04/07/07 「第7回医療安全対策検討会議事例検討作業部会」議事録 第7回 事例検討作業部会                        日時 平成16年7月7日(水)                           10:30〜                        場所 厚生労働省専用第15会議室 ○事務局  ただいまから第7回「事例検討作業部会」を開催させていただきます。委員の皆様方 におかれましては、お忙しい中をご出席いただきまして、誠にありがとうございます。 初めに、医政局総務課医療安全推進室長の岩崎からご挨拶申し上げます。 ○医療安全推進室長  本日は、所用により総務課長が若干遅れるとのことでございますので、私が代わりに ご挨拶させていただきます。  委員の皆様方におかれましては、本日、ご多忙の中、「事例検討作業部会」にご出席 いただきまして、誠にありがとうございます。昨年12月24日に厚生労働大臣が、「医療 事故対策緊急アピール」を出すなど、厚生労働省におきましては、医療安全対策の推進 を最重要課題と位置づけ、必要な施策に取り組んでおります。各医療機関におかれまし ても、日々、患者の皆様に安心・安全の医療を提供するために、医療安全の徹底に取り 組んでいただいていることと思います。  本作業部会は、今年度よりヒヤリ・ハット事例検討作業部会から、「ヒヤリ・ハット 」の文字が消え、「事例検討作業部会」という名称にいたしました。これは今年10月1 日を予定しております事故報告制度が立ち上がることをもって、これを含めるというこ とで名称を変更しております。  本日は、15名の委員の出席をもちまして作業部会を開催させていただきたいと思って おります。また、札幌社会保険総合病院から木村参考人にご出席いただいております。  それでは、まず議事に入ります前に、新任の委員の方も多くおられますので、皆様方 のご紹介を私からさせていただきます。石川廣委員、浦澤智佐委員、大澤總弘委員、門 林宗男委員、川村治子委員、進藤弘子委員、田中健次委員、田中基委員、那須野修一委 員、宮本敦史委員、武藤正樹委員、山口俊晴委員、山本章博委員、吉澤潤治委員、橋本 迪生部会長です。今日ご欠席は、中村幸一委員と山勢善江委員です。  それでは、今後の議事進行について、橋本部会長にお願いしたいと思います。よろし くお願いいたします。 ○橋本部会長  それでは、議事に入りたいと思います。まず資料の確認を事務局よりお願いします。 ○事務局  お手元の資料の確認をさせていただきます。第7回「事例検討作業部会議事次第」 「出席者名簿」「委員の座席表」がそれぞれ1枚紙になっています。その次からが資料 本体で、資料1は、札幌社会保険総合病院の木村看護科長のレジュメです。資料2は、 「第9回集計結果」。資料3は、「第10回集計結果」。別冊1、2として、第9回及び 第10回の集計結果のデータです。別冊1が1冊、別冊2が2分冊になっています。80頁 までのものと、81頁からそれ以降のものです。参考資料1は、「ヒヤリ・ハット事例収 集事業登録施設数」。参考資料2は、「10%リドカイン製剤の取扱いについて」という ことで、それぞれ1枚紙です。  そのほかに、情報提供として「医療安全支援センターにおける相談件数等について」 が1つ。資料の追加、差替えがそれぞれ1枚ずつあります。差替えは「訂正」とあり、 資料3、「医療安全対策ネットワーク整備事業第10回集計結果」の15頁の全般コード化 情報検討班の名簿の部分です。追加資料は、資料3の「第10回集計結果」の20頁と21頁 の間に、「事例の具体的内容」という表1が入ります。資料については以上です。 ○橋本部会長  資料をご確認いただけましたでしょうか。それでは、本日は9回と10回のネットワー クの報告がありますので、タイトであるような感じがします。  議事1ですが、前回から現場での取組みをご報告いただいております。今回は、その 中で注射薬のヒヤリ・ハット事例に関連した病院での取組みです。資料にもありました が、リドカインの問題やその他の注射薬の問題は、社会的にもいろいろと注目されてい るところです。そして、抗がん剤も大きく注目されているものの1つです。その取組み について、札幌社会保険総合病院の木村参考人からお話を伺うことになっています。よ ろしくお願いいたします。 ○木村参考人  ご紹介にあずかりました木村です。よろしくお願いいたします。「当院の概要」です が、札幌社会保険総合病院は、全国社会保険協会連合会が開設者となっている札幌市内 の中規模病院です。地域では二次救急の患者の受入れなどを行っており、今年から臨床 研修病院にもなりました。わずかながら治験も引き受けておりますので、この規模の急 性期病院としては標準的なリスクを抱えた病院ではないかと思います。  札幌社会保険総合病院では、院内報告制度を院内LANを活用して収集しています。 今回は院内LANになってからの全収集事例1,579件の中から、注射に関する報告416件 (うち化学療法に関するもの19件)がありましたので、この化学療法の部分を分析対象 にしました。  まず注射に関するインシデントの業務プロセス別の報告件数を示してあります。当院 では、混注業務を部分的に薬剤部が行っていますので、払い出しの中には薬剤部による 準備のエラーも含まれています。それと、部分的に看護師が行っている薬剤準備もあ り、この部分は実施の段階の中に含まれています。実施段階の準備エラーは106件で、 それ以外に実際に実施以降にかかわるエラーは153件です。  化学療法のインシデントを業務プロセス別に示してあります。まず指示発生時点での エラーが2件です。1件は具体的な薬剤の量に関するもの、もう1件はプロトコールの 訂正ミスにかかわるものでした。  オーダー入力に関するものが2件で、このうちの1件はタキソールとタキソテールと いう薬剤名に関するエラーです。当院では、抗がん剤は薬剤としての重要性が非常に高 いことと、ケミカルハザードであるという2点から、薬剤部が全件調剤しています。量 に関する誤りが1件、調剤払い出しの部分の3件のうちの残りの2件は、与薬経路が変 更になっていたのが、うまく伝わらなかったためのエラーでした。実施の2件について は、実施時間、最後に実施しなければならなかったものを、少し早めに実際に投与して しまったというエラーで2件です。全体の半数ですが、実施以降の実施時間のエラー、 観察・その他のエラーになっています。速度エラーと薬剤の血管外漏出、いわゆる点滴 漏れと言われているものは、観察・その他の部分で5件ずつになっています。化学療法 については、かなりリスクが高いという認識が大きいので、各部署とも取り扱いにはか なり気を使っていると思いますが、最終的な実施部分以降のエラーは、なかなか有効な 対策が採れないのが現状です。  前半部分で薬剤部が抗がん剤の調剤を行っていますが、前半の薬剤量、あるいは薬剤 の種類のエラーが非常に少ないのは、薬剤部が抗がん剤の調剤をしているという条件 が、かなり影響していると思われます。  次に具体的な事例です。ここでご紹介するタキソールの事例は、実際にこの2年間強 の期間中に、3回ほど繰り返し、ある一定の期間を置いて発生したものです。その都 度、少しずつパターンが違うという非常に興味深いエラーでした。タキソールというの は、タキソテールと同型のもので、西洋イチイなどの抽出物からの半合成物ということ ですが、非常に粘稠で、滴下にムラがあることは分かっていました。この事例では、本 来は薬剤を1時間で投与しなければならなかったところを2時間かかってしまいまし た。これ以前に滴下のエラーについては報告がなかったのですが、この事例では薬剤の 特徴のほかに、患者さんが自力歩行が可能で、点滴中も腕を組んだり、廊下を歩いてい たことが影響因子として考えられました。そのために、それまで各病棟に化学療法時の 輸液ポンプ使用というのは、必要があればということで判断を委ねていたのですが、 「輸液ポンプを原則として使用すること」と決めました。  タキソールに関しては、輸液ポンプを使っても、ムラ落ちすることがある程度分かっ ていましたので、実施中は原則としてお休みいただくことにしました。  もう1点は、タキソール点滴時の輸液ポンプの使用方法を周知するということで、こ の薬剤を使用するために、ME部が輸液ポンプにもともと点下センサーを付けて、請求 があれば払い出しをしていたのですが、その方法について周知するとともに、必ずそれ を使うように連絡をしています。  こちらが、準備してもらった某メーカーの点滴の輸液ポンプです。前面に「流量は 1.6倍にしてください」とあります。これは薬剤が粘稠なために1.6倍の流量で設定しな いと時間どおりに落ちないので、1.6倍に設定してくださいと言われました。  もう1つは、専用のポンプを払い出すために準備をしてくれていますが、通常はここ に付いているのが滴下センサーです。滴下センサーというのは、点滴の滴下筒に挟ん で、滴下の状態を確認するためのものです。通常は患者さんが歩いたりするとかなり滴 下筒が揺れますので、滴下センサーで誤作動を起こしてアラームが鳴ることが多く、当 院では通常は使っていません。ただ、タキソールに関しては、滴下筒にセンサーを付け て使ったほうが確実だということで、このケースについては滴下筒に滴下センサーを付 けて使うことになっています。  もう1つは、メーカー側から、このポンプは輸液セット専用で、「一般用輸液セット 及び他の輸液セットは使用できません」という注意書が貼ってあります。この状態で専 用の輸液セットを使って使用してくださいということを周知しました。  それからしばらくして、もう一度タキソールのエラーが出てきました。今回はタキソ ールを3時間で滴下の指示があって、タキソール専用のポンプを使用していたのです が、チューブを間違えたために予定時刻に終了しなかったというエラーでした。このエ ラーは日常的にあまり使用したことのない病棟で発生しました。使用に慣れた病棟では 起きにくいのですが、普段使っていない所では、個々人の細かな実施上の知識がなくて も、確実に実施ができるシステムが必要だろうということになりました。そのために薬 剤部が、専用の輸液ポンプ用チューブを薬剤にセットして払い出すことで、輸液セット 間違いを防止することになりました。これ以降、チューブそのものが異なっていたため にエラーが起きたという事例は起こっていません。  さらにもう半年ほどして、今度は3時間の滴下の指示があって、タキソール専用のポ ンプを使用したが、時間量の設定を1.6倍にすることを知らず、予定時刻になっても終 了しなかったという事例が発生しました。ちょうど新人が独り立ちして、新人あるいは 経験の浅い看護師だけで日勤を行うという時期でした。夏期休暇も重なって、そういう 状態が非常に発生しやすい状況でもありました。