04/11/30 がん医療水準均てん化の推進に関する検討会第3回議事録           がん医療水準均てん化の推進に関する検討会                  第3回議事録              日時  平成16年11月30日(火)                  10:00〜12:00              場所  虎ノ門パストラル                  本館1階 葵の間                         ┌――――――――――――┐                         │(照会先)       │                         │            │                         │ 厚生労働省健康局総務課│                         │    生活習慣病対策室│                         │       奥田、中山│                         │(内線)2397,2339    │                         └――――――――――――┘           がん医療水準均てん化の推進に関する検討会                  第3回議事録              日時  平成16年11月30日(火)                  10:00〜12:00              場所  虎ノ門パストラル                  本館1階 葵の間  大臣官房参事官  おはようございます。定刻となりましたので「第3回 がん医療水準均てん化の推進 に関する検討会」を開催させていただきたいと存じます。皆様方には御多忙のところ御 出席を賜りまして、誠にありがとうございます。  初めに、尾辻厚生労働大臣、医政局長も国会用務のため、本日は欠席させていただい ております。よろしくお願いいたします。  本日の出席状況でございます。北島政樹様、千村浩様、山口直人様が御都合により御 欠席との連絡を受けております。なお、本会も3回を迎え、論点もほぼ煮詰まってまい りました。そこでこれまでに出された論点の中から、より詳しい理解のため、参考人と して本日は東京大学の鶴尾隆様、東海大学の長村義之様、財団法人癌研究会附属病院の 濱口恵子様のお三方に御出席をお願いしております。  本日の御議論を関心を持って見つめております一般の国民の皆様にも、わかりやすく 御理解いただけるよう、御議論のほうをよろしくお願い申し上げたいと存じます。  では、以後の議事進行につきまして垣添座長にお願い申し上げます。よろしくお願い いたします。  垣添座長  皆さんおはようございます。遠方の委員の方には早朝からお集まりいただきまして、 誠にありがとうございます。いま瀬上参事官から御案内がありましたように今回は第3 回目です。1回目はフリートークをいただきまして、本日の参考資料にありますような 論点整理の土台が作られ、その後の議論を踏まえて幾分かは修正されております。第2 回は、均てん化の指標としてのがん登録の重要性ということで御議論をいただきまし た。  本日は、がん専門医等についての御議論をいただきます。かなり広範な分野をカバー しないといけませんので、本日は参考人の皆様からもいろいろと御意見をいただかない といけません。わかりやすく、かつ、効率的な御議論をいただければ幸いでございま す。よろしくお願い申し上げます。まず、事務局から資料の確認をお願い申し上げま す。  大臣官房参事官  資料でございます。  資料1   がん治療領域における専門医制度について。  資料2−1 国立がんセンターにおける育成。    2−2 地域がん診療拠点病院における育成。  資料3−1 病理について。    3−2 がん看護について。  参考資料  主要検討課題についての論点整理(案)  追加資料  山田委員から放射線の専門家について。  以上が配付させていただいた資料でございます。足りないようでございましたら手を 挙げていただければありがたいのですが、よろしいでしょうか。では、座長よろしくお 願いいたします。  垣添座長  議事に入りたいと思います。まず「がん専門医等について」ということであります。 「がん治療領域における専門医制度について」ということで東京大学の鶴尾参考人で す。日本学術会議の癌・老化連絡委員会癌専門委員会の委員長というお立場で御説明を お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。約10分お話をいただき、その後 に10分ほど討議をいただくということにしたいと思います。  鶴尾参考人  東京大学の鶴尾でございます。均てん化ということでございますが、そのバックグラ ウンドの一番重要なファクターの一つとして、専門医という話があると思います。本日 はその話題についてお話をさせていただきたいと思います。  垣添先生に御紹介をいただきましたように、学術会議ということでございますが、現 在は、学術会議でこういう制度に対して提言をしようということで書類をまとめており ます。本日は私個人の意見でございまして、これが学術会議の意見ということではござ いません。数段階のプロセスを経て何らかの意見が出るということで、本日は個人の意 見ということで御理解をいただきたいと思います。  2枚目です。きょうはこの4点についてお話をさせていただきたいと思います。次の ページです。専門医制度の日本の現状ということです。先生方はよく御存じであると思 いますが簡単に歴史を振り返らせていただきたいと思います。  バックグラウンドにありますのは、日本の医学部は講座制です。ドイツ医学の影響を 受けて講座制であったということです。その中で国内的、あるいは国際的にも、高度の スタンダードとなる医療上の知識、あるいは技術を持つことが必ずしも容易でなかった ということがあります。これが日本で専門医制度が遅れた、専門医が遅れた一つの理由 であると思います。  戦後、専門医の必要性が非常に強く訴えられまして、専門医制度、最初は麻酔におき ます指導医が1962年に始まっておりますが、さらに81年に学会認定医制協議会というの ができました。86年に三者懇談会、日本医学会、日本医師会を含めた三者懇談会です。 その後のポリシーというのは1医師・1診療科・1認定医というのがポリシーでした。  1997年に、21世紀初頭における医療保険制度と医療提供体制についての抜本的改革 案、これは厚生労働省からの案でございますが、これが出まして、認定医、専門医とい うのが動きだしたということです。  まず、学会認定医制協議会というのがスタートしました。これが最終的に2003年に法 人格を取得しまして、日本専門医認定機構という機構になっております。現在はこの機 構を中心にして、認定機構・日本医師会・日本医学会の意見を経て厚生労働省が審査・ 認可する過程である、と私どもは理解しております。  次のページです。がん治療領域における専門医制度の現状と書いています。現状とい うよりは必要性ということです。がん領域は特に他学会、がん以外の領域と比べまして 対応が遅れたということがあると思います。また欧米に比べまして著しく遅れていると いうこです。幾つかそこに理由が書いてあります。  大学に腫瘍学講座がなかったということ。がんは非常に広い領域でして学会が横断 的、いろいろな診療科を含む横断的な学会であった、ということがあると思います。必 ずしも組織だった対応ができていたわけではありません。  こういう現状において、専門医制度の必要性が言われています。そこに書いてあるよ うに、時代・社会・患者の要望に応えることが非常に重要であるということです。特に 新しい治療法というのが広く進んできておりますし、IT革命もありまして世界の最新 医療情報が国民の手元に届くという時代ですので、そういう情報において、患者さんの 要求に対して応えないといけないということであろうと思います。  がんは単純な病気ではございませんので、チーム医療が必要であるということがあり ます。専門家集団で治療をする必要があるということです。  特に、がんの場合には薬物・手術・放射線が、3大療法ですが、そういうものを組み 合わせる総合的な医療になるということも重要な点であろうと思います。  また、がんは一つ一つが違う病気であるという理解でして、がんと一つの言葉ではく くれない病気であるということです。対象となるがんも非常に多様であるということで す。  次のページです。日本のがん治療の問題点です。一つは専門医が非常に少ないという ことです。  平成14年度のがん患者さんは約128万人です。亡くなる方が30万人です。死亡率は約 23%ということであります。このうちの半数の方、約64万人の方が抗がん剤で治療をさ れるとします。。一人のお医者さんが年間で20人から50人に対して抗がん剤で治療する としますと、必要とされる治療専門医は2万人です。これは現在ではとても満たされて おりません。例えば、がん治療学会の医師会員は1.4万人です。あと病院にお勤めの医 師の数をみましても、2万人という数には到底到達しないわけであります。均てん化と いうことからもこういう大きな問題点があると思います。  もう一つは、臨床腫瘍学教育、大学にこういう講座教育システムがないということが あります。現在いろいろな学会で計画、あるいは進んでいる専門医というものがありま すが、そこにも幾つかの問題があります。それぞれの専門医制度の間に連携がほとんど ないということです。したがいまして、若い先生方、教育を受けて専門医になる立場の 若い先生方にも混乱がございますし、国民の間にも混乱があります。  最後に腫瘍内科、腫瘍外科が非認知という言葉は強いかもしれませんが、必ずしも内 科学会や外科学会でこれが認知されているわけではありません。  では、どういう対応を考えるべきかということです。現在、学会として対応している 例えばがん治療学会ですが、1995年から検討委員会ができましていろいろな対応をして おります。この専門医の資格というのは、他学会も同様で認定機構による条件がござい まして、それを満たすものと考えられます。  次のページです。専門医制度における教育です。  教育カリキュラム、教育セミナーが必要です。がん治療学会の今後の取り組みとして は、今年の理事会・評議会で専門医制度の規則・認定試験の最終承認がなされておりま す。したがいまして、2005年12月を目標に、恐らく近い将来、第1回の認定がされると いうプロセスになっています。  一方、薬物療法に関しては、日本臨床腫瘍学会における臨床腫瘍学専門医制度という ものも同時にスタートしようとしております。非常に教育カリキュラムの充実したもの を目指すということで、ASCOあるいはESMOを参考にして独自のものを作りつつ あります。教育セミナー、これも学会等と同時にいろいろな教育セミナーをおやりにな っておりますし、教科書の刊行は臨床腫瘍学という非常に厚い教科書を作られておりま す。年次総会、教育シンポジウムあるいはASCO−JAMOの合同シンポジウムを行 うということで、工夫をされているようです。  日本臨床腫瘍学会も近々専門医を認定するということでスタートすることになってい ます。  他学会をみますと、乳がん学会はかなり進んでおりまして、現在は公告のできる専門 医というところまで進んでおります。あとは放射線学会とそれから婦人科がんの領域で も専門医制度ががんの領域ではスタートしております。  次のページです。