04/07/23 労災保険料率の設定に関する検討会 第5回議事録            第5回労災保険料率の設定に関する検討会                       日時 平成16年7月23日(金)                          15:00〜                       場所 経済産業省別館第850会議室 ○岩村座長  ただいまから第5回「労災保険料率の設定に関する検討会」を開催させていただきま す。今日の検討会では、大沢委員がご欠席ということですので、その旨ご報告させてい ただきます。また、事務局から人事異動に関しての報告があるということですので、そ の点のご紹介をお願いしたいと思います。 ○数理室長  本日7月23日付で事務局に人事異動がありまして、労災補償部長と労災管理課長が交 代しましたので、紹介させていただきます。  労災補償部長の森山でございます。  労災管理課長の及川でございます。  初めに労災補償部長より挨拶を述べさせていただきますので、よろしくお願いいたし ます。 ○労災補償部長  今日付で部長を拝命いたしました森山です。どうぞよろしくお願いいたします。この 検討会はすでに5回目で、4回にわたっていろいろな観点から、また専門的な立場か ら、ご熱心にご検討いただいているというふうに伺っております。今年度中に最終報告 をいただくべく、ご議論いただいているところですので、私自身も、実は2年ほど前ま で、この労災管理課長をしておりまして、この問題にその当時から携わっております が、また、その間のブランクもございますので、猛勉強しまして、早速この議論に参加 させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○数理室長  なお労災補償部長は、所用のため失礼させていただきますので、よろしくお願いいた します。 ○労災補償部長  済みません。失礼させていただきます。 (退席) ○岩村座長  それでは議事に入らせていただきます。今日はこれまで4回にわたって検討してきた 「料率の設定」、「メリット制」、そして「業種区分」について、中間報告に向けて、 論点整理を行う必要があろうと考えております。そこで、こうした論点について、フリ ーディスカッションをさせていただきたいと考えております。  ただ、その前に、これまでの検討会においていくつかの質問が出されているところで して、その回答を事務局のほうで資料など含めてご用意いただいているところでござい ます。それらについて事務局のほうからのご説明をお願いしたいと思います。 ○数理室長  説明の前に、いままでの1回目から4回目について、毎回かなりの分量の資料をお配 りさせていただきました。ご持参いただくのも大変かと思いまして、バインダーの中に 資料として、今後も用意させていただくこととしておりますので、ご利用いただきたい と思っております。  では、今日の資料についての説明をさせていただきます。今日の資料については、い ままでご質問があったものについて、とりまとめたものでございます。後で調べるとい うことで、その場でご回答しなかった件についての資料でございます。順次ご説明申し 上げます。  まず1頁の資料No.1、これは料率改正時におけるスライド率と現価率の設定がどうな っているかということですが、平成元年度以降のスライド率と現価率の設定状況をまと めたものでございます。直近の平成15年度においては、スライド率を、当初は0.5%、 平成20年度以降は1%というような形で設定し、現価率は2.0という形で設定しました が、以前においてはスライド率で3%とか現価率5.5%という形で設定していたところ でございます。その推移でございます。  次に資料No.2、「労災保険の適用状況」ということで、これは前々回のメリット制 の関係で、3年以上継続している事業場数のお尋ねがございましたが、継続年数別の集 計がないので、それに代わるものとして、過去5年間ですが、各年の新規加入の状況、 廃止、消滅の状況をまとめたものです。  継続・一括有期の関係でいくと、毎年約20万弱の事業場が新規で加入して、ほぼ同じ 数が消滅しておりますので、3年間であれば、多く見積れば約60万の事業場が3年未満 の事業場というふうに考えられるところでございます。  事業場数は全体で260万弱ありますので、3年以上継続している事業場数は、少なく 見積って、約200万はあると思われるところです。  次に資料No.3、これはメリット制の関係で、特に特例メリットの関係の資料です。 特例メリット制については、快適職場認定事業場のうち、中小企業が対象となるわけで す。その母数がどのくらいであるのかというご質問がありましたが、まずいちばん上の 折線グラフは、いわゆる快適職場の認定数を示したものです。全体では、約500件弱ほ どで推移しているところです。  このうち、特例メリットの適用事業場として、いわゆる中小企業を対象としておりま すので、中小企業に限って推計したものが、その半分程度、約240〜250、低いときには 200くらいになっておりますが、そういった数値で推移しているところでございます。  そのうち、特例メリットの適用事業場という形で、特例メリットの申請をして、適用 されている事業場ですが、それがいちばん下の折線のグラフになっているところです。  平成11年度が121、平成12年度が143、平成13年度が下がりますが63、平成14年度は36 というような状況です。平成15年度の数字については、まだ集計されていませんので、 入っておりません。  次に資料No.3−2は、メリット収支率とメリットの増減幅の改定推移を調べたもの です。上の表が「継続事業」にかかるもの、下の表が「有期事業」にかかるものとなっ ております。上の「継続事業」においては、当初は制度創設から昭和50年度までは、 ±30%で推移して、最大の増減幅が±30%でしたが、そのときには、中心となる75%〜 85%を0として、ほぼ10%刻みで設けて、増減幅が順次設定されておりました。  それが昭和51年度に±35%になり、昭和55年に±40%になったわけですが、そのとき には、外側に10%刻みで順次拡大して設定されたという状況です。  一方、「有期事業」においては、これは「継続事業」よりメリット増減幅が10%小さ いという状況でしたが、そのときには、中心から収支比率の20%刻みで増減幅が設定さ れていたところです。  昭和51年、昭和55年に、それぞれ5%ずつ増減幅が拡大されたわけですが、それから 最近では平成13年、もしくは平成14年度に拡大されたわけですが、そのときには、外側 のほうから10%刻みとしたということです。例えば、昭和51年であれば、30%未満のと ころで10%で区切って、20%未満のものを−25%とし、それから昭和55年のときには、 10%以下のものを−30%としたといった改定をしているところでございます。以上がメ リット収支率と増減率の改定推移です。  資料No.3−3、5頁から10頁にかけては、メリット増減幅の適用状況の推移をまと めたものです。5頁が、継続事業のメリット増減幅の適用状況です。6頁が、その構成 比となっております。構成比のほうが少しわかりやすいかと思いますので、そのほうで ご説明申し上げますと、全体的に言えば、最近では、10万から9万くらいの事業場が適 用されていて、減少となっているのが、大体8割を超えるという状況です。  いちばん左の数字が、最大の割引率になっている割合を見たものですので、その割合 が、年々増加しているという状況が見てとれるかと思います。これは、災害率について は全般的に低下しているということですので、無災害事業場が増えているということが 影響しているのではないかと思われるところでございます。  7頁については、一括有期事業について、同じような増減メリット、増減幅の集計を したものです。8頁が、その構成比です。9頁が有期事業・単独有期事業のメリット増 減幅の状況で、10頁がその構成比の表です。  一括有期でも単独有期でも、いちばん最大の減少率となった割合が年々増えているの が、継続事業と同じような傾向になっているということです。  11頁の資料No.4は、前回、労災保険の事業の概念と、事業の種類の決定基準に関す る通達は何かというご質問がありましたが、それをもってきたものです。  昭和62年2月13日付の通達ということで、ここに書いてあるものをまとめて、前回資 料として提出させていただいたところでございます。こちらのほうで、事業の単位なり 事業の概念、それから事業の種類等についての規定がされているという、基本的な通達 ということでございます。  次に13頁は、各種業界団体等における労働災害防止活動の内容ということで、具体的 にどのようなものがあるかというご照会がございましたが、13頁ではそれを例示したも のでございます。一般的には、会員向けの機関誌を作って啓発、広報活動を行うなり、 全国安全週間などへの参加をお願いしているところでございます。  