05/07/29 第8回 医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する 検討会 議事録 第8回医療安全の確保に向けた保健師・助産師・看護師法等の在り方に関する検討会 日時 平成17年7月29日(金) 17:00〜 場所 厚生労働省講堂 ○赤熊補佐 ただいまから第8回医療安全の確保に向けた、保健師・助産師・看護師法等 の在り方に関する検討会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多忙中 のところ、当検討会にご出席をいただき、まことにありがとうございます。本日は遠藤 委員、小島委員、坂本委員、谷野委員から欠席のご連絡を受けております。また、小島 委員及び坂本委員より、本日ご欠席されるに当たり、代理出席の要請がございました。 座長にご相談したところ、よろしいのではないかということですが、座長、いかがでし ょうか。 ○山路座長 ただいま事務局からお話がありましたように、本日小島委員並びに坂本委員 のお二方が欠席されるということでございます。それぞれの病院の方の代理出席の要請 がありました。私としては、今回の問題に関して、実りのある議論とする上で意義があ るものと考えております。代理性が確保されていることを確認しましたので、了承する こととしたいと存じますが、皆様方、この取り計らいでようございましょうか。 (異議なし) ○山路座長 それではそうさせていただきます。 ○赤熊補佐 事務局からご紹介させていただきます。小島委員の代理として、北里大学病 院看護部の野地キン子教育看護課長さんです。 ○野地代理 よろしくお願いいたします。 ○赤熊補佐 坂本委員の代理者として、NTT東日本関東病院看護部浜田ヨリ子看護長で す。 ○濱田代理 浜田でございます。よろしくお願いします。 ○赤熊補佐 山路座長、進行のほどよろしくお願いいたします。 ○山路座長 それではよろしくお願いいたします。さて、本日は新人看護職員研修につい て検討していきたいと存じます。まず事務局より、資料の確認をお願いいたします。 (資料確認)  資料4は、論点ということで、3枚ものです。資料5として、前回の主な意見、3枚組 みのものです。それと、参考資料として、新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する 検討会報告書、参考資料の2として、菊池委員から提出されたご意見。それと、パンフ レットをご用意させていただきました。よろしいでしょうか。 ○山路座長 それでは議事に入りたいと思います。最初に事務局より資料の説明をお願い いたします。 ○野口看護職員確保対策官 それでは説明させていただきます。資料1です。「新人看護 職員研修に関する現状等」と題して、いくつか資料を見つくろわせていただきました。 まず最初の1頁ですが、これは現在の医療提供体制の見直しを平成18年に向けて進め ているわけですが、いわばそれの基礎的な文書として、私どもが平成15年8月に出さ せていただいた、「改革のビジョン」というものがございます。そのビジョンの中に、 この臨床研修の話も出ておりまして、それがこんな方向性で書かれているということを ご紹介したいと思います。この下線が引いてあるところですが、看護基礎教育の内容を 充実するとともに、大学教育の拡大など、看護基礎教育の期間の延長や卒後の臨床研修、 これがいわゆる新人看護職員研修ということですが、そのあり方について、制度化を含 めた検討を行うというような方向性が打ち出されているわけです。   その次が、今年3月に閣議決定された規制改革の3カ年計画です。その下の、線が引 いてあるところがありますが、より専門性の高い看護師等の育成や、臨床研修等の教育 環境整備等、具体的な措置を講ずるということで、この臨床研修等の教育環境整備は、 主として医師の臨床研修等が念頭に置かれていると思いますが、このような方向性で… …することが求められているという状況です。   3頁は、医師の臨床研修が昨年4月から必修化されたということで、それで看護職員 はどうするという議論にもつながりますので、最初にこの医師の臨床研修制度の概要に ついてご報告申し上げたいと思います。医師法は、昭和23年にできておりますが、そ のときに、当時のGHQの指導もあって、いわゆるアメリカ型のインターン制度が開始 されたわけです。その後、大学闘争等があったわけですが、昭和43年に、旧制度の医 師の臨床研修制度が始まって、医学部を卒業してからすぐ医師の資格を与える。したが って、一人前の医師という形で、保険医の資格も与えられる。したがって診療報酬上の 評価も可能であるというふうにしながら、2年間の努力義務を課すという形で、制度が 始まったのが昭和43年でございます。   それからいろいろ議論がありまして、平成12年になって医師法が改正され、昨年、 平成16年4月に、36年ぶりになりますが、新しい臨床研修制度の必修化が始まったと いうことでございます。   それまで、さまざまな反省点が言われていたわけですが、旧制度においては、極めて 大学病院中心のストレート研修が多い。したがって、なかなかプライマリー・ケア全般 を診られる医師が育っていないのではないか。あるいは、閉鎖的な環境の中で育って、 競争があまりなくていいのだろうかという議論があったりするわけです。研修内容や、 追認がどこまでできたかの評価が非常に不十分ではないか。あるいは、特に大学病院の 研修医に見られたわけですが、処遇が極めて低い。その結果、アルバイトに精を出さざ るを得ないということで、いわば、必ずしも一人前といえない医師が、ほかの病院の夜 勤等のアルバイトをするというのが、医療安全上問題ではないかということも指摘され ていたわけです。   そのような中で、昨年4月から新しい制度に切り換えるということで、その1つのキ ーワードが、「研修プログラム中心主義」ということで、従来型のストレート研修から、 さまざまな各科を回って、基本的な診療能力を獲得する。いわゆる新スーパーローテー ト方式をとろうということで、各病院が、さまざまな研修プログラムを競い合って、よ いプログラムにしていただいて、それを学生のほうが、どのプログラムがよいかを選択 していく。そういうことによって、学生も病院側も高めていこうというような中身でご ざいます。   研修医の処遇も、確保し、逆に研修専念義務を課す。そのようなことで、しっかりと 2年間勉強をしていただこうではないかということになったわけでございます。   その中身ですが、1番目に「研修の基本理念」とあります。3つあると言われていて、 最初の1行目にありますが、「医師としての人格のかん養」、2行下にありますが「プ ライマリー・ケアの基本的な診療能力の獲得」、3点目はここに明記されておりません が、「アルバイトをせずに研修に専念できる環境の整備」、この3点を基本理念として、 取り組もうではないかということで、取り組んできたところでございます。   臨床研修を行う場所は限定されておりまして、その下に書いてありますが、単独で1 つの病院で行う場合と、あるいは協力し合って群をつくって研修を行う場合と、2つタ イプがございます。   その臨床研修病院は、どのようなところかということで、その下に基準がかけられて おりますが、プログラム中心主義ということで、何よりも研修プログラムが的確に実施 できることということです。その(2)に具体的に書いてありますが、最初の1年間は内科、 外科、麻酔科を含む救急でしっかり勉強していただく。   次の1年間は、小児科、産婦人科、精神科及び地域保健・医療という形で、各科をロ ーテートして、基本的なところを身に付けていただくということでございます。なお、 それぞれ、ただ単純にグルグル回るわけではなくて、もちろん、到達目標を具体的に示 していて、その下の※にありますが、必要な基本姿勢、態度を定めた行動目標。それか ら経験しなければいけない診察法・手技、症状、病態、疾患といったものを、具体的な 経験目標として提示しておりまして、それが本当に達成できたかどうかということをき ちんと評価するということになっております。   臨床研修病院の要件は、(2)に具体的に書かれていますが、一定の診療科があると いうこと。あとは、研修プログラム等、研修医の管理等を行う研修管理委員会があり、 またプログラム責任者が配置されていること。CPCの適切な開催が行われていること。   指導体制として、常勤の指導医が配置されていること。その指導医は7年以上の臨床 経験を有する医師であること。それから、医療法標準があることとか、そのようなこと が書いてあります。5番目のところは、いくらでも受け入れていいということではなく て、ベッド数を10で割った数だけですよということで、これは従来、特に私立の大学 病院では、ベッド数に比べて極めて多い数の研修医を抱えていたという現状があったわ けです。   研修医の処遇に関しては、適切な処遇を確保する。目標は、当時、年収360万円とい っておりましたが、それが確保されていること。原則として公募による採用を行うとい うことで、自由な競争を行ってやろうではないかということでございます。  このようなことで、臨床研修制度が始まったわけですが、まず人数では、ほぼ1学年 7,500名のボリュームであるとお考えいただければよろしいと思います。したがって2 年間ですので、合わせて1万5,000名のボリュームでございます。   かつては、大学病院での研修が7割、それから地域の、いわば市中の民間病院が3割 だったのですが、その比率が最初の年に大学が6対4に下がって、今年平成17年で5 対5くらいで、ほぼ半々になってきております。さらに傾向的には、大学病院の比率が 下がることも考えられるかもしれません。   処遇については、かなり改善されております。平均で、ほぼ100万円上がっておりま して、平成15年、この新制度が始まる前は、臨床研修病院、大学病院合わせて平均で 264万円でしたが、平成16年度で365万円ということで、一挙に平均で100万円上がっ ております。   研修医の満足度は、研修医全体ではおおむね4割が満足している。研修プログラム、 研修内容に満足しているかについては、アンケート調査で、研修医全体でおおむね4割 が満足、3割が満足していない。   これを臨床研修病院と大学病院で分けると、臨床研修病院ではおおむね5割が満足、 2割が満足していない。大学病院ではおおむね3割が満足、4割が満足していないとい うことで、どちらかというと、この臨床研修病院のほうが満足度が高いという状況にな っております。説明しているときりがないのですが、とりあえず簡単にということで、 このくらいで止めさせていただきます。   その次が5頁です。それでは看護職員のほうは、新人の職員がどのくらいいるのかと いう数の問題です。いちばん左のほうに、保健師・助産師・看護師・准看護師とありま すが、これは表の見方としては、保健師として就業した人の数、平成16年3月時点で すので、4月から就職した人の数ということで、例えば大学を卒業して保健師として病 院に58名就職しますという表です。注の2とありますが、これは助産師学校を出たの だけれども、助産師としてではなく、保健師として就職した人が5名いたということで、 実は全体として5名ということはわかっているのですが、病院か診療所か、その他かの 区分がわかりませんので、この注を付けさせていただいて、この注が付いているところ は、いちばん最後の、足した5万804名、これが大体新卒の看護職員として就職した人 ということですが、そこの合計数には入れておりません。というのは、病院・診療所別 の内訳がその下にあるので、総体でいうと、病院で91.46%、非常に多くが病院で就職 され、最初の新人の方は診療所では5%程度の方であるという状況でございます。   この内訳はありませんので、一応5万804名という合計には入れていないのですが、 これらの数も入れて、新人の看護職員の数は5万1,764名になります。   