05/11/11 今後の労働時間制度に関する研究会 第12回議事録           第12回今後の労働時間制度に関する研究会                       日時 平成17年11月11日(金)                          17:00〜                       場所 厚生労働省専用第21会議室 ○座長  定刻より少し早いようですが、第12回今後の労働時間制度に関する研究会を開催させ ていただきます。お忙しい中をわざわざお集まりいただき大変ありがとうございます。 本日は水町様と山川様から、少し遅れるという連絡をいただいております。  早速、前回に引き続いて「新たな適用除外制度のあり方」についてご議論いただきま すとともに、論点として残されている年次有給休暇や所定外労働の削減等についても検 討をしていただければと願っております。いつものように事務局で関係資料の修正・追 加・年次有給休暇や所定外労働削減についての考え方のたたき台を準備していただいて おります。最初に事務局から説明をお願いします。 ○安藤監察官  資料1、資料2という形で、前回と同様に論点、たたき台案を提出させていただいて おります。今回はさらに、前回、専門業務型裁量労働制が実際に何人程度適用されてい るのか、もしくは企画業務型裁量労働制は実際にどのくらいの人数がいるのかといった 議論が出ていますので、参考資料1として、裁量労働制の導入状況ということで、適用 労働者数、制度を採用している企業数割合をお示ししております。また参考資料2とし て、前回、過重労働といった議論も踏まえるべきではないかというご指摘がありました ので、現時点で公表されているものですが「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補 償状況」の平成16年度の数値について、概要ですが、提示させていただいております。 また参考資料3として、今回たたき台で職位・職階、もしくは管理監督者といった概念 が多々出ておりますが、それぞれの職位・職階でどの程度の人数がいるのか、管理監督 者としてはどの程度の人数がいるのか、といったイメージを各参集者の方々に持ってい ただくために、職階別の労働者数の数字を用意させていただいております。参考資料4 として、今回新たに議論していただきます、年次有給休暇の取得状況等についての資料 を付けさせていただいております。  資料1については毎回、労働マップといったような形で論点案を提示させていただい ておりますが、今回新たに2頁のIII「年次有給休暇、所定外労働の削減等について」 といったことで3点ほど挙げさせていただいております。1点目は年次有給休暇、2点 目は所定外労働の削減、3点目は事業場外みなし労働時間です。細かい論点の提示につ いては、たたき台の方の議論とかぶりますので省略させていただきます。  資料2は毎回提示させていただいている考え方のたたき台案ですが、12頁までの労働 時間規制の適用を除外する制度の在り方については、前回、研究会に提示をして、ご意 見をいただいたところについて修正を行っております。13頁以降は、今回新たに議論を していただく年次有給休暇、所定外労働の削減などについて論点を提示しております。 修正点としてはまず4頁目です。ここは当初「グループリーダー」という名称にしてお りましたが、グループリーダーというよりもプロジェクトマネージャーと言うべきでは ないかというご意見がありましたので、「プロジェクトマネージャー」という用語に変 えさせていただきました。  7頁目、新たな労働時間規制適用除外制度の対象とすべき労働者の基準として、4点 ほど挙げさせていただいておりますが、その中の2番目の基準で、前回、自分のジョブ そのものを選ぶ権限があるということも重要ではないかといったご指摘がありましたの で、その2番目の基準に「業務の内容」といったものを追加させていただいておりま す。また、この4つの基準については抽象的なものが含まれているので、外形標準的、 客観的な基準で判断すべきではないかとった論点を提示させていただいて、前回、一定 の年収があり本人の同意があれば、業務にかかわりなく労働時間の規制を適用除外する という考え方もあるのではないかといった論点を提示させていただいた上で、さらに、 ジョブそのものを選ぶというようなご意見もありましたので、業務の内容についても考 慮する必要があるのではないかといった論点を追加させていただきました。その中の1 点目「一定以上の職位・職階にある者」といった論点については、一定の客観的な基準 として、会社全体の人事や予算配分についての決定権限を有している、といったことが 考えられるのかという論点を追加するとともに、2番目の基準では業務の内容といった ものを追加し、その内容が明らかになるような形で論点を、8頁の中ごろの所と下の部 分について追加しております。  9頁目は、一定水準以上の賃金が保障されているものについては、7点ほど問題提起 を付け加えております。具体的には一定の年収要件だけではなく、職責・職務に応じた 適正な賃金が支払われているのかといった議論とともに、そもそも成果主義賃金とはど ういったものなのか、というようなことなどについて問題提起をさせていただいており ます。また、4番目の基準として掲げている「休暇が自由に取得できるものであること 」というところについては、新たな適用除外対象となる労働者の業務との調整といった 観点などを踏まえて、5点ほど問題提起をしております。  10頁目の、対象となる労働者の「個別の同意」が要件として必要ではないのかといっ た論点については、こうした「同意」という要件を必要とするのであれば、労使交渉に おける実質的な対等性を担保する仕組みも必要ではないかといった論点を付け加えてお ります。また、3の「法的効果等」については(1)で、週休2日制が普及している実 態を鑑みると、休日に関する規定を適用してはどうか。その際は、休日の割増賃金は適 用除外ということも考えられるのではないか、といった論点を追加させていただいてお ります。また、(3)の「具体的な指示の禁止」。これは11頁、具体的な指示の禁止と いうことで、「使用者による具体的な指示の禁止」をどのように担保するのかなど、2 点ほど論点を追加しております。また、4番目「健康及び福祉を確保するための措置」 ということで(2)の内容に、そうした健康・福祉確保措置と、客観的な基準とされて いる「休暇が自由に取得できる者であること」の関係を整理すべきではないかという論 点を追加しております。さらに、5番目「その他」で「現行の労働時間規制の在り方に ついて(特に管理監督者について)」ということで、12頁、「新しい適用除外制度と管 理監督者を別制度として位置付けるとしても、実態としてそれぞれの対象者は相対的で あることから、しっかりとした基準を設けて整理する必要があるのではないか」といっ た問題提起を付け加えさせていただいております。  13頁目以降は、今回新たにご議論していただくところです。最初のテーマとして「年 次有給休暇」を挙げております。この年次有給休暇の取得促進のための効果的かつ具体 的な方策をどのように考えるのかということで、(1)計画年休制度を実際に導入して いる企業は平成16年には14.4%にとどまっている、そういう14.4%といった、低い水準 にとどまっているのは、どういった問題点があるのか。仮に問題点があるとすれば、ど ういった点を見直すべきなのかといったことを挙げさせていただいております。  2点目の論点としては、現在、年次有給休暇の分割の最低単位は1労働日とされてい るが、労働者の請求で使用者が任意に同意する限り半日単位での取得も可能とされてい る。しかしながら、年次有給休暇の取得促進という観点からは、時間単位での取得も可 能ではないかという論点を付け加えさせていただき、その上で、年次有給休暇は本来、 休養や活力の養成という趣旨から設けられているものだけれども、実態としては取得率 の低下傾向が続いている。そこで、効果的、具体的な方策を検討するべきではないかと いった論点に続き、14頁目で、一方で、公務員については1時間単位の取得が認められ ている場合がある、といった問題点を提示させていただいております。  3番目の論点として、労働時間規制の新たな適用除外制度を導入するのであれば、そ の適用労働者の「健康で文化的な生活」を保障するために、年次有給休暇の完全取得が できる環境整備が必要ではないかといったことで、時季変更権の行使との関係で、3点 ほど問題提起をさせていただいております。  次に「所定外労働の削減」ということで2点ほど論点を提示させていただいておりま す。まず1番目の論点として、時間外労働の法定割増率の引上げや36協定における特別 条項の在り方を見直すべきではないかといったことで、1点目としては、平成15年に 「特別な事情」は「臨時的なもの」に限るという趣旨を明確にする改正を行ったが、さ らなる改正が必要ではないかということを挙げさせていただいた上に、逆のご議論とし て、改正したばかりであるからこそ、改正内容の周知徹底を図りつつ状況を見守るべき かといった、2方向からの論点を提示させていただいております。2番目の論点として は、所定労働時間を超えた場合にも、割増賃金の支払を義務付けるといった措置を講ず ることとした方がいいのではないかという論点を提示させていただいておりまして、そ の中で3点ほど問題点を提起させていただいております。  最後に「事業場外みなし」です。現在事業場外みなしについては、一部の時間帯であ っても、事業場内で労働した場合には、その事業場内労働をした部分については時間管 理をするようにといった形にされているけれども、こうした取扱い自体が現在の実態か ら見て改善すべき点があるのではないか、といったことで問題提起をさせていただいて おります。以上、資料の説明でした。 ○座長  どうもありがとうございました。ただ今の説明についてご意見、ご質問と思います が、参考資料も念のためにちょっと説明していただいた方がいいかなと思います。簡単 にお願いします。 ○安藤監察官  参考資料の具体的な内容について簡単に説明します。  まず参考資料1として、「裁量労働制の導入状況について」の数値を挙げさせていた だいております。専門業務型裁量労働制の導入状況については、これは最終的には労働 基準監督署に、導入する際に届出という形になっているのですが、実際にその届出の数 は、現時点では実務上カウントしておりません。現在、統計は就労条件総合調査の方で 取っておりまして、その数字によると、直近の平成16年には、採用企業数が全体の企業 数の2.5%で、専門業務型の適用労働者数は約50万人となっています。