05/11/07 社会保険新組織の実現に向けた有識者会議第6回議事録          第6回 社会保険新組織の実現に向けた有識者会議                        日時:平成17年11月7日(月)                           18:00〜20:20                        場所:厚生労働省 専用第15会議室  佐藤座長  それでは定刻になりましたので、ただいまより、第6回「社会保険新組織の実現に向 けた有識者会議」を開催させていただきます。本日は、全委員出席でございます。  まず、10月31日に尾辻前厚生労働大臣に代わり、川崎厚生労働大臣が就任いたしまし たので、早速でございますが、本日の会議に先立ち、川崎大臣から一言御挨拶いただき たいと思います。よろしくお願いします。  川崎厚生労働大臣  今、御紹介をいただきました、ちょうど1週間前に就任したばかりでございます厚生 労働大臣の川崎二郎でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  既に7月から様々な形で議論を重ねていただき、「業務改革プログラム」、「新人事 評価制度」など、御提言をいただきました。実は昨年、年金法案というものを、私は国 会対策という場で何とか成立をさせなければならない、しかしながら、なかなか国民の 御理解が進んでこない、自分も大変に苦労をした一人でございます。国民の理解が進ま ない一つの理由として、社会保険庁自体の不祥事を含む様々な問題、簡単に言えば体質 の問題が強く指摘されたように思っております。その後、党内でも、また国会の中にお いても社会保険庁改革というのが大きな課題になり、厚生労働省というよりも内閣とし て取り組まなければならないという姿勢で今日まで参ったと思っております。  今日は、東芝さんがいらっしゃいますが、実は、私も松下電器の出身でございまし て、民間の立場から見て何よりも重要なのが、職員のやる気というものをどうやって起 こすことができるのか、どういう組織だったがゆえに職員のやる気がないと外部から見 られたということにつながったか、そこをしっかり検証しながらやっていかなければな らないと考えております。  同時に、国の機関として、年金というのは最も大事な部分でございます。長期にわた って掛け、そしてまた長期にわたって給付を続けるという制度でございますから、国民 の皆様方から信頼される機関でなければならないというのは、もう皆様方も御承知のと おりでございます。一度、国民から厳しい批判を受けたこの社会保険庁が、皆様方の御 議論をいただく中、どのような形で信頼を得られるものに変わっていけるか。また、そ れをどう表していくことができるのか。一人一人、国民に接触している窓口の方のシフ トというのが実は一番大きな要素を占めているのかなという思いもいたしております。  いずれにいたしましても、小泉内閣、スピードが大事だということが一番大きな課題 になっておりますので、来年には法律を出させていただいてきちんとやっていかなけれ ばなりません。どうぞ皆様方におかれましては、より建設的な御意見を賜りまして、最 後のまとめの段階を迎えていると思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  佐藤座長  どうもありがとうございました。それでは本日の議題に移りたいと思います。前回は 組織改革の在り方について入り口的な御議論をいただいたのですが、本日は今後の御議 論を深めるために関係者の方々においでいただいて、ヒアリングを行いたいと思ってお りますので、よろしくお願いします。  まず事務局から、本日の進め方について御説明をお願いします。  清水参事官  事務局の社会保障担当参事官です。  お手元に資料1、横の4枚紙ですが、前回の会議において御確認いただいた本日のヒ アリングの進め方の資料を改めてお配りさせていただいております。本日は4名の方に お越しいただいております。前半と後半に分けまして、それぞれ2名の方々からお一人 15分程度、計30分程度御発言いただいた後、20〜30分程度、委員の皆様方と意見交換を 行っていただくという形で進めたいと考えております。  前半の2名の方につきまして、発言順に御紹介申し上げます。  まず、社会保険事業運営評議会、宮武剛座長でいらっしゃいます。  2番目に、秋田社会保険事務所、小野地香所長でいらっしゃいます。  それぞれ事前に御用意いただいております参考資料があります。宮武座長の参考資料 が資料2、小野地所長の参考資料が資料3でございます。既に配布しておりますので、 それぞれ御発言の際に参照していただければと存じます。  それでは座長、よろしくお願いいたします。  佐藤座長  御多忙のところ、本日は誠にありがとうございます。御出席を快くお引き受けいただ いて感謝いたしております。  それでは、まず宮武座長より御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいた します。  宮武座長  宮武でございます。召喚されまして出てまいりました。  お手元にある資料でございますが、一言最初にお断りしておきたいのは、私どもの運 営評議会で、今回このヒアリングを受けるのに際しまして、委員の皆様に諮って何を語 るかということを協議するということをやっておりませんので、私の発言は、多くは個 人的な見解になるかと思いますが、その点はお許しください。  その上で申し上げますが、最初の紙に書いておりますように、私がいつも日本の年金 制度というのは不思議だなと思うのは、100人集まると100人が「年金をもらう」とか、 「もらえない」とかとおっしゃるんですね。本来は、保険料という負担をして、その見 返りにその給付を受けるという関係にあるものが、なぜ「もらう」という意識になるの か。「もらう」という意識の裏側には、例えば社会保険庁の側には、年金は「支給して あげる」とか、「支給してやる」という裏返しの意識というものがずっとあったのでは ないかと思うわけであります。  「もらう」意識というのはどうして出てくるのか。2つの側面が私はあると思うので すが、1つは制度設計上に「もらう」という意識が生じるような設計になっていない か。例えば専業主婦でありますと、自分自身は保険料を払わないで、2号被保険者であ る夫と2号全体の負担で基礎年金を受け取るということになりますと、どうしても「も らう」という意識になるのではないか。もちろん他にもありますが、代表的にはそうい う面があるかと思います。もう一つは、運営面におきまして、勤め人の場合は給与から 保険料を天引きされまして、しかし制度の運営について注文をつけるような機会という のはほとんどなきに等しいわけでございますので、どうもここでも「もらう」意識が先 立つのではないかと思うわけであります。  制度設計面において、「もらう」という意識ではなくて、年金を受取るという意識を つけるのであれば、例えば、皆さん御存じのように、スウェーデンの年金改革がありま したが、現実には保険料を払って、その大半は年金生活者に仕送りをしているわけであ りますが、納付実績が各人の口座に積み立てられ、そして1人当たり実質賃金の上昇率 に合わせた利息もついて、いつも自分自身が幾ら保険料を納めて、利息が幾らついてい るのかを確認することができるという、いわば負担と給付というものが連動していると いうか、あるいは直結しているという、こういう制度設計をいたしますと、「もらう」 という意識はなくなるのだろうと思います。  もう一つ、運営面において見習うべき例として言いますと、ドイツの年金制度は分立 をしておりますけれども、それぞれが職場の代表を選挙で選んで、自治組織として運営 をしておられる。こういう形の中からは「もらう」意識というのは当然出てこないわけ であります。  今の日本の年金制度を考えたときに、制度設計でいきなりスウェーデン型を導入する ことは到底無理でございます。しかし、運営面においてはもう少し被保険者なり、年金 生活者が制度の運営に対して物を申すことができる、関心を持つことができるという、 いわば参画意識を植えつけるという方式が、私は次善の策として必要ではないかと考え ております。  ちょうど今、私どもが任命されました社会保険事業運営評議会というのが、私はその 最初の試みではないかと思うわけでありまして、メンバーとしては、社会保険事業運営 評議会の参集者という名前になっておりますが、お坊さんがメンバーになっているのは 国民年金の被保険者であるからお入りになっているとか、厚生年金の被保険者なり、あ るいは有識者なりが入っておりまして、それぞれの立場から今の年金の運営についてい ろいろな注文をつけるという、そういう最初の試みでございまして、いみじくも、社会 保険庁の幹部の方が、こういう試みは40年間空白であったとおっしゃったのを、私自身 も納得できる対応だ、と受け止めました。  新しく新組織ができましたら、そこにおいても、仮称ではございますが、被保険者の 代表が入る運営評議会というものが設けられると聞いておりますので、今の試みをその まま発展させてくださるのではないかと私は期待しております。特に中央においてこう いう形の被保険者の声をくみ上げることができるという組織だけではなく、個人的には 地方においてもそういう組織が必要ではないのかなと思っております。8ブロック、社 会保険事務局ごとに年金に対して関心を持ち、また年金について様々な意見を被保険者 が言うことができるという場を設けますと、随分と風通しはよくなるのではないかと思 うわけであります。  ただ問題は、私ども選ばれたと言っても、これはかなり恣意的に社会保険庁の側が御 指名なさって、それでなったわけでございまして、一体これはどうやって選ぶのかとい うことは難しい点がございまして、まさか選挙をするわけにもいきませので、これも次 善の策としては、なるべく任期を短くして、せいぜい2年ぐらいにして、新しいメンバ ーが次々に中央でも地方でも入ってきて、年金に関心のある方たちの層を広げていくと いう方式をとっていただけないのかなと、個人的に思います。いったん委員を引き受け た方はそのまま「さよなら」というわけではなく、そのまま引き続き運営評議会のOB なりOGという形で、年に1度でも2度でも集まって年金についての意見を言うことが できるような、そういう形で中央、地方でお目付役であり、かつ年金に対する応援団と いうものをお造りになるのが私はいいのではないかなと考えております。  2番目でございますが、新しい新組織の長というのは、厚生労働大臣に対して制度改 正に対する提案とか、意見聴取も可能であるというふうに官邸の有識者会議が設計図を 描いておりますが、私はこれも大変いい試みで、現場の声、被保険者なり、受給者な り、あるいは職員なりが制度に意見を言ってそれを反映させることができるという、そ ういう道筋が初めてできるのではないかと思っております。  年金運営会議に対しては外部の専門家の参画や特別監査官、補佐というものも任命な さるということですが、これも今まで、どうも閉ざされた形の組織であったところに新 しい血を入れて、「透明性と説明責任」を高めるためには大変いい試みではないかと思 っております。  ただ、私がこれに一つだけ注文があるのは、こういう外部の専門家、今想定されてい る中に広報とか、企画部門の優秀な方を招くという発想がないというところをちょっと 物足りなく感じておりまして、広報というのは宣伝から企画に至るまで、そういう人材 というのはなかなか官僚の中から出てこないわけでございまして、外部の方、有能な方 をスカウトしてでも新しい組織に入れられることがベターではないかと考えておりま す。特に社会保険庁は宣伝や企画が余りお上手ではないと外部から見ていて思っており まして、例えば基礎年金というのは3分の1、国庫の補助がついた商品がなぜ売れない のかと。これは社会保険庁長官になられた村瀬さんなんかはきっとそう思っておられる だろうと私は思うのでありますが、もう少し企画、広報というものに力をお入れになる べきではないかと思っております。  いみじくも先ほど大臣がおっしゃいましたように、国民の信頼を取り戻して自信と誇 りを持てる職場という、そういう形にさせなければいけないとおっしゃったのはまさに そうでございまして、私はどうも見ておりまして、社会保険庁の不祥事が相次ぎまし て、それをずっとフォローしていて思うのは、こんなに巨大な組織なのに応援団がいな いという実に不思議な組織でございまして、だれも味方になってくれない。なぜなんだ ろうと思うぐらいでございまして、そういう意味では、どうも巨大過ぎて自給自足の中 に閉じこもっておられた。