遅れたのがどうしてなのか、日勤帯の 看護師は分からなかったのですが、申し送りのときに準夜勤の看護師が報告を受けて誤 りに気が付きました。  このときの検討内容としては、機械の表示をもう少し正確にしたほうがいいのではな いかという指摘もあったのですが、そのようにはせずに、連絡、教育によって対策をと ろうということで、再度タキソール投与時のポンプの利用方法と薬剤が粘稠であるた め、通常の1.6倍の時間がかかることを周知し、同時に院内にある看護事故防止委員会 からタキソール使用時の手順をまとめたものをフローチャート式にして、各部署の看護 事故防止委員を通して周知しています。1枚のニュースレターですので、各部署ごとに 院内統一の輸液ポンプの使用の手順のマニュアルに、そのまま追加してもらうことにな りました。今後もこのエラーについては、新人が入ってきたときや異動の時期に発生す る可能性があるので、また定期的に注意喚起を行っていく必要があるのではないかと思 います。  次の事例です。深夜勤の看護師が注射伝票と医師指示箋、プロトコール照合中に食い 違いに気が付いて、オーダー画面を確認したところ、オーダー内容もプロトコールと異 なっていることが判明しています。翌日、薬剤部からもプロトコールとオーダーの薬剤 面が異なっている旨、確認の連絡がありました。これは当院で化学療法を行う際に使用 しているプロトコールがエラーの検出に役立った事例です。  こちらが医師から提出されるプロトコールですが、こちらのプロトコールが事前に化 学療法が決まった時点で薬剤部と実際に実施する部署に出されます。薬剤部でプロトコ ールの内容を鑑査して、鑑査者が押印をする。事前に病棟あるいは外来に同様のものが 配布されます。外来では、オーダーを出す各科と、処置が中央化されていますので、中 央処置室に同様のものが全部配布され、指示受けをした看護師のサインがなされます。 この時点で、どういう治療がなされるかが確認されます。  その次にオーダーが入るわけですが、オーダーを打ったあと、もう一度薬剤部で確認 を行っています。下に注意事項のコメントが入るようになっています。最終的に薬剤部 で薬剤を調剤して払い出しますが、そのときにも調剤者が再び押印します。処方箋その ものも処方監査がありますので、薬剤師だけでこのプロセスが終了するまでに4名が関 与しています。それとそれぞれの部署での看護師の確認が入ります。  現在残っている化学療法にかかわるリスクとしては、経路変更等の連絡エラー、薬剤 部での調剤エラーが可能性としては残っていますが、今までこの2点については実際に 病棟に払い出しの段階まで上がったことはありません。最後にどうしても残ってしまう のが実施時のエラーで、特に速度エラー、薬剤の血管外漏出の問題です。  実施エラーのために採っている方策としては、チェックリストで経過時間、積算量、 時間流量、残量、刺入部という確認をそれぞれ時間を追ってチェックするためのリスト が準備されています。ただし、これは病棟では使っておらず、化学療法が同時に行われ るので、非常にリスクが高いために外来だけで使っています。  今まで当院で行ってきたエラー対策をまとめますと、まず医師によるプロトコールの 提出と事前の確認。薬剤部による化学療法薬の準備。ME部による輸液ポンプ・シリン ジポンプの管理・準備・払い出し。薬剤に関する教育ということで、DIミーティング (薬剤部主催)、院内の学術集会等を開催し、薬剤に関する職員教育を実施していま す。ポンプ等の使用方法に関する情報の提供とマニュアルの見直しなどを行っていま す。  これまでの対策の成果から1つ言えることは、プロトコールの使用は、事前の確認に よるエラー検出に非常に有効だということです。特に指示のエラー、オーダーミスの検 出には有効でした。外来化学療法のベッド調整等が可能になり、過剰な負担が実施する 場所にかからないという意味では、より安全な実施環境を確保できると言えます。  次に、薬剤部による調剤実施によって薬剤の種類や量誤認の発生はかなりの率で予防 できます。もう1つは、業務の上流でのエラー検出、特にプロトコールの使用と薬剤部 による調剤実施によって、実際に実施する看護師が実施の部分に集中できるという意味 では、下流の負担をかなり軽減してもらっているのではないかと思います。  最後に、先ほど紹介したタキソールの事例のように、大きいところでエラーが起こら ないようにシステムを直しても、どうしても細かく残るリスクがあって、反復して出て くるような事例の場合は、一つひとつの事例分析を行うだけではなく、そういうエラー を拾って、アフターケアを丁寧に行っていくことが重要ではないかと思います。ご清聴 ありがとうございました。 ○橋本部会長  少し時間をとってあります。第9回、第10回の集計結果をお話していただくことが後 に続きますが、それも今回の注射薬のヒヤリ・ハットの事例と全般コードも含めて関連 づけて議論を組み立てておりますので、そのような議論の仕方をしたいと思います。ま ず質問からお願いいたします。 ○浦澤委員  言葉の定義ですが、調剤というのは、取り揃えのことでしょうか。 ○木村参考人  調剤というのは、混注業務もすべて含んでいます。 ○浦澤委員  調整も入っているということでよろしいですか。 ○木村参考人  はい。 ○浦澤委員  調剤というと、取り揃えだけだという認識があって、ミキシングが入ると調整という 言い方をしていましたので、分からなかったものですから、質問しました。 ○田中(基)委員  輸液ポンプの使い方のことで教えてほしいのですが、滴下センサーを普段は使ってい ないが、今回は使ったというのですが、滴下センサーの使い方は一般的に行われている 方法なのですか。 ○木村参考人  取り付けなければ、取り付けない設定で使用できるようになっています。 ○田中(基)委員  タキソールの場合は、流量を設定よりも1.6倍にするということでしたが、粘稠が1.6 倍と言ったら、相当変わってくると思いますが、タキソールだけに限ったことで、ほか の薬剤は通常の流量で設定し、タキソールだけが違うということでよろしいでしょう か。 ○木村参考人  当院で使用している化学療法薬の中では、タキソールだけです。 ○田中(基)委員  そのほかの粘稠ではない普通のさらさらした薬剤であれば。 ○木村参考人  普通の薬剤の流量設定で、予定どおり終了します。 ○田中(基)委員  これはME部かどなたかがチェックされているのですか。 ○木村参考人  そうです。 ○武藤委員  外来の化学療法のセッティングと病棟の化学療法のセッティングで、その後比較した ことがありますか。例えば、チェックマニュアルを使うと外来化学療法のほうが、より ヒヤリ・ハットが少ない、あるいは病棟のほうが危険などという比較検討がなされてい るのか、印象的にはどうですか。 ○木村参考人  インシデントの数だけでどのぐらい比較できるかという問題もあると思いますが、実 際にはかなり正確に、注射薬についてははっきりしたエラーが出てくるので、数はかな り正確に把握できていると思いますが、流量のエラーについては圧倒的に外来のほうが 起きやすいです。  というのは、化学療法薬についてだけですが、輸液ポンプを全例で使っており、並行 して行う件数が外来のほうが圧倒的に多いのです。ただ、全例が19例ですので、多いと 言っても2例と1例とか、3例と1例ぐらいの比率です。外来のほうがある一定の時間 帯に集中して、かなり細かい指示で患者さんが化学療法を受けるケースが多いのです。 それと件数が外来は非常に多いので、発生する数としては外来が高いです。 ○武藤委員  件数当たりのリスク頻度までは分かりませんね。 ○木村参考人  そこまでは分かりません。病棟の場合は受持ちの看護師が1対1で行っていることが 多いのですが、外来の場合は交替があって、複数の看護師がかかわることもありますの で、外来のほうが印象的にはリスクが高いと思います。 ○武藤委員  今後、外来化学療法が増えてくるので、外来化学療法のリスクの問題が結構大きくな ると思います。こうした検討も外来化学療法で検討されるといいかと思いました。 ○門林委員  プロトコールを医師から出され、その中には中止基準や除外基準、バイタルチェック をどこで、どのようにするかが盛り込まれているのでしょうか。と言いますのは、オー ダーがあって、実際に最終的に直前にバイタルチェックをして、量を減らしたり、薬剤 を変えることもあり得ると思いますが、そういう点検をプロトコールの中に盛り込まな いと、実施直前で変更ができない、あるいは最終的にはチェックができないと思うので す。いまの委員の質疑の中で、プロトコールの例は見当たらなかったのですが、そうい うことはどうでしょうか。 ○木村参考人  現在行われている方法だと、事前の薬品の種類と量と組合せが一連に載っているだけ で、当院では、基本的には医師の診察を受けて、ゴーサインが出てから開始をすること になっています。 ○門林委員  薬剤師のオーダーがあって、調節する時間差があると思いますが、実際に実施する直 前でドクターの再度確認がそこで入るわけですね。 ○木村参考人  そうです。それは必ず診察が終わってから開始されるわけです。 ○門林委員  それはファックスか何かで薬剤師に連絡されるのでしょうか。オーダーされた内容で 調整してスタートする、あるいは少し変更するということですか。 ○木村参考人  本当に希ですが、実際に調剤したものが変更になることがあります。予め作っておい ても、それとは違うものが使われることがあります。 ○門林委員  外来のことが出ましたが、オーダーされ、時間差があって、少し前にオーダーされた ものをチェックしたときに、少し問題があって、量を減らすなどということがあるとい うことですが、初めの処方内容だけでは駄目で、再度確認の書類や証拠を何か残してお かなければいけない、そういうシステムをとらないと非常に危ないのではないかと思っ ています。 ○山口委員  癌研では、1999年に非常に重大な事故が起こり、ヒヤリ・ハットは前からやっていた のですが、最初は非常に少なく、4、5件しか出てなかったのです。そのあといろいろ 改革を進めて、いまの話は私も非常に感銘を受けました。癌研ではレジュメを全部登録 して、レジュメ集を作り、それを基にチェックするということで、レジュメのミスは極 めて減りました。薬剤師の自覚が非常に大きかったと思います。ダブルチェックも非常 に大事です。もう1つ非常に大きかったのは手書きのレジュメをやめ、すべて印刷して やってくれということになってから、字の書き間違いなどが非常に少なくなり、よかっ たのではないかと思います。  それから、慣れていない病棟で起きるということがあって、レベルの非常に高い重篤 な合併症が起こり得る化学療法は、限られた病棟でやるほうがいいのではないかと考え ています。  