05/02/04 「第11回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会」議事録       第11回 「医療安全対策検討会議(ヒューマンエラー部会)」                        日時 平成17年2月4日(金)                           15時〜                        場所 厚生労働省専用第15会議室 ○堺部会長  これより第11回「ヒューマンエラー部会」を開催いたします。委員の皆様にはお忙し いところをありがとうございます。本日は13名の委員の方々のご出席で、一部の委員の 方々が少し遅れるというご連絡をいただいております。時間になりましたので始めさせ ていただきます。  まず、事務局から資料の確認をよろしくお願いします。 ○事務局  資料の確認をさせていただきます。議事次第、委員名簿、座席表に続いて、資料1は 「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集等事業)第11回集計結 果」(32頁)。資料2は「平成14年全般コード化情報集計結果」(14頁)。資料3は 「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集等事業)の見直し等に ついて(案)」(2頁)。資料4は「医療安全対策検討会議等(案)」(10頁)。  参考資料1「医療提供体制の改革に関する主な論点整理案(社会保障審議会医療部会 平成17年2月2日の開催資料より(資料3)抜粋)」(32頁)。参考資料2「平成17年 度予算(案)医療安全対策の総合的推進」(3頁)。別冊1「医療安全対策ネットワー ク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集等事業)第11回集計結果(データ編)」((1)が 134頁まで、(2)が135〜325頁)。別冊2「医療安全対策ネットワーク整備事業平成14年 全般コード化情報集計結果(データ編)」(68頁)。資料は以上です。 ○堺部会長  それでは議事に入ります。議題1「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハ ット事例収集等事業)の第11回集計結果等について」と議題2「平成14年全般コード化 情報集計結果のまとめについて」の2つについて、事務局から資料説明をお願いしま す。 ○事務局  資料1と別冊1−(1)に沿ってご説明いたします。資料1の1頁「医療安全対策ネッ トワーク整備事業第11回集計結果の概要について」です。報告対象期間は、平成16年1 月1日から3月31日までの3カ月間に発生したヒヤリ・ハット事例に基づく「全般コー ド化情報」と、発生時期にかかわらない「記述情報」について、平成16年2月25日より 5月24日までの間に報告された事例数です。参加登録施設は249施設(前回245施設)、 報告施設数は84施設(前回80施設)となっています。報告数は、全般コード化情報が1 万3,390事例、記述情報が1,914事例、うち医薬品・医療用具・諸物品等情報が31事例で した。  まず、全般コード化情報の分析について報告します。分析方法等については、後ほど ご覧ください。4頁は分析結果です。全事例1万3,390事例を分析しています。別冊1 の5頁と資料1の4頁をご覧下さい。全事例の3つ目の○患者年齢は、これまでと同 様、71〜80歳、61〜70歳、51〜60歳の順に多いという年齢構成は続いています。また、 0〜10歳も7%程度発生しており、小児も何らかのリスク要因を有する可能性があると 分析されています。  別冊7頁、職種経験年数、部署配属年数については、ともに年数0年によるヒヤリ・ ハットが多い事例が続いています。また8頁、発生場面は、高頻度群として処方・与 薬、ドレーン・チューブ類の使用・管理、その他の療養生活の場面となっています。そ の他、これまでと同様の傾向が見られました。  また、今回記述情報の分析のテーマとしたドレーン・チューブ類について、全般コー ド化情報の分析結果を報告します。資料1の5頁、3)「ドレーン・チューブ類の使用 ・管理」。別冊1−(1)24頁「発生曜日」「発生時間帯」等はご覧ください。患者の心 身状態についてですが、床上安静、意識障害の患者等で多く発生しており、自己抜去の 原因となっている可能性があると分析されています。グラフは26頁です。  29頁「発生要因・詳細」では、やはり「観察が不十分であった」が最も多く報告され ており、その他「確認が不十分であった」「判断に誤りがあった」「多忙であった」等 の要因が多く報告されています。30頁、表3−2では、看護師からの報告がほとんど で、当事者職種は看護師が3,841事例と報告されています。  31頁は発生場面と発生内容を相関した図ですが、合計数が右端に出ています。いちば ん多いチューブの種類が末梢静脈ラインで497事例、次が栄養チューブ(NG・ED) が494事例、中心静脈ラインが342事例で3番目に多くなっており、気管チューブが139 事例、尿道カテーテルが113事例。内容としては、やはり自己抜去、自然抜去、接続は ずれがいちばん多くなっています。  その他、毎回同様ですが、医療機器の使用・管理、輸血、療養上の世話等ごとに分析 していますので、詳細については後ほどご覧いただければと思います。  次に、記述情報の分析結果、資料1の14頁です。収集件数は1,914件、空白・重複件 数等が328件ありましたので、有効件数は1,586件が分析されています。分析の方法等に ついては後ほどご覧ください。  資料1、17頁の「分析結果及び考察」。発生件数が高い手技・処置については表のと おりです。与薬、特に点滴・注射・輸血に関する事例が335事例、2割強になっていま す。与薬のうち、内服・外用・麻薬に関する事例が277例、転倒・転落、抑制に関する 事例が241例、チューブ・カテーテル類に関する事例が288例、検査に関する事例が153 例、食事、栄養に関する事例が69例、器機および器械操作に関する事例が37事例でし た。その他、処置に関連した事例や外傷を起こした事例、離院・離棟、安静度が守られ ない事例や職員対応に関連した事例等が含まれていました。  このうち288例報告がありました「チューブ・カテーテル類」について、第11回の記 述情報の分析をしていただきました。その結果は18頁に出ています。全体総括として、 1「チューブ・カテーテル関連事例の記述情報の傾向」の3つ目の段落「エラー発生状 況については」以降になりますが、チューブ類の抜去、接続部分のはずれ、閉塞の順で 多くありました。また、チューブの種類別では、中心静脈カテーテル類が最も多く、以 下ドレーン・気管内チューブ・気管カニューレ、膀胱留置カテーテル、胃チューブの順 でした。  さまざまな視点で考察がされています。まず、業務プロセスのアルゴリズムから見た 分類として、2の1)の3つ目の段落からです。医師の的確な指示、患者の現在の状態 の把握、現状に合わせた行動計画の立案と修正、現に実施する行動の確認、行動の実 施、実施結果の確認の6段階についてプロセスがあると考えられますが、それらそれぞ れのプロセスに照らし合わせて今回の事例が分析されています。その結果、それぞれの 段階において行われる業務を的確に実施し、さらにそれを確認することが重要であると いうことと、(19頁)各段階で十分管理されていないと判断される場合には、前段階に 戻って業務のプロセスを見直し、計画の修正を行う。あるいは、医師との協議によっ て、チューブ類の挿入の判断そのものを検討することが必要と考えられました。  2)「事例発生に関与した職種」ですが、当事者としては看護師と医師が圧倒的に多 かったわけですが、個人だけの問題でなく、業務分担やルールの不明確さ、お互いのコ ミュニケーションの不適切さによるものがその背景要因として見られました。また、そ れらについては病院の設備や、マンパワーの不足、あるいは機器に問題のある事例が見 られました。  さらに、産科・新生児領域などの特殊な領域において、発生のリスクが高いというこ とが考えられ、今回もこの領域で新生児に酸素を補給しようとしてチューブを吸引側に 接続してしまい、酸素が吸入されないという事例が発生していました。それについて は、二重三重の防護壁を設置する必要がある、マンパワーあるいは基準、手順の見直し といったことが重要と考察されています。  次に、チューブ・カテーテル類の侵襲の大きさについてですが、今回も気管内挿管チ ューブに関する事例等も多く報告されています。また胸腔ドレーンや消化管減圧チュー ブのドレーン等も報告されており、それらは生命にも危機を及ぼすということで、抜去 された場合の侵襲が非常に大きい事例も報告されており、事故を未然に防ぐという視点 が非常に重要と考察されています。(20頁)意識レベルの低下やせん妄のあるケースで の自己抜去も多いということで、これらについては抑制していたにもかかわらず、自己 抜去されてしまった事例がありました。抑制の手順の見直し等や抑制の適応についての そもそもの判断が、管理基準の設定が必要と考察されています。  4「事前の予測可能性」という視点から分析されていますが、予測していながらもト ラブルが発生してしまった事例や、全く予測しないままにトラブルを生じた事例等があ りました。予測していながらトラブルが起きたものとしては、緩んでいた抑制帯を患者 が睡眠中であったためにそのまま放置した事例や、モニターのアラーム音量を下げてい て患者の状態の変化に気づかなかったという事例もありました。全く予測しないままに トラブルが生じた事例としては、勤務の交替時間におけるトラブルなど、人的要因が背 景にある事例がありました。それに対して「頻回に病室を訪問する」「十分な観察を行 う」などの実現不可能な計画や改善策が記述されている事例も多く見られましたので、 この点についても課題というように考察されています。  21頁、5)「痴呆・せん妄患者の自己抜去事例」についても分析されています。