05/09/28 児童自立支援施設のあり方に関する研究会第3回議事録 第3回 児童自立支援施設のあり方に関する研究会 議事録 日時:2005年9月28日(水)17:30〜20:00 場所:厚生労働省17階共用第21会議室 出席者:  委員   津崎座長、岩田委員、小木曽委員、瀬戸委員、服部委員   山内委員、吉岡委員  事務局   北井雇用均等・児童家庭局長、白石審議官、清川家庭福祉課長、   山本虐待防止対策室長、相澤総務課長補佐、   佐藤児童福祉専門官、芝海家庭福祉課措置費係長      議事:  1. 開会  2.  挨拶  3.  議題    (1) 施設の運営体制について      (1)施設長及び児童自立支援専門員等の人事異動システム・資格要件等のあり方      (2)施設運営全般のあり方    (2) 寮舎の運営形態について      (1)夫婦小舎制のあり方(維持確保・強化策)      (2)交替制寮舎のあり方(充実・強化策)    (3) 意見交換    (4) その他  4. その他 配付資料:  児童自立支援施設のあり方に関する研究会 第3回議事次第  座席表  児童自立支援施設のあり方に関する研究会検討課題  児童自立支援施設のあり方に関する研究会【参考資料】 ○芝海家庭福祉課係長  定刻となりましたので、ただ今から第3回児童自立支援施設のあり方に関する研究会 を開催させていただきます。  本日はご多忙のところ、当研究会にご参集いただきまして、誠にありがとうございま す。私は、本日の研究会の進行役を務めさせていただきます家庭福祉課の芝海と申しま す。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、議事に入らせていただく前に、いくつか事務局よりお知らせいたします。  まず、本日の出席状況のご報告ですけれども、本日の研究会の委員の出席者数は7名 でございます。野田委員、藤岡委員は欠席ということで伺っております。  次に、事務局におきまして人事異動がありましたので、雇用均等・児童家庭局長の北 井、それから、大臣官房審議官雇用均等・児童家庭担当の白石より一言ご挨拶申し上げ ます。 ○北井雇用均等・児童家庭局長  8月26日付で雇用均等・児童家庭局長を拝命いたしました北井でございます。審議官 のときに引き続きまして大変お世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。 ○白石審議官  同じく8月26日付で雇用均等・児童家庭局担当の審議官を仰せつかりました白石でご ざいます。何とぞよろしくお願いいたします。 ○芝海家庭福祉課係長  それでは、議事に入りたいと思います。津崎座長、よろしくお願いいたします。 ○津崎座長  それでは、本日配られております資料の確認及び内容の説明を事務局の方からお願い したいと思います。よろしくお願いします。 ○芝海家庭福祉課係長  資料の確認に先立ちまして、本日の検討議題についてお知らせいたします。本日は民 立民営で児童自立支援施設を運営しております北海道家庭学校よりヒアリングを行うこ ととしておりましたけれども、日程の都合が合わなかったため、次回以降にさせていた だきます。  そのため本日の検討議題は、施設の運営体制、寮舎の運営形態について幅広くご議論 いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、資料の確認をさせていただきます。上から順番に議事次第、配付資料一 覧、座席表、当研究会の検討課題、最後にホチキス留めになっております17枚の参考資 料です。それから、各委員のもとには、本日のご議論の参考にしていただくために、前 回までの提出資料のうち、今回の検討議題に関する部分を抜粋して配付させていただい ております。  お手元に以上の資料がない場合はお知らせください。  それでは、当課専門官の佐藤より資料についてご説明させていただきます。 ○佐藤家庭福祉課専門官  お手元の参考資料の説明をいたします。  1ページ目をお開き願います。これは児童自立支援施設の施設長等の任用資格要件の 表でございます。今回は児童自立支援施設、児童相談所、それと児童養護施設、この3 つを並べて比較をしてみました。  児童自立支援施設長の資格のところでは、これは前回第1回目のときにもお話しいた しましたが、第81条の第1、「児童自立支援施設事業に五年以上従事した者」、現在は 58施設のうち約40%です。それから2号の「特別の学識経験を有する者であって、厚生 労働大臣又は都道府県知事が適当と認めたもの」、これが約60%というのが実情でござ います。  2ページ目になりますけれども、これは直接処遇職員の児童自立支援専門員、相談員 の児童福祉司、それから児童指導員の資格の比較の表でございます。これも82条の第1 号になります。地方厚生局長等の指定する児童自立支援専門員を養成する学校、これは 武蔵野学院で、この養成校を卒業した者。現在、児童自立支援専門員は738人おります が、この24.3%に当たります。  それから、2の大学の学部で心理学、教育学等の課程を修めた者等々については31%。  最後の7号になりますけれども、「児童自立支援事業に関し、特別の学識経験を有す る者であって、厚生労働大臣又は都道府県知事が適当と認めたもの」、これについては 7.7%という数字になっています。  それから、児童生活支援員は現在285名おりますが、第83条の第1号、これは保育士の 資格を有する者、約92%がここに該当いたします。  真ん中が児童福祉司でございますが、これについてはまた後ほど説明をします。  それから、次のページを開いていただきたいのですが、3ページになります。これは 児童福祉司さんの任用資格要件について表にしたものです。児童福祉司の任用資格のル ートはいくつかございますけれども、まず児童福祉司養成校を卒業して任用資格を得る もの。それから、専門資格、国家資格の医師、社会福祉士、精神保健福祉士で任用資格 を得るもの。それから、心理学部等の大学を卒業して、かつ、実務経験を加えた上で任 用資格を得るもの。それから、3番目の関連資格のところ、これが児童福祉司の枠の広 がった部分でございますが、保健師、看護師、保育士、教員、児童指導員であって、実 務経験が1〜2年あって、かつ、指定の講習会を受講した上で任用資格が得られるもの。 それから、その他でございますが、ここはいわゆる3科目主事を基本に実務経験等を加 えた上での任用資格。そのような体系になっているという表でございます。  それから、4ページは飛ばしていただきまして、5ページの講習会の内容ということで ございますが、先ほど児童福祉司の方は任用資格の要件を少し緩和した、広くしたとい うことですけれども、この場合、講習会を受講することによって、その資質を担保して います。その講習会の内容でございますが、都道府県または都道府県からの委託を受け た社会福祉法人その他の者が行うものであること。講義及び演習により行い、実施期間 は3月以内。講習会の内容は、児童福祉論等の講義と演習、それから児童虐待等の演習 も入っております。  続きまして6ページでございますが、武蔵野学院児童自立支援専門員の養成所研修の 現在の実施状況でございます。これは職責や職務あるいは職務経験に応じた研修体系と なっております。例えば1つ目のところにありますように、新任の施設長研修、これは3 日間、あるいは課長研修、それから児童自立支援専門員の実務経験に応じた研修という ものを行っているということです。  それから、7ページをお願いいたします。この資料は平成16年度の武蔵野学院の児童 自立支援専門員養成所検討委員会の報告書でございます。児童自立支援専門員の養成所 の今後の目指すべき方向性というものを、ここで打ち出しております。  例えばここにありますように、入所生について、課題になっております夫婦制職員の 人材確保に努める方策として、夫婦単位での入所について検討し、一定の入所枠を確保 し、夫婦制人材の確保に努めるべきであるとか、あるいは、社会人枠の創設では、従 来、選科生として実績のあった福祉従事者を受け入れて、社会人枠として設け、入所試 験についても別に実施すべきであると提案しています。  それから、ウのところでは入所年齢の引き上げということで、現在、養成部の入所時 の年齢要件が26歳未満でございますけれども、社会経験のある者など豊かな経験から培 われた人間性、広い視野、幅広い教養等を持った人材の確保に努めるために、この入所 年齢を引き上げることが適当であるというような方向性が示されているという内容とな っています。  それから、8ページになりますが、これは第1回の検討会で配付した資料の中からの抜 粋でございます。詳しい説明は第1回でしておりますので、省略をしたいと思います。 今回出したのは、直接援助職員の採用確保についての現場の意向とかそのようなものが ここに出ておりますので、後ほどお目通しをしていただきたいと思います。  それから、10ページをお開き願います。10ページは交替制施設38施設のうち、選考採 用のみを行っている5施設を除いた33施設について、直接処遇職員の経歴をA、B、C、D の4つにグルーピングして、いくつかの項目についてクロスをさせてみたデータでござ います。何らかの特徴が出てくるかどうかということでクロスさせてみましたけれど も、ここではこれといった大きな特徴は見られませんでした。  ただ、次のページを開いていただきたいのですが、これは夫婦制をとっている施設 と、夫婦制以外の施設について、いくつかの項目をクロスさせたものです。ここについ ては、一番下の定員の充足率について若干の特徴が出ております。定員の充足率につい ては、夫婦制をとっているところが若干充足率が高いという数字を示しております。ま た、在籍児童一人当たりの無断外出件数についても、若干高い数字を示しているという ことでございます。客観的な数字ということでご理解をしていただきたいと思います。  12ページ、13ページはあとでお目通ししていただきたいと思います。  14ページをお願いいたします。これは小舎夫婦制の施設の推移でございます。明治〜 昭和の創設時から昭和58年の57施設のうち、37が夫婦小舎制をとっておりましたけれど も、これが17年度には20施設、34.5%ということになっています。  15ページをお願いいたします。この表は児童自立支援施設の運営形態について、小舎 制、それから中舎・大舎制とございますが、小舎制については、夫婦制と併立制、交替 制、それぞれの長所・短所を、児童自立支援施設の運営ハンドブック、これは全国児童 自立支援施設協議会が発行しているものですが、これを参考にまとめてみた資料でござ います。これも後ほどお目通しをしていただきたいと思います。  資料の方は以上でございます。 ○津崎座長  今、事務局から説明をいただきましたが、今の説明に関して何かご意見、ご質問があ りましたらお受けしたいと思います。いかがでしょうか。特にご意見、ご質問はござい ませんでしょうか。  特に質問、ご意見がないようですから、本日の議題の方に移らせていただきたいと思 いますが、それでよろしいでしょうか。  それでは、今日の議題の1つ目でございますが、施設の運営体制のあり方についての 皆さん方のご意見をいただきたいということです。特に初めに職員の人事異動、資格要 件等について、各種資料もいただいておりますので、まずはその問題についてのご意見 をいただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○岩田委員  萩山実務学校の岩田でございます。  最初に、施設長の問題についてお話をしたいと思うのです。児童自立支援施設の設置 主体は、基本的には都道府県であります。設置主体である都道府県において、児童自立 支援施設の施設長というのは管理職ポストに位置づけられています。このために人事配 置は当該地方自治体の管理職についての人事配置方針に基づいて行われる。こういうこ とになろうかと思います。したがいまして、管理職登用の資格を有していなければ、管 理職ポストに配置することはないということになります。その一方で、児童福祉施設最 低基準で施設長の資格要件が定められています。  