05/08/04 第4回脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会議事録 第4回 脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会                    平成17年8月4日(木)                    厚生労働省6階 専用第8会議室  佐藤座長 ただいまから「第4回脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会」を 開催いたします。きょうは暑い中、遠くからも御出席いただきまして、委員の先生 方に感謝申し上げます。  では、早速議事に入ります。  まず、本日の資料の確認を事務局にお願いします。  事務局 それでは、資料の確認をいたします。  まず議事次第が2枚ございます。  資料1 論点4、5に検討会での意見(案)  資料2は論点6に関する資料です。   2−1 薬物乱用新5か年戦略(概要)   2−2 厚生労働省の薬物乱用防止啓発活動の取組   2−3 学校における薬物乱用防止教育について   2−4 効果的な啓発活動とは−学校現場より−(長岡委員の説明資料)  資料3は論点7に関する資料です。   3−1 「脱法ドラッグ」に代わる呼称候補(案)   3−2 薬物乱用状況の把握法(和田委員の説明資料)  資料4は論点5に関する補足資料です。   4−1 向精神薬乱用防止対策の在り方について(答申)   4−2 脱法ドラッグの規制   4−3 向精神薬の種別と医薬品承認の有無  参考資料として、前回までの資料をおつけしています。   1 主な論点   2 薬事法と麻薬及び向精神薬取締法との比較   3 薬事法と麻薬及び向精神薬取締法の罰則との比較  そのほか「平成16年度無承認無許可医薬品等買い上げ調査の結果について」とい う会議の中では使われません資料ですが、参考までに配付しております。これにつ きましては最後に触れさせていただきます。  資料は以上ですが、不備等がございましたら事務局までお申し出ください。  佐藤座長 ありがとうございました。  前回の論点別の議論の要約が、資料1「論点4、5に関する検討会での意見(案)」 として事務局から提出されております。これに関して御意見があれば、後ほど事務 局に連絡していただきたいと思います。  それでは議題1の「主な論点の討議」に入ります。参考資料1に「主な論点」が 書いてあります。本日は、まず論点5及び6について先に議論していただき、その 後で前回議論があった論点5について再度御検討いただきたいと思います。それで は、論点6から議論を進めます。  薬物乱用に関する啓発活動に関し、まず事務局から、次いで現場の体験をもとに 長岡委員から、資料に基づき御説明いただきます。それでは事務局からお願いしま す。  事務局 それでは資料2について説明申し上げます。資料2は論点6、すなわち 啓発に関することですが、政府全体の方針、厚生労働省、文部科学省の順番で説明 申し上げ、最後に現場の意見を賜るつもりでございます。  まず資料2−1「薬物乱用防止新か年戦略(平成15年)概要」です。  基本目標で根本的な姿勢を示した上で、大目標を4つ掲げています。目標1が啓 発、2が取締り、3が水際対策、4が再乱用防止となっています。論点6の啓発に ついては、一番最初の目標1で取り上げられています。  目標1は、中・高生を中心に薬物乱用の危険性の啓発を継続するとともに、児童 生徒以外の青少年に対する啓発を一層工夫充実し、青少年による薬物乱用の根絶を 目指す。この目標を達成するために(1) から(7) の小目標が掲げられており、(1) は学校等、(2) は有職・無職少年ですが、こうした対象に対する啓発の充実が目標 として掲げられています。  ちなみに、「脱法ドラッグの規制を強化すべき」ということはこの資料には出て おりませんが、基本目標2の(2) 薬物を取り巻く環境の改善、目標2の(5) 多様化 する乱用薬物への対応、こういったところで脱法ドラッグの規制について触れられ ています。  資料2−1については以上です。  次に資料2−1ですが、「厚生労働省の薬物乱用防止活動の取組」です。資料2 −1で申し上げました5か年戦略に基づきまして、関係省庁は自らの守備範囲に関 して麻薬の対策を実施しています。啓発に関しては厚生労働省と文部科学省が中心 ですが、厚生労働省がどのような啓発活動をしているかをここに示しています。  (1) 「薬物乱用防止キャラバンカー」による啓発の推進  (2) 「薬物乱用防止教室」への支援  (3) 特定薬物の乱用に対する啓発    本年度はMDMAと大麻に特化した啓発を行うということです。  (4) 「薬物乱用防止指導員」の啓発活動の充実  (5) 家庭・職域等における啓発    保護者向け読本の配布等が掲げられています。  (6) 国民的な啓発運動の実施    「ダメ。ゼッタイ。」普及運動等が掲げられています。  (7) (財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターを活用した啓発活動の展開    同センターではいろいろな委託事業等を行っているところです。  2ページには、キャラバンカーの運行状況、「ダメ。ゼッタイ。」普及運動の実 施状況、麻薬・覚せい剤乱用防止地区大会の開催状況について具体的な数字を掲げ ております。  資料2−2については以上です。  次に資料2−3「学校における薬物乱用防止教育について」ですが、これは文部 科学省の方々に作成していただいたものです。  1ページ、重要な項目として4項目が掲げられています。  1.教育課程の改善  学習指導要領においては、小学校の教科「体育」において薬物乱用防止に関する 指導を行うことを明記するなど、指導内容を充実しています。  2.薬物乱用防止教室の推進  警察職員や麻薬取締官OBなどの専門家を学校に招いて「麻薬乱用防止教室」す るよう指導しています。  3.教材の作成・配付  児童生徒向けのポスターやパンフレット、小学生・中学生・高校生用にはビデオ などの啓発資材、教材を使っているということです。  指導者用の参考資料として、喫煙、飲酒、薬物乱用防止に関する参考資料、ビデ オ等を作成しています。  4.その他  種々の研修会、教育シンポジウムの開催。広報啓発活動の推進として、競技場等 での大型カラーディスプレイシステムを活用した広報活動が実施されています。  2ページからは小学校、中学校、高等学校の学習指導要領における薬物乱用防止 に関する主な記述が掲げられています。  小学校学習指導要領では、5年生と6年生を対象として、シンナーなどの有機溶 剤を取り上げ、その乱用防止を指導することになっています。  中学校学習指導要領では、覚せい剤や大麻を取り上げ、その乱用防止について指 導がなされています。  高等学校学習指導要領では、コカインなどの麻薬、覚せい剤などについて、その 乱用防止が指導されています。  資料2について、事務局からは以上です。  佐藤座長 ありがとうございました。ただいまの説明について御質問などがあれ ばお願いします。よろしいでしょうか、  それでは、「現場の体験をもとに」ということで、長岡委員からお話しいただき たいと思います。  長岡委員 資料2−4「効果的な啓発活動とは−学校現場より−」をごらんくだ さい。1番から6番まで見出しがついていますが、順番に説明していきたいと思い ます。  まず1.中・高校生の実態です。  私は埼玉県立越谷技術高校の保健体育の教諭をやっております。日々、高校生と 格闘しておりますが、薬物に関しては生徒は全く関係ないというのが実態です。テ レビの報道で麻薬、薬物等の話がありますが、自分とは関係ないと思っている生徒 が多いです。薬物で問題があった地域とか、その地域に近い学校の生徒には大問題 で、もしかしたら自分も、という危機感をもっている生徒と、自分の生活には全く 関係ないと思っている生徒と2つに分かれています。そういう現場の中でどういう 授業をやっているかということを説明していきたいと思います。  2.保健の授業における「薬物乱用と健康」について  資料の2ページをごらんください。「7.薬物乱用と健康」というページと次の ページは教科書の見開きに書かれているものです。保健体育の授業は週1時間、2 年間にわたって行います。その中で、この2ページだけが薬物に関する授業です。 いま日本で薬物が騒がれていますが、たったこの2ページしか教科書では扱われて いません。  1.薬物乱用の健康影響ですが、高校で扱うものとしては健康を考えてまして、 健康という概念から薬物を考えています。  