05/11/04 児童自立支援施設のあり方に関する研究会第4回議事録 第4回児童自立支援施設のあり方に関する研究会 議事録 日時:2005年11月4日(金)15:00〜17:30 場所:厚生労働省17階専用第19会議室 出席者:  委員   津崎座長、岩田委員、小木曽委員、瀬戸委員、野田委員   服部委員、藤岡委員、山内委員、吉岡委員  オブザーバー   小田島北海道家庭学校長  事務局   清川家庭福祉課長、相澤総務課長補佐、佐藤児童福祉専門官   芝海家庭福祉課係長 議事:  1. 開会  2. 議題   (1)施設の運営体制について      施設運営全般のあり方      ・北海道家庭学校からの報告      ・公設民営化について   (2)援助技術・援助方法の向上と研修システム・人材養成について      (1)自立支援の援助技術・援助方法のモデル事例の抽出・整理・フィードバ       ックのあり方      (2)児童自立支援専門員等の養成のあり方   (3)意見交換   (4)その他  3. 閉会  配付資料:  ・児童自立支援施設のあり方に関する研究会 第4回議事次第  ・座席表  ・児童自立支援施設のあり方に関する研究会検討課題  ・児童自立支援施設のあり方に関する研究会【参考資料】 ○芝海家庭福祉課係長  ただ今から第4回児童自立支援施設のあり方に関する研究会を開催します。私は本日 の進行役を務めさせていただきます芝海と申します。  瀬戸委員が少し遅れているようですけれども、本日は9名全員ご出席いただけると聞 いております。また、民立民営で児童自立支援施設を運営されている立場から、北海道 家庭学校の小田島校長においでいただいております。  それでは議事に入りたいと思います。津崎座長、よろしくお願いします。 ○津崎座長  それでは議事に入ります。まず始めに本日の資料の確認及び内容の説明を事務局から お願いします。 ○芝海家庭福祉課係長  それでは、資料の確認をさせていただきます。上から順番に、「第4回議事次第」、 「配付資料一覧」、「座席表」、「当研究会の検討課題」それから58ページありますホ ッチキス留めされた「参考資料」、最後に13ページのホッチキス留めされた「北海道家 庭学校からの追加資料」、以上です。  お手元に以上の資料がない場合は、お知らせください。 ○津崎座長  それでは、佐藤児童福祉専門官から資料の説明をお願いします。よろしくお願いしま す。 ○佐藤児童福祉専門官  本日の検討課題はご案内の通り、「施設運営全般のあり方について」、それから「援 助技術・援助方法の向上と研修システム・人材養成について」の二つですが、検討に際 しての参考資料をいくつか用意しておりますのでご説明します。  まず1ページ、「児童自立支援施設の公設民営化について」です。これは、公設民営 化が今回の検討課題の一つになった理由・経緯、それから検討に際しての論点などに関 する資料です。  若干説明しますと、一昨年10月に開催された経済財政諮問会議において、行政サービ スの民間開放拡大の議論もあり、内閣府はこれを受けて、各自治体に対して行政サービ スのアウトソーシングの阻害要因についてアンケートを行いました。その結果、山形・ 茨城・佐賀の3県から「児童自立支援施設」については、児童福祉法施行令第36条の 「都道府県は、法第三十五条第二項の規定により、児童自立支援施設を設置しなければ ならない」「第一項の児童自立支援施設の長、児童自立支援専門員及び児童生活支援員 は、当該都道府県の吏員をもって、これに充てる」この規定が、アウトソーシングを阻 害しているという指摘を受けました。そこで、この指摘に対して厚生労働省は対応の方 向性を求められ、ここにありますように、児童自立支援施設は、その性格上極めて公共 性の高い施設であるため、自治体において責任を持って専門性・安定性を確保する必要 がある。しかしながら、専門性や安定性の確保が図られることを前提に、委託について 検討する余地があるという回答を行いました。この回答内容は、平成15年11月26日の経 済財政諮問会議において公表されております。  資料の3ページをお開き願います。(別添1)になりますけれども、「行政サービスの民 間開放等に係る論点について」それから4ページ目(別添2)の「地方公共団体より阻害要 因として回答のあった主なものについての各省の対応一覧」これがその公表内容です。  さらに、5ページになりますけれども、これは、横浜市から平成17年度に第7次構造改 革特区において児童自立支援施設の公設民営化の要望が出されましが、その内容です。 これに対して厚生労働省は「児童自立支援施設のあり方に関する研究会」において検討 する中で、このことについても議論の一つとして結論・方向性を見い出したい旨回答し ているということです。このような経緯などがありまして、今回の研究会の検討課題の 一つに、公設民営化も加えさせていただいたわけです。  2ページをお開き願います。この公設民営化について議論する上で、検討課題(論点整 理)としまして、5点ほど挙げさせていただきました。  一つは、施設の特性から公共性が極めて高く、他の児童入所施設とは性格が異なる。 そういう観点から議論する必要があるのではないか。二つ目が、仮に委託するに当たっ て、専門性・安定性の確保、人材の確保などをいかにして担保していくのかという論 点。さらに、例えば施設の特性から想定されることとして、入所児童の無断外出、ある いは事故・事件への対応、学校教育の導入等への影響という観点などからも、課題を整 理する必要があるのではないかということ。そして(5)として2番目とも重なりますけれ ども、今回の研究会の最大テーマである施設機能の充実・強化というような観点から、 仮に現行の公設公営に加えて、公設民営が真に選択肢となり得るためには、設置主体と なる自治体、運営主体となる委託先に、どのような要件・担保が必要とされ、求められ るのかというようなことを含めて論点にしていただきたい。これについては、後ほどご 紹介します北海道家庭学校小田島校長先生からのご報告も交えて、ご議論いただければ と思います。  続きまして、資料の7ページは、公設公営のメリット・デメリットに関する資料です。 第2回の研究会で野田委員からご報告いただきました、平成13年から15年に行われた子 ども家庭総合研究事業の「児童自立支援施設の入所状況とその課題について」からの資 料です。この中で、仮に公設公営の原則をはずし、公設民営に移行することを、職場は どう考えるかということについて意見をいただき、それを要約したものが一枚紙です。 詳細については8ページから12ページに出ております。  いくつか紹介したいと思いますけれども、公設公営のメリットとして、入所児童数の 増減にかかわらず、安定した運営・一定の処遇が可能である。あるいは公的な関係機関 と連携が取りやすく、また、踏み込んだ意見交換がしやすい。デメリットとしては、公 務員であるため人事異動の制約を受ける。あるいは運営も行政の制約を受け、サービス の拡充に限界があり、また、新しい企画の実現に時間がかかるというようなことが出て います。詳細はこの裏にありますので、後ほどご覧いただきたいと思います。  続きまして13ページ、検討課題の一つの、援助技術・援助方法の向上のあり方に関す る資料です。これは今年度(17年度)の「児童自立支援施設に関する実態調査」からの抜 粋で「子どもの援助内容について」です。(1)「新入の子どもに特別の対応をしていま すか」という質問で、(1)「新入の子どものための専用寮舎がある」8施設、(2)「新入 の子どものための特別なプログラムがある」28施設、約5割(48.3%)が特別なプログラム を持っているということです。例えば、新入児童支援カリキュラムを設定し、児童の情 緒の安定化や施設生活への動機付けを行っている施設、あるいは2〜3日から1週間程度 の、個別オリエンテーションプログラムを設定している施設等があります。一番下の (3)「先輩にあたる子どもの受け持ち制度がある」という施設が25施設あります。  続きまして14ページ、(2)「個別指導として指導に取り入れているものがありますか 」という調査ですけれども、「日記指導」「個別の定期面接」「通信による家庭との連 携」「職場実習」これが7割を超える施設で行っているということです。「その他」と して、21ページ目にありますけれども、家族との関係調整を図る生活訓練、家庭復帰を 目指した週末帰宅、親子ふれあいショートステイ、復学を目指した原籍校への登校訓練 等を行っています。また、集団生活がうまくいかなくなった不調児童に対する支援寮に おいての個別指導、無断外出・暴力等の問題行動が発生した場合は「特別支援プログラ ム」によって個別指導を行うという施設もあります。  15ページですが、(4)「贖罪教育について」に関する調査です。これについては第1回 の研究会で山内委員から「現場は少年院で行っているような、系統だった厳密な贖罪教 育と捉えて応えているとは限らない。むしろ、非行行為だけではなくて、生活全般を見 直すということも含めた広い範囲のもので、各施設はそれぞれの手法で行っているもの で、厳密な贖罪教育というと誤解を招くのではないか」というご指摘があったところで す。  16ページをお開き願います。(2)「中学卒の子どもについて」の質問ですけれども、 「中学卒の子どもがいる」のは48施設(82.8%)です。この子どもたちに対して、学科指 導を行っているのが34施設、作業指導は42施設、さまざまな資格取得の指導を行ってい るのが25施設、SST(Social Skills Training)の取り組みを行っている施設が8施設とな っております。  17ページになりますが、これは平成17年度の実態調査において、施設機能の充実・強 化について適切な職員配置のために、必要・有効と考えられることについて、職員から 聞いた内容です。詳しいことは後ほどご覧いただきたいのですけれども、NO.1〜10は専 門性の必要性、専門職員の配置の必要性、心理職員の配置の必要性が述べられておりま す。それから、NO.19〜23には、研修の充実やスーパービジョンの必要性、あるいは児 童相談所をはじめ他の職場との交流の必要性が有効策として書かれております。  続きまして18ページですけれども、最低基準についても触れられております。NO.31 〜35については、運営の安定・充実だけではなくて、いわゆる援助技術等の継承におい ても重要であるということから、経験年数等を加味したバランスのとれた年齢構成の必 要性について書かれております。  続きまして19ページですけれども、この資料は自立支援計画について本年8月10日に 発出した通知です。自立支援計画作成の留意点と、21〜28ページはこの自立支援計画表 の様式記載例等です。これも後ほどご覧いただきたいと思います。  飛びまして30ページをお願いします。「国立武蔵野学院附属児童自立支援専門員養成 所入所規程」です。この養成所のあり方についても、本日、若干議論していただきたい と思っております。ここの下の第2条で、養成は養成部及び研修部の二部に分けて行う ということで、養成部は、将来児童自立支援事業に従事しようとする者に、児童自立支 援事業の基礎的な理論及び技術を授ける部です。それから研修部があります。修業期間 としては、養成部は一年ということになっております。それから教科についてですけれ ども、32ページに児童自立支援専門員の養成部の教科があります。現状はここのIにあ りますように、講義科目が22科目(卒論を含む)・540時間・35単位、演習科目が5科目・ 180時間・6単位、実習が3科目・810時間・18単位、総計が1,530時間・59単位というこ とです。  36ページをお願いします。この資料は「平成17年度国立武蔵野学院附属児童自立支援 専門員養成所研修日程」です。