05/05/20 「今後の労働時間制度に関する研究会」第2回議事録            第2回今後の労働時間制度に関する研究会                  日時 平成17年5月20日(金)                     15:00〜                  場所 経済産業省別館10階第1014号会議室 ○座長(諏訪)  ただいまから、第2回の今後の労働時間制度に関する研究会を開催させていただきま す。本日はお忙しい中をご参集いただきまして大変ありがとうございます。議事に入る 前に、前回ご欠席になられた佐藤厚先生、同志社大学総合政策科学研究科教授が本日は ご参加くださいましたので、ご紹介させていただきます。 ○佐藤様  ただいまご紹介いただきました佐藤と申します。前回は都合がつかず、1回目の会議 にもかかわらず欠席いたしまして、申し訳ございませんでした。非常に重要な会議だと いうふうに心得ております。これからは必ず出席するように努めたいと思いますので、 どうぞよろしくお願いいたします。 ○座長  よろしくお願いいたします。なお、本日は水町先生からはご欠席の連絡をいただいて います。西川先生は遅れていらっしゃるのではないかということですので、会議を開催 させていただきます。  本日の議題は諸外国の労働時間制度、ヒアリング調査の実施などです。そこで、早速 諸外国の労働時間制度についてご検討いただこうと思います。前回は日本の労働時間制 度の変遷、労働時間等の現状を説明していただき議論をしましたが、労働時間規制の在 り方を議論していく上では、諸外国の労働時間制度について、現在の時点でどうなって いるかを確認しておくことが必要であろうかと考えます。そこで、まず、事務局からご 説明をお願いし、その後、意見交換をさせていただきたいと思います。では、よろしく お願いいたします。 ○前田賃金時間課長  資料1−1、1−2、1−3をご覧いただきたいと思います。この労働時間制度の検 討について、労働政策審議会においても、アメリカのホワイトカラー・エグゼンプショ ン等についてさらに調査をするということが課題とされており、また規制改革・民間解 放推進3カ年計画においても、平成16年度に海外事例の調査を行うということとされて いたところです。昨年度JILPTにこの諸外国におけるホワイトカラー労働者に係る 労働時間法制について、調査研究をお願いしたところで、それが取りまとめられており ます。それの概要をまずご説明いたします。  資料1−1です。今回、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリスと4カ国について労 働時間制度、特にホワイトカラーについての適用除外を中心に調査をしていただきまし た。まず諸外国の労働時間制度ですが、大きく考え方としてアメリカについては週40時 間で、40時間を超えると1.5倍の率で割増賃金を支払うということで、コスト的な圧力に よって、雇用を特に重視したもともとの立法趣旨であったというようなことも言われて いますが、間接的な規制でやるというような形になっています。  一方、ドイツ、フランス等については法定労働時間を定めて、労働時間の長さ自体を 直接的に規制するというようなことが基本的なところです。イギリスについては、もと もとは労働条件の決定について団体交渉などによる集団的な自由放任というのが伝統的 であったわけですが、EUの労働時間指令などを受けまして、1998年に労働時間規則と いう形で労働時間の一般的な規制ができたということで、イギリスも現在の労働時間規 則は労働時間の長さを直接規制するような形になっているというところです。  1頁です。まず「アメリカ」からですが、週の法定労働時間が40時間で、それを超え るときに1.5倍で割増賃金を支払うということです。立法趣旨として特に1937年当時、 経済状況が非常に悪く、低賃金、長時間労働、あるいは失業というものが蔓延してい た。そういう中で州法で労働時間や賃金を規制した場合に、その規制がある州とない州 との間で産業的な流出ということが問題になるということで、連邦法による規制がされ たということです。連邦最高裁の考え方などでも、時間外労働自体が規制されているわ けではなくて、割増賃金によって付加的な賃金支払が要求される。それを避けるために は雇用を拡大するという形の経済的圧力をかけるということで、割増賃金の経済的な圧 力によって、雇用の拡大を図るということが主たる目的であったということが言われて います。  1頁に戻っていただき、適用除外の関係ですが、いわゆるホワイトカラー・エグゼン プションということで、管理職、運用職、専門職というものについて適用除外というも のがあります。あと外勤営業職についても適用除外という形になっています。  2頁です。罰則等ですが、違反について1万ドル以下の罰金又は6か月以下の禁固と いう形になっています。さらに民事訴訟などで被用者及び労働長官がその被用者と「同 様の立場にある他の被用者」のために訴訟を提起できる。さらに未払額に加えて同額の 附加賠償金を支払わなければならないという形で、かなり違反した場合の罰則が強いも のがあるというところです。適用除外については後ほど細かく説明させていただきま す。  3頁です。弾力的な労働時間制度ということで、26週単位、あるいは52週単位の変形 制が可能であるというところです。  「ドイツ」ですが、実労働時間を厳格に規制しようということで、1頁にあるように 1日8時間を超えてはならないということです。また、小売業については閉店法などに よる営業時間の規制があるということです。3頁です。1994年の労働時間法で弾力的な 労働時間ということで6か月又は24週以内の期間で1日8時間を超えない場合に限っ て、1日10時間まで延長できるということです。一定の調整期間内で、1日10時間まで 労働できるということです。こういった形の弾力的な制度になって、時間外労働、ある いは割増賃金といったような規制は、法律上はないということです。協約によって割増 などがあるということです。  1頁に戻っていただき、適用除外については管理的職員ということで、事業所組織法 第5条第3項の管理的職員については適用除外になるということです。  2頁で罰則について法定労働時間を超えて労働させた場合に、過料等が科されるとい うことです。  3頁で弾力的労働時間制度とのかかわりですが、法令上の制度ではないのですが、一 定の調整期間内で労働時間を調整する際に、各労働者の労働時間を口座のように記録・ 管理して、8時間を超えた場合の時間外労働を休暇で補償するような形の労働時間制度 というものがかなり普及しているということです。  4頁です。さらに、信頼労働時間制度、これも法令上の制度ではないわけですが、コ アタイムのないフレックスタイムというような形のものが、特に大企業の協約外職員を 中心に普及している形です。休息・休日の規制があるということです。5頁で年次有給 休暇についは24日以上の有給休暇があるということです。  次は「フランス」ですが、従来左派のジョスパン政権で第1次・第2次オブリー法 で、週39時間から35時間に労働時間が短縮され、一方で労働時間の柔軟な編成がある程 度できるようになった。その後、さらに右派のラファラン政権でフィヨン法で柔軟な労 働時間編成がより可能とされている。最近、さらにこの35時間制について、失業率とか 財政赤字という問題が指摘されて、35時間制そのものではないのですが、例えば最長労 働時間についての労働監督官の許可を得ずに延長できる時間を180時間から220時間に延 長するという形で一部労働時間の延長について見直しが行われているという状況です。  1頁に戻っていただき、フランスの場合、現在1週35時間ということです。適用除外 については特にホワイトカラーとの関係で(5)にある経営幹部職員というものが適用除 外とされているということです。  2頁で罰則については法定労働時間を超えて労働させた場合に、第4種違警罪という ことで罰金がかかるということ、あるいは監督、民事訴訟なども救済として規定されて います。最長労働時間については2頁の下に、1日10時間を超えて労働させてはならな いということ。1週について48時間を超えて労働させてはならないということです。 「労働監督官の許可」とありますが、法定労働時間を超えて労働させる場合には、企業 委員会などに通知した後、労働監督官の許可を得なければならないということですが、 3頁で年間枠180時間までは労働監督官の許可でなく通知で足りるということになって いるということです。この180時間というのが昨年12月に220時間に延長されたというこ とです。  割増賃金については35時間を超えた場合に、協約・協定で定められる10%以上の割増 率の割増賃金を支払わなければならない。弾力的な労働時間制度については年単位の変 形労働時間制というものが導入されているということです。  4頁にあるように休息・休日については週1日の休息とか、原則として日曜日の休日 などが規定されています。年次有給休暇については年間30日というような形で規定があ るというところです。  最後に「イギリス」です。労働条件の決定について最初に申し上げたように、そもそ も一般的に労働時間規制が従来はなかったということで、女性、年少者、あるいは特定 の団体交渉が未発達の産業などについて、賃金審議会などで労働者の保護をやっていた というところでしたが、EUの労働時間指令を受けて、それを国内法化した労働時間規 則というものが1998年にできたということです。法定労働時間については1頁で17週を 平均して48時間ということで定められています。適用除外については(2)のイで、幹 部管理職ということで測定対象外労働時間という制度があり、そういったものについて は労働時間の規制が適用されないということです。  イギリスについては特に適用除外のエのところに、労働者により署名された書面によ る個別的なオプト・アウトの合意というものがあり、個別の合意によって法定労働時間 の規制の適用を排除するというような制度になっています。罰則は2頁にあるように、 法定労働時間等の違反についての罰則が定められています。4頁にある1日の休息、1 週間の休息、年次有給休暇について4週間の年次有給休暇ということが規定されている ということです。  一般的な労働時間制度についてはそういうところですが、特に適用除外については資 料1−2をご覧ください。