この専門業務の うち、法令でこういう業務、こういう業務という形で列挙しているわけですが、その業 務ごとの数値については、この統計調査から推測することはちょっと困難です。企画業 務型裁量労働制については届出数、労働基準監督署に届出があったものを基に集計して いまして、直近の数字で申しますと、平成17年6月末で、導入事業場数が1,063、適用 労働者数が3万2,842人となっています。  参考資料2として、労災の補償状況の平成16年度の数値を載せております。前回のご 議論では、平均の年収要件などは出ないのかといったご指摘があったかと思いますが、 現在、年収等については公表をしておりません。そのうち脳・心臓疾患の労災補償の状 況は、請求件数が816件で認定件数が294件。業種別では、製造業の請求、認定件数が増 加しており、職種別では専門技術職の請求、認定件数が増加している。年齢層では40〜 49歳または60歳以上で請求件数が増加しているという傾向があります。また、精神障害 等の労災補償状況は、請求件数は524件で認定件数は130件。業種別では建設業、卸売・ 小売業、医療福祉業の認定件数が増加しております。職種別では、専門技術職の認定件 数が増加しており、年齢別で見ると、30〜49歳層の請求、認定件数が増加しておりま す。  次は参考資料3ですが、現在、労働基準法で適用除外者である管理監督者とされてい る者の数値については、これは届出制という形のものではありませんので、そこから数 字を拾うことは、現時点では不可能な状況です。それを前提として、現在賃金センサス の方で、企業規模100人以上という形ではありますが、部長、課長、係長、非職階とい った形でそれぞれの数字を提示しております。ただし、ここの部長が必ずしも労基法で 言う管理監督者に該当するかどうかについては、実態を個別的に判断しながらみていか ないといけないという数値でして、あくまでも参考ということで見ていただければと思 っております。簡単に数字を申しますと、これは単位が10人単位です。部長ですと約38 万人、課長職で88万人、係長で72万人、パーセンテージで見ますと部長が2.9%、課長 が6.8%、係長が5.5%という状況です。以上です。 ○座長  どうもありがとうございました。それでは皆様、ご質問なりご意見なり自由にお願い します。 ○水町様  まず、「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況」という参考資料2です。 専門技術職が増えているとか、年齢層は分かったのですが、その人たちの適用されてい た労働時間制が例えば通常のものなのか、管理監督者として取り扱われていたのか、裁 量労働制が適用されていたのか、賃金がどれぐらいだったのかということなどは分から ないのですか。それとも、明らかにすると何かいろいろ問題があるから明らかにしない のですか。 ○大西監督課長  労災ですのですべての認定事案については、調べれば必ず出てくるものですが、これ は本省で全体的に集約しているものではありませんので、調べるのに物理的に時間がか かるということと、それを公表していいのかどうかという点ではまた別の議論があると いうことで、今、引き続き内部で検討している状況だとご理解いただきたいと思いま す。 ○水町様  公開するかどうかは別にして調べようとするとどれぐらいかかりますか。 ○大西監督課長  具体的に何日ぐらいということはちょっと申し上げられないのですが、一定程度時間 がいただければ調べることは、物理的には可能です。可能ですが、それを公表していい のかどうかということについては、それとはまた別の問題があるとご理解いただきたい と思います。 ○水町様  13頁、年休の半日単位、時間単位という所です。これは私自身の個人的な意見です が、そもそもここに書いてあるような休養とか活力の養成という趣旨からすれば、1日 単位で取るというのが原則で、世界的に見ても1日単位で取るというのが常識という か、普通なのですね。それならどうして今、半日とか1日、時間単位という議論がある かというと、そういうふうに認めた方が労働者の希望にも即するし、ワークライフバラ ンスの観点からすると、そういう柔軟な労働時間を実現するために、1時間2時間と か、遅く来たり早く帰ったりという。年休の消化率が悪いからそういうのを使ってでも やろうという趣旨であれば、それも考えられるかなという気もします。そういう意味 で、年休制度の趣旨をどういうように考えるかということが関わってくるというのが1 つ。  それをどうするかというときに、今までは半日単位というのをやっていますが、半日 単位というと、例えば午前9時から夕方6時までというときの午前中だと、8分の3時 間のときに半日になってしまい、午後だと8分の5時間ということになってしまいます ね。だから、その半日単位という計算の仕方がいいのか、1時間単位で計算するのがい いのかということは議論になると思います。半日単位の方が実はアバウトで、半日単位 にするのか、それとも、所定労働時間を8時間とすると、8分の4時間ということで半 日を数えるかとかいう問題になるのかと思います。  そのときに1つ解釈上問題になるのが、年休を取った場合の実労働時間、労働時間の 数え方なのですね。例えば午前の年休を取った場合に、昼の1時から仕事をして8時間 働いて、8時間以上また働ければ、残業手当はどこからカウントされるかという取扱い で、結局、午前中は休んだけれども、昼から10時間、11時間働いたということになった ら、年休の本来の趣旨に反するようになるわけです。それで、半日年休を取ったり時間 年休を取ったりしたときに、8時間以上は働かせないようにしようということにしたと すると、それも運用上あまりにもリジッドになってしまう可能性もある。そうすると、 例えば時間単位で年休を取ったり半日単位で年休を取ったりした場合、それは労働時間 算定の上では働いたものとみなすということにして、そこから実労働時間の算定をする とか、そういう制度的な工夫をしないで、ただ半日単位とか1時間単位というのを設け てしまうと、実はその制度の趣旨に反するような運用が出てくる可能性がある。  それとの関連でもう1点だけ言うと、裁量労働の人に、果たしてこういう時間単位の 年休を認めていいかというと、裁量労働の趣旨がそもそもそういうものになじまないの で、裁量労働者についてはやはり原点に戻って、1日単位で取るしかないというように しないと。1時間単位で取るというのとはちょっとそぐわないかなという気がします。 ○座長  どうぞ、ご自由にご意見をいただきたいと思います。どこからでも結構です。 ○佐藤様  参考資料の3、職階別労働者数の所です。要するに、管理監督者をどういう基準で切 って補足するかというのは難題で、それはよく分かります。公式統計として見たときに 出てくるのが賃構と国調ということなのですが、賃構の場合には、ここに定義があるよ うに部長だと2課20人以上、それに加えて呼称、構成員に関係なく、責任、職務の内容 が部長に相当する場合には含むということですね。ただ現実的に、実際に管理職として の職務の内容、責任が相当するかどうかというのはなかなか難しい。しかしその難しさ は、範囲を確定していく上では非常に重要になってくるところですね。数の面から言う とこの割合、これを含めるとやや広くなってくると思うのですが、企業の場合は処遇的 な部分で、例えば資格等級が8あって、7が部長相当職だとすると、一応その企業で は、呼称はいろいろあっても部長相当なわけです。ただ、その場合の処遇の基準という のは、しばしば仕事の責任とか権限ということとは関係なしに決まっていますから、実 態としてはそういう責任や権限がなくても、そういう所に位置付けられている場合が多 いです。したがって、ここではそれらが含まれている可能性があるということです。そ ういう流れでいくと、現実的にはもう少し減ると見た方がいいのですかね、つまりここ では2.9になっているけれども、ここは少し広めに出ているので、本当に部長、本当に というか、責任権限の「相当」ということから言うと、これより少ないとみるのか、こ のぐらいとみるか、もう少しというあたりのところですね。そのほか、課長もそうです けどね。 ○小林調査官  会社内でどう位置付けるかという、会社の判断もありますので。我々としては管理監 督者、第41条2号の適用除外者かという観点では一応判例等で、例えば権限があると か、一定の処遇をされているとかいう条件をつけて判断しておりますが、会社内でどう いうように処遇されるかという点では、様々なバリエーションがあったりしますので、 この数字が実態上多いか少ないかというのは、各会社によって取扱いがありますので、 当局として、これについて多いかどうかはちょっと判断しかねるかなと思います。 ○佐藤様  でも、大体これを目安に考えていいだろうと。 ○小林調査官  統計上これしか、職階というか、データとしてはありませんので、特にこういう数字 で表に出しておりますが。 ○大西監督課長  今ご指摘いただいたのは前回の議論の中で、職位・職階というのがその適用除外制度 を考える上で非常に議論になってきて、そういうのをどういうようにとらえるかという ことですが、現在、それは私どもの方でも非常に悩ましいことで、たぶん今のご指摘も それを踏まえたものだと思います。正直言って我々としても、例えばこういうことにす れば何万人ぐらいというのを、是非お示ししたいと思っていろいろ努力はしているので すが、今の段階ではそこに至っていない。ただ、ご指摘の点は我々もこれから一生懸 命、この資料だけでなく、ほかのいくつかの資料を組み合わせてそういうようなイメー ジができるように、また次回に向けても努力したいと考えております。 ○西川様  参考資料2の見方ですが、上の方のグラフで、職種別構成比、下もそうなのですが、 専門技術職の人と管理職の人の割合というのは、本来の労働力全体の割合でいくとかな り低いはずです。それがこの件数で見ると、かなりのパーセンテージを占めている。と いうことは、この人たちはほかの職種の人に比べて脳・心臓疾患とか精神障害とか、そ ういうものにかかる傾向が強いということが言えると思うのです。その場合、先ほど水 町委員も言われたのですが、この労働時間制度との関係で、いわゆる裁量労働制の適用 になっている人がここにたくさん入ってきているのか、あるいは、そうではない人が多 く含まれているのかということは重要なポイントだと思うのです。ですからその辺は、 もしデータとして出せるのであれば、出すべきではないでしょうかというのが1つで す。  次はちょっと違う話になるのですが、7頁の(1)の(1)のiiで、業務の内容という のを新たに追加したということ。それはもっともだと思うのですが、ただ、この業務の 内容という言葉がちょっと曖昧な言葉かなという気がします。