05/03/04 予防接種に関する検討会第6回議事録            第6回 予防接種に関する検討会 議事録                            平成17年3月4日(金)                             13:30〜16:30                    於:厚生労働省 18階 共用第22会議室                   議事次第           1.第4回及び第5回検討会のまとめについて           2.水痘の予防接種について           3.流行性耳下腺炎の予防接種について           4.肺炎球菌の予防接種について           5.その他 ○江崎課長補佐  それでは、定刻でございますので、ただいまより第6回予防接種に関する検討会を開 催させていただきます。本日御出席の委員の方、参考人の方、悪天候の中、また多忙な 中御出席いただきまして、ありがとうございます。  本日でございますが、竹本委員、廣田委員は欠席の御連絡をいただいております。ま た、事務局でございますが、牛尾結核感染症課長は出席可能になり次第、出席する予定 でございますので、よろしくお願いいたします。  本日も、専門家の方3人に参考人として御出席をいただいておりますので、簡単に御 紹介いたします。  藤田保健衛生大学医学部小児科教授の浅野参考人でございます。  国立病院機構三重病院副院長の庵原参考人でございます。  長崎大学熱帯医学研究所助教授の大石参考人でございます。  よろしくお願いいたします。  それでは、座長、議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○加藤座長  それでは、議事に入る前に、課長がおられませんので小林専門官から本日の検討会の 議事の概要を説明して下さい。 ○小林専門官  本日御審議いただく内容について、御説明させていただきます。  第4回検討会ではポリオについて、第5回検討会ではインフルエンザについて御議論 いただきました。本日はまず最初に、そのときの簡単な総括をお願いしたいと考えてお ります。  その後で、本日は水痘、流行性耳下腺炎、肺炎球菌の3疾患の予防接種の在り方につ いて御議論いただく予定といたしております。よろしくお願いいたします。 ○加藤座長  ありがとうございました。  それでは、早速ですが、議事次第に沿って議論を進めてまいりたいと思います。ま ず、議題1、第4回及び第5回検討会のまとめについてですけれども、この内容を整理 いたしましたのが資料1と2にまとめてございますので、それを事務局の方から御説明 をお願いいたします。 ○小林専門官  それでは、資料1の「第4回検討会のまとめ(ポリオについて)」をご覧いただきた いと思います。ざっと読み上げさせていただきます。  ポリオの予防接種でございますけれども、現行ではOPVを使用しているが、OPV の使用により被接種者にポリオ麻痺が数百万人に1人の割合で発生する。また、被接種 者からの二次的な糞口感染により、家族等に二次的な麻痺が生じることも知られており ます。  このために「ポリオ及び麻しんの予防接種に関する検討小委員会」で、今後のポリオ の予防接種の在り方について御検討いただきまして、平成15年3月に取りまとめられた 提言においては、IPVの早期導入の必要性と二次感染者に対する救済制度の創設の必 要性が指摘されております。  現在、我が国においてもIPVの治験が実施されているところでございますけれど も、定期の予防接種への導入には今しばらく時間を要するものと考えられることから、 当面は安全性に配慮した上で高い接種率を維持しつつOPVの使用を継続する必要があ る。  先進国では、ほとんどの国で既にIPVが導入されており、ポリオ根絶計画の進捗状 況にかんがみれば、我が国でも極力早期のIPV導入が喫緊の課題となっている。IP Vの早期導入に向け、関係者は最大限の努力を払うべきであると、このように整理させ ていただいております。  続けて、資料2は第5回、前回のインフルエンザについてのまとめでございます。1 は歴史的経緯ということでまとめております。ここの部分は読み上げを省略させていた だきます。  2つ目に、高齢者へのインフルエンザ予防接種について、まとめております。       (「高齢者へのインフルエンザ予防接種について」から朗読)  それから、資料5でございますけれども、前回お越しいただきました熊谷参考人か ら、前回の発表に関連して追加意見をいただいておりますので、簡単に紹介させていた だきます。  1番目といたしまして、抗体価の測定についてのstandarization、標準的な検査の在 り方について、技術的な問題点があるということでコメントをいただいております。  それから、研究開発の方向性といたしまして、アジュバントワクチンの開発を日本と しても積極的に進めていく必要があるのではないかということをコメントとしていただ いておりますので、資料として添付させていただいております。  以上でございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。ディスカッションに入ります前に、ちょっと私の方で順序 を間違えましたが、資料の御確認をしていただきますので、事務局からお願いします。 ○小林専門官  資料でございますが、今、資料1と資料2を御説明させていただきましたけれども、 その後、資料3として浅野参考人の発表資料、それから、資料4として庵原参考人の発 表資料、資料5として大石参考人の発表資料を準備させていただいております。  また、参考資料として『病原微生物検出情報』の水痘と流行性耳下腺炎の直近の特集 をコピーさせていただいております。また、いつもどおり参考資料につきましては、印 刷の都合で傍聴者には省略させていただいております。傍聴者の皆様におかれまして は、必要であればホームページ等で御確認いただければと考えております。  以上でございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。それでは、早速ディスカッションに入ります。まず、先ほ ど小林専門官から説明のありました資料1、第4回検討会のまとめのポリオについてで すが、何か御意見・御質問ございましたらどうぞ。  その前に、課長がいらっしゃいましたので、何か一言ごあいさつを。 ○牛尾結核感染症課長  所用がございまして遅れまして申し訳ございません。  小林の方から御説明があったかと思いますが、改めて私の方から本日の趣旨と目的を 御説明させていただきたいと思います。これまでの4回、5回の議論の総括と同時に、 今日は水痘と流行性耳下腺炎、肺炎球菌、3疾患の予防接種の在り方を御議論いただく ことになっておりますが、これをどうして今回議論していただくかということなんです けれども、これは平成10年に設置されました以前の委員会でございますけれども公衆衛 生審議会感染症部会の「予防接種問題検討小委員会」において以前、議論が行われまし たが、定期接種の導入という観点から必ずしも知見が十分ではないということで、審議 会では予防接種法上の取扱いについては、今後の調査研究等を踏まえながら、更に引き 続いて検討していくべきとの意見が取りまとめられたところでございます。そういう観 点から、水痘と流行性耳下腺炎、肺炎球菌の3疾患の予防接種の在り方につきまして は、平成10年ごろからの宿題となっていたということでございます。この審議会での御 意見を踏まえまして、有効性、安全性に関する研究が実施されてまいりましたので、今 回はこれまでの得られた知見に基づいて、これらの予防接種の在り方について御議論い ただきたいという趣旨でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○加藤座長  ありがとうございました。本日の議事の趣旨について、課長からお話がございまし た。  では、話を戻しまして資料1、ポリオにつきまして第4回の検討会のまとめがここに 書かれてございますが、御質問並びに御意見がございましたら、委員または参考人の方 々どうぞ御意見をいただきたいと思います。  確認をしておきますけれども、ポリオについてちょうど中段のところに書いてある前 回の小委員会で討議されました二次感染者に対する救済制度の必要性が指摘されたと書 いてございますが、この二次感染者に対する救済制度は確立したと。 ○小林専門官  さようでございます。始まっております。 ○加藤座長  ちょっと付記されておいた方が。 ○小林専門官  わかりました。では、そのように修正させていただきます。 ○加藤座長  ほかはいかがでしょうか。ポリオの方は十分簡潔におまとめいただいておりますの で、特に問題はないと思われますので、先に進んでよろしゅうございますか。  それでは、先に進ませていただきまして資料2、インフルエンザについてでございま す。インフルエンザについて、1番、2番のところに関しましては御議論は余りないか と思いますけれども、3番以降、小児に関してのところが若干新しく入ってきたところ でございますが、何か御意見、コメント、質問がございましたらどうぞ。  4ページになりますが、一番下の段落の表現の仕方は各委員、参考人の方、これでよ ろしゅうございますか。「現在の不活化ワクチンには、交叉防御能が弱くワクチン株と 流行ウイルス株が不一致の場合有効性が大幅に減少する」と明記されておりますが、こ の辺はよろしゅうございますか。何か御意見ありますか。 ○岡部委員  もし、一文加えるならば「不一致の場合、その程度により流行性が大幅に減少する 」。かなり「不一致」という言葉が独り歩きする可能性があるんですけれども、不一致 の度合いは、その表現にしばしば問題が出てくるときがあって、幅があるということを 明記しておいた方がいいのではないかと思います。 ○加藤座長  ほかに御意見いかがでしょうか。不一致の程度によりけりだということでございます けれども。これは岡部先生、昨年の米国で流行した場合の例をとると、どういうことに なりますか。 ○岡部委員  昨年、日本で生産したワクチンのウイルス株と、それから、流行している福建株とい うものとはHI反応というもので見るわけですけれども、8倍以上の差があるというこ とで不一致があるということは、感染研のウイスル3部が発表しているデータそのもの だと思います。しかし、もうちょっと細かい検討をしてみると、例えば、ワクチン株で 福建株を実験的にはある程度抑制ができることがあるというような場合があったり、あ るいは株の名前は違うけれども、せいぜいその4〜8倍程度の違いであるといったよう な場合もありますので、バリアントという1つの言葉ではなかなか解決できないときが あるというような意味です。でも、それを広く説明するには非常に難しいので、やはり 不一致ということで表現されるのは通常の場合は問題ないと思いますけれども、こうい ったような場合には不一致の幅の程度によりけりで、有効性が大幅に減少するというの であれば、その幅も記入しておいた方がいいだろうと思います。 ○加藤座長  ここに書かれている表現としての「大幅」は、やはり大幅ですか。 ○岡部委員  逆に、このままで「大幅」をとってもいいんですけれども。確かに大幅に減少すると いうことも恐らくはあるでしょうし、将来ないとは言えない。 ○加藤座長  大幅に減少する可能性もあるという、実際問題として余り厳密には述べられない内容 なんですね。そういう可能性は含まれていると。ただ、文言になって残りますと、ちょ っとでも不一致にすると大幅に流行してしまうというふうに読み取られる可能性もあり ますので、大幅に減少する場合もあるという程度にとどめておきましょうか。 ○岡部委員  これは、どちらにくみするという話ではなくて、現行のインフルエンザワクチンの宿 命的な部分であると思うんですね。それを認識しながら使うということが必要だと思い ます。 ○加藤座長  ほかはいかがでしょうか。 ○岩本委員  熊谷先生の話にちょっと出てくるんですが、やはりアメリカで、ここにカイロン社の インフルエンザワクチンが数千万人分輸入不能になったと書いてありますけれども、そ の先進国のアメリカでも、要するに、ワクチンの製造が滞ると国民的なパニックになる というようなことで、国の需給の問題と国内でそれをちゃんと賄うような体制を常にイ ンフルエンザの場合、今の抗原変換の問題と関係しますし、新型インフルエンザの問題 もあると思いますので、そういうところが少し出ていてもいいんじゃないかなという気 がいたします。 ○加藤座長  それは今後の検討課題という中で、ワクチン株を選択する上においてという意味です か。 ○岩本委員  それと、やはり国の需給の問題に関して、アメリカなどでも諸外国に頼っている場合 に大きな混乱になっているわけで、その辺のワクチンの製造体制のことをどこまで書け るのかわからないですけれども、やはり現にそういうものを見ている以上、やはり日本 としての体制の整備というか、そういう姿勢を示す必要はあるんじゃないかと。国が責 任を持つということを言ってほしいと言っているんじゃないですけれども。 ○加藤座長  そうすると、岩本委員としては具体的な文言としては、どんなような文言を今後の課 題の中で入れておいていただきたいとお考えですか。 ○岩本委員  今、熊谷先生の追加意見を読んでいて思ったので、すぐには思い浮かんでこないんで すが。 ○加藤座長  わかりました。  ほかにいかがでしょうか。小児に対するインフルエンザワクチンの接種についての結 論のところですが、宮崎先生いかがでしょうか。 ○宮崎委員  おおむねここに書いてあることは小児科学会で議論したことのまとめになっていると 思います。それを委員の先生方におまとめいただいたというふうに理解しています。 ○加藤座長  この中で、上から5行目の2番目の「・」ですが「予防接種法の対象者に位置付けて 」という意味は、「子どもに対して定期の予防接種は」というふうに読み替えていただ ければよろしいかと私は考えます。ですから、「定期の予防接種は」という意味合いが ある上に、そこに更にまた「積極的に」が入りますと、かなり強力に積極的に努めてい ると読めるので、私個人としてはこの「予防接種法の対象に位置付けて」という言葉が あった場合には、小児科学会の岡部先生の方が詳しいんですが、小児科学会としては小 児に対しての見解として特に積極的に推奨しないわけではないんですね。定期接種とし ては推奨しないけれども、効果の限度を考えた上で推奨するという形になっていました ね。 ○岡部委員  たしか小児科学会の文章は「任意接種として推奨することが適当である」というふう に書いてあったと思います。 ○加藤座長  そのようなことを勘案していくと、ここの「対象者に位置付けて」の次の「積極的」 が内容的に少し効き過ぎているかなと。子どもに対するインフルエンザワクチンの否定 度が若干強く表現されているかなというふうに読み取れるような気もしますが、雪下先 生いかがでしょう。今までのインフルエンザの御討議の中の流れから考えますと。 ○雪下委員  小児科学会の方から有効率が20〜30%というのが出されているので、恐らくこれはし っかりしたエビデンスのもとに言われているんだろうと思いますけれども、現場では接 種を希望してくる保護者や、あるいはかなりの先生方の中にも、もう少し有効ではない かと考えておられる方々が多いように思うのです。