いろいろな問題点がありますが、がん治療領域における専門医制度 の展望を述べたいと思います。これが最初に申し上げました私個人の意見であって、必 ずしもこれは学術会議の意見という段階ではありません。もう少しお時間をいただきた いということです。  がん治療領域における専門医制度における問題点、これはすでに申し上げました。  国民の要望は、がん診断治療を受けるための優れた一般医であろうと思います。広く 一般医というものを国民は求めているのではないかと思います。同時に高度の医療知識 と技術を持った専門医が必要であるということです。もちろんここには本会の目的であ る均てん化ということが重要な課題になると思います。  がん治療領域の問題点を幾つか書いてございます。一つは統合的なシステムが存在し ないということです。比較的縦割りで治療が行われる場合が多いということがありま す。はじめに申し上げました専門医制度の対応が非常に遅れているといえます。  しかし、がんの死亡というのは全死亡の3分の1をすでに超えております。したがい まして、国民の健康福祉を考える上で、専門医制度、そしてそれを均てん化するという ことは非常に重要な課題です。それは国の義務であるし、医師の緊急の義務であると考 えます。  しかしながら、各学会の専門医制度の対応には温度差があり、がん治療学会、臨床腫 瘍学会、乳がん学会等でそれぞれスタートしておりますが、そこにはいろいろな温度差 があるということです。もちろん学会の利害ということもあるでしょうが、いずれにし てもがん治療学会、臨床腫瘍学会は2005年に認定をスタートするわけですので、何らか の意味で混乱を避ける必要があると考えます。  最後のページです。これは展望ということで、この辺の議論はもう少し詰めないとい けないところです。国民に対して最良の医療を提供するのは、医師の使命であり緊急の 課題である。国の使命としてはそういうシステムを作るということ、本会の中心課題で ある等しく均てん化して国民が受けられるシステムを作る、ということが非常に大事だ と思います。  これらの理解はすべての学会に共通であると思います。したがいまして、統合性をも った専門制度が必要であるということは皆さんが思われていることです。専門医制度と いうのは患者のためであって、決して医師や学会のためのものではない、ということを 医者サイドは強く理解しないといけないと思います。  具体的には、専門医制度をどのように構築されるべきかということです。現在動いて いるのは、日本専門医認定制機構というものがございます。これに対する整合性は必要 であると思います。他の領域はそれで動いているので整合性は必要であると思います。 その上でがんを統合的にまとめていく。一つの考えとしましては、(仮)と書いてござ いますが、がん治療専門医認定機構、これは恐らくすでに動いているシステムの前段階 機構かもしれませんが、そういうものを作る必要があるだろうと考えられると思いま す。これは横断的、かつ、統合的な専門医制度をここで考えるということであります。  そこには当然、がん治療各学会の構成員が加わる必要があると思いますし、私どもの 活動の一つである学術会議の活動とは別だろうと思います。民間の法人格が望ましいと 思います。これに向けてスタートするのでしたら専門医制度推進に特化したワーキング グループというものも考える必要があると思います。  最後は、これは癌・老化研連の癌専門委員会の委員のメンバーでございます。この委 員の先生を中心に今後詰めていく予定でございまして、きょうの話をしました内容は、 現在は、私の案ということで御理解をいただければ幸いでございます。以上でございま す。  垣添座長  鶴尾先生ありがとうございました。先ほどの先生の御説明の中で、がんの一般医とい うか、それと専門医のお話がありました。その2つの種類の医師の間で、がんの治療成 績に違いがあるということはありますか。あるとしたらどうしてなのかということを、 もう少し補足していただけますか。  鶴尾参考人  具体的にどこが違うのかということまではくわしくは詰めておりません。当然、差は あると思います。もう少しブロードに診療ができる、最初に患者さんがある程度の信頼 性をもってかかっていけるのが一般医的な感じであろうと思います。認定医と専門医と いう切りわけに近いのかもしれませんが、そういうことも考えられるのではないかとい うことです。  垣添座長  がんの患者さんを診る、一般の立場全体の立場を上げて、さらにその上にもっとレベ ルの高い専門医をということですか。  鶴尾参考人  そうですね。数字で出しましたが必要とされているお医者さんは2万人ぐらいは必要 だということです。その2万人のすべてが専門医である必要はなくて、そこには当然、 一般医的な認定医的な方やグループがあってもよいのではないかと思います。  垣添座長  それと高度な、例えば薬物療法が当面の非常に大きな問題かと思いますので、がんの 薬物療法を考えた場合に、今の一般医と専門医との関係で考えた場合に、高度な医療と いうのはどういうことを頭に置いておられますか。  鶴尾参考人  いろいろの条件があると思いますので、詰めていく必要があるかと思います。屋買う ぶつ標準治療を習熟しているとか、非常にクリアなのは、例えば新しい薬の治験をされ るとか、そういうものに関わるドクターは薬物療法の専門医ということになると思いま す。  垣添座長  わかりました。ありがとうございました。私から2〜3補足の質問をさせていただき ましたが、約10分の時間がありますので御議論をいただければと思います。  現在、がんの代表的な治療の手段として、鶴尾先生からも御紹介いただきましたよう に、局所治療としては手術療法と放射線治療があって、全身治療としては化学療法があ る。一方、がんそのものがかなり多様性にとみ、かつ患者さんごとにがんが違うという ときに、今の治療手段によって分断されると、がん患者さんに不幸が生じるということ で、いかにその3つの治療手段をもっている先生方の連携をとって患者さんのために最 善の医療を選んでいくのか、ということが問題だと思います。いかがでしょうか。  西條委員  国立がんセンター東病院の西條です。まず鶴尾先生の4枚目の問題点の表です。必要 とされるがん治療専門医の数というのは、専門医という言葉が適切とは思いませんが、 化学療法を受ける患者さんをベースにして算定されております。私自身は、こんなに専 門医という名のつく方はいらっしゃらないと思います。今、垣添先生がいわれたよう に、がんの治療に携わる人はそれくらいいるかもわからないが、専門医という名の人は そういらないと思います。  といいますのは、ここにありますように、例えばがん治療学会の会員が現在は1万4千 人ですが、これでも質はかなり低いです。実際に、2万人を認定するとなると、それに さらに加えて6千人ですから粗製濫造になってしまうと思います。ですから、がんを治 療する人はそれくらいの人数は必要であるかもしれないということは考えるべきです が、専門医としては、もう少しクオリティーの高いものを目指したらいいのではないか と思います。  日本臨床腫瘍学会では、5つの条件を考えております。薬物療法の基礎研究のデータ を十分理解できるということ。確立された標準的治療法をきちんとできること。そこで 起こってくる副作用、有害事象にちゃんと対応できること。その標準的治療を作り出し 得る臨床試験を計画遂行できる。緩和ケアができること。この5つが基本、専門医とし ての必要最小条件であると思っております。  均てん化全体の中で占める専門医の位置づけでありますが、前回、ディスカッション されましたように登録をきちんとやると、そこの数字は見かけ上は悪くなってきます。 これは仕方ないです。今までが闇から闇に葬られていた人がそこに引っかかってくるか ら、どうしても悪くなります。しかし、それはそれで何年か続けていくと、良くなって くるかもしれないが、それはクオリティーがそろったという条件下であります。  したがって専門医が国内にどれだけディストリビュートしているか、どういうように ディストリビュートしているか、これも非常に大きな均てん化のサウエートになるので はないかと、私自身は位置づけております。以上です。  垣添座長  ありがとうございました。医師の分布の不均一制ということには、後ほど議論がある と思います。ほかに御意見ございませんか。  丸木委員  今の西條委員のお話にも関係します。専門医制度の対応がやっと動き始めた。2005年 から動きはじめる。例えば問題点として、がん治療学会と臨床腫瘍学会は独自に認定基 準があり混乱を招く恐れがあるという記述がありますが、具体的にはどういう認定の差 があり、国民がどこに混乱する恐れがあるのか、教えていただければありがたいのです が。  垣添座長  きょうはがん治療学会の代表としての北島委員が御欠席でありますから、できました らその議論はこの場では避けていただきたいという気がします。問題としては、御指摘 のように、国民の立場からすれば2つの学会が認定医を作ろうとしているということ で、わかりにくい混乱があるというのはよくわかりますが、これは2つの学会の間でな んとか調整をしていただき、わかりやすい形にもってくということで、この場は一応収 めさせていただけませんか。ほかにいかがでしょうか。  津熊委員  先ほどの日本がん治療の問題点のところのスライドのところにある数値ですが、平成 14年のがん患者数、これは恐らく厚生労働省の患者調査に基づく総患者数と呼ばれるも のではないかと思いますが、がん治療専門医の数をそこから計算するというのは、一つ の考え方であると思います。  一方で死亡数との比をとられて、死亡率というふうに計算されておりますが、このよ うにやりますと、この場合には新たに発生するがんの患者数、60万人程度ということに なると思いますが、そのうちの死亡数が30.5万人ということで、生存率あるいは死亡割 合ということでいいますと50%程度ということになろうかと思います。がん患者数の意 味合いが罹患数というものと、ある時点で継続的にがん医療を受けている方の数、これ が総患者数ということでございますが、少し意味合いが違うということでコメントをさ せていただきました。  鶴尾参考人  約50〜60万人の方が新たにがんになられるということで、そういうことで見ますと約 半分の方が亡くなっているというのが現状でございます。  垣添座長  ほかにいかがでしょうか。  後委員  私も専門医の数のところです。2万人というのは化学療法をベースに計算するとこの 数、化学療法以外にもがんの治療法がありますから、それを考えるともっとたくさんの 医師ががんの治療に当たるということでしょうが、専門医の数というのは、各学会によ っても割合がかなり違うという現状がございますし、どのくらいの数が本当に専門医と 呼ぶべきかということは、また考えないといけないところであると思います。  国民の目線に立つと、最初にがんかもしれないと思ってかかる病院はいろいろな病院 があると思いますので、そこのすそ野の部分をもっと上げる必要があると思いますの で、そういうことがとても関心事ではないかと思います。がん治療の専門医かどうかは 別として、がん治療に当たる方のすそ野というか、基本的な知識のところを広くアップ させることも同時に考えていきつつ、高見の部分の専門医というものの数もそろえる、 こういう両方の視点を持っておく必要があるかなと思いました。  鶴尾参考人  最初に垣添先生の御質問にお答えし、、最後に書いておりますが、国民が最も要望し ているのは、すぐれた一般医ということです。