04/09/09 第1回がん医療水準均てん化の推進に関する検討会議事録                       ┌―――――――――――――――┐                       |(照会先)          |                       |健康局総務課生活習慣病対策室 |                       |奥田、中山   内線2397,2339 |                       └―――――――――――――――┘           がん医療水準均てん化の推進に関する検討会                  第1回議事録          日時 平成16年9月9日(木)10時00分〜12時00分          場所 厚生労働省9階省議室 1.開会  大臣官房参事官  それではただいまより「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会」第1回を開会 いたします。皆様方にはお忙しいところ、ご出席賜りまして誠にありがとうございま す。  私、大臣官房参事官を務めております瀬上でございます。しばらくの間、私が議事の 進行を務めてさせていただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  それでは開会にあたりまして坂口厚生労働大臣よりご挨拶を申し上げます。  厚生労働大臣  おはようございます。皆さん方には本当にお忙しい方ばかりでございますが、その皆 さん方にこの検討会の委員をお願いを申し上げましたところ、心よりお引き受けをいた だきまして、まず、心からお礼を申し上げたいと思います。  本当に忙しい方々に申し訳ないと思うのですが、仕事は忙しい人に頼めという言葉も あるそうでございまして、ひとつ、お許しをいただきたいと存じます。今日は、また、 その中で第1回のこの会合を持つということでご出席を賜りましてお礼を申し上げたい と存じます。  がんの問題は対がん10ヵ年総合戦略を昭和59年度より開始をしまして、続いて平成6 年度からがん克服新10か年戦略、対策をさらに拡充してまいりました。そうした中で胃 がんでありますとか、子宮がんをはじめとして治療成績が向上しまして死亡率を低下さ せる、そうした大きな成果も出ているわけでございますが、しかし、一方におきまして がんによる死亡率というのが依然として第1位を占めていることは間違いのない事実で ございます。年間約30万人の方がお亡くなりになっているわけでございます。  日本は医療保険制度、立派に皆さん方のお陰で作り上げていただきまして、全国津々 浦々どこにおきましても医療保険、保険料を納めていただきまして、そしてまた、医療 保険を利用して医療にかかっていただく体制というのができあがっているわけでござい ますが、それでは医療を行う側の体制が全国津々浦々どこでも同じようにできているか と言えばなかなかそういうわけにはまいりませんで、現在、なお、この無医地区という のが900か所を超えるところであるわけでございます。私が政治家にならせていただきま したときに、1,100か所ぐらいあったというふうに思っておりますが、現在、まだ、900 何か所あるわけで、そんなに減っているわけではございません。  そうした状況の中、病院はできあがっておりますけれども、最近のように進歩が非常 に激しい分野におきましては地域格差というものも出てまいっております。とりわけが ん治療におきましては非常な進歩いたしておりますだけに、それぞれの地域における格 差というものが出てきていることも事実でございまして、いろいろと問題提起もしてい ただいているところでございます。  そんな状況の中でございますので、皆さん方、専門的なそれぞれのお立場の皆さん方 にご議論をいただきまして、できる限り、全国、本当にどこでも同じようなというふう にはなかなかいかないかもしれませんけれども、全国どこにおきましても同じような治 療が受けられる体制をどう確立をしていくかということは厚生労働省に課せられた大き な仕事であるというふうに認識をいたしているところでございます。  そうしたことで誠に急に皆様方にお願いを申し上げまして非常に申し訳なかったとい うふうに思っておりますけれども、お願いを申し上げて今日の運びにさせていただいた ところでございます。皆さん方のご意見を頂戴をいたしまして一歩でも二歩でも前進を させるように努力をしたいと我々も決意をしているところでございますので、どうぞよ ろしくお願いを申し上げたいと思います。ありがとうございます。  大臣官房参事官  ここでカメラ撮りの方は終了とさせていただきたいと存じます。ご協力の程、よろし くお願いいたします。  それではメンバー、委員のご紹介に移らせていただきます。ご所属はお手元の座席 表、メンバー表をご参照ください。  正面中央。垣添忠生様。原田征行様。山口晃弘様。内田璞様。高嶋成光様。野村和弘 様。西條長宏様。千村浩様。後信様。  右手に移りまして、山口直人様。津熊秀明様。岡本直幸様。山田章吾様。北島政樹 様。丸木一成様。そして、土屋隆様。  本日はオブザーバーとして文部科学省高等教育局より石野医学教育課長、並びに研究 振興局より斉木ライフサイエンス課長、出席をお願いしております。  厚生労働省の出席者をご紹介申し上げます。岩尾医政局長。田中健康局長。岡島大臣 官房審議官。上田大臣官房厚生科学課長。医政局からはこの他、原総務課長、鈴木国立 病院課長。健康局から中島生活習慣病対策室長、並びに国立がんセンター運営局長、鶴 田様がご出席しております。  以上でございますが、本検討会の座長は大臣による指名に基づきまして垣添委員にお 願いいたします。それでは以後の議事進行は垣添座長によろしくお願いいたします。  なお、マイクでございますが、ここのマイク、オン、オフと書いてあるスイッチを押 した上でご発言をいただきまして、ご発言の終了後、改めて押し直していただければと 存じます。 2.議事  (1)検討会開催要綱について  垣添座長  皆さん、おはようございます。国立がんセンターの垣添です。ご指名ですので座長を 務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  ご承知のように、この4月から第3次対がん10か年総合戦略がスタートいたしまし た。キャッチフレーズが「がんの罹患率と死亡率の激減を目指して」ということであり ますが、この10年でそれを達成するためには数多くやらなければいけないことがありま す。もちろんがん研究、がんの基礎研究、臨床研究の重要性は申すまでもありません が、それだけではなくて死亡率の激減を達成するには検診、そのために厚生労働省で既 にがん検診の見直しの検討会も設けておられますし、本日、立ち上がりましたこの医療 水準の均てん化に関する検討会、つまりがん医療水準の均てん化、そのことに関連した 人材育成、あるいはがんの実態把握ということがこの第3次対がん10か年総合戦略の目 標を達成する上で極めて重要と私自身も考えております。  したがって、この検討会の意義は計り知れないというふうに考えておりますが、座長 として全力を尽くしたいと思いますので、どうぞ皆様方のご協力をよろしくお願い申し 上げます。着席させていただきます。  それではまず、事務局から本日の資料の確認と検討会の開催要綱の説明をお願いいた します。  大臣官房参事官  お手元の議事次第の下に資料1といたしまして検討会の委員名簿、資料2といたしま してがん医療水準均てん化の推進に関する検討会開催要綱でございます。本日のこの会 でございますが、目的としてこの第3次対がん10か年総合戦略において、全国どこでも 質の高い医療を受けることができるよう「均てん化」を図ることを戦略目標として掲げ ております。また、健康フロンティア戦略においてもがん医療の「均てん化」が課題と して取り上げられております。こうした中でこの検討会を開催いたしまして、がん医療 の「均てん化」を推進するため、地域格差の要因について検討を行うと。その是正のた めの具体的方策を提言するということを目的としていると、こういうことが書かれてお ります。  参考資料1「がんの罹患率と死亡率の激減を目指して」、参考資料2、パンフレット 「対がん戦略」、参考資料3としてただいま申し上げました「健康フロンティア戦略 」。また、お手元には委員からの提出資料といたしまして「がんに挑む」という新聞記 事、「がん医療水準均てん化に関する検討」という原田委員のメモがございます。よろ しくお願いいたします。  (2)がん医療における地域の実態と格差を生み出している要因及びその是正に向けた    主要課題についての意見陳述  垣添座長  ありがとうございました。資料の不足等ございませんでしょうか。よろしいでしょう か。  それでは本日は第1回の集まりでありますので、はじめに「がん医療における地域の 実態と格差を生み出している要因及びその是正に向けた主要課題」ということで、委員 の皆様各位からご意見をいただきたいと思います。時間が限られておりますので皆様か ら順番に約5分程度でお話をしていただければ幸いと思います。私の右隣の原田先生か らお願い申し上げます。よろしくお願いします。  原田委員  青森の原田でございます。座ったままでご説明させていただきます。  既に皆様方のお手元に、設問がございましたので、それに答える形でメモとして差し 上げておりますので、これに沿って説明をさせていただきたいと思います。  がん医療における地域の実態と格差を生み出している要因ということにつきまして は、地域の実態ということで私どもの病院は総合病院の中でがん治療を行っているとい うことでございます。病床数が730床で平成15年度のがん患者、退院患者を見ますと 2,181人と、全体の17.7%ということになっております。  これ、平成11年、全がん協加盟とあります。ミスプリントでございまして平成8年に 全がん協に加盟させていただいています。11年からは院内がん登録ということを始めて いるという、我々の概況を申し上げさせていただきました。  続きまして一般病院ではがん治療にのみ専任できない状況があるということでござい ます。これは一般の日常の他の疾患の患者さんの治療に非常に多忙であって、マンパワ ーも充分でないということが実情かと思います。専門医が不足しているということは後 でもまた述べさせていただきたいと思います。  続きまして格差を生み出している要因といたしましては、病院自体と全国的な要因と いうことがございまして、我々の病院としてはがん専門医が絶対的に不足しているとい う自覚がございますし、実際、そのとおりだと思っております。がんは集学的治療が必 要でありますけれども、各診療科毎にはいろいろ進んだ治療も行っておりますが、我々 のような規模の病院の特徴とも言えますと思いますけれども、集学的な協力した、ある いは共通した認識のがん治療が行われていなかったというふうなことでございます。そ れがまたなかなか外の方にも私どもの病院でがん治療を行っているということがわかり にくいというようなこともあったのだろうと思います。  全がん協岡本班に入りましてアンケート調査をしておりましたけれども、私どもの病 院の評価というのは決して高い方ではなかったということもございました。診断治療に 関わる高度な医療機器、ある程度の医療機器は整備をしているつもりでありますけれど も、現在の高度な医療機器というのは少し遠く及ばないところもあるだろうということ でございます。  