05/07/06 第10回がんに関する検討会議事録 第10回がん検診に関する検討会議事録 日時:平成17年7月6日(水)14:00〜16:00 場所:経済産業省別館8階827号室 <議事内容>  1.開  会  2.議  題    (1) 大腸がん検診についてのヒアリング    (2) その他  3.閉  会 <議事内容> ○三浦老人保健課長 それでは、定刻となりましたので、第10回がん検診に関する検討 会を開催させていただきます。  委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にあ りがとうございます。  前回、第9回が3月22日に開かれておりますが、それに引き続きまして、大腸がん 検診についての御検討をいただくということにしております。  第9回から委員の構成が若干変わっておりまして、新たに御参加いただくことになっ ており、前回欠席されました坪野委員が、今日ご出席されていますので、御紹介申し上 げます。坪野委員でいらっしゃいます。 ○坪野委員 東北大学の坪野です。よろしくお願いします。 ○三浦老人保健課長 次に、本日の委員の御出席状況でございますが、土屋了介委員か ら御欠席の御連絡をいただいています。  それから、渡邊委員でございますが、御出席予定ということでございますが、手術が 長引いておりまして出席できない可能性もあるというような御連絡をいただいていると ころでございます。  それから、今日は3人の参考人においでいただいておりますが、お一人到着が遅れて いるという状況でございます。参考人の意見陳述は後ほどでございますので、まず、座 長の方から本日の進行をお願いいただければと思います。よろしくお願いします。 ○垣添座長 皆さん、こんにちは。蒸し暑い中をお集まりいただきまして、誠にありが とうございます。それから、参考人の皆さんには、御出席いただきまして誠にありがと うございます。  それでは、ただいまから第10回がん検診に関する検討会を始めさせていただきます。 よろしくお願いします。  まず、事務局から資料の確認をお願い申し上げます。 ○神ノ田課長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。  資料をクリップでとめておりますが、それを外してごらんいただければと思っており ます。一番最初に、議事次第を用意させていただいております。その下の方に用意させ ていただいた資料を一覧に整理しておりますので、こちらもごらんいただければと思い ます。  資料1でございますが、事務局提出資料として「大腸がん検診の現状等」ということ で用意させていただいております。  資料2が、斎藤委員の提出資料で「大腸がん検診の精密検査や対象年齢について」と いうことでございます。  資料3が、関原参考人の提出資料、「大腸がん患者の立場から」でございます。  資料4が、島田参考人提出資料、「先進的な取組をしている団体の立場から」でござい ます。  資料5が、佐野参考人の提出資料、「大腸内視鏡の専門家の立場から」ということでご ざいます。  また、そのほか前回の検討会で配付させていただいておりますが、祖父江班でおまと めいただいた『有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン』の普及版を参考までに 配付させていただいております。  以上でございます。何か不足等ございましたら、事務局までお知らせいただければと 思います。 ○垣添座長 よろしゅうございましょうか。  それでは、参考人の皆さんからお話を伺う前に、前回第9回検討会の宿題事項があり ますので、まず、それを片付けてから参考人からのお話を伺わせていただきたいと思い ます。どうぞ事務局からお願いします。 ○神ノ田課長補佐 それでは、御説明いたします。資料1をごらんいただきたいと思い ます。  1枚おめくりいただきますと、2ページのところに「大腸がん検診論点整理(案)」と いうことでまとめております。こちらは、前回の検討会におきまして、委員の先生方か ら出されました意見を整理したものでございます。  1点目が「大腸がん検診の現状について」ということで、老人保健事業に基づくがん 検診において、大腸がん検診は受診率が18.1%程度と低い状況にあるということでござ います。  また、特に問題になりますのが、精検受診率が全国平均で55.6%と他のがん検診と比 べても非常に低くなっているということでして、当然、精検を受けなければ、がんが適 切に発見されないというような問題点の指摘がございました。  2番目が「大腸がん検診の方法について」ということで、現行行われております便潜 血検査につきましては、死亡率減少効果の観点から有効性が示されているということで ございます。  また、実施の頻度については、毎年行うことについて有効性が示されているというこ と、また、対象年齢につきましては、現在40歳以上ということでございますが、40歳 代につきましては、がん発見率がやや低くて、効率がよくないのではないかという御指 摘がございました。  3番目に「精密検査の方法について」でございます。全大腸内視鏡が他の方法に比べ て感度が高いということが示唆されているというような御意見がありました。  また、市町村によっては、全大腸内視鏡検査がすべての要精検者に実施できない場合 もあるということも御指摘いただいています。  3番目には、全大腸内視鏡検査については、偶発事故などの不利益についても注意が 必要というような御指摘でございます。  4番目に「検診受診率及び精検受診率の向上策について」でございます。検診受診率 及び精検受診率の向上は、事業評価、精度管理の観点からも重要な課題ということで、 この向上のためには先進的な取り組みを行っている自治体の経験を参考にすべきである ということでございます。  5番目に「事業評価(精度管理)の取組について」ということで、要精検率、精検受 診率等のアウトカム評価も重要というような御指摘。  また、2つ目の「・」で、検診結果の数値を比較する際には、対象年齢を限定して市 町村ごとに比較可能とするような工夫が必要ではないかという御意見がございました。  続きまして、3ページ以降でございますが、先ほどの40歳代については若干効率が悪 いのではないかというような議論の中で、こういうがん検診に関する指標を年齢階級ご とに整理してほしいという御指示がございました。3ページは罹患率を性別、年齢階級 別に整理して、また、経年的な変化もわかるような形でグラフ化しております。ごらん いただければわかりますように、若い世代では罹患率が低いということで、年齢ととも に罹患率が高くなってきております。  経年的な変化を見ますと、年々これはすべての年齢階級において言えるかと思います が、罹患率は高まる傾向にあるということがわかります。  4ページでございます。大腸がん検診の要精検率を年齢階級別に整理しておりますが、 全年齢でいきますと7.3%ぐらいの要精検率ということでございますが、年齢階級別に 見ますと、40歳代では5.4%とか5.2%と若干低くて、年齢が上がるにつれて高くなっ ています。80歳以上では11.2%という状況でございます。  次に5ページ、精検受診率でございますが、こちらは全年齢で見ますと55.6%という ことですが、年齢階級別ですと40歳代が若干低い傾向があって、また80歳以上も低い という状況でございます。  6ページをごらんいただければと思います。こちらは、がん発見率でして、全年齢で 見ますと0.17%という状況でした。年齢階級別で見ると、40歳代は0.03%とか0.04% と非常に低くなっておりまして、年齢が上がるにつれて発見率も高くなるというような 傾向がございます。  説明は以上でございます。 ○垣添座長 ありがとうございました。  ただいま、事務局から前回第9回で提起された問題に対する一応の御説明をいただき ましたが、これに関連しまして、斎藤委員の方から資料2として提出いただいておりま すので、この説明をお願いできますでしょうか。 ○斎藤委員 資料2が、私の提出資料です。図表15枚からなっております。  今回は、大腸がん検診の精密検査対象年齢ということでありますが、大腸がん検診の 検討課題に関しまして、精検対象年齢、それと、精度管理についても若干述べたいと思 います。  まず、1枚目ですが、精検方法は平成4年の大腸がん検診実施基準の中で、全大腸内 視鏡検査またはS状結腸内視鏡検査及び注腸エックス線検査の併用とする。これが現在 まで踏襲されております。  次のページです。これは精検の感度でありますが、実際の検診プログラムの中で精検 の感度を測定したものであります。実際には精検受診者の追跡によりまして、精検異常 なしの群の中のがん、つまり、精検偽陰性例を把握して感度を求めたものであります。  CSで示す全大腸内視鏡検査に比べまして、BEで示しますエックス線検査あるいは SCSで示す、S状結腸内視鏡検査とエックス線検査の併用法の感度が低いということが お分かりになるかと思います。  特に注目すべきは、このうち深部結腸がんに対する感度が70%台と非常に低いという ことであります。  次をおめくりいただきます。費用効果の観点から見ていきたいと思いますが、前回、 祖父江委員より報告されました祖父江班での有効性評価で、レビューにより費用効果分 析に関する論文が2論文残りましたが、それらについて再検討を加えました。  まず、1枚目は、単純な費用効果の比較でありますが、便潜血検査免疫法をスクリー ニング法として全大腸内視鏡検査で精検をする、これが最も費用効果がよいということ が、2論文とも共通して示されております。一番下段です。  次をおめくりください。次は、これらの2論文を基に増分費用効果を改めて求めたも のであります。1枚目のTsuji論文の方では、エックス線検査とS状結腸内視鏡との併 用法が、全大腸内視鏡検査を含め他の方法に比べ相対劣位と判定されまして、つまり、 費用を増加させても効果が上がらないということでありますが、この分析により、この 併用法が除外されるべきものとして示されております。  次をおめくりください。同様の分析をもう一論文のSimbo論文でも行いました。この 分析では、スクリーニング法別に、それから、そのスクリーニング法と精検法の組み合 わせ別に、検診未実施に対しまして分析をしております。スクリーニングをIFで示し ました免疫法で行いまして、CSで示す全大腸内視鏡によって精検を行う方法に比べま すと、具体的には2段目と4段目のカラム、あるいは一番下のカラムですが、これらに 比べて他の方法、つまり、スクリーニング法は同じですが、エックス線検査で精検を行 う場合、これらがすべて相対劣位、つまり劣っていると判定されております。  これらのことから、費用効果上も前の2枚の図表と併せまして、大腸内視鏡検査がエ ックス線併用法よりすぐれていることが明らかに示されております。  ちなみに、スクリーニング法をFで示す化学法便潜血検査とするのも劣位と判定され ておりまして、現行の免疫法によるスクリーニングを支持するものであります。  以上から、精検は平成4年の冒頭に示しました実施基準の二法並列という勧奨から積 極的に内視鏡検査に移行すべきではないかと考えられます。このことに関しましては、 既に平成13年の久道班報告書の中でも明記されております。  次に、精度管理でありますが、1枚おめくりください。まず、精検受診率の問題であ りますが、これは精検受診率の推移を示した老人保健事業報告からのプロットでありま す。大腸がん検診が特に低いということは、既に先ほども御指摘されておりますが、平 成12年からは老人保健事業報告の内容が改定されまして、実際に受けない分と結果の把 握されていない分を分けて報告されるようになりましたので、実際に本当に精検を受け ていない分が把握できるようになりました。そうしますと、従来未受診とされていまし た約半分の25%ぐらいが、本当に精検を受けていないということがわかりました。しか し、いずれにしろ、このデータは他のがん検診についても報告されておりますので、比 較しますと他のがん検診に比べて、やはり実際に精検を受けない未受診率も大腸がんで 低いのであります。  この未受診を改善するほどではありませんが、このデータの改善の一つの方法としま しては、抜本的ではないのですが、報告期限を現在の6月から後ろにずらすというよう なことで、この未把握があるいは拾い上げられるかもしれないということを一つ提案し ておきたいと思います。  次をおめくりください。