05/02/25 医師の需給に関する検討会第1回議事録            第1回 医師の需給に関する検討会議事録                      日時 平成17年2月25日(金)                         10:00〜                      場所 経済産業省別館1014号会議室 ○医事課長  皆さん、おはようございます。定刻を若干過ぎましたが、ただいまから第1回「医師 の需給に関する検討会」を開催させていただきます。各委員の皆様方にはご多忙のとこ ろ、本検討会の委員にご就任いただきまして、大変ありがとうございます。座長選出の 間、進行をさせていただきます。  まず本日、医政局長の岩尾は国会出席のため、当検討会に出席できませんので、議事 に入らせていただく前に、審議官の岡島から一言ご挨拶をさせていただきます。 ○審議官 審議官の岡島です。本日はご多忙のところ、ご出席いただきましてありがと うございます。本来であれば医政局長の岩尾のほうからご挨拶申し上げるところです が、急遽国会に行かなければならなくなりましたので、私が代わりにご挨拶申し上げま す。  皆様には日頃から医療行政の推進にご尽力いただきまして、ありがとうございます。 医師の需給に関しては、これまでにも必要に応じて検討してきたところです。近年では 昭和61年、平成6年、平成10年と報告書を出しており、いずれも将来的には医師数が過 剰な状態に陥ることが予測されていました。しかしながら、全体としての医師数が将来 過剰になるという予測とは別に、地域における医師不足については検討を行う度に指摘 されてきたところです。また近年では、例えば特定の診療科における医師不足の問題も 提起されています。  このように、医療を取り巻く状況にも種々の変化が出てきています。そのような中、 医師需給の現状について再度見直しを行う必要があり、この度、医師の需給に関する検 討会を立ち上げることとなりました。今後ご議論いただきまして、平成17年度末までに 結論を取りまとめていただくことを予定しています。先生方には幅広い観点から、忌憚 のないご意見をお願いします。どうぞよろしくお願いします。 ○医事課長  初めに本検討会の委員の方々をご紹介させていただきます。慶応義塾大学医学部内科 学教授、池田康夫委員。茨城県保健福祉部次長、泉陽子委員。JR東日本フロンティア サービス研究所長、江上節子委員。学校法人川崎学園理事長、社団法人日本私立医科大 学協会長、川ア明コ委員。社団法人全国自治体病院協議会長、小山田惠委員。国立大学 法人九州大学病院長、水田代委員。社団法人日本医師会常任理事、土屋隆委員。社団 法人日本看護協会副会長、古橋美智子委員。読売新聞東京本社編集局社会保障部記者、 本田麻由美委員。独立行政法人国立病院機構理事長、矢崎義雄委員。東京北社会保険病 院管理者、社団法人地域医療振興協会理事長、吉新通康委員。北里大学医学部長、全国 医学部長病院長会議会長、吉村博邦委員。なお本日は、国立保健医療科学院政策科学部 長の長谷川敏彦委員はご都合により欠席となっています。  次に事務局の紹介をさせていただきます。先ほどご挨拶申し上げました、医政担当審 議官の岡島。医政局総務課長の原。同じく医政局指導課長の谷口。医事課課長補佐の井 上。そして私は、医事課長の中垣です。どうぞよろしくお願いします。また本日は、文 部科学省高等教育局の石野医学教育課長にも同席いただいております。  それでは、まず本検討会の座長の選任についてですが、どなたかご推薦いただけない でしょうか。  池田委員、よろしくお願いします。 ○池田委員  これまで、この「医師の需給に関する検討会」でもご尽力いただいたということで、 私は矢崎義雄委員に座長をお願いしたらどうかと思いますが、よろしいでしょうか。                 (異議なしの声) ○医事課長  それでは、矢崎委員に座長をお願いします。矢崎委員には座長席にお移りいただい て、今後の議事進行をお願いしたいと思います。 ○矢崎座長  ただいま座長に任命いただいた矢崎です。医師の需給に関する課題というのは、極め て今後、我が国の医療提供体制でも重要な部分を示すのではないかと思うので、今後と も委員の皆様方のご協力をよろしくお願いします。  それでは議事進行をさせていただきます。事務局から、この検討会の公開について説 明をお願いします。 ○医事課長  本検討会については、会議及び議事録、並びに資料について、公開とさせていただく ことでご了承をお願いしたいと思っております。 ○矢崎座長  検討会を公開で行う、ということで何か質問はございますか。お認めいただけますで しょうか。                 (異議なしの声) ○矢崎座長  では、検討会の議事については公開する、ということにいたします。  それでは、事務局から検討会の議事及び資料などの説明を、よろしくお願いします。 ○井上補佐  資料の説明をいたします。お手元の資料、「医師の需給に関する検討会第1回資料目 次」と書いてあるものをご覧ください。資料は資料1「医師の需給に関する検討会につ いて」、資料2「医師の需給に関するこれまでの経緯」、資料3「医師の需給に関する 資料」、大きく3点ございます。これに加えて、参考資料として2点の資料がございま す。1点ずつ、簡単に説明させていただきます。  まず資料1ですが、1枚紙です。医師の需給に関する検討会について、今回需給の検 討会を開催するに至った背景、及び検討事項の案、それから今後の日程について、簡単 に取りまとめたものです。  次は資料2、これも1枚紙です。医師の需給に関するこれまでの経緯について、簡単 にまとめたものです。昭和40年代、50年代は、当時の当面の目標であった人口10万人対 150人の目標医師数を達成しようとしていまして、昭和58年にそれを達成した後、昭和 61年、平成6年、平成10年、3度の検討会において、いずれも今度は逆に「医師の新規 参入数を制限するように」という提言がなされている、という経緯に関して、簡単にま とめてあるものです。  続いて資料3です。今回のご議論をいただくに当たって必要な、基礎的な医師の需給 に関する資料について、20頁の図表等にまとめたものです。これに関しては、1枚ずつ 簡単に内容をご説明いたします。  まず資料3の1頁目です。我が国における施設ごとの医師数の年次推移を、昭和30年 から直近のデータ、平成14年までまとめたものです。右側のグラフを見ていただければ わかりますように、診療所、医育機関を除く病院、医育機関附属の病院、いずれにおい ても医師数は年々増加しているという、そういうデータです。  続いて2頁目です。これを人口10万人対の医師数の年次推移に直したグラフです。こ れも昭和30年から平成14年までの推移をまとめていて、昭和30年から平成14年までの間 に、人口あたりの医師数は約2倍近くに伸びているという、そういうデータです。  続いて3頁目は、人口あたりの臨床医数の国際比較のデータです。OECDに加盟す る先進諸国30カ国の人口あたりの医師数を比較したものです。それぞれ国によってデー タを取っている年次、あるいはデータの取り方に若干の差異がございますので、大まか な目安ですが、日本は先進諸国の中では、人口あたりの医師数が相対的に少ない部類に 属するという資料です。  4頁目は医師数の年次推移を男女別に取りまとめたものです。男女とも医師の絶対数 は増えていますが、相対的には女性医師の伸び率のほうが大きく、右下の棒グラフによ れば女性医師が徐々に増え、現在は医師全体の15%程度が女性というデータです。  5頁目は、この女性医師割合を国際的に比較したグラフです。これもOECDに加盟 する先進諸国の中で、医師全体に占める女医の割合を比較したものです。我が国は徐々 に増えていますが、女医の占める割合が全体の15%で、国際的にはいちばん女医の比率 が少ない部類に属する、という形のデータです。  6頁目です。新しく医師になる、国家試験に合格した者の中における男女比を、平成 に入ってからここ10数年示したものです。これによれば最近は、新しく医師となる者の 約3分の1は女性ですので、前の5頁目のグラフと見比べれば、この傾向が続けば先進 諸国の中でも平均的なところになるだろう、ということが予測されるわけです。  7頁目、医師の種別にみた医師数です。これは左側のグラフが昭和50年当時のもの、 右側のグラフが平成14年直近のデータで、医師の人口ピラミッドを比較したものです。 右側の平成14年の医師の人口ピラミッドによれば、70代半ばのところに大きなこぶがご ざいますので、多くの診療所にお勤めの先生方が、まさにいまご引退なさろうとしてい る、ということが読み取れるわけです。