教育活動として、安全衛生教育の推進なり、災害事例集とか安全衛生マニュアル等を 作って、会員の事業場に配布するなりの対応をしていただいているところでございま す。  災害が発生した場合には、その災害の状況の分析なり、類似災害防止の徹底というこ とで、災害事例研究などが行われているような状況でございます。  そのほか、団体に未加入の事業場に対して啓発活動を行ったり、場合によっては団体 への加入等の依頼もしているようでございます。  もっと具体的な資料として、これは本年度の全国安全週間の実施要綱を付けさせてい ただいたわけですが、この週間は毎年7月に実施しているもので、厚生労働省と中央労 働災害防止協会が主唱して、各労働災害防止団体に協賛していただいて実施していると ころで、全国的な業界団体に協力依頼して行っているところでございます。  実施事項については、「実施者の実施事項」ということで、15頁の10で、箇条書きに しているところですが、本週間で安全労働災害防止に関するいろいろな項目について実 施をお願いしているところです。この項目については、各団体を経由して、傘下の事業 場のほうで実施していただくように、各団体にお願いしているところでございます。  17頁から21頁にかけて、協力依頼をお願いした各種団体の一覧表ということで、全国 的な業界団体に依頼して実施しているところでございます。こういった形でまとめてお りますので、ご覧いただければと思います。  22頁の資料No.6は、前回出した「就業構造基本調査」の結果について、「日本標準 産業分類」での、中分類での集計ということで、ご要望があったわけですが、その集計 結果です。一応中分類、2桁ごとの中分類の雇用者数と、参考に事務従事者の数とその 割合を掲載しているところでございます。  こういった数字になっておりますというご紹介だけですが、同じ大分類においても、 同じ大分類に入る中分類においても、事務職割合に差が見受けられるような状況が見て とれるかなと思っているところでございます。  最後の23頁以降の資料No.7は、昭和37年のときに適用事業細目の見直しを行ったと いうことで、前回、そのときの事情がいろいろ分かればというお話がございまして、そ れを調べたものでございます。23頁のものが、昭和37年に改正された適用事業細目に関 する通達の抜粋で、このときの再改正においては、「日本標準産業分類」を参考とし て、適用事業細目表の見直しを行ったということでございます。  事業の種類の名称についても、原則として「日本標準産業分類」を参考としていると いうことですし、保険料率表の構成についても、一次産業、二次産業、三次産業という 順序に配列して、それから番号も付したところでございます。  細目のほうについても、内容なり表現なりについては可能な限り「日本標準産業分類 」によるとしたところですし、事務の能率化なり機械化などを考慮して、細目に番号が 付されたという状況でございます。  具体的には、次の24頁の資料が、改正前の直前の労災保険率表で、このときには料率 の高い順番に等級が付けられていて、その等級に当てはまる事業の種類が記述されてい たという状況でした。  それが昭和37年の改正で、次の25頁のような形で改正されております。このように、 上から第一次産業、第二次産業、第三次産業という順番で事業の種類が並べ変えられ、 番号も振られ、いちばん右のほうにそれに対応する料率表が設定されたという状況で す。  この24頁と25頁の資料を対比したものが、26頁のA3の資料です。左側から右側に改 正されたということです。「日本標準産業分類」に、そういうような形で名称変更とと もに、いくつかの業種においては業種統合が行われた状況がございます。例えば、鉱業 では「金属又は非金属鉱業」というのが、3つが1つになるとか、建設事業では、「そ の他の建設事業」のところが、4つのところが1つになったとか、そういった改正が行 われております。  これは労災保険率ベースですが、27頁から30頁までの資料については、適用事業細目 という、いちばん下のレベルにおける昭和36年と37年の対比表になっているところでご ざいます。後でご覧いただくということで、細かい説明は省略させていただきたいと思 います。  いちばん最後の資料ですが、今日ご欠席の大沢委員から、検討会への意見ということ で、4項目にわたってのペーパーが出されておりますので、ご紹介申し上げます。  以上、資料の説明をさせていただきました。 ○岩村座長  ただいま事務局からご説明いただいた、今日の各種の資料について、ご質問あるいは ご意見がございましたら、ご発言いただきたいと思います。  2頁の資料No.2ですが、ここはやはり、当該事業場の存続期間というものを個別に 把握しているとか、そういうことがやはり行われていないということですね。 ○数理室長  ええ、行われていないものですから、出入りで見るしかないということです。 ○岩村座長  出入りでしか見ていないという。 ○数理室長  そういうことになります。 ○岩村座長  ですから、ごく大ざっぱな数字で、大体。 ○数理室長  3年以上になります。 ○岩村座長  3年以上というところで見ると、200万事業場くらいかなという推測ですね。 ○数理室長  はい。 ○岩村座長  3頁の資料No.3−1の「特例メリット」ですが、意外と人気がないような気がする のですが、これはどういうことなのでしょうかね。とりわけ、平成11年度で121事業場 あったのが、平成14年度は36事業場まで、約4分の1くらいまで落ち込んでしまってい るというのは。 ○数理室長  なかなか評価が難しいのですが、PRがちょっと足りないのかと思います。 ○岩村座長  中小企業に絞ってみても、まあ横這いで、少し波があるにしても、何となく横這いで きているのに、適用事業場でみると、むしろかなり激減しているという感じですね。あ まり特例メリットということについて、それほど魅力を感じないということなのか。そ れとも何か、適用を妨げるような要因があるということなのか。 ○数理室長  そこまで細かく分析したわけではないので、よくわからないのですが、やはり、認定 された後に翌年の前半期に、申請をしなければいけないという手続がございまして、そ れで特例メリットが適用されるという形になっていますので。手続が煩雑とは思わない のですが、やはりそういう、自動的ではなく申請主義でやっているということが1つの 重みではないかという感じがします。 ○岩村座長  ただ、別にこの平成11年度、12年度、13年度で、例えばアピール、周知の仕方や広報 の仕方というものを何か変えたとか、特にそういうことではない。 ○数理室長  そういうことはないと思うのですが。あと考えられることとしては、特例メリットで すと、現行の±40%を±45%にするということで、災害が起きてしまえば、+45%に振れ る可能性があるという心配もされている事業場も無きにしも非ずだと思いますが、細か い原因については、ちょっと分かりかねるところでございます。 ○岩村座長  そうか、特例メリットというのは、適用できる年数に限度があったんですよね。 ○数理室長補佐  3年間ですね。 ○数理室長  初めも、たしか平成9年度くらいから適用が始まりましたから、9年、10年、11年く らいは制度導入直後ですから、高かったのでしょうけれども、それはちょっと続いてい ないという状況です。 ○岩村座長  ということは、逆に言うと、新規参入者というか、新たに適用メリットを受けるよう な所が出てこないという感じなのでしょうね。 ○数理室長  そうです。快適職場の認定をして、その都度1回しか使えないということもありま す。 ○岩村座長  ということで、そうすると、ある程度使ってしまうと、いわば新しい顧客というか、 クライアントが出てこないという。 ○数理室長  そういうことなのかもしれませんね。ただ、認定件数はそれなりにありますので。 ○岩村座長  そうですね。 ○数理室長  ですから、もう少しPRしていけばいいのかなとは思いますが。 ○岩村座長  ほかにいかがでしょうか。 ○高梨委員  資料No.1で、料率改定時におけるスライド率と現価率について、平成元年以降のデ ータを出していただいたのですが、質問というか、若干意見になるのかなと思うのです が、これは労災保険の、中心的には過去債務の計算をどうするかということのために、 こういうデータを推計して計算していく。こういうことで、あくまでも労災のスライド 率というのは、結局は賃金の上昇をどう見るかということなわけです。  それから、現価率というのは、積立金があるので、その積立金の利息というか、逆に 言えば割引率ということになるわけですが、平成元年では、労働省とは別の役所の話で すが、厚生省の国民年金、あるいは厚生年金の財政再計算で、賃金上昇率とか、運用利 回りとか、こういうものが使われているわけです。  