05/04/28 今後の労働時間制度に関する研究会第1回議事録          第1回 今後の労働時間制度に関する研究会議事録                        日時 平成17年4月28日(木)                           17時00分〜                        場所 厚生労働省専用第21会議室 ○前田賃金時間課長  ただいまから、第1回今後の労働時間制度に関する研究会を開催します。本日はお忙 しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。私、賃金時間課長の前田でご ざいます。研究会の進行につきまして座長が選出されるまでの間、私が進行を務めさせ ていただきます。事務局からご挨拶を申し上げます。局長が急遽国会用務が入りました ので、審議官からご挨拶申し上げます。 ○松井審議官  基準局担当の審議官の松井でございます。局長が挨拶すべきところですが、いまあり ましたように国会の用務で外せませんので、私からご挨拶させていただきます。  まずもってお忙しい中、この研究会に各委員の先生方にご就任いただき、またご参加 いただきましてありがとうございます。事務局としての基本的認識ですが、経済構造が 変化している中で、働く人の意識とか働き方が多様化することを押さえながらも、働く 人自身が創造性とか専門性を活かして自律的に働く。あるいは人間力を強化するという 視点に立って、もう少し働き方そのものを見直さなければいけないという認識を強く持 っている昨今です。  具体的には、平成14年に労働政策審議会の中で裁量労働制施行後の実情をよくみて、 アメリカのエグゼンプションなども勉強した上で、今後の検討が必要ではないかという お話も受けています。さらに平成15年の労働基準法改正の中では、国会での附帯決議の 中でさまざまな宿題もいただいています。加えて昨年6月には、仕事と生活の調和とい うテーマで検討会議を持っていただき、この調和を実現する上で働く者の環境整備とい うものが重要だということから、具体的な提言までいただいています。  こんな中で、これでもかということなのですが、実は今年3月に入り、これはまた切 り口が違うのですけれども、「規制改革・民間開放推進3か年計画」というものが閣議 決定され、そこで裁量労働制あるいはホワイトカラーエグゼンプションといったものを 含めて、労働時間法制について検討すべきだという政府内の意思決定が行われました。 こんな状況がありますものですから、是非ともこの労働時間制度について、今後、どう いう取組みをすべきかという視点に立ち、全般についての検討を是非お願いしたいとい うことで、ここにお集まりの先生方に快く引き受けていただいたという経過があると思 っています。  この研究会のほかにもう1つ、労働契約法制ということも検討していただいていま す。そういったこととも総合的な視点で調整していただきながら、また議論を進めてい ただければと思っているところです。先生方の貴重なお時間を割き、相当無理な会議日 程をお願いすることもあろうかと思いますが、いま申し上げましたような背景の中で、 お願いしているということをご了解いただいた上で、格段のご配慮を賜れば幸いかと思 います。是非とも深掘りの効いたご議論をよろしくお願いします。 ○前田賃金時間課長  カメラ撮りはここまでとします。議事に入ります前に、本日は第1回目の会合でござ います。参集者の方々をご紹介させていただきます。東京大学大学院法学政治学研究科 教授の荒木尚志先生です。労働政策研究・研修機構統括研究員の今田幸子先生です。法 政大学大学院政策科学研究科教授の諏訪康雄先生です。法政大学経営学部助教授の西川 真規子先生です。東京大学社会科学研究所助教授の水町勇一郎先生です。一橋大学商学 部・大学院商学研究科教授の守島基博先生です。慶應義塾大学大学院法務研究科教授の 山川隆一先生です。このほか同志社大学総合政策科学研究科教授の佐藤厚先生にも参集 者になっていただいていますが、本日は所用でご欠席です。  厚生労働省側の出席者ですが、先ほどご挨拶申し上げました松井審議官のほか、監督 課長の苧谷です。私は賃金時間課長の前田です。監察官の岡です。  続きまして座長の選出について、参集者の皆様にお諮りしたいと思いますが、事務局 といたしましては諏訪先生に座長をお願いしたいと思いますが、いかがですか。                  (異議なし) ○前田賃金時間課長  それでは諏訪先生に座長をお願いすることといたしたいと思います。今後の議事につ きましては諏訪座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○諏訪座長  それでは司会役を務めさせていただきます。最初に本研究会の開催にあたりまして、 会議の公開について皆様にお諮りしたいと思います。事務局からご説明をお願いしま す。 ○前田賃金時間課長  資料2の「会議の公開の取扱いについて(案)」をご覧いただきたいと思います。会 議、議事録及び資料について、原則公開とするということです。ただし、以下に該当す る場合には、会議の決定をもって、非公開とすることができるということで、個人に関 する情報を保護する必要がある等、4項目書いています。一般的に研究会は大体こうい った形でやっています。いずれにしても原則として会議等公開ということで、お願いし たいということです。 ○諏訪座長  ただいまのご説明について、何かご質問、ご意見がございますか。よろしいですか。 それでは会議の公開につきましては、ただいま事務局からご説明があったように取り扱 わさせていただきます。開催要綱に従い本研究会の趣旨・目的を説明していただき、今 後の本研究会の進め方につきましても、併せてご説明を事務局にお願いしたいと思いま す。 ○前田賃金時間課長  資料1−1をご覧ください。本研究会の開催要綱ですが、審議官から研究会の趣旨に ついてはお話を申し上げたところです。労働時間制度について、これまでの産業構造・ 企業活動の変化、労働市場の変化の中で、裁量労働制等弾力的な労働時間制度の導入が 行われてきたところですが、さらに経済社会の構造変化で労働者の就業意識の変化や働 き方の多様化が進展している。そういう中で、労働者が創造的・専門的能力を発揮でき るような自律的な働き方というものが、さらに求められてきているところです。これは 先ほどもありましたように、適用除外についてもさまざまなご指摘がなされているとこ ろです。  一方、いわゆる労働時間分布について見ますと、長短二極化というものが進展すると ともに、年次有給休暇の取得日数の減少とか取得率の低下、あるいは過重労働といった 問題も発生しているというところです。こういう中で、労働時間制度全般についてご検 討いただくということで、この研究会を開催するという趣旨です。  検討事項につきましては、1つ目に「弾力的な働き方を可能とする労働時間規制のあ り方」ということです。裁量労働制につきまして平成15年の労働基準法改正が昨年施行 され、そういった状況も踏まえ、さらに適用除外等も含めて、弾力的な働き方を可能と する労働時間規制のあり方について、ご検討いただきます。さらに「年次有給休暇の取 得促進」「所定外労働の抑制」等、労働時間制度全般についてご検討いただきたいとい うことです。  進め方につきましては資料3をご覧いただきたいと思います。まず裁量労働制の施行 状況について把握する必要があるということで、昨年1月から施行されて1年ちょっと 経過しているわけですが、実際に導入している事業場において、どういう状況になって いるかについて、事業場あるいは労働者等にアンケート調査を行うとともに、労使団体 あるいは個別企業において労働時間制度についてのヒアリング等、まず実態把握を行う ということです。4月〜5月に論点整理、アンケート調査、ヒアリング調査の内容につ いてご議論いただき、アンケート調査については5月にも実施して6月ぐらいに回収す る予定にしています。さらに労使団体、個別企業のヒアリングを6月〜7月あたりに行 ってはいかがかということです。そういったものも踏まえて、秋以降、個別テーマにつ いてご議論いただき、できれば12月年内に研究会としての報告をとりまとめていただけ ればと考えています。 ○諏訪座長  ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明につきまして、ご質問なりご 意見がありましたらお願いします。よろしいですか。それでは先へ進めさせていただき ます。労働時間制度について、これからご議論いただくわけですが、とりあえずの論点 メモというのを事務局にご用意していただいています。この論点メモに入る前に、前提 となりますこれまでの労働時間制度の変遷や、労働時間等の現状を確認しておくことも 必要であろうかと考えますので、こうした事項につきまして事務局からご説明していた だきたいと思います。 ○前田賃金時間課長  資料4−2の「労働時間制度の変遷」をご覧ください。労働時間制度については、昭 和22年に労働基準法が制定され、その時点においては法定労働時間は1日8時間、週48 時間ということでした。