05/10/17 第2回 労働に関するCSR推進研究会 議事録            第2回 労働に関するCSR推進研究会                     日時 平成17年10月17日(月)                        15:30〜                     場所 厚生労働省共用第8会議室 ○奥山座長  ただいまより、第2回労働に関するCSR推進研究会を開催いたします。議題に入り ます前に、第1回研究会の開催後、事務局のほうに人事異動があったということですの で、事務局からご挨拶をお願いします。 ○参事官(労働政策担当)  山田でございます。よろしくお願いします。 ○室長補佐(労働政策担当参事官室)  補佐をしております小堀でございます。いろいろ至らない点があるかと思いますが、 よろしくお願いいたします。 ○奥山座長  よろしくお願いいたします。  それでは、本日の議題に入ります。皆さんまだご記憶にあると思いますが、今回の研 究会では自主点検用チェックの指標の具体的な検討に入るということで、この前、皆さ んからいろいろご意見を承ったものを少しまとめていただいて、事務局に自主点検用チ ェック指標の案を作成していただき、それをたたき台にして皆さんのご意見を承る予定 をしておりましたが、実際に事務局にたたき台の作成に向けて内部でご議論いただいた ところ、やはりもう少し研究会の委員の皆さんにご議論いただいて明確にしたい部分、 論点等があるやに伺っておりますので、その辺りの状況について事務局からあらかじめ ご説明いただいた上で議事に入りたいと思います。 ○室長補佐  座長からもお話がありましたとおり、前回8月25日に開催された第1回研究会におき ましては、第2回で自主点検用チェック指標の具体的検討の(1)として、事務局の方か らたたき台という形で自主点検チェック指標の案を提出し、これを基にたたいていただ く形でご議論いただくこととされていました。前回の研究会終了後、事務局の方でたた き台を作成すべく、その前提として、事務局で指標の項目についてCSRに関する他の 規格やガイドラインも参考にしつつ検討を始めたわけですが、労働CSRについては、 例えば、項目や各項目ごとの具体的内容等について、必ずしも相場観のようなものが形 成されていないと考えられるに至ったところです。そうしたこともありましたので、第 1回研究会の議論や、この研究会を設ける契機となった「労働におけるCSRの在り方 に関する研究会」、これは昨年6月に報告が出たものですが、こういったものの議論も 振り返ってみましたが、CSRの施策全体についてはともかく、自主点検用のチェック 指標の項目、あるいは情報開示項目の在り方といったところに関しては、必ずしも御議 論がなされてこなかったのではないかと考えております。  一方で、自主点検用チェック指標の項目の在り方というのは、自主点検用チェック指 標自体の性格をどのように考えるかという問題、もう1つの検討課題である情報開示項 目についても同様ですが、こういったものをどのように考えるかという問題とも関連す る本質的な問題で、おそらくいろいろな在り方、選択肢が考えられるのではないかと思 っております。そうしますと、この点について具体的な議論をしないまま、事務局でた たき台をお示ししてしまうことは、むしろチェック指標等の検討範囲を狭めてしまうこ とになるのではないかという考えに至りました。さらには、先ほど申し上げた「労働に おけるCSRのあり方に関する研究会」に引き続きご参加いただいている委員もおられ ますが、そうでない方もおられるという事情もございます。  こうしたことから、事務局としましては、本日の研究会においては自主点検用チェッ ク指標のたたき台をお示しする形をとるよりも、むしろさまざまな指標の実例をお示し しつつ、自主点検用チェック指標の関係、ひいては情報開示項目も対象になってくるか と思いますが、そういったものをどうするかという観点を念頭に置きつつ、在り方につ いてフリートーキング的に、ざっくばらんに意見交換していただき、その議論を踏まえ て、今後の研究会を進める形にさせていただければと考えているところです。よろしく お願いいたします。 ○奥山座長  どうもありがとうございました。そのように本日は進めてまいります。あとで皆様か らの自由なご意見を承りたいと思っております。そのための材料ですが、今日はかなり たくさんの資料が出ておりますので、資料の中身、種類等も含めて事務局からご説明い ただいた上で、フリートーキングに入りたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○室長補佐  やや厚めの資料になっておりますが、先ほど申し上げた観点から資料を用意させてい ただきました。具体的にはすべてではありませんが、我々が内部で検討したときに主に 参照したものを資料1の「参考資料」の形で提出させていただいたほか、資料2として 第1回の研究会の際にお出しした論点を再度提出させていただいております。  資料1で取り上げているのは、OECDの「多国籍企業行動指針」、コー円卓会議の 「企業行動指針」、国連の「グローバル・コンパクト」、GRIの「持続可能性報告書 ガイドライン」、日本経団連の「企業行動憲章」とその「実行の手引き」、「CSRの 推進ツール」、経済同友会の「企業評価基準」、労働関係が一部含まれているというこ とで、環境省の最新の「環境報告書のガイドライン(2003年度版)」を付けておりま す。  まず、OECDの「多国籍企業行動指針」です。これは、1頁にありますとおりOE CDが作成したもので、最新は2000年に改定されたものです。内容としては、企業 行動の原則、いわば行動規範に関するガイドラインです。背景としては、多国籍企業に よる貿易や投資が自由化されている、あるいは経済がグローバル化されていることに対 する市民社会からの懸念が高まる中で、その懸念に応えるために多国籍企業に求められ る行動規範をガイドラインとして作成したものという位置づけになっています。加盟国 政府の多国籍企業に対する勧告ということで、法令遵守など責任ある企業行動に関する 企業の自主原則及び標準を提示しております。したがって、法的な拘束力はなく、採用 は企業の自主性に任せています。また、OECDの方で特に検証等を行っているわけで はないということです。  第一義的には多国籍企業を名宛人としていますが、国内企業に対してもこの行動指針 に即した行動を期待すると書かれていまして、国内企業も同じように射程に置いたもの と捉えることができるのではないかと考えております。  具体的には、中身がやや重複しますので、詳細な説明は省略しますが、いま申し上げ た原則・定義が4頁以下にあります。5頁に一般方針があります。この中で、1では、 持続可能な開発を達成することを目的として、経済面、社会面及び環境面の発展に貢献 する。2では企業の活動によって影響を受ける人々の人権を尊重する。4では、人的資 本の形成、特に雇用機会の創出と従業員のための訓練機会の増進。5では、労働関係の みに限定されたものではありませんが、安全や労働による奨励またはその他の事項に関 する法令、または規則の枠組みにおいて意図されていない免除の要求及び受諾を回避す る。6では、良きコーポレート・ガバナンス原則を支持し、または維持する。8では、 訓練計画を含めた適切な普及方法、あるいは会社の方針について従業員の通暁と遵守を 促進する。9では、コンプライアンスの関係ですが、法律や行動指針に反するものにあ っては、内部通報で所管官庁に通報を行った者を差別的、懲戒的行動を取ることを慎 む。10では、下請企業と取引先の関係について、それぞれ書かれているところです。  IIIも通則的事項ですが、情報開示について書かれています。詳細については省略し ますが、例えば4のf)にある、「従業員その他当該企業の参画者に関する重要な問題 」や、5のa)、b)、c)の辺りで労働関係のものがかなり出てくる状況です。おそ らく、こういった一般通則的なところを今度のチェック指標なり情報開示項目なりの中 でどのように取り扱っていくかというのも、1つの大きな論点なのではないかと思って おります。  ここから先、7頁からは、前回第1回の研究会に提出した資料と共通の部分ですが、 雇用及び労使関係です。7頁の1のb)、c)で、児童労働や強制労働が、d)では差 別的取扱いの関係等が出てきており、かなり人権的な要素の部分があります。  2は、協議、情報提供の関係です。3で出てくるのは、先ほどは雇用関係の情報につ いてでしたが、ここは企業情報全体ということで、法律的な言い方で申しますと労使協 議制に近いニュアンスの部分かと考えております。  4は、雇用及び労使関係の基準より低くない基準を遵守する、あるいは安全衛生の関 係で、まさしく法令遵守のニュアンスの部分です。  5は、多国籍企業の関係なので、現地の人間を雇用し訓練するということで、そうい ったことも含めて職業能力開発の関係について触れています。  6は、企業組織が変わるときを想定し、解雇やレイオフといったものが最後の手段で あること、関係者に対する予告をするように等の記述があるところです。  OECDの関係は以上で、引続きコー円卓会議の「企業行動計画」についてご説明し ます。これは、既にご案内かもしれませんが、日米欧の民間企業の経営者が共同で策定 した企業行動指針です。企業が社会の信頼を獲得し、建設的な役割を果たすとともに、 さまざまな経済摩擦を解決するために、ルール、システムづくり、政策提言もさること ながら、まず企業が自らの行動を律することが基本という認識の下に作成されたものと 承知をしております。性格としては、あらゆる企業が参考にすることができるガイドラ インということで、法的拘束力はなく、採用は企業の自主性に任されています。また、 これについてもコー円卓会議のほうで特に検証を行うことはないと聞いております。  中身を見ますと、経営者の責任という形で整理をされているところもあり、かなり抽 象的な内容となっております。労働関係のところでは、前文や一般原則の所には先ほど 申し上げたものと共通の部分がありますが、13頁では、こういった形で、かなり抽象的 な内容になっております。具体的には、仕事と報酬の提供の関係が・1、健康と品格を 保つことができる職場環境の提供が・2、労使コミュニケーション、提案やアイデアの 吸い上げ、対立が生じたときに誠実に交渉する、その下には差別的取扱い・処遇と機会 均等の保証があります。さらには障害者雇用、労働災害の防止の関係、職業能力開発の 関係、失業問題への注意と混乱の回避の関係です。項目的にはかなりOECDと共通す る部分があるわけですが、こちらは先ほど申し上げたような性格から、訓示規定と言う と言いすぎかもしれませんが、相当抽象的な形になっているという点で際立っているの ではないかと思っております。  