今年度は、このプランに基づいて研修を行っているとい うことです。研修も種々バラエティに富んでおりまして、職層による研修、経験年数に よる研修、それから児童自立支援事業関係で、児童相談所の一時保護所の職員を対象に した研修等、あるいは里親を対象にした研修等も併せて行っているということです。37 ページからの資料に具体的な内容が出ております。これも後ほどご覧いただきたいと思 います。  それから、48ページをお願いします。これは平成16年に設置された「国立武蔵野学院 附属児童自立支援専門員養成所検討委員会」の報告書です。これについても、後ほど議 論の中で必要があれば、説明をしていきたいと思います。資料の説明は以上です。 ○津崎座長  ただ今の、佐藤児童福祉専門官からの説明にかかわりまして、各委員の方からご意見 ・ご質問等がありましたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。特にご質問 ・ご意見ございませんでしょうか。 ○服部委員  1ページの「児童自立支援施設の公設民営化について」の(2)「山形県、茨城県、佐賀 県から児童自立支援施設について、児童福祉法施行令第36条の都道府県による設置規定 及び児童自立支援施設の長、児童自立支援専門員及び児童生活支援員について都道府県 の吏員をもって充てる規定がアウトソーシングを阻害している要因としてあげられる」 という部分ですが、こういう要請が出てくる背景等を含めて、もう少し詳しく具体的に 説明をいただければと思います。 ○津崎座長  その辺、事務局の方わかりますか。 ○佐藤児童福祉専門官  本日、資料として横浜市については添付させていただいたのですけれども、3県につ いては、その辺の詳細な情報というものがありませんでした。確認したところ、これ以 上のものについては出していないというようなことも聞いております。従って、今回こ の資料については添付できませんでした。 ○岩田委員  関東の施設の施設長が集まる会があるのですが、そこで茨城県の施設長から、このこ とについて説明がありまして、この規定があるので委託はできないということであっ て、県として委託を考えているということではないのだと説明がありました。規定上、 こういう規定があるので委託はできないということになっていると。それで出したのだ という説明でした。 ○津崎座長  よろしいでしょうか。 ○服部委員  これは後ほどの議論に絡んでくると思いますけれども、これは公設民営化の問題なの か、それとも児童自立支援専門員等の人事のあり方の問題なのか、両者はリンクしてい ると思いますが、この要望をどのように捉えるのかについては議論の余地があると思い ます。 ○津崎座長  今ご意見がありましたように、この要望が出てきた具体的背景なり意図が、多少わか りにくいというご指摘だと思います。もしこの要望等に関して、別途もう少し詳しい背 景の意図、そういうものがありましたら、この場で改めてご紹介いただければと思いま すが、よろしいでしょうか。他に各委員の方でご質問なりご意見ございませんでしょう か。  他にないようでしたら、今日のメインのテーマである施設の運営体制ということで、 民立民営で児童自立支援施設を運営されている北海道家庭学校の小田島校長にお越しい ただいておりますので、民営の立場でどう自立支援施設のあり方ということをお感じに なっているのか、生の声を直接お伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○小田島北海道家庭学校長  北海道家庭学校の小田島です。今日のこの席にお呼びいただきまして、ありがとうご ざいました。それでは、私が持って参りました資料等に基づいて、ある程度説明をして いった方が、北海道家庭学校の現状なり、あるいは困っている様子なりをわかっていた だけるかと思います。ですから、最初にこの資料について主なところを説明し、後は皆 さまの方で見ていただいて、その後、私の思っていること、あるいは感想等を述べて役 を終えられたらと考えています。よろしくお願いします。  それでは、まず皆さまの手元に渡っております北海道家庭学校の現況等の資料ですけ れども、13ページまであると思います。  1ページ目の入所児童等に関する資料ですけれども、そこにある通り、定員が85名、 暫定定員が56名、現在36名となっております。それから職員数・入所経路等についても 書いてある通りです。それから2〜7番目等については置いておきたいと思います。  8番目の保護者の状況ですけれども、「実母のみ」という数字が66.7%となっており ます。約7割の子どもたちが、母親だけの家庭にいるようです。  それから9番目の「入校前の問題行為」ですけれども、ここは218.5%となっておりま すから、1人当たり大体二つぐらいの入所理由を計上しております。その中でも、「窃 盗・万引」、あるいは「家出・浮浪」そして「怠学」「粗暴行為」等が大きな数字にな っている気がします。  それから10番目の「無断外出の状況」です。無断外出は、後でまた私の説明でも出て 参りますけれども、平成8年から16年までは下の段に出ております。今年度は、今まで3 件の3人という数字になっております。  それから11番目の「学年別在籍数」ですけれども、小学生がおりません。中学生が1 年生から3年まで合わせて15人です。それから中学卒で卒業を待っている子どもたち、 いわゆる院内生は15人で、その他に高校生が6人おりまして、計21名が中学校を卒業し た子どもたちです。  それから12番目の「在校期間」ですけれども、今いる子どもたちは、このようになり まして、5年以上いる子どもたちも11.1%います。  次に、2ページは飛ばします。  3ページは「在籍生徒数月平均の変遷」です。昭和62年から平成17年まで、このよう に上がってきておりまして、今年が一番下がっている数字になっております。  4ページ目ですけれども、 (4)「年度別充足率」では、高いところでは昭和62年は84.6 %でしたけれども、平成16年は57.10%、今年はもっと下がっております。  5ページ目の「相談所別入校状況」ですが、道内の児童相談所からもこのように入っ てきておりまして、道外、それから私的契約と含めて、このような数字になっておりま す。  5ページ目の(6)は、家庭裁判所経由ケースのみで、このような数字になっていること を知っていていただきたいと思います。  6ページ目の「入校時の年齢」は、ここにある通りです。児童福祉法が改正されて、 平成10年4月1日から施行されましたが、その頃から、少し年齢の高い子どもたちの入所 傾向が高くなっている気もします。  7ページ目は「平均在校期間」を月別に表していて、このような数字で経緯していま す。  8ページ目は「退校事由状況調べ」ですが、退校の仕方に、依頼・改善・限界・未完、 いわゆる不結果の数字もここに入っていまして、このような数字を出しています。  9ページ目は(11)「道内児童相談所の相談件数の推移」ですけれど、平成元年から16 年まで出しております。北海道家庭学校に入って来る子どもたちの措置数、それから児 童相談所の相談件数として、非行相談件数が平成元年は10.5%あったものが、最近では 3.7%から3.8%、このように相談件数等も減っています。その中で措置児童数がどのよ うに相関しているのか、後ほど私どもの北海道家庭学校の中の事情もありますので、そ こで触れたいと思います。  10ページ目は飛ばします。  あとは、財政運営に関する資料ですので、見ておいていただきたいと思います。  それから、決算・予算の資料もありますが、北海道家庭学校では措置費としていただ く他に、寄付金をいただいておりますので、その辺の北海道家庭学校の財政事情をわか っていただくために付けています。  それでは、私が少しまとめて報告したいと思います。  本校における入所児童の減少のことですけれども、先程言いました通り、9ページに 相談件数の減少傾向が出ておりました。それに伴って、措置児童数の減少もあります。  それから学校側の課題ですが、私が前校長から引き継ぎいろいろなことをやってきま したけれども、寮を持ちながら窓口をやっているというような、寮担当者のいろいろな 状況もあります。もう少し学校中の組織体制を十分にしていかなければならないという 課題を持っていると考えています。その辺が、各関係機関との連携を損なっているのか とも考えています。なんとか早期に解決したいと考えています。  それから2番目です。措置児童数が少なくなることは、私どもの予算規模の縮小にも ろにつながります。しかも毎年、暫定児童数が変わってきますので、それに伴って予算 がどんどん変わり、その都度対応を迫られます。またこのことが、人件費ともつながっ てきますので、その辺が民設民営の児童の施設の大変なところであろうと考えていま す。  次に寄付金についてですが、平成16年度の決算報告にあります通り、本部の方で790 万6,165円、施設の方で98万3,000円程いただいております。一時は1000万円以上、ある いは2000万円近くもいただいていたのですけれども、最近はずいぶんシビアになってき て、だんだんと寄付金も減っているという状況にあります。  それから3番目は、施設整備費の確保です。北海道家庭学校の建物も築40年以上の建 物がほとんどですから、どんどん年次計画を持って更新していかなければならない状況 に置かれています。  4番目は、職員の確保、あるいは養成です。若い者にも入ってもらって、次を背負っ てくれる者を養成していかなければなりませんけれども、特に夫婦の職員を得るという のは、北海道家庭学校でも難しい状況にあると考えています。ただ、私は決して夫婦の 職員がいないとは考えておりません。探し求めれば与えられると考えております。  最近は入ってくる子どもたちが、いろんな課題・問題を抱えていることが多いと考え ています。そういう点で、それぞれに対応できる専門性を持った職員の養成、あるいは そういう対応ができる体制をとっておくことが大事ではないかと思います。ですから個 別処遇、あるいは小規模処遇の推進も必要ではないかと考えています。  次に5番目、高齢児処遇の対処ですけれども、北海道家庭学校では平成7年から高校生 寮を設置してきました。北海道家庭学校の周りに公立高校等、3つの選択肢がありまし て、今現在は遠軽高等学校の定時制に、6人を通わせております。  一時は13人を3つの選択肢に通わせたこともありましたが、いろいろな問題を抱え込 みますので、その辺では難儀することもありますけれども、適宜、何とか対処しながら やってきました。  そして就職を通して、自立支援をしなければならない。これは後で学校教育導入のこ ととも関連していますが、先程もありました通り、北海道家庭学校では15歳、16歳、17 歳くらいの子どもたちも入所しますので、その辺の子どもたちの自立をどう支援するか ということが、大事な課題だと考えています。それは学校教育の導入と並行してやろう と考えておりますけれども、その前にこちらの方を先にしなければならないのではない かなと、最近は考えるようになってきました。ですから来年度あたりから、その辺のと ころをもう少しきちんと取り組んでいく姿勢を打ち出すことになるかもしれません。  ここで、「する」とはなかなか言い切れないですけれど、もう少し話を詰めていかな ければならない課題かと思います。中の運営体制なりプログラムなりを、どう組んでい くかがありますので、その辺のことを考えていきたいと思います。  それから学校教育の導入のことですけれども、私の印象でもありますが、北海道家庭 学校が施設として今までやってきたことは、感化院・教護院の色彩を一番色濃く抱えて いるのではないかと思います。その一つは、朝夕は寮で奥さんが食事を作って、寮長と 子どもが一緒に食べる。