05/11/18 第8回生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会の議事録 第8回生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会 日時:平成17年11月18日(金)11:00〜12:43 場所:虎ノ門パストラル 鳳凰東 出席委員:谷本石川県知事、岡崎高知市長、今井総務副大臣、田野瀬財務副大臣、      川崎厚生労働大臣、木村地方財政審議会委員、      京極国立社会保障・人口問題研究所所長 (川崎厚生労働大臣) 少し遅れてまいりまして、申し訳ございません。 定刻となりましたので、ただいまから第8回「生活保護費及び児童扶養手当に関する 関係者協議会」を開催します。 本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。いつもでござい ますけれども、一応私の方から御紹介申し上げます。 谷本石川県知事さん。 岡崎高知市長さん。 山崎総務副大臣。 竹本財務副大臣。 木村地方財政審議会委員。 京極国立社会保障・人口問題研究所所長。 それでは、早速議題に入りたいと思います。まず、前回の協議会におきまして、谷本 知事さんから私に対して厚生労働省の見直し案に対する御質問がありましたので、御回 答申し上げます。 まず「生活保護の適正化について」配布をしております。これは厚生労働省の保護の 適正化についての考え方と、今日まで地方団体の皆さん方から御提案いただいた適正化 の方策について、いろんな議論の中で受け止めさせていただき、当省としての考え方を 整理したものでございます。 済みません。口頭で御質問をいただきました問題について、前回私から若干お答え申 し上げましたけれども、まとめてお話申し上げたいと思います。 厚生労働省案では、生活扶助については国が指針を示すとあるが、住宅扶助では指針 を示さないことかという御質問でございました。一言で言えば、国の関与の必要性の程 度の違いであろうと。国としては生活扶助、住宅扶助ともに地方自治体が基準を設定す るに当たって、何からの参考となる基本的な事項について示すつもりでございます。 ただし、住宅扶助基準は、地域の家賃データ等に従って、自ら客観的に定まるもので あり、生活扶助に比べて国が詳細にわたる参考事項を示す必要性は低いと考えておりま す。より地方の自主性が高いと判断をいたしましております。 住宅扶助を一般財源化することは、最低生活を一体として保障すべき生活保護の趣旨 に反するのではないのかと。これは先日の自民党の中でも議論が出たようですけれども、 住宅扶助を自治事務化するということかという御質問がございました。一言で言えば、 最低生活が一体として保障されることには変わりない。自治事務か法定受託事務かとい うことにつきましては、費用を国庫が負担するのか、地方自治体の一般財源かというこ とについては、直接には関連しないと判断いたしております。これは各省でこのような 判断が示されておりますし、先日も党の部会でもそうした判断が示されているところで ございます。 今回、住宅扶助基準の設定期限は保護の実施自治体に移譲すると同時に、 一般財源化することを提案しております。実際に被保護者に支給される最低生活費は、 生活扶助、住宅扶助など、それぞれの扶助基準額を合計して一体的に算定される。その 最低生活費と収入とを比べて保護の要否を決定し、保護費を支給することなどの保護の 実施自治体の事務は、現行と何ら変化がないと思っております。住宅扶助の実施に関わ る事務の性質も、法定受託事務のままと考えております。 厚生労働省の見直し案は、給付の適正化と関係がないのかというお話でございます。 これは前回もお答え申し上げましたように、例えば医療1つ取り上げましても、今、医 療改革を議論中でございますけれども、入院期間の長期化が医療改革の最大の課題にな っております。こういうものをできるだけ病院から在宅なり、また施設へと誘導してい くということが医療改革の基本にもなっております。そういった意味では、医療という ものを1つ取り上げましたときも、そういう方向へ地方自治体と国がお互いに協力し合 いながらやっていくということが大事であろうと。また他法他施策と申し上げておりま すけれども、自治体が工夫することにより、被保護者の自立が図られ、保護費全体の適 正化につながると考えております。これは前回お話したとおりでございます。 税源移譲問題とここでの議論は、もともとが昨年の議論を踏まえながら政府・与党が 生活保護費問題について地方の皆さん方としっかり議論をしながら、秋までに結論を出 せということになっておりますので、どうしても地方六団体の税源移譲の要求問題と関 わってくると思いますので、あえて申し上げておきます。 六団体が要求されております中に、例えばこの春に成立をいたしました介護保険法の 改正、またつい最近成立いたしました障害者自立支援法をうまく動かしていかなければ ならない。まさに法律ができて、それを動かしていく中での仕組みの1つとしてセット させていただいておるものでございますので、これを今すぐ地方にということについて は、なじまないと考えております。 また、SARS対策と今は鳥インフルエンザの問題が一番課題になっておりますけれ ども、健康危機管理、待機児童ゼロ作戦、国の大きな方針、総理の方針として挙げてお ります少子化対策なども、勿論地方自治体の皆さん方の御協力も得ながらでありますけ れども、やはり国がある一定の責任を持っていかなければならない分野であろうと。し たがって、この分野だけでしっかりとした回答を出せということについては、5,040 億 円といわれる四大臣からの数字との整合性がなかなか難しいなと考えております。 以上、この間御質問いただいたものの中で、メモしたものの中からお答えをさせてい ただきました。 それでは、本日も前々回、前回に引き続き、総括的な議論を行うということになって おります。資料を御用意いただいた方もいらっしゃいますので、順次御発言を賜りたい と思います。 最初に知事会及び市長会の御意見について、谷本知事から御発言いただきます。 (谷本石川県知事) まず、去る14日に地方六団体、そして地方議員で構成します地方分権推進連盟主催の 「地方分権改革総決起大会」を開催いたしました。お手元に資料も配布いたしましてお りますので、ごらんいただきたいと思います。 その中で厚生労働省の提案というのは、三位一体の改革の趣旨に全く合致しないとい うことで地方六団体は断固反対をするということでありますし、この関係者の協議会に おいては、生活保護等の給付の適正化に資する制度改革について、地方団体との協議を 継続して、制度設計者である国としての責任を果たすことを求めるという趣旨の「生活 保護等の地方への負担転嫁に反対する特別決議」というものを全会一致で決議した決議 したわけでございます。資料はお手元に配布をしておりますので、それをごらんいただ きたいと思いますが、その御報告をしたいということと同時に、地方団体には正直申し 上げて不満とか怒りが充満をしている状況にあるということをまず強く訴えておきたい。 このように思うわけであります。 それでは、全国知事会、全国市長会を代表して、前回の協議会で厚生労働省から提出 をされた我々地方団体の意見に対する厚生労働省の考えについて、意見を述べさせてい ただきたいと思います。お手元に資料を配布しておりますので、それをごらんいただき たいと思います。 まず厚生労働省の方では、我が国の社会保障制度においては、国、都道府県、市町村 が言わば重層的に役割と費用負担を分担している。生活保護についても例外ではなく、 現状においても国と地方が制度設計・実施責任に係る役割と費用負担を分担しており、 生活保護制度のみ国の責任で行われるべきものとする主張は適当ではないとおっしゃっ ておるわけでありますけれども、我々は、生活保護制度は言わば国民生活のナショナル ・ミニマムを保障する制度でありますので、国が保護基準や処理基準など制度の枠組み を決定して、地方はその基準に従って事務を実施するという役割分担は堅持すべきだと いうふうに申し上げているわけでありまして、決して国のみに責任を押し付けていると いうわけではないということを御承知置きいただきたいと思います。 社会保障制度そのものの概観を示したときに、生活保護制度と密接に関連をいたしま す年金制度や雇用保険制度については、そもそも国が制度設計をして、実施についても 国が行っておられるということでありますし、地方は直接には関与していないというこ とでございます。これは平成7年度の「社会保障制度審議会」の報告書でも述べられて おりますように、社会保障の中でも所得保障に関するものについては、基本的に国によ る政策決定と財政責任が確立されなければならない。恐らくこういう考え方を反映して おられるからであろうというふうに思います。 生活保護制度は社会保障の中でも最も基礎的な所得保障に関する制度でございますし、 国がその政策決定と財政責任を免れないことは論をまたないと、このように思うわけで あります。 次の点は、厚生労働省の方では生活保護の実施に係る責任や費用負担に関して他法他 施策との整合性をとることによって、自立助長が円滑に進められ、生活保護制度への過 度の依存が回避されるような仕組みにすることが重要であると考えているという主張が あるわけでありますけれども、我々とすれば厚生労働省の主張は、地方は国庫負担率が 高いということを理由に生活保護に過度に依存し、本来優先すべき他法他施策に責任を 持って取り組んでいないということになるのではないかというふうに考えられます。 