04/12/20 労災保険料率の設定に関する検討会  第11回議事録           第11回労災保険料率の設定に関する検討会                  日時 平成16年12月20日(月)                     17時〜                  場所 厚生労働省第17会議室 ○岩村座長  ただ今から第11回「労災保険料率の設定に関する検討会」を開催させていただきま す。今日の検討会では、東京大学の大沢先生、獨協大学の岡村先生、北海道大学の倉田 先生がご欠席ということでございますので、この旨、報告させていただきます。  それでは早速でございますが、議事に入らせていただきます。これまで論点整理とし ての中間とりまとめという、その回も含めて10回にわたり、3つの項目、すなわち「労 災保険率」、「業種区分」、「メリット制」について検討してまいりました。第8〜10 回においてご議論を頂戴した内容を中心として、私と事務局とで相談をし、最終報告書 の案を作成させていただきました。今日お手元に資料という形で、この最終報告書の案 をお示ししてございますが、最初にそれにつきまして事務局からご説明をいただきたい と思います。よろしくお願いいたします。 ○数理室長  ではご説明申し上げます。報告書の案をお手元にお渡ししてありますが、全体の構成 からご説明いたします。目次はI「はじめに」、II「現状と検討課題」、III「今後の基 本的な対応」ということです。このうち、「はじめに」と「現状と検討課題」について は、中間とりまとめで整理したものをそのまま持ってきています。ただ、「はじめに」 の最後の検討会のところで、今までは「今後、具体的な方向について検討を行う」とい う中間的な表現でしたが、最終的な報告書では、平成16年5月12日に第1回を開催し、 以降、「具体的な方法等について検討を行った」というような表現に変えています。I とIIについては、ほぼ中間とりまとめのとおりですので、III「今後の基本的な対応」 についてご説明申し上げます。  6頁、整理の仕方として、「今後の基本的な対応」という形にしました。労災保険率 の設定については、今まで一定の考え方に基づいて行われてきたわけで、IIで課題を示 しており、この検討会において、これらの課題を含めて労災保険率設定に関する主な論 点について総合的に検討を行い、新たに今後の基本的な対応についての考え方をまとめ たということです。  行政においては、このとりまとめを踏まえて所要の手続きを経て、労災保険率の設定 に関する基本的なルールを改めて策定し、これを明示することが必要である。さらに、 労災保険率の決定手順の一層の透明化を図るために、今後における労災保険率改定のプ ロセスにおいて労災保険率の改定に係る検討の基礎となる資料を公開するとともに、こ れに基づいて審議会での検討を行うなど適切な手続きを経て、労災保険率の設定が行わ れることが必要である、というようなことで整理をしました。  最後の段落では、労災保険率の設定に係るルールの明示及び手続きの透明化を図るこ とを通じて、制度の運営に対する信頼を高めるとともに、労災保険制度が被災労働者等 に対して迅速かつ公正な保護を行うために、事業主に加入が義務づけられた強制保険で あるということを踏まえて、被災労働者等に対する保護機能を確実に果たすとともに、 労働災害防止のインセンティブを促進するように適切に運営されることが望まれる、と いうことでまとめたところです。  1以降が、各項目ごとに整理をし、8回から10回で行われた検討を基にまとめたもの です。(1)が労災保険率の基本的な考え方です。まずイは、業種別に設定するという こと、労災保険率については業種別に災害リスクが異なる観点及び労働災害防止インセ ンティブを促進し、かつモラルハザードを防止する観点から、業種別とすることが適当 であるということです。  後ろのほうで財政方式と賦課方式を述べていますが、過去3年間の保険給付実績等に 基づいて算定する料率設定期間における、保険給付費等に要する費用の予想額を基礎と して、労働福祉事業及び事務の執行に要する費用の予想額を考慮して算定することが適 当であるとしています。  ロは改定の頻度ですが、労災保険財政の円滑な運営、保険料負担の不公平感の是正、 労働災害防止インセンティブ促進の観点から、これは随時見直すことが必要であるが、 事業主等に対する周知、事業主の事業運営の安定性確保、行政事務の効率化の観点か ら、原則として3年ごとに改定することが適当であるとしています。  ハは業種別の料率設定に係る基本的な財政方式ということで、業務災害分の料率につ いては、業種別に短期給付分及び長期給付分に分けて算定することが適当である。短期 給付の財政方式については、基本的に短い期間で給付が終了する性格のものですので一 定期間、これは3年間の収支が均衡するように賦課する方式(「純賦課方式」)による ことが適当である。長期給付の財政方式については、年金等という形式での給付ですの で、労災事故を起こした責任は、労災事故発生時点の事業主集団が負うべきという観点 から、災害発生時点の事業主集団から将来給付分も含め、年金給付等に要する費用を全 額徴収する方式「(充足賦課方式」)によることが適当である、というようにしており ます。  ニは全業種一律賦課ということで、a.業務災害分については、短期給付のうち災害 発生から3年を経ている給付分、長期給付のうち災害発生から7年を超えて支給開始さ れるもの及び過去債務分については、以下の理由から当該事業主の業種だけに責任を負 わすのは適当ではなく、全業種一律で算定するのが適当である。(1)短期給付分につい ては、労働基準法第81条により、3年経過時点で打切補償を行って、それ以後の補償に ついては行わなくてもよいとされていることから、災害発生から3年を経ている短期給 付については、当該事業主の業種だけに責任を負わすのは適当ではない、という整理を しております。  (2)長期給付分について、過去債務分は除くということですが、労働基準法において は、概ね治ゆ後、労災法での年金の4年相当分の給付を事業主の責務とするということ で、短期給付分の3年と合わせて災害発生から最高約7年相当分の給付が労働基準法が 定めた事業主責任分の最高額と考えるのが妥当ではないか。このようなことから、長期 給付分については、災害発生日(又は発症日)から7年を超えて支給が開始される年金 等給付費用は、当該事業主の業種だけに責任を負わせることは適当ではなく、全業種一 律賦課として算定することが適当である、というように整理をしたところです。  また、(3)過去債務分、これは平成元年度当時における既裁定年金受給者に係る将来 給付費用の不足額で、平成元年度から継続して積み立てているものですが、平成15年度 において約2,000億程度の積立不足でしたが、今までの過去債務についての考え方を考 慮すると、現時点においては全業種一律賦課の考え方を継続すべきだと。料率設定につ いては、積立金の不足額の状況、日本経済の動向を踏まえた今後の労災保険財政の見通 しにも関係することから、これを踏まえて料率設定することが適当であるというように 整理をしました。  b.非業務災害分等、専ら通勤災害分及び二次健康診断等給付分、労働福祉事業及び 事務の執行に要する費用については、以下の理由から全業種一律で算定するのが適当で あるとしています。  (1)通勤災害分については、通勤という行為は労務を提供するために不可欠の行為で あるが、業務と異なり事業主の直接の支配管理下にはない。通勤に関する住居、通勤手 段、経路の選択は基本的に労働者側の事情によって決まるということで、業種に関係な く全業種一律とすることが適当であるということです。  (2)労働福祉事業及び事務費用分については、労働福祉事業が被災労働者等を対象と する事業だけでなく、労働災害防止、労働者の健康増進等、全労働者を対象とした事業 を展開しているということ、また事務費についても、保険給付・徴収事務とも、すべて の事業場を対象としているため、全業種一律とすることが適当である。なお、労働福祉 事業の内容及び負担水準等の問題については、労働福祉事業のあり方に係る政策論を踏 まえて議論をする必要がある問題ですので、別途の場において検討されることが望まし い、というように整理をしております。  (2)は激変緩和措置等です。(1)のような基本的な考え方で、業種別に算定され た数値を労災保険率とすることを原則としている。