05/07/22 医業経営の非営利性等に関する検討会第9回議事録           第9回 医業経営の非営利性等に関する検討会 日時    平成17年7月22日(金)9時30分から11時30分 場所    虎ノ門パストラル 新館4階「プリムローズ」 出席委員  石井孝宜、木村光雄、品川芳宣、武田隆男、田中 滋、豊田 堯、       西澤寛俊、真野俊樹、三上裕司、山崎 學                              (五十音順、敬称略) 議事内容 ○田中座長  ただいまから、第9回「医業経営の非営利性等に関する検討会」を開催いたします。 委員の皆様方におかれましては、ご多忙中のところご出席いただきまして誠にありがと うございます。出欠状況ですが、本日は松原委員がご欠席です。  この検討会は、昨年12月から「非営利性の徹底」、「公益性の確立」、「効率性の向 上」、「透明性の確保」、「安定した医業経営の実現」という5つの柱に沿って、言葉 は別として「認定医療法人」、「出資額限度法人」、「一人医師医療法人」を含めた医 療法人制度改革について議論を重ねてまいりました。その間を思い出していただきます と、昨年12月に「主な論点整理」があり、4月に「今後の議論のたたき台」が出まし た。また、世の中の意見を求め、さらに前回6月には「修正案」が出て、少しずつでは ありますが新たな医療法人制度の体系に向けての方向性が見えてきたと思います。  本日は、これまでの委員の皆様方のご意見を踏まえ、事務局により報告書(案)がま とめられて提出されております。本日の意見の集約に向けて積極的な議論をお願いいた します。初めに事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○山下指導課長補佐  議事次第、委員名簿、座席表、報告書案概要、目次を含めた報告書(案)を配付して おります。 ○田中座長  報告書(案)について、事務局から説明をお願いいたします。 ○山下指導課長補佐  平成16年12月末から、約8カ月間、計5回の検討会を開き、これまでの意見を踏ま え、皆様方からいただいた意見を基に、事務局で報告書をまとめさせていただきました ので、ご説明させていただきます。  まず、目次に沿って全体の構成についてです。「医療法人制度改革の考え方」という ことで、医療提供体制の担い手の中心となる将来の医療法人の姿についてまとめまし た。目次の中で、医療法人というのは当然医療提供体制ということで、そもそもの社会 保障制度から医療法人というのはどのような姿が求められるのかを整理し、さらにその 医療法人制度をめぐる考え方について、3つの観点から整理しております。営利を目的 としないその法人としての考え方。公益性の高い医療サービスを明確化し、さらにそれ を担うための新たな医療法人制度の確立。民間の医療法人と、その医療法人を監督する 県との関係の見直し。今後の医療法人制度改革に向けた、新たな医業経営として3点、 まず効率的な医業経営を支える人材を養成していこう。透明性の高い医業経営の推進を していこう。公益性の高い医療サービスを安定的・継続的に提供するために、どのよう な支援方策があるのか。こういうことについて整理しております。  「報告書(案)」の9行目に、平成15年3月に、「これからの医業経営のあり方に関 する検討会」で、医療法人について国民に信頼される医療提供体制の担い手として、効 率的で透明な医業経営の確立に向け、改革を推進するよう最終報告書が取りまとめられ ました。  31行目から、政府においては別途、平成16年11月に、「公益法人制度改革に関する有 識者会議報告書」を取りまとめた。2頁の2行目から、現行の民法による公益法人制度 を抜本的に改革し、一般的な非営利法人制度としつつ、公益性を有する非営利法人を判 断する仕組み等についての本格的な検討が行われた。  6行目に、併せて税制についてもそれを踏まえて検討が行われている。  8行目から、こうした検討の背景として、今後の我が国の社会システムにおいて、政 府部門や市場経済を中心とした民間営利部門だけでは、さまざまな社会のニーズへの対 応が困難になりつつ、その問題意識が背景としてある。機動的な対応が構造的に難しい 政府部門、また株主が求める高収益率を追求するなど、採算性が厳しく求められる民間 営利部門では、国民が求める医療サービスをはじめとした社会のニーズに十分に対応で きない。このために、個人や法人の自由で、自発的な民間非営利部門による、公益的活 動が果たす役割とその発展を図ることは極めて重要である。  29行目から、このような政府全体の方向性というのは、民間非営利部門の医療法人に 期待される役割と軌を一にしているといえる。  31行目から、我が国の医療法人制度について見てみると、昭和25年に民間非営利部門 として位置づけるための制度が医療法上に創設され、国民皆保険制度の下で医療法人の 開設する医療機関の整備が推進されてきた。  34行目から、一方で市町村合併の推進や、地方財政の改善に向けた取組の中で、自治 体立病院をはじめとした公的医療機関、これらが果たしてきた役割の見直しが進んでお り、3頁に入って、これまで自治体立病院が中心として担ってきた地域の救命救急医 療、またへき地医療など、地域社会にとってなくてはならない医療サービスの提供につ いても、これまで以上に民間非営利部門である医療法人に期待される役割は極めて大き い。そのために、医療法人制度の健全な発展、地域社会からの信頼を高める医療法人制 度の確立等を通じ、機動的な対応が構造的に難しい政府部門や、株主が求める高い収益 率を追求するなど、採算性が厳しく求められる民間営利部門では対応できない医療サー ビス提供の中心的な担い手として、医療法人の役割が改めて見直される必要がある。  9行目から、そのほか医療法人制度に関しては、制度創設時より、一貫して剰余金の 配当が禁止され、営利性が否定された法人制度だが、医療法人の実態として、いわゆる 「持分」があると誤って判断されてきたことを原因として、医療法人の永続性・継続性 が確保できないといった問題が生じており、これについても地域の医療提供体制を確保 する観点から検討する必要がある。  I「社会保障制度から見た医療法人に求められる将来像」として、26行目からこれは 皆さんご存じのとおり、社会保障というのは個々の国民が心身ともに健康で生活するこ とを通じ、国民の「安心感」を醸成し、活力ある社会システムに貢献するもの。  29行目から、社会保障は個人の自助努力だけでは対応できないことについて、共助・ 公助でカバーするという国民連帯の中心として位置づけられるもの。  4頁の4行目から、このような中、健やかで安心できる生活を保障する、そういう高 い使命を果たしながら、限られた社会保障の財源を有効に活用するという役割を果たす ため、社会保障制度が支える医療提供体制の有力な担い手としては、社会保障制度が求 める使命を果たすことを第1の目的として位置づけられている民間非営利部門の医療法 人が中心となることが必要。  10行目から、「営利を目的とする」ことがその本質である営利法人とは違い、「営利 を目的としてない民間非営利部門の医療法人の使命というのは、地域で質の高い医療サ ービスを効率的に提供する」そういったことであり、これが一番の目的となっている。  14行目から、もちろんその医療提供体制の担い手としては、民間非営利部門の医療法 人のほか、いわゆる政策医療を行うために設置された国公立病院をはじめとした公的な 医療機関も存在する。しかし、良質で効率的な医療サービスの提供と、そのための効率 的な医業経営の推進に関していえば、民間非営利部門の医療法人が設置する医療機関で あっても、国公立病院をはじめとした公的な医療機関であっても、地域で安定的に質の 高い医療サービスを効率的に提供することについては違いはない。安易に財政支援等に 頼るのではなく、良質で効率的な医療サービスを、地域で安定的・継続的に提供するた めには、無駄のない医業経営をこういった公的な医療機関は推進して、医療サービスの 再生産のための収益を確保していく。このことについては、設置主体にかかわらず同等 なのだ、ということを述べています。  そのようなことを整理し、32行目から、医療法人制度については、昭和25年の制度創 設後も変わらない「営利を目的としない」という役割の再確認、これが1つ目。2つ目 として、公益性の高い医療サービスを安定的に提供するという現在の医療提供体制に求 められる役割から望まれる、公益性の高い医療法人制度の再構築。3つ目として、医療 法人を監督する都道府県との間の適切な関係の見直し、これらを柱に改革を推進すると 書いております。  それら3本の柱について整理しているのがIIのところです。1番目の柱は、営利を目 的としない法人の考え方について整理しております。24行目の後ろから、規制改革・民 間開放推進会議が、平成16年12月に公表した「規制改革・民間開放の推進に関する第1 次答申」では、こうした医療法人に対して、「実質的に営利法人に近い持分のある医療 法人が多数存続する」このように言及し、株式会社の医業経営参入とともに、医療法人 の経営の近代化、経営の透明性が必要との観点から、株式会社に医療法人の社員として の地位を与えること、医療法人の議決権を出資額に応じた個数とすることなど、株式会 社が医療法人の経営に参画することを可能とするよう求めている。  こうした指摘に対しては、その指摘の妥当性の有無にかかわらず、やはり「営利を目 的としない」ということについて、我々のほうでも改めてその考え方を整理するととも に、医療法人というのは民間の法人でありますが、「営利を目的としない」というもの を再確認しようというふうに整理しています。  それでは、その営利を目的としないということの考え方を整理しますと、6頁の14行 目から大審院判例を片仮名文字で書いてあります。18行目から、大審院判例においても 「毎年利益配当しない場合であっても、解散時にまとめて社員に残余財産ということに して分配することを契約しているならば、法人形態として営利法人と違いがない」とい うことが書かれています。  一方31行目から、昭和32年12月の医務局総務課長回答においては、精神病院の運営を 行っている医療法人の社員の1人が退社することになり、その際出資した土地の返還を 要求している事案に対しての回答です。「退社社員に対する持分の払戻しは、退社当時 当該医療法人が有する財産の総額を基準として、当該社員の出資額に応ずる金額でなし ても差し支えないものと解する」と通知し、これによって実質的に退社社員に対し、退 社時の医療法人の有する財産の総額を基準として、社員の出資額に応じた払戻しが認め られることとなった。