04/12/22 予防接種に関する検討会第3回議事録            第3回 予防接種に関する検討会 議事録                          平成16年12月22日(水)                             12:30〜14:30                         於:霞山会館 うめ・さくらの間 議事次第 1. ジフテリア・百日せき・破傷風の予防接種の在り方について 2. その他 ○江崎課長補佐  それでは定刻になりましたので、ただいまから第3回目「予防接種に関する検討会」 を開会いたします。  本日は御多用のところ、委員の皆様、参考人の皆様御出席をいただきまして、ありが とうございます。お礼を申し上げます。  本日でございますが、雪下委員が御欠席、それから、宮崎委員と岩本委員はちょっと 遅れての出席ということで連絡をいただいております。  本日も、参考人として3人の専門家の方に御出席をいただいておりますので、簡単に 御紹介をいたします。  国立感染症研究所細菌第2部長の荒川参考人でございます。 ○荒川参考人  感染研の荒川でございます。よろしくお願いいたします。 ○江崎課長補佐  国立病院機構福岡病院小児科医長の岡田参考人でございます。 ○岡田参考人  国立病院機構福岡病院の岡田と申します。よろしくお願いします。 ○江崎課長補佐  札幌市立札幌病院長の富樫参考人でございます。 ○富樫参考人  札幌の富樫でございます。どうぞよろしくお願いします。 ○江崎課長補佐  開会にあたりまして、牛尾結核感染症課長からごあいさつを申し上げます。 ○結核感染症課長  委員の皆様、そして参考人の先生方におかれましては、本日は年の瀬のお忙しいとこ ろお集まりいただきまして、ありがとうございます。  前回11月24日の第2回の検討会では、麻疹、風疹の対策について活発に御議論いただ いたわけでございます。本日は主としてジフテリア、百日咳、破傷風の予防接種につき まして、集中的に御議論いただきたいというふうに考えております。  言うまでもなく、DPTは既に古典的なワクチンというふうに言えるかと思います。 戦後、使用が普及するにつれまして、子どもの死亡原因の上位を示しておりましたジフ テリア、百日咳の罹患は著しく減少いたしました。また、同じく重症の感染症であり患 者数の少なくなかった破傷風の患者数も大きく減少いたしました。  ちなみに、我が国では1970年代にDPTワクチンの接種率が低下し、それに引き続き 百日咳の患者数及び死亡数が急増したということがございました。その後、関係者の御 努力によりまして、安全性の高い無菌体の百日咳ワクチンが世界に先駆けて開発、導入 され、その途端に、百日咳患者が大幅に減少したという歴史的経緯がございます。これ らの事実は感染症対策における予防接種の極めて高い有効性を示したものというふうに 考えております。  本日は、まずジフテリア、百日咳、破傷風の3疾患に関する最近の流行状況、細菌学 的知見について御報告いただき、これらの疾患の今後の予防接種の在り方について御議 論いただきたいというふうに考えております。  また、諸外国におきましてジフテリア、百日咳、破傷風と並びまして乳幼児期におけ る重症細菌感染症としてb型インフルエンザ菌による髄膜炎が注目されております。H ibワクチンが導入をされているところもあるわけでございます。この感染症につきま しては、国内における流行状況というものが、これまで余り明らかではございませんで したが、近年少しずつではございますけれども、その把握もされつつあります。本日併 せて我が国における予防接種施策として、これをどう考えるのかということについても 御議論いただきたいというふうに思っております。  どうぞよろしくお願いします。 ○江崎課長補佐  それでは加藤座長、この後の議事の運営についてはよろしくお願いいたします。 ○加藤座長  それでは本日の議事を進めさせていただきます。  まず事務局の方から、資料の確認をお願いいたします。 ○予防接種専門官  本日の資料でございます。議事次第の1枚紙をめくっていただきますと本日御出席し ていただいております委員の先生、参考人の先生の名簿がございます。  それから「資料一覧」でございますが資料1から資料6までございます。荒川先生、 岡部先生、岡田先生、富樫先生、宮崎先生からの発表いただきます資料の写しでござい ます。  資料6といたしまして、百日咳の患者の推移についてのデータを2枚紙で用意させて いただいております。  資料は以上でございます。過不足等ございましたら、お申し付けください。 ○岡部委員  ちょっといいですか。資料6参考までなんですけれども、まだ未発表段階なので、そ ういう取り扱いでお願いします。未発表というのは、まだ完全に整理をしていないとい うことですので。 ○予防接種専門官  これは、暫定的な扱いの資料ということですね。 ○岡部委員  そうです。 ○加藤座長  それは、また資料6のときの御説明でお願いいたしたいと思いますが、よろしゅうご ざいましょうか。  それでは、順次議事を進めてまいりたいと存じます。  本日は、先ほど課長からお話になりましたとおり、ジフテリア、百日咳、破傷風、そ れからインフルエンザ菌について議論を進めてまいりたいと思います。結論が出る出な いにかかわらず活発な議論をしていただきまして、今後の日本の予防接種行政がいかに あるべきかということを検討していただきたいと存じます。各委員、または今日は参考 人の委員の方に御発表いただきまして、特に確認事項がありましたらば、その都度2、 3御質問を承りまして、そして最終的に最終討論に進めていきたいと、こういう手順で 大体2時間ぐらいを予定して進行させていただきたいと思いますので、よろしく御協力 のほどお願い申し上げます。  本日の順番ですけれども、まず荒川参考人から、それから岡部委員、そして岡田参考 人、富樫参考人、それからまだ到着されておりませんが、宮崎委員の順に御発表いただ きまして、そしてディスカッションをしていただきたいというふうに考えます。  まず最初に荒川参考人から4疾患の細菌学とワクチン研究の動向についての御発表を お願いいたしたいと存じます。それでは、荒川先生よろしくお願いいたします。 ○荒川参考人  感染研の荒川でございます。  今日は、ジフテリア、百日咳、破傷風、それからHaemophilus Type bのワクチンに 関わることについて紹介をしてほしいという御依頼をいただきましたので、それで、少 しスライドをつくってまいりました。  私の部は細菌第二部と申しまして、主にジフテリア、百日咳、破傷風、それからボツ リヌスとか、あとBCG、ツベルクリン、それから今後Haemophilus Type bのワクチン を担当することになります。それで、こういったワクチンの品質管理、あるいは感染症 の病原体診断あるいは血清診断、そういったことを手広く担当しております。 (PW)  これはバクテリアの一般的な構造。代表として百日咳を選びましたけれども、百日咳 菌には細胞表層にいろんな抗原を持っております。その抗原の幾つかを選んで、この百 日咳ワクチンの場合はワクチン開発をしております。  あと、破傷風とかほかの病原体の場合は毒素のたんぱくを生成しまして、それを抗原 にしたり、あるいは表面に存在します莢膜多糖と言います、多糖体です。そういったも のを抗原にしたワクチンも開発されております。  バクテリアというのは、いろんな表面に付いているもの、あるいは表面から外に分泌 するような、いろんなさまざまな分子を出しておりますので、1981年以前は、この菌全 体をワクチンとして使っておりました。  その結果、この百日咳については、細胞の膜に存在しますエンドトキシンがかなりワ クチン製剤に混じっておりまして、それによるいろんな副反応が起きて問題になってお りました。極端な場合、いろいろショックとか、あるいはそういうものを起こされて亡 くなるような事例も70年代にはありまして、それを踏まえまして、81年からこのエンド トキシンを含まないタイプの新しいワクチンが日本で世界で最初に開発されて、もう既 に20年以上の使用実績が蓄積されています。 (PW)  これは、先ほど課長の方からも御紹介がありましたように、これは退院数でとってあ りますけれども、百日咳の患者さんの報告件数はずっと下がってまいりました。  ところが、ここで事件が起きまして、死亡者が出たということで、その後しばらくの 間ワクチンが余り打たれない時期が続きました。その結果、また百日咳の患者さんが増 えまして、この時点で新しいワクチンを急遽開発しまして、導入した結果、またこのよ うに劇的に患者さんの数が減ってきている。  この辺の詳しいお話は後ほど岡田先生の方から御紹介があると思いますけれども。 (PW)  現在、届け出の件数は年間1,500 から3,000 名ぐらいということで、実際の患者さん はこれよりも多いことが予想されますけれども、以前に比べますと非常に減ってきてい る。世界的に見ても非常に減ってきておりまして、ただ、先ほどお話しましたように、 日本ではワクチンの接種が中止された時点で、一たん増えて、またその後の新しいワク チンの導入で劇的にその患者さんを減らすことは成功したということであります。  ところが、この百日咳抗体の値を見ますと、ワクチンを接種してからかなり経った年 代の人でも高い抗体価を維持している患者さんがおられまして、これは何を意味するか と言いますと、実際に国内の市中に百日咳菌が我々が余り気が付かない状態でサーキュ レーションと言いますか、循環をしていると。症状も抗体がある程度ありますと典型的 な症状は出ませんので、知らずに済んでしまうような事例があって、そういうことによ ってときどきブースターがかかって、抗体が高い状態で維持されているのではないかと いうふうに考えられています。  結局、そういうこともありますので、やはり百日咳を制御していく、抑制していくた めには安全性の高いワクチンを使って、しかも、接種率を高く維持していく必要がある ということであります。これによって国内では、菌の散発的な小流行、そういうものは どうしても防げませんけれども、以前のような死亡者が出るような事例というのは非常 に少なくなってきておりまして、そういう点においては、このワクチンは成功している ということであります。 (PW)  ところが、国内でも百日咳による患者さんの死亡事例、あるいは特にワクチンを打つ 前の新生児における集団発生などが起きております。 (PW)  これは、九州地区のある県の小学校の低学年の患者さんから分離された菌でありま す。この患者さんは通常は、気管支あるいは上気道からは百日咳菌はたくさん分離され ますけれども、剖検した後、肺の実質組織からも大量の百日咳菌が分離されまして、結 局百日咳菌による肺臓炎が起きていたということであります。  通常は、百日咳菌による肺臓炎までいく例というのは非常に少ないんですけれども、 ワクチンがどうも打たれていなかったらしいと。ワクチン未接種ということがあって、 百日咳に感染して重症化して亡くなってしまわれたという事例であります。 (PW)  その患者さんから、いろんな病理組織から菌を分離してみたんですけれども、これは PCRという方法で検出しますと、咽頭だけではなくて肺のいろんな組織からも出てく るということで、この菌が呼吸器全般に広く感染して患者さんの死亡を引き起こしたと いうことがありました。 (PW)  実際に、その患者さんから分離されました株を比較してみました。 (PW)  次の症例でありますけれども、これは三重県内の産科施設で発生しました新生児の百 日咳菌による施設内感染の事例であります。 (PW)  この場合、少なくとも5名の新生児の方が感染しました。菌は、治療も始まっていま したので、5名全員からは分離できませんでしたけれども、2名の子どもさんから菌が 分離されました。このケース1、ケース2というふうに振ってあるところが、その菌株 でありますけれども、その2株とも非常に似ているということであります。  こちらの方は、国内の別の施設で分離された株であります。パターンがよく似ている ものもありますし、かなり違うものもありますけれども、少なくともこの2つの株は全 く同じパターンを示していたということであります。  これは、ワクチン株でありまして、ワクチンの有効性を検証するための力価試験に用 いる株であります。そういうものとは、かなり違ったタイプの株が市中に感染して、遺 伝的にはかなり違った株が流行しているということであります。  これは、パルスフィールドゲル電動でありますけれども、これで見ますと、やはりこ れもこの株2つは同じですけれども、ほかの株はかなり違っているということで、地域 的に少しずつ違った株が流行していて、ときどき同じ施設内で、あるいは同じ地域で1 つのタイプの菌が流行するということが起きているということであります。 (PW)  この5名の患者さんの症例でありますけれども、この四角の印を付けたところは出生 した誕生日です。この星印が症状が出始めた日であります。生まれて2週間ぐらい経ち ますと、早い人ですと数日ですけれども、症状が出てくる。どうも、この辺りで感染し たのではないかと。  菌がとれた方はこの初めの2人であります。  実際に抗体の方の動きを見ていきますと、この方は余り顕著な動きはないんです。こ れは上が日にちでありますけれども、この辺りで少し上がっているような状況はありま すけれども、菌が分離された割には余り抗体に動きがないと。  この方は、もう最初から高い抗体を持っていますけれども、多分採血7日の時点でし ましたので、本当は菌はもっと前から感染していたのかもしれません。  この3名の方については、菌はとれておりませんけれども、抗体が非常に高く上がっ ておりますので、少なくとも百日咳による感染が起きていたことが強く示唆されるとい う症例であります。  この中には、非常に重症化して呼吸管理を受けた新生児の方もおられますので、やは り出生直後でワクチンをまだ打たれていない、しかも、お母さんの世代がワクチンで防 御をしているけれども、実際の百日咳に感染をしたことがないような世代の方から生ま れた新生児の方には、十分に移行抗体の中の百日咳に対する防御抗体ができていない可 能性があって、こういう出生直後に感染すると発病して、中には重症化する事例がある ということの例であります。 (PW)  百日咳菌については、現行のワクチンが非常に安全性も高く有効でありますので、患 者数の方は着実に減少してきています。  ところが、やはり現在でも散発的な地域的な小流行が続いておりますので、国内の多 くの地域でこういった百日咳菌がまだ定着しているということであります。  特に先ほど申しましたように、ワクチンの投与を受けたのみ、接種を受けたのみ、あ るいは実際に百日咳菌に暴露を受けていないような子どもさんとか、あるいは妊婦さん から生まれた新生児の場合、感染しますと重症化するという可能性もあるし、先ほどの 事例のように死亡する場合もありますので、やはり百日咳菌も数は少なくなりましたけ れども、決して侮ってはいけない感染症であるということであります。 (PW)  私どものところで、百日咳菌、国内でどういう株が広がっているかということを調査 いたしました。 (PW)  国内の都道府県の地方衛生研究所、あるいは臨床の先生方から過去に分離された株、 あるいはつい最近分離された株を送っていただきまして、遺伝子のパターンを定型的に 調べてみました。 (PW)  そうしますと、先ほどのパターンをコンピュータで処理しますと、大きく分けて3つ のグループに分かれていることがわかります。大きくAのグループ、Bのグループ、C のグループというふうに分かれることがわかります。 (PW)  このAタイプ、Bタイプ、Cタイプ、地域的にも余り株数が余り多くないので、有意 差を論ずることはできませんけれども、AもBも全般的に日本中の地域から見つかって います。近畿の方では、どうもAタイプがちょっと多いような傾向がありますけれど も、あるいは関東地区ではBタイプもかなり増えているような状況がありますけれど も、まだ有意差があるかどうかは言えませんけれども、そういうような傾向が見られる ということであります。 (PW)  これは、年代別に見てみますと、以前はほとんどAタイプというものが多くて、この 90年代の半ばごろから少しBが出始めまして、この辺りは少しまたBが余りいないんで すけれども、99年以降の株の中にはBタイプがかなり増えてきているという傾向が少し あることがわかりました。 (PW)  そのBタイプというのが、この関東地区から比較的よく分離される傾向があるという ことであります。 (PW)  これもそうです。これは経時的に見てみますと、こういう感じであります。 (PW)  ワクチン株といろいろ抗原性の変化とか、あるいはほかの遺伝子の変化がどの程度あ るかということを調べみますと、少なくとも国内に流行している百日咳菌株、この株は ワクチン株と比べて当然遺伝的な差がありますし、あるいは以前の株と比べても少し遺 伝的な変化が起きてきておりますけれども、少なくとも現在使われているワクチンで十 分に発症予防が可能であるということが示唆されたということで、これはつい最近の論 文として発表いたしましたけれども、少なくとも今の日本の現行のDPTワクチンの百 日咳については、菌株の方は少し変化がありますけれども、十分な有効性が期待できる ということであります。 (PW)  次にジフテリアと破傷風であります。 (PW)  御承知のように患者数、これは破傷風でありますけれども、死亡事例、あるいは患者 数も著減してきております。年間今、患者数の報告例としては100 例ぐらいのところを 推移しておりますし、死亡事例も非常に減ってきております。 (PW)  次はジフテリアでありますけれども、ジフテリアも死亡事例はもう90年以降はほとん どもうないというようなことになっております。あっても1例、2例ということであり ます。当然患者さんの数も非常に減ってきている。  逆に、ジフテリアの患者さんが発生しても、臨床の現場で診断がつかないような事態 が起きているということであります。 (PW)  これは感染症情報センターの資料でありますけれども、ジフテリアの患者さんの血中 の抗体価のレベルなんですけれども、年齢、低年齢層、当然ワクチンを受けた世代は高 い傾向がありますけれども、それ以後の年齢でも比較的高い抗体価を保持している方が おられます。 (PW)  ところが、伝染病ではない破傷風の場合は、ワクチンの世代は高い抗体価が保持され ておりますけれども、年齢が高くなるにつれて抗体レベルが下がってまいります。これ は、やはり破傷風というのは、人から人へうつる病気ではありませんので、けがをした 後の病気ということなんですけれども、ジフテリアは人から人へうつる病気でありま す。 (PW)  高い抗体価が保持されているのは、やはり国内ではまだ患者さんの発生が余り気付か れないけれども、小規模なジフテリアの流行あるいは不顕性感染のようなものが起きて いるのではないかということが強く示唆されるわけであります。 (PW)  これは症例報告でありますけれども、68歳の男性であります。この患者さんは、急性 の呼吸困難で受診されまして、その次の日に亡くなってしまわれました。死亡診断書は 咽頭腫瘍による窒息死という病名で死亡診断書は書かれておりました。  ところが、この患者さんの症例を後から検証した病理医が、どうも咽頭腫瘍による窒 息死にしてはおかしいと。のどを調べますと、例えば普通の染色をしますと、グラム陽 性に染まる菌のようなものがたくさん見つかるということで、私どものところにこの菌 がどういうものなのか、ジフテリア菌とかそういうものではないかということを調べて ほしいというふうに依頼をしてまいりました。  そこで、うちで調べたわけでありますけれども、ただ、これはホルマリン固定をされ てしまっている標品でしたので、そこから菌を再度分離することはできません。 (PW)  そこで、PCRという方法で、その菌のようなものが実際どういうものかということ を調べていきました。そうしますと、ジフテリアの毒素の遺伝子を検出するPCRによ りまして、患者さんの組織からこの陽性反応が出ました。  これだけでは確認ができませんので、更にC検査解析をしましたところ、期待される 毒素遺伝子と同じC係数を持った断片であり、DNAであるということがわかりまし て、この結果、先ほどの咽頭腫瘍による窒息死というふうな死亡診断書が書かれた方 は、実は、ジフテリアによる死亡事例であったということであります。これは、つい3 年ほど前の話であります。 (PW)  国内では、ジフテリア症の患者さんが発生しても診断がうまく付かずに、人知れず亡 くなっている事例もあるのではないかと。こういうことを十分考慮しなければいけない と。 実際にそういう事例があるということは、ジフテリア菌が実際に継続的に市中に 循環していて、その結果、年齢の高い方々の間でも比較的高い抗体価が保持されている ということで、ただ、なかなか抗体がありますと症状がはっきり出ないことがあります ので、多くは気が付かれないまま推移しているのではないかと考えております。 (PW)  次にHaemophilus Type bのワクチンであります。 (PW)  これは、海外の調査であります。Haemophilus Type b、Haemophilusには、菌の表面 に持っている抗原の違いによりまして、a 、b 、c 、d 、e 、f と、あとNon-typable というのがあります。  特に、このType bというのは、敗血症とか髄膜炎を起こしやすいということで、海外 では非常に問題になっているということで、これは海外の調査で実際月齢、年齢によっ て、こういった患者さんがどのぐらいいるかというような、そういう調査でありますけ れども、これは皆さんにお配りした資料の方に少し欠けてしまったところが出ていると 思いますが、それを御参考にしていただければと思います。 (PW)  これは、髄膜炎とほかの全身性の特に敗血症でありますけれども、実際どのぐらいの 月齢、年齢で多いか、やはり1歳未満の子どもさんに圧倒的に大きいという病気であり ます。 (PW)  実際に、血中の抗体価を測定しますと、母親から生まれて数か月経った辺りのところ で、最も抗体価が低下してきます。ですから、この辺りの世代が一番、感染すると重症 化しやすいということで、この辺りを防御するために海外ではHibワクチンが開発さ れて、広く使われるようになりました。 (PW)  これは、開発と導入の歴史的な経緯でありますけれども、0か月から6か月とか、あ るいは7か月から18か月とか、年齢的に少し分けてあるんですけれども、患者数の方は 最初にPRPというType bの主成分だけを主な材料としたワクチンは余り効果がなかっ たんですけれども、ジフテリアのトキソイドとか、いろんなものとコンジュゲートにす ることによって、有効なワクチンが開発されて導入されてきました。  