厚生労働省として、地方は故意に他法他施策を適用しないで生活保護を適用し、財政 負担を免れているという考え方に立ったものであるとすれば、これまで培ってきた国と 地方の信頼関係というものを根底から崩すということになるわけでありますので、絶対 にこれは容認できないということであります。 前回申し上げたように、自助、共助、公助という社会保障の体系の中で、公助の最た るものであります生活保護については、他法他施策に比べて国の負担が大きいというの がむしろ自然であるというふうに思いますし、整合性があるわけであります。国庫負担 率を現行の4分の3とした当時の厚生大臣が国会ではっきりと答弁もしておられるわけ であります。今回の他法他施策との比較による国庫負担率の引き下げというのは、地方 に負担を押し付けるための単なるこじつけでしかないというふうに考えるわけでありま す。 次に厚生労働省は、協議会における分析結果や指摘の点、議論について真摯に受け止 めた上で、生活保護制度、児童扶養手当の現在の課題に対応するための国と地方の役割 分担やそれに合わせた費用負担の在り方について総合的・全般的に検討し、見直し案を とりまとめたという主張であります。 我々はこれまで本協議会で議論を重ねてまいりました生活保護制度、児童扶養手当の 現在の課題は給付の適正化であったと、このように認識しておるわけであります。 この課題について、実に4か月にわたりまして科学的な分析を共同作業で実施をして いただき、保護率と、失業率や高齢化、離婚率などとの相関は高く、経済・雇用情勢や 社会的要因は、保護率、保護費の上昇あるいは保護率の地域間格差に極めて大きな影響 を及ぼしている。また、全国平均的には高齢者世帯や傷病・障害者世帯が8割を超えて いるという現状の中では、就労自立支援が保護率を低下させる効果は限定的であると考 えられる。こういう共通認識が得られたわけでありまして、単なる地方負担率の引き上 げでは、生活保護の給付の適正化につながらないということも明確になったというふう に考えているわけであります。我々はこの共通認識を踏まえまして、第6回の協議会で 地方側の提言を行ったわけでございます。 なお、共同作業の最終報告にあります地方自治体における保護の実施体制や実施状況 には、地域間で格差があり、これらの指標と保護の動向との間の相関のあるデータ等も 見受けられるが、相関のないデータもあるということは、お二人の学識経験者からの報 告どおり、共同作業において両論併記ということになったわけでありますので、協議会 の共通認識ではないということを確認しておきたいと思うわけであります。 また、私どもは生活扶助、住宅扶助、そして医療扶助に係る保護基準の設定の権限に ついては、地域あるいは個人によって実質的な差が生じてはならないとする生活保護の 本旨に照らして国においてその責任を果たすべきであると、繰り返し主張してまいりま した。 こうした経緯を踏まえれば、厚生労働省の見直し案はこれまでの協議経過を真 摯に受け止めたものとは言えず、かつ生活保護制度及び児童扶養手当の現在の課題にも 対応していない。単なる地方への責任転嫁・負担転嫁であると言わざるを得ないわけで あります。 次に厚生労働省は、地方団体の提案については、間は省略しますが、必要に応じ、地 方自治体の生活保護行政担当者と厚生労働省との間で、実務的な検討の機会を持つこと についてやぶさかではないという主張であります。 我々地方側の提言は、実務的な検討では解決できない生活保護制度の根幹に係る課題 について提案をしているわけであります。この協議会では、これまでも共同作業を含め、 給付の適正化に向けた議論を積み重ねてきたわけであります。我々の提案がどれだけ実 現されるのか本協議会で確認をされない限り、実務的な検討に入れない。このように考 えておるわけでありまして、このため本協議会の合意に向けて早急に本協議会に専門的 な検討の場を設けて、改革の工程表といったものを作成すべきである。このように考え るわけであります。 最後に厚生労働省は、政府全体の三位一体改革のスケジュールの中で、厚生労働省が 提案をした生活保護等の国と地方の役割分担、あるいはそれに伴う費用負担の在り方に ついて結論を得て、見直しを実施することは必要であると考える。こういう主張でござ いますが、我々は、繰り返し申し上げているとおり、生活保護及び児童扶養手当に関す る事務に係る権限の地方への移譲は、地方の自由度を高め創意工夫に富んだ施策を展開 するために地方自治体の裁量を拡大するという我々が求めております三位一体の本旨に 照らしてふさわしいものではないというふうに考えているわけであります。 三位一体の改革に名を借りて、地方分権を推進する。あるいは地方自治体の裁量を拡 大をするという美名の下に、法定受託事務たる生活保護事務等について国庫負担率を見 直すということは、地方への単なる負担転嫁ということでありますので、厚生労働省の 見直し案は是非撤回していただきたいわけであります。 厚生労働省は、生活保護等を改革に含めなければ、目標額である5,040 億円が達成で きないというふうに言っておられますけれども、これは誤解であります。昨年8月の補 助金改革案で、まだ実現されてないものが8,300 億円残っておるわけでありますので、 この中から補助金改革を是非実行すべきであります。 厚生労働省の見直し案が提示されて以来、地方分権改革を理解しようとしない厚生労 働省の極めて不誠実な態度に地方団体の間には深い失望と反発が高まっております。生 活保護事務の一部停止の動きが広がりつつあるわけであります。国民の生活に直結をす る福祉行政は、国と地方の分担、協力の下、日常の実施事務は地方側が担っておるわけ であります。 今後、社会保障制度については、医療制度改革を始めとする数多くの改革に取り組ん でいかなければいけないわけであります。これは国と地方との信頼関係と協力がなけれ ば、優れた制度設計も実施体制も構築できないわけであります。厚生労働省の見直し案 がその一部たりとも強行されるということになりますと、貴重な国と地方との信頼関係 を破壊する。本制度の運用は勿論、将来にわたって極めて大きな禍根を残してしまうこ とになる。これはどうしても避けるべきである。このように思うわけであります。 以上で私の方からの説明を終わらさせていただきます。 (川崎厚生労働大臣) それでは、引き続きまして、岡崎市長さん。 (岡崎高知市長) それでは、市長会の方の立場からの御意見を申し上げたいと思います。 お手元の資 料2−3の方に「地方改革案の実現を求める緊急申し入れ」という資料も付けておりま す。まず、緊急申し入れの方から申し上げさせていただきたいと思います。 資料2−3を1枚めくっていただきましたら本文がございますが、今回の三位一体改 革についてでございますが、いわゆる内閣官房長官の指示でございます6,300 億円以上 の改革目標額には遠く及ばず、わずか300 億円程度にとどまっているような状況でござ いまして、地方の意見を尊重して対応するようにという指示が守られていないことは大 変残念でありますし、また遺憾であるというふうに思います。 厚生労働省の5,040 億円に対しましては、わずか100 億円程度しか回答がされており ません。生活保護費については現在検討中ということになっておりますが、我々の提案 と全く異なるところで論議がされておりまして、大変遺憾であるというふうに思ってい るところでございます。 我々地方六団体は、昨年そして本年の2回にわたりまして、政府の要請を受けまして 補助金の改革案を政府に提出しておりますが、その中で厚生労働省所管分につきまして は、それぞれ9,450 億円、また本年につきましては4,760 億円の改革案を示していると ころでございます。これに対して、厚生労働省は880 億円を実現させたにすぎず、880 億円の中身につきましても、我々が当初想定をしていませんでした三位一体改革の対象 から外しておりました国民健康保険の負担につきまして、都道府県に対する負担を強行 に実施されたわけでございます。 今回、地方の改革案を尊重するという総理の発言にもかかわらず、我々の改革案につ いて真摯に検討されたような形跡がございませず、どうしても生活保護にこだわってい るということにつきましては、大変残念であります。また遺憾であるというふうに思っ ております。 以下でございますが、先ほど谷本知事からも共同で御提案を申し上げましたとおり、 生活保護は国の責任で行うべきものでございまして、本来地方に裁量の余地はないとい うふうに考えております。一部住宅扶助について地方に裁量権を任せておるというふう なお話がどうもあちこちで出ておるようでございますが、現実的に裁量基準ということ ではなくて、厚生労働省が定めている基準の運用基準の中ですべて運営しているはずで ございますので、そこが別の意味でいろんなところでお話をされているということも聞 きます。生活保護にはいわゆる単独で助成をするという制度は全然かまされておりませ んので、すべて国が決めた基準の中で運用しておるということでございますので、地方 に裁量の余地はないというふうに考えておるところでございます。 2番目でございますが、厚生労働省は生活保護の改革を含めなければ、目標額である 5,040 億円は達成できないというふうに主張されておりますが、これも誤りでございま す。