この2つの問題をどう考えるかということになるわけですけれども、人事の問題です から、都道府県の人事当局が資格要件をどう考えているのだろうかと、私なりに考えて みたのですけれども、児童福祉施設最低基準の81条第1号については、それほど重視を されていないのではないかと思っております。というのは、施設長としての適性云々の 前に、管理職としての適性がなければならないと考えるのが人事当局のノーマルな考え 方であろうと思います。そうしますと、全体的な管理職配置の一つとして児童自立支援 施設の施設長の人事も行うということになろうかと思います。そのときに81条1号の資 格を有する人材から登用することが原則であるとされるのは、多分、地方自治体からす ると、人事に対する大きな制約であるという受けとめ方をするのではないかと思うので す。なおかつ、最低基準の第2号で、「適当と認めた者」といういわば自治体の判断に 任されている資格要件があれば、ほとんど1号の要件を気にしないで人事配置をすると いうことになろうかと思うのです。  これをどう考えたらいいかということですが、2号の資格要件を外せば、いくら都道 府県の人事当局といっても、児童自立支援事業の従事経験の要件を満たす者だけを施設 長にしなければならないということになろうかと思います。しかし、そうすると、今度 は管理職登用資格との関係で、人材を得られないという事態が発生することがあり得 る。それから、あまりにも地方自治体の管理職人事に対する制約になる。こういう反発 があるのではないかと思われますので、2号の資格要件を外すことは都道府県の賛同が 得られないのではないか、というのが私の率直な感想であります。  しかし、そうはいっても、現在の施設長の配置のあり方が本当にいいのかという問題 については、いろいろ考えなくてはいけないことがあります。少しこういうことを考え たらどうかと思うのは、81条の2号の要件の取り扱いの指針みたいなことについて、国 が何かしらの見解を示して、あまりに施設長配置が乱暴な設置主体に対して、少し注意 喚起等を図るということが考えられないかと思うわけです。具体的には、児童自立支援 事業に関して特別の学識経験を有する者ということについての取り扱い方針とか、ある いは適当と認める場合の根拠が必要なのだということについて、もう少し指針みたいな 形で基本的なものの考え方を示さなければいけないのではないかと考えております。  それから、施設長の人事異動のサイクルの問題もあります。これも総じて非常に短い という問題があって、施設の運営について、指導的な役割を果たすことなく異動した り、あるいは退職してしまう。こういう現状がやはりあると思うのです。これも都道府 県の人事当局からすると、管理職の人事の問題について、これが問題があると言われる ことは、非常に大きな制約というふうに受けとめられるのではないかと思うのです。  しかし、現実の問題として、あまりにも短いサイクルで人事異動が行われていること によって、施設の運営に大きな問題が出ていることは否めないのではないかという気が するので、これについても児童自立支援施設の施設長には特別な配慮が必要なのだとい うようなことを、何らかの形でものを申せないかなと考えています。国が言えるか、あ るいは学識経験者の方の見識みたいな形でもいいのですけれども、何かしらの形でやは り問題提起をしなければいけないのではないかと考えています。  施設長の問題については、私はそういうふうなところでございます。 ○津崎座長  今、施設長の要件について、かなり具体的な点に関してのご意見、あるいは提起とい いますか、それがあったわけですが、その点に関して、ほかの委員の方はどのようにお 考えになるか、ほかの委員の意見をあわせて出していただいたらと思いますが、いかが でしょうか。 ○小木曽委員  淑徳大学の小木曽と申します。  今、岩田委員さんの方からお話があって、私も大枠その点をすごく問題であるという か、逆にいうと、地方自治体の人事の流れというのがかなりそこでリンクした上で、相 当いろいろ矛盾が起こってしまっているという現状が、数字的に60%の任用規定という ようなことだと思うのです。  1つは、一昨年ぐらいから、児童相談所の所長の専門性の問題がかなり議論され、法 改正等のところでも、児童相談所長の専門性確保という部分と、今お話があった児童自 立支援施設の施設長が管理職というふうな立場が当然あるわけですけれども、一方で専 門性という部分で平均3年での転勤のサイクルが、現場のそういったものとの齟齬があ る意味起こっているとすれば、施設長の規定の2号を外していこうというようなことは なかなか難しいかもしれませんが、逆に専門性を確保するような手だてを、研修等を含 めたそういったもので可能なのかどうかわかりませんが、やはりそういった形で示して いかないといけないのではないか。施設長さんというものに対する評価と同時に、児童 自立支援施設自体の専門性を維持していく。片や専門職がかなり長く、夫婦制等で20 年、30年同じところでいる方たちに対して、園長は3年でいなくなってしまう。信頼関 係も含めてつくり上げていく上では、その辺のことも考えなければいけないのではない かと思っております。 ○津崎座長  基本的には同様のご意見をいただいたわけですが、ほかの委員の方はいかがでしょう か。 ○瀬戸委員  2号が60%ということで、非常に驚くわけですけれども、少年法のところでも原則と して逆送だという話があって、原則というのは大体6、7割は超えないと話にならないと 国会議員からお叱りを受けるようですけれども、私の理解からすれば、1号が原則で、2 号がさまざまな事情があることが理解できますので、例外であろうと思います。そうす ると、これは数字が逆転して、非常に由々しきというか問題であると思いますので、岩 田委員さんおっしゃったような形で、何らかの形でしておかないと、もちろん都道府県 の専権の分野もあるわけですけれども、その放置が現状の定員開差とか機能の弱まりが 広がっていることの原因と絡んでいると思いますので、その辺はもっと厳しく、一定の 意見を出すような形でやっていただきたいという意見を持っております。 ○津崎座長  加えてほかの委員の方、いかがですか。 ○服部委員  私も今の瀬戸委員のご意見に賛成です。1号が原則で、実際上2号も置いておくという ことだと思います。しかし、原則と例外の関係が逆転してしまっています。それを修正 していく具体的な目標を定めるべきではないでしょうか。例えば5年後には5対1、10 年後には10対1というような、そういう具体的な数値を置いて考えていく必要があると 思います。  前回に申し上げたと思いますが、やはり現場のリーダーは、ケースを通じて現場の指 導性を発揮していくことが一つの重要な条件だと考えます。自治体に対してものを言う のは、なかなか難しいところもあると思いますけれども、地方で特色を出すという問題 と、全国的なレベルできちっとやっていかなければいけないという問題と、2つの面が あります。これは厚生労働省がしっかり自治体に対して指導性を発揮していくべき問題 の一つだと考えております。 ○岩田委員  私は、今の2号と1号の関係は、法的には原則が1号であるという考え方はその通りだ と思うのですが、その考え方で都道府県の人事当局を、この要件が原則であるというこ とで説得することは、かなり困難ではないかと思っています。というのは、先ほどから 管理職の問題をお話ししましたけれども、東京都などの場合は、管理職試験に合格をし て、しかも東京の施設の場合は、2級階という部長クラスのそういう事業所なわけです ね。そうすると、課長の経歴を持って、そしていろいろな職場を経験している人間、そ こからまた登用していくということになるわけです。だから、その中でまた管理職とし ての資質みたいなことが試されていく。場合によっては、いくら児童自立支援施設での 経験があったとしても、管理職としての別の評価がされていくわけです。そういう中の ふるいがあってということになりますから、1号が原則であるという考え方で人材登用 をするということになると、非常に限られた登用という制約を受けるということになる わけです。  だから、私はこの資格要件の規定の仕方が、都道府県の人事サイドのいろいろな取り 扱いと必ずしもリンクされた形で規定をされていない。こういう問題があるということ なのです。しかし、そうはいっても、何でも、誰でもいいのだという考え方に立ってこ の2号の要件が運用されると、これは非常に問題がある。我々東京都の場合は、管理職 は基本的に2年で交替しています。私は前のところに4年いましたけれども、これは極め て例外なわけです。それは全体の人事の、特にまた管理職の場合は都全体の人事の問題 ですから、非常に固い。そういうところの問題であるという基本認識がないと、なかな かこの問題について、意見を言うのは簡単ですけれども、実際の自治体の施設長を配置 するときに動かし得る、そういうものになっていかない可能性があるということでござ います。 ○津崎座長  今いろいろ意見が出ましたが、先ほど委員が言われた中に、児童相談所が似たような 状況にあるというご指摘がありました。児童相談所の職員はどういうふうに規定が変わ ったかといいますと、全般の法改正等の中で、要はその他要件をもう少し厳密に運営す べきであるという形になったと思います。さらには、研修も新所長に対しては、今まで は任意の研修であったのが義務研修に変わっているはずです。だから方向としては、専 門性を今よりは強化する形で運営を考えてほしいという意向が、今の手法によって具体 的に示されたということだと思います。  それと似たような状況が児童自立支援施設の長にもあるのではないかと思います。児 童相談所長がその規定や運用の変更の中でどういうふうになってきているのか、感覚的 な感じですけれども持っていますのは、各都道府県の児童相談所の所長は、従来のよう な形で一般行政職でいいのだという考え方が多少後退しまして、何らかの専門職を配置 しないといけないという意識が各自治体に以前よりは高まったと思います。実際の配置 を詳しく見ているわけではないですが、何らかの専門職が所長になられるという例が、 以前よりは多くなっているような印象を持っています。  ただ、難しいのは、所長にそうした専門職が配属されたら、それで意図通り専門性が 組織として発揮されて、質が高まったのかとなってきますと、若干ずれがあると思いま す。といいますのは、施設長、児童相談所長、皆同じですが、長となりましたときに は、組織のマネジメントの力がないと、全般の運営がうまくいかない。あるいは対本 庁、対対外機関に対しても折衝能力、職員に対する管理能力、予算を取ってくる力、い ろいろな行政上のマネジメントの力がないと、うまくいかないという要素もあるわけで す。ところが、ある種の専門畑で来ますと、そういうマネジメント能力というのは必ず しもトレーニングされていませんから、かえって専門職が来ると、運営がうまくいかな い要素が出てくる可能性もあるわけです。そういう意味で、専門職配置をすれば、イコ ールそれですぐうまくいきますよというふうには短絡的にならないということも一定押 さえが要るのかなと思います。  しかし、一方で、今までの意見でもたくさん出ていますように、あまりここをなし崩 しにすると、専門機関としての資質が低下するということにもつながりますので、一定 の専門性をキープする条件については、何らかの指針がある方がいいのではないかと、 実際上私も思いまして、この場での意見もそういう意見が多かったということで、一定 集約しておきたいということでよろしいでしょうか。  特にご異論がないようですから、施設長の資格要件等については、そういう意見が多 いということにさせていただきますが、あわせて今度は職員、指導員の方についてのご 意見等がありましたら、それについて発言いただきたいと思います。 ○瀬戸委員  この研究会に対応してなのでしょうか、近畿地区で児童自立支援施設の現・元職員が 集まっていろいろと勉強会をしているようで、この前、大阪弁護士会の弁護士4、5名と 現・元の大阪府と市の施設職員の意見交換をしました。  その中で、もちろん民営化という問題が非常に大きな問題としてあるのですけれど も、その前にできることがあるだろうということで、人事の問題が非常に大きな、一つ のやる価値のあることではないかということで議論しておりました。