武藤委員のお話ですが、最近は外来の化学療法が圧倒的に多く、総件数からいえば、 外来のほうがインシデントは多いのですが、外来のほうが安全ではないかと思います。 ○橋本部会長  外来のほうが安全というのは、件数当たりですか。 ○山口委員  そうです。慣れたチームはそれに専念しているわけです。病棟はほかにいろいろな業 務をやっていますので、その点ではやりやすいのではないかと思います。 ○橋本部会長  木村参考人からは、外来は1対1ではなく、患者さん1に対して看護師が複数で看る から、そこのリスクがあり得るというお話があったような気がするのですが、その辺は 病院のやり方によって違うのでしょうか。 ○山口委員  病棟で1対1と言っても、ずっとやるわけではなく、交替して、しかも非常に不規則 です。むしろ外来のほうが必ず毎週1回来るなどと決まっているので、顔馴染みにな り、外来の看護師のほうが親密ではないかと思います。 ○木村参考人  その辺りは外来化学療法の件数や、それにどのぐらいの人員を投入できるかによると 思います。一般の市中病院で行う場合は、ほとんどが中央処置室で、そのほかの業務、 例えば採血や予約と併せて外来の化学療法を行っているケースが圧倒的に多く、一応担 当者は決まりますが、そこに完全に専念できる形にはならない病院がかなりたくさんあ ると思います。その場合にどのように安全に行っていくかは検討していかなければなら ないし、システムとしてきちんと確立していかないと、安全性は担保できないのではな いかと考えます。 ○橋本部会長  いまの話をまとめると、外来の化学療法でそれなりの基準に則って、しっかりした人 員を配置し、しっかりやると安全だというのが山口委員の言い方で、例えば、診療報酬 上かなり外来の化学療法にインセンティヴがかかっていますので、そういう意味でしっ かり人員を整えないでやると危ないという言い方が木村参考人からあったと思います。 ですから、やるからにはちゃんとやってください、という確認が病院の中でどの程度な されるか、あるいはどのように資源を配分していくかという問題になるのかと思いま す。  そのほかにございますか。田中健次委員は、工学のほうからご参加いただいているの で、いまお話があったいろいろな機械との関連等々でいかかでしょうか。 ○田中(健)委員  私も質問があります。先ほどの1.6倍の話ですが、事例1−3で、経験が浅い者が 「1.6倍でする事を知らず」というのがありました。先ほどの写真ではラベルが付いて いましたが、ラベルを見たのに、それに気が付かずに、それが分からなかったというこ とと、教育も十分されておらず、本人も知らなかったという二重の原因が重なったとい うことでしょうか。 ○木村参考人  これは知識が正確ではなかったというのが正しくて、その看護師は実際に専用のポン プを使わなければならないことと、専用のチューブを使わなければならないことは知っ ていました。流量も1.6倍でなければならないことも知っていたのですが、ME部から 払い出される時点で、流量が1.6倍と設定をしたと思い込んでいたために、そのまま使 ってしまったというエラーです。ですから、1.6倍に流量を変えなければ駄目だという ことを周知したのです。 ○田中(健)委員  それを担当者が変えなければいけないということですね。 ○木村参考人  そうです。 ○田中(健)委員  こういう表示の付け方はすごく難しい問題があって、写真は1.6倍で切れていますが、 1.6倍にしなさいというものなのか、1.6倍にセットしてあるはずだというのか、その辺 がうまく伝わる表示が必要です。私は最初に写真を見たときに表示の修正を考えるべき かと思ったのですが、先ほどの対策では、むしろ教育で対応するとありました。それは 表示で対応することによって、その場でハッと気づかせるのか、教育でしっかりさせる のが重要なのかという辺りは、議論されて教育でということに落ち着いたということで しょうか。 ○木村参考人  そうです。病院内で検討したのですが、教育で対応しようということになりました。 ○田中(健)委員  工学でという意味ではありませんが、いろいろな人が入ってくる所では教育で徹底さ せると漏れが起きる可能性があります。教育でやることは非常に重要ですが、それを補 助する意味での表示の適切さは考える必要があるかもしれないと感じました。  もう1つは、食い違いの話があって、プロトコールと伝票のところで、チェックが4 回もあるということですが、チェックと言っても、何と何をチェックするためのチェッ クかは1回ずつ意味が違う気がします。例えば、注射伝票とプロトコールの食い違いに 気づくのは、薬剤部とプロトコールの最初のチェックではなく、もっと後ろのほうのど こかでチェックされる。4回という回数が問題ではなく、チェックすべき段階でチェッ クされていない。だとすれば、それをダブルチェックしなければいけないというところ が明確にならなければいけないのではないか。私は医療の専門ではないので、これを見 ただけでは、チェックの回数より、何と何をどこの段階できちんとチェックするか分か らないところがありました。本来はどこでチェックされるべきなのに、それが見逃され たのですか。 ○木村参考人  これは見逃されたのではなく、プロトコールのチェックは事前に化学療法担当の薬剤 師が必ず目を通しています。そのあとで実際にオーダーで注射指示箋が出てきて、その ときにプロトコールと注射指示箋の食い違いに薬剤部が気づいていたのです。病棟でも 看護師が、医師の指示と実際にオーダー画面が食い違っていることに気がついて、両方 できちんとチェック機構が働いたので、オーダリングのエラーであることに気がついた という事例です。プロトコールの有用性について説明したつもりだったのですが、私の 言い方が悪かったようです。 ○田中(基)委員  1.6倍の流量を変えるということですが、いろいろ教育して防ぐことは大事だと思い ますが、ポンプ自体が薬によって流量が変わってしまうこと自体が問題だと思います。 多少粘稠であっても、決められた流量だけ入るポンプをメーカーに作ってもらうとか、 そういうポンプを使うという根本的なことが必要だと思います。ほかに塩ビのフリーの セットを間違えたということですが、塩ビが入っているのを使っては駄目というのは、 この薬だけではなく、ニトログリセリンも駄目ですし、脂肪製剤も駄目なのです。そう いうのが混在しているのが問題で、例えば病院全部が塩ビの入っていないラインを使え ば、間違うこともないので、根本的な解決策も必要ではないかと思います。 ○橋本部会長  病院の中で全部PVCのフリーのものにしてしまおうという議論はなかったのです か。つまり、問題の起こらないものだけがあれば、問題は起こらないのですが。 ○木村参考人  やはりコストの問題、諸々の問題があって、なかなかそこまで踏み切れないのです。 ○橋本部会長  いまの指摘は正しいと思います。どのぐらいのボリュームを使っているのかというの は全部コストの問題にかかわってきますが、そういう計算がきちんとできるかどうかと いう問題もあります。それが経済的な問題としてあるのだったら、次の段階でどうやっ てきちんと管理していくかという次の安全策を採るという話なのでしょうか。 ○木村参考人  タキソールについては、非常に特殊な問題があって、0.22μ以下のインラインのフィ ルターを付けることというのが薬剤の貼付書に書いてあります。フィルター付でPVC フリーとなると、かなり特殊なラインです。実際にこの薬剤しか使っていないので、対 策としては、この薬剤については薬剤部で対応してもらうことになったのです。 ○橋本部会長  山口委員の所では、粘稠なものの1.6倍というやり方については、どのようにされて いますか。 ○山口委員  薬剤部から払い出すということはやっていないので、非常に参考になりました。やは りこういうエラーがありました。コストの問題が出ましたが、全部このラインにしてし まうのは全く非現実的で、色を変えるとか、もっと賢い方法があるのではないかと思い ます。いま言われたような工夫でも十分いいなと思いました。 ○橋本部会長  1.6に調整をし直すというチェックの問題についてはどうですか。 ○山口委員  ポンプのことに関しては、私は理解していません。 ○門林委員  ポンプの問題は、ポンプの機種によって相当違いがあると思います。ストローク型の ものだったり、滴数センサーのものがあったり、それによって違ってくるので、機械ご とで決めても、新しい機械が出ると、1.6倍でうまく行かないということが出てきます ので、非常に注意しなければいけません。ですから、どんな薬剤であれ、行けるような ポンプが開発されれば、それに越したことはありません。そういうところがまだ見えな い部分があります。  PVCフリーは、非常に高コストですので、すべての薬剤をこれでというのは、いま の診療報酬では賄い切れないと思います。  チェックの話が出ましたが、薬剤師が関与しているというのは、チェックする項目が 大事で、その中では情報の共有化をしなければいけません。何をチェックするかは薬剤 師が薬品ばかりチェックしても不十分なので、患者さんの状態、バイタルチェックと併 せてチェックできるシステムではなければ意味がないと思いますので、是非情報の共有 化を図るということで、ご理解願いたいと思います。 ○橋本部会長  いま良いお話があったような気がします。薬剤師のチェックの仕方で、薬剤だけを見 てもしようがない。むしろ患者さんそのものもちゃんと見なさいというお話でした。 ○門林委員  薬剤も大事ですが、患者さんの情報がなければ良いチェックはできないということで す。 ○山口委員  確かにおっしゃるとおりです。いくらやってもいろいろな医師が出てくるのです。そ れはチーム医療をやらなければいけないのではないかということで、いま癌研でも医師 がどうしても威張って、医師中心の流れがいろいろな所で事故の因になっているので、 いま言われたことを実現するためにはチーム医療を何らかの形で、一緒に回診などをし なければいけないということで、いま検討しています。 ○橋本部会長  武藤委員にお尋ねします。クリティカルパスは、チーム医療を展開していくときに、 何を、誰が、どうすべきかを、明確に記載できる手法ですね。ご意見をください。 ○武藤委員  ですから、薬剤師たちにもクリティカルパスの作成段階から入っていただいて、どう いう段階で、どういうチェックを薬剤師がかけるべきか。薬の評価に関してもどういう 段階でやるかを、パスの中に明確に落とし込んでいくことでしょうね。またチーム回診 がすごく効果的です。我々もやっていますが、医師、看護師、薬剤師、検査科、栄養士 がお団子状態で回診行きまして、患者さんを診ながら、単に廊下で立ち話ですが、ウォ ーキング・カンファレンスをやっています。