04/12/09 医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会第9回議事録      第9回 医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会                          日時 平成16年12月9日(木)                             18:00〜                          場所 中央合同庁舎5号館17階                             専用第18,19,20会議室 ○樋口座長  ただいまから、第9回「医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会」 を始めたいと思います。委員の皆様方等におかれましては、お忙しい中をお集まりいた だきありがとうございます。事務局から委員の出欠状況等についてお願いいたします。 ○総務課長補佐  本日は、大山委員、神作委員、武田委員、辻本委員、寺野委員、以上5名の方からご 欠席の連絡をいただいております。また、松原委員から、遅れるという連絡をいただい ております。 ○樋口座長  それでは議事に入りたいと思います。11月いっぱいガイドライン(案)についてパブ リックコメントを募集いたしました。その結果、質問やご意見等160件ほど寄せられまし た。前半はその結果についてご報告をいただき、それを踏まえてガイドライン(案)の 修正を図る必要があるかどうか、ご議論をお願いしたいと思います。その後、ガイドラ インを作成するという任務のほかに、もう1つ我々は個別法の必要性に係る検討という 任務があります。前回、ある程度の議論はいただいておりますが、個別法の制定につい て、どのような形で我々の報告書に書き込むかについてもご議論をいただきたいと思い ます  では、配付資料等について事務局から確認をいただき、ガイドラインのパブリックコ メントの結果等について、ご説明を伺いたいと思います。 ○企画官  お手元の配付資料の確認をさせていただきます。資料1は「医療・介護関係事業者に おける個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」意見募集の結果概要です。資料 2は、ガイドライン(案)に若干の修正を加えた案です。資料3は「医療機関等におけ る個人情報の保護に係る当面の取組ついて(案)」です。  では、議題1「ガイドライン(案)」についてです。まずパブリックコメントの関係 を資料1により状況を報告いたします。ガイドライン(案)については、平成16年10月 29日から11月30日までの間、意見募集を行いました。その結果37通。1通の中にいくつ もご意見、ご質問があったりしますので、約160事項についてのご意見、ご質問等があ ったところです。この160のものについてのご意見、ご質問についての対応は、例えば、 これはガイドラインを修正しますとか、その質問にお答えするとか、そうしたことは要 約し表形式にまとめた上で、いずれホームページに掲載したいと思っております。本日 は全体的な対応方針についてご報告いたします。  全体的な対応方針としては、いただいたご意見を踏まえて、そのガイドラインに一定 程度反映させるとともに、事例の追加を希望するといったものとか内容についてのご質 問など、今回ガイドラインの文面に直接反映させていないご意見についても、今後のガ イドラインの適正な運用を図る中で活かしていきたいと考えています。  具体的にどのようなものがあったかと言いますと、(1)記述の趣旨をより明確化す ることを望む意見のグループ。趣旨をより明確にすることで、事業者等が誤解なく的確 な取組を進めるような修正を求めるご意見もあり、こういったものについては、可能な 限りご意見をガイドラインに反映させて、広く一般の事業者及び患者・国民の皆様に理 解しやすい内容となるような修正ということで努めました。また、不適切な表現を改め たり、わかりにくい表現をよりわかりやすくするべきといったご意見については、これ を採用いたしました。  例えば<意見の例(1)>独立行政法人や地方公共団体が開設する病院については、独 立行政法人等個人情報保護法、あるいは自治体の条例が適用されるのであって、個人情 報保護法の第4章とは違う法律、または条例を適用されるということを誤解のないよう に書いておくべきではないかというご意見。<意見の例(2)>がん検診における精度管 理のための検診実施機関及び検診委託元への精密検査結果や手術結果の情報提供は、地 域がん登録による情報提供と同様に、公衆衛生の向上のために特に必要であり本人の同 意を得ることが困難である場合に該当するということを明記しておく必要があるのでは ないかというご意見。<意見の例(3)>プライバシーポリシーとかプライバシーステー トメントといったカタカナ語を説明なく使うのは避けるべきではないかというご意見。 (参考)として具体的に、それぞれ例(1)、例(2)、例(3)について書き加えた、あるい は修正しましたと書いてありますが、具体的にどのように修正を行ったかについては、 後ほど資料2で説明いたします。  次は(2)のグループです。個別の事例をガイドラインに記載することを求めるご意 見もありました。ご自身の関係する具体的な事例を挙げて、こういうのはどうなのでし ょうかということで、ガイドラインにより多くの例を書き込んでほしいというご意見で す。記載の追加を求められた事例の適否についてはそれぞれ一般的な見解を表形式にす る際には示したいと思っております。ただ、具体的な法の適用は個別具体の事案ごとに 判断を最終的にされるものでありますし、ガイドライン案にはいくつか例として記載し ておりますが、これはあくまでも理解を助けることを目的とする参考例です。個別の状 況ごとに細かく記述することには自ずと限界があるということで、ご意見に対応して個 別事例を追加して記載することは今回の修正では行っておりません。  例えば、匿名化をどの程度やれば法の規制を受けなくなる個人情報でなくなるのか、 ということをもっと書いてほしいとか、また、業務委託の例として検査だけは書いてあ るが、他の機器の保守・トレニーング業務の委託なども書いてほしいという意見もあり ましたが、一定の限界があるということで、今回追加はしておりません。  (3)は、個別事案の解釈を求める意見・ご質問もありました。(2)と同様、個別 の状況に応じて判断が最終的には異なるわけですが、これを定性的・定量的な判断を求 めたり、あるいは判断の具体的な基準を明示してほしい、また、適・不適の記述を求め たりするといった意見もありましたが、個別事案についての適・不適な判断は、ガイド ラインに記載されている事例も参考として、最終的には、個別具体の事案ごとに判断す ることになりますので、ご意見に対応してガイドラインに一律の判断基準を示す修正は 行っていません。例えば「家族等」の範囲を明確にすべきではないか、説明や同意は電 話でもいいのか、文書は必ず必要なのか、同意書の書式を統一で作るべきではないか、 薬局で管理する調剤録などの書類は施錠可能なロッカー、施錠で管理できる部屋で保管 するのが必須になるのかどうかと。こうしたものは具体的にケース・バイ・ケースもあ りますが、そうしたことを明示してほしいという意見もありましたが、こういったもの については修正はしていません。  なお、冒頭で全体的な対応方針で申し上げましたとおり、ガイドラインでは今回修正 するとはしておりませんが、今後私ども、あるいは認定個人情報保護団体などで事例集 とかQ&Aを作っていく中では、こういった質問があったと、問題提起があったことは 十分参考にしてカジュアルな運用もしたいと思っています。  (4)は、ガイドライン(案)そのものというより別途の法律制定をしたり、あるい は、個人情報保護法の改正が必要となるような意見もありました。このガイドラインの 性格を超えて、法の制定、個人情報保護法の改正が必要になるようなご意見です。こう したご意見はガイドラインでの記述にそぐわないので、その旨を回答し、理解を求める という方針です。例えば、小規模事業者、死者の情報について法的拘束力のないガイド ラインではなく医療分野の個別法を制定すべきであって、このガイドラインでは不十分 だというご意見。あるいは、個人情報取扱件数が3万件以上とか、病床が千床以上とい った一定規模以上の医療機関には、個人情報保護に関する外部監査を義務づけるべきで はないか。あるいは、ガイドラインに従った場合の事業者の免責規定を設けるべきであ るとか。例えば漏えい等を行った従業員個人を罰する規制も必要ではないかという意見 もありました。医療分野というより横断的な検討が必要な論点もあったわけですが、ガ イドラインの記載にはそぐわないと考えております。  (5)は、その他のグループです。ガイドライン(案)が前提としている法令解釈と は異なる解釈に基づくご意見とか、行政への一般的な要望を内容とするご意見、あるい は素朴な質問です。異なる解釈に基づくご意見については、その旨を説明する、ご質問 については一般的な問題として可能な範囲で回答したいと思っております。4頁の<意 見の例(1)(異なる解釈に基づく意見)>の例としては、診療録に医師の個人情報の部 分があるという解釈は誤っているのではないかとか、同意取得の手段として院内掲示に 患者が異議を示さない場合には、同意したとみなしたやり方は安易で不適切である、逐 一同意を取るべきであるという意見。3つ目、開示の例外として「患者本人に重大な心 理的影響を与えその後の治療効果等に悪影響を及ぼす場合」と表現しているのは、曖昧 で不当だから削除すべきであると。この言葉自体はこのガイドライン直接ではなくて、 「診療情報の提供等に関する指針」に書いてある言葉で、これは不当ではないかという ご意見です。  個人情報保護法第25条第1項2号は、開示についての一部、または不開示できる事由 の1つで「業務の適正の実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合」という文言があ りますが、医療機関は患者の診療を行うのが業務であって、その業務を求められた場合 に情報提供するのは業務の一環だから、求められた場合にこの理由で適用する余地はな いのだということをガイドラインに明記すべきではないかというものです。そこはケー ス・バイ・ケースですので、そういう解釈はなかなかとりにくいところですが、そうし たことを書くべきではないかというご意見で、こういったご意見があったということを この場で紹介いたしました。  <意見の例(2)(質問)>保有個人データの定義で「6カ月以内に消去するものを除 く」とされているが、例えば開示請求を受けてから、この記述は2カ月前に書いたもの だから消しておこうということをやった場合、それは6カ月以内だからいいことになり ますかという質問で、それは駄目ということですが、そういう素朴な質問もありまし た。以上、大きく5つに分けて報告いたしましたが160件のご意見をいただいたところ です。  資料2は、いま説明した(1)に該当する意見について、ガイドライン(案)にこう いう修正をしてはどうかということで順次説明をいたします。  まず1頁の3.です。本指針の対象となる「医療・介護関係事業者」の範囲という所 に、「本指針が対象としている事業者の範囲は、病院等の医療機関等、介護関係事業者 である」と書いた所ですが、ここに、「いずれについても、個人情報保護に関する他の 法律や条例が適用される、国、地方公共団体、独立行政法人等が設置するものを除く」 ということで、これらについては個人情報保護法以外の法令が適用されます。要する に、国公立や独立行政法人は含まれないという部分もあることを念のために記載したと ころです。もとより個人情報保護の必要性がないということではないわけですし、この ガイドラインが参考にならないと思っているわけではないのですが、根拠が異なり、違 いがあるという部分もあることを念頭に置いて、適用される法律を踏まえて取組を行っ てほしいという趣旨だとご理解ください。この関係で、1頁の1.の所に「法の対象と なる」という言葉を付け加えました。  3頁、6.のプライバシーポリシー、プライバシーステートメントの所で、上から4 行目「個人情報保護に関する考え方や方針に関する宣言(いわゆる、プライバシーポリ シー、プライバシーステートメント等)」。ここは閣議決定されています基本方針に、 このフレーズで「個人情報保護に関する考え方や方針に関する指針(いわゆるプライバ シーポリシー、プライバシーステートメント等)」ということで使われていますので、 それは1回活かし、2回目の所、次のパラグラフの最初に「プライバシーポリシー、プ ライバシーステートメント」と書きましたが、こちらも個人情報保護に関する考え方や 方針に関する宣言」と括弧の外側の言葉をこちらで使うということで、裸でカタカナ用 語を使うことはしない。しかし、この言葉に馴染んでいる方もおられると思いますの で、1回目の所では括弧書きでフレーズを残してはどうかと思っています。  7.の所には2行付け加えております。紹介した中にはありませんが、パブリックコ メントの中で、例えば院内掲示等の説明に対し、視覚障害があったり、字を読むことに 困難のある方への配慮もいるのではないかというご指摘。あるいは、開示の申請に当た って、身体・知的また精神の障害のために本人が直接窓口で申請することが困難な場合 のサポートの必要性が、もっと述べられる必要性があるのではないかというご意見があ りました。各項目のそれぞれの箇所ごとに、また障害の種別ごとに書くのはなかなか難 しく、また、具体的な配慮の仕方も、個別具体的ケースにより様々ありますから、7. の所に、基本的な考え方の一環として書き込みました。  4頁は9.の研究部分の修正です。なお書きの所ですが、ここはかなり技術的な修正 になっております。原案では「治験等における取扱いについては」ということで、今回 の修正で「また」以下で書き分けることにしています。医療機関等が企業から研究を受 託したり、共同実施する場合の取扱いのことも含めて、「治験等における」ということ で書いたわけです。そうしますと「なお」フレーズの後ろ、「本指針のほか薬事法及び 関係法令の規定や・・・」との記載について、どの場合にどの法令、どの指針に従わな ければいけないのかが混ざって書かれるとわかりにくいというご指摘があり、それで治 験と市販後臨床試験における個人情報の取扱いについては薬事法関係法令等や、いわゆ る関係団体等の指針に従う。あと、「また」以下に書き分けたものについては、薬事法 は適用されず、本指針、別表5に掲げる指針、関係団体等の指針に従うものと整理した ところです。  10.では「UNESCO国際宣言等と(別表6参照)」としています。これについて は52頁の別表5に、「医学研究分野おける関連指針」ということで指針と国際宣言を混 ぜて書いていたものですから、ここは書き分けることにしました。このグループではガ イドラインという用語が部分的に混在していますので指針に言葉を統一しております。  次は6、7頁の用語の定義等の所です。2.の個人情報の匿名化の所の1行目と、7 頁の上から8行目の所で、「氏名、生年月日、住所の記述等」と書いたのと「氏名等」 と書いたものがあったものですから、統一して「氏名、生年月日、住所等」と、両方と も同じ表現に揃えました。7頁の上から8行目の、氏名、生年月日、住所等のすぐ前に 「場合等」の等を入れているのは、学会以外で発表したり、あるいは学会誌以外で発表 したりするというケースもあるので等を入れたということです。  