05/10/05 第10回 医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する 検討会 議事録 第10回医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会 日時 平成17年10月5日(水)17:00〜 場所 厚生労働省省議室 ○赤熊補佐 ただいまより第10回医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあ り方に関する検討会を開催いたします。  委員の皆様方におかれましては、ご多忙のところ当検討会にご出席いただき、誠にあり がとうございます。本日は金川委員からご欠席との連絡を受けております。それでは山 路座長、議事進行のほど、よろしくお願いいたします。 ○山路座長 本日は看護記録について検討していきたいと思います。事務局より資料の確 認をお願いいたします。 (資料確認) ○山路座長 議事に入ります。事務局より資料の説明をお願いいたします。 ○鎌田看護職員確保対策官 資料1、資料2、資料4、資料5と、参考資料1についてご 説明いたします。  ご案内のとおり、この看護記録については第1回の検討会において、現状では看護記録 はあるが法的な規制はどうなっているのか、そのあり方はどうなっているのか。患者の 情報提供や医療安全の観点から議論をする必要があるのではないかという問題提起を 踏まえて、議論するものです。したがいまして、まず資料1で、現行の看護記録に関す る法令上の扱いや位置づけについてまとめてみました。  ご案内のとおり、保助看法には看護記録について位置づけはありません。その他の法令 上の位置づけがどうなっているのかについてですが、病院あるいは訪問看護ステーショ ンなどの施設や運営に関する基準として、法令上看護記録が規定されているところです。  具体的に(1)の病院の施設基準です。地域医療支援病院、特定機能病院に関してです が、医療法や施行規則において、看護記録は施設基準の1つである診療に関する記録と して規定されていて、2年間の保存がされているところです。  2頁に医療法の抜粋がありまして、地域医療支援病院、特定機能病院についての基準で、 下線にあるように診療に関する諸記録がありと。3頁にいきまして、施行規則において、 それぞれ第2項に病院日誌、診療日誌、処方せんの記録について、看護記録が含まれて いるところです。これは特定機能病院などが、一般の病院に備えつけておくべき施設な り記録なりに加えて、きちんと備えていかねばならないという観点からこの基準が定め られております。一方、ここに資料としてはありませんが、医療法の第20条に一般の 病院に関する基準があるのですが、そこでは診療に関する諸記録はありますが看護記録 は含まれていません。  (2)です。これは医療保険の体系で、保健医療機関の責務である基準が定められてい ます。療担規則において、「保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿、書類、 その他の記録を3年間保存しなければならない」と書かれているところです。2番目の ○で、その具体的なものとして、「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続 きの取扱いについて」という通知において、入院基本料に関する施設基準の中で、看護 に関する記録について規定されております。  3頁にその抜粋があります。下の点線の四角です。これが「基本診療料の施設基準等及 びその届出に関する手続きの取扱いについて」でして、具体的には4頁の別紙3をご覧 ください。「入院基本料に係る看護記録」というのがありますが、この中に看護体制1 単位ごとに次に書く記録がなされている必要があるとされ、具体的に患者の個人記録と して、(1)の「経過記録」、(2)が「看護計画に関する記録」とありますし、「看 護業務の計画に関する記録」というのも記載されています。  1頁に戻ります。次に訪問看護ステーションの運営に関する基準です。これは指定訪問 看護事業の事業運営の基準について規定しているものです。介護保険法の体系、健康保 険法、老人保険法の規定に基づく体系で、それぞれ運営に関する基準が定められていま して、内容はほぼ同じですが、2年間の保存義務がかけられているものとして、訪問看 護計画書、訪問看護報告書があります。  具体的には、5頁をご覧ください。下半分の四角が、健康保険法及び老人保険法の規定 に基づく省令で、訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成がありまして、第17条で 「看護師等は利用者の希望、主治の医師の指示及び心身の状況等を踏まえて、訪問看護 計画書を作成しなければならない」とあり、その第3項ですが、「看護師等は、訪問日、 提供した看護内容等を記載した訪問看護報告書を作成しなければならない」とされてい ます。以上が看護記録に関する現行法令上の規定で、現在は病院、訪問看護ステーショ ンなどの施設や運営に関する基準に備えつけるべき資料という観点で、規定されている ことが伺えます。  続いて資料2です。他の医療に関係する職種の記録についてまとめたものです。まず1 頁目は助産録です。(1)にありますが、保助看法の第42条第1項に「助産師が分娩 の介助をしたときは遅滞なく助産録に記載しなければならない」という、記載の義務が 課されています。(2)には記載事項として、12項目にわたることが書かれています。 (3)では、保存義務があって5年間の保存が求められているところです。また、(4) には罰側がありまして、第42条の規定に違反、つまり記載義務の違反については50万 円以下の罰金となっています。  2頁です。次は診療録です。医師法第24条第1項において同じく記載の義務がありま すし、(2)にあるように、記載事項が定められ、同じく5年間の保存義務と50万円 以下の罰金が定められています。診療録、助産録から伺えることは、医療を独立して行 う医療職については、当然適正な診療の確保という観点、あるいは責任を明確にすると いう観点から、それぞれの業法、身分法において、記録の記載の義務が課せられている ことが伺えます。  続いて3頁です。下のほうですが、救急救命士の書く救急救命処置記録です。内容につ いては、(1)に記載の義務、(2)に記載事項、(3)に保存義務、(4)で罰則が 科せられています。救急救命士については、医師の指示の下に救急救命の処置を行うわ けですが、搬送されるまでの間の処置について、きちんと搬送先の医療機関の医師に正 確な情報を伝えて、医師の的確な診療を確保する観点もありますし、処置に何らかの過 誤があれば、その責任の所在を明確にする観点から記載の義務が課せられると考えられ ます。  5頁ですが、照射録が書いてあります。これは診療放射線技師の書くものです。同法の 診療放射線技師法の第28条に記載の義務があり、(2)として記載の事項があって、 (3)には罰則があります。異なるのは※にあるように、保存の義務に関する法令の定 めのないことと、詳しく見ると、記載事項について診療録にあるような処置の内容を書 くのではなくて、照射を受けた者の氏名、年齢、年月日、方法ということがあって、多 少処置と内容を書くというものと趣が異なっています。要は照射の内容というものは、 放射線技師も医師の指示の下で照射をするわけですので、照射の内容については診療録 の中の治療方法として記載されることがありまして、この記載の意義は、医師又は歯科 医師の具体的な指示の下に行ったかどうかを確認することになっています。したがって、 そういった観点から下の参考法令の第28条に照射録記載の義務がありますが、その第 1項の3行目をご覧いただきますと、「照射について指示をした医師又は歯科医師の署 名を受けなければならない」とあり、きちんと指示どおりに照射が行われたかどうかを 証明するということで、診療録や助産録と意義づけが多少異なっていることが伺えます。  6頁です。これは薬剤師法にあります調剤録です。薬局を開設した場合には、薬局開設 者には調剤録を備えなければならない義務があり、同じく調剤録の記載の義務、記載事 項、保存の義務、罰則が科せられるところで、医師や助産師と同じような扱いになって いるところです。以上が「他の医療関係記録に関する現行法令上の規定」の例です。  続いて、実際の現場ではどのような看護記録がなされているかは、後で関係する委員の 方から資料3に基づいてご説明いただきますが、資料4では教育の場面や国家試験では どうなっているかについて、教科書の抜粋を用意しました。  1頁です。この教科書では意義として、「看護師は観察により得た情報をアセスメント し、患者に必要な看護計画を立案し、実施する。ケアの経過も含めて、継続される看護 の科学的裏づけのためにも評価し云々」といったこと、また目的として、1)看護のケ アの質の証明、2)チーム医療を促進するための情報提供、3)として看護教育や研究 の資料とする、4)として法律上の資料となる、つまり裁判における証拠書類になると いうことです。  その意義づけ、目的づけを行った上で、2頁に種類とありますが、中程に「看護師によ って記録されるもの」として、看護記録、体温表、計画表などが記されています。なお、 ここの教科書では看護記録と体温表を別に書いていますが、実際の現場や看護協会など の指導指針などにおいては、看護記録というのはこれを全てを含む広い意味で取り扱わ れているようです。  参考資料1です。これは平成15年6月にとりまとめていただいた「診療に関する情報 提供の在り方に関する検討会」の報告書で、情報開示の観点からは看護記録がどのよう な位置づけにあるかが検討されています。2頁の「はじめに」をご覧ください。