と言いますのは、例えば 裁量労働制の場合に、こういう業務に従事している者が裁量労働の適用になるというこ とがあるわけです。それは業務の内容ではないのか。この7頁で言われている業務の内 容というのは、一体何を意味しているのか。例えば企画・立案・調査というのが企画型 の所にあるわけです。それは内容ではないのだとしたら、この7頁ではそういう意味で 使われていないと思うのです。そうすると、一体何が内容になるのかというところがち ょっと曖昧な気がします。 ○大西監督課長  2つ目の点については、たぶん、先生がお考えになっていることと我々が考えている こととはだいぶ似ているのではないかと思います。要するに、これが企画かどうかとい うことではなくて、そういうジョブの塊を受け止めるか、受け止めないかといところを 書き表したかったのです。表現ぶりはちょっと検討させていただきます。この2番目の ポツに書いてある「内容」という単語を、もう少し別の分かりやすい表現に直すことを 考えてみたいと思います。  脳・心臓疾患の話につきましては、私どもとしてもこういうところで、労働時間制度 との関係で何か相関のようなものが得られれば、それは検討の素材としては非常に大き なものになるのではないかという認識はありますので、引き続き研究させていただきた いと思います。 ○守島様  今と同じ頁のi)の「一定以上の職位・職階にある者であること」という内容の、論 点の3に「会社全体の人事や予算の配分についての決定権限を有している」。これは例 示なので厳密に議論することではないのかもしれませんが、会社全体の人事や予算の配 分というレベルまでいくとなると、職種によっても違いますし、職階の、どこのどれが 高いかということによっても変わってきます。もう1つ重要なのは、会社全体の人事や 予算や経営については何も言わないけれども、その事業や部門に関する内容を意思決定 するという場合は十分あるのです。会社全体ではないけれども、その人たちはやはりか なり高い職階にある方々だと思いますので、ちょっとこの書き方は2つの意味、つまり 1つはその部門という話で、もう1つは会社全体の決定にという、厳密に取るとすごく 高くなるねというものと2つ。なんとなく、ここだけ飛び抜けて限定性が高いように思 われてしまうのですが。 ○座長  そういうご指摘をいただいたということで、それ以外にご意見をいただけますか。あ るいはご質問ございますか。 ○守島様  これは単純に質問ですが、9頁に「成果主義賃金は何を基準として賃金が決定されて いるのか。また、公平性は担保されているのか。現在、労使双方にとって不満のない成 果主義賃金制度が存在しているのか」とありますが、これがここに挙がっている意味と いうか、なぜこれがここに挙がっているのか、説明で理解できなかったので。 ○小林調査官  時間にとらわれずに働くということで、労働時間とは関係ない評価制度に従って賃金 が払われることを可能にするための制度として、適用除外制度を作るということですの で、その前提としては成果型。そういう賃金制度を前提としたものであるべきだと思い ますが、成果主義賃金というのは、各会社において、ある程度評価されて、そういう制 度の中で働くということに対して、社員が納得のいく制度として定着しているかどうか という点についても若干、疑問符という形で付けた経緯があります。 ○守島様  分かりました。一応それで。またあとで戻ってくるかもしれません。ありがとうござ いました。 ○今田様  裁量労働ではない新たな適用除外ということで働く層というイメージですが、何回も 研究会で議論されたところを集約してこういう4つ。自律的な働き方というのを基礎に 置きながら、4つが条件のような形で、指標みたいな形で出てきたのですが、職位も一 定以上あって、それで権限というか、業務の内容というのは権限みたいなものに近いの かなと思うのですが、それもあって。上の2つの条件からくるイメージは、かなりベテ ランというか、年齢も比較的上の層で、その組織の中でステータスを占めている層のよ うな、そんなイメージがするのですが、そういうイメージでこの働き方をとらえていい のかどうか。  私などはどっちかと言うと専門型、企画業務型以外、専門とも企画業務とも言えない けれども、かなりやる気があってバリバリ働く、夜でも休みでも、やりたいときにはガ ンガン仕事をして結果を出して、その結果は企業によって、成果によって評価されて高 い収入が得られる、高い評価が得られる、その代わり仕事が一段落したら、もう休むぞ というような形で、休暇が取れてという、そんなイメージがちょっとしているのです が。なにかそういうイメージとはちょっと違って、組織の中の上の層、ベテランの層が この層になるのかなという感じがしているのですが、今の議論の流れからいうとどうな のでしょうか。やはり、私が持っているようなイメージの層ではない、比較的年齢層も 経験層もある、そういう層がこの対象になるという感じで、まとめの方向にいっている と理解するのでしょうか。 ○小林調査官  自律的な働き方をするという要件を具体的に基準として書き起こすと、時間配分とか 業務遂行あるいはその賃金制度が、労働時間と関係なく払われる、休暇も自分の采配で 取れる。一定の職位や職階ということで、若干、一定のレベル以上というイメージがあ りますが、ここでは指標として、一定の職位や職階が1つの判断基準としてあり得るか なということで仮に置いているもので、必ずしも、例えば部長とか一定以上の人をイメ ージするわけではなくて、どういうことをクリアすればそういう自律的な働き方ができ る人なのかという属性として置いただけです。ですから必ずしもハイランクの人をイメ ージしているわけではないです。 ○今田様  歯止めをかけるという、そういう本当の意味の自律した働き方の人を、この層として 明らかにしたい、とらえたいというその意図は非常によく分かります。その自律的な働 き方ということで、一生懸命知恵を出してこういう条件を付けてきたのですが、これを 付けることによって、少しイメージからずれてきているのかなあという感じがちょっと したものですから、あえて申し上げました。かくかくしかじかの条件を備えた働き方の 層を新たに適用除外とするというときに、もちろんそういう明確な指標を示さなければ いけないというのは分かるのですが。 ○大西監督課長  非常に難しい問題、まさにそこは非常に悩ましい問題で、結局内容として、バリバリ 働いている人、自分で、よし、やるぞという人で自律的に、家庭のことも考える、仕事 のことも考える、やりがいを持ってバリバリやる。内容の面からそういう人をまず対象 にしたい。要するにやる気があって、本当にそういうことができる人。制度となるとそ れを外形標準、ある程度誰がみても、こういうのはこういう人だなというのも何かつく らなければいけない。それが、一定の職位・職階である者という切り口でいいのかどう かとか、あるいは、それは年収でいいのかどうかとか、この辺は結局代用指標になって いますから、それが求められる像と本当に一致しているかどうかは、まさに我々もちょ っと知恵が足りなくて、こういう整理のたたき台、まさにこれはたたいていただく台で して、どういう関係に立てば客観的にも分かるし、主観的に、その望ましい姿と一致さ せられるのかというところを、是非引き続きご議論いただきたいと思います。そういう 意味では本当にたたき台という形で、この一定以上の職位・職階は具体的には何なの か、これは例外がある話なのかそうでないのかというような議論を、是非深めていただ きたいと考えております。 ○山川様  遅れて来て失礼しました。しかも前回も出られなかったので、議論がずれてしまうか もしれないのですが、7頁で、もしその企画業務型裁量労働というのを残すとすれば、 やはりその新たな適用除外制度の相対的な位置付けを、これまでの議論にありますよう に明確にしないといけないと思います。ここで挙げられている指標を見てみると、1つ は、その業務自体の客観的な自律性というものに加えて、今監督課長がおっしゃったこ とと近いのかもしれませんが、一種の要保護性というか、あるいは、現在の適用除外制 度は、経営者と一体的立場にあるとか、そういう要素が入っていましたので経営者ない し事業主との近さ、ないし要保護性というのが、この職位あるいはその賃金の水準に反 しているような気がしました。したがって、企画業務型の場合は、業務の内容の性格に よりますが、ちょっとここでは、今言ったような2つの要素が加わって、合わせ技みた いになっているのかなという印象を受けました。  それはこちらの読み方なのですが、もう1つはやや細かいことで、7頁のii)「使用 者による具体的な指示が困難な業務」。これは、客観化するという観点から「困難」と いうことになったのかと思います。しかし、企画業務型裁量労働では、前にもちょっと 言いましたが、「指示しないこととする」というように、客観性というよりはむしろ主 観的なコミットメントの話として書いてあるので、先ほどの要素が加わるとはいえ企画 業務型に近いとすれば、むしろ具体的な指示はしないということを意思として明確にす る方が、ある意味では明確になり得るのではないか。それをどういうように位置づける かはなかなか難しいのですが、もしそれが契約内容に反映するとすれば、それはその契 約レベルでの権利義務なりに反映できるかもしれませんし、そのコミットメントみたい なもの、あるいは、使用者としての意思決定みたいなものがどの程度、いわば歯止めに なり得るかということを、労基法上の客観的な要件設定とは別のレベルで、効果とオー バーラップするような問題かもしれませんが、いずれにしてもちょっと。その意味では 企画業務型に近づけて検討する必要が、その点についてはあるような気がします。 ○座長  先回の続きの適用除外の部分ですが、もう少しご意見をいただけますか。 ○荒木様  今山川委員が最後におっしゃった点は私も全く同感です。「指示が困難な業務」とい うように業務の性質から労働時間規制を外していこうというアプローチは、専門業務型 の裁量労働制と共通する考え方なのですが、前回も発言したように、適用除外を考える 場合には業務の客観的性質とは少し違う視点が必要となるのではないかと考えていま す。  もう1点は、適用除外を今考えているのは、1つは昔からの宿題で、現在、スタッフ 管理職と言って、当初、第41条2号では管理職とは想定していなかった人が管理職扱い をされていますね。これをきちんと考えなければいけなかったのではないかという気が しております。そういう点からするとこの新しい適用除外をどう位置付けるかにあたっ ては、従来の第41条2号のスタッフ管理職をどうするか、そちらの方から出てきている 要件と企画業務型との違いから出てきている要件、それをさらに詰めて今後議論すべき ではないかという印象を持っております。 ○座長  ほかに、今の点ではいかがでしょうか。よろしいですか。適用除外の問題でほかにも ありましたら、まずそれをご議論いただいたあと、本日の新たな論点である年次有給休 暇等に移りたいと思いますが、ほかにこの適用除外で残された論点、あるいは、これら たたき台の記述等で、問題だというようなところがありますでしょうか。 ○小林調査官  10頁目の「法的効果等」で、適用除外の法的効果として、現行の労働時間適用等でど こまで除外するかという点について、(1)の○で問題提起しております。管理監督者 と同様に労働時間、休憩及び休日の規定の適用を除外するか、あるいは深夜業に関する 規定の適用まで除外すべきかという点で、管理監督者については休日の規定を適用除外 することによって、365日の中の労働日と休日の仕切りを特に設けないで、自らの判断 で労働提供するという構成になっていますが、今回の新たな適用除外の対象者に、どこ までその労働時間の配分を自由にさせるかという議論が1つあります。また、休日規定 を適用することにより労働日へはね返るという議論もありますので、その辺、自由な労 働時間の配分等々休日の規定を置いたことによる制約をどう考えるかについて、ちょっ と意見をお聞かせ願えればと思います。 ○座長  非常に重要な論点ですので、何かご意見があればお願いします。 ○水町様  これは管理監督者にも同様に当てはまるかもしれませんが、今日本では深夜業が管理 監督者なり、その適用除外にかかってきているのですが、私が知る限り諸外国では、休 日とか深夜業も外れていることが多くて、唯一、労働時間関係で適用されているのは年 休で、年次有給休暇まで適用除外にしている所はあまりない。例えばヨーロッパの年次 有給休暇はどうかと言うと完全消化です。翻って日本を考えたときに、仮に深夜業を外 すという話になってくれば、比較法的にみた場合にはその年次有給休暇、日本は完全消 化ということには制度的になっていないので、その場合に例えば年次有給休暇を完全に 消化する、一般的な基準からするともう週休2日というぐらい取ってもらう、週休2日 プラス年休の完全消化ぐらいの休日を取っていれば、国際水準としては、深夜業ではな くてもう労働時間の管理を外れてやるということで、そんなにおかしくはないような気 はしますが、それが果たして日本でうまくいくかという議論はさらに必要だと思いま す。 ○座長  ほかに今の点でいかがでしょうか。特にありませんか。諸外国では完全消化が原則に なっているのに対して、日本の場合は半分かそれ未満の消化率という現状の中で、この 年次有給休暇の問題をどうするか。それから、時間外の取扱いについてどうすべきか。 今日、これについてはじめて正面から議論しますので、残った時間、これらについてご 意見をいただきたいと思います。 ○水町様  12頁の一番上の○、現在深夜業に関する規定が管理監督者にかかってくる。もしこの 深夜業を外すという場合には、今言ったように休日なり年次有給休暇を取っているとい うことを前提とするのと、もう1つ、日本でうまくいくのかという場合に、先ほど最初 の話にありましたが、場合によっては管理監督者と言われるような40歳代とか40歳代後 半の人でも、非常に過剰な労働をしているという実態があるとすれば、それに対して時 間ではないアプローチをするとすれば、健康診断とか特別なものを受診したりしている ということを要件にするとか、それはもう管理監督者でも新しい自律的な適用除外でも 同様にやるということが、日本では必要なのではないかと思います。それがやれれば、 それを制度化できるとすれば、深夜業を外すということも、1つの選択肢ではあり得る という気はします。 ○安藤監察官  今回、年次有給休暇、所定外労働の削減といったことで、年次有給休暇、所定外労働 の削減、事業場外みなしという形で3点出しているのですが、それ以外についても、こ ういった論点があるのではないかというようなご指摘があれば、是非今日言っていただ いて、それを踏まえてまた資料を次回、11月30日ですが、それに向けてリバイスをさせ ていただきたいと思っておりますので、これ以外、もしくはこのたたき台に載っている 裁量労働制、適用除外、プラス今回お示ししたもの以外にも、こういった論点があるの ではないかというご指摘等ありましたら、是非お聞かせいただければと思います。 ○座長  非常に重要な問題提起だと思います。法律家は得てして過去の規制に縛られるもので すから、見直しで、このような点が重要ではないかと思っていますが、ノンローヤーの 皆さんは、労働時間に関してもっと柔軟に考えてみると、こういう点はどうだろうかと いうようなこと、常日頃疑問に思われたりしているところがあろうかと思いますので、 是非ご遠慮なくお出しください。 ○佐藤様  資料が精緻すぎるので、どういう質問をしたらいいかというところで迷子になってい ました。少しラフな整理で言うと、先ほどの時間規制の適用除外の必要性とも関わるの ですが、現行、裁量のみなしと事業場外のみなしとがあって、裁量のみなしには専門と 企画があるわけですね。そのほかに適用除外をつくる必要性というのは、どのように理 解したらいいかというところですが、1つはここに書かれているような自律的な働き方 をしたい。そこは時間に縛られたくないというニーズがある、そのニーズは現行の裁量 の専門でも企画でも、それでは救いきれないからエグゼンプションになるのか。そうい う理解でいいのかどうかというあたりなのです。そういう理解でよろしいですか。 ○小林調査官  今現在の事業場外みなしは、基本的に営業で外回りをしているので目に見えない働き 方をする、ということでみなしという形をしておりますが、企画作業とか専門作業とい うのは、事務所の中で仕事をしているけれども、その裁量的な働き方からいって、実際 上の働く時間とは別のみなし時間を設定する方が適切だ、ということでみなし時間を設 定しております。ただし、あくまでも所定労働時間、実労働時間ではないみなし時間を 労働時間としているので、実際上、そのみなし労働時間の中でその自律的な働き方がな かなか自由にできない、例えば、所定外について割増を払うことが必要な場合とか、働 き方について決められた今の時間の中ではなかなかということです。規制もあるので、 それを超えた働き方をする人も出てきていますので、そういう意味で一定の条件をつけ ながらも、そういう働き方を可能にするような時間法制も検討すべきではないかという ことで考えているところです。 ○松井審議官  今の質問は今回の適用除外の基本だと思うのですが、本当に今の裁量みなしのほか に、自律的な働き方を実現しようとすると、適用除外が要るのか。確信は持てていない のです。実態分析も十分ではないということなのですが、今回ようやくかすったのは、 この参考資料1ですよね。そうではないかと思ってやっているのです。というのは専門 型裁量労働制、これも正確につかんでいないのですが、50万人は適用されていると考え ていただく。企画裁量が3万3,000人。この方々が今裁量型労働としてカバーされてい る。ここで議論すべき自律的な働き方をするというイメージが、これを足した53万3,000 でカバーしきれているのだろうかというぐらいはまず言えるのですね。本当はもっと多 いのではないだろうかということから入らないと、この議論ができないと思うのです が、今、ここの中身を詳しく分析できなくてそういうご議論に応えられない。しかしな がら、なんとなく考えて、これでは足りないかなというところでホンワリきているとい うぐらいの話なのですね。それが1つ実態なのです。  もう1つは、いろいろな労使のヒアリングを通じて、専門型は50万もいるからいいで はないかと言われたのですが、企画裁量型のときに、もっと要件を緩めてもらえないか とか、導入手続が大変だという使用者がいる。そしてこれ自体で、中に、実労働とみな しの時間が乖離しているからという意見が一番あったけれど、これ自体で大変だ。それ がすぐこちらの労災に結びつくというような評価はなかった。これは分析しましたけど ね。そうすると、そこまで結びつかないけれど、より自由な働き方をもっとしたいとい う潜在的需要があるとすると、今の制度を緩めて手直しして適用するのか、これはこれ で、むしろ本来的な今の狙いのところにぐっと絞り込んで、さらに別の意味で自律的な 働き方をする方のツールとして何がいるかと、こういうことだと思うのです。先ほど今 田先生が言われたように、専門型でも企画型でもないけれど、やる気のある人をつかま えられないだろうかという問題意識ですね。だけど、それを要件化するときに、少なく とも今ここで合意できたのは、しっかり働いてしっかり休むということしかなくて、客 観的な要件ができないので、いい加減な4つを並べているのですが、最初の職位・職階 は、議論があった中で、立場を限定しないとイメージがはっきりしないというのは、例 えばプロジェクトマネージャーみたいなものも入っていいのではないかと言われたか ら、それを客観化するとこんな言葉で書かないと漏れてしまうかなというので入れたの です。ところが言われたように、こうやると管理監督者的なイメージが強くなってしま って、これでは本当にしっかりやりたい方をつかむツールとして何か絞り込みすぎだと いうご意見だと思います。そうすると、この要件をやめるかというご議論にしてほしい と。  業務の内容については、今の書き方が時間配分とか手段について自由な決定、使用者 からの指示がないということを言いたかったのですが、指示しないものという書き方を すると今の企画裁量と同じように、事業主が勝手にする、しないの判断をするから客観 性がない。客観性を持たせるためにとなると、困難と書かなければ、ところが、この困 難という書き方は、条文的には実は今の専門業務型の書き方なのです。そうすると、そ ちらの中だけの例外となってしまうのかと聞かれて、これもまたパッタリと今倒れてい るわけです。  休暇、年休については、今でも形成権的にあるものを十分に取っていない中で、これ を与えるということを効果でやるのか、いわゆる適用要件として、こういうことを確実 に与えなければエグゼンプションをしないとするか。要するに、適用した効果とするか とか、あるいはこれを形成権としない何か義務的に付加するとか、これを与えなければ 適用除外しないとか、そんな議論も1つある。  もう1つは、ここの賃金制度と時間が遮断というところは、少なくともそういうふう にしないと裁量制という感じが出てこないということで考えたのですが、そうすると遮 断というのはどういう意味だろうかとなると、多分成果主義だろうと。成果主義は何か というのはよく分からない中で、遮断というのを客観化できるのだろうかということ で、ここで書かれているものは精緻に書かれているようですが、実はどれ1つとして固 まっていないです。