9頁の(1)の所、別表2に「主な利用目的」と掲載しているものですが、これは以 前この検討会の場でも、これは限定的なものですかという意見があったところですが、 限定的ではなくて、これは参考に各事業者で必要とされるものを特定し記載してほしい という趣旨ですので、それについての質問がパブリックコメントにもあったものですか ら、「想定される利用目的は別表2のようなものであり、これらを参考として自らの業 務に照らして通常必要とされるものを特定して公表」と修正しました。  次は10頁です。(2)の所に3行書き加えたのは、これもパブリックコメントのご意 見で、このガイドラインには第16条第1項に(利用目的による制限)という条文があり ますが、第16条第1項のことがどこにも書いていない、その例外だけ書いてあるので、 他意はないので書き加えました。(3)の所、(例)に付け加えたところですが、パブリ ックコメントの概要の<意見の例(2)>で紹介しました、がん検診に対するご意見を踏 まえ「がん検診の精度管理のための地方公共団体又は地方公共団体から委託を受けた検 診機関に対する精密検査結果の情報提供」を(例)として書き加えました。  11頁の修正は、中ほどの所で原案は「場合で」「場合は」という文書になっていまし たので、少しわかりにくいのでわかりやすいように修正をしました。  14頁は「ただし書き」の文書を付け加えております。ここは個人情報の適正な取得と いうことで「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得して はならない」という所に、「親の同意なく、十分な判断能力を有していない子どもから 家族の個人情報を取得してはならない」と書いてありましたが、これについてはパブリ ックコメントの中で、例えば喘息のお子さんの病態には、家庭内における虐待や暴力あ るいは人間関係に大きく左右される場合があって、こういった情報を把握するために幼 児から直接家庭内の家庭情報を得ることは非常に治療に役立っているので、治療の必要 がある場合は取得できるようにすべきではないかというご意見がありました。もともと 条文の趣旨からして、そういうことをできないようにしようと思って書いた文章ではあ りませんので、ただし書きを付けました。要は、偽りその他不正な手段で取得してはな らないという文章ですので、誤解、懸念のない文章にしました。  18頁の(4)は安全管理措置の部分です。「電子カルテ等の導入」という書き方をし ていましたが、電子カルテに限らず医療情報システム化を図る場合は一般的に、これは 全部当たるということですので言葉を広く修正しました。  次は22頁です。第三者提供ですが、(3)にがん検診を入れたのは10頁の修正と同じで す。23頁の(2)も、9頁の修正趣旨と同じで「参考」だということを明確にしておりま す。  24頁は、これは言葉の話で、例と事例1、2、3が混在しているというご指摘があり ましたので、(例)で統一をしました。あと、(事例3)家族等への病状説明ですが、 ここで「その同時に説明を受ける」という言葉を入れました。この言葉はなかったので すが、家族等に対する診療情報の提供について本人の同意が得られたものと考えられ る、という文章だけを見ると、別の所では「自分のことは個別に聞いてください」とい う文章があったのですが、それとの関係がわかりにくいというご指摘があり、もともと の(事例3)の例で書いているのは、本人と家族に同時説明をするということで、別に その場で、この人に聞かせてくださいという話を本人が言うのでなくても、同時説明を 受ける家族等については同意が得られたものと考えられる、ということを丁寧に書いた ということです。同時でない場合については、どの家族に説明してほしいかというの は、「別途本人に確認する必要がある」というのは別の所に記載しているところです。  29頁は「事例」を「例」に統一しました。  次は30頁です。中ほどに「診察した医師の保有個人データ」という記載を「当該診療 録を作成した医師の保有個人データ」と。これは診察した医師という言葉ですと不正確 ですし、6頁の1.の所では「診療録を作成した」と書いていましたので、ここは統一 をしたところです。  35頁は、上から10行目ぐらいの所を2行削って、同様の趣旨の記載を上に3行付け加 えました。それは何かと言いますと、修正していない1行目に「開示等の求めがあった 場合、主治医等の担当スタッフの意見を聴いた上で」と書いています。一方、消した所 は「開示の可否について検討するために設置した検討委員会等において検討した上で」 ということで、開示の可否を決定する際に主治医等の意見を聴く手続の話と、検討委員 会で可否を決定する手続の話と2つあり両者の関係がわかりにくいというご指摘があり ました。趣旨としては、一般的にはまず主治医等のスタッフに聴くと。それで開示して いいですよ、という話であればそれでいくということです。その上で、不開示事由に該 当する可能性がある場合には、検討委員会等でも検討する、という流れの構成でもとも と書いていたつもりでしたので、その流れの構成が明確になるように、まず順番を変え て2つの項目を連続して記載した上で、2つ目の項目については、第25条第1項各号に 該当する可能性がある場合の話であるということを書き加えて趣旨を明確にしました。  44頁の別表2は、あくまでも参考例としての別表2ですので、ここに書き加えなけれ ばいけないとか、書き加えたからどうだという話ではないのですが、本文の中で外部監 査機関の情報提供のことは結構書いていますので、このことを44頁のいちばん下の所 に、〔他の事業者等への情報提供を伴う事例〕ということで、外部監査機関への情報提 供を書きました。52頁は、先ほど説明した別表5と別表6を書き分けるという修正をし ております。  以上が今回、こういった所についての修正をしたほうがいいのではないかと思い、ご 提案をした次第です。 ○樋口座長  こういう形でのガイドライン(案)の修正点がいくつも出てきて、パブリックコメン トのお蔭でずいぶんわかりやすくなったり、誤解を避けられる部分がいくつもあったと 思います。その点に限らず、委員の方からご意見を承りたいと思います。  この検討会の中では宇賀委員のご指摘等で我々も十分よくわかったのですが、個人情 報保護法という名前の法律以外に同様の趣旨のものがあと2本あり、地方自治体の条例 もあり多様な構造になっているわけです。医療機関からすると、どういう区別なのだろ うかという点がよくわからないところがある。そういう点をはっきりしたほうがいいで すよ、もっとはっきり書かないと誤解を受けますよ、というパブリックコメントのおっ しゃることは全くそのとおりです。  そこで資料2の1頁では、このガイドラインは狭い意味の個人情報保護法の下でのガ イドラインなので、民間の医療機関等、介護関係事業者等を対象とするものとされてお り、いま付け加えられた下から5行目では、ほかの法律が適用になるのがあるので、そ れは厳密には対象にしませんよとはっきり書いてあります。  他方、これは私がごく最近経験したことですが、私はいま国立大学法人という所に勤 めています。国立大学法人というのは、いわゆる国立大学病院ですが、同じように個人 情報保護にどう対応するかということで、それぞれの国立大学病院で各自対応せよとい うのはなかなか大変です。しかも、大学病院ですから、私立大学病院も同じだと思いま すが、研究教育という使命を持っている。このガイドライン(案)を参考にしつつ、ど ういう形で変容を加えていったらいいかを考えているのです。  直接には、総務省の独立行政法人法に関するガイドラインがあります。ただそこは、 例えば国立大学法人に勤める従業員の個人情報のことしか出てこないので、大学病院は どうだろうかという話は実際に見てもわからないのです。