昨年8月の補助金改革案の中で、いまだ実施されていないものが8,300 億円残って いるわけでございます。 前回も申し上げさせていただきましたが、地方と厚生労働省の所管の部分については、 地方分権になじむ仕事が幾つかございまして、生活保護が一番地方分権になじまない仕 事であるというふうに我々は考えております。地方分権になじむ仕事の中でも、まだ実 施に移されておりません。これは民間保育等でございますが、民間保育所の運営費負担 金、民間補助の助成なんですが、これは2,800 億円ございます。これが地方分権に一番 なじむ部分ではないかというふうに考えております。 また、社会福祉関係の施設等整備費補助金も1,300 億円等がございまして、これらに 重点を置いて補助金改革を実行することが我々としては必要ではないかというふうに考 えております。 3点目でございますが、これまでの協議会におきまして、知事会、市長会の合同で提 案をいたしました生活保護の基本部分に関わります重要な課題について幾つか御提案申 し上げております。高齢者の生活保護制度の問題、また年金と生活保護基準との均衡、 いろんな意味での執行体制の問題は、やはりそれぞれのこの協議会のこの部分に踏み込 まないと、現在の生活保護率の急増、特に都市部における急増の対策はとれないという ふうに考えておりまして、この部分での論議をもっと深めることが大事だというふうに 考えているところでございます。 最後の4点目でございますが、今回生活保護にどうしてもこだわると。しかも一部だ けでも実施をするということが強行されますと、我々も先ほどの介護保険、障害者自立 支援法にいろんな意味で制度設計に協力をしなければならないということで、協力をし てまいりましたが、そういう信頼関係が大きく損なわれることになるということでござ います。そこを我々も非常に懸念をしておりまして、現在生活保護のいろんな事務の返 上というところも急速に広がっているところでございます。各ブロック単位でそういう 決議が毎日のようにされておりまして、本日も一部ブロックでそういう決議がされる予 定になっております。生活保護は国民の生活保障の一番根幹に関わる部分でございます ので、最終的にこういう生活保護の返上にならないように、どうしてもそういう強行は 避けていただきたいということでございます。 住宅扶助の話がそれぞれ出てきておりますが、やはり衣食住というものは一体的でご ざいまして、生活保護は一体的に算定されるものというお話が先の大臣のお話の中でも 少しあったと思うんですが、住宅扶助だけ切り離して別途の制度にやるということは、 やはり生活保護の根幹に関わる部分でございますので、なじまないというふうに考えて いるところでございます。 医療扶助につきましても、単なる負担転嫁でございまして、社会保障の根幹を成す、 いわゆる社会医療の制度設計が十分に論議をされることがなく、生活保護の一部負担を 転嫁すると。これはもう転嫁ということ以外にはないんですが、これは我々としては絶 対に容認できないということでございます。 最後に少し御意見を申し上げたいと思うんですが、我々はこの国と地方の協議会の場 におきまして、生活保護制度の制度疲労を起こしている部分につきましても、具体的な 提案をしてまいりました。ところが、この協議会の中で地方側は根幹的な制度の改善に 応じてこなかったというお話をあちこちで聞くわけでございます。我々は勿論具体的に 何回か口頭でも御提案申し上げておりますし、文書でも御提案申し上げておりますので、 地方側がこの制度の在り方に対する具体的な論議に乗ってこなかったということは、全 くの筋違いでございます。こういう話が外からたくさん聞こえてまいりますので、この 点につきましては、そういうお話があるということ自体が大変我々は不信感を招きます ので、具体的にさまざまな制度の改革案を我々は提案しておりますので、この点につき ましては、我々は大変な不信感を抱いているところでございます。 また後ほど何か御意見がありましたら、またお伺いしたいと思います。 以上でございます。 (川崎厚生労働大臣) ありがとうございました。 それでは、木村委員。 (木村地方財政審議会委員) 大臣ありがとうございます。 私の提出いたしました資料は、資料3−1、資料3−2、資料3−3の3部でござい ます。資料3−2は、資料3−1のデータを示したものでございますので、両方並べて ごらんください。 それでは、平成17年度『厚生労働省白書』に対する意見を申し上げます。 平成17年度『厚生労働省白書』の第4節生活保護を取り巻く地域の経済と取組み。1 生活保護制度と地域差の要因の分析のところに、図表2−4−5都道府県県別保護率と 福祉事務所別保護率のばらつき度の関係というものと、図表2−4−7現業員充足率と 保護率の相関という2つの図が掲載されております。2つのうちの1つは、福祉事務所 の県内の平均保護率が高いところほど保護率のばらつき度が大きい。結果として、実施 体制に問題があるのではないかという含みを持たせておりますし、また現業員の充足率 の高いところほど保護率が低いという相関関係を示しまして、充足率が保護率と非常な 関係を示しているということを言っておられます。 次に私が申し上げます点は、統計学上大きな問題があると思いますので、意見を申し 上げます。厚生白書の記述の128 ページ都道府県内における保護率についてもばらつき が大きい。都道府県別の保護率とその都道府県内の福祉事務所ごとの保護率のばらつき 度との関係を見ると、保護率の高い都道府県においては、その都道府県内におけるばら つき度も大きくなっているということで、これは厚生白書をコピーしたものでございま すけれども、都道府県内の保護率のばらつき度が高いところは、保護率も高い。決定係 数でrの2乗で0.6 、相関係数が0.78ということで、もうこれは非常に大きな関係が あるということを、この図で見る限りは示しておられます。 しかし、この問題点は統計上注意しなければならないという点を私は注意していない ところにあると思います。どういう点で注意しなければならないかと申しますと、平均 値が大きければ、この場合は各県の平均保護率でございますが、標準偏差、この場合は 各県内の各福祉事務所の保護率でございますが、その値も大きくなる傾向がある。これ は統計上の常識ですけれども、そういうことを示したにすぎません。 つまり保護率と都道府県内の保護率のばらつき度、標準偏差との相関をとれば、図に あるように決定係数、相関係数は0.78と非常に高い数値が出るのは当然であって、ここ から結論を出すことは意味がないということです。 ここでは散らばりということがテーマになっておりますので、平均値が異なる場合の 散らばりというものを、見てみたいと思います。平均値が異なる場合の散らばりを見る のに1つの有効な手だては、変動係数ということがございます。つまり平均値が異なる 場合、単純に標準偏差の比較だけで散らばりを判断することができないため、平均値の 異なるデータ間の散らばりを比較するときには、変動係数、標準偏差を平均で乗したも の、100 に対する数値が有効であります。 表1に従いまして、変動係数を見ますと、次のことが言えます。表1は資料3−2の 一番最後に付けたものでございます。表1は、各都道府県の保護率、標準偏差、変動係 数を表したものです。変動係数の全国平均は、100 に対して101 でございます。この図 表からいいますと、例えば大阪府の変動係数は100 、京都府は129 、神奈川県は108 、 東京都は49、北海道は44になっておりまして、変動係数が大きいところほど保護率が 高いということではございません。 また(2)ですが、変動係数を見ますと、京都府129 、兵庫県110 、神奈川県108 、愛 知県と大阪府が100 、福岡県が96、静岡県87、鹿児島県79と一般的に大都会を有する 都道府県ほど、また保護率の高い都道府県ほど変動係数が大きいように見えるかもしれ ませんが、愛知県は保護率が低いが変動係数が大きく、北海道は保護率は高いが変動係 数は44、東京都も保護率が高いが変動係数は49と小そうございます。 このことは何を示しているかと申しますと、図1〜図5に示したとおりでございます が、図1は北海道内の各事務所の保護率の分布を示したものです。高いものから順番に 並べております。図2は東京都について、図3は愛知県について、図4は大阪府につい て、図5は福岡県について並べたものでございます。 図1を見ていただきますと、北海道の平均保護率は非常に高く22%でございますが、 変動係数は44、散らばりは大きくございません。保護率が突出した福祉事務所がない。 平均保護率は高いんだけれども、突出した福祉事務所がない場合に変動係数は44と小さ くなります。 東京都も同じでございます。東京都の平均保護率は14.1%でございますが、それほど 突出した保護率を示す福祉事務所がないために、変動係数は低くなっております。 愛知県の保護率は5.3 %と非常に低いですけれども、変動係数は100 と大きいです。 保護率が突出した福祉事務所が数か所あるために、そのようになっております。 図4ですけれども、大阪府の保護率は21.5%と高いんですが、保護率が非常に大きく 突出した福祉事務所があるために、ここも変動係数が高くなっております。 福岡県も平均保護率は17.6%でございますが、保護率が突出した福祉事務所が数か所 あるために、変動係数すなわち散らばりが大きくなっております。突出した福祉事務所 があるところについて、そのような数か所の福祉事務所を除いて散らばりを計算すると、 いずれも変動係数は50〜70に低下いたします。