05/11/09 第3回自立支援医療制度運営調査検討会議事録           第3回自立支援医療制度運営調査検討会議事録                 日時 平成17年11月9日(水)15:00〜16:26                 場所 厚生労働省17階 専用第21会議室 (議事次第) 1.開  会 2.挨  拶 3.議  事   (1)精神通院医療における「重度かつ継続」の範囲について   (2)その他 4.閉  会 議事内容 ○佐藤座長 定刻になりましたので、ただいまより第3回自立支援医療制度運営調査検 討会を開催いたします。  皆さんにおかれましては、多忙のところをご出席いただきまして誠にありがとうござ います。  まず最初に、精神保健福祉課の新村課長よりご挨拶をお願いしたいと思います。 ○新村精神保健福祉課長 精神保健福祉課長の新村でございます。本日は委員の先生方 におかれましてはお忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。  さて、10月31日に障害者自立支援法が国会において成立いたしまして、来年4月1 日の施行に向けて現在準備を進めているところでございます。国会審議の過程におきま しても、精神通院医療の「重度かつ継続」の範囲についてご議論がございまして、厚生 労働省がお示しをしております3疾患以外にも追加すべきものにつきましては、当検討 会においてご議論いただくことになっておりますので、本日はこの範囲についてご検討 をお願いしたいと考えております。  また、育成医療、更生医療の「重度かつ継続」の範囲につきましては、厚生労働科学 特別研究におきましてデータの収集・分析を行って、現在お示ししている3障害以外に 追加すべきものがあれば、順次対応するということにしておりますので、本日、竹島先 生から研究計画の概要についてご説明をお願いしたいと思っております。  本検討会におきまして、これらの点につきましてご議論をいただきまして、自立支援 医療制度の適切な運営に活かしてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願い申 し上げます。 ○佐藤座長 どうもありがとうございます。  それでは、議事に入る前に、本日事務局から配布されております資料の確認をお願い したいと思います。 ○鷲見課長補佐 それでは、事務局より配布資料の確認をさせていただきたいと思いま す。まず1枚目、議事次第でございます。  資料1、表でございますが、2枚紙になっておりまして、こちらは日精協さん、日精 診さんからいただいたデータを分析した結果でございます。  資料2は日精協さんから提出していただいたデータでございますが、(事例)と書い てありまして、その後、横紙で2枚のものがございます。  資料3は、先ほどお話させていただきました特別研究の研究計画の概要というものに ついて竹島先生から提出していただいたものでございます。  参考資料でございますが、こちらは昭和40年9月15日の通知を載せさせていただい ております。  それから、既に先生方にはご確認いただいておりますが、前回の第2回の議事録につ いて配布させていただいておりまして、この議事録については、既に厚生労働省のホー ムページに掲載されております。  資料の不足等ございましたら、よろしいでしょうか。 ○佐藤座長 よろしいでしょうか。  それでは、議事の(1)精神通院医療における「重度かつ継続」の範囲について入り たいと思います。まず最初に、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお 願いいたします。 ○鷲見課長補佐 それでは、資料1に基づきまして説明させていただきます。  こちらは日精協さん、そして日精診さんから提供していただいたデータを事務局で分 析というか、順位づけというものをさせていただいたものです。これまで疾患名、IC Dレコード別にいただいているものなのですが、それらについて罹病期間、1年以上、 3年以上、5年以上。それから、医療費月額という形で分析をもともとしていただいて 提出していただいたものでございますが、これらにつきまして、まず1枚目が日精協さ んからいただいたデータでございますが、9,192例の患者さんについて載せたものでご ざいます。  罹病期間につきまして、例えば今回1年以上というものについて見ていただくとわか るのですが、F2の患者さん、つまり精神分裂病、分裂病型障害及び妄想性障害という 患者さんなのですが、罹病期間が1年以上の患者さんは96.9%となっております。こ ういう場合、この下をずっと見ていただくとわかるのですが、数字が一番高いので、順 位としては1という形でつけさせていただいております。  その次の双極性感情障害は、1年以上について94.9%ですが、こちらは5とつけさ せていただいております。こうした感じで、1から14までの順位づけというものを1 年以上、3年以上、5年以上でつけさせていただいております。  「期間総合」と書いてある項がありますが、これについては罹病期間のそれぞれの順 位づけの足し算について載せておりまして、F2については、1+2+2=5になると いうことでございます。  同様に医療費月額ですが、2.5万円以上、5万円以上、月平均金額を載せております が、F2についてすべて1ということで、金額総合は3という形になっております。  これらについて、「重度かつ継続」というものが、そもそも医療上の必要性から高額 な医療費が継続的にかかるということでございますので、これらについて罹病期間、医 療費月額で分析をしまして載せております。  合計点数、こちらは合計の足し算で、例えばF2であれば、5+3=8、かけ算とい う考え方もあるかと思いましてやりますと、5×3=15としております。最終順位と しては、両方とも、精神分裂病/F2について1位ということでございます。  こうしたような形で、F2からF9まで順位づけを行いまして、また、さらにこれま では載せておりませんでしたが、気分障害全体という形で改めて区分を設けまして、一 番下に載せております。  こうしたような分析をいたしまして、現時点ではお示ししている3疾患、「重度かつ 継続」の対象疾患というのが、これまでF2の統合失調症(精神分裂病)、F31の双 極性感情障害、これが狭義の躁うつ病でございます。G40のてんかん、これもこれま では難治性てんかんという形ですが、分類できませんので、てんかんでまとめておりま すが、この3つをこれまで「重度かつ継続」の対象としておりました。  これと同等以上のもの、つまり、これよりも上のランクのものについては、基本的に はこうした分析結果に基づきますと、「重度かつ継続」の対象とすることが妥当ではな いかというふうに考えまして、黒で色をつけさせていただいているものでございます。  実は精神遅滞につきまして、F7でございますが、こちらは白抜きとなっております。 なぜ、こういうような形になっているかと申しますと、前回の会議において、委員の先 生から、精神遅滞については、基本的に精神遅滞そのものに係る医療ではなくて、それ に付随する症状であったりとか、疾患について通常治療されるものであるし、そういう 場合であれば、逆にほかの、こちらに書いてあるような疾患群の方で拾えるのではない かと。なので、「重度かつ継続」の疾患の対象とすることはふさわしくないのではない かというようなご指摘もございましたので、今回こうした形で色づけをさせていただい ております。こちらは事務局の案でございまして、黒く塗りつぶしているものが「重度 かつ継続」の対象範囲としたいというものでございます。  1枚おめくりいただきまして、同様な形で日精診さんからいただいたデータについて も分類させていただいております。後ほど日精診の三野先生から補足いただけるかと思 いますが、こちらは日精協さんのデータとは傾向が異なっております。