精検を受けないということは、直感的にも理論的にも不利益 は明らかなのでありますが、実際に受けないことの不利益を示した研究は余りないので ありますが、ここでは精検を受けない不利益を見るために便潜血検査の陽性者を追跡し まして、精検を受けた群のがん、これは大半は発見がんでありますが、これと受けない 群のがんの生存率を比べて、その不利益を見ました。そうしますと、お示ししますとお り明らかな差がありまして、未受診による不利益が示されたと思います。  次をめくってください。精度管理について、老人保健事業報告のデータを基にした今 回新たに行いました分析結果を、以下4枚に示します。4枚を順におめくりください。 グラフが3つありまして、これは都道府県のデータの分布図ですね。それから、4枚目 がその統計学的解析、相関係数を示してあります。その次の5枚目に、これまでの有効 性評価研究における要精検率が書いてありますが、お戻りいただいて、分布図ですがこ れらのデータは、がん発見率と要精検率、精検受診率、陽性的中度という3つの指標の 間の相関を見たものですが、がん発見率とこれら3つの精度管理の指標の間に相関を認 めました。4枚目が、先ほど申しました相関の表であります。  ただ、いずれもばらつきが非常に大きくて、例えば、1枚目の要精検率の分布を見ま すと、平均は7%なのでありますが、上下3倍近い差がありまして、より収束させる必 要があると考えます。  一つ注意が必要なのは、この要精検率に関しては、一見高ければがん発見率が高いよ うに見えますが、この要精検率とがん発見率の間には、他の因子、例えば、受診者の年 齢、先ほどの事務局からのデータにもありますが、高齢者が多いと両方とも高くなるん ですね。それから、初回受診者の割合の高い・低いがこれに関与してきますので、この 要精検率が高いことが、がん発見率が高いということを意味するものではありません。  どの程度にすべきかについてちょっと触れますので、3枚飛んで、恐れ入りますが13 枚目の有効性評価研究での要精検率という表を見ていただきたいと思います。どのレベ ルにすべきかというのは今後の研究課題でありますが、少なくとも言えることは、有効 性が示された研究の指標に範をとるということでありまして、それを見ますと、ミネソ タ研究での逐年のデータを除きますと、死亡率減少効果が示された研究では、他の3つ のRCTで2〜3%、1〜3%台の要精検率であります。  また、我が国で複数あります免疫法に関する症例対照研究でも、3%前後の要精検率 でありまして、エビデンス・ベーストの観点からいいますと、これを目標にすべきであ ると考えられます。精検のキャパシティや、その偶発症を抑える観点からも、やはり現 行の7%から下方修正すべきであると考えます。  さて、申し訳ありませんが、もう一度3枚戻って、分布図の2枚目、つまり精検受診 率をごらんください。この精検受診率とがん発見率にもきれいな相関があります。この 平均は大体60%ぐらいですが、実際には先ほど申し上げましたとおり、未把握分が含ま れていますので、真の受診率はもう少し高いとしても、まだ70%台とかそういうレベル でありまして、他のがん検診より非常に低いわけでありまして、未受診群のがんの生存 率は非常に低いということからも、大幅に改善をする必要があるかと思います。繰り返 しますが、報告期限を遅らせると、未把握分が部分的に改善可能かと思われます。  次の陽性反応的中度とがん発見率ですが、やはり相関しますが、同様にばらつきが大 きい結果であります。  1枚めくりまして、この相関係数の表をごらんください。これら3指標とがん発見率 に統計学的有意な相関を認めておりまして、これは他のがん検診についても同じ分析を 行っておりますが、他のがん検診では相関がないか、あるいはもっと相関性が低いもの が多く、このことから、大腸がん検診のスクリーニングは他のがん検診より比較的機能 していると考えられるものです。ただ、お示ししましたように、ばらつきが非常に大き いので改善が必要で、とりわけ精検受診率などの改善が必要であります。  以上、老人保健事業データの分析を示しましたが、精度管理に関しましては、老人保 健事業データでとっている項目は現行ではまだ十分とは言えないものもありますが、相 当な情報を現状でも含んでおりまして、このようなアウトカム指標の分析をルーチンに 行うことで、全国の精度管理に活用していけるものではないかと思います。  2枚おめくりいただきまして、最後に、対象年齢に若干言及しますが、対象年齢に関 しましては、3つの無作為化試験を見ますと、対象年齢は50歳以上あるいは45歳以上 となっております。これらについて死亡率減少効果が示されております。  もう一枚おめくりください。これは、各国の大腸がん検診の実施状況でありますが、 特に対象年齢を中に示してあります。上の3つのナショナルプログラム、あるいはナシ ョナルプログラムを前提としたパイロットスタディ、下の3つですが、いずれもドイツ を除きますと50歳あるいは55歳を対象としておりまして、RCTで45歳以上が有効と 出た英国でも50歳以上に上方修正してあります。こういうことで、世界的に見ると50 歳台をターゲットにしているということであります。  最後の表をごらんください。我が国の成績ですが、これは委員の坪野先生がメタアナ リシスしたものですが、上段が青森県での症例対照研究、それから、中段が委員の樋渡 先生の宮城県での症例対照研究、これをメタアナリシスしたものであります。下段に統 合したオッズ比が示されておりますが、40歳代ではオッズ比0.72です。40歳代での死 亡症例数、がん症例数が少ないので、統計学的有意ではありませんが、40歳代と50歳 代以上では40歳代が比較的有効性が低い可能性が示唆されます。これに関しましては、 今後の研究が必要かと思われます。  以上まとめますと、対象年齢に関しては世界的には50歳代がターゲットでありまして、 今後、我が国でもその検討を行って、必要があれば改定すべきかと思います。  以上です。 ○垣添座長 ありがとうございました。  それでは、先ほどの事務局の説明と今の斎藤委員からの資料説明の両方に関して、御 質問あるいは御発言がありましたら、お受けしたと思います。 ○清水委員 斎藤先生の御説明にありました13ページですが、要精検率を2〜3%に絞 るのが適当ではないかというようなニュアンスでおっしゃったんですが、要精検率とい うのは、受診者の中に異常があって精検に回る人が何人いるかということですね。患者 さんが多いところだったら当然高くなるわけですし、1人もいないところでやれば要精 検率は低くなるのですから、あらかじめ要精検率を何パーセントにしようかというのは、 ちょっとおかしいような気がしてお話を伺いました。 ○斎藤委員 確かに、有病率は集団によって異なりますが、無症状な平均リスクという 受診者の条件でやりますと、それほど大きな差にはならないはずです。前回までも出て きましたが、アウトカム指標の重要な指標の一つとして、要精検率というのは例えば、 ほかのがん検診でも特に精度管理の標準化が進んでいる乳がん検診では非常に重要な意 味があると指摘されています。これは、精検が多くなればなるほど、それに比例して偶 発症が生じますので、一番がん検診のネガティブな部分を反映することになります。で すから、不利益を最小化するという観点で要精検率をコントロールするというのは非常 に重要で、どのがん検診でも世界的にこれをコントロールすべきと考えてオーガナイズ ド・スクリーニングが行われているわけですね。その観点からいくと、やはり便潜血検 査の要精検率も、証拠に基づく意味では有効性が示された研究での数値を中心に設定す べきではないかと。  ただし、それに関しましては冒頭に申しましたが、どういうふうに設定するかという ことは、やはりこれから研究しなくてはいけない課題で、今後、祖父江班等でやってい く問題だと思っております。 ○清水委員 おっしゃった意味は、所見がある人がどれくらいいるかはわからないけれ ども、異常のない人までたくさんとって精検に回してはいけないぞということなんです よね。それはわかります。ですけれども、どれだけあるかによって要精検率は決まるの であって、先に要精検率を決めておくというのは、私には不自然に聞こえました。  それがちょっと関連するんですが、最初にお示しになりました資料1の4ページです が、年齢別に要精検率がずっと記してありまして、40歳代でも5%ぐらいあります。70 歳、80歳ぐらいで要精検率が10%ぐらいでしょうか。罹患率を見ますと、この年齢は 40歳代に比べて何十倍もあるわけですけれども、要精検率がたった2倍しか違わないと いうことは、恐らく40歳代、50歳代のところでは異常のない人を非常に引っ掛けてい るということになるのでしょうか。特に、そういう異常所見が多くて出るのか、それと も40歳代、50歳代は落としては困ると思って、ちょっとしたものを70歳代、80歳代以 上によく引っ掛けているということになるのでしょうか。さっきのと併せて、この辺を どう見るのかなと思って見ておりました。 ○斎藤委員 年代によってなぜ要精検率が高いかというのは必ずしも明らかではないん ですが、実際に糞便中のヘモグロビン量が多いということは大体わかっています。その 理由はわかりません。そこはちょっとカットしますが、先ほどのコメントでちょっと追 加したいんですけれども、要精検率の設定が具合が悪いというお話ですが、例えば、2 ないし3%とした場合に、これを6%にすべきかという話なんですが、実際の集団の有 病率は大体0.15%、0.2%ぐらいなんですね。一番高いところでもその5倍、10倍とい うことはないんです。さっきの平均的リスクということで言いますと、せいぜい2倍内 なんです。あとは、年齢だけが強い因子になりますので、つまり年齢構成が高いところ では2倍とかなり得ますが、それ以上に強い因子はないんですね。そうしますと、要精 検率の枠を設定するというのは、そんなに現実的にも不合理なことではないと考えます が。 ○垣添座長 ほかにございますか。  結局、一次スクリーニングは免疫法による便潜血反応で、精密検査としては全大腸内 視鏡がいいということですね。その実施可能性については、後ほど参考人の佐野先生か らいろいろお話を伺いたいと思いますが、精検受診率をいかに高めるかということが大 腸がん検診の効果を上げるという意味で非常に重要であるということです。それともう 一つ、対象年齢を現在40歳代まで含めていますが、50歳代以降が世界の潮流であり、 我が国はどうするかということです。この年齢に関しては、斎藤委員はどういうお考え でしょうか。 ○斎藤委員 ターゲットを絞るには、まず、有効性の観点から、つまり、死亡をエンド ポイントとした研究で、年代別の有効性の大きさが示されているという証拠があれば、 それを中心として判断できると思います。例えば、先ほど最後に示しました40歳代のオ ッズ比があまり小さくなく、かつ50歳以上で非常に小さいということが、研究で再現性 を持って示されれば、対象年齢を上げる有力な根拠になると思います。あと、社会的要 因を含め検診を取り巻く環境が決定要因だと思いますが、まず第一は、有効性をベース にして決定すべきものだと思います。  その観点からいくとまだ不十分なので、費用効果も示されましたが、今これだけの成 績で年代が決定できるところまでは煮詰まっていないと認識しています。 ○垣添座長 先生の資料の最後のページにあるこの1つの論文だけでは40歳代をカッ トするということの結論には至らないと。 ○斎藤委員 今後のスタディをプロモートしていくということが必要だと思います。 ○森山委員 5ページ目の増分分析のところで、費用のところでCSがあるんですけれ ども、この費用というのは、例えばCSですとかなりトレーニングされた医者がやらな ければいけなくなるわけですが、人件費とかそういうものも全部含んでのことなんでし ょうか。 ○斎藤委員 保険点数ベースで計算していると思います。だから、保険点数にそれがど う入るかちょっとよくわかりませんが、保険点数ベースだと思います。 ○森山委員 わかりました。 ○佐野参考人 ちょっとよろしいですか。斎藤先生の御発表の中で、要精査の受診率は 先生の希望されるパーセンテージになった場合に、年間で大腸の内視鏡の件数はどのく らいに上るんでしょうか。 ○斎藤委員 今のお話は、つまり、要精検率と大腸内視鏡のキャパシティの関係という ことですか。それは今日お示ししなかったんですが、現行の要精検率7%でいきますと、 1999年の全国推計なんですが、40歳以上人口の23%がカバーできます。それを3%に しますと54%くらいになります。