04/10/18 労災保険料率の設定に関する検討会 第8回議事録           第8回 労災保険料率の設定に関する検討会                     日時 平成16年10月18日(月)                        16:00〜                     場所 経済産業省別館第1111会議室 ○岩村座長  定刻となりましたので、ただいまから「第8回労災保険料率の設定に関する検討会」 を開催させていただきます。  今日の検討会におきましては、北海道大学の倉田先生がご欠席です。獨協大学の岡村 先生も若干遅れられるということと、大沢先生はご出席の予定ですが、まだお見えでは ございません。  議事に入ります。今日の本題は、前回申し上げましたように、各テーマについて、中 間とりまとめを基に議論をさせていただくということで、「労災保険料率」から議論を 始めたいと思います。  その前に、中間とりまとめに関して、私のほうから簡単にご報告申し上げます。前回 (第7回)のこの会合において、「中間とりまとめ案」についてご意見を頂戴し、その 取扱いについては、私、座長に一任させていただきました。そこで、事務局と相談をい たしまして、前回の案に若干の修正を加えたうえで、今日、お手元に配付している資料 の「中間とりまとめ」とさせていただきました。また、この「中間とりまとめ」につい ては、先日10月13日に開催された労働政策審議会の労災保険部会において報告させてい ただきました。その旨をご報告申し上げます。  そこで、その審議会労災保険部会での議論について、事務局からご説明をいただきた いと思います。よろしくお願いいたします。 ○数理室長  私のほうから、10月13日に開催されました労災保険部会におきまして、中間とりまと めの報告をいたしましたが、それに対するご意見等がありましたのでご報告いたしま す。  まず、「労災保険率」に関して労側の委員から、「特定の業種については引き上げる ことになるかもしれないが、産業構造が変化したとしても、産業全体で支えることも必 要なので、業種別の料率に大きな格差を設ける必要はないのではないか。」というご意 見がありました。  また、労側委員から、「中間とりまとめの中で、過去債務分はなくてもいいのではな いか、というご意見が提出されておりますが、行政側としてどのように考えておられる のか。」というお尋ねがありました。「この過去債務分については、平成元年に財政方 式を変更した時に、昭和63年以前の年金受給者に対する将来給付のための費用の積立て 不足分を均等に賦課していますので、今後の財政状況や将来見通しとも関連しますが、 いままでの考え方を変更する予定はいまのところない。」という回答をさせていただき ました。  使用者側委員からは、「最近、業務災害が減少傾向にある中で、労働福祉事業等の費 用について、労災保険率に占める割合も大きくなってきている、検討会の中で労働福祉 事業について検討していただけないか。労災保険率の労働福祉事業分については、労災 保険率の構成要素でもあり、労災保険率の検討に当たり不可欠の問題と思いますので、 その点について要望させていただきたい。」というご意見がありました。  これについての行政からの回答ですが、「労働福祉事業の問題については、大事な問 題であると思っているけれども、検討会に課せられた課題は、災害リスクに応じた適正 な料率設定について、より専門的な見地から行うということで、その点で、検討会の検 討項目から外させていただくということです。ただ、労働福祉事業については、各事業 の内容まで踏み込まないとできない話でもあるので、別途、労災保険部会のほうで審議 をしていただくことにしたい。」という説明をしました。  「業種区分」の関係ですが、1点ご意見がありました。「「その他の各種事業」につ いては、さまざまな業種が入っているので、細分化については、ある程度仕方がない面 があると思う。ただ、製造業や建設業などでは、以前と比べると、技術革新等の進展に よって業種別の作業態様などにも大きな差異は少なくなってきているのではないか、最 終的には同じような作業形態に帰着すると思われるし、社会保険としての観点が抜けて しまう恐れがあるため、業種区分のこれ以上の細分化については必要ないのではない か。」というご意見がありました。  「メリット制」の関係ですが、2点ほどありました。両方とも労側からのご意見です が、「メリット制について、一部の事業主団体等からの要望があるのは承知している。 有期事業については、最近の平成13年度、14年度ですが、増減幅について、±30%から ±35%に拡大した時にも大きな議論をしました。その時にメリット増減幅の拡大と労働 災害インセンティブによる効果との間に関連があるかについて、必ずしも実証されてい るわけではなく、メリット増減幅の拡大は労災隠しにつながる恐れがあることも言われ ている。業界の要望のみを聞くことは疑問ではないか。」というご意見がありました。  もう一つは、「検討会への要望ではないのですが、メリット制については、労働災害 防止のインセンティブに与える効果は否定できないと思うけれども、メリット制を悪用 する事業主もいるので、労災隠しに対する罰則を厳しくするなど、別途対策をお願いす る。」というご意見がありました。  以上が部会で出ました意見です。 ○岩村座長  どうもありがとうございました。ただいまの審議会での議論の説明について、委員の 先生方から何かご質問はありますか。 ○高梨委員  業種区分の関係で、製造業、建設業については細分化の必要がないという意見は、労 働側委員の発言でしょうか。 ○数理室長  労働側委員の意見です。 ○岩村座長  ほかにはよろしいですか。よろしいようでしたら、本題の「労災保険率」に入らせて いただきます。労災保険率については、だいぶ月日が経っていますが、5月31日のこの 検討会で議論をさせていただき、そこでの論点を中間とりまとめで整理させていただき ました。今日はこの論点に関して、いままでのご意見を集約する形で、具体的にどうい う方向として最終的な意見にもっていくかを議論していただきたいと存じます。  今日の議論に役立てるということから、中間とりまとめなどで抽出しました論点を書 き出したレジュメのようなものを、資料として事務局にご用意いただきました。この資 料について、事務局から簡単にご説明をいただきたいと思います。 ○数理室長  お手元の横長の2枚組の資料についてご説明申し上げます。これについては、労災保 険率に係る項目として、課題とそれに対するご意見という形で整理しました。  真ん中の列の「課題(論点)」は中間報告の中で整理させていただいた課題のところ を「論点」の形で整理しました。これは特に労災保険率に係るところで、「中間とりま とめ」の5頁に「課題」ということで整理しておりますが、その中で「論点」のところ を書き出しました。  いちばん初めが「基本的な考え方」になるかと思いますので、それについては、災害 リスクの問題ですが、業種ごとに事業主団体の災害防止へのインセンティブを有効に働 かせる観点からは、業種ごとに異なる災害リスクを踏まえた適切な労災保険率のあり方 についてどう考えるか、という整理です。社会保険として必ずしも業種別に収支が均衡 する必要がないという考え方についてはどうか。3つ目として、労災保険率を設定する ルールについて、必ずしもすべてにわたって明確でないような状況がありますが、どう 対応すべきか。