04/06/29 第2回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会議事録         第2回 職業能力開発の今後の在り方に関する研究会                        日時 平成16年6月29日(火)                           16:00〜                        場所 厚生労働省9階省議室                 ┌―――――――――――――――――――――┐                 |(照会先)                |                 |厚生労働省職業能力開発局         |                 |総務課企画・法規係            |                 |TEL:                 |                 |03−5253−1111(内線5313) |                 |03−3502−6783(夜間直通)   |                 |FAX:                 |                 |03−3502−2630         |                 └―――――――――――――――――――――┘ ○諏訪座長  ただいまから「第2回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会」を開催いたしま す。山川委員と高橋委員は、少し遅れてご参加ということで、今日の出席のご予定の方 々は揃っていますので、議事に入りたいと思います。  お手元に事務局から資料が提出されております。この資料に基づいてご議論いただこ うと思いますが、最後に少しお時間をいただきまして、次回以降にヒアリングをしたい と考えており、それに関する提案を事務局からしていただこうと思っております。委員 の方々からヒアリングに関するご示唆もいただければと考えております。では、資料の 説明をお願いいたします。 ○森川総務課課長補佐  資料I−1、I−2、資料IIがあります。資料I−1は、若干前回の説明が職業訓練に 偏っていましたが、補足的に能力評価、キャリア・コンサルティング等についての資料 です。資料I−2は、前回、委員の方々からご指摘いただいた事項についての資料です。 資料IIは、前回、最後の資料のほうで、なぜ職業能力開発が積極的にやられないのか、 支援する場合にも何らかのターゲットが必要ではないか、能力開発をやるインセンティ ブのようなものを考える必要があるのではないかというご指摘がありましたので、それ に関する資料です。  まず資料I−1、I−2について最初にご説明したいと思います。資料I−1、「職業 能力評価制度の整備について」です。能力評価の目的では、従来から平成13年以前の職 業能力開発促進法においては、職業能力検定というのは、職業能力開発を効率的、意欲 的に行うためにその成果が評価される仕組みが必要ということで、どちらかというと能 力開発の目標という意味、積極的にそれを促進するという観点からの仕組みで、それが 目的となっています。  これは別紙1にありますが、法律に基づいてやられているのが技能検定、それ以外に も社内検定を認定するという制度もあります。技能検定については、137職種でやられ、 級も特級から基礎2級まで、場合によっては単一等級のものもあります。これについて 職業能力開発、職業訓練との密接な連携という関係で言いますと、例えば1級の技能検 定には7年の実務経験が必要ということがありますが、例えば能開短大を出ると3年で 済んだり、その職種についての大学校を修了すると1年で済むなどといった関係があり ます。  それは平成13年までの話で、平成13年の法改正において、労働移動の増加等の中で、 雇用の安定を図っていくためには、幅広い知識の実践的な能力開発を明らかにしていく ことが大事だろうということで、1頁の下の枠の中の第三条の二の5項のような規定が 置かれ、「客観的かつ公正な基準の整備」が謳われ、この規定に基づいて幅広い職業能 力開発基準を整備しております。それが3頁の別紙2で、1例ですが、ホワイトカラー の職種について、それぞれの職務ごとにレベル1から4まであります。次の頁に具体的 にこういう能力が必要であろうということでこの頁を付けています。  5頁に、先ほどのはホワイトカラーでしたが、そのほかにも業界団体のご協力をいた だきながら、電気機械製造業についてカウンセリングをし、そのほかホテル業等につい ても基準の整備をしているところです。  7頁、「キャリア・コンサルティングについて」です。定義で、キャリア・コンサル ティングとは、職業生活設計に基づいて、それに即した能力開発を効果的に行うことが できるようにする相談ということで、上から2番目の枠の中に、どういうことをやるか を記載しています。