現在は、右肩上がりにcolonoscopyのキャパシティは その前の10年間で上がっていますので、もう少し改善している可能性はありますが、お おむねそんなところだと思います。 ○佐野参考人 わかりました。 ○笹子委員 ちょっと素人っぽい質問で申し訳ないんですけれども、免疫法の便潜血の 陽性判定というのは、定性的に出るからカットオフ値を設定できるとかそういうことで すか。 ○斎藤委員 一応、免疫法は定量と半定量です。それによりカットオフ値を設定してま す。ただ、これは注意しなくてはいけないのは、便という検体はもともと定量に全く不 向きで、便の性状やサンプリングの仕方で1けた可溶成分のとれる量が違うんです。で すから、定量する意味というものがそもそも余りないんです。それほど信頼性があるも のではないということは、ちょっと注意しなければいけない。 ○笹子委員 そうすると、3%にするというのは、どういう方法。定量的なカーブのと ころで切るというのはできるでしょうけれども。 ○斎藤委員 カットオフ値を上げることで、要精検率は下がっていきます。ですから、 1つの目安にはなるんですが、ただ、今お話しましたようにカットオフ値はあまり客観 的なものではないということです。 ○垣添座長 それでは、坪野委員。これでこのディスカッションを最後にさせていただ きたいと思います。 ○坪野委員 斎藤先生の資料の10ページの確認なんですけれども、これは一つ一つの点 は都道府県ですか。 ○斎藤委員 プロットですね。これは都道府県です。 ○坪野委員 そして、都道府県レベルで見ても要精検率が40〜80%まで2倍の開きがあ るということだと思うんですけれども、要精検率がこれほど違う規定要因というのは、 先ほどのお話だと報告のずれがあるということでしたけれども、それ以外に何かわかっ ていることというのはあるんでしょうか。 ○斎藤委員 ちょっと待ってください。今は、どの表のことをお話ししておられますか。 ○坪野委員 10ページの精検受診率とがん発見率です。 ○斎藤委員 要精検率ではなく、精検受診率ですね。この都道府県間のばらつきですね。 これは、未受診も未把握も含めた値でのことです。未把握が多いところは精検勧奨など も十分行われていなくて未受診の可能性も高く、その結果合計の値も高くなっていると 思います。 ○坪野委員 ということは、このかなりの部分は未把握が多いためのアーチファクトだ ということですか。把握がきちんとできていれば、もっと差は狭まるということですか。 ○斎藤委員 低いところは実際の真の未受診と未把握と両方が低いと思います。それは もう一回ちゃんと見直さないといけないんですが、今まで把握している限りでは両方だ と思います。ですから、差は狭まるでしょうが小さくないと思います。 ○垣添座長 ありがとうございました。  それでは、時間の関係もありますので先に進みまして、本日の主な議題であります大 腸がん検診についてのヒアリングに移りたいと思います。  本日は、3名の皆さんにお越しいただいております。簡単に御紹介させていただきま す。  まず、日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー株式会社の関原健 夫社長です。関原社長は、大腸がん患者として長い治療経験をお持ちですので、こうい う検討会でも患者さんの立場で御意見をいただくということは非常に重要だということ で、参考人として御出席いただきました。  それから、宮城県対がん協会がん検診センターの島田剛延副所長においでいただきま した。先進的な検診を実施しているということで、後ほど御報告いただきたいと思いま す。  それから、国立がんセンター東病院内視鏡部消化器内科内視鏡室の佐野寧医長です。 先ほど議論がありました大腸がんの検診を最終的に内視鏡で行った場合、その対応はど うかといったことをお話しいただけるのではないかと思います。  まず、関原参考人に大腸がん患者としての立場からのお話をいただき、次に、島田参 考人に先進的な取り組みをしている団体の立場から、最後に、佐野参考人に大腸内視鏡 の専門家の立場から、それぞれ20分ほどお話をいただければと思います。  では、まず、関原参考人にお願いします。 ○関原参考人 ただいま御紹介いただきました関原でございます。  私は、実は大腸がんの早期発見の機会を失しまして、相当進行した段階でがんが発見 されました。その意味では患者としては悪い患者だったわけですが、近代医学とよき病 院、よき先生方のお陰で、極めて幸運に生き残ったということでございまして、健康な 皆さんが同じ轍を踏まないようにということもありまして、時々いろいろな会でお話を させていただいています。  今日は自分で簡単なレジュメをつくりましたので、これに基づいてお話をいたします。  まず最初に、私の病気の話でございますが、今から約20年前の1984年、ニューヨー クで勤務しておりました。何となしにおなかが張るとか便秘ぎみだという自覚症状があ りまして、一度血便があったわけですが、すぐに医者に行かず、結局半年ぐらい置きま して1984年11月にニューヨークにおられる内視鏡の新谷弘実先生の診療所に行きまし て内視鏡の検査を受けたら、大腸がんですということになり、ニューヨークのベス・イ スラエル・ホスピタルというところで手術を受けました。執刀医のアメリカ人から手術 の4日後病理検査の結果ということで、リンパ節を13とったけれども7つに転移がある ということで、あなたのがんは相当進行しており、具体的には5年生存率が2割である と告げられまして、これは死ぬなと思って日本に帰ってまいりました。  病院選びは大腸がんがどこに転移するかということで、肝臓と肺だという話だったも のですから、国立がんセンターにお願いして、大腸外科の森谷宣晧先生にフォローを受 けてきました。アメリカの手術から1年8か月経ったところで、肝臓2か所に転移があ るということになりまして、幕内雅敏先生に手術をしていただいたということですが、 今日は大腸の話なのでそのときのお話をします。後で森谷先生はすごいなと思ったわけ ですけれども、アメリカから帰ってきて、私の手術の傷痕を診た森谷先生が、手術の傷 痕が非常に小さいと言うんですね。リンパ節にそれだけ転移している人にしては傷が小 さい、これは手術が荒いんじゃないかと森谷先生がおっしゃったんです。それで、肝臓 の手術を幕内先生がされたときに、森谷先生が触診でおなかを触られたんですね。そう したら、やはりアメリカで手術をした切除部分の外側のリンパ節に腫れがあるというの で、結局、そこに転移が残っていたということで、併せて大腸の手術もされたというこ とです。これが最初の転移のときだったわけです。  それから、また1年3か月経ちまして、1988年1月に肝臓の転移があるということで、 また肝臓の手術をいたしました。そうしましたら、肝臓の手術のときに肺にも転移して いるというのがわかりまして、肝臓の手術の後3か月後に、今度は左肺の下葉の部分切 除を、今日はご欠席ですが土屋了介先生にやっていただきました。  更に、1年8か月経った1990年1月に、同じ左肺の下葉部に転移があるということに なりまして、下葉を全部落としました。  そうしたら今度は、半年後に右の肺に転移しまして、1990年8月に右肺の上葉部の部 分切除をしたということで、結局1984年から1990年に掛けて日米で6回の大腸、肝臓、 肺の手術をしたわけですが、その後全く不思議なことに転移・再発もなく、間もなく15 年が経つということでございます。  もっとも肝臓の最後の手術から6年後に、心臓のバイパス手術をいたしまして、左の 冠動脈2本にバイパスを入れたということです。  その5年後の2001年8月に、右の冠動脈がまた詰まり、PDCAで広げたということで ございます。  アメリカで最初に手術をしてリンパ節に転移があり、生存率2割と告げられて以来、 なぜ自覚症状があったときにすぐに医者に行かなかったのかと。あのときに行っていれ ば、リンパ節転移なんてなかったんじゃないか、あるいは毎年ちゃんと検査を受けてい たら、こんなことはなかったんじゃないかということを非常に悔やみました。その後転 移のたびに手術をしてくださいと言われた時、あの最初に自覚症状があったときアメリ カで検査に行っておけば、こんなことはなかったはずだと、これは非常に大きな反省に なったわけでございます。  次に、2番目に、そういう病歴でございますので、今も検診を続けているということ です。1つは、胸部・腹部、即ち肝臓と肺を1年に1回CTを撮っています。それから、 胃と大腸の内視鏡の検査を毎年受けています。この検査は、がんセンターではなくて外 のクリニックで受けています。後にもお話しいたしますが、私は一度がんセンターの内 視鏡、バリウムを入れる注腸検査を受けたんですが、アメリカでやっている麻酔をかけ てやる検査方法と違って、物すごく不快な感じがするものだから、これは絶対嫌だとい うことで、実は新谷先生が日本に来て検査をしておられたこともあって、外の病院で内 視鏡の検査を受けていました。一旦あの検査を受けると、ほかのものはやれないという ような感じになって、今も続けているということです。最近新谷先生以外に、日本でも 幾つかの病院でこの検査方法でやられるようになったので、新谷先生はお金が非常に高 いから、よそに行ってやっているということです。  それから、心臓の方も年に1回心エコーとトレッドミルを掛けて、RIで検査を受け ています。それから、当然、血液検査等をずっと継続しています。又、過去に脳のCT とかMRIとか、心臓や肝臓の血管造影とか、いろいろな検査を受けてきたということ でございます。  そういう検査の体験から、3番目に大腸の検査についてお話をいたします。便潜血検 査というのもやりました。これは非常に簡便ながら、何人かの友人がそれをやったんだ けれどもがんは見つからなかったとか、逆に潜血があったががんではなかったという話 を聞いていましたので、どうせやるなら最初からそんなことをやらずに内視鏡の検査を やればいいじゃないかということで、受診するなら精度の高い内視鏡の定期検査を受け ているということです。  では、この内視鏡の検査の問題というのは何かというと、ほかの検査に比べて最も負 荷が多い検査だと私は思います。それはまず、検査が一日仕事です。御存じのとおり、 最初に肝炎等のチェックのため血液検査を行うわけです。エイズだとか何とかいろいろ なことをアメリカ的に新谷先生などはやるわけです。その後で絶食をして下剤を飲んで、 腸の洗浄をして、それでやるということで、結局非常に時間を要し、大変です。  それから、当たり前ですけれども、苦痛なり、男の私に羞恥心もそうないですけれど も、やはりほかの検査よりは嫌な検査だということで、麻酔がかかっているのは非常に いいなと思います。  それから、内視鏡の検査は、費用が嵩みます。私の場合は術後の定期フォローでもあ り、保険で受診できますから大体検査をやると1万円ぐらいです。普通の人であれば、 単なる検診・検査となるため3万円とか3万5,000円、新谷先生であれば18万円とかそ ういう話なものですから、夫婦2人で受診すれば倍になります。しかも、がんというの はこれだけの検診ではないものですから、主要な臓器ごとにCTをやる、何をやるとい うことになると、結構コストもかさみ、やはり内視鏡というのはそれなりにお金が掛か ると思っております。  ここからは素人の意見なので、医学的に正しいかどうかというのは御異論があると思 いますが、まず、大腸の検診率がなぜ低いかということについてです。これはがん検診 に共通する原因と大腸がんに固有の原因があるのではないかと思います。  がん検診に共通する第一の原因は、日本人の国民性にあると思います。生意気な言い 方ですが、日本人は健康は自分で守るという自立性とか自己責任が乏しくて、非常に他 人依存型の民族ではないかということです。我々サラリーマンは会社で毎年検査を受け ているわけですが、これは別に自分で健康が大事だという問題意識ではなくて、何とな しに与えられたものをやっているというような問題意識なものだから、55歳になって会 社を辞めたら、定期的に毎年ちゃんと行くかというと、なかなか行かない。それから、 会社の場合は検査施設を用意してくれたんですけれども、自分で探してちゃんとやるか というと、なかなかやらないという、やはり日本人の一種の受け身の行動様式かと思わ れます。これは別に病気だけではなくて、例えば、健康保険に入っていない人がそれな りにいるとか、国民年金を払わない人がいるとか、選挙をやったって3割とか4割しか 投票しないというのは先進国では例外的で、自分で考えて自分で行動するということが 非常に不得手な民俗なんじゃないかというのが基本的にあると思います。  