05/10/17 第11回 医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する 検討会 議事録 第11回医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会 日時 平成17年10月17日(月)16:00〜 場所 厚生労働省専用15会議室 ○赤熊補佐 ただいまから、第11回「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等 のあり方に関する検討会」を開催します。委員の皆様方におかれましてはご多忙中のと ころ、当検討会にご出席いただき、誠にありがとうございます。本日は、辻本委員から 欠席の連絡を受けています。なお、坂本委員におかれましては、少々遅れるというご連 絡をいただいています。また、局長は所用により、今日は欠席させていただきます。岡 島審議官は、遅れて出席の予定です。   それでは山路座長、議事進行のほど、よろしくお願いします。 ○山路座長 ご苦労さまでございます。本日は、看護職員の専門性の向上について検討し ていきたいと思います。事務局より資料の確認をお願いします。 (資料確認) ○山路座長 議事に入りたいと存じます。まず、事務局より資料の説明をお願いします。 ○鎌田看護職員確保対策官 私からご説明申し上げます。資料1は、医療提供体制の改革 のビジョンからの抜粋ですが、改めて申し上げますと、平成14年3月に、厚生労働省 に医療制度改革推進本部が設置されました。その中で、医療制度については医療保険ば かりでなく、車の両輪としての医療提供体制の改革が必要であろうということで、医政 局長を座長として、医療提供体制の改革に関する検討チームができまして議論を行いま して、平成15年8月にまとめたものです。   この医療提供体制の改革のビジョンは、今後の医療提供体制についてイメージを示し まして、それに続いてその実現に向けて当面進めるべき施策というものをまとめていま す。お手元に置いていますのは、当面進めるべき施策として掲げたものですが、質が高 く効率的な医療の提供ということに関しまして、3番目に、質の高い効率的な医療提供 体制の構築があり、それに合わせて4番目に、医療を担う人材の確保と資質の向上を言 っています。具体的な将来のイメージとしては、看護職員を確保するとともに資質の向 上を図る。そして、在宅医療などのニーズに応え、適切な看護技術を提供するというイ メージを与えて、そのイメージを実現するために当面進めるべき施策として(3)以下 が書かれています。   具体的に申し上げますと、「時代の要請に応じた看護の在り方の見直しと資質の向 上」ということで、(1)看護職員確保対策を総合的に推進する、(2)看護師等の卒前の技術 教育が適切に推進できるよう、臨地実習の実施のための条件整備を行い、その定着を図 る。また、医療の高度化・専門化に対応するため、特定の領域について、より高度な知 識・技術を有する看護師(専門看護師等)の養成強化や普及を推進する。さらに、基礎 教育の内容を充実するとともに、大学教育の拡大など、看護基礎教育の期間の延長や卒 後の臨床研修の在り方について制度化を含めた検討を行う。(3)准看護師について書かれ ています。(2)にあるように、医療提供体制の将来のビジョン実現のための施策としての 専門看護師の養成・普及ということが言われています。    資料2は、「規制改革・民間開放推進3か年計画」です。ご案内のように規制改革・ 民間開放については構造改革の一環として議論されていまして、平成16年3月に3か 年計画が定められまして、今年の3月にその改定がなされたところです。その中に各論 というものがありまして、「医師・医療従事者の質の確保」が今後の計画として盛り込 まれています。(1)は、重大な医療事故を起こした医師や医療事故を繰り返す医師に ついては、再教育ということで、現在、医師の再教育制度について検討が進められてい ますし、同じく看護師についてもこの検討会において皆様にご議論いただいているとこ ろです。(2)は、患者に対し良質で安心できる医療サービスを提供できるよう、高い 技術を習得した専門医の育成を促すほか、より専門性の高い看護師等の育成や、臨床研 修等の教育環境整備等、具体的な措置を講ずるとされています。また、それについては 平成17年度中に措置ということが求められていますが、先ほどの医療提供体制の事由 に合わせまして、高い専門性を有する看護師の育成・普及が課題になっています。   資料3は、日付が前後しますが、平成16年1月30日に出された「医療分野における 規制改革に関する検討会」の報告からの抜粋です。医療分野においてはご案内のとおり、 先ほどの規制改革の会議などからいろいろと提言があるわけですが、平成15年4月に 医療を受ける患者・国民の視点、医療を提供する医療機関の視点の双方から洗い出しを 行いましょうということで、平成15年4月にこの検討会が設置されまして、例えば平 成15年6月に医療分野における労働者派遣の取扱いが定められ、そのあとにさらに医 療分野における規制改革についてまとめられた報告です。その中にIIIとして、「当面取 り組むべき規制の改革」という項がありまして、1、「患者・国民に対する情報提供の 推進、患者・国民による選択と医療機関の競争の促進」という項目に、(3)として「広告 規制の緩和」があります。広告規制については今後とも逐次緩和を図る。その際に具体 的に、次の事項について検討するとありまして、広告規制の緩和の対象として、「看護 師の専門性に関する事項」が掲げられています。   参考までに他の項目について申し上げますと、(3)の検査または画像診断の方法、医療 機器に関する事項、院内感染対策に関する事項などが挙げられています。また、同じく (3)以外の項目で、患者・国民に対する情報提供の推進の(1)医療に関する情報提供の推進 とありまして、個人情報保護法施行を踏まえてカルテの開示などに定めた基本指針の徹 底や、EBM、その根拠に基づいた治療の推進などがありますし、(2)として医療に関す る相談窓口の整備があり、その中で医療安全支援センターの設置の促進などが言われて います。   資料1から資料3で申し上げましたように、看護師の専門性の向上については養成、 強化、普及促進を図ると言われているとともに、専門性について患者に情報提供ができ ないかと言われていますが、行政並びに関係団体の取組について申し上げますと、資料 4です。これは、厚生労働省において行っている看護職員の研修に関する取組について です。「看護職員臨床技能向上推進事業」とありまして、平成17年度予算で約3億9,000 万円規模の事業です。その趣旨は、下の図にありますように、看護のレベルにおいて3 つの段階に着目しまして、基本技能・知識の習得は、臨床現場における基本的な看護技 術や知識の習得ということで、(1)新人看護職員研修を行っていますし、実務経験のある 方に対しては、5年以上の中堅看護職員などを念頭に置きまして中堅看護職員研修を行 っています。さらに、水準の高い看護を実践できるように、看護職員専門分野研修を行 っていますが、趣旨の「特に」という(3)の説明ですが、平成15年度から、特定の看護 分野において、高度な看護実践を学ぶことのできる施設として選定された実習施設にお いて専門的な技能を修得させること等により、がん看護や感染管理などの専門性の高い 看護師の育成を重点的に促すということで、平成15年度から(3)を実行しています。   もう少しご説明を申し上げますと、(1)の新人看護職員研修は平成16年度から行って います。新人看護職員研修として、平成15年度に「新人看護職員の臨床実践能力の向 上に関する検討会」というのがありまして、そこで報告がまとめられましたので、それ を踏まえて実施しています。具体的には、「新人看護職員研修到達目標及び研修指導指 針等」を活用して、各医療機関の院内研修責任者、新人研修担当者に対して講習を実施 して、各医療機関にフィードバックすることにより、統一された臨床技能の向上を図る ものです。   次の頁は、地方厚生局が8カ所ありますが、そこで講習会を開いて行っているという ものです。同じく、新人看護職員の中の1つとして助産師の事業を行っていまして、新 人助産師に対する医療安全推進モデル研修事業を行っています。これは助産師学校養成 所の卒業直後から及び研修プログラムに基づく臨床実務研修を実施しまして、助産師の ケアの質の向上を図るもので、実施期間は大体年間700件以上の分娩のある産科の専門 病院などにおいて、3カ月間の研修を行っています。   (2)が中堅看護職員実務研修事業で、ご説明しましたように、実務経験5年以上の中堅 看護職員を対象に専門領域の実務的な知識・技能の向上を図るための事業として、都道 府県を実施機関として、ここに書いてあるような内容を5日から10日間行っています。  これに対して、先ほど途中でご説明を申し上げましたが、(3)として行っている看護職員 専門分野研修事業は、特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いた、水 準の高い看護を実践できる専門性の高い看護師の育成を促進するための事業です。実施 機関としてはここにありますように、都道府県にお願いしていますし、また、厚生労働 大臣の認める者として、日本看護協会、日本精神科看護技術協会にお願いしています。 研修内容の例は、ここにありますように救急看護、創傷・オストミー・失禁(WOC) の分野、感染管理などがあります。実施期間は、1つのコースあたり6カ月の研修を行 っています。   資料5は、あとで菊池委員からご説明がありますが、看護協会が行っているものです。 私からは、次に資料6についてご説明申し上げます。先ほど申し上げました専門性の高 い看護師の養成事業として、日本精神科看護技術協会が行っているもので、いま申し上 げました厚生労働省からの補助も一部行っているものです。   