設置の 趣旨などを書いていますが、4番目の○の下から2行目ですが、「診療情報の提供等の 状況を把握、評価しつつ、今後の診療情報の提供等の在り方について検討する」という 検討の趣旨があり、下の○の3行目からですが、「患者と医療従事者が診療情報を共有 し、患者の自己決定権を重視するインフォームド・コンセントの理念に基づく医療を促 進するため、患者に診療情報を積極的に提供するとともに、求めに応じて診療記録を開 示すべきである」と基本的な考え方をまとめてあります。  同じく2頁の2で「本報告書における定義」のところですが、「診療情報とは」とあり まして、その2行目に「看護師等医療従事者が知り得た情報を言う」とあり、その下の ○で「診療記録とは」の中に、診療録、処方せんと並んで看護記録が書いてありまして、 3頁の2番目の○で「診療録の開示には診療記録を閲覧に供すること」とあって、看護 記録も開示の対象の扱いになっていることをご説明いたしました。  最後に資料5で、今回のテーマである「看護記録に関する論点」をご説明いたします。 ご覧いただいたように、医療法なり医療保険法の体系の中で、施設の管理の観点からの 規定があるわけですが、看護記録については保助看法の中で法制化されていいません。 そうした実際の場面で看護記録を書いているわけですが、何が問題なのか。さらに2番 目の○で、看護記録は協会のガイドラインなどに基づいてきちんと書かれているところ ですし、裁判等の法的証拠能力が認められている中で、法制化する意義・必要性はどこ に求められるのかが、1つの論点としてあろうかと思います。  その下の「一般に」というところですが、一方で医療に関する記録の意義というのは、 医療従事者が適切な医療を提供するために、その過程を記録し、自らの業務の的確な管 理を通じて適正な医療の提供に資することがありますので、そういった観点から看護記 録についても、記載というのは専門職として当然のものとして考えられるところではな いのかと。そうすると、患者に適切な医療情報を提供するという今日的な要請に応える ためには、法律において看護記録の記載を義務付けるべきではないのかということです。  それから、訪問看護ステーションについてご覧いただきましたように、看護師が管理者 になるわけですが、そこについては看護記録も法制的に位置付ける必要があるのではな いかという論点です。さらに、いま医療機能の分化と連携が求められているわけですが、 それを促進するという医療提供体制の今日的課題を推進していくためにも、記録の作成 を法制化する必要があるのではないかということが、大きな論点としてあろうかと思い ます。  仮に看護記録について義務付けということを考えた場合にいろいろと考えていかなけ ればならないことがありまして、具体的には(1)として、「記録記載義務づけの範囲 をどうすべきか」ということです。先ほどご覧いただきましたように、実際の現場では 入院医療を中心に書かれているということですので、必ずしも看護記録を記載していな い外来における記録はどのようにしたらいいのか、ということが大きな論点としてある かと思います。  2頁ですが、仮に保助看法に看護記録の記載を義務づけた場合には、看護師が書くべし となれば、医療機関ではない社会福祉施設等に勤務する看護師についてはどうしたらい いのかということも考えられるところです。さらに、記載事項としても、いま助産録や 診療録にしても、処置の内容などを書くのですが、一方で看護記録については看護計画 などを書いているわけですが、記載事項としてはどういったものを求めたらいいのかも 論点としてあろうかと思います。さらに保存の義務として、看護記録の記載を義務づけ た場合には、病院や診療所などの管理者に記録の保存義務を課す体系になるのですが、 そのことをどう考えるのか、さらに保存期間は何年が適当かということで、診療録や助 産録は5年ですが、一方で医療保険の体系に基づく看護記録は3年ですし、特定機能病 院などでは2年となっているところですので、保存期間は何年が適当かということも、 1つの論点になろうかと考えているところです。私からは以上です。 ○山路座長 看護記録にはどのような記載がなされているかについて、小島委員、坂本委 員より、それぞれの病院で使用されている看護記録について資料を提出していただいて おります。それぞれ10分以内で説明をお願いしたいと思います。小島委員からお願い いたします。 ○小島委員 資料3−1です。これは私どもが看護記録として整えているほんの一部です が、代表的なものをご紹介させていただきます。  この看護記録Iというのは、「健康認識」「健康管理」という左側に項目になっている 「栄養−代謝」「排泄」「睡眠−休息」「認知−知覚」「活動−運動」、その他「自己 知覚」「性−生殖」「役割−関係」「コーピング・ストレス」等々、この項目に沿って ヒストリーを取っていくもので、これは看護記録をいちばん最初に患者と出会った段階 で、この必要な情報からアセスメントのための情報収集で使っていくものです。これは 基本的に成人も小児も同じ考え方で展開していきます。  5頁です。「病態情報」というのは、これは医師のカルテ、外来カルテ等から、さまざ まな紹介状等からの情報を得て、最新の検査データがどうで、身体的な特徴がどのよう になっていて、医師の治療方針はどうであるか。それに基づいてどのような看護方針を 立てていくのか、看護をどのようにしていくのかといったことを書いています。プライ マリーナーシングをやっているところは、プライマリーナースが受け持ちの看護師の役 割について、「私があなたの受け持ちの看護師となりますが、どうぞよろしく」という ような印象等を書くことに使っています。  6頁です。これは「看護方針と問題リスト」ということで、それらの情報を基に、医師 の治療方針、患者はどのような治療、看護を受けたいかを、お話を伺いながら一緒につ くり上げていきます。それが「看護方針」となってきまして、基本的に私どものところ はPOSでやっていますので、それで問題リストが上がってきて、活動性、非活動性と いうように整理をしていきまして、これを使っています。  7頁です。これは看護記録の2号用紙と言われるもので、基本的にはPOSを書いてい ますが、その記録をここに書いていくものです。その次の看護記録IIIというのはもう少 しヴァイタル・サインを細かくチェックをする、インテイク、アウトプットをチェック する、処置が頻回に行われるものに使うもので、やや重症に使うものですが、これも看 護記録の一種です。  次は頁をつけていませんが、上のほうに「看護情報提供書」と書いていますが、これは 地域の連携の関連の記録に使うものです。これは転院等をされるときにその情報が必要 であるということを患者に確認をして、この情報を出してもいいかという合意の下にお 出しするものです。  10頁は「看護計画表」です。さまざまな情報を見て、受けたい治療方針、看護の方針、 患者がどのようにしていきたいかということの中から整理をしていく看護計画の表で す。問題リストを整理していって、期待される結果をここに持っていきたいということ で、これは日にちを追って見ていきまして、plan・do・seeを繰り返していきます。これ は最終的には担当のナースが責任を持って管理をし、主治医、受持医と確認をしながら 進めていくものですので、ケアプランということになるものです。  ラストの11頁ですが、これは入院の看護サマリーです。最終的に患者が退院されると きに作られるもので、診断名から始まって、入院された目的・理由、看護の目標・方針、 入院中にどのような経過をたどったか。真ん中の辺りは退院指導はどのようなことが行 われたのか、今度外来にお出でになるときには特にどのようなところに注意してほしい というようなことが、継続して看護が行われるようにしていくものです。あるいは残さ れた問題が全くなくてお帰りになる方もありますので、その看護の達成度を明らかにし ていくということで、これは最終的に病棟の責任者がきちんとサインをしていくもので、 非常にたくさんある看護記録の中から、一般的な看護がエビデンスに基づいて、患者の 考えをよく伺ってやり取りをして、このように進めていくという、一連の代表的なもの を説明させていただきました。以上です。 ○山路座長 次に坂本委員にお願いいたします。 ○坂本委員 NTT関東病院の事例をお話しさせていただきます。いま北里大学がやられ ているような内容を、2000年に電子カルテになりましたので、いまある流れを電子カル テの中に構築した形です。1頁の「入院患者ケアシステム」をご覧ください。ナースが どのように情報を取って、ケアをして、記録をしていくかの流れが書いてあります。「デ ータベース」というところが情報を取るところです。  どのようなケアをするかを考えるところが「診断から成果指標・看護介入」と言いまし て、いまアメリカから入っているNANDAという看護診断を用いています。それから ナースが計画を立てて指示を出した場合に、それらが看護オーダーというところから各 グループに指示が出されて、この指示はナースからだけではなく医師からも出てきまし て、そのようなものをもって結果として「経過記録」というところの「フロー型記録」 というところで、これは医師と共有で温度表のところを想像していただければいいと思 うのですが、温度表にどのような状態であるかの結果を書いていくことと、それ以外に イベントが起こったときにSOAPで患者の状態を、これも医師、薬剤師、栄養師、ソ ーシャルワーカー等と共有して書いていくところがあります。そして最後にサマリーと 退院サマリーとなっています。  これを1つずつ説明させていただきます。経過を書いているところをもう少し詳しくし たものが「入院看護計画・記録」というところです。これは後で見ていただくとします。 次に具体的にどのようにナースが記録をしていっているかですが、患者がお出でになっ たときに基本情報というところで、それぞれがどのような状態であるかをこちらに記録 をしていきます。