いろんなものが開発されてきまして、結局この辺りは15か月とか高い子どもさんにし か打てなかったんですけれども、2か月ぐらいの子どもさんに打って有効性があるワク チンが開発されてから、実際に20万人当たりのHibの侵襲性の感染症、髄膜炎とか敗 血症を含みますけれども、その患者さんは激減しまして、10万人に対してほぼ0という のが、こういうワクチンを導入している国の現状になっております。 (PW)  これは、Hibワクチンの推定される構造でありますけれども、ポリリボシルリビト ルホステートという多糖です。お砂糖のようなものですけれども、それと、あとその中 に少しエンドトキシンのようなものが混じっていて、糖と糖をつなげるつなぎの役に破 傷風のトキソイドなどが使われています。これ以外の別のジフテリアのトキソイドを使 ったり、髄膜炎菌の外膜たんぱくを使ったりしているような製剤もあります。  これを見ていただきますとわかりますように、このHibワクチンの中には、少なく ともHib、要するに、Type bの主成分、莢膜糖の主成分以外にエンドトキシンとその 他の抗原が入っているということであります。 (PW)  これを少し比較してみますと、日本で使われている精製されたDPTワクチン、それ から海外でつくられているようなDPTワクチンがありますけれども、リムルス活性、 これはエンドトキシンの活性を測定する試験法であります。  それから、プロスタグランジンE2とか、発熱活性、こういった要するにワクチンに よる副反応を予測するような試験法のデータでありますけれども、日本製、海外のDP Tワクチンは少なくともこのぐらいのレベルにあるのに対して、Hibワクチンは先ほ ど申し上げましたように、いろんなものを含んでおりますので、こういったエンドトキ シン活性のようなものとか、発熱活性がかなり高いものが現実的に海外で使われている ということであります。  ですから、このHibワクチンという非常に有効性が高い、あるいは期待されるワク チンなのでありますけれども、この問題をどう評価し、どう解決するかということが非 常に重要な課題となっているということであります。 (PW)  Hibワクチン、これはもう一つ、例えば破傷風のトキソイドをキャリアたんぱくと して混ぜているものについては、日本の現行のDPTワクチンに更にHibワクチンを 一緒に打ちますと、例えば破傷風に対する過剰免疫が起きる可能性があるかもしれな い。その危険性を検討しなければいけないとか、あるいは先ほど申し上げましたように エンドトキシンの問題。  それから、やはり国内で既に使われているものと海外のワクチンとの互換性でありま すけれども、それがどの程度あるのかないのかということも検討していかなければいけ ない。検討しなければいけない問題点が、いろいろまだ残っているというふうに理解し ております。 (PW)  実際に海外のワクチンにはいろんな種類がありますけれども、ジフテリアはトキソイ ド量で数倍、破傷風トキソイド量でも3倍ぐらいとか、アルミの含量、これはアジュバ ンドに使うものでありますけれども、7.5 倍ぐらい差があるものが海外では使われてい て、こういったものがもし将来的に導入されてきたときに、国内のワクチンとどのよう な形でうまく組み合わせて使っていくかということが1つ残された大きな課題となって いるということであります。 (PW)  例えば、これは海外のあるワクチンに人為的にエンドトキシンを添加した場合、どう いうことが起きるかということでありますけれども、日本製の場合は比較的添加したも のがそのまま検出されますけれども、海外メーカーのものでは添加しても、通常の我々 が行っている安全性試験では検出できない。これは何を意味するかと言いますと、エン ドトキシンが実際に入っていても、それをマスクしてしまう。あるいは、吸収して不活 化してしまうような何かが混じっていて、現行のエンドトキシン試験で、その何か含ま れているエンドトキシンの量を正確に測ることが、こういう種類のワクチンでは難しい ということであります。 (PW)  結論でありますけれども、我が国では百日咳、ジフテリアについては現行のワクチン によりおおむね発症が抑制されていると。非常に有効に機能しているというふうに考え られます。  それから、しかし、こういった株、特に百日咳は広く分布しておりますけれども、ジ フテリアについても国内に地域的、散発的に小流行が起きていることがあります。それ で、患者さんが減りましたけれども、ワクチンの接種率が低下しますと再び患者さんが 増加する恐れがありますので、現在のワクチンのカバレッジと言いますか接種率はどう しても維持し、あるいはもっと高めていかなければいけないということであります。  それから、もう一つこれは将来的には海外からいろんなワクチンが入ってくることが 予想されますけれども、そういったワクチンと日本のワクチン、かなり質的に違うとこ ろがありまして、その差をどう評価していくかということと、あともし一緒に使うよう になった場合は、その相互の組み合わせ、あるいは使い方をどういうふうにするかとい うようなことを十分に検討しなければいけないということであります。 (PW)  これは、うちの部で今のような仕事をしていてくれる職員であります。エンドトキシ ンのグループ、それからジフテリア、破傷風のグループです。それから、ここは Haemophilus Type bのグループとか、いろんなグループ。これは抗生物質グループ。 ここはBCG、ツベルクリンのグループ。こういった人たちで日々日常の業務をこなし ております。  以上です。どうもありがとうございました。 ○加藤座長  どうも荒川先生ありがとうございました。それでは、2、3御質問、御討議がござい ましたらばお聞きいたしますが、いかがでしょうか。委員、参考人の方々も。  どうぞ、先生。 ○結核感染症課長  新生児への5名の感染という事例を御発表いただきましたが、これは感染源というの は何か推定されていますか。 ○荒川参考人  職員とそれからその母親の検査ができなくて、結局感染源は不明ということになって おりますけれども、多分恐らくは面会に来られた家族の方、あるいはお母さん、あるい は職員のどなたかが不顕性感染、菌のキャリアの状態でおられて、そこからうつってし まったんだということを考えておりますけれども、それ以上の特定はできておりませ ん。 ○結核感染症課長  もう一点、Hibを導入した場合、添加物に対する過剰免疫という御心配、これは具 体的にどのような過剰免疫が生じるんですか。 ○荒川参考人  過剰免疫反応としてどういう症状が出るかということは、人の場合少し予想はできま せんけれども、実際私のところでマウスを使って実験をしますと、血中の抗体価は非常 に高くなるとか、通常のワクチンの接種による抗体価の上がり具合よりも更に高い抗体 が獲得されるような現象が起きますので、それによって予期せぬいろんな副反応的なこ とが起きる可能性はあるというふうに思っています。ただ、実際どういうことが具体的 に起きるかは予想できておりません。必要以上の高い抗体価が起きるということです、 少なくとも。 ○加藤座長  よろしいですか。ほかに。  先生、Hibのエンドトキシンですけれども、これはPRP自身によるエンドトキシ ンもあるんですか。 ○荒川参考人  いえ、PRPはエンドトキシン活性ございません。 ○加藤座長  そうすると、だからこのワクチンはPRPだから、出てくるエンドトキシンはどこか ら出てくるエンドトキシンですか。 ○荒川参考人  インフルエンザ菌というのは、グラム陰性桿菌ですので、もともと膜にエンドトキシ ンを持っております。それで、PRPは先ほど申しましたように、多糖なんです。エン ドトキシンもリポ多糖と言いまして、多糖なんです。ですから、ともに今の製法では十 分に分離できない、エンドトキシンを完全に除去できない。技術的には可能なんですけ れども、それをしますと非常にコストが高くなりますので、現在つくられている多くの Hibワクチンは、その十分に100 %エンドトキシンを除去したような処理はされてい ないということです。  ただ、一応許容される範囲には落ちていると思いますけれども、日本で使われている 現行のワクチンと比べましてかなり高い値を示しますので、こういうものを打ったとき に局所の腫れとか、その他のいろんな副反応が起きる可能性はあります。実際、どうい う状況が起きるかはわかりませんけれども、実際何十万人という方に打った場合に、ど ういう問題が起きるか少し予想の範囲を超えるものがあるということです。  あと、もう一つは、同じメーカーでもロットによってエンドトキシンの量が高いもの と比較的低いものがありますので、このロット間のエンドトキシンの濃度の格差をきち っとコントロールしないと、やはり問題が起きるのではないかというふうに考えており ます。 ○加藤座長  ありがとうございます。ほかに何か御発言ありますか。  もう一点は、百日咳のパターン、遺伝子学的なパターンをお示しになりましたけれど も、この遺伝子学的なパターンはPTから見たものですか、何の遺伝子を見た場合です か。 ○荒川参考人  PTともう一つ別の抗原を2つ見ております。それで、PTも、それからもう一つ別 の抗原も少しパターンとしては変わってきておりますけれども、ただ、実際変わるとい ってもアミノ酸の配列が1つ2つ変わる程度でございますので、それによって現行のワ クチンの有効性が著しく落ちるということはないというふうに考えております。 ○加藤座長  ありがとうございました。ほかにいかがですか。  一応、ジフテリアにしても百日咳にしても自然界に存在しているバクテリアであるの で、自然のブースターはかかる可能性は十分にあると。したがって、不感染症は起こさ ないけれども、感染を起こしている可能性はあって、先ほど課長から質問があったよう に、それが保菌者として、まだ感受性がある者にうつす可能性もありますよというわけ で、従来のポリオですとか、また天然痘のように完全に根絶するわけにはいかないか ら、ワクチンは必要であろう、そういう御意見でまとめてよろしゅうございますか。ど うもありがとうございました。  また、後ほど御議論があったらお伺いいたしたいと思います。  それでは、引き続きまして、岡部委員からジフテリア、百日咳、破傷風の血清疫学的 な知見について御発表お願いいたします。 ○岡部委員  感染研情報センターの岡部です。  時間の制約があるので、簡単に御説明します。私たちのところでは感染症流行予測調 査事業を国の事業として行っております。今日は百日咳、ジフテリア、破傷風が話題で すけれども、それだけではなく、いわゆるワクチンで防げる病気というものについて血 清にどのぐらいの抗体が含まれているかということなどを全国レベルで見ているという ものであります。  各保健所の先生方が臨床の先生に頼んで健康者の血液をいただき、それを各地の衛生 研究所が統一の方法でこれを検査し、情報センターでまとめて全体のデータを出すとい うふうな方法をとっています。 (PW)  これは、今回の百日咳、ジフテリア、破傷風の血清疫学調査に協力していただいてい る都道府県です。全県がやっているわけではないということと、毎年やっているわけで はないというのがあります。数年おきにやっております。 (PW)  対象はかつては小児だけだったんですけれども、近年これについて大人、高齢者も含 めて検討するようになったというのがあります。