それから、2番目は、検診は個人任せで国策になっていないということで、それはた またま去年、ダブリンの対がん協会の国際会議に出たら、アメリカ人が日本人の検診に ついて国策になっていないと言っていました。ここに厚生労働省の方がおられるので若 干失礼かもわかりませんけれども、やはりこういうがんの検診率を着実に上げていくと か、少子化対策とかあるいは今の年金の問題とか解決に非常に時間が掛かって、国民の マインドとかビヘイビアを変えるような仕事というものをするには、相当長期的なビジ ョンなりがあって、企業で言えばプラン、ドゥ、チェック、アセスメントという相当長 い期間のPDCAサイクルでやっていかなければいかんのだけれども、役所の人事というの は1年ごとに変わるから、なかなかそういうふうにならないと。問題の所在はある程度 わかっているんだけれども、なかなか具体的な立案は出来ない。出来たとしてもそれを 実行しつつ、それを継続的にフォローするのは、なかなか大変なことだと言っていたの で、その時なるほどなと思いましたが、今も私はそういうこともあるなと思います。  それから、検診の精度にばらつきがあって、検査を受けたんだけれども、実は見過ご されたという例が少なくないという話。  それから、公的の検診というのは、私は東京の大田区に住んでいるんですけれども、 ホームページなどを見ていると、検診機関としてずらっと病院の名前が並んでいるんで すね。大病院から、個人の医院と実に多くの医療機関の数です。がんという大きな病気 が開業医の先生の検診でわかるのかと心配で、検診機関というものに対していま一つ信 頼感が、別に大病院主義じゃないにしても、湧いて来ない。  それから、これは少し変な話なんですけれども、日本の医療に対する一種の不信とい いますか、盛んにマスコミなどが日本は不要な薬漬けになっているとか、むだな検査が 多いとよく報じますので、これがかなり国民の中に浸透しているものですから、大半の 検査や薬は必要なはずですが、何となしに検診を受けても意味が無いことになってしま っていると思います。  実際に効果の疑わしい検診、疑わしいというのは、例えば、欧米では無効だけれども 日本では定番化しているとか、いろいろなことがマスコミに断片的に出るものですから、 せっかく便潜血みたいに格別コストも掛からなくて一番簡単なんだけれども、簡単な便 潜血検査をやったって大した効果はないじゃないかという信頼感の欠如になっているん じゃないかと思います。  それから、検診の情報とかが非常に不足していて、検診に対するアピールが足らない んじゃないかと。つまり、がんの情報は掃いて捨てるほどあるわけで、がんそのものの 説明やがん患者の家族の話というのはいっぱいあるんだけれども、健康人に対して検診 がどういうものかということについて説得力のある情報がないんですね。例えば、年齢 別にこの検診は何歳の人は何年に1回受けなさいとか、このがんについては何年に1回 とか、そういう1枚のマトリックスがどこかに張ってあれば非常にいいんですけれども。 私の場合、大腸がんは3年に1回でいいと言う先生もいれば、2年に1回でいいと、い や、毎年やりなさいとおっしゃる先生もある。その意味で主要ながんについて検診の鳥 瞰図みたいなものがあって、それがインプットされていないと、なかなか検診というこ とにアクションが出ないのではないかという気がしております。  それから、さっきの検診の効果というのはこういうことですとか、そもそもがん検診 とは何かということこそ理解しておくことが大切です。人間ドックを毎年受けています とか、あるいは会社の検診で毎年ちゃんとやっていますという人が多いのですが、がん 検診との違いを含め、検診の意味や理解に相当ギャップがあるなという感じがしていま す。私自身銀行で働いていましたが、銀行では世の中平均レベル以上の高等教育を受け た人たちが大半ですが、それでも相当認識のずれがあるなというのが率直な印象です。 これが、がん一般の話です。  大腸がん検診の固有の問題としては、大腸がんの認識が非常に不足していることです。 胃がんは毎年検査しています、乳がんは定期的に受けているという人たちは結構多いで すが、逆に大腸がんはやっていませんという人達も以外に多い。胃がんが毎年10万人罹 る一方、大腸・直腸合わせて8万5,000人になっており、もう10年もすれば最大のがん になるんだけれども、そういう辺りの認識は大腸がんについて乏しいのではないかと。  それから、便の潜血検査というのは会社でもやっていますが、これを大腸がんの検査 という認識ができていないと思います。つまり、昔の検便の延長みたいな感じですね。 だから、例えば潜血があったのに、俺は痔だから放置しておくとか、逆に、1回潜血が あって検査を受けて何ともなかったから、またあっても大丈夫だろうと放置してしまう ように、この潜血検査の意味がいま一つよく理解されていないなという感じがします。  それから、さっき申し上げましたが検査の負担が大きいため、一度受診して異常が何 もなかったという人は、次に全く何の調子も悪くないのに、あんな嫌や検査を高い金を 掛けてやるのはばからしいと思うぐらい、大変な検査だと思います。特に、女性は1回 あの検査を受けたら、もう二度とやりたくないと言う人が結構いるわけです。最近みた いに、飲んで便から一緒に出てくるような非常に小さな内視鏡もどこかで開発されてい ますけれども、やはり検査がもうちょっと楽になるというのも受診率が上がる要因にな るなと思います。  それから、企業の検診などで、人間ドックなどでも胃がんだとか乳がんに比べて大腸 の検査のウエートは低いんじゃないかと思います。大体オプションになっていてやりた い人はやってくださいとなっているわけです。  それから、大腸がんの治癒率が高いという意味は、私もそうなんですが、大腸がんは、 デュークスBとかCとか、つまり相当進行していても治癒率が非常に高い。ほかのがん の場合進行していたら非常にサバイバルレートが低くなるんだけれども、大腸がんは割 と高いものだから、何となしにちょっと自覚症状があったけどいいやというような感じ もないわけでもないなと。これは決して、そんなに安心できる話ではないんですけれど も、がんの性質がいいと盛んに言われるものですが検診にはマイナスだと思います。  そういうことで、私自身として受診率を上げていくということの重要性はあると思う ので、では、どういう方法があるのかなというと、やはり一番は国策として検診率の向 上を推進しないといけない。これは国にとっても、個人にとっても非常に大事な話なの で。例えば、1年に約1万人の人が交通事故で亡くなるわけです。この交通事故という ものについては春・秋にキャンペーンをやりまして、これは全国の警察が一斉にやって、 街頭には交通安全週間の旗が立っている。私が住んでいる辺りの自治会だってこの運動 をやっているわけです。がんは死者年間30万人超ですから、勿論高齢者も多いんですけ れども、やはり検診をやることによって相当死亡率が減るということがあるとしたら、 がんの撲滅を一体どの程度真剣にやっているのかは、疑問です国策としてやるというの は相当の覚悟と根性を入れてやらないと、さっき言いましたように、国民性が他人依存 型なものですから。そういう意味で、来年の医療制度改革でいろいろな問題が提起され るはずで、医療費の増加は税を含め国民全体で負担していかなければいけない中で、医 療費を抑えるためにも早期発見、早期治療が必要となり、検診の普及をさせる好機では ないかと思っております。  それから、がん検診の向上のため、国際的な連携ができると、世の中の注目度は非常 に違ってくると思います。例えば、エイズ患者の数は日本で非常に少なく、大半の国民 は関係ないんですけれども、国際的にいろいろな動きがあると、随所にエイズ防止の看 板が出ていたりしているわけですね。そういう意味で、国際的にいろいろなことをやる というのは、よいアピールになり、日本のマスコミなどもそれを取り上げ国民の関心が 高まることになる。検診率の向上というのは、決して国がやるということだけではなく て、それをサポートする民間のある意味ではNGOではないですけれども、そういうもの とタイアップしない限り、なかなかうまくいかないなと思います。  それから、患者レベルの運動というようなものも非常に大きいはずです。乳がんは去 年この場で検討されたわけですけれども、乳がん患者のピンクリボン活動は世界的に大 きな活動になりまして、それで女性の関心が非常に高まっています。ところが、大腸が んは乳がんに比べてはるかに多いわけでして、女性にとっても大腸がんの方が乳がんよ りはるかに増えるわけですから、そういうことをもうちょっとやらなければいけないと 思います。  それから、さっきの検診情報の話、それから、検査施設というものをもうちょっと、 充実させることです。 例えば自治体病院は現在全国約1000あり、みんな大変な経営状況になっているわけです けれども、極端に言えば、各都道府県の1つぐらいの自治体病院を全部検診センターに してしまって集約してもいいんじゃないかと、自治体がそういうふうな思い切った見直 しをしないとだめなんじゃないかなと。  それから、やはり大腸がんというものがいかに増えていって、日本で最大のがんにな るかということを、もっとアピールするということが大事だなと思います。  それと、あの米国流の麻酔を使うという内視鏡のやり方はなぜ日本で、勿論、麻酔に はリスクも伴うんだけれども、もうちょっとそこは何かないかなという感じがしており ます。  ちょっと時間がまいりましたので、一応私の印象といいますか、思いはこういうこと でございます。 ○垣添座長 関原先生、どうもありがとうございました。御自分の大変過酷な進行大腸 がんの御経験から、大腸がん検診全般にわたって、あるいは日本人の国民性にわたる部 分まで御発言をいただきました。何か関原参考人のお話に御発言がありましたら、短時 間ですがお受けしたいと思います。 ○森山委員 これは大いにあって、今言われたことは本当のことだと思うんです。がん センターでも、がん予防・検診研究センターができたんですけれども、国策として何か やらないといけない時代に入っていると思うんですが、規制がめちゃくちゃ多いんです ね。たくさんあるんですけれども例を1つだけとって、例えば、恥ずかしいとかそうい うことがあって、バーチャルエンドスコピーというのをやろうと思うと、今度はそれを 広報でどこかに出そうとすると、研究でやっているというのを外に流してはいけないと か、新聞広告してはいけないとか非常に規制があるので、国策でやるときにその規制を とっていただきたいということ。それから、国の方で、例えば新しいことをやる場合に、 受診費用が今は高いわけですけれども、それをトライアルでやるときには補助していた だくとか、そういうことをやって、患者さんというか、がんから逃れるためのことをや る時代に入っているのではないかと。その広報が、政治もそうですけれども、がんにつ いても非常に下手なので、やはり広報に是非力を入れていただければと思います。今言 われたこと全面的に賛成でございます。 ○垣添座長 ありがとうございました。ほかにありますか。  関原参考人から内視鏡に関してもいろいろ御発言がありましたから、佐野参考人がお 話しになるときに、少しそれも含めて対応していただければと思います。  それでは、先に進みます。今度は、島田参考人、お願いいたします。 ○島田参考人 宮城県対がん協会の島田と申します。本日はよろしくお願いいたします。  お手元の資料の3ページ目、先日、厚生労働省の担当の方から、精密検査の受診率を 中心として、更に、大腸がん検診全体の運営に関しても簡単に考えを述べてほしいとい う御依頼がありましたので、実際の検診業務に携わる立場から御報告申し上げたいと思 います。本日お話しいたします内容は、3ページに記しました4点でございます。  次の4ページ、5ページ目に行っていただきまして、まず最初に、検診を運営する上 での諸問題。それは一次検診に関してと精密検査に関して、こちらの方に記しました。  まず、一次検診の方ですけれども、検診を運営する上での問題点としまして、検診は 左側に示しましたように、啓発活動に始まり事後指導まで続く一連の流れの中で行われ ております。この流れの中で、一次検診と精密検査にかかわることがしばしば問題視さ れていますので、この2点につきましてお話ししたいと思います。  一次検診に関します何よりの問題点というのは、地域も職域も含めたすべてのがん検 診受診率というものが市町村単位で不明であると。