05/09/09 新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会(第1回)議事録      新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会(第1回)                      日時 平成17年9月9日(金)                         10:00〜                      場所 厚生労働省専用第18〜第20会議室 ○谷口医政局指導課長  おはようございます。本日の進行役を務める医政局指導課長の谷口です。本日はお忙 しい中、皆様方にはご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。高知県は遅れて いるようですが、定刻ですので、ただいまから「新しい医療計画の作成に向けた都道府 県と国との懇談会」を開催します。開催に当たって、最初に厚生労働省松谷医政局長よ りご挨拶を申し上げます。 ○松谷医政局長  医政局長の松谷でございます。8月26日に厚生労働省の人事異動がございまして、岩 尾の後任でまいりました。よろしくお願いを申し上げたいと思います。大変お忙しい 中、お集まりをいただきまして本当にありがとうございます。また、常日頃から、医療 行政につきましては格段のご理解、ご協力を賜っておりますこと、この場をお借りして 厚く御礼申し上げたいと思います。  本日は、「新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会」ということで、 主に医療計画の政策につきまして、懇談の場を設けた次第でございます。その趣旨はあ らかじめお話し申し上げておりますが、厚生労働省におきましては、社会保障全般の見 直しを進めているわけです。特に来年度に向けまして、医療制度の改革を考えて、その ための準備を昨年来進めているところでございます。  その中で、医療計画の制度というのは大変大事な、基幹的な部分でございまして、今 日お集まりの各都道府県におかれましては、先進的な医療計画の取組みをされていると いうように伺っております。ぜひ意見交換をさせていただき、それを通じて医療の連携 体制の構築、あるいは患者さん、住民にわかりやすい医療計画を全国へ普及をするとい うための一助としたいと考えていまして、お集まりいただいた次第でございます。  懇談会といたしましては、先進的な医療計画について、本日は意見交換をさせていた だきますが、それを踏まえた医療連携体制の具体的な事例の紹介、さらにはそれを踏ま えたモデル的な医療計画の作成ということを考えていますので、年内に3回程度、この 懇談会を開催したいと考えております。出席いただいております皆様方におかれまして は、この趣旨をぜひご理解をいただきまして、それぞれのお立場から、積極的なご発 言、ご意見を賜われればと考えている次第でございます。どうぞよろしくお願いいたし ます。 ○谷口医政局指導課長  本日は初めての懇談会ですので、初めに出席者の方々のご紹介をさせていただきま す。地理的に北のほうから順にお名前のご紹介をさせていただきます。なお、広島県に つきましては、急なご事情ということで本日はご欠席だということです。秋田県健康福 祉部京屋部長です。同じく医務薬事課の渡部課長です。東京都福祉保健局梶山技監で す。同じく医療政策部医療改革担当村田副参事です。石川県健康福祉部木村部長です。 同じく医療対策課越島課長です。静岡県理事兼健康福祉部土居技監です。同じく健康福 祉総室企画経理室の鈴木室長です。大阪府健康福祉部納谷部長です。同じく医療対策課 高山課長です。広島県は欠席ですが、福祉保健部新木部長と保健医療総室医療対策室の 増井主任主査です。高知県健康福祉部田上副部長です。同じく医療薬務課家保課長で す。福岡県保健福祉部岡本医監です。同じく医療指導課天野課長です。熊本県健康福祉 部尾方医監です。同じく地域医療推進課坂本課長です。独立行政法人国立病院機構熊本 医療センターの宮ア院長です。  次に厚生労働省側についてご紹介します。辻厚生労働審議官です。松谷医政局長で す。健康、医政担当の岡島審議官です。医政局原総務課長です。同じく医政局総務課梶 尾企画官です。医政局指導課針田医療計画推進指導官です。医政局国立病院課外山課長 です。社会保険、健康担当の中島大臣官房参事官です。老健局山崎総務課長です。同じ く老健局老人保健課藤井企画官です。保険局榮畑総務課長です。保険局麦谷医療課長で す。社会保障担当の清水参事官です。以上です。  今回の医療提供体制の見直しに伴う新たな医療計画の作成については、これから厚生 労働省全体で取り組もうとしている医療制度改革全般の中でも、大変大きな位置を占め ています。そうした視点から、厚生労働審議官のほうから、一言コメントをお願いいた します。 ○辻厚生労働審議官  早朝から皆様、お集まりいただきまして本当にありがとうございます。いま医政局長 からお話がありましたとおりに、来年提出する予定の医療制度改革、医療保険制度と、 もう1つ医療制度、医政そのものの改革、これは両輪の輪であり、大変大きな改正にな るということで作業しております。  その場合に、この医療制度改革に関しましては、国民の皆様の健康、あるいは生活の 質が向上するような医療提供体制を本当に考えるということが大変大きなことで、医療 保険財政がどうなるかということも大変大切でございますけれども、地域の住民の皆様 の健康と生活というものがどうなるのかと、このことが両輪の輪でなければならない。 これが基本理念でございます。  そういうことになりますと、医療計画の見直しというのは大変重要なことになります が、医療計画につきましては、いままで医療部会で議論されておりまして、公表されて おりますのでご覧になっていると思いますが、患者・国民の視点、言わば治療を受ける 方がどのような医療を受けられるのかということを、地域の中で明らかにしていく。こ れが大切だと思います。そういう意味では、入院治療、そして急性期の治療の質が確保 されて、よりよくなされ、そして回復期の、例えばリハビリテーションが的確になさ れ、大部分の患者さんは早く自宅に帰りたいというのは、これはもう本当に一致すると ころでございますので、どのように生活の場に帰れるようにするのかと。こういった流 れを地域、地域で確立するということが、基本的に重要なテーマになります。その中核 は医療計画であるということが基本でございます。  その場合に、生活習慣病が大変大きなテーマになっておりますが、予防というものを どう位置づけ、医療計画との関係でどう整理していくのか。あるいは、生活の場に戻り ますときに、介護保険事業支援計画との関係をどう整理されるのか。あるいは、そのよ うな政策の流れというものに注意して、医療保険政策がどのように促進するのか。こう いったことで、省内全体にかかわる大変大きなプロジェクトになってきております。そ ういうことから関係各局も出席し、こうしてご挨拶をさせていただいている次第でござ います。  そういう作業を全国的に進めていただくためには、早め早めに各都道府県の皆様のお 話を聞いて、各都道府県のご意見というものを十分尊重して進めなければならないとい うことでございます。そういう観点から、いまの状況のお話を賜り、そして忌憚のない 意見交換ができ、実りある医療計画となるようにお願いする次第でございます。本日は どうもありがとうございます。 ○谷口医政局指導課長  議事に入る前に資料の確認をさせていただきます。配席図、表紙の1枚もの、名簿等 の他に、本日は資料1として、「平成18年の医療制度改革を念頭においた医療計画制度 の見直しの方向性」(中間まとめ)という、これは検討会のほうでお示しいただいた資 料です。資料1−2として、そのときに付けた図をまとめたものがあります。資料2と して、静岡県から出していただいていますが、表紙には「静岡県」としか書いていませ んが、静岡県の医療計画の中身についてお示しをいただいています。資料3として、大 阪府からご提出いただきました、これも表紙には「大阪府」としか書いていませんが、 大阪府医療機関情報システムについてのご説明資料です。資料4は広島県のもので、今 日はご欠席ですので次回に説明していただきますが、「広島県保健医療局の見直しにつ いて」の資料です。資料5として、熊本県から出していただいている「国立病院機構熊 本医療センターの取組み」といった資料を付けています。  本日の議題として、「新しい医療計画の円滑な作成と地域での医療連携体制の構築に ついて」と掲げています。まず初めに、先進的な医療計画と医療連携体制の具体的な事 例を、静岡、大阪、熊本の順に各県のほうからご紹介いただいて、それぞれ大体20分ぐ らいで説明をいただければと思います。その後、ご提示いただいた事例について、国と 皆様方とのやり取り、もしくは都道府県相互の意見交換という形で進めたいと思ってい ます。よろしくお願いします。まず資料2に基づいて、静岡県からお願いいたします。                (パワーポイント開始) ○土居理事兼健康福祉部技監(静岡県)  静岡県ですがパワーポイントで説明させていただきます。静岡県の医療計画は4年前 に総合計画というものを作成して、その部門計画という位置づけでこの医療計画は位置 づけられています。そして、県における保健医療施策の基本指針となるものです。計画 期間は、今年の平成17年から平成21年度です。今回の改定のポイントは2つに集中しま した。まずは、本当の意味での県民本位の計画であることです。それから、計画を立て っ放しで、作りっ放しだったのですが、進行管理を目に見える形でしていこうというこ とで、いま流行りのニューパブリックマネジメントの手法で進行管理をするというポイ ントがあります。  計画の柱は4つ立てました。まず、可能な限り情報を提供し、そして開示することで す。それから、生活習慣病のコントロールなど、疾病管理です。それから危機管理と進 行管理です。この4つの柱を立てて、それぞれ検討を進めました。  まず情報開示ですが、その目的は何かというと、ただ単に開示するのではなくて目的 を明確にしようと。そして、この目的達成のためにみんなで協力しようということで、 「患者が主体の医療機関選択」としました。数年前だと、このようなことは行政が言え る言葉ではなかったのですが、本当に県民本位ということであるなら、そのような目的 に資する情報提供、情報開示をしようと。それから、「医療機関の機能連携・分担」で す。ずっと連携とか分担と言っていますが、静岡県は自治体立の病院が多いので、それ ぞれが自己完結型で、全ての機能、いろいろな高度機器を全て揃えたいという意向があ るのです。どのようにしたら機能連携・機能分担が進むのか、そのための情報開示であ ると明確な目的設定をして進めたところです。  機能分担、「地域の医療機関が話し合い、それぞれの特徴を活かした連携を」という のは、建て前としてはあるのですが、これは不可能です。いくら調整をしても、自分の ところは他よりもいいものをつくりたい、これは当然の意識です。それを、情報を開示 することによって、医療のある意味での主体である患者に選んでいただくということ で、情報開示を進めることにしました。  進めた結果、地域における病院の位置づけがよくわかるようになりました。特に、院 長先生と言えども、自分の診療科以外の他の病院の情報には疎いようで、自分の病院が 地域でどのくらいのいろいろな医療機能を担っているのか、非常に客観的にわかるよう になっています。