大体1,500 名ぐらいの方が調査年の対 象になっております。  方法はここに書いてあるような統一的な方法で行っております。 (PW)  百日咳ですけれども、これは年齢別に見た予防接種歴別の感受性調査数というのが示 してあります。接種率というところで見ていただきますと、年齢が高くなると不明の数 が圧倒的に多くなってきますのでよくわかりませんけれども、大体1歳から4歳ぐらい で90%ぐらいの接種率があるというふうに考えられます。 (PW)  そして、これは年齢別の百日咳抗体の保有状況です。、これが年齢別、10倍以上とい うところで見るのが大体発症を防げるような抗体レベルではないかと見ます。10倍以上 の抗体を持っている年齢は、各年齢とも持っていますけれども、年齢が低くなると少し 下がっています。 (PW)  百日咳の抗体検査の方法は2つあって、抗PT法というものと、抗FHA法という方 法で測定をしています。いずれも抗体の保有状況ということでは、類似したパターンを とっています。 (PW)  これは、グラフで表してありますけれども、PT抗体で見た年齢別に何%ぐらいの人 が持っているかというものです。  これを年齢群別にもうちょっとわかりやすくまとめてありますけれども、全体に1倍 以上というところで見ていると80から90%ぐらい。それが10倍というところで見ると40 から60%ぐらいです。自然感染が先ほどの話に出ていましたけれども、あるだろうと思 われるのが、年齢が高くなっている、ワクチンを受けていない世代でも抗体の保有があ るというのは、恐らく自然感染がここに含まれているというふうに考えられます。  30代のところで少し下がってきたり、40から後半ぐらいで、少々下がりが見られると いうような現象もあります。 (PW)  FHAで見ても同じような現象が見られます。特に30代前半で少し抗体の減少が見ら れているというところがあるのは、この年齢は恐らくワクチンを接種しているはずの年 齢でありますけれども、抗体が低いというのはあるいはワクチン接種率が低かったとい ったようなことも考えられるかと思います。 (PW)  年代別に見ていくと、10歳から16歳ぐらいまでしか測定されていませんが、そのパタ ーンについては余り変わっていないようです。 (PW)  それから、これは接種回数別。DPTとしてI期が1回、2回、3回、それからそれ にプラス3、追加ということで見ているんですけれども、その抗体保有率で見るときち んと接種をしている方が高いわけですけれども、確かに3回やっている方がいいわけで すけれども、I期の2回と3回では、そんなに差はないといったような傾向が出ており ます。  これは、FHAで見てもPTで見てもほぼ同じであります。 (PW)  年齢群別に分けてみると、年齢が高まるときちっと受けている人の方が抗体レベルが 高くなっているということがあります。 (PW)  ジフテリアについて同様の図で御説明します。  ジフテリアの接種率もやはり年齢が1歳、4歳ぐらいでは90%ぐらい。それから、ブ ースターを受ける10歳から19歳のところで93%ぐらいという接種率が出でおります。年 齢の高いところは不明というのが多くなっています。 (PW)  抗体の保有状況ということを0.1 以上で見てみるとほとんどの年齢層で満足すべき抗 体があるけれども、人数も少なくっていますが、高齢者の方では低いというのがありま す。 (PW)  年齢群で見ますと1歳、それから10歳ぐらいまでかなり抗体価が維持されているとい うのがありますが、20代の後半ぐらいで抗体価の落ち込みが見られています。  それから40代後半になってくると抗体が下がってきているのがありますけれども、ま たその後、再びある程度の上昇が見られております。 (PW)  これは、ジフテリアについての抗毒素保有状況を年次別に見ていますけれども、抗体 保有状況はそんなに変わっていない。子どもたちにおいては維持されているというふう に言えると思います。 (PW)  先ほどと同じパターンですけれども、この接種回数2、3、I期2、3でそんなに大 きい差がないといったようなことが言えると思います。 (PW)  破傷風でありますけれども、破傷風の接種率はDPTでやっているのでほぼ同じよう なパターンが出ると思うんですけれども、1歳から4歳で90%。それから10歳から19歳 で93%ぐらい。年齢が高くなるとわからなくなるというのも大体のパターンはこれまで と同一であります。 (PW)  それから、抗体の保有状況について、0.1 以上の抗体価ということで見ますと、ほと んどの年齢層は持っていますけれども、ジフテリアあるいは百日咳と違って高齢者層で はこの抗体価が下がってくるというのがあります。  荒川先生の説明にもありましたけれども、自然感染で破傷風は抗体を得ることができ ない。もし、免疫があるとすればワクチンによる免疫と考えれば、この年齢層は当然免 疫も受けていないし、抗体の上昇は見られていないということが言えると思います。 (PW)  それをグラフ化しますと、明らかに高齢者の方が下がっている。これがDPとTとの 大きい差になっているというふうに思います。大体20代後半ぐらいから、この抗体価が 下がってきております。 (PW)  年代別に見たパターンですけれども、年代というのは、それぞれの測定した年による パターンの違いですけれども、これもそんなに大きい変化はありません。 (PW)  接種回数別ということであれば、これもI期、1回、2回、3回といったような形で 見ると、2、3ではそんなに大きい差がないといったようなのがあります。未接種は当 然低くなります。  以上が感染症流行予測調査事業から出ている成績であります。これの詳細について は、例年感染症流行予測調査事業報告書というのがありますので、それを参考にしてい ただければおわかりいただけます。またこれはホームページでもオープンになっていま すので、今年度、この2003年度についても、近々オープンになります。  以上です。 ○加藤座長  ありがとうございました。  岡部先生に何か御質問ございますか。大体予防接種歴は年長者においては不明になっ てくることが多いのですけれども、百日咳に関してはほとんど、先ほど荒川先生からも お話ありましたが、高齢者でも比較的エリーザ単位としては維持していると。  ジフテリアに関しては、若干高齢者で下がる傾向があるように見えるけれども、私が 拝見したところではシックレベルの0.03よりもはるかに高い方々が多いと思われます。  それから、破傷風に関しては、やはり30歳ぐらいを境に抗毒素量を持っている方がが くんと減ってくると、こういうことで先ほどの荒川先生の御発表と近いと思いますけれ ども、どなたか御質問ございませんか。御議論。よろしいですか。  それでは、また後ほどまた御議論がございましたらいただきたいと存じます。  それでは続きまして、岡田先生から主に百日咳について御発表いただきたいと思いま す。 ○岡田参考人  福岡病院の岡田と申します。私は主に百日咳のことをお話しさせていただきます。  本日ご紹介させていただく内容でございます。百日咳は先ほど荒川先生からも御紹介 がありましたけれども、非常に多彩な臨床像がございます。家族内感染の事例から多彩 な症状を取るということをまず御紹介いたします。次に疫学的な変化としては患者数は 確かに減ってまいりましたけれども相対的に年長児、大人が増えてきました。それを感 染症情報センターの報告から図表にしたものをお示ししたいと思います。  更に、年長児・成人の百日咳の臨床症状はいわゆる典型的な乳幼児とは随分違いま す。随分違うために感染源になっています。そのことを御紹介して、最後に現行のDT ワクチンの時期にDPTワクチンをやれば、10歳代、あるいは成人の発症を減らす可能 性をお話しさせていただこうと思います。 (PW)  まず家族内感染の事例からです。  小児科の先生方はよく御存じの百日咳の典型的な症例でございます。1か月の女の子 で特に生まれたときに何もありませんでした。9月初め最初に軽いせきなど風邪症状が あって、次第にせきがひどくなっていきました。無呼吸およびチアノーゼを認めて入院 をしてきた1か月の子です。  百日咳の場合には、白血球数が普通1万5,000 以上に上がります。リンパ球70%以上 になります。この症状はいずれも検査所見は典型的でございまして、この子から百日咳 菌が分離できています。  抗体価も凝集素価が上昇していますし、毒素に対する抗体も陽転しています。  全経過は約80日ぐらいで、入院期間が20日間でございました。  このケースの家族の症状を御紹介いたします。 (PW)  6歳のお兄ちゃんは、ちょうどこの子と同じ時期にせきが始まりまして、せき込みは ございませんでした。約三週間ほどせきが続きました。この子は、凝集原の入っていな いワクチンを4回接種していました。この子の血清抗体価の動きです。毒素に対する抗 体が十分増えていますし、繊毛に対する抗体も増えています。凝集素価も増えていま す。百日咳感染は血清学的に診断できますが、パラ百日咳菌も同時に分離され、百日咳 とパラ百日咳菌の混合感染であったお兄ちゃんです。  一方、4歳のお姉ちゃんは最初の1か月の妹がせきが出る2週間ぐらい前から軽いせ きがあって1週間ぐらいせきが続いたそうです。この子もDPTワクチンを4回接種さ れていました。凝集原を含まないワクチンです。血清抗体価の動きは、毒素に対する抗 体も繊毛に対する抗体も凝集素価もほとんど変化なく、この子は百日咳感染を受けてい なかったと判断いたしました。 (PW)  お父さん、お母さんです。  33歳の母親はワクチン歴は不明です。1か月の自分の子が発病する2週間ぐらい前か ら軽いせきがあったそうです。この子が入院してきた時点でお母さんの抗体は、毒素に 対する抗体も繊毛に対する抗体も一応10以下を正常範囲といたしますと、非常に高く上 がっておりました。  一方、30歳の父親はDPワクチンを4回接種されていることが本人の母子手帳から確 認できました。このお父さんは、先ほどの1か月の子が発病して2週間後ぐらいからせ きが始まってきて、ときどきせき込みがあって、約40日間せきが続いたそうです。こ のお父さんのリンパ球は23%ですし、白血球は5,500 で決して典型的な検査所見にはな りませんでした。このお父さんからも百日咳菌が分離できました。 (PW)  このように家族内感染で見ますと、百日咳は多彩な臨床症状を示します。福岡で1990 年に小さな百日咳の流行を経験してから、その後、百日咳のことをいろいろと勉強させ ていただいております。1990年代初めは6か月から1歳、2歳の年齢の患者さんが 多くて、菌はたくさん分離できました。  最近は発症してしまった大人では、いろいろな病院で多くの抗菌薬が処方されていま すので、菌は分離できないことが多いですが、血清学的に診断できる10代以上、30歳 代、40歳代の百日咳感染が非常に増えてまいりました。 (PW)  私ども呼吸器の病院でございます。呼吸器内科と協力して4週間以上せきが続く患者 さんの中で、ぜんそくなど病気以外で百日咳がどれだけあるかを調べたものでございま す。36名の百日咳の患者さんが確認できました。年齢は16歳から66歳ぐらい、平均36歳 です。  白血球数は先ほど典型的な場合には1万5,000 以上上がると申し上げましたけれど も、36名中1人も1万5,000 以上には上がっていません。  リンパ球も70%ある方は一人もいらっしゃりませんでした。  