05/08/04 生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会 第2回議事録             ┌─────────────────────────┐             |照会先 健康局総務課健康フロンティア戦略推進室  |             |          室長補佐:荒木(内線2988)|             |    健康局総務課生活習慣病対策室健康情報管理係|             |          係長  :元村(内線2971)|             └─────────────────────────┘          生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会                  (第2回会議)            日時:平成17年8月4日(木)11:30〜13:00         場所:東海大学校友会館 富士の間(霞ヶ関ビル33階)        第2回 生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会                     日時:平成17年8月4日(木)11:30〜13:00                     場所:東海大学校友会館 富士の間 ○出席委員  永井良三座長、太田壽城委員、岡山明委員、津下一代委員、浜口伝博委員、水嶋春朔 委員、(6名) ○参考人  古井祐司参考人、野口緑参考人 ○厚生労働省出席者  (健康局)田中健康局長、瀬上参事官、中島生活習慣病対策室長、  野村保健指導室長、藤井健康フロンティア戦略推進室長 ○次第 1 開会 2 効果的な健診・保健指導の事例について 3 その他 4 閉会 1.開会  瀬上参事官  それでは委員の皆様お揃いでございますので、ただいまより「生活習慣病健診・保健 指導の在り方に関する検討会」の第2回の会議を開催させていただきたいと存じます。 御多忙の折、この時間にお集まりいただきましてまことにありがとうございます。先ほ ど津下先生から「がんばれ減量男」という彼女の関係の新聞記事をいただいたのです が、私自身がこういう問題の重要性、また行動変容の重要性をとくとわかっていなが ら、しかしながらいつも二日坊主でなかなか続かない。本日はそこら辺の難しさを踏ま えた実質的な議論をしていただきたいと存じますが、そのためにお二方の御参考人の意 見を聴取していただきたいと存じます。  委員の皆さんは、本日は宮崎先生が御欠席でございますが、あと局長は国会で遅参し てまいります。浜口委員は中途で退出と伺っております。瀬上も最後までおれないと思 いますが、どうぞよろしくお願いいたします。永井先生、以後の進行をよろしくどう ぞ。 2.効果的な健診・保健指導の事例等について  永井座長  それではよろしくお願いいたします。きょうの予定ですけれども、前回御検討いただ きましたように、まず効果的な健診あるいは指導事例等について、御発表いただくこと になっております。前回は生活習慣病の健診、保健指導の方向性、基本的な考え方、こ のあたりを御議論いただいて、おおよその方向性が見えてきたのではないかとは思いま すけれども、その考え方に基づきまして、実際の事例に当てはめた場合にどういう効果 が見られるか、委員の先生方からお話を伺いながら、またディスカッションしたいと思 います。  お一人10分程度、5名の方にお話を伺います。1例1例の発表の後に討論したいとこ ろなのですが、時間の都合もございますので、5人の方にお話を伺った後に、まとめて ディスカッションをしたいと考えております。最初に水嶋委員から「予防医学のストラ テジー 〜ハイリスク・ストラテジーとポピュレーション・ストラテジー〜」につい て、お話を伺います。よろしくお願いいたします。  水嶋委員  ありがとうございます。国立保健医療科学院人材育成部長の水嶋でございます。本 日、御紹介させていただきますのは、健診あるいは予防医学そのものの基本的な考え方 の整理。あとはその中に位置づけとしての健診のあり方、効果的な進め方に関しまし て、少し基本的なお話をさせていただきます。お手元の資料1をごらんいただきたいと 思います。パワーポイントの資料で1ページに2枚ずつになっております。1ページの 下にございますのは、「健康日本21」の総論に記載されております文言でございまし て、「健康日本21」は御案内のように、国民健康づくり運動の第3次の運動として、現 状把握をきちんとして、到達目標を立てて、根拠に基づく健康づくりをしましょうとい うことが画期的な中身となっております。特に基本戦略の中に、対象集団への働きかけ といたしまして、ポイントとして1次予防、2次予防の施策との整合性、このときに1 次予防というのは病気にならないようにするという、健康増進活動を含めたものでござ いますが、2次予防はいわゆる健診でございます。この整合性をきちっととることが必 要だということをまとめておられます。  その2次予防といいますと、健診をして、あるリスクが高い人の振り分けをして、高 い人に対して指導なり医療を施すというシステムのことでございますが、それはハイリ スク・ストラテジーあるいは高リスクアプローチと申します。しかしそれだけではなか なか全体の罹患数、あるいは死亡者数を減らすことはできませんよといったことが、事 実としてございまして、集団全体へのアプローチを組み合わせることが必要ですといっ たことが重視されております。  次のページは同じ「健康日本21」のホームページから取った絵でございます。左上の 絵が緑色の分布図になっておりますけれども、これは例えば血圧なりコレステロールな り、あるいは血糖値なりあるいは肥満の指数の肥満度でも結構なのですけれども、右端 の高い人、リスクが高い人に対してアプローチをするのが高リスクアプローチでござい ます。それに対しまして集団全体で左側にえいやっとシフトさせるのが集団アプロー チ、あるいはポピュレーション・ストラテジーになるわけですね。  なぜそれが必要なのかというのは、右下の絵にございます。これは血圧と脳卒中の関 係を表したものでございます。緑色が血圧の分布ですね。右端の方は血圧が高い人です ね。要医療です。境界域は要指導であったり経過観察になるかと思います。脳卒中の罹 患率、発症率は赤い右上がりの線でございます。つまり血圧は1人当たりの値が高けれ ば高いほど、1人のリスクは高くなる。だからその人の血圧を下げましょう。そのため に降圧薬をつかったり非薬物療法による指導が必要ですという論理になるのです。  しかし集団全体を見る仕事である我々公衆衛生の人間としましては、実態として、脳 卒中の患者さんの数はどこからいちばん来るのだろうということに目を向ける必要があ るわけです。それが黒い分布の絵でございます。つまり境界域の正常側にいちばんピー クがあります。つまり脳卒中の患者さんの数そのものは、境界域あるいは正常高値にピ ークがあるのですね。これをやはりきちんと重要な点として認識しつつ健診をする。健 診というのは先ほど申し上げましたように、右側のリスクの高い人を拾い上げて、その 人たちに何かの指導や医療をすることでございますが、その要指導・要医療にならない 人のところから、実は多くの患者が出ているということをきちんと留意しておく必要が あるということになります。  なぜそうなるかということは、1人当たりのリスクが高い人の人間の数は、緑色の線 を見てわかるように、人間の数としてはそのカテゴリーにある方はそんなに多くありま せん。つまり患者の数あるいは死亡者数というのは、(1人当たりのリスク)×(その カテゴリーに入る人間の数)の積算で表われるものなのですね。そうしますと1人当た りのリスクは低くなっている境界域、正常高値のほうが、緑色の分布図を見ていただけ ればわかるように、カテゴリーに入るnの数は多くなるわけです。したがいましてかけ 算をして得られる脳卒中発症者数、あるいは死亡者数はこちらの方にピークがあるとい うことです。つまり健診だけではこのようなアプローチがなされないというジレンマが あるわけでございます。その下が2つのストラテジー、つまり病んだ個人への視点と病 んだ集団への視点。そこからハイリスク・ストラテジーとポピュレーション・ストラテ ジー。これはジェフリー・ローズ先生が1980年代に発表された概念でございます。  次の3ページ目でございますが、スクリーニングでうまくいって機能する例としまし ては、結核や感染症の疾病対策がございます。つまり正常と異常が二分できる場合がそ れに当たるのですね。しかし、生活習慣病のように全体にリスクが連続しているものに は、なかなかうまくいかない。この下には疾病リスクのある関連曝露と発症リスクの関 係でございますが、例えば基準値が血糖値126ですとか総コレステロール220というのが あまりにも強大な力を持ってしまいますと、その左下の方に、その値を超えると急にあ る病気になりやすくて、超えなければ大丈夫かのように思い込んでしまうのですね。