1つには、例え ば一番上のF5については14例、患者さんの数が非常に少ない疾患群があるというよ うなお話ということが関連しておりまして、例えばF8(13例)、F7(11例)とな っております。また、人格障害については、後ほど三野先生からお話もあるかと思いま すが、少し傾向としては、疾患群、ここの中に入れるものとしては、あえて「重度かつ 継続」に入れなくてもいいのではないかというようなお話もございましたので、今回基 本的には日精協さんからいただいたデータに基づいて事務局の案を作成させていただい たものです。  以上でございます。 ○佐藤座長 ただいまのご説明についてご質問、あるいはご意見ございましたらお願い したいと思いますが、いかがでしょうか。 ○樋口構成員 確認なのですが、今の資料1の最初のページの一番下のF3/気分障害 全体と書いてございますが、この全体という意味は、上の双極性感情障害も含めて気分 障害としたということでよろしいでしょうか。 ○鷲見課長補佐 そうでございます。ですので、F31、F33含めた気分障害全体とし てお考えいただければと思います。 ○樋口構成員 わかりました。 ○佐藤座長 そのほか、いかがでございましょうか。特に確認事項がありましたら、最 初にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。 ○三野構成員 この表を見させていただきますと、F0、F1、F2、F3というFの 1桁コードで「重度かつ継続」というふうに考えてよろしいのでございましょうか。も ちろんG40も含まれると思いますが。 ○鷲見課長補佐 G40はてんかんで2桁ということになりますが、Fのコードについ ては、1桁ということになります。 ○佐藤座長 よろしいでしょうか、その意味についても。 ○三野構成員 よくわかりました。 ○花井構成員 今の説明では、F3全体ということで、これに関しては賛成したいと思 います。これまでF31/双極性感情障害だけが抜き出されておりましたけれども、実際 の臨床場面では、当初から双極性感情障害と診断、確定できる例もありますけれども、 そうでない例も結構ある。一定程度1年とか見て、今までうつだけかと思ったら躁状態 が出てきたと、双極性だったという例もありますので、そういうことから考えるとF3 全体にまとめていただいたというのは結構かと思います。 ○佐藤座長 そのほか、ございますか。三野先生、お願いします。 ○三野構成員 データの分析に関しまして、日精診のデータの日精協と齟齬を生じてい るものについて解説といいますか、私どもの判断を述べさせていただきます。まず、大 分データが違いますが、これが本当に私どもの今臨床でやっている診療所のデータをそ のまま出しましたので、本日お配りした参考資料の後の部分にある判定指針でございま すね。ここに従えば、当然極めて少数のものになるような疾患群がございます。例えば F5とかF7などは、これは単独ではなかなか判定指針にひっかからないということで 非常に少ないのは当然だろうと思います。この少数の少ないものであえて出すというの は極めてその方々が高額の医療費を必要とするということがあるので、ある程度高くな る部分もあります。これは統計的に言えば、ある程度除外してやむを得ないのではない かと考えます。  そして、日精診と日精協のデータで少し違うのは、デイケアのパーセンテージなどの バイアスがかかっているということが2点目に言えるだろうと思います。それから、F 7、メンタルリタデーション(精神遅滞)でございますけれども、これはICD-10のこ れを持ってきておりますが、これも明記しておりますけれども、精神遅滞、精神発達遅 滞だけで想定されるので、必ず何らかの精神障害を合併して初めて精神障害になるわけ でございます。これだけを単独で出すというのは、先ほど鷲見課長補佐からご指摘あり ましたように、好ましくないだろうと思いますので、除外するのはやぶさかではないだ ろうというふうに思います。 それから、私どものF6/成人の人格及び行動の障害が比較的多数出ておりまして、 これがかなり高額かつ罹病期間も長くなっております。これは私どもがふだん使ってお ります臨床診断であるDSM-IVでは2軸診断になっておりまして、1軸でまず精神障 害があって、人格障害は2軸の診断として別に想定される。つまり人格障害がありつつ、 なおかつ主病名としては精神疾患があるわけでございますので、あえてここで人格障害 を32条の主病名として出したのは、それに焦点を当てなければ治療が困難であるとい うことを強調したいがために出したわけで、結果的にはほかの精神障害F2であるとか、 F3の重度のものであると考えられます。逆に言いますと、F6を指定してしまえば、 逆に混乱が起きるという意味で、これは除外すべきではないかと思っております。  それから、先ほど花井構成員からもご指摘ございましたが、F3をF31、F33とい う形で疾患をかなり細かくFの2桁で分類するのは臨床的に言いますと困難なことでご ざいまして、ある方が最初はF33、F30でいってもF31になることもあれば、途中で 診断が変わり得ることもあるという診断的な問題もございます。これはF3全体で規定 するのが好ましかろうと思います。  ただ、しかし、一方で、軽症のうつが入るのではないかという危惧もあるだろうと思 いますが、何度も申し上げますが、参考資料に添付されておりますような判定指針に従 えば、このことは除外できるということで担保できるのではないかと思っております。  そうして申し上げると、全体として、先ほど確認させていただきましが、ICDコード において、Fの1桁で「重度かつ継続」を規定するという考え方は、ある意味、状態像 で対応しているということは言えると思いますので、私どもは十分に高く評価したいと 思っております。  以上でございます。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。今、三野先生からは、事務局案について のご意見いただくとともに、日精診のデータについての考え方もいただいたわけでござ いますが、特に三野先生の日精診のデータに対する解釈についてご意見はございますか。 特になければ、先生の解釈を我々も理解したというふうに考えたいと思います。  そのほかにいかがでございましょうか。 ○樋口構成員 今のご発言とも関連して、私もそれを、支持させていただきたいと思い ますのは、特に気分障害というものの診断は、臨床の現場ではなかなか2桁のところま での診断をつけるということは非常に困難であると思います。これは先ほどもご指摘が ありましたように、うつ病だと思っていて、何年も治療していて、そのうちに初めて躁 病相が出てきて双極性になるというのは、これは日常よく経験されるところであります ので、そのあたりを分けてしまうことはなかなか現実的には医療の現場では難しい。概 念的にはそういうものが成立するわけですが。これが1点でございます。  同様のことが、今度はてんかんに関しても、最初たしか難治性のてんかんというふう に出されていたと思いますが、難治性のてんかんの定義というのは、学問的にはあると 思いますけれども、それが実際の臨床の場で、これは難治で、これは難治でないという ことを即断、決定できるかというところもございますので、これもてんかんというもの で一括りにせざるを得ないのではないかと私も判断をしております。  以上でございます。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。これまで特にF6については、前回も三 野先生からも同じようなご意見がありましたし、今、てんかんについて、また気分障害 全体にまとめたこと、F3について、これらの事務局案について肯定的なご意見をいた だいたところでございますけれども、そのほかに今事務局からいただいた内容について ご意見、ご質問ございましたらお願いしたいと思いますけれども。特にございませんで しょうか。  