05/04/25 第4回医師の需給に関する検討会議事録             第4回 医師の需給に関する検討会                        日時 平成17年4月25日(月)                           15:00〜                        場所 厚生労働省省議室9階 ○矢崎座長  ただいまから、第4回「医師の需給に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様 には、年度初めで大変お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。議 事に入る前に、前回の会議で、民間の病院の実情等に詳しい方を新たに委員に加えるこ とをお認めいただきました。私どもで相談し、社団法人日本病院会会長の山本修三会長 にお願いし、前回ご了解をいただきました。本日、山本委員にご出席いただきました、 よろしくお願いいたします。 ○山本委員  今回から参加させていただくことになりました、日本病院会の山本です。どうぞよろ しくお願いいたします。 ○矢崎座長  事務局から、本日の委員の出欠状況についてお願いいたします。 ○医事課長  本日は、ご多忙のところお集まりいただきまして大変ありがとうございます。本日は 長谷川委員が欠席です。古橋委員は遅れてまいります。本日、労働関係法規のご説明を いただく担当をご紹介いたします。労働基準局の庭山監督官です。 ○庭山監督官  庭山です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○矢崎座長  議事に入ります。事務局から、資料の説明をお願いいたします。 ○中村補佐  議事次第、座席表、メンバー表、資料1「医師の宿日直勤務と労働基準法」、資料2 「中間報告書骨子案(これまでの各委員の意見から)」です。今回からご参加いただい ております山本委員から、別途資料をご提出いただきましたので、参考資料1としてお 配りしております。 ○矢崎座長  資料1「医師の宿日直勤務と労働基準法」について、労働基準局の庭山監督官から説 明をお願いいたします。 ○庭山監督官  ただいまご紹介にあずかりました、労働基準局監督課の中央労働基準監察監督官をし ております庭山です。本日は、貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。 私からは「医師の宿日直勤務と労働基準法」ということで、労働基準法上の宿日直勤務 と、これにかかわって私どもは3年ほど指導をさせていただいておりますので、その経 過と現状についてご説明させていただきます。  資料1の1頁の「説明資料1」です。医療機関における、特に医師の夜間・休日勤務 の関係については、平成14年度の初めから、労働基準法上の取扱い、あるいは労働基準 法が現場の医療機関でどのように適用されているか、問題点がいくつかあるのではない か、ということで自主的な点検からさせていただきました。昨年度は、約600の個々の 病院にお邪魔し、労働基準法上の夜間・休日労働がどのような扱いになっているかとい うことで進めております。この辺りの経過については、民間病院の方にはよくご承知い ただいているかと思います。  その経過の中で、本日説明資料1でご説明いたします、もともと労働基準法上の宿日 直勤務は法律上どうなっているのか、という点について相当程度の誤解もありました。 したがって、本日は宿日直勤務の許可制度についてご説明した上で、説明資料2、説明 資料3で、現在の労働基準法に照らしてどういう問題があるのか、それについてどのよ うに対応していただいているのかをご説明いたします。  説明資料1で、法律上の問題についてご説明いたします。1「概要」にありますが、 宿日直勤務者について、労働基準監督署長の許可を得た場合には、労働基準法上の労働 時間、休憩、休日に関する規定の適用が除外される。主な適用除外規定として(1)から (4)まで記述しております。  最初に、労働基準法上の宿日直勤務について多かった誤解をご説明いたします。医療 法上、病院で入院患者がいる場合には、病院に宿直を置かなければならないと規定され ております。その場合には、概ね3つの方法で労働条件上対応していただいていると思 います。夜間や休日の勤務、医療法上の宿直者が労働時間上どのように管理されている かです。1つには大病院のように、病棟の方、外来の方、主に夜間・休日に救急で来ら れる方ということになりますが、その外来の方に対応するために、医師や看護師が二交 替や三交替制で休日や夜間の対応に当たっていただいていると思います。これは、通常 の開業時間と同じように、所定労働時間ということで医師や看護師が医療に当たってい ただいていることになります。  2つ目はあまりないかもしれませんが、夜間あるいは休日の診療について、時間外や 休日労働で対応されている。つまり、割増賃金を支払って対応していただいている、と いうのがもう1つの考え方です。3つ目は、宿日直として対応している。労働基準法上 の宿日直制度を活用して対応している。この3つかと思います。  この宿日直の対応の場合には、基本的な考え方として2番目の一般的許可基準の(1) に「勤務の態様」があります。宿日直勤務者について、監督署長の許可を得るために は、原則となる法定労働時間、割増賃金の規定を除外するという前提がありますので、 その勤務の態様としては、上のポツにあるとおり、常態としてほとんど労働する必要の ない勤務、原則として通常の労働の継続ではない。そのように極めて労働密度が薄い、 通常の勤務は行わない、ということが許可の前提になっております。このような勤務だ からこそ、基準法でいう、法定労働時間や、割増賃金の規定を除外してもいいだろうと いうのが大前提になっております。  夜間や休日の診療、特に外来の救急に当たる場合に、この地域ではほとんど患者は来 ませんという実態の下にかつて許可を取った医療機関が、その後夜間・休日の救急体制 を整備していかなければならないと。それは、国民の要求だったと思うのですが、そう いう状況に至った段階でも、この基準法上の宿日直の下に労働時間を管理し続けたとい うことから、この許可基準に照らして反する実態が出てきたのか、というのが現在各病 院でご努力いただいている労働基準法上の夜間・休日の問題です。  単純に交替制にすればいいのか、という意見をいろいろな方から聞きますが、しか し、地域の医師の数の問題、あるいは経営上の財政的な問題ということから、この基準 法の宿日直ではなく、交替制で直ちに医療法でいう宿日直に対応するのは難しいと。少 し時間をかけて、労働基準局も対応してほしいということで、いろいろなご要望を受け ながら、私どもも時間をかけて継続した援助をさせていただいているのが現状です。  以上のことを前提として、概要に戻ります。監督署長の許可を得るための基本的な労 働実態、それは常態としてほとんど労働する必要がないということでお話いたしまし た。そういう場合に適用が除外される規定として代表的なものが4つあります。(1)労 働時間(労働基準法第32条)は1週40時間、1日8時間という法定労働時間の規定で す。この法定労働時間を超える場合には、カッコ書きにあるとおり、時間外・休日労働 を行う場合、通常36協定という労使協定を締結して届け出ていただきます。ただ、時間 外、法定労働時間に対する残業時間や、休日労働という概念がなくなりますので、この 36協定は必要がないことになります。  (2)は勤務時間中の休憩についてです。労働時間が6時間を超える場合には45分、8 時間を超える場合には少なくとも1時間を勤務の途中に与える必要がありますが、これ も必要がない。労働密度が薄いですから、適宜の休憩、適宜の食事も摂れるでしょうと いうことです。  (3)は休日です。1週に1日又は4週に4日という定めがありますけれども、これに ついても与える義務がないことになります。したがって、法定休日という概念がなくな りますので、労働時間と同じように36協定や、休日の割増賃金も必要がなくなるという ことです。(4)は、いまご説明したとおり、割増賃金の適用がなくなるということです。  このように、労働時間や賃金の主要な規定が除外されることになりますので、2番の 一般的許可基準を厳格に守る必要があるということで判断をさせていただいておりま す。(1)は先ほどご説明したとおりですが、これが根幹になる許可基準です。(2)は宿日 直手当ということで、その1日又は1回につき宿日直勤務を行う者に支払われる賃金の 1日の平均額の概ね3分の1以上の宿日直手当を支払っていただければ、通常の賃金は 必要ありません。これも、すべて労働密度が薄く、ほとんど労働する実態がない、とい うことから出てくるものです。宿日直の回数についてですが、宿直については週1回、 日直については月1回という限度を設けております。そのほかに、夜間の宿直であれ ば、睡眠をとることも可能であることから、宿直については相当の睡眠設備の設置が必 要である、というものも許可基準に入れております。  この一般的許可基準については、一般の会社の事務所、土曜日曜は閉めているけれど も、お客様のサービスという観点から、何らかの緊急連絡には対応するために、宿日直 はやらせてほしいというものは全国的にあります。その場合でも、お客様から連絡があ って修理に行かなければならないということが稀にあった場合には、通常の休日労働や 時間外として、36協定や割増賃金が必要だということにしております。  ガス会社では、ガス漏れ等があった場合には、緊急に対応させていただきますという ことで、一部のガス会社では、宿日直の許可を得てその運用をしております。ただ、事 故はほとんどないというのが実態です。  その上で3番目に、医師、看護師等の宿日直の許可基準です。これは、2番目の一般 的許可基準の取扱い細目ということで定めております。