表1.おもな乱用薬物とその薬理作用という表がありますが、先生方が授業をす る時にはこの表を使いまして、薬物にはどんな種類があって、俗称は何と呼んで、 脳への作用や精神依存や身体依存はこういうものがあるという説明を最初にしま す。その上で、体にどんな影響があるかということを説明します。教科書には事例 が載っていますが、先生方はいろんな本などを見て、いろいろな事例を用いて説明 します。  2.薬物乱用がひきおこす社会問題ですが、幻覚や妄想がおこり、社会問題が発 生するということを説明します。  3.薬物乱用にたいする対策として、やってはいけないことを説明しますが、薬 物については法律で定められているということを強調します。薬物は持っているだ けでも犯罪になるという細かいところの指導をします。  この2枚だけでは説明しきれないことがたくさんありますので、4ページから2 ページにわたって、「意志決定・行動選択できるかな」ということで、新しい授業 のやり方を示しています。ブレインストーミングとかロールプレイングとかケース スタディとか、そういった技法を使って授業を進めていきます。  ここには「夜食の習慣をやめる作戦をたててみよう」という事例がありますので、 これでブレインストーミングの練習をします。  5ページに「望ましくない周囲の圧力をはね返す方法を考えてみよう」とありま すが、望ましくないものとして、ここではたばこをあげています。これを先生方は 薬物に変えたり、お酒に変えたり、性的なことに変えたり、いろいろ話題を変えて やっています。  薬物をすすめられた場合、本当はやってみたい、なんとなく興味があると思う生 徒が多いんですね。しかし断るのが一番いいとわかっている。誘ったのが先輩とか 彼氏とか彼女とか、どうしても断りにくい状況になったらどうするか。教科書に書 いてあるように、いろいろな方法を考えて、最終的にはどういう断り方をするかと いうことを学ばせます。  こういう練習を数多くすることによって、自分には関係ない、自分には起こりえ ないという状況ではなくて、いつでも起こりうるんだという話をして、起こった時 にどう対応すればいいかということを練習させます。ロールプレイングという技法 を使って練習していきます。  高校の現場では薬物だけが授業ではなくて、性の逸脱行動とか生活習慣病とか登 校拒否とか感染症とか、いろんなことがあります。薬物はその中の一つなので、こ れに時間をかけてはいられないんですが、最近は1時間の授業だけでは終わりにく い。これに2時間、3時間かけなげればいけないと学校でも考えるようになってき ています。  6ページからは、先ほど事務局からお話がありましたように、文部科学省で「喫 煙、飲酒、薬物乱用防止に関する参考資料」というのを作っていますが、そこから の抜粋です。私たちが授業をする時に教科書だけを教えるのではなく、文部科学省 や厚生労働省から出していただいたパンフレット等を使って授業をすることもあ ります。  第1回目の会議の時に厚生労働省からパンフレットをいただきましたが、文部科 学省では高校生、中学生、小学生と分けています。これらのパンフレットを活用し て細かく授業を進めています。  保健体育の教員は専門的にいろいろ勉強している先生もいますし、脱法ドラッグ という言葉さえも知らない先生もいたりして、なかなか厳しいかなと思うことがあ ります。こういうパンフレットを国が作成してくださって、現場ではそれを参考に しながら授業を進めていくことができますので、非常にありがたいと思っておりま す。  7ページには、学校を中心として、家庭と地域がどういうかかわりをもっていけ ばいいかということが書かれています。薬物に限らず、学校と家庭と地域が連携を とっていかないと良い子どもは育たないと考えています。家庭に問題を持ち込むの は非常に難しくて、私たち教員も生徒を指導するにあたり、家庭の中までどれだけ 入っていけるかということになると、なかなか入っていけない部分があります。そ こでは非常に難しい問題があります。ここに書いてありますように、学校を中心に 家庭と地域が連携をもっていけば、なくせるのではないかと考えています。  8ページの「危険なこと、なぜするのか−意志決定と行動選択−」というのは、 高校の保健の授業について指導要領を改定する時の一つのポイントになっていま す。何かをする時に、どういう意志決定をして、どう行動するか。それが安易であ る。パッと考えてパッと行動する。それではいけない。どう意志決定をして、それ をもとにどう行動すればいいかということを考えさせる授業が必要だということ で、このような資料を使って授業をやっています。  10ページにケース1からケース4まで載っています。これはケーススタディやブ レインストーミングに使うもので、これを先生方が読んで、自分はケース1のたば こで授業をやってみようとか、ケース4のMDMAのケースを使って授業をやって みようとか、先生方が自由に選んで授業ができるような指導案になっています。こ ういうものを使いながら、意志決定に影響する要因を見つけて、意志決定をする際 に何が影響しているのかということを生徒に気づかせる、そういう授業です。  次の11ヘージの指導案は、意志決定をするにあたって、どういう気持ちの流れが あるかということが書かれています。ここではワークシートというものを使って、 先生と話をして書き込みながら授業をやっていきます。これを全部の学校がやって いるかというと、そうではなくて、薬物教育をやらないと危ないという危機感をも っている学校はやりますが、そうでない学校はそこまではやらないと思います。  レジュメの順番が逆になりましたが、次に3.総合的な学習の時間の活用法です。  高校の場合、総合的な学習の時間は週1時間、1年から3年まで必ずあります。 その中でどういう授業をやってもいいんですね。自分史を書いてみるとか、自分を 振り返ってみるとか、一般教科をやってる学校もありますし、地域を調べてみよう とか、いろいろな工夫をしています。薬物に関して10時間ほど授業案を立てて、イ ンターネットで調べるとか、警察に行って薬物について調べてみるとか、保健セン ターに行って調べるとか、グループを作って調べるような授業をやることもありま す。学校によって差がありまして、薬物に関してやっている学校はそれほどないと 思います。  5.「薬物乱用防止教室」については、文部科学省から各学校に年1回以上やり なさいといわれていますが、どこの学校も1回ですね。それぞれの県に、どういう 内容でやったかという報告をしますので、時期はばらばらですが、どこの学校もや っています。本校はいつも2学期の終わりごろやります。警察の方に来ていただい たり、薬物乱用防止教育に熱心な先生の講演をしていただいたりしています。  本校は全校生徒900名いますが、体育館に集まって一斉に話を聞きます。全校で 話を聞けない学校もたくさんありますので、埼玉の場合は学年単位またはクラス単 位でなんとかできないかということで、各学校は工夫をしています。全校だと集中 して話を聞かないというのもありますし、人数が少なくなれば話を聞くのではない かということがありますが、小さい単位になると講演に来てくださる先生がたくさ ん必要ですので、そうなるとなかなか難しいという問題も出てきます。  今年は私は1年生の授業をやっていますが、小学校から薬物に関する授業をやっ ています。小学校ではたばこ、シンナーが中心になりまして、中学校では飲酒、喫 煙、薬物が入ってきます。高校は喫煙、薬物になります。小学校では3年から保健 の授業がありますので、薬物は体に悪い、依存性がある、1回でも乱用なんだ、持 っていてもだめ、やってもだめ、ということを小学校の時から教えますし、中学校 でも高校でも教えます。繰り返し授業はやってるんですが、やる子はやるんですね。 これだけ体に害がある、依存性も高い、1回やったらやめられない、こういうこと を生徒は知っているにもかかわらず、なぜ手を染めてしまうのか。  私は薬物に関して生徒と話をする機会が多いんですが、うちの生徒は興味がない わけでもないです。やってる生徒はいませんが、やってみたいという好奇心とか、 エイッ、やっちゃえとか、そういうふうに思う時の生徒の気持ちがどうであるかと いうのが一番大事ではないかと思います。家庭的な環境が悪かったり、受験とかい ろんなストレスを抱えて、言うに言えないいろんな悩みがあったり、そういう時に たまたまフラッと出かけた夜の街で先輩に会ったとか、だれかに会って、これはど うかと勧められた時に、断れるかどうか。高校生の気持ちというのは非常に複雑で して、さっき笑っていても次は泣いてるんですね。