アメリカについて、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプシ ョンという制度があるということで、この適用除外の趣旨については必ずしも明確な資 料はないわけですが、最低賃金をはるかに超えるような高い俸給を前提として、代償的 な特権が存在するような労働者について、時間的な基準で規画化することが困難であ り、また、そういった労働者については、他の労働者が容易にとって代わることができ ないというようなことで、割増賃金による経済的な圧力をかけても雇用の創出という効 果も生じにくいというようなことから、適用除外というような制度ができているのでは ないかということです。  大きく「管理職エグゼンプト」「運営職エグゼンプト」「専門職エグゼンプト」とい う3つの類型があるということです。1頁の(1)で一般的な要件として、そもそもブ ルーカラーの労働者ではないことが1つです。大きな2つ目の要件として(2)の俸給 要件がある。原則として週当たり455ドル以上の率で「俸給基準」で賃金の支払がなさ れるということです。「俸給基準」というのは実際労働した日数や時間にかかわらず、 あらかじめ定められた金額を支払うということです。ですのでイにあるように、基本的 には減額ができないというところです。仮に不適切な減額を行った場合には、適用除外 の効果が否定されるということです。減額が認められるのが個人的な理由による欠務が 1日以上とか、病気またはけがによる欠務が1日以上で、かつ、休業補償金等が支給さ れる場合、さらに2頁にある重大な安全規律違反や職場服務規律違反による出勤停止処 分といったような場合には減額が認められますが、それ以外は原則減額ができないとい うことです。  そういう一般的な要件と俸給要件に加えて、それぞれの類型ごとに職務の要件がある ということです。まず、2頁の(3)のア「管理職エグゼンプト」ですが、これは企業 内の上級幹部ということです。大きく3つの要件が決まっているところです。(1)が主 たる職務が企業、あるいは部署や下位部門の管理ということです。主たる職務というこ とについては、一般的には労働時間の50%以上をそういうエグゼンプトに費やせば当該 要件を充足するということですが、必ずしも労働時間だけが唯一の基準ではなくて、別 の要素も考慮され得るということです。(2)の要件として、通常的に他の2人以上の被 用者の労働を指揮管理しているというのがあります。(3)が労働者の採用、解雇の権限 を有する、採用、解雇、昇級、昇進その他について、その人の提案や勧告が特別な比重 が与えられているというようなことが、要件ということです。  こういう3つの要件ですが、特に高額の年収ということで年間賃金総額が100,000ド ル以上の者については、この3つの要件のうちのいずれか1つを満たせば足りるという ような形になっています。  2頁のイ「運営職エグゼンプト」で、これは管理職よりも企業内の地位は若干低いと いうところですが、企業内の集団を統卒して一定の社員を指揮監督するような立場とい うことです。職務の要件は2つということで、(1)が主たる職務が、使用者あるいは顧 客の管理や事業運営全般に直接的に関連するオフィイス業務、非肉体的労働の履行など です。(2)が主たる職務が重要な事項に関する自由裁量及び独立した判断の行使を含む ものであるということです。この場合にも年間賃金総額100,000ドル以上の場合には、 この2つのうちのいずれか1つを満たせば足りるということです。  3頁です。例えば「管理又は事業運営全般に直接的に関連」するという労働として、 ここにある税務以下のこういったものが例として挙げられています。「自由裁量及び独 立した判断」というものにあたるかどうかについては、ここにある経営方針、あるいは 運営方針を考案するなど、重要な任務の履行、本質的意味での事業活動に影響を与える か、重大な財政上の影響がある問題について使用者に具申する権限を有するかなど、一 応10項目の要素が挙げられていますが、そういったものを総合的に考慮して判断すると いうこととされているようです。   大きな3つ目にウ「専門職エグゼンプト」とあります。それについてさらに内容的 に、1つは学識専門職エグゼンプトということで、主たる職務が、科学又は学識分野に おいて、通常長期課程の専門的な知識教育で獲得できるような高度な知識を必要とする 分野であるという、「学識専門職エグゼンプト」というのが1つです。もう1つが「創 造専門職エグゼンプト」ということで、主たる職務が、芸術的、あるいは創作的能力を 必要とするという分野において、発明力、想像力、独創性、才能を要求されるような労 働であるというもの。3つ目が「教師」。4つ目が「法律業務エグゼンプト、診療業務 エグゼンプト」ということで、法律業務、あるいは診療業務のライセンスの保有者で、 当該業務に実際に従事しているとか、あるいはインターン、レジデントなどに従事して いるというようなものです。4頁で、専門職の5つ目として「コンピュータ関連職エグ ゼンプト」ということで、ハードウェア・ソフトウェア、あるいはシステムの機能仕様 決定など、システムの解析技術、技法などの実施などのコンピュータ関連職についても エグゼンプトが設けられています。  2の(1)で運営職エグゼンプトの具体的な例として、金融サービス業の被用者、プ ロジェクトチームのリーダー、あるいは管理職アシスタント又は運営職アシスタント (秘書)、人事部門の管理職、経営コンサルタントなどが該当すると言われています。 一般にその検査官、試験員、格付員等は管理、事業運営全般に直接関連する労働ではな いということで、そういうものは一般的には該当しないということです。  (2)の専門職エグゼンプトの例として「学識専門職エグゼンプト」としては、医療 技術者、看護師、歯科衛生士、公認会計士、シェフ、アスレチックトレーナー、埋葬業 者等が該当する。弁護士の補助職員や法務アシスタント等は一般的には該当しないとい うことです。  「創造専門職エグゼンプト」の例として俳優、ミュージシャン、作曲家、指揮者等が 該当する。筆耕者、アニメーター、写真の修正係等は該当しない。ジャーナリストは報 道、インタビュー、公知の情報の解釈又は分析、論説というような場合には該当すると いう形で整理されています。  「教師」は一般に正規の学校の教師のほかに、幼稚園、保育園の教師や職業学校教 師、自動車教習所の教官等が該当するということとされています。  3の効果については公正労働基準法の規制が大きくは最低賃金と割増賃金というもの なので、そういった規制が適用除外される。合わせて実労働時間に関する記録保存の義 務も適用されないということです。  アメリカについて6頁以下に旧規則ということで、この新規則が2004年8月から施行 されたということです。旧規則も同じく管理職、運営職、あるいは専門職についてそれ ぞれ要件が定められていたわけですが、旧規則については1つは俸給基準の減額につい て具体的な解釈が必ずしも確立していなくて、裁判所で仮に減額できないようなときに 減額したときに、莫大なバックペイを要求されるというような問題があったということ で、そういうものの明確化が求められていたというのが1つあります。  俸給水準について旧規則については原則的な要件が週当たり155ドルというような水 準であったわけですが、その水準が1975年以来改定されていなかったということです。 週当たり155ドル当たりというのが、今の最低賃金が1時間5.15ドルで、仮に週40時間 でいきますとそれだけで200ドルを超えるということなので、すでに最低賃金よりも低 いレベルであったということです。そういう俸給水準が低くて、実質的にその水準の要 件を果していなかったという問題がある。  さらに職務の要件についても、結局主たる職務ということを緩やかに解すると、例え ば管理職エグゼンプトであれば2人以上の指揮監督を行っているだけで、俸給水準の要 件等が非常に低いということもあり、適用除外されるとか、あるいは事業運営といった ような要件も曖昧であったというところで、集団訴訟が著しく増大したということもあ り、規則改正が行われたということです。  アメリカについて5頁に戻って、4の考慮すべき事情等ですが、最初に申し上げたよ うにアメリカの労働時間規制が、時間外労働に割増賃金支払義務を課すということで、 雇用を増大させるということが主な目的であったと位置付けられるとすると、適用除外 については割増賃金を課すことによって時間外労働が抑制され、雇用創出に役立つか否 かといったような観点から考えられたということです。  アメリカについて適用除外の対象者がかなり多い、あるいは健康確保措置というのが 制度上義務付けられていないということですが、そもそも労働時間規制の趣旨が、そう いう雇用に重点を置いていて、健康といった面が必ずしも重視されていないという点が 1つあろうかと思います。ただ、アメリカのホワイトカラー労働者についても労働時間 はある程度長いとしても、日本人と比べるとメリハリのある働き方をしているのではな いかというような仮説もあるということで、その点は必ずしも統計的に明らかにはなっ ていないわけですが、例えばインタビューなどによっても、休暇はきちんと取っている といったような指摘がなされています。  より重要な背景として、労働市場の違いというものも指摘されており、アメリカでは 転職が容易であるので、仮に過労死するような職場ではすぐ労働者が転職をしてしま う。使用者も人材確保の観点からそのような働き方は強制できないということが言われ ており、そういう転職が容易な労働市場というものが長時間労働を強いらせる状況の発 生を防止するということも窺われるということです。  さらに、アメリカの適用除外については、仮に適用除外に該当しないものを適用除外 と扱った場合に、倍額賠償などの集団訴訟が提起されるとか、政府からも訴訟を提起さ れる恐れがあるということで、そういう制度的な背景の下で、法的ルールの違反に対す るリスクが大きいということで、そういうルール遵守のための十分な注意を払わざるを 得なくなるという面もあるのではないかということが、この報告書では言われていま す。  アメリカについてこのエグゼンプションというものを極めて乱暴に整理すると、管理 職エグゼンプションというものは、我が国において考えた場合、いわゆる41条でいう管 理監督者というものに一般的には近いというところです。運営職エグゼンプトというも のが企画業務型裁量労働制にある程度近いかと。また、専門職エグゼンプトが専門業務 型の裁量労働制にそれぞれ近いのかというところはあります。アメリカのこのエグゼン プトの特徴として、1つは収入の水準というものを判断基準として用いているというこ とがあろうかと思います。  適用除外については職務などで要件の明確化については様々な努力がなされていると いうことです。