05/11/25 第9回生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会の議事録 第9回生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会 日時:平成17年11月25日(金)11:00〜13:17 場所:厚生労働省専用第21会議室 出席委員:谷本石川県知事、岡崎高知市長、今井総務副大臣、田野瀬財務副大臣、      川崎厚生労働大臣、木村地方財政審議会委員、      京極国立社会保障・人口問題研究所所長 (川崎厚生労働大臣) それでは、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから第9回「生活保 護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会」を開催いたします。 まず、私の方から出席者を御紹介させていただきます。 谷本石川県知事さん。 岡崎高知市長さん。 山崎総務副大臣。 竹本財務副大臣。 木村地方財政審議会委員。 京極国立社会保障・人口問題研究所所長。 お忙しい中、本当にお差し繰りいただきまして、ありがとうございました。 (報道関係者退室) (川崎厚生労働大臣) それでは、議題に入ります。 岡崎市長さんと谷本知事さんより御発言ということでまとめられておりますので、先に 御発言いただきます。 それでは、市長さんから、どうぞ。 (岡崎高知市長) それでは、お手元の資料1−1でございますけれども、ちょっと項目が多いもので少し 長くなりますがお許しをいただきまして、私の方から意見を述べさせていただきたいと思 います。 まず、地方が提案する給付の適正化方策の検討についてでございますが、既に何回か申 し上げておりますけれども、本協議会におきましては、現在の急増します保護率の上昇を、 国・地方ともに分析をしっかりしながら、この上昇率をできるだけ抑制していかなければ ならないという観点で設置されたと認識してございます。 それで、木村先生、また京極先生等の御協力も得ながら徹底した分析が行われてきたと ころでございます。 その結果、保護率と失業率や高齢化、離婚率との相関関係は高いということで、それぞ れこのことは国と地方の共通認識となったと思っているところでございます。 我々は、こうした検討の積み重ねに基づきまして、年金と生活保護基準との均衡の問題、 また生活保護に一定の期限を付ける有期保護制度の創設を内容とします課題を提言したと ころでございます。この件に関しましては、我々はここを抜本的に手を入れなければ、現 在の生活保護率の上昇というものはなかなか抑制できないと考えているところでございま すが、まだ厚労省の提出されました生活保護の適正化の中では、私どもが提案をいたしま した高齢者世帯の生活保障に対する対応策、これは具体的な対応策でございます。年金制 度との均衡、有期保護制度の創設といった具体的な検討がまだ検討対象とされていないと いう状況もございます。 我々も、これまでこのことに対して抜本的に早急に対策を講じなければ、保護率の上昇 は抑えられないということを毎回指摘をしておりますので、そのことを十分に御認識いた だきたいということがございます。 2ページでございますが、保護者等の、いわゆる資産からの費用変換、また調査に向け ての課題もあるということで御提言を申し上げております。資産調査等は、保護開始決定 時には、重要な要件となりますことから、一定の強制力を持つような権限がないといけな いという御提言をしております。これらの課題につきましては、まだ道半ばでございます ので、本協議会の下で専門的な場を設け、引き続き検討すべき課題であると思っていると ころでございます。 2番目から、保護基準等の中身に入らせていただきますが、生活保護の基準設定につき ましては、すべて国の判断に基づきまして設定されておりまして、国民に無差別・平等な 最低限度の生活を保障するナショナル・ミニマムの確保ということでございまして、ここ がしっかりしていなければ制度は成り立たないという状況にあると思っております。ここ は地方の裁量権の拡大ということではなくて、国が責任を持って行うべきものでございま して、よりきめ細やかな基準設定を行うことによって、適切に対応すべきものであると考 えているところでございます。 また、現在の厚生労働省の見直し案につきましては、生活保護制度を無理やり各扶助ご とに分断をし、基準設定権限や国庫負担率等を変更しようとするものでありますが、この ような考え方につきましては、本来生活保護、生活をするという衣・食・住、また医療・ 介護などの、それぞれの被保護者の方々の人間の営みをそれぞれ分断するということでご ざいまして、制度的に我々はあり得ないと考えているところでございます。特に日本人の 場合は、衣・食・住一体のものというふうに考えておりますので、生活保護を各制度ごと に切って制度を改正するようなやり方には、到底我々は理解することはできないという状 況でございます。 各扶助の基準を地方の裁量に委ねるということでございますが、本来この三位一体の中 で地方分権に一番なじまない生活保護自体を地方の裁量に委ねるということは、制度の根 幹に関わる問題でもございますし、単なる負担転嫁である、また責任転嫁であると言わざ るを得ないと考えているところでございます。 「(2)医療扶助」でございますが、医療扶助について特に都道府県の役割がすごく提 案されておりますけれども、都道府県には既に医療供給体制の整備や、それぞれの介護保 険、また健康増進に関する地域の実情に応じた計画を策定し、生活習慣病対策等を始めと する健康づくりを推進しているところでございますが、こうした本来の市民・県民の健康 づくりの部分と、医療扶助の国庫負担を地方に押し付ける話とは全然相入れない話でござ います。特に今回の医療扶助、ここでは4分の1ということにしておりますが、また少し 動いてきておるようでございますが、国の負担を軽減して、それを都道府県にはめ込むと いうこととは、医療扶助の適正化と何ら関連性がないというふうに考えているところでご ざいます。 それから、この件も何回もここでも御意見申し上げておりますが、医療扶助につきまし て、生活保護の中で国の負担が大きいというところで、国庫負担が現行の4分の3で固定 化するということは、当時の厚生労働大臣、小泉さんでございましたけれども、国が責任 持って行うということをはっきり国会でも答弁しているところでございまして、これを地 方に負担転嫁を行うということ自体は、我々とすると重大な約束違反だというふうに考え るところでもございます。 「(3)住宅扶助」でございますが、この住宅扶助につきまして、それぞれ地方の裁量 権を任すというお話が最近よく出てきておりますが、本来生活保護基準はそれぞれ国が基 準を設定して、それを実施機関の地方が行うということでございまして、データ的にそれ ぞれ全国からのデータを集めたものをもって基準設定を行うということになっているはず でございます。そのデータを蓄積自体も地方にはございませんし、これは国の裁量でもっ て行うということでございまして、現在の408 区分あるということでございましたが、40 8 区分で不十分ということであれば、更に国においてデータを取りながら詳細に区分し、 基準を設定するのが筋だというふうに思っております。それぞれの地方では、データ自身 もございませんし、そのこと自体にはやはり無理があると考えているところでございます。 それと各地方ごとに、住宅扶助基準を地方の裁量で行うということになりますと、やは り被保護者の特定の市、または特定の町への転入・転出ということにつながるおそれがご ざいますので、このこと自体もおかしいというふうに考えております。 それから、住宅扶助につきまして現物支給というお話が、ここ2回ぐらいの会の中で出 てまいりましたが、これもよく理解できないところでございます。公営住宅を現物支給と して提供しなさいということかもしませんが、御承知のように公営住宅自体は非常な競争 率の倍率がございまして、低所得者層がなかなか入れないという状況が、全国どこでも共 通の課題となっておりますので、公営住宅を被保護者の方々に提供するということ自体は、 現実的に無理なお話でございます。これ自体も現物支給ということが、どういうことをお っしゃっているのかよくわからないということでございますし、ここで地方の裁量を働か すということは現実的に無理でございますので、ここもやはりおかしいと思っているとこ ろでございます。 「(1)就労支援」でございますが、就労支援につきましては、我々もハローワークと の連携を常に図りながら、我々の福祉事務所でもいろんな求人情報はすべて福祉事務所の 中に張り出してございます。面接に来られる面接室にも張り出しておりますし、連携は十 分にやっているつもりでございます。ただ、この就労指導だけでは、現在の保護率の上昇 を抑えることはできません。我々のケース全体の中でも、0.2 %ぐらいしか下がっており ませんので、全体をこれをもって抑えるということはできませんので、もう少し有効性な 制度の仕組みを確立する必要があるんではないかと考えているところでございます。 「(2)保護の支給等の事務処理の適正化」というところもございますが、保護の事務 処理につきましては、御承知のようにそれぞれ事務監査も受けながら、給付事務を適正に 実施しているところでございます。調査協力の義務づけなど、生活保護の見直しにつきま して更に権限を法的に付与するということが重要ではないかと思っておりまして、特に保 護開始時点での資産調査の権限を強化するというところが、我々としては要るんではない かということで、またその件も御提言をしているところでございます。 「4.税源移譲について」でございますが、地方分権で地方自治体の裁量拡大するとい うのが、本来の三位一体の趣旨でございますが、今回の単なる負担転嫁はこの地方の裁量 権に全く関係のない部分でございまして、特に医療扶助を中心にいろんな御提案がなされ ておりますが、医療扶助の地方の裁量権とは全く関係のない話でございまして、国の負担 を減らして地方にそれを振り付けるということだけでございますので、三位一体と一番ふ さわしくない部分であると思っております。 厚生労働省のお仕事の中には、当然地方に密着する仕事はたくさんございまして、地方 からもそのことをいろいろ勘案しながら、8,300 億円程度の、まだ我々の改革案の中で実 現されていない部分があるところでございます。その中には、私立の保育所の運営費の負 担金、市立関係の公立の保育所等につきましては、既に一般財源化されましたが、私立の 分につきましては、まだ2,800 億残っているところでございますし、社会福祉施設等の整 備の補助金につきましても、まだ改革がなされていないところでございますので、やはり こういう地方の住民の方々に直接密接に関係した仕事の中から税源移譲を行うべきではな いかと考えているところでございます。 「5.市町村合併と都道府県の役割について」でございますが、地方分権の推進の中で、 平成の大合併もかなり進んできているところでございます。正式に言うと1,821 だと思う んですが、来年の春にはここまで市町村合併の数が進んでくるという状況でございますが、 これは地方分権推進の大きな流れの中で当然の結果だということでございまして、今回そ のことと都道府県の扶助費の負担と連動して提案されるということとは、筋が違うという ふうに考えているところでございます。 「6.実施機関としての地方の立場について」でございますが、我々は当然実施機関と して、国が決めた基準に基づきまして適正な保護を行うということで、それぞれケースワ ーカーも誇りを持って、その任務を全うしているつもりでございまして、単に下請けとい う考え方は全くございません。 それから、この生活保護の地方の責任から逃げるという意味合いでございませんで、や はり地方分権になじむかなじまないかという基本論をやっているところでございますので、 そこをお間違えのないようにしていただきたいということでございます。 どうしても我々としましては、今回の厚労省の御提案は単なる国の負担分を減らして、 その分を県と市に付け回すというだけにしか理解できずに、もともと社会保障そのものは、 我々は最低でも、例えば10年維持ができるという理論的にしっかりしたものでなければな らないと常々考えているところでございます。今回の御提案の中には、そういう社会保障 で一番大事な理念が何も感じ取れない、しかも読み取れないというところでございまして、 我々としてはこの入口論でそこの検討に入ることはできないということでございますので、 そこを強行されるということになりますと、やはり事務の返上ということに動かざるを得 ないということで大変懸念をしております。 現在、生活保護を受けている方々に御迷惑をかけられませんので、やはり新規分から地 方としては責任を持って受け付けはできないということにならざるを得ないというふうに 考えておりますので、そこを十分御勘案をいただきたいと思っております。 75歳の後期高齢者の事務の協議も、国からそれぞれ県・市にございますが、そういう事 務協議にも重大な影響が及ぶと考えておりますので、やはり慎重に御判断をいただきたい ということをお願い申し上げます。 以上、意見として申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。 (川崎厚生労働大臣) ありがとうございました。 