そういう複雑な心境の中でそう いうことを勧められたら、本当に断れるかどうか。ストレスがたまっていて、どう にでもなれという気持ちだったら、やってしまうのかな、そこが一番大事なところ なのかなと考えます。  特に女子はやせ願望が強いですので、ダイエットになるとか、受験勉強をするの に眠くならないとか、いろんなことがありますので、薬物乱用防止教育を行うにあ たっては、意志決定、行動選択とともに、心のストレス、気持ち、そういうものを 教えていったほうがいいのではないかと考えています。  6.論点6「効果的な啓蒙活動を行うにはどうしたらよいか」を考えますと、一 番最初にできることは、継続するしかない。小学校、中学校、高校でだめだとわか っていても、ここでプッツリやめるわけにはいかないし、ずっと続けるべきである と考えます。そのためには、教科書の中身を充実させたほうがいいのではないかと 思います。教科書の内容だけでは授業がやりにくいので、パンフレットを活用する のがいいと思います。  高校の場合は夏休み前に薬物乱用の授業をやって、夏休み中に事件が起こらない ような配慮はしています。パンフレットについても春とか1学期に渡せるような工 夫も必要かと思います。  もう一つは、指導する側の先生方の体制がまだまだ薄いかなと思っています。一 生懸命勉強する先生はするんですが、そうでない先生もいます。生徒が犠牲になる わけですが、学校だけで守りきれるものではありません。学校も地域も家庭もそう なんですが、一番長い時間一緒にいる、身近にいる先生の研修または意欲、そうい ったものをもう少し充実したものにしていかなければいけないだろうと思ってい ます。  保護者の意識づけということで、小学校の保護者に対して薬物とはどういうもの かという研修会等も多く開かれています。小学校だけでなく、中高の保護者に対し ても広げていけたらと思います。以上の3つは今までもやっていることだと思いま すが、さらに深くやっていかなければいけないと考えています。  生徒は人間関係が難しくなってきています。コミュニケーション能力も非常に薄 くて、友だちになれない、つきあい方がわからない、どう話をしていいかわからな い。お互いにトラブルがあった時に、どう解決したらわからない。高校生でもそう いう生徒はたくさんいます。基本的なコミュニケーション能力というのは薬物に関 してもつながってくると思います。強くいわれると断りきれない。強くいわれても、 悪いものは悪いとして断れる気持ち、コミュニケーション能力がなければいけない のかなと考えます。  薬物乱用防止の対策というのは、先生方の意識を高めることと、生徒を取り巻く 人間関係がうまくいくように私たちがやっていかなければいけないかなと考えて います。長くなりますたが、以上です。  佐藤座長 ありがとうございました。大切なポイントをたくさん含んだお話でし たが、ただいまの説明について御質問等がありましたらお願いします。  倉若委員 薬物乱用防止教室について、どこの学校でも外部講師の依頼という部 分で困ってると思うんです。外部講師の派遣要請について県の薬物乱用対策推進本 部が音頭をとって、各学校に申込用紙を配ってるんです。個人名というよりは、国 の麻薬取締官OBとか、薬物 乱用防止指導員とか医師、取締員とか、そういうリストを配りまして、ある時期を 決めて、学校はFAXで申し込みます。申し込み先は県の薬務課になってまして、 できるだけ希望にかなうように割り振って先生をお願いしていきます。平成11年ご ろからやっています。県の薬務課だけでなく、警察への直接の申し込みとか薬剤師 会への申し込みというルートもありますが、このようなスタイルをとってるという のが実情です。  行って講師として話すわけですが、先ほどの話にありましたように、規制につい て生徒から聞かれます。脱法ドラッグという物質が出ている中で、この物質は持っ ていてもいいのかという話になってくると、今のところ脱法という言葉のとおり法 の網にかかってないからという形になるわけです。生徒には麻薬、覚せい剤と同様 に、こういったものも危険だということを説明し、私どもで作っているパンフレッ トにも載せ従来の麻薬、覚せい剤に合わせて脱法ドラッグについても啓発をしてい るというのが実情です。  脱法ドラッグが生徒に浸透する中で、所持というところが抜けていくようになる と、啓発の段階でやりにくくなるのかなというのが一つ懸念するところです。  佐藤座長 効果的な普及啓発をどうしたらいいかということですが、熱心にやっ ている学校とそうでないところがあるというお話がありました。この2ページに加 えて、さらに取り組んでいる現状というのはどのようでしょうか。  長岡委員 どこの学校でどの程度やられているかというデータはなかなかつか みにくいんですね。保健の授業でやっているのは当たり前で、そのほかに薬物乱用 防止教室が年1回開かれていますが、総合的な学習の中で薬物の問題が取り上げれ らているかどうかというデータはないです。埼玉県には170校ぐらいあるうち、保 健の授業を拡大して、総学で3時間なり5時間とってでもやってる学校は1割にも 満たないだろうと思います。  板倉委員 教育の中でアルコールと喫煙と薬物の危険性とか、将来への問題性と いうのがあまりわからないような状況で教育された場合、本当の意味での薬物の問 題性が伝わっていってないんじゃないかという気がするんですね。  アルコールの問題については、この間もタレントさんの未成年飲酒が週刊誌で取 り上げられて、ファンの前で謝罪するというのがありましたけど、若い人たちは「僕 たちだってやってたよね」という感じなんですね。アルコールなんか高校生でも半 分以上の人は経験がありますし、大人が許容している部分があります。たばこにつ いては高校でもうるさく取り締まられて、吸ってるのが見つかると退校とか、しば らく学校に来るなみたいなことがあるかもしれませんけど、そういうものと薬物と の違いがよくわからない。  脱法ドラッグについては体に害はないんだというように一般的に広まっていて、 問題性を正しく理解できるようなツールとか何かが身近にないもんですから、確認 もできずに、勧められた時に断る理由がないままで使われてるという状況があるん じゃないかと思うんですね。  今はなんでも情報がインターネットで取られるようになってますけど、どこを対 象にするかというのは重要なことで、その年代にわかるような形での素朴な質問に 答えられるような情報が、しかも科学的な根拠に基づいたものが簡単に手に入れば …。パンフレットが何十万部も印刷されたといわれても、それを利用する人は限ら れていて、あるところに集中的にあっても、全体的には届いてないという状況があ るので、啓発の仕方自体についても工夫が必要だと思います。  私も教科書づくりにかかわったことがあるんですけど、検定が非常にうるさくて、 自分が伝えたいと思っていたことが最後に残らないという状況になるぐらいで、文 章もいろいろ直されてしまう。副読本の方が先生が自分のセンスで選べていいんで すけど、こういう情報が十分書かれている副読本が少ないのではないかという気が するんですね。そういうところをどうしたらいいのか、もう少し考えていただく必 要があるのではないかと思います。  うちの若い人たちにこういう問題についてどういう意識でいるかとを聞くと、 「捕まるか捕まらないかでしょ」という答えが一番多いんですね。今は大丈夫かも しれなくても、ある時点から、それを持ってるだけで捕まることもあるんだといえ ば、もう少しブレーキがかかる部分もあるかもしれないという気がするんですね。 「持っていても捕まらないんだったらいいや」というんじゃなくて、持ってるだけ でもこういうことが起こりうるよということがわかると、説得力が出るんじゃない かなという気がします。  南委員 高校で当事者意識のある人とない人とが二極化しているというのは一 般的な状況と思っていいんでしょうか。  長岡委員 一般的だと思います。地域によって違ったり、家庭環境によって違っ たりするので、全く関係ない子は「なに、それ」という感じですし、ある子は目の 前にあるわけです。いつ誘われてもおかしくない状況に日々いる。そういう状況な ので、これは一般的だと思っています。  南委員 そうだとすると、学校教育の中で問題になっている性感染症の教育など と同じに、学校教育の中で個別の状況に配慮したプログラムを進めることは非常に 難しいと感じます。  もう一つは、論点が違うかもしれないんですけど、薬物とかたばこの危険性より、 もっと小さい段階から自分の口に入るものに対する危機感というか、人間の体の中 に異物が入ったら非常に危ないんだということを教えなくてはいけないと思うん ですね。