とにかく、都道府 県横断で広域の人事配置をもっと意図的にしていくべきではないかと。割と機能して子 どもたちもたくさん収容している活気のある施設の熱意ある中堅の人を、ほかの府県の 方に一定の期間行ってもらって、そこでパワーアップしてというようなことをやってみ てはいいのではないかと。それから、例えばどこかの重点地区みたいな所を厚生労働省 全体として定めて、そういうところをバックアップするようなことをしたらいいのでは ないかと。今は知らないですけれども、昔は、逆にいうと武蔵野学院から各地へ派遣し た時期もあったのだという話も職員の方がおっしゃっていました。  そんな形でやって、とにかく、今お客さんが少ないところにテコ入れをするような形 を現実にたちまちやるべきだろうと。それをしたらいいということ。ただし、行く人が いるのかと私は聞いたのですが、現実にいうとそう簡単なことではないし、夫婦で行く のかとか、それから力のある中核の職員が出てしまえば、逆にいうとその施設はもつの かという難しい問題もあるようです。でも、そうはいっても、あまり府県、府県という 府県の人事の中でとらわれたら、そもそもこの施設自体の成り立ちからいって、非常に 馴染まないところがあるのだろうと思うのです。やはり特別な熱意を持って子どもとと もにやっていくというあり方からすると、それをはみ出るところがあるだろうと思うの です。もう少し意識的に全国的に人事を配置することをしていただきたいと思っていま す。  自分の志願者も含めて近畿で現実に何人ぐらいおるのだと、やろうという建白書でも 出せということで、今準備してくれておりますので、今度、15、16日、「小さい会」と いう会もありますし、そのあたりで何らかの意見的なものが出たらまたご紹介したいと 思います。私は現実の人事の配置がよくわからないですけれども、そういった方向性に ついて検討していただきたいと思っています。 ○津崎座長  ほかの方、どうぞ。 ○山内委員  では、今、武蔵野学院の話も出ましたので、少し現状も含めてお話しさせていただき たいと思うのですが、おっしゃる通り、人事を含めて、あるいは中の処遇を含めて、全 国の中にはなかなかうまくいっていない施設もあります。私どもの方でも、研修等を通 じて、できるだけ職員の資質向上をいろいろやっているのですが、職員の派遣等もいろ いろと話には出ることがあります。実は、私ども武蔵野学院の方も職員の確保がなかな か難しい。他府県にお話をさせていただいて職員を派遣するほど、職員を自分のところ でつくっていくこと自体が難しくなっています。  特に夫婦制の問題はあとにも出てくるのですが、夫婦で何とか確保したいというの は、どの夫婦制の施設も全部同じでして、そこをほかのところにまたお願いする、ある いは行ってもらうということは、なかなか今は難しい。その辺をいかにつくっていくか というところを、できたらここでもお話し合いをしていただけたらと思います。  今、夫婦制が多いのは、関東は国立と埼玉学園さん、それから関西の方が多いのです けれども、そういう意味では、できるだけ若い人の間で何かプールできるような、先生 おっしゃったような、それぞれのところでぎちぎちにするのではなくて、各県だけでな かなか難しいので、ある程度のところの単位でプールしながら、職員がうまく回転でき るようにする。  職員は、見ていますと、たとえ若いうちに地方へ行っても、最終的には自分の地元に 戻りたいという方が多いですから、そういう意味でうまく回転できるような仕組み、こ れはどういうふうな工夫をすればいいのかわからないのですけれども、そういった面も 含めて対応策をかなり考えないと、今の、特に夫婦制の施設にとっては、職員の確保が 喫緊の課題になっておりますので、そういうところをいい工夫があれば、ぜひとも取り 組んでいきたいと思っているところです。 ○岩田委員  職員の問題ですけれども、この問題については、寮舎の運営形態が夫婦制であるか、 あるいは交替制であるかということ、それから、職員の採用形態が選考採用であるか、 あるいは競争試験による採用であるかというようなこと、それから、採用職種として福 祉職というような直接処遇に携わることを前提とした採用職種を設けているか、あるい はそういうことも全くなくて、一般行政職の採用枠しかないということなのか、そうい うことによって問題状況が異なるのではないかと思います。そういう異なるということ を前提にしておかないといけないのだろうと思います。  それから、先ほど瀬戸委員が都道府県を越えて職員が移っていけることがいいのでは ないかというお話がありましたけれども、基本的にはこれも都道府県の職員採用の問題 に関わるわけですから、その都道府県で採用した職員についてどうするかという、そこ がベースであるということを押さえた議論でないと、これもそう簡単にいく問題ではな いと思うのです。  そういうことを前提として、東京の場合は交替制の運営形態をとっております。その 東京都ではどういう人事制度で児童自立支援施設の運営がなされているかということを お話ししたいと思うのですけれども、東京都の場合は、児童自立支援施設などの入所施 設で直接処遇に携わる職員というのは、福祉職という採用職種を設けて、そこで採用し た職員を充てるという方式をとっております。この職種で採用した職員を児童、障害、 高齢者施設等のいずれかに配置をするということでやっているわけです。どこに配置を するかというのは、人事配置の問題であるという理解だと思います。そういう意味で は、児童自立支援施設だけの業務に従事することを前提とした採用形態ではないという ことになります。昇任時にはほかの職場に異動を行ってキャリアを積ませたり、同一職 場に長期在職しているという弊害を防止する。あるいは本人の意向等を配慮した人事配 置によって意欲を持たせる。こういうやり方をとっているわけです。  こういう採用形態をとる場合のメリットですけれども、ほかの職場への人事異動が可 能になってきます。ある一定の範囲ですけれども。そうすると、場合によっては児童自 立支援施設で仕事をすることに適していない職員が出た場合に、ほかの職場に移っても らうことの対応が可能であるというようなことがあります。それから、昇任時に異動す ることによってキャリアを積める。こういうようなメリットもあるのではないかと思い ます。  デメリットとしては、障害施設などほかの施設のキャリアがそのまま児童自立支援施 設で通用するわけではないということがあります。そうすると、いくらほかの種別の施 設でキャリアを積んだといっても、我々の施設に来れば、また新しいゼロからの出発点 であるということになります。だから、頻繁に異動があって、転任職員があまりに多い となると、施設運営に支障を来たすことが起こるのではないかと思います。  それから、人事の異動基準などが、こういう福祉関係の施設で働く職員について特別 な配慮をすることがなかなかされなくて、どうしても行政職の職員と同じにされがちな ところがあります。児童自立支援施設でひとり立ちして働けるためには、少し時間がか かるということがありますけれども、そういうところが、人事といっても東京都の場合 ですと局がありまして、それからまた全体の人事部などがありますけれども、現場から 離れれば離れるほどそういうところについての理解が難しくなる。こういう問題があろ うかと思います。  これをどういうふうに考えたらいいかということですが、私としては、福祉職という ような採用職種があって、少なくとも施設利用者の処遇に携わるということを前提とし た職員が我々の施設に配置されるということは、一般行政職が配置されるのに比べれ ば、ベターであると言えるわけです。全国の施設の中には、一般行政職で採用した職員 を児童自立支援施設の寮舎に配置をするという人事を行っているところがありますけれ ども、これはやはり乱暴な配置としか言いようがないと思っております。  さらに、人事異動でもそういう乱暴な配置を前提として、3年でほかの職場に異動さ せるというような、これまた乱暴な取り扱いがされているという実態もあります。これ も非常に問題があると思っております。  児童自立支援施設で児童の処遇に関わる職員は、入所児童の特性を考えますと、知識 として学んだ専門性だけでは、実際の入所児童の指導に当たるに十分な専門性を身につ けることはできない。それだけではできないのではないかと思っておりますので、そう いう意味では、相当の期間、児童自立支援施設で児童自立支援事業の経験を積んだ職員 が、それぞれの寮舎に一定の割合いて、そして、そうした職員が次に中核的な役割を担 う職員を育成していくことにも関わって、そして、見通しの持てる状態になって異動が できるというシステムを、いくら自治体が決めることであったとしても、そういう配慮 が必要だということを、もう少し明確にする必要があるのではないかと思っておりま す。 ○津崎座長  ちなみに、東京都さんは、今、福祉職で異動のスパンはどのぐらいの期間になってい るのですか。 ○岩田委員  実際には例外の方でかなりやっていますので長くはなっているのですが。一般行政職 の基準は、かなり短いです。実際にはそれでは施設運営はできませんから、かなり長期 の職員もいるということであります。 ○津崎座長  多分、交替制ということを前提にした考え方だと思いますが、基本的には福祉職とい う配置の中で、福祉現場の異動も含めて、そういう福祉職としての勤め方といいます か、それを自治体が確立をすべきではないかというご意見だと思いますが、ほかの委員 の方、いかがでしょうか。 ○吉岡委員  前回もお話ししたかもしれないのですが、東京の福祉職と埼玉の福祉職は意味が全然 違います。東京の福祉職というのは、会長さんがおっしゃった通り、児童だとか障害だ とか、直接処遇に携わる施設の職員をいくつかの場所に配置しているわけです。東京は 都立のそういう施設がいくつもあるのですけど、埼玉の場合はありません。県立の高齢 者とか障害施設はないのです。それは別にして、埼玉の福祉職というのは、児童相談所 で働くか、福祉事務所で働くか、そういう感じです。福祉職の意味の採用の仕方が全然 違います。だから、東京の児童相談所のワーカーは福祉職採用ではないですよね。そう いう意味では、意味が全然違うと思うのです。それをちょっとつけ加えたいというこ と。  あともう一つは、先ほど岩田先生が言われた通り、特別な配慮をする人事システムが やはり我々の世界は必要だと思うのです。児童相談所についてもそうだと思うのですけ れども、専門職でなければいけないということは初めから当然のごとく皆思っているわ けですけれども、国がもし方針を出すとするならば、やはり専門職とは何かというのを はっきり規定しないといけない。専門職の職場だから特別な配慮が必要だということで はなくて、専門職ということで、前にも一定の規定のことをお話ししたのですけど、や はり専門職というのは深さがあります。だけど、深さだけでは足りなくて、広さも必要 なわけです。アルファベットのTみたいに。だけど、専門職ということになると、知識 があるとか経験があるだけではなくて、長く勤めなければいけないと思うのです。ちな みに東京でいえば、児童と障害と高齢者を平等に同じ期間働いても、あまり児童自立支 援の専門とは言えないと思うのです。やはり東京の児童自立支援施設に働いた期間が長 い、しかし、ほかのところで障害とか高齢のところで働いたというような形にならなけ ればいけないと思うのです。そういう意味では、やはり期間を保障するような人事シス テム、それを県の人事課などに理解していただくためには、専門職の職場だからという ことを何か訴えなければいけないなと思うのです。  あと、ちょっとさかのぼりますけれども、施設長の資格要件のところで私お話ししな かったのですけど、児童相談所も同様だということで座長さんお話しされたのですが、 児童相談所の専門性と施設の専門性がある程度リンクしているところが私はあると思う のです。例えば、81条の2号をするときには、何らかの方法を考えた方がいい、指針を 出した方がいいというお話があったのですが、そういうときに児童相談所の専門性がも し高まれば、そこで勤めた人が施設に来るということになれば、ある程度専門性があり ますよね。  