意識 レベルの低下やせん妄のある患者、痴呆のある患者の事例など、患者の認知レベルに問 題があるケースにおいて、自己抜去事例が非常に多くありました。これらについては、 危険なチューブ類を抜去するか、または適切な薬剤を用いた鎮静あるいは抑制帯の使用 等の検討が、非常に重要になってくると思いますが、同じ患者であっても、これらを状 況に応じて臨機応変に使い分けることが必要と考察されています。また、抑制が必要な 場合には、患者へのインフォームドコンセントや管理の手順について、病院の中でガイ ドラインを作成し、適正に管理できるシステムを作っておくことが必要と結ばれていま す。  6)「留置の適応の見直しの必要性」ですが、今回は「気管内チューブの留置を不十 分な抑制で継続」したために自己抜去に至った事例が複数報告されていました。適応の ないチューブを自己抜去できないままに挿入され続けて、苦痛な日々を送っている患者 がいることが推察され、今後の課題と考えられました。また、術後に動脈ラインを「と りあえずヘパリンロックして留置しておく」という事例がありますが、直接動脈にカテ ーテルを挿入している危険性を考えると、事例ごとに使用の可能性と抜去の危険性を考 えて、医師が判断し、的確な指示を出すべきというように考察されています。  最後に「小児患者における特殊性」ということで、小児の特殊性を考慮した現場での 適切な基準を作成しておくことが必要と分析されています。  これらを22頁の3番目以降にまとめています。(1)医師がチューブ類の挿入と管理 にかかわる適切な判断と指示を行うこと。具体的に、留置そのものの適応の再検討と約 束指示の見直しや、せん妄や抑制のコントロールによって、チューブトラブルの頻度を 下げる。(23頁)(2)チューブ類の管理にかかわる基準や手順の作成を整備するこ と。(3)医療従事者、特に医師と看護師間のチューブ類の管理に関連する適切な情報 交換とコミュニケーションの見直しを行うこと。(4)「珍しい」事例やエラー防止の ための「独自の工夫」の報告や、トラブル発生時の対応方法等に関する情報を共有する ことが提言されています。  これらにつき、別冊の59頁から、288事例のうち19事例を分析したものが掲載されて います。60頁からがその19事例についての目次となっています。今回は、「説明不足に よる胃チューブの自己抜去」や「低出生体重児の挿管チューブの固定が浅すぎたための 抜管」、「麻酔覚醒途中での管理不足によるチューブの自己抜去」、「眠っているので かわいそうと抑制の緩みを放置して自己抜去した事例」、「挿管再固定時の咳そう刺激 による抜去に対する対応」、「忙しく実現不可能な観察計画が実施できず、気管カニュ ーレとフレックスチューブがはずれた事例」、「新生児の酸素吸入チューブを吸引側に 誤接続した事例」、「『自己抜去時はそのままでよい』と指示のあるチューブの自己抜 去事例」等19事例について、一例一例専門家のコメントを付しております。今回は詳細 については割愛させていただきますが、後ほどお読みいただければと思います。  続いて、医薬品・医療用具・諸物品関係の結果について報告します。資料1の26頁で す。第11回の集計では、総分析事例数31件、うち医薬品事例数17、医療用具事例数が 14、諸物品事例数0になっています。報告された事例の中から、いくつかを説明しま す。  別冊1−(2)(315頁)、事例8は、勘違いの事例です。これは返却されたカイトリル 注を間違えてサクシゾンの場所に戻したために、サクシゾン払い出しの際に、その溶解 液と間違って取り出された事例です。改善手段としては、注射の払い出しの際の確認は 必須として、その他に調剤中に返却処理を行わない、もしくは返却する人を調剤者とは 別に設定するなどの返却に関するルールを考え直す必要があると思っています。  事例16(316頁)は、規格違いの症例です。ベイスンの0.2mgを調剤するところ、0.3 mg錠を調剤した事例です。糖尿病薬に関しては、患者の病名確認や薬歴の確認などの、 特別の過誤防止対策が必要と考えています。なお、昨年6月2日付、医政局長及び医薬 食品局長の連名通知によって、糖尿病薬等については、取扱いの周知徹底を図るような 通知を発出しています。  事例17(317頁)は、その他の事例です。麻薬の取扱いに関して十分な配慮がなされ なかったために、与薬の段階で間違いが生じてしまった事例です。麻薬に関しては、患 者が確実に服用したことの確認や、また各勤務時間帯での残数チェック等が重要である と考えています。  医療用具に関してです。事例1(318頁)は、人工呼吸器の気道内圧チューブと温度 プローブの差し込み部位を間違えた事例です。ただ、この気道内圧チューブと温度プロ ーブの差し込み部位は、実際は径が異なっており、本来は接続できない構造になってい ます。当該機器に関しては、企業により接続の試験を行いましたが、この状態での固定 は不可能との結果が出ています。しかしながら、報告のとおり接続が可能だったとする ならば、気道内圧チューブが本来の製品ではなく、他の機種用のものを転用した疑いが あると考えています。  事例8(322頁)は、配置が悪かったせいで生じた事例です。本事例は、医療機器安 全性情報報告書にて報告もされている事例です。人工呼吸器の加湿器チェンバーにひび が入って液漏れを起こした事例です。企業の調査の結果、ひび割れの入ったチェンバー すべての外壁表面に、白点状の汚れがあることが確認されています。その汚れは、どう やらベッドサイドで使用されたキシロカインスプレーの薬液が乾いたものであることが 確認されています。なお、キシロカインの添付文書上には、すでにプラスティックに対 する悪影響(腐食性)が記載されています。今後、加湿器チェンバー等に薬液等が付着 しないよう、注意する必要があると思われます。  この他、人工呼吸器等については事例等も多いことから、医薬食品局としては、医療 機器安全対策検討ワーキンググループというのを立ち上げ、課題を「人工呼吸器」とし て今後検討していきたいと考えております。  引き続き、平成14年1年分の分析結果もまとめて報告させていただきます。資料2 と、別冊1−(2)の326頁からの別冊2になります。資料2の1頁、今般、平成14年の全 般コード化情報1年分の報告事例について分析しましたので、初めて報告します。収集 期間は平成14年1月から12月となっています。全般コード化情報の事例数は3万3,524 件の報告がありました。分析方針等は、3カ月ごとの方法と同じですので省略いたしま す。  2頁の4「分析結果」の部分からご説明いたします。別冊2の2頁の図1「発生月」 のグラフですが、これで1年間のグラフが完成しています。これを見ると5月がいちば ん多くなっていますが、若干3月・1月が少ないという程度で、大きな変動は見られま せん。その他の傾向も、これまでの分析結果と同様の傾向が見られており、特に1年分 を総計したことによって目新しく出てきた結果はありません。  別冊2の63頁は、発生場面と発生内容をクロス集計したものです。資料2は7頁、7 )「その他」の分析結果になります。発生内容ごとに分析しています。2つ目の与薬準 備、処方・与薬は、別冊では64頁の表7−2です。処方・与薬に関する事例数が合計1 万1,363と3分の1近くを占めており、いちばん多い報告になっています。その中でも 内服の事例が4,073件と、いちばん多く報告されていました。続いて末梢静脈点滴、与 薬準備等が挙げられています。  別冊表7−6(66頁)、資料2は8頁、ドレーン・チューブ類の使用・管理について です。第11回の結果とおよそ同様ですが、4,619事例、そのうち中心静脈ラインが1,000 件、末梢静脈ラインが983件、栄養チューブが873件という報告です。  表7−7医療機器に関する使用・管理についても、総数1,018件の報告、うち人工呼 吸器に関するものが332件、輸液・輸注ポンプに関するものが256件と多く報告されてい ます。  表7−9(67頁)検査に関するものです。総数が2,342件と多く報告されています。 内訳を見ると、採血が788件、検体検査が254件、血糖検査が238件、採尿が173件、放射 線などの一般撮影が142件という報告でした。  68頁、療養上の世話としては、さまざまな状況が設定されているためもありますが、 総数7,757件報告されているうち、転倒・転落の総数が3,741件、1,180件と多く報告さ れていました。その他、詳細については後ほどご覧いただければと思います。以上でご 報告を終わります。 ○堺部会長  全般コード化情報は、初めて通年のものが出てきたわけです。全般コード化情報及び 記述情報の中身について、もし何かご質疑があれば承りたいと思います。ヒヤリ・ハッ ト事例の収集事業のあり方については、この後、ご意見をいただきますので、ここでは 今のご報告の中身についてご質疑をいただきたいと思います。  では、私から口火を切らせていただきます。この通年の結果を拝見しますと、まず全 般コード化情報の結果ですが、何曜日に多いか。これは、まさに病院の立場で見ると、 患者の入院が多い曜日とぴったり合っています。患者は週末に帰り、週明けに入ります ので、火・水・木・金に多いということかと思います。病院で入院患者が何人かという のは、絶えず変動していますので、正確にとらえるのは少し難しいのですが、しかし病 院ではそのように動いています。この点、嶋森委員、坂本委員、このように考えてよろ しいですか。 ○坂本委員  大体そうだと思います。 ○堺部会長  大体そうらしいという理解でよろしいかと思います。やはり、ドレーン・チューブが いつも大変な数に上るのですが、患者が多いときに比例して起こってくるということか と思います。病棟などの分類にはなっていますが、週の前半に大きな手術が多いわけ で、大きな手術は火曜日、水曜日にしますが、それに伴って中心静脈栄養その他のこと も出てくるかという気がしますが、そのことはこのデータからは読み取れないと思いま す。  ほかにはいかがでしょうか。ドレーン・チューブのこと、転倒・転落、これまでいろ いろご指摘いただいたものが相変わらず多いわけですが、何かこの内容について、ご質 問でも、あるいはお気づきの点でもございましたらご指摘いただきたいと思います。 ○上原委員  非常に貴重なデータがずいぶんたくさん集まっていて、安全対策を進めるのに有用で あろうと思われるのですが、ここで起こっているインシデントと、結果的に患者が何ら かの傷害を受けた、マルバツイベントを起こしたということとの関係性はどこかで見ら れるのですか。 ○堺部会長  私がお答えする立場かどうかよくわからないのですが、これはあくまでもヒヤリ・ハ ット事例です。いわゆる事故情報というのは、これはまさに今、集計が始まったところ で、おそらくこのヒヤリ・ハット事例である程度年間を通じて積み上がったものの頻度 と、事故情報の頻度が合うのかどうかというのは、今後わかってくることかと思ってお りますが、事務局いかがでしょうか。 ○事務局  そのとおりでございまして、評価機構のほうで併せて事故情報の解析が始まりました ので、今後、このヒヤリ・ハットとどのように比較していくのかということも課題にな ると思います。 ○山浦委員  1年間を通してのデータが出たわけですが、症例数もずいぶんの数に達しています ね。前にも申し上げたかもしれないのですが、ある程度に達すると、大体同じパターン の繰り返しになるのではないかということを考えざるを得ないのです。これは議題の3 番にも関係するかもしれないのですが、そういった点で、1年間を見れば、大体次の年 もこんなものではないかと考えてよろしいのでしょうか。 ○堺部会長  これはどなたにお答えいただけばよろしいでしょうか。やってみなければわからない ということかとは思いますが。 ○事務局  平成15年1年分の分析結果については、次回の事例検討作業部会で報告する予定です ので、そうすると14年、15年の2年間を比較することが可能になってくるということ。 また、後ほどの議論にもなりますが、収集方法の問題として、現在は常に報告していた だく施設、あるいは、ある時期は報告していただいたが、次の収集期間には報告しても らっていない施設もあり、定点での統計が十分とれていない状況があります。ですの で、この14年1年分の結果がある程度一般化できるかどうかというところは、まだ疑問 が残るので、16年度以降、ヒヤリ・ハット事例を収集する医療機関を定点化して、定点 からは、きちんと毎回報告をしていただくことによって、一般化できる統計結果が今後 出せるのではないかと考えております。 ○堺部会長  次に、医療機器に関することで、「やっぱりね」という感じがするのですが、人工呼 吸器、輸注・輸液ポンプの数が多いのですが、何かご意見がございましたらお願いしま す。 ○目黒委員  やはりそうなのですが、伺いたいのは、先ほど人工呼吸器に関してはこれから委員会 を作られてということでしたが、具体的な作業はこれから進めるのか、大体レイアウト のようなものは少し出来上がっているのか。例えば、どういう方々を委員にするのか、 あるいは情報収集をメインにするのか、各病院の医療現場の情報を集めるのか、それと も今まで集まった情報をもう少し分析するのかなど、細かなところがわかればいいと思 うのですが。 ○稲田委員  この資料を拝見しますと、私たちが日常感じているのを本当にそのまま表していると いう気がいたしました。原因を考えてみると、他の事例検討でも同じなのですが、やは り患者側の要因として、全般に高齢化・重症化している方々ほど、よりたくさんのドレ ーン、あるいは気管チューブといったチューブ類が入っていたり、あるいは薬の投与も 多いということで、そういう方々におそらくいろいろな事故、こういった事例が発生し ているという気がいたしました。やはり、高齢者の方や痴呆の方には、ナースサイドも 十分気をつけなければいけない。チューブを抜いたりするのは全く一瞬のことですの で、抑制をどの辺までしたらいいかという問題も含めて、看護体制の整備は非常に難し いということがあると思います。  機器の問題に関しては、私どもの病院でも人工呼吸器の数は十何種類入っていて、新 しい機器がどんどん出てきて、職員がそれに対してなかなか対応できないということも 1つ、こういった事例の原因になっているという気がいたしました。  また、点滴などの接続のはずれなどに関しては、本当にロック式の接続チューブがあ れば、そういった事例は非常に起きにくいはずなのですが、そういったものがまだまだ 採用されていない。価格の問題もあると思うのですが、ちょっとした工夫で、簡単な接 続のはずれのようなものは減っていくのだろうという気がいたしました。 ○堺部会長  有効な対策をいかに出していくか、ということは今日の後半の議論になってくるわけ ですが、いま稲田委員のご指摘のように、機器の種類はやはり整理・統合すべき、ある いは互換性を重視すべきということは、当然出てくると思います。  また、与薬あるいは点滴がいちばん多いということは、どこの病院でもわかっている わけですが、嶋森委員、坂本委員、看護の立場からいかがでしょうか。このデータをど うご覧になりましたか。 ○嶋森委員  内服薬も注射も含めて、薬剤の事例は数も多いのですが、その中で非常に重大な薬の 間違い等があります。これについては、やはり医師、看護師だけではなく、薬剤師の関 与が必要ではないかと考えます。準備の段階で取り違えて、そのまま患者に渡してしま うということもあります。医療法等の数の問題があると思うのですが、現場に直接薬剤 師がかかわるような体制の整備が必要ではないかと思います。  今回のドレーン・チューブ類の分析をして感じましたのは、医師も抜去していいのか 迷っていて様子を見たい、抜けたら仕方がないがそれまで入れておこうという判断もあ るということです。しかし、そのチューブを抜去されたら、インシデントや事故になり ます。この辺りをもう少し厳密に判断するということを、医師にお願いしたいと思いま した。また、どうしても抜いてはいけないチューブ類について、医師と看護師との連携 がうまくいっていないために、非常に重要なチューブを抜去されています。後でご覧い ただくとわかるのですが、例えばチューブ類のヒヤリ・ハットは、どの時間帯にも起き ています。特に、夜中に多いのです。与薬に関しては、昼間、業務の多いときに多いと いうことで、ヒヤリ・ハットの内容によって発生する時間が違っています。  チューブ類については、抜いてはいけないものを抜かせない体制をどうやって整備す るかが重要です。絶対抜いてはいけないものについては24時間見ていなければいけない ぐらいに、非常に危ないケースがあります。こういう時にどういう体制を整えるか、看 護要員も含めて、観察できる体制をもう少し整える、という方向での議論も必要だと感 じました。 ○堺部会長  対策のことはまた出てくると思います。いま薬剤師の方々の関与のご指摘がありまし たが、土屋委員、いかがでしょうか。 ○土屋委員  薬のエラーという場合に、直接薬そのものが関係するといいますか、その病院におけ る採用薬の工夫がまだ足りない、いわゆる類似名称や外観類似に対しての対策が、必ず しもまだ十分ではないという気がします。一方、全体を見ますと、医薬品の供給体制と いいますか、いわゆる病棟への供給体制の違い、あるいは混注も含めて言えば、最終投 与形態までへの薬剤師の関与というものが、人数の問題もあって薄いというところが、 現実としては出ているだろうという気がするのです。  今回のヒヤリ・ハット事例でも、315頁の7番のところにありますが、例えば持参薬 にしても、その医療機関における薬にまつわるシステムができていない。薬剤師が関与 するようなシステムができていないということがある。この辺は、物で対策をとるとい うよりは、システムとしてそういう仕組みを作っていかなければいけないという気がし ました。薬剤に関する事故が多い、またヒヤリ・ハットはある種、事故の前触れをちゃ んと予測しているといいますか、ヒヤリ・ハットに対してどう対策を立てるかというこ とが、やはり事故を防いでいくのだということが言えるのかなというのが実感です。 ○坂本委員  私も、ここに来る前にまた1つインシデントを見てきたのですが、ソリタT3とT3 Gの間違いがあって、色を聞いてみたらグリーンと、薄いグリーンだというのです。な ぜ似た色にするのかという感じがしました。  私どもの病院でも、インシデントレポートを出してやっていますが、薬のほう、注射 のほうに関して、同じ割合で出ています。おそらく、人間で何とかしろというのは難し いと思っていて、それをどうやってやるかということで、いま研究所も一緒になって研 究をしているのですが、人間で努力して、何とか確認して間違えないようにしようとし ても、この3割〜4割というのは減らないのではないかという気がしているところで す。色とか形とか、何らかの物的な状況で変えていかないといけないという気がしてい ます。  薬のことはそういうことなのですが、もう1つカテーテル類のことです。これは、生 命に関することなので大変気にしているのですが、今度、精神科の患者に対しての抑制 をするときの委員会を、指導によって病院で開きなさいということでやっていますが、 ああいう形で抑制と抜去するときの対策とが両天秤になってきます。それに対するガイ ドラインなり、病院の取り決めというのがあるようでない。先ほど嶋森委員も言われた ように、先生方とあうんでやってしまっていることがあって、いま私もこれを読みなが ら、やはり具体的なガイドラインを病院の中で作らないと、やさしさとか、かわいそう だからやめておいたということが起こってくると思いました。この分析結果のどこかで 出していただくと、それが必要だということで、病院の中でも行えるのではないかと思 いました。 ○稲田委員  与薬に関しては、こういった事例が多いということは前からわかっていることなので すが、患者は、自分が服用している薬、あるいは投与されている薬について、どれだけ 理解をしているかということが非常に重要なことだと思います。インフォームドコンセ ントをきちんとして、どういった病状で、だからこの薬がこれだけ出ていますというこ とを理解していれば、患者が最後の砦として、「こんなものを渡されましたけど、これ はおかしいんじゃないですか」と気づくことがあると思います。  