その辺のギャップを、これはワクチ ンが改良されても20〜30%なのか、あるいはその辺を努力することによって将来的には もう少し有効率が上がる可能性があるのか。その辺のところをちょっと読み取れるよう な文があればと思います。 ○加藤座長  蒲生委員いかがですか。その3行前には保護者の間でも予防接種に対する強い期待が あるということが書かれてある。その一方で、上の方で研究班の成果として大体20〜30 %程度の有効性であるからして、結論としては定期接種の実現は無理であるというとこ ろで、更にまた積極的に勧奨はしないという言葉が入ってくるわけですが、その辺は御 意見が何かございますか。 ○蒲生委員  多分、現場のお母さんたちはどっちなんだろうと混乱されると思います。受けた方が いいのか、受けない方がいいのか、もうちょっと端的に言っていただいた方が、現場の お母さんはわかるんじゃないか。これだとどちらがいいのかわからないかなという気が します。まだはっきりしたことはわかりませんが、この間の御討議の中でも、赤ちゃん たちには有効性が余り高くはないだろうということになってはいましたけれども、受け させたいと思うのであれば受けてもいいとか、何かそういう具体的なことを入れていた だいた方がよろしいかと思います。 ○加藤座長  恐らくそこのところが、後の方の「任意接種として、有効性などについての正確な情 報を保護者に説明した上で、希望する場合に接種を行うのが適当」ということで表現さ れているものと思うんですけれども、ちょっとこの文章を、ですから、先ほど私が問題 提起したように、下の方で接種されたい方はどうぞということを言っておいて、上では 定期ではしません、しかも積極的にも勧奨しませんということが並びますので、若干迷 うかなと。そういう意味で、そこの「積極的」という言葉だけとっていただくと、少し 流れがスムーズかなという気がします。 ○小林専門官  この「積極的に」というのは前のページの高齢者の部分で「積極的に接種勧奨すべき 」という表現の対という意味合いで考えていたんですけれども、要するに、法律に位置 付けるということは積極的な勧奨という意味ですので、そういう意味で定期接種ではな いということであれば積極的な勧奨ではないという意味合いだったんですが、確かに誤 解を招きやすいということで、「積極的」という部分は削除するということで対応させ ていただきたいと思います。 ○加藤座長  では、その「積極的」はとっていただいた方が下の方が生きてくるということで。意 味合いは、そういう意味合いであるということで御理解いただければよろしいかと思い ます。では、よろしくお願いします。  そのほかに、このインフルエンザに関しましていかがでしょうか。もう少し追加して おきたいこととか直しておきたいようなこととかございましたらどうぞ。 ○蒲生委員  今後の検討課題の中の2つ目の「・」に、基礎疾患などのハイリスクの方々へという ことで、医療関係の方々とか高齢者の施設の方々ということがあるんですけれども、そ の中に是非、赤ちゃんたちに接する方たち、保育園などの職員というような言葉もつけ 加えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。赤ちゃんには有効性が低いとい うことでしたので、周りにいる大人がインフルエンザを予防することで赤ちゃんを守っ てあげるという意味でつけ加えてはどうかと思います。 ○加藤座長  わかりました。そういう御意見が出ましたが、いかがでしょうか。以前からの蒲生委 員の御意見のとおりでございまして、それがちょっと今回の中に欠落しておりますが、 そうすると「集団で乳幼児等と接触する従事者等」というようなことを入れるというこ とでよろしいですか。では、そのようなことを加えておいていただけますか。 ○小林専門官  わかりました。 ○加藤座長  ほかはいかがですか。今さりげなくお話ししておりますけれども、これはかなり重要 なポイントに徐々になってくることですので、十分御吟味いただきたいと思います。 ○岡部委員  先ほど、雪下先生からこの先はどうなるんだというような御質問があったと思うんで すが、小児科学会の中でこの問題を検討したときの委員会では、今のデータは現行の方 式にのっとって行った知見であると。今後、例えば接種量とか接種方式あるいはワクチ ンそのものの改良あるいは開発によって、それは違ってくる可能性があるので、現在の 得られたデータの段階で考えたところでは、今のところこうですということで、将来あ るいは未来永劫そのままフィックスするという理解ではないというのが、小児科学会で 行った委員会での結論です。 ○加藤座長  ありがとうございます。最後の方に書いてありますが、より有効性の高い新しいワク チンの開発やワクチンの改良を積極的に推進する必要があると書かれてありますのが、 先ほど岩本委員からお話になったところがこの中に含まれていると思いますけれども、 その前のところで岡部先生がお話しになったようなこと、例えばどういう表現にいたし ますか。「現行のインフルエンザワクチンを小児に」、これは小児についてのお話にな りますか。 ○岡部委員  そうですね。別に加えなくてもいいとは思うんですが、強いて加えるなら結論の3行 目のところで「これまでに得られた知見」の中に全部組み込んでいるとしてしまえば、 それでいいんですけれども、もし、それで表現として足りなければ、「これまでに得ら れた知見からは、現行の方式並びに現行のワクチンを使った知見によれば」というよう なことを付け加えていただければ、よりはっきりすると思います。 ○加藤座長  4番の一番最後のところ「今後、より有効性の高い新しいワクチン」にいきなり飛び ますので、「今後、現行ワクチンの接種方法、更には」というような言葉を加えたらい かがでしょうか。例えば今、小児でもこれから問題になるであろう量の問題、1歳未満 は0.1とか0.2とか0.3、0.4といろいろな問題が含まれておりますので、そのような文言 をこの中に加えていただいて「今後、小児に対する現行ワクチンの接種方法の研究」と いうようなことを文言に加えておいていただくと、今後の検討課題というところに入っ てくるかなという気がいたしますが、いかがでしょうか。 ○小林専門官  わが国でも接種量の見直しの必要性が小児科の先生方の間で議論になっていると聞き ますが、日本よりも接種量の多い欧米の報告でも、乳幼児に接種した場合の有効性には 限界があると指摘されているように思われます。当然、現行ワクチンの接種方法等の変 更の検討は重要でございますが、新しいワクチンの開発の必要性を強調する必要性があ るのではないか、ということで、「ワクチンの改良」の前に「新しいワクチンの開発」 を持ってきた訳でございます。 ○浅野参考人  インフルエンザの参考人ではありませんが、ちょっと教えていただきたいことがあり ます。4番目の「今後の検討課題」のところで「インフルエンザワクチンの有効性につ いて」という最初の行がありますが、これは引き続きより正しい方法論に基づく、より 上質な疫学的研究の推進というふうに読み取ることができるかと思われます。現在の成 績というのは神谷班の成績に基づいた議論の上にあって、そこでの結論のように思いま すが、具体的に、何か新しい、正しい方法論とか、上質にするにはどんな研究体制をと ってインフルエンザワクチンの有効性を検討したらいいのかというような議論は、今ま でなされたのでしょうか。 ○加藤座長  疫学的な調査というところで議論する機会はございました。ただし、ここに書かれて あるように、具体的に今後の検討課題として書き置いておくというような方向ではされ ていなかったので、熊谷参考人からこのような形で追加資料が出てきたものと考えま す。したがって、場合によってはそのような文言を入れた方がよければ入れるべきであ ろうと考えますが。 ○小林専門官  前回、本日欠席の廣田委員、疫学の専門家の先生でございますけれども、既存の研究 のどれもが悪いというわけではないんですが、中には問題のある研究も行われている と。すなわち、中には疫学的な観点から見て必ずしも適切に評価されていないものがあ るという発表がございましたことから、よりクオリティの高い研究が必要であるという 意味合いで書かせていただきました。 ○岡部委員  それは、廣田先生のスタディそのものも決してパーフェクトではないという意味も含 まれているので、ほかの先生のものが全部だめと言っているわけではないと思います。 疫学検査というのは必ず限界がありますから、それを含めて今後の先生のおっしゃる 「更に上質の」というところが生きてくると思います。 ○浅野参考人  もう一つよろしいでしょうか。今の質問に関連してですが、日本のこういうリコメン デーションを見ますと、米国の現行の生後6か月以上に定期接種化しているシステムと かなり違いがあるわけですね。いずれもエビデンスに基づいたリコメンデーションとし て出てきているんですが、これだけの差が出てきているエビデンスの出し方、その辺国 によって接種基準、対象が大きく違うというところに、もう少し何かしなければいけな いということを感ずるんですが、何かその点に関して議論はされたのでしょうか。 ○加藤座長  直接突っ込んだそういう議論はございません。現在、御意見をちょうだいして結構だ と思います。ですから、4の3つ目の「・」に書かれてあるところが大体のまとめでし て、今までなされてきた研究成果というものをより上質にして、そして、適切な評価・ 検証を行うような研究を今後更に追求して行うべきであろうということがまとめられて いると思うんですけれども、ここで今、浅野教授がおっしゃったように、なぜ日本でで きないかという問題を突っ込んで考えてみるとすれば、やはりそれは日本における治験 制度の難しさ、それから、度々申し上げて大変恐縮ですけれども、日本国内での新しい ワクチンができたり、または、いろいろな改正をしていく上において、認可されるのに 極めて時間が掛かるという制度上の問題が非常に絡んでくると思うんです。したがっ て、そういう言葉を文言に入れていくことも、この検討委員会としては最終的には意味 があることであろうと考えております。わかりやすく言えば、もう少し行政がバックア ップしていただきたいという意味ですね。いろいろな意味で、それは研究をする上にお ける研究費もそうですし、国を挙げて治験ということを国民に知らしめるという責任を 行政が持つべきであろうし、また、新しく開発されたワクチンの早期の評価をというこ とを進めていくべきであろうということを行政側がもっと全面に出していくべきであろ うと、いろいろなことが加味されてくると思いますけれども、いろいろなことを一遍の この紙の中へ書くと大変なことになりますので、今回はこの程度のまとめでよろしいか と思いますが、最終的な検討のまとめとしては、そのような文言を随所に入れておくべ きかなと考えております。  ほかによろしゅうございますか。 ○小林専門官  庵原先生、大石先生の御意見も、もしあれば。 ○加藤座長  今日は参考人として、特別ワクチンの参考人ではなくて、いつもそうなんですが、参 考人の先生方には全体の委員と同等の御意見を伺うことになっておりますので。 ○大石参考人  ちょっと流れがわからなかったので質問しなかったんですけれども、小児の脳炎脳症 に対する効果については、特に言及なされないのでしょうか。臨床の先生方の関心が非 常に高い部分だと思うんですけれども。 ○加藤座長  インフルエンザワクチンと脳炎脳症についてですね。では、岡部先生どうぞ。 ○岡部委員  森島先生が参考人としておいでになられて、そのときの意見を述べられているのと、 それから、小児科学会のまとめた見解についてもこの検討会でディスカッションがあっ たと思います。ですから、正式なことは議事録を見ていただければいいと思うんですけ れども、日本のインフルエンザ脳症を起こした患者さんの中でワクチン接種を受けてい る方は、たしか27〜28%ぐらいだったと思います。それは、かつて小児でインフルエン ザワクチンをほとんどの方が受けていないころに比べれば、全体のワクチンを受けてい る方は増えてきているので、中に入ってくる可能性があると。したがって、今わかって きているのは、インフルエンザワクチンを接種したことによって、インフルエンザを引 き金とする脳症のきっかけを完璧に止めることはできない。しかし、インフルエンザと いう病気に伴って起きる脳症であるならば、そのインフルエンザに感染しないチャンス が少しでもあるならば、それはインフルエンザ脳症を少しでも抑えることができるであ ろうと、この辺は推論でしかないと思うんです。きちんとしたエビテンスは極めて難し いので、そのときの見解としては、ある程度インフルエンザの感染発症を抑えることを 期待できるならば、それは小児にとって勧めてもいいだろうと。しかし、インフルエン ザ発症を抑える割合が20〜30%であるならば、これを定期接種として求めて、これでイ ンフルエンザ脳症は完全に防げますよという言い方は違うのではないかというような意 味合いのことがディスカッションされたと思います。 ○大石委員  ありがとうございました。 ○加藤座長  今のは、岡部先生がちょうど小児科学会の予防接種委員会の委員長を務めておられま して、小児科学会として見解をまとめたので岡部先生に御意見を委ねたわけですけれど も、森島班と神谷・加地班の両方の研究班のデータを集めまして、小児科学会として見 解を申し述べたということでして、その見解をつくった委員会の中には当然、森島班の 班長の森島先生も入っておられますし、加地・神谷班の神谷先生も小児科学会の委員の 中に入っておられて、両者ともに反対意見ではないということでございます。  庵原先生いかがですか。 ○庵原参考人  神谷というのはうちのボスです。このインフルエンザワクチンの研究は、1年プレリ ミナリーのデータがあって、それから3年間の班研究、結局4年間研究をしたわけなん ですけれども、結果のデータはおおむねここに書いてありますように、1年目がよくて 30少しあったんですけれども、それから3年間のデータが大体20〜30%。ですから、4 年間しても同じ値です。スタディの方法も人数はちょっと忘れましたが、大体4,000〜 5,000人の子どもを対象にしたスタディで同じ値でしたので、やはり現行のインフルエ ンザワクチンは子どものいわゆる1〜6歳に関しては、この程度ではないだろうかと思 います。ただ、私たちがフィールドで保育園とか幼稚園でスタディを組んでいますと、 2年続けて福建株がはやった昨年度ですと、1年目にはやったクラスは2年目ははやら ないというようなデータはあります。ですから、インフルエンザのワクチンのスタディ をやるときには、よほどはやった集団をつかまえてワクチンのスタディを出さないと、 見掛け上有効率が下がって出てくる。ここで書かれておりますように、疫学研究をする ときには必ず限界というものがありますので、よほどいいフィールドで、よほどいい流 行をつかまえたときが一番データがよくて、いろいろなファクターが入ってきて薄めて いきますと、大体有効率は20%ほどに落ちてくる。これは、いろいろなワクチンの有効 率の調査のともきそうなんですけれども、また、後でムンプスのデータも出しますが、 きちんとしたデータですと有効率が90%ですが、Field Useになると大体そこから20% ぐらい落ちてくると。ですから、現在の20〜30%はよほど薄められたスタディですの で、もう少しきちんとやると、もう少し高くなるだろうという予測は成立つんですけれ ども、成立ったとしても10%くらいしか上がらない。