ご説明申し上げますと、流れはいちばん下の図をご覧いただきたいのですが、いちば ん左に「日本国の看護師の免許を有する」とありますが、我々が作成したので間違いが ありまして、正確には「日本国の保健師、助産師または看護師のいずれかの免許を有す る者」、つまり保助看のいずれかの免許を有する者で、実務経験が通算で5年以上ある こと。そのうち、精神科看護の経験が通算3年以上あることが条件で、日本精神科看護 技術協会の認定看護師で必要な所定の単位を取得するということで、ここに基礎専門科 目23単位、専門科目10単位となっていまして、あとでまた詳しくご説明しますが、概 ね600時間程度を念頭に置いた単位構成になっています。その上で認定試験を日本精神 科看護技術協会が行っていまして、特別の委員会を作って認定試験を行い、その認定試 験をクリアしますと認定看護師として登録され、認定証が交付されるというものです。   その上に分野とあります。認定看護師の分野として4つありまして、1つ目は精神科 救急・急性期看護、2つ目は精神科リハビリテーション看護、3つ目は思春期・青年期 精神科看護、4つ目は老年期精神科看護です。これまで認定した実績は、今年の10月 現在でそれぞれ14人、25人、12人、8人となっています。   次の頁は、いま申し上げた4つの分野のうちの精神科救急・急性期看護の教育カリキ ュラムです。基礎・専門基礎科目は、精神科看護学から地域精神科看護論までの23単 位です。専門科目は10単位ありますが、そのうち精神科救急・急性期看護概論、精神 科救急・急性期看護対象論、精神科救急・急性期看護援助論、それぞれが1単位になっ ていまして、右下に総時間が604時間になっていますが、精神科救急・急性期看護を引 きますと、上の専門基礎科目23単位と専門科目の上の3つの3単位で604時間に相当 するということで、専門科目の文献学習、実習、専門科学者は別途7単位ありまして、 例えば学会に発表した論文の審査などを行っていると聞いています。これが、日本精神 科看護技術協会が行っているものです。   資料7についてご説明します。資料7は、そうした専門性のある看護師の看護が、実 際にどのような効果があるかということの調査で、2つあります。1頁と2頁にありま すが、平成10年度に厚生省医療技術評価総合研究事業として行われたもので、いわゆ るWOC看護認定看護師に関する研究で、研究目的にありますように、WOCの認定看 護師による直接的看護ケアが退院促進にどのように影響しているかというものです。こ の認定看護師は、あとでご説明のあります日本看護協会が行っている認定看護師で、大 体600時間程度の研修を受けて認定された方を認定看護師と言っています。   調査方法はここにありますように、対象病院としては、WOCの認定看護師が活動し ている病院で、さらに直腸癌で腹会陰式直腸術を行った患者が1年間いた病院です。調 査方法としては、22の対象病院に勤務する22名の看護師に記載依頼をして、その質問 項目について診療記録や看護記録に記載されている内容を調査していただいたもので す。    結果は、認定看護師の導入前と導入後を比較してもらったもので、対象患者は93 名です。結果の2つ目のストーマケアに関する教育・基準・記録については、全般的に 導入前と導入後を比べると、導入後のほうが実施率が上がっていますが、有意性につい て着目をすると、病院全体でのWOC看護の教育の実施が多いということです。なお、 表中に「np」とありますが、「ns」の誤りです。失礼しました。病棟単位でのWO C看護の教育についても、導入後は高まっていますが、それ以上に病院全体での実施が 高まっていることが言えます。また、下から3行目の専用記録用紙を活用して教育看護 が行われているようですし、さらに導入後にストーマ外来の開設が進んだこともうかが えます。   次の頁です。研究の目的である退院促進にどのように影響しているかに直接に関係し ますが、3つ目として、平均在院日数とセルフケアの確立時期については、手術後の入 院期間は、導入前が43日、導入後は36日と、7日短縮しています。また、患者が術後 に自分独りで装具の交換ができた時点、これをセルフケア確立時期としていますが、そ れは導入後のほうが7日間早いということで、一定の効果がうかがえると言えます。ま た4つ目の術前のストーマケアについて調査しました。1)手術前に必要な患者のアセ スメントを実施しているか否かについて、有意差のあるものを申し上げますと、1行目 の患者の心理状態はアセスメント導入後は高くなっていますし、疾患に対する患者の理 解度を見てみますと高くなっていると言えます。さらに、マーキング位置の選択理由な どについても、きちんとアセスメントがされていることがうかがえます。術前に必要な ケアの実施ですが、疾患理解のための援助、ストーマ及びストーマケアの患者教育、マ ーキングの実施、それぞれ調査項目すべてについて有意差があるという結果が出ていま す。   手術後10日間のストーマケアの実態については、ストーマの形・色などのアセスメ ント、排泄物の性状のアセスメント、ストーマ周囲皮膚のアセスメント、ストーマケア に関する看護、セルフケア指導、それぞれについてほとんど有意差があるとうかがえま す。   さらに退院指導の実態について、退院後の生活についての指導が、導入前は48.9% あったのが導入後には70%に上がっていますし、装具に関する指導も、48%だったのが 82.9%に上がっているなど、やはり有意差が認められるというところです。これが平成 10年に行われた調査です。   3頁は、今年6月に行われた中医協の委員会に出された資料で、同じくWOC看護技 術の有効性に関する調査です。調査の目的は、WOC看護技術が患者アウトカムに与え る影響を明らかにすることにより、特化した看護技術の適正な評価についての基礎資料 を得ることを目的としたもので、(1)褥瘡の治癒経過と処置にかかる費用、(2)ス トーマ造設術後の在院日数、ストーマ周囲の皮膚トラブルの状態及び治癒経過、退院後 のQOAを資料として用いています。   対象としては、200床以上の外科を有する小児病院を除く医療機関1,358施設のうち、 WOC看護技術を有する看護師の就業する211医療機関を介入群として、残りの1,147 施設を対照群としたわけです。褥瘡については、褥瘡の経過表の「深さ」2以上の褥瘡 を有する患者であり、継続して3週間以上の褥瘡観察及び褥瘡管理が可能であることで ありますし、入院基本料はI群の2以上をとる医療機関にしています。また、ストーマ については、人工肛門又は人工膀胱造設術のために入院し、他に合併症がないことを条 件としているようです。   結果ですが、調査対象のうち655施設から有効回答を得まして、回答率は48.2%と なっています。(1)褥瘡患者調査は、4頁のイをご覧ください。褥瘡ケアの提供時間 は、対照群でオムツ・寝衣・寝具による擦れ予防のケア、禁忌のケアとされる局所マッ サージの実施時間が有意に長かったとあります。また、褥瘡の措置、褥瘡の状態やケア に対する患者への説明は、介入群がより多くの時間を費やしていたことがうかがえます。 調査目的である治癒の経過はウにあります。調査開始時の褥瘡経過表合計得点は介入群 が13.5、対照群が12.1でしたが、3週間後の得点は介入群が13.5から10.9に漸減し ている一方で、対照群は12.1から10.7への減少ですので、褥瘡の改善状況については 介入群の効果が認められたという報告がされています。   また、エのWOC看護師の看護技術の有効性については、褥瘡の得点変化に関連のあ るWOC看護師の有無、日常生活自立度、糖尿病の治療の有無と褥瘡患者管理加算の有 無、それから、看護人員配置をパラメータとして重回帰分析を行ったところ、2週間後、 3週間後にWOC看護師の影響が増大したということで、治癒に対してWOC看護師の 効果が出ていることがうかがえます。また、費用対効果は、褥瘡経過表の合計得点の1 点減少に要した費用、この費用は薬剤、衛生材料の費用ですが、介入群では5,109.1円 に対して、対照群は1万686.4円で、介入群では半分以下のコストであることが検証さ れたという報告があります。   ストーマ患者の調査です。イをご覧ください。術後のケアにおいて、「皮膚トラブル 評価」「心理的ケア」「セクシュアリティのケア」「患者会の紹介」という点において は、介入群のほうが実施率が高く、患者の心理面やサポート組織の利用にまでに配慮し たケアが実施されていたとあります。また、ケアに要した時間は、全体として介入群の ほうが短い傾向がありました。18項目中8項目で介入群のほうが有意に時間が短かった とあります。ただ、術後14日間の便漏れ・尿漏れの状況、皮膚トラブルの発生、退院 後のQOAについては介入群、対照群に差は見られなかったという報告があります。   ウのWOC看護師の看護技術の有効性については、術後の在院日数について、合併症、 放射線治療、化学療法及び年齢をコントロールした多変量解析の結果、合併症や放射線 治療は術後在院日数長期化と有意に関連しており、WOC看護師の就業は術後在院日数 短縮と有意に関連していたという報告があります。   この報告では下の3行にまとめられていますが、WOC看護師の特化した看護技術は、 褥瘡の治癒過程を促進し、費用対効果に優れていること、ストーマ造設患者の術後在院 日数の短縮に関連することが検証された、という報告がされていまして、専門的な知 識・技術を有する看護師の効果は、こういう形の調査で明らかになっています。   資料8です。資料3にありましたように、広告の必要性について指摘されていますが、 いま同じように専門性と広告については、専門医の広告がされています。その仕組みを 資料8でご説明申し上げます。   医療法第69条は、医業等に関する広告の制限について書かれていまして、「医業若 しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関しては、文書その他いかなる方法によるを 問わず、何人も次に掲げる事項を除くほか、これを広告してはならない」とありまして、 その中に「その他厚生大臣が定める事項」と定められています。   