与薬に関しては、前回も出たと思いますが、流れとして医師のオーダーから薬剤部、 ナース、患者という流れの中で、それぞれ落とし穴があるということですが、やはり医 師のオーダーが非常に読みにくかったり、指示の仕方自体がうまくいっていないという こともあると思います。  薬剤部の要因としては、現在、ジェネリック薬品をたくさん使おうということで、ど んどん薬の数が増えて、なかなか理解できない。医師もナースも、すべて薬が何で投与 されているか、どういう名前のものが投与されているかということを理解する、という ことが基本線にあるような気がいたしました。 ○堺部会長  それでは次の議事に移らせていただきます。議事の3「医療安全対策ネットワーク整 備事業(ヒヤリ・ハット事例収集等事業)の見直し等について」です。前回の部会で も、この問題については集計だけではなく、有効な対策をどのように出すかということ を検討すべしというご意見がございましたが、資料の3、4について、事務局からご報 告をいただきます。よろしくお願いします。 ○事務局  資料3、「医療安全対策ネットワーク整備事業(ヒヤリ・ハット事例収集等事業)の 見直し等について」です。1頁、ヒヤリ・ハット事例収集事業は、平成13年10月に事業 を開始し、平成16年の4月から対象機関の拡大と定点化を図っていますが、左側にあり ますような現状、問題点をこちらの部会でも指摘されています。大きく3点になるので すが、1つ目が「定点化を希望する医療機関を募っているが、施設の規模・地域等の調 整をしておらず代表性がない」という点、あるいは「定点の登録を行っても、定期的な 報告のない医療機関がある」といった問題があります。これに関して右側が改善案にな ります。定点医療機関をしっかり確定しようということを考えています。規模・地域等 を調整した対象機関の抽出ということで、大体300程度の医療機関を抽出しようと考え ています。  こちらに関しては2頁です。定点医療機関の抽出の考え方を示したものです。まず1 つ目は、地域・規模・機能・報告状況を勘案して抽出する、という考え方です。表1 が、地域及びその内訳の大体の数、目標値です。病床数、あるいは人口を勘案して、一 応、地方厚生局ブロックごとに、大体どれぐらいの医療機関があればそういった代表性 が保たれるかといった観点から数を割り振ったものとなっています。  表2は、病床規模を中心に見たもので、病院を病床数で区分し、それぞれの病床規模 数で大体どれぐらいのパーセンテージがあるか、といったものを割合をもって数の分布 を決めるという考え方です。  機能ですが、一般病棟というのは、いまのような形で大体数としては揃ってくるので すが、療養病棟あるいは精神病棟といった所に関しては、数が少ない、特に精神単科の 登録がないために、それらは複合型である、場合によっては個別にお願いするといった ことも考えなければならないのではないかと思いますが、ここにまとめていますような ことを念頭に、1頁のように規模・地域等を調整した対象機関の抽出を考えてみたいと 思っています。また、定点医療機関には、全般コード化情報を必ず報告していただける よう、徹底したいと思っています。  次に左側、2番目のグループになります。平成16年4月から、対象医療機関を全医療 機関に拡大したことにより、報告数が急増しています。前のパターンで、最後の1月〜 3月までの3カ月の期間が1万3,000件余りだったのが、平成16年4月〜9月、体制を 変えてからの最初の6カ月間で8万8,000件ほど症例数が集まっています。こういった 形で、かなり報告数が増えています。平成16年4月からは、全般コード化情報は6カ月 ごと、記述情報は3カ月ごとに収集しています。  こういった情報収集方法の変更といたしまして、全般コード化情報に関しては、定点 医療機関のみの報告としてみたい。記述情報に関しては、従来どおり、すべての医療機 関から、各期テーマを決めて報告してもらうことにする。いろいろなことをすべて報告 するとなると、かなりの数になりますので、例えば今回報告したように、チューブトラ ブルだけ、それに関しての記述情報を収集するということで、テーマを決めて、その区 切られた期間では、そのテーマに関すること及び警鐘的な事例、これはすべての事例に 関わるかと思いますが、こういったことにテーマを絞っていってみてはどうかという考 え方です。  全般コード化情報6カ月ごとという形にしましたが、定点医療機関でトレンドを追う という形にしたことを考えると、やはりそれなりの頻度で見ていく必要があるだろうと いうことで、記述情報と合わせて3カ月ごとの収集にしてみてはどうかといった考え方 です。  最後のグループ、記述情報は、事例の分析が十分に行われておらず、改善策等が適切 に記載されていない事例が多い。あるいは記述情報は、個人名が記載されているなどの 不適切な形で寄せられている場合がある。こういったことを踏まえて、「その他」で は、記述情報の記載方法、報告の範囲を記載要領に明記し、より質の高い報告が得られ るよう医療機関に周知を図るとともに、医療機関に対し、事例の分析手法等に関する教 育・研修を実施していく。  このような右側の3点で、ヒヤリ・ハット事例収集分析体制の見直しを図ってみては いかがかという案です。  資料4は、「医療安全対策検討会議等」となっています。1頁の横表は、平成16年度 現在の医療安全対策検討会議の組織図になります。検討会議をヘッドに、医薬品・医療 用具等対策部会、ヒューマンエラー部会が現在動いています。医薬品・医療用具等対策 部会の下には、医薬品類似性検討ワーキンググループがあり、医薬品・医療用具等対策 部会とヒューマンエラー部会両方にぶら下がる形で、事例検討作業部会があります。こ ちらは、ヒヤリ・ハット事例、あるいは医療事故情報の収集等事業に関する事項の検討 という形で、検討部会が設けられています。  現在こういった形になっていますが、前回の部会等でいただいたご指摘を踏まえて、 来年度より体制の見直しを図ってみてはどうだろうかという案が出ています。それが2 頁の図です。見直しの要点としては、大きく2点あります。1点目が、医療部会向け意 見のとりまとめを行うワーキングの設置、2点目がヒューマンエラー部会と事例検討作 業部会の再編です。  まず、医療部会向け意見のとりまとめを行うワーキングの設置ということで、組織図 案によると、医療安全対策検討会議の右側に線が出ており、「医療安全施策検討ワーキ ンググループ(仮称)」となっています。2月2日に第5回社会保障審議会医療部会が 開催されており、参考資料1は、その資料のうちの資料3です。こちらの部会で、医療 安全対策の総合的推進ということで、参考資料1の6〜8頁にわたって論点が提示され ています。医療安全関係に関しては、6頁のいちばん上になります。※で書いています が、「医療安全対策の更なる推進については、医療安全対策検討会議において、具体的 検討を行う予定」とされています。  この具体的な検討を行うのですが、実はこちらの医療部会のほうが5月中旬ごろを目 処に、それぞれさまざまなテーマがありますが、議論を一巡させて、夏ごろを目処に中 間とりまとめを行うスケジュールとなっています。このためあまり時間的な余裕がない ものですから、医療安全対策検討会議で議論を行うためのたたき台を作っていただくと いうことで、右側になりますが、「医療安全対策検討ワーキンググループ(仮称)」の ほうで、先ほどの参考資料にあったような点について具体的な議論を重ねていただき、 最終的に夏前、医療安全対策検討会議にお諮りした上で、医療部会にこの検討結果を報 告してみてはいかがかと思っているわけです。  ちなみに、医療部会のほうでテーマとして挙げられているものが、6頁から8頁とい うことですが、簡単に触れますと、まず、参考資料1の6頁になります。大きく6つの 論点になっています。(1)は医療安全対策についての国、地方の役割を明確にしてみ てはどうか。(2)は医療機関における安全管理体制ということで、いま病院、有床診 療所には医療法上、義務というものがありますが、例えば、それ以外の診療所や医療を 提供する場所もあります。そういう所で何らかの安全管理体制の実現を図る、改善強化 が考えられないかといったことが挙げられています。あるいは院内感染対策、放射線防 護対策といったものが、医療機関における安全管理体制の論点として掲げられていま す。  7頁の(3)は苦情や相談への対応体制ということで、(1)が医療機関における体制、 (2)が医療安全支援センターにおける体制ということで、法的な位置づけの明確化や二 次医療圏ごと等への設置拡大等、改善充実を図っていくことが必要ではないかといった 論点になっています。  (4)は医療事故や医療関連死の報告・届出に関する制度ということで、(1)が事故 事例の報告・届出です。部会長からもお話がありましたが、昨年10月から事故の報告制 度が始まっています。これらの体制をどうしていくかということです。(2)が原因究明 制度、紛争処理制度ということで、医療の透明性の確保、医療事故の再発や萎縮防止を 目的とした診療行為に関連して患者が死亡した場合の届出、そういった場合にどうして そうなったかという原因究明を行う制度についての検討、医療事故等に関わる紛争につ いての早期解決を図るための裁判外紛争処理制度について検討する必要があるのではな いか、といった論点です。  (5)は医療事故をおこした医師等への対応です。行政処分を受けた医師等々の再教 育制度を考えてみる必要があるのではないかといった論点です。  8頁の(6)はその他として、歯科医療あるいは先ほどからも論点に挙がっています が、医薬品・医療機器に関して、どのようなことが考えられるか。こういったことを議 論していただいた上で、最終的に医療部会のほうに報告をしていただく形になるかと思 っています。  また、先ほどの資料4の横表2頁に移っていただきたいと思います。いま申し上げた ような論点を議論するためのワーキンググループを設置してみてはどうか、というのが 1点目です。  見直しの2点目は、ヒューマンエラー部会と事例検討作業部会の再編ということで、 表の真ん中ぐらいになります。