05/04/20 治験のあり方に関する検討会第2回議事録            第2回治験のあり方に関する検討会議事録                         厚生労働省医薬食品局審査管理課                             平成17年4月20日(水)                                 16:00〜18:00                         於:はあといん乃木坂 フルール ○事務局  それでは定刻になりましたので、ただいまより第2回治験のあり方に関する検討会を 開催させていただきます。  まず、本日の委員の先生方の出欠状況でございますが、本日は木村委員が御欠席でご ざいます。それから、桐野委員でございますが、後ほど遅れて御出席される予定でござ います。また、本日は議題2におきまして、昨年度、平成16年度ということでございま すが、GCP運用改善研究班の主任研究者を務めていただきました、医薬品医療機器総 合機構顧問でいらっしゃいます上田先生に、参考委員としてお越しいただいておりま す。 それでは池田先生、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。 ○池田座長  池田でございます。第2回の検討会ということですが、よろしくお願いいたします。 それでは、まず事務局の方から、いつものように配付資料の確認をお願いします。 ○事務局  それでは、事務局から配付資料の確認をさせていただきます。本日机の上にお配りし た資料でございますが、まず本検討会の議事次第、配付資料一覧、それぞれ1枚紙でご ざいます。それからもう1枚、1枚紙がございまして、座席表でございます。その後か らが資料になりますが、そこにつきましては配付資料一覧と見比べながらごらんいただ ければと思います。資料1が、「「治験のあり方に関する検討会」開催要綱」の改訂案 でございます。資料2が委員の名簿、資料3が生駒委員からの追加説明資料でございま す。資料4が、「GCP研究班について報告」、上田参考委員の説明予定資料でござい ます。資料5が、「医師主導型治験の実施で直面している諸問題」ということで、藤原 委員説明予定の資料でございます。資料6が、「Translational Researchを成功させる ために」ということで、藤原委員の説明資料で論文の写しという形でございます。資料 7が、同じく藤原委員の説明資料で、「医師主導型治験の実施を巡る法令改定に関する 要望書」で、委員からの御要望書という形のものでございます。  それ以降は参考資料という形になっておりまして、参考資料1が「薬事法(抄)」、 参考資料2が「薬事法施行規則(抄)」でございます。参考資料3の部分はこの検討会 では初めてお配りいたしますが、医療保険の方で「治験に係る特定療養費制度について 」ということで、具体的には検査、画像診断の部分を、これは企業主導治験の場合には 企業負担になっておりますが、そこを医師主導治験については保険が適用されるという ことが決まりまして、4月1日から実施されておりますので、その関係の資料でござい ます。参考資料4は、「医師主導治験の流れ」の参考図でございます。参考資料5は、 GCP省令でございます。参考資料6は、GCP省令が施行されましたときの行政的な 薬務局長通知でございます。参考資料7は、一昨年度、医師主導治験が実施されました ときの行政的な医薬局長通知でございます。参考資料8は、このGCPに関しまして、 その運用を示しました審査管理課長通知でございます。それから、ちょっと配付資料一 覧からは漏れておりますが、本日追加で参考資料9というのをお配りしておりまして、 これは昨年10月に、さらに細かい「医薬品の臨床試験の実施の基準の運用における必須 文書の構成について」ということで、審査管理課の方から事務連絡を出しておりますの で、その資料も本日おつけいたしております。  なお、本検討会の資料につきましては、厚生労働省のホームページの方でも公開させ ていただいております。  以上でございます。 ○池田座長  ありがとうございました。資料1〜7、参考資料1〜9までですが、先生方、何か不 足なものはございませんでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、本日の議題に入ります前に、事務局から前回配付資料の改訂案があるとい うことですので、御説明いただけますか。 ○事務局  前回の配付資料1で、本検討会の開催要綱について改訂をいたしたいと思います。資 料1をごらんいただければと思いますが、前回御意見をいただきましたので、目的の項 の下から2行目の文章に、「治験の信頼性及び被験者の安全性を確保しつつ」というこ とで、「及び被験者の安全性」という言葉を追記いたしたいと考えております。これを 先生方に御了解いただければと考えておりますが、いかがでございましょうか。 ○池田座長  これについては前回も先生方から御意見をいただきましたので、そのようにさせてい ただいてよろしいですね。 (異議なし)  ありがとうございました。それでは本日の議事の進め方について、事務局の方からま ず説明をいただいてから議事に入りたいと思いますが、よろしくお願いします。 ○事務局  本日は、前回会合でも申し上げましたとおり、GCPの運用の改善について御議論い ただければということで、先ほどの資料のところでも若干説明をさせていただきました が、まず議題1といたしまして、生駒委員の方から前回の説明の一部で訂正させていた だきたいという部分がございますのと、前回の議論を踏まえまして、治験の費用につい ての説明を追加いたしたいということがございますので、まずそれをお願いいたしたい と思っております。それから議題2といたしましては、参考委員として御出席をいただ いております上田先生の方から、GCP研究班報告の御説明をいただきたいと思ってお ります。次に議題3としまして、医師主導治験を現在自ら実施しておられます藤原委員 に、医師主導治験におけるGCP上の問題点等について、御説明をお願いいたしたいと 思っております。その後、先生方に現行のGCPの問題点を含めて、現在の治験の問題 点について御議論をいただきまして、その後、議論の状況によりますけれども、その段 階で本日の会合までの御議論を短期的、または中期的目標というような形で、次回まで に整理ができればというような形で考えております。  以上でございます。 ○池田座長  ありがとうございました。前回は第1回ということで、先生方からいろいろ御意見を 伺えたわけですが、必ずしも私も慣れているものではございませんので、十分に先生方 の御意見を伺えたかどうかわからない点もあると思います。今事務局からありましたよ うに、第2回ということでこのような形で進めさせていただきまして、なるべく先生方 から、短期的、あるいは中長期的な目標として幾つかの課題を抽出していきたいと思っ ておりますがよろしいでしょうか。何かその進め方について、先生方、ぜひこういうふ うにやってほしいというような御意見はございますか。事務局の方は何かございます か。 ○事務局  ちょっと先生、マイクを持っていただいた方が。 ○池田座長  そうですか。聞こえませんでしたか。失礼しました。今のところはよろしいですね。 すいません。  それでは、本日第2回の進め方については、ただいま事務局から話がありましたよう な形で進めさせていただきたいと思います。  早速、生駒委員からの御説明をいただきたいと思いますが、資料3をもとに御説明い ただくことになると思います。これについては第1回で何人かの委員の先生方から御質 問もございましたので、その辺も含めて生駒委員から御説明をいただけるものと思いま す。よろしくお願いいたします。 ○生駒委員  生駒でございます。前回の検討会のときに、今日御欠席かと思いますが、木村先生か らクリニックにおけるIRBの状況について御質問がございまして、私の方からクリニ ックでもIRBを設置してやっているような回答をしておりました。これについては、 その後いろいろ調べてみたところ、間違っておりましたので訂正させていただきたいと 思っております。  実際にはクリニックでのIRBの形態については大きく2つのパターンがあるようで ございまして、1つ目はほかの医療機関の長が設置したIRBを利用できると。これは GCPの第27条の第4項に記載されているものでございます。すなわち、同じ治験に参 加されている、IRBが設置されているような中小病院で、審議していただいていると いうことのようでございます。例えば地域ネットワークが最近いろいろできております が、三重治験ネットワークでは、三重大学のIRBをクリニック等が利用されていると いう具体例があるようでございます。  2つ目が、同じGCPの第27条の第2項に、民法第34条の規定により設立された法人 が設置したIRBを利用することができると。これについても大阪府の医師会、あるい は名古屋医師会などによるIRBを、クリニックが利用されているというようなことが 調査で分かりました。  ということで、前回回答いたしました、開業医が自前でIRBを設置しているような ところはほとんどないということでございましたので、訂正させていただきます。 ○池田座長  ありがとうございました。そのほかに、本日の資料に基づいて少し御説明いただけま すか。ただいまのはよろしいですか。クリニックはそれぞれがIRBを持っているわけ ではなくて、法人のIRB、あるいは病院等のIRB、あるいは臨床内科医会等は臨床 内科医会のIRBにかけてやっているというようなこともあるようですので、そういう ほかのIRBに諮って参加しているということだろうと思います。  それでは、よろしくお願いします。 ○生駒委員  もう一点、前回の検討会で、これは寺岡先生からだったかと思いますが、日米間の治 験費用の差についての御質問がございまして、それに関するデータがあれば示してほし いという御依頼でございました。本日、御紹介できるものが2つございましたので、そ れについて御紹介したいと思います。次のスライドをお願いいたします。  これは、2002年の治験の国際化シンポジウムで、藤沢薬品さんの例ということで聞い ておりますが、「国際共同治験における費用比較」ということで、1症例の単価当たり のコストをヨーロッパ、米国、日本間で比較したものでございます。見方は、ヨーロッ パの1症例の単価を1とした場合、米国、日本における比率を示したものでございまし て、実際の費用がどのくらいかかったのかはちょっとわかりません。これを見ていただ ければわかりますように、日本は同じプロトコールで1症例当たり、大体これを計算し ますと1.4倍ぐらいの高い費用がかかっていたということですが、この内訳はこれ以上 わかっておりません。次をお願いいたします。  もう一点はファイザー社のデータで、2003年に開催された第3回北里ハーバードシン ポジウムで紹介された資料でございます。韓国、香港、ヨーロッパ、米国、日本におけ る、代謝性疾患の治療剤の治験で、グローバル展開の治験のときのそれぞれの国におけ る1症例当たりの治験コストでございます。臨床費用(Clinical)、広告、セントラル ラボ、CROなどいろいろ分類されておりますが、日本がかなり高いことが分かると思 います。ただ、これもダイレクトコストを単純に症例数で割っただけということでござ いますので、具体的にどの辺がどうなっているかということについてはちょっとわかり ません。現状では、公開されているデータというものではこちらの2点がございまし た。  現在、製薬協の方でも62治験のアンケート調査を既に行っておりまして、日米間の同 じプロトコールで1例当たりどのくらい違うかというものについては、現在まとめの段 階に入っておりますが、これについてはまだ公表できる段階ではないということで、大 変恐縮ですがお示しできません。 ○池田座長  ありがとうございました。ただいま生駒委員から、前回の木村委員、あるいは寺岡委 員からの御質問に答えた形で追加の御説明をいただいたのですが、先生方、どなたか御 質問はございますでしょうか。  前回生駒委員には、クリニックだとCRFをクリーンアップするのに期間が短いと か、症例のエントリーが多いとか、脱落率が少ないとか、そちらはいい点だろうと。し かし、SMOなどを使うものだから、1症例当たりの単価が高くなるんだと、そういう 御説明をいただきましたよね。クリニックを利用した臨床治験の比率という欧米のデー タはあるのですか。これで見ると白いカラムはClinicalと。何を示してClinicalと言う のか。恐らく生駒委員も詳しいデータはお持ちではないと思うし、これは人が作成した データだと思うのでわからないと思いますが、その辺はいかがでしょうか。 ○生駒委員  実際に、代謝性疾患ということでございますので、ある程度開業医が治験を十分やれ るような対象かなということになりますが、日本でもなぜ高いかというあたりの大きな 理由としては、やはりSMOが入っているかどうかということになるかと思います。そ の中には、やはり開業医クラスですと、治験のインフラ機能がまだ不十分ということが ございますので、SMOを入れて、さらには外部のCRCも入れてということになりま すので、その分どうしても割高になってしまう。例えば通常大きな病院等では、これは 一律ではないのでしょうけれども、1例の単価でCRCの支援費用が大体10万円位です が、SMOさんを絡んでやりますと大体50〜60万円ということになりまして、そこで40 〜50万円ぐらいの差が出てまいりますので、それが10例となりますと、そこでもう既に 500万円ぐらい大学大病院と開業医では違ったりします。 ○池田座長  そうするとこのパターンは、例えば抗がん剤の場合のような、いわゆる生活習慣病と は違って、ある程度専門性を持ったところでやらなければいけない臨床試験と大分変わ ってくることは十分に予想されると考えていいのでしょう。 ○生駒委員  そうですね。大学大病院が中心の治験と、開業医中心の治験では、大分違うかなと思 います。 ○池田座長  それは、あまりデータとしてははっきり出ていないのですね。 ○生駒委員  現状ではちょっとお示しできないということでございます。 ○池田座長  そうですか。いかがでしょうか。先生方、どなたか御質問は。寺岡先生、何かよろし いですか。 ○寺岡委員  中身が詳しくわからないということですので、あまり分析的に話をしてもあれです が、もしこういう問題があるとすれば、そこら辺のところを今後この委員会でどのよう に整備していくのかということも、課題の一つではないかというふうに理解したいと思 います。 ○池田座長  ありがとうございました。そのほか、委員の先生方、どなたかコメント、あるいは御 質問はございますでしょうか。基礎になるデータが必ずしも今の時点でははっきりして いないので、あまりこれ以上立ち入ってディスカッションをするのはなかなか難しいと 思いますので、先生方から、こういうような方向性でデータを積み上げていくことが将 来的に非常に重要だというような、そういうコメントでもいただければと思いますが。 どうぞ、先生、よろしくお願いします。 ○景山委員  1症例当たりの治験コストの違いというところで、日本がえらく高いわけですが、こ れは代謝性疾患というだけで具体的なことが記載されておりませんのでよくわかりませ んが、現在製薬協の方でより多くのケースについての集計をなさっているということで 結構なんですが、ただこの1例だけをもって非常に日本のコストが非常に高いと。欧米 の2〜3倍ですか。そういう認識のもとでディスカッションすることが果たして適切か どうかということは、若干疑問に感じます。もしかするとこのデータは、やや日本は金 がかかりすぎるのだということを意図して出されたものかもしれないということは、や はり一応頭の片隅には置いておいた方がよいのではないかと思います。ただ、個人的に はもちろん日本のSMOの単価が高すぎるということは、私は懸念しておりますが、果 たしてこの今日お示しになった2枚の資料をもとにディスカッションすることが適切か どうかということについては、若干疑問に思います。 ○池田座長  そうですね。ありがとうございました。今後考えていくのに、非常に大事な御指摘だ というふうに理解をしております。そのほか何かコメント、御質問はございますか。ど うぞ、長尾委員。 ○長尾委員  似たような話ですが、これは結局一つの施設でどのくらいの例数がそこで得られるか によって、つまり固定費のところと、例によって比例するところ、そういう情報という のも多分必要なのだろうと思いますが。 ○池田座長  ありがとうございました。この点についてはよろしいでしょうか。そのほか特にござ いませんか。もしございませんでしたら、今の寺岡委員、景山委員、長尾委員から出さ れました意見も頭に入れながら、また次の議題をお聞きしたいと思います。議題2に移 らせていただいてよろしいですか。  議題2は事務局からお話がありましたように、平成16年度のGCP運用改善研究班の 報告についてですが、これは上田先生に参考委員としてお越しいただきましたので、御 説明をお願いしたいと思います。上田先生、よろしくお願いします。 ○上田参考委員  御紹介いただきました上田でございます。こういう機会を与えていただきまして厚く 御礼を申し上げます。  研究班の正式な名前は、「治験の実施に際するGCPの運用に関する研究班」という ことでございますが、通称「GCP研究班」と申しております。本日ここにおられます 景山委員、藤原委員も委員会に参加しておられます。それで本日は、研究班で主に討議 をいたしました項目を1として申し上げまして、3ページのところにアンケートを行い ましたその結果を書いてございます。それから、大きな3、4としましては、欧州ある いは米国の治験の事情の視察をいたしましたので、その御報告をいたします。  まず、研究班そのもので討議いたしました項目が1)〜6)までございます。それを 簡単に申し上げますと、これは平成15年〜16年度にかけて2年度の研究でございまし て、最初にGCP運用マニュアルの検討をいたしました。これは、実際にGCPを運用 する場合、特に医師主導の治験などを行う場合には、いろいろ詳細な点に解説が必要で あろうということからマニュアルをつくったわけでありまして、例えば治験審査委員会 の成立と採決には委員の数が何人必要であるか。GCPには委員は5人でもって構成す ると書いてありますが、その成立や採決に関する委員数は規定されていないのですね。 そういう点について規定を加えました。それから、治験調整委員会というのが最近誕生 しておりますので、そういう機能について。それから、監査とモニタリングのあり方で ございますが、監査につきましては、IRBも監査をするのですが、IRBは監査報告 書の提出を受けてそれを見るという役目がありまして、ダブルチェックをするんだとい うことを書いております。それから、治験記録でございますが、医師主導の場合には記 録の保存を医師がやっておりましても、医師が退職したり転職したりすると責任者がい なくなりますので、医療機関で保存することができるように記載をいたしました。それ から健康被害の問題、そういう点について討議をいたしまして、それを課長通知として 平成16年7月と9月に出しております。  2)でございますが、これは治験審査委員会における審査の質の向上を目指して、 「中央審査方式」を導入してはどうかという御意見がございまして、その討議をしばら くいたしました。これは、多施設共同治験などが増加しておりまして、そういうときに 各施設で事前の検討を行いますが、それがかなり時間がかかって、全体としては治験の 開始が非常に遅れるということがあります。それからまた、各治験審査委員会に適切な 専門家が含まれていない場合もあり得るので、それらの解決策として中央の審査委員会 をつくるということはどうかなと、そういう討議もいたしました。例えば複雑な治験、 抗がん剤の治験などで、非常に専門的な見地から適切な審査を実施するための「中央審 査委員会方式」はどうかということを考えました。米国におきましてはNational Cancer Instituteに設置されております。  それで、後で申しますアンケートをいたしまして、そういうものを設置する団体とし て、どういうところが考えられるかということを伺いましたところ、ここにありますよ うに学会、法人、医師会などが候補として挙がっております。ですが、実際的に学会や 医師会(日本医師会あるいは地域の医師会など)が中心になるのが可能性があるのでは ないかと、そういうふうに考えております。それから、国立病院機構などは、そういう 方向でいろいろな準備を進めておられるような話も伺っております。  問題点でございますが、これは運用しますとコストがかかるわけで、それをどういう ふうに負担するかという問題や、あるいは中央で審査したものをさらに治験施設で審査 をいたしますと、二重審査になりますので、時間的なロスが増える可能性もあり得ま す。それをどういうふうにして防ぐかということが問題になりました。  3)でございまして、そういうふうに治験の様式が変わってくるとしますと、治験審 査委員会の審査のあり方についても少し考えた方がいいかもしれないと考えました。例 えば中央審査方式を採用した場合には、それぞれの当該の治験施設での審査に、従来と 同じような予備審査を含めた時間がかかっていますと、全体として時間が延びますの で、それを防ぐための“expedited review”というような制度が必要ではないかと考え たわけであります。現在のGCPには「迅速審査」という規定がございます。ただ、そ の中に書かれておりますことは、事務的な書類上の文言の変更とかそういうものに限ら れておりますので、このような非常に専門的な治験を中央で審査した後の各施設の治験 というものになじまない言葉でありますので、ここの用語を検討する必要があるのでは ないかと、そういう意見が出ております。  4)でございますが、治験中の安全性情報の伝達でございまして、これは薬事法並び にGCPで安全性情報の収集、配布などが義務付けられておりますが、外国における情 報を含めて、非常に膨大な報告が医療機関に届いております。医療機関の方からも、非 常に始末に困るというようなお話もありまして、そういう膨大な資料でありますといろ いろな問題が生じます。必要な情報処理、情報に基づく判断が適切に行われない可能性 もございます。また、審査が形骸化してくるというおそれもあります。それから、医療 機関において非常に文書がたくさん蓄積してしまう、堆積するという問題がありますの で、安全性情報の提供を求める範囲とか、それをどういう形式で報告するかとか、タイ ミングとか、そういうものをより効率的に行うために、安全性情報の質の規定でありま すとか、あるいは報告の方式とか、そのタイミングなどを、直ちにというふうに書いて ありますが、直ちにというのでなくて、何かの期間を設けて適切に実施した方がいいの ではないかと、そういう意見が出ました。  5)でございますが、医師主導の治験の実施のあり方についての検討もいたしまし た。私どもの国では歴史が割合浅いので、まだ問題点の把握が十分でないということが ございますが、例えば副作用情報などにつきましても、先ほど申しました安全性情報の 収集につきましても、企業主導の治験と同じようにやろうとすると大変負担が大きくな ります。ですから、合理的に考えて範囲を多少限定する。