では、その他厚生労働大臣が定める事項は何かと申し上げますのが1番目の◎で、平 成14年に出された厚生労働省の告示ですが、「医業若しくは歯科医業又は病院若しく は診療所に関して広告することができる事項」とありまして、そのうちの第26項も別 に厚生労働大臣が定める研修体制、試験制度その他の事項に関する基準に適合するもの として厚生労働大臣に届け出た団体が行う医師及び歯科医師の専門性に関する認定を 受けた旨が事項となっています。   そこで、第26項にある別に厚生労働大臣が定める基準は2番目の◎で、平成14年の 同じ時期に出された告示で、「厚生労働大臣が定める研修体制、試験制度その他の事項 に関する基準」とあります。この段落の2段目にありますように、医業若しくは歯科医 業又は病院若しくは診療所に関して広告することができる事項第26号に規定する厚生 労働大臣が定める研修体制、試験制度その他の事項に関する基準として以下の9項目が 挙げられています。1、学術団体として法人格を有していること。2、その会員数が1,000 人以上であり、かつ、その8割以上が医師又は歯科医師であること。3、一定の活動実 績を有し、かつ、その内容を公表していること。4、外部からの問い合わせに対応でき る体制が整備されていること。5、医師又は歯科医師の専門性に関する資格の取得条件 を公表していること。6、資格の認定に際して5年以上の研修の受講を条件としている こと。7、資格の認定に際して適正な試験を実施していること。8、資格を定期的に更 新する制度を設けていること。9、会員及び資格を認定した医師又は歯科医師の名簿が 公表されていること。というのが広告を行うに際しての条件でありまして、この条件を クリアしたときに専門医として広告されています。   順番が前後しますが、参考資料2が、いま申し上げました広告可能な医師、歯科医師 の専門性を認定する団体のリストで、社会保障審議会医療部会の資料です。例えば1番 目の整形外科に関しましては、その団体としましては社団法人日本整形外科学会があり まして、「広告できる資格の名称」としては整形外科専門医となっていまして、会員は 2万1,605名の方が入っていらして、そのうち専門医の方が1万4,827です。「専門医 取得に必要な研修期間」は、先ほどの基準では5年以上となっていますが、ここでは通 算6年となっていまして、そのうち認定施設での研修は3年になっていまして、認定施 設の要件はこのように定められています。また、「専門医認定の際の要件、必要な提出 資料等(主なもの)」もこのようにありまして、整形外科で申し上げれば診療記録10 例ですし、研修内容等を記載した研修手帳の提出であり、学会発表・論文発表各1編以 上の提出がありまして、試験としても筆記、口頭となっています。これがずっとありま して、全部で42の団体資格になっていまして、医師だけではなく歯科医もあります。 例えば歯科医については、7頁では41に特定非営利活動法人日本歯周病学会の歯周病 専門医がありますし、5頁の23は社団法人日本口腔外科学会の口腔外科専門医があり まして、42のうちの2つほどが歯科医になっているということです。それが現状です。   資料9です。資料1から資料3で申し上げましたように、専門看護師の養成・普及の 必要性が指摘され、広告規制の緩和があるわけですが、医療の技術の向上なり看護を取 り巻く状況の変化を踏まえまして、より専門性の高い看護師の養成強化を図るためには、 どのような方策が考えられるだろうか。行政としての関与なり団体としての努力が考え られますし、養成した看護師を普及するにはどのようなことがあるだろうかということ が1つの論点としてあると思います。   また、広告規制の緩和ですが、患者・国民に対する情報提供を推進、患者・国民によ る選択を促進する観点から、このように折角身に着けた専門性について、その看護師の 専門性に関する事項を広告可能としてはどうかという要請が指摘されていまして、その 際、看護師の専門性を広告可能とする場合、どのような基準を設定することが可能だろ うか。先ほど、資料8で申し上げた、医師又は歯科医師に関するものがありますが、看 護師の場合はどのようにしたらいいかということが論点として挙げられるかと思いま す。   なお、参考資料は看護系大学院の設置状況ですが、これについても後ほど看護協会の 菊池委員から引用のご説明があるかもしれませんが、単にグラフを申し上げますと、い ま看護系大学院の修士課程、博士課程を設置しているものを見ますと、修士課程は81 大学で定員が1,404人ですし、博士課程は31大学があり262あるということで、専門 性のある看護師の教育も進んでいるということです。以上が、事務局からの説明です。 ○山路座長 ご苦労さまでした。   資料5を提出いただきました菊池委員から、約10分程度で簡単にご説明をお願いし ます。 ○菊池委員 専門看護師と認定看護師についてご説明します。医療の高度化・複雑化に伴 い、水準の高い看護ケアを提供することが看護師の職員の中に求められてきていまして、 そのために専門看護師と認定看護師を養成しています。これは、本会が認定審査をした ものを専門看護師、認定看護師と合格した者を言っていますが、日本看護協会だけで作 ったものではありません。この制度を立ち上げるときには、例えば日本がん看護学会や 救急看護学会などのいろいろな看護系学会、それから看護系の教育団体、日本看護系大 学協議会といった教育団体、それから本会の日本看護協会と、いろいろな看護に関する 団体の総意で作ってきたという経緯があります。まず、専門看護師についてご説明しま す。   専門看護師というのは資料にもありますが、「本会専門看護師認定審査に合格し、複 雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して、水準の高い看護ケアを効 率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識及び技術を深めた者をいう」という ことで、専門看護師は、水準の高い看護ケアを実践すると同時に、看護職者に対する相 談とか医療のチームの中での調整とか、倫理的な問題の調整、教育・研究の6つの役割 を果たすということで、この人たちの活動が保健医療福祉や看護学の発展に貢献すると 考えています。   いま、専門看護分野としまして特定されて養成されていますのが、精神看護、がん看 護、地域看護、老人看護、小児看護、母性看護、成人看護(慢性)、クリティカルケア 看護です。今後特定される予定の分野が、感染看護と家族看護となっています。   この教育と認定のシステムですが、日本の保健師、助産師、看護師のいずれかの免許 を有する人が対象になります。この人たちが看護系大学院の修士課程で、この学問を修 了し、認定審査を受けることになります。日本看護系大学協議会が定める専門看護分野 の専門看護師カリキュラム総計26単位を取得していること。もう1つは実践の部分と しまして、実践経験が通算5年以上あって、そのうちの3年間以上は専門看護分野の経 験、例えば、がん看護の専門看護師であれば、がんの分野の経験があるということ。そ れから、専門的な分野の3年間のうちの1年間は、修士課程修了後に、教育を受けたあ とにさらに実務経験をすることということで、認定審査を受けることができる。これが、 認定審査を受けるための条件になっています。認定審査は一次試験と二次試験がありま して、一次試験は書類審査、二次試験は口頭試問ということで審査をしていまして、こ れに合格した人が専門看護師の認定証を交付され、登録するということになっています。 これは5年間有効で、5年後にまた更新の審査を受けなければならないシステムになっ ています。   どういう教育機関で教育されているかというと、下のほうに一覧表が作成してありま すが、いろいろな看護系大学の大学院でそれぞれの特定分野の教育を実施しています。 いちばん早かったのは精神看護、がん看護で、1998年から開始されていまして、その表 の中に入っている数字は開始の年です。この専門看護師教育課程の認定は、日本看護系 大学協議会が行っています。教育課程の認定自体は、本会ではなくて日本看護系大学協 議会が行っていまして、日本看護系大学協議会が、ここの教育課程は専門看護師の教育 をするのに十分であると認定したところで養成をすることになっています。2005年3月 現在で認定されている専門看護師教育課程は、そこに固有名詞が全部書いてありますが、 17大学院の60課程ということになります。   専門看護師を先にまとめて説明しますと、3頁をご覧ください。これは、がん看護の 専門看護師の専攻教育課程ですが、教育目標のあとに科目があります。専攻分野の共通 科目は8単位ということで、病態生理、看護理論、看護援助論を履修する。専攻分野の 専門科目は8まで書かれた専門領域の中から4単位以上を履修することになっていま す。例えば化学療法看護、放射線療法看護、幹細胞移植看護、がんリハビリテーション 看護、疼痛看護、緩和ケア、ターミナルケア、予防・早期発見の中から選んで履修する。 それから実習を6単位設けていまして、合わせて必須単位が18単位になります。それ 以外に下に書いてありますが、科目として8単位以上を含めて合わせて26単位を履修 することになっています。共通科目としては看護教育論、看護管理論、看護理論、看護 研究、コンサルテーション論、看護倫理、看護政策論のうち、がんの場合ですとがん専 攻分野のCNSとしての役割を考慮して広範囲に8単位以上を選択する。合わせて2年 間で26単位を修士課程で履修することになっています。   4頁は、精神看護の場合にはこういう科目になっていますというものを表わした資料 で、専攻分野の共通科目としては、制度や体制、精神の健康生活状態の評価に関する科 目、精神領域のセラピーに関する科目、精神看護の援助法に関する科目ということで、 これが必須単位12単位です。それから必須ではないけれども、次の課程の中から学ぶ ことが望ましいということで、専攻分野の専門科目として、クリティカル精神看護、リ ハビリテーション精神看護、薬物依存精神看護、リエゾン精神看護、メンタルヘルス看 護。