それと同時に、他方で40代後半から50代にかけ ての医師が、今後急速に増加するということも、このグラフから見て取れるわけです。  次に8ページ目です。特定の診療科において、特に医師の不足というものが指摘され ているので、各診療科別の医師の年次推移を簡単にまとめたグラフです。左側のグラフ では、医療施設全体の医師の数と、そのうちに占める内科の医師の数をまとめていま す。全体が約25万人。そのうちの4割、10万人が内科医という形です。右側のグラフ は、内科以外のいくつかの科において、ここ10数年の診療科別医師数の推移をまとめた ものです。医師数全体は増えていますが、例えば小児科、産婦人科といった診療科で は、必ずしも医師数が増えていないということが、こうしたグラフから読み取れるわけ です。  9頁目は、都道府県別に見た医療施設に従事する人口10万人あたりの医師数をまとめ たものです。これは各都道府県別に2本棒グラフを示していまして、一方の黒いほうの グラフが直近のデータ、平成14年のもの。それから、その左側に付けたやや白っぽいも のが、その16年前、昭和61年のものです。これで見ると人口あたりの医師数は、各都道 府県別にいくらかのばらつきがございますが、いずれの都道府県においてもここ10数 年、人口あたりの医師数は伸びているということが読み取れるわけです。  10頁目は都道府県別に見た、今度は病院の病床数を人口あたりで示したものです。先 ほどのグラフと同様に、直近の平成14年のデータと、昭和61年のデータを比較していま す。これで見ると、前のグラフで見たように医師数はここ10数年、人口あたりに対して 急速に伸びていますが、ベッド数はほぼ同じ状態にあり、ここ10数年で大きな変化はな いということが読み取れるデータです。  11頁は全国の医科大学の入学定員の年次推移をまとめたものです。私立大学、公立大 学、国立大学別にまとめています。昭和40年代から50年代にかけて、医学部の入学定員 は大きく増加をし、60年を境に若干減少し、平成に入ってからはほぼ同じ状態が続いて いる、というデータです。  12頁は、いまの折れ線グラフをやや細かく数字にしたものです。医学部の入学定員の ピーク時は昭和59年でして、このときに合計8,280人でした。平成10年度までにそれが 7.7%減少し、それ以降、現時点までほとんど減っていない。現時点で入学定員は7,625 名です。  次に13頁です。文部科学省から頂戴したデータですが、医学系大学院博士課程の入学 定員の推移を、平成に入ってからまとめたものです。平成の初め頃は1学年約4,000人 強であったものが、現時点では5,000人に増えているということです。先のデータで1 学年の医学部の入学定員は7,625名でした。大学院は年間約5,000人定員ですので、医学 部を卒業した人のうち相当部分が大学院に進学しているということが読み取れるデータ です。  14頁は、医師の国家試験の合格者数の年次推移を、昭和60年からまとめたものです。 受験者数、合格者数、合格率、3つを1つの表にしています。概ね合格者数は7,000名 から8,000名を越えるところで、毎年推移をしています。  15頁は施設の種類別に見た推計患者数の年次推移です。左側が入院患者、右側が外来 患者の図です。これを見ると、1日あたりの患者数に直して、入院・外来とも平成に入 ってからは大きく増えているわけではないということが読み取れるデータです。ちなみ に右側の外来患者数は、これは平日の1日あたりの平均を取っているというデータで す。  16頁は文部科学省から頂戴したデータですが、医学部入学定員における地元枠に関す るデータです。すでにいくつかの大学において、入学定員の中で地元枠を設けていただ いており、新たに実施を予定されている大学もあるということです。  次に17頁です。医師の需給と新しい臨床研修制度との関連が指摘されることがござい ますので、今年から始まった新医師臨床研修制度における研修医の分布の変化を、都道 府県別にまとめたものです。各都道府県別に、新しい臨床研修制度が始まる以前の平成 15年度と、それから来年度、新制度が始まって2年目ですが、来年度における各都道府 県別の、1年目の研修医の人数の推移、及びその増減をまとめたものです。一定の傾向 を言うことはなかなか難しいのですが、例えば少し黒く塗ってある5つの県で比較いた しますと、東京都、大阪府、福岡県といった比較的都市部の都府県では、新しい制度が 始まって後、県全体としての研修医の数が減っているのに対し、例えば北海道や沖縄県 といった地方にある都道府県において、新臨床研修制度後に研修医数が増えているとい ったようなことがございます。  18頁は同じく新医師臨床研修制度による研修医分布の変化を、今度は別の角度から見 てみたものです。研修医が研修する場所を、大学病院と大学病院以外の市中の研修病院 というように分けた場合、新しい研修制度の発足によって分布がどのように変わった か、ということを示した図です。新しい臨床研修制度が始まる前の平成13年度において は、約7対3の割合で大学病院のほうで研修をする医師が多かったわけですが、これが 新制度が始まってからは概ね5対5の割合で、どちらかと言えば大学病院以外の、一般 の市中の研修病院で研修をする研修医が増えているというデータです。  19〜20頁は文部科学省から頂戴したデータですが、国公私立大学における医師の名義 貸し等の実態の調査の結果についてということです。これによれば、平成14〜15年当時 においては、いわゆる医師の名義貸しということに関して、このような実態があるとい う、そういう概要です。以上、資料3についての簡単な説明をさせていただきました。  次に参考資料ですが、参考資料は1、2とございます。参考資料1は、地域医療に関 する関係省庁連絡会議から取りまとめられた文書です。この資料の3頁目をご覧いただ くと、下線を引いてある部分に、医師の需給の見直しというのが今後の検討課題として 挙げられていまして、平成17年度中を目途に、医師の需給の見直しを行うと定められた わけです。これを受けて本日からの医師の需給検討会の開催となった次第です。  参考資料2ですが、大きく4点の資料がございます。最初の3点は、過去3回の医師 の需給の検討会における報告書、あるいは意見書といったものです。資料2−1が昭和 61年の最終意見の要約。資料2−2が平成6年の検討会の意見。資料2−3が平成10 年、医師の需給に関する検討会の報告書の概要及び本文です。いずれの報告書において も、新しく医師となる新規参入者数を抑制するように、という意見が取りまとめられて いるところです。  最後になりましたが、資料2−4は平成9年6月3日に出された閣議決定の抜粋で す。「財政構造改革の推進について」という文書の中の一部に、「大学医学部の整理・ 合理化も視野に入れつつ、引き続き、医学部定員の削減に取り組む」という文言が盛ら れているという形です。以上、簡単に資料の説明でした。 ○矢崎座長  どうもありがとうございます。医師需給の議論を進めるに当たって、極めて重要なデ ータをそろえていただき、また簡潔にご説明いただいてありがとうございました。  最後の資料ですが、全国自治体病院協議会の会長でおられる小山田委員から資料がご ざいますので、説明をよろしくお願いします。 ○小山田委員  いま全国の病院で医師の不足が騒がれていますが、特に私ども自治体病院が地域で行 うべき医療ということで、特に地理的条件が悪い病院の医師が、昨年来から大学の引き 上げ、その他によって、大きな打撃を受けて、その地域医療が確保できるかどうかが、 いま危機になっています。そうしたことで厚生労働省、文部科学省、総務省にお願いし て、昨年2月からこれについての検討委員会を立ち上げていただき、また6月から総務 省での検討会、地域医療の確保、医師の確保をいかにしたらいいかと。私ども協議会も 県知事をはじめ、協議会が一体となって、6カ月間の検討をしていただきました。それ についての検討の中で、全体の数が足りないということと同時に、同じ意味を持ってい る地域別な格差、それから部門別な格差をどうするか。この両方をしっかりとやらない 限り、いまの日本の供給体制はあり得ないということで審議していただいたのですが、 それらの委員会での討議の中で、そしてこれは答申が先月の29日に出てまいりました。 その中で、医師需給についての議論がいっぱいありましたので、その中の議論をここに まとめて出した次第です。どうか一覧願いまして、これからの審議の参考にしていただ ければ幸いです。 ○矢崎座長  どうもありがとうございました。大変重要なポイントを要領よく指摘していただいて いるようですので、今後の検討のときにまたご参照いただければと思います。よろしく お願いします。  