ちなみに、埼玉県の場合は、私、30年ぐらいの園長さんを全部知っているわけですけ れども、1人福祉事務所から来た園長さんがおられました。最近は現場から施設長にな った人は十数年いないと思うのですけれども、園長は児童相談所から皆来ているので す。そういう意味では、少なくとも我々の現場から上がった人間がトップにならないと するならば、児童相談所の児童福祉関連の経験がある人が来るというようなことを81条 の2号などにくっつければ、ある程度いいかなと思ったりしています。 ○瀬戸委員  私は、全国で都道府県の枠を超えて人事をどんどん回せということは、あまりできな いだろうと思います。少年院のように国立で全部やれば当然できるわけですけれども、 それの方が場合によってはいい場合もあり得るだろうと私は思っているのですが、ただ 現実はそうではないですね。ただ、私が言っているのは、そうではなくて、もう少し出 向を多用して、各省庁から各府県に中堅幹部で送り込んでいるわけですけれども、それ と逆かどうかわかりませんけれども、そんなことができないかということです。だか ら、夫婦制であれば夫婦制で、そういう意味でやった人が5、6年単位で行く。そのかわ り若い人が割と活気のあるところへ行く。交替制であれば交替制で行くということ。例 えば、東京はかなり経験もありますし、いい実績を上げているので、東京からでも地方 の交替制のところへ行くという人が何人か出てくるのではないかと私は思っているの で、そういった形の配置をしてほしいというのが意見でございます。 ○津崎座長  ほかにご意見はありませんでしょうか。 ○服部委員  人事の問題はデリケートな部分もあって、非常に難しい問題だと思っています。た だ、議論の仕方として、何が望ましいかということを確認した上で、いきなりそこへは 行けないから、では現実的に次のステップとして何が必要か、そういうアプローチとい うか、とらえ方がまず必要だと思います。もっといえば、人事の問題は各自治体の福祉 についての基本姿勢に関わる問題です。そのことが人事に反映しているという面があり ます。根本的にいえば、各自治体の福祉についての考え方がそこにある。そういう構造 の中で、人事のあり方について、ここで議論するなら、ある意味大胆な、しかし岩田委 員が言われるように、慎重なプランをつくっていく必要があると思っています。 ○津崎座長  いろいろご意見をお伺いしていますと、基本的には、職員の方も一定の特殊な仕事の 性質上、専門性は高めないといけない。ただ、都道府県に所属していますから、それの 人事のルールの制約を受ける。ただ、制約を受けるからといって、そのままの状態で適 用されては専門性の維持ができない。そこに何らかの配慮をして、採用あるいは研修、 異動も含めて、一定の専門性がキープできる条件、そういうものをもう少し検討を深め た上で、何らかの指針を出すべきではないだろうか。そのようなご意見が多かったよう に思いますが、基本的にはそういう方向性ということでよろしいでしょうか。 ○岩田委員  基本的にはそれで私は差し支えないと思います。全国の施設長さんなどで非常に困っ ている状態でお話を伺うことがあるのですけれども、今まで土木事務所で事務をやって いた人を、いきなり寮舎の職員に配置をするというような人事が行われているところが ある。本人も行きたいわけでも何でもない、3年間我慢しなさいと、こういう人事が行 われている。  そういう施設があるということを聞いて、どうしてなのかなということですけれど も、夫婦制でやっていたときは、人事の採用が選考採用ですから、特別に採用職種とし て一般行政と別の採用職種を設けなくてもよかったのではないか。ところが、交替制に 移れば人事異動等もありますから、どういう採用職種を設けないといけないか、この検 討がなされて、直接処遇に携わる職員として採用するという何かのことが考慮されない といけなかったのではないかと思うのですけれども、そこが検討されないまま、福祉職 みたいな採用職種を設けていない。設けていないからやりようがないので、そのままに なっているようなところがあるのではないか。だから、少なくとも寮舎で児童の処遇に 携わることを前提とした採用形態ということは、最低限必要であるということぐらい は、はっきり言っていいのではないかと思いますけれども。 ○津崎座長  自治体に任された人事権という微妙な要素がありますけれども、基本的には、児童自 立支援施設の専門性を確保するための要件は、一般的な行政職の人事のサイクルや採用 とは違った配慮が必要である。そういうことを踏まえた何らかの指針が必要ではないか というようなご意見が多いということで、資格、人事異動等も含めた問題については、 一定意見集約をしておきたいと思います。  次に、あわせて施設全体の運営問題まで範囲を広げてこの問題についての意見交換を したいと思いますので、各委員、児童自立支援施設全体の運営に関してのご意見があり ましたら、意見を出していただけたらと思います。いかがでしょうか。 ○服部委員  その前に、議事進行の関係で、武蔵野学院の養成所のことが今日は一つのテーマに上 がっていると思います。これはあとで話し合うということでしょうか。それとも、人事 の関連のテーマの一つですので…… ○津崎座長  では、つけ加えて言っていただければ。 ○服部委員  あとで養成所の問題を取り上げていただけるのなら、そのときに申し上げたいと思い ますが。 ○津崎座長  なんでしたら、養成所の問題もどちらかというと、職員の具体的な採用であったり資 格用件の件ですから、あわせて……。 ○服部委員  武蔵野学院の養成所のより一層の充実は、人材確保の点で大変重要なことだと思って います。ただ、学生を送り出す側からしますと、武蔵野学院の研修所の入り口が見えに くいというのが現状です。具体的に言えば、試験の実施時期が今は10月ですけれども、 他の国家公務員試験は6月の夏休み前に実施をしています。夏休み前に大体進路が決ま るという状況の中で、やはり実施時期が遅いという感じを持っています。  それと、試験科目も、現在は、国語、数学、英語、一般教養という科目が並んでいま すが、学校教育も導入ということですので、試験科目も現在のままでいいのか。法務教 官の試験などを見ると、青少年の発達に関することに重きが置かれていますので、試験 科目についても検討の必要があるのではないかと思います。  さらに具体的なことを言うと、試験の過去問を見られないということがあります。例 示もないのです。全く検討がつかない中で、学生たちは試験準備をします。そうする と、こちらから見て、この学生はこの分野で頑張っていけるという学生がいても、試験 を通っていかないし、逆に教職関係の科目をとっていると有利ということもあって、ふ さわしい人材を採るシステムになっているかどうか、検討していただく必要があると思 います。  また、研修期間も現在のままでいいのか。試験の実施時期が早ければ、卒業までの半 年を有効に使っていくという可能性もあります。それから、出口のところで、研修を修 了したら現場に直結していくような保証がないと、最低基準の82条でいかに資格をう たっていても、実際にどこかの施設に就職していく保証がないといけないわけで、その ためには、武蔵野学院の養成所が各地の児童自立支援施設と連携を深めていく必要があ ると思います。また、研修中に、地方の児童自立支援施設である程度の期間研修を行う ことも組み込んでいく。そういう研修の多様化も課題に含めて検討していただければと 思っています。 ○津崎座長  7ページに養成所が検討委員会を持たれて報告書を出されています。その目指すべき 方向性が何点か書かれていますけれども、方向性そのものについてはこれでいいわけで すね。 ○服部委員  はい。 ○津崎座長  むしろ具体的な実施時期であるとか、科目であるとか、試験の内容とかが、もっと一 般的な、受験学生の事情等を配慮した形のものに中身的にしていく必要があるのではな いかという意味のことですね。 ○服部委員  そうです。ポイントを繰り返せば、学生の就職活動と試験の日程とをうまくかみ合う ようにすること、それから、ふさわしい人材を採るための試験科目等の再検討というこ とです。 ○津崎座長  この点に関して、国立の現院長をされている山内委員の方、いかがですか。 ○山内委員  今、いろいろとご指摘を受けまして、私ども、おっしゃっていただいているところも かなり努力している部分もあるということをご説明もしなければいけませんし、時期に ついては、これでも毎年度できるだけ早くということで、各地方自治体の試験と、ある いは実際に会社等の関係からいけば、もう4月には決まっている。今の時期からいけば、 どの時期にしても、なかなか難しい時期はあるのですけれども、できるだけ早く試験の 実施ができるように、毎年努力はさせていただいているつもりです。まだ10月というこ とで遅いというご指摘を受けましたし、私ども、もう少し早くということは考えており ます。これは努力をさせていただきたいと思っています。  ただ、学科とか試験の内容につきましては、ここの養成機関を通過すれば、究極の目 的は児童自立支援施設にみんな希望する学生、あるいは希望する方々が受けていただい ておりますので、そういうところに1年間来ていただいて、そういう方を養成するとい う場所ですので、実は大学を含めて、特にこの学部、福祉や司法ということに関わら ず、幅広い方々の人材をできるだけ集めていきたいということが、一番大きな目的とし てあると思うのです。もし福祉なり司法なり、あるいはそういう関係で自らそういう資 格を持ちながら行けるようなところについては、そのまま行っていただいたらいいので すが、なかなかほかのところで学んできても、またこういう仕事をやりたいと、こうい う希望の方はできるだけ拾っていきたいということで、あらゆる学部、どんな学部を出 ていても、こういった養成所の方に来れるのだというところを基本には考えたいと、こ う考えていますので、先生のおっしゃるところも参考にしながら、今後も検討はしてい きたいと思います。そういう意味で、今の学科も、そういう学科と、それから面接等を 重視しながら、選考ということで今させていただいているように聞いております。今お 話があったところも、これからも検討していきたいと思っています。  それから、就職のことですが、実はおっしゃる以上に私ども非常に危機感を持ってお りまして、せっかくこうやって1年間、それもなかなかうちは厳しいです。養成所とい いましても、実は土日もなく、現場のところで中に入ってやっていく。座学もあります けど、半分は実際に寮舎に入ってやっていく、子どもたちと汗をかきながら一緒になっ て取り組んでいくということで、かなり厳しくやっていますので、夏休み等を利用し て、全国の各児童自立支援施設の方で実施をさせていただいたり、そういう意味で、学 生の方もできるだけ見ていただく。いい学生があれば、施設の方もちょっと応援してい ただいて、試験があれば、それに積極的に入れていただくような形をとっておるのです が、何しろ今話が出ましたように、児童自立支援施設の選考試験という、児童自立支援 施設だけに就職するという試験をやっているところがなかなか少ない。  そういう意味で、なかなかそういう機会が少ないというのと、今お話がありましたよ うに、それでは福祉職ということで、福祉職でもチャレンジをしていくのですけれど も、なかなか昨今の公務員の試験の難しさというのがありまして、ここのところが、私 どももせっかく1年間養成で来ていますので、何らかの形で試験に強いものも養成所の 中でやっていかなければいけない。ところが、なかなか難しい。公務員ですから、いわ ゆる競争試験でしかあり得ませんので、そういう部分では、今でも各施設には配慮して いただいているとは思うのですけれども、就職については厳しい状況だと、こういうこ とをご理解をしていただきたいというのがあります。  それから、ちょっとお話が変わるのですけれども、先ほどの運営と採用のところにも 結びつくのですが、実はうちの養成所の方も、最近は男性より女性が多い。特に試験の 関係からいきますと、女性の方がどうしても試験の点数が高くて、どこの都道府県もそ うなのですけれども、特に児童相談所がそうなっていると思うのですが、女性がどうし ても多くなってくる。