次の6頁で、看護学生が、一体どのような指標によって医療機関を選択するのかとい う資料がないかということで、ちょっと直接的ではないのですが、学生の進路指導を担 当する先生のほうから見て、何を重視しているのかという調査がありましたので、付け させていただきました。この真ん中あたりに、「3年課程の養成所」という欄がありま すが、これが看護学生のいちばん多いところで、そこで、いちばん多かった質問項目か ら、1、2、3、4、5ということで、左側に出させていただきました。これが各大学 とか短期大学とかによって、この順番が微妙に違っておりますが、こと看護師に関して は、この「院内・外での研修体制が充実」というところをいちばん重視しているという のが、どこの養成所でも変わらないという状況になっております。   他方で、准看護師の方については、1位ではなくて、この※に付いていますが、「進 学可能であるかどうか」ということを、進路指導でいちばん重視している。やはりこれ は、准看護師の方も、その後さらに進学したいというご希望があるという特殊性もある のかなということでございます。   それから、当検討会として非常に重要な課題である、「医療安全の確保」、そのあた りの資料でございます。ヒヤリハッと事例、これは、昨年4月から半年間に収集された 事例、8万8,600件余りを分析したものでございます。まず職種ごとに見ると、助産師・ 看護師・准看護師、いわゆる看護職員の方々が、81.72%、ほぼ8割以上がヒヤリハッ と事例に関与しているという状況です。なお、件数が8万8,600件余で、人数が9万と なっているのは、重複して事例に関与されている方がおりますので、それがダブルカウ ントになっているということです。   もちろん、看護職員の方は、医療スタッフの半分を占めますので、多いといえば多い のは当然ですが、1件の事例に関して、患者側から見た場合、やはり8割の方が看護職 員であるという事情は変わらないので、そういう意味では看護職員の方々について、や はりいろいろなことを考えていく必要があるのかなということにはなろうかと思いま す。なお、それを経験年数ごとに見たものが、下の表ですが、これは残念ながら、実は 職種ごとに出ておりませんで、全職種で見て、経験年数を見た数字です。   0年、要するに、いわゆる本当の新人というところで、全体の割合が12.98%、いわ ゆる医療界では、3年経ってようやく一人前というような言われ方をよくするそうです が、この表で、1年、2年というところまでで区切らせていただきましたが、この表を 見ても、そんな感じが少し窺えるかと思っております。3年経つと、だんだん減ってい って、10年になって、ヒョコッと上がっているのですが、11年、20年というのは、10 年間でということなので、仮に10で割ると1.25%。その次も10で割ると0.6%という ことで、いわば順調に減っているという状況です。   ただし、これは8万8,000件に対しての割合ですので、各医療機関ごとに年齢構成が 違うでしょうし、それなりの人口構成どうなっているかということもありますから、厳 密にそういう目から見たらアレですが、そういうことで、一応参考になるのではないか。 この0年から1年、2年のところの部分がやはり要注意の部分ではないかということが 窺われるわけです。   8頁が、残念ながら、ヒヤリハッとに止どまらずに、医療事故、になってしまって、 さらには行政処分に至った事例です。現在の行政処分の考え方の方針が決められたのが、 平成14年11月でしたので、その方針が決められて以降、現在までの医療事故の件数を 挙げたものです。全体では、25件ございました。その25件のうち、先ほど一応3年と いう仕切りで、経験3年未満の方を集めてみたら、たまたまちょうど10例あったとい うことです。経験年数の若い順に、表では書かせていただきましたので、実は1つの事 件で2人がかかわっているものがあります。ちょっと欄が離れてしうまうので、わかり にくいのですが、最初の1番目が、塩化カリウム注射液を、先輩看護師が後輩に、新人 にちゃんと指示をしなくて、新人が間違って、薄くしないで、そのまま注射してしまっ た結果、患者さんが亡くなってしまったということで、新人のほうが、この1番で、指 導すべき先輩の注意が足りなかったというのが、10番でございます。1と10が同じ事 例です。   2番目のほうが、注射器を、本来であれば使った後、滅菌しなければいけないのです が、それを放っておいて、別の看護師が滅菌したものだと勘違いして使用してしまった 結果、感染が広がってしまって、1名亡くなってしまったという不幸な事例です。これ も2人の看護師が関与していますが、2番目と6番目でございます。   3番目の事例は、麻酔薬を、流量を間違えてしまって死亡に至らせてしまったという ものです。   4番目は、栄養剤をちゃんと胃に入るチューブに入れなければいけないのですが、間 違えて肺のほうにやってしまって、窒息によって亡くなってしまったというものです。   5番目が、やはり同じく塩化カリウムの注射を、薄めずに注射してしまった結果、心 不全を起こさせて亡くなってしまったという事例です。   7番目が、出血性の胃潰瘍で入院中の方に薬を投与する際に、本来なら、静脈にして はいけないのですが、静脈にしてしまって、その結果亡くなってしまったというもので す。   次が、切迫流産の疑いで入院された方に対して、本来なら抑制剤をしなければいけな いものを、逆の促進剤をやってしまって流産させてしまったということです。  同じく9番目ですが、これは、栄養剤を投与するときの投与方法を間違えて、内服薬を 投与してしまったという事例です。やはり薬関係の誤りが目立つというご指摘があろう かと思います。  9頁は、看護協会さんのほうでお調べいただいた、新人看護職員の早期離職等の実態調 査です。最初の上のほうにあるグラフですが、平均離職率8.8%ということで、1年後 に、10人中約1名、8.8%の方が辞められているということでございます。なお、特定 機能病院と一般病院で、若干差があるように見えますが、大学病院等、特定機能病院に ついては8.8%、それ以外の一般病院では8.6%という数字になっております。   なお、これが一体、どういう評価をするのか難しいのですが、他方で、一般の会社で あれば、同期のうち、10人に1人ぐらいが辞めるのではないかという話もあったりする ので、比較するのはなかなか難しいかとは思うのですが、免許を持った、それなりの志 を持った方がこれだけの数辞めていくというのは、やはり問題なのではないかと思いま す。また、こういう傾向が、過去に比べてどうなのかということが、実はこの調査はこ のとき初めてやっていて、過去との比較はできないのですが、その下のほうに、増えて いるのかどうかというところでは、「特に変わらない」が3分の2ではあるのですが、 2割弱のところでは、やはり増えているのではないかというご指摘もあるわけです。   それでは、なぜ辞めるのか、病院側の見方、学校側の見方ということで、いくつか選 択肢を挙げさせていただいたのが、その下ですが、教育修了時点での能力と、現場で求 められる能力に乖離がある。いわゆるリアリティショックが大きいのではないかという ところが、いちばん大きなことになっています。  1つ飛ばして、看護職員に、従来より高い能力が求められるようになってきている。そ の下で、現場の職員が、新卒者に教える時間がない。それから、この新人に関しては、 そのちょっと下になりますが、自分が医療事故を起こすのではないかという不安で、萎 縮している。   それからそのちょっと下になりますが、新卒看護職員を計画的に育成する対策が整っ ていない。そのような事例を挙げていただいておりまして、新人職員について、充実し ていけばこの辺の状況が改善される可能性はあろうかと思われます。   その次、10頁では、実際に新人のほうから見て、何が悩みなのか、何で辞めたいと 思ったのかを聞いた資料でございます。悩みとなったことの1番が、専門的知識・技術 の不足、あるいは2番目で医療事故を起こさないか不安、専門的というよりも、基本的 な技術も身に付いていないのではないかというのが3番。その次に「ヒヤリハッとレポ ートを書いてしまった」、それでちょっと恐ろしくなってしまったということだと思い ます。そのだいぶ下になりますが、「十分な教育研修を受けられていないと感じる」と いう回答もございます。   というようなことで、あと、仕事を辞めたいと思った理由は、1番は、看護職が向い ていないのではないかというものもありますが、2番目のほうで、やはり医療事故を起 こさないか不安であるという、不安の中で辞めていくという方も結構おられるのかなと いうことも感じられるわけです。   その下に、「どんな研修をもっと受けたかったか」ということがあって、これはもち ろん各病院、医療機関において行われている研修はさまざまですので、単純な比較評価 は難しいと思うのですが、少なくとも、それなりの研修を受けた方が、もっと何を受け たかったかというと、薬に関する知識を受けたかった。専門的に必要とされる技術、あ るいは注射など、医行為の実技。それからちょっと飛ばして、真ん中あたり、医療安全 に関する研修というようなことを、さらに受けたかったと、こんなニーズも窺われるわ けです。   11頁は、それでは新人研修がどの程度医療機関では行われているのかということで すが、1つ目は、平成14年に私どもで調査させていただいた結果で、病院においては ほぼ8割のところが、何らかの新人研修を行っている。診療所においては、ほぼ3分の 1が、新人研修を行っているという結果でした。   なお、ちょっと前の時期になりますが、看護協会でお調べいただいた、調査対象は違 っているのですが、病院においてはほぼ8割ちょっとのところで、新人研修を行ってい るという結果で、ほぼ8割くらいのところは、病院であれば何らかの研修を行っている のではないかということが窺われるわけです。   12頁で、私どもとして、看護職員の資質の向上、特に研修という部分に関して、ど のような取組を行っているかということですが、下の表にありますが、大きく1、2、 3とあって、「新人看護職員研修を一生懸命やりましょう」、2つ目が、実務経験5年 以上の中堅の看護職員の問題」、3つ目が「より専門性の高い看護職員の問題」、この 辺について取り組んでいますということでございます。   その中で、新人のことについて、13頁で触れております。問題意識としては、新人 看護職員の技術能力が低下をきたしているのではないか。あるいは、現在の現場に合っ ていないのではないかというような問題意識があって、基礎教育の面と新人教育の面と、 2つの面から取組を進めさせていただいております。   まず平成14年ですが、看護基礎教育において、特に臨床技能にかかわる技術教育が、 ちょっと現場では萎縮傾向にあるのではないかということがありましたので、看護技術 を3つのカテゴリーに分けて、自分で実施できるもの、指導者がついてやるもの、それ から、これはちょっと見学するしかないものということで、3つに分けて、それぞれに 応じてきっちりと技術教育をしてほしい。それで臨床能力を付けてほしいというような ことをねらいにして、その報告書を出させていただいたのが、平成14年でございます。 その翌年度に取り組んだのが、新人職員の問題で、研修はかなり行われているけれども、 研修内容がかなりばらばらではないかというご指摘がありましたので、いわば研修内容 の標準化に取り組もうではないかということで、研修の到達目標をつくっていただいた り、あるいは研修する際のマニュアルを作らせていただいたりということをしたのが、 この平成15年でございます。   平成16年は、平成15年につくらせていただいたものを、いわば全国に広めたいとい うことで、後ほど説明いたしますが、全国7ブロックで講習会を開催させていただきま した。   本年度になって、少子化対策の意味、特に医療安全上の課題がなかなか多いというご 指摘もありますので、周産期医療分野ということで、新人助産師に対する新人の研修モ デル事業というものをさせていただいております。