がん登録に関わる専門医も不足しておりますけれども、それを支える記録をする、整 理をする、そういうマンパワーも絶対的に不足していることが、がん治療の資料の整理 なども含めてうまく進んでいない状況だろうと思っております。  緩和ケア、セカンドオピニオンについては私ども、遅れておりますけれども、緩和ケ アは本年、緩和ケアチームを作りました。緩和ケアの認定看護師、在宅緩和ケア、これ は青森県医師会の事業の中の支援として、これも始めてまもないところでありますの で、まだ、評価する段階には至っておりません。セカンドオピニオンにつきましては血 液疾患のセカンドオピニオン、医師1人ございまして、それは登録をしておりますけれ ども、非常に全体として他のがんに取り組むまでには至っておりません。  全国的な要因につきましては治療成績等を含め、学会主導による診療科毎の基準がま ちまちだということでございまして、客観的評価基準がないということは我々のような 病院にとりましてはなかなか客観的に評価してもらえないというような事情もあるので はないかと思います。  続きましてがん専門医等の育成につきましては病院自体として今後、シニアレジデン ト、若い人たちを含めて私は養成したいというふうな考えを持っております。がん拠点 病院間でのシニア研修医と共通教育制度を設置した方が私どもとしては効率的な若い人 の教育もできるというふうに考えております。がんセンターという構想が私どものとこ ろにありましたけれども、今の事情では経済的な事情等々からちょっとペンディングに なっておりますけれども、いずれ将来構想の中にがん病棟を設置するということで進ん でおります。 高度専門施設からの短期間の専門医招聘と教育指導ということも今後、 機会があれば、ぜひ、これは進めたいというふうに考えています。  いろいろ人的な交流につきましては大学の教室から私ども、派遣されております。現 実に今のところ、3大学から派遣されておりますけれども、やはり教授、教室の意向と いうことに沿っての、例えば長期の研修になりますとマンパワーの補充の仕方、がんに 対する考え方も必ずしも統一ではございませんので、この辺は調整をする必要がある。 なかなか調整が難しい点ではないかというふうに思っております。  次の3番目の国、ブロック、都道府県、二次医療圏における各がん専門医療機関の役 割分担を踏まえたネットワーク体制の整備。私どもは、ぜひ、これは整備してほしいと いうふうに願っておりますけれども、地方の病院において中央の施設との違いというこ とが大きくございます。私どもの病院からも例えばがんセンターなどについてセカンド オピニオン、あるいは診療、治療等も含めてお願いをする患者さんは多くあるわけです けれども、そこから私どもの病院に継続治療を依頼された場合のシステムが必ずしも成 り立っていないということも含めてこのようなネットワークというものは必要だと私は 思っております。  次の上記(3)を踏まえたがん専門医の人材交流ということにつきましては、さきほ ど申し上げましたようにがん専門医の全国的な不足だろうと思いますけれども、私ども の病院では特に不足しているということも踏まえまして人事交流があればいいと。た だ、一般病院の中で一般医療をやっておりますので、がん専門医も一般医療に従事して おります。ぎりぎりのところでやっておりますから、がん専門医がどこかで研修をした 場合のマンパワーの補充ということも大きな問題だと思います。簡単にはなかなかこの 補充ができないと。がん以外の専門領域の専門医もたくさんおりますので、その分を補 充することがなかなか難しいという現状であります。  (3)のがん病棟を設置して、私ども、将来構想の中でがん病棟を設置しようと思って おりますが、こういうふうにある程度、特化をいたしますとがん専門医を確保すること は私は青森でも将来可能だろうというふうには思っております。  どうも時間がオーバーしてしまいましたけれども、その下の5番目のところはそこに 書いてありますようにある程度、私どものところはがん治療に取り組んでおりますけれ ども、全国的な規模から見ますと必ずしも全国的な水準ではないというふうに考えてお ります。以上でございます。  垣添座長  原田委員、ありがとうございました。続きまして山口委員、お願いいたします。  山口(晃)委員  岐阜県の大垣からまいりました山口と申します。がんの地域格差という問題につきま してですが、私自身は病院間格差は非常に強いというふうに考えますが、地域格差につ いてはそれほど病院間格差ほど、大きなものではないのではないかというふうに私は思 っております。  この病院間格差が、なぜ、こんなに大きくなったかという面については、やはり患者 サイドがいろいろな情報をいろいろな分野から取り入れてくるということと同時に、保 険診療の制度で均一ではなくて手術、その他に格差ができたということもひとつ大きな 要因ではないかというふうに私自身は考えます。  病院間と言いますか、岐阜県では長野県、すぐ隣ですが、がんの拠点病院が現状では ゼロという状態です。今年度、岐阜県では、昨年度ですが、申請して、4つ、申請して ありますが、まだ、その結果は出ていないというところだと思います。  がんの拠点病院ということになりますと、がんの拠点病院を運営していく上には現状 に加えてさらに多くの人材が必要になってきます。さきほどの原田委員が言われました ように自治体病院ではがん単一の疾患をやっていくわけにはいきません。地域の専門病 院としていわゆるターミナルホスピタルと言いますか、すべての疾患が我々のような病 院にくる。しかも、さきほど言いましたように患者側の医療について高度なものを求め てくるというような点で、すべての疾患に対応できて、かつ日本の標準的医療乃至それ 以上のものをしなければいけないという状況にあるわけです。したがって、さきほど言 いましたようにがん拠点病院を維持していくための人材及び財源の確保というのはこれ から問題になってくるというふうに私自身は考えます。  がん拠点病院になること自体のメリットというのが現状ではあまりよくわからないよ うに私は思うわけです。がん拠点病院になることによってどのようなメリットがあるの かというところがよくわからない。がん拠点病院の制度を制度そのものとして作るので はなくて、実態のあるものとしてそれを動かして、それを皆が本当に利用してやってい けるような制度にぜひ、していただきたいというふうに思っております。  専門医の問題についてはがんの専門医は何をもってがんの専門医とするかというとこ ろが未だよくわかりません。日本がん学会、あるいはがん治療学会等がありますが、そ の中には専門医制度というものが現状でははっきりしたものがありません。したがって がんの専門医というようなきちんとした制度というものがよくわからないのが実態で す。今後、どのようにしてそのような専門医制度を作っていくかということが大事にな ってくるというふうに思っております。  まだまだ申し上げたいことがありますが、時間がほぼきましたので以上で終わりま す。  垣添座長  どうもありがとうございました。続きまして内田委員、お願いいたします。  内田委員  倉敷からまいりました内田でございます。私は地方の民間総合病院の意見ということ でご指名をいただいたと理解、認識をしております。  がん登録の普及並びに精度、精度はシステムではなくて詳しさという意味ですが、そ れに問題がありまして、また、公表された医療機関独自のデータも算定基準の標準化が 行われていませんので、5年生存率の地域格差があるかないかということ、あるいはそ の程度というものはまだ充分明らかにはなっていないと思っております。  ただ、外国でも悪性腫瘍の生存率につきまして地域格差、あるいは国家間、国の間の 格差というものが重要視されておりまして、例えばヨーロッパでは乳がんの5年生存 率、これがスイスで76%であるに対してポーランドでは44%、大きな開きがあります。 スイス、フィンランドでは平均より高いのですが、イギリス、スコットランド、エスト ニア、ポーランドというのは有意に低いという報告がありまして、やはり地域格差の可 能性は否定できないと思います。  質の高いがん医療の均てん化というものを目指すのでしたら、がんの実態把握という ものが急務でありまして、これには行政、関連学会、医師会等の強力なリーダーシップ が必要と思います。私のおります岡山県では県の医師会の情報センター、がん登録委員 会というものがありまして、ここでDCN、DCOの減少に務めております。これは補 充調査票というものを配りまして、それに詳細に記載をしますので、それで比較的精度 の高いがんの実態把握ができておりますけれども、医療水準との関連を示すデータは未 だに乏しいのが現状であります。  地域格差というものがもしあるとしますと、さきほど山口委員が申されましたように 医療水準の病院間格差というものが問題になると思います。格差を裏付けるデータの収 集にはやはり例えば胃がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんなど、代表的な疾患につい て都道府県の主要な病院に共通の妥当な基準で算定した5年生存率の最新データの提出 を依頼して、その比較から平均を下回る病院、あるいはデータの提出ができない病院に ついては厚生労働省主導の調査が行われるのが妥当ではないかと思っております。ある いはサーベイヤーとしては機能評価機構の関与も考えられると思います。  格差の是正につきましては原田院長が詳細に述べられましたので省略いたしますが、 私はやはりオンコロジーナースの育成も必要でありますし、診断治療に欠かせない放射 線科医の育成、病理が非常に少ないということでありまして、これでは精度の精密化、 登録の精密化をはじめとして診断ということにも大きな問題があるように思います。  急性期の病院の在院期間がますます短縮していきますので、あとのフォローを、これ を連携病院にお願いしなければいけない。やはりかなり強いネットワークを作っておき ませんと登録の精度が下がるということと、あとのフォローのケアも水準が下がるとい う懸念もあります。以上です。  垣添座長  内田委員、どうもありがとうございました。続きまして高嶋委員、お願いいたしま す。  高嶋委員  四国がんセンターの高嶋でございます。私は地方がんセンターの立場からこの検討会 に加えていただいたものと理解しております。そこで当院の現状と愛媛県の現状を加え て簡単に説明させていただきます。  当院は360床の国立病院が昭和54年に名称を変更しましてがんセンターに特化したとい うことでありますが、その当時、がんの占有率が30%そこそこでありまして、名称を変 えただけでなかなか地元の認知は得られないということで、当時の病院幹部は大変苦労 されました。現在、漸く90%の占有率になりましたが、その間の追い風となりましたの が全がん協への加盟、平成6年から国立がんセンターを中心としました多地点テレビ会 議システム、がんネットの接続、また、平成9年からは国立がんセンターから副院長、 あるいは臨床研究部長の派遣、当院の幹部医師の研修等の人事交流によりまして体制整 備並びに地元へのアピールができたというふうに考えております。  現在、当院の現状でありますが、外科系のレベルにつきましてはそれほど問題はあり ませんが、やはり内科系には大きな差があると考えております。特に各がん種を横断し た化学療法を行うための化学療法科の設置を以前から考えておりますが、定員増が困難 であり、地方では腫瘍内科医がほとんどいませんので、現在、まだ、実現しておりませ ん。  