女性が多いのが悪いということではないのですが、障害の施設で すと、どうしても同性対応ということで、男女の比率が決まってあるのですけど、私ど もの児童自立支援施設からいくと、昔から、特に夫婦制のところは男性職場的な部分が あって、そこのところでなかなか女性が入りにくいという部分も一方ではあるのではな いか。  特に職員採用の最低基準の中でも、うたわれています2ページのところで、いわゆる 児童自立支援専門員としての資格で入る部分と、児童生活支援員という形で入る部分 と、ここのところが、特に夫婦制のときになかなか難しい問題が多々ありまして、この 児童生活支援員というのが、もともと教護という形の中で残ってきましたし、この児童 生活支援員の資格があることで、夫婦制の、例えば奥さんが何らかの形で一緒に仕事を やりたいときに、保母の資格を持てば、そこで採用ができるということで、この児童生 活支援員の資格というのも非常に大事な部分があるのですけれども、一方で児童生活支 援員、児童自立支援専門員ということで、地方も含めまして、そこに何らかの格差が出 てしまうという部分があって、本来的にいえば、この児童自立支援専門員の資格を全体 的に、女性であれ男性であれ持っていただいてするべきところが、そういういろいろな 諸事情があって、この児童生活支援員という形になっていると思うのです。  これはなくしたらいいということではないのですけれども、できるだけ、今まで教護 員と言われていた時代から児童自立支援施設に行って、しかも、今、女性がたくさん職 場の中で来て、女性の役割、男性の役割それぞれある中でやっておりますので、この児 童生活支援員の資格のところは残しても、男女の役割分担というところを、決して処遇 とかそういうことだけではなくて、職員の身分という部分では差のないように、うまく 処遇できるように考えていただきたい。手当から何からして違う部分が地方でもたくさ んあります。そういうところも含めて、男女のところをうまく考えていただく。  しかも、適正な男女比率というのも職員の中ではやはり必要になってきますので、そ ういう問題も考えていただく必要があるのではないか。半数半数あればいいということ ではありませんけれども、あまりにも今の職員の採用、あるいは職員の配置ということ になれば、施設の運営上、男女の比率なり、男女をどう考えていくのかということも、 今後大きく必要になっていくのではないかということを指摘させていただきたいと思っ ております。 ○津崎座長  どうもありがとうございました。  就職がかなり厳しいというお話でもありましたけれども、一般的な状況からすると、 児童養護施設も本来は核になる人は、児童自立支援施設での処遇、力量があるような人 がいないと、うまくいっていないのです。そういう意味では、児童自立支援施設に入る ことにこだわらず、もっと一般児童養護施設の方にも就職していっていただいて、児童 養護施設の力量アップにも一定寄与していただくような、そういう方向性があった方 が、児童相談所等から見ていますと、ありがたいという気がします。それが1点。  もう1点、児童生活支援員の資格の中に保育士となっています。例えば、私たち児童 相談所だったら、一時保護所に保育士がいます。ところが、保育士の資格を持っている 人は、乳幼児の保育の教育を受けてきています。そうすると、非行の子や年長の子の処 遇は一般論でいうとあまりできない。だから、その辺がいつもギャップを感じていて、 保育士の資格というのが、児童自立支援施設で実際に非行の子どもを指導するに当たっ て、ちょっと違和感を感じるということも一つ指摘させていただきたいと思います。  この点に関してもよろしいでしょうか。 ○小木曽委員  服部委員から話が出ましたが、大学におりまして、かなり養成所を受けたいという学 生がここ数年増えています。ちょっと勘違いをしている部分があって、大学院レベルの 教育を受けて、それを専門にやれるのではないかという期待が半分あるのですけれど も、そうではないよという説明をしなければいけないのですが。もう少し中身的に、こ ういうふうなものを養成するという意味での、大学側にわかりやすいようなものを、こ ちらもなるべくポスターを貼ったりなどはしているのですけれども、その辺を、人材を 広く確保という意味では、けっこう福祉をはじめ司法の分野、教育の分野、学生の中で は相当そういったものを目指す学生が増えているのではないかなという感触を持ってい ますので、ぜひそういう点では、職員確保と同時に、よりよい人材確保という意味での 大学等のいろいろな協力を、これからもぜひしていっていただきたいなというのを今感 じました。 ○津崎座長  それでは、ちょっと時間が押していますので、寮舎の運営形態、夫婦小舎制のあり 方、あるいは交替制寮舎のあり方、あるいはまた施設全体の運営のあり方等を含めて、 ご意見をお伺いしたいと思いますが、どなたか委員の方から意見を出していただきたい と思います。いかがでしょうか。  できれば、今、児童自立支援施設におられる立場から、夫婦小舎制、交替制、どっち がいいのだという論議がかなりあると思うのですが、その辺の長所、短所も含めて、あ るいはまた実際上こうあるべきだと思っても、現実のいろいろな枠もあるという中で、 その辺、今後どういうふうに体制を考えたらいいのか、ご意見をそれぞれいただけたら ありがたいのですが。 ○岩田委員  よく夫婦小舎制がいいのか、交替制がいいのか、そういう議論の立て方がずっとされ てきましたが、私自身は、その問題の立て方自体はもうあまり意味がないと思っていま す。現実にそんなことをいっても、だんだん交替制に移ってきているということがあり ます。それは趨勢で、なぜ移らざるを得ないかといったら、後継者がなかなか見つから ないというようなことで、いくらいいといっても、維持できないことが一方である。そ うすると、そのよさというのをどうやって残していくかという、その面でのここで言う 維持、確保、強化策を考えていくことが一つは重要であろうかと思います。  それから、交替制に移ったと。では交替制に移ったらそれで役割が果たせないのかと いうと、そういうことでもないのではないか。交替制に移っても、どういうふうなこと を考えていけばうまく機能していくのか、役割を果たしていけるのか、こういう問題の 立て方をすべきではないかというのが私の基本的な考え方です。  東京の場合は交替制でございますので、少し交替制の問題についてお話をしたいと思 いますけれども、交替制の場合の運営について、寮舎の児童集団の規模はどうあるべき なのかとか、あるいは建物の構造とかそういうことについて、児童の処遇の理念と関連 させて基本的な考え方を整理しておかなければいけないのではないかと思うのです。  最近、夫婦制から交替制へ運営形態が変更するところがありますけれども、どのよう な寮舎の規模とかそういうようなことが処遇の理念に合致するのかということについ て、必ずしも十分に検討されないまま、後継者難でもう維持できないからしようがない のだと、交替制に移るのだと、こういう移行をしているのではないか。そこが困難な問 題を引き起こしている原因でもあるのではないかと思っています。  東京の場合は、交替制に移行して30年を超える年数がたっています。当時、どういう ふうな議論をされたかというと、私はあまり詳しくは知りませんけれども、交替制に移 るときに相当職員が議論をした。交替制に移行するとしても、児童の集団の規模をでき るだけ小さい、それを小舎と称するかどうかわかりませんけれども、小さい規模でやら ないといけないのではないかというようなこと。それから、交替制のチームでやるとし ても、そのチームの構成人数を、当時は4人ぐらいだと思いますけれども、比較的少人 数でチームを組むというやり方をとって、これは相当議論をしたと聞いています。労働 時間の関係で現在は一寮5名の体制でローテーションを組んでやっているわけですけれ ども、職員の体制にしても、人数が多いことが必ずしもいいこととは限らないのだとい うことについても、やはりかなり移行するときに議論をしないといけないと思うので す。  それから、東京の場合は、女子の職員も一人で深夜勤務をやっているわけです。それ は少ない人数の5人というチームでやるとなると、女性もそれぐらいの勤務をしてもら わないといけないということになってしまう。愛知学園の事件の影響もあって、交替制 をとっているところでは、夜間職員を複数体制にしなくてはいけないということが非常 に大きな課題になっていて、そうすると、勤務のチームを組む職員の集団を大きな集団 にしないと、勤務ローテーションが組めない。そうすると、今度はそれだけ多く職員を 配置するのだから、児童はかなりの規模を見てもらわないと、あまりにも職員と児童の 割合が効率が悪くなってしまう。こういうことがありますので、児童集団の規模が大き くなってしまう。こういう問題があります。  それから、全国の施設を見ると、寮舎のつくりなどが、交替制だからということなの かよくわかりませんけど、必ずしもアットホームな感じのつくりになっていないところ があるのです。寮舎で食事をするという仕組みがとられていない。食事は食堂でする。 寮舎に帰ると、団欒の場というのはテレビがあって、それに病院の待合室みたいな感じ でソファが置かれている。そういうつくりの建物構造を持っているところもあります。 そうすると、交替制になっても、その役割を果たすためにどういうふうな建物構造を持 たないといけないのか。こういうことについてきちっと議論をして、そして交替制に移 るなら移るということをしないといけないのだけども、そこらあたりが必ずしも検討さ れないまま移行されてしまう。そのことがまた大きな困難な問題を引き起こしている。 そういうふうになっているのではないかと思っております。  最近は、交替制に移行する施設、あるいはした施設のなかに、東京の施設の誠明、萩 山の方に職員を派遣して研修をする施設がけっこうあります。東京の施設はそういうこ とも引き受けてやっていかなければいけないのではないかと思っております。 ○津崎座長  状況からして交替制にならざるを得ない、ということを前提にした新たな体制の組み 方で行かざるを得ない面がある、ということだと思いますが、一方で、何としてでも夫 婦小舎制を維持していくのだという考え方をとっておられるところもいくつかあるとお 聞きしていますが、ほかの児童自立支援施設の委員の方、いかがですか。 ○山内委員  夫婦制か交替制かという論議よりは、小舎15人程度、中舎25人、大舎25人以上と言わ れていますが、今、非常に難しい子どもたちを生活をともにしながらやっていく施設、 児童自立支援施設だけが難しいというわけではないですけれども、いわば学校で、ある いは家庭で手に負えないというような子どもたちが次から次へと入ってくる施設の中の 仕組みとしては、やはり小舎で子どもに目が行き届きやすい、あるいは家庭的な中でや るのには、何としても私どもは小舎が一番いいのではないかなと。今、ほかの方々も同 じような考え方でおられるのではないかと思います。  もう一つは、夫婦制と交替制、どちらがいいかというよりは、並存的に夫婦制のいい ところもあれば、夫婦制の問題もある。それから、交替制もいいところもあれば悪いと ころもある。互いに刺激し合いながら処遇論もやっていくという意味でいけば、今の夫 婦制20施設と残りの交替制の比率を何とか維持をさせていただいて、ともに切磋琢磨し ながら、いいところ、悪いところを刺激し合うというのが、この処遇論からいけば一番 いいのではないか。どっちがいい悪いということではなくて。それぞれの処遇の仕方、 基本的な部分は似たような部分があると思うのですが、やはり違う部分もありながら処 遇していくということで、いろいろと学び合えるところもたくさんあります。  