05/01/27 標準的電子カルテ推進委員会第6回議事録             第6回標準的電子カルテ推進委員会                       日時 平成17年1月27日(木)                          15:00〜                       場所 経済産業省別館1028会議室 ○高本補佐  ただいまから、「第6回標準的電子カルテ推進委員会」を開催いたします。委員の皆 様にはご多忙のところご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。本日の委 員会は、公開形式で行われるものです。報道関係の方が撮影をされる等の場合について は議事に入るまでとさせていただきたく、あらかじめお願い申し上げます。委員会の開 催に当たりまして、厚生労働省医政局医療技術情報推進室長の新村からご挨拶を申し上 げます。 ○新村室長  本日は、委員の方々におかれましてはご多忙のところご出席いただきまして、ありが とうございます。本委員会におきましては、前回の委員会から中間論点整理メモに基づ いて作成いただいた主要な検討項目について、順次、検討状況をご報告いただいている ところですが、今回は「共通の機能に対応するソフトウェア部品の標準化」や「個人情 報保護に対応したシステム運用のあり方」など、委員会全体で議論すべき論点につい て、担当の委員から検討状況のご報告をいただき、皆様方にご議論をいただければと考 えております。今後、3月には本委員会としての報告の取りまとめに入りたいと考えて おり、次回3月3日の委員会において、残された検討項目の検討に合わせて、最終報告 に向けた論点整理案を提示したいと考えております。委員の皆様方には、この点もお含 みおきの上、十分なご議論をお願いしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願 いいたします。 ○高本補佐  続きまして、本日の委員の出欠状況について、ご報告いたします。大久保委員、木村 委員、手嶋委員、新倉委員におかれましては、ご都合により欠席されるとのこ連絡を頂 戴しております。大久保委員の代理として日立製作所公共システム事業部の橋詰明英 様、木村委員の代理として静岡大学工学部の作佐部太也様、手嶋委員の代理として、三 洋電機株式会社コマーシャル企業グループ コマーシャル営業本部 メディコムビジネス ユニット開発部部長の小宮宏之様にご出席いただいております。よろしくお願いいたし ます。以降の議事進行については、大江座長にお願い申し上げます。 ○大江座長  議事の前に、事務局で用意していただいている資料の確認をお願いいたします。 ○高本補佐  お手元の資料ですが、議事次第、資料1は、「関連組織・団体の有機的な連携体制の 構築」です。資料2は、「共通の機能に対応するソフトウェア部品の標準化」です。資 料3は、「個人情報保護に対応したシステム運用のあり方、および、電子カルテ安全対 策ガイドライン」です。参考資料ですが、いつもお付けしている「標準的電子カルテ推 進委員会中間論点整理メモ」です。参考資料2は、「主要な検討事項と検討体制につい て」です。参考資料3は、「今後の委員会等の開催予定」です。参考資料4は、「第5 回標準的電子カルテ推進委員会議事録」です。これについては、既に連絡して、委員の 皆様にご了承いただいております。参考資料5は、「標準的電子カルテ推進に関するデ ィスカッション議事録」です。これは昨年11月28日に行われた標準的電子カルテ関連研 究報告会の後半の部分の議事録です。最後に、委員の皆様のテーブルには、参考資料と して、60頁の「共通の機能に対応するソフトウェア部品の標準化の報告」があります。 資料等の不備がありましたら、事務局にお申し出いただきたいと思います。 ○大江座長  よろしいでしょうか。本日の議事に入りたいと思います。議事次第が用意してありま すが、今日の議事は主として4つの検討状況の報告で時間の大半を使いますので、目安 としては1つの発表を20分、それから10分以内程度の質疑を個々の発表ごとに行って終 わってしまいます。最後のほうで少し時間があれば、全体の質疑を持てるかもしれませ んが、大体そういう予定です。よろしいでしょうか。議事の(1)「主要検討項目の検 討状況報告について」ですが、最初の検討項目1)関連組織・団体の有機的な連携体制 の構築について、高田委員にご報告をいただきたいと思います。 ○高田委員  熊本大学の高田です。今日は2つお話をさせていただきます。先ほどご紹介いただき ましたように、資料は資料1と資料2、委員の方のみの配付となっていますが、JAH IS(保健医療福祉情報システム工業会)の特別委員である長谷川英重さんが最近の国 際的な電子カルテのプロジェクト等について、非常に詳細な資料を作っておられて、こ れを参考資料として添付しております。まず、「関連組織・団体の有機的な連携体制の 構築」ということで、ご紹介いたします。2つの発表をさせていただきますが、私が担 当している研究班と全日病の飯田先生が担当されている研究班の合同での検討結果とい うことで、それぞれの分担研究者の方、JAHISの電子カルテシステムモデル特別プ ロジェクトの方々など、多くの方のご指導をいただいて発表させていただきますので、 よろしくお願いします。  中間論点の整理メモの中では、標準的電子カルテの推進基盤として、産・官・学の枠 組みで役割を明確化した上での関連組織・団体の有機的な連携がとられる体制が必要で あると述べられています。また、標準的電子カルテがもたらすシステムの互換性や開発 コストの削減効果をより大きくするために、開発と導入に関する経験を蓄積し、そのノ ウハウを利用する方法を十分に考慮する必要があると述べられています。この点につい て、最近の状況などを勘案した上でのプレゼンテーションとさせていただきたいと思い ます。  内容としては、EHRの観点から、国内の標準化体制の整備、公共の医療情報ネット ワーク、以下標準的電子カルテをEHRとしますが、EHRの情報技術のフィージビリ ティスタディについてということ。次のe−Japanという観点から、医療分野にお ける情報技術のロードマップなどを紹介させていただきたいと思います。  国内の標準化体制の整備ということで、「役割分担の明確化」がポイントとしており ます。最近の国際的な状況については、長谷川さんの資料をご覧いただきたいと思いま すが、非常に大きな変化があったと感じています。本委員会は2年目の活動に入ってい ますが、本委員会が始まった時と今では、諸外国の状況が大きく変わったと考えていま す。個人的にインパクトがあったと思われるのは、HL7がOMGと連携をとることを 明確化したことです。アメリカでは、在郷軍人病院のいろいろな情報システムリソース をHL7とOMGの組合わせで標準化して提供するという枠組みができたことが、非常 に大きいインパクトを与えているのではないかと思います。  この図の3つの輪が重なる真ん中の所にUMLと書いてあります。UMLは一種の共通 言語と言っていいかもしれませんが、UMLを使ってシステムの記述をしたり、相互理 解を深めたりすることを私たちの研究班の活動として進めてきました。こういった流れ が世界的にも1つの正当な流れとして認められていると思います。このような国際的な 流れをよく理解した上で、私たちも今後の道筋を選ぶ必要があると考えています。  この図は米国と日本の体制の比較となっていますが、米国ではNHIIという、ご存 じのとおり非常に大きいプロジェクトが進んでいます。この中には、品揃えとしては例 えばメッセージ、機能モデル、コンフォーマンスという点ではHL7、サービスインタ ーフェイスとしてはOMG、プロファイルとしてはIHE、医用画像についてはNEM A、用語やコードに関してはSNOMEDなどの団体による活動が行われています。こ れに対応する我が国の窓口を並べてみると、必ずしも全部が揃っているわけではないと いう問題があります。例えばOMGに対応する組織は必ずしもない(事務局はあるよう ですが、事務的な活動をしているのみとなっているようです)し、SNOMEDなどに 関しても、それに対応する活動がない。さらに、日本ではNHIIに対応するものがな いのではないかという点が、いま私たちが抱えている大きな課題ではないかと思いま す。  こういった状況を考えると、国内のEHRの標準化に関する役割の明確化を進める必 要があるだろう。それから、海外のEHRの標準化組織とのリエゾン窓口、橋渡しをす る部分を明確化する必要があるだろう。国内のEHR標準化に関する連携体制の確立と いったものが必要ではないか。私たちはいま、このような課題にどう対応するのかを求 められているのではないかと考えられます。  欧米のプロジェクトでは非常に強力なトップダウン方式と、それをサポートする非常 に豊富な予算があるという状況で進んでいるものが多いように思いますが、これが日本 で同じようなやり方でできるかというと、必ずしもそうはできないのかもしれない。い くつかの道があるかと思いますが、日本としての独自の方式を作っていかないといけな いのではないか。この点が大きな鍵です。それは公共の医療情報ネットワークを作って いくという、今後の施策などにもかかわる点ではないかと考えられます。  以前本委員会でもご紹介しましたが、産業として保健・医療・福祉という分野の諸活 動を発展させていくことが日本としては必要だろうと考えます。いろいろな要素がある のですが、IT国家としての先進性を高めていくということで、保健・医療・福祉分野 を活性させていこうということが、この委員会に課せられている課題だろうと思いま す。医療は地域との兼ね合いの下に活動が行われているということで、地域の中核病院 を中心にして、地場のソフトウェア産業、通信インフラを担当する企業を含め、保健・ 医療・福祉分野のサービスを提供する企業との連携を高め、地域としての活性化を図っ ていくことが必要だろうと思います。これをどうサポートするかという点に、大きな課 題があるのではないかと考えています。  