労災保険率の改定のプロセスについても、基礎資料の公開等についてど う講ずるべきか、という整理をさせていただきました。  右側の「意見」については、それに該当するところのご意見は、「中間とりまとめ」 の8頁で整理させていただいておりますが、前の「課題」に相当するところのご意見と いうことで、それに対応する形でまとめました。  2番目が「基本的な財政方式」ですが、これについては現行の財政方式、「現状」の ほうで記述しておりますが、それの現状について整理をしました。これに対する先生方 のご意見としては、特にいままでありませんでしたので、「意見」のほうは空欄になっ ています。  2枚目の項目、「全業種一律賦課」のところですが、ここの部分については現状につ いて整理をしており、それに対するご意見を右側で整理しました。  4番目は「激変緩和措置」で、「課題」として、労災保険料の水準が過度に変動する ことを避ける観点から、激変緩和措置を講じているけれども、そのあり方についてどう 考えるか。長年にわたる産業構造の変化に伴って規模が小さくなった業種において、過 去に発生した災害によって過大な負担となるという問題があるけれども、これをどう考 えるか、ということで整理しました。その右側が、それに対する検討会で出された意見 として整理しました。以上です。 ○岩村座長  どうもありがとうございました。いまご説明いただきましたように、資料のほうで は、「課題」として、これまでの議論を踏まえて、中間とりまとめの中で示された論点 を、それぞれの大きな項目ごとにまとめていただき、それぞれの論点に対応する意見を いちばん右側にまとめたという形で、見やすい形でまとめていただいたと思います。  そこで、以下、この労災保険率の設定について、大きな項目ごとに、それぞれが関連 するので、もちろん関連させた形で議論していただいて結構ですが、議事進行の都合 上、各項目ごとに順次議論させていただいて、最後に全体をもう一度振り返って、共通 する論点等があれば、それを考えるという形で進めたいと思います。  何と言ってもいちばん出発点になるのは、今日の資料にもありますように、第1番目 の「基本的な考え方」のところです。「論点」と「意見」を対比した場合に、ここでは 程度の差はありますが、ものすごく大きく何か意見が分かれたということではなかった ように、私としては記憶しておりますが、今後、報告書をまとめていくに当たって、こ ういう点を考慮すべきであるとか、具体的な方向としてどういうことを考えるのかにつ いてご意見があれば、是非頂戴したいと思います。  ご意見のところを見ていただくとすれば、インセンティブを損なわない形で業種別の 保険料負担のあり方を考えて、あとは本来的な考え方として、業種ごとにリスクに応じ た率に近づけるべきだということがあるのでしょうが、他方で、4のところにあるよう に、「激変緩和」ということも併せて考えなければいけないことにはなるのだと思いま す。  ですから、基本的な考え方としては、たぶんこの出発点のところ自体について、それ ほど大きな意見の違いはないのかなと思います。もちろん、今日の課題そのものではあ りませんが、業種別の区分をどうするかという問題は、また別途あるにせよ、このこと 自体はいかがでしょうか。 ○高梨委員  基本的に、いま座長がおっしゃったようなことだろうと思います。1の「基本的考え 方」の部分の意見のところの2つ目の・については、こういうことだと思いますが、先 ほど座長がおっしゃった激変緩和の部分のことを、予めここの表現に入れておくとすれ ば、「一定部分を除いて近づけるべきだ」というような、何か留保条件を入れておいた 方が良いと思います。それから「課題」に関する「意見」のところが空欄になっている ところがありますが、もちろん個人的な意見ですが、一定の保険料率を設定するルール の問題とかについては、今回、この検討会にもいくつかのデータというか、資料が出て いるわけです。そういう基礎データ、あるいは考え方などを、審議会があるわけですの で、その審議会の場で明らかにしていくことが求められていると思います。 ○岩村座長  いまの前者の点については、おっしゃる趣旨が分かりますので、最終報告を考えるに 当たっては、注意させていただきたいと存じます。  後半の部分、ルールの設定とか資料の公開ということについて、いま高梨委員からご 意見がありましたが、そこについては、各先生方のご意見があれば、是非頂戴したいと 思います。  「課題」なり「論点」のところでは、ルールが必ずしも明確に示されていないと。ど う対応すべきかということが、前回の中間とりまとめでは示していたところであり、ま た、基礎資料の公開、決定基準の透明化についても、改善が必要ではないかということ を「中間とりまとめ」では述べさせていただいていたと思います。  いま、高梨委員からご指摘がありましたが、ここについて、もし事務局で何か、現段 階でお考えになっていることがありましたら、お伺いしたいと思います。 ○数理室長  確かにいままで基本的な考え方については、求められれば説明してきたようなところ がありますが、従来、一定の考え方に基づいて運用していましたが、必ずしも明示的な 形で示していなかった状況もありましたので、その点については、こういった形で計算 しているなど、より具体的な形で公開なり明示していきたいと、いまのところ考えてい ます。 ○岩村座長  その場合、ルールを設定して明示する場というのは、どういう場所を考えておられる のですか。 ○数理室長  いまのところは、労働政策審議会の労災保険部会の中での審議を経て決めまして、ル ールをはっきりさせていきたいと考えています。 ○岩村座長  高梨委員からお話もあり、この「課題」のところでも書いてあったのですが、基礎資 料の公開についてはいかがでしょうか。 ○数理室長  基礎資料についても、その場で提示して、説明して、こういった基礎データに基づい て、こういった計算方法に従って計算したらこうなります、という形になるかと思いま すが、そういうことを一応想定しているところです。 ○岩村座長  ほかに何かありますか。いま、事務局からは、そういうお考えで、労災保険部会でル ールの設定の審議等を行ったうえで決めたいと。基礎資料についても労災保険部会に提 示するということで考えてみたいということが、事務局の考えとしては示されました。 よろしければ、最終的な報告書をどういう形で書くかという問題はまた別途あります が、そういう方向を基本的な方向として考えさせていただくことにいたします。  全体の基調を考えるうえで、たぶん重要だと思われるのが、この「基本的な考え方」 の「課題」の第2点目の2つ目の「・」である「社会保険として必ずしも業種別には収 支が均衡する必要はないとの考え方については、どうか」というのが、最終的に報告書 をまとめるに当たって、一つの基本的な立場を決めるものだというような気がいたしま す。これはこのあとの、例えば「一律賦課」の問題とか「激変緩和」の問題とも結びつ く問題ではありますが、中間とりまとめの段階では、必ずしも明確にこの点について意 見を書き出すということにはなっていなかったのですが、この際ですので、今後報告書 をまとめていくに当たっては重要な論点かと思いますので、ご意見がありましたら、是 非お伺いしておきたいと存じます。岡村先生、いかがでしょうか。 ○岡村委員  いま座長からお話があったとおり、私自身も、社会保険としては収支が必ずしも均衡 する必要はないと言いますか、均衡しない部分があるのは当然だと思います。特に「全 業種一律賦課」のような個別企業のリスクに対応しないで、押し並べて広く賦課する形 は、まさに社会保険の基本的な考え方だと思いますので、そういうものも取り入れてい る以上、個別的には対応できないと言いましょうか、対応しないことに、逆に社会保険 としての意義があると考えていますので、このとおりでよかろうと思います。 ○岩村座長  阿部先生、いかがでしょうか。 ○阿部委員  岡村先生の言うとおりだと思います。社会保険であれば、別に業種別に収支が均衡す る必要はないと思うので、だとしたら、労災保険が社会保険なのか、そうでないのかと いう議論ではないのかなと、ここでは思っています。ですから、どういう位置づけを労 災に求めているのかを議論すれば、ここはいいのかなと理解しています。  そういう意味では、労災がどうなっているかというのは、その法律上とか、どういう 規定になっているかというのが、むしろ重要で、そこから読み込んでいって、社会保険 なのか、そうでないのかという議論をするのかなと私は思っています。 ○岩村座長  制度の話になると、たぶん事務局のほうに少しご説明をいただいたほうがよろしいか と思うのですが、労災保険法上、その位置づけということで考えた時に、やはり社会保 険だという捉え方がなされているという見方でよろしいのかどうか。事務方のほうはい かがですか。 ○管理課長  先生を前にして言うのも恐縮ですが、ご案内のように労災保険は労働基準法と同時に 成立したという沿革からいきましても、工場法時代から考え方はあったのかもしれませ んが、労災に対する労働者の補償、保護、使用者責任と。その使用者責任を担保すると きにそれが絵に描いた餅ではなくて担保されるようにということで基準法の使用者責任 を補完するものとして、労災保険制度が同時に成立しました。使用者責任を担保するも のであったのがその沿革ですが、歴史的な発展の中で、使用者の基準法上の責任を上回 る部分についても、使用者の連帯的な負担の中で補償する。いわば労働者の保護を実効 あらしめるということを貫徹するために強制保険として、国の政策の一環としてやって いくということですから、これは沿革的にも考え方からいっても、社会保険の一環とし ての制度ということだろうと認識しております。そういった広い意味で、社会・労働保 険と言われるものが5つあるかと思いますが、その中の1つだと認識しております。 ○阿部委員  だとしたら、業種別には収支は均衡しなくてもいいということになろうかと思うので す。もしそうだとすると、労働災害防止のインセンティブを損なわないように業種別の 保険料負担をどうするのかはかなり難しいというか、どこまでインセンティブを求める か、どこまで全体で持つか、この線引きを我々は決めるのかと言われると、ちょっと難 しいかと思います。 ○岩村座長  たぶんいま阿部委員がおっしゃったところについては、このあとの「基本的な財政方 式」の所にあるような業種別賦課の部分と、一律賦課の部分をいままである程度区分け する形でやってきているので、それに何か手を加える大きな要因があるかどうかという ことで、たぶん我々としては考えていくということだと思うのです。いずれにしても、 報告書という形でまとめることを考えた場合には、規制改革会議からの求めと閣議決定 との関係で、この点については、なお理論的な根拠というのを明確にする必要もあろう かと思いますので、また報告書起草の段階でご相談させていただいて、ご意見を伺いた いと考えております。  「基本的な考え方」については、いまのようなことでよろしゅうございましょうか。 ○高梨委員  労災保険制度は、私は社会保険制度だと思っています。ただ、ここで言う業種別に収 支の均衡を図るという考え方は、労災保険制度の基にある考え方なのです。社会保険制 度であれば、区分をされて均衡をするという形はおかしくて、すべて負担も給付も一律 でなければならないということでは全くない。社会保険制度であっても負担がグループ によって変わることもあるし、給付がグループによって変わることもあるので、収支が グループごとに見たときに均衡しないという制度は、いくらでも社会保険制度の中にあ るのです。社会保険制度として収支の均衡云々という表現は、ちょっとどうなのかと思 いますが、あとにしていただいても結構です。 ○岩村座長  たぶん社会保障制度として均衡というよりは、社会保険と言ったときに制度全体とし てはもちろん均衡が取れていないと困るのですが、問題はたぶん業種別で厳密に収支を 均衡させるのかどうか、そこにあるのです。逆に言えば、業種別に本当に収支を均衡さ せるのだという話になってしまうと、社会保険という意味がどこにあるのだということ におそらくなってしまうだろうと思うので、そうすると、出発点は社会保険とは何だろ うという話になると思います。 ○岡村委員  大きな目標として大前提に置いているのは労働者に対する補償で、間接的にこれを行 うかどうかという問題と、直接的に行うかという問題がありますが、使用者の賠償資力 を担保することによって、労働者の労働災害から、それを補償するという形を見ます と、本来ならば民間の保険のように使用者の責任で、本来の民間の保険であれば使用者 のための保険なのです。ところが社会保険はそうではなくて、労働者のための保険であ るにもかかわらず、拠出するのは使用者です。それの屈折と言いましょうか、政策性が ワンクッション入っておりますので、そういう意味でも社会保険として必要だろうと思 います。そうであればなおさら厳密に、個別な保険料を各個に適用しなければいけない というルールも必ずしも成り立たなくてもいいと思います。でないと、例えば全業種一 律賦課だと、リスクによって偏りがあるにもかかわらず一律賦課をするわけですから、 その理屈が成り立たなくなると考えます。  ちょっと話が違うのですが、「課題」の所に「・」が4つありますが、この「・」の 優先順位については、別に順不同と解釈してよろしいのですか。 ○数理室長  優先順位は特に意識しているわけではないのですが、課題のほうで整理した順番に 「・」を付けていったものです。 ○岡村委員  文章の流れからいってこうなっているだけであって、優先順位がどちらか書いている わけではないのですね。 ○数理室長  そういうわけではないです。 ○岩村座長  中間とりまとめの課題の部分を、4つに分けて整理をしていただいたということであ って、これを作るに当たって、私の理解でも特にこれで何か1、2、3、4という優先 順位があってという話ではないと思います。 ○岡村委員  いまの話の流れからいきますと、まずもって労災保険は社会保険だということがまず 頭にあるという重要性からいきますと、2番目の「・」のものが本来なら最初にくると いうこともあるでしょうが、いまのお話ですと話の流れですから、そういうことであれ ば、私はそのままでいいと思います。 ○岩村座長  岡村委員がいま言われた最後の点は重要なご指摘だと思いますので、報告書をまとめ ていく段階では留意させていただきたいと存じます。時間の配分の関係で、また戻って いただいて結構ですので、とりあえず第2の項目の「基本的な財政方式」に移りたいと 思います。