そもそもキャリア・コンサルタントについても、平成13年の法改正 でいくつか規定が追加されていますが、そこについてきちんと担っていただく方を養成 する必要があるだろうということで、施策としては、まず養成で、平成14年度から5年 間で5万人の養成を目標にしています。公的機関については、大体毎年1.100人程度で、 民間を中心に養成をしております。昨年度末時点で2万人程度になっているという状況 です。  キャリア・コンサルタントの能力を付けていただいた方々については、公的な機関、 具体的にはハローワークや独立行政法人雇用・能力開発機構のキャリア支援形成コーナ ーで活躍していただくようにしています。相談件数は134万件となっていますが、実際 に相談を受けた方についてアンケートをとったものが10頁にあります。安定所、コーナ ーで相談を受けられる方の属性を見ますと、当然休職中の方が多くなっています。相談 内容も法律の規定に基づいた形で教育訓練の受講や自分に向いている職種について、 キャリア形成についてということで相談がなされています。  得られたこととしては、コーナーでキャリア形成の情報。安定所では資格・教育訓練 に係る情報などが得られています。その結果、満足度みたいなものを見ますと、9割以 上の方に一応ご満足いただけているのかなという状況です。  12頁、能力開発にかかる情報収集提供の体制の整備ですが、これも第7次の計画に基 づき、計画的に整備を進めております。特に今年度については、2番と3番にあるとお り、現在教育訓練給付にかかる講座の情報は、中央能力開発協会のホームページ、公共 職業訓練のコース状況については、独立行政法人雇用・能力開発機構で、バラバラにな っているということで、統合整理したような総合的なデータベースを開発するように、 今年度は取り組んでいきたいと考えています。  そのほかに先ほど説明いたしました職業能力開発に関するデータベースも随時、来年 度以降は整備をしてまいりたいと考えています。以上が補足の説明です。  続きまして、前回ご指摘いただいた宿題についてで、資料I−2です。北浦委員から 国際協力についてもということがありました。1頁を見ますと、国際協力の仕方は、思 想は人づくりを通じて国際社会に貢献するということですので、被援助国のニーズに応 じた協力を実施しております。主に東南アジア地域を中心に技術協力等を行っていま す。1はJICAを通じて二国の間でやっている場合、ILOと多国間の枠組みでやっ ている部分があります。国際的な観点から、1と2と趣を異にしますが、技能実習制 度、外国人研修生の受入れをやっています。3頁で、基本的には入管法に基づく制度で 当初の所管の行政とどういう関係があるかですが、3年の枠組みの中で研修を1年やっ て、雇用関係の下での実習を2年やり、1年と2年の間に在留資格の変更があります。 対象者は所定の技能評価試験に合格した者ということで、技能検定基礎1級、2級の試 験に合格した方に限定されるものです。これも制度の創設以来、随時研修制度を利用し ている方が増えている状況です。  キャリア形成促進助成金ですが、上西委員に前回平成14年度の実績を口頭でご説明し ましたが、平成15年度の数字も出ていますので掲げています。制度の仕組み上は平年度 化した実績を予算に反映するのは平成16年度になりますので、平成14年度、平成15年度 は予算と実績が随分乖離しています。いずれにしても、前回議論になったキャリアブレ イク、長期休暇やキャリア・コンサルティングについては10件程度の利用となっていま す。  教育訓練休暇制度は、こういう助成制度で制度導入促進を図っていますが、現状はど うかを5頁にグラフを付けています。調査の方法は昔は有給の教育訓練休暇という取り 方をしており、平成14年度以降は無給の部分も含めているわけですが、従前より導入し ている企業割合が、随分低下しているという状況です。  このほかに従業員が自己啓発するためにどういう支援がされているか、という調査が ありましたので、これも併せてご参考までに付けております。「受講料等の金銭的援助 」が半数以上の企業で導入されており、休暇時に使っていただくと、休暇の助成金が出 る仕組みになっていますが、導入割合としてはいちばん高く、「情報提供」などが中心 になっています。「特に何もしていない」が17%から22%に増えているという状況で す。  7頁については、前回「サービス業にもっと注目すべきではないか」というご意見が ありましたので、公共職業訓練、教育訓練給付の講座の分野別の統計です。ご覧いただ きますと、確かに施設内の訓練は建設系で8万人、製造系で14万人で、どちらかという と、施設内のブルーカラー系が中心ですが、トータルで見ますと、情報通信関連、サー ビス系、介護系といった分野も訓練実績、受講者数としては相当いらっしゃいます。  