お伺いしたいのは、政府の中のほかの役所が使っているデータを参考にするという考 え方でやっているのか、それとも独自に労災の関係は労災の関係ということでやってい るのか。結局は賃金上昇率とか積立金の運用利息ということですから、同じ性格がある わけですが、同じ性格のものを推計するときに、ほかの役所のものをどういうふうに考 えたかということを質問したいのです。  ただ、実は労災の場合と年金の場合とでは、賃金といっても中身は若干の違いがある わけで、労災ではすべての勤労者のいわば賃金ということになりますが、厚生年金のほ うで使われているのは、「標準報酬月額」という、下限があったり上限があったりす る、その平均なわけです。ですから、上のほうの金額、あるいは下のほうの金額は反映 しないという面がある。それから、利回りのほうにしても、最近時点についていえば、 年金資金については自主運用となっていますが、労災のほうについては、全額預託する ということになっていて、仕組みが現在では違う仕組みになってきているので、運用と いっても違う面があるのです。調べてみると、平成16年の、この財政再計算で用いられ た賃金上昇率は2.1%、平成11年の場合は2.5%、平成6年の場合が4%、平成元年の場 合が4.1%です。  運用利回りは、平成16年が3.2%、平成11年が4.0%、平成6年が5.5%、平成元年が 5.5%ということで、現価率と利回りについて、古いところは同じ状況です。しかし賃 金上昇率については、結構差があると思ったりするのです。平成15年の状況と、平成16 年の状況で、片や労災のほうは1%で、厚生年金のほうは2.1%ということで、長い期 間計算してみると、結構違ってくるわけです。  私としては、意見を申し上げれば、同じ政府部内のデータなので、重要な参考とし て、ほかの制度のデータを使うべきではないのかと思うのです。その質問の点につい て、どういうふうに考えてきたのかという点について、教えていただきたいと思いま す。 ○数理室長  スライド率については、どちらかというと私ども独自みたいな形で考えてというか、 そのときの経済情勢などを見ながら設定してきた状況でございます。  現価率についても、高梨委員がおっしゃるように、全部理財に預けて、いわゆる財政 投融資の中でやっていますので、その中での利回りで預けている、なるべく稼げるよう な利回りということで現価率などを設定しているところです。  そういう点では、公的年金、国民年金、厚生年金とはちょっと現価率も違ってくるの かなと思っているところでございます。  現状、平成15年度においては現価率、このときには最大30年ものというのがあるので すが、いま私どもで、大体20年もので預けていこうということを考えていて、その平均 的な利回りがいまおよそ2.0%だと思いますので、そういうところから、私のほうでは 現価率を2.0とさせていただいたところでございます。  スライド率についても、平成15年度であれば、どちらかというとデフレの状況、賃金 の上昇がマイナスの状況もあったものですから、そのことも考慮して、ただ長期的に見 れば、上昇するだろう、上昇してほしいという希望的観測もありますが、それで当初は 0.5%、長期的には1%ということで、そういう点では独自にこういったスライド率、 現価率を設定したところでございます。  ただ、これから重要な指標になりますので、この制度についての設定状況を見なが ら、今後固めていきたいと思っていますが、一応いままではそういった形で決めていた ところでございます。 ○高梨委員  若干意見を申し上げれば、ここのスライド率が平成15年の推計で、平成20年度以降は 1.0%と推計しているわけですね。  先ほど、年金のほうの物価上昇率について言っていませんけれども、平成16年の財政 再計算での物価上昇率は1.0%を厚生労働省は使っているわけです。仮にそれが、その くらいだなということだとすれば、労災保険のほうの平成20年度以降1.0%ということ は、これは名目賃金の話ですから、実質賃金は全く上がらない状態が、平成20年以降ず っと続くと、こういうことになってしまうのです。ですから、やはりどこかで、いろい ろ精査しないといけない面があるのかなと思ったりするのです。 ○岩村座長  1つお聞きしたいのは、何となくスライド率をいま労災保険に使っているのを見たと きに、数値的にパッと浮かんだのは、我々もこの前まで国家公務員だったのですが、人 勧の数字が結構近いのかなという感じがちょっとして、見ていたのですが、そういう感 じでもないという感じですか。 ○数理室長  人勧は、特に意識してはいませんが。 ○岩村座長  そうですか、わかりました。ほかにいかがでしょうか。  あと、詳細にメリット制の適用状況の推移について、表を出していただいているので すが、上限を動かしたときのインパクトというのが、やはりそれほど明確に見えるわけ でもないのかなという感じはしますね。若干のタイムラグがあって動いてくるにして も、そう明確な動き方というのは、データ的にわかるわけではないのかなという気がし ますね。ただやはり、何年か、2、3年経つと下限にはり付いてくるという感じで動く のですかね。 ○高梨委員  そんなことはないのではないでしょうか。 ○岩村座長  例えば、継続事業のところで、6頁ですが、これはあまり動かないので、ちょっとわ からないのですけれども、昭和54年から55年のところで、−35%から−40%に動いてい るのですが、構成比で見ると、35%だったものがストレートに40%に平行的に動いたか というと、比率的には必ずしもそうともなっていないですね。 ○高梨委員  昭和54年の−35%のところに、38.5%、はり付いていたわけですよね。 ○岩村座長  そうですよね。 ○高梨委員  それが−40%をつくったときに、−35%のところが12.9%に激減して、−40%のとこ ろに27.5%がはり付いたわけですので、−35%が大幅に減少しているのではないでしょ うか。 ○岩村座長  それはそうなのですが、35%いた分がそっくり移るわけではないということですね、 災害発生率等との関係で。 ○高梨委員  それはそうですね。 ○岩村座長  3年くらい経ってみて、実績がわかるにしても、昭和58年、59年でも30%というとこ ろなのですね。計算上は、実際にはたぶん3年くらい経たないとインパクトが出てこな い。 ○高梨委員  たぶん5年経たないと駄目だから。 ○岩村座長  そうですね。3年取って1年置いてですからね。だから、5年取ったところで、正確 なインパクトがたぶん出てくるという感じになりますね。その後は今度はたぶん全体的 な災害率の低下によって、下にはり付いていくのがだんだん増えていくという、そうい う状況でスライドして動いていくということなのでしょうね。 ○阿部委員  詳しく見ないとわからないと思いますが、平成8年から9年というところでは、ほと んど変化は見られませんよね。 ○岩村座長  ただ、45%というのは、特例なんですね。 ○阿部委員  特例なんですけどね。特例をそういうふうにつくっても、例えばいまから45%とか50 %に拡大したとしても、果たしてどれくらい出てくるのかということは。 ○岩村座長  ただ、特例なので、もともとのキャパというか、適用対象が少ないですから、そんな に構成比では大きく出ないと思うのです。 ○数理室長補佐  資料2で見ていただいた、100のオーダーですね。 ○阿部委員  そうなのですが、こんなものでいいのですか。いいのですかというか、では何のため に作ったんですか、ということになりますよね。 ○高梨委員  先ほど座長がNo.3−1について、ご質問があったわけですが、特例メリット制度は非 常に縛りがあって、まずは快適職場の認定を受けた事業場でないといけないよというの があって、認定を受けている所は多くは大企業なんです。しかもこれは3年間しか続か ない、その間に手を挙げないといけないし、中小企業はこういうことで平成14年度で36 事業場しか特例メリットを受けていない。 ○阿部委員  だから、何でそうなるのかということですね。 ○高梨委員  いや、ですから。 ○阿部委員  確かに認定を受けなければいけないというようなことはあったとしても、なぜ認定を 受けないのか。 ○高梨委員  約500の事業場しか対象の事業場がないわけです。快適職場事業場の認定を受けている 所は500しかないわけです。最近だと491ですけれども。それしか特例メリットが受けら れないのです。 ○岩村座長  ですから、たぶん、おっしゃっているレベルが違って、構成比で見ると少なくしか出 てこないのですが、阿部委員がおっしゃりたいのは、特例メリットに本当に魅力がある なら、もっとたくさん、要するにそのキャパシティいっぱいの事業場が出てきてもいい のではないかということですね。 ○阿部委員  はい。 ○岩村座長  ですから、5%の40から45というところに、実はそれほど、ひょっとすると企業にと っては魅力がないのかもしれないという、そういうご指摘ですね。 ○阿部委員  そうです。 ○高梨委員  そんなことはないんです。特例メリットだけでいけば、中小企業の認定事業場は平成 11年は253あったわけです。そのうち半数の121が特例メリットを受けたわけですね。 ○岩村座長  そうなのですが、ただ、それがいま全然続いていなくて、平成14年度になると、もう 本当にずっと率が低下してしまっている。ちょっとそこは要因分析がないので、なぜそ うなっているのかということはちょっとわからないので、突っ込んだ論争はできないと 思いますが、現実問題としては、そういうふうになってしまっている。その要因は何か ということは、議論の余地はあるのかなということでございます。  その他ございますか。少しフリーディスカッションの時間もとりたいと思っています ので、もしその他の部分についてご質問があればお願いします。1つ気がついたのです が、資料No.7−4とかNo.7−5を見ると、これは料率の作り方を変えただけではなく て、実はこのとき、料率もかなり動かしているんですね。 ○数理室長  そうです、かなり料率が変わっております。 ○岩村座長  そうですね。このときは、相当思いきったことをしている。  ほかにございませんか、なければ少し時間をとって、各論点についてのディスカッ ションを進めさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。  そうしますと、これまで過去4回の部会で、1回目にフリーディスカッションをさせ ていただいて、その後の2、3、4回で、それぞれ料率設定の問題、メリット制の問 題、そして業種区分の問題について、各1回ずつ議論をしてきたということで、今日も この3つの論点について順次議論をしていきたいと思います。ただ、3つの論点につい てバラバラにというのも、あまり整理もよくないものですから、料率設定、ついでメリ ット制、そして業種区分という順序でフリーディスカッションということにしたいと思 います。  それで、一応いままでの研究会で各論点について、皆様方のご意見がそれぞれ出て、 ある程度の議論のポイントも、少しは浮かび上がってきているように思いますので、そ れに沿いながら、ご意見があれば出していただくということで進めさせていただきたい と思います。  まず最初に「料率の設定」ということになりますが、ここについては、おそらく大き く言って、2つの論点が議論の中ではあったのかなという気がします。1つは、産業間 での相互扶助というものを、どのように考えるのかということで、例えばこの前までの 検討会でもありましたように、短期給付と長期給付とに分けて、それぞれ各産業で分担 する部分、それから産業界の全体でやっている部分というような区分の仕方をしている わけで、その辺、各業種ごとで負担すべき部分と、産業界全体というような形で負担す べき部分という部分の区分けの問題というのをどうするか。もう1つは、それとの関係 で災害防止のインセンティブというものをどういう形で与えるのかということです。  料率改定との関係でいうと、この検討会でも問題になったように、「設定料率」と 「算定料率」という2つが存在するということで、この2つの存在をどのように考える べきなのかというのが、大きく言うと議論の対象としてはあったのかというふうに思い ます。  以上のようなことが、料率設定に関する問題として議論されてきたことだと思います ので、後でもご相談しますが、中間とりまとめに向けて作業をしていく上で、是非参考 にさせていただきたいと思いますので、ご意見がございましたら、積極的にお出しいた だきたいと思います。順序は、料率設定ということであれば、いま申し上げた順序にこ だわっていただく必要はございませんので、フリーにお出しいただければと思います。 ○高梨委員  料率設定の問題は、業種区分の問題と切り離すことができない問題ではなかろうかと 思いますが、現状、および現状よりは細分化するという方向を前提にした場合において も、一定の部分については産業間での相互扶助といいますか、そういう部分がないと、 1つの設定された業種だけで、すべての責任を負わせるというのは、いささか無理があ るのではないか。  それは、産業構造の変化という問題もあるし、災害が後から発生してくる。こういう 問題もあるわけで、その他、急激な変化を避けるという点からしても、やはりある部分 というのは産業間調整というものが必要なのかなと思います。  その場合に、どこで産業間の調整をするか、しないかという区分ですが、私は大ざっ ぱに言えば、労災保険法は、労働基準法の災害補償責任を基礎にして出発していますの で、基準法の災害補償責任を超える部分というものについて、産業間の調整に委ねると いう考え方があり得るのかなと思います。  もう1つの、「設定料率」と「算定料率」の問題ですが、産業間の調整をするという ことを前提にする限り、設定料率は算定料率にできるだけ近づけていくということが必 要なのではないか。  ただ現実に、現在の業種区分で設定されている料率があるわけですので、その乖離が 非常に大きい。特に設定料率が引き上げられる業種も出てくる可能性があるわけです が、そういう業種について、一挙に一時に引き上げるというのは、その業界に対する影 響がいささか大きいということで、激変を緩和する措置を講じた上で、徐々に近づけて いくということが必要なのではないかと思います。 ○岩村座長  ほかの方は、いかがでしょうか。  いま高梨委員がおっしゃった前者の問題で、個別の業種の責任の問題と、産業間の相 互扶助の問題ということを考えるときに、その仕分けの仕方ということで、確かにおっ しゃるように、労働基準法の災害補償責任というものから、労災保険法がもともと出発 した。その上で、年金とかそういったものに入っていって、労基法の災害補償責任を超 える部分についても、労災保険法でいま給付を行っているという、そういう構造を考え たときに、おっしゃるように1つの整理の仕方としては、労働基準法におさまる部分に ついては、各業種の責任ということで基本的に考えて、それを超える部分については業 種間の相互扶助という考え方で整理をしていくというのは、1つの考え方だろうと思い ます。  現在の、これまで事務局のほうからご説明いただいた料率設定における産業間の相互 扶助というのも、基本的にはいま高梨委員なり私なりが申し上げたような線に大体沿っ ているというように思うのですが、高梨委員、その辺の整理はそれでいいというお考え ですか、それとも何か見直す余地があるとお考えでしょうか。 ○高梨委員  個々に精査しないといけないわけで、短期の3年を超えるとか、あるいは長期の7年 を超えるという、その辺は大ざっぱかなと思うのですが、長期の辺りが、7年がいいの かどうかというのは、もうちょっと精査する必要があるかもしれないと思っています。 方向としては、短期と長期を分けて、3年ないし数年ということで、一時金で給付する 部分もあるわけですから、それをどのようにしてカウントするかという、そこの辺りだ と思います。  今やっているのが非常におかしいということまでは、なかなか言えないかなと思いま す。 ○倉田委員  私の理解の確認ということで、算定料率の段階では、いまおっしゃった説明だと思う のですが、結局乖離してしまっている業種については、つまり、産業間相互扶助という ものを終えた後で、なお高いところを調整して削っているわけですが、その削った分 は、結局すべての業種に添加されているというふうに私は若干理解しているのです。そ うすると、最後の段階で、いま述べた原則というのは、実は修正されているのではない かという見方は可能ではないですか、ということが1つです。  確かに、高梨委員が言われたように、労基法の労災補償責任から出発して、労災保険 制度の負担の考え方を説明するという仕方は、私もそれは筋論としてはそのとおりだと 思っているのですが、現実に最後のところでは、その筋論と違った調整をしているので はないかというところを、この検討会でどういうふうに評価するかということと、それ を筋論の形に戻すのか、それとも今の形のまま、また違った説明でもう1回別な考え方 の相互扶助みたいなことをするのか、という形の論点整理をしておかないといけないよ うな気がするのです。  制度の、こういう説明については可能だということを、予め私の意見として述べてお きたいのですが、労基法上の補償責任というのは、事業主の個人責任ですね。それで、 この限りでは、やはり事故を起こした事業者が全部を見るというのが、この法律の立前 です。それが例えば業種内での連帯責任になったり、業種間の相互扶助になったりする というのは、労災保険法という制度があって可能なことだというふうに私は思っており ますから、労基法上の責任を、労災保険という制度の中でどのように分担し直すのかと いうことについては、若干政策的にいじる余地はあるのではないかと考えています。  