これは家庭教育なんでしょうけど、そういうものが根底にないと、いくら ドラッグなどの教育をしても仕方がないのではないか。安全神話自体が崩壊してし まっているところに後追いするむなしさを感じます。ヘルスサイエンスの教育が不 備だということがよく言われるんですが、人間の体に外から物が入ることの危険、 一見安全に見えてもそれは毒かもしれないといった危機管理をどこかの段階でき ちんと教える必要があるのではないかと思います。  アメリカなどでは人から手渡されたものは親なり先生にきちんと確認してもら うまでは口に入れてはいけないということをたたき込まれているということを聞 いたことがありますが、そういうことが必要ではないかという気がしました。  合田委員 資料2−4の2ページのところで、「医薬品でない薬物を不適切な目 的で使用すること」というのも薬物乱用の定義に入ってるということを知ったんで すけど、やせ薬が非常に出てますよね。そういうものは食品ではありえないんだと いうことが常識としてあって、科学リテラシーがあれば、そういうものには手を出 さないと思うんですが、それとかなり近いところに薬物乱用の入り口もあるような 気がするんですね。やせ薬の中には向精神薬が入ってる場合がありますので、マジ ンドールなんかはそうですけど、麻薬とか向精神薬のようなものだけではなくて、 やせ薬でも、それは医薬品なんだよ、そういうものは通常のルートで健康食品では 売られないよというところから学校教育で話をしてもらうと、こういうところの解 決に近いんじゃないかと思います。  法律で取り締まられるかどうかということよりも、一定のルールのもとで売られ ているものであって、口の中に入れることは警戒を要する、十分考えるべきである、 そういうところがあまり教育されてないのではないか。法律違反は避けようという ことじゃなくて、法律違反の一歩手前のところに、科学で考えたらこういうことは 起こりえないだろうということを生徒が理解していればいいと思うので、そういう 教育体制になるといいなと思ったところです。  長岡委員 「薬物乱用と健康」の一つ前に「医薬品と健康」という分野がありま して、その中では先生がおっしゃったようなことは出てないんですね。説明書を読 みなさいとか、用法用量を守りなさいとか、カプセルを引っこ抜いて粉だけ飲んじ ゃだめだよとか、その程度なんですね。「医薬品と健康」の中で、今おっしゃった ようなことが授業としてできれば、「薬物乱用と健康」のところにつながってくる かなと感じました。  藤岡委員 思春期の子が合理的な判断で薬物をやるかやらないかを決めている のであれば事は簡単だと思うんですが、なかなかそうもいかないところがありまし て、高校で意志決定のロールプレイの教育が一部とはいえ行われているというのは すばらしいことだなと思いました。私は少年院とか刑務所で、薬物をやってきちゃ った人たちの立ち直りのための教育と、今は大阪大学で教育心理学の中で阪大生た ちに薬物の教育をどういうふうにするかということと両方やっていて、同じくらい の年齢なんですけど、生い立ちとか状況がすごい違う子たちにアプローチをしてる んです。  けっこう共通項もありまして、一つは、さっき長岡先生がおっしゃった、やる子 はやるという話なんですね。やる子はやると思うんですよ。それが思春期というん ですかね。合理的な知識を教えて、薬害をきちんと教えて、こんなに悪いんだと思 ってやめる子がほとんどだと思うんですが、ハイリスク・ハイリターンを求める子 がたくさんいて、禁止されればされるほどやりたいし、大人がこうだといっても、 本当かなと疑って、やってみるというのはありうることだと思うんですね。  薬害の健康被害が先にこないとわからないというところが一番怖くて、若いころ は自分の10年後、20年後なんて考えてなかった気がするんですよ。30、40になって ズシッとくるという現実がなかなか見えないと思うんです。  薬物乱用防止教育で講師に招かれたことも昔はあったんですけど、高校の先生は 「うちにはそんな問題は全然ありません」と最初は皆さんおっしゃるんですね。薬 物乱用した子は退学させちゃって、「うちにはいません」という話がすごく多くて、 よく聞いてみると、実はいたんだという話がしょっちゅう出てくるんですね。先生 方も教科書を使って薬害のことを教えることはできるんだけど、結果の怖さという のを実感としてなかなか味わえないところがあるのではないか。刑務所とかで30、 40になって、薬物でどんなに人生を壊してきたのかというのを見てると、本当に怖 いもんなんだなという実感がわいてくるんですね。  大阪大学でも非行、犯罪とは何か、薬物乱用はいいのかいけないのかという話か ら始めるんですけど、今の若い人たちは、大人はたばこやアルコールを使っている のに、年齢とか性別とか自分の条件だけによって自由が制限されるというのは受け 入れがたいところがあるようなんです。窃盗とか殺人とか暴力とか、そういうのは 法律で禁止すべき絶対にいけないことというので意見が一致するんですけど、法律 で違反となる覚せい剤は法律違反なんだからいけないんだろう、でも薬物は結局は 自分の自由の範囲だから、法律で規制する必要はないんじゃないかという学生が多 数います。その人たちが実際に薬物を乱用するかどうかは別ですけど、でき上がっ たものに対する違った考え方というのは貴重なものでもあると思うんですね。  そういう人たちに、やった時の今のいいことと、将来のいいことと、それぞれの 嫌なことといいことをあげてもらって、彼らがいいこととしてあげたことについて、 本当にそうなのかどうかを検証する情報を与えて、最後は自分たちで決めてもらう。 最後は自分でやろうと思えばやるし、やるまいと思えばやらないと思いますので、 そういうのが手ごたえがあるような気がします。  講師としてダルクの人をよくお招きするんですけど、話すことは非常にまともで、 高校まではちゃんとやっていた人もけっこういるので、言ってることはちゃんとし てるのに、薬物をやってどんなに自分の人生を無駄にしたかという話をすると、イ ンフォームドコンセントみたいに、きちっと判断して決めようというような、自分 で迷うところがあると、決定が自分のものになるのかなという気がします。大きく 枠を決めた厚生労働省や文部科学省の啓蒙活動というのが一次予防としてすごく 大事で、それで大多数の人はOKなんだけど、そこから抜けてくる人たちに対して、 本人たちを迷わせておいて、情報を与えられるような、結果が見えるような働きか けが必要なのかなと思っています。  小沼委員 学校での教育というのは、一つは手を出さないという教育と、もう一 つは、ある程度手を出して、進行していった時に幻覚が出た、これは問題だという 形で気づかせる教育の成果と両方あると思うんですね。いま学校でいろいろやられ ているのは全校生徒一般にという形でやってますけど、和田先生のところの中学生 を対象にした調査では、たばこを1回でも吸った中学生、あるいは大人不在で1回 でも飲酒した中学生、これはシンナーの乱用へ移行しやすいんですね。シンナーの 乱用に移行すると、覚せい剤、大麻に移行しやすい。たばこ、大人不在の飲酒とい うのはシンナー乱用へのハイリスクグループですし、シンナーの乱用は覚せい剤、 大麻へのハイリスクグループなんですね。  学校で外部の専門家を招いて薬物乱用教室をやってますけど、たばこを吸ってる 子が来てるかというと、不登校で、聞いてなかったりということがあるわけです。 一般的な教育とは別に、喫煙、飲酒を経験したハイリスクグループの人たちに対す る集団教育みたいなことが必要ではないか。学校には養護の先生がいらっしゃるわ けですから、養護の先生を中心にスクールカウンセラーの心理の人とか校医さんと か、近くの精神科の医者でもいいと思うんですけど、そういう人と連携をとりなが ら、焦点を当てた対策も、それぞれの学校でやっていただければと思います。  佐藤座長 違法だからだめなんだというのは問題だという板倉先生のお話もあ って、なぜだめなのかという一番基本的なところを問い直さなくてはいけないので はないかという気もいたしました。教科書にも体に悪いからということがありまし たね。WHOの2001年のヘルスレポートで、人生で障害を抱えて苦しむ期間が長い 主要疾患というのを調べたものがありますが、それを見ますと、障害を抱えて生き る期間が長い病気の約半数が心の病気なんですね。その中に薬物乱用とかアルコー ル依存が上位に入ってるんですね。  成人になってからの人生に障害をもたらす疾患として心の健康についての意味 を明確にして、教科書に織り込んでいただくと、もっとわかりやすいのではなかろ うか。藤岡先生がおっしゃったこともそこに入ってくるのではないかと思います。 