こ れは大きな間違いであるということが、「健康日本21」総論には書いてあるわけでござ います。  4ページ目の上の図でございますが、それをさらに別な絵で紹介したものでございま して、つまり正常と異常に分けられるような分布は上側でございますが、実際はそうは ならないと。その4ページの下は、フラミンガム研究での心筋梗塞の罹患者で、波線の 分布は心筋梗塞を起こした人のベースラインのときのコレステロールの分布です。mg/dl の単位でいうと、150〜330ぐらいまで分布していますね。しかし急性心筋梗塞を起こさ なかった人は130〜300と、かなりオーバーラップしているわけなのですね。これが生活 習慣病の特徴でございます。  次の5ページ目はMRFITという多重のリスクファクターを持った方のフォローアップ スタディーでございます。これはコレステロールの値が高ければ高いほど、右上がりの 曲線に表われるように死亡率も高くなります。しかし実際に冠動脈疾患、つまり心筋梗 塞で死亡した人の内訳を見ますと、260以上だった方は全体の17%、220〜260だった方 が32%、190〜200以上の方が39%で4割ですね。それを模式図に表しますと、5ページ の下ですね。つまり罹患者、死亡者の内訳をハイリスクから2割、境界域から3割、正 常高値から4割と、つまりハイリスク2割だけに注目していては、全体の脳卒中患者数 あるいは心筋梗塞の患者数を減らすことはできません。このことを6ページの上のよう に予防医学のパラドックスといっております。  その理屈については6ページの下のように、1人当たりのリスクが4/10の場合に、そ このカテゴリーに入る人が100人であれば、ここから出る患者の数は40人。しかし正常 高値が1人当たりのリスクが半減した、ああ、良かったですね。しかしそこのカテゴリ ーの範囲に入る患者の数は非常に多いわけですね。つまり2/10×500で100人と。小さな リスクを背負った大多数の集団からの患者の数のほうが多くなるというのが、予防医学 のパラドックスと呼ばれるものでございます。  その解決策としては7ページの上にございますように、集団分布自体をいい方向へ持 っていきましょうということです。7ページの下は、BMJというイギリスの医師会雑 誌に載っているシミュレーションでございますが、集団全体の分布を5%左側にシフト させることによって、脳卒中罹患を30%減少させる。英国では75,000人の脳卒中を予防 できることになりますが、ハイリスク・ストラテジーとして、血圧の拡張期が100以上 の人すべてを見つけ出して、すべてを治療して、すべてをリスク半減させたことに成功 したとしても、脳卒中罹患は15%の減少であるということになっております。  こういうことを踏まえつつ、8ページに書いてありますように、健康日本21の各論 で、循環器分野でこれは上島先生や岡山先生が御貢献されたところでございますが、具 体的にどういう波及効果があるといったことがまとめられてございます。8ページの下 は、私の考えた絵ですが、つまり一人一人のリスクの程度をアセスメントして、一人一 人に応じた情報、知識、態度を提供して、行動変容をしていただくというような、これ は健康づくりの王道なのですけれども、これにうまく乗れない人はかなり多いわけです ね。自分の生活習慣というのは周りの環境に非常に影響されますので、環境づくりを中 心としたポピュレーション・アプローチ的な仕掛けを併せてやっていく必要があるので はないかなというふうに思っております。  参考文献が載っていまして、あとは総合臨床という雑誌に、今申し上げたことが書き 言葉として書かれております。それでは健診の位置づけはどうしたらいいのかの話なの ですけれども、健診自体が何かのスクリーニングという位置づけで二次予防的な考え方 なのですが、健診を通して自分の生活習慣をきちんと明らかにする。あるいは健診の前 のこの検討会で出ているようなアイデアに基づいて、自分の生活習慣のレベルあるいは 状態をアセスメントして、必要に応じた健診をきちんとやっていくといった仕掛けが生 きてくると思います。  そのときに1つの例なのですけれども、総合臨床の抜き刷りが終わったところに、A 4で横長のがございますけれども、例えば生活習慣の最たるものとして喫煙対策がござ います。喫煙を問診で「あなたは吸っていますか」と聞くとなると、「はい、吸ってい ます」「止めました」「吸っていません」のこの三択なのですけれども、これに加え て、例えばニコチン依存症としてのスクリーニングとして位置づけた場合には、その依 存の程度の把握ができるわけなのですね。繰り返し必要な慢性疾患としてとらえたTD Sという、詳しくは次のページにございますけれども、それと問診項目がございます。  そうしますと0から10点にグレーディングされます。非常に依存度が高い人は要医療 になりますし、あるいは要指導も含まれる。あるいは自主的に止めようとしている人は 応援程度でいいといったようなかたちになります。そういった喫煙のニコチン依存症の スクリーニング自体を受けることで、何らかの自分の状態をアセスメントして、行動変 容につながるような、そういった仕掛けが上手に問診の聞き方などで組み合わせるとい いのではないかなというふうに思っております。この辺は一次予防と二次予防の整合性 を考慮したやり方の1つとして御紹介させていただきました。以上でございます。あり がとうございます。  永井座長  ありがとうございます。では続きまして古井先生に「実効性ある保健事業の可能性  〜職域保険者の事例に基づいて〜」という演題でお願いいたします。  古井参考人  古井でございます。よろしくお願いいたします。ページをめくっていただきまして、 右下2ページ目というところからごらんください。私のほうから職域の事例ということ で御報告いたします。まず1番目にいわゆるリスク者に対する個別の保健事業ということ で、いくつかの健保さんでやられていますが、この事例を紹介いたします。基本的に個 々のヘルスアップ等でやられているのとほぼ同じでございまして、6ヶ月間、専門職の 方が1対1で面接指導中心に指導するというものがございます。健診の結果から要指導 者をピックアップして、産業医の先生の同意のもと健保と民間の予防機関が連携をして というかたちになっております。  次の3ページ目ですが、実際にやれば意識変容とか行動変容とかが起こってくるわけ ですが、一応その1年前とやった後の検証の結果を見ても、自分の目標は達成された方 とされない方というふうに分けていますが、比較的やはり目標を達成した方は検査値も よくなっているという結果でございます。  次の4ページ目でございますが、仮にということで1年間だけなのですが、レセプト をくってみた結果がこの図になっています。この健保では要指導者が350人ぐらいおり まして、手を挙げてプログラムに参加した方97名に関しては、前年の医療費に比べて15 %増加しています。一方、実際に同じぐらいのリスクを持っている方でプログラムに参 加しなか、1年後31%増加しているということで、本当に1年だけなのですが、若干医 療費の上昇が抑えられたのかなというぐらいで、結論的に言うと、一次予防のプログラ ムだと、単年度では費用対効果はなかなか難しいというところでございます。  次の5ページ目ですが、実際にこの個別指導を考えたときに、やはり1次予防は長期 的には効果があると思うのですが、短期的に見たときに、アメリカのdisease  managementのようないわゆる3次予防の対象のような者でないと、なかなか即効性がな いのかなというのがありますが、今の下に書いてありますように、(1)の保健事業中で はなかなか3次予防というのは難しくて、今の(2)の診療報酬の中では生活習慣病管理指 導料というのがあって、これはある民間事業者が一部やられていますが、開業医の先生 を支援して保健指導をやったりとか、それから将来的に勝手に書いてありますが、予防 報酬的なものを介護保険のように分けてやるのか。その辺りの可能性をお書きしており ます。  次の6ページ目以降が、今度は被保険者全体で、職域で言うと被保険者本人と被扶養 者、いわゆる主婦の方とか家族の方ですが、すべての方に網を掛けて保健事業をやりた いということで、やられている健保さんもいくつかあります。上にあるように小さい字 ですが、健康チェック等を通して対象者をリスク別に層別化をして、その方々全員に健 康情報の提供をして、最後は動機づけ支援までを何とか効率的にやろうということで、 そういうことをやられているところがあります。  考え方としてはその下にあるように、リスク者だけではなくて、10,000人の被保険者 がいると大体9,000人は大きなリスクはない方ですので、その方を包括的に出して、そ れからリスクに応じてある程度情報提供をし、それから最低1回は健康チェックを主婦 の方にもやりたいと、それに健保だけではなくて、事業所と労組と一体的な取り組みと いう4点でございます。  