したがって、実際には、これ を相当程度参酌しながらということですし、一般論としても素人考えで言うと、県立病 院へ行く、国立病院へ行く、国立大学病院へ行く、私立大学病院へ行くのとで個人情報 の取扱いが異なるのはすっきりしない。  これは厳密に言えばこのとおりだと思いますが、例えば「除く」の後に「ただし」と いうことで、ただし医療・介護分野における個人情報保護の精神は同一であるから、こ れらの事業者も本ガイドラインを参照することが望ましい、ぐらいのことを書き加えた ほうがいいような感じがしますが、いかがでしょうか。 ○企画官  今回作っておりますのは、厚生労働大臣が個人情報保護法に基づく権限をどう行使す るかに関わることが念頭にあるものですから。国立大学法人のケース、あるいは私立大 学病院のケース等については主務大臣が違うということです。 ○樋口座長  管轄が違うのはわかります。 ○企画官  ですから、そこまでは踏み込んで書いていないのです。 ○樋口座長  「望ましい」と書くのが強過ぎるのであれば、もう少し弱めても結構です。どういう 表現がいいのかはよくわかりませんが。 ○企画官  そういうことを書くことについて、関係省庁に投げてみて、それでも構わないという ことであれば、そう書きたいと思います。そういった方向で調整をさせていただければ と思います。 ○樋口座長  そうしていただければありがたいと思います。 ○医政局長  私は国立病院と独立行政法人国立病院機構を所管していますが、いま座長が言ったよ うなことがあってもいいのではないかと思います。全体の医療に関連することですか ら。 ○樋口座長  もう1点、今日ご紹介がなかったパブリックコメントの内容の1つとして、22頁の所 で、個人データの第三者提供というのは原則同意が必要ですが、しかし、個人情報保護 法自体に、次のような場合については、例外として同意がなくてもいいですよと。これ は医療の場面でどのようなことが考えられるのだろうか、というのがここで具体化され ている部分です。(3)で「公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必 要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」と、ここではいくつ か例が挙がって、児童虐待事例について関係機関との情報交換が挙げられています。最 近そういう話ばかりのニュースで本当に残念ですが、いわゆる高齢者虐待、老人虐待は どういうことなのかという意見もあったそうで、この(3)は児童の健全な育成というと ころにかかっているので、ここへ書くわけにはいかない。どのみちそれは例外として同 意を得なくても届け出ていただくことになるのですが、それは別の条文の所で大丈夫な のですよという対応はしている。それはご紹介が必要かなと思っています。 ○企画官  高齢者虐待は児童ではないのと、公衆衛生の向上で読むのも難しいのです。実は上に (2)で「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって」とあります ので、高齢者虐待のケースについても、少なくとも(2)の条文では読めますので、高齢 者虐待が疑われている場合の利用ということは、児童虐待のケースと同様に関係機関と の情報交換で使えるものと理解しております。 ○樋口座長  ほかにはいかがでしょうか。 ○岩渕委員  24頁の(事例3)の所で「その同時に説明を受ける」という、その同時にの「その」 というのは普通一般のわかりやすい新聞用語ですと「その」は要らない。「その」を 「本人と同時に」というニュアンスではどうでしょう。 ○企画官  「その本人と同時に」がわかりやすいですね。 ○岩渕委員  それがよろしいですね。 ○大道委員  医療記録等、特に医師の記載する診療録の中で保有個人データであるということでの 法体系としての解釈・理解は、徹底させていくということであるのですが、医療現場で の状況というのは、一部パブリックコメントでも出てきているはずですが、医師側の判 断とか評価に関わる情報についての見解というのは、収束させるのはなかなか難しい状 況にあると改めて感じています。その中で、実は樋口座長が一時期示されたのですが、 医師が非常に効果的な処方の組み合わせなどについて、これは医師個人として独自の価 値を持った情報なのではないか、それがこの法体系では必ずしも保護されないという例 示をされました。  今回のパブリックコメントに多少関わっている中でも、学術的な価値のある診断また は治療に関するものについて、まさに患者にしっかり情報提供をすることで本来の医療 の目的を達しようとするのであるのですが、それが学術的に価値のあるために、学術的 な雑誌等に掲載する前にその提供を行ったときに、これがインターネット等を通じて他 の医師、例えばセカンドオピニオン等でもその場合でありますが、伝達され、ないしは それが他の知るところとなった場合については、医師が学術的な意味合いで価値がある と自らの個人情報と考えられるものが、むしろ保護されないのではないか。この趣旨の パブリックコメントが出ているはずなのです。そのようなことの相談を受けているとい う経緯はあるわけですが、この辺りは解釈の違いである、法体制がそうなっていないか らということで当人にご説明しても理解されないのではないかという気もするのです。 私はやむを得ないとは言いませんが、法律そのものの体系はこうだからということで繰 り返しのご説明をいただいているので、それはそれでよろしいのですが。今日改めてパ ブリックコメントをいただいた中での議論ですので、座長でもよろしいし、事務局でも よろしいのですが、その辺りの見解を、この検討会としてはどうなのかについて、お聞 かせいただければありがたいと思います。 ○企画官  実は、パブリックコメントにも同趣旨のご意見はありました。診療を担当する医師に とって、開示の対象となる診療情報が医学的に、医師の個人データとして重要な情報で ある場合はどうなる、その場合の検討が必要ではないかということで、担当医が研究開 発して新しい診療法を実施した場合であってもその患者の使用上必要であれば、新しい 診療方法であっても開示されることになる。開示された診療情報を使用してその患者が ほかの医師等に相談すると、発表以前にそれが出ていくとプライオリティがなくなるお それもある。こういうのをどう考えるかという話はありました。問題は、それが個人情 報保護法上どういう扱いになるのかです。これはどういうケースだったらどうだという のは今この時点で右左をつけ難いので、具体的なケースに即して判断することになるだ ろうと思いましたので、今回事例としては入れていません。  ガイドライン(案)29頁の第25条の所が開示の条文で、ただし、そのいずれかに該当 する場合は一部不開示、開示しないことができるというのが1号、2号、3号とあるわ けですが、例えば1号の第三者の財産その他の権利利益を害するおそれがある場合。あ るいは、事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合といった条 文がありますので、個別具体的なケースによっては、その条文に当たることもあるかと 考えます。プライオリティの程度にもありますし、新しさの程度もあるかと思います が、そういったことを個別具体によってはあるということではなかろうかと。要するに これに当たり得ないという解釈をとっているわけではないのです。ただし、どういう場 合だと当たるということもなかなか困難なわけで、そういうことで今回のガイドライン は修正をしていません。そういうことで今回処理をさせていただければと思っておりま す。条文の解釈は座長にお願いできればと思います。 ○樋口座長  いま事務局の方が言われたとおりだと私は基本的に思っています。どういう事例で問 題が出るかによると思います。大道委員が言われたのは、私には理解が足らない部分が あるのだと思います。