愛媛県におきましても各医療圏で中核施設ががん医療を行っておりますが、やはり当 院と同じように外科系の、大部分のがんにつきましてはそれほど問題はありませんが、 やはり化学療法、緩和医療、特にモルヒネの使用の量の差など中央と大きな差がありま すし、当院との間でもやはり格差はあります。  外科系の中でも特にさきほど少し出ましたが、乳がんにつきましては非常に大きな格 差、これは地方格差というよりも全国的な施設間格差があると考えております。私は乳 がん外科医でありますが、乳がんと言いますのは乳房切除術が外科のがん手術の基本的 手技でありまして、外科医ががんの手術を学ぶための入門的な位置づけになっておりま す。したがいまして、外科がある施設ではどこでも乳がんが行われているということが これまでの歴史的背景でありました。  ところが乳がんにつきましては早期から全身に転移を伴う全身病であるということが わかってまいりまして、現在、治療は手術から抗がん剤を中心としました薬物療法に変 わってきております。しかしながら、乳がん診療、外科医が独占してきたこともありま すし、腫瘍内科医が非常に少ないこともありまして、現在、国際標準として認められて いる化学療法が、これは非常に専門的になりますので外科医ではなかなか難しく、完全 に行えていないという状況があります。  また、手術につきましても早期乳がんの標準手術は放射線を併用しました乳房温存療 法でありますが、この適応に差があること。また、放射線治療医が非常に少ないため に、放射線を併用しない乳房温存療法がかなり行われているということがありまして、 現在、欧米諸国では既に乳がんの死亡率は急速に減少しておりますが、日本はまだ上昇 していると、こういった状況にあります。したがいまして、やはり抗がん剤が使える腫 瘍内科医の今後の育成が非常に重要かなというふうな気がしております。  全国的な格差につきましてはさきほどからいろいろお話がありましたので省略させて いただきます。以上です。  垣添座長  高嶋委員、ありがとうございました。続きまして野村委員、お願いいたします。  野村委員  がんセンターの野村でございます。私どもは行政とタイアップしていろいろ均てん化 については今まで努力してきたところであります。そこにおける課題についていくつか お話をさせていただきたいと思います。  ひとつは、この均てん化のための組織づくり、この点でございます。次に財源的な裏 付け、こういったものがぜひ、必要であるということ、人的交流の促進にはどんな問題 があるかと、この3つに限ってお話をさせていただこうと思います。  まず、関係組織のことでございますが、日本には3つの均てん化と言いますか、それ に向けた組織がございます。ひとつは全がん協と一般に言っていますが、全国がん成人 病センター協議会、これに今、30施設が全国で加入しておるのでございますが、ここに おいてやはり均てん化についての検討をしているというところであります。  もうひとつは、国の方で施行しているがん政策医療ネットがございます。これはひと つは高度専門医療施設、ここでは国立がんセンターでございますが、その他に基幹医療 施設として8ブロックあり、それぞれブロック毎に指定されております。専門病院施設 が49施設あります。こういう組織があって、この中でネットワークを組んで医療の水準 をアップしていこうというような方向で進んでいるわけであります。  次に最近、指定されておる地域がん診療拠点病院でございます。これは去年、87、こ れから今年中に150ぐらいにするというような予定だそうでございますけれども、この 3つの組織があって、これがまだ整合性が取れていないというようなところがございま す。これをいかに整合性を取って機能的に活用できるように、あるいは活動していただ けるようにするかが今、大事ではないかなと思います。これは組織の面でございます。  財源的裏付けでございますが、がん政策医療ネットワーク、私もいろいろこの提案に 関わってきたのですが、3年間目標を決めまして、各施設に年度毎に目標達成をお願い しているというような状況で進めてこられたと思います。その中には自助努力で達成し なければならないということが大きな問題点として存在してきたということではないか なと思います。  例えばMRIの設置を専門病院では何年頃までにやると目標が出ても財源がなければ なかなかできないものです。財源を捻出する方向づけ、これをいかに可能にするかとい うことが非常に大切な問題ではないかなと考えております。  それらについては例えば一時的な補助金では各施設が補助金が切れたら終わりになっ てしまいますので、継続性のある計画が出来ないというようなことになりますので、何 か知恵を出して、継続性のある将来計画、そういったものができるような形で進める必 要があると考えています。  例えば診療報酬、それにある基準を満たせば反映できるというような形の方策などあ るのではないかなと思います。それらに知恵を絞らなければいけないだろうと考えてお ります。  人的交流の促進でございますが、がんセンターにも毎年、かなりの人たちが研修に来 ております。それらの人たちの研修はいいのですが、各拠点病院なり、それなりの病院 からがんセンターなり、あるいは他の全がん協の病院なりに研修をさせようという場合 に、やはり各施設のスタッフがぎりぎりいっぱいで、そうする余裕がなければ送ること もできないというような事情があるのだろうと思います。これをいかに解決するかがこ れからの問題ではないかなと考えます。時間がきましたのでこれで終わらせていただき ます。  垣添座長  ありがとうございました。続きまして西條委員、お願いします。  西條委員  国立がんセンター東病院の西條でございます。今日、私の立場といたしましては、も ちろん国立がんセンターからということがありますけれども、それ以外にひとつは均て ん化の補助金の主任研究者をお任せいただいているということと、日本臨床腫瘍医学会 の理事長をやっておりますので、その立場でお話を進めさせていただきます。  さきほどから病院間格差、あるいは地域格差のことが言われておりますけれども、地 域で教育、あるいは診療のコアになっているのは特定機能病院がコアになっていると思 います。これは今まであまり議論にならなかったことだと思うのでありますけれども、 特定機能病院は大学病院が主でありますから、外科手技につきましては日本はかなり均 てん化されていると思います。むしろ、均てん化されすぎているというぐらいされてい るような気がいたします。  一方、臨床腫瘍医、これはアメリカのメディカルオンコロジスト、腫瘍内科医と同義 語なのでありますけれども、臨床腫瘍学というのは、よくご存じかと思いますが、メス を持たずにがんの診断から治療までの全分野をカバーする学問でありますけれども、米 国では、あるいは欧米諸国では内科の中に独立した存在として存在して、内科全体の10 %ぐらいのアクティビティを占めております。  しかし、日本の大学の講座に臨床腫瘍学のあるところは極めて少ない。したがって、 がんの薬物療法の教育が総合的に行われておりませんし、国家試験の出題基準にも臨床 腫瘍学のところはありません。したがいまして、国家百年の計、あるいは十年の計から しますと、この講座を作るということがエッセンシャルになってくるわけであります。  なぜかと言いますと、ひとつは教授、助教授、講師、助手といった人材が特定昨日病 院で複数に養成されます。学生時代の講義でイニシエーションをできるということ、卒 後研修をされた方が大学に戻る場所やポストがないわけですね。今、講座がないわけで すから。したがって、臨床腫瘍学を勉強するというインセンティブが働かないというよ うなことがあります。にも関わらずどうしてそういう声が大きくなってこないかと言う と、これはやはり特定機能病院としての大学病院で外科の先生が何らかの形で化学療法 を全部まかなえると思っておられるからなのです。これは我々が一度作りました、シン ポジウムをやりましたときはまさにそのような声が出されました。  一方我々としてはやはり内科の部門として認知されるよう努力していかないといけな いだろうと。では、臨床腫瘍学講座のない状態でどういうように均てん化していくかと いうことを考えます。  すなわち診療教育をどうするかということでありますけれども、実地教育はこれは全 がん協の病院、あるいは特定機能病院で行うことになります。野村先生が具体的な戦略 を述べられましたので私はお話をいたしませんけれども、そうしますと、それ以外では 学会が中心となってこの教育をやることになります。今までの日本の学会というのはミ ッションがはっきりしていなくて、戦略プランが具体的ではございませんでした。従っ て出席しても教育にならないというような問題がありました。  日本臨床腫瘍学会では臨床腫瘍学に関する総合的な教育に関するカリキュラムをきち んと作って、そのカリキュラムをカバーできるようなセミナーを何回も繰り返して行っ ていく。そして、教育のためのテキストを整備していく。そして、学会自身の運営につ いてはうまくごみみたいな演題をたくさん集めて発表しても、そんなものを聞く必要は 何もないわけで、現在、日本の研究者は臨床腫瘍学に関するいいデータが出たら必ず米 国臨床腫瘍学会(ASCO)へ最初に持っていきますから、したがって、日本の学会は それをエデュケートする場にすればいいというのが私の考え方でありまして、臨床腫瘍 学会ではそのようにしております。  あと、インセンティブをもたせる必要があります。そのためにはやはり診療報酬に跳 ね返ってくるようなこと、あるいは勉強した人にとってメリットがあるというようなシ ステムを作っていかないといけないというようなことがあります。そのひとつの方法が 専門医だと思いますけれども、それ以外にも何かポッシィブなことがあれば、ぜひ、検 討していきたいというように思っております。以上であります。  垣添座長  ありがとうございました。続きまして千村委員、お願いします。  千村委員  鹿児島県保健福祉部長の千村でございます。私は県におきます地域の医療行政を担当 しているという立場からこの会議に参加をさせていただいているというふうに考えてお ります。  まず、鹿児島県につきまして簡単に申し上げますが、ご承知のように九州最南端にご ざいまして、南北が600km、有人の離島が27あるという県でございます。非常に離島が 多いということが特徴のひとつかなというふうに思っております。人口が約170万ござ います。  そこで県におきますがん医療のレベルということなのですけれども、地域がん登録か ら見ますと死亡が平成13年ですが、4,897、罹患数が1,397ということで、罹患数と死亡 数の比を見ますと0.29ということです。1.5以上であればある程度のレベルを持ってい るということから考えますと、地域がん登録に課題が多いのだろうなというふうに思っ ています。  したがいまして、県内のレベルを数値をもってこうであるというふうに申し上げるの はなかなか難しい状況ではございますので、地域での中核的な医療機関の実情を少し散 文的に申し上げます。まず、県内二次医療圏のひとつで中核的な医療機関でございます ある病院を見ますと、ここは人口33,000でございますけれども、病床が150、医師が18 名います。院内がん登録は、まだ、実施していません。がんの治療に関しましては、 2003年の4月1日から2004年の3月31日までの1年間で、例えば手術例を見ますと胃が んの症例が7例ございます。