健康とは何かというところから始まって、体だけではなくて、大人になってからの 社会生活機能を侵してしまって、それで苦しんでいる人がこれほど各国で多い、こ うならないために絶対だめという、そういうところが必要ではなかろうかと思いま した。  小沼委員 麻薬・覚せい剤乱用防止センターでは「ダメ、ゼッタイ」というんで すけど、手を出した人はどうなるのかというと、乱用防止センターの場合は犯罪者 という形で切ってしまうんですね。それは困るんですね。教育の中でも、手を出し て依存から抜けられない、精神病の状態までいったという時には早めに精神保健福 祉センターに相談するとか、精神科の病院に早めに行けばいいんだよとか、そうい うことも情報として与えてあげていただきたいと思うんですね。  佐藤座長 リスクを抱えた方々への対応というのは、今後の方向づけの中で織り 込んでいただきたいと思いますね。  板倉委員 最近、ダイエットがものすごくブームでして、それも異常に進んでい ます。「食品は安全で医薬品は危険」と小さいころから教え込まれているので、中 国の糖尿薬は医薬品に分類されますけど、食品として売られてしまうわけです。そ ういうことを教えなくてはいけない大人の側でも「食品」という言葉だけで安全と いうイメージを持ってるところが大きいと思うんですね。  「食品添加物」は危険ということも相変わらずで学校の先生の中にさえあります ので、先生の教育をもう少しきちっとやらないと家庭でそういう指導をするのは無 理だと思います。リスクコミュニケーションといわれますけど、現実のものとなっ ていませんので、効果的な手法を考えていただくことがあっていいのではないかと 思います。  倉若委員 神奈川県の場合、外部講師による薬物乱用防止教室を年1回なり年2 回実施しています。外部講師以外に学校内で先生たちが講師となって講習を行って います。埼玉県の場合は数字をとられてないということですが、神奈川の場合はと らえてまして、その進捗状況を管理している。  うちの課で講習会に講師として言った者から、「捕まらなければやったっていい じゃないか」という子が多いという話はよく聞きます。「持っていて捕まるんです か」、「いや、これは捕まらない」。その先に今度は「使っていいんですね」とい う所まできてしまう。保護者のお母さん方も「うちの子はこうなんだけど、これを 持っているだけで捕まるんですか」と電話をしてきて、「捕まりません」というと、 「よかった」という言葉が返ってくる時代なんですね。その辺を考えると、普及啓 発も大事ですし、同時に所持まで違法だということまで入っていかないと、なかな かわかってもらえない部分もあるということです。  藤岡委員 法的な規制というのはもろ刃の剣という感じがして、最後のところで は大事だなとは思うんですが、捕まらないんだったらやりましょうという話になっ てくるんですね。薬物をやって刑務所に入った人たちは自分たちとは全然違うんだ と切り離しやすいと思うんです。刑務所で働いていた時には、女子の50〜60%は覚 せい剤の受刑者で、男子の4分の1が覚せい剤で、窃盗と並んで二大収容者数なん ですね。やくざとの関係で犯罪性の高い人も多いんですが、ほとんど犯罪性のない 薬物乱用だけの人もたくさんいて、覚せい剤は罰金刑がないですから執行猶予がつ いて、くせになるからすぐやっちゃって、長く服役しなくてはならない。刑務所自 体も教育はするけど、お金もかかるし、しかも社会的なスティグマでもある。  今は各地で精神保健センターが頑張ってくれてはいますけど、薬物乱用だけの人 を治療するシステムを考えていく時期にきているのではないかと常々思ってるん ですけど。  佐藤座長 貴重な御意見をたくさんいただきました。まだご意見はあるかと思い ますが、効果的な啓発活動については、次のように議論を整理したいと思います。  (1) 脱法ドラッグに手を出させないようにするために啓発は極めて重要である。  (2) 特に青少年についてはその後の人生を大きく変えますので、学校教育をはじ めメディアの関与も大切になりますし、有効な啓発活動に取り組むべきではないか ということだと思います。  それでは次に論点7に移ります。  その他の脱法ドラッグ対策に関して、まず事務局より、続いて和田委員より、資 料に基づいて説明をお願いします。  事務局 資料3−1をごらんください。「脱法ドラッグ」に代わる呼称候補(案) です。脱法ドラッグという呼称は、すれすれではあるが許されているという誤解を 生むのではないかとの懸念から、より適当な名称を事務局としても検討してきたと ころです。ここに掲げました4つを候補として検討に供させていただきたいと思い ます。これ以外にも適当なものもあろうかと思いますので、新規の御提案も含めて 御検討いただきたいところでございます。  1.違法ドラッグ  2.非合法ドラッグ  3.違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)  4.非合法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)  このような案を用意しております。事務局からは以上です。  和田委員 資料3−2を説明させていただきます。薬物乱用状況を把握する方法 ですが、基本的には使ったことがあるかないかという話になるわけです。聞かれる 側としては、知られたくないことを調べられるということですから、どういう方法 を使っても正確な数字は出てきません。そういう大前提があるんですが、日本の現 状を把握するために、それなりの規模ないしは質をもっている調査結果、調査法を 並べてみました。  1.一般人口の中での状況把握ですが、まず最初は検挙者数です。法律に違反し て捕まった人ですが、これは警察白書ないしは犯罪白書に出てきます。多い順番に、 覚せい剤取締法違反者、次は毒物及び劇物取締法違反ですが、その中のほとんどが 有機溶剤、3番目が大麻取締法違反です。薬物の順番でいうと覚せい剤が最も多く、 2番目が有機溶剤、3番目が大麻となります。  検挙者数というのは捕まった人の数だけですから、どういう理由で使ったかとか、 そういう細かいことは一切わかりません。把握している内容としては量的把握とい う言い方がありますが、数だけをみているということです。検挙者数というのは限 界がありまして、捕まった人イコール使っている人全員かというと、そんなことは なくて、捕まらない裾野の部分の方が多いであろうと考えるのが自然です。  2番目は「薬物使用に関する全国調査」です。日本の国民の中で最も多く使われ ている薬物は何であって、どのくらいの人が使っているのかを調査してみようとい うことで進められているものです。これは2年に1回、私のところでやっています が、全国から5,000人を無作為抽出しまして、調査員が対象者に調査用紙をもって いき、数日後に回収してカウントしていくというやり方です。  1回でも薬物をやったことがある人について薬物ごとにパーセントを出します と、一番多いのが有機溶剤1.7%、次が大麻0.5%、3番目が覚せい剤0.45%で、検 挙者の場合と順番が違っています。裾野の部分も見た場合、日本で最も経験されて いるのは有機溶剤であるという結果になりました。  全国調査というのは規模が大きいですから量的な把握はできるんですが、もう少 し細かい質的な問題を聞くには限界があります。この調査では量と質をそれなりに 聞きますが、結果的には量的な方が特徴をもっているということになります。  3番目は「薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査」です。先ほど小沼委員 から話がありましたが、日本の場合は10代で有機溶剤に手を出し、10代後半から20 代前半で覚せい剤に移行するという年代ごとに使う薬物の流れが伝統的にありま す。調べてみますと、結果として精神病院に来る覚せい剤精神障害者の3分の1は 覚せい剤を使う以前に有機溶剤の乱用を始めているという事実がわかりました。有 機溶剤の乱用を抑えることが、その後の覚せい剤の問題も減らしていく可能性があ るということで始められた調査です。  これは全国規模の中学生調査でして、全国から215前後の中学校を無作為に抽出 して、その中学生全員を調査対象にするという大規模調査です。全国で10万人強が 対象になります。これも私のところでやらせていただきましたが、1回でも有機溶 剤を経験したことがある中学生は1.1%、1回でも大麻をやったことがある中学生 は0.5%、覚せい剤も0.5 %でした。2番目の全国住民調査と数字はほぼ同じなんですね。アンケート調査で はありますが、この順番は不同なんですね。