例えば新しい治療法を開発したという場合は、治療方法には一般 的には知的財産権は認められていませんで、新しい治療法、画期的なのが出てくれば開 示してもらって皆で使おうという法制度になっているのです。ただ、一定の発明につい ては、発明という概念が1つあって、これで特許という話になれば、それは1号で本人 の財産その他の権利利益を害するおそれがあって、すぐに人に知られたくないというケ ースはあり得ると思います。そういう場合ならそれはそうです。  しかし、一般的な手技の工夫のようなことであれば、それは法律上の保護にはまだ値 しないというか、むしろ秘密にしないで公開してくださいという法制度になっていると いう気がしています。具体的にどこに書き込むかが難しく、結局、ここの具体例の所で 解釈せざるを得ない。だから、守られる可能性もありますということだろうと思いま す。 ○大道委員  若干の経緯があってあえて問題提起をしているところがあります。いまの法第25条の 1号または2号の所は、事例によってはここで読み込むといいますか、そこに当たるこ とがあるのかないのかを検討する余地はあると、このぐらいの説明で私なりに受け止め ているのです。いま座長ご指摘の治療法に、まさに公益に資するところがあれば出来る だけ早く公開をし、広く普及するのが医療においては特段にそのとおりということです が、多分、問合わせをした方は、いわゆる学術的価値で、先にそのことを指摘したり、 あるいは発見、場合によっては発明と言ってもいいのですが、そうしたことそのものの 価値付けを認識しての問題提起だと思いますので、ここは観念論をしてもいかがなもの かと思いますので、これ以上は、よろしいのかなという気がいたしますが、この種の議 論は相変わらず現場ではくすぶっている状況があって、これは施行前ですからやむを得 ないというか、当然のようなところもあります。確認をさせていただいた上で、第25条 の1号または2号の読み方の余地があるということを、それなりにお伝えをし、かつ、 運用の中で適切な対応をしていくと。このように受け止めました。ありがとうございま した。 ○樋口座長  ほかにガイドライン(案)の修正に関して、何かご意見はありますか。ないようです ので、ここまでのご意見を踏まえ若干ですがガイドライン(案)の表現等の修正を行う ことにしたいと思います。内容の点では皆さんの意見で齟齬がないといいますか、概ね ご了解いただけていると思いますので、字句の点については、今日のご意見を反映した 形で、ほとんど修正点はないと理解していますが、その修正及び最終的な確認について は、私がたまたま座長ということでもありますので、私に一任していただくということ でよろしいでしょうか。                 (異議なしの声) ○樋口座長  ありがとうございました。これでガイドライン(案)が大筋まとまったということに なって、今後の取扱いについて事務的なことはどうなるのかを事務局から、ご説明をい ただきたいと思います。 ○総務課長補佐  ガイドライン(案)については、ただいま座長からお話がありましたとおり、座長の ご指示の下、事務局で修正し正式な形でまとめたいと思っております。その後、厚生労 働省において所定の手続をとり正式な「ガイドライン」をとりまとめ、厚生労働省から 各都道府県、関係団体などに通知を発出するなど広く周知を図ることを予定しておりま す。 ○樋口座長  それでは、もう1つの議題、いわゆる個別法あるいは特別法についてどのような形で 報告書案に盛り込むかが問題として残っております。これは資料3ということになると 思いますが、事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。 ○企画官  資料3は、「医療機関等における個人情報の保護に係る当面の取組について(案)」 です。前回第8回で、この問題の論点ということで資料を示してご意見を頂戴したとこ ろです。そのご議論を踏まえ文章化して考え方を整理いたしました。それでは読み上げ ます。  「はじめに」。本検討会は個人情報保護に関する法律の全面施行に向け、医療機関等 における個人情報保護のあり方を検討するため、本年6月に設置され12月までに9回に わたり議論を行ってきた。検討会においては、個人情報保護法に定める義務等を医療・ 介護関係事業者が遵守していくに当たっての内容等を定めた「医療・介護の関係事業者 における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン(案)」について議論を行うと ともに、個別法の必要性を含めた法制上の措置、その他の措置のあり方について検討を 行ってきた。  以上の経緯を踏まえて、平成17年4月の個人情報保護法の全面施行に際しての医療機 関等における当面の取組方針について以下のように取りまとめを行うものである。  「1 個人情報保護法等における医療分野の個人情報の位置付け」。個人情報保護法 において、政府は個人の権利利益の一層の保護を図るため、特にその適正な取扱いの厳 格な実施を確保する必要がある個人情報について、保護のための格別な措置を講じられ るよう必要な法制上の措置、その他の措置を講ずるものとされている(法第6条第3項 )。  医療分野については「個人情報の保護に関する基本方針(平成16年4月2日閣議決定 )において金融信用や情報通信等と並んで「個人情報の性質や利用方法等からの特に適 正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある分野」の1つとして位置づけられてい る。また、個人情報法案が審議された衆参両院の個人情報の保護に関する特別委員会の 附帯決議において、医療分野は国民から高いレベルでの個人情報の保護が求められる分 野の1つとして、個人情報を保護するための個別法を早急に検討し、個人情報保護法の 全面施行時には少なくとも一定の具体的結論を得ることとされている。  「2 医療機関等における個人情報の取扱いに係る課題」。医療分野の個人情報が、 基本方針等において、特に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要があるとされ、い わゆる個人情報保護法第6条第3項措置の検討が求められている具体的な理由について は、概ね以下のとおりと考えられる。  (1)安全管理に関する問題。医療分野に関する個人情報の漏えいや不当な利用など により、個人の権利利益が侵害された場合には、他の分野の情報に比べ、被害者の苦痛 や権利回復の困難さが大きいことから、安全管理のための格別な措置が必要と考えられ ること。  (2)自己情報のコントロールに関する問題。患者の自己決定権のもと、患者自らが 主体となって判断し医療を受けることができるようにしていくためには、患者の医療に 関する個人情報に関する自己情報のコントロールについて、格別の措置が必要と考えら れること。一方で医療分野の情報は、公衆衛生などその利用の意義が大きい点や、患者 への配慮のない開示により逆に患者に不利益になる場合もありうるなど、他の分野にな い特性を有することから特別な配慮を必要とする場合があると考えられること。  (3)死者の情報。個人情報保護法は、生存する個人に関する情報について適用され るものであるが、医療分野においては、医療は死と向き合う分野であり、死者の情報に ついても安全管理や開示に配慮する必要があるため、死者の情報について他の分野の情 報とは異なる格別の措置が必要と考えられること。  「3 医療機関等における個人情報の取扱いの現状」。2に記した各論点について、 既に行われている法制上の措置その他の措置の現状について整理すると、以下の【既に 行われている措置】に記載するとおり一定の取組が進められているところであるが、そ の上で、検討会においてガイドライン(案)に盛り込むべき内容について議論し、医療 分野については以下の【ガイドライン(案)の特別に盛り込んだ措置】に記載するとお り、個人情報保護法の定める内容以上の取組もガイドライン(案)に盛り込むこととし たところである。  (1)安全管理に関する問題について。【既に行われている措置】。(1)刑法、各資 格法等による守秘義務の規定。医療関係の資格者については、刑法第134条のほか保健 師、助産師、看護師法第42条の2等に、罰則付きの守秘義務の規定が置かれている。ま た、不妊手術、精神保健、感染症など、その業務の内容によっては、それぞれの関係法 律に、資格者でない職員についても罰則付きの守秘義務の規定が置かれている。  一般の医療機関等の職員についても、医療法第15条や薬事法第9条で、管理者に対し 従業員に対する監督義務を規定しており、個人情報保護法第21条(従業者の監督)とあ いまって、管理者を通じた、個人データを取り扱う従業員への監督がなされることとな る。  上に記した刑法等に定める守秘義務規定や従業員に対する監督の規定は、その者が従 事する事業所が取り扱う個人情報の量を問わず適用される。  個人情報保護法に基づく具体的な取組として、ガイドライン(案)においては、管理 者(個人情報取扱事業者)は、従業員に対し、雇用契約や就業規則で退職後も含めた守 秘義務を課すとともに、教育研修を行うこと等を定めている。  (2)個人情報保護法に基づく安全管理措置及び委託先の監督。医療機関等は、取り扱 う個人データの漏えい防止等のため、必要かつ適切な安全管理措置を講ずること、ま た、取扱いを委託する場合には、委託を受けた者に対し必要かつ適切な監督を行わなけ ればならないこととされている。個人情報保護法の第20条と22条であります。なお講ず るべき措置内容については、医療分野に即してガイドライン(案)に具体的に示されて いる。  次に【ガイドライン(案)に特別に盛り込んだ措置】。(3)小規模事業者への適用と いうことで、個人情報保護法は、取り扱う個人情報の数が5,000件以下の小規模事業所 に対しては、法に基づく個人情報取扱事業者としての義務等を課していないが、患者等 からみれば、事業所の規模等によらず良質かつ適切なサービスの提供が期待されるこ と、また、どの事業者が「小規模」かどうかはわかりにくいこととの指摘がある。この ことを踏まえ、ガイドライン(案)においては、個人情報保護法上の義務を負わない小 規模の事業者にも、これを遵守する努力を求めており、これにより、小規模事業者につ いても、従業者の監督や安全管理措置、委託者の監督についての遵守努力が求められて いる。  次に説明の論点の(2)自己情報のコントロールに関する問題について。【既に行わ れている措置】 (1)で診療録等の開示。個人情報保護法第25条では、医療機関等は、 本人から診療情報の開示を求められた場合、遅滞なく書面の交付等の方法により開示を 行うこととされている。(同条第1項各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は 一部を開示しないことができる。)  平成15年9月に定められた「診療情報の提供等に関する指針」に基づき、インフォー ムドコンセントの理念等を踏まえ、医療従事者と患者等とのより良い信頼関係を構築す ることを目的とした診療情報提供の取組が既に開始されている。なお、この指針に定め られている内容は、個人情報保護法第25条と整合しており、ガイドライン(案)におい ては、患者等からの求めにより個人情報である診療情報を開示する場合は、同指針の内 容にも配慮する必要があるとされ、また、同指針においては、医療分野の情報の特性を 踏まえ、開示の際には、担当の医師等が説明を行う等の対応が望ましいとされている。  (2)開示・不開示の判断の妥当性の客観的評価。個人情報保護法による開示であれ、 「診療情報の提供等に関する指針」による診療記録の開示であれ、一定の事由に該当す る場合には、診療情報の全部又は一部を提供しないことができるとされている。医療従 事者によるこの判断の妥当性が客観的に評価されうる仕組みが必要との指摘があるが、 同指針においては、「開示の可否については医療機関内に設置する検討委員会で検討し た上で決定すること」、「文書で理由を示すこと」、「苦情処理の体制についても併せ て説明すること」を定めている。  また、個人情報保護法により、医療機関等は個人情報の取扱いに関する苦情に適切か つ迅速に対応する責務を有し、そのために必要な体制の整備に努めなければならないと されている。加えて、厚生労働大臣の認定を受けた認定個人情報保護団体は、対象事業 者である医療機関等の個人情報の取扱いに関する苦情があった場合は、その相談に応じ ることとされており、また地方公共団体にあっては苦情の斡旋等を行うこととされてい る。  さらに、同法により、厚生労働大臣は、必要に応じ、医療機関等に対し、個人情報の 取扱いに関する報告をさせ、必要な助言をすることができ、医療機関等が法令に違反し た場合で、個人の権利利益を保護するため必要があると認めるときは、医療機関等に対 し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨の勧告、 命令を行うことができるとされている。  医療情報についても適用される個人情報保護法にこうした規定が設けられていること により、医療機関等の不開示の判断の客観的妥当性に疑義がある場合には、第三者によ る判断とこれを通じた救済を求めることができる仕組みが設けられることになる。  (3)保有個人データの訂正や利用停止等。個人情報保護法により、本人から、内容が 事実でないという理由によって、保有個人データの内容の訂正、追加又は削除を求めら れるときは、必要な調査を行い、その結果に基づき訂正等を行わなければならないとさ れている。  また、個人データの改ざんに関する個人情報保護法に基づく具体的措置として、ガイ ドライン(案)においては、保有個人データを不当に改ざんしてはならないことを明記 するとともに、入退室の管理やアクセスの管理など物理的あるいは技術的な安全管理措 置を講ずることが必要であることも記載し、改ざん行為の防止を求めている。  (3)死者の情報について。ここは遺族への開示や死者の情報の保護のことです。 【既に行われている措置】 「診療情報の提供等に関する指針」においては、患者が死 亡した際には遅滞なく、遺族に対して、死亡に至るまでの診療の経過、死亡原因等につ いての診療情報を提供しなければならない、と定めており、遺族に対する診療情報の提 供は既に取り組まれている。  その上で【ガイドライン(案)に特別に盛り込んだ措置】として、個人情報保護法 は、生存する個人に関する情報について適用されるものであるが、ガイドライン(案) においては、同法の整理を前提としつつ、1)遺族への診療情報の開示については、 「診療情報の提供等に関する指針」において定められている手続きに従い、同指針の規 定により遺族に対して診療情報の提供を行うものと整理している。2)患者等が死亡し た後においても、その情報を保存している場合には、漏えい等の防止のため、生存する 個人の情報と同等の安全管理措置を講ずるべきものと定めている。  「4 医療機関等における個人情報保護に係る措置のあり方の議論について」。検討 会においては、3に記した現状(ガイドライン(案)に特別に盛り込むこととした措置 を含む)を踏まえ、医療機関等における個人情報保護に係る措置のあり方について議論 を行った。  議論の中で、小規模のものを含めた医療機関等に個人情報の取扱いを周知する観点か らは、個人情報保護法及びそのガイドライン(案)、刑法、各資格法に定められた守秘 義務等をわかりやすく示すべきとの意見があった。  また、現在、関係の学会等において、診療録の標準化への取組が進められており、こ れらの取組を阻害しないような配慮が必要との意見があった。  