ただし、算定された数値が大幅に変 動した場合、特に大幅に引き上げることになるときは、企業における負担、対応が困難 であると想定されることから、一定の激変緩和措置を講ずることもやむを得ないのでは ないか。その内容については、労災保険率の全般的な水準にも関連する問題ですので、 あらかじめ一義的に決めることは難しいということで、今後の料率改定時において、過 去3年間の数理計算を踏まえて改めて設定する必要があるということです。  さらに、過去に発生した災害等による給付が継続しているが、急激な産業構造の変化 によって事業場数、労働者数の激減が生じ、保険の収支状況が非常に悪化している一部 の業種(「金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業」等)については、業種別に算定された 数値が、現在の事業主の労働災害防止努力の結果として評価されるものよりも過大に算 定されてしまう。要するに、規模が小さくなったがために過大に算定されてしまう。そ の数値が今後も悪化していくことが予想されるということで、通常の激変緩和措置だけ ではなかなか難しい面があるだろうということで、労災保険率の水準に関するこれまで の状況なり、使用者の負担能力等を勘案して、必要に応じて一定の上限を設けることが 必要であるかどうかを、過去3年間の数理計算を踏まえて具体的に検討することが必要 である。以上の激変緩和措置を講じたことにより、財政的に影響が出る場合には、その 必要な所要額については全業種一律賦課とすることが適当である、というように整理を しております。  2.「業種区分」の関係ですが、(1)が基本的な考え方です。労災保険制度におい ては業種ごとの作業態様等に差異があるということで、災害の種類、災害率が異なると いう実態を前提として、労働災害防止のインセンティブ促進の観点から、業種別の労災 保険率を設定するということです。労災保険の業種区分については、労働災害防止イン センティブを有効に機能させるという観点から、作業態様や災害の種類の類似性のある 業種グループ等に着目して、そのグループごとの災害率を勘案して分類することが適当 である。その際に、費用負担の連帯性の関係で、労働災害防止活動を効果的に浸透させ ていくことのできるような業界団体等の組織状況について斟酌するとともに、保険技術 上の観点からは、保険集団としての規模、表示の問題では日本標準産業分類などを勘案 することが適当であるとしました。  現行、比較的災害率の高い製造業、建設業などでは、割と細分化されていますが、サ ービス業を中心とする第三次産業等については、比較的大括りの区分になっているとい うことで、産業構造の変化に伴い、特に第三次産業が中心となっている「その他の各種 事業」については、リスクが異なるさまざまな業種が縷々含まれていることから、上の 考え方に沿って業種の細分化をすることが適当である、というようにまとめています。  (2)が業種区分の見直しということで、イ.「その他の各種事業」の分割で、現行 の「その他の各種事業」の業種区分を、平成18年度労災保険率の改定に際しては見直す ということで、事務従事者割合の比較的高い適用事業細目を取り出した上で、日本標準 産業分類(大分類)に対応して、(1)「新聞業又は出版業」及び「通信業」、(2)「卸売 業又は小売業」及び「旅館その他の宿泊所の事業」、(3)「金融、保険又は不動産の事 業」というところを分割して、また新たな業種区分として設定することが適当である。  現行の「その他の各種事業」のうち、上の(1)(2)(3)を除いたものについては、当面 引き続き「その他の各種業種」として同一の業種区分とすることが適当である。そのよ うに区分を分けた場合に、(1)については「新聞」、「出版業」、「通信業」とし、(2) については「卸売業又は小売業」、「飲食店」、「旅館その他の宿泊所の事業」とし、 (3)については「金融業」、「保険業」、「不動産の事業」として、いわゆる業種区分 の事業適用業種細目をそのように定めて、各細目ごとの収支状況等のデータを整理する ことが望ましいというようにまとめました。  災害率が大きく異なる産業分類が含まれていると考えられるような業種、例えば「そ の他の各種事業」の中の医療保健、法務、教育、宗教、研究又は調査の事業といった区 分がありましたが、それについては今後、業種をさらに適切に分割することができるよ うに、日本標準産業分類を参考として適切に細分化するとともに、業種の分割に要する 基礎資料のデータの収集・整備することが適当だということでまとめています。  一方、ロは統合の関係ですが、現行、労働者数が1万人を下回っているような業種に ついては、保険集団としての安定性を維持するという観点からは、今後の労働者数の変 化等の動向を見つつ、統合の検討を行うことが望ましいのではないか。一方、長年にわ たる産業構造の著しい変化に伴い、規模が小さくなり、過去に発生した災害等による給 付が継続しているということで、保険の収支状況が著しく悪化している一部の業種につ いては、料率の違いもありますので、他業種との統合はなかなか難しいと考えられると ころから、現状の業種区分を維持した上で、1の(2)の激変緩和措置等の必要な対応 を行うことが適当であるというように整理しています。  3の「メリット制」ですが、(1)が基本的な考え方ということで、同じ業種区分で あっても、個々の事業場における作業工程とか、機械設備、作業環境の違い等によっ て、災害率に差が生じる。このため、労働災害の多寡によって保険率(料)を増減さ せ、もって事業主の経営感覚に訴えるということで、労働災害防止のインセンティブを 促進するという機能を持っていますが、そういったメリット制は労災保険制度において も必要なシステムであるということです。  (2)はメリット制の適用要件の関係ですが、一応個々の事業場の保険収支率(メリ ット収支率)に応じて保険率(料)を増減させるということですので、労働災害防止イ ンセンティブを促進するというメリット制の目的を考えると、メリット制適用の規模要 件については以下のように考えることが適当であるということで、ちょっと噛み砕いた 形で表現をしています。  例えば、一定の労働者数当たりの災害の発生確率が同じであっても、規模が小さい事 業場は一定期間当たりの災害発生確率は非常に小さくなる。例えば、100人で危険な作 業を行う場合に、年1件程度の災害が発生すると考えると、20人でやったら5年に1 件、4年間は無災害、10人では10年で1件で、9年は無災害というような割合になりま す。したがって、小規模な事業ほど、もしメリット制の対象になれば、無災害の状況が 続いていて、それで−40%に適用される期間が長くなるということも考えられますが、 一旦災害が起きてしまうと、規模が小さいがために保険料が少ないということで、メリ ットの収支率が非常に大きくなる。メリット増減率が+40%に飛びはねてしまうような 状況になる。このような場合には、労働災害の増減の評価を通じて経年的に労働災害防 止インセンティブを促進させるというのがメリット制の基本的な機能ですので、それが なかなか有効に働かないのではないかということで、一応メリット制の対象として一定 規模以上という要件を定めることは適当である、というように整理をしました。  このような考え方を踏まえたメリット制の適用の要件の具体的な基準として、労働災 害防止の努力の差異を、保険数理的に最小限有意に評価できるような水準の規模として 「年に平均1件程度の災害が予想されるような規模」というのをメルクマールとするこ とが適当であろう、そのメルクマールによって定められた適用要件、これは労働者数× 非業務災害を除く労災保険率≧災害度係数というような要件で定めていますが、その災 害度係数について、最近の給付実績等から検証したところ、現行の0.4と相違ないとい う結果が得られています。  現行の規模要件を拡大すると、無災害事業の割合が高まるということになり、保険料 収入の減少が見込まれ、それを補填するため、労災保険率を全体として引き上げる必要 があること等の影響もあることから、メリット制の適用要件は現状どおりとすることが 適当であるというように整理をしています。(注)がありますのは、前回に出した参考 資料を焼き直したもので、災害度係数についての説明を入れています。  (3)はメリット増減幅の関係ですが、継続事業のメリット増減幅の拡大について は、(1)制度が導入された当時と比較して、災害率が相当程度低下しているという現状 で、メリット増減幅の拡大による災害防止効果を明確に予測することは過去に比べて難 しいのではないか、(2)保険料収入の減少が見込まれ、それを補填するために労災保険 率のベースを引き上げる必要となるなどの問題があることから、現状の水準(±40%) とすることが適当である。一方、有期事業については、継続事業とは異なり、現行で は±35%の範囲で保険率(料)を増減させていますが、その差が設けられた経緯は、有 期事業へのメリット制が導入された当時(昭和30年)、当該業種において重大災害が多 発する傾向にあり、継続事業と同じであれば、著しい保険料負担の増加と、それに伴う 事業主の災害防止インセンティブの減退を招くおそれがあるということで、それを避け るために有期と継続事業の間には増減幅に差が設けられたという経緯があります。  しかしながら最近の、特に建設事業における最近の災害発生状況を見ると、度数率及 び強度率が、有期事業へのメリット制度導入当時に比べて著しく低下している。継続事 業が±35から±40%の増減幅に拡大されたころ、昭和55年当時の全産業の災害発生状況 と同程度までに最近の災害発生状況が低くなってきているということがありますので、 これらの取扱いに差を設ける合理的な理由はなくなった。そのため、有期事業(建設の 事業)のメリット増減幅は、今後は継続事業と同じにすることが適当ではないか、とし ております。  なお、メリット増減幅の拡大については、「労災かくし」を助長することから拡大す べきではないというご意見がありますが、「労災かくし」については労働基準法および 労働安全衛生法に違反する事案として、行政機関において厳正に対処することは当然の ことですし、また「労災かくし」の背景には、公共工事の指名停止等をおそれることな ど複合的な要因が考えられるということで、「労災かくし」に係る対応については、そ れ自体、別途検討される必要があると考える、というように整理をいたしました。  (4)は、特例メリット制については、中小企業である継続事業場が安全衛生措置を 講じた上で、同制度の適用を希望したときにメリット増減幅を±45%の範囲で増減させ る制度ですが、十分活用されていないということで、その原因として、(1)中小事業場 では、ひとたび災害が発生すると急激にメリット収支率が悪化して、保険料が±45%に なる可能性が高いということと、(2)対象の安全衛生措置が「快適職場の認定」に限ら れているということ、また、(3)特例メリット制の普及活動と企業への浸透状況が必ず しも充分ではないということなどから、十分活用されていないのではないかということ です。特例メリット制の普及活動に努めるとともに、更なる活動を図る、また、中小企 業への安全衛生措置の導入を促進するためということで、対象となる安全衛生措置を追 加することが適当であるという整理をしました。  中小の事業場への一層の適用促進を図る観点から、政策的なインセンティブとしての 有効な措置の導入、例えば−45%〜+40%という、プラスマイナス非対称型の導入も考 えられるのではないか、ということで整理をしています。  最後は4.「今後の状況変化等への対応」です。今回、本検討会において基本的な事 項について上記のようにとりまとめたところですが、今後とも労働災害の実態なり、産 業構造や技術変化等が考えられますので、それを踏まえた労災保険財政の健全な運営、 適時適切な見直しのために、専門家の参画も得て、次のような課題等について継続的に 検討していくことが望ましいとしています。  課題としては、まず業種区分の問題では、(1)産業構造や技術変化等は当然今後も考 えられるところですので、そういった変化を踏まえて業種に関する情報を収集し、業種 区分に係るルールに基づいて業種区分の見直しを行う、また、(2)保険集団が小規模で あるということに起因することで料率改定が大きく変動しないように、ある程度の規 模、最低規模のあり方について検討すること等が必要である。また、メリット制につい ては、創設当時と比べて、労働災害が非常に減少し、今後とも減少が期待されるという 状況において、メリット制の機能を実効あらしめるような手法等について検討しておく ことが望ましい。あわせて、メリット制と保険財政の関係等について分析を行うととも に、労働災害防止努力をより適切に反映し得る手法など、労働災害防止インセンティブ の促進機能を維持し、より高める方策について検討することが望まれる、ということで 整理をしております。  別紙は、参集者の方々と開催状況などをまとめたものです。以上です。 ○岩村座長  ただいまご説明いただいた報告書の案について、ご意見を頂戴したいと思います。  最初にご説明がありましたように、今回の「報告書(案)」のうち、I「はじめに」 とII「現状と検討課題」については、すでに中間とりまとめのところでご議論いただい たものをそのまま用いておりますので、今日はIIIの「今後の基本的な対応」、資料の 6頁からに的を絞ってご意見をいただきたいと思っております。  IIIの最初、6頁に全体の考え方をまとめた部分がありますが、そこについて何かご 意見があれば頂戴したいと思います。この部分の置き方が難しいところで、最後に持っ てくる部分もあるかという気もしないでもないのですが、他方で、最後にはまた検討課 題ということで、こういうことを検討しなさいということも書いてありますので、そう いう場所の問題点が若干ないわけではないのですが、最初に書くということで、特に問 題はないのかなと思ってこうしたのですが、よろしゅうございましょうか。また何か全 体を見てお気づきの点があれば、次回にでもご指摘をいただきたいと思います。  次に1の「労災保険率」の部分に進ませていただきます。ここでは、全体を大きく2 つのパートに分け、(1)が基本的な考え方、(2)が激変緩和措置ということになっ ています。まず(1)の基本的な考え方について、お気づきの点があればご指摘いただ きたいと思います。 ○高梨委員  6頁のいちばん下、ロの改定の頻度についてですが、結論として、「原則として3年 ごとに改定」ということについては、そんなところかと私も思っているのです。その理 由づけについて3つほど書いてあるうちの最後のところ、「行政事務の効率化」の観点 というのはうまく理解できないのです。私の感じからすれば、行政事務の負担の軽減の ような、要するにあまりしょっちゅう変えられると、事務が複雑になったりする、とい うことかとも思うので、「効率化」というのはうまくのみ込めないのです。どんな趣旨 なのか聞かせていただきたいと思います。 ○数理室長  担当者が、例えばこの年は料率はこう変わったというのを一旦覚えて、それで保険料 の申請があったときにチェックしております。確かに頻繁に変わると、量が多くても点 検をしていかなければならないということもあり、「負担」という表現のほうがよろし いかもしれません。 ○岩村座長  これは最初の周知などと関係するとは思うのですが、簡素化というのもちょっと変で すね。 ○数理室長  基本的に労災保険では、自主申告でお願いしておりますので、結構事業主が書かれる ような場面もあり、そこが毎年変わっていくと記入する側も、数字を間違える可能性も 出てくるかもしれません。 ○岩村座長  ですから両面でしょう。そうすると、煩雑化の防止とか、煩雑化を避けるとか、そう いうことかもしれないという気がしますが。行政側の負担だけの問題ではなくて、事業 主の周知の関係との問題もある。要するに、しょっちゅう変わるというのは事業主の側 にしても面倒な話でもあり、行政の側にとっても負担増ということになりますね。そこ は表現を検討させていただくということにしたいと思います。  その他はいかがでしょうか。この部分については、検討会の場においても概ねコンセ ンサスがあった部分かと思っています。労働福祉事業のところについては、高梨委員の ほうから議論があり、それを8頁に「なお書き」という形で入れさせていただいていま す。 ○高梨委員  (1)全体ということであれば、8頁に、7頁から書かれている過去勤務債務につい ての記述があり、8頁の上から4行目に「全業種一律賦課の考え方を継続すべきである 」という、かなり強い形の表現ぶりになっています。ここまで強い表現でいいのかどう か、というのが私の意見です。