05/06/15 第3回脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会議事録 第3回 脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会                       平成17年6月15日(水)                       厚生労働省17階 専用第21会議室  南野課長 最初に事務局から連絡事項がございます。座長の佐藤先生ですが、東北新 幹線が一時ストップしたということで、30分程度遅れるという御連絡がございました。 佐藤座長がお見えになるまでの間、座長代理でございます小沼先生に進行をお願いした いと思います。  また、今日は涼しくなっておりますが、軽装励行期間ということで、我々もこういう 格好でおりますので、上着を脱ぎ、ネクタイもはずしていただいて、審議に臨んでいた だければと思います。  それでは小沼先生、よろしくお願いいたします。  小沼座長代理 佐藤先生が到着されるまで、私が代理で座長を務めさせていただきま す。どうぞよろしくお願いいたします。  ただいまから「第3回脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会」を開催いたします。  まず、本日の資料の確認を事務局にお願いします。  事務局 それでは、資料の確認をいたします。  資料1 論点1〜3に関する検討会での意見(案)  資料2 麻薬指定の手順  資料3は論点4の資料ですが、3−1から3−5まであります。   3−1 薬事法に基づく無承認・無許可医薬品の行政による取締りの概要   3−2 麻薬及び向精神薬取締法における麻薬の規制について   3−3 麻薬及び向精神薬取締法における向精神薬の規制について   3−4 規制枠組みのパターン   3−5 毒物及び劇物取締法におけるシンナーの規制について  資料4は論点5の資料ですが、4−1から4−4まであります。   4−1 インターネットによる脱法ドラッグの販売方法の事例   4−2 医薬品と麻薬の輸入   4−3 薬事法と麻薬及び向精神薬取締法の罰則の比較   4−4 インターネットを用いた脱法ドラッグ等の販売等に係る法的規制の現状       (概観)  資料5は論点6の資料ですが、5−1から5−4まであります。   5−1 薬物乱用防止新5か年戦略(平成15年)概要   5−2 厚生労働省の薬物乱用防止啓発活動の取組   5−3 学校における薬物乱用防止教育について   5−4 効果的な啓発活動とは −学校の現場より−  資料6は論点7の資料ですが、2つに分かれております。   6−1 「脱法ドラッグ」に代わる呼称候補(案)   6−2 薬物乱用状況の把握法  参考資料1 主な論点  参考資料2 薬事法と麻薬及び向精神薬取締法との比較  資料は以上ですが、不足等がございましたら事務局までお申し出ください。  小沼座長代理 前回までの論点別の議論の要約が、資料1「論点1〜3に関する検討 会での意見(案)」として事務局から提出されております。これに関して御意見があれ ば、後ほど事務局に連絡してください。  それでは議題1の「主な論点の討議」に入ります。まず、前回出た御質問等について 事務局から補足説明があります。  事務局 それでは説明申し上げます。資料2「麻薬指定の手順」をご覧ください。前 回の議論で麻薬指定の手順という点がありましたので、現在、具体的にどのような手続 きを経て麻薬指定が行われているかを説明するのがこの図です。  まず左端のルートですが、国際条約の付表に新たな物質が麻薬として加わった場合に は、これを180日以内に国内法の規制下に置くことが締約国の義務となっておりますので、 パブリックコメントを得て麻薬指定政令を改正し、その物質が麻薬に加わることになり ます。  次に真ん中のルートですが、国内で乱用等があって、我が国が独自に麻薬を指定する 場合には、このルートをとることになります。  まず規制(候補)物質を選定し、依存性、精神毒性等を評価するための資料を収集し、 国内の乱用実態の有無や程度を詳しく調べ、その他関連情報として産業用途等を収集し ます。  これらを総合して、既存の麻薬と同種の乱用のおそれがあり、かつ同種の有害作用が あるかどうか、麻向法の別表中に掲げられた定義ですが、これを判断します。  これまでは文献や世界の薬物取締機関等からもたらされる情報に基づいてこの判断を してきましたが、平成17年度から科学的データが不十分である場合には厚生労働省が自 ら評価のための試験を行い、麻薬指定の適用を判定するのに足る科学的データを入手す ることとしています。これは脱法ドラッグ等として新規化合物が登場してくるのに対処 するためです。  こうしたデータをそろえて、依存性、精神毒性、麻薬との類似性の評価を行います。  さらにこの判断について専門家の評価を仰ぎ、その確認を得、麻薬指定に関する一般 の方々の意見を得るためにパブリンクコメントの募集を行い、その上で麻薬指定政令を 改正して、この物質を麻薬に指定します。向精神薬についても基本的に同じ仕組みです。 これが麻薬指定の手順です。  もう1点は英国の一括指定についてですが、これは資料はございません。英国の物 質規制法の一括指定の制度において、構造等から毒性がなさそうなものにまで刑事的 な罰則を含む規制を、そのクラスの他の物質と同じようにかけているのかという点で す。この法律を所管する英国の内務省の担当者に電子メールで照会しまして、現在ま でにわかったことを申し上げますと、罰則を含めて、一括指定された物質に関する規 制は他の麻薬と同じであるということです。したがって、前回、トリプタミン等の誘 導体をたくさん示しましたが、これらはすべてヘロインやコカインといった麻薬と法 的に同じ規制を受けることになります。  一括指定では、多くの物質が定義に当てはまることになりますが、それらが規制物質 に当たるかどうかに関する問題は、担当者は今までのところ経験していないということ です。  前回からの宿題事項については以上です。  小沼座長代理 ただいまの事務局の説明について御質問等がありましたらお願いしま す。よろしいでしょうか。  それでは、参考資料1に書いてありますが、前回御承認いただきました「主な論点」 の4番目、「脱法ドラッグの規制を仕組みをどのように考えるか」という論点から議論 を進めたいと思います。まず事務局からこの論点に関する資料の説明をお願いします。  事務局 まず資料3−1ですが、薬事法に基づく無承認・無許可医薬品の行政による 取締りの概要です。  薬事法による取締りについては、インターネットや市売調査その他の情報に基づき、 薬事法の無承認・無許可医薬品の製造、販売等に関する情報を入手した上で、薬事監視 員による立入検査等を行い、そのものが医薬品に該当するかどうかを判断し、必要に応 じて収去し、成分検査を行います。  その上で薬事法違反を確認し、行政指導、無承認医薬品の廃棄、回収、広告・販売等 の中止等を指導します。場合によっては行政命令等によって報告命令、薬事法に基づく 廃棄命令、命令を受けた者がその命令に従わない場合又は緊急の必要がある場合は薬事 監視員による廃棄、回収等の措置が行われます。  悪質なものについては警察等で告発をすることになります。  事務局 引き続きまして資料3−2以降で麻薬及び向精神薬取締法における規制につ いて説明申し上げます。  まず資料3−2ですが、これは麻薬の規制です。  図をご覧いただきますと、輸入されてから麻薬製造業者等のラインがありますが、製 造、製剤、元卸、卸という業者を経て、患者又は研究者に至るまで免許制度と許可制度 によって厳格な流通規制が行われています。ここに掲げられた者以外には麻薬は流れず、 所持も使用もできません。  これらの輸入業者をはじめとする業者はすべて厚生労働大臣又は都道府県知事の免許 制度の下に置かれており、免許期間は2年間で更新となっています。  免許業者であっても、輸出入についてはその都度、製造については半年ごとに大臣の 許可を得て、これを行うことになっており、それ以外は禁止されています。  流通については太い矢印がありますが、矢印の方向の麻薬の売買についてはその都度 許可は不必要です。しかし譲渡証・譲受証の交換や記録の保管が義務づけられています。 矢印の逆向きの流通は、その都度許可を得なければできません。  患者に医療用の麻薬が譲渡される際には、「麻薬処方せん」という様式の定まった特 別の処方せんをもって行われます。  以上が麻薬の流通等にかかわる規制です。  次に資料3−3ですが、麻向法における向精神薬の規制です。  向精神薬についても麻薬と同様、免許制度と許可制度による流通規制が実施されてい ます。患者は別として、免許者以外には向精神薬は流れません。  