労働市場の問題としては、アメリカの場合にはかなり採用時点から、す でにエグゼンプトになるような労働者とそれ以外の要員というものは分けて採用されて いるということで、エグゼンプトになるような人は、そういった能力を前提に採用され ていて、労働時間などにとらわれずに残業手当などはなくても当然というような働き方 ではないかということです。  年次有給休暇などは法令上規定はないわけですが、実態からいくとそのエグゼンプト の場合に勤続年数にもよりますが、大体4週間から6週間の有給休暇があって、8割程 度は消化されているということも言われています。そういう意味で知的な労働にとっ て、そういう休暇をとって、リフレッシュするというものは不可欠であるという考え方 もあるのではないかということです。  9頁でドイツについてです。ドイツが管理的職員について労働時間の規制が適用除外 されるということで、管理的職員というものは事業所組織法第5条第3項に規定する管 理的職員ということです。その要件としてその事業所、あるいはその部門に雇用される 労働者を採用、解雇する権限を有する。包括的代理権又は業務代理権を有する。それ以 外で企業、あるいは事業所の存続と発展にとって重要で、職務の遂行に特別の経験と知 識を必要とするような職務を通常行う者ということで、(指揮命令に拘束されずに決定 を行うとか、決定に重要な影響を及ぼす場合に限る。)という形になっています。一般 的には人事部長や事業所委員会があるような事業所の所長などは、この管理的職員に該 当すると言われています。管理的職員に該当するかはっきりしない場合に、事業所委員 会の選挙、あるいは社会保険料の算定基礎となる平均報酬額の3倍を超える額の年俸制 の対象になっているかどうかといったようなことによって判断されるとされています。  管理的職員については労働時間法の規制の中の最長労働時間、休憩・休息、深夜労 働、あるいは休日労働、労働時間記録といったものの適用を受けないということです。 こういった管理的職員がどの程度いるかということについては、必ずしも最近の数字は 明らかではないのですが、一応1970年代の研究では、全労働者に占める管理的職員の割 合は2%程度であるというような推計があり、最近もそれほど変わっていないのではな いかと言われています。  法律上の適用除外についてはそういった管理的職員ということですが、法令上の制度 でないものとして、協約外職員というものがあるということです。協約外職員は管理的 職員よりも下位の職位に位置するわけですが、労働協約の適用を受けない労働者という ことです。ですので、管理的職員と労働協約の適用を受ける一般的な労働者の中間的な 位置付けということです。  こういった協約外職員については労働時間法の適用を受けるわけですが、労働協約上 の労働時間の規制の適用は受けないということです。一般に高度の資格を有して、協約 の最高賃金を超える賃金を得ているということで、一般労働者とは異なって、その業務 に従って自己の責任で労働時間を管理することが期待されるということです。この協約 外職員というのは、その協約の最高格付けの職務を超える活動に従事するということ で、一定の管理的な業務とか、相当高度な専門的な活動が想定されるのではないかとい うことです。実態については一部、今回アンケート調査などをやった中での結果をみま すと、協約外職員の割合が大体労働者の中の1割程度ではないかということです。一般 的には大卒の学歴で一定の職業経験のある者ということで、アンケートなどでは概して 10年以上の勤続年数の者が多かったというところです。  管理的職員というのが経営判断に関与する経営的な業務というものに対して、協約外 職員というのは専門性、あるいは自律的な労働の仕方等ということで、賃金も労働時間 ではなくて業務に対して支払われるということで、この協約外職員というのはある程度 我が国の中でいうと、企画業務型裁量労働制に近いというところもあるということで す。  11頁、フランスについてです。フランスについてもいわゆるカードルという幹部職員 があります。法律上、経営幹部職員については、労働時間規制の適用が除外されるとい うことです。要件として1の(1)のところにある労働時間編成上大きな独立性を持つ ような重要な責任が委ねられている。自律性の高い方法で決定を行う権限を与えられて いる。当該企業又は事業場における報酬システムの中で最も高い水準の報酬を得ている というもので、これは経営の幹部というところです。そういったものについては労働時 間規制の適用がないということです。  それに対して2のその他というところで、それ以外の幹部職員、それもカードルの中 で1つは労働単位に組み込まれた幹部職員というものがある。それと経営幹部職員の間 にその他の幹部職と大きく3つの類型に分かれているということです。労働単位に組み 込まれた幹部職員というものは、(1)のアにあるよううに、産業部門労働協約等にい う幹部職員の資格を有するものですが、その職務の性質から、自らが組み込まれている 作業場、部課、作業班に適用されるような集団的な労働時間に従って勤務しているよう な幹部職員ということです。  そういった労働単位に組み込まれた幹部職員については、法律上の労働時間規制が適 用されるということですが、超過時間労働が規則的・恒常的に行われている場合に、個 別労使の合意によって、週、月単位で労働時間を一括合意して、それに基づく報酬の支 払が可能であるということです。この労働単位に組み込まれた幹部職員が幹部職員全体 のおよそ58%ぐらいがその類型に属するとされています。その他の幹部職員というもの が労働単位に組み込まれた幹部職員よりは少し上のレベルで、ただ経営幹部職員には至 らないというレベルというところです。  (2)その他の幹部職員についても労働法典上の労働時間規制の適用は受けるという ことですが、個別労使の概算見積合意によって、労働時間の長さと報酬額を一定の下に 概算的に設定できるということです。  要件として労働協約による幹部職員の資格を有して、先ほどの「経営幹部職員」には 至らず、一方「労働単位に組み込まれた幹部職員」よりも高いレベルの者であるという ことです。効果としてあらかじめ協約で概算見積等について定めた場合に、その協約の 範囲内で個別労使の概算見積合意で、週、月、あるいは年単位で労働時間の長さを決定 することができるということです。年単位の概算見積は法定労働時間の1,600時間プラ ス180時間の枠内で定めなければならないということです。概算見積の合意の場合に、 実際にその労働時間がそれを超えた場合には超過労働時間として割増賃金を支払わなけ ればならないということにはなっているということです。  労働時間の概算見積だけでなくて、労働日数の概算見積を定めることができるような ものがあり、これは自律的な幹部職員ということで、より自律的な者であるということ です。労働時間編成の自律性に照らして、その適用対象となる幹部職員の範囲を決める ことができるとなっており、そういった者については労働日数の概算見積という形で、 年間217日を超えない範囲内で労働日数を定めて、それで概算見積をすることができる という形です。ただ、実際の労働日数が超えた場合には、代替休日を扶与しなければな らないという形です。  3の運用の実態ですが、労働者全体のうち約2割が幹部職員です。そのうち先ほど申 し上げた労働単位に組み込まれれた者が58%ということで、それ以外の第1類型、第3 類型が残りということですが、第1類型は経営幹部職員ということなので、かなり限定 的な者であろうと推測されるということです。幹部職員の賃金の平均額は月額4,770ユ ーロということです。フランスのカードルも一般的に学歴や職務ということで、かなり 職階的になっているということです。例えば有名な大学の出身者であれば、1年ぐらい の研修期間を終えればカードルになるという形で、一般の大卒でも数年でカードルとい う形の幹部職員の処遇になるようです。給与水準はかなり高いということで、そういう 社会的なステータスと、一方にカードルになれば付加的な年休があるとか、そういう特 権もあるというようなことです。一方で過重労働ということもフランスでは最近かなり 議論されているようですが、そこで議論されているのは「過労死」ということよりも 「ストレス」という問題が議論されているようです。  概算見積については、先ほどの労働時間での概算見積と労働日数での概算見積がこの 第3類型の場合にあり得えるのですが、大企業の場合には労働日数での概算見積という ものがとられている場合が多いということで、幹部職員の36%が年単位の労働日数での 概算見積合意といったものを利用しているということです。  14頁でイギリスについてです。イギリスについては法律上「測定対象外労働時間」と いうことで、これも幹部管理職ということですが、幹部管理職については労働時間の長 さが測定されていないとか、あらかじめ決定されていない、あるいは当該労働者自身に よって決定することができる特別な性質の活動に従事する労働者というものが、労働時 間規制の適用を受けないということになっています。経営幹部管理職ということで一般 的には事業経営の指導的な地位にある者で、労働時間等の規制を超えて職責上活動しな ければならないということです。実際の勤務の態様も一般労働者と異なった扱いを受け ているということです。そういう者について法定労働時間、休日、深夜労働及び記録保 存義務などの規定が適用されないということですが、年次有給休暇の規定は適用される といことです。  2が労働者の測定対象外労働時間が一部ある一方で、使用者からあらかじめ決められ た部分があるという両方が入っているような場合もあり、そういう場合にはその測定対 象外労働時間の部分については労働時間規制の適用を受けないということです。ただ、 こちらの場合には休息・休日、休憩時間、記録保存義務の規定は適用されるということ です。  3のその他の問題としてイギリスでは最初申し上げたように、個別的オプト・アウト ということで、労働者との書面による合意によって、法定労働時間の規制を適用しない ことができるということになっています。この辺については欧州委員会からは、オプト ・アウトというものが労働者の自由意思での同意を担保していないという批判も受けて いるということです。ただ、実際の実態としては、この測定対象外労働時間などが要件 が曖昧というところもあり、かなり個別的オプト・アウトというものが一般的に他の適 用除外に優先して用いられている例が多いということです。例えばCBIという使用者 団体の調査によると、労働者の33%ぐらいはこのオプト・アウトの合意をしているとい う調査があるということです。労働協約又は労使協定による適用除外というものもあり 得るということです。  