端的に言ってしまえば、私も全業種一律賦課の考え方を 捨てるべきだとは考えていませんが、表現ぶりからすれば、「全業種一律賦課の考え方 を否定することは適切とは言えない」くらいのことかと思うのです。  ついては、事務局のほうで資料があれば出していただきたいのです。積立金につい て、平成元年から今まで、どう推移してきているか。各年度ごとの積立金の増額幅が出 てくると思うのですが、その増額しているのは、どういう要因で増額になっているのか ということを、3つぐらいに分類してデータが出せるかどうか。その1つが、まさにこ こで書かれているような、全業種一律賦課ということで、いまで言えば0.1/1,000とい うものを財源にして積立金が増えている。かつてであれば1.5/1,000というものを財源 にして増えてきている部分があるであろう。2つ目は、充足賦課方式をとっております ので、そのときに発生した事故について、将来の給付ということが必要でしょうから、 計算がどこまでできるかはともかくとして、その将来の給付のための積立金の増という のがあるはずです。3つ目は、労災保険の業務災害の収支の差があるはずですね。保険 料収入と、給付との差額がある、その差額が積立金のほうに入っているはずです。  その積立金が増えていく過程で、全業種一律賦課ということでの財源部分が全体の積 立金の増の中で、どれくらいのウエートを占めているのか。特に最近の時点でいけば、 0.1/1,000の財源ということで積立金を増やしていく、それがどの程度なのかというこ とを見てみたいので、そういう資料を出していただけたらと思います。それがあれば、 こういう強い表現が良いかどうかの判断ができると思いますので、データの提供をお願 いしたい。  もう1点は、先ほど座長がおっしゃった労働福祉事業の関係ですが、結論的に全業種 一律にするということはやむを得ないとも思います。この理由づけのところで、労働福 祉事業の中にはいろいろありますと書いてあって、「被災労働者等を対象とする事業だ けでなく、労働災害の防止、健康増進等、全労働者を対象とした事業を展開している」 と書いてあるわけですが、「被災労働者等を対象にする事業」と、「全労働者を対象に する事業」と、両方あるから全業種一律というのはちょっと論理としていかがであろう か。  私の感覚からすれば、被災労働者を対象とするものについては、考え方としては、そ の業種に負担をしてもらうということもあり得るだろうと思うのです。ただ、現実の被 災労働者を対象とする額そのものが、それほど大きくなくて、逆に全労働者を対象とす る事業の額のウエートのほうが大きいから、全体としてみれば、全業種一律という結論 になるのはやむを得ない。とすれば、ここの表現ぶりで、被災労働者を対象とする事業 と、全労働者を対象とする事業とのウエートの関係が必要だろうと思うので、そこの工 夫が必要かと思います。  大ざっぱに言ってしまえば、「全労働者を対象とする事業を数多く」とか、あるいは 金額的に多いということを入れておいたほうが適切ではないか。  私自身は、この労働福祉事業の関係について、この場でも議論をしたほうがいいので はないかという意見を持っていたのですが、「なお書き」で書いてある別途の場で十分 な検討を経て、適切な結論を出すということをぜひ行政のほうでもやっていただきた い、ということを希望として申し上げたいと思います。 ○岩村座長  前段の過去債務の問題については、資料で一部は出ているのですが、より詳しいもの をお出しいただきたいということなのでしょうか。第2回の資料、資料No.1−5で 「過去債務分料率0.1/1,000というのを算定方法ということで、積立金の推計の積算の 方法であるとか、その計算方法をどういう形でやっているかとか、そういうこと自体は 出てはいるので、多分同じ計算を遡ってやっていただくということなのかとも思うので すが。 ○高梨委員  そうではありません。0.1/1,000の計算の方法としては、こういうことだろうと思う のですが、現実に積立金の額が平成元年から増えてきているわけで、その財源の中に は、平成元年当時であれば、1.5/1,000というのを過去債務分として設定をしてきてい るわけですので、その1.5の財源が積立金の増につながっている。しかし、積立金の増 は、それだけで増えているのではなく、将来の給付の財源にするために回している分も あるし、収支差から余った財源を回している分もある。それを経年的に過去十数年間程 度、計算できないかということです。 ○労災部長  全業種一律賦課という考え方、その方法自体がおかしいと言われるのか、それとも今 後もずっと過去債務分を取っていくということをここに書くのがおかしいということな のか、どちらでしょうか。 ○高梨委員  全業種賦課の考え方については、私は全く問題ない、そうすべきだと思っています。 問題は、0.1を継続して取るということについてです。 ○労災部長  額をどうするかというのは「なお書き」以下で、取るかどうかというのは、今後の経 済をいろいろ計算してみないと、実際の料率もわからないということを書いているわけ です。全業種一律賦課というのは、取るとすればこれは全業種一律賦課という方法では ないかという書き方です。「継続すべき」というのは、必ず取れという意味の継続では なく、取るとすればということで書いています。 ○高梨委員  そうではなくて、ここは0.1/1,000を全業種一律で取っている、それを継続すると いう意味に読んだのです。 ○数理室長  「なお書き」以下で、これを踏まえていろいろ設定することが適当であると書いたの で、水準についても「なお書き」のところで書いているつもりです。それは時々の状況 に応じて変わる可能性があるだろうということです。 ○労災部長  ひょっとして、これからものすごくよくなるとすれば、それは過去債務分はそこで吸 収される計算になる。ですから、取らないということもあり得るわけです。 ○高梨委員  そうではなくて、現在まだ2,000億円の積立不足があるわけです。座長は、例えばと いうことで、考え方として、その2,000億円を一気に取ったらどうか、ということもお っしゃっていたわけです。そういうことで、この2,000億円を必ず取っていく。そして 積立不足がなくなった状態が早くくれば、それはそこで取らなくなるのは当然の話なの です。しかし、積立不足があったとしても、0.1/1,000なり、あるいはもっと低くな る率かもしれませんが、そういうものを継続して取るということをしなくても、今まで のような形であれば、要するに収支差があるわけです。今まで、通常の保険料率で赤字 を出すような保険料率の設定はしていないと思う。ですから、必ず収支差が出てくるわ けで、出てくるのを回すということをすることによって、結果的に積立不足が解消の方 向に動いていく、そういうことを主張していたつもりなのです。ところが、ここの「全 業種一律賦課の考え方を継続すべきである」という書き方について、私はそういうこと をさらに続けていけ、というように受け取ったのです。 ○岩村座長  高梨委員の従来のご主張は、どちらかというと償却したらどうかというお話だったも のですから、収支差の中で出てくる、いわば差益の部分をこの過去債務分に充当すると いうことは、今まであまりおっしゃっていなかったように思うのです。もう1つは、収 支の差益が出たときに、それを過去債務に充当してしまうのが適当かどうか、というの がもう1つの問題としてあるだろうと思うのです。 ○高梨委員  いや、それは私の今までの発言が適切でなかったかもしれませんが、私自身は、早く 償却してしまえというように言ったつもりはないのです。積立不足があっても、それが 2,000億円ぐらいの小さな金額になり、料率として、かつては1.5/1,000というような ものであったものが、すでに今では0.1/1,000まで落ちてきているので、0.1/1,000と いうことになると、146億円を毎年度財源として取っているわけです。収支差が出て、 100億円の余剰金ということもいくらでも出てくるわけです。収支差は自動的に積立金 のほうに回るというシステムになっていると思いますので、発想からすると収支差を振 り向けるということで差し支えないのではないかということなのです。 ○岩村座長  しかし、他方で過去債務分については、一定の計算式を使って、根拠を出して、これ だけの額が必要だということで議論をし、今は0.1/1,000になっていますが、そういう 率を料率に上乗せして徴収してきている。