だから、50%を超えないだろうと いうことが予測されるというということが1点。  それから、もう一つ面白いことに、これは1〜6歳を丸めていますが、年を切ってい きますと年齢が高くなるほど有効率が少しずつ上がっていく。神谷・加地班のデータは 廣田先生が統計分析されたデータです。廣田先生は疫学の専門家ですので、できました ら現在あるデータを年齢別に分けて分析していただくと、もう少し現在の研究班の研究 から生かされたデータが出てくる可能性があると私は考えています。  以上です。 ○加藤座長  ありがとうございました。いろいろ議論がございまして尽きないと思いますけれど も、本日また後にも出てまいりますが、たくさんの議題がございますので、この辺りで ポリオとインフルエンザの話題を止めさせていただきまして、先ほど申し上げました が、報告書の取りまとめの段階でまた再度議論する機会もあろうと思いますので、その ときに再度議論していただきたいと存じます。  それでは、続きまして議題の2番目、水痘の予防接種についてという議題に移りま す。まず、水痘に関しましては、長年御専門で研究をなさってこられました浅野教授か ら、最近の科学的知見等につきまして御報告いただきまして、その後で種々ディスカッ ションいたしたいと存じますので、浅野教授、よろしくお願いいたします。 ○浅野参考人  ただいま御紹介いただきました藤田保健衛生大学の浅野と申します。  本日は、20分の予定でこの検討会で「水痘の流行状況とワクチンの有効性、安全等に ついて」ということでまとめさせていただきます。              (パワーポイントを使って説明)  水痘はインフルエンザと違いまして、ウイルスは変化をいたしませんし、毎年決まっ た時期に決まった頻度で流行しています。1974年に阪大微研の高橋名誉教授らが開発さ れた岡株ワクチンが日本でも使われておりますし、世界じゅうでも唯一使われているの がこの岡株ワクチンで、WHOにも認められた株ということでございます。  この水痘の原因になりますウイルスは、ここに示しました水痘・帯状疱疹ウイルス。 これはVaricella−zoster virus、VZVと訳しますが、現在人間に感染するヘルペス ウイルスは8種類あります。そのうちの1つが、この水痘・帯状疱疹ウイルス。御存じ のように、初感染で水痘という病気を起こしますし、このウイルスは水痘が治った後、 脊髄の後根にあります知覚神経節というところに潜伏をいたします。60歳以降になりま すと、体の免疫が全体的に落ちます。その一環として、このウイルスに対する細胞性免 疫機能も低下するために、ウイルスは再活性化という現象を起こしまして、この知覚神 経の分布するところに帯状に水疱ができるということで、その疾患が帯状疱疹というこ とになります。  今日、この部屋にお見えの方々は100%、このウイルスのDNAを知覚神経節に持っ ておられるはずです。  典型的な私たち小児科医が診ます水痘です。こういうようにこのウイルスに感染いた しますと、ほぼ100%近く顔面と躯幹を中心として、こういうような周りが赤くて中に 水を持った水疱をつくります。体と顔面に多いという特徴がありますし、最初に出てく る水疱はこのように大きな水疱が出てまいりまして、これを初期疹というふうにも表現 します。  この水痘は、麻しんに比べれば疾患としての重症度は軽いことは確かだと思います。 また、合併症の頻度も低いということは確かだと思いますが、水痘の重症度はかなり幅 がありまして、一般に500個以上水疱が全身にできますと重症水痘というような表現を します。その中間の中等症の水痘がこの前のスライド、それから、中には大変軽い水 疱、50個以下のものもあることは確かです。どのお母さん方も目で見て非常に特徴のあ る疾患ということで、よく知られている疾患でございます。  知覚神経節に潜伏したウイルスは、再活性化をしてこのように知覚神経の分布領域に 帯状に水疱疹をつくって帯状疱疹という病気になりますが、これは回復期の痂皮化をし ているところです。  水痘の疫学、伝染様式ですが、まとめますとこのようになります。発症年齢のピーク はかつてより早くなりまして1〜2歳。子どもたちが集団生活をする年齢が早まったせ いでしょうか、この辺に現在ピークがあります。10歳までに90%が発症します。発症は 12〜1月がピークで、夏の暑い時期が谷ということになります。  この水痘は、結核と並びまして空気感染をする典型的な感染症として知られていま す。潜伏期は14日というものがほとんどであります。  この水痘は、水痘の患者さんに接触して水痘になるのが圧倒的に多い。帯状疱疹の患 者さんにお孫さんが接触をして水痘にもなります。しかし、水痘の患者さんに接触して 帯状疱疹になるとか、帯状疱疹の患者さんに接触して帯状疱疹になるということは考え にくいです。  感染症情報センターのグラフですが、これは1982年から2004年までの水痘の流行状況 を示したもので、縦軸が定点当たりの患者さんの報告数、横が年次を示しております。 日本で水痘ワクチンが導入されたのが1987年ですが、こういうように少し減少傾向にあ るかなというふうにも見られますが、出生数がこういう形で減少している、そのせいと いうことも言えます。現在、米国で見られているような大きな変化は日本では起きてい ない、いまだに流行していると言うことができます。  年間を通して、これも感染症情報センターの成績ですが、横軸が1年間の週数で示し てありまして、縦軸が定点当たりの報告数。毎年同じように冬から春、初夏に掛けて患 者さんは見られますが、暑くなりますと谷になって、また寒くなるにつれて出てくる、 そういう形を毎年繰り返しております。  水痘の合併症ですが、正確な日本の統計というのはパブリッシュされておりません が、現在、厚生労働省の岡部班の方でもまとめられております。この成績は米国のCD Cが出しているもので、一番多い合併症は1〜4%で水疱の部位に細菌感染を合併す る。ライ症候群もこの頻度であったんですが、小児の解熱剤としてアスピリンを使って はならないということから使われなくなって、現在では見ることができません。それか ら、水痘の回復期に急性小脳失調症とか髄膜脳炎をこんな頻度で起こしてまいります。 死亡例も100例ほど米国では報告されております。  最もポピュラーに見る水疱の部位に黄色ブドウ球菌が感染して、このような合併症、 これは比較的まれではありません、日常診療で私たちが診ることもあります。  水痘は重症ではないんですけれども、発疹は多発していないんですが、黄色ブドウ球 菌が深部に感染すると、比較的長い期間入院治療を必要とします。  また、これは愛知県の豊橋市民病院というところで経験されたケースですが、溶連菌 感染で劇症型の形をとった7歳の男の子です。こういうようにDICという状態を起こ しまして、これは手術室で撮影されたものですが、減張切開を加え、このように壊死状 になった下肢に血流が再開しないかどうか、再開すればよかったわけですが、残念なが らこの子どもは左ひざから下を切断しております。こういうような非常に重い合併症も まれですがあります。そんなに古いケースではありません。  これは私たちの病院で経験したケースですが、4歳の男の子で、そんなに発疹が多く ない水痘の回復期にけいれんの重積状態を起こして入院して、この時点では自発呼吸も なく人工呼吸器で調節呼吸をしているところですが、この写真を撮った7日後に死亡し ております。  こういうような水痘という病気並びに合併症ですが、いろいろな対抗手段を持ってい るのがこの水痘です。1つには、今日お話をいたしますワクチン、もう一つには、発病 してから治療に用いますアシクロビルという水痘ウイルスの特効薬があります。今日 は、このワクチンについてお話をしたいと思います。  これが現在、日本で任意接種のワクチンとして使われております水痘ワクチンであり ます。生きたウイルスが、この凍結乾燥をしたここに最低1,000個のウイルスが入って いなければならない。実際にはもう少し多く入っておりますが、こちらに注射用の蒸留 水がありますが、これに溶かして子どもたちに皮下注射をいたします。  その水痘ワクチンですが、岡という3歳の子どもの水疱からとられたウイルスです が、1974年に阪大微研の高橋らが開発して、成績を『Lancet』に報告をいたしておりま す。1983年に欧州諸国でハイリスクを対象にして認可をされております。日本は1987年 に製造承認され、接種が開始され、現在任意接種として使われております。翌年、韓国 では接種を開始し、一番目覚しい成績を来たしているのが米国でありまして、この岡株 ワクチンは1995年に製造承認されて、接種開始されております。米国は、ユニバーサル ・イムナイゼーションの戦略をとりまして、免疫のない子ども、成人全員にこのワクチ ンを接種する戦略をとっております。  どれくらいのワクチンが世界じゅうで使われているかを示しておりますが、日本では 現在、接種率が29%。34万人ぐらいの子どもたちを中心にして接種されております。一 方、アメリカでは613万人、カナダも加えてですが、接種をされております。2003年の 米国の接種率は85%になっておりまして、非常にたくさんの子どもたちを中心にワクチ ンが接種されております。全世界では約800万人弱が現在接種を受けています。  目覚しい変化は米国で起きていると申し上げましたが、1995年に水痘ワクチンを導入 しております。何がはっきりしたかといいますと、アメリカでは疫学の変化が起きまし て、水痘の流行がすごく減少してきているということであります。また、それに関連し て水痘に関連する死亡が減少している。また、水痘による入院、それから、入院に要す る費用が減少している。また、実際水痘の合併症で入院する人も減っているという報告 もあります。しかしながら、ワクチンを打ったのにかかってしまうということも10〜15 %報告されておりまして、そのリスクファクターも検討されております。  これが2002年の米国の水痘ワクチンの接種率を州別に示したもので、全国を平均しま すと81%、これが2003年には85%になっております。  細かい数字ですが、この赤い線のところを見ていただきますと、1999年には57.5%の 接種率だったものが、2003年には19歳から35か月児を対象として調べた数字ですが、85 %まで接種率が上がってきているということを示しております。  最初の水痘の疫学が米国では変化したという成績が、『JAMA』の2002年号に出ており ますが、米国では導入する前に400万人が毎年水痘に罹患していた。1万1,000人が入院 しておりまして、毎年100人死亡していた。  これが水痘ワクチンを導入したことによる変化を見ておりますが、これはカリフォル ニア、テキサス、ペンシルバニア州、その3つの地域を調べておりますが、1995年が一 番左で2000年まで見ておりますが、確実に水痘の患者さんが減っているということを示 しております。  計算をしますと、この3つの地域では水痘患者が71%、84%、79%というように減少 したということを報告しております。一番減少したのが1〜4歳ということを言ってお ります。  『New England Journal of Medicine』の2月号、先月号ですが、米国で水痘ワ クチンを導入した結果、水痘による死亡が劇的に変化したということを報告しておりま す。  このグラフの縦軸は100万人当たりの死亡数、横が年次を示しております。上のグラ フは、水痘が基礎にあって起きた死亡、これは水痘が原因で死亡した。いずれにしろ、 1995年に導入後、こういう水痘による死亡が大きく減少したということを示しておりま す。  これは、どの年齢が一番恩恵をこうむっているかということを示しております。一番 水痘による死亡が減少したのは、乳児期の子どもたちです。それから、1〜4歳がこの ブルーのラインです。ずっと傾斜は緩やかになりますが、50歳以上を除きますと有意に 減少しているという評価になります。  3つ目に、水痘が原因で入退院をした数、また、それに要した医療費。これが、水痘 ワクチンの導入によって水痘に関連したものが減少しているという報告であります。 『PEDIATRICS』の2004年9月号に公表されております。  この赤い矢印は、水痘ワクチンの導入された年で、1万人当たりの水痘に関連した入 退院の数が縦軸で、横が年次です。こういうように導入後、減少してきている。それに 逆比例して、これは水痘ワクチンの接種率ということを示しております。  どの年齢層が一番入院しなくても済むようになったかを見たのが、このスライドで す。一番上が0〜4歳、それから、2番目が5〜9歳、こういうように劇的に水痘が原 因で入院する数が減ってきております。  幾ら水痘ワクチンの導入後に医療費を使わなくても済むようになったか。これは1994 年の161.1ミリオンダラーが、2001年には66.3ミリオンダラーまで減少したということ を示しております。  4つ目の水痘に関連した合併症です。  先ほどごらんになった劇症型の溶連菌感染。  これはアメリカの一つの小児病院の例ですが、上のラインは何かと言いますと、先ほ どの病気で入院してくる人の数です。横軸が年です。最近を見てみましても、あの疾患 で入院する患者さんの数は変わらない。しかしながら、水痘に関連したものはこんなふ うに減少していますよということを言っているわけです。だから、ワクチンの接種率が こういうふうに上がると、トータルの数は変わらないけれども、水痘が引き金になるも のは非常に少なくなっているということを示しております。  ワクチン接種後水痘というものも問題の一つとして残りますが、これはアメリカで報 告された成績を7つほどまとめたものですが、ワクチン接種率が保育園、学校で30%、 40%と低い報告から96%、97%という高い学校での流行です。流行がこんな接種率でも 起きてしまうというところがちょっと問題ですが、しかし、解析をしてみますと、ワク チンを打っていれば発症する率は極めて低い。それから、ワクチンの効果で打っていた のにかかったのというがあることは確かですが、このように中等症から重症の水痘をど れくらい防御できるか。これは、ほぼ100%近く防御しているということで、米国の考 え方は重症水痘をコンプリートにプロテクトするワクチンという判断で、ユニバーサル ・イムナイゼーションの導入を決めております。  これがワクチン後の水痘で、非常に軽いということが特徴です。ほとんどのケースが 50個以下の発疹で、伝染力も自然感染に比べると3分の1以下であるということもわか っております。  このリスクファクターとしては、いろいろ調査をされましたが15か月未満、したがっ て12〜14か月の子どもが、このリスクファクターとしてほぼ間違いないだろうと言われ ておりますが、現在検討されていることとしては接種後5年以上、気管支喘息、吸入ス テロイド、経口ステロイドというようなものが検討されております。  水痘ワクチン、私はかつてから定期接種化が必要と考えておりますが、子どもが発疹 数の多い水痘にかかりますと、かなり重症感が強いわけであります。目が隠してありま すが、本当にこの子どもは恨めしそうな顔をしております。こういうようなことにかか らずに済むわけですし、また、まれですが重篤な合併症、死亡例も含めて水痘に罹患す ることがなければ、こういうこともないし、また、水痘にかかりますとお母さんたちは 仕事を休んでケアをしなければなりません。