めていきますけれども、同時に、現場、現場で教育をしていく。それ を例えばIT技術を使ってできるだけ情報交換をしながら全体のレベルを高めていくと いう仕掛けは情報研究部を中心につくっていけると思いますが、問題は現場でそれをや っていく、スタートするんだということを宣言していただかないと、おそらく各病院動 けないと思います。  実際、拠点病院の指定に関しても、拠点病院を指定していない都道府県の議会の議論 を見ますと、今厚生労働省が指針を検討しているので今は指定できない、というような 答弁があるわけです。ですから、がん登録に関して、4月から新しいフォーマットでや りますよ、ということをある程度アナウンスしていただければ、それに向かって現場は 動いていきますし、現場から、これはできない、問題だということが上がってくれば、 それをフィードバックして、じゃあどうするんだというのは常に議論しながら進めてい けばいいんじゃないか。逆にいいますと、最初にこのレベルと設定するのではなくて、 必須項目は目標ですよとして、足りなくても、それはしょうがない、スタートしましょ う、という形でスタートしていただいて、ここ何年かの間に、この必須項目は拠点病院 では全部ちゃんと出せるように精度を高めていきましょう、というような枠組みといい ますか、仕掛けづくりが必要ではないかと思います。  武藤委員  この間、猿木班に初めて行ったんですけど、そこで大阪成人病センターの調査の専門 家の人が実態を話してくれました。非常に優秀な女性でしたが、その人が言ったのは、 医者に頼むとTNMの分類さえ書いてくれない、実にあてにならないとこぼしていまし た。成人病センターは全がん協のメンバーですよね。それでもそんな程度なんですね。 だから、とにかく医者に任せちゃだめだと。  1つの案として、これはあくまでも案ですけど、少なくとも、がん拠点病院になると ころは、誰か1人事務員の専任をおく。兼任でも構いません、とにかくその人が記録し ていく。これはそんなに難しいものじゃないですよね。そして、あちこち抜けていると ころを、医者をつかまえて書いてもらう。実はこれが大変手間がかかるんですね。そう いう人をちゃんと置くことが拠点病院の条件にして、それに何がしかの補助を与えれ ば、僕はスタートすることはできると思いますね。そんなに大きなお金じゃないと思う んですよ。  土屋座長  この説明にも、医師等、とありますけど、実は多くの施設が、医師等の等はなくて、 医師がやっているところに問題があって、情報研究部で案をつくっても、その兵隊がい ないというのが実態だと思います。それと、武藤先生のところとか、私どものところに なると、症例数が莫大な量になっていて、1か月で、胃がん、肺がんですと50例、60例 で、普通の施設の1年分を処理しないといけない。その辺も十分加味して。やりながら というのは、お気持ちはわかるんですけど、年間50〜60例なら月に5、6例やればいい けれども、月に50〜60例というとあっという間に山積みになってしまって、やりながら 考えるということはちょっと、アメリカの病院と同じような施設が増えてきていますか ら、無理なんじゃないか。  スタートの時点で現場まである程度教育をして、専任者だけではなくて、臨床家にも ある程度理解を深めた上でスタートしないと、TNMも全部入れろというのは無理かも しれませんけど、ある程度、臨床が理解した状態でスタートしないとなかなかうまくい かないんじゃないかなという気がしますので、ぜひその辺もお願いしたいと思います。  TNMの話が出ましたけど、これも臓器ごとにいろんな案はあって、1つの臓器であ ればTNMを入れると臓器分析ができるんでしょうけども、Iの中でもIaとか、T1で もT1aとかbとかあって、おそらく臓器横断的には、そういうものは役に立たないだ ろうという気がいたします。ですから、その辺も踏まえて、武藤先生言われたように、 現場の意見を聞くという意味では班会議にも振っておいて、特にいわゆる臨床の現場に 接している方の意見をいただく必要があるんじゃないかと思います。  それから、最後になりますが、特に傍聴席のマスコミの方にお願いですが、事程左様 に、制度に至るまでにはかなりの作業量と苦労があるということで、よくマスコミか ら、アンケートで5年生存率を書け、なんていうのがきて、全部埋められなかったら、 順位に結びつかないで総長に怒られましたけども、国民の方に正確な情報をお伝えしな いといけない。背景因子の違うもので出して、順位付けをしても皆さんを迷わせるだけ ですので。  この院内がん登録が基盤になって、正確でしかもそこの地域特性がわかる状況で皆さ んに情報を提供しなければいけないんじゃないか。そういう意味で、大変大事な作業だ と思いますので、今後ともよろしく御検討をお願いします。  では、次回の予定について。  村重補佐  今後のスケジュールでございますが、座長の先生とも御相談させていただいた上で、 日程調整いたしましてあらためて御連絡申し上げたいと存じますが、よろしいでしょう か。  土屋座長  はい、ではそのようにさせていただきます。どうもきょうは御協力ありがとうござい ました。終ります。                                     (了)