それでは、谷本知事さん、どうぞ。 (谷本石川県知事) 岡崎市長さんの発言と重複するところもございますけれども、お許しをいただきまして、 前回の協議会において厚生労働省から提出されました、生活保護の適正化、そして大臣発 言等に対する意見を若干述べさせていただきたいと思います。 まず、第1点、厚生労働省の方では、この生活扶助基準、あるいは住宅扶助基準を、都 道府県や保護の実施主体が設定することが保護費全体の適正化につながるという御主張で あるわけでありますけれども、こういった生活扶助、そして住宅扶助、あるいは医療扶助 に係る保護基準の設定の権限については、地域あるいは個人によって実質的な差が生じて はならないとする、この生活保護の本旨に照らして、私どもは国においてその責任を果た すべきだと主張してまいったわけであります。 地方の方がきめ細かい基準設定が可能という大臣発言もございましたが、きめ細かくな れば保護費が下がるという論拠が理解できないということであります。現行の基準設定が 不十分ということであれば、国において更に詳細な基準設定を行うというのが筋ではない かと考えているわけであります。 また、最低限度の生活水準が、地域によって異なるということは、先ほど市長さんもお っしゃいましたけれども、国民に無差別・平等な最低限度の生活を保障するという、いわ ゆるナショナル・ミニマムの確保という生活保護の理念に照らして、これはあってはなら ないことだと思うわけであります。 そういう意味で、この住宅扶助を始め、各種扶助の基準を地方の裁量に委ねると言われ ますけれども、生活保護にはそもそも地方の裁量はない。三位一体の改革の目的でありま す、地方の創意工夫が発揮できる余地がない。そして、この最低限度の生活水準という全 国統一的な考え方の下に、客観的に導き出される基準を地方が設定するということを仮に 求められるとすれば、それはまさに裁量行為でなくして基礎行為そのものだということで ありますので、したがって、厚生労働省の主張は地方への責任転嫁だと考えざるを得ない わけであります。 次に、厚生労働省は医療補助について、都道府県が医療計画の策定などを通じて、平均 在院日数の短縮や、病院から在宅への復帰促進などに取り組んでもらうことによって、そ の適正化が図られるでありますとか、また、医療扶助に県負担を導入するということは、 他の施策との整合性と都道府県の役割・責任を拡大することによるものであるという主張 があるわけでありますけれども、私ども県では既に医療供給体制の整備でありますとか、 介護保険とか、健康増進に関しまして、地域の実情に応じた計画も策定して、患者の視点 に立った地域における医療連携体制の構築でありますとか、生活習慣病対策を始めとする 健康づくりというものは積極的に推進してきたわけであります。 一方、この医療費の適正化ということになりますと、この医療費に大きな影響を与える 診療報酬制度、あるいは医療法の医療制度の枠組みを決定する権限はもともと国がお持ち であります。国が主導的な役割を果たしてこられたわけでありまして、我々は厚生労働省 がお示しになりました、医療制度構造改革試案に盛り込まれた県に対する医療費適正化計 画の策定の義務づけとか、政策目標の実施を踏まえた費用負担の特例を設けるということ に対しては、これまでの国の責任を都道府県に転嫁するものであると考えております。本 来医療費の適正化に関し、主導的な立場にはない県が医療費適正化計画を策定しても実行 性に乏しいと考えているわけでありますが、こうした指摘に対して十分な議論も尽くして いない現状の中で、この医療制度構造改革試案の実現を、あたかも前提としたかのような 医療扶助に4分の1の都道府県負担を導入するということは、ある意味ではこれは地方の 意見を尊重するという小泉首相の方針にも反するものだと思うわけであります。 次に、厚生労働大臣の方からは、住宅扶助についての基準の設定を保護の実施主体に移 譲するのと同時に一般財源化することを提案している。また、この住宅扶助の実施に係る 事務の性格は法定受託事務のままと考えていると、更に地域の実情をより把握できる実施 自治体が管内の住宅扶助基準を設定することによって、地域の実情を反映したきめ細かな 基準設定が可能になるという御発言があったわけでありますけれども、生活保護そのもの はまさに生存に関わるナショナル・ミニマムを確保するために、全国統一的に公平・平等 に行う給付金の支給等に関する事務であるとして、これは法定受託事務にそもそも分離を されたものであります。厚生労働大臣がその責任と権限を持って保護基準とか処理基準、 こういった制度の枠組みを決定し、地方はその基準に従って事務を実施しているというこ とであります。 したがって、仮に地方にこの生活保護の基準設定権限を移譲したとしても、ナショナル ・ミニマムを達成するために、必要最低限度のものとして基準を設定しなければならない とすれば、先ほど申し上げたようにそれはまさに基礎行為であって、地方に裁量の余地は 全くないと言わざるを得ないわけであります。 また、住宅扶助の生活保護基準についても、公平・平等でなければならないということ は当然であります。したがって、その基準は地域の住宅の実態を正確に反映させる必要は ありますが、客観的なデータを基に全国的に整合性を持って定められるべきであります。 地方の裁量に委ねるということは、生活保護制度の理念に反し、あってはならないことだ と考えているわけであります。 更にこのナショナル・ミニマム確保の観点から考えれば、地域事情の反映をより正確に するということは、地方の裁量拡大によって達成はできないものであります。国が地方の 手を借りて、各地域の実態を十分把握すると同時によりきめ細かな基準設定を行うことよ って、むしろ適切に対応すべきであると思うわけであります。 仮に我々の主張に沿って引き続き法定受託事務とするということであれば、国庫負担率 の引き下げに向かうということは、地方としては逆方向ではないかと考えるわけでありま す。こうしたことから、この自治体の裁量を拡大することを理由にした国庫負担率の見直 しというのは、地方への負担転嫁であるばかりでなく、地方の現場に無用の混乱をもたら すものであり、反対であると申し上げざるを得ないわけであります。 次に、大臣の方から高齢者や障害者分野の補助金は介護保険法の改正、障害者自立支援 法の訂正が間もないので、これをすぐに地方に移譲することはできないでありますとか、 国の大きな方針、総理の方針として挙げている健康危機管理とか少子化対策などは、国が 責任を持っていかなければいけない分野であり地方には移譲できないという御発言もあっ たわけでありますが、我々は繰り返して申し上げておりますとおり、この生活保護、ある いは児童扶養手当に係る権限の地方への移譲は、地方の自由度を高め創意工夫に富んだ施 策を展開するため、自治体の裁量を拡大するという、我々が求めております三位一体の改 革の本旨に照らして決してふさわしいものではないと考えているわけであります。厚生労 働省の回答は、生活保護費や児童扶養手当と我々が提案をし、手つかずになっている8,30 0 億円の補助金改革案のどちらが三位一体の改革に相応しいのかという問いかけに応えて おられない。単なる数字合わせと言わざるを得ないわけでありまして、厚生労働省の見直 し案は撤回をして、地方が提案をしている国庫補助金の改革リストから是非選定をすべき だということであります。 次に、財務副大臣の発言の中で、市町村合併が進む中で都道府県の役割が相対的に減少 しているという御発言がございましたが、高知の市長さんがおっしゃいましたように市町 村合併によりまして、町村の数は減少し、市の数が増えた結果、都道府県の扶助費の財政 負担は減少しておりますけれども、市町村合併はもともと地方分権を推進するという観点 から、国の政策としても取り組んだものであります。より住民に身近な団体である市がよ り多くの事務を担うということは、ある意味では地方分権推進の当然の結果でもございま す。そして、都道府県における扶助費の財政負担は減少はしておりましても、生活保護に おける都道府県の役割は何ら変わることはないわけでありまして、このことをもって役割 は相対的に減少しているとの主張は理由がなく不適切だと思うわけであります。 そして、国と地方の負担割合の変更がなければ、県と市の財政負担のバランスというも のは、地方交付税制度の財政調整機能によって適切に調整されているわけでありまして、 県と市の間では財政上のいかなる問題も発生していないということを特に申し添えておき たいと思うわけであります。 最後に、知事会、市長会としてのこれまでの主張を再度確認しておきたいと思います。 そしてこの主張は、地方の総意であるということを表明しておきたいと思います。 この協議会は、社会構造の変化に対応できず、言わば制度疲労を起こしております、こ の生活保護制度の改革を目指して、国庫負担率の引き下げを前提としないことを確認をし てこの春に設置されたわけであります。生活保護制度は、国の責任において、生活に困窮 するすべての国民に対して、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度であることは 改めて申し上げる必要はないと思うわけであります。 したがって、国民の最低限度の生活を保障される機会でありますとか、最低限度の生活 水準の内容については、地域あるいは個人によって実質的な差が生じることがあってはな らないものであることは、厚生労働省自身もかねてから主張してこられたところでござい ます。 当時の厚生省の強い主張によって、平成12年度の地方分権一括法において、生活保護を 生存に関わるナショナル・ミニマムを確保するため、全国統一的に公平・平等に行う給付 金の支給等に関する事務であるとして法定受託事務に分類をし、厚生労働大臣がその責任 と権限を持って保護基準や処理基準など、制度の枠組みを設定する。地方はその基準に従 って事務を実施することとされたものであります。 生活保護制度が制度疲労を起こしているとは言え、こうした生活保護の基本的な枠組み というものは、ナショナル・ミニマムを確保するという観点からも堅持をする必要がある わけでありますし、拙速な見直しは将来に大きな禍根を残すと考えるわけであります。 また、この児童扶養手当でありますけれども、法定受託事務という点では同様でありま して、生活保護及びこの児童扶養手当事務は、ともに地方の自由度を高め、創意工夫に富 んだ施策を展開するために、自治体の裁量を拡大するという三位一体の改革には相入れる ものではないわけであります。 更にこの協議会の下に設置された共同作業チームによりまして、生活保護費に係る保護 率の上昇とか地域間格差は、経済的・社会的要因によって極めて大きく影響を受けている ということが解明されたわけでありまして、厚生労働省などがまとめられました地方負担 率の引き上げでは、生活保護費の適正化にはつながらないということも明確になったわけ であります。 こういう経緯からしますと、今後共同作業チームの科学的分析結果に基づいて、この生 活保護費の適正化についての議論が進むものと思っておりましたところ、こうした協議会 での議論の積み重ねを無視する形で、生活保護制度の根幹であります保護基準の設定権限 の地方への移譲、あるいは国庫負担率の引き下げを併せた提案がなされたわけでありまし て、我々はこの協議会の議論を踏まえまして、本協議会の最大の検討課題である給付の適 正化に資する改革として、共同作業チームの科学的分析結果を下に、年金との整合性であ りますとか、有期保護制度の創設でありますとか、資産調査の強化などを内容とする生活 保護制度などの基本と検討すべき課題、給付の適正化のための方策というものを提言した わけでありまして、本協議会の下に専門的な検討の場を設置して、しっかりとした議論を 行うべきと申し上げたわけであります。 我々は、この生活保護の本旨にも劣る厚生労働省の提案は、地方への責任転嫁ゆえの何 物でもなく、決して受け入れることできないし、強く撤回を求めるものであります。これ は地方六団体の総意でありますし、一糸乱れぬ地方の総意であるということを表明する次 第でございます。 厚生労働省には、三位一体の改革に係る改革対象補助金については、生活保護に固執す ることなく、地方が昨年8月に提案をいたしました補助金改革案でまだ実現をされていな い8,300 億円の中から選定するように強く求めるところであります。 現場を預かる我々としては、十分な議論と地方の納得がなければ、現場の混乱は必死で あると思います。特に理由なき地方負担引き上げについては、地方団体には正直言って不 満や怒りが充満しているわけであります。もし厚生労働省が見直し案を強行されるという ことであれば、我々としても重大な覚悟を固めざるを得ないとの申し入れも行ったところ でございます。場合によっては、地方団体一致して直ちに統計月報の報告を停止する。あ るいは来年4月以降の新規の生活保護受給に関わる事務について、厚生労働省が直接実施 をするよう求めていかざるを得ないという動きがあることも申し上げておきたいと思いま す。 今後、医療制度改革を始めとする、この社会保障制度改革については、何よりも国と地 方との信頼関係と協力がなければ、制度設計も実施体制も構築できないと考えるわけであ ります。国と地方の信頼が損なわれないように是非厚生労働省の適切な判断を期待すると ころであります。 なお、この趣旨は11月18日に地方六団体として大臣に、生活保護の実施を国に求める 緊急申し入れを行ったものであります。