そういう意味で、選択と集中ということで、病院経営の戦略にも非常 に有効です。  ここには挙げなかったのですが、いま市町村の再編があります。その中で、いま静岡 県では市町村の再編によって病院の統廃合が行われたところはありませんが、特に自治 体立病院の機能の強化あるいは統廃合へ向けた動きに対しても、非常にいい情報になる のではないか、ということを複数の院長先生からお言葉をいただいています。  医療機能の情報の開示へ向けて、行政はいままでいろいろなことをやってきました。 平成14年に、医療事故の報告も過失の有無にかかわらず、死亡または重篤な障害が残る もの、そういった事案が発生した場合には保健所に届出をしなさいという、法律に基づ かない通知を出しました。こういった通知も、県の医師会が全面的にバックアップして くれて、それで病院協会も合意をして、法律には基づかないのですが、平成14年に医療 事故の報告義務を課したところです。結果、死亡事故や重大案件云々ではなくて、こう いった医療事故絡みの報告が3倍に増えました。  そしてもう1つは、いま県の商工施策と一緒に進めている構想の中で、臨床試験ネッ トワーク、特に治験ネットワークを構築しています。これも、医薬品として世に流布さ せるために検査結果を製薬会社に返すという目的ではなくて、医療の質の向上のために 治験をやろうという目標を立てて、治験ネットを組んだところです。医療の質の向上を 目的に掲げた治験ネットというのは、我が県だけではないかと思っています。  もう1つは、あとで説明申し上げますが、県版標準電子カルテです。これも非常に乱 暴な話なのですが、オーダリングシステムや医事会計システムは大体病院に入っている のですが、そのシステムとフルコンパティブルに乗る電子カルテを、1回目は県が100% でお金を出してシステムを開発して、そのソフトを無料で県内の病院には配るので、3 年、4年後にはそれぞれの病院がお金を出し合って電子カルテを作りましょうと。これ は足掛け3年間やったものですが、いま進行中で、このような取組みを行ってきまし た。  実際に医療審議会にワーキンググループを設けて、医療機能の情報開示へ向けて、医 師会や病院協会、薬剤師会や看護協会、いろいろ集まって会議をしたのですが、結局は このような行政の取組みよりも、県医師会・県病院協会の理解と高い意識があって、医 療機能の情報の開示ができたというのが実情です。我々はおそるおそるワーキングをや ったのですが、開示すべきかどうかという議論は一切なくて、どうやって情報の内容、 医療機能をリストアップするのだという、最初からそのような議論に入りました。  医療機能の選定ということで、最初の目的に沿って、地域の医療連携に資する医療機 能をリストアップしようと。あとは国の通知の例示を参考にする、それから診療報酬請 求項目を参照、さらには我々がリストアップしたものを各領域の専門医師の意見を反映 して行うと。各病院に調査をかけるときには、目立つように「調査結果の公表という前 提で調査をします」ということを明記して、調査をしました。  これは県のホームページからピックアップしたものです。当初は静岡県のトップペー ジにあったのですが、古くなるとそれが落とされて、いまは健康福祉部のトップページ に医療機能調査は載っています。平成16年度に県内97病院、約180項目の治療方法につ いて調査をしたものです。公表を急ごうということで、見かけと使い勝手は悪いのです が、悪性腫瘍云々ということで、食道がん、胃がん手術などと列記しています。例え ば、「胃がん手術」をクリックすると、このような術式あるいは医療処置別の項目が並 んでいます。当初は、これの解説をしないとよくわからないだろうと。解説をいろいろ と検討すると、なかなか大変だということで、いちばん安易な方法で国立がんセンター にお願いして、がんセンターのホームページへリンクさせていただくことにしました。 そうすると、先ほどの胃がんということで、まず解説を見たければ、クリックすると国 立がんセンターのホームページにつながって、ここには素晴らしく、素人にもわかるよ うな内容で、診断から治療に至るまでの詳しい解説があります。これを読むとどのよう な治療方法かがわかります。その中でも、「内視鏡的粘膜切除術というのがあるのだな 」ということで、これをクリックすると、病院別に年間の症例数が出てきます。  まず早く公表することを前提としたものですから、これでは県民の皆さんの使い勝手 はよくありません。それで、こういった症例の情報開示だけではなくて、静岡県が作っ た医療計画が本当に住民の皆様にわかりやすい形で情報提供できるホームページの作成 に、いま取り組んでいるところです。  疾病管理についてですが、疾病別の診療ネットワークというよりも、疾病別の医療機 関連携、病診連携あるいは病病連携、これをどう進めるかが本当の疾病管理の内実を得 られるものだと思います。いままで、いろいろな地域連携室あるいは専用の電話を置い ていたとか、担当者を入れるという中で地域連携をやったのですが、いいツールがあれ ばますます連携が進むだろうということで、県版電子カルテを活用した地域連携をす る。これでは検査の重複などもなくなり、紹介状も本当に簡単に書けるようなシステム にしてあります。病院の電子カルテだけではなくて、かかりつけ医向けの電子カルテも 現在開発中です。少し宣伝をさせていただくと、県医師会を通じていまのかかりつけ医 が使っているもの、もちろんオルカとフルコンパティブルのものもありますが、レセコ ンにしっかり乗って、かかりつけ医にとって必要な機能を備えたものが、市場価格で2 万円以内で購入できるような、アフォーダブルな電子カルテをかかりつけ医向けにも開 発しているところです。  先ほどの電子カルテですが、この電子カルテも何で導入するかの目標設定を明らかに しようと。第一に患者がわかりやすい、患者の利益に直結するような電子カルテにしよ うと。そのために医療機関相互の連携に使える。さらには治験や臨床研究のデータ管理 ができる。このように目的を明確にして開発を進めたところです。これも足掛け3年に なるのですが、一昨年に統一様式機能の協議が始まって、平成16年、平成17年にかけ て、いま開発をして、患者中心の医療、医療の質の向上を目指して作っています。  この電子カルテも、患者に対してネット上での配信は当面は考えていません。セキュ リティや患者の理解の点があります。CD−ROMの形で患者にこのカルテをお渡しす る形を取ることにしています。これも主治医に紹介状と一緒に付けてもらうスキーム と、病院の事務でお金を払うときに、「私の診療情報をください」と言ったときに、つ まり主治医に頼むのではなくて、事務で「あなたの診療情報をCD−ROMでお渡しし ましょう」ということで、この電子カルテの開発が進んでいます。  我々が目指しているのは、その結果セカンドオピニオンであるとか、そういったもの を受けようと思ったときに、患者がそういった情報を持って、何のハードルもなくセカ ンドオピニオンを受けられるようにしようと、あるいは病診連携、病病連携について も、必要十分なデータを持ってコンサルテーションを受けられるようにしようというこ とで、いま進んでいます。これも大体平成18年度には、県内の400床以上の病院の6割 以上に導入する計画になっていて、手を挙げているのは全部で30病院、様子伺いも含め ると80病院ぐらいあります。  危機管理です。健康福祉部というのは本当に危機管理部局なのかということはあるの ですが、今回の医療計画でも、とんでもございません、非常に複雑多岐にわたっていま すと。しかも、単に危機の事態の初期だけでの対応ではなくて、初期対応から復旧、復 興に至るまでの総合的な管理部局というのは、健康福祉部だけでございますという中 で、県庁の中でも危機管理部局としての健康福祉部という認識が、今回の医療計画の中 でもなされつつあります。  最後ですが、進行管理です。これもアウトカム指標に基づく達成状況の評価・改善、 業務棚卸表の活用ということで、逐次データ、数字を県民の方々に公開してどのような 計画が、計画倒れに終わっているのか、そのような批判も得ながら進行管理に努めま す。  それともう1つは、責任体制の明確化です。これまでは保健所にも地域医療協議会と いうものがあり、年に2回程度開かれるものでしたが、実際に地域医療の課題を検討 し、福祉への連携の実質的な議論を進めましょうということです。ある地域は脳卒中、 ある地域は糖尿病ということで、それぞれ具体的な重点項目を掲げて、保健所が調整役 ということです。これは病院や医師会も、非常に強く望んでいることです。我々にとっ て、この二次保健医療圏における計画の推進にとって、いま非常に期待しているのが交 付金です。医療提供体制交付金でしたでしょうか、この使い道もここでしっかりと練っ て、提供体制をつくりたいと考えています。  まとめですが、いちばんインパクトがあったのは、我々行政官に対してあったのでは ないかと思います。これは我々の自省の念として、医療行政がありますが、いままでは 単に補助金を流すだけのものだったのではないかと。医療の質の向上が叫ばれています が、そういったことに行政がかかわるのは、アンタッチャブルな領域ではなかったか。 我々は二言目には、いろいろな議会での答弁でも、「県民本位云々」と言うのですが、 そのような言葉と我々の実際にやってきたこと、責任ということを県民から問われた場 合に、本当にそれは責任を全うしていただろうか。そのような非常に大きな反省が我々 の中にありました。  先ほどの医療機能の情報の開示ということですが、おそるおそる行政は一歩踏み出し たら、医師会にしろ、病院協会にしろ、高い意識と理解で、むしろ我々を励ましてくれ ました。特に医師会の幹部の先生は、「今度はいよいよ診療所の番だな」と、病院団体 も「これでこれからの治療成績の公開という一歩が踏み出せましたね」と、そのような すごい励ましをいただきまして、これから医療の質の向上に向け、我々は前進したいと 思っています。  最後に1つの例示ではあるのですが、静岡県の資料2のいちばん最後の頁がありま す。我が県でも、産科医不足が非常に深刻ですが、浜松の産科オープンシステムという ことで、地域のかかりつけ医の先生を「非常勤医師」という形で位置づけて、この県西 部浜松医療センターで分娩の際に立ち会う。あるいは一緒にオペレーションをする体制 が取れている。  もう1つは救急システムなのですが、これは静岡市医師会からのイニシアティブで、 特に在宅医療との連携の中で、十分に患者及び患者の家族との合意の上で、イエローカ ード、グリーンカードと、その患者の状態が悪くなったらすぐに救急車を呼んで、運ば れて云々という一連の図式ではなく、グリーンカードを持っていれば、すぐにその先生 を呼ぶ。先生と連絡が取れなければ市の救急隊に連絡をするわけです。そうすると、 「グリーンカードを持っています」と言うと、市の救急指令が当番の先生に連絡をし て、その先生が在宅の患者宅を訪問して、最期を看取る。イエローカードの場合は救急 隊が出動します。こういった2つのモデルを今後全県的に進めていきたいと考えていま す。以上です。                (パワーポイント終了) ○谷口医政局指導課長  質問等があるかもしれませんが、全ての県のプレゼンテーションが終わってから一括 してお願いしたいと思います。引き続いて大阪府にお願いします。 ○納谷健康福祉部長(大阪府)  大阪府です。資料3をご覧ください。