せきは、平均で約45日ほど続いていました。せきの特徴は、非常に息苦しいとの訴 えが多くありました。あるいは夜中に目が覚める、せき込みで目が覚めるとか、せき込 んで大人が吐くとかという症例が多くありまして、中にはせきのために肋骨骨折をされ た大人もいらっしゃいました。  気道過敏性が上がります。疫学上特徴的と考えていますのは36例中23例、約6割が家 族内に咳をしていた児がいたことです。   この23例中14例は子どもが百日咳の診断を受けていたり、あるいは百日咳で入院し ていたというような事例です。大人の場合に、この家族歴、特に百日咳や咳の続く家族 歴をよく聞いていただくと比較的診断に結び付きやすいと思っています。 (PW)  年長児・成人百日咳の小児との違いです。臨床症状はDPTワクチンを接種していな い乳幼児ですと、典型的なせきです。大人の場合には決して典型的なせきはなくて、慢 性の長引くせきで、息苦しいなど呼吸困難を訴える方々が多いということでございま す。  白血球数増えませんし、リンパ球数も増えません。  百日咳の家族歴が非常に多いことが特徴と考えています。  こういう方々が乳幼児への感染源になっていることが考えられます。  今後の対策としては、多くの臨床の先生方に大人にも百日咳感染があることというの を認識していただくことと、先ほど申しあげましたように現行の2期接種の時点でDP Tワクチンを接種すればこの対策をとれるのではないかということを御紹介いたしま す。 (PW)  これのスライドは、先ほど荒川先生も岡部先生も出されましたけれども、血清疫学調 査です。1990年後半の福岡でのデータでございます。毒素に対する抗体を年齢別で 見ますと、通常ですと三種混合ワクチンを接種直後の0歳から5歳のグループが一番高 いと予測をしていました。しかし実際は10歳から15歳のグループが一番毒素に対する抗 体が高いとわかりました。  そして、その後感染がなければだんだん抗体は低下していくと思われますが、40代、 50代でもう一つ山がありました。また低下していきますけれども、70代、80代でもう一 つ山がありました。70、80代の一つの山と40、50代の一つの山と10歳代のこの山と3つ のピークがございました。  破傷風ですと、人から人にうつりませんから、ワクチンで得られた高い抗体から時間 が経つにつれて下がっていきます。百日咳の場合には、流行があって、10歳代、40〜50 歳代、70〜80歳代が感染を受けてピークになっているというふうに考えられます。 (PW)  これは感染症発生動向調査から作図したものでございます。先ほど荒川先生も岡部先 生も言われましたけれども、報告数は確実に減ってきております。1982年、2万5,000 例ほどの報告があったのが、最近は約二千例でございまして、10分の1に、全体の患者 数は減ってきています。  ただ、注目していただきたいのは年齢割合が随分変わってきています。98年、99年ぐ らいから1歳から4歳のグループは1980年当時は50%以上ありましたがだんだん減って きて今は30%です。  一方、0歳代は99年、2000年ぐらいからぐっと増えて、今40%ほどあります。  5歳から9歳は、そんなに変わりはありません。10歳から14歳、15歳以上はごらんい ただきますように、年々少しずつですけれども増えてきています。 (PW)  10歳から14歳、15歳以上だけを取り出してみますと、全体の報告数は先ほど申し上げ ましたように随分減ってきていますけれども、15歳以上、10歳から14歳は2002、2003年 ぐらいから増えてきていることがご理解いただけると存じます。 (PW)  アメリカも今、再興感染症の一つとして今、百日咳を注目しています。アメリカも年 々百日咳の報告数が増えてきています。 (PW)  特に、10歳代以上が非常に増えています。2002年の報告ですと、53%が10歳代以上で あるということで、アメリカも患者さんの年齢が随分変わってきているようでございま す。 (PW)  ただ、百日咳の診断が難しくて、実際百日咳として報告されている患者さんは氷山の 一角だけだろうというように言われています。その理由はいろいろございます。1つは 先ほど申し上げましたように、決して典型的な症状ばかりを呈する患者さんだけではな くて、非典型例があることがあげられます。  例えば、症状が軽い咳のような医療従事者の4から16%ぐらいが百日咳であったとい う報告もありますし、臨床症状が非常に多彩でございます。  更に診断率が非常に低いこともあります。このレポートはアメリカの大学で百日咳の 流行が起こりました。そのときの診断名は上気道炎が40%、気管支炎が45%で、百日咳 と確実に診断されたケースは非常に少なかったというレポートでございます。  更に報告率も低いこともあげられています。アメリカは全数報告でございますけれど も、全症例の約十二%ぐらいしか、報告されていないのではないかといわれています。 特に、青少年とか、成人症例の報告がやはり少ないようです。  報告されていない、あるいは入院症例の60%から70%ぐらいしか実際は報告されてい ないということで、非典型例があったり、臨床症状が非常に多彩であったり、診断率、 報告率が低かったり、あるいは臨床医のまだ百日咳に対する認識が低いために、百日咳 はきちんと診断されていないのが現状でございます。 (PW)  そこで、年長児とか成人が乳幼児への感染源になっています。  両親が多く報告されています。  年長児は主に兄弟、姉妹からうつっていきます。ロンドンでの報告では、感染源の27 %が兄弟であったという報告がございます。  あるいは、先ほどの荒川先生が御紹介いただました新生児の症例もございます。新生 児室とか未熟児室内で、スタッフが感染源になっているという事例がございます。院内 感染の感染源に医療従事者がなっているケースが報告されています。  さらに、これは結核と同じようにおじいちゃん、おばあちゃんも感染源になっていま す。1感染源の15%が祖父母であったという報告もございました。 (PW)  そこで、これからの対策の1つとしてとりあえずやれることは、今これからの対策の 1つとしてDT接種を行っている11〜12歳児にDTの代わりにPを入れたDPTワクチ ンを追加すれば、このグループの発症が抑えられる可能性がございます。  将来的には成人とか医療従事者に対してDPTワクチンをやれば、このグループも少 なくなる可能性があると考えられます。 (PW)  世界では、成人へのDPTワクチン接種が行われています。90年代の終わりから報告 がございます。SKBが小児用のDPTワクチンの3分1量の百日咳抗原とジフテリア と破傷風はDTと同じ抗原量を使った成人用のDPTワクチンをつくっています。10歳 から13歳、今の日本ではほぼ2期の年齢にあたりますが5回目として接種されていま す。十分に抗体価が上がって副反応の発生率もDTと変わらなかったという報告がござ います。 (PW)  このレポートから世界の国々では、例えばカナダでは、青少年、あるいは成人へユニ バーサルのワクチンとして青少年と成人へ勧奨接種されていますし、オーストラリアで は10歳代に接種を勧奨されています。  ドイツとフランスでは青少年へルーチンにやられていますし、EU圏内では小児を扱 う医療従事者や保育園の従事者などにも勧められています。ドイツでは最近は新生児が いる家族内にも一応勧められているというのが今の世界の現状でございます。 (PW)  そこでカナダやオーストラリアで使われていますDPTワクチンの抗原量でございま す。日本で使われていますDPTワクチンは御存じのように5社ございます。5社の抗 原量は特に百日咳に対する抗原量および成分比も違っています。各社のDPTの0.1ml での抗原量と世界で使われてきました成人用DPTワクチンの抗原量を比較しますと、 百日咳毒素の抗原量は海外の成人用DPTと比べてやや少ないようです。FHAもちょ うど中間ぐらいの量でございます。  一方、ジフテリアと破傷風の抗原量は世界で使われていますDPTワクチンのジフテ リアの抗原量よりは現行の日本のDPT0.1 mlでは、ほんのわずか多い抗原量でござい ました。一方、破傷風は世界で使われている成人DPT抗原量に比べますと、現行のD PT0.1ml ですと10分の1の量でございます。  我が国の現行のDPTワクチン0.1 mlを接種した成績を御紹介いたします。 (PW)  これは、現在のDTの接種年齢の子どもたち11〜12歳ですが、5分の1量のDPTワ クチンを接種した後の毒素に対する抗体価の変化でございます。ごらんいただきますよ うに全例抗体がきちんと陽転しております。一応感染防御抗体のレベルを10以上とする と、全例ちゃんと陽転化してまいります。 (PW)  繊毛に対する抗体は、毒素に対する抗体と比較して事前に持っている子どもたちは多 いことが報告されていますが、ごらんいただきますようにこちらも全例きちんと抗体反 応がございます。 (PW)  一方、ジフテリアに関しましては、この11歳〜12歳の時点では現在の日本のDPTを やっていると、高い抗体価がございます。その高い抗体価の子どもたちに、現行のDP T0.1ml をやりますと、現行のDT0.1 mlの抗原量が4Lfぐらいでございますから、 やや少ない抗原量で接種してもきちんと全例抗体反応がありました。 (PW)  破傷風も比較的高い抗体価を持っております。現行のDPT0.1mlの抗原量が0.5 Lf でございまして、現行のDT0.1ml は0.7Lfとなっています。現行のDTよりは少な い抗原量で接種しても、やはり全例抗体価が上昇してまいります。 (PW)  気になる副反応でございます。副反応は特にございませんでした。20人中2人が接種 したところがはれたことがございました。大きさは1センチ以内でございました。局所 反応以外に大きな副反応はございませんでした。 (PW)  まとめでございます。百日咳の患者さんの報告数は着実に減少傾向にございます。し かし10歳から14歳、15歳以上の青少年は相対的に増加をしてきています。 青少年、成 人の百日咳の臨床症状は、典型的でないことが多くて、すぐ治療されずに乳幼児への感 染源になっているということでございます。  海外では、青少年・成人へ百日咳対策として成人用のDPTワクチンの接種が勧奨さ れたり、定期として入っている国々がございます。  現行の2期の年齢、11歳から12歳にDPTワクチン5分の1量を接種した成績では、 十分な追加効果が確認をされまして、特別な副反応は認められませんでした。  2期接種の時点でDTからDPTへの変更をしていただくことは、可能ではないかと いうふうには考えられます。 (PW)  現在のDPTワクチン・DTトキソイドの接種方法でございます。第1期は生後3か 月以上から90か月未満に初回接種を3回と、追加接種を1回、各0.5 mlずつやっていま す。これで百日咳の患者さんの数は随分減ってきました。  ただ、ガイドラインの中には2回目と3回目の間隔が8週間を超えた場合には、それ が6か月未満であれば3回目としてやりますけれども、6か月を超えてしまった場合に は、3回目を行わずに追加接種をやるということになっています。先ほどの岡部先生か らの報告もございましたけれども、2回と3回の比較では有意差はございませんが、3 回の方が抗体価が高いことを考えると、やはり間隔があいても接種回数の3回を遵守す るようにしていただいた方がいいと思われます。  