次のページからがちょっと画面のイメージなのですが、実際に10,000人いたら、 10,000人の被保険者本人と家族の方にホームページみたいなものをつくってあげて、次 の8ページ目で本当に健保で調査を見てみると、恥ずかしいとか面倒くさいというの が、主婦の方が健診を受けていないいちばんの理由なので、最悪、健診センターに行か なくても、自宅で問診をやるのが最低必要ではないかという考え方があります。  次の9ページ目が問診健康チェックに基づいて健康アドバイスをして、さらに10ペー ジ目でその方の健康状態に合わせたような健康教育コンテンツをオーダーメイドである 程度配信をしていく。その次の11ページ目が血糖や血圧の高めの方に、それぞれの病気 の勉強をしていただこうというページ。次の12ページがよくある機能ですが、メールマ ガジンでヘルシーレシピのようにそれぞれに合ったメールマガジンを配信していく。次 の13ページ目がこれはPull型健康教育関連サイト。最後の14ページ目が動機づけという ことで、「あなたはこのまま行くと5年後にこういうリスクがありますよ」という、ち ょっと危機感をあおるようなことをやってはどうかという考え方でございます。15ペー ジ目のほうが、例えば健保とか産業医の先生方が使う場合には、例えば健保であると事 業所別に見ていますので、例えば東京本社とか何とか工場とか、実際に出してみると違 うので、どこを優先的にやっていくかとか、そういうデータに使おうというところでご ざいます。  続きまして、次の16ページ目が、今度は主に被扶養者の方になかなか健保が保健指導 をできていないということで、これはいくつかの健保さんの共同事業でやることを考え ていらっしゃいます。基本的にそこの下の図にあるように、人間ドックとか自治体健診 を受けている方と受けていない方がいるので、どっちにしても、健保の方でさっき言っ たような健康チェックの問診をやって、そこに上にあるようなインセンティブを与えよ うと。例えば健康チェックを受けてくれたら、運動が必要な人はフィットネスとか増進 施設の利用券を配ったり、あるいは健診助成費というのを今健保は結構やっています が、それを多くしたり少なくしたり、それからJR東海さんのように、例えばHBA1Cが 8.0以上だと6時以降の残業はできませんとか、そういうところでやると効果はあると いうのはこの間伺ったのですが、なかなかそこは実施されていないようです。その結果 に応じて右のように、Aさん、Bさん、Cさん向けに、ある程度オーダーメイドの情報 を提供していこうというような流れになっています。  最後に17ページ目以降が参考資料なのですが、今実際に健保の状況ということで資料 をお持ちしました。17ページは4,000人規模の健保さんなのですが、4,000人を名寄せを してベストテンを調べてみると、やはり透析はもちろん多いのですが、脳梗塞とか癌も ありますが、20〜30傑を見ると、数百万円以上でいわゆる生活習慣病がほっておかれて います。レセプトを見ると、この方々の中でも数年前は全く医療機関に係っていない場 合も多いというのがあります。  次の18ページ目が、最近健保さんに行くとこの指針を見せられるのですが、この指針 に基づいてほとんど予算計画をつくられています。右上にあるようにポイントは健康デ ータをちゃんと分析しようというのと、それから専門家をうまく使おうというのと、そ れから事業主と労働組合と一緒になってやろうという、その3点を彼らは上げていま す。  次の19ページ目は、昨年の厚生科研から引用させていただきましたが、考え方として 上にあるように、リスクの方に対しては手厚い(3)のサービス。それから一般の方、リ スクはそんなに高くない方には、全体的に効率的に教育とか啓発をやっていこうと。そ ういう考え方があります。  次の20ページ目は、この間の第1回の検討会の資料と非常に似ているのですが、永井 先生も言われている厚生労働科研事務局資料の中で、基本的な考えは左半分の「健康チ ェックをしっかりやって」、右半分の「事後指導につなげていこう」という資料でござ います。  次の21ページ目は、その考え方にもし基づいた場合に、健保で実際に予算というの が、右にありますが、大体年間1人当たり19,000円ということになっておりますが、こ れは配偶者の方と分けると半分になってしまうのですが、したがって1人10,000円くら いだったら、保健事業は何とかうまくできるのではないかということになっています。  最後の22、23ページ目ですが、実は今100健保さんぐらいが任意で研究会をつくられ て、保健事業の検討をやられているのですが、その基になったのが厚生労働科研の方で やらせていただいたもので、いわゆる学識だけではなくて、医療機関の先生とか医療団 体とか、あるいは健保の方々が集まってやったこの研究会が生活習慣病予防の動きに発 展しています。  最後の23ページ目は、その厚生科研の報告書が出るときに新聞発表されたものです が、やはり健保さんは最初保険者機能というと病院ミシュランをつくるのとか、ちょっ とそういう方向に行ってしまったので、そうじゃなくて、まずはかかりつけ医をもって 「賢い受診の仕方を教育」するとか、あるいはやはり健康づくりにもうちょっと注目し ましょうということで、少しずつ意識が啓発されたと思われます。ちょうどこの検討会 で9月に方向性が出ると伺いましたが、意識が高くなりつつある保険者さんへ健康づく り・予防の方向性を示すいい機会なのかなというふうにとらえられています。以上でご ざいます。  永井座長  ありがとうございました。次に尼崎市民局国保年金課健康支援推進担当の野口先生の お話です。「メタボリックシンドロームの概念を導入した健診・保健指導の実施につい て」よろしくお願いいたします。  野口参考人  それではよろしくお願いいたします。私は尼崎市の現在は国保年金課というところに いるのですけれども、昨年まで職員を対象にした健康管理をする、いわゆる職域保健の 分野におりました。職員が全体で5,000人を少し切れる、そんな対象に対しまして様々 な活動をやってきたわけなのですが、結果として最終的に現職死亡が非常に多かったの が死ななくなった。それから長期でお休みされていた方のうち、循環器疾患での長期の 療養がなくなった。このような結果に至ったのはどういうことが背景にあったのだろう というようなことを中心に、お話をさせていただきたいと思います。  資料の2枚目になりますが、今回の尼崎市職員健康管理戦略と題したのですけれど も、そのポイントは大きく3つあるかなと思います。まず対象集団の、健康課題を先に 明確化をしていったと。どこに向かって叩いていくのかというようなことを明確にしま した。そのためにレセプトデータをまず分析をしまして、早世予防であるとか障害予 防、早死にや障害にさせないためには、どういう健康課題に絞り込むのかということで 分析し、脳・心臓疾患に絞り込みました。その結果をもとに、健診の受診者に対してマ ルチプルリスクファクター症候群(メタボリックシンドローム)の考え方で予防の対策 を整理をしていったというのが1点目です。  2点目に集団全体を対象とした合理的・効率的な対策とありますが、対象に対し全体 的に広く風呂敷を広げて対策を打っていくのではなく、優先順位・緊急度に応じて対象 者をまず明確にし、どの人からまず叩いていかないといけないのかというような序列を しました。対象者の人数をそういうふうに優先順位の高い方から把握をして、効率的な 支援を実施をしていきましたので、業務量の量的な把握やマンパワー計算もしやすく、 効率的に計画的に実施することができました。  それから最後にこの過程の中で特に力を入れたのが、いわゆる上から何かを指示され る指導ではなく、自ら気付いていただき、職員自らが生活を変えるような支援をしてい った。そのためにエビデンスに基づいた体の状態の理解について、自分の体のイメージ が湧くように支援をするというようなことに意識を置きました。大きくはそこの※印が 2つあるところなのですけれども、その中で「自分の体のイメージが湧くツール」とし て健診を拡充したというところが、うちの特徴かもしれません。  ということで、先に4ページ目を見てください。これは尼崎市は職員の健康保険組合 を持っておりましたので、レセプトデータからどんな健康実態にあるかというようなも のをまとめたものなのですが、心筋梗塞・脳梗塞に至った人たちが非常に多かったとい う実態。それからその背景にはどういう疾病を合併していたのかというようなことで、 やはりメタボリック代謝障害が一緒に合併されていたということがよくわかりました。  3ページ目に戻ってください。ではそういう人たちがどんなふうにどんな経過を経 て、脳梗塞や心筋梗塞に至ったのかというのがこれです。