昼は奥さんたちが交替で校内の給食棟で作り、あるいは外から 来ている人たちに手伝ってもらって食事を作り、学校の生徒・男子職員がそこに一同に 集まって食べる方法の二本立てでやっています。  この寮舎でご飯を作って食べるということも含めて、夫婦小舎制の色合いを一番色濃 く持っている施設ではないかなと思います。ただその中で、どのように変遷してきたか を含め、私たちがどういう気持ちで取り組んでいるかと考えれば、まだまだ足りないと ころがたくさんあります。  それから働く教育を大事にしています。私たちが、児童自立支援施設の前身の教護院 に勤めだした時には、全国の施設の7〜8割は夫婦小舎制でやっており、そしてその中 で、「働く教育・学ぶ教育・暮らしの教育」の3つを3本柱として大事にしてきました。  その中で、学習の保障・高等学校進学など、ずいぶん社会が変わってきまして、学校 でのクラブ活動も含めて、そういうところが時間をとっていったという経過がありまし て、全国の施設の中で言えば、働く教育をずいぶん後退させてきたと考えられます。  しかし、北海道家庭学校に行って、働く教育の素晴らしさというか、そのやっている ことの意味を知ることができました。なぜかと言うと、働く教育は、人と人とのつなが りを学ぶ一番きちんと持っていなければならない教育だと考えられるからです。  学習教育も個人的に非常に大事なことですし、スポーツなり、あるいはクラブ活動も 大事なことですけれども、働く教育は必ずしも肉体労働をするのではなくて、一日の生 活をみんなで組み立てていくことであると考えれば、このことを抜きにしては、人と人 の関係を学ぶことが、やっぱり欠けるのではないかと思っています。そういうことを大 事にしていますので、学校教育の導入もそこをどうつじつまを合わせるかが、一つの大 事なこととしてあるかと思います。  いずれにしても、地元の教育委員会と話をしてつなげた中で、教育長から言われてい ることは、北海道家庭学校が遠軽町の教育委員会と話し合って、どうしても公教育公立 学校を持ち込まなければならないと考えたときは、きちんと話を持って来なさい、とい うところまでは進んでおります。ですから、北海道家庭学校がそれをどう詰めて、どん なふうに持っていけばいいのか、その辺のところが残っていると考えています。  その他に、児童自立支援施設の義務設置等、公立民営化のことですけれど、私はもし ここで公設公営ということをはずしてしまったら、私たちの施設は、がたがたになって しまうのではないか、法律の後ろ盾を失ってしまうのかと、正直そう思っています。  今まで、いろいろ言われてきました。全国には58通りの教護院がある、あるいは58通 りの施設がある。そう言われてきましたけれども、確かに感化法成立、そして少年教護 法、あるいは、児童福祉法につながってきた経過と言えば、施設に対しては非常に柔軟 に、初めはできるところにやってもよろしいということで出発してきました。ずいぶん そういう点では、柔軟に対応してきたように思いますけれども、ここで、そういうもの が、もしなくなったら、がたがたになるのかなという気がしています。  それから、施設への基本理念がきちんとしていないと、やはりどこかに、どういうふ うに、動いていくかわかりにくいところが、出てくると思います。  それに、一定水準の処遇効果を維持しようということであれば、そういうふうに、全 国的な中でばらつきが出てくると、さてこれがどうなのかなという気がいたします。  いずれにいたしましても、北海道家庭学校の留岡幸助先生によって築き上げられた理 念を、今でも私たちは、そこに収斂しようと思ってやっております。ですから、苦しい 状況の中でも、なんとかやれているのかなと思います。時によって左に揺れたり右に揺 れたりして、なかなか思うようにいかないこともありますけれど、何とか、そういう夫 婦の者が子どもたちと一緒に生活して、子どもたちと密着しながら、そういう人間環境 をつかむ。そして先程言いました通り、今度は仲間同士で、働く教育を通じて人間関係 をつかんでいくということ、あるいは広大な山を活用して汗を流しつつ、それは単に言 葉ではなく書いた文字でもない、働く教育です。そういう汗を通して、つなげていける ことを学ぶ上では非常にいい施設だと、自信を持ってそう思っています。  説明があっちこっちに行って、この研究会と少し違った方向に行ったかもしれません が、これで終わりたいと思います。 ○津崎座長  どうもありがとうございました。  今小田島校長から、実際上の北海道家庭学校の運営に関して、また運営を踏まえた考 え方等についても説明をいただいたわけですが、今の意見を踏まえまして、公設民営化 の問題とも絡めて、各委員のご意見等をいただければと思いますが、いかがでしょう か。  どなたからでも結構ですが。  基本的な、非常に重要なポイントでございますが、児童自立支援施設の、特に公立民 営というメリット・デメリットも資料の方に示していただいておりますが、それらも踏 まえてご意見をちょうだいできればと思いますが、いかがでしょうか。   ○ 藤岡委員  ありがとうございました。よくわからないので、もう少し教えていただきたいのです けれども、今少年は40人前後いて、寮舎はいくつぐらいあるのでしょうか。 ○小田島北海道家庭学校長  8つありまして、1カ寮が実態として休寮状態です。 ○藤岡委員  7つの寮で各寮5、6人。 ○小田島北海道家庭学校長  ただ実際にと言うか、一般寮が四つ、高校生寮が一つで、きちんと入っているのは5 カ寮です。あとの2カ寮は、職員が休むときに子どもを預かったり、緊急に対応しなけ ればならないときなどに使っています。 ○藤岡委員  1カ寮に8人ぐらいはいらっしゃるのですね。 ○小田島北海道家庭学校長  はい、そうです。   ○藤岡委員  それからもう一点ですが、働く教育、汗を通してつなぐというのは、なるほどと思い ますが、もう少し具体的に、どんなふうに働いておられるのか、そういうことを教えて いただけますか。 ○小田島北海道家庭学校長  答えになるかわかりませんが、例えば北海道家庭学校では、野菜にしても花にしても 全部種から始めます。種を蒔いて、苗をつくり、苗を育てて、それを仮植・定植して、 世話をして、実としたり花として、食べたり、愛でます。それですから、いつ誰がどこ でどんなふうにその花にかかわったか、野菜にかかわったか、見える形になっていま す。  これは、留岡幸助先生が、こうした施設では実物教育が大事だということで、しか も、それはただ単に言葉で言ったりするのではなくて、視覚に訴えることを非常に大事 にしました。このことは、やっぱり引き継いでいると思います。  ですから、先程言った通り、いつ誰がどこでどうかかわったか。最後に花にしてみ て、きれいだな、よかったな、あるいはうまかったな、来年はこうしよう、その中で必 ずほとんどの子どもたちがかかわっているということです。  それは自分で認められるし、周りからも認められる形を作っていると思います。  もっともっと抽象的に言うと、みんなで汗を流して積み重ねて、最後に汗を分けて食 べる、汗を皆でよかったなと、褒められるというのか、認められるとういうのか、そん なふうにしていると思っています。 ○藤岡委員  そうすると、農作業・園芸作業一本と考えてよろしいでしょうか。 ○小田島北海道家庭学校長  その他に、生活の中で子どもたちは、いろいろな役割を分担しながら生活を作ってい るわけです。 ○藤岡委員  施設の運営維持のための作業と考えていいですか。 ○小田島北海道生活学校長  維持というか、いわゆる暮らしを作るということです。 ○藤岡委員  ありがとうございます。 ○津島座長   はい、どうぞ。 ○瀬戸委員  ありがとうございました。  私は、宿泊させていただいたので、イメージが湧いてよくわかっていますが、今公設 民営の絡みの中で、小田島先生にお話いただきました。歴史の中で、北海道家庭学校 は、ずっと民設民営で頑張ってきて、今も頑張っておられるわけですが、それと、その 公設公営原則とをどういうふうに棲み分け、どんな位置付けで考えておられるのでしょ うか。 ○小田島北海道家庭学校長  私の所が民設民営でやってこられたのは、一つは、留岡幸助先生が始めた民の基本的 な考え方・理念があったからです。  もう一つは、それを裏付ける財政的なものです。非常にいろいろな方々が苦労してつ ないできましたし、後は、措置費制度の中で助けられたところもあるのだろうと思いま す。これで、私たちも何とかやれています。もっと人数が少なくなったら、果たしてや っていけるか、つぶれてしまうのではないかと思ったりします。正直なところ、職員に 給料を出せなくなります。だからそこでまで追い込まれたとき、どうするのかというこ ともあります。  もう一つ、触れなかったのですが、無断外出で、やはりいろいろなことを、子どもた ちがいたします。そこの中で、北海道家庭学校ではそれなりに、いろいろなことで対応 してきました。  皆さんご存じでしょうけれども、2月のこともありました。そのことも、今後どんな ふうに展開するのかわからないところがあります。そういう事故に対しては、弁護士さ んと顧問契約して、一応窓口に立ってもらっていますけれども、いずれにいたしまして も、いろいろなことに対応をしてかなければいけませんから、非常に財政状況は逼迫し ていると思います。  だからここで、公になるということではありませんし、職員には、「公と同じことを するのだったら、全部お願いしたらどうですか」というようなことも時々言うことがあ ります。  今、瀬戸委員からご質問があったように、公立公営はやはり国の行政なり、あるいは 国を進めていくときにどうしてもカバーをしていかないとならない人たち、あるいはそ こで福祉的な活動をする人たちの中で、生まれてきたものというか、整え合ってきた、 そういう福祉的な面だろうと思います。  ですからその点から言うと本当は、児童福祉行政は、主管課と措置機関と施設とが一 体となって、もっと進めていくべきものではないかと考えています。それを施設だけ に、もう少し頑張ってやって欲しいということでは済まないと思っています。ですから ここで公設民営と言うのは、非常にそぐわない感じもします。  正直なところ私は、児童福祉行政は、やはり主管課と福祉施設と関係機関が一体とな って進めるべきものだと思っています。そこを外してしまったら、後は何が残っていく のか、ばらばらなのです。例えば公設民営にしても民設にしても、そこで何ができてく るのですか。もっと施設の方が型を崩していってしまうのかなと思います。  私ども、たまたま幸助先生が本当にきちんとしたものを据えてくださっているから、 ここに寄り添ってこられた気がします。  後は、財政的なものをどうするかです。その辺で、そういう福祉行政として進めるも のと、本当に純粋に民から起こったもの・起こすものとは、質が違うという気もしてい ます。 ○津崎座長  よろしいですか。  今の質問とも関連して、少しお尋ねしたいのですが、北海道の児童相談所は具体的に 措置を考えるときに、普通一般の公立の施設と、先生の所の民営の施設と、何かその基 準というか、こういう特色があるからこの子は先生の所へ頼もう、あるいはこの子は別 の公立の施設へ頼もうというような、その辺の感触といいますか、何か違いがあるよう であれば、それも教えていただければありがたいのですが。 ○小田島北海道家庭学校長   一時ですね、北海道家庭学校には車に手をかけて乗り回すような子どもについては、 やはり金がかかるから置いておこうということもあったようです。けれども、北海道家 庭学校もそのことを、あまり表に出すとなかなか子どもを措置してもらえないという経 過があるのか、その辺も少しボーダレスになっている感じもあります。  