いま事務局のほうから需給に関するいろいろなデータを示していただきましたし、小 山田委員からは議論するに当たっての重要なポイントのご指摘がありました。本日は第 1回ということで、各委員の方にそれぞれのお立場から、あるいはお考えを、第1回で すから忌憚のないご意見をお伺いしながら会を進めたいと存じておりますので、よろし くお願いします。  最初に、いま事務局から提出されたデータなどについて、理解の進め方、あるいはと らえ方で、何か委員の方々で質問はございますか。 ○江上委員  質問ですが、資料3の14頁の医師国家試験の合格者の推移を拝見すると、平成12年辺 りで急激に合格率が低下していますが、制度的な変更や、運用上の変化などの構造的な 背景が影響しているのかどうかを教えて下さい。 ○井上補佐  特に何か構造的な背景があったわけではありません。平成12年当時の国家試験という のは、基本的には絶対基準により合否を定めており、予め試験を実施する前に定めてお いた合否基準に基づいて合否を決定したところ、結果的にこの年は例年よりはやや低い 合格率になったということです。特に何か背景があるということはありません。 ○矢崎座長  そのほかいかがでしょうか。 ○本田委員  とても単純な質問で申し訳ありませんが、同じく資料3の2頁、3頁に医師数、臨床 医数とあります。臨床医数というのは、例えば大学で教えている先生などを入れていな い数字という、そういう別のものなのですか。それとも同じことなのですか。 ○井上補佐  臨床医数というのは、臨床に従事している医師ということですので、大学病院の医師 も基礎研究に従事している、例えば解剖学や生理学の医師を除いた、大学病院の診療科 の医師もすべて含むものです。臨床医に含まれない者は、例えば行政機関に従事する 者、基礎の研究者、あるいはすでに引退して診療に一切従事していない医師、そうした 医師に限られるわけです。2頁に医師数と述べており、3頁に臨床医数と述べているの は、たまたま3頁のデータはOECDの国際比較から取ったもので、このOECDのデ ータの中での定義が全医師というわけではなく、診療に従事している臨床医数という定 義であったので、違うという形です。ただ医師数全体と臨床医数というのは、それほど 大きな開きがあるわけではありません。 ○池田委員  これも資料3ですが、女性の医師の割合がこれからますます増えてくるのはまず間違 いないということで、現在、国家試験の合格者は3分の1ぐらいですよね。5頁の2000 年の臨床医数に占める女性医師の割合の国際比較では、大体女性の臨床医数というのは 15%ぐらいになっています。ということは大体半分ぐらいの人が臨床に従事していない と理解していいということでしょうか。 ○井上補佐  そういうことではありません。5頁のグラフは、新しく医師になった者に占める女性 医師の割合ではなく、すべての医師の中に占める女性医師の割合ですから、例えば50 代、60代という比較的年輩の世代においては女医の割合が少なかったことが反映されて いるということです。6頁はあくまでも新しく医師になった者の中のデータという分母 集団の違いです。 ○池田委員  そうすると単純に女性医師で、就業していない人がどれくらいいるかというのは、ま だデータとしてはないわけですか。 ○井上補佐  これは現在調査中です。 ○小山田委員  少しお伺いしますが、OECDの中での医師の数はよくわかりますが、各診療部門に ついての調査結果は出せるでしょうか。もう1つは、各診療科の医師の格差をなくすよ うな仕組みについて、日本は全然野放しなのです。誰がどこに行こうが、どの診療科が 多くなって、どの診療科が減っても放置されているのですが、OECDではそういう面 でのバランスを取るための仕組みはどうなっているかの資料をお出しいただければ、大 変参考になると思いますが、お願いできますか。 ○井上補佐  承知しました。以上の2つの点について、現実にすでにOECDにそのようなデータ があるかないかを含めて調べることにします。そういうデータがすでに取りまとめられ ている場合には、次回の検討会で提供したいと考えています。 ○水田委員  もう一度繰り返しになるのですが、人口10万人に対する医師数というときには、医師 数というのは免許証を持っているというのではなく、本当にアクティブに働いている人 と解釈してよろしいのですか。 ○井上補佐  これはデータのソースが「医師・歯科医師・薬剤師調査」で、2年に1度法律に基づ き各医師が届出先、勤務先等届け出る、それに基づいたものです。届出があった医師の 数をすべて集計しています。届け出られた医師の中には、「現在無職です。仕事をして おりません」という届出もあるので、そうした方も含まれてはおります。 ○水田委員  ただし働く意思はあるということですね。いまは無職でも、まだリタイアはしていな いという意味でしょうね。 ○井上補佐  完全にリタイアすれば、おそらく届出をすることはありませんので、ごく少数です が、現在無職ですという形もあります。またこの中には臨床に従事をしていない、例え ば行政機関等に従事をしている医師も数としては含まれています。 ○水田委員  もう1つお聞きしたいのは、先ほどOECDのところでは、言われましたが、日本の 中で医師たちの職種別の年齢層はわかりますか。例えば産婦人科がいちばん問題になっ ているのは、若い方がいないということです。戦後に産婦人科の医師はとても増えまし たが、いまはほとんどがリタイアの年齢になってきていて、特に産科が非常に厳しい状 況なのです。ほかの科もそういうことはわからないでしょうか。いまは若い方の専攻が 昔とずいぶん違ってきており、年齢別の分布がわかればいいなと思うのです。 ○井上補佐  承知しました。これは集計を取ることは可能だと思うので、次回の検討会のときに、 少なくともいくつかの、問題になるような診療科については、集計をした上で提示をし ます。 ○吉村委員  先進国では専門医と家庭医とにかなり分かれています。日本だけが免許証さえあれば あらゆることができるというスタイルです。先進国の専門医と家庭医の比率、あるいは それに何かオブリゲーションをしているのかどうか。その辺のことがわかればありがた いと思います。 ○井上補佐  これもわかるかわからないか即答はできませんが、調査をしてわかるかわからない か、あるいはわかればその内容がどうかに関して、次回の検討会で提示をします。 ○泉委員  先ほどご紹介があった「医師・歯科医師・薬剤師調査」の捕捉率はどのくらいだと見 ていらっしゃいますか。医学部の入学定員の全体の数は出していただきましたが、都道 府県別の人口当たりで見た定員の偏在がかなりあると思うので、そのデータも是非出し ていただきたいと思います。 ○吉新委員  私は前回の委員でもあり、矢崎先生と私でこの検討会にも入っていますが、多いとい う認識が本当に正しいのかどうか。数を論じるのであれば、分布に関して何か仕組みが 必要だと思います。それを規制して、分布に関して野放しであれば、僻地・離島は先ほ ど小山田先生がおっしゃったように自治体の小さな特に田舎の村など確保できないわけ ですから、そういう規制をするならば、分布に関して国が何か関与すべきだと思いま す。例えばタイでは卒業すると必ず僻地に1年間オブリゲーションが全ドクターにあり ます。イギリスでは前のNHSで、現在はわかりませんが、僻地であれば診療点数が少 し上乗せされて、経済的にメリットがあります。日本の場合は、いきなり給料が僻地に 行くと自治体がずいぶん高く用意していて、それで誘導するようなことになっていま す。必ずしも給料ではなく、もっといろいろな意味で誘導する方法があると思います。 何しろ医師が少なくてできないということもありますので、できれば海外で僻地のオブ リゲーションを受けているようなことが調査でわかれば、調べていただければと思いま す。それとドクターの分布についてある程度、国が誘導しているような施策がもしあれ ば、ご紹介していただきたいと思います。以上です。 ○古橋委員  医師の需給を考えるときに、1つには医師が所属している様々な側面での、いわゆる 部署に対する偏在、ある偏りがあることがなきにしもあらずという気がします。すべて が足りないのか、どこかには余裕があるのかという点で、医師の所在の偏在をデータか ら読むとすると、今日の資料3の9頁のデータかと思いますが、偏在の実態を厚労省と して何か資料はお掴みではないのでしょうか。  もう1つは、時間帯の偏在です。私はいま臨床現場にもおりますが、夜間の救急、時 間外受診者に対する医師数の不足を非常に緊張感を持って案じております。そばで共に 仕事をする看護職なども必死の事態が起きています。夜間の就業医師数の実態もある程 度捉えておくことも、需要を考えるときに必要なのではないかと思います。  