自給自足というのは往々にして唯我独尊に陥るわけでござい まして、ちゃんと法律にのっとって保険料をとって年金を給付すれば何が問題だという 意識があったのではないか。基本的にはやはりサービス業でもあるわけでございますの で、受給者に対して丁寧な応対をなさるなんてこともなかなか、この意識からは出てこ ないのではないかと思っております。  そういう意味では、昨今の生命保険会社の大変な不払い事例なんかを見ております と、民間であれ、官業であれ、やはり透明性が薄まる、あるいは説明責任を怠ると、同 じようなことをやっていくのではないかと思っております。そんなことを私なりに、運 営評議会に参加させていただきまして、感じたことでございます。後は何か御質問があ ればお答えすることにいたしまして、発言を終わりたいと思います。  佐藤座長  ありがとうございます。それでは続きまして小野地事務所長にお話しいただけますで しょうか。よろしくお願いします。  小野地事務所長  それでは、秋田社会保険事務所の状況から申し上げます。事業概況でございますが、 資料3の3ページ以降に、秋田社会保険事務所の事業概況を記しております。これを申 し上げていますと大変時間がかかりますので省略しますが、今現在、職員が58名、謝金 と国民年金推進員42名、合わせまして100名を要している事務所でございます。  それでは、現在の現場の状況からお話し申し上げます。「社会保険庁の在り方に関す る有識者会議」の最終とりまとめが本年5月にありましたが、その前段として昨年の11 月、社会保険庁の組織、業務の見直しについて基本的な考え方が示されまして、緊急対 応プログラムに沿った改革を進めることになりました。  また、同じ11月には長官によります「社会保険庁は変わります」宣言が行われたとこ ろでございます。これらを皮切りに、私も含めた職員の多くに問題意識と改革への意識 がだんだんと増え、だんだん追加され、逓増されまして、地方組織全体に改革の気運が 高まってきた、職員一人一人に改革の気運が浸透してきました。まさに「変わります」 宣言は職員が自らの改革と国民に対する変革の意思表示として決定的なものとなりまし た。またそれは改革への自信にもつながったところでございます。  様々な危機感に伴って地方組織には改革への一体感がつくられまして、職員は変革の 大きなうねりの中に身を置いていることを直接肌で感じて、一つずつの進展に大いに賛 同を覚えるものとなりました。現場には「守る」とか、「維持をする」とか、そういう 言葉は不要となりまして、既得権益は改革の障害と感じるようにもなりました。  しかし、改革の方向性が示されましたものの、見極めができないものや紆余曲折が予 想されるものにあっては不安や不信感がぬぐえず、職員間において改革への意識の温度 差が生じているのも事実でございます。改革の今後の経過推移を見守りながら、職員へ の一層の情報提供と説明を行い、温度差を解消していくことが必要と考えております。  次に、改革についての基本的な考え方について申し上げます。最初に組織改革につい てでございます。組織改革については現行が抱える構造的な問題を踏まえて様々な観点 から検討が行われていますが、意思決定機能と業務執行機能とが十分な意思疎通を図っ た上で地方組織の運営をする必要があると考えております。意思決定機関の意思という のは国民の意向が十分に反映されることが重要であって、国民の意向の最前線はやはり 地方であって、社会保険事務所が現場であるということを御認識、尊重していただく必 要があると考えております。  国民年金保険料の収納率の向上は、直面している現下の最重要課題ですが、新組織が 公的年金制度の信頼回復と次世代への大切な財産としての制度を構築する責務を考える とき、再出発するための組織改革は国民年金の問題を第一義的に考慮した改革組織でな くてはならないと考えております。新組織の設立に当たってはかつての地方事務官制度 の弊害を一掃して、形だけの変革に終わることなく、国民の期待にこたえられる新組織 の構築が重要と考えておりまして、厳正な手続きによる職員移行が求められると思って おります。  人員削減計画においては、全体としては公務員削減を図りながらも、社会保険庁の事 業内容と組織が並行となる計画が基本と考え、合理化の設計図が一人歩きすることがな いことが大切と考えております。特に社会保険事務所では国民年金保険料収納事業にお いて、強制徴収や職権適用等の実施体制の大幅な拡充と質の向上が急務であって、また 必要不可欠であることですから、その要員確保については格段の措置を必要としており ます。また、年金の運営主体を考えるとき、国民サービスの充実と向上を図るため、年 金相談事業を初めとする社会保険事務所窓口機能の拡充と質の向上が喫緊の強化課題で あり、その要員確保にも十分な措置が必要と考えております。  次に業務改革プログラムについてでございます。先の緊急対応プログラムの逐次実施 と進捗は職員に確実にその手ごたえを感じさせておりまして、改革の気運の自信と加速 につながりました。今般、業務改革の到達目標を示した上で、改革のセカンドステージ に取り組むべき方策が示され、業務改革全体、120項目を取りまとめていただいたとこ ろです。国民にとっても、地方組織にとっても、身近で具体性のある取組みとして受け 入れられ、今後定期的なフォローアップとともに進捗を検証していく必要があると考え ております。特に国民サービスの向上、年金制度の周知徹底、保険料収納率の向上は最 重要課題として据えて、さらに予算執行の無駄の排除、個人情報保護の徹底、意識改革 の徹底を図ることへの全ての事項に、私ども、同感と認識を共有しているところでござ います。  その中にあって3つほどお話し申し上げます。国民サービスの向上においては、CS 発想を基本に民間企業の手法を取入れ、職員のスキルアップ、マニュアル作成など、レ ベルの統一化に取組む必要があると思っております。また、業務品質の標準化と一層の 事務処理の効率化を図りながら、地域差のないサービス提供が肝要かと思っておりま す。  2つ目、年金制度の周知徹底は、現行制度の理解だけにとどまらず、将来を担う次世 代への財産構築、大きくは人的、経済的社会基盤の構築につながることと思い、広報と 教育は重要な事業であり、継続的、広範な事業である必要があると考えております。ま た、保険料収納率の向上については強制徴収体制の強化整備、納めやすい環境整備の推 進はもとより、最前線の地方組織にあっては市町村との協力連携体制のもと、両者の信 頼関係を築くことこそが最重要課題であり、そのための具体的方策を施す必要があると 考えております。  3番目、地方組織の改革について申し上げます。都道府県毎の社会保険事務局のブロ ック集約化についてでございます。ブロックの集約化は効率的、一体的に人事配置する ことや、業務の統一化、コスト管理の徹底、指揮監督命令という内部統制の強化など、 文字どおり抜本的な改革になると考えておりまして、組織的に利点が多くあると職員か らの理解が得られるものと推察いたします。  一方で、ブロックの集約化は、個々の社会保険事務局の組織が肥大化することで内部 統制が拡散し、事務局における事務所の業務と職員管理に緻密さがなくなることや、事 務所現場の意見集約の軽視と事務局集権的、いわゆる中央集権的な状況を生じさせるこ とが懸念されます。したがいまして、地方組織の再建に当たりましては社会保険事務局 の役割自体を見直していただき、いたずらな社会保険事務局の肥大化を防止するなど、 必要最小限のものにした上で、社会保険事務局は中央機能と事務所組織との十分な連絡 調整を図る必要があると思っております。  次に人事評価制度についてでございます。基本的な考え方から述べさせていただきま す。人事評価については長い間、合理的で機能的なシステムの構築は困難と思われてい た聖域かと思います。今般、民間手法を取入れ、画期的な制度が取りまとめられたこと は、行政サービスのトップランナーを目指す上で、業務改革とは別に大きな改革であ り、勇断とも思っております。実績評価と能力評価の2つの大きな柱は、職員が組織目 標を意識しながら業務遂行し、個人の能力の向上と効果的業務と効率化が期待できま す。  また、評価は透明性と公平性があり、長期的には人材育成と組織活性につながるもの と確信します。しかし、改革の中でも唯一、試行期間を設けるなど、その実行までの困 難さを物語っているものとも言えまして、今後、現場において具体的な実行への確実な 取り組みが必要と考えております。また、今後生じる問題については必要な見直しを行 い、より納得性を高めながら、新制度の十分な定着を図るべきものと考えております。  新制度は絶対視することなく、人事評価制度運営会議等において職員の現場の声を十 分に吸収する体制が必要と考えております。必要な修正を加え、職員から信頼性があ り、組織的にも精度の高いものに育てる必要があると思っております。  また、個々の具体的な運用では、評価者、被評価者への研修は単発に終わることな く、具体的な範例も提示しつつ、継続的に実施していただき、透明性、公平性の確保に 努め、決して時間的経過による形骸化などはあってはならないものと考えております。 先端的で独創的な制度の構築は職員からの信頼と国民からの支持を大いに得られるもの と確信しております。  次に新組織への移行についてでございます。政府管掌健康保険の運営の分離、年金運 営組織の発足に関しては広く国民に十分な事前周知を図り、混乱することなく移行が図 られるようにする必要があると思っております。また、健康保険公法人への職員の継承 には職員の意向を尊重するとともに、システムも含めた業務の円滑な移行が行われるよ う十分な準備が必要と考えております。  終わりに、社会保険の組織改革の全体像が鮮明になってきましたけれども、改革が大 局的で長期的な視野に立ち、改革の中身はあくまで国民の皆様のためのものでなくては ならないと考えております。今、私どもは、制度面においては次世代への大切な財産と して改革が進められ、組織面においては次世代への重要な機能が果たせるよう、確実に 改革が成し遂げられ、私ども社会保険職員として誇りと生きがいを持てるような組織に なることを願っております。現場を預かる私どもとしても、そのために最善を尽くして いきたいと考えております。よろしくお願いいたします。以上でございます。  佐藤座長  ありがとうございます。お二方から大変貴重なお話を伺いましたが、それでは各委員 の皆様方から御意見をいただきたいと思います。  岸井委員  非常に単純化するかもしれませんが、お二人に今の有識者会議、先にあった官邸の有 識者会議のものもありますが、流れについては、総論は賛成、同調できると。先ほどい ろいろな注文もつきましたけれども、そういう基本認識でよろしいですか。  宮武座長  結構です。  小野地事務所長  賛成でございます。  岸井委員  小野地さんにちょっと伺いたいのですが、先ほど言ったように、今や「守る」とか 「維持する」ということが不要な言葉になっていると。そのぐらい意識改革は大分進ん でいると。しかし、かなり温度差があるということである。ここは非常に問題だと思う んですよね。例えば、具体的に一番温度差がある点、今抱えている問題というのは何で すか。  小野地事務所長  年齢層によりますけれども、年齢の高い40代、50代の職員が既得の、今まで得た様々 な問題を自分たちで解決してきた経緯がございますので、その問題からどうしても頭が 離れないと。改革の意識に持っていくまで「なぜやらなきゃいけないの」というような 言葉まで自分たちの中で燃焼しているような状況でございます。  岸井委員  例えば、具体的にはどんなことですか。  小野地事務所長  先ほど申し上げました国民年金の、例えば保険料収納とか、市町村関係との連携につ いては、やはりまだ市町村との連携があった方がやりやすいというようなものが実際に あろうかと思います。  陶山委員  小野地さんにお尋ねいたします。改革についての基本的な考え方についてコメントが ありました中に、新組織への厳正な手続きによる職員移行というのがありました。この ことについて具体的にどういうことをお考えになっているのか大変興味を持っていたの ですが、必ずしも具体的な御説明がなかったので、できるだけ率直にお考えになってい ることを御説明いただきたいのが1点。  2点目に、市町村との連携について極めて重要な要素だという御説明がありました。 私も全く同感であります。