ですから、労基法からスタートしているから、これでなければいけないんだというと ころで、政策選択の幅を法律で狭めてしまうのか、それとも、いや、そうではなくて、 最後もうちょっといじる余地があるんだというふうに考えるかという点は、根本的な問 題としては重要なのかなという印象で考えております。 ○岩村座長  前者の質問の点はいかがでしょうか。つまり、産業間の相互扶助等を考慮して算定料 率が出てきて、そこで今度は設定料率にいくわけですよね。だから、そういう意味で は、もう一段、ある意味でリスク分散をかけてしまっているということにはなっている でしょうね。実態として、事実上そうなってしまっているでしょうね。 ○数理室長  実際、現実には非常に高い形で算定され、業種間調整をしても非常に高い業種があり ますので、それは当然負担できるレベルではないと思います。しかし、下げるわけにも いかないので、そこら辺ももう一段階の修正をかけていると言ってもいいと思います。 ○岩村座長  そこがいま倉田委員がおっしゃったことのいちばんのポイントで、前段の、つまり算 定料率を出すところまでは、ある程度業種ごとの責任と産業間の相互扶助ということで 説明がついているのが、算定料率から設定料率に移る段階については、政策的な形で根 拠を持って説明されているわけではない。どちらかというと、過去の経緯から出発する 形になっていて、そういう意味で、この部分は制度設計の理念というものが明確に説明 できているわけではない。その結果として、結局前段の部分の説明にゆがみが生じてい ることは否定できないだろうと思うのです。 ○倉田委員  もう少し補足すると、算定料率と設定料率の乖離の部分は、業種間調整から除いてし まった部分を、結局は全体で埋めていることになるのではないかと思うのです。そうす ると、最初の説明と違ったことを、最後ではやっぱりやっている、ということになりは しないのかということです。どういう順番で計算していくのかという説明と、そこのと ころが必ずしも一致しなくてもいいのかなという気はするのですが、最初こういうふう に説明して、最後のところはもう一段階別の連帯というのがあるのだと説明することは 論理上可能だと私は思っているのです。しかし、いまのこの仕組みをどう理解するかと いうところが、議論の大出発点だと思うのです。 ○岩村座長  前段のほうは長期のリスクで、要するに個別のリスクに転化できない部分を分担しま しょうと言うのですが、後段の設定料率と算定料率というのは、高すぎて困るのを調整 しましょうという話になってしまったのです。そして、それが過去からの積み重ねで来 ているのだと思うのです。逆に言うと、高すぎて困るところについては産業間で調整し て、連帯でリスク分散して変えましょうという話なので、前段における産業間での相互 扶助というのとは少し違う考えが入っているのだと思うのです。 ○倉田委員  もし説明するならば、たぶん違った論理で説明しなければいけないでしょう。 ○岩村座長  その説明が説得的かどうかというのは、もう一段別の問題だと思いますが。 ○岡村委員  いまのお話を伺っていまして、出発点は個別企業のお話ですね。個別企業から、特に 短期は3年を超えるもの、長期は7年を超えるものについては産業全体でシェアする。 ここで1回シェアがあって、今度それで算定料率を組んだときに、業種間である程度リ スクをシェアリングする。これは一時調整だと思うのです。ここら辺りまでは保険の理 屈で話が通ると思うのですが、算定料率から設定料率に行くときには、保険の理屈とい うよりも、むしろ産業間の調整の問題だと思うのです。また別の論理が必要だろうとい う話が先ほど出ましたが、まさにそのとおりの問題が出ていると思うのです。  強いて挙げれば、これも産業間の再調整という形で、二重三重のリスクシェアリング をしているのだと捉えれば捉えられなくもないでしょうけれども、最後の算定料率から 設定料率に移行するところの政策性の問題については、ある程度のガイドラインが必要 かという気がしております。保険の理屈からは少し離れているように感じました。 ○岩村座長  算定料率と設定料率、そこのところの整理が必要なのでしょうね。 ○岡村委員  個別企業についてはメリット、デメリットというのがあり、そこでもう一回調整がき きます。そこから業種でまとめて、業種で調整をして、最終的には全産業で再調整をす るという三段構えになっていると思いますが、いちばん問題になるのは最終的な、算定 料率と設定料率の調整になるのではないかと思います。だから、それをまたメリット制 に引き戻して拡大幅を調整するというのは、全体を見てからでないと、軽々には論じに くいという気がしました。 ○阿部委員  最後の二段階目の調整はどういう理屈がつくのかと、さっきから考えているのです が、なかなか難しいと思います。 ○岩村座長  おそらく、あり得るのは2つです。1つはかつてあったように、1つボンと大きな事 故が起きるとドンと保険料率が上がって、当該産業だけでは負担できないというとき に、全体でリスクシェアしましょうという場合です。あとは、産業自体が一方で縮小 し、しかしリスク自体は高いというときに、保険料率がものすごく高くなるというのを リスクシェアしましょうと、たぶんそのくらいの説明しかないのでしょう。 ○岡村委員  いまの座長のお話では、それは個別企業の努力の域を超えてしまっている部分が多く て、産業間の経済構造上の問題とか産業構造上の問題等、個別企業の努力の及びにくい というか、そこを超えてしまっている部分で働いている問題だと捉えたほうがいいので しょうか。 ○岩村座長  たぶん、そういうことなのかもしれないという気はします。 ○岡村委員  座長はこういう言葉を使いませんでしたが、過去の経緯から云々というような言葉を 聞くと、ここに移行するステップが、不透明というと言いすぎかもわかりませんが、透 明性にやや問題があるのではないかと受け取れました。 ○倉田委員  私も高梨委員が先ほど言われたことと同感なのです。この問題は結局業種区分の問題 と関わってくるわけで、岡村委員が言われた、保険では実際の説明がつかないというこ となのでしょう。しかし、保険というものを前面に出してきたときに、この業種区分で はリスクは分散されていないのだという評価を保険の立場からされるのですか。その辺 りがよくわからないのです。 ○岡村委員  いまの質問はお答えするのが難しいと思うのです。例えば業種区分との関係に話を絞 ると、建設業や製造業には本社と現場がありますが、それが別物と考えていますね。そ の辺りが違ってくると思うのです。  例えば、本社は事務職が多いから「その他」に分類されている。ところが、現場ある いは工場は違った会社、別個のものだとカウントされて、そこでリスクが測られていま す。ところが、本社と出先なり工場は、ある程度一体化して責任をシェアしている部分 があります。それらを分断して別個のものと考えているので、それらも含めての問題に この場で答えるとなると、時間もないし勉強不足なのでできません。 ○倉田委員  私が聞きたかったのは単純な問題で、算定料率と設定料率の乖離が非常に大きい所 は、業種区分の中の被保険対象の従業員の数が少ないとか、会社の数や事業場の数が少 ない所にこの現象が現れていると思うのです。保険というのは大数法則の適用を前提と して考えるので、大数法則が適用できるほどに大数化されていないのではないか、つま り、評価として可能なのかどうかということなのです。 ○岡村委員  それは当然あり得ると思います。前の事業所の数を見てみると、数百規模というのが あり、あれでは誤差が大きいのではないかという気がするのです。 ○倉田委員  業種区分の話になってしまうので、これで発言を止めますが、要するに仕事の態様と か業務の態様が似ているということで切っていくと、やや細かくなっていく。逆に、保 険なのだから、もう少し大数法則をきかせたいので、多少似ていれば大きくしてくっつ けていく。  私は、この問題の決め方というのは2つのやや矛盾する要素を調整しながら決めてい るのだという理解なのです。だから、リスク構造に着目して細かく対応して決めれば決 めるほど、保険数理的に不利な保険集団が出来てしまうという構造をどのように調整し ていくかという問題があります。結局、いまのこの決め方だと、大数の法則がうまく働 かない分だけ、最終的に調整しなければいけない、保険学的にはそういう理解でいいの かということだけ伺いたいのです。 ○岡村委員  純粋に保険の技術的な問題を言いますと、個別リスクに厳密に乗っかるべきだと思い ます。その場合に問題が出てくるとすれば、いま倉田委員が言われたとおり、数が少な いと誤差が大きくなるので、制度としての安定性を欠くということになると思います。  しかし、この場合には社会保険なので、必ずしも保険の技術だけでその仕組みが成り 立っているわけではなくて、個別リスクをある程度拡大し、統合したような形で大数法 則を成り立たせようとする部分が出てきているので、当然矛盾が出てきて然るべきだと 思っています。