本日、資料として提出してございますので、詳細 は後ほどごらんいただきたいと思います。 以上でございます。 (川崎厚生労働大臣) ありがとうございました。 それでは、前回の協議会で木村委員、総務副大臣から、私に対する質問がございました。 既にお答えしたものもありますけれども、今の2点についてお答え申し上げたいと思いま す。 1つは、木村委員から、厚生労働白書の生活保護の2つの分析の記述を削除すべきとい うお話がございました。木村委員御指摘の分析については、本協議会の共同作業で議論が 深まる前の白書執筆時点、今年の6月もしくは7月ごろの知見を下に記述しており、白書 においても本協議会において保護率の地域差の要因等を分析しているところであり、その 結果を踏まえて生活保護の適正な実施について検討する必要があるという留保を付けさせ ていただいておる。 一般的に申し上げて、厚生労働白書については毎年その基準について、さまざまな御意 見をいただいております。木村委員の御指摘も御意見として、今後の政策決定やそのため の分析を行う際に参考としてよく勉強させていただきたいと思っております。 それから、今回の提案では、今もいろいろ議論がございましたけれども、一方的に地方 の責任・負担が増えるだけだが、国はどのような責任や負担を新たに担うのかという、総 務副大臣からの御質問でございます。 三位一体改革は、地方の裁量拡大と補助金の廃止、税源移譲、交付税改革を併せて実施 するものであります。今回、厚生労働省見直し案は、この三位一体改革の趣旨に沿って基 準の設定権限を地方に移譲するとともに、医療扶助における都道府県負担の導入や、住宅 扶助の一般財源化を行うものであり、税源移譲の結果、地域によってばらつきがあるもの の、一方的に地方の責任と負担が増えるものとは言えないと考えております。国において は、新たに地方自治体が基準を設定するに当たっての助言を行うとともに、地方の提案を 受けて保護の適正化のための不正受給に関するガイドライン作成等の取組みを行っていき たいと考えております。 昨日、4大臣会合におきまして、私の方から昨日時点の厚生労働省の考え方をお示しし ますということで、4大臣会合に提出をいたしましたので、その説明をさせていただきま す。 11月4日の第6回協議会において、生活保護については8,100 億円の国庫負担金の廃止 ・縮減等を提案しておりましたが、今回資料1にありますように、その額を3,800 億円と する見直し案を提案したものでございます。当初案からの変更点は、見直しは住宅扶助及 び医療扶助について行うこととし、つまり生活扶助は削除いたしたことになります。 医療扶助については、国庫負担を3分の2にするとともに、都道府県と保護の実施主体 の負担をそれぞれ6分の1に変更することといたしております。 以上の生活保護の見直しの中心として、4大臣から厚生労働省案を出せということで、 御承知のとおり来週の28日、29日、政府・与党として最終決定を致す日程を組んでおる ようでございます。これはもう知事さん、市長さん御承知のとおり、年末の予算編成に向 けて、作業の一連の流れの中で私どもの協議も秋という1つの指定をいただいた中で議論 を詰めてきたという意味で、昨日、先週の会合の下で何とか24日に設定をいただきたいと お願い申し上げましたけれども、お忙しい方々ばかりでありますが、どうしても日程の調 整が付きませんでした、したがって、その中におきまして厚生労働省として5,040 億とい う額、これは内閣の方から出てきておりますので、それに対して考え方を述べたというこ とでございます。 なお、今日も4大臣会合があり、その中において先ほど御指摘のありました、施設整備 費の問題については、厚生労働省の考え方を示すようにという御指摘がございます。 一方で、先ほどから御議論いただいております地方提案につきましては、昨日の4大臣 会合でも縷々御説明申し上げました。また、地方との協議の場、麻生知事さん、市長会の 会長さんからも御質問がございましたので、私からSARSとかBSEとか、こういう問 題を国の責任を放棄して全部地方に譲れと言っても、なかなか厚生労働省としては難しい 御提案でございますと、まさに今、鳥インフルエンザの問題を議論しているときに、こう いう機能をすべて地方に移譲するようにという御提案は、なかなか難しいと考えておると 申し上げました。 2番目に、障害者自立支援法は、今年の秋に成立したばかりであります。また、障害者 団体からさまざまな意見が今、厚生労働省に、勿論皆さん方にも寄せられている中、我々 真正面から問題、障害者団体と話し合いをしていかなければならぬ問題だと考えておりま すので、介護保険法も含めまして、今年成立した法案で来年から作業に入っていく問題に ついては、やはり国が正面から取り組んでいかなければならない問題と申し上げました。 また、少子化問題につきましては、残念ながら今年は大変厳しい数字になるだろうと思い ます。内閣の最大課題と掲上しながら、現実問題、私はよく団塊の世代と申し上げますけ れども、私の時代は268 万人生まれましたけれども、今年は結果として110 万人を切る数 字になるであろうというときに、国の責任を放棄して、すべてそれは地方でやってくださ いということは、私どもなかなか判断をしかねるというのが現実でございます。 昨年提案をいただきました保育につきましては、これは昨年さまざまな議論をした中で、 政府・与党として決定させていただいたという経過がございますので、政府・与党で1つ の結論を得たものについて、今回またもう一度検討しろと言われても、この問題について はなかなか難しゅうございますというお答えを昨日はさせていただいたところでございま す。この会合においても、何回かこのようなお話をいたしておりますけれども、昨日こん な案を出しましたので、あえて私の方から付け加えさせていただいたところでございます。 それでは、順次御発言をいただきたいと思います。市長さん、知事さんに御発言いただ きましたので、木村委員、どうぞ。 (木村地方財政審議会委員) ありがとうございます。 大臣、御回答ありがとうございました。大臣の御回答をいただきましたけれども、私と しましては、そういう官僚答弁的なものではなくて、やはり実施体制が議論になっている ときのああいう分析でございますから、私としましてはあの分析か本当に適正なものであ ったかどうかということをなぜ言えないんだと、そういう一般的な回答しかなぜしてもら えないんだと、こっちの真剣さがわかっているのかと、大臣に直接申し上げているという よりは、そういう気がいたします。 ああいう予断を持ったような、あるいは予断がなければ、よほど基本的なことを踏まえ ていないような分析で実施体制が云々と言われることは、研究者の立場から見ると非常に おかしいんではないかと感じますので、今回そのお話は承ったということだけにとどめた いと思います。 それでは、資料3−1、3−2、3−3、3−4をごらんください。 資料3−1は「『第8回 生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会』におけ る厚生労働省主張などにたいする意見」でございます。 「I.住宅扶助基準の地域の住宅事情の反映について(1) 厚生労働省側の主張といたしまして「国がしている住宅扶助基準において、同一の特別 基準が設定されている地域内においても、実際に家賃格差がある。地域の実情をよりよく 把握できる保護の実施自治体が、管内の住宅扶助基準を設定することにより、地域実情を よりよく反映したきめ細かな基準の設定が可能になる、と考える」とございます。 私の反論は、既に住宅扶助基準は地域実情を反映したきめ細かな基準となっていること は、生活保護受給者の家賃分布を見ても明らかであると考えます。 ます、その理由の第1でございますが、住宅扶助は47都道府県・14政令指定都市・35 中核市ごとに、更に1・2級地と3級地等に区分して、408 の額を設定してございます。 それは、資料3−2の表1に載っております。それぞれの御出身の県とか、そういったと ころの基準額、これは単身者でございますが、家族が2人〜6人までですと1.3 倍。単身 者の基準額にしましても、例えば車椅子を使ってエレベーターがないとだめだという場合 には、この基準内で見つけることが難しい場合には、これに1.3 倍をかけた家賃を上限と します。 また、地域性というものがございまして、この地域では家賃が高くて、この基準内では 見つからないというときに1.3 倍をかけますが、それを適用している自治体は、私の知っ ている限りは、全部の自治体に問い合わせたわけではないですが、地域性によるものは東 京の3区ぐらいではないかと思います。各地域はその上限の範囲内の家賃の借家を借りて いるということでございます。 私は、東京都、大阪府、富山県、三重県、青森県、石川県、高知県のそれぞれにつきま して、先生方の御出身地ですけれども、民間借家の家賃の分布と生活保護受給者の家賃の 分布を図表に表しました。 順次見ていただきますが、結論から先に申し上げますと、民間借家のうち住宅扶助特別 基準額の範囲内で借りることができる住宅は、全体の1割程度です。全体には正規分布を していますが、それの非常に低い方の裾野の方にあるということです。 また、各都道府県について生活保護受給者の家賃は、既に住宅扶助特別基準額を上限と して、地域実態を反映したものとなっており、多様化している。それも図表でお示しいた します。 まず、資料3−2の3ページの図1でございます。これは、東京都の民営借家の家賃分 布です。東京都1級地の住宅扶助特別基準額(単身者)は、5万3,700 円です。そういう 5万3,700 円は、この民営借家の家賃分布のうち、左側の下の方にあるということがおわ かりいただけると思います。 東京都3級地の住宅扶助特別基準額も4万900 円ですが、これもずっと左側の低い方に ございます。民営借家の面積別の家賃を見ますと、29平米以下ですと、平均家賃は6万3, 578 円となりまして、この住宅扶助特別基準額より1万円ぐらい上です。30〜49平米は8 万8,000 円ぐらい、50〜69平米は11万2,000 円ぐらい、そういうふうに民営借家の面積 別家賃がございますが、住宅扶助基準額、これは上限となりますが、生保受給者の家賃の 低い方のところに設定されていると。 図2は、東京都の生保受給者の家賃分布でございます。これを見ますと、もう住宅扶助 基準額が上限ですので、上限の範囲内で、それぞれ分布していると。既に多様化している ということがおわかりいただけると思います。 ちょっととんがってあるのは、上限のところで借りられるリミットが来るので、そこの ところでとんがっている。 東京都の1、2級地の5万3,700 円というのが、実際どれぐらいのものが借りられるの かは、後でお話をいたします。 図3は、大阪府の民営借家の家賃分布。大阪府は大阪市、堺市、大阪府1、2級地とい うのは4万2,000 円。これは単身者で上限でございます。大阪府3級地の住宅扶助特別基 準額は3万800 円です。 民営借家の面積別家賃で、29平米以下が4万6,000 円、30〜49が5万9,964 円で、こ こでもやはり民営借家の平均よりはずっと住宅特別基準額が低いんですが、大阪府、堺市、 大阪市を見ましても、このように家賃分布はかなり多様化しております。これは電話で問 い合わせてもそうなんですけれども、上限の範囲内でその地域に合ったものを探すという 作業が行われております。 一番住宅扶助基準額が低い富山県を見ますと、それが7ページでございますが、富山県 は2万1,300 円と載っておりますが、これは3級地だと思うんですが、富山県の1、2級 地、富山市で3万800 円です。これでもやはり分布のうち非常に低いところに住宅扶助特 別基準額が設定されているということがおわかりいただけると思います。 富山県の生保受給者の家賃分布は、8ページのようになっておりまして、これもやはり 地域に応じて多様化しているということが読み取れると思います。 大臣の三重県を見てみますと、三重県の1、2級地では3万6,200 円、3級地では3万 3,400 円です。民間の平均家賃が、30平米以下でも3万9,900 円、30〜49平米でも4万8, 000 円です。3万6,200 円でどれぐらいのものが借りられますかというのを問い合わせて も、2DKで築が古いかなという感じのところです。 三重県の生保受給者の家賃分布は、図8のようになっております。 時間の関係もございますが、青森県、石川県、高知県を見ましても、同じように住宅扶 助特別基準額以下の民営の借家を探そうとすれば、全体の1割あるいは十数%の中から探 すと、その中で探して家賃分布というのを見ますと、地域に応じてそこで借りられる家賃 の範囲内で住宅を借りますので、私はもう既に実態として多様化しているんだと思います。 2番目に「II.住宅扶助基準の地域の住宅事情の反映について(2)」です。 厚生労働省資料では「東京都(最も高い基準額)53700 円では新宿区では6畳未満とな るのに対し、八王子市では12畳間以上の間取りの賃貸も可能。家賃に差があるにもかかわ らず、同一の基準にすると、借りることのできる住宅に実質的な不公平が起こりうる。地 域の住宅事情を的確に反映しない基準は、相対的に高い基準の地域への被保護者の流入を 招く」とあります。 これに対しましては、東京都特別区と八王子市はともに東京都1級地−1に属しまして、 住宅扶助特別基準額、単身は5万3,700 円と同じです。