たまたま私は1996年から4年間医療対策課長を やっていたので、大阪府の医療計画の経過、それも医療開示との関係を中心にして、少 しイントロをお話させていただいて、その後の現状と今後を担当課長からご説明しま す。  大阪府の資料の3頁に年表を付けているので、ご覧ください。右側ですが、平成9年 に国のほうで第3次医療法改正がありました。このときの大きなテーマが、「医療施設 相互の機能の分担及び業務の連携」と「医療機関別、医療機能調査の結果の公表」が大 きなテーマでした。当時の担当課長がたしか『厚生』に、「我が国の医療は民間が主導 でやられています。そのような中で、医療機能・情報を公開することによって、民間の 医療の方向性を位置づけるというのが1つのやり方だろう」ということを書かれていた と思います。それぞれの病院に「お宅はなくなりなさい」とか、「この2つが合併して 1つの病院になれ」というのは、なかなか我が国ではできないわけで、この当時の厚生 省の方向性というのに我々も、そうだなということで、府の医療計画の改正は、そのよ うな方向で頑張ってみようということになりました。  医療機関の情報公開をどうすればいいのかということで、平成10年くらいにそれを受 けていろいろと議論したのですが、4つの大きなやり方があると思いました。1つは、 既存のデータがいくつもあります。例えば基幹災害医療センター、また救急病院など、 すでに出ているものがあって、何も医療計画で公表するからといって、それほど問題の ないものというのはかなりあるわけです。  2つ目として、主として病院で、国及び府の補助金、公費が入っている機能はいくつ もあります。例えば精神科などは国のいろいろな補助金などが入っています。そういっ たものはお金をもらっているので公表するのは当然ですから、補助金が入っているもの は公表できると考えました。  3つ目は、社会保険のいろいろな請求項目で、これはかなり医療機能を反映した項目 になってきておりました。ただ、私が行政を始めた頃、このときからさらに10年くらい 前ですが、社会保険のほうでは『部外秘』という冊子を持っていまして、社会保険のど のような機能をしているか、どのような請求をしているかというのは部外秘だと言われ ておりました。特にその当時は、看護師の数による1類、2類というものが中心だった からかもしれませんが、部外秘でした。この当時、おそるおそる担当から社会保険のほ うに尋ねたところ、返事は、これも保険料がいくわけですから、むしろどんどん公開し てくれというものでした。私も耳を疑いまして、担当にもう一度確認させたのを覚えて います。これが出ると、随分たくさんの機能が出てきます。  4つ目は、いわゆるアンケート調査で、医療機能調査をしようということで、医師会 や病院協会等々と相談をしながらつくった医療機能があります。それが左手に書いてい るように、疾病別手術・化学療法・放射線療法といった、病院ごとの調査項目で、かな り詳細なものでした。  ただ、これがなぜできたのかというのは、いまの静岡県の報告とも似たところがあり ますが、もともとかかりつけ医というのが、医師会主導の事業で進んでいました。推進 するためには、かかりつけ医が適切に病院に紹介しなければいけなくて、医師会は病診 連携を盛んに言っていました。このために、医師会はすでにそれぞれの病院の詳細な情 報のアンケート調査をして、本にして持っていました。どこの病院には何という機械が 何台あるかまで持っていました。これはすでに本になって出回っていて、これを全部と いうわけにはいきませんが、かかりつけ医にぜひ必要なものは医療計画に載せていきた いと言ったところ、それはそうだということで、あまり抵抗もなく賛同していただけた ということです。この辺も似たようなお話ですが、病院協会のほうも、ぜひ病院の機能 は公表していくべきだという方がおられて、そのような意見が述べられると、反対意見 は特になかったということです。  このアンケート調査は、府下約600の病院に行いまして、2度担当者から催促をして、 90数パーセントの回収率で、2回で打ち切るということでスタートしました。  その次の頁です。平成12年に医療計画としてこれを公示しました。次の平成13年に は、大阪府の医療機関の情報システムということで、インターネット上に載せていくと いうことで、これは現在は一般診療所はもちろん、歯科診療所までに拡大をされてい て、少し医療計画とは別に発展をしています。  先ほども申し上げたように、このときの情報公開を含む医療計画がうまくいった理由 というのは、かかりつけ医制度の充実を医師会も望んでいたこと、医師会主導ですでに 病院のデータがかなり集められていたこと、我々も情報提供が非常に重要であるとして いたこと、これは1つは府民への情報提供、民間病院がその地域でどのような機能を持 つべきかの参考にしていただく、こういったためにも非常に重要であると考えたもので す。  一方、その次に医療計画の中では医療のシステム化が非常に大事なわけですが、少し 振り返って考えると、大阪府は5つの府立病院を持っています。これは精神医療、がん 医療、循環器医療、災害医療センター、小児のセンター、アレルギーのセンターです。 大体において、そこを基幹病院にして、それぞれの地域にそれぞれの機能の地域センタ ーをつくっていくやり方が、わりあい取りやすい環境にあったということですが、これ は国の先導的な動きが非常に大事で、1つはがんの拠点病院と地域拠点病院の制度で、 少し進みつつあります。これは、がんの手術の治療成績までいま公表に至っています。  それから、もう1つの地域リハビリテーションで、例えば国立循環器病センターとい うのが大阪にありますが、そこでの脳卒中、心臓病の患者のリハビリのシステムをつく る、それをきちんと受け止めるリハビリの病院、いまはケアマネジメントまで入れて、 在宅医療にまでつなげる、保健所と病院が一緒になって、第一線の救命救急、国立の循 環器といった救急から在宅にまでつなげていくシステムにつくりつつあります。小児に ついては、NMCSや産科救急システムといったシステム化があります。  大阪府の今後の医療計画の大きなテーマは、システム化と、病院のセンター化がある と思います。いま小児科のセンター化はなかなか難しくて、外来の休日・夜間のセンタ ー化を目指しています。また、産科の病院のセンター化も必要だと考えています。 ○高山医療対策課長(大阪府)  それではお手元の資料の1頁、2頁の医療機関情報システムの内容について、補足で 説明させていただきます。現在、これはインターネットを利用した形で大阪府内全域の 医療機関の情報を収集・管理・提供するシステムになっています。先ほど部長から経緯 の説明がありましたが、いちばんのベースは救急医療機関情報システムという形で立ち 上がって、それがコンピュータシステム化され、医師会に委託され、それから広域災害 ・救急医療情報システムという国のシステム構築の流れも吸収した上で、出来上がって いるもので、平成13年3月末から運用を開始しています。  このシステム図は5頁に記載しています。大きく分けて、「大阪府医療機関情報案内 システム」、これはいちばん右端の上から3つ目と4つ目の箱の部分が1つあります。 「大阪府医療機関基本情報管理システム」で、これは5つ目の箱の部分です。1つ目と 2つ目の箱が、「大阪府広域災害・救急医療情報システム」で、この大きな3つのシス テムから構成されて、いま現在話題になっているのは、1番目の医療機関情報案内シス テムです。  この内容ですが、(1)に記載していますが、「医療連携情報システム」として医療 機関に提供する情報システムと、「府民案内情報システム」で府民に提供する情報シス テムという、2段階方式で情報公開をする形でつくられています。  このシステムの主なメニューですが、(1)で基本情報検索として7項目の記載があり ます。これはあとで(2)で触れますが、基本的に保健所で、病院・診療所の許認可業 務で管理する台帳をコンピュータシステム化していて、それをベースにして、基本的に 提供する情報が基本情報検索です。  (2)は、それをキーにして、年に1回行うアンケート調査で、各医療機関から情報提 供をしていただく29項目です。メニューは7頁に総括表があります。実態は参考資料2 に、病院用と診療所用を全部付けています。  この医療機能は29項目あって、医療機関の機器(主に治療機器)、医療技術、対応で きる外国語等、医療機能に関する項目をキーワードに検索できるメニューになっていま す。この中の救急医療に関するその日その日の空床情報、対応可能状況等、あるいは詳 細な医療機能については、医療連携情報システムのみ、つまり医療機関にのみ共有する システムで、そこまでは府民に全て公開する形にはなっていません。  それから、この情報提供システムは、最初は全ての約600病院についてスタートした わけですが、平成15年度末から全ての診療所約6,200件、平成16年末からは歯科診療所 4,000件も加わった形で、全ての医療機関をカバーすることを目標にしています。現在、 コンスタントに答えていただいて情報開示できているのが、カバー率が約8割という状 況です。あとは救命救急センター、救急病院、休日・夜間診療所の一覧表が情報提供さ れています。  (2)が、その基盤となる台帳システムということで、保健所で入力して管理しま す。これは基本的には外から入り込めないシステムですが、これを基盤にして(1)の 医療機関情報案内システムを構築しているものです。  (3)が、災害拠点病院とか、救急告示病院については、災害医療の協力病院として 協力していただいているので、その情報を広域災害・救急医療情報システムという形 で、主に救急医療機関、消防に提供するシステムということで、2頁の(3)は今回の 話題ではないので割愛させていただきます。  このシステムの現在の課題ですが、情報の更新をどうするのか。信頼性の高い情報を 誰がどう入力していくかということで、災害や救急医療システムの更新は当然の如く、 1日2回更新していただくようになっていますので、これは問題ないとして、個別医療 機関の情報については、各医療機関が自ら常時インターネットからアクセスして最新の 情報に入れ替えることを基本にしています。中にはそういったことをきちんとやってい ただけないところもありますので、年に1回アンケート調査でリフレッシュをお願いし て、こちらで把握して、その内容を更新していく体制でやっています。  公開項目の選定・追加については、医師会、歯科医師会、病院協会、府等からなる医 療機能情報管理委員会で協議をしています。  この情報開示について静岡県とは少し違って、ベースにかかりつけ医として必要なデ ータベースは医療機関内部で保有されていたものをベースにしていたので、その中で一 般府民にも公表していいものを選び出して公表するスタンスで、府民に誤解を与えず に、医療機関を選択する際の判断資料に資するものということで、若干絞らせていただ いて、前の医療計画の議論でも、ガンマ・ナイフのある病院がどうのこうのという議論 がありましたが、そこまでの公表はしておりません、そこは、かかりつけ医がきちんと 説明をしながら、患者に開示する資料として提供するという二段構えでやっておりま す。  このシステムは年間のランニングコストは大体4,000万円ぐらいの、府単独ですが、 いちばん大きなベースは先ほどの広域災害・救急医療情報システムで、これは国の補助 をいただいて運用しているものがベースにあるので、その上で府単独で運営しているも のです。