したがって、福祉事務所の保護率の散ら ばりと保護率との間には関係を見出すことができない。皆様方が恐らく散らばりが大き いときに、福祉事務所の中でもう突出した福祉事務所とかいろいろとあると思われたか と思いますが、図1〜図5に示すように、そういうことはございません。 3ページでございますが、図2−4−7現業員充足率と保護率の関係、130 ページの 問題点について申し上げます。記述は129 ページにもございます。 現状員の充足率(現業員数/標準数)を都道府県別に見ると、最も高い地域は184.4 %と、最も低い地域(68.4%)で2.7 倍の大きな差がある。現業員の充足率と保護率の 関係を見ると、充足率が100 %を上回る都道府県32地域の保護率は、8.3 ‰、100 % を下回る15地域の保護率は12.8‰で1.5 倍の差があり、現業員の充足率が高い地域で は保護率が低く、充足率が低い地域では保護率が高くなるという一定の相関関係が見ら れるということでございまして、これは決定係数が0.3507といったことを示しておられ ます。いかにも現場の現業員の充足率が低いことが保護率を高くならしめたという印象 を持たせるものでありますが、私はこれについても以下のような問題点を申し上げたい と思います。 それは4ページにございます。まず図6、私の資料図6をごらんください。図6に示 す大きな事実を見落としている。それは標準数1、簡単に言えば被保護世帯数から割り 出されたケースワーカーの数が1人という福祉事務所は、過疎地や離島に多く、移動距 離が長いことなどから、実態としてケースワーカーが2、3人必要であり、そのように 配置している福祉事務所が少なくないことである。実態としては、必要やむなくの配置 であっても、標準数1の福祉事務所であれば2、3人のケースワーカーいるわけですか ら、計算上は200 %、300 %の充足率となって数字上は表れます。 したがって、標準数1の福祉事務所数が県内全福祉事務所数に占める割合が高いとこ ろほど、充足率が高くなります。それは図6に示しているとおりです。相関係数は0.8 です。福祉事務所1人の福祉事務所の数が県内の全福祉事務所に数に占める割合が高い ところほど、充足率が高い。それは余分に置いてあるという意味ではなくて、仕事上必 要で置いてあるのに、見かけ上はそういうふうに見えるということです。 標準数1の福祉事務所が多いということは、当然保護率が低い福祉事務所が多いとい うことであって、結果として当該県の保護率が低いんです。それは図7に書いておりま すが、例えば有名な富山県は、標準数1人の福祉事務数の割合が8割近くなります。福 井県もそうです。大阪、北海道は保護率が高いですけれども、そういった福祉事務所は 1割も見当たりません。 3番目ですが、現業員は生活保護だけではなく、ほかの福祉五法を兼務している場合 がある。その割合を示すものが専任率であって、福祉事務所の規模とも相関が高く、こ れは地域格差が本当に大きいんです。したがって、充足率の地域格差を計算する場合に は、現業員数に専任率を乗じて、専任換算された現業員数を用いる必要がある。図8に 示すように、標準数1の福祉事務所を含む各県の福祉事務所の充足率を専任換算したも のと、保護率には相関が見られません。標準数1の福祉事務所を含むため、充足率は計 算上は高めに設定されているにもかかわらず相関が見られない。相関係数は0.21になり ます。それは図8のとおりです。 「要望」ですが、以上の分析を踏まえ、平成18年度の『厚生労働白書』において、平 成17年度の図表2−4−5都道府県県別保護率と福祉事務所別保護率のばらつき度の 関係、図表2−4−7現業員数充足率と保護率の相関及び関連記述を削除する旨を記す ことを私は要望したいと思います。この点について、次回厚生労働大臣のお考えを拝聴 したいと思います。 それでは、資料3−3をごらんください。2枚とじのものでございますが「『第7回 生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会』厚生労働省提出資料などに対する 意見と質問」でございます。 まず大きく続くことですので、1番の11月4日の協議会における厚生労働省提出資料 について。 「意見」は、国の意見には一貫性がなく、場当たり的である。とにかく国の負担割合 を引き下げるという財政目的だけに終始しているために、後々社会保障制度上禍根を残 す内容を提示している。 例えば、権限の移譲、住宅扶助基準の設定権限を保護の実施自治体に移譲することに 伴う役割・責任の拡大と、住宅扶助費を金銭で支給することに加えて、自立支援・就労 支援のための機能を備え、地域資源を活用した住まいを現物のサービスとして提供でき るように道を開くことに伴って、財政負担を見直しとあるが、ナショナル・ミニマム確 保のため、国が責任を持って基準を定めるべきである。また、衣食住は一体である。 生活保護のような短期ではなく長期の最低生活の保障ということについて、国がどう しても財政的に関与しなければならないというのは、各国の事例を見ても、私は厚生労 働省が一番御存じではないのかと思っております。 「質問」ですけれども、○現在でも住宅扶助基準は国により地域差があるように設定 されている。その住宅扶助基準の設定権限を保護の実施自治体に移譲すると、どのよう に給付の適正化が進むのか。そのメカニズムを御提示いただきたい。 2は、生活保護費及び児童扶養手当の見直し案に関する地方団体の意見に対する厚生 労働省の考えにおいて、地方自治体における保護の実施体制や実施状況には地域間で格 差があり、これらの指標と保護の動向の間の相関のあるデータ等も見受けられるが、相 関のないデータもあることも共通認識とされたことにも留意しなければならないとの3 ページの記述、及び内容の意見について。 これは前回申し上げましたように、意見が一致しなかったということでございまして、 国側は相関がある。地方団体側は相関がないと主張して、なおかつ厚生労働省の分析上 の問題点を指摘したところでございます。しかし、もう共同作業は基本の基本というミ ッションを私たちに与えてもらっていましたので、もうあそこでまとめたものでいいの だなと思っておりましたら、厚生労働省の考えの記述だけではなく、竹本副大臣までそ ういうことをおっしゃいました。何を根拠にしてそう主張されるのか、私は是非お考え をお聞かせ願いたいと思います。 3は「『市町村合併が進むと県の役割は後退する』という意見について」。 市町村合併が進んでも、例えば郡の中で市町村合併が進んでも、町村が残っている限 り福祉事務所数はずっと維持しております。市町村合併が進んでも維持しなければなら ない福祉事務所数はほとんど影響を受けないで、この25年間ずっと同じようなレベルの 福祉事務所というのを維持してきていますし、それは市も同じことです。 4番は「『地域格差が経済・社会的要因で説明できるからといって、すべてを国の責 任に帰するというのはおかしい。失業対策など地方団体がすべきことがあるのではない か」という意見ということに対して。 「意見」は、社会的、経済的要因が保護率上昇の要因であるから、国が責任を持つべ きとの発言は、これまで地方団体側はしておりません。実施体制の問題である、問題で あるとおっしゃっているという情報がいろいろ入りましたので、実施体制の問題ではな い、社会的、経済的要因で説明できるのだということを分析結果として提示したことだ けでございます。国が責任を持つべきであるというのは、生活保護制度の理念、性格に 照らして主張していると。 生活保護の性格上、地方団体が責任を負うにはリスクが大き過ぎるため、国が責任を 持つべきであると主張しているのであって、現在でも地方団体は4分の1の財源を負担 して、県も市も実施主体となっております。 地方団体にとり雇用の創出は大きな課題であって、企業誘致など従来から努力してい るところであります。またボーダーライン層についても、各種の対策を行っております。 そういう具体的資料は次回の協議会で提出したいと思います。 5番は「「地方団体が生活保護受給者に就労支援をするために、都道府県の負担割合 を増加させる』という意見に対して」は、生活保護の目的である自立助長、就労支援に ついては、これまで各自治体が取り組んできたところであり、過去30年間の成果は厚生 労働省の調査報告にも記載されており、私はそれに基づいて資料も協議会で提出してお ります。現在の就労支援専門員の配置などは、その延長線上にあるものでありまして、 都道府県の負担割合を変える根拠になるほどのものではございません。 6番は「『退院を促進するために、都道府県の負担割合を増加させる』という意見に 対して」。 「質問」は、なぜ都道府県の負担割合を増加させると生活保護受給者の退院が促進さ れるのか、そのメカニズムを教えていただきたいと思います。 以上でございます。 (川崎厚生労働大臣) 3問御質問がございました。 1つは、住宅扶助基準をなぜ地方に任せると給付の適正化が進むのかという御質問で す。現在国がやっております住宅扶助基準において、同一の特別基準が設定されている 地域内においても、実際に家賃に格差があることから、これはもう御存じのとおりであ ります。地域の実情をよりよく把握できる保護の実施自治体が管内の住宅扶助基準を設 定することにより、地域事情をよりよく反映したきめ細やかな基準の設定が可能になる と考えております。 一方で、地方自治体は市営住宅なり公営住宅という1つの手段をお持ちになっておる と。