その法定労働時間を超える時間外労働あるいは深夜、週1日の 法定休日の労働については、割増賃金は2割5分以上ということです。変形労働時間制 については、当時、4週間単位の変形労働時間制というものであり、年次有給休暇につ いては最低付与日数は6日で、最高20日という形の年次有給休暇でした。その後30年余 り、労働時間制度はほとんど見直しが行われなかったということです。  昭和57年に、時間外労働についての目安を指針で定めるといった形の目安指針の制定 が行われています。大きな見直しとして昭和62年に労働基準法が改正されています。そ の際、法定労働時間については週40時間を目標として規定し、当面、46時間制が導入さ れています。みなし労働時間については、事業場外みなしが労働基準法上、法定化され ました。研究開発等業務の5つの業務について、専門業務型の裁量労働制というものが 創設されています。変形労働時間については、従来、4週間単位であったものが、1か 月単位の変形労働時間制が創設されました。フレックスタイム制についても法定化さ れ、3か月単位の変形労働時間制が創設されました。さらに日々の業務の著しい繁閑が あるような小規模の小売店等について、1週間単位の非定型的変形労働時間制が創設さ れています。年次有給休暇については、最低付与日数が6日から10日に引き上げられま した。一定の日数以外のものについて、労使協定による計画的な付与制度が創設されて います。さらに不利益取扱いの禁止が法定化されました。  平成3年に週の法定労働時間が44時間に移行し、平成4年に時短促進法が制定され、 それまで1,800時間というのが目標としてあったのですが、労働時間短縮計画で1,800時 間を目標として定め、それに向けて労使が自主的に計画的な労働時間短縮を進める取組 みが、スキームとしてできたということです。  平成5年に労働基準法及び時短促進法が改正されています。平成6年から法定労働時 間が原則40時間となっていますが、一部猶予措置等が設けられています。割増賃金につ いて、休日の割増が3割5分に引き上げられ、変形労働時間について1年単位の変形労 働時間制が創設されています。年次有給休暇については、継続勤務要件が短縮されて、 6か月継続勤務によって年次有給休暇が発生するという形に改められています。  平成9年に時短促進法が改正されています。これは臨時措置法であったので期限ごと に延長を行ってきました。一方、週40時間制の猶予措置がなくなり、平成9年に全面実 施されました。専門業務型裁量労働制について、さらに6つの業務が追加されました。  平成10年の労働基準法改正において、裁量労働の中に、いわゆる本社における企画等 の業務について企画業務型の裁量労働制が創設されています。時間外労働について限度 基準が、従来は目安指針としてあったものを、法律の根拠に基づく限度基準告示として 定められています。年次有給休暇については、付与日数が2年6か月以降については1 年ごとに2日ずつ増えるという形で、引き上げられています。  平成13年に時短促進法の改正があり、時短計画の改定等が行われています。法定労働 時間について特例措置が週44時間という形で整理されました。平成14年に専門業務型の 裁量労働制について、さらに7つの業務が追加されています。  平成15年に労働基準法が改正されたわけですが、裁量労働制について、企画業務型に ついては従来から健康・福祉確保措置、苦情処理措置が導入されていたわけですが、専 門業務型についてもそういう措置を導入するとともに、企画業務型の裁量労働制につい て従来、本社事業場に限っていたものを事業場要件を緩和しました。労使委員会の議決 について全員合意を5分の4以上とか、労使委員会の設置届出を廃止するなど、手続の 一部簡素化が図られています。  限度基準について、いわゆる特別条項付三六協定ということで、特別の事情がある場 合に限度を超えられるという形になっていたわけですが、その特別の事情というのは臨 時的なものに限るという形で、限度基準の告示の改定も行われています。  現在、時短促進法について、一律の計画的な労働時間短縮を図るものから、個々の労 働者の事情に応じた労働時間の設定の改善を図るものに改めるということで、労働時間 等設定改善法への改正のための法案が、現在、通常国会に提出されている状況です。制 度の変遷については以上です。  次に労働時間の現状について簡単に説明します。資料4−3をご覧ください。1頁は 労働者1人の平均年間総実労働時間の推移を暦年で見たものです。昭和35年が戦後の労 働時間のピークで、総実労働時間が2,432時間、所定内労働時間が2,170時間という状況 でした。その後、高度成長の中で週休2日制等の導入もあり、総実労働時間、所定内労 働時間ともに減少していき、昭和50年の段階で総実労働時間が2,064時間というところ まで短縮されています。ただ、昭和50年代に入ると安定成長に移行し、労働時間がやや 横ばいで、2,100時間前後という形で推移していきました。  先ほどの制度の変遷にありましたように、昭和62年に労働基準法が改正され、その 後、法定労働時間の短縮が徐々に進んでいきました。さらに時短促進法の制定等もあ り、平成に入って総実労働時間が2,000時間を切る状況になってきました。現在、平成 16年のところで見ると、1,840時間が総実労働時間で、所定内労働時間が1,691時間とい う状況になっています。2頁は制度の変遷と併せて推移を見たものです。  3頁は、週所定労働時間を1企業平均あるいは労働者1人平均で見た場合です。平成 3年に週44時間制となり、平成6年に原則40時間、平成9年に全面的に40時間制になり ました。その時点で1企業平均も週40時間を切る所定労働時間になってきている状況で す。  4頁は、パートタイム労働者の割合が増加しているということで、一般労働者とパー トタイム労働者に分けて労働時間の推移を見ると、一般労働者の総実労働時間は平成16 年においては2,021時間で、最近はやや伸びている状況にあるところです。所定内労働 時間は大体1,840時間前後という状況です。パートタイム労働者の総実労働時間は1,176 時間で、これは最近は横ばいで推移しているところです。  5頁はパートタイム労働者比率です。平成5年にパートタイム労働者比率は5人以上 の所で14.38%、30人以上の所で11.55%でしたが、平成16年には25.27%、21.39%とい うことで、それぞれ約10ポイントほどパートタイム労働者比率が上がっていますから、 パートタイム労働者の比率が総実労働時間の減少にも影響しているという現実がありま す。  6頁は労働時間分布の長短二極化です。これは労働力調査でみた場合ですが、週労働 時間が「35時間未満の者」は、平成5年が18.2%、平成16年は23.6%で5.4ポイント増 加しています。一方、「週60時間以上の者」も平成5年は10.6%、平成16年は12.2% で、こちらも1.6ポイント増えています。その間の「35時間以上60時間未満の者」が減 少していますので、「労働時間分布の長短二極化」が進行しています。特に30歳男性に ついてみると、23.8%が週60時間以上でその割合が高くなっている状況です。7頁も同 様に労働時間分布の「二極化」について「労働力調査」でみたものです。  8頁は変形労働時間制の導入状況についてです。平成16年の段階で企業割合でみる と、変形労働時間制を採用している企業が54.8%で、約半分強というところです。規模 別にみると1,000人以上が70%でいちばん高いです。そのうち1年単位の変形労働時間 制を採用している割合が36.9%、1ヵ月単位の変形労働時間制が14.3%、フレックスタ イム制が5.9%です。規模別にみると、1年単位の変形労働時間制は企業規模が小さい 所が採用割合が高い。一方、1ヵ月単位とかフレックスタイム等は大きな規模の所で採 用されている割合が高い状況です。下が労働者の割合ですが、労働者割合でみても48.7 %で、約半数弱が変形労働時間制の適用を受けています。  9頁は、みなし労働時間の導入状況です。みなし労働時間制を採用している企業割合 が上の方ですが、平成16年で9.8%、約1割ぐらいです。これも企業規模でみると1,000 人以上が23.2%で、規模が大きいほど採用している割合が高い。そのうち事業場外のみ なし労働時間制の採用割合が8.6%、専門業務型が2.5%、企画業務型が0.5%という状 況です。下が労働者割合です。  企画業務型裁量労働制が平成14年からできているわけですが、その導入事業場数や適 用労働者数についてみると、平成16年の改正等の後、導入事業場及び適用労働者がかな り増えています。現時点において有効である決議届の適用を受けている事業場が936、 適用労働者が約3万人という状況です。  11頁は、その規模別あるいは業種別の状況です。規模でみると100〜999人、10〜99人 という事業場規模の所での導入割合が高い。業種別では製造業、情報通信業、サービス 業等でかなり導入している事業場が多い。  12頁は、裁量労働制の採用企業について、企画業務型及び専門業務型について産業別 にみたものです。企画業務型の裁量労働制の導入割合は、情報通信業が4.1%で一番高 い。