肺がんが同じように7例、乳がんが5例というような状況 でございます。全国各地にあるがん診療の中核的な医療機関と比べてみますとかなり症 例数が少ないのではなかろうかなというふうに思っているところであります。  もうひとつ、地域のまさに二次医療圏の中でさらに狭い地域を見ております医療機関 について見ますと、これはまた別の医療圏でありますが、病床が40床ありまして、医師 が3名というところであります。ここにつきまして見ますと年間でがんを含めまして全 身麻酔を使った手術というのが7例行われています。ここは二次医療圏の中では一部の 地域を担当するところでありまして、そういった意味では中核的な施設ではございませ んが、県土の広さから見まして実際にはその地域においていろいろな医療を担当せざる を得ない状況になっているということでございます。  また、別の医療機関でございますが、離島にあります、ある中核的な医療機関につい てお話を伺いましたが、ここでは例えばお年寄りががんにかかって治療を受けたいとい うときに、子供さんが県の本土なり、あるいは大阪、東京なりに行っておられる方はが んの医療を受ける場合にその子どもさんを頼って行かれるというケースがあるようで す。また自分の家の近くで医療を受けたいという方がおられる場合には、県の中核的な 医療機関から医師のサポートを受ける、これは派遣を受けるとか、アドバイスをもらう といったようなことで対応しているというような実例があるということです。  こういったことから課題として考えられると思いますのは、地域における人材の確保 をどうしていくかということ。これは医療のレベルを上げるための研修ですとか、ある いは地域の医療機関への医師の派遣などの、こういったものも含めまして、いろいろネ ットワークををどう作っていくかということが課題なのではなかろうかと思います。  また、我が県について特に申し上げますと、さきほど申し上げましたように基礎にな るデータを集めるための地域がん登録、これをどう進めていくかということが課題で す。以上でございます。  垣添座長  ありがとうございました。後委員、お願いいたします。  後委員  九州大学の後でございます。私は医師になりましてから基本的には外科医としてその 道を歩んでまいりましたけれども、その途中で基礎医学の方をしておりましたり、臨床 医としては外科医として大学病院における勤務、あるいは中小の規模の病院における勤 務、診療所にお手伝いに行ったこと、都会においても田舎においても勤めたこともござ いますし、また、さらに行政の場においてこのようながん対策に従事したこともござい ます。このような立場、経験を踏まえまして本日、参加させていただいているものと思 いますので、発言をさせていただきます。  私はまず、がん患者さんがこの度のこういった検討会にお求めになっているというこ との問題意識の認識について、やはり治療成績が非常に高いというところでぜひとも、 この知名率の高いがんという疾患の治療を受けたいというご希望が強いのだというふう にずっと感じておりますので、こういった認識を、こういった問題への対応を具体的に 目に見える形で行うというスタンスを崩さないように議論する必要があろうかと思いま す。  そういう前提の下に、まず、がん医療に見られるばらつきについて結論として私もば らつきがあるのだと思っております。既にばらつきの検証というのが地域がん登録のデ ータなどを見ますと既に行われていると言ってもよろしいと思います。  例えば発生するがんの種類自体も全国でばらついておりましょうし、治療成績につい てもがん登録のデータなどを見ますとこれはばらついているという実態があると思いま す。がん登録については何度かご発言がございましたけれども、健康増進法16条におき ましても生活習慣病の発生状況の調査の把握、状況の把握ということで努力義務が課さ れておりますので、ぜひ、推進すべき事柄であるというふうに考えております。  あとは他にばらつきと言いますと、やはり医師からの説明の内容のばらつきであると か、あるいはがん患者さんが入手するがん医療情報のばらつきと。こういったばらつき もあるのではないかと思っております。  そして、地域のこういった格差を生み出している要因としてはやはり専門家の不足と いったものがあろうかと思います。ただし、それは専門医という制度として行うべきか どうかというところは議論が必要かと思います。と言いますのは、どのような僻地にい きましても私の先輩で北海道の道立診療所で僻地医療に従事している方がおられるので すが、そちらにお電話して2、3日前に聞きましたところ、やはり内服の抗がん剤の処 方などはそういった診療所でも行っているということでありますし、一専門医制度の問 題ではなく全体の底上げという視点もこれは欠かせないということがございますし、さ らにその上にしっかりした専門医制度を作るということが必要かと思います。  専門医制度につきましては既に走り出していたり、走り出し始めているような学会の 取り組みというものもありますので、そういったものをよく検証して欠けているものが あれば、それに必要な機能を求めるというような形の提言を出すべきであろうかと思い ます。 また、このような問題は我が国にとっての問題のみならず、世界的にも同じよ うな問題はあるかと思いますので、欧米のがん医療の水準を高めるための試みといった ものについても少しどなたか詳しい方がおられれば聞いてみたいところだと思っており ます。  医学生の教育についてもさきほどから臨床腫瘍学という講義というもの、講座という もの、出ましたけれども、現在の卒前教育上のコアカリキュラムに特別、臨床腫瘍学と いうことを設けておらないわけですけれども、こういったものをカリキュラムを作られ たときの考え方とか、果してそういう講座を作ることが解決にどのぐらい資するのかと いうこともよく議論する必要があろうかと思います。  あと、人材交流につきましてやはり県とかブロック、都道府県といったところで行政 の関与というのは非常に重要と思っておりまして、現在では個人個人のつながりで医師 の人材交流というのはあると思いますけれども、そういった場を提供するであるとか、 情報収集というところにおきましてはやはり行政機関なりの関与、地域の医師会とかの 団体の関与というのは非常に重要であると思います。そういった地域ベースの政策を進 めるにあたって、まだ、始まったばかりですが、地域がん診療拠点病院制度というのは 非常に今後、重要になってくるというふうに思いまして、育てていくべき施策であると 思います。  最後にこのような施策を進めていくにあたりましては、やはりこれまで以上に行政と 学術団体との一層の連携が必要だと。それによって実現性が上昇していくものというふ うに思います。また、それぞれがそれぞれの立場で国民に頻繁に説明をして、極端な誤 解とか、受け止め方をされないように配慮していくということが必要であろうかと思っ ております。以上でございます。  垣添座長  ありがとうございました。今度、こちらにまいりまして山口委員、お願いいたしま す。  山口(直)委員  山口です。私は疫学公衆衛生学の立場でこの検討会に呼んでいただいたと理解をして おります。  がん医療の均てん化ということで目的は明確でありますが、実現をするまでのプロセ スというものをやはり充分に検討する必要があるのではないかというふうに考えており ます。今まで先生方の議論をお聞きして感じましたことは、ひとつは人材育成、あるい は全国的な組織化等々、非常に重要なテーマが挙げられてましたが、時間的に考えます といずれも20年、30年後に実を結ぶような、そういう課題ではないかと考えます。  今回の均てん化という課題をもう少し時間的に短い時間、例えば10年間ぐらいで実を 結ぶような施策というものを考えていくためには、システマティックな展開が必要なの ではないかと考えます。そのプロセスは一般的なプロセスと同様だと思いますが、第1 に実態を正確に把握するということ。第2に格差を生んでいる要因をきちんと分析する こと。そして、第3に改善方法の検討と評価。こうした研究的な段階を踏んだ上で有効 な改善方法を全国展開して、さらに最終的には評価をしていく。このプロセスを時間軸 の中で展開していくことが大変重要なのではないかと考えております。  その中でひとつ、疫学的な視点で言いますと、ひとつはがん医療の成果を測る物差し をどうするかと。今まで5年生存率等、あるいは死亡率で成果を測ってきたわけです が、短期的な成果を測っていくには5年生存率、あるいは死亡率というのはいろいろな 要因が複雑に絡んでおりまして、なかなか感度の高い物差しになりにくいということが ありますので、ひとつ、研究的な側面で言いますと、短期的な、感度の高いアウトカム をぜひ、指標を設定して検討していく必要があるのではないかと考えます。  例えば短期の、90日以内の死亡とか、あるいは化学療法等で言いますと重篤な有害事 象の発生状況等々、少し視点を変えたアウトカム指標を検討することも大事なのではな いかと考えます。  もうひとつ、がん医療の内容につきましては最近、医政局の方のプロジェクトとしま して診療ガイドラインの整備が進みつつあります。その中でがんにつきましても肺が ん、乳がん、前立腺がん等々、診療ガイドラインの整備が進んでおりますので、診療ガ イドラインに基づかない治療を許さないとか、そういうことではないと思うのですが、 ひとつの目安としましてがん医療の内容を評価をする際に診療ガイドラインというもの をひとつ中心に置いて医療の治療の内容を評価していくという手法も検討する必要があ るのではないかと思います。  最後にさきほど最初に申しましたプロセスの最後の全国展開評価というところで、ど うしてもやはり院内がん登録等々で全国的な評価をもう一度し直す必要性が最終的に出 てまいりますので、今のうちから全国的な評価をするための情報インフラをきちんと整 備していくということに力を入れていくということも必要なのではないかと考えます。 以上です。  垣添座長  ありがとうございました。続きまして津熊委員、お願いします。  津熊委員  私は大阪府がん登録を担当してがん医療における地域の実態、あるいは地域格差の問 題というものに注目しておりましたので、その点につきまして若干、述べさせていただ きます。  地域格差の要因ということでありますが、その場合は地域に一定レベル以上の医療機 関がない、あるいはアクセスが乏しいといった、いわゆるハード的な問題と、医療機関 はあるけれども連携がとれていない、あるいはがん医療に関する最新情報が住民に伝わ りにくいといったような、言わばソフト面、あるいは情報面と呼ぶのでしょうか、そう いった問題があると思います。地方ではどちらかと言いますと前者、都会地では後者の 問題が大きいのではないかと思っております。精度に一定の限界はあるのですけれど も、地域レベルでがんの実態とその成果をモニタリングするということを、大きな課題 としております地域がん登録は、こうした問題の所在の解明に役立つものでありまし て、各委員の先生方からご指摘のあったところでございます。  大阪府がん登録での分析結果を勘案いたしますと、例えば大阪府の中に11の医療圏が ございますけれども、その中で見ましても、例えば5年生存率は診断時の進行度の違い を考慮しても差が残るといった場合がございます。それにも大小がございます。また、 施設間での治療成績を見ますと、肺がんなど、比較的高度な専門技術が要請される分野 でやはり差があるといった実態がございます。