05/11/10 第7回生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会の議事録 第7回生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会 日時:平成17年11月10日(木)13:00〜14:45 場所:ホテルルポール麹町 マーブル 出席委員:谷本石川県知事、岡崎高知市長、今井総務副大臣、田野瀬財務副大臣、      川崎厚生労働大臣、木村地方財政審議会委員、      京極国立社会保障・人口問題研究所所長 議題  (1)総括的議論  (2)その他 (川崎厚生労働大臣) ちょっと車の渋滞に巻き込まれているようですけれども、すぐに財務副大臣の御発言 の時間はありませんので、始めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い いたします。 それでは、先週に引き続き、第7回目になります「生活保護費及び児童扶養手当に関 する関係者協議会」を開催いたします。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、あ りがとうございます。 それでは、私の方から本日の出席者を御紹介させていただきます。 谷本石川県知事さん。 岡ア高知市長さん。 山崎総務副大臣。 木村地方財政審議会委員。 京極国立社会保障・人口問題研究所所長。 竹本副大臣が出席予定でございますけれども、少し遅れております。 それでは、議題に入らせていただきます。前回に引き続き、総括的な議論を行うこと としておりますが、まず前回の協議会で厚生労働省から提出いたしました「生活保護及 び児童扶養手当の見直し案」に関して、知事会及び市長会、木村委員、総務省がそれぞ れ御意見をとりまとめられたとのことですので、順次御発言をお願いしたいと思います。 それでは、谷本石川県知事、どうぞよろしくお願いします。 (谷本石川県知事) 全国知事会、そして全国市長会で見直し案に対する意見をとりまとめさせていただき ましたので、代表して意見を述べさせていただきたいと思います。 まず、資料の方をごらんいただきたいと思います。 「1 生活保護制度の本旨とその責任」についてということでありますけれども、こ れまでも繰り返し我々は申し上げておりますけれども、この生活保護制度は、憲法第25 条の理念に基づき、国の責任において生活に困窮しているすべての国民に対して、健康 で文化的な最低限度の生活を保障する制度ということであります。 したがいまして、国民の最低限度の生活を保障される機会でありますとか、最低限度 の生活水準、この内容については地域あるいは個人によって実質的な差が生じることが あってはならないものだと考えており、そういった意味では国の責任と役割は極めて重 いものだと理解しているわけであります。こうした基本認識に立って、以下数点につい て意見を述べさせていただきたいと思います。 まず、この協議会でのこれまでの議論の経緯との関連ということでございますけれど も、厚生労働省の見直し案は、これまでの協議会の議論を一切無視するもので、給付の 適正化に資する制度改革ではなく、強く撤回を求めるということでございます。 この協議会では国庫負担率の引き下げを前提にしたものではなく、生活保護制度や児 童扶養手当制度の在り方について、幅広く論議を行うという形で設置をされたわけであ りまして、第1回の協議会で尾辻前厚生労働大臣の方からは、この給付の適正化に資す る種々の改革について、総合的な検討を行うという発言もあったわけでありまして、我 々もこれに同意をして、これまで議論を進めてきたという経緯があるわけであります。 こういう方針の下で、言わばこの協議の前提となる共通認識を得ることが何よりも大 事だということで、お互いが合意に達しまして、この協議会の下に共同作業チームを設 置し、科学的な分析の結果、保護率の上昇や地域間の較差については、経済的・社会的 要因を示す指標によって、その理由のほとんどが説明できるということが判明したわけ であります。 すなわち、これまで厚生労働省の方では保護率の地域差というのは地方自治体の実施 体制や取組状況もその一因として考えられるという主張、これを厚生労働白書、あるい はこの協議会でも繰り返し述べておられたわけでありますけれども、この共同作業の結 果によりまして、単なる地方負担率の引き上げでは生活保護費の適正化にはつながらな いということが明確になったのではないかと考えているわけであります。 こうした議論の経過に基づいてまいりますと、こういった経済的・社会的要因によっ て増加をしてまいります生活保護費の給付費というものをいかに適正化するかという協 議に入るべき段階だと思うわけでありますけれども、それにもかわらず、前回唐突に地 方への権限移譲あるいは役割・責任の拡大と地方の財政負担の拡大を趣旨とする見直し 案が提出されたということでございます。 このことはある意味では、これまでの協議会における議論の経過を一切無視するもの でありますし、無理やり地方への負担を転嫁するものであって、本来議論すべき課題で ありました、給付の適正化に資する提案にはならないと考えているわけでありますので、 その意味でも強く撤回を求めるものでございます。 次は「3 生活保護制度の理念との関連」についてでありますけれども、見直し案は この生活保護制度を無理やり扶助ごとに分断し、この基準設定権限や国庫負担などを変 更するというものでありますので、生活保護制度の理念に反するということであります。 厚生労働省の見直し案では、この生活扶助、住宅扶助、医療扶助など、この生活保護 のそれぞれの扶助ごとに在り方を見直すとしているわけであります。憲法が求めており ます、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度であります、この生活保護制度を 言わば無理やり扶助ごとに分断をして、基準設定権限や国庫負担率等を変更しようとす るものであります。 こういう考え方は、本来生活保護というのは総体としてとらえるべき、衣食住をどう 保障するのか。あるいは医療、介護など、言わば対象になります被保護者の人間総体と しての暮らしや営みを全く軽視をするものだといわざるを得ないわけでありまして、こ ういう考え方には断じて同意することはできないということでございます。 次は「4 国と地方の役割との関連」についてでありますけれども、保護基準の設定 権限を地方に移譲するということは国の責任放棄であり、現行の国・地方の役割分担は 堅持すべきであるということでございます。 現在、この生活保護は生存に関わる言わばナショナル・ミニマムを確保するため、全 国統一的に公平・平等に行う給付金の支給等に関する事務であるとして、法定受託事務 に分類されているわけであります。厚生労働大臣がその責任と権限を持って保護基準や 処理基準など、制度の枠組みを決定し、地方はその基準に従って事務を実施していると いうことであります。 しかし、今回の厚生労働省の見直し案では、現行の保護基準は国が定めているが、地 域間較差が大きく、保護基準の策定は地方が担うことが不可欠ということで、生活扶助 や住宅扶助の基準設定権限を都道府県、あるいは実施主体に移譲するということにして おられるわけであります。 我々としては、ナショナル・ミニマムを確保するという観点から、現行の国・地方の 役割分担は堅持すべきであると考えているわけであります。 仮に地方に生活保護の基準設定権限を移譲したとしても、国がナショナル・ミニマム を達成するために必要最低限度の基準を設定しなければならないということになるとす れば、これは覊束行為であり、地方に裁量の余地は全くないと考えざるを得ないわけで あります。 また、これを地方自治体の裁量に委ねるということがあれば、ナショナル・ミニマム の観点から見て、憲法上の疑義があるのではないかと考えているわけであります。 こうしたことから、自治体の裁量を拡大するということを理由にした国家負担率の見 直しは、単なる地方への負担転嫁ということでありますので、断固反対せざるを得ない ということであります。 次は「5 三位一体の改革との関連」についてであります。三位一体の改革に名を借 りて、この生活保護事務等について地方に責任を押し付け、地方負担を増やすというこ とは、地方への単なる負担転嫁ということでありますので、断固反対ということでござ います。 生活保護、児童扶養手当に関する事務というのは、地方の自由度を高め、創 意工夫に富んだ施策を展開するために、地方自治体の裁量を拡大するという我々が求め ております三位一体の改革の本旨に照らしてふさわしいものではないと、繰り返しこれ までも申し上げてまいったところであります。三位一体の改革に名を借りて地方分権を 推進する、あるいは地方自治体の裁量を拡大するという意味合いの下に、法定受託事務 たる生活保護事務などについて国庫負担率を見直すということは、地方への単なる負担 転嫁ということでありますので、断固反対ということであります。 更に地方の改革案を尊重するという小泉総理の発言にも反するものであります。我々 が作成をした総額1兆円の平成18年度移譲対象補助金一覧から選定をすべきでありま す。また、地方分権を推進するためには、国庫補助負担率の引き下げではなく、当該国 庫補助負担金の廃止によるべきものであるということも付け加えさせていただきたいと 思います。 「6 他法他施策との関連」についてであります。他法他施策の国庫補助 負担率との整合性を図るため、生活保護等の国庫負担率を引き下げるということは単な るこじつけであるということであります。 