土地の現物出資という事案について、土地そのものについての払 戻しを認めることは、継続的な医業経営に支障が生じることから、これに関する当時の 対応として、土地の価額を現金に換算して払い戻すことはやむを得ないものと考える。 しかし、この価額はあくまでも出資当時の土地の価額を基準として行うべきものであっ て、退社時の医療法人の有する財産の総額を基準とするに至っては、配当禁止に抵触す るのではないかとの疑念が残ると書いております。  10行目から、「公益法人制度改革に関する有識者会議報告書」にもあるとおり、「営 利を目的としない」というのは、社団医療法人の社員における権利・義務の内容につい て、出資義務を負わない、利益(剰余金)分配請求権を有しない、残余財産分配請求権 を有しない、法人財産に対する持分を有しない、ということを整理すべきだと書いてお ります。  そのような営利を目的としない法人の医療法人に対して、必要な規律とは何かが22行 目以降に書いてあります。31行目から、医業経営の基本原則(理念)の位置づけという ことで32行目から、地域の医療提供体制の担い手の中心として、地域で求められる医療 サービスを確実、効果的、かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図ると ともに、提供する医療サービスの質の向上、及び経営の透明性の確保を図る、というこ とについて医療法の規定を設けてはどうかと書いております。  「特別の利益供与の禁止」ということで15行目から、法人の設立者、役員、社員又は 評議員又はこれらの者の親族等に対し、施設の利用、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与 の支給、役員等の選任、その他財産の運用及び事業の運営に関して、特別の利益を与え ないことを医療法上明確に規定することを検討すべき。  「剰余金の配当禁止」については、医療法第54条において、医療法上は剰余金の配当 をしてはならないと規定しております。  26行目から、医療法人の非営利性を担保する医療法第54条の規定というのは、非営利 性を担保するための重要なものなので変更すべきではない。一方で、医療法人の適正な 運営に資するという観点から、費用の形で実質的に利益の原資が流出してしまう可能性 を防ぐため、医療法人はその運営に著しく支障を来す経費の負担をしてはならないこと を医療法に明確に規定することを検討すべきだ。  なお、このような規定というのは、医療法人が効率的な経営をするために、適切な内 部手続を経て意思決定された費用負担に対し、影響を及ぼすものではないということ で、医療法人制度の運用に当たっては、法人の経営に支障が生じるというようなこと や、法人の運営が硬直化することのないよう十分配慮することが必要だということも併 せて書いてあります。  9頁の3行目から、「社団医療法人の社員の資格」として5行目から、いま現在は 「社団たる医療法人にあっては、社員たる資格の得喪に関する規定」についての法令上 の規定はありません。  16行目から、今後は医療法ほか関係法令において、医療法人の社員の資格を明確に定 めるとともに、少なくとも営利を目的とする法人が、医療法人の社員となることはでき ないよう法令上措置するべきだ。  19行目から、また社団のほうの医療法人の社員の議決権ですが、社団医療法人への拠 出額に応じた議決権割合を社員に付与することについては、拠出額の多寡によって、社 団医療法人の経営を左右してしまうことになって、営利を目的としないという考え方と 矛盾することとなる。  28行目から、そのために社団医療法人の社員の議決権は拠出額の多寡にかかわらず、 1人1票であることを医療法ほか関係法令において明確に定める必要があると書いてあ ります。  31行目から、医療法人の理事・監事・理事会の役割として、10頁の2行目から、「公 益法人制度改革に関する有識者会議報告書」に沿って、民法の公益法人制度改革が行わ れた場合と同様、医療法人の理事・監事・理事会の役割の法令上の明確化を通じて、各 機関が効率的にその医業経営の実質に向けて有効に機能するようにすべき。  6行目、なお、医療法人の役員の選任に当たっては、当該医療法人内部の適正な手続 に基づいて行われるということで、不透明な手続で役員に就任させるというようなこと のないような、ということを書いております。  8行目、医療法人のガバナンスとして、これについても13行目から「公益法人制度改 革に関する有識者会議報告書」に沿って、財団医療法人については今理事会しかありま せんが、その経営をする理事会の業務を内部からチェックする機関として、評議員会を 医療法上規定するべきだ。  16行目、拠出金ですが、19行目から、「公益法人制度改革に関する有識者会議」報告 書に沿って、社団医療法人の定款の定めるところにより、拠出金制度を選択できるよう にすべき。  22行目、「医療法人の書類の開示」ですが、医療法第52条において、現行でも毎会計 年度終了後2カ月以内に財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作り、常にこれを各事 務所に備えておかなければならないとして、一方でその医療法人の債権者は、医療法人 の執務時間内はいつでも書類の閲覧を求めることができる。また、医療法第51条におい て、毎会計年度の終了後2カ月以内に、決算を都道府県知事に届け出なければならない として、医療法人の経営状況について、債権者や都道府県知事に適切に開示・届出する ことを現行でも求めています。  この規定は今後も維持されるべきであって、31行目、書類の提出を受ける都道府県等 において、管轄する医療法人の経営状況に係るデータを整備して、各医療法人が提出し た書類を閲覧できる体制を整え、これによって医療法人の信頼をさらに高めるべきだと 書いております。  11頁「財務状況に関する医療法人における広告のあり方」として、医療法人の財務状 況や、財務状況に関する情報、一般的には格付情報などについては、個々の医療法人の 判断において、地域社会に対して広告できるような整理とすべきと書いております。  9行目、「医療法人と営利を目的とする一般的な株式会社との関係」ですが、民間非 営利部門の医療法人と、株式会社をはじめとする営利を目的とする法人との適切な関係 を担保するということは、やはり社会保険診療という医療サービスを提供する医療法人 に対する地域社会からの信頼を確立する上で重要ですので、株式会社と役員が同じだと か、株式会社から資金の支援を受けている場合には、当該医療法人において関連する株 式会社の名称を開示しなければならない取扱いとすべきと書いてあります。  「残余財産の帰属」についてですが、これまでは残余財産については、解散時におけ る医療法人の定款又は寄附行為の定めるところによるものとしておりました。23行目、 一方でたとえ解散する医療法人においても、これまで有していた医療機能、例えば入院 の機能を地域において継続させることが求められる。このため、債権者や医療法人に財 産を拠出した拠出者との関係を整理した上で、解散する医療法人の残余財産に関して、 法制上の配慮を行う規定が必要であると書いてあります。  28行目から、医療法人が解散する場合の残余財産の帰属先については、これまでの定 款又は寄附行為に定めるという規定を改め、解散した医療法人の残余財産は、社団医療 法人の解散の際は総社員の同意を得、かつ都道府県知事の認可を受け、また財団医療法 人の解散の際は、都道府県知事の認可を受けて、国・地方公共団体又は他の医療法人に 帰属させることを医療法上規定するべきである。その際、都道府県知事は医療法人の解 散認可を行うに当たって、都道府県医療審議会の意見を聴くということとして、解散時 の手続の透明性の確保を図るべきだ。  12頁の2行目、なお、この場合においては、当分の間経過措置を設けることとし、取 扱いの変更によって既に設立されている医療法人の経営に支障がないよう配慮すべきだ と書いております。  5行目以降は、その他ですが、医療法人の改革については、民法の公益法人制度改革 と十分整合性を保ちながら改革を進めていくべきだと書いております。  今までは、一般的な医療法人の非営利の話でしたが、14行目以降は、さらにその中で も公益性の高い医療を行う医療法人の確立ということで書いております。21行目から、 これまで医療法人というのは積極的な公益性は要求されないものとして、その仕組みが 構築されてきたところですが、医療法人の中には積極的に公益性を求めるものがいるこ とや、一方で自治体立病院をはじめとした公的医療機関がこれまで担ってきた、「公益 性の高い医療サービス」を、公益性の高い民間非営利部門の医療法人に担っていただく ということで、地域社会の要求に応えていくことが求められており、新たにその公益性 の高い医療法人制度を再構築することによって、このような求めに応える必要がある。 その際、現行の医療法に規定されている特別医療法人制度については、以下に掲げるよ うな公益性を取り扱う仕組みや、公益性の高い医療を提供する医療法人の規律を新たに 医療法に規定することを通じ、公益性の高い医療法人自らが、「公益性の高い医療サー ビス」を一定程度担うことによって、地域に積極的に自らの役割を説明し、もって患者 や地域社会から支えられるものとして位置づけられるようにするべきだと書いておりま す。  13頁の6行目から、法人の話の前に、公益性の高い医療サービスというのはどういう ものかを整理しております。7行目から、医療というのは積極的に不特定多数の利益の 実現を図ることを基本としたサービスです。また、医師法において、診療に従事する医 師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければこれを拒んではならな いということとされ、これによって日本の医療サービスが広まっていく。また、さらに 国も社会保険制度で、このような医療サービスを支えることによって、医療サービスの 普遍化が図られてきました。  13行目から、一方でさまざまな理由により医療サービスがすべての地域、またすべて のサービス内容にわたっては提供されていないという実態もあることは事実です。24時 間365日いつでも救急医療を受けられるという医療サービス、へき地という人口が少な い所であっても、等しく提供される医療サービス、災害医療や精神科救急医療など、医 療従事者が自らの危険を顧みないで提供されるサービスなど、社会保険制度を通じて、 通常提供される医療サービスと比較しても、継続的な提供が困難を伴うものもある。そ れでも、やはり地域社会にとってなくてはならないという医療サービスというのがあ る。  これは、これまでは国や都道府県等による財政支援でもってそのようなサービスの提 供を支えてきたところである。