(1)の、通常の勤務時間の拘束 から完全に開放された後のものであるということは共通したものでありますが、病院と いう特殊な状況を考えて、(2)に夜間に従事する業務は一般の宿直業務以外に、定時の 巡回、異常事態の報告、少数の要注意患者の定時検脈等々の、軽度でかつ短時間の業務 に限りますが、そういう業務はしていただいても構いません、という特別な取扱いを定 めております。ただ、応急患者の診療又は入院、患者の死亡、出産等が昼間と同態様の 労働に従事することが常態であるという場合には許可しない、ということが定められて おります。(3)は、夜間に十分睡眠がとりうることという定めがあります。  4番目は、既に許可が出されている場合の取扱いです。(2)の許可を得て宿直を行う 場合に、(2)のカッコ内のような労働が稀にあっても、それは直ちに許可を取り消すと いうことは、その影響を考えていたしません。ただ、その時間の扱いについては、36協 定や労働基準法37条の割増賃金の支払いをしてください、ということで取扱いを定めて おります。以上が労働基準法のご説明です。  2頁は説明資料2として記述しております。これまで、こちらからいろいろな形で援 助あるいは助言指導させていただいておりますけれども、平成14年度の初めに、自主的 な点検作業をしていただきたいということでお願いいたしました。その前提として、い ちばん上に「許可機関の確認」というのがあります。右側の「経過」の欄を見ますと、 許可件数8,400機関という数字があります。労働基準監督署長の、宿日直に関する許可 については、法令上有効期間を定めるということにはなっておりません。したがって、 許可書は1度発行すると、それが一貫して有効になることになっております。したがっ て、昭和40年代からその許可がずっと出されたまま生きている状況もあります。  ただ、病院もいろいろ診療科の変動もありますし、医師あるいは患者の数、それから 夜間の診療を強化するようになったという状況もあるかと思いますので、この許可条件 どおりはなかなかいっていないのではないかというところから、いろいろ改善すべき点 が出てきたのかと思います。  その8,400機関を調べてみたところ、下の「自主点検」の項目の左側の網掛けをした 帯を見ますと、3つに分かれていていちばん左側は、既に宿日直勤務を行っていない、 あるいは許可基準を満たしていることが明らかである。そういうものが、既に労働基準 監督署のほうで把握されています。あるいは自主点検を行った結果把握できたという所 がいろいろあります。許可を出した上で、閉鎖していることが明らかな所を除いた6,600 機関について、自主点検を実施したところ、そのような実態がわかってきました。  真ん中の、許可基準を満たしていない、という所が相対的に多かったわけですが、右 側にあるとおり自主点検を回答していない所もありました。以上を総計しまして、6,600 機関に自主点検を実施したところ、6,000件から自主点検結果を出していただいた結果 です。  次に、この許可基準を満たしていない、あるいは自主点検が未提出だという医療機関 を対象として、3段目にあるように「説明指導会」を実施しました。説明指導会を実施 するに当たり、(1)1か月の医療行為のある日が8日から10日で、医師1人当たり最大 3時間の治療行為を行っている。(2)1か月の医療行為のある日が11日から15日、最大 で1人当たり2時間を超えて医療行為を宿日直中に行っている。(4)宿日直回数の基準 を超えている。(5)通常の労働が行われたとき、割増賃金が必ずしも全部払われていな い。このような内容が、自主点検によりこちらで把握できますので、それらに該当する 医療機関について説明指導会を開催することになりました。  これらの5つよりも、より低い水準といいますか、より良水準といいますか、そうい う方たちについては自主点検の際に法律、あるいは許可基準の内容についてご検討いた だきたいということで資料を送り、自主的な改善をお願いしています。とりあえず説明 指導会の対象とする方は、あまり数が多いと大変だという面もありますので絞らせてい ただいたということです。説明指導会への出席は、2,000の医療機関にお願いいたしま した。  4段目の「改善報告書」というのは、説明指導会の前後に、さらに改善報告を作って 提出していただきたいということで2,000の医療機関にお願いしたものです。この改善 報告書の提出の中で、自主点検の要領、書き方の要領が悪くても、実際には許可基準を 満たしている病院も少なくありませんでしたので、それらの病院については改善を確認 したということで、この一連の指導から除外しています。  最終的に改善報告書の対象になった医療機関、あるいは自主点検をその時点でも出し ていない医療機関の中から、改善報告書を出していただいたけれども、やはり附款の範 囲を著しく超えている。要するに、ほとんど毎日、医療行為は何らかの形であるという ような所で、かつ具体的な改善の年月日、期日が記入していない医療機関、それから改 善報告書を提出していない医療機関を対象に、約600機関の監督指導を実施したという ことです。これまでの流れの中で、約2年弱の時間をかけて自主的な改善を促しながら 指導を進めてまいりました。  その監督指導の現在の状況についてまとめたのが、説明資料の3です。これは、昨年 11月にその状況を説明したものです。この表の下に注も入れておりますが、(1)実施時 期、平成15年度第4四半期から平成16年度の第1四半期を中心に実施いたしました。こ の夏場ぐらいまで、あるいはそれ以降も若干実施している所もあります。実施地域とし ては、全国47都道府県です。  この中で、(1)から(11)まで掲げておりますが、(1)監督実施件数が596、(2)この596 のうち何らかの法違反がある医療機関が430です。いろいろ点検していただいた結果、 個々の立入指導を監督官が行っております。違反率72.1%となっておりますが、私ども が指導する場合に、いくつか法違反があるだろうという所にお邪魔しておりますので、 病院に限らずどんな事業場でも違反率はこのぐらいあります。こういう言い方もなんで すが、特別な違反率ではありません。  (3)は第32条違反です。これが法定労働時間の違反になります。夜、宿日直中の労働 が法定労働時間を超えている、あるいは36協定の限度時間を超えているといった対応で す。(4)は宿日直時の労働によって割増賃金の一部が未払になっている場合があるとい う違反です。  (5)は、許可のある医師について37条違反を見た場合の問題です。説明資料1の中の 3番目「医師、看護師等の宿日直の許可基準」の(4)に、許可を得て宿日直を行う場合 に、(2)のカッコ内のような通常の診察を行った場合には、最終行にあるように、同法 第37条の割増賃金を支払っていただく必要があります。その診療の時間帯については、 宿直手当とは別に、通常賃金の割増賃金を払っていただく必要がありますというのがあ りましたが、それに該当するのが50の医療機関でした。これも、全部という場合もあり ましたが、一部足りなかったという所もあります。  (6)以降は、法違反の有無にかかわらず、先ほど申し上げました許可基準に照らして どうなのかということです。596の医療機関のうち、348(58.4%)で許可を得て医師が 宿日直をしていました。そのうち(8)(9)(10)(11)が主要な許可基準上の問題になりま す。主要な許可基準の内容の4つのうち、いずれかに該当する医療機関が(7)にあると おり249の医療機関で認められたことになります。これは、全国統一の指導文書を用意 し、該当する所にレ点を入れていただき、各医療機関に渡して改善していただくという 方法で指導いたしました。  特にこの中で、(9)のように夜間・休日に従事する業務について、昼間と同態様の労 働に従事することが稀ではないというのがいちばん多くて195の医療機関でありました。 いちばん下の網掛けは、専用指導文書を交付した249を100%とすると78.3%の医療機関 で、許可基準上ここがいちばん問題が大きいということです。  これらの許可基準上の援助指導という点については、その後相当期間経過をしており ます。ただ、いろいろな地域や診療科による医師不足という状況がありますので、時間 をかけて粘り強くこちらからいろいろ援助をさせていただきながら、指導を進めていく 状況です。  専用指導文書に基づいて4つの項目、具体的な改善を相当程度やっていただいている 一方、なかなかそれが進まないというのも現状です。ただ、具体的な改善の典型的な例 として、例えば宿日直であれば、5時から8時ぐらいまで患者が非常に多い。8時ある いは9時を回ると極端に外来患者は減るという場合には、8時あるいは9時までは残業 にし、それ以降は基準法上の宿直で管理して改善していただく。  休日の日直についても、昼まで同様に休日労働にし、それ以降を日直という制度にし ていただく。あるいは、外から嘱託といいますか、医師の応援をいただいて、1人当た りの患者数を減少させていく。病院の中には、交替制に移行していく。そのように、い くつかの改善に取り組んでいただいております。  宿直や日直の回数は、(9)に比べて改善しやすいようです。いままで、一部の医師で 宿日直に取り組んでいたけれども、その病院内でもう少し多くの医師に取り組んでいた だくことにより、この回数はわりとクリアしている病院が少なくはないという状況にな っております。いずれにしても、私どもは今後ももう少し時間をかけながら、性急なや り方はしないということで粘り強く努力していただきながら、私どもも必要な助言を進 める中で改善をしていただきたいと考えております。私からのご説明は以上です。 ○矢崎座長  ただいまの、労働基準局からの説明について、ご質問やコメントがございますでしょ うか。 ○土屋委員  監督実施件数の中で何らかの違反があったという医療機関の内訳は、民間医療機関な のか公的な医療機関なのか、開設者はいろいろな分け方があると思いますが分類されて おりますか。 ○庭山監督官  この病院については、自治体が経営しているのか、いわゆる公的な病院ということで 分けているのかというと、そういうことで労働基準法の適用が分かれるわけではないも のですから、そういう集計はしておりません。いま手元に資料がないのですぐにはわか らないのですが、自治体病院については名前を見ればわかります。自治体病院は、大体 200件ぐらいあったかと思います。 ○土屋委員  そうすると、3分の1ということですか。 ○庭山監督官  そうです。 ○土屋委員  この検討会は、医療の需給に関する検討会ということで、ご案内のように病院医師の 不足がいま言われております。そうしますと、私どもとして知りたいのは、どういう種 類の医療機関が、特にどういう要件を満たすことが難しいのかを知りたいのです。それ は、データを整理すれば、自ずと出てくる数字だと思うのですが、後ほど教えていただ けますか。 ○庭山監督官  医政局と相談をして、わかる範囲でさせていただきます。先ほど200と申し上げまし たが、170でした。 ○矢崎座長  大学病院はどうですか。 ○庭山監督官  これは、全国の労働基準監督署からこの時点のものを送らせて、それで手作業で集計 しているので、大学病院についても集計を見直して考えさせていただきます。 ○矢崎座長  土屋委員のお話は、どこに医師不足があって、勤務状態が苦しいかということを知り たいということです。そこが多いのがけしからんという話ではなくて、医師の需給がそ ういう病院ではどうなっているかを土屋委員は知りたいということです。 ○土屋委員  厚生労働省というように2つの省が一緒になられたことでもありますし、その整理集 計は医政局でもやっていただけると思いますので、データだけでもお示しいただけたら ありがたいと思います。 ○小山田委員  この問題について法律違反と言われると大変心苦しいのですけれども、私ども自治体 病院、特に地域の中小病院の医師の労働過重がひどいのです。昨年、1,000ある全病院 に対して調査を終わりました。これによると届出とか手当て等についてではなく、実際 に過重労働をやっている病院は、全体として80%の病院がこの法律を守れない。小規模 病院になるになるにつれて、そのパーセントは多くなっているという事実があります。  確かに法律の意図するところはよくわかります。しかし、現実の地域医療、しかも逃 げられないといいますか、回避できない医療をやっていく上で法律に反するとわかって いながらその医師に仕事をしてもらわなければならないという現実があります。そこで 教えていただきたいのは、厳重注意がありますが、これでも守れなかった場合に、開設 者、あるいは病院長に対してどういう罰則、あるいはペナルティをかけるのかという点 が1つあります。  もう1つは、私どもその病院を管理する立場から痛いのは、そこに勤務するドクター が国に対して、病院はこのような労働の過重を強いているといって勤務医が訴えたりす ることです。そのような事例が出た場合には具体的にどうなるのかを教えていただきた いと思います。 ○庭山監督官  前者のペナルティということですが、小山田委員の会合にも何回かお邪魔してご説明 させていただいているとおりであります。この許可基準の問題が法律違反として現れて いるわけですから、それについては正していただく必要があろうかと思います。そのた めにもご努力いただいているわけです。  制度的な問題をお話いたしますと、先ほどご説明したとおり、この宿日直の許可制度 そのものは常態としてほとんど労働がないものという前提になっておりますので、その 基準を大きく超えるようなことが長期間ある、改善の見込みがなかなか厳しいというこ とになれば、努力できる環境の下で努力されている方もたくさんいるわけですから、制 度としてはそれを取り消す必要があります。  ただ、それをする場合にも、現在の許可基準が常態としてどうこう、労働することが 稀ではないということで、少し抽象的なものでもありますので、そこを少し具体化を図 っていく。それに基づいても難しいのだという状況になれば、そういうことも必要にな ってくるかと思いますが、いまの時点で考えているのは、いましばらくご努力いただき たいということと、仮に制度上そういうことがありうるわけですから、実際に運用する 場合には、許可基準あるいは取消基準の具体化を図り、その上で理解を得ながらという ことになってくると思います。いまのところは、それによって取消し云々ということは ありません。それでは、いつからやるしかないというようなことはまだ想定しておりま せん。  もう1つペナルティという問題でいいますと、この労働基準法はあくまで罰則のある 規定ということになりますので、その運用はどうなのかということも、もちろん制度上 の問題であればあるわけです。それについては、個々の事業主がどのぐらい努力してく れているかということです。  もちろん、皆さんに努力していただいている中で、一定の事業主が努力すれば対応で きるものを怠っているような場合にはいかがなものかという場合もあるかもしれませ ん。通常は、一生懸命努力していただいている限り、意識、遵法態度というのは我々も 当然評価させていただきますので、そういうことにはつながらないのではないかと考え ております。  労働基準法は使用者の義務という形をとっておりますので、その点について言われた 場合にどうなのかということですが、そこは労使間でどう話し合うかという問題にもな っていきますので、私どもはなんとも言えないところであります。法律は、やはり遵守 する方向で、労使で具体的にどう努力していくかということかと思います。私どもは、 全国的な労働組合の方が、この件で労働基準局にお越しになるときには、指導の状況を 可能な範囲でご説明いたしますが、労働組合の方もこの件ついては、やはり地域での医 師不足の問題が非常に大きい、という病院が少なくないのだということから、かなり理 解しながらされている組合幹部の方が多いかなということを、印象としては持っており ます。 ○山本委員  この問題は、法律的な問題と、医療という現場のギャップをどのように埋めるかとい う視点から考えないと。例えば、外科で15時間の手術をやって、その日が当直だった、 そして当直に入って、そのまままた患者を診るということは日常的にあるわけです。こ うしたことが、例えば時間外という手当でカバーすることはできますけれども、トータ ルの時間外の時間というのは、先ほどの時間の限定がありますからそれを超えてしま う。  そうすると、少ない中で救急の患者をしっかり診ていこうといったときに、これをク リアできない現状というのはずっと続けてあるわけです。こうしたものは、この法律の 中でどうやって考えていくかということが、具体的な解決策としては必要だし、それを いまご説明いただいて、その中に性急にはやりませんという言葉の中に入ってくるのだ ろうと思います。  その場合に我々がいちばん注意しなければいけないのは、現場で働いている医師が、 患者のために働くという意欲をそぐような形のものはまずいということです。それか ら、患者のためにやっているということですけれども、過剰な労働時間では健康を害す ることもありますので、やはり健康管理という意味ではこれをしっかりやっていかなけ ればいけないだろうと思います。  1つ質問ですが、36協定という話が出ましたが、現在いくつかの組合で36協定の中 に、医師の場合は時間外についてはこれを外す、という協定が多くの場合ありますがこ の辺はどうなのでしょうか。それを教えていただきたいと思います。 ○庭山監督官  医師の場合に、時間外協定の対象としなくていいという制度はありません。 ○山本委員  対組合と病院側で、36協定の中でやってはいけないというふうに理解しているのです か。 ○庭山監督官  はい。ただ、医師の中でも副院長や、大きな病院の部長という方は、同じ第41条で管 理監督者と。使用者、事業主と一体となって労務管理を行う管理監督者は、もともと法 定労働時間の適用はありませんので、そういう方は36協定の対象の必要はないことにな ります。 ○池田委員  労働基準局としては、労働者としての医師の健康管理に視点を置くのは当然だと思い ます。一方、ちょっと違った視点から考えると、医療の安全というのがいま非常に話題 になっていますが、その観点からも医師の過剰な労働を考えていかなければいけないと 思うのです。  いろいろデータを取られたわけですけれども、それと医療事故がある程度報告される ようになったということもリンクさせて、一部頭に置いてデータを整理していただける と1つの参考になりうるのではないかと思います。労働過重ということは、医療の安全 という点からは決して好ましいことではないということは明らかです。大学病院には人 が十分いるのだろうと思われているかもしれませんが、決してそんなことはありませ ん。朝から晩まで働いて、当直を週に1回こなして、翌日も朝から診察をして、手術に 入ってということが日常茶飯事で行われている状況がありますので、その辺も少し考え なければいけないのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○水田委員  説明資料1で、労働基準監督署長の許可をという場合には、基準局の許可する人によ って解釈が違ってくることがありうるのでしょうか。去年法人化になり、いろいろな大 学がこれで悩んだわけです。そのときに、県あるいはその土地によって解釈が違ったと いいますか、裁量労働制で許された所もあれば、絶対に駄目だと言われた所もあるとい うのが大学病院の現状なのです。そこのところをもう少し徹底するといいますか、一度 皆さんに説明をしていただけたらと思います。  地方の労働基準局へ行っても、こういうことは前例のないことだとおっしゃいます。 それで認めるとか、認められないとか、非常に解釈の仕方によって違ってくるという感 じがするのですが、そこのところはどうなのでしょうか。 ○庭山監督官  許可基準の話ですね。 ○水田委員  そうです。基準はここに出ているのですけれども、その解釈についてです。 ○庭山監督官  先ほど言いましたように、夜間・休日に昼間と同じ態様の労働が常態としてあっては いけない、常態とか稀という言葉が出てまいります。これは先ほど言いましたとおり、 例えば普通の会社の事務所で、お客様から苦情があったときに受けるために、ほとんど ないのだけれども受けるためにいますというときに、この許可を得てということになり ます。実情としては、まさに稀とは何かとか、常態としてどうかとか、そこの基準はど うなのかということが問題にならないぐらい、通常の勤務はない。そういう所に許可を 出しているのが実態です。  ですから、1日何本ぐらい電話を受けていいか、あるいはお客様の苦情で外に出かけ るのは1日に何時間までいいかとか、何回までいいかという議論というのはほとんどな かったです。この許可基準自体が、もともと常態として通常の労働がないのだというこ とが、具体的にそれではどうだ、どのぐらいまでだ、ということが正直言って問題にな ったことはないです。それだけ、ほとんど労働することがない所に、この許可制度が使 われているのが実態として存在していたというわけです。  ただ、先ほど申し上げました、医療機関の宿日直、特に医師の宿日直については、夜 間・休日の診療の要望ということで、その時点でいろいろな問題から宿日直制度が出て まいりましたので、いまの時点でどうなのかというところでいうと、いま言われたとお りはっきりさせなければならないというところだと思います。  いまのところは、本来の許可基準を目指してご尽力いただくという前提で進めており ますから、なるべく人によって1日何時間でいいといった話にならないように、私ども も全国に指示をしております。ただ、どうしても言われた場合に、過去の例としてこの ぐらいはとか、個々に許可の取扱いをした監督官がご説明したことがあるかもしれませ んけれども、基本的には公式には何時間何分というお話は、あくまで許可基準は、その 常態としてほとんどないというものでしか我々は各組織に指示をしたことがないです。  いずれにしても、この許可基準、あるいは取消しは制度上はあるということです。そ れを、もう少し運用していくためには、個々の具体化は図らなければならないとは思っ ております。いまはこういう状況で、ギリギリと性急に我々がやっていくことではな い、ある程度時間はかかるということは皆さんに浸透しておりますから特段ありません けれども、こういう状態がずっと続いていていいというわけではありません。もう少し 具体的な目標を設定できるように、労働基準局としても示すべきではないかというお話 は団体からもいただいておりますので、その具体化を図る作業は進めていかなければな らないと思っております。  個々の監督署の判断で、1日何人以上やっているから駄目ですよ、といった断定的な 言い方は指示しておりません。もし、そういうのがあるのだったら言いすぎかもしれま せん。 ○吉村委員  法律上は、現実と乖離していることは十分ご承知だと思います。実際にこれを遵守す ると我々も非常に困るわけです。労働基準監督署としては、こういうことがなくなれば それでよろしいのかと思います。現実には三交替にしてくださいとか、医療をもう少し 縮小しなさいといった視点はどのようにお考えなのでしょうか。先ほど池田委員が非常 に危険だとおっしゃったけれども、極端な言い方をすれば、あなたの所は診なくてもい いですよ、患者が来ても、うちではとても診られませんと言いなさいということなの か、あるいはもっと医師を増やして三交替にして合うようにしなさいというのが趣旨だ と思います。監督署としては、これがなくなればよろしいという姿勢なのでしょうか。 ○庭山監督官  ちょっと意地の悪い質問ですが、そういう医療体制が基準法上問題がなくなれば、そ ういう医療体制はそのためになくてもいいのではないか、ということをおっしゃるのは 当たり前なのですが考えておりません。こういう場、あるいはいろいろな団体へご説明 に行くときも、そういうことを避けていくために、いま個々の病院でできる努力は何な のか、労働基準局としてやれる努力は何なのか、ということでいま進めさせていただい ております。  ただ、皆さんが努力している中で、はなから努力していただかない医療機関がもし仮 にあれば、それはいかがなものかということは行政機関だから当然考えます。そうでな い大多数の皆さんに対しては、時間をかけて地域の実情を見ながらということで進めさ せていただいております。  労働基準局も、医政局といろいろ監督指導の状況など情報交換をしながら進めさせて いただいております。両方進めていかなければならない、両方進めないと世の中がうま く回っていかないということだと思っております。いちばん言われるのは、法律を杓子 定規に当てはめて、労働基準行政の都合で法律が守られていますよ、というようなこと は毛頭考えていないということです。 ○土屋委員  冒頭にお願いしたことに関連するのですけれども、この法律は国家公務員には適用さ れないのですか。 ○庭山監督官  はい、適用されません。 ○土屋委員  いままで国立大学であるとか、国立病院みたいなものが大体独法化されてきますと、 従来は問題でなかったことが問題にされるということで、座長は、大学病院は大丈夫で すかとおっしゃったのだろうと思うのです。しかし、まだナショナルセンターは残って いますが、これに対してはどうなるのですか。同じような仕事をやっている職種で似た ようなことをやりながら、ナショナルセンターのドクターは過重労働をしても、お国の ためだからしようがないのだというわけにはいかないだろうと思います。やはり、民間 であろうと、国立のセンターであろうと、あるいは私的な大学であろうと、法律は同じ ように適用されて然るべきだと思うのですが、その辺をお伺いいたします。 ○庭山監督官  国立病院については、昨年4月から独立行政法人となりましたので、昨年4月からこ の労働基準法が適用されております。したがって国立病院についても、独立行政法人国 立病院機構に属する病院についても、この宿日直の許可基準に基づいて対応していただ く必要があることになります。これは全国的にどういう状況になっているかを把握した ことはありませんが、国立病院についても同様に、宿日直をされるのであれば宿日直の 申請をしていただく必要があります。これは各労働基準監督署で、同じ基準で許可でき ないものと許可できるものを割り振って判断をしていると思います。許可できない場合 には、もう一度持ち帰ってご検討をいただくという対応をしています。 ○土屋委員  国立がんセンターは国家公務員だと思いますが、これは独法化していませんので、こ れについてはいかがかということをお伺いしています。 ○庭山監督官  いくつかそのまま残っています。そこのところは正確にはわかりません。おそらく法 律の適用関係は、その以前のまま残っているのではないかと思いますが、いま正確には わかりません。 ○吉新委員  前回の委員会で、日本産婦人科学会の報告でドクターが2人でやっている所は拘束が 月に25日、当直が15日ぐらいあったと思います。月の半分は勤務して、さらに当直して いる病院が多分3分の1ぐらいあったと思います。そうすると監督官の意見では、産婦 人科医は全く足らないということになります。偏在していたりすることもありますが、 マンパワーは数倍にしないと、半月当直している、25日拘束されている状況は改善しな いと思いますが、そういう理解でよろしいのでしょうか。医療の現場において、一部産 婦人科や小児科に関しても全然足らないというお話の裏返しで、こういう指導をする施 設が多くなっているということでよろしいですか。 ○庭山監督官  私どもが、少し時間をかけて丁寧に指導することについては、いろいろな団体あるい は個々の病院から上がってきている声として、医師が不足する地域や診療科があります というときに、それについては個々の医療機関の努力だけですぐに解決できない場合が 当然多いだろうと考えています。 ○吉新委員  逆に労働基準法を裏返しすると、この施設にはこのぐらい医師がいれば、法律違反し なくていいというか、そういったような最低数は出るのではないかと思います。そうい う考え方で、「こちらの病院は休日・夜間を重視するために何人足りませんよ」という 逆の指導もあると思います。最低に何人足らないということは言えるのではないです か。 ○庭山監督官  個々の指導にお邪魔している監督官は、医療経営のプロではありませんので、そう言 われてもなかなか難しいとは思います。ただ1つの選択肢として、交替制というのがあ るというお話はします。 ○吉新委員  もう1つ。労働法上からすると、医師を確保するには旧来ですと医局に頼む方法があ りました。それがいまは頼りなくなってしまった。一方、あっせんや派遣が、医師の場 合は禁止されていますが、そうすると医師確保の出口が見えなくなって、人数はこれだ けいなくてはいけない、けれども、方法はないという八方塞がりの状態です。ですか ら、もし労働基準法を徹底するのであれば、医師の派遣といった制度ないし、それを補 完するような形で作らないといけないのではないかと思いますが、その辺はどうです か。人材派遣法みたいな。 ○庭山監督官  そこの点については、私が直接扱っているわけではないので申し訳ありません。 ○矢崎座長  どうもありがとうございました。おそらく医師の需給に関する検討会が、うまい解決 策を提示すれば、このような労働基準局のストレスはずいぶん解除できるのではないか と思います。本日はどうもありがとうございました。また必要であれば、ご説明にお呼 びすることがあるかもしれません。よろしくお願いします。どうもありがとうございま した。  次の議題は、中間報告書骨子案について、中村補佐からよろしくお願いします。 ○中村補佐  お手元の資料2をご覧ください。いままで3回ご議論をいただきましたが、そのご議 論の中で各委員の方々からいろいろなご意見を頂戴しました。その意見をまとめて、今 回「中間報告書の骨子案(これまでの各委員の意見から)」と、まとめています。大き な番号順に1〜3までありまして、その中が細かく分かれていますので、大まかにご説 明をしまして委員の方々にご議論をお願いできればと思います。  1「はじめに」は、そもそもなぜ需給に関する検討会が始まったのかということと、 なぜ中間報告書というものを出すのかをまとめています。この中間報告書に取り込めな かった事項については、「残された事項は、最終報告書まで引き続き議論」ということ を書いています。最終報告書は、今年度中の取りまとめということになっていますの で、平成17年度中に取りまとめることを現在事務局は考えています。  2は現状の認識です。現場でどのようなことをお感じなのか、現場ではどのようなこ とをお考えなのかを1回目、2回目に数多くのご意見を頂戴し、かなりオーバーラップ したご意見が多かったので、事務局でまとめています。現場では患者の立場から見ると 医師は非常に忙しい。また、そのドクターの立場から見ても非常に忙しいという感が拭 えないということ。それから診療科、時間帯、地域においての医師の偏在ということも ご指摘いただいています。また女性医師の問題のご発言もかなりありましたので、2の いちばん最後の1行に書いています。また、ご意見を頂戴できればと思います。  2頁は、「検討すべき課題とその解決方法について」です。検討すべき課題を(1) から(8)まで挙げています。(8)はその他ということで、今後の検討課題が主にな るのではないかと考えています。(1)は地域偏在の解消、(2)は診療科偏在の解 消。この偏在ですが、地域と診療科とそれぞれ偏在の点についてご意見をずいぶん頂戴 しましたが、偏在という形で1つで括るには非常に大きすぎましたので、こちらのほう で(1)と(2)に現在分けています。こちらに関しても、ご意見を頂戴できればと思 います。(3)は良質な医師の養成・確保、(4)は医師の勤務体制について。これは 交替制についてご意見を頂戴しましたので、1つ項目を置きました。3頁の(5)は医 師と他職種との役割分担、(6)はジェネラリストの話、(7)は検討すべき課題とい うことで、再度女性医師の活用についてという項目を置きました。ただ、2の現状の認 識と若干オーバーラップもありますので、こちらについても委員の皆様方のご意見を頂 戴できればと思います。  (8)はその他です。いちばん最初は医師過剰が本当に弊害を生むのか。医師が過剰 になると、いったい何が起こるのかというご意見も頂戴して、このような項目を置いて います。あとは、単に数字を比較するだけでなくて、その数字の背景、裏に隠されてい る状況をきちんと理解をして議論をすべきではないかというご意見も頂戴しましたの で、今回は上から3つ目のポツに書いています。その他のいちばん最後は、医師の需給 というのは数だけを議論するのではなくて、質や偏在の問題、他職種との関係のあり方 の問題と総合的に考える必要があるのではないかというご意見を頂戴しましたので、 (8)の今後の検討課題みたいなところに入れています。これは、あくまで事務局のほ うがまとめたペーパーですので、委員の皆様方からのご意見をお願いしたいと思いま す。説明は以上です。 ○矢崎座長  それではご議論をいただきたいと思います。これまでの各委員の方々からのご意見を 網羅的にまとめ、整理したところですが、追加ないし、さらにこの認識あるいは理解を 深めたらいいのではないか。あるいは、解決方法についても何かご意見があれば承りた いと思いますが、いかがでしょうか。 ○泉委員  位置づけについてお聞きします。この中間報告というのが、今後どういう作業をする 前提なのかがいまひとつよくわからないところがあります。つまり、医師の需給に関す る検討会ということで当初ある種の推計をして、それに基づいて足りる足りないという 議論を、その地域や診療科という視点も入れながらやっていくものだと理解していまし たが、いまのところそういう議論がされていません。今後、その推計を行っていく前段 として、こういう視点でやるべきだということが具体的に書かれているものならばそれ で理解しますが、総論的なことが書かれています。それから解決方法についても現状が どうかということを数字で、確認をしていない状況で書かれている気がしますので、こ この説明をお願いします。 ○中村補佐  ご意見ありがとうございました。この中間報告書ですが、最終的にはいろいろなデー タを用いて、いろいろな条件を当てはめて推計をしていって、いろいろな数字の下でご 議論をいただいて最終的な報告書をまとめることを現在は考えています。例えばいまま での議論の中で、実際にこの最終報告書が出るというのが今年度末です。そのときです とそのあとの制度改革や、ほかのことに若干間に合わないのではないかということも危 惧されたので、とりあえずいままでの議論のまとめという形で中間報告書を取りまとめ させていただければと思います。今日は4回目ですが、1回目から3回目までこういう 議論がありましたということをまとめて、これを参考にしながら今後の議論に活かして いただければと事務局は考えています。 ○泉委員  平成18年度の改正に盛り込める事項というのは、具体的にこの中ではどういうことを 想定しているのでしょうか。 ○中村補佐  例えば2頁の(3)良質な医師の養成・確保についてです。これはこの検討会とは若 干外れますが、医師の再教育については先日別の所の検討会で報告書が取りまとめられ まして、その中で国が行うべきことということが書かれています。そこで今年は、トラ イアルをやって平成18年度の医療制度改革につなげていこうということもありますの で、(3)のいちばん最後のポツといったものが例として挙げられるのではないか。1 番目、2番目にもある程度の解決策と思われるようなことは事務局のほうで書いていま すので、こちらというふうにお考えいただければと思います。 ○山本委員  参考資料として出させていただいたものが資料2と関係することなので、簡単に説明 してよろしいでしょうか。  参考資料1をご覧ください。この資料2に書いてある中間報告の骨子と大きくずれる ところはないですが、四病院団体協議会というのがありまして、その意見をまとめた形 で今日は出しました。  最初に書いてあるのは、医師不足による病院の機能不全や地域医療の維持の困難さ は、過去に例を見ないほど深刻である。しかも、それが進行していることに非常に危機 感があるわけですが、これは病院云々よりも地域の住民、あるいは患者のニーズに応え る地域医療を本当に維持できるのか、ということが緊急な課題だという視点で対応しな ければいけないということを、まずスタンスとして書きました。不足の現状については 1の下から2行目に、病院における医師の不足の実態、要因、内容というものは地域の 事情、病院の規模・設立母体等で異なって複雑であり一様ではない。これは、単純に医 師を増やせば解決できるという問題ではありませんよ、もう少し突っ込んだ議論が必要 だということです。この辺は、もう既にここでやっていらっしゃることだと思います。  2つ目の不足の要因については、一応4つプラスその他の要因を挙げました。これも ここには出ていますので特に説明はしませんが、実際に地域のある病院で医師が足りな いということと、プラス医療法のルールあるいは労働基準法の先ほど出たような話、医 療提供体制や診療報酬といった問題に絡んで、現場の医師は非常にいま不足感が増幅さ れていて、危機感をもっている。だから、自分の病院は医師がほしいということで実態 として、高額の報酬を出して獲得しようとしていることもあるわけです。こういう方法 は、必ずしもいい解決の方法ではない。むしろ、その地域にあってその地域の人たちが 必要とする医療をどう確保していくか。その視点から本来は考えるべきではないかと分 析しています。  その解決に向かっての取り組みですが、まさに地域医療というものを基本に考えてい くこと。地域の偏在というものに関しては、短期的、中期的にいろいろな対応があるの ではないかということで、例えば短期的な対応でここに国として公的病院、私的病院に 何ができるかということを書きました。災害が起きたときには、医師が足りない足りな いといってもバッとそこへ出ていって応援するわけです。そういうことが必要とされて いるようなところがあるかもしれないということ。  ですから、短期的に何かできないだろうか。あるいは中・長期的に基本的に対応す る。これは地域医療をどう確保するかという話になります。それと専門分野の偏在を両 方一緒にして考え、「専門分野偏在」の最後に、基本的には機能の集中とIT化や3年 目以後の医師の卒後教育のあり方、新しい診療支援システム、医師が地域医療を支援で きる流動的な勤務体制の確保と書きました。  この意味は、各地域あるいは国としてあってもいいのかなと思いますが、地域医療支 援センターというセンターを作って、そこにいろいろな医師が登録をする。そして現実 に足りないところに医師が、わりあい流動的にいけるようなシステムも考えてもいいの ではないか。特に国立や地方自治体立というのは、どこかに出るとなるといまはルール が厳しくて大変ですね。職専免をちゃんと出してやらなければいけない。そういうこと を地域医療センターに登録することによって、比較的容易に地域支援に短期的に出ると いうシステムをつくるのもいいのかなと。そんなことを意見としてここに書きました。  あとは、開業医への移行抑制対策もおそらく出ているのだろうと思いますが、現実に 昨年に6,000とも7,000とも開業医が一遍に増えた。すなわち、その分だけ病院から医師 が減っているということですので、この問題をしっかりと検討しなければならないと思 います。  