05/06/15 「平成17年度第2回2007年ユニバーサル技能五輪国際大会有識者会議」議事録      平成17年度第2回2007年ユニバーサル技能五輪国際大会有識者会議                     日時 平成17年6月15日(水)                        10:00〜                     場所 厚生労働省専用第12会議室 5階 ○事務局  ただいまから、第2回2007年ユニバーサル技能五輪国際大会有識者会議を開会いたし ます。委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところご出席いただきましてありが とうございました。以後の進行は座長にお願いいたします。 ○座長  第1の議事は、「2007年問題への対応について」です。事務局から説明をお願いいた します。 ○事務局  資料2「2007年問題の対応を行う必要性と具体的な施策(案)」については、前回、 概略資料をご説明申し上げ、それから視点をご説明申し上げた後にご議論いただきまし たが、それを踏まえて再度整理したものです。  「背景」については、前回ご説明したことを再整理したものです。「ものづくりにお ける技能は、製品の品質を支えるのみならず、多品種少量生産等の要請に応えることを 可能とし、新製品や新技術の源となるもの」と位置付けております。そういう中で、 2007年問題が発生してくるということです。  そういう問題についての認識ですが、大企業は危機感をもって技能継承等の取組みに 着手・実施をしているわけですが、中小企業においては納期の短期化や厳しい経営環境 の下で、優秀な技能者の定年延長、再雇用、さらには経験者の中途採用等の短期的な対 応を行っているのが現状であります。  現状のまま、このような問題を放置すると、熟練技能者の技能の喪失、海外への流 出、ひいては我が国のものづくりの衰退を招くおそれがあるということで、取組みとし ては、中小企業等の技能継承、あるいは技能者育成の取組みを支援することが必要と考 えております。  図1は、人口の状況で前回ご説明したものと同様です。図2は団塊世代の、この3年 間の労働者の占める割合ということで、業種別にまとめたものです。2つの棒グラフが あり、上が全業種で、その中から製造業を取り出したものが下です。パーセンテージが 書いてあります。いちばん右側は、全体の中で団塊世代が占める割合で、合計は9.2% であるのに対し、製造業では9.8%という状況になっています。  図3は、「2007年問題」に対する危機意識を、昨年度調査したものを今年度にまとめ ています。水色は危機意識を「持っている」と回答した者、赤は危機意識を「持ってい ない」と回答した者、黄色は「分からない」と回答した者です。下のほうへ行くほど企 業規模が大きくなります。いちばん下の300人以上のグラフは、危機意識を「持ってい る」者が37.4%、危機意識を「持っていない」と答えた者が46.5%でした。それ以下の 100〜299人、50〜99人などの規模の企業においては、危機意識は「持っていない」と答 えた者のほうが、「持っている」と答えた者をはるかに凌いでいまして、「持っていな い」と答えた者は6割以上に及ぶ状況になっています。これが背景です。  それを踏まえて、中小企業等が技能継承を行うに際し、どういう問題点があるかを次 の箱の中に整理しております。図4は、ものづくり人材の育成を進める上での問題点は 何であるかを聞いています。左のほうからグラフの大きいものを見ますと、「人材育成 に割く時間がない」、「教育を受ける側の意欲・熱意に乏しい」、「人材育成の重要性 に対するものづくり現場の理解不足」などです。  図5は、国にどのようなものを期待するのかが棒グラフになっています。多い順に申 し上げますと、「ものづくり人材育成のための資金援助」、「企業と教育訓練機関が連 携した実践的な教育訓練」の実施、「ものづくり人材育成のための教え方のノウハウな どの情報提供」などになっています。  それらを同じ箱の中で6つの課題に整理いたしました。1点目は、2007年問題、ある いは技能継承の必要性に対する認識不足がある。2点目は、技能継承の方法等に関する 知識・ノウハウが不足している。3点目は、教える人材が不足している。4点目は、教 える側に、教え方のノウハウが不足している。5点目は、教わる側に意欲・意識等が不 足している。6点目は、資金・時間の不足がある。  次の矢印は「施策の必要性」になっておりますが、このような問題点に対応するため に5つの施策群に分けて考えております。具体的には、それぞれの矢印のところをご覧 ください。1点目は、2007年問題・技能継承の必要性に関する広報啓発をしていく。2 点目は、技能継承の方法等についての助言・情報提供を行う。3点目は、技能継承を行 う人材の確保・育成を行う。4点目は、技能継承の受け手の意識・意欲の向上。5点目 は、資金面での支援です。  これを、もう少し関連づけた施策にしたものが、いちばん下の「具体的な施策」と書 いてある箱です。群ごとにどのような取組みをするかが書いてあります。中小企業その ものがどのようなことを行うか。その下に、「中小企業団体、NPO法人等」と赤い字 で書いてあります。こういう所の支援も受けながら、中小企業においては、定年退職者 等を活用した、マンツーマンのOJT、社内研修会等のoff-JTを充実させる。コア技 術をデジタル化、マニュアル化、記録化する。技能評価制度の導入を図る。そういった ものを推進していきたいと思っております。  中小企業においては先ほど申し上げましたように、中小企業団体、NPO法人に講習 会、導入訓練などを依頼する場合もあると考えております。こういう中小企業団体、N PO法人等に対して助成金を支給するわけです。具体的には、(1)から(3)に書いてある ような、「地域における熟練技能者のネットワークの構築」、「教え方についての講習 会の実施」、さらには「心構えや基礎技能についての共同の導入訓練等」を実施すると いうことで考えております。  これらの中小企業、あるいは中小企業団体、NPO法人等が、技能継承に係る各種相 談を行い、支援を受ける窓口として、右側に青い色で括ってあるように、一元的な相談 窓口を設置したいと考えております。具体的に、ここには都道府県職業能力開発協会と 書いてありますが、各種アドバイスを受ける相談窓口の設置と、高度熟練技能者を派遣 する機能を、都道府県職業能力開発協会において持ち、必要に応じて中小企業や中小企 業団体等に対する支援を行うといった仕組みを考えております。  併せて、左のほうに黄色で書いてある広報・啓発も非常に大事であると考えておりま す。1つは、私のしごと館における特別展示を行う。それから、今年度から始まってい る、ものづくり立国推進事業の拡充を行うことにより、それを通じて広報・啓発を進め るということを現在考えております。以上が資料2のご説明です。  次に資料3についてご説明いたします。先ほど、広報・啓発の一環として「ものづく り立国」推進事業を拡充すると申し上げました。前回の会議においても、「ものづくり 立国」の今年度の実施状況、来年度の拡充の方向についてご説明申し上げましたが、そ れをもう少し具体的なものとして書き込んでおります。  左側に、今年度の実施内容が書いてあります。平成18年度においてどのように拡充し ていくのか、という方向性を書いてあります。「ものづくり立国」の推進事業について は2つの柱があります。「ものづくり立国」の社会基盤の整備と、「ものづくり立国」 を担う若年ものづくり人材の育成の2つに分かれます。それぞれ個別の事業もここに書 きました。右側に、平成18年度の拡充案が書いてあります。  「『ものづくり立国』の社会基盤の整備」という大きなカテゴリーの1番目です。そ の中でシンポジウム等を開催する予定ですが、これに関しては、開催都市を拡大してい き、結果として回数を増やすことを考えています。我が国のものづくりに非常に重要 な、基礎的な技能職種について、必要性を周知することなどを目的として、デモンスト レーションを新しく追加していきたいと思っております。親子連れをターゲットにし、 デパート等の催事場において、仕事の疑似体験をできるような取組みを実施していきた いと思っております。  2番目の、広報サイト「ものづくり情報ネット」の開設については、現在準備を進め ております。