しかし、その財政という資源が限られる中で、このよう に地域社会にとってなくてはならない医療サービスが、行政の財政支援だけに頼らざる を得ないという構造が将来も継続していけるかは疑問がある。今後の社会のあり方を考 えると、行政のみの関与の下で、医療サービスを提供するのではなく、民間非営利部門 の医療法人が自ら主体的にこのような医療サービスを担えるようにすることによって、 地域社会の求める医療サービスを充足していくことも重要な方向性である。  「官」によるサービス提供ではなく、民間の「公」という視点を高めることは、豊か な社会のあり方としても望ましい。このため、「公益性の高い医療サービス」として は、通常提供される医療サービスと比較して、継続的な医療サービスの提供に困難を伴 うものであるにもかかわらず、地域社会にとってなくてはならない医療サービスと定義 し、行政だけではなくて医療サービスの提供者、医療サービスを受ける患者などをはじ めとした、地域社会からの参加を求めながら、地域で「公益性の高い医療サービス」の 具体化を図っていく手続を整備するとともに、これらを客観的に評価できるような仕組 みを設けることを通じて、民間非営利部門の医療法人が自由な発想の下で、公益性の高 い医療サービスを地域のために積極的に提供していくこととして、もって公という視点 を高めて豊かな社会を構築することが必要と書いております。  14頁の3行目から、地域社会にとって必要とされる公益性の高い医療を客観的に評価 できる仕組みとして、9行目、「公益性の高い医療サービス」を具体化していく作業は 非常に困難ですが、一方で、その地域に適切な供給が難しい医療サービスが存在するこ とも確かだということで、18行目から括弧でありますが、このような公益性の高い医療 サービスについて、アとして、救命救急のために常時医療を提供するものであること。 イとして、居住地域や病態の程度にかかわらず、等しく医療を提供するものであるこ と。ウとして、医療従事者に危害が及ぶ可能性が高いにもかかわらず、提供することが 必要な医療であること。エとして、患者や地域の医療機関に対し、無償で相談助言や普 及啓発を行うものであること。オとして、高度な医療技術などの研究開発や、質の高い 医療従事者の養成であって、科学技術等の進歩に貢献するものと整理しております。そ の具体的なものとして、いちばん最後に別紙を付けております。これは最後にご説明し ますが、こういうものを具体的な公益性の高い医療サービスということとしておりま す。  14頁の33行目、このような「公益性の高い医療サービス」というのは、まさにさまざ まな時点からの透明性のある議論を通じて確立されていくべきものである。また、時点 ごとの絶え間ない見直し作業、地域のきめ細かなニーズに対応した、都道府県による具 体化作業が考えられるということで、このような公益性の高い医療サービスを具体化す るとともに、その手続についてもきちんと整備しましょうということで、15頁の5行目 から、アとして、まず厚生労働省において具体的な「公益性の高い医療サービス」の内 容、それと、これを客観的に評価できる指標を提示する。イとして、そのような、具体 的な公益性の高い医療サービスの内容と評価できる指標については、いわゆるパブリッ クコメントなどを通じて、国民からの幅広い意見を聴く。ウとして、パブリックコメン トなど、国民からの意見を通じ、具体的な公益性の高い医療サービスの内容については 法律に位置づけること。エとして、法律に位置づけられた「公益性の高い医療サービス 」の内容については、常時客観的に評価できる指標でもって、地域社会から評価される ようにする。一方でオとして、具体的な「公益性の高い医療サービス」の内容について は、厚生労働省のほうで国だけで決めるものではなく、都道府県知事においても一定の 手続を経て別途具体化できる手続を設けることが必要だと書いております。  一方で18行目から、医療サービスを担うさまざまな開設主体というのは既にあります が、このように「公益性の高い医療サービス」を、このような手続を通じて具体的に明 確になった場合には、特に国公立病院を中心とした公的な医療機関がその範を示すべき ことは言うまでもありません。今後は、これらの医療機関は積極的に「公益性の高い医 療サービス」を提供することが求められるとともに、これら公益性の高い医療サービス について、地域で提供することができない公的な医療機関は、地域社会から厳しい評価 を受けることとなると書いております。  29行目から、公益性の高い医療サービスを提供する医療法人に求められる規律につい て整理しています。その規律を検討するに当たって31行目から、医療法の特別医療法人 や、租税特別措置法に規定される国税庁長官の承認を受ける医療法人、これを「特定医 療法人」といっていますが、その規律を基礎として考えるべきだ。  16頁1行目から、一方で政府において検討されている公益性を有する非営利法人の規 律との整合性も図ることが必要だ。それとともに現行の特別医療法人、又は特定医療法 人の規律であっても、医業経営上支障があるような規律については極力見直すべきだと 書いています。また、公益性の高い医療サービスを提供する医療法人の規律を検討する に当たっては、医療法人自らの地域社会に対する積極的な情報公開を通じた自主的・自 立的な規律を基礎として考えることとして、県や国の事前規制についても極力見直す方 向で検討すべきだ。  続いてそれぞれについて整理していますが、9行目の「情報開示」の件については、 29行目から、患者の視点に立った医療サービスの提供が今まで以上に求められている 中、医療機関を経営する医療法人、とりわけ「公益性の高い医療サービス」を担う医療 法人については、社会福祉施設を経営する社会福祉法人との整合性のある対応が必要 だ。そのための法制上の措置を検討すべきだ。  役員の報酬等については、17頁の1行目、あまりに多額になると法人として不適切な 利益配分となるおそれがある。また、本来「公益性の高い医療サービス」を担うための 資源配分を阻害する可能性もあり、役職員の報酬等が不当に高額なものであることは望 ましくない。  5行目から、一方でそのような役員の報酬について基準を一律に設けることは、効率 的な医業経営の実施に極めて支障が大きいので、医療サービスの提供や医業経営の実施 の面から、有能な役職員を確保する観点からも問題がある。  9行目から、このため役員の報酬については医療法人の自立性を尊重するということ で、役職員に対する報酬等の支給規程を、地域社会に積極的に情報開示することでもっ て対応するべきだ。その際、現行の特別医療法人、特定医療法人の要件で、役職員の給 与制限については見直すべきだと書いています。  14行目から、「同一の親族による支配の制限」ということで、やはり公益性の高い医 療サービスを担う医療法人については、同一親族が占める割合については3分の1以下 とするといった規律を医療法上設ける必要がある。  19行目から、「理事長の資格要件の見直し」です。医療法第46条の3では、医療法人 を代表し、その業務を総理する理事長の資格要件として、医師又は歯科医師であること を求めています。これは、医療サービスという人の生命、健康に著しく影響を及ぼすも のを提供するためには、医療サービスを専ら提供する医療法人の経営に携わる者につい ても一定の要件を求めることとされ、原則として医師又は歯科医師の資格が必要とされ たものだ。  一方で昨今の医業経営を取り巻く厳しい状況を考えると、診療というだけではなく て、28行目から、(1)医療法人が患者に提供する包括的なサービスのあり方をどうする か。(2)質の高いサービスを持続的に提供するため、従来の取引先との関係をどう見直 すか。(3)多様な専門的な職種をどのようにまとめるのかという、いわゆる経営の判断 というのも必要な資質として挙げられます。  33行目から、こうしたことを踏まえるとともに、従来の特定・特別については都道府 県知事の認可によって、医師又は歯科医師でない理事のうちから理事長として選出する ことができる、という取扱いに鑑みると、地域社会から求められる「公益性の高い医療 サービス」を担う医療法人の理事長については、3行目から、医師又は歯科医師である 理事のうちから選出するという原則を維持しながらも、当該医療法人がそれぞれの状況 に応じて、人材を幅広く求めることを可能とすることも有用だ。  言い換えると、地域社会から求められる「公益性の高い医療サービス」を担う医療法 人の理事長については、当該医療法人自らが多様な人材から的確な者を選ぶことができ るよう、医療法上の規定を見直すべきだ。併せて、このような法人については、地域社 会からより高い信頼を得ながら、医業経営を推進することが求められることから、当該 医療法人を代表する理事長に関し、医療法人の設立や、理事長の変更などの県知事の認 可又は届出の時点において、当該理事長の名称を開示するといった取扱いとすることも 検討に値すると考えられると書いております。  13行目、「評議員会の設置」です。18頁の24行目、評議員の一定数が、その同一親族 で占められることのないように留意しながら、地域社会から求められる、「公益性の高 い医療サービス」を担う医療法人において、評議員会を設置できるよう医療法上明確に すべきだ。  31行目、「公認会計士等による財務諸表監査」です。地域社会から求められる公益性 の高い医療サービスを担う医療法人については、行政による事前規制でなく、地域社会 に対する積極的な情報公開を通じた自主的・自立的な規律に基づいた位置づけにする必 要がある。  19頁、特に医療法人の経営については、4行目から、公益性の高い医療サービスを担 う医療法人のうち、一定規模以上のものについては、公認会計士や監査法人による財務 諸表監査を受けなければならないものとする。  7行目から、一方でこういった財務諸表監査を受ける医療法人については、現行の医 療法施行規則第30条の34の自己資本比率の規制を適用しないことが必要。また、これら の医療法人については、経営上必要な資産について適正に管理され、かつ処分を行う場 合には適正な手続に基づいて行われるということを条件として、保有する現金等の預け 入れ先の規制についても適用しないということが必要だということを整理しています。  19頁の14行目以降は、3本柱の最後の関係でIII「今後の医療法人と医療法人を監督 する都道府県との関係」ということで整理しております。21行目、従来は救急医療など 収益性の低い医療は公立病院でなければ実施できないといったことが暗に前提とされて いましたが、今後はどのような医療サービスであっても、地域で効率的に提供されるた めにはどうすればいいのかという観点から、医療提供体制を考える必要がある。  