また、財政構造改革ということで現在も医師過剰、医学部定員削減という発想がある とすると、これは現実の実態とかなり乖離しているような印象を受けます。医師過剰、 医学部定員削減ということが浮上してくる根拠を、もう1回教えていただきたいです。 ○矢崎座長  事務局から何かありますか。 ○井上補佐  ご質問が続きましたので、最初からお答えします。まず泉委員のご質問で、「医師・ 歯科医師・薬剤師調査」において、実際にどれぐらい届け出ているのか、捕捉率はどの くらいに考えているのかというご質問でした。手元にデータがありませんので、これも 調査して次回の検討会でお答えします。県の人口当たりの入学定員のデータは示せない かについては、これは可能ですので次回にお示しします。  吉新委員のご指摘、例えばタイや英国の例を挙げ、海外において医師を僻地に誘導す る、あるいはオブリゲーションを課す、そういう事例の提示ができないかということで すので、これも事務局で調査したいと思います。  古橋委員のご指摘、部署による偏在の実態、部署というのは必ずしも診療科というこ とだけではなく、病院の規模別、あるいはご指摘の時間帯、医療現場の各シーンにおけ る偏在の実態を数として示せないのかというご指摘でした。データとしてなかなか整っ たものをどこまで出せるかどうかわかりませんが、部署というのは診療科別、病院の種 別別、時間帯別、こうした形でどのくらい偏在のデータが示せるかを検討したいと思い ます。  もう1つのご指摘、現場感覚ではあまり医師数が過剰だとは思えないが、過去3回の 検討会では、医師数の総数を新規参入者数で抑制しろと示されているということで、そ の根拠は何だったのかということです。これは過去3回の検討会で、報告書概要を参考 資料で示しましたが、根拠ということで要約をすると、それぞれの検討会の報告書と も、その時点で大幅に医師が過剰という認識ではなかったと私たちは理解しておりま す。現在の入学定員数、あるいは新規の医師の参入者数がこのまま続いた場合に、将来 の医師の需給動向を予測するときに、大幅な供給過剰が想定されており、そうした事態 を回避することが望ましいと過去の検討会では考えており、そうした事態を回避するた めには、早い段階から新規参入者数の抑制の対策を取る必要がある。そういう報告書の まとめ方でしたので、必ずしもその時点ですでに医師の供給数が過剰というご指摘では なかったように私どもは理解しております。以上です。 ○矢崎座長  土屋委員どうぞ。 ○土屋委員  各論的な細部については今後の検討会で出てくると思いますが、医師数のカウントの 仕方、国際比較のようなものが出ていますが、日本の特に勤務医なら勤務医だけを取り 上げても結構なのですが、勤務実態は通常労働基準法でいう時間を1とするならば、1 で終えている人というのはまず伝統的にほとんどいません。常勤の医師というと、いち ばんわかりやすいのは、今日夜間の当直をやったにしても、明くる日が直明けなどとい う話はないわけで、通常どおり勤務するわけです。そうすると1人の医師が、これは国 際的な勤務実態の比較をしないとわからないかもしれませんが、少なくとも日本の医師 は、1.8なり2なり、2を超えている人もいるかもしれないということです。10時間など というのはざらで、ほとんど病院の中で寝泊りしているぐらいの若い人たちもいるわけ です。それを1とカウントすること自体が、国際比較をしてもあまり意味がないのかも しれません。あるいは先ほどの調査の中で女性医師云々という話があり、ひょっとする とまず大体30代から40代の勤務実態は大体8割程度に落ちています。そうするとそれを 1とカウントすること自体が、これもまた数字の中身的には、その辺りをきちんと補正 しておかないといけないのではないかと思います。こういう数字の比較はそれぞれの国 の医療制度、勤務実態を斟酌した上で解釈しないと、これだけで絶対的な値だと思う と、大きな誤りが起こるのではないかと思います。  もう1点は、従来の検討会の報告書等を見ると、大体需給バランスは取れていると。 これからは過剰になるから医学部の定員を1割ぐらい削減したらどうかというような提 言がなされているようです。しかしいまの実態を見ると、その時点の平成10年以降6、 7年経っていますが、実際にどういうことが起こっているかと言うと、僻地に医師が足 らない、あるいは医師の名義の貸し借りの話などいろいろなことが起こってきていま す。これは一口で言うと、絶対数としてはこれでいいのだと言うのなら、偏在という表 現もできるでしょうが、これがいまの日本の医療の現状を表わすということにすると、 これは不足ということになります。ですからそれ以降、医学、医療も進歩し、医療を取 り巻くいろいろな制度から環境が大きく変わってきた。そのときどきの医師数の需要 は、大きく変わるのだということの明らかな証左だと思うのです。ですからこれを単に 偏在という考え方で、この議論を進めていくと、結論的に大きな誤りが出るのかもしれ ません。僻地で医師が足りないということと、いまの制度上の配置標準を満たさないと いうことの意味で、医師が不足しているということと、実態としてこれだけの医療をや るのに、これだけの専門医が集中して集まらなければできないということと、同じ医師 不足といっても全然意味が違うと思います。ですから昭和20年代の初めに出されたルー ルにより、大病院も、地域の中小病院も、それで縛られているわけです。ですから高度 な医療をやるならば、専門医何人かが集中してそれに当たらなければならないこともあ りましょう。  地域の医療であれば、大体ここぐらいの所ならば、これだけのメンバーでそこそこに 地域の医療を担って、それなりの貢献をしていると考えられる医療機関がほとんどなわ けです。しかしそういう所では、医師が足りない。足りないという理由は、その医療機 関としては身の丈に合った医療を提供しているわけなのですが、ルールに照らし合わせ ると足りないというわけです。そこでどういうことが起こっているかは、本当は名義上 のドクターなど要らないのですが、そうするとそこで標欠だなどと、足らないではない かと言われてしまう。だから名義を借りて帳尻合せをしているのが実態なわけです。  ですから本当は医師不足といっても、うちの程度の医療ならこれで十分だというの に、それに照らし合せると足らないということから、大学なり何なりに無理をお願いを して来ていただく。ところが、来てもらってもその先生に、ここで仕事をやっていって くださいといって、実際の医療ではなくて、大学の仕事を持ち込んで、そこで論文を書 いたりしているというのが実態なわけです。ですから足らないというのも、本当に足ら ないのと、そういうルールに合わせるがための帳尻合せの上において足らないというの があるのです。僻地で本当に足らないというのとでは不足の意味が全然違うのです。で すからその辺を各論的に分析して、検討しないといけない。一口で申すと、そういう人 員配置の基準が、現状の医療、実態に合っていないということが、非常に大きく医師の 需給についての考え方を混乱させているのではないかと思います。 ○小山田委員  土屋先生のご意見とほとんど同じですが、整理すると平成10年の報告に基づき、各項 目について医師の必要な数を決めて、総計として見て、医師が2020年、2025年に1万 1,000、1万4,000増えるということになっています。それらの項目を見ると、わずか7 年でも医療の状況がこのように激しく変わっているのです。このときの状況はこのよう だったのかもしれませんが、科学的な根拠を持った数字を出すべきだと思います。それ がなく、ただ少ない、多いという議論は成り立たないので、平成10年度に出た報告書の 計算の基準になったもの、例えば1人の医師がどのくらいの患者さんを診療できるかと いう数から計算しています。外来については42人、入院については医療法に定めるも の、普通の病院では患者16人に1人、あるいは療養所では48人、精神科でも48人の患者 に1人。急性期病院で忙しく立ち働いている、本当に労働基準を満たすにはこれだけの 数でいいのかどうかは大きな問題だと思います。  それから医療介護老人に対しては、100人に1人でよろしいということです。いまの 時代にこれで本当に介護ができるのかということです。当時はそう考えたのだと思いま す。例えば救急医療がありますが、救急医療については20万人単位、20〜30万人の地域 で15人いればよろしいというのです。いまはどうでしょうか。これで救急医療をやれる でしょうか。また、僻地の無医村地区が900いくらありますが、これに1人ずつ配置す る。そこに1人ずつ配置された医師が行くでしょうか。そして実際に質のいい医療が、 無医村地区でできるのでしょうか。  こういう項目が全部書いてあるので、これを調べるのは簡単だと思います。