実習は先ほどのがん看護と同じで6単位、それ以外の共通科目と合計で26単位を 2年間の修士課程で履修する。こういう教育課程で養成が行われています。   その結果、いま何人の専門看護師が実際に活躍しているかが6頁です。左が県名で、 上が特定の専門分野になっていますが、例えばがん看護は44人、精神看護は25人とい うことで、それぞれの分野を合わせて全国で102人の専門看護師がいま活躍している状 況です。これは参考資料の1をご覧いただくと、看護系の大学院が年々増設されていま して、平成17年度の修士課程、博士課程の人員が、修士課程が1,404人、博士課程が 262人ということですが、こういうふうに年々大学院自体が増えて、そこで学ぶ人たち も増えてきているために、今後専門看護師を履修する人たちもますます増えてくるので はないかと考えています。ただ、専門看護師は大学院修士課程ですので、まだこの10 年間にいまのところは102人ですが、大学院が増えていますので、今後、急速に増えて いくと考えています。以上が、専門看護師の簡単な説明です。   もう1つは、認定看護師という熟練した看護技術と知識を用いる看護師を養成してい まして、それが2頁に資料として書いてあります。こちらも看護界の総意で作った制度 ですが、認定審査自体は本会が行っています。「認定審査に合格し、ある特定の看護分 野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践のできる者をいう」 ということで、認定看護師は優れたモデル的な実践を示すことと、看護職員の指導や相 談に乗るという3つの役割を果たすということで、看護ケアの広がりと質の向上を図る ことに貢献すると考えています。   現在の認定看護分野はそこに記載してありますように17分野があります。救急看護、 創傷・オストミー・失禁(WOC)看護、重症集中ケア、ホスピスケア、がん性疼痛看 護、がん化学療法看護、感染管理、訪問看護、糖尿病看護、不妊看護、新生児集中ケア、 透析看護、手術看護、乳がん看護、摂食・嚥下障害看護、小児救急看護、認知症高齢者 看護の17分野が特定されて、養成されています。   この認定システムは、これも保健師か助産師か看護師のいずれかの免許を有している 人で実務経験が5年以上、そのうちの3年以上は認定看護分野の経験を持っていること。 教育の課程ですが、6カ月・600時間以上の教育を受ける。教育を受けたあとに筆記試 験の認定審査を受けて、合格した人に認定証が交付されて登録するという仕組みです。   この教育機関は一覧表が下に書いてありますが、日本看護協会の看護研修学校をはじ めとしまして、国立看護大学校の研修部や神奈川県立保健福祉大学の実践教育センター、 県協会の認定看護師教育課程や大学、職能団体の研修機関。それから日本訪問看護振興 財団、これは訪問看護の認定看護師教育ですが、そういうところで教育する形で、いま はこれだけの教育機関で認定看護師を養成しています。   例えば、救急看護のいちばん上は看護研修学校で、1996年から、括弧にあるのは定 員ですが、2005年10月現在で全部で17の教育機関で教育がされていまして、その教育 課程は35、総定員が855名で毎年養成されています。こちらも更新制度がありまして、 認定看護師のレベル保持のために5年ごとに更新審査を実施する。実際に、その分野の 看護実践をきちんと積み重ねているかということと、自己研鑽の実績をポイントにして 更新審査が行われるという状況です。   この教育の内容については5頁です。これは、WOCの教育基準カリキュラムの例と して出したものですが、共通の必須科目が6科目のほかに、専門の基礎科目としてWO C看護概論、危機理論、ストレスコーピング、リハビリテーション、栄養生理学、アプ ライアンス基礎、専門科目としてストーマケア、創傷ケア、失禁ケア、演習/実習とし て臨床実習、実習課題、合わせて600時間以上の教育を受けるということで養成してい ます。   その結果、7頁ですが、いま全国で1,741人の認定看護師が生まれて、活躍している 状況です。いちばん多いのが褥瘡やストーマのケアをするWOC看護、重症集中ケア、 感染管理が重要視されていますが、そういうところの養成が早くから始まりましたので 人数が多いです。この教育機関も年々増えていますので、養成数も年々増えていくと考 えています。以上です。 ○山路座長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明及び菊池委員の説明 に関して、ご質問、ご意見があればお願いします。制度の説明が長かったのですが、資 料9を再度ご覧ください。2つの論点を中心にご議論をいただければと思います。1つ は、より専門性の高い看護師の養成強化、より専門性の高い看護師の普及を推進するた めに、どのような方策が考えられるかということ。もう1つは、それに関連して、患者・ 国民による選択を促進する観点から、看護師の専門性に関する事項を広告可能としては どうか。広告可能にする場合、どのような基準を設定することが適当か。この2つの論 点についてご議論をいただければと思います。 ○石渡委員 いわゆる産科の看護師等の業務というところで私から説明させていただき ましたが、いまは助産師が圧倒的に少ないことを報告しました。その中で、特に産科診 療所はいまは分娩の47%を扱っていますが、そこでの助産師の数が少ないことも報告し ました。そこで、助産師が足りないことについての今後の対策として、エキスパートナ ース、産科エキスパートナースの養成というのはどうでしょうかということもお話しま した。この認定看護師のところで、いくつかの分野に分かれていますが、ここで分娩看 護とか、そういうような概念、部門というのは考えられないでしょうか。それが私の質 問です。 ○山路座長 これは、菊池委員に伺ったほうがよさそうですが、認定看護師との関連の話 でいかがなものかというご質問ですが、いかがでしょうか。 ○菊池委員 その分娩看護についての認定看護師ということは、いまのところ考えていま せん。助産についてはそれだけの教育を受けた助産師が、助産を扱ったほうがいいケア につながるということで、助産師の養成をきちんと確保していただく方向を考えていま すので、不足しているからといって分娩専門の認定看護師を養成することは考えていま せん。 ○石渡委員 私がお話したのは、いわゆる助産所で医師から独立して行われる助産と、医 療機関内で医師の指示の下に行われる助産の状況は異なるのではないかという考えの 下から、医療機関においてはこういう分娩エキスパートナースというのもあってもいい のではないかというのが私の考え方なのですが、いかがでしょうか。 ○遠藤委員 現在、保健師助産師看護師法の中で、助産師の養成に関してはご存じのよう に6カ月以上の養成で可能なわけです。現実的には、おそらく6カ月でしている所は保 健師助産師合同コースというのが2つくらい残っていたかもしれませんが、そういう課 程がありますので、今日の看護の部分の認定看護師を見ていただくと6カ月以上、600 時間以上という時間数が決まっていることと、実務経験が5年以上ある人ということを 前提で作るならば、石渡委員のおっしゃられたことはむしろ助産師の基礎教育を養成す るよりも、もっと得難い状況が発生してまいりますが、そのあたりは石渡委員は何かお 考えでご発言されましたでしょうか。 ○石渡委員 この6カ月、600時間以上は、どういう研修のカリキュラムを組むかによっ てずいぶん変わってくると思いますが、私がいま考えている医療機関内のということに なりますと、もう少しこの辺は緩和されるのではないかという考えも持っています。ま た、この6カ月、600時間以上を前提とするならば、カリキュラムの作り方もまたいろ いろと変わってくるのではないかと思います。 ○青木委員 今日の議題というか討論の中心は、専門看護師、認定看護師という話だと思 いますので、それに関して2、3質問をしたいことがあります。専門看護師、認定看護 師をお考えになり、現在そういう方々が出られているというベースは、日本看護協会と いう組織の中でのことであると了解しております。それは日本医学会の中で、医師の専 門性、日本外科学会の専門医であるとか、今日の資料に示されているいくつかの専門医 という形が取られているのと、形としては同じである。もう少し述べますと、基本的に 日本医師会に日本医学会があり、全部かどうかはわかりませんが、日本医学会の下に多 くの学会が所属しているという形ですので、日看協の下にそのような形があるというこ とで間違いはないのか、私の了解で間違いはないのかということを教えていただきたい。   もう1つ、専門看護師という場合、「大学院修士課程」と書いてあると言われました が、このようなものを考えていくときに、医師の専門性を考えたときは医師であるとい うことがスタートになっている、専門看護師は看護師であるということがスタートにな っていないと理解しますが、そのような理解でいいのでしょうか。 ○山路座長 いまの2点にわたる質問について、いかがでしょうか。 ○菊池委員 第1点目の、日本看護協会の認定ということでされている専門看護師と認定 看護師ですが、先ほど説明したように、これが作られる経緯の中で、いろいろな専門分 野を特定するときも各看護学会、例えばがん看護学会、救急看護学会、手術看護学会な ど、それぞれ看護の専門の学会がありますが、そことの意見を調整してカリキュラムを 考えたりといったことをやっております。専門看護師については、日本看護系大学協議 会という看護系大学のほとんどが参加している協議会の中で、教育課程をきちんと認定 し、教育課程が協議会の中で認定された所で教育された人が、認定審査を受けたときに 本会として合否を決めるので、一専門団体だけがやっているわけではなく、看護界の総 意でつくられているということがあります。20年ぐらい前かと思いますが、そもそも厚 生労働省の看護制度体制検討会の中で、専門看護婦の育成ということが謳われ、それを 契機にいろいろと検討し、看護界の総意でこのような認定制度を作ってきたという経緯 があります。   