これも後ほど資料で簡単にご紹介い たします。   それから今回、検討課題ということですが、この検討会でご議論いただいている。こ んな流れの中で行われておりまして、この先の矢印がどうなるかということでございま す。    先ほど、平成15年度の研修の標準化の話ですが、参考資料として、パンフレット と報告書本体を付けさせていただいております。時間がありますので、一々細かくはご 紹介できないのですが、このパンフレットがいちばんわかりやすいかと思いますので、 簡単にご紹介させていただきます。見開いていたたぐと、「新人看護職員をめぐる現状 と課題」とあって、特に看護基礎教育と新人研修の役割分担が常に議論になりますが、 この検討会における一定の到達点としては、その3つ目の○にありますが、「看護基礎 教育における現状と課題」としてあって、複数の患者の受持や多重課題への対応等につ いて、つまり、あちこちでアラームが次々に鳴っているときに、一体どう処理するのか というようなイメージだと思いますが、そういうことへの対応については、やはり基礎 教育で身に付けることは困難であるということで、そういう現場の極めて強い緊張感の 中でしか身につけられないものがあるのではないかということを出発点に、この研修の 標準化を図る。そんなことでございます。   ちなみに、新人看護職員何人と、「5・1・7・6・4」と書いてありまえが、これ は先ほど集計から外したものを入れると、この51764となるわけです。   新人看護職員の到達目標は、見開いていただいて3頁、4頁、5頁、6頁とあって、 最初の3頁の、切株みたいなものがあるのですが、これは切株がイメージされていて、 まず木の芯になるところが1で、「看護職員として必要な基本姿勢と態度」という、い わば核になるものがある。その核になるものとは何かという、具体的な、その下の表の 1に、こんなことができますよということが書いてありますが、その核の周りに、管理 的側面ということで書かれてありますが、1から7番目まで。この1から7番目という のは、6頁の安全管理からコスト管理まで、さまざまな、横割の目で見た管理の手法を、 この管理の目から見て身につけなければいけない。   2番目が、「技術的側面」ということで、いちばん上のほうに技術の年輪ができてい ますが、技術的側面の中では、1から13まで、個別の技術がありますが、その個別の 技術を横割的に支える要素として、その横に1から3まであるということで、極めて三 次元的な構造になっておりまして、何なのかよくわからないというお叱りを受けるので すが、意味としてはそういうことでございます。これ1個やればいいということではな くて、こういうことを縦から見たり横から見たりしながら、いわば1つの木のように育 ってもらいたいという願いであるわけです。   それから、研修のマニュアルが7頁にその中身が書かれております。パンフレットの 裏側ですが、「施設において研修体制を充実してほしい」、それから順に、「指導者は どうあるべきか」が2つ目に書かれております。それから、もちろん具体的に研修を行 うのは各部署ですが、「各部署でどのようにして研修するのか」。特に実地指導者とい うことで、いわゆるプリセプターといわれるようなイメージがあります。最後のほうに、 病院として気をつけてほしいということで、「研修内容を公開」してほしいということ です。これは学生、あるいは進路指導の上でも、研修が極めて重要な要素になっている ということですから、就職先の選定に当たって、いかなる研修が行われるのかは極めて 重要ですし、それで学生が就職を選択することによって、また研修の中身のほうも上が っていくのだろうと考えているわけでございます。   そういうことで、14、15、16は省略させていただきますが、いまのパンフレットの 中身でございます。   それから17頁が、予算事業として、平成16年度からさせていただいております、い まのパンフレットの中身の普及事業でございます。全国7ブロックの地方厚生局単位で、 計21回、講習会を開催させていただきまして、受講者が2,570名、受講対象者は、(1) (2)とありますが、新人研修の現場の責任者、あるいは教育の責任者、両方集まって いただいて、研修していただいたということでございます。まず、研修の希望が殺倒と いったら言いすぎですが、かなり希望が多くて、全員に当たらなかったのです。それで、 では翌年度もやりましょうというほど、極めて熱意と関心を、看護課からお教えいただ いたということで、大変ありがたいことですし、研修修了後も、是非この中身を踏まえ ながら、自分の病院で手がけたいということで、力強いお言葉をいただいたりしており ますので、大変私どもはありがたいと思っております。その事業を、今年度も継続して、 是非、少しでも多くの病院で新人研修をやっていただければと念願しているわけでござ います。   18頁が、助産師のモデル事業です。これも、この4月から事業を実施するというこ とで、まさに時間がなかなかない中で心配していたのですが、手を挙げていただいた医 療機関が多いということで、結果的には17箇所の病院で、モデル研修をしていただい ている。ほぼ1箇所10名当たりの新人助産師を引き受けていただいて、3カ月の研修、 それぞれ研修プログラムをつくっていただいて、しっかり分娩等を見ていただくという ことになっているわけでございます。資料1は以上でございます。   資料2は、新人研修の問題について、関係団体からお寄せいただいている要望書をご 紹介する趣旨です。最初が、日本看護協会から私どもの大臣に、7月にいただいた要望 書ですが、その中で、新卒看護職員の研修の制度化ということで、制度化を保助看法に 位置づけるとともに、教育年限の見直し、これは延長という意味だと思いますが、看護 基礎教育の充実を推進すること。それから、2番目で、臨床実践能力を高めるため、制 度化するとともに、財源の確保。3番目が、基礎教育と卒後教育とのスムーズな継続の ためのプログラム。4番目が、指導者の配置の予算化。こういう中身でご要望をいただ いております。   次に2頁で、日本助産師会・全国助産師教育評議会のほうからは、先ほどご紹介した モデル事業について、それを継続し、さらに全国規模で展開するというような中身のご 要望をいただいていると理解しております。   次に資料4は、本来であれば、野地先生のほうからご報告があってからのほうがよろ しいかもしれませんが、時間の関係上、資料4について進めさせていただきます。これ は繰り返しになりますが、報告書に向けての論点整理ではありませんで、この場でさま ざまご検討いただく際の議論の材料として、こういう点が考えられるのではないかとい うことでご紹介するという趣旨でございます。   最初の問題意識は、これまでも資料でご説明させていただきましたが、医療安全の確 保のためにも、新人看護職員の卒後臨床研修の制度化を図る必要があるのではないかと いう問題意識を出発点として、どのように検討いただくかということだと思っておりま す。   まず現状ですが、先ほど申し上げたとおり、医師については平成16年から必修化さ れ、また、歯科医師が2年置いて、来年4月から、1年間ですが、必修化されておりま す。 他方看護師については、医師法と同じく昭和23年に法律ができておりますが、 まず基礎教育については、高卒3年の基本骨格を維持しております。また卒後臨床研修 については、制度化がない。その結果、病院等の自主的な取組に委ねられているという 実情でございます。ただ、多くの病院においては、すでにご説明させていただいたとお り、何らかの研修が行われているのが実態でございます。また、私どもとしても、到達 目標の標準化と、研修をなるべく標準化していただくように取り組んでいるのですが、 まだまだ目標、理想とするところまで至っていないのではないか。相当バラつきがある のではないかということが窺われるわけです。   また残念ながらヒヤリハッと事例に新人が関与し、またさらには医療事故につながっ てしまうという例があることも事実でございます。   そのような現状に対して、指摘されてきた点、あるいは指摘された点をいくつかまと めさせていただきました。最初は、看護職員というのはいちばん患者と接する機会も多 く、時間も長い。したがって、医師を制度化するのであれば、看護職員も必要になるの ではないかというご指摘でございます。   2つ目が、これは特に一生懸命研修をやっていただいている病院から出てくるご意見 かなと思っておりますが、一生懸命やっているところと、必ずしもそうでないところは やはりあるのではないか。そうした場合、一生懸命やっている病院は、もちろん自分の ところの職員ではあるのですが、ずっと長くその職員が自分の病院にいるのかというと、 何年かすると、ほかの病院に移っていくということも、ままあるわけです。そうします と、最初の、まさに資格として一人前になるための研修については、公共的な性格を有 するものとして、その負担についてはみんなで合理的に負担する、公平に負担するとい うような仕組みがあってよいのではないかという観点でございます。   3つ目の○では、看護基礎教育との関係においても、これも、これまでの検討会でも ご指摘いただいておりますが、医療安全についても、やはり看護基礎教育で充実すべき だということをいただいているわけです。さらに、臨床能力をさらに充実すべきである。 そうしますと、いまの3年間ではなかなか足りないというご指摘を、教育関係者の方か らいただいておりまして、教育期間を、例えば4年にするなどの、さらなる充実を図る べきではないか。そういう観点からのご指摘もあります。   他方、違う観点で、看護職員に関して、ヒヤリハッと等、あるいは重要事故等で、薬 に関するところが多いのではないかというご指摘ですが、薬というのも化学物質ですの で、いわば基礎教育の中で、講義という形ででも徹底的に教えれば、かなりの程度安全 性の確保ができるのではないか。あるいは、それも含めて、さらに学校にいる間に一人 前になるような教育にしていって、学校を卒業して免許を取った時点では、病院で立派 に働けるというくらいまで、基礎教育を充実すべきではないか。そういう意味では、い まのあり方を見直すべきではないかという観点のご意見でございます。   以上を踏まえて、いくつか論点を挙げさせていただいております。まず最初に、制度 化を図るとした場合に、もちろん制度化というのはどういう中身なのか、いろいろ中身 があるわけですが、いろいろな点について、やはり検討を深めていく必要があるだろう。 まず最初は、制度化という以上は、義務づけするのかどうか。義務づけするとすれば、 それは必修義務なのか、あるいは努力義務なのかというような問題があろうかと思いま す。   それでは、義務づける相手は誰なのか。医療機関に自分のところの職員の研修を義務 づけるということなのか、それとも看護職員個人に義務づけるということになるのか。 あるいは、そもそも義務づける研修の中身というのは、どうあるべきなのか。研修プロ グラムは、どういう形で、またその実施の時期、あるいは実施期間、あるいはその研修 を指導する体制、あるいはまた研修を修了するといえるためには、どういうような基準 が要るのか。そんなことをやはり検討を深めなければいけないのではないか。  あるいはその研修を実施するとしたら、それはどこでもできるのか。それとも一定の要 件がある、教育的な医療機関に限定するのか。また、研修が終わったときの記録はどう するのか。また、研修中の看護職員の処遇、ないしは雇用関係はどう考えるべきなのか。 また、その費用について、どのように公平かつ合理的に負担したらよいのか。以上、大 変大きな検討課題が含まれているように感じております。   次の○で、臨床研修を制度化していくといった場合に、さまざまな検討課題があるわ けで、すべて一度に、なかなか手がけられないかもしれない。そういう意味では、特に 重要と考えられる、あるいは当面手がけられるところは何かということで、当面実施す べきことを明らかにして、ほかのことはいいとは言いませんが、段階的に取り組んでい くという方法論も現実的なのではないかというご指摘もあろうかと思います。  