05/01/20 ゲフィチニブ検討会第1回議事録               ゲフィチニブ検討会 議事録 1.時及び場所   平成17年1月20日(木)10:00〜13:00   厚生労働省共用第7会議室 2.出席者   北澤 京子、下方 薫、竹内 正弘、土屋 了介、貫和 敏博、堀内 龍也、   堀江 孝至、松本 和則(8名)五十音順   欠席者(3名)五十音順   池田 康夫、栗山 喬之、吉田 茂昭   参考人:アストラゼネカ社   Alan Barge, Kevin Carroll, Ann Readman, Janet Milton-Edwards,田中 倫夫、   羽田 修二、蒋 海=(「=」はさんずいに「猗」)、増田 貴之、   石野 幸子(通訳)、山下 順子(通訳) 3.事務局   阿曽沼 慎司(医薬食品局長)、黒川達夫(大臣官房審議官・医薬担当)   平山 佳伸(安全対策課長)、森口 裕(安全使用推進室長)、   渡邊 伸一(安全対策課長補佐)、田宮 憲一(GPMSP査察官)、   鬼山 幸生(副作用情報専門官)、星 順子(主査)、田尻 興保(主査)、   川原 章(審査管理課長)、関野 秀人(審査管理課長補佐)、   林 憲一(審査調整官)、紀平 哲也(化粧品専門官)、   岸田 修一((独)医薬品医療機器総合機構安全管理監)、   伏見 環((独)医薬品医療機器総合機構安全部長)、   森 和彦((独)医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長) 4.備考   本検討会は公開で開催された ○事務局  ただいまから、「ゲフィチニブ検討会」を開催させていただきます。本日ご出席の委 員の先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうご ざいます。本日の会議は公開で行うこととしておりますが、カメラ撮りは議事に入る前 までとさせていただいておりますので、その旨ご承知おき願います。また、傍聴の皆様 方におかれましては、傍聴申込用紙の注意事項を遵守いただきますよう、よろしくお願 いいたします。  議事に入りたいと思いますが、座長が選出されるまでの間については、事務局におい て進行させていただきたいと思います。初めに本検討会の開催に当たり、阿曽沼医薬食 品局長からご挨拶申し上げたいと思います。 ○医薬食品局長  医薬食品局長の阿曽沼でございます。本日は、委員の先生方におかれましては早朝か ら本検討会にご出席を賜りまして、ありがとうございます。大変お忙しい中お集まりい ただいたことに対しまして、心から感謝を申し上げます。また、日ごろから医薬食品行 政につきまして、ご指導・ご協力をいただいておりますことに関して、心から感謝を申 し上げたいと思います。  本日の議題ですが、昨年アストラゼネカ社が日本、米国を除く世界28カ国で実施され た非小細胞肺癌患者へのイレッサとプラセボによる生存期間を比較検討する試験の初回 の解析結果を発表されました。したがって、私どもとしても、本日その試験結果につい て、委員の先生方から科学的・客観的な評価をしていただければということで、お集ま りいただいた次第です。本試験については、現在アストラゼネカ社が詳細な解析を進め ており、総合的な結果は今後発表される予定と聞いておりますが、現時点での解析結果 について、アストラゼネカ社からご報告いただき、各委員の先生方にご質疑・ご議論を 忌憚なくいただければと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。 ○事務局  続きまして、本日お集まりの委員の先生方をご紹介させていただきます。日経BP社 の北澤京子委員、名古屋大学の下方薫委員、北里大学の竹内正弘委員、国立がんセンタ ーの土屋了介委員、東北大学の貫和敏博委員、群馬大学の堀内龍也委員、日本大学の堀 江孝至委員、国際医療福祉大学の松本和則委員です。そのほか、慶應義塾大学の池田康 夫委員、千葉大学の栗山喬之委員、国立がんセンター東病院の吉田茂昭委員の3名にお かれましては、本日欠席となっております。  事務局側もご紹介させていただきます。先ほどご挨拶をさせていただいた阿曽沼医薬 食品局長、黒川医薬担当大臣官房審議官、平山医薬食品局安全対策課長、川原審査管理 課長は所用のため、少し遅れて出席の予定です。森口安全対策課安全使用推進室長、独 立行政法人医薬品医療機器総合機構の岸田安全管理監、独立行政法人医薬品医療機器総 合機構の伏見安全部長、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の森新薬審査第1部長で す。  座長の選出をしたいと思いますが、本検討会の座長については互選により選出したい と考えております。どなたかご推挙いただけますか。 ○堀内委員  松本委員がこれまでのゲフィチニブの検討会の座長を務められておりましたので、適 任ではないかと考えます。 ○事務局  ただいま松本委員に座長をお願いしたいという旨のご提案がありましたが、委員の先 生方はいかがでしょうか。                   (賛成) ○事務局  先生方のご賛同を得ましたので、松本委員に座長をお願いしたいと思います。どうぞ よろしくお願いいたします。 ○松本座長  このたび、ご指名により座長を務めさせていただきます。先ほど阿曽沼局長からもお 話がありましたように、本日の議題はその対応が大変難しい内容になっております。正 直なところ、私はこの役割は遠慮させていただきたいというのが本音ですが、これまで 医薬品の安全性に関して多少なりとも携わってきた者でありますので、お引き受けいた しました。  イレッサは肺癌の治療薬として大変期待されて登場したわけですが、これまでにも安 全性ということで注目されてまいりました。このたび、効果・有効性ということに関し て、新たな事実が明らかにされました。医薬品の安全性・有効性に関して、一般の注目 も大変集まっております。ということで、この検討会においては、今後のこの医薬品の あり方を多くの人が納得するような形でまとめ上げて提案できればと思っておりますの で、よろしくご審議くださいますようお願いいたします。  初めに、事務局から本日の配布資料の確認をお願いします。 ○事務局  これから議事に入りますので、マスコミ関係者の方々によるカメラ撮影はここまでと させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。申し遅れましたが、冒頭 で阿曽沼局長からの挨拶にもありましたとおり、本日は試験結果について説明するため にアストラゼネカ社からも出席していただいておりますので、ご案内いたします。  資料の確認ですが、座席表に加えて「ゲフィチニブ検討会議事次第」と書いた1枚 紙、「配布資料一覧」と書いた1枚紙、「ゲフィチニブ検討会委員名簿」と書いた1枚 紙に続いて、資料ナンバーの付いた資料を配布しております。資料No.1は「ゲフィチ ニブの申請から現在までの経緯」です。資料No.2は、「厚生労働省、医薬品医療機器 総合機構に報告されているゲフィチニブ使用との関連が疑われている急性肺障害・間質 性肺炎等の副作用発現状況(報告日による集計)」です。資料No.3は、「承認条件の 実施状況等について」と書いてある資料です。資料No.4は、「イレッサの安全使用の ための情報提供等の実施状況」です。資料No.5は、「イレッサ錠250プロスペクティブ 調査(特別調査)に関する結果と考察」です。資料No.6は、「イレッサ錠250mgの進行 非小細胞肺癌におけるISEL試験の結果についてのお知らせ」です。資料No.7は、 「イレッサ錠250の使用に関する説明−ご使用に際して−」です。資料No.8は、右上に 英語で「news release」と書いてあり、日本語では「イレッサの進行非小細胞肺癌にお けるISEL試験の結果について」と書いてある資料です。  資料No.9は、イレッサ錠250の添付文書です。資料No.10は、「2004年5月以降明ら かになった諸報告」と書いてある文献です。この文献については、委員の先生方には文 献そのものをお付けしておりますが、傍聴者の方々には文献リストのみとしておりま す。資料No.11については、パワーポイントのスライドを印刷した資料です。そのほか 委員の先生方に限って、英文の資料ということでISEL試験の結果を書いた「The ISEL (IRESSA Survival Evaluation in Lung Cancer) Study Summary of Overall Survival data and analysis of Oriental subset」という英文のタイトルの付いた スライドを配布しております。この資料の取扱いについて説明させていただくと、アス トラゼネカ社のISEL試験の結果について、資料は検討会の委員の方々のみに配布 し、会議後、回収させていただくような取扱いとしているところです。傍聴者の方々に おかれましては、アストラゼネカ社からの説明の際に、今日用意しているパワーポイン トにより映し出したものをご覧いただくことにしております。  これについて、厚生労働省としては、アストラゼネカ社のISEL試験の結果につい ても、その他の資料と同様に、資料を傍聴者に配布することができるようにアストラゼ ネカ社と協議しましたが、アストラゼネカ社から、本試験については今後論文化をして 学術雑誌に投稿することを予定しているということで、投稿するまでに本日の資料が文 書として配布されて公開されると論文化に支障がある、という申し出がありましたの で、このような取扱いとしております。アストラゼネカ社からは、今後、今回の試験結 果を論文化して学術雑誌への投稿がされたあとであれば、これらの資料については文書 として公開可能であると聞いております。厚生労働省からは、アストラゼネカ社に対し て、論文化を早急に行うように伝えているという状況です。  その他、委員の先生方には参考資料として、アストラゼネカ社に対する指摘事項と、 委員の先生方から事前にいただいたご意見の資料を配布しているところです。資料は以 上です。 ○松本座長  委員の先生方、資料は揃っていますか。揃っているようでしたら、議題1の「現在ま での安全対策の状況」に入りたいと思います。まず、資料をもとに事務局から説明をお 願いします。 ○事務局  資料をもとに事務局から説明させていただきます。資料No.1、「ゲフィチニブの申 請から現在までの経緯」です。これはご存じかと思いますが、簡単に要点だけ説明いた します。平成14年7月5日に、このゲフィチニブが承認されております。その後、10月 15日に緊急安全性情報の発出が行われております。また、下から2番目の平成14年12月 25日ですが、第1回ゲフィチニブ安全性問題検討会が開催されております。その翌日、 第1回ゲフィチニブ安全性問題検討会の検討結果に基づく対応通知を厚生労働省から発 出しているところです。  次の頁ですが、平成15年5月2日に第2回ゲフィチニブ安全性問題検討会を開催して おります。5月5日、米国FDAがイレッサ錠を認可しているところです。平成16年に 入り12月17日、アストラゼネカの英国本社が延命効果試験結果を公表しており、翌週の 20日には日本のアストラゼネカ社も延命効果試験結果を公表しているという状況です。 今年1月4日になって、アストラゼネカ社がEMEA(欧州医薬品審査庁)に対するイ レッサの承認申請を取り下げているような状況です。  次に資料No.2ですが、これは「厚生労働省、医薬品医療機器総合機構に報告されて いるゲフィチニブの使用との関連が疑われている急性肺障害・間質性肺炎等の副作用発 現状況」で、これは括弧の中に書いてあるとおり、「報告日による集計」となっており ます。報告日による集計ですので、発現日別などではなく、報告日で集積されているの で特異的な点があります。