そして、更に、これまでの諸報告か ら受診率を推定しますと、どうも余り高くないと考えられるところです。このように、 現在自分たちの位置がどうもはっきりわかっていないという状況でありますので、しか るべき対策がなかなか立てられないというところが問題だと思います。ですから、まず は、この問題を解決していく必要があると思っています。  そのためには、今、国民生活基礎調査ですとか、老人保健事業報告という既存の制度 がありますので、これは整備してもう少し使いやすくしていただくとか、あるいは東北 大学の辻先生のがん検診の実施主体を市町村、事業所から保険者へ移行し、レセプト情 報などを使って受診状況を把握したら、しっかり正確に把握できるだろうと。そして、 未受診者は個人単位でわかりますので、そういったアプローチの方法もあるんじゃない かと、新たな方法も提示されていますので、そういった新しいシステムを考えていくべ きではないかと考えています。  次に、先ほどから出ていますが、要精検差率に関する問題点、4ページ目の下段にな りますけれども、この各検診団体ですとか、市町村ごとに要精検率の幅があるというこ とが問題にされていますが、各団体ごとの要精検率の相違というものは、実際は便潜血 検査のキットによる違いが主要因だろうと私は思っております。さまざまな便潜血検査 のキットが市販されていますので、どの製品を使うかといったことで大体陽性率という のは決まってまいります。この陽性率が高過ぎて、その地区ではとても精検処理ができ ないという事態に至った場合に、各施設が感度ですとか陽性反応適中というのを勘案し ながら、カットオフ値を調整して陽性と判定する率を下げているというのが現状ではな いかと思っています。  ですので、先ほどから言われています要精検率の問題について、ある程度整理したい というのであれば、やはりカットオフ値の設定、各検診団体独自にやれと言われてもな かなか厳しいところがありますので、もし、そういう指標が出せるのであれば、陽性率 ズバリでもいいですし、陽性反応適中度でもいいですが、そういった基準値の指標とい うものが出せれば、各検診施設はそれに倣って動けると考えております。  次の5ページ目にいきまして、こちらは精密検査に関する諸問題です。まず最初に、 上に書きました精検受診率、これは先ほどから言われておりますように低いということ で、この件につきましては、後ほどまたお話ししたいと思います。  精検方法につきましても、いろいろとお話が出ておりましたけれども、皆さんがお考 えのように、感度と病変を診断する能力はTCSが最善であろうと。以前は、処理能で すとか偶発症、受容性ということに問題があってTCSはどうもと考えられていたんで すけれども、最近の調査でいきますと、TCSの処理能というのは急速に伸びていると。 ただ、すべての地域で十分とは言えないと思います。また、一方、偶発症というのも事 故の頻度も相当下がっているんじゃないかと感じております。  大ざっぱな受容性、全く無痛であるという段階まではどこもいかないと思うんですが、 受診者の方が何とか受けてくださるという段階までは、大体来ているんじゃないかと思 っています。  したがいまして、TCSを主体とした精検というのが今後も進むべき道だろうと思う んですけれども、今その結論を焦って、絶対全部TCSだと言ってしまうと、処理能の 問題から精検システムに支障を来す可能性もありますし、あるいはこの偶発症が増える 可能性もありますので、そうなった場合には、検診システム全体に影響を与えますので、 今は我々がどういう精検方法を目指すかということを、斎藤先生が久道班の報告書でお 書きになったように、TCSが望ましいというような目標をつくっておくことで十分だ と思います。そうすれば、自然にTCSの方に多分流れていくだろうと考えております。  以上が、全体に対する考え方であります。  次に、精検受診率に関してお話ししたいと思います。6ページ目、7ページ目に移り ます。  精検受診率に関する我が国の報告というものを幾つか見てみますと、まず、代表的な ものは消化器集団検診学会の全国集計であります。これは平成4年度から平成14年度ま でグラフにしてみましたが、大体全体としては60%前後でありまして、この成績という のは平成4年度からほとんど変化せず低いままであるということが問題であろうと思い ます。  次の8ページ、9ページに行っていただきまして、各学会報告あるいは研究班報告か ら、精密検査受診率に関しての論文を挙げてみました。まず、8ページ目にありますも のは、おおむね90%以上の高受診率を達成している地域の、どんなことが有効だったか ということを述べた報告を挙げてみました。(1)から(7)まで挙げてありますけれども、報 告によっては受診勧奨だけでよくなったとか、あるいは医療機関と市町村をつなぐバス を出したらよくなったとか、一部の費用負担がよかったとか、こういうように単発の対 策でよくなったというところもあれば、(6)(7)のように多数の対策が必要であったという 報告から、さまざまであります。  このように、各報告によって重要視されている項目はさまざまでありますけれども、 これはこういった報告がある市町村における報告でありまして、多くの市町村をまとめ た報告ではないということだと思います。つまり、市町村によっては、ちょっとした受 診勧奨ということでよくなるところもあるでしょうし、徹底的に手を入れないとよくな らないというところまで、さまざまあると思うんですね。ですから、ある程度普遍性を 持った対策というものを考えるためには、多くの市町村を対象とした検討が必要だろう と思います。  一方、9ページ目の方は、斎藤班の中で西田先生という先生が精検受診率に関する諸 要因というのを多変量解析で分析した結果の概略であります。その検討というのは、主 に住民ですとか職員、検診を受診する方に対してアンケートを送って調査した検討と、 もう一つは、検診を提供する側、全国の市区町村を対象とした検討の2つに分かれてお ります。  ここに大体書いたように、多数の要因が精検受診にかかわっているだろうと。そして、 2つ目の報告の方で西田先生がまとめているのは、精検受診率には多くの要因が関与し ており、特に特異度に配慮した一次検診の精度管理、そして、複数回の受診勧奨、3つ 目が精検受診日の指定というのが重要であると。そして、これら3要素を有機的に結び つけたシステムが必要であると報告されています。  以上が、これまでの報告の簡単なまとめです。  次の10ページ、11ページに行っていただきまして、ここからは私どもの精検実施体 制と精検受診率の話になります。  11ページ目が、私どもがどんなふうに精検をやっているかということなんですが、ま ず最初に、便潜血検査が陽性になった方々には陽性ですよという通知を送るんですが、 その際に、精検説明会というものを開きますから参加してくださいという通知も一緒に お送りいたします。その後に、精検説明会が開かれるんですが、その精検説明会では最 近のがん罹患や死亡の動向、あるいは大腸がんの一次予防、検診の効果、便潜血検査の 意義ですとか精度あるいは前処値や精密検査の具体的方法といったことをお話ししてお ります。  そして、この精検説明会の際に、もし、私たちの施設で精密検査を受けられますよと いう方に対しましては、その場で検査の予約を入れてしまいます。そして、市町村から 私たちの方にいらしていただいて精密検査を行うわけですけれども、その場合は、遠方 の市町村と仙台市になりますので、その間をつなぐためのバスを手配いたしまして、実 施主体の保健師さんに同乗して来ていただくと。そして、精密検査が終わりましたら、 私どものところで受けない方の結果もなるべく集めて市町村の方に報告しまして、最終 的に受けなかった方々に対しまして、市町村の保健師さんから受診勧奨していただくと いうことで精密検査に臨んでおります。  次の12ページ、13ページ目にその結果が書いてあるんですが、結果は1993年度から 2000年度までをまとめました。せっかくですから胃がん検診がよく対象に上がりますの で、胃がん検診も一緒に検討しております。そうしますと、結果は13ページのグラフに なりますけれども、各市町村、いろいろな市町村がありますが、その市町村別の精検受 診率というのは91.2〜99.6%で、平均95%でした。このように、すべての市町村におい て90%を超える成績でありました。同時に測りました胃がん検診の精検受診率というの は96.5%でありまして、ほぼ同等と思われました。  このように当施設の精検システムというのは対象人口、今回は1,000〜3万5,000人 程度なんですが、地域集計におけます精検受診に対して有効に機能するだろうと思われ ました。  次の14ページ、15ページには、胃がん検診と大腸で違ったところを拾い上げて出し てみました。まず、最初の14ページですけれども、大体胃がん検診も大腸がん検診も同 じくらいの精検受診率なんですが、80歳以上になりますと途端に大腸がん検診の方が落 ちてきます。10%ぐらいストンと落ちます。しかし、胃がん検診の方は80歳以上も95% ぐらいの精検受診率を保っているというところが、まず1つ違うところでありました。  一方、15ページの方は市町村別に今度は精密検査、私どもの施設を受けた人たちと、 地元の医療機関を受けた方々の割合がどうなっているかというのを比較したものです。 上段はいずれも1993年度、下段は2000年度になっております。左側が大腸、右側が胃 になっております。まとめますと、下に書きましたが、各地域におけます精検処理能の 向上に伴いまして、地元医療機関受診の割合が増加してきております。この傾向という のは、胃がん検診でより顕著になっています。実際、1993年度というのは私どもの施設 を大体90%ぐらいの方が受けていらっしゃいましたけれども、2000年度になりますと、 大体私どもの施設を受ける方が70%です。その差は、大体地元の医療機関を受診してい ると。それは、地元の医療機関が精検がどんどんできるようになってきたということが その理由であります。  しかしながら、大腸がん検診におきましては、特に大方の地域において、いまだに私 たちの施設で受ける方が大半を占めております。ですから、こういうようにすべて精検 処理をどの町もできるわけではないという現状がまだ続いていると思いますので、やは りそれをサポートする必要があるのだろうと考えております。  次に、16ページ、17ページ目になりますけれども、今までのお話は、私どもの施設は 便検査から精密検査まですべて担当している地域でのお話です。中には、私たちの施設 が便検査をやっているけれども、精密検査は地元の病院でやっているとか、便検査も精 密検査も地元の病院でやっているけれども、データの処理は私どもでやっているという パターンがありますので、それぞれのパターンごとにおきまして、少し詳しい情報がわ かっておりますので、それぞれの比較を行ってみました。それは17ページに大体の概略 を書きましたけれども、先ほどから述べています私たちの方法が「対がん協会」という ところに述べたものです。これは主に精検処理能が低いだろうという地域を担当してお ります。先ほども申し上げましたように、精検説明会を実施し、精検の予約も入れ、受 診勧奨も行うと。そして、各市町村から受診者をバスで送迎しているというわけです。  一方、「A方式」と書きましたものは、地域の中核病院にお願いしまして、私どもと同 じような方法をやっている。つまり、私どもが精検を担当している分を、その地域の中 核病院が行うというだけの違いであります。したがいまして、精検説明会も実施する、 精密検査の予約も入れる、受診勧奨も行うと。ただ、受診者の方が住んでいらっしゃい ます地域にある病院ですので、当然バスは出さずに、そのまま病院に行っていただくと。 いかに大きな病院といえども、一遍に検診をやってしまうと、精検該当者がどっと来る と通常の業務に大変な支障を来しますので、担当地区の便検査というのは複数回に分け て行っております。大体春から秋まで満遍なく行えるように分割しております。これが A方式であります。  一方、「B方式」というのは多分一般的な方法だろうと思うんですけれども、地元の医 療機関だけでできる、したがって、精検処理能が高いと考えられる地域で実施される方 法です。受診勧奨は行いますが、精検説明会ですとか精検予約といったことまでは行い ません。病院を受診して精検を受けていただくという方法です。  精検方法というのは、いろいろな病院がありますので、医療機関により異なっており ます。