そうしたものを今は現金支給というのが基本でありますけれども、現物の住宅を支 給していくという対策も練られていくだろうと考えております。 2番目は極めて難しい御専門的な御質問をいただきましたけれども、我々の認識とい たしましては、これはもう木村先生も言われておりますとおり、共同作業においては保 護の実施体制や実施状況等、保護の動向に関するデータが各参加者から提出されました。 その結果、相関があるとするデータを提出した方々と、今、木村先生が御主張のように データがないと方の両方が存在したことから、共同作業のまとめにおいて、これらのデ ータ双方を参考資料に併記しており、事実のみ記載をさせていただきました。 これについてありますか。 (竹本財務副大臣) 私の方から少し述べさせていただきます。今、厚生労働大臣からお話ありましたこと とほぼ同じことでございますが、地域間で格差があるという点についてなんですけれど も、これらの指標と保護の動向の間の相関のあるデータ等も見受けられるが、相関のな いデータもあるとされていることなんですけれども、国、地方側がそれぞれデータを出 して主張し合い、このように両論併記するということをお互いに認めたということでは ないかというふうに考えております。 (川崎厚生労働大臣) もう一問は、都道府県の負担割合を増加させると生活保護受給者の退院が促進される のかという御質問でございます。今回の見直し案は、医療扶助について平均在院日数の 短縮や病院から在宅への復帰促進を図るため、医療計画や介護保険重要支援計画を策定 する都道府県の役割と責任、国民健康保険や老人医療、介護保険等、他法他施策をもっ ても都道府県が費用負担をしておるのが現実であります。それとの財政負担の整合も図 ることも必要であろうということから、今回の御提案を申し上げました。都道府県負担、 負担を導入することによって、都道府県の負担割合を増加させることで生活保護者の退 院が促進されるということではなくて、1つは他の施策との整合性です。もう一つは、 都道府県の役割と責任。特に先ほどからお話申し上げているのと、私ども医療計画全体 がこれから都道府県とお話し合いを持ちながら、できるだけ長期入院を減らしていこう というのが医療計画の基本でございますので、御理解のほどお願い申し上げたいと思い ます。 (木村委員) また、意見交換のときに申し上げたいと思います。 (川崎厚生労働大臣) ありがとうございました。 それでは、京極所長さん。 (京極国立社会保障・人口問題研究所所長) ありがとうございます。 お隣の委員と比べて、まだ私は資料を持って発言しておりませんので、初めて資料に 基づいて発言させていただきます。なお、この資料につきましては、ページをめくりま して、最初の2枚は私の考えということで、あとは客観的な資料ということで、私ども の研究所のスタッフにつくってもらったというものであります。 資料の説明の前に、私の立場を申し上げますと、福祉行政を今後ますます進めていく ためには、地方分権化というのは1つの鍵であると。そのための三位一体の方向という のは、正しい方向であるというふうに思っていますが、ただ、三位一体の具体的な在り 方について、地方六団体の意見がすべて正しいかということについては、専門家として も異論があります。先般10月31日に国会を通過しました障害者自立支援法においても、 国の責務ということが明確になり、地方六団体の意見をそのままやっていきますと、市 町村の事務になってしまうということで危惧を持っていました。六団体の中でもいろん な御意見があったんでしょうけれども、結果的にはよかったのではないかと思っていま す。 なお、生活保護については、後で申し上げます。 やはり六団体の御努力、熱意というものには敬意を表しますけれども、個々の問題に ついてはそれぞれ立場がありますし、またいろんな関係者が協議をし合って、収まると ころに収めていくのがこれからの方向だと思っております。 特に国と地方の信頼関係はきちっと持っていくということで、生活保護におきまして も、今日もそうですし、将来においても国と地方の関係は、やはり信頼関係を保って進 めていくということが必要で、その具体的な在り方については、これからの議論という ことだと思います。 それでは、1枚目をめくっていただきますと、私のメモでございますけれども、5点 から成り立っております。 1点は、生活保護は我が国社会福祉の根幹であるが、それを他法他施策と切り離して 特別なものと考えるべきではないというふうに思っております。 かつて、生活保護と他の福祉施策の国庫負担率は同一、10分の8でございました。基 本的には横並びということでございました。しかし、その後の行革で、生活保護は10 分の7.5 、つまり4分の3、他の措置制度は10分の5になりました。変化をいたしま した。今回また新たな改革でどうするかということが議論になっているわけでございま す。そういう時代の中で考えていく必要があると思います。 ちなみに4ページでございますけれども、図の中で今まで客観理由としては、失業率 だとか離婚率、高齢化率でいう客観指標があって、それと保護率がどうなっているかと いう分析は、共同作業の中でも随分やられましたけれども、生活保護の率は必ずしもそ ういう客観指標だけではなくて、年金制度の成熟化ということも非常に関係がございま す。これは時代時代の中で揺らぎがございまして、特に解釈についてはまだ専門的に十 分に検討しているわけではございませんけれども、例えば昭和45年から見ますと、年金 の受給率はどんどん上がっていきますけれども、生活保護率はそれほど動いていない時 代もあります。また昭和58年から平成7年の前でございますけれども、基本的に生活保 護率は減っていくと。年金が成熟化すると、今までは高齢者の方から生活保護を受けな ければいけない、あるいは受けざるを得ない方が受けなくても済むということもあった んでしょうけれども、そういう時代がある。また今般のように、不況が長く続きますと、 年金の受給率が上がっていくのと生活保護の受給者が増えていくのが、割とパラレルに 進んでいるという時期で、今後どうなるかと。改革によって変わっていきますけれども、 そういうような時代時代の中で見ていく必要があります。 2番目に、生活保護を機関委任事務的発想で国の責任とみなして、地方自治体の福祉 施策と切り離して考えることはいかがなものかと。私は他法他施策を活用して、自立支 援を促進するという観点からマイナスであると考えております。生活保護は法定受託事 務であり、国と地方が共同して実施する責任があります。私の持論でございますが、特 に都道府県の広域行政の責任は極めて大きなものがありまして、医療政策あるいは住宅 政策、就労支援などは都道府県行政との連携は不可欠でございます。 ちなみに5ページは市部と郡部の保護率の推移、保護人員の推移、世帯の保護費の推 移ということになりますけれども、一番端的に申しげられますのは9ページでございま す。都道府県と市等というのは、市以外に町村で福祉事務所を持っている数か所のとこ ろがございますので、等にいたしました。基本的には市でございます。これでいいます と、もっと前の数字があればよかったんですけれども、これは総務省の資料を使ってお りまして、厚生省の資料を使っていると何かいんちきぽいのではないかという批判があ るといけませんので、1953年は60%都道府県が保護費を使っていたわけでございます。 それだけの仕事をしていましたということになると思います。 しかし、今日は2003年のデータで見ますと、もう20%を切っておりまして、これが1 0分の1ぐらいになってしまうと。そして、市町村合併が進んで、極端な話すべて市に なった場合は、都道府県は保護行政から後退すると。一切しないということを意味する わけで、果たしてそれでいかがなものかというふうに思っております。やはり都道府県 の役割というのは、依然として大きいし、むしろ今後国とともに大いに発揮していかな ければいけないのではないかというふうに思っている次第でございます。 3点目でございます。生活保護を福祉の最前線で、市民に対する有益な業務でありま して、地域福祉の原点ととらえる必要もあり、国の下請ととらえることは誤りであると。 生活保護にタッチしているケースワーカーは、それぞれ地方行政の中でまじめなよい仕 事をしているわけで、国の下請でやっているというふうに見るのは、正しくないのでは ないかと。やはり生活保護行政も重要な地方行政の1つであるというふうに思っており ます。 4番目でございますけれども、国のみということではないと先ほどおっしゃっておら れましたが、もし国のみを強調するという地方自治体の姿勢があるとすれば、生活保護 に対する地方の責任をあいまいにして、言わば貧困者を切り捨てる地方行政ととらえか ねないということでありまして、そういう誤解がないようにやはりこれから対応してい く必要があると思います。 5番目の最後でございますけれども、21世紀の今日、生活保護と他法他施策を一体的、 総合的、整合的に動員してこそ、地域福祉の充実が図られるし、自立助長の支援、被保 護からの脱却という生活保護の目的も達成するということでございます。 次のページをめくっていただきますと、これは1つの案でございますけれども、国、 都道府県、市町村レベルの関係をどうするかということが今回の一番大きな議論でござ いまして、それにより生活保護が適正化されるかどうかということでございます。