そういう意味で、先ほどから武蔵野学院の養成所の話をたくさん出していただいてあ りがたいのですが、どちらかといえば、前に野田先生からも指摘があったように、どう しても自分のところの施設が夫婦制なので、夫婦制を主に考えてしまいがちなところが ありますが、今、岩田先生がおっしゃったように、交替制のいいところ、あるいはどう 処遇していったらいいのかというところの部分も、これからも取り入れながらやってい くことで、より夫婦制もいいところが、まあ、夫婦制みたいに寮がよかったらいいとい うふうになりがちなところが、施設全体として一人の子どもをどう見るのかという部分 からすれば、そういった部分の技術論なり処遇論もやはり出てくると思いますので、そ ういう意味で、私は今の線を何とか維持していくための、特に夫婦制をどう維持してい くのかというところを、これから大事にしていかなければならないのではないかなと思 っております。 ○瀬戸委員  ちょっと教えていただきたいのですけど、私は別にどっちがいいかということより、 現実の問題として都道府県の中でやっていますので、交替制でなければできないという ことで、それで何とか維持しているところもありますし、そこでの工夫が必要だと私も 強く思っています。  小舎制ばかり泊まらせていただいたのですが、1ヵ所だけ交替制に行ったときに思っ たのですけれども、これをやるについて、家庭的な雰囲気を維持するためには、寮長と いうか、名前は知りませんけれども、リーダーがしっかり前線の指揮官として確立し て、我が寮について全責任を持つぐらいの気持ちでミーティングしてやらないと、非常 に無責任な体制になってしまうなとそのとき思いました。だから、その辺夫婦制より も、もうちょっと寮長の、それが課長と位置づけるかどうか知りませんが、リーダーシ ップみたいなことできちっとやらないといけないのではないかと思いました。小舎であ って、なおかつリーダーシップみたいなことです。その辺はもちろん議論は深めておら れるのだと思いますが、ちょっと教えていただけたらと思います。 ○岩田委員  東京のことでお話をしますけれども、誠明と萩山は若干違って、私が前にいた誠明 は、各寮に寮長という形で、これは東京都の制度では全くないのですけれども、施設と して中心になる人をはっきりさせておいた方がいいだろうということで、勝手に寮長さ んという制度をつくって、一応その人がその寮の中で中心なっていろいろな取り組みを するということでやっております。  萩山はそういうことはありませんけれども、事実上やはり中核になる人はいるわけ で、その人を中心としていかにチームワークをつくり上げていくかという、これがもの すごく大事なことです。しかし、そうはいっても、いつもいつもそれが成功するとは限 らないです。場合によっては、人事異動などでなかなかそこがうまくとれないような人 が配置される場合もあります。だけど、そうであっても、そこが一番大事なのだという ことでやっていくしかないだろうと思っております。 ○服部委員  夫婦制については、私たちが目に触れることのできるケース報告が多数あります。し かし、交替制については、ケース研究が乏しいですね。交替制は、チームプレイの仕事 ですので、そのチームプレイをどうつくって、どう展開していったのか。それがうまく いくケースもあるし、失敗例も含めて、交替制のケース研究がもっともっと出てこなけ ればいけないと思います。これは現場に任せておくだけではなしに、具体的な企画とし て交替制のチームプレイを含めたケース研究というものを、ちゃんと出していかなけれ ばいけないし、そういうものを全国に発信していくことで、交替制のノウハウ、いい面 と難しい面を各現場が受けとめて実践につなげていくことが必要だと思います。  交替制もそういう面で悩みといいますか、大変なのだという声を聞きますので、交替 制のケース研究の蓄積を、ぜひ厚生労働省の企画としてやっていただければと思ってい ます。 ○津崎座長  ほかの委員はいかがですか。 ○吉岡委員  あまり積極的な意見があるわけではないのですが、私、夫婦制のところから来ていま すので、夫婦制のことをある程度お話ししておかなければいけないかなと思いますけれ ども、岩田委員が言われた通り、夫婦制がいいか、交替制がいいかという議論は、なか なか難しいのであまりできないかと思いますけれども、ただ、社会的養護の審議会など では、家族的ケアということを言われていますし、小規模化ということも言われていま すから、現在でもそう言われて、昔からそう言われているわけですから、それはいいだ ろうと私は個人的には思っています。  私の埼玉県は夫婦制で、10組の夫婦がいるわけですけれども、夫婦の数としては多分 全国で2番目に多いだろうと思っています。一番多いのが修徳ですけれども。今年も2人 異動しましたけれども、新しい方に来ていただきました。この2組は交替制のところで 働いていて、夫婦制をやりたいという職員が来ています。埼玉県の子ども課の方でも、 夫婦制がいつまで続くのか心配している向きがあるのですけど、現場としては、我々は しばらくは続く可能性があると思っています。去年の段階でも2人来ましたけれども、 それと前後して埼玉県で働きたいという方が何組か来られて、今でも多分数組の方が待 っていただいているような状況なので、埼玉県の夫婦制については、今後かなり長期間 維持していけるとは思うのですけれども、そういう意味では、私は基本的には夫婦制が いいと思っているし、続くだろうとは思っています。  ただ、夫婦制が減っていくというのは、後継者がいないというところに問題があるだ ろうと言われたのですけれども、もう一歩突き詰めると、なぜ後継者がいないかという ことが問題なのです。夫婦制の仕事というのは、大変なところがどうしてもあるわけで す。この資料にも書いてありますけれども、かなり労働が強化になるとかということが 書いてあるわけです。前にもお話ししましたけど、夫婦制で教護院で働く職員は、休み なんか欲しいと言ってはいけないという時代があったので、それがずっと今も流れてき ていると思うのです。埼玉県の自画自賛ですが、埼玉県は夫婦制の中では夫婦ともに休 む日は全国で一番多いのだとお話ししました。私は今ただの公務員みたいな仕事ですけ ど、年間130から140、いろいろな意味で休んでいると思います。うちの場合は92〜93日 で、大体普通の公務員の6割程度ですけれども、やはり140日も休むと子どもとの信頼関 係が薄れるから、開放的処遇の中で無断が多くなるとか、いろいろな面があると思いま す。そこをバランスをとらなければいけないところが少しあると思います。  夫婦制が非常にいい、また維持したいという気持ちの中で、夫婦制の弱いところはど ういうことかというと、法治国家の東京のど真ん中で言うにはちょっとふさわしくない ことですが、夫婦制であろうと何だろうと、働く人間は労働者だから、労働基準法は守 らなければいけない。8時間勤務ということになると、夫婦制と勤務時間はマッチしな いのです。夫婦で2人、8時間・8時間ですが、子どもは24時間いるわけですから、夜中 もある程度の仕事をしていますよね。夫婦制というのは、労働基準法を破る面があるの です。でも、それを覚悟で今までみんなやってきたわけです。勤務時間や休息時間は明 確でなくてもいい、適当に取る、休みはなくてもいいというつもりでやってきています から。だけど私は言いたいのですが、夫婦制の一番の弱点はその面が弱い。労働基準法 に関する面について、そこが弱いのですけれども、そこを何とかクリアする方法で今後 考えていかなければいけないなと思います。  そうすると、これは夢の夢かもしれませんが、こういう施設の運営を里親さんみたい にして、今、特区という言葉が流行っていますけれども、ある程度そういうふうにして いかないと、法律を犯すことになる可能性があるかなと思っています。 ○津崎座長  今日、最初に説明いただいた資料を見ましても、無断外出の安定度とか充足率で若干 夫婦制のところと交替制のところが差が出ているというお話がありました。私の経験で も、今実習生を児童自立支援施設に送り込んでいますが、学生は正直ですから、そのま まのことを言います。先般も訪問で回りますと、その学生はたまたま交替制の寮に配属 されたみたいですが、職員が変わると子どもの態度がころっと変わる、見事に変わると いうことを言っていまして、なかなか一貫した形での指導が難しいように感じたという 言い方をしていました。確かにチームで交替でいろいろな個性のある職員が時間的な分 断の中で指導効果を高めていくのは、難しい面があるのかなと思います。そういう意味 では、後継者がうまく見つかる体制がとれるのであれば、夫婦小舎制の維持ということ も検討していっていいのではないかと思うのです。  ただ、後継者の中で先ほど里親という話もありましたけれども、今、国的には、里親 を拡充していきたいという方針を明らかに出しておられます。そして、里親制度の中で も、専門里親というのを新たに制度化されて、そこにかなり難しい子どもをある程度引 き受けていただいて、そして家庭で見ていただくという施策を今とられているわけで す。  そうすると、今すぐは難しいかもわかりませんが、将来的に専門里親が寮舎を受け持 つというような形での人材の確保ということがあってもいいのかなと思います。さらに 言えば、今あるような児童自立支援施設の中で全部寮を持つという形ばかりではなく て、サテライト型といいますか、児童自立支援施設が運用するようなグループホームが 施設の外部にある。そして、そこを一定の民家の一定の資格要件のある専門里親のよう な人が運営をする。そして施設ともリンクし合う。そのような形態が今後あってもいい のではないか。  例えば平成9年に児童自立支援施設が、今度は通所もできるという法律規定になった のですが、どうも実際的に通所されているところはあまりない。かなり皆辺鄙なところ にある。ということになってくると、児童自立支援施設での教護効果がまた街中に帰っ たときにどこまで持続するのかとか、アフターケア的なこともしにくいという要件があ るとすれば、場合によっては街中にサテライト型のような分園、グループホーム的なも のがあってもいいのではないかなと思いまして、そういう運営形態も今の形だけでなく て、もっと柔軟にあり方の検討というものがされてもいいのではないかという思いもち ょっと持っています。  さらに、これは児童相談所の立場で常々思っていたのですが、夫婦小舎制でがちっと 固められてしまいますと、例えば、この子を一時保護委託を一回してほしいのだとか、 試験的に入れてほしいというふうになったときに、そういう中途半端な入り方をした子 どもは、受け入れが難しいという条件があると思うのです。そうなってくると、夫婦小 舎制のところもあるけれども、一方ではいろいろな名目、いろいろな子どもが入るよう な、もうちょっと包容力のあるといいますか、複合的な要素でそこに入るというような 寮があってもいいのかなと思います。そうすると、そこはむしろ夫婦小舎制というより は、交替制なり、職員の多様な職種がそこの寮を運営維持するというような、ある意味 では併存型になるのかもわかりませんが、さらには夫婦小舎制にないもの、寮に特色を 持たせた、そういう運営の仕方というようなこともさらにはあっていいのかなと思いま す。  加えて先ほど労働基準の問題を言われていたのですが、労働基準の8時間の規定外に なっている職場というのは、いろいろあると思うのです。だから、本来は安定運営とい うことを考えると、24時間職場のこういうところに、8時間労働の基準そのものを当て はめるということに無理があると思いますので、むしろ例外職場的な位置づけにできな いのかなとも思うのですが。  いろいろ思うことはあるということで、意見を述べさせていただきましたが、さらに 加えてほかの方の意見を伺えればと思います。いかがでしょうか。 ○小木曽委員  何点かあるのですけれども、1点は、先ほど瀬戸委員がおっしゃったように、交替制 のリーダーシップの問題ということで、経験的にお話をさせていただこうと思っていま す。ほかがどうかわかりませんが、私自身の現場では、実は夫婦制というのは並立制と いう体制をとっていまして、寮長がずっと住み込んでいて、先ほどもありましたよう に、なかなか人材確保が難しいということで、結果的に交替制寮を試行するという移行 を年度半ばにしなければいけないという状況で始めたところです。夫婦でやっていたの を何人かで見ればいいのだよというような、割とそういう感じで移行してしまった状況 があったのですが、実際はやり方、手法、本当にチームワークの問題が相当いろいろ噴 出しまして、子どもの安定を含めて相当大変な状況でした。  