そういった施設間で精度の差が出る可能性がありますので、それを解消する目的 あるいは更に治療が必要だという方が円滑に移動できるように、精検担当の先生方が集 まって熱心にやっている地元医療機関のタイプであります。これがB方式です。  次のページに行っていただきまして、18ページ、19ページにその結果が書いてありま す。18ページの方は、精検実施体制別に見た検診受診から精検受診までの期間というも のを箱ひげ図で描いております。なるべく待ち時間を少なくと言っていましたけれども、 陽性になってから1週間、2週間でやれというわけではなくて、大体要精検という通知 を受けてから2か月ぐらいにほとんどの方が受けていると。私は大体これぐらいで十分 ではないかと思っているんですが、一応その辺りを出しておきました。  それを踏まえた上で、19ページのグラフになりますが、対がん協会方式とA方式、つ まり地域の中核病院が私たちと同じような方法をやるという方法ですと、ほとんど同じ 95%前後という成績であります。  一方、B方式は、ここに書きますと一見低く見えますけれども、実際は85%という非 常に良好な結果を得ていると思います。つまり、下段に書いてありますが、精検処理と いうのは円滑に流れて、しかも、未受診者というのをきちんと把握して、それを勧奨を 行うと。つまり、当然行うべきことをきっちり行えば、かなり多くの精検受診が見込め るんじゃないかと考えております。より高い精検受診率を得ようと思いますと、精検説 明会の実施ですとか精検予約といった、早い段階から積極的に介入するということが必 要なんじゃないかと考えております。  ちなみに対がん協会では1996年度、A方式では1997年度からTCSを主体とした精 検方法に変更しましたけれども、その前後で精検受診率はほとんど変化はありませんで した。  次のページが最後になりますが、20ページ、21ページをお願いします。精検受診率向 上へ向けて考えられる対策ということで、ちょっと考えられるものを挙げてみました。 まず、受診者の理解を深めることが重要だろうと思います。そのためには、精検説明会 の開催というのも一つの方法でしょうし、これはなかなか難しいと思いますので、せめ て精密検査が必要ですよという通知の中に、受診者の理解を深めるように精検説明会で 話すような内容のパンフレットを同封することも有効じゃないかという報告もございま した。  また、2番目は、これは私は重要だと思うんですけれども、精検処理能を確保して、 精検までの待ち日数を短くすると、これは重要だろうと思っています。精検処理能に余 裕がある地域はそれでよろしいわけですが、精検処理能に余裕がない地域におきまして は、そういう精検処理能に余裕がある地域とうまく連携を図って、精検を主に担当して くれる病院を捜して対処していくということが必要かと思います。  また、精検処理能に見合った計画を立てて、一遍にやってしまうとその病院が混みま すので、年間の中で何回かの期間に分けて検診をやっていくということも重要だと思い ます。  3番目の利便性を高めるというのは、先ほどお話ししましたように、バス送迎ですと か、精検の予約を入れるあるいは少なくとも精検を行ってくれるようなしかるべき機関 というものを受診者の方にきっちり提示していかないと、どこの病院に行っていいかわ からないということが起きますので、その辺を最低でも行うべきであろうと思っていま す。  そして、これだけやっても、なかなかお受けにならない方がいらっしゃいますので、 その場合は受診勧奨をしないといけないわけですが、報告によりますと、ハガキで行う よりも電話や訪問といったことが有効だとされております。  以上、まとめますと、精検未受診者のことを考える場合には精検未検者対策、つまり、 精検未検となった時点から対策を開始するという考え方ではなくて、精検該当者対策、 すなわち精検該当となった時点から対策を開始するということが重要ではないかと考え ております。理想的には、一次検診の実施時点から十分対策が講じられるとよいと思う んですが、なかなか対象人数が多くなりますので、これはちょっと難しいかなとも思っ ております。  実際どんなことを考えていったらいいかといいますと、受診者の理解を深めること、 精検処理能を確保し、精検までの待ち日数を少なくすること、利便性を高めること、受 診勧奨などが重要な柱ではないかと思っております。  ただ、各地域における状況というのはさまざまでありますので、その結果、どういう システム、どういう選択をしていくかというのは異なってくると思います。ただ、どう いうシステムを選択したとしても、精検受診率が低迷するという状況では、先ほど挙げ ました4点からシステムを見直すことで、改善が期待できるのではないかと考えており ます。  以上であります。 ○垣添座長 どうもありがとうございました。精検受診率90%以上という大変高い成績 を挙げておられる実態を御報告いただきました。何か御発言ありましょうか。 ○斎藤委員 同じ宮城県対がん協会の精度管理下に3つ違ったタイプがあって、非常に 参考になるんですが、AとBの差は説明会と予約をやるかやらないかと、あと、専門医 がいるかいないかですよね。これはどっちが、この差に多くきいているんでしょうか。 ○島田参考人 要は、A方式というのは一つの流れをしっかりつくってしまっているん ですね。ですから、専門医もいるということを中心にして、陽性になった方は、一つは ここで受ける道がありますよと提示しているところが違うんだと思います。B方式は、 いろいろな病院の中から選んで行ってくださいとなっていますので、それが一つだと思 います。更にプラスして、精検説明会を実施しているとか、精検予約を入れるというこ とが加わってきて、専門医というのがどの程度かかっているかどうかというのは正直言 うと、はっきりとはわかりません。 ○垣添座長 対がん協会との関係はどうなっているんですか。17ページのA方式、B方 式と、あと対がん協会。受検者のすみ分けはなされているのでしょうか。 ○島田参考人 これは、市町村別になっています。中核病院の方で私たちがやりますよ と言ったところは、そちらにお任せしますし、地元の医療機関でやりますよというとき には、そちらでお任せするという方法で。 ○垣添座長 わかりました。  ほかにいかがでしょうか。 ○笹子委員 8ページ目に一部の費用負担というのがありますが、これは検査代を出し たということですか。 ○島田参考人 検査全部ではなくて、前処置の費用を町が出したということらしいです。 ○笹子委員 市町村が出したと。 ○島田参考人 はい、そうです。 ○垣添座長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。  続きまして、参考人の3番目、佐野先生にお願いしたいと思います。 ○佐野参考人 国立がんセンター東病院の佐野といいます。今日は、大腸内視鏡の専門 家というか、毎日内視鏡をやっている立場から見ました大腸がん検診を大腸内視鏡の導 入の問題点について、少しお話しできたらと思います。  3ページにありますように、大腸がんの予防、大腸がんの死亡率、発生率を予防する ためには、colonoscopyを使えば最も効率的であろうということは間接的には証明され ているわけで、実際にダイレクトにそれを証明していくにはかなりの年数が掛かります が、効率がいいだろうということは、先ほど斎藤先生からも出たと思います。  4ページですが、私どもの内視鏡に関しては、ほとんどの患者さんが臨床診断、治療 目的の内視鏡を行っているわけでありまして、検診に対するデータというのはちょっと 今日はお示しできないんですが、当然、FOBTがポジティブになって、便潜血陽性の患者 さん等もたくさんいらっしゃいますし、一般に行われている内視鏡というものに関して は、そういう検診の陽性の患者さんあるいは症状のある患者さんがミックスして内視鏡 を受けているわけです。ですから、今日示しますデータは、そういうミックスした患者 さんのデータであると。しかも、臨床診断、治療をメーンに行った場合にこのぐらいの 偶発症、死亡が起こるということを念頭に置いておいてください。  5ページですけれども、基本的には便潜血が陽性になりますと、現在はBa enema、 注腸あるいはSigmoidscopy、S状結腸内視鏡あるいは大腸内視鏡をやっていくわけなん ですが、ほとんど今のところSigmoidscopyはどうなのかわかりませんけれども、我々の 施設でダイレクトに大腸内視鏡を常にやっております。  次にいきまして、したがって、そのお話ですけれども、大腸内視鏡の精査に回った場 合の功罪について少しお話をします。  まず、前処置ですが、これは非常に大変であります。先ほどのお話がありましたが、 実際、自分が内視鏡を受けることになりますと、この2つの方法があるわけなんですけ れども、ブラウン変法というものとゴライテリィ法というものがあります。低残渣食を 食べて下剤をかけてやるのがブラウン変法でありまして、ゴライテリィ法というものは、 当日に約2リットルの等張液を飲まなければなりません。  実際この点でも問題がありまして、最近でも新聞をにぎわしておりましたが、腸管穿 孔あるいは腸閉塞等の合併症が起こりまして、死亡例が報告されております。ですが、 この死亡例に関しては、非常に大腸の進行したがんの患者さん、あるいは非常に高齢の 患者さんで起こった事象でありまして、これを健常人に行った場合にはどういったデー タになるかというと、恐らくはこれほどの死亡率、少ないですけれども、それほど発生 はしないのではないかと考えます。  次にまいりますと、大腸内視鏡というものはこのようなものですが、大体長さが1m 30あるいは2mぐらいあるものもありますが、これをおしりの穴から盲腸まで到達させ るわけなんですけれども、後でラーニングカーブの話をしようと思いますが、内視鏡の 中では最も技術的に難しい検査であるとされています。  現在、熟達した内視鏡医の試験をやっているわけなんですが、このデータを下に示し ておりますけれども、大腸内視鏡の盲腸到達率は99.6%に及びますが、後で示します初 心者がやった場合には、全く違ったデータになります。そして、平均盲腸到達時間もプ ロフェッショナルがやると6.8分ぐらいというのが我々の現在行っている多施設共同の データでありますが、これは極めていいデータでありまして、実際のところはそこまで いけるかどうかというのは問題があると思います。  そして、内視鏡を挿入していく場合に、当然偶発症が起こるわけなんですが、9ペー ジですけれども、大腸内視鏡検査による偶発症は0.069%起こっています。実は、この 偶発症の下に死亡例が出ていますが、偶発症というのは出血及び穿孔に当たります。そ れから、大腸内視鏡検査による死亡例ですが、これは非常に頻度が少ないわけですけれ ども、これも穿孔によって起こること、心不全、脳梗塞などがあります。実際、心不全、 脳梗塞等に関しては、前投薬といったものが影響している。鎮経剤を使うことが多いん ですが、そういうものを使った場合に、心拍数が上がって血栓が飛んで脳梗塞を起こす、 あるいは心不全になるということで死亡された患者さんがいらっしゃいます。  それから、偶発症に関しても、前投薬を使うことでショック状態になったとか、死亡 には至らないにしても、そういうケースが、実はこの偶発症の中の8割は前投薬による もので、これを検診で大腸内視鏡をやった場合に前投薬を使うことになってしまうと、 そういうことで死亡してしまう患者さんが発生する可能性があるということなので、こ れは気をつけなければいけないということになります。  それから、10ページは参考ですけれども、大腸内視鏡をやりますと当然、現状では検 診で便潜血陽性になった患者様に対しても、一般の外来に来られた場合は精査も行うわ けですが、同時に治療も行ってしまうわけです。実は、治療を同時に行った場合の出血 や穿孔といったものに関しては、前治療の中のパーセンテージですけれども、0.147%、 0.139%、EMRというのは粘膜切除に当たりますけれども、発生するということがわか っています。  11ページはがんセンター中央病院、東病院、静岡がんセンター、栃木がんセンターの 大腸の偶発症のパーセンテージですけれども、やはり同じようなトータルでいきますと 右下に出ていますが、0.15%程度の偶発症が治療によって起こっているということがわ かります。  次12ページですけれども、先ほども出ました感染症の予防というものも内視鏡を使い ますと必要になってまいります。これは当然、内視鏡自体は300万円ぐらいするわけで すから、これを使い捨てでやるわけにはいきませんので、使い回しをするということに なります。