05/04/25 「第12回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会」議事録について  第12回 医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会                      日時 平成17年4月25日(月)                         14:00〜                      場所 はあといん乃木坂2階213号室 ○堺部会長  定刻になりましたので、第12回ヒューマンエラー部会を開催いたします。開催に先立 ちまして、今年度から事例検討作業部会とこの部会は再編されましたので、委員の方々 の追加があります。事務局のほうも若干の変更がありましたので、まずそれについて事 務局からご案内をお願いいたします。 ○医療安全推進室長  新委員・新事務局のご紹介をいたします。まず、財団法人日本医療機能評価機構医療 事故防止事業部長の後委員、日本医療器材工業会常務理事の山本委員、日本製薬団体連 合会調査役の吉澤委員です。  また、4月の人事異動に伴って事務局のほうにも一部変更がありましたので、紹介い たします。医薬食品局安全対策課の山田安全使用推進室長、医政局総務課医療安全推進 室の小林医療安全対策専門官、平野医療安全推進室主査、小川指導係長です。以上で す。よろしくお願いいたします。 ○堺部会長  続いて資料の確認をお願いいたします。 ○事務局  資料の確認をさせていただきます。本日の議事次第、座席表、名簿に続いて、資料1 「ヒヤリ・ハット事例収集事業の収集体制の変更について」、4頁の資料になっていま す。資料2は「ヒヤリ・ハット事例収集事業第12、13回集計結果」で、47頁の資料にな っています。資料3は「ヒヤリ・ハット事例収集事業平成15年全般コード化情報集計結 果」で、13頁の資料になっています。資料4は「医療事故情報収集等事業第1回報告書 」で、40頁の資料になっています。資料はこの1から4です。  さらに別冊として、別冊1が(1)と(2)の別刷りになっています。「ヒヤリ・ハット事 例収集事業第12回、13回集計結果(データ編)」、1−(1)が157頁の資料、1−(2)が 241頁の資料になっています。別冊2として、「平成15年全般コード化情報集計結果 (データ編)」で、70頁の資料になっています。最後に参考資料として、「医療安全対 策に関する通知等」が7頁の資料になっています。以上です。 ○堺部会長  まず「ヒヤリ・ハット事例収集事業の収集体制の変更について」の報告をお願いしま す。 ○事務局  資料1をご覧ください。こちらは前回2月4日のヒューマンエラー部会で、先生方に ヒヤリ・ハットの事例収集体制の見直し等についてご議論をいただいたところですが、 その結果3月1日付で、収集分析機関である財団法人日本医療機能評価機構のほうか ら、参加医療機関に対して通知をしたことと、それを受けて厚生労働省からその通知が 発出された旨ご通知したものです。  1頁です。前回のヒューマンエラー部会でお諮りした内容が、そのまま変更内容とな っています。記より下、1からになります。「『記述情報』の収集内容の限定」という ことで、記述情報に関しては、従来どおり全ての参加登録医療機関から収集することと し、収集内容については収集期間毎にテーマを定め、そのテーマに該当する事例をご報 告いただくこととしました。ただし、以下に掲げる事例に関しては、広く医療機関等に 周知する必要があることから、定められたテーマにかかわらず全期間を通じて収集を行 うものとする、として警鐘的な事例、薬剤の名称や形状に関する事例、医療機器の誤作 動、誤操作によるもの、薬剤・医療機器・医療用具等に由来する事例、その他警鐘的な 事例については、収集期間に限らず収集することとして、各期毎にテーマを決めて、そ れについては参加医療機関に対して、事務連絡等で連絡する体制に変更しました。  2点目として、「全般コード化情報」について、報告施設の定点化及び収集期間の変 更を行いました。3頁に数字が載っていますが、全国の参加登録医療機関から、地域・ 規模・機能を勘案した「定点医療機関」を定め、そちらから事例を収集することとしま した。全国で約300施設とし、その選定方法は3頁のとおりとなっています。「定点医 療機関」からは、当該期間に発生した全てのヒヤリ・ハット事例に関する、全般コード 化情報を報告いただくこととします。また、「定点医療機関」については、日本医療機 能評価機構から、別途協力をお願いする文書を送付しています。収集期間ですが、平成 16年1年間は半年毎として行いましたが、再び四半期毎に収集することとしました。こ れが3月1日に日本医療機能評価機構から通知されました。  4頁です。それを受けて、厚生労働省から同様の通知を発出して、最後の4行になり ますが、昨年3月4日付で、医政局・医薬食品局の両局長名で通知した「医療安全対策 ネットワーク整備事業への協力について」は廃止するということにしました。これをも って、この評価機構からの通知に基づいて実施することになるので、お知らせいたしま す。資料1については以上です。 ○堺部会長  議事を進めていきます。1番の「ヒヤリ・ハット事例収集事業の第12回、13回集計結 果等について」のうちの、まず全般コード化情報について、事務局からご説明をお願い いたします。 ○事務局  資料2と別冊1−(1)をご覧ください。まず資料2の1頁です。「ヒヤリ・ハット事 例収集事業第12回、13回集計結果の概要」についてご報告いたします。  平成16年4月1日から平成16年9月30日までの6カ月間に発生した、ヒヤリ・ハット 事例に基づくものとしました。報告期間は、5月25日より11月23日までです。記述情報 は、当該ヒヤリ・ハット事例が発生した時期にかかわらず報告可能として、報告期間は 5月25日より8月24日までで、13回のほうは8月25日より11月23日までとなっていま す。  参加登録施設及び報告施設についてです。平成16年4月より、報告対象医療機関を全 国に拡大したことにより、多くの医療機関の参加登録があり、報告数も急増しました。 参加登録、回数毎の報告施設数はこのとおりで、12回が1,235施設、前回第11回に比べ ると5倍以上の施設数で、13回は1,259施設です。そのうち報告のあった施設数は、12 回が506施設、13回が445施設で、急増しています。  それに伴って事例の報告数も増加していて、全般コード化情報については、半年間で 8万8,601事例、3カ月間について、記述情報の12回、1万6,878事例、13回では1万 3,088事例ということで急増しています。4の表の括弧内は、医薬品・医療用具・諸物 品等の情報の内訳です。  2頁です。「第12回、13回全般コード化情報の分析について」です。ただいまお話し たとおり、報告事例数の総数は8万8,601件でした。分析方法はこれまでどおりで2、 3頁に記載されているとおりです。4頁です。参加登録施設数が急増しましたが、結果 としては、傾向は大きな変動はありませんでした。  全事例の分析結果です。発生月については6月にピークがありました。発生時間帯 は、これまでと同様、朝方6時から7時台になると増加し、午前中にほぼピークとな り、午後に入ってからは少し減少し、深夜帯の発生は少ないという日内変動を示してい ます。また、患者の性別も、若干男性患者のほうが多い傾向は続いています。患者年齢 も50代から80代の高齢者に多く、また0歳から10歳台の小児患者についても、7%程度 という傾向は続いています。また、発見者も当事者本人が多い状況は同様です。職種経 験年数、部署配属年数も、ともに0年がいちばん多いという傾向は同じでした。  また、発生場面についても、処方・与薬が3割弱の27%、ドレーン・チューブ類の使 用・管理についても15%、その他の療養生活の場面が12%という内訳は、同様の傾向を 示しています。また、発生要因についても、「確認が不十分であった」や「観察が不十 分であった」「判断に誤りがあった」「多忙であった」などが上位に挙げられていま す。影響度においては、間違いが実施された事例の割合が7割に達していました。実施 前に発見されたが、仮に実施されたとしたら生命に影響し得る事例が0.9%ありました。 以下、処方・与薬、ドレーン・チューブ類の使用管理、医療機器の使用・管理、輸血、 療養上の世話等に分類して、それぞれの内訳を単純集計と、項目間の相互関係を把握す るため、それらのクロス集計を行っています。具体的な数字及びグラフは、別冊1−(1) に掲載されているので、後ほどご覧ください。12回、13回の全般コード化情報について は以上です。 ○堺部会長  議事の1と議事の2はお互いに関連するので、議事の2の説明が終わったところで、 ご討議いただきたいと思います。続いて「医薬品・医療用具・諸物品情報の分析につい て」の説明をお願いします。 ○事務局  医薬品・医療用具・諸物品についての説明をいたします。資料2の37頁です。今回の 集計結果ですが、名称類似、記号違い、規格違い、勘違いが、比較的多く報告されてい ます。これは前回若干報告数が少なかったことから、これと比較するのは難しいのです が、過去1年間のデータと比較すると、大体同じような分布になっています。  細かい資料を簡単に説明します。別冊1−(2)の167頁です。事例の62番です。ラシッ クスとビソルボンの注射の取り違えで、この原因は返却時に正確に戻されておらず、そ のせいでの取り違えの事例です。次に169頁、事例の71です。ミカルディスカプセルと 錠剤のミグリスティンの間違いの事例です。こちらの問題点は、医師の口頭指示によ り、看護師が処方せんを代筆した行為にある、と考えられるという報告です。  次に172頁の94番の事例です。吸入薬の調整時に、注射薬のビソルボンを使ってしま った事例です。次に186頁の177番の事例です。同じ20mlのアンプルですが、20%のブド ウ糖とメイロンの注射を充填ミスしたことによる事例です。  その他、医薬品の187頁の190番、194番、195番の事例です。