他法他施策の国庫補助負担率との整合性を図るために、生活保護などの国庫負担率を 引き下げるとされておりますけれども、自助、共助、公助という社会保障の体系の中で、 公助の最たるものである生活保護については、憲法25条との関係において、他法他施策 に比べ、国の負担が大きい方がむしろ整合性があり、国庫負担率の引き下げは地方に負 担を押し付けるための単なるこじつけでしかないと考えるわけであります。 最後に「7 各論に対する意見」を申し上げたいと思います。 まず「(1)生活扶助、住宅扶助について」であります。厚生労働省の見直し案では、 この生活扶助については生活扶助基準の設定権限を都道府県に移譲し、都道府県が4分 の1を負担するとして、住宅扶助については住宅扶助基準の設定権限を保護の実施自治 体に移譲し、現物のサービス提供を可能とし、一般財源化するということでありますが、 生活扶助、住宅扶助などの生活保護基準は何よりも公平・平等でなければならないとい うことは当然であります。したがって、その基準は地域の実態を反映させる必要がある ことから、客観的なデータを基に全国的に整合性を持って定められるべきであります。 地方の裁量に委ねるということは生活保護制度の理念に反すると考えるわけでありま す。 地域事情を的確に反映をさせ、実質的に公平を期すため、保護の実施自治体が基 準を設定するとしておりますけれども、ナショナル・ミニマムを確保するという観点か らは、地域事情の反映を地方の裁量拡大で達成することはできないわけであります。国 自身が各地域の実態を十分に把握をして、よりきめ細かい基準設定などによって適切に 対応すべきであるということであります。 地方自治体の裁量責任で住宅扶助基準を設定するということになれば、全国レベルで の均衡が損なわれ、被保護者の転入・転出という事態も懸念をされるのではないかと考 えるわけであります。 「(2)医療扶助について」は、国保や老人医療、介護保険でも、都道府県が負担し ていることの整合を図るため、都道府県が4分の1負担をするということでありますが、 国民健康保険や介護保険などとの負担の整合を図るとしておりますけれども、自治事務 であるこれらの制度と法定受託事務である生活保護制度とを一律に論じるべきではない。 このように考えられるわけであります。 また厚生労働省のこれまでの議論の中で、保険制度で対応する考え方もあり得るとの 考え方を示しておられましたが、単純に都道府県負担を導入するという考え方に変わっ ております。一貫性がないのではないかと考えるわけであります。 「(3)児童扶養手当の見直しについて」は、就業自立に向けた総合的な支援に関す る実施自治体の役割・責任を拡大をして、実施自治体が2分の1負担をするということ でありますけれども、児童扶養手当の認定基準は収入のみということであります。地方 自治体の裁量の余地はなく、三位一体の改革に名を借りた単なる地方への負担転嫁であ ると考えるわけであります。 また、児童手当では国が3分の2負担をしているということとの整合性が考慮もされ ておらず、単に2分の1負担ありきといわざるを得ない。このように考えたわけであり ます。 以上で、私の方からの説明を終わらせていただきたいと思います。 (川崎厚生労働大臣) ありがとうございました。 次に、岡ア高知市長からお願いいたします。 (岡ア高知市長) それでは、市長会の立場から、さっき代表で谷本知事がおっしゃいましたが、私の方 からも少し補足ということで意見を申し述べさせていただきます。 まず、生活保護の実施につきましては、先ほど谷本知事もおっしゃいましたとおり、 やはり国の責任で実施をすべきものということでございます。根本論、財政論からいい ましても、もともと生活保護は所得の再分配ということが基本になっておりまして、超 過税率等で高額所得者の方々から税をいただく国側が、生活ができない低所得者に対し て、直接的に金銭を給付するということで本来成り立った制度でございますので、その 観点から言いましても、やはり国の責任で実施をすべきというのが我々の思いでござい ます。 今回この協議会の中でも厚生労働省からいろんな提案が出されてきましたが、どうも 我々から見ても一貫性がない。しかも、我々も長らく市町村の仕事をしてまいりました が、社会保障や全体の国民の生活を支える制度には理念や、いろんな意味での国民を守 るための短期的にころころ変わるということがなくて、しっかりとした理論づけが必要 だというのが我々の思いでございます。いろんな意味で経験しておりますが、そういう 理念がまず全然感じられない。 特にこの中で生活扶助と医療扶助は、国の負担を減らして県の負担に我々から見ると 振り替えたものとしか映っておりません。 住宅扶助と一時扶助については、一般財源化して市の方でということになると。ここ にも社会保障として、制度としての理論的なものが全然感じられませんし、単に急遽つ くり上げて負担転嫁だけを何とかやろうということだけしか考えられないということで ございまして、我々市長会としても受け入れられないというところでございます。 厚生労働省の仕事については市町村が一体となってこれまでつくり上げてきた経過も ございます。例えば、国保の創設期のときには市民の家庭を一軒一軒回り、国保の皆保 険制度という趣旨を説得しながら、こういう制度ができますので加入してくださいとい うことを説得しながらつくり上げてきた経過がございます。 国保の創設期のときには医師会は大反対でございましたが、各市町村では医師会を説 得しながら、この制度をつくり上げてきたという自負もございます。また、介護保険も 10月1日から切り替えになっておりまして、今、現場でも大変なことをしておりますが、 介護保険の円滑な実施のために市町村も努力をしているところでございます。 平成20年には75歳以上の後期高齢者の保険制度がスタートする予定になっています が、この保険者は国側からは市町村の方でお願いしたいということですが、まだ市長会 ではこれを受けるということにはなっておりません。 国民の生活を守るために、我々は厚生労働省とともにいろんな制度をつくり上げてき たつもりでございます。ただ、こういうこととは別にしまして、生活保護の場合はやは り国が最終的に責任を持つ制度であるということで、ここはやはりこれまでのいわゆる 自治事務としての我々の協力とは、また立場が違うというところをしっかり御認識をい ただきたいというところでございます。 この協議会では、急増する都市部の生活保護の率をいかにして抑制をしていくかとい うのが国と地方の共通の一番大きな問題点であったはずです。今回の提案の中では我々 は前回具体的に高齢者の生活保護の問題、期限付きの生活保護の問題等、都市部の生活 保護の急増をいかに抑えていくかということを少し事例を挙げながら御提案を申し上げ ているつもりでございます。 今回の提案の中については、肝心のそこの部分が見受けられないということも非常に 残念でございます。そういう意味から、当然単なる負担転嫁、しかも厚生労働省はすご く市町村に直接つながる仕事が多い中で、一番地方分権に遠い部分の生活保護をどうし ても出してくるということは、なぜかということもよくわからないんですが、地方側の 提案とは全く違う、一番遠いところのものを出してきています。これでは我々地方側は どうしても飲めないということでございますので、そこを十分御理解いただきながら、 生活保護率の抑制をどのようにしていくかの本論の部分を我々としてもしっかり考えて いただきたいというところであります。 以上です。 (川崎厚生労働大臣) それでは、木村委員からお願いします。 (木村地方財政審議会委員) ありがとうございます。風邪を引いておりまして、お聞き苦しい点は御容赦ください。 私が提出いたしましたのは、資料2と資料3。それに資料3に含まれております1枚 紙がございますが、それを適宜申し上げますのでごらんください。 まず、私の意見を資料2に基づきまして、申し上げます。 「1.厚生労働省案は、憲法25条で定められた国の責任を放棄するものであり、保護 基準を扶助ごとに分断して国庫負担の軽減を図ろうとするものである。 ナショナル・ミニマムを保障する生活保護は、経済社会構造の変化などの影響を大き く受けるため、県や市町村といった個々の地方団体が担うにはリスクが大きすぎる。そ のため、国が責任をもつべきものである。したがって、保護基準を扶助の種類によって 分断し、一部を地方団体の負担に移すことは国の責任の放棄である」。 2は、有名な平成8年5月20日の「第45回地方分権推進委員会・第19回くらしづく り部会合同会議」における関係省庁ヒアリング。そのときは厚生省でございましたけれ ども、そのときに示された生活保護制度についての旧厚生省の考え方と今回出されまし た厚生労働省の考え方は180度対立するものではないか。 そのことについて意見を申し上げたいと思います。その前にその平成8年5月20日と 言いますのは、福祉の面から見ますとどういう時期であったかということを少し振り返 りたいと思います。 それにつきましては、この1枚紙をごらんくださいますでしょうか。高知市長もおっ しゃいましたけれども、私は研究者としてこの時期、老人福祉のことを少しずつ整理し ていく時期で、厚生労働省の役人の方々と議論しながら、ものをつくり上げていくとい うのは非常に楽しい経験であったことを思い出します。 1989年に例の有名なゴールドプランが出まして、今後2000年までにホームヘルパー とかショートステイとか介護デイサービスとか、もう特別養護老人ホームとか、現在も う既にありますいろんなものがもうこの時期にありまして、その国全体としてどういう ふうに整備していくかというのをここで初めて厚生省がよくやったと言われたぐらいに 数値目標を具体的に示しました。 