これは非常に重要です。日本の場合は 最も多く使われた経験のある薬物は有機溶剤、2番目が大麻、3番目が覚せい剤だ という状況がわかってきました。  この数字は自己申告なわけです。周囲の人間に結果は知られないと保証されてい ても、本当のことは言いたくないという心理が働きますので、こういうところに出 てくる数字は、少なく見積ってもこのくらいはいるという解釈をすべきであろうと 考えています。  次に2.特定集団の中での状況把握です。  まず最初に「依存性薬物情報研究班による精神病院受診患者調査」です。(独) 下総精神医療センターというのが千葉県にありますが、そこに事務局があります。 全国の精神病院の中からモニタリング病院を設定して、薬物使用が原因で受診ある いは入院した患者を通年にわたって調査するというやり方です。病院に来る事態を 引き起こす薬物としては何が多いのか、どのくらいなのかということを把握してい ます。それによりますと、覚せい剤が50.8%、有機溶剤が16.9%、第3種向精神薬 が3.8%という結果でした。  2番目は「薬物関連精神疾患全国精神病院調査」です。これはモニタリング病院 の設定ではありませんで、全国の精神病院全部に対する一斉調査です。調査期間は 通年ではありませんで、決められた2カ月間に病院に来た人という限定式です。結 果は、最初の調査と数字はほとんど同じでした。こういう結果を見ますと、どうい う薬物が精神障害を引き起こしやすいかということが明確にわかります。  3番目は「児童自立支援施設入所者調査」ですが、これは旧教護院に入っている 児童に対する調査です。児童自立支援施設の入所者はハイリスクの児童たちという ことでして、そこでどういう薬物を使われているかという調査をしています。これ は全国の全児童自立支援施設の全数調査になります。  その結果を見ても有機溶剤が圧倒的に多く、2番目が大麻、3番目が覚せい剤と いうことで、一般人口の調査と同じでして、こういう順番は変わらないということ です。  4番目は「救命救急センター搬送患者調査」ですが、このあたりから特殊になっ てきます。今まで説明しましたのはアンケート調査ないしは本人から調査員が聞き 取りで進める調査ですから、知られたくないという気持ちが働くんですね。そこで 考えたのが、ある集団の尿を調べようということです。覚せい剤を使ったら、覚せ い剤の代謝産物を含めて覚せい剤そのものが尿中に排泄されます。まさに生物学的 な手法を用いた検査です。  都内2カ所の救命救急センターに搬送された患者について、ある調査期間、全員 の尿を調べました。その結果、1つの救命救急センターでは覚せい剤は検出されま せんでした。もう1つのセンターでは2.7%の患者から覚せい剤が出てきた。  だれでもそうですが、自分の尿を検査用に出したくないんですね。こういう検査 をする時にはインフォームドコンセントによって目的とかいろんなことを説明し た上で本人から承諾を得て尿をいただいて検査をするという手続が絶対に必要で す。となってくると、簡単にもらえません。  一つやり方がありまして、エイズの拡大を防ぐ意味でWHOが認めざるをえなか った手法なんですが、アンリンクト・アノニマスといって、10人の対象者がいた場 合、だれの尿かわからないようにする。10人に対して10の検体という関係しかわか らないという取り方であれば本人の同意なしに検査しても構わないんですね。そう いう手法を用いて、調査期間中に搬送された患者の尿を調べたものです。  救命救急センターに運ばれる人は一般人口より薬物を使っている率は高いと推 測されますですから、こういう生物学的な検査をしても覚せい剤の陽性率は3%に なっています。これは特殊な検査であり、かつ正確な数字になってきます。ただ、 これは東京の繁華街を控えているパーセントが高く出そうな救命救急センターを 選んでやっていますので、日本全体というわけではありません。  5番目は「薬物乱用・依存者におけるHIV感染の実態とハイリスク行動に関す る研究」です。世界的にみた場合、薬物乱用者・依存者はHIV感染の最もリスク の高い集団であることがはっきりしています。日本の場合はどうかということで、 経時的に検査しています。日本の場合はHIV陽性率は0.3%と驚異的に低いんで すね。HCV抗体というのはC型肝炎の抗体ですが、陽性率は37%という驚異的に 高い結果が出ています。これでも経年的には減ってきてるんです。10年ほど前は5 0%でした。  ほかの国はどうかというと、アメリカでは薬物依存者だけみた場合は70〜80%が HCV抗体プラスですから、これでも日本はまだ低いという驚きの状況です。  どういう人を調べたかというと、薬物依存患者を比較的多く診ていると考えられ る病院はわずか6カ所だけですが、6カ所の病院だけで、覚せい剤に限れば、日本 の精神病院に入院している薬物依存患者の18%を占めることになります。6カ所の 施設で18%の患者を調べられるということ自体が、それだけ薬物依存の患者を診る 病院がいかに少ないかという医療の貧困をあらわしているわけです。そういう状況 だから検査ができるという皮肉な話でもあります。  6番目は「MDMAおよび5−MeO−DIPT使用経験者に関する聞き取り調 査」です。5−MeOというのは脱法ドラッグという形で浮上して現在は麻薬にな ったわけですが、今までのものとガラリとやり方が違いまして、5−MeOを使う とどうなるかということがわからないもんですから、使った人間を募るんですね。 いろんな方法で使ったことのある人間を探りあてまして、その人間と話をしながら、 ほかの経験者を教えてもらって、そこに行って情報を得て、どんどん情報を増やし ていく。そういうことを我々はやってみました。何人いるというのは全然わからな い。使うとどうなるとか、質的なものだけがわかってくる。そういう調査法です。 これは5−MeO−DIPTのデータづくりの出発点になった調査法でもありま す。  以上、ずっと並べてきましたが、統計学的、疫学的にきちんとしたやり方以外に、 特定集団になってきますと、アクセスすることも難しいとか、医療行為であるから 言いたくないとか、非常に難しい問題を含んでいます。何を調べるか、だれを調べ るかによって方法を工夫する必要があります。  下に3.症例報告というのを書きました。今まで害が未知であるものを見る時に は、身体的・精神的に異常をきたした症例を収集する作業が必要になりまので、症 例報告というのがあるんですね。  4.インターネット上の情報収集ですが、最近はいろんな情報がインターネット 上にあふれていますので、どんな情報があふれているかということを収集整理して いく。脱法ドラッグの場合は、使った人間からの情報を募るということをやってい く必要があるのかもしれません。脱法ドラッグレベルであれば捕まる話ではありま せんので、申告しやすいんですね。ということで、インターネットを逆利用する方 法が今後は工夫される必要があるかもしれません。  以上で私の説明は終わりなんですが、ちょっと時間をいただいて、教育の話に関 連して、上から3番目の「薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査」の中身を 紹介したいんですが。  佐藤座長 時間がないので、後で振り返ることにして、ここで一区切りさせてく ださい。  ただいま資料3−1と3−2について御説明いただきました。まず「脱法ドラッ グ」に代わる呼称について、御意見をいただきたいと思います。  三輪委員 違法ドラッグとストレートにやったほうがいいと思います。ただし、 いきなり違法ドラッグというと脱法ドラッグと別物じゃないかという混乱も生じ ますので、過渡期的な意味で3番の違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)として、 この両者は同じなんですよ、ただしメインは違法ドラッグということで、とりあえ ず3番でいって、ある程度わかってきたところで1番にする。非合法ドラッグとい うのは発音しにくいですよね。違法というのはパンチもありますし、発音しやすい ので、私はその線を推薦します。  今井委員 今の御意見は、脱法ドラッグというのは、薬事法2第条第1項第3号 に該当するものであるということを踏まえますと、もとから違法であったので、そ れを確認する意味で1番にする、暫定的に3番にするということだと思います。参 考資料3にありますが、薬事法の規制対象の中でも、薬事法だけの場合は所持につ いて限定的な罰則の規制となっていたり、使用させることが罰則の対象外となって います。行政法上の違法性は高いのですが、麻向法等と比べますと、その薬物の持 っている犯罪性という意味での違法性には違いがある。