特に対象業務である企画、立案、調査、分析といった業務がある企業を100とした 場合に、情報通信業は10.6%で約1割ぐらい採用されています。右が専門業務型の裁量 労働制ですが、この採用企業数割合についても情報通信業が16.3%で一番高い。あと職 種別に採用の割合が出ています。  13頁は、年次有給休暇の推移について労働者1人平均の取得状況です。平成15年度で 付与日数が1人平均18日、取得日数が8.5日、取得率は47.4%です。取得率のピークは 平成4年、5年あたりの56.1%です。付与日数は平成14年度までは大体増加してきてい る。取得日数については平成7年の9.5日がピークで、その後はやや減少傾向にあり、 年次有給休暇の取得率が低下傾向にあるというところです。14頁は、その年次有給休暇 の取得率等についての企業規模別及び産業別の状況です。  15頁は、計画的付与制度が昭和63年、労働基準法改正の後に導入されているわけです が、計画的付与制度がある企業の割合が、年によって若干上下していますが大体10数パ ーセントでずっときています。現在、平成16年で計画的付与制度がある企業の割合が 14.4%という状況です。その計画的付与制度がある企業について、1企業平均の計画的 付与日数が右から2つ目のところで約4.3日です。企業規模別に見ると、企業規模1,000 人以上の所は30.4%で、かなり計画的付与制度がある企業の割合が、ほかの規模と比べ ると高くなっています。  16頁は、年次有給休暇の取得率が5割を切っているところですが、その要因として特 に年次有給休暇取得へのためらいが労働者側にあり、7割の労働者がためらいを感じて いるところです。その理由として、「みんなに迷惑がかかると感じる」「後で多忙にな る」「職場の雰囲気で取得しづらい」といった形で、年次有給休暇取得のためらいを感 じている状況がみられます。  17頁は週休2日制等の普及率の推移です。平成8年と9年のところで週休2日制等の 内容の取り方が違っています。平成8年までは完全週休2日制、月3回週休2日制、隔 週又は月2回週休2日制、月1回週休2日制ということで取っています。その後は完全 週休2日制と、その他何らかの週休2日制、および一番下に「その他」となっていま す。平成16年でみると、その他が2.6%、完全週休2日制が39.0%、その他の週休2日 制が50.7%とあります。この「その他」の2.6%というのは、週休3日制など完全週休 2日制よりも休日が多いものです。18頁が労働者ベースでみた割合です。  19頁は病気休暇等の特別休暇のある企業の割合です。病気休暇の制度があるのは平成 16年で21.2%です。教育訓練休暇は5.1%、リフレッシュ休暇が11.2%、ボランティア 休暇は2.2%といった特別休暇の状況です。現状については以上です。 ○諏訪座長  ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、ご質問がありましたら何な りとご自由にお出しください。いかがですか。よろしいですか。それではまた必要に応 じて立ち返っていただくことにしまして、さらに説明を続けていただこうと思います。 論点メモです。よろしくお願いします。 ○前田賃金時間課長  資料4−1及び4−4の2つを併せてご覧ください。論点メモということで仮置きで 事務局で用意しました。こういったことも踏まえてご議論いただければと思います。資 料4−1は論点についての(案)ですが、1の「労働時間規制の在り方」について、人 事管理の個別化・多様化等が進むとともに、就業形態や就業意識の多様化が進む中で、 労働者と使用者との個別の労働契約の重要性が増加している。一方、労働条件の重要な 要素である労働時間について、特に労働者の創造的・専門的能力を発揮できるような自 律的な働き方への対応が求められている。そういった状況にあるということです。  こういう中で労働契約法制については、労働契約法制のあり方に関する研究会で検討 が行われていて、先般、中間的なとりまとめがなされたところですが、自律的な働き方 を可能とするために、労使当事者が労働契約の内容を実質的に対等な立場で決定するこ とが重要な問題になります。その場合に、労働条件の中の特に主要な要素である労働時 間規制が、現状のままで自律的な働き方に対応できるのかどうかが大きな論点です。一 定の場合には、そういう労働時間規制を適用除外するといった形で、さらに弾力的な労 働時間制度を用意しないと、本当の意味で労使双方が自律的な働き方を、主体的に選択 することができないのではないかということです。  2の「裁量労働制の在り方」についてですが、裁量労働制については先ほども説明し たように、前回の労働基準法改正で裁量労働制の手続等一部改正したところですが、さ らに様々な指摘がされているところです。  資料4−4の1頁をご覧いただくと、日本経団連の経営労働政策委員会報告の中で、 裁量労働制は規制緩和の方向で大幅に見直すべきという指摘があります。さらに3頁で 具体的に対象業務あるいは労使委員会等手続についての緩和、届出等についての緩和 や、労働時間規制を除外すべきといった形で、裁量労働制についてのさらなる緩和の要 望が出されています。4頁も同じく、これは中央会で手続あるいは対象業務についての 緩和といった要望が出ています。5頁は東京商工会議所ですが、対象あるいは手続の簡 素化という同様の意見です。これについては、連合からは7頁の(7)で実施状況を調 査して、見直し、改善を行うといった指摘があります。8頁の電機連合についても、手 続等の簡素化を求める報告が出されています。  さらに9頁の前回の労働基準法改正の附帯決議の中で、裁量労働制について、この 6、7、8で裁量労働制の拡大について、これは前回措置したところですが、適用事業 場の基準を設けるとか、対象業務についての問題、指導・監督の問題、労使委員会の適 切な運営の確保といった指摘がなされています。  14頁の「労働政策審議会建議」の中では、ニで、企画業務型裁量労働制については、 今般の導入、運用等に係る手続の簡素化等に伴う影響を含め、その実施状況を把握し、 当分科会に報告することとされたいとしています。中ほどの(3)で、企画業務型裁量 労働制の在り方に関連し、労使委員会の在り方について、今後検討していくことが適当 であるといった指摘がなされています。  「規制改革・民間開放推進3か年計画」では、17頁のところですが、導入手続につい て企画業務型についても労使協定による導入を認めるという意見があるということで、 その可能性について検討する。あるいは対象業務の範囲について労使の自治にゆだねる という考え方にも留意して、見直しに向けた検討を行うという指摘があります。  こういった指摘もされている中で、資料4−1に戻っていただくと裁量労働制の在り 方については、現在の裁量労働制というものが労使双方の働き方の多様なニーズに十分 応えることができているか。仮にできていないとすればどういった点が問題なのか。特 に裁量労働制については現在、専門業務型と企画業務型と大きく2つに分かれているわ けですが、そういった類型で自律的な働き方のニーズへの対応が十分足りているのか。 さらに現在の制度が十分対応できていないとすれば、こういった現在の専門業務型・企 画業務型という類型は維持しながら、よりニーズに対応できるような見直しは考えられ ないかといった論点です。  3の「労働時間規制の適用除外の在り方」ですが、この点についても資料4−4で見 ていただくと、1頁の日本経団連のところで、ホワイトカラーについて労働時間の適用 除外という制度を導入すべきとあり、2頁、3頁も同様です。4頁の中央会、5頁の東 商についても、同じく適用除外の導入という指摘がなされています。  労働政策審議会の建議についても、14頁の2で適用除外について、労働基準法第41条 の適用除外の対象範囲について、前回の改正を行った場合の施行状況を把握するととも に、アメリカのエグゼンプション等についてさらに実態を調査した上で、今後検討する ことが適当という形になっています。  18頁の規制改革の指摘の中でも、ホワイトカラーの従事する業務のうち、裁量性の高 いものについて健康確保措置を講ずる中で、労働時間規制の適用除外することを検討す る。また、管理監督者については3頁の日本経団連の要望の中の20で、管理監督者につ いて対象範囲の拡大、あるいは深夜の割増賃金の規定の撤廃という指摘がなされていま す。18頁の規制改革3か年計画の中でも、管理監督者については深夜業の規制の適用除 外の当否も含めて、併せて検討を行うという指摘がされています。  先ほどの裁量労働制の在り方とも関わるわけですが、現在の裁量労働制が働き方の多 様なニーズに十分対応できていないということであれば、アメリカのホワイトカラーエ グゼンプション等を参考にしながら、我が国において自律的な働き方をする労働者の労 働時間規制を適用除外することについて、どう考えるかということ。仮にそういう労働 時間規制の適用除外というものを検討するに際しては、その対象者の範囲、要件、効果 をどう考えるか。さらに健康確保のための措置についてどう考えるか。苦情処理、その 他の措置をどう考えるか。  