2004年3月の時点での棒グラフでかなり高い数字が出ており ますが、これは後ほど紹介するプロスペクティブ調査の集計の終了が2004年3月という 時期になっており、プロスペクティブ調査の調査票がこの時期に回収されたということ で、それに伴って報告数が集積されたという状況になっております。トータルで申し上 げると、累積の報告の例数が1,473例、うち死亡例が588例となっており、推計の累積患 者数が8万6,800人という状況です。 ○事務局  次に資料No.3、「承認条件の実施状況等について」ですが、イレッサは承認条件と して、(1)の市販後臨床試験と(2)の作用機序の解明を目的とした検討の2つが義務付け られております。1.の「市販後臨床試験」は承認条件(1)に対応するものですが、こ れについてはゲフィチニブとドセタキセルの生存期間を比較する多施設共同非盲検無作 為化群間比較の第III相試験が実施されています。(1)の試験の概要はここに記載してい るとおりです。(2)の進捗状況ですが、平成15年9月に開始され、平成19年3月に終了 の予定です。平成16年12月28日の時点で234例、内訳はゲフィチニブ117例、ドセタキセ ル117例という状況です。  次の頁ですが、2.の「作用機序の解明」は承認条件の(2)に対応するものです。作 用機序の解明のために基礎研究、臨床研究等として、この頁に記載したような試験を含 めて、イレッサの作用機序の解明に関係した24の試験が実施されているところです。 3.には、「我が国で承認後に実施又は計画された他の臨床試験について」、概要を記 載しております。 ○事務局  資料No.4は「イレッサの安全使用のための情報提供等の実施状況」ということで、 アストラゼネカ社が情報提供を行っている実施状況をまとめたものです。2頁のいちば ん最後ですが、2004年12月18日「ISEL試験結果」ということで、12月17日にアスト ラゼネカの英国本社がISEL試験の結果について公表したのですが、それが金曜日 で、翌週の月曜日になって日本のアストラゼネカ社が公表しているのです。その間、12 月18日(土)からISEL試験の結果について、医療機関向けの情報提供は開始してい ると聞いております。  次に「投与初期の入院、同意取得の状況」ですが、これはこういう安全対策を行うと いうことが第1回ゲフィチニブ安全性問題検討会で指摘をされ、実施することになって おりますが、その実施状況です。この実施状況については個別の患者ごとではなくて、 医療機関として、病院としてどういう実施をするのか、統一がとれているかという状況 を取りまとめた数字になっております。原則4週間の入院措置というのは、病院の統一 見解として原則4週間入院を行うこととしている施設が63%、病院の統一見解として原 則入院としているけれども、4週間入院できない施設が25%、病院の統一見解はなく て、医師の個々の判断によって入院日数や入院の有無がばらばらの施設が11%となって おります。  右側のインフォームド・コンセントの状況ですが、病院としての方針がどうなってい るかということで、必ず文書で同意を取得という医療機関が62%、必ず口頭にて同意取 得が36%、病院の統一見解はなく、医師ごとに同意の方法が異なるという施設が2%と いう状況です。  資料No.5、「イレッサ錠250プロスペクティブ調査(特別調査)に関する結果と考察 」ですが、これも第1回のゲフィチニブ安全性問題検討会の結果に基づいて指示された 事項です。間質性肺炎・急性肺障害の発現危険因子やハイリスクの患者背景等を明らか にするための調査ということで、アストラゼネカが取りまとめた資料です。結果です が、11頁の4、「急性肺障害・間質性肺炎の発現及び転帰に影響を与える因子の検討」 の4.1、発現に影響を与える因子の推定の所で、「急性肺障害・間質性肺炎の発現に影 響を与える因子として、PS区分、喫煙歴有無、肺の合併症/間質性肺疾患有無、化学 療法有無が選択された」という結論になっております。  12頁の4.2は、「急性肺障害・間質性肺炎の予後に影響を与える因子の推定」という ことで、その結果、予後不良因子として、性別及びPS区分が選択されたという結論に なっております。この結果については、本日資料No.9として、イレッサ錠の添付文書 が付けてあります。資料No.9の1頁の「警告」の欄の4の下線が引いてある部分と、 右側の1「慎重投与」の(2)で下線が引いてある部分、2頁の4の「副作用」につい て下線が引いてある部分、3頁の9.の「その他の注意」の(2)で下線が引いてある 部分などに、このプロスペクティブ調査の結果の情報提供ということで、添付文書を改 訂して情報提供がなされているところです。  資料No.6ですが、これは先ほど申しましたように、昨年12月17日に英国アストラゼ ネカ社本社が今回のISEL試験の結果を公表したあと、翌日の12月18日から日本国内 の医療機関に対して、アストラゼネカ社が情報提供を始めた資料です。  資料No.7ですが、これもISEL試験の結果が公表され、それを患者の同意文書に 反映させるということで、ISEL試験の結果を反映させた同意文書です。この同意文 書については、冒頭1頁の上に書いてあるとおり、同意文書は医療機関が作成するもの で、同意文書(案)として、アストラゼネカ社が医療機関に対して参考資料として提出 しているもので、医療機関においてはこれを適宜追加、変更等を行って利用することに なっております。この同意文書ですが、患者に渡すものと施設への控えということで、 同一のものが2つ必要だということで、2頁から6頁までと7頁から11頁まで同じ内容 が続いています。これは患者用と施設控え用ということで、同一の内容がダブってコピ ーされているような状況です。ISEL試験の結果については、2頁のいちばん下の黒 ポツで「最近、28カ国」から始まる部分から3頁の上の部分にかけて、ISEL試験の 結果について同意の説明文書に反映させているようなものを、現在アストラゼネカ社が 参考資料として医療機関に提供しているような状況です。  資料No.8は、昨年12月20日に日本のアストラゼネカ社がプレスリリースとして公表 した資料ですので、参考までに付けております。  資料No.10は、今日ご出席の貫和先生からご指示があった、イレッサに関連する論文 のリストを付けておりますので、後ほど貫和先生からご紹介いただければと思います。 事務局からの説明は以上です。 ○松本座長  事務局から、現在までの安全対策状況についての説明がありましたが、このことにつ いて何かご質問、コメントはありませんか。 ○堀内委員  資料No.2についてお尋ねしたいと思います。これまでに報告されている急性肺障害 ・間質性肺炎等の副作用の発現と死亡率は、1,473例中588例、推定患者数が8万7,000 人ということですが、プロスペクティブ調査による肺障害の副作用の発現率は5.8%、 死亡率は発現した患者の38%というデータが出ております。そうすると、ここに報告さ れているデータは、副作用の発現している中での4分の1ぐらいが集積されている、と 考えてよろしいのでしょうか。 ○事務局  報告されている中では、こちらで示しているような状況となっております。プロスペ クティブ調査というのは、資料No.2は自発報告ということで、必ずしもすべての発現 事象を捉えているわけではないということもあるかもしれませんが、そういった違いは あります。 ○堀内委員  プロスペクティブ調査を外挿すると、12月までに8万6,800人に使われたわけですか ら、間質性肺炎等の副作用が発現した患者は5,000人程度で、2,000人程度が亡くなって いると考えてよろしいですか。 ○安全対策課長  その推計についてはベースになる数値が異なりますので、プロスペクティブ調査の結 果をそのまま推定患者数に掛け算することについては、過大に数を示すことになると思 います。出ている推定患者数は正確な数字でもありませんので、いまの時点でその数字 が正確かどうかということについては、コメントできない状況です。 ○堀江委員  実際にプロスペクティブのデータがまとめられる段階までに蓄積されている症例数、 その中で間質性肺炎の出現した頻度、最近1年間に、新たに使用を開始された症例にお ける副作用の発現頻度などの比較はされていますか。要するに、どういう患者で副作用 の出現する危険性があるのかという因子については、明らかにされているわけですね。 そういう危険因子を認識して本剤が使用されるようになってきたと思いますが、その点 が、実際のデータ上に反映されてきているかどうかというのが気になるものですから。 ○事務局  ただいまご指摘いただいたような統計の数字については、現在のところ私どもで把握 しておりません。 ○松本座長  それでよろしいですか。ほかにありませんか。この問題に関してほかに質問がないよ うでしたら、次に議題2の「ISEL試験結果について」に入ります。今回の試験結果 について、アストラゼネカ社から説明をいただきたいと思います。 ○参考人  私はアラン・バージと申します。イレッサ担当のグローバルのメディカルダイレクタ ーです。本日はイレッサの前向き大規模無作為化第III相試験から得られた初期の予備 的なデータについて、説明をさせていただきたいと思います。この試験はプラセボ比較 試験で、対象患者は化学療法で効果が得られなかった、進行性非小細胞肺癌患者でし た。この試験からの最終データは近い将来に得られる予定で、結果が得られたら3月ぐ らいにはまたご当局に報告させていただきたいと思っております。ISEL試験自体 は、2003年5月にイレッサが米国で承認された折、FDAより承認条件として実施を要 請されました。それに従い実施されている第IV相試験です。それとは別に、いま日本で 第III相の立証試験を実施中です。  今回お見せしているスライドですが、昨日ぎりぎりまで検討して若干の変更を加えま したので、お手元のコピーとお見せするスライドの内容が若干異なっている場所があり ます。 ☆スライド  本日はISEL試験全体のデータ、さらに当初より予定していた東洋人患者における サブセット解析より選んだデータをお見せしたいと思っております。その後、ご質問が あればお答えさせていただきたいと思います。また、今回のデータが意味する内容につ いては、ご当局と検討させていただきたいと思っております。ISEL試験より選んだ データに関して、私の同僚である統計家のケビン・キャロルさんから説明をお願いしま す。 ○参考人  このISEL試験においては、世界28カ国、210の治験施設において、1,692例の患者 を、イレッサとプラセボ群に、2対1の割合で無作為割付けをしました。この試験で は、日本の施設からの患者は参加しておりませんが、東洋人患者が342例、参加されて おります。これらの患者を国別に見ると、マレーシア、フィリピン、台湾、シンガポー ル、タイで登録されています。 ☆スライド  試験の評価項目、統計的手法に関してですが、この試験における主要評価項目は全生 存期間でした。副次的な評価項目としては、イレッサ、プラセボの投与が中止になるま での時間、奏効率、患者の生活の質(QOL)、症状を検討しております。全生存期間 に関しては、層別化ログランク検定で解析しました。この試験においては当初より、人 種別の解析も含め、いくつかのサブグループ解析をプロトコルに含めており、それに従 い解析を実施しております。これらの解析にはコックスの回帰モデルを使用しました。 これからお見せする生存期間のデータですが、2004年10月末までに収集されたすべての データに基づいております。その時点における患者の追跡期間の中央値は7カ月、そし て、その時点において969例の患者が死亡しておりました。実際この場合の追跡ですが、 追跡から外れた患者の割合は、全患者の中の10%でした。大規模な無作為割付試験では 通常よく見られるように、この試験においても治験開始前の重要な予後因子に関して は、治療群間でよく釣合いがとれておりました。 ☆スライド  前回のスライドですが、フォローアップできなかった患者は10例でした。このスライ ドには、生存期間の分析結果をまとめております。