やはり、こういうようなことを考えます と、水痘ワクチンは何とか定期接種が必要ではないかと考えております。  以上です。 ○加藤座長  どうも浅野先生、ありがとうございました。それでは、ディスカッションに移ります ので、先生にはお席にお戻りいただきたいと思います。  ただいま浅野先生から水痘の疾病そのものの御説明と、ワクチンの効果等について御 発表がございました。  ディスカッションいただく前に確認させていただきますが、そうすると、今のところ 日本では、大まかな水痘の罹患患者が大体20万人前後おられるという計算でしょうか。 ○浅野参考人  年間ですか。年間は大体出生数と考えていいと。 ○加藤座長  120万人程度と考えてよろしゅうございますか。そのうちの死亡者が、先ほど5万人 に1例というのは、罹患者5万人に1例ですか。 ○浅野参考人  そうですね。 ○加藤座長  そうすると、年間水痘でお亡くなりになる方はどういう計算になりますか。20人死亡 するんですか。 ○浅野参考人  20〜25人ぐらいです。 ○加藤座長  米国が400万人で100人死亡とおっしゃっていましたね。そうすると、日本でも20名近 くは水痘で亡くなっているという計算になると。 ○浅野参考人  そうなると思います。 ○加藤座長  わかりました。そうすると、疾病そのものは違いますけれども、はしかの問題はほぼ 終わりましたが、はしかの場合は大体年間20万人の発症。死亡が年間大体約20人という 報告だと思いますが、疾病そのものはそれより多くて、死亡数もやはり20人ぐらい年間 にお亡くなりになっている、こういう病気であるという御発表です。副反応が一番問題 になるところですけれども、大きな副反応はなくて、逆に副反応というよりもむしろ接 種した後で流行にさらされますと、非常に軽症ではあるけれども10〜15%程度は罹患し てしまうワクチンであるいうところは、若干リスクファクターになるであろうというよ うな御発表でした。  以上のようなことから、浅野先生の御発表は、是非とも定期の予防接種として水疱瘡 ワクチンを導入していただきたいという結論であったかと思いますけれども、参考人ま たは委員の皆様方の御意見をいただきたいと思います。どうぞ御自由にディスカッショ ンください。 ○蒲生委員  浅野先生に質問させていただきたいんですけれども、発症年齢が1〜2歳というふう に下がっているという御報告だったんですが、発症年齢が低くなると合併症にかかる率 は高くなるというような相関関係はありますか。特にそれはないんでしょうか。 ○浅野参考人  日本の詳細なデータはないと思います。罹患年齢のピークが疫学的な調査で1〜2歳 のところに移動しているということで、そのことによって合併症の頻度が高くなるとい うことは考えにくいと思いますが。 ○蒲生委員  ありがとうございます。 ○加藤座長  ほかにいかがでしょうか。 ○岩本委員  これはまだ高橋先生が開発されて30年ぐらいですので、ワクチン株で帯状疱疹が出た 例などはないかと思うんですけれども、ウイルスは基本的には全般的に変異していて、 複製力が弱いというようなことなんでしょうか。 ○浅野参考人  ワクチン株と親株を比較した成績では、両方ともリンパ球に感染する能力は変わらな いんですが、皮膚に感染する能力は弱毒化をされたために少なくなったという成績は出 ております。  それから、ウイルスはDNAウイルスですから、変化することはないというふうに考 えていいと思います。世界じゅうどこへ行っても水痘ウイルスは1つと。 ○岩本委員  ここには多分入るんですね。 ○浅野参考人  それは入ります。特に開発当初、白血病児にこのワクチンを接種いたしましたから、 その白血病児が後に帯状疱疹になることは報告されておりますし、その頻度は白血病児 が自然感染をして、その後に帯状疱疹になることはよく知られているんですが、ワクチ ンを打った後、帯状疱疹になる頻度は自然よりもかなり低いということも報告されてお ります。 ○岩本委員  だけれども、白血病児に打っても安全だったということですか。 ○浅野参考人  そういうことです。日本では白血病児にも接種できます。 ○加藤座長  ほかにいかがでしょうか。  これは平成10年でしたか、平成11年でしたか、神谷先生が座長のときにも同じような 議論で、多分あのときも浅野先生が御発表になったと思いますが、同じ議論になります が、当時と今と違うことは、当時はまだ疾病分類に一類疾病、二類疾病という区分けが ございませんで、高齢者に対するインフルエンザ接種以来、一類疾病と二類疾病という 分類がなされて今日に至っているわけです。大まかに申し上げますと、一類疾病は集団 予防を目的としたものであり、二類疾病に関しては個人予防の観点から希望者が接種す るという定義になっているわけであります。その定義の中から入ると、定期接種に入れ るのであれば今のまま一類か二類かと言えば、その定義に従えば病気の種類としては一 類疾病の中に入ってこようと思いますが、これは定期接種する必要はないんだという御 意見の委員、参考人は是非御発言ください。  それでは、国民的な合意が今まで得られない可能性もあったわけで、なぜ国民的な合 意が得られないのかということに対して御意見の委員、参考人の方どうぞ。なぜかと申 しますと、先ほども前段でお話ししたとおり、私も知りませんでしたが、水痘で20人死 亡されているという計算になるんですね。それから、年間120万人罹患しているという ことも確かなようです。今は厚生労働省は、はしかに対して非常にセンシティブになっ てくださいましたが、5年前は余りはしかに対してもセンシティブじゃなかったんです ね、実際は。厚生労働省の検討委員会でこういうことを申し上げるのは大変失礼ですけ れども、それが事実だったんです。ですから、5年後、今度水痘に対してセンシティブ になるかもしれない。今のうちに御議論しておいていただきませんと、あのとき何をや っていたんでしょうかということになりまして、また10年間放っておかれることになり ますので、是非御意見をお願いいたします。 ○岡部委員  水痘ワクチンの安全性の方ですけれども、たしか前回の委員会では別にそういうこと は検討の議題にはなっていなかったと思うんですが、このワクチンの開発当時に非常に 議論があったのは、ヘルペスウイルスであって、潜伏感染を起こし、中には発がん性を 持つのもヘルペスウイルスの特徴であったと。したがって、そういうようなことについ て不安を抱く研究者というのは少なからず当時いて、いろいろなディスカッションがあ ったと思うんですが、私の知る限りでは、その辺はクリアされていると思うんですけれ ども、浅野先生ちょっと教えていただけませんか。  それから、もう一つ加えれば、岩本先生が安全性に関して「白血病児にも使えるんで すね?」「はい、そうです。今でも使います」というお話だったんですが、このワクチ ンはたしか当初は白血病の子どもを救うために開発されたワクチンであるというふうに 私は思っていたんですが、それでよろしいですか。 ○浅野参考人  そのとおりだと思います。ヘルペスグループに属すワクチンということで、開発当初 は相当、今、岡部委員の言われたことは議論されたことであります。しかし、水痘・帯 状疱疹ウイルスに関しては、発がん性を示す疫学的なおそれをサジェストするような実 験的なものも何もありませんし、そういうことは現在では全く問題になっておりませ ん。ワクチン接種しなければ、日本では10歳までに100%の子どもたちがこれに罹患し てしまいます。ですから、現在では勿論そういうことは全く議論になっておりません。  また、現在では水痘治療にアシクロビルという薬剤を使うことができるんですが、水 痘ワクチン開発当初の1974年は、この治療薬はなかったわけです。ですから、免疫のな い白血病児、ネフローゼ症候群、そういう子どもたちは対処法が全くなくて、このワク チンの開発が一つの大きな原動力になったことは確かであります。現在では、ほとんど 健康小児に使われておりますけれども、岡部委員の御指摘のとおり、開発当初はそうい う子どもたちの水痘を守るという手段として開発されてきた経緯があります。 ○加藤座長  ほかにございますか。 ○岩本委員  これは、先生のおっしゃった非常に遺伝的な変異が少ないDNAウイルスで、ヒトに しかかからなくて、しかも病気も非常にわかりやすい。そうなると、要するに例えば、 WHO等で根絶のような形のウイルスの候補として上りにくいのは、やはり神経節に入 って長い間ヒトにいるからというようなことだったんでしょうか。 ○浅野参考人  理論的には根絶は可能だと思います。ただ、疾患の重症度のとらえ方ですね。これ は、開発途上国から先進国、国によってやはり幅がかなりあることも確かですから、ポ リオとか麻しんのように死亡とか麻痺が中心になるウイルス感染症とちょっと違うこと は確かだと思います。 ○宮崎委員  2つお聞きしたいんですけれども、1つは、資料の9ページで世界の水痘ワクチンの 販売量ということで、北米が今中心になっていて、残りが140万人ぐらいということに なっていますけれども、主にヨーロッパでのいろいろな意見なり動きなりがわかりまし たら教えていただきたいことと、もう一つは、発売当初と今とで有効率が違ってきてい るかどうか。水痘ワクチンの一つの欠点として、接種してもかかるというのがある程度 あるということが知られているわけですけれども、ワクチンバイアルに含まれるウイル スドースの問題も含めて、有効率が変化してきているのかどうか教えていただければと 思います。 ○浅野参考人  北米以外ですと、ヨーロッパも含めて東南アジアとか南米、中南米、かなりたくさん の国でこのワクチンが任意接種として使われております。特に、ヨーロッパ、EU等は まだユニバーサル・イムナイゼーションの戦略をとっておりません。その理由は、一つ にはコストベネフィットの評価で、ワクチンの導入に関して十分な金銭的な計算ができ ていないという報告がヨーロッパの方であることは確かであります。数は多くありませ ん。また、疾患の重症度の考え方も、やはり日本とかアメリカとかそういうところとは ちょっと違うということも言われております。  それから、2番目のワクチンに含まれているウイルス量に関してでしたか。有効率で すか、抗体陽転率で見ますと、むしろ開発当初より今の方がいいことは確かかと思いま す。その理由といたしまして、もともと水痘・帯状疱疹ウイルスは熱に極めて弱くて、 コールドチェーンをきっちりしたとしても製造から接種するまでの間タイターのロスと いうものも考慮して、現在では最低これだけ入っていればいいという製造基準より、か なりウイルス量としては多目のものが含まれていると。したがって、抗体陽転率はよく なっているはずです。ほぼ100%に近いです。  それから、そういう抗体陽転した人たちが今度、水痘に罹患するかどうかの問題です が、それも有効性に関係しますが、これは一つには水痘の疫学が関係してきまして、米 国のように水痘という病気がほぼなくなってきますと、やはりできた免疫が維持される 大きな機構の一つに、booster、再感染はしても再罹患しないという機構が大事だった わけですが、日本ではまだその疫学に変化がありませんから、それが保たれていて1回 接種すれば免疫が持続する期間はかなり長いと思います。しかし、米国ではそういうこ とも水痘そのものがなくなって再感染するチャンスがなくなってきていますから、麻し ん、ムンプス、風しん同様、2回接種も水痘ワクチンに関して既に議論が始まっている ところであります。 ○加藤座長  ありがとうございました。  ほかにございますか。 ○岡部委員  コストベネフィットのことでちょっと付け加えたいんですけれども、日本の場合です と、恐らく一般のお母さんというか保護者の印象はワクチンの方が高くて、水痘にかか ったらお薬をもらって早く治した方が安いだろう、ほとんどお金が掛からないというよ うな印象で、ワクチンの意味はそんなにない、あるいは接種率が高まらないというのも その辺にあると思うんですが、これは薬を使った場合、小児科の医療はほとんどの場合 はマルメのような形ですから、実際に保護者の方がお金を出すのは少なくて、ワクチン は当然任意接種なので全額負担で、例えば5,000円とか8,000円ぐらい掛かるので、ぞろ っとお金が出ていくという意味では、ワクチンは高いという印象があると思います。  私たちの方である地域で、例えば、お母さんが休んだときの期間もどのくらいの費用 が掛かるか、あるいは他の人を頼んだ場合、それから、自分ではお金は出していないけ れども全体の医療費というようなことで考えた場合には、ワクチンの方が国の医療費と してはベネフィットがある。それから、保護者の方にとってはお休みのことなどを費用 計算すれば、それも十分に見合うのではないかというようなデータを今現在出しており ます。 ○加藤座長  ありがとうございました。水痘に関しては、皆さん大体共通の御意見のようですが、 今後どのような方向性に持っていきたいかということは、また後ほどのトータルのディ スカッションでいたしたいと思いますので、各委員、各参考人は頭の中で、それまでに おまとめいただきたいと存じます。  先に進ませていただきまして、流行性耳下腺炎の予防接種についてに移らせていただ きます。三重病院の庵原副院長からお願いいたします。              (パワーポイントを使って説明) ○庵原参考人  三重病院の庵原です。  今からムンプスの話を進めたいと思いますけれども、最初はまず、日本でのムンプス の流行状況の話を少ししまして、それから、現在日本のワクチンの有効性等をお話しし て、それから、一番問題になっていますムンプスワクチンの安全性を一番最後に持って きています。先ほど水痘ワクチンのところでWHOはどう考えているかというような意 見がございましたが、今現在WHOはeradicationについては天然痘は終わった。ポリ オはその次で、その次をはしかとして今、一生懸命やっています。はしかが終われば先 天性風しん対策として風しんをワクチンで封じ込めて、風しんが終わればその次はムン プスだというようにWHOは考えています。ですから、ほとんどの先進国ではムンプス ワクチンは定期接種で行われているという状況のもとで、日本がどういう状況にあるか ということを考えていく必要があると思います。  ムンプスの流行状況といいますのは、これは感染症情報センターのデータを基にまと めたものですけれども、1989年までは3〜4年周期で流行していましたが、1989年から 一時、麻しんワクチンの代わりにMMRワクチンが行われるようになりまして、この期 間ムンプスの流行は3分の1ぐらいに収まったんですけれども、MMRワクチンを中止 すると、また3〜4年周期で流行しております。  発症年齢は先ほどの水痘は大体1〜2歳ですけれども、ムンプスの場合は3〜6歳が 発症年齢です。ただ、ムンプスの場合の特徴といたしまして、典型的な耳下腺腫脹が起 こる3日前から、腫脹が開始して大体7日間、約10日間ほどウイルスが分泌されており ます。しかも、ムンプスの場合、顕性感染率約70%と言われているんですけれども、不 顕性感染者の唾液もウイルスを分泌しています。ですから、ムンプスが一度流行し始め ますと、ムンプスの流行をコントロールするというのは非常に難しい状況です。といい ますのは、腫れていない人も休ませないとムンプスの流行はコントロールできないとい うことになるわけです。  ムンプスウイルスはパラミクスウイルス科のRNAウイルスですので、ジェノタイプ が存在することがわかってきています。