そこに、来年度から若者と熟練技能者が交流できる場を新たに設置してい きたいと考えております。『技能情報マガジン』は引き続き継続です。メダリスト等の 活動による、地域単位での啓発も継続する予定です。それに加えて、平成18年度におい ては、技能やそれを活用した製品等についての解説・紹介した書籍の作成を考えており ます。ものづくり人材育成優良事業所の表彰も新規で検討したいと思っております。  2番目の柱である、「『ものづくり立国』を担う若年ものづくり人材の育成」につい ては、工場、民間等の訓練施設を親子に開放促進する。高度熟練技能者と小中高校生と の交流会の実施。若年者によるものづくり技能競技大会の実施は、引き続き継続して行 う予定です。技能五輪国際大会に向けた高度若年技能者の育成については、名称を変更 し、内容を充実したいと考えております。  具体的には右側に書いてありますように、「2007年ユニバーサル技能五輪国際大会金 メダル倍増計画(仮称)」とする。下のほうにポツで3つ書いてありますが、中小企業 から参加予定職種がありますが、そういう職種のうち、重点的に強化訓練をする職種を 選び、重点的に実施していく。第39回技能五輪国際大会のプレ大会を平成18年度に実施 していきたい。諸外国の大会への参加を通じて選手育成をしていく。このようなことを 考えております。  この事業については、平成19年度も引き続き実施することを予定しておりますが、結 果としてものづくりに親しむ社会の形成、ものづくり現場における若年者の入職、技能 継承を積むことを期待して事業を進めてまいりたいと思っております。 ○座長  ただいまの説明に対するご質問、ご意見をお願いいたします。  特にないようですので、次に入らせていただきます。この資料は、前回の会議での議 論を踏まえて作成されたものですが、この資料について活発なご意見をお願いいたしま す。  フリーターなどがいるものですから、日吉丸の話をしてやるのですが、全然受け付け ません。織田信長に額を割られても、なおかつ日本一の草履取りになろうというのは全 くピントが合わなくて困るのです。要するに、長期ビジョンが全くないのです。いざと なってからやればいいだろうという調子でおりますから、その辺からすっかり直してい かないと、こういう技術が伸びるということはなかなかないのではないか。  先ほど説明のあった、展示をするというのは非常に効果があることだと思います。昔 は、国語の教科書の中にそういうことが書いてありました。この間、津波がありました けれども、私たちが習った小学校の国語の教科書の中に、「稲村の火」というのがあり ました。海岸のちょっと高い所にお宅のあった庄屋さんが上から見ていたら、海の水が 急速に引き出したのを見て、呼びに行っている暇がないということで、刈り入れて積ん である稲に火をつけたのです。村民は、尊敬する村長の家が火事だというのでみんなが 坂道を駆け上がってきたのでみんなが助かったという話がありました。そのように、学 科が複合教育になっていったのですが、そういうのが全くないことも1つの原因だろう と思います。 ○委員  大変体系的にまとめていただいてありがたいと思います。最近の諸々の現象を見てい ますと、政府自身がこのように本格的にものづくりを大切にするという考え方に立ち、 さまざまな事業を展開し始めてくれると、1年、2年ではなかなかその気運が盛り上が るとか、成果が出るとかということにはいかないと思いますが、3年、5年と観察する と、これがいろいろなところにジワジワ気運が広まっていって、かなりしっかりした運 動というのか、人々の精神を変えたり、あるいは覚醒させたりする効果があるように、 私はほかの分野の現象を見ていて思うのです。これを本格的に展開していっていただき たいと思います。そうすると、必ず成果が出てくるのではないかと思います。  また、全然分野は違いますけれども、10年ぐらい前、橋本内閣から始まった金融改革 から金融危機を経て、今日どういうことが見られるかというと、金融機関の再生という か復活が、再編成を伴いながら実現しております。そういう中で、日本人は、金融界に おけるさまざまな能力あるいは、技術が全然ないと言われ、ひところは毎日のように批 判の報道がありました。  今年の所得番付のトップは、投資ファンドのマネージャーがトップでした。突然今年 そうなったのかと思ったら、去年、一昨年と、3年連続ぐらいで、所得番付ベスト100 位に入っていて、徐々にランクアップしてきて、今年トップになったのです。  そういうことを見ても、金融関係における日本人のスキルというのは、10年も経たな いうちにものすごいものに育っているというのも窺えるわけです。1年、2年というス パンで見ると、何においても全然なってない、このままいったら日本は破綻してしまう と言うような報道がよくされるのですけれども、3年、5年経ってみると、そうでもな いということがわかりますので、この際腰を落ち着けて、じっくり自信を持ってやって もらえば、成果が出てくるのではないかと期待しております。 ○委員  先般、私は技能五輪に行ってきたので、その報告は後でさせていただきます。私が技 能に興味を持ちましたのは、熊本であった技能五輪の国内大会に初めて行く機会があ り、それを見て非常に感動しました。若い人たちが、額に玉の汗をして必死に取り組ん で、出来たものが素晴らしいものでありました。その感動が、そのまま技術代表として の私の活動の原点になっているわけです。  もちろん、この政策の中にはいろいろ具体的なものがあります。1つは、我々が教育 していくと同時に、若い人たちが本当に興味をもって取り組むような環境づくりが大事 ではないか。技能五輪などでそういう若者を見るわけです。逆の言い方をすると、あの イベントといいますか、あの感動が非常にローカライズしているのです。私も、技能五 輪新潟大会のときに、「是非来い」ということで友人を引っ張っていったのですが、見 た人はみんな感動していました。  そういうものがドラマとしてあるにもかかわらず、マスコミがほとんど取り上げな い。今回のヘルシンキ大会でもどのぐらい取り上げていただいたかはよくわかりません けれども、あの感動は必ずや若い人たちが憧れてくるだろうと思うのです。  変な例ですけれども、堀江さんがライブドアで騒いただけで、一時減ってきていた Webデザインの専門学校がまた盛り返してきている。閉鎖しようとした学校が、また再 開したという新聞記事を読んだことがあります。  そのように、やって見せるといいますか、ああいうコンピティション、あるいはロー カルなものもいろいろありましたけれども、そういうもので、もっと視覚的にやって見 せる。そのようにして、若者たちを自分たちの中で感動を植え付けて、やってみようと いうふうに持っていくことも非常に大事ではないかという感じがします。 ○座長  大変大事なことだと思います。私は、鉛筆削りは使わせないほうがいいと昔から言っ ています。肥後守だと、間違っても大怪我しないです。いまのカッターナイフは切れま すから骨までやってしまうということで、結局子供のときから使わなくなります。鉛筆 削りの名人がいて、我々も無理やり頼んで、やっと1本削ってもらって、その名人が削 ったものを持ち回って威張って見せていたことがあります。そうすると、みんながプラ イドを持ってきます。 ○委員  我々製造業の立場でいうと、2007年問題もそうなのですけれども、ここ10年間ぐらい の間に、各メーカーがリストラをやって、合理化をやって、相当人員を絞ってきまし た。そこへ製造工程その他、それからマーケットもそうなのですけれども、片方でデジ タル化がどんどん進んでいます。ところが、技能の伝承というのは、デジタルだけでは できないのではないか。要するに、アナログの世界とデジタルの世界がうまく融合しな いと、技術の伝承ができない。いわゆる現場力が日本の製造業の中では衰退してきてい ます。  例えば、新入社員が入ってきても、製造現場を希望する人間はほとんどいません。I Tなどの先端、それもものづくりかもしれませんけれども、そちらばかりに興味があっ て、本来のものづくりのほうはほとんど希望しません。社会全体に、そういう大きな問 題があります。  例えば、オーストラリアのように、4年制大学の卒業生よりも、ものづくりを学んだ 専門学校の生徒のほうが就職率がいいというように、社会全体がそういう方向にいかな いと、我々が直面している2007年問題がありますけれども、背景としては大きな社会的 構造の中に問題があると認識しています。  