特にこの検討会については、平成18年の医療制度改正に向けて、何ができるかという ことが常に皆様方の頭にあるということですので、そういう意味では、新人看護職員研 修については、平成18年に向けてどういうことができるのか、皆さんの共通理解が得 られるのかというようなことが、あるのかないのかということについて、極めて重要な 問題があろうかと思っております。   もちろん、基礎教育の関係と、現場教育との関係、これは、どちらがどんな役割を分 担していくのかということが、先ほどの指摘の中にありましたが、これは根本問題とし て考えていく必要があろうということでございます。  以上、説明させていただきました。 ○山路座長 どうもご苦労さまでした。ただいまご説明のあった、資料2−2で出された 要望書に関連して、要望書を出された日本看護協会、日本助産師会のほうから、何か付 け加えることはございますか。よろしいでしょうか。 ○菊池委員 要望書そのものについては、ここに記載してあるようなことで、特に付け加 えることはないのですが、参考資料として、卒後研修について、意見書を提出させてい ただいているので、それをいまご説明してもよろしいでしょうか。 ○山路座長 それではお願いしましょうか。どうぞ、簡単にお願いいたします。 ○菊池委員 それではお時間をいただきまして申しわけございません。参考資料の2をご 覧いただきたいと思います。本日のテーマである新人看護職員の研修について、本会と して次のようなことが非常に重要だと考えておりますので、申し述べさせていただきま す。  医療の高度化、複雑化、在院日数の短縮に伴いまして、安全な医療や看護の提供という のが非常に難しい、危機的状況にいまなっております。看護業務の密度が高まって、看 護職員に高い能力が求められている今日、看護職員の適切な配置と併せて、資質向上と いうことが急務になっています。その資質向上に向けて、次の2点が強く求められてお ります。まず1点は、看護師の基礎教育について、教育期間延長を視野に入れて見直し て充実する必要性があるということ。それからもう1点は、保助看法を改正して、免許 取得後の新人看護職員に臨床研修を義務づけるという臨床研修の法制化が必要だとい う、この2点です。   なぜこのように考えるかという理由と背景としては、まず1番目として、医療安全対 策ということがいま緊急課題になっておりますが、新人看護職員は、医療事故を起こす 可能性が非常に高い状況にいまあるということです。看護職員は、新人といえども診療 の補助業務の最終実施者ということで、医行為などするわけですが、知識・技術の未熟 な新人看護職員が、医療事故に遭遇する危険性が非常に高いということです。先ほどの 厚生労働省のヒヤリハット事例収集事業のデータにもありますが、ヒヤリハットとの当 事者の81.7%が看護職員ということで、そのヒヤリハット事例の13.0%が、職種経験 0年の新人であるということです。これは後ろのほうに、図1と2で示しております。   それから本会のほうで調査した、病院で報告されたインシデント総件数を見てみると、 そのうちの81%が看護職員が関与していて、その81%の中のインシデント件数のうち の13%は、新卒看護職員が関与しているということで、事故までには至っていないけれ ども、その裾野に、こういう重要な状況があります。   もう1つ別の調査によると、これは2002年の、新卒の看護職員の基本的な看護技術 がどこまで獲得できているかということについて調査したものですが、新卒看護師の7 割以上が、入職後3カ月を経過しても、基本となる看護技術103項目のうちの68科目 をまだ一人で実施できないという状況にあります。   それにもかかわらず、半数以上の新卒者が、入職2カ月で夜勤業務を始めているとい う状況があって、かなり危険な状態で夜勤に就き、業務を行っているという状況があり ます。   2番目として、新人看護職員の入職時の看護技術能力と、病院が求める能力との格差 が非常に大きいということがあります。これは、医療がどんどん高度化して、看護職員 にも高い知識・技術・能力が求められていますが、新卒の看護職員の臨床看護実践能力 が、看護管理者の期待する水準に達しておりません。新卒看護師の7割以上が、入職時 に、就職したときに1人でできると認識している技術が、看護基本技術132と書いてあ りますが、103項目の間違いです。103項目のうちのわずか4項目。例えばベッドメー キングとかリネン交換とか、呼吸・脈拍などのバイタルサインのチェックとか、身長・ 体重の測定とか、そういう基本的な4項目にすぎないという状況です。このように、卒 業時の能力と病院が求める能力との差が非常に大きいという状況があります。   3番目として、基礎教育の中で、臨床技術を学ぶことが、年々困難となってきており ます。そのために国家免許取得後に、実践の場でしか培えない能力を獲得するための臨 床研修が必要になってきています。   なぜ基礎教育の中で臨床技術を学ぶことが困難になってきているかというと、患者の 権利意識の向上とか、医療安全の確保という観点から、人を相手にして、実際に採血し たり注射をしたりという技術の実習経験が非常に制限されてきておりまして、それを経 験していることが少なくなってきております。   また、現場に出ると、多重課題への対応等、いろいろな業務に優先順位をつけて対応 していかなければいけないという課題もありますので、そういう能力を獲得するには、 免許取得後に実践の場でしか培えない能力を獲得するための研修というものが必要で、 そういうことを実施することで、新人のリアリティショックとか適応障害、早期離職の 防止を図ることが必要だと考えています。新人看護職員を送り出している看護教員の 85.3%が、卒後研修の必修化が必要と考えています。   4番目として、看護部のほうで新人を受け入れたときに、臨床研修を病院の努力でか なり行っていますが、それも現在では、努力に任せておくのは限界にきております。実 際に、新人育成のために、新人の研修ということで、救命救急、感染予防、安全管理、 与薬などの研修を、かなりの病院が実施しております。それからまた、新人1人に対し て、先輩の看護職を付けて、教育指導をするというプリセプター制を導入しているとこ ろが、非常に多い状況です。   最近では、プリセプターとは別に、看護技術実地指導者を配置しているところが 37.5%と増えてきております。また、最初新人が入った4、5、6月というのは、一人 前としては働けない状況ですので、その低下した看護力をカバーするために、一時的に、 3月に退職する予定だった先輩の人たちに、6月まで在職してもらって、新人と重ねて 配置して、そこをカバーするという努力も、病院のほうではかなりしているのですが、 それも、昨今の、医療が高度化して在院日数が短縮化して、看護業務の中身がどんどん 密度が高まる中で、もう先輩看護職が新人を指導する余裕が年々なくなってきておりま す。そういう中で、新卒看護職員の育成を病院の努力だけに頼ることは限界にきている 状況です。   5番目として、その結果、そういう状況の中で、病院に就職した新人看護職員の離職 率が9.3%に上っていて、その背景には、先ほども申しました、知識・技術の不足とか、 医療事故への不安というものがあります。この9.3%というのは、平成15年度の本会の 調査の結果ですが、平成15年に病院に就業した新卒看護職員が約4万7,000人くらい いて、この9.3%というと、4,4000人くらいが1年以内に離職したというふうに推計さ れます。この人数は、看護学校の1学年定員を大体43人くらいというふうに考えると、 大体100校分に相当する、そのくらいの看護職員が、就職後1年以内に離職していると いう状況があります。   また一方、新卒看護職員は、仕事を継続する上での悩みとして、先ほどもご紹介があ りましたが、配属部署の専門的な知識・技術が不足しているとか、医療事故を起こさな いか不安とか、基本的な技術が身についていないということを挙げて、非常に不安な中 で仕事を継続しているという状況です。   それで、看護管理者や看護教育者ともに、新人の職場定着を困難にしている要因とし て、基礎教育修了時点の能力と、看護現場で求める能力とのギャップを、76%、80%が 挙げておりまして、こういう能力のギャップが、高い離職率にもつながっているという 状況があります。   最後に、6番目として、医療の発展に伴って、ほかの医療職種は、教育年限が延長さ れたり、医師・歯科医師のように、臨床研修が義務化されたりというふうに、充実して きておりますが、看護の基礎教育だけが50年以上、基本的なところでは変化していな いという状況があります。   それで、3年課程の看護教員は、現在の教育期間では十分ではない、教育年限が不足 しているとすでに考えていて、57%が、教育期間を延長したほうがよいと考えている状 況です。   以上の理由、背景から、いま基礎教育を充実するということと、卒業後の臨床研修制 度を早急に法制化するということが、是非とも必要だと考えております。 ○山路座長 それでは次に、今回の議題に関して、大変参考になると思われますので、新 人看護職員研修の実例をご紹介していただきたいと思います。本来、小島委員にお願い しておりましたが、先ほどご紹介がありましたようにご欠席ということで、代理の野地 さんに、時間が押し迫って恐縮なのですが、15分程度で新人教育の実際について報告を お願いいたします。 ○野地代理 それでは新人研修の実際についてご紹介させていただきます。私どもの看護 職員の平成17年度の看護職員の教育背景ですが、903名ということで、大学卒が47%、 3年制短大が11%、3年制の看護学校が27%、2年制、進学コース等が3%、10%と いうような状況で、大学院卒が2%というような状況になっております。   私どもでは、クリニカルラダー制度というものを導入して、新人・一人前・中堅・達 人というふうに、看護師の実践能力を高めていこうという、継続教育のシステムをもっ ておりまして、それに沿って教育をしております。新人はレベル1というところに入っ て、到達目標に、1年間で到達していただく。その内容は看護実践、管理リーダーシッ プ、看護実践の能力、管理リーダーシップの能力、教育的な能力、研究の能力、そうい ったものの評価表があって、そういうものをクリアすると、新人の1年間の目標は到達 しましたよということで、レベル2に上がっていくというような構成になっております。   新人のときから、入ってきたときから将来を見通して、自分自身が管理領域で生きて いくのか、あるいは専門領域で生きていくのかというような、将来を見通しながら進ん でいただくというような継続教育に沿って育てております。   まず、新人看護職員の指導者の育成の研修というものをいたします。平成17年度が、 新規採用者が165名でした。新人の指導者、プリセプターですが、その研修は、教育学 者から教育原理、教育の方法といったようなことを講義していただきます。そこに書い てあるような発達と教育の概念、良きかかわりの構築、未来を生き抜く力、達成感、夢 と希望への新しい航海。そういうことをしていくために、どういう指導をしたらよいの かというようなお話をしていただく。あるいは、教育委員、看護師のほうの教育委員か ら、新人がチームに受け入れられるように、責任をもって支援をしていくというような こと。あるいは、新人の知識・技術の到達度を確認して、継続指導をしていくこと。リ スクを回避しながら、常に意識して指導していくことなどを教えていきます。   それから、プリセプターは非常に負担が大きいものですから、支援が必要です。病棟 の管理者、あるいは教育委員が支援して、フォローしてというふうにしてカバーしてい きます。   新人看護職員の研修ですが、対象は看護基礎教育を修了し、国家資格をもつ新卒の看 護師・助産師としております。目的は、そこに書いてあるように、新人看護職者は、看 護基礎教育で習得した知識・技術だけでは、高度、複雑化している臨床の場で、安全な 看護ケアを提供するのは困難な状況です。