イギリスの場合にEU指令が安全衛生義務を前提に、本来EUでは全会一致が原則な わけですが、安全衛生事項であるということで、特定多数決で指令が決定され、それを イギリスで国内法化したというのがこの労働時間規則であるということで、基本的には 安全衛生という枠組みで成立しているということです。この個別的オプト・アウトとい うものが、評価についてはいろいろ分かれるところもあり、労働者にとっては賃金の確 保の手段になっているという評価もあったりするということで、例えば48時間以上働く 労働者の70%は、そういう賃金の低下を望んでいないというようなことを言っているよ うなところもあり、評価は非常に難しいところがあります。  諸外国の労働時間規制の適用除外、あるいは諸外国の労働時間制度についてはそうい ったところですが、いずれにしてもそれぞれの国によって制度が異なっており、その前 提となる労働市場や各国の風土も異なっているので、外国の制度をただちに持ってくる わけにもいかないということで、我が国においてどういった労働時間制度がよいのかと いうのは、これとはまた別に考えていくことが必要ではないかと思います。  資料1−3については諸外国との労働時間等についての国際的な比較のデータです。 1頁が製造業の生産労働者について年間労働時間を一定の仮定の下に推計をしたもので すが、日本で1,975時間、アメリカ、イギリスはかなり長い。一方フランス、ドイツと いうのは1,500時間台というような形になっています。2頁がそれを時系列的に見たも のです。3頁は年間休日数の国際比較ということで、これは週休2日を週休日とした上 で、法定休日と年次有給休暇を日本においては取得日数で比較したものです。祝日は日 本は多いのですが、年次有給休暇の取得が低いということで、全体的な日数でいくと、 かなり少なくなるということです。  4頁以下は労働移動、特にアメリカなどとの関係で、労働移動の容易さというような 資料を若干付けています。勤続年数などについて見てみますと、平均勤続年数は日本は 11.3年ということで、5年未満が日本の場合は36.5%ですが、アメリカは54.5%、6か 月未満、1年未満というところも10%台ということで、かなり勤続年数が短くというこ とになっています。イギリス、ドイツ、フランスも5年未満のところが5割弱で、日本 よりはやや勤続年数が短いというところです。  5頁で労働移動ですが、日本の労働移動率はおそらく毎勤でやっていると思えるの で、パートも入ったものだと思いますが、労働移動率が39.1%ということに対して、ア メリカの場合126.4%ということで非常に労働移動が多いということで、そういった労 働市場の違いというようなものもあるということです。以上です。 ○座長  どうもありがとうございました。それでは各国の制度について、ご存じのことが多か ったとは思いますが、ご質問、ご意見等がありましたらお願いいたします。 ○今田様  アメリカの例についてお聞きしたいのですが、管理と運営と専門という3つの類型で すが、日本の場合は、専門は入職のときからそれとして入職するケースが多いが、管理 や運営の場合には通常の一般職からローテーションなり昇進という経歴を経て、そうい う職務に就いていく。アメリカの場合はそういう状況なのか、それとも最初から専門職 のような形で入職しているのか、あるいは組織の中で移動していくというケースがある のか、その辺について教えていただきたいと思います。 ○前田賃金時間課長  一般的にアメリカの場合にはエグゼンプトになるような人は、採用のときからそうい うような人として、職務を明らかにして、それに応じて採用するという形になっている というのが一般的だと大体聞いていますので、もともと採用時点からそういう人として 採用されているというのが一般的ではないかと思います。 ○今田様  ではそういう調査やデータは、このレポートで調べられているのですか。 ○前田賃金時間課長  そういうこともさらに調べてみたいと思います。 ○今田様  理解としては組織の中の移動というケースは希で、通常は入職する段階でそういう職 務として入職していると、そのように理解してよろしいのですか。 ○前田賃金時間課長  そういうのが一般的ではないかと私どもとしては理解しています。 ○座長  ここには専門家がたくさんいらっしゃいますから、必ずしも事務局にお答えいただか なくても、どんどん補足をお願いします。ではまず人事管理から言っていただいて、そ の後、両先生にお願いします。 ○守島様  基本的には今の事務局のお答えだと思います。というのは、まさに仕事自身がエグゼ ンプトなのか、ノンエグゼンプトなのかというタイプの区分けをされた段階で、アドバ タイズされますから、入職の段階では決まっているという言い方は少し極端ですが、そ れが一般的だろうと理解しています。私が知っている会社で1社だけ内部昇進的なプロ セスで、いわゆるホワイトカラーなのだけれども、ノンエグゼンプトからエグゼンプト に移るという会社を知っていますが、それは多分非常にレアなケースだと、向こうで話 した人もおっしゃっていました。 ○座長  それでは荒木先生からも補足的にお願いします。 ○荒木様  専門ではないのですが、よく聞くのはアメリカでは普通の労働者の転職回数が11回ぐ らいある。その転職のたびにステップアップしていくわけですから、その労働者として はキャリアが相当あっても、ある企業に入る場合にはエグゼンプトという契約でもって 新しい仕事に就くということで、契約を結んだ時点からエグゼンプトという扱いをされ ているという例は少なくないのではないか。企業内で昇進しても「自分は転職するけれ ども、俺の給料をもっと上げてくれたらこの場にいるよ」と、その代わりそれはエグゼ ンプトとしての仕事として、契約を結び直すということですから、おそらく契約上はエ グゼンプトという位置付けが当事者にとっては明確になっているのではないかという気 がします。 ○座長  山川先生お願いします。 ○山川様  同じです、付け加えることはありません。 ○座長  今の点はフランスのカードルなどもかなりそうだろうと思います。イギリスも大体基 本的にそうなのだろうとは思うのですが、ドイツはどうなのですか。 ○荒木様  ドイツはいわゆるエグゼンプトという位置付けが法律ではないので、今日ご説明があ ったとおり、一定の規定は適用除外となるライテンデ・アンゲシュテルテという管理職 員というものはごく少数ですので、労働者の中でこの人たちとカテゴライズできるよう な人たちは、企業の中で相当上の地位の人というのにとどまるのだと思うのです。この 労働時間との関係でいうと、そこに達しない、つまり、適用除外を受けていなくても、 協約外職員と言われるように協約の適用を受けない上層の労働者がいるというのが特徴 だと思います。若干、今日の説明を敷衍しますと、ドイツの労働時間法は割増賃金規制 を持っておりません。したがって、時間外労働に対して割増賃金を請求するためには、 協約を根拠とせざるを得ないのです。その協約の適用を受けないということですから、 協約外職員というのは働いた時間に応じて割増賃金をもらえる存在ではない。そういう 人たちが相当数いるというのがドイツの特徴ではないかと思います。 ○座長  初歩的なことを聞きますが、割増は払えなくても割増でない通常の賃金は、協約内の 職員の場合は当然時間外になる場合は払われるわけですね。 ○荒木様  もともと時間外手当というよりも、新しい94年の労働時間法自体が割増賃金ではなく て、代償休日という、代替的な休息を与えるということで、たくさん働いたらその分、 時間で返す、働かないで休むということで清算するような頭になっていますので、割増 賃金など賃金のほうではない処遇で対処し、それから賃金自体は協約外職員の場合はそ もそも契約上高いということではないかと推測します。 ○座長  ほかにご質問、ご意見をどうぞ。 ○青木労働基準局長  ドイツの協約外職員というのはほかの国と違って日本に近いという理解でよろしいの ですか。つまり、中で一定程度経験を積んで、あるレベルに達して給料も高くなって、 それからが協約外職員ということで、日本の管理職に近いと理解していいのでしょう か。 ○荒木様  管理職と呼んでいるかどうかは知りませんが、技能を積んで非常に協約上もランクが 高くなってきている。つまり、勤続年数など、1つの企業に限らないと思うのですが、 労働者としてのキャリアが長くて、協約の賃金ランクを突き抜けてしまう。そういう人 たちだと思います。だから管理職に限りませんが、専門職でもあり得るものではないか と思います。 ○青木労働基準局長  その企業内での勤続年数ということではないわけですね。 ○荒木様  協約自体が企業を超えて産業別で結ばれていますので、産業別で協約賃金の格付けが 決まってきているので、必ずしも企業内で勤続が長い場合ということにはならないので はないかと思います。もっと詳しい方がおられるかもしれません。 ○座長  ほかに質問はよろしいでしょうか。それでは質問以外で少し補足的に、基になったこ の調査研究にかかわってくださいました山川先生と荒木先生から、補足的にほかに我々 が考えるべきことがあったらご指摘いただきたいと思います。山川先生からお願いでき ますか。 ○山川様  今、課長からご説明いただいたことで概ね尽きているかと思います。いろいろ多面的 に見ていくというか、単に数字だけ比較する、条文だけ比較するということでは十分で なくて、その背景事情、働き方まで踏み込んだ比較が必要であろうということがいちば ん大きな印象だったと思います。  インタビューは特にアメリカに行ったのですが、そういう企業では人は辞めてしまう から、企業としてむしろ困ってしまう。過労死等の有無について聞いたところ、そうい う状況が出てくると人は辞めてしまうから、むしろ企業としてはそういう状況を作らな いようにする。逆に言えば、法律上、健康確保措置ということがないというのもそれが 背景になっているのではないか。労使とも働き過ぎの問題を労働時間規制との関係で考 える意識自体がそれほど強くないようだったのですが、こちらからインタビューしたと ころで聞いてみるとそういう答えが返ってきますので、おそらく労働市場ということが 背景になっているのではないかと思います。かなりの確率でそういう答えが返ってきま した。 ○座長  荒木先生からもお願いします。 ○荒木様  フランスのところで、幹部職員が3種類あるというお話がありました。資料1−2の 11頁、経営幹部職員があり、これは適用除外なのですが、他に労働単位に組み込まれた 幹部職員とその中間にあるその他の幹部職員があります。この2者、労働単位に組み込 まれた幹部職員とその他の幹部職員、これは概算見積による賃金支払が可能となってい ます。