そして、医師が取った情報とナースが取った情報、もしくは薬剤師が 取った情報等が必要なところは互換性があって、どちらも見られるようになっています。 こちらで患者の状態がどうであるか、生活上どうであるかを取っていきます。  次の4頁はドクターと共有しているところです。5頁はどのような看護計画があるかと いう場面です。これは大体449ぐらいの看護の計画をすでにつくり込んで使っていくと いう考え方です。1回1回患者に計画を立てるベースになるものが、つくり込んでいる ものをお出でになった患者にプラスしていく考え方を「系統」、「疾患名」、「経過」 というところで選んでいきます。  6頁はどのような疾患が入っているかを選ぶ画面です。この辺は同じような画面で飛ん でいっていただいて、7、8頁も同じです。検査や治療に関してもそのようなものをつ くり込んでいますので、該当する患者がいらしたときはそこから選んで考えていくとい うことです。  9頁ですが、これが医師と共有している看護計画で、看護計画をどのように実行するか という場面が温度表の下に出てきまして、医師もこれを見ながら患者の状況を見ていく ところです。  10頁はサマリーというか、要約していく場面です。最後に11頁をご覧ください。ここ は今後論点になる大きなところだと思います。それぞれの患者に起こった状況をSOA Pで書いていきます。この11頁の場面は、呼吸器科の医師が何時何分に書いたかの記 録が出てきます。次にナースが患者にかかわったときに、先ほどの温度表のところにい ろいろなことを書く以外にいろいろなことが起こった場合は、こちらにナースが書けば、 看護師、どの病棟、何々、何時何分に書いたかということで、医師の場面と同じような 形で経過的にずっと出てきます。いちばん近い情報から見ていくと、書いた順番に患者 の情報がわかっていくような記録になっています。  12頁がそれらを選んでいく場面です。誰が書いたかを選ぶときは「職種」で絞り込ん でいく方法があります。何時に書いたかがどのように表われるかと申しますと、これは 指紋で登録した人がその時間に表われるということですので、看護師であるなら「看護 師誰々」と書くところから出てくることになっています。  このような過程で看護記録をしていまして、特徴的なのは、医師とナースと理学療法士、 栄養師、薬剤師が、イベントに関してはかかわった職種がSOAPでイベントを書いて いくところかと思います。  それから外来ではナースはどうなのかと申しますと、外来においては先ほどの看護計画 の場面はありません。外来のナースはどのようにしているかと申しますと、SOAP画 面に、患者から得た情報で診断にとって必要だとか、大変問題を抱えている患者である という場合は、外来のナースがドクターと同じ場面に入って書いております。紙のカル テからどういうイメージかと申しますと、ドクターの診療録、2号用紙の中に他の職種 が入り込んで書いているイメージです。そうしますと、看護記録の2号用紙は自ずとも うないことになります。 ○山路座長 次に菊池委員よりご説明をお願いいたします。 ○菊池委員 日本看護協会で、「看護記録及び診療情報の取り扱いに関する指針」を発行 しています。これは看護記録の開示を促進することと、個人情報を保護するという観点 から、看護職としてこのようにすべしという在り方を示したものです。その経緯や意図 については1頁の前文のところに書いてあるのですが、インフォームドコンセントの理 念に基づく医療が求められてきているということで、看護記録の開示を含めた診療情報 の提供が、医療の透明性の確保や患者と医療従事者の情報共有による医療の質の向上、 患者の知る権利及び自己決定権の尊重、患者と医療従事者との良好な関係の構築を促す ものとして非常に重要ということで、積極的に取り組むことが求められているというこ とでつくっております。  本会としましては、この指針の前に、まず看護職員の行動指針を示した「看護者の倫理 綱領」という基になるものをつくっておりまして、それが18頁にあります。  これは「参考資料1」と書いてありますが、2003年に改定しました。左のほうの条文 の4番に「看護者は、人々の知る権利及び自己決定の権利を尊重し、その権利を擁護す る」ということで、その前のほうには「対象となる人々との信頼関係を築き、それを基 に看護を提供する」ということ、5番目には「守秘義務を遵守し、個人情報の保護に努 める」ということを、まず倫理綱領のレベルで決めています。  19頁の4番の条文を解説した中の最初の段落で、「自己決定の権利を尊重する」とい うことの解説をしています。「人々は、自己の健康状態や治療などについて知る権利、 十分な情報を得た上で医療や看護を選択する権利を有している。看護者は、対象となる 人々の知る権利及び自己決定の権利を擁護するために、十分な情報を得る機会や決定す る機会を保障するように努める」ということで、「診療録や看護記録などの開示の求め に対しては、施設内の指針等に則り誠意をもって応じる」というふうに看護記録につい ても開示の求めに対して誠意をもって応じる、というようなことを行動指針の倫理綱領 の中で示しております。  1頁に戻ります。看護者の倫理綱領のところでそのように行動指針を決めておりまして、 その下に看護者に共通の実践レベルを記述した「看護業務基準」というのをつくってお りまして、その中で「看護実践の一連の過程は記録される」としまして、看護記録を記 載することは看護者の責務と位置づけています。2000年にはそのような倫理綱領や業務 基準に基づいて、看護記録の開示に関するガイドラインを公表して開示の促進に努めて きたわけですが、同じ年から看護記録と診療情報開示に関する継続教育プログラムを毎 年実施しております。  2003年に個人情報保護法が成立しましたので、この開示のガイドラインを改定しまし て、今日お配りしました指針を作成して、会員に配付しているということです。看護記 録は、医療安全の上でも、看護の質を確保する上でも重要なものと考えておりまして、 この指針の中で看護記録のあり方を示しています。  それが8頁に書いてあります。7番の真ん中辺りです。「診療記録開示の目的に適う看 護記録のあり方」ということで、まず「看護業務基準」というところから抜粋していま すが、「看護実践の一連の過程は記録される」ということで、「この記録は、看護職者 の思考と行為を示すものである」と。「記録というのは、他のケア提供者との情報の共 有や、ケアの連続性、一環性に寄与するだけでなく、ケアの評価やケアの向上開発の貴 重な資料となる」と考えています。  9頁に記録の目的や意義を7項目ほど書いています。1番目に「看護の実践を明示する」 こと、2番目に「患者に提供するケアの根拠を示している」ということ、3番目に「医 療チーム間、患者と看護者の情報交換の手段とする」ということ、4番目に「患者の心 身状態や病状、医療の提供の経過およびその結果に関する情報を提供する」ということ、 5番目に「患者に生じた問題、必要とされたケアに対する看護実践と患者の反応に関す る情報を提供する」ということ、6番目に「特定機能病院等の設立要件や入院基本料の 診療報酬上の要件を満たしていることを証明するもの」であるし、7番目に「ケアの評 価や質向上及びケアの開発の資料とする」と、このような目的や意義があるということ で、その記録の整備については下のほうに書いてありますが、患者の個人情報、看護計 画、患者に行った治療、処置、ケア、看護実践の内容を記載した経過記録、継続看護の ための看護サマリーというもので構成されると考えています。  医療事故の場合には、特に医療事故が発生したときの記録というのは正確に記す必要が あるということで、31頁に「医療事故発生時の記録」ということで、別途詳しい記録の あり方をそこで示しておりまして、いつ、どこで、誰が何をどう実施したかが正確にわ かるように、経時的な記録できっちり正確に記録することを、別のリスクマネジメント ガイドラインの中にも示しています。  このように看護記録は、患者の状態とともに、看護職員の看護行為の目的や必要性の判 断、実施した内容を表したもので、医療、看護の継続性を図ること、診療情報を医療従 事者あるいは患者との間で共有すること、看護の内容を評価する指標として、非常に重 要だと考えていますので、これをきっちり法的に整備していくことが重要と考えていま す。  先ほどご説明にありましたように、すでに診療情報の提供等に関する指針や個人情報保 護のガイドラインにおいても、看護記録は診療情報の1つであることは明記されて取扱 いが診療録と同じような扱いになるようには記載されておりますので、そういうガイド ラインレベルで看護記録というものが重要であって、同じように考えられているという ことですが、法的なレベルでは医療法の中の地域医療支援病院や特定機能病院だけにし か記載義務がないということで、その辺がまだ未整備ではないかと考えています。以上 です。 ○山路座長 いまからご自由にご議論していただきますが、できれば資料5に示された 「看護記録に関する論点」を再度見ていただいた上で、あまり論点を広げさせないとい う意味で、できるだけこの論点に沿っていただければ議論がしやすいのではないかとい うことを付け加えまして、ご議論いただきたいと思います。  先ほどの菊池委員のご説明に関して少し伺いたいのですが、「法制化の方向」というこ とを言われましたが、現在施設基準で示されている特定機能病院以外にも、全体的に広 げるべきであるというお考えですか。 ○菊池委員 はい、そういうことです。  逆に質問なのですが、先ほどの資料1の説明で、地域医療支援病院と特定機能病院の施 設基準のみに看護記録が入っているということなのですが、一般病院でもそれは必要な ものだと考えているのですが、なぜこの2つにしか入っていないのかということについ てお聞きしたいのですが。 ○鎌田看護職員確保対策官 率直に申し上げまして、明確にその趣旨等の記録はなかった のですが、医療法の第20条では、通常の病院について、その病院の使命に沿って適正 な医療を行い得るために有すべきものについての最低基準というような意味づけでし て、その中に診療に関する諸記録として規定があるのですが、ご指摘のようにそこには 看護記録はないというところです。それがなぜないのかについて、なぜ書かなかったの かという明確な記録はないのですが、その後にできた特定機能病院あるいは地域医療支 援病院などにあることを考えますと、これは一定規模以上の病院を想定しているわけで すし、また性格的にも通常の病院が備えておかなければいけない施設あるいは記録以外 にも、きちんとしていることなどが考えられているわけですから、そこから私の個人的 な推量で恐縮ですが、一定規模以上の病院ですと、当然ベッドも多いわけですから、入 院が当然あると思われます。そうすると、当然看護記録は記載されるだろうということ で、その観点から特定機能病院なり、地域医療支援病院については、備えておかなけれ ばならない記録として看護記録を明記したのではないかと思われます。  一方で、あえて申しますが、診療に関する諸記録の中に看護記録が書いてないというわ けではないので、むしろ普通の病院でも当然にやっているだろうということで、あえて 最低基準として求めなかったのではないかということで、一方、一定規模以上の病院で あれば当然入院医療もあるだろうから、看護記録も備えるべきだという考えで規定され たのではないかと推量されるところです。 ○山路座長 他にございますか。 ○谷野委員 診療に対する諸記録というのは、私は当然看護記録は入っていると思うので す。変な話ですが、何かあった場合の証拠保全はみんな看護記録から持って来ます。そ れが1つです。  看護記録だけを法制化するということは、いまはチーム医療の時代ですから、そうすれ ば他のコメディカルも全部記録は法制化しなければいけないという堅苦しいことにな るので、それは診療に関する諸記録の中で看護記録も含むとして、看護記録だけではな く他のコメディカルの記録も含むという解釈では駄目でしょうか。 ○山路座長 いまのお話について他の委員の方からご意見をいただければと思います。 ○菊池委員 いまチーム医療ということで、いろいろな職種が患者にかかわっているとい うことで、本来なら患者を中心として、患者にいろいろな医療チームがかかわったもの がきちんと記録される、かかわった人が全て記録するという記録が必要なのではないか と思います。ただ、いま日本の法律はそのようになっていないので、医師は診療録、助 産師は助産録ということで身分法の中で決まっています。  看護の場合には入院患者に対して非常に書かれていますし、それがまた重要な意味を持 っているということが実際にありますので、これは法的に整備していただいたほうがい いのかと思っています。 ○坂本委員 看護の記録というと看護記録というところで、すぐに患者の状態を書くとか いろいろなことを考えがちなのですが、よくわからなくなってきているのは、例えばド クターが注射のオーダーを出したときに、いま静脈注射もオーケーになっていますので、 その注射をナースがしたことと、その結果についてどうであるかについては何も決めら れていないわけです。書きなさいとは決められていないわけですから、裁判などで患者 に大変不利な状態が及ぶ可能性があると考えますので、どのようにして看護記録は、と するのかどうかはわかりませんが、もう少し細かく練らないといけないと思いますが、 ある一部は絶対に書かなければいけないというところで決めないといけないのではな いかと思います。 ○川端委員 いま裁判の話が出ましたので、私が医療事故の裁判に携っている立場から申 し上げますと、今日社団法人日本看護協会のガイドラインを見て非常に感心しました。 このような形で全ての看護記録が記載されていれば本当にいいと思いました。実際には 病院によりけりなのですが、例えば看護記録を修正液で消している、あるいは真っ黒に 塗り潰して一部が読めなくなっているというのは、証拠保全に行くと頻繁に目にします。 神経質な裁判官ですと、修正液で消したところを裏から透かして見て、元の字が何であ ったかを見ようとします。もちろんほとんどは単なる誤記を直しているだけなので、私 などは全然気にしないことが多いです。そのような形で、看護記録というのは重要な裁 判資料として扱われているわけです。  これを法制化して記載を義務づけるのと、義務づけないのとの差は、一生懸命やるとこ ろがガイドラインに沿ってやっていればそれでいいわけですが、当然その場合にはそう ではないところが出てきても仕方がないということになるわけです。しかし、一生懸命 ガイドラインに沿ってやっているところでだけ医療事故が起こるわけではなくて、多分 確率的には逆になるでしょう。患者側の立場から言えば、正確な医療記録があることが 重要ですし、その医療記録の中には、その患者がどういう状態においてどのような処置 を受けたのか、どのような投薬をされたのかといったことが正確に記載されている必要 があると思うのです。   それは医師の診療録、医師の指示簿だけではわからない今の記録のシステムになって いるのではないかと思います。   実際問題として、病院によっては、医師の診療録の中に処置、投薬の記載があり、指 示簿にもあり、看護師の書く温度表の中にも記載があり、看護日誌の中にもありという ことになっていて、それが全体として統一的に、いつ何がなされたのかを正確に理解す るのが非常に難しいという例があります。抗生物質の何を、いつ、どれぐらいやったの かというレベルでさえ、裁判所から鑑定を求められた医師がそれを読み取って記載する 場合でさえ読み方が不統一になって、実際には何が行われたのかがよくわからない部分 が出てくることさえあるわけです。その辺の記録が正確になされていることは、医療の 事後的な評価においては絶対に必要なことであり、そのような記録が全て法律に根拠づ けられていることでなければ全部の医療機関に行きわたらせることはできないという ことになると思うので、私は現在の看護記録が施設の基準の履行という形でしか位置づ けられていないというのは問題だと思います。 ○山路座長 他にご意見があればどうぞ。 ○平林委員 いまの議論とどうかかわるのかはわからないのですが、現実問題として、資 料5のいちばん最初の○にあるように、法制化されていなくても現実にやっているので 問題はないではないかという点については、いま川端委員がおっしゃられたとおりだろ うと思います。同時に、百歩譲って、仮に全部の病院ないし施設がきちんと理想的な看 護記録を付けていたとしても、そういう事実があるからそれでいいのではないかという 問題ではないのだろうと思うのです。それはむしろ看護というものがどういうものであ って、どのような職種であって、よく看護は専門職だと言われていますし、3つ目の○ の中にも「専門職として当然のことではないか」という記述があるところに、1つのポ イントがあるのだと思います。  その専門職であるということが、当然のことに専門職として1つの行為をするときに、 患者の状態をアセスメントして、判断をして、最も適切であるという介入行為をしてい くのだと思うのです。それは診療の補助を行うときにも行う必要があるでしょうし、ま たそれとは別に療養上の世話を行うときにもそういった判断行為があって、その判断行 為をきちんと看護記録の中に残していくということが、専門職として極めて重要であり、 そのことが患者のためになり、医療の安全につながっていくし、専門職として自らを確 立していくことにつながっていくのだろうと思っていますので、そのような観点で、理 念の問題として、専門職としての看護は、他の専門職である医師や薬剤師と同じように、 きちんと記録を書いて、自分がやったことをきちんと残して、そしてそれを後できちん とチェックして、そして患者のために業務活動をしていくと、そこに意味があると思う のです。  そして、そのことが結果として、訴訟になったときに、どういうことをやっていたかを それによってきちんと証明されることによって、よく言われるのですが看護師を守るこ とにつながっていくわけで、それはあくまでも結果であって、その結果と目的とが逆転 することだけはあってはならないだろうと思っています。 ○辻本委員 裁判というようなことが主に語られている、これはまさに時世だとは思いま す。ただ、残念だなという思いをもってお聞きしています。そうした訴訟対策というよ うな位置づけで、ナース自身の身を守るということ、それもとても大事なことと当然に 思うのですが、書いてばかりいるナースという、患者にとっては本当はもっとそばにい てほしいとか、話を聞いてほしいというときに、書かなければいけないから、訴訟対策 だから、患者のベッドサイドに行くよりも書くことを重視するという現状が、本当にそ れで患者のニーズに合うのかということは、少し疑問を感じます。  もちろん記録ということが法制化されることで、看護の専門性が向上することも否めな いとは思うのですが、私たち患者は、いま自立支援ということを厳しく求められる中で、 ナースがどうかかわってくれるかということで大きく二分される状況にありますので、 その辺の必要を感じ、なおかつそれでも書いてばかりいるナースの姿が目に浮かぶと、 患者が求めているのはそうではないという気持も一方ではします。意見でも何でもない かもしれませんが、そのような思いを抱きました。 ○平林委員 いま辻本委員がおっしゃられたことは非常に重要で、法制化して看護記録を 書かなくてはいけなくなったから書いてばかりいる看護であったら、それは本当に本末 転倒で、それであったら看護専門職などと言わないでほしいと私は思います。  ですから、もちろんそうはならないであろうということを前提にしての議論であろうと 思いますので、先ほど少し余計なこととは思いつつ結果と目的とを混同してほしくない ということを、辻本委員と全く同じような思いで申し上げたのです。 ○遠藤委員 私も全く同様の意見です。