27行目から、今後は民間非営利部門の医療法人と県との関係が重要で、今後の県の役 割は自らが自治体立病院を設置し、直接的に医療サービスを提供する役割から極力撤退 し、医療サービスに係るルールを調整する役割、医療サービスの安全性、アクセスの公 平性を監視する役割に転換することが求められる。  33行目から、そのためには医療法人の設立認可や合併等の事務については都道府県知 事部局において、設立認可等に係る審査基準や、その審査に要する期日についてあらか じめ明確に定めておくこととして、行政による不透明な裁量が極力及ばないようにする べきだ。これによって、民間非営利部門の医療法人が円滑に事業展開できるようルール を明確にする。  2番目として、民間非営利医療法人が、今後とも効率的に経営できるよう、例えば療 養環境の向上を制限しているような合理的でない規制について、引き続き見直しを行っ ていくべき。3番目として、医療法人の経営が今後とも透明性が確保され、効率的に推 進されるよう、医療法人制度の見直しを行うべきだと書いてあります。  併せて休眠法人、病院や診療所などで活動していない、それでも存在している医療法 人が休眠状態になっているものについては、きちんと県において速やかに法人の設立認 可取消しを行うよう努力すべきと書いてあります。  このようなことを整理し、最後に今後の医療法人制度改革に向けた新たな医業経営の あり方として、15行目、「効率的な医業経営を支える人材の養成」が大切ということ で、23行目、今後は医業経営を支える人材の養成について、関係省庁と協力しながらそ のあり方を厚生労働省は検討すべきだということ。  26行目から、「透明性の高い医業経営の推進」ということで、21頁の1行目から、医 療サービスの提供と医業経営は車の両輪であることから、医業経営をする者が医療サー ビスを効率的に提供するため、自らその経営実態を把握することは不可決だ。もちろん 経営規模において、中小企業と同程度の医療法人には十分配慮しながら、医療法人に必 要な会計はどういうものがいいのか、今後ともその医療関係団体の意見を踏まえながら 検討を深めていくことが求められる。  また、当該医療法人の経営実態について、他の公的医療機関や同種の医療サービスを 提供している医療機関と比較等を行うことを通じて、より客観的に把握することも重要 だ。  10行目から、今度は「公益性の高い医療サービスを安定的・継続的に提供するための 新たな支援方策の検討」ということで、14行目から、このような医療法人に対しては、 医療法人に従来認められている医療機関債の発行のほか、証券取引法に基づく有価証券 としての公募債の発行、社会福祉事業や、医療保健業以外の多様な収益事業の実施、寄 付金税制や法人税制など、医療法人に係る税制上の優遇の検討など、公益性の高い医療 サービスを安定的・継続的に提供することを可能とするための基盤整備が求められる。 また、厚生労働省においては医療法人にかかわる行政指導の根拠、また医療法人に対す る課税関係など、ルールの明確化に一層取り組んでいくことが重要だ。  21行目から、公募債の発行などが可能となるようなこういった医療法人については、 従来以上に地域で安定的に効率の高い医療サービスを提供する必要があるため、効率的 な医業経営を推進することが求められる。その際、当該法人の経営実態を把握し、かつ 経営状況について客観的、対外的に説明責任を果たすことが、地域社会からの理解と支 持を得るために必要だ。このためには、「公益性の高い医療サービス」を担う医療法人 における適切な会計基準の導入を促進するべきだ。  28行目から、我が国において、金融機関が医療法人に対して融資を行う場合、医療法 人の理事長ほか経営に携わる者の個人の連帯保証を求めることが慣例として通用してい ます。これについて1番として、融資の際の信用補完の役割があること。2番として、 理事長の経営責任を担保する役割があること。3番として、医療法人から理事長など個 人に資産が移転した場合であっても、当該資産を保全する役割があることなどを理由と して、現在我が国の金融機関で広く通用しているもの。  一方で、このような個人の連帯保証に関しては、医療法人の経営の状況にかかわら ず、一律な対応が行われ、結果的に医療法人の経営に携わる者の意欲を阻害する面も否 定できない。このため、今後とも公的な信用補完制度を通じ対応がなされている中小企 業施策を参考にしながら、医療法人が地域で安定して医療サービスを提供できるよう、 その支援方策について引き続き検討することが望まれると書いております。  最後になります。このようなことで整理し、16行目から、繰り返しになりますが我が 国の医療提供体制は、民間非営利部門の医療法人が中心となって担うべきものであり、 これらの主体が自主的に地域の医療を担っていけるよう制度を構築していくことが重要 だ。その意味では、地域の医療提供体制は行政主体から民間主体へと転換しつつあり、 この医療法人制度改革というのは、それを後押しする重要な改革だ。また、従来は公的 医療機関が中心となって担ってきた「公益性の高い医療サービス」についても、住民の 支援を得ながら、民間非営利部門の医療法人が担っていくということは、今後の豊かな 「公」の社会の実現に向けても重要な転機だ。厚生労働省においては、こういった重要 な改革を確実に推進するため、今後も医療関係団体と今まで以上に議論を重ね、新たな 時代の医療法人の役割の実現に向け努力すべきだと整理しています。  最後の頁ですが、公益性の高い医療として、医療計画に位置づけられるものとしての 整理をしております。上の表は繰り返しになりますので言いませんが、下の表は現時点 で考えられる公益性の高い医療というものとして、この例をずらっと整理しておりま す。事務局からのご説明は以上です。 ○田中座長  各委員の意見をまとめる大変な作業をしていただいて感謝いたします。ただいまの説 明について、ご意見、ご質問をお願いいたします。 ○品川委員  今まで、私はこの検討会でも、現状懸念されるような問題から問題点を指摘してきた つもりです。この医療制度がどうこうなるということについて、個人的にはニュートラ ルな立場でいるつもりです。たまたま、日医と日本医療法人協会の研究会等で、医師側 のいろいろな実情も伺っている立場から、この報告書全体を見させていただいて、果た してこれで皆さんが納得できるのかどうか、現場で相当なパニックが起きるのではない かということを率直に懸念しております。問題意識の考え方から、頁ごとに追って見解 を伺います。  3頁の11行目、「持分があると誤って判断されてきたことを原因」云々と書いてあり ます。この「誤って判断」というのは、昨年医政局長が国税庁に対して、出資額限度法 人の取扱いについて照会してきたわけです。また、それらはこの検討会の1つのテーマ でもあったわけです。「誤って」と言われると、もともとあの照会自体は持分を前提に して言っているわけですから、持分があると判断されてきたということであればともか く、「誤って」とここまで書かれると、この検討会のメンバーの1人として私はいささ か憤慨です。  別に誤って判断したわけではなくて、従来からそのように解釈されてきたので、ここ はあまりにも判断が偏向しているのではないかと考えられますので、ご一考していただ ければと思います。  もちろん、医療法第54条、第56条の解釈については、今までそれぞれ見解の違いがあ ることは確かですから、それはどういうふうに評価するかはともかくとして、片方の見 解は誤ってと判断することは、ちょっとそこは問題があるということを1つ指摘してお きます。  最大の問題は、この文章からいくと8頁から12頁にかけてが、現在の医療法人の取扱 いに関する最大の考え方の違いを整理しているところであります。要するに、去年まで の考え方については、前回のこの検討会でもそうですけれども、できれば一般の医療法 人については3類型にすべきではないかと要望が強かったです。この意見では、そうい う検討の余地はないのだ、もう2類型しかないのだということで、そして12頁のところ で、現在ある医療法人については経過措置を設けて、経営に支障がないよう配慮すべき だと謳われているわけであります。  そもそも出資の概念、特に10頁に拠出金の問題があります。「拠出金制度を選択でき るようにすべきである」となっているのですが、第54条の規定の「配当してはいけない 」というのは、もともと出資があるから配当してはいけないという書き方になっている のではないですか。そうすると、もし出資という概念が全くないということであれば、 配当してはいけないという規定も必要ないわけです。配当というのは、もともと出資や 資本に対する見返りの問題です。もう1つは、この拠出金制度を選択できるという、選 択できる反対概念として、出資という概念をどう考えているのかということが若干わか りにくいところです。  最大の問題である、11頁から12頁にかけて先ほど指摘したような、現在約4万の医療 法人があって、そのほとんどが一人医師医療法人なのです。一人医師医療法人について は、当然そういう中小の医療法人がなぜ医療法人になったかという問題については、我 が国においては中小企業が法人になるのと同じような選択肢、即ち所得税や法人税の税 負担をできるだけ法人制度を活用することによって低減しよう、ということが根底にあ ることは否定できないと思います。  そういう考え方が、今回実質的に否定されることになるわけです。それが、医療法人 の1つの政策的判断として必要であるということであれば、それはそれで構わないと思 うのです。ただ、現在ある4万の医療法人について経過措置を設けると。医療法人の経 営に支障がないよう配慮するというと、経営に支障がないように経過措置を設けるとす ると、これは永遠になってしまいます。5年とか10年で経過措置を定めたら、必ず経営 に支障を来します。少なくとも、いまある剰余金について何らかの形で取り崩さざるを 得ない。取り崩す過程で税金の問題が生じますし、あるいは取り崩すことによって4万 の医療法人の財務内容は非常に弱体化することは目に見えています。それらのことをど のように判断するのかということ。  今後、一人医師医療法人が選択できない。今までの4万の医療法人がそのまま移行で きても、これから医師になって医療法人化して、地域医療に努めようとする人にとって は、こういうことが全く可能にできなくなってまさに差別が起こるわけです。これに対 してどう責任を持って対応していくのか、その辺が非常に懸念されるわけです。ほかに も何点か問題があるのですけれども、それらはほかの先生方もいろいろお考えだろうと 思います。いずれにしても、11頁と12頁辺りを中心に、その辺の見通しを是非お伺いし たいと思います。 ○山下指導課長補佐  ただいまの品川委員のご発言に対して、私どもがこの検討会の報告書をいただいた上 で、厚生労働省がどう対応するかをまず述べさせていただきます。