先ほど三野先生からは、その後の資料のことも含めながらコメントをいただいたわけ でございますけれども、もし先ほどの事務局の案についてご質問、ご意見等がなければ、 次に進みたいと思いますが、よろしいでしょうか。  資料2について、日精協の花井先生からぜひお願いしたいと思います。 ○花井構成員 それでは資料2について説明させていただきます。  最初に2枚目の一番下に書いてある「重度かつ継続」の対象範囲について、従来から (1)としては、医療保険の多数該当の者と、(2)として疾病、症状等から対象となる者とい うふうに2つに分けられておりましたけれども、過日、厚生労働省から、きょう説明の あったお考えも我々伺いまして、先ほど事務局から説明のあったFコード、F0、F1、 F2、F3、それとG40を疾患から対象となるものとすることに関しては、それはそ れでいいのではないかと思います。ただ、我々としては、(2)に書いてありますように、 疾患以外に症状等から対象となるものをぜひ「重度かつ継続」の対象範囲の中に加える ということを提案したいと思っております。  次のページめくっていただきますと、その理由を簡単に書いてありますが、今、拡大 された疾患以外に関しましても、長期間にわたって相当額の医療負担が発生する精神障 害者は結構少なくありません。そういう人たちが疾患の枠から外れても、自立支援医療 制度の制度としての公平性の観点からきちんとつけるということが担保される必要があ るだろうというふうに思っております。そのために(2)の項目をぜひつけ加えていただ きたいということです。それは判定方法に書いてありますように、判定指針に基づいて 精神保健指定医が判定して、「重度かつ継続」であると認めるということを診断書に記 載すると。そのことによって加えていくという仕組みを(2)として提案したいというこ とです。  「重度かつ継続」に関する判定指針としては、先ほどのFコードで対象設定された精 神疾患以外についても、以下の病状を示す精神障害のため、インテンシブな通院医療を 継続的に要する者。(現在病状が改善していても、その状態を維持し、かつ再発を予防 するためにインテンシブな通院医療を継続する必要のある場合を含む。)と、このこと を精神保健指定医が判断した場合には「重度かつ継続」とするというのをぜひ加えてい ただくということです。  その前の状態像としましては、下に(1)情動及び行動の障害と(2)不安及び不穏状態 という2つの項目を掲げておりますが、これは実はきょうの参考資料にありますように、 参考資料の5ページから最後まで7ページ、これは現在適用されている32条の通院医 療費の判定指針、これに基づいて実際運用されているわけですが、これが第二のところ に、精神障害及びその状態像からその対象を規定していまして、これが1から9つまで の状態像に分かれております。先ほど拡大された対象疾患、これに該当する状態像を除 いていきますと、6ページ目の5番目の情動及び行動の障害と6番目の不安及び不穏状 態というものが残るわけでして、これを1つの状態像の規準として、先ほど言ったよう にインテンシブな医療を要すると判定した場合には「重度かつ継続」と判定するという 仕組みにしていただけると、先ほど言ったような対象疾患から除かれる部分についても 実際カバーできるというふうに考えておりますので、その点はぜひ対象疾患の拡大と併 せてご検討いただきたいと思っております。  先ほど言われた対象疾患以外に「重度かつ継続」に該当するような人がいるという事 例の1つとして、最初に掲げた事例を1例添付しておりますので、ご紹介したいと思い ます。この事例は鑑別不能身体表現性障害、F4のグループに入るものですけれども、 簡単に読ませてもらいますが、初診時43歳、家具製造販売会社の事務職で妻と子供2 人の4人生活。  生活史、既往歴に特記すべきものはない。  平成XX年4月に同僚の女性職員が課長に昇進した頃から、その課長の陰口を職場で 吹聴したり、些細なことでクレームをつけるようになり、時には大声を上げるなど、い らいらが目立つようになった。職場雰囲気が気まずくなり上司に注意されるようになる のと並行して、腹痛、嘔吐などの理由でたびたび欠勤するようになった。朝起きられな い、体調不全、意欲が湧かない、早朝からの腹痛・嘔気を訴え、6月に初診しておりま す。  腹痛、嘔気は平日に強く休日には比較的軽い。理学的所見なく、諸検査でも異常を認 めず器質的疾患は否定的であった。軽度のうつ気分を認めるものの、気分の日内変動は なく、希死念慮・体重変化・不眠は認めなかった。当初はうつ症状を伴う適応障害と考 え、抗うつ剤、抗不安薬による薬物療法を行いつつ、2ケ月程度の休職診断書のもとで 支持的精神療法を行うも、職場復帰が近づくとともに再燃を何度か繰り返しています。 症状増悪に伴い家族関係も悪化して、家庭での居場所が厳しくなったことを契機に抑う つ気分がさらに増悪するために薬物調整と環境調整のために入退院を3回ぐらい行って おります。最後の3回目の入院においては、退院直後の職場復帰は困難であると考え、 退院後3ケ月間の精神科デイケア通所を勧めたところ、対人関係、作業種目などはスム ーズに実施できるのですが、早朝の腹痛は相変わらずよくなったり、悪くなったり消長 を繰り返すという傾向にありました。  このような経過から、診断としては適応障害よりも身体表現性障害を念頭に置いて、 症状コントロールと、症状の誘因となるストレスへの対処能力の向上を目的とする、継 続的かつインテンシブな治療が必要と判断した。そのため職場の上司の了解のもと長期 休職し、問題解決プログラムを中心とする集団精神療法及び精神科デイケアの通所を1 年間継続しました。腹痛等の身体化症状は次第に改善し、半年間の集団精神療法の終了 後には短時間の職場復帰訓練と精神科デイケアとの併用を行いました。上司の協力もあ って、半日勤務、隔日勤務へと進み、週1回の通院医療で職場復帰が可能となりました けれども、1ケ月程度で再び身体化症状が増悪し出社不能の状態に陥り、そのため職場 も解雇というか、本人も了承して職場をやめるという状態になりました。以後、一時期 は通院治療も滞り、日中家に引きこもり、好褥的になる。本人も現状を何とか乗り越え たいという気持ちもあって、再びデイケア通所を行うようになり、時間給による院内清 掃ですが、「職業前訓練」とデイケアを併用して新たな就労の準備を試みていると。  この例については、反復性うつ病性障害の診断規準は満たしていないものの、繰り返 す抑うつ気分と相まって身体化症状が出現することから、通常の外来薬物療法、精神療 法に加えて、集団精神療法等のインテンシブな治療を提供する必要があった。さらにこ の例においては、早期の職場復帰を目指す観点から、休職中においても精神科デイケア を継続することにより、日常生活リズムを保ち、患者へのストレスをコントロールしつ つ対処能力の段階的な獲得を促すことが治療上効果的であった。  こういうように、先ほど対象とされた疾患以外であっても、結構継続的にインテンシ ブな治療を要する障害者が結構少なくないということもありますので、先ほど言った (2)の「重度かつ継続」の範囲の指定医による認定ということはぜひ併せてご検討願い たいと思います。  以上です。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。ただいま花井先生からは幾つかの提案が あったと理解しておりますが、1つは範囲についてでございまして、次は判定の指針と いいますか、また、それをどなたが判定するのか、そういうことでございました。範囲 に関しては、事務局案でいいのではないかと。ただし、そこから漏れる方については、 症状等をもとにして拡大的に運用できないか、こういう話でした。特に範囲の拡大とし てデイケアを含むサービスを受けた症例を提示いただきましたけれども、最初に範囲に ついてお話し合いしていただいて、その後で、どんな基準でだれが判定するべきかをお 話しいただく順序にしたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。