そして、90年には福祉8法の改正がありまして、老人の在宅福祉が市町村の役割、努 力だよということが規定されたというような大きなことがありました。 93年には、全国の自治体で老人保健福祉計画の策定が義務づけられて、一生懸命した ことを覚えております。自分の町で将来要介護者がどれだけ出るのか。そのためにはど のような形で人材とか施設を整備しなければならないかという計画を立てました。 平成7年には、新ゴールドプランが作成されて、ゴールドプランのバージョンアップ がなされたわけです。 平成11年には、またゴールドプラン21というのが作成されまして、2000年には介護 保険が導入されたわけです。 それでどのような形でそのホームヘルパーとかショートステイ、あるいは施設が整備 されていったのかというのは、字が小さくて恐縮ですけれども、お配りした1枚紙の右 のところに載ってありますが、この平成8年5月には介護保険制度の試案というものも まとめられまして、二度にわたって提示されております。 ですから、平成8年という時期は、今、私たちが享受している福祉の基本的なものが 既に枠組みとしてつくられておりまして、介護保険についてもどういう制度なのかとい うものも見通しが立てられる時期にございました。世の中全体の流れとしては、住民に 密着した福祉サービスは特に基礎的自治体でするのが望ましい。そういうふうな流れに あった時期でございます。 ですから、大きな潮流としては現在と何ら変わっていないと私は思います。ただ違う のは、生活保護率がこのときは7.1‰というぐらいに非常に低くて、現在は10.5‰とい うぐらいに上がっている。その保護率は違いますが、福祉の構造はもう90年代の初めに かなり枠組みがつくられて、平成8年は介護保険の枠組みももう見通せる状況にありま した。 その時期に述べられました意見で、陳述人のお名前には佐々木局長とか辻保護課企画 課長というというお名前が記録には残っておられますが、そういった方々の御発言に私 は非常に賛同いたしますので、ここに読みたいと思います。 「ヒアリング時に旧厚生省は、国が基準を設定することを最低限必要であるなど、生 活保護制度にたいするオーソドックスな考えを示した。 生活保護は国の責務との考えに地方団体も同意し、その後閣議決定され、2000年の地 方分権一括法において生活保護制度は『その性格が生存にかかわるナショナル・ミニマ ムを確保するため、全国一律に公平・平等に行う給付金の支給等にかんする事務として、 法定受託事務』となり、今日にいたる」。 括弧内はヒアリング時の厚生省意見の抜粋であります。ゴシック体は私が重要と思っ たものをゴシックにしております。 括弧の抜粋の部分を紹介いたします。 「(1)国の責任において国民は等しく最低限度の生活を保障すべきもの ○ 生活保護制度は、憲法第25条の理念に基づき、国の責任で、生活に困窮するすべ ての国民に対し、等しく健康で文化的な最低限度の生活を営むことを権利として保障す るもの。また、生活困窮者にとっては、生活保護は『最後の拠り所』となる公定扶助制 度である。 (2)全国的に公平かつ平等に実施されるための措置が必要 ○ 生活保護制度において、最低限度の生活を保障される機会及びその最低限度の生 活の内容について、地域や個人によって実質的な差があってはならない(無差別平等及 び必要即応の原則)とともに、生活困窮者がその利用し得る資産、能力その他あらゆる ものを活用することを要件として実施されるべきもの(補足性の原則)。 ○ このように、全国民に共通した公平と平等が求められる見地から、国は、具体的 な保護の決定及び実施について地域差が生じないよう、保護基準の設定のみならず、法 令及び保護基準の解釈・運用方針等の詳細にわたって定めるとともに、それが遵守され るように徹底する必要がある(国による指導監督が不可欠)。 ○ 具体的には、(1)国が基準を設定すること(生活保護法第8条)、(2)保護の決定・ 実施に関する国の指揮監督権限(第20条)及び(3)国による事務監査権限(第23条)が 最低限必要である。 ○ 生活保護の基準は、生活保護法第8条により地域や個人の実情によって定めるこ ととされており、現行保護基準もそのように構成されている。したがって、地域や個人 の実情によって支給額などの保護内容が異なるのは当然である。 ○ なお、生活保護制度の無差別平等や補足制の原則等から、地方公共団体の独自の 判断による上乗せや保護基準の運用に格差を設ける裁量の余地はないものである。 ○ 生活保護制度の決定・実施の事務は、地方公共団体で行われているが、国は単に 基準の設定だけではなく、保護の決定・実施についても最終責任を負っており、国の指 導監査によって全国一般的な適正な実施が確保されてきたところである。 ○ 仮に生活保護の決定及び実施に関する一般的な指導監督権がなくなる等現行制度 よりも国の関与の度合いが弱まり、地方公共団体の独自の判断による保護の基準額の変 更、保護の種類の追加や生活保護制度の運用等が可能となると、最低限度の生活の内容 に実質的な地域格差が生じ、地方行財政のあり方によって最低限度の生活水準が左右さ れるおそれが生じる。 こうした状態をもって、すべての国民に対し、憲法が権利として保障する最低限度の 生活を無差別平等に保障しているとは言いがたいのではないか」。 こういった意見を述べておられます。私が思いますのに、貧困に陥った人を救済する という生活保護の性格及び必要は変わらないし、福祉の構造はもう1990年代の初めに現 在のものが既にでき上がっておりますので、構造的なものは変化がないとしますと、厚 生労働省が現在この平成8年の時期と全く違う考えを示されるのはなぜか、理解に苦し むところであります。 3でございますけれども、生活扶助も医療扶助も、新たに県の負担を入れる根拠がな いと私は考えます。 その理由を申し上げます。 「○ 県は実施主体として、郡部の生活保護行政を担っており、県管轄の福祉事務所 数はこの25年間ほとんど変化がない。県が実施主体であるという点は、介護保険、老人 医療、国民健康保険とは大きく異なる点である。また、介護保険や老人医療、国民健康 保険は被保険者の保険料や保険税などを財源として独立採算的に実施する保険財政であ るのに対し、生活保護については県も市も国の仕事を粛々と実施しているに過ぎず、そ れ以上でもそれ以下でもない。 県域をこえて経済活動が行われ、人が移動していることを考えると、広域的調整は国 がすべきであり、国が責任をもって財政調整にするべきである。 ○ 生活保護は低所得者対策という点で他の制度と根本的にことなるものであり、ほ かの制度と国庫負担率が違って当然であり、同じくする根拠はない。 ○ そもそも医療保険や介護保険制度において、国、県、市町村で負担を持ち合う形 式が日本の大きな特徴であるが、このことが責任の所在を不明確にしている。 ○ 医療扶助に県の負担を導入する根拠として、医療扶助と医療提供体制に相関があ るとしているが、地方団体側の分析では、医療供給体制と医療扶助に相関関係がみられ なかった。 ○ 医療費の抑制、ノーマリゼーションの推進などは医療や福祉全般でわたるもので あり、そういった領域で議論をするべきであり、生活保護制度のなかだけで議論するべ きものではない。 4.生活は衣食住でなりたっているのであり、住だけを分離して、つまり住宅扶助だ けを分離して地方の一般財源とする根拠がない。 ○ 今後も大都市部において生活保護受給世帯の伸びることが予想され、それに伴っ て住宅扶助受給者が伸びると予想される」。 大都市部の負担は大きなものになるということは、恐らく間違いがないものと思われ ます。 それは資料3をごらんください。資料3は図がございます。 まず、生活保護では大きく申し上げますと、1級地、2級地、3級地というように大 きく3つに級地を分けている。そして、1級地に大都会が入っているというように御理 解ください。 そういたしますと、1978年〜2003年までの25年間におきまして、1級地は借家世帯 の割合は、25年前は7割はなかったんですけれども、今はもう86%ぐらいにどんどん、 これはいわゆる高齢で借家世帯が増えていることも反映しておりますが、大きな割合を 占めております。公営住宅も伸びておりますが、民間借家の方が大きく伸びております。 それは2ページにあります図2でもおわかりいただけますように、2級地も借家世帯 がぐんぐん伸びておりまして、現在8割ほどでございます。今後も伸びると予想されま すし、次の3級地も同じことが言えます。この借家世帯の中には公営住宅も含まれてお りますが、公営住宅に住む世帯の割合も増えております。 次の表はまた1級地、2級地、3級地のそれぞれについて、1998年、2001年、2003 年の経年的に公営住宅の家賃分布を見たものでございます。公営住宅は供給制約があっ て、生活保護受給者が増えたからといって公営住宅が簡単に増やせるわけでもございま せん。公営住宅の家賃分布はほとんど計上に変わりはありませんが、1級地の公営住宅 に入る人の数というのは増えております。 次のページは同じく1級地で、ピンクのものが2003年の1級地の公営住宅以外の借家 世帯の家賃分布なんですけれども、どういうところで伸びているかと言いますと、もう 家賃が低いところはそれほど供給がないので、また1級地の家賃が相対的に高いときの 方で生活保護受給者が伸びておりますので、家賃分布は上方にシフトしております。