この一般医と専門医をどこで切りわける のかというのは難しいところがありますが、2万人というのは、薬物療法に関わる医者 ということで、必ずしも高度の専門医という理解でなくてもよろしいかと思います。安 心してかかれる薬物療法のエキスパートとしての立場の方がほしい、と御理解いただけ ればと思います。  垣添座長  抗がん剤治療に関していえば、日本中のどこでがんになって抗がん剤の治療が必要に なっても、取りあえず信頼のおける一般医の方からすでに市販されている薬の治療を受 けて、さらにその上に新しい薬が出てきたときに、それを例えば臨床試験で安全性・有 効性を確かめる、というかなり高度な内容に関しては、これは専門医が担当する。確立 されたものをどんどん日本中に広げてすそ野を全般に上げる、そういう構造でお考えで あると考えますがよろしいでしょうか。  鶴尾参考人  はい。  垣添座長  まだ当然ながら御議論がいろいろとおありかと思いますが、きょうは予定が大分詰ま っておりますので、鶴尾参考人からのお話はここで打ち切らせていただきます。  続きまして、野村委員に「がん専門医の育成について」ということで、資料2−1に 沿って国立がんセンターにおける育成を5分ほどでお話いただく。続きまして2−2に 沿って「地域がん診療拠点病院における育成」ということで、高嶋委員から5分ほどお 話をいただき、その上であわせて10分ほど御議論をいただければと思います。よろしく お願いします。  野村委員  がん専門医の育成について、ということで資料2−1で御説明をさせていただきま す。その前になぜがん専門医が必要なのかということについて、一般の方もいらっしゃ るので説明をさせていただければと思います。  がんは遺伝子の病気であるといわれております。そのがんが全身の全臓器に発生する ということがございます。その全臓器のがんがそれぞれに特徴を持っていて、治療法も 診断法も違います。そういうことに関しては、専門性の高い知識が必要であるというこ と。がんの時間的系列で見てみますと、いろいろな病態が出てきます。最初に発生した 時期から最後のときまで、それぞれの時間系列において治療を選択していかないといけ ないということがございます。その他に緩和医療等々がすべて入ってくるということが あります。  その意味からすると、全体を総合的に考えて物事を判断していかないといけない。治 療を判断していかない。ということになると、そこに専門医が必要であるということで あります。  先ほどからお話が出ておりましたが、専門医という一つの概念の中にも、基本的なが んの知識・治療法、それをすべて頭に入れた上での実地医療に携わる人と、さらにその 上の各臓器それぞれの専門的知識、あるいは技術をもって治療にあたるということで、 二つの方向性があるのではないかと思います。  がんセンターとしては、まずは基本的な知識・技術というものを、すべてオールラウ ンドですべての臓器に関して研修をしていただくという建前です。その上に立ってさら に専門分野における技術・知識を習得してもらう、という方向で研修、あるいは教育を 進めております。  その中で、ここに示しましたのは、がんセンターのレジデント、がん専門修練医制度 というものだけをお示ししましたが、がんセンターには、このほかに研修の制度として 一つは厚生労働省の計画研修、これも受けて医師・看護師・放射線技師・臨床検査技 師、これらの研修を行っておりますし、前回ありましたがん登録に関しても研修を行わ せていただいているところであります。  さらに個別研修というものがあります。当センター以外の病院、あるいは研究所、そ れから希望でここで研修をする、という方向でも研修をさせてもらっています。  受託実習というものがございます。これは放射線、診療放射線技師、あるいは臨床検 査技師、栄養士などの医療技術養成の国公立の学校からの要請で研修を行わせていただ いているという状況であります。  本日は資料に示しましたレジデント、がん専門修練制度についてお話をさせていただ こうと思います。1ページをごらんください。  全体像を見ますと下からごらんください。医師免許取得後に臨床研修等の2年以上の 臨床経験をほかの施設でやっていただく。3年目になりましたらがんセンターでの研修 の時期が来て、そこから始められるということで試験を実施させていただき、行ってい くわけです。  まず、レジデントの研修においては前期、例えば真ん中の内科、内科系、支持医療と ありますが、これは前期ローテーションと書いてあります。これが最初の1年あるいは 1年半の間に研修医が勉強する期間です。これはローテーションをさせます。関連部門 ということが主体でありまして、これは外科病理、あるいは診断、放射線診断等々です が、そういうものについてローテーションしていただき技術を磨いていただく。  その上に後期ローテーション、専攻コースと書いてありますが、ここにおいては各内 科なら内科の各臓器の化学療法等々の研修をそれぞれの臓器をすべて研修をしていただ くということにしております。  次に専攻コースを設けて、これがまた1年なりありますが、そこで実際に本人がどこ の臓器のがんを研修したのか、ということを絞ってやっていただくという方向です。  右は外科、外科系、診断と書いてありますが、これも同じように、前期ローテーショ ンでは臓器各部門のローテーションをしていただく。ですから、胃なら胃だけではな く、胃もあるし肝臓もあるし大腸もあるし肺もある。そこで研修をしていただくという ことです。後期のほうでは、内科と同じようにある程度絞って研修をするという方向で 進めております。  このレジデントは3年間でございますが、その上にがん専門修練医の2年コースがご ざいます。これもレジデントの中から選ぶということではなく、ほかの施設からも公募 によって試験をさせていただき、選別をするという形で進めております。  そこでがん専門修練医においては、がんの診療に対して、指導的立場になれるくらい の知識を身に付けていただく、という方向で研修をさせてもらっております。  次には細かいローテーション、研修のコースが書いてあります。3ページには選択可 能なローテーション。がんセンターには東病院もございますので東病院のカリキュラム が付けてあります。5ページには専門修練研修過程が付けてあります。東病院を続けて 付けております。  7ページをごらんになっていただきますと、今までのレジデント修了者の就業状況が 書いてあります。がんセンターで研修を受けた卒業生は全国でがんの治療・診療に携わ っていただきたいというのが我々の期待でありますし願いでもありますので,そういう 方向で進めているということでございます。  がん専門医療機関においては、ここでは数名ですが、がん専門修練医修了者に関して は、これは指導的な立場で治療ができるという研修医でございますが、専門医療機関に も10名程度、その他の病院にかなりの数で皆さんが就業して活躍していただいていると いうことであります。後にもデータがありますので見ていただければと思います。  垣添座長  引き続きまして高嶋委員からお願いします。  高嶋委員  四国がんセンターの高嶋でございます。私はがん診療拠点病院の立場ということでお 話をさせていただきます。四国がんセンターは、これ以外に全がん協の加盟施設でもあ りますし、国立病院機構のがん政策医療ネットワークの四国の基幹医療施設、という3 つのがんのネットワークの中に属しております。ベッド数は360、常勤の医師の定員が 44名という小規模な地方がんセンターという立場からお話させていただきます。  レジデントは野村先生からもお話がありましたように、卒後3年目以降のレジデント 26名の教育を現在行っております。これは公募ではありませんで、我々の病院のところ に医師を派遣していただいている近隣の大学、岡山大学、広島大学、徳島大学、愛媛大 学、川崎医科大学等の関連医局からの派遣であります。  研修期間は3年でありますが、医局の人事から来ておりますので2年の場合もありま すし、それ以下の場合もございます。また年度途中の採用、あるいは途中での研修修了 ということもしばしばあるという問題点もございます。  そういう意味で、1年目の共通のカリキュラムは準備しておりますがローテーション を希望しない人も結構おられます。コアカリキュラムとしては、資料につけておりま す。資料(1)、これはがん研究助成金で当院の前副院長、現在は東海大教授の江口研二 先生がまとめられたものであります。これは全がん協を対象とした教育制度の提言、な らびにアンケート調査によるレジデントの教育の現状、コアカリキュラム案よりなって おります。これを当院のコアカリキュラムとしております。  ただしこれを補うために、当院では国立がんセンターを中心としました全がん協の18 施設が参加しております多地点テレビ会議システム、がんネットワークが接続されてお りまして、これを有効に利用するということで、共通の研修を行っております。  資料(2)にありますのが、これは毎年国立がんセンターで6月にレジデントを対象に 行っている講義であります。これを中継していただいておりまして、これを受講させ る。もちろん業務の関係で受講されない場合にはビデオで保存しておりまして、これを 有効に活用させていただいております。  資料(3)にありますのが、これは腫瘍内科医が中心のカンファレンスであります。こ れは中央病院と数カ所のがんセンターで行っておりまして、レジデントの間では評判の 高いカンファレンスであります。  資料(4)が全施設が参加する週一回行っているカンファレンスです。これも非常にレ ジデントの教育には役立っております。  そのほか、各科の多地点テレビ会議が週に2〜3回行われておりまして、これらは非 常にレジデントの出席率が高いということで、こういうものを利用して補っておりま す。  また、高度の研修を希望する場合には国立がんセンターに1カ月の短期研修を行って おりまして、実績としては現在までに17名がこれに参加しております。そのほか、公的 研究費の班会議、あるいはJCOG等の臨床試験グループへの会議にはレジデントの同 行を積極的に指導しております。  問題は指導医体制です。各科の指導医は相当おりますが、44名という非常に少ない数 で非常に忙しい日常臨床を行っておりますので、教育といいましても、一緒に診療に従 事しながら、その場で教育するということが主なものになっております。したがいまし て、問題点は評価体制が整っておりません。現在のところは指導医からの情報を聞きま して、ある程度研修が修了したと思われるものにつきましては、全がん協の会長の国立 がんセンター総長の修了証書の交付を申請しておりまして、実績としては49名がこの交 付を受けております。  現在のところは、医局からの派遣ということで、ある程度その要望には十分に応じて おりまして、220名あまりの修了者がこれまでおりますが、各大学で重要な地位、ある いは地域の施設での重要な地位についているということでありますが、今後、公募で行 う場合には人的な配置がないと、広くがん専門医の育成というのは、地方の病院では非 常に難しいかなという気がしております。以上です。  垣添座長  高嶋委員、野村委員ありがとうございました。野村委員からは国立がんセンターにお けるレジデントとチーフレジデント、がん専門修練医の研修に関して、こちらは全国か ら公募制で試験で採用している。地域がん診療拠点病院の代表として国立病院四国がん センターのほうは、レジデントは周辺の大学からの医局人事で人を派遣する形になって いるので現状では公募ではない。