それから臨床研修の問題、女性の問題は、あとで議論が出ますので説明はしません。 その他の要因として法律、外来の問題等々がありますが、一応中間報告の骨子案にサッ と目を通したところ、ほとんど重なる部分も多いのでこんな説明で、あとはよろしくお 願いします。 ○矢崎座長  どうもありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。 ○池田委員  1つよろしいでしょうか。事務局にお伺いします。盛岡のほうで今回の研修医の必修 化で、大学病院に残る人がほとんどいなくなってしまい、大学病院そのものがやってい けないので外へ出せないため、結局何をしたかということが出ています。大学病院は、 日本語が喋れる人ならば中国から医師を連れてきてよろしいと。確か卒後3年の研修を やった人がいて、それで日本語が喋れれば研修をやらせてもよろしいと。そして、ある 意味ではその分だけ人手が確保できるので、中堅クラスの医師を地域の病院に回せる方 向を取ったという話が実際に出ていましたが、そういう緊急避難的というか、あるいは これは緊急避難的ではなくて、そういうことも念頭に置いているのかを念のためにお聞 きします。 ○医事課長  外国の医師の方の話というのは、いわゆる特区や規制改革などの議論があるわけです が、私どもとしては、我が国の医師の国家試験を受かって医師の資格を持った方という ことで、ずっとやってきています。ご指摘の件については、何日か前の新聞に出ていた ケースだと思います。詳細は承知していませんが、あそこには医師の臨床修練の制度を 使ってというのが書いてありました。この臨床修練の制度というのは、どちらかという と我が国で医療を学ぶためにやってきた方、向こうで資格を持っている方が日本の医師 の指導の下にやるという形ですので、あそこに書いてあるとおりであれば極めて制度の 趣旨からずれているので、問題があれば私どもとしては適切に対処しなければいけない と思います。 ○江上委員  現状の認識のところで、女性医師の増加の記述があります。これは、この検討会や医 師に関連したいろいろなレポートの中では皆さんのご理解が一致しているかと思います が、これが社会に発表された場合、女性医師が増加すると生産性が下がるから、むしろ 増加させないほうが良いといった逆の反応をする考え方が登場する懸念も考えられます ので、丁寧に、少し記述を補ったほうがいいかと感じています。  もう1つは、この中の下から4つ目に、地域医療を守っている多くの医師が引退年齢 にあると書かれています。前に提出していただいた医師の年齢別の活動率の表を拝見し て、免許登録状況や生命表より推計したというデータでは、65歳以上が70数%の活動 率、70歳以上が65%程度の活動率ということで、これは他のいろいろな専門資格に比べ てもかなり高い活動率ではないかと推察されますが、実態を考えるとこの行動率が果た して正確な数字として解釈できるのかいまひとつ納得しがたい。医師の高齢化というこ とを、医師の全体の生産性に影響しているのではないかと思います。そのことは現状の 認識の中に「高齢化が生産性に及ぼす影響」という記述は入っていないのですが、皆様 のご認識はどうなのかという気がしています。 ○矢崎座長  いかがでしょうか ○小山田委員  前に厚生労働省からも出ましたし、私どものデータ(自治体病院)でも、病院勤務医 の高齢化が進んでいます。いままでは年齢層の山が2つありましたが、その山がだんだ ん後ろになってきて、50を越えています。他方は、開業されている方々の年齢が若くな っている。土屋委員、どうですか。 ○土屋委員  そのとおりです。  骨子案ということで示されていますが、ここに記載されているようなことがすべて盛 り込まれるわけですか。それをお伺いしたいのです。というのは、この中に書いてある ことについて、いくつかはそうではないのではないかという考えを持っています。した がいまして、これはまとめた段階で何かあったら言えというならば話は別だと思います が、ここに書いてあるようなことをすべて盛り込んだ中間報告書を作ることになれば、 もう少し個々について検討しなければいけないのではないかということが1つです。  もう1つは先ほど山本委員から示されましたが、過去3回の検討会を見ると、いずれ も結論は長期的な医師の需給の推計ということで終わっています。問題は、ここにも短 期的な対応ということがありますが、喫緊の課題をいかに解決するかということも、医 師の需給に関する検討会の大きなテーマの1つだと思います。その上で、一方で長期的 な対応ということも、医師数の推計というものに立って考えなければいけないと思いま す。これを分けてそういう格好で示して、喫緊の課題を解決するには具体的な対応策を 示さなければならないというお話がありましたが、そのとおりです。私どもも、これに ついてはいくつか考えがありますので、また機会があったらお示ししたいと思います。 ですから、このまとめについてはどうでしょうか。そういう格好で短期的というか、喫 緊の対応策と中・長期的なものとに分けて記載していただくと、中間報告という格好で 出すからにはその意味も付くのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○矢崎座長  まず、事務局からお願いします。 ○医事課長  いまの土屋委員のお話は、先ほどの泉委員のお話も若干重なっているところはあろう かと思いますが、私どもが考えているのは土屋委員がおっしゃったように、これまでの 推計というのは将来どうなるかということで、ずっとやってきています。こういった作 業は当然必要だろうと思いますので、これは最終報告、要するに年度末までのものでは どうなるかというのは必要だろうと思います。  先ほど補佐からも言いましたが、今回中間報告として出したのは、私どもは平成18年 の制度改定に向けて、いま社会保障審議会の医療部会で医療制度について広く検討して います。その中では当然、主たる医療提供者としての医師の問題は非常に大きな問題 で、今回ここに出ているような内容についてもかなりいろいろなものが重複と申しまし ょうか、出ています。したがいまして、私どもはその中で盛り込めるようなことがあれ ばやりたいということで、今回はできれば中間報告という形でまとめたいと思います。  骨子案の本日の性格ですが、カッコ書きでこれまでの各委員の意見からとあります。 したがいまして、いままでの意見をある意味網羅して書いていますので、それぞれの項 目の中でそれほど矛盾した内容が書かれてあるとは思いません。これは今後の骨子で議 論して、その後おそらく文書をもってご議論をいただくことになろうかと思いますが、 その中で重み付けや優先付けを各委員のご議論の中でしていただければと思います。以 上です。 ○矢崎座長  いま課長が言われたように、これは委員の皆様のご意見を羅列したものであり、報告 書としてはもう少しまとめて、例えば医療に対する需要側がどう変わったかということ で、高齢化社会を迎え、あるいは生活習慣病などの疾病の変遷によって、国民の皆さん が要求している医療ニーズが変化してきたということもあって、現状の認識の背景にい ままでと違ったものがあるし、いまご議論があったように供給側の変化というのがいく つかありますので、そういうものを基盤として土屋委員が言われた短期的にはどういう 方向で進んだらいいか、中・長期的にはどう進んだらいいかをまとめていくことになる かと思います。  ただ、この検討会の位置づけですが、ここでこうしなさいとして解決できればいいこ とですが、我々としてはこういう方向性を打ち出すことによって、これを土台にして厚 労省のこれからの医療政策にどう活かすか、あるいは文部科学省と議論して、方向性を どう具体化するかを検討していただきたい。これはおそらく医療提供体制のことまで、 あるいは専門領域に関してはもう少し多くの機関の方々のご議論を得ないと、なかなか 実現まではいかない可能性はありますので、我々としては方向性だけはきっちりと出し ていきたいと思います。そういう意味で活発なご意見をいただいて、徐々に形のあるも のにまとめていきたいと思いますので、委員の皆様方には本当に忌憚のないご意見をお っしゃっていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。 ○古橋委員  私もこの医師不足の問題は一方で、いま座長がおっしゃったように医療需要の質と量 と医師の数は、非常に需給の中で両方とも重要な要素だと思います。もう1つは、例え ばこの時期、新たな出来事として臨床研修が始まっています。これが2年間が終わった 中で、世に出てこられる医師がどう動かれるのか、どういうふうにご自分の医師として のお仕事の場を獲得していらっしゃるのかで少し動きが違うのかどうか。ちょうど一過 性に大きなエポックが始まりましたから、それが約満1年後にどう動いていくのかのシ ュミレートができないのかどうかです。  もう1つは前にも議論が出ましたが、日本は個々の医師の就業分野や専門分野は一応 個人の自由選択制でありまして、これが束縛されるということはもちろん由々しいこと とは思いますが、そうしたことに対するある種の統制というかガバナンスというものの 働く余地がないものかどうかです。もう1つは医療需要というけれども、これはナーシ ング・ケアの領域もそれなりに含んでおります。また国民の受療行動に対しても、賢く 行動する国民教育というのをやる必要があるのかないのか。急性期医療は当然医師の診 断と治療が要るわけですが、介護や看護ケアで対応できる領域はあるのかないのか。そ んなことも含めて、医療需要の質と量と対医師の数ということが、総論的ですが考えら れていいのではないか。最大の関心は、臨床研修の1期生が研修の終わる時期に、どの ように医療現場に出発していらっしゃるのか。そのあたりのシュミレーションというの は、厚労省のほうで多少考えておられるのかどうか。そのあたりを伺いたい気がしま す。 ○矢崎座長  大変重要な点をご指摘いただきまして、ありがとうございます。供給側のファクター として医療提供体制の再編のお話、効率化のお話が出ていましたが、臨床研修必修化の あとの若い医師の進路選択方法にどういう影響を与えるかという点で、要するにいま必 修化された医師臨床研修後の医師の教育の方向性が、医師の需給に大きな影響を与える のではないかというご指摘ですが、これについて委員の方々でご意見はありませんか。 ○本田委員  私も古橋委員がおっしゃったような、いまの臨床研修をやっていらっしゃる研修医の 皆さんの動きがとても気になります。数は少ないのですが、いくつか2年目の研修に選 択制を設けているような病院に少し話を伺うと、1年目でローテートでいろいろ見て、 本当にきついということを実感してしまったことで、2年目の選択のときに外科を希望 する人がとても減っているとか、わりと楽というわけではなく診療分野として面白いと いうこともあるのだと思いますが、例えば皮膚科、眼科を2年目の選択で選ぶ人が多い という現実も聞いています。それは単に2年目の研修の選択なので、その後どういう道 に進むかを決めたものではないと思うのですが、そういう動きみたいなものを調査でき ないのかとも思います。  そういう現実を少し聞いていると、先ほどもありましたが以前にお話が出たような、 医局に戻られる際には定員制にできないのかとか、「あなたはどこの診療科に行きなさ い」ということを縛ることはできないにしても、検討すべき課題を骨子でまとめられて いるところで、ある程度の大枠や基準を決めるようなことはできないのかとも思いま す。  もう1つは関係ないのですが、現状の認識のところで「患者から見ると」というのは 多分私の意見だと思います。医師は常に忙しくて十分に時間が取れなくて、まさにそう 思っていますし、ちゃんと書いてありますが、一方でそれはある部分の診療科だったり 病院医師だったりというところなわけで、すべての診療科や開業医も足りないというの ではないのではないでしょうか。「現状の認識」の全体を読んでいると医師はとても足 りないから、数を全体として増やしましょうと言っているように読めてしまうのです。 不足している診療科や地域に進んでもらう仕組みもなく、単に増やされるのは患者とい うか、皆さんも保険料を納めて医療費を払っている者としてはそれは逆に不安を感じま す。医師1人を養成するのと、また医師1人が世の中に生まれると、何千万という医療 費がアップするという統計もあると聞きますので、その辺の医療費的な観点のことも是 非加えていただきたいと思いました。 ○矢崎座長  大変、貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。 ○小山田委員  2つだけお話をします。現在、私ども自治体病院全体で研修病院が578病院あります。 そこで抱えている臨床研修をしておられる方が1,023名いますが、1年終わったわけで す。その方々に去年の暮れですが、2年後はどうするかというアンケートを取りまし た。ほぼ半数は大学に戻りたい。あとの半数は戻らないというものですが、そうしたこ とを受けて、私どもとしてはその人たちが安心して働き甲斐がある、またいい医師とし て育てる責任があるということで、後期研修を含めたシステムを今つくっています。  もう1つは、この会の進め方です。平成10年度の答申のときに、各項目について必要 な医師の数を細かく書かれましたが、あのことについてもそれぞれの立場で、最終的に ああいう積み重ねで将来に向けて、どのぐらいの医師が必要かということを全項目につ いて見直していただくことをお願いします。 ○吉村委員  卒後の研修を含めて、もう少し長い目での研修、医師の養成ということを最初から申 し上げていますが、この長い目で見た医師養成のプログラムが絶対必要だと思います。 つまり卒業をしましてもこれは未熟ですから、まず初期研修、後期研修、それからさら に専門医への研修が必要となります。その修練は、単一の施設だけでは難しいと思いま す。留学もあるでしょうし、センター病院に行ったり、いろいろな所と連携したプログ ラムが必要だと思います。従来は大学の医局に属すると、初期研修も含めて大病院ある いはへき地も含めての様々な研修プログラムがあったと思いますが、現在は小山田委員 がおっしゃったように大学離れなのです。ならば新しいプログラム、グランドデザイン というものがないと。自治体病院だけで全科の医師を養成されるということであれば、 それはそれでよろしいのでしょうけれども、中小病院もありますので、それを含めた研 修システムがないと、自治体病院だけは埋まっても中小病院が足りないとか、国立病院 が埋まってもどこかが足りないとか、へき地が足りないということになります。そうい った研修の過程での多くの病院や、へき地を含めた研修プログラムが必要です。  さらにそれが終わりましたら、今度はいよいよ専門家としての就職ということになる と思います。その段階で開業を選ばれる、大学の教職に残る、あるいはどこかの大きな 病院のポストに行かれる場合は普通は推薦でもって行かれるのですが、推薦があるとい うことはそれなりのしっかりとした研修を終えたという、推薦するほうにも責任がある わけです。そういうことを含めて初期、後期、さらに専門研修の中でどういう医師をし っかりと養成していくかの視点がないと、ただ配置を替えることではなかなか難しいの ではないかと思います。 ○山本委員  後期の3年目以降はどうなのかという議論がありましたが、これは非常に重要な問題 だろうと思います。現在こういう医師の需給が問題になるほど、医師が非常に獲得しに くいという状態の中で、おそらく3年目は大学から見れば是非大学に戻ってほしいとい うことがあると思いますし、また一般病院では3年目の人の教育も含めてシステムをつ くって、さらに教育を重ねていくということでやっていこうというスタンスもあると思 いますが、そうすると3年目以降は取り合いになってしまう。逆にいうと3年目のドク ターは自分で選択もできますが、一方で迷ってしまうこともあるだろうと思います。私 は、ドクターの資格を取って2年目、いまは大学と一般病院の半々でやっていますが、 ある一定期間の中で必ず大学での教育は必要だろうと思いますから、そういうところに ちゃんと行って、ある時期にきちんとした大学の医療というのは何をやっているのだ、 医学は何をやっているのだ、研究は何をやっているのだということをしっかりと自分で 見て勉強して、その上で将来を選ぶような仕組みをつくっていかないと、本当の意味で いい医師は育ってこないだろう。ですから、後期研修の中ではどういう形でも、大学で も一時期やることを考えなければいけないのではないかと思います。  しかし一方で、大学も1年、2年は有給で3年目になったら無給になるわけにはいき ませんから、有給化の問題がありますし、学位の問題にしてもこれからは論文博士は駄 目だという方向でいっていますから、大学院に入らなければいけない。これは経済的な 問題もあります。一方で、それならば専門医を採ればいいではないか、専門医だった ら、一般病院でも採れるのではないかということも兼ねて考えていきますと、かなりこ の問題は一般病院も大学も一緒になって、3年目以降の教育の方針をきちんと出し、若 い先生方のためにやってあげなければいけないのかなと考えています。具体的にどうし ろというとなかなか難しい話ですが、むしろ大学の先生方が、この問題をどうお考えに なっているかを是非お聞かせいただきたいと思います。 ○水田委員  私は後期研修、すなわち専門研修は大学病院が中心になって関連病院と協力しながら 担当すべきであると思っています。なぜなら、"good clinician","good researcher", "good teacher"の3要素を備えた"professional doctor"を育てるためには、基礎から 臨床へのバランスのとれたtranslational researchの成果のもとに、最先端の医療を行 い、それを社会へfeed backするという1つの流れの中で、診療に、研究に、教育にと 一定期間身をおくことが大切であると信じるからです。日本の場合は、現在は専門医 (認定医)取得と学位取得という2つの目的がありますので、それをどのように組み合 わせるかと言うことが難しいところですが、専門研修につきましては専門医あるいは認 定医の資格がとれるようなプログラムを大学病院と関連病院が一緒になって作り、それ に従って臨床修練を重ねていくことだと思います。九州大学ではそのようなプログラム を組んでいますし、またこのような考えで進んでいます。九州地区には福岡県や沖縄県 を中心に若い優秀な医師達がたくさん初期研修をしています。その方々が2年の初期研 修が終わっても九州に残って欲しくて九州厚生局や医師会も一緒になって後期研修のシ ステムを考えています。大学が人を囲い込んでいるとか単純な考えではありません。関 連病院と一緒に若い人を育てていきながら、その人の能力に適した病院へ紹する事によ って地域医療も確保できます。 ○吉新委員  先ほども言いましたが、これまでは大学の医局が30代はこうだ、40代はこうだと、キ ャリアパスのモデルを提示していました。医局で育って、教授にならなければここの部 長があるとか、専門では本当は大血管外科医だけれども、自分はちょっと心カテもでき るとか、本当は肝胆動系のプロのとても腕のいい外科医だけれども、結局内視鏡のドク ターになったり、脳外科だけれどもチームから離れると結局神経内科になるとか、キャ リアパスというか、そういったモデルをいままでは大学の場合は明確に出したと思いま す。それで年齢に見合ったポジションがあって派遣をやって、人事ローテーションを回 して地域医療を確保して、ついでにへき地医療もやっていただいたということだと思い ます。いままでは各医科大学が80校だとすると、80本にさらに専門領域のキャリアパス というか大きな柱があったと思いますが、それがいまは完全に崩れつつある。