ただ最近感じますのは、今大沼学園に入っている7人の小学生の子どもたちの様子を 見ますと、それは児童相談所の考え方として、できるだけ早く措置をして、問題を解決 して、養護施設あるいは家庭復帰につなげていこうというようなことも見えます。大沼 学園の方は学習に力を入れているとなっています。北海道家庭学校はどちらかと言えば 年長児で、働く教育の方に力を入れていると見ていただいているという気がします。 ○津崎座長  先程ご説明いただいた働く教育ということの特徴を踏まえて、それを年齢的に多少分 けて児童相談所側が措置をしている、そういう印象があるということですね。  他の委員の方々から。はい、どうぞ。 ○岩田委員  運営形態の問題をどういう視点で考えるべきなのかということについて、少し話をし てみたいと思います。  公設民営の問題が論じられる一つの大きな背景として、私たちの施設に入っている子 どもたちの数の減少の問題があると思わざるを得ないわけです。非行問題というのがこ れだけ大きな社会問題になっているにもかかわらず、入所児童が少なくなっているとい うことは、施設が求められる役割を果たしていないのではないかということです。  その原因の一つとして、公営でやっているのを、ある意味では親方日の丸的な意識で 運営をしているのではないかと思われていることがあります。このまま公立で運営して いっても、期待される役割を果たしていける展望を持てない。従って民間のノウハウを 活用したいという理屈です。  入所児童が少ないということは、財政的な面からするとかなり問題にされる余地があ ります。財政負担が非常に重い、非効率である、負担が軽くなる方策を考えたいという ことも、論じられる背景にあるのではないかと思います。  入所児童の減少ということについては、この研究会でも議論をされたわけですけれど も、施設が公立で運営をされていることが原因で発生しているとは必ずしもいうことは できないのではないかということです。これは北海道家庭学校が民間でしかも運営の理 念としてかなりはっきりしたものを持って、われわれ公立で運営している者からする と、ある意味では手本にするべき要素を持っている運営をしているにもかかわらず、最 近入所児童が減少してきている。それは経営の問題まで引き起こすところまでいってい ます。  議論された入所児童の減少の背景ですけれども、3点ぐらい要因があると思っていま す。  一つは入所のシステムにかかわる問題です。これは社会状況も少し変わってきてい て、保護者の同意と児童の納得の困難性という問題が、従前と比べると少し出てきてい ると思います。  これは子どもたちを入所に至らせる児童相談所の力量を、どうやって向上させていく かという問題でもあります。入所に至る中に、実際には非行相談が減少しているという ことですけれども、非行相談は多くが警察通告ということです。従って、警察との連携 にきちんと手を当てて行かなければいけないという問題があります。それから受け入れ 施設側の時期に応じた受け入れを可能にすることになると、観察寮的なものの設置をし ないでそういうことが可能であるかという設備的な問題もあります。一つは、こういう 入所システムの問題があって入所児童の減少が起こっています。  それから施設側の問題もあります。この問題については、受け入れる職員の力量をど うやって向上させていくか、あるいは施設の力量をどうやって向上させていくかという ことです。特に受け入れ力量の問題に関して、近年、夫婦小舎制から交替制へ移行する 施設が増えてきています。交替制に移行する施設が、運営のモデルを、必ずしも構築で きていない状態が生まれているのではないかと思っています。運営のモデルを構築でき ていないことに対して、行政の問題意識あるいは対策が欠けているのではないかと思っ ています。そういうことも、この問題に対するときには対応策として考えておかなけれ ばいけないと思います。  われわれの施設の中に生じる困難性に対する理解、子どもたちが非常にタイトな状態 になっていくということがあり得て、場合によっては入所している子どもたちが安心し て生活できない状態が生まれてしまう。あるいは処遇に当たる職員が身体の安全を脅か されるという事態があり得る。そういう困難性を持ったところがあるという認識が十分 でないと、それに対する手当てがきちんと立てられないことになると思います。  入所のシステムの問題、施設側の問題、先程小田島先生がおっしゃいましたけれど、 設置主体というのは行政の問題です。特に非行問題に対する対応の重要性ということ を、児童自立支援施設の役割に対する認識が、設置主体の方で必ずしも十分でないとい うことになると、この施設の運営の要をなす人材の育成、あるいは配置について、極め て乱暴な取り扱いをされることがあります。寮舎の規模や寮舎の設備構造の問題につい て、最近移行する施設がほとんど大舎制で、児童集団の規模が非常に大きい寮舎が建設 されています。そういう規模の交替制・大舎制のほとんどの施設で、うまくいっていな いということがかなりはっきりしているにもかかわらず、実際に交替制に移行するとき に、小規模な集団生活ができるような寮舎形態をとらないで大舎の形態をとるという、 実証されていない寮舎の運営形態が進められています。これはいろいろな財政的な面か らそういうことが求められるのだと思いますが、実際の運営がどこもうまくいっていな いにもかかわらず、そういう運営形態がとられているということがあります。  私は民間に運営を委託することについてどう考えるかという場合、都道府県の設置義 務は維持をすべきだと考えています。それは児童自立支援施設が、非行問題に対して果 たすべき固有の役割があると思っているからです。それは職員と子どもが一緒に生活を することによって、育ちの問題を抱える子どもたちの育て直しをする。その中で職員と の関係づくりを最も処遇の大事な要素としてやっていく。この関係性を、施設を退所し た後も生かしてアフターケアを続けていく。そして、地域の関係や地域の自立援助ホー ムなど、関係機関と連携してずっとかかわり続けることによって自立を支えていくとい う役割をわれわれの施設は果たし得るのではないかと思います。  関係機関の多くは、どちらかというと福祉サイドの施策の中で運営されていることが 多いわけです。したがって非行問題への対応を考える場合には、地域性の問題、福祉の いろいろな施策との連携の問題ということから言って、各県になくてはならない施設で はないかと思っています。そういう意味では、撤退をすることになると非行問題に対す る対応について、大きく欠けるところが出てくると思っています。  それから運営の委託についても、するべきではないと考えています。民間で運営する といっても、児童自立支援施設の運営について、実績のある民間の団体というのは北海 道家庭学校、横浜家庭学園以外にはないわけです。われわれの施設を退所した後、子ど もたちが入所している自立援助ホーム等がありますけれども、自立援助ホームの運営実 施というのは、基本的には入所者の意思がベースになっています。入所児童がそこで生 活をするという意思を持っていることが前提になっています。われわれの施設は本人が 望んで入所するということではなく、そこがある意味特徴であり、そこからまた処遇の 困難性が出ているという特徴があります。本当に民間で処遇のノウハウを持っている団 体というのは必ずしもあるわけではないだろうと思っています。  先程も申し上げましたけれども、場合によっては児童と職員との関係の問題で非常に 緊張が生じることもありますし、職員に精神的な問題を引き起こすところまでいってし まうというようなこともあります。それほど表には出ておりませんけれども、われわれ の施設の中でも公務災害というようなこともあります。そういうことが発生するという ことを前提として、いろいろなことを考えておかなければいけないのではないか。そう いう意味では公務員というのは身分の安定の問題からすると、そのくらいはしないとな かなか務まる仕事ではないのではないかと思っています。  その他にも無断外出時の警察との連携の問題、学校教育もまだ道半ばという感じで す。施設の運営の中で教育委員会との関係で、学校教育をきちんと整理できていないよ うな段階で、この問題について結論を出すということは、またその問題について一つ先 送りされるということです。  民間に運営を委託した場合に、民間ですから撤退の自由というのは当然あり得るわけ で、経営が成り立たなくなればやめたいということにならざるを得ない。しかしもうそ の時には県の方の人材育成は断絶しているわけですから担い手はもういない。そういう 意味では、運営を委託してそれが失敗をするということが、絶対にあってはならない形 の仕組みの中で、考えないといけないのではないかと考えています。私はそういう見解 です。 ○津崎座長  今かなり具体的に入所児童減少の背景要因の一定の改善ということを踏まえつつ、本 論的な民営委託の問題については、公立を維持すべきではないかというお考えを披露い ただいたわけですが、他の委員はいかがでしょうか。 ○瀬戸委員  先程服部委員からも質問があったと思うのですが、山形県・茨城県・佐賀県の言う 「長や職員の吏員の規定」の問題と、民営化というのは全体の学園・学校を民間の法人 が運営するということですので、こういう枠の中で議論されていることと違うと思うの ですが、その辺はどう整理されているのでしょうか。 ○津崎座長  誰に対する質問ですか。 ○瀬戸委員  事務局です。 ○清川家庭福祉課長  各3県の議論については、要望の背景はわからないということを、先程お答えしたと 思うのですけれども。  5ページ以降で、横浜市から構造特区のような形で民営化を何とかできないのかとい う意見が出てきておりまして、そこの提案理由を見ると、かなりはっきりと横浜市の考 え方と、どうしたいのかというのが出てくるのではないかと思っています。やはりそこ にありますように、設備・運営に対して民間活力を導入することで、(1)からいくつか の効果が期待できるのではないかという考え方を持っているということです。  4ページに児童福祉法施行令36条がありますが、その第5項の「児童自立支援施設の長 及び専門員、施設運営員は当該都道府県の吏員をもってこれに充てる」ということで す。現在の規定においてよく議論になる条項として、第1項で「都道府県は児童自立支 援施設を設置しなければならない」、これがいわゆる設置義務についての問題です。  それから第5項で「児童自立支援施設の長あるいは施設職員は都道府県の吏員をもっ てこれに充てる」。当然第5項があれば民間の運営というのはできませんので、この第5 項が、運営を都道府県にするのかあるいは民間にするのかについての問題ということ で、要望は出てきていると理解しています。 ○津崎座長  よろしいですか。他の委員。はい、どうぞ。 ○小木曽委員  先程小田島先生の北海道家庭学校の歴史といいますか、今改めて問わなければいけな いということで聞いていました。  それから私も岩田委員と同じような状況だと思うのが、この3県1市の他にいくつか現 状を訴えている声を聞いているからです。先程岩田委員が言われたように、実情がかな り逼迫している県が実際にありますし、見ていかなければいけない視点というのは、ご 存知のように施設運営がどんどん民営化になり、児童養護・施設養護だけがそれを避け ては通れないという現状で、事業団の解体であるとか公立の施設の民営化というような 流れが非常に進んでいるし、指定管理者制度がNPO法人と同時に急速にこの世界にも進ん できています。  特に今まで公設公営で、非行少年等の手厚い処遇というものが必要だということで、 ある意味守られてきた施設としては、今後も必要だという前提はあります。