そのことによるいろいろな制約もある、という実情を お話いただきました。  今のレジデントの育成という観点から、何か御発言いただくことがありましたらお受 けしたいと思います。  原田委員  青森の原田です。野村先生にお伺いします。大変に立派なレジデント制度です。私ど もの病院も機会があればぜひ利用させていただきたいと思っております。  もう一つは、私は整形外科医でありまして、整形外科はかなり古くから骨関節の腫瘍 ということを扱ってきましたが、大変に例数が少ないので、集約的な集中的な治療がで きない分野の一つです。学会としてはかなり古くからこの骨軟部腫瘍の学会をずっと特 別に持ってまいりましたが、そういう腫瘍が少ない、例えば骨肉腫とか最近はがんの転 移の骨腫瘍というのは痛みをとってやると、驚くほどQOLが改善します。ですからあ る意味では非常に大事な分野であると思いますが、そういう例数の少ないものと、ある いは骨軟部腫瘍などに関して、修練医制度というもの、あるいはレジデントというもの で特別にお考えになっておられるのかお伺いしたいと思います。  野村委員  お答えいたします。例数の少ないがんに関しては、これはうちのほうでは外科と外科 系と分かれております。外科系の部類に入ります。そうしますと整形外科とか脳外科と か、泌尿器がそこに入ってきます。そこでは、全体の研修をすべてやるということもよ いのですが、その中で専門的なことを主体的に最初からやるということも可能にしてあ ります。  もちろん、疼痛対策ということに関しては、いまうちでは支持療法に関する専門家が おりまして、そこと相談して、例えば整形外科の患者さんでも適切な治療をして疼痛を とるという方向で進めております。それもレジデントと一緒にして勉強させているとい うところであります。  原田委員  がんセンターだけではなく、ほかの施設も使ってやるようなこともお考えになってい るかどうかということです。数少ない例なので、なかなかたくさん扱う機会もないので はないかという心配もありますので、がんセンター以外に他の施設も使いながら教育を するというお考えもありますかどうかということです。  野村委員  現在は研修希望の方を受け入れるという形で実行しておりますが、これから均てん化 ということを考えていけば、例えば、それなりのレベルの施設に研修を普及して、さら に下部の施設にも普及をさせていくという形で進めるのではないかと考えております。  垣添座長  少なくとも現状では中央病院と東病院の間で交流研修をやっておりますので、症例数 が少ない場合には、お互いにやりとりをするということはあります。将来的なことを考 えますと、がんを専門的にやっている医療機関と連携してそういう数の少ない患者さん をできるだけ多く診る、ということも考えうると考えております。  西條委員  先ほどの学会の専門医と、こういうセンター病院、あるいは地域拠点病院における専 門医の養成の位置づけを考えてみますと、学会というのは、知識を教育する場になるわ けです。例えば、臨床腫瘍学会などは年間丸三日やっておりますが、それで臨床腫瘍学 を全部をカバーするという形です。ただし、学会というのは実地の教育というのはでき ないわけです。したがって、そういうところは主として地域拠点病院、あるいは全がん 協、国立がんセンター、さらには抜けておりますが大学病院を中心とする特定機能病院 があります。そういう病院で行うということになると思います。  この数字を見ていただきますと、私は東病院でレジデントの教育もやっておりますの で見ていただくと、東病院と中央病院の両方を合わせてレジデントとがん専門修練医が 年間で約60人が養成されております。そのうち中央の3分の2は恐らく外科ですね。東 は半々ぐらいだと思います。  そうしますと、メディカル・オンコロジスト、薬物等々を扱う医者というのは、10年 で200人が養成されているということになります。それで四国がんセンターは非常によ くやっておられるのですが、ほかの全がん協が同じぐらいのアクティブティといえるか どうかわからないのですが、ここでもかなり養成されると思います。しかし、10年間で 200〜300という数字は、かなり厳しい数字ではないかと思います。  だから、地域がん拠点病院、あるいは特定機能病院等でそれをもっともっとできるよ うになるということが必要だと思いますが、手前味噌ではありませんが、国立がんセン ターはもう少しレジデントを増やしていただく、ということも考慮していただければあ りがたいと思います。  垣添座長  ありがとうございました。がんの専門性ということを考えると、知識を身につけるだ けではなく実施訓練が必要であるということです。ただし国立がんセンターで一生懸命 に育成しても、例えばがんの薬物療法の専門家は10年でせいぜい200名というのは、い ま養成されている、かなり高度の専門性を持った人ということではありますが、200名 というのはなかなか厳しい話であるということです。非常に重要な問題として認識して おきたいと思います。  丸木委員  就業状況のことで野村先生にお伺いします。卒業生が433人いて、当センターで61人 が勤務している。これはよいのですが、地域のがん専門病院が10名以上という微妙な書 き方をしておりますが、残りの人たちは専門性を生かした場所で働いているのかどう か、ということをお聞きしたいというのが一つです。  もしそういう関連病院で、こういう人たちがせっかく知識を積んだ上でも生かせない とすれば、一体何が問題なのかということを教えていただきたいと思います。  野村委員  多くの方々は大学のほうから派遣された方です。その人たちは大学に帰って、こちら での研修の成果をそちらの大学で発揮しているということがかなりあるということで す。  これからどうすべきかということを考えているのです、それが一つと、今は拠点病院 が指定されてきておりますから、そういう拠点病院を含めて全がん協を含めて、2層あ るいは3層構造の組織を作り、こちらで研修を受けた人たちがそういう病院にも行ける ようなシステムを作らないといけないと考えております。現在、拠点病院の院長先生方 にもこれからこういう研修医が欲しいということであれば、そういう意思表示をこちら にしていただきたい。その結果卒業生に、こういう希望をしている職場があるが、そこ で活躍してみないか、と推薦できるシステムを作っていこうと考えております。  西條委員  もう一つ、厚生労働省のお力でこういう臨床腫瘍のエディケーションに役立っている のは、対がん10カ年総合戦略でリサーチレジデントというのが結構きております。これ が教育を受けて各地で根を下ろして活発に活躍しています。ですから、そういう点でも 均てん化は進んでいるのではないかと思います。  もう一点はJCOGの組織です。これは全国の190施設が現在集まっておりまして、 そこから集まってくるドクターが数百名になっていると思います。これは会議をするこ とによちまとまってエディケーションしますので、セントラルエディケーションの役目 を果たしていると思います。以上です。  垣添座長  ありがとうございました。JCOGというのは、ジャパン・クニカル・オンコロジー ・グループの略です。かなり高度な臨床試験をグループで進めていく組織です。  まだ御議論があると思いますが先に進みます。  資料3です。「がん医療を支える専門家について」。3−1で病理について長村参考 人から御説明をいただきたいと思います。  長村参考人  東海大学の病理診断学の長村と申します。私は日本病理学会では副理事長と病理専門 部会の会長をさせていただいておりますので、その面から病理学会の専門医の実情、問 題点、我々が希望しているようなこと、そういうことをお話させていただきたいと思い ます。  これまでも御議論がありますように、私たち専門医というのは、本日はがんのお話で ありますが、がんに特化した専門医ではなく、一般の病理診断をする専門医ということ でお聞きいただきたいと思っております。  資料に沿って御説明させていただきます。資料1の病理学の分類です。本日お話をさ せていただいているのは、人体病理学、病理診断学という部分でございます。これには 細胞診、組織診、病理解剖と大きく分けて3つございますことは先生方も御存じである と思います。特に私たちが一番時間を割くのは組織診断、外科病理学という言葉が用い られておりますが、組織診断学でございます。その中には大きく分けて3つのカテゴリ ーがあります。その中で多くのものはがんの診断でございます。  胃がんが多いのですが、胃がん、食道がん、大腸がん、最近はポリープも非常に多い のです。がんのときに、これまではがんかどうかということを診断すればよいというこ とであった時代がずっと続きましたが、最近は、最終診断のみでなくて、予後がどうで あるかとか、あるいは最近すごい勢いで進んでまいっております分子標的治療、そのた めのふさわしい患者さんのセレクションを病理診断を基盤にする、ということが要望さ れておりますので、そういう面を含めて病理診断ということを我々は養成していかない といけない、また認定していかないといけない、という時代に入ってきたと理解してお ります。  これまでの病理専門医に関する大きな流れをまとめました。認定病理制度というのが 病理学会で開始されましたのは、昭和53年です。それにかなり遅れて、病理診断は医行 為であるということが厚生労働省から初めて認定されたわけであります。それが平成元 年12月20日に通達をいただきました。これで病理診断は医師がやる業務であるというこ とであります。  申し遅れましたが、病理学会の専門医は口腔病理専門医というものがありますが、本 日は医師の専門医についてお話をさせていただきます。  平成11年に日本病理学会は社団法人化されました。それまでは病理協会というのが職 業団体でございましたが、それを病理学会に吸収しまして、現在の病理専門部会となっ ております。  昨年2月に厚生労働省から病理専門医の公告をしてもよろしい、という御認可をいた だきまして、現在は患者さん向けに病理専門医のいるところは公告ができるようになっ たという状況でございます。  今年度4月から臨床研修医制度が導入されまして、CPCの剖検連に基づいたCPC の報告書を作成するということで、その指導をするということで病理専門医というのが あたるということになった状況でございます。  実際にどういうことで病理専門医を認定しているのかというのは、下にございます。 現在は臨床研修を卒業後にやった場合には、1年間は病理の加算をして、実際の専門研 修は4年間で計5年でございます。来年度からの医籍登録者については臨床研修2年間 を義務化しました。その後に4年間の病理専門医の研修をして、計6年で受験して病理 専門医になるということでございます。  これに病理診断、私たちは最終診断と自負しておりますので、これで社会に対して、 あるいは医療に対する責任を十分に果たせるのではないかと考えてございます。専門医 認定試験は2日間にわたって3つのタイプの試験をいたします。  3ページです。そのようにしてトレーニングされて選ばれてまいりました病理専門医 のこの10年間の推移を申し上げます。現在、1,901名の病理専門医がございます。諸外 国の米国と英国の比較は後ほどいたします。現在は1,900名の専門医がその業務にあた っているということです。5年に1度、これは生涯教育への参加度、あるいは学会への 参加度等々で点数制にしておりまして更新制度であります。5年間ですが、これは修身 で、5年に1度、病理業務にあたっている以上は更新をするという制度をとってござい ます。  