適正 化の中には、福祉事務所で運用上変えてくるものもあるし、国、地方の関係からくる構 造的な改善によって、適正化がされるという2つがあると思います。 この中で見ますと、やはり年金は国が中心に実施し、全国的ばらつきはないというふ うに思います。生活保護は国と地方が連携して実施すると。医療は、都道府県など市町 村を超えた広域で実施というのは、これからの方向ではないかということでございます。 福祉・介護は、住民に最も身近な市町村を中心に実施ということで、だんだんこういう 方向になっていくのが本来望ましい姿というふうに私は思っています。 なお、国際比較上、日本の生活保護は戦後改革の中におきまして、たくさんの扶助が ございます。ちょっと言葉が適切でないならおわびいたしますけれども、着物でいいま すと、欧米先進国の生活保護はひとえ物、あるいはふたえ物でございますけれども、日 本の生活保護は十二単衣を着ているということでございまして、あらゆる扶助が入って いるということでございます。 ちなみに3ページは未完成でございまして、研究所でまだこれから整理して更に充実 させていきますけれども、医療扶助と住宅扶助は、生活扶助から別途のところが多いわ けでございまして、基本的には地方行政が担っているところが多いというふうに思って おります。ドイツは医療扶助が社会保障の中に入っておりますけれども、住宅はそれぞ れ地方の仕事ということでございます。 なぜそうかということなんでございますけれども、これはいろいろな議論がございま すが、医療扶助と住宅扶助はかなり現物給付的な性格が強く、医療扶助は明らかに医療 を受けた結果について生活保護費が支給されるということでございます。また住宅扶助 も当該地域の家賃等で実際に払われた額に対しての支給でございます。そういう性格上、 地方行政とのなじみが非常に深いのではないかと。勿論生活者と見た場合は、生活扶助 と地方のさまざまな施策を一体にして活用するわけでございますけれども、実質的体制 は日本はやや特殊な地位にあると。それがよいか悪いかというのは別の議論でございま すけれども、そういった点をやはりかんがみて、今後地方行政において住宅政策と医療 扶助を一体的に運営するという考え方は十分あり得るし、またそうであったとしても、 生活保護上の医療扶助の法定受託事務の役割は依然としてあると。 ちなみに法定受託事務の中には、戸籍事務のように100 %地方が持っている。国は1 %も負担しないものもありますで、法定受託事務は国が100 %であるのが望ましく、0 %はけしからぬということではなくて、それぞれの分野にそれぞれ対応した割合がある ということでございますので、私はそれでよろしいのではないかというふうに思ってい ます。ただ、どの程度の割合にするかということは、申し上げません。 基本的には今、川崎大臣がおっしゃったように、特に医療の問題は病院からいかに退 院させるかということが大きな課題でございまして、実は政府の方も、生活保護を受け ている方も、ちなみに私どもの研究所でつくった図を参考にいたしますと、例えば10 ページをごらんいただきますと、医療扶助の給付額の推移でございますけれども、これ は1955年〜2003年まででございますけれども、これで見ますと波がございますけれど も、入院というのは大変大きな額を占めておりまして、その中には精神障害者の社会的 入院もかなり入っているということで、この方々を10年間で7万人、障害者基本計画で はうたっておりますので、こういう方々をいかに地域で受けるかというときに、地域の さまざまな施策と結び付かなければ、なかなか社会に出て行くことはできないというこ ともございまして、国が給付を厚く出していれば、それで医療扶助の問題は解決できる かということでは決してないわけでございますので、その点も御理解いただきたいと思 っております。 以上でございます。ちょっと長くなりましたけれども、これで終わりたいと思います。 (川崎厚生労働大臣) ありがとうございました。 次に、山崎総務副大臣。 (山崎総務副大臣) それでは、こちらの方から前回に引き続き発言させていただきたいと思います。今ま でのお話と大分重なる部分もございますけれども、その辺は御勘弁願いたいと思います し、反論したいようなところもありましたが、それもまた後の方に譲りたいと思います。 お手元の資料5に沿って、一応お話させていただきますが、あらかじめ申し上げれば 1ページと2ページは今回の私の方からの発言内容です。3ページ以降のことについて は、今までと変わっていないものですので、前回の資料を付け加えさせていただいたと いうことをお断りさせていただきたいと思います。 前回いろいろな御意見が出されたわけでございますが、まず基本的な考え方として厚 労省の見直し案というものに対しての当方の考え方というのは、一言で言えば全く変わ っていないということを申し上げたいと思います。 資料に沿っての説明でございますが、生活保護についての基本的な考え方は前回お示 ししたとおりでございます。前回の議論を踏まえますと、今後これから述べていきます 論点について、議論を深めなければいかぬというふうに必要性を考えております。 まず第一に、厚労省から生活保護制度のみ国の責任で行われるべきものという主張は 適当でないという主張がございましたが、そもそも生活保護制度は典型的な法定受託事 務であるというふうに我々は考えております。 法定受託事務というのは、地方自治法上、国が本来果たすべき役割に関わるものとい うふうに当然のことながら認識するわけでございまして、全国的な制度設計、費用とい うものを含めまして、国の責任が重いということは何ら変わらないわけでございまして、 その点を踏まえることが必要である。その実施については、地方だということなんでご ざいましょう。ただ、少なくとも本質的な責任は国だということは踏まえなければいけ ない。まず重要な点だということでございます。 そういった点から考えて、厚労省の御主張というものは、法律上の現行法制の1つの 制度の事務の位置づけという点から見て、変えようとするものなのかどうなんだろうか ということがわからないといいますか、見えてきません。もしそうだとすれば、その理 由は何なのかということが今日の説明でも見えておりませんので、是非整理して、次回 この場で説明していただければというふうに思う次第でございます。 次に、厚労省は国と地方が重層的に役割や費用負担を行うべきというふうに主張され ているわけでございますけれども、具体的な厚労省見直し案におきましては、一言で言 えば国の負担を減らして、一方的に地方の責任・負担が増えるだけの内容となっている というふうに言わざるを得ません。と申しますのも、税源移譲でどうのこうのという反 論は当然考えられるわけですけれども、作業が増えることによっての地方の負担という ことは、当然連動するわけでございまして、そういう意味で言えば、作業が増えれば責 任も増える、負担も増えるということでございます。 そういう中で逆提案的にいいますと、今回の厚労省案で厚労省はどうなんだと。何か 新たな責任が生じ、負担を担うことになるのかということが当然考えられるわけでござ います。それが何なのか、是非お示し願えないだろうかと。あんたのところにいくのは 大したことないということはわかるんですけれども、それでは厚労省御自身にどういう 作業が増えるんだと。一方通行ではないのかという不満が当方には感じられる次第でご ざいます。 第3に、現在生活保護受給世帯の8割以上が高齢者、あるいは傷病・障害 者の世帯であるわけでございますが、そういった自立支援の効果は限定的ということが、 これまでの共同作業で共通認識になったのではないかというふうに理解しております。 そこのところの議論は、そうではないというならば、またこれは大変なことになるわけ ですが、そのような中で厚労省側は自立助長が円滑に進められて、生活保護制度への過 度の依存というものが回避されるような仕組みにすることが重要だというふうにおっし ゃられているように受け取りました。 ところが自立支援というもの自体が、本来生活保護法の目的であったはずでありまし て、今の生活保護法はそういったものが不十分であると。不十分なんだから、それを直 すために今回の案だというふうな説明のように受け止められるわけで、それでは今まで の生活保護法は不十分な内容の法律だったのかということを厚労省自体がまずお認めに なるのかどうかということもあろうかと思うんです。 そして、自立支援の理由として、国と地方の財政負担の仕組みを変えると主張されて おるわけですが、どのような新しい自立支援というものを考えているのか。そして、そ の効果はいかがなるものなのか。具体的な手法、そして見込みというものをやはりこの 際お示し願わなければいけないのではないかなというふうに考える次第でございます。 続いて第4番目として、厚労省の方としては、生活保護基準の設定権限を地方に移譲 すると。より地域事情を反映した基準が設定できて、適正かつ公平な基準となると。 先ほど住宅のことについて、より細かくというような説明もなされていたわけでござ いますけれども、国の責任があるということは、生活保護というものは全国統一的に公 平かつ平等に実施されるという原則はやはり守らなければいけないわけで、その点を考 えますと、受ける側、国民の側から考えると、それがどうも平等ではない、不公平だと いう不満がもし出てきた場合に、その行き先が今までですと国だとなったのが、今度は 地方だと。地元の自治体だと。この批判の矛先を国から地方に転嫁するような感じにな るのではないのかなというふうに思うわけでございます。