そこで、現場の管理者のお立場で、今後、市町村との連携に ついて具体的にどういう分野、方向でエネルギーを用いた方が新しい組織の対応として メリットが大きいかということについて、お考えになっていることがあれば教えていた だきたい。以上であります。  小野地事務所長  最初の1点目の方から、新組織への移行の件でございますが、厳正な手続きというの は法的な、あるいは規定的なものがあればそれをつくっていかなければいけないのでは ないかと思いますが、ただ実績だとかということではなく、やはり職員は様々で、今ま で抱えている生活やら、仕事への思いもございますので、まずは職員の意向をきちんと とっていただくということが大切ではなかろうかと。一方的な上からの指示、命令だけ では職員の移行がスムーズにいかないのではないかと考えております。  次に市町村との連携という話でございますが、今、私が考えているものは、信頼関係 が必要だという中には、情報提供というものが市町村とのスムーズな関係を引き出さな いといけないと思っております。個人情報保護については今、様々な問題を抱えており ますが、情報提供のスムーズさイコール私どもの業務のスムーズさにつながってくるの ではないかと思っております。  それともう一点、情報提供以外には国民年金の窓口が市町村になっているということ でございますので、私どもの新しい組織が窓口を社会保険事務所にするのか、市町村に するのかというものを明らかにした上で、もし分けて仕事をするとすれば、その明らか なことをきちんと示して、国民の前にそれを説明しておかなければいけないのではない かと思っております。以上です。  小林委員  小野地さんに伺いたいのですが、新人事評価制度の関係で納得性を高めるための見直 しが必要だというお話がございました。私も全くそのとおりだと思うのですが、そうだ とすると制度的にこの見直しがなされるような仕組みにする必要があるのではないかと 思うのです。何かその辺、お考えがおありかどうかということが1点と、全然話が違う のですが、お二方が異口同音に広報が不足していた、これがとても大事だとおっしゃい ました。私もそうだと思うのですが、具体的に、今このような観点からの広報が不足し ているから、こういうふうな広報をすべきだというものが、もし具体的にあれば教えて いただきたい。  小野地事務所長  1点目でございます。納得性、公平性というものを高める人事評価制度でございます が、これには評価、被評価者の互いのコミュニケーションが必要かと思っておりまし て、今の御質問の中にありました、どういうことをしたらいいのかというのは、やはり 一つの手順を具体的に示しておかなければいけないのではないかということと、もう一 点、私が先ほど申し上げましたけれども、凡例等を提示しつつ、その凡例を職員間にき ちんと示していただいて、その凡例に従ってある程度は標準化したものが必要なのでは ないかということを考えております。したがいまして、手順と凡例というものを今考え ていただければと思っております。  広報の大切さというのは、私はちょっと信念を持っておりまして、今、社会保険庁で は、その広報について若干手薄になっているのではないかと考えておりまして、私は広 報というものの大事さは、まず国民年金でいうと優良納付者に対しても広報するという ことを具体的に挙げていきたいと思っております。それは風評とか、口コミというのは 大変大きな力になるのではないかと。風評というのは、誤解のある風評や口コミであっ ては決してならないと思いますが、正しい情報、正しい仕組みというものを出して、風 評、口コミにつながるような大きな力になるものが、今、必要なのではないかと思って おります。私、個人的にはそういうふうに思っています。ただし、現場ではそのような ものに頼るわけにはいきませんので、現場ではしっかりとした、足が地に着いた一つ一 つの未納者への広報、それから、先ほど優良納付者と言いましたが、被用者年金の被扶 養者、このような方たちにも広報をしていきたいということで頑張っているところでご ざいます。  宮武座長  広い意味での広報という意味で申し上げますと、年金制度というそのものの制度の根 幹のところを国民がなかなか理解していない、周知徹底されていないわけです。具体的 に、先ほど申し上げましたが、基礎年金というのは3分の1国庫の補助がついています よということを知らない人が3割も4割もまだおいでになる。払えないとおっしゃるけ れども、それは免除の制度もあるということもなかなか周知徹底していない。物価が上 昇すれば、今は新しい仕組みで物価上昇がそのまま上乗せされるわけではございません が、しかしある程度は物価上昇に合わせて年金が増えたり減ったりする仕組みがちゃん とあるという、そういう老後の生命線であるにもかかわらず、なかなかそのことが周知 徹底されていないのは、やはりそれは広報が足りないと思うわけです。  民間の保険に比べて公的な年金の方が損だみたいな、そんな声がちまたにあるという のは、村瀬さんなんかは民間から来られたから僕はきっとびっくりされているのではな いかと思うのでありますが、これだけ優遇されていて、こんなに周知徹底されていない 制度は一体何だろうと思うわけです。それと同時に、もっと現場での、宣伝活動と言っ てもいいですが、相談業務も含めた宣伝活動について言いますと、社会保険庁の本体だ けでやっておられることはやっておられる。小野地さんが横にいて恐縮ですが、社会保 険事務局、社会保険事務所、どこまで今までやってきたのか。そこにマスメディアが取 材に行ったとしても、ろくな応対をしなかったのが実態ではなかろうかと思います。  各地にあるところ全部、民間の会社で言えば、職員も含めまして、ほとんど巨大な地 方の大企業ですね。そこでの対応が今まで全然足りなかったんだろうと思うんです。そ の辺を改めていく必要はあると思っております。  岸井委員  宮武さんに関連で伺いますが、私も専門の広報官を外部からスカウトしてでもという のは基本的に賛成なんです。これは物すごく大事なことだと思うんです。宮武さんは広 報、ピーアールの努力が十分でなかったと。不足という言い方でやんわり言われている けれども、全くそんなこと考えもしない、必要ないと思っていたんじゃないですか、と いう感じがしませんか。  宮武座長  最初に申し上げましたが、国民の側が年金をもらうというのは、片側から見ると、社 会保険庁から見ると、年金を「あげている」、「やっている」という意識であった。そ れが底流としてあると思います。  岸井委員  ではピーアールの必要性を感じていなかったと。  宮武座長  そういうことでしょうね。国民の側に納付義務があるわけですね。納付義務があるん だから納めるのは当たり前だろうという意識になっていたのではないかなと思います。  佐藤座長  小野地さんから、今の話をお聞きになって御意見もおありかと思うんですね。例え ば、「受け取る年金」という発想でなければおかしいと。当たり前だと思うのですが、 宮武先生がおっしゃってなおそう思いましたが、事務所の側からはどうなんでしょう か。広報を各事務所も挙げてとか、年金のいい面をどんどん宣伝すべきだという大勢の 御意見があったんですが、そういうことを各事務所も今まで余りやってこなかったとい うことでしょうか。この辺り、いかがですか。  小野地事務所長  長い間、国民の間に、社会保険という制度そのものが浸透していない、あるいは誤解 されていたということがございまして、社会保険を身近に感じていただくということ で、広報は長い間、相当自分たちではやってきたことを私は確信しております。その広 報というのは、一つには、例えば、一つのイベントで多くの国民、あるいは市民が集ま るところで社会保険というもの、健康保険、国民年金というものを全面に出してやって きたことは、私ども、長い間やってきたわけですが、しかし今回、制度の根幹を揺るが すような、年金数理的な問題が出たときに、対抗できるような広報ができなかったと思 っているわけです。今までは国民年金や健康保険に対する広報は本当にやってきたつも りでいるのです。また、窓口でも丁寧にそれを国民の皆様に提示してきたつもりでいる わけですが、根本が揺らいだときに対抗するものが私どもになかったと考えておりま す。  袖井委員  ちょっと違うことですが、宮武さんに2つばかりお聞きしたいのですが、1つは運営 評議会、これのメンバーを短期間で本当に新しいいろいろな方を入れていくというのは いいのですが、社会保険庁がピックアップすると、本当の利用者の声が届かないのでは ないかという気もするので、どうやって利用者側の声を吸い上げていくか、具体的な方 策があったらお教えいただきたいということと、もう一つは、応援団という発想はすご くおもしろいアイデアだし、いいことだと思うのですが、どうやって応援団をつくって いくのかということですね。これは社会保険庁だけではなくて、多分日本の役所全体が みんな応援団なんか余りないのではないかと思うのですが、その辺のところ、お聞かせ ください。  宮武座長  最初の点は大変悩ましいことですが、中央にだけつくるのではなくて、地方にもつく っていって、そして任期は2年程度にして、次々に新しいメンバーを入れていくという ことにすると、恣意的な人選というのは社会保険庁にも、社会保険事務局にも限界がご ざいますので、ですから新鮮なメンバーを次から次に入れていって、その方を離さない で、いわばOB、OGとしてさらに長いこと、いつも意見が言えるような立場にいても らうということですね。袖井先生がおっしゃる意味から言えば、その中で公募の方があ ってもいいかと思いますし、地方でも一定程度公募の方をお選びになることもいいと思 います。ぜひ物申したいという方はおいでになると思います。  もう一点は応援団、私も今度、運営評議会というのに思いがけず選ばれまして、出て きて、そして事業運営について、それから今努力していることについて、やはり直接に 会って話を聞いていれば、だんだん理解をしますし、応援団になる要素が出てまいりま すよね。努力されていることを見ていれば、それは大変なことだなと思いますし、長官 が自ら、それこそ全国をかけ歩いているのを見ると、それはやはり人間ですから、ただ きついことを言うだけではなくて、いいところも見えてくるわけでございますので、そ ういうふうに、今までは全く閉ざされていて、被保険者も、年金生活者も、どこでも接 点がなかったわけで、接点があるのは窓口だけですよね。皆さんそこで待たされて怒っ ていたわけです。中に入っていって、直接にいろいろな業務の内容についても説明して いただければ、やはり気持ちは変わってくるのではないでしょうか。  杉山委員  先ほどの質問にちょっと関連するのですが、宮武先生に、例の外部の専門家が入って の年金運営会議、前回も議論とかあったのですが、意思決定機能でかなり権限を持つ者 にということになってきますと、御意見番的なというか、来てちょっと話し合って、事 務局も何もかも厚生労働省の方であったり、社会保険庁の方であったりという中では、 そんなに変わらないのではないかというような話なんかも出まして、そういう意味で は、外部の専門家であっても、ある程度責任を持ったりとか、身分保証があったりと か、かなり時間を割いてこの仕事につくみたいなありようもあっていいのではないかと いうことを感じたりもしているのですが、その辺りはいかがかなというところが1点。  小野地さんに質問ですが、一般の国民からしますと、あれだけいろいろなことがぼろ ぼろ出てきて、それで長官も外部から来て「変わります」宣言をしたので変わりますと いうのでは、「何を言っているの」というところが正直なところで、どうしてそうなる 前に変わることができなかったのかというところを皆様で自己分析されたときにどうい うことが出てきたのかということ。いろいろな改革をされているということだったので すが、職員の方たちが一体どういうことをこの間、例えば夜遅くまで残ってみんなで話 し合いを重ねたとか、その中から自発的にこんなことが出てきたとか、そういうことが あったのか、思い出す限り、ポイントだけで構いませんので、こういうことがありまし たというのがもしあれば、それをお伺いできれば。  もう一点が、宮武先生のこちらの資料にもあるのですが、民間企業への研修であった り、出向であったり、人事交流とか、そういったことは私もいいのではないかと思って いるのですが、その辺りはどのようにお考えなのか、賛成なのか、いやそうじゃなくて 閉ざされていた方がいいのか、ちょっとその辺り、もし宮武先生もその点、何か補足が あればお願いいたします。  宮武座長  最初の点ですが、運営評議会というのは素人の集まりで、相手をするのがみんなプロ で、とても太刀打ちできないだろうと。そうだと思いますよ。