更に、2期接種の11歳から13歳のところでは、現行は小学校6年生にDTトキソイド 0.1 を1回皮下注射しております。ここに百日咳を対象として入れていただいて、現行 のDPTワクチン0.1 mlを1回皮下接種することで、年長児の百日咳が減って感染源に なる確率が減ってくると考えられます。  以上でございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。  岡田先生の御発表に何か御質問、御質疑ございますか。比較的高齢者から低年齢層の 者たちに百日咳を感染させているという可能性が強いので、比較的大きな子どもたちに も今後百日咳ワクチンを接種していくべきではなかろうかと、こういうまとめだと思い ますけれども、先ほど15歳以上が増えていると同時に0歳代で増加とありましたね、百 日咳の発症。 ○岡田参考人  はい。 ○加藤座長  0歳代というのは、どのぐらいのところ、年齢層は。 ○岡田参考人  0歳とは乳児です。この年齢群は相対的に増えてきていると思われます。 ○加藤座長  たしか、スライドの何枚目かに15歳以上は増えていると同時に、0歳代でも少し増加 という。 ○岡田参考人  それは0歳です。 ○加藤座長  0歳ということは。 ○岡田参考人  1歳までと思います。 ○加藤座長  1歳までの間。それは現行の予防接種が例えば6か月からやっていたとしてもです か。 ○岡田参考人  おそらく接種する前にかかっている可能性があると思います。 ○加藤座長  接種していない、そういう可能性が強いと。  ほかに何か。先生どうぞ。 ○結核感染症課長  非常に興味深い内容でございました。一番最初の荒川先生との話とも共通するんです が、小児医療従事者に対するEUでは打っているというのは、これはやはりあくまで勧 奨のレベルでございますか。それとも義務づけているんですか。 ○岡田参考人  それは、まだ勧奨だと思います。 ○結核感染症課長  勧奨ですか。 ○岡田参考人  英語をどう訳すかだったと思うんですけれども、Universal Routine と書いてある 国とUniversal Vaccination と書いてある国とがございます。 ○結核感染症課長  これはEU加盟国の中では、もうそういうふうな方針でやっているということです か。 ○岡田参考人  全部がどうかわかりませんけれども、フランス、ドイツはまた少し別な方法でござい ましたから、すべて統一ということでは恐らくないんだと思います。しかしかなりルー チンというところまでいっているところと、まだユニバーサルというところまでしかい っていないという国があるんだと思います。 ○加藤座長  ほかにいかがですか。年長者に接種することによって年長者の百日咳発症は食い止め られるとしても、年長者がキャリアーになることはまでは止められませんね。 ○岡田参考人  はい。だから、キャリアーにはなりますけれども、せきがなければ感染源には恐らく ならない可能性があるのではないかなと思いました。 ○加藤座長  ということは、先生がおっしゃっていることは、すなわち感染源と思われる方々はも う明らかに百日咳に発症しているんだと、こういう理解でよろしいですか。 ○岡田参考人  はい。それがわからずに診断がついていないということです。 ○加藤座長  わかりました。  いかがでしょうか。よろしいですか。 ○岩本委員  最近、15歳以上が増えてきたというのは、診断がつくようになったということです か。 ○岡田参考人  内科の先生方の認識が少しずつ上がってきているためと存じます。特に呼吸器の専門 の先生方の中にはいろんなところから報告が今されるようになってきました。 ○加藤座長  私も全く先生と同じ経験があって、子どもが百日咳という診断をつけたところ、お母 さんが非常に随分前からせきをしているというので、もう内科を転々と回って回って回 って、それで先生と全く同じです。肋骨骨折を起こしているんです。それで、そんな骨 が折れるほどせきをするので、マイコプラズマか結核か何か違う病気ではないのと思っ ていたら、子どもが典型的な百日咳でお母さんを調べたら菌がきれいに出ましたと、こ ういう例がありますので、確かにそういう例はあることはあります。  よろしいですか。どうもありがとうございました。また、後ほど時間がありましたら 御質問受けたいと思います。  次は、富樫先生からHibワクチンについて御発表お願いいたします。 ○富樫参考人  市立札幌病院の富樫でございます。Hibワクチンについて発表させていただきま す。 (PW) (PW)  先ほど荒川先生がHib菌についてはもうお話になりましたので飛ばしますが、Hi b、莢膜の型がb型のインフルエンザ菌による全身感染症は、95%が5歳未満の小児に 発生します。特に髄膜炎につき、今日お話申し上げますが、このほかに肺炎、敗血症、 喉頭蓋炎、中耳炎などを起こします。  莢膜型ではb以外にaからfまでがありますが、非常にまれでございます。 (PW)  人にのみ感染して、鼻咽腔で保菌状態で保育施設の25%程度でありますけれども、後 に述べます髄膜炎を発症した子どもの施設及びその兄弟のいる施設では、この倍ないし は3倍の保菌状態です。感染経路は、飛沫、直接接触感染でございます。 (PW)  のどでColonizationを起こして、それが血中に回って、結局髄膜で髄膜炎、それから 肺炎、それからいろいろなそのほかの全身感染症を起こすわけでございます。 (PW)  外来小児科学会の深澤先生が発熱診療で非常に困ると指摘しています。私も小児科の 医者でございますが、熱の患者さんを診ると、この病気で悩まされます。早期診断が難 しくて、そして外来で最大のリスクはHib感染症であるというふうに、九州の深澤先 生がおっしゃっております。私たちも日常の臨床でこれを見逃すと訴えられるのではな いのかなと常に頭に浮かびます。 (PW)  深澤先生は、Hibはインベーダーのようにひそやかに血液や髄液中に侵入し、突然 髄膜炎を発症すると述べています。  しかし、完全な防御策があります。  それは、今日お話するHibワクチンの定期接種です。 (PW)  血中に入って敗血症を起こして、髄膜炎になります。  髄膜炎を完全に抑えるといえば、日本は抗生物質によって菌を死滅させるということ でありますが、アメリカ、その他の国ではワクチンで抗体を上げるということでござい ます。 (PW)  これは、1997年まで千葉大学の上原先生たちのMICのデータで、要するに薬剤感受 性の分布でございますけれども、耐性化が進んでおります。この研究から、7年経って いるわけでありますから、さらに増えているわけでございます。 (PW)  これは、北里大学の生方先生のデータをお借りいたしました。  5歳より下の年齢群で分離されたインフルエンザ菌性の髄膜炎の年齢分布です。1歳 未満で一番多く発症し、全部で212 例になります。0歳児、1歳児、2歳、3歳という ふうにだんだん減ってくるわけでありますが、問題はこの赤のBLNAR と呼んでいる耐性 のインフルエンザ菌及びピンクで表しているLow- BLNARという、この2つを併せてもう 耐性が既に半分を超えており、アンピシリンが効かなくなっています。 (PW) (PW)  今から10年ほど前に三重の神谷先生を中心に全国の日本における頻度調査をやりまし た。  1994年にRetrospective Study をやって、それから96〜97年、97〜98年にわたって 2回のProspective Studies を6つの地区で行いました。 (PW)  10年前、私たちは北海道、千葉、神奈川、愛知、三重、鳥取において、Hibの髄膜 炎の全国調査をやりました。これはHibに限らず細菌性髄膜炎全体を集めましたの で、第1位がHibで、続いて肺炎球菌ということになります。 (PW)  Study-1では5歳未満の10万人当たり8.6 という数字が出ました。 (PW)  それから次にStudy-2でありますが、5歳未満の10万人当たり8.9 という数字が出ま した。  ということは、年間に約六百人の患者さんが出ているということになります。年間50 人が死亡して、150 人が神経学的な後遺症を残すというのが、10年前、8年ぐらい前で の成績で、恐らく現在も状況は変わっていない。しかも、耐性菌が増えているというこ とでございます。 (PW)  海外の状況でありますが、Hibワクチンの導入の現状、これは5年ほど前の話であ りますけれども、アジア、アフリカを含む100 か国以上で既にこのHibワクチンが導 入されており、これを色で示してあります。日本は未導入国です。 (PW)  これは、イギリス。 (PW)  これはノルウェー。 (PW)  スウェーデン。 (PW)  これはオランダです。 (PW)  ウルグアイです。 (PW)  これは、アメリカの先ほどの成績で、導入する以前の100 分の1に激減し、ワクチン 効果は抜群でございます。 (PW) (PW)  我が国で治験をやりました。PRPに破傷風のトキソイドとコンジュゲートしてあ る。乳幼児で抗体と細胞性免疫を誘導できます。乾燥品に溶剤を入れて、そして注射接 種します。、これはフランス、アベンティスパスツールの製品を輸入して使っていま す。勿論、アルミニウムやチメロサールは入っておりません。 (PW)  2ないし6か月の健康乳児に対して3回、4週間毎に注射し、翌年に4回目を接種し て抗体価を測定します。 (PW)  2000年2月から2002年6月までで私をはじめ全国の小児科の先生たちの協力を得まし た。 (PW)  抗体価は、長期感染予防レベルが1μg/mLで、現在0.15あれば感染予防レベルであり まして、大体3回接種後で感染予防レベルまで達して、そして追加接種をすると。 (PW)  このように100 %、長期の感染予防レベルになります。1歳で接種が終わりますか ら、長期レベルで5歳の発症を抑制します。 (PW)  安全性でありますが、局所の発赤とか腫脹、硬結などがございます。半分ぐらいの例 に起こりますが、3回を繰り返すと多くなるということはございません。  発熱は1.6 %から4.1 %の間にあります。  いずれも重篤なものはなく、腫脹や発赤も数日で消失いたします。 (PW)  抗体価の上昇が十分得られて、免疫原性が確認できて、そして1年後の追加接種によ って長期感染予防レベルを超える抗体価が得られて、良好なブースター効果が認められ ます。7日までの間に発現した副反応は局所反応であり一過性で重篤なものは認められ ません。 (PW)  早期の導入が待ち望まれます。Hibの耐性化が進み、化学療法も限界に達していま す。  それから外国でも多くの国々で感染症が激減した。要するに、感染症、今回は髄膜炎 だけをお話しましたけれども、その10倍以上の肺炎などのHib全身感染症がございま すので、それも含めると経済効果は髄膜炎だけでも年間100 億とか200 億円です。肺炎 まで含めるともっと多くなります。(PW)  これは、外来小児科学会の先生たちが外国の学会に行って、非常に肩身の狭い思いを して帰って来た体験談です。イギリスのある先生は日本信じられないと首をすくめたと か、アラブ首長国連邦の先生も日本は導入するお金がないの?と聞いていたという話。  トルコにもHibワクチンはありますよと。オーストラリアの先生は、やはり日本の 小児科医は大変だねというふうに言っていたという。韓国の小児科の先生は、Hibの 髄膜炎は自分の国にはありませんと。日本の小児科の先生の肩身の狭い思いを御想像い ただきたいと思います。 (PW)  WHOは、HibワクチンはShould be included in routine EPIというふうに 言っているわけであります。 (PW)  現在、national immunization system 2003 年で、ここの黄色い国が定期接種にな っている国であります。日本は、勿論まだであります。機構の方には2003年のうちに、 申請がいっているそうでございますが、承認が遅々として進んでいないのが我が国の現 状です。  以上でございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。富樫先生のHibワクチンに関しまして、何か御質問ござ いますか。よろしいでしょうか。  今、先生がお示しになったのはアベンティスの輸入のワクチンということですけれど も、このアベンティスのワクチンというのは、世界の市場でどのぐらい使われているん でしょうか。 ○富樫参考人  3つの会社でやっているんだそうですけれども、ワイスとそれからメルクです。その シェアについては詳細を知りませんが、アベンティスのものは非常に多くの国で、特に ヨーロッパはほとんどこれだと聞いています。 ○加藤座長  ほかに。どうぞ、先生。 ○岡田参考人  人での破傷風の抗体価を測っているレポートはあるんでしょうか。 ○富樫参考人  上がりますけれども、通常の三混ワクチン接種で獲得する抗体と比べると圧倒的に低 いそうでございます。 ○岡田参考人  そうすると、DPTを接種した子どもたちにやると、破傷風は少し、先ほど荒川先生 の言われたように上昇すると考えてよろしいのでしょうか。 ○富樫参考人  テタヌス抗体が上がりますが、DPTの後に接種しても異常は出ません。今はDPT +HibやあるいはIPVコンビネーションが製品化され、欧米で実施されていますが、 特別な副反応は起こっていません。 ○加藤座長  ほかによろしいでしょうか。先生、どうぞ。 ○予防接種専門官  今のその話とも関連しますけれども、治験をされた対象者についてなんですけれど も、この対象者についてはDPTの予防接種はRoutine で行われたという理解でよろし いのでしょうか。また、DPT接種後の副反応に影響はありましたでしょうか。 ○富樫参考人  これは不活化ワクチン同士ですから、DPTと1週間以上の間をあければ、いずれを 接種しても良しとしました。どのような順序でやっても副反応は強く出ません。 ○加藤座長  よろしゅうございますか。  先生、どうもありがとうございました。  宮崎先生からもHibについてお話しいただきますので、引き続きよろしくお願いい たします。 ○宮崎委員  もう富樫先生が包括的に話していただきましたので、重なる部分は省いて、数分で話 をしたいと思います。 (PW)  まとめですが、Hib髄膜炎の早期発見、診断というのは非常に現場では困難という ことが実感です。  年間五、六百例の発症があります。  それから小児の細菌性髄膜炎の90%は5歳未満で発症していて、Hibの髄膜炎の場 合、私のデータでは15%ぐらいが予後不良、死亡・後遺症を残しています。  社会的損失は、先ほど言われているように100 億から数百億になるのではないかと思 われます。  それから、薬剤耐性菌が増えてきているということ。ワクチンがあること。欧米で制 圧されつつあること。したがって、日本小児科学会もワクチンの早期承認を求めており ますし、外来小児学会等々は一歩進んで定期化の要望を出しております。 (PW)  これは、全国調査で小児の細菌性髄膜炎の60年代から2000年までの推移ですが、ヘモ フィルスインフルエンザ(Hib)には、徐々に増加傾向にあるということです。(P W)  菌の割合も大体400 例中半分近くがHibになっています。 (PW)  これは、耐性菌の率を示しますが、先ほど先生がお示しになったとおりです。 (PW)  これからが私たちのデータなんですが、厚生労働省の予防接種研究班で15歳未満の小 児の急性神経系疾患の入院患者に関する調査を全国約10か所くらいで経年的に行って いますが、一時期減少していた細菌性髄膜炎が90年代以降、また反転して増加し、特に ヘモフィルス菌、つまりHibの増加が目立っています。 (PW)  それから、小児の細菌性髄膜炎の起炎菌は私たちのデータでも不明例を入れてもHi bが4割、不明を除いて確定例だけにしますと6割がHibになります。 (PW)  それから転帰(予後)ですが、最近の2調査、1999年から2002年までに303 例の小児 の細菌性髄膜炎の症例が集まりまして、後遺症が13%、死亡2%、転院、転院というの は、大体悪化して転院するケースが多いのですが3%ということで、やはり15%ぐらい は予後が余りよくないということです。 (PW)  Hibの髄膜炎に限って言いますと、125 例の確定例があり、ほとんどが5歳未満の 症例で男女差ありません。  転帰もやはり後遺症は12%、死亡例が1%、転院が2%ですので、15%前後の予後の 不良例があるということです。 (PW)  これは、私が働いております福岡市の施設におけるHib髄膜炎で後遺症を残して、 リハビリテーションのために受診した子どもさんの症例です。  16年間で8例ありまして、年間0.5 例。人口推計からいくと年間日本全国では50例ぐ らいのリハビリテーションを要するHib髄膜炎後遺症児が生じていると思われます。 後遺症症例が12%としますと、やはり疾患全体としては500 例ぐらいということで、ち ょうど推計と合うのではないかとも思います。  実際の後遺症として、どういうものが残っているかと言いますと、てんかん、四肢麻 痺(非常に重たい麻痺)、運動麻痺、それから知的障害、多動、難聴があり、難聴が多 いのが目立ちます。こういうケースがリハビリのために訪れておられます。 (PW)  これは、社会的損失の計算のために提示した私の症例なんですけれども、急性脳症、 細菌性髄膜炎ともに重い障害を残した場合は、頻回の病院通院やリハビリテーション、 それから身障手帳を持ちながら、特別児童扶養手当、障害者福祉手当、あるいは生活全 介助になりますので、この子たちは幼児期でも年間500 万円ぐらいの社会的負担が生じ ているということが計算上出てまいりました。  以上でございます。 ○加藤座長  ありがとうございました。  宮崎先生からはHibの髄膜炎の実情についてお話をいただきました。やはり同じよ うに年間600 名ほどの可能性髄膜炎が出ているということと、推定約五十人ほどの後遺 症の患者さんが出てくるということは、年間ですね。ですから、それがどんどんどんど ん積み重なっていくと、こういうことですけれども、そういう方々がおられるというこ とで、両先生からのお話では、そういう現状からかんがみて、やはり世界の情勢も見た 上でHibワクチンの導入は先進国としては不可欠ではなかろうかと、こういうことで お二人の先生の御意見をまとめてよろしいでしょうか。  何か御質問ございましたら。どうぞ。 ○岡部委員  Hibに関連してよろしいですか。 ○加藤座長  どうぞ。 ○岡部委員  病気のインパクトから言えば、やはり10万人ぐらいあって、30%ぐらいの重度後遺症 を残すというのは、かなりインパクトの強いものだと思うんです。そういう面からは非 常に期待されるものであると思うんですけれども、荒川先生がおっしゃった幾つかの考 えられる不安点というものについては、もしこれを払拭する、あるいはそこをもっと強 調する、逆に心配だということを強調するんだったら、どういう調査、あるいはどうい うことをすればクリアーになりますか。 ○荒川参考人  まず調査と言いますと、実際の治験の場合、100 人規模の数ですので、実際数万人と か数十万に打ったときの副反応について十分に予見できるかどうかというのは、ちょっ とそこは不明な点があります。  ですから、1つは導入した場合に、接種後の調査をきちっとしていただいて、発熱者 とか副反応が発生するような患者さんの比率が現行のDPT等とどの程度違いがあるの かないのかということを、きちっとやっていく必要があるのではないかというふうに思 います。  それからもう一つは、海外から日本へ輸入するワクチンについては、日本で車を買え ば日本の排気ガス規制をクリアーしなければいけないのと同じように、日本のクォリテ ィーにできるだけ合わせたものを入れていただくということで、これはかなり過分に行 政的な課題になるんですけれども、やはり日本で今、使われているものに近いものを努 力していただくと。  実際、先ほども少しお話しましたように、Hibワクチンについてはロットによっ て、非常に高いものと低いものの差があるんです。ですから、できるだけそういう辺り をきちっと調べた上で、試験をした上で、そういう問題点が少ない、より少ないと考え られるものを日本に選択して輸入してもらうようなことをするとか、可能であればそう いうことも求めていく必要があるのではないかなというふうに思っていますけれども。 ○加藤座長  いかがでございましょうか。ほかにどうでしょうか。 ○結核感染症課長  基本的なことで申し訳ないんですけれども、ロットによるばらつきというのが非常に 気になるんですが、なぜこういうことになったんでしょうか。 ○荒川参考人  Hibワクチンについては、エンドトキシン試験を製造工程、あるいはコアゲルにつ いて、課していないです。グラム陰性桿菌ですので、調べれば出るんです。ですから、 実際に欧米などでは、製造工程の品質管理の中で、日本で今、行われているような形の 生物製剤基準みたいなものの中できちっと位置づけるということはされていないんで す。  それから、Hibワクチンを日本へ導入するということを想定したのは、生物製剤基 準の中にもエンドトキシン菌を調べるという項目は原案の中には入っていません。です から、現行ではそれを我々は、その生物製剤基準がもし承認されたら調べることは日常 の試験の中で確認することはできないです。ですから、やはりそういうものについてき ちっとデータを求めていくということは、1つの対策の選択肢かなというふうに思いま す。 ○加藤座長  よろしいですか。ここは、子どもたちを病気から救うためにワクチンをどうしていこ うかという、そういう検討会ですので、ワクチンを採用するかしないかというお話では ございませんので、これ以上深くは突っ込まないことにいたしますが、いずれにして も、今の荒川先生の言葉を大まかに見れば、少し突っ込んで言われていただければ、市 販後調査をきちんとやっていただきたいと。こういうことに尽きる、そういうとらえ方 で大体ここのところはよろしいですね。そのようなことでまとめてよろしいのかと思い ますが、全体的に何か御意見、今日はDPTとHibの検討をさせていただきましたけ れども、全体で何か御質問ございましたら、どうぞ。 ○予防接種専門官  百日咳の関係でございますけれども、2点ございまして、資料6のところで、百日咳 患者の年齢分布がございますが、2000年から2004年においては、1歳未満、すなわち0 歳代の患者を0から5か月のものと6か月から11か月のものに分けて記載されておりま す。1歳未満を見ますと半分強が6から11か月、半分弱が0から5か月ということなん ですけれども、麻疹については1歳代での患者が多いので、なるべく1歳の誕生日直後 に受けましょうというキャンペーンがあるわけなんですけれども、百日咳の患者を減ら すという観点から、もっと厳格に幅を狭めた接種勧奨時期を定めるという考え方もある のではないかと思われますが、患者数を減らすという観点からの具体的なリコメンデー ションの設定というのは、どうあるべきかというのが1点。  