そこのところで具体的な話に なると、設定権限というものを地方に移譲しなければならぬわけですが、どこまで指針 を示すんだと。どこまで地方の裁量にゆだねるのかと。この点は非常に具体的になって くると難しい問題だと思います。 御案内のとおりだと思いますが、くどくなりますけれども、この指針が具体的であれ ばあるほど、地方の裁量はなくなってしまうわけです。そして、逆に地方に全部自由で すというふうにすれば、その結果実質的に最低限度の生活の内容に差が生じてしまうと。 このパラドックスをどういうふうにしたらいいのか。これはもう明らかに私の個人的な 考え方かもしれませんが、こういう制度になるとすれば、少なくともある程度のシミュ レーションをして、大丈夫だと。この程度の移譲であれば、地方もうまくやれるという ぐらいのシミュレーションをやらないと、一旦やってしまってからでは大変なことにな るというふうに考えるわけでございます。 もし実質的な差が生じた場合は、生活保護法第2条、無差別平等原則というものがあ るわけですが、それに反するものであるということで、最高裁までいく訴訟にもなりか ねないと。その辺のところをどう考えているかという考えをお示し願いたいわけでござ います。 そういったことで、先ほど来のことがございますけれども、この間のことで 恐縮なんですが、竹本財務副大臣へのことでございますが、前回制度の創設時は国がや っていた。先ほど京極委員の方で、最初のうちは全部の制度が大体8割国庫負担だった ということと通ずることなんですが、現在はそのときより豊かになったんだから、少し 地方も負担していいのではないかという趣旨の発言があったように記憶しております。 ですけれども、現行の国庫負担率というのは、やはり生きるという、生存に関わるナ ショナル・ミニマムの確保という国の責任というものをかんがみますと、やはりちょっ と問題があるのではないかと。と申しますのは、やはりその前にこの問題ということが、 たしか平成元年と先ほどの資料ではあったと思いますが、4分の3、75%で恒久化され たという経緯があるわけです。そこで議論されているわけです。 平成12年だと思いますが、介護保険が導入されて、現在の社会福祉制度の体系が一応 確立されたと。こういうふうな形もあったわけですけれども、その際も生活保護の負担 率の見直しというのは、行われていなかったわけでございます。 その辺との流れの中で、今の見直しという議論をどう考えたらいいのか。その当時と 比べて、現在の状況は大きく変わった、生活のあれが大きく変わったというふうには私 どもは思えません。ですから、そこのところで豊かたになった、変わったんだからとい う議論はいささか根拠がないのではないかなというふうに思慮する次第でございます。 むしろその辺のところで蛇足的に付け加えるならば、その当時に比べて生活保護受給 者というのは増えているわけなんです。その現状において生活保護に対するセーフティ ーネット、勿論終戦直後の昭和30年代くらいまでに比べれば別ですけれども、先ほど申 し上げた平成元年、あるいは介護保険の12年時代に比べても、セーフティーネットの位 置づけは、現時点において高まっているというふうに言わざるを得ないと思います。 そして、三位一体の改革の関連で申し上げたいと思います。 地方側からは、資料の最後のページに付けてあります参考−4に改革案の(2)とし て、厚労省分で4,800 億円税源移譲という提案がなされているわけです。そして、先ほ ども話が若干出たと思いますが、昨年度の提案分は、厚労省関係はおよそ3,500 億円あ りまして、併せると地方側からの改革提案というのは、総額で8,300 億円に上るという ことでございます。そして、過日の厚労省に対する要望改革額というのは、これら地方 の方から選択すれば解決するのではないのかなという金額です。8,300 億円のうちから、 5,040 億円といった中でございますから、そういった中で何でこの地方の求めているこ とをカットして、無視とは申しませんが、考えずに生活保護と児童扶養手当に選ばれた のかというのが、今までの議論の中でどうしても見えてこないというところがございま す。 そういった意味で、地方の改革案に示された補助金よりも、今、申し上げた生活保護、 児童扶養といった方がより税源移譲にふさわしいと。この方がいいんだという考え方を 次回になると思いますが、是非具体的に明らかにしていただきたいというふうに思いま す。 当総務省としての一番のポイントの点をこれから申し上げたいと思います。 委員の方々のいろいろな御意見の中で出てきたわけでございますけれども、一言で言 えば、この問題というのは国と地方の信頼関係だというふうに私は思っております。厚 労省側の中身についてのことは申し上げません。しかしながら、委員の方々の御意見の 中でもそういうふうな言葉は出てきたんですが、正直に申し上げて、今の厚労省案が地 方の不信、国と地方の信頼関係というものを損なわないで、厚労省案でいけるというこ とを考えているとしたら、私がお話の中身を聞く中でとんでもないことになると。総務 省という立場を考えると、もう中身の是非を超えて、これは一番これからの国と地方の 関係を踏まえた上でも大変なことになるというふうに思わざるを得ません。 当省の具体的な話で言えば、地方の保護の実施体制、取組み状況をやって、国の負担 率を引き下げというふうなことをいったわけです。これまでの議論を振り返れば明確な 事実でございまして、これは言葉を変えれば、私は前回か前々回も申し上げたと思いま すが、地方の不信から出たとしたかいいようのない考え方でございます。 そして、今度の場合は、地方団体にやればよりきめ細かくしっかりやれると。だから、 国と地方と役割分担をしながら、こっちの案でどうでしょうかと。考え方が180 度がら っと変わってしまっているわけでございます。 ここのところを考えますと、やはり地方側がこうした厚労省の考え方、今までの議論 の進め方というものに対して不信感を抱くのは無理ないものというふうに考えておりま す。これからある程度決まったら、地方の御理解をということは当然なさると思います けれども、地方が理解したら、地方の今までの主張、考え方は何だったのかということ で、地元がもたないなどというのは言ってはいけないことかもしれませんが、正直その ように考えております。 これも蛇足かもしれませんが、先ほどの考え方、厚労省案の考え方というものが、要 するに両論併記だというふうにいったところで言えば、固有名詞を挙げて失礼ですが、 木村委員の点検という作業と私個人のことからいけば、この議論はあそこでやめにした い、木村委員の案というか説明に反論があるならば、是非この場でお聞かせ願いたいと 申し上げたのに対して、何ら反論のないまま、その次の回で両論併記というのを平気で 主張されるという。そしたら、この両論併記のための議論は何だったのかと。そして、 それが我々の中だけであればいいんですが、そこのところを踏まえたような形の、それ なりに影響力のある新聞社の社説にまでそれが引用されている。これは中身の議論を本 当にできるのかなというふうにすら私は思っております。 今ちょっときつい言葉も多くなったかもしれませんが、是非その辺のところを踏まえ て御回答等を願えればというのが総務省からの発言とさせていただきます。 (川崎厚生労働大臣) ちょっと所要の時間が過ぎてしまいましたけれども、竹本財務副大臣。 (竹本財務副大臣) いろいろ議論はありますけれども、私は基本的に憲法で保障されている最低限度の生 活の保障ということは、国の責任であるんですけれども、ナショナル・ミニマムの達成 は、だからといって全費用を国が持つということまでは約束をしていないということだ ろうと思います。もしそうであれば、先ほど話に出ておりましたように、生活保護、他 の福祉施策は最初補助率が10分の8で始まりましたけれども、10分の10で始まって、 10分の10で終わらなければいけない問題ではないかと私個人は思っております。 そういう視点に立って、具体的に生活保護の見直しのことについて何点か簡単に申し 上げたいと思いますけれども、要は都道府県の役割の在り方がこのままでいいのかどう かということに尽きるのではないかなというふうに私は思うわけであります。 先ほど京極委員の方から図表をもって説明がありましたように、どんどん市の負担が 多くなって、都道府県の役割が少なくなっていると。私に言わせれば、能力のあるとこ ろが総合的な役割分担を担って、生活保護に頼らざるを得ない気の毒な人たちを救うと いうのが本来の目的ではないかなと思います。 そういう意味におきまして、都道府県の役割をそれなりに見直して、しかるべき役割 を持っていただくことが必要なのではないかと。その役割の中にそれなりの財政負担が あってもいいのではないかなと思うわけであります。 加えて、話にもありましたように、町村合併がどんどん進んでまいります。そういう 状況において、やはり60年前の日本と今日の豊かな社会になった日本との大きい格差、 したがって行政の在り方ということについても再考されるべきではないかなと思ってお ります。 住宅の問題なんですけれども、住宅扶助につきましては、私は国の行政、住 宅政策を最低居住水準あるいは平均居住水準という指標を持って、全国的に豊かな生活 の実現ということを目指しておるわけでありますが、やはり北海道あるいは東北のよう に寒いところと、沖縄のように暖かいところでは、当然住宅の規模あるいは住宅の在り 方は違うわけであります。