どういうところに病理専門医がいるのかと申しますとその下でございます。病理学会 認定病院、これは病理専門医が専従している病院です。大学病院はこれには入りませ ん。専従している病院では、このように1名のところが非常に多い、2名とか3名のと ころはありますが、いわゆる1人病理、ソールパソロジストというのですが、アメリ カ、あるいは外国にはあまりないパターンです。1人病理が非常に多いというのがこれ でおわかりいただけると思います。  我々認定病理学会の登録施設でございます。これは病理専門医が在中しておりませ ん。ですから非常勤で賄っているところです。ごらんになりますように、かなり大きな 病院でも病理医がいないという病院があります。あるいは1名、これは週に何回という 回数で来ておりますが、必ずしも十分な対応ができていないというのが現状であると伺 っております。  その下です。病理専門医の合格者数です。このように試験でございますので80%の下 から上までを前後しております。今年度は61名の合格者を出しております。各都道府県 に割り当てますと、1県に1人ということになりますでしょうか。ですから非常に少な い数であると私たちは考えております。  次です。これは病理学会のホームページに載っております。各都道府県別、これは 2003年のホームページに載っているデータです。都道府県別に病理専門医の数を棒グラ フにしました。これは東京が非常に多い。大阪とか都市には非常に多いわけですが、例 えば福井県、そういうところは10名以内です。一桁ということでございます。ですから このように数は1,900名ということでありますが、非常に都道府県に関してはバラツキ がある、均てん化ということでありますが、非常に不均一であります。これをどのよう に解決するのかというのが、私たちの当面の今の問題点で、いろいろなことを模索して おります。  もう一つ、諸外国ではジェンダーの問題があります。このように2003年の時点では1 割強ということでありまして、今のメディカルスクールの医学生の割合に比べれば、ま だまだ少ないということで、その辺にリクルートの対象があるかなという感じがしてお ります。  次です。時間の関係で急がせていただきます。病理専門医の数です。これは人口比を 米国あるいは英国と対比しております。病理専門医の人口比でいくと、我が国は0.0016 %です。全医師数からしますと0.76%ということでございます。  ちなみに私はアメリカで病理をやったことがありますが、アメリカでは0.005%、人 口比ですが、ドクターの医師の中での割合は1.6%ということで、大体、人口比にしま すと3分の1、ドクターの数としたら半分というようなことでしょうか。ジェンダーで は圧倒的にアメリカは女性が多いということであります。  イギリスで見ましても、これは全人口がイングランドだけなのか全体なのか、ちょっ とわかりませんが、それにしましても、人口は病理が我が国は少ないということでござ います。  まとめます。次のページです。27年間にわたりまして我々病理学会は専門医の認定を 行ってきております。現在、専門医の公告は1,860名の公告を出させていただいており ます。ごらんになりましたように、明らかな地域偏在がある。米国、諸外国に比べても 病理が少ない、また1人病理の形態が多いということが、これまで学会の中では非常に 強く議論をされてきました。  病理学会としてのこれに対しての対策は、社会の責任を担える病理専門医の育成が急 務であるということです。病理は何をしているのか、ということは患者さん、あるいは 一般市民の方々になかなか周知されていない面がありまして、その面にも注意をはらっ ております。  若い医学部の学生に対しても病理学、あるいは病理の宣伝をしたいということで、サ マースクール等をやっております。  適正配置でありますが、これは何人いればよいのかというのは非常に議論があるとこ ろですが、一つの問題というのは、地域差がある、不均一がある、それをどうするかと いうことです。病理学会としては、地域病理ネットワークで、例えばどこかに求人があ れば、それを学会として考えるというネットワークを立ち上げましたし、テレパソロジ ーはすでに保険収載をしていただいております。そういうことは一つの手段であろうか と考えております。  求人公告、これは病理学会のホームページにあげております。その次ですが病理専門 部会のこれはホームページを開けていただきますと、求人情報の更新があります。これ は病院がここにアクセスして、病理学会が学会内に流して、そこに病理がアクセスする ということであります。  最後に、問題点を少しまとめます。病理はこのように諸外国と比べても少ない、ある いは偏在しているということが問題であります。それはどういうことかというと、解決 策はどこにあるのかということであります。病理学会の中での努力、これも十分にやる 必要があるし、現在も取り組んでおりますが、地域差をみますと、待遇の問題があろう かと思います。1人で病理をやると、特に周りに病院がないところで1人でやるという のは、非常に大変であると思います。そういうところでそれをケアするだけの、やはり 診療報酬体制の問題がひとつあろうかと思います。病理がどこで働くかということで、 これまでは標榜化の問題も病理学会はやっております。そういうところで、病理の働く 場を病理の中で確立するということで、標榜化の問題も忘れてはいけないのではないか と思います。今後、行政面への御理解も含めてお願いしたいと思っております。以上で す。  垣添座長  長村先生ありがとうございました。現在、病理の専門医が約1,900名いるとおっしゃ いましたが、その中でがんの診断、例えば胃がんとか大腸がんとか非常に数の多いがん に関しては相当程度のことはできるのでしょうが、原田委員から御指摘のような、例え ば骨肉腫とか軟部腫瘍とか非常に難しいものがありますね。そういうものをカバーでき るようながんの病理診断に関して、かなり特化したような方はどのくらいおられるので しょうか。  長村参考人  お答えします。先生が御指摘のように病理専門医はジェネラルなものでありまして、 これは私も含めて、毎日、胃がんとか大腸がんの診断をします。特に御指摘のような難 しい肉腫あるいはリンパ腫などの特殊なものは難しいということで、そういうところ は、特に骨肉腫あるいは軟部腫瘍の専門家は非常に少ない。10名おられるかどうかとい うことであります。病理学会としては、コンサルテーションのシステムを作っておりま して、難しいものがありますと、そういう先生のところに学会を通してコンサルトする ということでございます。  各分野、では膵臓がんの専門家がいるかどうかということになりますが、個々の臓器 のがんに分けていきますと、非常に少ない状況であると思います。  垣添座長  ありがとうございました。  丸木委員  質問ばかりで恐縮です。病理医全体が欧米に比べて少ないというのはよくわかりまし た。1人病理医が欧米に比べて大変に多いという欠陥、一つは待遇面と診療体制の話を されましたが、むしろがん治療の診断において大変に重要ではないかと思いますが、そ の辺も少し御説明いただけますでしょうか。  長村参考人  私の経験でありますと、米国では1人で病理をやるというのは、かなり特殊な状況で あります。大抵は複数でグループでやっているということであります。そういうことで 相談しあい、あるいはお互いにカバーしあって、あるいは個人的に専門の勉強をしてお いて、ある程度はこの領域はこの人という分担を決めて全体の精度を上げる、というこ とをしております。  ですから、1人でやりますと全部をカバーするのは非常に難しい状況で、全体のクオ リティーを上げるということに関しても、分担をしてそれぞれの勉強をして、その分野 のクオリティーをあげるというのはどうしても必要だと思いますし、そういうことをす ることによって、またがんの診断、特にこれからは分子標的治療とか新しい分野への対 応も要求されてまいりますので、そういうところの対応もできるようになると考えま す。ですから、先生が御指摘のように、がんの正しい診断だけではなく、臨床の先生方 から要求されるような、今後要求されるようなことに対応しようとすると、1人病理と いうのは、非常に望ましくない状況であると思います。背景はいろいろとございます。  垣添座長  いまの問題点の解消として、御説明していただいた地域病理ネットワークとか、ある いはテレパソロジーは具体的にはどのくらい機能しておりますか。  長村参考人  テレパソロジーは、迅速診断等にということで保険収載されておりますが、まだなか なか地域の非常にリモートなところで、病理医がいないところではかなり活用されてい ると聞いておりますが、責任問題、あるいは誰が画像を送るのかということで、病理学 会ではそれは詰めている状態でございます。保険収載されてございますので、せっかく のこういう診療報酬のつくものでございますので、その辺の責任体制、あるいはどうい う人たちが画像を送り読むかという業務体制、そういうものを十分に詰めている状態で ございます。  垣添座長  ほかにはいかがでしょうか。  山田委員  私は放射線治療が専門ですが、うちのほうも人数が少なくて大変で、あとから説明さ せていただきます。  地域格差がかなりあって、先生のほうも東京がかなり多いのですが、東京でも病理医 が少ないのかどうかというのが一つの質問です。  長村参考人  東京、あるいは東京近辺、病院単位になりますと、大きな病院でがんセンター、ある いはその他の大きな病院では複数おられて、それなりの機能をされていると思いますか 200床、300床、そのレベルの規模の病院でありますと1人プラス非常勤というような状 況です。私は個々のデータを申し上げることはできないのですが、そういう状況を見て おりますと、病院では足りないのではないかと思います。  もう一つは、なかなかお互いにコミュニケーションを、病院と病院のコミュニケーシ ョンがなかなか日本は取りにくいという土壌もあるようでして、ですからそういうとこ ろも考えますと、まだまだ複数配置できるという状況は生まれてこないと、十分な対応 はできないと考えております。  山田委員  もう一つは、病理の場合にはテレパソロジーなどを用い例えばあるところに病理医を 集中させるということは可能だろうと思います。どうしても病院に1人病理医が必要で あるというのは、病院での剖検数が年間何体必要であるということにしばられていると いうのが原因になっているのではないでしょうか。  長村参考人  そういう時代もあったと思います。そういう時もあったと思いますが、今はむしろ生 検診断、あるいは手術診断、そういうことがかなり表に出てまいりまして、そういう方 面での病理診断ということが、剖検もそうですが、それと同様に、あるいはそれ以上に 生検診断、手術診断に対する病理の要求というのが増えてきたのではないかと理解して おります。  土屋委員  認定病院と登録施設というのがあります。認定病院のほうでは1人病理医が多いとい う現状のようですが、登録施設というものはどういうものをいうのですか。  長村参考人  これは日本病理学会が病院の御希望で登録施設という認定をしているという病理学会 のシステムであります。認定病院はそこに専従の病理専門医がおられる病院です。登録 病院というのは専従の方がおられない。常勤の方がおられないで、非常勤の方が行って おられる。