すべて問題提起になっているとみていただけないかと思います。決 して固まっていないと思います。すべての要素がごちゃ混ぜになっているということ で、戻って、今の裁量制でカバーされている方々あるいはすべき方々が、本当に自律的 な働き方をやられている方をすべてカバーしているのか。もっと狙うべき方々をカバー しきれないのか。極端に言うと、そこ1点なのです。そこの共通認識があるかどうかと いうことにかかると思います。そんなことで、もう1回実態論と制度論をお願いしたい と思います。 ○佐藤様  これは前回に確認したことにもかかわらず、私が休んでいたからそういうことになっ たのかもしれませんが、非常に今の説明でよく分かってきました。それで、基本的には 実態は自律働き型ニーズが強いのだと。しかし、今の2タイプでは補足しきれない。で すから、そこをなんとか補足していこうということになったときに、それがベースです ね。そうなったときにどう考えていくか、法律でどう規制していくかは専門外だからよ く分かりませんが、考え方というのはわりとシンプルなのではないかと思います。1つ は原則、いいのだよとしてしまって、しかしながら、働き過ぎになってしまったらいけ ないよとか、まとめて休みを取ることも必要だろうという要件が必要だよという形で構 成していく考え方があるのかなと思います。原則、いいよというのは何でもいいわけで はないけれども、基本的には職種、年収要件が仮にあったとすると、そういう中で少し 広めに取っておいて、しかし、こういうものをクリアしなければ駄目だよという考え方 が1つあると思います。この案はどちらかというとそうではなくて、基本的にはまずは いろいろなところを細かく事前にある程度定義して、その上でそれに合ったものが該当 するという考え方になっていて、おそらくその中身は職種とか内容とか職階とか、そう いうのが入ってきているのだろうと思います。  そこで、そうしたときに問題になってくるのは、当然に実態との対応ということにな ってくるので、ここからは私の意見ですが、先ほど守島委員からも出たことと重なりま すが、実際に職位要件とか職階要件というのを事前に一定以上というふうにやれるか。 あるいは客観的に書けるかというと、多分これをもし書いたとすると、実態との乖離と いう問題が出てくるような気がします。  というのは、1つは自律性もそうですし、職階もそうですが、これは相対的な概念だ と個別企業では捉えているのでしょう。規模や権限配分も会社の方針によって変わって きますし、業務をどういうユニットで切り出してそれに責任を与えるかというのは、会 社の方で経営の戦略と直結していますので、ここをダイナミックに展開しなければ駄目 だというニーズがあるのだと思います。企画業務が狭すぎるというのは、そのベースに あるニーズが充満していて出てきている話なのだろうと。したがって、企画が狭いので 補足できない。だから、エグゼンプションだという筋でくるのだったら、そうしてしま うとまずいわけで、それはもう少し手の込んだ企画みたいな話になってしまうので、そ うならないのだったらスッキリと住み分けることからいうと、そこは客観的に細かく書 くということではない考え方にならざるを得ないのだろう。  ただ、そうなったときに働き過ぎの問題が出てくるから、そこはいかにきつく制約を かけるかとか、あるいは手続のところでやるかという考え方になるのが1つの考え方か なと思います。ただ、それが全体的な今の残業や年休取得のような状況の中では、議論 としては土壌の部分が緩んでいると思います。そこがきちんと、例えば100%取られて いて残業もない状況の中で、2タイプ+エグゼンプションが乗るというのであれば分か りやすい話なのですが、そこが緩んでいますから、緩んでいるところでそれをやってし まうと、どうなのかというのは当然に組合からの権限もそこにオーバーラップしてある わけで、そこはきちんとやっておく必要があるのかなと。だから、合わせてそうなると すると、年休や残業の方の規制はかなりきつくしないと、という合せ技になってくるの かなという印象を持っています。 ○松井審議官  全くそのとおりで、先生の言われた片鱗は8頁の一番上のところを議論されたときに も、そんな背景があったように思います。書き方は違いますが、つまり仕事の話ではな くて、当該社員に対して相当の高給をドンと出してあげるということで、それでやる気 があるかどうかをトレースしてみるとか、そのこと自体に本人が同意するとか、これは 手続論ですね。さらに、それをやる動機付けとして7頁の下ですが、いわゆる客観的な 基準というのをこういったところに求めるということで整理されるのです。  もう1つは年休の話をしていますのは、適用除外する方について、ひょっとすると1 年間の労働日を普通の人がうんと短くした人しか駄目だと。先ほど言われたように週休 2日制であれば、年間52週であれば365日から104日を必ず引いて、この者は年間何日働 くということでこれだけの年収をあげるという契約をした方だけ、あるいはそれを守る ことだけ認める。それに、さらに言われた年次有給休暇を取得するというのであれば、 それプラス20日を足して、それも引いて、あなたとの契約では就労日はこれだけです よ。これ以上は、会社としてお願いしないし、これだけ働くのだから、お金をあげま す。しかも、これだけあげます。あなたも同意。さらに、必要であれば会社が労使の協 議の場でそういうこともOKしたとして、システムを認知するとかをしておいてやる。 そうすると、初めのねらいである自主的な、自律的な働き方とは多少ずれるかも分から ないですが、その枠組みの中で同意するところにすべてかけて、その人はやりたい人な のだとみなしてやるとすると、今の各制度の要件を摘んできて言われたようにごちゃご ちゃやらなくても済むというのもあるかもしれません。それは、全く今言われたような ことはトレースの話ですから、そういった視点で議論しようというのを入れていただい て、今のやり方と比較していただかないとという感じなのです。そういう問題だと思い ます。 ○今田様  労働日を制限すると確定するということは、要するに計画年休ということですね。 ○松井審議官  裏返せば、そういうことですね。今の言い方だと。 ○今田様  確実に1年間、働いてはいけない、出社してはいけないと。 ○松井審議官  あとは、夜も昼もうんと働いていいけれども、年間にこれだけは絶対に休ませよと か、手法を変えてやるというのもあるかなと。それは適用の効果ではなくて、適用する ための要件だという説明にします。そんなこともあり得るかと思います。 ○今田様  客観的ということになったら、年収と休暇の2つがかなり条件として前面に出てくる という案ですね。あとは、あまり細かくごちゃごちゃとやると、形式から外れていくと いうことなのでしょうね。  もう1つ気になったのは、荒木先生がおっしゃった部下を持たないスタッフ管理職を 制度として考えたいという意味合いがあるわけですね。そうすると、今の議論と全く矛 盾したものをまた抱え込んでしまう。制度として、またすっきりしない制度になる懸念 があります。 ○座長  スタッフ管理職の意味についてご意見を。 ○荒木様  これは行政解釈が出ていまして、制定当時は管理監督者というのは部下が持った、い わばラインの管理職、指揮権、命令権限を持っている人と思っていたのですが、そうで はないような、同期入社して、日本の年功システムで昇進していくと、管理監督権限は 与えないけれども、同じぐらいの俸給で管理職扱いをして、しかし部下がいないという 専門職とかスタッフ職という人達が出てきた。その人たちには、時間外は割増賃金を払 ってというのはいかにもナンセンスだということで、これらのスタッフ管理職の企業内 における処遇の程度によっては管理監督者と同様に取り扱い、法の時間規制外において もこれらのものを地位からして、特に労働者の保護に欠ける恐れはないということか ら、現在は適用除外扱いをしているわけです。  現在の法制度は、参考資料1にあるように、実労働時間制と適用除外しかなかったと ころに、みなし制という裁量労働制を入れたわけです。だんだん自律的に働く人が増え てきて、実労働時間制がナンセンスになってきた。それを全部裁量労働制で救えていれ ばいいのですが、手続が非常に煩雑である。かつ、これは労働者がやりたいと思ってや れるものではありません。労使協定がなければできない。企画業務型の場合は、労使委 員会の決議が必要だということで、使用者からしてみると、こういう煩雑な手続を取る よりは、管理監督者扱いにしておこうとなりかねない。今日ご報告があったように管理 監督者扱いをしてしまえば、届出も何もいりませんから、これは把握ができないので す。本来であれば割増賃金規制を適用すべき人が、そういう形で管理職扱いをされてい るかもしれないし、逆に、きちんとした受け皿があればその制度の下で本人も自律的に 働きたいのに、それにふさわしい受け皿が用意されていないかもしれない。そういうこ とがホワイトカラー・エグゼンプションで、きちんと受け止めなければいけない問題で はないかということです。  もう1つ、佐藤先生がおっしゃったことで非常に示唆深いと思ったのは、どちらから 出発するかです。今回の議論は、本来は実労働時間制が適用されるべきだというところ から始まって、この要件をクリアしたら適用除外に移っていこうというアプローチ。そ れに対して第41条2号は、管理監督者というのはデフォルトとして、適用除外だという ところから始まっていて、実態を見て、これは管理監督者とは言えないかどうかをチェ ックしていって、その場合は適用除外になりませんよという逆からのアプローチだと思 います。今ここで議論されているアプローチは前者のアプローチで、要件を沢山かけて それを一つ一つクリアしたら実労働時間制から外していこうというものです。  ただ、後者のアプローチ、すなわち原則適用除外から出発する場合には、本来デフォ ルトとして適用除外としていいような人を設定しないといけない。そういうものがうま く設定できるかどうかは、もう1つの難しい問題だと思います。 ○今田様  デフォルトにしようというのが、今の条件なのでしょうか。 ○荒木様  適用除外というカテゴリーを作るとしたら、そういうことになるかもしれません。た だ、これも要件の仕組み方によって先ほどおっしゃったように、要件としていろいろな 実労働日が少ないとか、事前に計画年休を適用するとか、なんとか組み合わせていく と、あまりデフォルトかどうかよく分からなくなりますから、実態は完全にデフォルト にならないかもしれません。いずれにしても、両方からのアプローチがあり得て、どの 辺に新しい枠組みを作るかを考えなければいけないでしょうね。 ○山川様  先ほど審議官の言われた一定の労働日以下であることが要件になるというのは、私は コミットメントという言い方をしましたが、それが1つの例かなと思いました。つまり こういうことをこの方々に対してはやりますと契約レベルで位置づけておいて、それを 適用の要件とする。ですので、計画年休にある意味で、プラスアルファーして契約休日 制みたいなイメージかなと思いますが、それと計画年休とは全く別で、トータルとして は最終的には1つのアレンジメントの中に入るという位置付けかなと、非常に興味深く 伺いました。  関連して質問ですが、今度は労働時間等設定改善法というのが成立しましたが、それ の中で例えば年休でしたら、別に管理監督者とか適用除外者だけの問題ではないわけ で、そのようなことで活用し得る道というのはあるのでしょうか。つまり、労働時間等 設定改善指針といいますか、一種の行動計画的なものとして。これは純粋な今後の法の 運用に関する質問です。 ○松井審議官  労働時間設定改善法の指針をどういうものにするかを今議論していまして、その中で 現行制度による年次有給休暇の取得促進のために、どういうふうに工夫するとか、広く 行き渡らせるためにはどうするかというものをある程度目標値を定めてやろうとか、そ ういう議論をしていますので、それを作ればそれをもって、労使に納得していただくよ うな啓蒙啓発活動を展開する予定になっています。 ○座長  なかなか年休に入りそうで入らず、時間外には行きそうで行かず、ましてや事業場外 のみなしにはという感じなのですが、どれも難しい問題ですが、もう少しそういう問題 でご意見をお願いします。 ○水町様  7頁の4要件で、私自身が今までの議論を伺って考えたのは、この中では3と4が今 後考える上では一番重要だという気がします。3については、一定以上報酬をもらって いて交渉力を確保していて、割増賃金は支払わなくてもいいという意味があって、その 制度化についてはアメリカの報酬ベース要件とか報酬額要件というのがありますので、 それを参考にしながら水準はまた別にして、何らかの制度の作り方ができると思いま す。  4の「休暇が自由に取得できる」ですが、外国で年次有給休暇が完全に適用されてい るというのも、まさに全部計画年休のようなもので、年度の初めに何月何日に取ります というので30日、35日と全部決まるわけですよね。日本で、果たしてこの人たちについ てはそういう制度にするのか。それが難しいとしても、何月何日に休みましたよという ことを最終的には記録に残せるような形に休日管理だけをして、あとは労働時間を外す というふうにするのか、その制度設計の問題で、それも工夫によってはできないことは ないと思います。  1と2の要件は、荒木先生がおっしゃったように、スタッフ管理職というものがこれ まで管理監督者で無理矢理入れ込まれていたので、無理矢理入れ込まれていたものをこ こで吸収するというふうな、で、意味があるとすれば、1の要件をあまりリジッドに考 えるとうまくないかもしれない。2の要件については、専門職はそんなに問題がないと しても、企画業務型の裁量労働制は非常に使い勝手が悪かったり、実際にそういう似た ような仕事をしているけれども、適用がなくて実態として長時間労働をして残業手当も あまりもらっていない人がたくさんいるとすると、そういう人たちもこれまでの企画業 務型ではないやり方で救えるとすれば、要件をどう設定するかにしても、2の要件で重 なるような部分が出てくるような気がします。ただ、あまり企画業務型と同じような要 件にすると、それが生まれ変わったのかとか、その関係がよく分からなくなってくる。  私自身が思うのは、3と4の要件で、あとは個別の同意を得たら全部いいというとな かなか難しくて、私の中の漠然としたイメージでは、出退勤の時間が自由とか、労働時 間のうち、ほとんど会議とか所定の仕事が全部入って、何の自由度もないというのはさ すがに外さなければいけなくて、出退勤の自由というのはフレックスタイム制とか、今 までの現行制度の中にもヒントはあると思うので、そういうのを考えながら1、2の要 件をもう少し練り直すと新しいイメージが出てくるかと思いました。あとは、健康問題 です。 ○座長  適用除外から早く逃げたいと思っているわけではありませんが、今のご意見その他で 少し方向は煮詰まってきたような感じもします。  それでは、年次有給休暇について、この場合は、裁量労働者や新たな適用除外者だけ ではなくして、それ以外の通常の労働時間規制を受けている人たちを含めまして、日本 のような現状はかなり先進国としては異常なのではないだろうかと思います。とりわ け、知的労働が高まっていきますと、肉体労働と違って、疲労の回復のリズムが違って くるわけです。肉体労働の場合は短時間に回復することはあっても、精神的な疲労はジ ワジワと浸み込むだけに、ある程度の時間をかけないと回復しない。そういう意味で は、年次有給休暇をきちんと、しかも連続して取るという欧米型のやり方には、こうい う知識社会化あるいはサービス経済化していくような流れの中では、非常に合った部分 があるのではないか。そういう意味では、今までの働き方は第二次産業の製造業的な働 き方、しかも現場の働き方に相当程度適合はしていたのだろうけれども、それに合わな い方々にはいろいろな軋みを生んでいるのではないかという問題意識は、よく言われる ところです。  こういうのを踏まえまして、先ほどの参考資料の2などにもありますように、本来の 労働者の比率以上に一定の職種などでは労災のパターンが出てきています。脳・心臓疾 患のようなものは加齢というものが影響しますから、そういう意味では高齢者の比較的 多い管理監督者に出てくるのは当然ですが、下の方の精神障害みたいなものでは30代以 降のところに出ているように、いろいろと課題があろうかと思います。いったい、どう やったら消化率を高めることができるのか。その場合に国際的にみると、みんな目をひ んむくような半日とか時間といったようなやり方にした方が本当にいいのか。それと も、そうではなくして年休制度の本来の趣旨、これからの将来へ向けての社会の変化と いうことを踏まえて、もう一度原点に戻りながら別途労働時間制度などに関しても、少 し柔軟なトレランスみたいなものを設定する方がいいのか。このようなところが今回の たたき台の中に、いろいろな形で入っていると思います。少しご議論をいただければと 思います。 ○今田様  先ほどの労働時間等設定改善法ですか、労働時間等設定改善委員会ですか、企業の中 に労働時間に関して、いろいろ改善していく委員会として、かなり期待されるのではな いですか。どういうことかというと、こういうのは休暇を取るとか取らないというの は、日本全体でキャンペーンを張って、そういう方向にみんなが行くのも重要ですが、 それぞれの職場の状況、業態とか職務によってあるでしょうし、それぞれの職場の中で 工夫をしてどういう休みをうまく取っていくかの知恵を出してもらう。そういう草の根 的な方向が重要だと思います。そういう意味で、そちらの方の法律、指針とここの枠組 みとの関係は、どう考えていますか。 ○松井審議官  今言われたのは、労働時間設定改善法、時短法を改正して成立して、来年の4月から 予定している法律ですが、いわば設定改善を促進する法律で、強行法規的なものではな いのです。設定改善委員会というのを職場ごとに設けて、そこで職場ごとの状況を労使 がよく話し合ってということですから、その話し合う前提として今言われたように知的 働き方をするのであれば、ますます今まで以上にしっかり休んでしっかり働くとか、働 いて休むということをベースに取り組みをしてくださいといういわば社会運動というの は、運動論的な意味で十分機能し得るし、させていかなければいけない法律だというこ とであるのですが、ここではそれプラス、さらにもう一知恵ないかというぐらいの問題 提起と思っていただければと思います。もちろん、それもやるということを前提にした 上で、それをやるからいいかと。まあしばらくそれをみていて、その成果でいいではな いかという議論の仕方もありますが、任意的な法規のほかに、もう1つうんとやらなけ ればいけない仕組みはないかという問題だと思います。  その際に、14頁にありますように、すぐに思い付くのは、公務員制度では取得させる という趣旨で1時間単位をやったのか、あるいは下の方の通院とか育休・介護とか、ま さに現場の問題で、仕事と生活の調和を取るために役所に来るまでに自宅周辺で託児所 に子供を預けなければいけない。そんなところを年休でという要望に応えてかと思いま すが、そんな形で年休消化は先行しているわけです。そうすると、これを公務員でやっ ているから民間はどうかという足場の問題もありますから、それらを含めて年休消化を どうするかという問題になっているという捉え方をしていただきたいのです。 ○座長  ただ、公務員については、フレックス制はまだ入っていないでしょう。 ○松井審議官  おっしゃるとおりです。 ○座長  本来、フレックス制があれば処理できる。それから恒常的フレックスに対して、ある 一定事情に応じた短期的なフレックスというのも理論上はあり得る。だから、そういう 制度で、労働時間の柔軟性を実行的に対応した方がいいのかどうかなのです。たまたま そこに年休という制度があったから、それをそういう形で使うというのは1つなのです が、それが長い目で見て袋小路に入ってしまう議論にならないだろうか。本来の王道に 行くだろうか、行かないだろうか、ここら辺が1つの工夫だろうと思います。さはさり ながら、今未消化で終わっているのだから、これを水町先生がおっしゃられたような実 労働時間計算その他では、おかしくならないように合理的な措置をしつつ、当面は使う というのもどうだろうかというのは1つあろうと思いますが、そういう場合はまさに時 限立法ではないけれども、当面はというふうにしておきませんと、どんどん放っておく と何か年次有給休暇というのは融通無碍に使うものであって、長期的に非常にメンタル な疲労その他を回復するために使う、あるいは将来へ向けて、自己投資をするようなも のに使うものではなくなっていく。そこが懸念されるところです。 ○荒木様  休暇取得を促進しようと思えば、根本的には発想を転換しないといけないですね。諸 外国は、いつ取るかというのを決める権限は使用者にあって、ただ、その際に労働者の 希望を考慮しなければいけない仕組みとなっている。したがって、使用者に権限はあり ますが、同時に年休が20日とか40日あれば、それを全員が取るように最初からスケジュ ールを組まざるを得ないのです。その際に、労働者の希望を聴取して、あなたはこの時 季に休みなさいと。  それに対して、日本は労働者が時季を指定する権限を持っていますから、使うかどう かは労働者に下駄が預けられていて、様々な理由から労働者自身はなかなか言い出しに くい。