さらに大阪府のがんの患者さんの生存率 は他の府県に比べて若干低いというような実態も明らかにされてきております。  このようにがん医療における地域の現状を正確に把握して、格差の要因を明らかにす る、そして対策を講じていくということで、地域がん登録、また、その基盤となります 院内がん登録の整備が重要であると思います。ただ、我が国では欧米諸国と比べまして このあたりの基盤整備が大変遅れているということをまず指摘させていただきたいと思 います。  もうひとつ、施設間の生存率差ということが問題になります。この生存率差には診断 時のステージの違いを考慮する必要がありますが、それでも比較的小さい、あまりない という領域と大きい領域とがございます。ただ、施設間の生存率比較というのは、さき ほど山口委員からもありましたけれども、なかなか単純ではございません。進行度だけ ではなくて合併症の有無など、必ずしもがん登録だけで把握しきれていない要因が複雑 に絡むからです。  大阪府でも10の地域がん診療拠点病院が制定されまして、その施設で主な治療を行い ました患者の5年生存率を大阪府がん登録から計算し、ホームページで公表しました。 するとマスコミ各社は10の施設間の生存率の差というものに着目して、低い成績が出た ところはいろいろご迷惑をおかけしたということがございました。  ただ、私自身はこういう一定レベルの拠点施設の成績を算出して公表するということ は、この一定レベルの生存率を一般の方にアピールするという意義が大きいという思い ます。そのレベルの生存率と地域全体の生存率の比較をして、その差がどうであるかと いったことを吟味するべきです。中核となる施設は自分のところの生存率を上げるとい うことにもちろん心していかなければいけませんけれども、地域全体の患者さんの生存 率のレベルをいかにして上げるかということにむしろ精力を注ぐべきで、施設間の生存 率差というものをあまり露に出すということについては問題がございます。もちろん大 阪府の場合に10の拠点施設が既にございますけれども、その中でも全がん協の施設であ る大阪府立成人病センターの成績は比較的良いという分野がございますので、その技術 移転も積極的に進めるべきであるというふうに思います。  最後に、はじめにも申し上げたことでありますけれども、がん対策の羅針盤になるが ん登録の梃入れと言いますか、これが非常に重要ではないかと思っております。東北大 学の久道名誉教授が「評価なくして対策なし。登録なくして評価なし」というような言 葉を残されておられますけれども、この点での国のリーダーシップを期待したいと思い ます。以上でございます。  垣添座長  ありがとうございました。続きまして岡本委員、お願いします。  岡本委員  神奈川県立がんセンターの岡本でございます。私は疫学研究、特に今、津熊委員がお 話された地域がん登録の方もちょっとお手伝いしておりまして、あと、がん検診の評価 とか、がん患者さんのQOLの調査などをやっております。  その中で15年前ぐらいから全がん協が中心になっています研究班に参加することがご ざいまして、ずっとオブザーバー的に全がん協の研究班の方をお手伝いしながら、最近 の4年間は研究の代表をさせていただきました。  全がん協では毎年、調査をやっておりまして、その各病院、さきほど野村委員からお 話がございましたように、現在では30施設がございますけれども、その中の各病院のハ ード面、ソフト面を毎年、きちんと調査をしてどういうふうな医療状況であるかという ことを把握していました。  その中で最も大事だと言われているのが、地域医療計画に基づいて病診連携、病病連 携を確実にやることということで進んでまいりましたけれども、実際には実態が伴って いないということが現実でございました。特に各参加施設の全がん協の加盟施設の機能 評価をどうするかということで、これはひとつは評価の指標としましてひとつは生存率 を出そういうことで、昭和50年ぐらいでしょうか、群馬がんセンターにいらっしゃいま したミワ先生が院内がん登録を充実させるということで活動を開始されまして、院内が ん登録の手引きみたいなものを作成されておられます。  それで院内がん登録が充実したかというと、実はそうではなくて、私ども、生存率を 毎年、計測していますけれども、やはりうまく結局、院内がん登録が充実していないと いう全がん協に加盟している施設でも充実していないということがわかりました。  そのためにがん医療の評価基準、さきほど山口委員からもお話がございましたけれど も、がん医療の評価をどういうふうに評価するかという基準がないという、今のとこ ろ、死亡率だけがあるのですけれども、その他の基準がないということで、これは早急 にひとつさきほど山口委員は短期的なものが必要だということもお話されましたけれど も、そういった評価基準がどうにかして作るべきではないかということが1点でござい ます。  もう1点でございますけれども、高齢化に伴ってがん患者さんが増えているというこ とと、もうひとつ忘れてならないのはがんの告知状況でございますけれども、15年前は ほとんど告知されていなかった状況が最近では90%から99%ぐらいが告知されていると いうことでございます。そうなりますと多分、今までがん医療というものは非常にクロ ーズドであったものが非常にオープン化されてきたということで、こういう状況が今、 きているのではないかと。  そうしますと全がん協でがんセンターと名のついたところに患者さんがどっと押し寄 せるようなことがございまして、今、全がん協の中では入院待機患者が増えているとい うこと、逆に入院期間をだんだん短くして埼玉がんセンターではもう17日というふうに 極端に短くなっているところもございます。  こういうふうにがん患者さんの増大で入院期間が短く、ベッド数は今のところ、全が ん協の中でも増えておりませんので、結局、がん患者さんが巷にあふれるということに なるわけですけれども、そのサポートをどうするかと。さきほど内田委員もおっしゃっ ていましたけれども、地域でがん患者さんをどうサポートするか、それは医療機関のネ ットワークというものが重要で、私は全がん協の施設の研究から評価基準の問題、地域 でのがん患者さんのサポートということが必要ではないかというふうに感じておりま す。以上でございます。  垣添座長  ありがとうございました。続きまして山田委員、お願いいたします。  山田委員  東北大学の山田でございます。私は専門が放射線腫瘍学というか、放射線治療ですの でその点から意見を述べさせていただきます。  がん治療の中で放射線治療の占める役割というのは手術、放射線、化学療法と3本柱 のひとつでありまして、欧米ではがん患者の約5割、日本ではだいたい3割ぐらいが放 射線治療を受けているということでございます。ただ、高齢化がこれから進みますと放 射線治療の役割がますます増加していくということか予想されます。  放射線治療の最大の特徴は手術に比較して治療医による差が少ないということでござ いまして、例えば食道表在がん、食道の早期のがんなのですが、これをとってみまして も学会に行って外科の先生のお話を聞きますと、皆、90%以上で、食道の表在は放射線 科には任せられないというような話を聞きますが、全国集計をちょっと見てみますと5 年生存率は70%とか60%です。  これは5年生存率が早期の食道がんで40〜50%という施設があるということの証明で はないかと思われます。放射線治療はそれに比較して術者による差がなく、放射線治療 の方はだいたい70%とか60%の5年生存率を報告しておりますので、総合的にみて食道 表在がんの治療成績は手術と同じというような報告を私どもはしてきております。  ただし、放射線治療が全国均一、あるいは施設すべて均一かと申しますと、これはそ うではないというのがこの間のいろいろ報道されております医療事故で明らかになって おります。特に過剰照射とか、過少照射というのが昨今、問題になっておりますが、こ れが報告されているのは非常に優れた施設の報告が多いという問題もあります。何を意 味しているか申しますと、放射線治療のチェックもできない施設がかなりあるというこ とでございます。  実際にライナックを有している施設が全国で770ぐらいあるのですが、そこに専門医、 いわゆる放射線の治療認定医は400強しかいないということで、さきほどからも指摘さ れておりますように放射線治療医があります。また、放射線治療を管理しているのは技 師さんたちでありまして、欧米のように医学物理士と言って医師をサポートするような 職種が日本では今のところいないというのが現状で、学会としてはこの育成というか、 この制度づくりに今、全力をあげているところですが、そういったところでございま す。  放射線治療のこうした格差、特に放射線治療の場合には治療成績が報告されている施 設はだいたい均一な報告がなされているのですが、むしろ報告がない施設の方が圧倒的 に多いわけで、そういったところの治療成績というのは非常に惨憺たるものではないか というふうに予想されますし、事実、そういったデータも出ております。  放射線治療についてはやはり今の数少ない治療医を一気に倍とか3倍に増やすという ことはこの10年では不可能であろうと思いますので、さきほどからも言われております ようにセンター化の促進があるのではないかと思います。  ライナックがいろいろな施設にあるということは、これは非常にいいことでありまし て、放射線治療というのはがんを治すための治療と同時に痛みを取るとか、要するに姑 息的な治療というものもございますので、センターでは根治的な治療を中心に行ってい ただいて、センター以外のところでは姑息的治療を中心にやっていただくというような 棲み分けが必要ではないかと思います。  ただし、センターではやはりさきほどから言われておりますように、治療成績を公表 することが必要であると思います。この治療成績公表に関しても診療管理士を雇うなど お金がかかるというようなこともございますので、診療報酬によってセンターへの支 援、あるいは放射線治療を支える、品質を支える医学物理士とか、品質管理士と言った ようなものへも診療報酬によるサポートが必要ではないかと思います。  今、放射線治療においてはハードの面が非常に先行して進んでおりますが、ソフト面 が非常にプアだというのが日本の現状ではないかと思いますので、この会でソフト面に 関する検討もしていただければ幸いでございます。私は放射線治療の代表と同時に東 北、北海道と言いますと必ず医療過疎の代表に上がっておりますので、そういった地域 の代表としても発言させていただきたいと思います。以上です。  垣添座長  ありがとうございました。続きまして北島委員、お願いします。  北島委員  慶應義塾大学の北島でございます。本日は首都圏にある大学病院を代表する立場並び に日本がん治療学会理事長としてお話をするようにというご下命をいただきました。  さきほど坂口大臣からもお話がございましたように、平成15年3月に「今後のがん研 究の在り方に関する有識者会議」、この報告書を踏まえまして坂口大臣のご指導により まして第3次対がん10か年総合戦略が制定されました。私もメンバーの一員として議論 に参加させていただきましたが、特により良い質の高いがん医療の均てん化、これに関 して大学病院の使命といたしましては研究成果を幅広く応用、転化する研究等のがん研 究、これを一層推進することによって新しいがん治療、あるいは予防対策を押し進めて いくと、こういうふうに考えているわけでございます。  