このことをもって、皆様方は恐ら く印象では、八王子の方がいいのを借りられると思われるかもしれませんけれども、賃貸 住宅の情報に基づいて実態を調べますと、そういうことはありません。このことによって、 実態として不公平を引き起こしたり、相対的に高い基準の地域への被保護者の流入を招く ほどの差異とはなっていない。 その理由といたしまして、賃貸住宅について調べると以下のことが言える。東京都1級 地−1の住宅扶助特別基準額5万3,700 円で借りられる住宅は、八王子市では、例えばア パートとかマンションの占有面積が30平米〜40平米で2Kあるいは2DKで、築30年〜 15年ぐらい、最寄駅から徒歩10〜20分、中にはバスに乗るところもございます。 新宿区で調べてみますと、アパートかマンションの占有面積が25平米〜40平米ぐらい、 2Kあるいは2DK、築35年〜20年、最寄駅から徒歩10〜15程度。ほかの東京都内の1 級地−1に属する市は八王子の状況に類似します。 東京特別区では、目黒区、足立区、練馬区なども、新宿区の状況と類似いたします。し かし、千代田区などで調べますと、適合する家賃のところは見出し難いという状況であり ます。むしろ、私は八王子をとれば高い基準に設定されているのではなく、むしろ家賃が 低いところに基準が設定されているのではないかと考えます。 ここで質問でございますけれども、以上見たように、既に生活保護受給者の家賃は地域 実態を反映して多様化している。現行制度を変えて、厚生労働省の言うように地方が基準 を設定することによって、給付の適正化に資するか以前として疑問である。現在と何が変 わるのか、地域実態と今でも十分合っていると思うんですけれども、なぜ給付の適正化に 資するのか、その点を明確に御説明願いたいと存じます。 「III .生活保護受給者の公営住宅入居について」です。 厚生労働省側の主張は「市営住宅、公営住宅を自治体はもっているので、今は現金支給 が基本であるけれども、現物の住宅を支給するという対策もある」というお考えについて です。 住宅扶助は、お金の面から言いましても主に大都市圏の問題でございます。そこでは、 公営住宅の応募倍率は高く、また公営住宅に生活保護受給者が優先入居することは、ほか のボーダーライン層との関係、就労関係、まちづくりなどの観点から、望ましいことでは ないと考えます。 生活保護受給者のうち、どれだけが公営住宅に入居するかは、公営住宅の供給状況とは 関係がございません。それは、図15にありますので後でごらんいただければと思います。 住宅扶助の問題は、主に大都市圏の問題であります。公営住宅の応募倍率は、大都市圏 ほど高く、2003年では東京都が27.4倍、大阪府が20.1倍、北海道が8倍、愛知県が6.2 倍、福岡県が11.4倍でございます。それは、図16にあるとおりでございます。近年、非 常に公営住宅の応募倍率が伸びている状況にあるということが、おわかりいただけると思 います。 大阪府を見ますと、応募倍率が1より小さい団地は、平成14年度で府営住宅3 75 団地のうち3団地、ほかに泉北ニュータウンが15団地ございます。平成15年度は、府 営住宅378 団地のうち5団地、ほかに泉北ニュータウンが14団地ございます。しかし、 その泉北ニュータウンでは、その後先着順の募集をして埋まるということもお聞きしまし たが、回転も早いということもお聞きしております。 例えば、泉北ニュータウンは、交通事情や築年数の古さが影響していると思われます。 一方、大阪市営住宅は交通の便がよく人気が高い。人気の低い公営住宅に生活保護受給者 が優先的に入居することは、受給者の就労条件に合うかとか、住み慣れた町を離れること になるとか、まちづくりの観点からも望ましいことではないと私は思います。 公営住宅の入居は、母子世帯や障害を持つ人のいる世帯、高齢者世帯を優遇しており、 その倍率は高いです。それは、参考資料2ページの表2、これは大阪市のものでございま すが、「最近8年間の特定目的住宅応募状況」、生活保護受給者以外です。母子世帯向け、 高齢者世帯向け、身障者世帯向け、高齢者ケア付、身障者ケア付というのがございますが、 母子世帯向けで4.7 倍、高齢者ケア付で75.8倍、身障者世帯向けで3倍とか、こういう 形で非常に公営住宅の倍率も高いし、空いているところも偏在している。 そういう中で、生活保護行政と結び付けるということは、私は適正ではないと思います。 4番目の「IV.福祉事務所および生活保護費の負担について」です。 厚生労働省等の主張は「どんどん市の負担が多くなって、県の負担が少なくなっている。 能力のあるところが、負担を担うべきである」という御主張に関しましては、都道府県は 法律にも決められておりますとおり、生活保護の実施主体です。所管する福祉事務所は、 この25年間ほとんど変化がございません。それは、19ページの図17にございます。県の 福祉事務所の数は、その黒いもので330 ぐらいでずっと来ております。政令市も百から百 数十で来ております。政令市以外のところが、700 台でずっと来ておりまして、この25 年間所管する事務所数にほとんど変化がありません。所管する事務所の中の構成人口が変 わりました。 図18でございますけれども、生活保護費の中で、どこを通して生活保護費が払われてい るかという分布を示したものでございます。昭和50年からのほぼ30年間です。都道府県 生活保護費が下がってきている部分で、全体的に増えているのは、一目瞭然で政令市生活 保護費、それから東京都の特別区の生活保護費です。こういうふうに見ますと、政令市と か特別区というのは、非常に行政的に力のあるところでございます。能力のあるところが、 この50年間およそ半分以上のシェアを担ってきたところは変わりがないと思います。 こういうことは抜きにいたしましても、実施主体がわざわざ調整的な負担を担うという ことは、私はおかしいのではないかと思いますし、ほかの制度との整合性ということも生 活保護では必要がないというのは、国民健康保険のようにそれぞれ独立でしている会計を 調整するというようなものではなく、生活保護は国全体に共通した国の事務を淡々と実施 するということであるからです。 それでは「V.退院促進について」です。 厚生労働省等の主張は「退院促進のためには県の働きが大切である」ということに関し まして、反論をいたします。 医療供給体制、ここでは病床数と医療扶助に相関が見られない。したがって、病床数規 制の関連させて、退院促進のために都道府県の責任を求める理屈は妥当しない。 退院促進は、むしろマッチングの問題であり、保健師や医療ソーシャルワーカーの働き を重視することの方が大切ではないかと思います。 退院促進は、別に新しいことではなくて、ここ数十年取り組んできたところでございま す。例えば、東京都では生活保護の改善に向けた提言の中で、就労支援員と並んで保健師 や医療ソーシャルワーカーの配置を重視し、福祉事務所への設置を提案しました。本年度 は、自立支援プログラムの一環として、精神保健福祉センターや、精神障害者地域生活支 援センター、地域の医療機関などと連携した精神保健福祉支援プログラムの実施を検討し、 退院促進に向けた退院支援員、メンタルヘルスケア支援員の配置を福祉事務所に呼びかけ ています。 「VI.医療扶助と住宅扶助について」です。 厚生労働省等の主張は「医療扶助と住宅扶助は、生活扶助と別のところが多く、基本的 に地方行政が担っているところが多いと思っている」ということです。 それについて、私どもの調査結果を示したのが、資料3−4でございます。少し丁寧に 書いたので、細かな字になって申し訳ございませんが、「諸外国の公的扶助制度の概要」 でございます。日本以外では、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンを 並べました。これは、社会保障制度の制度比較をするときに、我々がよく取り上げる国で ございます。日本のことはもう皆様御存じですので、日本の方は省きまして、アメリカは 連邦国家で、州は国でございます。 対困窮家庭一時扶助制度、それから補足的給付制度。これは低所得者の障害者、高齢者 などを対象としたものでございます。それに低所得者対象の医療扶助で、メディケイドと いうのがございます。 補足的給付、高齢者とか障害を持つ方を対象とした、これは生活費、住宅費用ともに現 金給付いたします。 対困窮家庭一時扶助制度は、生活費に住宅手当を付加的に現金給付いたします。 医療扶助、メディケイドは、現物給付です。基準額の設定主体は、この補足的給付の方 は連邦でございます。国はそれに対して付加的な給付が可能となっているだけです。 それから、対困窮家庭一時扶助制度は、国が基準額を設定いたします。医療扶助も国で ございます。 費用の負担割合ですけれども、連邦政府と国になっております。 今度はイギリスですが、イギリスは単一国家で国、カウンティ、ディストリクトで、2 層または3層性になっておりまして、公的扶助の名前は所得補助と言います。フルタイム 就労以外の低所得者の方々が対象ですが、60歳以上については、2003年から年金クレジッ トといいまして、高齢者を分離した制度をつくりました。生活費を現金給付いたします。 所得補助受給者、年金クレジット受給者には、同じように分類上から言えば、無拠出所得 比例給付というんですけれども、そこに属する住宅給付を支給することになっております。 医療は、国民保険サービス、国庫負担でやっておりますので、原則無料であります。 基準額の設定主体は国であります。 所得補助は、国庫負担100 %です。 住宅給付につきましては、補助率95%の国庫負担が付いております。 ドイツは連邦国家で、制度名称は社会扶助と申します。必要不可欠の生計費を自らの力 及び手段によって十分に調達できない者が対象となっておりますが、生計費、住宅費とも に分離することなく現金給付です。 ほかに医療扶助とか介護扶助もありますが、これも社会扶助の中で支払われます。 連邦政府が定める扶助基準額、規制の枠内で国が具体的な扶助基準額を定めることにな っております。特別扶助は国、生計扶助はコミューンですけれども、そのコミューンは社 会扶助は国からの機関委任事務になっております。 フランスの社会扶助ですけれども、児童扶助、医療扶助、高齢者扶助、障害者扶助、住 宅及び宿泊に関する扶助がございます。ほかに、社会住宅手当(国と企業が負担)、家族 住宅手当(家族手当金庫が負担)とございます。これも国が最低基準を設定いたします。 スウェーデは単一国家でございます。名前が社会扶助でございますが、65歳以上の高齢 者には、最低保障年金を支給しております。スウェーデンの社会扶助は、コミューンが一 般財源で経営しておりますけれども、臨時的応急的制度で平均的受給期間は3か月でござ います。 生活費、住宅費を現金支給いたします。65歳の高齢者(最低保証年金受給者)の住宅給 付につきましては全額国庫負担で、これはもともと地方団体がそれぞれのコミューンが、 この住宅給付を持っていたんですが、高齢化の偏りとか、そういうことによって、それぞ れのコミューンが持ちこたえられなくなりましたので、96年に全額国庫負担に変わったと ころでございます。 ですから、住宅扶助と生活扶助を切り離してやるかと言えば、私は切り離していないと ころの方が多いと思います。地方団体が財源を持っているのかということにつきましては、 そうではないということをお示しをいたしました。 最後に、資料3−3でございます。「地方自治体のボーダーライン層への配慮(結果と して生活保護への落層防止になると考えられる実施策)と地域経済振興策の例示)」、こ れは多くの生保受給者を抱えている政令市から意見を主にまとめたものでございます。 地方団体は、むしろ低所得者対策よりも、経済振興の方に熱心になるという財政学者の 理屈がございますが、ここにお見せするものは両方にわたるものでございます。 「1.地方自治体のボーダーライン層への配慮(結果として落層防止になると考えられ る実施策)」、住宅の提供、家賃補助、各種料金などの軽減・減免、資金貸し付け、技能 習得、保育者優先入所、就労斡旋、経済的支援などです。 ○住宅政策 ・公営住宅の整備と公営住宅への身体障害を持つ人、母子、低所得者等への入居の優遇 ・低所得者への家賃の減免 ・低所得高齢者向け優良賃貸住宅の確保と家賃補助 ○母子世帯にたいするもの ・母子・父子世帯への医療費助成 ・母子世帯への保育所優先入所 ・母子世帯への就労斡旋 ・母子福祉資金・寡婦福祉資金の貸付 ・母子福祉対策資金の貸付 ・就学援助制度(学用品費・給食費・就学旅行費の費用の一部補填)パソコン技能者養成 講習会 ○その他 ・低所得世帯への特別奨学会 そういったものがございます。 あと例えば、ホームレス自立支援事業、川崎市で行っているもの等を挙げてございます。 2番といたしましては、地域の経済復興のために地方自治体がしていることは、企業誘 致、次世代産業の育成、観光業の振興、人材育成、就労支援、資金支援などでございます が、項目だけ申し上げますと、地場中小企業の競争力強化・経営基盤の充実、そこにはい ろんな例を挙げでございます。 3ページ目でございますけれども、地域コミュニティに密着した経済活動の活性化、創 業支援の充実、既成産業の発展、次世代産業の育成、雇用創出に向けた取り組み、国際ビ ジネスの推進というように、さまざまな観点から、創業や就労支援に取り組んでいるとい う状況をここで申し上げました。 以上でございます。 (川崎厚生労働大臣) ありがとうございました。 