さらに、医療従事者は高いモラルを有しており、刑法等の規定もあいまって、これま でも医療従事者自体による個人情報の不適切な取扱いに基づく漏えいや不当な利用は少 ないのではないかと考えられることや、個人情報保護法の全面施行により、医療機関等 は原則として同法の対象となることから、同法が適用されることを踏まえた各医療機関 等による一層の取組が期待されるとの指摘があった。  各医療機関等においては、「診療情報の提供等に関する指針」に基づく情報提供への 取組が緒についたところであり、今後、厚生労働省において、個人情報保護法の施行状 況等も適宜把握し、その評価を行った上で、さらに必要と考えられる措置について検討 を行うことが適切ではないかとの指摘があった。  まとめとして、医療機関等における個人情報保護のための措置としては、個人情報保 護法、同法第6条第3項措置の内容も含んで作成されたガイドライン(案)、刑法及び 各資格法等に定められた守秘義務規定並びに「診療情報の提供等に関する指針」が適用 されることとなり、医療分野の個人情報については、他の分野に比べ手厚い保護のため の格別の措置が講じられることになることから、現段階においては、個人情報保護法の 全面施行に際し、これらの措置に加えて個別法がなければ十分な保護を図ることができ ないという状況には必ずしもないと思われる。  平成17年4月からの個人情報保護法の全面施行に当たっては、これらの法律やガイド ライン(案)等に基づく措置が的確になされるような取組が行われることがまず重要で ある。厚生労働省においては、本検討会の議論も踏まえ作成したガイドライン(案)に ついて、所要の手続きを行った後、広く周知を図ることが必要であり、また、各医療機 関等においては、新たに施行される個人情報保護法、ガイドライン(案)及び「診療情 報の提供等に関する指針」の内容を十分理解し、その遵守に最大限努力することが求め られる。  なお、個人情報保護法附帯決議において、政府は、法の全面施行後3年を目途とし て、法の施行状況等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること とされていることを踏まえ、厚生労働省においては、政府全体の検討に合わせ、医療機 関等の法施行後の取組について、個人情報の適正な取扱いの厳格な実施が確保されてい るかについて評価・検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずることが必要で ある。以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。以上のようなものがとりあえずの原案です。ただ、これは 前回のこの検討会での議論を踏まえたものであると理解しておりまして、結果としてと 言うか結論として、直ちに個別法制定が必要であるという趣旨を盛り込まないことにな っております。その結論を含めて、それに至るリーズニングというのですか、こういう 形の構成になっておりますが、この文章全体についてはいかがでしょうか。 ○高橋委員  この検討会の報告の主たる趣旨は、医療における特別な立法の附帯決議に関する対応 ということで、全体としてはこういうことかと思います。多少、介護保険の運用等に関 心がある立場からちょっと発言させていただきます。  介護保険のほうでもさまざまな制度的な個人情報の保護についても、介護保険法等な り通達なりにおいて行われているわけですが、医療のように個人情報に関する議論が必 ずしも成熟していないという認識もっています。実はこれは一方で実態把握が必要です し、老健局のほうのご検討もいただかなければいけないということですが、そこら辺の 現実認識が必要だと思います。とりわけ介護保険事業の場合は、民間事業者が非常に多 く、なおかつ零細な業者が多い、他職種が関わり合うということもあり、医療従事者の ような、必ずしもきちんとした個人情報保護に関するオリエンテーションが、形式的に はありますが、実質的な教育が行われているとはちょっと思えないというようなことが あります。やはり介護保険等の事業者の状況については、個人情報保護のあり方につい てもう少し精査が必要だと思っておりましす。これは介護保険を所管している老健局の お考えもあろうかと思いますが、そこら辺のことで、多少注意を喚起するような文言を どこかに入れておいていただいたほうがいいのではないか。要するに、医療はかなり先 へいっていますから、そうすると、あとからついてくると言うか。その場合に、どうい う段階にあってどういう課題があるかということについては、若干の指摘をしておいた ほうがいいのかなということが1点あります。  もう1つは、介護事業者は社会福祉法人等の、いわば福祉サービスに関わる事業所が あって、これについては社会・援護局が、これは検討会等を設けずに事務的なベースで ガイドラインを作ったと伺っています。ここら辺との整理、おそらく内部的には老健局 と社会・援護局でやっておられると認識しておりますが、そこら辺との整理はこれから も、今後の施行過程のある時期にしておく必要があると思います。福祉のガイドライン と介護のガイドラインが結果的には別々の形で出来る。こちらは「医療等」の中に介護 が入るという形で整理をされていますが、必ずしもそれですむのかどうか。これも事務 局の見解も含めて、そこら辺の状況についての認識はある程度どこかに入れておいてい ただいたほうがいいのか、あるいは、私の荒唐発言ですめばそれで結構ですが、ちょっ とそんなことを、介護保険に関心のある立場から発言をさせていただきました。 ○樋口座長  ありがとうございました。いまの高橋委員の発言はいずれも重要な点だと思います が、もしかしたらこの資料3というのは、いわゆる個別法制定の必要性。 ○高橋委員  分野によって違うので、ちょっと躊躇しながら発言しております。 ○樋口座長  いや、責めているのではないのです。そういうことではないのです。先に、とりあえ ず確定していただいたガイドラインの所でもう少し。第1点は、やはり介護を入れるこ とにして、それは1つの決断だったわけですが、ガイドラインはご承知のように、どう しても医療機関中心ですよね、どう見てもね。相当努力をしていろいろな事例で入れら れたと思うのですが、だからもう少し介護事業者の所へ。もう一歩何か言及があっても いいかなというのがご趣旨で、第2点目はそのガイドラインの作り方で、福祉と介護の 関係等の問題ですね。これは少し大きな話ですが、事務局の方でどなたか。あるいは老 健局かもしれませんが。 ○企画官  いわば重点3分野と言われている医療、金融・信用、情報通信のことについても検討 しなければいけないという宿題があってということですので、この資料3のレポートは 医療ということで整理させていただいております。ただし一方で、そのガイドラインに ついては、医療事業者が介護もやっていることが多いということもあって、一体的に作 ったという経過もあり、いろいろな意見も頂戴しておりますので、介護事業者の取組の 話とか、介護事業者は別途作っている福祉ガイドラインとの関係もよく考えなければい けないとか、そういった辺りについてはガイドラインのほうで何か工夫をさせていただ くようなことが、もしよろしければ。 ○高橋委員  基本的には事務局にお任せして、それぞれの関係部局との調整でお願いできればとい うことです。 ○樋口座長  それはよくおわかりのことではあるので。ですから、発言を強いるわけにもいきませ んが、老健局の方が出ておられればいまの点について。いらっしゃいますね。何か一言 コメントとか、お願いできますか。 ○老健局介護保険課長補佐  確かに高橋委員がおっしゃるように介護分野は、平成12年に法律が施行されて5年経 ったのですが、確かに医療分野からはかなり遅れているところがあろうかと思います。 