地域中核病院を中心とした地域連携の構造をうまくサポートして育成することができ れば、おのずと産業としての保健・医療・福祉が活性化されるだろう。これをサポート する産・官・学の連携、縦横のネットワーク化という部分が課題だと考えています。社 会的な基盤としての保健・医療・福祉情報システムをどのように支えて育成するか、と いう課題に直面すると考えられます。特に、仕組みを維持するために必要な費用をどう 捻出するかということに大きな課題があると思われます。  社会的な基盤を整備することが必要になります。社会的な基盤が整備されるというこ とは、医療情報の交換やその情報の共有化が広がる、連携の拡大が道筋として見えてく るわけですが、このような連携の仕組みを運用するために必要なコストを誰が負担する のか。いまは医療情報の交換や共有のためのシステムの維持・管理のコストを負担して いる人がいないのではないか、あるいは明確になっていないのではないか。ですから、 例えば何らかの地域医療連携プロジェクトがあっても、その維持管理費用があるときは 動くのですが、それがなくなると動かなくなってしまいがちです。これを継続的に動か すためのコストの負担をどう解決するかという課題に直面しており、これが重要な課題 ではないかと考えます。  情報の受益者がこの費用を負担できることが必要だと思います。受益者が費用を負担 できるというのは、費用を出してもいいと判断されるコンテンツが整備されることが重 要だと思います。ここで受益者というのは保健・医療・福祉サービスを受ける人たち、 そこで活動する企業、そこに情報を提供するITベンダー、また薬剤などを開発して提 供する医薬品メーカーかもしれません。そういった人たちが費用を負担してもいいと思 われるコンテンツを整備することが重要で、これが公共的情報資産になるのではないか と考えます。その点を明確化し、公共的情報資産を提供するサービスが仕組みとして作 り上げられれば、先ほどのような運用コストなどの捻出が可能となり、産業としての育 成・発展が期待できるようになると考えます。  このような仕組みとしては、例えばイギリスではGPRDというデータベースがあ り、診療所の臨床データを集め、これを基に、例えば製薬企業が必要な情報を活用し、 大学等が研究を行い、また、公衆衛生的な検討が行われ、医療政策を考える基礎資料に なる、といった使われ方が可能となります。製薬企業など利用者がデータを使った場合 に、その利用料を払うと、これが回って診療所等に協力フィーとして支払われる、とい う仕組みができています。こういった仕組みができると、情報に対しての価値が認めら れ、その価値に対して何らかのフィードバック(プロフィット)があるという仕組みが できるようになるのではないかと思います。  情報にバリューがあり、価値のある情報を生めば、それを提供する人がその情報を利 用する人から何らかの見返り(プロフィット)を得る。このバリューとプロフィットと いう関係が作られていく必要がある。このときに、バリューがある情報を作っていく仕 組みがEHRではないかと思われるわけです。  EHRの役割は、バリューを創造する仕組みという見方もあると考えます。それに加 えて、バリューをプロフィットに変換する仕組み、またそれを還流させる仕組みなどが 必要になり、こういったものが一体として動くと、正のスパイラルとして回り、産業と しての発展性を望むことができるのではないかと思います。このときに、情報資産の長 期的な継続性、安定性、安全性を考えると、例えばエンタープライズ・アーキテクチャ (EA)、モデル・ドリブン・アーキテクチャ(MDA)というような技術的なフレームワーク をベースにして、道筋をたてることが妥当ではないかと考えられます。  次に、EHRの情報技術のフィージビリティについて、十分な検討を行うことが必要 だろうと考えられます。先ほどご紹介したように、諸外国の技術的な動向はかなり激し く変化しています。我が国としては、こういった諸外国の技術の調査を十分することが 必要だろうと思います。標準化を想定して作られ、発展している技術は、うまく活用す ることは必要です。そのためには、国内でこれらの情報技術がちゃんと使えるのかどう か、ないしはそれが活用できるかどうかというフィージビリティの評価を必ずする必要 があります。これがちゃんとできるかどうかが、海外の情報技術を我が国がうまく活用 できるかどうかの分かれ道になるのではないかと考えています。このための体制の整備 が必要だと考えられます。その上で、標準の妥当性を確認しながら、EHR導入を推進す るという施策が続くのではないかと思います。  もう1つ、標準にちゃんと適合しているというコンフォーマンスを検証するための体 制が重要であり、これはあとでご紹介させていただくソフトウェアの部品の互換性、そ の運用性などを考える上で重要な要素になると思います。こういったものを産・官・学 の連携体制の上で作っていくことで、日本的なHER推進への取組みを進めていくことが 課題だと思います。ベンダー間も、ユーザー間も、産・官・学の間の連携も、十分な取 組みを進めていく必要があるのですが、そのリーダーシップを誰がどうとるかという点 が重要かと考えられます。  「具体的な進め方」としては、地域の中核病院の果たす役割が重要です。厚生労働科 学研究を含めて、多くのプロジェクトが進行していますが、公開されたプロジェクトを 地域の中核病院が担当し、そこで出てきた成果を標準化委員会というべきものがオーガ ナイズし、相互運用性の保証をする、検証をする、または部品として登録し、それを流 通させるような仕組みを作ることはできないでしょうか。これらの成果を基に、国内外 の企業が地場のソフトウェアハウスなどと一緒に、より一般的な病院に対してソリュー ションを提供する、という枠組みができることが必要ではないかと思います。医療とい うのは地域性というものがあるので、地域の中核病院を中心に、この標準化されたサイ クルが浸透するようなプロジェクトをうまくオーガナイズできると、多くの地域でこの 仕組みが発展していくのではないかと感じています。  少し話が変わりますが、最近、医療分野における情報技術のロードマップが話題にな っています。情報処理推進機構(IPA)が平成17年1月に、医療分野における情報技 術のロードマップを出しています。e−Japanの重点計画で示されたIT利活用の 重視、その先導的な7分野として医療が入っているのですが、当該分野における今後必 要とされるソフトウェア技術のロードマップを作成したということになっています。こ の中では、具体的なターゲットとして、医療安全性向上のためのソフトウェア技術、医 療知識の共有支援システムの構築、在宅ホームドクターの支援ということが出ていま す。  私の個人的な不勉強によるものですが、本委員会の委員でありながら、情報処理推進 機構がこういうロードマップを出されたことを、実は私は知りませんでした。このよう な動きと、うまく幅広く連携がとれているかどうかについてはやや疑問なところもあり ます。連携がとれ、それぞれの動きが1本の束になっていくことが必要だろうと思いま す。  「有機的な連携に関する提言」としては、EHR対応に向けた国内標準化体制の整備 が必要であり、特に海外の標準化団体との窓口の設定とリエゾン推進、国内の標準化団 体の連携促進が重要です。  公共の医療情報ネットワークの運営維持のための仕組みづくりにより、バリューとプ ロフィットというスパイラルを回すような仕組みの整備が必要です。  それから、EHR関係の情報技術のフィージビリティのための体制作りが必要で、標 準に関しての調査やフィージビリティスタディ、評価や策定ができる組織、標準として の適合性の検証ができる体制作りが必要であろうと考えます。  他の組織のコラボレーションということで、情報処理推進機構、情報処理相互運用技 術協会など、必ずしも医療だけではなく広い範囲で活動している組織とのコラボレーシ ョンを今後図ってっていくことが必要ではないかと考えます。このようなことが進む と、我が国の電子カルテに関してのさまざまな活動がより有効で、合理的に進められる のではないかと考えています。 ○大江座長  大変よくまとめられて、重要な提言をしていただいていると思います。少し時間を取 って、いまのご発表に関してご質問、ご意見がありましたらお願いします。いかがでし ょうか。最初に3頁にアジェンダがある、国内の標準化体制の整備についてお話をいた だきましたが、これに関して何かありますか。用語/コードの国内に対応するSNOM EDというのは。 ○高田委員  いまお配りしている資料ではSNOMEDが入っているのですが、これは実際にはな いので、あとでホームページに掲載させていただく資料では訂正させていただきます。 ○石原委員  高田委員のコラボレーションが必要だというのは大賛成で、私も不勉強を1つ質問い たします。電子カルテというものの前に、いまもう既に紙に書かれたカルテをスキャナ ーで読み込んで、それを原本とするというのが法制化されてしまったということで、も うすぐ発効しますね。ああいうのがどこでどのように関係部門と検討されたかよくわか らないままです。あれが発効してしまうと、実際にその法律を信じて紙カルテを破棄し てしまうと、何か訴訟があったときには、証拠能力をもたず、全く戦えないような状態 のまま、医療機関はそれを原本と信じてしまうという非常に困った状態になるかと思う のですが、その辺りはいまのご発表の中でどのようにご認識でしょうか。 ○高田委員  私は電子カルテというのは、単純に紙かペーパーレスかということだけではなくて、 社会的な基盤としての電子カルテという見方が必要ではないかと考えています。それが たまたま紙に書いてあるものがスキャナーで読まれたりすることもあるのかもしれませ んが、少なくとも社会的な基盤としての電子カルテをどう整備していくか、そういった 仕組みをどう整備していくかということが、政府あるいは国としての施策として明確に なることが必要ではないかと考えます。そういった点に対して、もちろんいろいろな関 係団体が意見を表明した上で、一定の合意を取って、それぞれ技術的な点も、医療の運 用の点も含めて、協力関係を作っていくことが必要ではないかと考えています。 ○石原委員  おっしゃるとおりだと思うのです。協力関係というときには、いちばん重視すべきも のは、先生のおっしゃる前向きの未来に向かったポイントも非常に重要だろうと思うの ですが、世間には各診療科10年、20年、所によっては30年以上にも及ぶ紙カルテが残っ ており、それはそれで非常に重いものですから、そこもやはり認識するという現実を見 たポイントが1つです。  もう1つは、医療情報関係の仕事は医療情報学会関係者が主体です。各種委員会の中 にもちろん医師会の先生方がいらっしゃいますが、もう少し正面切って、医師会の開業 医の先生方のワーキンググループそのものとのコラボレーションも私は必要ではないか と思います。これまでの委員会はどうしても大学病院や公的病院の大病院指向で、皆さ ん、予算は厳しいものだとおっしゃいながらも、実際には天から下りてくる予算で運営 しているところがほとんどです。ベンダー系と独立系のコストは随分違う。しかも、満 足度はあまり変わっていないではないか、というご指摘がまさに阿曽沼先生からありま した。そのような視点で見ると、やはり開業医の先生方の視点も入れるべきではないか と思いますので、コラボレーションの際、是非お考えいただけたらと思います。 ○山本委員  石原委員がご質問のe−文書法の対応に関しては、松原理事も参加されているネット ワーク基盤検討会で随分検討を行い、このあと私が発表する安全基準の所で少し触れま すので、そのあとでディスカッションしていただくのが適当かと思います。 ○井上委員  大変面白く聞かせていただいてありがとうございました。いろいろ問題があるかと思 いますが、ITコストの負担分担について、日本ではまだ明確に議論はされていなく て、グランドデザインをまとめるときに、(議論の)途中ではそういう議論はあったの ですが、文字としては残らなかったわけです。いまご紹介がありましたように、(例え ば)アメリカの大統領のIT諮問委員会からの答申でも、インフラの部分については政 府が投資をすべきであるということを明確に書いてあります。だから、日本においても 医療のITには莫大なコストがかかるわけですが、どの部分は受益者負担にし、どの部 分は医療者の負担にし、どの部分は政府が負担するかといった議論を是非すべきではな いか。これはここの委員会の議論ではないだろうと思うのですが、いったいどこでそう いう議論をしていただけるかということをお考えいただきたいと思います。 ○大江座長  高田委員、この辺りはいかがでしょうか。プレゼンの中では受益者負担はわりと打ち 出されていましたが、政府というか、国との分担は何か議論されましたか。 ○高田委員  その点はこのあとのプレゼンの中でも出てくる所なので、そちらで説明させていただ きます。いずれにせよ、誰がまとめるかという部分が非常に重要ではないかと思いま す。例えば米国のNHIIという大きいプロジェクトがあり、そこには全体の責任者が いてマネジメントしています。そういう体制が我が国では必ずしも明確ではなく、いろ いろなグループ、団体や組織がそれぞれ一生懸命頑張っているが、いまひとつ1本の束 になりにくい状況があるのかもしれません。それをまとめようとしてこの委員会がで き、または厚生労働科研の共同での発表会などが行われ、経済産業省のプロジェクトな ども含めて、以前に比べると、だいぶまとまって1つの方向性が出てきているのではな いかとは考えています。  あと、例えば小泉首相が、医療に関してはこのようにしたいということを言っていた だくことも必要です。政府レベルでのイニシアチブが取られて、国としてはこうやる、 企業はこうやりなさい、ユーザーというか、受益者はこのような負担をお願いします、 ということを言っていただけることが重要ではないかと思っています。 ○大江座長  この社会的基盤を基盤とするのであれば、いま井上委員がご指摘くださったように、 どこを国が基盤として負担すべきなのか、受益者負担はどの部分でカバーされるかとい うのは、どこかで議論をしないといけないですね。 ○井上委員  いま小泉首相の話が出ましたが、小泉首相は民にできることは民にやらせるというこ とですから、そこのところは相当しっかりと、これはどうしても民でやらせるべきこと ではなくて、政府がすべきことだという説得力のある話を用意しておく必要があると思 います。 ○大江座長  可能であれば、アメリカをはじめ海外の場合、その辺りの分担をどのように考えてい るかということも、またお調べいただけたらと思います。ほかに何かありますか。中ほ どでEHRの情報技術のフィージビリティということで、海外の技術を日本に適用でき るかを検証する体制が整備されるべきであるというご提案がありまして、それが非常に 必要です。一方で、同時に日本国内で国産の技術を明確化していく。それを日本の電子 カルテにどう適用していくのかということも、やはりどこかでやらないといけないと思 います。その辺りは、もう既にある程度は体制ができつつあるなど、何かありますか。 ○高田委員  そういった点については、逆にJAMIやJAHISが頑張らなければいけないことかも しれません。ただ、例えばHL7やOMGといった所に委員を派遣して、国内でのいろ いろな動きを国際的な標準化の活動の中に盛り込んでいくという活動を展開することが 重要です。そこで国際的な標準となり、国内に戻ってくるという道筋をうまくつけるこ とが必要ではないかと考えます。それは放射線の分野ではかなり実現されていると思い ます。標準化の動きの中でも日本がリーダーシップを取っている部分があるわけで、皆 がそういった努力をしていくことが必要ではないかと感じています。 ○大江座長  私ばかり発言して恐縮です。やはり社会基盤になるのであればこそ、もちろん国際標 準化への準拠は大事なのですが、国際的な標準化に準拠することと、海外の技術を持ち 込んで日本で適用できるようにしてしまうことはかなり違うし、基盤整備ということか ら考えると、安直に海外の技術を日本に適用して使えるから広めてしまおうというの も、良い場合と悪い場合がある。その辺りの評価が非常に難しいと思うので、評価体制 が必要だと思うのです。 ○廣瀬委員  ただいま大江座長がおっしゃられたことは、そのとおりだと思います。洋行帰り新知 識の時代でもないですから、確かに国際標準は国際標準として尊重しなければなりませ んが、それぞれ国内において、国内の事情を当てはめた上で国際標準の中でというか、 国際標準に国内の事情を当てはめていくという努力もかなりなされていると思うので す。ところが、本邦の場合、ややもするとお勉強会というか、ご紹介、そして先ほどお っしゃられたように、無理矢理、日本の中に適用してしまう。こういったことになる と、いつまで経っても本邦としては後ろを追いかける、後塵を拝することになって、た ぶんそれは非常にコストが高くつくものだと思います。この辺りはきちんと分けて考え る必要があります。先ほどJIRA、画像関係、あるいは検査関係で日本がリードして 貢献しているといったお話がありましたが、それは当然で、そういった機械を造ること については、日本が相当のマーケットを占めていますので、それなりの発言力がある。 しかし、逆に情報モデルにしても、社会モデルにしても、もっと日本独自のものをきち んと確立していって、国際標準の中にそれなりに盛り込むなりという努力が必要ではな いかと感じています。 ○大江座長  ほかにありますか。また後ほど時間がありましたら戻っていただいても結構ですの で、2番目のプレゼンテーションに進みたいと思います。引き続き高田委員にお願いし て恐縮ですが、「共通の機能に対応するソフトウェア部品の標準化」について、よろし くお願いします。 ○高田委員  中間論点整理メモには、システムの大規模化や固有機能の開発など、非常に経費がか かる高額なシステムになってしまっているという問題が指摘されています。これに対応 するために共通の機能を整理した上で、これらの機能を満たすためのシステムの要件を 記述、列挙していく努力が必要だと指摘されています。また、システムの単位ごとに部 品化を図ること、そしてその共通利用が進むことが望まれるとされています。  そのようなことを実現するための手法として、例えばIHEの手法が参考にできるの ではないかと指摘されています。先ほど公共的な仕組み、社会的な基盤、ということで 考えることが必要という話をさせていただきましたが、標準的電子カルテが備えるべき 公共的機能は何なのかということを、米国のNHIIの事例を参考に、ご紹介したいと思い ます。  米国のNHIIは、ご存じのように2004年4月にブッシュ大統領が「10年以内に大多 数の米国人がインターオペラブルな電子カルテを持てるようにする」と発表したもので す。健康省(HHS)に医療産業のデジタル化を命じ、医療情報技術のための国家調整官 が指名され、開発や維持に責任を持ち、相互運用性のある医療情報技術の推進を図るこ とになっています。この結果として、医療ミスの削減、品質の向上、医療支出に対する より高い価値の創出を実現するということです。ここで非常に重要なことは、まず大統 領が目的を示して宣言をしていることです。それから、国家調整官という責任者を明確 にしていることです。この調整官に対して、大きな権限が与えられています。また、国 民に対して医療の品質向上などの明らかな利益がもたらされるという、非常にわかりや すい構図が作られています。これに対して、高額な予算が配分されているということも ご存じのとおりです。  行動計画としては、戦略的なフレームワークと4つのゴールが示されています。「臨 床プラクティス情報の提供」では、例えばインセンティブ付きEHRの適用は、このE HRを使っている医師に対して金銭的なフィードバックがかかるようになっています。 それによってEHRに対しての投資リスクが削減されます。地方や医療情報システムが 普及していない遅れた地域へのEHRの普及を促進させるということもあります。  「臨床医間の相互連絡」ということで、地域協調の促進があり、これは地域医療連携 です。