1点だけ御質問がございましたので、局長より答えさせます。現行制度を変えて、厚生 労働省の言うように地方が基準を設定することによって、給付の適正化に資するか依然と して疑問であるという御質問です。 (木村地方財政審議会委員) 私は、大臣からお答えをいただきたいと思います。 (川崎厚生労働大臣) 細かい数字の話ですから、正直申し上げて新宿区の土地の値段が幾らになって、1平米 幾らと言われても、正直言って私からなかなか、援護局長からも答えられないかもしれま せんけれども、どうぞ。 (中村厚生労働省社会・援護局長) まさに木村委員が、先ほど新宿区と八王子の例を住宅情報誌からお取りになったという ことですが、全国のそういう作業を国でやるのが適切なのか、まさにそういった地域の実 態をきめ細かく把握できる地方の実施機関がやることが適切なのかということだと思いま す。 例えば、かつて国鉄で時刻表をつくっておりましたけれども、分社化してJRになって、 きめ細かな時刻表ができることによって効率化が図られたと。そういうことを我々はイメ ージしているということ。 もう一つ、木村委員から、被保護者の家賃の状況がございましたけれども、いろんな経 過で現在の住宅扶助の基準が決まっておりますが、今の基準は被保護者世帯の97%をカバ ーするという基準になっております。 そういうことで、それより下の方に分布しているのは当然でございますが、その生活実 態を見て、被保護者の方の自立を促進したり、被保護者の方のミニマムの基準を決めると きに、または被保護者の97%をカバーするというような決め方で、かつそれを毎年伸ばす 場合には、東北地方なら東北地方の家賃、これは消費実態調査、CPIがございますが、 全国のブロックのCPIで伸ばすというような機械的な基準になっているということがご ざいますので、そういった点について、今度扶助の実施主体、保護の実施主体の方でやり ますと、例えば都道府県内の区域単位に設定することもできますし、今はできていない市 町村のその下の区域までのきめ細かさも設定できるということで、実質的な公平というこ とについて、より現行よりもきめ細かな基準ができると考えております。 また、現物給付についてのお話がありましたけれども、一般財源化ということになりま すと、財源を自由にお使いになることができるわけで、ある物件を一括借り上げして被保 護者の方に提供するというような、例えば、高齢者においてシルバーハウジング等をやら れておりますが、そういった一括借り上げすることによって実質的に家賃の水準を下げる というような政策も可能なのではないかと考えて、住宅扶助につきましての権限の保護実 施機関への全面的な移譲と一般財源化を提言させていただいているところでございます。 (川崎厚生労働大臣) ありがとうございました。 御意見ですか。どうぞ。 (木村地方財政審議会委員) 私は、局長の御説明でもわからない。なぜ適正化になるのか。もう既に限度内で実態を 反映したものになっているという理解ですので、適正化するということは市場価格をもっ と反映しろということでしょうか。そうなると、ナショナル・ミニマムの価値を上げろと いうことになるんでしょうか。そこら辺が非常に難しいし、また三重県の方とか、大阪市 の方とか、いろんな方に伺うと、全国で見て自分のところの付けた、例えばこの住宅扶助 基準を自分で設定するとなりますと、全国で見てどこがナショナル・ミニマムの設定にな るのかということが非常に難しいというふうにおっしゃっておられます。私は、この各国 の例を見ましても、やはり国が基準を決めておりますね。それでいいんではないかと。今 のどこが問題なのか、それで何で適正化できるのかがいまだによくわかりません。 以上 です。 (川崎厚生労働大臣) それでは、京極所長、どうぞ。 (京極国立社会保障・人口問題研究所所長) 今日は、最後の会なので、私の方からも前回のように詳しい資料と思ったんですけれど も、本来、大臣や知事や市長の前で話す場合に、もうちょっと共同作業でやるべきことが たくさんあったのではないかと思います。 それはそれとして、私の方からの資料はたった1枚でございまして、たまたまマスコミ 等では、やや国の責任後退とか、そういう記事が多いものですから、そうではないんだと いうことで『河北新報』の23日版の生活保護に関しての私の意見を述べたものを提出して おります。 今回、厚生労働省案が出たわけでありますが、私はかねてから生活保護全体の見直しは、 また社会保障審議会その他で大きく議論しなければいけませんけれども、今回は三位一体 改革の中で、生活保護についても地方分権が可能か否かという議論を、もうこの協議会で 結論を付けると。私としては、一部可能であるというふうに思っておりまして、厚労省の 意見で特に医療扶助と住宅扶助という、言わば現物給付的なものに関しては、かなり手を 付けてよろしいんではないかと思っております。 生活扶助の方は、生活保護の根っこでございますので、これは現金給付という体系であ りまして、各国においてもこれが独自の体系になっていると。国によって、先ほど木村委 員から御説明がございましたけれども、連邦制度の国を、いわゆる日本のような国に置き 換えるかどうかという、国・地方の関係で言いますと、連邦、国、基礎自治体という段階 でございますので、どちらに引き付けて考えるかということによって違いますし、先ほど イギリスの例も見ましたように、イギリスは単一というふうに言っておりますけれども、 サッカーなどを見てもわかりますように、スコットランド、イングランド、ウェールズ、 北アイルランドは別の国でありまして、議会も別途開かれて、保護基準も別でございます ので、そういうことを考えますと、いわゆるどこをもって国として言えるかということも、 やはり国際比較の上ではなかなか難しい問題が多々あります。 ただ、一般的に言えるのは、生活扶助と医療扶助と住宅扶助を統一的に考えているのは、 ドイツぐらいが日本と若干似ていると思いますけれども、基本的には医療扶助については 別の体系でメディケイドになっている国もありますし、また無料でやられている場合は、 生活保護者は無料で医療を現物で受けられますので、別の扶助にならざるを得ないという ことであります。 住宅についても、公営住宅との関係は私も申し上げている話で、やはり進んだ住宅政策 の国、我が国はそうではないという暗黙の理解がございますので、なるべく低所得の人は 公営住宅に入っていただくということで、できない場合に家賃補助をするというのが、本 来の姿ではないかと思いますけれども、日本の場合は国土交通省が公営住宅政策を推進し、 住宅扶助は厚労省が推進するという形でばらばらになっていますので、ここの連携が取れ てないという問題があるということでございます。 医療扶助についても、ちょっと補足をいたしますと、一時期ですけれども、昭和36年だ と思いますけれども、国民健康保険で医療扶助を受けざるを得ない人たちは、3か月間は 猶予があって、3か月どうしても払えない方が医療扶助の受給者として国民健康保険から 受けるという例もありました。これはその後改めましたけれども、やはり医療扶助とか住 宅扶助につきましては、医療保険制度がどうなっているか、医療制度がどうなっているか、 また地方の実態がどうなっているか、それから住宅政策については、公営住宅が実際どう なっているか、そういう地方の実態との関係でやはり政策が組み立てられるべきだと思い ますし、その点ではよりきめ細やかな対策をするという今回の生活保護費の適正化に資す る方向については、私は是非進めていただきたいと思います。 特に住む家に関して、これはいろんな地域で違うわけでありまして、生計費のランニン グコストと違って、どのうちに住んでいても同じような生活ができるようにするというの が生活保護の基本だと思います。 医療につきまして、ナショナル・ミニマムというのは実際に医療にあるかどうか、例え ば重い病気にかかった場合、生活保護者は重い医療を受けるわけですから、それを生活扶 助費のように一定の基準で全国画一的にできるということではありませんので、やはり今 回のように現物給付。先ほど現物給付で公益住宅だけではなくて、家賃補助も実際に借り て、そのお金の一部を補助しますから、現物給付ということで御理解いただきたいと思い ます。そういうことで、これから県の役割も大きいと。 確かに生活保護行政の実施主体というのは、福祉事務所を指しますけれども、実施体制 としては国・県、そして市町村というのがいろんな形で絡まって、それぞれ協力し合って やっていくべきですし、今回の議論の中で生活保護の適正化については、皆さん意見が全 く変わらないし、また国と地方が協力しなければいけないという点でも意見が一致してい ますし、その間をどうするかという点で大きく意見が分かれましたけれども、私としては 県の御努力というものもこれまで非常にあったわけで、町村だけの行政で県がいいわけで はなくて、実施体制という点では市の福祉事務所に対してもいろんな形で関与して、県行 政の広い視野から住宅政策とか、あるいは医療政策とか、就労支援、産業育成等を推進さ れて、保護率をできるだけ抑制していくということが正しい選択ではないかと思っており ます。 以上でございます。 (川崎厚生労働大臣) ありがとうございました。 続きまして、山崎総務副大臣、どうぞ。 (山崎総務副大臣) 先ほど修正案というか、今までのお話とちょっと違った提案が厚労省からなされたよう でございますので、今すぐにと言ってもなかなか十分というふうなことではないんですが、 それを踏まえまして今までの案、こちらの方の考え方を述べさせていただきたいと思いま す。 最初にかなりの部分、知事会、市長会、谷本さん、岡崎さんの方から言われたことと重 なっている部分があるということをお断わりしなければいけません、それで私どもの方で、 まず最初に取り上げたいことは、住宅扶助に関する点でございます。 一応、この住宅扶助というものは、一応と言うとおかしいんですけれども、基準の設定 を地方に任せるというふうな考え方のようでございます。そっちの方がきめ細やかだと。 ところが、ここのところが問題でして、生活保護というのが法定受託事務というふうにさ れているわけでございまして、これは制度上大きな矛盾ではないかと当方は考えます。 いわゆる国の根幹、地方と国との関係のところでの法定受託事務と、当該事務の基準に ついて今回資料を出させていただいておりますので、資料5を見ていただきたいと思いま す。ここにいろいろ戸籍法、その他農地法までございます。そこのところを見ながらお聞 き願いたいのでございますけれども、資料にもあるとおり、主要な法定受託事務というの は国が基準を決めると、設定するものだと。そしてそれを受けて、地方がその基準に自分 たちのところはどう当てはめていくのかといのうが本来の役割分担ではないかと、この考 え方のあるものではないかと。 例えば、児童手当の支給に関する事務では、手当の額、支給の要件が法律上定められて いるわけでございます。また、細かい話になるかもしれませんが、農地等の権利移動の許 可に関する事務ということになると、樹冠の疎密度、専門家ならすぐわかるんでしょうが、 樹冠というのは木の葉っぱの茂る広さで、そういうものがたくさんあるかどうかというの が、0.3 以下の土地は主として採草放牧の目的に供されていると判断すると。 あるいは、農作業に従事する日数が年間150 日以上である場合は認めるとか。地方自治 法の規定に基づく処理基準で事務の詳細にわたって規定するようなものがあるわけでござ いまして、ある意味で法定受託事務と国の基準設定というのは不可分であるというふうに 考えておりまして、基準の設定を地方に任せて、なおかつ法定受託事務のままということ は、今の法治体系の中からちょっと受け入れることができない、どちらかにすっきりして いただかなければいかぬというのが、まず総務省としての考え方でございます。 それに関連してきまして、今回のいわゆる基準設計を地方に任せる、委ねる問題点とし て申し上げておきたいことは、住宅扶助に関して言えば、基準の高いところに低所得者が 移ることとなると、たくさんもらえるようなところに移ることになる。その場合、給付増 を地方が嫌って、結果として基準の引き下げ競争が起こるという指摘が現場から寄せられ ておるところでございます。 これを容認することが、もしそういったことになれば、生活困窮者の最後のよりどころ となる公的扶助制度として適切と言えるのかどうかと、この点について、先ほどもその辺 の説明があったようにも受け取れましたけれども、是非この際厚労省の考え方を伺ってお きたいと思います。 そして、人的な社会サービス、現物サービスと違いまして、現金給付の所得再分配に係 るという生活保護に関しては、地方自治体に任せると給付の高いところに低所得者が移動 したり、あるいは自治体ごとにそれを引き受けたくないというインセンティブが働いて、 その地域から貧しい人を追い出す結果という行政も可能になるわけでございまして、そう いう結果にさせないためは、やはり中央政府がその責任を負うべきではないかというのが、 当方としては確立された財政の理論ではないかと考えておりまして、その辺のところも厚 労省のお考えをお聞かせ願いたいと思います。 