いろいろな現場力が全体的に低下していくので、製造業の中で事故が起きたりいろい ろな問題が多発しているのだろう。中小企業の問題は、2007年問題で言われております けれども、大企業といえども同じような問題を大きく抱えていると我々は認識しており ます。 ○委員  大変まとまりのいい資料をありがとうございました。2007年のユニバーサル五輪をき っかけにし、これをいい機会と捉え、ものづくりの重要性を一気に盛り上げるようにし たらいいのではないかと思います。こういう大きなイベントはめったにないわけですか ら、これを絶好の機会として捉え、みんなで取り組んでいったらいいと思うのです。私 は、いままで日本で開かれた大きなイベントを見る度に、すごい組織力と盛り上がりを いつも感じます。みんなでやっているうちに、きっとうまくいくと思うのです。  例えば、今年の初めに長野で、障害者の冬季スペシャルオリンピックがありました。 去年の秋までは特に盛り上がらなくて本当に大変でした。長野県が中心になり、みんな で応援し、実際にやってみたら大成功でした。通訳は重要な問題でしたが、2,000〜 3,000人のボランティアが集まって、1、2週間協力しました。お金についても、去年 の秋口にはどうなることかと思うほど集まらなかったのが、急に集まってきました。 2007年の大会を目標にして、力を合わせていったらいいのではないかと思うのです。  ものづくりということ、今度の五輪のことを考えると、我々産業界あるいは経済界か ら見ていると大事な側面がいくつかあります。1つは、いま委員がおっしゃった、いま の産業界の現場力、ものづくり能力をもう一遍再点検して見直そうということだと思う のです。その点については、いまお話のあったとおりで何一つ付け加えることはないで す。  去年来、いろいろな企業の方々の意見を聞いておりますと、中間管理層、監督層をも っと大事にしろ、そちらをもっと強化する必要があるのではないかという意見が大変強 くなってきています。現場力の低下を克服する道は、ほかにもいっぱいあるのだけれど も、その1つではないかということです。いままで、中間管理層、監督者を軽く見すぎ ていたのではないかという反省があります。  組織のフラット化が言われて、それはそれで実際に進んでいますが、それがあまり進 みすぎて、中抜き現象もやりすぎると弊害が起こってくるという認識を持ち出している のだと思います。中小企業の場合は、そんなにたくさん人がいるわけではないのです が、どこの職場へ行っても核になる人がいて、その人が指導することになれば、物事の 技術や技能が伸びていくわけですから、そういう配慮、目配りが必要なのではないかと 思っています。  もう1つの側面は、次世代育成ということだと思うのです。後でヘルシンキの話も伺 いたいと思っているのですが、私も2年前にスイスの大会を拝見する機会がありました が、委員がおっしゃったように本当に感動しました。しかも、そこに小中高生が学校の 先生の引率でたくさん来ていて、会場がいっぱいになるぐらいでした。しかも、真剣な 目で競技を見ている姿を見て、これは国を挙げて次世代の育成をしているのだと思いま した。  もちろん、職業選択のプロセスというのは、日本とヨーロッパでは違いますから、そ のまま真似するということではないのですが、小さいときから教育の面でそういう機会 を利用することが大事なのではないかと思っています。 ○委員  先ほど言い忘れたことがあります。委員のお話に関連してですが、このペーパーは非 常によくまとまっているのですが、1点だけ残念なのは、座長がおっしゃっていた学校 教育のことです。教育段階でどうするというのは、省庁縦割りの中では出てこないわけ です。  委員にお願いしたいのは、奥田経団連会長が、経済再生諮問会議の最有力メンバーで 参画されているわけです。あの場で、小泉総理や竹中大臣に、金融の問題も大事だし郵 政民営化も大事だけれども、中長期的に見て、もっと大事なのはものづくりで、厚生労 働省ばかりに任せておかないで、総理の陣頭指揮で、文部科学省や経済産業省などいろ いろな所を束ねて、もっとハッパをかけてくれという発言を是非やっていただきたいで す。  そして、通常国会冒頭に行われる総理の施政方針演説の中に、ユニバーサル技能五輪 大会を2007年にやるのだということを入れるべきだと思います。それが、マスコミにあ まり注目されなくても、関係の人たちが施政方針演説に入ったというのをコピーして、 あちこちで配れる論拠になるので、是非お願いしたいと思います。 ○座長  私も、及ばずながら。 ○委員  総理や政府の要人に言っていただくと、徐々に変わってくると思うのです。 ○座長  あまり知られていないのですが、文部科学大臣が辞めるときに、従来の画一化方針は やめる、ということを言明されています。ただ、いろいろな反響があるせいかどうか、 あまり大声ではおっしゃらなかったのですが、はっきり言っておられます。ですから、 あのときから多様化教育に適材を伸ばすという考え方に文部科学省は変わっておりま す。 ○委員  中央教育審議会などいろいろな場があります。有力な皆さん方はそういう所のメンバ ーでいらっしゃいますから、それぞれの所でもそういう機会を利用して発言されると、 また雰囲気が盛り上がっていくと思います。 ○委員  経済財政諮問会議で、一度ワッと言ってくれるとすごく違うと思います。言っただけ では記事にならないかもしれないから、奥田会長が記者会見で「私はこのことを言った 」と言ってくれるともっといいと思うのです。 ○委員  後でフィンランドのことで出てくると思うのですけれども、2007年に、団塊の世代、 周辺人口で言うと1,000万人、労働力でいうと700万人ぐらいがいなくなるということで 急に騒いでいるわけです。やはり、技の周辺に対する尊厳というかリスペクトみたいな ものが基本的にないというのが問題です。足りなくなったところに急に若い人たちを投 入しようと思っても、素地が全くできていないので、これはそんなに簡単ではないと思 っています。  ニートが85万人、フリーターが200何万人で、最近の特徴は、ニートとフリーターの 高齢化が大きな問題になっています。引きこもりも高齢化しているのですが、35歳以上 の無職の独身が急速に増えています。一方で職を持ちたくないと言っている人と、一方 で空洞化するところを、そんなに簡単にはつなげられないので、2007年というのは、ま さに1つのシンボリックな年として、そこから技の周辺がいかに素晴らしくて人の感動 を呼ぶか、ということを特に若い人たちに知らしめることの意味を、ヘルシンキへ行っ てより強く感じてきました。  数字の上で、こことここがこうだから合体させればいい、と言うのは簡単なのです が、全く素地ができてなくて、投資も事業投資から金融投資に完全に移っていて、お金 イコール職業という感覚が特に若い人たちの間では増えています。ホリエモン支持とい うのを見ていても、2007年周辺で問題になっている団塊の世代は最も支持しています。 これは、自分は終わってしまったからどうでもいいやというのと、なんとなく新しいも のに否定的ではないということを見せたがるという世代の特性からだと思うのです。  若い人は、どうしても金融という2文字の周辺と、ITという2文字の周辺を重ね合 わせたところに、未来の職業地図があるように、世の中もメディアもいま持っていって いると思うのです。この辺は駄目だ、そうしてはいけないと言っても難しいので、こち ら側はあくまでも技の周辺の素晴らしさを訴えかけていくということを、今年の大会も そうですし、来年以降2007年まで具体的な目標を設定してやっていくべきだろうという 感を強くして帰ってまいりました。 ○委員  基本的に、技能の育成というのは非常に時間のかかるものだと考えています。マラソ ンでいえば箱根駅伝のようなもので、本当はいままで走ってきてくれた人が、次に技能 を渡したい。そのときに新しい人をある程度育成しておかないと技能はつながりません し、ラップする期間が要ります。  これからの日本を考えていくと、いままでの技能だけ、それを受け継ぐだけでは国の 発展もないと思いますので、いままでの技能プラスアルファをまた身に付けて、新しい 技能、それをまた次の世代に結び付けていく、といった視点が必要になるのではないか と感じています。  2007年問題等に関してもいろいろな対応が考えられております。いまの時代にどの対 応がマッチしているのか、というのは私自身もはっきりわからない面があります。