ただ、あとでご説明がありましたとおり、概算の時間を超えて実際に労働した場 合には割増賃金をなお支払う必要があるということですので、これは適用除外、あるい はみなし制とは違うという点に注意する必要があります。  フランスでインタビューしたとき、日本と同じように、ホワイトカラーの過労の問題 がないのかと聞いたら、そういう問題は最近起きてきている。とりわけ、ストレスの問 題が問題となってきつつあると聞きました。しかし、日本のように健康確保措置とか、 そういった議論があるかというと、どうも行政として何かをやるという話ではない。し かし、社会的にはそういう問題がないわけではないということをお聞きしました。  イギリスに関しては、14頁以下でご説明があったとおりです。法律の条文だけを読む と、日本の裁量労働制に非常に近いようなものが「測定対象外」と、2番目の「通常の 時間と測定対象外時間がある場合」とがあります。  この辺がいちばん近そうなのですが、これを向こうで聞くと、実際上はほとんど問題 になっていない。なぜかというと、最後にご説明があったとおり、個別的オプト・アウ トがイギリスでは認められています。そもそも、個人が書面によって労働時間規制を受 けないという合意をすると、完全に労働時間規制が適用されない。それにより、ほとん どの場合は処理されているということでした。これがEUの中では、いまでもしばしば 報道されていますように、イギリスは労働時間規制に関するオプト・アウトを維持した いというのが政府の考えですが、EU委員会やEUの他の国からは労働時間規制の一般 性の問題から疑問が呈されています。イギリスについては、実際上、個別オプト・アウ トという問題で処理されている実態があるということを述べておきたいと思います。 ○座長  ありがとうございました。 ○今田様  いまの荒木先生のお話のフランスの管理職のストレスにかかわる問題ですが、私も企 業でいくつかヒアリングなどをやったことがあります。そのときに、管理職の人たちと いうのは相当長時間で、過重な労働をしているケースがありました。一般労働者はみん な、時間になったらいなくなったり帰ったりする。あと、残り時間を働くのは管理職し かいないということから、かなり長時間で過重な場合が出てきているという話をいくつ もの職場で聞きました。でも、社会的には過労死という認識がされない、あるいは幹部 職の働き過ぎというものがあまり表面化しない。それはなぜでしようか。どのような社 会的背景があるのでしょうか。数が限られているし、特権的な階級であるという認識が ある。さらにその人たちには過重な労働をカバーするだけの例えばまとまった休暇な ど、補償のシステムがあるという解釈は成り立たないでしょうか。 ○荒木様  この辺になってくると、本当は守島先生にお伺いすべきなのでしょう。よくわかりま せん。従来、ホワイトカラーの人たちは長時間労働の割増賃金の請求をしたり、あるい は法で長時間労働を規制したり、あまりそういう問題ではとらえていないのです。働く 人は働くのですが、それはむしろ、自分の仕事の充実や昇進のため、しかも俸給も非常 に高いものですから、労働法の問題とはあまり考えられていなかったのではないかと思 います。  あと、これは一般的な話になってしまいますけれども、日本のように、夕食時に父親 がいないのは当たり前ということは社会的に許されなくて、私が留学中などはみんな、 夕食を家族と取るために、とにかく5時半までには仕事を済ませるためにものすごく集 中して仕事をするのです。朝は早いのですが、帰って家で家族と一緒に食事を取らない と、それが続いていたらすぐに離婚されてしまう。そういう働き方をしていました。そ ういうように、仕事のために家に帰らなくていいということが社会的に許されていない とか、いろいろな要因があるのではないかという気がします。 ○座長  また基本的なことをお伺いします。アメリカなどもそうで、ヨーロッパや英米は大体 そうですが、家族とともに食事をする。そうすると、しばしば持ち帰り残業が多くなる というのがアメリカでは言われます。ドイツもそういうことはあるのでしょうか。特に ホワイトカラーの場合、食事を終えたあとに持ち帰って仕事をするということは。 ○荒木様  私はドイツに住んだことがないのでよくわかりません。むしろ、働き方を見ている と、みんな朝から早く来ているのです。夕食はゆっくりと、家族とレストランで取った りということが多い。ゆったり過ごしている。その代わり、朝はものすごく早く来てい る。向こうはみんなマイカー通勤ですので、ラッシュを避けるために非常に早くから来 ているという例はよく耳にしました。 ○座長  大体エグゼクティブとか、上の地位の人は欧米では朝がものすごく早いですね。 ○守島様  先ほど、今田先生から言われたことと多少関係するのですが、アメリカで過労死が問 題になっていないという話が出てきました。私もこれを読んだときにフッと思いまし た。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、数年前に“Overworked American”とい う本が出ました。それによると、アメリカ人を個人で見た場合の労働時間というのはも のすごく増えていて、それがある意味では社会的ストレス、病気という面で問題になっ ているという提言がされた。  その中で言われていることは、1つは大卒で、ある程度資格、クオリティーの高い人 たちはムーンライティングをやるのです。ムーンライティング、セカンドジョブを持 つ。セカンドジョブを持つと、両方ともある意味でエグゼンプトで仕事をしているわけ で、両方ともある意味で時間的な規制がかからないわけです。そうすると、そこにもの すごく時間をかけて仕事をしてしまう。したがって、家族が崩壊するなどという話では なかったように思うのですが、健康が侵されたりストレスになったりという話になる。  企業に聞いて、ここに出ているようにきちんと休暇が取れるというタイプの仕事を、 一体どれだけの人が持っているのかということも1つの重要なポイントではないか。何 となく、ここを読んだ限りでは、大企業の管理職で労働時間が長いけれども、きちんと 休暇が取れるという、ある意味ではプレビレッジされたというか、レベルの高い人たち がいる。そうでない人たちがアメリカの場合はエグゼンプトの中に大量に含まれるわけ です。そういう人たちについてはもう少しきちんと、別にこの報告書が見ていないとい う意味ではありませんが、もう少し見たいという感じがしました。以上です。 ○山川様  それとのかかわりで、報告書でも労働時間が短い、ゆったりとしているという印象は なかったです。やはりかなり働いているということで、裁量労働的な制度を十分活用し て、朝遅く来たり、夕方早く帰るのか聞いたら、「そういうことはない」ということな のです。にもかかわらず、あまり健康確保措置は問題になっていないという実態でし た。 ○守島様  これは私の勝手な観測で、印象的な議論になってしまうのですが、米国の場合はそう いうことをやるのは本人のチョイスである。本人の選択であって、企業が押しつけてい る、ある意味ではニュアンス的に押しつけているということもあるかもしれませんが、 本人のチョイスだというところがベースにあるような気がします。極端な場合、よく言 われるように、エグゼクティブが自分の部屋で心臓マヒか何かを起こして突然死んで も、「それは本人の責任だよね」と言われてしまう。そのような認識があるので、あま り問題になってこないのではないか。素人っぽい考え方なのですがそう思っています。 ○座長  その点、いわば健康確保義務みたいなものは第一義的に本人が負っている、労働者が 負っていると考える国と、そうではなくて言わば企業が負っている国、両方の共同責任 という国があるのだろうと思います。この辺のところもきっと効いてくるのかもしれま せん。ほかにございませんか、よろしいですか。  それでは、外国のことはこれからも必要な折には参考にしながら議論を組み立ててい きたいと思います。それに当たっては、この間、第1回のときに出していただいた「論 点」をいろいろ盛り込んで、事務局が再整理をしてくださいました。この説明を受けた あとで、さらに議論を深めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  資料2をご覧ください。この間、第1回のときにご意見をいただきましたが、その 後、必ずしも論点について整理が進んでいると言えないところもあります。最小限直し たところは、まず1の「労働時間規制の在り方」です。特に、弾力的な働き方の方に1 番の「総論」が偏っていたというところで、いちばん最後のところに「一方、自律的な 働き方の実現という観点から、年次有給休暇の取得促進や所定外労働の抑制についてど のように考えるか」ということを加えています。  そもそも、自律的な働き方というのはどういうものかいろいろご議論をいただきまし た。まず、弾力的な働き方のところについては2の2つ目の○、「創造的・専門的能力 を発揮できる自律的な働き方」と言っております。その中で言っているのは、最終的に は業務の遂行や労働時間の配分について自らコントロールしていく、という意味での自 律的というのが1つです。それが弾力的な働き方のところにつながっていくかと思いま す。そういう意味で、一応「創造的・専門的能力を発揮できる自律的働き方」というよ うに2のところで書いています。また、時間配分についてのコントロールとか、そのよ うな整理の仕方もあろうかと思います。  3の「労働時間規制の適用除外の在り方」については前回、最初の○でアメリカのホ ワイトカラー・エグゼンプションを参考にしながらということでしたが、それ以外も含 めて一応「等」ということで入れています。  自律的な働き方について、もう一方の意味として、労使が労働契約で多様な働きの中 で、例えば労働時間については決めた時間だけ働くというような働き方、あるいは就業 場所など、基本的な労働条件の中で労使でこういう働き方をするということを決めて、 それを選択するという意味での自律的な働き方という意味で使っているところもある。 年休の取得、あるいは所定外労働の削減などについては、労使当事者間で決めた労働契 約というものに従って働く。自分が選択した働き方によって働く、という意味でも自律 的な働き方ということになっています。そこは説明などで、労働契約の内容に沿って合 理的に働くという意味で使っています。  以上、一応の整理をしていますが、またいろいろご議論をいただければと思います。 ○座長  ありがとうございました。