が、あまり に周りの大きな流れの中で、きちんと児童自立支援施設だけは公設公営でいくというこ とを示せるであろうかというところが、幾つかの県の状況を聞くと、吏員に充てる等々 というところだけで守りきれない現状があります。  これは先程岩田委員が言われたように、非常に入所率の高い施設とかなり低くなって 定員過疎の施設があるという両極化の問題があり、県内でも行政のサイドで厳しい状況 に追い込まれているというところで、根本的な見直しをせよという現状もあるのではな いか。  実際は施設だけの問題ではなくて、児童相談所との関係や社会資源等、いろいろなつ ながりを勘案して考えなければいけないことだとは思うのですが、その中で何を根拠と して施設自体を維持運営していくかということが、交替制に移行する流れの中で、夫婦 小舎制の確保と同時に、施設としての存在意義というものが盛りきれないような現状 で、大きく動きつつあるということ。以前もあった少年法の改正で14歳以下が12歳以下 にというところでも役割の認識や、学校教育の導入というのは表面的には50%しか導入 していないから、そのあたりも阻害になっているという捉え方も、実態はいろいろと議 論をされているわけですけれども、外の目というのが非常に厳しくなってきているとい うこと。  瀬戸先生のような弁護士の中にも、かなり批判的な目を向けていて、ある意味児童施 設の透明性の課題を、もう少しはっきりせよという意見も一方では出てきているし、そ の辺をどう守るかという部分での公設公営の大義を、対外的にも各地方自治体の現状を 含めて、どう示していけるかというのが、まさにここのところにかかわってくるのかと いうことです。理念や方向性という部分は確かに見えているのですが、実情として状況 がかなり逼迫しているのかというのが私自身の感覚で、その辺を含めて委員の方々のご 意見をいただきたいと思います。 ○津崎座長  はい、ありがとうございます。  公設公営でなければといけないという一つのはっきりとした大義、こういう理由で公 設公営でないとこの施設は運営ができないのだという問題を、もう少し明確化する必要 があるのではないかということと、じり貧に対してその改善についてはどうすればいい のかということ、さらには大きな流れとしての民営化ですが、民営化であれば何がどう だめなのだということを、一般の人がわかりやすい形で整理をして、こういう問題があ りますということをきっちりと押さえる必要があると思うのです。  できましたら今の三点、公営の大義、今のじり貧に対する具体的な対応策、民営に対 してはこういうものがあってこの部分がネックになる所で、もし今民営化するのであれ ばそれを補填するためのこういう施策が必要ですというような点に絞って、各委員の方 からご意見をちょうだいできればと思いますが、いかがでしょう。 ○吉岡委員  意見というよりも、その前に公設の大義を考えなければいけないと思うのですが、民 間で実践してこられた小田島先生がお見えになって、われわれ教護の原点のようなとこ ろですが。先程のお話の中では、民設民営にすると困難ではないかという表現があった と思うのですが、そこのところをもう少し詳しく教えていただきたいと思います。  私は長い間公務員で教護をやりましたので、若干後ろめたい気持ちを持って北海道家 庭学校を見ていたのですが、もし民営で立派にできる、あなた方公務員の世界は甘いで すよ、われわれのほうが原点に近いのですよ、やればできますという論理であれば少し 考えたいと思いますが。私の今日までの認識では、やはり民営化反対という気持ちがあ ります。民営で立派にできるということであれば、見習う点もあるかと思いますので、 もう一度その点についてお聞きしたいのですが。 ○小田島北海道家庭学校長  民設民営化では、まずきちんと運営理念を立てていることが大事なことです。それか らそれをやって行くために、財政的な確保ができないと、非常にしんどいことだと思い ます。  今のように子どもを預かる、そして上下の激しい中で運営するとなると、子どもたち の方にどんどん精力を使わなければいけないものを、どうすれば財政的に安定化を図る ことができるかということは、なかなか大変なことにつながってきますので、財政的な ものがきちんとバックアップしていただけるのであれば、クリアできるのではないかと いう気がします。施設運営の理念をはっきりさせておくことと、財政的なバックアップ があれば可能だと思います。 ○藤岡委員  また全体の討議の方向に反対するような意見になってしまうのですが、公設の大義あ りきで話を進めるとおっしゃったのですが、私は民営化というのもありという可能性も 考えてみたほうがいいのではないかと思っています。  今刑務所でもPFI(Private Finance Initiative)といって民営化しています。2つだ けですけれども、去年山口県の美祢をセコムのグループが落札して、今年は島根県の旭 のA級刑務所を大林組などが一生懸命プランを作っています。そういうプランを見てい ると、非常におもしろいのです。今までの国立の刑務所とは違った発想や違った処遇な ど、とても自由にできていて、かつ法務省と詰めながらやっていて、民営の活力の活用 というのは非常に可能性があると私は考えています。  アメリカのマサチューセッツ州で、民営の少年院などのプログラムや保護観察などを 見てきたことがあるのですが、もちろんお金を出す方は評価の基準を作って、それに合 致しているのか毎年きちんと評価をして、だめならその資格を取り上げるという形で運 営しています。その民営をやっている人たちはプログラムをきちんと作って、それを外 で売ったり、さまざまな方法を取って、自分たちのやっていることの適切さを説明して いるという印象を受けています。  北海道家庭学校の話を他の方はご覧になったのでわかっていて、私だけが行ったこと がないのでぴんとこなかったのかもしれないのですが、率直に言わせていただくと、私 は児童自立支援施設の入所児童が減っているのは、さまざまな小さなシステムの問題で はなく、施設の側が内向きになってしまっていて、世の中の動きをきちんと把握するこ とができていない、あるいはきちんと説明できていないことに、根本的な原因があるの ではないかと思っています。  私は個人的には、働く教育ということの素晴らしさというのはあるとは思います。汗 を流して働くこと、農作業・園芸作業の大事さというのは少年院でも長く基本の一つで した。ただ、実態も知らないので言いにくいのですけれど、施設に入った子どもたちが 世の中の動きとは違うことをやって、ますます施設化されていって、外の社会と切り離 されていって内側になっていくことが、果たして更生につながるのかと疑問に思ってい ます。位置付けが大事だと思います。  北海道家庭学校のある地域がどのようなのかがよくわからないのですけれども、民間 になった場合、例えば地域社会の企業やさまざまなNPOと協力して、運営アドバイザリ ーボードなどをつくって、ボランティアや地域の活力をどんどん入れていくという民間 の経営の仕方というのは、あり得るのではないかと思います。  小田島先生が孤軍奮闘していることを、職員も社会地域とのつながりをつくっていく ことで、子どもたちが地域社会とのつながりを取り戻していくことにとてもつながる と、そのように民営化もできるのではないかと思っています。 ○津崎座長  はい。 ○瀬戸委員  少し教えてほしいのですが、いろいろと自由な議論を交わすのには賛成ですが、少年 院についても、民営化という議論がまじめに検討されているのでしょうか。 ○藤岡委員  少年院については聞いていません。刑務所です。警備が先にくるので刑務所の方が簡 単だと思っているのでしょう。 ○吉岡委員  私もアメリカの民間刑務所が出ていたテレビを見たことがあるのですが、民営化する か公設かという一番根本的な原点は、財政の問題だと思います。  アメリカの民間施設は、コンピューターの部品などを生産しています。収入になるわ けです。だから民間にもできると思うのです。でも、うちの子どもたちにはほとんど生 産をさせるわけにはいかないのです。先立つ物が出てこないのですから、そういう点で 民営化は非常に困難だと思います。 ○服部委員  藤岡委員がおっしゃった民営化の意義というものはあると思うのです。ただ、児童自 立支援施設の公設民営化という脈絡を、もう少しつぶさに見てみると、一般的な意味で 言われている民営化とは質的に違うものがあるように思うのです。公で行われるものが あって、民との競い合いというか多様化という方向に向けて民営化を行い、活性化を図 っていくのは良いと思います。  しかし、児童自立支援施設の公設民営化というのはそういう脈絡ではなくて、都道府 県に最低1カ所必置義務がおかれているのをはずして民営委託をするという流れで、そ れも先程津崎座長が厳しく「じり貧」という言葉を使われましたけれども、公でうまく いってない部分についてそれを民へ委託するというそういう公設民営化なのです。そこ は質的に違うものを感じています。一口に「民営化」と言われるけれど、違う性質のも のがあることを押さえておく必要があるのではないかと思っています。 ○山内委員  私のところは夫婦小舎制の施設です。理念というところが非常に大事ではないかと思 います。今の児童自立支援施設が置かれている状況の中で、確かに民営化というところ が良く聞こえるところもあるかもしれないのですけれども、実際にそれでは今都道府県 がどうか、あるいは国でもそうですけれど、今の措置費制度の中でも決して措置費制度 の中の人員対応では回らないという状態の中で、各都道府県ともに人員的にも、たくさ んの人員をかけてやらざるを得ないという従来の困難性と指導の難しさがあります。  しかもその運営形態の中で、小田島先生がおっしゃったように、今まで夫婦小舎制と いうところが大半だったのがだんだん交替制になってきている。  これまで培われてきていた理念である、子どもと共にある、あるいは24時間子どもと 共にどのように過ごすのか、あるいは育て直しというところで子どもたちをどうするの か、そういう部分をできるだけ将来とも大事にしていかないといけない。それには運営 形態も今ある夫婦小舎制、あるいは交替制のそれぞれのいい所を生かすような形にして いかないと、今までも話がありましたけれども、反社会的で非常に指導困難な子どもた ちの本当に良い所を導き出すという方向性を、職員あるいは施設全体に求めることは、 民営と言っても単に社会福祉法人だけでなく、事業団や第三セクターなどいろいろな形 態があるでしょうけれども、そこで果たしてそういう理念あるいは考え方を持続してい けるのかどうか。  民営化ということになれば、それぞれの法人や理事会の中で決めていくような部分を 持てるのであろうかと。それは法人の理事会などで一人の人が力を持ってしまって、泣 き寝入りしてしまうということではなくて、きちんとそういうものを都道府県なり公が 責任を持てるところが重要です。  これは小田島先生がおっしゃるように、その理念をきちんと形で押さえられるものを 持たなければ、なかなか民営化の中で、子どもたちをこういった非常に難しい、先程か ら話がありますように、人権すれすれのところで子どもたちと対応しなければならない 児童福祉施設、こういった社会福祉施設の中で、子どもたちの自由も時にはわれわれは 制限をしているわけです。例えば強制があるということだけではなくて、外へ出てはい けない、あるいは学校も外ではなく中でやっていかなければならないというような施設 は、理念をしっかり持つことが、これからの運営に当たっても非常に大事だと思ってい ますので、ぜひそういうところをどう確保するのか、果たして民営化で確保できるのか というところを、十分に一度考えていただけたらと思っております。 ○野田委員  実にテーマが多面的なので、なかなか悩ましいと思いながら聞かせていただいていま すが、一つ今日の素朴な感想としては、われわれにとって象徴的な意味を持つ北海道家 庭学校にして、現在非常に困難な状況が招来していて、措置体制の下ですらこの人数で 「小田島先生が、後何年頑張れますか」と聞きたくなるような、経済的な事情も含めて 大変なのだと思います。  これがなぜ少ないかについての総合的な分析は、岩田委員がやっていただいた通りだ と思うのですが、前々回のときにも話しましたように、例えば北海道の児童相談所の相 談件数を見ていただいたらわかるように、少なくとも、ぐ犯については、半分くらいに なっている。平成の初めから今で件数は半分位になっていると思いますが、触法通告に 関しては1/4くらいになっていると思います。その中でニーズにきちんと向き合いなが ら、民としてできる余地があるということを、片方で証明していただいている。しかし そのような処遇一本だけでは非常に困難であるということも、あえて言えば北海道家庭 学校にしてこの状況なのだということは、きちんと認識する必要があるというふうに思 っています。  先程の大義と言うか理念をしっかりと言うところでこの問題は、児童自立支援施設の 理念と言うよりは、児童福祉行政全体が非行についてどういうスタンスをとるのかいう ところを、まず押さえる必要があると思います。  先程のじり貧という意味では、まさにこれまでも公務員体制が持っている弊害である とか、それぞれの専門性の蓄積の困難さ等々、いろいろな課題が出されていたと思いま す。しかし大枠のところをいじる話と、それからそうではない、たまたま児童福祉法施 行当初は選考採用等々が相当柔軟にできていた、しかし今日では一般的採用試験化して いる。そうは言いつつも例えば医療職などを中心に、あるいは最近ですと心理職でも相 当柔軟な任用形態が行政の中でも行われていることも事実だと思います。その辺の位置 付けをどのようにしていくのかというところで、つまりじり貧への対応と全体の大義を どう考えていくかというのを、丁寧に切り分けながら議論する必要を今考えています。  少なくとも私は児童福祉行政の中における非行への対応の役割というのは、非常に大 きなものがあると思っていますし、これは単にその施設が成り立つかどうかだけではな くて、教育分野においても、例えば義務教育の場合、私も私立学校に在籍しております のでじくじたるものがあるのですが、公立がなくなっていいのか、全部民間がやるとい うならば、義務教育は全部私立のどこかに任してしまう、多分そういう話はないだろう と思います。  特に都道府県必置の部分とセットで展開されている今の制度は、類似の情緒障害児短 期治療施設や児童養護施設が今非常に困難に直面しており、そこで実際に採用された職 員が平均で3年持たずに退職をしているというような状況の元で、少なくとも県に一つ、 精神保健総合センターと同じような形で、きちんと公立で、そしてさまざまな施設ある いは行政が持つべき子どもへの処遇のノウハウを蓄積できる場所とする。あるいは児童 相談所の福祉司の中には最近子供と直接面接ができない、あるいは向き合えないのでな いかというような批判を受けております。例えばそういったことについて、本当に子ど もときちんと向き合えるような、レベルの高い児童福祉行政の処遇経験を蓄積する場、 その他言いだせばいろいろあると思いますけれども、国立に武蔵野学院を置いていただ いているのと同じように、各都道府県にせめて1カ所くらいはこのようなノウハウを蓄 積されるところがあってもいい、と言うより私は不可欠なのではないかと思っていま す。  そのことと併せて、例えばそういうセンター的な機能がある一方で、民間の北海道家 庭学校や横浜家庭学園、あるいはもっと多様な児童自立支援施設というようなあり方、 あるいは最近の子どもたちが難しくなっていることとの関係で言えば、処遇の個別化が より必要である。  あるいは小規模化が必要であるというようなところで言えば、一部でも議論されてお りました、専門里親として児童自立支援施設の職員経験者が、施設を離れて自分の家を 開放して、そういう子どもたちの面倒を見る。これはすべての子どもを見るというのは 無理だと思います。しかし、それに適用する子どもたちもいることも事実です。例えば そういったような児童自立支援施設の公立を一つ核にしながら、もっと広い意味での里 親あるいは専門里親まですそ野を広げるような、児童福祉行政の中における仕組みをま ず描く。そしてそこのところにどのような問題が生じるのかということについて、もち ろん丁寧に議論する必要はあると思います。先程もありましたように、夫婦小舎制の方 が効果が高いにもかかわらず、大舎を造ってしまうというような子どもの現状やニーズ を無視した政策をとらない方向を、ということが実は重要だと考えています。 ○瀬戸委員  私は現在の各都道府県の社会で非行を犯した少年の中には、家庭的な環境を持った施 設で、生活の中で立ち直るということが必要な少年が、確実に一定数存在するのだとい うことを認識していただきたいです。もちろん少年院という立派な機能を持った施設が あるわけですけれども、ただ少年院は基本的にはそういったところではない。男子には 男子職員が、女子には女子職員がという体制が、基本的にはずっと固いものとして存在 すると私は思っていまして。  この100年の歴史もそうですけれども、非常に家庭的なものを持った中で生活を共に するということによって、幼い子どももそうですが、確実に立ち直れる子どもたちがい るというのは重要なことだと思います。これがもしそうでなくなるということなります と、例えば都道府県の判断によって機能している児童自立支援施設についても、民営化 ということになれば機能が確実に低下するだろうと思います。他方で機能を果たしてい ない施設もかなりあるということですけれども、そこではより将来にわたって、機能の 回復の機会がなくなってしまうと私は思っています。  どちらにしても民営化するということは非常に問題が多くて、日本から旧教護院(現 在の児童自立支援施設)の役割を基本的になくしてしまう議論だということです。国策 として民営化はそういうことだというならばやってみろと言いたいぐらいです。これは 何を招来するかといえば、国の国家予算で少年院が繁盛するということです。それが子 どもたちにとっていい場合もあるし、よくない場合もある。それから病院的なものがた くさん繁盛する。そういうさまざまな弊害があると思っています。  私は結論を言っているわけですけれども、その議論自体を私は反対しているわけでは ありませんが、その前にやることがあるということをこれまでの前回の3回目での議論 でもありましたけれども、府県を越えた施設の連携というのを強く図っていただきたい と思っています。子どもたちの広域化、受け入れの子どもたちのこと、それから職員に ついてももっと積極的にやっていただきたい。私はこの議論を聞いても、公立というか それぞれ各都道府県の職員という意識が強すぎてとても抵抗感があります。私が勝手に 旧教護院の夢を描いているだけかもしれませんが、その辺できる話があると思います。  それから委員はともかく、現場の職員や最近辞めたばかりの職員の方もなかなか発言 しがたいのかもしれませんけれども、まだまだ全国には熱意をもってかかわっている方 がたくさんおられます。一定程度そういう形の意見も吸い上げて、もう少し1世紀の歴 史の施設の強化のために早急に諮っていただきたいと思います。  それから岩田委員もおっしゃっていましたけれど、私も非常に思っているのですが、 交替制の児童自立支援施設が現実に沢山あるわけですから、既にいい活動をしていると ころのノウハウは全国に広めないと、形だけ取り入れるというのは非常に寂しい状況が 広がってしまう危険がありますので、それも一つしていただきたいと思います。  それから私の持論ですが、全国のブロックに一つ程度の強制措置対応寮というのも造 って欲しいと思っています。これは重大触法事件の議論の絡みもありますから、対マス コミの問題も含めてです。  それと私は権利擁護の関係で武蔵野学院で研修させていただいたときに、その辺のこ とをうまく取り入れていかないと、体罰を克服していくことも視点においた権利擁護を きちんと図った施設運営が難しいとも感じましたので、その点も積極的に取り入れてい ただきたい理由です。  それから法令上の根拠なしに言っているのですが、人員的に児童相談所と児童自立支 援施設が合体したらどうだろうというようなこと。  それからもう一つ、公営化だけれど寮について、例えば先程施設の方が専門里親をや ると言っていましたけれども、そういう人を逆に合う寮に連れてきて年限を切ってやっ てもらったらどうだと。その辺は先程の3県のところと少し抵触してしまって意味付け がわかりませんけれども、もう少し柔軟な対応をしてほしいと思っています。 ○津崎座長  はい、どうもありがとうございました。  具体的な児童自立支援施設の運営形態についていろいろな意見が出ていまして、なか なかこの場でこういう方向がいいのではないかというのは少しまとめきれないです。  それぞれの考え方がありますし、現状の問題をどうするのかということと、先程出て きましたが民営化の中でのいろいろな展開の可能性があるのではないかという意見もあ ります。この辺は今日小田島先生がおっしゃっていたのは、とにかく理念と財政的バッ クです。これが決定的に民営化ということを考えたときには重要な事項であるというこ ともおっしゃっていました。  この辺のところはここでの研究会の案をまとめることに関しては、事務局がいろいろ 今の論議も踏まえて、一応報告書を作られるまでに下案をできれば作っていただいて、 もう一度それを踏まえて委員の皆さん方の意見もそこにさらに集約して、この委員会の 報告にするということでご了解いただけないかと思いますが、いかがでしょうか。は い。 ○服部委員  私はこの場でもっと議論すべきだと思います。まだ議論の半ばではないでしょうか。  引き続き私の意見を述べさせていただきたいのですが、公設民営化の是非を考えるに あたっては、今日配布されている資料の2の(1)に「児童自立支援施設は公共性の高い施 設」という指摘がありますが、この「公共性」というものをもう少し砕いて考えてみる 必要があるだろうと思います。この「公共性」はとりわけ年少の子どもたちの非行問題 をどう考えるのかという問題と一体だと思うのです。そこをどう考えるかということが 一番の要ではないかと思うのです。  児童自立支援施設に来る子どもたちの背景には、今日小田島先生から示された資料に もあります通り養護問題があります。しかし、私は養護問題にとどまらない難しさがあ ると思うのです。児童自立支援施設に来る子どもたちは、被虐待の経験を持っているケ ースが多く、また、周りの人や社会に対する不信感が極めて強く社会との関係が切れて しまっている中で、反社会的な行動を引き起こしています。こういう子どもたちのケー スは、少年院に来るケースと比べても一層の難しさを持っているのではないかと思うの です。幼少期の育ちに深く根差した、しかも長期間にわたって起きてきている問題がそ こにあります。それを良い方向に導いていくのは大変な労力のいる仕事で、難しい仕事 です。その取り組みのためには、継続性・安定性・高い専門性が要求されてくると思い ます。  より高い専門性という意味は、少年院と比べてもむしろ難しいケースを抱えるという 点と、幼少期の育ちに根ざす長期間の問題を抱えているケースが多いという点です。こ れに適切に対応していくにはそれ相応の体制が必要であろうと思っています。  ただ、公共性が高ければ公がやるかと言えば、公共性の高い仕事を民が担っていると いうケースはたくさんあります。しかし、今申しましたような難しい仕事をまず公がき ちんと範を示すということがあってその上で、民に委託をする、あるいは民との共同と いうことがその次に模索されるというのが順序であって、公の十分な対応がない中で民 営化を言うのは、公の責任の放棄になりはしないか。  