これはフルカリックとい って、2層バッグの事例です。いままで2層バッグについてはポスターなり、製剤のほ うに、真ん中の境界のところに赤い点線なり、つり下げのところにシールを貼るなどし て対策を取ってきたところですが、これは上と下の液の色が違う製品です。色の違う製 品については事故が起こりにくいというところから、その対策の対象外としていたので すが、今回、3例の報告がきているので、これも同様の対策を取るべきと考えていま す。  続いて医療用具の説明です。209頁の7番です。こちらは人工呼吸器ですが、電源が 切れた際に一緒に停止してしまった事例です。どうしてかというと、通常は停電時のバ ッテリを搭載していない製品で、それで電源が落ちると同時に機械も停止してしまった ということです。かなり古い機種だと思われるのですが、こういうものがまだ市場に残 っていて、このような事故事例が報告されています。  次に217頁の26番です。これもエビタ2デュラの人工呼吸器の事例です。これは連続 1,000時間を超えて使っていて、それによる故障事例です。これに似たような事例も今 回数例報告されています。いままでも同じような注意喚起はしているのですが、古い機 種や、いままで報告があったような事例が今回拡大したこともあり、同じような事例が 複数報告されているのが今回の特徴となっています。今後も同じような事例が変わらず 報告されているようでしたら、また注意喚起を行っていきたいと考えています。以上で す。 ○堺部会長  続いて、記述情報の分析の報告をいただきたいと思います。これまで、注射・点滴に 関する事例、チューブ・カテーテルに関する事例について取り上げてきましたが、今回 は残る5つのテーマで、内服薬、検査、食事、医療機器、転倒・転落について分析して いただいたので、分析作業の責任者である嶋森委員から報告をお願いいたします。 ○嶋森委員  資料2と別冊1−(2)です。まず資料2の13頁です。いま堺部会長からお話があった ように、今年度は7分野に分けて分析を行いましたが、注射・点滴、チューブ・カテー テルについては終了しています。これまで医療安全推進室から報告があったように、報 告件数は増加しています。分析方法等については12、13頁に書いてあるとおりです。  15頁の1つ目の○です。「分析結果及び考察」ですが、報告件数は従来の約9倍に増 加しています。情報量・内容ともに充実した事例が増加していて、これはヒヤリ・ハッ ト事例報告の組織的な定着・浸透が考えられます。  次の○で内容ですが、7分野の割合です。与薬・注射に関するものが約20%、内服薬 が約20%、転倒・転落は18%、チューブ・カテーテルが11%、検査が10%、食事関連が 4%、機器等が3%となっています。12回、13回とも、大体この前後で変わりなく続い ています。  その他では、無断離院・離棟、安静度が守られない患者と職員とのトラブル等の事例 があります。また、カルテの電子化が進む中で、内容の変化も見られております。  12回に分析した各テーマに沿って話をさせていただきます。(2)です。先ほど申し 上げたように、与薬に関してはたくさん事例が報告されています。与薬は、医療職の中 で職種の違う、医師、看護師、薬剤師が一連のプロセスで関与して行われるものです。 このプロセスの途中でエラーが生じて、最終的に患者に投与する看護師のエラーにつな がるということになっています。  DPCが導入されてから、外来で処方された薬を入院してからも継続して服用する、 いわゆる持参薬のエラー事例が発生しています。また、患者が薬を自己管理するため に、服薬管理指導が行なわれていますが、この自己管理に関連するエラーが発生してい ます。転倒・転落に関しては、常に多く報告される事例です。検査関連の事例は、回を 増すごとに増加していて、これについても患者誤認などがあった場合、影響が大きいの で取り上げています。食事、与薬に関連しては、病気や検査等との関連で、食事をどう するかは大きな問題があることかわかりましたので、細かく分析をしています。機器に ついてもいくつかの問題があります。  16頁下の全体総括です。内服・外用/麻薬の事例については、先ほど申し上げたよう にそれぞれの職種がかかわっていて、各職種がそれぞれの役割をきちんと果たすことが 重要になってきます。このプロセスをシステムとして構築していく必要があるのではな いかと考えます。それから、電子カルテの導入で薬剤師の業務の見直しの動きがありま すが、与薬プロセスにおける薬剤師の役割分担をもう一回考え見直す必要があるのでは ないかと思います。  17頁に「業務プロセスから見たエラー発生の状況とその要因」を示しました。Aは医 師の指示の段階です。電子カルテを導入している、していないにかかわらず、医師の指 示がタイムリーに現場に伝わってこないことがあります。医師はいつでもオーダーの変 更ができるわけですが、そのオーダーが看護のオーダーシートや電子カルテのオーダー 画面で止まってしまって、ベッドサイドにいる看護師にまでつながっていないという問 題があります。電子カルテを導入した場合でもその運用の取決めが十分にされていない のではないかと思われます。  2診療科以上が同時に1人の患者を診療している場合、この情報管理が一元化されて いないため情報が共有化されず、薬剤の重複や漏れが生じる状況が起きています。  医師の指示の中で、定時薬(通常1週間に1回定期的に出される内服薬)の指示が継続 されないという問題があります。1回定時薬を出した後、なくなっても次の指示が出さ れない。この辺の医師の指示責任をもう少しきちんとしていく必要があると思われま す。それから、外来や他院で処方された薬を、持って来ていただいて(持参薬と言われ ている)入院してから内服させるときにエラーが生じています。入院患者に医師が処方 する場合は、薬剤師が疑義照会等の管理をするのですが、持参薬を持って来た場合に、 新たに処方される薬剤ではないので、患者からの情報に基づいて内服させたところ、間 違っていたり、重複投与等が起こっております。この持参薬に関連しては、情報の適切 な管理と、薬剤師の関与が必要だと思われます。  指示受けのところでは、相変わらず口頭指示によるエラーが生じていています。電子 化が進んできていますから、必ず記録による確認が必要だと思われます。特に与薬の変 更が頻繁に行われるステロイド剤、ワーファリン、麻薬剤等については、エラーが多く みられていますので、変更指示が現場の受持看護師にきちんと届くシステムの構築が必 要だと思われます。化学療法剤等の個々の患者に応じた調整が必要な薬剤の場合は、同 様の問題が生じる可能性があるので、これを検討する必要があると思われます。  与薬の準備の段階では、配薬準備の業務が一元化されず複雑であること、環境的に看 護師はいろいろな業務を並行する中でこれらの業務が行われるために、ヒューマンエラ ーが生じやすい環境になっています。これまでも言われていますが、準備の業務に専念 できる体制、もしくは与薬するまでの準備された薬剤が病棟へ届くような仕組みが必要 だと思われます。与薬の段階でも、他の業務の割込みがあって、ヒューマンエラーが生 じています。毎日、食後に3回という通常のパターンの薬剤は間違いが少ないのです が、食前、食間、検査の前に投与すべきもの、投与を中断すべきものなど、非定型的な パターンで与薬される薬剤に関しては、非常にエラーが多くなっていますので、これら も含めてシステムをきちんと作り上げる必要があると思われます。医師が処方の責任者 という意識をもって、薬剤の定期的な処方をきちんとする、ということなどもきちんと していく必要があると思われます。  患者側の問題として薬剤の自己管理の問題があります。医師、看護師、薬剤師等が判 断して、患者に自己管理をしていただくわけですが、その自己管理のエラーが生じてい ます。これについては、自己管理をしていただくかどうかの判断を適切にする必要があ ると思われます。患者の状態、薬の内容、その他、自己管理をしていただくための判断 基準を作って、その基準をクリアした方に自己管理をしていただくということを、きち んとする必要があると考えられます。  実施後の観察ですが、与薬が薬を配るだけに終わっていて、内服を確認するところま で行き届いていないという現状です。これは看護師の業務の忙しさもあって、自己管理 が適切にできない患者にも任せてしまっていて、服薬時にこぼしてしまったという事例 もあります。これらの管理を適切に行う必要があると思われます。麻薬に関しては、注 射、座薬、内服等、いろいろな剤型があるので、これを十分に理解していないために重 複したり、与薬されなかったりするエラーが生じています。個々の患者への教育・指導 システムの構築が必要だと思われます。  20頁です。今後の課題としては、1つは持参薬の管理について、どの病院でも通常に 処方されたものと同じような仕組みにする必要があると思います。また、果たして他院 で出された薬を、新しく入院する病院で内服させていいのかということの検討も必要だ と思われます。DPCで包括化されたので、入院しても外来で処方された薬剤を内服さ せましょうということが多くなっていますが、安全性という面から検討が必要だと思わ れます。  また、自己管理の判断基準、配薬の手順や環境の整備も必要だと思われます。それか ら、日本薬剤師会が、内服薬、持参薬の管理を適切にするようにと注意喚起する文書を 出しましたが、そういうことも含めて、与薬のプロセスにもう少し薬剤師に関与してい ただくことを推進する必要があると思われます。  医学教育の見直しということでは、処方せんの記述の仕方にも検討が必要です、薬剤 の処方で「3×」と「×3」というような、謎かけのような処方の書き方があります が、このような誤解されやすい表記を辞めるなどの標準化が必要だと思われます。それ から、電子カルテを導入していますが、その情報が患者のすぐそばまで届かないという 問題や処方を変更した際の情報の共有化が図れていないということもありますから、こ の辺りの情報のやり取りを適切にする仕組みの検討が必要だと思われます。  