これがいま現在の現状で、イメージ図は6頁の左上にあります。このような形 で府民向けのページが出てきます。右側に「医療関係者用サービス」というタグが付い ていますが、これは医師会の先生方はパスワードを提供させていただいて、そこからは 詳しい情報が医療関係者のみはさらに得られるようになっています。一般的な府民向け の項目は右に少し列挙されています。基本情報や外来の時間、診療科目、許可病床や対 応できる医療機能、専門外来、予防接種となっています。以上がシステムの現状です。  あと医療連携の具体的事例は先ほど部長から報告がありましたが、資料の9、10頁 が、「がん診療拠点病院の機能強化事業」ということで、これは医療情報開示が医療機 関、医師会、病院協会の理解の下にかなり進んでいたものですから、こういった中でが ん拠点病院の選定を大阪府では昭和40年代から、日本で最大規模のがん登録システムを 運用してきたので、それとリンクさせて5年生存率という、医療の質のデータを公表で きないかということで、国で示す要件に加えて5年生存率を公開することに応じていた だけることを条件にして、各二次医療圏ごとに拠点病院の選定をしました。  選定をするに当たっても、がん登録数の多いものから順にエントリーしていただく形 で選んで、いま現在大阪市を除くすべての二次医療圏ごとに1か所とは大阪市内4カ所 で、計11カ所指定されていて、指定に当たっては国の補助をいただいて立ち上げて、そ の後、大学病院も加えた病院連絡協議会を開催しています。  いちばん大きな成果はどこにもないデータとして、5年生存率を全ての11病院、主要 部位別に開示しています。手術件数も含めて開示しています。さらに、大学病院も平成 17年5月から開示されるようになっています。このコーディネート役を保健所にお願い しまして、いま現在この拠点病院と連携して最新の医療の研修会やいろいろな啓発や、 さらに地域での病診連携といったもののコーディネートを進めています。  11頁の地域リハビリテーション推進事業も先ほど部長からお話がありましたが、二次 医療圏ごとに地域リハビリテーションの地域支援センターという拠点病院を指定しまし て、これも国の補助をいただいてやっています。大阪府の特色は、保健所が企画・調整 の事務局として全面的にサポートする。地域の支援センターの有力病院は、確かに医療 活動として高い機能を持たれて熱心ですが、地域でのいろいろなシステム化や関係機関 との調整といった業務についてはとても手が回らないということで、保健所がそこを全 面的に担っています。具体的に先進的なよい試みとしまして、特に北のほうで進んでい ますが急性期の病院と回復期リハ病棟を持った回復期の全ての医療機関の空床情報や待 機状況、受け入れ可能患者情報というものを、随時保健所が事務局になって更新しまし て、急性期病院に情報提供をしています。これをやり出してから回復期リハ病棟に送ら れてくる患者が、非常に適切なタイミングで送られてくるようになりまして、これは双 方とも経営的にも非常に大きなメリットがあって、その後広く情報共有して、患者の流 れを作るシステムは機能しています。ほかの地域でもそれを真似して広げる動きになっ ていて、このシステムの成果ではないかと思います。  いま、回復期から維持期に向けた介護保険サービスとのさらなる情報共有の試みをい ろいろ地域でしていまして、これは具体的な成果というところまではいっていません が、そこに踏み込んで事例研究をして、お互いのサービスを検証し合う形で進めていま す。以上です。 ○谷口医政局指導課長  どうもありがとうございました。引き続いて、熊本県、よろしくお願いします。                (パワーポイント開始) ○宮ア熊本医療センター院長  私どもの病院の、ここ数年間の取組みについてご紹介します。タイトルは「医療連携 とクリティカルパス」で、この2つに焦点を合わせてご紹介を申し上げます。内容は、 第1番目に私どもが取り組んでいる医療連携についてお話をします。それから、クリテ ィカルパスについて少しお話をさせていただいて、最終的には医療連携クリティカルパ スについてのご理解をいただければと思います。  お手元に資料をお配りしていますので、この画面の字が見にくいときはそちらをご参 照いただければと思います。熊本県の人口は185万人で、全国で23位です。熊本市が66 万人。その中に、公的病院と言われるものが36病院あります。医師会のA会員の先生方 が熊本県で1,405人、熊本市で584人です。ここにありますように11の二次医療圏で構成 されていまして、特に注目すべきところは三次医療の主なところは、熊本医療圏に集中 していることが特色であろうかと思います。  熊本市の中の公的な急性期病院がどのような配置であろうかということを少しご紹介 します。大体7カ所の病院だろうと思います。この中で、赤で書いてある4病院が急性 期特定入院加算を取得していることが、全国的にも注目を受けているようです。こうい った背景の中で、私どもの病院がどのような取組みをしてきたかをご紹介申し上げま す。病院は国際医療協力が機能付与されていて、診療科は24診療科です。病床数が 550、外来の1日の受診者数は800人です。この病床数にしては非常に少ない。なぜかと 申しますと、私どもの病院である程度診療目的を達したら、地域のかかりつけの先生方 に逆紹介をしているということで、数が少ないのです。救急車は年間5,300台です。毎 年増えていますので、もう少し増えるのではないかと思います。ただ、救急車以外の患 者はそんなに多くありませんで、大体1万5,000人ぐらいです。紹介率が、一般の紹介 率計算で63%ぐらいです。平均在院日数は14日を切っています。  これから病診連携・病病連携の項目に入りますが、平成8年に開放型病院としての資 格要件を取得しました。熊本県内においては、医師会病院が2つあります。その次に私 どもの病院が、公的病院としては最初に取得しました。現在、登録医の数が1,053人で す。そのほかに、急性期特定入院加算を平成12年に取得しました。これは全国で4番 目、地域医療支援病院が平成14年3月で、全国で42番目という状況です。ご承知のとお り、昨年4月に独立行政法人化しました。  病院は、診療、教育研修、臨床研究、国際医療協力の4つにかなり力を入れてやって いますが、その中の診療部門においては、こういう方針を立てて10数年間、運営をして まいりました。良質の医療提供が大きな眼目です。その1つの柱が診療機能の向上、医 療の質の向上、医療の質の向上の中でクリティカルパスに取り組んでいます。初めてお 聞きの方もいらっしゃるかもしれませんので、あとでこのことを少しだけご紹介申し上 げます。それと、今日のテーマの医療連携の推進。いわゆる病診・病病連携の基本とし て、開放型病院としての取組みをやってまいりました。そして逆紹介の推進。私どもの 病院で診療の終わられた方は、地域のかかりつけの先生方にご紹介を申し上げるという 逆紹介です。これが、1つの大きな柱になっています。医療連携をやる上においては、 どうしても救急医療を欠かせないということで、こちらも力を入れています。そして国 民に、医療機関に期待され、信頼される医療機関であろうというふうに願って運営して まいりました。  医療連携にどのようにして取り組んできたかと申しますと、平成2年3月に地域医療 連携室を開設しました。当時としては、かなり早い取組みであったろうと思いますが、 まだ当時の地域医療連携、病診・病病連携に関しては地域の理解がまだ十分でない時期 でした。しかしながら、平成2年から平成7年の5年間に、地域における医療連携が急 速に、特に熊本においては進んでまいりました。私どもの病院としては国立の医療機関 ですので、いろいろな先生方と公平に連携を取るべきであろうということで、熊本市の 医師会と開放型病院の相談を開始しました。市の医師会も非常に積極的に、しかも高い 関心と理解を持って取り組んでいただきました。1年間、かなり熱いディスカッション をしました。平成8年に、開放型病院の運営協議会を発足してスタートしました。  これが、熊本市内の最近の1年間で紹介していただいた病・医院の分布図です。これ が熊本県内です。県内、いろいろな所からおいでいただいているということです。これ は年に2回ほど、登録医の先生方とも意見交換会を開催しています。  次はクリティカルパスです。3番目の医療連携クリティカルパスをご理解いただくに は、どうしてもクリティカルパスについてご理解をと思いましたので、少し紹介させて いただきます。お手元の資料には「クリティカルパスの効用」としていますが、クリテ ィカルパスで何が得られるかと申し上げますと、医療の質が向上します。それからチー ム医療が推進されます。安全性が高まります。標準化、効率性ともに向上します。また 患者、職員の満足度が高まります。1つひとつ説明していると時間がなくなりますが、 大体この5項目は達成できると思います。  それでは、私どもはクリティカルパスをどのように取り組んできたかと申し上げます と、クリティカルパスの普及のためにクリティカルパスの標準化が必要であろうという ことに取り組んでまいりました。平成13年は、私どもにとりましては医療制度に関して 大きな変革がありました。改革試案も出ましたし改革大綱も出ました。その中で、保健 医療分野の情報化に向けてのグランドデザインを策定する方向が示されました。医療情 報システムの工程表が示されました。赤で書いてあるところに、クリティカルパスに関 する項目があります。いわゆる、「クリティカルパスを相互に共有利用するシステムを 開発」しようということで、平成13年度から平成15年度までの間にその基盤を作る事業 が展開され始めました。私どももその事業に参加しまして、それを推進しています。そ の中で、クリティカルパスの標準化に取り組んだわけです。  共同利用、情報交換について何を考えたかと申しますと、概念図に示すとおりです。 実際に事業主体となっていただいたのは、医療情報システム開発センターです。そこの 公開用サーバーに、いろいろな医療機関が持っているクリティカルパスを登録しません かと。また、そこに登録して掲載したものは、ほかの医療機関がダウンロードして利用 できますよと。ほかの医療機関も、そういうことであります。ただ、それぞれの医療機 関の持っているクリティカルパスというものが本当にクリティカルパスであるかどうか については、ある程度の基準を決める必要があろうかというところでディスカッション を進めてまいりました。  基本的には、医療者用と患者用の2種類を作ることが1つです。あとは細かいところ がたくさんありますが、大きなところは1つです。それから、標準様式を作成しまし た。ここに14の項目がありますが、これ以外に登録の医療機関で、いくつもプラスする こともできますし、外すこともできますという緩やかな標準様式です。当然のことなが ら横軸は時間、縦軸はケア項目です。どうしても避けられない達成目標を必ず作ること が、クリティカルパスの要件でありますということをお示ししました。簡単に申し上げ ますと、釈迦に説法の話が出てきますが、横軸に時間、日時、縦軸に検査や治療の項目 が入ります。これが1つの表として動き始めるわけです。  医療者用のクリティカルパスと患者用のクリティカルパスがありますが、これも横軸 が時間、日にち、縦軸がいろいろな検査や処置などが書いてあります。ここに観察の項 目もあります。これを運用すると、医師による差がなくなります。いわゆる標準化が進 みます。