ヒューマンエラー部会と医薬品・医療用具等対策部会の 下に、本年度ですと、事例検討作業部会がぶら下がっている形になっていますが、これ を各種作業部会ということで再編してみてはどうかということになります。事例検討作 業部会に関しては従来、この部会と事例作業検討部会の役割がかなり重複しているので はないかというご指摘があったこと、事例の収集体制が本年度から財団法人日本医療機 能評価機構に移ったわけですが、こちらがかなり充実してくるだろうということで、ヒ ューマンエラー部会のほうで一元化をした上で、また別途、各種作業部会ということ で、来年の案によると、「集中治療室における医療安全管理指針の検討等、必要に応じ て設置し、検討を行う」ということを考えています。  これに関しては参考資料2をご覧ください。参考資料2は来年度の予算(案)です。 1頁です。来年度、医療安全関係では4つの新規事業があります。1つ目が「診療行為 に関連した死亡の調査分析モデル事業」です。2つ目以降は、4の「その他」の中の 「ハイリスク施設・部署の安全ガイドライン導入」「周産期医療施設のオープン病院化 モデル事業」「手術室における透明性の向上」の3点です。このうち、「ハイリスク施 設・部署の安全ガイドラインの導入」ということで、来年度、多くの危険因子が存在す る集中治療室における具体的な「医療安全管理指針」を策定するための検討会を設置す ることになっています。このガイドラインを具体的に検討していただく場として、先ほ どの資料の4に戻っていただきますが、各種作業部会で、来年度最初の検討課題として みてはどうかということです。  以上、医療安全対策検討会議の見直し(案)についてです。 ○堺部会長  ヒヤリ・ハット事例収集の定点観測、記述情報の収集についての報告、医療部会の議 論を経ての医療安全対策検討会議でワーキンググループを設置しようということ。この 部会において1つの例ですが作業部会を設けて、これからいろいろな事故情報、ヒヤリ ・ハット情報がさらに上がってきますので、それを踏まえて具体的な対策を立てるため の作業部会を、随時設けていこうという説明です。まず、ただいまのご報告の内容につ いて何かご質問はございますか。 ○土屋委員  確認ですが、確か医薬品とか医療用具については、いまは以前と違って重要事例とい うふうに分けるのではなくて、記述情報ということで一元化されているのだと思いま す。今度から各期のテーマに沿った事例という話になったときに、医薬品というのはお そらく何かが起きたとき、それは警鐘的な事例に当たるのだという言い方をするのかど うかはありますけれども、要するに、いまテーマではないからという話になると、医薬 品とか医療機器というのは、その後のアクションが必要なものです。ですから、そこら 辺は今までどおり支障なく情報収集ができるのかどうか。そこら辺が確保されているの かどうかお伺いしたいのです。 ○堺部会長  これはどなたにお答えいただいたらいいですか。全般コード化情報と記述情報はこれ からも収集される。事故情報も収集されると理解していますが、それでよろしいです か。 ○事務局  大きく2つ、全般コード化情報に関しては定点化されたところで、これは継続的にず っとということになりますので、当然、医療機器に関するものが出てきます。ただ、こ れはチェックで該当するものがあるかどうかという話がありますが、これについては継 続的に同じような形での収集という形になります。  記述情報に関してですが、これに関しては先ほどの説明のように、テーマという形で ある程度絞ってということになるかと思います。そのため、例えば機器に関して集めた いというように、1つのテーマという形で出てくることになるのではないかと思ってい ます。ただ、先ほど委員からもご指摘がありましたように、確かに継続的に見なければ いけないものであるということ。その点に関しては警鐘的事例という形で任意での提出 を拒むものではありませんし、もう1つ、機器のそもそもの副作用等の話になると、こ れは全く別のルートでの報告が、薬事法上の義務としてかかっていますから、直接役所 のほうに届出があります。そういったものを総合して見ていくことになるのではないか と思っています。 ○青木委員  資料3の2頁ですが、定点医療の機関抽出方法について、これは厚労省のほうでお考 えいただいた案なのか、機構のほうで考えた案なのか、どちらでしょうか。 ○事務局  実施主体は機構ですが、私どもの重要な事業ですので、事務局レベルですけれども双 方で話し合って、このような方向でどうかという案です。 ○青木委員  もう1つ、いま求められていることというか、15年がまだこれから出てくるというの は少し遅いのかなという気がします。早くフィードバックすることだと思うのです。現 場に早く返して、それによって知恵が付いて、発生してくる事例がどういうふうに変わ ってくるかを見ていくことが大事で、誰でも考えることだと思います。そうすると、そ れはここで考えることなのか、それともこの上の会議の医療安全対策検討会議で具体的 な内容が決まってくるのか、この辺りはどう考えたらいいのでしょうか。 ○事務局  これらの事例をもとにした対応策ということですか。これについては、このヒヤリ・ ハットの見直しにも関連するところですけれども、まずテーマを絞ったり定点を確実に して情報の質を上げて、それから報告集計期間を3カ月に統一することにより、情報は できるだけ早くフィードバックしたいという見直しが1点です。  来年度、この4月以降、こういった集計・分析・公表に至るまで評価機構のほうでヒ ヤリ・ハットの事業を担当していただけるということになりますと、事故事例と横並び でそういったことができるようになりますので、今後、これまで厚生科学研究でご尽力 いただいて、このヒヤリ・ハット事業の評価などをやっていただいていましたが、そう いった分を来年度以降、もう少し掘り下げて分析をしていただき、対策などにつなげる ようなところまで研究していただきたいということです。まだ来年度の研究費の評価・ 採択が行われていませんが、私どもとしてはそういった研究をして、この情報を提供す るだけでなくて、対策に結び付くような検討結果を出していただき、その研究の成果を ヒューマンエラー部会や検討会議などにも、研究結果を基にご議論いただけるような形 で進めていただきたいと思っています。 ○青木委員  認識が少し私と違うと思います。要するに、こういう分析結果がある程度出てきた ら、現場に早く返したらどうですかと言いたいわけです。例えば定点として医療機関の 数を見ると300ぐらいある。病院だけで全国に9,000ぐらいあるわけですから、こういう ものが情報として上がってこない医療機関に、ある意味では情報として早く与えて、つ まらないミス、ヒヤリ・ハットが起こらないようにしていくことが大事だと思います。 もっとしっかり事例を積み上げて、答えを100%きっちり出して、そこから出発ですよ という構えではなくて、途中であってもそういうフィードバックを早く考えるべきでは ないか。社会保障審議会医療部会のご発言も、そういうところにあるのではないかと思 います。 ○事務局  この情報につきましては、現在も医療機能評価機構のホームページで、分析した事例 等含めて検索できるような形になって公表しています。また、すべての事例を厚生労働 省のホームページで公表していますので、評価機構のほうで来年度以降、この事業の分 析までやっていただいた結果は、速やかにホームページに載せていただくことにしたい と思っています。 ○堺部会長  このような方法で周知されているということを、やはり関係団体にお伝えいただくと いうことも必要かと思います。よろしくお願いします。 ○土屋委員  今後、さらに深いことをやることはすごく大事ですが、この3年間で既にわかってい て、まだ対策を全く取っていない。前から申し上げていますが、処方箋の書き方などは もういい加減対策を取らないと、結局、今回も処方箋の書き方が関与した特殊な薬の出 し方とか、その他いろいろなファクターはあると思いますけれども、それで研修医がそ ういう事故を起こしているわけです。  処方箋の書き方は、それぞれの病院では対応のしようがない。教育をしていないわけ ではないけれども、その統一が取れていないという問題があるのです。これこそどこか できちんと対策を取って、そろそろ入口を閉めることをやらないといけない。入口を閉 めても既存の人をどうするのかというのは、すごく大きな問題としてあるのですが、ま ず入口を閉めれば、システムもその書き方に沿ったシステムが出来上がってきます。  もちろん何年間もかかかるのはわかりますが、そのアクションを取らないと、いつま で経っても「問題ですね」で終わってしまう気がするので、そこは検討会を待たずに何 か取られたらいかがなのかなという気がします。 ○稲田委員  前回、このヒューマンエラー部会の役割とは一体何だろうという話で、こういった情 報収集はたくさんしているわけですが、いま土屋委員も言われたようにそこから先に一 歩進めていない。情報収集して、その情報をどう扱うかもう少し考えないといけない。 個々の事例の深い検討はもちろんだと思いますが、例えばこれだけ全国的なものが出て きて、おそらく施設で見ていくと非常に良い施設と悪い施設が出てくると思います。い ちばん良い施設と悪い施設でどこが違うのかということの分析から、もう少し問題がは っきりすると思います。  例えば、執拗に処方箋の書き方について教育している所は、与薬のミスが少ないとい ったことが出てきて、それを今度は、対策を立てたところで全国に出していく。先ほど 定点という話がありましたが、今度は、同じ病院内でAという時期からBという時期に どう変わってきたか。そういう縦と横の線をうまくつないでいかない限りは、全国的な 改善は望めないのではないかという気がします。 ○嶋森委員  医師の指示の書き方について、事例の分析をしていても、大きな問題があるように思 いました。現在、私どもの研究班で、上原先生の研究班のNDPの活動の中で検討され た、医師の指示の標準ガイドラインの案を受けて、記述情報の分析グループで案を作 り、研修医の指導基準の検討グループにお示しして、基準として研修医の指導案の中に 入れていただくことを考えています。