営利・非営利のとこ ろが、この検討会の考え方の出発点だと思います。中小企業というのは、いわゆる株式 会社の中小企業ではなくて、中小規模の非営利法人をどうするかということではないか と思っております。  つまり、今までの整理で、もしこれが違うというのであればまたあれなのですが、非 営利法人というのは配当をしてはならない。配当というのは、資産を持っている人に対 して、その資産を持っていることに対して分配をしてはいけないということだと思って います。それを維持するのであれば、持分という資産に対して、その資産に応じた配当 をするというのはやはり営利法人だと言われかねないので、そこを整理すべきだという のが基本認識としてこの検討会にはあるのではないかということを考え、我々はそのよ うなことで議論をしてきたのではないかと捉えております。  一方で、11頁のように残余財産をこのように書くといかがなものかというのは、12頁 ですが既に設立されている医療法人については、当然残余財産について、今までの残余 財産の取扱いを定款で自主的に定めることができるということが、法律において国・地 方公共団体又は他の医療法人の中からしか選べないということをするというのは、確か に既に設立されている医療法人にとっては非常に経営上重要な変更になる。  そのようなことに対して、法律を作る観点からすると、当然一律なある時期からとい うことではなく、経過措置を設けるべきだと。それが、いつになったらなのかというこ とについては、法律の改正に当たっての技術的な話ではありますが、いつかということ は行政がつまり、法律を作るほうが予測がつかない、この場合には「当分の間」という ことにおいて、その時期については明示しないということが法律を作る場合のルールで すのでそのように書いております。  繰り返しになりますが、まずは営利・非営利、中小規模ではありますが、非営利の法 人としてどうあるのか。資産の分配というのは非営利法人はしないのだということが前 提となった、この検討会の議論を踏まえたものと私どもは認識しています。 ○品川委員  1つの理念的な問題はともかくとして、私が前回指摘いたしましたのは、医療法第54 条と第56条の解釈がどうかということと、解釈が困難であれば立法的な手続をとるべき ではないか。その解釈論と立法論の整理がこの問題については必要なのです。  第56条にはここに書かれているように、定款で定めたらその出資者に対して戻しても 構わないというふうにも解釈できますし、現にそういうふうにやってきたわけです。そ れであるからこそ、11頁には、32行目の所で「国、地方公共団体又は他の医療法人に帰 属させることを医療法上規定すべきである」と。規定すべきであるということは、現行 法上は解釈上限界があるので、新たに立法的に解決しようというふうにされているよう に思えるのです。  そうであれば、現行法の54条、56条という考え方は、54条は年次配当はしてはいけな い。56条は定款の定めがあれば、最終的には残余財産は出資者に対して戻してもかまわ ない。それが現にずうっとまかり通ってきた。そして、これはそういう前提であるから こそ、昨年は出資額限度法人について、医政局長が国税庁に対して照会を出して、特定 の要件を満たせれば、出資額限度法人として扱うという回答までもらっているわけです ね。もし、解釈上、そういうのはもともと戻ってこないということであれば、あんな照 会なんて必要ない。  また、現在ある国税庁の財産評価基本通達の194の2にある、医療法人の出資の評価、 これも昭和59年にできて国税庁と医師会、医療法人協会と、いろいろな経緯が繰り返し てきて、この会場にはその生き証人の方もおられるわけです。そういう必要も全くない わけで、そういうことが何十年間続いてきたということは、56条の解釈がそうではな い。また、この11頁の32行の意見は、その解釈を一応是認しているからこそ、医療法 上、もう一度立法論的に解決しようとされているのではないですか。それは冒頭の誤っ た判断に云々ということに全部絡んできますけどね。  私は別にここで問題を拗らかそうとかそういう含みは毛頭なくて、この考え方ができ るだけスムースに受け入れられることを願っての発言ですので、そこは誤解しないでい ただきたいと思います。もし、このままやったら、非常に現場が混乱するということを 憂慮してのことですから、対立関係で議論をするのではなくて、そこのところをよくご 配慮していただければ、結論自体については私は特に何も言う立場ではありません。税 務の現場をずっと見てきて医者の税金問題も私も何十年も見てきておりますので、この ままいってしまったら、これは大変。ここにお2人もの専門家が揃っていますので、そ の辺、補足的にお伺いしていただければと思います。 ○山崎委員  いまの話は結局、非営利ということをどういうふうに担保するかということだと思い ます。したがって、解散時に従来どおりに定款に基づいて出資額に応じて返還できると いうことにしてしまうと、非営利の根底が崩れてしまいます。したがって従来継続して いた法人については、ある程度財産権というか、そういうものがあるわけですから、経 過措置として認めるということであって、新規につくる法人については、非営利を徹底 とするということで、出資に応じて解散時に返還するという項目を削除するということ で、私はこれでいいと思っています。 ○木村委員  私は税理士として中小の医療機関の会計税務や経営指導に当たっていますが、この検 討会の動向を現場では将来に大きな影響を与える問題として、例えば医療法人成りをこ れからしようという方が、決断しかねているのです。というのは持ち分有り無しの関係 なのです。自分が持っている財産を提供する同族色の強い医療法人ですから、一般では 一人医師医療法人と言われていますが、そこに自分の財産を医療行為に注ぎ込む。それ が、剰余金の持ち分がないというのはやはりちょっと違和感というか、抵抗があるので す。個人財産を投げ打ち、しかも自分が経営するわけですから、そこの実体的な現場の 感覚というものも尊重しなければいけないと思うのです。  もう1つは自分の作った医療法人を、将来自分の子供に医療法人を承継させるため に、出資金を剰余金込みの時価で贈与しているのです。相続のときに一度に課税される と高額になりますから、毎年贈与しているのです。それは財産権を自分の子供に承継し ているわけです。それがある時、突然、持ち分が額面のみということになりますと、何 か当初の予定していた時価贈与の効果が経過措置後に無効になってしまうとしたら、そ れが果たしていいのかどうかということです。医療法で定める非営利というのは、医療 行為そのものは公益性が高いわけですから、それは問題がないと思います。  一方で品川委員もおっしゃっているように、課税庁はあくまでも医療であるとかない とかではなくて、あくまでも所得や財産権という視点で、一般の医療法人には企業と同 じ課税をしていますし、そこに医療法と課税庁の考え方が一元化していないところに問 題があるのではないでしょうか。相続のときに相続税が現実に課税されているわけです から、一人医師医療法人というものを持ち分ありの同族医療法人として認めるというこ とができないものなのかなと。公益性の高い持ち分のない公共的法人と拠出金のみ返還 権を認める非同族の一般法人、さらに一人医師医療法人のような剰余金の相続権を認め る小規模同族法人の三類型にして考えてもいいのではないか。医療法人の同族割合と財 産権の範囲の組み合わせで考えてもいいのではないかと、そのように考えます。 ○石井委員  私も品川委員がお話いただきました実務家の1人で、20年以上にわたって医療法人に 関与しています。また、日本医療法人協会の意見書作成段階の委員でもあります。日本 医療法人協会での整理の中心は営利を目的とする医療行為をしないということの定義論 でありまして、意図して営利目的での医療を行えないことをもって、医療法における非 営利だという前提に立ち、出資持ち分の定めのある法人を存続するという見解に賛同い たしました。  しかしながら一方で、社会全体からの要請の問題があり、この検討会の報告書でいえ ば5頁の第1次答申の見解や7頁の有識者会議における非営利の定義がありまして、こ のこととの対応関係をどうしても考えなければいけないという観点からの整理も不可欠 となりました。私自身は前回検討会の際に抽象的ですが、「今までとこれから」の整理 をどうしていただけるかということを申し上げました。確かにいまここで提出されてい る検討会報告書の考え方を適用した場合には現場は混乱すると思います。いまいろいろ ご意見があったような形での議論というのが出てまいります。  ただ、もう1つに、在り方検討会時代から議論をしてきました株式会社参入という問 題がありまして、株式会社が参入をした場合の医療界における混乱という問題と、現実 にこのような形で医療法人の新しい整理をした場合の現場における混乱というのは、い ったいどちらが医療界におけるところの影響の度合が大きいのかと考えたときに、どう しても世界標準としての非営利性に関しては、先ほどの4つの定義がありますので、財 産権を残した上で非営利だという主張をし続けられるかということに関しては、非常に 弱いという理解をせざるを得ないのではないかと考えます。そこで最終的には、ここに あるように、少しそこのところが抽象的であやふやな部分がありますが、今までの4万 件に関しては当分の間は、基本的には今までを踏襲していただいて、これからに関して は新しい2類型の制度という整理をしていただいたのは、ぎりぎり最低の線なのかなと 私自身は理解をしています。  実務家としての私は現場の混乱、そして在り方検討会以降ずうっと関わりを持ってき た医療法人の在り方を議論してきた人間といたしましては、社会的要請としての株式会 社参入があった場合の混乱、これをどうしても比較考量した場合に、個人的には最終的 にはやむを得ない、今回の検討会報告書をもって、とりあえず「是」という議論を私自 身はせざるを得ないと思っています。  ただ、先ほど品川委員が3頁で言われた「誤って」という言い方はちょっと適切性に 欠けるのではないかというふうには理解をしていますし、当分の間ということに関して は、やはり法律上の定義があるかと思いますが、まさにいまある4万件に関する措置と いうのは十分にご検討いただくないしはご了解いただくのが必要であると考えます。今 回の医療法人制度改革に関する検討会報告書の最終到達点は、ある意味苦渋の選択かと 思いますが、結論を出さざるを得ないと理解をいたしました。 ○品川委員  補足して、先ほどの営利か非営利かという問題、あるいは株式会社参入論の問題に関 しても、それはいろいろな認識上の問題があると思うのです。