実際に患者さんを目の前にしてやるベッド サイドのカンファレンスがいちばん効果的ですし、薬剤の副作用の問題なども、そこで 薬剤師と共有できますから、情報共有の中ではチーム回診がすごくいいと思います。 ○橋本部会長  回診の中にはカンファレンスも入っているのですか。ときどき申し上げているのです が、カンファレンスの中に患者さんを入れることはありませんか。 ○武藤委員  我々の所では、全部ではありませんが、患者さんに入っていただき、これから何をす るかを患者さんに情報としてしっかり伝えています。患者さんの状況など多種多様です ので、全部ではないと思いますが、そんなこともあるのかと思います。 ○那須野委員  先ほどのポンプの件ですが、いまのポンプでは粘稠度によって全部に対応できるもの は非常に少ないというか、ほとんどないのではないかと思います。機種ごとに1.6倍で はなく、1.2倍のものもあれば1.4倍のものもあると思います。この場合に、トータル量 を注入時間で決めていますが、指示の中に毎時いくらで入れなさいという注入量が入っ ていません。現場では、輸液ポンプを使う場合に、輸液ポンプで毎時いくらという指示 と、何時間でこれだけの量を入れなさいという指示と2つあって、現場でそれを計算し てやっているわけですが、1.6倍で注入するのではなく、ポンプが決まっているわけで すから、トータル時間と注入速度を記入するようになれば、1.6倍で注入することに捉 われずに、最初の指示の段階で計算してあれば、こういうエラーは起きにくいのです。 ポンプはこれを使って、この注入量で入れなさいという形になれば、たとえ制御ポンプ が変わっても対応が可能なのではないかと思います。 ○橋本部会長  ポンプがいろいろあって、それごとに1.6倍ではないはずだから、そういう表記のほ うがいいだろうという考え方ですね。でもいろいろあるのはつらいですよね。そのこと 自体はつらいのですが、技術的にまだそこまで行っていないということなのでしょう。 ○川村委員  3点お聞きしたいと思います。大体プロトコールというのは、薬剤量に関しては、体 表面積当たりいくらという基準が書かれていて、実際に指示箋を出すときには患者さん の体表面積をかけて患者さん用の薬剤量が指示として出されています。患者さんの体表 面積などの数値を見ながら、プロトコールと合わせて算定が合っているかを薬剤師、あ るいは看護師の両者がチェックをするべきだと思います。混合調整に関しては、私は看 護業務というのは途中中断が起こりやすいので、薬剤科でやられるのがベストだと思い ますが、資料のプロトコールの写真をジッと見ていますと、ジェームザールなどという ところですが、その患者さんの量になっているような感じがします。患者さんの算定根 拠がプロトコールのどこかに書かれているか、指示箋のどこかに書かれていて、それを もとに薬剤師や看護師が量の確認をしているのでしょうか。 ○木村参考人  身長と体重はオーダリング画面の患者プロフィールに入っているので、それを見て確 認ができます。 ○川村委員  このプロトコールは基準ですよね。 ○木村参考人  プロトコールは患者さんごとに最終的に決定されたものを渡しています。 ○川村委員  では、この段階で医師が算定を間違えている可能性はないのでしょうか。基準のプロ トコールに、患者さんの体表面積を掛けて、患者さん用の投与量を計算しますが、初め からこのプロトコールには患者さん用の投与量が入れられているのですね。 ○木村参考人  そうです。 ○川村委員  では、医師の算定した量を薬剤師が鑑査をするというのは、どのようにやられている のでしょうか。 ○木村参考人  新しいプロトコールというか、やり方をするときは、当院では、医師と担当の薬剤師 が基本的には、どういう状況で、どういう方法でやりたいという話が事前に行っていま す。それに基づいて薬剤部で確認をして、鑑査をしています。 ○川村委員  それでは、医師が量を書くときに、プロトコールの基準値と患者さんの体表面積から 計算するところを、両者がやっているということですか。 ○木村参考人  そうです。 ○川村委員  そして、このプロトコールが出され、さらに指示箋が出されるのですか。 ○木村参考人  指示箋はあくまでも医師の指示を受けて、オーダリングを入れたときに初めて出てく るものです。 ○川村委員  看護師の行為伝票としては、指示箋で行くわけですか。 ○木村参考人  行為伝票というのは。 ○川村委員  実際に点滴をつないだりするときに、患者さんの目の前で確認をするための伝票はこ れですね。 ○木村参考人  そうです。 ○川村委員  看護師もこの内容量が、プロトコールと合っているということは確認しているわけで すか。 ○木村参考人  そうです。そのためにプロトコールを事前に出してもらい、あくまでも医師の指示の オリジナルなものとオーダーが間違っていないかどうかを確認します。 ○川村委員  医師の計算間違いがどこでチェックされるのかということが重要だと思います。2つ 目は、薬剤師が混合調整をして病棟に払い出したあと、薬剤師が4人でやられていても もし間違っていたとすると、看護師は、どのようなやり方でチェックするのですか。 ○木村参考人  基本的には、2番目の事例にあったとおり、まずプロトコールと注射指示箋を照合し ます。 ○川村委員  でも薬剤はもう中に入っていますね。 ○木村参考人  中に入っている薬剤の確認の方法はありません。 ○川村委員  例えば、空バイヤル、空アンプルまで残量を出して病棟でチェックしているのかどう か。そうすると、最終的に入れられたものは薬剤部の確認のみということですね。 ○木村参考人  そうです。 ○川村委員  3点目ですが、輸液ポンプを使うのは流量設定上はいいと思うのですが、輸液ポンプ は圧力で入れますので、末梢静脈からいくと漏れたときは大漏れになって、壊死性抗が ん剤の場合は大変な組織傷害を起こしてしまったりするわけで、普通はポンプは使わな いほうがいいと思っていたので。時間どおり注入しなければいけないということが最優 先ならば、輸液ポンプ使用中の抗がん剤の患者さんに、どのように観察に注意するかを 看護師教育でなさっているのでしょうか。 ○木村参考人  先ほどの外来のチェックリストの項目があったと思いますが、あれは10〜15分ごとに です。 ○川村委員  病棟でもそうですか。 ○木村参考人  基本的にはチェックリストは使用していませんが、輸液ポンプでの血管外漏出の問題 は大きいので、必要な確認事項については、基本的に点滴刺入部の確認、残量の確認、 流量設定の確認は全部行っています。 ○橋本部会長  質問が3つありました。1番目は、算定根拠が、この紙には示されていないので、そ れを信ずるしかないのだが、それでいいのかということですね。 ○川村委員  医師の書いた量が正しいと信じていいのかということです。 ○橋本部会長  2番目は疑い深くて、薬剤部がやったものを病棟でチェックする方法は考えなくてい いのかということですが、2番目の問題は結構拡張性があって、病棟で看護師はいろい ろなものを混注しているのは薬剤師がやるべきだという議論が、業務の分担論の中であ って、そのほうが安全だという言い方があります。私も気になっているところですが、 それを仮に薬剤師がやって、間違った経験が薬剤師のほうであると、病棟ではそれをそ のまま信じて使えるのかどうかが、とても気掛かりのままやるという状況が出てくるの ではないかと思います。空の瓶を付けて上にあげるという話になるのですか。 ○川村委員  看護師は、正しく入れられているかどうかが不安だと言います。そこをどのように解 消すればいいか、皆さんのご議論をいただきたいと思います。 ○橋本部会長  この薬剤がそれに該当するかどうかは分かりませんが、病棟で薬剤師が混注をして、 そこでやっていることを見せることは結構いいのではないかという議論はあります。目 の前でやられていないものは、1回間違うと、なかなか信用しないのです。 ○川村委員  混合調整している薬剤師を1度見たのですが、その前には確かにほかの薬剤師がチェ ックしていたとしても、入れているのは1人です。そこでもう1人見ているわけでもな く、それほど人の資源があるわけではないのですし、薬剤師を信じるしかないのです が、薬剤師の側からはいかがですか。 ○門林委員  人的資源の問題もあるかと思いますが、基本的にはドクターからオーダーをいただく と、最初に個人別セットをします。その段階でチェックします。本来は1人で混合調整 するのを2人でやる。3人でやるのがいちばん理想的で、2人が作業をして、後ろから それを鑑査する人間が立って、その手元を点検するというやり方がいいので、私の所は そのようにやるのですが、人的資源の問題もあります。  もう1つは、使ったあとの空バイアルや空アンプルは絶対に捨てないで、同じトレー の中に残しておく。それを次の方がチェックしないと保証できませんし、そのようにす るべきだと思います。看護師がそれをチェックする、あるいはドクターがチェックして も構わないと思います。最終的には重量を測ったり、諸々の方法があるかと思います。 ○橋本部会長  1つアイディアをいただいたような気がします。算定根拠のようなものの数値は残し ておいたほうがいいのではないかということですね。たぶんその前のステップでどうい うことを、どれだけきちんとやっているかに依存するような気もします。ただ、そこを 外して独立に考えると、確かに身長と体重ですか。 ○川村委員  体表面積です。 ○宮本委員  抗がん剤の場合は、体表面積でやるようです。ほかの薬剤と違って、量が個別に変わ るのです。薬剤師が混注したものを、例えば病棟でナースやドクターがチェックするに しても、その算定根拠になるものが一緒に動いていないとチェックできないというシス テムです。先ほど川村委員の指摘があるまで分からなかったのですが、いちばん基本に なるこのプロトコールはベースでいくらという算定の基準になるものがまずあって、こ の患者さんはいくらという形になっていないと間違いが起こると思いますし、チェック できないのではないかと思います。 ○橋本部会長  そういう情報が一緒に載っていたほうが安心できるということですね。体表面積でい いのですか。 ○門林委員  主には体表面積で、出すためには身長と体重で、計算式があります。 ○橋本部会長  計算は手計算でやるのですか。結構嫌な式で、いくつか方式がありますね。 ○宮本委員  計算はなかなか難しいので、普通は体重と身長から出た体表面積表というのがありま す。 ○橋本部会長  表の場所などはよく見間違えるのではありませんか。 ○門林委員  最初にプロトコールをドクターが作られるときに、使用基準、除外基準が必ず載って いないといけないと思います。こういう条件で、どんな体表面で、こういう計算式を使 って、この量でいくという換算ができるような情報。