ですから、おっしゃるように確かに積立金と しては、1つの財布になってしまっているのか、どういう勘定をしているのか、今まで の資料ではそこはわかりませんが、少なくとも観念的には、収支益で出てくる部分、収 支差で出てくる部分と、この0.1分なりの上乗せで出てくる部分というのは、区別して 考えてきているのではないかという気がするのです。だから従来、収支益が出ても、そ れを繰り入れるというような形で積立金の額を動かす、ということはしてきていなかっ たと思うのですが。 ○高梨委員  料率を設定するときに、その料率の中に0.1/1,000が含まれていますよということだ けなのですね。0.1分の財布が、あるいは勘定が、口座があるわけではないのですね。 一方、積立金というのは、全体の収支差を引っくるめて積立金というのが出てきている のだと思うのです。したがって、それが給付に必要な額として計算した額と現実の積立 金の額と比べてみて、それが積立不足という計算の仕方だと思うのです。 ○岩村座長  おそらく収支差というのは、ある意味で、もしそれが差益として出ているとすれば、 いわゆるバッファーですよね。翌年度、何かボンと出たときに。それで使ってしまうと いうのはどうですかね。 ○労災部長  収支的には、高梨委員が以前におっしゃったことも含めて書いたつもりなのです。現 実的には結果的に収支差がこのように出ている感じになっていますので、今後どう動く かということで、実際の料率をどうしていくかは、場合によってはゼロにするというこ ともあると思うのです。それをどう計算していくかというのは、今後の経済の見通し で、いまおっしゃったような数字が出てくるかどうかわからないところがある。そこで 「なお書き」以下では、むしろ今後の日本経済の動向も踏まえた労災保険財政の見通し に関係してくる、ということを書いたつもりなのです。ですから、継続すべきだという のは、その考え方を継続ということで、実際のところはこの「なお書き」のほうに入れ たつもりなのですが、そうは読めないということですか。継続すべきだというのは、 0.1/1,000とか、そこをずっと継続すべきだという意味ではないのです。そこは、座長 と相談して手直しをいたします。 ○岩村座長  資料を出してほしいというご要望もありましたので、それも含めて事務局と私のほう で相談させていただきたいと思います。より趣旨を明確化するという点で言えば、4行 目の「なお書き」のところに、「なお、具体的な料率については」というようにすぐ頭 に持ってくる。それによって前段では賦課の方法自体は全業種一律ということで、ただ その料率については、いろいろなことが関係するので、それを踏まえて考えましょう、 というようにはっきり読めるようにする、というのも1つの案かと思います。  もう1つは、「継続すべきである」というのは、確かに他のところでは書いていない と思うので、場合によっては他とある程度表現の歩調を合わせるという形で、「適当で ある」という書き方もあるかもしれません。ですから、もうちょっとニュアンスを変え るとすれば、「現時点においては、賦課のあり方については従来どおり全業種一律の考 え方を継続するのが適当である。なお、具体的な料率については」というような形にす ると、いまの高梨委員のご指摘になった部分はより明確になるかと思います。  資料の点と、いまの議論を踏まえた文案の確定については、もう一度事務局と調整さ せていただきたいと思います。労働福祉事業の部分は、ご指摘のことも踏まえながら、 表現については検討させていただきたいと思います。おそらく、被災労働者を対象とす る事業といっても、労働福祉事業でやっているのは、どちらかというと長期のほうに引 きずられるものがあるという気もしますので、やはり一律になってしまうのかという気 もします。特別支給金が、そもそも給付費用のほうに入ってしまっていますから。ここ でくるのは、たぶん外科処置とか、一酸化炭素中毒であるとか、脊損とか、就学援護費 とか、そういったものですね。ですから、大体長期相当なのかなという気がいたしま す。  それでは、8頁(2)の激変緩和のところですが、ここはいかがでしょうか。これも 検討会において、大体コンセンサスがあったものだと思いまして、ほぼそれに沿う形に はしてございますが。 ○高梨委員  意見ではなく、質問なのですが、9頁の上から6行目、「過去3年間の数理計算を踏 まえて検討」と、このようになっていますが、過去3年間だけでいいのか。もちろん過 去3年のことは必要なのですが、その業種について、もうちょっと前からの動きという ものを見ながらということがあるのではないか。3年という言葉が必要かどうかという 点が、ちょっとあったのですけれども。 ○数理室長  これは料率の計算上、過去3年間の給付を基にしてということが念頭にあったもので すから、「過去3年」という表現をしております。 ○岩村座長  その前のところで、「労災保険率の水準に関するこれまでの状況や使用者の負担能力 等も勘案して」というように入っていますので、数理計算自体は3年ごとなものですか ら、いま申し上げた表現が入っていることによってご理解いただくということでいかが かと思うのですが。数理計算のところでは、さらに踏まえてということになっています ので、やはり「3年」を入れておかざるを得ないのではないかと思います。あるいは、 いまの疑問にもう少し明確に答えるとすれば、「必要に応じて一定の上限を設けること が必要であるか」というのを1つ前の所に持ってきて、「ことも想定され得ることから 」として、次に「必要に応じて」の一節を入れて、その後に「労災保険率の水準に関す るを勘案して」のように入れ替えたら、もう少し明確になるのではないかという気がし ます。 ○高梨委員  こだわりません。 ○岩村座長  そこは事務局と相談させていただきたいと思います。  他になければ、同じく9頁の2の「業種区分」に移ります。(1)は基本的な考え方 ですが、これについてはいかがでしょうか。 ○高梨委員  書き出しのところに、「労働災害防止のインセンティブ促進の観点から」という記述 があります。この関係については、6頁で、「今後の基本的な対応」の前書き的な部分 のいちばん最後のところに、「労働災害防止のインセンティブを促進するように労災保 険制度が適切に運営されること」を受けて、3つの「労災保険率」、「業種区分」、 「メリット制」というところに繋がってくるのです。ただ、果たして業種別に労災保険 率を設定することが、災害防止のインセンティブの促進という観点だけで出てくるのか どうかという点がちょっとある。否定をするつもりはないのですが、私の感覚からする と、災害を発生させた業種は自分で負担することがまず中心で、言葉で言えば、「負担 の公平性」のようなものがあって、業種別に保険料率を設定することに合わせて、災害 防止のインセンティブもあるのではないか。これで、「労働災害防止のインセンティブ 促進の観点から業種別に保険料率を設定している」ということは、ちょっといかがかと いう感じがします。 ○岩村座長  負担の公平というのは、その前のところに入っているというのが私の理解です。業種 ごとのというところから、このような実態を前提としてというところが負担の公平では ないかと思って理解していました。 ○高梨委員  完全に否定するつもりはないのですが、業種別に保険料率が違うということが、どれ だけ災害防止のインセンティブをその業種に与えるのかどうかという点がどうも。 ○労災部長  座長が言われたように、前提としてということで、その前のところで、当然業種別に 違うということを書いたのです。高梨委員が言われたことは当然そうで、そのように書 いたつもりですが、その点のご指摘ですね。 ○岩村座長  次の先取りになるのですが、いろいろな災害防止活動というものが、結局、業種団体 を主な媒介として行っているという事実があり、業種団体ごとで防止活動をするという インセンティブを与える契機にもなっているのではないか、そのような理解だと思いま す。難しいのは、インセンティブの部分というのが次の段落にももう1回繋がってくる ことです。そこでの考え方というのは、結局、業種グループ別に分けるときに、1つの 考え方の基礎にあるのが、労災防止活動は業種グループ別に着目しながらやっていると いうことも結び付いていると思うのです。 ○労災部長  インセンティブをちょっと強調し過ぎているということもある。 ○岩村座長  メリットに比べると、確かにそれはあるかもしれません。 ○労災部長  負担の公平性のことはいままでも言っておりますし、当然この前提、その背景にある ことを理解した上でということで書いていますから、このようになっているのです。そ こは当然そのような意識でおります。 ○岩村座長  ちょっとそこは相談させてください。  その他、(1)の基本的な考え方のところでいかがでしょうか。なければ、(2)の 業種区分の見直し、具体的には9頁のイの(1)(2)(3)は新たな業種区分としてというこ とにし、細目についても区分してデータ収集をする。それ以外のところについては、基 礎的なデータの収集を行うというのが1つの具体的な提案だと思います。 ○高梨委員  中身について異論があるわけではないのですが、9頁のイの書き出しが、「平成18年 度労災保険率の改定に際しては」となっているのです。いろいろ書かれていて、平成18 年度の料率の改定の関係の記述がどこまでなのかがはっきりしないのです。仮に、平成 18年度のところがどこまでだとすれば、平成18年度の次の改定だってあるわけです。平 成21年かどうかはわかりませんが、そちらの考え方は、一体どこに書いてあるのかとい う点が出てきはしないのかというのが1つの意見です。  ロに「統合の検討」という項目があり、労働者数が1万人という具体的な数の基準が 出てきていますが、1万人という規模についてどのような根拠で出てきたのか、その点 を教えていただきたいと思います。 ○岩村座長  前段については、確かに、ややごちゃごちゃしている部分もあるので、記述がもう少 し明確になるように整理させていただきたいと思います。おっしゃるように、第1段落 が「平成18年度」で、その後「現行の」もので後の話が引き続きになって、「その際」 でまた第1段落の話に戻っているなど出入りがありますので、ご指摘を踏まえて少し整 理させていただきます。確かに、「また」以下が後の話になっていますので、そこはも う少し明確になるように整理させていただきます。次の労働者数の1万人というのは、 どのような根拠かという質問についてはいかがですか。 ○数理室長  特段、検討会の中で、これはという数字は確かに出てこなかったと思います。最小規 模についてはこれから検討する項目として後ろのほうで挙げているところもありますの で、差し当たって1万人程度で考えてはどうかということで出したもので、特にはっき りした根拠というものはありません。1万人を下回っている3,000人、1,000人といった 業種もありましたから、その辺について、いまの状況のままであれば、非常に極端な災 害が起きた場合には、保険集団として安定はしてこない、ということです。業種につい ては料率と繋がっているところもあり、何らかの検討をしたほうがいいということで出 したので、1万人についての根拠は特にありません。 ○岩村座長  過去、何か統合した場合に1万人というものがベースになったとか、そのようなこと もなかったのですか。 ○数理室長  特になかったと思います。数が多いに越したことはない、どこで切るのかは確かに難 しく、それについては今後の検討課題としてやりたいと思っております。そのような点 でははっきりしていないということになります。 ○高梨委員  現状の51業種を見てみると、1万人を下回っているのが6、7業種ほど、最低は約 1,000人という所があります。ただ、この記述では「しかし」という言葉があるので、 そこに類する所は別扱いになるわけです。具体的に、我が業界はどちらに入るかという ことで、平成18年度の料率改定がどのようになるかが浮かび上がってくるだろうと思う のです。そこで1万人ならば1万人ということについて、ある意味、合理的な保険集団 としての規模、たしか議論の過程では、災害率の関係が入ってくるのでなかなか難しい ということでした。私は健康保険組合の総合(設立)が3,000人で、それを参考にせよ と言ったわけではないですが、それについては災害率が介在してくるのでなかなか難し いという議論がありました。1万人という具体的な数字が、いまの段階で出てくるのが いいのかどうか。小さい所は維持できないと思いますから、私は統合すべきだと思って いますが、いまの段階で、あるいはこのペーパーとして、基準を1万人と言ってしまっ ていいのかどうかという点がありそうな気がするのです。 ○岩村座長  わかりました。そこは検討します。その上で残るかもしれないし、変わるかもしれま せんが、検討させていただきます。 ○阿部委員  (2)のイの部分について、分割に関して(1)、(2)、(3)と3つの新たな業種区分が できるわけですが、その理由として、「作業態様の面に着目した」という理由づけが1 つだけあります。これだけではなくて、ロに出てくる保険集団としての安定性、作業態 様から出てくる災害率がほぼ似ているなどといったものが理由として出てくるのではな いかと思いますが、それも付け加えたほうがいいのではないかと思います。というの は、高梨委員が(1)の基本的な考え方のところで、負担の公平性ということを言われ たのですが、保険というのはリスク、業種別のリスクがいちばん重要な前提になってく るのではないかと思うのです。これから業種区分を見直していく、将来を見直すわけで すから、将来のリスクがどうなっているかということが最も重要であるし、保険集団と してリスクをカバーできるかどうかということも重要になってくると思うので、理由づ けとしてはそのようなことが必要ではないかと思っています。  もう1つ、あまり大きい話ではありませんが用語に関して、10頁目の上から4行目、 「また」で始まるところで、「災害率が大きく異なる産業分類」となっていますが、産 業分類ではなくて、「産業あるいは業種」のほうが用語としては適切ではないかと思い ます。 ○岩村座長  産業分類という用語についてはご指摘のとおりだろうと思います。(1)、(2)、(3)を 取り出す根拠については、阿部委員の話も踏まえて、もう少し明確な形で書けるかどう かを検討させていただきたいと思います。リスクについては、事務従事者割合の比較的 高い適用事業細目を取り出したことに含まれていると思いますが、いまの示唆も考え て、明確化できるかどうか検討させてください。その他、業種区分の見直しについて、 いかがですか。  よろしければ、3のメリット制に進みたいと思います。(1)は基本的な考え方、メ リット制は何かということの基本的な説明ですが、何かあればお願いいたします。特に なければ、(2)メリット制の適用要件に移ります。ここは検討会でも議論のあったと ころですが、いかがでしょうか。 ○高梨委員  11頁の「メリット制の対象として一定規模以上という要件を定めることは適当」とい う点については、私もそうだと思っております。ただ、そこから後の記述が私の意見と は合わないのです。いろいろ書いてありますが、出発点になるのは「年に平均1件程度 の災害が予想されるような規模」、そこをメルクマールとするところから出発していく と、当然このような結論になるのですが、災害の発生の状況が、かつての日本のよう に、災害が多発するような状況から、今日のような状況へと変化してきている中で、平 均1件程度の災害というものを変えないでいいのかどうか、という点があるように思い ます。マクロで見れば、平均1件と考えるのではなく、例えば0.9件、0.8件のようにマ クロで考えることはあり得るのではないか。なぜ、そのようなことを申し上げるかとい うと、現状でメリット制の適用を受けている所が、労災保険の適用事業所の、たしか 5.7%だったと思いますが、それしかメリット制の適用にならないわけです。もっとメ リットの適用対象が拡大されてもいいのではないだろうかという観点から、ここの点に ついてはいかがなものかというのが私の意見です。他の委員の方々のご意見も伺いたい と思います。  いくつか条件があり、現在は20人未満は一切適用しないことにしていて、20〜100人 の所について度数率、災害度係数を掛けることによって人数計算をしています。確か に、小規模の所について、前の頁にあるような問題が出てくることもあり得るので、拡 大をしたケース、通常の場合はいままで3年平均で災害率を取るということをしている わけですが、新たに拡大する所については3年平均ではなく、期間をもっと長く見る中 でメリット制を設けることも考えられるのではないかと思います。