た だ、何をターゲットにしてどの方向に持っていきたいのか、それを短期と長期に視野を 分けて、2007年問題や静岡大会も、日本の将来へ向けての第1ステップ、第1通過点と いう見方で見てもらえると、これらの内容も先ほど委員からありましたように、ニート やフリーターに対する対応の1つにもなってくると思いますので、その意味でも皆さん がいろいろな形で協力・連携を取りながら進めていくと、より効果的なものになるので はないかと思います。  先ほど委員が言われました現場力ということですが、いまはIT化が進んでいて、デ ジタル化とアナログ化の両方があります。デジタル化の人の弱みというと、情報をたく さん持っている人や理論的に優れている人、そういうトップがいると、その人に対して 反論ができないのです。これはこうでこうでしょう、これは正しいですよねとなると、 やはり反論はできにくくなってしまいます。それが、デジタル化の思考回路の人の欠点 ではないか。  アナログ式の人は逆で、理論的にはこうなのだけれども、現実はこうだよ。例えば車 のデザインでもそうなのですけれども、図面で書けば平面なのですけれども、平面に書 いてしまうと、人間の目の錯覚で斜めにしか見えない。だから、わざとずらさないと誰 も購買してくれないよ、買ってくれないよと。そういう状況がわかるのがアナログ式の 感覚です。五感を研ぎすませてとよく言うのですけれども、これからはそういう新しい ものを築いていく、今後の日本を考えまと、当然デジタル式の知識や情報も必要なので すけれども、それに加えて、それだけに終わらず、それを改造・改善していけるような アナログ的な思考・感覚が必要になってくるのではないかと考えています。 ○座長  ITを導入したので、人間がこんなになってしまったので、そんなものはやめたほう がいいとおっしゃった方もいるわけですけれども、それは無茶であります。我々は、I Tをフィーリング、感覚で使いこなしていかなければいけないです。それが、これから の近代化の非常に重要な要点だと思います。その辺を使いこなせない悔しさがなかなか 出てきていないのです。 ○委員  やはり、頼りきってしまっている面があると思います。本来は、ツールであって使い こなしていくものなのです。 ○座長  このことに限らず、いま日本人というのは日本文化という、どちらかというとフィー リングの感覚的なものがほとんど文化をなくしてしまっています。アメリカ流の効率主 義というか、言葉は悪いですけれども唯物主義の方向に突っ走ってしまっているのが、 いま反省を要する点ではないかと考えています。 ○委員  2007年に団塊の世代が去っていくということ自体も、本当かどうか当の団塊の世代は 半信半疑でいるのですが、マスコミがそのように言っているので、去りたくない人も去 らなければいけないかもしれないと感じている。いま現在技を持つ、最先端の技術者た ちをまずきちんとする。技ありの中高年者層に、きちんとその場にいてもらうというこ とがまず基本にないと、年を取ったからさあ出ていけ、というふうに聞こえてしまいま す。この辺が、意欲をそいでいるのはとても惜しいと思うのです。  日本というのは、一緒くたにみんなドッと移動させるのが好きですけれども、本当は その気になっていない人も行かなければいけないような空気がよくないと思っていま す。その人たちの中でも、定年だからいなくなる、という風潮自体も考えものですし、 違う人生を歩む人は歩んでいい。しかし、自分の技をバトンタッチするべくそこにいた いという人にも、異端の目を向けないということも重要なのではないかと思うのです。 このままいくと、みんなどさくさに紛れてドドドッと追われて出ていかざるを得ないと いう、そのような時代の気分はよくないと思って見ています。 ○委員  2007年問題は、大企業は大体において、いままでは会社が必要とする人間だけ、例え ば定年延長をしていました。いまは、本人が希望すれば1年契約で、自主的に定年延長 をどんどんやっています。ですから、技能を持った人たちも、60歳で一斉にいなくなる などということは現実にはないと思っています。我が社でも、人生観で、「俺は60歳で 第二の人生を楽しみたい」という人は別として、本人が希望すれば大体自主的に1年、 2年と定年延長を具体的にやっています。 ○委員  団塊の世代というのは、みんなと一緒にされるのはいやだといいながら群れるのが好 きなので、そんなに居たくなくもないのに、居なくなってしまう人が結構大きいので す。技があるのにドヨドヨドヨと付和雷同で行きかねないというのも怖いと思って見て います。世代の特性もあるのです。 ○委員  委員が言ったように、中堅監督層というか、例えばヨーロッパのマイスター制度みた いなものがあれば、生産現場へ優秀な人材がどんどん行くようになると思うのです。教 育を含めて、そういう社会的な風潮が日本にはないです。 ○座長  女性を差別するとえらい勢いで叱られるのですけれども、私などは公開の委員会の席 上で「年寄り引っ込め」とよく言われます。それは実力で決めるべきものなのであっ て、「あなた方のほうが俺より上になったら喜んでやめるよ」と。やはり、第二の人 生、第三の人生を楽しみたいですからね。しかし、逃げるわけにはいかないので、いま 頑張っているわけです。本当の意味の、見る目がなくなってしまっているということも 1つあります。  団塊の世代というのは、自分1人で言うのはいやだから、みんなで束になってやるわ けです。そういう意味からいうと、かなり深い社会的な眼があります。 ○委員  マスメディアの記事がデジタル化しているのです。○か×かとか、良いか悪いかと か。良いか悪いかではなくて、灰色の部分が大部分あるような現象が多いのです。例え ば、いまの団塊の世代問題にしても、委員のような発言をすると、メディアの記事や映 像にならないから取り上げないことになってしまうのです。私も、日々それで苦労して います。割り切って表現するということは間違いなのだけれども、割り切らないと記事 にしてくれません。真実により近いことを話そうと思うと記事にしてくれない。これは なかなか難しいことです。しかし先ほど言ったように、その瞬間は失敗すると思っても 言い続けていると、だんだん現象が裏書きしてくれるという現実がありますから、頑張 り抜く以外ないのです。 ○委員  黒か白かという言い方がよくなかったですね。グレーというとよくないと思われます から、赤か白か、ピンクとか言えばよかったのだけれども、その言い方がちょっと駄目 だったですね。グレーゾーンにだって真実はあると言うと、なんか後ろ暗い感じがしま すから。 ○委員  今回、私が技能五輪のこれに関係するようになったときに、我が社で「技能五輪を知 っているか」と役員以下幹部に聞いたら誰も知らなかったのです。PRか何か。総理大 臣に言っていただくのもいいのですけれども。我々の勉強不足だったのかもしれません けれども、製造業である我が社で全然知らないというのは、科目が直接我が社とは関係 なかったから知らなかったのか、PRが不十分だったのか、その辺のところもあるのか と思います。特に我が国でやるわけですから、PRも十分考える必要があるかと思いま す。 ○委員  団塊の世代が60歳になるというのでいま大騒ぎしているのですけれども、もうとっく に卒業している世代がすごくたくさんいるわけです。たまたま大きな山が来るというこ とですから、両方まとめて一緒に考える必要があると思っています。  高齢者というのは何歳から始まるのかというのは問題ですが、60歳定年後ということ にしたとしても、この世代ほどさまざまという世代がないと思うのです。いちばん大き く多様化している世代だと思います。体力も、経済力も、これからの人生設計も、実に さまざまで、いままでこんなにやったのだから、これからは自由にするのだという人も いるし、いや、やはり自分の仕事をもっと続けたいという人もいるし、それこそ本当に 幅が広いと思うのです。  これから、ますますそういう世代の数が増えていくわけですから、どうしたら社会全 体としてそういう人たちが持っている力を活用できるかという視点が大事ではないかと 思うのです。会社にしてみたら、これから人手不足の時代になってくるわけですから、 そういう人たちにいてほしいわけです。本当に優れた技能者、技術者にいてほしいので す。  そういう仕事を続けたいという人もかなりの割合いるでしょうから、それは会社に残 りたい。会社を替わってもいいからやりたい。