範囲の拡大につ いてご意見がございますか。 ○三野構成員 私ばかりしゃべりまして申し訳ございません。今、花井構成員が提出さ れました、例外的かもしれないけど、しかし、インテンシブな治療が必要だ。このよう な形で診断書によって判定をして、「重度かつ継続」として治療を要すると。救い出す ということは非常に重要なことであろうと思います。たとえ例外的なものであるにせよ、 今後、竹島先生にこれから調査研究をしていただけることと思いますが、疾病構造の変 化によって様々な病態が重症化するということはあり得るだろうと思います。この自立 支援医療制度がどのような形で制度持続性を保つという意味でも、このような症例とい いますか、ケースを積み上げていくという意味で、ぜひともこのような形での状態像に よる規定を設けていただきたいというのが私どもの意見でございます。 ○竹島構成員 私どもの特別研究の一環として、実際に現場の医療機関の先生方にヒア リングをさせていただいてきたところであります。その中で共通して出てきていること としましては、いろんなカテゴリーの中に少数ずつではあるが「重度かつ継続」の対象 とするべき事例がある。例えばひきこもりで、精神病的症状を一時的に呈して、その中 で本人が不安になって治療に来ているのだけれども、精神科デイケアで就労を支援して いくことによって、本人が今の苦しい状態から数年かけて抜け出ることができるといっ た事例とかありまして、精神科医療が適切に絡み、インテンシブな治療を行うことによ って、その人を救える事例というのがあるという感じがいたしております。花井先生か ら出されているのは1つの現実的な方策なのではないかと思います。  ただ、1つだけ気になりますのは、通院公費制度の長い歴史の中で、例えば神経症性 障害という診断だけでおおむね通院公費の適用になるという地域もあるとだけ把握して おります。指針は非常によくできていると思いますが、この指針を適正に運用していく ための何らかの具体的な物差しといいましょうか、地域差によって国民に不公平が起こ ってくるということがないような、臨床的な判断に基づきながら、判断基準の明確さを 求めていくというような書式であろうとか治療計画であるとか、そういったものを示し ていくことによって、今提案されていることが国民の方から見ても不公平でない、いい 制度であると支持されていくのではないかと考えています。基本的には、花井先生の言 われていることを、私ども特別研究でお聞きした話とかなり一致していると思っており ます。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。今、竹島先生からは、花井先生の方から の拡大のあり方についてはいいのではないか。ただし、その指針というものに地域差、 その他の不公平が生じないような何か手だてが必要ではないか、そういうご意見をいた だいたのですが、拡大といいますか、範囲について、そのほかご意見ございますか。 ○桑原構成員 きょうの議論をいろいろと伺っていて、私も、「重度かつ継続」を2つ のカテゴリーに大別して、それぞれの認定要件を定めるという提案は、非常にリーズナ ブル、妥当であるとの印象を受けております。ただ、やはり、新たに追加提案された F4からF9の疾患の方については、非常に判定の難しい事例が出てくると思います。実 際、本日の資料提示された事例を見ても、相当な経験を積んだ精神科医師、入院とか外 来も含めた精神科医療の経験を積んだ医師にして初めて適正な治療が可能な事例である と思います。従って、制度本来の趣旨をはっきりと踏まえた「重度かつ継続」の判定が なされるためには、その診断・治療にあたる医師の資格要件を検討することが必要です。 このことは、また後ほど議論になるのかもしれませんが、そういったことも1つの前提 条件として考える必要があるだろうと思います。ただ、本日の検討課題は、差し迫った 問題で、ある程度、速やかに方針を決めなければならないということもございますので、 当面は、こういう形でのスタートとして、あとは三野先生からもご発言ありましたけれ ども、継続的に検証しながら、その妥当性を検討し、基準などについても見直していく ことにするのであれば、今回の対象範囲の拡大案は、納得できる、サポートし得る提案 ではないかと思います。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。今まで花井先生の範囲の拡大とその考え 方について、また当然その前提となる事務局の案について肯定的なご意見が続いている わけですが、この中にインテンシブな治療が必要であった、そういう表現がございまし た。先ほどの症例ではデイケアが必要であったというところが特に浮き彫りになってい るようですが、インテンシブというところを専門的に、事務局の方からでも、もう少し お示しいただける部分があるともっとわかりやすいかなと思うのですが、いかがでしょ うか。 ○花井構成員 どういうふうにこのインテンシブということをとらえるかということは なかなか難しいと思いますけれども、大分症状が安定している方の場合には、私の場合 は、外来通院が2週間に1回、もっと安定している場合は、4週に1回という人もいま すけれども、2週間に1回ぐらいの人が多いですね。そういう点から考えますと、通院 の頻度と必要な頻度というのがちょっと問題になるのかなというふうに思います。  これは外来に必ずしも来なくても、結構電話の相談というのは患者さん本人から頻回 にあるということも加味していただかないと、通院した回数だけ見られると大変なんで すが、ある程度、週1回程度の外来通院、電話相談も含めて対応が必要であるというこ とは1つのあれになるかなということと、通院による薬物療法、通院カウンセリング以 外の医療的な支援が必要だということ、これは1つとしては、先ほど出ましたデイケア も入りますし、病院によっては患者さんの外来で作業療法やっていたり、外来で集団療 法あるいはSSTなどをやる場合もあるでしょうし、訪問看護を組み合わせるという場 合もあるでしょうし、そういうサービスを、薬物療法と通院カウンセリングだけではな かなかいかないので、何らかのものが必要だというようなことも1つ入ってくるのでは ないかという気がしますけれども。 ○佐藤座長 いかがでしょうか。竹島先生、どうぞ。 ○竹島構成員 大体、花井先生と重なっていますけれども、統合失調症以外でもデイケ アを利用している人たちが10%、20%いる精神科医療機関が結構あるようでありまし て、話に出てきたのは、本人の病状の悪化とか、いろんなことが予測されるときに訪問 看護を適時利用していくことによって、それ以上の病状の悪化を防いだりとか、適時な 介入が可能になる。そういった本人の日常生活、社会生活を維持する医療の一環として、 サービスを組み合わせて利用していくのもインテンシブの中に含まれるという形で理解 いたしました。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。事務局は何かご意見ありますでしょうか。 ○鷲見課長補佐 医療内容につきましては、今、花井先生、竹島先生の方からお話があ ったとおりかと思うのですが、こうした内容について、基本的にこの疾患以外の方でこ ういう対象になる方についてはきちんと診断書なりを書いていただいて、それを見て判 断することになるのかなと。ただ、先ほど竹島先生からお話がありましたように、都道 府県でいろんなばらつきがあったりするというようなことが、今後できるだけ少なくな るように、そうした情報を今回の研究なり、来年度以降、この制度が始まってから進め ていく研究の中で情報を収集して、ある程度適正化も含めて、何かしら基準というか、 そうしたようなものを目指しながら研究を進めていくのが必要なのではないか。また、 そうして得られた情報をきちんと、例えば会議の中で審査を行うセンター長の会議の中 でお話しをするとか、そういうような対応が必要ではないかと事務局としては考えてお ります。