そのために新人看護職員が卒後1年間で習得 すべき臨床実務に必要な知識・技術、そして社会人、専門職業人としての態度を身につ けて、ベッドサイドケアが安全確実にできるように育成するということを、目的にして おります。   まず入職をして医療現場に入る前に、医療安全教育というものを実施しております。 この目的としては、医学的侵襲を伴う処置を、安全に提供できるための基本的な知識・ 技術を教育いたします。  それから臨床での戸惑い、不安を最小限にして、仕事の場として意識できるようにして いきます。   まず医療人としてのマナーというものを教えます。これは、新人の臨床研修医と同じ 場で、新人の看護師も教えていきます。それから看護倫理、これは看護協会で出してい る倫理綱領に基づいた内容を教えます。それから「医療事故防止に向けて」ということ で、内服編、チューブドレーン編、医療ガス編、転倒・転落編、注射編といったことを 講義とパワーポイント、VTR等を用いながら教えていきます。間違いやすい薬財など についても、パワーポイントを用いながら教えていくということをやっております。   レベル1の新人看護職員の到達目標ですが、まずは日常生活援助のための知識、技術、 態度を身に付けて、ベッドサイドケアが安全確実にできることがいちばんです。チーム メンバーの役割と責任を果たす。院内研修を通して、看護実践、看護の知識を深められ るということ。あるいは研究活動に参加するといったことを目標に挙げております。こ れは実際に係長が指導しているところですが、点滴のルートを組むということを、この ような学部を使い、こういった場面でルートの組立方を先輩がやって、新人が全部やっ てみるといったようなことをやっております。これも同じ場面です。   看護実践というところは、実際に配置された病棟の業務ができることを目的にしてお ります。管理、リーダーシップの側面というのは、病院が看護師は今年度どのような目 標で進んでいくのか、あるいは自分が配置された所はどのような目標で病棟が進んでい くのかといったことを教えていきます。経済的な側面についても、注意を払えるように していきます。あるいは災害時、緊急時などには、新人といえどもリーダーシップを発 揮していただかなければいけませんので、患者を誘導するなどのことができるようにし ていきます。教育のところでは、院内研修には参加をしていただき、知識、技術を習得 していただく。あるいは社会人、職業人として常識的な行動が取れるようにしていただ くということです。研究は参加をしていくということです。  1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月と集合教育を行っております。1ヶ月目の研修ですが、目的は 臨床実務に直結した看護技術と、精神面の弱さをフォローするということをやっており ます。いまの新人は、コミュニケーションすることが非常に苦手ですので、報告・連絡、 相談というものが必要だということをよく教えてあげます。そのために、自分が1ヶ月 間臨床でどのように過ごしてきたのかといったことを話し合って、お互いに問題を共有 化しています。薬の知識、輸液管理、感染看護などを教えていきます。実際にこのよう なグループを組みまして、不安や悩みを語り合い、問題を共有化し、解決策を見つける ということをやっております。点滴管理の演習、薬剤師による麻薬の講義、あるいは針 刺し事故の演習といったものをやっております。手洗いについても、院内感染防止のた めに演習をしております。救急蘇生法は3ヶ月目にやっておりますが、夜間で緊急時に 対応できることを目的にして、救急の認定看護師がこのような形で教えて、実際には新 人ナースがこれを全部やってみるということを行っております。   3ヶ月目になりますと、リアリティショックを非常に強く感じて、こんなはずではな かった、こんなにできない自分ということを感じて落ち込んでいる時期です。そのよう な時期にうまくもち上げて、前向きにしてあげませんと乗り越えられませんし、そこで うつ状況などが起こってしまいますので、自分自身をよく振り返っていただき、前に進 むにはどのような課題を明確化していけばいいのかといったことについてグループワ ークし、問題を共有化して進むことを行っております。いま、一般病棟が非常に重症化 しており、人工呼吸器、心電図モニターというものをたくさん使っておりますので、専 門性の高い看護師が教えています。実際にこのような場面でグループワークを行ったり、 発表をしたりということをしております。   6ヶ月目ですが、このころになりますと、だいぶ落ち着いて、自分が配属されたセク ションのことができるようになります。このときの目的は、一人立ちに向けて臨床の場 で多重課題・時間切迫の状況下で優先順位を選択し、安全に正しく看護ケアが提供でき るということです。多重課題・時間切迫のシミュレーションは、多重課題・時間切迫に どのように対応するのかを、自分とプリセプターだけではなくて、第三者からも評価し ていただくということで行っております。それから職場適用の調査、技術のチェックリ ストといったものもやっております。実際に多重課題・時間切迫シミュレーションは、 平成14年、15年の厚生科学研究の結果から必要性を見出し研修に取り入れたものです。   実際にこのような場面、患者A、B、C、Dという外科病棟の4人室を想定しまして、 演習をしていただくわけです。患者Aは術後の点滴中の方。Bが抗がん療法後でふらつ きのある方。Cは肺炎を起こして意識が不鮮明である。患者Dは明日退院で元気な方で す。教育委員は先輩ナースとしてナースステーションにおり、評価者として椅子に座っ ております。それからタイムキーパーが1人おりまして、「お入りください。演技を始 めてください。フィードバックを始めてください。入れ替わってください」とタイムに 沿ってやっていきます。これは1人5分でやるシミュレーションです。   新人ナースにはこの場面を教えてありませんので、どのような設定があるかを入る5 分前に読むだけです。新人ナースが入口から入ってきて、ナースステーションに行きま すと、患者Aから「点滴が終わりそうなので、取り替えてくださいというナースコール が入ります。新人ナースは「はい、わかりました」と言って、患者Aの所へ行き、点滴 に何が入っているかを確認し、ナースステーションにボトルを取りに戻ってきます。ナ ースステーションでは間違いやすい薬を並べておき、正しく選ぶかも見ております。   患者Aの所へ点滴を持って行き、替えようとすると、患者Bが「お手洗に行きたいん ですが、連れて行ってください。もう我慢ができません」と言います。そこで多重課題 が発生します。新人は点滴を先にするのか、お手洗に連れて行くのかを考えますが、点 滴が大丈夫であればお手洗に連れて行こうとして、患者Cの側を通ろうとすると、患者 Cは咳込んで、PaO2が85という札を出します。患者Dは元気な方で、「苦しそうだか ら吸引してやってよ」と言います。そうすると、もう新人は何をしていいかわからなく なってしまうという状況です。実際の場面でもある状況を設定して、演技は3分です。 すぐに評価者が1分間のフィードバックをします。そのようなシミュレーションをやっ ております。これはボランティアの方に協力をしていただき、患者役割を取っていただ きながらやっております。  シミュレーション学習の目的は、多重課題・時間切迫の状況下で安全に優先順位を選択 し、正しいケアが提供できるということです。評価の視点は、確実な看護ケアの提供、 自分の能力の限界を知って、先輩ナースに応援を求められるか。評価の視点3というの は、態度・言葉遣いは適切であったか。評価の視点4は、正しい優先順位が選択できた かというものをすぐにフィードバックします。   技術チェックリストというのがありまして、これは新人看護師の臨床実践能力向上に 関する検討会で出された13領域69項目を、評価表にしたものです。これは常に新人と プリセプターがチェックをしていくものです。1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月目でもチェック をします。それから実際に配置された専門領域の、実践能力はどれくらい習熟したかと いう評価表で評価をいたします。業務に対する態度はどうかということの評価もします。 レベル1の共通評価というのは、北里大学病院ではこのことができることというのが書 かれておりますが、これも評価いたします。このような技術チェックリスト評価表で評 価して、レベル1がクリアできたかどうかを見ていくということをやっております。   このような新人の状況ですので、実際に研修制度がきちっとされている所はいいので すが、日本全国で共通して平等に新人を育てるためには、研修制度が必要だということ を述べさせていただきます。4〜6月の現場の状況は、人員が切迫しており、余裕のな い先輩看護師です。できるナースたちが辞めて、そこに新人が入ってきているというこ とで、倍の仕事量、負担の大きいプリセプター、新人を抱えながら自分の業務を行うと いうことです。新人看護師のほうは、未熟な知識と技術、次々に変化する状況に対応で きない、医療事故に対して現実感がない、新人の容量を超えた仕事量、このようなこと から育つのは大変難しい状況にあります。   検討会で出された研修指導指針というものを実践するにはどうしたらいいのかとい うことを考えてみると、やはり、仕組みをきちっとつくっていただき、システム化をし、 研修制度などをするということ。教育基盤をつくることが大事で、新人の教育をするた めにも、教育の専任者を置いていただく、現任教育のシステムの構築などをしていただ くということです。それから指導者を確保すること。新人指導者、プリセプター、ある いはプリセプターを見られるような高いレベルのナースということで、指導者の層を厚 くしておくことが大事である、そうでないとこれは実践できないということだと思いま す。以上です。 ○山路座長 ただいまの野地さんの発表、それ以前の事務局並びに日本看護協会からの資 料説明について、何かご質問、ご意見があればお願いいたします。野地さんに基本的な ことを伺いますが、最初の新人看護研修の節目の1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月を合わせて、 時間数にしたらどれくらいの時間の研修になるのですか。 ○野地代理 1回の研修が8時間ということですので、3回やりますから24時間という ことになります。 ○山路座長 わかりました。他にいかがですか。 ○金川委員 本質的なことは後から出させていただきたいのですが、いま北里の話を伺っ て、新人の看護職員の研修に関しては、かなりしっかりしていらっしゃるという思いが しました。ちなみに、離職者の割合はどのくらいでしょうか。 ○野地代理 ただいまは在職年数が6.1年ぐらいになっておりまして、新人のほうを見て みますと、昨年は147名採用して2名の退職者でした。ほとんどの方がレベル2にいき、 新人はあまり退職はいたしません。 ○金川委員 やはり、1つの効果という評価もできるのでしょうか。 ○野地代理 そうです。研修は非常に丁寧にしていると思っております。 ○金川委員 ありがとうございました。 ○山路座長 ご意見も含めてお願いいたします。 ○辻本委員 具体的にいまの内容についてということ以前の問題として、この状況をもっ と患者側に知らしめていただきたい。いま、患者の要求が非常に高くなっていることと、 ここの話にも出てきていますが、最も身近で、最も層の厚い存在であるナースへの期待 も、そして怒りも同様に増えているのが現実だと思います。しかし、ある日突然100% 完璧な能力を持った人がいると患者は思いがちですが、実はゼロの状況から始まって、 このような教育があって、その中の困難性ということをもっと社会的な問題として国民 が知ることの必要性を、いまお話を伺いながら非常に強く感じましたので、それをまず 申し上げておきたいと思いました。 ○川端委員 北里の平均在職年数は6.1年ということで、何となく随分短いという印象を 受けてしまいますが、そんなものなのでしょうか。これだけ充実した研修を受け、専門 技術を身に付けたナースが、なぜ辞めていってしまうのでしょうか。 ○野地代理 急性期の大学病院なものですから非常に忙しいということと、かなり学習を しないとついていけないということがありまして、やはり疲れて辞める方が多いと。毎 年、退職者のアンケートを取っておりますが、正式には結婚して辞めるとか転居といっ たことがありますが、本質は疲れて、もうちょっと楽な所に異動するといった理由が多 いように思います。 ○金川委員 北里大学病院ばかりに質問して申し訳ないのですが、この病院には大卒がか なりいらっしゃるということで、地方では羨ましい感がありますが、大卒の方が辞める 割合がかなり高いのではないかという雰囲気も少し受けます。出身教育機関によってと いうことはないですか。 ○野地代理 大卒が特に多く辞めるという状況ではないです。平均化して辞めているよう に思います。 ○菊池委員 いまの北里の状況と似たようなことを本会で全国の病院を調査したのです が、離職率は在院日数が短い病院ほど高くなっていくという傾向はデータの中にも表れ ています。それは先ほど説明があったように、それだけ教育研修を受けて、実際に力は 付けてきて、やりがいを持ってやっているのだが、やはり忙し過ぎるということがある と思います。これは今回の研修や教育のテーマとは別に、いま看護職員の配置が、急性 期の所ではあまりにも少な過ぎるという問題が別途あって、それはまた別途の対策が必 要ではないかと強く思っております。 ○平林委員 お話を聞いておりまして、結論的に新人看護職員の研修をしていかなければ ならないだろうということについては、おそらくどなたも異論はないだろうと思うので す。ただ、今日の話を聞いていて率直に驚いたのは、新人看護職員が入職をしたときの 看護技術の能力の低さが、いろいろなデータから明らかになっているわけで、どうして そのようなことになっているのか、どうして能力の低い人が看護師の試験に合格して看 護師の免許が与えられているのか、その辺りの構造的な問題はどうなっているのかをち ょっと教えていただければと思います。 ○山路座長 それはどなたに答えていただければよろしいでしょうか。 ○山本委員 資料1の5頁に書いてありますが、助産師の、病院や診療所への就職率です が、診療所のほうは極端に少ないです。全体的に見てもわかるように、大学卒の看護師 が大変多くなっておりますが、大学教育の中で助産師まで取得するとなると、看護師、 保健師、助産師を同時に4年間の教育の中で3本柱で取らなければならないという現実 が見えてきます。本来、専門学校ですと、看護専門学校が3年間、それに助産師の専門 学校が1年、あるいは保健師の専門学校が1年ということで、助産師になるために1年、 保健師になるために1年というコースがそれぞれあるわけですが、それを大学の4年間 で保助看全部を一遍に取らなければいけないという現実があります。   現に、助産師を専攻する学生は、各大学の中でもほんの少数で、例えば慶応大学では 4名、北里大学では6名というように極端に助産師の養成数は少ないです。希望する学 生は相当数おりますが、助産師の専門教育となりますと、教員の数も、少ない人数では ありますが大変な時間を要するということで、保健師、看護師までは取れるが、助産師 までは大変厳しいという現実があります。昨年、北海道の天使大学では専門職大学院が 日本の中で第1号となりましたが、現在、私の所でも専門職大学院の2年生のインター ンシップの学生を受け入れております。   インターンシップの学生は、その教育の中で分娩を15例以上ということで、学生の うちに15例以上という課題が与えられておりますが、現在、大学教育や専門学校の教 育の中では10例程度ということで、8、9例ということです。いろいろな大学から助 産師の専攻の学生を受け入れておりますが、中には5例程度で終わって、外回りあるい は新生児の計測をしただけで1例、分娩第1期について1例というように、本来の意味 での10例程度というのが実施されていない現状があります。4年間では、助産師教育 までは到底できないというのが現状で、助産師教育においては大学のインターンシップ を取っていただければ、より実践能力の高い助産師が誕生すると思います。   現在、私の所で受けている大学院の学生は、20例の分娩介助をして、来年度国家試 験を受けることになりますので、名実ともに即戦力になる学生が育つのではないかと期 待しております。専門職になればなるほど、インターンシップ制を取り、教育を進める べきではないかと考えております。 ○山路座長 平林委員の質問に対しては、助産師側から見た考え方として、結論的には教 育の中身と期間の問題ということになりますね。 ○青木委員 先ほどの座長の話についてはカリキュラム、いわゆる教育内容が古いという こと。大学のことはよくわかりませんが、養成所に関しては、教員人事の硬直化がある と思います。そのようなことが非常に大きな原因で、卒業したときに、所定の臨床能力 と言いますか、そのようなものまで達していない、期待されるところまでいっていない、 そのようなことが大きいのではないかと思います。希望を1つ申し上げたいのですが、 社会保障審議会の医療部会の中間まとめが前回あって、それがほぼ確定に近い状況にあ ることは事実だろうと思うのです。今日の会議には、ここで討議されたことがどのよう な文章になって出ているかということを、委員の方々に知っていただいた上で議論を始 めるというのがルールではないかと思います。   もう1つは、9月に入って、「産科における看護師等の業務」についての議論が始ま る予定と了解しておりますが、そのときに石渡委員から、冒頭であってもなくても結構 ですが、30分ほど委員の方々に話を聞いていただきたいと、このような希望を聞いてお りますので、できましたらここでご承認をいただきたい。今日の話が、今日だけでもし 決まっていくのだとしたら、あまりにも議論がなさ過ぎる。先ほど平林委員が言われた ように、誰だって反対する人はいないが、どのように、どの時期から、どのような形で やっていくかということについて、相当深めた議論をした上で、このような形ではない かというものを出していかないと、いまの医師の臨床研修ですら随分大きな問題を持っ ている。それは辻本委員などもよくご承知だと思いますが、あれによって医師不足が加 速されているといったことに始まって、医師の偏在のところ、給料が高ければその研修 病院に人が集まるとか、そのようないろいろな問題があそこで出されているわけです。   そのようなことがほとんど議論されなくて、医療部会の文章をここに出すべきだと冒 頭に言ったのは、我々がここで2時間話をしただけで、医療部会ではこのような方向と いうことが1行で書いてあるのです。ですから、私たちの責任は非常に大きいので、き ちんとした議論をしなければいけない。方向性はいいと思うのですが、残り30分ちょ っとぐらいではとても議論が尽きることではないと思いますので、最初に、今日で結論 を出して1行で済ますということはないということを、皆さんで合意できればと思いま す。 ○山路座長 青木委員のご意見はご意見として承って、石渡委員のプレゼンについては、 座長としても異論はないところです、後ほど事務局で進め方について、時間配分の問題 は改めて考えさせていただきますが、それはそれでご了解いただけますね。それはそれ で結構だと思います。医療部会の件については、事務局としてはいかがですか。 ○田村看護課長 大変失礼いたしました。青木委員が言われるとおりだと思いますので、 いますぐに該当箇所を、現在まだ最終座長預かりの部分がありますが、看護関係のこの 検討会に関連する部分は、特に修正等のご意見もありませんでしたので、いま準備をさ せております。 ○山路座長 よろしくお願いいたします。配付していただけるわけですね。 ○田村看護課長 後ほどいたします。 ○山路座長 この1回だけでは足りないというご意見についても、改めて皆様方から本日 意見をいただいた上で、合意に基づいてあと1回同じ議論でやるのか、一旦打ち切って、 まとめの段階で再度議論するのかについては、最後に決めさせていただきたいと思いま す。 ○金川委員 先ほど平林委員から質問がありましたが、若干関連して、私はいま大学で看 護の基礎教育を担当している立場の人間です。先に結論ありきではいけないのですが、 結論的には看護協会から2つのことが出されており、これに関しては反対ないと思いま すが、やはり看護の基礎教育が足りない、基礎教育は是非延ばしたほうがいいと思って おります。その理由の中には先ほど助産の問題もありましたが、患者のニーズが非常に 多様化していること、あるいは看護の現場が非常に広がってきていること、高度医療が 進んできているといった理由で、いままでのような3年間の教育で本当に看護の能力が、 いま言ったようなことに対応できるかと言えば、やはり対応ができなくなってきている ということが1つあるのではないかと思います。   先ほど山本委員が言われたように、4年間の中で保健師あるいは助産師、選択とは言 え、そして看護の基礎教育、それに例えば大学という形でいけば、できるだけ教育のゆ とり性を持たせる、人格の形成、教養といったものを入れる、そのようなものを全部入 れ出したときに、いまの4年間の中で、例えば大学教育で保助看もやっている中では、 やはり到底足りない。そのような意味では、助産であれ、保健師であれ、もしかしたら 助産師も異論があるかもしれませんが、看護の基礎教育というのをもう少しきちんと充 実させて、それにプラスという形で進めていく必要があるのではないでしょうか。   そのような意味で、先ほどのいろいろなデータで、新人の看護職の医療過誤、しかも 卒業して間際の方の医療過誤の割合が非常に高いとか、新人ナースが能力のギャップを 非常に感じているとか、その他諸々の背景ということの説明があったわけですので、そ ういったことをきちんとクリアしていくためには、1つは基礎教育というものをもっと 充実していって、カバーをしていける部分がまだ基礎教育の中にあるのではないかと思 っております。 ○山路座長 そうすると、計算的には、1つはいまの3年を全部4年にしてしまうと。 ○金川委員 段階的にということで、薬剤師は6年という話がありますが、一挙にという のはなかなか難しいかなと思います。どこがゴールかという形はあると思いますが、一 歩一歩という意味では、少なくとも4年は必要だと思っております。 ○平林委員 いま委員の方々が言われたことを理解できないわけではないですし、時間的 に足りないという側面も、正直あるのだろうと思うのですが、ただ私が先ほど申し上げ たかったのは、いまの教育年限の中でも、きちんと教育できることはあるのではないか という疑問があったのです。例えば、新人看護職員研修の中で、社会人専門職人として の態度をきちんと身に付けてとか、看護の倫理を身に付けてなどといったことを、入っ てから改めて研修の中でやるというよりも、基礎教育の中できちんと身に付けさせるこ とは十分可能なところがあるのではないか。   もちろん、実際に免許を取って、臨床技術を学ぶためには、免許を取った後での研修 をしなくてはいけないという側面もあることも十分承知しているのですが、あまりにも 臨床研修のところに負荷を与えてしまうと、その前提となる看護の基礎教育の問題が全 部こちらにきてしまうので、そしてその解決方法として年数を延ばせばいいではないか というのは非常にわかりやすい議論ですが、ただその議論をする前に、いまでもできる ことがあるはずではないかと思ったのです。いまできること、できないこと、研修でな ければできないことといういくつかの問題点をクリアに分析した上でこの問題を考え ていかないと、少し安易な解決方法に流れてしまうような気がしたものですから、問題 提起をさせていただきました。 ○野地座長 教育の中身にも問題はないだろうかという話ですね。 ○青木委員 私も平林委員の意見に賛成です。