2番目の質問で、CNSは大学院の修士課程で養成されますが、看護師がベースにな っていないのではないかということでしたが、そのようなことはなく、認定を受ける場 合には、保健師か助産師か看護師のいずれかの免許を有することということが付いてお りますので、必ず免許は持っております。 ○山路座長 青木委員、よろしいでしょうか。 ○青木委員 まず最初の件ですが、このような専門医とか専門看護師といった形の我が国 でのあり方というのは、厚生労働省がその外郭を決めて、律していくような形を取るの ではなく、いまの医学会が取っているような、これもご承知のような問題がたくさん出 てはいますが、学会内で自主的にやっていくことが非常に大事なことだと思うわけです。 例えば、日看協なら日看協という専門団体がやっているということが大事だ、という意 見も持っているということです。   2番目の専門看護師のことについては、いわゆる大学院修士課程を出ていないとと言 うか、そこの単位を取得していないと、専門看護師になることができないと理解されま す。医師の世界だけを例に取ってはいけないでしょうが、医師の場合は、基本的にすべ て医師であるということが出発点で、さらに学業の部分を大学院といった形で求めると いうことはないと私は理解しています。これは出発点に差がある話にならないか、不公 平にならないかということをお尋ねしているわけです。 ○山路座長 わかりました。菊池委員から何かあればお願いいたします。 ○菊池委員 水準の高い看護ケアを提供するためには、それだけの学習、知識や技術を学 んで実践してみることで能力を高めていくことが必要です。そのような意味で、大学院 の修士課程で学ぶということが、看護の場合には必要という判断の下に諸外国の例もい ろいろ参考にしながら、作っていったということがあります。 ○谷野委員 看護の専門性というのは、大学院や専門看護師制度、認定看護師制度のみ議 論していくことが果たしていいのかどうかといったことも考えたり、考える方向として これしかないのかという気もしたり、「看護の専門性とは何ぞや」といった神学論的な 話をしても仕方がないから、このような専門看護師の話でもしないといけないのかなと いう気もしたりして、非常に切り口は難しいと思っています。   もう1つは、専門看護師でも認定看護師でも、私の感じから言えば、現場をかなり犠 牲にして時間を割き、このことにかかり上がらないと、特に、我々民間病院でこのよう な資格を取るには、非常に難儀な側面があり、それがこの数字になっている。ある意味 ではかなり低い数字になって表れているのではないかという気もするのです。現場を抱 えながら、このような専門看護師制度を取るというのは、かなり難しい話です。そうか と言って、そんなに簡単に専門看護師を与えていいのかという問題もあります。   ここでの議論ではないと言われればそうなのですが、もう1つは、専門医にしても専 門看護師にしても、これをもらったからと言って、取ったからと言って、きちんとした 経済的な評価がなされるかと言うと、そうでもない。極端に言えば、専門看護師とその 他の看護師と、現場でいちいち違うわけではないので、そのような点では非常に資格と いうのは難しい。ただ、医師の世界はかなり専門医制度が普及してきて、精神科の専門 医制度がいちばん遅れましたが、皆さん頑張っている。つまり、医師が専門医制度を確 立し、かなり多くなっているが、看護師の世界はまだまだ少ないというのは、どの辺に 問題があるのかということも考えなければならないです。   1つ考えられるのは、やはり現場を犠牲にするということと、取ったからと言って、 それがどのように反映するのかというところがもう1つ不明確。医師の場合、専門医制 度というのが、自分としてはかなりステータスになっている面もあるのかなという気が したり、ちょっとよくわからないのです。専門看護師というのをどのような切り口で論 ずればいいのか、それが看護の専門性を議論するときに、これしかないのかどうかとい うことも含めて、いろいろ問題があると思います。 ○山路座長 それでは、いま説明があった専門看護師、認定看護師という看護の専門性が、 具体的に現場でどのように機能しているのかということについて、現場からの説明をお 願いして、議論の参考にさせていただければと思います。北里大学病院とNTT東日本 病院の両部長さんから簡単に説明をお願いいたします。 ○小島委員 私どもがいま進めております実際の様子を紹介いたします。まず専門看護師 からお話しますが、いま菊池委員から紹介があった、日本看護協会の認定を受けた修士 卒のCNSで、がん専門看護師、リエゾンの精神看護師が、合わせて4名ほどおります。 どのようなことをしているかと言うと、がん患者に実際的に相談に乗ったり、ケアを一 緒に行ったりと、基本的にはそういった問題と教育的な関わり、それは看護職員がジレ ンマに非常に苦しみ、どのように患者に関わったらいいかわからないというときに関わ ったり、あるいは医療チームの中でチームの活動を調整したり、ナース及び患者からの さまざまな相談があるごとに対応する、あるいは研究を見てあげるといったようなこと を全体的に見ているわけです。要は、がんでしたら、がんの医療におけるチーム医療の 中での推進役をする、また、がんの患者やその家族が満足して医療が受けられるような 支援をするといったことになります。    いま述べたように、具体的には実践、相談、調整、教育、研究、その他ですが、も う1つ、調整の中には倫理的なさまざまなジレンマも出てきますので、倫理的な調整も 含めて行うということです。この活動は、現場のナースたちが苦しいジレンマに陥って いるところをサポートし合ったり、患者により良いケアを進めていくことができるとい ったような働きをいたします。   認定看護師ですが、私どもの所ではこれもすべて日本看護協会の認定を受けたもので すが、救急看護、重症集中ケア、WOC、がん性疼痛、感染管理、新生児の集中ケアと いったようなところで資格を取ってきた者が働いております。いずれも、専門看護師よ りももっと1人の患者、個に深く関わるため、ケアそのものに集中的に関わっていきま す。つまり、実践とコーディネーションと教育ということで関わっていくわけです。重 症集中の認定ナース等は、フィジカルアセスメントを具体的にどのようにするのか、で きたフィジカルアセスメントをどのように実際の看護につなげていき、いい看護を確実 にしていくのかといったようなことを押さえながら実践に深く関わっていきます。   先ほど質問にもあったように、本当に現場を犠牲にして、この専門の教育を推し測っ ていかなければいけないということは、確かに大きな問題です。私どもの場合は大学院 を学内に持っておりますので、そこで学びながらアルバイトをしたりして修士の資格を 取るわけですが、資格を取るための時間の担保をどのようにするかということは、1つ 大きい問題としてあろうかと思います。そのような専門の資格を取ってきたときに、ど のように配置するかということですが、これは中で取り決めをしまして、そのような学 習をしてきて取った資格は十分に活かしたいという考え方があるので、いちばん仕事が しやすい部署に配置する。協議会や連絡会を作ったりして、日々どのような活動を行い、 月間、年間のデータを出させていくわけです。それによって、管理者としては働きやす い場所に配置するような工夫をします。   相談できる専門的能力の高い人たちがいるということで、現場のナースたちから非常 に頼りにされているので、支え合うサポート体制としては非常に大きく影響しています し、ナースだけではなく、チーム医療の中の医師及びコメディカルにも、十分連携を取 り、理解しながら進めていくという感じになっておりますが、配置をどのようにするか ということも、非常に大きい管理上の問題ではないかと思います。   処遇等に関してですが、専門職としての処遇をするときには、本当は何らかの、例え ば専門性の高いことをしたら、診療報酬でこれぐらいのものが認められるといったよう なものは、たしか、がん看護のCNSが緩和ケアのところで1日250点だったかと思い ますが、そのようなことはありますが、必ずしも診療報酬ですべて認められているわけ ではありません。1人の患者に対して250点ですから、1日2,500円でしたでしょうか、 そのようなものはありますが、それはまだ非常に少ないことですし、診療報酬上にどの ように位置づけるかというのも大きな問題だと思います。まだ、さまざまな整備が見合 うようには行われていないというのが現状です。   先ほど青木委員が言われた、日本看護協会が専門を認めていくというのが基本的なス タンスで、非常に大事であるというのはおっしゃるとおりですが、その他に学会の認定、 つまり日本糖尿病学会の認定、日本生殖医療研究会の認定、日本不妊カウンセリング学 会の認定、日本心臓リハビリテーション学会の認定、あるいは外傷のTLSのインスト ラクター、内視鏡学会の認定などといった学会の認定を受け、その部署部署で学んでき たことを活かして取り組んでいる者もおります。   総じて言いますと、そのような専門看護師、認定看護師が随所にいるということは、 看護の質の向上には非常に大きく影響しますし、インシデント、アクシデントの防止に も非常に役に立つと思います。いま、その数を今日は持ち合わせておりませんが、そう いったこととナースたちがジレンマの中から明るい光を見い出しながら、重い責任を果 たしていくというところでは大きい役割をしているのではないかと考えております。 ○坂本委員 私どもの病院には、看護協会から資格をいただいた専門看護師が1名おりま す。これから取ろうとする者が3名おりまして、認定看護師と合わせて14名いるわけ ですが、専門看護師は私どもで出したわけではなく、がんセンターのほうから来た人で す。いろいろな書き物はあるのですが、最初はどのような仕事をするのかということが はっきりわかりませんでした。