どこか途上国へ行って指導するという人 だっているだろうと思います。いろいろな仕方で仕事を続けたいという人もいる。  もう仕事はいいと。さすがそちらのほうはくたびれてしまった。でも体力は十分ある し、元気があるから世の中の役に立ちたいという人もいっぱいいます。そういう人たち を、文部科学省などがもっと使って、学校の教室へ連れてきて、子供たちにいろいろ生 きた体験を話してもらおうとしないのか。そうすれば、子供たちのマナーももっとよく なって、もっといい社会が自然に生まれてくるのではないでしょうか。2,000万、3,000 万のそういう人たちに、どうして社会参加してもらわないのか。これは厚生労働省だけ の仕事ではないのです。そういう視点で見ていく必要があるだろうと思います。  団塊の世代の一時の山というのも社会的には大問題だけれども、もう少し長期的に見 て、社会参加を促すような環境づくりは是非必要だと思います。本当に、社会として皆 さんの力が必要なのだということをちゃんと言うべきだと思います。肉体年齢と関係な しに、本人の本当の能力に基づいて貢献してもらったらいいのではないか。そういうの をつくる一つの場だと思うのです。ここですべて出来るわけではないのですけれども、 そのように考えていったらどうでしょうか。 ○座長  そういうときに障害になるのは、希望者が何人かいたときに、本当に残すだけの力が 残っている人というのは全部ではないわけです。そのときに上役が、あなたは残ってく れ、あなたは・・・ということをいやがるのです。一律が大好きなのです。いまみたい なことが具体化していくときに、それが非常に弊害になっているのではないかと思うの です。 ○委員  そうですね。現場では、いろいろな現象が起こっていると思います。風潮が変わると いうことで変化もしてくるし、現実に少子化が続いて、人手不足になっていけば、否応 なしに考えると思います。いまは、まだ4.何パーセントという失業率ですけれども、 これから本当に人手不足になると思ったら、経営者は考えると思います。見方はもっと 現実的になると思います。そういうことによって、現場の中間管理層や監督層の考え方 も変わってくるわけです。 ○オブザーバー  PRの関係は私もやっていますけれども、なかなか致らないところがあります。先ほ ど来のご議論と関係するのですが、小中学生、工業高校生の層に是非見てもらいたいと 思っています。ここ数年各県で開くようになり、県の教育委員会のご協力をいただい て、中高校生、小学生も相当たくさん来るようになりました。  2007年も、知事の力で総動員し、学生・生徒に見ていただきたいと思っております。 その際、教育の中に取り込んでいただく必要があるのだろうと思います。いま、私ども はテキストブックを開発しようと思っています。ご覧いただく前に、1時間でもいいで すから学校の中で、何なのだということを教えていただきたい。ビデオも作ろうと思っ ています。そういうものをもって、つまり、あそこで競われていることが、生活の中で どうかかわっているのかということも含め、その仕事の大事さも含めて、子供に教えて いただくということを続けていきたいと思っております。  国体と同じで、各県行った所は大変理解が深まり、次の年度から選手を送ってくる数 が格段に増えてきます。仮に全県を回りますと、全国大会の参加人数は相当なものにな るのではないかと期待しております。  小中高校生に対する部分は、私ども厚生労働省を通して文部科学省にもお願いしなけ ればと思っております。その年齢層の教育を徹底的に進めていくということをやってい きたいと思っております。 ○座長  事務局でも、「プロジェクトX」のプロデューサーをここに入れようとしたのですが うまくいかなかったようです。ああいう中でも、名工の類の人のサクセスストーリーぐ らい入れていただければ、若者が燃え上がるだろうと思いますので、残念なことをした と思っています。  いろいろな形で似たような番組ができつつあって、この間は、鳥の飛び方を見て模型 飛行機を作っていたのがありましたけれども、堂々たる流体力学の大学の先生でした。 あんなものも若者にはいい刺激になるだろうと思います。 ○委員  「プロジェクトX」は、まもなく企業よりから個人に変わりますので、たぶんその辺 で何かリンクできればと思います。 ○座長  非常に優れた技術をマスターした人があの中に出てくれば、そういうものの目が啓発 されるでしょうから。いままでは、高等学校に入るまでは、職業訓練はむしろ否定され ていたのですが、これは先ほど申しましたように、ブレイクスルーはできていますか ら、この辺のところも有効に活用すべきではないかという気がします。  大変有効なご意見をいただきましたので、事務局のほうで、いままでにいただいたご 意見を参考にしながら、さらに施策の詳細について検討を進めていただくようお願いい たします。  第2の議事は「報告事項」です。事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○事務局  第1点はヘルシンキ大会です。第38回技能五輪国際大会として開催されました。その 結果は資料4にまとめてありますが、いまお配りしておりますように、委員に専門的な 見地からおまとめいただきましたので、私がご説明するよりも委員からお願いできたら と思います。 ○委員  資料4に全体的なまとめがありますので、後で見ていただきたいと思いますが、私が まとめたものについてご説明いたします。場所や日時はそのとおりです。参加国は37カ 国でしたが、実際に加盟しているのは42カ国です。フィリピンは重要な加盟国なのです が、財政的な問題で選手を送ってこない、そういった所があります。メキシコは、今回 4名送ってくる予定だったのですけれども、急遽駄目になりました。やはり、財政的な 負担で各国頭を悩ませているようです。公式34と、デモンストレーション5つの39でし た。  参加選手は、1職種1人と考えると611人で、1職種2名ないし3名というのがあり ますので、それを勘案しますと663名です。これは、最終的な閉会式のときの数字なの で、たぶん大丈夫だろうと思います。技能大国といいますか、20種目以上選手を出して いる国が14カ国あります。この辺が、国として力を入れているところだろうと思いま す。  今回の職種の特徴は随分デフォームされまして、ポリメカニクスという新しい職種が できました。これは、この前の要素であります機械組立て、精密機械、抜き型の統合し たもので、より職業に近いところの競技をしようということで統合されてしまっている わけです。  2番目の、製造チームチャレンジというのは、3名1組でものづくりをやります。課 題があって、ある機械に100kgぐらいの荷物を乗せて電動モーターで坂を登るという競 争を4日間でやるわけです。しかもコストまで計算するということです。これは、人気 のある職種でした。  CNCマシニングということで、通常だと旋盤とフライス盤は別の職種だったのです が、これも統合されてしまって旋盤とフライス盤と両方やらなければいけなくなりまし た。たぶん、これは間違いなく元に戻ると思いますが、ものすごく評判が悪くて、やは りこれは無理だろうということを各技術員が随分言っていました。  デモンストレーションとしては5つあります。情報ネットワーク施工というのは日本 が提案し、6カ国で競いました。それから印刷、鉄工、金属屋根葺き、輸送技術のデモ ンストレーションでしたが、これが静岡で正式になる可能性があります。静岡の場合は 8カ国以上ないと駄目なのですけれども、8カ国以上あると、自動的に公式にせざるを 得ないということなので、この辺は事前の準備を要するということです。  2005年のときに参加国不足がありました。12カ国ルールというのがあり、定常的にな ると12カ国ないと休止になるという変なルールを作ってしまったのです。そのルールが 厳密に適用されて、11カ国でも駄目だということで、木型、構造物鉄工、曲げ板金、抜 き型、左官といった日本の強いところが全部やられてしまいました。これは巻き返しを やっているわけですが、強いところが全部駄目になりました。  2007年のデモンストレーションですが、静岡で提案される可能性のあるもの、あるい は提案しているものは、航空機整備、ロボット、道路舗装、バン焼き、ロックスミス (錠前)というように、だんだん技能の競技大会ではなくて、職業の競技大会になりつ つある傾向があります。  