Aさん、Bさんそれぞれいち ばん最初は肥満から始まり代謝障害を起こし、様々な健診データに変化があった、最終 的に非常に長い20年ぐらいの経過をかけて、そういうような疾患に至っていったという ことが分かりました。この考え方を基にどこの段階でどう叩いていくのかというような ことを整理し、対策を打っていったわけです。  5ページ目です。健康状態の変化を模式したのが、その5ページ目の資料の上の段に あります。左から右のほうに向かって健康破綻をしていくという、そういうイメージな のですが、尼崎でまずやりましたのは、それぞれの段階の健康実態をまず明確にしまし た。いちばん健康破綻をしている状態は死亡ですから、その状態はどうなのか、その原 因は何なのか。長期に休んでいる状態は何が背景なのかということを見ました。そうい うことからも循環器疾患であるということが見えてきたのですが、さらにはレセプトを 分析をしていきました。  6ページ目をお願いします。そこにレセプト分析をした結果が書いてありますが、特 に高額につながっている傷病名を見てみたところ、やはり循環器疾患に非常に高いお金 がかかっている。それから高額でしかも継続している疾病名として人工透析がありまし た。こういうようなものを何とか予防していきたい。それから人工透析の背景として糖 尿病というのが非常に課題だとされているわけなのですが、糖尿病の初診年齢を見ると 40歳代が最も多くそういう状態になる前に、先ほどの経過表にもありましたとおり、も っと早い段階から有所見になっていると考えられる。いちばん下に治療費の経過を書い ておきましたけれども、そういうようなお金が積み重なっていくわけなので、もっと早 い段階で、というようなことが分かりました。  こういうようなことから循環器疾患にさらにターゲットを絞ろうということで、7ペ ージ目。治療には至っていないものの健康実態を見ていきましょうということになりま した。  そこで8ページ目です。では循環器疾患をターゲットにしていくのだけれども、どの 人からやっていくのかというときに、健診データを分析していったわけなのですが、真 ん中にありますマルチプルリスクファクター症候群というエビデンスに基づきまして、 血管変化が進んでいる可能性の高い人を抽出しようということで、独自の分析方法を考 え、有所見のたくさん重なっている人たちの序列をしました。そうしますと、上から順 番に倒れていっていたのですが、第3位の人はすでに現職死亡しているという、やはり エビデンスに基づいて対策を打っていくというのは非常にこういう現実になっているの だということが分かったのですが、そこで優先順位の明確化をするということの重要性 が明らかになりました。まずこれが1つ目の尼崎での大きなやり方の特徴です。  その次に今度は個人の序列化をするとともに、集団全体の序列化、対策の序列化もい たしました。左から右に向かって健康破綻が進んでいっている。その集団の中でもどう いう状態にあるのかを見まして、いちばん右に近いところは、緊急度の高い集団ですか ら、個別でていねいに。あるいはもっと左のまだまだ余裕のある段階につきましては、 研修会等を織り交ぜながら、全体で自分の体を見るという意識を高めていただきまし た。こういうような大きく2つの観点から集団を分析し、具体的な対策というのがその 次のページになります。  10ページ目ですが、大きく「予防ができる体制づくり」ということで2つ。まず1つ 目は、自分自身の客観的な状態を、職員自身が把握するツールの整備ということで、健 診を整備していきました。定期健康診断としいうやり方と、それに加えて2次健康診断 というものを実施をしました。内容も拡充をしていきました。2つ目に、その健診結果 を基に研修会・個別健康相談をやっていったということになります。  健診の内容の充実ということが次のシートにありますが、少し間違っておりまして、 労働安全衛生法に基づく39歳未満のところは、その隣の35〜40歳以上のところの項目に 入りますので、御訂正いただければと思います。尼崎の健診内容はいちばん右の方なの ですが、特に血管変化の進行、循環器疾患に対する予防をターゲットにしておりました ので、血管変化の進行に焦点を当てて、対象者をより明確にできる項目を選んだこと。 それから職員みずからが自分の健康段階を確認できる、そういうデータが得られる組み 合わせということで、いちばん左端の縦軸に健診項目の予防的な視点という、このデー タから何が分かるのかというようなことを一緒に併せて職員にもお話ししましたし、デ ータの健診内容を充実させていきました。  その次のページですが、個別の健康相談や研修会で特に注意をしていった視点です。 大きく研修会・個別相談の内容としまして、従来一般的によく言われている 保健指導 の内容というのが左側ではないかと思いますが、その状態に対して何か指示をする。知 識や指示やあるいは病気の結果と確率というものの因果関係だけの説明では、なかなか 一人一人が自分の体の状態が理解できないというようなことがあり、行動変容には至ら ないということを経験していましたので、特に今回特に気を付けたのは、自分の問題と して気付いていただくための支援として、※印が上と下2つにありますが、まず自分の 将来の見通しがもてる、今どの段階にいるのかという事を知り、見通しが持てること と、それから下の※印で自分の血管や血液の状態がイメージできていること。具体的に 頭に映像が浮かぶような、そういうようなお話をするということに注意をしました。で すので、お話の中ではなるほどとかへえーというような感動を伴った、そういう感情が 動いた言葉が出てきましたが、例えば血圧にしても、「160以上になると高いのだよ」 という言い方ではなく、「自分の血圧に13.6を掛けると水圧に変わるのだ。そうすると 160の血圧だと2mを超えますから、それだけの圧力が血管の直径8mmに当たると、ど んな感じがするかな」というようなお話。そのようなこともお話をしていきました。  その次の13ページあるいは14ページは、職員に対します研修会なんかで仕事と体の関 係について考えていただくための研修資料で、13ページには特にそれぞれの部局の健康 の状態ですね。いちばん左側に年齢の序列が書いてありますので、年齢が高い方の比率 が多い部局が当然に高血圧や高血糖になるだろうと。ところが年齢が若い集団部局が、 高血圧や高血糖の順位が上がっている。これはどういうふうに関係があるのかなという ふうなことを一緒に読み取って学習をしまして、非常に楽しかったのです。  それから14ページの方は、みんなによく食べる食事の内容、料理の組み合わせを聞き ました。大体横軸が1食当たりに入っている料理の油が、そこに70とか書いているので すが、黒印がAさん、Bさんが組み合わせるものです。それを足しますと、1日に体の 中で処理できる油の量をはるかに超えるということをイメージしてもらうための資料で した。  こういうふうなことをずっと続けました結果、15ページ目です。結果といたしまして は、現職死亡が減っております。対策を取り組む前と後と比べましたところ、特に心疾 患によります現職死亡は出なくなりました。それから休職者ですが、循環器によります 休職者数も3分の1に減っております。それから長期の休みに入りますと、健康保険組 合等から傷病手当金というのが出ますが、これも減額をしております。それに合わせて 長期の休みになりますとアルバイトを入れないといけませんので、その賃金も減ってお ります。  その次の16ページは、今度は医療費から見た結果なのですけれども、これは本当に短 期間の評価ですので、これがすべてではないのですけれども、対策を始める前と対策を 始めた翌年との医療費の比較をしましたところ、そこにありますとおり医療費が下がっ ている。一人当たり1,700円ほど下がっています。そういうような結果が出ましたので、 これから中長期的に見ていくと、さらなる医療費の適正化が見込まれるという結果が出 ました。死亡と医療費だけでなく、その後ろに付いています資料をまた後で御清覧いた だきたいと思いますが、一人一人の職員がこんなふうにデータが変わり、意識が変わっ たのだよという事例を3事例ほど載せておりますので、参考までに御清覧ください。あ りがとうございました。  永井座長  ありがとうございました。次に岡山委員から「個別健康支援プログラムの長期効果と 医療費への影響」−岩手県矢巾町の経験から−ということでございます。  岡山委員  それでは説明させていただきます。2ページ目をごらんください。平成14年度から国 民健康保険が健康支援プログラムの開発とそれからその実施の評価を健康指標、従来は これが多かったのですが、それプラス医療費から評価しようというモデル事業が開始さ れました。現在、全国で33市町村が独自のプログラムを、特にこれは外部の評価者とと もに開発評価しているというのが特徴です。外部の評価者というのは、各地域の医学部 の公衆衛生の教室などが、一緒に評価また開発をするというようなかたちで展開をして おります。目的としては全国に普及できる個別健康支援プログラムを開発するのだとい うことで、スタートいたしました。  