それでは、この論点についてご質問、あるいはさらにこの ような点も付け加えるべきではないかということを、今日、外国の規制を見たあとです ので、余計お気付きの点がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。 ○佐藤様  私は前回欠席したので、最初の在り方、「自律的な働き方」で確認します。前回も議 事録を送っていただき、読ませていただいたのですが、いろいろな考え方があるという ことはわかりました。この研究会で自律的な働き方の理解をどうしたらいいかというこ とについては、ちょっと意見交換させていただきたいと思います。  この文章だと、労働者の創造的な、専門的な能力を発揮できるような働き方というイ メージでとらえられる流れとなっています。職種的にそういうものに馴染むような職種 もあるかと思うのですが、自分で働き方、あるいは実質的に働く時間帯を選べるかとい う、実質的な意味での現状の理解を確認したいし、議論したいと思います。  特に、「労使が対等な立場で決定することが必要となるが」ということまでは事実だ と思います。実際問題として、労使が対等な立場で決定することができるような条件は どういうものであって、そういう条件を考えていく中に労働時間の規制の在り方がかか わってくる。  うっかりすると、労使が対等である原則が現状としてなかなか難しいということであ って、基本的に使のほうが仕事の量をなかなかコントロールしないで、それをこなし切 れないでいるような現状があった場合に、そこが対等であるのかどうかという判断、あ るいは理解が必要になってくると思われます。  そのようなときに現状の労働時間の規制の在り方、いま規制はあるのだけれども、な かなか残業がなくならないという問題があるわけです。それを現状の理解とするなら ば、規制があってもそうなのだから、なくなるとどうなるのかという話になってくる と、例えばもっと長くなるのではないかという議論もあり得ると思います。  しかし、他方で規制があるのだけれども、規制がホワイトカラーの働き方にうまく合 っていないので、ある意味では潜っていたり、規制がうまく働いていないというような 意味で、実質的な意味での規制になっていないという部分もあると思います。それはあ る種の乖離みたいなものです。そういう場合には、現状の働き方に規制のほうが合って いないのだから、規制をむしろ変えていかなければならないのではないかという考え方 にもなってくるわけです。  いずれにしても、現状の理解のところで、実態と規制の在り方のところでどういう認 識を持ったらいいのか、私自身の中でもまだ確固としたものがあるわけではありませ ん。外国の議論でどの国がどういう仕組みを入れてくるかともかかわってくるのです が、その辺を深めたいという気持がありました。これは意見です。 ○座長  重要な問題提起だろうと思います。皆様からご自由に、関連してご意見をいただけれ ばと思います。こういう場合、実態に通暁している守島先生にお伺いします。 ○守島様  佐藤先生、何を問題にされたかったのですか。もう1回言っていただけますか。 ○佐藤様  文章で言うと2段目に直接かかわってきますが、労働時間の規制が現状のままで良い かどうかというのは非常に重要な問題である。そのときに現状の理解として、いま規制 があるけれどもうまく規制されていないという、実態との乖離ということがあるように 思うわけです。そういうことが一方にある。したがって、規制があるけれども、うまく 働いていないという理解が1つあり得ると思います。  他方、規制があるけれども、残業が多いなど、どうも長さの上で仕事量が多いという ことがあって、なかなか時間外がなくならない。長めになっているではないかという議 論というか、事実がまだあります。その上で、規制がなくなってしまうともっとなくな ってしまうのではないかという理解があり得ると思います。  その辺、いろいろ渾然となっていますが、どちらの理解をしたらいいかということに ついての現状認識、別にこれが唯一正しい現実であるというわけではありませんが、自 分の認識を深める意味でも意見交換したいという意味です。 ○守島様  お答えになっているかどうか全然わかりませんが、私は現実の人事管理の在り方とい うのは、今の規制、裁量労働も含めてなのでしょうが、働き方、働かせ方がフィットし ない状況に多分陥っているというのが現実だろうと思っています。  それを前提として、例えばサービス残業の問題などを考えてみると、このような言い 方をすると語弊はあるのですが必要悪かなという感じがします。必要悪という言い方は いけないのかもしれませんが、今の労働時間の実態というのは、企業の考え方からすれ ば適切かどうかわかりませんが、仕方がないものだという認識はあります。ですから、 ここは逆に、それよりも働く人たちがそれをどのように自分でレギュレイトするか。後 半のほうに対象の範囲の問題など、一連の議論がなされていますが、多分そういうポイ ントが1つ重要になるのかなと思っています。そういう意味では、現実はキャッチされ ないという意味も含めてなのですが、企業が働かせ方のニーズに従って変えていくと、 必ずしも企業が悪いインテンションを持っていなかったとしても今のような状態にはあ る程度なっていくのではないかという気はしています。お答えになっているかどうかは わかりません。 ○座長  非常に重要なポイントだと思います。まさしく、ここが我々がいちばん考えなければ いけない問題の1つだろうと思います。とりわけ経済のサービス化の中で、この点が重 要なポイントだと思います。ほかの方からでもどうぞ、事務局の側からでもご意見をい ただきたいと思います。 ○今田様  守島先生のご意見に刺激を受けてしゃべりたくなったのですが、企業のニーズに基づ いて労働者をうまく、効率的に働かせようと思えば、いくらでも企業にとって都合の良 い時間制限、時間制度は作れる。それはもう当たり前だと思います。でも人間が働くわ けだから、睡眠や最低限の休養が要です。  おそらく、労働時間規制の歴史は、一方において企業や産業社会のニーズ、他方にお いて勤労者の生活や健康という生理学的な条件を初めとして社会的あるいは文化的条件 など、さまざまな要件を積み上げて、労働者としての適切な労働時間の在り方が問われ、 この2つのせめぎ合いの中で労働時間の規制やルールが作られてきた。  産業社会の変化の中で、経済の、企業の側が打ち出してくるニーズが変化する。今、 私たちが労働時間法制を問い直すのは、大きくは多様化という現象が進行しているから だと思います。働き方が決められた8時間労働、ベルトコンベアが動き機械が動き、そ れに応して労働者が職務を遂行する。そういう職務ではない、いろいろな働き方が産業 社会の中で必要になってくる。そういう大きな波の中で、働く側として基礎的な、生理 的な、文化的な、社会的な要請を踏まえた上で、ならばどういう労働ルールがいいのか ということが、今回我々が問われている問題なのだろうと思っています。そういう意味 からすれば、おそらく今の労働時間ルールかなり実態からずれているという認識でいい のではないかと思います。 ○守島様  そのとおりだと思います。ただ、ずっと私が気になっていたのは、ここに「労働者の 創造的・専門的能力を発揮できる自律的な働き方への対応」という言葉が出てくるわけ です。この言葉というのは非常にきれいな、良い響きのある言葉なのですが、実はこれ をどう解釈するかによって、多分どちらを見ているかがある程度決まってくるだろうと 思います。今のものがずれているという意味で確かにそういう言い方をしましたが、あ る意味でずっと疑問に思っていたのは、このように書くことが果たして労働者にとって 良いことなのか。もちろん良い面もあり、企業にとって良い面もありということなのだ と思います。そこのところをもう少しきちんと整理しないと、どういうところに我々は 行きたいのだろうかというところがなかなか見えてこない。単に生活の問題、健康の問 題ということだけでは考えられなくなったから、創造性や専門性という議論が多分出て きたのだろうと思っています。  そうなってくると、これは本当はどういう意味なのかという点をもう少し詳しく見な いと、逆に言うと世の中的に起こっていることというのは、ここの部分を利用してとい う言い方はいけないのかもしれませんが、利用して労働時間が結果として多くなってい る部分が多いように思います。そういう意味です。別に反論しているわけではありませ ん。 ○佐藤様  私が問題提起したことによって、いろいろご迷惑をかけているような気になってきま した。むしろ、キャッチボールをすることでだんだん固まってくるかと思います。  先ほど、欧米での仕組みを詳細に紹介していただいたのですが、創造的・専門的能力 を発揮できる働き方の対応として労働時間のルール、法律というものをどういう形にす るかという流れだとすると、アメリカ、イギリス、ドイツ、いろいろ国によって違いま すが、こういう文脈の中でレイバー・ロウの修正を行ったケースはあるのか、ないの か。その辺りを知りたいと思います。どうも伺った範囲ですと、アメリカの事例で言う と全然別ではないけれども、こういう技術的な働き方の対応としてモディファイすると いう話とちょっと違うコンテクストのような気もしたのです。その背景などをご教授い ただければと思います。 ○座長  これは今後も議論をしていかなければいけない問題だと思いますから、今日、ここで 結論を出す必要はないと思います。 ○松井審議官 最初の部分は必ずしも整理し切れていないということの説明です。とり あえず問題意識を立てながら、後ろの各論へ戻すための仮置きとご理解いただきたいと 思います。文章も非常にいいかげんに書いているのはそういうこともあります。  ポイントだけ申し上げますと、例えば最初の3行目、「労働条件の重要な要素である 労働時間については」とあります。ここでは労働条件の中のすべてではなくて、労働時 間について自律的にコントロールするということがいるのではないですか、ということ を本当はストレートに言いたいのです。そこをまたボカしてしまって、「自律的な働き 方への対応」などといういいかげんな言い方になっている。ストレートに言えば、労働 時間を自律的に決め、労働者側で時間配分、労働時間を自律的にするということが要る のではないかという提案がよろしいでしょうかという意味なのです。  さらに、ぐるっと回っていますが、大前提としていわゆる就業形態の多様化など、い わゆる外形標準が変わっている。意識も多様化している。そういう中で今後とも生産性 を維持し、あるいは高めるためには、逆に言うと創造的な仕事が特に要請される分野で あるとか、専門性をしっかり出さなければいけない分野が特定されて、そこへ労働力を 集中的にやるということもいるのではないか。