例えば適応症が同じようなも のとか、同様なプロトコールで行っている治験の安全性情報だけに限るとか、何かそう いう便法を考えることが必要かもしれないということでございます。それから、モニタ リング・監査につきましても、医師主導の場合にどういう方法をとるかという重要な問 題がありますが、CROなどを利用しますと非常に費用もかかるということもありま す。ですから、治験の質を保証できる範囲で、欧米の臨床試験でとられているような方 策というものを考えて、効率的な実施方法を考えていく必要があるのではないかと、こ ういう意見が出ました。  6)でございますが、治験に関する医療機関との契約の問題でございまして、これは 製薬企業主導の治験の場合に、製薬企業側から治験の契約を現在は医療機関の長とする ことになっておりますが、治験を実施する治験責任医師との契約に変えられないかと、 そういう御提案がございまして、それについて検討いたしました。メリットとしまして は、治験に対するincentiveが高まるかもしれないこと。それから、事務的な処理がより 合理的になる可能性があるということがありますが、問題としましては利益相反といい ますか、コンフリクト・オブ・インタレストの問題でありますとか、それを含めた評価 の公正性の保守という点で問題があるかもしれないという意見が出ておりまして、今後 検討されることになっております。  大きな2番でございまして、これはアンケート調査をいたしました。目的は、治験審 査委員会の現状についての調査でございます。対象としましたのは、治験推進協議会に 加盟しておられる医療機関574施設に対してアンケートをいたしまして、御回答をいた だいた施設が443機関でございました。回答率が75.6%で、比較的いい回答率でござい ました。  たくさんありますが主なことを申し上げますと、治験審査委員会における外部委員の 数が多いものだけを書きましたが、「2名」というところが47%、「1名」というとこ ろが37.1%でございます。それから、下部組織を持っているかどうかということを伺 いましたら、「あり」というところが42.6%でございます。すなわち下部組織で下調 べをして、下で調査をしてくるわけでございますから、治験審査委員会委員自身の意見 が必ずしも反映されない可能性といいますか、その下部組織の意見が承認されてしま う、そういう危険性があって、委員会の責任がどうなるかというような問題もあろうか と思います。それから、開催頻度は「月1回」というのが47%で一番多いです。それか ら、1件当たりの審査時間をお伺いいたしましたところ、「15〜30分の間」というのが 50.7%で一番多い数になりました。したがって、かなり短い時間で審査をされている ということで、新しい治験の場合は時間がもっとかかるのではないかという気もいたし ます。それから、Central IRB(中央治験審査委員会)ができたときに、審議を委託 するかというのは、「Case-by-caseで判断する」という御意見が一番多くて55.3%で ございました。それから、有害事象報告につきまして、それが審査に足る内容かという ことを伺いまして、国内と国外と分けたんでありますが、国内の方は「大概足りている 」というのが33.9%、海外の場合には「不足のことが多い」というのが一番多くて 35.9%でございました。  それからあと視察でございまして、欧州の視察を景山先生などにしていただきまし た。ここに書いてありますが、英国とドイツに行っていただいたわけであります。英国 の場合には、ここに書いてありますような、LocalなResearch Ethics Committeeと Multi-centreのResearch Ethics Committeeというものの体制がございますが、それ以 外にCentral Office for Research Ethics Committeeという新体制がありました。そこ で申請すべき委員会の振り分け、ガイダンスやトレーニングを行っていると。それか ら、従来は法に基づいていなかった審査活動でございましたが、それが行政規則に基づ く許認可制に変わっているということを伺いました。  次の4ページでございますが、ドイツは主任研究者が所属する施設に対応する倫理委 員会が、全体の審査の役割を果たしておりまして、他の倫理委員会との内部調整を図り ながら決定をしているということでございます。詳しいことにつきましては、景山先生 からもお伺いをしたいと思います。  最後に米国の調査でございますが、これはここに書いてありますOHRP(Office for Human Research Protection)とGeorge Town 大学を訪問いたしました。Office for Human Research Protectionというのは、治験の実施状況とかそういうものを、法律 に基づいてIRBを登録させまして、そこの監視をしたり定期的な研修制度を行ってい るところでございます。そしてOHRPは、連邦政府の予算に基づいて行っている研究 については、その監視をしたり、あるいは中止を命ずることができるという権限を有し ております。そういう意味で、臨床研究や治験について、中央政府が非常に詳しくIR Bを含めて審査をしているという状況でございます。  以上で大体の御報告を終わらせていただきます。 ○池田座長  上田先生、ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、あるいは 御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。どなたか御意見はございますか。 どうぞ、望月委員。 ○望月委員  今の上田先生からの御説明の最後の、国外でのIRBの状況のところですが、イギリ スとドイツに調査に行かれたものと、それから米国の話が出てくるのですが、このイギ リスとドイツでIRBのシステムが中央制になっていますが、こういう形にすることで 審査にかけてから最終的に許可がおりるまでの審査期間がかなり短縮されるとかいった 改善は実際に見られるのでしょうか。実は前回のときに、治験が日本で非常に遅れる原 因の一つとして、生駒委員の方から、IRBの審査期間もかなり長いという御発言があ ったものですから、この仕組みを導入している場合と、日本のように導入していない場 合で、審査期間の差があるのかというあたりで、何か参考になる情報がおありになりま したら教えていただきたいのですが。 ○上田参考委員  具体的な期間についてのデータは持ち合わせておりませんが、システムから考えます と、日本のIRBというのは一般的にIRBにかかる前の事務的な審査といいますか、 事前審査というのにかなり時間がかかっているのです。そういう点、ドイツのように一 箇所で、中央の治験責任医師がいるところの施設で重点的にやるということにします と、短くなると思います。  それから、アメリカなどは下部組織を持っていないIRBが多いです。ですから、下 調査というのを日本のようなシステムで別に長い期間かけてやるということをしない で、委員会そのものが責任を持ってやっていると思われますので、治験を開始するまで の期間は日本よりも短いのではないかと、私はそういうふうに思っております。 ○池田座長  景山委員、何かコメントはございますか。 ○景山委員  ヨーロッパのEU臨床試験指令では、治験の届けを出して、審査以後になりますけれ ども、届けを出してからたしか60日だったと思います。それで特別なことがなければ始 めていいということですね。それから、EU臨床試験指令のもう一つの特徴は、一国一 意見ということを明確にしています。ですから、中央の倫理委員会で審査するというこ とになりますので、数が減りますから当然時間も節約されるのだろうと思います。た だ、実際にその委員会に、どこかの中央の委員会に書類を提出して、審査が終了するま で何日間かということは覚えておりません。 ○池田座長  そのほかいかがでしょうか。どうぞ、藤原委員。 ○藤原委員  私も先月、別に黒川班という未承認薬の検討委員会があって、それでEUを調査して きたので、そのときにさっきのIRBの話ですが、臨床試験指令の中ではIRBの審査 期間というのは60日になっています。それで、ソマティックセルセラピーやジーンセラ ピーに関しては90日で、それからジェノジェニックですね、異種間のセルセラピーなど の場合は、期限を設けずIRBで審査しなさいというふうになっているので、一応EU の場合はIRBの審査期間というか、回答期限というのが60日あるいは90日というふう に。 ○池田座長  決まっているということですね。 ○藤原委員  はい。 ○池田座長  逆に言えば、それだけの十分な態勢が整えられていると。60日間を超して審査があれ することはないということですね。 ○藤原委員  いえ、実際の現場は文句たらたらで、あんなしようもない──しようもないじゃない ですね、非常にいい法令を課したのだけれども、現場のインフラの整備が全然進んでい なくて、むしろ今からどうやって整備するかというのが、国内法にする段階で各政府も 困っているし、それから現場の医療機関もそれを実現するためにどういうインフラの整 備をしたらいいかというのは、非常に悩んでいるというのが現実のようでした。 ○池田座長  そうすると、現実問題はそういうことを決定はしたけれども、まだまだ整備をしなけ ればいけないところは幾らもあると、そういうことでしょうか。 ○藤原委員  はい。日本と全く同じで、インフラの整備をどうするかというのが今後の課題です。 ○池田座長  でも、エイヤとその60日、90日ということを決めたことは決めたと、そういうことで すね。 ○藤原委員  はい。 ○池田座長  そのほかどなたかございますでしょうか。  上田先生、このGeorge Town大学は、ここの大学での治験の実施状況やIRBの研修 など含めて、全米の大学、あるいは施設と違って特別に特徴的なものがあるということ ではなくて、割にレプレゼンタティブな大学だというふうに理解してよろしいのでしょ うか。大学によって大分違うんじゃないかと思うんですけれども。州によっても。 ○上田参考委員  George Townというのはワシントンにありまして、FDAの足元に、OHRPの足元 にあるわけですから、そういう意味においてはかなり代表的な、レプレゼンタティブな 治験体制をとっていると、私はそう思っております。 ○池田座長  ありがとうございました。そのほかどなたかございますか。このGCPの研究班につ いて、運用マニュアルのこと、特にIRBのことについて、随分アンケート調査も含め て、あるいは欧州の実地調査も含めて非常に精力的にやっていただいたわけですが、こ の辺について何か委員の先生方から御意見をいただけますか。効率化ということと安全 性、あと信頼性という、その3つがキーワードになるわけですが。先生、研究班での委 員の先生方の御意見としては、中央の治験審査委員会というものを、日本でもやはりか なり短期的に目指さなければいけないという考え方が多かったのでしょうか。 ○上田参考委員  委員会全体としては、やはりそういう傾向にあったと思います。ただ、日本の場合、 IRBの実態というのがあまりよく調査されていない。IRBの登録制度もありません し、IRBの視察の制度もあまりないわけです。どういう状態でIRBが運営されてい るかがよくわからない。したがって、治験の質を高めていくためにはやはり中央的なI RB、質の高いIRBの数を増やしていくことが必要ではないかと、そういうふうに思 った次第であります。 ○池田座長  ありがとうございます。どうぞ。 ○吉村委員  吉村ですが、今インフラに関しては非常に不満たらたらであると、こう言われたので すが、実際にはインフラのどの部分が一番ネックになるということなのでしょうか。 ○池田座長  藤原委員、どうぞ。 ○藤原委員  お手元の資料6にその辺はつらつらと書いておりますので、後で私のところにちょっ とまた……。 ○池田座長  その点について上田先生、何か御意見、お答えはございますか。 ○上田参考委員  先ほども開業されている医療機関での治験の実施というお話が、費用の面を含めて出 ましたけれども、そういうところの治験の実施状況、あるいはIRBにおける審査とい うのが全然把握できないという現状にあるわけです。そういうことが非常に私どもにと って不安といいますか、ちょっと心配な点がございまして、もう少し組織をきちっと固 めてIRB(治験審査委員会)の質を高めていく必要があるだろうと、私はそう思って おります。 ○池田座長  吉村委員、よろしいですか。また後ほど藤原委員の方からプレゼンテーションで御説 明があると思いますが。そのほかいかがでしょうか。先生、アンケート調査で574施設、 これは治験推進協議会に加盟している医療機関ですから、ある意味ではきちっと把握で きるところですよね。そこで回答率が75%ということで、非常にいい回答率で、その範 囲内ではまあまあというような印象ですが、それ以外がどれぐらいあるかが全くわから ないということですね。 ○上田参考委員  そうですね。その治験推進協議会の施設においても、1件当たりの審査時間が15分な いし30分以内というのが圧倒的に多いと。治験の審査件数も多いわけですし、月1回開 催するとすればそれが限界だろうと思いますが、例えばアメリカのジョンズ・ホプキン ス大学というのはIRBが6つありまして、毎週開催しています。そのために、1件当 たりかなり長い時間の審査をやれるような体制にあるわけです。日本とちょっと事情が 違いますので、いろいろな比較はできないのですが、IRBできちっと審査をしようと 思うと、かなり時間がかかるのではないかと私は思いまして、15分というのはちょっと 短いのではないかなと思っております。 ○池田座長  ありがとうございます。そのほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。上田先 生にお聞きすることはございますか。  それでは、先ほど吉村委員からも御質問が出たこともありますので、もし上田先生の 方に御質問が今の時点でないようでしたら、次の議題に移りたいと思いますが、上田先 生はもちろんお残りになっていただけますよね。 ○上田参考委員  ちょっと用がありまして、失礼させていただきます。 ○池田座長  失礼しました。 ○上田参考委員  藤原委員と景山委員も同じ委員会にいましたのでお答えいただいて。 ○池田座長  そうですか。では、景山先生にもまたお答えいただくということで。  それでは議題3に移らせていただいてよろしいでしょうか。議題3、これは、前回も 御議論をいたしましたけれども、医師主導治験におけるGCP上の問題点についてとい うことで、藤原委員から御説明をお願いして、先生方とまた議論させていただきたいと 思います。よろしくお願いいたします。 ○藤原委員  貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。国立がんセンター中央病院の 藤原でございます。前回も申し上げたとおり、医師主導治験を現在やっている身とし て、それからまた普通の臨床医ですね、今日も外来を3時で抜けて出てきたのですが、 週3回外来で何十人もの患者さんを朝9時から5時まで診ているんですけれども、そう いうのが多分普通の医者だと思うので、そういう医者が医師主導治験という禁断の木の 実に手をつけたときにどういう思いをするかということを、今日お話しして紹介したい と思います。  私どもが今やっているのは、先日も少しお話ししましたが、再発あるいは治療抵抗性 のc-kitあるいはPDGFR陽性の肉腫、と長いですが、イマチニブ、商品名はグリベ ックと言いますけれども、これは慢性骨髄性白血病(CML)に対する非常にいい薬 で、まさに慢性骨髄性白血病の治療を変えたようなお薬です。慢性骨髄性白血病という のはBCL-ABL というがん遺伝子の異常で、そこに共通するターゲットとして、ここにあ るc-kitとかPDGFRのTyrosine Kinase の阻害というところと、BCR-ABL のTyrosine Kinase の阻害というところが多分共通項なので、このイマチニブ(グリベック)をこ ういう変異がある肉腫の方々に投与すれば、劇的な効果があるのではないかということ がさまざまなところで言われておりましたことから、肉腫の患者さんというのは非常に 治療抵抗性で抗がん剤に対しても効きにくい方々が多いので、その方々の福音になるの ではないかと考えて当初計画したものでございます。内容は少しはしょって、実際に医 師と治験で困っているところの話をしていきます。  現在、治験をやっている実施施設、これもこの前患者代表の方から、「わからないの にしていないの」と言われたので申し訳ないと思って、今日ここで出せば少しは宣伝に なるかなと思って書いてきました。現在、新潟大学医歯学総合病院、慶應義塾大学病 院、日本大学医学部附属病院板橋病院、国立がんセンター中央病院、千葉県がんセンタ ー、神奈川県立がんセンター、愛知県がんセンター、岡山大学医学部・歯学部附属病 院、国立病院機構九州がんセンターという9施設で行っております。  予定しております症例数というのは40例を設定しておりまして、症例集積期間は2 年、追跡期間は1年です。進捗状況としましては、昨年の11月2日に治験届をまず7施 設、この下線のない7施設で出しました。この準備をするのに、改正薬事法、前回の薬 事法の大改正が国会を通ったところから、そのときはどうなるかわからなかったのです が、多分時間はかかるだろうと思ったので準備を始めて、この治験届を出す前に約2 年、いろいろな歳月を費やしました。それで、この中で治験届を出しまして、12月14日 にさらに治験届を2施設、この愛知県がんセンターと九州がんセンターが加わって9施 設になったところでございます。さらに、実際に患者さんへの投与が可能になったのは 今年の3月になってからでございまして、これは悲しい現実として、私ども素人がいろ いろな契約行為などをやる場合にさまざまなハードルがございまして、事務作業に非常 に時間がかかって、治験届を出したはいいが、患者さんへの投与に至るまでのいろいろ な事務作業をクリアできなかったという責任があると思うのですが、それを何とかクリ アして、3月14日に初めて患者さんに投与ができたという現状でございます。  では一体どういう問題があるかというと、このスライドで明示しておりますけれど も、これが一番クリアですが、一番上がプロトコールを作成する。臨床試験のプロトコ ールを書くということは、私どもがんの専門をやっている人間にとってはそんなに苦で はなくて、がんの領域では全世界を通じて臨床試験というのは非常に盛んに行われてお りますので、プロトコール書きというのはメディカルオンコロジストと呼ばれる臨床腫 瘍医はなれていると思いますので、ここはそんなに苦ではございませんでした。  問題はその次からのところでございまして、まず業務手順書というのが2つ並んでい ます。これは工場でやっているいろいろな作業の手順とか、そういうものを規定したマ ニュアルというものがございますが、SOPとも言いますが、それを業務手順書と言い まして、いろいろな治験をやる段階でこういう業務手順書をあらかじめ定めなければい けないというのが、最初の最大の難関でした。というのは、通常の臨床医はあまりマニ ュアルどおりにやるというのは、クックメディシンというふうにばかにしまして、マニ ュアルはあるけれども、自分の目の前に置かれた患者さんのいろいろな病態の変化に応 じて、臨機応変に対応するという教育を受けてきておりますので、言われたとおりに物 を進めるということになれていないのが通常の臨床医の頭の構造なのです。だから、自 分たちの行為を規定するということに非常に抵抗感があったのですが、何とかいろいろ な企業の方々の援助も得つつ、業務手順書というものをつくり上げました。現状でも多 々不備はあると思いますが、それは私どもが現在治験を進めていく中でどんどんとぶち 当たっていますので、その段階でいろいろ改訂していけばいいかなと思っております。  それから補償に関する基準。これも医師の間では、補償と賠償の違いというのも理解 できない人が大半でございましたので、その補償とは何かということをそもそも理解す ることから始めて、無過失責任というものがあるんだなということを学んだり、補償に 関する準備をどうしていくかということにも苦労いたしました。これはまた後でお話し します。  それから特定療養費というものです。これは、治験というものは大手を振って混合診 療ができるという日本で唯一のシステムなので、それの中で特定療養費という言葉が出 てきますので、これに関する付随した問題も後で御紹介いたします。  それから、治験の計画の届出と書いてありますが、これは厚生労働省、今は医薬品医 療機器総合機構ですね。新霞が関ビルにある大きなエージェンシーで、そこに届出を出 すのですが、そういうものを私ども普通の医者はやったことがない。あるいは、北海道 や沖縄にいる先生方はわざわざ東京まで来るのかというようなこともありますが、そう いう届出業務をまず経験するということも非常にいい経験にはなりました。  それから、モニタリング、監査の実施と書いてありますが、これは通常医師であれ ば、治験をやっているとモニタリングは受ける側ですね。来ていただいて、自分たちの 中身を見てもらう。監査もそうです。今回は自分たちがモニタリングをする、あるいは 監査をするという非常に主体的な立場になりますので、これも非常に苦労したところで ございます。というか、今まさに苦労しているところでございます。  それから、これは先日第1回のところで申し上げた、副作用報告のあまりの数の多さ に今非常に苦労していると。これも今からお話しするところです。  こういう大きな問題点を、それぞれ細かくブレークダウンすると、どういうふうにな っているかということを解説させていただきます。  まず、補償への対応ですが、これは課長通知ですね。右の上に出ています。上田班で 検討しました改正GCP──省令GCPですね──の基準の運用に関する課長通知の中 で、「補償への対応」というところで改正してある部分ですが、(注2)のところに、 「必ずしも自ら治験を実施する者による保険の加入に基づく金銭の支払いに限られるも のではなく、副作用の治療に対しては、医療の提供及びその体制の提供という手段も考 慮しうるものである」という一文が入っております。これが入らないとなぜ困るかとい うと、上を見ていただくと、これが省令GCPの記載ですが、「自ら治験を実施しよう とする者は、あらかじめ、治験に係る被験者に生じた健康被害の補償のために、保険そ の他の必要な措置を講じておかねばならない」と。こうさらっと書かれると、私どもが 治験審査委員会あるいはIRBにかけると、「医師主導治験をやるためには保険に入ら ないとだめじゃないの」というふうに指摘をされる委員がたくさんいらっしゃるんです ね。役所の通知というのは、わからないように書くのが多分テクニックだと思うので、 点がたくさん入って、どこで切れるかわからないという記載になっているのですが、こ れを改正する段階ではもう少しそれを明示的に示していただかないと、IRBの委員が 多分困るだろうというふうに考えたので、恐らくこの(注2)が加わったのだと思いま す。  加わったことで何が変わったかというと、必ずしも治験保険に加入しなくてもいいで すよということが文書から読めますし、それから無過失責任ですね。