イレッサの投与群の患者には、試験 の全対象患者、さらに腺癌患者のサブセットにおいて、生存期間にある程度の改善は認 められておりました。しかし、層別化ログランク分析で検討した結果、統計的有意差は 得られませんでした。しかし、副次的に実施したコックス回帰分析においては、全生存 期間につき、対象患者全体と腺癌患者のサブセットにおいて、統計的に有意な改善が認 められております。 ☆スライド  このスライドには、対象患者全体における生存期間のカップランマイヤー曲線を示し ております。先ほど申し上げたとおり、イレッサ投与群の患者では全生存期間に若干の 改善が認められております。この曲線が4カ月目辺りから分かれていることが認められ ます。このように改善をしているのですが、この改善は統計的有意差に至るほどではあ りませんでした。 ☆スライド  先ほど申し上げたように、いくつかのサブグループ解析の実施を、試験計画の作成当 初より計画の中に入れておりました。解析結果に関して、スライドを2枚準備しました が、これはその1枚目です。それぞれのサブセット解析で、プラセボに対するイレッサ のハザード比、95%信頼区間をこの図の中に示しております。このハザード比は、皆様 ご存じのように、患者死亡の相対的リスクをイレッサとプラセボ間で検討比較したもの です。ハザード比が1未満はイレッサのほうに有利な差がある、ということを示してお ります。ハザード比が1を超えると、プラセボに有利な差があるということがわかりま す。ほとんどのサブセット解析結果は中心部近くに位置しています。例外は喫煙歴で、 喫煙歴の全くない患者の結果と喫煙経験のある患者との結果の間に、統計的な有意差が 出ております。これについて、また後ほど説明申し上げたいと思っております。 ☆スライド  これはサブセット解析を示した2枚目のスライドです。ここで、ほぼすべてのサブセ ット解析結果が中心部近くに位置しているのですが、人種については東洋人の結果と非 東洋人の結果の間に、統計的有意差が認められました。この結果は、東洋人および日本 人で常に高い奏効率が認められていた第II相の試験結果と一貫した傾向を示しておりま す。 ☆スライド  このスライドには、東洋人、非東洋人におけるカップランマイヤー曲線を示しまし た。イレッサ群の東洋人患者では、生存期間中央値がプラセボと比較して約2倍になっ ておりますが、非東洋人患者群ではこのような違いは認められませんでした。 ☆スライド  同様に奏効率についても、東洋人の値は非東洋人の2倍となっております。これは統 計的に有意な差です。 ☆スライド  ご推察いただけるかもしれませんが、イレッサで効果が認められた患者では、効果の ない患者よりも長い生存期間が得られております。 ☆スライド  東洋人患者でも、同じような効果が認められています。イレッサで奏効が認められて いなかった東洋人患者でも、イレッサによる若干の生存のベネフィットが認められてい ます。これは非東洋人患者の結果と対照的です。 ☆スライド  このスライドには、人種別、喫煙状態別の結果を示しました。この表からおわかりい ただけるように、東洋人の喫煙者、非喫煙者の生存結果は、対応する非東洋人における ものよりも良好な値となっております。次に東洋人患者における喫煙の効果について見 たいと思います。 ☆スライド  このスライドには、東洋人の患者において、喫煙状態別のデータ、さらに東洋人患者 における癌の組織型別のデータを示しました。このデータを見ると、東洋人で腺癌の患 者は、東洋人で非腺癌の患者よりも良い結果が得られていると認められます。ただし、 統計的な有意差は認められておりません。 ☆スライド  非東洋人患者における喫煙の効果、作用に関して、お話をしたいと思います。ここ で、非喫煙者と喫煙者を単純に区別しております。喫煙者間でも、タバコに関するばく 露量は相当異なっているのですが、この区分にはそのばく露量については考慮されては おりません。ISELのデータセットの中では、累積喫煙量をパック年の単位で、より 詳細に確認することが可能です。パック年という単位の定義は、1日当たりのタバコの 喫煙箱数に喫煙年数を掛けたものです。横軸にはパック年単位のばく露量を示し、喫煙 経験のない患者は0の所に入っています。また、縦軸にはプラセボに対するイレッサの ハザード比と95%信頼区間を示しております。この解析から、タバコに対するばく露量 と、イレッサの治療によりベネフィットを得られる可能性の間に関連性があることが示 唆されています。 ☆スライド  喫煙状況に関するデータをまとめると、ISEL試験の結果より、東洋人の喫煙経験 なしの患者において、イレッサにより大きな生存期間に関するベネフィットが得られる ことが示されています。東洋人の喫煙患者では、タバコに対するばく露が増えるに従 い、ベネフィットの程度は小さくなるものの、やはりイレッサによるベネフィットが得 られることがわかりました。  バージさんに代わっていただき、このプレゼンテーションの最後の部分をお願いした いと思います。 ○参考人  ISELの安全性のデータに関し、現在解析は継続中です。しかし、我々はこの試験 の中で間質性肺疾患に関し、特に注目しました。というのは、この間質性肺疾患が日本 で特に問題となっているからです。この試験の対象患者全体における間質性肺炎の発現 率は低く、イレッサ投与群とプラセボ間で差は認められませんでした。一方、東洋人患 者群では、発現率は若干高い値を示しましたが、イレッサ投与群とプラセボ群間での差 はありませんでした。プラセボ比較盲検試験から得られたこれらのデータより、今回の 試験対象患者においては、イレッサにより間質性肺疾患の発現率が上昇することは認め られませんでした。 ☆スライド  また、当局からの要請により、アストラゼネカでは日本において、前向きの無作為割 付第III相試験を実施しております。対象患者は、1または2レジメンの化学療法で効 果が得られなかった、進行性非小細胞肺癌患者です。この試験では、イレッサとドセタ キセルを比較しており、主要評価項目は生存期間です。 ☆スライド  この試験は、日本の33施設で実施されており、昨日の時点において244例の患者が登 録されております。この試験からのデータは、2007年半ばぐらいに得られるものと予測 しております。今回のISEL試験のデータに関しては、この第III相試験の治験担当 医の先生方にも結果をお知らせしております。先生方からは、患者の組入れに関し、積 極的なご支持をいただいております。 ☆スライド  全体のまとめですが、ISEL試験では特に日本の施設からの患者は登録されません でした。イレッサ投与群の患者においては、生存期間に若干の改善が認められました が、対象患者全体においては、統計的有意差が得られるほどではありませんでした。し かし、当初より予定しておりました東洋人患者におけるサブセット解析において、生存 期間に関しては臨床的に意味があり、かつ統計的に有意な差が認められました。この患 者群における有効性は、いままでに公表されている東洋人、アジア人及び日本人の患者 のデータと一貫した結果を示していると考えられます。また、喫煙状態は治療結果の重 要な予測因子となっております。喫煙経験の全くない患者が最大のベネフィットを享受 することができることは、はっきりしました。ただ、喫煙者の患者においても、イレッ サにより生存のベネフィットが得られるのですが、そのベネフィットの程度がタバコに 対するばく露量が増加するに従い低下することがわかっています。また、イレッサによ り対象患者群全体、または東洋人患者においても、間質性肺疾患の率が増大するとの確 証は、試験からは得られませんでした。 ☆スライド  ISEL試験のデータですが、データの解析はまだ続行中です。本日は予備的な解析 結果をお見せしました。最終データは近い将来に得られる予定で、データが得られたら 3月に当局に報告したいと考えております。ISEL試験では、日本での治験施設から の患者は参加しておりませんでしたが、東洋人におけるデータは我々にとって励みにな る結果であったと思います。今回得られたデータですけれども、現在日本で認められて いるイレッサのベネフィット/リスク比を側面からサポートする内容であったと考えら れます。  これでプレゼンテーションは終わりたいと思います。ご清聴どうもありがとうござい ました。ご質問がありましたら、喜んでお答えしたいと思います。 ○松本座長  ありがとうございました。こちらから質問を出しているものに対して、先にまとめて 返事をいただきたいのですが、よろしいでしょうか。 ○参考人  それでは厚労省から前もっていただいた照会事項に関して、簡単に我々からの回答を ご紹介申し上げます。 ☆スライド  最初は有効性に関する照会事項です。  東洋人かつ非喫煙者のサブグループで生存に対する効果が示唆される成績となってい るが、その理由として本サブグループでイレッサが効いているために群間差が出ている 可能性の他に、プラセボ群の生存期間が他のサブグループ(東洋人かつ喫煙者及び非東 洋人かつ非喫煙者)といったグループですが、このようなプラセボ群に比し短いことの 影響が大きい可能性も考えられる。本サブグループでプラセボ群の成績が悪いことにつ いて合理的な理由があるのか、説明すること。 ☆スライド  まずこの照会事項の1に関する我々の回答は、東洋人のサブセットで認められたポジ ティブな効果は、プラセボ群における効果が不良であったことが原因ではありません。 ☆スライド  まず、生存期間に関してですが、東洋人及び東洋人以外のプラセボ群の患者において 生存期間は同様でした。 ☆スライド  そして、またさらに、東洋人患者のサブセットの中で見ても、生存期間は喫煙者、あ るいは非喫煙者のプラセボ群の患者の生存期間と同様でした。 ☆スライド  2番目の照会事項です。  上記指摘1に関して、本サブグループの症例数は141名であり、イレッサ群の割付比 が1:2なので、プラセボ群の被験者は40〜50例程、イレッサ群では90〜100例程と推 測されるが、本試験はBest Supportive Careの対象となる末期の患者を登録したもの で、患者間の背景の差が著しく大きい試験であり、予後因子の違いで、大きく予後が変 わり得る。という状況を考えると、数十例規模の群間比較では、予後に大きく影響を与 える因子の偏りによって生じる問題が回避できない可能性がある。このことから、以下 の2点について回答すること。  (1)無作為化にあたって、「腺癌/腺癌以外」「喫煙/非喫煙」など、重要な因子は 群間で偏りが生じないように均等に割り付けられるように対策がとられているものと考 えるが、具体的な割付方法を試験実施計画書に基づき説明すること。(2)実際の割付け について、サブグループごとの背景因子の集計表を示すこと。(3)上記(2)を踏まえ、サ ブグループ間及びプラセボ−イレッサ群間で背景因子の構成割合、偏りの有無がなかっ たかについて説明するとともに、交絡の影響(背後にある見えない変数の影響)を排除 するように解析した結果を提示すること。 ☆スライド  この照会事項の2に関する我々の非常に簡単なまとめた回答です。公表したとおりの 方法で無作為割付けをしています。 ☆スライド  これからいくつかスライドを見ていただきますが、そのスライドからわかりますよう にベースラインのさまざまな因子において、臨床的に意味のある重要な不均衡は認めら れていません。 ☆スライド  このグループにおいては東洋人、東洋人以外のグループを見ると、十分にバランスが とれていることがわかります。 ☆スライド  また、統計解析においては、ここに発表した解析で全く偏りが生じないようにという ことで、すべての重要な予後因子に関しては調整をかけてあります。 ☆スライド  3番目の照会事項です。  奏効率、すなわち腫瘍縮小効果について、「東洋人/非東洋人」「喫煙/非喫煙」等 のサブグループごとのデータを提示すること。  これはご要望に応えた形で、このレスポンスに対するデータを示しています。