だから変に私みたいにな まじか知っているよりも、全くの素人が僕はいいと思うんですね。今度、運営評議会を やってみておもしろかったのは、私なんかすぐにだまされますが、今まで年金のことを 余り知らない人の方が、びっくりするようなことをおっしゃるんですね。プロにはない 発想ですよね。生活に根差してお話になったり、質問されて、「これ、どうなっている の」とおっしゃる方がむしろ非常にインパクトがあります。  これを地方の方でもつくればもっと素朴な意見が出てくると思いますし、地方ごとに 出た意見をまたくみ上げて、中央でもう一回やり合うというか、こんなんでいいのかと いうような話をした方がいいと思っているんです。そういうことをやれば有効な会議に なるのではないか。何よりも、ないよりましです。とにかく40年間なかったんだから。  もう一つは、緊張感を保つためには、例えば地方の運営評議会、社会保険庁が新しく やられるような事業についてはその会議を発表の場にされる。そうすると、マスメディ アは必ず報道してくれて、いつも緊張感を持ってできると思うんですね。地方での同種 のものを運営評議会、あるいは懇談会かどうかわかりませんが、それを持って、例えば 秋田でなさる新しい年金の取組みについてそこで発表なさる。そうすると、マスメディ アも取り上げてくれるし、宣伝や広報ってそういうものでしょう。そういう形で広報し ていって、なおかつ形骸化しない、緊張感を持って維持できるという、方式としてはそ れがいいのではないかと思っております。  小野地事務所長  2点ほどあったかと思いますが、まず、長官よりの「変わります」宣言がある前にな ぜそういう動きがなかったのかという話ですが、私どもは現場におりまして時代の流れ とそのスピードとかに大変ゆがみを感じておりました。ですから、本来こうあるべきで はないかということと現場とが何か一緒に走っていないなというゆがみを感じておりま した。しかしながら、そのゆがみは、私ども地方にとっては出すすべがないというのが 正直な気持ちでございました。すべがないというよりも、結果的に本庁である社会保険 庁の方に意見を申し述べる機会がなかなかつくれないと。それがまた問題意識を持ちな がらも、形にあらわれていない原因がそういうところにあったのではないかと考えてお ります。  また、2つ目の話ですが、自発的にそういう議論とかが現場ではなかったのかという ことでございますが、時間が遅い、早いは別といたしまして、あらゆる機会をとらえな がら職員間でそれは議論もありました。それが建設的な議論であれば一番いいのです が、また逆行している議論も逆にございまして、それは逆に矛盾を感じている部分であ りましたが、議論そのものは職員間で大分していたと思っております。具体的には何々 ということではないですけれども。  稲葉委員  宮武さんにお伺いしたいのですが、新組織の構想についてというところで、運営評議 会に触れられましたが、現在の社会保険事業運営評議会について、意見のくみ上げ方と 言いますか、現実に意見というのはくみ上げられたのかどうかという実態について教え ていただきたいのですが、それと何かその点で問題をお感じになったということはない のかどうか。  それに関連いたしまして、現在の社会保険事業運営評議会というのは、資料にもあり ますように、長官決裁で、いわば懇談会的な行政運営上の会合と言いますか、長官がそ の参集を求めて、その都度皆さんがお集まりになるというスタイルの組織であると思う のですが、今度つくるべき運営評議会というものは、もうちょっとオフィシャルなもの にした方がよろしいとお考えかどうか。オフィシャルという意味は、いわゆる審議会的 な、もうちょっと恒常性のあるようなものと言いますか、あるいはそういう必要はなく て、もっと実態というものが重要であるとお考えなのか、その辺、御意見がございまし たらお聞かせいただきたいと思います。  宮武座長  1点目でございますが、この運営評議会で、非常に細かな資料も含めまして社会保険 庁側に説明をしていただいて、それに対してかなり厳しい意見もいつも出ております。 極めて著明な経済人もお入りになっているわけでございまして、そういう方から見ます と、今の社会保険庁の運営なり、財政的な処理についてもプロとして極めて厳しい意見 が出ます。それについて大変真摯に毎回お答えいただき、かつ追加資料も求めると当然 ながらすぐに出てまいりますので、そういう意味では意義があったのかなと思っており ます。  私なども言いたいことを言う方でございますので、特に国民年金の納付率をいかに上 げるかということになりますと、持論ですが、国民年金の保険料は市町村の健康保険、 介護保険と一括して徴収すれば、これは絶対とり漏れがずっと減るわけでございます。 そういうことをやったらどうですかと言いますと、村瀬さんから見事な返答がございま して、私ども、やるべきことをやってからしかそういうことは言えませんとおっしゃっ たので、それもまた立派な御答弁だなと思いますが、そんなことも率直に申し上げてお ります。ただし、問題はどこまで緊張感を保てるかということだと思います。  2点目でございますが、できたらそれはオフィシャルなものがいいと思います。今の 運営評議会は、実は委員でも何でもなくて、参集人という名前でございまして、参詣人 というのは聞いたことがあるのですが、参集人というのは初めて聞きました。それはや はり国の方の何か審議会をつくってはいけないという規定で、そういう参集人という仕 組みにするほかなかったようで、もちろん新しい組織に向けて皆様御検討なさるとき に、もう少しオフィシャルなものにしていただければというのは、メンバーの多くはそ う考えていると思います。  大山委員  私自身はシステムの刷新を含めたコンピュータ関係を見ている者ですが、この観点か ら運営評議会の座長をお務めの宮武先生に一つお聞きしたいと思います。御案内のとお り、先進的な自治体や民間企業においては、ITは経営の武器に今なっています。社会 保険庁においては、残念ながら、これまでの状況を見させていただいたところ、言葉は 悪いですが、武器ではなく餌になっていたかもしれないと感じています。なぜこうなっ たのかをよく見てみると、やはり組織を運営する側のある種のガバナンス、特にITの 場合には、ITガバナンスという言葉を使いますが、自分たちが非常に強力な武器であ るITをどう使えばよりよいサービスをより低コストでできるかという観点が不足して いたのではないかと思います。この問題を解決しようとすると、ある意味では、人をふ やす必要があります。もちろん、人を育てることも考えられますが、これには長い時間 がかかります。  このことを踏まえて、座長の先生にお聞きしたいのは、運営評議会の開催経緯を見る と社会保険オンラインシステムの見直し等についての説明があったと書いてあります が、今のような観点についての議論およびお考えがありましたら、私の方も十分参考に させていただきたいと思いますので、ぜひこの機会に教えていただければと思います。  宮武座長  私の大変弱いところでございまして、よくわからないところでございますが、メンバ ーには王子製紙の社長もおいでになりますし、日本経団連の常務理事もおいでになりま して、このお二方を中心に今のコンピュータシステムのことについてはよく意見が出ま す。一つ、今まで取組みがおくれていたことを社会保険庁側も認めています。ただし、 新しいシステムを入れようとすると膨大なお金がかかるということです。そこのところ がネックになっていると聞いております。意欲はあるけれども、先立つものがないとい う答弁に今のところはなっております。お答えになったかどうか知りませんが、恐縮で す。  木村委員  小野地さんにお伺いしたいのですが、小野地さん、こういう改革で、職員の方を引っ 張ってこられて、このレベルまで達したということだと思うのですが、他の、例えば市 役所とか、保健所とか、同じような行政機関のサービスレベルと比べて、今、改善され たレベルがどういうものであるのか。そういうものを職員の方はどのように思っておら れるのか、その辺りを教えていただきたいと思います。  小野地事務所長  市役所と保健所ということが具体的に出てきましたが、今、サービスレベルについて は、私ども、自信を持って、我が社会保険事務所では改善されていると。あるいは先端 的にやっていると思っております。民間レベルという言い方ではあれなんですが、民間 レベルに近い、国民をきちんとお客様という形でやっているという自信は今ございま す。ほかのところ、たまに私も市役所等に行きますが、ここでは言えないですが、まだ 私どものレベルではないなと思っております。自信を持って。  佐藤座長  まだ時間をかければ幾らでもお教えいただきたい点が多くありますが、また改めて私 どもが気がついたことを別途お教えいただくこともあるかもしれません。あるいは改め てお気づきの点がまたあれば、後日、メモでもいただくなり、お教えいただければとぜ ひ思っています。時間を切ってしまって大変恐縮ですが、どうも本当にありがとうござ います。御苦労様でございました。  引き続きまして、後半のお二方からヒアリングを進めたいと思っております。最初に 事務局から御紹介申し上げます。  清水参事官  後半は職員団体の代表2名の方にお越しいただいてございます。発言順に御紹介申し 上げます。  まず、全日本自治団体労働組合国費評議会の高端照和議長でいらっしゃいます。  次に、全厚生職員労働組合の杉下茂雄中央執行委員長でいらっしゃいます。  進め方ですが、前半と同様、お一人15分程度の合計30分、御発言をいただきまして、 その後、委員の皆様方と意見交換を行っていただきたいと思います。なお、御両者から それぞれ資料を御用意いただいてございます。高端議長のものが資料4でございます し、杉下委員長のものが資料5でございます。御発言の際に参照していただければと存 じます。  それでは座長、よろしくお願いします。  佐藤座長  御多忙のところ、本日は御出席を快くお引き受けいただいてありがとうございます。 限られた時間で恐縮ですが、まず高端議長より御発言をお願いいたします。よろしくお 願いします。  高端議長  御紹介いただきました、自治労国費評議会で議長を務めています高端照和と申しま す。こうした場を設けていただきましたことに感謝を申し上げさせていただき、早速、 社会保険庁改革に関しての自治労国費評議会の考え方などについて発言をさせていただ きたいと思っております。自治労国費評議会の概要につきましては既に資料があるよう ですので、省略をさせていただきたいと思っています。  それでは、資料4として用意をさせていただいていますので、御参照いただきたいと 思っております。順番がよくなくて申しわけありませんが、まず7ページを御参照いた だきたいと思います。社会保険庁改革に向けて国費評議会の基本的な姿勢ということに ついてでありますが、7ページに、昨年8月の国費評議会組合員1万2,500名の総意を もって確認した活動方針の抜粋を掲載させていただいています。  昨年のいわゆる年金国会以降、社会保険庁・社会保険事務所に対する様々な問題の指 摘や厳しい批判を受けるようになりました。こうした中、私たち国費評議会は「被保険 者の視点に立ったサービス」を遂行し、信頼回復に全力を挙げなくてはならないこと、 労働組合としても、信頼回復・サービス向上に向かっては民間からの村瀬長官のもと最 大限の努力をし、被保険者に安心信頼を提供していくこと、第一線現場で働く者とし て、わかりにくい制度への不信や行政に対する不満を払拭し、社会保険行政が住民に身 近で開かれたものとなるように取組みを進め、住民の視点に立ったニーズに沿ったサー ビスを提供していくことなどを確認し、この1年間、改革を自らの課題として職場から 取組みを進めてきたところであります。  続きまして9ページのところを参照していただきたいと思います。昨年9月には、総 会方針の具体化としまして、国費評議会は、被保険者・事業主・受給者などと現場で直 に接している私たちこそができる取組みということで、記載があります「社会保険職場 改革アクション」の取組みを提起してきました。  そこでは、社会保険庁改革の成就は、最終的に、被保険者・事業主・受給者など、カ ウンターの向こうの国民の皆さんから見て「変わった、よくなった」と感じられるこ と、社会保険事務所に寄せられる声は社会保険庁改革の源泉と受けとめて取組むことが 大切であること、社会保険事務所で直接被保険者などの声を聞くことのできる私たち国 費評議会組合員が、極めて重要な任務を与えられていることを認識し、この改革にやり がいを持って生き生きと取組みを進めることなどが重要でありまして、自分たちがどう 見られているのか、どのように受けとめ、どう改革に生かすのかということ、このこと がとても不足してきたことを反省し、利用者の立場に立った社会保険庁改革の視点で取 り組みを進めてきました。  