その問題というのは臨床の中では20年ぐらい前 からずっと討議されてきて、その結果がPOSであったり、先ほど坂本委員が説明して くださったように、いかにペーシェント・オリエンテッドするかという形でものを書い ていくとか、IT化を活用していくかということで、方法の議論はその次の議論だと思 っておりますし、現実的に現場ではそれは大変な努力で、記録や申し送りという、大事 なことなのですが、なるべくベットサイドに行けるための改善は相当なされていて、記 録に要する時間も相当短縮を図っていると認識しております。 ○坂本委員 辻本委員からお話しされたことは重々私たちも気にしていることなのです が、実はこれは反対なのではないかと思うのです。いろいろなところで看護記録が大変 不明確な状況になっていまして、何か問題があったときは「証拠だからきちんと書いて いなければ駄目ではないか」と言われて、施設基準等のいろいろなこと以外は書かなく てはいいのだというところで、現場にいるナースたちはどこに線を置いていいのかがわ からなくなって、施設ではその状態を知るために書くのだということが起こってきたり、 そのときの看護部長であり、病院長であり、いろいろな人たちの考え方によって、きち んと書くのだとなってみたりと、大変不安定な状況にあると思います。  そういう意味では、どのところにおいても、ナースが何をしたときにはどのようにする のだということを、明確にきちんと義務づけるということを置くほうが、むしろ安定し ていろいろな考え方が出てくるのではないかと思います。いまのところは全くバラバラ な考え方でいっている気がします。 ○小島委員 いま坂本委員が言われたことと似ておりますけれども、ナースが実際に看護 するときには、どのような判断や考え方で看護を行ったのかという記録をきちんと残す。 そして、残した記録が適切であったかどうかというチェックをする。  先ほど監査のことは申し上げなかったのですけれども、実際にやったことが患者のニー ズに合っていたのかということで患者中心の医療や看護につながっていくということ でPOSをチェックしていくような書き方。書き方の方法論はどうであれ、どのように ナースが判断をし、それを具体的にどのように記録に残すか。そこの判断をしたところ と記録にきちんと書かれていくことは非常に重要なポイントではないかと思うのです。  辻本委員が確かに記録を書いてばかりいるとおっしゃっておりますが、これはIT化を することで、もう少し効率的になるかもしれません。しかし、細かな看護記録があるこ とで、24時間3交代で大切な情報がつながっていくということもあります。確かに看護 記録を取り巻く、時間が費やされているという問題等、種々問題がたくさんございます が、そういうところは大切に考えながら取り組んでいきたいということはあるかと思い ます。 ○菊池委員 辻本委員がおっしゃるように、看護記録に時間をとられすぎているのではな いかということは問題になっておりまして、それは、できるだけ簡潔に、効率よく書く ことが必要です。先ほど説明した看護業務基準でも最後のほうに、必要な看護情報をい かに効率よく、利用しやすい形で書くか、記録するかが重要である、と付けてあるので す。効率よく、ポイントをちゃんと押さえて短時間に書く。それだけの判断力や文章力 等を身につけるためには、1つには、基礎教育や新人研修でも、きちんと判断できるよ うに教育や研修を充実していくことも重要になってくるのではないかと考えます。効率 よく書いて患者のそばにいる時間が少なくならないようにする。看護職としては、これ からもそういうふうに努力していこうと思っています。 ○辻本委員 少し議論がずれるかもしれませんが、今年4月1日の個人情報保護法施行後、 微妙な患者の側の変化ということで、相談の中に、いままでは不信感がある人が記録を 手にしたいというニーズだったのですが、入院した記念に記録を手にしたい。しかし、 ドクターが書いたカルテは、カモメが飛んだりミミズが這っているそうだから、入手し たところで読めやしない。でも、看護記録は日本語で書いてあるそうだし、関わってく れたそれぞれのナースが私をどんなふうに捉えていたかということがもし客観的に見 えるなら、是非入院したときの記念に入手したいという相談が届くわけです。ですから、 ある意味ではガラス張りになることが質の向上につながる。そうしたことは大歓迎です し、開示に耐え得る看護記録ということが、ひいては看護の質が高まるということであ れば、もちろんそちらの方向も大事だと思います。  しかしその一方で日本中の看護レベルの差があまりに幅広いだけに、一定基準で線を引 いたときに、そこでどういう問題が起きてくるのだろうということが、現場の詳しいこ とはよくわかりませんが、患者の立場としては、大丈夫かなという一抹の不安をぬぐい 切れないような気がしています。 ○谷野委員 ちょっとわからないので素朴な質問をします。看護論がさまざまあって、看 護記録の方法論がさまざまあるように私は思うのです。そこで法制化するために、最低 限どういうことを看護記録に残すということは、看護専門職で、それは合意ができるよ うな問題なのでしょうか。どういう看護論であろうが、どのような記録方であろうが、 看護記録というのは千差万別あるように私は思うのだけれども、共通項として、この記 録は最低限こうあるべきだということは法制化して残せるものなのですか。 ○坂本委員 残せると私は思います。ただ、自分の病院の中でいかに効率的にその患者を 見ていこうかということで工夫をしながら、また患者の見方もある一定のところに方向 性をつけようということで理論も用いたりしているのですが、そういう理論のところに 入らないで、患者のケアとしてしたことについては記録をするとかという細かい話では なくて、きちんと絞って目線を合わせていくということは可能だと思います。 ○菊池委員 私も同じ意見です。先ほど看護記録の構成要素ということで、看護計画、経 過記録などと簡単に説明しましたが、そういう内容について、記載する書き方で集約す ることもできると思います。  先ほど厚労省から説明のあった資料2の診療録の記載事項についても4点書いてあり まして、非常に大まかな書き方です。実際の様式は病院によって違うということはあり ますが、書かれるべき内容については、ある程度統一したもので合意はできると思いま す。 ○山路座長 医療の安全、患者にとって法制化することが本当にプラスになるのかどうか、 そして法制化するためのコンセンサスや最低基準のようなものをつくることができる かどうかという議論だと思うのですが、ほかにいかがですか。 ○青木委員 私は、医師としての病院での勤務時代を含めて、いままで、看護記録をしっ かり書きなさいという指導を受けて看護婦たちが一生懸命に書いている時代、それから、 そうでなくて、もっと患者に付きなさいという指導があってそういう方向に流れた時代、 これの繰り返しのように思います。  私自身の感じで言いますと、勤務時間中に書くことに集中できる時間があるようでは、 と言うと語弊がありますが、書くことがたくさんできる状況では、あまり感心だとはい えないのです。私の周囲では、ほとんど勤務時間が終わってから書いていらっしゃると いうのが現状です。だから深夜、終わっても11時ごろまで帰れないというのが、特に 新卒で入ってきた人たちの現状だと思います。  私は自分自身が書いているとは言えませんから、言葉にすることは恥ずかしいのですが、 要領よく、必要なところをきちんと書くということは絶対に要ることです。しかし、本 当に要領よく書いているか。  私は、今はそういうわけにいきませんが毎朝、出れば自分の受け持ちの患者の看護記録 をまず読むという生活をずっとしてきましたから、そういう意味では非常に大事なので す。どういうふうにやっていくかという内容を指導することがいちばん大事なのであっ て、法制化というのも、やっていないところがあるのだから、これはやらせなければい けないという観点ならば致し方ないのでしょうけれども、きつくそういうことを法の中 に書いていくということは、すべてのことがよい方向には先で向かわないと思いますか ら、法文を作るにしても簡潔に書くべきであると私は思います。 ○石渡委員 先日の検討会の中で、新人看護師がどのぐらい職から離れていくかというよ うなお話があった中に、1つは適性的な問題もあるかもしれないが、1つは非常に業務 がきついというようなことも理由としてあったと思うのです。その中で、いま青木委員 が言われたように、いわゆる勤務時間の間に看護記録まで、全て記録を残していくとい う、そういう観点から考えた場合に、要するに超過勤務というのは、勤務体制の中でお かしいと思うのです。もし勤務時間の中で全部記録をとっていくということになると、 先ほど、顔が見えない、患者に接する時間が少ないということが出ましたが、そういう 業務体制が出来ていくのではないかということを危惧します。  先ほど座長が言われたように、法制化していく場合には、必要最低限のところは法制化 する必要があろうかと思うのですが、それ以外の理想的な看護ということになりますと、 それはガイドラインのレベルで抑えていくということが必要ではないかと思います。で すから、法制化する場合には必要最低限といいますか、介護をする場合、あるいは看護 をする場合に、業務の上でここだけは絶対必要なところだけに抑えて、あとはガイドラ インのところで指導していくのがよいのではないかと思います。 ○平林委員 最終的に法制化をするというときは、いま石渡委員がおっしゃったような形 で行かざるを得ないと思うのですが、現在の時点で、例えば先ほど菊池委員が質問され たと思うのですが、一般の病院と地域医療支援病院と特定機能病院とで診療記録の取扱 いが違っているではないかというのは、残念ながら厚労省のご説明ではいまひとつ納得 はいかないわけであります。仮に一定規模以上の病院だけというのであれば、一般の病 院だって同規模の病院はあるわけですから、規模だけの問題ではないように思います。 