免許に係る業態については、麻薬に比べますとやや簡素化されていますが、業態は6 つあります。免許は5年ないし6年の有効期間があります。  麻薬に比べて医療用途が大きいことにかんがみ、普通の薬局開設許可を受けた者を向 精神薬小売業者とみなす点、研究者については個々の研究者に免許を与えるのではなく、 試験研究施設の設置者という形で登録制となっている点が麻薬との差ですが、その他は 流通の経路等は似ています。  流通について麻薬と違う点は、矢印の逆向きの返品が認められている点は違いますが、 この矢印以外のものは認められておりません。  輸出入については、免許を受けた向精神薬輸入業者・輸出業者が行うことはもちろん ですが、第1種向精神薬(メチルフェニデート等)はその都度の許可、第2種向精神薬 (ペンタゾシン等)は輸出入の際に届出が必要です。第3種向精神薬については麻薬及 び向精神薬取締法としては手続きは求めておりません。  なお、試験研究施設設置者を輸出入も認められていますが、あらゆる向精神薬につい てその都度の許可が必要になります。  向精神薬の規制については以上です。  続きまして資料3−4です。以上、薬事法と麻向法の規制を概観しましたが、脱法ド ラッグの規制を考えるにあたって、一般的にどのような規制の方法があるかをパターン で示したものがこの図です。  第1の方法は、左上の図ですが、麻薬のように一律に製造、取引、所持、使用等をす べて禁止する。したがって、黒く塗りつぶしてありますが、免許制度で一部解除する。  例としては麻向法の第14条を挙げていますが、「麻薬輸入業者は、麻薬を輸入しよう とするときは、そのつど厚生労働大臣の許可を受けなければならない」。免許で解除し、 さらに許可もかけて輸入を制限するという方法です。  右側の2にいきますが、利用する際の目的ないしは理由に着目して規制する場合は(1) と(2)と2つあります。  (1)は正当な理由による場合の利用を除いて禁止する。白く抜いた部分を正当目的とし て、これを除いた部分を禁止するという方法です。  例としては、銃砲刀剣類所持等取締法と毒物及び劇物取締法を例示しています。業務 その他正当な理由による場合を除いては、発火性、爆発性の劇物、長い刃物などを携帯 してはならないという書き方になっています。  どういう理由を正当な理由というかについては解釈に委ねられる場合や政省令で定め ている場合があります。  (2)は乱用目的の利用を禁止する方法です。  例としては、同じく毒物及び劇物取締法のシンナーの規制に関するものが挙げられま すが、これが唯一の例でして、これは議員立法によるものです。第3条の3で、「みだ りに摂取し、若しくは吸入し、又はこれらの目的で所持してはならない」。それ以外は 許すという書き方になっています。  続きまして資料3−5ですが、シンナーの規制について補足して説明申し上げます。  1.規制対象物は、興奮、幻覚又は麻酔の作用を有する毒物又は劇物(これらを含有 するものを含む)として、(1)トルエン(劇物)、(2)酢酸エチル、トルエン、またはメタ ノールを含有するシンナー、接着剤、塗料、充てん剤、これらが政令で指定されていま す。  2.行為と規制ですが、興奮、幻覚又は麻酔の作用を有する毒物又は劇物を乱用目的 で使用されることを知って販売することが禁止されていまして、違反した場合は2年以 下の懲役、100万円以下の罰金、併用も可という罰則が定められています。  また、摂取、吸入などの使用、乱用を目的として所持することが禁止されており、違 反した場合は1年以下の懲役、50万円以下の罰金、併用も可という罰則が定められてい ます。  参考のところですが、毒物及び劇物取締法は産業用途のある物質について規制してい るものでして、毒物や劇物の製造・輸入、販売等を行う際には登録が必要です。譲渡に 関しても未成年者等への譲渡禁止などの制限がかかっています。  トルエンは劇物でもありますので、この規制が前提としてかかり、かつシンナーのた ぐいにかかる規制もかかるということです。  資料3に関する説明は以上です。  小沼座長代理 ただいまの説明について御質問などがありましたらお願いします。よ ろしいでしょうか。  それでは、脱法ドラッグの規制の仕組みをどのように考えるかについて御議論をお願 いしたいと思います。  合田委員 議論をするということは、資料3−4の規制の枠組みのパターンの1と2 の(1)、(2)のうち、最終的にどれでいくかという意味合いでよろしいんですか。  南野課長 この種の物質の規制の枠組みはこの3つのパターンに要約できるのではな いかと思われます。脱法ドラッグについても許可制、免許制でガチガチに縛るような仕 組みを作っていくのか。それは麻薬や向精神薬と似たような仕組みということで、1の ほうになるわけです。あるいは正当な理由による場合の利用を除き禁止する2のような 仕組みを考えていくべきなのか。2の(2)は例外的な規定ですので、こういう仕組みが脱 法ドラッグでとれるかどうか、法的な問題としてあろうかと思いますので、1のパター ンでいくのか2のパターンでいくのか、そういった点について御議論いただければと思 います。  合田委員 分析と取締りに直接かかわってるところで考えますと、1は難しいと思い ます。何らかの形で流通している脱法ドラッグを取締ろうとすると、どこかで分析をし ます。その場合そういうものの標準品が必要ですし、いろんなところで実験者がかかわ るシステムが必要だと思うんです。麻薬の場合は数が限られていますし、急に流行する という状態はないので、1番の制度でも麻薬取締事務所を含めて対応できると思います が、脱法ドラッグの場合は地方衛研とか登録検査機関といったレベルで何らかの対応が 必要だと思います。  そうすると2番のパターンでないと実験をして、それはそのものであるということを 決められないと思います。2番のパターンで、特に正当な理由があれば、そういう場所 は登録制でも何でもいいんですが、そういうものをアイデンティフィケーションするた めに取り扱うというのは何ら問題ない。そういうものを分析する練習をすることも可能 だし、ましてやそのものの標準品を用意することを考える時に、試薬屋さんは正当な理 由であればそのものを準備することができますよね。そういう意味で1番はすべてのと ころで取締りをするためにネックになる場合があるので、2番の(1)が適切な方法かなと 思います。  三輪委員 2の(1)のほうは原則的に禁止する、ただし正当目的があった場合はOKと いう関係ですよね。(2)のほうは原則的にOKだけど、みだりに摂取し、若しくは吸入し、 所持してはならない。他の用途にも使われるシンナーを考えると、原則的に禁止するの は難しいという事情はよくわかります。(1)の銃砲刀剣法の場合には長い刃渡りの刃物を 持って歩くのはよくないので一般的に禁止、でも正当な目的があればその限りにおいて OKというのは理解しやすい。そういう意味で合田先生の御意見と一緒なんですが、こ の図の表現方法をもう一度考えてほしいと思うんです。  南野課長 図の描き方は誤解を招くところがあったかもしれません。2の(2)のほうで すが、シンナーの場合は産業用途で広く使われているという実態がありまして、これの 乱用が青少年に広がってきたということがあるので、乱用目的の利用に禁止規定を設け たという経緯があって、こういう規定の書きぶりになったと思います。図については誤 解を与えるようなところがあれば、そのようなことがないようにしたいと思いますが、 基本的には裏からとらえるか表からとらえるかの違いだということです。  三輪委員 これを見る限り原則と例外がひっくり返ってませんのでね。図表の上でも ひっくり返したほうがいいのではないかと思います。  合田委員 ふつう脱法ドラッグと考えられてるもののほとんどは、それ以外の目的が ないので、2の(1)でいいと思うんですね。ただ、亜硝酸塩などの場合はそれ以外の目的 があるので、2の(1)では苦しいかもしれない。ほとんどすべては2の(1)で大丈夫だろ うと思います。  板倉委員 国民生活センターでもダイエット関係のところでエフェドラが入ってるか どうことについてテストの依頼を受けたことがあったんですが、うちでテストができま せんで非常に困ったということがあります。監視していく場合はテストが不可欠ですの で、そういった意味でやりにくいというのも合田先生のお話と一致すると思います。  受け取る側としては三輪先生と同じなんですけど、全体的には認められていて一部だ けはいけないんだよみたいにとらえられると、受け手のほうは緩やかな印象を受けてし まうんですね。絶対に使ってはいけないんだけど一部だけはいいんだよというと、それ に対して取り組む姿勢が全然違ってしまうと思うので、2の(2)はおかしい。やるとして も(1) でないと、一般に普及していった時に逆にとられてしまう。悪いんだけど、こういう使 い方をすればいいんだよというのは、この趣旨とは違ってくるんじゃないかと思います。  