もう一度必置義務の意味を確認してあるべき姿を描き直し、そのために今何が必要か という議論に戻って地歩を固めることが必要だと思います。民営化はその次の課題では ないかと思うのです。  現在、仮に公設民営化が行われると一部にはうまくいくケースがあると思いますが、 全国的に見れば児童自立支援施設の養護施設化は避けられないところだと思います。現 状においても養護施設は非行問題に対して消極的です。なかなか非行のケースを受けた がらない。そうすると児童自立支援施設がこれまで受けてきたケースの受け皿というも のが消えてしまうことになりかねない。そういう事態が発生すれば、すべての子どもの 発達保障というものが実現されないことになるおそれがあります。  子どもの権利条約の6条2項は、すべての子どもの発達を保障すると規定し、18条2項 は子どもの発達保障のための国の責任を、20条は家庭環境を奪われた子どもの保護に関 する国の責任を規定しています。ここに掲げられているすべての子どもの成長保障を実 現していくには、現在のまま公設民営化を行ったのであれば埋まらない部分がどうして も出てくる。児童福祉における非行問題の部分を児童自立支援施設は担っていく必要が あるのではないか。それが、児童自立支援施設の役割であり社会的使命だと私は考えま すし、従来この言葉についてはいろいろご意見もあるかと思いますが、「最後の砦」と 言われてきた意味もそこにあるのではないかと思うわけです。  また私は学校教育の導入について少し違う考え方を持っていましたが、学校教育の導 入実施ということを前提に考えれば、公設民営施設では十分な対応ができないのではな いかと思うのです。  公設民営化が行われれば、それに適したケース、つまり養護的なケースが措置される ことになるのではないでしょうか。公設民営化によって、児童自立支援施設の対象は動 いていくのではないかという予想を持つわけです。  まだまだ論ずべき点はありますけれども、このように考えていくと、公設民営化につ いては慎重に考えなければいけない。児童自立支援施設の本来の姿というものをもう一 度確認して、何が必要なのか議論を本筋に戻す必要があると考えます。 ○津崎座長  はい、ありがとうございました。  少し事務局とご相談したいのですが、この研究会の報告書を出す日程的なものもある と思うのですが、今日のテーマはかなり核心のテーマで1回の議論では足りないのでは ないかと。むしろもっと児童福祉における非行へのスタンスそのものをどのように考え るのか、あるいは特に年少非行に対する公としての責任・対応というようなものを、あ るいはそれに対応するための児童自立支援施設の役割、あるいは例えば民間と共同する にしてもどのような共同の仕方があるのかということです。安易に民営化という形で今 の閉塞状況を打破するという選択をすれば、かえって今の施設そのものの最低の運営体 制までもが、場合によっては崩壊するのではないかという危惧もあるわけです。  そういうことで、もう少しこの問題を継続して論議する方がいいのではないかという ご意見もあったのですが、日程的にその可能性はどうですか。 ○清川家庭福祉課長  児童自立支援施設をどうやって充実強化していくかというのが、この研究会における 最大の前提であるということにつきましては、皆さんご異議はないと思っています。  また、座長が言われたように、児童福祉の中で非行に対してどう取り上げていくの か、またそういった中で児童自立支援施設が今後どういった形であるべきなのかという 全体像、あるいはその自立強化のためにどういうことをしていくのかというような全体 的な考え方等についてきっちり固めた上で、そういった各種の機能強化策の中で、例え ば公設民営化というのが一つの選択肢であり得るのか、あり得ないのか。  あるいは公設民営化という場合においても、例えば先程専門里親のような形で民間の 活力を利用するというような話がありましたが、どういう形態で考え得るのか。現在で はまだ尚早なのか。  また、理念あるいは財政的な裏付けなど、どういう事柄についてきちんと担保しなけ ればいけないのか等、相当考えていくべき事が多々あると思っておりまして、私の方と しては公設民営化に絞って議論するというよりも、報告書全体の中でそういう現状の把 握なり、その中で児童自立支援施設が今後どういう役割を果たしていくのかというよう な問題を押さえた上で、一つのパーツとして、この問題を捉えていくのかと思っており ましたので、むしろ各種の問題を全て整理した上で、津崎座長からもお話がありました けれども、報告書の記述の中でどういうものが適当であるかといった議論を全体の中で することが必要なのだろうと思っています。  あと2回ほど予定しておりますので、次回あるいは次々回に報告書のまとめの議論に 入るわけですが、ただ2回で必ずしも閉めなければならないというものでもありません ので、例えば報告書を元に、皆さんで一度ご議論いただいて、その中で例えば積み残し た問題、あるいは議論しきれなかった問題等ありましたら、大変皆さんお忙しい中恐縮 ではありますが例えば一回余分に取っていただくということも事務局としましては可能 ですので、そういった形で、全体の充実強化策をどうしていくのかということをまずま とめてみて、その中でどう位置づくかということなのかと、現在思っています。 ○津崎座長  そういう事務局からの提案があるわけですが、これに関して委員の方ではいかがです か。そういう方向でよろしいのでしょうか。  では、そういうことでいいようですので、全体のあり方を、より具体的に論議の場を 持ちつつ、報告書の素案を出していただきながら、また場合によってはそれを踏まえて 議論を再度展開していくということで、今後進めていきたいと思いますのでよろしくお 願いします。  時間がかなり迫っているのですが、今日の議題ではさらに、2番目のところに「援助 技術・援助方法の向上と研修システム人材養成について」という議題がありまして、そ の(1)に「自立支援の援助技術・援助方法のモデル事例の抽出・整理・フィードバック のあり方」というテーマが、そこに書かれています。これは、多分、児童自立支援施設 での各実践例です。  成功例や新たな試み例を、むしろよりモデル化して他の児童自立支援施設等にも場合 によっては波及させていくという狙いがあるのではないかと思うのですが、この点に関 してのご意見があればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○岩田委員  特に自立支援の援助技術等で、夫婦小舎制の場合は大体こういう運営をするというこ とについては、施設の関係者は共通の認識があるのではないかと思います。  問題は交替制で運営している所で、なかなか運営モデルを職員あるいは施設長も持て ないでいるという状況があるのです。これは交替制といっても、一方では寮舎の形態の 問題があり、東京は交替制で30年を超える歴史があって、非常に大変な状況ではあるけ れども、こういうやり方をして、あるいは新しいこういう取り組みがあるのだというそ れなりのノウハウもあると我々は思っていますけれども、また同じ交替制でも寮舎の規 模が大きくて職員の集団の規模が大きいと、違う問題も発生するのではないのかと思い ます。  そういうことも含めていろいろな意味で、やはり混乱をしている所に運営のベースと なるようなものを示していく作業が必要ではないかと私自身も思います。 ○津崎座長  はい、どうぞ。 ○野田委員  今の岩田委員のご意見と基本的には一緒ですが、ただ夫婦小舎制に処遇のスタイル的 なものはあるのだろうと思うのです。モデルであるとか技術であるとかという認識をそ れぞれの方が持ってやられているかというと、慣習上大体というところはあると思いま すが、多分ここで言われているのはもう少しクリアに見える形で、そして人に伝えるこ とが可能な一つのスキルとしてということだとすると、まだそれがどこまで精製された ものになっているかというところでは議論はできていないと思います。例えば先程の働 くことの意味を一つ取ってみても、一つの施設の一つ一つの寮舎間でも十分議論ができ ていない。  あるいは、先般もご報告しましたが、中国地区では専門委員会というものをこの5、6 年継続しておりまして、その中で処遇についてもたびたび議論はしておりますが、例え ば、「あるモデルがあるのか」というような聞き方をしても、一つの施設でもある職員 はあると思っているが、ある職員は思っていないというような、そういう状況が多々見 られるわけです。  ですので、ここでは、モデル事例の抽出ということも含めて、もう少し丁寧に、現場 で何が行われていて、そのことを言語化していく、その調査を掛けるかどうかも含め て、そのこと自体相当意味のある事なのかと思います。  そして、逆にその事を1つの素材にしながら議論していくことというのは非常に重要 だと思いますし、それから資料にも付けていただいていますが、自立支援計画表という 形で自分の施設における仕事をもう一回振り返るという事自体も、実は私の経験では相 当に抵抗があるというよりも、なじんでいないという状況もあったかと思いますので、 そのことも併せて進めていく事の意味は非常に大きいと感じます。  以上です。 ○津崎座長  はい、ありがとうございます。この問題に関して他にありますか。 ○小木曽委員  今、野田委員がおっしゃったような事ですけれども、実は私もかつて児童自立支援施 設にいた人間として、今は大学に移っているのですが、おっしゃるように研究という部 分での学会での発表や、児童自立支援施設自体の議論というのがなかなか位置付けられ て来なかった。そこの部分も多分、先程藤岡委員のところにもありましたように、非常 に見えないという部分でして、決して研究サイドで進めることが必ずしもいい方向かと いうことはまた議論の対象になるかもしれませんが、やはりそういう部分での検証を交 替制・夫婦小舎制ありきということよりも、やはりその辺でのきちっとした事例検討、 そして援助技術の構築。それから私は学生をそのような施設に出していますが、学生か らの報告の中で各寮によってやり方が全く違うと。それが本来の寮の個性なのか、それ ともやはり子どもの利益なりに非常に響いてしまうような事なのかということが、やは り見えてこないし、そういった検証の場が少ない。  やはり実際にその辺を今の公設民営というものも良し悪しではなくて、そういった状 況にあって、中でそういうことを議論していかなくてはならないのだと。  ある意味そういった透明性という部分と、先程私が言ったように「風にそよぐ葦」で はなく、きちっとした葦としてアピールをしていく手立てを考えていかなくてはならな いし、それはやはり説明責任として、施設として、第三者なり評価を受けるという方向 性にある中で、児童自立支援施設は進んで行かなければならない道ではないかと今感じ ています。 ○小田島北海道家庭学校長  先程、北海道家庭学校の働く教育について、藤岡委員から指摘されたことにつきまし ては、確かにもう少し見えやすいように、そしてまた本当に開放されたものというか、 あるいは近代化するというこの辺については、まだまだ吟味しなければならないと思っ ています。これは大事なことだと思っています。ありがとうございました。  それから、私たちの児童自立支援施設の子どもたちの抱えている問題は、単に養護の 問題にとどまらないと思っています。  ある意味では贖罪の問題と関係する事と思っていますけれども、やはり自分でそうい う悩みを持っている子どもたちがいるのだということで、ある意味養護施設と違った使 命があると考えています。この辺を丁寧に受け止めてやらないと、将来に禍根を残して いくというか、ですからこの点も私たちは十分に受け止めなければならない事であると 考えています。  