申し訳ありませんが、1ページのところにまた戻っていただきたいと思います。「社 会保険職場改革アクション」の取組みを行う中で、改めて社会保険行政を見直すと、制 度が一人一人の被保険者にきちんと届いていないこと、社会保険事務所の業務運営の多 くが申出主義に立っていることを痛感しました。  2ページのところでありますが、利用者が現場に寄せる声ということを表にしまし た。ここにありますとおり、年金関係であれば、年金をあと何年掛けて何歳から支払わ れるのか、本当に支払われるのかということは必ず聞かれることであります。このこと は、一人一人に即した年金に関する必要な情報や制度周知が届いていないこと、結果と して利用者が社会保険に関する情報の多くをマスコミ報道で得ている状況があると思い ます。年金空洞化を解消し、制度に対する信頼を取り戻すためにも利用者の一番望む声 に見える形で社会保険事務所から提供することが大切だと思っています。  国費評議会はこのような取組みを踏まえ、昨年の11月、今年の7月の2回にわたり、 社会保険職場の改革・改善に向けた現場からの提言をもって社会保険庁との意見交換を 行ってきました。その提言は資料の11ページ以降に記載しておりますので、後ほど御一 読いただければと思っています。こうした取組みが社会保険庁の業務改革プログラムの 中に盛り込まれ、活かされてきているものと考えており、今後も各職場において継続し て取り組むこととしていきたいと思っているところであります。  続きまして3ページ以降のところでありますが、そうした取組みを通じまして、「IV .信頼回復に向けては、徹底して利用者の立場に立った社会保険庁改革を」ということ を課題で載せておりますが、具体的にその提言ということで大きく4つをまとめてきた ところであります。  1つは、利用者の信頼を基礎とした制度の確立に向けて、制度と執行体制の一体的な 改革を図り、年金制度の空洞化を解消すべきではないかと思っているところでありま す。  2つ目として、被保険者の身近なところでの執行体制の確立と申出主義を排したきめ 細かなサービスの提供ということであります。これは例えば医療保険の関係で高額療養 費という制度がありますが、その制度そのものを知らないということの中で、請求が行 われず時効により権利が消滅するケースがあります。まさに申出主義でなく、そういっ た権利が確保されるためにも、年金の裁定請求書と同様に、該当している被保険者に高 額療養費支給申請書として通知をするターンアラウンド方式導入など、できる限り申出 主義を廃止し、積極的に情報提供を行い、利用者とのしっかりとした信頼関係を構築す ることが重要ではないかと思っています。  もう一つ、年金ドックの開催と書いておりますが、医療における人間ドックと同様、 60歳まであと残すところ25年という35歳での被保険者中間点通知を活用した35歳人間ド ックを開催してはと提言したいと思っています。一人一人の加入記録に即して、受給権 確保に向けた60歳までの年金設計に対する相談を、基礎年金の受給要件25年を残したそ の時点で被保険者全員を対象にした年金相談を実施するというイメージで考えていま す。35歳年金ドックが被保険者の義務まで高められることができれば、受診者は制度に 対する理解と安心が得られ、順調に年金制度に加入すれば、受給権発生前に年金裁定請 求書が送られてくるまで、そう頻繁に社会保険事務所に資格記録や受給要件を問い合わ せる必要もなくなり、事務の効率化にも結びつくのではないかと思っています。  このように、社会保険改革は徹底して利用者の立場に立ち、望まれることをきちんと 目に見える形でサービス提供できる、そういったことを行っていくことで、現場職員も やりがいを持って働くことができると思っているところであります。  3つ目としては、利用者の信頼と納得性の確保に向けて、利用者の声が制度や事業運 営に反映される組織システムの確立ということであります。どのような改革をするにし ても、利用者の納得と協力が必要だと思っています。新たな年金運営組織においては運 営評議会との連携を図り、利用者の声が事業運営の在り方や年金運営組織を通じて制度 改正に反映されるまで、利用者の制度参画による納得性を確保すべきだと思っていま す。今、各都道府県版の運営評議会とも言うべき地方社会保険事務局サービス改善協議 会がつくられておりますが、そういったこともさらに充実、発展するべきではないかと 思っているところであります。  4つ目としまして、社会保険庁改革は事務の効率性と効果性の重視、利用者に対して サービスの低下をもたらさないことが前提ということであります。今、検討されていま す政管健保公法人の分離独立ということでありますが、そのことについて年金運営組織 との密接な連携を行い、利用者との利便性を低下させないということが重要だと思って います。例えば、健康保険の傷病手当金と厚生年金の障害年金とが併給調整される規定 がありますが、新たな組織となった場合、どこに相談に行き、どこに書類を提出するの か、問い合わせは1カ所で済むのかなど、利用者にとっての利便性を損なうことのない 検証が必要だと思っています。  また、利用者の接点である窓口機能の充実ということの中では、市町村窓口との連携 やターミナル駅を活用した連携なども検討し、利便性を高める必要があるのではないか と思っているところであります。  年金制度の空洞化の解消に向けてということでありますが、具体化の中でも少し述べ てきましたが、年金制度の部分について、例えば国民年金について見ると、従来は自営 業者中心という見方をされていましたが、現状の部分ではパートやフリーターやニート の方、失業される方々を対象にしている状況があります。したがって、そのことについ ての空洞化の解消ということの中では厚生年金における完全適用の問題、そういったこ ととあわせて行っていく必要があるのではないかと思っています。  さらに、広報の問題についてもそうでありますが、今まで厚生年金の関係については 事業主に対しての広報を行っているということにとどまっている状況があって、一人一 人の被保険者になかなか制度周知が届いていないという状況もあります。そういったこ とも含めて行うべきではないかと思っているところであります。  次に6番目、利用者の立場に立ち、職員が誇りとやりがいを持って働くことのできる 職場にということでありますが、5ページのところであります。「新たな人事評価制度 」を中心に説明をさせていただきたいと思っております。国費評議会は「新たな人事評 価制度」の実施に当たっては、その前提として利用者の立場に立った行政機能を規定す ることが大切であると考えています。年金制度の空洞化のとこで申し上げたとおり、年 金制度の空洞化の解消に向けては国民年金担当職員のみで解消できるものではなく、健 保・厚年の適用調査業務の適正化などの業務が空洞化の解消に資することなど、組織全 体の目標に向かっての役割を果たしていることが実感できるよう、明確な目標を定めた 業務運営が重要だと思っております。その上で、人事評価の果たす役割として、組織目 標に沿った一人一人の頑張りが評価に結びつくこと、上司と部下のコミュニケーション が円滑となること、社会保険庁改革の前進、行政サービス向上に結びつき、職員が誇り とやりがいを持って働き続けられることに資する制度とすべきだと考えています。  「新たな人事評価制度」は現行法枠内の対応ではありますが、社会保険庁のみなら ず、公務員総体の課題であり、トップランナーとして人事院や他官庁からも注目をされ ていると思っています。人事評価制度は職員への周知と理解、評価の物差しとなる基 準、評価するためのシステム、評価する者とされる者との信頼関係がしっかりしたもの でなくてはならず、やり方を間違えれば職場に混乱が生じたり、職員の意欲や士気の低 下につながりかねないと思っています。この間のいろいろな会議の中でも御議論のあっ たところだと思っております。制度構築に当たりましては、公平・公正性、透明性、客 観性、納得性を持った制度、苦情処理制度、労使協議制が確保されるべきであり、特に 労使協議については、本年の人事院勧告においても「職員、各府省、職員団体の理解が 得られるよう、関係者間で十分協議を行った上で、試行を行い、実効性を検証しつつ制 度設計することが不可欠」とされ、10月21日、給与法が衆議院において可決された際に も同趣旨の決議が行われているところであります。  現場、社会保険事務所の業務はグループワークがほとんどであり、「新たな人事評価 制度」の導入を通していかに組織全体のパフォーマンスを向上させるかが問われている と思っています。現在示されている社会保険庁における試行制度では実績評価と能力評 価とに分かれ、実績評価において目標管理の仕組みが導入されています。目標管理の部 分などは私たちの職場にも適用しやすく、組織力の向上にも役立つのではないかと考え ています。一方、評価制度は余りに複雑にし過ぎると、評価のための評価に陥って、本 来の目的を見失ったり、評価のために時間が割かれ、効率性が低下しかねません。社会 保険事務所にふさわしい実効性のある評価制度の構築に向けても、今後の試行期間を通 して国費評議会の意見を聞く場を設けることを要望したいと思っております。  最後になりますが、村瀬長官の「社会保険庁は変わります」宣言を受け、この1年 間、現場職員は信頼回復と行政サービス向上に向け、精一杯頑張ってきました。最近の お客様満足度アンケートの結果にも示されているように、改善が図られてきたとの評価 もいただいています。一方、残念ながら、メンタルによる長期病休者の増加や5年間で 83名に上る現職死亡、早期退職の増加など、大変厳しい実態が顕在化してきておりま す。こうした健康に関する課題や将来に対する漠然とした不安などについて労働組合に も大変多くの声が寄せられてきております。社会保険庁改革は向こう3年間、セカンド ステージを迎えます。改革意欲を持って生き生きと働くことのできる持続可能性を持っ た組織体制と取り組みが求められていると思っています。職員は住民と直に接する現場 で経験を蓄積された貴重な人材であり、改革の実現のためには職員が健康で明るく誇り とやりがいを持ち、自信と確信と将来展望を持って働けることが必要であると思ってい ます。  以上を申し上げ、国費評議会としての発言とさせていただきたいと思います。ありが とうございました。  佐藤座長  ありがとうございました。それでは引き続きまして杉下委員長の方から御説明くださ い。  杉下委員長  全厚生職員労働組合中央執行委員長の杉下と申します。有識者会議の委員の皆様の御 尽力に心からの敬意を表するものです。また、本日はこのような場を設けていただき、 職員団体の立場からお話しできる機会を与えていただきましたことに感謝申し上げま す。  各種世論調査からも明らかなように、社会保険制度に対する国民の関心は極めて高い ものであります。それだけに制度拡充はもとより、国民から信頼され、期待にこたえら れる業務の遂行ということが強く求められていると思います。ところが、事業運営を担 当している社会保険庁に対して、その存在を許さないとするほどの厳しい批判が突きつ けられてきました。この間、日々第一線でまじめに働いている職員にとっては本当につ らい日々でした。それだけに何としても地に落ちた信頼を回復しなければならない。そ のために私たちは全力を挙げなければならないと考えているところです。  また、私たちは国民の基本的人権の保障と福利の実現という公務、公共部門の役割の 中心を担っている社会保障行政、社会保険行政事務において、組織的と言える一連の不 祥事等が引き起こされたことは重大な問題であると受けとめています。当該労働組合は 何をしていたのかとの批判は真摯に受けとめなければならないと考えています。私たち は公務員労働者の基本的役割を改めて自覚するとともに、指摘されているところの社会 保険庁の組織の構造問題を改めるために、国民の利益を第一に、必要な改革は当然に行 わなければならないと考えています。  また同時に、私たちは国民としっかり向き合うことが大事だと考えています。今回、 私たちは専門性を生かして年金講師団活動に取り組んできました。これは2003年10月か ら2004年8月までの取り組みで、約674回、参加2万4,000人の国民と向き合って話し合 いをしてきました。