もし重篤な、例え ば全然誰も予想だにしなかった健康被害が被験者の方に生じた場合には、もう全身全霊 を挙げて医療を提供して治療に当たるということで、それで何とか補償ということの行 為を認めてほしいという願いがこもった文書だと思います。ただし、それを患者さんに 何もインフォームせずに治験を始めてはだめなので、一番下のところに、「被験者に対 し予め文書により具体的に説明するとともに文書により同意を得ておくこと」という一 文が加わっているわけです。  実際に、これはがんセンターの私どもがIRBを通したときの同意説明文書の当該部 分ですが、「この治験に参加することにより、予想されない副作用や健康上の不利益な 症状が出現した場合には、通常の診療と同様に適切に対処いたします。その際の医療費 は、あなたが加入している健康保険が使用されますので一部ご負担(3割負担)いただ くことになります。今回の治験に参加することにより補償金が支払われることはありま せん」というふうに書いてあります。  補償をするということとその金額を払うということは少し区別があって、これも私は 勉強する中で学んだのですが、黄色い字で「医療費」「医療手当」と書いてあります が、それ以外に「補償金」というものがありまして、これがいわゆる補償の3要素と呼 ばれるもので、企業の治験の場合はそのうちの補償金ですね。例えば患者さんが亡くな ったときの遺族年金であるとか、子供が障害になったときの障害児の年金とかそういう ものが、医薬品副作用被害救済制度という国の制度があるんですけれども、それに応じ て一定額、例えば月額34,000円とか何とか、たしかそういういろいろな補償金というの があるのです。要するに、企業主導の治験の場合には、治験保険という企業が加入して いる保険から補償金というものが支払われて、それ以外の医療に関して用意した医療費 や医療手当というところは、製薬企業が払っているのです。こういう実態がある中で、 医者がいざその治験を自らで行なって補償しなさいと言われたときに、治験保険に加入 できないので補償金はどうやっても出せないわけなのです。では、医療費や医療手当を 現金で払うんですかと言われると、それを払える手段はなかなかないわけです。したが って、今私どもがやっているのは、お金を現金で払うのは大変でしょうけれども、もし 何か起きたら医療という形でしっかり提供しますよと。その代わりお金はいただきませ んということに多分なると思いますが、そういう苦肉の策の対応をしているわけです。  幸いなことに日本医師会の大規模治験ネットワークに加入している場合には、補償の 部分のうちの補償金をカバーする治験保険を、日医さんがカバーしてくれる体制にはな っていますが、抗がん剤や生物学的製剤や血液製剤というのは、そもそも国の医薬品副 作用被害救済制度の対応になっていませんので、日医の大規模治験ネットワークでやっ ている傘下の医師主導治験であっても、それらの薬剤については補償金は日医の治験保 険からは出ません。したがって、私どもは大規模治験ネットワークからお金をいただい て運用してはいますが、やはり補償に関しては自前で何とかせざるを得ないというのが 現状です。したがって、今後こういう医療費とか医療手当のところを、私どもは国の施 設なので、毎年予算を計上して運用しているわけなので、未知ですね、誰も予想しない 健康被害に対して医療費が今年幾らかかるとか、医療手当が幾らかかるとか計上するの は不可能なんですね。にもかかわらず、私どもの医療機関の長の理解をいただいて、 「よっしゃ、わかった。何とかするから」と言うので、医療の提供という形を言葉に盛 り込んではいるのですが、これは私どもが医師主導治験のIRBをかけるとき、ほかの 施設でかなりこの部分はもめました。IRBの委員は企業の治験と医師主導の治験とご っちゃにしているので、あたかも私どもが企業の治験をやっているような解釈で、どん どんいろいろな指摘をしてくるのですが、ど素人の医者がやっているという理解もな く、非常に理不尽な指摘をするIRBがたくさんありまして、その対応には非常に苦労 いたしました。私どもは患者さんに新しい薬を早く提供する手段として、合法的な手段 は医師主導治験として考えてやっているにもかかわらず、国のシステムとして補償の内 容、特に抗がん剤やバイオロジクスや血液製剤、特に重篤で生命の危機に瀕する患者さ んが一番必要な部分の薬剤に関して、補償の内容を詳しくブレークダウンしていない状 況でこれを始めてしまったということは問題かなと、今も思っています。  次は特定療養費制度の話です。お金の話ばかりで申し訳ないですが、ここのところは ちょっと見にくいので、皆さんお手元の資料を見た方がいいと思います。通常の保険で は保険給付部分と患者さんの御負担部分という二層構造からできていますが、治験にな りますと特定療養費制度というものが活用されることになるので、患者負担部分と特定 療養費の保険給付という部分と、さらに企業負担というところですね。これを合法的混 合診療と呼んでもいいと思うのですが、治験にかかわる検査、画像診断、投薬、注射部 分というのは患者さんに負担をかけなくて、その治験をやっている企業が負担するとい うのが従来のスタンスで来たわけです。それで、この医師主導治験が実際にスタートし たときに、いざ今まで企業が負担していた部分を一体誰が払うんですか、ということに なりまして、幸いなことに日医の大規模治験ネットワークでは、これを雑役務費という 研究費の中の一つの項目として計上していただいているので、この企業負担部分は日医 の治験の場合は出せるシステムはあるのですが、日医の大規模治験ネットワークに入ら ない人たちがもし医師主導治験をやろうとすると、この企業負担部分をどう捻出するか というのは非常に大きな問題になっています。  幸い、先ほど事務局からも説明があった4月1日の保険局からの通知で、医師の側に は幸いなんですけれども、この企業負担部分の大半のところ、検査、画像診断の部分に 関しては、従来の特定療養費の保険給付と患者負担のこの2つの部分でカバーできると いうふうな通知、ちょっと誤解があったら後で訂正していただきたいんですけれども、 いわゆる医者、やっている側には金の負担はなくなりましたよという通知が出ました。 ただし、そうすると、今度は患者さんの側に立つと、例えば小児で非常に重篤な疾患の 患者さんの場合、1カ月の医療費が数百万円になることは容易にあるんですけれども、 それを保険給付で3割負担と言われたとしても、若い夫婦にとっては非常に大きな負担 になります。したがって、特定療養費の支給対象外経費、あるいは特定療養費で支弁さ れない経費という、従来の企業治験の企業負担部分のところの運用に関しては、まだま だ論議が必要ではないかと思っています。  それからモニタリングと監査です。私どもは従来はやったことがなかったので、これ をどうするかというのは非常に頭を悩ませていましたが、幸い日医の大規模治験ネット ワークの研究費をいただけたので、ここに書いてありますCROに業務委託することで カバーできています。しかし、日医とコンタクトをする前に見積もりをとってもらった 段階では、通常私どもがやっている40例規模の第II相試験でも業務委託にすると、モニ タリングあるいは監査のところを合わせると数億円かかりますよという試算をいただき ました。では、大規模治験ネットワークでカバーされない普通の医者は、どうやってそ んな億の単位の金を用意するのか、ということが大きな問題の一つとして挙げられると 思います。  次に副作用報告の話をしますが、これは私どもが去年の11月2日から今年の2月末ま での段階で、全世界からCIOMS formという共通のformが英語で来るんですけれども、そ のCIOMS formを1日何件受けて、それをどう処理したかというのをまとめた表です。11 月に月159件、12月は190件、1月が218件、正月明けは40件ぐらい来たのを、外来明け から夜中までかかって処理したというひどい目に遭いましたが、これを月曜から金曜ま で毎日やっているんですね。何のためにこんなことをやらなければいけないかという と、法令に遵守するためだけです。それで、入っている内容を見てみると、ほとんど臨 床的に意味のない報告ばかりです。ただそれをまじめに読んで、解釈して、ここに書い てある法令にのっとった15日報告や7日報告に対応しているのです。私どもで今これを やっているのは、実際には医師1人、それから事務の補助の方1人ですが、これを治験 期間の3年間やると、恐らく2人とも死ぬんじゃないかと思っています。  次にまた別の話をしますと、ここまでは私どもが今やっている効能追加という、業界 の方々に言わせれば少し簡単な治験という部分でやっていますが、例えば本当に鋭意の 方、あるいは非常に優秀な大学の先生方に関していえば、私がつくった、あるいは発見 した物質を、医師主導治験をやって患者さんに提供するまでの道をつくりたいと思われ る方はたくさんいると思います。その場合にはさらにGMPの基準、あるいはGLPの 基準という誰も聞いたことがないような基準がいろいろあるんですけれども、企業さん はよく御存じですが、それの基準にのっとって薬をつくったり薬を管理したりしなけれ ばいけない。それは当然ですね。患者さんの人体に物質を投与するわけですから、きち っとした品質管理というのはされないといけないので当然ですが、今の医療現場にはそ のGLPやGMPに十分対応できるようなノウハウを持った人間もいませんし、設備も ないという中でこれを課せられると、なかなか大変なことだなと思っております。  では、今後医師主導治験を、私どもに続いてどんどんやっていただく先生方が出てく るためにはどうすればいいかということですが、これで先ほど申したインフラ整備とい う話になります。私どもがんセンター中央病院では、野村院長の指導のもと、ナショナ ルセンターとしては誰も手を出さない、あるいは開発コストがかかりすぎて企業が手を 出さないところの、希少疾患や重篤な疾患に対する薬の開発に貢献するのが、国の機関 として残った病院の責務だろうということから、数年前から自前で何とか医師主導治験 を完結できる体制をつくろうと整備してまいりました。  これがその整備の現状ですが、今私は臨床試験管理・推進グループのグループ長をし ているのですが、こういうものを何とか立ち上げて、従来病院の中ではやっていなかっ た品質保証ですね、監査とか品質管理、これは両方とも監査になっていますが、これは モニタリングや監査を自前でやるという意味で左に書いてあります。また、安全性情報 をハンドリングするようにしましょうとか、そういうシステムを現在構築しつつありま す。各病院あるいは地域ごとにこういうグループを整備しない限り、医師主導治験を自 前でやるということは無理ですね。幸い日医の大規模治験ネットワークに入れば億単位 の金がいただけて、それをもとに外部のCROやSMOさんに業務委託をすることによ って可能かもしれませんが、それではいつまでたっても日本全国に医師主導治験は進ま ない。各病院あるいは大きなところにこういうインフラの整備を進めていかないと、非 常に大変なことになります。お手元の皆さんの資料には、この星印の「整備中」という のが抜けていますが、一番下の実際にいろいろな実務をやる方々の定員というのは、ま だがんセンターでもついておりませんで、これが実質稼働するためにはまだまだ長い遠 いハードルがあるとは思っております。  片や、外国ではどうかという話をしますが、これはMD Anderson、テキサスのヒュー ストンにある全米でもナンバー1、2を争うがんセンターですが、ここにはOffice of Research Administrationといいまして、MD Andersonで行われる治験、のみならず臨床 試験すべてを管轄する、下支えをする事務部門があります。何と65人もスタッフがいま す。