それから、夫婦小舎制の事につきましては、先程、野田委員からも指摘されましたけ れども、北海道家庭学校の中でもなかなか皆同じような所に立って、考えていくという ことは、できかねるところがあります。ですから、そういう点ではもっとスーパーバイ ズするとかされるとか、その辺のところの体系たるものが必要かと考えています。 ○津崎座長  このテーマにつきましては、各委員とも特に異論がないようで、むしろもっとより言 語化あるいは説明化・透明化そういうことで社会に具体的にアピールする必要があると いうご意見が多かったように思いますので、これを具体化するについて、例えば児童自 立支援施設の全国的組織とどういう分担、あるいはどういう作業をするのかという事務 的な手続き等も必要になると思いますが、その辺は事務局の方で具体的なあり方は検討 していただきつつ、ぜひこれを具体化・実現をしていただくという方向でお願いできれ ばと思いますので、よろしくお願いします。  それでは、最後になりますけれども、残された課題ですが児童自立支援専門員等の養 成のあり方ということに関してご意見をちょうだいしたいと思いますが、いかがでしょ うか。 ○野田委員  どの射程距離でものを言っていいテーマなのかというのが少し読み取りにくい話です が、従前から出ています、これは養成だけではなく採用から、その中でのOJT的なもの からスーパービジョンまで多面的なことがあるのかなと思っています。  ただ小木曽委員もそうだと思いますが、福祉系の大学の現場で、実習指導であるとか あるいは学生たちの意向を聞いていますと、実はそういう現場で働きたいと思っている 非常に力のある学生というのは事欠かないというか、たくさんいると思います。いい伴 侶を得て、夫婦小舎制に適応するかとなりますと、また一つそれはそれでハードルはあ ろうかと思いますけれども。  その辺で言いますと、一つはやはり武蔵野学院がこの中にもありますように、いろい ろ見直しを図っていただいているという事と併せて、そこで要求されるものは何なのか という事をクリアにしていただきたい。武蔵野学院とお客さんの取り合いをしたいとい う意味ではありませんけれども、やはりこの施設で働く、あるいはこの領域で働く事の ためにはどのような力を付けておく必要があるのかという事をオープンにしていただく ことによって、各地の大学が、むしろ武蔵野学院と連携を取りながら、いろいろな人材 を、力をつけていく、あるいはそれだけではなく、東京一極集中ということではなく て、各地の大学であるとか高等教育機関が、施設の職員さんたちのリカレントというか 新たな教育システムというか、例えば関西なら藤岡先生がいらっしゃる所ででも、ある 部分についての力を育てるということで、非常に優秀な力を発揮できる。類似のような ことが各地に展開できるのではないかと思います。  ぜひ、武蔵野学院のリーダーシップと併せて、もう少し総合的なこの分野のノウハウ というか、そのあたりの構築ができるといいと感じていますので、今回はカリキュラム 等もオープンにしていただいていますけれども、やはり中でどのようなことが動いてい るのかという事もどんどん発信していただけるとありがたいと思います。  それと一点、先般も武蔵野学院の試験があったようで、服部委員も以前から言われて いますように、やはりそのあたりの内容の公開についても、ぜひよろしくお願いしたい と思います。 ○津崎座長  この件に関して加えてご意見はありませんか。 ○服部委員  前回申し上げた事の繰り返しになりますが、武蔵野学院の養成所を終えた後、児童自 立支援施設への就職につながっていく事が保障される必要があると思うのです。一年間 研修を受けつつ、他方で受験勉強を同時にしなければいけないというのは、研修の効果 を妨げるものだと思います。  ただ一方で、試験採用で入ってきた公務員からすると、選考採用というものについて は抵抗感があろうかと思うのです。  そこの調整をどうするかが現実的には問題になると思います。これは各都道府県への お願いになるかもしれませんが、養成所の試験に合格し1年間にわたり研修を受けてき た部分については、そのことを尊重し、試験採用ではない選考採用の道を開いていくこ とがふさわしい人材を確保していくことになると思います。養成所から現場への道を、 これは武蔵野学院だけの問題ではないと思いますが、厚生労働省、それから各自治体、 研究者を含めて開いていかなければいけない事だと思います。 ○津崎座長  ほかにご意見はありませんか。  現場で運営・管理にあたっておられる各先生方は、特に採用・養成・職員の資質、何 が最も重要かということをもう一度分かりやすくご指摘いただくとありがたいです。 ○小田島北海道家庭学校長  私はやはり子どもたちと本当に向き合って生活する、まずそこに始まると考えていま す。それがあるときに、初めて、いろいろな課題を克服していけるものが、そこから生 まれてくるのではないかと思います。もちろんいろいろな資格も必要ですが、それ以上 に、そのことがやはり根っこにあるという事が非常に大事な事だと考えています。 ○山内委員  私どもは、今お話にあったように養成所の方で約20人の学生が1年間に学んでいきま す。そうしますと最初、学生を見ていましても、学生の子どもへの対応や構えなどが、 寮舎に入ったり、あるいは子どもとやりとりをする中で、そういう視点・理解度あるい は柔軟性というものが変わってくるということが非常によくわかってきます。  そういう意味で、別に私どもの宣伝ばかりするわけではありませんが、やはりそうい った実習という経験の中で学生なりあるいは研究生と言っていますが、そういった人材 のところは気付いてくれるような養成あるいは研修の体系を作るというところが、これ は実習や座学などそれぞれのカリキュラムなどにもよるかもわかりませんが、そういっ た部分で、学生が自信を持って子どもたち、あるいは受け入れられるというものを作っ ていけるということが、特に児童自立支援施設あるいは児童養護施設でも虐待で大変な 子どもがたくさんいるのですが、自分本位にならないで、子ども中心に子どもの事を感 じられるような人材作りというのが最も大切なところではないか、そこに気付いていけ ばいくらでも吸収できる部分を学生なり何なりが持っていける、そういう場を今おっし ゃったように私どもは特にそうですけれど、いろいろな場でできるような形にすれば、 研修や養成のところも広がりができるのではないかと思っています。 ○津崎座長 はい。 ○岩田委員  そうですね。私どもはやはり職員の資質をどう向上させるかというのは、「仕事の場 を通じて」というのが一番大事なところだと思っています。  全国的な研修等がありますけれども、子どもたちを抱えていますので、そう何人も出 すわけにもいかないということで、なかなかそういう研修の機会を与えることができま せん。そうすると、ベースとなるのは職場で仕事をしながら、どうその職員を育成して いくかということです。  その場合には単位はやはり一つは寮の単位でチームを組んでいる職員が新しい職員を 受け入れて、どうしたらその職員を一人前に育てられるかとそこを意識的にやっていか ないといけない。またそれをできるような組み合わせをしていないと、そこがうまくい かなくて非常に困難を伴うということがあるのではないのかと思います。  それからこういう全国の研修だけではなく、なかなか職場から離れられないというよ うな現状の中で、いかにその職場の中で講師に来てもらって研修をしたりして、最近の 子どもの状況を踏まえた対応の仕方等についても、新しい知識なりを取り入れていくと いうことも必要になってくるのかと思います。  もう一つは、これもなかなか難しいのですけれども、自立支援計画との絡みですけれ ども、やはり子どもたちにどうかかわっていくかということについて寮の職員だけでは なくて、組織体としてどういう方針を持って、そしてどういう取り組みをしたかという ことを検証していってスーパーバイズをしながら、力を高めていく、これがやはりもの すごく必要で、ここの点はまだまだ不十分だと思っています。 ○津崎座長  他の委員の方でご意見はいかがでしょうか。特にありませんでしょうか。  全般的には学生そのものの就労とのリンクの工夫でいきますと、実学というかインタ ーンシップが見直されてきています。たぶん試験で入って養成校に入っても、向き不向 きがあるのではないかという気もするのですが、その辺はある程度のインターンシッ プ、実際にそういう場で体験を積み重ねていくと、自分は合っているとか、合っていな いというのがよく見えるのではないかなと思います。私どもはできれば各大学に、確か にこういう場で働きたい、そういう場でもっと自分の実習を積んでみたいという思いを 持っている学生もいますので、各県の児童自立支援施設がより積極的にインターンシッ プを取ると。今の実習であれば4週間ですね。そうではなくて、もっと長くそういう場 で自分が具体的に働く体験もし、その上で自分の姿勢・資質・意志を再確認したうえ で、場合によっては正式に養成校に行くとかいうルートがあってもいいのかと気がしま した。  全国で1カ所だけが養成をするというよりも、全国的な府県の施設もそういう職員養 成にどうかかわるのかということでタイアップできないのかという気もしています。い ずれにしても、大学・養成所あるいは全国の児童自立支援施設の連携の中で、新たな職 員の採用・養成あるいは研修も含めて、より多様な考え方が具体化できてそれを採用で きるような方向性もあれば、それも検討いただければと思います。  今日はこれで予定の時間は終了になりますが、特に何か言い残した事があって、ぜひ この事はということがあれば発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。特に ないですか。 ○藤岡委員  よくわからないのですが、ずっと専門員等の養成のあり方の中で、子どもの扱い方で あるとか、そういうことをどう力を付けるかという話をされてきたと思うのですが。例 えば私が少年院などで働いていたときに、子どもと向き合う力をまずは身に付けなけれ ばならないのですけれども、その中でより大きなシステムを見たり、新しい物を取り入 れたり、それを外に対して示していくという力も同時に育てていかなければならないこ とにとても困難を感じたのです。心理職として、子どもと一緒にぶつかることの技術も 身に付けなくてはならなくて、それだけでも大変なのですが、でもそうすると、生活の 中にどんどん埋もれていって、結局見えなくなるのです。そして、自分のやり方がとて もいいような気がしてしまったり、本当に見えなくなってしまっていて。  変な話ですが、ぽっとアメリカへ行く勉強の機会をもらって、頭を冷やして帰ってき たときに、すごく違うものが開けた気がするのです。現場のやり方とシステムとして見 る視点を両方持てたら、すごく視野が広がった気がするのです。  忙しいのは確かなのですが、やはりそう言う意味で、ある一定のときに、一定の研修 のシステムのような物を作って、より広い視野を持たせるような研修制度を確立すると いうことは、とても大事なことではないかと思いました。 ○津崎座長  ご指摘のところは多分その通りだと思いますので、そういう工夫も含めて新たな研修 ・養成ということが提起というか具体化できれば、より一層望ましいと思いますので、 その点も含めて考えていただければと思います。  今日はこれで予定の時間が終了しましたので、この研究会はこれで終えたいと思いま す。長時間にわたりどうもありがとうございました。                                     (了) 照会先  雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係(内7888)