9頁は、教育訓練給付の指定講座の分野別ですが、これも技術系や製造系はごくわず かで、圧倒的に事務、情報、営業等の講座が中心になっています。教育訓練給付は離職 者、失業者も受けられることになっていますが、その部分は自己負担が必要です。片 や、公共職業訓練は無料で受けられます。どこが違うかですが、公共職業訓練は就職に 必要な一定限の能力を付ける。例えば、介護のホームヘルパーに関して言えば、公共職 業訓練は2級しかありません。教育訓練給付になりますと、1級の者等が含まれてくる という形で、よりキャリアアップを図っていくという面で教育訓練給付が失業者にも活 用されているという状況だと思います。  10頁は、廣石委員からビジネス・キャリア制度の利用状況についてご質問がありまし たので付けております。講座数と受講者数のグラフを見ますと、受講者数は平成11年を ピークにやや減少傾向で、講座数も平成12年から平成13年にかけて半減しています。大 手教育訓練機関が抜けたことが大きいと聞いています。  11頁は樋口委員からご要望のあった国と都道府県の役割について整理したものです。 12頁、13頁は前回出した資料を付けておりますが、基本的に国は学卒者訓練、在職者に 対しては高度な訓練をやります。逆に言うと、都道府県の学卒・在職者訓練は基礎的な ものが中心になってきています。法令上、県も短大校をつくれることにはなっていて、 全国に7校ありますが、基本的な役割分担としてはそういうことだろうと思います。離 職者に対しては国の責任としてきちんとやらなければいけないということで、10万人程 度をやっています。  障害者については、特に重度の方や制度的な訓練については、独立行政法人高齢・障 害者雇用支援機構営の2校でやられており、障害者に対しては福祉施策の連携、地域に お願いしたほうがいいのではないかという考え方で、国立の障害者校についても県に運 営を委託している状況です。これが国と県の基本的な考え方です。  同じく樋口委員から財源の構成についてのご質問がありました。14頁を見ますと、雇 用勘定、労災勘定、一般会計という区分で、独立行政法人雇用・能力開発機構につい て、職業訓練は委託訓練が中心で、このほかに約450億円程度、機構の指導員の人件費 等が、記載されていませんがあります。そのほかに一般会計で13億円程度が機構のほう に行っていますが、学卒未就職者等については、雇用保険の被保険者になったことがな いということで、ここの部分を一般会計で見ています。  県については、15頁で詳細に説明いたしますが、雇用勘定、一般会計のそれぞれがあ ります。国立県営の障害者校については、労災勘定も予算としては流れています。  基本的に法律上、障害者用の訓練には雇用勘定は使えないという規定になっています ので、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の訓練の実施に当たっては、一般会計と 労災勘定が入っています。そのほか職業能力評価では、雇用勘定、国際協力でも一般会 計のほかに、若干雇用勘定が流れています。雇用勘定を流している考え方としては、ど ちらかというと、国際化に対応して現地に行かなければいけない日本人在職者に対し て、その訓練を行っているという観点で雇用勘定が入っています。  国から県への財源の流れが次の頁にあります。役割分担のところで、職業能力開発校 は各県1校は必置という規定になっているものですから、そこの部分をきちんと国のお 金で手当てをしなければいけないということで、国から職業能力開発に関して言えば、 何でも使っていいという交付金を流しているということです。中身としては、一般会計 が34億円で、主に学卒訓練等が対象です。あとは雇用勘定から88億円が流れています。 このほかに都道府県営の訓練校については、都道府県が独自の財源で手当てをしていま す。  国から県へ委託費という形で流している部分が別途にあります。先ほどの役割分担の ところで離職者等について、国の責任としてセーフティーネットでやらなければいけな いという説明をしましたが、ここはまさにそういうことで、臨時的に県を通じて委託訓 練をやっていただいている部分があります。  雇用保険制度の中で、どのぐらいの予算が能力開発関係に使われているかというのは 次の頁で、失業等給付の中で、教育訓練給付は平成16年度予算で795億円用意されてい ます。三事業、5,000億円程度の中で、能力開発事業として1,500億円程度が能力開発に 使われています。  最後に、山川委員から、事業主の責務について検証すべきではないかということがあ って、前回出した資料を若干手直ししておりますが、事業主の責務としては、就業訓練 実施等々のほかに、職業訓練計画の作成、職業能力開発推進者の選任という努力義務も かかっています。キャリア形成促進助成金を支給申請する際には、必ずこういった訓練 計画、職業能力開発推進者の選任をお願いしており、それが助成金支給の要件になって います。以上です。 ○諏訪座長  それでは、ただいまの資料I−1、I−2についてご質問、ご意見等がありましたら、 ご自由にお出しいただきたいと思います。 ○黒澤委員  私が全然分かっていないからだと思いますが、資料I−1の9頁に「キャリア・コン サルタントの養成数について」という円グラフがあります。この比率を全部足すと100 %ですが、ハローワークなどで配置されている割合と、どのような機関を通して養成さ れたかというのが一緒になってますが、配置された方の中にも民間で養成された人もい るし、職業能力開発大学校で養成された人もいるという理解でよろしいのでしょうか。  もう1つは、質問というよりもお願いですが、10頁のキャリア形成支援コーナーで職 安にいらした方の中で何パーセントぐらいがこういう相談を受けているのかという情報 があれば知らせていただきたいと思います。 ○半田キャリア形成支援室長  ハローワーク、独立行政法人雇用・能力開発機構(都道府県センター)に配置されて いる者というのは、基本的に機構あるいは安定所の中で研修をやっていて、そういうこ とで採用されている方々ということです。 ○黒澤委員  ということは、2つの1つは、全くハローワークなどで配置されている方はいらっし ゃらないのですね。 ○半田キャリア形成支援室長  例えば、能開大学校にしても、ここの卒業生がハローワークに配置されているという のはまだありません。基本的に能力開発大学校などでは在職者を対象とした訓練になっ ています。  もう1点のほうは、(来談者)全員にお聞きしたいところですが、それもなかなか難 しいので、(来談者の一部を対象に)アンケート方式でやっています。母数のほうは、 安定所に何人相談に見えているかは、職業安定局に確認して出してみたいと思います。 ○高橋委員  いまのキャリア・コンサルティングの話の続きですが、私は詳しくこの部分を見てい るわけではありませんが、イメージ的に言うと、アウトプレースメントなどで中高年の 個別の相談に乗るときに必要なイメージと、若者の転職のケース、新卒の就職のケー ス、もう少し言うと、最近増えている社内で自立的にキャリアを作っていくことを支援 するキャリア・アドバイザー的なものを社内に置いて、外に出ていけという意味ではな く社内でというパターンなど、いろいろなパターンが出てきている。アメリカでキャリ ア・カウンセラーが出てきた背景は、ほとんどは就職、転職、そのあと再就職になって いたと思います。それがそのまま来ている部分があるのですが、いまの新しいタイプの さまざまなキャリア・カウンセリングやキャリア・コンサルティングのニーズは多様化 しているような感じがします。  例えば、企業の中でやろうとすると、個別の相談に乗るだけではなく、キャリア自立 を推進する人事担当者として、どんな研修をやったらいいのかなどというデザインもや らなければいけないし、行ってみると、転職したいということが前提ではなく、いまや っている仕事の中でどう自己実現できるかというコーチングみたいな話が結構多かった りするのです。それが中高年の場合は、とにかく仕事を探すことが最大のポイントだっ たり、随分スタイルが違うような感じがするのです。今までターゲットにされてきたも のが、その中である部分のイメージに少し偏っている部分もあるのかなと思うのです。 例えば、学校などもそうですが、どこかに押し込む就職指導ではなく、働くことに対し て、そもそも前向きに考えさせるための職業教育みたいなものをリードしていけるキャ リア専門家のようなものを、高校や大学に配置しようとした場合に、ここで言うキャリ ア・コンサルタントと共通する部分がすごくあるし、違う部分もあるような気がするの です。キャリアに関する専門家をキャリア・コンサルタントだけに絞らないで、いくつ か育成して促進して配置していくことが必要なのかという感じがしました。 ○半田キャリア形成支援室長  キャリア・コンサルタントは、平成14年4月に能力体系をとりまとめていただいたわ けですが、このときの考え方としては、「(キャリア・コンサルタントに求められる能 力は)、各分野によって特徴的な部分はあるでしょう。ただ、(各分野のキャリア・コ ンサルタントに共通して求められる)共通部分、最大公約数的な部分があるだろう。」 ということでとりまとめていただいております。  例えば、教育機関、企業内部、職業紹介機関、能力開発機関、あるいは地域でのサー ビス機関など、各分野に応じて必要とされる特徴的なものはあるでしょうが、それはこ れまでのところ、それぞれの一線の中で積み上げていただこうということでやっており ます。  そうは言いながらも、「若年者については早急に対応していく必要があるだろう。ま た若年者には職業経験のない方が多いという大きな特徴もあるので、若年者向けにはと り急ぎ特化した分野の能力を検討する必要があるだろう。」ということで、平成15年度 に検討会をやっていただき、若年者向けの追加研修のあり方についても検討をお願いし て、まとめていただいているところです。 ○高橋委員  何らかの人材育成などに前向きな企業を認定しようみたいな話が、こういう議論の中 で出てくるとすれば、企業としての認定の中で、企業内キャリア・アドバイザーみたい なものをどう置いているのかとか、そういうものも含めて、そういうものを後ろ立てす るような支援策ができるとすれば、企業内というのも、その中で扱えるようなものが、 ひょっとしたらできるのではないかと思っていますが、そういう議論になったときに、 是非お話をさせていただきたいと思います。 ○妹尾総務課長  いまのご意見について1点補足ですが、企業の中で、その社員のキャリア形成につい てサポートするような体制をどう作っていくかという議論をお願いしたいと思います。 現状では、いま説明した資料の中にも、キャリア形成促進助成金の支給実績があったと 思います。企業の中でキャリア・コンサルタントに社員を派遣した場合に助成金が出る という仕組みがありますが、実は現在はほとんど使われておりません。使われていない 理由はいろいろあるのだろうと思いますが、現在では日本の企業は社員に対してキャリ ア・コンサルタントを使いにくいというか、社員のほうも受けにくい現状です。そうい うことも踏まえながら、冒頭に申しましたように、良いアドバイスをいただければと思 っております。 ○諏訪座長  関係して、ほかにご質問はございますか。 ○山川委員  いまお話のあった資料I−2の4頁のキャリア形成促進助成金の件ですが、まだ3年 目ということもあるかと思いますが、利用度が非常に少ないのもありますし、また変動 しているのもあるということで、原因について、先ほどキャリア・コンサルティング推 進給付金については、いろいろあろうかということだったのですが、何か原因をつかめ ているものがほかにあるのかどうか、あるいはこれからなぜ使われないのかということ を調査される予定があるのでしょうか。その辺でもし何かありましたら伺いたいと思い ます。 ○内田育成支援課長  キャリア形成の助成金は、大きく2つに分かれています。1つは訓練給付金や下の2 つにある特別な対象に支給したものですが、地域と中小企業で基本的に事業内で事業主 が直接従業員に訓練をした場合に、訓練費用と賃金を持つという、いわゆる事業者が直 接やるものです。  もう1つは、そのほかの休暇給付金やキャリア・コンサルティングの推進給付金で す。これは従業員がある程度自発的にやる場合に、企業が側面援助する。具体的には休 暇を与える、あるいはキャリア・コンサルタントを外部に委託して授業を受けさせてあ げるという、事業主が直接手を下さない側面支援の部分です。そういうときに事業主が 直接やるのは、それなりに出ているが、それに対して側面支援のほうが非常に出ていな いという構造的な問題があります。  いますべての原因をつかんでいるわけではありませんが、1つ議論になっているキャ リア・コンサルタントの推進給付金について原因を調べてみますと、キャリア・コンサ ルタントを企業でやらない理由の調査が一部あって、余力がないというのが圧倒的に多 い。もう1つは、キャリア・コンサルタントという、ある意味で企業に直接どのように 結び付いてくるか分からない利益という部分については、必要性がいまいち理解できな いというのがその次ぐらいにきています。  そういうことで、1つは直接従業員に訓練をする場合はメリットもあるので、少々景 気が厳しくてもやるのに対し、従業員に休暇を与えるという側面支援は、二の次になっ てしまう部分がどうしてもあるのではないか。併せて、そういう側面支援については、 必要性が感じられない部分があります。そこについては、制度ができてからまだ3年ぐ らいの話で、周知が足りない部分があるかなと分析しています。いずれにしても、ここ はどのようにしたら利用できるかという話は、いま使ってもらっている所、使ってもら っていない所の事業主の調査をして、ニーズを把握し直さなければいけないだろうと思 っています。 ○高橋委員  我々慶應のキャリアラボでは、企業が社内でキャリア・アドバイザーのようなものを 養成するケースは、ご相談に乗ったり一緒にやっているケースがかなりあります。その 経験でいくと、大企業でいちばん早い所でも、富士通がやってNECがやって、次がど こどこということで、本当にこの2年ぐらいでバタバタとやっと起き始めたという印象 が非常にあります。ここにきて急速に、例えば丸の内シティ・キャンパスという慶應の 社会人教育の社内アドバイザーコースが、今年辺りからまた何社も増えたり、これから 増えるかなと思います。  もう1つは、そういう会社のパターンを全部見ていますと、キャリア・カウンセラー は全部社内で、社外の人に頼むというパターンはほとんどありません。それはアメリカ と非常に対象的で、アメリカは社外のカウンセラーを契約で雇うケースが圧倒的に多い のですが、いろいろな会社と話してみても、日本はどういうわけか社内でやりたい。