現在、労働基準法第41条で、管理監督者については労働時間規制の適用が除外されて いるわけですが、この管理監督者というのは経営者と一体的な立場にあるということ で、この管理監督者の労働時間規制について見直す必要がないか、併せて論点として考 えられるのではないかということです。  4は「年次有給休暇の取得促進」です。年次有給休暇については資料4−4の7頁 に、連合の要望として年次有給休暇の付与日数の引上げ、取得促進に繋がる施策の推進 といった指摘がなされています。15頁の労働政策審議会の建議の中で、年次有給休暇に ついて計画的年休付与・取得の普及促進策を実施することが適当といった指摘がなされ ています。  年次有給休暇については、そもそも自律的な働き方の実現ということから考えると、 労働者としては権利である年次有給休暇について、完全に取得できる形が可能となるべ きであろうと言えるわけですが、現状からみると、年次有給休暇の取得日数が減少して いる、あるいは取得率が低下している状況になっています。そういう中で年次有給休暇 の取得方法や計画的年休の在り方を含めて、年次有給休暇の取得促進のために、さらに 効果的に、具体的な方策について、どのように考えるかが1つの論点ではないかという ことです。  5は「所定外労働の削減」です。所定外労働の削減については資料4−4の労働時間 についての指摘でいくと、6頁の連合の政策・制度要求の中で、不払残業の撲滅、時間 外労働についての上限規制の徹底、上限規制の法制化といった指摘や、法定割増率の引 上げといった指摘がなされています。労働政策審議会の建議の中で15頁ですが、平成16 年12月17日建議の中で、労働者委員の意見として、ここでも割増賃金の引上げという建 議がなされています。  所定外労働についても、自律的な働き方ということで、労使当事者間で決定された労 働契約内容に沿って効率的に働くことが、自律的な働き方であるとすれば、所定外労働 というのはあくまで例外であるわけで、そういう労働者の自律的な働き方を阻害しない ために所定外労働についてどのような措置が考えられるかが論点です。  とりわけ、一般労働者を中心に労働時間の二極化ということで所定外労働時間も増加 している中で、割増賃金の在り方を含めて所定外労働削減のために効果的な方策につい てどのように考えるか。契約法制などとの関連もあるわけですが、雇用調整についても 労働契約のルールが明確化されるとか整備されていくということであれば、従来、所定 外労働というものが我が国において雇用調整回避の機能を果たしてきていると言われて いるわけですが、本来的にそういう機能を果たしているのかどうかも含め、所定外労働 の削減についてどういう方策があり得るかが、1つの論点ということです。  6「その他」については、これもこれまでの内容と重複しているわけですが、現在、 労働契約法制の検討も進められているところであり、自律的な働き方に対応した労働時 間の見直しを行う場合には、労使当事者が業務内容や労働時間を含めた労働契約の内容 を、実質的に対等な立場で自主的に決定できるようにする必要がある。この労働時間規 制の見直しと労働契約法制の見直しは、一体的に検討すべき課題ではないかということ で、論点として掲げています。以上です。 ○諏訪座長  ありがとうございました。ただいまの論点メモを中心に、ご質問いただき、ご意見を 交してみたいと思います。 ○水町様  4−1の論点についての(案)の3、労働時間規制の適用除外の在り方の1つ目の○ ですが、「アメリカのホワイトカラーエグゼンプションを参考にしながら」と書いてあ りますけれども、適用除外制度というのは必ずしもアメリカに限られた制度ではありま せんし、労働時間制度のそもそものあり方として、アメリカ型とかヨーロッパ型とか、 制度の背景にあるものがいろいろ違いますので、ここをアメリカのホワイトカラーエグ ゼンプションだけを参考にしながらと考えているのか、それともここに「等」を入れ て、アメリカ以外の適用除外制度も視野に入れて考えるべきなのか。私はどちらかとい うと後者の立場に立つべきだと思いますが、この点についてはいかがですか。 ○前田賃金時間課長  この点につきましては、これまでのご指摘を踏まえて書いているところがあるのです が、例えば資料4−4の14頁の労働政策審議会の建議について、「アメリカのホワイト カラーエグゼンプション等についてさらに実態を調査した上で」という表現になってい ます。18頁の規制改革会議のところでは、「米国のホワイトカラーエグゼンプション制 度を参考にしつつ」というところです。いわゆるホワイトカラーについて適用除外とい うものが、かなり一般的というか広い範囲であるというのがアメリカということで、従 来そういうご指摘があり、そういうことも含めてここではアメリカのホワイトカラーエ グゼンプションと書いていますけれども、ご指摘のようにそれに限るものではないので 「等」を入れることで、アメリカだけではないというのはご指摘のとおりであると思い ます。 ○諏訪座長  よろしいですか。よろしければ欧州、その他について水町先生のご認識をご披露いた だけますか。 ○水町様  アメリカのシステムは、そもそも何時間働くかという時間そのものを規制したもので はなくて、この時間を超えたら割増賃金を出すというシステムです。特にドイツやフラ ンスなどの制度は、そもそも労働時間を何時間にするという時間規制自体があって、そ れを違法に超えた場合には罰則の適用があるとか、時間自体と割増賃金を併せたシステ ムになっています。日本の現行法は、どちらかというとドイツやフランスなどヨーロッ パ大陸型の制度に近い。その適用除外の範囲を見てみると、アメリカの場合はかなり広 いですが、ドイツやフランスの場合はかなり狭いということで、日本の現行法制度はそ うなのですが、これからの制度をどうするかというときには、その両方を視野に入れな がら検討していくことが重要かなと私は認識しています。 ○諏訪座長  ほかにご質問、ご意見をどうぞ。 ○山川様  質問とも意見ともつかないのですが、資料4−1の1にある○の記載ですけれども、 この労働時間規制の在り方という部分が、主に次に係る2と3を主として念頭に置いて いるのか。あるいは4、5、6も念頭に置いているのかということです。どうも弾力的 な労働時間制度を中心的に念頭に置いているみたいですけれども、ここに4、5、6と ありますので、全体的に念頭に置くとすれば労働基準法の時間規制の在り方について、 例えば多面的に検討するという趣旨も含まれているのではないか。そういうふうに理解 できるのですが、そういう理解でよろしいのでしょうか。あるいは、この論点というの は、ここに書いてあるから1については弾力的な労働時間制度のみを検討するとか、そ ういうふうにあまり厳格に捉えなくてよろしいかどうか、その点をお伺いしたいと思い ます。 ○前田賃金時間課長  いま、ご指摘のように1の書き方が、やや2、3に最終的に行っているようなところ もあるのですが、いずれにしても自律的な働き方とか多様な働き方という中で、4、 5、6も含めてそれは関わってくる問題であり、そういう意味で労働時間制度全般につ いてご検討いただくということですが、そういう意味で1のところは最後のところが狭 くなり過ぎているところがあります。 ○諏訪座長  ほかに、いかがですか。 ○守島様  根本的な「そもそも論」に戻ってしまうのかもしれませんが、ある意味で非常に単純 な質問ですけれども、随所に「自律的な働き方」という表現が出てきます。多様化とか 個別化というのはそれなりに理解することは可能なのですが、ここで言う自律的な働き 方というのを、どういうことを前提として考えられているのか。この文章を読ませてい ただく限りでは、自律的な働き方というのは、ある意味で目標値のようなひとつの理想 形というか、そういうイメージもあるように思いますので、そこのところをもう少しク リアにしたほうがいいのではないかという気がします。質問です。 ○前田賃金時間課長  就業形態の多様化、特に事業の高度化、高付加価値化といった中で、労働者について 創造的・専門的能力を発揮するような自律的な働き方というものが、特に競争激化等の 中で求められているということで、そういうところから、1つは自律的な働き方という 表現で言っているということです。それに限らず、個々の人が自ら契約した中身に応じ て、主体的に働き方を選択して多様な働き方をしていくという中で、そういうときには 所定外がどうなのか、年休がどうなのかも関わってきますので、1つはそういう事業活 動の面からの問題と、あとは労働者側からの労働意識の多様化や就業ニーズの多様化な ど、その両方から自律的な働き方というものが求められているというイメージです。 ○守島様  ちょっとわかったような、わからないような感じですけれども、自律的と言ったとき に、自律的に自分の働き方を律することができる。ある意味で自分の働き方を自由に決 めることができるような社会というか、それが望ましいという認識があって、こういう ことをお書きになっている、そういう理解でよろしいわけですか。 ○前田賃金時間課長  そうです。 ○松井審議官  完璧に組織として合意しているというレベルではないのですが、少なくとも「自律的 という言葉の裏に目標値を構えてやっているのではないか」というご質問に対しては、 多分ノーだと言っていいと思います。