先ほどありましたように、寮長が住み込んである程度やっていれば、「寮長が決める からね」みたいなところで済んだものが、全部話し合いをして、児童相談所の一時保護 所みたいな形で、課長に当たるような人がまとめなければいけないというような部分 で、そこら辺を試行錯誤したという経験です。そこをどういうふうにきちっとチームワ ークを組んだらいいのか。  それから、服部委員からありましたように、処遇技術的には、モデルとして夫婦のい ろいろな事例等はすごくあるのですけれども、交替制というところをモデルにしたもの は、これ以上夫婦制から交替制にということが起こってきたら、逆にいえば数的に逆転 をしてきますので、そういったものを含めたモデルの構築といいますか、これは逆に言 えば、私なども含めた大学にいる研究者の役割なのかもしれないということをすごく今 感じていて、交替制・夫婦制是非論というものではなく、交替制に移行した中でのそう いったものをどう積み上げていったらいいのかというのを、もっともっと現場等を含め て取り組んでいかなければいけないなということを感じています。  それから、座長がお話しになったように、私も1回目にお話をしたのですが、今、自 立援助ホームの方に関わらせてもらっていて、サテライト型というので、なるほどと思 いました。東京さんなどはそうですが、施設内に自立支援の寮という実践をずっとやっ てこられています。  もう一つ、先ほどの就労ということを考えると、もう少し都市部に自立援助ホームを というような形で、施設直営のというのは大変ですが、そういったものをブランチで、 里親からでも構わないのですけれども、自立の出口の部分でそういったものを確保して いくのは非常に求められているのではないか。もしそういうことがどこか試行的にでき ると、将来的にも、児童自立支援施設に対するネガティブないろいろな意見が多いので すが、発展的、先駆的な、まさにそういった青少年、ニートを含めた子どもたちに対す る支援という意味では、何か道が見えてくるのではないかなと、現実的にはどうかわか りませんが、ぜひそういうようなものがいくつかできてくるといいなと感じました。 ○岩田委員  私自身は、あまり施設がいろいろなことをやるということには賛成していないので す。もっとベースをきちっとやっていく。その中で初めて余力があればいろいろなこと に取り組めばいい。だけど、今の問題状況は、そんなところの問題ではないのではない か。もっとちゃんと基本的にやらないといけないところが、きちっとできていないとい う問題があるのではないかと思っているわけです。  東京の場合、実は児童自立支援施設から高校進学の割合が非常に高くなっています。 だけど、基本的には中学3年生を卒業すると、家庭に戻るケースが多い。ところが、戻 ったケースが高校を続けて卒業するところまで至っていないという問題があって、アフ ターケアも相当取り組んだわけですけれども、なかなかそこの状況を基本的には変える ことができないということで、一つの道は、養護施設に措置変更して、そこから高校進 学するということがありますけれども、これもなかなか実際には難しいということがあ ります。  というのは、つまり、子どもたちが変わったというのは、子どもたちの中の病気が治 ったというようなものではなくて、施設の生活の中で、職員との信頼関係をうまく築い ていって、その中で素直な面がより多く出せるようになった。こういうとらえ方をすべ きではないかと思うのです。そうすると、そういういい状態になって、もう少し自由度 のある生活をこの子は必要だろうと、そういうふうに考えても、児童養護施設に移る と、そこでまた新しい人間関係をつくっていくというその営みがあって、それは必ずし も簡単なことではない。そこにまた一つのハードルがある。また、児童養護施設の場 合、小さい子どもがいると、職員が児童自立支援施設から来た子どもをちゃんと向き合 って受けとめるという、そこの仕事が必ずしも容易ではないというようなところがあっ て、難しい面もあります。  それで、実は私、誠明にいたときに、何とかしたいということで、誠明の近くに養護 施設のグループホームをつくって、本当は誠明がつくるということもあるかもしれませ んが、なかなか定数の問題とかいろいろなことがあって難しい問題がありましたので、 民間の養護施設に、誠明の近くにグループホームをつくってもらえないかと。そこに高 校に進学した子どもで残ってもいい子を移して、そして高校を卒業するところまでもっ とたくさん持っていかなければいけないのではないか。そのかわり近くにつくるという のは、普通、養護施設がグループホームをつくると、養護施設の本園との連携でやって いくのだろうけれども、児童自立支援施設である誠明学園と連携をしながら、何かあっ たら今まで関わった職員も訪ねていくし、場合によっては、どうしてもうまくいかない 場合は、もう一度戻ってもらってもいい。そういうぐらいの感じで、新しい形のグルー プホームみたいなものを試行して、そして将来を開く。そういう新しい取り組みをした らどうかと、こういうことで今準備が進んでいて、多分近くそれができると思います。  それもまたいきなり中学卒業と同時にそこへ移すのではなくて、誠明からちゃんと高 校に1年ぐらいきちっと通えた子をそこに移していくと、よりそこできちっとやられて いく。そういう可能性が高いわけです。子どもたちにとっても、施設に残るということ が、ただ残されたというだけでなくて、新しい自分の将来を開くために残って、次のス テップはこういうのがあるよと、こういうような新しい取り組みをやろうとしているの で、そういうようなことももっともっとやっていけばいいのではないか。別にそれは児 童自立支援施設が全部乗り出してやらなくてもいい。新しい連携のあり方として、そう いう仕組みをつくっていってもいいのではないかと思っております。 ○津崎座長  ほかにご意見はありませんでしょうか。 ○山内委員  今、岩田委員の方から職員との信頼関係ということで話があったのですが、全国の児 童自立支援施設は、今かなり種々多様な子どもたちが入ってくることによって、従来の いわゆる非行で力の関係に頼るような子どもたち以外の子どもたちを、児童自立支援施 設が本来的にいけば対象児童としてどうかという問題がありながらも、ほかに対応する 施設がないということで引き受けていく。そうすると、中で個別処遇ということがやは り難しい。小舎といえどもなかなか難しいので、施設が荒れてしまう。そうすると、外 から見ていても、何か児童自立支援施設がうまくいっていないのではないかと、こうい う問題点を今抱えているのではないか。  特に私ども武蔵野学院の方では、全国の児童自立支援施設から、処遇上困難だという 子どもたちが来る中で、私どもは処遇がいいということではないのですけれども、まあ まあ落ち着いてやっていただける。いろいろな条件があると思うのです。地方から武蔵 野学院へ来るということの動機づけなり、あるいは本人の覚悟というものがあったり、 いろいろあると思うのですが、やはり何といいましても、私ども強制的措置があった り、観察寮ということで、割と個別処遇的な部分を一方で組織的に持って、そこにドク ターもおりながらいっている。どんなに暴れたり、あるいは施設によっては、職員を 「おばはん」「おっさん」というような形で、全く指導にならない子どもたちも、一人 ひとりになると、非常にかわいい、いわば中学生らしいところが出てくる。そのために はクールダウンするような、一定のときには個別に見ていけるような部分が必要です。 特に児童自立支援施設は種々多様な子どもたちが来るようになって、難しい子どもたち もいる。個別処遇的な部分を持たなければならないというときに、昔は各施設で観察寮 というようなところがあって、利用していたかと思うのですが、そういうものをできれ ば各児童自立支援施設でつくっていただく。それはいわばハードも人的な部分も含めて ということになるので、非常に難しい部分もあるかと思うのですが、児童自立支援施設 の処遇なり、あるいは望まれている子どもたちをうまく処遇するためには、私は必要不 可欠なものではないかなと思います。  先ほどおっしゃったような児童自立支援施設がそういう形で安定していけば、例え ば、今児童相談所の一時保護所で困っているような、虐待の子どもと非行の子どもを一 緒にして、なかなか処遇が大変で、虐待の子どもが、乱暴な子どもが入ってきてどうす るのだと、なかなか両方ともうまく処遇がしにくくて、非行の子がいるから虐待の子が 入れませんと、こういうような部分が少なくとも、非行の子の全部とは言いませんけれ ども、一定のところがいわゆる施設内処遇の中でも違った部分を持つことによって、一 時保護とかそういうことも可能になってくる部分もあるのではないか。また、個別処遇 も、完全な個別処遇は無理としても、一定の時期を得て個別処遇もできるのではない か。そういうような仕組みも、内部を安定させながら、しかも外のニーズにもこたえる ような、いろいろな仕組みをつくっていけば、児童自立支援施設はもっと受け入れる、 あるいは希望なりニーズなりを受け入れるという部分が高くなっていくのではないか。 専門性だけではなくて、そういった部分の人的配置、あるいは組織、あるいは建物、そ ういうものが必要になってきているのではないかと思っております。 ○津崎座長  どうもありがとうございます。  私も児童相談所の立場で児童自立支援施設を見ましたときに、どうしても措置施設で ある、それも公立であるということが前提にありますから、措置するのは児童相談所だ ということで、児童相談所だけを向いていて、そして、入所のいろいろな条件について は、中の安定の条件を言わせてもらうよということで、私は受け入れの枠がどうしても 狭いのではないかという印象を持っています。  今、山内委員がちょっとおっしゃいましたように、社会が変わってきていますよね。 先ほどの話でも、以前は高校進学というのはあまりなかった。今は高校進学がほとんど 前提になってくる。そういうふうな変わったことに対して、児童自立支援施設がどうこ たえていくのか。あるいは、今は例えば教育の分野でも問題になってきていますが、広 汎性発達障害という概念が出てきて、従来はあまりそういう概念で子どもを見ていなか ったのが、かなりの率でそういう子どもがいるではないか。そうすると、そういう子ど もに対する対応の新たな仕方というのが要るのではないか。そうなってきたときに、そ ういうものに対して対応するような新たな体制や具体的な処遇のやり方というものを、 工夫をしていかなければいけないのではないか。  あるいは、今、全国的に養護施設で被虐待児がかなりウエイトが高くなって、どこも アップアップしていますよね。中で処遇して努力してやっていても、やはりやり切れな いという現実があって、皆かなり混乱されている。その子をどこかで見てくれと児童相 談所に言われたときには、実際上は児童自立支援施設にお願いするしかないのです。あ る見方によると、児童自立支援施設は養護施設のフォローアップ施設と違う、独自の機 能を持っているのだから、そんなのばかり受け入れていたら困るという声を聞いたりも するのですが、でも現実的には養護施設でやれない子どもを、ほかのどこの施設が受け てくれるのかとなったときには、実際上としては児童自立支援施設しかやれない。そう なってくると、児童自立支援施設がそういう養護施設のバックアップ機能というような ことも果たさざるを得ないのではないか。  あるいは、最近のように、今まで普通で何も問題がなかった子が、急に特異な事件を 起こすというような事件が出てきましたときに、従来の作業指導と教科指導と生活指導 という三位一体の指導の枠だけでいいのか。どうしても新たな治療機能みたいなものが 要るとなってくると、そういうものも持たないといけない。先ほど山内委員がおっしゃ ったように、児童相談所の一時保護所も今混乱状態にある。一時保護の安全弁というこ とをどこに求められるのか。今、警察の一時保護の委託も難しい。そういう機能も要る のではないか。そうなってきたときに、児童自立支援施設がそういう社会の動きに合わ せて、自分たちの持っているノウハウも生かしながら、そういう問題に対して幅広くこ たえ得るような体制ということは、やはり検討の材料として考えていかなければいけな いのではないか。