そして、それを上回る社会的、政策的な目的が入っているわけですか ら、そちらのほうを優先したと私は理解しています。 ○高梨委員  先ほど私は、産業間の調整が必要だということを述べたわけですが、次に述べること もそれの補強の1つになると思います。一人の労働者が一生涯一つの産業で過ごすとは 限らない。いくつかの産業を渡り歩いて、渡り歩いたところでの負荷が後から災害とし て発生するということも現実にあり得るのです。ですから最後の、災害が発生した所で の収支だけを見るのは適当でない。また、そういった産業間移動をする中で、作業や職 種、あるいは危険作業というものが変わる場合もあるし、継続するケースもあり得る し、災害が違うということだってあり得るわけです。そういう意味からも、その調整割 合をどうするかという問題はありますが、産業間の調整が必要だと私は思います。 ○岩村座長  時間の制約もありますので、意見があればまた伺うことにして、次にメリット制のほ うに論点を移したいと思います。ここでの議論の過程で出てきた論点として、1つはメ リットの増減幅の問題があろうかと思います。現状では、特例メリットを除くと、継続 では40%が最大、有期は35%が上限という形になっていますが、それを拡大することが できるのかどうかということです。拡大することに何か意味があるのか。とりわけ、災 害防止のインセンティブということから言ったときに有意義なのだろうかということが 議論されてきたと思います。  もう1つはメリット制の適用対象です。業種によって違いますが、現状では一定規模 以上となっていますが、それの拡大があるのか。メリットの増減との関係で言えば、仮 にメリット増減幅を拡大するとしたときに、単純に拡大すればいいのか、現行制度を少 しいじったほうがいいのかというのも論点としてあると思います。そこで、これについ ても率直に意見を出していただいた上で、今後の作業に生かしていきたいと思います。 ○高梨委員  今日の配付資料No.3−1で、特例メリット事業場についてのデータが出ているわけ ですが、私は、この特例メリット制度そのものがどれだけ効果が出ているかについて、 非常に疑問に思っています。これ以上特例メリット制を見直しするとかという問題では なくて、そもそもの上下限、継続事業で行けば現在プラス・マイナス40%となっている そのものを大幅に引き上げていくことが必要なのかなと考えています。  事務局に質問したいのです。今日配付の資料No.3−2で、現在の仕組みが書いてあ り、またその歴史が書いてあるのですが、これを見ると、メリット収支率の刻み方が、 黄色の線を引いてある所が「75%を超え85%」ということで10%刻みなのです。その上 下が5%なのです。しかし、そこから先は10%ずつの刻みでいっているわけです。どう して5%が出てきたり10%が出てきたりしているのか。  それを有期事業の所で見ると、刻みの点は同じなのですが、増減率の括り方が、昭和 50年以前は20%の幅で5%ずつ上下させていたのです。いまは変わってきていますが、 どうして5%の部分があったり10%の部分があったりするのか。その理屈があるのかど うか、よくわからないのですが、この際、この刻み方を見直していく必要があるのでは なかろうかと思っています。  先ほど私は現在の上下限幅を、40%ではなくて、もっと大幅に引き上げるべきだと主 張したわけですが、現在40%になっている所は「5%を超え10%まで」のところにまで 行っているのです。いままでの発想で組み立てるならば、特例メリット制をやめたとこ ろで、45%までしか行けないわけです。このため、10%刻みで、その上下限を5%ずつ 増減させて行くというシステムを、この際変えてみることを考えてもいいのではないだ ろうかと思うのです。  それから、どうして継続と有期とを変えないといけないのか。上下限幅も、有期は ±35%にとどまっているわけですが、これについて継続と同一にするということ、それ はある意味で政策判断なのかもしれませんが、そういうことがあってもいいのではない だろうかと思います。  さらに言えば、そうやってメリット増減率を大幅に引き上げた場合、下限は当然大幅 に引き下げることになるわけですが、増減について、下限と同じ幅で上限を上げるとい うことになると、相当な負担増が生じるということが、今までの発想でいけば起こり得 るわけです。そういう観点からすれば、災害防止のインセンティブを与えるという観点 からはいささかとは思いますが、上限の限度と下限の限度とを変えて、要するにデメリ ットについては若干緩和するような措置をとることも考えられるのではないかと思いま す。  メリット制の適用については、現在20人以上でないと全く適用にならない制度になっ ているのですが、もっと引下げをしてもいいのではないかと思ったりするのです。それ で、事務局にデータが取れるかどうかなのですが、現在15万ほどメリット適用事業場が あるわけで、そのメリット適用事業場について規模別に、どれくらいの労働者規模の所 が適用を受けているのかというデータが取れると、そこのところが非常にわかりやすい と思います。業種別のデータは出ているわけですが、労働者規模別にどうするかという ことがあると思います。  メリット収支率の算定から除かれる疾病として、じん肺、腰痛、振動障害などがある わけですが、それだけでいいのかどうか。産業間を渡り歩くその過程での負荷という問 題はこの3つだけでいいのかどうかという、かなり専門的な立場での検討をすることに なるので、もちろん、この場で結論を出すことはできないとは思っていますけれど。  例えば難聴という現実の労働災害の被災者がいるわけですが、ある会社だけでの業務 で難聴が起こるということよりは、いくつかの会社なり産業を渡り歩いた上で難聴が発 症するということがあるので、3つの疾病だけでいいのかどうかという点も、場合によ っては別の場でということになるのだろうと思いますが、検討すべきではないかと思い ます。 ○数理室長  刻みの問題で、昔設定された状況が具体的にどうなのか調べ切れないところがありま すが、まず75から85にしているのは、もともと、これは昭和25〜26年、30年ごろに設定 されています。そのときに、事務費の扱いで約15%分を取っていたものですから、その 15%を引いて、75から85を基準にしたというのは承知しています。初めに5%にして、 残りを10%にしたのは切りの良さというところしか考えられません。  継続と有期については、増減幅のいちばん初めが10%差があったということで、継続 事業では、例えば10%刻みでいくと、30%より下のものについて−30%にした。だから、 そこのレベルで有期と継続を併せたのだろうと。有期は−20%でしたから、そこを−20% にする。その間の区分でいくと継続事業では10%刻みだけれども、有期のほうは20%刻 みになったのだろうと思います。これは推測ですが、そうすれば理解できると思いま す。昭和51年と55年に、継続のほうは外側に順次増減幅を拡大していっている状況です が、有期については、外側からはやってきましたが、その明確な理由ははっきりわかり ません。  15万のメリット対象事業場があるということですが、規模別の集計というのはどうい うことを言うのですか。 ○高梨委員  要するに、いま最低が20人以上になっています。ですから、規模の区分はどうか知り ませんが、1,000人以上の規模、あるいは500人以上の規模、100人の規模、50人の規模、 20〜50人の規模という形で規模別の適用率が違っているのではないでしょうか。 ○岩村座長  事業場数からいえば、人数の多い所が構成比で見るときは当然少なくなってくるで しょう。例えば1,000人以上の事業場というのはそんなに数がない。20という所は15万 のうち何パーセントというふうには出てくるだろうと思うのですが、適用人数という観 点からすると、どうなるのかというのは別だと思うのです。 ○数理室長補佐  7割とか8割とか、事業場数でいくと非常に少ないですけれども、労働者数でいくと 20人以上とか80人以上とか、その料率で計算されますが、それ以上は全部です。ただ、 3年間継続している事業かどうかだけがネックになっている。3年継続している事業場 は全部適用していますから、労働者割合でいくと7割、8割という数字になるのではな かろうかと思います。 ○高梨委員  単なる人数だけで適用の可否を考えるのではなくて、災害率も計算の要素に入れてい ますよね。 ○数理室長補佐  3回目の資料No.3−1に業種別の最低規模数を出していて、これより上の規模の事 業場で3年間継続している所は、全部適用対象になっているのです。第3回目の資料 No.3−1の10頁、いちばん右側に最低規模と書いてあるものですが、15年度メリット 最低規模で、この人数より上の事業場で3年継続の所は、全部メリット制の適用対象に なっています。 ○高梨委員  ということは食料品製造業で見れば、66人以上いないとメリット制は適用できないと いうことですね。 ○数理室長補佐  そうです。 ○高梨委員  わかりました。それでは私の言い方を変えましょう。資料の提出は求めないで、メリ ット制の適用要件は20人以上となっているけれども、保険料率との関係で事実上、製造 業で見れば20人規模の所の適用は「窯業・土石」1カ所しかないのです。 ○数理室長補佐  それに「船舶」と「木材・木製品」、3カ所あります。 ○高梨委員  そうですか。そういう意味からすると、もっと要件を緩和してもいいのかなという主 張に切り替えます。 ○岩村座長  メリットの適用のあり方のルールをもう少し変えて、適用の範囲を広げてもいいとい うことですね。 ○高梨委員  そうです。 ○倉田委員  3回目に配付された資料No.3−1の10頁について前から気になっていたのですが、 これは適用事業割合で出しています。労働者数でいくと、かなり高いのですか。 ○数理室長補佐  かなり高いはずです。 ○倉田委員  大きい事業場を対象としているのですが、メリットの対象になっている所で働いてい る労働者は大体何割ぐらいか、いま分かりますか。 ○数理室長補佐  資料を持ってきてみなければわかりませんが、やはり7、8割はいっていると思いま す。 ○倉田委員  数字で見ると、事業の5.66%しか適用されていないのですが、保険料を払う人という 格好でこの資料を作っているので5.66%の事業場しか受けてないのかという印象がある のですが、現実に労働者数で見ると、かなり高いと理解していいのですね。 ○数理室長補佐  結構です。 ○阿部委員  いまの点とは違うのですが、メリット制の拡大とかそういう議論があるとして、果た して拡大することが有意義なのかという点なのです。もう少しデータを分析しないとわ からないとか、いろいろあると思うのですが、今日配付された、メリット制のプラマイ の分布の表でいくと、明らかに減少のほうが多いわけで、収支率が悪化していると考え られると思います。収支率が悪化すると、次のときの算定料率の計算のときに、悪化し ているほど料率に影響してくる可能性があると思います。いまはいいのかもしれないけ れども、結果的に将来算定料率に影響する可能性があるということで、現状のメリット 制が果たして意義があるのか。つまりインセンティブになっているのかどうか、ここは 少し考えないといけないのではないかと思います。  なぜこういう制度が出来たのかわかりませんが、次のときの算定料率に影響しないよ うな形でないと、いくらメリット制だけいじっても、トータルな効果は見られないので はないかと思います。 ○岩村座長  たぶん歴史的にはよく言われたのですが、私の理解では、労災で最初に保険を導入す るときに、保険を導入すると、結局事故が起きても全部保険で填補されてしまうので、 災害防止の努力をしなくなるのではないかという批判が19世紀のころからありました。 そして、それに対応する形で、1つは刑罰法規等を使った労働安全衛生法規できちっと やるのだという話、それから、保険に内在させて事故が発生すれば、それを保険料率に 反映させる。あるいはその逆という形で事業主や使用者に災害防止のためのインセンテ ィブを与えようというのが、こういうものが始まった経緯なのだろうと私は理解してい ます。  大体、強制の労災保険を持っている所は、ほぼメリット制を持っていますが、仕組み のあり方等については、それぞれ若干違っています。日本の場合は有期と継続と分けて いて、かなり純粋にやっているのですが、事業規模の小さい所はもう少しメリットの動 き方を緩和するような形にするとか、そういう工夫をしている所はあると思います。 ○高梨委員  第3回検討会で配付された参考資料3、「事業主の意識調査」の結果を見ても、メリ ット制適用と災害防止活動との関係については前向きといいますか、積極的な評価をし ている事業主がほとんどですので、現状において、制度そのものについて否定的な所は ほとんどないと言えるのではないでしょうか。 ○岩村座長  たぶん阿部委員がおっしゃりたかったことはそういうこととは違って、メリット制ば かりをいじっても、それが全体の収支に影響を与えると、デフォルトの保険料率が動い てしまって、災害防止のインセンティブというものに果たしてどのくらいの影響を与え るのか。下手をすると相殺されてしまうのではないかと、そういうご議論ですよね。 ○阿部委員  そうです。 ○倉田委員  いまの話にしっくり噛み合うか自信がないのですが、メリット制のような仕組みがな ぜ必要かという根本的な話をすると、保険集団、例えば業種でいうと、業種に同じ保険 料率が適用されます。それは業種の中の平均事故率ということで確率統計で出てくるの ですが、個々の事業場が持っている事故確率は違うのだろうから、それに見合った形で 保険料の割り付けを再度やり直すのが公平だというのが、この仕組みのそもそもの発想 だったと私は理解しているのです。  ある事業場の事故率が一定と仮定したときに、高い所と低い所で、事故率に合わせて 保険料率を設定しても、全体として収納される、つまり集まる保険料は同じであるとい うのが、こういう仕組みを考えるときの一応の基本なのです。  ところが、現行のメリットというのは、必ずしもそういう格好になっていない。それ はなぜかというと、施行上、実際の制度運用上の仕組みとして、そういう厳密な計算は 無理だから、一応見合いでやっていきましょうということでやっているのだと私は理解 しているのです。  そうであるにしても、阿部委員が指摘したように、今回配付された資料でいくと、適 用された事業場の8割は保険料が安くて、2割しか高くならない。結局この仕組みは、 適用された事業場の間で、集まる保険料全体は収支とんとんにならないのです。だか ら、公平・公正という保険の基本の考え方からやや離れた格好で機能しているという事 実自体は、一旦きちっとおさえておかないといけないのではないかと思うのです。メリ ット制が適用されるということは、8割方の事業場にとっては、保険料が安くなるとい うことなのだろうと思うのです。  実は、この話にはもう一つ先がありまして、業種全体で事故の予防に努力して、業種 全体の保険料率が下がるということは、その業種全体で努力した成果を業種全体で分配 することを意味するわけです。つまり、保険料を下げることには2つ意味があるので す。あなたの所は低いから下げるというのと、みんなで頑張って下げたから、みんなで 分け合いましょうという、2つの次元の異なる位相の問題があって、そこのところの調 整というか組み合わせをどういうふうに考えるかというのは、今後メリット制のような 仕組みを考えるときに重要な視点なのではないかと思っています。 ○岩村座長  もう1つ重要な論点として業種区分があります。すでに料率設定のところで少し議論 されてはいるのですが、ここでは、基本的に政策のスタンスをどうするのか。つまり、 業種区分を細かくしていくと、それだけリスクシェアがしにくくなる。しかし、他方で 業種区分を大まかにすると、リスクシェアはしやすくなるのですが、リスクの低い所と 高い所でそれぞれに利害が違ってきて、その調整をどうするかという問題が出てくる。 その点が全部いろいろな所に波及してくるわけで、細かくすればするほど、業種の特性 はある程度反映できるにしても、保険集団としての意味が無くなっていくというような 問題が出てくるでしょうし、社会保険であるということを重視すれば、もう少し大ざっ ぱでもいいのかもしれないという話にはなるのかもしれないのです。  いちばん問題になるのは「その他の各種事業」をどうするのかです。前回までの資料 でも出していただきましたし、今日の資料でも、産業構造との関係で「その他の各種事 業」はどういう状況にあるかを大ざっぱな括りで見たときに、果たして今一括りになっ ているものを何かの理念によってうまく分けることができるのかと、そういうことがあ ろうかと思います。時間も限られていますが、これについて少し意見をお願いします。 ○高梨委員  前回も意見として申し上げたかと思いますが、現行の業種区分の94「その他の各種事 業」は、現在細分化できる四桁分類でいくと15になるわけで、当面15程度に細分化して いくことが必要ではないだろうかと思います。前回の資料No.2−2で単純収支率につ いて見たときに、4桁の業種区分によって大きな違いがあります。そういうことからし ても、15程度に分割していくということがあっていいと思います。  ただ、いまの4桁分類はかなり大括りということで、中を見れば違ったものが結構含 まれているものもありますので、将来に向けて更なる細分化が必要かどうかのデータを 得るために、15に分けるだけではなくて、その中をさらに分類しておく。そういうこと を積み重ねていくことによって、将来のデータを得て更なる見直しにつなげていくこと が必要だと思います。  これは業種の話なのか料率の話なのかよく分からないで申し上げるのですが、今日配 付された資料No.4で、昭和62年の通達が出されています。