ほ かの地域と比べるともう一目瞭然なんですけれども、こういった家賃分布のシフトとい うのは1級地が非常に大きな影響を受けております。 2級地、3級地というふうにそれぞれ分布は、これはもう後で見ていただければよろ しいかと思うんですが、公営住宅はそれほど家賃分布にほとんど変化がございませんが、 それは供給制約があるためですけれども、民間借家の方に、特に家賃の高い方に現在シ フトしているという状況であります。 生活保護受給者の公営住宅の入居率が地域によって違うということで、地域格差があ り過ぎるということを厚生労働省がおっしゃっていたように覚えておりますけれども、 一般世帯でも公営住宅の入居率は地域によって当然違います。別に生活保護受給世帯に 限ったことではありません。 例えば、神戸市では生活保護受給者のうち、公営住宅入居者の割合が高いんですけれ ども、それは大きな震災を受けられた後で公営住宅を整備する必要があったことが大き く影響しておりますし、また京都市も同じく公営住宅入居者の割合が高いですが、昭和 40年代から公営住宅が多数建設されてきたことも影響しております。 大阪府では生活保護受給者のうち、公営住宅入居者が特別高い市が2つぐらいあるん ですが、その市の特徴は、その市で昔から公営住宅が多く建設されていること。なおか つ入居倍率がそれほど高くない市であるというように、地域の事情が異なるため、公営 住宅の入居事情が違うのは当然であると思います。 「○ 公営住宅の入居においては、生活保護受給世帯の母子世帯、障害者世帯などボ ーダーライン層が抽選において優先されるケースが多い。落層を防ぐための効果が大き いと思わる。 ○ 生活保護受給世帯を公営住宅入居において何よりも優先させていることは、本人 の生活環境の継続性、就労場所との関係などから問題あるケースが生じる恐れがある」。 私は「恐れ」と書きましたけれども、聞き取りによりますと、もう問題が生じますとい う答えが現場のケースワーカーの方々からの答えです。 「○ 生活保護受給世帯を公営住宅入居において優先させることは、地方団体の公営 住宅会計を悪化させることにつながる。 ○ グループホームなど居住形態にあっても、家賃を設定することは可能である」。 多様な居住形態があることをもって、その住宅扶助を切り離すということにはならない のではないかと思います。 「5.就労支援について 生活保護は従来金銭給付と自立支援、就労支援が大切との厚生労働省の指導を受けて、 地方団体は両方にとりくんできたところであり、就労支援そのものはなんら新しいもの ではない。 6.児童扶養手当受給資格は所得の低い層に限定されており、また生活保護受給世帯 率の動向は、世帯保護率と非常に似通った動きを示している。児童扶養手当は生活保護 に落層しないための制度であり、生活保護と同じく国の責任が大きい」。 以上でございます。 (川崎厚生労働大臣) それでは、次に山崎総務副大臣からお願いします。 (山崎総務副大臣) それでは、私の方から総務省としての考え方を申し上げたいと思います。資料4をご らんください。 初めに資料の説明をさせていただきますが「基本的な考え方」としてI、「各論」と してII、その下に参考資料として、これから申し上げることに対する裏づけの資料を4 ページばかり付けさせていただいております。 この厚生労働省案に対しての提案については、前回、次回申し上げるということでご ざいましたので、今回こういった形で考え方を示させていただきたいと思います。 それでは、資料の順番に沿った形で考え方を申し上げていきたいと思います。 まず生活保護についての「基本的な考え方」でございます。今までのいわゆる知事会、 市長会、木村委員の発言とかなり重なる部分もございますけれども、その点は御了承い ただきたいと思います。 いわゆる生存に関わるナショナル・ミニマムの確保ということに関しては、やはり国 の責任であると考えます。このことは生活保護法1条の条文どおり明確に規定されてい ると考えます。 生活保護は全国統一的に公平かつ平等に実施されるものという、この無差別の原則も 生活保護法第2条に規定されているところでありまして、最低限度の生活の内容につい ては地域や個人によって実質的な差があってはならないという思想が背景にあるものと 考えております。 生活保護及び児童扶養手当の原則は金銭給付であります。その点、地方に対し裁量の 余地は全くございません。厚生労働省は自立支援を強調して、あたかもこのことが地方 の自由の拡大に資するかのような感じの主張をなさっているというふうに受け止めます が、あくまで生活保護などに対する自由は客観的要件に該当する人に対して、それに見 合う給付を行うという事務の執行でございまして、そこにさじ加減はむしろあってはな らないというふうなものと考えます。 地方自治体における保護の実施体制や取組状況などは、保護の動向に影響を与えるも のではない。これは本協議会で4か月にわたる精力的な作業の結果、解明された事実で あります。その意味では協議会設置の当初の目的については結論が出たものと理解して おります。 にもかかわらずという表現をさせていだたきたいんですが、前回言わば唐突に新たな 観点からの生活保護に関する地方負担を導入するという提案が厚生労働省がなされたと 思っております。そうであるならば、むしろ給付の適正化に資する抜本的な解決が不可 欠という全体の協議会で地方側から給付の適正化方策の提案がなされたところでありま すが、本協議会の設置趣旨から言っても、このことをまず十分に議論すべきではないか と考えます。 続いて「II各論」の方に入らせていだたきます。 そもそもこれまで厚生労働省は生活扶助、住宅扶助の水準を地方で決めるなどという 制度の根本に関わる議論をしてきたことはなかったはずであります。今回の三位一体の 負担の話が出てきまして、急に出てきたという印象はぬぐえません、そうとしか考えら れません。となれば本末転倒の議論ではないかと思う次第でございます。 従来の厚生労働省の主張は、地方側の実施体制、取組状況に着目して何か言わば地方 自治体への不信感というものがあり、それに基づいたような形の提案ではなかったと受 け止められますが、これに対して今回の案はむしろ地方自治体に任せた方がしっかりで きるというような主張に変わったのではないかと思います。皮肉でなくそう思います。 となれば、地方自治体に対する見解が180度変わっているねと。これはどこに理屈が あるんだろうとなりますと、とにかく負担を地方に回したいというのは根底にあるので はないかと思えてなりません。そういった意味でも厚生労働省の議論のやり方というの は私どもにとってみれば、国に対する地方の信頼関係を失うものではないかと思うわけ で、今回 の三位一体のいろんな議論の中での議論のやり方はあると思うんですが、いかがなもの かと思わざるを得ないのであります。 そして、個別具体的な点について何点か申し上げたいと思います。生活保護に関して は、その給付の生活上、国庫負担率は他の社会福祉政策における国の負担に比較して最 高の水準を維持すべきであると考えます。このことは論を待たないのではないかと思い ます。この現行の4分の3の国庫負担率を定めた国会審議で、当時の厚生大臣が生活保 護というのは国として大事な仕事だから、ほかの補助率とは違って最高の水準を維持す べきであるとはっきり答弁されております。 これは参考資料2にお示ししてございますが、念のため申し上げれば、当時の厚生大 臣は現在の小泉総理大臣でございます。 また、生活保護の水準に実質的な差が生じることは生活保護の趣旨になじまない。こ のことは先ほど述べたんですけれども、例えば、厚生労働省案では住宅扶助の推進は実 施団体が定めることとなっておりますが、隣接する市がそれぞれの条令に基づいて、例 えばですけれども、水準設定をして、そこに格差が生じた場合、よいものかどうか。 その結果、保護水準の高い方に住民が移動するということは十分考えられるわけでし て、そのことをよしとするのかどうかという議論はまたここで十分議論しなければなら ない。そういった論点が非常に多いと申し上げたいと思います。 こういう点について、本協議会において今まで議論がされてきたというふうには受け 取っておりません。こういったことはそもそも生活保護制度の根幹に関わる問題であり まして、別のところ、すなわち社会保障審議会でも十分議論が行われて、そこのところ を踏まえた形での我々としての議論ということも必要になるのではないかと考える次第 であります。 住宅扶助につきましては、一般財源化の見直し案が出されておりますけれども、人の 生活、特に弱い人の生活ということは衣食住は一体不可分であると考えておりまして、 最低生活費は一体として保障されるものと考えます。そのうちの一部だけ切り取って、 その扶助を地方自治体の責任にするということは現行の確立させた生活保護の体系を崩 すものであると言わざるを得ません。 また医療扶助に関しまして、権限に何も変更もなくて、それを新たに都道府県という ものを導入するということは単なる負担転嫁そのものではないかと考えざるを得ません。 そもそも診療報酬など医療扶助適正化の基本的要素というものは国が定めております。 また、厚生労働省は都道府県が医療計画を定めているということをもって、都道府県の 役割・責任も大きいよと主張なされているわけですが、医療計画のうち医療費適正化に 資するという事項は基準病床数の設定のみであります。その他の項目はいずれも医療水 準をいかに確保するかという事項だと考えております。 しかも基準病床数の算定は厚生労働省令によっており、これによらない場合は厚生労 働大臣の同意が必要とされているところであるはずです。