21頁です。転倒・転落事例は昨年、全体的な傾向は見ましたので、今年は特に転倒・ 転落の多い場面について検討いたしました。小児、精神障害者、高齢者に転倒・転落の 事例が多く見られています。小児の場合はベッド転落が主です。ベッド柵がついている のに、親がそばについているからと油断して柵をおろしたまま隣の人と話をしていると きにベッド転落したというこ事例があります。もう1つは、ベッド柵の金具が壊れてい て、柵が落ちてしまって転落したという事例もあります。小児の場合は周りの人の注意 が必要であろうと思われます。小児のベッド転落は注意をしているつもりでも起きてい ますので、例えばベッドサイドで目を離すとき、安全性をチェックするリストを作って おいて、周りの人が安全を確認してベッドから離れるというような仕組みを作っていく 必要があると考えられます。  精神障害者の場合は、薬の影響や、治療上必要で行われた抑制に抵抗してベッドから 転落する例があります。薬剤は服用しないわけにはいきませんが、最近は副作用の少な い薬剤が開発されているということですから、薬剤の使い方も検討する必要があると考 えられます。  高齢者の転倒・転落は24時間いつでも起きています。特に夜間にも多く起きていま す。この辺りは、患者自身に理解していただくことと、高齢者には筋力の低下等がある ので、リハビリ等で筋力低下を防ぐこと、また周りの環境整備が必要だと思われます。 離床センサーの使用、トイレ等の設備の改修など環境の整備は必須です。「ナースコー ルを押してください」と言っても、患者は自尊心から押さないこともあります。自分で は大丈夫だと思って一人で行こうとして転倒するという事例があります。22頁の下のB ですが、転倒・転落の発生頻度の高い場所は、相変わらずトイレです。この整備が必要 だと思われます。  23頁ですが、トイレまでの動線がわからないことや、トイレの構造の不備がありま す。これは昨年立ち上がった療養環境研究会でかなりいろいろな検討がなされているの で、それと並行して、基本的な病院の構造のあり方を検討する必要があると思われま す。それと患者教育等も必要と思われます。  24頁です。検査の事例についてですが、検査をまとめて分析したのは今回が初めて で、900余りありました。ここでは1)の患者確認の問題、2)検査に伴う処置や投薬 の問題、3)検査時の食事の問題、4)検査部位・検体の取り違え、5)検査方法の問 題、6)機器のメンテナンスと操作の問題、7)血糖関連が問題として挙げられていま す。  患者確認の問題では手術などと同じように、患者の確認が必要ですが、これが適切で はありません。名前を呼ぶだけで、間違った人が検査室に入ってきてしまうことがあり ます。ですから、検査においても、少なくとも2つ以上の異なった、独立した方法によ る患者の確認が必要だということが、改めて認識されています。患者に名乗ってもら う、リストバンドを使うこと等を確実に実施する必要があります。  その下です。インスリン治療中の患者が、検査に際しての指示が不適切なため低血糖 や高血糖を起こす事例があります。以前にもインスリンの事例が報告されましたが、同 様のことが検査場面で起きています。これは指示の受け方についての標準化が必要と思 われます。機器のメンテナンスと操作の問題については、機器が不備で検査が遅れた事 例がありました。これは他の医療機器も含めて日常点検が必要だということです。これ についてもシステム化が必要だと思われます。  26頁です。複数の検査が重なる場合ですが、ある検査は食事をせずに行う必要があ り、検査の種類によって先にやるべき検査、後にやるべき検査等があるわけですが、こ れが混乱して、後にやるべき検査が先になって結局残った検査ができなかったという事 例があります。これらについては、電子化している場合は情報を一元化してコントロー ルする方法があると思いますが、電子化されていなくても、「ラリーシート」などを用 いて、どの順番でやっていくかを患者自身もわかるようにしておく必要があります。こ れを、検査室でも看護師が活用して、順序性を保ちながらできる仕組作りが必要だと思 われます。  検査部位の取り違えは、手術等と同様で診断の誤りが生じる可能性があり、非常に危 険なことです。医師がオーダーのときに自分で指示を書いて終わりとなっていますが、 家族、や本人、他の医療職も含めて、指示の段階できちんと確認する仕組みを作る必要 があると思いました。  27頁です。検査方法の適切性ですが、検査方法で、試薬の劣化、機器の整備など、ハ ード面の確認に偏りがあります。これも重要なことなのですが、採血部位、検体の状態 などのソフト面を軽視する傾向があります。この検討グループには検査技師に入ってい ただいていますが、血液検体が凝固するというトラブルが生じる場合がありますが、こ れは採血者の手技に大きく左右されるということです。検査結果で異常なデータが出た ので確認したら、採血時に問題があったという事例があって、そういう採血時に手技上 の問題が発生したときには、これを伝達する仕組みを作ることや、できれば検査技師が 採血までをやるべきではないかということなど、このグループでは検討していただきま した。検体と機器の精度の双方を確認し、インシデントを未然に防止することが望まし いとしています。それ以外に、検査のために服用を中止したり、服用しなければいけな い薬のことで、情報の伝達が不十分なために検査が行われなかったり、遅れたりという ことがあります。これはもう少し情報を共有する仕組みをきちんとすることが必要で、 例えば問診表にチェックリストを取り入れることなども考える必要があります。  28頁です。食事・栄養の事例ですが、これもこのようにまとめて分析したのは今回が 初めてです。294件で、経管栄養の事例、誤嚥・窒息、異物混入がありました。エラー の内容と発生要因ですが、指示の段階では単位の見誤り、指示の転記間違いが生じてい ます。後でも出てきますが、食事に関連する情報は、どういうものを使うか、どういう 惣菜にするかということで、医師の指示から情報の形が変わってくるという特徴があり ます。そういう情報の変化による間違いがあります。  実施段階では、経管栄養が早く入りすぎた、チューブから入れるべき栄養を、経口で 食べさせてしまったというものがあります。今回の場合はエラー事例ですから、静脈に 注入したというような事例はありませんが、レントゲンで部位を確認しないまま経管か ら入れるという、危ない事例もありました。経管栄養の場合、入退院、外泊検査という イベントがあるときの情報が不適切で、間違ったり、用意されなかったり、別のものが 用意されたりということがあります。  次の頁です。調理・配膳・摂食段階では、禁止食品、例えばアレルギー患者にアレル ギーが生じる食品がいく例かありました。また、絶食患者に食事が出たり、摂食中の誤 嚥・窒息の事例もあります。家族が介助している事例で、誤嚥・窒息を起こしそうにな った事例がありました。これは認知症の患者だと思いますが、自分で食事を詰め込んで 窒息しそうになった事例もありました。パンや刻み食材などで窒息や誤嚥などがありま すので、高齢者や麻痺などによる嚥下機能低下のある患者の食事の問題が、事例として 挙がっています。  異食や誤飲ですが、特に患者自らの異食はなかったのですが、家族がペットボトルに 化粧水を入れていて、それを飲ませてしまうということがありました。つまり、患者の 身の回りのことについて、異食等が起きないような指導が、医療者、家族を含めて必要 だと思われます。異物の混入として、毛髪、害虫、計量スプーン、爪楊枝など、さまざ まなものが入っています。  まとめとして、一つは、食事については、最近は患者サービスという面が強調されが ちですが、重大なエラーを防止するために管理方法等をきちんとしていく必要があると 考えます。2)ですが、病院食は、特に集団給食としての安全性の確保が必要だと考え られます。食事の過程には、病院職員以外の外注職員などがかかわっています。薬剤の 場合は、医師、薬剤師、看護師など、専門職だけがかかわるわけですが、食事の場合に は、専門職以外の看護補助者や外注職員等が関わるので、これらの職員を一元的に、適 切に管理するためのシステム化する必要があると思われます。集団給食としての管理 と、かつ、治療・ケアの一環としての食事管理、また、先ほど申し上げたように食事に 関連する情報が、医師の指示カロリーに対し、どの食品を使用して献立に変えるかな ど、変わった形になるので、この情報伝達の仕組みをきちんとしていく必要があると思 われます。  32頁です。結論としては、生命にかかわるエラー発生を防止するということで、食事 をどういうシステムの中で、何のためにやっているかということについて、専門職でな い人も含めた教育、手順等のシステムの確立が必要です。集団給食の安全確保というこ とと、治療・ケアの一環としての病院食の位置付けを明確にすることが必要です。多様 性を踏まえて、情報伝達の方法についてもう少し整理していく必要があると思われま す。  機器・機器操作については、184件を分析しましたが、1つは、機器の動作確認不足、 設定操作ミス等の人為的ミスと、機器本体にかかわる問題がありました。次の頁で、電 気及び医療ガスの病院設備に起因するものというのがあります。人工呼吸器の重大なエ ラーもいくつかありました。  次の人工呼吸器に関連するところでは、ケアの前後やレントゲン撮影等をした後、そ ういう操作に絡んで、蛇管が外れたり、亀裂が入ったりということがあって、人工呼吸 器の設置場所を病室の入り口からも見えるようにしておくとか、ケアや検査等の操作が できるような余裕を持った設置の仕方も考える必要があると思われます。それから、回 路の接続間違いがいくつかあるので、これも一体化したディスポ製品を使うことも考え ると同時に、ME等によって、きちんとセットしたものを現場で使えるような形にする 必要があると思われます。  設備に起因した突然の人工呼吸器の使用不能ですが、医療ガスの供給低下、圧が下が って一斉に使えなくなった事例や、ブレーカーの遮断がありました。