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。どうぞ、樋口先生、お願いします。 ○樋口委員 ちょっと別なことを、これはご質問といいますか、三野先生にお聞きした 方がいいかと思って伺うのですが、判定方法のところで、症状等から対象となるものに ついてというところで、判定指針に基づき、精神保健指定医が判定すると書いてござい ますが、これは実際問題として、例えばクリニック等を開設しておられる方は必ずしも 精神保健指定医は持ってない方もおられると思うんですね。先ほど桑原先生がおっしゃ ったように、高度の臨床的な判断が必要なので、それなりの経験を持った人が行うべき だというのは趣旨としてはよくわかるのですが、逆に言うと、精神保健指定医がいない クリックにかかっている患者さんは、これを書いてもらえないことになってしまうと、 少し逆の差別が起こるのではないか、そういう不安があるのですが、その辺のご意見は 何か。 ○佐藤座長 ちょっとよろしいでしょうか。先ほど整理したように、先に範囲について 話して、その順序でお願いしたい。 ○樋口構成員 申し訳ございません。 ○佐藤座長 拡大するという方向性がいかがか。また、そのインテンシブというものの 考え方はこれでいいかというような、大分いろんな意見をいただいたと思うんですが、 拡大についてのご意見をもう少し整理したいと思いますが、そのほかいかがでしょうか。 ○竹島構成員 1点確認なんですけど、F0からF3のところ、それから、それ以外の 病態に関しても、基本的には現在の指針というものが1つの物差しになるという理解で よろしいのでしょうか。 ○佐藤座長 ここのところは事務局からどうでしょうか。 ○鷲見課長補佐 基本的には、これまでの旧32条でお示ししました判定指針は、今回 の自立支援医療におきましても引き続きこの判定指針を用いる予定としておりますので、 この判定指針に基づいて、判断していただくということになると思います。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。 ○三野構成員 何度も申し上げますが、この判定指針は極めてすぐれたものであると私 ども思っております。これをきちんと適正運営していくことが制度の持続性を担保する ものになるだろうと思います。そして、必ずしも今現在安定していても、将来にわたっ てこのようなものはあるということも含まれておりますので、ぜひともこの判定指針は 今後も趣旨として守っていきたいと私ども思っております。 ○佐藤座長 どうもありがとうございます。それでは、特に範囲の拡大について、先ほ ど出された花井先生の考え方についてご異議がないと考えてよろしいでしょうか。また、 その内容を見ながら基準を適用していくことも大事だと。また、インテンシブというも のに対するきっちりした医学的な担保といいますか、そういうことも専門性を持った担 保も必要だという意見もありました。  次に先ほど樋口先生から出たように、だれがそれを書くというか、判断するか、そう いうところに入りたいと思いますが、第1回のこの会議のときも指定医制について、い くつかのご意見がありまして、竹島先生、花井先生、桑原先生は、議事録にもあると思 うんですが、やはり必要ではないかというふうに申しておられましたし、三上先生はも う少しいろんな検討が必要ではないかということを申されておったと思うのですが、今 も竹島先生、桑原先生から、そういうきっちりとした指定医といいますか、そういうも のをここに適用すべきではないかという意見もあったのですが、その辺について、次に ご意見いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○三野構成員 今、樋口先生からございましたので先に申し上げたいと思います。まず、 今の議論は、指定医療機関の問題とは全然別でございます。今、花井先生からご提案の あったインテンシブな治療を要する方に対して診断書等を出す方の要件ということでご 承知おきいただきたいと思うのですが、このことについては大変貴重なご提案だと思っ て、私ども評価をしますけれども、1点だけ追加提案をさせていただきたいと思います。  精神保健指定医が判定要件になるということは、確かに指定医は現状において、非自 発的入院や隔離などの様々な患者さんの人権を制限することになる、適正な運営を担保 するという意味において現実に機能している制度で、精神障害者の方々の人権を擁護す るという意味では不可欠な制度であると私どもは思っています。しかし、それを自立支 援医療の精神通院公費の診断要件にすべてしてしまっていいかというと、これは精神保 健指定医の、例えばケースレポート1つとってみても、これは法的要件にかかわること に関して求められているだけでございまして、決して診断技量や専門的技能そのものを 担保する性質のものではないということが言えるだろうと思います。  精神保健指定医の資格というのは、精神保健福祉法にのっとって、患者の人権を配慮 して医療を行う資格であると思います。その意味からいいますと、総合的な臨床力を要 求するもの、例えば現在精神神経学会では専門医の移行が行われております。少しその 意味での混乱が生じるかもわかりません。その意味で指定医であることの要件は確かに 否定はしませんが、このことをインテンシブな治療にかかわって熱心にやっておられる 治療者という意味で、精神医療の実績といいますか、臨床歴は最低3年あるということ で、精神保健指定医に限定するのは好ましくないと私どもは思っておりますので、ぜひ ともその辺をご考慮いただきたいと思います。その指定の要件の仕方については、また、 これは事務局等で考えていただければいいと思います。指定医だけに限定するのは私ど もは困ると申し上げたいと思います。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。今、三野先生からは、指定医の性格につ いて、ここにきちんと適用できるような性格ではないということと、臨床的な担保がき ちんとある必要がある。しかし、専門医制度はまだ学会の方ではここに持ってくるわけ にはいかないということであると、なにがしか規準が、場合によっては、事務局の方で も考えてほしいと、そういう意見だったと思うのですが、そのほかいかがでしょうか。 花井先生お願いいたします。 ○花井構成員 今、三野先生おっしゃったことに関しては私もそのとおりだと思います。 ここに指定医しか書いてありませんけれども、大事なのは、これだけの判定をするわけ ですから、一定の臨床経験を持った精神科医がするということにポイントがありまして、 指定医ということだけに私も限る必要はないかなと。今、三野先生がおっしゃったのは 臨床経験3年以上ということですか。 ○三野構成員 はい。 ○花井構成員 それに関しては私も指定医あるいは精神科臨床経験を3年以上というこ とでいいのではないかと思います。 ○樋口構成員 私も指定医というのがこの場合に適切かという点についてちょっと疑問 を持っておりまして、ただ、これを判定していくというのが、だれでもやってよろしい ということになると質の担保ができないということがあるので、今すぐは私は無理だと 思いますが、一番適切なのは学会専門医だと思うんですね。ある年限が規定されて、そ の年限のうちにしかるべきトレーニングを受けて、講習会を受けてということで、ある 質をそこで保っていこうとするわけですから、これをすぐにここの中へ取り入れるのは 無理にしても、学会専門医が定着するのはこれから数年で多分ほとんどの会員が専門医 を目指してこられるだろうと思いますので、その頃にはぜひそういう形で年限だけでな くて、学会専門医というようなもので括っていただければと私の希望としてはそういう ところがございます。 ○三上構成員 私もこれは指定医というのは、本来の指定医の趣旨と合ってないかなと いうふうに思いますが、今、専門医の話出ましたけれども、専門医制度につきましては、 各学会によりまして基準が違いますし、いわゆる学会の会員の7割、8割が専門医をと るとうのが本当の専門医かというのもちょっとどうかという感じもいたしますので、基 本的には学会認定の専門医云々ではなく、精神科医療の経験年数等によって定める方が フェアではないかと。こういういわゆる診療報酬とか、あるいは患者さんの負担に関す るものについて、専門医の資格が左右するということにつきましては、専門医の資格要 件が一定でないという部分につきまして、精神神経科学会だけをそういうような形にす るということについては問題があろうかと思いますので、もう少し検討していただきた いと思います。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。専門医については、まだ、時期的にもと いうことでもございますので、一応のきょうは話題という形で我々もお聞きして、また、 今三上先生からも専門医というものの位置づけということのご意見もありましたので、 また、改めてそういう時期になったときに検討をきっちりすべきことかと思って、その ことはそれとして、今、花井先生からは指定医ということで案を提案いただいていまし たけれども、花井先生はそれを、三野先生のように、3年なりの経験年数ということで やってはどうかというご意見になっておりますけれども、いかがでしょうか。先生、ど うぞお願いします。 ○桑原構成員 この点に関しては、先に、私の方からもかなり強い要望をさせていただ きましたが、私も、精神保健指定医という資格にこだわる意味は余りないのではないか と思います。精神保健指定医の制度創設の趣旨とか、役割等を考えてもそのように思い ます。ただ、実際に判定の現場において、具体的な申請書類を見ていますと、この前も 申し上げましたけれども、必ずしも精神科医療をやっていらっしゃる方たちが診断書を 書かれているわけではなく、そういう意味での問題点があることも確かです。  特に、今回、提案の方向で「重度かつ継続」の判定をするとなると、返戻といいまし ょうか、具体的な治療内容がどうかというところで、相当のやりとりが出てくる可能性 がございますし、その点でも、ある程度の精神科医療を経験した先生に診断書を書いて いただくということが必要になると思います。そういう意味では、最低限度3年ぐらい の精神科臨床の経験年数はやはり必要な条件ではないかと思います。さらに、できれば、 外来だけでなくて、入院による精神医療を経験して、トータルな医療体験、経験を持っ ていらっしゃる方が望ましいと思います。そういったことを、どこまで、どんな形で規 定するのかというのは今後の課題かもしれませんけれども、当面は、今、申し上げた要 件をメインに考えていただいて、診断書作成医師の要件を定めていただけるのであれば、 私としては、何が何でも精神保健指定医でなければならないと考えなくてもよろしいの ではないかと思います。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。三上先生、今、最低3年という、そうい う意見も出たりしておるのですけれども。 ○三上構成員 3年でこの状態像の5番、6番、いわゆる情動及び行動の障害、不安お よび不穏状態の診断が3年でできるのか、あるいは5年でないとできないのか、2年だ ったらできないのかという判断は非常に難しいと思います。3年というのは比較的妥当 な年限ではないかと。ただ、臨床研修が今現在2年ございます。それをどのようにカウ ントするか、必ず精神科は回ると、あるいは小児科も回るというようなこともございま すし、それをどうカウントするのかという場合がございますし、また指定医療機関との 関連で、あそこでも3年というのが一応出ていたと思うのですが、5年の臨床経験及び 3年の精神医療の経験というのが出ていたと思いますが、それとどのように合わすのか ということもあると思いますので、3年は妥当かもしれないですけれども、そこでこぼ れるようなことがないように、例えば、研修が終わられた後、比較的早く何らかの事情 で精神科のクリニック等を継承されたような場合にそこでちゃんとした医療が行えない ということだったら困りますので、いろんなケースを想定しながら漏れがないような形 で決めていただければと思います。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。今、先生からは、研修の期間も検討しな ければならないというような、貴重なご意見いただいておりますが、おおむねどなたか らも大体3年くらいでどうかというような、ただ、それについてはもう少し検討が必要 だと。運用上のことも含めてだと思うのですが、そのときに3年というのはどんなふう にして決めるのかというか、そういうことも含めて、事務局に何かお考えはございます か。 ○鷲見課長補佐 既に、例えば育成・更生医療などではそうした経験を持っている方と いう形で要件を定めておりまして、その場合には、例えばこういった病院でこれまで勤 務していましたというような証明書を出してもらうような形でやっていただいていると 思っています。基本的にはそれと同様の考え方だと思います。ただ、研修期間の含み方 については、現在、必修科ということで精神も含まれておりますので、細かい運用につ いては、少し事務局で詰めさせていただきたいと思いますが、基本的には大きな枠組み としまして、精神医療3年という経験で先生方のご意見がある程度合意できているとい うふうに事務局としては認識しております。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。きょうは事務局から案を出していただい て、それに花井先生から拡大の問題、その判定の内容、ケース、また、だれが判定する かというような話の提案いただいてディスカッションしてきたわけですけれども、いか がでしょうか、そのほか、何かこういうところは重要だということがございましたら。 ○三上構成員 精神医療の経験につきまして、精神科に入局をされたとか、あるいは精 神科に所属されているドクター以外でも、精神医療を経験される事例はかなり多いので はないか。私自身は内科医ですけれども、精神科を含む総合病院で精神科の身体合併症 の患者さんを20年来診ておりますが、そういった形でも精神科の医療をずっと経験す るということはございます。ですから、そういう意味で、どういう形でそういう証明を するかということにつきましても、具体的な形で示していただければと思います。 ○佐藤座長 3年と決めたとしたときに、そこからもれないようにするにはどうするか。 症例数なり、いろんなことがあるのだと思うんですが、そこの辺のところは、今ここで 具体的に詰めるのは難しいので、年数をおおよそ3年として、具体的なところはまた事 務局の方にお願いするということでよろしいでしょうか。 ○鷲見課長補佐 今、先生方のご指摘を踏まえまして、事務局の方でまた案を作成しま して、ご相談させていただきたいと思います。 ○佐藤座長 そのほか何かございますでしょうか。 ○竹島構成員 今のことと関係するかもしれないのですが、聞き取りをしていた中で、 「通院公費」という制度が適正医療の普及ということに機能していく大きい意味があっ たのではないかということが何度か出てまいりました。年数とか経験といったところに 関係するかもしれないと思い、一言だけ追加させていただきます。 ○佐藤座長 今、先生の方から大体同じような意見でいただいたところでございますが、 もし、大体議論がある程度まとまりかけているのではないかと思うんですが、まとめさ せていただきますと、範囲につきましては、疾患ベースでF0の認知症、F1の薬物関 連障害、F2の統合失調症、F3の気分障害全体、G40のてんかん全体というものが 事務局から出されて、これは妥当ではないかという意見でございました。  