それから、国としての基盤的な医療情報ネットワークの開発と、連邦情報システ ムの調整を行うことになっています。それ以外に「個別ケア」、「公衆医療の改善」な ど、プロジェクトのフレームワークとゴールが明確になっています。これを約10年の間 に3段階にわたって進めようという計画です。  「主要行動」ですが、1つは医療情報の技術指導のパネルの創設、つまりリーダーを つくるということです。このパネルから提案がされている内容が、先ほどご紹介したフ レームワークと4つのゴールになるわけですが、こういった組織を作っていることが重 要です。それから、医療情報技術製品の民間認定の促進を掲げ、これに対して予算を付 けて、主要な活動が進められています。地域に密着した医療情報システムを作り、それ をサボートする国の医療情報技術ネットワークを作る。こういったことを実現するため に必要な標準は何なのか?戦略は何なのか?ということを明確に問い、ここにお示しす るような計画ができてきたということです。何のために標準化するかという点を明らか にして、その上で活動を展開しているという点が、私達にも参考になると思います。  以前は米国においても標準化作業の実情としては、いろいろな団体から異なる標準が 提示されていて、てんでばらばらだったと認識し、これを束ねることが必要であり、ポ イントは、国の医療情報ネットワークは国が基盤として整備するということです。これ は国が行うべき部分としてちゃんと規定しています。次に、医療情報の地域的な組織、 つまり中核病院を中心とした地域的な医療連携組織を作るということ。さらに、標準的 な製品であることを認定する仕組みを作ること、と考えられます。  基盤としてのネットワーク、展開先としての地域、国際的な標準、これらを基に活動 を展開していくという作戦です。そのためにHL7とOMG、在郷軍人病院などの組織 が、それぞれの活動と資産を提供し合って、標準化を進めるという形になっています。 在郷軍人病院では共通的に提供しているさまざまなサービスを、HL7とOMGの枠組 みの中で標準化していきます。HL7のメッセージを基盤に、在郷軍人病院開発のサー ビス部分をOMGで標準化し、SONOMED−CTなどの用語を組み合わせて提供す るという形で、コラボレーションするという戦略に出ているわけです。  標準的電子カルテの公共的機能としては、EHRの先進開発諸国の成果を活かして、 公共の医療情報ネットワークを整備するとともに、医療情報ネットワークと連携する機 能を医療情報システムに取り込める仕組みの整備が、我が国としては大切ではないかと 考えています。もちろん、先ほどお話があったように、諸外国の成果をそのまま流用し ようというだけではないわけですが、少なくとも標準として確立されているものについ ては、できるだけそれを遵守するようなことは必要かもしれませんし、そういった対応 が求められているのではないかと思います。  我が国の状況として、既存の病院情報システムにはかなりの資産がありますので、そ れとの連携をどうとるか?そのために必要となるラッピングという技術が必要ではない か?それから、標準的な規格に適合しているということを認定する組織が必要ではない か?と考えられます。今後の施策としては、利用者の納得が得られ易い機能を、優先的 に標準的電子カルテとしての公共的機能として整備していく。これはたぶん厚生労働科 研でも来年度の大きな課題になる、医療の安全性の確保などであると考えられます。い ま国民の間からも求められていることですが、こういった機能を、公共的機能という観 点から医療情報システムに組み込んでいってはどうかと考えています。  公共的機能のイメージに関するこの図は、Bealeさんという方が作られた有名な図な のですが、かなり複雑なので一口では説明できませんが、こういった一連の機能と仕組 みで公共的な機能が提供されるのではないかというイメージになっています。中心にE HRがあり、これを中心にポータルサイトを通じて、患者、連携病院、支払い機関、他 の企業、二次的な利用で政府や疫学研究機関へのデータの提出や、意思決定支援という ことで知識処理の技術の利用、遠隔医療に必要なリアルタイムのゲートウェイなど、さ まざまな仕組みが提供され、盛り込まれる必要があるわけです。  適合性を認定するという活動は、ソフトウェアの部品が相互に動作することを保証す るためにどうしても必要になります。適合性の認定をどのようにするか?これは、米国 のNISTで試行中だそうですが、例えばこんなやり方があるのではないかということ でご紹介します。機能仕様について検討されていますが、それだけでは相互運用性が保 証できないということがあります。そのために、適合性の認定が必要です。HL7で は、機能モデルということで、プロファイル/レベルというもの、それに対応するモジ ュールというものが提示されていて、それぞれに機能名、ステートメント、コンフォー マンス句などの情報が付加され、これにIDが付与されリストが作られています。こう いったものが実装され、ちゃんと機能するか、要求仕様に合っているかという確認をそ れぞれしていく作業が必要になるのではないかと考えられます。この例は実際には検討 されている最中かもしれませんが、こういった仕組みを我が国の事情に照らし合わせな がら進めていくことが、ソフトウエア部品化には必要だと考えられます。  EHRシステムの基盤整備という点では、HL7とIHE−ITIの話があります。 国がやるべき部分はどこか?ということなのですが、1つはこの図の共通基盤部分とい うことになると思います。医療機関A、B、Cがあって、その間をつなぐ医療情報流通 の基盤といったものが、共通基盤として国で整備されるものだと思います。このような 共通基盤を構築する情報技術に関しては、HL7ではDraft Standard for Trial Use として現在公開されているものがあります。  医療機関が電子カルテの情報を、Cross-Enterprise Clinical Documents Sharing というような共通基盤を介して1つのデポジトリーに蓄積するという仕組みをIHEで 提唱しています。このような情報を溜める仕組みをまず作る、それを基に地域の連携を 進めていくという計画で、この仕組みを作るための会社が作られるという話が昨日の 『ニューヨークタイムス』の記事として出ているようです。このような仕組みができて くると、だんだん共通的な基盤が拡大していくのではないかと考えられます。これはI HEの取組みですが、我が国でも経済産業省などのプロジェクトを含めて、今後取り組 まれる内容になると思いますし、どういう優先順位で取り組むか、ということも考える 必要はあるかもしれません。  標準的電子カルテの共通機能の部品化について、何でもすぐみんなうまく共通化でき て、部品化できるというものでもないので、優先順位を考えて、重要なものをトライア ルとして作り、それぞれお互いの技術、やり方についてのコンセンサスを作っていくこ とを考えてはどうかと思っています。先ほども申し上げましたが、いま医療の安全性の 確保という点が社会的にも求められていると思います。電子カルテがこの点についてど うに寄与できるかということは、今回の検討事項の中にも入っていることですが、いく つかの要素を考える必要があると思います。1つは、どうやったら医療の安全性を確保 できるか。これにはいろいろなレベルのものがあると思いますが、例えばバーコードで 2つのものを照合して、そこの情報が合えば良いというレベルのものもあるかもしれま せん。また、医療のプロセスを進める上で、何と何の情報を照合しなければいけないの かというレベルもあるかもしれません。ある疾患に対して、どういう診断や治療のプロ セスをとるべきかというレベルもあるかもしれません。そういった非常に広範かつ多彩 なロジックを組み込んでいくことが必要だと思います。そのときに、どういうロジック を組み込むかということを、それぞれの病院やベンダーが考えることも重要だと思いま す。が、ある一定の範囲で明確化され、バリデートされているロジックを適切な組織が 作成し、これをディストリビュートして、それぞれの電子カルテのシステムに組み込む ような仕組も必要ではないかと考えています。そういった点で、電子カルテとペアを組 んで安全性の確保に必要なチェックを行う昨日を備えた「ユニット」を作ってみること も、1つの大きなプロジェクトになり得るのではないかと思います。  ご存じのように、医療を行う上では、さまざまなプロセスが複雑に絡むのですが、そ れぞれのプロセス毎にいろいろなルールがあり、それらのルールに基づいて判断を繰り 返しながらプロセスを進めていく必要があります。しかし、業務プロセスを管理するプ ログラムの中にルールを全部書き込んでいくと、非常に重くて動作が遅いシステムにな ってしまうので、ルールに基づく判断を行うための知識処理などの部分はひとつの「ゆ にっと」として外に出し、これとは標準的なインターフェイスをもって情報をやり取り することが考えられます。ルールに基づいたチェックを「ユニット」に行わせ、その結 果をもらうような仕組みも、高度な安全性の確認処理には必要ではないかと思っていま す。  この図に示すような「安全ユニット」を作っていくという方法が有用ではないかと思 いますが、この場合には、電子カルテとの通信の標準化、あるいは既存システムのイン ターフェイスをラッピングするような仕組みも必要かもしれません。ルールやロジック の作成、そのディストリビューションと実装、こういったものが1つの社会的基盤とし て整備され、実施されていくとインパクトがあるのではないかと考えています。  この「安全ユニット」の中には、例えば処方の監査や服薬指導という部分があり、そ のために必要な医薬品情報のマスタや、必要な知識処理ロジック等、多くの要素が関係 しますので、来年度以降の厚生労働科学研究の重要な課題になるのではないかと思いま す。  同時に、こういったものを進める上では、現行医療情報システムのモデル化を進めて いくことも必要であり、これらについてはIHEの手法が適用されると思います。  