例えば私 が属する自治体病院が1,025ありますが、各ドクターのそれぞれの分野での労働時間が 重要なのです。無医地区などでは、多い人は、1カ月に7.5日も当直をやっているので す。その人たちが労働条件を満たしながら働くためには何人の医師が必要か、また、部 門別の偏在をなくするには何人必要かということを詰めていけば、国民にわかりやすい 数字として、あるいは方策として出せるのではないかという考えております。以上で す。 ○矢崎座長  川ア先生、私立大学協会からのご意見は何かございますか。 ○川ア委員  私立医科大学協会では、10%の定員を減らしていないということで、厚労省からもう 少し減らすようにという指導を受けて、いまから10年くらい前にもう少し減らそうとい う案まで作ったのですが、結果的には、うやむやになり、いまのところ10%まで減らし ていないです。国立大学の場合は定員120名の学校がほとんどで、それを100名にしまし たから20名減っているので、もう10%削減は完全にできたわけです。公立大学はもとも と定員が少なく、多い所でも100名、少ない所は60名ですから、ほとんど変わっていな い。私立医科大学の場合は、定員120名の学校と100名の学校、中には80名の学校もあ り、120名の学校はほとんど100名に減らしましたが、まだ3つの大学が120名の定員の ままです。そういう状態で10%は減っていないのですが、国公私立とも地方にある医科 大学では、医科大学自身の先生が足らないというのが現状です。卒業生が自分の出身地 に戻る、あるいは都会に出て行って、なかなか残ってくれないということです。特に山 陰地区、四国、あるいは東北もそうだと思います。ですから大学も派遣するどころか、 自分の所を維持するのが精一杯だというのが現実です。  先ほどのお話のように、やはり労働基準法の問題はこれから厳しくチェックされて、 1日8時間、週40時間、当直は週1回以上してはいけない。当直は電話番だということ です。こうしたことでは大学は、もう救急、あるいは小児医療は全くできない状態にな っています。大学の中でも外科系に入局が非常に少なくなってきて、困っているのが現 状です。女性医師は現在15%ですが、国家試験合格レベルでは約30%です。私立医科大 学だけでは、過去10年間で入学してきた学生は、女性が36%です。これが10年続けばお そらく国試の合格者も40%近くになるでしょう。勤務している医師も女性が30%近くに なってくるのではないでしょうか。ですから女性の医師が、卒後に安心して勤められ る、即ち産休、育休が十分取れるような体制をどのようにしていくか。そのためには相 当な代替要員、それを補うだけのスタッフがいないといけないということです。入学定 員を増やすという問題だけではなく、やはり全体に医師の数の偏在だけではなく、絶対 数が足りないのではないかという気がしております。以上です。 ○池田委員  医師の需給の問題を考える上で、これは非常に難しいことかと思いますが、土屋委員 が言われたように、医療の現場にはいろいろな現場があるわけですから、それぞれの特 徴がある医療の現場で、どのような状況になっているのかという、比較的客観的なデー タがどうしても欲しいという気がします。なぜならば、医療機関というのは国民から24 時間対応するよう、これはもうやらなければいけない医療機関の使命だと思います。あ る時間だけ医療を受け持って、それ以外の時間はやらなくてもいいということではな く、医療機関そのものが国民のために24時間何らかの形の対応、できるだけの対応を取 ることが必要です。医師もやはり人間として、労働時間がこれからはある程度守られな ければいけない。これまではそういう面では、医師というのは労働のことに関しては、 かなり、奉仕をするということを強いられてきた気がします。大学病院でもいまは本当 に人が不足している。それはなぜかと言うと、大学病院は確かに医師の数は多いのです が、それだけ一人ひとりの患者にかかる時間が非常に多くなってきている。これは医療 の内容が、10年前に比べると全然変わってきている。この小山田委員のレポートにもあ りましたように、例えば患者の家族に対するインフォームドコンセント、やはり、患者 と医者との関係がこれまでとはだいぶ変わってきて、十分に納得して医療を受けるとい うことは国民の皆さんが思っていることですので、それだけ時間が、かかるようになっ てきたということも一方で事実です。ですからそういう医療の内容と、医療の現場での それぞれの対応、そこを勘案しながら需給数を考えていかなければいけないということ だと思いますので、できましたらいくつかのタイプの医療機関別に、そのデータを客観 的に取るということから始めないと、なかなかこの問題を、一律に議論していくのは難 しいのではないかという気がします。 ○水田委員  国立大学も全く同じような状況です。よく、大学が医者を引きあげるからだと言われ ますが、引きあげるということではなくて、現実として大学も医師がいないわけです。 特に臨床研修制度ができてからは、2年間、新しい方が全然いない、その代わりに、い ままでだったら、例えば2年あるいは3年、ちゃんと臨床研修をして関連病院に出張で きていた人たちが、大学に残って、臨床をしなくてはいけないというのが現状です。研 修医が大学に残らないことに関しては、大学が魅力あるプログラムを提供できるような 研修制度をつくらなくてはいけない。それは私たちの責任と思ってやっております。  それと、先ほど池田委員がおっしゃいましたように、大学自体の医療が非常に高度な ものを要求されるようになっていますので、例えば、いままでは3人でよかったものが 4人、5人と手がかかると言うと失礼な言い方ですが、それぐらいの方たちが、分けあ ってやらないと、いい医療ができないということもあり、一方ではすぐ労働基準局のチ ェックが入るのです。その分やはり医師の数を増やさなくてはいけない。  そういうことで大学のほうも人員が要りますので、いままで夜の当直に行っていた開 業医さんの所にも行けない。そうするとこの開業医さんの所の当直がいない。そこがま た地域医療で問題になってくる。すべてが玉葱サークル的に、悪循環と言ったら悪いの ですが、どこかでそれをポンと切れるようなことを、この委員会でしなければいけない なと思っております。 ○本田委員  大学病院や病院の先生方からのご意見がありましたので、私は患者の立場として意見 を述べさせていただきたいと思います。  病院や医療機関で本当に医師が足りない、働く方々もそう思っていらっしゃるのと同 じように、患者としてもそう感じることが、たびたびあります。私は乳がん患者でいま も治療を受けていまして、待合室でよく話題になるのは、「今日は何々先生は忙しそう だからこれ聞けなかった。がまんした。来週は聞けるかどうかわからないけれど」など と、患者のほうも忙しい医師を思いやるような状況になっているのですね。どうしてこ んなに先生が足りないのかしらというのを、一般の患者のほうでも疑問に思っているの です。一方で、必要な所にいないのではないかというようにも思っています。最近は患 者もどんどん説明を求めるので時間がかかる。そういうことで医者が足りなくなってい るのではないかと思っている部分と、あと、新しい医療分野について、例えばがんの場 合、どんどん新たな抗がん剤が開発されており、その分野の医師に診てもらいたいのに いない、どうしてこういう医師を育ててくれないのかしら、ということも感じるように なっているのですね。  だから一概に医師数と言っても、そういう部分も含めた、実際にどういう分野にどう いう医師がどれ位必要なのかというような、目安みたいなものは出せないのかと感じて います。諸外国では、学会のような機関が、こういう分野には全体でこれぐらいの人数 の医師が必要だ、というような目安、基準みたいなものを出しているという話を聞いた こともあります。そういう考え方は日本ではできないのかどうかということも含めて、 是非知りたいと思っています。  もう1つは、先ほども、各診療科への医師の供給に関して日本は野放し状態だという ようなお話がありましたが、それを規制は難しくても定員制にできないか、できないと いうなら、その根拠は何かあるのかということも、是非教えていただきたいと思いま す。 ○小山田委員  これは私が前から言っていることですが、偏在を起こしているのは、大学の医局と学 会が全くコントロールなしに、自分の講座の人を増やしたい、大学に人を集めたい、学 会も何の規制もなく、どの学会でも、何人でもいらっしゃいと。そこに国家的な観点も なければ、患者に対して、どのような供給が必要かということがない。  これがなければいくら数を増やしても偏在はなくならないということは、実は前の委 員会でも、最後にしっかり書いてあるのです。