また、先ほど来随分ございましたが、厚労省側から住宅扶助の方が生活扶助より、地方 の自主性が高いというか、そこに対応することが非常に高いというふうに、京極先生の方 からもお話があったように感じますが、先ほど木村先生が縷々説明されたように、住宅扶 助は地域の家賃のデータ、その他を見ても、もうほとんどある程度客観的に決まってきて いるもので、それに対応しているということでございまして、国が詳細にわたる参考事項 を示そうとしている生活扶助と同様に、そう地方の自主性を発揮できる分野ではないと言 えるんではないかと、そういうふうには言えないというふうに私どもは思います。 ということで、にもかかわらず、生活扶助と住宅扶助で国の負担に極端な差異を設ける と制度設計をしたいという理由は、ちょっと見出せないのではないかというふうに考えて おります。 2番目として、医療扶助に関わる問題点も指摘させていただきたいと思います。先ほど 来いろいろ厚労省側から、都道府県が医療計画の策定などを通じてどうのこうのというよ うなことを繰り返しません。要するに、都道府県が策定する医療計画のうち、医療費の適 正化に資する事項というのは何があるんだということが問題になります。普通一般的に言 われているのは、基準ベッド数ということの設定だと思うんですが、そこのところをそれ だけでおっしゃるようなことになるのかどうか。しかも、積算というのは厚労省令で決め られておりまして、都道府県の実質的な権限は少ないと。権限に何の変更もなくて新たな 都道府県にそういったものを導入するというのは、やはり単なる責任転嫁にすぎないので はないかと思います。 そして、何よりこの問題というのは、医療制度全体が今どういうふうにしたらいいかと というふうな、大きな問題点をこれから、何年かかるかわかりませんが、とにかく見直し てちゃんとやらなければいかぬのだろうと、老人医療も何も含めて、そのときにその議論 と引き離して生活保護者、国民全体の医療制度を考えなければならないときに、そこで生 活保護の皆さん方だけの医療制度について切り離してどうのこうのというのは、ちょっと 今、時期的にいかがなものかということも言わさせていただきたいと思います。この医療 制度だけで、とんでもない議論がこれから必要だろうというときなので、先ほど京極先生 は最後だとおっしゃいましたが、本当に最後かどうか、私は正式に聞いておりませんで、 もしよければ後で京極先生に最後だという情報源を教えていただければ助かるんですが、 そういったことを、最後とは言わないまでも、これから短い期間の三位一体の改革の中で、 この医療扶助に対する問題点というのは、やはり別のところの視点もあるということをし っかり踏まえれば、余り深入りはできない問題ではないかと、取り上げるのはいかがな問 題ではないかと。繰り返しになりますが、費用の付け回しという言葉はきつくなりますが、 都道府県に対する負担転嫁にすぎないのではないかということを言わせていただきたいと 思います。 それから、児童扶養手当に関してですが、この手当の認定基準というのは資産調査をし ないというのは、共通認識と言いますか事実だと思いますので、そうなってくると地方自 治体の裁量の余地は全くないということになります。要するに、単なる先ほどの国側の負 担率のカットということになって、それに関わってもし自治体側に事務量が増えることが あれば、その分だけ自治体側の持ち出しが増えるということになるんではないかと思って おります。 最後に、いろいろ言わなければならないんですが、結論的として申し上げたいのは、何 で皆さんいろいろな生活保護等にこだわって、地方案を厚労省側として点検していただけ なかったのかと、勿論すべての地方案が問題なしとは言えないわけでありまして、先ほど の保育所、去年話が済んだはすだというのも、当然古い話ですから項目には残っておりま すが、今回それとは別に提案されているわけですから、そのことを厚労省が、これはやは り我々としてはなかなか受け入れないということであるならば、その辺の議論を一つひと つ積み上げた形で、この三位一体の税源移譲の案をするという作業がもっとあってもよか ったのに、そこのところに熱意をほとんど示されてこなかったと、それで今月中等々のお 話が出てくるということは、非常に奇異な感じがしておりまして、健康危機管理であると か、少子化対策は国が責任を持っていかなければならない分野だと、そういったことで厚 労省に対する要求改革額5,040 億を出すのは困難だというふうにおっしゃっているわけ ですが、そういった形で金額ベースで言えば、それ以上の8,300 億円というのが地方側か ら出ているわけでございまして、その辺のところ、前回も今も申し上げているわけですけ れども、それから地方と相談して補助金として税源移譲になじむものを点検していただけ ればよいわけでございまして、その辺のところ、何で地方側から要望している補助金に移 譲するのに、それだけネガティブな態度を取られるのかというのが、最後まで当方として は納得できないというのが、最後までと言いますか、今回も納得できないというのが基本 的な考え方であります。 以上であります。 (川崎厚生労働大臣) 2、3お答えしますと、法定受託事務、国が基準設定していると。基準の設定を地方に 任せて、そのまま法定受託事務というのはいかがかという御質問であろうと思います。法 定受託事務か自治事務かということについては、今、前例もお示しになりました。地方自 治法設置法上の技術的な問題であると思いますので、私どもと総務省と詰めてまいりたい と思います。 それから、医療の問題の御指摘がございましたけれども、医療の問題も小泉内閣の最大 課題になっておりまして、医療構造改革については12月中には基本的に結論を得なければ ならぬということですので、これから勿論、今年の12月の議論ですべては終わりませんけ れども、しかし、12月をもって1つの議論のけじめを付けていかなければならぬというこ とは御理解いただきたいと。 その中で、昨日、大臣からも今のお話と少し合いますけれども、権限移譲というものを 併せて都道府県に医療というものの計画についてやってほしいと。したがって、権限移譲 というものが前提だというお声をいただいたことは事実でありますので、そういった問題 も含めて今、議論を与党と政府の医療制度改革でさせていただいているということだけお 答えしておきます。 (山崎総務副大臣) では、せっかくのお答えがございましたので、今そういった意味での、前向きと言いま すか、そう言わざるを得ない御回答がこの法定受託事務についてあったわけでございます けれども、そうすると何年か前の地方分権推進委員会のあの侃侃諤諤の議論は何だったん だということにもなるわけで、そこのところがこの三位一体になってきたら、ちょっと具 合が悪くなるとそこの議論とはまた結論が変わってきてもいいんですよというように受け 止められますので、その辺のところも踏まえた上での対応を今後していただけたらと、こ れはこちら側の希望でございます。 (川崎厚生労働大臣) それでは、財務副大臣、どうぞ。 (竹本財務副大臣) 皆さん御苦労様です。今日で9回目ですけれども、生活保護制度について相当詳しい議 論をしてきたと思います。やはり聞いておりましても、一番の問題は何と言っても役割分 担をどうするか、こういうことに尽きるのではないかと思いますけれども、生活保護は国 の責務だという御意見もありますけれども、現に生活保護制度は国と地方の役割分担の下 で運営されているわけですので、時代に応じて的確な役割分担をその都度考える必要があ るのではないかと思います。 そういった中で、都道府県の役割や関与の在り方がこのままでよいのかということが論 点になっておりますし、それは考えなければいけないのではないかと思っております。 前回か前前回か、京極先生の方から話がありましたように、戦後の荒廃した日本で国民 の生命を維持するためには、自治体も金がない、力がない、そういう中で国がやらざるを 得ないから10分の8という高い補助率で、2割だけ地元で負担してくれということでやり ました。それが少し事情が変わって4分の3になりましたけれども、私は前にも申し上げ ましたとおり、国の事務であるから費用の全部は国が負担しなければならないということ には必ずしもならない、それぞれの役割と、それぞれの能力に応じて、関係機関がみんな で力を合わせて生活保護を実現するということに尽きるのではないかと思っております。 先ほど、木村先生のお示しになった資料3−4を見ましても、スウェーデンの例が出てお りますが、スウェーデンではこの生活保護の財源をコミューンが一般財源でこなしておる わけであります。日本は、国が4分の3をもっておると。このように、どこの国において もその国の実情に応じて、一番適切で、かつ能力のあるところがその支援をするというこ とになっているのではないかと思います。 私も、スウェーデンはこういう問題で視察に行きましたけれども、やはりコミューンと いう意識、日本で言えば隣組なのかわかりませんが、もっと広い範囲ですけれども、そう いった共助の精神が非常に強い。ですから、みんなで金を出そうということになっている のではないかと。 日本は、大変豊かな国になりましたけれども、しかしながら国においてその財源が十分 ないという状況の中で、どういった適切な役割分担があるのかということを考える必要に 迫られていると思います。 1点、住宅扶助を自治体の判断及び一般財源に任すのはいかがかという話が再三ありま したけれども、住宅については、例えば日本で1軒当たりの住宅の面積が一番広いのは、 石川県、富山県といった北陸地方でありまして、一番狭いのは大阪市であります。これは、 自然の環境が全く違う、また社会環境も全然違う、したがって、小さい家でも大阪市内で あれば何とか生活できると。大阪市の場合は、1世帯で大体3畳ぐらいの安いレンタルハ ウスをつくっている業者がおりまして、そこに住んでいる人が多いと、その費用は大体4 万円ぐらいと聞いておりますけれども、そのように地域によって相当違うのではないか。 また暖かい沖縄では、暖房は要りませんし、寒い北海道では相当お金がかかっても暖房し てあげないと最低生活の保障はできないと、そういうふうにやはり住宅こそ地域で適切に 考えていただき、結果としてナショナル・ミニマムというのは地域によって対応が違うけ れども、ここまでやれば国としての責任を果たしたことになる。それに県及び市もしっか りと協力していると、成すべきことをやっているということになるんではないかと思って おります。 そういう意味におきまして、住宅における権限移譲、それから医療補助における都道府 県の役割分担、こういったものに対応した見直し案を示された今回の厚生労働省の案は、 妥当なものではないかと思う次第であります。 以上です。 (川崎厚生労働大臣) 随分時間も経過してまいりましたけれども、御発言があれば。どうぞ。 (谷本石川県知事) 手順についてお聞きしたいんですけれども、我々も今朝の新聞報道で5,000 億という内 容を初めて知ったわけですけれども、今お話聞いておりましたら、4大臣会合で官邸に正 式に提案をされたというふうにお聞きしたんですが、そういう理解でいいんでしょうか。 (川崎厚生労働大臣) 昨日の時点ではそうです。 (谷本石川県知事) 正式に提案したということであれば、この協議会でまだ協議が続行中であるというのに 提案をされたというのは、我々としては全く腑に落ちない。この協議会で協議をして、合 意を得て、それが正式な提案ということになるんではないかと思います。ですから、そう いう意味では24日に開けなかったということは、我々もいろんな仕事を抱えておりますの で、この協議会できちっと協議をして、その議論を経た上で提案をするというのが、たし かこの協議会のもともとのお約束ではなかったかと思いますので、そういう点では、大変 言い方がきつくなるかもしれませんけれども、協議会そのものが無視をされたという印象 を受けざるを得ないので、もしこれが正式の提案ということであれば、是非撤回をしてい ただきたいということを強く申し上げたいと思います。 (川崎厚生労働大臣) 先ほど少し触れましたけれども、今お話いただきましたように、21、22日に会合を持ち たい、残念ながら日程が立たない。24日と私が御提案申し上げました。頭の中にありまし たのは、一方で4大臣から厚労省として1つの考え方を示すようにという要求もあったと。 それを併せながら議論をしてまいりまして、残念ながら今日の日になりました。 したがって、私としては今日時点のという表現を付けて御提案をさせていただいたとい うことでございます。撤回する気はございません。 (谷本石川県知事) そうしたら、これは、この協議で今日を提案をいただいたという理解でいいんですか。 事後報告ということですか。 (川崎厚生労働大臣) 今日時点の話をお伝えしました。 (谷本石川県知事) 今、大臣の方からお話がありましたが、この協議会に対しては事後報告ということです か。今、協議会の場で、我々は5,000 億という話はどこからも聞いたことがありませんの で、新聞で初めて知ったということなので、我々委員としては無視されたような印象を強 く思っているんですけれども、この5,000 億という提案は今日あったという理解でいいん ですか。それとももう昨日提案をしてしまったので、それはもう単なる事後報告だという 理解でいいんでしょうか。 (川崎厚生労働大臣) 事後報告というよりも、今日皆さん方と意見の一致を見れば、その提案を出させていた だきます。しかし、意見の一致を見なければ、そろそろ厚労省としても自分たちの考え方 を、政府・与党の責任において出していかなければならぬだろうと。これはもう再三再四 申し上げていますとおり、昨年の政府・与党合意、15年にもございました。