岩手県矢巾町では私が岩手医大に在職中に一緒に関わりましたが、14年度からこの取 り組みを行なっております。老人保健事業で個別健康教育というのを私どもは普及させ るように取り組んでおりましたが、それを骨格として、集団指導及びグループワークを 組み合わせるというかたちで実施をしました。事業ですので、研究者が直接指導すると か、関わるというのではなくて、この岩手県矢巾町のスタッフが、創意工夫を重ねてや ったという意味で、保健事業の効果というかたちが特徴だというふうに考えておりま す。内容ですが、6ヶ月の重点支援に、3ヶ月ごとの個別面接を加えてフォローすると いうようなかたちで、長期に効果があるような構成を試みました。  特徴ですが、生活習慣を系統的にアセスメントするというのが、まず1つの特徴で す。つまり生活習慣、特に食習慣というのは非常に把握が難しいものですから、系統的 にアセスメントすることで、支援者の技術を補うことができるということになります し、またそういったアセスメント結果に基づくことで、対象者の意欲を引き出しやす い、そういったアドバイスができるということです。またもう1つの特徴として、特別 の施設を必要としない。つまり例えば運動施設が要るとか、そういったものではなく て、ごく普通の市町村で実施可能なプログラムということで作成をいたしました。  重点支援の流れというので、4ページ目にまとめております。食生活のアセスメン ト、さらにそれに基づく食品群、それから栄養素の分析といったものを行なって、それ に対して個人の指導項目を決定していくというようなかたちになっております。当然、 この中で指導者の思いだけではなくて、対象者の希望とかも絡めながら、1ヶ月に1回 関わっていくということで、6ヶ月のプログラムを構成いたしました。その中で例えば 運動教室とか栄養教室といったものも開催しております。  これの長期効果ということで、2年間の指導効果についてまとめたものが5ページ目 になります。これは高血圧の例ですが、重点支援群、通常群に分けまして、重点支援群 のほうがやや高めなのですが、ほぼ同じような血圧からスタートしまして、6ヶ月目、 12ヶ月目、18ヶ月目、24ヶ月目ということで、2年間のフォローをいたしております。 6ヶ月目に約7〜8mmHg低下した血圧が、18ヶ月目まで徐々に低下傾向を示し、24ヶ月 目にやや上昇しておりますが、それでも初回に比べますと、かなり低下を維持しており ます。通常群で見ますと、通常群は半年に1回ずつ健診とそれに基づく個別アドバイス のようなかたちでしておりますが、ほとんど血圧には変化が見られませんでした。その 変化の要因としては、これは重点支援群でしか調べておりませんが、塩分排泄量が2g ぐらい低下しておりますし、またBMIもかなり低下しております。  高脂血症が次のところになっております。高脂血症は重点支援群で通常群よりも20mg ほど高く、対象法の設定があまり十分ではありませんが、傾向を見ますと、総コレステ ロールは終了時にはほぼ対象群と同じコレステロールの値まで停滞して折ります。約20 mgぐらい低下しております。通常群では一旦下がったもののまた上昇し、開始時と5mg 程度の差に留まっている。このときにBMIが24.3〜23.4と、体重がうまく減少に導いて いると。こういたことが示されております。  従来から高脂血症、高血圧等について、適切な保健指導とそれから支援を継続するこ とで、効果が継続するということは、文献的にははっきりしていたのですが、保健事業 でこのような効果があるかどうかということについては、2年間にわたる長期効果が示 された初めての例ではないかなというふうに思っております。  医療費の影響についてまとめたものが7ページ目です。医療費は重点支援群の方が多 かったのですが、通常支援群よりかなり多かったものですから、比較が非常に難しいと いうことで、年齢別に比較をしてみました。外来件数ですが、月当たりの外来件数が例 えば63歳未満ですと、重点支援群では実際に減少が見られております。これは平成12 年、13年ということで、実施前の2年間、実施した年は除きまして、15、16の2年間と いうことで、2年間ずつの平均を示しておりますが、外来件数は減少、通常群では2.3 日の増加ということで、これは優位さが見られております。  また外来医療費プラス薬剤医療費を加えた外来総医療費では、重点支援群では実数と して、点数として1,800点の減少が見られております。通常群では4,000点の増加が見ら れておりまして、この差が6,000点ということで、年間6万円程度の差が見られました。 ただ症例数が少ないですので、優位性という面では境界域でした。  ただ総医療費につきましては、やはりいろいろな要因がかかりますので、特にはっき りした傾向は見られませんでした。63歳以上では、総医療費の低下というのは難しいの ですが、やはり重点支援群と通常支援群では、4,400点の差が見られております。これ を重点支援群、通常支援群で年齢構成が違いますので、年齢調査した結果では、年間 5,000点程度の節約が、外来医療費については節約が見られたということです。総医療 費については確かに差は見られますが、非常に動揺が大きいので考慮が必要かと思いま す。  8ページ目に医療費への影響をまとめました。要因分析ということこの医療費はどの ようなものが影響するかということで、ジュウカイ(?)分析を用いた結果です。ちょ っとややこしいケースですが、実施前費用というのは、平成12、13年にかかった費用で す。偶然の要素がかなり利いてきますので、外来医療費が多かった人は減るという可能 性が高いということが示されております。年齢はすべての医療費で増加要因になってい る。つまり歳が高い人ほど医療費が増えやすいということになります。投薬の有無とい うのは、生活習慣病の高血圧、高脂血症、糖尿病のいずれかの服薬中の方ですが、そう いったことを持っている方は増えやすいという、こういったデータになっております。  その次が支援の有無ということで、重点支援群だったのか、通常群だったのかという のを条件に入れて計算しましたところ、外来医療費、つまりこれはお医者さんにかかっ ている費用ですが、これはほとんど寄与しなかった。薬剤医療費は0.055ですからボー ダーラインですが、やや関連が見られた。つまり支援をすることによって、薬剤医療費 がやや減少するというようなかたちになりました。また外来総医療費では優位に支援す ることによって、総医療費が抑制されるというような、そういったデータになってまい りました。  このように矢巾町のデータは150人ほどのデータなのですが、出ましたところ、長期 効果それからは医療費にもかなり強い影響がある。その特徴としては、やはり治療中の 方は希望に応じて参加していただいたというのが大きかったのではないかなというふう に考えております。今後、平成17年度から国保ヘルスアップモデル事業は、ヘルスアッ プ事業という名前になりまして、全国での展開が今予定されておりますが、保険者とし て市町村が保健事業を実施するということで、保険者特性を活かした事業というのが非 常に期待されます。  今まで健康づくり担当者が入手しようとしてもできなかった医療費指標といものが、 保険者機能という点から見ると極めて重要であるということで、こういったものを保健 事業の評価に直結できるという点があるかと思います。また受診行動が把握できる。こ れは受診漏れ、中断等も重要な情報になるというふうに考えられますが、こういったこ とも活かした保険者としての事業の展開が考えられます。そして個別健康支援プログラ ムによって、ハイリスク者へ確実に支援をしていくということが予測されております。  今後の課題ですが、こういったことを行なうには優れた人材が必要です。トレーニン グを受けた、そして経験を積んだそういった保健指導、もしくはこういった支援のでき る人材を確保していくことが必要になります。また予算も当然確保する必要があるかと 思います。ただこういったプログラムは2ヶ月に1回とはいえ、1時間程度拘束すると いうことから言いますと、時間的余裕の少ない人への支援というのは、別枠で設ける必 要があるかもしれません。また、こういったプログラムへの参加の意欲のあまりない人 に対する支援というのも、当然必要になるかと思っております。またこういったものを 健康診断とどのように連携するかというのも、大きな課題になっております。こういっ たものを行うにあたって、個々の市町村、小規模な自治体等では、精度管理をする、そ れから企画をするということで、大変限度があるというふうに考えております。そうい う意味では広域でのプログラムの連携、医療費の集計といったところに、保健所や国保 連合会などの調整機能を求めるといったことが必要ではないかというふうに考えており ます。以上でございます。  永井座長  ありがとうございました。