メダルについては資料4にもありますが5つ取りました。ポリメカニクスはデンソー さんが取ってくれましたが、これは3つ分です。メカトロニクスというのは、たぶん初 めてだと思いますがロボット制御です。非常に高度で、25カ国も参加する人気職種です が、日産自動車が取りました。機械製図CADも日立のハイテク、それからCNCは統 合されて非常に不利だったのですけれども見事に日本が取りました。機械系というの は、これにあとMTCを入れて5つしかないのです。その5つのうち4つ金メダルを取 って、1つは銅メダルだということで総なめにしました。  おっしゃっていましたけれども、基本技術といいますか、そういうところの日本の復 活といいますか、その兆しが見えてきました。どんなことをされても、ちゃんとメダル を取るという底力を示したという感じがいたします。  もう1つは我々が提案した情報ネットワーク施工です。これは協和エクシオというN TTの子会社です。これは、光ファイバーの施工技術を日本が提案し、6カ国で見事に 金メダルを取りました。5つ目の金メダルということです。電子機器組立ては銀メダ ル、銅メダルはMTCという製造チームチャレンジと自動車板金です。日産自動車が随 分頑張ってくれて3つメダルを取ってくれました。  5つというのはトップでして、いままでは韓国がものすごく取っていたのですが、今 回韓国は3つしか取れませんでした。5つというのは、日本、スイス、イタリアでトッ プです。敢闘賞としては、溶接、電工、配管、広告美術、自動車工、洋菓子製造、鉄工 という状況です。洋菓子製造というのは、前にも銅メダルを取りましたので、今回も非 常に頑張ってくれました。  メダルポイントということで、金メダル4点、銀メダル3点、銅メダル2点という換 算をすると、さすがにスイスは強くて、圧倒的な強さです。金メダルを5つ取って81点 でした。次が韓国で、韓国は満遍なく強くて、金メダルは3つだったのですけれども、 メダルポイントは高い。それから、ドイツ、フィンランド、イタリア、日本ということ で、日本は6位でした。  次の頁に、今回の大会のスローガンが5つ書いてあります。技術委員長である、アイ ルランドのココランさんは、今回はこの5つを徹底的にやりました。Integrity(誠実 さ)というのは嘘をつかないということです。Fairness(公平さ)。Transparency(透 明性)。Innovation(改革)。Partnership。この5つを5つのピラーといいまして、 ポスターを作り、それを各職場に全部貼らせて、それを毎日拝みなさいということで、 この5つは徹底してやったように思います。そのことが、いままでに比べると随分フェ アな大会だったということです。  ちょっと面白い分析なのですが、国によって特徴があるということです。機械系に強 い国というのは、日本、台湾、ブラジル、スイス、オーストリア、韓国、ドイツです。 情報通信に強い国は、シンガポールが圧倒的に強くて、台湾、韓国、オーストラリア、 カナダです。日本は、情報ネットワークで金メダルを取りましたけれども、あと6位以 内に入っているのがイラン、タイ、マカオ、サウジアラビア、ニュージーランドが健闘 しました。  サービス系はちょっと違って、イタリア、スイス、オーストリア、フィンランド、ド イツです。面白いのは、韓国は満遍なく強いのです。これは、国策でメダルを取るとい うことが1つの目標なのでしょう。満遍なく強いのは韓国だけで、あとは全部特徴があ ります。  今回の特徴は、イタリアと書いてありますが、イタリアは国としては参加してなく て、南チロルという小さな地域で参加しています。これは、マカオや香港も地域で参加 しているわけです。人口40万人で、金メダルを5つ取り、しかもメインの電工、タイル 張り、貴金属装飾と非常にいいところで取っています。これは、これからメダル倍増の 非常に大きな参考になるのだろうと思います。技術委員にいろいろ聞いたら、国際競技 の課題を徹底的に研究して訓練したと言っていました。日本のように国内向けで、国内 でやればいいや、ついでに外国へ行けばいいということではとてもメダルは取れない。 英語で課題が出ますし、国内とは少しコンセプトが違うのです。  例えば、建築大工などというのは設計をやらせます。ところが、日本の建築大工の場 合には国内ではそれがない。その代わり、カンナで削ると、削りカスにはみんなが惚れ 惚れするわけです。日本人が削ったものはみんな均一で、みんなが削りカスを見に来る わけです。だから、そこは強いのに、ちょっとした設計ができないものだから、なかな か上位に行けないのですが、ちょっとコンセプトを変えれば、メダルが手に入るのでは ないかと感じまた。現実に南チロルという、たった40万の人口で、日本でいえばどこか 小さな県が参加して、しかも5つも取っているわけですから、これは学ぶべきだと思い ました。  静岡大会の課題として3つ申し上げます。1つは、基本技能の復活の件です。これ は、厚生労働省とも一体になって進めております。技術委員会の課題として継続審議と なり、来年5月に決まります。精密機械組立て、抜き型、構造物鉄工、曲げ板金の復 活、CNC旋盤との分離、この辺りはかなりの賛同を得ております。ドイツ、スイス、 オーストリア、ブラジル、アジア諸国は賛成に回ってくれていますので、あとはどうい う具合に世論をつくっていくかということで、日本の提案が非常にアプリーシエートさ れたということです。  これは、日本の関係者の方々と、外国と一緒に職種定義をつくっていただくというこ とと、盛んにスポンサーのことを言っていましたので、トヨタさんとかデンソーさんは スポンサーとしていろいろご支援をいただきたいと思います。そのことが、世界に対す る1つのプレゼンスでもあるということです。  2番目は、CIS(コンベンション・インフォメーション・システム)ということ で、競技大会のコンピューター・システムが初めて今回動きました。先回まではトライ アルだったのですが、今回はかなりうまく動きました。ここは、評価システムが非常に 公正化された、迅速化された、精度が上がった、チーティングがなかったということで 非常に評判がよかったのですが、まだ完成度が低いというかバグがあるということで、 この辺の精度向上があります。  今回、エキスパート以上は全部ノキアの携帯を持たされたのですが、あれが非常によ かったのは、広報が同時にバッと流されたことです。いついつ何人集まれといった連絡 事項が一瞬にして来るということで、あれは非常に便利でした。スイス大会の場合は走 り回るわけです。何か連絡があると、探し回って、汗だくで走り回っていましたが、こ のシステムでそれがなくなりました。これは、ノキアの技術だと思うのです。  できたら、それに4カ国の翻訳機能を付けてほしいと思いました。これから、日本の ボランティアとかいろいろな方が参加されると思うのですが、技術があってもちょっと 苦手だという人は全部日本語でわかる。簡単な、何時に集まれとか、ここがこう変わっ たよ、食事の時間が変わった、バスがこうなったということが全部英語やドイツ語なの です。それに翻訳機能を付けたらどうかと思いました。  これをちゃんと作ると、日本がここで完全にCISを完成させて次に譲ると同時に、 このノウハウを国内大会にも使えるだろうということです。日本選手を向こうへ出すと いうこともありますが、逆に向こうの選手を日本の大会へ招くことも可能だろうと思う のです。これは茶飲み話ですけれども、オーストラリアが山口大会に出したいという話 もありました。受け皿としては、語学の問題とかいろいろな問題がありますからすぐに はいきませんけれども、こういうシステムさえ完成しておけば、英語圏の人が来よう と、ドイツ語圏の人が来ようと、日本大会と同じようにできますので、このCISを日 本で完成させたいと思いました。  3番目はいろいろ出ておりますような、PRと見学者へのサービスです。技能五輪と いうのは、日本の国際競争力維持向上であると思います。2つありまして、こういう競 技大会というのは、もちろん1つは技能を向上させるという面ですが、もう1つ大事な 面はデファクト標準になるということです。  ですから、前回のスイス大会でやった各国の技術は、その次の大会では良いところは 真似されます。ということは、それが現場レベルでデファクト標準になるということで す。それはツールであったり、手順であったり、材料であったり、やはりビジネスにつ ながるわけです。