これは 奏効率に対するデータです。 ☆スライド  4番目の照会事項です。  副次的評価項目であるEGFR発現とEGFR遺伝子の変異に関して、調査の手順と 具体的な検査の内容を詳細に説明するとともに、実際に調査の対象とされた患者の数に ついて、「東洋人/非東洋人」「喫煙/非喫煙」等のサブグループごと及びそれぞれの プラセボ群/イレッサ群ごとの数を示すこと。 ☆スライド  まず最初に、EGFRの分析については現在進行中です。結果が出るのは3月と我々 は考えています。 ☆スライド  安全性に関する照会事項の1です。  東洋人におけるリスク・ベネフィットを評価する上で、生存期間という有効性の観点 とともに、副作用及び副作用関連死の発生状況という安全性の観点からのデータが不可 欠である。CROにおいて試験全体について安全性の解析を実施中とのことであるが、 有害事象が見られた個別症例(少なくとも死亡症例)が社内の有害事象データベースに 集積されているのであれば、そのデータをもとに各サブグループにおける副作用発現状 況や死因についてある程度は確認可能と考えるので、それらをもとにサブグループ間の 安全性を比較した上で、特に東洋人における安全性について説明すること。 ☆スライド  これは予想どおりですが、このスタディに参加したほとんどの患者が、何らかの有害 事象を経験しています。また、さらにイレッサがアクティブな薬剤であるということ で、イレッサ群において、この治験医としては薬剤関連のイベントであると考えた例が イレッサ群で多くなっていました。 ☆スライド  また、東洋人のサブセットで見ていっても、両群においてこの有害事象の頻度は高く なっていました。また、さらにイレッサ群においては、治験医による評価によって、薬 剤関連であると報告された有害事象も多くなっていました。また、さらにイレッサ投与 群においては有害事象による投与中止の例がやや多くなっていました。 ☆スライド  また、全体の対象群を見ると、ILDに関連するイベントの発現率は低いということ がいえました。また、東洋人群においては、このILD関連のイベントの発現率がやや 高くなっていました。しかし、イレッサ投与群とプラセボ投与群の間において、このよ うなイベントの頻度に差は認められませんでした。 ☆スライド  安全性に関する照会事項の2です。  前化学療法に忍容性のなかった患者のサブグループでは、試験期間全体を通してみる と群間で統計学的に有意差はないものの投与開始後4〜5カ月の間はイレッサ群で死亡 が多い状況にあるが、この理由について説明すること。その際、少なくともイレッサ 群、プラセボ群それぞれにおける死亡例の死因を示すとともに、イレッサ群で治療関連 死(副作用死)が多くなっていないか、説明すること。  安全性に関する照会事項2に対する我々の回答は、全追跡期間を見ていくと、直前の 化療に忍容性のなかった患者において、生存期間の差は認められませんでした。 ☆スライド  ケモセラピー、化療に対して忍容性を示さなかった患者群において、イレッサ群でも プラセボ群でも、このベースラインにおけるバランスは十分にとれていました。  まとめです。直近の化療に対して忍容性がなかったイレッサ投与群において死亡数が 増えることはありませんでした。むしろプラセボ群のほうが死亡数は多かった。また、 全対象群においても東洋人のサブセットにおいても、治療関連死亡数には差はありませ んでした。また、このような患者に関する具体的な詳細については、3月に厚労省に提 出します。ご清聴ありがとうございました。 ○松本座長  どうもありがとうございました。 ○事務局  指摘事項の安全性のNo.2で、利用となったデータをお示しいただければと思います。 ○参考人  私がいま申し上げた回答の基になっているデータを示せということでしょうか。 ○事務局  私どもがこのNo.2の指摘した基になったデータということで、いま委員の先生方の お手元に配られている資料集では53と書いたスライドになります。いちばん最後のスラ イドを映していただけますでしょうか。 ○アラン・バージ氏  このスライドでよろしいでしょうか。 ○事務局  それではありません。もし、スライドでなければ、委員の先生方はいちばん最後の53 番のスライドを見ていただくと、右側の「Intolerant」と書いたグラフの青い線のほう が、投与から初期の段階でグラフが下のほうにいっているというようなことに基づいて こういう指摘事項を出しているという状況です。 ○参考人  ご質問をどうもありがとうございました。私のほうからお答えできると思います。最 初に、ここに示しているサブセットにおいては、試験全体の対象になった患者の10%し か入っていません。また、この曲線が最初の数カ月で分離しかけているように見えます が、このようなカーブの分離、曲線の分離でありますが、これは統計的には有意ではあ りませんでした。この2種類の治療群の統計的な差を最もよく見ようとすれば、ハザー ド比です。この場合のハザード比が1と出ていますので、ここの場合はプラセボ群とイ レッサ群の追跡期間においては差はないことになります。 ○松本座長  どうもありがとうございました。アストラゼネカ社の説明に対する質疑をこれから行 いますが、それを行った後で、本試験に基づく安全対策措置の必要性、この試験の詳細 な解析を行うにあたり、解析項目としてさらに指摘しておくべき事項について議論した いと思っています。したがって、これを念頭に置いて、アストラゼネカ社に質問があれ ばお受けしたいと思います。 ○貫和委員  ISELの試験の内容はよくわかりましたが、2つ質問があります。第1点はスライ ドの17です。アドバース・イベントはイレッサとプラセボで差がなかったというスライ ドです。これに対して日本では2つデータが出ています。1つはレトルスペクティブな WJTOGの約2,000例のデータ、もう1つはアストラゼネカ社ご自身で調査なさった プロスペクティブデータ約3,300例、トータル5,000例を超えるデータがあります。これ らでは明らかに高いILD発生率と死亡率のデータが出ています。このディスクレバン シーはどうお考えになるのかご説明ください。 ○参考人  先生がおっしゃった試験は私どもも十分に承知しております。しかし、この2種類の 試験を直接比較することはできません。というのは、ISELにおいては東洋人が対象 になっていますが、日本人は全く入っていません。しかし、非常に興味深いことに、こ ういった盲検の試験でプラセボ群において東洋人を対象にした場合、ILDのリスクが 上がっていないということは非常に興味深いと思います。 ○貫和委員  その場合、アドバース・イベント、特にILDを判定したのは日本では専門医です。 このスタディにおいて誰がILDを判定したのですか。 ○参考人  診断をしたのは実際にインベスティゲーターということですが、それはWHOが示し ている標準的な基準に基づいて診断をしています。そして、すべての有害事象と同等の 扱いをしています。 ○貫和委員  この違いは重要であると指摘しておきたいと思います。2番目の質問に入ります。2 番目はスライド18のスタディです。このスタディがあることは厚労省が追跡のスタディ としてご指示なさったことも存じていますが、昨年5月にEGF受容体に特異ミューテ ーションの問題が出た後の対応についてとりあげたい。このスタディに対してのインフ ォームド・コンセントに問題があるのではないかと思います。というのは、ゲフィチニ ブの効果がある方はミューテーションがある方だと、プレリミナリーなデータが出てい ます。そうすると、先ほどアストラゼネカ社がおっしゃったミューテーションの有無と 薬効に関するデータがサマライズされるのは3月であると。それまでむしろエンロール をストップするべきではないか。さらに患者にインフォームを加えてスタディを再開す る、それが筋ではないかと思います。 ○参考人  確認なのですが、そのISELスタディでのミューテーションデータが出るまでです が、日本のフェーズIIIをとりあえず一旦中止すべきだというご指摘なのでしょうか。 ○貫和委員  これは前向きですから、少なくとも私が現場で患者に説明するときに、ミューテーシ ョンに対して新たな知見があるということを説明せずに、患者をエンロールするのはエ ティカルに問題があると考えます。そういう点からアストラゼネカ社はこの問題に対し て、どの時点で患者に説明できるかということを、むしろ我々現場に指示をしてもらい たい。 ○参考人  できるだけいい形でお答えをしたいと思います。ISELのデータが出たら、ただち に日本における同意文書の取得については変更を加えていきたいと思っています。ミュ ーテーションに関してはもっと事情が複雑です。日本と欧米で行われたIDEALスタ ディのデータの分析をやっています。患者からサンプルを取って、当然解析、分析をし たわけなのですが、その結果としては、イレッサ群においてミューテーションがあった ということと、効果があったということに関しては相関が見られませんでした。ミュー テーションの解析に関しては、ISELのトライアルで大体600ぐらいのサンプルが得 られると考えています。その解析が5月に終了します。こういった分析をまずしていか なければいけないと思っています。実際にその分析結果により、ミューテーションとレ スポンスアウトカムの間に相関があるということがわかって、初めてこのICやスタデ ィのデザインなどを変更することを考えていかなければいけないと思っていまして、現 時点ではまだ時期尚早と考えています。 ○松本座長  これは大変重要な問題ですが、本日の趣旨ではないので、時間があれば後ほど取り上 げさせていただくということでよろしいでしょうか。 ○貫和委員  先ほどのアイディアルの結果が出ているそうですがが、それは公表されていません。 論文で公表されていて、ミューテーションがあって、効果があったというのは、先ほど の6つの論文を集めていただくとわかると思いますが、32例のミューテーションがあっ て、28例がゲフィチニブで効果があった。むしろこれは変異がある例に有効であると考 えざるを得ないので、こういうことも情報としては加えてもらいたいと思います。 ○参考人  先生がおっしゃいました発表文献については十分に承知しています。ただ、我々がア イディアルスタディで実際にミューテーションの有無を検討したのは14例のみです。そ の中で効果があったのは7例だけでした。マサチューセッツ総合病院からこのミューテ ーションに関してはいちばん最初のデータが出されたわけですが、我々のほうとして は、このアイディアルのミューテーションのデータについては、マサチューセッツ総合 病院と共同で、できるだけ早くデータを発表していきたいと思っています。 ○北澤委員  ISEL試験結果についての疑問の1です。先ほどのお答えで、肺の副作用の発現率 に関して、日本での結果とここでの結果が違うことについて、日本人が含まれていない ので直接の比較はできないと答えられました。では、生存率は東洋人ではいいというよ うな先ほどの説明でしたが、効果については東洋人を日本人に当てはめられるのでしょ うか。この試験には日本人が含まれていないので、東洋人での結果を出されたのだと思 うのですが、東洋人を日本人と置き換えて考えていいのかについて、教えていただけれ ばと思います。 ○参考人  私どもとしては、このISELスタディに関しては日本の施設が全く入っていないこ とは十分認識しています。したがって、この結果をいまご指摘のとおり、直接日本人に 当てはめることはできないと考えています。しかし、1点申し上げたいのは、それ以前 に行われていたフェーズIIの東洋人を対象にしたスタディにおいて、奏効率に関して は、日本人における奏効率と非常に類似していました。さらに、ISELにおける東洋 人だけを見てみると、そういった東洋人における結果というのは、以前に東洋人を対象 にして行われた結果と非常によく一致していました。 ○堀江委員  肺への副作用の問題は私たちにとって非常に重要な関心事です。