また、これらの疾患以外について、花井先生から提案がありまして、精神医療に一定 の経験を有する医師ということで、今、臨床経験として3年程度がいいのではないか。 ただ、その具体についてはもう少し事務局で案をつくっていただきたいということでし たが、そういう一定の経験を有する医師がある基準をもとにして、「重度かつ継続」を 判断いただく。その際のインテンシブな治療については、事例も含めながらいろいろ提 示いただいたわけですが、それらを基に診断した患者さんについても対象とするという 意味で事務局案を拡大するというような意見にまとまりつつあるというふうに思うわけ でございますけれども、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。                (「はい」と声あり) ○佐藤座長 これまで3回にわたって、この精神の通院公費についての「重度かつ継 続」をどういう範囲にするか、また、どういった形で書類等をつくっていただくかとい うか、書いていただく人、そういうことについてもある程度の検討をしたところでござ いますので、おおむね了承が得られたとさせていただきたいと思います。  最初に課長さんの方から話がありましたように、更生医療、育成医療については、既 に3つのものが出されておるわけですけれども、具体的な研究データとか、そういうの が今持ってないので、提案された3つの疾患でスタートして、これからの研究に待つと、 そういう話があったと思います。これで、更生、育成、精神の3障害について、一応範 囲についてはまとまったと考えたいと思います。  それでは、我々が検討したことの範囲、その妥当性や判定の基準づくりについて、研 究される方々にぜひ頑張っていただきたいというご意見があったということをつけ加え ておきたいと思います。  では、次に議事の(2)の方に移って、ご検討をいただきたいと思います。まず、資 料3について、竹島先生からご説明をお願いしたいと思います。 ○竹島構成員 それでは、平成17年度厚生労働科学特別研究「自立支援医療の給付の あり方に関する研究」の中で、「重度かつ継続」に関する部分についての研究をこれか ら進めていくわけですが、現在の研究計画内容についてご説明したいと思います。  目的は、自立支援医療における「重度かつ継続」の範囲等について検討を行うという ことであります。  方法としましては、平成17年10月分の診療報酬明細書を下記のとおり抽出し、障害 種別、疾患群別に区分し、医療内容や医療費の分布等について分析するということです。  その下の「●」を打ってある3つについて、検討する中で方針が変わっているところ がありますので、その分を口頭で説明させていただきたいと思います。  精神通院公費に関しましては、現在80万人以上の利用ということになっていると思 いますが、その中で、10月のレセプトのうち月当たり5件以上出ている分の保険診療 機関をまず抽出いたしまして、その中でさらに 4.8%を無作為に抽出する。さらにその 中で20%を系統的に抽出して、それで全体像を分析し、あるいはこちらに書いてあり ますような疾患群別ということで分析をしていくことを行いたいと考えております。   次に、育成・更生医療でございますが、今、佐藤座長から説明もありましたが、例え ば育成に関しては、年間入院が7万件で、月当たり6,000件、通院も7万件で、月当た り6,000件という件数になります。  更生に関しては、年間入院22万件、通院が約99万件、月当たり入院が2万件で、通 院が8万件という件数になります。  育成に関しては、同じく5件以上利用している保険診療機関の件数から考えまして、 約半数を無作為抽出して、さらに診療報酬明細書で20%系統的に抽出すると。  更生に関しては、5件以上利用している保険診療機関のうち 4.8%、これは精神の通 院公費と同じですが、無作為抽出し、さらに診療報酬明細書を20%系統的に抽出する ということになります。 こうすることにより、精神通院公費に関しては2,000件、育成・更生についてはそれ ぞれ1,000件強のレセプトについての分析ができるということになります。もちろんこ れだけでわかる部分が限られているということも出てくるかと思いますが、その分に関 しましては、先ほど鷲見補佐から話がありましたように、そこでわからなかったことを 次の段階で調べていくということも必要になるかもしれません。このような方法につい て、少なくとも育成・更生のことに関して、精神通院と同じような形の全体像、ある程 度事例の得られるものについては障害種別等についての分析が可能になるということで す。 これは、結局は月当たりの医療費等の実態にはなるわけですが、これだけでは「重度 かつ継続」ということはわからないわけでありますので、その次に今度は、それぞれの 上記の区分それぞれにおいて、典型的なモデルケース、典型的なモデルケースは何なの かということになりますと、いわゆる一般的な事例ということになるかと思います。そ のものについて、一定期間、例えば10年とか5年とか20年とかにおける医療費といっ たものを概算をしたいと考えております。それが、「●」の2つ目、3つ目にあります。  以上の結果により、今日議論のありました「重度かつ継続」の範囲がおおむね現状と して適切であるか、この研究によって検証することができていくと考えております。  モデルケースですが、分担研究者の岩谷先生から連絡があり、佐藤座長の方で、育 成・更生の2例についてあずかられているということですので、私は精神の通院公費の 例を紹介させていただきます。  統合失調症で50歳の男性。20歳で統合失調症の治療を開始して入院期間は延べ3年 間。精神科のデイケアを5年間週3日利用して、40歳ぐらいから通所授産施設を利用 しているけれど、その間も精神科デイケアは週1回、訪問看護は月に1回程度利用して いるというような事例があったとすると、20歳から50歳の延べ医療費をある程度計算 できるのではないか。そういうことをしまして、通院公費は仮に20歳で治療を開始し ているけれども、22歳から利用して、28年間利用しているというようにした場合にど ういう姿になるかということを整理するということができるかと思います。  期間については、5年がいいのか、10年がいいが、20年がいいのか。意見があると 思いますけれども、生涯ということになりましたら、平均余命というものが個々の事例、 疾患、病態により違いますし、非常に短いと医療費が少ないという問題も出てきますの で、一定の年数を決めるとか、柔軟性を持って実際に即したまとめ方をしていかなけれ ばいけないのではないかと思います。  育成・更生につきまして、よろしくお願いいたします。 ○佐藤座長 実は岩谷所長と同じセンターですが、実際には届いてなかったそうで、失 礼しました。竹島先生の方に送ったという資料をちょっと見せてもらったものを記憶を たどりながら述べてみたいと思います。岩谷所長は2例提案されておったはずでござい ます。  1例は、2歳のときに巨大結腸症を手術したという男子でございまして、現在7歳で、 元気に小学校に通学しているケースでございました。入院のときの費用としましては、 DPC等で入院期間又は手術点数を見ますと、大体93万なにがしという入院経費がか かっております。軽症の場合ですと、退院後は年に2回ないし3回、2〜3週間程度の 入院を行うということで経過していくと。病変が消化管の上部の方に及びますとどうし ても中心静脈栄養を在宅でやらなければならないということになります。軽度の場合で すと、月当たりの費用は 720円というのは単に受診の場合、また、入院等しますと19 万なにがしかかると、こういう数字を出しておったはずでございます。 もし重度であって、毎日在宅中心静脈栄養をやらなければならないとなりますと、毎 月診察・検査、指導、投薬を継続していくということになりますので、毎月19万 3,98 0円かかると、そういうデータを岩谷所長が送ったはずだったわけでございます。 