そういう意味では、日本の国際競争力維持向上の原動力であるという ことをつくづく感じましたので、皆様方のご意見と全く同感です。それをベースにし て、特に次の世代を背負う学童、学生への浸透は必須であろうと思います。なかなか難 しいかもしれませんが、やはりメディアで取り上げていただけるような運動をしていき たいということです。  もう1つは見学者へのサービスということで、競技進行状況の視覚化が必要です。特 に機械系もそうですし、情報系は何をやっているかわからない。パソコンに向かってや っているだけで、見学者もパラパラです。洋裁、美理容、ビューティケアなどは人だか りがあります。やはり、見せることも、もっと工夫する必要があるだろうと思いまし た。  ビデオなどを使って、学校で事前教育するということは非常に大事ですけれども、も う1つは現場でベテランの人が立って、これはこういうことをやっているのだというこ とを、例えばメカトロとか、CNCマシニングで、経験者がそこに立って解説をしてあ げる。あれはああやっているのだよ、これはこうやっているのだよ、これは時計のこん なのが使われているのだよ、ということをやると全然違うと思うのです。見てもわから ないのです。小学生や中学生は見るのだけれども、何をやっているのかわからないので ズッズッズッと行ってしまってあまりインパクトがないと思いました。  なにも40種を全部見せる必要はないので、主なところはこういう意味がありますよ、 ということを解説してやると、目の前でやっていますから、こんなインパクトはないで す。そうすると、子供たちは強烈な印象を持つと思うのです。そういう意味で、この3 つぐらいは静岡でなんとか実現したいと思っています。 ○座長  事務局から付け加えることはありますか。 ○事務局  いま委員からお話がありました機械系などについては、見てもなかなかわかりにくい という点については、今年度から展開いたします「ものづくり立国」推進事業の一環と して、全国の主要7都市でシンポジウムの開催などと併催という形で、過去に技能五輪 国際大会などで優秀な成績を収められた方にお願いし、職種のデモンストレーションを 考えています。  そのときに試みとして、デモンストレーションのみならず、おっしゃられたような解 説をしていただく方を付けてということを考えております。その辺りの成果についてご 報告させていただければと思っております。 ○委員  イタリアの話を聞いて、すごいと思いました。イタリアは、中小企業が強いのではな いか、技能を大事にし、それが事業として成り立っているという背景があると思うので すが、その辺のところはどういう感じなのでしょうか。日本の中小企業にも優れた会社 はいっぱいあるのですが、地域としてそういうものに力を入れているというか、何かお わかりでしたら付け加えていただけますか。 ○委員  具体的にどういう訓練をしているかは聞かなかったのですけれども、いずれにしても そういう生業系というのは、日本はあまりメダルを取れないからといって、技能が世界 的レベルに比べて低いということではないと思うのです。  ある部分では圧倒的に強いにもかかわらず、競技としての考え方が日本ではまだ浸透 していないと思います。同じ職種で、各国で専門的な仕事をやっていることに関しての 差は感じませんでした。  育成というのは日本と違って、向こうは徒弟制度といいますか、ギルドみたいな形で 伝承しています。もう1つは教育制度も違いまして、前に私はアイルランドへ行ったの ですが、中学あるいは職業学校というのでしょうか、日本だとほとんど同一教育で、大 学へ行くか高校で職業に入るかという選択しかないわけです。中学で出る人はほとんど ありません。そういう所は、多様な社会で活躍するコースがあって、それはそれなりに 尊敬されているというのは大きいのではないですか。だから、アイルランドの選手を見 ていると、みんな生き生きしていますし、誇りを持っている感じがしました。教育制度 の問題があるかもしれません。 ○委員  私はこの仕事をさせていただくようになって岩手へも伺いました。やはり、先ほどか ら皆さんのお話に出ているように、目の当たりにすると本当に感動しました。フィンラ ンドでは、私のような人間でも、あちこちでもらい泣きをいたしました。4日間22時間 競技をしますが、それぞれスタートが違うのです。終わる時間も違うので、終わるころ をねらっていくと、そこは感動の嵐で、涙、涙が繰り広げられていました。  知られている、知られていないという点で感じたことを申しますと、まず、空港に降 り立ちますと、ほとんど何もないのです。本当に大会をやっているのかとびっくりする ほど何もない。市民の人たちもあまり感じている様子はない。会場内へ行くと、もちろ ん熱気はすごいです。  ただ、日を追うごとに、関係者がIDを持って市内の主要な交通網であるトラムを自 由に乗れるのですが、みんな大きな写真付きのものを持っているので、市民がそのIDカ ードを見ることによって、こういうことをやっているのだということがわかって少しは 功を奏したかなと思います。  ただ地元メディアが、特に新聞やテレビでしょうか、審査をやっている間に町に出て みましたら、ある店の日本の女性の店員が、「日本の選手ってすごいんですね」と言っ ていました。それは何かというと、20歳の宮大工の青年が大工の部に出ていて、白いT シャツ、白いパンツ、白い地下足袋でした。この地下足袋が当初駄目で、認めていただ くのに関係者の努力で前日に協議をしていただきました。もっと厚底でないと、釘を踏 んだときに危ないと。しかし、足の裏で釘という感触をつかむことのほうが大事だみた いな、一種の文化の違いもあってなかなか認めてもらえなかったらしいのです。でも、 地元の新聞では相当大きなスペースを割いて、彼のことを取り上げていて、ヘルシンキ の在留日本人は、すごく誇りを持って見ていたそうです。  あるいは、れんが積みにたった1人女性が出ていて、成績としてはそれほどではなか ったのですが、初めて見るれんがの形と、それから2つ、3つ抱えるととても重い。屈 強な男性たちは8つぐらい持てるのですが、彼女はようやく2つ、3つ持てる。3日目 の朝から泣きながら積んでいる姿は、やはり地元の人の心を打ったらしくて、最後の日 に地元の人たちが、「加奈子、素晴らしい」と言ってくれて、彼女も涙をするという場 面がありました。人間ドラマとしての技の世界は、金メダルとは別の見方があるという のを1つ感触として感じました。  先生がおっしゃるように、成果が見えないものというのは評価軸がわからないです。 電線をきれいにしているけれども、本当にこれでいいのか、ぶら下がっているからここ は駄目なのか、その辺がよくわからないです。目に見えるものは、評価の中に自分が参 画できるという楽しさがあります。これなどは会場設計として、通路のつくり方、本当 はアイランド方式にして、蛇行して道をつくると見えやすいとか。こういう所に、その まま四角いゾーンをつくると、ここからしか見えないので、本当は裏も全部見えたほう がいいとかいろいろ考えさせられました。動線の問題はとても大きかったです。  現場の人が知らせるのもいいのですが言語が難しいので、ここは何が見どころで、ど ういう人がいいのだということが、それぞれのブースでわかるということ。それから、 ドイツだけがやっていましたけれども、個人のプロフィールを出していて、この人は、 いつどういう学校を出て、いま何をしているというのが書いてあると、関心の持ち方と して、私と同じ年だとか、生年月日が一緒だとか、工業高校へ行っているのだ、という 共通項が結べるという意味ではよかったと思います。  日本の場合は、日の丸と七夕、五月人形などを自分なりに、また友達の応援色紙など も置いてありましたけれども、もう少し個人にスポットを与えて興味を持っていっても いいのかと思いました。  スポンサーメリットについては、最終日の閉会式の表彰する際にボルボの枠があり、 ボルボの人が表彰しました。文部大臣などと一緒に、ボルボ賞というような形でやって いました。スポンサーメリットについてはかなり積極的にやっていました。館内の垂れ 幕、それからVIPの人たちが俯瞰して会場を見える位置に、ちょっとした喫茶・ワイ ンコーナーみたいなものもあり、スポンサーがお金を出しただけのことはあると思わせ る設えはなかなかよくできていました。  主管が文部省だったというのもあり、初日と2日目は学生を乗せた130何台のバスが 駐車場に入りきれませんでした。