14頁は、「グローバル・コンパクト」の関係です。ここにも書いておりますが、こち らも、同じく企業行動原則です。中身としては、世界人権宣言やILOの基本原則等々 普遍的な10原則から構成されていまして、各企業がそれぞれの活動領域において、これ に基づいて行動するように求めているものです。具体的に申しますと、これはグローバ ル・コンパクトのパンフレットから取ったものですが、17頁のとおり10の原則からなっ ており、労働関係は「以下のとおり」の2番目のカテゴリーで4項目ほど挙げておりま す。団結権・団体交渉権の保障、強制労働の排除、児童労働の実効的廃止、そして差別 撤廃の4原則を盛り込んでおります。いずれにしても法的に禁止される性格の内容で、 基本的に重要な人権といった色彩が強い項目と整理できるのではないかと思います。  以上のものについては、いずれも企業のシステム、体制の整備に関する事項が盛り込 まれていないという点で、先ほどのものと異なっている点があろうかと思います。ちな みに、グローバル・コンパクトについては、17頁の下のほうにありますとおり、GC (グローバル・コンパクト)に参加して企業がとるべき行動を3点ほど挙げています。 企業戦略、企業文化、日常業務の中に取り込んで、良い企業経営に役立てること、広報 資料や講演会といったコミュニケーション手段を通じて、グローバル・コンパクトに参 加していること及びその原則を積極的にPRすること、年次報告やそれらに準ずる報告 書、社会報告書等がこれに当たるのではないかと思いますが、その中でグローバル・コ ンパクトを支持する上で実行したことを発表することです。こういったことをやるとい う前提で、18頁「参加の手順」のところですが、事務局長宛にその原則を支持すること を表明する書簡を送ると、これに参加したことになるという仕立てになっています。  次は19頁のGRIの「持続可能性報告書ガイドライン」です。これは、グローバル・ リポーティング・イニシアティブが作成したもので、2002年に改定したものが最新と聞 いております。内容としては、企業が事業、製品、サービスに関する情報を公開する際 に、自主的に活用できる報告書の作成のためのガイドラインということです。中身とし ては、環境的側面だけでなく社会的側面、経済的側面も含めた3つの要素、「トリプル ボトムライン」と称しているものですが、これを報告することになっております。これ に応じた報告書の指標がガイドラインの形で示されているところです。このガイドライ ンについても法的拘束力はなく、使用は企業の自主性に任されています。認証・検証に ついては、GRI自体では実施しておりませんが、第三者の独立した機関による保証、 保証機関が用いる保証プロセスの基準、ガイドラインの開発などを推奨していると聞い ております。  具体的な中身ですが、24頁にあるのがガイドライン2002年版の全体の作りを示した表 です。この中では、特に社会の部分で、人権、社会・製品責任と並んで労働慣行及び公 正な労働条件が掲げられています。また、人権の中にもいくつか関係するものが入って いる状況です。  もう少し具体的にご説明しますと、27頁「労働慣行と公正な労働条件」のところをお 開き下さい。指標は必須指標と任意指標に分けられており、雇用のところでは、労働力 の内訳、労働/労使関係では労働組合等によってカバーされている従業員の割合や組織 変更の際の情報提供といったものが掲げられています。あるいは、安全衛生ということ で労働災害の関係、教育研修では職業能力開発の関係、機会均等と管理職の状況等々ま で含まれているところです。  次頁は、人権関係の指標です。28頁のHR1のところで、人権問題に関する全側面の 関係、以下、差別撤廃、組合結成の自由、児童労働の廃止、強制労働・義務労働の撤廃 に対する方針等々が掲げられています。これらをご覧いただけばわかりますとおり、そ れぞれ項目が細かくなっていることが1点、それから27頁を見るとわかりやすいかと思 いますが、労働災害の辺りを見ると、単に労働災害の記録・通知の慣行だけではなく、 公式の合同安全衛生委員会の記述があり、さらには、右側の欄では労働安全衛生マネジ メントシステムの関係等々についても掲げられています。全体として見ますと、必須指 標・任意指標として、方針、プログラム、手順、監視システムといったものも含めて全 体がカバーされている形になっています。また、現状の公表も併せて指標化されている ところです。こういった意味で、いままでご説明したものとは随分と性格が異なってい ます。  次は30頁、日本経団連の「企業行動憲章」です。これは2004年に改定されたものが最 新と承知しております。企業不祥事の多発といった状況を受けて、社会的常識からかけ 離れた企業行動を見直し、自己規律の強化を会員に求めるべく策定されたと聞いており ます。作りとしては、会員企業が企業行動憲章の精神を自主的に実践していく上で、必 要と思われる項目を例示しています。その上で、それぞれの業態、特徴等を踏まえ、こ れらの項目を参考に具体的な行動の在り方を工夫するように期待する形になっておりま す。  実は、企業行動憲章と、この下にもう1つ「企業行動憲章実行の手引き」というもの が作られておりまして、この資料では一緒に添付していますが、この2つをワンセット にして作られているということかと思います。具体的なところですが、32頁が企業行動 憲章の本体です。これだけ見ますと、直接労働関係に触れているところは、おそらく4 番だけになるかと思います。書きぶりもかなり抽象的、訓示的になっております。しか しながら、33頁以降が実行の手引きを抜粋したものですが、4番のところに限らずいろ いろなところで労働関係について詳細に触れられています。  これをかいつまんでご説明しますと、33頁の3番のコミュニケーションのところで も、ステークホルダーの一環として(3)で従業員が出てきています。その上で、(4 )でステークホルダーとの双方向のコミュニケーションの重要性を指摘しています。35 頁の中程の「具体的アクション・プランの例」のところですが、社会的側面についても できる限り数値化した経年データを掲載する、必要な場合にはネガティブな情報もきち んと発信しましょうということが書かれています。コミュニケーションの関係では、36 頁にもステークホルダーとの対話集会の開催や、インターネットを使ってもいいのでは ないかということが書かれており、いずれにしても、双方向のコミュニケーションがだ いぶ強調されているところです。  37頁は、先ほど直接労働関係と申し上げた4番の関係です。眼目としては、従業員の 多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊 かさを実現するということで、下の「背景」の部分の言葉を使うと、「人間尊重の経営 」という形で書かれているところではないかと思っております。具体的にご説明する と、38頁ですが、多様な人材が個々の能力を十分に発揮できる人事処遇制度を構築す る、と書かれており、多様な人材の尊重と活用、多様な雇用・就労形態の選択肢の提 供、納得性・公正性に根ざした人事処遇制度の構築が「基本的な心構え・姿勢」という ことで挙げられています。その上で、「具体的アクション・プランの例」のところにあ るとおり、従来型の正社員に止まらない形で、多様な雇用形態の従業員の能力を、従来 以上に積極的に活用する、そういった多様な勤務、就労形態を開発、導入するというこ とが具体的に書かれています。  4−2は、差別禁止、機会均等の関係です。ここでの「具体的アクション・プランの 例」を見ますと、差別的取扱いの排除ということで、均等待遇原則の徹底やセクシャル ハラスメント防止の関係、また、男女共同参画社会の実現ということで両立支援のため の諸制度の整備、ポジティブアクションの実施といったものが挙げられております。先 ほどの4−1と見比べて際立つところは、こちらは、法令の遵守に近い性格のものにな っているのに対し、前のところは人事労務管理をどういう方向に持っていったらいいか という、かなり質の違う部分も併記されていることが分かるかと思います。  40頁は、安全衛生の関係です。これについては、まさしく労働安全衛生法等で行われ ているところに近いと思いますが、安全衛生活動の関係、安全衛生教育の関係、労働安 全衛生マネジメントシステムの関係、さらには労働衛生対策の関係ということで、いわ ゆる3管理の関係等に触れているところです。41頁は、キャリア形成・能力開発の関係 です。多様な研修・能力開発機会の提供、キャリア・カウンセリング・システムの整備 ・充実、インターンシップの促進等が記載されているところです。  42頁は、従業員と直接あるいは従業員の代表と誠実に対話、協議するということで、 協議の関係です。(1)は、労働関係法令の遵守と建設的な協議・交渉の実践が打ち出 されています。その上で、(2)で誠実対応の実践、(3)で情報の共有化の推進と信 頼感の醸成が記述されているところです。43頁は、児童労働、強制労働の禁止です。  以上が労働関係について直接にかかわる4の部分の関係です。これ以降に関しても労 働関係のものがパラパラと出てきます。44頁からでは、積極的に社会貢献活動を行うと いうものがありますが、その中で47頁では、ボランティア休暇について触れたりして おります。  もう1点が49頁の8番ですが、国際的な事業活動においては、国際ルールや現地の法 律の遵守等が重要ということで、これについては第1回の研究会でも論点として取り上 げられていたと思います。こちらでも、同様の観点から触れられています。50頁では、 現地の法律の遵守、経営理念や行動規範の海外支店・現地法人に対する徹底や、本社に よるチェックシステム確立といったことが書かれています。  51頁(4)では、事業進出・撤退時、特に撤退時ですが、従業員への影響が最小とな るよう事業継続の可能性を検討するというくだりがあります。  56頁から先は、企業内の体制整備の観点からの記述です。9ですが、経営トップが憲 章の精神の実現が自らの役割であることを認識する。そして、率先垂範の上、社内に徹 底する、実効ある社内体制の整備を行うこと等が謳われております。この部分の中に は、かなり労働関係が出てくるところがあります。具体的には、57頁の具体的アクショ ン・プランの(1)では、各種法令等の遵守の重要性を訴える、(2)では率先垂範し て倫理感を涵養する、その他行動規範・諸規程の作成等について、経営トップが自らリ ーダーシップを発揮する等々の記述があります。  