そうなってくると、あまり幅を広げてどうこうということよりも、実 際のニーズとしてそういうものに対応していかざるを得ない。それを全然考えに入れず に、従来のやり方、措置の枠組みで児童自立支援施設のやれる子どもに枠を絞ってとい うことになってくると、やはり現実に合わないということになりますので、その辺は世 の中の動きを見つつ、児童自立支援施設の特色を生かして、どういうふうな形でその機 能を提供できるのかということは、もっと具体的に検討されてしかるべきではないかと いうのが私の思いではあります。 ○岩田委員  外からそういう意見をされるわけですけれども、例えば広汎性発達障害について、ど ういうふうな処遇をすれば対応可能であるかということは、我々の施設ではわからない わけです。それがもしわかっていれば、養護施設だってやれる部分があるわけです。一 時保護所だってやれる部分がある。つまり、それを実はわからない状態で全部児童自立 支援施設が考えるべきなのだと言われたときに、できないことがありますよということ を私は言いたい。  しかし、今まで広汎性発達障害やADHDの子どもたちを我々の施設で受けていないかと いえば、そんなことはないのです。受けてやれる範囲でやっているのです。というの は、児童相談所の方から、もうここしかないと言われる。その中で受けてやっている。 だけど、まだ本当にどうやったらできるのかというノウハウが確立していないし、それ も職員の力だけでできているという状態ではない。子どもたちの力もかりながらそうい うことができている。だからそれを大事にしながら、そのことを受けとめていくべきで あるといえば、それはその通りであるし、その考え方は養護施設だって同じです。養護 施設だってそういうことをやらなければいけないと思います。そこをすべて児童自立支 援施設の方に持ってこられたら、児童自立支援施設は多分お手上げになってしまうので はないかと思っております。 ○瀬戸委員  先ほどの山内委員の話を非常に興味深く思いました。名前を正しく言えないのですけ れども、強制措置に絡む観察寮という名前なのか、昔は閉鎖寮と言ったのかもしれませ んけれども、去年、新任所長と課長の研修のときに、子どもの権利擁護で私研修をさせ られて、整理したのですけれども、そのときに体罰のない指導というようなことで、考 えれば考えるほど、一定のペナルティーと言うかどうかはともかく、とにかく一人で考 えさせるようなショック療法みたいなことをしないと、本当の子ども権利擁護というの は図れないのではないかと逆に私は思ったわけです。  昔、全国に8つあったという、それが非常に悪いイメージで、押し込めるというような イメージが強くて、多分うちはやれないというふうになっているのだろうと思うし、近 畿の元職に聞いても、そんなものは論外というような感じで、あまり話に乗ってこない のです。ただ、私は本当に子どもの権利擁護をやるときには、枠のある生活ですから、 その中で一定程度そういう仕組みを持っていないと、とてもやれなくて、それが武蔵野 学院ときぬ川学院しかないというのが、全体の制度として非常にアンバランスという か、非常に不足がある制度だなと思っています。  それと、重大触法少年というのが非常に社会的注目を浴びている中で、まさに今少年 法改正問題の焦点ですけれども、少年院に送られるようになる可能性が高まっています が、それでも幼い子どもにはやはり家庭的なということは不可欠だと思うのです。そう いうときに、一定程度、対外的なマスコミ対応も含めまして、そういうものを安全弁と して持っていないと、きちんとした対応ができないのではないかと思って、そこをもう 少し検討していただきたいというのが私の願いであります。 ○津崎座長  誤解がないように私もつけ加えさせていただきますが、例えば養護施設、あるいは情 緒障害児短期治療施設、あるいは児童相談所の一時保護所で、やりにくい子が皆児童自 立支援施設で引き受けてくれたらいいというふうに言っているのではないのです。それ ぞれで創意工夫をしながら、そういう子どもには対応をしていく体制を強化しないとい けない。ただ、運営形態、あるいは実際上の処遇形態を含めて考えたときには、例えば 児童養護施設と児童自立支援施設、そういう子どもを受けとめるキャパ、あるいは能力 を考えたときに、限界は児童養護の方が明らかに低いのです、いろいろな条件が。そう なってきたときに、それはそこの問題ですから、そこでやりなさいということにはなり がたい面がありまして、やはりやるべきことはやってもらった上での、なおかつそこで 受けとめ切れないというものは、最後の砦としての児童自立支援施設の機能ということ に頼らざるを得ない面があるのではないか。そうなってくると、その部分に対して一定 こたえるだけの処遇の体制であるとか、内部の諸々の体制の工夫ということも、やはり 検討材料になるのではないか。そういう考え方ですので、よろしくお願いしたいと思い ます。 ○岩田委員  私も全く同じ意見なのです。ただ、それでは我々の施設がそういう問題について対応 していないかというと、できる範囲で実はやっているわけです。だけど、そのことを最 後の砦だということで、すべて可能である、それが役割であるということにされると、 非常に厳しい問題になる。実は入所児童が多い施設ほどやっているのです。一時保護の 問題にしても、入所状態としては満杯状態になっている。そういうところでまたその問 題を提起されても、実際にはなかなか難しい。  そうすると、そういうことが求められる施設は、定員に対して入所児童が少ないとこ ろということになっていくわけですけれども、そういう施設は、今度は逆に非行の子ど もですらなかなか対応できないような力量の施設である。そこにまた最後の砦だという 形でかぶせていって、本当にできるのかという問題があるということなのです。だか ら、その基本的なところを、どう対応していくか。その対応力を強めていく、そして入 所児童を増やしていって、その中で新しいニーズに対してまた対応する力もつけてい く。こういう発想でないと、現実にはお手上げ状態をどんどんつくっていくことになっ てしまうのではないか。そういうことを心配しているわけです。 ○吉岡委員  私も基本的に岩田先生と同じ意見ですけれども、まず、先ほど座長さんが言われた養 護施設のフォローアップという件については、うちの施設には16〜17人いると思います が、多分、全国の養護施設は大変になってきていますから、そこでみられない子どもは 児童自立支援施設へ来ているケースが多分相当いると思います。それはやぶさかではな いし、昔からそういうことであるから、それはやっていると思うのです。  それ以外にも、社会の変化によって、広汎性発達障害とか軽度発達障害とか、そうい う子どもが飛躍的に増えています。これも全国の状況ですけれども、うちの施設では ADHDが2割以上はいます。25%まではいかないけれども、22〜23%今日現在でいるので す。ADHDの子どもが2人いれば大変というのを、1つのクラスに5人ぐらいいます。小学 生クラスもそうです。A、B合わせて小学生が13人のうち、7名はADHDです。本当にすご い状況になっています。そのぐらいやっている。  あるいは高等部クラスは、学園から高校に行かせる実績があるところもあるのですけ れども、ただ、最後の砦ということで、いろいろな意味で幅広い子どもたちがいくらで もどんどん来ると、我々の施設も全能ではないので、非常に難しいところがある。  先ほどから関連の領域のことを少し言っているのですけれども、軽度発達障害の子ど もたちの専門に処遇するような機関とか機能、情緒障害児短期治療施設がそうかもしれ ないけれども、そういうものも全国にいくつもないわけです。20もないわけですから。 だからそういうものも整備して、そことも連携して、またやっていくことも必要。  あるいは思春期病棟、これも全国にいくらもないと思います。うちにはそういう診断 を受けた子どもも来ているし、統合失調症の子どもも一人か二人ですけどいるし、その 子たちが非常に混乱したときに対応できない。なかなか入院とかできないですからね。 そういう面のうちを取り巻く福祉の施設のネットワーク、病院も含めて、そういうもの をつくって、その中でそれぞれの機能を明確にするということが非常に必要になると思 うのです。  何もかも我々がやるのは本当に大変なことで、しかも、我々の仕事は、前もお話しし たかもしれないですが、人間のあり方の基本に関わるところで動いていますよね。これ は明治以前の時代であれば、外国は公教育がありましたけれども、日本は明治からです よね。従来はそういう人間のあり方、盗みがいけないとか何とかは、法的な問題だけで はなくて、倫理的、道徳的な問題でした。そういうことは昔は宗教とかそういう世界だ った。それを基本的に我々はその子どもたちに良し悪しを全部問わなければいけない。 あるいは社会の変化ということもあるのですが、今までの基準でいろいろな子どもたち を指導してきていましたけれども、今の高校生などの姿を見ると、とんでもない格好を いっぱいしていますよね。シャツを出したりとか。学園の中でそれを指導するのは非常 に難しいのです。なぜそれがいけないかということを。そういう根本的なあり方まで考 えながら指導していかなければいけない我々の施設の困難さというものを、少しご理解 いただきたいなと思うのです。 ○津崎座長  大分時間が押し迫ってきましたけれども、何もかも児童自立支援施設に押しつけよう という考えではありませんので、その点はご理解いただきたいと思います。  ただ、全般的にどの機関も、自分のところの機能だけで全部問題を処理するのはでき にくくなってきています。どこもそうです。児童相談所なども同じことです。だから、 今児童相談所でも言われているのは、外部の機関と連携して、全体の力をアップさせ る。今、例えば弁護士さんなどがおられますけれども、かなり児童相談所をサポートし てくれている。あるいはまた医療機関とも結びつく。そういう形で児童相談所の本来機 能を外部のいろいろな機関の力をおかりして、そしてアップする。それと同じことは児 童自立支援施設にも求められているのだろうと思います。  だから、すべていろいろなことを押しつけられて、自分たちが全部それをしなければ いけないという考え方ではなくて、そういう社会的要請があるときに、自立支援の機能 を一方で活用しながら、一方で、どういう機能とうまく結びつくとそういう対応がより よくしやすくなるのか。そのためには、例えばさっきいろいろおっしゃっていたよう に、いろいろな外部の機関と連携をとって、そしてその力もかりて、自立支援の機能を さらに発揮しやすくする。そういう新たな体制の仕方ということも検討が要るのだと、 そういうような含みにしていただくとありがたいかなと思いますので、誤解がないよう によろしくお願いしたいです。  そろそろ時間が迫ってきましたので、特にご意見がなければ、今回の会議はこれで終 わりたいと思いますけれども、何かぜひこれだけはというのがありますか。  なければ、これで今日の研究会は終わりにしまして、次回の日程等について、事務局 の方からご説明をお願いしたいと思います。 ○芝海家庭福祉課係長  ご議論ありがとうございました。  第4回の研究会の日程につきましては、10月末ごろを予定しておりますけれども、日 程については、改めて事務局よりご連絡させていただくことといたします。  なお、次回の検討議題につきましては、施設の運営体制についてということで、今回 できませんでしたけれども、民立民営の北海道家庭学校からヒアリングを行うことを予 定しております。  それから、先ほど服部委員からもご確認がありましたけれども、研修についてという ことで、援助技術、あるいは援助方法の向上であるとか、研修システム、人材養成の議 論についてもしていただきたいと考えております。 ○津崎座長  それでは、これをもちまして今日の研究会は終了したいと思います。どうもありがと うございました。                                     (了) 照会先  雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係(内7888)