つまり設備が不十 分だったり、たくさんの機器を使うのに必要な電気容量がないことがあります。これに ついては、医療機器等がたくさん使われるようになる中で、病院としての管理体制、設 備のチェック体制の整備が必要だと思われます。人工呼吸器のアラームを設定していな かったという事例はありませんでしたが、アラームが鳴ったときにどう対応するかとい う、ケアする側の体制整備も必要だと思われました。  輸液ポンプ及びシリンジポンプに関しては、操作前後の機器の確認が不十分で、相変 わらずスタートボタンを押さないまま離れてしまった事例や、クランプを開けないまま 離れたり、クランプを閉めないまま、ルートをはずしてフリーフローになったりという ことが起きています。これについては、手順やチェックリストをきちんと使うと同時 に、フリーフロー防止の仕組みのついている自動輸液ポンプにするなど機械の改善も必 要だと思われます。ポンプの種類については、先ほども少し出ていましたが、古いタイ プを使っているためにアラームがなく、気づかなかったということもありますので、改 善の必要があります。新しく手術台を買ったのに点検しないまま使って、ネジが外れて しまったということがあって、これはベッドでよかったのですが、機器を導入する際の 手順など仕組みを決める必要があると思われます。  さらに機器に関連しては、メーカーが推奨する点検をすることや、基準や手順の整備 をするということが、今後の対策として必要だと思われます。もう1つは、医療機器の 組織的な管理体制です。これはMEがいらっしゃればいいのですが、それだけではな く、電気容量等の設備の管理等も含めて、システム化する必要があると思われます。そ れから当然のことですが、医療安全の観点から、メーカーのものづくりについて、操作 パネルの統一化等を含めそういうものの工夫をしていただくとありがたいと思います。  13回については全体の概要だけですが、12回とほとんど変わりありません。長くなり ましたが、各テーマの分析結果を報告いたしました。以上です。 ○堺部会長  「平成15年全般コード化情報集計結果について」の説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは資料3と別冊2をご覧ください。前回は平成14年1年間の全般コード化情報 の集計結果をお知らせしましたが、今回は翌平成15年1月から12月の全般コード化情報 に関しての集計結果が出ましたので、ご報告いたします。  資料3の1頁です。収集期間は平成15年1月から12月で、1年間で5万1,119件でし た。分析方法等はこれまでと同様です。  2頁下段からご報告いたします。1年間とおしての集計結果になりますが、これまで と大きな傾向の変化はありませんでした。唯一1年間の経過を見たわけですが、月別発 生件数等は大きな変動や、特徴的な結果はあまり見られませんでした。別冊2に具体的 な数字やグラフ、表が掲載されています。  別冊2の1頁、図1−1が全事例の発生月の内訳です。7月が若干多く、1月、冬が 少ないことが多少見えますが、大きな変動はありません。その他の個別の項目の集計結 果も、大きな変動はありませんでした。別冊2は、平成14年、平成15年の2年間のデー タを、平成14年を折れ線グラフ、平成15年を棒グラフとして、2年分を掲載しているの で、データについてご活用いただければと思います。具体的な数字については割愛させ ていただきます。平成15年の報告は以上です。 ○堺部会長  以上の各年度の全般コード化情報、医薬品・医療機器等、記述情報について、お互い に関連するので、まとめて、これまでの内容について、ご質問、ご意見をいただきたい と思います。 ○事務局  説明の補足ですが、第12回、13回のヒヤリ・ハット事例の収集結果及び平成15年1年 間の集計結果については、3月29日に開催された事例検討作業部会で、すでに報告済み です。  あと、記述情報ですが、これまで全事例についても資料としていたのですが、報告し たとおり事例数が非常に膨大になったために、紙の資料とすることは控えさせていただ きました。今後ホームページで公表することにしておりますので、ご了承ください。 ○堺部会長  どなたからでも結構です、いかがでしょうか。 ○小泉委員  いま嶋森委員が発表されたことについてですが、特に食事のことを非常に詳しく分析 されて、食事にまつわるヒヤリ・ハット事例は、どこの病院でも起きていることなので 感心して聞いておりました。食事を摂取できる患者というのは、患者の家族が介在した ためにトラブルになったというのがありますが、患者自身が自分の食べるものだからと いうことで、安全管理に関する工夫はいろいろ病院でされていると思うのですが、そう いうことについて体系的に取り上げられることはないのでしょうか。患者自身が受身で なく、もう少し自分の安全は自分で守るという視点というのは、あまりよくないのでし ょうか。 ○嶋森委員  エラー事例しか挙がっておりませんので、なかなかそこに出てきていないのですが、 これは食事のことだけではないと思います。患者さんに対して情報提供が不十分だと思 われます。つまり、配膳されるとそれが自分のものだと思って、すぐに召し上がってし まうということがあります。  例えば糖尿病の患者さんで、十分に食事指導ができている人は、食事の量を見て、多 いから違うのではないかということはできるのですが、蛋白制限や糖分など、ほかの成 分制限の場合は、素人が見た目には一般食とあまり変わらないように作ってあります。 満足感をなくさないようにと配慮する余り、見た目があまり変わらないような状況で作 ってしまって、患者さんに理解していただくようにはなっていなかったと思います。今 回事例分析を行ってみて考えることは、委員がおっしゃったように、薬も含めて、食事 などは特にご自分の生活に関わることですから、十分情報を提供して、むしろ特定の栄 養食品だったら、ほかと区別するような形のものを作って、自分はこういうものを食べ るのだというように理解していただくと、エラーが少なくなる可能性はあります。そう いう意味では、患者さんに参加していただくということ、また、こちらも、きちっと患 者さんに評価していただくような支援の仕組みが必要であろうと考えられます。 ○稲田委員  こういった資料の収集についての質問です。ここに、参加登録施設数が1,200余りで、 報告施設が400半ばから500ぐらいと、約半分弱ぐらいなのですが、この辺の数字につい て、どう考えたらいいのかということ。それから、もう少し報告率を上げるような努力 というのは何かなされているのかということを質問したいと思います。 ○医療安全推進室長  従前から、参加いただく所には適切な報告をお願いしているところですが、なかなか ご報告いただけない場合もございます。今回資料の1で、ヒヤリ・ハット事例収集事業 の収集体制の変更ということを検討するに当たりまして、特に全般コード化情報につき ましては定点を決めて、定点医療機関になった所には必ず報告をいただくということを お願いして、それを前提に定点をお引き受けいただくことにいたしました。定期的なご 報告がいただけませんと、折角全国的な動向を把握できるような形で定点を決めても、 きちんとした動向が把握できないということがございますので、そういったお願いをし た上でこの見直しをしていただいているところです。今後もこの定点にきちんとご報告 いただけるように、医療機能評価機構と連携を図って、収集情報の質の向上を図りたい と思っております。  また、記述情報につきましても、あまりにも対象範囲が広くて散漫になりがちでした ので、時期を区切って、テーマを決めて集めるということにしました。そういった意味 でも報告しやすくなっているかと思いますので、参加していただいている医療機関に は、適切な情報の提供について、これからもできるだけ情報を提供してまいりたいと思 っております。 ○稲田委員  資料の集めやすさ、それから、病院側の努力もあるでしょう。前回から話題になって おりますが、私たちがここで何か施策をつくって、それがフィードバックされるかどう かが、モチベーションとして非常に大きくかかわってくると思いますので、その辺を少 し強調して今後もやっていく必要があるだろうと思います。  もう1つの質問は、いま定点の観測ということがあったのですが、前回、定点の観測 ということで何らかの対策を立てて、それがこういったいろいろな事例の減少に影響が あったかどうかということ。それから、定点の中で非常に改善したという所では、どう いう方策をとったかといったことを知るというような議論があったと思うのですが、そ れに関しての情報収集というのは、今後ずっとやりやすくなると考えてよろしいのでし ょうか。 ○医療安全推進室長  そういった議論につきましては、医療機能評価機構の中でもご議論いただいていると ころかと思います。ただ、今回定点医療機関を定めて収集方法を大きく変更いたしまし たので、まずは、その新しい形で適切に報告をいただく必要があると考えております。 ご指摘いただいたような効果的な収集と情報提供ができないかということについては、 今後ご検討いただく必要があると思っております。いまのところ、まずこの新しい方法 できちんとご報告いただくということを医療機関にお願いしているところです。 ○楠本委員  日本看護協会では毎週、医療事故報道について全国5大紙を中心に収集しています が、このところずっと続いているのが手術のときのゴムベラや縫合針、機械のネジの部 分など、異物の遺残です。多いのはガーゼです。そのガーゼが5年、10年身体の中にあ る患者さんはずっと不調を訴えていて、検査をしたらガーゼ遺残で、骨頭の部分が壊死 になって、それを外して歩行困難になっている。それから肉芽になって、臓器の一部を 切除するというようなこと。非常に長期にわたって、そして最終的に不具合がひどくな るという状況が起こってきているように思うのです。このヒヤリ・ハットの中には、異 物の遺残みたいなものは、どの程度報告されているのか、どこを見たらわかるのかとい うことです。