スライド17に示され たデータを見ると、CTCグレードで判定されていますが、イレッサとプラセボにおけ る差がほとんど見られないと思われます。このイレッサと、プラセボ群のCTCグレー ドをどの時点でチェックがされているのか。経過中に新たに陰影が出てきたという、画 像上の変化があって副作用ととらえているのでしょうか。 ○参考人  無作為割付けをする前に、肺の検査はやっていません。 ○堀江委員  そうすると、ILDとして判定されたのは、両群ともに、ある時点での所見に基づい ての判定であって、新しく陰影が出現したという確認はされていないということです ね。 ○参考人  おっしゃるとおりです。 ○堀江委員  急性の間質性肺炎が発現する頻度が非常に高いということから、警告としては症状、 あるいは聴診所見を含めて経過を注意深く観察することを強調したと思います。画像だ けでなく、症状、聴診などに変化があることへの気付きが非常に重要だと思いますが、 このILD判定にそのようなものは含まれているのでしょうか。 ○参考人  症状スコアを対象として入れていますが、この症状スコアに関するデータの解析はま だ済んでいません。症状は我々が診ていくべき重要な点だと思っています。 ○堀内委員  いまのお話で日本人がISELの試験に入っていないのでいろいろ複雑にしていると 思うのですが、すでに承認されていた日本の患者がなぜ試験にエントリーされていない のでしょうか。 ○参考人  まず、ISELトライアルというのはFDAの承認条件としてフェーズIVとして行う という種類の試験でした。その直前にイレッサの承認が日本で入れられたわけです。ま た、日本においては別のフェーズIIIのトライアルを要求され、これを我々はやること になりました。これはイレッサとドセタキセルを比較するという試験です。当然統計的 なパワー、十分な検出力が必要です。日本人の患者だけを対象にして、十分な検出力が 求められています。ISELトライアルで日本人を入れてサブセットとしてとらえるよ りも、こういった日本単独のフェーズIIIのトライアルをやるわけですから、そちらの データのほうがはるかに強力であろうと考えたわけです。 ○参考人  もう1点付け加えますと、承認時にこの薬剤に関してはブリッジング手法を使って申 請させていただきましたが、承認時には、この薬剤はブリッジングは成り立たないとい うコメントを当局からいただいていました。すなわち、臨床試験を実施するにあたって は、やはり日本人でしっかりしたエビデンスを出すことを第一と考えていましたので、 日本での承認時に求められたドセタキセルとの第III相試験を実施することがいちばん 大切だという考えのもとに、このISELの試験には参加せず、私どもの試験を実施し たという経緯になっています。 ○堀内委員  その治験のエントリーが始まったのは発売されて1年後ですね。ですから、ただちに スタートしていないのはどういうことですか。 ○参考人  いちばんの大きな理由としては、今回の間質性肺炎の問題があり、まずは患者の安全 性を確保することを第一としたので、私ども、弊社の専門家会議として間質性肺炎をま ず先生方にご検討いただく、そのことを先に進めましたので、フェーズIIIの開始が若 干遅れたということです。 ○堀内委員  その話をするとだいぶ長くなりますが十分な答えにはなっていないだろうと思いま す。間質性肺炎の問題でしたら、それに対してきちんとした全症例調査をするとか、分 母が明らかになるような調査をすべきだと思うのですが、それがただちに行われなかっ たのは、指摘事項による調査が遅れた理由にはならないのではないかと思います。 ○北澤委員  いまの質問に関連するのですが、日本においては現在イレッサ対ドセタキセルでフェ ーズIIIが進行中なのですが、今回のISELの結果、プラセボとイレッサの間で生存 期間に有意差がないというプライマリーエンドポイントから考えると、日本においても まずプラセボとの比較が必要になるのではないかと思うのですが、その辺りのお考えは いかがでしょうか。 ○参考人  確認ですが、いまの質問の趣旨は、日本でもう1本プラセボコントロールスタディが 必要だとおっしゃっているのでしょうか。 ○北澤委員  もう1本かどうかというのはよくわからないのですが、やはり日本においての生存期 間延長の効果をきっちりと見るためには、プラセボ比較試験をやったほうがはっきりわ かりやすいのではないかと感じたものですからお尋ねしました。 ○参考人  おっしゃるとおりだと思います。プラセボを対象にするというところだけが違って、 ほかは全部イコールということであればそうだと思います。 ○松本座長  よろしいですか、確かに必要だと思います。 ○審査管理課長  審査を担当する者からコメントです。確かに先生方のご指摘、ここにいらっしゃる方 はお気付きだと思うのですが、プラセボコントロールトライアルをやったほうが、デー タの解釈やいろいろなものを評価する場合に、すごく有益なのです。これは後ほど統計 専門の竹内委員からFDAの経験も踏まえたコメントをいただければと思います。実際 問題として、日本において一定の効果が認められた薬と言われている薬とプラセボを比 較して、そういう試験が医療機関の先生方、患者の協力も得て、場合によっては何年も やるわけです。そういう試験が実際にできるのかどうかという問題もあり、非常に難し いところではあります。その必要性については私どもとしても理解はするのですが、実 際に実施を条件にやるかとなると難しいところがあります。 ○松本座長  ほかにございませんか。時間も経ちましたので、アストラゼネカ社に対する質問は終 わりたいと思いますが、竹内委員どうぞ。 ○竹内委員  今日の発表を聞きまして、すべてコックスリグレッションという統計解析をされてい るのですが、この解析の結果が非常にセンシティブで、頑健性がないということが知ら れています。特に東洋人のところで350例で6つの因子が調整されている。それで2つ プラセボとこれが入って128のセルがあって、そこからのコックスリグレッションで、 頑健性があるとお考えですか。いまなぜそのポイントを突いたかという根拠は、53頁の ハザードレイショーが非常に大事だとおっしゃったのですが、これはプロポーショナル ハザードを基にしたところで計算されており、このグラフを見た限りでは、全然プロポ ーショナルハザードはクロスしているので統計的に言ってもそれは適当ではない、それ をそのまま発表され、それで有意差がないというやり方は、あまりよくないのではない か。ですから、それを使われるときには頑健性、いわゆるコックスリグレッションを使 う場合には、例えばツーアンドウエイのロバステーエストメイトですから、そういうの を示していただいて、出てきた結果に頑健性があるという話で、東洋人に有効性がある という話ならわかるのですが、全然出てきた結果の頑健性が示されないままに、結果だ けが走って解釈されるということは私は非常に不安です。 ○参考人  ご質問ありがとうございました。私から少し強調させていただきます。全くアジャス トメントをやらずに再解析をやった場合、具体的にはログランクテストをやりました。 それでもイレッサ群とプラセボ群の間には差はなかったのです。いずれにしても私たち はこういったデータはかなり確実なものであると思っています。最終的なデータは、3 月に厚労省に提出させていただきたいと思っています。 ○竹内委員  グラフの結果は東洋人のところでも、例えば非喫煙者と喫煙者の間で出てくるという ことで理解してよろしいですか。もし違っている場合ですと、交絡因子があるので一緒 にはできないと私は考えるのですが、その辺の考察はされているのでしょうか。 ○参考人  どのスライドの事をおっしゃっているのか確認させていただけますでしょうか? ○竹内委員  13頁のスライド26、いまこの席で問題になっているのは、東洋人の患者に対してイレ ッサが効いているかどうかということが議論になっています。東洋人の患者の中で非喫 煙者と喫煙者というところで、同じように東洋人の患者ということではリポートされて いますが、それぞれのセルにおいても非喫煙者のオリエンタルの方がハザードレイショ ーが0.38、もう1つのほうが0.87です。例えばログランクをやると0.9ぐらいに上がる と思います。そうすると、そこのオリエンタルのスモーカーの方がノンオリエンタルの 方とほとんど同じだと、データを解析したらわからないですが、そういうような考察を された上で、東洋人の方に効きめがあるとか、そういう発表をされるのはいいと思いま すが、ただ単にコックスリグレッションでやりました、その結果はこうですというやり 方は、そのロバスト性を考えられてから発表していただかないと、非常に間違った結論 にいってしまうと思います。東洋人に関しては128のセルがあって352の患者しかいない ので、出てくる結果は非常に不安定です。 ○参考人  確かにおっしゃるとおりだと思います。解析そのものが本当にロバストであるかどう かということは非常に重要な点だと思っています。したがって他の方法、ログランクテ ストなどを使って、我々の結果がバリッドであるかどうかというそのバリディティを検 証することは必要だと思っています。  我々が実際にデータを報告するときに、ログランクテストとともにコックス分析も使 って両方を1対1で並べた形で出したいと思います。そして最後、ISELのスタディ においてスライド13で示したデータをログランクテストで再解析しても、東洋人におい て有意差が出ます。 ○参考人  私もデータ解析はしました。ただ、本日はデータをお示しすることはできませんでし たが、その点、確認はしておりますので、後ほどお示しさせていただきます。 ○竹内委員  東洋人の方で、たばこを吸われる方と吸われない方で奏効率は同じでした。先ほど青 には囲ってなかったですが、そうすると、何か矛盾したような気がしますが。たばこを 吸う吸わないというのはあまり関係ないのですか。 ○参考人  東洋人を対象にしてノンスモーカーとスモーカーの間で奏効率に差はなかったとおっ しゃっている。スライド14番に奏効率が示してありますが、これは喫煙者と非喫煙者を 別に示しています。アストラゼネカ社の回答を書いた形でお出ししましたが、そのドキ ュメントを見ていただくと、テーブル4、表4に当たると思います。奏効率は東洋人の ノンスモーカーのほうがスモーカーに比べて高くなっています。 ○竹内委員  スライド36番で、オリエンタルとオリエンタルでない方で喫煙者、非喫煙者ではレス ポンスレートは同じくらいですね、間違っていました。 ○ケビン・キャロル氏  ご指摘理解致しました。 ○松本座長  いろいろ難しい質問で、なかなかすぐには答えられないところがあると思います。時 間も結構経っていますので、アストラゼネカ社に対する質問は、後ほど安全対策の必要 性のところでも出てきますので、そのときにまた改めて議論させていただくことにし て、この辺で一応打ち切らせていただきます。どうもありがとうございました。次に、 本日の本題に入ります前に、実際の医療現場における、本剤の治療成績などに基づいた 経験について、国立がんセンター中央病院副院長の土屋先生からお話を伺いたいと思い ます。 ○土屋委員  国立がんセンターの土屋です。本来は胸部外科医ですので、自分で投与しているわけ ではありませんが、中のチームと一緒にやっていますので、現在公表できる範囲で奏効 率と肺の障害について、私どもの現場での経験をお話させていただきます。多くの皆様 は患者の反応その他はご存じだと思いますが、1例だけ症例をお見せして、どういうも ので判断しているかということをお見せいたします。                 (スライド開始) ☆スライド  症例は55歳の男性、腺癌でIV期、進行肺癌です。全身倦怠感、咳ということで、たば こは1日45本、25年間という大変なヘビースモーカーです。25歳時に肝炎、43歳時に胸 膜炎を患っています。転移は脳と骨にすでにあります。シスプラチンを含む前治療が行 われて、その後肺内転移が増大するということでゲフィチニブを開始しました。 ☆スライド  左が投与前、右が投与1カ月後です。効果が出たのはもっと早い時期ですが、ご覧に なっていただいてわかるのは、横隔膜の位置が非常に下がっているということで、呼吸 困難感がなくなって非常に楽になる。右の肺に、特に中葉を中心に、下肺野になります が、消退しているのがおわかりいただけるかと思います。 ☆スライド  同じ時期のCTをご覧いただくとわかると思いますが、いちばん主たる腫瘤影が縮小 している。その他の肺内転移も、かなりの部分が消失しているということがおわかりい ただけると思います。自覚症状はドラマティックに改善しているという状況です。 ☆スライド  したがって、これをまとめますと、投与約4週後で、原発巣が縮小し、転移巣はほぼ 消失、咳・倦怠感・骨転移の痛みは消失、全身の紅斑・口角炎、足の指の爪の周囲炎が 出現しましたが、特に治療は要しなかったということです。2年4カ月後の現在、効果 が継続し、継続投与をしている。このような症例を多々経験するので、実際には、先ほ どプラセボとのコントロールスタディというようなことがありましたが、患者に同意し ていただくのは難しかろうというのが、私どもの現場での印象です。 ☆スライド  これらをまとめて、いまオンゴーイングのスタディの症例がありますので、個々のも のは避けますが、時期を2002年7月から半年ごとに見ていくと、症例数はかなりバラつ きがあります。3番目の列で、奏効率が出ております。これは33、34、32、32と、最近 6カ月のものは、まだ評価ができておりませんが、総じて3分の1の患者に奏効が認め られる。これは、実地臨床のものもありますので、主治医による判定も含めております が、大体3分の1の方に効果が認められます。  ILDの発症は、5.5、5.2、4.4、5.1と、いちばん最近のものは、まだ全部エバリュ エーションできませんので、この前の4時期では、あまり大きな変動はない。総じて4.4 %ということです。ILDによる死亡は3.6、5.2、0、1.3、1.4ということで、最後の 半年のものは評価できませんが、一応8例、2.2%というのが、私どもの現場の状況で す。 ☆スライド  いま現在、当院では6つのスタディが行われています。いちばん下のが、先ほどご紹 介のあったフェーズIIIですが、当院の規模としては、大変症例の集積が少ないように思 われますが、15例という状態です。これは、患者の同意を得るというのが困難なこと と、4週間の入院ということで、なかなかタイミングが合わないというようなことがあ ります。  以上が、いまの現場の状況ですが、先ほど申し上げた、呼吸器外科という観点から1 つだけコメントさせていただくと、4週間入院というのがかなり障害になると申し上げ ましたが、こういうILDの早期の診断に、果たして入院が本当に役に立ったのか。私 ども外科では、術後にやはり間質性肺炎を診ることがあるのですが、現在、外科の術後 の入院期間は、早い方では術後4、5日。通常で7日から10日で、皆さん退院なさいま す。その前後に発症があるわけです。私ども、以前から早期離床に努めていて、翌日か ら廊下を歩く、食事を椅子でするというようなことをしておりますが、これは、運動負 荷をすることによって呼吸困難感を早く見つけるということを、私ども胸部外科では考 えております。したがって、入院中に、いくら廊下を歩けて、あるいはトレッドミルの ようなものを用意しても、やはり家に帰って日常生活に戻ったのとでは運動量が違うと いうことで、日常生活へ戻ったときのほうが、いわゆる運動負荷があるために、呼吸困 難感が早くわかるというような解釈をしておりますので、その辺、薬の場合にはどうな のかというのが、我々外科から見ると、ちょっとこの「4週間の」というのが、どれだ けの効果があるか、むしろ、アドヴァースに働いている面はないのかというような感じ をもっております。 ○松本座長  ただいまのお話について、どなたかご質問、コメントございますか。ないようでした ら、次に移らせていただきます。続いて貫和先生に、イレッサに関する論文について、 資料のご説明をお願いします。 ○貫和委員  時間が迫っているので、簡単にご説明します。いま肺癌の治療は、非常にエキサイテ ィングな状況にありまして、こういうエキサイティングな状況の薬剤を開発なさったア ストラゼネカには、本当に敬意を表するのですが、要するに、適用をクラリファイして いただきたいというのが、私の希望です。この論文の1番、2番、4番、これがひとま とめになりますが、ここで報告されたことは、第1点としてEGFRのリン酸化酵素の ドメインに、同じような変異が集中している。その変異は、肺癌組織だけで、全身は正 常なわけです。日本人にもアメリカ人にも、同じ変異が見つかるけれども、どうも日本 人に多いようだという内容です。  2点目は、変異があると何が起こるか。これは、癌細胞におけるシグナルの伝達とい う非常に重要な問題ですが、そのシグナルが伝わりやすくなる、アクティベーティング ミューテーションであるというのが2点目です。  3点目は、なぜゲフィチニブがよく効くのかという問題に対して、ゲフィチニブに対 して変異あるEGF受容体リン酸化酵素では親和性が10倍ないし100倍高くなる。すなわ ち変異の存在がゲフィチニブが特異的に効くターゲットになるのではないかと考えられ る点です。  3番目、5番目、この論文は、アクティベーティングミューテーションが、実際に細 胞にはどういう影響を与えるのかということを解析した論文で、結局癌細胞が不死化に 対して能力を獲得していることを示しております。いままでこういう知見がありません ので、非常に興味のある報告です。通常の抗がん剤、あるいはディスシグナルでは死な ないというデータも含まれております。  6番目、7番目、これは12月に出た最新のデータですが、日本におけるEGFR受容 体のミューテーションの頻度がどの程度かということで、愛知がんセンターの手術切除 例で解析されていて、肺腺癌においては、224例中110例、(49%、)非腺癌は53例中1 例にミューテーション。  7番が台湾のデータで、ほぼ同じです。腺がんにおいては、69例中38例、(55%)に ミューテーションがある。非腺がんにおいては、32例中1例のみです。先ほども少し追 加しましたが、これらの論文にあるゲフィチニブの効果があったという数字を足し合わ せると、ミューテーションがある32例中28例でエフェクティブである。変異があると85 %前後、80%から90%前後有効性が期待できる。 ○松本座長  ここでお断わり申し上げます。本当はこの会は12時までだったのですが、司会の不手 際によって大幅に遅れております。申しわけありませんが30分ほど、12時30分を目途に 延長させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。  それでは、ただいまの先生のお話に、どなたかコメント、ご質問ございませんでしょ うか。ないようでしたら、本日の本題に移らせていただきます。本試験に基づく新しい 安全対策措置の必要性と、ISEL試験の詳細な解析を行うに当たりまして、解析項目 として指摘しておくべき事項について議論をお願いしたいと思っておりますが、本日欠 席されている委員から事前にコメントが寄せられていれば、事務局のほうから簡単に紹 介していただけますか。 ○事務局  それでは事務局のほうから、本日欠席の栗山委員、吉田委員からコメントが寄せられ ておりますので、簡潔にご紹介させていただきます。委員の先生方におかれましては、 お手元の「ゲフィチニブ検討会による事前にいただいたご意見」というものをご覧いた だければと思っております。栗山委員ですが、本結果について、プライマリー・エンド ・ポイントではないのですが、サブグループ・アナリシスにおいて、東洋人で、同剤の 生存に対する有効性が明らかにされている。一方、本邦で問題になった肺毒性について は、全症例でも、あるいは東洋人に限定した場合でも、プラセボを上回る比では認めら れない。そうしたことから、初めてのプラセボを用いた大規模な比較試験において、肺 毒性が認められなかった事実は極めて重要である。こうしたことから、患者の大半を東 洋人が占める本邦においては、有効性、安全性の両面から、ゲフィチニブの有用性が確 認された治験成績と言えるのではないか。よって、現行の効能効果の適用を継続すべき である。  ただし、今回の結果は、サブセット・アナリシスによる結果ですので、現在実施中の 第III相比較試験によりきちんと確認する必要がある。こうしたコメントをいただいて おります。  吉田委員のほうですが、まず安全性についてということで、本日もご紹介したプロス ペクティブ調査における治療関連死、例えば2.5%というものについてですが、がんセ ンターにおける肺癌化学療法の治療関連死率2.7%と同等であり、決して高率とはいえ ない。ですから、この2.5%を危険水準と認定するということであれば、世界的なコン センサスからも大きく逸脱することとなり、結果として、今後のがん治療の進歩の大き な阻害要因になりかねないと述べており、、西日本胸部腫瘍研究機構における調査など を引用して、きちんと管理した状況下では、肺臓炎の発症率が3.2%、死亡率が1.3%と いった結果も出ており、むしろ他の化学療法よりも安全性は高いとさえ言える、とコメ ントされています。  有効性に関しては、先ほどの貫和先生からご紹介いただいた、変異に関する論文等に ついてご紹介があって、ただ、実際にEGFRの変異率と奏効率がなぜ相関するのか、 あるいは、EGFRの変異がどのような原因で生じるか、といったことについては依然 として不明であるので、また実際に腫瘍縮小を示さなくても、イレッサの利益を受け る、(長期不変)と書いてありますが、そういった症例が少なからず存在するというこ とから、現時点でEGFRの変異の有無のみで本薬投与の可否を決するのは、拙速にす ぎると思われるといったコメントがございます。  今後の対応ということでは、実現性を重視する意味で、臨床試験案が提案されてい て、非小細胞肺癌既治療例を高感受性期待群(EGFR変異があるもの、女性、非喫煙 者、腺癌など)と、その他の群に大別して、前者については、イレッサ単独のプロスペ クティブ・ワンアームトライアルを行い、その生存期間を明らかにする(ヒストリカル コントロールを用いて対比)、後者については、イレッサ単剤のプラセボコントロール トライアルを行う、ということを提案されておられます。  要は、イレッサの前者における生存期間が、これまでの常識的な治療成績を大きく凌 駕すれば、イレッサの有効性を担保し得ることになる、また、後者で試験群が勝れば、 高感受性期待群以外にもイレッサのメリットが示されることになる、といった提案が出 されております。 ○松本座長  それでは本題に入りたいと思います。まず、このISEL試験に基づいて、新たな安 全対策措置を講ずる必要があるかどうかということについて、ご意見をいただきたいと 思います。いかがでしょうか。先ほど、アストラゼネカ社との質疑において、相当いろ いろなことが明らかにされたわけですが、改めて、新たな安全対策措置の必要性につい て、ご意見を伺いたいと思います。  このたびのことで、新たな安全措置を講じる必要性はないというふうに理解してよろ しいでしょうか。もちろん、先ほどの質疑の内容がありますので、それを加えて。 ○堀内委員  いろいろなご意見があると思うのですが、間質性肺炎の発現率が、全体の5.8%あっ て、そのうち、罹患した患者の40%近くが死亡に至る。先ほどのデータでは、東洋人で はあまりそういう傾向が出ていないという報告がありましたが、日本においては、厳然 として死に至る人が出ているので、使用については、やはり厳密にコントロールする必 要があるのではないかとい思います。  特に、資料2にあるように、推定の累積患者数が直線的に伸びている。急性肺障害、 死亡率もほとんど変わっていないということが出ております。