ただ登録施設にしておきますと、そこで例えば若いトレリーがそこにいって 剖検をすると、その剖検体数は病理学会の専門医の試験を受けるときの体数に加えられ るということでございまして、そういうことで病理学会である規模の病院、ある剖検数 があって病理診断の施設が整っているところを認定している。ただ常設の病理医はおら れないというところでございます。  土屋委員  研修指定病院のような考え方ですいいですか。  長村参考人  そうです。ただそこには病理医はおられなくて非常勤でやっておられる。御指摘の認 定病院は1人はおられるということです。  垣添座長  ありがとうございました。まだ御議論はあると思いますが、恐縮ですが先に進ませて いただきます。今度は、「がん医療を支える専門家について」資料3−2に沿いまして がん看護について濱口参考人から御説明をいただきたいと思います。  濱口参考人  癌研究会附属病院の濱口です。私はがん看護専門看護師であり、また副看護部長とい う看護管理者である立場からお話をさせていただきます。私は医療法人東札幌病院、今 年3月までは静岡県立静岡がんセンター、4月からは癌研病院で活動している者です。 そういう中から均てん化ということで、オンコロジーナース、つまりがん看護関連の専 門看護師や認定看護師の活動について、お話をさせていただきたいと思います。  次のスライドにありますように、がん看護の専門看護師は1996年から、認定看護師は 1997年から、日本看護協会で認定試験が行われています。専門看護師は臨床経験が5年 以上で大学院の修士過程で所定の単位を取得した後に、さらに1年以上の臨床経験を持 ち、次のスライドにあるような6つの役割「実践」の実績が認められた者です。  現在がん看護の専門看護師は44名おります。精神看護の専門看護師25名の中には、 一部、リエゾン精神ナースとしてがんの患者さんの心理的なケアを行っている方々もお ります。一方認定看護師は必要条件を満たした者が6カ月の講習を受けて認定試験を受 けるということがありまして、詳しくは5ページ以降の参考資料に書いております。エ キスパートな実践とコンサルテーション、そしてスタッフへの指導を行うという3つの 役割が期待されておりまして、がん看護に関してはホスピスケア、がん性疼痛看護、が ん化学療法看護の3つの領域があり、現在300名を超えました。  次のページです。専門看護師の役割は6つです。複雑な解決困難な問題を持つ患者さ んや御家族、集団に対しての卓越した実践を行うこと、コンサルテーションを行うこ と、医療チームのメンバーやシステムの調整をすること、さまざまな倫理的なジレン マ、例えばインフォームド・コンセントの問題、セデーションの問題、治療の中止・継 続等の倫理的な問題を検討することに対して、それを促進させていく倫理調整です。ス タッフへの教育、これは集合教育はもとより、専門看護師としては一人一人の患者さ ん、ベッドサイドで具体的にどのようなケアをしていけばいいのかというようなOJT を行って、ロールモデルを示していくことがあります。私は教育担当者でもありますの で、スタッフが段階的にがん看護の能力を高めていけるようなカリキュラム作りをいま やっておりまして、今後、院外にも公開できるような地域と連携できるようなそういう 教育活動をめざしております。最後の6番目には、研究という役割が期待されておりま す。  がんの医療をケアの格差を少なくして質を確保するということでは、もちろん、がん の疾患や腫瘍に対する治療の質ということもさることながら、がんという病気を持って いらっしゃる方のQOL、生活に焦点を当てることがとても大事だと思います。そして 安心して納得した医療が受けられるように、そのために医療従事者と患者さんとが情報 を共有して、患者さんの視点を重視した全人的な、つまり身体・心理・社会・スピリチ ュアルという側面に関わることが重要であると思います。  初期治療、ファーストラインの治療というのがかなり標準化されておりますが、再発 進行がん、ひいては終末期がんの患者さんへの治療やケアの在り方は、かなり差が大き いと思っておりますし、そのようながん治療に対する支持療法、副作用対策や、抗がん 治療と同時に行われるべき緩和ケアということに関しては差があると思っております。  24時間入院患者さんの側にいるのは看護師ですので、看護の質というのは、医療の質 に大きな影響を与えると思います。さらに在院日数がますます短縮していますし、外来 でがんの治療が増えてきていますから、医療従事者が何かを提供するということはもと より、患者さん御自身が自分でそのことに対して対処していけるようなセルフケア能力 を高めていくことがとても重要で、その意味ではがんのサバイバーという方々の生活に 焦点を当てているナースの役割はとても大きいと思っています。  またチームのメンバーとしても病院間で偏りがかなりありまして、がんの専門看護師 や認定看護師はもとより、ソーシャルワーカーや心理療法士などのさまざまな職種、ま たがんのリハビリ、例えば呼吸療法などを行うPTやOTという方々が配置されている かどうか、ということも実は大きくて、そういう人たちとのチーム連携が必要だと思い ます。  外来で看護をしていくことが重要だと申しましたが、残念ながら外来での看護師の人 数の規定がなくて、さらに非常勤とか夜勤ができない看護師が配置されるという従来の やり方ですと、とても問題が大きくて、本来はがんの看護のエキスパートこそが外来の 看護に携わるべきであるというふうに考えています。  専門看護師がどういうことをしているのかということに関しては、幾つか調査があり まして引用文献にも書いております。  例えば、専門看護師が苦痛症状を緩和するということで、終末期のがんの患者さんの 在宅医療ということが可能になって、必要最低限の入院期間でQOLを重視した療養環 境を選択して、患者さんや御家族の意思を尊重した、納得した終末期医療が可能になっ ていました。小迫らの調査では、がん看護の専門看護師ががんの疼痛緩和に関しても正 確なアセスメントを行って個別的な現象を瞬時にとらえてケアをしており、専門看護師 の行動の特徴としましては、自分が患者さんに関わったほうがよいのか、または医療チ ームメンバーの力を引き出して間接的に関わったほうがよいのか、つまり問題の複雑さ や緊急度、事態の展開の予測を総合的に判断して、担当チームメンバーの力量を査定し ながら患者さんに不利益がないようにタイミングをのがさずに行動する、という特徴が 明らかになっております。  究極的な目的は、医療チームメンバーの能力を向上させて患者さんのアウトカムを高 めることですので、看護師が医師の指示を待つということではなく、主体的にアセスメ ントをして予測しながらケアができるような、そういうサポートをしていくということ が専門看護師、または認定看護師の役割であると思っています。  将来的にはこういう人たちが外来に相談窓口を作ることで、訪問看護ステーションや 地域の病院、診療所の人たちのコンサルテーション活動をしていければ、さらに地域と 連携でき活性化していくのではないかというふうに考えます。  次を見てください。そういうような専門看護師、認定看護師の数が増えない理由とし ましては、特に専門看護師は大学院の修士過程の2年間を修了するということがありま すので、まだまだ社会人枠が少なくて、退職をしなければならない。ということになれ ば次の就職の保障もないということがあります。ですからアメリカのように週1回、ま たは半日というような仕事をしながら単位取得ができるようなシステムがあればと思い ます。  認定看護師の場合には、6カ月の講習ですし、今は緩和ケアチーム、外来化学療法加 算などの診療報酬上の保障ということもかなりできてきましたので、病院が看護職を認 定看護師の教育に出す、派遣するということで、数も増えかなり倍率が高くなっており ます。  専門看護師の地域格差、または施設間格差に関しては5ページに参考資料を付けまし た。専門看護師44名がおりますが、2枚目にありますように関東、関西の都府県に偏っ ているということがあります。また次のスライドにありますように一つの施設に複数の 専門の資格を持つナースを配置して、医療を行っている病院もあれば、全くそのような 人を配置していない病院があります。ここにあげている二つの病院はちなみに県立病院 で、がん拠点病院になっている病院です。  もう一つは、たとえ人数がいたとしても、その人が組織上でどこに位置づけるかとい う問題があります。がん看護専門看護師が独立したポジションに位置づけられるという のはまだ一部でありまして、実は看護師長、副師長、副看護部長というポジションで看 護管理に忙殺されながら、本来の機能が果たせないという状況があります。これは雇用 の問題があります。雇用の問題ということに関しては、病院の幹部、特に看護部長の理 解が不足しているということと、看護職というのは従来は、部署(病棟や外来)または 職位で行動してきましたので、病棟を超えて、または院内外で活動するということをし てこなかったので、その人たちの人件費の保障がない。またはポジションや職位を置く ということをいままでしてこなかったということがあります。  また、データとして専門看護師や認定看護師のアウトカムを示していないということ があって、雇用の問題があるように思います。  アメリカではクリニカルナーススペシャリストのアウトカム研究がなされておりま す。例えば、在院期間とか、再入院率、合併症の割合、またはコスト、患者満足度とい うことを指標にして、従来の患者ケア群とクリニカルナーススペシャリストがかかわっ た群で、優位差を出しているというようなことがありますので、今後はそういうことを しながら、少しずつ専門看護師や認定看護師の存在の意義をちゃんと示しながら、こう いう人たちを普及させていくということが必要だと思いますし、そのためには診療報酬 上、何らかのチームとしての裏付けがあればと思います。  専門看護師、認定看護師は変化を起こす人というような、チェンジエージェントとい うような役割もありますし、このような人たちがいることでスタッフの看護能力ややる 気が高まっていくことで離職率が下がるとか、そういう人たちが配置している病院にや る気のある有能なナースが集まってくるというようなことが現場では起こっているとい うことを最後に付け加えさせていただきたいと思います。以上です。  垣添座長  濱口参考人ありがとうございました。では御質問等がありましたらよろしくお願いし ます。初期治療に関してはかなり標準化されているが、がんに関していえば、再発とか 転移が起きた場合の対応が随分とばらついているということは、医療の質、看護の質の 均てん化という観点からは、非常に大きな問題であると思います。これに関して、もう 一歩踏み込んでいただけませんか。  濱口参考人  これはもちろん、ガイドラインをいろいろな学会等が作っていらっしゃると思います が、まだまだ医師の裁量権が大きいので、この先生がこうしたいということを、その病 院がどこまでそこをちゃんとできるかということ、インフォームド・コンセントにおい てこれが標準治療なのかどうなのか、または治療効果の可能性がどうであるのか、合併 症などはどうなのかということを、ちゃんとどこまで患者さんに情報が公開されている か、または患者さんが理解なさっているか。またこういうことに関して、ナースもちゃ んとそこに立ち会って、患者さんや御家族をサポートしながら先生方の方針に対してち ゃんとそこに参加できるような、そういうことがしていければかなり変わっていくので はないかと思っています。  垣添座長  最初に鶴尾委員から御説明があった、チーム医療の中で看護が果たす役割が非常に大 きいという御指摘であると思います。  