学生は平日に来るようにと指導したらしいのですが、 本当に足の踏み場もないほどの盛況でした。  開会式と閉会式には、それぞれ地元の若い人たちがやったので、エンターテイメント の熟度としては稚拙な部分もあったのですが、一生懸命やっていました。会場は非常に 盛り上がって感動的だったのですが、これが静岡県大会になったときに、開会式・閉会 式にどこまでどのように人を入れるのか。向こうは、午前4時に夜が明けて、午後11時 ぐらいが夕焼けですので、午後6時ぐらいから開会式・閉会式を始めて、午後8時、9 時に終わって外に出てきてもまだ明るいのです。広場にたむろしていて、そこでみんな が友好関係を取り結んでいたり、記念写真を撮っていたりという情景が大変よかったで す。そういう時間の設定、場所の設定、人の動かし方を考えなければならないでしょ う。  それから、これは致し方ないことなのですが、私がこういう立場だから言いやすくて 言ったのだと思うのですが、親御さんや会社の方々などいろいろな方々が、選手の宿舎 がひどすぎると言っていました。あれは、日本の国力が衰えていて馬鹿にされているか ら、ああいうひどい所をあてがわれているのかという意見が非常に多かったです。い や、そうではなくて、組織委員会が平等に振り分けてこうなのだ、選手の皆さんは若さ もあるので、2人、3人部屋で頑張ってもらおうという気持もあるのだと答えました。 選手自身がそう思っていたかどうかよりも、付き添いの人たちが、あれではなかなか夜 も眠れない、シャワーブースは入れないぐらい狭い、寝台の感じが非常によくない、遠 くから行った人は時差の調整もあるということでいうと、日本の人たちは、こういう所 で日本の国際社会での評価についてこのように思っているのかということに私はむしろ 驚きでした。日本が差別されていて、こんなひどい環境の部屋に泊められていると、決 めかかっている姿に驚かされました。それは、大会の運営そのものというよりは、日本 で開催したときに、同じことを感じる外国の方たちがいないでもない。和室の問題、お 風呂の問題とかいろいろあります。特に、今度はアビリンピックも一緒ですから、そう いう方たちが、うちはこういう国だから差別しているのかと思われるかもしれないとい うことは、頭の中にちゃんと入れておかなければいけないと思いました。  先ほど言いましたように、あちこちで感動的なシーンがありました。私の役割だろう と思ったので、あちらで絵葉書を50枚ぐらい買い、情報発信力になるニュースキャスタ ーや文化人、政治家の一部の人たちに、こんなに素晴らしい大会であるということを知 らせました。今度フィンランドへ行くのだと言っても、ふーんと聞いている人でも、こ うやって、こういうものを目の当たりにしたら感動的だったというふうに絵葉書に書け ば、少しは興味を持ってもらえると思ったのです。  先ほどの宮大工の男性は時間切れになってしまいました。釘の打ち方も、ほかの国で は考えられないぐらい難しくて、斜めから打ったりしていました。君のカンナ削りは肌 のように美しいと絶賛されるのですけれども、最後まで組み立てられないのです。そこ の現場にいた人たちに聞いたら、ほかの人たちは数式で計算しているけれども、こちら は全部線を引いて算定するので、それに初日の2時間を費やしてしまいました。彼の板 は全部線で、ほかの人たちは全部数式なのです。  韓国も3年前から数式方式に変えました。出た数字をスケールで測って木を切るの と、材木を持っていって、線に合わせて切るので曲がっていたんでしょうね、何ミリか ズレていて、誰が見ても浮いているのが見えて、私はかわいそうでしようがなかったの ですが、そういう技術の比較なのだから仕方ないと思って見ていました。  最後に、その青年は、減点覚悟で5分くれと言ったのです。その5分が終わっても15 秒ぐらい足りなくて、最後の釘が打てずに彼が歩いてきたときに、隣にずっと立ってい た初老の人が、ホロッと涙を流して「よくやった」と声をかけたのです。それが、棟梁 だったらしいのです。それを見て、私も、思わずもらい泣きをしてしまいました。  全体としては、彼らがフィンランドで体験したことを、日本の国の中に戻って来たと きに温度差があるということがいちばんかわいそうな気がしました。私は、この立場に いさせていただいている以上、賞を取れなかった人のことも、ちゃんとよく知らしめて あげたいと思いました。彼らは世界のいろいろな人たちと交じわって、いろいろなこと を体験したはずなのに、日本に帰ってきた途端、小さい会社の人はすぐ仕事に戻って、 それが何だったということもなく終わってしまっているのではないかという、そのつな ぎめはちゃんとやってあげたいと思って帰ってきました。  折角やっていることをどうやって広めるかということ、これが私に課せられた大きな 課題だということを再認識して帰ってまいりました。ドラマや演出のネタになるような ものもいっぱい転がっています。これは、一緒に行ってくれた広告代理店の人たちもみ んな同じように感じたと思いますので、2007年には、たぶん活かされるのではないかと 思っております。 ○委員  確かに日本の成績は上がってきているのですけれども、この背景を見てみますと、台 湾は35回ぐらいから急激に成績が落ちています。これは、政府の方針が変わり、職種数 も減らす、お金もかけないという状況で下がってきています。相手が下がったことによ り、日本が上がっています。今回の韓国も、昨年の段階では少子化が進んでいて、韓国 でも技能離れが起こっています。  では、どういう対策をとっているのだということで、私は少し話を聞いてみました。 それに伴って、国としての動きも入ってきているのではないかと思います。ただ、国の 裏付けが取れていませんので、そういう可能性もあります。かつて日本には、勝って兜 の緒を締めろという言葉がありますけれども、そこで浮かれるのではなくて、相対的に 見ると台湾、韓国という強敵が下がってくれたので、結果的に日本が上がった状況にな っている一面もあるかと思います。引き続き、トレーニングや支援が必要になると思い ますので、ご理解をお願いいたします。 ○座長  自動翻訳器はもう使えるようになっていますので、おっしゃっていただければ電機会 社のほうで付けます。先ほどからディスプレーの話が出ていましたけれども、いちばん 大きいのは我々発光ダイオードで出ています。あれは、屋外劇場もやれます。そういう ものも、渋谷辺りにはいくつか並んでいたりして使われている例がありますから、会場 で回しながら周知させるのにも非常に役に立つのではないでしょうか。そういうのも、 全部お手伝いいたします。  いま宮大工の話が出ましたが、使ってみるといいというところがあります。その場の 試験では必ずしもよくないということがあります。例えば、札幌の北西の旭川へ寄った 所に、キロスロという変な名前の工場があります。そこへ行ってみますと釘を使わない のです。なぜかというと、北の国は暖房を使うから結露がおこって、そこから釘が錆び て腐ってきます。ですから、そういうところには宮大工の技術が非常に活きていて、非 常に成果が上がっているみたいです。狂わないということなど、そういう視点も必要な のではないかと思いますが、そのときに勝負させられるとちょっと弱いです。 ○委員  フラワーデザインなども、花材の選び方にしても日本はわびさびを重んずるのか、若 い人でも紫色の花を選ぶと、ヨーロッパではピンクや赤の花のほうが相対的に評価が高 いとか、いろいろ文化の違いで評価が違っています。これは、仕方のないことかもしれ ません。 ○委員  その辺はやはり差があります。 ○座長  大事なご意見をたくさんいただけたと思います。今後、具体的な話が進んでまいりま すと、またいろいろご意見をいただかなければいけないチャンスもあるだろうと思いま す。そういう点で、事務局に手を貸していただければありがたいと思います。その他に ついて、事務局からお願いいたします。 ○事務局  次回の会合は、今年度の終わりを目指して日程調整させていただきます。そのとき に、本年度の事業の進捗状況等についてご説明させていただきます。改めてご相談させ ていただきますので、よろしくお願い申し上げます。 ○座長  本日の議事はすべて終了いたしましたので閉会とさせていただきます。どうもありが とうございました。 (問い合わせ先)  職業能力開発局  能力評価課  有識者会議担当  電話  (代表) 03-5253-1111      (内線) 5948