私どもがんセンターとほぼ同じようなベッド数の規模なので、臨床試験の数もそん なに差はないんですけれども、片や私どもは数名でやっている作業を、アメリカ人は能 率が悪いからかもしれませんが、こんなに人手をかけてやっているんですね。FDAも そうですね。人がたくさんいるのです。もう何でこんなにいるのかというぐらい人がい て、それはそうすればあんな細かい規定は誰でもできます。65人も人をつけるから細か い規定もできるということなのですが、じゃ、日本で人もいないのに細かい規定をやる ためにはどうすればいいかというのは、やはり真剣に議論すべきだと思います。  したがって最終的に、現在日本で医師主導治験が進まない一番大きな原因は、治験を 活性化することを目的とするのではなくて、多くの医者が今現在やっている臨床試験と 呼ばれる、治験の枠組み、薬事法の枠組みを外れた試験全般を実施するインフラの整備 をして、それでようやく治験のクオリティーもスピードも増えてくるだろうというのが 私の考えです。  それに関しては、先ほど吉村委員から御質問をいただいたときに、資料6を読んでく ださいねと言ったのですが、その資料6の2ページ目あたりですね。では、こういうこ とをどう具体的に改善すればいいかということを、ここは「Translational Researchを 成功させるために必要なインフラストラクチャー」と書いています。ここにいう Translational Researchというのは、私の考えでは、日本でよく言われているパイロ ットスタディー的な、初めてヒトに、人体に投与するフェーズIの前の段階の狭義の Translational Researchではなくて、いろいろな薬剤のシーズの開発から日常診療の 診療体系全体を変革するまでの、広義のTranslational Researchの振興が必要だという のが私の定義なので、その広義のTranslational Researchを成功させるためには、これ だけのポイントを押さえておかないと、いつまでたっても世の中が変わりませんよとい うことを申し上げている表でございます。これは後でゆっくり読んでいただければ、何 が日本に今足りないかということがわかると思います。  最後に、資料7でございますが、これは今読むのはちょっと不可能だと思うので、簡 単に解説しますと、この半年ぐらいの間に、というかこの3年ぐらいのあれですかね、 いろいろ悩んできた過程で思っていることをまとめたものです。  先ほど言ったように最初に副作用情報、これは今一番困っているので、何とか自分た ちがやっている治験の中で発生する有害事象報告だけに軽減してもらえないかなという のが一つ、一番の要望です。  これには前例があります。そこの下の関連事項というところに「EUの臨床試験指令 」と書いてありますが、これは先ほど上田先生も紹介されていたEU Clinical Directiveと言いまして、EUは2001年4月から治験以外、要するにすべての医者がや っている臨床試験で、しかも効能効果や用法用量が承認されているものから違うとか、 比較試験とか、大半「New England Journal」や「Lancet」に載るようないい臨床試験 に関しては、ICH−GCPどおりにやれという法令ができました。発布はこうなので すが、各国で成文化しないといけないので、実際にスタートし始めたのは去年の5月ぐ らいからですが、向こうでは非常に現実的な対応をしていて、EUの臨床試験指令では そういう臨床試験の中で発生する有害事象、特に未知重篤のものに関しては、そのスポ ンサー、要するに私どもでいえば私ですね、自ら治験を実施している者がやっている試 験のみの有害事象報告をすればいいですよと明示してあります。そういう現実的な対応 を向こうは当初からしているので、日本でもできるのではないかと思っています。  それから、今実際問題一番困っているもう一つ、副作用報告に関していえば関連事項 の3ですが、医者は適応外使用が大好きですし、私どもはいつもがんの治療をする場合 に、適応外使用をせずして標準的使用はできないというぐらいですが、治験とほぼ同等 の使用方法で適応外使用というのを、普通に施設内でやられていることが多いんです ね。その場合に、それで発生した有害事象というのは通常報告するルートがないので す。というのは、企業にとっては適応外使用というのは、自分の効能効果とは関係ない ところなので、わざわざ報告する義務は彼らにはないので、医者が自分が経験した適応 外使用で発生する有害事象を安全対策課に報告するとか、企業の開発の方、MRさんに こんなことが起きたんだよと言ったときに、ボランタリーに役所の方に報告が行って、 それをもとにいろいろな変革が起きるということで、これはブラックボックスなんです けれども、広く行われている適応外使用で発生する有害事象を国が積極的に集める方策 が今ないので、そういうもので発生した有害事象をどう医師主導治験に反映するかとい うのも、一つ大きな問題として抱えています。  次をめくっていただくと、2番の特定療養費制度の運用は先ほど申したとおりです。  3番はモニタリングの実施でございまして、これは企業の治験でもいつも私どもが感 じるところですが、とてもきれいな完璧なデータは出たのだけれども、臨床的に意義の ない、全然大したことのない臨床試験結果であったというのが、日本の今のモニタリン グシステムでいくと満載になりそうなんですね。過度の信頼性保証というのはやはりそ ろそろ考え直して、重箱の隅をつつくような試験の質を問うよりも、何が一番患者さん に大事なのかと。それをはっきりと示すためには、どの程度のモニタリングのレベルが 必要なのかということを考えるべきではないかと思っています。これはこの前ヨーロッ パに行ったときに、いろいろな規制当局に会いまして、EMEAあるいはフランスのA FSSAPS、それからイギリスのMHRAにも行って担当者と話しましたけれども、 例えばイギリスであればその臨床試験で発生する有害事象のリスクというのは、要する にもう誰もが知っている薬を誰もが知っている疾患に投与するような臨床試験の場合 に、非常に厳しいモニタリングをする必要性はないですよと、規制当局の担当者も言っ ていました。それはリスクベースモニタリングと言うらしいのですが、MHRAという イギリスの規制当局の担当者がそのリスクを判断しますというふうに言っていましたの で、やはりダイナミックに試験の内容に応じてモニタリングの内容を規定するというよ うに、日本も改めるべきではないかと思います。  4番の補償措置は先ほど申したとおりです。  次をめくっていただくと5番、インフラ整備も先ほど申したとおりですが、今回は先 ほどから言っていました学術会議の会長の黒川清先生が班長で、国内未承認薬の検討班 というのがあるんですけれども、これは適応外使用やコンパッショネートユースや国内 未承認薬などをどうやって使っているのか、海外ではどうか、日本ではどうかというこ とを調査している研究班ですが、昨年アメリカに行って、今年はヨーロッパに行ってき ました。そういう中で見てみると、やはりこのインフラ整備のところに書いてあるいろ いろなシステム上の違い。特に私は今まで自分がアメリカで教育を受けたところもあっ て、アメリカ一辺倒だったのですが、最近ヨーロッパに行って、中央集権だし、国民皆 保険もいいし、歴史も日本と同じぐらいだし、ヨーロッパの方が日本に近いかなと思っ てヨーロッパびいきになりつつあるのですが、そこの規制当局、それから現場の人たち の話も聞くと、ここに書いてあるようないろいろな項目を実現して、インフラをきちっ と整備した上で臨床試験を推進していることがよくわかってきました。特にフランスの 制度というのは非常に参考になると思いますので、例えばこの治験の検討委員会とは別 に、黒川班の報告の方でまたまとめたいと思っています。  6番、7番は今後の課題です。6番は多施設共同治験を念頭に置いた医師主導治験と いうふうに書きましたが、今の医師主導治験の中では多施設の共同治験というのは念頭 に置いていないんですね。これはなぜかといいますと、上田先生がおっしゃったのは、 従来の治験屋さんとか治験おやじと呼ばれる、昔は治験総括医師と呼ばれていた人たち ですね、金の亡者の人が多かったのですが、そういう人たちが復活するのではないか と。要するに、共同でやると結局ボスがそれを仕切って、そのために医師主導治験がね じ曲げられてしまうのではないかという性悪説に基づいて、今の医師主導治験の法令と いうのは、単施設でやることを常に念頭に置いております。したがって、私どもの治験 も治験責任医師は9人いるんですね。それでやるとものすごく調整に手間取ります。そ れで調整する治験調整委員会、私は治験調整委員会を束ねているのですが、私らの場合 は、「私がやりますから皆さん、私の意見に何かあればコメントしてくださいね」とい う形で、なるべく治験責任医師の方々に負担をかけないような調整委員会機能にしてい ますが、やはり次に医師主導治験を巡る法令を変える場合には、今世界で動いている臨 床試験というのは多施設でやるのが標準ですから、やはり多施設の共同治験というもの を念頭に置いた法令の記載というのを、ぜひしていただきたいと思います。  7番は知的財産権の話ですが、今回はプロトコールからCRFから全部私どもがつく ったので、私の頭に知的財産権があるというふうに主張したいところですが、そうもい かないので、企業さんが最終的に薬を承認・申請しますので、その知的財産権を将来的 にどう受け渡していくかと。ここはいまだに議論は何もなされていません。ただ、数年 後には私どもがやっている治験、あるいは循環器、小児領域でやっている治験というの は終了して、うまい結果が出れば承認・申請に使えますので、それに向けて現段階か ら、じゃ、そのときにどうやってそのデータの成果を企業に移転するかというシステム を、十分整備しておく必要があるのではないかと思います。  最後に、次をめくっていただくと、あとは細かい規定に関して自分たちのコメントを 入れていますが、8)その他の(9)、治験審査委員会のところですね。先ほど吉村先生 のIRBに関する質問の中にあったのですが、私が今、上田班で中央IRBの議論をし ていく中で、今回ヨーロッパに行って気づいたことがあったので、少し(9)についてコ メントさせていただきます。  フランスでは、今IRBではこの1年ぐらいの間に、全仏でIRBのSOPを統一化 するというふうに、AFSSAPS、フランス医薬品庁の方が言っていらっしゃいまし た。フランスでは全仏で40ぐらい認定して、それを中央IRBと呼ぶかどうかは別とし て、そういうようなところで審査するようなシステムにするということをおっしゃって いました。  それからイギリスですが、これはナショナル・キャンサー・リサーチ・ネットワーク と言いまして、向こうのMRCと並ぶような、がんの領域で臨床試験を行なうネットワ ーク組織でありますが、そこの先生に聞いたところ、多施設共同試験の場合は、まずは イングランド、この人はロンドンに行きましたので全イングランドにある数十のIR B、これは国が認定しているところがあるらしいのですが、その中から一番早く審査が その段階で済むということを選んで、そこで審査させるらしいです。その上でローカル のIRB、これも別に病院にあるわけではなくて、人口比に応じていろいろなところに 設置している地域のIRBに審査をさせて、要するに効率よくなおかつ早く、どうやっ て試験を開始するかという工夫がヨーロッパではたくさんされているということが、こ の英仏の状況ではわかりましたので、セントラルIRBの議論のときにそのあたりを検 討していただきたい。特に統一化したIRBのSOPづくりとか、あるいはアメリカで やっているIRBの認定ですね、アクレディテーションとか、それからアメリカで非常 に厳しいのはメンバーの教育です。