小沼座長代理 座長の佐藤先生が到着されましたが、今の討議だけは私のほうでさせ ていただきまして、5番目の論点からは佐藤先生に引き継いでいただきたいと思います。 ほかにいかがでしょうか。  今井委員 合田先生のお話では、脱法ドラッグは亜硝酸塩を除くと、その他の正当な 用途はないということだったので、法的な規制の仕方としては2の(1)がいいと思ってる んですが、こういうのをかけた時に、その他正当な理由という時にほとんどいらないこ とを書いてるのかなという気がしないでもないんですね。科学的に脱法ドラッグといわ れてるものも適正な利用方法があるのかどうか、今後、規制案を考える際の資料として 教えていただければと思います。  小沼座長代理 脱法ドラッグというのは同じ名称でもいろんなものが含まれていて標 準品がなかなか見つけにくい。標準品をきちんと見つけて、それを動物実験して身体毒 性、精神毒性、依存性を調査する、そういう面では正当目的を入れる必要があると思う んですが、物質によって正当目的として考えられるものは何かありますか。  合田委員 天然物を考えていただくとよくわかると思うんですが、脱法ドラッグ成分 の中でも天然物が入ってるものがあります。観賞目的で植物を持っている場合は、どう しようもない場合がありますね。どこまでかという場合、難しいとは思いますけど、一 つ考えられるのは天然物の場合、そういうものが微量に含まれているものも除かざるを 得ないだろうと思います。  和田委員 ここで議論するのは合成で作られるものなのか、天然物に含まれるものな のかでずいぶん違ってくるという大前提があって、包括的に一括して考える方法論を考 えるべきなのか、別々に考えるべきなのか、そのへんは議論としてあるのかなと思いま す。  それとは別に、2の(1)というのは、現実的には乱用以外に用途がないものであろうと いう御意見がありましたが、合成系の薬物でいうなら、いま問題になっている脱法ドラ ッグの基本骨格で押さえること自体、何も問題がないのではないかという話になってい くのではなかろうか。そういう議論もあり得るのではないかという気がするんですが、 どうなんでしょうか。  合田委員 脱法ドラッグとして流通しているものの基本骨格はフェネチルアミン系と トリプタミン系がありますが、もともと天然物にもあるものです。生理活性がある骨格 ですから、どんどん広げると、有用な化合物にもつながるんですね。前回も議論があり ましたけど、最初は薬事法の第3項の規定でいって、その後に個別の化合物は挙げられ るものはどんどん挙げていく、その挙げていくスピードの問題だと思うんですね。  脱法ドラッグの分析を自分のところでやってますと、法規制があった瞬間に物が変わ るんですけど、非常に近いものが出てくるんですね。例えばダイソプロピル基のイソプ ロピル基の片方だけがメチル基に変わってみたり、ただのプロピル基に変わってみたり、 わずかな変換はどんどんしてくるんですけど、それがタイムリーに化合物の指定で押さ えることができれば、かなり実効が上がるんじゃないかと思います。地方での取締りで も化合物レベルで具体的に挙がってるとやりやすい。  実験をやる人はどのものであるかというのが大事で、どのものであるかということを 押さえていくのが分析の本筋なんですね。骨格で押さえるというのはどこまでやるかと いう問題があるので、法律の範囲の中で明確に化合物があるほうがいい。いま流行して いる化合物について、どのくらいスピーディに名前を挙げて、そういうものを製造の目 的以外では所持してはならないという、そういう形ができるかどうかだと思うんです。 ある一定のスピードをもってできれば、そういうものをどんどん押さえることができる ので、あるところで行きつくのではないかと思います。  そういうことを目的で売るんだから、生理活性についてある程度のことは向こうも期 待して作ってるんでしょうけど、本当にそのもの自身に活性があるかどうかというのは わからないんですね。その部分はグレーであったとしても、目的がないものがそういう 形で販売されれば、そのものはいかに指定できるか、そこのスピードが大事だと思いま す。  三輪委員 天然オリジンと合成のものを区別すべきかどうかという点ですが、私は区 別すべきではないと思います。代表的なケシからのモルヒネとかマジックマッシュルー ムのサイロシビンの例を見るまでもなく、麻薬系のものというのはけっこう天然オリジ ンのものがありますね。ですから脱法ドラッグについても区別すべきではない。  ただし、天然のものはケシの花を観賞するとか、マジックマッシュルームの異様な姿 を観賞するとか、アロマの目的とか、ほかの正当な目的らしきものが当初うたわれると は思うんですね。合成のものに比べて、観賞とかアロマとか他の正当らしき目的だとい うのは、そんなものじゃない。それは時間の問題で明らかになるわけですが、そのへん の手続きが一ついる。観賞目的ではありません、アロマ目的ではありませんということ をはっきりさせる手続きが何がしかの期間いるというだけの相違であって、天然由来と 合成由来のものは差がない、差をつけるべきでもないと私は考えます。  和田委員 ちょっと誤解された部分があるかもしれないんですが、天然に存在するも のは麻薬原材料として指定するかどうかの話だと私は見てるんですよ。物質として区別 するしないの話じゃなくて、規制法というか指定法というか、そこを変えていけば解決 する話ではなかろうか、そういう前提で話をさせていただきました。  合田委員 天然物にはいろんなパターンがあって、植物の学名で規定できるものがあ れば、それが一番いいんですね。それを含むものということではなくて、この植物にし かこういうものは天然物で入ってないといえば、それで指定してしまう。広くディスト リビューションしているものについては、どうするかというのはいろんなテクニックの 問題だと思いますけど、天然物であったとしても植物名で指定できるものもあるという ことを発言したいと思います。  鈴木委員 脱法ドラッグの中から既に麻薬になっているものがありますよね。そうい うものと、今後指定していくものとの区別というか、これからは麻薬にしていかないの か、そのへんはいかがなんでしょうか。  南野課長 この4月に、脱法ドラッグの成分として広く流通していた5-MeO−DI PTとAMTの2物質を、専門家の方々の御意見をお聞きした上で麻薬に指定したわけ ですが、私どもの考えとしては、麻薬の指定に足る有害性ないしは依存性を持つような 物質については、できるだけ麻薬に指定していこう、そしてより厳しい規制をかけてい こうという考え方に立っております。  脱法ドラッグの成分は科学的データが少ないものが多いということもあるもんですか ら、自ら動物実験等の評価試験をやって科学的データを集めて、麻薬に指定できるだけ のデータが得られたものについては麻薬に指定していく、このための予算も確保したと ころです。今後、脱法ドラッグとして出回るものの中で麻薬に指定できるようなデータ が集まったものについては、できるだけ迅速に麻薬に指定していくということで進めて いきたいと考えております。  鈴木委員 2段階で考えておられるということでよろしいわけですね。  南野課長 はい。  倉若委員 調査等で職員が家族のところへ行きますと、「持ってると罰せられるんで すか」とよく聞かれるんですが、薬事法でいくと所持は違反ではないので、「違反では ありません」となると、お母さんが子どもに「よかったね」という話になってしまう、 というのが現状なわけです。今の脱法ドラッグは全部いけないんだよという形から入っ て地方としても大変困るという現状ですので、今お話がありました2段階の2番目の段 階とすれば2の(1)になるのかな、その上で1に上がっていくのかなと、そういう形でと らえているわけです。  小沼座長代理 現状では脱法ドラッグが明らかに人体に影響を与えるような意図をも って売られている場合は薬事法で規制する、それ以外の規制としては麻薬及び向精神薬 取締法に入れるとすれば麻薬になってしまうような感じがするんですけどね。私は薬物 依存の患者さんをもってますけど、脱法ドラッグを使うような人は若者で、しかも少し 無規範な興味半分の人が使うわけなんで、それが麻薬と同じような形で乱用されるとは 思えないんですね。  麻薬及び向精神薬取締法に入れると麻薬になってしまうんですが、アメリカの規制で は臨時的な措置として期限つきで入れてるんですね。医薬の役割をするのであれば向精 神薬になると思うんですが、それ以外のものは全部麻薬になってますね。それ以外に新 規の乱用危険物質とかそういう枠を一つ設ければ理解しやすくなって、網がかけやすい ような感じがするんですが、いかがですかね。  南野課長 向精神薬の規制が入ったのは平成2年の法改正の時でして、国際条約に基 づいて国内的にもそれに対応していくということで入ったようです。