では最後に太田委員から「生活習慣病の発症予防と保健指 導効果に関する総説」をお願いいたします。  太田委員  私は健康・栄養研究所の健康増進部に部長としておりまして、そのときにいろいろな 仕事を当時の健康増進栄養課から行いたいと言われまして、そのデータを御紹介してい きます。3ページのいちばん上に表の3というのがございます。これは10,000人ぐらい の職域で、確か5年ぐらい健診データをずっとフォローさせてもらったときに、高血 圧、高脂血症、糖尿病という、私たちが当時考えていた特に健康増進の効果がよくある 疾病に対して、発症が予防できるというデータです。高血圧の継続しているグループと いうのは真ん中にありますが、0.7前後の数字になっていますし、それから高脂血症は 食事のことをこれは見ていないので、あまり数字は表われてなく、他のデータでは出て います。糖尿病も0.7前後で、これも実は大阪ガスと同じようなデータだなというふう に私自身は思っています。  次に4ページをごらんください。表の7がいちばん上にありまして、今度は軽症のこ の生活習慣病に対して2ヶ月の運動指導をするというプログラムを、これはフィットネ スクラブとドクターとの関係でやらせていただいたのですけれども、360人ぐらいのデ ータだったと思います。上の方に肥満とか血圧とかコレステロールとかフルクトサミン になりますが、ベースラインといいますか、例えば血圧を見ていただきましても、収縮 期の運動前が153が、2ヶ月の運動後で139になって、1年後の数値が出ています。  下から2段目に、1年毎運動前の数字の差が血圧だと15とか14とか、HDLで4.9とか、 あるいはコレステロールだと9.6とか、フルクトサミンだと13.0とかこういうふうに、 この段階ではボーダーラインとか投薬をしていない人について集めてやったのですけれ ども、こういうデータが出ています。ですからある程度血圧が高いか、ボーダーライン あるいは診断基準を超える人でも、こういう運動と食事で、この場合は食事もやりまし たけれども、それで2ヶ月でよくなって、なおかつ1年後まで効果が継続しているデー タだと思います。  次に11ページの図の1というのがございますけれども、私は元健診センターにいまし て、これは女性の特集だったのですが、女性のデータだけ20,000人ぐらいのデータなの ですけれども、断面的に運動の習慣があるなしで、血糖とか血圧とか脂質等の値を断面 で見ると、わずかなのですけれども、はっきりそれぞれ運動している人の方がデータが いいという結果です。  次の12ページの図の2ですけれども、これは同じフィールドで5,000人ぐらいだと思 うのですけれども、変化、つまり運動習慣を獲得したりなくなった人で、検査値がどう いうふうに変わるのかというのを見たのですが、一口で言うと、運動習慣がなくなると 結果が悪くなって、運動習慣がよくなると結果も改善したり、改善に伴ってあまり悪化 しないという結果が出ています。  次に14ページの図の5を見ていただきたい。これは食事について少しやってみようと 思って断面のデータなのですが、同じように肥満、血圧、脂質、血糖について、食習慣 と検査値とのクロスの結果ですが、一言で生活習慣のいい人は検査値もいいというだけ の話です。  15ページは、当時4ヶ月ぐらいの減量教室を300人近い人にやっていました。そのデ ータですが、下にあるのは歩数の多さでカッティングを3段階にしてありまして、右側 が摂取エネルギー量で3段階にしてありますが、ちなみにいちばん手前のところが、動 かなくてなおかつ食事もそこそこ食べている人だと、4ヶ月で3kg減る。いちばんよく やっている人たちは5.2kg減るという数字なのですが、運動量にとてもきれいに依存し ていることと、食事の量に依存して減量の効果が出ているという結果が出ています。  23ページの右の表-11ですけれども、これは確か当時、健康運動指導士会の人と、運 動を始めた友人500人と運動を継続している友人500人の「なぜ」という理由を聞いたも のですけれども、この表の11は始めた動機なのですが、これは一人ずつばらばらで、ま た後でごらんください。非常にばらばらだなという感じがします。ただこういうものも また行動変容とか動機づけでは使えるのではないかなと思っています。  その次の25ページの表-18。継続理由というところ。これはそこそこ意味があるので はないかなと思うのですが、%の多いところを見ると、友人とのつきあい、健康になっ た、あるいは施設等が近くにあった、運動が好きとか、ストレス対策とか、技術の向上 とか、充実感とか老化防止とか、環境条件とか交友条件以外に、やはり運動そのものの 快感みたいなものとかストレス対策みたいなものと、それからもう少し理性的というの かよくわかりませんが、効果がはっきりわかってきたという、そういう確信みたいな部 分が入っているのではないかなというふうに思っています。  32ページの図3ですが、1998年に出る前に私自身が健康状態の推移と生活習慣という ものを、自分の頭の中で書いたものですけれども、実は今回のメタボリックシンドロー ムの、健康から発症までの流れと非常によく似ているなと思ったので、実は私もこんな ことを考えていましたよというのを、ここで御紹介しようと思って持ってまいりまし た。  次に34ページの表1で、これはそのためのインフラの整備から、どういうふうにいろ いろな評価をしていくのだろうかを考えたときに、いちばん下が多分インフラ的な話 で、真ん中付近から参加とかそういう話で、上の方に行くと健康度であったり、もっと 上はモラルだったりして、職域の事例なのですが、こういうストラテジーというのはよ く言われています。これをどういうふうに地域のものに変えていくのかというのはまた あると思います。こういう考え方というのは、極めて真っ当な考え方ではないかなと思 っています。  次に38ページの左側に図-2というのがありますが、これはさっき見た10,000人以上 の健保組合で、91年ぐらいから体力測定をやって、それで体力を皆さんに自覚してもら って、運動してくださいというプログラムを、これは結構安い金額で外注したようです が、それをやって1994ぐらいまでを見ていきますと、1人当たりの医療費の偏差値は、 1というのは全健保と年齢調整した数字なので、結構信頼できる数字だと思います。ず いぶん良くなってきて、5%以上よくなっている数字になっています。  中身を見ていくと、2段目の入院の金額というところがガクッと下がって、3段目の 外来は変わらなくて、4段目の入院日数も減っているというような感じで、外来ベース ではまだ変わらないのですが、入院ベースが変わっていくという意味では、なかなかお もしろいなと思っています。右の図-1は一般的には職域ですと、傷病手当とかあるい は休業日数から改善しています。それが91年から始めて94年からダダッと減ってきた数 値が出ていまして、これはきれいなデータだなと思っています。  次に39ページで、実際にその中身はどうなっているのだろうということでちょっと見 ようと思いまして、ここに図が3つありますけれども、これはそれぞれ脂質と血糖と血 圧の異常者の出現率で、異常率を年代別と運動習慣のありなしと、それから時系列的に 見た絵なのですが、一言でいうと運動習慣のある人は同じない人に比べて、同じ世代で も医療費というのが少ないということと、それから伸びも少なそうだと。つまり時系列 で見ても、右に行くほどあまり上がっていない傾向があって、こういうデータから医療 費的な効果も十分あるだろうなということで、さっきの総医療費の中身の分で、それが 見えてきたのではないかなと思っています。  次の41ページですが、左側の図-2ですけれども、今度は地域でして、右の方の図-1 を見ていただくともっとわかりますが、出張人間ドックというのをこの村は始めまし て、何かかなり医療費が高かったらしくて、それから始めたらしいのですが、医療費で はなくて死亡率でしたか、ちょっと覚えていないのですが、61年とか平成元年ぐらいか ら、ずっとかなり高い70%近い受診率をキープし始めたのですね。ここからシステムを 変えたそうなのですが、これも外注でやったのだそうです。そのときに医療費はどう変 わったのかというのを、左の方の老人医療費の推移で、このY県という県と、それから S村という村の数字で見ていますけれども、63年、平成元年ぐらいから、とてもきれい な感じで下がってきています。サンプルサイズはそんなに大きくないので、多少ガタつ きますけれども、入院医療費が真ん中、いちばん下が外来ですけれども、ともにかなり 順調に下がってきていますので、そういう意味でもこういう健診というものの老人医療 費適正化効果というのは、あるのではないかなと思っております。  実はこれによく似た市町村はたくさんありまして、他の違った地域のデータもありま すし、全国の統計的なデータも国保中央会等でつくっています。