58頁は、自社の行動規範、取組姿勢、社内推進体制といったものを社外に公表する、 取引先等に対してもそういったものを同じ形で要請していく等が定められています。  59頁では、全社的な取組体制の整備ということで、その一環として、正しくこの会の 議題になっているCSRについて、担当の役員や部署を設けて部門横断的に取り組む等 の記述があります。  60頁では、ヘルプライン、相談窓口の関係で、そういったものを設置する際に、情報 通報者の秘密の保護や、相談内容が直接経営トップに伝わるようにというところも記述 されております。  61頁では、役員等を対象とした企業倫理研修が(1)に、一般従業員も(2)で記載 されています。(5)では、法令遵守のためのマニュアルの整備、説明会や研修を定期 的に実施する等々、そういった教育・研修の部分が書かれているところです。  62頁(4)では、相互牽制体制の整備について、(5)では、外部監査的なものをや っても有効なのではないかということが書かれています。  63頁以降は、先ほどの10のところで、憲章に反した事態が発生した際の対応方策につ いて触れております。これも、おそらく労働関係も共通するところがあるかと思います が、そういった目で見ると、緊急事態が発生した際の体制の構築、あるいはそういった 緊急事態への対応に対する研修、訓練など、必要なものが書かれています。65頁では、 関係者への迅速な連絡、本部の設置、原因究明と再発防止、責任の明確化、厳正な処分 などが書かれているところです。  縷々中身をご説明しましたが、こういった形で「企業行動憲章」の本体は相当抽象的 ですが、「実行の手引き」の中では人権の部分、コンプライアンスに係る部分、それ以 外の部分と、それぞれについて例示する形で、ある意味工夫がされていると言えるので はないかと思います。また、体制整備に関する記述もありますし、むしろ日本経団連さ んとしての人事労務管理施策の周知を訴える性格のものも入っています。  67頁以降が、「CSR推進ツール」です。これは、先ほどのものと一連になるのでは ないかと思います。後ろのほうに、企業名が載っているものもそうでないものもありま すが、各項目について具体的な参考事例が整理されています。これについては、説明を 省略させていただきます。  105頁からは、経済同友会の「企業評価基準」の関係です。こちらは、2003年に発表 された「第15回企業白書」で提唱されたものと聞いております。具体的なところは、 106頁の(1)以降で、見出しを追っていくと大体性格がご理解いただけるかと思いま す。企業の自主的、主観的な取組ということで、また「すべての項目に取り組まなけれ ば評価されない」わけではない、いわば分野ごとに使える形に仕立てられております。 回答内容は経営者自身でご確認くださいというのが入り、(5)個別回答を許可なく公 表することはないという整理になっております。その一方で、(7)では、「積極的な ディスクロージャーが時代の流れであることはご理解ください」という形になってお り、企業が自主的にチェックするためのものという整理になっています。  特徴としては、107頁でひととおりの説明がなされております。自己評価のためのチ ェックシートであり、目標をコミットメントとして示すためのツールであり、ベストプ ラクティスを発掘、評価するためのツールであり、「リスク・マネジメント」、と「ビ ジネス・ケース」に資する観点から作られた設問項目であり、「形式」の有無よりも 「機能」の有無を問う設問項目であり、常に「進化」していくツールであるということ が謳われています。位置づけは以上のとおりです。  次に、具体的な中身ですが、110頁に「人間(仕組み)」とあります。この中で、優 れた人材の登用と活用ということで機会均等の関係、社内公募・FA制度等、能力・実 績評価の関係が掲げられています。エンプロイアビリティの向上ということで、従業員 教育・研修の関係、トップ・マネジメント層育成等が掲げられているところです。  111頁はファミリー・フレンドリーな職場環境の実現の関係、その下は働きやすい職 場環境の実現の関係ということで、それぞれ家庭人としての責任配慮、育児・介護支援 があり、その一方で従業員満足度のようなもの、さらには、安全・衛生の関係も入って います。112頁で、人権配慮についても設問が設けられています。  113頁は、「人間(成果)」です。ここで前の部分との比較で分かるのは、仕組みと あるところで制度を聞いており、成果のところで実態も押さえようという観点から作ら れているということです。特に成果の中では、女性の役員比率、管理職比率や外国人の 関係、障害者雇用率も掲げられております。エンプロイアビリティ向上の中では、従業 員教育・研修のための費用、年次有給休暇の取得率、月次残業時間等々、一般的には企 業がなかなか答えにくい部分についても触れられており、自主的チェック項目という性 格との関係で、こういったところまで踏み込めるのかなという印象も持っております。  116頁からが「社会」で、ここでも仕組みと成果に分けられております。ここでは、 ボランティア活動の関係、社会報告書の取組等も触れられております。  121頁からが、コーポレート・ガバナンスの関係です。経営理念の明確化としてステ ークホルダーの明確化、経営理念の浸透度合が、またリーダーシップの発揮として社長 の直接関与、従業員への、あるいは従業員からのコミュニケーションといった関係につ いても触れられています。  124頁はCSRに関するマネジメント体制の確立ということで、CSRの担当部署、 年金運用に関するSRI基準の関係についても触れられています。  126頁からコンプライアンスのための体制が書かれておりまして、企業行動規範の策 定と周知徹底、それから、コンプライアンス体制の確立ということで専任部署、相談窓 口の関係。127頁では内部通報窓口、遵守状況のチェック、業績評価での考慮の辺りが 書かれております。129頁には、ディスクロージャーとコミュニケーションということ で、情報開示の関係についてもチェック項目が立てられています。  131頁は、環境省で作られた「環境報告書のガイドライン」です。最新のものは2003 年度版と聞いております。その中では、環境報告書ということではありますが、その一 方で重要と考える分野ということで、132頁に1)〜5)まで列挙されています。その 中で社会的取組の状況が掲げられています。  133頁には、労働関係のものがかなり並んでおります。労働安全衛生に係る情報とし て、方針、計画、取組の概要、労働災害の発生頻度、件数。イには人権及び雇用に関す る情報ということで、方針、計画、取組の概要、労働力の内訳、均等法関係、障害者雇 用の状況、福利厚生という形で整理をされておりますが、産休や育児休業の関係、年次 有給休暇、法定外の休暇の取得状況等についても触れられています。労使関係では労働 組合の組織率、団交の状況、解雇・人員整理に対する基本方針と履行状況との関係、労 働基準監督局、おそらく労働基準監督署のことだと思いますが、労働監督局からの指 導、勧告の状況等についても項目化されています。職場環境改善の取組、児童労働、強 制労働の関係についても触れられているところです。  以上、長くなりましたが、いま、ひととおりのものをご説明しました。ものによって 相当中身も違い、項目にも差がありますし、さらには、具体的な中身についても相当な 違いがあるという印象を持っておりまして、こういった点も含めてご議論いただければ 幸いと考えております。よろしくお願いいたします。 ○奥山座長  資料2の論点(案)は何かありますか。 ○室長補佐  本日、こういった形の会の持ち方にさせていただいた関係で、第1回の研究会と同じ ものですが、あるいは参考になると思い、いわば参考資料的な扱いとして今回、併せて 配布させていただいたものです。 ○奥山座長  細部の資料をいただいて、かなり駆け足でご説明もいただきました。それを聞いてい ると、私などはまだまだCSRの中身や意味というものを十分理解しているわけではな いので、余計そう感じるのかと思うのですが、それぞれの報告書、あるいは綱領等で、 いま事務局にご説明・ご紹介いただきましたように、かなり中身の幅も広いし、その中 で少し違った視点がそれぞれ出ていたりして、どういうところに的を絞ってこういう問 題を考えていけばいいのか、ちょっとわかりにくいところを私自身は勉強不足の関係で 持っているのです。  そういうものを踏まえて、今後こちらでそういうチェックリストの項目を立てたり、 あるいは結果として情報開示の項目も考えていくときに、もう一度いまのような各種の 報告書、あるいは綱領の中で出されたようなものと比較・関連させながら、どういう観 点から切り口と申しますか、考え方を示していったらいいのかについて、今日、最初に も説明しましたように、改めてフリートーキングで、研究会としてどう考えて方向付け をするかというよりも、むしろ研究会の中でこれから事務局にたたき台を作っていただ くときの、いろいろな意味で基礎固めをしたいということもあって、今回、本当にいろ いろなところの切り口から、ざっくばらんにフリートーキングで進めたいと思いますの で、どうかよろしくお願いいたします。いま事務局にご提出いただいた資料に対する説 明、ご質問等も含めて、どこからでも自由にお話をしていただければと思います。 ○寺崎委員  これは事務局への質問というか、確認でもあるのですが、個人的には自主点検用チェ ックリストという用途限定であれば、非常に広い領域をカバーしていいのではないかと 思うのです。ただ、その一方で、やはり経営上いろいろ問題が出てくるとしたら、情報 開示のところです。これをどう扱うかというところで、自主点検用のチェックリストと いう項目もパフォーマンスまで見てしまうかというところも、結構規定されてくるのか と。まず、この情報開示項目というところをどう考えるのか。これはある意味この項目 を開示するのが推奨されるといった時点で、これは何となく強制力があるような雰囲気 も出てきますし、そうではなくて、あくまでも情報開示項目は任意のものである。積極 的に公表したい企業は積極的に公表してください、というようなものにとどめておくの か、それとも情報開示のことはもう一切触れない。あくまでもこれは自主点検用チェッ クリストとして作りました、というようにするのとでは、結構ニュアンスも、労使が受 け止めるスタンスも変わってくるのではないか。この辺の意識合わせは最初にしておい たほうが、実際に自主点検をどこまでやるかという話をする際に、あまりぶれなくて済 むのではないかと思いました。質問と意見、半々だったのですが、この辺はいかがなの でしょうか。 ○室長補佐  事務局の方でも、その辺をどう考えるかというのはかなり悩ましく考えている点で す。