当時の資料を見て みますと、薬という名称は使っていますが、医療に使用されている物質だけでなく、医 療に使用されてない物質も含み、広く中枢神経系に作用して精神機能に影響を及ぼす物 質の総称としてとらえられたようです。脱法ドラッグに相当するものも広い意味では向 精神薬という概念の中に含まれてくるのかなという感じはしておりまして、麻薬ほど有 害性はないにしても、それよりも一段低い有害性があって、何らかの規制をかけていく 必要があるものとして向精神薬がとらえれられている、このような整理だったように承 知しております。  小沼座長代理 その場合は標準品があって薬理作用とか依存形成作用とか身体に対す る影響、精神に対する影響と医薬品としての用途と、その勘案によってランクづけで入 ってると思うんですね。標準品がないうちに向精神薬にも入れづらいのではないかとい う感じがするんですが。  南野課長 麻向法の場合は基本的に直罰で規制をかけていく。要するに白か黒かで取 締りの対象になるかならないかというところで整理をするものですから、有害性が明ら かになった物質について個別に麻薬なり向精神薬に指定をしていって規制をかけていく という仕組みをとっているところに一つ大きな特徴があるのではないかと思います。  脱法ドラッグは何が入っているかわからない、有害性の程度もどの程度かわからない が、けっこう幅広く出回ってるということですので、そういう物質に対してどうやって 早く規制の網をかけていくのか、そこが一つポイントになるんじゃないかと思います。  小沼座長道理 規制さえかければ、好奇心の強い無規範な考えをもってる人も手を出 さなくなっていく。それがこの会議の意味合いだと思うんですけどね。  合田委員 前回の議論にもありましたが、「疑い」とか「おそれ」の段階で規制をか けようとしているので、薬事法の第2条第1項第3号の規制とのコンビネーションで考 えていくことではないかと思います。薬事法の中で、より個別の指定をして、しっかり 罰則規定ができるとか、そういうメカニズムがあれば麻向法までもっていかなくても、 「疑い」「おそれ」のあるものはレギュレーションできるのではないかという気がしま す。  和田委員 前回も言わせていただいたんですが、この議論というのは最終的に麻薬指 定なのか向精神薬なのか、これは大きい問題だと思うんですね。乱用者を見ていると、 麻薬というのは麻薬たるゆえんがありまして、なんでも麻薬だと麻薬の価値が下がるん ですよ。社会規範及び抑止力というのが大きな問題でして、前回、事務局から国際的な スケジュールと日本の法に基づく麻薬とその対比表が出されましたが、日本の麻薬は国 際的に比べても数が圧倒的に多いんですね。今後これを続けると日本の麻薬はますます 種類が増えていく。これも麻薬かという気持ちを特に若い方々に持たれては困るんです ね。麻薬というのは健康に対する害あるいは依存性ということを含めて、横綱格のもの を並べてこそ麻薬の価値があると私は考えてるんです。それでこそ日本は今まで世界に まれな乱用が少ない国を維持してきたと私は考えておりますので、その考え方はどこか で生かしていただければと思います。  三輪委員 健康食品にはキノコの粉とか、カルシウムを電解質的に溶かしたものとか、 そんなに害のないものもあるんですが、それは無許可・無承認医薬品の製造販売の罪と して立派に薬事法の刑事犯罪たりうるわけですね。脱法ドラッグも薬事法違反で無許 可・無承認医薬品という見方ができるんですが、健康食品問題の刑事事件というのは、 いま和田先生がおっしゃった麻薬になるようなものではないんですよね。そこでパッと 規制をかけると、それが非常なスピードで同業者に伝わるとみえて、サッと抑制力がか かるんですね。  本当に麻薬に値するような毒性のあるものは第2段階として麻向法の範ちゅうにもっ ていくべきだと思うんですが、大部分のものは健康食品的な薬事法違反として規制すれ ば、それでシュッと消えてしまう。また新しいものが出てきても、そういう程度の規制 だったら簡単にかけられる、小沼先生のおっしゃった興味本位で安易にやってる程度で 終わらせる脱法ドラッグの規制は薬事法違反だけで可能ではないかと思います。  鈴木委員 麻向法で麻薬、向精神薬が1種から3種までありますので、そこに段階を つけて、所持に関しても罰則をちゃんと考えていただくような形にして、2の(1)を新た に付け加えるような形にすれば流れとしてはきれいになるかなと思うんですが、いかが でしょうか。  合田委員 麻向法でいこうということですか、それとも薬事法でいこうということで すか。  鈴木委員 先ほど小沼先生が麻向法に新たな枠を設けてといわれましたが、それに2 の(1)を入れればいいんじゃないかなと思ったんですけど。  合田委員 今現在、脱法ドラッグの使用者がいて、それがトラブルになっているので、 取締りがいかにスピーディにできるかということが大事だと思うんですね。薬事法でい こうと麻向法でいこうと、私は法律が専門じゃないからわからないんですが、いかにそ れが早く作りやすくできるかというところに影響があるのではないかと思います。薬事 法のほうが早ければ薬事法でいけばいいと思いますし、最後の出口は同じだと思うんで すね。所持を禁止して、制度の目的以外ではそういうものは持てないよというシステム を作ってしまえばいいので、どちらが作りやすいか。麻向法を下ろしていくほうが作り やすいか、それとも薬事法の中に特殊なグループを設けるほうが作りやすいか、スピー ドの問題じゃないかと思います。  鈴木委員 どちらでもいいという議論もあると思いますけど、根本的に考えれば依存 性、乱用ということですから、それを精神論で生かせば、麻向法のほうが正しいかなと 思います。  今井委員 皆さんの御意見を伺ってますと、迅速で効果的な取締りをという方向性は 一致しておられて、法的な規制のあり方にも及んでいると思いますので、感想を述べさ せていただきますと、麻向法の向精神薬の範囲を拡張するというのは、国際条約を受け てのものであるだけになかなか難しいだろうと思います。向精神薬類似であることは確 かですし、他方で麻薬指定が日本で多いということから、条約を受けても麻薬ないしは 向精神薬の指定が各国に許容されてるのかもしれませんが、向精神薬の定義から考えて、 これを広げていくことで、現在出ている脱法ドラッグといわれるものに包括的な網をか けるのは法的な観点から見ても難しいかなというのが1点です。  他方、薬事法の2条1項第3号の適用を今より緩くすることができれば運用ですべて 処理できるんですが、目的の立証というのは思っている以上に難しいので、今まで警察、 検察当局がこれによる摘発にちゅうちょしてきた。それは正当な発想でして、目的を立 証するためには、薬物がいかようにも使えるだけに、被疑者の供述をとらないといけな いんですが、そういうことは難しいということがあります。  今以上に網をかけ、かつ運用の効率を上げるのであれば、目的要件をできるだけ落と して、しかも薬事法と麻向法の中間に新たな法的な網をかれるというのが落としどころ かなと思って聞いた次第です。  三輪委員 健康食品問題を紹介したんですが、その段階というのは、2の(1)のそのま た前段階ということなんですよ。薬事法違反で無許可・無承認医薬品の製造・販売の罪 に問うためには、行為は製造か販売なんですよ。業者なり売り手であって、薬事法では 所持には及ばないのではないかと思うんですね。目的の立証がありますが、その段階で はかなり迅速に対応できる。その中で依存性とか有害性のあるものは2の(1)、さらには 麻向法というふうにいくんじゃないかと思うんですね。乱用の実態というのは究極的に は麻向法までいくようなものと、単なる興味目的というか、その段階のものがあるので はないかと思いまして、私の頭の中には薬事法、次は2の(1)、そして最後は麻向法と3 段階あるということなんです。  小沼座長代理 2の(1)は具体的にはどういう法の範ちゅうに入るんでしょうか。  南野課長 ここには2つ挙げておりますが、ほかにも立法例はたくさんあります。  小沼座長代理 特別に法律を作るという考えになるんですか。  南野課長 正当な理由を除く形式として、法的な抜き方としては正当目的を除く、そ ういう仕組みがほかの立法例でもあるという御紹介です。  合田委員 2の(1)のパターンは薬事法で可能なんですか。今までの議論を聞いてます と、所持がいけないというルールにしなくてはいけないと思うんですね。もう1つは化 合物を具体的に指定していく。その2つが大事なところだと思うんですが、そういう部 分が薬事法上で法改正をすることによって可能かどうか、お聞かせ願えればと思います。  南野課長 正当な理由による利用を除くという規定の縛りというのはいろんな法律で もありますから、薬事法でも十分できると考えています。