これは私たちが伊能先生と共同研究したデータ なんですけれども、うちで分離しましたムンプスウイルスの約3分の1のジェノタイプ をチェックいたしました。そういたしますと、大体三重県では流行するたびごとにジェ ノタイプが異なるものがはやっていることがわかりました。1994年ごろはジェノタイプ Kというものが、1998年ぐらいはジェノタイプBが、現在はジェノタイプGが流行して います。これは三重県での流れで、日本では2000〜2002年ぐらいに全国調査が行われま して、そのときには地域によってはジェノタイプKが流行している地域、ジェノタイプ Gが流行している地域、新しいジェノタイプLが流行している地域とか、日本国内では いろいろなジェノタイプのものが混ざって流行しています。  そういたしますと、ジェノタイプが異なったら感染するんじゃないかということを心 配されるかもしれません。現在うちの病院では小児を主に診ている関係で、職員を採用 するときに、もう十数年前からはしかと水痘とムンプスと風しんの抗体価を測定し、陰 性者にはワクチン接種ということをしておりました。このスライドは大体10年間ぐらい のムンプスの平均抗体価の動きを見たものですけれども、低い年もあれば高い年もあっ て波打っています。先ほどお見せしました地域の流行が多いときに波打ってくるという ことが示されます。ということは、地域でムンプスが流行することによって、大人の方 に抗体価のboosterが掛かって、結局大人は抗体価が維持されているという状況です。 ですから、こういう方たちはジェノタイプは異なりますけれども、といいますのは、平 成12年ごろにはやりましたのはジェノタイプGですし、このときはジェノタイプBとか Kです。こういう方たちは、ほとんどジェノタイプBが流行したころにナチュラルにか かったと思われる人たちですので、ジェノタイプが少々異なりましても、抗体反応には 大きな影響は及ぼさないだろうということが予測されます。  わざわざジェノタイプということを出しましたのはなぜかと言いますと、これが世界 で使われているワクチンの株です。今、世界で一番多く使われていますのがJeryl Lynn という株で、これはジェノタイプAです。スイスで開発されましたRubini株というのも ジェノタイプAですし、ロシアで開発されましたLeningrahdとかクロアチアで改良しま したL−ZagrebはジェノタイプFです。日本で開発されたのはジェノタイプBです。こ ういった形でジェノタイプが異なりますけれども、先ほどお示ししましたように、現在 流行している株に対しては十分に反応することもできますし、幾つかの研究データから もジェノタイプが異なりましても、といいますのは実際に、現在ヨーロッパで流行して いますのは、ジェノタイプHとかCが流行していまして、でも、ジェノタイプAのワク チンでも有効ですし、ジェノタイプBのワクチンでも有効であるというようなデータが 出てきています。   そこで、実際にワクチンの有効性ということで幾つかのデータをお示しいたしま す。現在のところムンプスワクチンの抗体陽転率ですけれども、日本のワクチン株の陽 転率は中和法で調べますと、大体80〜90%。EIAで測りますと90〜98%。Jeryl Lynn の場合は大体80〜100%、これも中和法で図った値です。ということは、日本のワクチ ン株は世界で使われていますJeryl Lynnとほとんど遜色がないということです。  ここで有効率のデータなんですけれども、世界で非常に多く使われていますJeryl  LynnとかLeningrahd−IIIの有効率は大体90〜95%、これは先ほどから言っていますよ うに、コントロールド・クリニカル・トライアルですから、ムンプスが発症したと思う 人をきちんとウイルス学的に確証しました場合は、このくらいになります。Field Use では、実際に罹患した人は腫れたか腫れていなかったかということで調べていきます と、大体このくらいの割合に落ちてきます。  もう一つ面白いことに、これはスイスのジュネーブでムンプスがはやったときのデー タなんですけれども、これはJeryl Lynn株を含んだMMRワクチンを打ったグループ。 Urabe株を含んだMMRワクチンを打ったグループ、Rubini株を含んだMMRワクチン を受けたグループ、そういうグループのワクチンの有効率、その結果がこういうことで す。どういうことかと言いますと、Urabe株が一番有効率が高くて七十何パーセント、 Jeryl Lynnが六十数パーセント、Rubiniは十何パーセントということです。これ以来 スイスではRubiniを使わなくなってきていますし、こちらの2つを使うということにな っています。  ワクチンの有効率というのは、ここに算式を出していますけれども、ワチクン歴がな い群での発症率から、ワクチン歴がある群の発症率を引いて、ワクチン歴がない群の発 症率で割るという、これはWHOが決めたスタンダードなワクチンの有効率の出し方で す。以降のワクチンの有効率は、この方式で私たちも出しています。これが、三重県で のField Useのときのワクチンの有効率を表しています。保育園での流行のときには2 つの園で見ますと、1つの園では90%、1つの園では79.1%、まとめますと84.3%です し、家族内接触のときでは平成6〜7年に掛けては78.1%。園児の兄弟で発症率を見ま すと76.3%。昨年も少し三重県で流行しましたので、そのときの有効率は92%で、まと めますと81.9%になります。ということは、日本のワクチンも、先ほどのスイスのデー タとほぼ匹敵する割合で有効率が求められるということです。  もう一つは、ワクチンの有効率が落ちてくる原因は一体何かといいますと、これは先 ほどのS保育園というところで見ていきますと、ワクチンを打ってからの接触の年数が 経つにつれて発症率が増えてきているということがありますので、多分、抗体価の減衰 が主たる要因ではないかということが考えられます。ただ、株ごとに見ていきますと、 その点ははっきり言えないんです。ですから、ムンプスワクチンといいますのは、1回 接種して、時間が経つにつれて抗体価が減衰して、また流行がかぶった場合は一部の者 が発症する危険性があるというようなワクチンですということになるわけです。  そうしますと、ワクチンを打ってかかってしまったけれども、実際、臨床症状はどう かと言われた場合に、ワクチン歴がある人と、ない人と比べた場合に、耳下腺の腫脹す る割合とか腫れた日数を、ちょっと例数はまだ少ない時期のデータなんですけれども、 ワクチンを打ってあった子はもう一度運悪くムンプスを発症しましても軽く済むという ことが一つ言えるわけです。  もう一つ大事なことは、ムンプスの髄膜炎の発症予防効果なんですけれども、これは ある医院でムンプスであると診断した人、ワクチン歴のある人とない人はこの割合で す。これは当院にちょうどムンプスの髄膜炎で入院した人を調べていきました場合に、 この人はワクチン歴があってムンプスになって申し訳ないけれども、髄膜炎になった 人。これはワクチンがない人で髄膜炎になった人です。これとこれとの比較をしていき ますと、オッズ・レイシオで約10分の1です。ということは、ムンプスワクチンを打っ ていますと、運悪くムンプスにかかりましても、ムンプスの髄膜炎になる率は10分の1 に下がるという結果です。  もう一つ、面白いデータは、ムンプスが流行したときに兄弟でムンプスが発症した人 を調べていきました。そうすると、兄弟でムンプスを発症した人が25家系ありまして、 ムンプスの潜伏期間は大体18〜25日ぐらいになっています。その潜伏期間中次の子が発 症した場合を二次発症例とし、その期間を越えて発症した場合は一次発症例からかかっ ていないということになるわけです。  そういたしますと、一次発症例でワクチン歴がある人が4人いて、そのうちの2人は どう見ても兄弟からもらった、要するに50%の人がそうです。ワクチン歴がない人です と、21人中20人は兄弟からもらったという結果です。ムンプスワクチンを受けています と臨床症状が軽いですし、髄膜炎になる率も10分の1に収まりますし、周りの人に感染 するリスクも減ってくるということになるわけです。  症状の軽症化までムンプスワクチンの効果とみなすならば、ムンプスワクチンの有効 率は現在お示ししました80%よりももう少し高い率と言えます。  もう一つ、WHOが言っていますように、ムンプスワクチンを打つとどういう具合に なるかということなんですけれども、人から人にうつる感染症の場合には、こういう集 団免疫率という考え方があります。集団免疫率というのはどういうことかといいます と、それだけの免疫率を維持することによって、その流行を止めることかできる、ない しはある流行が始まった場合には、この集団免疫率に達するとそこで流行が止まるとい うことです。具体的に言いますと、この2つの研究者のデータなんですけれども、はし かの場合ですと大体90〜95%に達しますと流行が止まる、ないしは流行を止めるために は90〜95%の免疫率が要るということです。ここに出てきますように、ムンプスの場合 は大体85〜90%、ちなみに風しんは80〜85%です。ということは、これだけの免疫率を 持てば、流行を減らすことができるということになるわけです。  そこで、これはWHOのGalazkaという疫学をやっている人のデータですけれども、 世界で2回接種している国、1回接種している国、1回も定期接種をしていない国で、 ムンプスの流行がヨーロッパでどれだけ減ったかということを出しています。そういた しますと、2回定期接種している国はムンプスの発症率が99%減少している。1回接種 ですと90%減少している。定期接種にしていない国は全然減らないという、きれいなデ ータが出てきています。  日本のワクチンを同じように打ってどれだけ発症する人が減るかということなんです けれども、これは三重県のS保健所管内の某地区で一生懸命やっている人がいまして、 ちなみにこの地区ですと、1歳半健診のはしかワクチンの接種率が92%ぐらいありま す。1歳半健診での風しんワクチンの接種率は90%を超える地区です。そういう地区で 一生懸命、親にムンプスワクチンの接種を勧めますと、ここで接種した数と生まれた子 どもの数との関係から計算しますと、接種率は大体55%ぐらいになります。この地区の 幼稚園2か所でのワクチン接種率を調べると大体50%ぐらいの値ですから、この地区で の4〜5歳くらいのムンプスワクチン接種率は大体50%であると考えてください。そう したときに、これは感染症サーベイランスが改正されてからの報告の件数ですけれど も、突発性発疹、伝染性紅斑、手足口病というのはワクチンがありません。こういった ものとムンプスの報告のオッズ・レイシオを出したのがこの結果です。0.4ということ は、これだけのワクチン接種率をすることに、よってムンプス発症率がこの地区では60 %減ったということになるわけです。  ということは、55%の接種率をすると60%、大体数字どおりの数が減っている。とい うことは、ムンプスワクチンというのは接種率を高めることによってハードイミュニテ ィを十分達成することができる。ですから、ヨーロッパ並みに定期接種にすることによ って90%の接種率が達成されれば、ムンプスというものは90%減らすことができるだろ うということになるわけです。  ムンプスはどういう病気かといいますと、自然感染をしますと70%が発症しますし、 無菌性髄膜炎が3〜10%発症します。問題なのは脳炎ですが、約1万人に1人ぐらいの 割合で発症する病気です。ムンプスの場合は無菌性髄膜炎は予後がいいですけれども、 脳炎は一般に後遺症を残して予後が悪いと言われています。死亡するということは余り ないんですが、知的障害を残すと言われているのが脳炎です。難聴は教科書的には1万 5,000とか2万例に1人と言われていますが、最近の日本の報告はほとんど400例に1人 になってきています。ですから、これも非常に問題です。  ワクチンはといいますと、ムンプスワクチンを打ちますと約3%が腫れますし、一応 ワクチンによる症候性の無菌性髄膜炎は1,000〜1万人に1人だろうということになっ ています。この辺のデータを少しお示しいたします。  約2,000人打っていますが、耳下腺が腫れた人すべてからウイルス分離しています。 ウイルス分離した結果ワクチン株であると同定されたのが約1.2〜1.48%です。という ことは、これは流行時にワクチンを打ちますと腫れる人の数は増えるんですけれども、 増えた分はほとんど野生株であって、ワクチンを打って耳下腺が腫れてワクチン株であ るという割合は、この9年ぐらいの間はほとんど一定です。  もう一つは、ワクチン株を打って腫れた人が二次感染をさせるかどうかを見た場合で すけれども、これは野生株の場合ですと13例中11例が発症しますが、ワクチン株は5例 中誰も発症しないということで、たまたま腫れましても二次感染は少ない、非常に安定 であるということです。  それから、以前MMRワクチンを止める理由になりました無菌性髄膜炎の頻度なんで すけれども、これは高松の永井先生のグループが、これには私も入っていますが、外来 小児科学研究会でやったデータをまとめたもので、日本のワクチンは3株で、大体2,000 に1から6,000に1という髄膜炎の頻度です。自然感染が同じように比べまして、髄膜 炎の頻度は1.2%ですので、大体100分の1ぐらいに落ちるということになります。  無菌性髄膜炎を起こしたときの臨床症状をこのグループで比べていますが、この間に は差はありません。  ちなみに、世界的によく使われているJeryl Lynnの無菌性髄膜炎の頻度が約180万分 の1、Urabe AM9が大体1万〜6万分の1、これは世界のデータです。  そこで、やはりムンプスという病気がどういう病気かということをもう一度整理する 意味で、はしかとか風しんとか水痘といった、いわゆる神経合併症を起こしやすい感染 症と比べると、ムンプスの脳炎の頻度は風しんとほぼ一緒ぐらいです。更に、それに髄 膜炎と難聴が加わるといったような病気です。特に、難聴につきましてはここにもあり ますように、ムンプス難聴といいますのは、小児科の一般的な教科書では1万5,000分 の1と言われているんですが、最近の日本のデータですと300とか250とか400分の1と いうデータなんです。先ほど大体、日本の年間出生数が120万人で、顕性感染率が70% といいますと、大体80万人ぐらいがムンプスを発症しているということになります。80 万人のうちの400分の1が難聴になるというと、結構な例が難聴になっているというこ とになりますし、もう一つ大事なことは、1960年ぐらいにフィンランドの軍隊でムンプ スが大流行しまして、そのときの難聴を示した人の割合が4%で、永久に難聴を起こし たというのが300分の1というデータです。  ということは、一つ考えておかなければいけないのは、ひょっとしたら大きな年齢に なるほど難聴になるリスクが高いんじゃないかということです。  もう一つ、難聴に伴う症状として前庭炎といいまして目眩を訴えます。この目眩は子 どもはほとんど訴えませんけれども、成人がムンプスになりますと割と前庭炎、目眩を 訴えてきます。ですから、こういったことも一つ問題です。  もう一つは、日本では全然話題になっていませんが、もし、日本でのワクチン接種率 が高まってきた場合に、先ほど言いました50%ぐらいを接種する地域ですと、ムンプス に罹患するのは子どもではなく、罹患せずに大きくなった大人で罹患するようになって くるということが起こってくると思います。