たとえば白血球数が極端に減っ た、500にまで減ったら中止するというような基準の情報がないと、最終的に使ってい いのか、混合調整していいのかどうかは薬剤師も分からない。看護師にも情報を流さな いということになると思います。 ○橋本部会長  札幌社会保険総合病院のお話をお聞きして、こういうことに関する一般的な方向性を 出していくのが今回の議論の役割だと思いますので、そういう意味では算定根拠が確認 できるようなものがあったほうがいい、というご意見であったと思います。あとほかに いかがでしょうか。  乱暴な聞き方をしますが、タキソールという、粘稠度が高くてポンプの設定をいちい ちし直すさなければいけないようなものを使わなければならないのですか。この辺りは 全然分からないで聞いているのですが、一般論とすると、この薬がとてもリスキーでい ろいろな所で問題が起こるのだったら、ほかのもっと楽な安定したものを、同じような ものを使えばいいではないか。トータルにはどちらがいいのだろうという話は、たぶん 一般論としては成り立ち得るのだと思いますが、この場合はどうなのですか。無理です か。 ○山口委員  無理です。 ○橋本部会長  どうしても使わなければいけないものについては、危険な要素が残りながら、どうや って管理をしていくかという、一般的な問題だと思います。  もう1つ出たのは、危険なものは慣れた所に扱わせろという意見ですね。危ない状況 のもの、これもいくつかこれまでに経験はあるような気はします。これも前の検討会で 話したと思いますが、例えばインスリンの規格が変わったときに、ある時期混在するわ けですね。それをどういうふうに乗り切るかというと、あまりばらばらにあちこちにや るのではなくて、前の規格のものは1カ所に集めて、そこで厳重な管理ができるような 能力を持った人たちに任せる。ある種、危険な領域があったらそこは専門家に任せると いう仕組みだと思います。そのほかにございませんか。 ○山口委員  最終的に患者さんに実施するとき、患者さんを間違えるとこれは終わりなのですが、 何かその辺りで工夫されていますか。 ○橋本部会長  いちばん基本のところです。 ○山口委員  それがいつも怖いなと思うのです。 ○木村参考人  モノと患者の照合ということですよね。この治療をする時に患者さんに一切説明がな いということはありえませんから、治療が始まることは本人もお分かりです。当院で患 者誤認を避けるためには、患者氏名などの記載されたラベルがはってある薬剤を持って いって、まず御本人と一緒にラベルを確認するという作業を、注射に関しては全部やる ことになっています。 ○橋本部会長  ご本人とですか。 ○木村参考人  はい、一緒にです。特に外来のときは、上のチェックリストに書いてあったと思いま すが、名前、時間流量なども書いてありますから、それをご本人と一緒に確認して、ポ ンプの設定から全部見てもらう作業をしています。必ず患者さんに声をかけて確認を一 緒にしていただくということをしています。 ○橋本部会長  よろしいですか。特段ほかになければ次に進みたいと思います。また関連した話が出 てくれば、そこに戻るということで、議事の第2番目の「医療安全対策ネットワーク整 備事業の第9回の集計結果について」と、3番目の「医療安全対策ネットワーク整備事 業の第10回集計の結果について」、同時に進めていきたいと思います。「全般コード化 情報」「重要事例情報」「医薬品・医療用具等情報」の集計と分析について、それぞれ 事務局から報告をしていただきまして、その後でまとめて質疑の時間を取りたいと思い ます。では、第9回及び第10回の「集計結果の全体概要」と、第9回と第10回の「全般 コード化情報の分析」について説明をお願いします。 ○事務局  資料2、資料3を交互に使って説明をさせていただきます。まず第9回及び第10回集 計結果の全体の概要ということで、資料2の1頁をご覧ください。第9回の集計結果の 概要についてです。  第9回の報告対象期間は、平成15年7月1日から9月30日までの3カ月間の間に発生 した、ヒヤリ・ハット事例に対して収集したものになっています。これが「全般コード 化情報」です。「重要事例情法」「医薬品・医療用具・諸物品等情報」に関しては、ヒ ヤリ・ハット事例が発生した時期にかかわらず、平成15年8月27日から平成15年11月25 日までの間に報告をしていただいた事例を集計しています。  参加登録施設は250施設、報告施設が69施設です。4.に情報別報告数が表になって いますが、「全般コード化情報」が1万4,263事例、「重要事例情報」が1,644事例、 「医薬品・医療用具・諸物品等情報」が127事例という形になります。  次に、第10回の集計結果の1頁です。第10回の全体の結果概要について説明いたしま す。構成は全く同じですが、第9回と第10回で大きく違ったところは、集計のカテゴリ ー分けが変わりました。報告対象期間については同じです。9回以降の3カ月間という ことで平成15年10月1日から平成15年12月31日までの3カ月間に発生したもの、これが 「全般コード化情報」です。それから「記述情報」とあります。第9回では「重要事例 情報」と「医薬品・医療用具・諸物品等情報」の2つのカテゴリーに分けていたもの を、「記述情報」という形で統合しています。第9回と第10回では、カテゴリーの分け 方が多少変更になっています。「記術情報」が第9回でいう「重要事例情報」と「医薬 品・医療用具・諸物品等情報」が足されたものとご理解いただければと思います。  1.の報告対象期間は同じです。「記述情報」としては、ヒヤリ・ハット事例が発生 した時期にかかわらず、2.の報告期間は、平成15年11月26日から平成16年2月24日ま での間に報告されたものをとりまとめたものです。3.の参加登録施設数は245施設で して、その内の報告施設数が80施設でした。4.は情報別報告数で、「全般コード化情 報」が1万3,443事例、「記述情報」が1,891事例。うち「医薬品・医療用具・諸物品等 情報」が41事例ありました。以上が第9回、第10回の集計結果の全体概要です。  次に「全般コード化情報」の分析について報告いたします。資料2(第9回)の3頁 から14頁までがその内容になります。3頁に先ほど説明した内容、特に1.になります が、収集状況ということで、1万4,263件あったということが記載されています。それ 以降はこういった形で方針とか、どのような項目を集計しているかが書いてあります が、お読みいただきたいと思います。  5頁、分析結果の内容です。その後9頁まで記載されています。第9回は報告事例数 が、前回から約1割ほど増加していますが、頻度分布に特に大きな変化は見受けられ ず、全体的にほぼ同様な傾向になっています。個別の事例に関してもほとんど同じなの で、かいつまんで説明いたします。  6頁、これは全事例を集めた集計の中の影響度ということで、○の2つ目になりま す。間違いが実施された事例が約7割ということでした。第8回が68%、第7回が62% と比べて多いことになります。ちなみに第10回では75%と、9回、10回ではそれぞれが 7割を超えていました。  7頁、「ドレーン・チューブ類の使用管理」の中で、患者の性別【図3−5】という 記載になっています。男性患者のヒヤリ・ハット件数が女性の約1.7倍になっています。 第10回の報告では1.5倍程度になっています。次に「影響度」ということで「間違いが 実施」が8割を超えており、未然に発見されにくいと言える。第10回でもこちらの間違 いが実施されるのが81%という比率でした。  8頁、輸血です。患者の性別では他の場面でのヒヤリ・ハットに比べ、性別による変 動が少ない傾向が指摘されています。影響度については、実施されていれば患者への影 響は大きい、特に生命に影響あると思われた事例が14件(11.8%)で、ハイリスクな領 域と言えると指摘がされています。第9回は以上です。  第10回ですが、同じような記載で書いていますが、内容的にはほぼ同じなので、第10 回の集計については後ほどお読みいただければと思います。「全般コード化情報」から は以上です。続いて「重要事例」「記述情報等」についての報告をいたします。  資料2の15頁、第9回の「重要事例情報の分析」について説明いたします。概要につ いてはいま説明があったとおりなので、1についてはご覧ください。  2「分析の概要」です。分析の方法については9回まではこれまでどおり、医療機関 が広く公表することが重要と考える事例について、分析の対象に該当するものを検討班 で選定して、タイトルやキーワードを付し、専門家からのコメントとして「記入方法に 関するコメント」「改善策に関するコメント」を述べています。  16頁、その分析対象事例の選定の考え方としては、(1)(2)(3)の基準を基にしていま す。(2)の(重大性)(複雑性)(教訓性)(汎用性)と書いてあります。これらのい ずれかに該当するものを選定しています。また、ヒューマンエラーの観点から、モノや 機械等に関する事例についても報告がされていたので、そちらの分析も行っています。 キーワードは17頁をご参照ください。  18頁、その分析結果及び考察を述べています。1)の(1)全体の概要の中で4つ目 の○、発生件数割合が高い手技・処置については、この表のとおりでした。毎回、同様 の割合になっていますが、今回は与薬、その内の内服・外用に関する事例が208例 (13.4%)。チューブ・カテーテル類に関する事例が202件(13%)。与薬の点滴・注 射に関する事例が165件(10.6%)。転倒・転落に関する事例が163件(10.5%)。調剤 ・与薬準備に関する事例が76件(4.9%)という内容でした。  また、成人病棟に限らず、小児病棟や産科病棟等からの報告も見られるようになって おり、発生場面が広がっていることが特徴として上げられました。また、看護師以外の コメディカルの方々からの報告も増えてきている傾向がありました。以下、それぞれの 分類について若干分析と改善策をまとめていますが、内容については後ほどお読みいた だければと思います。与薬に関する事例、チューブ・カテーテルに関する事例、転倒・ 転落に関する事例。  20頁、コミュニケーションに関する事例や食事に関する事例。  21頁、患者の離院に関する事例とか機器一般に関する事例。滅菌に関する事例といっ た報告もありまして、トピックスとして分析をしていますので、内容についてはお読み ください。  22頁にも同姓、同名に関する事例が引き続き報告されていることや、検査に関する事 例もありました。また、その他注目すべき事例として9回では、全盲に関する事例と か、コンピューター、オーダリングシステムの問題、末期癌患者の自殺未遂に関する事 例、放射線、夜間緊急時等の事例も報告されていました。  24頁、「まとめ」として全体的なコメントを述べています。