病院の中でどのように入り込めるのかというのは大変悩 んだわけですが、いま、基本的にはスムーズに動いておりまして、マトリックス的な動 きです。病棟や外来という部署でいろいろなことが起こってくるときに、彼女は依頼を 受け、飛んで行っていろいろなことをする。患者や家族が告知を受けて大変なパニック になっている状況があったときに、外来などでは外来の患者も見なくてはならず、ドク ターもナースもとても関われないとき、複雑なる状況があって簡単に終われないという 状況のときにはコンサルトして、ドクターからも大変信頼されて、彼女に依頼します。   もう1つは、がんの患者が多くなってきて、外来の混雑している中で初めてがんであ ると告知したとき、そのまま帰していいかどうか、病院の中では大変悩むわけです。彼 女の提案するものは、例えば皆で告知プログラムを作り、それに基づいてやるようにし ようとか、そのような介入をしてくれるので、具体的に、数値的にどうだというのは出 ていませんが、いままでやっている医療といままでやっている看護の形態を少し変えて マトリックスにやることによって、患者に大変喜ばれており、患者からそのような看護 師はいないのかと聞かれ、そのナースが飛んで行くといろいろな話をするというケース も出ております。   これから重症集中というのを育成したいと思っていて、まだ免許はいただいていない のですが、人工呼吸器の問題とか、ナースそれぞれに教育訓練をするのですが、まだま だバラバラなわけです。そのようなところに専門の看護師がいて、患者に人工呼吸器を 付けるときにはチェックしてみたり、チェックする方法を標準化してみたりといったこ とにおいては、私どもの病院では必要性を感じておりますので、早く重症集中の免許が もらえればいいなと、いまやっております。   認定看護師で1名だけ感染対策のナースが看護部付で動いており、彼女も全くマトリ ックスで、感染のサーベイをしたり、外科や内科の先生たちにデータを還元したりして、 どの程度感染率が上がっているか等を調べたりしています。WOCという名前が付いて いますが、褥瘡に対することも、外来で人工肛門をしたり、褥瘡の患者に特別に関わっ てやっております。これからどれだけ増えていくのがいいのか、北里大学でも問題にな っていた、どれだけのナースが必要なのかどうかということについては、まだちょっと わからないところもあります。   まず、1つ考えていることは、とにかく、1つの病棟に1名入れたいということです。 6カ月ということで出すところは勇気がいるのですが、帰ってきたときの還元さを考え れば、大変貢献しているということ。それに対するお金の処遇については、まだまだ未 熟であって、そのことに対して給料にいくら付けてあげるということはなかなかできな いといった問題があります。私が経験した中で、彼女たちが大変いいのは、5年間の更 新制なのです。いままで研修を受けたり、いろいろなことをすると、行ってきて一時的 には良かったが、持続することがなかなか無かったのです。5年更新制というのは、彼 女たちにとっても大変いろいろなことが課せられていまして、研究したり、教育したり ということをきちっとやっていくということが浸透しておりますので、そのような面で は、いまのところは効果があると評価しております。 ○金川委員 話の論点をどこに持って行けばいいのかちょっとわからないのですが、今日 は看護職員の専門性、その中でも専門性の高い看護師の養成云々ということですが、先 ほど青木委員、谷野委員から、専門性というのをどう考えるかという話もあって、確か に、看護としての専門性というのは何か、その基本条件は何かという前提が必要だと思 うのですが、そこの有様ばかり言っていても仕様がないのかなと思っております。いま、 ここで教育論云々ではないのですが、大学院教育のあり方に関しては、私どもの学生時 代とか若いときには、教育研究者の養成ということでしたが、最近は専門職大学院構想 も出て、法科大学院もあるように、やはり高度の専門職の養成を大学院の中で進めてい くという考え方が非常に出てきております。   現に、それに沿いながら、看護の場合の4年間の中でのジェネラリストではなく、2 年間なりの大学院の、特に高度専門職業人の養成という意味では、大学院教育というの は非常に大事ではないかと思っております。ただ、大学院だけでいいのかどうかという ことに関してはいろいろありますが、現時点では、先ほどから話があったように、現在 既に誕生して、看護界の中では看護協会、看護系大学、看護系の学会、確かにすべての 学会ではありません、医師の方々が言われる看護の専門学会が、すべて足腰が強いかと 言えば、私も関係している学会がありますので、学会の中で果たして認定ができる足腰 があるかどうかということに関しては問題はあると思っています。   現時点で考えられることは、看護協会、看護系大学、看護系大学協議会、看護系の学 会といった所の総意の中で、少なくともいまの制度に関してかなりの評価はいただいて いるということです。逆に言えば、その成果を見ながら専門性という面、専門性の条件 に合った形、大きく言えば国民の健康に寄与しているかどうか、そのあたりはきちんと 見て考えないといけないと思っております。 ○菊池委員 先ほど、まだ養成が少ないということと、その背景には、現場からはなかな か出せないからではないかという意見があったかと思うのですが、現場で実際に認定看 護師を受け入れている所は、小島、坂本両委員のお話にあったように、役割をきちんと 取ってくれているということでかなり評価されており、その医療機関全体の、その分野 のケアの質を上げるということに寄与しているのではないかと思います。そのような意 味で、例えば認定看護師などは職場から派遣されてくる人も結構いるのですが、人気の 分野については、例えばいま医療機関で感染対策とか褥瘡の対策など、どこでも取り組 んでおりますが、そのような分野については本会の学校の教育専門課程への応募率も4 倍、6倍と非常に高く、定員の関係で全員を入学させることができないのですが、応募 があります。   派遣をして出した医療機関の方からは、今後、この人に自分の所で活躍してほしいか ら、是非認定を取ってきてほしいということで応募させる、自分の所としては優秀な人 に取ってきてほしいということで応募させるが、なかなか試験が厳しくて入れない、も う少し養成を増やしてもらえないかといった要望もきております。いま人数が少ないと いう話でしたが、確かに、実習をやれる場所とか指導する人が限られているので、最初 の養成数は少ないのですが、養成機関がどんどん増えて、認定看護師、専門看護師も増 えてきているので、今後、養成も飛躍的に伸びていくのかなと思います。例えば認定看 護師などは、今後、1年間に400名ぐらい増えていくのではないかという見通しを持っ ております。 ○山路座長 さまざまなご意見をいただきましたが、いろいろと課題があって、ハードル をどうするのか、質を高めることともう少し量を増やすということと、なかなか両立し がたい問題があるので、その辺をどう整理するのかという論点が残っているだろうと思 います。もう1点、本日ご意見いただきたいのは、広告規制の緩和の問題です。これに ついては、いままでの説明を踏まえて、何かご意見をいただければと思うのですが、い かがでしょうか。看護師の専門性に関する事項を広告可能としてはどうか。そうした場 合、どのような基準を設定するのが妥当かといった観点からお願いいたします。 ○青木委員 広告の問題の前に、先ほどのことに少し触れたいのですが、私のいままでの 経験の中でも、喉頭全摘を受けた患者の発声、ストーマの分野で、認定、専門という言 葉が出てくる前の段階ですが、非常に優れた看護師が患者のいろいろな指導に当たり、 私としてもそのことは大変高く評価できるという経験をしてきておりますし、現在も感 染や褥瘡に関するチームの1人として、いわゆる部署を離れてフリーに活躍することの 素晴らしさ、成果と言いますか、そのようなものは自分の目で見てきております。私は このような考え方を否定するものではない。ただ、このような制度は国が仕切ってはい けないと強く思っております。  医師の制度の中で、麻酔の標榜医というのがありましたし、いまもあります。標榜医の 資格を取れば、麻酔の専門医に加算点数が付くというものであり、現在は麻酔専門医と か指導医という形になってきて、標榜医の色が薄くはなっておりますが、ここでは厚生 労働省が決めた例数と、保健所を通していろいろな資料を提出することで資格を取って いくという形でした。いわゆる官制の統制が取れるような形というのは、医療の場にお いてはふさわしくないと思っております。専門医においても、現在、専門医の腕が未熟 であって、医療事故で問題というケースが出ているのはご承知のことですが、まだその ような状況の中で、いわゆる民の団体が努力をしていくことが、それこそいまの政府が 考えていることではないかと、大筋としてはそのようなことを主張したいと思っており ます。   いまの広告の問題ですが、私はこの場で結論は出せないだろうと思います。現在、医 療部会でネガティブ・リストでいくのか、ポジティブ・リストでいくのかということに ついての議論がまだ決着していないと思いますので、看護の専門性と言え、医療という 法の中にあるのだろうと理解しますので、ここで具体的な形、例えば専門看護師とか認 定看護師という形で医療部会に上げることではないのではないかと思います。 ○平林委員 議論をどう考えていったらいいのかよくわからなくて発言しづらかったの ですが、広告の規制の問題、あるいは広告規制が緩和されていったという問題との関連 で言うと、医師の場合と看護師の場合とではだいぶ状況が違っているのだろうと思うの です。むしろ、まず医師の広告の規制が、なぜあのように緩和されていったのかという ところを明らかにしていく必要があるのではないかと思うのですが、その辺はどのよう な理由で緩和されたのか、どなたか教えていただければと思います。 ○山路座長 たぶん、いろいろな長い歴史があるのでしょうが、事務局から簡単に説明を お願いいたします。医師の広告規制の緩和の理由ということです。 ○平林委員 これは全く私の独断で、頭の中だけで考えたことなので実態とは違うのかも しれませんが、例えばこのように考えてはいけないのでしょうか。かつて、広告制限、 規制がかけられていたとき、現在のシステムの前に、医療法の中では、標榜科目は自由 に書いてよろしいとなっておりました。ですから、内科の先生でも、場合によっては外 科を広告の中に出してもいいということになっていたと思うのですが、そうすると表に 出ていることと内実とに食い違いがあって、それが医療の安全、国民あるいは患者に対 する情報提供というところで必ずしも十分ではないので、むしろ、広告に出すものと中 身をきちんと一致させるために、専門医というものを学会が認定をして、そのことにつ いては中身があるものとして広告を広げていったと、少なくとも客観的に見ると考えら れるのではないかと思うのですが、そのように考えては全くの間違いでしょうか。その 辺を教えていただきたいと思います。 ○青木委員 平林委員が言われたとおりに思っております。 ○平林委員 そうなると、看護の場合はそのような状況にはないわけです。専門看護師の 問題、これは広い意味の専門看護師で、日本看護協会が言う専門看護師、認定看護師と は別に、一般名詞としての専門看護師制度と専門医制度とは、かなり状況が違っている のだろうと思うのです。と申しますのは、医療の場合は、医療そのものが専門分化して おりますので、医者そのものがある意味では専門医であると思うのです。もちろんジェ ネラリストもいますが、ジェネラリストもジェネラルプラクテショナーとしての1つの 専門医といった認識もあるわけですから、全体として、医師の世界では、医療そのもの が専門分化していると言えると思います。   ただ、看護の場合はもともとそのような状況にはなくて、看護はおそらく全部を1人 でいろいろな病棟を渡りながら、すべての科目について看護を担っていったと。看護そ のものについては、その疾病がどうであろうと、その人がどうであろうと、従前の医療 の中ではそれほど意味を持たなくて、患者に対してどのような看護をしていくのかとい うことで済んでいた時代がかつてはあったと思うのです。それが医療の進歩と同時に、 それに対応する看護そのものも、それぞれ対応していかなければならないという状況が 出てきて、改めて、看護の中でもそれぞれ専門を持つ看護師というものを養成していく 必要性が出てきたのだろうと、これも私が勝手に思っているのです。   そのような状況の中では、ある意味看護の専門性というのは、もともと看護が専門職 であるかとか、看護の専門性とは何かという議論とは別に、現実問題としての専門分野 あるいは専門分化、スペシャライゼーションという意味での専門分化というのは、医師 の場面と看護の場面とでは少し違っているのではないか。むしろ、看護の場面は少し意 図的に専門分化をさせていかなければならないという考慮が働いているのだろうと思 うのです。そうすると、それは広告の規制を緩和するかどうか、もともと看護について の広告は現在ではそれほど明確にはなっていないわけですから、先ほどの医師の標榜科 目の問題は生じないわけで、むしろ実態の問題として、看護の専門分化をどう構築して いくかということになるのだろうと思っているのです。そのような意味で、日本看護協 会が専門看護師と認定看護師といった形で分けて、おそらく専門看護師は大学院レベル の、アメリカのアドバンスナースといったところをモデルにしながら、看護師の看護師、 看護師を全体として教育していく、より高度な看護師像というものをそこに想定したの だと思うのです。   いま我々が問題としている専門分化というのは、看護協会の言う専門看護師というよ りは、看護協会の枠組みで言うところの認定看護師のほうではないかなと思うのです。 むしろ、現場で働いている、いろいろなセクションで働いている看護師が、それぞれど のような現場での看護の専門性を高めていき、医師とともに車の両輪となって、患者の ために何ができるのかという枠組みの中で、これもややこしいのですが看護協会の枠組 みで言うところの認定看護師としての専門看護師と言うのがより正確なのかもしれま せんが、そのような問題として、いま看護の専門性というものが問題になってきている のではないかと考えております。   同時に、先ほど石渡委員から問題提起されたことにも関連するのかもしれませんが、 保助看という3つの看護の職種があるわけですが、看護師というものをベースに置けば、 保健師や助産師というものも、ある意味では専門看護師と捉えることができないわけで もないわけで、保助看の関係をどのように捉えていくのかということも、実は専門看護 師の問題の中には根本的な問題として含まれているのだろうと思うのです。それは、ま さに保助看法をどのように改正し、どう構築していくかという根本問題に関わってきま すので、おそらく、皆さん触れたくはないだろうとは思いますが、それを避けてはこの 問題は通ることはできないと思いますので、いまの点についても、少し問題点の指摘を させていただきたいと思います。 ○谷野委員 平林委員の話と関係して、もっと現実的なことを言いますと、私のこの認識 でいいのでしょうか。いまの保助看法では、産科専門看護師、精神科専門看護師と名乗 ることは、たぶん違法になるのです。広告規制とか何とかまで触れると、その辺まで踏 み込まないといけないのかどうか。よくわからないのは、医師の場合は麻酔専門医とか 何とか、名刺にそれを入れるということがOKなのかどうかです。例えばよく見られる のは、神経内科認定専門医というのは横に書いてありますが、医師の場合はその辺が医 師法との関係でどうなるのか。いま専門医制度では、名乗ることは問題ないとすれば、 看護師だけが専門看護師と名乗ることは違法ですね。その辺をどのように考えたらいい のですか。 ○菊池委員 法律のことではないのですが、日本看護協会では専門看護師と認定看護師を 商標登録しており、日本看護協会が認定した人たちにだけその名称を付けるということ でご理解いただくようにしております。 ○平林委員 そのように名乗ったり、例えば名刺に書いてしまうことは法的に許されるの ですか。 ○鎌田看護職員確保対策官 名称制限の議論があったかと思うのですが、いまは法的に制 限することはなかなか難しいのかなと。後で説明しますが、まとめの議論の中で決まる のですが、この検討会の結果、仮に名称制限という制度を導入すれば、紛らわしい名称 という形で1つ検討の対象となって、専門看護師という考え方は紛らわしい名称かどう かという議論はあるのですが、どのような意味があるのかということが議論されていく のかなと思います。つまり、中に名称制限の規定がないので、それだけをもって法的に 駄目だということはできないと思っております。 ○坂本委員 例えば認定看護師が受からないときに、自分の病院で、院内だけで、その人 を早く育てたいために、あなたは専門ですよということを付けている所もあるのです。 実際、私どももまだ取れていないときには、看護部付にしてその人に取らせた。外に向 けて専門看護師が1人いるとか、そのようなことはなかなか言えないのですが、院内で は自分たちで勝手に付けて動いている所もあるわけですから、別に名前は制限されてい ないような気がしていたのです。ただ、外へ向かって出すときは、「看護協会の」と言 わなければいけないわけです。 ○山路座長 煩瑣な議論になりかねないところもありますので、ちょっと整理をしていた だきたいと思います。石渡委員、お願いいたします。 ○石渡委員 スペシャリストとエキスパートの所ですが、初めの教育及び認定システムの 中で、「日本国の保健師、助産師、看護師のいずれかの免許を有すること」と書いてあ りますが、この前も議論になったように、助産師で看護師の資格を持っていない方、こ のような方も対象になるのでしょうか。 ○菊池委員 そうなります。実質的にはおりませんが、そのまま解釈するとそのようなこ とになります。 ○石渡委員 そうすると、助産師の資格を持って看護師の資格のない方も、例えば重症集 中ケアであるとか、このようなことも可能になってくるわけでしょうか。 ○菊池委員 このまま解釈するとそのようになりますが、実際にはそのような方はほとん ど、特に助産師の場合は1年に数名の話ですので、実質的にはそのような人はおりませ ん。今後もそんなにいないのではないかと思います。 ○石渡委員 例外的にあってはまずいのではないかと思いますが。 ○山路座長 この前の話では、現行の法的には可能だということでしたが、実際にはまず いのではないかという話で、今度のまとめで、その辺のところを改めて整理しようとい うことです。 ○遠藤委員 先ほど平林委員が言われた、医師の場合、標榜科と実態とが違っていると問 題になるということについて、青木委員もそのとおりだと言われていましたが、看護の 場合も、例えば私が関係している認定看護師の教育では不妊看護という領域があります。 例えば、いま600弱のアート、いわゆる生殖補助医療をしている診療所が標榜しており ますが、利用者が、不妊の認定看護師という制度があると聞いたが、そのような看護師 はいるかという質問が最近ときどき入ってきます。そのように、この検討そのものが医 療安全の観点からとか、消費者にとってということであれば、認定看護師、医師の世界 で言うと本当に専門看護師というレベルだろうと思いますが、つまり、実践を最も優先 しながら、その中で教育や指導の調整をするという役割がそれですので、そのような人 がその施設にいるのか、いないのかということは、私は標榜していいのではないかと思 います。   名称のことはどのように決着をつけるかは来年度の名称独占のところできちんと整 理すればいい話であって、現に千何人も出ていて、それが消費者に対して成果が上がっ ているという事実は間違いないので、そのような意味では看護の中にも同じようなスタ ンスで広告規制緩和していいのではないかという立場でおります。 ○山路座長 患者・国民にとって、そのほうがプラスになるのではないかということです ね。 ○小島委員 いま遠藤委員が言われたことで、がんの患者が外来で受診したり、入院中に 告知をされたりと非常に厳しい状況に立ち至られたとき、私どもはCNSというがんの 専門看護師がいるので、何か相談があればご相談下さいと、病院の中で使っている小さ なパンフレット、あるいは総合相談部にそのような人もいて相談に応ずることもできま すといったことを掲示しておく。困っている患者が行く。医師の説明は大変専門的で難 しいが、もう少し噛み砕いた形で、不安な状況を専門的に聞いてもらい落ち着く。とこ ろが、専門看護師の存在そのものを全然知らないし、ナースはみんな似たようなユニフ ォームを着て働いているということで、そのような人がいることを全然知らないと言わ れ、パンフレット等で紹介したところ1日に1人とか、是非聞いてほしいということで 訪れる。つまり、専門に応ずる能力を持ったナースがいることを、何らかの形で患者の ニーズに対してリリースしておくことは大事ではないかということを、実際の場面で感 じております。 ○菊池委員 同様の意見ですが、医療提供体制の改革ビジョンの患者の視点の尊重の中に も、医療機関情報提供という部分で患者が情報を持ち、選べるようにといったことが方 向性として言われています。その1つとして、専門看護師、認定看護師も患者に対する 情報提供ということで、広告規制を緩和する時期ではないかと思います。 ○山路座長 そろそろ時間ですが、どうしても言い足りないことがあればお願いいたしま す。 ○谷野委員 事務局に是非調べておいてほしいのは、私の読んだ本に、何とか専門看護師 というのはまずい、ということが書いてある本が何冊かあったので、そこさえクリアで きれば、先ほどから話があるように、うちの病院にはこのような専門看護師がいるとい うことで、専門看護師はどんどん情報公開したほうがいい。この次までちょっと調べて おいてほしいのです。 ○田村看護課長 どのような本を読まれたのですか。私もわからないものですから、ちょ っと教えていただければと思います。 ○山路座長 具体的にわかれば、後で事務局にお伝えください。 ○青木委員 看護課から答をいただければと思うのですが、いまの専門、認定という専門 性に関する認識というのは、それほど違いはないと思うのです。今度、それを法的に定 めていくときに、直接厚生労働省の省令なり、その前の法なりで専門看護師、認定看護 師という規定の仕方をするのか。そうではなくて、現在の学会専門医と同じような専門 の団体を認定することによって、そこが専門性の高いというものを定めていくのか、ど ちらの方向を考えていますか。 ○田村看護課長 いまのところでは、法律であるとか政令、省令でそのようなことを定め るということは考えておりません。これまで看護協会や看護系の大学の先生方、学会の 先生方が築き上げてこられたこの仕組みなり、あるいはそこで使われている言葉なりを、 うまく一般的な表現にして活用できればいいのではないかと思っているところですが、 そのような答でよろしいでしょうか。 ○青木委員 ありがとうございます。 ○平林委員 先ほど申し上げたことで1つ言い忘れたのですが、看護の場合はある程度専 門分化を自分たちでしていかなければならないという側面がある。そうすると、その背 景にある教育、カリキュラム、6カ月600時間という教育内容そのものを、誰がどのよ うにチェックしていくのかということは、やはりどこかできちんと議論しておくべきだ ろうと思います。それがきちんとできた後で広告することは、私も反対するものではな いのですが、時期が十分熟しているかどうかということはきちんと議論していったほう がいいと思います。私は専門分化することに賛成ですが、そこはきちんとやっていくべ きだろうと思います。 ○山路座長 評価とハードルの設け方について、どこまで妥当性があるのかどうかという ことをもう少し議論すべきではないかということになると、また改めて議論が必要だろ うと思います。残念ながら、本日はこの程度で意見を打ち切らせていただきたいと思い ます。次回以降のことと、前回の検討会での主な意見について、改めて事務局にまとめ てもらいましたので、簡単にその説明をお願いいたします。 ○鎌田看護職員確保対策官 資料10は、前回の検討会において「看護記録」について出 された意見です。時間もないので主だった意見をピックアップして申し上げますと、看 護記録を法律に位置づける必要性、意義については、いちばん上にあるように、最初の ○の2行目以降、医療、看護の継続性を図ること、診療情報を医療従事者と患者との間 で共有すること、看護の内容を評価する指標として法的に整備していくことが重要であ る、といった意見をいただき、3番目の○の2行目以降ですが、専門職として自らを確 立していくことにつながっていくので、専門職としての看護師は、医師や薬剤師と同様 にきちんと記録を書き、それを後で評価していくことに意味がある、といった必要性な り意義についての発言がありました。2頁目の2番目の○ですが、いま診療に関する諸 記録もありますが、当然看護記録も入っている。チーム医療が行われる現状においては、 法制化するのであれば、他のコメディカルの記録も法制化しなければならないのではな いかという指摘もいただきました。    法制化した場合の課題としては、そうしたコメディカルの記録の他に、最初の○で すが、医師法における診療記録事項は、非常に大まかになっているが、看護記録の様式 は病院によって異なるので、書くべき内容についてはある程度統一したもので合意でき るのではないか、2番目の○ですが、要領よく、必要なことを書くということが必要で ある。内容を指導することがいちばん大事で、それで法制化による効果というものが期 待できる、といった指摘がありました。   3頁の2番目の○ですが、患者にとってはもっと看護師にそばにいて欲しい、話を聴 いてほしいなどのニーズがあるので、ベッドサイドに行くよりも書くことを重視すると いう現状が合うのかどうか疑問である、看護記録に時間がとられ過ぎているのではない かということが問題になっているので、いかに簡潔に書くか、また、基礎教育や新人研 修での充実が重要ではないか、といった指摘もいただきました。   現在書かれている実態は、入院の看護記録が中心であるということがあったので、外 来あるいは病院以外の施設においての看護記録についての議論となり、最初の○にある ように、外来の記録、その他の施設の記録がどのような状態かということが把握されて いないので、法制化ということを考える場合には、その辺の把握が必要だろう、という 指摘をいただきました。   一方、外来の記録が重要なので、患者の言ったことを看護師が聞いていたにもかかわ らず、情報として記録に残っていないために、責任がわからないという問題があるので、 保健指導も含めて外来記録も看護師がかかわったケアをしたことを記録してないと、看 護師が何をやったかわからない、という指摘をいただきました。4頁の3番目の○です が、仮にそれを保健師助産師看護師法という行法を身分法で書き込むとすれば、入院部 門は看護記録を書くが、外来は書かないという話にはならないのではないか。その下の ○で、社会福祉施設等の看護記録がどのようになっているかわからないので、これを機 会に調査する必要があるのではないか、という指摘をいただきました。抜粋した例です が、このような意見があったことをご報告いたします。 ○山路座長 本検討会が最初に挙げていただいた検討内容について、不十分な形ではあり ますがひととおり議論いただいたわけです。これからの進め方をどうするのか、私と事 務局で相談をさせていただきましたので、事務局から説明をお願いいたします。 ○鎌田看護職員確保対策官 いま座長からありましたように、当初予定されていた項目に ついての個別の議論は、今日でひととおり終わったということになります。以後、これ までの議論を踏まえたさらなる議論、取りまとめをお願いするわけですが、ご案内のよ うに、この検討会の報告については、社会保障審議会医療部会に報告ということになっ ております。その医療部会の日程を考えますと、いまのところ11月の下旬には医療部 会に報告することが求められているところです。次回以降、できれば取りまとめの議論 をお願いし、座長にご相談ですが、11月下旬までに3回ほどご議論いただけないかと考 えております。次回の第12回にこれまでの議論を踏まえて、まとめた形での報告案の 骨子というものを我々から報告させていただき、骨子の段階で方向性が一致するもの、 しないものという部分で整理していただきたいと思います。その上で残りの2回にわた って、我々から報告書の原案を出しますので、さらにそこで議論していただきたいと考 えているわけです。 ○山路座長 事務局からいま説明がありましたように、全体的な骨子案については次回や ると。もちろん次回もそうですが、次々回以降2回に分けて、それを受けての検討をす るという提案です。あと3回ということですが、皆様方お忙しいでしょうし、3回もや りたくないという方もいらっしゃるかもしれませんので、できれば2回で済ませられれ ばと思っていますが、3回という予定でやらせていただければと思います。いかがでし ょうか。 ○石渡委員 産科における看護師の業務というところは、非常に重要な部門だと思ってお ります。特に、この前の検討会以降も、産科医療機関がかなり減少しているということ もありますし、一方、助産所での分娩というものも、今後ある程度重要視されていくの ではないかということを踏まえていくと、その2点について、中間まとめの中で少し時 間を割いていただければと思っております。 ○青木委員 私も同じ希望を持っております。 ○山路座長 それでは今後3回の中で、いまのご意見も含めて可能な限り議論させていた だくということでご了解をお願いしたいと思います。次回の日程の確認を事務局からお 願いいたします。 ○事務局 第12回は10月28日(金)午後3〜5時、場所は17階の専用18〜20の会議 室において行いますので、よろしくお願いいたします。 ○山路座長 本日は閉会とさせていただきます。どうもご苦労様でした。 照会先 医政局看護課 課長補佐 岩澤 03-5253-1111(2599) 1