ですから、そこら辺のところを、まとめの段階に至るまでにもう一回検討をしていただ く。全体のバランスが、現行法の中でも崩れているところがあるという問題があるので す。それから、保存期間について2年と3年というばらつきがありますので、そこら辺 はすぐにでも直せるのではないかと思いますので、それも視野に入れてまとめをしてい ただければありがたいと思います。 ○坂本委員 くどいようですが、看護計画と看護の経過がどうであるか、介入は何をする かということも重要だと思うのですが、ドクターの指示によって行った行為に対しての 記録というのは絶対に書くべきだと思います。それから、そのときの患者の状態を、も しナースが実施したりナースがそばで見ているならば、そのときの状態を書くというこ とは、ある意味では義務づけないと、患者にとって大変なリスクを抱えることになると 思うのです。ドクターが指示を出して、きちんと処方せんに書くということを言われて いるならば、実施した人が実施した責任で書く。すべての看護記録がどうだということ になったら大変問題があるので、すべてを一言で語れないのですが、せめて生命危機的 なことだけでもちゃんと義務づけていくということは重要だと思います。 ○山路座長 大体意見は出尽くしたようですので、看護課長に、いままでの議論を受けて お話いただきます。 ○田村看護課長 ただいまの先生方のご意見を伺いますと、レベルはまだまだ議論しなけ ればならないが、看護記録の必要性、あるいは一定程度の義務づけは必要だという方向 でのご議論ではないかと思います。  資料5、看護記録を義務づける場合の論点という中で、特に外来における記録の問題、 それから、看護職の働いている場がいま非常に広がっておりますので、入院の場合以外 に社会福祉施設等で働いているナースに対してはどのようにしていったらいいのか、と いうようなご議論を少しいただければありがたいと思っております。 ○山路座長 その点に関して、いかがでしょうか。 ○菊池委員 入院患者についての記録はある程度把握しているのですが、いま課長のおっ しゃいました外来の記録、その他の社会福祉施設等の記録がいまどういう状態になって いるかということについて、日本看護協会としてもまだ把握できていないという状況な のです。  ただ、外来につきましては大病院、例えば北里大学病院のようなところは、外来の場合 も、結構侵襲性の高いことをやった場合には記録をちゃんと残していらっしゃいますし、 保健指導等をやった場合は残していらっしゃるのではないかと思いますので、外来が全 然書いていないということも、ないのではないかと思います。法制化ということを考え る場合には、その辺がどうなっているかという実態を把握をする必要も、その前段階と しては必要なのかなと思いますが、看護課のほうでは、その辺の把握はしていらっしゃ いますか。 ○坂本委員 外来の記録というのは、いま大変問題になっています。というのは、私ども の病院は電子カルテなので、ナースが書いてドクターに情報を渡すということをしてい るのですが、前のときは外来に看護記録がなかったものでメモでドクターに情報を渡し ていたわけです。そうすると、その情報が消えたり、患者が言ったのにその先生は全然 聞いてくれないというようなことがあったのです。いまは診療録の2号用紙の中にナー スが入り込んで書くということをやっているのですが、聞いた責任といいますか、患者 が言ってナースが聞いたのに、それは誰が責任をとってくれるのかという問題が生じて きます。ではドクターがすべて問診でやるのかということになると大変時間がかかりま すので、ナースがいろいろなことを看護師としてやるわけですが、その記録を残さない と、患者の集合された記録とならないわけです。そういう問題を抱えています。電子化 すると、それは結構できるのですが、まだまだナースたちは、記録してよいのかという 気持がある。保健指導もそうなのですが、外来記録も、ナースが関わってケアをしたこ とにおいては記録をしなくてはいけないということを書いておかなければ、何をやって いるのかわからないということになってきます。もう明確になりつつありますので、こ れも同じだと私は思います。まだまだ整備はされていないと思いますが。 ○小島委員 外来の記録に関しましても、先ほどご紹介しましたように、外来につながる 問題点というものを提示してまいりますので、それを中心に見ていく。そして、実際に 行ったケアというのは医師と一緒に2号用紙の中に書き込んでいきますが、それも検討 することは多くございます。ただ、処置をしたこと等はきちんと看護録に入ってまいり ますが、外来記録をどのようにしてもっと効率的にしていくかというのは問題点にはな っております。また、保健指導等につきましては、どのような時間帯にどのような保健 指導をやって、次にどのような課題があるといったようなことは2号用紙に残されてい きます。それが私どもの紹介です。  先ほどの意見で出ておりますように、社会福祉施設等他のところの看護記録がどのよう になっているのかというのは、私どもはよくわかりませんので、これを機会に、実際に どのような記録が行われているかというのを少し調べてみるということはいかがでし ょうか。私どもの中で把握できていないこともございますし、全体的に記録がどのよう に病院以外のところで行われているかを、是非調べていく必要があるのではないかと思 いますので、そのことを問題提起したいと思います。 ○坂本委員 もう1つ問題になるのは救急センターのことなのです。救急センターで、家 族とのことも含めて、いろいろなことをやった結果、ドクターが打った注射だけしか書 いてないし、出していないというようなことがあったりすると、患者にとって大変不利 益になるということで、周辺状況でナースが関わっていることを記録に残すかどうかと いうのは、私どもの病院では大変問題になっています。というのは、こちらにとって不 利益ではなくて、患者にとって不利益といいますか、後からいろいろなことが起こって きたときに「あのとき頭が痛いって言ってたじゃないか」というようなことが問題にな って、それはどこにも残っていないということが起こってくるもので、観察した状況を ナースが書いていくということに持っていかざるを得ないのではないかと今思ってい るのです。そういうところも、まだまだ整理されていないところがあります。 ○山路座長 いざこういう形で法制化の方向で考えようとした場合には、検討課題がたく さんあるということですね。 ○坂本委員 ただ、これは医療安全の問題ですから、「患者にとって」というところから 考えていくと、いろいろな調査をして整備していかないと、患者にとって大変損をする といいますか、大変不利益になる人というのが出てくるということが事実です。 ○平林委員 いま北里大学病院とNTT東日本関東病院の例をご紹介いただいたわけで すが、この点につきましても、先ほど辻本委員がおっしゃっていた、看護全体の中でい うと、かなりのばらつきがあるということを私は危惧するわけです。ある意味、北里や NTTはトップレベルの病院だと思いますが、そうでない病院外来もありますし、診療 所における看護師もいるわけです。だから、外来における看護のあり方というものを看 護全体としてもう一回きちんと議論をしていただきたいと思うのです。これは法律化の 問題ではなくて、むしろ看護の問題として。従前あまりきちんと議論されてこなかった ところだろうと思いますので、是非そこら辺についての議論を深めていただきたいとい うのが1点です。  もう1つは病院以外の、福祉施設、学校や養護施設や養護学校等で看護師が管理をする ということが現実問題として起きているわけです。そこでは医療との連結をする重要な 役割を看護が果たしているので、病院における看護師の役割とはまた違った役割が求め られていると思います。いま小島委員がおっしゃったように、調査をすることも結構だ ろうと思いますが、その点も含めて、少し違った観点でこの問題を考えていくべきだろ うと思います。そして基本的には、看護師である以上は記録を書かなくてはいけないと 私は思いますが、では何をどう書いていくかという点では少し違いがあってもいいのか なと思っております。 ○山路座長 そこら辺のところをこれからどうしていくのかという問題提起ということ で受け止めておくことにいたしますが、事務局から何かそれについてありますか。特に 社会福祉施設等に勤務する看護師の問題があり、いまの時点では答えづらいところはあ るかもしれませんが、これからの調査ということも要望で出されましたので、受け止め ていただきたいと思います。 ○田村看護課長 私どものほうでも、この検討会で記録のことが議題に挙がるということ がこの春わかりましたので、急遽厚生労働科学研究で対応していくということで研究に 取り組んでいただく予定にしております。 ○辻本委員 電話相談などで患者やその家族が不信感ということで訴えることが、特にナ ースに言ったのにそれが先生に伝わっていない、というようなことがよくあるのです。 ですから一定レベルの基準が決まって、そういったことが無くなるということは、私た ち患者にとっては、ものすごくありがたいことだと思います。  ただ、30人に1人の配置ということすら十分でないような今でさえ「お願いだから声 をかけないで」と難しい顔で走り回っていらっしゃるようなナースに、どうしてそんな 時間が出来るのだろうと。患者の気持とナースを応援したいという気持と両方で、私は 二律背反なのですけれども、大丈夫なのでしょうか。ナースは書けるのでしょうか。 ○小島委員 よくぞ、そのようなご心配を教えていただきまして大変感謝しておりますが、 そのとおりです。いま私どもの病院は特定機能病院で高速がかかっておりますから、30 人に1人ということもままならないとき、3,000人近くがいらっしゃって100人は要る わけですが、とても満たされていないような現状がございますし、もっとさまざまな悩 みを抱えておられるところはあると思います。