また、過剰病床を少なくする という権限はありません。都道府県の役割は極めて限定的であります。 先ほどの指摘もありましたように、この医療に関すると、またこれはこれで別の大き な議論があるところでありまして、その辺のところをどういうふうに国と地方で役割分 担をするかという専門的な議論が別にあってしかるべきとも考えます。 そして、児童扶養手当の認定基準は全国一律、しかも収入のみでございます。そこに 地方自治体の裁量の働く余地は全くありません。そういったことを考えれば、これは三 位一体の改革に名を借りた単なる負担率のカットにすぎないのではないかと思う次第で ございます。 最後にまとめとして幾つか申し上げたいと思います。資料の最後をごらんいただきた いと思います。そこのところには地方側の今回のことに対する税源移譲を求めている公 助の内容が左側に書かれておりまして、右の方にこれはだめだよと地方が言ったことが 書かれております。 そういったこの図でございますけれども、いわゆる地方六団体は小泉総理が今回、い ろいろな政策の一つの大きな柱として何回も言われている、地方にできることは地方に という観点で、生活保護や児童扶養手当ではなくて、真に地方自治体の裁量性を重んず るべき分野の補助金を削減して、それに見合う地方税源を移譲すると提案しているわけ で、今年度は5,000億近い額を提示しておりますし、昨年の分を含めますとおおよそ8, 500億円という提案でございます。 具体的には年金・生活保護等における所得再配分をして、所得保障する金銭給付は国、 介護・保育のような地域ニーズに合った、いわゆる現物給付と言いますか、人的なサー ビス給付という対人社会サービスは地方という考え方がここに地方六団体側から提示さ れていると我々は受け止めております。 そして、この地方六団体側の提案を是非真摯に受け止めていただいて、我々が考える 真の意味で言う三位一体の改革を行うためには、地方が税源移譲を求めていないものに ついて、そういったものを税源移譲というふうな厚生労働省案については、できればこ の場で御再考いただいて取り下げていただきたいというのが当方の考え方でございます。 以上でございます。 (川崎厚生労働大臣) ありがとうございました。 それでは、本日の御発言も含め、見直し案に関する地方団体からの御意見に対し厚生 労働省側の考えをまとめさせていただきましたので、担当局長より説明させます。 (中村厚生労働省社会・援護局長) 私の方から資料5に基づきまして、私どもの見直し案に関する地方団体の御意見に対 する厚生労働省の考え方について御説明を申し上げたいと思います。 5枚紙の資料になっておりますけれども、4点に整理をさせていただいて、私どもの 考え方をまとめさせていただきました。 箱の中に書いてありますのが、私どもの見直し案を公表して以来、昨日まで私どもが 承知しております主な御意見を挙げさせていただいており、それに対しまして、私ども の考え方を御説明した内容になっております。時間の関係もありますので、簡潔に御説 明をさせていただきたいと思います。 第1点、最初の1ページの箱に書いてありますのは、言わば協議会の経緯や手順など、 手続的なことについて、例えば、協議会の前提に反するのではないかとか、唐突な提案 ではないかという御意見をいただいておりますので、その点についてお答えをさせてい ただいています。 1ページの回答の方の1、言わば基本的な考え方でございますが、私どもは生活保護 は、我が国の社会保障制度の中で、年金、医療、介護、福祉等の施策、生活保護の立場 から申し上げますと、他法他施策になりますが、そういったことを適用しても最低限度 の生活ができない場合に、最低生活を保障するとともに自立を助長するセーフティーネ ットとしての役割を果たすものであると考えております。 我が国の社会保障制度におきましては、国、都道府県、市町村が重層的に役割と費用 分担をしており、生活保護制度においてもその例外ではなく、現状でも国と地方が制度 設計・実施責任に関わる費用負担を分担しており、生活保護制度のみ国の責任で行われ るべきものとするということは適当ではないのではないかと考えております。 私どもとしては、生活保護の実施に関わります責任や費用負担に関しまして、他法他 施策との整合性を取ることにより、自立助長が円滑に進められ、生活保護制度への過度 な依存が回避されるような仕組みにすることが重要であると考えております。 主に経緯の点につきましては、2ページの3に飛ばさせていただきますが、本協議会 におきましては、これまでに6回にわたり生活保護制度及び児童扶養手当の課題等につ いて、これはこの協議会を設置するときに先ほどもお話がございましたけれども、尾辻 前大臣も幅広く御検討いただきたいということでスタートいたしましたし、そういうふ うに検討していただいてきております。 国と地方の役割・責任につきましても、7月6日の第3回の協議会におきまして、私 とどもの方から、例えば、地域別の保護基準の設定とそれに伴う国庫負担の在り方につ いて、問題提起もさせていただいておりますし、4回、5回の論点に沿った検討におき ましても、生活扶助、住宅扶助、医療扶助等、それぞれの各論の議論の際に論点として 提示をし、御意見を賜ってきたと考えております。 私どもといたしましては、ここの協議会における議論について、真摯に受け止めた上 で生活保護制度、児童扶養手当の現在の課題に対応するため、国と地方の役割分担やそ れに合わせた費用負担の在り方について、総合的・全般的に検討を行い、昨年は国庫負 担率の一律の見直しと御提案をさせていただきましたけれども、それではない形で今回、 今、御議論していだたいております見直し案をとりまとめさせていただいたところでご ざいます。 なお、ここには書いてございませんが、今日の御発言の中でも厚生労働省 側の提案として地方自治体の実施体制に問題があるというようなことが厚生労働省の立 場ではなかったかというお話がありますが、例えば、昨年10月19日に「国と地方の協 議の場」で尾辻前厚生労働大臣が、私の考え方として、生活保護制度についても御提案 申し上げておりますが、それをお読みいただきますと一切そういうことはございません で、指定都市市長会の方々から、今の生活保護制度は制度疲労を来しており、保護者の 自立支援の充実など、時代に即した制度への改善という御要望を受けて、地方自治体の 創意工夫を生かし、裁量と権限を持って取り組んでいただくことが重要であるという考 え方で考えてまいりましたし、そのことについては変わっておらず、むしろそのことを 徹底させているというのが今回の御提案だと考えております。 また厚生労働省としては、それぞれの扶助の性格に応じまして今回の提案、国と地方 自治体が手を携えて一体となって生活保護の適正な実施や母子家庭の自立支援を進めて いきたいと考えております。 今日の御発言の中で、扶助ごとに行うことは生活保護を分断するものであるというよ うな御発言がございましたけれども、そもそも生活保護法の第8条第2項の中で、生活 保護の基準などにつきましても要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別、そ の他保護の種類に応じて必要な事情を考慮して実施しろというふうに書いてございまし て、その保護の種類別にいろいろ考えることも前提になっておりますし、第9条で必要 即応の原則と書かれておりまして、保護はそういう実際の必要性の相違を考慮して有効 かつ適切に行うということで、それぞれの扶助ごとに考えていかなければならないとい うことは、まさに生活保護法の精神に沿ったものと私どもは考えております。 2ページの真ん中の論点でございますが、これは保護率については社会経済的な要因 が大きいことについてというとりまとめがあり、そういったことについて生活保護費の 国庫負担引下げを内容とする提案は不適切であるという御議論についてのお答えでござ います。 要約しますと、1番でございますが、昨年も私ども厚生労働省は三位一体に 関する地方との議論の中で、生活保護等の費用の負担の見直しを御提案させていただき ましたけれども、これは先ほど尾辻大臣の御発言も引用させていただきましたが、国庫 負担率を引き下げることが自動的に保護率の低下等の適正化に結び付くといった単純な 理由で御提案したことは一度もございません。自立支援プログラムの導入といった自立 支援等に関する自治体の役割と裁量の拡大。これに伴った費用負担の見直しというお願 いをいたしているところでございます。 3ページの方に移りますけれども、共同作業の結果を踏まえて、社会経済的な要因に よることが保護率については大きいということでありますが、問題は3ページの2行目 でございますが、「このような要因から生じている被保護者をいかにして就労させ、入 院から在宅に復帰させるかにあり、他法他施策を活用しながらこのような自立支援を進 めていく必要がある。このためには、生活保護の国庫負担率と他の施策の国庫負担率の 統合性をとることも必要である」と思っております。 また、実施体制については保護率と関係はないんだというお話がありましたけれども、 ここのところは厳密に言いますと2つの意見が分かれておりますし、相関のあるデータ もあるし。ないデータもあるということで、そういったことについては御留意はしてい ただく必要があろうかと思います。 第3の論点は、生活保護制度と憲法第25条の関係、また裁量性についての論点でござ います。 