これは被験者間の感染もありますし、外因性の被験者間の感染もあり得るわ けで、この2つに関して、まずは、患者さんに使った内視鏡を十分に消毒する、そうい う必要性が出てまいります。  ちなみに、患者様に関しては当然、検査前に感染症のチェックが行われるわけで、前 例に採血が必要になってくるということになります。  それから、医療従事者等の感染ですけれども、手袋といった便を防御するようなガウ ンの着用が必要になってまいります。  それから、コストですけれども、全大腸内視鏡検査に関しては1万5,500円、これは 盲腸まで到達した場合には1万5,500円になりますけれども、到達しなければもう少し 安い。ちなみに、がん治療を行った場合には6万7,000円、良性のポリープを切除した 場合には5万3,000円掛かるということになります。  そして、次にお示ししますのは、ラーニングカーブあるいは内視鏡学会の方で今取り 組んでおります大腸内視鏡の教育カリキュラムについて少しお話をしたいと思います。  14ページに示しておりますのは、最近の大腸内視鏡の件数であります。社会医療診療 行為別調査で出しておりますけれども、大体200万件前後を見ております。確かに、10 年前と比較すると件数は増えてきているわけなんですが、最近の伸びというのは比較的 頭打ちでありまして、250万件を超えることはなく、頭打ちでプラトーに達していると いう現状だそうです。  しかるに、大腸内視鏡教育の必要性が出てくるわけでございますが、16ページですけ れども、これは内視鏡学会が推進しまして、日本の7施設だったと思いますが、現在カ リキュラムに沿った大腸内視鏡挿入教育の体系化を行っております。  まず、ステップ1ですけれども、基礎知識の習得になります。大腸内視鏡に関する基 礎知識あるいは消毒あるいは治療、合併症といったものに関する知識のトレーニングを 行う。これが約1週間から2週間行います。  ステップ2ですけれども、実地前の研修として臨床、患者さんに対する内視鏡の前に 上級者の見学のもとに、後で示しますけれども、モデルを使ってトレーニングを行って いきます。  そして、ステップ3ですが、その後に実際の実地の臨床研修を行っていくということ になります。  17ページですけれども、従来こういった必要性が出てきましたのは、当然、大腸内視 鏡の件数を増やさなければ大腸がんの予防はできないということになりますし、検診に 導入することはできないということで、従来のラーニングカーブというのは、プロフェ ッショナルが教えた場合と教えない場合では、やはりプロフェッショナルについて教え た場合の方がカリキュラム効果があり、非常に盲腸の到達率や内視鏡の操作が早い段階 でよくなるということが示されておりますので、そういった試みが必要になってくると いうことになります。  次ですけれども、ステップ1、これが1週間、2週間ですが、基本的な知識になりま す。そしてメーカー、UPDというのは挿入をしていく内視鏡を磁場を用いて観察でき るようなシステムであります。ですから、うまい人の内視鏡を客観的に見ていくという ようなことになります。  そして、ステップ2ですけれども、トレーニング、これは右下に出ていますのがcolon  modelといいますけれども、実際にゴムでできた大腸のシミュレーションを行っている んですが、こういったもので大体1週間トレーニングします。現在では、コンピュータ ーシミュレーションで大腸内視鏡の治療あるいは挿入ができるような機械もできており ますので、そういったものを導入していく必要性もあるかもしれません。 次に、20ページですけれども、これがデータですが、実際のところ初心者の、要するに 研修医レベルの先生にこういったトレーニング、まずはモデルを使ったものですけれど も、第1日目140分、2回訓練させまして盲腸まで到達することはできません。ところ が、2日、3日、4日、5日といくにつれて、盲腸への到達率は上がってまいります。 そして、到達時間も最初は40分程度掛かっていたものが、モデルを使って練習しますと 6日目には6分程度になると。  そして、この練習を終えた後に、実際の患者さんの中で熟達者の指導のもとに挿入を 行っていっているわけですが、これは例ですけれども、実際の検査機関の1週間置きに 見ておりますが、やはり実地になりますと最初の2週間は盲腸に到達できません。その 後、3週間になってきますと、少しずつ挿入率が上がってまいりますが、実際これで5 週間やっているわけですけれども、実際の盲腸の到達率は8割にしかすぎません。先ほ ど私がお示ししましたのは99%ですから、そこまでいくにはかなりの練習が必要になり ます。  それを示しているのが22ページですけれども、大腸内視鏡の症例数と大腸内視鏡の盲 腸到達率の推移を示しておりますが、ここでおわかりのように、300例を超えてきた段 階で100%に近づいてくるということになります。この300例というのは、かなりの件 数であります。実際、がんセンターでは年間約3,000人の患者さんに内視鏡をやってい ますけれども、そのうちの10分の1を1人のドクターがやるわけにもまいりませんし、 300例の経験を積むには、やはり数年の経験数が必要であると考えられます。  23ページですが、まとめますと、大腸内視鏡というのは死亡率を示す相応の根拠があ るということですが、やはり無視できない問題、不利益、合併症やあるいはラーニング カーブの問題がありますので、それを修正していく必要性があるだろうと思っています。  次にまいりまして、今後解決していかなければいけないというのは、そういう教育シ ステムの整備、これに関しては、まだ内視鏡学会が推進しておりますけれども、れっき とした整備は行われておりません。そして、偶発症もトレーニングシステムによってカ バーできる可能性はありますが、偶発が起こった場合の対策に関しどうするかというこ とも取り決めが必要ですし、それから、先ほどありましたけれども、大腸内視鏡は非常 にしたくない検査であると。これは、ほとんどの患者さんがそう思っておられますので、 被験者に対する大腸内視鏡の意識改革というものも必要である。比較的熟達の先生がや った場合には、それほど苦痛の内視鏡ではないということが最近わかっていますが、た だ、どういったところに行けば、そういうドクターに受けられるかということがわかっ ていないということが非常に問題なわけです。  ちょっとお話ししますと、先ほど検査を1年にやるのか、3年にやるのかというよう なことがありましたが、今のところは実は検診を一旦受けて、では、内視鏡を受けた際 に、次はいつやるかということはわかっておりません。29ページですけれども、今走っ ているランダマイズド・コントロール・トライアルをお話ししたいと思いますが、これ は終わるのが2010年になりますけれども、恐らくポリープや病変がある、なしでも検査 の感覚が違ってくるということが推定されますし、非常にローリスクの患者さん、がん などがないような患者さんに関しては、ここで内視鏡を2回やった際には3年ぐらいは 内視鏡をやらなくてもいいんじゃないかというような話を展開する目的で、ランダマイ ズド・コントロールをやっております。その後もコホートをしていく予定になっており まして、ローリスクの患者さん、実はアメリカではスクリーニングで大腸内視鏡を介入 すれば10年やらなくていいというような話も展開していますし、ただ、ポピュレーショ ンはかなりポリープが有症状の患者さんや便潜血陽性の患者さん、あるいは家族歴があ る患者さんなどが対象になっておりますので、ジェネラルのポピュレーションではない んですが、そういったリコメンデーションの中にもある程度データは提示できるんじゃ ないかと考えております。  以上です。 ○垣添座長 どうもありがとうございました。  これは病院における内視鏡診断の実態ということでお話をいただきましたが、何か佐 野先生に対して御質問あるいは御発言ありましょうか。 ○笹子委員 腹腔鏡の手術などでは、審査員がついて、この人はどうかとか審査を始め ましたよね。大腸ファイバーではそういう、この人は何分以内にいける率が90%だから 合格とか、そういうところまではやろうというようにはなっていないんですか。 ○佐野参考人 内視鏡学会の専門医等にそういう実地の研修の評価というのはありませ ん。ただ、治療に関しては、そういう実地の評価をしていく可能性が提案されています。 ただし、内視鏡挿入に関してはやっておりません。 ○垣添座長 それは、是非学会でご発言いただいて、学会として何かそういう評価をつ くっていただくのは非常に大事なんじゃないでしょうかね。  ほかに、いかがでしょうか。 ○土屋(隆)委員 先生御自身のお考えで結構なんですけれども、麻酔薬の使用のメリ ット・デメリットといいますか、先ほど関原さんのお話にもありましたが、これは1回 使うと、もうずっと使ってくれということをおっしゃるんですよ。我々の仲間も、そん なものは使わなくたって大丈夫なんだと、俺はできるんだと、被験者の方からそんな大 変だというクレームなんか起こっていないんだとかいろいろあるんですけれども、薬物 使用によるいろいろなトラブルさえ起こらなければ、使った方がやりやすいといえばや りやすいし、本人にとっても不安感だとか苦痛感がとれていいのかなと思うんですが、 先生はたくさんやられておりますのでその経験上からお話を伺いたいと思います。 ○佐野参考人 まず、麻酔薬、鎮静剤に関しては、基本的に保険が通っておりませんの で、大腸内視鏡の際に使用するということ自体がまずは問題があります。それは抜きに しまして、確かに実際プロポフォールやミタゾラム等の薬を使うことが多いわけなんで すが、ほとんど無痛、しかも、終わった後に逆行性健忘で内視鏡をやったことをはっき り覚えておられない患者さんがほとんどであります。ですので、実際に検査中に苦痛表 情をされたり、実際に声を出して痛がっておられる患者さんもいらっしゃるんですが、 次に外来に来られますと、非常に楽だったと。ですから、もう完全に忘れているという ような状況で、確かにそういうものが安全に使えれば、あるいは保険適用で使えるので あれば使っていい患者さんもいらっしゃるとは思うんですが、全例に使うとなりますと、 先ほど言いましたように、偶発症、呼吸停止とかショック等で心配停止に陥ることもあ りますので、実際、自分自身も経験したことがありますので、そうなってしまって、も し、命を落とすというようなことになってしまうと、これはかなり訴訟問題にもなるで しょうし、危険な反面を持っているということになると思います。ですから、非常に症 例を限って使用する、しかも、厳重なサチュレーションモニターや心肺の状況をモニタ リングしながら使うということであれば、使っていい患者さんを絞り込むことはできる かもしれません。 ○土屋(隆)委員 現在は、先生は原則としては使わないと。 ○佐野参考人 原則的には男性の方には一切使っておりませんし、女性の患者さんに対 しても非常に痛みが強い患者さんに対しては使いますけれども、それ以外に関しては使 用しないということです。 ○土屋(隆)委員 被検者の立場から関原さんの御意見を伺いたいんですけれども。 ○関原参考人 私は、これは医療ですから不確実というかリスクは絶対あると思うので、 今の率がどういうことかということです。一応、内視鏡検査の前に心電図等でチェック して、麻酔を使う訳で、勿論リスクはないとはいえませんが検診率をマクロベースで上 げていこうとなると、検査が楽というのは非常に大きいと思います。 ○佐野参考人 それはそうですね。いかに楽な検査をやり遂げるかということが、次の またリピートして受けていただく、あるいは皆さんに検診が広まるということの第一歩 だとは思うんですが。 ○関原参考人 実は私は二十数回やったんですが、麻酔というのは物すごく気持ちがい いんです。やった人はみんないいと言うんですね。あの眠る瞬間、「はい、始めますよ」 というフワッとして物すごく深い眠りに落ちて、あれが一種の快感です。あれはすごく 気持ちがいいということでリピーターになっているんです。勿論ちゃんとした検査前に 管理されているので安心しています。アメリカの新谷先生のものは割に強い感じです。 だから、目を覚ますのにまた注射をして覚まされるらしいんです。ところが、日本で今、 私がやってもらっているところは、別にそういうことではなくて、ちょっとなんですね。 だから、そういうことなしに自然に目が覚めるというので、勿論程度はあるんでしょう けれども、私は麻酔はやった方がいいんじゃないかなという気がします。 ○笹子委員 学会等でどれくらい使われているというデータは出ていないんですか。