こういった取組みには長期的な展望が必要であり、先ほどもご紹介したEAのよう な、中長期的視点に立ったフレームワークの考え方も必要であり、されに公共的な機能 の標準化という視点、また優先度に基づいたサービスの提供や取捨選択といったことも 必要です。適合性の認証に関する取り組み、既存の病院情報システムとのコネクティビ ティやラッピング等の課題があり、これらに対しても十分な配慮を行う必要があると考 えています。  ソフトウエア部品化という話はよく出てきますし、理想的ではあるが、実際には進ま ないことが多いのです。しかし、これは一般企業がソフトウェアを部品として製造して 提供するということに関して、「魅力的な市場」ができるか、売り手と買い手がいるか どうか、製造されたソフトウェアが部品として安心して使えることを保障する仕組みが つくれるか。これはルールに基づいてつくられる必要があるので、一種の規制が必要で あり、それに対してちゃんと適合しているという認定の仕組みも必要です。こういった 仕組みが出来るかどうかが大きな課題になっていると思います。これをオーガナイズし て進めていくのが施策ということで、国あるいは国のプロジェクトとして先導されるべ きものではないかと考えています。 ○大江座長  これについても、いろいろな意見があると思います。どのようなことでも結構ですの でお願いいたします。 ○石原委員  2つの報告を聞きましたが、最初の報告で、手元資料の6頁にあるNHIIに相当す るものは日本にはないという所です。良い悪いとか、好き嫌いは別として、MEDIS がどうしてここに入ってこなかったのかなというのがあります。そこがクエスチョンマ ークのままである理由やお考えを教えていただきたいのですが。 ○高田委員  もちろんMEDISやJAHISなど、それぞれ立派に活動しているとは思います。 NHIIでは、医療情報技術のための国家調整官が1人指名され、その方がプロジェク トに責任を持っている。医療情報技術の指導パネルといった、かなり権限を持った人の グループをつくっています。リーダーがいるということです。それから、健康省HHS に医療産業のデジタル化を命じています。この辺の権力というか意思判断の仕組みの差 というものが大きくあるのではないかと思います。  国家調整官の責任を果たしている方はBrailerさんという方で、私はお目にかかった ことはありませんが、今回の参考資料を作ってくださった長谷川さんによれば、ものす ごくパワフルな人だそうです。その人が非常に大きな責任を負ってプロジェクトを進め ているから出来る、というところにアメリカの強さがあるのかもしれません。この取組 方法と同様なことを日本でできるかどうかは考えてみる必要があると思いますが、日本 は日本なりのやり方を考えていかないといけないと思います。  ここに1つの資料があります(The Decade of Health Information Technology: Delivering Consumer-centric and Information-rich Health Care)。この資料は 178頁ありますが、プロジェクトの思想や課題、それからゴールというものを盛り込ん で書かれています。短時間に集中的な議論を進め、方向性を決めていく。トップダウン と予算の大きさというものもあると思いますが、この辺がアメリカらしい進め方かなと いうことで感心する次第です。 ○廣瀬委員  いまのプレゼンテーションには非常にたくさんの内容が含まれていたので、なかなか コメントしにくい部分もあるのですが、最後のほうのナレッジの整理、これは私として も重要だと考えています。ただ前半部分の、ややもするとアメリカ礼讃的に聞こえるよ うなコメントは、私としてはちょっと違うのではないかという気がしています。1人が 権限を持ってトップダウンでやるという手法は、大統領制度の国ですからそのパターン で行けるでしょう。しかし、それが日本になじむか、あるいはそれでうまくいくかとい うと、全く話が違います。そもそもアメリカの医療制度や医療経済の状況は、はっきり 言って、かなり悲惨です。その上セキュリティというかコンフィデンシャリティもこれ また、かなり悲惨です。そういった事情の中では強力なリーダーシップをとって推進し ていく必要もあるでしょうが、そうではない、そこまではいってないかもしれない状況 の中で模索を進める場合とは、やはり、また手法も違うと思うのです。それが1点で す。  2点目は、地域社会もしくは国全体の中でポジティブに回るスパイラルをつくって何 か進めていこうという、そのお考え自体には私も賛成です。しかし、仰られたような部 品の適合性を検証するためにも、かなりのマンパワー等々を要する。つまり金を要す る。そうなると、求めていたことが本当に得られるのかどうか。そもそも、仰られたよ うな複雑な枠組みをつくってしまうこと自体が高コスト体制を作り上げしまうようにも 思え、何かしらハテナマークを持つ方が1、2人は居られてもよいのではないかという 気がいたしました。 ○高田委員  私の初めのほうのプレゼンテーションの図では、欧米については強力なトップダウン で豊富な予算、日本はクエスチョンマークになっています。このクエスチョンマーク は、日本にはそういうものがないということではなくて、日本は日本的なやり方を考え る必要があるという意味です。この部分を考えるのが私たち、本委員会を含めて、の役 割かなと思います。そして、必ずしも米国と同じことをやれということではなくて、先 ほどのプレゼンテーションでも申し上げたように、日本のやり方で考えないといけない のではないか、また、それは私たちの任務かなと考えているということです。  スパイラルがうまく回るかどうかについては、費用の問題は大きいと考えます。先ほ ど受益者負担という話をしました。例えば、旧国立大学附属病院が医療情報システムに 対して払っているお金というのは相当なものがあって、その費用を法人化された後も維 持できるかどうかというのは、それぞれの大学法人が悩んでいるところだと思います。 ただ、そういった投資が縮小すると、医療情報システム業界としても規模が縮小する し、それが最終的に医療レベルの低下につながるというようなことがあってはいけない のです。そのためには医療情報システムが単純に業務の合理化を行うというだけではな くて、蓄積されている情報から何らかの付加的な価値が生まれるという枠組みに持ち込 まない限り、継続的に縮んでいってしまうのではないかという恐怖感を私としては持っ ています。  この辺の対応策を十分とることが必要です。例えば、現在多くの製薬企業が大学病院 から情報を得るために委任経理金のような形で投資していると思いますが、そういった ものが情報システムの開発や運用に投じられる道筋を作る必要があります。包括支払い 制度が導入されてから、特定機能病院の医療内容は、一定のフィルターはかかります が、客観的に評価されるようになっています。適切な情報を基にした施策が行われる仕 組みができたともいえます。そういった仕組みが今まではなかったわけですが、そうい う社会的仕組み、それを支えている情報システムは、今後十分評価されるようになるの ではないかと考えています。そして、そこに何らかの投資が生まれるというスキームが 望ましいかなと思っています。 ○井上委員  どういう組織でやるかということですが、これは大きなプロジェクトだという認識を 持つことが大切だと思います。アメリカの場合、これを10年計画でやると言っています が、それでも成功するのは大変難しいかなという感じを受けるのです。日本の場合、例 えば医療費が30兆円だとすると、その5%はITと考えて、1兆5,000億円ぐらい。そ れぐらいに大きなプロジェクトだということで、これから組織等々を考えていく必要が あるということなのです。  少し具体的なことを高田委員にお尋ねしたいのです。医療の安全向上を共通のソフト ウェアとしてプライオリティを持たせたらどうかという提案は大変いいことだと私も思 います。ただし、ここでいう安全性とは、例えばオーダリングシステムでできるような ことではなくて、もっとレベルの高い安全であって、電子カルテをやれば、ここまで安 全性の範囲が広がったというようなことを念頭に、言葉としては、むしろ「医療の品質 管理」と表現したほうがわかりやすいのではないかと感じました。 ○高田委員  アドバイス、どうもありがとうございました。おっしゃるとおりだと思います。安全 というだけではなくて、品質の向上、結局は日本における保健、医療、福祉レベルの向 上に寄与する情報システムである必要があると思います。  この中に盛り込まれる要素はものすごくたくさんあると思います。JAHISのほう でいま医療の品質管理に取り組むワーキンググループが出来ていて活動を開始していま すが、取り組むべき課題がたくさんあるので困っているというところもあります。例え ば、疾患に対しての治療の標準的な指針も、いろいろな学会が出しているものもあり、 情報システムに盛り込んでいくようなことも十分考えられると思いますが、そのとき に、学会ごとに出している指針が違う、内容として異なっている、妥当性に問題がある というようなことがあっては困るのです。そういった部分を誰がどうバリデーションし て認めた上でシステムの1つの要素として盛り込んでいくかというようなことを考える ことは、1つの標準化のプロセスに非常に似ているのではないか。そういった点も含め た標準化、ロジックの標準化、それを実施する部品の標準化というようなことと一緒に 考えてはどうかと思って先ほどのようなプレゼンテーションをさせていただきました。 ○大江座長  後半のソフトウェアの共通部品化については、まだ十分議論ができておりませんが、 時間の関係もありますので、まずは次のプレゼンテーションに進みたいと思います。高 田委員、どうもありがとうございました。  3と4はかなり密接に関連したプレゼンテーションでもありますので、3)個人情報 保護に対応したシステム運用のあり方、4)電子カルテのセキュリティ基準の明確化等 を連続して山本委員から説明をお願いいたします。資料は3です。 ○山本委員  私はこの委員会から2つの課題を頂きました。