定点で収集されるときに、是非その辺りも収集していただいて、抜本的な 対策を考えていく必要があるのではないかと思うのですが、集めていらっしゃる方、そ の辺はいかがなのでしょうか。 ○堺部会長  異物遺残がヒヤリ・ハットかという点があるかと思いますが。 ○楠本委員  それもあると思うのですが、それもヒヤリ・ハットとして報告されるのですか。 ○嶋森委員  ヒヤリ・ハットとしては報告されません。つまり、異物が遺残しているということは すでに事故ですので、それはヒヤリ・ハットには挙がっていません。 ○楠本委員  見つけたというのは報告されているのですか。 ○嶋森委員  見つけたというのはありますけど。ガーゼをカウントしたら合わなくて、探し回った ら何かと一緒になってゴミ箱に捨てられていたとか、もともと数が少なかったらしく、 いくら探してもなかった。そのような事例はいくつかありますが、それ以外に異物遺残 の事例はありません。 ○土屋委員  2点ありますが、まず1つは薬のところです。ダブルバッグに対して折角対策がとら れたのですが、もともと例外にした部分、2層であることがはっきりしているから少し 緩めてもいいのかなと。折角未開通を注意するためのシールを穴のところに貼って、ぶ ら下げるときに気をつけてほしいというつもりでそのシールが貼られたのに、中には注 意喚起の赤テープを隔壁開通前に剥がした。慣れがあって、結局それが注意になってい なかった、という点があるわけです。  ここは1つは教育問題です。折角出てきて、とられた対策がどういう意味を持ってい るのかということが、医療機関の中で必ずしも十分に周知徹底されていなかったという ことで言えば、この点はかなり反省しなくてはいけないのかなと思っているのです。折 角ポスターもお作りになっていますが、ああいうものが一般例として出てくると、どう しても自分の所ではないと。大体、事故を起こした所で聞くと、ヒヤリ・ハットはあっ ても、まさかうちでは起こらないだろうと思っていた、ということがよく言われます。 そういう意味では、防止のためのポスターなども、医療機関で作ることができるように 素材を提供して、自分の所に合ったものを作りなさいとか、画像も、自分の所に合った ものを入れておくとか。隔壁開通というのはいろいろな会社のものが載っているのです が、自分の所で採用していないと関係ないと思ってしまうということがあるわけです。 ですから注意ポスターも、ただ配るというよりは、医療機関参加型というようなやり方 を1つお考えになってはいかがかなという気がいたします。  それから、何度か申し上げていますが、いまの教育もそうです。根本的な対策とし て、基本的なところについてのルール、先ほど内服について嶋森委員からありました が、処方せんの書き方のような基本的なところの共通ルールというものをきちんとして おかなければいけないのではないか。本格的なIT化をしようとしたときに、ベンダー によってその解釈がいろいろ出来てしまいますと、折角のIT化が無駄になってしま う。日本のIT化というのは、いままでやっていることをそのままIT化してしまった のです。原理・原則に戻って本来あるべき姿を考えてIT化すればよかったのですが、 いままでやっていることをやったので、処方せんの書き方でも、自分の所でやっている やり方をそのまま、ということが多いと思います。基本的なことをいろいろ決めるとい うことが、IT化のときに最後の整理をする手段になると思いますし、是非そこは進め ていただきたいと思います。 ○堺部会長  処方せんの記述につきましては以前から、三宅委員をはじめ他の委員の方々からもご 指摘いただいたところですが、何か関連してのご発言はございますか。 ○三宅委員  私も従来から何回もお話しておりますが、いま土屋委員が言ったとおりでありまし て、いままで、地域、場所により違うやり方をしていたということがある。電子化され ていく、電子カルテがどんどん広まっていくという中で、標準化したシステムというも のをここで提示していくことは非常に重要なことですので、是非これは検討会議で話題 にしていただきたいと思います。 ○堺部会長  いま三宅委員からもご発言がございましたが、この処方せんの記述というのは大変重 要な問題ですので、この部会の親会議にあたる医療安全推進対策会議に報告いたしまし て、どのような体制でこの問題を討議すべきかということをご討議、ご決定いただきた いと思いますが、よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○堺部会長  ではそのようにお願いいたします。 ○山本委員  資料2の25頁なのですが、医療機器のデザイン自体に問題がある場合もあり、このよ うな場合には、医療施設から製造販売業者に働きかけることも重要である、というよう に記載されているのですが、従来、むしろそういう問題があったときというのは、比較 的医療機関から業者にご連絡いただいているのです。ところが、ご連絡いただいて、各 個別に対応するために、かえって問題が起こっているということのほうが多いような気 がするのです。ですから、そういう問題があったときには一定のところに集めて、むし ろ全体的に解決するようにしていただくほうがよろしいのではないかと考えているので すが、その点はいかがでしょうか。  それからもう1点。26頁の「参考省令等」の中で保守点検について書かれています が、施行規則施行令の中で「〈費用〉適正な管理が行われなければ」という記述があり ますが、この費用というのは、どういうことをおっしゃっているのでしょうか。実は点 検について、医療機関のほうは、メーカーがやりなさいというような形で言ってくる所 が多いのです。それで、ここで述べられている費用とはどういう意味を指しているのか ということを教えていただきたいのです。 ○堺部会長  それでは2つ目の費用のことを先にやっていただきます。これはどなたにお答えいた だいたらよろしいですか。報告ですので、嶋森委員でよろしいですか。 ○嶋森委員  私は、いまおっしゃった意味でのことはよくわかっていないのですが、それは保守点 検するためにメーカーに払っている費用と理解しておりました。そうではないのです か。 ○坂本委員  私どもの病院でもこれは問題になっているのですが、業者にお願いすると医療機械が 高くなる。では自分の所でやるというのはMEがやるのですが、MEに任せると、どこ までやれるかというのは、大変難しい機器もありますので問題がある。それから、業者 に聞くだけではなくて、自分たちで何年置きにやればいいのかということは、素人です ので大変難しい。そういう問題があって、では業者に任せましょうかと言って投げてし まうと、たくさんの機器がありますので、どれだけ費用がかかるかわからないというよ うな問題を抱えております。 ○山本委員  ここに書いてある「基準を設けることとした」ということは、費用とは違うのでしょ うか。括弧の中の費用のことを決めているような印象を持ちましたし、文章全体の意味 がわかりかねたのですが。 ○嶋森委員  そういう通知も出ているので、そういうことを検討しながら、どういう体制で適切に やっていけばいいかということを考えてほしい。基準をそれぞれのところで作ってほし い、ということを申し上げたつもりです。 ○山本委員  わかりました。そういう基準をつくるべきだということでしたら、是非やっていただ きたいと考えているところです。 ○堺部会長  山本委員が提起された問題の1つ目、医療機器に対して問題が提起された場合に、ど こでどのように扱うかということですが、これは医薬食品局のほうでいろいろ情報を収 集されて、その取扱いもいろいろな形で進めていらっしゃいますが、もし何かございま したらお話ください。 ○嶋森委員  私どもの分析の中で言っているのは、いままでにも、機器等の不具合があるという情 報が伝わっていないために現場で困って個々に解決していて、機器は直っていかなかっ た。それから、不具合に関する情報が一般化されていないのが問題で、1つは厚労省が 今、機器とか表示の問題を集めていますから、そういうところへ報告しなさい、という ことは今まで一般的に言われてきました。しかし、それだけではなくて、メーカーが積 極的に取り組んでいるようですから、機器の改善についての提案をしたら、メーカーの ほうで、当然他のメーカーとも相談して、改善していただけるのではないかという期待 がありまして、そのように申し上げているわけです。確かにメーカー毎に開発のノウハ ウや技術の特許の問題等があって、もしそういうことを個々に言われたら、自分の所だ けで秘密で直して提供するというようなことになるかもしれませんが、そうだとする と、それはどこか第三者でこれを統一して改善する場所を作らなければいけないことに なります。例えば先ほど出ていた、2層になった薬の対策については、いろいろな薬剤 メーカーが共通して対策を考えていただいたと思いますが、機器のほうでも、医療機器 安全性情報がありますので、そこに期待してこういう記述をしたつもりなのです。 ○堺部会長  事務局に補足をお願いします。 ○事務局  医療機器につきましても、不具合もしくはトラブル等々につきましては収集を制度で やっておりまして、報告された資料に基づいて必要な「回収」もしくは「改修」を順次 行っております。そちらの情報をもとに今後も、必要に応じて正していきたいと考えて はおります。 ○堺部会長  山本委員、よろしいですか。 ○山本委員  医薬品と医療機器というのは、実は、かなり違うのです。医薬品というのは基本的 に、どこかの医療機関のほうから、ここを直してくれ、あそこを直してくれと簡単には 言ってこないと思うのです。成分も変えられないし、何も変えられないのです。ところ が、医療機器というのは容易に改良できてしまうために、医療機関から非常に多数の要 望が各個別の企業に出されるわけです。そうしますと企業は、力関係からみて、医療機 関のご意見をすぐに聞いてしまうわけです。ですから、左側にスイッチを付けろと言う と左側に付けてしまうし、パネルも、こうやれと言うと、そういう形に作ってしまうの です。  それが新しい事故を招いているケースが、最近非常に目立っているように思っていま す。