使用者への気兼ねのみならず、周りの同僚に迷惑がかかるから言い出しにくいと いうことですから、労働者によかれと思って労働者が時季指定できるという法律を作っ たのですが、それがうまくいかない。そのために、昭和62年改正で計画年休制度を作っ たのですが、実態はどうでしょうか。データがあれば教えてほしいのですが、それほど 広まっていないように思います。したがって、本当に抜本的に変えようと思ったら、ま さに時季は使用者が指定する。その代わり全員に取得させるのが一種の義務みたいにな りますが、そういう制度をとればそれは革命的に変わってくると思います。 ○座長  おっしゃるとおりで、よく欧米に行くと管理職が部下に年次有給休暇を取らせる。取 らせなければ、自分自身が評価を下げると言われるのは当たり前のことであって、取ら せる義務があるから、取らせなければどうしようもできない。言葉を変えて言うなら ば、いわば非番の日を設定するようなものですね。有休の非番の日みたいなものですか ら、それをきちんと設定しているのにもかかわらず、労働者がのこのこ出てきたら「お い、君は今日の要員に入ってないのだから出てきちゃ駄目じゃないか」というのは、管 理職の当然の責務になる。ここら辺は、全く日本と権利の構造が違っていることが、ど ちらの方が本当に年次有給休暇を取れるようになっているかというと、結論は火を見る より明らかです。  ただ、問題は今までそういうやり方で全く来ていませんから、ある日突然そんなこと をしようとしても、これは大混乱です。そこで、もしそういう形に移っていくとしたな らば、移行期をどれぐらいの期間を設定して、どんなふうに移っていくかも1つです し、あるいは全面的ではなくて部分的に、例えば半分ぐらいを計画年休で処理をすると いうふうにすると、残った半分は今と同じように持たせ、しかもそちらはずっと柔軟化 させて時間単位でもいい。例えば、このような組み合わせをどうするかという工夫なの だろうと思います。ここら辺は、人事労務管理の現場からするとどうですか。 ○守島様  難しい問題だと思います。話が戻ってしまうので申し訳ないかもしれませんが、我々 はこれから社会での働き方というか、人々の働き方をどう考えていかないといけないか というと、1つは自律的な働き方をできる余裕のあるというか、そういう仕事の人には できるだけ自律的な働き方をしてもらうという側面と、もう1つは、これだけ裕福な国 になってきたので、ある程度の長期的な休暇を年に取るというその2つが多分カップル になった形で、1つの将来像というものを考えていかないといけないと思います。そう なると、先ほどから議論されている計画年休みたいな問題というのは、自律的な働き方 をできる人たちに対して、できるだけ労働時間の規制を外していくこととカップルの中 で考えていかなくてはいけない。逆にいうと、カップルで考えていっていい問題だと思 いますので、全然お答えになっていないかもしれませんが、それが目標だと。そこに対 して、先ほどの座長のお話のどういうふうにという問題だと思います。  もう1つは、それと同時にフレックスという考え方。具体的な制度はどれかが分かり ませんが、日々の中で通院するとか子供を保育園にピックアップしに行くとか、そうい うことを年次有給休暇というコンテキストの中で考えていくのはまずくて、それこそワ ークライフバランス・フレキシビリティになるのかは分かりませんが、コンテキストの 中で制度づくりというか、基本的な考え方を作っていかないといけない時期に来ている のだと思います。これから多様な労働者がどんどん出てくるわけで、そうなってくると いわゆる年次有給休暇という、ある意味では正社員を前提とした制度を拡張適用してと いう形ではなくて、もっと違ったイメージの柔軟性を作っていかないといけないと思い ます。具体的ではないので申し訳ありません。 ○座長  ほかにいかがでしょうか。年次有給休暇以外の時間外労働の制限、削減の問題、ある いは事業場外のみなし労働の在り方などについてでも結構です。 ○水町様  「所定外労働の削減」の14頁の2の(1)の1つ目のポツの「特別な事情」は「臨時 的なもの」に限るという趣旨を明確にする改正を行ったというのを、もう少し具体的に 教えてください。それが、実際にどうなっているかを含めて教えてください。  (2)は、私は前に比較法的には例のない制度だと言いましたが、3つ目のポツの中 に入っていることですが、もう少し具体的に言うと、客観的に1日8時間という場合に は割増賃金の計算は簡単ですが、もし所定労働時間が1日6時間で、6時間を超えたら お金を払うとなったら3つ目に書いてあるように、所定労働時間を1日8時間にしてし まう。こういう場合に、制度的にどう対応するか。脱法措置を制度的にどう防ぐかとい うと、例えば実際に働いた時間が所定労働時間を離れてしまった場合。フランスのパー トで昔そういう規定があって、4週間を見て平均が所定労働時間の一定以上離れた場合 には、平均実労働時間を所定労働時間と見なすという制度がありました。複雑ですぐに 終わってしまったのですが、そういう制度にしてしまうか。それとも所定労働時間より も短く働いたときに、所定労働時間に足りない部分に何かプレミアムを付けるという工 夫をしないと、所定労働時間というのは労使の合意でいくらでも変えられますし、使用 者の力でいくらでも変えられるものなので、こういう制度を作ったとしても、あまり意 味がないような気がします。では、そういう制度ができるかなと思うと、それもなかな か複雑のような気がします。以上です。 ○小林調査官  最初のお答えですが、平成15年の「特別な事情は臨時的なものに限る」というのは、 限度時間が決まっていまして、限度時間を超える場合は特別な事情に限るという規定に なっていましたが、それについて特別な事情の範囲が不明確だということで、臨時的な ものに限るということで趣旨を明確にした改正が、基準の告示改正ですが、平成15年に 行いました。 ○水町様  告示改正の結果、あまり世の中には影響がないと、労働基準監督署の窓口で、強くや ってみたとかいろいろあるのですか。 ○小林調査官  平成16年4月からですので、まだ1年半ぐらいしか経っていませんので、効果がどう なのかはまだはっきりしていません。 ○安藤監察官  併せまして、告示の改正とともに通知の方で、特別な事情というのは具体的にどうい うことかについて、単に特別な事情というのを包含的に書いて、それで具体的な事由を 示さずに、単に業務の都合上必要なとき、または業務上やむを得ないときといったよう な定性的な書き方で書いてあるものについては、それは臨時的なものに該当しませんよ というのを明らかにした上で、かつその回数についても特別条項が適用される、適用の 期間を1年のうち、半分を超えないものという期間の方でも縛りますということをした 上で、当然ながら36協定ですので、そこについては監督署の方でも特別な事情はできる 限り詳細に協定を行い、届け出るように指導をするようにといったことを併せて通知で 明示しています。  具体的に効果があったのかというご質問ですが、ご承知のとおりまだ平成15年の改正 でで、今年は平成17年ですので、まだ一定の評価が固まらないのかなと思います。それ で、ここの論点の書き方としては、1番目に所定外労働です。これは全体的な流れの話 ですが、全体的な流れが進まない中で、さらなる改正が必要なのかということととも に、こうした改正の内容というのは周知されていないところに問題があるのではない か。なので、改正の内容をもっと周知すべきではないかという、あえてそこの評価が固 まらないので苦心の作として、対のような形で問題提起をさせていただいているという ことです。 ○松井審議官  この改正がどの程度効いているか、そこについては間違いなく効果はあると思いま す。ただ、36協定というのは変えるところは大体1年とか2年で大きく変えていきます から、全部かかっていないと。  もう1つの問題提起は、一定の臨時的なものに限ると解釈通達を出したにもかかわら ず、国会議員から、臨時的なものに限るとしながら、労働の現場から決して限られた運 用をしていないのではないかという質問が実際にあったりするものですから、そういっ たことも考慮して、もう少ししっかりしたものにする必要があるのではないかという問 題提起をしています。だから、確実に現状を把握してというところではないということ にかかってきます。 ○山川様  年休の点ですが、おそらく促進の基本は先ほど今田先生が言われたように、仕事のや り方に問題があるとか、要員の配置をどう工夫するとか、そういうレベルの話になるこ とがかなりあると思うので、それは企業でそれぞれ行動計画なりで促進してもらうのが 基本だろうと思いますが、それができない場合にどうするかというお話になろうかと思 います。半日年休等について、確かに1日あるいは連続というのが基本ですが、日本の 場合は本人の病気休暇というものがないという現状も考慮に入れた方がいいのではない かと思います。子供の看護だったらできるのですが、本人の病気に関しては特別な法律 上の調整はないので、それも考慮に入れる必要があるかと思います。  あとは完全ストックについて、先ほどの適用除外のところで出たのは、いわば個人別 の計画年休みたいなものを要件の方に持っていくという位置づけですが、計画年休がな ぜ普及していないかはよく分からないのですが、リジッドに考え過ぎているようなとこ ろもあるのかなと推測しました。判例などでも、計画年休の与え方なども、協定で具体 的に決めないといけないと読めるような判例もあるものですから、要はもう少し個人レ ベルで職場の中で調整ができるようなものであればいいような感じがしますので、具体 的にどういうのがいいかは分かりませんが、法で強制するよりもこういうフレキシブル なやり方も可能ですということはあり得るのかと思います。  あと、促進と直接な関係はないかもしれませんが、前にどこかの論点に出ていたので すが、有給休暇を取得した場合の不利益取扱いの問題があって、現在の付則第136条で すが、訓示規定みたいなことになっています。現在、育児・介護休業法は不利益取扱い を強行的に禁止しています。雇用機会均等法も、今そういう方向で検討しているとする と、ある意味では最も権利性の強い年休が訓示規定というのが、法体系的にバランスを 欠いているような感じがあります。もちろん、禁止してもおおよそ何もできないという ことではなくて、理由としてという文言をどう解するかは現在、育児介護休業法の中で 欠勤時間、日数に応じた取扱いは可能であるとか、その辺の工夫というか解釈の余地は ありますが、もし均等法が現在提案されているような方向で改正されるとすると、なん となく基準法だけが別扱いということになってしまいそうな気がします。 ○小林調査官  先ほどの不利益取扱いについてですが、第136条ではどう解釈するかは若干、訓示規 定のような受け取り方をしていますが、基本的には第39条の年次有給休暇については取 ることを抑制する側については公序に反するというので、民法上第90条違反ということ で、無効だという判例もありますので、わざわざ法律で書く必要はないということで訓 示規定みたいな形をしていますが、基本的には判例上は第90条違反で処理する形で扱い をされていると聞いています。 ○山川様  解釈によって第90条違反がどのぐらいの幅を持つかを総合判断して、年休を与えた趣 旨が没却されるような場合に第90条違反ということなので、また幅の点で検討すべき余 地はあると思いますが、第90条を厳しく解釈すれば同じようなことになる余地はあると 思います。 ○荒木様  最高裁は、年休を取ること自体を抑止するような効果を持つ場合には第90条違反にな るけれども、そうでない限りの精皆勤手当を少し減額するというのは抑止効果がないか ら、不利益取扱いをしても第90条違反にはならないという判断ですね。第136条に関す る判例評釈で私はこれは強行規定と解すべきではないかという主張をしたのですが、裁 判官は立法過程を検討して、強行規定ではないという解釈をした。私は山川先生がおっ しゃったように現時点では、ほかの法律と体系的に整序する余地は十分あると思いま す。 ○西川様  年休について、先ほどから計画年休の導入というお話が出ていますが、現状としてこ の年次有給休暇というのが先ほどのワークライフバランスとの関係で、労働者がフレキ シブルに対応する際に役に立てていることがありますが、予期できないことが起こった 場合に、対応するという機能を現在持っていると思います。子供が病気になった、ある いは親の介護が必要になった。介護休業について最近、研究会に入って勉強させていた だいていますが、介護休業制度というのがありますが、それを取らずに最初は年休でな んとか対応しようとしている人が多いということが分かってきまして、実際はそういっ た機能を年次有給休暇は持っていると思います。  先ほど荒木先生からありましたが、その年休が労働者側に決定権がある。自由に使え るということがあって、そういった予期できないことに対応する機能というのは、この 年休によってそういうことを提供するかどうかの問題は別にして、ほかにそういう方法 がない場合、いったいどういうところで予期できないことに対応するのかなと。そこら 辺は、1つの問題ではないかと思います。  所定外労働のところの(2)の2つ目のポツに、「所定労働時間が法定労働時間を超 えることが想定されていないパートタイム労働者にも、割増賃金を支給される可能性が 高くなることから、均等待遇改善につながるのではないか」と書いていますが、これが なぜ均等待遇改善につながるのかなというのが1つの質問です。もう1つは、正社員で はない多様な働き方が増えていまして、その1つがパートタイムですが、そのほかにも 派遣であるとか契約であるとか、嘱託であるとかという働き方が増えているわけです。 こういう人たちの多くが、時間的制約というのを避けてこういう労働形態を選んでい る。健康上の問題であるとか生活上の優先事項であるとか、そういうものがあって短時 間勤務を行っている。あるいは残業がない働き方を選んでいることが言えると思いま す。ですから、むしろこういう人たちが残業する場合には、どちらかというと正社員の 方よりもペナルティが高いような、逆にそういうシステムがあってもいいのではないか という気がしています。 ○今田様  年次有給休暇が突発的に遭遇するいろいろなイベントのために使われる。現実にそう ですよね。介護の調査などをみていると、ほとんど年次休暇で対処して介護休業を取ら ないですよね。そういう年次有給休暇の使用が問題なのではないかと思います。守島先 生がおっしゃったみたいに、ワークライフバランスという観点からいうと、本人の病気 だとか家族の病気だとか、そういうもののための休暇や制度というものが要求として出 てきて、職場の中で実現可能かという形で広がる。それを全部、有給休暇が吸収してし まうと、それはそれとして職場としてそれほど問題が尖鋭化しないことになる。でも、 そもそも有給休暇の目的はという話になると、今後の有給休暇のあり方というのは諏訪 先生がおっしゃったみたいな論理立てになり、全く違ってくるわけですよね。そうした 本来の有給休暇制度へと脱皮させて育てていくという発想に立つのか、そうではなくて 残務処理のような形のものとして有給休暇を位置づけるのか非常に重要な論点になると 思います。 ○西川様  私は、ほかにそういう機能を補完するようなシステムがあればいいのですが、現状と しておそらくは企業で提供されていないと思います。ですから、こういう年次有給休暇 というのを使って、なんとかやり繰りしている状況があって、そしたらフレックス制と か時短とか、いろいろあるわけですが、それがきちんと機能するシステムというのが補 完されて、初めて計画年休という制度も導入できるのではないか。やはり、制度との補 完関係がうまくいって初めてできることであって、現状でそういう予期できないことに 対応する機能を果たしているわけですから、それをどこへ持っていくかを考えるべきで はないかということです。 ○山川様  先ほど、西川先生と同じようなことを申し上げたのですが、それは本来的には病気休 暇制度というのが法律上あれば、そちらで対応するということなので、まだそこまで議 論が詰められていない現状です。 ○水町様  アメリカは年休無しで、家族的理由による休暇を認める法律があって、フランスは年 休と家族的理由というのがあって、ドイツは年休と賃金継続支払法というのがあります が、年休以外で非常に特徴なのは、基本的にはドイツの賃金継続支払法を除くと無給な のです。日本の場合は、逆に年休の枠内でやっているから有給で、育児休業とか介護休 業は基本的には無給で3割だけですから、その分年休を使っていることが使いやすいよ うな制度になっている。だから、もしかしたら日本の年休の制度の中でも、有給でたく さん休みを入れてリラックスするのと、ワークライフバランスで有給の中で使うという のを分けて制度設計するというのが、諸外国とは違う新しいやり方としてあるかもしれ ないとは思います。 ○荒木様  私も、現在の年次有給休暇の果たしている機能のうち、いいところは残していいと思 います。現行法上も計画年休というのは、本人が自由に使える自由年休を5日間確保し た上で、それを上回る部分だけ計画年休で使ってよろしいという制度になっています。 だから、5日間は自分の好きなように使うのを確保してというのが現行法です。もう1 つ大事なのは、年次有給休暇の場合は自由利用というのがあって、どういう理由で休む かは基本的に自由なのです。だから、事由によっては病気休暇だけれども、病気休暇と いうのを言いたくないということもあるわけです。そういう目的を特に示すことなく休 暇を取れるというのは、いろいろな意味でこれから需要が高くなってくるかもしれな い。それはそれで使う、今の日本の有給休暇の機能のいいところは残すべきだと思いま す。  所定時間外の割増賃金のところで、先ほどご指摘のあったパートタイムの待遇改善と いうのがありますが、割増賃金というのは両面に作用しうるものです。もともとパート タイマーは、本来はこの時間しか働かない、時間外労働はしない、という前提でパート タイムを選んでいる人が多いわけで、割増賃金を払うとなると、使用者から割増を払っ ているのだからパートでも残業もしなさい、という圧力にならないかどうかというのが 1つ懸念されますし、他方では、労働者の方でも割増賃金をもらえるのだったらという ことで、また時間外労働の増加につながる可能性がないか、その両方に作用することも 踏まえて、議論をする必要があるかと思います。 ○山川様  今の点の追加ですが、均等待遇の改善につながるかというと、パートタイムの市場は 比較的に流動性が高いことを考えると、最低賃金の範囲内でパートの時給を下げれば、 結局トータルとしての賃金コストは変わらないで、時間あたりの賃金はかえって均等待 遇の観点からは、差が拡大する可能性もなきにしもあらずかなという気がします。割増 分でカバーできたら別ではないかというのもあり得なくはないですが。 ○松井審議官  ここの均等改善というのは、ものすごく議論が飛んでいまして、頭の体操で正しくな いかも分かりませんが、前置きを抜きますと、社会保険の適用基準もちょっと頭に置い て書いたのです。今であれば、所定労働時間が通常の方の4分の3以上の方でないと適 用しないと書く。そして、むしろこれは、私は適用基準を下げていくべきだという論者 ですが、下げるとしたときに下げ圧力を適用基準にしたら、下げたくないということで 使用者は例えば2分の1から適用するとします。そしたら、それを逃れるために所定労 働時間をひょっとして4分の3の場合、とどめることはないだろうかと思って、そうで あれば、パートというのだったら、そこから上は逆に割増を取りますよとやると、どっ ちがいいかなと迷ってしまうのではないかと。そちらの方を言ってみたかっただけなの です。それは多分に机上の空論か分からないが、今言われた経済の賃下げの方が本当に 働くかも分からないとは思いますが、ただ適用基準を操作するというときには多少、使 用者として躊躇するようなものにならないかなというぐらいのつもりです。 ○座長  今日は、時間が迫ってきたらとても議論が活発化をしてきましたので、もう時間がな いとはなかなか言いづらいのですが、今日で最後ではありませんので、もしよろしけれ ば今日はこのあたりで、所定時間内で仕事は終えてということにさせていただこうかと 思います。よろしいですか。  今日、また新たな論点あるいは考え方等がいろいろと示されましたので、こうしたも のは次回以降の資料に反映をお願いすることにしまして、今後どのように進めるかにつ いてを事務局からご連絡ください。 ○安藤監察官  次回の会合は、11月30日(水)10時から12時までの形でお時間をいただいています。場 所は、厚生労働省専用第21会議室で開催したいと存じますので、ご参集いただくようお 願いします。 ○座長  場所は一緒ですが、曜日と日付は絶えずあっちへ行ったりこっちへ行ったりします。 今度は30日(水)の午前中になりますが、どうぞよろしくお願いします。  本日はお集まりいただきまして、また非常にいいご議論をしていただきまして、あり がとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いします。 照会先:厚生労働省労働基準局監督課調整係 電話 :03-5253-1111(内線5522)