そこで本日は両方の立場から「質の高いがん医療の均てん化を目指すには」について お話しさせていただきます。時間の都合で4点に絞ってお話をさせていただきたいと思 います。さきほど野村委員からお話がございましたように、均てん化に際してはやはり 組織の構築、あるいはネットワークの構築と整合性が必要と考えております。特に国立 がんセンターを中心としたがん診療拠点病院、あるいは全がん協との横の連携、さらに はお互いのネットワークの確立、レベルアップ、こういうことが必要でございますが、 このがん拠点病院のグループの中に特定機能病院が現在、含まれていないのが現状でご ざいます。81の特定機能病院を何かの形でネットワークの一部としてやはり参画させて いただく必要があるのではないかと考える次第であります。日本がん治療学会の理事会 においても要望事項のひとつとして出ております。  さらに学会との連携、これも重要な課題だと思いますが、日本がん治療学会は1万4 千人の会員を擁する横断的ないろいろな診療科が参加している学会でございまして、幸 いなことに本年の10月には全がん協の会議ががん治療学会の会議中に開催されると。そ ういうことで学会と将来的には何かこのようながん関連病院との連携を我々も模索して いきたいと考えているわけでございます。  次にさきほどもいろいろな先生方からお話がございましたように臨床腫瘍医の育成、 これは非常に重要な課題だと思います。臨床腫瘍医は腫瘍内科医、あるいは外科医、婦 人科医、放射線科医等々、全診療科のがん治療を専門とする医師の総称でございます。 特にがん治療は薬物療法、手術療法、さらに山田委員が言われました放射線治療、これ らの総合的な医療と考えております。そしてその対象がん種も様々でございます。一人 の医師、あるいは一領域の専門医がすべてを決定する従来型の医療ではなく、コーメデ ィカルを含めたチーム医療の広範な展開に資する制度としての機能を今後、求める必要 があるのではないかと思っております。  しかしながら、本邦のがん治療基盤、これはご存じのように現在、欧米型の専門医制 度を受け入れるにしてはあまりにもその基盤が脆弱であります。そこで考えてみますと 西條委員、丸木委員のこれからご報告があると思いますが、臨床腫瘍学教育の欠如、学 会主導の専門医育成制度は横の連携に乏しい。がん治療において腫瘍内科医は必要不可 欠でありますが、内科学会においてすら正式に認知されておりませんし、腫瘍外科医に おいても同様な状況がございます。  平成14年度のがんの総患者数128万、死亡30万、23.8%が亡くなっております。これ らの患者さんの50%に抗がん剤投与を対象とした場合、64万人でがん治療専門医が1 人、20人から50人を扱うとすると2万人の腫瘍医が必要という計算になります。  3番目といたしまして山田委員のご発言にもありましたように、日本がん治療学会は がん治療専門医制度の確立を急いでおります。本学会におきましては1995年6月から臨 床腫瘍医制度検討委員会が設置されまして、10年の年月をかけて充分な議論を進めてま いりました。当学会は全診療科を横断する学会であることから、エキスパートの育成は 各診療科別の学会で、本学会では全診療科におけるがん治療の共通基盤となる臨床腫瘍 学の知識の技術に習熟した生命倫理に配慮したがん治療に従事する優れた医師の育成を 目指しているわけでございます。  4番目といたしましては、2003年にがん診療ガイドラインの作成を開始いたしまし た。日本がん治療学会で委員会を設置いたしまして薬物療法に限らず、症状緩和及び副 作用対策を含めたコンプルヘンシィブ・キャンサー・ケアの質向上を目的としてEBM の概念に則った情報提供、すなわち臨床腫瘍医が検索する科学情報として患者さんとと もに共有できるがん診療ガイドライン、これを目指しているわけでございます。  最終的にはがん治療の均てん化を求める場合、やはり我々、医師は患者さん、あるい は国民の立場からの視野で物事を考えていく必要があると、このように考えているわけ でございます。どうもありがとうございました。  垣添座長  ありがとうございました。続きまして丸木委員、お願いいたします。  丸木委員  読売新聞の丸木と申します。私どもの新聞では昨年の12月から4部19回にわたりまし て一面で「がんに挑む」というテーマで連載をやりました。一部はお手元に入れさせて いただきましたけれども、この中で一番大きな問題として出ていましたのは今回のテー マであります「均てん化」ということです。  「治療の質に地域格差」という見出しのものをお配りさせていただきました。詳しく はここをお読みいただければいいのですけれども、山形市の市長さんが自らがんになっ て、その地域格差を体験されたと。これではいけないというので国立がんセンターから 専門家を招いて研究を重ねて、結果的には放射線治療機を入れたという地方での前向き の取を紹介しました。今、現状においてはどういうことが行われているかというと、全 国から東京都内の国立がんセンターはじめ有名病院に患者が殺到し、国立がんセンター では手術待ちが千人を超えるとか、半年後でないと治療を受けられないと、こういうふ うな実態があります。もう皆さん、説明するまでもなくご存じのことと思います。  では、なぜ、このようなことが起きるかということですが、もう各委員がおっしゃら れたことでありますけれども、重ねて申しますと結局、治療成績、もしくは手術成績に 差があるということであります。さきほど岡本委員がご説明になりましたけれども、が ん医療の地域中核の病院ですら、生存率に、詳しい説明は省きますけれども、12ポイン トの差があると。こういう実態を国民が知った場合には、では、日本のがん医療はこれ でいいのかというのを感じるのは当然だと思います。  では、その原因は何かというと、私がいまさら繰り返すまでもありませんけれども、 財政的な問題であったり、地方の人材不足、専門家がいない、要するに国立がんセンタ ーに研修に人を出したいと思ってもそれだけの余裕がないといった、専門家の人事交流 の問題点というのが浮かび上がってくるわけであります。  この連載の中で指摘しましたが、病理医の問題にしてもアメリカに比べて非常にお粗 末な状態であるとか、放射線治療医にしても、さきほど山田委員もお話になりましたけ れども、専門治療施設に充分な専門医がいないというのが、これは患者の側から見て大 変な問題ではないかと思います。  もう何回も出ておりますけれども、臨床腫瘍医、これについては米国はそういう試験 をパスしたのは約9千人と言われています。ただ、これから日本の場合では認定制度が まもなく動き始めると思うのですけれども、外科、内科、いろいろセクションが違いま すけれども、これはもっと充実させる必要があるのではないかというふうな気がいたし ます。  がん診療拠点病院に関しましては地域格差がこれもあるということであります。ある 県においては3つ、4つ、近くのところにがん診療拠点病院があるにも関わらず、他の 県では0であるということがあります。お話を聞きますと初年度に200万円の補助金し かでない。200万円の国支援ではどうやっても非常勤職員を一人雇うぐらいではないか と、インセンティブがどこにあるのかと、こういうふうな声も聞きました。  煎じ詰めて言いますとこれからのがんの均てん化の問題点というのは、3つあると思 うのですね。ひとつは専門家の人材育成であり、2番目はその専門病院のネットワーク づくり、北島先生がおっしゃったように全がん協とでは特定機能病院はどう協力すれば いいのか、内科、外科、放射線科、そういう科を超えた患者中心のネットワークをどう やって作ったらいいのか。  3つめがやはり情報公開だと思うのです。やはり患者が望む治療成績の公開というの はこれからの流れであります。そのためには、実態を反映した誤解のないデータの整備 と公表が必要です。そのためには、これまでも出ておりますけれども、院内がん登録で あり、地域がん登録が不可欠です。ところが地域がん登録、院内がん登録にしても統一 したフォーマット、いわゆるルールができているのか。ある病院では先生が自分の治療 成績を出し、ある病院では、ステージに基づいて出した。数字が一人歩きしたら、患者 からすると非常に誤解を招くということになります。やはりそれには国なり、権威ある 団体が指導してそういう情報公開に耐え得るデータの整備というのが絶対必要ではない かと思います。  最後に一口に治療といっても、慢性期と急性期を分けて考える必要があるのではない かと思います。急性期はある程度、専門化して手術件数を上げることによって質も上が るというのはある程度、データも出ておりますし、集中と選択が必要だと思います。慢 性期、例えば2025年には500万人を超えると言われるがんサバイバーの継続的ケアをど うするのかという問題があると思います。このためにはそういう、病院の整備も必要で すけれども、これから在宅治療と入院治療を結ぶ「がんのホームドクター」とか、そう いうものを育成していくというのも必要ではないかと思います。以上です。  垣添座長  ありがとうございました。最後になりましたが、土屋委員、お願いいたします。  土屋委員  日本医師会の土屋でございます。  まず、地域がん診療拠点病院についてお伺い申し上げますけれども、これはただい ま、丸木委員もおっしゃったように地域格差、これほどあるものございませんで、現 在、0のところは今後もずっと0であろうと見込まれる県がいくつかあるわけでござい ます。というのは、過疎の県で中核的な医療機関が10ぐらい病院があるとしても、似た ようなものでありまして、どれかひとつを、がん診療の拠点病院に特化するというよう なことは事実上、不可能です。それはハード面としては結構見かけは立派なものがござ いましても、また、その中に最新の機器を揃えるだけではできないのでありまして、要 するに専門家が必要でございます。1人2人、ある種のがんについての専門家がいるだ けではできない。  ある県のがん総合対策で時間をかけて議論したことでありますけれども、拠点病院と 言うからには、例えば、術中の病理組織診断みたいなものも今のものではなくて、即遺 伝子診断ができるぐらいのものでないと、それは拠点病院と言えませんよという意見も ございました。そんなことを考えますと、よしんば1つ、そういうことができたにしま しても、この地域からあそこの病院まで行くのに2、3時間かかるとしますと、隣の県 に行った方がいいじゃないかという話がございまして、なかなかこれを二次医療圏、あ るいは30万人ぐらいの人口のところに1つ置くというような考え方も地域の事情によっ ては極めて難しいという事情がございます。  そこで、ネットワーク化ということを考えました。それぞれの医療機関が持っている がんの専門性を全部まとめたら何とかそれなりの、とりあえず現実的な対応ができるの ではないかということです。さらにそれがもっと専門的な、例えば、国立がんセンター みたいな、要するにナショナルセンターが、その配下として全国にいくつかそういうサ ブセンターを置いていただいて、それとアクセスできるようなことになって初めて地域 のネットワークというものが本当の意味を持ってくるのではないかということでありま す。  専門医不足ということが縷々、各委員さんからも出ましたけれども、確かにそうであ ります。特に今、委員さんたちのご意見を伺ってますと、がん治療についての均てん化 ということのお話がほとんどと私は承ったのですけれども、現状の制度の中でやはりが んの医療というのは診断、治療ですので、そうしますとがんの検診も重要であります。  