率直に言うと、そもそも今回自主チェック指標なり情報開示項目をご検討いただく のはどういう趣旨かというと、CSRを推進するという観点からは、こういったものを 提示することが役に立つのではないかというところが発端になって、おそらくこうした 形でご参集いただいているところかと存じます。そういった観点からすると、一般論的 に申し上げれば、いま先生からもありましたとおり、広く開示した方が望ましいことは 間違いないかと思うのですが、その一方でそういった形になっていると、逆に指標なり 開示項目自体が使えなくなるといった側面もあるかと思います。  もう1つ、その一方であまり示さないということになると、逆にやらなくてもいいの かということにもなりますし、さらにもう一歩踏み込んでいくと、いま先生からもあり ましたが、開示項目と指標との関係をどう考えるかというところで、かなり近い距離の ものと考えるのであれば、それなりに合わせなければいけないという方向にもなるでし ょうし、あるいは逆の言い方をすれば、両方バラバラでいいのだというように割り切っ てしまえば、別の観点からそれぞれ検討する。当然、集合関係で言えば補集合の関係に はなると思うのですが、あまりそういったことを気にせずにやるという手もあるかと思 います。  その辺、CSRという分野が、分野としてもあまりまだ成熟していないところもある かと思いますので、どの辺のスタンスをとったらいいかというのは、先程も申し上げま したが、事務局としても悩ましいというのが正直なところで、むしろ折角の場ですの で、各先生からいろいろご意見を伺えると、事務局としてはありがたいと思っていると ころです。 ○寺崎委員  そういう意味でも、結構企業の立場で情報をインプットしておくと、例えばパフォー マンス項目を開示してくれというような話になって、残業時間がどうだ、有休の取得率 がどうだというと、それが取引先に知れてしまったら、お前の会社はまだこんなに余裕 があるのかと。結構笑い事ではなくて、中小企業にとってみれば死活問題になるような 部分というのも多々ありますので、細かいパフォーマンス項目まで情報開示、例えば望 ましい例として入れてしまったら、非常に厳しいものがあるのだろうというのがまずあ るかと思います。  もう1つは、情報開示項目自体がネガティブスクリーニング的に使われたら、これも これで経営にはインパクトがあるのだろうと。それは投資活動として、こういった情報 開示項目に準拠して投資家が行動したり、取引先の選定ということで、こういったもの が使われるとしたら、これも結構、企業側からしてみればインパクトがあるのではない かという気はします。ただ、一方で労使の労側から言ってみれば、細かいその辺のパフ ォーマンスまでちゃんとやってくれと言ったほうが、これは実効性が保てるということ ですから、これはこれで非常にわかる話です。ですから、その辺の落とし所も、これも 皆さんのお知恵を借りたいところです。 ○奥山座長  私なんかまだちょっとよくわかっていないところは、個人として2回目の研究会に入 る前に少し勉強したいということで、既に日本の中でいろいろな所で出されているCS Rに関する報告や書いたものを拝見したり、今日のご説明の中でも感じたことなのです が、やはりまだまだこういうCSRという問題については、日本ももちろんそうです が、諸外国でもどうもそれほど進んで何か中身が固まっているということではなさそう です。その上で、私の感じたところは、もし違っていたりしたら教えていただきたいの ですが、アメリカなどでこういう問題についてこういう視点から考えているところと、 おそらくヨーロッパなどで考えるところの力点というのでしょうか、CSRの中にどう いう座標軸を描くかというときに、そのベースにするところの視点がちょっと違ってい るみたいなところも書いてあったりします。  例えばアメリカなどは、コンプライアンスは私などの労働法をやっている人間からす ると、ある意味で日本の場合に即して考えると、労基法をはじめ労働者保護法があっ て、これで最大限押さえるわけです。コンプライアンスというのは、企業自身がボトム ラインとして当然守らなければいけない。その上にいろいろな事情があって、いろいろ なトラブルが出てくるわけです。それはちょっとCSRで何かぎりぎり、ぎりぎり議論 をして固めていく。もちろん、そういう形である程度企業の倫理性、あるいは従業員に 対する配慮や人権なども大事なことだと思いますが、CSRの観点からそういう配慮を ある程度書くことは大事なことだと、個人的には思うのです。  でも、それをこういうところの中の座標軸の縦でも横でもいいのですが、要に置くの か、斜め読みで恐縮だったのですが見たときに、ヨーロッパのほうですとあまりそうい うところではなくて、むしろ人事・労務とか、そういう観点での企業の在り方を使用者 の心構えというよりも、もっと別のちょっと違う観点で環境整備など、そのようなもう 少し企業組織の内部の問題よりも、ちょっと外向けの視点が強く出ているような感じを 持ったのです。ですから、いま寺崎委員がおっしゃったところも、たぶんそれに絡んで くることで、内部的なところで労働者の人権、機会均等、解雇の問題というものを少 し、私は要らないということではなくて、そういうものをある程度出すと、労働者、働 く側にとってみればこういうCSRというのは非常に意義もあるし、効果もあるしとい うことになるのでしょうけれども、企業経営のほうからすると、あまりそれが出ると、 逆に投資の問題、外部からのそういう企業に対する社会的な評価と責任を見て、投資を する場合でも、逆にそれがマイナスになって、ネガティブな方向付けのCSRになって しまうのではないか。これをどこまである程度入れ込んで考えていくかというのは非常 に難しい部分もありますね。だから、そういう点ではこちらで検討していくときにも、 言葉はあまり良くないと思いますが、その辺のところの目配りというものをどうしてい ったらいいのか。そういうものが1つ、たぶん視点になる。  その中で、もしそういうようなところをある程度軸にするなら、チェックリストにし ても先ほど挙げた点検項目、これをどのような形で取るか、ちょっと別ですけれども、 その中身をどうするかという話に、たぶんつながっていくのだろうと思うのです。まだ 2回目ですから、皆さんそれぞれ個々の意見もだいぶ温度差もあったり、意見の違い等 が出てきますので、その辺の皆さんが考えていらっしゃるところを、私としてはもう一 度お聞かせいただければと思います。紹介のときにもだいぶ前から「あり方研」でやっ ていらした方から聞いたつもりで、勉強はしたつもりなのですが、もう一度その辺のと ころも併せてお聞かせいただいて、自分なりにもう少し整理して考えたいと思っていま すので、教えていただければと思うのですけれども。 ○足達委員  ご質問を受けてなのですが、第1回が始まって以降、この研究会をめぐって、企業や 労働組合の方とお話する機会がありました。つまり労働に関する指標づくりが始まった んだってね、という脈絡でお話する機会が何度かあったわけです。そこでいろいろな方 が問題提起をされたのは、いまもう既にいろいろな指標なり自己チェックシステムがあ るではないかと。なぜ屋上屋を重ねるもの、あるいはまた違うものを貴重な税金をかけ てつくるのだ。こういう疑問をたくさんいただいたということを、まずこの場でご披露 しておきたいと思うのです。事実、今日お示しいただいただけでもこれだけあるわけで すね。現実にある。それでいいではないかという意見は当然出てくるわけで、それでは なぜ新しい指標が必要なのだというところをきちんと議論して、皆さんすっきりした上 で進めていかないと、この会としての説明責任というものを問われるだろうと思うので す。  その上で、私はどちらかと言えば、それでも指標化は必要ではないかと考えている立 場です。その意味は働くということについて、良い会社、悪い会社、この中には個人の 価値観も含むでしょうけれども、ある程度社会のコンセンサスとして良い会社、悪い会 社というのが人々に共有されて、その結果、就職の行動、会社への購買の行動などとい うものが左右される、良い、悪いの価値観の共有によって、企業が影響を受けるぐらい の、そういう様子が世の中でもう少しあってもいいのではないかと考えているからで す。つまり、これだけの材料があるのですが、それが機能していない。では、機能させ るためにはどうしたらいいのか。たぶん、指標を作るという目的よりは、最終目的は働 くということにとって良い会社に購買行動、あるいは就職しよう、そこで働こうという 行動で、支持が集まるような世の中にするには何をしたらいいのか。その議論をまず、 どこかできちんとやることが重要ではないか。そのうえで、いや、この指標では駄目だ から、新しいものを作ろうということになるのかもしれないし、この指標を基に、こん な仕掛けを作ってみようということになるのかもしれないと、こういう思いを持ってこ の議論に参加をさせていただいているつもりです。  その上で、もう一言だけ申し上げますと、いま座長が法令遵守というところと、ヨー ロッパではビヨンド・ザ・レギュレーションなどという言い方をしますが、法令を超え たところ、これはちょっと性格が違いますねというご指摘があって、そのとおりなので す。日本の場合に議論を非常に難しくしているのは、法令の遵守でさえままならないと いう部分がある。例えばサービス残業の問題であるとか、男女雇用機会均等の問題も、 法律はもう既に20年前からあるわけですが、実際にパフォーマンスとして、例えば管理 職の女性の比率を見てみると、部課長級でもこの数年は横這いとか、部長級はたしか下 がっていたりするのです。そういう様子があるということです。  よく途上国に行くとインプリメンテーションという言い方をしますが、法律はあるの ですが、実際にそれが機能していないではないかという指摘がある。実は日本でも労働 分野は、途上国と同じではないかというような指摘が一方であるがゆえに、コンプライ アンスの問題とビヨンド・ザ・レギュレーションの問題というのは確かに分けるべき で、法律よりも上のところで専ら議論をしたいという気持もあるのですが、利害関係の 中で言うと弱者という立場になる方にとっては、その法律の上のところで議論する前 に、実際、法律があっても、それをうまく機能していないところがCSRだと、労働の 問題ではそういう意見が必ず返ってくるわけです。環境の問題では、水を汚さない、大 気を守るという水準より上のところで議論がほぼ成立しているのですが、労働の問題は この点に難しさがあるので、私は性格的に分けられるということはそのとおりだと思い ますが、ここの議論は両にらみで行かざるを得ないのかというような見通しを持ってお ります。これは私の個人的な意見です。 ○奥山座長  私も基本的にはCSRというのはそういう内容のものだというように、だいぶ理解を してきているのです。別に反対だということでは決してなくて、ちょっと自分の考え方 の整理の意味も込めて言うのですが、一方でこういう労働関係の人権保障、強制労働の 禁止などを見ると、なるほど、労基法をはじめ、戦後日本の中では労働関係法規の中 で、それはきちっとボトムラインを押さえてあるわけです。それでも、いまおっしゃっ たように、サービス残業、過労死、不当な解雇というものは、現実問題として存在して いるわけです。個別には裁判所に行って、いろいろな法規の適用によって、個別的な解 決を図っているわけですね。  さらに、最近、少子化の流れの中で、女性の能力発揮の促進で、いわばファミリー・ フレンドリー政策という格好で、公労使の然るべき部局が両立支援でいろいろな政策も 立てられているわけです。だから、最初に足達委員がおっしゃったように、こういう研 究会で改めてチェックリストの項目にしても、点検の項目にしても立てていくときに、 もう既に労働関係の場でもファミリー・フレンドリー、雇用機会均等など、いろいろな 政策でやっているではないかと。ここの報告書を見ても、労働関係の場で挙がっている ような項目は、大体私もこれまで関与してきた中でやられていることなのです。ポジテ ィブ・アクションなど、いろいろな形でやられている中身なのです。ちょっと視点を変 えれば、労働法的な、あるいは労働の場での切り口からすれば、そういう言葉とそうい う政策でやってきているわけですね。ほかの点からすると、また違ったイメージ概念を つけて、でも中身はある程度同じような。そういう点では、最初におっしゃったように 屋上屋化するみたいな形のもので、何で改めてここでこういうことをするのが必要なの かといったときに、いや、そうなのだけれども、やっぱりいろいろな観点、いろいろな 切り口で1つの方向付けをしながら、1つの目的にあるべき姿のところへ、日本の企業 も含めて、そこで働いている人も含めて、ステークホルダー、ほかの利害関係人もきち んと進んでいけるように、より良いステージに上がっていけるように、いろいろな観点 からいろいろな政策を立てていくのだということが、ある程度説得的に他に出せない と、表現できないと、いまのような視点にすると、労側からするとそれはもう望むべき 最低限のところではないか。それさえもやられていないのだから、もっとそこは強調し て入れるべきだとなります。今度は経営側からすると、あまりそこが大きく出てくる と、俺たちはちょっとやっぱりそれは乗っていけないよと。むしろそれは企業の対外的 な信用度、地位、評価を逆に今度はマイナスに与えてくることだから、そういうものに はあまり積極的に乗っていけないということになる。その辺のところの調和をどうして いくか。私は両方は本当に必要だと思っているのです。その調和、兼ね合いをどこにや っていくかということが全然わからないものですから。 ○室長補佐  その意味で言うと、いまの議論の中で、最初に座長のほうからヨーロッパとアメリカ でかなり違うというお話がありまして、足達委員のほうからもいまお話がありましたと おり、コンプライアンス的部分と、さらによりましの部分の扱いについてのご意見があ ったのですが、その点で難しいのは、1つおそらく出てくるのは国際基準といいます か、外国でどうだという関係があるかと思います。企業にとってみれば、ほかの国より 厳しい基準でというのは勘弁してくれという話は、もう1つの視点で出てくる可能性が あると感じております。その関連といいますか、もう1つ難しいのが、これは奥山座長 あるいは小畑委員の前でお話するような話ではないのですが、法制度が各国まるで違っ ているというのが、おそらく労働関係のかなり特殊な部分かと思います。これは先生の ほうがお詳しいのですが、アメリカの場合ですと、ほとんどコモン・ローで決まってい て、あまり成文法がないという世界。一方でヨーロッパの方は、イギリスはちょっと難 しいところはありますが、大陸法の関係は制定法でかなり細かく決まっている。その一 方で日本を見てみると、制定法がそれなりにある一方で、ちょうどいま労働契約法制の 議論を別途しておりますが、労働者と使用者の関係を律する大きな部分というのが、い ままで判例、あるいは裁判例に委ねられてきたというところがあります。ある意味、日 本の場合、民法との関係も含めて、いわば三重構造みたいになっているところがあっ て、その辺もどう考えるかというのは少し検討の視点としては出てくるのかと思ってお ります。 ○経済産業省  情報提供の関係なのですが、9月末にISOという国際標準化機関のSRに関する第 2回総会が開かれて、これでSRに関連するISOの骨子ですか、どういうものを作る かということについての決議がされています。このISOについては、第三者認証を前 提としないということと、マネジメントの規格にしないということが合意されています ので、ガイドラインに近いような形になるのかとは思っているのです。とりあえずそう いった設計仕様書が決議されて、来年1月中旬ぐらいから、来年早々ぐらいから、正式 な規格の開発に関する作業に入ると聞いています。規格そのものは2008年ごろの制定を スケジュールとして組んで、作業をしています。これが労働とか、それぞれにフォーカ スしているものではないのですが、一応ISOということになるので、おそらく国際的 な基準として、各国はそれを基に作っていくということが推奨されていくのではないか と考えています。 ○寺崎委員  私は基本的には足達委員の考え方に非常に近いものがありまして、やはりコンプライ アンスなくして、そこから先はないのだろうなと。先ほど事務局のほうからも出たとお り、各国の法規の違いがその辺のCSRの項目で、米欧、違ったスタンスが出ているの かと。そうであれば、今回このような集まりの意義というのは日本ではどうなのだとい うところをちゃんと明確に打ち出していくことが意義なのではないかと思っています。 その上で、私もこの前の会合のあと、いろいろな会社で社長や組合の方とお話をして、 ちょっと水を向けてみたのですが、労使ともにいちばん興味を持っているのが労働時間 なのです。これがたぶん、いま日本特有の話なのだろうと。サービス残業の話を持ち出 されると、経営側もちょっと困ったところも出てきますし、組合側も当然それに関して は敏感なところがある。  さらに、これは皆さんのほうが専門なのですが、日本の労基法自体がどちらかという と工場法的なので、いまのようなホワイトカラーなりの働き方を反映していないのでは ないかというところで、必ずしもサービス残業が本当に、倫理的に見てそれはサービス 残業なのかというところも出てきて、これはエクゼンプトウの範囲をどうするのだみた いな話になるので、ここで取り扱える話ではないとは思うのです。そのようなところも あるので、もしこのコンプライアンスの話を出して、経営側も組合側も過敏な反応をす るとしたらここなのだろうと。さらに、企業活動でコスト要因になってしまうというの もありますし、もう1つコスト要因のところで話が必ず出てくるのが、派遣会社の問題 と請負会社ですね。いわゆる偽装請負の話、派遣社員が労働条件遵法どころか、違法な 状態で労働条件が提示されているなどという状況もあって、請負会社、派遣会社にすべ てその辺のコンプライアンスを飲ませるというのであれば、今度はいままでそれを前提 にコスト管理をしていた企業はどうなるのだなどというところも出てきて、ここに踏み 込むと非常に話が紛糾するのだろうという気はします。気はしますが、おそらくその辺 の議論を全くしないまま、こういう項目にしましたとやったら、両方からいろいろ言わ れてしまうのだろうと。これはジャストインフォメーションということなのですが、提 示させていただきたいと思います。  コンプライアンスの部分についても、そこから先の部分についても、やはり両方扱う べきです。ただ、経営サイドの立場からものを言ってしまえば、それを情報開示と言っ たら、これは非常にハードルが高くなってしまうのだろう。実質的にこの辺のガイドラ インを活用していただくのであれば、その辺のところは多少引くといいますか、自主点 検のほうはパフォーマンスまでひっくるめて、結構細かいチェックができるようにした 上で、情報開示に関してはあまり積極的にといいますか、強制的な意味合いは持たせな いほうが、実は浸透していくのではないかというように思っております。これはいま現 在の私のスタンスです。 ○政策企画官(労働政策担当参事官室)  本日ご説明したものはいずれもそうだと思うのですが、基本的な性格として企業が自 主的に使うものだということであるとか、あるいは積極的にこれに合致しているかどう かを、ガイドラインを作った所が評価するシステムになっていません。ISOもそうい う方向で作業を進めることになっています。それから、経済同友会のものは、分野ごと にある程度濃淡をつけてやることも可能だという性格のものになっています。  そういう中で、コンプライアンスの問題、情報開示の問題をどう位置づけるのかとい う問題も1つあると思いますが、強制をするということだとなかなか付いてこれない部 分、あるいは情報開示を求めてしまうと付いてこれないところがあるという話は、そも そもその前提として、このCSRというのが企業の自主的な取組であるという性格、あ るいはそれの評価を誰がどのようにするのかということとも絡む問題なのかと思ってい ます。したがって、作るものの性格、作り方、その範囲、企業がどういう使い方をする のかというところも見て考えていかないと、いま寺崎委員がおっしゃったような話とつ ながっていくのかと思います。単純にどのような項目を盛り込むのかという話をする以 前に、その項目を決めるに当たって、どういう使い方をするのが前提になるのかという ところも議論していく必要がある。パーツを使うということも念頭に置くのか、それと も基本的には全体を使ってくださいという形の性格のものというように位置づけるの か。 ○奥山座長  今日ご説明いただいた資料も、日本の中のいくつかの部局、あるいは組織で作ったも のがありますし、国際機関が出しているものもありますね。それは基本的に企業の自主 的な取組みとどうかかわるのか。そのときにどういう観点から切り口を考えたらいいの だろうかということで、コンプライアンスの面、情報開示の面、環境保全の面など、多 様な企業がかかわっていくような側面のいろいろなところに項目を立ててチェックをし ていって、企業の社会的な責任みたいなものを踏まえながら、より意義のある企業活動 をしていこうということがベースになっているわけです。  