目標値までは考えておりません。簡単に図柄を分 析したのは、いままでの基準法体系というのは、主に集団的な取決めの中で、いまの多 様に比べると一様というか、モノラルな働き方を選択せざるを得ないという枠組みで考 えています。そういうのは個人にとっては、相当他律的な働き方だったと考えようとい う言い方にしています。  そこが多様な働き方、個別的な関係が増えてきているということなので、いまの対概 念として、他律的な働き方に比べれば、もう少し自律的な働き方を重視して、それに必 要な時間法制を考えようというぐらいの意味なのです。ですから、一様と集団、多様と 個別、他律と自律というぐらいの整理でやっているつもりなのです。 ○守島様  意図は理解しました。 ○水町様  自律的なというときに、個人としての自律と考えるか、集団まで含めた形での自律と 考えるか。その対置で言うと、とにかく国が実態的な一律のルールを決めるというのに 対して、自律というのは1対1の個人の関係を自律と捉えるか、それとも間にある集団 的なものも、例えばここで、「労使双方が主体的に自律的な働き方」という「労使」に は、集団的な労使で決めたらそれを尊重するという意味で、それまで包含しているとす れば、単純に個人や1対1の関係ではなくて、集団と個人の関係も含めた形での自律だ と捉えているのかと私は認識したのですが、そういう認識でよろしいのでしょうか。 ○松井審議官  当然いまのお考えも許容すると思います。個々人レベルでの自律と言いながら、もう 1つ労働問題については市民契約と違って、個々での契約以外に個で律する部分と、例 えば就業規則や労働協約のように、1人の者が集団を律する場合や集団と事業主当事者 が全体を決めることがありますが、そこについてこの自律的という考え方をしっかり持 ち込めればと思っているのです。  そういう意味では、この自律的という考え方を個々人のレベルでもしっかりしたい し、集団的な取決めの中でも、できればもう1回見直していただけないかと思っていま す。というのは、そのときの集団の問題は、労働組合の組織率などが落ちる中、どうす るかということも必ず出てくるので、そういったときにも、同じ自律的という言葉です が、検証してもらえればと思っています。 ○守島様  おそらく「自律的な働き方」という表現と、何か主語があって働き方を自律的に選択 するというときの意味が少し違っていて、人事管理の立場からいうと、「自律的な働き 方」という表現を使った場合には、例えば極端ですが、今週は子どもが入学試験だから 20時間働いて、来週はその分を補って60時間働くという選択ができるということを、あ る意味では自律的な働き方の選択という言葉に置き換えられると。いまさっき議論され ていたようなところは、どちらかというと、個人や集団が働き方を自律的に選択できる という話だと思います。今日結論を出す必要は全然ないのですが、そういう意味ではそ この部分をある程度理解した上で進めたほうが、混乱が起きないのではないかという気 がします。 ○今田様  自律的というのは、自己決定性という意味ですか。 ○守島様  私はそうだという理解をして読んでいたら、先ほどの話になったので、少し理解がで きなくなったのですが。 ○今田様  この論点整理の基本的な枠組みというのは、1つは多様化だと思います。多様化は、 産業と個人の要請の両方で多様化が進行する。そして、そうした波に対して労働を制御 する1つの考え方として、自律性という概念を用意したという感じだと思うのです。  多様化していく中で労働者は、一方的に多様化を受け取るのではなくて、それに対し て労働者が選択でき決定できるのだという基本的な枠組みを用意するために、自律性と いう概念が使われていると理解していたのですが。自己決定性ということと違うのでし ょうか。 ○松井審議官  ある意味では主体性の発揮という、少し文学的に言うとそういう意味でも使えると思 います。いろいろな意味で、自らが選択についてもう少し働きかけをできるようにした いという問題提起です。 ○諏訪座長  水町先生どうぞ。 ○水町様  守島先生と同じことを考えているのかもしれませんが、個人が多様な働き方をできる という働き方の問題と、それをつくるためのシステムや制度をどうつくるかというルー ルの決め方の問題があって、ここでルールの決め方までが含まれているとすれば、その 自律性というのは単純な個人と個人の関係ではなくて、集団的にルールを決めたり、シ ステムを決めることが1つ大きな意味であり得て、最近ヨーロッパやアメリカの動きを 見てみると、ヨーロッパで国の規制を外すときには、集団のレベルはだんだん分権化し てきていますが、個人には還元できない集団でルールをつくるというのがヨーロッパの 方法です。去年のアメリカの改正でも、ホワイトカラーエグゼンプションのルールを明 確化する中で、そこで出てくる苦情や不満をどう吸い上げるかという、制度の中で、事 業場なり何なりでシステムをつくって、苦情処理を促すというシステムづくり、ルール づくりを促す制度になっています。そういう意味では、働き方の自律性という問題と、 ルールをつくるときの自律性という問題は、単純に個人に進んでいるわけではないこと を言いたかったので、少し集団ということも視野に入れながら制度を考えていくべきな のではないかと思っています。 ○諏訪座長  今後、本研究会において我々が用いる概念や理念などの中身をだんだんに詰めていこ うと思うのですが、今日は最初ですからできるだけ自由な立場でご意見をいただければ と思います。 ○西川様  自律的な働き方の「自律」というのが、どういう定義なのかというところで引っかか っていて、先ほどから話に出ていることでは、何となく働き方の決定の部分なのかと思 っています。ここでは量的な側面が強調されているのかもしれないです。一方で、資料 4−1の2番にある裁量労働性の在り方に関するところに、また「自律的な働き方」と いう言葉が出てくるのですが、ここではむしろ業務の遂行における自律性という意味 で、質的な側面が入ってくると思うのです。その2つが混同されているのではないかと 考えているのです。 ○荒木様  自律性の捉え方はたくさんあるなあと聞いていました。まずどういう働き方をするか というレベルの議論があり、もともと1つのパターンの働き方しかないところから、ど んどん多様化してきたという問題が1つ提起されたと思います。  その場合に、多様化されたいろいろな選択肢があって、それを選び取った後、次に、 それを誰がどう管理するかという問題があると思います。例えば労働時間制度があっ て、その後の管理はすべて使用者がやれと法が命令している場合もあるし、別の選択肢 を採ったら、その労働時間の管理は原則として使用者は行わずに、労働者自身がやりな さいということもあります。おそらく中間形態もいろいろあって、裁量労働制というの はその中間形態かもしれません。そのように、働き方のパターンの選び方における主体 性の発揮の仕方、それを実際に運用する場合に、誰が責任を持って選び取った働き方を 実現するのかというレベルでの自律性の両方があると思います。  労働時間制度に引きつけて考えると、一番問題となっているのは、ある労働時間制度 を選び取った場合にどういう結果になるのか。例えば国が使用者に労働時間管理の義務 を課してやらせるのが妥当でないということになっているのか、逆に労働者自身に管理 をさせたいと言って、国家が何もフォローアップしないということで問題は出ていない のか、労働時間制度ではその辺が問題になるのかという感じがしました。 ○山川様  理念的な問題とその理念を実現するためのシステムの問題、法的な概念の問題の3つ がありそうな感じがしますが、理念的な問題はなかなか難しいところがあると思いま す。いちばん単純な法的な概念からいうと、労働基準法第38条の4の企画業務型裁量労 働制では、端的に「当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的 な指示をしない」と書いてあるので、これをどのように新たに考えるかは別の問題です が、法的概念としては、現行法ではこれが自律的な働き方の1つの表れではないかと思 います。  そこには先ほど来お話に出ている、量的な面と質的な面の2つが入っていると思いま す。個々に具体的にあれをしろということを言わないという面と、配分といっても多分 2つあるのではないかと思うのですが、何時から何時までの枠が決まっていて、その中 でどう配分するかというほかに、何時に出て来て何時に帰るかということも、理論上見 解の対立があったと思いますが、通常の理解では、出勤、退勤についても拘束しないと いうことだったと思います。その意味では、量と質の両方にわたるのではないかと思い ます。いまの制度の手がかりとしては、そのようなものが自律的な働き方として、法律 上は捉えられていると思います。もう少し深い理念的なことはさらに難しいと思いま す。 ○諏訪座長  よろしいですか。現行法を出発点としながら、それを踏まえつつあるべき姿につい て、おいおい議論をしていきたいと思います。いまの部分以外で、ご質問、ご意見はあ りますか。