所持については次の論点で資 料がありますので、そこで御議論いただいたほうがいいかもしれませんが、流通規制を 原則としていますので、単純な所持というのは薬事法の規制は難しいかなと思います。  小沼座長代理 それでは、今までの議論の整理をしたいと思います。  (1)正当目的による利用は認める必要があるが、免許・許可制度を採用することは不適 当ではないか。  (2)天然物については学名で、合成物質に関しては物質名で規制する。所持に関しても 規制をかけたい。このようなことが御意見として出たと思います。  ここで佐藤先生に座長をお願いしたいと思います。  佐藤座長 今日は遅れまして申し訳ございません。停電で新幹線が1時間余り止まっ てしまいまして、失礼いたしました。  続きまして5番目の論点に移りたいと思います。まず事務局から資料を説明していた だき、続いて今井委員よりインターネット規制に関する法的な問題点について説明して いただきたいと思います。  事務局 論点5に入る前に、資料4−1のインターネットによる脱法ドラッグの販売 方法の事例ですが、国内業者と海外業者が日本語のサイトを開いて国内の人に販売して いる実例を紹介させていただきます。  事例1ですが、国内業者が国内の利用者に対して販売をしているという実例です。4 ページをご覧いたきますと、売られている商品の広告等が出ています。一番上のメルシ ーキューブですと、芳香剤として2回分お使いくださいとか、このような実例がありま す。  5ページの事例2は外国の業者が脱法ドラッグと思われるものを国内向けに、かつ日 本語で利用者に販売しているという実例です。  次に資料4−2ですが、医薬品の輸入と麻薬の輸入について書いています。  医薬品の輸入については、医薬品製造業、医薬品製造販売業の許可を受けた者が厚生 労働大臣が承認した医薬品を輸入することになりまして、その際に当該許可業者が輸入 届出をした上で輸入が認められています。  そのほか自己の治療のために使用される医薬品、医師が患者のために使用する医薬品 の個人輸入については薬事法で禁止されておりません。  品質不良(基準不適合)、変質、不潔な物質、有毒な物質が含まれているなど保健衛 生上危険な医薬品は個人輸入も禁止されています。  2ページの図は、医薬品の個人輸入の手続きの流れを示しています。  個人で使用することが明らかな数量以上の医薬品を個人輸入する場合は、あらかじめ 厚生労働省の地方厚生局に、他人への販売・譲渡が目的でないことを確認する輸入報告 書というものを提出します。地方厚生局の薬事監視員の確認を得たものが薬監証明と呼 ばれるもので、この薬監証明を税関に提出して通関して輸入が可能となります。  個人で使用することが明らかな数量以内のものについては、そのまま通関が可能とな っています。  事務局 資料4−2の1ページに戻っていただきまして、麻薬の輸入について説明申 し上げます。  麻薬の輸入については、行為者は麻薬輸入業者の免許を持つ者しか輸入はできません。  個々の輸入の都度、麻薬の品目、数量、期間、輸入港を記した許可証を得ることが必 要です。  個人輸入は禁止されています。ただし、自己の疾病の治療を目的として麻薬を携帯し て入国することは、事前の許可を得た場合のみ許されています。  3ページは、携帯による麻薬の輸入について説明しています。  麻向法第13条、ただし書き以降がその規定です。下の図で説明しますと、外国に麻薬 を服用している患者がいて、日本に来たい場合は、事前に医師の診断書等を添付した上 で地方厚生局に許可を申請し、地方厚生局が携帯輸入許可書を送付します。患者本人が 許可書を持参した場合、税関はそれを認め、国内に入れることになります。  当該許可書を受けても麻薬を郵便により輸入したり、知人等に託して輸入することは 禁止されています。  続きまして参考資料2を用いて、薬事法と麻薬及び向精神薬取締法の比較について説 明申し上げます。この資料につきましては前回、前々回でも触れておりますので、今回 は規制対象、規制の態様、取締りについて簡単に説明申し上げます。  まず規制対象の定義と判断基準を申し上げます。  左側の薬事法では規制対象で脱法ドラッグに関して問題になるのは医薬品です。医薬 品の定義のうち、法の第2条第1項第3号の「人又は動物の身体の構造又は機能に影響 を及ぼすことが目的とされているものであって、機械器具等ではないもの」。これが重 要な定義です。脱法ドラッグも多くは精神作用があり、身体の構造、機能に影響を及ぼ すとから医薬品に当てはまる。したがって、無許可・無承認の医薬品となります。  一般の規制対象とするかどうかの判断基準は、その下に書いてあります。局長通知で 示されていますが、「専ら医薬品として使用される成分を含有するかどうか。医薬品的 な効能効果を標榜しているかどうか。用法、用量、形状等が医薬品的かどうかを総合的 に判断する」。このような形で判断されています。  右側の麻向法のほうですが、規制の対象は、麻薬、向精神薬、麻薬原料植物、麻薬向 精神薬原料が規制の対象で、これらは物質又は植物として法律又は政令で指定されてい ます。  次に規制の態様の欄をご欄ください。  薬事法は医薬品の有効性・安全性の確保を主目的とする法律ですので、製造・流通を 規制する、これが主たる内容になっています。  不良な医薬品や無承認・無許可の医薬品が世の中に出ないように製造、流通等を禁止 し、医薬品まがいのものが医薬品であるかのように誤解させるような広告、こういった ものが禁止されています。使用、所持については規制はありません。  麻向法ですが、麻薬については、製造、流通から所持、使用に至るまで一切の行為を 禁止し、医療、研究等正当な目的での使用する場合は免許・許可等によって禁止を解除 しています。  向精神薬については、免許・許可等のない製造、輸入、譲渡、広告は禁止です。しか し譲受と使用については麻薬と違って規制はありません。所持については譲渡目的の所 持のみが禁止されています。これは向精神薬と麻薬と比べた際の有害性や医療用途等が 勘案されているものと考えられます。  次に取締りの態様です。  薬事法においては、1つは行政機関による規制があり、立入検査、報告命令等の措置 があります。許可業者については許可の取り消しや停止があり、さらに罰則もあります ので、警察の取締りもあり得るわけです。  麻向法においては、麻薬や向精神薬を扱う正規の業者に対しては行政的な立入検査等 が行われますが、正規以外のものについては司法警察機関による取締りが行われます。  続きまして資料4−3を用いて薬事法と麻薬及び向精神薬取締法の罰則の比較につい て説明申し上げます。  まず右側の麻向法の罰則を説明いたします。  麻薬については、左端の欄に掲げてあります行為、すなわち輸入、輸出、製造から広 告まで、すべて禁止されています。罰則の重さを比べますと、ヘロインが他の麻薬の比 べて一番重くなっています。ヘロインの場合は営利目的の輸入では無期懲役という罰則 が含まれています。覚醒剤も同じ重さの罰則となっています。ヘロインとその他の麻薬 の罰則の差は、有害性に応じた規制や罰則の厳しさを実現するためです。  麻向法においては、営利目的の違反は単純な違反に比べて罰則が重くなっていること は、この表から明らかです。  向精神薬については、譲受、使用に関する罰則はありません。したがって、「施用、 使用」の欄には斜線が引いてあります。  罰則は麻薬より一段軽くなっています。  「所持、譲受」については向精神薬と薬事法の比較をしながら説明申し上げます。薬 事法と向精神薬の比較をしますと、所持、譲受については、薬事法においては譲渡目的 の貯蔵、陳列を規制しています。向精神薬においては譲渡目的所持を禁止しています。 これらは実質的には近いのではないかと考えています。したがって、薬事法と麻向法の うちの向精神薬の規制については、規制される行為そのものが類似していると言えます。  罰則の重さを比較しますと、薬事法違反の罰則は向精神薬の単純違反とほぼ同じかや や軽く、向精神薬の営利目的の違反に比べると軽いことがわかります。以上です。  佐藤座長 それでは、今井委員から報告をお願いいたします。  今井委員 資料4−4ですが、インターネットを用いた脱法ドラッグの売買等に係る 法的規制の現状を簡単にまとめたものです。  先ほどの資料4−3、参考資料2を並行して見ていただきますと、薬事法、麻向法に 共通しているのは川上の規制でして、売却の誘引とか申込みをさせるような行為に罰則 がかかっています。現行法のもとで取締りのネックとなっているのは、インターネット を用いていろいろなところから買うことに対して誘引的な行為をしてるんですが、それ が本当に効果的に取締まれているのかと思いましたので、資料4−4にまとめてみまし た。  I.現象面の特徴ですが、資料4−1から4−3の共通点として、現象面として以下 のことが言えるだろうということです。  典型例として、脱法ドラッグの通信販売をする。