気になっていてもできないという事実も ございますので、いまここは人の数のことは言う会ではありませんが、実際問題として、 それは非常に大きい重要な問題です。先ほど委員が、書いてばかりいて患者のところに 来ないとかとおっしゃいましたが、書かないといけないこともございますし、なかなか 難しい問題を含んだことがいろいろ議論の中で出ていると思っております。その問題点 は非常に重要なご指摘ですので、今後どのようにして、本当に患者が満足できるケアを 提供できるのかというところも含めて、考えていくべきだと、いつも肝に銘じておりま す。どのようなところでやるといいかという問題をいつも持っております。 ○菊池委員 看護師としてやったほうがいいと思っていることはたくさんあっても、なか なかできないという状況がある中で、看護師自身も苦しいわけです。先ほどのお話は、 人員配置をきちんとしていただかないと、本当に患者の医療の安全を守るためには責任 が持てないという状況がいまありますので、是非人員配置を高める手だてや政策をとっ ていただきたいと思います。それを言うのはこの検討会ではない、と最初の会合のとき に言われたのですけれども、医療安全というと、どうしてもそこに触れないで全うする ことはできないと思いますので、この検討会の報告の最後のまとめの中で、やはりそこ は触れてほしい、まとめの中に入れられないかと考えますが。 ○青木委員 保助看法で書き込むという話が最終的に出てくるはずです。ですから、それ が非常に簡潔にという話になれば、入院は書くが外来は、という話は当然入らないと思 うのです。ですから、時期的にどういうふうなステップで進むのかということを教えて いただきたいというのが1つあります。  また、この場にはあまり関係ありませんが、昨日から今日にかけて経済財政諮問会議等 が、次の診療報酬改定で5%ぐらいのダウンは当り前という話が、ある意味では煮えた ぎってきているわけです、それは民間議員が言っただけという話ではあるのですが。こ ういうことで看護基準をつくってほしいけれど、結局そんなことは夢の夢だ、というよ うな事態も当然起こってくるはずですから、そういうときに、それではどうするのだと いうことも考えていかなければいけないことだと感じますので、どうぞよろしくお願い いたします。 ○山路座長 診療報酬、看護基準、人員配置は、ここのまとめの中では議論しづらい話な のですが、意見があったということで伺っておきます。ほぼ意見が出尽くしたようです し、大体時間もまいりましたので、議論はこの辺で終わりにさせていただきたいと思い ますが、よろしいでしょうか。 ○辻本委員 法制化、義務づけという位置づけの問題ではなくて、用語の問題で敢えてお 願いしておきたいのです。先ほども申し上げたように、患者が看護記録に非常に興味関 心を持つ時代になってきている中で、記録の中に指導・教育・介入・評価、処置に処遇 に……にという、そういうまなざしがキーワードとして上から注がれているようで、そ のキーワードを嫌う患者がいるのです。ですから、時代の流れの中で、そうした「言葉」 の位置づけをどこかで、専門の方たちで十分な議論をしていただいて、患者が読んでム ッとするような気分にならないような言葉ということも、今後是非ともご議論いただき たいということを要請しておきたいと思います。 ○山路座長 わかりました。さまざまな意見が出尽くしたと思いますので、本件について の議論はこの辺で終わらせていただきたいと思います。  次に、前回の検討会での主な意見を事務局でまとめてもらいましたので、前回の議論を 簡単に説明していただきます。 ○鎌田看護職員確保対策官 資料6をご覧いただきたいと思います。資料6は第9回の検 討会において「産科における看護師等の業務」が議題となりましたので、そのときに出 されたご意見、ご発言について事務局でまとめたものです。  紹介いたしますと、まず、まさにテーマとなった、看護師の業務について活発なご意見 がございました。  読み上げますと、分娩第I期の「観察」というものは危険性がほとんどないのではない か。また、分娩監視装置等による観察の他子宮口の開大度・児頭下降度の計測は、訓練 を積めば比較的容易にでき、分娩を安全に導くために必要な1つの観察・測定であると いうご意見がございました。  また、助産師が行うところの内診と、医師の指示の下で看護師が行うものとして求めて いる内診は、自ずから異なる。医師が求めるのは、看護師が子宮口の開大、児頭の下降 度のみを医師に伝えることである。内診は静脈注射より侵襲性が少なく、分娩監視装置 も装着しており、訓練した看護師なら十分行えるのではないかというご意見をいただき ました。  さらに、現在、助産における看護師による内診はやってはいけないこととなっているが、 少なくとも分娩の第I期にあっては、絶え間ない分娩を監視していくという意味では違 法性はないと考えられるのではないかということです。  それから、保助看法には助産の定義がない。何らかの形で助産というものを定義し、何 らかの基準によって、診療の補助行為と助産を区別すべきであったが、それがわからな い状態で通知が発せられているというご意見がありました。  次が、助産と診療の補助行為の違いが明確でない。医療の現場では、看護師が患者の状 態を観察し、医師に報告し、それを基に医師が判断することは通常である。分娩第I期 においてはそれが否定されることに疑問を持っている。  少子高齢社会で、看護師も不足している中で、助産師の増員が可能と考えるのか。保助 看法の考え方を変えるべきではないかというご意見もいただきました。  内診するタイミングについて議論がありました。内診するタイミングについて、機械的 に決まるのか。看護師の知識と能力で判断できるものなのか、という意見がありました。 それに対して、内診のタイミングは、陣痛の強さなどを看護師から報告を受けて医師が 判断する。四六時中内診が必要だということではない。経験を積んだ看護師なら理解で きる。医師は、外来・分娩・手術も行わなければならないので、約8時間にもおよぶ分 娩第I期の経過を常に観察することは、物理的に不可能であろう。そして、それを補う ために、看護師による計測・観察が必要であるという説明がございました。  内診は分娩進行状況を判断するための全体掌握の1つの手段であり、内診の行為を計測 として単純に論じられるものではなく、子宮口の開大のみではなく硬度、柔軟性、回旋、 骨盤内の児頭の高さ、大きさ等を判定して分娩進行を判断しリスクを回避するために細 心の注意を払い、危険予知と危険回避を備えた助産業務は、医師の指示下によるもので はなく、また、看護師が代行できるものではない、というご意見がございました。  助産師が絶対的に不足している状況下で、看護師が子宮口の開大・下降度の計測をでき る体制が必要である。現行の枠内でできないのであれば、例えば産科のエキスパートな ど、新しい制度を踏まえて考えるべきではないか。  看護師教育では内診などの教育は含まれていない。助産師の充足までの間であれ、産科 エキスパートナースの養成については疑問である。十分な教育を受けた助産師を養成す べきであるというご意見もありました。  看護師も母性・母子看護の科目の中で勉強しており、教育がゼロであるとは思われない。 医師も看護師も基礎に解剖や生理を学び、それを元に組み立てながら覚えていくもので ある。内診もその範疇で考えるべきである。医師も学生時代に手術をしているわけでは ない。  質の高いお産が求められている中、内診はきちんと教育を受けた助産師が対応すべき。 医療安全の確保のために、助産師教育を充実させていくのが望ましい。  安全安心なお産に向けて努力しないで、看護師に内診させるという対応はいかがなもの か。国が政策的に診療所の助産師を増やすことを積極的に行うことが必要ではないか。  昭和25年には96%は自宅あるいは助産所での分娩であったが、それが年々医療機関に シフトしていくとともに周産期死亡率、新生児、妊産婦死亡率が低下し、我が国の周産 期医療が世界のトップレベルになったという指摘がございました。  従来、「内診」と言われた行為の中から、子宮口の開大と児頭の下降度を見ることのみ 切り離し、一定の訓練を受けた看護師にやらせる制度を設けた場合に、それが「内診」 といえるのかどうか。また、そのことが患者の安全、医療の安全との関係でどういう意 味を持つのか。医師、助産師、看護師の間でもう少しその点について詰めてもらいたい。  助産師の国家試験の例を見ると、内診は測定ではなく診察になるであろう。看護師に子 宮口の開大と児頭の下降度を見るという2つのことだけを取り出して報告させること が、他の部分の情報が医師に伝わらない制度となるのではないか。  3頁目です。理想は助産師を増やすことであろうが、現実には、助産師も看護師も増え るという時代ではない。現実と理想があまりにも乖離していることを直視すべきである。 このような状況では、安心して出産できない。この検討会で、移行期の措置として何か 提言できないかというご意見がございました。  次に、助産師が足りないのではないかということが1つの論点になりましたので、助産 師の確保ということでとりまとめてみました。なぜ、診療所に助産師が就職しないのか、 内診は、単なる計測ではなく、第I期の観察と行為をセットとしてサポートすることで 分娩における安全と快適性が確保されるのではないか。  診療所に助産師が勤務しないのは、院長とのコミュニケーションや、報酬や待遇の問題 で助産師の気持を満たす状況がないのではないかということがありました。  それに対しては、助産師が診療所に少ないのは、医師と同様に大病院志向があること。 若い人は都会の生活を好み、子どもの教育の問題もある。診療所の就業はハードであり、 楽なほうに流れるのではないか。コミュニケーションの問題等があるとすれば、改善す るよう努力しなければならないが、それは一般社会においてもあることであって、特に それだけが重要な問題とは考えていない。  