これらのデータから、 少なくとも今回挙げましたいくつかの生活習慣病に対して、メタボリックシンドローム の中に入っている生活習慣病は、生活習慣の改善で予防できたり改善できたりするとい うことが1つ挙げられることと、もう1つは地域と職域のレベルでヨウシュウ(?)に も、いい影響があるのじゃないかということが示されました。以上です。  永井座長  ありがとうございました。非常に盛りだくさんなお話を5名の先生方からお聞きしま した。それでは残りの時間はわずかですけれども、質問あるいは全体的なディスカッシ ョン、御意見等をよろしくお願いいたします。  藤井室長  津下先生から本日こういう資料もいただきましたので、拝聴させていただきたいと思 います。それではよろしくお願いいたします。  津下委員  質問とコメントということで3点なのですけれども、1つは水嶋先生のおっしゃった ハイリスク・アプローチとポピュレーション・アプローチということで、両方の視点が 必要だよというお話でした。先ほど野口先生の発表の中で、ハイリスクに対して重点的 なアプローチをかけたということなのですが、情報が非常にうまく行き渡る集団です と、ハイリスク・アプローチをかけて職場に成功事例ができるということによって、ポ ピュレーション・アプローチとして非常に大きな効果を及ぼすのではないのかなという ことです。尼崎では重点的に対象者を絞り込んで、ハイリスク・アプローチをかけたこ とによって、職場全体の意識改革につながったのではないのかなと思いますけれど、そ のあたりはどうでしょうか。それからタバコについてですが、ある職域で心血管イベン トが起こった事例を精査していますと、メタボリックシンドロームと、タバコ、両者の 合併した方が非常にリスクが高いということがわかりまして、このタバコ対策は何かさ れたのかどうなのかということをお尋ねしたいと思います。  それからお手元にお配りしたこの簡易チェックですが、この前、事務局の方から簡単 な健康チェックという話題がありましたので、私どものあいち健康プラザでは運動施設 がございまして、運動施設に来られる方の事前健診チェックということで、この簡易健 康チェックを受けていただいております。運動するつもりで来られた方が、問診をし て、生活習慣を振り返る機会が与えられるということで、健診という大げさなものでは なくても、日頃の生活習慣を振り返って、単に運動をしようと思って来られる方も多い のですけれども、それ以外の生活習慣に目を向けられるという意味では、ポピュレーシ ョン・アプローチの1つの方法出はないかと思います。10〜15分で答えていただいて、 そして問題のあるところや気になるところを、医療機関に行くほどでもないけれども健 康について気にしていることを気軽に聞ける場があるということが、1つのやり方では ないのかなと思いまして、御紹介させていただきました。  永井座長  まず御質問に対して、野口先生、お願いします。  野口参考人  ハイリスク・アプローチがポピュレーション・アプローチに繋がったのではないかと いうことですが、実際に尼崎の職員がみんなやせていくのですね。メタボリックにター ゲットを絞ってやっていますので、その根っこは内臓脂肪であるということで、そのこ とでみんなやせていくと、やっぱり気になるということは、確実にポピュレーション・ アプローチになっていったのではないかと。だから非常にハイリスク者に対して、そう いう肥満を中心にしたお話をさせていただいています。それと仲間が年間10〜15名死ん でいっていたのが死ななくなっていますので、そういう意味でもこの健康管理というの が確実なものであるという、そういう意識づけにはなっていっているなという印象を持 っています。  それからタバコの件なのですが、尼崎市の職員につきましては、メタボリックの課題 があまりに大きいということで、なかなかタバコのところまで行けていないのが実情で す。ただ一般的なタバコの禁煙支援というのはもちろんやっているのですけれども、そ れとメタボリックの指標と併せてアプローチをするというところまでは行っておりませ ん。以上です。  水嶋委員  関連してよろしいでしょうか。尼崎のお話は野口さんから伺って、非常にすばらしい 成功例と思います。津下先生の御指摘の点ですけれども、職域とかあるいは学校保健の ように、分母が把握可能で全数把握可能なところでは、ハイリスクのふるい分けをする スクリーニングを主体とした全数への影響、波及効果はできるというのは事実だと思い ます。それで「あの人がうまくいって減量して、ああよかったな。それじゃ俺も」とい う効果が出ます。ですが地域の場合は少し実情が違いますので、健診を受ける前の働き かけが自分の生活習慣、先ほど野口さんは自分のことをイメージできるとおっしゃっ て、なるほどと思ったのですけれども、いわゆるキャンペーン的に歩きましょうだけで はなく、「では自分はどのくらい歩いたらどうなのだろう」と、そのところまでイメー ジができた波及効果があると、すばらしいのかなというふうに思いました。  岡山委員  今の地域保健の難しさというのは、非常に今大変重要な問題ではないかなというふう に思っています。といいますのは老人保健事業でやっているときには、他の保健事業で サービスを受けられない方という定義があると。にもかかわらず町としては、住民全体 の健康づくりをしなければいけない。そうすると対象となる集団が、実は二重構造にな っているというのが、今の地域の健康づくりの大きな問題ではないかなというふうに思 います。やはりそこのところを整理していかないと、ポピュレーション・アプローチを するにしても、情報すら得られない。つまり自治体レベルでやろうとすると、情報すら 得られないという現状がありますので、その辺の枠組みを変えていくことで、初めてポ ピュレーション・アプローチとハイリスク・アプローチをくっつけることができる。今 残念ながら対象者を選ぶときに、住民の何%からスクリーニングできているかというこ とはわからなくて、受診者の何%しかできていないという基準しかないという意味で、 そこら辺はやっぱり今後1つのキーワードとして持っていく必要があるのではないかな と思いました。  水嶋委員  関連してよろしいですか。岡山先生の資料の中にもありますように、保険者ごとに括 る場合には、何とか保険加入者という分母を規定すれば、医療にちゃんと行っている・ 行っていない、あるいは健診に行っている・行っていないは、今のところ多分工夫しな いと難しいのかもしれませんけれども、分母をある意味で規定できるような枠組みで、 何割の人が健診を受けていて、何割の人は指導を受けているかと、そういった指標を追 いかけるモニタリングのシステムがないと、やはり新しい取り組みも評価もできにくい かと思いますので、その辺も併せて検討が必要かと思います。  永井座長  私は野口さんにちょっとお聞きしたいのですが、医療費が大分抑制されてきているの ですけれども、これは健康になったから医療費が抑制されたのか、あるいは医療機関で 健診にかわるような診断指導を受けなくて済むようになったからなのか。その辺を分析 されたことはおありでしょうか。  野口参考人  健診にかわる。  永井座長  要するに医療機関でちょっと具合が悪いというと、もう少し複雑な検査が行われるた めにどうしても医療費は膨らんでいきます。健診がしっかりしてくれば、その辺が少し 役割分担というのか、医療費の節約にもなるかという気がするのですけれど。  野口参考人  そのあたりの分析はできていないのですが、今永井先生の方からおっしゃってくださ ったことで、私どものところの二次健診というのが、75gのOGTTであるとか頚部エコー まで踏まえて、それはなぜかというと、スクリーニングするためではなくて、自分の首 の血管の状態がどうなっているのかとか、インスリンがどれぐらい出ているのかという ことを自分でイメージしてもらって、生活を選択してもらうためにやっているのです ね。そうなると当然、「悪いから病院に行く」ということではなく、それほどではな く、本当に緊急度が高い人はもちろん受診をされますが、そこから予防に一旦戻ってく るという、そのことは確かに医療費に影響しているのではないかなと思うのが1点と、 それから自分の見通しがわかって、自分なりにデータが読めるようになるので、単なる 数値的に要医療であるという結果が出たからといって、受診するのではなく、なぜこう なってきたのか、どこから変化してきたのかというようなことを、一人一人が考えられ るような、そういうような全体のムードにはなってきている。そのことは影響している のじゃないかなとは思っています。  永井座長  これからの医療機関の機能分担と、そういうことを考えていく上で、非常に重要なこ とではないかと思います。その他に何かございますか。  水嶋委員  野口さんに質問させていただくのですけれども、通常の職域の安衛法の健診項目に比 べますと、かなり濃厚にされていて、費用が結構かかるのではないかなという質問と、 あとは個人のイメージ化に向けて特にどの項目がインパクトがあったのか。この2点を お願いします。  