IRBの先生方を見ていると、ものすごく知識にば らつきがあるので、毎回IRBの指摘がばらつくんですね。「あの先生はこう言ってい るけれどもこの先生はこう言っている。毎回ぶれているじゃないか」という指摘がよく あるので、そのあたりメンバーの教育や委員会の資格認定に際しては、やはり考えてい くべき必要があるのではないかと思います。  以上でございます。 ○池田座長  ありがとうございました。藤原委員からは、医師主導型治験の実施で直面している問 題点をいろいろ挙げていただきました。さらには医師主導の治験だけではなくて、我が 国における臨床試験全般にわたってのインフラ整備の問題にまで触れていただいたわけ ですが、時間がまだ少しございますので、ぜひこの点を委員の先生方から御討論いただ きたいと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○寺岡委員  よろしいですか。今、藤原委員は、医師主導型治験にかかわっての思いのたけを発表 されたと思いますが、途中の話にも出ましたが、多少お手伝いしている立場からいえ ば、一々胸にずしんずしんとこたえるといいますか、共感を呼ぶ内容が多かったと思い ます。しかし、ちょっと誤解があるといけませんので一応申し上げておきますが、日医 の治験促進センターの大規模治験ネットワークにのっていれば幸いにも、というような 御発言がございましたけれども、これは今そこに医政局研発課長も来ていらっしゃいま すが、現在の医師主導型治験の取り組みというのは、厚労省の科研費の補助金による治 験促進研究事業という、研究事業の中でのモデル事業としてやっておりますので、これ はずっと日医の促進センターが……。むろん今後もこのモデル事業が終わっても新たな 課題を見つけ、また事業が存続できるように努力していくつもりではありますが、今の 形がそのままずっと続くというわけではございません。藤原先生はもちろん十分おわか りのはずですが、ちょっとお聞きになっていらっしゃる方には十分御理解いただけない かなと思いますので、余計なことかもしれませんが申し添えておきます。  あと、御指摘になった内容については、ほとんど私も共感できる内容だというふうに 申し上げておきたいと思います。 ○池田座長  ありがとうございました。吉村委員、どうぞ。 ○吉村委員  藤原先生の御意見をお聞きしたいのですが、IRBのSOPをつくるということはそ んな僕は難しくないと思うんですけれども、そのメンバーに対して、実際にこういう認 識でこういうことを問題にしてやらなければいけないということの教育というのが、む しろ難しいのではないかと思うのです。その教育を、例えばどういうところでやればい いとお考えになっているでしょうか。 ○藤原委員  難しい御質問ですが、教育は僕は官主導は嫌いなので、あまり厚労省に指導してほし くないなとは思うのですが、日本人というのは官尊民卑なので、厚労省が言えばこう考 えますという人が多いので、日本の人に合うにはやはり厚労省、あるいは厚労省の外郭 団体でもいいですけれども、そういうところがIRBの委員の要件というのを指導すれ ばいいと思います。そのときに一番してほしいのは、昔審査をやっていたころに、イギ リスの海外GCP調査に行ったときに、そこのIRBの委員長とディスカッションして いて思ったのですが、日本のIRBの先生方によく会うと、「これは法律にのっとって いますか」とか「薬事法で承認されていますか」ということを非常に気にされる方が多 いんですけれども、イギリスのIRBのチェアマンが何を言っていたかというと、「こ れを患者さんに投与したときに、本当にその人にとってリスク・アンド・ベネフィット を見て、ベネフィットが上回るかどうかという観点で私は審査しています」と言われた ので、非常に感銘を受けたのです。やはりIRBに求められているところは、その臨床 試験のリスクとベネフィットをちゃんと判断して、それを法令はともかく、法令を遵守 するというのは大事なことですが、むしろ患者さんにそれをやるということが、本当に トレードオフですね、リスクとベネフィットのトレードオフはどうなっているかを教え るのが、それを見なさいと指導するのが僕は一番肝要だと思います。  それを厚労省がやるのはなかなか難しいと思いますが、それを押さえた上で、じゃ、 法令の中ではこういう記載がありますとか、薬事法でやっていることは、遵法行為はこ ういうものでありますとか、あるいは臨床試験というのはこういうものですとか、そう いう付随するいろいろな措置も教えてあげないと。今のIRBの先生方を見てみると、 そういえば臨床研究に関する倫理指針もそうですし、それからゲノムの指針とか、告示 とか、別に法律行為ではないことから、薬事法とかその法律に基づく行為まで、さまざ まなことを一緒くたにしてコメントする方が多いので、法体系をちゃんと教えてあげ る、あるいは臨床試験の基本はこういうものですよというところを教えてあげるとか、 各国の規制状況がこうですよとか、そういうものも基本的知識として教える機会は必要 ではないかと思います。 ○池田座長  どうぞ、吉村委員。 ○吉村委員  基本的に今おっしゃったことの方向性は、私は全く異論はありませんが、IRBのほ かにIDMCとか倫理委員会とか、何らかの意味でのモニタリングに相当するようなこ とをやるいろいろな組織では、非常に多種多様な分野の人が集まってくると。そうする と、例えば大学みたいなところはどうも縦割りというか、学部単位みたいなものがあっ て、なかなかそういうものに対する統一的な教育というのはしにくい。しかし、今本当 はそういうことが必要とされていると思うんですね。だからそれを何らかの意味で、そ ういう縦割り大学、あるいは専門とは違ったところで、多種多様な人が同じ問題意識で もって教育されるということが必要ではないかと思います。そういう何かうまいシステ ムが考えられないものかと。 ○池田座長  そうですね。いわゆる人材の育成ということも踏まえて、藤原先生、どうでしょう。 何かうまい仕組みというのを。例えば欧米などではどういう仕組みでそういう人材を育 成しているのか。 ○藤原委員  私はジョンズ・ホプキンスに昔いたので、まだ事件が起きる前だったのですが、あの ころにIRBを見ていて、よくまあこんなに仕事をたくさんするなと思ったのですが、 要は人ですね。要するに、人がたくさんいないと話にならないというのがあって、日本 の場合は政府の予算というのは建物にはたくさんつきますが、機械にはたくさんつくん ですけれども、人には全然つかないというところがあるので、定員枠としてちゃんとた くさん人をつけて、臨床試験の倫理をちゃんと指導できるような人たちを、たくさん育 てる。まず定員の大幅な増員というのを一方で考えておいた上で、最近思っているの は、アメリカ型の各医療機関にIRBをそれぞれ設置してという、非常に非効率的なこ とはせずに、ヨーロッパ型に、なるべくなら地域ごとにIRBをたくさん設置しておけ ば、人材の散逸は避けられると思います。ローカルなIRBを設置して、そういうとこ ろでたくさんの人たちにオープンな場でディスカッションしてもらうというシステムが できれば、先ほど吉村委員が言われた、教育の効率化という意味では役立つし、審査の スピードも早くなるかなとは思います。 ○池田座長  そうすると、その人材もその施設に属している者ではなくて、その地域やその役割で もってある程度動ける人と、そういう考え方と。 ○藤原委員  というのも一つの手かなと。 ○池田座長  一つの考え方。寺岡委員、どうぞ。 ○寺岡委員  私ども日本医師会が取り組んでいる大規模治験ネットワーク、それにくっついている いわゆる地域等ネットワークについては、地域の医師会ですとか、あるいは大学、また はそれに相当した組織を中心とするネットワークなど、さまざまなネットワークをつく っておりますが、今おっしゃったことに関連するならば、我々はインフラ整備というと ころで、やはり相当な努力をして成果を出さないといけないなと思っております。その 中で特にこのIRBの設置ということに関しては、医師会のネットワークこそ、それで すべてがカバーできるというものではないかもしれませんが、医師主導型治験の全国展 開においては、我々が整備していかなくてはいけない部分がかなりあるなと思っており ます。 ○池田座長  ありがとうございました。そのほか、委員の先生方、どなたか御質問、御意見はござ いますか。  藤原委員はがんセンターにいらっしゃるので、がんの臨床試験を医師主導型の治験と いう形でやっていらっしゃいます。がんというとある意味で、薬剤の中では患者さんは 非常に致命的な疾患を抱えているということで、ほかの疾患とは少し違う点があると思 うのですが、先生はほかの疾患、あるいはほかの薬剤にも同じように考えていいのかど うかという、その点についてお考えはありますか。例えば先ほど副作用の報告の軽減に ついて、もうちょっと何とかならないかという御報告がありましたが、その辺はいかが でしょうか。 ○藤原委員  アメリカ方式でいえば、life threatening diseaseというのをFDAはよく言います けれども、重篤なまれな疾患というのは別にがんに限るわけではなくて、例えば循環器 でも肺高血圧症とか、呼吸器でもいろいろな病気がありますし、それから精神神経疾患 や小児にいきますとますますそういう病気が多いわけです。ですから、そういうまれで かつ重篤な疾患というのは各種疾病領域で共通の課題ですので、そこに関してインフラ を整備するということは共通の認識だと思います。別にがんだけが大変ではなくて、む しろ僕はがんの場合はたかだか数百例、たかだかといっても日本でやるのは大変です が、数百例の患者さんに参加していただければいい臨床試験はできますが、生活習慣病 や循環器の領域にいきますと、数千例規模の臨床試験をやらないと、今診療行為という のは変わりませんので。日本で治験が進まない大きな原因としては、そういう数千例あ るいは1万人規模の大規模疫学研究やランダム化比較試験が全くできる環境にないとい うところも、やはりインフラの整備としてはしっかり考えていかなければ、循環器の先 生方はいつまでたっても、欧米発のデータにしかディシジョンメーキングを依存せざる を得ないということは変わらないと思います。 ○池田座長  ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。  今井委員、先ほど、がんセンター中央病院での同意説明文書の補償に関する記載のと ころがございましたが、こういう文書を見ると患者さんの立場から見てどうでしょう か。臨床試験への参加とか。たしか8ページですか。 ○今井委員  これは要するにお金は出ないで、治療で代わりに補償しますよという意味ですよね。 意味はわかるんですけれども、この場合、患者さんが副作用の治療を他の医療機関で受 けたいと思った場合は、どういう扱いになるのでしょうか。 ○藤原委員  非常に難しい問題ですね。だから、こういう話が多分いろいろなところで出てこない といけない。今のところ私どもは、自分たちの病院で発生した有害事象は自分で責任を 持って対処しますと。いろいろなところから医者を呼んできてもいいですし、対処しま すというふうなお話はしますが、ほかのところに絶対に行きたいと言われたときにそれ をどうするかと言われると、今のところここでは即答はできないですね。ただ、患者さ んに金を出せということは、要するに経済的な負担をかけるということは一切しないこ とはもう間違いないので。ですから、未知の発生した重篤な有害事象のところに関して 責任を持って、最後まで対応するということ、要するに患者さんが不利益をこうむらな いようにするということは間違いないところは言えるのですが、具体的な方策として は、そういうのが発生しないとなかなか言えないです。