それぞれ そのキャリアパスに通用しなくなると、ちょっとぶれると若いドクターたちは大変な環 境の違う所に置かれてしまう。いままでは医局を離れて、また戻ることは可能だったと 思いますが、これから戻る所もなくなってしまう可能性がでてくる。  先ほど小山田委員から、必要な医師数の数字を積み上げるときに、きちんとした議論 をまたもう一度しましょうという話がありましたが、需給委員会では、最終的にはこの 国の医療をどうするかということを議論しなければいけないと思います。フランスでも ヨーロッパでもアメリカでも、ジェネラル・プラクティショナーが2分の1はいるわけ です。日本は2分の1のジェネラル・プラクティショナーは、いわゆる一般と救急のド クターも入ると思います。そういう水平領域で、多臓器にわたる総合診療ドクターを一 生懸命につくってこなかった部分、臓器別のスペシャリストを一生懸命につくっても駄 目だと思うので、最終的にこの国のドクターの数はジェネラリストはこのぐらい、スペ シャリストの外科であれば血管外科医は何人ぐらい、脳外科医はどのぐらいという、あ る程度医療のあるべき姿から逆算していくようなことがあってもいいのではないかと思 います。前回の小児科と産婦人科のドクターも、不足数の試算を見て各専門領域はいい のですが、ジェネラル・プラクティス、いわゆるファミリー・メディスンの部分で日本 は非常に遅れているというか、そこの部分が専門医を取り合ったあとの残りのゴミ捨て 場みたいになってしまって、そこが本当はしっかりしないといけないのではないか。そ ういう意味では、この医局制度が相当弱くなる段階で、きちんとこの委員会で「日本の 医療のあるべき姿」の議論をしないと大きな混乱をしてしまうのではないかと思いま す。 ○池田委員  吉新委員のいまのお考えは非常に賛成です。医療のあるべき姿からどう考えていくか という議論の進め方の1つの例として、これは矢崎座長のいちばん推進されていること ですが、本当に生活習慣病が非常に大きな問題になっているわけです。日本はこれから 健康21という大きなキャンペーンを張って、厚生労働省と文部科学省も一緒になってこ れをやっていこうという大きな1歩を踏み出しているわけです。例えばこういうものを 1つに取って、これはどういう人たちが役割分担をするのか。医師だけでは、おそらく できない。看護の方たちもやっていくだろう。あるいは医師の中でも効率化を図って、 どういう役割分担をしながらそれに向かっていくだろうという一つひとつの医療を具体 的に考えながら議論を進めていったほうが、比較的ものに到達しやすいのではないかと いうことで、いま1つの例を挙げましたが、そういうのはいかがでしょうか。  特に健康21というのは、本当に矢崎座長が進められていることだろうと思います。こ れは、日本全体でこれからやっていかなければいけないことで、欧米ならず開発途上国 でも21世紀の非常に重要な課題だということは、WHOの最近のレポートでもはっきり しているわけです。これに取り組まない国はおそらく取り残されるわけですから、この テーマに対して、どう取り組むのか、どういう役割分担をするのかはとても重要なテー マかなと。あとは救急医療や外科医療と、いくつかのテーマが当然出てくると思うの で、そういう格好で積み上げていくのはいかがかと思います。 ○矢崎座長  いわゆる後期臨床研修で、いまの若い人は専門志向です。2年間の研修が終わった ら、自分はこういう領域の医師になりたいというところがあって、いまこの検討会では ジェネラル・フィジシャンあるいはファミリー・メディスンの重要性が述べられました が、実際にそういう領域にどういうふうに3年目の人の受け皿をつくったらいいかとい うことが、医師の需給を考える上では極めて重要な部分ではないかと思います。それに 対して、どうしたらいいかという方策をいま池田委員が提唱されましたが、そのほかの 可能性としては、特に大学あるいはほかの臨床研修病院で、どういうふうに対応してい ったということに何か提言がありますか。 ○池田委員  私は研修医と話をしていて、先生も言われたように2年間、ジェネラルなことを初期 研修としてやってきて、彼らはもう一段進んだところでどうしても勉強したい。そし て、勉強させなければいけないと思います。ですから、その体制をつくる。それは先ほ ど来皆さんがおっしゃっていたように、大学はその研修ができる。少し高度な研修がで きる所が一体となった仕組みをなんとかつくるようなことでやっていくほうがいいので はないか。決して取り合いをするわけではなくて、一緒になって考える仕組みをつくる のがいいのではないかと思いますが、吉村委員、どうでしょうか。 ○吉村委員  もう1つは、いま文科省の石野先生がお出になっていますが、大学の中にかなりでき ていますが、総合診療医学や家庭医学という構造をしっかりつくって、研修は多くの連 携の病院の中でしたり、海外に留学させたり、海外で然るべき資格を取った方を招くと いう学生のころから、そして卒後にかかっての仕組みがあれば、そういうことをやりた いという学生は結構いますので、その辺を教育の面からもサポートしていければよろし いのではないかと思います。 ○土屋委員  この研修医制度でちょうど大学と民間の研修病院が半々ぐらいになってきたというこ とで、ある意味ではちょうどいいバランスがとれてきているのかなと思います。ただ後 期研修なりいろいろな考え方がありますが、3年目ぐらいはいちばん大事な時期だと思 います。どうも綱引きをして、こっちの水が甘いぞという話で、いちばん肝心なところ がちょっと見失われてしまって、有意な人材が結局最終的には開業でもしようかと。然 るべき病院もなさそうだし、そこの職員になったらどうも忙しくて大変らしいと一般の 若いドクターたちの中には学生時代から、あるいは研修医の時代からそういう考えを持 つ人が大分いるみたいです。  先ほどの開業数が増えてきたのは確かにそうでありまして、昔は40、50代だったので すが、それが若い30、40歳代のほうにずれてきています。その最大の理由は何かといっ たら、先ほどお話がありましたように専門的なことをやりたい、折角学んだことだから と。その考えだけですと、余分なことはやりたくないという話になるわけです。時間的 な拘束もあまり受けないで、専門的なことだけをやれるのならばいいけれども、そうで はなくて燃え尽きてしまうような忙しいことは無理だと。すると、開業しようかという 先に希望のないような、致し方なくそういうほうへ移行してしまう状況が確実にあるわ けです。大学も民間の病院も、大学だけですべて研修できることではないでしょうし、 大学院という所で相当な数がいま吸収されていて、これも厳密にいうと大学院生であり ながら、一方で少し研修医なり何なりを指導しなければならないというところもあるよ うです。そこまでを含めて一貫した、きちんとそれぞれの希望・能力、あるいは意欲に 応じて選択できるような、あまりバラバラではなくて、うちのほうがおいしいよという ことではなくて、そういう形にする必要があるのではないでしょうか。大学にもそれ向 きの人材がこれからも必要なので、医局員がおられなくなってしまったという寂しい話 は、何か狂ってしまっていると思います。ですから、ちょうどいい機会ですので、後期 研修でも専門医制度でも大学院でもいいのでしょうけれども、いろいろな選択肢をきち んとプログラムと一緒に示してやる。同じような立場で、考え方でそれが選択できると いうように導いてあげるということは大事だと思います。  私は自分を振り返ってみて、臨床研修医の3年目ごろに、日本の将来、日本の医療は どうあるべきかということはあまり考えていなかったと思います。それについてはご立 派な行政の皆さん、あるいは教育者の皆さんがおいでなので、是非考えていただきたい と思います。そうなりませんと、私どもが傍から見ていて、いまの若いドクターたちが 可哀想です。 ○矢崎座長  どうもありがとうございました。残念ながら定刻がまいりましたので、今日のこの議 論は終わりますが、次回はいままでのご議論を踏まえまして、もう一度この議論を深め ていきたいと思いますので、委員の皆様方におかれましては是非また次回も議論してい ただきたいと思います。よろしくお願いします。  それでは、次回の検討会についてお願いします。 ○医事課長  次回の開催は、5月19日(木)16時から、場所は本日と同じ、こちらの省議室において 開催する予定です。議事については、いま座長からお話がありましたように、引き続き 骨子についてご議論をいただきたいと思います。先ほど何名かの委員からありましたよ うに、本日のものについてご意見等があれば事前に文書等でお寄せいただければそれを 反映した形で出したいと思いますので、よろしくお願いします。 ○矢崎座長  もし次回まで、まとめ案にこういう項目をしっかり入れようとか、この項目をまとめ 案に入れるのはいかがなものかというご意見がありましたら、事務局にファックスでご 連絡いただければと思います。  本日は、大変熱心にご議論いただきまして、ありがとうございました。是非、次回も よろしくお願いします。どうもありがとうございました。                                     −了−                         ┌─────────────┐                         |照会先          |                         |厚生労働省医政局医事課  |                         |課長補佐 宮本(内線2563)|                         |指導係長 双川(内線2568)|                         |代表 03-5253-1111    |                         └─────────────┘