全体として、もっと メリット制が適用になる所が増えるような方策があってといいのではないかと思ってお ります。 ○数理室長補佐 期間を長くするという考え方に立てば、例えば、年平均1件を年平均 0.5件にする、2年に1回にするといった考え方をすれば、いままで3年の基準で見て いたものを6年で見ることになり、一応、保険数理的には妥当な線ではないかと思われ ます。ただ、6年間の収支を見るということは、例えば1つの大きな災害が起こったと き、災害発生時から6年間ずっとその収支を追いかけて見ていく、その間は努力しても なかなか収支は改善しない、そのように長い期間収支を改善しなくていいのかという議 論の中で、3年という1つの期間がバランスがいいのではないかというところで我々は やってきたと思っているのです。長く追いかけていくかどうかということのバランス を、よく考えないといけないのではないかと思います。 ○岩村座長  もう1つは、仮に6年ということにしたとき、規模の小さい所で6年以上存続してい る企業、事業所がどのくらいあるかという問題も出てきてしまい、6年間続いていない と、その部分は、全部他の所に転嫁されてしまうことになると思います。 ○高梨委員  確かにそのとおりですが、結局、メリット制の適用があるか、ないかということで見 れば、適用がなければ、そもそも災害防止をしようが、しまいが関係がなくなっている グループがいまあるのです。20人以下はすべてそのような業種であるし、100人未満、 100人近い90何人の所でも、すでに災害度係数との関わり合いでメリットの対象になら ない所がありますから、もっと拡大してもいいのではないかと思います。平成18年度に 向けて、すぐ検討できるかどうかという問題がありますので、そこは必ずしもこだわり ませんが、検討すべき課題はいろいろあるのではないかと思っています。 ○数理室長  いまの現状であれば100人程度の所は料率では1,000分の5とか1,000分の6と、いち ばん低い料率グループがそれに当たりますので、もともと災害率が低いがために、規模 として100人ぐらいがベースになっているという状況があると思います。 ○阿部委員  前回欠席したのでわからないのですが、いま高梨委員が言われたことは前回も提案が あったのでしょうか。今日お話された新しいインセンティブ、メリット制の期間を長期 にすることなどは、前回もあった議論ですか。 ○高梨委員  小規模の所への拡大というところまでは申し上げておりますが、いま述べた、期間を 3年ではなくもっと長期にといったことは今日初めての発言です。 ○阿部委員  なぜ、お聞きしたかったかと言いますと、この報告書は、たぶん、いままでの議論を 前提にして書かれていて、その中で積み上げがあってこうなっていると思うのです。も し、小規模企業に対してどうするかという議論があったならば、それは盛り込まれても いいのではないかと思います。 ○岩村座長  前回議論したところでは、いま高梨委員が言われたように、具体的に倍の期間を取っ ておくという話はなかったのですが、要するに、いまのメリット制が過去3年間に支給 された給付の増減で見る、基本的に給付額の増減で計っていくという考え方を取ってい るので、現実にどれだけのインセンティブが働くかどうかが、現状では非常にわかりに くいレベルまで災害率が下がってしまっている。したがって、保険給付の増減というこ とでインセンティブを見るには、どうも限界がきているのではないか。むしろ、別の角 度を勘案することも考えてはどうか、そのような議論ではあったのです。今日のペーパ ーで言うと、13頁の課題のところに追い込んであるわけです。  全体として、災害発生の状況が昔と非常に変わってしまっている。昔はメリット制と いうことで労災防止努力のインセンティブというのが非常に計りやすく、明確だったの ですが、現状ではそのような計り方ができないような限界領域に達しているところもあ るのではないかということから議論が出て、それが今日のペーパーの13頁に入っている 形になっています。したがって、いまの高梨委員のようなご意見を、最終的に報告書の 中でどのような形で反映させるかどうかだと思うのです。拡大してはどうかという意見 は、従前から高梨委員が言われていたところではありますが、期間を、例えば倍にして みるという考え方は今日初めて述べられたので、どう扱うかということになると思いま す。それは阿部委員のおっしゃるとおりです。時間の関係もありますので、いまの高梨 委員のご意見をどのように扱うかということについては、恐縮ですが私のほうにお任せ いただき、事務局と相談しながら考えさせていただきたいと思います。  11、12頁、(3)のメリットの増減幅について、ここでは継続事業については現状維 持、有期事業については±35%を±40%にするという提案内容になっております。これ については「労災かくし」を助長するのではないかという批判に対して、「なお書き」 で応えるという構成になっています。 ○高梨委員  (3)のメリット増減幅の問題ですが、増減幅の拡大は(1)(2)という問題点があるか ら、現状の水準の±40%とすることが適当であるという記述になっています。(1)の災 害防止効果を明確に予測することが難しいということが、果たして、増減幅拡大を否定 する論理かどうかということが1つあります。  2つ目は、(2)に「労災保険率のベースの引上げが必要である」とかなり断定的に書 いてあるのです。労災保険料率ベースの引上げの作用があることについては否定はしま せん。ただ、新たに増減幅の拡大をしたとき、いままで災害率から−40%というところ に張り付いていたものが、さらに−45%、−50%というランクができて、それこそメリ ット制についての災害防止のインセンティブが働くということが出てくるのだと思うの です。もちろん、働くことが出てきたことによって保険料の納付額は減るという面はあ りますが、災害防止の効果が出てくるので、給付も減ってくるわけです。それはその事 業場だけではなく、他の事業場も減少幅の高いところに到達するとメリットがあります から、それに向けての努力が行われる。そのようなことによって、災害の発生そのもの が低くなるということが出てきて、保険料率が単純に上がるのではなく、災害が減るこ とによって全体をカバーできる部分もある。(2)の引上げの作用があることについて否 定はいたしませんが、引き上がるのだということには必ずしもならないのではないかと 思いますので、「現状の水準とすることが適当である」という表現はいかがなものかと 思います。  もう1つは表現ぶりの関係ですが、先ほど座長が言われていたように、13頁のメリッ トについて、これから検討することが望まれるということを言っているので、仮に、現 状の水準でやむを得ないとしても、「当面」そうするということにして、将来について は13頁の検討を踏まえて、増減幅の拡大について検討をしていただくということもある のではないかと思います。 ○岩村座長  第1段落の(1)と(2)は、検討会でもかなり議論したところですが、いずれにせよ、あ る程度の将来予測ですから、断言はできないだろうとは思いますが、現在の−40%に張 り付いている事業場の災害発生の状況を見たときには、(1)(2)が大体、確言はできない にしても、かなりの程度で言えるのではないかと思います。検討会の議論も、大体その ようなことではなかったかと思います。−40%に張り付いている事業場というのが、過 去ずっと無災害事業場ということになっているのです。 ○労災部長  (2)のほうも、現状の災害発生状況を踏まえると、このようになってしまうというこ とです。 ○小畑委員  そのように書いてはどうでしょうか。 ○岩村座長  (2)のところをですね。 ○阿部委員  11頁の(2)に問題があることから、現在の水準とすることが適当であると直線的にい くのは少し問題が残るのではないかという気がします。やはり、13頁でメリット制につ いて今後検討すると書いてあるので、直線的ではなく、書き方を工夫してはどうかと思 います。 ○数理室長  高梨委員の言われたように、「当面」と入れるかどうかですね。 ○岩村座長  「当面」と入れるとすると、ある意味では動かすことが前提になってしまうので、そ こまで踏み込めるかどうかです。 ○阿部委員  こうした問題があって、それを今後いろいろ検討した上でという形なのだろうと思い ます。 ○岩村座長  おっしゃるように、ちょっと直線的にいってしまっているところはある。