インターネット上に広告をアップロ ードするわけですが、その後、客たろうとする者が売買契約の申込みをしてきまして、 それが成立します。そうするとどこどこの口座に送金をしろと指示し、送金を確認して からドラッグを送付するということかと思います。  こうした行為がかなり蔓延していると思いますが、その理由としては、行為の容易性 と拡散性、模倣性ということが指摘されています。店舗が不要ですから、自分が今まで 自己使用してきたんだけど、余ってしまったので、売ってみようかということで簡単に 売りに出ることもできますし、元手がいらないということですので、他の者も容易にそ れを模倣することができる。インターネットを用いた犯罪には共通する問題ですが、こ ういったことがあります。  それに対する取締りとしては、発見することの困難性、発見したとしてもどうやって 警告をし、警告が無視された場合、どのように規制をしていくか、非常に難しい問題が あります。  資料4−1の事例2では外国業者の場合がありました。ここの事例には外国業者が日 本語で広告を出していますが、その筋のわかる人しかわからないような英語あるいは他 の外国語で広告が出る場合も多々あります。その場合、日本の取締機関がそうした広告 を発見できるのだろうか。発見しても、売り主が国外にいるとか、日本人でもハワイ等 の国外のサーバーに違法なサイトをはることが多いですから、そういった場合、どう対 処するのかというのがここに書いてあるような問題です。送金先が国外である場合はど うか。買い主が国外にいる場合もあります。  国境がない世界ですので常時監視をする必要がありますが、どこまでやればどれだけ のメリットがあるのかというのが共通する問題となっています。  II.法的規制の前提と限界です。  前提として、ここでは薬事法、麻向法の罰則が問題となっていますが、刑法一般を含 めて共通することとして、日本国内で犯罪がなされたという要件、国内犯性を満たさな ければ薬事法も麻向法も刑法もすべて適用できません。  どういう時に国内犯という要件を満たすかというと、一般には犯罪を構成する客観的 要素、その中の主要な部分が行為と結果をつなぐ因果関係のいずれかが日本にあれば国 内犯であるということになっています。  これは主権論の記述でして、こういう場合は日本国が主権に基づいて刑罰法令を適用 すべきである。各国の主権に基づいて主権の及ぶ範囲で相互にコントロールしあってい るというのがありますので、世界的にどこでも国内犯性というのが前提となっているか と思います。  国内犯であっても、薬物の運び人は外国人の時はどうするのかというと、国内犯であ れば、それに関与した外国人も日本国内の共犯として処罰が可能だといわれています。  国内犯であれば効果的な鎮圧対策がとれるかというと、限界があります。  まず証拠の収集が困難です。国内のサイトの場合もそうですが、先ほどの事例2のよ うに外国業者に係る容疑事案がある場合、どうやって証拠を集めるかというと、日本の 警察がハワイに行って、ハワイ州の被疑者から証拠をとることはできません。国と国と の相互の約束をして、捜査共助の要請をして、証拠を借りてくることが必要です。  その場合、他国の警察がやってきて自国民の捜査をするわけですから、自国で処罰さ れている者についてしかそういうことは認めないということで、双方可罰性ということ がいわれる場合があります。  今回の話に関連して言いますと、我が国において脱法ドラッグの網を広げていった場 合、国内犯であっても証拠が国外にある場合、相手国が同じような規制をしてないとな かなか難しいのかなという気もしています。  国内ですべてかたづいている場合、先ほどの事例1のような場合は比較的簡単ではあ ります。しかしプロバイダが違法な広告をしている時は証拠の確保が必要ですが、現行 法ではなかなか難しいのであります。現在、国会に改正法がかかっていますが、まだ通 っていませんので、プロバイダ等に対してログやインターネット上のコピーの提出要請 は容易ではありません。  プロバイダに違法な広告の削除要請をして拒絶された場合、何かできるかというと、 やめてくれといったのに悪さをしている時には不作為犯が成立する可能性がありますが、 インターネットに関する一般論として、プロバイダは単に通り抜けるサイトにすぎない ので、不作為の正犯として処罰するのは難しいのではないかといわれています。  外国人に対する捜査の困難性、これは一般的に理解可能かと思います。  海外サイトから販売広告がなされている場合、監視はもっと難しくなります。  1点追加しますと、先ほど行為と結果と因果関係のどれかが日本にあれば国内犯だと 申しましたが、送金先だけ日本の場合はどうかというと、これは原則として国内犯にな りません。有償譲渡という類型で、払込先が国内の場合は国内犯となりますが、そうで ない時には犯罪後に金銭の経由がありますので、銀行だけ日本にある場合、国内犯にで きない場合があることに注意していただければと思います。  簡単ですが、以上がこの議案に関する状況の説明です。  佐藤座長 ありがとうございました。ただいまの説明について御質問などがありまし たらお願いします。  合田委員 インターネットを用いた脱法ドラッグの売買のところで、所持犯で取締り ができればこの問題は解決できると考えてよろしいですか。  今井委員 日本にいて所持している場合はそうです。補足しますと、川上の規制がす べてに共通しているものですので、それに焦点を当てたわけです。薬事法では所持が不 可罰ですので、今回の考え方で所持までいくんだということでしたら、この問題は回避 できるということです。  佐藤座長 先ほどから伺っておりますと、迅速に有効な手を打つという速さを大切に する、これが皆さんの共通した意見だと思います。目的で規制するというのも正当目的 以外は規制するということで、この2点は薬事法でうまくいくということですが、問題 は所持でしたね。この所持を、麻向法のエビデンスがそろった段階で、次のステップと してやるか、とりあえず今回は脱法ドラッグは薬事法だけで、製造、流通という目的で 押さえるか、ここのところが議論になっているのではないかと思います。  迅速に有効性のある網をかけたいというのが今回の基本的なねらいですので、脱法ド ラッグの取締りを実効あるものにするための規制・罰則についてどのように考えるか、 御議論をお願いいたします。  三輪委員 迅速ということを考えると、薬事法しか考えられないですね。薬事法とい うのはどういう法律かというと、医療に供する医薬品の製造、流通を規制する法律です から、もともと脱法ドラッグは考えてないわけで、薬事法で所持まで規制するというの はかなり難しい。現実には無許可・無承認薬の製造販売の禁止、その罪というわけです ので、そこまではわかるんですが、所持は難しい。迅速を要求すれば薬事法でいく、薬 事法でいくなら所持ということは考えずに、まず売り手のほうにいく。  そんな中途半端でいいのかというと、いずれ王道で麻向法まで通じる道は用意してい るわけですから、まずは迅速に、安易に乱用されている部分を抑制していく。これは所 持までは考えない薬事法で十分いけるのではないかと思います。  合田委員 脱法ドラッグとか他の無承認・無許可医薬品の流通を考えた時に2種類あ りまして、1つは個人輸入が非常に多いですね。個人輸入をする時に、化合物の名前だ けで来た場合はトラブルが何もなしに輸入できると思うんです。その中にこういうもの が入っているという化合物名を挙げておいて、国内に入る時に薬監証明か何かでレギュ レーションができれば、現行の薬事法の中でもある程度の実効あることができるかもし れないと思います。  やせ薬の類縁体がたくさん出てますから、そういうものと同じように、化合物が指定 されたものについては、医薬品成分が入ってますよという形で何らかの警告を与えると か、そういうシステムができないかなと思うんです。脱法ドラッグ成分については化合 物のレベルをたくさん挙げることによってレギュレーションができれば、かなり実効が 上がることになるのかなと思います。  ただし、最後は本人が個人使用ですと強硬に言ってしまえば、名前が挙がっていても 何も言えないかもしれないですね。とりあえず専ら医薬品成分であるということについ て化合物の名前がたくさん挙がっていれば、入り口の段階で何らかのアクションがとれ るのではないかと思います。  佐藤座長 とりあえずは製造、流通のほうをいかに早く手を打つか、できれば所持ま でにらんで何か対策ができないかを検討するというのが一つ出ているかと思います。  個人輸入を含めて麻薬については、合田委員がおっしゃったような方向で規制をかけ ていく、あるいは個人輸入はすべて止めるということがありますが。  