一方で、遺伝子変異との 関係で、EGFRに遺伝子変異がある場合には有効性が高いと、先ほど報告されたとお りですので、やはり、このような分子標的薬は、すべての患者に使われるという性質の ものではないと思います。これから、いろいろな分子標的薬が出てくると思われます が、その場合の考え方としては、一定の条件に合った人に使われるべきで、一般的な薬 と同じ考え方をすべきではないと考えます。  したがって、今回の場合は、現在の状況では、先ほどご報告があった遺伝子変異、東 洋人に多いというデータが出ているわけですし、いろいろな施設で遺伝子変異をチェッ クすることができるようになっているわけですので、遺伝子変異をチェックして、変異 がある患者に使うという方向にもっていったらいかがかと思います。一般的に、どのよ うな患者でも使えることが妥当だとは思いません。 ○松本座長  ほかにございますか。 ○北澤委員  私もいまのご意見と大体同じなのですが、分子標的薬と言われているにもかかわら ず、その標的となる分子の状態と無関係に承認されているのは、何だか理屈に合わない のではないかと思っていました。いまの先生のご紹介のように、遺伝子の変異につい て、いろいろなことがわかってきているので、その関連性をまずはっきりと検証した上 で、こういう患者になら使えるというふうに条件を絞ったほうがよいのではないかと思 います。  もう1つは、安全対策とは直接関係ないのですが、そもそも抗がん剤の承認におい て、現状ではフェーズIIで承認されるという仕組みになっていますが、このようなIS ELの結果を見るにつけ、やはり真のエンドポイントといいますか、生存期間の延長効 果というものを見て承認するような仕組みを考えるというのも1つではないかと感じま した。  例えば、何年か前ですが、脳循環代謝改善薬というのが日本にもありました。承認さ れて何万人もの人に使われていましたが、承認後にプラセボと比較試験をしたら、有効 性が認められなかったということで、承認が取り消されました。それから考えると、や はり、抗がん剤においても、承認するときの条件を考えることも1つ方法としてあるの かなと感じています。 ○土屋委員  いまの北澤委員のご意見は、2つとも確かにごもっともだと思うのですが、基本的に はちょっと両者とも時期尚早ではないかと思います。1つ目のEGFRの変異その他で も、やはり変異のないものでも効果がある、あるいはステイブルディジーズの割合がか なり高いので、現在までの研究成果で、いきなりバッサリ切ってしまうのはちょっと危 険ではないか。  承認のほうも、確かにフェーズIIIまでやって、生存までわかれば、私どもは大変あ りがたいのですが、先ほど挙げられた脳循環薬とは、やはり患者の病態というか、病気 の性質そのものが、放っておけば半年、1年で亡くなるというような病態の方が多いの で、やはりこれももう少し慎重に構えていく必要がある。  今回のスタディそのものについては、生存が変わらなかった、有意差がなかったとい うことが、明らかなエビデンスとして示されたのであって、安全性については、特に対 策を変えるというエビデンスは報告されていないと、私は考えております。 ○松本座長  貫和先生、いかがですか。 ○貫和委員  北澤先生、もう1人の方のご意見のとおりで、要するにターゲットが何であるかとい うのは、分子標的薬として先行するグリベックに関しては、慢性骨髄性白血病(CML )という診断名とターゲットが、たまたま合致していた。これは、bcr-ablという変異 融合蛋白がターゲットであったというわけです。  今回、非小細胞肺癌で肺腺癌のリン酸化酵素部分にあたる変異EGFR受容体そのも のがターゲットとわかった段階で、それをどう考えるのか。すぐ適用どうこうとは言え ませんが、患者はやはり不安になると思います。患者に対してどう説明するのかという ことは考えていただきたい。 ○松本座長  堀江先生、何か一言お願いします。 ○堀江委員  安全性については、使用が開始された当初、かなり多くの患者で、間質性肺炎を発症 し、そして亡くなられる症例が増えたという事実がありました。それに基づいて、いろ いろと解析をして、先ほど土屋先生から、4週間の入院の問題点を指摘されましたが、 早期に発見して、早期に副作用に対応するために入院して経過をみるようにしたと思い ます。呼吸器専門の先生方が対応していれば外来で経過をみることが可能かもしれな い。しかし、そうでない場合もあり得ますから、入院が原則となった背景がありまし た。堀内先生から指摘がありましたが、間質性肺炎が発現すること、そして死亡例があ るのは最近でも事実だと思います。ただ、症例の蓄積に伴って副作用症例は当初に比べ て減っていますし、発現頻度が大体安定したような比率で見られています。  したがって、安全性に対する勧告は、これからも十分に強調していく必要があると思 いますし、患者への対応も、注意深くおこなっていくことは当然です。そのようにして これからも経過を見ていくようにしてはいかがかと思いますが。 ○松本座長  下方先生、何かございますか。 ○下方委員  そもそも薬剤が臨床の場で使用されるにあたって、その薬剤の作用機序がはっきりし ていないままに使われるのは、非常にまずいと思うのです。この薬剤が出てきたときに は、非常に短絡的だと思うのですが、EGFRの発現が高い場合には多分効果が強いだ ろう、EGFRの発現が低いものには効果が弱いだろうということを多くの人が考えた と思うのですが、実際臨床の現場でそういう検索も併せて効果判定すると、必ずしもそ れがマッチしない。昨年になって、これはEGFRの変異の問題が大きくかかわってい るのではないかということが出てきたわけです。  実際、我々の検討でも変異が認められる人、あるいは欠失が依存する人たちでは効果 が強くて、そういうものがない人には効果が低いということがあります。しかしそれで 全部が説明できる現状ではありません。したがって、変異だけの問題で、この薬剤を適 用にするかどうかということは、まだ少し問題があろうかと思います。  そういう意味では、今まですでに言われているような、いろいろな効果を期待できる ような背景というのがありますので、そういう方たちも含めて慎重に対応していく。私 たちは、この薬剤を使う場合には、原則的に入院していただいて、文書で同意をとっ て、そして十分な説明のもとに治療を行っています。そういう現状では、幸い大きな副 作用は少なくて済んでいますので、やはり慎重な対応が必要ですが、一気に適応を絞り 込むというのは、患者にとっても選択の余地が減るわけですので、慎重に考えたほうが いいのではないかと思っています。 ○土屋委員  安全性の面で、先ほど堀江委員が強調されて、専門領域以外の医師が処方ということ をご指摘になりましたが、これは最も大きな問題だと思うのです。これは、安全性の面 で強調してもしすぎることはない。それが行われるということ自体がおかしいのであっ て、やはりそこを強調して安全に管理することが大前提であると思います。 ○松本座長  続いて、ISEL試験の詳細な解析がこれから行われるわけですが、その解析項目と して、指摘しておく事項、先ほども随分たくさん、いろいろと挙げられましたが、これ 以外に何かありましたら、ご発言をお願いします。もしあえて追加することがないので あれば、この辺で、ちょっと時間も過ぎておりますので、今日のこの会のまとめを行い たいと思います。  その場合に、とりまとめの議論を効率的に進めるために、まず事務局と竹内先生と私 と3人で、いまいろいろなご意見、先ほどの質疑応答を含めて出ました意見を参考に、 とりまとめの案を作らせていただきます。それを皆さんにお示しして、またご議論して いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ではそのようにさせていただきま す。  そういうことで、準備のために、5分か10分くらい休憩させていただこうと思いま す。                   (休憩) ○松本座長  どうもお待たせしました。資料の作成が済みましたので、検討会を再開いたします。 まず事務局から、資料の配布をお願いします。  それでは、まずこの内容を、事務局から読み上げていただけますか。 ○事務局  それではゲフィチニブ、ISEL初回解析結果に関する意見としての取りまとめ案を 読み上げさせていただきます。  1.現在までに得られている解析結果においては、(1)全症例を対象とした場合、 本剤投与群とプラセボ投与群との比較で、腫瘍縮小効果(奏効率)では統計学的に有意 な差が認められたが、主要評価項目である生存期間について、統計学的に有意な差は認 められなかったこと。 (2)東洋人を対象としたサブグループ解析及び非喫煙者を対象としたサブグループ解 析において、本剤の投与が生存期間の延長に寄与することが示唆されたこと が示されているが、現時点では解析結果の頑健性が確認できていないこと、副作用発現 状況を含めた安全性、上皮成長因子受容体(EGFR遺伝子の変異)、その他の評価項 目に関する解析が終了していない等本試験結果の日本における本剤の臨床的有用性に対 する影響を判断するためには、現在実施中の各評価項目の詳細な解析結果を待つ必要が ある。  2.しかしながら、(1)サブグループ解析の結果から、日本人は含まれていないも のの、東洋人においては本剤の投与が生存期間の延長に寄与することが示唆されるこ と。(2)非小細胞肺癌におけるEGFR遺伝子の変異が、腫瘍の本剤に対する反応性 にかかわっているとの報告や、当該遺伝子の変異の割合が米国に比し日本で高いとの報 告があること を考慮すると、現時点で本剤の使用を制限する等の措置を講ずる必要性に乏しく、引き 続き、少なくとも投与開始後4週間は、入院またはそれに準ずる管理のもとで、間質性 肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うなど、添付文書に記載されている 安全対策を継続しつつ、肺癌化学療法に十分な経験をもつ医師による使用を徹底するな ど、本剤の適正使用を進めることが適当である。  3.昨年12月から企業が行っているISEL試験の初回解析結果に関する医療機関等 への情報提供については、今後も定期的に実施するとともに、本剤の使用に際しては、 患者に対して、東洋人かつ喫煙者のサブグループ解析において、本剤による生存期間の 延長が認められなかったこと等本試験結果の内容について十分に説明し、同意を得た上 で投与することが重要である。  4.本剤の日本人患者における生存期間に対する有効性を評価するためには、現在実 施中のドセタキセルを対照とした無作為化群間比較試験の結果が必要であり、企業は早 急な試験の完了に向けて努力するべきである。  5.企業はEGFR遺伝子の変異と本剤の治療成績との関連についての研究を早急に 進めるとともに、得られた結果については積極的に公表し、医薬関係者及び患者に対し て情報提供するべきである。 ○松本座長  このとりまとめ案に関してご意見、コメントございませんか。何でも結構です。 ○北澤委員  いまいただいたばかりで、ちゃんと読めていないので、気がついたことを1つ。まず 4番の、いま現在日本で行われているドセタキセルを対象とした試験の完了に向けて努 力すべきであるという点で、フェーズIIIは、「非盲検無作為化群間比較試験」というふ うに資料3にはありますので、ここでも「非盲検」というのを加えておいたほうがいい と思います。 ○堀内委員  一定の患者に有効性があるということは、わかっているなのですが、安全性が問題に なっているわけです。特に、間質性肺炎がどういう場合に起こるかということが明確に なっていないわけです。間質性肺炎になれば、どういうステージであろうと、大体4割 くらいの患者が亡くなるというデータを、メーカーのほうも出しているわけです。そこ がきちんとされない限り、安全性は担保されないわけですから、それを検討する。例え ばEGFRレセプターが変異と間質性肺炎に関係があるかどうか。