若干順序が入れ替わりますが、実は中間とりまとめの所では議論をしており ませんでした非業務災害について、これが中間とりまとめをする段階においても、また この検討会においても事務局等からご説明がありましたように、ここは全業種一律賦課 ということになっています。具体的には通勤災害分と、二次健康診断等給付分というこ とになりますが、規制改革会議のほうからはこの点についても若干言及があったことも あり、最終報告書の中では触れておく必要があるのかなということでもありまして、今 日の論点の項目の中に入れさせていただいたところです。事務局のほうから、この点に ついて規制改革会議のほうでどういうご指摘があったかということと、事務局のほうの 考え方を簡単にご説明いただければと思います。 ○数理室長  規制改革会議のほうでは、例えば東京、大阪もそうかもしれませんが、電車通勤をし ている労働者の方が多いだろうと。ただ、地方に行くとクルマ通勤をしている所もあり ます。クルマ通勤であると、事故がそれなりに多くなっているはずだと。そういう中 で、通勤に自動車を使っている従業員の多い所では、災害が多いにもかかわらず同じよ うな料率になっているのはいかがなものかと。モラルハザードが事業主のほうで起こっ ているのではないかということです。通勤の際に事故が起こりやすいような、クルマを 使うようなことについて、そのことも、例えばメリット制の対象にして災害防止に努め るようなことをしないと、なかなか事業主間の不公平感が生じるのではないか、という ような意見があったところです。  事務局としての通勤災害の考え方は第1回のときにも簡単にご説明したかと思うので すが、通勤は業務と異なって、事業主の直接の支配下にないということ。それから住居 の選択なり、通勤手段、通勤経路についても労働者が選ぶようなところがある。その点 で、業種によって大きな差があるとは言えない。事業主の災害防止努力も、通勤のほう は支配下にないこともありますから、限界があるのではないかということで、通勤災害 にかかる負担については、業種に関係なく全業種一律としているところですし、メリッ ト制も基本的に業務災害の発生の高低によって業務災害部分を増減するということです ので、メリット制による収支率の算定基礎なり、増減の対象から通勤災害分については 除いているところです。 ○岩村座長  そういうのがいままでの考え方になりますが、逆にちょっと私のほうから質問します と、通勤災害などについてメリットをかけるというのは可能なのですか。技術的にはど うなのですか。 ○数理室長  技術的に言えば、可能なのだろうとは思うのです。いわゆる給付が通勤について、こ れぐらいあったのを収支の分子に入れていけばいいはずですので。 ○岩村座長  ただ、技術的に考えたときに、交通事故のケースなどを考えると、私の承知している 限り労災の実務では、自賠責優先でやっているのではないかと思うのです。 ○数理室長  ええ。 ○岩村座長  そうすると、自賠責でカバーされてしまうものは、たぶん通災のほうには来ないので すよね。ですから、正確に事故率を把握できないのではないかという気がしたのです が、自賠責でカバーしてしまって、結局労災のほうに回ってこないのはあり得ますね。 ○数理室長  当然、あり得ますね。 ○岩村座長  そうすると、通勤災害としての請求は来ないわけですから、労災の側から見ると、そ れは結局ないのですね。 ○数理室長  請求がない限りは、ないことと一緒です。 ○岩村座長  本当に労災のほうで事故率をきちっと把握できるかという問題は、あるような気がし ます。あとはもし仮に把握できたとして、どのくらい保険料率に反映する差異なのかと いうことでもあるのかと思います。 ○数理室長補佐 技術的な話の中で、業務災害のメリットと別枠で通災のメリットを考 えると、現時点では0.9厘と非常に保険料率が少ないので、事故を起こせばすぐに収支 率は何百とか何千とかになって、どういう形のメルクマールをすればいいのかという ちょっと難しい部分があるし、交通事故の場合は自損事故的なものであればいいのです が、そうでなければ加害者、被害者の形になってくると、それを労災の中でどのように 整理をしていくか。まだ、そのやり取りの部分も出て来るのだと思うのです。そういう 部分も含めていくと、簡単に給付額の全部が全部、事業主責任というか、収支に反映す べきものかというのは、確定が難しいような気もします。過失割合など、そういうのを 決めるのは時間がかかりますから。 ○岩村座長  もう1つ、二次健康診断等給付はどうでしょうか。いまあまり実績がないのでしょ う。 ○数理室長  これは、平成14年度で。 ○数理室長補佐 資料ですね。 ○岩村座長  はい。 ○数理室長  第2回の資料No.2−15の30頁です。平成13年度から始まりましたので、平成13年度 の給付実績としては9,000万ぐらいです。平成14年度で3億の給付があったという状況 です。平成15年度は集計がまだ上がっていないのでわからないのですが。 ○岩村座長  そうすると、これもいまのところ業種別に何か反映させることでもないような気もし ます。 ○数理室長  これは例えば二次健康診断等給付についても、いわゆる脳・心疾患の恐れがあるとい う労働者について二次健康診断をやることになり、業務上の脳・心疾患の予防に資する 給付という形になります。業務災害の事前防止という位置づけですので、その点で個別 の業種別ではなくて各事業主、全事業主が共有するようなリスクではないか、そういう 位置づけになると思います。  給付額もいま3億とか、初めの予想では100億程度を下回るぐらいということで、料 率計算上は大きな影響は少ないこともあって、通勤災害と一緒の形でたしか整理された と記憶しています。 ○岩村座長  この点はよろしゅうございましょうか。 ○高梨委員  私は、通災と二次健康診断については、現時点ではいままでの考え方でいいと思うの です。それは通勤災害の発生のリスク、あるいは二次健診を受けなければならないリス ク、そういうものが業種別に大きく異なるというデータが、いまのところないと思って いるのですが、業種別に大きな違いがあるというデータが出れば、その段階でどうする かを考えればいいので、いまの段階ではいままでの考え方でいい思います。  短期給付の関係について言えば、3年で収支均衡ということですが、それは保険料率 の改定をいままでは大体3年でやってきているので、3年の収支ということかと思うの です。ですから、改定の頻度を変えるということがあれば格別、そうでなければいまま での3年の純賦課という方式でいいと思います。  長期給付のほうの充足賦課については、平成元年からそういう方向できているわけで すので、この考え方はいま変える必要はないと思います。 ○岩村座長  ありがとうございます。いま「基本的な財政方式」の(1)の短期・長期の給付につ いてのご発言だったのですが、何かそれに付け加えることはございますか。 ○数理室長  ちょっとその点だけでご説明申し上げます。これは算定期間の関係ですが、徴収法の 第12条のほうに、労災保険率の決定に当たって考慮すべき項目としまして、過去3年間 の業務災害及び通勤災害の災害率等を基にしてやりなさいという規定がありますので、 いわゆるそこから過去3年間の収支均衡になるような形で短期給付を決めている、そこ から3年ごとに改定しているのが出ているのです。 ○高梨委員  法律上は、概ね3年ごとに改定しているからということではないのですね。 ○数理室長  要するに、過去3年間のデータ、給付状況を基にして決めなさいとなっておりますの で、新しいデータが出る3年ごとに改定しているという状況です。 ○高梨委員  改定する頻度というのは、むしろあとから出てくるのですね。 ○岩村座長  改定する頻度自体は法律上の規定はなかったような気がするのです。 ○数理室長  規定はないです。 ○岩村座長  ただ、いままで実務的には3年に1度ずつ見直してきた、そういう経緯だと思います が、それはよろしいですね。 ○数理室長  毎年ですと事務的なこともどんどん変わって、なかなか作業が大変です。それから、 周知期間のこともありますので、そういうことを考慮して、3年ごとに改定していると いう状況です。 ○岩村座長  事務コスト等を考えると、そんなに頻繁にやるメリットがあるのかという気もしま す。毎年というのは、ちょっと非現実的なのでしょうし、何か3年というのをもっと短 かいスパンでやりなさいという状況の変化が客観的にあるということではないように思 います。ここまでは基本的な考え方の中にたぶん入ってくると思うのですが、そこから 先は全業種一律賦課ということになりまして、まさに先ほど議論させていただいた労災 保険が社会保険だという具体的な現れの部分になってくると思います。  現在の考え方については、「課題」で書いてありますように、短期については3年を 超えたもの、長期については7年を超えたものというのが現在、全業種一律賦課の対象 になっていますし、過去債務についても同様であるということだと思います。それにつ いては、いままでのところ私どもの検討会では、全業種にわたる調整というのは一般論 としては必要ではないかと考えてきたと思いますが、個別のところについてはそれぞれ ご意見があったと理解しております。  そこにもありますように、例えば短期・長期についての3年、7年という基準がどう なのかということについての精査の必要があるのではないかというご指摘もありました し、過去債務についてはだいぶ充足されてきたこともあって、廃止してもいいのではな いかというご意見もありました。これについてはいかがでございましょうか。  3年、あるいは7年ということについての従来の根拠については、前にこの問題を議 論したときにご説明をいただいたところだと存じます。いますぐに何回の資料のどこに 出ていたかわかりますか。 ○数理室長  第2回の5頁、資料No.1−3です。 ○岩村座長  資料No.1−3、これで第2回のときに資料という形でご提示いただいてご説明をい ただいた3年、7年という所で、一応従来考えてきた根拠ということです。私などは、 労基法との結び付きがこういうところで出てきてしまうのかと、非常に興味深かったと ころではあります。この点についてご発言されたのはたしか高梨委員だと思いますが、 何かございますでしょうか。報告書をまとめていく上で留意しなければいけない点等が ありましたらお願いします。 ○高梨委員  短期給付については、打切補償との関係からすると、3年超で区分するというのは基 準法の補償の範囲かどうかということの区分のメルクマールにするというところから、 いままでの取扱いでいいのかと思います。  問題は長期給付のほうですが、長期は遺族年金と障害年金、それから傷病がありま す。ちょっと私もよくわからないのは、遺族年金と障害年金については、それぞれごと に計算してみて大体4年ということですので、短期の3年プラス4年で7年というのが 大体いままでの取扱いでいいのかと思います。傷病年金のほうがどうもちょっとよくわ かりませんので、その辺が基準法との関係で、どの辺で精査する必要があるのか、そこ のところを事務局のほうからも教えてもらいたいのです。  ついでに過去債務の問題について申し上げれば、私は廃止の方向で検討をすることで はないかというのが意見です。 ○岩村座長  いま高梨委員のほうから具体的にご指摘があったのは、傷病補償年金の部分だと思う のですが、それが7年というのはどうかということなのですが、第2回の資料No.1− 3の5頁、長期給付の(1)が、傷病補償年金に関するものだという理解でよろしいで すね。 ○数理室長  基本的に傷病補償年金は、治らない場合、重度の場合に傷病補償年金として支給する わけです。労基法の第81条では、治らない場合には3年間で切って、そのあと3年経過 中で打切補償として1,200日分をお支払いしなさいという規定になっていますので、そ の1,200日分が労災法で言えば傷病年金に相当するような給付だろうと。  傷病補償年金の第1級ですと、例えば313日分になりますので、1,200日分を313で割 れば3.8年という形になります。2級ですと277日分になりますので、それですと4.3年 ということで、ほぼ4年に見合うかと思っているところです。 ○高梨委員  傷病補償年金を受けている人が死亡して、続けて今度は遺族年金というようなケース もあります。その場合にいまの取扱いではどこで切ると言いますか、区分しているので すか。 ○岩村座長  それはたぶん、していないのだと思うのです。例えば同じように障害補償年金につい ても、いま室長がご説明になったような扱いをしているので、障害補償年金の受給者が 亡くなって遺族年金に切り替わることについては、7年という根拠を考えるに当たって は、特に考えていないですよね。 ○数理室長  考えていないです。 ○岩村座長  たぶんそういうことだと思います。 ○高梨委員  それぞれ別々に7年、7年で計算するということですか。 ○岩村座長  一応、根拠としては、7年という根拠を別々にやっていると。ですから、いろいろな バリエーションについて、組合せすべてについて、何か精査して7年ということではな いのだろうと思います。  傷病だと基本的パターンとして、こうでしょうと。障害の場合だと、基本的パターン がこうなのかと。遺族だと、基本的な仕組みがこうだからということで、それぞれにつ いて考えていって、近似値を取ると、切りのいいところで7年というのがこれまでの整 理なのかなというのが私の理解です。事務局とは違わないですよね。 ○数理室長  はい、そういう考えです。 ○岩村座長  たぶん、遺族年金への切り替えは、労基法の世界では考えていないのでしょうか。そ うでもないですか。全くないわけではないけれども、障害補償を貰って、それでおしま いになるので、あまり考えていないのですね。これも7年というのを変えて、短くする と全業種一律賦課分がそれだけ増えるという話でありまして、長くすれば、その分、全 業種一律賦課は減るのですが、そうすると、少なくとも、いままで説明されてきた労基 法との関係というのではあまり説明がつかなくなるということなのかなと思います。こ れはこれで、巧妙にご説明いただいたのかなと。少なくとも現行の7年ということにつ いてはですね。  次は、過去債務分なのですが、これは労災保険部会でも質問があったところで、財政 状況等に鑑みて、どうなのだというのが、たしか労側からの質問であったと思います。 その点、事務局でご説明をいただけるでしょうか。 ○数理室長  過去債務についての考え方ですか。 ○岩村座長  はい、あと、現状ですね。 ○数理室長  過去債務については平成元年以前は、将来6年分だけを賦課して、残りのものについ ては二次的に賦課するという修正賦課方式を採用したという状況でして、平成元年以降 で充足賦課ということで、年金移行者については将来給付分を含めて取るという方式に 変えました。