合田委員 個人輸入をどういう形で規制できるのかというのは我々はわからないので、 その部分がイメージできれば、いろんなことが言えると思うんですけど、個人輸入を何 かレギュレーションする際に、化合物名を挙げておくというのが非常に大事だと思いま す。ただ、そのあと、どういうことに関して実効があるかどうかというのはわからない。 化合物の名前が明確になっていれば、現段階では、こういうものが入っていないことを 確認しなさいよということが入り口の段階で言えるので、いくらかは可能だと思うんで すが、その部分が法的にどこまで拘束力があるかというのはよくわかりません。  今井委員 薬事法では使用、所持が規制の対象となっていない、不可罰である。他方、 麻向法では麻薬は使用、所持が全面的に禁止、処罰されますが、向精神薬については譲 渡目的のみ禁止する。薬事法は、無許可の薬等を作って、本当は薬として人体に影響が ないようなものを販売するのを取締るということですので、半分の目的は行政規制です よね。承認を得ないで売ったけど、人体に無害なものがあるということを踏まえて、使 用、所持は自己責任でやってくれということで、これは不可罰になっているのでしょう。  麻薬は本人の責任だけど、本人を廃人にし、社会に有害であるから全面禁止、向精神 薬はその次だからちょっと低めということになってるわけですね。  脱法ドラッグの毒性の程度、あるいは使用した人をどこまで廃人にして、社会的に有 害かということで麻向法のレベルにいくのか、薬事法の体系にいくのかというところで、 使用、所持については決断しないといけない問題だと思います。  迅速に取締りをして、かつ所持までを視野に入れますと、かなり麻向法に寄ってるん ですよね。薬事法の延長だけでは無理かなという気はしております。  板倉委員 個人輸入代行業というのがあって、消費者のほうは自分は個人輸入をして いるという意識なしに購入するわけです。健康食品の場合はインターネットでの販売が 多いですから、個人輸入をどのように規制するかということが明らかでないと、せっか く法律を作っても、海外からのところで、なし崩し的になってしまうんじゃないかと思 うんですね。  消費者は健康にいいと思われる食品とかダイエットに効くようなものを買ってるわけ ですけど、今日の資料の4−2を見ますと、品質不良、変質、不潔な物質が混入した医 薬品は個人輸入も禁止というのがあって、こういう部分をどういうふうに運用できるの かなと思ったんですね。  こういう部分の解釈で、薬事法でも、ある成分が検出されたものについては、だまさ れてた人は処罰されると困るんですけど、それ以降の部分については、何かの拘束力が 出るということがあれば、多少はいいかと思います。検査してもわからないという部分 はあるかもしれませんけど。  消費者のほうも、こういうことで違反ということになりますと、自分が持ってる人は すごく心配でしょうし、消費生活センターに問い合わせをされたりするわけです。その 時点でどこかで回収するとか、そういうふうにすれば広がらないということもあるでし ょうし、個人輸入をどう規制するかということがもう少し具体的になるといいかなと感 じました。  佐藤座長 罰則ですが、先ほど説明がありましたように、薬事法と麻薬と向精神薬で はそれぞれ重みが違うわけです。脱法ドラッグについては薬事法でいこうという意見が 多いんですが、重みづけについても同様という扱いになるんでしょうか。  板倉委員 素人が外から見てということですけど、薬事法違反というのは甘いような 印象を受けています。事業者のほうも指導があっても、建物を出たところで書類を破る という話をよく聞きます。健康食品の場合は開発の費用もかからないので、非常に利益 が大きいわけです。このくらいの罰金だったら悪いことをやったほうがぬれ手にアワだ という事業者もたくさんいるんじゃないかと思います。もうけたお金は全部取り上げら れるという話があるとは聞きますけど、そういうこともあまり伝わってないし、悪徳業 者は取締られているにしても、消費者には伝わってないという状況にあります。私たち としては甘い罰則だなという意識があったんですけど、そのへんは皆さんはどう考えら れるのか、お聞きしたいと思います。  南野課長 薬事法の場合、悪徳法人に対して1億円以下の罰金を科すことができると いう仕組みがあります。懲役刑は3年以下となっています。麻向法の場合は個人を罰す るという法体系になっていますので、法人に対する罰金刑はありませんで、個人に対す る罰金刑としてヘロインの場合は最高1千万円までとなっています。  三輪委員 私はずっと薬事法を教えたり研究したりしてきてるんですが、脱法ドラッ グ規制を考えると、将来的にはともかくとして、当面、薬事法で所持まで禁止するよう な規制のあり方というのはかなり難しいのではないかと思います。  今や世の中が個人輸入に大きくシフトしてきて、せっかく国内だけ規制しても、そこ から穴があいてしまうということなんですが、外国からの輸入をしゃかりきになって規 制しようと思っても、これは薬の分野だけの話ではないので、今回の法律なり対策でそ こをやろうと思うのは荷が重すぎるのではないか。  今の薬事法で迅速にできることは、個人輸入とかインターネットの輸入までは仕方が ない、今すぐには脱法ドラッグだけをねらって規制はできない。だからじゃんじゃん入 ってくるわけです。それを前提にして、入ってきた後に、それが薬事法でいうところの 無許可・無承認薬の製造販売の罪に当たる時には業者を迅速に規制していく。受け手ま では考えないし、所持までは考えない。できるところをまずやる。薬事法の場合は罰金 が1億円以下となると、かなりの抑止力があると考えられますので、いま迅速にできる ことというと、そういうことになるんじゃないかと思うんですね。  なぜそういうことを言うかというと、ニューヨークでは大型凶悪犯罪が頻発していて、 警察はそれに対応するためのものという認識があったんですが、前のニューヨーク市長 のジュリアーニさんは、ごく瑣末な置き引きとか、日常的な小さい犯罪から手をつけて いったら、いつのまにか大型犯罪もなくなって、きれいなニューヨークができた。あれ を考えますと、すごいところをいきなりねらうよりも、できるところを手堅くやってい くというジュリアーニ方式が脱法ドラッグ対策として大事なのではなのかと考えていま す。  今井委員 先ほどの報告に少し補足させていただきます。私の報告は、現在どういう ふうに難しいかということでして、国外からの輸入、個人輸入等を野放しにしていいと いうところまでは含んでおりませんので、それはここで議論していただきたいと思いま す。  どのようにして個人輸入等を罰するかというと、先ほどの資料4−4では国内犯とい うことで絞りましたが、国外犯的な個人輸入等を処罰するという条文を置けば、理論的 には処罰可能になります。  ジュリアーニさんのとった政策と逆のことなんですが、条文による一般的予防効果が ありますので、自分で買ってもだめなんだなということがわかった場合の抑止力がない わけではありませんし、証拠が集まりますと、そういう国外犯処罰規定があれば、迅速 な検挙もできるということになります。  先ほど板倉先生から現行の薬事法の罰金が低いという御指摘がありましたが、それは そうだろうと思います。薬事法には必要的没収追徴の規定はないのですが、業者が薬事 法違反で不当な利益を得ている時には、刑法の総則にあります「犯罪行為で得た利益の 没収」というので上がりを取ることができます。立証ができればですが、かなり効果的 にできます。  薬事法で所持までいくのは無理かなと思うんですが、薬事法というのは偽医者の取締 りみたいな面もあるわけです。ブラックジャックみたいな人が手術をした。無許可なの で、それは許可違反ということで行政規制に反してますけど、腕がいいといった時に、 お客さんを処罰する必要はないわけです。薬事法もそういう思想が入っていて、無許可 だけど、使ってみたら体に効いた。無許可のものを売った人は悪いけど、使った人を処 罰する必要はないでしょうということで、使用とか所持は禁止の対象となってないわけ です。  今回の脱法ドラッグというのは麻薬に近いんだ、薬ではないんだという価値判断を入 れていくと、薬事法から少し離れていって、麻向法型に寄っていくと、所持もだめだし、 少なくとも譲渡目的所持等はだめかなという方向は法政策としては可能かなと思ってい ます。  合田委員 資料4−2の2ページに「医薬品の個人輸入について」という例があるん ですが、これは治療目的に使われる医薬品の例だと思います。専ら医薬品に指定されて いるものには、実際には使われないけど、いろいろな意味合いで医薬品的規制をしよう というものがあります。脱法ドラッグはそこに入ると思うんですが、そういうものを個 人輸入しようとした場合、最初から最後までどのように扱われるのかということを知り たいんですが。事務局にお聞きすればよろしいんですか。  