そして最後には、「ついては、これらに ついて各大学並びに研修病院並びに各学会がそれぞれ協調して、これから改善に努める ことが望ましい」。この会では、それをなくすような具体的な方策を、1つでも2つで も出していただければ、私どもは大きな声で、大学にもお願いし学会にも頼んで叫んで いきたいと思っています。 ○池田委員  医療の問題を考えるときにいちばん大事な視点というのは、どの問題もそうだと思う のですが、やはり患者の視点、要するに医療というのは患者のためにあるものですか ら、患者を中心にして考えるというのが常に基本だということで、我々もそのつもりで やっています。  先ほど本田委員からも、医師の適正な数ということに関して、例えば専門医という領 域があります。専門医制度、先ほど吉村委員も言及されましたが、専門医に関しては、 いまは専門医認定制機構という所があって、それぞれの専門医は日本で何人ぐらい必要 なのか、そういう議論はきちんとしていこうということが、もちろんちょっと遅きに失 しているかもしれませんが、言われるようになっております。この領域の専門医だった ら、患者数、発症数からしてどのくらいの専門医が必要なのか、という議論はやはりし ないといけないだろう。ある領域によっては増やさなければいけないし、ある領域によ っては、そんなに専門医をつくってもしょうがないではないか、ということがあります ので。ただ、適正な数というのをどうやって算出していくか。これは技術的には大変難 しい問題があるとは思いますが、議論がそういう方向に進んでいることは確かですの で、その辺もこの中で頭に置きながら議論していくことが、必要ではないかと思ってい ます。 ○土屋委員  先ほど、各論的な話ですから申し上げませんでしたが、いま専門医というお話が池田 委員から出ました。大学も平成10年以降、大きく変わってきている。その何よりの証拠 は、研修病院が大学病院と市中の病院と、大体50対50になってきたということから見て もわかるように、大学そのものが、もっと言うと、医局というようなものの機能が、従 来的なものを期待しても大きく変わってしまっているという状況にあります。これは研 修医制度とか、専門医制度とか認定医制度とか、いまの若い人たちはそのためにそうい う研修病院を選びますし、その専門医にならんがために、そういう病院に集中するわけ です。大学も、あるいはいま研修病院になっている所も、実は2年後に、その研修を終 えた人たちがどうなるのかということについて、やはりこれが1つの関心事なのです ね。だから一般病院の研修病院からは、2年間が終わって、また大学に戻られたら困る と、こういう話があるわけです。研修医といえどもこの人たちはそれぞれの医療機関 で、もう医師ですから、それなりの役割を果たしている、果たしてきたわけです。です からこの先生たちがいないということは、その病院の機能が落ちてしまうわけです。  そこでいま、これは矢崎座長のご専門のところですが、いうならば、後期研修なるも のをどうするのかという。大きな国立病院等では昔から、2年終えた後に、3年ぐらい のレジデント制みたいなものをひいて、事実上その人たちを、見方によってはですが、 その若いドクターたちを、足止めしていると言いますか、研修ですから、若いうちの修 業ということで、その人たちはなんの疑問も持っていませんが、医療機関そのものがそ れで成り立っている部分があることは否定できないのですね。だからと言って、それで 良しとしておいてはいけないのではないか。  その間は研修医ですから、身分保障みたいなものはしれているのです。ですから実情 から言うと、いま、5年ぐらい経ってようやく6年目ぐらいから、一人前の医者として 扱われているという現実があるわけです。かと思えば地方では、そんな贅沢は言わな い、どんな医者でもいいと言うのですが、いまのこういう世の中の、ポストグラジュエ ートのそういう研修制度、研修ということを考えると、いまの若い人たちが都会に、あ るいは大病院に、高機能の、最先端の医療を勉強できる所に集中するのは避けられな い。お前、やめとけよとは言えないと思うのです。ですから、これからもそういうこと にますます拍車がかかるだろうと思います。あるいは、大学院という形で、どんどん大 学院が増えてきていますが、純粋に大学院学生としての仕事だけかというと、結構臨床 もやって、若いドクターたちの指導も一部やっている所もあるということです。  そうすると、我々はインターン制度があった時代に育った人間で、私も卒業して5年 間無給医局員という時代がありましたが、中身的にはほとんど変わっていないという か、実態は変わっていないのではないか。だからそのツケがいま一気に回ってきてしま っているような、そんな気がします。ですからいまのこの状況は、新たな研修制度がで きて、引きあげられてしまったから、医者がいないようになってしまったという、そん な単一のことではない、いろいろな要因が絡み合って現状をつくり出してしまったので はないかと思います。 ○吉新委員  前回の委員会では、医者が供給過剰になって、非常に多くなってしまった場合に、質 の悪い医師グループが現われる、これは非常に問題だということが大きな柱だったと思 うのですが、その前に巷で医者が1人、病院の医者が増えると1億円、診療所が増える と5,000万円、要するに国が大変な費用負担をしなくてはいけないので、医師数はそんな にたくさんまかなえない時代だということで、これはコントロール、要するに増えては 困るという議論があったのですが、この委員会では、医者が増えるとどういう問題が起 きるのか、ということをきちんと整理しておくべきだと思うのです。  確かにほかの国では、どこかの国の免許を持ったタクシーの運転手がいるとか、いろ いろ噂では聞きますが、そういう国で実際に質が悪いということでの弊害がたくさん起 こっているかどうか、それを確認したいというか、知りたいなと思います。例えばOE CDで、逆に日本の反対で、多すぎるような所で、オーバ−ドクターと言いますか、意 味は違いますが、ドクターが多いことでどういうトラブルが起こっているのか。そうい う事例というか、それで日本も同じようなことになるのかどうかということも、できれ ば知りたいと思います。 ○吉村委員  実は全国医学部長病院長会議に、11の専門部会があって、その中の1つに「卒後臨床 研修委員会」と「地域医療に関する専門委員会」というのを作って、いま検討していま す。そこでいろいろアンケートをしてみますと、過去60年間、地域を含めて医師の養成 と派遣、派遣という言葉は悪いのですが、そういうのはどこが担ってきましたかという 問いに回答した80大学のすべてが、一応大学がやっていたんだと。いま小山田委員か ら、大学医局は悪の根源のように言われましたが、少なくともこれまでは医師の養成、 特に質の担保と、各病院からの依頼に対して派遣をしてきたこと、これは間違いないと 思うのです。ただこれから大学も、無給医は置けなくなりましたし、医科大学もたくさ んできましたから、なかなかいいポストもできないということで。以前は、ちょっと行 ってこいと言えば、また学位もなくなりましたということで、なかなか教授があそこへ 行けと言っても行く時代ではありませんし、また行けなくなっていることは事実です。  いま臨床研修の問題が出ました。大きな病院であればたしかに2年間ぐらいはできる けれど、その先、全科の医師をあなたの所で育てられるのかと言うと、いや、それはで きない。一定の程度はできるけれど、やはりどこかでしっかりした、これからの日本の 医療を担う医師の養成ということですよね。大学ではもちろん、入学定員を増やして卒 業させれば、数はいくらでもできると思うのですが、いかに良質の医師をしっかり育て るかという視点がないと、これはただ、医局を壊せば俺たちやるぞと言っても、きちっ とした医師が育つかどうか。これについては全国医学部長病院長会議の全員が非常に危 惧しているところです。 ○小山田委員  実はいま私どもの自治体病院で、578の施設が1,023名の研修を受けていて、来年も初 期研修が終わりますね。そしてまた新年度には20%増えた学生が来るのです、というこ とはやはり学生は、もちろん大学で研修する人もいます。しかし地方の病院の研修に、 そのやり方に魅力を持って来る人もいるのです。それらの方がその後どうなるのだろう ということに私どもは非常に関心があって、しょっちゅうアンケートを取っています。 あなた方はどうするのか。そうすると、約半数が大学に戻って研究したい。しかしあと の半数はそうではない。その半数はどうなるか。これが問題です。なので私どもは組織 をあげて、その方々に研修と同じ、プログラムを伴った後期研修をやる病院があるか。 そこにあなた方がいるかということ、もちろんこれは強制とか拘束ではありません。