関連職種のスタッフで作成して実施するために、情報の共有がされる。チーム 医療が推進されます。ここに達成目標を1つずつ作っていますので、それに対してバリ アンスがあるかどうかということで、医療内容の見直しが行われます。そこにEBMも 入ってまいります。したがって、そこで医療の質と効率化の向上、安全性も向上すると いうことです。これは患者用のクリティカルパスです。満足度が向上しますということ です。ちょっと専門化しますので、ここは飛ばします。  先ほどの事業の中で、各医療機関から申請されたクリティカルパスを医療情報システ ム開発センターのWebの上に登載しますということで、クリティカルパス・ライブラ リーという事業を展開します。お手元にあると思いますが、「全国の医療機関のクリテ ィカルパスを自由に閲覧、ダウンロードできます」、それから、「あなたの病院のクリ ティカルパスの掲載の登録申請を受け付けています」、もう1つは、「標準クリティカ ルパス作成ソフトを作りましたので、それを自由にダウンロードしてお使いいただけま す」。全て、これは無料の作業です。現在、参加施設は17病院で、もう少し増やしたい と思います。登録クリティカルパスの件数は、156種類です。現在、毎月大体4,000件前 後のアクセスがありまして、4分の1が一般市民の方々のアクセスです。ここは、注目 すべきことだろうと思います。そこには、医療者用と患者用のリストがありまして、こ こにそれぞれのクリティカルパスの絵がありますが、医療者用をクリックすると、この ようにどこかの病院の医療者用のクリティカルパスが出てきます。要件としての達成目 標は、必ずここにつけます。患者用をクリックすると、患者用のクリティカルパスが出 てくるということです。  標準クリティカルパス作成ソフトもダウンロードできます。この中に自由に記載する ことができます。また、これは2種類ありまして、この中で選択性のものもありますの で、2種類を掲載しています。ご利用いただければ、クリティカルパスを作成するのに 非常に容易にできるということです。大体3時間あれば、医療者用と患者用の両方でき るという実績を持っています。  さて、私どもの病院がクリティカルパスに対して、どのような取組みをしているかを 少しだけご紹介します。全病院的に各部会を作りまして、ここ10年近くクリティカルパ スに取り組んでまいりました。全職種の参加です。その中に、こういう推進プロジェク トを作りまして、いま6つの研究班が動いています。これが、私どもの病院のクリティ カルパスの質の向上に役立っています。いろいろな職種が参加しています。参加するの も自由、脱退するのも自由という非常に自由な研究班です。2カ月に1回、こういう発 表会をしています。いろいろな施設から大体30〜50人に毎回参加していただいていま す。  病院の中で、平成17年7月の実績をここにお示しします。現在、医療者用と患者用を 1組として351種類のクリティカルパスを置いています。この月は特別な月だと思いま すが、整形外科は入院患者の95%がクリティカルパスで運用しています。婦人科の患者 も、大体9割はクリティカルパスを利用しています。眼科の患者も同じです。かなり高 い率です。眼科の普段の月は、これが100%になります。こうやって、診療科によって 利用度が違いますが、病院の特性もあろうかと思います。病院全体としては、入院患者 の大体50〜60%の使用率です。近いうちに、これを8割までに持っていきたいという計 画を立てています。  ここで医療連携とクリティカルパスの概要についてご紹介します。3つ目の医療連携 クリティカルパス、いわゆる連携パスとよく言っています。また、地域連携クリティカ ルパスとも言っていますが、これについて少しご紹介します。いままで、クリティカル パスは1つの病院で1つのクリティカルパスが動いていたわけです。しかしながら、先 ほどもほかの県からの報告がありましたように、このあと回復期の病院またはリハビリ の病院に転院しますと、ここは空白です。そうすると、この間の情報の共有というもの が必要になってまいります。それで、ここにクリティカルパスを活用するという考えが 出てきたわけであります。これは私どもの病院の野村を中心に、取組みが始まりまし た。  これが、第一世代の連携クリティカルパスです。これが私どもの病院で、これが個別 の患者を受けてくださったリハビリの病院のクリティカルパスです。そして、最終的に この病院がどこまでいったかという情報をこの病院にフィードバックします。そうする と、クリティカルパスで行った医療の質が、ここで見直しができるわけです。これが第 一世代の連携クリティカルパスです。これは患者用です。平成15年度の1年間に、この 連携クリティカルパスを使用したのが、大体400件ぐらいです。  第一世代の連携クリティカルパスについては、急性期病院から回復期病院と、いろい ろな病院に行くわけです。しかしながら、その実態はこの回復期病院には、この病院か らも他の病院からも来るわけです。そうすると、この病院から来た場合、あの病院から 来た場合で対応が違ってくることに1つ問題があろうということで、第二世代の連携ク リティカルパスがいま進行中です。それは、こちらの医療機関とこちらの医療機関が相 互に相談してやれば、かなり標準化ができるのではないかという考えの下に動いていま す。大腿骨の頚部骨折に限って言いますと、シームレスケア研究会というのがありまし て、私どもの病院はこれですが、月1回に会合をやっています。訪問看護ステーション まで入り、無床診療所も入って会合を開いています。これが、大腿骨頚部骨折の連携パ スです。オーバービュークリティカルパスで入院からここで手術をしまして、ここから 転院しましてリハビリを行いまして、そのあとに在宅ということになります。ここの結 果が、こっちにフィードバックすることになります。  急性期病院では、急性期病院の周術期のクリティカルパスがここで運用されます。ま た、回復期のリハビリ病院では、術後のリハビリのクリティカルパスがここで動くわけ です。2つの医療機関だけの連携になってまいりますが、いま進んでいるのは在宅にい ったところの1週間のところまでで、この情報が最初の医療機関にフィードバックする 流れです。この流れを一巡すると、そこでクリティカルパスの見直しが行われ、当然の ことながら医療内容の見直しが行われると、医療の質が向上するというサイクルです。 私は、医療連携もクリティカルパスも、医療の質の向上に貢献すると思います。どう も、ご清聴ありがとうございました。                (パワーポイント終了) ○谷口医政局指導課長  どうもありがとうございました。今日ご出席の皆様方からのプレゼンテーションはこ れで終わりですが、広島県の方が今日はお見えになっていませんので、詳しい話は次回 に県の方から承りたいとは存じますが、折角資料を出しておられまして今日は総合的に 意見交換をしていただくことも考えると、若干広島県の資料について、こちらからコメ ントさせていただければと思います。 ○松谷医政局長  折角資料が出ていますので紹介をして、全体について議論したらよろしいかと思いま す。最も資料作成者は来ていませんので、正確には次回で、むしろ見てのコメントを申 し上げたいと思います。  静岡、大阪からは情報開示を患者が見て、患者が選択をする。それによって医療のあ るべき姿に持っていこうということが基本視点です。そのための手段として、情報をや ろうというお話があったように思います。いまの熊本のお話はクリティカルパス、本来 病院内での医療機能を非常に効率的に、なおかつ質を高める手段として用いられたもの を地域に広げて、地域の連携パスという形で地域全体の効率化にこれを使おう。それを 医療計画に用いたというご発想と伺います。広島の場合は典型的なよく知られている例 が出ていまして、資料の6、7頁に旧尾道市と旧御調町の例がこの資料に出ています。 ここに来られる方はご存じだろうと思いますが、御調町の例は7頁以下に出ていて、こ れはその地域での公立御調総合病院の山口先生を中心として、その地域の中心となる病 院が、全てその地域の急性期のケアから回復期、在宅に至るまでの連携が非常にスムー ズにいっている例だと思います。尾道の例は医師会の先生だったかと思いますが、17頁 で片山先生が中心になって、これは1つの病院ではなくて医師会の先生が音頭を取っ て、地域での急性期、在宅へ向かうというところを連携を取りながら、特にケアについ て医療と介護の連携も含めて、地域としての計画を立ててやっていく代表例だと思いま す。  全体的にいうと、広島は医療計画には例として出ている。したがって、広島県の中で もその地域によって、そこでの資源なりによってやり方が違う、各県ごとにはもっと違 うということで、それに合わせた計画を立てていく。医療計画が都道府県単位で行われ ていることの意義は、そこにあると考えています。  議論がまだ行われていないのに、勝手に私が申し上げるのも恐縮ですが、1つは医療 計画というものを考えるときに、地域の医療の質を高めながらどうやって効率を良くす るかというところに今回の改革の視点があると思います。その手段として、主に3つほ どあると考えていまして、1つは病床の規制を昭和60年の医療計画を導入したときの考 え方ですが、医療計画によってバチッと決めてやっていこうという、ある意味では社会 主義的なやり方です。2つ目は、経済誘導による。これは医療法の世界と違って、むし ろ社会保険の、例えば診療報酬等で行った経済誘導をしていこうという考え方。それに よって、地域の流れを作ろう。3つ目は、最近特に強調されている先ほどの静岡、大阪 にもありましたように情報公開をして、それによって患者が選択をしてやっていこう。 これは、医療の1つひとつの臨床の現場でもそうですが、地域の中でもそういうことを 行って流れを作っていく。それぞれ一長一短あると思いますが、この3つの中で地域の 特性によって濃淡を付けながら、医療計画を立てていくということではないかと思いま す。御調にしても尾道にしても熊本についても、宮ア先生のご活躍、まさに、そういう リーダーの方がいらっしゃって、そういう方が努力をされて築き上げられた。それを行 政として取り組む。地域の必要性によって、各県にそういう方がいらっしゃると思いま す。そういう方を開拓をして見付けて、あるいはそういう方を育ててやっていくことが 迂遠なようですが、大事なことではないかと思います。その地域の医療の支援のあり方 に沿ってやっていく。  そのための手段として、堅い医療計画もありますし、経済誘導はなかなかあれです が、都道府県知事にある程度権限が来れば、そういうこともあり得るかもしれません し、情報公開・開示はそういう意味では大事です。その連携の仕方として1つの病院が 中心になる場合もあるし、尾道のようにあるいは熊本の場合ですと急性期病院が複数あ って、その間の連携を上手に取られたことで、それぞれの連携パスはその手段として極 めて有効ということだと思います。そういういろいろな要素を入れながら、いままでの 単なるベッド規制としての医療計画ではない、地域での急性期から回復期あるいは在宅 につながるような仕組みを使っていく。それぞれ一長一短ありまして、計画的にやろう とすると我が国ではそもそもそういうものに馴染まないところがありまして、ベッド規 制そのものですらやめろというような声があって議論されているのはご存じのとおりで す。これにも経済誘導も、もちろん限界があります。  情報公開・開示も、ある意味では、ものすごい無駄を生ずることもあります。