ですから昭和63年以前の年金受給者については、充足賦課方式でいえ将来 給付分がば取り切れていないというところで、その不足分について、平成元年以降、当 初は30年間にわたって、過去債務を均等に賦課させていただいているところです。基本 的にいうと、過去債務というのは、昭和63年以前の年金受給者の将来給付分の不足分に ついて、全部取り切るような形で負担をお願いしているところですので、基本的には取 り切らないとは言えないのかなと事務局では思っているところです。  ただ、どこで100%なのかという問題もこれありと思いますので、財政状況に応じて、 それは決めていく話なのかということで考えています。現状では、今のところ平成14年 度末においての必要な積立金額は7兆8,000億円程度ということで見込まれていまして、 そのときに平成14年度末の不足額積立金としては、7兆6,000億円ということで、不足 額が2,500億円あるというような状況でして、その分について平成35年まで、21年間で すが、毎年146億円、料率に換算すると、0.1/1,000ずつ賦課させていただくという考 え方で整理しているところです。この関係の資料は、第2回の資料No.1−5で、デー タとともに整理をしているところです。 ○岩村座長  これは第2回の資料No.1−5ですが、大体いま146億円ずつを取るような計算で年間 やっているということです。高梨委員のお考えだと、ここまできたら償却してしまえと いうことですか。 ○高梨委員  考え方は、100になるまで取るのが筋だろうと思います。ということで、取り出した 当初は1.5/1,000を取っていたものが、いまは0.1というところまで落ちてきていて、 しかもずっと今まで若干余るというか、収支は黒になるということがあって、ずっと続 いてきているので、これからの日本の経済を考えていけば、保険料率の設定を、極めて いい加減にやるというようなことをすれば、格別きっちり計算をしていくということで あれば、多少の黒が出るぐらいの保険料率設定ができるでしょうから、そうすると、今 まで予定している150億円ぐらいをわざわざ料率の設定をして取るまでのことはないの ではないかということで、廃止をすると。  廃止というと適当ではないかもしれない、休止かもしれません。そういうことでいい のではないかというのが私の考えです。 ○岩村座長  事務サイドはいかがですか。この前、部会でもご説明になったことではありますが。 ○数理室長  事務方では、基本的にはやはり100%になるまではというのがあります。要するに理 念として、過去債務の設定の問題もありますので、基本的には昭和63年以前の、本当は それ以前から充足賦課で取っていれば問題はなかったわけですが、取れなかった分につ いて、それを平成元年以降、均等に賦課していただいて取り切ろうという考え方で進め ているようなところもありますので、それを急に今ここでやめるのはどうでしょうか。  確かに、あと2,000何億円、毎年で150億円程度、トータルすれば2,500億円程度です ので、いままではそれ以上の財政上プラスになったときもありますが、今後の経済情勢 もちょっとわからないようなとろもありますので、基本的には取り切るのが筋なのでは ないかと思います。 ○高梨委員  事務局がおっしゃるのは分からないでもないですが、平成元年時点では、35年間かけ て、35年間の事業主が、いわば均等に負担をして、100%までもっていこうという計画 だったわけです。ところが、現実はそういう形ではなくて、当初1.5で出発したものが どんどん落ちてくるということですから、平成元年に近いところの事業主が当初予想さ れたよりは、結果的でしょうが、余計負担しているということになるので、依然として 続けて取るという考え方をしなくていいのではないかと私は思うのです。 ○管理課長  充足賦課方式の考え方につきましては、いま室長から説明したとおりでして、労災保 険部会でも、これまでの考え方を変更する状況にはないと思っている、という旨回答い たしましたが、次期の料率改定に向けましては、積立金財政についても、いろいろな試 算の前提になる数字も、今後の金利動向ですとか、あるいは賃金動向によっても、今後 の積立金財政の見通しに対しての前提が変わってくる要素もありますから、そういった 計算をしながら、検討していくということになると思いますし、考え方は考え方として 踏まえた上で、まだ、そういうような結論の中で検討しなければいけいのかなというと ころもあります。 ○岩村座長  いま事務局からご説明もあったところなのですが、阿部委員なり、岡村委員から、何 かご意見があれば。よろしいでしょうか。素人考えですが、ここまでいったのなら、い っそのこと、むしろちょっとのこと上げて、先に全部取ってしまえという考え方もあり 得るかもしれません。先ほど、ちょっと目の子(算)で計算したら、2/1,000ぐらい 取れば、2,500は取れるなと。それで終わりという考え方もないではない、という乱暴 な発想もあるような気もしました。  場合によっては、この際ですから、景気によっては少し割増しをしておいて、早目に 充足賦課を取ってしまうという考え方もあるのかもしれません。いずれにしても、そこ はいま課長のご説明にありましたように、景気動向を見ながら、次期改定のときに検討 することでよろしいのかと思います。そこはそういうことでいきまして、たぶん、いち ばん問題となる「激変緩和」のところに話を進めたいと思います。  激変緩和については、論点として、今日のペーパーにもありますように、現在、保険 料水準が過度に変動をすることを避けるということで、激変緩和ということをしている と。平成15年度改定においては±4/1,000以内の改定ということで、止めていることに なっているが、それでどうだろうか、ということであります。  もう1つは、これは前者はどちらかというと、災害発生率の変化などに伴う変動に対 応するものであり、もう1つは、長期にわたる産業構造の変化などに伴って規模が小さ くなった、そういう業種の問題であるという、2つの側面の問題があるのだろうと思い ます。  いままでの私の理解では、その右側の「意見」の所にもありますように、この検討会 の内部での議論では、やはり激変緩和措置というのは必要なのではないかという意見が あったわけで、特に保険料率を引き上げる場合については、激変緩和措置は必要ではな いかということだったろうと思います。  そして、長期の時間の経過に伴う変化についても、やはり考えて激変緩和が求められ るのではないかというのが大体のご意見だったように思います。論点としては、1つは 引き下げる場合、つまり災害発生率の変化によって料率が下がる、しかも大幅に下がる というときに激変緩和を使うのかということと、もう1つは災害発生率の変化によっ て、大幅に引き上がる場合について、やはり激変緩和で一定の幅のところで料率の引き 上げを抑えるのか、天井をかけるのかというのが最初の論点だと思います。  引き下げる場合、引き上げる場合、現在は両方について激変緩和をかけているのです ね。下げる場合にもかけ、上げる場合にもかけると。 ○数理室長  過去2回において、下げる場合にも枠を設けました。上げる場合についても、平成13 年度であれば、±4としても、実質的には上げるにしても、2が上限になっています。 ○岩村座長  ですから、従来は下げる場合についても、上げる場合についても、それぞれ下の部分 と上の部分で一定幅ということで、かけていたようでありますが、考え方としては下げ る場合については、かけないと。