両方とも、私にというよりは医療情報 ネットワーク基盤検討会及び、その作業班への課題ということで、出来上がったプロジ ェクトも1つですので、1つのプレゼンテーションにまとめさせていただきました。  ネットワーク基盤検討会自体はこの委員会よりも先に存在しておりまして、さまざま な理由からこういったものを検討してきたということをまず説明したいと思います。そ れは規制緩和がこのように進んできたという話です。  これは電子保存の容認通知です。ネットワーク基盤検討会で一昨年の暮れに、厚生労 働省が補助金を出して医療機関等にアンケート調査を行ったところ、電子保存の指針や ガイドライン等が非常にわかりにくい。それだけではなくて、明らかに誤解して実施し ている施設もあるということが明らかになりました。  これはご承知のグランドデザインです。ここでもネットワークセキュリティ技術とい うことで、情報セキュリティに関しても、このグランドデザインの重要なテーマになっ ておりました。  これはその後に出された外部保存の容認通知ですが、オンライン電子保存が極めて限 定的にしか容認されていない。その理由が、個人情報保護法が未整備であり、安全性の 実証が必要であるということで、見直しを明記していて、その見直しもしなければなら ない。このような課題がネットワーク基盤検討会で認識されておりました。  この検討会は平成15年6月に、医政局長の私的検討会として設置され、安全に情報を 伝達・参照できるような環境整備を図る必要性、医療情報を取り扱う際の運用面におい ても適正を期する必要性、上記確保のための基盤整備のあり方について患者・国民の視 点を重視しつつ検討するという目的で設置された検討会です。座長は東工大の大山先生 であります。  先ほど石原委員からもご発言がありましたように、検討の最中に、俗に言うe−文書 法が昨年秋の第161国会に提出され、アッと言う間に成立してしまいました。これには 2つの法律があります。通則法は、民間事業者が行う書面の保存等における情報通信技 術の利用に関する法律です。誤解を恐れずに、ざっくばらんな言い方をしますと、法律 等で作成、保存が義務づけられている書類は、すべて電子化して扱うことを原則として 可能とするという趣旨でしたが、実際に成立した法律は、対象文書に関しては、所括省 庁の通知によって定めることになっており、現時点では通知が出されておりません。し たがって、どれを対象にするかというのは、まだ確定ではありません。整備法は、この 法律の実施に際して著しく障害となるような字句が含まれている法律を一括して改正す るような形になっております。  ネットワーク基盤検討会としては、昨年9月に最終報告を出しております。それは大 きく分けて4つの項目からなります。Iは、医療のフリーアクセスを担保しつつ、情報 セキュリティの確保及び個人情報保護を前提とした情報伝送の技術的及び運用管理上の 基盤が必要であるという前提に立ち、医療においては、公開鍵基盤の整備が急がれるこ と、それからIIIで、医療に係る文書の電子化について記されています。ここで保険薬 局に持参する処方箋の電子化とe−文書法への対応について言及されております。  IVで、これまでの電子保存と外部保存のガイドラインは、誤解も多く、分かりにく い。それから、個人情報保護法がすでに成立しており、今年4月1日から実施されるわ けですが、この2つの通知ガイドラインは、個人情報保護法が成立していない状況で作 られたものですので、これに対応する必要があるということで、この議論を深めてまい りました。  9月16日にその最終報告が出て、それに基づいて、II〜IVに関してはガイドライン、 それ以外には必要な文書等を準備して対応することになりました。それまでにも作業班 は存在していましたが、合同作業班として、引き続きその作業も検討するということに なりました。  その過程で、11月にはパブリックコメントが出され、12月24日に、厚生労働省の個人 情報保護法の実施に当たって、「医療介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱 いのためのガイドライン」が出されました。その安全管理の項目で、いちばん最後に、 医療情報システムに関しては別に指針を定める、という事項が記載されております。こ れが具体的に何を指すかというと、ネットワーク基盤検討会で作る先ほどの最後の2つ のガイドラインプラス電子保存、外部保存だけではなくて、電子カルテからレセプトコ ンピュータまでを含めて、医療で情報システムを用いる場合の安全管理に関する指針を 作るという意味です。先ほどの最終報告の電子保存、外部保存のガイドラインの見直し から対象を広げて、医療情報システム全体の個人情報保護法に対応した安全管理指針を 作成するというミッションに替わったわけです。  その途中で、この委員会から2つの課題をいただきました。これは個人情報保護の観 点から、システム運用のあり方、何らかの標準的な指針等を作成することが求められて いるということです。この指針の一部は、すでに厚生労働省が出された先ほどの、個人 情報保護のためのガイドラインに含まれると思いますが、特に電子カルテを扱うという 意味では、情報システムに関してはいま作成中のガイドラインになります。それからセ キュリティ基準等は、この委員会からの課題と、先ほど述べた、個人情報保護法実施の ためのガイドラインの安全管理の最後の一文も含めてガイドラインに入れる、というこ とになって作業を急いできたところです。  ワーキンググループを作成し、年末も入れて、かなりの量の作業を行ったわけです が、誠に残念ではありますが、現時点ではまだドラフトであり、パブリックコメントを 出すには至っておりません。したがって、今日の説明はあくまでも現時点の説明と考え ていただければと思います。  このガイドラインは、いまの段階で百十数頁と頁数は多いのですが、例えば単に、電 子保存もしない、外部保存もしない、e−文書法も関係ないということであれば、1〜 6章までを読めばよろしいし、1〜6章までも、あまり細かな記載を熟読される必要は ないのです。付表1というのがあり、これは後で説明しますが、かなり使いやすい表に なっております。自らシステムの機能や運用事項を決めれば、どういう対策を取ればい いかということが分かるようになっております。  構成は、各項がA、B、C、Dと4つに分かれております。Aは制度上の要求事項で す。これは個人情報保護法など法律の要求、それから電子保存の容認通知や外部保存の 容認通知、その他の指針など制度上の要求事項がそのまま記載されております。Bでは その要求事項を平易に解説して、そのための原則的な対策を記載しております。  Cは、Aの要求事項を満たすために最低限実施しなければならない事項を記載してお ります。最低限と申しましても、Cの中には選択肢的な記載は当然含まれます。その場 合は、どれかを選んで、確実に1つは実施しなければいけないというガイドラインにな っております。Dは、実施しなくても要求事項を満たすことはできるけれども、国民に 対しての説明責任という観点からは実施したほうがより理解が得やすいと考えられる対 策を挙げております。  例えば、医療情報システムの基本的な安全管理でAは、個人情報保護法に方針の制 定、情報の把握、リスク分析といったような要求がある。しかし、これはあまりにも大 きいので、いくつかに分割して、組織的な安全管理対策としてA、B、C、D、Eとい うような解説をして、最低限必要なガイドラインと、推奨されるガイドラインを分割し て記載するという構成になっております。  医療機関は脅威のアセスメントがあまり得意でない。性善説に立って運用している方 が多いのだろうと思いますが、実際の脅威例ということで、知識のある人にとっては当 たり前に見えることでも一応は記載して、病院情報システムの管理をされている方が情 報理論にあまり通じていなくても何とか対応できるようにようにということで、若干量 は増えました。  考え方として、前回の電子保存容認通知のガイドラインも外部保存のガイドライン も、徹底的に技術的にニュートラルであるということを条件にして、時代が変わっても 改訂しなくていいという、今から思うと無謀な目標を掲げて作ったために、非常にわか りにくいものになりました。しかし今回は、改訂は覚悟で、トレンドのテクノロジーと して取り入れるものは取り入れていこう。そうでないと、具体的な問題点や具体的な対 応策がわかりにくいであろうということで、例えばスマートカードを使う場合、バイオ メトリックスを用いる場合などと具体的に指定して、それを使う場合にはこういった留 意点があるということを具体的に記載するようにしております。  それから最低限のガイドライン。これは技術的安全対策の例ですが、(4)のアクセ スの記録と定期的な確認という事項で、ではどの程度の留意度でアクセスを記録すれば いいのか、定期的とはどれぐらいなのかというようなことも、書ける範囲では書いてお ります。それでもまだ具体性に欠けるかもしれませんが、組織の運用体系や規模等によ ってあまりにも食い違う場合、実は最後の付表のほうには、医療機関の規模別に対策を ある程度は書いてありますので、それを参考にすればわかるようにはなると思います。 不十分かどうかは、今後皆さんのお目に止まったときに検討して頂ければと思います。  推奨されるガイドラインとして、離席の場合のクローズ処理、人的な安全対策として は、従業者や委託事業者に対する人的安全管理等、現実に考えられる限りの場合分けを して記載しております。  中身ではないのですが、お手元のプリントアウトのようにユースケースを分類し、こ ういうシステムを使う場合にどういう注意をしてほしいかということを、できるだけ具 体的に書くように努力をしています。  外部保存に関しては、電子カルテを運用していく上で、情報を何で外部に保存するか で運用がかなり変わってきます。そこで、大いに関係があると思って、ネットワーク基 盤検討会の結論をここに載せました。