逆に変 な動きがあることもありますが、これは大きな流れとしてやる。それぞれ一長一短ある と思いますが、それらを組み合わせたような計画を今後作る。それは地域にどんな資源 があって、どういうリーダーがいてというのを見ながらやっていた。それによって、効 率を高めながら質も向上される。そういうことを模索をするということではないかと思 います。広島のことに加えて、余計なことを話をしてしまいました。何か補足をするこ とはありますか。 ○谷口医政局指導課長  広島については、私もかつて広島県に在職していたので少し事情が分かるのですが、 先ほどの広島県の資料にも出ていましたように、地域で見れば本当に隣接した2つの自 治体、旧御調町と旧尾道市の隣合わせのところですら地域の実情が違って、それぞれそ の地域に適ったシステムが組まれてきて活用されてきた事情があります。そういう意味 からすると、何が何でも統一的なものは確かに難しいだろうと考えていて、そういうこ とも踏まえながら各プレゼンテーションをしていただきました都道府県の中で非常に光 ったものがあると考えています。そういった地域の実情に応じた医療計画作成、連携体 制の構築ということについて、先進的な取組みを折角やっていただいているものについ て今後どのような形で、全て同じ形にはいきませんが、いいものはいいところで採用し ていただき、そのために国なり各都道府県下の協力も必要かと存じます。そういう形で 今後、どのような方向性を全国の都道府県がいいものにしていくために、ご意見をいた だきたいというのが今回の懇談会の趣旨です。そういったことを念頭に置いていただき ながら、まず今日プレゼンテーションをしていただいた事例等を中心にしながら質問、 意見交換に入らせていただければと思います。特に順序はありませんので、どうぞご発 言をよろしくお願いします。 ○木村健康福祉部長(石川県)  先ほど4つの先進的な事例を紹介していただきまして、誠にありがとうございまし た。どれも非常に参考になるもので、私どもは来年度に医療計画を策定することになっ ていますが、大いに活用させていきたいと考えています。  そこで1つ質問ですが、いまお聞きしていて、特に患者や一般住民への医療情報の提 供というところで静岡県や大阪府を中心にご説明がありました。非常に素晴らしく、た くさん立派にやっておられるということで非常に感心しましたが、一方で個別の細かな 情報、高度な機能の情報を住民に提供していきますと、その住民はむしろ、より高度な 病院にどんどん行くのではないか。すなわち、本来軽い病気になっている方も高度な医 療機関に行ってしまうのではないか。平等に、仮に一次から二次、三次医療機関の情報 を住民に流したとしても、高度なほうに行ってしまうのではないかという危惧もあると 思います。  一方で、我々は簡単な病気は一次医療で支え、それより重いものは二次医療に、そし て重度なのは三次医療と、医療の分担というものを一方で構築していきたいと思ってお りますが、それとの兼ね合いは、この辺の哲学とでもいうのでしょうか、情報開示の促 進と一次、二次、三次医療の構築という兼ね合いの哲学は、どんなふうにお考えになっ ていて、あるいは実施される中で、どういうご苦労があるのかをご教示いただければと 思います。 ○谷口医政局指導課長  いかがでしょうか。静岡、大阪のどちらでもどうぞ。 ○土居理事兼健康福祉部技監(静岡県)  我々のワーキングでも、そういう議論がありましたが、そういう懸念があるから開示 しないのか。というのは、これは本末転倒の議論です。例えば資源の効率化につながら ないで、大病院ばかりに集中する。それは一方で、病診連携のシステムが脆弱だからな のです。ですから、病診連携のシステムをしっかりとてこ入れしつつ、情報の開示をす べきである。何か課題があるから情報開示をしないというのは、先ほども我々は目的を 明確にしたのですが、目的にそぐわないのです。  もう1つは、情報開示も二段階方式。すなわち、医療関係者向け、それから一般市民 向け。これも目的設定の違いと、どちら側の論理で物事を考えるかです。供給側の論理 で考えると、二段階方式にならざるを得ません。そのときも問題になるのは、患者側に 混乱があるのではないかというのが供給側の論理になりますが、一般市民に聞くと、自 分たちがそういう情報をもらったら混乱するという意見はほとんどありません。万が一 混乱するのであれば、混乱しないような情報を提供することが行政の責務だろう。  ですから、我々のワーキングの本当の議論があったときに、課題があったときにどち らのベクトルで動くのか。その動くベクトルは、もともとの目的設定に適う議論なの か。そうすると、我々の行き着いた点は、とにかく病診連携を強化しよう。国立熊本病 院のようなシステムを早急にやろう。そのときにも電子媒体としての情報システム、電 子カルテは有力な武器になるだろう。そして、県民が求める情報開示を大阪府がやって いる5年生存率も素晴らしいことだと思います。我々も電子カルテで院内がん登録、あ るいは脳卒中登録ということを進めて、これも近い将来にはそういう情報も開示した い。長いですが、対策とあるべき姿を一緒にやらなければ駄目なので、何か課題がある から何かをしないという消極的な、その論理でいくと前進はないのではないかというの が我々の経験です。 ○谷口医政局指導課長  大阪府は、いかがでしょうか。 ○納谷健康福祉部長(大阪府)  同じような話です。確かに大きな病院に集中はいいのですが、軽い患者が集中すると いうのが非常に大きな問題なので、それはとにかくかかりつけ医機能を強化する。ある いは診療所が、例えば在宅医療、緩和ケア、リハビリテーションという地域密着型の医 療に特化していって、大病院が高度医療をやっていくような住み分けの中で患者を誘導 する。かかりつけ医に行ったほうが、大きな病院にかかるときにも早くいいところで診 ていただけるというのでしょうか、待ち時間も少ないですし、病院にもよりますが誰か が待っててくれて、部長の特別診療にまで結び付けるサービスが、かかりつけ医からの 紹介があればやりますよというところも増えてきていますので、かかりつけ医と大病院 との連携をいかに進めていくかが情報開示とパラレルに必要なことではないかと思いま す。 ○谷口医政局指導課長  ありがとうございます。静岡、大阪両自治体でもさまざまな情報開示をされておられ まして、その中でまず第一にいま石川県のご提案があったような悩みをおそらく散々議 論されたのだろうと思います。その上で、情報開示が進んでおられるのだと我々は理解 しています。  こういうのは可能かどうかは知りませんが、大阪府、静岡県にお聞きします。患者が それぞれの先進的な取組みによって、石川県のご心配のような大病院に集中しているの かどうか。それから、本当にそういうことになっていないだろうと。その辺の何か客観 的なデータはお持ちですか。 ○土居理事兼健康福祉部技監(静岡県)  これは、まだ我々は7月にWeb上で公開したのと、いろいろな媒体を使って広報を やっていますが、県民にまだこういう形で情報提供がされているのだということがなか なか広がっていません。実際には何の変化も起きていません。ですので、情報は現段階 ではそういう数字はありませんので、残念ながら説明できません。 ○谷口医政局指導課長  大阪府は、5年生存率が発表されまして、その結果はいかがでしたか。 ○高山医療対策課長(大阪府)  5年生存率に関しての反響は、がん患者のNPOがインターネット上のホームページ で非常に高く評価されて、今後ずっとデータの使い方やモニターしていく形でそこには 表示されていまして、我々は見ていますが、その後はまだ出ていないです。  この中での具体的なデータのモニターはできていないのですが、インターネットでの アクセス件数を8頁に示していますが、病院だけの情報を公開していたのが平成15年に なってから一般診療所、歯科診療所まで公開するようになってグッと伸びているような ことで、実際にそんなに混乱したり集中したり、このことによる苦情は具体的には全く 聞いていません。 ○納谷健康福祉部長(大阪府)  それと大病院、大学病院に風邪をひいても行きたいという患者は昔からおられまし て、情報公開をしようとしまいと立派な病院には行きたいという患者は当然おられるの で、むしろ情報公開をする中で、あそこのがんは急性期の難しい手術を中心にやってお られて、こっちの病院は緩和ケアやホスピスに力を入れておられるということをわかっ ていただくための情報開示につながっているのではないかと思います。 ○土居理事兼健康福祉部技監  石川県のような議論は、おそらくどこの県でも起きると思います。実際、そういった 会議で「こうなったらどうするんだ」と言われたときに、おそらくそこで必ずといって いいくらい議論はストップすると思います。そうなると、結果的に消極的なものへ行か ざるを得ないのです。どうやったらそれを突破できるかだと思います。我々はこのワー キングできれい事でない議論をやったときに、突破をする議論を導いてくれたのは県内 の医師会のメンバーだったり、病院協会のメンバーでした。先ほどいろいろな行政をや ったけれども、こういうことができた本当の理由は、医師会や病院協会の高い意識、理 解ですよというのが本質なのです。私は時々暴言を吐きますが、そこで議論が止まる所 は、その地域医療関係者の意識が低いのだと、今回の静岡県の経験で、はっきりとそれ だけは申し上げたいと思います。 ○谷口医政局指導課長  ほかの県はいかがでしょうか。 ○梶山福祉保健局技監(東京都)  東京都も特に石原知事になってから、非常に医療に関心が強い方ですので、東京の医 療のこれまでのいろいろな欠陥、問題点を指摘されました。いちばん大きく取り上げら れているのが都立病院の改革ということで、一般会計からたくさんの補助金が出ている 都立病院のあり方について考えようといことから始まりまして、東京で始めたのは「患 者の声相談窓口」という仕組みがあります。直接、今回の医療計画の中心の議題である 医療のシステム化や医療のネットワーク化というのとは違いますが、患者の本当の声 を、医療機関に行ってもいろいろなトラブルが起こりますが、極端な例ですが、いまま では泣き寝入りをするか訴訟に持ち込むことしかなかったのを東京都、行政がきちんと 声を受け止めて患者と医療機関の間の橋渡しをする。病院に、説明をもっときちんと患 者にしてあげてくださいという機関を作りまして、全国にこれが広まっていると思いま す。  このように東京都はいろいろなことをやっていますが、いまシステム化やネットワー クの中で、いちばん国民の方の関心が高いのは救急、特に小児救急のことではないか と。東京の病院が620〜630ありますし、診療所は1万近くあります。いままで医療のシ ステム化やネットワークというと、いくつかの県でもご報告があったと思いますが、ど うしても医療の提供側の理屈というか考え方、一次医療、二次医療、三次医療というピ ラミッド型の構造になっていた。また、病院の中ではそれぞれの病院が自己完結的な治 療をやっていた。やり方も、それぞれ何々大学方式、何々病院方式ということで行われ る。質を比べようにも、なかなか医療機関の側が情報公開をしなかったという状況だっ たと思います。  小児の救急については、東京の場合も従来の考え方で地域の医師会の先生方が準夜間 等を是非お願いしたい。その上で入院が必要な中等症以上の子供については、休日、平 日の全夜間を含め必ず小児科の先生が診察をして、必要ならば入院できるという病院を 都内に約50ほど作りました。