初 期研修を引き受けたからには、それだけの準備をしなければならないということで、い まそうしたことをやり、4月からはそうした全国的なシェアでの研修を行った人たち が、もし自治体病院での後期研修をやるなら、これだけの受け皿がありますよという情 報を公開するシステムを立ち上げることになっています。  今後それらの人たちが大学と全く切り離されるということは考えられないので、その 生涯の生活の設計の中で、自治体病院にいた方が大学に行って一時的、あるいはそのま まいて研究する人もいるでしょうし、大学からまた自治体病院に来る人もいるでしょ う。そうした関係はやはり必要であって、そうした過程で今後研修医のあり方、なるべ く彼らがそれで生きがい、働きがいのある生活設計、生涯設計を立てていけるようなこ とを考えていますので、是非今後ともお願いしたいと思います。 ○吉村委員  自治体病院の中ではできるかもしれませんが、地域のもっと小さな病院とかあるいは 僻地に、小山田先生の所に派遣してくださいと言ったときに、そこの医師までも養成を していただけるという、そういう枠組ができないと。 ○小山田委員  自治体病院は自治体がつくっている病院です。小さい病院も、その病院のドクター も、その小さい病院だけで診療を完結するとか研修をするとか、あるいは生涯設計を描 けるかというと無理なので、自治体病院の病院のあり方として、これからはいままでと 違って集団化であるとか、統合とか今すすめられています。そうしたことでないと医師 の専門性とか、生きがいというものがなくなってしまうので、自治体病院の形態、あり 方がいま大きく問われていて、方向性としてはいま申しましたように、1つの自治体の 小さな病院の存在というのは、今後あり得ないと考えられ、再編統合とかネットワーク 構築の方向ですすめられています。 ○吉村委員  要するに大学だけではなくて、大学と自治体病院とか、国公立の病院とか、大きな枠 組の中で医師を養成していかないと、いままではおそらく大学だけが担っていたと思う のですが、そういう枠組を是非つくっていただきたいなということだと思うのです。 ○矢崎座長  そういうことだと思います。 ○水田委員  九州地区は、福岡県と沖縄県にかなり充実した研修医の数がいるわけです。特に沖縄 は、このデータにも出ていますが、2年間の臨床研修の地域というのは素晴らしく数が 多いわけです。では、その人たちを後期研修に受け入れるだけの施設があるかという と、沖縄にはないわけです。そういう方たちを、九州全体で一緒にやっていこうという 考え方が1つあります。それは九州地区の病院長医学部長会議でも決まりましたし、国 立病院との話合いも始めております。  もう1つは、私どもの大学では、後期研修ということに関しては非常に力を入れます が、それとともに国立病院や自治体病院と一緒に、関連病院長会議の中でプログラムを 一緒に組みながらやっていくようなやり方を始めました。  いま小山田委員が、自治体病院の小さい病院だけでの研修はあり得ないというように おっしゃいましたが、いままで見ていますと、各自治体が全部、おらが村、おらが町に 病院を、しかも大学と同じぐらいの規模のものをつくって、そして言われることは、医 者を送れ、送れ、医者の紹介、紹介とおっしゃる。それでこちらが一生懸命やっても、 1人では駄目だとおっしゃると、もう供給のしようがないという状況になりますね。で すから、それならば少し集中化して、セントラリゼーションして、あとは、いまはこれ ほど交通網があるのですから、救急車でどんどん送っていくようにしていけば、自治体 病院も素晴らしくいいものになるのではないかといつも思っていましたが、今日、委員 の先生がおっしゃったので安心しました。 ○江上委員  私は職業の変化と女性の就労を長らく研究してきた立場から、初めて議論に加わらせ ていただきます。今回、資料を見ながら皆様方の意見を拝聴していますと、過去の検討 会の継続的な議論という印象がございますが、この医師の需給に関する検討というの は、専門分野に限られた議論にすることなく、広い見地からの問題を集める事が重要と 思われます。国民的利害に影響する極めて重要な問題であると思います。  それで1つは、定員の量的な問題からの数字的な検証だけに止まることなく、これか らの社会的観点での「あるべき医療サービス」という形に必要な医師の定員のあり方を 十分に議論していただきたい。私自身も親の手術や入退院を通し、医療の実践現場の仕 事のプロセス、移り変わりを注視しております。患者と病院との関係、医師との関係と いうのは、近年飛躍的に変わっています。インフォームドコンセントも然り、セカンド オピニオンも然り、薬の処方のあり方1つでも、いまは全部画像とデータがつき、副作 用情報も開示するようになっています。そういう意味では、1人当たりの医師が患者及 び患者の家族にかける、カウンセリングを含めた時間や、医療行為の質的内容、方法 論、手段は、変化しております。また、医師の求められる能力・スキルにおいても、変 容が認められるようになってきていると思います。  私自身、大学病院や自治体の病院、地域の開業医を回ってみて、医療行為に携わる人 の多様化を認識しています。新しい医療の知識や技術に十分にキャッチアップできてい ないケースや、職業倫理の観点から納得のいかないケース、適切ではない医療コミュニ ケーション等のケースも散見されます。そういう意味では、医師の国家試験を受けたあ と、そのまま生涯にわたって継続できる職業という事について、精査が必要と思われま す。例えば、いま文科省では教員の免許更新制ということ等も検討しておりますが、市 場評価が働かない領域では、有資格者が非常に努力をされるケースとあまり努力をされ ないケースと、2分化してきているのではないでしょうか。患者は鋭敏に評価するわけ です。一般の産業界と違い、医療の分野における情報公開は、ごく近年になってからで す。国民からアクセスしたり、評価したりというようなことがなかなかできない領域で した。そういう意味ではこれから、医師をどういうふうに評価していくか、市場評価の 働かせ方も含めて、医療における職業的な質を高めていく方向を関連づけての需給につ いても、是非、議論に含めていただきたいと思います。  医師を養成する組織における構造的な障壁、あるいは運用制度的な障壁、あるいは組 織文化的障壁が、医師の偏在、あり方に非常に大きな影響をもたらしているということ を、今日の議論から抽出できると思います。産業界でも似たような特質はあるわけで、 やはりそういった組織に対しては、徹底的な情報公開を行なっていく、あるいは公正な 競争性を導入する、あるいは評価・処遇・任用、そういった問題をもっと透明性をもっ と高めていくようなことも含めて議論があれば、と考えます。この検討会で、パブリッ クコメントを取るとか、あるいは定常的に変化しはじめている病院のプロトタイプをい くつかヒアリングして、医師の職業的な能力が変質している、あるいは患者からのニー ズが変質している、それを定性的・定量的にきちんと調査しながら、新しい検討のスペ ックを洗い出すというような作業を是非していただけるとありがたいと思いました。 ○泉委員  いままでの議論の中で2つほど申し上げたいと思います。1つは、全国的な医師数と いう話からすぐその次は、山間・離島・僻地はどうなんだという話にいつも飛ぶのです が、その中間に都道府県別の格差ということも抜きにできないだろうと思っています。 資料3の9頁に都道府県別の医師数がありますが、現在でも約2倍の格差があるという 事実を、やはり踏まえないといけないだろうと思っています。つまり、同じ僻地の議論 をするにしても、都道府県別に見れば全国を超える医師数がある県の中での僻地の問題 と、まるで少ない県での僻地の問題とは全然深刻さが違いますので、県別の格差という ことを考えていただきたいと思っています。専門医のことも議論していただきたいと思 いますが、その際も、専門医を地域別に均衡の取れた形で配置するにはどうしていくの かという議論を、常にあわせてしていただきたいと希望しております。  もう1つは、医師が増えてきたときに何が起こるのかという議論がありました。資料 の7頁に、年齢別の医師の数というグラフがあって、この右のほうに平成14年の医師数 があります。これがこれから10年、20年となったときにどういう形になっているかと考 えると、入学定員が変わらない限りこの若いところの形は変わらないということになり ます。その分、いま50歳半ばのところにある大きな壁が、どんどん高齢化していくとい うことですから、これから何十年か医師が増え続けるとすれば、それはすべてこの50歳 以上の方の増加という形で現われてくる。ですから、数の増加というのがそのまま、つ まり働き盛りをこえた方々ですので、労働力がそれだけ増えたと考えていいのかどうか ということを見ていかなければいけない。