まず3ページの下の方の1番でございますが、憲法第25条につきまして、通説・判例 などを申し上げておりますけれども、要は憲法第25条第1項、生存権の保障の目的・理 念、2項はその目的・理念の実現に向けて、国の果たすべき責務を定めたものでありま して、両者は一体として広義の社会保障制度全般に関する規定であると解されておりま して、憲法上、生活保護と他の社会保障制度との位置づけが変わるものではないと考え ております。そういった中で、どういう社会保障制度を組み立てていくかということは、 立法府の広い裁量に委ねられていると考えております。 私どもとしては、3ページの一番最後のパラグラフでございますけれども、全体の地 方分権の推進、国と地方の役割分担の見直しなどとの整合性をも考慮いたしまして、生 活保護制度における国と地方の役割・費用負担の在り方を検討することは妥当であり、 勿論そういったことは憲法第25条に抵触するというようなことはないと考えておりま す。 4ページでございますが、裁量性の問題。特に生活保護基準の設定権限を地方に移譲 するということについてでございますが、私どもの御提案は地域の事情を反映した基準 を設定することにより、適正かつ公平な基準を設定していただくという観点に立ったも のでございます。 被保護者を就労や入院から在宅復帰に至らせ、これは医療扶助が生活保護の費用の半 分を超えておりますので、医療扶助の適正化ということは生活保護の適正化の最大の課 題の1つであると思っておりますけれども、自立を助長するための実情把握、評価、指 導方法等は自治体ごとに工夫を凝らし得るものであり、活用できる社会資源、ネットワ ークも地域ごとにさまざまであり、自治体のまさに工夫、裁量の余地は極めて大きいと 認識いたしております。 4番目に生活保護制度のこれからの見直しの在り方についてでございます。今日の御 意見にございました、社会保障制度全体の在り方を踏まえた慎重な審議とか専門的な審 議の場までという御指摘でございます。私どもの基本認識といたしましては、1番に書 いてございますように、本協議会は昨年の三位一体改革に関する政府・与党合意に基づ くものであり、またそこのミッションを負っているものと考えております。 他方、2番目に書いてございますように、昨年来生活保護については制度疲労をして いるという御指摘もあり、あらゆる機会をとらえて可能な限り早急に見直しに取組むべ きものと考えております。 先週のこの会議でも地方団体から具体的な御提案がございました。私どももその際、 資料4として、私どもの今まで考えております検討状況について、資料はお配りさせて いただきましたけれども、地方団体の御提案につきましては、これは実現させる方向で 取組んでまいりたいと思っております。 提案内容の詳細や背景を的確に把握し、実情に即した解決策を得るために、地方自治 体との生活保護行政担当者との実務的な検討の機会を持つことについてはやぶさかでは ございません。 しかし、この協議会はミッションを負っておりますので、政府全体の三位一体改革の スケジュールの中で見直しについて結論を得て実施していくことが必要であると私ども は考えております。 以上でございます。 (川崎厚生労働大臣) それでは、今、厚労省側から説明がございました。そのことも含めまして、総括的な 意見交換ということで、また順次御発言をいただきたいと思います。 谷本知事さん。 (谷本石川県知事) 今、資料5の説明がございましたが、これは大臣の説明要旨というふうに受け取って いいわけですね。 (川崎厚生労働大臣) 結構です。 (谷本石川県知事) 我々とは考えというか、事実関係が違うところもありますので、こうした点について、 次回我々の反論をさせていただきたいと思います。 それから、議事進行のことなんですけれども、我々もここへ参りまして、いろいろ意 見を申し上げておりますけれども、委員としての大臣の意見も是非お聞かせいただきた いという思いがしております。厚生労働省の局長さんが全部説明しておられますが、ほ かのところは副大臣も自らの言葉で説明しておられます。勿論、全体の議事進行をやっ ていただくというのは、大事なお仕事だと思うんですけれども、やはりここは我々も政 治家という立場で来ておりますし、基本的にこの協議会を立ち上げるときに、やはりそ ういう立場でみんな議論していこうと。そちら側は事務局ということでありますが、や はり委員としての大臣の意見も是非お聞かせいただきたいという思いが率直にしており ますので、また次回以降よろしくお願いしたいと思います。 そういう中で、我々としては前回提案をされました、厚生労働省の提案というのは、 生活保護制度を根幹から変えかねないものでありますので、我々は十分な議論が必要で はないかと思います。これは、地方の一致した思いでございます。是非そのところも御 留意をいただきたいと思います。 そして、見解も数点確認をしておきたいと思いますが、先般厚生労働大臣の方から説 明要旨ということで説明があったことになっているんですが、その説明要旨の中で、1 つは厚生労働省の見直し案の中にあります、地方に生活保護基準の設定権限を移譲する くだりが7ページにあったかと思いますが、そういう中で生活扶助だけ国が定める指針 の下で、国の関与を明示しておられますけれども、生活扶助と他の扶助で地方の基準設 定権限に差があるというお考えをお持ちなのかどうか。また、差があるとすれば、その 考え方を大臣の方からお示しいただきたいと思います。 住宅扶助の見直し案では、保護の実施主体が自ら基準を設定する。そしてその財源は 実施主体の一般財源で賄うということになっております。今、木村委員の方からも住宅 扶助については、詳細な御紹介も含めての説明もございましたけれども、権限と財源を すべて実施主体ということになれば、これは自治事務にするということなのか、仮にそ うであるとすれば、我々が先ほど申し上げた生活保護は非保護者の暮らしや営みを全体 として、衣食住全般にわたって考えると、この考え方にも反することになりますけれど も、これについて大臣はどういうふうにお考えになっているのか、是非この辺もお教え いただきたいと思います。 第2は、これまでも繰り返し申し上げてまいりましたけれども、この協議会では給付 の適正化についての議論を我々は積み重ねてきたというふうに承知しているわけであり ます。厚生労働省の見直し案は、この給付の適正化につながる見直し案ではないという ふうに我々は思っておりますけれども、この点について是非また大臣の見解をお伺いし たいと思いますし、これは給付の適正化につながるということであれば、どの部分が実 際給付の適正化につながると考えておられるのか、その論拠も是非具体的にお示しいた だきたいと思います。 もう一つは、我々は実は三位一体の改革につながるということで、今、総務副大臣も おっしゃいましたけれども、1兆円の改革案を既にリストアップさせていただいておる わけであります。厚生労働省は、どうもこの生活保護にこだわっておられるというふう に我々は受け止めざるを得ないんですけれども、厚生労働省の示されたこの生活保護の 見直し案が、我々がリストアップした項目より、なぜ三位一体改革にふさわしいとお考 えなのか、その辺のところの理由を是非お示しいただきたいと思います。 是非、次回の協議会で、大臣御自身のお言葉で御説明いただければと思います。 (川崎厚生労働大臣) 次回に細かくお話をしなければならないと思いますけれども、さんざん申し上げてお りますとおり、基本的には生活保護費の支出を受けている方々が、就労する、もしくは 医療で入院して治療を受けている。その方々をできるだけ、例えば在宅、できるだけ福 祉施設という形で転換を促していくことが必ず改善につながると考えております。ここ が多少意見の違いかもしれません。しかし、私どもは地方の皆さん方と私どもが一体に なってやっていかないと、就労支援なり、今の入院の問題なりというのは解決できない と思っております。そこは一言だけ申し上げましたけれども、あとはまとめて次回に申 し上げたいと思います。 (岡ア高知市長) それでは、私の方も意見を申し述べさせていただきたいと思います。1つだけ、前前 回ぐらいでしょうか。白書との関係も申し上げましたが、直接局長さんと意見のやり取 りをするつもりはないんですが、地方の実施体制が、生活保護の地域間較差と今、関係 がないというふうに局長はおっしゃいまして、私どもはそのことを主張しておりました のでそのとおりだと思うんですが、実は今年度の白書の130 ページに生活保護の地域差 に対する考え方の中で、地方自治体の実施体制の問題や取組み状況もその一因として考 えられると、実はこの白書の中に書かれております。 こういうことをされますと、非常に地方と国との信頼関係が損なわれますので、こう いう文書を書くときには慎重によく検討して書いていただきたいということを申し上げ たいと思います。 先ほど、川崎大臣も少しおっしゃられましたが、生活保護の急増をいかに抑え込んで いくかということは、我々地方にとっても大きな問題だと考えております。これは負担 の問題ではなくて、前回も少し何点か申し上げておりますが、もう少しその点につきま して突っ込んで触れますと、例えば生活保護世帯の約半数は高齢者世帯でございます。 これは自立支援のできない高齢者世帯でございます。これが東京都でも非常に拡大して おりまして、いずれ大きな問題になると認識しておりますが、我々がケースワーカーを やっておりました時代は、まだ介護保険制度もございませんでしたし、いわゆるコーデ ィネーターとしてのケアマネもいませんでしたので、この部分をすべてケースワーカー がいろんな形でケアをしております。 