中 央病院はかなりの頻度で鎮静剤を使っていると思いますが。 ○佐野参考人 済みません、学会でどのくらいというのは今すぐ答えられないんですが。 ○笹子委員 それから、要するに静脈麻酔剤とか鎮静剤、トランキライザーとかそうい うものを使ったときの事故の率というものもわかっていないですか。 ○佐野参考人 恐らくそれはデータがあると思いますので、ちょっと調べてみないとわ からないです。 ○笹子委員 だから、結局その辺の数値が非常に……。 ○関原参考人 容認できるかどうか。 ○笹子委員 ……1個あったからという問題ではないと思うんですね。 ○垣添座長 今の点に関して、いかがですか。 ○樋渡委員 母集団の数がわかっていないと思うんですね。実際どのくらい問い合わせ が多いか。死亡事故とか重篤な事故があるとなった場合に、学会の報告には上がってき ていますけれども、全体……。 ○笹子委員 通年の検査数に対して、何割の患者が投与を受けているというのは、多分 出せると思うんです。 ○樋渡委員 学会主導で調べれば、すぐに出るとは思いますけれども。 ○垣添座長 やはり、そういうデータは必要ですよね。 ○樋渡委員 やはり、多くの患者さんに使う施設と、全く使わない施設とはっきり分か れていると思います。 ○土屋(隆)委員 先ほどの関連なんですけれども、これは先生方の時代になってから、 うんと機器そのものもよくなりましたし、そういう苦痛、事故等は少なくなったんだと 思いますけれども、内視鏡の検査の発展・発達の歴史からいうと、特に、大腸の内視鏡 検査というのは、最初のころは相当被検者も大変だったんですね。やる方も汗だくでや りましたけれども、それがしばらく続いたために、変に世の中に喧伝されていまして、 大腸の内視鏡をやるぐらいなら死んだ方がいいぐらい極端なことを言って、相当苦しか ったんだろうと思いますけれども、周囲にそういう不安感を与える人がいまだに結構い るんですね。 ○垣添座長 先ほどの佐野先生の報告された、内視鏡検査に習熟した方は物すごく短時 間に精密検査の目標を達成するのに対して、慣れていない人が検診を担当した場合の差 は大きいと。 ○土屋(隆)委員 ですから、大腸内視鏡検査の受診率を上げるには、先生方がそのつ もりで御指導いただくということと、素人でもやっているうちに腕も上がるだろうとい うような考え方ではなくて、認定制度みたいなものがありますけれども、あれは当てに なりませんから、実技は先生方が直接指導いただいて、私自身も経験があるからわかる んですけれども、そうしていただかないと、この検査そのものの有効性というか意義は 非常に高いということがわかっていても、いよいよ精検で内視鏡検査をやりますという ときに、意外にそういうことで躊躇していらっしゃる方がいるんじゃないかと思います ので、そのことも御配慮いただく必要があると思います。 ○垣添座長 ありがとうございます。 ○森山委員 2つほどあるんですけれども、1つは精度の問題なんですが、今ある専門 医制度というのはかなり怪しくて、知識として知っている専門医と、内視鏡のように実 技が優先するような専門医と全く別だと思うんですね。今よくできているのはマンモグ ラフィがよくできていて、勿論試験はやるんですけれども、どういう細胞系が動いてい るか、どの領域に多いのかというのはいっぱいありますけれども、そのほかに、現実に 中央精度管理委員会というのがあって、そこで読影をさせられるんですね。だから、知 識が山ほどあっても、目の前にあるマンモグラフィを読めないとアウトになるようにな っているんです。それでA、B、C、Dランクまでつけているので、特に検診の場合は 医療と違うので、そういうような実技を伴った何かランク付けがいいのではないかとい うことは一つ思います。  それから、もう一つは前処置の話なんですけれども、今うちで大腸内視鏡と注腸を選 ばせますと、大体7割が内視鏡を選ぶんですが、私は両方やったことがあるんですけれ ども、幸か不幸か全く鈍くて、どっちでもOKなんですね。いわゆる上部消化管内視鏡 でも全く大丈夫で、今度麻酔なしで上部消化管内視鏡をやってみようかと思っているぐ らいなんですけれども、人によってかなり差があるんです。少なくとも1回やって苦し かったとか、途中で苦しいという人には、初回はやらないでやるけれども、1回やって 懲りてやめてしまうというのは、次もまた同じ方法でやられるからということだと思う んです。だから、そのときに対応することが必要ではないかと。勿論、医療も必要です けれども、特に検診というのは病識がない人をやるということを理解すると、検診受診 者の自由がある程度きくという要素が必要なんじゃないかという、その2点です。 ○垣添座長 ありがとうございました。  では、最後に、笹子委員。 ○笹子委員 最初の斎藤先生のお話の中でも、ネガティブ・プレディクティブ・バリュ ーといいますか、要するに1回検査をやって何もなかったときに本当にないということ が、何年間先生は大丈夫かというと3年とかと今おっしゃっていましたけれども、それ が3年間で何もなかったのにがんになる人というのが、どれくらいの頻度かというのは わかっているんでしょうか。 ○佐野参考人 ちょっと27ページにデータを載せておりますけれども、これは対象患者 さんはもともと健常人ではありませんで、何らかの症状あるいはFOBTで引っ掛かった患 者さんを対象にしておりますけれども、グループAというのが全くポリープがなかった 患者さんです。右に年数が書いてありますが、年数の上の段、0.2、0.5、0.8、1.2、こ れが累積のがんの発生率ですので、全くポリープがなかった患者さんは10年経ってがん が発生する可能性としては2.6%ということで、多施設、5施設のデータでやりました けれども、グループBが小さなポリープがあった患者さんです。グループCが大きなポ リープがあった患者さん、グループDががんがあった患者さんですが、それぞれリスク 別にだんだん発生頻度が上がってくるということがわかっております。 ○斎藤委員 これはIndex Lesionだから、10mm以上のポリープが入っています。 ○佐野参考人 そうですね。10mm以上のポリープも入っていますね。10mm以上のポリー プか、高度異形腺腫またはがんというものがこれぐらいの発生頻度で出てくると。 ○笹子委員 Aは、それが全くない人。 ○佐野参考人 はい。Aは1回目の内視鏡で全く所見がなかった患者さんです。 ○関原参考人 1つだけよろしいですか。非常に初歩的な質問なんですけれども、便の 潜血反応があり、異常があるから、再検査を受けてくださいということを患者に連絡す るのは、日本全国同じフォームなんですか。つまり、あなたは潜血反応があってがんの 疑いがありますとはっきり書いて出せば、私はもっと検診率が上がるような気がするん ですけれども。異常があるとか言うだけでは……。その点だけちょっと教えていただけ ますか。 ○斎藤委員 非常に重要な御指摘で、それは先ほどの島田参考人のプレゼンの中にもあ りましたが、検診を受けるときに陽性の意味がどういう意味かということを伝えている ところから、全く伝えていないところまであります。ですから、全国一様ではないです。 ○垣添座長 便潜血反応検査の目的や意味が伝わっていないということですか。 ○関原参考人 誰だって、あなたはがんの疑いがありますと言われれば、私は大半の人 は再検査を受けるんじゃないかと思うんですが。 ○斎藤委員 少なくとも、説明書のどこかに1行書いてあるのと、物すごく口を酸っぱ くして耳にタコができるくらいに言っている施設間の高低の差はあります。 ○関原参考人 1行書いておけば終わりじゃないかと、私はそういうふうに……。どう いうふうになっているのか、そこがよくわからないんですよ。 ○垣添座長 島田先生、お願いします。 ○島田参考人 おっしゃるとおり、強力に受診勧奨した方が受診率が上がるという報告 をしているところもありますが、その反面、強力にやったら下がったというデータを出 しているところもあるんですね。以前、坪野先生も検診受診に関する諸要因ということ で、例えば、非常にがんというのを深刻にとらえ過ぎている方というのは、かえってが ん検診を受けなくなるというデータを以前出されたことがあるんですけれども、余り脅 かし過ぎると、「あなたはがんだよ」と言うと、患者さんというのはがんというのはイコ ール一巻の終わりだと思っている方もいらっしゃるんですよ。だから、余り強烈に伝え 過ぎるとちょっと難しいので、でも、そこは何かうまくほどほどに伝える工夫はやはり 必要だろうと思います。 ○関原参考人 大腸がんの検査で疑いがありますので、必ず再検診を受けてくださいと 書くのは、私は何も脅かすとか何かではなくて、検査結果をそのまま伝えることではと 思います。 ○島田参考人 脅かす意思はなくても、すごく怖がってしまう方がいるのもまた事実な ものですから。 ○関原参考人 その人はどう伝えようがしょせん来ないんじゃないかと私は思うんです けれども。 ○笹子委員 要精検と言われたときに、要精検という診断を下す率が高いほど、実際に 見つかる患者さんの頻度は減りますよね。そうすると、要するにオオカミが来たぞとい うオオカミ少年じゃないけれども、便潜血がプラスだからといって本当にがんの人はす ごく少ないんだから心配しなくていいというふうになっていきますよね。だから、先ほ ど斎藤先生がおっしゃっていたように、全部CFでやるというのであれば、それなりの 低くある程度絞った人で実際にがんの頻度が高いというところで、難しい精度管理にな ると思いますけれども、今よりももっと苦しいんだったら、しかも、本当のがんの頻度 が低いのだったらやめようかなという話になるという可能性はあると思います。 ○垣添座長 そのとおりですね。それは大腸がん検診における非常に重要なポイントだ と思います。 ○森山委員 最後に1つだけいいですか。 ○垣添座長 では、これが本当に最後です。 ○森山委員 精度管理で非常に大切なのは、大腸の場合ポリープの中にがんがあるのが ありますよね。そういうのは1年くらい放ったらかしておいても本当の話、大したこと は起こらないんですよね。そうすると、さっきのCFと大腸の注腸のときのことなんで すけれども、例えば、注腸で見落とされてしまって七十何パーセント大腸で見つかった ものの中に、それが致命傷になるかどうかということがあると思うんですよ。そうする と、同じ見落としでも致命傷で見落とされているのか、別に遅れるだけで結果は同じな のかという解析のデータはございますか。 ○斎藤委員 進行がんがたくさん見落とされます。 ○森山委員 なるほど、わかりました。 ○笹子委員 ちょっと国策のことで。 ○垣添座長 大事な話なので、では、最後にもう一言。 ○笹子委員 国策としての取り組みがないという話が何回か出ましたけれども、もし、 本当に国策としてみんなが受けるということを国が動かすのであれば、過去3年間検診 を受けた人ががんになったときの医療費の、今の3割本人負担のうちの1割はどこか国 のお金で払うとか、そういうようになっていれば自分が検診を受けていたから一部は国 が持ってくれる、受けていなかったために全部3割分は自分で払うとか、そういうよう なインセンティブをはっきり出せば、国策と言えるのではないかと思います。 ○垣添座長 おっしゃるとおりだと思います。そういう検討もされていると聞いており ますが。  では、大変活発な御議論をありがとうございました。それから、関原、島田、佐野各 先生には、参考人として大変貴重な御報告をありがとうございました。  時間がまいりましたので、これで閉じさせていただきますが、本日御議論いただきま した点は、事務局で整理していただきまして、次回に報告させていただきますが、最後 に事務局から何かございますか。 ○神ノ田課長補佐 三浦課長が別の会議で途中退席しておりますので、私から申し上げ ます。本日は、活発な御議論をいただきまして、本当にありがとうございました。また、 3名参考人の方には、大変貴重なお話をたくさんいただきまして、本当にありがとうご ざいます。  次回の検討会でございますが、それまでに今、座長から御指示がありましたように、 ある程度の資料をまとめて提出させていただきたいと思います。場所等につきましては、 また追って調整をさせていただきたいと思います。  本日は、本当にありがとうございました。                    照会先:老健局老人保健課                 連絡先:03-5253-1111                 担当者:課長補佐 神ノ田(内線 3942)                      主査   前田 (内線 3947)      - 4 -