未知で、しかも予想されないよ うな重篤な副作用というのはなかなか出てこないですね。こういうグリベックというの はもう既に市販されているお薬ですから、あらゆる副作用プロファイルというのは大体 わかっているので、それに載ってこないものに関してというのはなかなかないですが、 発生した場合に患者さんにお話しするときには、そういう補償に関してというときに は、もう絶対に迷惑はかけませんという話はします。 ○池田座長  どうぞ、望月委員。 ○望月委員  医師主導型治験は非常に大変な作業がたくさんあるなというのを、今日のお話を聞い ても、前回の景山委員のお話を聞いても思いました。今日のお話の中の5ページ目の、 自ら治験を実施しようとする者はこれこれ等々膨大な作業を強いられるというのが、多 分今日のお話の一番の基本的な整理になっているのかなと思ったのですが、これをちょ っと大胆に整理をさせていただいてしまうと、藤原委員のお話を聞いていますと、プロ トコールの作成、SOP、治験計画の届出、これらはある程度の御経験で解決ができる ところがある項目かと思います。しかし、残りの部分というのが法的な枠組み、あるい は財政的、人的なインフラ的な整備というのが必要な部分なのではないかというふうに 整理できるのかと思いますが、そういう整理の仕方でも大丈夫でしょうか。 ○藤原委員  ありがとうございます。そのとおりでございます。 ○望月委員  では、その上でちょっと御質問があるのが、これは藤原委員にではないのですが、景 山委員に御質問したかったのが、前回、私が実は質問しようと思っていた項目ですが、 今の経験があれば解決できるという整理ができる中に、プロトコールの作成というのが 一つ出ています。前回、先生の御発表の中で、ここは結構時間がかかって大変なんです という御発言があったと思いますが、そこは同じプロトコールの中でも、単に研究計画 をきちんと立てるという以前の、薬の概要とか、薬理ですとか毒性ですとか、そういっ たあたりの概要情報をまとめるところが大変なのかと推測するのですが、プロトコール 作成に対する藤原委員との意見の違いを教えていただければと思います。 ○景山委員  前回、恐らく私の記憶では、プロトコールを作成することは、医師主導の治験を自ら 実施する者にとってはそれは可能ではあろうと。しかし、それなりに時間のかかること だというふうに申し上げたと思います。その理由は、従来自主研究としての臨床試験を やっていれば、プロトコールの骨子を書くこと自体はそれほど大変なこととは思いませ ん。ふだん興味を持っていることを文章にするだけですから。しかし、治験となります とGCPの制約が加わりますので、一つ一つ書いていることをGCPに照らして、果た して適切かどうかということを確認していかなければいけないわけですね。そういった 作業にかなり手間取るだろうという趣旨です。それともう一つは、細かいことですがケ ースリポートフォーム、症例報告書ですね、これとの整合性をとらなければいけないわ けです。これも実際にやってみると相当厄介な仕事だろうと思います。そういう意味で プロトコールを作成することもそれなりには大変であると。ただし、骨子をつくること はそれほど問題となる作業ではないというふうに申し上げたと思います。  それから、治験薬概要書云々ということですが、そういう趣旨ではございません。 ○池田座長  よろしいですか。藤原委員から、本当にわかりやすく問題点を整理してプレゼンテー ションしていただきまして、寺岡委員からも今医師主導型の治験の実施で抱えている問 題点というのが、非常にそのとおり浮き彫りにされたのではないかというお話をいただ いたわけです。本日は3人の方に御意見をいただいたのですが、この3人の先生方のプ レゼンテーションを踏まえて、現行のGCPと我が国の治験の環境について、もう少し 一般的な話題で御議論をいただきたいのですが、いかがでしょうか。今まで幾つかもう 既に医師主導に関わらずご意見は出たとは思いますが、何か特別に御発言はございます か。どうぞ、藤原委員。 ○藤原委員  さっき一つ言い忘れたことがありまして、研究的診療という、治験も含めてですが、 臨床試験を行う場合にそれにかかる医療費のうちの研究的部分ですね。だから通常の診 療の中でやっているところはいいんですけれども、例えば有効性の判定にCTをとると かMRIをとるとか、そういう部分の医療費を出す経費として、やはり国の中で何らか の整理が必要かなと最近思っていまして、この大規模治験ネットワークの治験推進事業 でやっている場合には、先ほど申し上げたように支給対象外経費のところは研究費とし て算定できるんですけれども、それ以外の医師主導治験をやろうとする場合に、例えば 厚生労働科学研究費で予算をいただいて研究をやろうとする場合に、保険料は出せるん ですけれども、医療費というところは今出せないんですね。全部医療費を出せというわ けではなくて、そういう研究的診療の部分を例えば医療費で何とか、研究費で賄えない かというシステムを日本でも導入していただくと大分違うかなと。  例えばアメリカでもメディケアという公的な保険の場合、メディケアの場合は例えば NCIとかNIHがサポートするような臨床研究に関しては、ルーチンペイシェントケ アコストですね。普通の診療の部分に関しては、たとえ研究的診療であってもメディケ アから支払えますよというシステムがありますし、ヨーロッパを見てみますと、イギリ スだとMRCが臨床試験をやったときの研究的診療の部分の医療費を持ちますよとか、 フランスも今年の1月から、フランスがんセンターというのがシラク大統領の肝いりで できたのですが、大きなグラントの大半は研究的診療に関する医療費の負担というのが うたわれていまして、やはり日本の研究的診療を大手を振って保険診療下、あるいは特 定療養費という制度でもいいんですけれども、そういう中でやるシステムを考えていた だかないと、今回やってみて思ったのは、やはりお金がかかるんですね。かかるときに それを何とかする、フレキシブルに動かすシステムというのを包括的に考えていただか ないといけないかなと思います。 ○池田座長  ありがとうございました。医師主導の治験に関しては、前回、景山委員に我が国の届 出の状況というのをお示しいただいたわけですが、残念ながらまだ数は非常に少ない と。それは非常に御苦労があるということもさることながら、やはり臨床試験全般に対 する評価というか、医者の評価というのが我が国では残念ながらまだまだ低いこともあ るのではないかと。要するに、ベーシックサイエンスだけをやっていれば評価をされる ような風潮が少しあるのではないかということで、その意味では恐らく厚生労働省も臨 床試験そのものをバックアップするような方向、あるいは医師主導の治験、あるいは介 入試験、無作為化比較試験などの、非常にリーズナブルなプロトコールにのっとった試 験をサポートするような、そういう試験に対してエンカレッジするような方向に行って いただければいいなと私は考えて、恐らく藤原委員も同じ意見ではないかと思います。  いかがでしょうか。先生方、そのほか何か御意見はございませんでしょうか。今日は かなり活発に御議論いただいたと思います。最初は生駒委員から日米間の比較の話が出 て、そのときにはできればもう少し詳細な、議論できるようなデータが欲しいというこ とで、それをぜひ今後も積み上げていかなければいけないということ。あるいは景山委 員からは、日本あるいは欧米の比較の中で、日本は非常に治験の費用がかかるというの は、あれが本当にすべてのものにレプレゼンタティブなのかというような問題もござい ましたので、そういうデータも少しこれから必要かもしれませんし、あるいは施設でど れぐらいの症例が平均して入っているかというようなことのデータなども必要だろう と。あるいは上田委員からは、IRBの実態が必ずしもうまくつかめていないかもしれ ないというような問題提起をいただきました。医師主導の治験については、藤原委員に 非常に詳しく御説明いただいたわけです。このような議論を踏まえまして、事務局に今 後短期的な目標、または中長期的な目標として解決すべき課題について、今後の会合に 向けて整理をしていただきたいと思いますが、次回の会合以後の進め方について、事務 局の方で何か考えがございましたらお聞かせいただいて、そして委員の先生方に少し御 意見を伺いたいと思いますが、どうでしょうか。 ○事務局  次回につきましては、今、池田座長の方から御指示がございましたように、いろいろ な御意見等が出ております。それを短期的な目標、中長期的な目標として、事務局の方 で少したたき台といいますか、そういう課題とか、それから今後議論すべき部分の問題 提起といったものもあったかと思いますので、ちょっとその辺精粗がややまざってしま うとは思いますが、そういう形で課題といいますか、項目をちょっと整理させていただ きまして、次回提示させていただければと思いますが、いかがでございましょうか。 ○池田座長  ありがとうございました。委員の先生方、ぜひこの点は次回の委員会までに整理して おいてほしいというようなことがございましたら、課長は非常に有能な方ですからすべ て用意してくださると思いますので、いかがでしょうか、何か御意見はございますか。 よろしいですか。はい、どうぞ、寺岡委員。 ○寺岡委員  ものすごく簡単なことですが、今まで出てきた話の中で、手順的に非常に過重である ということがさまざま出てきたと思いますが、それも含めて少し我々にわかるように、 何がそれの障壁になっているのか、あるいはそれを短期的にこういうふうにすれば可能 であるとか、非常に難しいとか、ということも含めて整理していただいたらありがたい と思います。 ○事務局  できるだけそのように対応したいと思います。 ○池田座長  よろしくお願いしたいと思います。それでは、本日の議題は以上です。長時間にわた る審議をどうもありがとうございました。事務局から最後に何かございますか。 ○事務局  次回の日程でございますが、これは前回5月分までお決めいただいておりまして、次 回は5月26日を予定させていただいております。資料等につきましては、追って御連絡 を申し上げます。それから、この本日の日程を決めさせていただくときにも、先生方は お忙しい方ばかりで大変だったものですから、大変恐縮でございますが、本日この場に おきまして、6月、7月の会合予定も決めさせていただければと思っております。 ○池田座長  あらかじめ事務局の方から先生方に一応6月、7月の御予定を、御都合の悪い日にち をなるべく避けてということで伺ったのですが、6月は30日の午前中ということにさせ ていただきたいと思います。7月が22日。 ○寺岡委員  午前中といっても何時からですか。 ○池田座長  すいません。普通は10〜12時ですか。 ○事務局  はい。そのようになると思います。 ○池田座長  そうですね。10〜12時ですね。そして、7月22日もやはり10〜12時ということにさせ ていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。よろしいでしょう か。先生方は皆さんお忙しい方ばかりなので、すべての先生方に出席していただける日 にちが無いもので大変申し訳ございませんが、よろしくお願いしたいと思います。  それでは、これをもちまして本日の検討会を閉会させていただきたいと思います。お 忙しい中どうもありがとうございました。失礼します。 ○事務局  どうもありがとうございました。                                     <了> 照会先: 医薬食品局審査管理課 清水・近澤(内線2736、2737)