したがっていま委員がおっしゃいましたように介護保険事業者は非常に零細な所も多 く、体制的にも非常に脆弱であるというような状況もありますので、例えばQ&Aなど でよりわかりやすく周知できるようにしていきたいと考えております。 ○樋口座長  福祉との関係はどうなのでしょうか。 ○老健局介護保険課長補佐  確かに介護保険の事業を社会福祉法人にもやっていただいていますが、今回は一応切 り分けて、こちらに乗らせていただいたということですので、これについても先ほど申 し上げましたようなQ&Aできちんと周知を図っていきたいと考えております。 ○樋口座長  ありがとうございました。ほかにこの資料3についていかがでしょうか。 ○岩渕委員  また細かいことですが、2頁目の(2)で「患者の医療に関する個人情報に関する」 とありますが。「関する」が2つ続いてしまうとちょっと混乱してしまうので、この辺 りはちょっと整理していただきたいと思います。  それと、ガイドラインというタイトルが付いていて、中は指針になっているのです ね。あるいは、これはすでに全部決着済みの話かもしれませんし。それで資料3のほう は、またガイドラインでずうっといっている。これはどうなのですか。やはり私の理解 が足りないのでしょうね。 ○樋口座長  最終的にはどちらかに文言を統一するのでしょうね。 ○企画官  基本的にはガイドラインはガイドラインということで。別表ごとなどのときは多分野 のものを総称して指針にしましたが、これ自体はガイドラインという名前で呼びたいと 思っています。私はそういう整理をしていたつもりだったのですが、ちょっと漏れがあ るようですので整理させていただきたいと思います。「関する、関する」の所は工夫し てちゃんとした文章にしたいと思います。 ○樋口座長  そのほかいかがでしょうか。それではいまの岩渕委員からのご指摘を踏まえて、少し 字句を訂正する所があると思いますが、その点も、軽微な修正だということで、私に修 正及び確認を一任していただくということでよろしいですか。                 (異議なしの声) ○樋口座長  ありがとうございます。そうすると宿題が2つ、一応終わったような形になります。 私は本検討会の委員の任期というのは全然意識していませんでしたが、来年3月までと いうことになっているのだそうです。しかし今日、一区切りがついたということでもあ りますので、これまでの検討を振り返って全体として、せっかくの機会ですので、特に ここでコメント、意見をいただけるものがあればそれはありがたいと思いますが、何か ありますでしょうか。 ○高津委員  これからガイドラインができて各分野と言いますか業界のほうで、周知普及あるいは 啓発という作業に入っていくと思うのですが、最初の段階で厚労省のほうが、医療機関 あるいは介護のほうも含めて、こういうことが始まって施行されますよというポスター を作るお考えがあるかどうか伺いたいと思います。  もう1つは、ちょっと言いそびれたのですが、先ほどから用語の問題でいくつか、修 正部分がありました。用語を普及させる意味で、ガイドラインの後ろに用語の索引があ れば、理解しやすいのではないかと、いま用語の問題を聞きながら浮かんだのです。そ れも加えて意見を言わせていただきたいと思います。 ○樋口座長  ありがとうございました。いまの点について事務局のほうはいかがですか。 ○企画官  まず1点目の広報について、今後どういう形で普及啓発の作業をしていくかは、これ は個人情報保護法全体の施行ということで、内閣府でもある話ですので、そことの関係 を見ながら、どういった工夫ができるか考えていきたいと思います。  索引等の話につきましては、ガイドラインの中にそういったものを入れるかどうかと いうことは、今後広めていく際にはそういった、検索しやすくしていくという工夫は必 要だと思いますので、やり方はちょっと考えさせていただきたいと思います。 ○樋口座長  ありがとうございます。ほかの委員の方はいかがでしょうか。全体としてということ で結構です。 ○大道委員  かねてから議論になっていた事例集、これは、わかりやすいという意味合いもありま すし、趣旨を現実の想定された場面でこうだということをお示しいただくのは、それぞ れの分野で大変ありがたいと思います。すでに発言したことですが、法の趣旨、あるい は具体的な国としてのガイドラインが示されますと、それを受けてそれぞれの分野で専 門団体、学会ですね。学会や、さまざまな協会、協議会等がありますので、そこで本来 の解釈がなされて、個々の分野での、ガイドラインという言葉が適当かどうかわかりま せんが、具体的な手順などを示す活動と言いますか、そういうことがこれから行われて いくのだと思います。そういう意味でも、事例集がすべてだとは思いませんが、よりわ かりやすい形での、国としての広報は是非お願いをしたい。ここまで書き込めば誤解 は、誤解と言いますか、間違った運用はないと思うのですが、先ほどもちょっと触れま したように、たぶんにまだ納得しかねるみたいなところが少し、特に医療の中での専門 職を中心に、医師ですね。医師を中心に起こっておりますので、ここらをひとつ、適切 に対応をお願いしたい。もちろん、委員としてもいろいろな意味での説明には努めたい とは思っていますが特段に、国のほうでもよろしくお願いしたいと思います。以上で す。 ○樋口座長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。それでは、個人情報保護法の全 面施行が来年4月ということですが、それに向けた今後の動きについて事務局から説明 をください。 ○企画官  まず、いま大道委員からありました事例集等の作成ですが、これは、これまで9回に わたる議論の中でいただいたご意見とか、あるいはパブリックコメントで出てきた用語 などを活用して、事務局のほうで進めていきたいと思っています。前回の会議で、こん なようなイメージで作りたいということをお示ししましたが、あの線で事務局のほうで 作業を進めていきたいと思っておりますが、こういう事例を紹介してほしいとか、こう いう事例についての解説をしてほしいとか、そういったようなご提案がありましたら、 また追ってご連絡いただければと思っております。先ほど座長から任期の話がありまし た。任期の残る今年度中にまた集まっていただくということは、たぶん、特段の事情が なければないと思っておりますが、会議はともかく、今後ともいろいろご協力、ご指導 をいただければと思っております。  食事の準備もありますので、よろしければお残りいただければと思っております。 ○樋口座長  最後に医政局長からご挨拶をいただきます。 ○医政局長  今年6月23日以来9回にわたるご議論をいただきました。私ども、来年4月の全面施 行ということで、お尻が切られておりますと、かくも頻繁に委員の方々にお集まりいた だいたというのは、大変お忙しいところ申し訳なかったと思っておりますが、医療現 場、介護の現場の具体的な課題にも対応できるいいガイドライン(案)ができたのかな あと思っております。こういうものを中心に、今後個人情報の保護に努めていくことに なるかと思います。先ほども言いましたが、このガイドライン(案)については、所要 の手続を済ませて、各都道府県や関係団体などに広く周知させる予定にしております。  樋口座長をはじめ各委員の先生方には、大変ご協力いただきまして重ねて御礼申し上 げます。引き続きご指導いただければありがたく思います。本当にどうもありがとうご ざいました。 ○樋口座長  それではこれで閉会にしたいと思います。各委員の皆様、事務局の方もそうですが、 いろいろご協力いただきまして本当にありがとうございました。                  照会先  医政局総務課                  担当者  濱田・安川                  連絡先  (代表)03-5253-1111 (内線)2522