2例目としては、多分50歳の男性で、糖尿病で糖尿病性腎症でクレアチニンが9mg/ dlくらいになって、浮腫があって入院して、それでAVシャントを増設をしたと。そ して、その後、在宅で週3回の夜間透析を行っておると、そういうケースで、その場合 に入院して透析を導入するというようなことになりますと、20万 410円の入院経費が かかるはずであると。外来では週3回の透析、その際の診察・検査等をずっと続けると いうふうになりますので、毎月45万 2,900円かかります。  こういう継続的な透析をやりながら復職しておるというケースを出されておるはずで すけれども、こういう透析のケースですと、一生かかるということになりますし、また、 子供さんの場合はその成長過程から、今後どんな合併症が起こってくるか、そういうよ うなことも専門的にフォローしている人の意見も踏まえながら、ある程度の妥当な数字 というか、適正な数値を求めていく。これは単にレセプトからだけでは出ない部分だろ うというふうに話しておられました。  以上でございます。  ただいま、症例提示も含めて、今進めつつある研究についてご報告いただいたわけで ございますけれども、これについてご質問、ご意見ございましたらお願いしたいと思い ますが、いかがでしょうか。 ○中澤構成員 中澤でございます。育成医療・更生医療に関しまして、この研究の方法 というのでしょうか、ちょっとお伺いしたことがあります。それは目的はよくわかりま すが、この10月分のレセプトでお調べの部分というので、先ほど竹島構成員がおっし ゃられましたように、「重度かつ継続」というものと少し異なる状況で、これだけでは うまくいかないのでモデルケースをつくるとおっしゃっていたのですが、モデルケース にはめるときにどういうふうな場合をお使いになる計画をされているのでしょうか、こ のデータを、例えば入院のときにどれぐらいかかったかということを代表としておとり になるのか、私それが多少理解できなかった部分です。  もう一点は、モデルケースということですが、非常に多岐にわたる疾患を扱っている とすれば、どういうふうな疾患群というか、先ほど精神の方で問題になりました疾患群 とともに症状によるものをお加えいただいたわけですけれども、そうしますと、この育 成・更生医療の場合も同様なこと、前回まで出てまいりましたのは3つか、4つ病態が 書いてございましたけど、そうするとこの場合は、今のお話だと、そういうことでない 部分も入っているようにお伺いしたいのですけれども、そのような理解でよろしゅうご ざいますでしょうか。 ○竹島構成員 育成・更生については、座長の方にも少しお助けいただかなければいけ ないと思うんですが、まず精神の公費の部分についてお話しをしたいと思います。モデ ルケースという場合に、今までの調査でも、例えば何歳代ぐらいであれば、何回ぐらい の入院経験があるという人が一番多いか、そういった調査がありますので、それを参考 にしたい。それから、入院回数に関しては最近減少傾向にある。入院期間は短くなる傾 向にあるといったこともありますので、そのことも勘案しながら、幾つかの事例をつく ってみる必要があるのではないかと考えています。精神通院公費の場合は入院を対象に していませんので、入院のことに関しては、入院回数、入院の期間等を想定をして組み 入れてみる必要があると考えています。  それから、Fコードに従って、Fの1桁で分類していった場合に、ある程度多いもの、 少ないものというのが出てきます。脳という一つの器官を対象にしていますので、Fコ ードに全部にきめ細かに調べていくことが必要なのかどうか、今回の議論に沿いつつ、 ある程度まとめていくということが実態的かもしれない。どちらにしましても、レセプ トの中で通院頻度の多い人、少ない人がそれなりの分布で出てくると思うので、それも モデルケースをつくるときに参考にしていきたい。例えばデイケアの利用者が統合失調 症でどれくらいであるかというところから見て、例えば何年ぐらいがデイケアの実際の 利用であり、訪問看護の利用でありというデータを補足しながらモデルケースに近づけ ていきたいと考えております。 ○佐藤座長 私から更生・育成の方について2つコメントさせていただきますけど、先 ほど申し上げたケースは、いずれも3つの疾患に含まれているものでございます。1つ は、短腸症候群になって在宅で中心静脈栄養が毎日必要な小腸機能障害のケースでござ います。  それから、血液透析が必要であるという腎不全のケース、これは腎臓機能障害でござ います。  それで、レセプトからの研究は、どういうふうにモデルケースをつくるときに使われ るのかということなんですけれども、これは想定なのですけれども、相当たくさんの疾 患がありますので、その全部についてモデルケースを初めからつくる。そしてつくって みて、これは当たらないというのは作業が大変になると思いますので、モデルケースを つくる入り口として整理するものはこのレセプトの方から来るのではないかと思います。 例えば、ファローの四徴で経過を診ている人が年に2回くらい、また、心カテを5年に 一度ぐらいやるとかなると、時には34万なにがしというお金がかかるというものが出 てくるかと思いますが、そういうものがあったときに、そういうものをモデルケース、 その疾患なり病態をモデルケースとして検討するテーマにするとか、そういうように使 えるのではないか。レセプトのデータを十分に検討して、そこから有効な使い方をいろ いろ検討するというふうにしか今のところは言えないと思います。 ○竹島構成員 ケースはいろんな括り方があると思うのですけれども、レセプトに従っ て、そこから不足する資料を別のところから利用するということ。どういう根拠でもっ て、そういったモデルケースをつくったかということを研究の報告書の中にきちんと明 記するということで整理しておきたいと思います。 ○佐藤座長 その他、いかがでしょうか。竹島先生のご説明にご質問ございませんでし ょうか。  それでは、今、竹島先生から積極的に始まっておる研究の結果をいただくわけで、ぜ ひ年度末に本検討会に報告していただいて、今まで検討してきました疾患群といいます か、それの追加、場合によっては削除も、範囲が広くなっており、削除するものもあろ うかと思いますが、そういうことについてご検討の結果をお聞かせいただき、「重度か つ継続」の範囲について、検討をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。よ ろしくお願いします。  最後に何か事務局からございましたら、お願いしたいと思います。 ○鷲見課長補佐 本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。最後に事務局よ り、次回の日程についてご連絡申し上げます。当初、次回の日程につきましては、一応 予備日といたしまして、11月25日を予定しておりましたが、今回、先生方のご努力で 一応取りまとまったということもございますので、11月25日は開催しないということ にしたいと思います。それで別途次回の開催日等についてはご連絡を事務局からさせて いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○佐藤座長 それでは、これをもちまして、第3回の自立支援医療制度運営調査会を閉 会したいと思います。長時間どうもありがとうございました。                  (照会先)                   [自立支援医療制度運営調査検討会事務局]                    厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部                      精神保健福祉課 医療費係 岩倉 慎                       TEL: 03-5253-1111(内線3057) FAX: 03-3593-2008 1