これは、いまのとこ ろは何のデータもないわけです。有効性ののデータはあるけれども、間質性肺炎との関 連については何のデータもない。  ですから、そこが解析されないままでしたら、ずっと同じことが起こるだろうと思う のです。先ほども申しましたように、分子標的薬は、一定の条件の人に用いられて有効 であるというのが基本的な考え方だろうと思うので、一般の医薬品と、考え方を変えて いく必要があるだろうと思います。したがってその点を是非入れていただきたいと思い ます。  現状ではそこが明確になっていない以上、有効な患者に使う、有効性の確率が高い患 者に使うというのが原則ではないかと私は思います。したがって、先ほど申しましたよ うに、レセプターを解析できるような専門医のいるところで使うというのが、かなり制 限をかけることになりますが、必要だと思います。私の個人的な意見としては、あまり このまとめについては、妥当だとは考えません。 ○松本座長  事前チェックというのは、非常に大事なことなのですが、具体的に、どういう形で入 れるかということになると、いまの段階ではなかなか難しいところがあるのですが、い かがでしょうか、先生、何か方法がありますか。そういう検討をしろという文言を入れ る分には、入れられないこともないと思いますが。 ○堀内委員  すべての病院でできるとは思いませんが、例えば我々のところでも、すでにEGFR の遺伝子チェックをして、変異がある患者は確かに有効性があるということで見ていま すし、遺伝子を取り扱っているところであれば、そんな難しいことではないと思いま す。メーカーでそれを引き受けてやってもいいでしょうし、いろんな形が考えられるだ ろうと思います。  それから、少なくとも第III相をする場合には、やはり遺伝子チェックをした上でエ ントリーするということは是非とも必要だろうと思います。 ○土屋委員  いま言われたのは、1つの臨床試験として考えるのはよろしいかと思うのですが、そ れをして、かなり実地臨床に近いところに持ち込むのは、まだ根拠が乏しいのではない かという気がします。 ○松本座長  いかがですか。ちょっと実地臨床では、なかなかそこまで。 ○堀内委員  しかしながら、EGFRレセプターのミューテーションがあると、EGFRのアクテ ィベーションがずっと維持される。イレッサが結合すると、その作用を著しく抑えると いうデータは明確に出ているわけです。サイエンティフィックに話をする必要があるだ ろうと思うのです。したがって、そういうデータについては、それをきちんと評価をし て、それに対してどうするかということを考える必要がある。ここですぐ考えることが 難しいなら、そういうことはできるだけ近い将来考える必要があるのではないかと思い ます。 ○松本座長  この点について、下方先生、何かご意見ございませんでしょうか。 ○下方委員  ご指摘のように、EGFRの変異があれば効果が高いのは間違いないと思います。た だ、それが絶対的な条件かというと、必ずしもそうでない症例もあるのも事実です。  もう1つは、現実的な問題として、いま遺伝子解析ができる施設というのは、全国で もそんなに多くないと思います。そうすると、患者が希望された場合に、そのサンプル をやり取りするとか、あるいは患者にそういうことができる施設を紹介するということ が、どのくらい臨床的に現実性をもつかというと、なかなか難しい面もあると思うので す。  患者に説明する場合に、そうした点に十分配慮して説明するのは非常に重要なことだ と思いますが、今の時点で、施設を限定してしまうということは、問題があるのではな いかと考えます。 ○堀内委員  資料2にこだわりますが、現在12月までに8万6,800人に使われている、これはメー カーが薬価算定のときに出してきたものの7年分に相当します。このようにたくさんの 患者に使われて、どれだけ有効性があったかということが問題になるだろうと思うので す。それが、実際上調査されていないわけです。こういう薬は本来なら全症例調査をし ばらくの間やるべきだと私は思いますが、とにかくそういう形で、ずっと直線的にたく さんの患者に使われてきていることが妥当かどうかを考えなければいけないと思うので す。  現状では、できるところはかなり限定されることは確かにあるだろうと思います。し かしながら、専門家のところで使うということで、十分、必要な患者には使えるのでは ないかと思います。 ○松本座長  そろそろまとめに入りたいと思うのですが、4番に北澤委員の「非盲検」という言葉 を入れること自体は、これは問題ないですね。堀内委員のご提案については、もっとも なことなのですね。それで、5番のところに、「安全性についての研究を進める」とい うような文言で入れることではいかがでしょうか。それでは不十分でしょうか。 ○堀内委員  課題としてできるだけ早く検討していただきたいと思います。 ○松本座長  ということですね。それがいちばん理想だと思います。そこに、そういうふうに入れ た文章で読み上げていただけますか。 ○北澤委員  いま遺伝子の変異についてのいろいろな議論がありましたので、この3番の、患者に 対しての説明の部分で、「東洋人かつ喫煙者のサブグループ解析において、本剤による 生存期間の延長が認められなかったこと等」と、「等」になっているのですが、この 「等」のところに、2の(2)の「EGFR遺伝子の変異」のところも加えて、十分に 説明しというふうにつなげるというのはいかがでしょうか。 ○松本座長  いいかもしれませんね。どうですか。 ○安全対策課長  詳細のデータが出てきて、その結果が盛り込まれていきますので、いまの時点ではま だ。ちょっとどういう解析になるかわからない段階では、まだ難しい。 ○松本座長  では、それでよろしいですか。 ○堀内委員  添付文書は、一応公的な文書ですが、そこに、昨年出たプロスペクティブスタディの ことが盛り込まれておりますが、死亡率については全く入っていないですね。間質性肺 炎が起こった患者のうちの38%が死亡するというデータが、プロスペクティブスタディ で出ているわけですから、それを周知させる。間質性肺炎が起これば、かなりの割合が 死に至る可能性があるということを、十分に周知させ、患者にも知らせる。何か異常が 起こったら、すぐ連絡をするというようなことを、もう少し周知させる必要があるので はないかと思います。患者説明文を見ても、その辺が極めて曖昧ですので、特に患者説 明文については、もう1回きちんと練り直す必要があるだろうと思います。 ○松本座長  その点、先生からご意見があろうと思って、ある程度考えたのですが、添付文書につ いては、別にまた改訂なりしていく必要があると思いますので、その点は除外させてい ただきます。よろしいでしょうか。このまとめ案に関しては、先ほど申し上げたよう に、5番目にそういう安全性について、それから北澤委員がおっしゃった2つ、非盲検 とEGFRをここに入れるということの修正でよろしいでしょうか。まとめた形でもう 1回読んでいただけますか。 ○事務局  それでは変更点の部分について読み上げさせていただきますので、ご確認いただけれ ばと思います。まず4番のところですが、現行、無作為化群間比較試験となっていると ころを「非盲検無作為化群間比較試験」に修正させていただきます。  5番のところは、例えば安全性の観点のところは、「企業はEGFR遺伝子の変異と 本剤の治療成績及び副作用の発現との関連についての研究を早急に進め」という形では いかがでしょうか。 ○松本座長  副作用の事前チェックについては、まだ一般的ではないわけですね。研究を進めてい る段階ですね。 ○事務局  「研究を早急に進め」という文言であれば現状と一致するので結構です。 ○松本座長  いいですか。 ○事務局  はい。 ○松本座長  堀内委員、この点に関してよろしいでしょうか。 ○堀内委員  EGFRレセプターの変異との関連について検討するということですね。検討すると いうことは、予めこの変異を調べるということですね。 ○松本座長  研究を進める。 ○堀内委員  第III相をする場合には、調べるということですね。 ○松本座長  実際の実地の臨床でやるということを強制しているわけではなくて、そういう研究を 進めるということを。 ○堀内委員  いまは研究の話ですから。私はあまり賛成ではないですが、皆さんがよろしいという ことであれば。 ○松本座長  合意をいただかないと、なかなかこれは難しいのですが。 ○審査管理課長  いま堀内先生がおっしゃっているのは、現在オンゴーイングのIII相試験に参加して いただく患者については。 ○堀内委員  この件については少なくともやるということです。 ○審査管理課長  やったほうがいいということですか。 ○堀内委員  そのように私は思います。 ○審査管理課長  実際問題として、現在その研究をしている、従事していただいている先生方のプロト コルの変更とか、そういうことにも関係してきますので、ちょっとそれをいますぐとい うのは、なかなか難しいのではないかという気もいたしますが。 ○松本座長  こちらのいま現在のものとは少し離れておりまして、それは理想。 ○堀内委員  新たなプロトコルでも構わないのですが。 ○松本座長  それは、そちらのほうになりますね。 ○堀内委員  とにかくたくさんの患者が使っているわけですから、適用の。。。。。 ○松本座長  ですから、一応結論的には、EGFRの遺伝子の変異と安全性についての研究を進め るということでいこうと思うのですが、よろしいでしょうか。ここで、具体的な研究の 方法まで指示する権限はないものですから、一応このような形で、まとめさせていただ こうと思いますが、よろしいでしょうか。 ○堀内委員  要するに、できるだけ必要な患者に限って使われるような、制限がかかるような方法 というのが必要ではないか。何でも自由に使っていいという薬ではないだろうと私は思 いますので。 ○松本座長  それは、いままでの安全対策において、そのような形をとってきています。 ○堀内委員  それがこれまでのところでは、まだ十分に制限がかかっていないだろうと私自身は思 います。 ○松本座長  それはなかなか難しい、解釈の問題で。 ○堀内委員  先ほど、いいというお話もありましたが。 ○松本座長  確かに治験のエントリーに関しては、それはもう、治験のところの問題ですので、こ ちらのほうとしては、それに対して指示を出すことはできないと思いますが。今日のと りまとめ案でいきますと、先生のご意見、それから、今日欠席の先生方、先にお帰りに なられた先生方、いまのこの形のまとめで、大きな反対はないということなのですが、 これで最終的な確認ということにさせていただいてよろしいでしょうか。堀内委員は、 もし駄目だということであれば。よろしいですか。 ○堀内委員  ……。 ○松本座長  ということであれば、ただいま事務局が読み上げたものを、最終的なものとさせてい ただいて、修正したものを事務局から各委員宛に送りますので、またご確認いただけれ ばと思います。  ほかにご意見ございませんでしょうか。事務局、何かありますか。 ○事務局  ただいまおまとめいただいた本検討会の意見については、事務局のほうで公表させて いただきたいと思います。また、今後、最終的な解析結果がまとまった場合などには、 改めてご議論いただくことも考えられますので、その場合には、新たな日程を調整させ ていただきたいと思います。あと、委員の方々におかれましては、お手元に配布した資 料のうち、「厳重管理」と書かれたものと「委員限り:検討会後、回収」と書かれてあ る資料がございますが、その資料は回収させていただきたいと思いますので、机の上に 置いておいていただければと思います。 ○松本座長  よろしいでしょうか。ほかにご意見ございませんでしょうか。ないようでしたら、こ れで閉会といたします。どうも長い間ありがとうございました。司会の不手際で延びま したことを、心からお詫びいたします。 (照会先) 厚生労働省医薬食品局安全対策課  星(内線2794) Tel.03-5253-1111(代表)