今回の事例については与 薬に関するヒヤリ・ハット事例が更に増加している傾向がありました。その一方で滅菌 に関する事例など、新たな種類のヒヤリ・ハット事例も報告されています。また、医療 機器や医療用具に関するヒヤリ・ハットも前回、医薬品に関するヒヤリ・ハットという ことで、施行の運用の手順を遵守することに重点が置かれるあまり、その薬剤の使用す る意味や薬剤の作用について考えが及んでいない、という指摘がされましたが、この機 器についても同様のことが言えるのではないかという分析がされています。また、今後 の課題として、記入方法についての意見が最後に書かれていますが、ご覧ください。  その分析事例については別冊1の55頁です。今回、17事例を分析いたしました。57頁 にその目次があります。事例の概要だけ説明します。  日常生活の援助として、末期がん患者の自殺未遂、車椅子移送中の経腸チューブ切 断。  化学療法における混注もれ、今回の議題ともなりました化学療法に関する事例が1例 ありました。また、隔壁のある点滴薬剤の未開通使用。シリンジポンプによる10倍量投 与。双子の予防接種にあたっての薬液の準備間違い。  機器一般としてはモニター装着後の確認忘れ。加温加湿器電源忘れ。三方活栓の開放 忘れ。手術中におけるブレーカー落ち停電。  インスリンに関する事例として、指示受けにおけるコミュニケーションエラー。イン スリンの過量投与がありました。  その他として、研修医の処方による散剤の10倍量投与。物品管理の不備による新生児 仮死状態への対応遅れ。ほぼ全盲の入院患者の所在不明。一次的胸腔ドレナージに伴う 胸腔内への空気の逆流。滅菌中断による未滅菌手術器具の混入という17事例について選 定して、詳細に分析しコメントを付しているので、内容については後ほどご覧いただけ ればと思います。  抗がん剤の事例について66頁に、ヒヤリ・ハットの具体が書かれています。報告され た内容としては「化学療法の持続点滴中で、注射指示箋と点滴用氏名シールにミキシン グの医師のサインを確認した。点滴用氏名シールには抗癌剤名とその他の薬剤名が書か れていたので、混入されていると思い点滴を更新した」ということで、先ほどご指摘が あったような、まさにミキシングを信じて行おうとしたという事例です。  67頁の下に改善策に関するコメントが書かれていますが、先ほどの議論の内容と重複 することも書かれているので、後ほどお読みください。9回については以上で報告を終 わります。  資料3の15頁、第10回、先ほど説明がありましたが、今回から「記述情報」と称して います。「記述情報の分析」について報告します。概要についてはご覧ください。  2の「分析の概要」についてです。この回から分析の方法を少々変更しました。今後 はより専門的な視点からヒヤリ・ハットを起こす状況を改善すべく方策を考えていくた めに、まずテーマ別の分析ということにいたしました。(1)の2行目の終わりから書いて います。「転倒、転落、抑制」「チューブ・カテーテル類」「注射/点滴、輸血」「内 服薬/外用薬、麻薬」「検査」「器械操作」「食事・栄養」の7テーマに分けて、1回 につき1〜2テーマについて集中的に検討を進めていくこととしました。  16頁、事例の選択方法は、先ほど申したような従来の選定基準に加えて、毎回のテー マを設定し、分析すべき事例を絞り込み、分析対象候補事例として選定しました。2) に従来の選定基準が書かれています。3)分析の方法として、テーマごとに分類した記 述情報について、前回までの集計結果も参考にしながら、その傾向や要因について分析 を行っています。タイトル及びキーワードは従来どおり変わりありません。  18頁に「分析結果及び考察」を述べています。今回の報告としては3つ目の○に書い てあるように、記述情報の内容が非常に充実してきており、ヒヤリ・ハット事例報告の 組織的な定着・浸透がうかがえました。また、発生件数割合の高いカテゴリーは以下の とおりですが、与薬(点滴・注射)に関する事例が415件(29%)と非常に高くなって いました。そのほかは以下のとおりご覧いただければと思います。また、この中に今回 から医薬品・医療用具・諸物品等、先ほど41件と報告した事例も含まれているので、ご 承知おきください。  19頁、今回のテーマに関する事例についての分析が書かれています。点滴/注射・輸 血を取り上げた理由としては、本部会でも毎回報告をしているにもかかわらず、事故に 関する報道が後を絶たない。また今回の報告件数でも約3割と多いこと。エラーが発生 した場合、身体侵襲が大きいことなどから、このテーマを選定しました。  19頁、3つ目の○の2つ目のパラグラフの部分から分析を書いています。今回は「点 滴/注射等の業務プロセス」の時間軸に沿って区分をしてみました。その上で人的要素 の大きい、いわゆるヒューマンエラーと機器・材料の問題、あるいは手順自体に内在す る問題等を分類して、その傾向を探っています。また、ヒューマンエラーについては Mistake、Lapse、Slipに分類し、Mistakeとは知識や経験の不足のために、意図自体が 誤っている形。Lapseは、意図は正しいがその行為を行うにあたっての記憶の誤り。 Slipは、意図も、そして行為に伴う記憶も正しいが、それでも見誤りやいつもの行動 に引きずられて、意図とは異なる行動をするという定義に基づき分類をしています。追 加資料の表1に、その分類の1例を示しているのでご参照ください。  21頁にその各時間軸に沿った分析を記載しています。業務プロセスI(医師の指示) としては、Mistakeが多く、医師の指示の出し方そのものが適切でない事例が見られま した。医療機関としての「業務ルール」が不明確ということも問題と見られました。そ のためにインスリンの過剰投与など重大なエラーが発生しています。業務のルールを定 めること、医療従事者への十分な教育を行うことや、知識水準の向上を図ることが重要 と思われます。  22頁、業務プロセスII(指示受けから指示の引継ぎ)については、Lapseが多く見ら れました。Lapseを防止するためには記憶に依存せず、記録に基づく行為をするように 職員を教育することが重要です。つまり、口頭指示によることは避けることが望ましい としています。  業務プロセスIII(注射の準備:薬品の混合やセットアップなど)については、Slip が多く見られました。Slip自体は本人が発生を予防しようと心がけても有効に防止する ことは困難であるため、行為を行った後、振り返りをすることが有効である。そのため 空アンプルを捨てないなど、自分の行為の結果が確認できるよう、業務プロセスを設計 する必要があるとしています。また、薬剤を混合してしまった場合には、エラーの発見 は難しいことから、この段階まで薬剤師が関与することが望ましいと分析しています。 slip事故は多重の課題を時間切迫の中で行う場合に生じやすく、薬剤師がこのようなシ ステムに関与することでslip事故の多くを防止できるのではないかと分析しています。  23頁、業務プロセスIV(実施、施注)の段階ですが、このプロセスではLapseが中心 となっています。実施に当たっても記憶に依存するのではなく、指示書と照らして正し いことを確かめつつ実施するなど、各医療機関が組織として取り組むことが重要として います。  また、チューブ・カテーテル類に分類されますが、三方活栓の開放忘れや、クレンメ の開放忘れ等も見られましたが、こちらは特にチェックリストを活用するなどして、確 実にチェックする習慣が必要と分析しています。  また、今回の記述情報には見られませんでしたが、内服薬の血管内への誤注入事故な どが過去に発生していますが、これはここの段階にSlipとして分類されるものです。そ れらは電子認証システムや機器の機能としてITを活用した安全対策が重要ではないか と指摘しています。  最後に、業務プロセスV(実施後の観察および管理)としては、観察計画そのものが 不十分ということで発生している事例が見られたので、患者の状態の評価や介入計画を 標準化し、それに基づき適切な観察計画を実施することが望ましいと分析しています。  24頁、「まとめ」として書かれています。2段落目、このようなエラーが生じる背景 として、重要な薬品についての取扱いや職種間の業務分担、業務のプロセスの標準化な ど、組織的な取り組みの遅れがあるのではないかと推察されました。そのために、専門 職員の配置や、環境整備等が重要という分析をしています。特に薬剤に関する重大事故 が後を絶たない現状では、医師、看護師とともに薬剤師が更に積極的に注射薬施用に関 与することが必要であると分析されています。また、今回は時間軸に沿った分析を行い ましたが、そのほか環境要因などの分析も必要という指摘がありました。  別冊2の55頁です。今回はいま説明したような選定の基準によりまして、13事例を分 析しました。57頁にその事例のリストがあります。  点滴輸注速度管理エラー。また、医師の不明確な指示により生じた薬剤の濃度の間違 い。薬剤性の発疹が生じた事例の薬剤変更時に医師へのコールの指示を忘れ、看護師が 単独で実施した事例。類似アンプルの取り違えによる与薬エラー。不完全な患者確認で 生じた患者誤認による誤与薬。口頭指示の間違いに気づかず、そのまま実施して生じた インスリンの過剰投与。教育・管理体制の不備のために生じた初心者による化学療法の 中断と遅れ。術前処置時、時間切迫のため確認不足で生じた新人看護師による誤与薬。 看護師間の口頭引継ぎによる化学療法の中断と遅れ。速度計算ミスによる化学療法実施 日程の延長と退院日の遅れ。血糖コントロール段階での治療方針への理解不足と指示の 不徹底によるインスリンの過剰投与。医師の指示から与薬までにルール違反が重なって 生じた与薬中断。異なる機種の輸液ポンプ交換後の流量設定間違い。この13事例につい て詳細に分析を行っております。  本日の議題となりました化学療法に関する事例が3例報告されています。そのうち事 例550については68頁です。69頁にヒヤリ・ハットの具体的内容が書かれています。化 学療法のプロトコールに沿って点滴が開始された。看護師は初めての経験であったが、 主治医とスケジュール調整や点滴内容の確認は行わず、指示表も正確に理解しないま ま、1枚目に書かれていた点滴が終了した時点で「終わり」と思い込んで、ルートをロ ックしてしまった。次勤務者は看護師の実施サインがないことと、17時で終了している ことに疑問をもち、実施看護師に尋ねたが、「これで終了」と看護師が答えたため、そ のままにしてしまった。20時に主治医が患者が点滴を持続していないことに気づき、 No.2に書かれていた点滴も接続することが分かり、3時間遅れで再開したという事例 です。  69頁右側の下半分に改善策に関するコメントを載せていますが、こちらについても、 先ほどの議論と重複するので、後でお読みいただければと思います。  