ですから、どこかでそういうものを防ぐシステムなり手段を講じられないのかと思 うわけです。 ○堺部会長  目黒委員は、何か補足することがありますか。 ○目黒委員   私はいつも医療機器を扱う当事者として発言しています。いま事務局のほうでも答え にくいでしょうし。私はいつも言っているのですが、病院の中に組織として薬剤部があ り、検査がありというように、臨床工学の部門をきちんと組織化して、医療機器の安全 対策、あるいは改修、改造についても受け入れる窓口がきちんと機能していれば、いま のような問題点はかなり整理されるのではないかと思っています。  先ほど皆さんが話していましたように、薬でもそうなのですが、各施設間で、医療機 器の保守点検の方法は千差万別なのかなという気がしています。近年は少しずつ技師が 整備をされている所もあるのですが、基本的にはメーカーが書いてあるような、何カ月 毎に何をしなさい、これをしなさい、あれをしなさいということを、すべからく保守点 検していましたら、いまの人材の中では力量がありません。それが事実です。私は、い ろいろな会議の席上で、臨床工学部門のことについて、皆さんに少しお力添えいただき たい、あるいは、典型的な施設をつくって、そういう所をモデルとして、1回実験的な 検討を始めていただきたいということを申し上げてきたわけです。ここら辺の話に集約 しているのは、そこに根底があるのではないかという気がします。  もう1点。私は日常仕事をしていて考えるのです。それは人工呼吸器についての問題 点です。人工呼吸器について、この機械がどれだけの機能を持って、どういうことがで きるのか、あるいは、この細かいスイッチを動かしたときに何ができるのかというの は、実は先生方も知らないことが多いのではないか。ですから、その辺は専門職種であ ります臨床工学の方々をなるべく活用させていただく。少なければ当然手も回らないわ けですが、そういう活用の仕方をなるべくシステムとしてつくっていただきたい。なる べく上の部会のほうにも話を持っていっていただきたい。基本的にいまのいろいろな医 療機関における医療機器の保守点検の現状を、もう少しつぶさに調べあげる必要がある のかなという気がしています。 ○三宅委員  おそらく山本委員がおっしゃったことは、医療機関が個別のメーカーにいろいろ言わ れて、いろいろ直すからますます複雑になってしまうということですね。これは私ども が平成14年に、ベッドのことでいろいろネットワークでお話をして、そして厚労省がと った方法は、業界団体としてそういう取組みをしなさいということでした。業界団体と してそういう窓口をつくって、業界としてどういうように安全に取り組むかということ を考えてもらうことが、おそらく厚労省の望んでいるところだと思うのです。  その場合、そういう方法でやるのか、あるいは、国として医療機器の安全基準のよう なものをつくっていくのか。両方あると思うのです。いずれにしても、各メーカーでは なくて、どこかの団体として窓口をつくらないと、いま山本委員がおっしゃったこと は、ずっと変わらないと思うのです。その辺で何かやらない限り、改善しないのではな いかと思います。 ○堺部会長  山本委員、いかがですか。日本医療器材工業会の中に、安全委員会があるということ をお聞きしたように思うのですが。 ○山本委員  はい、ございます。受け皿は私たち工業会でもつくりますが、医療機関でも、是非要 望などを一本化できるような形にしていただいたほうが、個々に出していただくよりは やりやすい。そうでないと、どこかの医療機関で出たものだけに対応して、次はまた違 う対応だという、同じような形になってしまいます。是非医療機関でも、一本化できる ようなシステムをお願いできたらと思います。 ○小泉委員  先ほど事務局から説明されたことについての質問です。いろいろな情報を収集すると おっしゃいましたが、実際に、情報はどこから来るのですか。 ○安全使用推進室長  医療機器の安全情報のうち、いわゆる不具合情報につきましては、薬事法に基づい て、基本的にはメーカーや承認を持っている業者から来るというルート、それから、医 療機関から直接報告をいただくルートとあります。 ○小泉委員  実際は、どちらが主なのですか。医療機関から直接情報が来るのか。 ○安全使用推進室長  私どもが受け取っている情報の量からすれば、業者経由の情報が圧倒的に多いです。 ○小泉委員  その場合、業者は、病院からクレームが来たら、ほぼ自動的に、こういうことがあっ たと報告するのですか。 ○安全使用推進室長  いま申し上げたのは不具合の報告ですので、必ずしもここで議論されているヒヤリ・ ハットとイコールではありません。ヒヤリ・ハットというのは、実際に事故が起きる前 のことです。不具合情報というのは、むしろ事故が起こったとか、健康被害あるいは有 害事象が起こった事例が主です。 ○小泉委員  車のリコールのシステムは、他の業界に学ぶということから言うと、もう少しきちん としているような気がしましたが、どうなのでしょうか。 ○坂本委員  私どもの事例ですが、この前、アンビューバッグの違う所に刺したら酸素が行かな い、というのが見つかったのです。それを業者にお願いしたら、業者は、すぐに直しま すからということでやるのですが、国に届けてくださいと言って、届けてくれているの かどうか分からないのです。国に届けた書類を、同じようにコピーしてくださいと言う と届けるということになるのです。だから、やはり病院も、すぐに直すということにな ったときに、「直してくれて、ありがとう」ではなくて、国に届けるコピーぐらいはも らっておく。MEも入っていますし、それは医療安全室のほうで一括してやりますが、 そういう仕組みは少しずつ浸透されてきていると思うのです。 ○吉澤委員  先ほど山本委員は、医薬品では改善要望はないと言われたのですが、これは全く違っ て、医療機器と全く同じように、ものすごい数で製薬企業は、外観類似を解消する依頼 を受けています。先ほど山本委員が言われたことは薬にとっても同じで、個々の病院か ら言ってこられますと、例えばA病院でAという薬とBという薬が類似している。だか らAを変えろとものすごく強く言われる。それに、たくさん使っていただいているとい うのか、大事な顧客だと思うと、やむを得ずこれを変えてしまう。そうするとB病院で は、改善したA薬とC薬がそっくりになったと言って呼ばれて、すごく叱られて、元へ 戻せと言われる。そういう経験を随分長い間繰り返してきています。  いま日本製薬団体連合会では、個々の病院の問題について個々に改善を持ってこられ るとすごく困るので、外観類似については、いま厚生労働科学研究のほうでも行われて いますので、そういう結論を待つとか、類似性ワーキングで検討する。製薬企業だけ、 あるいは業界だけで検討して何かをやるというのは、必ずしも現場に即したものではな くなる可能性もあるので、いろいろな関係者が集まったところで十分検討する必要があ るのではないかと思っているのです。  山本委員が言われたのは、それをやりたいということだと思うのですが、業界団体だ けでこれを受けるのでなく、出す側も、例えば薬の場合なら、病院薬剤師会で一度集め てくださいとか、そういうお願いもしております。協調してやっていかないと、これは 非常に難しい問題だと思っています。 ○堺部会長  ありがとうございます。今後の検討課題の1つだと思います。それでは議事の3に移 らせていただきます。「医療事故情報収集事業第1回報告書」について、日本医療機能 評価機構から報告をお願いします。 ○後委員  本日の資料4につきまして、私ども日本医療機能評価機構から説明させていただきま す。資料4「医療事故情報収集等事業第1回報告書」は、去る4月15日(金)にこの報 告書を取りまとめまして公表したところです。当日は記者会見を行いましたし、また、 日本医療機能評価機構のホームページにおきまして現在掲載しているところです。  内容の説明に入ります。1から2頁は、この事業を取り扱っている医療事故防止セン ターのセンター長である野本の巻頭言です。そして3頁以降が、「医療事故情報収集等 事業の概要」を書いております。特に3頁にはこれまでの経緯を書かせていただいてお ります。  4頁の1)は対象医療機関です。報告が義務となっている医療機関として(1)から(4) の医療機関、そしてもう1つ、参加登録申請医療機関ということで任意の医療機関、こ ういった2種類の医療機関について、その内訳を書かせていただいております。  2)は対象情報です。これは事故の定義にもなりますが、本事業において報告の対象 となる情報は次のとおりである、と書き始めて(1)から(3)まで書いております。  これについては38頁に、報告の範囲について説明をするためのQ&Aがあり、そこに 事故の定義について図示しております。簡単に申しますと、事故というのは幅広に定義 をされておりまして、「明らかに誤った医療行為又は管理」だけではなくて、「明らか に誤った医療行為又は管理は認められないもの」も事故に入ります。また、そういった もの以外にも、「事故の発生の予防、再発の防止に資する」ということであれば、事故 として報告をいただく。このような幅広い定義になっております。  5頁の3)は報告方法と報告期日です。報告期日は、事故の発生、あるいは事故の発 生を認識した日から2週間以内に行っていただきます。  方法はインターネットを使っております。この制度の発足当初はインターネット回線 がなかなか使いづらいというご指摘もございましたので、この5月2日から、少し報告 しやすいような改善をしているところです。  4)は本事業の運営体制です。(1)の運営委員会という委員会の下に、(2)専門 家部門として(1)総合評価部会、(2)専門分析班という形で、専門家の先生にお集まりい ただいて収集・分析をしていただきます。  6頁は医療事故防止センターの組織図です。そして7頁以降が、今回第1回報告書の 中の数字を示した所です。7頁に「報告の現況」とあります。1.の登録医療機関につい て、登録医療機関は義務の所と任意の所と2通りあると先ほど申し上げましたが、両方 足し合わせて533医療機関です。