植村室長 海外で一般薬を購入したとか、海外で医師の治療を受けて処方せんの薬を もらっていた方が帰国することになったとか、外国人が日本に来る時に、医師から処方 された薬や海外で購入した薬を日本に持ち込むことがあり得ますが、それは自己の治療 という正当な目的での輸入ですので、こういうことは可能であるべきだろうということ から個人輸入という仕組みを設けています。  その際に実務はどうなっているかというと、税関では関税法に基づきますが、他の法 律に違反がないことも確認し、個人使用のための医薬品であれば薬事法違反にはならな いということで通関可能としています。  かつ、業務を効率的に行うために、少ない数量であれば他に譲渡とか販売を目的とし ているのではなくて、個人が自分で使うと判断して、通常の医薬品であれば2カ月分は 通関して構わないという取り扱いにしてあります。無承認・無許可の医薬品を日本国内 において他人に販売譲渡するという薬事法違反の行為が行われないという確認を税関に おいて行っているということになります。  無承認・無許可の医薬品を海外から持ち込むことが税関の段階で荷物あるいは手荷物 で確認できた場合、それが正当な目的ではないということになれば、所持、所有を放棄 して、輸入はしないということで対応していただきます。それが正当な目的かどうかの 確認をするために薬監証明という手続きをとる形で、その際に必要な理由とか、あるい は医師から指示なり処方を受けてるという確認を行うという手続きになっています。  先ほどの2の(1)のような規制の枠にするかどうかという議論とも絡んでくるかと思 いますが、正当な目的をどう確認するかという手続きが個人輸入についてもどこまで仕 組みとして作り得るかというのは、ここでの御議論を踏まえた上で考えていかなければ いけない課題だと思っています。  倉若委員 今は2月の通知で無承認無許可医薬品の立入り等々をやってるんですが、 現在禁止されている物質についてはどうなんですか、どういう形でいくんですかと聞か れた時に、あの物質はまだ野放しになってますよという形ではまずいのかなと思ってい ます。確かに薬事法でいくのは速いんですけど、現在、脱法ドラッグとして検出されて いる物質、地方衛研、国立衛研で検出されている物質については、せめて所持禁止の対 象になるところまでもっていかないといけないんじゃないかなという気がします。  南野課長 資料4−3にありますように、麻向法の中でも麻薬が一番厳しい規制を受 けてる、麻薬の中でもヘロインが罰則が一番重くなってる、その次のランクとして向精 神薬があるということです。向精神薬の規制の態様を見ますと、使用については罰則は かかりませんが、譲渡目的所持のみということで、買った側の規制ではなくて、売る側 の規制が中心になっています。薬事法についても譲渡目的の貯蔵とか陳列までは禁止を かけている。所持と貯蔵、陳列では概念の差はあるかもしれませんが、かなり近いとこ ろまでいってるのかなというのが印象です。  向精神薬については国際条約で全世界的に規制がかけられて、有害性も明らかである ことから、個々の物質を指定して規制をかけていくということになっているわけです。  片や脱法ドラッグについては有害性が必ずしも明らかでないものもかなり出回ってる という状況にあって、現在の薬物規制の法体系の中で、有害性が必ずしも明らかでない 脱法ドラッグについて、どこまでの規制がかけられるのか。単純な所持とか、向精神薬 と同じような規制まで実際にかけられるのかどうかについてはかなり疑問があるところ です。そういう点も踏まえて、どういう規制をかけるのが適当かということも御議論い ただければと思います。  佐藤座長 有害性が特定された場合、麻薬、麻薬というので麻薬に指定して増やして いくのは麻薬の怖さが薄れていくという和田委員の発言がありましたし、麻薬、向精神 薬の別の枠を作ったらどうかという御提案もありました。例えば準麻薬にして、有害性 がはっきりしたら麻薬にするとか、そんな枠を作って所持を禁じる。有害性がはっきり してきて、麻薬にいく可能性があるものは準麻薬にして、所持禁止まで踏み込むべきで はないかという御意見もあったんですが、この点についてはいかがでしょうか。  南野課長 向精神薬の規制を作った時の整理として、中枢神経に作用して精神機能に 影響を及ぼす物質であって乱用のおそれがあるもののうち、麻薬、覚せい剤、アヘンな ど既に規制が行われている物質を除いたものを向精神薬として位置づける。麻薬とか覚 せい剤に指定されていない物質について向精神薬という一つの体系を作って、そこに必 要な規制をかけていく。麻薬よりも有害性の程度が一段低いものという整理がされてい ますので、規制の態様にしても麻薬より一段緩い規制のかけていく。具体的にいうと使 用や単純な所持には規制をかけない。このような法体系として整理されたようですので、 そもそものカテゴリー分けの趣旨からすると、準麻薬というものを作るというのは難し い面があるのかなという気がしております。  合田委員 向精神薬の場合は薬として役に立つところがかなりあるんですが、脱法ド ラッグの場合は薬としての用途は全くないので、そこがいつも引っかかるところですね。 個人輸入の段階でも、薬としての用途ではない用途で使おうとしていることが明らかな ものに対して、薬監証明の取り方で具体的に押さえることが可能であれば、現実的な取 締りができるんじゃないかと思うんです。  こういうものを最初に使う場合には、そのあと麻薬に入っていくゲートウェイドラッ グですよということがよくいわれますよね。この段階で手に入りにいものにすることが 実効のある状態だと思うので、そのへんの取締りのシステムを作っていただければいい んじゃないかと思うんです。  藤岡委員 所持まで禁止して罰則にするかという話ですけど、私は南野課長の意見に 賛成で、所持まで罰則にするのはどうかなと思うんです。一つは法体系の問題もありま すけど、青少年というのは薬物に興味を持つもので、しかもインターネットでの売り方 を見ると芳香剤と思う人もいるかもしれないし、一度使ってみたいと思って使ってみる かもしれない。そこではまっていく人というのは所持だけじゃなくて必ず譲渡に踏み込 んでいくので、最初の段階で法的な罰則という形で規制をかけることが、青少年の育成 にとって結果的にいいかどうかというのはちょっと疑問があります。  佐藤座長 貴重な御意見をたくさんいただきましたが、時間が迫ってきましたので、 脱法ドラッグの取締りについて、次のように議論を整理したいと思います。  (1)迅速に法の網をかけることを最優先に考えることを前提として、脱法ドラッグを売 る側を中心として規制してはどうか。  (2)輸入については、個人輸入を含めて禁止する芳香で検討してはどうか。  (3)罰則についても、麻薬ほど重い罰則を科す必要はないのではないか。  (4)インターネットについては、今井委員から現実には限界があるという御指摘があり ました。  (5)有害性がはっきりした時に全部麻薬にするんじゃなくて、準麻薬というアイディア もあるのではないかという御意見も出ました。それは今の法体系の中では難しいという 御意見もありましたが、それは本当に難しいことなのかどうなのかも含めて次回までに 事務局で検討していただければと思います。  次の論点6の薬物乱用に係る啓発活動は非常に大切な問題ですが、今日は時間がなく て論点6に進むことができませんでした。  事務局から何かございますか。  事務局 次回の検討会の日程ですが、今後調整して決めさせていただきたいと思いま す。  和田委員 時間がなくて恐縮ですが、法律的な立場から教えていただきたいと思いま す。資料3−4の2の(2)は例外的なものだということで外されて議論されてるんですが、 所持、使用ということを現実的に考えた場合、この当時もシンナー遊びをめぐって、今 でいえば脱法ドラッグをめぐって、同じ議論の中から生まれてきた議員立法ではないか と思います。  「みだりに摂取し」というのは何をもって「みだり」かというのは法的には難しいん でしょうけど、現実的には現行犯しかあり得ない話なんですね。今やってるのは逮捕な んでしょうけど、これはある意味では実際的なんですね。これを根拠にして逮捕に踏み 切るかどうかというのは、その時々の取締りサイドの考え方ひとつの部分もあるわけで して、これが法的に妥当なのかわかりませんが、現実的な部分もあるような気がします。 こういうのをどう考えればいいのか、司法サイドの御意見を伺いたいたいと思いまして。  佐藤座長 まだ御意見はあると思いますが、今回の話を整理して次回に出しますので、 次回、ゆっくり時間をかけて議論していきたいと思います。  それでは、以上をもちまして本日の検討会を閉じさせていただきます。どうもありが とうございました。 (照会先) 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 TEL:03(5253)1111(内線2761)