なぜこんなことを心配するかといいます と、現在、数年前にはしかがはやったときに成人がたくさんかかりましたし、2年ぐら い前から風しんがはやっていますけれども、成人がかかっている。すなわち、ハードイ ミュニティが中途半端な状態で流行しますと、成人がかかる率が高くなるということが 必ず起こります。そうした場合に、たまたま妊娠されている方がかかりますと、3分の 1が自然流産するという悲惨なことが起こってきます。ただし、幸いなことに流産を免 れますと胎内奇形はないという、この点だけは救われる点です。  ですから、今危惧していますのは接種率が低い場合、現在のような状況ですと、子ど もがかかって成人は発症しないですから、余り難聴とか妊婦さんのムンプスは話題にな らないでしょう。ですけれども、50〜60%ぐらいの接種率になりますと、こういったこ とが問題になるでしょう。こういうことを起こさないためには、やはりしっかりとした 高い接種率を維持していく必要があるんじゃないかと考えています。  ですから、導入するに当たりましては、しっかりと定期接種にして接種率を高めてお くということが大事ではないかと。その接種年齢はと言いますと、現在の日本の流行は 水痘は先ほど浅野先生が示された1〜2歳に多いんですけれども、ムンプスの場合は3 〜6歳が多いですから、はしか、風しんの次にムンプスのワクチンを続けて打てば、こ ういう人たちは予防できるんじゃないかと考えています。  以上です。 ○加藤座長  ありがとうございました。では、庵原先生はお席にお戻りください。  しばらくムンプスについて御議論をいただきますが、何か御質問・御意見ございます か。 ○岩本委員  不活化ワクチンに関しては今まで既に検討があって、余りこのウイルスに関しては効 果がないのか、それとも不活化ワクチンそのものができたことがないのかという点だけ 知らないので伺いたいんですが。 ○庵原参考人  不活化ワクチンにつきましては、はしかにしても水痘にしても風しんにしてもムンプ スにしてもそうなんですけれども、感染からの回復機転にはT細胞の機能という特異 的、細胞性免疫がないと治癒していかないということがわかっています。そういたしま すと、生ワクチンでないと細胞性免疫が誘導できないという欠点があります。初期に は、はしかと同様に不活化ワクチンが行われたんですけれども、はしかでそういうこと がわかってきてから、ムンプスも生ワクチンの方に変わっており、生ワクチンでしか最 近はデータがないという状態になっています。 ○岩本委員  先ほどは抗体価のことだけが書いてあったので、抗体だったら不活化は何で検討され ないのかなというような疑問を持ったものですから。 ○庵原参考人  細胞性免疫が大事であるということです。 ○加藤座長  ほかにいかがでしょうか。 ○澤委員  前回MMRでMMRワクチンを導入したときもかなり副作用が問題で、私ども保健所 は、いきなりの導入、いきなりの廃止で大変苦慮したところなんですけれども、今お聞 きしていて副反応の発現の頻度に関しては、今もそれほど変わりはないんですか。 ○庵原参考人  あの当時のMMRワクチンの副反応の頻度が、この辺りの数字は宮崎先生が一番詳し いんですけれども、データによりまして、ものすごくばらついているんですね。一番多 い数字だと100分の1ぐらいの数字を出していますし、少ないところでも1,000分の1ぐ らいの数字だと思います。今回の外来小児科のグループでやったデータですと、大体 4,000〜6,000に1というようなデータが出てきていますので、1,000分の1も6,000分の 1も一緒だと言われるか、6倍違うと思われるか、そこに掛かってくるんです。ただ、 ムンプスの場合、髄膜炎が出た場合に、ワクチンであろうが自然感染であろうが症状は 同じですし、治るのも同じように治るということが一般的な経験では言われていますの で、ですから、症状的には変わりはないだろうということになると思います。 ○澤委員  私も小児科をやっていまして、ムンプスのことはよくわかっているんですけれども、 やはり症状的に問題ないと言いながらも、ワクチンでなるというのは保健所サイドから してはかなり問題が大きかったように思います。自然に感染した方が髄膜炎になる率が かなり高いのでということもお話ししながら進めてきてはいたんですけれども、やはり なかなか難しいものがあって、保健所長会としましては、やはり安全性のところはしっ かり押さえていただきたいという感じがありますので、今ちょっとお聞きしました。 ○加藤座長  ありがとうございます。ほかにいかがですか。 ○岡部委員  ムンプスに伴う問題点というのは髄膜炎、それから、庵原先生が御指摘になった脳炎 の問題のほかに、難聴とか妊婦の問題の方が本当ははるかに問題としてはシリアスじゃ ないかと思うんです。しかし、それは余り表面に出てこない。  それから、髄膜炎の場合も通常、髄膜炎ですべてのウイルス分離をやってその原因を 追究しているのではないので、日本に出てくる無菌性髄膜炎のほとんどが実は原因がわ からなくて、たまたまやってみるとムンプスだったというようなこともあるわけです が、原因不明であるという中で、患者さんの立場に立って、普通の状態の子が髄膜炎で すねと言われて、「ああそうですか、大変ですね」というような形で経過すると思うん ですが、仮にこのムンプスにかかった人たちが今20万人ぐらいは定点から出てくるわけ ですから、100万人ぐらい患者さんがいるというふうに推計すれば、本当は1万人ぐら い髄膜炎が出ているはずなんです。でも、ほとんどはわからない。半分とっても5,000 人ぐらい。しかし、例えば定期接種でワクチンを導入して、ほとんど全員の人が受けて 100万人が1歳のコホートで受けるとすると、100〜200人くらいのムンプスワクチンに よる髄膜炎が出てくるんですね。ですから、相当きちんと説明をしておかないと、ワク チンによる髄膜炎はやはり現実に出得るわけですから、相当多いんじゃないかと。そう すると、難聴の問題、妊婦の問題をどうとらえるかということを問題点としてどっちが 大きいかという議論をしておかないと、髄膜炎だけに集中していくと、やはり多くの人 が指摘するように、ワクチンを接種すれば当然ワクチンに伴う髄膜炎の患者数は登録上 ものすごく増えてくると思います。 ○加藤座長  ありがとうございます。  いろいろな国際学会等で日本でおたふく風邪ワクチンをルーチンでやっていないとい うことがわかると、日本の医者はおたふく風邪で難聴が起きるのを知らないんじゃない のという質問を受けるんですね。岡部先生が時々困って、そんなことはない、知ってい るよといつも答えていますけれども、それは十分承知の上でやっているわけですが、そ ういう病気が怖いということ、難聴というのは合併症ではないですね、病気のうちの一 つと考えていいと思います。髄膜炎も同じですが、そういう疾病であるという疾病単 位、おたふく風邪というと、ここが腫れるだけという日本人にはそういう概念があるん ですけれども、無菌性髄膜炎もそうだし、難聴もひっくるめた上で、そういうすべての 病気がムンプスという病気であろうと、私はそういうふうに理解しております。  先ほど課長もお話しになりましたが、前回、やはり同じようにディスカッションされ て、ムンプスワクチンが再度土俵に乗ってきた理由の一つは、今、岡部先生がお話しに なったとおり、無菌性髄膜炎のことが解決されていないということが理由で前回ペンデ ィングの状態になっておりまして、前回のこれと同じような検討会の席上では、よりよ いムンプスワクチンの改良が望まれるということで締めくくられていたのが現状であっ たと記憶しているわけです。したがって、当時と今とどれだけの変化があるかと申しま すと、残念ながら、今のところ我が国で販売されているものに関しては変化がないと。 その観点からのみ見ますと、そう言わざるを得ないのかなというようなことも考えられ ますが、何か御意見ございますか。 ○雪下委員  諸外国特に先進国ではほとんどMMRを使用しておるわけですけれども、日本は無菌 性髄膜炎のことでMMRを廃止したということだと思うんですが、その結果を見ると 1,000分の1ぐらいの発症率だったものが4,000分の1くらいになったということであま り改善したとは思えないのですが、諸外国のいわゆる副反応というものの例はどうなっ ているのか。特に髄膜炎の発生というのがどうなっているのか、それを踏まえた上で予 防接種が実際に実施されているのか、その辺のところを教えていただきたいと思いま す。 ○庵原参考人  宮崎先生が追加でコメントされるかもしれませんが、現在、先ほど言いましたように Jeryl Lynnというのが広く使われている株です。それは大体100万人に1人ぐらいしか 髄膜炎を起こしません。ただ、Jeryl Lynnの場合は、抗体の陽転率が日本の株に比べ て低いということは言われています。ですから、Jeryl Lynnをやる以上は少なくとも 2回やらないと確実に流行のコントロールは難しいでしょう。  そこで、抗体獲得率が低いということで、フランスのアベンティスはUrabe AM9を 使っています。フランスのUrabe AM9のデータですと、大体6万分の1というのが髄 膜炎の発症率です。ですから、Jeryl Lynnに比べて高いですけれども抗体陽転率がい いし、先ほどもジュネーブのデータをお示ししましたように、有効率が約10〜15%高い です。ですから、そういった暴露されたときの状況をとるか、髄膜炎の頻度をとるかと いうことです。ちなみにL−Zagrebが使われているMMRワクチン、東欧圏とかブラジル などでもスタディをしているのですが、そうしますと、大体2,000〜6,000の1で日本の 星野、鳥居、宮原と同じ発症率です。ですから、日本が諸外国と比べてどう解釈されて いるかというのは、その数字を見て判断していただきたいということです。 ○加藤座長  ありがとうございました。ほかにいかがですか。 ○雪下委員  ちょっとよろしいですか。この6万分の1というのは無菌性髄膜炎だけでしょうか、 トータルの……。 ○庵原参考人  無菌性髄膜炎の発症率です。 ○雪下委員  そうすると、そういうものを承知した上で使用されているというふうに理解していて よろしいでしょうか。 ○庵原参考人  フランスのグループの考え方は、6万分の1であるけれども抗体反応がよくて、長期 の予防効果はJeryl LynnよりもUrabeの方が高いということで、フランスのメーカーは それを使用して、現在も世界で打っているということです。 ○加藤座長  ほかにはよろしいですか。 ○岡部委員  庵原先生あるいは宮崎先生にお尋ねしたいんですが、MMR当時の髄膜炎を見たとき のケース・デフィニションとそれから、例えばジュネーブとか今のフランスのデータで 見ている無菌性髄膜炎というもののケース・デフィニションというのは差があるように 思うんですけれども、同じなんでしょうか。 ○庵原参考人  MMRで無菌性髄膜炎が出たときには、みんなが我もくさんに見つけようということ で、ちょっと頭が痛いと言っただけでも検査していたわけですね。そこで、髄液の細胞 数が多いからこれは無菌性髄膜炎であるという状況であったと思います。実際、この前 の外来小児科などのデータを見ていますと、ワクチンを打って少々頭が痛くてもそうい うことは言わずに、1日ぐらいでよくなっているようだったら余り無菌性髄膜炎とは言 わずに経過を見ているような様子があります。ですから、現在の方がデフィニションは より厳密というか、やはり頭痛と発熱と嘔吐、しかも、しつこい嘔吐というような定義 でやっていくと、その当時のMMRワクチンの合併率は、この数字よりももう少し数字 は小さくなるというか、分母がもう少し大きくなったんだろうかということは予測され ます。デフィニション自体は一般的に外国の方が緩いというような印象を持っていま す。 ○加藤座長  ほかにいかがですか。 ○宮崎委員  日本のMMRワクチンというのは、結局4種類あったわけですね。統一株と各自社株 の計4種類。国も調査をされましたし、私たちも行いましたけれども、非常にはっきり したことは株によって髄膜炎の発症率が違ったということです。統一株が非常に多くて 数百に1、一番少なかったのが自社株のUrabe、そして残りの2つがその中間に位置し たということです。日本の調査は割としっかりした調査で、臨床症状で髄膜炎だろうと いうことで髄液を検査して髄膜炎を確認してということなんですけれども、外国はそこ までの厳密さはないだろうと思いますので、数字自体をそのまま比べるのは難しいと思 うんですが、日本の中での相対的な頻度というのはかなり確実なものであると思いま す。  それから、外国で例えばUrabeとJeryl Lynnが多少違うデフィニションであっても、 両者を比べるとやはり明らかに頻度の違いがあるということを考えると、世界的に使わ れているワクチンの中ではJeryl Lynnが一番頻度が低くて、その次が頻度の少ないタ イプのUrabe、そして、今日本で一般的に単味ワクチンとして使われているワチクンが その次に位置して、MMRワクチンを中止に追い込んだ主な原因であった悪い方のUrabe が一番頻度が高かったのであろうというふうに理解しています。  現在、日本で使われている単味のムンプスワクチンは3種類ありますが、先ほどの外 来小児科学会の調査では、平均すれば大体2,100に1例、ウイルスが確認されている例 で言うと2,700に1例ということで、こういう数字と、自然感染による髄膜炎や難聴と のてんびんの中で国民の皆さんが考えられるだろうと思っています。明らかにワクチン の方が頻度は低いんですけれどもね、そういうことだと思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。  それでは、また後ほど総合討論でお話ししていただくことにいたしまして、次に肺炎 球菌の予防接種について移らせていただきます。大石助教授からプレゼンテーションを お願いいたします。              (パワーポイントを使って説明) ○大石参考人  それでは「肺炎球菌の流行現状とワクチンの有効性・安全性等について」というタイ トルで話をさせていただきます。  これまで話がありました水痘とかムンプスとは違いまして、肺炎球菌は呼吸器に親和 性のある病原細菌です。これによって起こる病気というのは肺炎が中心ですけれども、 他にも中耳炎とかいろいろな病気を起こしてまいります。ただ、先ほど申しましたウイ ルス性の疾患と違うのは、この肺炎球菌に特徴的な臨床症状、所見というのはないとい うことです。  肺炎球菌感染症のスペクトラムをここで示しています。主要な疾患が肺炎ですが、そ の一部には侵襲性肺炎球菌感染症と言われる髄膜炎とか菌血症を伴う肺炎があります。 教科書的には肺炎球菌性肺炎の20%が菌血症を伴う肺炎で、菌血症を伴わない肺炎が80 %とされております。  ただ、日本で実際に肺炎球菌性肺炎の中で20%もこの菌血症を伴うかというと、必ず しもそうではない。恐らく10%あるいはそれ以下かもしれません。  日本における肺炎は、死亡原因の第4位になっております。市中肺炎の起炎菌とし て、この肺炎球菌が一番重要な起炎菌です。文献によってその検出頻度というものはさ まざまであります。日本でしっかりしたデータを調べますと、大体20〜40%ぐらいとい うところが市中肺炎の中での肺炎球菌の検出頻度と考えられます。  