年休取得の問題、従来型の時間外の規制の在り方等についてもいかがでしょ うか。 ○山川様  5番で、自律的な働き方を契約との関連で捉えて、契約外の労働は所定外労働という ことで、それの削減のためにどういう方策を取るかを考えるとされています。そうする と、ここで考える対象は、自律的な働き方をする、したほうが望ましいというカテゴリ ーの労働者に限るのか、あるいはそれ以外の裁量労働や適用除外の対象にならないいわ ゆる一般労働者についても考えるのか。実は表裏一体の問題ではないかと思うのです が、おそらく両方を踏まえて、つまり弾力的な労働時間制度に該当する場合、しない場 合のそれぞれも視野に入れたほうがいいのではないかと思います。  もう1つは単純な質問で、現在管理監督者は適用除外になっているのですが、そうい う人たちの労働契約について、労働時間を決めて、それが所定だという理解でいいのか どうか。労働基準法第15条や第89条ですと、労働時間、始業、終業時刻を示すことにな っていて、それは管理監督者についても同じという理解でよいのか、そうすると、その 時間だけ働く義務があるということになるのかどうか。基本がわかっていなかったこと を自覚しまして、少し確認したいのですが、つまり管理監督者など、現在適用除外者に ついての労働時間の契約内容はどのようなものかという点です。 ○前田賃金時間課長  具体的にどういう契約をしているかは、それぞれの契約次第だと思いますので、管理 監督者だから、会社で決めている始業、終業時間が適用されているかどうかは、決め次 第で、それと労働基準法第15条や第89条との関係は必ずしも法制上は整理されていない と思います。 ○山川様  第15条で労働条件を明示するときには、何時から何時までということは、運用上は別 に示さなくてもいいということになりますか。 ○苧谷監督課長  管理監督者も何時までに出て来なければ懲戒の対象になる場合もあるので、先ほど言 いましたように、それは決めの問題ですから、何時に出て来てもらって何時に帰るとい うことで、まず最初の目安を決めるという意味では、そのように決まっていれば当然明 示しておかなければいけませんし、就業規則の対象にもなるという解釈です。  管理監督者が適用除外になっているのは、自律的な働き方に近いところもあります が、それだけではなく経営と一体的に働いて、経営者的な立場だというところもありま すから、まったく自律だというわけでもないかと思います。 ○諏訪座長  非常に重要なポイントの1つだと思いますが、いまの点についてどなたかいかがです か。今日はそういうポイントがあるということで、先に進めさせていただきます。ほか にご質問、ご意見はいかがでしょうか。                  (特になし) ○諏訪座長  ほかにも検討しなければならないところがあるので、「論点メモ」については、とり あえず今日はこの辺りにしておきます。事務局においては、今日出たような先生方のご 意見を踏まえて、必要な修正等を加えていっていただきたいと思います。論点メモはだ んだんに整備をして深めていく、場合によっては広げていくということで対応していき たいと思います。今日のところはこの辺りにさせていただきます。  そこで次の議題ですが、「裁量労働制の施行状況等に関する調査について」です。具 体的に議論を進めるに当たっては、現状を踏まえて認識を共通なものとして、具体的な 議論を進めることが必要だろうと思います。とりわけ、前回の労働基準法改正後の裁量 労働制の施行状況等の実態把握が不可欠ではないかと思います。そこで裁量労働制の施 行状況などについて、アンケート調査を行ったらどうだろうかと考えられていて、事務 局からその叩き台の案等が出ているので、ご説明をお願いしたいと思います。 ○前田賃金時間課長  資料5−2が、前回の裁量労働制の改正内容及び現在の裁量労働制の概要です。資料 5−1で、調査について、事業場用、労働者用、企業用と3種類の調査票を用意しまし た。  まず調査の対象です。(事業場用)と書いてあるものについては、現在裁量労働制を 導入している事業場を対象に、調査をすることを前提に考えています。その対象とし て、企画業務型の裁量労働制については、現在約1,000事業場で採用されているという ことで、基本的に全数を調査対象として考えています。一方、専門業務型裁量労働制に ついては、現在協定が出されているのが約4,000数百あるということで、そのうちの半 分ぐらいの2,000ちょっとを対象に調査を行いたいと考えています。  (労働者用)というのは、裁量労働制を導入している事業場の労働者について、1事 業場について、専門業務型、企画業務型、管理監督者、それ以外を合せて、4種類の労 働者を2名ずつ選んでいただくことを前提に調査をすることを考えています。(企業用 )は、まだ裁量労働制を導入していない企業、主に上場企業で約2,000社ぐらいを対象 に調査をすることを前提に案を作っています。(事業場用)というほうは、現在企画業 務型、専門業務型の両方、あるいはどちらかを採用している事業場に対して調査をする ということです。  簡単に調査票をご説明しますと、2頁は事業場の属性です。3頁は、現在の所定労働 時間と、どういう労働時間制度を採用しているかです。あと、裁量労働制について、ど ういうものを対象に導入しているかです。  4頁の辺りは、裁量労働制導入の理由です。それから、裁量労働制の手続についての 簡素化等の要望も出されているので、裁量労働制の手続について、どの程度の負担があ るかということを5頁で聞いています。裁量労働制で働く労働者について、どういう労 働者を対象にしているのか、全体でどの程度の割合かというのが6頁の辺りです。  専門業務型については、現在同意は要件になっていないとか、労使委員会ではなく、 労使協定で導入できるとなっているわけですが、そういうものについて、例えば同意を 要件にしているとか、労使委員会で決議を行っているかといったことです。  7頁以下が、業務の遂行について、出退勤の適用や、具体的な仕事の指示がどのよう になされているか、仕事の期限、進捗状況の把握がどのようになされているかというこ とです。8頁が、裁量労働制の場合にも1日の労働時間は何時間かということをみなす わけですが、そのみなし労働時間の現状、何をもとにみなし労働時間を決定しているか といったことです。実際の労働時間はどのくらいであるか、それがどのような方法で把 握されているかが8頁以下です。  休日労働、深夜労働はどの程度あるか。年次有給休暇の付与日数、取得日数はどうな っているかということ。10頁は、さらに特別な休暇があるかどうかです。11頁以下が、 賃金について特別の手当があるか、年俸制の採用があるかないか、実際の適用者の年収 はどの程度かといったこと。評価制度がどうなっているかということです。  12頁が、健康・福祉確保措置としてどのような措置を実施することになっているか。 実際の健康診断における異常の状況はどうなっているかということです。13頁で、苦情 処理措置としてどのような措置が設けられているか。実際にどのような苦情が出され て、それに対してどういう対応がなされているかということです。  15頁以下が、対象業務が現状でいいか、もっと広げるべきか、もっと狭くするべきか という点です。広げるべき、あるいは狭くするべきという選択をされた場合に、どうい う形で業務を決めればいいと考えるかという質問があります。16頁は、裁量労働制の手 続についてより簡素化をすべきか、厳格にするべきか。それぞれについて、さらにどう いったところについて簡素化なり、厳格にすべきかというようなことです。  17頁は、現在の裁量労働制の法的効果で、これはみなし労働時間ということですが、 それについて現行でいいのか、さらに変更すべきなのかということです。変更するとす れば、どういったところについての効果を見直すべきかといったことについてです。  労働者用については、その事業場に裁量労働制が適用されている方と適用されていな い方、専門業務型、企画業務型、管理監督者、それ以外の方の4種類について、各事業 場で2人ずつ選んでいただいて、回答をいただくということです。1頁目は労働者の属 性です。2頁が適用されている制度、内容です。3頁は職位等です。  4頁は、事業場用とリンクして、業務の遂行方法や指示についてどうなっているかと いうようなことです。5頁で、出退勤の状況、労働時間の状況、休日労働、深夜労働の 状況です。6頁が年休等の休暇制度、健康の状況です。7頁で、健康・福祉確保措置に ついて、さらにどういうような要望があるか。苦情処理について、実際に苦情を申し出 たか、それに対する対応がどうであったかです。  9頁が、裁量労働が適用されている方について、適用されるに至った理由や現在の労 働条件についての満足度等を聞いています。10頁以下は、対象業務や法的効果等につい て、見直すべきか否かといったようなニーズを調査することとしています。  企業用は、裁量労働が適用されていないことを前提にピックアップして、調査をする ということで2頁で労働時間制度がどうなっているか。場合によっては裁量労働制が適 用されているところにいく可能性もあるので、調査票は裁量労働制が適用されているこ ともあり得るということで作っていますが、なぜ裁量労働制を導入していないかについ て3頁以下でお聞きするという趣旨です。  