ただ、介護保険ができて、コーディネーターができまして、この部分のケースワーカ ーの担う部分というのはほとんどケアマネの仕事になります。ということは、高齢者の 部分の生活保護を少し別制度に切り替えると、ケースの数から言うと50%おりますから、 ケースワーカーの数は半分に抑制ができます。これは、具体的に80ケースに1人という 国の一定の基準がありますから、どのぐらい削減できるかというのはすぐ計算できます。 この部分は、いろんな意味で改革しようと思ったら改革に移せる部分でございますし、 今、ケースワーカーが高齢者に対して行っておりますのは、やはり安否確認と介護とか そういうところのつなぎをやっておるわけでございまして、この点につきましては、例 えば、ケースワーカーが直接やらなくても社会福祉協議会とかで十分担える部分でござ います。そういう意味で、高齢者に対する生活保護制度等をいろいろ考え直したらどう かということを含めて提案しております。 この点、中身にすごく突っ込みますと、やはり具体的には社会保障審議会の生活保護 部会ということになるんでしょうから、それ以上ここでは踏み込みませんが、こういう ふうに我々も地方側から具体的な提案をしておりますので、そのことももう少し我々と しては議論していただきたいということです。 そういう具体策がないと、単なるお金を振り替えるという問題では抑制はできません。 これは、地方だけではなくて大都市部をいかにして抑制していくかというのが、国にと っても大きな課題であるはずですので、そのことをもう少し突っ込んで、本格的には社 会保障審議会の役割でございますが、もう少し議論をする時間が要るんではないかと思 っております。 それと我々として、もう一つ懸念がありますので申し上げておきますが、この国の4 分の1負担を減らして県へ付け換える。また、市へ一般財源化で持ってくる。このこと に対する地方側の反発は、相当強いものがございます。政令指定都市は、11月4日の段 階ですぐ声明を出しております。それから、九州市長会も事務の返上も辞さないという ことで、九州市長会が全体でそういう声明を出しております。 我々は、今ここで協議を真摯に重ねているつもりでございますので、すぐ事務返上と いうことは、今はそういう時期ではないと思っているんですが、この案を厚生労働省が どうしてもこだわるなら、そういう動きが活発化するということは避けられないと思っ ております。 一番最初、私の発言の中で少し申し上げましたとおり、やはり地方と特に厚生労働省 とはいろんな意味で信頼関係がないと制度設計ができません。介護保険がその最たるも ので、介護保険の前の国保の制度の導入のときもそうでした。そういう信頼関係がない と、年金の問題にしても、今、社会保険庁が市町村から1回取っていった経緯がありま すが、年金の徴収で行き詰まっています。この件についても、いろんな新聞報道では、 またこれを市町村へ戻したらどうかという報道もなされております。 それから、さっき申し上げました75歳以上の後期高齢者、これもだれが保険者になる のかまだ決まっておりません。 そういうことで、いろんな意味で信頼関係がなければ制度設計はできません。これは 本省の方々が一番よくわかっていると思うんですが、そのことを十分踏まえながら、慎 重に判断していきたいということです。よろしくお願いいたします。 (川崎厚生労働大臣) 1点目の具体的な提案については、先ほど局長からも少し触れましたけれども、我々 も真摯に受け止めて作業に入ると。これはそのとおりでございますので、どうぞよろし くお願いいたします。 それでは、木村委員、お願いします。 (木村地方財政審議会委員) 私も、本日の厚生労働省の考えを拝聴しまして、まだこだわっておられるのかなと思 った点が1つございます。 それは、3ページに「また、『地方自治体における保護の実施体制や実施状況には地 域間で較差があり、これらの指標と保護の動向の間の相関のあるデータ等も見受けられ るが、相関のないデータもある』ことも共通認識とされたことにも留意しなければなら ないと考える」というのがございますが、共通認識というのは意見が分かれているとい う認識ということだけですね。厚生労働省が出した、相関があるデータの分析方法につ きましては、こういった問題点もあるということを、地方団体側は定義いたしましたし、 地方団体側は相関関係がないということを示しております。しかし、厚生労働省白書に、 先ほど市長もおっしゃったように、地方自治体の実施体制の問題や取組み状況もその一 因として考えられるという記述があって、聞くところによりますと、総務省の調整化が 抗議したにもかかわらず協議打ち切りという形でされたと。これは、むしろ来年の厚生 労働省白書で訂正をしていただきたいと思います。 それから、2番目でございますが、生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議 会の開催についてという文章の中で、給付の適正化に資する改革を推進することがミッ ションとしてございましたけれども、先般厚生労働省から出された案が、どのように制 度の合理化に資する改革なのかということを、これは是非御説明願いたいと思います。 3番目でございますけれども、地方案が提示されましたので、これは地方が給付の適 正化に資すると申しておりますので、是非ここでも議論していただきたいと思います。 大臣が先ほどおっしゃったことに対しては、非常に恐縮でございますけれども、私がい ろんなところでヒアリングした限りにおきましては、就労支援というのは決して新しい ことではなくて、ケースワークでさまざまに地方はいろんな形で、私その場に居合わせ たこともございますが、もう既にこの30年取り組んできておられますので、それほど新 しい国と地方の財源配分を変えるぐらいに新しいことだとは考えられません。 それで、退院のあれについても私は同じだと思います。 以上でございます。 (川崎厚生労働大臣) 京極所長、お願いします。 (京極国立社会保障・人口問題研究所所長)  機会がほとんどないので短くなって、次回は資料を用意させていただきたいと思いま す。私は前回数字の話も申し上げたけれども、やはりこの生活保護の見直しに関しまし ては、数字の話よりむしろ国と地方の関係についてきちっと整理するということで、そ のことによって非保護者が、先ほど大臣がおっしゃったように、自立した生活に一歩で も近づけるかどうかという方向で適正化が行われるということだと思います。 ちょっと第三者的な言い方をして恐縮でございますけれども、長年福祉行政を専攻し てきた者として、この10年間の変化を見ますと、やや攻守逆転していると。かつては、 厚生労働省は機関委任事務を死守するというか、総務省はむしろ徹底的に地方分権化と いうことで争いまして、結果的には機関委任事務が廃止され法定受託事務になりました。 現在を見てみますと、確かに言葉は機関委任事務という言葉は使っておりませんけれど も、法定受託事務という言葉で機関委任事務的なものを総務省ないし地方六団体は維持 すると。逆に厚生労働省は、もうちょっと地方の責任を追及するというふうに、10年間 で攻守逆転したところがございまして、ではどうなのかと。 やはり私は、この法定受託事務ができたことが、やはり歴史的には大きな意味があっ て、かなり国と地方でどういう関係で、勿論国が非常にウェートがあるものと地方にウ ェートがあるものがありますけれども、いずれにいたしましても、国と地方である福祉 行政事務を担う必要があるわけで、単になる国の下請けで、県とか市町村がやることで はない時代になってきたという点では、やはり地方分権化ということを、生活保護にお いても進めるべきだと、かねて思っておりまして、何分の1かどうかは別としてですね。 生活保護に関しては、実はずっと制度改革については昭和21年に原形ができて、25 年に改正されまして、それ以来ほとんど大きく変化ございません。平成2年の福祉関係 法の改正のときもそうでございましたし、平成12年を前後とした基礎構造改革の中でも、 生活保護には全く変化なしということで来ましたけれども、果たして戦後直後できた、 何もなかったと言ったら語弊がございますけれども、他法他施策といってもほとんど何 もない中でできた生活保護体系が、現代の21世紀の社会で当代無比なものという考え方 は、恐らく国民の多くの方々もそう思ってないと思いますので、それはきちっとすると。 ただそのときに、平成12年10月に有識者会議が首相官邸で開かれまして、21世紀に 向けての社会保障というものが、小渕内閣、森内閣と続きまして報告が出まして、その 最後のまとめの中でも、今日社会保障制度は、国と地方公共団体の間の役割分担の下で 進められておりと、社会保障の総合的な推進に当たっては、この観点も十分留意するこ とが必要だと。ただし、その会議では必ずしも十分に議論されてないこともまた事実で ございます。しかし、いよいよそういう時期に来たということで、この生活保護と児童 扶養手当の在り方に関する検討会については、その試金石というふうに私は思っている わけでございます。 その点で考えますと、やはり前にも申し上げたように、例えば、 県の役割ということを言う前に、生活保護の方が特別養護老人ホームに入所されますと、 生活保護を受けていたときは4分の3国が給付しているわけですが、特別養護老人ホー ムになって負担なしで入った場合は、これは何と2分の1になるんです。同じ人間が生 活保護施設、あるいは生活保護体系から老人福祉の体系に移れば2分の1になってしま うんです。それでいいのかという矛盾があるんではないか。 