制度化されておるのは、例えば老人保健法に基づくがん検診であります。これとて、 実は一般財源化されたということから確実に格差ができつつあるのは事実でありまし て、表向き、検診がなくなっちゃったとかというようなところはないにしても、地域の 事情、財源的なものを背景にして考えますと様々でございます。  そんなことで例えば例を挙げますと、乳がん検診ということに関して過日の厚労省の 検討会で垣添先生が座長さんになっておまとめになった。その前段階としては今、ご臨 席の大臣が500台のマンモグラフィーの機器を全国に設置するということをご英断いた だきました。 ところが、果してこれがそれぞれの都府県で入れてもらえるかどうかと いうことは、県が半分持たなければいけないという補助金でありますので、なかなかこ れとて均てん化ということに関しては難しいわけでございます。さらによしんば、その ハード面が整ったにしてもそれを扱う、あるいは撮影する診療放射線技師、あるいはそ の写真を読影するドクターの育成もこれは喫緊の課題でありまして、それらが揃って、 初めて本来の意味を持ってくるであろうと、考えるわけであります。  そこで、財源的な裏付けというようなことが縷々言われております。  私どもが一番懸念しておりますのは、三位一体改革の中で財源が地方に委譲された場 合、地域における格差を一番懸念しておるわけでございまして、新たな均てん化のこう いう施策も大事だと思いますけれども、例えばがん検診の中で集団検診ひとつ取り上げ ましても、さきほど冒頭に垣添座長がおっしゃったように、罹患率というのは、要する にがんになった人を見つけることであります。そうしますと、それは早期発見は検診で ございます。ですから、そこに格差があったとしますと、それから上がってきたものの 治療をどうするかという話以前の重大なことであります。したがって、現状の制度をさ らに充実をしていくということも忘れてはならない点ではないかと申し上げておきた い。  垣添座長  ありがとうございました。初回ですので、各委員にそれぞれ約5分程度、お考えを述 べていただきました。この検討委員会の委員をお願いしている先生は様々な立場におら れますが、それぞれの立場からのご発言をいただきました。がん診療水準の格差、これ は地域格差でもあり、また、医療機関の格差でもあろうかと思いますが、その点に関し て様々な面からご指摘をいただきました。  まとめますと、ひとつは評価が大事で、その場合、指標をどのように決めていくかと いう問題があります。そのことと関連して実態把握ということでがん登録、地域がん登 録とか院内がん登録の重要性も指摘されております。人材育成の重要性を繰り返しご指 摘いただいています。これはがんの診断から治療、両面に渡りますが、画像診断の専門 家、あるいはがんの化学療法の専門家、放射線治療の専門家、放射線治療に関連しては 技師や周辺のコーメディカルの教育も当然関係してくるということになろうかと思いま すが、そういう人材育成の重要性、あともうひとつ、病理ですね。病理医の絶対数がや はり足りないということが各委員より指摘されました。そういう人材育成の問題。それ を解決する上でセンター化という構想もひとつご指摘をいただきましたし、治療成績の 公表というのが非常に重要であるということも繰り返しご指摘をいただきました。  さらに各医療機関の間の連携を保つ上でネットワーク化が非常に重要であると。その 際、現在、進められておりますがん診療拠点病院構想の中では大学病院、あるいは特定 機能病院が必ずしも含まれていませんので、大学をどのように取り込んでいくかという ご指摘もありました。  この検討会は非常に限られた時間の中で一定の結論を出さなくてはいけないというこ とになりますが、あるタイムスケジュールの中でこういった問題点をどういうふうに実 現していくかということをこれからご議論いただきます。もう少し長期的に考えます と、大学における臨床腫瘍学の講座がないとか、これはもう予てから指摘されているこ とですが、そのことが特にがんの化学療法の専門家が、あるいは放射線治療の専門家が 育ってこないひとつの理由であるというようなことにもなろうかと思いますので、この ことも少しご議論いただきたいと思います。また、少し見方は変わりますけれども、検 診の格差ということもこういうがん診療の格差につながっていくというご指摘もありま した。  こういった様々な問題点をご指摘いただきましたが、あと約25分程ありますので、と りあえず本日は総論的な意見交換会として今、それぞれご発言をいただいたことで足り ない部分、あるいは他の委員のご指摘を受けてもう少しご発言いただきたいことがあり ましたら自由にご討論いただければと思います。次回以降、これを事務局の方で論点整 理をしていただきまして、その論点に従って順次検討していきたいと思っております。  何かご発言が、あるいは追加のご発言を希望される方、ありましたらどうぞご自由に ご発言ください。がん診療の地域格差というのが当然、言葉として非常に重要なのです けれども、これに関して皆さん方の認識は共通になっていると考えてよろしいでしょう か。地域格差に関して何かご発言がありましたらお願いします。どうぞ、津熊委員。  津熊委員  地域格差につきましては現在把握できている資料から申し上げますとやはりあるので はないかと思います。しかし、一概に問題になるものでもなく、分野により大小があ り、実態をより明らかにすべきであると思っております。  せっかく機会ですので追加発言させていただきます。がん医療の評価という観点で大 事となってきますがん患者の生存率ですが、これをきちんと把握するということは、地 域がん登録でも重要ですし、院内がん登録、あるいはいろいろなデータベースでの検討 でも重要かと思いますので、これに関して3点ばかり申し上げたい。  がん登録につきましては人的、財政的、あるいは制度的な取り組みが欧米諸国に比べ て非常に遅れているということを申し上げたのですけれども、今、申し上げましたなか で制度的な整備については、すぐに取りかかれる問題もあり生存率計測に関する事項 は、その代表例です。  がん登録ではがん患者さんの生死確認をしますのに住民基本台帳の閲覧ということを 致します。現在でもこれは基本的には許されておりますので、実施可能なのであります けれども、個人情報保護というような観点でいろいろな懸念が市町村の側から提示され まして、住民票照会そのものがなかなか難しいというふうな状況も出てきております。 こういった面では、国からの協力依頼が市町村にあれば住民票照会がやりやすくなると 思いますし、また、中長期的には、住民基本台帳ネットワークが整備されておりますの で、こういったものを有効活用すれば予後の確認が容易になるということがあるかと思 います。  もうひとつはがん患者さんの死因を把握するのに人口動態死亡情報というものを使う 必要があります。現在でも法務省の許可を得て市町村に本籍地照会をし、死亡の場合に は本籍地を管轄する法務局に死亡診断書の記載事項証明を請求すると、こういった手続 きがあるわけでありますけれども、これも人口動態情報が活用できればそれには現在の ところ、名前が入っておりませんけれども、生年月日や死亡日、あるいは性、市区町 村、こういった情報でレコードマッチングすることによりまして、そのがん患者さんの 死因をきちんと把握できるということがございます。  もうひとつ申し上げたいことは、現在、人口動態オンライン報告システムというもの が進んでおります。これは死亡診断書記載の全情報が市町村で電子入力され、この情報 が保健所、府県を通じて統計情報部のデータベースに蓄積されるという仕組みと伺って おります。ここには名前を含めまして個人同定指標がすべて磁気化されているわけであ ります。もし、この情報とがん患者さんのファイルとをマッチできれば、がん患者さん の死亡をほぼ完全に把握可能ですし、死亡診断書に記載ある死因情報も得ることができ ます。  こういう制度をアメリカではナショナル・デス・インデックスだとか、ナショナル・ デス・インデックス・プラスという名称で実現しており、学術目的では有料でサービス が提供されています。こうした制度的な面、がん登録の基盤を支えるものですけれど も、国のリーダーシップで即に取りかかれるものもあると思います。患者さんの予後を 把握するというのは非常に重要ですから、ぜひ、国の支援をお願いしたいと思います。  垣添座長  ありがとうございました。がん登録の重要性ということで、あるいはその実現に具体 的に取りかかるべき課題といったことをご指摘いただきました。その他、ありましょう か。どうぞ、西條委員。  西條委員  地域格差のことを考えるときに、2つのことを考えないといけない。ひとつはアブソ リュートな人材不足から、それからリラティブな人材不足。この2つがあると。リラテ ィブなものにつきましてはこれは他の事につきましても人口の都市集中というものがあ りますから、これはなかなか解消しにくいと思います。  アブソリュートな不足は実際に必要な臨床腫瘍医等がいない事が問題です。実際、日 本全国見てみますと、例えば国立がんセンターなどで教育を受けた人が地域に複数おら れるところでは臨床腫瘍学がレベルが高い。しかし、そういう人たちが1人もいないよ うなところ、島根県などですと全く0で、そうすると必然的にレベルは低くなります。 したがいましてやはりアブソリュートにそういうことをできる人を養成していくという ことが地域格差をなくしていくのに極めて有用であるというように思っております。  垣添座長  それは多分、皆さん、共通の認識だと思いますが、実際問題として国民が見て当然、 この検討会の結論、非常に注視しておられると思いますが、そのときに比較的短期間に 実現できることと、かなり長期的に実現する2つがあると思いますが、そういう観点か らはいかがですか。  西條委員  長期的には皆さんが言われておりますように、いわゆる臨床腫瘍医を養成するような 講座を作って養成していくということが一番エフェクティブだと思いますけれども、短 期的にはこれはやはり研修制度をどうするかということが課題と思います。ひとつは特 定機能病院と全がん協病院、がんセンターを中心とするそこでの実地の教育を組織化す るということです。そういう教育研修。それからあとは学会が教育セミナーを積極的に 行っていくこと。こういう2点が一番短期的な解決法ではないかというように思ってお ります。  垣添座長  ありがとうございました。他にこの点に関してご発言いただくことありましょうか。 どうぞ、内田委員。  内田委員  治療に関してですが、がん治療の標準化ということは非常に難しいことなのでしょう か。これが難しい疾患と比較的やりやすい疾患とあると思うのですけれども、少なくと も標準化のやりやすい疾患からそういうことを積極的に始められるということが非常に 重要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。  垣添座長  これも大変重要なご指摘だと思いますが、北島委員、お願いします。  北島委員  がん治療の標準化というのはこれは方法論としていくつかあると思うのですが、さき ほど西條委員が言われたいわゆる臨床腫瘍医の育成というものもひとつの方法ですが、 やはり医師、あるいは患者さんと、共有の知識と言いますか、ガイドライン等々を通じ て共有していく必要があると思います。