株式会社参入論というの は、いわば黒船が来たからといってさっさと城を明け渡すようなもので、今まで城に安 住していた人をみんな城から外に追い出す。それが先程おっしゃったように、そちらの ほうの弊害のほうがむしろ大きいかもわからないですね。こういうやり方をされるより も、むしろ黒船に上がってきてもらったほうがはるかにいい、というふうな医療法人も たくさんいると思うのです。  そういう問題ともう1つは、財産権の問題。私もある雑誌で実は「医は仁術か算術か 」というコラムを書いたことがあるのです。私もいま日医の仕事にかかわっていろいろ なことを個人的には考えさせられているのですが、人間の行動を医療のサービス提供に おいては、効率性ということは非常に重要なのです。効率性の問題はやはり人間である 以上、財産権がある程度保証されていなかったら、そのために一生懸命に頑張るので す。それを一切阻害するというやり方は非常に問題が多いわけです。  現に我が国の医療で最も効率性の悪い、あるいは収支状況の悪いのは国公立病院で、 言うならば無責任体制が整っているから、かけ声は効率効率と言っても、実際は非常に サービスの悪い医療を提供しているというのが実態だと思うのです。私もそういう所に 入院してこりごりしたことがあります。現実の問題と、建て前と本音の問題、確かに医 業で営利を目的にするのは私は間違っていると思うのです。  ただ、非営利だからといって、持ち分は否定する財産権は否定するというのはあまり にも短絡的で、もう少し両者を融合できるようなことを考えないと、本当に効率的のあ る医療サービスの提供というのは難しくなると思うのです。そこはただ観念論だけでは 事が済まないと思います。それは単なる1つの感想です。 ○田中座長  出資額限度額法人のほうの持ち分の話と、解散時に貯まっていた剰余金なり土地の値 上がり分が配当されるという話は別ですよね。 ○山下指導課長補佐  はい。 ○田中座長  出資額限度という以上、出資額は戻るのですね。 ○山下指導課長補佐  はい、出したものは。 ○田中座長  そこがいま議論が混乱したと思うのです。 ○山下指導課長補佐  はい、混乱しています。 ○田中座長  一人医師医療法人をこれからつくる方々も、財産がなくなるわけではないですね。 ○山下指導課長補佐  はい、説明させていただくと、財産が没収されるわけではありません。例えば診療所 を開設する、病院を開設する場合に、自分の土地を出して、それで法人成りをする。そ れは非営利であっても可能です。それがたとえ事業の不能によって法人をたたむ場合、 出したものは返ってくるので、土地を出したのであればその土地は返ってきます。もし 医療機器を自分で出したのであれば、それも返ってきます。出したお金も返ってきま す。  ところがそれは出したものがそのまま返ってくるのであって、それに利子が付くと か、もしくは値上がり益が返ってくるとか、土地がお金になって返ってくる、値上がり も含めて返ってくるとかいうことがないということで、財産が没収されることは新しい 医療法人であっても、非営利法人であってもそれはございません。 ○三上委員  いまの議論でこの医療法人制度に関する理解のというか認識の仕方が、税務当局と、 厚生労働省側とでかなり違うのだなということがわかったと思います。その「誤った」 という文言は私が入れたのですが、実際には医療法の中で医療法人制度は、医療機関の 継続性とか永続性を担保するために位置づけられた今までなかったタイプの法人で中間 法人とも言えるかもしれないのですが、それを医療法人側、医療機関側も十分医療法の 趣旨を理解せずに、出資したのだから、これは全部自分の持ち物だというふうな認識 で、出資金を法人株のような形で譲渡したり相続したりしてきた。  それに対して税務当局も、医療法の中でどういう趣旨で医療法人制度ができたのかと いうことを十分理解せずに、そういう形で全て普通の営利法人と同じような形で課税し てきた。ですから、そういう医療法人側も、あるいは税務当局側も医療法を十分理解せ ずにそういう判断をしてきたということが、今回こういう見直しのきっかけになったの だろうと思いますから、ここは私は「誤った」と書いていただいたのは、ちゃんと頭を 下げて謝った姿をみせ、ここで一から出直すのだということを明らかにする意味では、 いいのではないかと思っています。 ○真野委員  今までの流れと多少違うかもしれませんが、多少関係はあるのです。個人の話と医療 法人の話が多分あって、つまり大きな医療法人、ここに見える委員の方の所はあまり影 響がないかもしれませんが、先ほど品川委員からお話のありましたように、今後、何か やっていくという場合、医療もどんどん展開していくわけです。新しい技術なども入っ てくるわけですから、そういったところで新しく何かやろうという人は当然いるわけで す。医師でも新しくやろうと、開業しようとする人はいるわけですが、その人たちが医 療法人という制度を選ぶか、個人でやるという考え方を選ぶかで、今回個人の話という のは、ある意味、医療法人の話が中心なので出ていないわけです。  何らかの形で今後その辺の整理もする形に、報告書の雰囲気として全くないというの がよくわからないなというところはあるのです。もちろん個人の場合、財産というのは 確実に守られるわけです。であれば医療法人ではなくて、少なくとも当面は個人のほう にしておいたほうが、という判断をする人が増えるのではないかなという懸念がちょっ とあるのです。 ○山下指導課長補佐  個人と法人とありますが、私どもの認識として個人でやることに対していけないとか いうことは全くありません。個人というのは自己実現を図るために一生懸命活動をす る。その対価としていくらもらうのか。私は公務員の立場ですが、それが例えば自営で しかも1人で個人でやっていく場合の対価については、それは自己実現に対する、やっ たことに対する自分の活動に対する経済的な評価があるわけで、個人の活動について、 その行為を営利だ、非営利だということではないと思っています。  つまり医療というのは非常にその技術があって、それに対しての医療からの評価があ って、それに対して1人で稼ぐということに対して、それらを営利だとか非営利だとい うことは、個人についてはないのだろう。我々が問題としているのは法人という形態に おいて、営利、非営利というのが出てくる。それは自己実現としてやっていることだけ ではなくて、その結果資産を持っている人に対して配当することが、医療法の観点から すると、それは非営利の観点を守るべきなのではないかと考えているということです。 ○真野委員  今回の報告書に対しての意見では必ずしもなくて、医療全体の提供という立場で見た ときにもちろん個人は、山下さんの言われるような形かもしれませんが、医療行為は個 人も結構提供しているわけです。だからそういう視点で見たときにどうなのかなと。今 回医療法人の話が中心だからいいのですが、医療を提供する人たちが今後も新しくたく さん出てくるわけで、その人たちが医療法人という制度を選ぶのか、個人でやろうかと いう話というのは、当然あり得るわけです。その辺も今回はないにしても、今後、少し 整理していかないと、どういう形になるのかなという感じです。 ○谷口指導課長  今回は法人の話ですので、個人にはあえて触れていませんし、正直申しまして触れる 必要はないと私は思っております。ご指摘のように個人というものについて、医療をや っていただくことには、おっしゃるとおりに違いはございません。その部分については 医療計画の検討会がありまして、今般報告をまとめていただいていますが、少なくとも 今後の医療計画の進め方について、法人であれ個人であれ、やはり地域の医療を提供し てくださる医療資源については、どのような形できちんとサポートしていくか、もっと 言えば頑張っていただくか。そういったことをちゃんと医療法の中に位置づけることは 大事だろうと私自身は思っています。  そういう形での個人なら個人に対するさまざまな、個人でも公益的な部分だと当然言 われるでしょうから、そういう部分がある程度あるとすれば、行政として支援をしなけ ればいけないと思っているので、そういった形での位置づけを考えていけばいいのでは ないかと思っております。 ○三上委員  一人医師医療法人をいちばん多く抱えている医師会の立場として申し上げます。一人 医師医療法人も、医療法人ということで位置づけられているということは、やはり永続 性とか継続性とかいう、いわゆる公益性のある医療行為を長くその地域に提供し続ける ということのために、設けられた法人への道を開く制度であると理解をしているわけで す。単なる個人商店が法人成りにするという場合と少し意味合いは違うと考えるべきで はないかと思っています。  ただ、先ほど言われたように、財産権の侵害になってはいけないし、今までずっと50 年間こういう持ち分があるという形でやってこられた方々にとっては、そのまま継続す ることが当分の間できるということですし、新たにされる場合には、そういった医療法 の中に定められた医療法人というものがどういうものなのかということをもう一度考え ていただいて、個人でやるのか法人でやるのかを選択していただくことが正しいのでは ないかと思っています。 ○西澤委員  今回の検討会の前に「これからの医業経営の在り方に関する検討会」がありました が、そのときに議論をしたことは、いま国民の意識も変わってきているし、これからの 少子高齢化社会に対して、どのように医療を提供したらいいのかということだったと思 います。その流れで、では、そういう社会において医療提供側である医療法人はどうあ るべきかという議論をしてきたと思います。ですから、この報告書は我々医療法人とい う立場から見ると、かなり厳しいなというのが実際の感想なのですが、しかし、いま言 った流れの中で考えると、我々もその中でどうあらなければならないかという議論をし てきたと思うのです。そういうことでは今回の落としどころとしてはこの内容でいいと 思います。  私たち医療法人がどうあるべきかを自分たちの視点よりも、もっと国民の視点に立っ ての議論の中での報告書だということでご理解していただきたい。我々提供側もそうい うことで理解して、自分たちの在り方、今までは非営利、公益性と言いながら医療界だ けで通用する非営利という見方で、ともすれば見てきた。しかしながらこれからの公益 法人制度の在り方などを見ると、社会全体の非営利、公益性というのがあって、それと のずれがあったのであれば、そのずれを直していかなければこれからは国民の信頼は得 られない。そういうことをこの報告書の中できちんと謳ったつもりです。ですから、大 きく言えば、この報告書が出ることによって、我々提供側が国民からの信頼を得るとい いますか、その1つのきっかけにもなるのではないか。そのためには我々も少し痛みを 伴っていかなければということです。 ○田中座長  先ほどの石井委員のご発言もそうでしたが、大きい環境の中で出ていた報告書です。 ○武田委員  西澤委員がおっしゃいましたように、時代の流れといいますか、ものの考え方、価値 観がずいぶん変わってきているわけです。私個人のことを申しますと、1つは300床の 個人病院は2年前に持ち分なしの法人にいたしました。寂しいところもありますが、財 産権というのは人それぞれの考え方なので、全てが財産が欲しい、それで持ち分なしに する、あるいは出資額限度法人にするのが嫌だとか、そういう考え方をもっていない人 も、かなりあると思うので、その辺の財産権に拘って云々ということは全てでないとい うことはご承知していただいておくほうがいいかなと思っています。 ○品川委員  たまたまいま財産権の問題は言われるとおりで、これはいろいろな人がいろいろなこ とを考えているわけで、私が申し上げたのは、そういういろいろな生き方を保障してお いたほうがいいのではないかと言っているだけの話ですから、そこをどうこうというつ もりはありませんが、ただし、医療全体の問題を考えると、実は昨日たまたま経済産業 省とか、別の団体のいろいろな税理に関する研究会があって、その中で医療費は国民が どこまで負担できるかという問題があるのです。そういう立場からいくと、こういう持 ち分とかいうことは、ある意味では極めて小さなことなのです。要は国民経済全体から 見たら、総医療費をどうやって抑制できるか、その抑制するためには医療サービスは、 もっと効率的にしてもらいたいということなのです。  昨日も「厚生労働省と日本医師会は信用できない」という発言があったので、「い や、そうではない」と弁解にこれ努めて、私は相当かばっておきました。世の中は結局 はいまのままでいったら、どんどん医療費が膨れ上がって、国民経済が破綻してしまう のではないかということを非常に懸念しているわけです。いまここで議論をされている ことは、ある意味では非常にマイナーなことなのです。ただ一人医師医療法人の4万人 の人たちのことを思うと、このやり方だけではいささかと思う、それだけのことです。 ○山崎委員  この報告書の21頁の29行目です。理事長の債務保証というか、連帯保証の話ですが、 私の所も出資額限度法人に切り換えたのです。それで病院を改築するという話になっ て、30数億の借入れをした。そうすると、福祉医療機構から、借入金額について理事長 ともう1人連帯保証の判こを押せということで押させられました。債務保証の在り方を きちんともう1回整理してほしいのは、一方では経営の透明性とか財産権の担保がある 程度できなくなる。一方では巨額の債務保証を理事長という地位だけで判こを押せとい うのはおかしいと思います。  銀行にどうしてこういう2人の債務保証を取るのだという話を聞いたら、政府系の金 融機関がそのような債務保証の仕方をしているから銀行も横並びでやっているのだと、 こういうことなのです。これは非常におかしい話であって、経営の透明性を我々にそこ まで追求するのなら、この債務保証の仕方も新たに検討の場をきちんと作っていただき たいと思います。 ○三上委員  いまの話に関連してですが、経営責任の取り方というのはどういうものなのか。公益 法人あるいは民間も株式会社もあるでしょうけれども、経営責任というのは経営者がど こまでとらなければならないのかということで、権利と義務という考え方もあります が、権限と責任というのも当然あるだろうと思うのです。債務保証もそういった中で理 事長としての権限があるということで、責任をとるという考え方なのだろうと思います が、それが釣り合っているかどうかということだろうと思います。  一般の公益法人はほとんど、何年間理事長を勤めたら退職金をもらって辞めるという 形で、そこが破綻しようが、自分の財産には傷がつかないのだというところで、どんな 責任の取り方をしているのか。特定医療法人なり特別医療法人の場合は、持ち分を放棄 していますが、経営責任は全面的にとっているのです。逆に言えば理事長を辞めても債 務保証が続くということが起り得るわけですから、その辺のところを一般の公益法人 と、こういった医療関係の一般医療法人の中の公益性の高い部分というのを、どういう 感じで区別するのかということを考えていただきたいと思います。 ○田中座長  今回の報告書とは別ですが、問題提起として承りました。 ○豊田委員  ここの委員会で、検討会ではいろいろな議論がありましたが、今回まとめられた点に ついては、ここへ納まったということはベストではないですが、それなりの評価ができ ると考えています。  ただ、今までも制度があったわけですが、医療法人の何が悪かったか、何が問題であ ったかと言いますと、従来も医療法人制度があったのですが、結局その制度を育ててい くといいますか、それを普遍化させていく裏付けとなる税制の問題がほとんどなかっ た。従来も例えば特定医療法人という非常に厳しい条件で、医療法人についても8%ほ どの税制の軽減は多少ありますが、そのほかはほとんど何もない。同じような公益性で はかられる社会福祉法人と比較しますと、まさに天地の差があります。そういったこと で、規則ばかりが厳しくて、それを裏付ける税制がほとんどなされていなかったという ことがあるわけです。  今回、せっかくこの制度面で新しいいろいろなことを取り入れていくわけですし、特 に高度の公益性をもったグループと、出資額限度法人といった形になるわけなので、是 非この面については、これらの新しい形の法人に対しては、きちんとした税制的な裏付 けを獲得できるように。これは意見ではなくお願いなのです。これから我々も頑張りま すが厚生労働省に是非これはお願いしておきたいと思います。その点がこれからのいち ばん大きな問題であるので是非実現していただきたい点です。 ○山崎委員  もう1つ、これは本検討会とはあまり関係がないと思うのですが、せっかく局長が見 えているのでお願いをしたいのです。「医療法」という言葉ですが、あれはいかにも役 所が監督するというニュアンスが非常に強い言葉だと思います。したがって、この報告 書にも入っていますように、「医療サービス」という言葉を使って、「医療法」を「医 療サービス法」というふうに変えるとか、あるいは公益性の高い医療サービスを担う法 人についても、「地域医療サービス法人」など、もう少し一般国民が聞いてわかりやす い、馴染むような法律の名称、あるいは法人の名称をお考えいただければと思います。 ○木村委員  確認をさせていただきます。「認定医療法人」という言葉が出てきますが、これは特 定医療法人と特別医療法人を併せて新たな対応にするという意味なのかというのが1つ です。もう1つは、改正後の新設の医療法人は出資額のみの財産権が認められるのかど うか、確認させていただきます。 ○山下指導課長補佐  まず後者ですが、非営利法人、いわゆる出資額限度法人といいますか、新設の法制度 後の法人については、出したものは返ってきます。拠出したものは拠出した額がそのま ま返ってきますが、利子はつきませんが、そういうものです。 ○木村委員  持ち分ではなく拠出という考え方ですね。 ○山下指導課長補佐  それを持ち分とかいうところがちょっとあれなのですが、その持ち分となると出した ものが時価で全部どんどん積み上がっていくという観点ではなくて、出したもの、つま り自分の出したものが、そのものがずうっといつまで経っても価値を変えずにあって、 それがそのまま返ってくるというのが、拠出したものが返ってくるということです。 ○木村委員  持ち分なしではなくて出資額限度法人という意味ですか。 ○山下指導課長補佐  そうです。 ○品川委員  それは赤字になっても戻ってくるのですか。 ○山下指導課長補佐  公益法人の有識者会議の報告書にも書いてありますが、それを出して当然、債権・債 務者との整理が解散時にありますね。それは「劣後する」と書いてあるのです。つま り、もし解散時に債権者がたくさんいて、その整理をした段階で拠出したものまでも資 金化して返さないといけないようなことをした上で返ってくるということで「劣後する 」と書いてあるのです。 ○品川委員  すると貸付金でもない、出資金でもない。貸付金の悪いところと出資金の悪いところ が重なったという、極めて誰でも出したくないお金ですね。そんなことで医療法人の財 政基盤が整うのですか。 ○木村委員  いま解散時と言われましたが、解散時でも出資額は保証されるのですね。 ○山下指導課長補佐  出資額という言葉だとあれなのですが、拠出したものは返ってきます。一方で、認定 医療法人、これはずうっとこれまで(仮称)ということでした。今回、山崎委員からも ありましたが、そこは逆にアピールしたい、公益性の高い医療法人というのをこれから 再構築していくのだという際に、どういう名前がいいのかは私もあまりあれですので、 逆にいろいろと意見をいただければと思っています。考えとしてはここに書いたよう に、いま木村委員が言われたようなことで考えています。 ○木村委員  それは改正後の新設の法人の場合の取り扱いであって、現行の法人は改正後であって も出資額のみではなく、剰余金も持ち分があるということですよね。 ○山下指導課長補佐  旧のほうは何があるかというと、「残余財産は定款で定める者に帰属する」というこ とが旧医療法人はずっと残るということです。それが出資とかいう言葉は我々はあまり 医療法にも書いてありません。 ○石井委員  そろそろ方向が出たようなので、最後に会計士としてのスタンスとコメントを一言だ けさせていただきます。私は、前の在り方検討会の時代から病院会計準則との絡みの中 で医療法人の在り方議論と関わりをもたせていただいたように思っています。この非営 利性等検討会に関しましては、いまご議論がありましたように、創立以来50年以上経過 した医療法人制度についての基本構造、それ自体の再確認というか再評価と、新しい改 革という、非常に踏み込んだ議論をして考え方を検討したという流れがあります。この ため、私が最も専門としている会計に関する議論が結果としてはほとんど行われており ません。しかしながら、この報告書の中の21頁辺りには「医療法人に必要な会計はどう いうものがいいか」ということに関して、「今後とも医療関係団体の意見を踏まえなが ら検討を深めていくことが求められる」と記載されています。  また、同じ頁の中で、「公益性の高い医療サービスを担う医療法人における適切な会 計基準の導入を促進するべきである」ということで明記をしていただいていますので、 今後とも引き続き医療法人の会計の基準に関する部分に関しての検討は継続されると、 理解をしています。過去、私も関わりをもちましたが、2年間にわたって行われた3つ の厚生労働省の研究事業を、できましたらその際には十分に活用していただいて、今後 の検討に生かしていただければと、切に会計学の一研究者としてお願いをしたいと思っ ておりますので、よろしくお願いいたします。 ○田中座長  これもガバナンスに関わる重要な点ですので、そういう要望があったと承っておきま す。 ○山崎委員  11頁の残余の財産の帰属についてですが、30行目の所に、「社団医療法人の解散の際 は、総社員の同意を得」と書いてあるのですが、これ1人でも反対をしたらどうなりま すか、事務局に聞きたいのですが。 ○山下指導課長補佐  社団法人というのは人の集まりです。普段の判断は当然、社員総会に諮ったうえで、 過半数をもって可決するということですが、解散については、人の集まりですから、そ れぞれの人が、それぞれの思いをもって医療サービスをやっていくために集まった法人 です。それが残念ながら何らかの理由で解散をする場合には、それを過半数で決めると いうものではない。つまり、それはそれぞれの人の意思の集まりでできた法人ですか ら、そこは「総社員の同意を得」というのは、もう既に医療法にも書いてあるのです が、解散をする場合に、もし1人でも反対をするのであれば、そこは解散には至らな い。 ○山崎委員  要するに解散できないのですか。 ○山下指導課長補佐  はい、「総社員の同意を得」というのは、それなりの重いものと考えています。 ○山崎委員  そうすると、1人でも反対をしたら解散はできない。 ○山下指導課長補佐  そういうことです。つまり、ここは行政がどうのこうのというよりは、その法人のほ うで解散という重要な意思決定をする時にどうするかということなのです。1人のもの では当然なくて、社員が1人だけだったらあれですが、それは社員一人ひとりの集まり としてできた法人形態で、1人1票という中でやるときに、普段の意思決定は過半数で すが、その場合の解散は総社員の同意が必要になります。 ○石井委員  いまのことでちょっとお伺いしたいのですが、医療法人の医者がいなくなって、医療 施設だけは残っている。しかし、他の医療法人には渡したくない。そうすると、総社員 の同意が得られなくて宙に浮くわけですね。他の医療法人には渡さないけれども、他の 医療法人に貸し付けて賃料をもらうことは可能なのですね。 ○山下指導課長補佐  石井委員の言われることがよくわかりませんが整理をすると、いまの話は医療法の55 条の1項5号なのです。社団法人というのは社員の集まりでできた法人ですから、社員 が全くいない場合にはしたがって。 ○石井委員  私がむしろ言いたいのは、総意というのが実際的でないのではないか。構成員がいな くなってなおかつそういう。 ○山下指導課長補佐  解散の事由には、定款で定めた解散事由の発生と、もしくは目的たる業務がもうどう 考えてもできないということ、あとは総会の決議、他の医療法人との合併、そして社員 の欠乏と破産手続開始の決定と、あと行政庁から設立認可の取消を受けた場合がありま す。これが解散の事由です。社員がいる場合での解散は総社員の同意ですが、もともと 社員がいない場合には社員の欠乏事由に当たるので、それはすぐに解散手続が始まるこ とになります。すみません、委員の言われた意味を誤解していたのです。社員が全くい ない場合には社員の欠乏ということで、そもそも社団医療法人の法人としての格がもう なくなるということです。 ○品川委員  先ほどの質問でまだ答がもらっていないのが1つあるのです。10頁の「拠出金制度を 選択できる」ということに関して、先ほど木村委員からご質問がありましたが、「出資 と拠出金制度が選択できる」というのは、他方には出資金という概念がまだ残っている ようにも思えるのです。そして、医療法人が欠損を抱えたような場合に、先ほど出資に ついては弁済がいちばん最後に残ると言われましたが、拠出金でしたらこういう制限は なくて、欠損になった場合には他の債権者と同じ資格で、同じ割合で弁済が可能になる のですか。  要するに社員3人で1億円ずつ出資をし3億円、それは出資しても持ち分も何もない から、とにかく拠出金で1億円ずつ3億円医療法人に拠出する。しかし、その後、経営 が思わしくなくて、財産が1億5,000万に減った、ほかの債権者もいるという場合に、 この拠出金だと他の債権者と同じ資格で弁済してもらえるのですか。 ○山下指導課長補佐  そこは劣後します。 ○品川委員  拠出金の場合も劣後するのですか。 ○山下指導課長補佐  そうです。つまり、それは公益法人の有識者会議報告書にも書いてありますが、まず はその法人の債権者が先。 ○品川委員  そうすると出資と拠出金は変わりがないということですか、選択できるとなって、何 か別な制度のように読めたので気になったのです。 ○山下指導課長補佐  違います。選択できるというのは、拠出金をしないでつくる社団法人もあれば、拠出 金を選択した法人もあると、そういうことです。 ○品川委員  この拠出金というのは、従来言っていた出資金もみんなこの拠出金の中に入ってくる のですか。 ○山下指導課長補佐  そこは新しい法改正後のものはこうだと。 ○品川委員  もう出資金という概念はない。 ○山下指導課長補佐  ないです。 ○田中座長  ほかによろしいですか。これまだ新しい制度改革なので、実際にこれから各論に細か く考えていくと、またテクニカルな問題にぶつかるかもしれませんが、そこはまた皆様 方の意見を個々に伺ったりすることもあるかもしれません。報告書としては今日ご意見 を承ったところ、大筋これでよろしいという感触を得ました。品川委員からいくつかテ クニカルな点でこう変えたらとのご指摘がございました。大数というわけではないの で、品川委員のご意見は議事録にこういうご指摘をいただいたと。 ○品川委員  私は今まで日本医師会と日本医療法人協会のいろいろな意見を集約したりして、2階 に上がったら梯子がなくなったという感じで、張り合いのない仕事をしたものだなとい う感じはしますが、しかし、これでよろしいということであれば、よろしいのではない ですか。 ○田中座長  品川委員の問題意識は現在の公開の原則に則りまして、議事録としてずっとホームペ ージ上に残りますので、歴史が判断するということです。報告書につきましてはこれで とりまとめて、私どもとしては局長にお渡しすることになると思います。皆様方それぞ れの立場からいろいろとご協力をいただきましてありがとうございました。とりわけプ ロセスでの熱心な議論がむしろためになるので、報告書はそれぞれの意見を少しずつ切 り取って出来上がるため、全員の賛成ではないのかもしれません。プロセスで私たちが 議論をしたことが後々これからの医療の在り方に大きなプラスになるのだと思います。 それを忘れないようにします。これで終わりにいたしまして、岩尾医政局長から一言ご 挨拶をいただけるということでございます。 ○岩尾医政局長  どうも先生方ご多忙の中、半年以上にわたりましてご議論をいただきましてありがと うございました。  この会の前の在り方検討会のときからもそうですが、私どもが言われていましたの は、先ほど出ました株式会社の参入の問題と、それから公的な病院といいますか公立病 院との。これは日本の医療制度が始まってからずっとこうなっているわけですが、公私 のイコールフッティングをどう考えていくかということも時代の要請としてずっと科せ られております。特に一連の社会保険病院の問題だとか、国立病院の問題も含めて、制 度改正をしていく中で、地域に必要な医療資源というものを公私にかかわらず、同じよ うな状況にもっていかなければいけないのではないかという中で、1つは医療法人とい うものにも民間のほうから少しでも公益性あるいは、もちろん非営利ということを中心 に考えていかなければいけないというのが問題意識でございました。  先ほど山崎委員からお話がありましたが、医療法ができてから長いこと経っているの ですが、見れば見るほど、やはり医師のやることだから間違いないだろうというので、 法律にしては性善説に基づいて書いたような気が私はするのです。本来、法律というの は悪いことをするから取り締まるための法律、で医療法も取り締まりの法律だと思うの ですが、結構、性善説なのです。そういうところが解釈の問題とか、さまざま今日齟齬 を来してきたのではないかという点については、18年度に向けての医療保険を始めとす る一連の医療制度改革の中で、私ども医療法、医師法も含めて一連の改正をしたいと思 っています。チャンスとしては、そういうものにこれも乗せていきたいと思っていま す。いちばん関心のあるのは、やはり税制度との問題だろうと思います。これも特に医 業経営という中でいちばん大きな関心事でございますので、こういう点についても、十 分これから財務当局と、この報告書を基に詰めていきたいと考えております。  株式会社参入の時に先生方にご協力をいただきましたが、非営利の設定と公益性の確 保ということで、私ども今後とも医療法人の在り方、あるいは日本の医療というものを そのような立場で考えていかなければいけないと思っていますので、引き続き皆様のご 協力とご理解をいただければと思っています。本当に長い間どうもありがとうございま した。 ○田中座長  検討会を通じて非営利性とは何かということについての理解も、ずいぶん深まったと 思います。法人の利益の有無の話と、目的としての医療は違うことが明らかになりまし たし、専門家としての個人の、先ほどの山下指導課長補佐の言葉ですと自己実現です か、その話と営利とはまた違う、非営利とは利益がないとの理解ではない、二重否定に なります。非営利とは利益があってはならない話ではなくて、上位目的のための法人存 続の利益は非営利性とは相矛盾しないことも明らかになってきた点、大変この検討会は 価値があったと思います。最後に事務局から今後の報告書の取り扱いについて説明をお 願いいたします。 ○谷口指導課長  本日も大変活発なご議論をいただきましてありがとうございました。今回の報告書の 内容を踏まえまして、今後の医療提供体制全般のご議論をいただいております社会保障 審議会医療部会のほうに、今日の報告書の内容を報告しまして、部会における議論に反 映させていただきたいと考えています。併せまして18年の法改正を睨んでいるわけなの で、関係省庁との具体的な協議も進めてまいりたいと考えておりますので、またご指導 のほどよろしくお願い申し上げます。 ○田中座長  それではこの検討会の最後の会の議事をこれで終了いたします。お忙しい中をご出席 を賜りましてありがとうございました。                                    (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 大門 龍生(内線2560) 医療法人係長  伊藤 健一(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194