これは私個人の意見ですが、その辺の性格付けのものであっても、例えばアメリカで そういうことをやるときに、連邦政府がそういうものに対してある程度指標的なものを 作るような場合、たぶんアメリカの場合はないと思うのですが、企業が自らの活動の中 で積極的にやっていく。その範囲も限られたところだろうと思うのです。ヨーロッパの ように制定法定、法規である程度枠付けをして、その中で日本ほどではないですが、い ろいろ行政が後押しをしていくようなところ等です。日本の場合にも一応、労働関係法 規というのは保護法以外のもの、特に均等法などで雇用平等などをやっているときはい わば行政指導、性格的にそういう法規が多いのですが、そういう行政指導的な形で企業 とそこで働く労使、あるいはステークホルダーも含めて、もうちょっと広い意味でも、 こういうようなことをやっていただくことが企業にとっても、そこで働く人たちにとっ ても、株主みたいにステークホルダーにとっても、良い方向でこういうことが進められ るのですというように仮に考えたとしても、私はいま企業の中の問題しか言っていませ んが、行政がこういうものを作って、チェックリスト項目にしても開示項目にしてもや ったときに、その労使に与えるインパクトというのは、諸外国で労使が持っているイン パクトとは、違う響き、効果、影響があり得ると思うのです。  そういうことを考えたときに、この研究会である程度、いつになるかわかりませんが そういうものを出したときに、労使双方ともに、結果として強く私たちが乗りやすい し、また積極的にそれに関与していけるようなものになっているかどうかというのは非 常に関心のあるところだろうと思うのです。ですから、その辺のところをどうしていく か。皆さんおっしゃっていることは全く同じだと思うのですが、その出し方をどうする か。 ○政策企画官  自主的なものというのが大きいのですね。行政が言うと、たぶん日本経団連が言った のとは、かなり違うインパクトがあるはずなのです。 ○奥山座長  はい。もうインパクトがあると思いますね。 ○政策企画官  そこのところも、ある程度我々として踏まえなければいけない。 ○奥山座長  かといって、それに留意するあまり意味のないものになっても、それは結果的には困 ることにもなりますし、それだったら最初からいろいろなところで出しているのだか ら、それで任せておけばよかったではないかということにもなりかねないですから、そ この兼ね合いですね。もうちょっと一歩でも二歩でも進めるようなもので、しかもみん なが乗ってくれるといいますか、やれるようなものが中身としていちばんよろしいのだ と思うのですけれども。 ○寺崎委員  1回目のときに、たしかどなたかおっしゃっていた、労使のコミュニケーションツー ルだというのは、比較的受け入れていただけるのではないかという気はしますね。 ○足達委員  ただ、組合の中の方は、もう十分にコミュニケーションできていると、このように言 う方もいるのです。これはちょっと不思議だと、そういう印象を受けることもあります が。もう1つ、いまのお話を伺っていて発言したくなったのは、今日ご紹介いただいた 8つのガイドライン的なものなのですが、環境省のものを除けば、ある程度ステークホ ルダーのスタンスといいますか、設計思想みたいなものは明確に出ているものなので す。OECDのものは確かにOECDという政府機関が作っていますが、どちらかとい えば企業以外のステークホルダー、特に労働組合の意向というのは非常に強い性格だろ うと思います。それで、ナショナル・コンタクト・ポイントというものを作って、違反 事例があれば提訴ができるというところが特徴になっているものだろうと思います。 2001年から今年の1月までで既に50数件の違反提訴があって、日本企業の事例もその中 に3例ほど含まれていますが、労働組合側は提訴したぞということを公表してしまうわ けです。そういう形で機能している。  それから、GRIももとをたどっていきますと、バルディーズ号の事件というタンカ ーの座礁事件を機に、アメリカの環境保護団体が企業に説明責任をより強固に負わせる ところから始まりました。説明責任を果たしてもらうことで、今回起きたようなタンカ ーの座礁のような環境破壊が防げるだろうということから、NGOが企業の側にプレッ シャーをかける形で、バルディーズ宣言という宣言に署名をしてくださいということを 働きかけて、そのことから環境報告書という報告制度が始まり、それがいまGRIに結 実をしているというような経緯を持っているのです。この2つはどちらかというとステ ークホルダーの側から、企業への働きかけという形で出てきた。  コー円卓会議と経団連と同友会は、もちろん企業の側から自らが説明責任を果たすと すれば、という設計思想で作られているわけです。ですから、どれもそうした検証制度 のようなものは持っていませんし、今日議論が出ているように、CSRは企業の自主的 なものだという主張がある意味では貫かれている。国連のグローバル・コンパクトはま たちょっと違っていて、いわゆる貧困の問題を解決するという、アナン議長のビジョン の中で、例えば人権の問題と貧困の問題というのは非常に関連が深い。労働の問題もそ うです。児童就労なり、そういう問題。環境の問題も、貧しさゆえの環境破壊というの があるのだということから、具体的にミレニアム宣言みたいなものを彼が出す前に、そ れを具体的に企業にやってもらうためにということでグローバル・コンパクトを出し た。したがって、仮に我々の指標づくりをやるとして、どの立場に立つのか、あるいは どこに問題点を見出して発想を始めるのかということも、非常にポイントになってくる と思います。先ほど屋上屋を重ねることの批判を受けているということは率直に申し上 げましたが、この点は説明責任の大きなポイントになるのかと思います。 ○小畑委員  議論の整理や啓蒙のために作るという考え方もありますし、また現在抜けてしまって いるところや補強すべきところ、強調すべきところというものを指摘していく方向で動 かすということの方向性もありますし、方法論を示すという方向性もあるでしょうし、 どういうスタンスで作業を進めていくかということは、出発点は慎重に選ぶべきだと思 っております。そのためには、正確な現状認識がないとできないと思うのです。それ で、現在、正確な現状認識ができているのかということについて、私自身は自分自身に ついて、やはり不安を持っております。  例えばこれだけ経済団体でいろいろな努力がなされていて、それなりの規模の企業は もううまくいっているのだと言い切っていいのかという現状認識も、それも私はまだ確 信を持っているわけではない状況です。そのような話も聞くのですが、そのような前提 に立って、それだから今後の経済のグローバル化を考えて、中小にも広げるという啓蒙 的な意味が重要なのだというお話を伺うこともあるのですが、他方で足達委員がお話に なられましたように、いやいや、とんでもない、そんな状況ではなくて、むしろ大変な 思いをしている人たちがものすごい数いるのだというようなお話も聞くわけです。それ で、その出発点を決める際に、正しい現状の把握ができた上で作業を進めることが必要 なのではないかということを、まず指摘させていただきたいのです。  先ほど奥山座長がおっしゃったコンプライアンスとCSRの問題は、もちろん私も非 常によく理解できるところがありまして、既に法律で強行規定があって、実効性を確保 するための制度が整っているものについて、コンプライアンスの問題は必ず守るべき問 題として存在するわけです。他方で、CSR固有のビヨンド・ザ・レギュレーションの 部分というのは、企業の文化、企業の個性というものによって、力点の置き方や実施す る順番というのは必ずしも一緒である必要もなくて、まさに自主性というものが入る余 地が大いにあるということで、その2つは違うものというように線引きをしないと、ご ちゃごちゃになってしまったがゆえの混乱が起こるというのは、作っても恐ろしい結果 が出てくることになると思うので、それは十分に注意すべきことだと私も思っておりま す。  お示しいただいた資料にもありますように、日本では既にコンプライアンスがCSR の中の議論に入ってしまっているので、そういうこと自体は前提にせざるを得ないと思 うのですが、作り方の上で、法律遵守の問題で必ず守るべきものなのか、それともビヨ ンド・ザ・レギュレーションなのかという問題については配慮が必要であるということ は、もちろんそう思っております。そして、他方でCSRが出て初めて光が当たった問 題があるのも事実ですので、そのCSRということを評価すべき点はあると思っており ます。  それから、私が強く感じるのは、どういう縛りの書き方をするのかということとも関 係するのですが、本当にかっちりと決めてしまうのであれば、ほかの諸々の指標や基準 との矛盾があったら全く動かなくなってしまうので、それは矛盾をなくすことを目指す のか、緩やかさや縛りの固さというところで調整するのか、いろいろやり方はあると思 うのです。そこは留意して進んでいかないと、全く思ったような結果に結び付かないの ではないかと思います。 ○奥山座長  そうですよね。自分のいつもやっている分野ばかり話して恐縮なのですが、両立支援 の問題にしても、雇用機会均等の問題にしても、その他の公正な処遇の評価システムに しても、いろいろなところの厚労省の内部の部局でもそれぞれの局が役割分担みたいな 形で進めていらっしゃるわけです。例えばファミリー・フレンドリーにしても、いろい ろなチェックリストを立てて、企業に自主的に取り組んでもらっている。そういうとき に、今度こちらのCSRのほうでチェックリストの項目を入れたときに、向こうではポ ジティブ・アクションのような格好の自主的な取組みをベースにしながらやっているの に、こちらが二歩も三歩も踏み込んだ形で、かなり強い形で出ると、企業にしてみれば どういう観点でやればいいのか、足並みがわからないみたいなところがありますね。そ ういう点で、コンプライアンスの問題とか、それとちょっと離れた職場での公正処遇、 あるいは働き方の多様化などというものを含めても、ほかとうまく合わせて、良い言葉 かどうかわかりませんが、突出してしまったら、これは労使双方とも混乱が起きるでし ょうし、うまくやろうとするときには、たぶんその辺をどう調和させていくかなのでし ょうね。  現実を見ると、やはり企業と労使の皆さんのいわば生の声といいますか、現状、言っ てみれば当事者がいまどのように日本のCSRについて現状認識をされているか、位置 づけをされているか、そういうところで何を求めていらっしゃるか、そういうものをお 聞きすることは大事なことなのだろうと思いますね。いま、その良い手立てを考えてい ませんが、おそらくそういうものがあって、それを踏まえて労使双方、あるいはその他 の利害関係者の方たちが一歩前進するためには、こういうものを指標として出せればい いのではないかというところをにらみながら、少しやることが必要なのかと思います。 ○室長補佐  率直に言って、今回一度案を作ろうとして悩ましかった点が、先ほども申し上げたの ですが、情報開示というものを1つのテコにしていくというお考えをお示しいただいた のです。その意味で言うと、見ていて結構興味深かったのが、必ずしも情報開示を前提 にしないものであると、先ほど若干資料の中でも説明申し上げたのですが、体制の作り 方とか、こういう形で現状を踏まえて、それをフィードバックして何か社内制度を改善 していく。そのようなやり方を導入してやっている。そういう書きぶりのものも結構あ りまして、そういったやり方というのが1つ興味深い点だったのかと思っております。  もう1つ、これはまさしく項目の対象の範囲、ちょっと最初の議論に戻ってしまうと ころがあるのですが、コンプライアンスの部分、それからよりましの部分というのもあ るのです。どうも見ていると、それ以外に純粋に当事者の契約の関係だったり、どこか に出ていましたが、先ほどの非正規の割合、あるいは人事処遇制度をどうするか、さら には裁量労働制を入れるかどうかみたいなものもありましたが、純粋に人事政策という か、その企業でパフォーマンスをよく製品なりサービスを出していくためにはどういっ たやり方がいいのか、そういう広い意味での人事・労務管理といった部分も入ってい て、そこら辺の概要をどの辺に持っていくかというのも、たぶんいまの議論と絡んでく るところなのだろうと思います。そういった観点からすると、実はこういった形で原案 を作っている中で悩ましかった点を、ちょうどご指摘いただいたというところです。 ○奥山座長  企業全般で、横断的に共通項として考えられるような指標よりは、むしろ個別の企業 の中の個別のいわば人事管理の問題で、それは当然、個々の企業の中の労使の自主的な 交渉やいろいろな話合いのレールはあるのでしょうけれども、そういうものである程度 お任せして解決していったほうがよりベターであるような項目というか、事柄までちょ っと入ってきているところもあって、ほかの企業を合わせたり何かするときにそれは少 し難しい。 ○足達委員  そこの部分が、先ほどご紹介した、「いや、もうしっかりやっているよ」という声が 出てくる背景なのです。 ○奥山座長  うちではそんなものはもうクリアしているというような形が。 ○足達委員  コミュニケーションツールがなくても、コミュニケーションできているという発言が 出てくる。 ○奥山座長  「それを何でいまさら出すの」みたいな話になるのです。 ○寺崎委員  そういう意味では、先ほどおっしゃったような啓蒙なのかというところはあると思う のです。もちろん、うちは先進いっているのだというところは、それはよかったという 話ですから、むしろそういう意識すらまだ持っていない企業に対して、こういう考え方 がちゃんとあるのだという意味での啓蒙活動に使うという意味では、厚生労働省から出 すインパクトというのはそれなりにあるのだろうと。  これは足達委員にお伺いしたいといいますか、私の感覚が合っているかというところ を確認したいのですが、意外と大企業でもまだ「労働分野のCSRというのは何ですか 」という企業がほとんどではないかという感じはありますよね。やはりある程度整理し て、コンプライアンスというのは、実はCSRの一環なのだと思っていただけるよう な。 ○足達委員  労働の分野でもですね。 ○寺崎委員  そうです。 ○足達委員  先ほども冒頭に申し上げたのですが、環境の問題がCSRだということは、ほぼ皆さ ん企業の方は共有しておられると思います。この心は何かといいますと、企業の人たち には、環境のことは最近マーケットからの反応の大きな分かれ道、インパクトになって いるぞという認識があるのです。例えばハイブリット自動車が売れるとか、環境配慮型 の製品の売れ行きがいい、あるいは環境報告書を出すと、学生が就職のときに「環境報 告書を読んでやってきました」などという発言がある、こういう実感があるのです。で すから、関心も高いし、ある意味での企業間競争になってきているわけですね。ところ が、残念ながら、企業の側に労働の問題について、まだそういうインパクトが生まれて いるという実感がない。それがいま寺崎委員がおっしゃった状況を作り出している理由 なのではないでしょうか。  これは鶏と卵の関係なのですが、冒頭に私が申し上げたように、何かインパクトを生 み出せる仕掛けが作ることができれば、企業の人たちもCSRの中で労働が重要だと思 うし、そのことが社会にも1つのムーブメントを与えて、やはり物を買うときに、その 会社がどんな労働条件で人を雇っているのか、これは重要だよねというように消費者も 思うようになる。この相乗効果といいますか、良い方向での相互の影響というものを何 とか作る仕掛けを考えたいと思いますけれども。 ○奥山座長  ある意味で、これまで日本の企業の中の経営管理、あるいは人事管理という観点から すれば、賃金をいくらにする、あるいは雇用機会均等をしていく、あるいは両立支援の 問題というのは、むしろコスト的な観点からするとやはりちょっと望ましくない。でき れば避けていきたい。労使の自主的な交渉だと言いつつも、それは法律を作って、外か ら何か外圧的にやられたらたまったものではない。企業にとったら規模も違うし、業績 も違うしいろいろなものがあるのだから、それを一律の強行法規的なものを作って課さ れるのでは、これはちょっと企業は立ち行かないですよみたいな形で、こういう企業の 中のコンプライアンスのような最低限は押さえる必要があるけれども、それ以上のもの については労使の自主的な交渉で委ねていくべきだ、という発想がかなり強かったと思 うのです。  そのときに、こういうCSRのような観点から、「いや、そうではないですよ。最低 限の上で、やはり企業が社会的な評価を得て、企業活動にプラスにしていくためにも、 もっと積極的にかかっていかなければいけないのですよ」というのが、たぶんこういう 視点だろうと思うのです。これまでの企業の論理からすると、それはいわば受け身で持 っていた部分だから、それを改めてもっと自分の自意識を高めて認識をと言ったときに は、ちょっと待ってよみたいなところにあるのが、いまの状況なのだろうと思っている のです。だから、そこでそういうことを言われるのはちょっとつらいとか、寺崎委員が おっしゃったように、コンプライアンスというものがCSRの中身に、いわば強い形で きているのだと。私も勉強不足でわかっていなかったのですが、そういう部分は多少あ るのでしょうね。 ○寺崎委員  座長がおっしゃったように、どちらかというと労基法や労働法対応というのは、経営 側から見ると、どうしてもコスト的な観点という意味合いが非常に強くて、やればやる ほどお金が出ていく。労働CSRの考え方に立てば、ここにかかるお金というのは、コ ストではなくて投資なのだというように、目を向けていただかなくてはいけないのだろ うと。いままで会社側も労働組合側も、遵法ということではいろいろやってきたという のも、結構個別的な、おっしゃったように受け身の取組みでしかなかったのか。例えば サービス残業の問題があり、雇用均等法の問題があり、いろいろその周辺分野の問題が あったとしても、それは1個1個の独立した案件でしかなくて、それをもうちょっと高 い視点から見ると、これがCSRなのだという1つ上の所から見ていなかったのではな いかという感覚はありますね。なので、個別に例えば36協定だったら、今回こういう縛 りがあったから、それに対応しなくてはいけないと、当たり前ですが、どちらかという と義務的なところで、どうしても走っていった嫌いがあるのではないかという気がしま すね。 ○奥山座長  いまの状況とこれからの状況を見ると、企業も産業構造の変化や少子化の流れの中 で、労働供給システムの変化がありますから、人材の確保という観点からは、これまで みたいに受け身ではなくて、もっとより積極的に人材の確保、そのような環境を整える 制度の整備をすることが人材の確保につながるという観点は、十分持っていらっしゃる でしょうから、いままでの視点とはちょっと違った視点で、そこにCSRの光を当てれ ば、よりそういうことについての積極的な、いわば勧誘に対するインセンティブになる かとは思うのです。だから、そういう切り口を出していかないと、なかなか上から物申 す、こういうところ法令遵守、最低のものでも守っていないのだから、もっとやれよみ たいな形のものを出すと、逆に今度は理屈抜きの感情的な反発みたいにも行くおそれが あるかと、これもちょっと素人考えですけれども。中身もそうですが、その辺のところ の出し方ですよね。 ○寺崎委員  CSRということではないのですが、この前、参考資料で配っていただいた個別企業 の取組みがありましたね。結局、企業にとっては、これをやることによるメリットとい いますか、やはり利益感覚というのを持ちたいのだろうというのがあるのです。なの で、例えばガイドラインとは別の話かもしれなくて、こういったものを推進していく上 で必要なことは、こういうことに取り組んだから、ここの会社の財務的なパフォーマン スがちゃんと上がったのです、というような所は事例として見せてあげないと、特に中 小企業・零細企業にとっては、コスト意識というのからなかなか抜けきれないのかなと いうのはありますね。 ○八幡委員  感じるのは、先ほどISOの話が出ましたが、やはり株価に対する影響だと思いま す。環境については、指標が出ていますから、そこが企業にとってはいちばんインパク トがあるのではないかと思います。それから、ファミフレもそういうことをやっていま すということ、企業イメージが向上して、求人も良くなり、当然、株価にも好影響を与 えているはずです。その辺がうまくつながる仕組みを意識したほうがいいのではないか と思いました。 ○奥山座長  それをやることが企業にとって大きくメリットにつながるのですよということなので しょうね。 ○八幡委員  極端な話が、有価証券報告書に、こういう情報が載るとかですね。逆にいま有価証券 報告書はだんだん情報開示が少なくなってきた。ある意味で標準化されてきたのです が、昔はもっといろいろな情報が載っていました。それはドイツ企業でも詳しいアニュ アルレポートが出るようになったのだが、それにあわせてそれまではオープンにしてい たような情報が表に出なくなってしまった。IR情報の公開で規制をどんどん強めてい ったら、以前は出していた情報がその過程でカットされて出さなくなってしまった。情 報公開の標準化は進むのですが、それによって情報の量はかえって抑制されてしまう部 分がある。 ○奥山座長  逆に、ここまででいいのかと。 ○八幡委員  ISOの動向ですが、時期的には1月ぐらいではっきりしてくるということですか。 ○経済産業省  本格的な規格の作成を開始するのが1月ごろと聞いています。 ○八幡委員  検討機関はいつごろまでの予定なのですか。 ○経済産業省  いまのところ規格の発行は2008年を予定しています。 ○八幡委員  日本からかなり強く意見が言えている状況なのですね。 ○経済産業省  そうですね。日本からは先月の総会にもかなり人を出していますし、今後も日本の意 見も積極的に言っていこうと思っています。 ○足達委員  ちょっと補足をさせていただくと、バンコクの会議に私も出席させていただきまし た。エキスパートという参加者が出ているのですが、年末までに私はここを書きたいみ たいなチームアップを行います。年が明けて実際に起草作業が始まって、次回第3回の 総会が来年2006年6月にポルトガルのリスボンで予定されています。ここでワーキング ドラフトという形で、ある程度書き込まれたものが目に見えてくるはずです。そこでま た議論を詰めて、来年の暮れまでにはコミティードラフトに格上げできるのではないか と言っております。 ○経済産業省  コミティードラフトは、たぶん来年の、1次案ですよね。 ○足達委員  コミティードラフトになると、今度は国の意思表明になりますよね。いまはエキスパ ートがそれぞれ意見を言っているのです。それで、その意見の集約で原案を決めており ますが、コミティードラフトとなりますと、国のそれぞれの標準化に関する機関が、イ エスとかノーとか、ここの意見は反対とか修正などという意見を言ってきます。 ○奥山座長  たたき台みたいなのが来年の。 ○足達委員  はい。ですから、来年中にはどんな規格になるかのイメージは、ほぼ共有できるよう になってくる。しかし、そのあと手続がいろいろありまして、いま発行は2008年10月と いう予定になっているのです。 ○奥山座長  そういう動きからあまりにもかけ離れてしまうと、まずいかと思っているのです。で すから、何かその辺の情報をいろいろ取りながら動いたほうがいいのではないかと思う のですけれども。いまのお話ですと、プロセス的にはまだそういうたたき台的なもの、 ドラフトが出てくるのも1年先ぐらいのような状態ですね。 ○経済産業省  そうですね。固まるのがちょっと先なので。 ○奥山座長  だから、それとある程度連動させながらとなると、もう少し時間がありますし、その 前にやはり小畑さんがおっしゃったように、日本の労働関係の場ですと、労使がこうい う問題についてどういう現状認識とどういう要望と言うとちょっと言い過ぎなのです が、スタンスでいるか、これはしっかり把握しておいたほうがよろしいですよね。あま りそういう意識ともかけ離れてしまったら、国際基準とかけ離れるのも困りものです し、またそれぞれの国の中の労使のそういう生の意識と要望とも大きくかけ離れても、 これはあまり効果がないものになるでしょうから、その辺の2つを少し押さえながら考 えていくことが、やはりいまの時点では必要なのですかね。 ○八幡委員  日本の情報を発信したほうがいいのですか。 ○奥山座長  何らかの形で。 ○参事官  いろいろご議論をお聞きしていて、指標をどのような項目で作るかということも必要 なのでしょうけれども、足達委員がおっしゃったように、こういうものを使うような意 欲というか、そういうものが出てくるような雰囲気づくりというのをどのように仕掛け ていくのかというのは非常に重要だなという感じがしております。だから、情報開示し なければならないという、強制ではなくて、まさに北風と太陽でいえば太陽的な、「そ のようにやらないとまずい」という感じに持っていけるかどうかというのが非常に重要 な感じがしております。そういうことを考えたときに、先ほど寺崎委員もおっ しゃいましたが、取引先からまだこんな余裕があるのかという感じで捉えられたり、従 業員をかわいがっているだけではないかというように捉えられると、かなりきつい面が ありますよね。  そうすると、単にそこで働いている人たちにとっていいことだという以上の価値とい うか、そういうものをうまくアピールしていくというのが何か考えられないかと。例え ば去年出た少子化プランでも、やはり少子化の問題を考えるときに、企業における働き 方の問題というのは重要な要素だという認識はかなり高まっていますから、日本の将来 ということを考えたときにも、働き方というものをどれだけ大事にしているかで企業の 価値が決まってくる、ということを世の中全般にメッセージとして出していけるよう な、そういう道筋というのも1つあり得るのかと。いずれにしても、何か世の中の意識 をうまくこっちのほうに誘導していってそこから企業も「これは開示しなければいけな い」というように持っていくような仕組みづくりというのを、この場でいろいろ考えて いく必要があるのではないかと思いました。  もう1つ、小畑委員がおっしゃったいまの現状認識はどういうことなのかというとこ ろは非常に重要だと思っています。座長がおっしゃったように、労使のいまの実態につ いての認識というのも、是非しっかりと聞く必要があると思いますし、小畑委員、それ 以外にいまの正しい現状認識を得るための作業として、何か考えられるようなことはあ りますか。 ○小畑委員  まず、ここにご出席の先生方がいろいろな情報を持っていらっしゃるようなお話を先 ほど少しずつ伺いましたので、有益なお話を伺ったと思っています。それは委員の先生 方が率直なお話をなさっているのだろうというのはあります。あとはやはり直接伺うと いうことでしょうか。特に妙案というのは浮かばないのですけれども。 ○奥山座長  今日の研究会でもお2人に、言ってみれば生の現場の情報や状況などのお話をしてい ただきましたので、これでも、ある意味では直接当事者ではなくても、間接的に当事者 が考えていらっしゃるようなところ、意向、要望、あるいはご不満も含めて聞いていま すので、それも間接的に1つの現状の分析とか認識に私個人はつながりますので、それ は個人的な視点でも構わないのですが、ここでどんどん話していただくことが間接的に 日本の企業社会の中での労使当事者の要望とか現状分析されますから、こういう作業も 続けながら、それぞれ時間的な余裕とかその他の余裕があれば、当然、経団連、あるい は連合、双方のトップの持っている組織としての考え方、企業規模で見ていく、業種で 見ていくなど、その辺の切り口がいくつかできれば、ある程度トータルにいま日本の社 会が置かれている、労働の場で置かれているような状況も、そういう問題に関して少し は見えるのかと思います。その辺、事務局のほうにベターであったりベストであるのが いちばんだと思いますが、ちょっと探っていただいて投げかけていただければ、議論を 踏まえて、その時その時で良い方法をとっていきたいと思います。ちょっとご面倒なこ とをお願いしますが、よろしくお願いしたいと思います。 ○足達委員  経団連と連合ということになると、どうしても国内の問題に集約してしまうのです が、海外の日系企業なり日本企業の調達先の労働問題というのは、最近非常にクローズ アップされておりまして、日本企業が批判の対象になることも出てきています。例えば 経済産業省の関係で、ジェトロの方でお詳しいような方にお話を伺うとか、あるいは日 本の多国籍企業の中の海外労務をご担当の方のお話を伺うという機会を作っていただけ ると、たぶん国内の労使の関係とちょっと性格の違うお話が伺えるのではないかと期待 をするのです。 ○寺崎委員  国際標準基準みたいなもの。 ○八幡委員  日本国内で活動している外資系企業の方にお話を聞きたいですね。 ○足達委員  それも面白いかもしれませんね。 ○八幡委員  だいぶ感覚が違うでしょうね。 ○奥山座長  そういう所では、中の人事管理や制度などを作っている基準が、大体外国の本社のい わば雛型を当てはめている所がありますね。そういう所のずれですよね。ちょっと見て みたいところがありますね。そういうのも含めて少しやれれば、より良いかと思いま す。まだまだ議論が尽きないと思いますが、そろそろ時間も来ているようです。いまの 話で大体方向付けみたいなものがありますが、事務局から次回以降の進め方について何 かありましたらお教えいただきたいと思います。 ○室長補佐  いままでのご議論の中でだいぶ話も出てまいりましたが、事務局としてはとりあえず 今回の指標開示項目の在り方として、いちばん関係が深いのは、とりあえずは国内の労 使であり、具体的に申し上げると、連合、経団連ということになるかと思いますので、 そちらのほうからのヒアリングという形で今後進めさせていただければと考えておりま す。ほかにもいろいろジェトロ、あるいは外資の関係等も含めてありましたが、それは 労使のヒアリングをまずやってからというほうがむしろ順序としてはよいと思いますの で、とりあえず連合、経団連からのヒアリングというように進めてはどうかと考えてお ります。 ○奥山座長  順番といいますか、そういう形でとりあえず日本の企業の中の、いわば利益を双方で 出してくださるような所のご要望、現状認識などを踏まえた上で、ジェトロ、あるいは 外資系で適当な所で、国際標準基準とのずれがあるかないかも含めて、認識の持ち方の 違いがあったりするようなところもわかれば、それなりに一歩違った観点も出ますの で、そういう形で少し進めていただければと思います。そういう形でよろしいですか。 では、今後はそういう方向で検討してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいた します。 ○室長補佐  やや事務的な話になりますが、次回以降の開催の関係です。いま話もありましたとお り、ヒアリングということになると、ヒアリング先の都合等の関係もあると思いますの で、次回以降の日程については追って調整ということで、別途また事務的にご相談させ ていただければと思っています。それから、ヒアリングということになると、当然また ヒアリングの項目等が必要になるわけですが、これについても事務局で案を作成して別 途ご相談させていただく。それで、次回にはヒアリングという形で段取れればと思って います。 ○奥山座長  わかりました。次回の日程、ヒアリングの項目も含めて、事務局にお考えいただい て、日程は個別に皆さんのご要望ですり合わせをしていただければと思います。ヒアリ ングの項目のほうも、お考えいただいたものを個別にそれぞれお示しして、ご意見をい ただいて確定していただければと思います。そのようによろしくお願いいたします。ほ かに特になければ、第2回の研究会をこれで終了したいと思います。本当にお忙しい中 ご参集いただきまして、ありがとうございました。 照会先:  政策統括官付労働政策担当参事官室調整第二係  電話 03−5253−1111(内線7720)