一定の広さがないと最低とは言えないということは、必ずし も一律には言えないのではないかなと。 したがって、そういった基準を地方が独自に判断されて、勿論国との整合性を図りな がら、最低居住はこれだということを示す中で、それに対する努力をしていくという意 味では、地方の自主財源でやっていただくには非常にいいことではないかというふうに 思っておるわけであります。 いずれにいたしましても、県にしろ市にしろ、全部の費用を国でやってもらえれば、 ただでさえ行政が厳しい中で楽だというのはわかるわけでございますけれども、三位一 体改革はもう時間が限られて、何が何でも実現しなければならないという現時点に立っ てみますと、それぞれできるところでそれなりの負担をしていただくことが、やはり一 番適切ではないかなというふうに思っておるわけであります。 以上です。 (川崎厚生労働大臣) それでは、先ほど申し上げましたように、お忙しい中お集まりいただいて時間が過ぎ てしまいましたけれども、特に御発言ある方がございましたら、どうぞ。 (谷本石川県知事) 生活保護というのは、そもそも何ぞやというところをやはりきっちり踏まえておかな ければいけないのではないかというふうに思います。 今、総務副大臣もおっしゃいましたけれども、やはり憲法で保障された最低限の生活 を保障するナショナル・ミニマムということは、私は大きな点だというふうに思います。 だからこそ、地域によって、人によって、実質的な差をつけてはいけない。これは豊か な保障をするのではなしに、最低限度の生活をどの地域に住んでいても、そして人に関 わりなく保障してあげるんだというところはきちっと位置づけをしておく必要があるの ではないかと思います。 この協議会も8回目ですけれども、いろいろな議論をしてまいりました。スタートす るときには、生活保護に関わる問題点について総合的に検討しましょうと。これで我々 は全員合意したわけです。なぜ、保護率が上昇しているのか。なぜ地域で差が生じてい るのか。その原因をしっかり分析する必要があるでしょうと。それはそうですというこ とでみんな合意をしたわけです。ちょうど学識経験者もお入りになっておりますので、 地方側も政府の側も担当者が入って、プロジェクトチームをスタートさせて原因の分析 をしたわけです。そして、まず共通認識を得ましょうと。共通認識を得れば、次の段階 に向けての作業ができるでしょうと。こういう順序を踏んできたということです。 そういう中で社会的、経済的要因というものは非常に相関度が高いということが明ら かになった。 あとは両論併記という話がありますけれども、それは共通認識にある意味ではなり得 なかったということでありますから、そこのところについて、結局は生活保護の適正化 をどうするのかという話に進んでいかないと問題の解決にならないのではないかと。あ る意味では非常に大きな問題を抱えている。単に負担割合を変更するというだけで生活 保護の適正化ができるような代物ではないと。 そして、我々は地方の側からいろいろな提案もさせていただいたということでありま すので、そういう形で議論はしていくべき性格のものではないかというふうに私は思い ます。そして、やはり事務の性格が何かということは非常に大事なことだというふうに 思います。 地方分権一括法というのは、平成12年に法律が制定された。つい5年前で す。法律の制定によって国と地方が事務の意味では対等、協力の関係になった。言わば 画期的な法律だったと思うんですけれども、そういう中で国と地方の役割をきちっと整 理をしないと、責任の所在があいまいなままではおかしなことになるだろうという中で 法定受託事務のような国が基本的に責任を持ってやるべき事務、地方の創意工夫とか自 主的体制が生かせるような事務、そういう仕分けを地方分権一括法でしたわけなんです。 それからまだ5年しか経っていない。その中で生活保護は法定受託事務として、国が基 本的に責任を負う事務に仕分けされた。我々はそういうことたがら、全部国で何もかも やれと、地方は知らぬというようなことは言っていない。 これは先ほどもそれぞれ申し上げましたけれども、そこのところは是非御理解をいた だきたいというふうに思うんですが、国と地方の役割というのをきちっと、地方分権一 括法の中でやはり整理をした。それからまだわずか5年しか経っていないということで すから、一つひとつの基本を踏まえて、これは議論をしていくべき性格のものではない かというふうに私は思います。 法定受託事務であるにもかかわらず、地方が丸々負担をすればいいんだというのは極 論だというふうに思います。方向としては、わかりやすく本当に原点に立ち返って整理 をしていけば、法定受託事務は国が負担をする。自治事務は地方が負担をする。恐らく 方向としては、そんな整理にいくべだと思います。 ただ、現実にはいろんな財政負担の関わり合いで、まだきちっと整理はされてはおり ませんけれども、少なくとも方向としてはそういう方向にいくべきだと。我々は別にこ のことについて、科学的な分析の結果が出ましたので、それを踏まえて国の財政負担を 更に増やすべきだと、こんなことを我々は主張しているわけではないということは、是 非御承知置きをいただきたいと思います。 (川崎厚生労働大臣) どうぞ。 (岡崎高知市長) 時間が押していますので1点だけでございますが、京極先生の資料の中にちょっと我 々としては看過できないような資料がございます。京極先生には申し訳ございませんが、 1ページの3と4でございます。我々は決して生活保護の実施機関である福祉事務所は、 国の下請ということではとらえておりませんし、むしろケースワーカーは住民の方々の 最低生活を維持する最前線で働いているという誇りと責任を持って働いておりますので、 決して国の下請というふうに働いているケースワーカーはいないと思います。 もう一 点は「市民への『最低生活の保障』の責任から逃げ」という表現がございますが、こう いう表現は大変我々も不信感を抱きます。我々は責任を持って、実施機関との責任を持 ってやっておりますので、その点だけは看過できませんので、そのことだけは申し上げ ておきます。 (京極国立社会保障・人口問題研究所所長) 地方六団体がそういっているということではございませんので、そういう考え方に対 してはということでございます。 (川崎厚生労働大臣) 逆に岡崎さんから反論があったということでいいのではないですか。 木村委員、ど うぞ。 (木村地方財政審議会委員) ありがとうございます。私は大臣、副大臣あるいは京極先生がおっしゃったことにつ いては、次回反論を述べますけれども、少しだけ是非この場で申し上げなければならな いと思うことを申し上げます。 まず京極先生がおっしゃった医療扶助と住宅扶助について、各国とも別々であって、 生活保護の本体とは離れておって地方が負担しているということについては、私どもの 調査結果とは違っておりますので、次回申し上げたいと思います。 そして、生活保護の保護費が市部の方が増えて、県が負担している郡部が非常に減っ たということでございますが、県の負担が減った分、どこが増えているかというと政令 市が増えているのでございます。県が保持している福祉事務所数は変わりませんけれど も、人員が減ったと。その対象はどこにいったかというと、政令市の方が増えておりま して、県並みの能力のあるところが担っているということには変わりはございません。 他法他施策を利用すると、生活保護の役割が減るかのような印象を与える御意見が聞 かれますけれども、最低所得を保障する制度というのは、我が国においては生活保護し かなくて、たとえ介護保険とか医療保健があっても、一部負担をきっちり取る、老後に おいてもきっちり取るという、国において最低所得保障をする生活保護の重要性という のは、時間が経っても変わるものではございません。 以上です。 (川崎厚生労働大臣) いいですか。 (京極国立社会保障・人口問題研究所所長) 次回でいいです。 (川崎厚生労働大臣) 次回にという形で御発言が相次ぎましたけれども、秋までに結論を得るという形で今 日まで議論を進めてまいりました。そういった意味では、できるだけ早く次回を持ちた いと思いますけれども、来週の21、22、月曜、火曜辺りにいかがでしょうか。特に県知 事さん、市長さんお忙しいですけれども、御足労いただけますでしょうか。 (谷本石川県知事) 私自身はまだ帰って日程を調整してみないとわかりません。それと今日いろんなお話 がありましたので、我々も知事会に諮らなければいけないこともありますので、明日は もう土曜、日曜ですから、月曜、火曜というのは、余りにも日程がなさ過ぎるのではな いかと私は思います。 (川崎厚生労働大臣) わかりました。 (岡崎高知市長) 私のところは、臨時議会を設定していますので、そこの日程では無理です。もうちょ っと後ろへ動かしていただかないと無理だと思います。 (川崎厚生労働大臣) わかりました。そうしたら私も都合ありますけれども、一応私の方から24日午前中と いうことで御提案申し上げて、今日はその日程をお持ち帰りいただいて、事務方から調 整させていただくということにさせていただきたいと思います。 (谷本石川県知事) 事務局へ御回答すればいいんですね。 (川崎厚生労働大臣) はい。調整に入ります。 それでは、次回については御提案だけさせていただきました。また調整をさせていた だきます。 ありがとうございました。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)