他法他施策が非常に充実してきた中で、やはり都道府県や市町村の役割が非常に大き くなってきていることも事実でございますし、そういう中で国と地方がどういう連携を 持って非保護者の生活自立を助けるかということで考えますと、旧来の、ともかく原則 的には国が全部見て、一部、これはかつては10分2を地方が見ておりまして、これが1 0分の2.5 になりましたけれども、それでいいのかなと、お金のお付き合いというだけ でいいのかなと。もう少し体制的にも、または財政の面でも、あるいは権限の面でも、 ある程度持っていただいて、人々の自立した生活を支援するというふうにしかるべき改 革をしていく必要があるんではないかと思っております。 数字の話は今日は申し上げませんけれども、基本的な視点という点で、やはり国の機 関委任事務的な発想を引きずって、これからもそれでいいというのは、私は極めて納得 できないと申し上げたいと思います。勿論地方自治体の方々の御意見、現実に心配な面 が多々ございますことは十分承知しておりますけれども、それを踏まえてまた新たな改 革も可能なんではないかと思っております。 (川崎厚生労働大臣)   それでは、山崎総務副大臣。 (山崎総務副大臣) 今の厚生労働省の御説明について、次回考え方を申し上げるということで済まそうと 思ったんですが、今、京極先生のお話を伺っていた中で、これは別に大臣からというこ とではなく局長からで結構ですから、次の機会に私の頭を整理する意味でも教えていた だきたい点を申し上げたいと思います。 と申しますのは、それなりの京極先生のこの問題に対する視点というものはあるんで すが、私の立場から見ますと、ここに1点抜けているところが、今回のこの議論という のは三位一体の改革というものに関連してこの会が持たれているというところです。と いうことは、三位一体の改革について厚生労働省はどういうスタンスでおられるのか。 私どもの理解するところの三位一体の改革というのは、勿論国と地方の役割分担はあり ます。しかし、今ここで数字の問題が出ていませんと言いますが、みんなの頭の中には 税源移譲の数字の頭がどうしたってあるわけで、そのときの会計にあったのは、地方の ところの補助金その他で、国の方から地方がやっている仕事を縛るのはできるだけやめ て地方に任そうと、そしてやらせようと、その代わり地方が自分たちでやれば、そのお 金が圧縮できるはずだから、これは国の財政、地方の財政に資するものであると。この 視点があったと私どもは理解しております。 その点に関して、先ほど来何回も申し上げている、どこからも出ているんですが、こ ういう内容のものは我々の地方にとっては裁量の余地がない、やらなければいかぬこと だというのがそこにあるんです。その点についてのお考えが出てない。もしこの文章を 素直に受け止めれば、設定権限を地方に移譲するということは、圧縮するという前提だ ったら地方は自分たちの権限で、今ある生活保護の水準を下げてやりなさいと受け止め られてしまうんです。 その辺について、今の私の申し上げたことが、そうではないということを是非次回ま でにお示し願いたいと思います。 (川崎厚生労働大臣) 竹本財務副大臣、どうぞ。 (竹本財務副大臣) いろいろ議論が沸騰しておりましたけれども、幾つかについて申し上げたいと思いま す。 メインは当然のことながら国と地方の役割分担、またはその費用負担をどうするかと いうことでありましたけれども、議論のやり方として本協議会が設けられて熱心に討議 を重ねておりますので、私は昨年の政府・与党合意を踏まえて、生活保護制度、それか ら児童扶養手当制度の在り方について幅広く検討するという、この会議できっちりとし た結論まで持っていくのが本筋だと思っております。 さてその中身でございますけれども、国、県、市が、重層的に行政サービスを提供し ている中で、生活保護について都道府県の関与がどうかということでございますが、現 実を見ますと非常にその関与が薄くなっているわけであります。財政負担で見ましても、 県と市の割合は、既に1対9となっておりまして、町村合併が進めば更に小さくなると 思います。 また、病院や住宅の問題等によりまして、同一県内で地域的な偏在があり、あるいは 都市間でも偏在がある中で、県が関わることなく市のみが役割を担っているという状態 があるわけであります。 こういった状況を踏まえますと、都道府県の役割を踏まえた制度の見直しは十分検討 に値するのではないかと思います。 住宅扶助につきましては、扶助の設定権限の移譲とともに、一般財源化するという内 容でありますが、地方でより的確な御判断をいただき、運営していただく内容になるの ではないかと思っております。 地方側がこの共同作業の結果については、保護率の地域間較差には、地方団体の運用 体制の問題は関係がない、したがって、地方側が負担を多く持つ必要はないという御意 見もあると思いますけれども、私はその共同作業の中で、地方自治体における保護の実 施体制や実施状況には地域間で較差があり、これらの指標と保護の動向の間の相関のあ るデータでも見受けられますけれども、相関のないデータもあるというのが共通認識の はずだと思っております。木村委員、先ほど御説明がありましたけれども、意見が違う ということが共通認識ということかもしれませんけれども、我々はそういうふうに相関 のあるデータもあれば、相関のないデータもあると、このように見ておるわけでありま す。 それで、地域間較差は、経済情勢等の影響が大きいということにつきまして、地域が 経済問題について全く受身の問題かというと、企業誘致、地域振興など、前回も問題に なりましたけれども、経済問題についても地方団体が一定の役割を担っているのが事実 でありまして、地方経済の帰結である失業率の相違の影響が大きいから地方の問題では ないと位置づけるのはちょっと難しいのではないか。 また、そもそも地方財政や地方税収入自体が地方経済と密接に関係するものでござい ますけれども、三位一体改革はそういう地方経済に関係するものを地方に分権していこ うという考え方に基づくものでありまして、生活保護の説明においてだけ地域格差につ いては失業率などの経済的要因が大きいから、地方とは関係が薄い、あるいは地方では 対処できない、したがって、国が負担を多く持つべきであるということにはならないの ではないかと思っております。 先ほど京極先生が、いみじくも言われましたように、何もない時代に国が5分の1あ るいは4分の3をもって、言ってみれば全責任を持ってやらざるを得なかった、そうい う極限の状態からスタートしたわけでありますけれども、21世紀に向かって既に豊かな 国に入っている中で、やはり各団体がそれなりの責任を果たすべきが本当のところでは ないかと私も思う次第であります。 現時点ということが考えますと、三位一体改革において、昨年税源移譲において3兆 円規模を目指すとされたところでありますけれども、この点については地方側も同様の お立場かと思っております。これを受けまして、いわゆる残り6,000 億円の税源移譲に 結び付き得る補助金改革が問題となっているわけでありますけれども、今回官房長官の 発言を踏まえまして、総務大臣、財務大臣、経済財政政策担当大臣を加えて四大臣とし て、各省に対して要改革額、そのための廃止・縮減策のとりまとめを連絡したところで あります。 したがいまして、こういった現実を踏まえてどのように対応するのが、先ほど山崎総 務副大臣からもお話がありましたけれども、三位一体改革を実現しなければならないと いう大きい枠組みの中で、そして現時点でどのようにこれを解決するかという立場に立 って、この結論を当協議会で出すことが必要なのではないかと思っております。 理想は理想として、現実を踏まえた議論をお願いできればいいのではないかと、私自 身は思っております。 以上です。 (川崎厚生労働大臣) 全員の方に御発言いただきました。私にも質問がございましたし、また厚生労働省サ イドに質問もございましたし、またいろいろな御意見の開陳があり、また京極所長から 今度はペーパーを持ってという御発言までございました。 本協議会は昨年の三位一体改革に関する政府・与党合意で生活保護負担金及び児童扶 養手当の補助率の見直しについて、地方団体関係者が参加する協議会を設置して検討を 行い、17年秋までに結論を得るという話し合いで進んでまいりました。 その中で、先ほど総務副大臣が触れられました、現実の数字の話まで出てきてしまい ましたので、私の方から一言だけ申し上げておきますと、11月8日に内閣官房長官、総 務大臣、財務大臣、経済財政政策担当大臣の四大臣から、各省庁に対し国庫補助負担金 について、それぞれ額を提示して改革案を回答するようにとの要請がございました。6, 000 億のうち厚生労働省に対して5,400 億以上の補助金廃止・縮減案をとりまとめるよ うにという指示があったところでございます。 厚生労働省といたしまして、何でこんな大きな数字が来たのかというのが本音でござ いますけれども、そうした指示を受けた中で今日の会合があったということは、御理解 を賜っておきたいと思います。 なお、いずれにせよ次回に回答せいという話もございましたし、また我々も申し述べ なければならぬこともいろいろあると思いますので、次回また設定させていただきたい と思います。 ただ、日程につきましては、皆さん方お忙しい方ばかりでございますので、事務方の 方の調整ということでよろしゅうございますか。 それでは、早急に事務方で調整をさせますので、また次回よろしくお願い申し上げま す。今日はありがとうございました。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)