ということを踏まえると、 違法ではあるんですが、自己使用が不可罰であるという点で大きな違いがある限り においては、非合法ドラッグというのもいいのかなと、私は迷っているところです。  和田委員 麻薬とか覚せい剤というのは私は法律用語として使っているつもり ですが、ここで議論しようとしている脱法ドラッグというのは、どういう意味での 言葉として決めようということなんでしょうか。  南野課長 今まで脱法ドラッグと称されてきたたぐいのものについて、どういう 名称が適当かということを御議論いただきたいということです。麻薬や向精神薬に 既に指定されているもの以外で、薬事法で規制の対象になる、人体の構造機能に影 響を及ぼすことを目的として販売されているもの、人に乱用させる目的で販売され ているもの、こういったものについてどのような名称が適当かということを御検討 いただきたいと思います。  脱法という言葉は法の網を逃れるという印象を持たれる方が多いようでして、薬 事法違反になるにもかかわらず、法の規制がかからないという誤ったメッセージを 伝えてしまうおそれがある言葉でもあると思いますので、この名称を変更するとい う観点で御検討いただければと思います。  佐藤座長 三輪先生から明快な御提案がありましたが、この前の積み残しの論点 5ともかかわりますので、そちらをちょっと検討した上で、もう一度ここに戻りた いと思います。  それでは、資料4に論点5の補足資料がありますので、それについて事務局から 説明してください。  事務局 資料4−1、4−2、4−3をごらんください。論点5の補足資料です。  前回の検討会で麻薬及び向精神薬取締法における麻薬と向精神薬の規制、これら に加えて、もう一つカテゴリーを麻向法に新設してはどうかという議論がありまし た。向精神薬の規制の制度が創設された当時から、どのような考え方に基づいて規 制されてきたか、これを説明したいと思います。  資料4−1です。向精神薬条約を批准するために、平成2年に旧麻薬取締法が改 正されまして、向精神薬の規制が加わりました。その際に名称も「麻薬及び向精神 薬取締法」となったわけです。これに先立ちまして、中央薬事審議会(現在の薬事・ 食品審議会)が条約の義務や、わが国における規制の在り方等について審議を行い、 「向精神薬乱用防止対策の在り方」という答申を厚生大臣(当時)に提出していま す。  法改正を含む向精神薬の規制制度は、この答申に示されました基本的な考えに沿 って設計されています。この答申について説明申し上げます。  まず向精神薬の定義です。1ページの1.向精神薬とはのところの下線部をごら んください。「中枢神経系に作用して精神機能に影響を及ぼす物質であって、乱用 されるおそれがあり、かつ、乱用された場合、保健衛生上の危害及び社会的な弊害 を起こすおそれのあるもののうち、麻薬、覚せい剤、あへん及び大麻を除いたもの とする」となっています。  麻薬及び向精神薬取締法では、法律における向精神薬という言葉で表される物質 群はバスケットのようなものでして、乱用される薬物の総体から、より危険な麻薬 や覚せい剤などを除いたすべてということです。  続いて「向精神薬には、医療に使用されている物質(例えば、睡眠薬、抗不安薬 等)だけでなく、医療に使用されていない物質も含まれる」とありますように、向 精神薬は、そのものに医療用途があることを前提とした分類ではなく、有害性を尺 度に決められた物質をまとめたカテゴリーである。こういった整理で向精神薬は考 えられたということがわかります。  2ページですが、向精神薬の規制としてどういうものが考えられたかということ です。3.向精神薬の乱用防止対策の確立という項目の(1) の(1)規制体系の下線部 です。  「向精神薬条約の規制対象物質のうち、乱用された場合の保健衛生上の危害及び 社会的な弊害の程度が既に規制されている麻薬又は覚せい剤と同等あるいはそれ 以上と考えられる物質については、麻薬又は覚せい剤に指定して規制することが適 当である」とあります。乱用される可能性のある向精神薬という総体の中で、所持 規制等を含む厳しい規制に値する有害性をもつものは、麻薬や覚せい剤に指定して 規制をするという方針が示されています。実際、向精神薬条約の付表1に入ってい るLSDやMDMAは向精神薬条約の対象物質ではありますが、わが国では麻薬に 指定されて厳しく規制されているところです。  次に、麻薬や覚せい剤に格上げされない残りの向精神薬の規制についてはどうい うことがあったかというと、(2)規制事項の下線部をごらんください。  「向精神薬の使用を原則として医療及び研究上の目的に限定し、向精神薬がこれ ら以外の目的に使用されないようにするため、製造及び流通を規制する」。  (3)規制の程度。「向精神薬は、乱用された場合の有害性の程度は麻薬に比べて低 いため、麻薬よりも緩和な規制とする」となっています。有害性に応じた規制をし、 向精神薬は有害性が低いので、規制も麻薬より緩和なものとするということです。  このように向精神薬については製造と流通を規制し、単純所持や使用までは規制 しないという方針が示されて、これが麻薬及び向精神薬取締法の向精神薬の規制の 部分に反映されたわけです。向精神薬条約においても製造、流通の規制を締約国に 義務づけていますが、個人の所有や使用の禁止までは条約上も求められておりませ ん。  具体駅にどういう規制かといいますと、3ページの(2) 規制制度の具体的内容で す。  (1)国内流通の規制の下線部ですが、「向精神薬の使用を原則として医療及び研究 の目的に制限するため、次のような規制措置により、これらの目的以外の製造及び 流通を防止する」。  「次のような規制措置により」というのは、(ア) 製造、流通業者の免許制の導入 ですが、「向精神薬の製造、輸入、譲渡を業とする者について免許制を導入する」。 これは向精神薬条約の要請でもあります。  このように製造、流通に関して、それにかかわる業者の免許制度による規制を行 う、このように方針が決められ、法律もそのようになったところです。  資料4−2に移ります。以上で説明申し上げましたこと、前回検討会までに説明 されました薬事法での脱法ドラッグの規制を1枚の絵にまとめたものです。  縦軸は下から上にいくにしたがって有害性が高くなります。横軸は、左側が物質 としての有害性がわかっているもの、右にいくと有害性が未知のものとなります。  左半分にあります太い線の大きい四角が麻薬及び向精神薬取締法の規制対象物 質ですが、上半分の四角が有害性の高い麻薬で、有害性に応じて使用、所持まで規 制。下半分の大きめの四角が向精神薬で、有害性がより低いので、製造、流通を規 制となっています。  麻薬及び向精神薬取締法では規制対象物質を一つ一つ化学名で指定し、それぞれ の有害性が、ヘロイン、モルヒネからジアゼパムまで物質ごとにわかっていまして、 その有害性に適した規制ということで麻薬ないしは向精神薬の規制がかかってい るわけです。  脱法ドラッグの規制はどうなっているか、これが右半分で示されています。脱法 ドラッグが登場した段階では含有成分の有害性は未知ですので、座標の右側に楕円 でボワンと描いてあります。その有害性は麻薬並みに高いものから向精神薬並みの もの、それより弱いものなどいろいろな可能性があります。  これまでの説明で何度か出てきましたとおり、現在は脱法ドラッグが人体の構造 又は機能に影響を及ぼすことを目的として販売されているにもかかわらず承認許 可を得ていないということで、薬事法の規制対象、無承認無許可医薬品として規制 対象になると考えています。  具体的には、幻覚や興奮などを生ずると称して販売するだけで、何が入っている かによらず、また、その成分の有害性を立証するまで待つ必要もなく、市場に出現 すると同時に、その製造と流通を規制することができます。  その上で、厚生労働省としては含有物質を分析して突きとめ、その有害性を明ら かにします。楕円の「脱法ドラッグ」の左側に矢印がありますが、そこの説明です。 明らかになった有害性が、麻薬に指定して、所持規制を含む厳しい規制をかけるこ とを正当化するほど有害性が高いとなれば麻薬に、向精神薬の規制に値する有害性 があるということであれば向精神薬で規制することになります。5−MeO−DI PTについては脱法ドラッグの成分として広く流通していた。これを分析して発見 し、その有害性を明らかにしたところ、麻薬に指定するのが適当ということで麻薬 に指定された。これがいい例だと思いますが、こういう形での規制になっています。  資料4−3に移ります。現在、麻薬及び向精神薬取締法で規制されている向精神 薬のわが国での医療用途の有無を示したのがこの表です。