全くのいま の思い付きですから確定案と取らなくて結構ですが、「などの問題もあるところである ので、現状の水準を直ちに動かすことは困難と考えられる」とか、「などの問題がある ことから、慎重な検討を必要とし、現状の水準を直ちに動かすことは困難である」、そ のような表現なのかもしれません。  有期事業のほうはいかがでしょうか。これは35%から40%に拡大するということで踏 み込んだ形で提案されています。先ほどの40%の増減幅と同じですが、拡大することの 理由づけがこれでいいのかということになります。従来、拡大幅を継続と有期との関係 で、広げるに当たって言われてきたことをある程度踏襲はしています。 ○高梨委員  有期については、私は特別意見はございません。ただ、申し上げたいのは、いままで 35%だったものが40%になるわけです。35%が40%になるときに、前の頁の(1)(2)とい う理由は、一体どうなっているのか、そのことは変わらないのです。35%を40%にする 場合でも、結局、(1)の問題もあるし、(2)の問題もないわけではないはずです。私は建 設業については揃えるべきだと考え、発言もしてきました。建設業について、揃えると いうことによって、具体的な増減幅が35%から40%になるのであれば、(1)と(2)の問題 は、ある意味ではクリアされているわけです。つまり、こちらについて言いたいのでは なく、11頁のほうがこれでいいのかどうかを申し上げたいわけです。 ○岩村座長  (1)(2)に関して、そのような意味で有期事業については、1つは政策判断と、従来、 差を設けてきたことの理由づけができなくなったことによって、35%から40%に広げよ うということなのです。35%から40%に広げることによって、(1)と(2)の問題が起きる ことはおっしゃるとおりです。(1)と(2)の問題は重要だと思うので、そうだとすれば35 %のままでもよろしいのではないかと思っています。(1)と(2)の問題が生じることを当 然の前提とした上で、なお、継続と有期について差を設けていることの説明がつかない ことのほうが、より大きな要因として今回考慮すべきである、というのがここでのペー パーの立場だと思います。  他にご発言がなければ、(4)特例メリット制についてはいかがでしょうか。前回ご 欠席だったので、阿部委員のご意見を伺えなかったのですが、いちばん最後の2行目 で、「例えば−45%〜+40%」という非対称型の導入はどうかということが出ているの ですが、これについてはいかがですか。 ○阿部委員  よくわかりませんが、安全衛生措置の導入のためのインセンティブとして、マイナス 幅を大きく取り、プラス幅が5%低くなっているわけですが、実際のところ、分布とし ては正規分布の形にはなっていないので、問題としてはそう大きなこととして事実上捉 える必要はないのではないかと思います。どのような形がいいのかということは、特に こだわる必要がない気がします。 ○岩村座長  おっしゃるとおりです。確かに、メリット制全体としても対称型ではなく、非対称に なっていますから。メリット全体として収支計算を合わせるという考え方でやっていな いですからね。 ○高梨委員  現在の特例メリット制度は中小企業に限定しているし、この制度にどれだけの政策効 果があるかということについては、疑問であるというのが意見です。ここで対象となる 安全衛生措置を追加することが記述されていますが、例えばどのようなことが考えられ るのか。何か事例があったら教えていただきたいと思います。いまは「快適職場の認定 」ということになっていますが、それ以外に、どのような安全衛生措置の追加が考えら れるのか、教えてください。 ○数理室長  1つ考えられるのが、労働安全衛生のマネジメントシステムで、いろいろな災害リス クの低減の計画を立て、実施し、評価し、改善し、そのように回転させて、全体的な災 害率を減少させていくというものを進めています。大企業では実施されておりますが、 中小にはなかなか浸透していない面もあるので、そのようなことも1つ考えられるので はないかと事務局としては考えております。 ○岩村座長  13頁にも若干関係しますが、ある程度パイロット的にメリットとの組合せで考えられ るのかもしれません。  その他特段なければ、最後の4で、もう少し課題について継続的に検討をするという ことで、具体的には13頁で課題として挙げておりますが、この点についてはいかがでし ょうか。 ○阿部委員  質問が1つあるのですが、13頁の下から2行目に「労働災害防止努力をより適切に反 映し得る手法」とありますが、手法というのは、どれだけ努力しているかをモニタリン グするという意味での手法なのか、あるいは努力を引き出すインセンティブを与える、 最適なメリット増減幅をどう設定するかという手法なのか、いろいろ読めるのですが、 そこは明確にしたほうがいいのではないかと思います。±40%にするのがいいのか、 ±45%、50%がいいのか、±100%がいいのかというのは、考え方としてはいろいろ出 てくると思うのです。いちばん必要だと思われるのは、メリット制の増減幅としてどれ が最適な幅なのか、これを見つけることがこの後の議論として重要になるのではないか と思いますので、そのようなものも加えていただければと思います。 ○岩村座長  ここで考えていた下から2行目の「手法」、検討会の議論などで言っていたことは、 例えば火災保険との関係、労災ではありませんが、火災保険でスプリンクラーの設置と 保険料率とを結び付けると、非常にインセンティブが働くでしょうといった議論だった ので、たぶん、それを考えて入れてあるのだと思います。 ○数理室長  災害防止に対する姿勢みたいなものも評価できるということだと思います。 ○岩村座長  いま阿部委員が言われた中で言えば、どちらかというと前者のほうを考えていて、こ こではメリット幅の問題は直接的には想定していないのです。ご指摘の点は、確かに重 要ではあると思いますので、また事務局と相談させていただき、どのような形で入れら れるかどうか考えてみたいと思います。 ○阿部委員  より高めるための方策のほうなのでしょうか。 ○岩村座長  上に入るのではないでしょうか。 ○労災部長  上の「手法」のほうは、委員が言われた幅などですが、同じ「手法」を使ってはおか しい。 ○岩村座長  手法の手法としてしまっているからおかしい。そこはもう少し趣旨が明確になるよう な形で整理したいと思います。両方とも手法となってしまうし、両方とも「また」にな っているので、ちょっと整理がついていないかもしれません。目が行き届かなかったの ですが、ここは「また」「また」と「また」がたくさんあります。  大体時間になりましたが、今日いろいろ出していただいたご意見、ご指摘を踏まえな がら、次回の検討会までに今日の案の修正を行いたいと思います。それを、次回、最終 報告書(案)としてお示しして確定させていただければと思っております。もちろん、 持ち帰られて、お読みいただいた上で追加の意見がありましたらお出しいただきたいと 思いますし、今日、欠席されている委員の方々からも、別途ご意見を頂戴したいと考え ております。恐縮ですが、何分、年末年始の休みも入り、時間的にあまり余裕がありま せんが、12月24日(金)までに追加のご意見があれば、事務局までお寄せいただきたい と存じますが、よろしいでしょうか。それを基に私と事務局とで検討させていただき、 案の作成をし、次回で確定したいと思っております。その後、今度はこの最終報告書を 労災保険部会へ提示するという流れになります。それでご了解いただけますでしょう か。事務局もそれでよろしいですか。 ○数理室長  結構です。 ○岩村座長  それでは、いま申し上げたような手順で今後の作業を進めさせていただきたいと思い ます。次回の開催期日については、事務局より説明をお願いいたします。 ○数理室長  次回については日程調整をしたところですが、来年1月11日(火)、午後5時からで お願いしたいと思います。場所は厚生労働省内の会議室を予定しておりますが、決まり 次第ご連絡申し上げたいと思っております。 ○岩村座長  事務局よりご案内がありましたように、次回第12回の検討会は1月11日(火)に開催 いたします。本日の検討会は以上で終了いたします。どうもありがとうございました。 照会先  労働基準局労災補償部労災管理課労災保険財政数理室  電話:03−5253−1111(代表) (内線5454,5455)