そうすると、そこの分野においては、労 働時間を労働者がうんと自律的に使えるようにするということがいるのではないか、と いうことを結論から書いて問題提起できるようにしたいと思っています。そのように、 まず捉えていただければいいかと思います。  そのときに、自律的な労働時間を確立するためには入口として、労働条件設定の1つ の要素ですから、まず入口で労使対等を頑張って取ってこないとできないのではない か。従属的な地位で労働契約をやっておいて、労働時間だけちょうだいというのは無理 だろう。そうすると、次のセンテンスですが、自律的な使い方をするにしても労使対等 で、契約というものを対等にやれるというようにしておいて、それから時間に入ってい くということがいるのではないか。そういう取り込み方をしようとするときに、いまの 労働時間規制というのはプラスに働いていますか、マイナスに働いていますかというぐ らいの気持で書いています。  今回の事例でいくと、イギリスなどはそういうものを個々人で打破してくれと。要す るに、規制から自分で脱けておいて自由度を確保してくれというのがいちばん分かりや すいやり方なのです。先ほど、守島先生の言ったレギュレーションからやるというやり 方と、そうではなくて法律のほうに加工して、そうはさせじということで要件固めし て、こういうものだけ脱けられますと丁寧に書き込んでいくか。そのどちらか。実は、 日本はその間をいまフラフラしているわけです。そのフラフラ状態がいいのか、もう少 し調整してやらないといけない。フラフラ状態だから、ひょっとすると今の規制のやり 方が現実に合わなくて、規制しろと言われるけれども規制できなくて残業が増えると、 例えば捉えたらどうか。このような回しができないかなということで置いています。 ○苧谷監督課長  これはもしかしたら個人的考え方かもしれないのですが、あとのところで出てくる裁 量労働制について、なかなか統計的にわからない部分もあるので守島先生にお伺いした いと思います。現在の裁量労働制がうまく機能しているかどうかという点で考えなけれ ばいけないのが、まず労使でみなしをするわけですけれども、典型的な仕事の考え方で 本当にみなし労働時間がうまく設定できるか。昔の典型的ならいいのでしょうが、こう 付加価値化してきますとなかなか難しくなってきているのかどうか。  もう1つ、実際に今度はみなしで決めた時間と現実にかかる時間との乖離が出てきて いるのかどうか。  もう1つ、ある前提とした仕事の与え方でみなしをしたものの、そのあとその仕事の 与え方のままになっているのか。もしかしたら、仕事が終わったらまた次の仕事が来て いるとか、運用上の歪みが出ていないかどうか。いろいろ調べようと思うとなかなか難 しいのですが、ある程度フィールドワークをされた先生方にお伺いしないとわからない 点もあるかなと思います。その点、制度を入れてから、実際に問題をお感じになってい るかどうかも含めてお伺いしたいと思います。 ○守島様  私も学問的に調べたわけではなくて、人事の方々、もしくは働いている方々と会話を した程度です。私の印象では、やはりみなしという考え方は1つの制度としては受け入 れられていますが、それが自分の労働時間を正確に把握するものだというように考えな い人たちが結構多いように思います。逆に言うと、みなしというのは手当の一部で、手 当が自分の給料の中に入っている。それが1つなのですが、それが実は自分の残業とい うか、普通の9時〜5時以外のところで働いているものに対応するものという認識は頭 ではわかっていたとしても、身体でどこまで理解をしているか。例えば企業の研究所に いる方、それから営業をやっていらっしゃる方からすると、ほとんどそういう認識はな いという感じです。ということは、逆に言うと、みなしということは実質的には多分機 能していないのだろう。  乖離があるかどうかという問題なのですが、そのようになってしまうと今度は把握を しないというか、それが実態としてあるかないか。少なくとも、働いている人はたくさ ん働いたなという感じはあるのでしょうが、それがみなしよりも多かったなという感覚 で認識しているとは私は少なくとも思っておりません。そのようなお答えでよろしいで しょうか。 ○苧谷監督課長  仕事の与え方は。 ○守島様  企業のほうの仕事の与え方ですか。それが先ほど、佐藤先生の質問に対して私が言っ たところです。こういう言い方をすると怒られてしまう部分があるのですが、ある意味 ではそこの部分が非常に曖昧だからこそ、仕事の与え方がどんどん労働時間が大きくな るように、変化に振れているのではないかという気はしています。  もう1点、先ほどおっしゃったことで、今日ご説明の外国の労働時間制度の説明で気 になったのですが、フランスやドイツというのは管理的なポストにある人たちに対して どういう労働時間規制をしているかというお話で、アメリカとイギリスは管理職も入る けれども、そうではなくて専門職も入るというお話でした。先ほどのお話を前提とする と、この委員会の目的というか、メインの部分というのは、ある程度創造的な仕事に就 いている人たちが社会で増えてきて、それが現状とフィットしないからどうしようか。 そういうイメージだという理解でよろしいわけですか。つまり、管理職の部分に関して はサブなのかということです。 ○松井審議官 今、この文章でとりあえず提起できているのは、言われたように労働者 というか、使用者の指揮監督のもとで業務を専らする方々の特徴を捉えてやっている。 しかし、今の法体系では、日本の中でも管理監督者は除外しているということがありま すが、管理監督者を除くというのはそれとはまた別の理由でやっているわけです。それ を取り込んでいきたいと思っていて、初めのところに別の理由で入れなければいけない と思っています。とりあえず、良い理屈がなくて入れていません。  つまり、雑駁に言えば、もともと使用者と一緒なのだから、働く側のほうで考える必 要がないから除けばいいのではないかぐらいでやっていると思います。そうすると、こ こで言う就業形態の多様化や意識が変わってきたという話ではなくて、別の要素でそれ はそれとしているわけですから、「在り方」の書き込みで指摘いただいたように、それ についての論点もまた別途足して、トータルで労働時間規制をどうするかという点が要 ると思っています。落としたわけではなくて、説明できていないということを申し上げ ています。 ○座長  これ以外の点で何かありますか。 ○山川様  今の点とも若干かかわるのですが、あるいはヒアリングのところで出てくる問題なの かもしれません。お話を聞いていて、働き方の実態みたいなことに関心を持ちました。 指揮監督下の労務提供は工場労働ですと比較的明確ですが、ホワイトカラーだとそうで ない部分がある。客観的にだけ見れば、指揮監督下の労務の提供かどうかわからないと いう状況があって、それをどう評価すべきかという問題になってくるかと思います。  10数年前にアメリカのある巨大ソフトウェア産業を見に行ったら、勤務時間中なので すがフリスビーをやっている人もいれば、自転車に乗っている人もいる。そもそも、5 階以上の建物はストレスが溜まるから建てない。そういう職場環境の設定の仕方をして いました。  もう1つ、労働時間制度的に言えば、現実には結構働いているけれども、ふと気が向 いたときに外に出てもとがめられない、1日の範囲の中では賃金カットされないという ことを保障している。そのような働き方の違いと、それに合わせた制度の違いといった ことが背景にあるような気がしました。  現実に日本のホワイトカラーにおいて、例えばフッと出ていっても、多分賃金カット はされないというのがいまの41条の解釈だと思うのですが、そのような働き方がどのぐ らいなされているか、あるいはそれを広げるべきかどうか。労働の対応から考えていく というスタンスではどうかと思っています。 ○座長  これも重要な指摘だと思います。それでは、この「論点」の部分を今後さらに整理し ていくことにして、とりわけもっと細分化していかないと最終的な報告書にはなりませ ん。我々の検討が進む中で、論点はさらに整理されていくと思います。  そこで、今日はこの点は以上といたします。もう1点残っている「ヒアリング調査項 目」、今後連続的に行っていくヒアリング調査で、これまで私どもが議論してきたよう なところを反映して、どのような質問をしていったらいいか。これを検討したいと思い ます。事務局から説明をお願いします。 ○前田賃金時間課長  資料3をご覧いただきたいと思います。ヒアリングについては6月以降、労使団体と 個別企業、個別企業についてはできれば労使双方とやりたいと思っています。労使団体 については連合、日本経団連、東商、中小企業団体中央会の4つを予定しています。個 別企業については、具体的にはまだ選定中ですが、業種等を含めていくつか、裁量労働 制などを採用しているようなところでヒアリングをしたいと思っています。  ヒアリング調査項目ですが、労使団体用と個別企業用とあり、とりあえず(案)とし て資料3を作っています。基本的には、先ほどの資料2の「論点」の各論に沿って書い ていますので、また論点の問題になるわけです。先ほどの資料2、「裁量労働制につい て」現行で十分対応できているか、あるいは対応できていないとすればどういう問題が あるか。裁量労働制の見直しについての要望。それから「労働時間規制の適用除外につ いて」どのように考えるか。仮に除外する場合、対象者の範囲等をどう考えるか。  「管理監督者について」今若干ご議論がありましたが、現に適用除外があるものとし て管理監督者という人があるわけです。それについて、実態として範囲等がいまどうな っているか。あるいは、管理監督者の適用除外についてもどういう見直しがあり得る か。  「年次有給休暇の取得促進について」は取得方法、計画的年休を含め、取得促進のた めの方策を取る。「所定外労働の削減」については割増賃金の在り方を含め、所定外労 働削減のための方策を取る。「その他」、労働時間制度についてということでございま す。  2頁はさらに個別企業について書いてあります。意見・要望は大体労使団体用と同じ ですが、実際の裁量労働制、あるいは管理監督者についての実情、労働時間の実情など を併せてヒアリングしてはいかがかということで、とりあえず項目を整理しています。 以上です。 ○座長  ありがとうございました。この点について、限られた時間ですが、少なくとも必ず聞 いておかなければいけないところがあろうかと思います。事務局で用意してくださった 調査項目(案)について、皆様からご意見なりご質問なりをいただきたいと思います。 ○佐藤様  労使団体のところに関して言うと、基本的には枠組みとして、それから考え方を聞く という意味において、この6点でよろしいかと思います。個別企業に対してということ なのですが、そのような枠組みや考え方よりもう1歩踏み込んで、それぞれの会社の中 でのシステムと現状というように踏み込んでおられる。そういう構成でよろしいかと思 います。  1つ、裁量労働制については入れている企業、入れていない企業、あるいは検討途上 の企業とあります。裁量労働制を既に入れている会社をお呼びになるというのはまずプ ライオリティーとして高いと思うのですが、そのときにどういう議論があって、労使で どういう意見交換があってというプロセスがあったのか。特に狙いなど、そのようなも のについて(2)辺りで、含まれているのかもしれませんが知りたいと思います。  あと、時間制度の枠組みのところ全体にかぶさるのですが、時間管理の仕組みと評 価、報酬へのつなぎという位置付けをしている会社も少なくないと聞いています。特に 時間の長さではなく、成果で評価するという流れの中で裁量労働制を入れているという 会社も少なくないと思います。狙いとかぶさりますが、現状でそのような裁量労働者に 対する評価や報酬へのつなぎというところを少し補足するような形で聞きたいと思いま す。  (3)のところは是非聞きたいところなのですが、管理監督者の特に範囲のところ で、これもいろいろな管理監督者の位置付けが会社によってあると思われます。これは 処遇上の位置付けと仕事面での位置付けということでアの中身にあります。この人たち は管理職ではないけれども、仕事上はスーパーの店長など、管理的な役割を担っている ような、こういう点が実はグレーゾーン的なところで労基署に聞かれると、これには当 たらないけれどもそうしているのではないかという話を聞いたことがあります。この 辺、会社によっていろいろ事情が違うと思いますが、その辺を詳しく聞きたいと思いま す。もちろん、項目としてはこれで足りていると思います。  (5)、(6)は取得されていないような状況がある。あるいは、所定外がなくなら ないという状況がある。その辺、現状の中でかぶさると思うのですが、特にその理由を 聞きたいと思います。これは要望です。 ○座長  ありがとうございました。 ○守島様  非常によく出来たアウトラインだと思います。私が話をした企業の中で、裁量労働、 フレックスタイム自体が嫌だ。ホワイトカラー専門職ですが、裁量労働自体が企業の実 情には合わないと考えている企業が結構あります。  チームで仕事をしていますから、チームで仕事をするようになると、バーチャルでや らない限りは基本的には人が集まってくれないと困る。集まってくれるというのは裁量 労働になると非常に難しい。非常に単純な理由なのですが、そういうことがあります。 どれだけ広がっている話かはわかりません。ですから裁量労働やフレックスタイムな ど、時間の自由化自体についてどう思うのかを少しでも聞いていただけると、個別企業 サイドのヒアリングとしては有益なのではないかと思います。 ○座長  ほかにいかがでしょうか。 ○荒木様  佐藤先生がおっしゃった点は私も賛成です。2頁でみなし時間を聞くことになってい ます。みなし時間を聞くのは、時間で賃金が決まっていれば聞く意味があると思うので すが、年俸制を導入するためには適用除外か、裁量労働制を入れて時間とのリンクを切 る必要があるわけです。そのために裁量労働制を入れているところが多いということだ と、時間を聞いてもいいのですが、むしろその人の報酬がどう決まっているか。それが 重要で、時間見合で決まっているのだったらみなし時間が重要ですが、時間と関係な い、時間とのリンクを切った働き方を認めたいという企業がどの程度あるのかを知るた めには賃金をどう決めているのか。みなし時間とは関係ない、年俸制などで決めている かどうかという、賃金の決め方も聞いていただければというのが1点です。  もう1つ、先ほどの働き方の議論ともかかわるのですが、いろいろ多様な働き方があ る。例えば、我々のような研究者もいろいろなタイプがいるわけです。非常にひらめき が良くて、短時間で大変な業績をあげる人もいるかもしれませんが、丁寧に仕事をし て、時間をかけて、より完成度の高い作品を作る人もいるわけです。その場合、一律に 時間管理をされると、これ以上働いたら時間外労働になるのだからやめなさい。そうな ってくると、そういう働き方で自分の納得のいく仕事をしたいという人は、そういう働 き方を否定されることになります。  あるところで聞いた話によると、時間管理をされた結果労働者の不満がたまった。つ まり、これではまだ未完成だ。もっと、ここまでやりたいのにもう時間だから帰れと言 われたということでは仕事に対する自分の満足度が上がらず、かえって働いている現場 の人から不満が来たと聞いたこともあります。多様な働き方を認めるというのは、ノル マを課されて、それに不満を抱いたままで働くという悪い面もあります。それは規制す るべきでしょうが、逆にある程度納得のいくために、時間に縛られずに働きたいという 人がいるとすれば、そういう働き方を認めるということも重要ではないか。先ほどの守 島先生と同じなのですが、そういうことが少しわかる項目があればありがたいと思いま す。 ○山川様  先ほどの点と若干かかわるのですが、個別企業について、聞き方をどうするかはとも かくとして、出社・退社について何か指示をしているか。例えば、そういうことをする と、労基法の要件を満たさなくなってしまうという聞き方だとおかしいと思いますの で、そうでない範囲で聞くべきではないか。それから、勤務時間中の外出についてどの ような態度を取っているか。  もう1つは(3)の適用除外について、これは意見聴取ということかもしれません。 アメリカの1つの特色は賃金減額をしないということを明確にするということですの で、賃金減額への制約を「苦情処理その他の措置」に加えていただければと思います。 ○座長  ほかにいかがですか。 ○青木労働基準局長  今お話に出ている例えばみなし労働時間の話、今山川先生がちょっとおっしゃったの ですが、公開の場でみなし労働時間の報酬がリンクしていないというのはなかなか企業 としては言い難い。こういうところのヒアリングや調査というのは非常に難しい。守島 先生もおっしゃったような問題についても、そういうものがあるので山川先生がおっし ゃったように聞き方、直に聞くというのは先ほど来、なかなか難しいことが様々出てき ているように思います。場合によっては周辺的な話になるかもしれませんが、そうやら ざるを得ないのではないかとちょっと感じていました。 ○座長  重要なポイントだと思います。こういう場で聞くということを1つの与件としつつ、 その中でできるだけ、我々が今後考えていく上で参考となるような質問をし、かつ聞い ていきたいと思います。  ほぼ予定した時間が近づいてまいりました。ヒアリング調査についてはこのような項 目、そして今日出た意見を少し勘案してくださって整理をしていただく。これは事前に お送りをして答えていただくわけですか。 ○前田賃金課長  対象のところに、今日の意見も踏まえて修正したものでお願いして、それについてま ずご説明いただいて、そのあとさらに皆様と意見交換ということになります。1つの企 業なり団体について、トータルで大体1時間ぐらいを考えています。 ○座長  ということですので、もしこの質問表に漏れていることなどでお聞きになりたいこと がありましたら、ヒアリングの場でお聞きいただく。必ずしも、直接に答えていただけ るかどうかはまた別問題だと思いますが、そのような対応もあろうかと思います。それ では、事務局には再整理をしていただいて、労使団体、とりわけ個別企業で協力してく ださる企業の選定に鋭意当たっていただきたいと思います。  これにより、前回皆様にご検討いただいたアンケート調査とヒアリング調査、双方が いずれかの時点で大体明らかになってきます。それを踏まえて、我々は鋭意内容のある ディスカッションに移っていきたいと思っています。何か、皆様からご質問なりご要望 はありますでしょうか。よろしいですか。次回の開催日程などについて事務局からご連 絡ください。 ○前田賃金時間課長  次回は6月3日(金)、午後5時から開催を予定しています。正式には追ってご連絡 いたします。次回はとりあえず、連合からヒアリングを予定しています。また、その 他、可能でしたらほかも合わせて調整したいと思います。以上です。 ○座長  貴重な花金の夕方に開催という、恐るべき研究会ですが、これは必ずしも結論を先取 りしたことではございません。誤解のないようにお願いしたいと思います。  今日の議論ではっきりとしてきたことは、どの国も新しい働き方や多様化、産業構 造、職業構造の変化の中で新たな法規制の在り方を模索している。そういう場合、とり わけホワイトカラー的な働き方に対する規制の在り方とその外し方、この両面がそれぞ れ検討されている。実は規制の在り方が外し方にも関係しているわけです。イギリスが 典型的にそうですし、アメリカも同様だと思います。  いずれにしても、いままで日本には管理職エグゼンプションはありましたが、専門職 その他のエグゼンプションはなくて「みなし」という形でやってきた。これをむしろ、 エグゼンプション型でやるかどうかということについてフランス、あるいはアメリカな どが1つの例になっていたわけですが、今回明らかになったことはもう1つ、オプト・ アウトという考え方です。イギリスの場合は全部外してしまうし、もともとの規制がご 存じのとおりそれほど厳格にしている国ではありません。しかし、外す場合でも、どこ とどこを外していくというのはいくらでも外し方があるわけです。100あるうちの90は 残す、80は残すとか、いろいろあります。  いずれにしても類型化して、エグゼンプションをしていくような他の諸国について も、類型化の在り方はあまり先進的ではないと言っていいドイツ型、もう少し伝統的に いろいろなことをやってきているアメリカ、フランス型があるようです。また、ドイツ 型も今日、皆様のご説明でよくわかったことは協約のかけ方によって、つまり最低限を 法令でやって、協約でさらに絞り込む。その協約から外す、外さないというようなやり 方もあるということなど、かなり問題の焦点というか、対処の仕方に示唆を与えてくれ るご報告、検討だったと思っています。  是非、これを踏まえながら、今後の議論を継続していきたいと思いますので、今後と もどうぞ、よろしくお願いいたします。本日は長時間にわたり、熱心なご議論をありが とうございました。                  照会先:厚生労働省労働基準局賃金時間課政策係                  電話: 03−5253−1111(内線5526)