また、2004年3月にはやりがいのある仕事と国民から信頼される行 政の実現を目指しての社会保険行政研究集会、さらにことしの3月に国民本位の年金制 度と真の社会保険庁改革を考えるシンポジウムを開催するなどの取組みを進めてきたと ころです。  こうしたことを基本にしまして、現在、進められています社会保険庁改革に対して、 4点にわたって私どもの考え方を申し上げたいと思います。  第1点は組織改革についてです。社会保険制度は国家の責任としての社会保障制度確 立の中心をなすものであり、これは後退させたり、縮小させてはならないものです。ま た、制度運営については安定性、継続性からも国民の信頼を基礎に国が全面的に責任を 負う必要があります。公的年金の運営主体については政府が直接に関与し、明確かつ十 全に運営責任を果たす体制を確立することが必要となっているところですが、国の責任 並びに業務の性格・内容等から私たちは国家行政組織法第3条に基づく行政機関、庁と して位置づけることが必要であると考えています。  次に公的年金制度と政管健保の運営の分離については、社会保険庁解体ありきからの 結論ではないのかと考えるものです。政管健保は被用者保険の最後の受け皿です。国の 責任ということを基本に労働者、国民の視点に立ち、運営主体等についてどうあるべき かの幅広の議論が必要なのではないでしょうか。適用及び徴収と給付は一体のものであ り、被保険者等の意見を反映した自主性、自立性のある保険運営が行われる仕組みには 大いに賛成ですが、分離は事務処理の効率性等から問題があるのではないかと考えてい ます。私たちは、政管健保は国の責任において全国一体的にしていくことが必要である と考えているところです。  また、組織改革にかかわって雇用の問題が重大な問題であると考えています。職員の 新組織への移行について、自由民主党、社会保険庁等の改革ワーキンググループ等合同 会議の「社会保険庁の解体的出直しと新組織設立について」においては、漫然と新組織 の職員に移行しないための措置を講じるとして、法的措置を含め検討としています。し かし、雇用問題には最善の努力を払うことが必要であり、雇用不安を起こすべきではあ りません。この点で選別や排除を可能とするような法的措置なるものを規定するような ことはあってはならないということを申し上げておきたいと思います。  第2点は業務改革の推進と職員の労働条件についてです。業務改革については、先に 述べましたように、必要な改革は当然行わなければなりません。このことにおいて大事 なことは、職員において積極的で実践的な推進体制をいかに構築するかです。これまで においては通知即実施、トップダウン方式で有無を言わせず走ってきました。職員には とまどいとともにやりきれない思いが生じています。職員が能動的、主体的に意欲を発 揮する上において事前の説明、周知など、職員の理解を得る手順を十分に尽くすことが 必要なのではないでしょうか。また、この際、労働条件については勤務条件法定主義で あり、そこから外れることがあってはならないし、十分に考慮されなければならないと 考えるものです。そのためには労使協議を尽くすことが不可欠であると考えています。  第3点は新人事評価制度についてです。短期的評価結果をインパクトが余りにも強い 給与処遇に活用することは、その結果、避けられない矛盾や問題、弊害が生じる危険性 が極めて高く、重大な懸念を抱いています。私たちは短期的評価結果を給与処遇に活用 すべきではないと考えています。公務員人事管理及び行政事務の遂行においては中立・ 公正性の確保とともに、民主的で、希望と意欲を持って安心して働ける職場づくりが重 要だと考えるものです。  以下、私たちの基本的な意見を述べておきたいと思います。1つは、評価制度は労働 条件そのものであり、理解と納得が得られる十分な労使協議が行われることが前提でな ければならないということです。ことし8月の人事院勧告での報告では、能力・実績に 基づく人事管理の導入に当たっては、職員を初め各府省や職員団体の理解と納得を得ら れるよう、関係者間で十分協議を行っていくことが不可欠であると特に強調していま す。  2つは、本格実施に至る過程において十分な検証、検討が行われねばならないという ことです。職場に、職員に、様々な思いや意見があります。スケジュールありきのやり 方は改めるべきであり、後々の禍根にしてはならないということを申し上げておきたい と思います。  そして3つは、公務全体との整合性を図ることが必要だということです。能力・実績 に基づく人事管理の導入については、この間、公務全体の大きな課題になってきていま す。様々な角度から多くの問題が指摘され議論があるこうした制度を導入するのにはそ れなりに慎重であるべきであり、あらゆる角度から検討すべきです。同時に公務員の労 働条件の根幹を規定している公務員制度そのものにかかわることであり、その点からも 公務全体との整合性を図ることが必要だと考えています。  第4点は、定員削減についてです。社会保険職場の実際からすれば、業務量見合いの 要員の確保は最も重要な課題であり、私たちは一貫して強く定員増を要求してきまし た。当局も最大限の努力を約束してきたところです。今、公務の現場の実際を全く無視 した形で、公務員が少なければ少ない方がよいとした議論が展開されていますが、無責 任であり、強い憤りを感じているところです。社会保険業務はこの間、増大する業務量 への対応、そして行政サービスを向上させるために、科学技術と言いますか、コンピュ ータシステムを利活用し、そのレベルアップを図りながら対処してきました。相当の部 分は効率化、省力化が行われてきました。  しかし一方、社会保険の業務はマンパワーなくして成り立たないということも動かし がたい事実です。増加する業務量への対応、行政サービスの向上、さらに働くルールの 確立からも削減ありきのやり方は改めることが必要だと考えるものです。お手元の資料 にありますが、2003年秋に私たちは職員アンケートを実施しました。働きがいのある職 場づくりや執務環境のために充実・改善すべきことでは定員増が圧倒的に多くなってい ます。  今、職場では人間関係が希薄になっている、職員同士の会話は少なくなってきてい る、また、心の病で休んでいる方が目立つほど多くなってきているという実態が報告さ れています。こうした深刻な事態の背景には複雑な仕事とともに忙しさがあることは疑 いのないところです。私たちは適切で具体性のある対応を当局に繰り返し求めていると ころですが、重要なことは、繰り返し申し上げますが、業務量に見合う定員を確保する ことが必要だということです。削減ありきではなく、現場の実際を踏まえた議論、対策 こそが重要であるということを申し上げておきたいと思います。  最後に、公務は人であり、育成が重要であります。改革の中で職員のモチベーション の低下を来すようなことはあってはならないと考えるものです。以上のことを申し上げ まして、私の発言といたします。ありがとうございました。  佐藤座長  どうもありがとうございました。それでは各委員からどうぞ、御意見なり、御質問が あればお出しください。  岸井委員  率直な印象を申し上げると、非常にそらぞらしいですよね。本当にそらぞらしいと思 う。それで世の中通ると思っているかどうかということですよ。では杉下さんの方に聞 きますが、真の改革をやる、また改革への努力、苦しい中でもいろいろやってきておら れるということを言われているのですが、この6月の機関紙号外も、今言われた基本の 要求というのも聞いていると、いわゆる改革路線には反対ですね。今言われている改革 の流れには。改革とは言えないという認識ですか。  杉下委員長  一貫して私どもは私どもの大会でありますとか、中央委員会でありますとか、または 社会保険関係の支部代表者会議でありますとか、そういう会議の場を通じまして、社会 保険庁改革は進めなければならない、やらなければならない、なぜならば、歴史的、組 織的に形づくられてきた社会保険庁にやはり問題はいっぱいある、このことを仲間たち に私は語ってきました。そういう点では、改革全体をすべて無条件にそれを支持するも のではありません。しかし、基本的に社会保険庁が抱えている課題につきましては、こ れは全面的に改めなければいけない。この立場は一貫した姿勢であります。そういう点 では改革に反対ではありません。以上です。  岸井委員  それでしたら、あえて言うわけではないけれども、そういう職員団体として、社会保 険庁がこれだけの不祥事を起こしてきて、あえて言えば組織の体をなしていないような 組織にしたことについて、職員団体にはその責任はあるわけでしょう。それに対する反 省の言葉から始まらなければおかしいんじゃないですか。  杉下委員長  その点では、指摘されているような問題を杉下が承知していなかったのかと言われれ ば、私は承知していた部分は、相当部分というよりは一定部分あります。にもかかわら ず、私が全厚生の委員長を引き受けて7年になりますが、この問題が社会的に大きな課 題になる以前において、内部告発的な問題提起というのをしてこなかった。そういう点 で私は個人として痛切に反省をしている話を機関会議でも申し上げました。そういうこ とを含めて、私どもは組織として、同時に公務員労働者として、本来どうあるべきなの かという、その基本に立ち返った議論が必要だ、こういう立場で議論をしてきました し、私はその姿勢で臨んでいるつもりであります。  岸井委員  その関連になりますが、高端さんにお伺いしたいのですが、この一連の不祥事で、今 もお聞きしましたけれども、職員団体にその責任というのはありますよね。我々にも明 らかにされた100に上る合意書とか覚書があるわけですよ。これは、言い方が悪いかも しれませんが、改革とか、新しいことをやることはできない、あるいはやらない、その ことの確認の羅列だったようにも思うんですよね。つまり、労働組合として守らなけれ ばならない使命とか役割はあるけれども、ある限度を超えるとそれは既得権益の集団に なるわけですよね。そこの一線を越えているような反省はないのかどうかということで すね。その点について、高端さんから。  高端議長  それではお答えさせていただきたいと思います。国費評議会は社会保険庁とこの間、 事業運営や全般にわたるいろいろな課題について、特に新たに業務を行っていくそうい うことの中では、それぞれの各県や職場の現場の中で混乱することのないように、スム ーズに行くように、現場の声を出しながらいろいろな話をしてきました。したがって、 そのことに向けて、問題のないようにスタートするための確認ということで、確認事項 ということで取り交わしをやってきました。そのことによってそれぞれの業務が円滑に 進んでいるというふうには自負をしてきているところであります。  当然、労働組合でありますから、そこで働いている職員がそのことで健康を損ねた り、不安な思いをしたりということのないような形の指摘というのは、当然それはして きているところでありますが、それぞれの業務に当たっては、そういうことの中で円滑 にするためのスタートを切るということの確認ということでやってきていると思ってい ます。  ただ、いろいろなこの間の動きやそういうことの中で、例えば労働組合としてのチェ ック機能がどうだったのかという話を言われればそのとおりであると、そこは反省をし ていますので、これからの改革やいろいろなことの中でそのことは提言をしたり、利用 者の声を生かしたそういうことになるように話をし続けていきたいと思っているところ です。  陶山委員  お二方に同じお尋ねをいたします。お答えは簡潔で結構であります。地方事務官制度 が廃止になって今まだ日が浅いわけでありますが、制度が変わったことによって、廃止 されたことによって、文字どおり現場の第一線で働いておられる職員の方々の意識的な 面でよく言われることが、例えばかつての地域主義的な意識であるとか等々含めた意識 の面で何か変わったことがあったのかどうか。もし変わったことがあったとすれば、ど ういうふうな変化があったのか。組合のリーダーとしてのお立場で簡潔に率直にお答え をいただきたい。ただし、いいとか、悪いとかの価値判断的な要素は結構であります。 率直に事実として認識されているところを教えていただきたい。  高端議長  私の方から先にお答えさせていただきます。地方事務官制度、50年にわたる制度とい うことでありますので、その中で、例えば採用だとか、そういうところも機関委任事務 ということの中でスタートしている部分がありますから、その上に成り立っていること があるということでありますので、意識の上では、自分たちはそれぞれの都道府県の中 で働いているんだという意識がありますし、業務の上でも都道府県の行政機構に入って きたということがあります。  