もう1つの事例としては、72頁の660番、看護師間の口頭引き継ぎによる化学療法の 中断と遅れがあります。73頁に具体的内容が書いてあります。5日間持続点滴で抗がん 剤投与の患者に対し、1日予定量が確実に与薬されず、3時間遅れで点滴更新をしてい た。5日目、点滴終了日に口頭で「現ボトル終了後、抜針」と申し送られ、カルテの照 合をせず抜針した。4時間後、他患者の点滴準備の段階で抗がん剤が1日分残っている のを発見する。朝、主治医に報告し、患者に対し残り1日分の点滴治療を行うことを説 明され、治療継続となったという事例です。  こちらについては右側に改善策に関するコメントとして、情報共有が非常に問題であ ったということを指摘していることと、あと下のほうにプロトコールの作成が重要とい うことと、抗がん剤に関しては特に口頭の指示は行わないことを徹底すべき、という改 善策を記載しています。74頁の最後についても、更に職種間でその取り決めについて情 報共有をすることを、改善策として述べています。  次の事例は、665番の速度計算ミスによる化学療法実施日程の延長と退院日の遅れと いう事例です。75頁に具体的内容が書かれています。短期ケモ治療をしている患者であ った。5−FUを3.3アンプル、ブトウ糖5%、50ml×2本を22時間で滴下する指示で あった。B日勤看護師が計算間違いをし、22.7ml/時間と記入した。A看護師が19時30 分に更新時、同じく500mlで計算を行い、C夜勤看護師に申し送った。C夜勤看護師も 間違いに気づかず、1時間ごとの巡視時も22.7/時ずつ滴下しているのを確認する。そ の後、D日勤看護師に申し送りし、夕方17時30分、点滴が終了していないと患者より指 摘を受け発見する。主治医に報告し、残りを3時間で滴下する指示をもらう。また、患 者に点滴が遅れていることを伝え謝罪し、退院が11月2日から11月3日に延期となると いう事例でした。これについても、改善策を75頁右側に記載していますのでお読みくだ さい。記述情報の第10回の終計結果については、以上です。  医薬品・医療用具・諸物品等の情報の分析について報告します。資料2の29頁が第9 回の分析結果です。1の「医薬品・医療用具・諸物品等の情報の分析対象」としては、 総事例数が127、分析対象事例数が125、うち医薬品関連が82、用具が37、諸物品が6件 でした。比率的には前回とほぼ同じです。  詳細です。要因別件数ですが、今回の報告では外観類似が8件、名称類似が6件、記 号違いが12件、規格違いが11件。あと勘違い、薬効類似が6件、こちらが上位です。前 回と比べると外観類似が若干多めの報告となっています。あと、数量違いが今回は全く 報告がなくて、薬効類似に関することが若干多くありました。  次頁は用具関連の件数です。基本的に管理が不十分というものが前回と同様、いちば ん報告数が多いケースでした。あと、故障していたというケースが前回と同様2位で す。諸物品については報告例数が少ないので、前回と比べるとあまり変わりはないと思 います。  31頁、これは前の1年間での比較です。基本的に名称類似、記号違い、規格違い、勘 違い。あと薬効類似、ほぼ同じようなものが上位を占めています。外観類似が今回多か ったので、外観類似も上位に入ってきていますが、基本的に前回とあまり変わりない比 率です。  32頁、こちらも前1年間と比較した結果ですが、管理不十分、故障のケースが上位を 占めています。  資料3の29頁は、第10回の分析についてです。第10回については、総事例数が41件、 うち分析対象事例数41件、医薬品が31件、用具が8件、諸物品が2件です。要因別件数 ですが、勘違いと規格違いがいちばん多くありました。あと名称類似、数量違い等がそ れに続いています。  30頁の用具については、管理が不十分というものがいちばん多く報告があります。物 品については2件報告がありましたが、判定ができないような内容でしたので、判定不 能2件となっています。  31頁は、1年前までとの比較です。基本的に名称類似、記号違い、規格違い、勘違 い。あと数量違いが上位を占めています。あまり変わりはありません。  32頁の用具については管理不十分がいちばん多い報告でした。  別冊2の327頁です。個別の事例について紹介いたします。症例の5はキシロカイン のポリアンプ、1%のものを払い出すところ、注射箋の記入がキシロカインの10mlとあ ったことから、勘違いをして10%のキシロカインを払い出してしまったというケースで す。実際、投与までには至っていませんが、注射箋の記載及び薬剤師が事前に問い合わ せ等をしていなかったということで、間違いが生じた事例です。  332頁、25番の事例です。こちらは「アマリール」と「アルマール」の取り違えの事 例です。本来「アルマール」を出すところに、糖尿病用薬である「アマリール」を出し た例です。実際、患者さんが気がついて看護師に報告して「アルマール」と交換したと いうことで、投与には至っていません。報告をされている時点では、ヒートシールに印 字してある文字が一色なのですが、そこに「糖尿病用薬」と既に記載してあったもの で、たぶん気がついていただけたものだと思います。現在、糖尿病用薬の文字は他の文 字と色を変えて、青で記載しているので、非常に見やすくなっているので、もし同様の 症例が出るようであれば患者さんに気づいてもらえるものだと思っています。以上で す。 ○橋本部会長  ありがとうございました。新しい委員の方はいくぶん混乱されたのではないかと思い ますが、要するにコードで上がってくるものと、記述情報で上がってくるものの2種類 があって、9回までは記述情報を2つに分けていたのですが、10回からはそれを統一し て1つにした、ということでよろしいのですね。報告の中身の区分みたいのは、あまり 変わっていないというふうに考えてよろしいのですね。これについて少しお話をお聞き したいと思います。10回から記述情報については、いくつかのテーマを設定して、それ ごとに進めていくというやり方があって、今回がその1回目です。2回目以降、またテ ーマを変えてやっていきます。10回目の記述情報については、かなり踏み込んだ分析の 手法を取り始めたという印象がありますが、その辺も含めてご質問、ご意見が伺えれば と思いますが、いかがでしょうか。まず、全般コード化情報からいきます。提出してい る病院には大変な作業をお願いしているのですが、中身は数字で一括されてしまうと、 こういうふうになるということです。  私がまず気になった点があるのですが、間違いの実施率が第9回では70%で、第10回 では75%に上がっているということですが、この要因みたいなことはどういうふうにお 考えになりますか。 ○武藤委員  ヒヤリ・ハット報告というのは、いわゆる患者さんに有害事象が生じなかった例で、 その中に2つあります。1つは実施をしたけれども、有害事象は生じなかった。いわゆ るニアミスです。もう1つは事前防止といいますか、事前にそれに気がついて行為を行 わなかった。ただ、行ったとしたら非常に重大な影響があった、あるいは中等な影響が あった、そういうことなのです。  別冊1の10頁の図1−14を見ていただくと分かるのですが、このような分布になって います。ですからこの頻度に関しては、一般的に、実際に実施をしたけれども患者さん に有害事象が生じなかった例のほうがずっと多かった。実施前に発見して未然に防止し たほうが少なかった。この比率に関しては今回、間違いが実施されたけれども、患者さ んに影響がなかったのが増えたというのが分かりませんが、ヒヤリ・ハットの報告とい うのは、報告者の報告動機とかそうしたことも関係しているものですから、すみませ ん。分かりません。 ○橋本部会長  これ、245とか250ですから、母集団が大きく変わったわけではないですね。母集団は この2回、もしくは8回の前から、それほど変わってはいないけれども、こういう変り 方をしているというのは何なのか、ここは気になりますね。パーセントですから総体的 な数字なので母数が変わると変わりますから、確かに全体の数が9回と10回を比べて、 70〜75%に増えたといっても、母数がたしか、ちょっと減っているので、そういう意味 ではそこを補正して考えないといけないとは思います。 ○武藤委員  報告動機としては、実際に行って、あっと思ったけれども、患者にさんに何もなかっ たから大丈夫だったという、ヒヤリ・ハットのほうがより報告の動機にはなるかもしれ ないという気がするのです。つまり、車で急ブレーキを踏んで大丈夫だったのと、実際 にはそのままつっ走ったけれども、ヒヤリとしたと、その2つが入っていますね。報告 としては実際に赤信号をつっ走ってしまったけど平気だった、というほうが増えてきた という解釈なのですが。 ○橋本部会長  全体的にいうと70とか75%に増えたという話ですが、例えば発生場面別にというか、 区分別に見たときに、どこかが増えているとかいう傾向は観察されていないのですか。 ○武藤委員  それはなかったです。これ毎回の疑問なのですが、事前に発見して、もしそれを行っ たら患者さんへの影響が大きかったというのは、今日の最初のテーマである注射とか輸 血の問題がここに入ってきます。そういう場面でということです。各ヒヤリ・ハットの 内容によって変化があったというのは分かりません。 ○橋本部会長  2つの意味が、解釈があるのだろうと思います。どうしてかということではなくて、 例えばヒヤリ・ハットとかインシデントレポートを出してもらって、いろいろな対策を 立てていく。すると病院の中が安全になってくる。そうすると、何かが行われるいくつ かのプロセスの中で、患者さんに実施される前に防ぐことができるようになったという 安全の高まりとすると、むしろ全体からみると、それには逆行しているようなという解 釈が1つ成り立つということです。  もう1つは武藤委員が言われたことだと思いますが、改善に意味があるようなものを 報告するという、要するにこのことが大事なのだ、ということの報告が多くなったとい う解釈ももう1つあり得るかなと。つまりその病院のレベルがどこにあるかということ と、大きく関与するのだと思います。いまのところそういう2つの解釈が成り立つかな というぐらいです。 ○山口委員  初めてなのでよく分からないのですが、これはもう10回ですね。この減ったとか増え たとかいうのは、どうして言えるのですか。その前がブレないでずうっときていて、今 度変わったらあれですが、この2回だけ見て増えたとか減ったという議論は、あまり意 味がないように思うのです。 ○橋本部会長  9回目の報告にあったと思いますが、8回、9回に比べると、頻度ですが、60数パー セントから70%になったという増え方が観察されて、10回になるとそれが75%だとい う、そのいくつかのポイントしか見ていませんが、比較して一応増えている。 ○山口委員  その前の1回〜8回の間はそういうブレはなかった。 ○医療安全対策推進室長  そこの議論は従来いろいろやってきています。こちらから申し上げればよかったと思 うのですが、実は今年度から、そもそも先ほど部会長からもお話がありましたように、 母集団が毎回毎回異なるものですから、経時的なトレンドが本当は追えないではないか という議論がありまして、ちょうどヒヤリ・ハット事例収集事業に協力していただく団 体というか病院を募っています。その中で、今後時間を少しいただいて、定点化をして きちんとデータを出していただく医療機関のトレンドで、その中で増えた減ったという 議論を今後していきましょう、ということに実はなっていますが、今まではこのような 形で、わりとざっくりしたご議論は行われていましたが、正確に申し上げると、山口委 員が言われるような方向にあります。 ○橋本部会長  厳密な疫学的な分析はちょっとできない状況です。それもいま室長が言われたよう に、母集団を少し確定することによって、もう少しはっきりした像が結べるのではない かというのが、今後の作業の課題だと思います。それにしてもコード化情報を送ってい ただくこと、つまり一つひとつのデータが正しいというか、適切にコード化されるとい うことがどうしても必要な状況はあると思いますので、少し慣れていただくという見方 もあるかと思います。 ○武藤委員  コード化のことで追加したいのですが、先ほど事務局からも指摘がありましたが、性 差の問題は我々も皆さんのご意見をいただきたいところです。例えば別冊1の第9回の 集計結果の5頁で見ると分かるのですが、患者の性別で見ますと、全事例ともに男性の ほうが女性よりも大体1.3倍ぐらい多い。特に顕著なのが24頁のチューブ・ドレーンが 女性に比して男性のほうが大体1.7倍ぐらい多い。この辺り、性差がかなり、実際のと ころ、これも先ほど言いましたように、厳密な疫学調査ではないので、問題はあると思 いますが、こうしたトレンドははっきりと現われています。実際のところ患者調査で見 ると、入院患者では女性のほうが多いのですが、男性のほうにヒヤリ・ハット事例が多 いということは、男性は危ないのではないかと思います。 ○山口委員  癌研では、転倒・転落が多いのでチームを作って、事例を解析してみたのですが、そ の時、面白いことに転倒は男女あるのですが、ベッドから転落するのは全例男性でし た。その時にみんなでディスカッションしたのは、男性はちょっと遠慮して看護師にあ れやってくれとか、これやってくれとなかなか言わないのだけれども、女性はわりと素 直に言ってくれる。男性みたいにやせ我慢しないのが原因ではないかということで、や せ我慢して転倒をしたら看護師が困るからという教育をいましています。 ○武藤委員  これはほかでも報告が出てきたのですが、チューブ・ドレーンは、特に気管チューブ は自己抜去が多いのですが、この男女差が比常に多くて、男性のほうに圧倒的に気管チ ューブの抜去が多い。その辺の経験はどうですか。   ○橋本部会長  性差についてはとても興味が向きがちなところですが、確かにいまのような議論は数 回前のこの検討会でもあったと思います。もう少しデータを精査した形で注目していく 必要があるかなと思います。コード化情報のほうはよろしいですか。言い出すときりが ないという感じがしますが、時間が限られているので、お気づきの点があればまたご指 摘いただければと思います。「記述情報」についていかがでしょうか。  今日事例として報告していただいた、がんの化学療法についての事例もいくつかあっ て、それを少し紹介していただきましたが、原因の分析、あるいはどういうふうにして いったらいいかという改善策については、同じようなことが指摘されていたように思い ます。何かご意見があればお聞かせいただければと思います。 ○田中(健)委員  先ほどの機器のほうでもよろしいですか。 ○橋本部会長  はい。 ○田中(健)委員  管理不十分という項目がたくさんあったということですが、管理不十分というものの 意味が理解しにくいのですが、どういう内容を管理不十分とまとめられているのです か。 ○事務局  第10回の別冊2の334頁です。これは1番で管理不十分というのがあるのですが、こ ちらは耐用期間及び使用回数について、もともと1年間または30症例のいずれか短いほ うとなっているのですが、これは、それを超えて使用されていたことによる脱落事例に なります。337頁も管理が不十分という事例です。こちらの輸液セットの本体の装置が 不完全だったと考えられるということですが、適切なセッティングや徹底等、その辺が 不十分であったと思われる事例です。337頁、これは連続投与キーと間欠投与キーのい ずれかを押すことになっているのですが、それのミスです。 ○田中(健)委員  「管理不十分」という言葉でまとめるには、何か内容がちょっとずれているのではな いかという気がするのです。例えば操作に対する十分な知識がなかったとか、管理の問 題と表現するよりは、むしろその機械が扱いにくかったという項目もありますし、扱い にくくて、そういう知識が非常に必要なものだったので、その知識が十分に伝わってい ないとか、何かもう1ランク下げたほうが、例えば先ほどの一覧表で、管理不十分がた くさんありましたというだけではなくて、どういう管理の必要が多かったとか、少なか ったとか、もう1ランク分けて分析されたほうが、その次のステップに入りやすいので はないかと思います。 ○石川委員  たぶん私、前回の時か前々回にも同じ発言をしたのですが、業界のほうでその管理不 十分というところをもう一遍よく見た中では、たぶん保守点検をやらなければいけない ときにしていなかったとか、先ほどの電源コードを外していたとかいうことも入ってい るのですね。すると、1つの中では使用者側の問題点のところもあるし、それから、あ る意味では機械側が検討をしなければいけないところもあるし、要するにユーザビリテ ィのほうが問題だったのかもしれないしということで、よく読まないと分からないとこ ろがたくさんあって、確かに言われるように「管理不十分」のところで全部まとめられ ているので、もう少し分けて分析されると、たぶんもう少し原因が、訳が分かるのでは ないかと私も感じています。 ○橋本部会長  記述情報が一緒になってしまいましたが、記述情報が前の重要事例と言っていたほう ですが、その分析はわりに一つひとつモノを見てやっていくのですが、モノについて は、わりと括られて表になって出てくるというのが分からなくしているかもしれないで すね。もう少しモノについての固有の解決方法を示すような方法が、必要かなと思いま す。  先ほどの木村参考人の発表でも、やはり表示の問題というのは、本当にああいうシー ルに貼っていいのかという提起が田中委員からされました。その辺をもう少し専門の立 場からのご意見をいただきながら、今後考えてみたいですね。  もう1つ気になったのは、記述情報については、ヒヤリ・ハットですか、厚生労働省 のインターネットでキーワードで入っていって、キーーワードでやるとその事例が出て くる仕組みが出来ていますね。あれをもう少し宣伝されたほうがいいかなという気がし ます。たぶんこの委員の中でもご覧になったことのある方は、そんなにたくさんはおら れないと思います。  さらに、あれをもう少し教育システムにもっていけば、折角、かなりの情報が入って いますので、これを読んで、ああそうかと思えるのは、かなり安全のことをやった人で ないと分からないような気がするのです。もう少し噛み砕いた形で、こういうことをチ ェックしなさいよ、というところまで持っていくことも、今後考えてもいいのかなと思 いました。今後の課題だと思いますが、いずれにしてもコンピューターの中で事例が誰 でも引ける状況は、もう少し知らせてもいいかなと思います。特段になければ、議事の 4の「その他」について事務局からお願いします。 ○事務局  参考資料1です。先ほどの議論の中にも出てきましたが「ヒヤリ・ハット事例収集事 業の登録施設数」です。設置主体別に国、公的医療機関等々、6つのカテゴリーに分け ていて、トータル1,182の医療機関が、本年度7月2日現在の登録医療機関数です。各 都道府県別にどれぐらいの箇所数が出ているかを表にして、印刷したものをお配りした いと思います。  参考資料2、「10%リドカイン製剤の取扱いについて」ということで、もう既に新聞 等でいくつか出ているのでご存じのことかと思いますが、2%リドカインと10%リドカ インの製剤の取り違え事故で、患者さんが死亡する事故が続発していることを受けて、 10%リドカイン製剤を全ての病棟・外来に保管しないことを徹底する旨、ここに掲げて いる団体から緊急通告等が出されています。時系列的に書いてありますが、平成15年12 月には日本医療機能評価機構から、また平成16年5月には日本病院薬剤師会から、そし て平成16年6月には三学会構成心臓血管外科専門医認定機構から出たのを皮切りに、下 に掲げているような10団体から緊急通告が出されているという情報提供です。  それから、情報提供ということで、「医療安全支援センターにおける相談件数等につ いて」ですが、時間の関係もあるので詳細は割愛させていただきますが、本年5月をも ちまして、全都道府県に設置がされています。これは平成15年度の結果について記載を しているものなので、ご覧いただきたいと思います。この情報に関しては、「医療安全 支援センター総合支援事業」を委託している日本医療機能評価機構において集計をされ たものです。以上です。 ○橋本部会長  ありがとうございました。時間もまいりましたので、本日の議論はこれで終わりたい と思います。次回の日程等について事務局から連絡をお願いします。 ○事務局  次回の日程につきましては、委員の皆様方のご都合を調整させていただいた上、後日 連絡をさせていただきたいと思っています。第9回、第10回の集計結果については、今 週中に厚生労働省のホームページに掲載をする予定になっています。また、先ほど部会 長からご紹介がありましたが、今年度から事例の収集機関となりました財団法人日本医 療機能評価機構のホームページにおいて、「ヒヤリ・ハット事例情報公開事業」を開始 しています。記述情報の内、専門家のコメントを付した事例をデータベース化してい て、キーワードによる検索ができるようになっているので、是非ご活用くださればと思 っています。以上です。 ○橋本部会長  本日はこれで閉会いたします。お忙しいところをありがとうございました。                    (照会先)                      医政局総務課医療安全推進室指導係長                        電話 03-5253-1111 (内線2579)