その12頁の(3)に、派遣 事業の取扱いについて、主たる作業実態がどうかで判断をして、「それぞれの作業に従 事する派遣労働者の数、当該派遣労働者に係る賃金総額等により判断する」となってい るのです。労災の適用事業所の中で、労働者派遣事業が何事業所あって、労災の業種区 分として、どこに分類されているものがいくつあるのか、そういうことがわかるのかど うかです。  いままで派遣業として認められていた業種は、大ざっぱに言えば事務的な職種が多く て、それにプラスして重機の運転や清掃などがあるわけです。しかし本年3月からは製 造業派遣が認められるようになっているわけです。しかも、派遣期間も、やがて1年か ら3年になるのです。このような動きの中で、いままで事務職関係の労働者派遣を行っ ていた所が新たに製造業派遣を追加的に行う。製造業派遣といっても、いろいろな製造 業に派遣するケースが出てくるのだろうと思いますが、そういうときの労災の業種区分 をどうするかという点が、この62年通達で言うものだけで対応できるかどうかという問 題がありそうな気がするのです。若干意見めいたことになるのですが、冒頭のデータが 取れるのかどうかについて、わかれば教えてもらいたいのです。 ○数理室長  労働者派遣事業という形で業種区分をつくっているわけではないものですから、それ は取れないと思います。全国にありますし、個別の個票にまで立ち戻って、申告書を全 部見るということまでしない限り、わかりかねるかと思います。 ○高梨委員  感覚的には94の「その他の各種事業」になっているケースが多いのでしょうか。 ○数理室長  いままで事務職が多いと考えれば、おそらく94だろうとは思いますが、それは推測で しかないのです。  それから、製造業関係の派遣が増えているということであれば、「派遣事業に対する 労災保険制度の適用について」という基本的な通達があって、いまのところ、派遣先で の作業実態ということで、主たる派遣先はどこであるかは派遣先での業種によって決め るという原則がありますので、当面はそれで業種区分の決定をしていくと思うのです。 どういう問題が出てくるのかは分かりかねるところもありますので、いまのところ、そ の基本的な通達で対応するしかないと思っています。 ○岩村座長  外国の例を見ますと、いままで日本の場合は事務職だけだったのですが、製造業その 他に派遣するようになったときには、派遣労働者の災害発生率が高いのです。ですか ら、その辺の問題は出てくるかもしれないという気がします。 ○数理室長  主たる業態をどう見るかですが、派遣事業における製造業でもほかの所でも、主たる 業態は何かということで見ていますので、派遣適用でも同じような考え方になると思い ます。 ○数理室長補佐  事務系とか製造業系とか、業種のグルーピングによって、そこは一緒に主たるものを 判断できない、というふうな考え方を適用の中で考えていかなければいけないのではな いですか。製造業関係の派遣の料率の設定、事務系の料率の設定、2つは比べてはいけ ない、2つの中で主たるものを考えてはいけない。問題を整理する中では、そういう方 向の考え方を部分的にはしていかなければいけないと思います。 ○岩村座長  それは製造業関係に派遣がどのくらい出ていくかという、今後のことにも関係してく ることだと思います。 ○小畑委員  前回配っていただいた資料No.1−1の最後に、災害防止活動浸透の面で、業界組織 による分類を配慮して定められているという所がありました。それで、災害防止活動は どういう業界団体でやっているのかと質問し、今日配っていただいた資料No.5−1、 5−2、5−3を調べていただいたのです。業種区分の問題で「その他」を分類するか どうかというようなことを考える際にも、1つの選択肢として災害防止活動の浸透とい うことを考えるのであれば、この災害防止活動がどのような単位で行われているかを加 味するというのも、1つの選択肢としては考えられるのではないか。今日配っていただ いた資料と関連して、今このことを発言させていただきます。  もちろん、分割の視点はいくつかあって、それぞれに理由があると思うので、この災 害防止活動をしている業界団体の分類の仕方にすべきだということではないのですが、 もしこの理念を大事にするならば、これが1つ加味してよい要素ではないかということ を述べさせていただきます。 ○倉田委員  94の分類をどうするかという点について確認したいのです。単純収支率が1つの大き な目安の数字になるということを前提として前回話したと思うのですが、経年的に収支 率の数字が取れるかどうかについては、いかがですか。前回配っていただいたものには 平成14年度の単純収支率が示されていますが、単年度の収支率は変動する可能性があり ますから、ある程度こういう傾向があるということでなければ、リスク構造が違うとい うようなことはなかなか言いづらいような気がするので、データ確保の可能性はどうな のでしょうか。 ○数理室長補佐  過去については難しいのですが、その時期にきちっと集計をかけておけば、今後デー タは把握できる。だから、将来に向かっては4桁の把握はできるだろうと思います。 ○倉田委員  一旦つくってしまった業種区分をまとめるというのは、社会・経済構造に区分自体が 根ざしていきますから、なかなか難しい部分があろうかと思うので、区分すること自体 についてもう少し慎重になったほうがいいのではないかというのが、個人的な意見とし てあります。 ○岩村座長  94の4桁分類の部分をどうするかということですが、今日示された資料の中で見て も、細かく見ると事務職の存在率が少し違っているということもあり、仮に94の4桁分 類の所を細分化するにしても、いまの分類のままで細分化するのかというのが1つの論 点としてあります。単純収支率はいまの分類を前提としてしか出てないので、ほかの分 類だとどうなるかというのが見えないのです。  先ほどの小畑委員の発言との関係で言うと、いま精査していませんが、ざっと見た感 じでは、94の分類の所は、その業界団体があまりないような感じも受けるので、ちょっ と難しい部分はある。ないわけではないのですが、その辺がうまく噛み合うのかどう か、どういう視点があり得るのかというのは要検討です。他方で、あまり細かくしすぎ ると、それはそれでまた別の問題も生じるということもあるので、その辺の兼ね合いを 考えながらということになるかもしれません。しかし、当然細分化すれば、理論的にも 全体の収支にも影響は出てくるのでしょうか。 ○阿部委員  同じです。 ○岩村座長  いままで平均化されていたのが、ばらばらになるだけの話で、変わらないのですか。 ○阿部委員  そうですけれど、分類を変えると同時に、メリット制でもやっているわけで、そこが まだ整理できていないのです。つまり、業種区分を変えて事故率、収支率を見ていくと いうのと、それを大きい業種の中でメリット制で調整してしまうというのと、どこに違 いが出てくるのか、そこが見えないという感じがするのです。業種区分をする際に、ほ かの業種はそうなっているのですが、料率で考えてやっていいのかどうかということが うまく理論づけられていない、整理できていないのです。 ○岩村座長  そこが検討課題だという気がいたします。特にこの際ということで発言の希望がなけ れば、予定していた時間にもなりましたので、今日の議論はこの辺までにしたいと思い ます。  今日を含めて過去5回検討会を開いて、各委員からいろいろな意見をいただきました ので、次回は中間報告の検討というステップに進みたいと考えております。そうは言っ ても、議論を進めるに当たって何らかの叩き台が必要であろうと思いますので、大変僭 越ではございますが、座長である私と事務局と相談しながら素案をつくりたいと考えて おります。もしこの方向でご異議等がなければ、次回はその素案なり叩き台をベースに しながら議論させていただきたいと思っておりますが、委員の皆様方はそれでよろしい でしょうか。ちょうど夏休みということもあり、その期間を利用しながら、大体1カ月 ほど時間をいただいて素案なり叩き台を作成したいと考えております。したがって、次 回以降の日程も含めて事務局と相談させていただきたいと思いますが、一応、この段階 でのお考えを事務局から説明していただけませんか。 ○数理室長  次回については、今日委員の皆様方の予定を伺って、予定として9月上旬のいずれか の日に開催したいと考えております。日時や場所は後で連絡いたします。 ○岩村座長  次回については9月上旬ごろに開催というのが事務局のお考えですが、それでよろし いでしょうか。特にご意見がなければ、そのようなことで進めさせていただきたいと思 います。本日の検討会はこれで終了とさせていただきます。お忙しいところ、またお暑 い中、どうもありがとうございました。 照会先  労働基準局労災補償部労災管理課労災保険財政数理室  電話:03−5253−1111(代表) (内線5454,5455)