ただ、身分の切替え以降、国の行政組織ということもありますし、そしてそれぞれ、 今、LAN等を活用していろいろなことの情報伝達ができるような形になってきて、よ りよいものを取り入れようじゃないかということの感覚は持ってきているのではないか と思っております。心情的な問題で言えば、それは自分たちがそこで採用されてきたん だということの意識は、それはあると思いますけれども、行政を進める上では、そこの ところは全国的なものになってきているのではないかと思います。  杉下委員長  私ども、地方事務官制度問題というのは行政の在り方と職員の身分の在り方、両方に かかわる問題という認識で長い間、取組みを続けてきました。組織の中に3つほど意見 がありました。そういう意味では相当慎重に、丁寧に議論をしてきましたが、最終的に 私ども組織としては、今日もお話ししましたが、基本的な考え方として国の責任で国家 公務員が当たるべきだという方向性で意見を取りまとめ、取組んできたところでありま すから、地方事務官制度が廃止されたというのは心から喜んでいるわけでありますし、 一層その立場から、まさに国の責任としての社会保障行政を遂行していくために力を注 ぎたい、こんなふうに考えてきているところであります。  小林委員  お二方に伺いたいのですが、人事制度のところで、高端さんの方は、複雑なものはよ ろしくないということと、より実効性のあるものというように、非常に抽象的におっし ゃいました。杉下さんの方は、この新聞の3ページにもございますように、給与処遇に 短期的な評価結果を活用するのはいかがなものかという、こういうお話があります。こ ちらも非常に抽象的で、いま一つわかりにくいのですが、どういう点が問題になると思 うのか、どのように運用すべきとお考えか、もうちょっと具体的にお話しいただけます か。  高端議長  それでは私の方からお答えさせていただきます。新たな人事評価制度をなぜ行ってい くのかということ、社会保険庁改革を進めていくために必要なものというのは、一つ は、一つの改革に向けて目標をつくっていこう。そのために課だとか、事務所だとか、 そういうところの中でどう目標をつくりながら、そのことに心を一つにして頑張ってい くのかということの中身が大変重要ではないかなと思っています。ただ、今、そのこと についてのマニュアルがいろいろ出来ていますが、それぞれの中での信頼関係や物差し というのがしっかりしていないと、そのことに振り回されるということがあります。  例えば今、事務所の課長さんが第一次評価ということになってきていますが、それぞ れ目標をつくっていろいろパフォーマンスをつくりながらやっていこうということで日 々努力をしているわけですが、そのことの中身が余りに細かくなってしまうと、いわゆ る平常の業務を持っているわけですから、評価のための評価ということになりかねない という要素を持ってきているわけで、できるだけみんながわかりやすい制度に練ってい かなくてはいけないのかなとは思っているところであります。  杉下委員長  お答えします。私どもは評価そのものに批判をするものではありません。ただ、短期 的な結果と言いますか、その前といたしまして、この制度を形づくり骨格をなしている もの、私は大きく言って2つあると思うんです。一つは目標管理制度であり、もう一つ は評価そのものだろうと思うわけであります。公務の場合の特性と言いますか、そうい うものを考えたときに、自己目標的なものでその結果を図り、結果として個人の処遇に 直結させていく。こうした短期的な結果を反映させるということは、組織のチームワー クと言いますか、そういうことよりも評価、つまり評価する側に対する被評価者の対応 の問題であるとか、矛盾がいろいろ出てくると思います。  ちょっと話は違うのですが、一つ特徴的な例を申し上げておきたいと思います。実は 評価と被評価者の関係で言いますと、先ほど高端さんも申し上げられましたが、本当に 評価することだけが目的になるのではないかという問題意識を強く持っているんです。 例えば社会保険業務センターという組織があります。ここで課長が第一次評価者、部長 が第二次評価者になっています。そうすると、40人から70人弱の課があるわけでありま す。1つの部で250人を要する部があるわけであります。こういうところで公平性だと か、信頼性だとか、納得性だとか、そういう評価が本当にできるんだろうかという大変 強い問題意識を持っています。  したがって、私は短期的な結果というのを賃金に結びつけるのではなくて、長いスパ ンの中で人材育成を重視していく、それを重視することが大事なのではないか、こんな ふうに強く思っているところであります。ちょっと話がそれまして申し訳ございませ ん。  杉山委員  質問ですけれども、サービスの質がどんどん向上していくというのはすごくいいこと だと思うのですが、その一方で、その分コストが余計にかかってしまったという状況で あれば、そのサービスをどこまでするのかという話というのは、特にこういった税金を 使ったりとか、保険料を使ってやっている仕事の中では出てくるんだろうと思うんです ね。そういうときに、やはり同じサービスを低コストでやる機関、アウトソーシングと か、外部委託とか、そういうのが出てくるのであれば、それはそちらに移管していく、 移行していくというのは十分あってしかるべきだろうと、特に私などは思うわけです。  つまりは、どこを見て仕事をしているのかというときに、やはり一般国民の人たち が、今、社会保険庁がどうなっていくんだろうかというのをじっと見ているというとき に、国家公務員の地位を守らなければとか、そういう部分でしてしまうと、現状の民間 の今の働き方の中では、「これでいいの」、「本当にこれで改革になっているの」とい うような疑問というのは出てくると思うんですね。その辺りの人員の削減であったり、 外部に仕事を渡していくという辺りをどのようにお考えなのかというのが一点です。  先ほどもちょっと別のところで質問しましたが、私は民間企業に研修に行ったりだと か、出向に行ったりとか、人事交流とか、そういった民間との交流をしていって仕事の 質を上げていくとか、効率化を図っていくとか、そういうのは必要だろうと思うのです が、その辺りをどのようにお考えか教えていただければと思います。  高端議長  利用者の立場に立ったサービスの提供ということでいろいろ話をしましたが、当然そ ういうことをやるにはコストがかかる部分があるわけで、そこのところは、予算との絡 みというのは当然あるわけです。これまでも社会保険庁の改革やいろいろな業務の運営 に当たってアウトソーシングを進めるということをやってきていますので、今の全体の 政府の公務員の削減ということの流れや、また国の予算の関係の部分からすれば、そこ のところはいろいろ議論をしながら進めていかなければいけない中身ではないかなと思 っています。ただ、そのことによってサービスが低下するだとか、そういうことのない ような研修というのはしっかりやる必要があるのではないかなと思っています。  いわゆる民間企業的な感覚というのがいろいろ指摘をされて、特に窓口の応対が悪い だとかいうことを非常に指摘されまして、言われるまで気がつかなかったという、少し 情けない話なんですが、そういうことも職場改革アクションということの中で痛感しま したので、そういう意味では、自分たちが来訪者の立場に立ったらどうだろうかという ことを含めてありますし、当局としても、例えば応対の部分について民間の人に講師を 頼んでやっていくだとか、そういうことも進めてきているわけで、そういういろいろな ことをまた検討してやっていくというのは必要なことではないかとは思っています。  杉下委員長  私ども、外部委託の関係については大きく2つに分けて考えています。既に社会保険 の現場は相当部分、外部委託が進んでいると思います。一番大きな部分というのは、あ る意味で社会保険の骨格をなしているシステム、これ自体がほぼ100%外部委託であり ますし、さらに現場の業務、集約化できる業務についても相当部分、外部委託化が進ん できていると思います。これは業務量との関係でやむを得ずと言いますか、そういう判 断、選択をしてきた実態があると思うんです。  しかし一方で、今議論になっている市場化テストの問題、これにつきましては私ど も、重大な懸念と同時に、むしろ率直に言いますと、これには反対という立場を組織と してはとっているわけであります。年金というのはそれこそ一人の人生にすべてかかわ るわけであります。ところが短期的な、1年なら1年なり、3年なら3年という非常に 短い中での競争原理だけで安定性とか、継続性とか、国民の生活・権利というものが本 当に確保できるのか。そういう点で大変重大な問題意識を持っています。いつでも、も うけの対象としてそれが間尺に合わないということになれば、その市場から撤退してい くということだって当然考えられるわけでありますから、そういう面で国の責任におい て私どもは基本的にそれをやるべきである、こんなふうに考えております。  もちろん、費用については効率的であり、言ってみれば低廉な価格で行わなければな らないということは当然だと思います。ただ、市場化テストについて問題になりますの は、競争の大前提が人件費になってくると思います。つまり賃金が安ければ安いほどい いということでは、私どもはやはり賛成はできないと考えております。  袖井委員  1つはお二人に聞きたいのですが、先ほどからお二人とも健康の問題とか、亡くなる 方がいるというお話がありますが、そういう状況は前からあったのか、特にここ最近そ ういうふうに忙しくなったり、ストレスがあったり、不安感が高まって健康を害される 方が増えたのか。そういう人は、でも今は日本中どこもそういう状況なんですが、特に 社会保険事務所で多いのか、その辺をお聞きしいたと思います。  もう一つ、これは私はとても気になったのですが、杉下さんにお聞きしたいのですけ れども、全体的に変えるということに対して非常に抵抗を持っていらっしゃるような感 じですが、もちろん先ほど改革は必要だとおっしゃったのですが、どのぐらいのスピー ドでお考えになっているのか。つまり、私は今本当に早くドドッとやらないと、慎重に とか、話し合ってといったら、また元の黙阿弥になっちゃうのではないかと思っている んですね。ですからどのぐらいのスパンとか、どのぐらいのスピードをお考えになって いるか、その辺をお聞かせください。  高端議長  それでは健康問題の関係について話をしたいと思います。先ほども発言でさせていた だきましたが、5年間で83名が現職死亡という数字が出ています。今年度、まだ半分ち ょっとのところでありますが、12名、現職死亡が出ているという状況があります。いろ いろ理由はあるのでしょうが、やはり通常のところとは違う状況かなと思っています。 なぜなのかということを考えると、非常に厳しい指摘もされまして、自分たちも変わら なくてはいけないということの中で、長官のもと本当に一生懸命頑張っていこうじゃな いか、夜間や休日の年金相談や強制徴収やいろいろなことを頑張っていこうじゃないか ということで、自分たちにむち打って頑張ってきたということがあると思うんです。  ただ、人間の体はどうしても限界があるわけで、どこまで頑張るのか、どう頑張って いくのかというのがなかなか見えない中で、全力疾走してきている。そのことでくたび れているということがあるということ。したがって、メンタルの部分もありますし、長 期間病気で入院をされるということ、自分たちの健康チェックということよりも業務を 何しろ頑張らなくてはいけないということになってきているということがありますが、 ある意味、職場で改革に向かって頑張っていく貴重な戦力がそのことで損なわれてしま うというのは非常に痛いところでありますし、その姿を見ていると気持ちがなえてしま うということもあるのかなと思っていますので、やはりそこのところもしっかりと考え ながら、これから改革、セカンドステージを進めていくわけですから、労働組合として もそこのところについては提言をさせていただきたいと思っているところです。  杉下委員長  まず健康の問題からお答えしたいと思います。心の病、メンタルヘルスの問題が私ど もの組織の中で各職場を通じて異口同音に語られるようになってきたというのは、その ことが議論の大きなテーマになってきたというのはやはりこの3年ぐらいの特徴だと私 は理解をしています。本当に職場の中が忙しくなったと語られます。