いまの教育課程をもう一度見直して、どう したらより改善できるかということと同時に、研修を考えていけばいいわけで、もう少 し専門的な見直しと言いますか、そのようなことはこれからでも始めなければいけない のではないかと思います。 ○金川委員 それはおっしゃるとおりです。ただ、ここでの検討が、いまの現状の中でど うしたらいいかという1つの問題と、それを踏まえて次という、どの辺までの段階がこ こでの議論かという、そこがいま1つはっきりしないということですので、現状の中で 可能な点というのは少しずつしていくことに反対はいたしません。 ○辻本委員 課長にお尋ねします。平成13年度でしたか、看護教育のあり方検討会のと きに、今日看護教育の中で、特にあれは大学という特定ではあったように思いますが、 もちろんそれが専修学校にも参考にしてもらうという、モデル型と言うのでしょうか、 きちっとしたものの報告があり、その報告会も大々的に行われて、どうあるべきかとい うことは既にできていると私は理解していたのですが。 ○田村看護課長 文部科学省のほうで検討された看護系の大学における、タイトルは正確 には申し上げられないのですが、学生の到達に向けての検討がございました。それは基 本的には看護系大学で到達すべき目標と考えられてはいるのですが、当然看護専門学校 の先生方も、それを横目に見ながら教育をされていると聞いております。それを受けま して、辻本委員にもお入りいただきました、看護基礎教育における技術教育のあり方の 検討会を行い、先ほど対策官が説明した、レベル2をいくつかに分けて、こういったこ とを看護学生が実習の間にやりましょうということを明示させていただいたという経 緯がございます。 ○辻本委員 ということは、既に現場に出て、こんなに危うい状況ではない学生をどう教 育するかということの指針は、あのときの報告書である程度確立されていると理解して よろしいのでしょうか。 ○田村看護課長 その点は、ある意味でガイドライン的なものは出たということではあり ますが、それがすべての看護教育機関において、ねばならないという形では必ずしも通 知はしておりません。これを参考に教育に当たっていただきたいということでございま して、その後大学における技術の到達目標といったものもまとめられましたが、1つひ とつ個別にということではなく、まとまりがある程度大きなまとまりになっていたかと 思いますので、学校によって到達目標というのは、期待される卒業時点の目標というの は違いがあるのではないかと考えられます。 ○辻本委員 ちょっとそれを確認させていただきたかったことが1点と、今日の資料4の 2頁に、論点ということでいくつか項目があります。先ほどの青木委員のご発言も然る ことながら、これを議論するだけでも1年ぐらいかかりそうな内容がここに既に挙がっ ているわけですので、早急に解決できる問題でもないし、ここだけで方向性が見い出せ るものでもないということを、もう少し私たちも認識して、熱い議論をしたいなと思っ ております。 ○山路座長 いま青木委員が指摘された資料が配付されていますが、これについて若干説 明をいただけますか。 ○野口看護職員確保対策官 ご指摘を受けまして、事務局の不明を恥じております。申し 訳ございませんでした。28日の医療部会で、中間まとめの取りまとめに向けて議論が行 われております。結果的には座長預かりとして、文言の修正等をしながら間もなくまと まって、今日できなければおそらく来週ということになると思いますが、中間まとめと して報告されるという段階になっております。医療部会のまとめ自体は、検討の論点と して挙げられている項目ごとにある程度まとめられておりまして、8番目のところで人 材の問題が取り上げられております。   人材の問題をいま全体にお配りしておりますが、24頁の11行目、看護の問題は9行 目から書いてありまして、1つは「本年中に策定する予定の新しい看護職員の需給見通 しを踏まえて、看護職員の養成、確保の計画を進める必要がある」という指摘をいただ いております。まさに、患者の視点に立って医療安全を確保するという観点から、1、 2、3、4と。これは本検討会において、去る6月にまとめていただいた4つの課題を そのまま挙げております。4つの課題、それぞれの論点については、この検討会の中間 まとめにおいて、「一定の制度の見直しを行う方向で整理がなされているところであり、 必要な措置をすべきである。この他の新人看護職員研修等、資質や専門性の向上の論点 について、引き続き検討していくことが必要である」ということで、中間まとめの段階 までに、この検討会としてまとめていただいていた報告を基本的に踏襲すると言うか、 踏まえて、この検討会で出されたような方向性で必要な措置をすべきであるという合意 が、この医療部会でなされたものと私どもは理解しております。   もちろん、この医療部会の報告書も中間まとめですから、また年末に向けて意見書が 取りまとめられます。その中で残された課題も含めて、引き続き検討していくというこ とですので、私どもとしては本検討会でまとめがなされれば、それをまた医療部会に報 告をして、医療部会としての報告書に反映させていただければありがたいという気持で ございます。経過としてはこのようなことで、本検討会設置以来、極めて精力的にご審 議いただいて、まとめていただいた結果が、このような形で医療部会の意見書にも反映 されたという状況です。私どもとしては、この検討会の報告を受けて、具体的にどうす るのかということを、事務的にさらに検討を進めなければいけないと考えております。 ○青木委員 印象ではなく、私がこのようだと理解している点を述べると、例えば2番の 「看護師等の名称独占」、これは法律を改正していくのだということがこの場で決めら れたと思うのですが、それが概要版の形で別紙あって、ここに書いてある下から3行目、 16行目の「必要な処置をすべきである」という言葉となっているわけですので、ここで 決まってきたことというのが、医療部会で、すなわち、このような形で文章が出るだけ で承認されていくわけですから、私としてはそれだけこの会が重いものだと理解してい ます。 ○菊池委員 基礎教育でももう少し工夫の余地があるのではないかという意見も出てい ました。確かに、何でも改善の余地というのはあると思うのですが、ただ看護を実際に 教えている先生方というのは、その辺は非常に心を砕いて、学生1人ひとりをどうやっ て育てようかということを必死で教育しているわけです。それでも、3年間の教育では どうしても教え切れないということを強くおっしゃっているわけです。また、いまの基 礎教育の中で、医行為に関するような臨床技術的なことは非常にできなくなってきてい るという状況があります。先ほどデータを一部紹介したのですが、例えば注射、採血と いった技術は1割に満たないくらいの経験しか学生の間にはしていないという状況で 卒業していくということがあります。   なぜ、そのような侵襲的なことがなかなかできないかと言いますと、先ほどもちょっ と申し上げましたが、患者の立場から見ると、無資格のまだ若い人にやってもらうとい うことについて、非常に恐れる部分もありますし、そのようなことでなかなか同意が取 れないということもあります。病院のほうも責任を持つ立場として、医療事故等を考え ると危ないことをやらせるわけにはいかないということがあって、実際にはなかなか経 験できないということがありますので、国家免許を取った後に医行為的なことをきっち り研修するということは、どうしても必要だと思っております。   病院も医療事故を恐れる部分があって学生にさせないということがありますが、それ は病院側の体制の問題もありまして、いま余裕がない状況で日々の患者の看護をしてい るという中で、実習にきた学生に丁寧に対応できる状況ではないわけです。そうすると、 どうしても防衛的にさせないという方向になりますので、病院の置かれている全体の状 況の問題ということもあります。それはそれで別に解決しなければいけないと思うので すが、そのような状況があります。   先ほど、もう少しいろいろ議論をする必要があるのではないかということが出ていま した。どのように臨床研修を制度化していくのかという具体的な内容、基礎教育をどこ まで、どのように充実させていくのかという議論が必要だというのは、確かにそうだと 思うのです。ただ、全部結論が出てから何か対策を立てたり、法制化するのかというと、 いまはとてもそのような状況ではない。先ほど申し上げましたように、新人の看護職員 は、卒業したときと入職したときのギャップに悩み、医療事故が不安で、離職がどんど ん増えているという状況です。病院のほうも、なかなか育てる余裕がない。先ほどの北 里の例は一部の、本当にいい病院の例だと思うのです。ほとんどの所は、あのようにき ちっとした対応ができない状況になっているということでです。全部が整理できてから 何かをするというのではなく、いまのこの危ない状況というのを認識したら、まずはど のような方向でいくかを決めて、その上でどうするのかということを詰めていくのが筋 ではないかと思います。 ○平林委員 全部決めて、解決してからやれということを言っているわけではなくて、全 体的な問題点の所在を明確にした上で、基本的には菊池委員と結論は変わらないと思う のですが、いまやるべきことをやっていかなくてはいけないと思います。ただ、いまや るべきことをやっていくときに、全体的な大きな枠組みを明確にしておかないと、ます ます現場の臨床研修のほうに負担がかかってしまう。それが本来の教育のあり方かと言 うと疑問なので、そこのところをきちんと明確にした上で、取りあえずはいまやるが、 将来的にはもう少しシフトしていくのだという、そこのところをきちんと踏まえて議論 をすべきではないかということを述べたので、おそらく菊池委員と同じようなことを申 し上げているのだろうと思います。 ○青木委員 同じ意見です。 ○田村看護課長 いつだったか、私からちょっとお話したかもしれませんが、現在のカリ キュラムはもう古いと先ほど青木委員も言われたのですが、平成7年に検討をし、平成 9年の新入生から現行のカリキュラムは動いており、前回検討したときからちょうど10 年経ちます。この間、医療看護を巡る環境は大きく変化してきておりますので、今年カ リキュラム等の改善に向けた検討会を立ち上げたいということで、いま鋭意努力中でご ざいます。そのような意味では、現行の枠内においても、どのような看護の基礎教育を したらいいのかということについては、現在取組を進めようとしていることに是非ご理 解を賜りたいと思います。それを踏まえつつ、いま菊池委員が縷々述べられたような現 場の新人職員、現場の受け入れた看護職の皆さんの状況を、どのようにサポートできる のかということを議論していただけるとありがたいと思っております。 ○青木委員 平成16年度の話だと思いますが、「新人看護職員の臨床実践能力の向上に 関する検討会」というのが開かれて、その検討会のワーキンググループがあって、4回 か5回仕事をして、「研修の指導指針の作成ワーキンググループ」というのもあって、 研修に関するいろいろな内容というのは、この2、3日ですが見て、随分細かいところ まで入っているということは自覚しています。ただ、ちょっと自分でわからなかったの は、医師の臨床研修の場合には、医師の卒前教育の中に、医行為をある程度取り入れて やってきたのです。いま菊池委員の意見ですが、そのようなことには特に触れていない ように見えたのです。そのような問題があります。それから、どの辺りから始めていく のか、期間としてはどのようなことを考えているのか、法的にどのような位置づけにな るのか、このような辺りが何も見えなくて、さあ、やりましょうということはちょっと 乱暴ではないかと思います。学校での卒前の教育の有様をもう少し考えながら、研修が どのような形で行われていくのがいいのかということを、改めて何回か議論して、やる べきことではないかと思います。 ○山路座長 そろそろ時間がきましたが、これからどうしていくのかということも含めて、 少しご意見をいただければと思います。