肺炎球菌ワクチンの特徴は、成人を対象としているということであります。日本を対 象としたワクチンと考えていいと思います。  ここで、本邦で行いました114症例の肺炎球菌性肺炎の臨床像の特徴についてお示し したいと思います。起炎菌はほとんどのケースで喀痰から検出されています。先ほど申 しました菌血症を呈したケースというのは、この中でほんの3例しかございませんでし た。  患者さんの平均年齢は67.4歳であります。疾患の年齢の分布のピークは男性も女性も 70歳代です。30歳ぐらいに小さなピークがあって、40歳はほとんどなくて、そしてまた 70歳代にピークが来るという、二峰性のピークを示しています。  どのような方が肺炎球菌性肺炎を罹患しているのかということについてですが、基礎 疾患のない人も28%罹患しています。しかし、ほとんどの方が基礎疾患を有しており、 39%の方が呼吸器の基礎疾患を有する人であります。慢性閉塞性肺疾患でありますと か、喘息でありますとか、肺結核後遺症といった疾患。そして、その他糖尿病、脳血管 障害、高血圧性心疾患といった基礎疾患のある方々がハイリスクということになるかと 思います。  このスタディでは臨床像だけでなく、起炎菌の薬剤耐性あるいは血清型という細菌側 に注目しています。肺炎球菌114株に対する薬剤感受性を検討しています。この図は penicillin Gの肺炎球菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)の分布です。横軸が MICであり、縦軸が菌株数であります。このように、MICの分布が二峰性になってい ます。ペニシリン非感受性肺炎球菌の頻度は57.9%でした。  とりわけ、ペニシリン結合蛋白質の遺伝子の3か所に変異のあるゲノムタイプPRSPが 36.4%にもおよんでいることです。  これは、肺炎球菌114株のマクロライドのクラリスロマイシンに対するMICの分布 であります。MIC分布の中で、高度耐性株のクライスターが耐性を形成しているのが ermAM遺伝子変異株であります。結果的に、この肺炎球菌感染症の約半数近くは高度耐 性であります。  この114症例のうち亡くなった方が5例おられます。致命率は114分の5(4.3%)で す。  この114株を、PSSPとPISPとPRSPを分けて、疾患の重症度を呼吸器のガイドラインに 従った重症度で見てみますと、むしろ軽症あるいは中等症側にこの耐性の株は分布して います。そして、むしろ感受性の株の方が、こちらの中等度あるいは重症に分布すると いう結果が示されています。  肺炎球菌には血清型が約90種類存在いたします。この成績は実際に肺炎を起こした肺 炎球菌株の血清型、この肺炎球菌の23価ワクチンはどのくらいカバーしているのかとい うことを示したものであります。青が含有株で、ピンクで示したものが非含有血清型で あります。19F、23F、6B、3、14といったところがメジャーな血清型でありまし て、この94株が23価ワクチンに含まれているということが判ります。  肺炎球菌ポリサッカライドは多糖体抗原でありますので、T細胞非依存性抗原です。 ポリサッカライドはMHC分子と共存しないということで、T細胞応答を誘導できない と一般的にされています。  この肺炎球菌感染症におきましては、血清型特異的なIgG抗体が補体依存性にオプソ ニン活性を示して感染防御を行うということが考えられています。  本邦では23価ワクチンが1988年に認可され、臨床応用されています。また脾摘患者に 保険適応があります。  これまでに示されている効果につきまして、侵襲性肺炎球菌感染症、すなわち菌血症 を伴う肺炎、髄膜炎に対して有効であるという多くの報告が1990年代までにあります。 このような成績を受けて、米国CDCは免疫の正常な65歳以上の高齢者とか、それ以下の 基礎疾患のある慢性肺疾患、心疾患、糖尿病患者等々にAランクの推奨をしておりま す。  また、経済的な効果としても、65歳以上の高齢者に1回接種した場合に、一生のうち に1,300ドルほどのコストを節減する効果があるとされています。一方、Nicholらは、 肺炎球菌ワクチンが慢性呼吸器疾患者の肺炎による入院回数、死亡数を減少させ、また 医療費も減少させていると報告しています。この報告では肺炎球菌性肺炎に限定した成 績は示されていません。一方、逆に肺炎球菌ワクチンの高齢者の菌血症を伴わない肺炎 についての予防効果が明らかでないとした報告もあります。  そこで、この肺炎球菌感染症の発症を考えるときに、その発症過程には呼吸器ウイル スの先行感染が非常に重要になります。インフルエンザなどのウイルス感染と肺炎球菌 の感染の過程において、上気道に菌が付着して、その後に感染が起こってくる過程が考 えられるわけであります。  最近になって、ウイルスと肺炎球菌の感染のメカニズムに関する論文が報告されてい ます。肺炎球菌の表層に共通抗原としてのセル・ウォール・ポリサッカライドが存在 し、その決定基であるフォスフォリルコリン(PC)がヒトの気道上皮細胞のPAFリセプ ターに結合するということが知られています。  風邪ウイルスの代表的なライノウイルスをヒトの気道上皮細胞に感染させると、この PAFリセプターの発現が高まってきて、肺炎球菌がよく付着するということが報告され ています。また、一方では、インフルエンザウイルスのノイラミニターゼによる気道傷 害を介して肺炎球菌の付着を促進するという報告もあります。  また、臨床的にもインフルエンザウイルス感染後に肺炎球菌性肺炎が発症してくると いうことが報告されておりまして、我々も日常診療の中でインフルエンザ後肺炎球菌性 肺炎には、しばしば遭遇しています。  そういったことで、インフルエンザをはじめとする呼吸器ウイルス感染が、肺炎球菌 感染の下地をつくるだろうということが考えられるわけであります。  従って、最近は、肺炎球菌ワクチン単独の評価ではなくて、65歳以上の高齢者に対す る肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの併用効果について幾つかの報告がなさ れています。これはスウェーデンからの報告でありますけれども、併用接種によりイン フルエンザや肺炎による入院回数が減少することが報告されています。このようにイン フルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、そして両者の併用、接種しない者というグル ープ別に見ますと、相対危険率がそれぞれ0.74と0.7、併用だと0.63とまた有意に下が ってくる。そして、肺炎の発症による入院回数も0.94、0.91、併用で0.71というふうに 併用接種で入院回数が減ってくると報告されています。  一方、これは我々が九州地区の病院で行った共同研究成績であります。ここでは対象 は慢性呼吸器疾患であります。インフォームド・コンセントを得た上で症例をランダマ イズしまして、A群を肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンを接種して、B群を インフルエンザワクチンのみ接種しています。当然インフルエンザワクチンが定期接種 されていますので、このB群という形をつくらないと倫理的にも通らないわけで、この 2群で比較しています。その後、観察を2年間続けて行っています。  評価項目としては、ワクチン接種群で血清中の血清型特異的IgG抗体が増加してくる かということと、肺炎を含む急性増悪の回数を2群間で比較しています。  実際、スウェーデンのデータと全然違うのは「n」の数であります。100例弱のケー スしか評価しておりません。A群とB群でそれぞれ94人と96人であります。  対象の年齢は60〜70歳代、呼吸器疾患も慢性閉塞性肺疾患、陳旧性肺結核、気管支拡 張症、気管支喘息等々であります。  血清免疫学的な研究として、ワクチン接種前後の血清型特異的IgG抗体濃度を測定し ています。これは三世代ELISA法という方法で、ワクチンの中にも含まれている共通抗 原であるセル・ウォール・ポリサッカライドと22F CPSを除去して測定した抗体の濃 度は、実際の血清のオプソニン活性とよく相関するとされています。  これは、84症例のワクチン接種後の血清中血清型特異的IgG濃度を肺炎で頻度の高か った4つの血清型について測定しております。症例によって相当ばらつき、反応が悪い ケースと非常に高いケースがあるということがわかります。全体で見ますとワクチン接 種1ヶ月後には統計学的に有意な血清中の特異抗体濃度の上昇が認められています。  更に、このワクチンによって誘導された抗体のうち結合力の高いhigh avidity抗体 につきましても、ワクチン接種前後で有意に上昇するということが示されました。  このように、肺炎球菌ワクチンを接種することで、確かに血清型特異的な抗体濃度が 上昇してくるということがわかりました。では、実際に、臨床的な効果はどうでしょう か。この研究で、慢性呼吸器疾患の急性増悪の回数が肺炎球菌ワクチン、インフルエン ザワクチンの併用接種群でインフルエンザワクチン単独群に比べて減少するということ がわかりました。併用接種により感染による急性増悪と考えられるケースも減っており ます。ただ、起炎菌が決定されたケースで肺炎球菌による急性増悪は有意な減少を認め ていません。  死亡数についても両群で差はありませんでした。  副反応は全身症状として微熱が1例のみ見られておりますけれども、重篤なものはご ざいませんでした。  副反応について国立東京病院の成績を示します。対象は慢性呼吸器疾患患者です。局 所反応と全身反応で見てありますが、全身反応としても非常に軽いものでありまして、 頻度的にもそう多くはありません。いずれも2ないし3日で消失して重篤な副反応は認 められていません。肺炎球菌ワクチンの安全性は特に問題はないと思います。  肺炎球菌の位置付けについて説明します。例えば、麻しんワクチンは中和抗体を誘導 して、高い麻しん発病阻止という効果を示します。特に臨床的にも、これが麻しんであ るということは比較的わかりやすいわけですから、このワクチンを打ったことの効果と 発病阻止ということを1対1の対応として見ることができます。また、現在はインフル エンザが定期接種二類疾病となり、インフルエンザワクチンの毎年再接種が行われてい ます。血中にはHAのIgG抗体が誘導され、麻しんワクチンほどではないにしても、発 病阻止が示されます。間接的な効果としても、入院頻度や肺炎発症率とか死亡率の減少 などのエビデンスはかなり存在します。  一方、肺炎球菌ワクチンは、今のところ海外では5年以上の経過で再接種が可能です が、日本ではまだ認められていません。確かにワクチンを打つことで血清型特異的IgG 抗体誘導は確認できるんですが、これまでに示されたデータとしては、侵襲性肺炎球菌 感染症の発生率が低下するということがあります。また、入院頻度とか死亡率の減少、 医療コストの削減ということが肺炎球菌ワクチン単独でも示されています。  しかしながら、肺炎球菌ワクチン単独による肺炎球菌性肺炎の発病阻止効果の評価と いうのは、実際困難でありまして、これまでも十分なデータは示されていないのが実情 であります。  また、インフルエンザ後肺炎球菌性肺炎の発症が認められることと、インフルエンザ が65歳以上の高齢者における定期接種二類疾患として認められているということもあり まして、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの併用接種として評価することが 今の段階では適切なのではないかと考えます。我々も併用接種でいくと感染性の急性増 悪が減少するということを示しましたし、海外の報告でも肺炎やインフルエンザの発症 率の低下とか、死亡率の低下ということが示されているわけであります。  次に、海外における肺炎球菌ワクチンの接種状況について示します。アメリカとかカ ナダ、そして、イギリス、ドイツ、オーストラリアにおいて2000年の1万人当たりの使 用量が比較的多くなっています。これに対して日本は2003年の時点で1万人当たり13.7 ということで接種状況はかなり低いということが判ります。  すべての高齢者に対するワクチン接種の勧告がなされているのは「○」が記されてい る国々であります。そして、国または健康保険によるワクチン接種の償還といったもの が行われているのが「○」で示したところであります。アメリカ、イギリス、オースト ラリアでは65歳あるいは75歳以上の償還が行われています。  特にアメリカの状況としては、65歳の以上の高齢者における肺炎球菌ワクチン接種率 は64.2%であり、州によってかなり差もあるようですけれども、大変高率になっていま す。一方、日本の65歳以上の高齢者における接種率というのは、大体2.2%と算出され ます。このような日本と欧米における接種率の違いがあります。  最後になりますが、我々の成績は、高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチン接種の必要 性を支持していると考えます。インフルエンザと肺炎球菌性肺炎の発症機序における関 連性とか、インフルエンザワクチンが65歳以上の高齢者を対象に定期予防接種二類の疾 病になっているという現状を考えますと、併用接種による有用性を評価すべきであろう と考えます。今後、本邦の65歳以上の成人に対するインフルエンザワクチンと肺炎球菌 ワクチン併用の有用性に関する更なるエビデンスが必要だと思います。実際的には重症 化予防効果あるいは治療に要する医療経済的な効果ということを評価していくべきであ ろうと思います。  以上です。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。先生、お席にお戻りください。  それでは、肺炎球菌につきまして、御討議いただきたいと思います。御質問または御 意見がおありの方どうぞ。  これは前回のこの検討会のときには、肺炎球菌のワクチンの接種者数が大体1年間で 日本で1,000人程度であるので、議論の対象にならないということで、はっきり申し上 げますとこれが議論の対象にならなかったわけですが、今聞くところによりますと15〜 20万人ぐらいですか。 ○大石参考人  そうですね。 ○加藤座長  何か御質問・御討議ございませんか。 ○岩本委員  先生のお話にもありましたけれども、恐らく日本も耐性菌が増えているので、しか も、高齢者の割合が増えるので、細菌性疾患に関するワクチンというのは非常に大事な ストラテジーだと思うんですけれども、1つは、割と血中から見つかる頻度が比較的少 ない。そういう点に関しては、例えば尿中抗原が測れますよね。そういう尿中抗原で測 るともっと高いのかというような問題と、あるいはワクチンの投与方法として、もう少 し肺炎そのものを守るような、要するにワクチンの将来的な可能性というものはあるの かという。 ○大石参考人  しかしながら、菌血症と伴う肺炎例と菌血症を伴わない肺炎例での尿中抗原検出頻度 には差は認められないとする報告もあり、必ずしも尿中抗原で菌血症が効率良く検出で きるわけではないと考えます。最近になって肺炎球菌の尿中抗原が認可になって臨床的 にも使われるようになって、診断率は向上しつつあると思います。つい最近出たレポー トでは、従来の方法より1.5倍ぐらい診断率が向上しています。恐らくウイルス感染後 の肺炎であると思います。  