向精神薬には医療用途が ないものも含むと申し上げましたが、それを示したものでして、○がついているも のが医薬品としての承認を得たものです。第一種向精神薬7物質のうち医薬品とし て用いられているものが2物質、第二種9物質中5物質、第三種63物質中31物質、 合わせて79物質の向精神薬のうち医療用途があるのが38物質で、半分以上は医療用 途はないということです。  事務局からの説明は以上です。  佐藤座長 ありがとうございました。前回までの審議の結果も踏まえて、はっき りしてきたのではないかと思います。次々と出てくる脱法ドラッグに迅速に対処す るために薬事法で対応する。有害性が麻薬と同等かそれ以上の場合は麻薬に指定し て、所持、使用を規制する。これまで二通りの流れであって、まだ議論が煮詰まっ ていなかったところです。  時間が押してきましたが、大切な部分ですので、御意見をいただきたいと思いま す。  鈴木委員 非常に明快になったと思います。向精神薬に新たに加えるという提案 がなされているわけですが、今まではすべて麻薬に入れてきたわけです。そこの判 断というのはどんなふうに考えられているんでしょうか。  南野課長 今まで向精神薬については事務局ではっきりと説明をしてこずに、麻 薬に限定するような形で説明をしてきたんですが、それは必ずしも適切な説明では なかった部分があります。向精神薬というのは名称からすると医療用途があるだけ のものではないかという印象もあるんですが、向精神薬の規制を導入した時の考え 方は、先ほどの中薬審の答申にありましたように、医療用途がなくても、精神的な 作用があって依存性があるものについては向精神薬の規制の対象として考えてい くという整理です。  脱法ドラッグに含まれている物質があって、それが有害性があることがわかった 時に、それを麻薬に位置づけるのか、あるいは向精神薬に位置づけるのかという問 題が一つあると思いますが、麻薬として指定されている一群が140数種類あります。 向精神薬として指定されている物質が79種類あります。どちらの分類により近いの かということを一つの判断基準として、新しい物質を麻薬に指定していくのか向精 神薬にして指定いくのかということになっていくのではないかと思います。  鈴木委員 別の委員会でいろいろ議論して、脱法ドラッグを麻薬にしているわけ ですが、麻薬として扱うのはどうかという疑問があるものも今までは麻薬にしてい るような感もあるわけですね。そのへんのラインをしっかり議論していかないとい けないかと思います。  佐藤座長 前回、準麻薬のような枠を設けて、向精神薬の規制で代用できないか と私が申し上げたんですが、それについてはいかがでしょうか。  南野課長 麻薬と向精神薬の間に準麻薬というカテゴリーを設けることができ るかどうかという御質問が前回ありましたが、麻薬と向精神薬は連続した一連の概 念であって、向精神薬の中で特に有害性が高く、より厳しい規制をかける必要があ るものについて麻薬として規制をかけていくという考え方になると思います。  三輪委員 準麻薬という考え方は、今までのルートが脱法ドラッグから麻薬にい くというのがメインだったために出された考えではないかと私には感じられまし た。今の事務局の話を聞くと、脱法ドラッグから向精神薬にいくルートをここで確 立するとなると、それが準麻薬であるという感触を受けますね。そのほかにもう一 つ準麻薬があるとすると、屋上屋を重ねるような、非常にわかりにくい状態になる んじゃないかと思います。  今のお話を聞いてまして、向精神薬という名称なんですけど、できることなら向 精神薬物という名称だったらよかったんじゃないかと思います。  町野委員 脱法ドラッグの呼称ですけど、要するに無承認無許可医薬品であると いうことを言えればいいだけですね。そのように書いて、(脱法ドラッグ)とする のが一番正確じゃないかと思います。薬事法の基本的な考え方は、使った人間が被 害者だという考え方でできてるわけですよね。その規制はかかっていて、使用する のはOKなんだと、その意味ではうそではないわけですね。売るのは違法だという だけですから。しかし売るのは違法ドラッグというと、どうぞ勝手にお使いくださ いということになるので、無承認無許可医薬品(脱法ドラッグ)というのは長いで すけど、それがいいのかなという感じがします。  麻向法ができた時に向精神薬の規制があったのは、国際条約に基づいて日本が立 法の措置をとらなくてはいけなくなったので、こうなったわけですよね。向精神薬 の条約が要請している内容というのは、少なくとも流通規制をすべきである、そし て国際的な監視のもとに置かれるべきである、その2点だったわけですね。その程 度の規制をかければ十分と思われるものを向精神薬として、もっと規制をしたほう がいいというのは麻薬とか覚せい剤である、そういう考え方ででき上がってるとい うことですよね。向精神薬と麻薬の中間的な物質を作ったとして、どう区別するか という問題があるから、中間を作るというのはあまり意味をなさない議論だろうと 思います。  佐藤座長 準麻薬については、前回、私からお願いしたんですが、三輪先生の御 指摘のとおり、今の向精神薬でかわりうるものだと思いますので、屋上屋を重ねる ようなことはやめて、このような扱いで枠の中に入るのではないかと思います。  合田委員 無承認無許可医薬品は非常に広い概念で、ここで議論しているのは、 無承認無許可医薬品の中で特に脱法ドラッグといわれるものについてどういう名 前にしようかということですね。無承認無許可医薬品といってしまうと、やせ薬も 入りますけど、それは実質的に害のレベルは脱法ドラッグとは全然違うと思うんで す。  違法ドラッグが非合法ドラッグかという名前を提案されてますが、化合物の名前 をダーッとあげておいて、これはプラスアルファの悪いやつですよと、そういうこ とを決めようと考えてるんじゃないかと私は思います。そういうものについては、 前回議論がありましたけど、インターネットのところで輸入する際の、輸入規制み たいなものができるような範囲であれば非常に有効性があるんじゃないかと思い ます。  三輪委員 無承認無許可医薬品という提案があったんですが、私も合田先生の意 見に大賛成です。私は健康食品の刑事事件の弁護をやることがあるんですが、それ らは、一般的にやせ薬が入っていて、低いながらも有害性があるという、そのレベ ルでもないんですね。草の粉みたいなものを健康にいいといって、10億、20億売り 上げると警察が入って、私が刑事弁護をすることがあるんですが、これはまさに無 承認無許可医薬品で、いわゆる健康食品で、ほとんど害がない。それと脱法ドラッ グとは違うんじゃないかと思います。  佐藤座長 予定の時間を超えてしまいましたが、いちおう御意見が出たかと思い ます。町野先生から専門の立場でこういうふうに呼ぶのが適切ではないかという御 意見がありましたし、取り締まる側からいうと違法性をはっきりうたったほうが有 効ではないかとか、普及啓発においても非合法というだけでは問題であるとか、さ まざまな御意見があったと思います。  今日の御意見をまとめて要約をしていただきまして、必要であれば、次回にさら なる議論をしていきたいと思います。  和田先生から日本での薬物乱用状況の把握について御説明がありました。世界的 に見ても日本でこれだけきっちり乱用実態を把握しているというのは進んでいる ことでして、その裏にはずいぶんの努力とこれまでの蓄積があったわけです。もっ と時間をかけてこの内容を皆様に御理解いただきたかったのですが、前半の部分で 時間がオーバーしてしまいました。次回、補足説明がありましたら、お願いしたい と思います。  予定した議題については御審議いただいたということで、今日の時点におけるま とめを次回に出していただければと思います。  それでは、事務局から何かございますか。  事務局 次回検討会の日程は現在調整中でございます。  事務局 最後に御報告ですが、毎年度、各都道府県に委託をして「脱法ドラッグ」 を対象とする買い上げ調査を実施しております。平成13年度から15年度の買い上げ 調査の結果につきましては第1回目の検討会において報告させていただきました が、8月2日に16年度の買い上げ調査の結果を各都道府県に通知という形で送付す るとともに公表いたしましたので、この場を借りて御報告させていただきます。以 上です。  佐藤座長 それでは、以上をもちまして本日の検討会を終了いたします。どうも ありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 TEL:03(5253)1111(内線2761)