また、いまの医師の生涯の勤務パターンとし て、40〜50代から開業している方が増えてくるということが、この年齢分布からわかり ます。全体が高齢化していく時に、この傾向がそのまま続いていっていいのかどうかと いうことも、やはり考えなければいけないと思っています。また、こうなると特に地方 においては医師の高齢化ということが深刻になってくる。  こういう2つを指摘させていただきたいと思います。 ○矢崎座長  今回は1回目ということで、皆さんから自由にご意見を伺ってきたわけです。前に谷 口課長が座られているので思い出しました。3年近く前に、生殖補助医療の検討会が始 まったときの第1回目の自由討議は、そういうものはやってはならないという意見と、 医療としてやらなければならないという意見と真っ二つに分かれて、本当にまとまるの かどうかという心配がありましたし、臨床研修必修化の検討会でも、大学の先生と小山 田先生を中心とした、小山田先生はともかく、そのときはおられないけれど、臨床病院 と、真っ二つに分かれたご意見があって大変だったのですが、今日お聞きすると、一部 にはそういう部分がありますが、皆さんやはり、いい医師を育成したい、という気持が 基礎にあってお話いただいているということがよくわかりました。医師の育成というの はいま江上委員がご指摘のように、極めて専門性の高い領域であるとともにロングスパ ンで、軌道修正した結果が出てくるのに10年ぐらいかかるわけです。ですからこれは大 変なことであって、水田委員が、この検討会でどこか課題をポンと切り開くような報告 を出せばいいなとおっしゃっいました。そういうことはなかなか難しいとは思います が、バックグラウンドをよく考えると、資料2のこれまでの経緯を見ますと、昭和61年 と平成5年、平成10年、そして今回平成17年と、大体5年間のスパンでこの検討会が開 かれています。  今度の検討会というのは過去の検討会と異質ではないかと思います。それはバックグ ラウンドの医療環境が過去の検討会をやっていたときとガラっと変わりました。例えば 1999年の横浜市立大学における患者取り違え事件以降、マスコミの医療不信に対する記 事が飛躍的に多くなって、やはり医療の安全、信頼への関心が、国民的な大きな課題の 1つになったということと、いままでは医療評価というのは医学的な尺度で、例えば血 圧がこれだけ下がりました、血糖値が下がりましたと、医学的な尺度で評価して、患者 も医師も満足していたのが、医学的な尺度だけではなくて、患者の目線に立った、自分 の価値観などが反映した医療を入れてほしいという、患者視点の医療評価というものが 入ってきたということで、やはり医療に対する国民のとらえ方が、以前の検討会のとき に比べると大きく様変わりしたのではないかということがあります。事務局もそういう ことで、この検討会の内容も大きく変わったのかと思うのは、前回は女性が1人しか入 っていなかったのに、今日は岡島審議官を入れると6人になるということで、やはり女 性、患者の立場から検討を進めていくということになったのかと思います。  そういう社会的な背景の下で、医学教育もものすごく変わってきた。医学教育課の課 長がいらっしゃいますが、卒前の医学教育も抜本的に大きく変わりましたし、そのあと 変わりつつあります。その後の初期臨床研修化、これも先ほど申し上げましたように大 学と臨床研修病院、あるいは医師会の先生のご意見が真っ向から対立しましたが、いま ある研修制度が、いろいろ議論されたけれど一応進んでいるということは、これはやは り社会的背景を皆さんが考え見て、臨床研修医をしっかり育てようと、一致団結してい ただいたおかげではないかと思います。  それに続いて良き医師の育成という観点からは、卒前・卒後、それからいまお話にな りました後期の、要するに、ある程度専門性を持った領域での医師の育成をどうするか という話、これは本当に医師の需給、直接は関係ない議論がいま3分の2あったかと思 います。また、労働基準法による医師の勤務体制の大きな変革がありましたし、女性医 師の急増、医師国家試験の合格者の3分の1が女性。前回の検討会のときには、女性医 師は大体10%ぐらいの割合でしたが、いまは合格者だけで見ると、極めて急増している という問題もあるかと思います。  また、ご指摘がありましたように、この数年間で医学の世界ではゲノム時代になった という、医療技術の革新的な進歩があって、医療の内容そのものも大きく変わってく る。それは患者にプラスになる一方、多くの倫理的な問題がクローズアップされてきま したので、それに伴って個人情報保護法が来たる4月から施行される。そういうように 極めて、過去の医師の需給の検討が行われていたときと社会的背景、あるいは医療を取 り巻く背景が大きく変わってきているのではないかと思います。私どもはそういう大き な時代の流れをしっかりとらえながら、医師の需給に関してしっかりと検討していきた い。これはアレキサンダー大王が一刀のもとに、絡まった糸を解決したという故事に習 うわけにはいきませんが、皆さんの叡知を集めてある程度の方向を出せば、私はいい方 向に向かうのではないかと確信しておりますので、今日、全員の委員の方々からご意見 をお聞きして、私が考えていたいろいろな課題を、すべての委員の方々からご指摘いた だいて、これは皆さんが問題意識を共有しているのではないか。ですからこの委員会は 結構うまく進んでいい結論になって、医師の需給にまつわるいろいろな課題がいい方向 に、特に患者、国民にわかりやすい方向にまとまるのではないかと思っています。  しかしこの課題は極めて複雑ですので、生殖補助医療の検討会のときは1回に4時間 ぐらい、ほとんど2週間おきにやったという思い出もあります。タイムスケジュールが だいぶ迫っておりますが、少し時間をかけて検討しなければならないかと思います。ま た事務局には、極めて把握しにくいデータを是非出してほしいという要望もあるかと思 いますが、井上補佐は大変優秀な方ですので、一生懸命、最善を尽くしてデータを把握 していただけるのではないかと期待しております。第1回の検討会で、それぞれの持っ ている課題を適切にご指摘いただいて、大変ありがたく思っております。  次回以降、どういうふうにこの議論を進めていくかということは、事務局と相談しな がら進めていきたいと思いますが、今後のスケジュールについて事務局から説明いただ けますか。 ○医事課長  次回についてはすでにご案内しているところですが、3月11日(金)の午前10時か ら、場所はこの建物の11階の1111号会議室で開催する予定です。議事はまず、本日欠席 の長谷川委員に、現在、厚生労働科学特別研究事業として医師需給と医学教育に関する 研究というのをお願いしておりますので、現時点での成果を発表していただいて、今後 の議論に資するものとしたいと思います。本日は委員の皆様方から非常に活発なご意見 を頂戴し、私どもに対する資料の要求もありましたので必要なものを準備させていただ くとともに、ご意見の中で分類できるものもあると思いますので、それをわかりやすく したような資料を作って、さらに議論を深めていただければと考えております。私から は以上です。 ○矢崎座長  それでは、途中でいろいろお気づきの点とか、こういう方向に議論を進めたらよろし いのではないかという、忌憚のない意見がありましたら、むしろお願いですが事務局の ほうにどしどしお寄せいただいて、なるべく効率よく議論を進めたいと思いますので、 今後ともご協力のほどよろしくお願いいたします。本日はお忙しいところを、大変貴重 なご意見をいただきましてありがとうございました。本日はこれで検討会は終了します が、次回以降も今日のような、情熱を持って検討会にご参加いただければ大変ありがた く思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。今日はこれで終了させていただ きます。ありがとうございました。                                     −了−                         ┌─────────────┐                         │照会先          │                         │厚生労働省医政局医事課  │                         │課長補佐 中村(内線2563)│                         │指導係長 双川(内線2568)│                         │代表 03-5253-1111    │                         └─────────────┘