そして昨年も 政府・与党合意の中で、秋までに結論を得るようにという中で、また18年から実施するよ うにという1つの条件の中で、私ども政府・与党の一員としてやってきておりますので、 政府・与党の一員としての行動として、昨日させていただいたということでございます。 (谷本石川県知事) 私がお聞きしているのは、今日この協議会で提案があったというふうに受け止めていい んでしょうかということをお聞きしているわけであります。5,000 億の話は我々は全く聞 いておりません。今日、朝の新聞を見て初めて知ったという状況ですから、政府・与党の 場合でも協議会でしっかり議論をしてくれというお話がありましたので、国の方からお声 かけがありました。ですから、我々はこの春に協議会のテーブルについたということなん で、この協議会でしっかり議論をして、そして1つの方向性を出して、それを持ち上げて くれと、私はそういう理解でこの協議の場に臨んでいるわけでして、とりわけこの春スタ ートするときには、国庫補助率、負担率の引き下げは前提としないで、生活保護制度全般 について議論をしようと、このことは4月の第1回の会合でも、大臣はその当時は大臣で はなかったわけですけれども、確認しましたら、それはそのとおりですと、生活保護制度 全般について議論するんですと。そのためには、まず共通認識を得ておかなければいかぬ でしょうと。それはそのとおりですという御同意を得たわけであります。中には学者の先 生方もおられますので、そこで科学的な分析をやりましょうということになり、その結果 きちっと1つの原因が究明をされた。これは生活保護の適正化というのが大きなテーマに なってくるという理解をしたわけでありまして、そちらの方向へむしろ事は進んでいくべ きではないかという思いがありますので、その中で9,000 億という話も突然でしたけれど も、これは協議会でそういう提案がされたという我々は受け止め方をしております。今度 の5,000 億がもし、要するに4大臣の方へ正式に提案をされたということであれば、やは り極端な言い方をすればこの協議会の存在を無視されたと。この協議会は一体何なのかと いう思いすら持たざるを得ない。これは地方の側にも非常に大きな不信感が、もっともっ と増幅されてくるんじゃないかという思いがしております。 今日、大臣が正式な提案ということであれば、提案の中身については我々はまた議論を して、意見を言わせてもらわなければいかぬというふうに思います。事後報告ということ であれば、この協議会を全く無視されたと。協議会はそんな形で発足したんじゃないと思 います。 (川崎厚生労働大臣) 協議会については、いろいろなことを含めて議論しようと。したがって、適正化に向け ていろんな議論をしようということでやってまいりました。その中で、皆さん方の意見も あると、我々の意見もあるということでぶつけ合いながら、今日まで来たんではないでし ょうか。 一方で、政府・与党としては、秋までに説明を得るということが、我々の場合はかかっ ている。皆さん方はかかってないという御主張かもしれないけれども、我々はこの3大臣 は、ある意味では政府・与党として秋までに責任を得ると責任を負っているわけです。そ ういった中で、昨日会合を持てませんでしたので、今日時点の考え方をお示ししますとい うことで、5,000 億とありましたけれども、それは正直言って税源移譲はここで出してお りませんので、基本的には生活保護についての考え方を昨日申し上げたというところでご ざいます。 また、ここで結論を得られるならば、当然その方向によって変えていくということはあ ります。 どうぞ。 (岡崎高知市長) 時間も押しておりますので、少し手短にしたいと思いますが、本協議会は、やはり急増 する生活保護をいかにして国と地方が協力して抑制していこうかと。そのためには、制度 の抜本的な部分までいろんな意味で改善しなければならないという趣旨で立ち上がったと いう認識をしております。そこがどうもかみ合わないので、いつも負担の割合を国と地方 がどう持つべきかのところだけがいつも表に出てきますので、この協議会の立ち上がった 一番根本の部分の、今の都市部の生活保護の急増をいかに抑えるかという本論へ入らずに、 どうしてもここへ来るので、我々もいつも平行線になるわけでございます。 ただ、この協議会の立ち上げの目的はそこだったと思いますので、それはもう今、谷本 知事がおっしゃったとおりでございまので、そこを全体的に考えないと、いかに負担を国 が地方へ切り換えたとしても、生活保護の急増はストップできません。これはっきり言っ ておきます。そこへ踏み込まないと、本来の協議会の趣旨は全うできないと思っておりま すので、その点をよろしくお願いしたいと思います。 (川崎厚生労働大臣) どうぞ。 (木村地方財政審議会委員) ありがとうございます。時間がないので、3点ほど申し上げます。 まず、竹本財務副大臣のスウェーデンのことでございますが、私もそういうふうにいい とこ取りされるんではないかと思っていたんですけれども、スウェーデンはあくまでも臨 時的、応急的な制度なんです。失業手当にしろ、年金にしろ、ほかの制度で最低所得保障 というのが整っておりますので、コミューンの一般財源でする社会扶助というのは、日本 なんかと全然違って、平均受給期間は3か月、それもほかの制度からまた払い戻してもら うことがあるというぐらいの短期的な制度なんです。そのことをお含みください。 また、私がドイツの州を国としたことについて、先生方から反応がありましたので、私 はいいとこ取りをなかなかしてはいけないという職業の研究者ですので、やはり州は国で す。州では大臣、首相まであります。義務教育の制度も、ドイツは州によって違います。 ですから、国と取る方が私は当然だと思います。 今まで知事も市長もおっしゃいましたけれども、私が今までの制度で一番残念に思うと ころは、厚生労働省側からの提案には適正化について十分に説明し切れていない。もう時 間が来ましたので、時間が来ましたのでと、それまでに何度も適正化について説明を伺い ましたし、納得のするものであれば、そうですねということになりますけれども、そこの ところが、私は議論が足りない、制度について話をしていないというのは、別にごねてい るのでも何でもなくて、当然の地方団体側からの反応であると思いますし、まだその意味 では議論が足りない、まだ続けるべきだと思っております。 以上です。 (川崎厚生労働大臣) 京極所長、どうぞ。 (京極国立社会保障・人口問題研究所所長) 2点だけ申し上げます。1点は手続論で、谷本知事の御意見もございましたけれども、 昨日の段階で厚生労働大臣がしかるべき立場で提案せざるを得ないというのは、よく了解 できますし、またそれを踏まえて、今日改めて、これは正式と言っていいと思うんですけ れども、出されたことについては、これもまだ当然なことであって、ここで議論するとい うことだと思います。この協議会を無視したというふうに、私どもは理解しておりません。 2番目に、方向性でございますけれども、今、日本は道州制に向かっていると言われて おりますけれども、今、県の生活保護行政がどんどん後退していって、果たして道州制に なったときに全然生活保護行政をやってない県がいっぱい集まって何をするのかというこ とにもなりますので、直接市の福祉事務所のような形でやることは郡部しかないわけでは ありませんけれども、しかし全体の広い視野で敬愛する谷本知事のようなリーダーシップ のある方で、きちっと県が市の福祉実施体制を指導していけば、相当よくなるのではない かと期待がありますので、私は特に今回医療に限定されましたけれども、将来的にはもう ちょっと広く考えていいんじゃないかと、これはこれでまた大きな課題になると思ってお ります。 以上です。 (川崎厚生労働大臣) 竹本さん、何かございますか。 (竹本財務副大臣) 特にございません。 (川崎厚生労働大臣) まず第一に、生活保護の見直しの作業として、木村委員からも谷本知事さん、岡崎市長 から御提言をいただき、前前回だったでしょうか、省としての考え方をまとめて答えさせ ていただきました。 その他の問題もあるかしれませんけれども、いずれにいたしましても、適正化に向けて 皆さん方の御提言を受けながら、私どもできるだけスピーディーに実施に移せるものにつ いては移すということで、まず作業は進めたいと思っております。 もう一方で、この負担の問題につきましては、私どもの主張と皆様の御主張は乖離があ ったと。それぞれの違い方向で議論をしてきたということは事実だと思います。 しかしながら、そのペーパー自体は、この9回、まさに多くの方々もお入りいただいて、 オープンな中でやってまいりましたので、両者の間で意見は必ずしも一致しなかったと。 特に厚生労働省の見直し案に対する見解は異なったと、生活保護の適正化に向けては、先 ほど申し上げたように、まだまだ課題があると申し上げましたけれども、それはやってい かなければならぬということについては、意見の一致は見たということで、もう9回にな りましたけれども、正直申し上げてもう11月中、秋までには結論ということになりました ので、両者の意見はそのようなところで、ある意味では出し尽くしたということで、今日 の会合をもって終わりとさせていただきたいと思いますけれども、御意見ございますでし ょうか。 どうぞ。 (谷本石川県知事) 同意いたしかねます。今、京極先生の方から、今回新たな正式な提案というお話もござ いましたので、そういった提案を我々は受け止めて、次回にはしっかりとした意見も言わ せてもらわなければいかぬということであります。 やはり4月から9回やってきたということで、だんだん生活保護制度の問題点が明らか になってきたということです。高知の市長も言っておられますけれども、生活保護の適正 化こそが一番大きなテーマなんであって、こういうことが共通の認識として得られてきた わけですから、これは大事にしなければいけない。 そのためには、是非この協議会で、我々が提案した事柄について、単に検討するという ことではなしに、専門の検討機関を設けてしっかりやっていく。これが生活保護の適正化 につながるんではないかと思います。大臣は打ち切りたいというお話かもしませんけれど も、我々はまだ継続するべきだという意見を持っていることを申し上げたいと思います。 (川崎厚生労働大臣) どうぞ。 (岡崎高知市長) 私も同様でございまして、これまで9回、非常に重要な意見を提案させていただきまし たし、それぞれの委員さんからも、それぞれ重要な意見がたくさん出ております。また、 その意見の総括も私はできてないと思いますので、やはり総括なしにこれをいきなり閉じ てしまうというのは、非常に乱暴だと思いますので、やはり国・地方ともども、生活保護 を抑制しながら、よりよい制度、生活保護は御承知のように、約六十年経ちますが、ほと んど抜本的な改正はされておりません。やはり60年の間で制度疲労が来ていると思います ので、そこを踏まえて議論を継続するべきだと考えております。 (川崎厚生労働大臣) ほかにございますか。どうぞ。 (山崎総務副大臣) 当方からは、最後にしたいというのが一言だろうと思いますが、今までいろんな議論が あったとは言え、先ほど京極所長からの話にあったように、今日の今日出てきた案をその ままにして終わりというのは、幾ら何でも、谷本知事からありましたように、ひど過ぎる ということもございます。 それから、厚労省案、先ほども自治事務かどうかという話がありましたけれども、ここ だけの項目を1つ取って、どちらかに移してもいいかという議論ではなくて、すべての行 政事務において、それではこれが本来国のやるべき仕事なのか、地方のやるべき仕事なの かという根本的な議論の中でのある程度の方向性が出てこなければいけないものを、こて 先でこれはちょっと動かしてもいいですよといわんばかりの発言というのは、幾ら何でも 制度の根幹に関わる点からすれば、当方としては議論がちょっと不十分なままではないか と。そういったことからいくと、先ほどの議論の中にも若干出たかもしれませんけれども、 給付費の適正化に資する改革というのが先決だということを、地方からの提案の給付費適 正化方策ということについての議論もまだほとんど済んでいない。 最後に申し上げれば、先ほど来から京極先生の引用ばかりで恐縮なんですが、冒頭にど ういう、かつての先生の出ている発言になっているかと言いますと、補助金削減メニュー にないものを厚労省が持ち出してきたという地方の怒りは理解できるがという表現になっ ているわけです。厚労省案に地方が怒りを持つのは当然理解できると言ったところで、そ このところで一番の問題は、今の打ち切りという中での厚労省案に対して、総務省がどう こう言うわけではないかもしれませんけれども、谷本知事、岡崎市長を始めとする地方六 団体が、その怒りを抑えて納得して、生活保護の人たちの事務に対して、先ほども返上と いうことがありましたけれども、それをほかの自治体の知事さんや市長さん、ほかの団体 の方々に説得して、やはり国に協力していかないとだめだろうということを言う気分にな っているかどうかということが、ある意味政治の世界、行政の世界では重要ではないかと。 そこのところを納得しないままで、これはもうけしからぬということになれば、これはも う明らかに国と地方との摩擦の大きな原因になって、そしてその結果被害を被るのは、や はり最終的には生活保護の人たちになるんではないかと。そういう点を極めておそれる内 容ではないかと思っております。 (谷本石川県知事) 私が提案した内容も、これは生活保護制度の根幹に関わる問題です。