従来、医療機関や医療法人等が適切に管理する場 所というのが対象になっていたわけですが、今回、行政機関等が開設したデータセンタ ー、それから、危機管理上の目的のために、情報を保存する医療機関自身が自ら所有す る機器を用いて外部に保存する場合、もちろん保存はハウジングになるわけですが、ハ ウジング事業者が中の情報に一切アクセスできないという前提でこれを認める形になっ ています。先ほど話題になったe−文書法は、本来、厚生労働省から通知が出されて確 定するものですから、このガイドラインは、ネットワーク基盤検討会の一定の結論をも とに作ってあります。  医療の中でスキャンを行う文書を、大きく2つに分けております。1つは、具体的に 申しますと、ペーパーレスの電子カルテで運用している医療機関に紙の診療情報提供書 を持ってこられた場合がいちばん典型的な場合です。その場合、診療情報提供書は紙で すから、その紙を何らかのファイルに保存しなければならない。ファイルに保存するぐ らいは差し支えないとしても、数回の診療で、必ず電子カルテ上の情報と別のファイル に保存した診療情報提供書、両方を参照する必要があるということで、1つ間違える と、医療安全上の問題を起こしかねない。つまり、どちらかが疎かになる可能性があ る。放射線フィルムにしても同等でありまして、これを許さないということでは、現場 に効率のよい、質の高い医療を提供していく上で問題があるだろうということで、原則 はこれを認める方向の結論になっています。  これには比較的厳しい基準が付いております。スキャンを行った場合は、行ったとい うことに責任を持つ意味で電子署名をすること、それから精度も、経済産業省が出す一 般の事業者向けスキャンの精度、国税に関する書類のスキャンの精度等がすでに指針と して出ておりますが、それよりはかなり高い精度を要求しております。これに関して は、まだ結論ではありませんので、ひょっとすると皆様から大反対があって下がってし まうかもしれませんが、現時点では、作業班の考えとしてはこういった精度になりま す。  放射線フィルムに関しては、日本医学放射線学会電子情報委員会の指針が平成14年か 15年に出されております。これがデジタイザーの規格を決めていて、それを読めば一 応、一般の診断には差し支えないという結論が出されておりますので、それを採用する ことになります。  ただし問題が1つありまして、マンモグラフィがその時点では対象外になっていたの です。ご承知のように、検診でマンモグラフィの扱いが大きく変わって、医療機関に対 して検診で撮影したマンモグラフィが持ち込まれる可能性は決して小さくないのです。 したがって、これだけをフィルムで保存して、そのために別にシャーカステンを設置す るというような負担もかなり大きなことだと思いますので、日本医学放射線学会の石垣 教授にお願いして、マンモグラフィに関しても適切な基準を定めていただけるように、 いま検討していただいております。できるだけ間に合わせてそれができるようにしたい と思います。  2つ目の状況として、場所が狭い。電子カルテに移行したのだけれども、それまでの カルテが存在する。フィルムレスに移行したのだけれども、それまでのフィルムが存在 する。これらをスキャナ等で取り込んで捨てることを認めてほしい。一昨年末に実施し たアンケートでも、こういう要望は結構全国の病院から来ました。しかし、それはかな り危険と申しますか、少し慎重にならざるを得ません。というのは、一括してデジタイ ズする場合には、その前者のほう、都度発生する情報というのは、手に入れて一定時間 内にスキャナで取り込んで、両方を見比べてこれで大丈夫という判断をすることで、実 用上も問題ないですし、少なくともその情報に対して悪意のある改竄をしなければなら ない動機が発生する機会が非常に少ない。そういう意味では、社会に対しても納得は得 やすいのです。ところが、蓄積された情報というのは、どうしても一括してやることに なりますので、いちいちその情報精度を確認することは、それほど容易ではないでしょ うし、また、不信感を持った目で見れば、その中の一部が改竄されている可能性がない とは言えない、そのことに対する説明をすることが必要になってまいります。  したがって、不可とはしておりませんが、事実上非常に難しい、厳しい条件が課され ております。計画から監査まで、第三者監査に相当する厳格な監視が必要である。つま り、計画を立てて実施している状況や結果に関しても、第三者が何を指すかは問題です が、第三者に相当する監査を受けるようにということを原則として指摘しております。 そして、今回作っている安全管理のガイドラインも、これに沿った記載になっておりま す。  これが最後の付表です。ここにある運用管理項目、実施項目、対象、技術的対策、運 用的対策、運用管理規程文例です。Aは医療機関の規模を問わない、Bは大規模、中規 模医療機関、Cは小規模医療機関や診療所です。これに対応する所を合わせて見れば、 およその運用的な対策がわかります。運用管理規定も、文例としては利用できるという ことで、これを整備して実施していただければ、ガイドラインに沿った運用ができると 考えております。  運用管理項目は、安全管理上の要求事項で、多少とも運用的対策が必要な項目はすべ て挙げてあります。実施項目はこれを細分化したもので、対象というのは医療機関の規 模の目安、技術的対策は、例えばスマートカードを使っているとか、バイオメトリック スを使っているとかという技術的対策が書かれておりまして、それぞれの技術的対策に 対して、とるべき運用的対策が対比できるように、関連づけた形で選べるようになって います。  そのような運用的対策を取る場合の運用管理の規程文例というのがあります。各通知 では運用管理規程を整備することを求めておりますし、個人情報保護法では、規程を整 備して公表することを求めておりますので、その両方に対応できるような文章例にして おります。したがって、これを活用していただければ、比較的ステップワイズではあり ますが、それほど苦労なく運用管理対策ができるのではないかと考えております。  ガイドラインの中に、これを最低限の指針としては含めていませんが、随所にできる だけPDCAサイクルを回して自らチェックを繰り返し、継続的な改善をするという考 え方を取り入れたものとなっています。少し抽象的で分かりにくい話になったかと思い ますが、おそらく近いうちにパブリックコメントの形で皆さんの目にふれると思います ので、今日を含めてご意見を頂ければと思います。 ○大江座長  いまの報告について、何かご質問やご意見はございますか。 ○石原委員  2つ教えていただきたいのです。まず、書かれた文書の電子化という所で、処方箋に ついては不可能なのにカルテについてはOKになったというのは何かちぐはぐな気がす るのですが、それはどうしてでしょうか。 ○山本委員  処方箋を調剤薬局で受け取って、処方済みの処方箋を保管する場合は可です。処方箋 が不可というのは、患者に交付してフリーアクセスを担保して、保険薬局にそれを持っ ていって調剤を受ける処方箋自体を電子化することは、現在の技術レベルでは、日本全 国という意味で、まだ時期尚早である。それを実施することによってフリーアクセスを 制限する、ないしは診療投薬を誘発するようなことがあってはいけないので、これは不 可といたしました。 ○石原委員  A医院からB医院に紹介状や持参のフィルムが届いたときに、受け取ったほうは、そ の場で紹介状、持参フィルム、ともに電子化して原本としてよろしいのでしょうか。 ○山本委員  はい。 ○石原委員  わかりました。2つ目の質問なのですが、ガイドラインA、B、C、Dそれぞれのレ ベルをまとめておられて大変な労作だと思うのですが、CとDは非常に問題だと私は思 うのです。山本委員、あるいは検討会のほうは、あまりプロフェッショナルでない方々 がこれに準拠すれば、いいものが出来るという非常に積極的なつもりで整備したとい う、その趣旨はよく分かるのです。しかしながら一方で、Cという最低限のガイドライ ンも、おそらく現場ではかなり厳しかろうと思います。端的にいえば、東大病院がいつ このCをクリアできるのかなということもあるでしょうし、民間の診療所レベルではど うなのだろうということもあります。その際に、ガイドラインCというものが存在する がために、これまで普通に、良心的に一生懸命やっていて問題がなかった所が、そのガ イドラインCをクリアしていないという違反状態、違法状態、ガイドライン逸脱状態が つくられるのです。  つまり、一生懸命やっている所が、非常に高コスト体質を強いられてしまうか、ある いは違法状態になるということを懸念するのですが、その点はいかがでしょうか。 ○山本委員  違法かどうかという問題は、ガイドラインですから、難しい議論ではありますが、少 なくとも、個人情報保護法の安全管理の考え方は、結果がよければいいというものでは ないのです。説明責任を果たす必要があるということを、少なくとも指針では求めてお ります。したがって、現にできていたというだけでは不足だと考えております。出来上 がったガイドラインを読んでいただけば分かりますが、Cの項目を後ろの付表と取り合 わせて考えれば、多くの医療機関で、ものすごく努力が要るような項目ではない。シス テムに関しては少し厳しくなっており、各ベンダーは、たぶん対応に追われることにな るだろうと思いますが、運用上はそれほど厳しいものではないと考えております。少な くとも、説明責任を果たすという意味で、この程度はやっていただければと我々は考え ております。我々の及ばない困難さがあるかもしれませんが、当然、これはパブリック コメントが出ますので、是非その際にご意見をいただければ、検討したいと考えており ます。 ○石原委員  Cの部分は検討会の委員の1人からドラフトの状態のものを見せてもらって、つぶさ に読んだのですが、私は山本委員の意見とは全く逆で、現場ではこれを守るのも大変だ ろうと思います。マンパワー、並びに策定すべき院内文書等々が随分ありますし、もの によっては、年に何回かブラッシュアップが必要である。そういうことを考えますと、 かなり厳しいものではないかと思いましたので、守れば大丈夫だということについて、 現場ではそうではないとコメントして質問を終わりたいと思います。 ○阿曽沼委員  21頁で、すでに蓄積された書面のスキャンとあり、これは今後いろいろ議論になるの だろうと思います。診療記録の電子保存が出来て丸5年経って、そのときに書面が必要 なのかと。だけれども将来のために、その都度スキャンしていた。ずっと持っていたと いう場合もあるでしょう。5年経った今、電子カルテを入れている医療機関が300カ所 ぐらいになっているわけで、そこの多くが、先ほど石原委員が言ったように、持ち込ま れた資料も、自分の所で発生したものも、それなりに電子化されている部分はあるのだ ろうと思います。計画から監査まで第三者機関というものがあるのですが、例えば院内 の倫理委員会などで、これは電子カルテに相当する信頼性があるのだということを管理 者として担保した場合に、それも認めないのかどうか。その辺はいかがでしょうか。 ○山本委員  その点は説明が不足していたと思うのですが、いまお話した基準は、原本を捨てるた めの基準です。紙で受け取った診療録、フィルムで受け取った診療録を、現在は、公的 に保存義務がある時期でさえも、物理媒体として外部に保存することに関しては、それ ほど強い制限をかけているわけではないのです。原本がある状態で、それを運用的に電 子化して用いる、つまり、診療上非常に不便なので、それをスキャンして用いることに 関しては、従来からそれを別に禁止しているわけではないのです。  今回、それに関してもこのガイドラインの中で明記しておりますが、条件としては、 診療に差し支えない精度で電子化をしてほしいということです。いま言いましたよう に、一旦スキャンしたものの原本はあるのです。しかし、それはたぶん電子媒体で、電 子的な装置で見るほうがはるかに簡単ですから、たぶん物理的媒体は見ていただけない だろうと思うのです。見ていただけないという状況でも、診療に差し支えない精度で電 子化していただきたいという条件を希望としてつけております。わざわざ捨てなくても いいということであれば、それは従来からも認められていると思いますし、今回は、そ れに言わずもがなの条件を記載したということだと思います。  したがって、すでに電子化され、運用されている。しかし、その元はちゃんと置いて あり、何かの場合に原本として担保できるものとして保存してあるのであれば、何の問 題もないということだと思います。保存義務のある間にそれを処分するときに問題にな るということです。 ○廣瀬委員  3点お聞きします。まず、いまの問題からですが、21頁の「責任の所在」というの は、原本保障に関する責任の所在ということですか。 ○山本委員  言葉が非常に抽象的で困るのですが、原本保障というよりは、これがこれから先、こ の人の診療に用いて障害がないものということです。 ○廣瀬委員  真正なる原本の代替ですか。 ○山本委員  原本性という言葉は非常に難しい言葉なので、いろいろな委員会でも定義されて使っ ていますが、あまり使いたくない言葉です。ただ、原本でやるというよりも、医師の場 合で言いますと、これを代替することで実際の診療上、及び医師としての法的責務を満 たし得ると判断した人が、その責任の所在を明確にするという意味です。 ○廣瀬委員  それが医療情報部長であっても、病院長であってもいいわけですね。 ○山本委員  それは構いません。 ○廣瀬委員  わかりました。2番目の質問はHC−PKIのことです。これは属性の種類によって 属性の寿命の長さも変わりますし、地域で使いたいような属性もあると思うのです。一 方で、国家など相当上層部のほうで保障すべき属性もあると思うのですが、その辺りも きちっと振り分けた形で今後検討していくのでしょうか。 ○山本委員  この項目は今回の議論と直接関係ないと思って、説明を省いたのですが、医療情報ネ ットワーク基盤検討会は、厚生労働省の医政局長の諮問機関ですから、厚労省は携わる べきヘルスケアPKIの認承局です。何をしているかといいますと、国家資格を属性と して持つPKIの実施・運用に当たって、採用されるべき標準ポリシーを作成しており ます。認承局ではありません。 ○廣瀬委員  そうなると、例えば知事レベルで認証すべきさまざまな資格をサーティファイする と、それはまたどこかでポリシーを作るところから行わなければならないことになるわ けですか。 ○山本委員  そうですね。しかも、これは認承用ではなくて、電子署名用なのです。電子署名だけ ですので、現時点では、国家資格属性が含まれていれば十分だろうと思います。 ○廣瀬委員  でも、認証を省いてしまって良いのですか。 ○山本委員  認承と署名を一緒にすると、極めて混乱が大きいのです。もう1つは、日本全国のレ ベルで共通の認承基盤というものを今すぐ作成できるかというと、公開鍵基盤以外の技 術的制限から、現時点では不可能だと思うのです。したがって、現時点でその作成を急 ぐのではないのです。  いま現実に困っていることは何かというと、例えば、電子政府に対して何らかの申請 を行いたいという市民の方が、医師から診断書をもらったのだけれど、診断書は紙であ る。したがって、必ずお役所に持参しなければいけないというような状況が生じている わけです。それから、診療情報提供書は紙である。したがって、紙に書ける分量で、な いしは紙に書ける情報でしか今のところ交換できない。そこで、そういった制限を、医 師としての署名を電子化することによって、できるだけ早く行う。そういう意味での電 子署名です。 ○廣瀬委員  わかりました。3番目の質問は処方箋についてです。処方箋自体を電子化することは そう難しくないと思うのですが、地域の調剤薬局でこれを運用するとなると、かなり運 用上の問題を含んでおり、気付かないうちに、個人情報がかなりの脅威にさらされる状 況に陥る可能性もある,と私は推測しています。先ほどの山本委員の発言は、そういう ことを危惧して委員会で審議されたのか、あるいは逆に、テクニカルなことでまだ無理 だと考えたのか、どちらでしょう。 ○山本委員  個人情報保護法上の問題もないとは言いませんが、テクニカルというよりはインフラ の整備の問題です。すべての診療所の先生方、すべての調剤薬局や保険薬局、さらに言 えば全ての患者さんが対応できるようなものであればいいわけです。いま処方箋は、患 者さんが受け取って、患者さんが見ることができるわけです。極端な場合、破って捨て ることもできるわけです。そこで、こういった今の処方箋の特質をすべて満たすことが できるようにするには、技術的及び精度整備的にまだ不十分である。したがって、早期 にこれを導入することにしてしまうと、医療機関を選ぶフリーアクセス、また保険薬局 を選ぶフリーアクセスを阻害するおそれがあります。それから、電子的に処方箋を発行 できてしまうと、よほどきちっとした対策をとらないと、無診療投薬のようなことが起 こる可能性もなくはありません。そういったことを解決するまでは無理だろうというこ とで、今回はこういう結論になっています。  しかしながら、処方情報を電子化することにより、処方や調剤の間違いを防ぐことが できます。また、現在はほとんど返されていないわけですが、調剤情報を医療機関に返 すこともできます。処方情報の電子化自体を阻害することはこの検討会の意図ではない ので、処方箋は紙で運用していただくけれども、調剤情報の電子化は進めるべきだとい う結論になっています。 ○廣瀬委員  病院なり診療所なりから処方箋を発行して、それが調剤薬局に届くと、調剤薬局で は、薬剤監査をするのが理想だと思うのです。しかし、監査をするとなると、他の診療 所や病院が発行した処方情報や調剤結果情報も同時に見る必要があり、患者さんがそれ をすべて良しとするかどうか。私自身は、ちょっとうれしくないなという状況になると 思うのですが、それが1つです。  さらに、医療の安全性の状況では、病院なり診療所なりから処方箋を発行し、それが 電子的に調剤薬局に行って、そしてそこで薬剤監査が行われる。その結果、不適切処方 と思われたなら医療機関に送り返される場合もあるでしょう。そういうことを絡めます と、そのシステム回りは結構複雑になります。それからプライバシーのこともあるので す。そういうことが考えられますので、その辺りも合わせて検討していただければと思 います。 ○大江座長  廣瀬委員がご指摘のように、いまの処方箋や調剤情報の話はかなり複雑な問題をはら んでいるテーマで、データ基盤検討会でも十分議論されたことと思いますので、場合に よっては、その重要な部分を今後の報告書に織り込んでいきたいと思います。まだ十分 議論が尽くせないことも多いのですが、今日の議論はこのくらいにしたいと思います。  今日4つご報告をいただいた中で、更にご意見をお持ちの方もおられると思います が、それは私あるいは事務局にメールなどでお知らせいただき、次回以降の議論に反映 したいと思います。今日はいろいろな意見が出ましたが、これまでの議論も踏まえて、 まず私と事務局のほうで論点を整理し、最終報告に向けて、どれをどのように織り込ん でいくかということを次回以降の委員会でお諮りしたいと思っていますが、そのような 手順でよろしいでしょうか。                  (了承の声) ○大江座長  ありがとうございます。事務局から今後の連絡事項などありましたら、お願いいたし ます。 ○高本補佐  まず、参考資料3にある次回委員会の日程です。次回第7回の本委員会は3月3日 (木)午後3〜5時を予定しております。開催場所等は追って連絡いたします。あらか じめ日程の確保にご配慮いただければ幸いに存じます。また、第8回の本委員会は3月 30日です。今後は、残った主要な検討事項等について報告・討議いただきます。また、 室長からの挨拶にもありましたように、最終報告に向けた論点整理なども提示していく 予定ですので、今後ともよろしくお願いいたします。 ○大江座長  これで本日の委員会を終了いたします。高田委員と山本委員には、長い時間プレゼン テーションをしていただき、ありがとうございました。委員の皆さんも、どうもありが とうございました。 照会先 医政局 研究開発振興課 医療技術情報推進室 企画開発係 中内 TEL 03-5253-1111(内 2588) FAX 03-3503-0595