そうしたところ、どういうことが起こったかというと、入 院の必要のない方も病院に行けば、24時間必ず小児科の先生が診てくれることになりま した。  ただ、そういう一次、二次の役割を十分にわかった上でご利用くださいとPRをした のですが、24時間小児科の先生が診てくれるという非常に大きな安心感だと思います が、約50の病院に年間に30万人ぐらいの方が押し掛ける。若い共働きの方で、なかなか 開業医の先生がやっている時間帯あるいは準夜の時間帯では、子供を医療機関に連れて いけないということもあると思いますが、30万人の方が押し寄せて本当に入院が必要な 患者は、たった5%でしかなかったというのが実情です。  こうした点を考えると、私たちが考えているシステム化、ネットワーク化というのは 住民の方の本当のニーズと合っていないのではないか。ずれているのではないか。これ から医療の効率化、医療の質の向上ということで生活習慣病、脳卒中のあとのリハビ リ、糖尿病のことなどのネットワークを作っていかなければいけないと思いますが、特 に生活習慣病になると、私たち医療に関係する者も含めて普段生活するときは、医療の ことばかりを考えているわけではないです。家族の者あるいは自分が病気だと言われた ときになって、初めて医療機関はどこへ行こうかと考える。かかりつけ医というのを日 頃から持つようにということを医師会の先生方や各都道府県は言っていますが、普段生 活している方はそこまでは考えていない。あわてて県のホームページやいろいろな情報 にアクセスしても、それが理解できる方はいいのですが、どれがどういうことなのかは なかなかわからない。  そうなると、患者の団体や、そういった方たちの活用、NPOの活用をもう少し考え て医療計画の仕組みの中にこれまで以上に強く出していかないと、相変わらず医療提供 側のきれいな絵は書けますが、実態はそう動かないということが起こるのではないか。 松谷局長がおっしゃったように、いままでは規制をする、経済誘導をする、これからは 情報公開だということのやり方は間違っていないと思いますが、医療の関係者のもう少 し外側に居る方たちの意見なり考え方なりを組み入れていかないと、今回の医療計画は 非常に大きなターニングポイントになる大切な時期の計画ですから、そこらあたりでも う一歩踏み出すことが必要ではないかと考えています。長くなりましたが、以上です。 ○谷口医政局指導課長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 ○田上健康福祉部副部長(高知県)  先ほど来、素晴らしいご発表を聞かせていただいて、大変勉強になりました。ただ、 今日参加させていただいていて、この懇談会がいったい何を目指しているのかが十分に 理解ができていなくて、2点ほどお伺いします。  1つ目は、医療計画といっても大変幅広い内容を含んでいます。冒頭でお話がありま したような、患者にとってわかりやすい患者本意のスムースな流れを形成していくとい ったところにポイントを絞った議論なのか、それとももう少し幅広く議論していくこと なのか、どちらでしょうか。  それから、私どもは都道府県間でお互いに情報交換して勉強していくことも多々必要 かと思いますが、先ほど申し上げたような目的に向けた手段として、規制、経済誘導、 情報公開、ほかにもあるかもしれませんが、その手段を使って目的を達成していくため に、この医療計画の中を通してやっていかなければいけないことは何なのか。その際 に、本当に県としてできることなのかどうか。国のレベルで規制や経済誘導等について は、こうしていただかないとできないのではないかといったことだったり、県としては こういうことでいままでやっているけれども、ここまでしかできていない状況にあるこ と。これからやれるようにするためには、こうしなければならないのではないかといっ たようなこと。県がいったい、どういう役割を担わなければいけないのか。また、担う ためには何が必要なのか。そのあたりの議論なのかなと思っていたのですが、どこまで の議論をこの中でされるのかといったことがよくわからなかったので、そのあたりをご 教示いただければと思います。 ○谷口医政局指導課長  大変、重要なご指摘をいただいたと思います。局長や厚生労働審議官のご挨拶の中に もありましたが、私どもの今後の医療提供体制の見直しの中で、医療計画というのが大 変大きな役割を占めているという認識を持っていまして、そういう医療計画を作ること 自体は少なくとも都道府県知事の責務として位置づけられているわけですので、各都道 府県において適切な医療提供をどのように組んでいくかを医療計画の中に住民がわかる ような形で、はっきりと明示していただくことが最終的な目標だと思います。  総論的にはそういうことなのですが、具体的にいえばいま副部長がおっしゃったよう に、患者の流れというものを急性期から慢性期から何からの流れの中で、それぞれにい い医療を受けていただいて、本当に早く社会復帰していただく医療を提供するために、 どういう仕組みがいま県でできているかを示すことも1つでしょう。国の要望のような 形で起きてきましたが、規制が必要であるならば、また誘導が必要であるならば県とし てできないものがそこであるとしたら、国にどういう要望をするのかということも併せ て私どもにいただければ、今後の改革の中で我々としては汗をかくためにご意見をいた だくことは大事だと思います。その辺はあえてこれだけとお考えいただかなくてもいい のではないかと考えています。お答えになりましたでしょうか。 ○松谷医政局長  少し補足させていただきます。まさに、国と都道府県の役割、あるいは県同士での情 報交換ということでこの会は設定しています。いま指導課長が申し上げたとおりです。 その中で、国の役割のうち、これは知事に欲しいというようなことでもあれば、またそ ういうご提案を受け付けたいと思います。医療計画を立ててやることは県知事の権限と して医療法に規定されているわけですし、医療機関の設置の許可、開設の許可というの も知事の権限ですが、ある意味では医療の分野というのは県単位で行われているのが原 則になっています。それをさらに医療計画の中にこういうことも必要ではないかという こと等を自由にご議論いただければと思います。 ○谷口医政局指導課長  秋田県はいかがですか。 ○京屋健康福祉部長(秋田県)  数点お伺いします。先ほどの東京都のお考えと相通ずるところがあるのですが、静岡 県にお伺いします。今回の医療計画の改正のポイントの1つに、県民本意の計画という のがおありだと。それを踏まえて各論として情報公開というのがあると承りましたが、 こういう医療計画の考え方をまとめる、あるいは情報開示のいろいろな枠組みを決める プロセスにおいて、本当の県民の声というのをどう取り入れて進められたのか。  先ほど、これを進められたのは医師会や病院協会の意識の改革ということで進んだと いうのがありましたが、県民というお話がなかったものですから、そこはどうかという 感じがします。考えるに、患者団体などというものが頭に浮かぶのですが、一般的な患 者団体というのはあまりなくて、難病連などという非常に特殊な一分野での団体はある のですが、広い意味での団体はあまり考えにくい。かといって、公募した場合には、非 常に見識の高い方は集まりますけれども、こういうことを言っていいのかわかりません が、そういう方は極端なお話をされる場合もあります。そういう公平な意味での県民の 意見を聴取するというのが非常に難しいような感じがするものですから、私どもが進め る場合にはどうやればいいのかと、首を傾げながらお伺いするところです。  情報開示の方法です。カルテはCD−ROMでやられるということで、これは閉鎖的 なものかと思いますが、一般的な情報公開は多分インターネットだと思います。本県の 場合には、全てインターネットで可能なのかどうか。特に本県の高齢化率は全国No.2 ですから、高齢者の方が情報を取得する場合には、インターネットは非常に考えにく い。しからば、どういう方法があるのか、ペーパーくらいしか考えられないのですが、 それではペーパーはどういう方法で開示できるのか。そういうような疑問点がありま す。  付随的に情報の更新です。大阪府から更新の話がありましたが、静岡県は情報の更新 を定期的にどれくらいのことがやられているのか。そういうようなことをお伺いしたい と思います。  それから、いろいろな医療機関の情報公開は、国が主導で進められるお考えがないの か、厚労省にお伺いしたい。いま、福祉の分野では例えばグループホームでの評価制 度、介護保険の調査などが進んでいます。そういう意味で、福祉の分野では最近進みつ つあるのですが、それが医療機関では全く動きが見えない。これは我々はどう考えたら いいのか。都道府県が進める場合には、やはり医師会の意識があってこそ進められる。 そうすれば、医師会の協力なり、意識改革のないところには、そういうものは進められ ないという結論にもなりかねない。そういう意味ではオールジャパンの厚労省の主導で 進めるのがいいのではないか。我々としては各県が、地元に帰ってから医師会と話を進 めて、そういう方向に導くのは簡単に考えても2、3年かかるのではないかという感じ がします。そういう意味では福祉の分野で進められているような評価制度をドーンと導 入して、そのスタンダードがあって、あとその項目を広げていくかどうかは地域にまか せる方法ができないかと考えます。そこら辺について、ご教示をお願いします。 ○土居理事兼健康福祉技監(静岡県)  すみません。最も大事なことを忘れていました。我々はこの医療審議会で医療計画の 改定を行うのに先立ち、県民無作為抽出で2,000名の方にアンケート調査をやりました。 どういったことを望むのか、情報開示はどうなのか、そういったことをベースにその結 果を踏まえて、医療関係者それから医療審議会、ワーキングは医療関係者だけにしぼっ たクローズドワーキングで検討いたしました。  いま取りあえずWeb上でやったというのが現状です。これはすぐ大阪府のようなも のを参考にしながら、ホームページを作るのですが、もちろん携帯電話でもできるよう にします。それから、いま高齢者というお話がありましたが、我々の認識では高齢の方 々は、かかりつけ医と大体良好な関係にあるだろう、またお子さんたちがいるだろうと いうことで、高齢者には通常の媒体しかいままで考えてきませんでした。もちろん、県 民だより、市町村にもお願いして市町村だよりでも情報を提供してきましたが、では個 々の高齢者一人ひとりにどうやってこの情報を伝えるか。それはかかりつけ医との関係 でこの情報にアクセスしてもらえばいいだろうという認識です。  いまの医療機能のデータ改定は、毎年1回行うことにしています。これは平成16年度 の調査ですので、実は平成15年の実績のデータです。今後は医療監視で、いわゆる情報 の信憑性が問題になるのです。診療情報の提供は、どういうデータに基づいて県に報告 をしたのかということを医療監視の中、データの信憑性を確認する作業をすることとし ています。以上です。 ○原医政局総務課長  厚生労働省に質問がありましたのでお答えします。医療機関の情報公開を、国として 主導して取り組んでもらえないかとのご質問でした。私たちも患者に対する情報提供あ るいは医療機関の情報開示は非常に大事だと思っています。社会保障審議会の医療部会 で昨年からずうっと議論していますが、その中の大きな検討課題の1つになっていま す。  