それから、例の負 担割合を下げて地方の負担割合を増やすというのは、負担割合を変更するということです から、これは生活保護制度の根幹に関わるお話だというふうに思います。そういった意味 では、平成12年に地方分権一括法というのができて、ここで国と地方の役割分担というの が整理されたんですね。それからまだ5年しか経ってない。その中で、特に生活保護に係 る事務というのは国が責任を持ってやらなければいけないんだという国の強い御主張があ って、これは法定受託事務に位置付けられたわけですから、それからまだわずか5年しか 経ってない。 よくこの三位一体、分権改革を進めるときに、国の役割、地方の役割がいつも議論にな るんです。単なる数字合わせではいかぬと、国は何をすべきか、地方は何をすべきか、そ の役割分担を整理したのが、5年前に成立した地方分権一括法、ここから事が全部スター トしている。わずか5年弱しか経っていないのに、この生活保護制度の根幹を変えなけれ ばいけないような事態が生じているとはとても思えない。 ただ、生活保護制度が戦後60年間の間で制度疲労を起こしていると。それは現場にいる 高知の市長さんが感じておられるわけですから、我々は生活保護の給付の適正化について、 やはり検討していかなければいかぬでしょうということで、多くのメニューを提案させて いただきました。これはまさに保護制度の根幹に関わるお話もあるわけですから、せっか くこの協議会でそういう提案もさせていただいて、共通認識も得られたわけですから、そ の方向に向かって事柄を収斂させていただくというのは、極めて素直な対応ではないかと いう思いがいたします。 ですから、京極先生はこれで議論が尽きたから終わりとおっしゃっていますが、何を根 拠に言っているのかわからないし、今回の提案が正式な提案ということで、京極先生もそ のことをおっしゃいました。今回正式に提案をされたということですから、されたのであ るならば、今ここで提案をして、今日で打ち切って、はい結論、物別れですというのは、 余りにも協議会としては、お粗末極まりないと言わざるを得ないと思います。 それぞれの各委員の皆さん方の御意見を。 (川崎厚生労働大臣) 12年度にそういう話があった、これは事実です。しかし、その後に三位一体をやろうと いう中で、15年にも、これは総務省も財務省も入り、厚生労働省も入って、政府・与党と してこの問題について取り組もうと、したがって、そういう意味では国全体のスタンスは、 谷本さんお怒りになるかもしれないけれども、スタンスは変わったと。12年のとき変えな いと言ったじゃないかと言われるけれども、その後三位一体の中で議論をしてきたと。 (谷本石川県知事) お言葉を返すようでけれども、三位一体の改革というのは、地方の創意工夫を生かし、 地方の自由度を増やしていくと、地方分権を進めるための三位一体の改革で、国から地方 へ負担を転嫁するというのは、これは三位一体の改革でも何でもないというのが、我々地 方全体の共通の理解なんです。 (川崎厚生労働大臣) それは知事さんの御主張としてわかります。だから、先ほど申し上げたように、私ども の主張と知事さん、市長さん、木村委員の御主張とは一致は見なかったと先ほど申し上げ たんです。しかし、一方で適正化問題について、我々からペーパーも出させていただいた ように、すぐやらなければならないこととして整理はいたしましたと。しかし、もっと大 きな話があるんだという御主張もわかりましたと私ども申し上げているんです。 しかし、こうして9回やってきて、一方で政府・与党というものがあって、私どもはそ ろそろ物事の結論を得なければならないという中で、先ほど申し上げましたように、適正 化というものについての認識をしていかなければならないということは一致したけれども、 手法については乖離があると、これは言われるとおりでございます。 したがって、この議論をいつまでも続けているというわけには、政府・与党としても作 業に入りませんので、そこで私の方から御提案申し上げたと。ある意味では、結論が悪け れば少なくとも議長役の私からの1つの発言という形で受け止めていただければありがた いと思います。 ○谷本石川県知事 ここは生活保護を議論する場ですから、三位一体全体の改革の話は、 「国と地方の協議の場」というのがありますので、余り触れはいたしませんけれども、我 我としてはもし時間がないということであれば、8,300 億円の提案をしているわけですか ら、そこから是非選んでいただきたいというのが我々の率直な思いですし、協議そのもの は続けるべきだと思います。今日正式な提案があって、今日協議を打ち切りにして終わり というのは、余りにも拙速だし、乱暴極まりないという思いがいたします。これは、各委 員の御意見を聞いていただいたらいいと思います。 (川崎厚生労働大臣) 分かれるでしょうね。 (谷本石川県知事) 審議会は、別に議会ではありませんから、多数決で事を決めるという場ではありません けれども、やはりそれぞれの委員さんがどういうお考えをお持ちなのかというのは、議長 としてお聞きになるべきだろうと思います。 (川崎厚生労働大臣) どうぞ。 (岡崎高知市長) やはりこの協議会の本来の目的は、先ほども言いました、やはり生活保護費の急増をい かにして国・地方で共同して抑制していくかということが、一番の目的だと私自身は認識 しておりますし、厚労省自体もそういう認識に立っていると思っております。 そういう意味で言いますと、この協議会の目的は全然達しておりませんので、目的を達 していないうちに単に、いわゆる負担の補助率の問題だけで議論を打ち切ってしまうとい うのは、この協議会を立ち上げた意味がないと思いますので、やはりこの重要な部分を論 議していくべきだと思います。 以上です。 (川崎厚生労働大臣) どうぞ。 (山崎総務副大臣) 先生方の御意見、いろいろ傾聴すべきものたくさんあるんですけれども、要は三位一体 改革の政治日程、非常にタイトなものがありまして、時間が無制限にあるのであればとも かくも、そちらをほうっておいていいかというものでもないわけであります。 したがって、それに対して政府としてきちっと答えられるような環境をつくっていかな ければならないということを考えますと、9回行われましたこの会合で私が聞いておりま しても、知らなかったことがたくさんありまして、随分勉強になりましたし、ずっとこれ から続けたとして必ず1つにみんなの意見が合うという保障はないわけであります。ただ、 現実を非常に理解できたということと、その上で今、三位一体改革のプロセスの中で現実 に対応していかなければならないということを考えますと、十分皆さん方の御意見を聞い た上で、あとは役所としての判断があってしかるべきではないかと思うわけであります。 時間は無限にないということを考えますと、ある程度厚生労働大臣の御判断もやむを得な いのではないかと思います。 (川崎厚生労働大臣) 木村さん、どうぞ。 (木村地方財政審議会委員) 私の意見は、協議を続けるべきであると申し上げたいと思います。その理由は、そうい うふうにタイムリミットがあることがお互いわかっているのにもかかわらず、修正案が本 日出てきた。もしタイムリミットがあるのがわかっているんだったら、もっと前に出して くださればよかったし、どうして急に生活扶助が削られているのかも理解できない。この ままで終わってくださいと言われても、ひょっとしたら初めから答えがあったんではない かというふうに勘ぐりたくなるぐらいです。 一番の問題点は、先ほど申し上げましたように、なぜ厚労省案が給付の適正化に資する のかということを説明できなかったという点が、このように皆様方が今回も話したけれど も合意できなかったという点が一番大きい原因だと思います。地方が提示した案の方が、 かなりドラスティックな案だと私は研究者として思いますし、まだまだ給付の適正化につ いて議論すべきだし、せめてこれについては、やはり地方団体側の意見を聞くべきではな いかと思います。 以上です。 (川崎厚生労働大臣) 京極さん、どうぞ。 (京極国立社会保障・人口問題研究所所長) 私も学識経験者としては、じっくりもっと1年ぐらいかけてという気持ちはありますけ れども、もともとこのメンバーになることをお受けしたときに、秋までの検討ということ で言われておりましたので、もう冬になっておりまして、今日も上着を持ってきましたけ れども、どこまで秋かというのは、別に定義があるわけではございませんけれども、政治 日程の関係があって、もうちょっと議論を続けたいけれども、先ほど厚生労働大臣からお 話あったように、政治日程が絡みますので、あるところで議論を打ち切らざるを得ないか なということでは理解できます。 また、いずれにしても、これは法律改正とかその他になりますと、国会での議論があり ますし、審議会でも当然議論がありますので、そこの場でまた別途議論を深めていくとい うことは可能ではないかと思っております。 (川崎厚生労働大臣) どうぞ。 (岡崎高知市長) 繰り返しになりますが、先ほどの谷本知事からの話にありましたように、今日修正案が 出て、それで今までの経過があるんだから納得して打ち切りというのは、いかにも乱暴、 拙速だということでございます。もし仮に時期的、時間的なタイムリミットがあるのであ れば、もう少し地方提案の方から、それを受け入れた形の厚労省案というものが出てきて もしかるべきではなかったのかという印象が非常に強いものですから、ここで私どもとし ては、簡単にOKですというわけにはいかぬ、もう少し何かあってしかるべきだと考えて おります。 (川崎厚生労働大臣) 今、お話ございました話については、先ほど私ちょっと述べました。施設整備費の問題 については、今日の夕方に厚労省として考え方をまとめてくるようにという官房長官の指 示でございます。一方で、総務大臣には、この反対する理由をまとめてこいという御指示 でございます。そういった全体の流れの中で、また議論をしたい。4大臣、特に総務大臣 もお入りでございますので、議論をしてきたいと思います。 三位一体改革に対する政府全体のスケジュール、予算編成については、先ほど申し上げ たとおりでございます。そうした流れでございますので、協議会は9回目でございますけ れども、一応今回で改めて終わりにさせていただきたいと、議長として御提案申し上げま す。 なお、生活保護制度の見直しにつきまして、今後とも地方自治体の御協力が深く伝わる と考えておりますし、残された課題もございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思 います。 (谷本石川県知事) くどくどは申し上げませんけれども、せっかく4月から始めて、この生活保護制度の問 題点というのが浮き彫りになってきたというのは、その共通認識が持てたというのは、私 は非常に大きな成果だったと思います。それを踏まえて我々は真摯に提案もさせていただ いているわけですから、やはりこの協議会の場でそういった生活保護の適正化という本丸 というか、そこについてきちっと議論を深めていくことが大切であると考えますし、必要 な見直しは制度の根幹に関わる見直しもあるのかもしれませんが、そういう議論を深めて いくことがこの協議会としては極めて素直な対応だと思います。 これまで4か月間も原因分析をしっかりやっていただいて、これについては国・地方の 共通認識が持てたわけですから、持てた部分について、次に生活保護の適正化に向けてど うやっていくかという議論に進んでいく、これは極めて素直な提案だと思います。 そういった意味では、この協議会の協議を引き続き続けるべきだと思いますし、今日突 然そういう提案がなされたということですから、我々は次回に我々としての意見を申し上 げたいということであります。打ち切るということであれば、多少言葉はきつくなります けれども、是非今の厚労省の提案は撤回をしていただきたいということを申し上げたいと 思います。是非協議は継続すべきだということを最後に申し上げたいと思います。 (岡崎高知市長) 最後にしますけれども、我々は市町村として、御承知のように国保、介護保険を含めて、 いろんな保険者という立場で、現場でそれぞれの制度を円滑に実施しなければならないと 思っております。その責任は十分感じているところでございますが、やはりここで生活保 護を巡って国と地方の関係がこじれますと、重大な影響がさまざまな分野に及ぶというこ とを大変懸念をしております。やはりこの生活保護の安定につきましては、慎重に御判断 いただきたい。そうしないとほかの分野まで全部影響が及ぶということを大変懸念します ので、そのことを最後にお願いしたいと思います。 (川崎厚生労働大臣) 先ほど申し上げましたように、夕方には4大臣会合もございます。今、知事さん、市長 さんが言われたことも含めてお伝えをしておきたいと思います。いずれにせよ、谷本知事 さんが先ほど言われましたように、一致したものはまず大事にしていかなければならぬと。 また、御主張いただいて、まだ私どもしっかり意見が一致していないもんもありますので、 それは先ほど申し上げたように、今後とも地方との連携というものが一番大事だと思って おりますので、それはまた他の機会にお願い申し上げたいと思います。 いずれにせよ、もうかなりの時間を経過しましたので、議長として協議会をこれで閉会 とさせていただきたいと思います。長時間にわたりありがとうございました。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)