それと、もう一つの御質問は気道粘膜ワクチンの可能性についてと思います。気道粘 膜ワクチンの開発の現状はまだ動物実験レベルです。肺炎球菌由来の蛋白質ワクチンす なわちPsPAとかニューモリジン等を用いたワクチン開発を研究しているグループもあ ります。しかしながら、実用化はかなり遠いと思います。 ○岩本委員  アメリカなどの一般の高齢者で比較的接種頻度の高いような国で、たしか接種前後で 肺炎球菌の証明された肺炎であるとか、肺炎全体の症例頻度に影響を与えたというよう なデータはありますか。 ○大石参考人  肺炎の発症頻度についてですね。 ○岩本委員  重症化に影響を与えたとか。 ○大石参考人  肺炎の重症化についてのデータは多いのですが、スウェーデンにおける6ヶ月間だけ の評価期間の成績はインフルエンザワクチンとの併用接種で肺炎、肺炎球菌性肺炎の発 症頻度を低下させることを報告しています。 ○加藤座長  よろしゅうございますか。  それでは、今日は3つの疾病と予防接種について御発表、プレゼンテーション、そし て御議論いただきましたが、最後に全体的なまとめといたしまして、疾病とワクチンの 予防接種法上の位置付けということが一応この検討会の目的になっておりますので、今 日議論になりました3つの疾病に対するワクチンの予防接種法上の位置付けについて、 どのような御意見をお持ちであるかということを少し伺いたいと思いますが、順番に水 痘ワクチンから。水痘ワクチンは先ほど少しやりましたけれども、いかがでしょうか。 予防接種法上の観点から見た水疱瘡のワクチンについて御意見をいただきたいと思いま す。  御承知のように、今の予防接種法では定期の予防接種と臨時の予防接種、それから、 結核予防法によるBCGの3つが法律で決まっておりまして、その他の予防接種はすべ て任意接種、そして、定期の接種の中では一類の疾病と二類の疾病に分かれておりまし て、二類疾病は高齢者のインフルエンザという位置付けにあるわけですが、そのような 位置付けを頭の中に入れつつ、とりあえず水疱瘡についていかがでしょうか。  御議論がないと御指名しますが、蒲生委員いかがでしょうか。 ○蒲生委員  ちょっと私の方も不勉強だったことを反省したんですけれども、水痘がこれだけ120 万人年間かかっていて、しかも、20〜25人ぐらいの方が亡くなっていて赤ちゃんに多い ということは、多分お母様方、実際に育てていらっしゃる方々は全く御存じないだろう と思います。予防接種を受けなくてはいけないということは、お母さんたちはわかって いますけれども、発信する側はどのように考えていようとも、現場のお母さんの受け取 り方としては、定期接種さえ受けておけば子どもの健康は守られると。任意の接種の場 合お金が掛かるというのもとても大きな問題で、若いお母さんたちにとって1回7,000 円、8,000円の出費というのはとても大きなものですので、そうなってくると、どんど ん後回しにされてしまうということは事実としてあるかと思います。  その中で、どれを定期接種にした方がいいのかというと、発信する側はどれも受けて ほしいと思っていても、情報を受け取る側は、定期だけ受ければいいというふうに思う のが現実ということを認識しなくてはいけないのではないか。そういう観点から立った とき、水痘についてはどう考えるべきか。10歳までにほとんどの子どもがかかってい て、まれではあってもかなり重症な合併症もあり、死亡例もありということですので、 お母さんたちに情報を与えて任意にしますよというだけでいいのかどうか、ちょっと私 は今日お話を伺ってどうしたものかなというのが正直迷う感じです。 ○加藤座長  続けて、おたふく風邪について、いかがでしょうか。 ○蒲生委員  おたふく風邪なんですけれども、お母さんたちは髄膜炎についてとても心配していま す。インフルエンザについてもそうなんですが、脳症、脳炎、髄膜炎などの脳に関係す る病気にとても過敏です。大変なことだという認識がとても強くて、怖いと思っている のが事実です。ですから、「自然にかかってもなりますよ」と言われても、予防接種を することで髄膜炎になる可能性があること自体で、とても引いてしまうんじゃないかと いう気がします。  いろいろな議論があるかとは思うんですけれども、予防接種を受けた方がどれだけ子 どもの健康を守れるのかということを正確に広くお知らせした上でないと、いきなり定 期接種にした場合の反発というか、恐怖というものが先に立ってしまう。MMRのとき のお母さんたちの混乱状況、私どもの雑誌にも、たくさんのお手紙をいただきました し、あのことを考えると、ちょっと急に定期にするのは危険な気がします。 ○加藤座長  わかりました。ありがとうございます。  では、澤委員、行政または小児科医の立場としていかがですか。 ○澤委員  水痘ワクチンに関しましては、かなり安全性も高く、罹患者も多い、死亡者も多い、 副反応は少ないということがありますので、私は是非、定期予防接種に入れていただき たいと思います。  それから、先ほどのおたふくのムンプスなんですけれども、これは今までの経緯、前 回とこれだけ変わったということがまだ認識が足りないなという感じがしますので、今 入れるのはいかがなものかなという認識です。ただ、私も難聴の患者さんも、それか ら、膵炎の患者さんも経験しておりますので、ワクチンそのものの重要性はわかります けれども、行政として直ちに導入したいということはちょっと、もう少し検討の余地が あるのかなとは思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。  宮崎委員いかがでしょうか。3つの疾患併せて、一つ一つ手短に。 ○宮崎委員  では、肺炎球菌からいきますと、小児科領域ではやはり今の23価ワクチンは余り有用 性がない。高齢者に関して抗体の上がりが思いのほかよくなかったなと、今日スライド でお見受けしたんですけれども、老人で現行の23価ワクチンを導入していくのか、ある いは小児科が期待しているコンジュゲレート型の方がやはり高齢者でもいいのかどうか というのも、後でお聞きできればと思います。子どもの定期接種には、なかなか肺炎球 菌は話題にならないだろうと思います。  それから、おたふく風邪に関して言えば、おたふくも水疱瘡も定期接種化するのであ れば、先ほど庵原先生が言われたように、ある接種率を保たないといけない。中途半端 にやるのはなかなか難しいので、やるのだったら徹底的にやる。その条件としてムンプ スの場合は、やはりJeryl Lynnないしはそれに近いような頻度のものを日本に導入す るか、もしくは今ぐらいの日本の国産ワクチンでの髄膜炎率を許容しながら、疾病対ワ クチンの副作用のてんびんで導入していくか、このコンセンサス、その2つのどちらか あるいは両方が必要だろうと思っています。  水疱瘡は副反応の問題は少ないと思います。あとは、価格の問題があり、それから、 疾病の重たさからいくと、この前議論になったHibとかムンプスの方が水疱瘡よりも高 いので、そこですごく迷っています。優先順位をつけろと言われたときに、私自身がま だ1回目からずっと悩んでいるところです。  以上です。 ○加藤座長  わかりました。  雪下先生いかがでしょう。 ○雪下委員  水疱瘡についてですが、先ほど先生のお話のところでは接種後の発生が10〜20%とい うことでしたけれども、このスライドの中では2〜34%という数字が出ておりましたが ・・・。 ○浅野参考人  アメリカの方ですね。平均しますとそのくらい。 ○雪下委員  ちょっと接種後の発生率がまだ高いかなと、この辺は何とかなるのかどうかというこ とが1つ。  それから、もう一つ、帯状疱疹の発生率についても抑制効果はあるということです が、この辺のところがもう少し発生を十分防げるというエビデンスがあればというふう な感じがいたします。定期接種の中に入れるかどうかは、もう少し専門家の先生方から の意見を聞かなければ何とも言えないと思います。  ムンプスにつきましては、一番少ないのでもやはり2,000〜4,000に1例の髄膜炎とい うと、これをお母さん方に説得して理解してもらって接種していくというのには、ちょ っと難しいかなという感じがいたします。  それと、接種回数その他の関係から、やはりMMRという形で実施するとすれば、そ の形でやれるワクチンの製造がまず必要に思っております。  それから、肺炎球菌につきましては、これもまだ定期接種とするにはいろいろな問題 があるかなと思っております。インフルエンザワクチンの方も、まだ法改正してからの エビデンスが十分確立しているというところまでいきませんので、それが確立するまで は現在の形でいいのかなという感じがいたします。 ○加藤座長  ありがとうございました。  岡部先生、いかがでしょう。 ○岡部委員  1つは、一類の疾病と二類疾病という整理がまだ十分にできていないのか、あるいは 現行のままでいっていいのかどうかという議論が済んでいないと思うんです。前の公衆 衛生審議会のときの議論では、一類疾病は非常に致死率が高かったり、あるいはほとん どの子どもたちに接種をしてもらいたいというつもりでランクに入れたのが一類で、二 類はそれほどでもないけれども、やはり広く接種を勧めたいと。当時は二類というもの の中に水痘あるいはムンプスというのを入れようか入れまいかという議論があって、イ ンフルエンザだけが入ったという経緯があったと思うんです。ですから、それを踏襲し た形での一類、二類をそのまま続けるのかどうか、あるいは全然別枠の仕組みをつくる かどうかによって大分考え方が違ってくるだろうと思います。  ただ、このワクチンを導入するかしないかというよりも、この病気をどういうストラ テジーでこれから見ていくかということを考えておく必要があると思うんです。そうす ると、現在の一類に入っている疾患は、やはりいずれも十分にこれからも続ける必要が あるし、特に、はしか並びに風しんについては、一応ある程度の目標をセットアップし たような形でそれに向かわなくてはいけないので、このアクティビティを落とすわけに はいかないと思います。  それから、今日議論になっている水痘、ムンプス、この2種類はこれから先、病気を どうしようかという点では、やはりコントロールすべき病気である、子どもにとって disease burdenが高いし、導入すべきものだと思うんです。ですから、どのワクチン を入れるかということを考慮に入れないのであるならば、この2種類は今後ワクチンを 広く進めるワクチンに入れるべきである。つまり、私の考えだと二類相当になるのでは ないかと思います。ただ、現行のワクチンがそのまますっといけるとしたら、水痘は間 違いなくいけるけれども、ムンプスはその点についての議論が要る。  それから、肺炎球菌ワクチンは大石先生がプレゼンテーションされているものも高齢 者を中心としてのデータですし、小児については今後の問題点として耐性菌の問題もあ るから、disease burdenとしては高いと思うんですが、今のところデータがないので高 齢者にとってはインフルエンザとミットするような形での導入は、いわゆる高齢者福祉 対策としては必要ではないかと思っています。つまり二類という意味です。 ○加藤座長  ありがとうございました。岩本先生、御意見ありますか。 ○岩本委員  私はワクチンの専門家でないので、意見を言わないで済むならその方がいいと思って いたんですけれども、今日伺った中では、やはり今、岡部先生がおっしゃったように、 当然水痘もムンプスも肺炎球菌も全部ケアすべき病気ですけれども、水痘に関してはか なり早期の定期接種のような形でいいのではないかと思いますが、これはやはり行政と して重い病気からというような順番もあるだろうと思います。  ムンプスに関しては、病気を減らすことは非常に重要な一方で、やはり広報等を通じ て、国民が要するに、特に髄膜炎への頻度的なものに関して、情報の提供が非常に必要 だと思いますけれども、一方で、私が思うのは、やはりいろいろなワクチンが一つ一つ 増えていく方向と一緒に、子どもたちの接種頻度を上げようとすれば、どれとどれは一 緒にできて、いつ打つんだということの議論も要るのかなと。小児科の専門家でもワク チンの専門家でもないですが、そういうことを思いました。  肺炎球菌に関しては、やはり高齢者のワクチン政策というものも日本としては考えて いかないと、大人の細菌性疾患には抗生物質というようなことではだんだんいかなくな るのではないかと思うので、今後の方向として大石先生のおっしゃったようなことで、 高齢者の方向として肺炎球菌ワクチンの開発なり適用が大事なことではないかと思いま した。 ○加藤座長  ありがとうございました。まとまり切れませんけれども、一応私なりに少しまとめて みます。たくさんの御意見を伺いました。皆さんそれぞれ異なった意見というふうに伺 いました。その中でも水疱瘡に関しましては、過半数以上の委員がそろそろ定期接種に 入れていただけるものであれば入れていただけないかというような御意見が多かったよ うに思います。また、すべてのワクチンについて有効性に関しては十分である。ムンプ スに関しましては、先ほど澤委員から出ましたように、無菌性髄膜炎が若干気になると いうところで、前回と余り進行性がないのではないかという議論がございました。  したがいまして、いろいろな議論はあると思いますけれども、岡部先生がおっしゃっ たとおりで、現行の一類疾病、二類疾病の振り分け方ももう一度考え直さなければなら ない時期が来る可能性もありますし、基本的なスタンスも考えていかなければならな い。その中で、やはりもう一つのカテゴリーぐらいまでのところも考えておいてもいい のではないかと。一類、二類だけに限らず、もう一つぐらいのグループ付けをしてもい いのかなということも頭の中に入れつつ、今後また時間があり次第検討していきたいと 存じますけれども、結論を申し上げれば、水痘に関しましては限りなくより定期接種に 近づけた形で今後検討を続けていきたい。おたふく風邪ワクチンに関しては、疾病とい うものの怖さ、特に難聴等の頻度等をもう少し国民にアピールしていくような形をとっ ていきつつ、ワクチンの改良を進めていただきたい。  それから、肺炎球菌ワクチンに関しましては高齢者対策ですので、先ほど雪下委員も おっしゃったとおりエビデンスをもう少しきっちりと出した上で、もし入れるとすれ ば、最終的には高齢者対策として二類疾病の中に入れていく可能性はあるであろうとい ったようなことが本日のまとめになろうかと思います。  本日は皆様から貴重な御意見を伺いましたが、また機会を持ちまして更に深まった議 論をしていきたいと考えております。  以上で、今日は締めさせていただきますが、事務局から何かございましたら。 ○小林専門官  次回の検討会でございますけれども、3月23日の9時半からの開催を予定しておりま す。また、場所が決まりましたら御連絡させていただきます。  以上でございます。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。本日は大変長い間、御熱心に御議論いただきまし て、特に参考人の先生方どうもありがとうございました。これをもちまして終了させて いただきます。  どうもありがとうございました。                               照会先                         健康局結核感染症課予防接種係                         TEL:03-5253-1111内線(2385)