あと、それからもう一点は、DPTの1期の初回の接種回数について、先ほど岡部先 生の発表の中で2回接種の場合と3回接種の場合と、若干の差はあるんだけれども、大 きな差はないというコメントがありましたが、追加接種の場合の副反応、局所反応の発 生状況を考えた場合に、初回を2回で済ませる方法もあるのではないかという議論が学 会で行われているということを聞くんですけれども、その辺りについて何か知見がござ いましたら教えていただきたいと思います。 ○加藤座長  では、後段の方からは私がお答えしますが、これは平成6年の予防接種改正のとき に、実は私が個人で私どものデータを出しまして、DPT接種は2回接種で十分に効果 が上がるというデータをお出しました。  確かに、すべて2つの抗毒素量、それから1つのPT、FHAともに2回接種いたし ますと十分上がってきました、3回目はエライザ法ですので、もうほとんどプラトーに なってきます。したがって、2回でよろしいのではないかという御議論をそのときにい たしましたが、また今、同じ御議論になるわけですが、残念ながらその後の研究が進ん でおりませんで、その後、果たして今までどおり1年あるいは1年半の間においてブー スターをするということが2回接種で十分それまでもつかどうかということが1つのポ イントになっておりましたが、残念ながらその後の研究は私どもがちょっとサボってお りまして、出ておりません。日本でも出ていないと思われます。  その間、世界の動向も実は私もながめておったわけですが、すなわち米国等では無菌 体百日咳ワクチンを導入して、その際に2回接種にもっていくかどうかということをじ っと見ていたわけですけれども、先進各国とも2回接種にもっていかなかったんです。 結局、現行どおり3回接種にしているということでありましたので、それから先の追加 の研究は私どもは少なくともいたしておりません。先ほどの御発表でも、やはりそう大 きな違いはないけれども、やはり3回接種した方が安全であろうというような御意見と いうふうに承りました。  それから、前段の御質問は、先ほど私が岡田先生に御質問したことと同じ内容になり ますが、1歳前の方でかなりの患者さんが増えているところを見ると、今の予防接種行 政の接種時期の在り方ということの御質問だと思いまずか、果たしてそれでよろしい か。  例えば、今は生後3か月から90か月までの間ということですが、米国は2か月からで す。はしかは厳密に1年経ったらやりましょうというキャンペーンをはっているところ で、果たして百日咳に関してどのような方向で接種の時期をもっていこうかと、いった らいいかというのが専門官からの御質問だと思いますが、岡田先生いかがでしょうか。 ○岡田参考人  現状では3か月からできますけれども、3か月からDPTを接種している人はそれほ ど多くないと思います。このため、接種する前にかかってしまうこともあるため、早め の接種が勧められていると思います。  ただ、来年の4月からBCGが生後6か月までというところになったときに、BCG をまず最初に勧めた方がいいのか、DPTを最初に勧めた方がいいのかというのは、や はり全体的な流れの中でお勧めの案を、それなりに考えていかなければいけない分野な のかなとも思います。DPTだけから言うと、勿論早くからやった方がいいんでしょう けれども、少なくとも2回やっておけば毒素に対する抗体はしっかり上がってまいりま すから、最初で2回やるか、間にBCGを入れるか、どういうリコメンドになるのかわ かりません。 ○加藤座長  岡部先生、どうぞ。 ○岡部委員  資料6の方でいきますと、確かに1歳以下の百日咳の患者数は割合で増えてはいるん ですけれども、人数としては以前に比べればがくっと減っているというのは事実であり ます。ですから、急激に乳児において問題になっているということはないと思うんです けれども、しかし、相対的に患者の割合がこの年齢層に多いということは、何らかの問 題があるだろうというふうに思います。  それは、例えば私の発表にもあるんですけれども、流行予測の中で見ている接種率で 確かに1歳を過ぎれば90%にいっているんですけれども、0歳代の接種率は30%ぐらい である。先ほど岡田先生のお話にありましたように、多くの自治体では3か月から勧め ることは可能なんですけれども、実際には6か月以降にいわゆる予防接種券というよう な配布であったり、実際の勧めをやっているところが多いのではないかと思います。  ということは、実際の接種は少しずつずれてくるので、0歳代での接種率を上げる工 夫は専門官がおっしゃったように、今後の予防接種の在り方としては、十分に工夫をし ていくことが必要であろうと思います。それで、発症者をもっと減少させることでき る。  しかし、新生児とかあるいは3か月ぐらいの乳児での予防はなかなか難しいと思いま す。一方、岡田先生の御提案になっている長期がどのぐらいかというのはわからないけ れども、とりあえず10代以降の抗体保有を上げて、発症者を少なくしていくというの は、方法ではないかというふうに私は思いました。 ○加藤座長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○竹本委員  これは、実際に全国的にそうなのかどうかわかりませんが、私の知っている限りで は、まず3、4か月健診で保健所でBCGやるわけです。ですから、それまでにワクチ ンの連絡は来ていないし、3、4か月健診といっても、4か月の健診のときにBCGを やりますから、実際にはそれから1か月間あけるので、大体5か月以降に三種混合の第 1回目に来ることになります。早くてもそのぐらいになりますが、それから少し遅れて いるうちに今度はポリオの連絡がきますと、お母さんたちはポリオの連絡がくると、や はり保健所なり行政から連絡がくれば、連絡が来た方が先にやらなければいけないんだ なと思うから、余計遅れていく。  しかも、ポリオは年2回しかやらないので、日本に現在ない病気だから年2回でとい う意識が私たちにはありますけれども、お母さんたちには年2回しかやってくれないん だから、その時期に行かなければいけないということになると、まずBCGやって、ポ リオやって、三種混合になる。だんだん三種混合は遅れていくというのが現状ではない かなと感じますので、来年度のBCGの改正に併せて接種の理想的なプログラムみたい なものを国民にアピールしていかなければいけないのではないかなという感じがしま す。 ○加藤座長  ありがとうございました。 ○澤委員  では、保健所から。 ○加藤座長  どうぞ。 ○澤委員  東京23区の保健所では、やはりBCGを一番最初にということで、接種票を送る時期 が既にちょっとずれているんです。そういうようなことも含めて、県によっては全部1 冊お渡ししてしまうところもあるんですけれども、親が混乱してしまってなかなかどれ もこれもどうやって打っていいのかわからなくなるという可能性がすごく高いというふ うに私どもは理解しているんです。だから、そういうこともありまして、順番がこうい うふうになっていて、特にBCGとポリオは集団接種ですから、その時期を外すとなか なか難しいということがありますので、どうしてもそういうふうなお勧めの仕方になっ てしまうというのが実態ではないかと思います。  ですらか、今、先生がおっしゃられましたように、いろんなものを導入するときに、 システムを変えるときに、きちっとパターンを決めて、だれでもがわかりやすいように してやっていければ時期というのは、3か月に打った方がよければ、そんなふうになる のではないかなというふうには思います。  それから、もう一つなんですけれども、さっき学童期、要するに、2期ですか。DP Tの追加の  ところで、DTではなくてDPTの方がいいというふうにおっしゃっていたんですけ れども、実はあの時期のDTの接種率が非常に悪いんです。  それで、これは後で、多分最後の方の会議で問題になる、発言させていただく機会が あるのかなと思うんですけれども、一応足立区の方で予防接種の検討会をした結果、や はり大きくなってからの接種に保護者が同行するとか、それから保護者が同行していな い場合は電話をかけて、保護者と連絡をとってというふうなことがあって、それでは絶 対接種率が上がらないということが言われておりますので、そういうことも含めて、も しDPTにするなら、そういうことも含めた形で最後の方の検討のところで取り込んで いただきたいなというふうに思います。 ○加藤座長  ありがとうございました。  大体、予定いたしました時間になりましたのでまとめさせていただきますが、いろい ろ詳細にわたる検討をいたしましたが、十分の時間がありませんので、今日は結論じみ たことは申し上げられませんけれども、最後に委員がおっしゃったとおり、岡田先生か らは11歳から12歳のときに百日咳ワクチンを入れた三種の混合ワクチンを接種をしては いかがかという、こういうお話がございました。  それからHibワクチンについては、お二人の先生から是非導入を早めていただきた いというお話がありましたし、また荒川先生からは市販後調査を含めて問題があるとこ ろは解決していくべきであろうというような御議論をいただきました。  Hibに関しては、ワクチン自体が承認されておりませんので、定期接種化について 深い議論はまだ尚早かと思われますけれども、このワクチンの意義について非常に有意 義なディスカッションができたことと思います。  いずれにいたしましても、Pを入れる、またはHibを導入する、いずれにいたしま しても副反応というようなところがいろいろな点で問題にもなってまいると思いますの で、この討議の間にすべてのワクチンの副反応というようなことも、今後事務局の方で 計画をしていただいて、集中的な討議をしていただきたいというふうに考えます。  また、それと同時に最後にお話しになったとおり、予防接種どの順番でどういう予防 接種をしていこうかというスケジュール、このスケジュールについても時間がありまし たらば、是非この検討会で皆さんで知恵を出し合っていただいて、1つのモデルという ものを、日本の国のモデルというものをつくり上げていきたいというふうに私は考えて おります。  それから、澤先生がさっきおっしゃった保護者同伴の件は、今年から日本脳炎に関し ては、中学生については条件付きで保護者が同伴しない場合にも接種が可能となりまし た。1年違いですかね、DTの2期接種は6年生ですので。その辺のところを、事務局 と十分に検討した上で、今後の課題といたしたいと存じます。  まだこれからも検討会ございますが、今日はこれでよろしゅうございましょうか。  なければ、事務局の方からお話ございますか。 ○予防接種専門官  特にございませんけれども、次回は年明けの1月14日の午後に予定しております。ま た、場所等々決まりましたら御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたしま す。 ○加藤座長  どうもありがとうございました。                               照会先                         健康局結核感染症課予防接種係                         TEL:03-5253-1111内線(2385)