5頁以下が、現在の裁量労働制の対象業務や法的効果等についての要望です。6頁以 下で、労働時間の現状、休日労働、深夜労働の現状というところです。  調査については、できる限り早く調査を実施したいということで、本日ご議論いただ いた上で、5月にも調査票を発送して、6月上旬ぐらいまでに回収した上で、夏までに 集計、分析等を行って、この研究会での議論、検討の材料となるように準備をしたいと 考えています。  本日佐藤先生がご欠席されているのですが、事前に佐藤先生に調査票をお送りした中 で、いくつかご意見をいただいています。例えば「割増賃金の対象となる金額や時間に ついての目安があるかどうかを聞いてはどうか」。あるいは、事業場票でいくと5頁で すが、「裁量労働制の対象になり得る者について、特に要件を定めている場合に、例え ば職位、勤続年数、年齢等について要件を定めているとすれば、具体的にどの程度の要 件を定めているかを聞いたらどうか」。それから、これはニーズのところですが、事業 場票でいくと16頁の(3)で、要件とすべきところに、「例えぱコンピテンシーなどの 職務遂行能力を要件とすべきといったことを加えたらどうか」というご意見をいただい ていますので、そういったことも併せて検討したいと考えています。  守島先生から、表現のわかりにくいところとか、企業調査について、「事業場と企業 との整理がうまくいっていない」というご指摘をいただいています。その点については 表現をさらに工夫するとともに、事業場と企業の整理は事務局で再度精査をしたいと思 っています。以上です。 ○諏訪座長  この3つの調査票に関して、調査に関するプロの皆様もいらっしゃいますので、いろ いろとご示唆をいただきたいと思います。調査票の表書きを見ればわかるように、返送 期限が6月3日までとなっていて、あっという間に連休明けですので、要するに時間が 押している中でのご検討で恐縮ですが、いろいろとご示唆をいただきたいと思います。 ○西川様  この事業場用のものと、労働者用のものを見せていただいて、「誰が評価をするか」 というような質問が入っていないということで、先ほどの自律的な働き方とも関連する と思うのですが、必ずしも直属の上司が評価できないような仕事、例えば専門的な業務 をされている方などいると思うのです。例えば事業場票の11頁で、評価に関してはいち ばん下の(2)に関係するようなことが書いてあるのが、これはおそらく上司ベースを 前提に書かれていると思うのです。最近はチーム制やプロジェクト制だとか、企画、専 門などそういった仕事をされる方は、必ずしも上司が評価するというよりは、同僚ある いは同じ専門性を持った人たちがお互いに評価するということもあるかもしれません。 ですから、その辺の「誰が評価をするか」というところを入れられたほうがいいのでは ないかと思います。  いま事業場票の(2)を見ているのですが、評価の仕方が書いてあるのですが、その 上で賃金について聞かれています。この賃金にどの程度反映されているのかという点も 入ったほうが、よりよくなるのではないかという気がします。  労働者用のほうは、評価のところと絡んでくるのが、3頁の終わりから「業務の遂行 等について」というのが始まっているのですが、ここにいろいろな項目があって、(1 )に期限、内容がきています。それから業務の遂行方法、指示というのがきています。 これも上司、自分、顧客というのは入っているのですが、先ほど言ったうようなワーク グループの視点が入ったほうが、より実態に即した項目となるのではないかという気が します。  それから、これらの項目に加えて、評価というのは誰が行っているか。評価という か、業務内容の質は誰がモニターしているかは、自律的な働き方という面では非常に重 要なところだと思うので、上司が行っているのかもしれないし、自分が行っているのか もしれないし、チーム制であればチームの同僚が行っているかもしれないし、記録等を 付けて質の管理をしているのかもしれないし、いろいろなやり方があると思うので、そ の辺も少し膨らまされたほうがいいのではないかという気がしました。 ○諏訪座長  よろしいですか。逆に事務局側がよくわからなかったときは質問をお願いします。ほ かにいかがでしょうか。 ○山川様  事業場調査、企業調査も共通の質問が作れるかもしれませんが、適用除外となる職位 は何以上とか、そういう形で聞いてもいいと思うのです。例えば、労働時間制度一般の ところに、適用除外としている職位は何以上と記入してもらうのはどうかと思います。  あと細かい点ですが、事業場調査の5頁の3の「裁量労働制で働く労働者について」 ですが、指針の中に企画業務型の適用対象には当該業務の経験年数というのが、1つの 要素として入っていたように記憶しているのですが、これは専門業務でもある程度は使 えるかもしれませんが、例えば13にさらに1つ加えて、該当業務における経験年数を入 れてもいいのかと思います。  あとは、やや次元の異なる問題かもしれないのですが、裁量労働と似ている労働時間 制度の1つがフレックスタイム制で、どこかでフレックスタイム制の推進を図るという 方針を聞いたことがあるのですが、フレックスタイム制で使いにくい理由は何かという ことを、例えば企業調査の3頁目に「フレックスタイム制があり」ということを聞いて いるので、そこで枝を付けて、何か使いにくいことがあれば記入してくださいと書いて はいかがかと思います。  さらに細かいことで、事業場調査の5頁に戻りますが、負担を感じた要件について、 専門業務型については法律上必要でないものについて斜線が引いてあるのですが、専門 業務型についても労使委員会でやっているところがないではないように思うので、ネグ リジブルだったら書かなくてもいいのですが、ある程度あるようでしたら特に斜線を引 かなくてもいいようにも思うのですが、その点はご検討いただければと思います。以上 です。 ○諏訪座長  ほかにいかがですか。 ○今田様  細かい中身に関しては十分に検討していないので、コメントはできないのですが、全 体の枠組みについて、労働者本人、事業場の調査があり、企業用調査は全然導入してい ない企業ですね。具体的にそういう経験を持っていない企業の担当者に調査票を送り付 けて、こういう項目を調査した結果、どのような感じとして予想されているのでしょう か。答える人たちはあまり具体的な経験がなくて、わからない人たちでしょうから、当 然そういうリアクションを予想して作られていると思うのですが、結果として正確な情 報が出てくのか。わからない人を対象にした調査票、経験のない人を対象にした調査票 としては、何か心配なところがあるのですが、どのような感じで受け取ればいいのでし ょうか。 ○前田賃金時間課長  現に企業ではまだ使っていないということなのですが、その理由として、そもそも制 度をまったく知らないという方もあると思うのですが、制度は知りつつ、使うにも却っ て問題があるとか、手続が大変だとか、やっても対象になる人がそれほどいないとか、 効果がないとか、そういう問題があることによって採用していないとすれば、どこかの 点に何らかの手直しをすれば採用される可能性もあると思っています。採用をしていな いところについて、なぜ採用していないかを主に調べて、その中で何らかのご意見があ れば改善の方向としては参考になるのではないかという趣旨がメインです。 ○今田様  あまり関心がない、対象業務もないという企業もあるでしょうし、やりたいけれども 使い勝手が悪いという層が重要になってくると思うのですが。事務局の予想としては、 どのように考えておられるのでしょうか。 ○前田賃金時間課長  主に大企業を中心に調査をしようと思っているので、制度についてはある程度知って いらっしゃる所が多いのではないかということを前提にしています。平成14年にも同じ ような感じで、企業に対して裁量労働制を知っているかという形で調査したのですが、 その際には知らないというのが40%ぐらいで、制度は知っているということでした。対 象となる業務があるかどうかについても、3割程度が対象があるという感じであって、 それでも導入していないということであったので、導入していない理由は何かとか、そ ういうことをある程度調査結果から導き出されるのではないかと考えています。 ○今田様  ランダムに送るのですか。 ○前田賃金時間課長  上場企業を対象に考えているので、上場企業というのは大体4,000ぐらいで、とりあ えずその半分ぐらいを対象として考えています。そこの本社に送ろうと思っています。 ○今田様  対象業務がありそうな所に送るのではなくてランダムに送る、そういうデザインです ね。 ○前田賃金時間課長  はい。 ○今田様  結果として、つかまえたい所が少なくなるのではないかというのが心配ですが、そう でもないのですね。いまのデータから言えば、こういう部分が大変だ、こういう部分に 改善が必要というデータは出てきそうなのですね。 ○前田賃金時間課長  前回調査した中でも、手続としてどういうところが煩雑であるとか、そういうニーズ はある程度出てきているので、そういうことを踏まえると、今回も期待できるのではな いかと考えています。 ○荒木様  調査の対象に関して、専門業務型に新しく大学教員というのが入りましたが、大学も 対象になっているということでしょうか。 ○前田賃金時間課長  対象になります。 ○荒木様  もう1点で、労働者用で見てみようと思うのですが、3頁の7の「業務の遂行につい て」というので、「仕事の目標、期限や内容は通常どのように決められていますか」と いう質問があります。いま裁量労働でいちばん問題だと言われているのは、やり方は個 人にゆだねるにしても、非常に過大な業務量を課していると、いくら時間配分が自由で も長時間働かざるを得ないという点だと思います。  選択肢は1から5、そのほかとなっていますが、労使委員会などが業務量の決定で何 か役割を果たすという選択肢が要るのかどうか、「その他」ぐらいでいいのか、もちろ ん苦情処理のほうで労使委員会の役割はお聞きになっているようですが、ノルマ等の決 め方で何か選択肢があってもいいのかと思います。こだわりはしませんが、少しそうい う気がしました。 ○前田賃金時間課長  7の(1)の話ですね。 ○荒木様  はい。 ○諏訪座長  それは検討していただくことにして、ほかにぜひいかがでしょうか。 ○西川様  これは質問なのですが、特に労働者用の調査において「裁量労働制が適用されている 年数はどのくらいですか」という質問があるのですが、適用される前とされてからの変 化、例えばここで注目されているのは、実質的に労働時間が増えてしまったとか、スト レスや健康上の問題であるとか、失業の不安が増えたとか、裁量労働制が適用される以 前と業務が変わったのかどうかも含めて、その辺の変化について聞く質問を入れること は可能なのでしょうか。これは現状の部分でしか聞いておられないようですが、変化の 部分についてはいかがでしょうか。 ○前田賃金時間課長  質問を作ることはできると思います。 ○守島様  細かいワーディング等についてはメールで送ったので言いませんが、先ほどの今田先 生の話とも少し関連するのですが、この調査から何を得たいのかといったときに、我々 が将来的に労働時間一般の議論をしていくことが仮にあるとすると、いまの裁量労働制 について企業がどういう評価をしているかとか、手続についてどう思っているかという ことも1つですが、同時に将来的に労働時間はどういう在り方がいいのかというところ で、それほど数は入れられないと思うのですが、労働者用と入れていない企業の部分 で、1問か2問くらいあったほうが、この研究会で議論していくためには少し役に立つ のかという感じがしたので、もし追加できるのであれば、そのようなものが入ってくる と役に立つのではないかという気がします。 ○諏訪座長  これはかなり重要なご意見だと思います。先ほどの西川先生と並んで、流れを見てい く上で重要なご質問だと思います。私のほうからお願いをしたいのは、これは要らない というのもあるような気がするのです。このように検討してくるとどんどん広がって、 無限にたくさんあれも聞きたい、これも聞きたいとなると、調査は結局うまくいかなく なるので、あえて言えばこういうのは要らないのではないかということでも、お気づき の点がありましたらご指摘いただければと思います。 ○水町様  先ほど前回の調査という話があって、2001年か2002年に、賃金時間課で裁量労働につ いての調査をされたような記憶があるのですが、それとこれの関係というか、同じよう な項目を聞くようにしているのか、それとも全然違う項目になっているのか。同じよう な項目になっているとすれば、どういう項目に無回答が多くて、答えにくいものになっ ていればそこをどうするかとか、その辺の処理はどのように考えられたのでしょうか。 ○前田賃金時間課長  前回、平成14年裁量労働制について似たような調査をしています。ただ、今回は前回 の改正の影響をある程度把握しなければいけないので、同じような項目について調査を する必要がありまして、そういう部分は同じような形で調査をやるということです。前 回、選択肢としてほとんどないというのも確かにありまして、そういうところを精査し て、そういうものを除くとか、そういうことはやりたいと思います。 ○水町様  まだここではやられていないのですね。 ○前田賃金時間課長  一部やっていますが、さらにとういうことです。ただ、不要なものは削って、今回加 えているので、全く一緒ではありません。 ○守島様  これはメールで送ったことと多少関係するのですが、1つは、健康診断の異常の項目 をここまで細かく取る必要がわからないのですが、本当に必要があるのかどうか。これ を分析してすごく意味のあるものになるのかどうかということが分からないのですが、 もしあるのなら構わないのですが、そうでなければここは自由記入にしたらいいと思い ます。  それから、これはまさにメールで申し上げたことなのですが、普通の労働者にこの労 働者用の調査票の10、11頁のような内容を聞いて、どこまで理解できるのかがわからな いのです。必要があるという議論もあることは理解するのですが。そうなってくると、 先ほど西川先生が言われたような質問を入れて、具体的なものはもう少し精査をしなけ ればいけませんが、多少ここの部分は削っていくこともあるのかと思います。 ○前田賃金時間課長  10、11頁のところは、確かに表現等がやや難しいような、法律的な用語をそのまま引 っ張ってきているところがありまして、そこはもう少し工夫はしたいと思っています。 ○今田様  前回との比較をするのですか、データを分析して。 ○前田賃金時間課長  裁量労働制の施行状況について、先ほどの労働政策審議会の建議も踏まえると改正の 施行状況を把握することも必要ですので、基本的には裁量労働制の施行状況について前 回と比較するところは比較すべきということで、それに必要な質問は入れているという ことです。 ○今田様  この調査で前回のデータで比較をして、こういうふうに変わりましたというデータを 出すわけですか。 ○前田賃金時間課長  そういう分析をします。 ○今田様  質問を変えたらまずいですね。 ○前田賃金時間課長  全く同じではなくて、施行状況について、前回の調査票も踏まえて作っている部分も あるので、比較すべきところは比較すると。ただ、それ以外に付け加えることもできま すし、前回調査してあまり意味がないようなところであれば、それは今回の調査項目か ら落とすこともやっているので、全く同じという意味ではないです。 ○諏訪座長  よろしいですか。それではさらにお気づきの点がありましたら、事務局にメール等で ご連絡していただくことにして、夏以降の議論には、なるべく早くこうした調査結果 が、我々も把握できるようになっていることが望ましいという前提で、急いで調査に入 りたいと思っています。今日様々なご意見をいただいたので、これは事務局と私のほう でまとめさせていただいて、最終的な案を作らせていただきます。今日はサンプリング 等については、特にご意見が及んでいませんが、そういう点も含めてさらに詰めさせて いただこうと思います。そのような段取りでよろしゅうございますか。                   (了承) ○諏訪座長  ありがとうございます。そのようにいたします。  それでは、大体予定している時間が近づいてきましたので、今日は初回ですから、こ の際に事務局にこのようなことを調べておいてくれとか、こうした点は重要ではないか とか、注文があれば早めに出していただいたほうがいいかと思うので、何かお気づきの 点があればお願いしたいと思います。あるいは、事務局のほうから、このような調査や このような最近の成果は目を通しておくべきだという注文があればお願いしたいと思い ますが、いかがでしょうか。よろしいですか。  今後とも事務局で資料等を整備する場合には、できるだけ前広に皆様からご指摘いた だいたほうがいいかと思うので、お気づきの点があれば会合のときだけでなく、メール 等ででもお知らせいただければと思います。よろしくお願いいたします。本日の会合は この辺りで終了させていただきたいと思いますが、事務局から連絡事項をお願いしま す。 ○前田賃金時間課長  次回は5月20日(金)の午後3時から開催したいと考えていますので、よろしくお願 いいたします。正式にはおってご連絡させていただきます。次回は論点についてはまた 引き続きご議論いただくとともに、ヒアリング調査を実施するということで、その内容 等についてご議論いただければと思っています。さらに海外のホワイトカラーの労働時 間適用除外制度について、平成16年度にJILPTのほうで調査を実施していて、現時点で 大体整理できている状況ですので、そういったものについても次回に説明させていただ いて、今後の検討の材料としていただければと思っています。そういった点について、 事務局で資料を用意させていただきます。以上です。 ○諏訪座長  それでは以上をもって、本日の会合は終了にしたいと思います。本日はお忙しい中を ご参加いただきましてありがとうございました、今後ともよろしくお願いいたします。                  照会先:厚生労働省労働基準局賃金時間課政策係                  電話: 03−5253−1111(内線5526)