そういうものができれば、それに絶対に従わなけ ればいけないわけではないですけれども、医師の指示の標準化がある程度できて、当院 で起きた持参薬の指示間違いというような事故は防げるのではないかと思います。そう いう形で標準化やガイドラインを作り上げていくことが必要だろうと考えます。 ○事務局  若干補足をさせていただきます。来年の4月の臨床研修医の指導医向けに、いまガイ ドラインを作っていただいています。「指導医ガイドライン」の中に、もう既に注意喚 起できる項目があれば付けたらどうかとディスカッションしていまして、それでいま嶋 森委員に医師の指示の出し方を中心に、その指導医ガイドラインに載せる案を作ってい ただいています。指導医ガイドラインを作成しているグループのほうに嶋森委員の研究 結果をお渡しして、そういった注意喚起もできればということを検討しているところで す。 ○堺部会長  いま、処方のことが例に出ましたが、処方についてそのような対策が取られつつある ということです。具体的な対策が取られつつあるものと、これから対策を作ろうという ことで幾つかの作業部会をこの部会の下に作ろうという、この二本立てかと思います。 どのような作業部会を作るかということは、これまでの皆様のご議論を踏まえて、事務 局からもまた案を出していただくことになろうかと思います。  ヒヤリ・ハット収集の部分でも結構ですし、あるいはこの部会のあり方でも結構です が、もう少しご議論を頂戴したいと思います。 ○目黒委員  先ほどの話ですが、人工呼吸器の作業部会みたいな部分は、この図でいくとヒューマ ンエラー部会の下のほうのグループ、あるいは部会みたいな形になるのですか。 ○事務局  医薬食品局のほうで、作りました医療機器安全対策検討ワーキンググループですが、 これは医薬品・医療用具等対策部会の下に、医薬品の類似性と同じ位置に作りました。 まだ1回目の顔合わせ的なものと、今後の課題をどうするかということで先日検討し、 人工呼吸器、輸液ポンプ、シリンジポンプ等の機器について検討していこうという答え が出ています。今後、なるべくヒューマンエラーが起こりにくいようなものを作る方向 で検討したいと考えています。 ○堺部会長  ほかにはご意見、いかがですか。 ○上原委員  いま、何名かの委員の方が言われました、本当に具体的な対策を出すべき時ではない かと全く賛同します。いまの処方のこと、点滴あるいは注射の指示の書き方等を含め て、本当に標準化することで、かなりのところが解決できる問題があります。例えば、 いま厚労省が指導して進めておられる紛らわしい容器などについても、それを変えるだ けで死ななくて済む人がずいぶんありますので、そういう手を早く打っていくときに、 どこに優先度を置いて早くリーダーシップを取ってやっていくかを見ていくのに、こう いう情報というのはずいぶん役に立つであろうと思います。  実際問題としてこれまでのところは、このデータの活用については、まだ形としてフ ローチャート的に、これがどこにどう活かされ、どうなるというのはまだなっていなく て、これから作るという感じなのでしょうか。いままで集まっているヒヤリ・ハット は、どこに、どういうふうに活用されるというふうになっていましたか。一般に公表さ れるということと、いろいろな所に情報として提供するということはわかるのですが、 いまの仕組みは、それはどこに持って来るのでしたか。 ○事務局  いま現在の仕組みでは、このヒューマンエラー部会や事例検討作業部会で、これに関 するコメントなどをいただいて、一般にそういったことを周知するという仕組みになる ことに留まっています。ですから、これからもっとこういったことを集中的にやるため に、必要な部会をその下に作っていく必要があるのではないかというのが、今回の組織 の改編の提案です。 ○上原委員  わかりました。まさに今からそれを始められるという理解でよろしいですね。そのこ とに関連して2点だけ、いろいろな意味で本当にこれはすごく貴重な資料だと思いま す。1つは、こういう傾向があるから、どこに突っ込んだらいいかという調査の入口を 見つけるのに役に立ちます。まだ現状はこんな理解なんだという教育のニーズを開くこ とにも役に立ちます。もちろん対策に関することに役に立つのですが、対策に関しても どちらかというと、ここにおられる方とか関わっている人は、みんなご存じのことを確 認しているので、むしろこういうことをデータとして、エビデンスとして付けながら早 く手を打ったほうがいいと思います。  ただ、もう1つは、こういう情報は負担がそう大きくなければ、継続的に集めること は意味があると思いますが、先ほど質問したように事故の分析はまた難しい面があるの はわかりますけれども、それぞれのヒヤリ・ハットの中で実際の事故につながるもの と、つながらないものとあります。例えば医療事故という観点から見たときに、どうい うふうなエラーやミス、インシデントが、既往因子が高いかによって、どこに対策を打 つべきプライオリティがあるかが見えてくることがあるので、ある意味見ていると、こ ういうエラーは起こっているし異常なんだけれども、まあ、頑張っても起こるだろうな というエラーは、ヒューマンエラーである以上は当然ありますね。ただ、それが起こっ ても絶対患者は殺さないし、絶対患者には害を与えない仕組みを作っていくことを考え ると、最初の洗い出しは広く見ていくのはいいと思いますが、ある程度その傾向が固ま れば、事故につながらないようにするために、どこに手を打ったらいいかに絞り込んで いくことも、ひとつ考えていいのではないかと思いました。  エラーのほうで抑えないと事故はなくならないですが、エラーを全部洗っていても何 なので、セーフティのほうから重要なプライオリティの高いエラーを絞り込んで、しか し、そこはすぐ手を打っていく。手を打つために必要な情報を取ってくる。これから対 策に入っていくのであれば、多少プライオリタイゼーションはあってもいいのかなとい う気がしました。 ○山浦委員  数人の方から似たようなご意見が出されたのですが、私はなるべく早く刺激的なフィ ードバックをしないと、皆さん飽きてしまうと思います。13年から始めて14年、15年、 ヒヤリ・ハットの報告数は増えましたよね。しかし、これはヒヤリ・ハットの数が増え たというよりも、レポートが増えたということ。これは1つの成果だと思います。気軽 に報告する習慣が身に付いた。これは非常に大きな成果だと思いますが、せっかくここ まで来たのに、いま速やかに手を打っておかないと飽きてしまいます。いくら報告して も、各病院ではちっとも事故は減っていないのです。そういった実感を持っているので す。  どういうものが刺激的なフィードバックかというと、私はガイドラインを作って差し 上げるのが必ずしもベストではないと思います。ガイドラインを作る際、非常に緊張し ます。ガイドラインは必ず法廷に持ち込まれますから、あの場合、この場合と考える と、どうでもいいようなガイドラインしかできないのが普通です。それよりもガイドラ イン、あるいはそういった基準は各病院で作りなさいとして、そのときに役に立つよう なデータをお渡ししたらどうなのでしょうか。  例えば、1年目に多い事故は統計的にわかるわけですから、これこれですよという生 のデータをどんどんフィードバックしていく。ガイドラインを作って差し上げるという のではなくて、自分たちで考えなさいでいいのではないかと思います。 ○堺部会長  対策を提案するにしろ、ガイドラインを示すにしろ、いま山浦委員のご指摘のように データそのものを示すにしろ、座長があまり意見を言ってはいけないかもしれません が、有効性の検証が大事だと思います。それが本当にインシデントあるいはアクシデン トを減らしたのか。それが出てくると「なるほど」とみんな思うわけです。おそらく、 これは全国で一斉というわけにいかないでしょうから、例えば定点でこれに絞って、こ ういうふうにしたらどうなったか、提案前と提案後で数が変わったかどうかを見ること も、これは機構との関わりもあるかと思いますが、何か有効性を検証しないといけない と考えています。 ○三宅委員  私も、いま山浦委員が言われたのと同じことで、土屋委員が言われた処方箋の書き方 についても、13年から同じことがずっと言われてきて、これだけデータが集まっても的 を射るような方針が全然出されない。渦の周辺ばかりグルグル回っている。それは、私 ははっきり言って厚労省という所が責任を回避しているのではないかと思います。処方 箋の書き方ひとつきちんと決めれば済むことなのです。何でそれを決められないのか。 国際的にも共通の書式が決まっているのに、どうして日本が決められないのか。私はそ れを聞きたいですね。それひとつで解決することがたくさんあるのに、それを放置して ガイドラインだとか何とか言って、渦の周辺ばかりグルグル回って中心をひとつも撃っ ていない。そういうことをやっていても無駄だと思います。  定点にしましょうというのも、集めても同じ情報ばかりだから定点にしましょうと言 っているわけで、定点にするのは、いかに無駄な労力を省くかということで定点という 話が出ているわけです。そこが何か全然わかっていないのではないかという気がしま す。  もう1つ私がお話したいことは、今日のチューブ・ドレーンのことについても、決し て、こういうときにこういうことがありましたということで済むことではないのです。 これは医療経済と密接に結び付いている問題なのです。だから、ここで出てきている情 報でも高齢者に多いこと、認知障害があること、薬物投与が関係していること、これは 今までデータは全部同じなのです。ではそれに対してどうやればいいかということは何 ひとつ出ていないわけです。  もう何回か前に確か慶應でしたか、いくつかの病棟で看護要員を増やしたら明らかに 転倒が少なくなった。そういう報告がありましたよね。だったら人を増やすかセンサー を使うとか、何らかのお金をかけない限り解決しないわけです。それをいつも棚上げで すよね。ただ、こういうデータがありました、それをインターネットで公表しました、 それでは何の解決にもならないです。行政の役割というのは何なのですか。 ○堺部会長  先ほど事務局から説明がありましたが、臨床研修医の処方の指導ということが次年度 から行われると聞いています。これを一遍に、全医療機関すべての医師にできるかとい うことはあるかと思いますが、少なくとも臨床研修医への指導が始まるということは、 ひとつの進歩かなと思います。  これまでも同じように、データが出て、どんな状況かはわかっているけれども、有効 な対策が打たれないではないかというご指摘は、この部会で繰り返し出ていたと思いま す。ただ、皆さんも委員でいらして、全くそれでは何もなされなかったかというと、こ れは私の個人的な意見ですが、そうでもないというふうにも思います。私は行政官僚で はありませんので具体的なことはよくわかりませんが、やはり行政の進め方というもの はあろうかと思いますし、早い遅いの問題かなと思いますし、遅過ぎるのでしびれを切 らすというところもあろうかと思います。いろいろ法令の縛り、予算の縛り等々あろう かと思いますが、ここでもって何もできていないではないか、もうやめたというわけに はいかないですよね。 ○三宅委員  ただ、山浦委員が言われたことはかなり的を突いているところがあって、結局、何年 続けても何ひとつ具体的な解決策に結び付くような施策が取られないとしたら、確かに 飽きてきますよね。みんなあまり関心を示さなくなってくると思います。だから、それ が怖いのではないでしょうか。だから問題点が絞られてきてわかりきっていることに対 して、どうしてきちんとした対応ができないのでしょうかということです。これは何回 も私はここで土屋委員と同じことを言っているのです。 ○事務局  私どもも前回、このヒューマンエラー部会の委員の方に、このヒヤリ・ハット事業等 の課題などをフリーディスカッションいただきましたので、そういった問題は十分認識 しています。それで、すぐできることからやろうということで、今回、ヒヤリ・ハット の結果から見て、これは結果が出なくても当然想定されることですけれども、就業して ゼロ年目の方のヒヤリ・ハットが非常に多いということもありますので、臨床研修のプ ログラムの中に、来年度から医療安全の指導者用のガイドラインを作り、そこにこうい った情報提供とか、もう既に情報として対策を提言というか、アピールしたほうがいい ような内容については、その指導者向けのガイドラインにも載せて情報を提供すること を、まずやりたいと思っています。  その中で、いままでヒヤリ・ハットの分析をお願いしていた嶋森委員に、そういった ものに載せていけるものを抽出していただいたところ、医師の指示の出し方について は、すぐに載せたらどうかというご提案をいただきましたので、そういったことを載せ ていきたいと思います。また、このガイドラインについては毎年見直しをしていきたい と思っていますので、載せられるものがあればどんどん追加していきたいと思っていま す。  それから、これは行政の役割としては委員ご指摘のとおり、これからもっとアピール していく項目などを絞って出していかなければいけないのだろうと思っていますが、ヒ ヤリ・ハットについては行政のほうにご報告をいただく分と、病院の中でご活用いただ いている分があろうかと思いますので、今回、定点化したとしても、病院の中でのヒヤ リ・ハット事業の報告を、自ら病院の中で報告いただいて対処いただく分が後退しない ように、院内での報告の意義については、これからもお願いしていかなければいけない だろうと思っています。 ○三宅委員  それは当然のことです。それは13年度の医療安全対策検討会議で報告書が出たところ に義務として書かれていることです。それをここで改めて厚労省が言う必要は何もない わけです。それは当然のこととしてやられる中で、定点でやりましょうというのは、集 まってきた情報はほとんど同じだから、全部から集めるよりは定点でやったほうが効率 がいいでしょうということではないのですか。 ○事務局  それだけではなくて冒頭申し上げましたように、いままでも定点をお願いしていた所 はいくつかありますが、必ずしも定期的な報告をいただいていませんので、この情報自 体、報告数が報告時期によって、報告いただいている所、いただいていない所、まちま ちにあるわけです。 ○三宅委員  それは定点にしてもしなくても、報告をしてもらうにはそれだけの手間暇かかってい るわけです。では報告してもらうのにお金を出していますかといったら、出していない でしょう。だから、それは出ていないと攻められませんよ。報告をもらうのであればそ れなりの情報提供料として、ちゃんとお金を払うべきことです。 ○堺部会長  先ほどの山浦委員の飽きてしまうというご発言ですが、私はこの飽きてしまうという のは、一体何に飽きてしまうのかということかと思います。同じような報告をするとい うことには飽きるだろうと思います。ただ、医療安全を推進しよう、対策を考えよう、 これは各医療機関で飽きてしまうということは、あり得ないというのが、両看護部長が いらっしゃいますが、当然のことだと思います。報告のほうは飽きて誰も報告しないと いうことがあると困りますから、それは制度を整えていただいて、しかし、対策を立て るほうは飽きてしまうということはないだろうと思います。 ○三宅委員  隣に棟近委員がいらっしゃるから棟近委員に言っていただいたらいいかと思います が、例えば車の安全はどうやって情報を集めて、あれは国土交通省か通産省か知らない けれども、どういうふうな形で安全が保たれているのですか。それと同じような働き を、医療安全について厚労省はやっているでしょうか。 ○事務局  そういったご指摘も今までいただいてきましたので、少しずつそういった体制を整え たいというのが、今日の見直しの趣旨ですので、もう少しきちんとこういった情報を分 析してアピールできる体制にしていきたいと思っています。 ○三宅委員  私が言いたいことは、規制しなければいけないことは規制しなければいけない。あく までもご意見伺いで、情報たれ流しで安全は保てませんと私は言いたいのです。やるべ きことをやっていないのではないですかということです。 ○堺部会長  いま、小泉委員と上原委員が手を挙げられました。小泉委員、どうぞ。 ○小泉委員  言いたいことが喉まできますと、青木委員、山浦委員、三宅委員がそのままおっしゃ っているので、そのとおりだと思っているのです。ひとつ飽きてくるという話は、確か に各病院のリーダーは、もちろん飽きてくるということは全くないと思いますが、どこ の病院でも私どもの大学病院でもそうですけれども、毎月同じようなヒヤリ・ハット報 告を出されても、「ああ、今月も転倒が何件」、「そうですね」で終わっていると、や はり結果を出さないと飽きてくるというのは、各病院でもあります。  こういう形で厚生労働省が呼びかけられて、ヒヤリ・ハット事例を集めることが何か 1つの契機になって、ただ、直接データを集めるというだけでなく、そういう安全管理 の仕事をしていくカルチャーが、各病院に広まっているという面もあると思います。そ ういう意味では3年間続けたことの面を見て、それこそ3年間協力していただいた病院 が、協力したけれども、結果、何も出ないなということで、それこそ飽きるか嫌気がさ すか、そうならない仕組みを出さないと、3年間協力した結果が何も見えないと、熱意 がトーンダウンするような気がします。 ○堺部会長  上原委員、お願いします。 ○上原委員  全く同じつもりでした。飽きるという言葉はそういう意味でお使いだと思いますが、 私も交渉のときにいつも強調しているのです。みんな恥を曝して、書きたくないことを 書いてくれているわけですが、それを書くことによって何か変われば、自分が面倒なも のを恥を曝して書いてもよかったと思いますけれども、書いても何も変わらなければ書 くメリットは本人には何もないですから、書くのが嫌になっていくということだと思い ます。  ただ、この機会に2つ追加させてほしいのですが、いちばん最初、私はこれでよかっ たのではないかと思いました。現状がどうなっているかを把握する上でいろいろなもの が見えましたし、いろいろな分析もきれいにしてくださった。次にやっていくときは、 本当にどういうアクションを取り得るのかを考えて調査項目を決めないと、このままの 調査項目をやっていってどんなアクションにつながるのかなという気がします。  先ほど言いましたように、いまのだと調査の入口で、ここを調査したらいいだろうな というのを拾い上げられるし、あるいは教育ニーズも多い。これを見ていると、本当に これからちゃんと確認しましょう、みたいなのが未だにずいぶんあるわけです。という ことは、本当に安全問題意識の教育がまだできていない。事例分析もできていない。だ からそこにどういう標準セミナーを作っていくか。そういう対策にはつながっていくと 思いますが、ただ、問題解決のための対策には、このままではつながらないと思いま す。だから、せっかく定点を作ってやっていくのであれば、こういうアクションを取り たい、こういうアクションは取り得る、厚労省としてはこういうイニシアティブを取れ る。あるいはこういう所に投げたい。だからこういうデータを上げてこようという、過 去3年間に踏まえたコードオリエンテッドな調査項目に、もう少しできるのではないか という気がします。  もう1つは、品質管理の世界で「自責・他責」ということをよく言います。これは例 えばQCサークルの現場の人たちが改善をやるときに、政府が決めたことや病院の院長 が決めたことを現場の人が変えることはできませんから、自分たちの努力でできること からまずやりましょうとやるわけです。そういったものは改善できても、院長や保険制 度が変わらなければできない。あるいは薬の外形が変わらなければならないものは手を 付けられないわけです。これを見ていても現場のヒヤリ・ハットですから、間違いなく 自責で考えているわけです。自分のどこが悪くて、自分はどうしたらいいかしか書けな いわけです。  これを活用していく人は、もう少し仕組みを変えられる立場の人たちが活用できるわ けですから、そこから情報を取りながら、あるいはこれを入口にして調査をかけて、ど こにこういうことを頻繁に起こしている根本原因があるのか、先ほど嶋森委員、三宅委 員も言われたと思いますが、そういう根本要因のところに入っていって問題を解決しな いと、全部現場が「はい、頑張りましょう」という話の繰り返しに、いくらやっても終 わってしまうと思います。  