一応準備した資料に沿って御発言をいただきました。これまで議論が出ていないとこ ろで何かありましたら御発言をお願いします。  山田委員  東北大学の山田です。放射線治療の立場から資料を用意させていただきましたので、 資料に基づいて少し現状と要望を説明させていただきたいと思います。  まずがん治療の均てん化に放射線専門医が不足しているということがなぜ問題になる のかということでございます。現在、定位放射線治療法、これは腫瘍に限局して放射線 をかける、あるいは強度変調放射線治療法、これは三次元的な腫瘍の形そのままに放射 線をかけるというような高精度の放射線治療が進歩してまいりまして、早期のがん、例 えば肺がんとか食道がん等の早期のがんでは、手術に匹敵するような制御率が報告され てきております。  また精度が非常に向上したことによって、以前にみられたような放射線による障害と いうこともほとんど認められず、患者さんが治っているということが発表されてきてお ります。  放射線治療は、皆様御存じのように機能が温存できるという点、全身状態が不良の患 者さんにも治療ができるという点、あるいは痛みをとるというような治療にも有効な点 ということで、現在、高度高齢化社会が急速に進行している中で非常に需要が急増して いる分野でございます。  この高度な技術というものを、どの施設、あるいはまたどの地域でも等しく受けるこ とができるためには、放射線物理学や生物学、画像診断学、化学療法等に精通した専門 医、さらにはそれを支える放射線の物理士あるいは専門技師が相当数保障されているこ とが必要でございます。  そういうことで資料に沿って現状を説明させていただきます。  1ページ目の放射線腫瘍学の構造調査でございます。これは2001年に本邦と米国を比 較したデータでございます。人口が日本は1億3千万人、米国がその倍の2億8千万人 ですが、日本では放射線治療師が640で米国は2000ということです。患者さんの数は日 本が13万4千人です。米国は70万人ということで、がん患者さんの中で放射線治療を受 ける患者さんは日本では20%に過ぎませんが、米国では60%に及んでいるというデータ でございます。  それに対して、放射線の腫瘍医がどれだけいるのかということを調べますと、日本で は500人が専任として放射線治療をやっている。一方、米国ではこれの8倍の4千人が いるということで、特にそれを支える物理士になりますと日本では40人ですが、米国は 100倍の4000人がいるというデータでございます。  次のページですが、高度高齢化社会の中でがんの患者さんの総数がどんどん伸びてお ります。日本の疾病構造もだんだんと欧米に近づいておりますが、欧米と同様にがん患 者さんの60%が放射線治療を行うということになりますと、45万人が年間放射線治療を 受ける、10年後には、そういうデータでございます。また、いまのまま20%でいきます と25万人が放射線治療を受けるということになります。  その下のデータですが、これは施設の大きさごとにどれだけの治療装置と放射線の治 療医あるいは物理士が配置されているのかというデータを示しております。赤で囲って いるのは1995年に調査したときと比較してこの6年間に約20%以上増えているというデ ータです。例えばA1・A2というのは大学病院とか大きい病院ですが、そこではほと んど放射線腫瘍医の数は伸びていないのに患者さんの数がどんどん増えているという状 況が示されております。  3ページです。この状況ががん治療にどういう影響を及ぼしているのかというデータ です。肺がんでございますが、専門医が1人以上いる施設での治療成績と、1人以下の 施設を比較してみますと、上の黒い生存率の曲線が1人以上、複数の専門医がいるとい う施設でございますが、有意に治療成績がよいという結果でございます。施設によって 病期とか全身状態が異なりますので、それを多変量解析で補正してみましても、放射線 専門医が多くいるという施設のほうが治療成績が有意によいという結果が出ておりま す。  その下です。将来の放射線治療の患者さんの数がどんどん増えておりますので、将来 的にどれだけの数の放射線腫瘍医、あるいは物理士が必要かというデータでございま す。20%の患者さんを治療した場合には25万人ですが、これでは750人で、物理士が540 人です。中間として予想される大体35万人が恐らく放射線治療で担当することになると 思いますが、その場合には、現在は500人ですが、放射線腫瘍医は1,250人が必要であろ うというデータです。一方、物理士は今は40人しかおりませんが835人が必要だろうと いうことで、これに研究開発を含めると、これの1.5倍とか2倍程度の人材が必要では ないかというデータでございます。  この放射線治療医の不足に対する対応でございますが、大学でも各大学でいろいろと 勧誘を種々行っておりますし、また放射線腫瘍学会でも学生を対象として、病理のほう でもやられているような放射線治療セミナーを行ったりして勧誘に努めているところで ございます。  ただし大多数の大学で放射線腫瘍学講座がないために、十分な教育が行われておりま せん。したがって、放射線治療を志す医師が育たない原因となっておりますし、また放 射線治療について十分な知識を有していない医師ががん治療を担うということになりま して、放射線治療の適用に理解がないというところもございます。  したがって、これは大きながん治療の均てん化の支障になっているのではないかと考 えられます。  がん治療に占める放射線治療の比率ほど、国試において、問題が出題されていないと いうこともございまして、それなりの教育がなされていないという原因にもなっている のではないかと思います。また、根本的には国はいま初期研修必修化でマッチングを行 っておりますが、今が非常によい機会ではないかと思いますが、後期研修の選択におい ても、ある程度は疾患の割合から診療科に割り振る医師の数をコントロールしていくこ とが必要ではないか、あるいはそういうことに着手することが必要ではないか、という ように考えられます。  以上が、放射線治療の専門医を増やすというための方策でございますが、これを行う にはすぐには無理で、数年あるいは10年ぐらいかかるのではないかと思います。現在ど うしたらいいのかということになりますと、放射線治療医はある程度がん拠点病院に集 中化するとともに、放射線治療医とともに治療計画をたてたり、品質管理を行うという ような、日本放射線学会と放射線腫瘍学会、あるいは物理学会、技術学会、技師会でい ま検討している、放射線治療の品質管理士を十分に配置していただけるような方策をと っていただければ、これはかなり放射線腫瘍医の不足を補って、がん治療の均てん化に 貢献していただけるものではないかということで、ここに切望するものでございます。  垣添座長  ありがとうございました。山田委員から放射線治療の現状、特に各医師あるいは技師 の不足等を中心にしたお話をいただきました。放射線治療に関して何か御意見がありま したら承りたいと思います。  後委員  私は放射線物理士というものをいろいろなところで非常に重要だという話を聞きまし て、個人的にもそう思っていますが、なかなか世の中には放射線物理士というものの業 務とかがよくわからないと思います。わかりやすく言えば、これだけの強さのものを当 てようと思えば、確かに機械がその強さのものを発生させているとか、ピタリと1cmも 狂わずに同じ場所に当たるように機械を整えるとか、そういう役割をしている方のこと と理解してよろしいでしょうか。  山田委員  放射線治療計画というのが放射線治療で非常に重要なウエイトを占めます。その時に 線量分布図を作ったり、こういう方法でかけると最適な治療ができるということを医師 と相談しながらやる。もう一つは、今回いろいろな医療事故が放射線治療において多数 発生しております。そうした品質管理を行う。、線量がきちんと出ているのかというこ とを管理するというような、トータル的な、放射線治療に関する品質管理を医師と一緒 に、医師をサポートしながらやっていただくということです。これがないときちんとし た治療ができません。  御存じのように放射線というのは目にも見えませんし、実際にどれだけ体内に入って いるのかわかりません。それを外からチェックしながらやっているという状況です。品 質管理が抜けていると、いろいろと報道されているような事故がはっせいするというこ とでございます。品質を管理する、サポートする人です。  野村委員  一つ質問です。その品質管理士ですが、これは放射線のスイッチを押せないという資 格ですね。放射線の治療をするときに、その人が放射線の装置のスイッチをonにするこ とができないという資格でしょうか。  山田委員  今は日本は技師さんが放射線治療のスイッチを押します。日本では物理士がかなり少 ないのですが、技師さんが日本ではかなり優秀で、アメリカの物理士の業務を担ってき ているという実情があります。  野村委員  兼任しているということですか。するとそれは大丈夫ですか。  山田委員  そうです。ただ技師さんは患者さんを治療台に乗せたり、あるいはトレーを付けたり という雑用をしながら物理士的な業務もやっている。したがって、きちんとした品質管 理をする部門がなかったということで、それを独立させてやっていただければ、数少な い放射線腫瘍医を補うと同時に品質も向上する、どの場所でも同じ治療が受けられるよ うな基本的なスタンダードになるという意味です。  野村委員  教育システムは社会では技術専門学校かなんかでやっているのでしょうか。  山田委員  放射線治療関連5団体で、例えば優秀な技師さんとか、あるいは物理士の方にある講 習を行い、毎年講習を受けさせるというようなことで品質を保障しながら認定をしてい こうという方向でいまは進んでおります。  西條委員  臨床腫瘍学の抗がん剤を扱う人と、この放射線腫瘍委員とで根本的に違うところは、 放射線治療医というのは、その資格も必要ですし何しろ機械がなければ絶対にやれない というところですね。いまのお話を聞いていて、危なくはないのですが、QA・QCが 犠牲になると思います。あまりにも絶対数が少なすぎると思います。先生がおっしゃっ たように放射線治療学講座、これは最重要課題と思いますが、そう急にはいかないです ね。ですからその間に何とかできる人を増やそうと思っても、メディカル・オンコロジ ストであれば、見よう見まねでエディケーションでできるが、なかなかそうはいかない ですね。その辺りはどのようにお考えでしょうか。  山田委員  これは先ほどお話をしましたが、教育とかもう一つは我々がいくら勧誘の努力をして も、入ってこないところは入ってこない。例えば、がんの患者さんは年間で60万人発生 するとしたら医師の中でがんの内科医なり外科医、それから放射線腫瘍医が何人必要で あるというようなアメリカでやっているような方向で、少しマッチングするような方策 が必要ではないかと考えます。このままだと我々がいくら努力しても、入ってこないと いう状況です。  ただ今は入ってこないから、では少ないところでがん治療に差があってもよいのかと いうことで、さっきいった品質管理士のようなものを、少ない治療医のサポートする部 分を付けていただければ、若干その間は乗り切れるのではないかということでお話をし たつもりです。  丸木委員  その品質管理士ですが、それは現在資格として認めてほしいと言っているのか、それ とも現実にそういう資格があって、例えば技師であり、放射線物理士もそういう資格が とれるということですか。  