もともとの議論の取っかかりは、広告規制を緩和するという議論から始まりました が、やはり広告の問題ではなくて、一定の範囲の情報を医療機関に届け出を義務化させ る。これは都道府県に届け出をしてもらうという考え方です。そういうことをやりまし て、その上で都道府県が医療計画を通しても結構ですが、そうでない形でも結構です。 あるいは媒体も、インターネットでもそれ以外でもいいと思いますが、いつもわかりや すい形にして住民に対して情報開示をしていただく。こういうような仕組みを作ること のほうが意味があるのではないか。広告規制の緩和も大事ですが、そういう方向に今後 は行くべきだと、それが患者にとっての医療機関の適切な選択につながっていくという 考え方になりまして、このことは8月1日に医療部会で中間まとめを行いました。医師 会の先生方も全部含めて、概ねこの考え方あるいは仕組みについては、ご賛同を得たと 理解をしていますし、そうした趣旨で中間まとめに書かせていただいています。  ただ、今日も議論に出ていますが、課題は、一定の範囲の情報を届け出させるわけで すけれども、その一定の範囲にどこまで含めさせるか。本当に患者さんが知りたい情報 は、いわゆるアウトカム情報といわれていますが、今日の大阪府の5年生存率は、大変 参考になるお話だと聞きましたけれども、果たしてそういうものまで含められるのかど うか。これからこの辺を医療関係者の方々ともご相談をしながら、医療部会で具体化を していきたい。したがって、私たちも努力をしてまいりますので、最終的にはこれを是 非実行してもらうのが大切です。その県その県のやり方があり、医療計画を使うという こともありますが、いろいろな議論をしながらよりよいものにしていきたいと思いま す。どうぞ、よろしくお願いします。 ○谷口医政局指導課長  若干定刻を過ぎています。出席の皆様方のご都合もありますので、あまり長びかせる わけにはいきませんが、5分か10分くらい少しだけ延長します。よろしいですか。 ○岡本保健福祉部医監(福岡県)  情報公開の話です。我々の県も一応「ふくおか医療情報ネット」ということで、医師 会と県で作っている財団法人福岡県メディカルセンターのホームページから、多分大阪 府と同じくらいの情報提供をさせていただいています。これを行うときに、先ほども言 いましたように、医師会と県で作っているメディカルセンターでは、ほとんど情報公開 に対して大きな反対というか、問題点は指摘をされませんでした。非常にスムーズに情 報提供はできています。  今後どこまで行うかというお話ですが、やはり大阪府からも出ていましたけれども、 ボランタリーに情報提供をいただいていて、その情報の提供率は病院でいけば80%くら い、診療所で60%ちょっと、歯科の診療所で50%を超えるくらいですから、まだまだす べての医療機関から情報の提供をいただいていない。提供をいただいていない医療機関 がどういうお考えなのかは、我々も承知はしていないのですが、その辺をどのように考 えていったらいいか。先ほど原課長がおっしゃったように行政がすべて把握できる情報 とそうではない情報、これをどうしていくかというのが非常に重要な話ではないかと思 っています。  それと、福岡県は平成18年度までの医療計画ということで、平成19年度からは新しい 医療計画にしなくてはいけないのですが、いま厚生労働省からいただいているいろいろ な資料を見ると、医療機能調査ということで、厚生労働省は平成19年度以降に調査がさ れて、標準的なものが示されていくのだろうと思います。その辺、我々は医療機能調査 も今年度中に実施をしないと、平成19年度に間に合いません。標準的なものというか、 ある程度の必要的記載事項、任意的記載事項などが、どの程度のものになるのか、ま た、我々の時間的な整合性について、どのように考えたらいいのかを教えていただけれ ばと思います。 ○谷口医政局指導課長  若干事務的な話ですので、簡単に申し上げます。基本的にこれから懇談会を数回開か せていただきまして、そういったご意見を基に、私どもとしては年末までに大体のイメ ージを提供しなければいけないのではないかと認識しています。 ○納谷健康福祉部長(大阪府)  東京都から小児救急のお話があって、非常に興味深いお話です。ただ、小児救急の拠 点は東京らしい豊富な資源をお使いになって、50の病院に集中させられた施策の問題で あって、必ずしも病院情報の公開が患者さんをそちらばかりに誘導したのではないので はないか。もちろん、そういう面もあるかもしれませんが、それだけではないのではな いかという気もいたします。  大阪ではそういう問題もあって、やはり診療所の情報を出していかなければいけな い。それによって、これは東京ももっとそうだと思いますが、大阪も患者だけではなく て、医者も情報の海の中で溺れているのが現状です。いったいどこに小児科専門医が開 業しているのかということが、大型病院にはほとんどわかっていませんので、それを見 ながら、あとはお近くの医院でフォローされたらどうかというような形にも誘導してい けることだろうと思います。やはり、情報提供の問題は大都市圏と農村型は違うのだと 思いますが、情報提供の質、仕方などの問題が我々にはテーマになります。するかしな いかということは、10年ほど前に終わっているのかという実感を持っています。 ○谷口医政局指導課長  ありがとうございました。 ○土居理事兼健康福祉部技監(静岡県)  実はこういった情報開示によって症例数の集まるところ、それから少なくなるところ は必ず出てくるのです。我々の目的は、均質な医療の確保のわけですから、当然そうい うことは是としています。そこで要望です。医師会からも言われてきているのですが、 いま病床規制が新規参入云々よりも問題です。ここはもう病床を使っていないではない かというところを返してもらうというのでしょうか、これがいまの喫緊の課題です。い まのままであると、使ってなかろうが何であろうが、廃院のような状態にあるにもかか わらず、既得権となっている。一方、ある病院は病床を増やしたいが、それができな い。この辺を是非ご検討いただきたい。 ○梶山福祉保健局技監(東京都)  もう時間なので、最後に要望だけ申し上げます。いま松谷局長が国の権限で地方に委 譲できるものがあればということをお話されましたが、いまは基準病床が全国一律の考 えでできています。都道府県知事の考えによって、いくつかの特定の病床はプラスでき ますが、これはいろいろな地方分権で、知事の考えもさまざまですし、うちの県は高い 保険料を払ってもたくさん病院があったほうがいいという県知事、あるいは県民の方が いてもおかしくはありません。基準病床を相変らず全国一律の考えでいくのか、思い切 って例えば極端な話、病院はいくら作っても、病床はいくらあっても都道府県ごとの責 任でやってくださいと、ただ、そこで医療費がたくさんかかるのは、その県の中で処理 してくださいと、賄ってくださいという考え方もあるのではないか。  もう1つは、いろいろなネットワークシステムを作っても、例えば、片一方で3次医 療機関へのフリーアクセスがあると、北海道、東北、九州からもいくら時間がかかって も、いくら飛行機代がかかってもがんセンターの先生に診てもらいたいという方までの 権利を閉ざすことになる。やはり、フリーアクセスをどこまでいままでと同じように認 めていくのか。これは今回の医療計画を考える中で、そのようなことも視点の中に入れ ていただければと思っています。 ○谷口医政局指導課長  ありがとうございます。まだ、いろいろあるかとは思いますが、時間もだいぶ過ぎて います。次回以降、また各県からのご要望、ご意見を継続して聞かせていただきます。 ○辻厚生労働審議官  大変、貴重なご報告、意見交換ありがとうございました。この懇談会は何という趣旨 でと高知県からご指摘ありましたので、骨っぽいところを言わせていただきますと、今 日の話の中でもだいぶ出ていますが、各県それぞれ相当まちまちです。その中で、今回 の医療制度改革の基本というのは、医療は一定水準の全国的な保障がいるのではない か。ここのところがまちまちで、いまも話にありましたように、九州、北海道から東京 へというようなことは日本の医療のあり方でいいのだろうか。基本的に地域の中で一定 水準の医療が格差なく保障されるのが私どもの国のあり方ではないか。そういう考え方 が1つ今回はあります。  それと、併せまして、医療保険制度改革の思想は、各県ごとにある程度自主的な試み もして、やはり医療費の水準と保険料水準が各県ごとに対応していっているのではない か。こういう考え方も出ています。その中で各県が先進的なものをいかに育てるかとい うことと同時に、各県の県益の中で一定の水準のものをいかに自己充足して整備する か。これは今回の医療制度改革の非常に大きなポイントです。そのために、県にどのよ うな権限が必要か。こういったことは、今後医療制度改革の中で議論をいただき、また より皆が納得する方向に向かうべきだと思います。  そういうことですが、ただ基本は今日は非常に私も貴重な勉強をさせていただきまし たが、各県ともにそれぞれ進んだ水準のものを持っているわけです。しかし、中間報告 にも先進的な都道府県の取組みを参考にしながらと書いていますが、全県がいろいろな 分野で先進的なものを持っていて、それを交換しあって、全国でよい水準のものを作る という努力をしようではないか、あらかじめ皆の意見をよく聞いてみようというのがこ の懇談会の趣旨です。ほかの県でも、私は言いたいという県は是非出ていただきたいと 思います。  2つ目はこの中間報告に相当考え方は載っています。吟味いただきますが、本当に必 要な医療が受けられ、そして必要な医療が終えればできるだけ早く入院を終えて、回復 期のリハビリが必要ならばリハビリをして、地域の中で自宅が駄目な人はクループホー ムなど、生活の中で質を確保するような医療であるべきではないか。これはこれからの 大目標です。そのためには情報開示による選択ともう1つは医療機関間の連携です。  それから、不足しているのは在宅医療でしょう。今日の全部のプレゼンテーションが 終りませんでしたが、そういう姿が見える。私は全国を国として見ていますので、そう 理解してまいりました。その辺りは共通の理念として医療計画で取り上げる。こういう ようなことを計画論として考えています。趣旨に関して、各局にまたがりますので、在 宅医療になれば老健局が関係抜きにできない。それで、老健局も来ています。そういう 趣旨ですので、何とぞ皆様の忌憚のないご意見、情報交換を今後ともお願いします。 ○谷口医政局指導課長  進行の不手際で時間が超過いたしました。まことに申しわけありませんでした。この 辺で今回の懇談会は終わらせていただきます。次回は事前にご連絡申し上げています が、10月24日(月)を予定いたしています。詳細な時刻については後ほどまたご連絡しま す。その場では今日ご欠席の広島県の方からのプレゼンテーションをしていただきま す。それに加えまして、今度は厚生労働省側から、ご出席いただくのは限られた都道府 県であり、それ以外にもいいところは確かにありますので、各地域の先進的ないろいろ な連携に対する事例紹介をして、また意見交換を進めさせていただきます。  次回まで期日が飛びますので、各県からご意見、ご質問等がありましたら、是非事務 局にお寄せいただければと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。本日はど うも大変ありがとうございました。 照会先: 医政局指導課 担当者: 計画係、指導係 連絡先: 03-5253-1111(内線2557)