そういったことに引っ張り出そうと思うと、具体的にできることは今のような調査事 項がそうですし、そこに絞り込んでもう少しインデプスな調査をかける。その調査とい うのは、医師はどうできる、ナースはどうできるではなく、今の医療制度をどう変えた らよくなるのかという発想で調査をかけないといけない。こういう調査というのは社会 学の方や経済学の方など、もう少しそういうノンメディカルな方法論を持った人が必要 です。日本には残念ながらパブリックヘルスの教育がないので十分育ってはいませんけ れども、しかし、こういう機会を通じて育てていけるだけのポテンシャルはたくさん持 っていると思います。  そうした人たちに入っていただいて、これは制度のどういうことに根本的に起因し て、こういう現象があちこちで形を変えて起こっているのかを引っ張り出してこない と、結局、安心して医療にかかれないという状況は変わらないのではないか。そういう 入口をきちんと作っていくためには、こういう情報というのはすごく役に立つと思いま すが、これを現場の人に、「さあ、どういうふうに教えましょう」と繰り返しているの では、これは何も変わらないのではないかという気がします。そういう方向も是非考え ていただけたらと思います。 ○堺部会長  この部会の作業部会についての貴重なご提言をいただいたと思います。青木委員、ど うぞ。 ○青木委員  三宅委員のお話を伺いながら、ちょっと医師会がいかんのかなというふうに思った部 分があるのですが、やはり委員の皆様のご意見は、私が思っていたこととほとんど一緒 なのです。医師会は、厚労省がこうじゃないですか、ああじゃないですかと言って医療 機関の中に入ることは、あまり好まないというところがありますから、それによってこ の問題も一歩引いて、ホームページには掲載してありますという程度のところで留まる という形になっているのではないかということを、少し反省したわけです。  私どもは、医療者として、現在でいえば院内感染の問題であるとか、医療安全の問題 であるとか、もちろん事故の問題も含めて、そういう部分についていろいろな知恵をい ただくこと、そのためにある程度の規制があることは、さほどそれを嫌うものではな い。25条の立入り調査で何か細々した話が出てきて、嫌だなとみんなが言っているとい うことはあります。保険診療の中で使いたくても使えない薬があるという話もいっぱい あります。だけど、この部分は大分違うと思います。だからもう少し踏み込んで具体的 なことを早くフィードバックして、逆に言えば医師会に何億かの予算を付けていただい て、全医療機関の安全管理者をきちっと教育するというような、そういうプランを立て ていただければと思います。 ○棟近委員  今までの話を聞いていて、このデータを取り始めたときの目的というのが、あまりは っきりしていなかったというふうに理解したのですが、それでよろしいですか。私には とてもじゃないですけど信じられないのですけど。データを取るということは、何らか の目的を持ってやるわけです。それが今まではっきりしないままに経過してきたという ふうに思えるのですが、それはそういう理解でよろしいのですか。 ○事務局  いいえ、全国の医療機関にご協力をいただいて、これだけの情報をいただくわけです から、まずは発生状況の把握ということと、その発生状況と併せて医療機関での背景因 子、それに対してどのような対策を取られているかを把握して、それを全国に情報提供 するということを目的に、この事業をスタートしたと私どもは考えております。 ○棟近委員  でも発生状況といったときに、ある1つの医療機関で見たときに、そこで起きている すべてのインシデントについて報告してもらっているわけではないわけです。何か適当 に選ばれたものが来ているわけでしょう。そうすると全貌はわからないわけです。だか ら、いまひとつ目的がよくわからない。  いままで各委員が言われたことを考えると、おそらくこれからは対策を取っていくこ とを目的にデータを取っていかなければいけない。そう考えると、いまのデータの取り 方では駄目です。特にコード化されたものでは全く駄目だと思います。そうすると、1 つの事例についてもちろん深くやらなければいけないし、対策ということを考えるのだ としたら、300も調べる必要はない。3つぐらい選んでそこを徹底して深くやるという 調査もあると思います。  本当の対策に結び付けるためには、表面的なものでは駄目で、深く要因に入っていか なければいけないから、いまの調査方法では私は駄目だと思います。そこは本当に対策 ということを皆さんが言われるように考えるならば、調査方法自体の設計も私は考え直 す必要があると思います。 ○嶋森委員  対策のことですが、三宅委員が言われていることは私も言いたいことなのです。しか し、医療制度の問題と、医療を受けている一般国民の人たちが、医療の安全のためにお 金が必要で、もう少しお金を使わなければいけないと理解していただかないと、たぶん 厚労省は動けないと思います。そういう意味では、こういう事業をやったり安全のため の仕組みを作るときに、お金が必要だということをどうやって分かってもらうか考えな ければならないと思います。事故に遭ったりヒヤリ・ハットの当事者になった患者さん は非常に怒りますし、医療者を責めます。それは当然ですが、一方、医療者側に言わせ ると、いまのお金の範囲の中で精いっぱいのことをやっているという感じがあります。 この辺の根本的な問題も解決しないと、医療安全は成り立たないと思います。これをど うやって皆さんにわかってもらうかが私の悩みです。今日、傍聴にいらした方たちも、 このようなことについて、皆さんに解っていただけるようなキャンペーンなどをやって いただけるとありがたいと思います。 ○土屋委員  とにかくアクションを起こすときに、各医療機関はそれなりに努力しているのです が、自分たちではどうしようもない問題というのがあって、だから基本的ルールを通知 で出してくださいということです。そうしたら守るのです。そこをやらないと、ガイド ラインと言っても、また厚生科研の結果でわかっているように、処方箋の結果は伝承の 世界になっている。「上の先生方が」と言って書いたものを真似ている。その指導者の ガイドラインを作るからと言っても、そのガイドラインはいつ変わるかもしれませんと いう話になったら無理なのです。  例えば通知1本あって、ここはこうするぞという話があったときに、ただし、その間 をどうやって過ごしていくかが必要なのであって、医師法とか施行規則の処方箋に関す るところに保険局の通知があって医政局の通知がないことが、すべての混乱の基になっ ている。そこをやることによって、ヒヤリ・ハット報告が減ってくることもあり得るわ けです。これから評価機構は、いっぱい集まったのをどう減らしたらいいか考えるでし ょう。でもどう減らしたらいいかを考える前に、元を正すやり方をきちんとしてあげれ ば、そもそもそこがそんなことで悩まなくて済むかもしれない。飽きさせないためにも 我々は一生懸命やるけれども、そもそも無力感が出てくるのは、これだけ言っても厚労 省から通知も何も出ないとしたら、もうどうしようもないのかなという心が、いちばん この世界で怖いことだと思います。  みんな努力して一生懸命やっている。でも越えられない壁があって、そこはもうある 種、行政がきちんと一義的にやる。それがまた批判をいろいろ受けることはあると思い ますが、ここはそれをやらないと駄目なのかなというのが、正直申し上げて、ここのと ころずっとこの対策で分析もしてきたし、見てきて、それはひとつ出していただきたい なという気がします。 ○堺部会長  委員の方々のご意見はほぼ集約されたように感じますが、来年度、またこの部会の活 動は続くわけです。一応、ご意見も出揃ったかと思いますので、討議をここまでにした いと思います。今日、議事の3に出たヒヤリ・ハット事例収集分析体制の見直し、それ から、ここはヒューマンエラー部会ですが、厚生労働省医療安全対策検討会議の組織図 案、この2つの案は一応、平成17年度はこの案に沿うということでよろしいでしょう か。                  (異議なし) ○堺部会長  お認めいただいたということで、それでは、今後のこの部会の開催について、事務局 からご案内をお願いします。 ○事務局  本日は、ヒヤリ・ハット事例収集事業の見直しと、医療安全対策検討会議ヒューマン エラー部会・事例検討作業部会の再編及び、新たな医療安全施策の検討を行うための部 会の設置について、ご了承いただきありがとうございます。  本件につきましては、3月4日に開催予定の医療安全対策検討会議にお諮りすること としており、ご了承いただければ、新年度から、事例検討作業部会の機能も加味し、こ のヒューマンエラー部会をさらに拡充した新たな体制で開催させていただくことになり ます。新たにご参加いただく委員につきましては、部会長と相談の上、選任させていた だきたいと考えています。  本部会の委員の皆様には、引き続き委員をお願いしたいと考えております。後日、会 議の日程調整をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。 ○堺部会長  議事4に「その他」とありますが、何かございますか。それでは時間になりましたの で、本日の議事はここまでにさせていただきます。事務局からご案内をお願いします。 ○事務局  日程につきましては、先ほど申し上げたように、後日、日程調整をさせていただきた いと思っています。また本日の資料は非常に大分となっていますので、後ほど事務局か ら委員の先生方こご送付申し上げますので、机の上にそのまま置いてお帰りいただけれ ばと思います。以上です。 ○堺部会長  ありがとうございました。また引き続き、よろしくお願いいたします。                      (照会先)                      医政局総務課医療安全推進室指導係長                      電話 03-5253-1111 (内線2579)