そういうことによっていわゆるがん治療の標準 を知るということがまず大事だと思います。  そういう意味でやはりがんに特化したガイドラインの作成、特に今、日本がん治療学 会では23臓器4部門のガイドラインを作っておりますが、これもやはり日本病院評価機 構等と連携を保ちながら作っているわけであります。このようなことが重要ではないか と考えております。  垣添座長  ありがとうございました。どうぞ、高嶋委員。  高嶋委員  確かにガイドラインは医師格差をなくすのには非常に重要ですけれども、施設間格差 を少なくするるためにはクリニカルパスが有効と思います。例えば愛媛県などで外科系 の格差がなくなっているのは、クリニカルパスの普及によると考えています。クリニカ ルパスは医師以外のパラメディカルも参加して作成いたしますので、ある程度施設内で の医師格差が少なくなります。もちろんガイドラインは当然必要ですけれども、それに 基づいたクリニカルパスの普及というものも非常に重要だというふうに思っておりま す。  垣添座長  ありがとうございます。非常に具体的なご提案だと思いますが、その他、ありましょ うか。どうぞ、西條委員。  西條委員  ガイドラインは非常に重要なのですけれども、ガイドラインを作っても全然守らない というような場合が結構あるのですね。それと日本のガイドラインは特に医学のガイド ラインはそのデータの根拠をほとんど外国のデータに頼っている。これをやはり日本の データに頼るようにしていかないといけない。そのデータを作れるような人を国として 養成していかないといけないということが重要と思います。  垣添座長  ありがとうございました。時間のかかることではありますが、がんの診療のレベルを 上げていく上では非常に重要なご指摘かと思いますが、他にご意見ありましょうか。  本日、がんの治療に直接関わる医師、外科医、化学療法の専門家、放射線治療医、そ れから病理、あるいは診断医の話がありました。その他にコーメディカルの養成という ことがありまして、オンコロジーナースの必要性とか、あるいは放射線技師の話があり ましたが、全体のレベルを上げていくという上ではこうしたコーメディカルの充実も非 常に重要かと思います。この点に関してもう少し何かご発言、希望される方がありまし たらどうぞ。どうぞ、北島委員。  北島委員  さきほど私、申しましたようにコーメディカルを含めたがん治療のチーム、こういう コンセプトが重要だと思っております。これはやはりセミナー等含めた教育、これが例 えば医師と同時にそういうセミナーを通じてコーメディカルを教育していくことが必要 です。  学会等のセミナーにがんに関するテーマを取り上げますと相当の看護士、あるいは技 師さんたちが参加しております。こういうことを積極的に行って地道な活動をし、がん 治療の基盤を拡大していくことが必要だと思っています。  垣添座長  ありがとうございます。従来のがん診療はともすると一人の担当医の判断ですべてが 決定されるという時代が長く続いてまいりましたが、これからは専門家同士の意見交 換、あるいはコーメディカルを含めたチーム医療が重要であるということをさきほども ご指摘いただきましたし、ただいまもご発言いただきました。それをやはり全体として 広げていくということが非常に重要かと思いますが。他にどうぞ、津熊委員。  津熊委員  今の観点ではがん登録の方でもございます。がん登録に必要な情報の抜粋とか、情報 の管理を今までは医師の篤志的な協力に依存してきましたけれども、アメリカ等ではそ れを専門に行う腫瘍登録士という制度がございまして、きちんとトレーニングし、資格 認定しています。大変忙しい医療の現場で各先生方が腫瘍登録に必要な情報を抜粋する ということは現実、考えられませんので、アメリカのような腫瘍登録士の制度を創設す るということについてもお考えいただきたいと思います。  垣添座長  あるいは病歴管理士とか、あるいは腫瘍登録士という、今のようなコーメディカルの 充実という観点でがん登録を支えるコーメディカルの充実の重要性ということをご指摘 いただきましたが、このがん登録が進まないことに関して今のようなことも含めてもう 少しご発言いただくことありましたらお受けしたいと思いますが。どうぞ、山田委員。  山田委員  さきほどの津熊先生の国レベルで人口動態の件ですが、あれは私どもが、治療成績を 計算する際のネックとなっている件です。予後調査が非常に難しく、電話をかけて追跡 するとかということを行うわけですが、ぜひ、先生のご提案を実行して頂けると治療成 績の公表がもっと広がるのではないかと思います。  もうひとつ、放射線のコメディカルの育成の件ですが、どうしても技師会とか、いろ いろな学会が絡んで、なかなかひとつにまとまってこなかったという足並みの乱れがあ りましたが、今、それを調整しているところです。アメリカでは9千人以上の物理士と いうのが放射線治療を支えていますが、日本では医学物理士は100人しかおらず、ほとん ど実質的に役に立っていないと。  ただ、欧米では放射線治療に対する保険診療が非常に高いというのも事実で、それに よってコメディカルの育成ができ、雇用できるという事情がございますので財政的にも 支援がないとなかなか困難ではないかと思います。  垣添座長  千村委員。  千村委員  今、ご指摘ありましたがん登録の関係でございますけれども、さきほど私、申し上げ ましたように鹿児島県におきましてはがん登録、非常に進んでいない実態があります。 各病院でがん登録を進めたいというようなお考えもいろいろ伺っていますけれども、こ れから新しい資源を投入してがん登録を進めていこうということになりますと、例えば 個々の病院経営との関係からなかなか難しいところもあるというのも現実ではありま す。さきほどご意見としてありました、例えば病院レベルにおける治療成績などをもう 少し違った観点から見るような方法について、もし今の個々の病院のマンパワーなり資 源の中でできるような簡略化されたものがあれば、新しい方法としてご提示をいただく と、今後の各病院における治療成績を見る中でがん登録を普及していくということの助 けになるのではないかなというふうに考えております。  垣添座長  どうぞ、山口委員。  山口(直)委員  院内がん登録、各施設の登録が整備されて初めて地域がん登録の質が向上するだろう ということで、院内がん登録、大変重要だと思います。その中で各施設がばらばらに独 自の登録をしていては施設間の比較もなかなか難しいということで、昨年度まで津熊先 生、あるいは岡本先生にもご協力いただいて厚生労働省の研究班で院内がん登録で最低 限、登録して収集すべき情報の項目等についてまとめまして、それを垣添総長にご報告 もしていると思いますが、その辺のこれまでの成果をぜひ、活用して標準化に向けて進 めていただけたらというふうに考えております。  垣添座長  既にいくつもご発言があったかと思いますけれども、がん登録のフォーマットの統 一、なるべく現場で使いいいようなフォーマットの完成ということが非常に重要で、あ る程度、達成されていますが、このがん登録がかなり我が国で遅れているひとつの理由 として、さきほど千村委員がご指摘のような現状、なかなかそれが進まないのでもう少 し簡略なものを作ってほしいという話と、それを実現する場合に、医師に頼っていたの ではこれだけ忙しい診療現場からはそういうデータが出てこないということで、それを 助けるような何らかの制度的なインセンティブ働かないかといった問題点があるのだと 思います。これはいずれも評価の問題でがん登録というのは診療水準の均てん化の上で 非常に重要ですので、今後、充分またご議論いただくことになろうかと思います。それ 以外のことで何かご発言なりたいこと、ありましょうか。どうぞ、西條委員。  西條委員  言い忘れたのでありますけれども、結局、実際の研修を効果的に、あるいは短期的に 効率よく行っていくにはどうしたらいいかということをひとつ考えてみます。ひとつの 方法としてはセンター病院から医者がそういうところを回ってエデュケートしていくと いうような方法も考えられると思うのでありますけれども、例えば国立がんセンターの 笹子先生などはオランダで胃がんの手術の技術を教えていました。  ただし、考えてみますと例えば地域がん拠点病院にしましても、それ以外の病院にし ましても、その先生が行ったとしても月に1例ぐらいしか対象症例がないとしたら、こ れは効率が非常に悪いし、効果があまり出てこないということが容易に考えられます。  したがいまして、ちょっと乱暴なことを考えているのでありますけれども、こんなこ と可能かどうかわかりませんが、やはりセンター病院で研修、これを例えば地域がん拠 点病院と指定されたら義務づけると。ただ、1年間、あるいは6か月ぐらい、その間、 その代わりにその拠点病院にはそのスタッフの代わりを入れてもらうと。そういうよう なことをやってもらわないと具体的に実が上がってこないような気がします。  垣添座長  現在、がん診療拠点病院が87施設まで指定されておりますが、これが必ずしも理念と 実態が合致していない、整合性が取れていない大きな理由は、ひとつやはり人材交流の 重要性は予てから指摘されておりますけれども、それを動かすだけのインフラストラク チャーと言いましょうか、そういうものがないということがあって、今の西條委員のご 指摘はそういうところにつながるのかと思いますが、これもこのがん診療水準の均てん 化を進めていく上で人材交流というのは人材育成と同様に極めて重要で、しかも短期的 にある程度の成果を出す上で非常に重要な課題で、これも項目を立ててきちんと議論を していただきたいというふうに思っておりますが、この場でもう少し今の点に関してご 発言、どうぞ、野村委員。  野村委員  その件に関してですが、どこの病院ももう目一杯なのですね。マンパワーとしては。 それをどういうふうに流動的にするかに関しては今、話したように人の補充をしてもら うということが非常に重要なことだと思います。大学などの特定機能病院、ここと一緒 になってやるということを考えると、ある程度の動かせる人材が出てくるのではないか と予測されます。そういったことを財政的なものをきちんと詰めて、やっていくという ことがひとつの具体策ではないかと考えます。  垣添座長  ありがとうございました。大学の立場で何かご発言。北島委員。  北島委員  今、野村委員、ご指摘のようにやはり81の特定機能病院、これをやはりうまい人材交 流の場としてお使いになるということが一番差し当たってできることではないかと思い ます。さらにいわゆるがん治療の標準化のみならず、特定機能病院でやっている先進医 療等々の導入もいろいろな意味で好影響を与えると考えております。 3.閉会  垣添座長  ありがとうございました。それでは本日は第1回目ということで各委員から貴重なご 意見を賜りました。約30分、フリーディスカッションをさせていただきましたが、時間 がまいりましたのでそろそろ閉会とさせていただきます。  本日、皆様から頂戴しましたご意見を事務局で取りまとめまして、論点整理をしてい ただき、次回以降、さらに議論を深めていただきたいと思いますが、最後に事務局から 何かございましょうか。  大臣官房参事官  大変長い間、貴重なご意見を賜りましてありがとうございました。次回の開催につき ましては皆様方の日程を調整させていただいた上で改めてご案内を申し上げたいと存じ ます。本日は誠にありがとうございました。                   (終了)