本検討会は大枠のところ、方向性を決めると、 できれば野口対策官からも説明があったように、平成18年度の改革に合わせて、でき ることをまずやろうということ。菊池委員が言われたように、現場は非常に切迫してい るので急がなくてはいけないということもある、それとの兼ね合いの話が絡んでいまし て、なかなか難しい問題があるのですが、本検討会でどこまで突っ込んで議論するのか。 先ほど青木委員の言われたことをきちんと整理するとすれば、改めて別の形での検討会 を開いてやらざるを得ないと思うのですが、それ以前の本検討会での取りまとめはどこ までできるのかということです。 ○青木委員 切迫しているからこそ、80%近かったでしょうか、やっているのです。やら なければ病院が困るのです。しかし、これだけ需給の状況、それを見たいなという気持 が随分あるのですが、人手は足りない、その中で教育をどれぐらいの間に、どれだけコ ンセントレイトしてできるかということを、病院はそれぞれ一生懸命考えながらやって いるのです。これ、厚生労働省が決めました、プログラムはこうです、これだけの期間 です、このような所へ行ってやりなさいと、パッとそれが決まってきたとしたら、医療 機関はそれで納得できるかと言ったら納得できないと思います。 ○山路座長 他にご意見があればお願いいたします。 ○石渡委員 新医師臨床研修制度においては、研修医は既に国家試験を通って研修病院と 契約を結び臨床現場に入っていきます。ところが、今度の看護師等々の問題に関しては、 すでに就業しています。その上で新たに別の研修機関で研修を受けることになります。 その点は、医師の場合と看護師の場合は少し違うのではないかと思います。例えば処遇 の問題などといったところは、医師の場合とは別の枠でいろいろ検討しなくてはいけな いのではないかと考えます。 ○菊池委員 いまから決めていかなければいけないのではないかと思います。それについ ても、医師や歯科医師の場合には、実際に義務化という法制化をした後に、4年とか6 年かけて、そこを詰めて制度を作り上げていったという経緯がありますので、看護の場 合にも同じように考えていくこともできるのではないかと思います。 ○野口看護職員確保対策官 いまの石渡委員からの質問に関して、補足の説明をさせてい ただきたいと思います。確かに、医療界の感覚として、医師はプロフェッショナルであ って労働者ではないという非常に高いプライド感があったのだろうと思いますが、現実 問題、臨床研修の指定病院ないし大学病院で、研修をするという研修が何なのかという ことで、いわば学生と同じような立場であって、労働者ではないのだという理解が大学 を中心にかなりあったわけです。新医師臨床研修制度が始まるに当たりましては、処遇 の向上と研修専念義務ということとも絡みますが、基本的には労働者であるという位置 づけをする。労働者ということが、プロフェッショナルリズムとの関係で誤解がないよ うな意味で言うと、労働基準法も適用されるし、最低賃金も出さなければいけないとい う意味の労働者であるということを前提にしており、これはつい先ごろ最高裁からも、 研修医は労働者であるという判例が出ておりますので、そこは疑いのないところです。 私どもとしては、研修医については、研修する各病院に雇用されているという状況に立 っているものと理解しております。 ○山路座長 そろそろ時間になりますので、特に他にご意見がなければ、この辺でこの問 題については打ち切らせていただきたいと思います。次回もう一度やるかどうかについ ては、事務局と座長のほうで改めて相談させていただき、皆様方にご通知させていただ きたいと思います。一旦打ち切って、取りまとめの段階でご議論いただくのか、もう1 回やったほうがいいのか、ちょっと検討させてください。 ○野口看護職員確保対策官 時間はもう取りませんが、前回の検討会で出された主な意見 について簡単にご紹介させていただきまして、もし補足等があれば、いまでも後でも寄 せていただければ結構です。資料5ですが、簡単にご説明したいと思います。事務局と して整理しましたので、十分な整理になっているかどうかという不安もありますが、そ のような前提でご覧いただければと思います。   最初に、助産所ないし助産師のあり方、位置づけという部分についての議論で、安全 性と快適性ということが助産と病院に関してよく言われるわけですが、いい所を融合さ せなければいけないという意見、あるいは病院で何でもやるのは問題であって、助産所 の役割が拡大できるよう支援すべきであるという意見もありました。あるいは産科、小 児科の医師が不足している現状では、近くになければ妊婦が遠くまで通う必要がある、 分娩の際の産科、小児科の部分でなされた経験という意味だと思いますが、もう子ども は産みたくないという意識もある。消費者の立場、患者本位の安全を考えた場合、助産 所の開業権を狭めないほうが消費者に利益が大きいという意見もありました。   海外の例ということで、オーストラリア等で助産所が活発化している。正常産につい ては快適さ、子どもを育てる視点、医療費の効率化の観点から助産所が評価されている という意見。一方、助産所では正常産しか扱わないが、出産の過程において異常に移行 したか否かを判断するのは、助産師が責任持って行わなければならない。助産師が行う ということが、今回の検討に当たっても、当然議論の前提であるという意見。   助産所も安全の確保が重要であると。正常産については、産科診療所も当然取り扱っ ている。そのような意味では、産科診療所と助産所の役割区分を明確にするべきである。 遠隔から医師の指示があれば、助産所で緊急でなくても異常があった場合の医療ができ るとすることはおかしくて、助産所での取扱い、これは既にガイドラインがありますが、 ガイドラインに沿ってリスクがほとんどない分娩に限定すべきである。   資料にある約束規定は前回ご説明いたしましたが、判断を伴うような薬剤の使用につ いても、事前に医師が認めるかのような表現があり、これは医師の責任の取り方として 大きな問題を孕んでいるのではないか。地域で分娩場所を確保する意味では助産所は重 要であるが、現実に助産所において問題も起きている。医師の指示の下で、助産師がど こまで判断できるかを考えつつ、産科医会としても支援していきたいという意見。助産 師が正常から異常への移行の判断を行うためには、最新の医療水準に即した超音波等の スクリーニング検査を行うことは当然だという意見。助産業務に付随する行為として、 現実に医療水準はいろいろと変わっているわけですが、一体何ができるのか、薬の問題、 緊急処置のあり方について、産婦人科の先生ときちんと議論をして、個別問題の解決を 図っていくべきだろうと。その上で、さまざまな点で合意が取れていければ、プロトコ ールという形で形式が整っていくだろうという意見。   嘱託医制度については、嘱託医という機能が実際にどうなのかの評価が必要であろう と。緊急時のことに焦点が当たっているが、実は身近な相談者としての機能、メリット があったはずだ。妊娠中期におけるスクリーニングの重要性から考えれば、それが嘱託 医師と言うかどうかはともかくとして、日常的に相談できる医療機関を持つことは意味 があるという意見。緊急の場合ですが、緊急の場合であっても、嘱託医師を通さないで、 直接搬送するということは受けられないという医療機関は現に存在している。病院の医 師が嘱託医師になっている場合、たまたまその時間に嘱託医師がいないときには対応し ないという病院もある。そのようなことで、緊急の場合には職託医師を介する余裕がな い状況の中で、直接コンタクトを取って搬送するという状況も一方である。このような 嘱託医と緊急性の問題の議論がありました。   他方、その問題については、緊急の場合に嘱託医師を飛ばして緊急処置ができる医療 機関、搬送医療ということは、ある意味では当然であって不自然とは言えないのではな いかという意見。嘱託医で産婦人科医でない精神科、皮膚科、あるいは産科医であって も分娩を取り扱っていない産科医の場合もあるが、名前だけで、緊急時には近隣の周産 期センターと連携しているという現実であるという意見もありました。   どのように見直していくかということですが、嘱託医の専門、当然産科ですが、産科 であるかどうかということについては、産科でない医師については、やはり問題である と。産科医以外の医師を嘱託医師としたり、あるいはそうせざるを得ない現状があると すれば大変問題なので、これについては必要な改正を行い、早急に対応すべきだという 意見。嘱託医師というのは、緊急性という問題だけではなくて、身近で助言できる医師 という問題、何かあったときに、すぐ対応できる医師、そのような位置づけのものであ る。したがって、産科医が嘱託医師となるように改正すべきである。その上で、嘱託医 師が対応できない問題もあるので、後方医療機関を確保することも必要である。嘱託医 師は1人ではなく2人以上確保すべきである、連帯して責任を持つ体制を取るべきだと いう意見もありました。   問題となる緊急時の連携ですが、医療安全の視点から考えると、正常のお産から異常 へ移行するということはよくある話ですので、助産所と医療機関を連携させることを最 低限の基準とする必要があるだろうという意見。同じような意見で、緊急時には嘱託医 師を介さず、また医師個人ではなくて、24時間受け入れることのできる機関としての産 科医療機関と連携すべきである。嘱託医師制度は、ある意味では名目だけの制度となっ ているので、むしろ、ないほうが2次救急、3次救急とうまく連携できる。むしろ緊急 時の搬送の仕方をどうするのか、医療機関を予め決めておいて、できる限りの検査デー タ等を添付する、助産師が同行するといった方法を決めるほうが重要だという意見。夜 中に何かあったときに、嘱託医師個人に連絡がつき、本当にすぐ処置できるのかが問題 だと。そのような観点からすれば、医療機関のほうが当直医もあり、応処義務もあるは ずなので、より安全なのではないかという意見。   緊急の受入体制そのものについては、総合周産期医療システム、あるいは緊急医療シ ステムという問題の中に、助産所を組み込んでいくべきであるという意見。医療機関の 連携の話については、今後医師でない医療法人の責任者が増加することも予想される中 で、本当に医療法人あるいは機関との連携で安全が確保されるのかという疑問。嘱託医 師必置というだけではなくて、選択的に病院でもよいとすべきではないかという意見。 日常的な連携も重要だろうという観点からの意見ですが、嘱託医師の目的は異常者の対 応のためとする解釈だけではなく、当初から異常にならないよう、助産師と連携しなが ら正常のお産に導いていくという役割も期待されていたので、直ちに緊急時ということ だけで、嘱託医師をすべて医療機関に切り換えることがいいのかはよく考える必要があ るという意見。   連携の方法として、オープンシステムのような形で開業されている助産所の助産師が 病院に来て、実際に入院している妊婦を指導するというあり方もできたらいいだろう。 あるいは病院、助産所双方のスタッフが、自由に相互の病院、助産所について出入りで きる環境をつくること。その連携によって、医療安全も確保されるし、双方ともにメリ ットがあるのではないかという意見。  以上、多方面からご意見をいただいておりまして、うまくまとめられているかどうかと いうことはあるかと思いますが、大体このような意見ではないかということでまとめま した。 ○青木委員 私自身がいくつか発言したことについても異論のあるところがと思います ので、後日連絡をするという形で、再度これを討議していただきたいと思います。 ○山路座長 それでは、後日事務局との間で意見を言っていただいて、修正箇所があれば、 改めてご説明いただくと。 ○野口看護職員確保対策官 修正して、次回の検討会でまた配付し直させていただきたい と思います。 ○山路座長 本日はこれにて閉会させていただきます。どうもご苦労様でした。 照会先 医政局看護課 課長補佐 岩澤 03-5253-1111(2599) 1