その中で、報告義務医療機関という、義務の課されて いるところが276、引き算をした257は任意の医療機関ということになります。  下の段の表は、月別の報告件数です。10月に制度がスタートして6カ月になります が、その間に533件の報告をいただいております。登録医療機関数の533と同じ数字です が、これは全くの偶然でありまして、533機関がこの期間に1件ずつ報告しないといけ ない、というようなルールがあったわけではございません。  8頁は、特にこの事業の中心になる、報告義務の課せられている医療機関の報告状況 です。国立高度専門医療センター、及びハンセン病療養所を例にとって説明させていた だきます。そこは登録数が21になっておりますので、そういった医療機関は21あるとい うことです。今回第1回報告書に盛り込まれている報告をいただいた医療機関は、21の うちの11医療機関であったということです。この11の医療機関から挙がってきた報告の 件数は25件であったと、このように読んでいただければと思います。合計で、報告義務 のかかっている医療機関からは482件の報告をいただいているということです。それに 任意の医療機関分を合わせて、トータル533です。下の段の表に、報告の内容というこ とで内訳を示しております。  こういった分類につきまして、34から37頁が報告をいただくときのインターネット上 の画面になっております。34頁から始まる、このような詳細な項目についてチェックを していただくことになっています。こういったチェック項目のどこにチェックをしてい ただいたかを集計したものが今回の報告書の数字です。  ちなみに、この報告のインターネット上の画面は、このようにチェックをする部分 と、37頁にある大きい空白の部分、そこが文字で書いていただく部分です。このよう に、コードによる情報と記述による情報の2通りを事故についても集めるという形にな っております。  9頁にお戻りください。9頁の上の段の表は「事故の程度」による分類です。先ほど チェックのあった項目で「死亡」とチェックされたものが83件。そして、障害残存可能 性が「高い」「低い」「コード選択なし」は、いずれも医療機関のほうで判断してチェ ックをした数を集計したものです。  下の段の表は「発生場所」による分類ですが、これは病室が多くなっておりました。  10から11頁は、これを先ほどの更に詳細な報告画面の項目毎に分けたものです。それ ぞれの件数にしますと、まだ数はたくさんはないということです。  12頁は「発生場所」と「事故の程度」ですが、病室で発生が多く、死亡事例なども多 いということでした。  13頁からは報告・記載の現況ということで、課題としていくつか、今回の報告に関し ての状況を数字で書かせていただいております。と申しますのは、いただいた報告を見 ると、コードとして当然選択されているはずのところが選択されていないとか、前半の 選択と、それからずっと読み進めて後半のコード選択とが矛盾しているということがあ る等、いろいろな問題が散見されました。  14頁は、コードとして選択されているべきところが実際に選択されていない数やその 率を「未選択率」という言葉で表にしておりますが、数パーセントから数十パーセント と未選択率のかなり高いコードもございました。  15頁は、記述情報のほうで表になっておりますと、実施した医療行為の目的や発生要 因、背景・要因、改善策等、いろいろ記述していただいたほうがいい部分ですが、ここ も未記入率が1桁から2桁パーセント、多いと20%ぐらいあるということ。あるいは (1)から(4)に書いてある中に、なにかしら記述してはあって、その意味で「未記入」で はないわけですが、その記述を読み進めても、もうひとつ内容が把握できないような、 十分な記載でないものもあるというような、今後の改善の必要な課題もございました。  そのために15から16頁では、ある程度専門的な知識を持った方が入力のところを担当 していただければという趣旨で書かせていただいております。  17頁では、専門家の先生方による分析班で特に優先的、集中的に分析するようなテー マを設定するべきではないかという議論になりまして、そのためのテーマの選択基準を (1)から(5)まで書かせていただきました。(1)が一般性・普遍性、(2)が発生頻度、(3) が患者への影響度、(4)が防止可能性・回避可能性、(5)が教訓性です。  18頁の下のほうにある(1)手術等における異物残存、(2)医療機器の使用に関する事故 という2つのテーマを、17頁にある(1)から(5)の観点から選ばせていただきました。こ の2つは今回きりのテーマというわけではありませんで、その意味で、今回の報告書で 終わりということではありません。今後も集計し、分析結果を追加して公表してまいり たいと思っております。  19頁は、1)手術等における異物残存について、分析班で現在言えることを1頁ほど 書かせていただいております。基本的には数がまだあまり多く集まっておりませんの で、詳細な分析まではいっておりませんが、件数としては16件ぐらいあります。そのう ち5件の事例については、電話で詳細な調査を行ったり、それぞれの医療機関に訪問に まいりまして詳しい情報収集をさせていただきました。  異物の内容としては、ガーゼや縫合針、鉗子、眼科の治療に使う金属プラグ、スプー ン、開創器の部品、その他いろいろなものが遺残物として残っておりました。これらの ものをみますと、手術に直接関係するものと、そうでないものとがありました。手術に 関しても、本来手術野において手術操作を加える際に使用しているもの、あるいは本 来、手術のときでも体外で、手術野と異なる場所で使用していたものが落下した等、い ろいろなものがございました。  その原因として、例えばガーゼカウントや機器カウントなどが不備であった、あるい は手術後のエックス線撮影により残存物の有無を確認する方法が不備であった。そうい ったことの実施の有無が1つの医療機関でもばらついている、というような事例が見ら れました。  今後は、先ほど少し議論にもありましたが、ヒヤリ・ハット事例の収集事業のテーマ にもある「手術等における異物残存」を掲げさせていただく。ヒヤリ・ハットのほうで は、異物が残存しそうになったけれども、それが回避できたというような事例になるか と思いますが、回避できたものから、実際に残ってしまったものまで、総合的に情報を 収集して分析することにしております。  20頁は、2つ目のテーマである医療機器の使用に関する事故です。これは更に件数が 少なくて7件です。このうち1件については訪問調査を行っております。  その7件の内容は(1)から(4)にあるように、誤ったアラーム設定。そもそもアラーム をOFF として、設定していなかったものも含んでおります。あるいはチューブの接続が 外れてしまったもの、医療機器、医療用具の操作ミス、医療機器の誤作動といったよう なものがございました。この医療機器の使用に関する事故につきましても、ヒヤリ・ハ ットのほうでもテーマとして設定し、同様の情報収集と分析を行っていくことにしてお ります。  以上が報告書の本編なのですが、21から25頁は「付録」という位置付けで情報提供さ せていただいております。今回の事故情報の報告を見ますと、事故発生時の事実把握の 方法について、もともと決まった方法で行っていなかったり、きちんと把握できていな かったりするような状況もございました。特にこの記述の中では、24頁に表を付けてあ ります。例えば、時系列による整理を行う。すなわち時刻に沿って整理をしていく。あ るいは直接的・間接的な関係者を全員列挙して、それらの方々の関与や発言や振舞いを 時系列で整理していくような表を作って把握していく、という方法を1つ紹介させてい ただきました。  26頁以降は資料です。26から30頁は資料1、報告義務の対象となっている医療機関の 一覧、276施設です。31頁は資料2、医療事故防止センター運営委員会の名簿。33頁は 資料3、専門家の分析結果を更にこの報告書に取りまとめる医療事故防止センター総合 評価部会の名簿。34から37頁は資料4、先ほど申しました報告画面です。そして38頁か ら最後まで、資料5として医療事故情報収集に関するFAQを掲載しております。簡単 でございますが、説明は以上です。 ○堺部会長  ありがとうございました。ただいまのご報告にご意見を頂戴したいと思います。どな たか、いかがでしょうか。 ○山路委員  質問なのですが、報告義務医療機関以外に任意で参加されている病院が、いまの話だ と257あるという話でした。これは医療事故に関する基本的なことで、そちらに伺うべ き話ではないかもしれませんが、医療機関の公共性、公益性ということを考えると、医 療事故ですから、本来は全部の医療機関が公表すべきだと思うのです。それで、ここに 登録されている医療機関というのは、どういうインセンティブがあって参加されている のかということ、つまり何か得があるのかということです。また、参加していない医療 機関に対しては、もう少しそれを広げるような方策を考えておられるのかどうか、その 点を伺わせてください。 ○後委員  任意参加の医療機関について、まずインセンティブということは特にございません。 医療機能評価機構から何か特にメリットとなることをお返しする、というようなことは 特にございません。それでも、こういった医療機関の皆様方から、この事業の趣旨に賛 成していただいて、医療事故の防止につながるような情報を差し上げます、ということ で自主的、篤志的なお気持によって参加していただいているところです。  それから、この事業に参加していない所に関する方策ですが、医療機能評価機構のほ うでもいろいろな医療安全の事業をやっておりますので、全国いろいろな所で行うとき に、「任意の医療機関」ですから、参加する、しないはそこの判断になりますが、広く 参加していただきたいと申し上げていきたいと思いますし、その趣旨は、できるだけた くさんの情報を集めて、偏りなく医療事故の防止に役立つような情報として分析・解析 して還元していきたいということですので、取り組んでまいりたいと思います。 ○山路委員  ここで議論すべき筋合いの話ではないかもしれませんが、医療事故についての報告と いうのは、むしろ医療機関に義務づけたらどうかと思うのです。これは問題があまりに も大きすぎるのですが、任意で、報告している病院と報告しない病院があるというの は、どうにも割り切れないのですが。 ○堺部会長  事務局から、何かございますか。 ○医療安全推進室長  医療事故の報告の制度を議論いただいたときに、今回医療機能評価機構で実施してい ただいている報告制度につきましては、医療事故の発生の未然防止と再発予防というこ とを目標にしており、個別の医療機関の処分等にはつなげないということで、幅広く情 報を提供していただくことが目的になっております。ですから、ご報告いただく医療機 関につきましては、先ほどのヒヤリ・ハットと同様、ご参加いただいた以上、適切な情 報を定期的にお出しいただくことが重要になりますので、そこはご理解いただかないと いけないと思っております。しかし、全ての医療機関が参加した場合に、情報の質の問 題等ございます。  ご参加いただく上では質の高い、背景、要因まで分析されたような情報をご提供いた だくことによって、再発防止策の検討などに資するものと思っております。医療事故を 全ての医療機関にご報告いただき処分につなげるべきという御意見もあると思います が、この事業については、そういうことを目的にしたものではございませんし、憲法第 38条の自白の強要の問題等もあり、どのような形で御報告をいただいて、それをどうい う形で利用し、また処分などにつなげるのかどうかというのは大きな問題です。 ○山路委員  病院名の公表を前提としないということだからこそ、逆に協力が得やすいのではない ですか。だから、義務づけは、むしろやったほうがいいのではないかと思うのですが。 ○医療安全推進室長  そういう意味では、全国に参加対象を広げておりますので、ご参加いただきたいとい うお願いはしているところです。 ○山浦委員  私は、分析能力に限界があるのではないかと思います。全病院でやって、どれだけの 事故の報告が挙がってくるかわからないのです。今回のものも、分析できるのかという 気持で見ていたのですが、このように、きちんと分析していただきました。しかし、隅 々の病院までの事例を収集するということになると、質を下げないことには分析し切れ ないのではないかと思います。ですから、実を上げるために、ある程度絞った数でも、 きちんとした分析をして、それをフィードバックするようなシステムが出来上がらない と、次に進めないのではないか、そのことを第三者として考えております。 ○小泉委員  これもヒヤリ・ハットの議論のときに出たのですが、定点的にやるというのは基本的 には事実を把握して対策を立てるための調査だと思うのです。ですから、世の中で起こ っている事故を全て把握しようというのは、先ほど言われたように、処分ということも 含めた発想になると思いますが、ここはそういう主旨ではないので、参加された病院が あまり事例を出さないということも含めて、これは調査なのだと思います。ヒヤリ・ハ ットにしても、事例は十分集まっていると私は思うのです。だから、あとはしっかり分 析して何か提言する、というところにシフトしていったほうがいいような気がします。 事故のことは、いいデータが出始めているので、啓発の意味も含めて、事例を公開する とか、警鐘を鳴らすために、いろいろ広報的なことをしていただくことが大事だと思い ます。 ○三宅委員  自由参加というのは、評価機構の認定病院が対象ですか。 ○後委員  いいえ、それは認定病院の仕組みとは全く別の事業です。 ○三宅委員  私は今日のお話を伺って、このように1例1例を細かく、きちんと検討するというこ とはいちばん大事である。ただ数を集めただけでは、あまり意味がないと思っておりま す。ですから、定点にしたということは、その定点から、日本全体でどれぐらい起きて いるのかということが把握できるし、どういう所でどういう事が起きやすいのかという ようなことが把握できると思うのです。しかし、個別の問題を詳細に検討することで、 その中から、予防するための材料がいろいろ発見できると思うのです。これは非常に素 晴らしい取組みだと私は思います。こういうものをどんどん進めていただきたいと思っ ております。 ○嶋森委員  私も、いまはまだ、どういうように分析して対策を考えていくか、その試行の時期だ と思っています。集めてきた事故事例の情報を詳細に把握することによって、どういう ように情報を提供していただくと対策が考えやすいか。そのノウハウがある程度はっき りした段階で、病院としてそのぐらいのことはした上で結果を報告してもらう。そうい う目安がついた時点で全体に広げていってもいいかなというような印象で、むしろ、い まどういうことをすれば事故から学べる仕組みをつくり上げることができるかというこ とで、とりあえずやっていくことが重要ではないかと思います。 ○小泉委員  現地に行って調査するということでしたが、どれぐらいのチームで、どれぐらいの労 力がかかっているのでしょうか。 ○後委員  チームといいましても、大体3名ぐらいです。もちろん事務局が1人入りますので、 専門家は残り2名という形です。先ほどの遺残のほうが4件、機器のほうが1件、合わ せて5件を1月ぐらいから行っておりまして、このぐらいがマンパワーの限界というと ころです。 ○堺部会長  それでは議事の4「その他」に移りたいと思います。参考資料の「医療安全対策に関 する通知等」について事務局から報告をお願いいたします。 ○事務局  参考資料を1枚めくっていただいて、簡易血糖自己測定器及び自己血糖検査用グルコ ースキットの安全対策についてです。このグルコースのキットですが、昨年の9月29日 に、グルコース脱水素酵素(GDH)法を用いた血糖測定器及び血糖検査用グルコース キットにつきましては、一度通知を発出しております。ただ、その通知を発出した後も 同じように、マルトースを含む輸血を投与中の患者さんに当該キット及び当該機器を使 用して、その測定値に基づきインスリンを投与した結果、当該患者に低血糖が発現した という症例が複数報告されたことから、今回またこのような通知を発出したところで す。  具体的には、下のところをご覧いただきたいのですが、「当該機器の使用方法の周知 徹底について」ということで、1.として、当該機器及びキットは、原則として、患者 さん自身が自宅等で血糖を測定する場合に使用するものであること。2.として、当該 機器へのシール等の貼付又は配布です。患者さんが個人で機械をお持ちのケースがほと んどなものですから、測定用の試験紙に、機器に貼っていただくシールを付けて、外来 の患者さんにも配布して、そこで付けていただく。もしくは、外来の窓口に患者さんが いらした場合は、医療機関の方でも構いませんので、機器をお持ちであれば、その場で 付けていただくという対策をとったものです。  3.として、糖尿病教室等での患者教育で、これを行ってくださいと。具体的には、 わかりやすい資料等を用いて患者さんに指導していただきたいということです。  3頁以降は、機械を取り扱っている企業と試薬を取り扱っている企業に、具体的にこ のような対策をとってほしいということが書いてあります。  7頁は、点滴用のキシロカイン10%製剤の取扱いについての通知です。従前から点滴 用キシロカイン10%製剤については、単品での取扱いの誤り、もしくは静注用2%製剤 との取り違え等が複数報告されておりまして、2001年よりラベル変更、もしくは添付文 書の変更等を、複数回対策をとっているところです。しかしながら、その後も取り違え 等の事故が続いていることから、販売元であるアストラゼネカ社のほうから、医療事故 防止の根本的な解決方法ということで社のほうで検討した結果、販売中止が妥当である との結論に至りまして、2005年3月末日に販売中止という申し出がございました。それ をもって、2004年10月から、代替製剤の案内を含めて情報提供等を行ってきたところで すが、今般、2005年1月に日本ホスピス緩和ケア協会より、がん性疼痛治療における供 給継続の要望がございました。それについて検討いたしましたところ、本年9月末まで の暫定的な措置として、がん性疼痛治療の分野に限って、別途文書をもって、医療機関 が当該製剤の適切な管理を行う旨確約した場合のみ、この製剤の供給をすることといた しました。その他の場合、現在循環器等で使われている場合の用途については販売を中 止するよう、併せてアストラゼネカ社のほうに指導をいたしております。  とはいえ、医療機関のほうには在庫等が残っておりますので、その在庫の取扱いにつ いて注意をしていただきたいということを、その下の5行に書いております。基本的に は、1年前に日本医療機能評価機構と循環器病の学会等でPRしている、救急カートを 含め、救急部を含む全外来・病棟等から標記製剤を、撤廃していただきたいというより も、必ず撤廃してくださいというトーンで書いております。  それと、管理は薬剤部になるのですが、厳重なな保管・管理、使用等の取扱い、及び 職員にそのことを十分周知徹底していただくことを、指導方お願いしたいという通知の 内容になっています。以上です。 ○堺部会長  ありがとうございました。もし、ほかに何かないようでしたら、今後の予定について 事務局からご案内をお願いします。 ○医療安全推進室長  次回の部会の日程についてですが、今般、医療機能評価機構のほうに、事故事例と一 緒に、ヒヤリ・ハット事例の解析評価についても事務が移ったことに伴い、評価機構と 調整させていただいた上でご連絡をさせていただきます。以上です。 ○堺部会長  本日の部会はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。                       (照会先)                       医政局総務課医療安全推進室指導係長                       電話 03-5253-1111 (内線2579)