若い人が入ってき ても、なかなかその人たちに仕事のことで教えてやる余裕が、自分の仕事で目一杯だか らできないとか、もしあの人が心の病で休んだり、退職したというときに、事前になぜ その人のことを私たちはつかめなかったんだろうかということが語られています。  そういう点では、本当に他人を思いやるような、そういう状況と言いますか、局面と 言いますか、これは職場の中での人間関係が希薄になってきている、これが異口同音に 語られてきている。これは事実であります。ですから、昔からか、最近なのかと言われ れば、心の病というのは昔からありました。しかし、様々な職場で異口同音に語られて きたのは、私はここ3年ぐらいの特徴ではないのかなと思っています。  改革のスピードなり、改革に対する私の基本的考え方でありますが、今提起されてい る改革すべてについて私どもは無条件にそれに賛成というわけではありません。労働組 合ですからという言い方は変ですが、やはり定員については行政サービスを向上させ る、さらに職員の労働条件を考えた場合に、必要な、常識的な定員は確保されるべきだ と考えていますし、公務員制度の骨格にかかわる評価制度については十分に議論すべき だと考えています。  したがいまして、すべてを無条件に賛成というわけではありませんから、何か反対の 姿勢のように受け取られたかもしれませんが、決してそうではなくて、緊急対応プログ ラムにいたしましても、セカンドステージにいたしましても、実施すべきだと、明確に その立場を示しているところであります。  したがって、今日、申し上げましたが、いわゆる社会保険庁の組織の構造問題と言わ れている分については、これは当然改革しなければいけないし、スピードが大事だと思 っています。そして、その上において大事なのは職員一人一人がその意識を、そういう 立場にとにかくしっかり立たせていく、このことに労使ともに努力していかなければい けないんだと私は考えています。  杉山委員  そのメンタルケアで素朴な疑問を持ったのですが、多分こういう状況だったら、しん どいとか、仕事で行き詰まるという人が出るのは間違いないというか、そうだろうな と。出ない方がおかしいんじゃないかなと思うんですね。そのときに組合側が何をされ るかというのがやはり大事で、心の病の人がふえましたというのをここで御報告するの が多分お仕事ではなくて、そういった方たちにどんなケアを組合としてサポートが必要 なのかという辺り、多分対応をとられてきておられるんだろうとは思いますが、そこ が、それこそ改革を前に進める必要なことではないかなと思うのですが、いかがでしょ うか。  高端議長  それでは私の方から話をさせていただきます。先ほど話をさせていただきましたが、 健康の問題が大変重要になってきていると思っています。労働組合ですから、そこで働 く人たちが本当に生き生きとやる気を持って働けるかどうかということが大事なことで ありますので、それは使用者側に対しても、やはりそのことの健康の問題がどうなんだ ろうかということについての対策はそれぞれ、それは労使をもってしっかりと責任を持 ってやっていこうではないかということの話を今してきているところであります。  例えば健康診断の問題もそうですし、またいろいろなことの困ったときのカウンセリ ングの問題や、そういうことの体制がきちんとできているんだろうかということについ て、そういうことの提言も行いながら今進めてきているところであります。これ以上、 そういうことのないように、ただ「健康を守りましょうね」ということの声をかけるの ではなくて、それぞれの働き方はどうなんだろうか、無理して働いている状況はあるの かどうなのかということもお互いに見ていくことだとか、例えば朝来たときに「おはよ う」と声をかけるということ、そういうような会話を持っていくというようなことの取 組みというのも、職場の中で、窓口でお客さんに接する人たちが暗い顔をしていたら、 それはどうにもならないわけですから、そういうことの取組みということも運動として 今、取組みを進めてきているところであります。  杉下委員長  実体験から若干申し上げたいと思います。私は職場で具体的にあらわれている事象と して大きくいって2つあると思うんですね。1つは職場の上司との関係があると思いま す。上司の心ない言葉の一言で、いわゆる心の病というか、躁鬱病に罹患される方など も結構生じています。年金の制度というのは制度改正が大変頻繁に行われます。人事異 動も比較的頻繁にやりますから、なかなかその制度に精通するということができない。 つまり制度の難しさということを職員が強く主張しているというか、問題提起をしてい るところであります。  そういう中で、まじめな人ほど、求められる仕事を十分こなせない、そういう自責の 念と言いますか、そういう部分があると思います。そういう点から私どもは職場の中 で、この病気は必ず治せる病気であるし、こういうことをしてはいけないんだという意 味では、職員全体に対してもそうだし、とりわけ管理者に対するこういう教育と言いま すか、研修というものが非常に大事だなと思っています。私も職場にいたときは何人か 直接そういう方とかかわりを持ち、何とか職場の中で回復し、まともに一緒に仕事をし ていけるような、そういう状況をつくり出すために努力してきた経験があります。以上 を申し上げておきたいと思います。  佐藤座長  まだいろいろおありでしょうし、意見交換は尽きないのですけれども、この辺りで終 わらせていただきたいと思っているのですが。  村瀬社会保険庁長官  今、心の病という問題がありましたが、心の病は、責任を持ってやるのは、どちらか というと組合ではなくて我々使用者側ですから、組合だけが問題提起するわけではなく て、我々がいかにやっていくかということで当然考えています。先ほどの人数の中で、 現職死亡というのは必ずしも心の病だけではなくて、病気で残念ながら命を落とされた 方もいますので、正確に数字を言わないといけないと思っています。  また、ただいまの議論の中で、私自身が物すごい勢いで改革をやっているような感じ でお話になっていますが、まだまだ甘いと思っています。スピード自体はまだまだロー からセカンドにやっと入ったぐらいであり、これから物すごい勢いで仕事をやっていか なければいけないと考えていますので、その点だけは意思表示をさせていただきたいと 思います。  佐藤座長  各委員の皆様の中には、社会保険庁改革問題は難題だけに有識者会議の委員として手 をつけ責任を直接負うのは大変しんどい、むしろ、外から批判をしていきたかったとお 考えの方は多いと思うんです。それだけに、ぜひ早く国民の目線に立った改革ができる ように御協力をお願いしなければいけませんので、これで今日はヒアリングを終わりま すけれども、また今後いろいろと御意見等あれば、また事務局等を通じておっしゃって いただければと思っております。4人の皆様にはお忙しいところお越しいただいて、本 当に貴重な御意見をありがとうございました。  それでは次に、先日、医療制度構造改革の厚生労働省試案が公表されたと伺っており ますので、事務局から説明をお願いします。  清水参事官  資料の6−1と6−2がその関係の資料でございますが、本体の資料6−2の方をご 覧いただきたいと思います。  表紙に書いてありますように、これは去る10月19日に公表したものでありまして、医 療制度の構造改革の叩き台、厚生労働省としての叩き台であります。その中に幾つかの 柱がありますが、3つ目の柱が医療保険者の再編統合でして、本体の12ページから13ペ ージをご覧いただきたいと思います。  「III 都道府県単位を軸とする医療保険者の再編統合等」と書いてありまして、そ の基本的考え方は、その下の箱の中に書いておりますように、規模の適正化、地域の医 療費水準に見合った保険料水準の設定のため、保険者について、都道府県単位を軸とし た再編・統合を推進するということであります。  具体的に、政管健保については、12ページの下から3分の1のところでありまして、 ここに書いてあります最初の丸で、平成20年10月を目途に全国単位の公法人という点。 財政運営については都道府県単位を基本ということで、中略いたしますが、都道府県ご とに地域の医療費を反映した保険料を設定するといった点。  3つ目の丸、最後の丸ですが、準備金の積立てというのも掲げております。  また、13ページですが、公法人の組織については、意思決定機関として、事業主、被 保険者、学識経験者から構成される運営委員会の設置ということ、また、評議会といっ たことも言及されております。なお、適用・保険料徴収の事務は、この公法人ではな く、社会保険庁改革に伴い新たに設立される公的年金の運営主体において合わせて実施 する。こういった叩き台の内容になっております。  佐藤座長  本件につきましては、今後また状況に応じて、この会議で御相談したいと思っており ますので、よろしくお願いします。  最後に、今後の議論の進め方につきまして委員の皆様方に御相談をしたいと思ってお ります。前回、岸井委員から、とりわけ組織の在り方等の検討にあたっては、稲葉委 員、陶山委員と私の3人でたたき台を作成したらどうかという御意見がありましたが、 そうした形で検討したいと思っているのですが、いかがでございましょうか。  前回、大きく2点ばかり、1つは新組織の法律上の位置づけ、あるいは名称等を含め て検討してほしいということでしたし、2つ目は、年金運営会議や特別監査官などの組 織法上の位置づけとか、機能とか、役割とか、この辺りを詰めておきたいということが ございましたので、この辺りについて国家行政組織法の枠組み等をにらみながら検討し たものを次回お示しして御意見を伺ってみたいと思っているのですが、よろしいでしょ うか。それでは、そうさせていただきます。  ただ、一方、人員削減計画とか、職員の新組織への移行問題についてはいろいろ実務 等を見ながら、実情も把握しながら、別途並行して検討していただかなければいけない と思っています。この点については多少事務局に資料等の作業をしていただくことをお 願い申し上げて、これも次回に出していただいて、あわせて議論を進めたいと思ってお りますが、そういうことでよろしいでしょうか。そういう扱いで次回は臨みたいと思っ ております。  岸井委員  その点で一点、それは今度の公務員改革とどう絡んでくるんですか。  佐藤座長  部分的にかかわる部分もあるでしょう。事務局の方ではどういうように認識されてい ますか、今の点は。  清水参事官  当然、その辺りいろいろと絡んでくると思います。私たち内々に総務省の行政管理局 等ともある程度意見交換等をしているところでありますので、その限りにおいて、反映 できるものはできる限り反映して叩き台をつくってまいりたいと考えております。  佐藤座長  制約になるのか、あるいは独自に進められる分があるのか、これはまた検討していく 過程で御意見を承りたいと思っております。  岸井委員  早目に出された方がいいと思うんですけどね。  佐藤座長  わかりました。そういう御意見もございますので、それをテイク・ノートさせていた だいた上で検討させていただきます。  それでは、次回はそういう扱いで進めさせていただきまして、次回、今申し上げまし たように、共同で論点整理メモを一つ、それから事務局から先ほどの部分についての参 考資料ないしはたたき台を出させていただく、こういう形をとりたいと思っておりま す。よろしゅうございますか。  それでは最後になりましたが、厚生労働大臣がお越しですし、長官も御発言がおあり かと思います。どうぞよろしくお願いします。  川崎厚生労働大臣  今日はありがとうございました。2時間20分にわたって貴重な意見を4人の参考人の 方からいただいて、また委員の方々も何をお考えかなという一端だけ、私、今日は吸収 させていただいたなと思っております。正直、我々国会議員という立場から言います と、社会保険庁改革は進んでいるとは国民全体がまだ受けとめていない段階にあると考 えております。したがって、今、村瀬さんから話があったように、まさにこれから進め ようとするところでございますので、お互いの理解を深めていきたいと思います。  いずれにせよ、佐藤座長、稲葉さん、そして陶山さんにお世話をかけますが、どうぞ よろしくお願い申し上げます。今日はありがとうございました。  佐藤座長  長官どうぞ。よろしゅうございますか。  それでは、予定の時間を大分過ぎまして、御苦労様でございました。次回は11月21 日、月曜日、これは午前10時から12時までとなっておりますので、よろしくお願いしま す。  本日は長時間にわたりましてありがとうございました。(了) 【照会先】  政策統括官付社会保障担当参事官室   津曲、川島   03−5253−1111   (内7702、7708)