野口参考人  今行政に対する市民の目が厳しい中で、職員に対して非常に手厚くさせていただいて いるのですが、その意味づけといたしましては、やはり職員が1人倒れるということの 損失を考えました。長期間お休みになってしまいますと、試算して3億4億というお金 が1年間で動いてしまうというようなことを考えましたので、逆に1人当たりしっかり と健診をして予防をしていただいて、お休みをしなければその3億が浮くわけですか ら、わずか数千万円で結構効果が高いのです。1人当たり10,000円までは行かないにし ても、10,000円ぐらいでやっているわけなのですが、積算すると職員数が多いですの で、非常に大きい額にはなるのですが、予防効果があるということで、組織内でも意思 統一をしています。  イメージ化という点では、すべての検査項目が尼崎の中では1つ1つの項目に対して 評価をするというやり方ではなくて、先ほども見通しを持ってということをお話ししま したが、データとデータとのつながりで、自分はどの段階に来ているのかというよう な、血管の中で何が起こっているのかということがイメージできるような、データを組 み合わせてお話しするということをやっていますので、一般の定期の項目でも十分イメ ージ化ができるということと加えて、より効果が高かったのが、やはり75gOGTTの結果 がヘモグロビンA1Cは5.5であるとか5.8だという結果しか見えないですよね。ところが 体の中で一生懸命5.5にしている裏方の状態が見えるのですね。インスリンをたくさん 出さないと5.5にならないのか、わずかでも5.5なのかというようなことが量的に見える ような、資料の出し方も工夫をしたのですけれども、そのことによりまして、この二次 健診を受けた対象者が、翌年70%が5.5未満の正常域に戻ったというような結果も出て いますので、OGTT等は非常に効果が高かったと思っています。  水嶋委員  経年的なデータの比較も踏まえて指導されたのですか。  野口参考人  そうですね。指導するときには経年表とそれから今の時点でメタボリックシンドロー ムの視点で、1次予防、2次予防、3次予防のどの段階まで個人が来ているかという2 つ合わせて指導しています。  永井座長  糖負荷テストでは30分のインスリンも測っていますか。  野口参考人  測っています。  永井座長  御存じだと思いますけれども、日本人はインスリンが出にくい人も多いのですね。早 期のインスリン分泌低下がかなりのリスクになりますし、診断的な価値も高いと思いま す。  藤井室長  野口先生からはかなりたくさんの資料をいただいたのですが、時間的にかなり絞らせ ていただきまして、当初お寄せいただいた資料の中で、尼崎市さんで1次健診、定期健 診と2次健診という健診の重層化をしていらっしゃるのですけれども、定期健診から二 次健診に向かう方の判断基準というのをよく見ると、ちょっと資料としてはカットされ ていらっしゃるので。  野口参考人  1次健診の中で尼崎の集団はとにかくメタボリックシンドロームですので、内臓脂肪 がある。尼崎の中で腹囲測定をもう始めています。腹囲で有所見だった、つまり男性で 85cm以上、女性で90cm以上の人たちをひとつスクリーニング基準にしていることと、そ れから腹囲が85cmあるいは90cmなくてもヘモグロビンAICが5.5以上あれば、2次健診に 行っていただいているというふうに見ています。一見それほど異常がなかった方でも腹 囲が有所見の方は、OGTTなんかやるとかなりの率で境界型という結果が出てきます。  中島室長  野口さんにちょっとお伺いしたいのですけれども、健診の充実によって自分の問題と してとらえ、それを事後指導に展開をしていく。その際に大切なのは、まさに一人一人 の生活実感なり自分の見通しを立てていくということで、いわゆるツールの開発という か、そういうところで大変工夫をされているということなのですが、そして現実にこの ように事後指導の効果が上がっているということなのですが、これだけ効果的な事後指 導をしていくために、どの程度の密度なり、どの程度の体制を整えてやっておられるの か。実際、職員の方々は5,000人ぐらいでしたか。そういう人に対してどれぐらいの頻 度でハイリスク者に対して面接みたいなものをやり、そして何人の保健師さんで対応し ておられるのかというところを、ちょっとお伺いできればと思います。  野口参考人  私どものところでは、年1回の定期健康診断の後、先ほど申し上げましたような独自 の基準でメタボリックシンドロームに着目した順位づけをしまして、先ほどの資料の集 団全体のランクづけという、これは対象者の明確化ということで9ページ目にもありま すが、こういうふうにどの段階でどれぐらいの人たちがいて、どの順番に緊急度が高い かということをまず明確にさせまして、特にいちばん右の健康破綻に近寄っている集団 を、定期健康診断のあと個別相談をしていきます。あるいは二次検査1次健診の後と二 次健診の後の2回ぐらいです。それも二次健診の後に1回だけという方もあります。と ころがその翌年には70%の方が改善したという状況です。保健師ですが、この業務に携 わっている保健師は3名。主には2名が中心になってやっているという、そういう状況 です。  瀬上参事官  資料の15ページです。御説明の中でかかっている経費が2億3億という、これは直接 費用と間接費用全部を入れての話だと思いますが、この結果のところには、傷病手当金 が770万円、そして次のページで、医療費が1,000万円、そしてさらに高額療養費が500 万円ということで、大体合わせると直接軽減したのが2,300万。それにプラスで15ペー ジのいちばん下にあります、お休みなさることによって大体人件費が6,000万円かかる。 直接削減効果よりも、こういった間接費用がものすごく安くなっているということが1 つ見てとれるかなと。あとプラス、休んでいても給料は払わなければいけないというよ うなことを加えていくと、こういうような数字になるのかなと。そういうことでよろし いのですか。  野口参考人  はい。ありがとうございました。そうです。長期の療養に入られる方の絶対数が減っ ていますので、その分は相当な額が落ちています。  永井座長  いかがでしょうか。これは職域健診ですので、こういうことを地域でできるかという のは、またいろいろなことを考えないといけないですね。何かアイデアはおありでしょ うか。  野口参考人  尼崎市の職員に対するこういうことで成果が出ましたので、この4月からは私が国保 の方に行きまして、今医療費分析というのをずっとやっています。先ほどの全体像の課 題の明確化という9ページのところを見ていただきましたが、これを5,000人の職域の 集団でやるのではなく地域全体を1つの集団ととらえ、1次予防段階、2次予防段階、 3次予防段階の人たちが、それぞれどれぐらいの割合でいるのかと。そしてどこのとこ ろにターゲットを絞って、どの順番に健康指導をしていくのかというようなことを、そ ういう地域というマスでできないかそういうような取り組みを尼崎では始めておりま す。そのために国保という保険者だけではなく、健保であるとか、政管健保であるとか という保険者と一緒に、何かこういうことを考えられないかというような動きを始めて おります。 3.その他  永井座長  いかがでしょうか。議論が尽きないのですが、時間も押しておりますので、よろしけ ればきょうの御発表、御討論を事務局のほうでとりまとめをさせていただきます。中間 とりまとめということで、また案を次回提出させていただくという段取りにしたいと思 います。事務局の方から何かございますでしょうか。  藤井室長  貴重な皆様方のお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。次回の日 程をここで調整させていただきたいと思うのですが、次回は事前に調整させていただき まして、8月26日10時〜12時とさせていただければと思ってございます。先ほど永井座 長からも御指示ございましたように、前回の御議論、そしてまた今回のお話、御議論も 踏まえまして、26日までの間、委員の先生方とやり取りをさせていただきながら、次回 へ向けて中間とりまとめの調整をさせていただければというふうに考えておりますの で、どうぞよろしくお願いいたします。  永井座長  ここだけではなかなか時間も足りませんので、また各委員の方には事務局からお伺い させていただきます。中間とりまとめの調整にいろいろ御協力を御願いしたいと思いま す。その他何か事務局からございますでしょうか。  藤井室長  どうもありがとうございました。それでは今座長から御指示いただきましたように、 進めさせていただきます。事務局からは以上でございます。 4.閉会  永井座長  それではこれで2回目の検討会を終わらせていただきます。どうもありがとうござい ました。                                     <了>