山田委員  この間の医療事故、この1〜2年でかなり多発しておりまして、それを受けていま5 つの学会でそれを検討しており、来年の1月から本格的にはじまる予定で動いておりま す。今はまだ進行中でございます。現在品質管理を実際に担っているのは、物理士が40 人と数が少ないのですが、あとは優秀な放射線専門の技師がボランティアでこれを担当 しております。片手間でQA・QCをやるのではなく、こういう資格をもって専任化さ せてほしいというのが今の要望でございます。  垣添座長  ありがとうございました。一通り資料に沿った御説明をいただくだけで残り時間が15 分ぐらいになってしまいました。全体を通じましてがんの治療領域における専門医、あ るいは育成、あるいは現状について、あるいは近未来の方向性について御発言いただけ ればと思います。  きょうは抗がん剤の治療の専門家、放射線治療の専門家、病理診断の専門家、がん看 護の専門家という観点からいろいろと御説明をいただきましたが、全体を通して御発言 いただければと思います。本日のこの15分ではとても足りないと思いますので、また別 な機会を設けますが、この場でできるだけ御発言いただき承っておきたいと思います。  土屋委員  専門医というのが、病理にしても放射線、あるいはがんの新薬を安心して使うことが できる専門医も少ない、これは逆にいいますと、いろいろと研修の中身的なお話を伺い ましたが、医師の絶対数が足りないのか、足りているけれども偏在しているのか。もっ と申しますと、この分野では専門医不足的な話が出てきますが、これだけではなく、例 えば小児科医であるとか産婦人科医であるとか麻酔科医が少ないということが社会的な 問題になっております。  トータルとして本当に医師の需給がこれでよいのかというところも,ちょっと頭にお いてこれを検討するひつようがあります。どんな立派な形のものを構築しても、そのも とになる人材育成について、その人材が不足しているのであれば、これはなかなか解決 できない問題ではないかという印象があるのですが、いかがでしょうか。  垣添座長  これはどなたからお答えいただいたらよろしいでしょうか。  健康局長  本来であれば医政局長がコメントをするところであると思います。今後、全体の医師 数の必要性については、また別途検討されるのではないかと思います。ただ、前と比べ ると明らかに毎年8千人弱のお医者さんが出ておりますので、非常にタイトであるとい うのは、それぞれの各論をみますと先生がおっしゃるように問題があるのですが、トー タルとしては不足しているのか、という印象はあります。必要であれば別途医政局から お答えさせます。  山田委員  今の問題ですが放射線科医もずっと少なかったのです。ただ5年前でしょうか。非常 に医師が過剰になるという試算があって、医師の入学定員を減らしていった時期があり ますが、あの頃は放射線科にもかなり入ってきて、うちの医局も5人とか毎年10人近く が入ってきていたのです。その後大学院の重点化と初期研修の必修化が続けてきた頃か らかなり減ってきているという状況があって、こうした医師がまた出てくると、私自身 はまたもとのように医師が増えてくる状況になると思いますが、今はその意味ではボト ムなのか、あるいは本当に患者さんの数が増えていて、医師の数が減ってきているのか ということについて、計算をし直していただいたほうがよいのではないかと思います。  垣添座長  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。  高嶋委員  別の見方です。国立病院も今回独法化しまして企業会計で病院の運営をしないといけ なくなりました。先ほどいろいろな問題がありました。病理医を増やしたい、あるいは 看護師の外来はすべて非常勤ですがこれを常勤にしたい。いろいろなことを我々は計画 をしておりますが、それをやりますと人件費率が増えます、そうしますとどうしても病 院の運営をやっていけない。多分、がんの占有率が90%以上のがんの専門病院は非常に 苦しいということで、そういう財政的な援助がないと、教育の充実も非常に難しい、我 々はそういう問題を抱えているということも御理解いただきたいと思います。  垣添座長  この前のがん登録の話のときにも、がん登録をやりましょうという掛け声だけでは実 態は動かないということで、ある程度の規模の病院に対しては、患者さんを登録数に応 じた一定の診療報酬上の配慮とか、何らかのインセンティブが働くような形を考えるこ とによって人手を配して、登録がきちんといくということを考えないといけない。今の ご指摘はそれに関連した、同様の話しにつながってくるのではないかと私も感じており ます。  野村委員  ただいまコメディカルな専門看護師、あるいはいろいろな専門家の問題が出てきまし た。いまひとつがん専門薬剤師、これも日本としては推進している必要があると考えま すので発言させていただきました。  原田委員  専門看護師のことでお伺いします。大変に重要な職種であると思います。特に専門看 護師の受験資格のところが、これだと大学の教官なみの資格を要しているようなので す。どういう目的なのか、指導者を養成しようという目的なのか、この看護師さんをも っと増やしていかないと、ますます今の均てん化に差が出きてしまうのではないかと、 私はむしろ危惧をしております。緩和をしてもう少し増やすとか、何かかわるもの、例 えば、認定看護師を増やすとかということなのか、指導者を養成しようとしているの か。  濱口参考人  専門看護師は現場でベッドサイドで実践をするということを求めています。アメリカ などもすべてクリニカルナーススペシャリストもナースプラクティスも全部大学院とい うことでなされています。何も指導者ということではなくて、実践にちゃんと学問的裏 付けをもってスタッフにも患者さんにも医療を提供できる人という意味で、一つの質と して2年間の大学院教育となっております。ですから2年間の大学院教育を、もっとフ レキシブルに単位をとれるようになっていけば、もっと増えると思います。  あと、認定看護師と専門看護師は役割が違うということはあります。  原田委員  今でも看護系の大学の教官が不足している状況で、これはこういう資格の問題がある のではないかと思います。アメリカはその通りでしょうが、すると早急に対応を、例え ば短期的に対応する、あるいは中期的に対応するという考えであれば、私はもう少し緩 和をしたほうがよいのではないかと思いましたので一言です。  長村参考人  病理関係で2点ほど追加させていただきたいと思います。1点は保険診療報酬の問題 です。いまいろいろな病院から常勤病理医の要望が出てまいります。先ほど御発言があ ったように1人あるいは2人置くと持ち出しになってしまう、という考えがどうしても 出てまいりますので、いま私たちがお願いをしているのはドクターズフィーで病理診 断、特にがん診断の場合にはいろいろなレベルがございまして、それに見合うような診 療報酬が病院として入る、あるいは病理にそれが還元される、ということをぜひお願い したいということであります。  もう一つは、臨床研修に私たちは病理診断、あるいは放射線も同じようなお立場かも しれませんが、選択科目のローテーションの中に明記していただきたい、ということを 随分申し上げました。現在は入っていないのですが、そういうところでがんの教育、が ん診断の教育をするということをぜひ入れたいので、選択科目の中に病理診断という選 択肢を入れていただきたい、この2点を加えさせていただきます。  垣添座長  ありがとうございました。御参考までに国立がんセンターのレジデントあるいはチー フレジデント、特にレジデントですが希望者に最近は毎年病理の希望者がいるようで す。それから放射線治療の専門医も、かつてはほとんどいなかったのがだんだん増えて きているということはあります。ただ抗がん剤の専門家を目指す人たちの数がまだ必ず しも予定している数に満たないということはあります。  長村参考人  それが今は各施設のプログラムに任されているという状況になってしまっていると思 うので、むしろそれをもう少し制度化していただきたいということです。  丸木委員  たまたま今日、国立がんセンターのレジデントの研修のものがこういう形で発表され ましたのでお伺いしたいと思います。我々が企画をやったときに、地方の拠点病院で、 例えば国立がんセンターで研修を受けたいというやる気のある人がいて、病院も出した いとは言うのですが、実際にその人を出してしまうと診療が成り立たないという問題が ある。それを何かカバーするような、例えば県なり地域でというシステムは現在あるの か、もしくはないのか、お知りであれば教えていただきたいと思います。  野村委員  後釜を補充するという方法は今はないのです。それなので、なかなか交流ができない ということで、何とかそれを工夫して可能にできないかということはいま検討しており ますが、なかなかよい案が浮かんでこないというところです。  垣添座長  丸木委員からの御指摘の点は、がん医療の均てん化という観点から非常に重要な問題 です。本当に数をだんだんと増やしていくというのは、かなり長期的な計画になると思 います。現在、近未来的に何かができるのかというときに、ある程度はがんを専門にし ている医療機関の間での人材交流というのは、非常に重要なポイントであると思いま す。次回以降にもう少し、その点に関しては深く議論をさせていただきたいと思いま す。ほかにいかがでしょうか。  後委員  きょうの専門医のところについて言いますと、きょうはいろいろな学会のお立場から どれくらいの専門医がいまいて、外国に比べたらどのくらい足りないというのがござい ました。これは個別にぱらぱらと出てくる状況ですから、全体として日本にどのくらい のがん患者さんの発生があってということをベースにして、こういう分野の方がどれく らいいるというようなグランドデザインを描かれたことは多分ないと思います。そのも とになるがん登録自体も精度が高くない状況ですから無理もないかもしれませんが、そ ういうものをトータルとしてまとめてみて、ロードマップをみて、ここは特別にのろの ろいっているというところは、少しでも国として支援できるかどうかを検討するという ことは必要かと思います。  垣添座長  非常に根本的な御指摘であると思います。  西條委員  臨床腫瘍医の資格に関しては、一言でいいまして現状追認の専門医をつくったら国家 百年の計として大変なことになるという気はいたします。  非常にマイナーな話でありますが、このサマリーの中にも入っておりますか、国から のサポート、セミナー等に関するサポートは非常に限定されている、必要な金額の10分 の1ぐらいしかありませんので、参加する人にも計画をする人にとっても、非常に負担 になっているという現状でありますので、その点をよろしくお願いします。  垣添座長  ありがとうございました。まだまだ御議論はおありと思いますが、本日は時間がまい りましたので、これで閉じさせていただきます。最後に事務局から何かございましたら お願いいたします。  大臣官房参事官  大変深い御議論をいただきまして、誠にありがとうございます。また、わかりやすく 御発言をいただくように心がけていただきましたことに御礼を申し上げたいと存じま す。次回でございますが、平成17年1月に開催したいと思っております。日程と開催場 所につきましては改めて御連絡を申し上げたいと存じます。本日は誠にありがとう存じ ました。                                    −終了−