診療所は助産師が働きたくなるよう努力すべき。産科医の不足を助産師の不足に結び付 けることに疑問。助産師の超不足、産科医の減少が産科診療所の閉鎖に結び付き、分娩 を行っている医療機関に分娩が集中し、過重労働となり、そこでも閉鎖するようなこと が起きている。医師は下降度と展退度を見なければならなくなり、疲労困憊していると いう説明がございました。  次に、患者への情報提供という観点からも意見がありました。出産は産むときだけでは ない。母親学級により信頼関係を築いた後に出産がある。産婦の不安がないように、産 婦のもとにいるのは誰なのかわかりやすく情報開示をしてほしい。「地域の産婦人科で 不安・動揺が生じている」とあるが、これは看護師が今までも内診をやっていたともと れる。誰が何をしているのか、きちんと患者へ情報を開示してほしい。  それに対して、以前はベテランの看護師が内診をしていたことがあるが、日本産婦人科 医会は看護課長通知を会員に周知し、内診させないように指導を徹底しているし、現場 でもそのように対応している。  マスコミでも報道されているように、地方においては分娩医療機関がない所が出てきて おり、各地の住民が不安と不満を抱いている。地元でお産ができない状況になると、少 子化を加速させていくのではないかと危惧しているという意見がありました。  最後に助産師の需給に関しまして、周産期の現状、助産師が足りないという現状を踏ま えて、厚生労働省においては、助産師の数がどのくらい増えれば十分安全・安心な医療 につながると考えるのかというご指摘がありました。これに対して、現在、需給見通し の策定作業を都道府県がやっているところであり、また、今回の見通しにおいては助産 師を別掲で調査しており、12月には需給見通しの数を確定していきたいという説明をし たところです。 ○山路座長 よろしいでしょうか。 ○谷野委員 私も話は聞いていてそのときは言わなかったのですが、4頁のマルポツの2 番目と関係して、助産師の数の地域差というのが、まあまあという所と絶対いないとい う所と、かなり極端らしいのです。  いま岐阜県から研修医が来ているのですが、変な話で、岐阜県境の方々はかなり延々と 時間をかけて高山市まで行かないと出産ができない、ということがあるのだそうです。 これは医師と同じで、どれだけ増やしても、地域偏在があると何もならないわけで、こ の地域偏在についてきちんと厚労省が調べる。お産する方にとってみれは、これはほか の病気より深刻なわけです。ですから、国の責任で地域偏在をきちんとする。こういう 検討会は、往々にして国の責任をあまり書かないのですが、そこがずるいところなので、 国の責任をもう少し明確にしてもらわないと。お子さんを産むのに何時間、あるいは半 日かかって行かなければならないというような現状があるわけで、助産師を増やしても 都会ばかりに集まっていれば仕方ないわけです。そこら辺を私は言い忘れたのです。ほ かの先生からも、そういうことをよく聞くので、それを少し書くわけにいかないでしょ うか。 ○鎌田看護職員確保対策官 これは前回こういう発言があったという整理なのです。 ○谷野委員 後から追加していただけないでしょうか。 ○山路座長 それは取りまとめの段階で改めて相談させていただきたいと思いますが、と りあえずいまの谷野委員の意見は、マルポツの2番目の補足的な意見としてあったとい うことにいたします。しかし、これは前回の説明ですから、これはこれで出させていた だきたいと思います。 ○谷野委員 一方では助産師は、順調に養成されているという意見があることに対する1 つの問題提起として、そういうことは是非書いてもらいたいと思います。後からでいい ですから。 ○石渡委員 私は、助産師が不足しているということを数字に出してお示ししたわけです が、助産師が充足しているかどうかというのは、例えば分娩数や医療機関数だけでは十 分評価できないわけです。助産師の偏在、これは地域による偏在と病院間の偏在があり ますから、その辺も考慮の上で、いま分娩をやっている医療機関が安全・安心して分娩 ができるようにする。そのためにはどのぐらいの助産師がいなければいけないか。そう いうところも是非検討項目に入れていただきたいと思います。  もう1つ確認したいことがございます。それは、この意見の3頁目に「地域の産婦人科 で不安・動揺が生じているが、これは看護師がいままでも内診をやっていたともとれる」 と。この文言ですが、いわゆる看護課長通知がなされた平成14年以前の周産期の状況 はどうかといいますと、私がこの前説明したとおり、分娩第I期においては、医師の指 示あるいは監督・指導の下に看護師も頸管の開大、要するに子宮口の開大と児頭の下降 度については測定をしていた、観察をしていた。そういう状況下で、日本においては母 体死亡あるいは新生児死亡、周産期死亡等々がどんどん減少してきて、いま世界のトッ プレベルになった。こういう状況は、いままであった周産期医療体制の中でできてきた ことである。そして、看護課長通知があった以降については、産婦人科医会は全会員に 対して、いわゆる頸管の開大度や児頭の下降度についても内診の中に入ると解釈されて いる問題については、一切やらなくなった、という説明をしたわけです。ここに書いて ある、看護師がいままでも内診をやっていたということについて、「いま」という言葉 が私は引っかかるのですが。 ○田村看護課長 これは委員のご意見をまとめてありますので、それ以上の何ものでもあ りません。 ○青木委員 私も話したつもりで話をさせていただいていなかった点が2、3ありますの で、是非、まとめのときに少し時間をとっていただきたいと思います。 ○山路座長 それは改めて相談させていただきます。 ○山本委員 青木先生と石渡先生から常々申し出がありますように、日本の国の約50% の赤ちゃんが診療所でお産されているわけですから、助産師の偏在化というのは大変大 きな問題であり、私たちもそれは十分に理解してはおります。しかし専門職、特に助産 師においては、教育と資格認定の上に成り立っているわけですから、訓練を積めばでき るものというような認識であっては専門職とはいえないと理解しております。十分な教 育を受けて、その上で訓練を積むというのが筋ではないかと思っております。  そして、内診を受ける受け手の国民がどのように判断を下すかという内容がいちばん大 きなことではないかと思いますので、例えばここで私たち委員が看護師に内診をという ようなことを承認したとして、それを国民が十分納得して理解するかということが大き な問題だと思います。情報開示ということがありましたけれども、後付けで教育をして 認定をさせるということではなくて、資格を受ける以前の教育の段階から十分な知識を 踏まえ、そして訓練を積むという方向に持っていくべきであろうと考えております。 ○山路座長 議論の仕切り直しをやっていると、また2時間ぐらいかかりますので、それ はまとめの段階で改めて相談するということにさせていただきたいと思うのです。 ○青木委員 ただ私は、助産師の職分を侵すというような話をしているつもりではござい ません。それは全く違いますので、分娩の定義の議論をしたとお考えいただければと思 います。 ○山路座長 その辺りは前回ある程度、十分に議論したわけですから、繰り返しになりま すが、まとめの段階で改めて相談するということにさせていただきます。 ○石渡委員 まとめの時間を十分取っていただきたいと思います。 ○山路座長 可能な限りそういたします。時間もまいりましたので、本日はこれで終了さ せていただきたいと思います。次回以降の日程について、事務局から連絡をお願いいた します。 ○赤熊補佐 次回第11回は10月17日(月)午後4〜6時に開催いたしたいと存じます。 場所については改めて連絡させていただきます。また、次々回は10月28日(金)午後 3〜5時といたしたいと思いますので、日程のほうをよろしくお願いいたします。 ○石渡委員 いま検討の日程はお聞きしたのですが、検討項目については、どういうふう になっているのでしょうか。 ○山路座長 そろそろ終盤に来ましたので、今後の予定について、事務局から改めてご説 明願います。 ○鎌田看護職員確保対策官 次回は10月17日と申し上げましたが、当初予定した検討項 目のうち、検討していないのが看護の専門性ですので、次回は看護の専門性についてご 議論していただくことになります。次回でひと通り検討項目について1回は検討したこ とになりますので、それ以降のことは次回検討会で相談をすることになりますが、通常 の流れであれば、次々回からは取りまとめの議論、1回目の議論を踏まえた次のステッ プの議論というふうになると考えております。 ○鎌田看護職員確保対策官 補足して申し上げますと、そもそもこの検討会は、次期医療 制度改革をにらみながらやることになっていますし、中間取りまとめも、社会保障審議 会医療部会に報告しています。この中間取りまとめ以降の検討についても、取りまとめ て医療部会に報告することになりますので、その医療部会の流れもにらみながらとなる と、次回でひと通りの検討が終われば、それ以降は取りまとめを受けた議論をしていた だくということになるのではないかと思っております。 ○青木委員 進め方として、今日の問題のように、時間的な経過からして明らかにペンデ ィングになってくるものがいくつかあるのではないですか。それはそれでよし、という ことなのですか。 ○田村看護課長 例えば看護の新人研修等で議論をさらに詰めなければならない点が指 摘されましたが、それについては議論を新たに詰める次の検討会を起こさなければなら ないのではないかと思っております。そのようなことも含めて、全体でどのようなまと めが今回この限られた時間の中でできるかをご議論いただきたいと思います。 ○山路座長 よろしいでしょうか。本日はこれにて閉会させていただきます。どうもご苦 労さまでした。 照会先 医政局看護課 課長補佐 岩澤 03-5253-1111(2599) 1