計算どおり下げてしまうという考え方もありますでし ょうし、上げる場合についても、計算どおり上げてしまうという考え方もあるのだと思 います。それぞれについて、先生方のご意見を伺えればと思います。 ○高梨委員  いろいろな考え方があるし、また影響するところも、それぞれの業種によって違うも のですから、ちょっと言いにくい点もあるのですが、やはり考え方の整理からすれば、 引き下げる場合は歯止めをかけるようなことをしないで、引き下げをする。しかし、上 げる場合は事業主に対してのインパクトが相当あるというケースもあり得ますので、そ ういう点からすると、引上げの場合については、やはりある程度の歯止めというか、そ れが必要だと思います。ただ、その上げ幅の制限ラインというか、それを前回は 4/1,000ということにしたわけですが、その幅がいいかどうかというのは、少し議論を しないといけないと思います。ただ、個人的に全く論理的でないことを申し上げれば、 労災保険の最低の料率が5/1,000なわけです。最低の料率を上回るような変化がプラス してあるということは、やはり事業主にとって相当インパクトがあるのではないかと思 います。だから、その辺は最低料率の幅を超えるようなことをするのはいかがかという 感じなのです。あまり論理的ではないのですが、そんな感じがしたところです。 ○岩村座長  あまり高梨委員に突っ込んでもしょうがないのですが、ただ、引き下げる場合につい て下限を設けないとすると、いま5/1,000なのですから、それがまた下がりますね、場 合によっては最低料率が。その場合は、どうお考えになるのかなということに次はなる と思います。例えば、最低料率が3/1,000になってしまったとすると、いま高梨委員は 論理的ではないとおっしゃったので、あまり突きつめても申しわけないのですが、上限 の上げ幅も3/1,000になるのかという話も出てくるのかなということですが、そこはあ まりきれいにルール化するのは困難かもしれないですね。  いまのご意見に何かございますか。下げる場合は、高梨委員のご意見では、特に下限 を設ける必要はないのではないかと。ただ、上限の場合はインパクトが大きいので、何 か天井をかける必要があるのではないかということなのですが。 ○阿部委員  収支がそれで均衡するのかどうかということを考えると、無理なのではないかと思う のですね。どうなんでしょうかね。よくわかりません。 ○岩村座長  私も直感的には、たぶんその問題が出てくるのかなと思うのですが。何か事務局のほ うでありますか。 ○数理室長  引き下げる場合には引き下げて、上げる場合に制限を設けると。その場合では引き上 げなければいけないところまで達しないという意味では、その分が徴収不足になるかと 思います。該当するような業種がどのくらいあるのかということと、その幅がどれぐら いであるのかと、それでどのくらいになるのかということで、いろいろなケースがある かと思いますので、平成15年度の数字を使ってちょっと計算してみました。それでいき ますと、その分どういうふうに負担させるかという問題、要するに基礎部分をどのよう に負担させるかという問題もあると思います。例えば、全業種に割り振った場合はどう なのかというのを計算しますと、料率換算でいくと、0.1/1,000にいくのか、いかない のかというレベルかなというふうに計算上は出てきています。  ですから、大きいか小さいかという判断はまたあるかと思いますが、0.1/1,000にい くか、いかないかぐらいの影響が出るという状況です。 ○岩村座長  当然、過去3年間の災害発生率の状況によって、たぶん違ってくるので、何か大規模 災害でもあったりして、ドンという所があると、ボンとはね上がるので、その部分が上 がる場合について上限を設けて、下げる部分で底はないという話になると、たぶんその ほうが上げられなかった分については、やはり全業種でみてもらうという、論理的には それで説明するしかないのでしょうね。特定の業種にそれを負担させるという理屈はた ぶん立ちませんから、やはり全業種に分散して負担してもらうということでしか、説明 はつかないことだと思います。それで、たぶんよろしいですね。ある特定の業種に「お たくだけに負担してもらう、その上げられない部分を負担してちょうだい」という説明 は付けられないと思います。やはり、全体で負担してくださいということでしか、でき ないでしょうね。 ○阿部委員  そうすると、結果的には、下限にもどこか天井みたいなものがあるように見えるので すが。 ○岩村座長  結果的にはですね。ですから、たぶん下限まで下がったところで、1回上がるという いう感じですね。ただ、それが一律でアプリオリに決めるのではなくて、上限の壁にぶ つかった所の分だけ差を少し底上げするということなのです。いままでは、そういうや り方ではなかったのですね。アプリオリに上下4とか、3とか決めてやっていたという ことです。 ○阿部委員  どちらかというと、そうなんですね。 ○岩村座長  だから、もしそこを今のようなやり方をすると、上限については、何かルールを決め るにしても、下限については、アプリオリに決まるわけではないという方向にむしろル ールを変えるということだと思います。ただ、上限の論理をどうやって決めるのかとい うのは、高梨委員がおっしゃっているのは、1つのご説明になったとは思います。 ○高梨委員  過去データを見ると、過去引き上げていることもある。その最大がたしか、最近では 5/1,000だったと思います。私の見方が違っていたかどうかですが。 ○数理室長  昭和50年代に非常に財政が赤字になったときには、10/1,000ぐらい上げた時期もあ るようですが、平成元年度以降であれば、4/1,000が最大の引上げ幅になっています。 ○岩村座長  1つのルールとしては、例えば過去何年間の実績でもってというようなことで、上げ 幅の壁を作るというのが、1つの考え方としてはあるのかもしれません。それであれ ば、事業主サイドとしても、ある程度予測がつくということはあるでしょうから。  何かお気づきの点があれば、おっしゃっていただくとして、もう1点、おそらくいち ばん議論になり得るのは、やはり過去の経緯というのがあって、災害が過去多かったけ れども、しかし規模自体がいまや小さくなってしまって、長期給付などの分で残ってい る結果として、何もしなければ、非常に過大な保険料率がかかっているのです。その業 種の扱いをどうするかというのが最後に問題としてはあると思います。これも中間とり まとめの段階では、やはり激変緩和ということで、全業種一律賦課ということでよいの ではないかということで、大体意見の一致を見たのかなと思います。この前の労災保険 部会でも、使用者側からは、過去の歴史等も踏まえていただいて、大変結構であるとい うご発言もある委員からはあって、ただ、具体的にはどういうことが問題になるのかと いうことで、事務局からも、炭鉱の例などについてお話をしていただいて、それなりに ご納得いただいたのかなと思っているところです。  典型的なのは、金属鉱業がいちばんはっきり出ている所でして、これも、やはり特例 的ということで、激変緩和が全業種一律賦課という形で、負担を緩和するということは 避けられないというように思うのですが、いかかでございましょうか。 ○高梨委員  金属鉱業というふうに捉えるのがいいか。金属鉱業とすると、いろいろなものが実は 入っているわけですね。金も銅もあるだろうし、砕石もたしか入る。 ○数理室長  いや、砕石は入りません。 ○高梨委員  石灰石ですか。 ○数理室長  石灰石も入りません。 ○高梨委員  入らないのですか。一番問題となるのは、私はやはり石炭産業だろうと思うのです。 石炭産業で、坑内掘りをしているような所の過去分ですね。いまの分はあるのでしょう が、石炭産業の過去分については通常の考え方でいくというのではなくて、これは全く 発想を変えて、別扱いで全産業で持つというような整理があっても、私はいいのではな いかと思います。将来を考えても、坑内掘りの石炭などが日本でこれから興るというこ とは私にはとても考えられない。限定をして、そういうものについては、全く別な扱い をするというようなことがあってもいいのかなと思います。過去の就労による災害分と いいますかね。 ○岩村座長  ただ、石炭の切り出しというのは現行のシステムでできる。石炭だけとは、実は限ら れないのですね。 ○数理室長補佐 金属と石炭と一応4桁(の区分)で見てみると、どちらも同じような 結果ですね。それは明確なのは石炭のほうが明確なのですが、石炭と一緒になる前の金 属鉱業も非常に小さくなっていって、過去の債務もありまして、同じような動きですの で、分けてみても同じような管理をしなくてはいけないのではないか、と私は思ったの です。 ○岩村座長  もう1つの典型例は、この前も部会で「石炭なんですよ」とご説明したら、皆さん 「ああ、そうですか」とすぐご理解いただけたのですが、これから出てくる可能性があ るものもあるのですね。考え得る例として、産業が縮小しているものとしては林業です ね。そういうものもあって、あれは比較的長期疾病を抱える業種であって、そういう意 味で石炭だけに特定する、あるいは金属鉱業だけに特定してというふうに、あまり限定 的にもできない部分があるかなという気もするので、石炭、金属鉱業については、もち ろん過去のものですから、それについて全業種一律賦課というのは、ご納得いただける と思いますし、今後場合によって産業が縮小してしまって、しかし過去のものが積み残 しで出てくるというようなものについても、そのときどきの料率改定のところでそれを 勘案して全業種一律賦課ということもやるというのは、考えなくてはいけないのかなと いう気はしています。あり得るとすると、やはり林業ですか。 ○数理室長  どういう基準でいくかということだと思います。現行の料率と算定値の差が大きいと いう意味であれば、いちばん大きいのは石炭、金属鉱業ですが、2番目に林業関係があ りますし、それ以外に10/1,000程度違う業種が2つぐらいあるかと思います。 ただ、 林業については実は平成15年に2つあった業種を統合したという事情がありまして、以 前は「木材伐出業」と「その他の林業」が平成14年度までは分かれていて、平成15年度 にそれが統合されたという事情がございます。これは林業の作業で木材伐出というのは どちらかというと、木を切り出すほうで、その他の林業というのは植林のほうでして、 林業の作業が2つの業種での作業実態が統合した経緯ですが、いままでは皆伐して新し く植えるという方式から、今後は択伐とか間伐、要するに、途中で切っていくというよ うな状況を主体としてやっていく、全部切るのではなくて、一部切っていくというよう な作業に移行しつつあるということで、これまでの木材伐出と造林業の区別がつきにく くなってきているという状況があります。  林業業界のほうで2年間かけて、いろいろ各構成団体におきまして、災害防止等、業 種統合に係る労災保険の収支改善関係の検討が重ねられてきたことを受けまして、木材 伐出とその他の林業を平成15年度に統合したという経緯です。それ以前の料率として は、木材伐出が133/1,000、その他の林業が39/1,000と格差があったわけですが、統 合後については、以前の平均的な料率は60/1,000の前半ぐらいだと思います。算定値 の引下がりを評価して、59/1,000という数値が平成15年度以降になっています。林業 については以上のような背景があるということです。 ○岩村座長  林業などはこの後どのように推移していくか分からないわけですが、林業も比較的長 期疾病など長期障害等を抱えやすい性格もありますので、今後また金属鉱業などと同じ ような問題が出てくることはあろうかと思います。やはり、料率計算をしていく、その 都度、特例的な扱いをするかどうか。全業種一律賦課で考えるかということを検討する という道は、限定的にではなくて、開いておかないと困るのかなと思います。いずれに しても、最終的には、たぶんそうやって調整をしていきますと、最後にもう一回全体の 収支均等のために、やはりどこかで一律賦課で調整しなければいけないということにな りますので、最後の収支均等の所でもう一度、一律賦課の部分を算定して賦課すると。 そういう意味では、他方でルールとしてはいままでに比べると、はるかに明確なルール になるのではないかというようには思います。一律賦課の部分をどういうふうに算定し て、かけているのかというのがルールとしては、明確になって透明度が増す。  したがって、労災保険部会に基礎資料を出すということと相俟って、これについて は、かなりの程度今よりも透明性も出て、ルールも明確になるのではないかと思ってい ます。  今日のペーパーでお出しいただいた項目については、一渡り検討を加えたということ になりますが、全体を通しまして、何かまだ論じられていないような問題がお気づきで あれば、ご指摘をいただきたいと思います。  よろしいでしょうか。今日は、皆様のご協力で、議事が予定より早く進行いたしまし て、どうもありがとうございます。今日のテーマにつきましては、議論も大体出尽した ということだろうと思いますので、今日は検討会はここまでとさせていただきたいと思 います。今日、ご議論いただいた方向性について、今日の議事録などを基に事務局でま とめていただいて、日程的には後のほうで報告書のとりまとめを進めていく段階で、再 度確認的にご議論をいただくことになろうと思います。いまの予定では、年末頃という お話のようでございますので、年末は特に忙しいことが多かろうと思いますが、よろし くお願いしたいと思います。それでは、今後のスケジュールにつきまして、事務局から ご説明をいただきたいと存じます。 ○数理室長  次回第9回の検討会ですが、日程調整をさせていただいたところ、11月1日(月)16 時からということでお願いしたいと思っています。議題としましては、「業種区分」と いうことを考えていますので、よろしくお願いしたいと思います。場所については、ま だ決まっていませんので、別途お知らせしたいと思います。 ○岩村座長  そういうことですので、いまご説明いただきましたように次回の第9回は、11月1日 (月)に開催ということでございます。それで、よろしゅうございますか。「業種区分 」ということでございますので、今日のように予定より早く終わるという望みはあまり ないかもしれませんが、よろしくお願いをいたしたいと思います。特にご指摘がなけれ ば、今日の検討会はこれで終了いたします。お忙しいところ、ありがとうございまし た。 照会先  労働基準局労災補償部労災管理課労災保険財政数理室  電話:03−5253−1111(代表) (内線5454,5455)