社 内での業務知識がない外部の人間が来ても難しい。それについて「コンフィデンシャリ ティー(守秘性・機密性)の問題は心配ないのか」というアンケートをいくつかの会社 で取ったりしていますが、心配する人もいて、どちらかというと少数派で人事と切り離 した組織であれば、来る人は来るという感じがあるので、やっと出始めているという感 じなのではないかと思います。日本の場合、社外にまで金を使ってやるというのは、行 きそうにないなという感じがします。 ○北浦委員  先ほどキャリア・コンサルタントの数が2万人という数字が出ていて、初めて拝見し て、こんなに多かったのかと驚いたのです。これは講座修了者が入っているので、必ず しも試験を受けているわけではない数字です。その点は確認しておきたいと思います。  これはどの時点からのものを取ったのでしょうか。いわゆるキャリア・コンサルタン トの認定試験というのは、この2、3年の中の話ですので、それ以前からも類するもの があったのだろうと思いますので、それも全部含んだのかどうかを教えてください。 ○半田キャリア形成支援室長  2万人の内訳ですが、ご指摘のとおりで、平成15年度までに養成された者を全部入れ てあります。試験の指定が始まったのが平成14年11月からですから、それ以前の講座を 修了した方も入れてあります。  私どもも気になりましたので、キャリア・コンサルタント養成機関あるいは試験機関 の連絡会議がようやく発足しましたので、こちらで月に1回ぐらい会合していただき、 いろいろ取組みを検討していただいているのですが、試験機関の中で養成された方々も 一応把握したところ、8,000〜9,000人ぐらいになっていました(正しくは7,000人)。 過去に試験を受けて合格された方、過去の講座の修了者に対しても、追加の講習などを 実施して能力評価を実施しているということで、2万人のうち、約半分はそれなりの能 力が認められており、比較的質の良いものになっているのかと考えております。 ○北浦委員  いまのことはよく分かりました。現実に2万人近くの人がいるわけですから、この人 たちは一体何に能力を使っているのだろうかを考えていかなければいけないと思いま す。高橋委員が言われたように、まだ始まったばかりということもあるだろうと思いま すし、これからはブレイクしてくるところもあるだろうと思います。  ただ、実態的に見ますと、キャリア・コンサルタントの講座を受けておられる方は、 結構教育訓練給付が多いのです。そちらを受けて、個人として受けるというのがあっ て、資格志向の流れというと語弊がありますが、そのような中で取っている所が結構あ るようで、現実に受講生がかなり増えているわけです。そのことが会社として認知され てやっている場合と、純粋に自己啓発で土日の話としてやっている場合と二通りあるわ けです。折角そこまで頑張ったものを社内で活してあげる道筋を付けてあげないと、単 に資格を1個増やしただけということになってしまうという感じです。  現実的にキャリア・コンサルタントに対する人気は、ものすごく高まっていて、人気 のある資格職種のいくつかに入っているというアンケートをどこかで見たことがありま す。そのように関心が関心を呼んでいることは事実ですが、果たしてそれが社会的にど のように活躍するかという姿を早く作ってあげなければいけない、それが大きなポイン トではないかと思います。 ○佐藤委員  能力開発の今後の在り方ということで、個人的にこういうことが大事だと思っている ことを、少し話させていただき、質問させていただきたいと思います。  個人的には、これからの能力開発を考えるときに3つの大事なことがあると思いま す。先回議論されているのかもしれませんが、1つは、雇用保険でカバーされていない 人たち、いわゆる非典型の人たちで、フリーターと言われている人たちの能力開発をど うするのか。  2番目は、厚生労働省がこれまで取り組んできた現場のブルーカラーの能力開発につ いて言うと、経済産業省等々と連携して少しずつ新しい動きがありますが、技能形成や 技能継承に不安がある。特に製造業の現場へ行くと、20歳代の人は全部自社で雇用して いない請負会社の人たちです。メーカーはここ10年間新卒を採っていなかったので、20 歳代の人はみんな自社の社員ではなく請負社員です。20歳代がポッと空いてしまい、 40歳、50歳になります。40歳、50歳の人が辞めてしまったあとはどうするのか、技能継 承への対応が大事と思います。  3つ目は、特に広い意味での総合職的なホワイトカラーの能力開発で、いまの仕事に 必要な能力や転職に必要な能力開発というよりも、もう少し長期のキャリアを考えた能 力開発が大事になるだろうと思います。つまり、訓練というよりは、広い意味での能力 開発で、それも30歳代と40歳代に対するものです。特に30歳代と40歳代初めぐらいで、 現在第一線でいちばん仕事をしている人たちのリカレント教育が大事だろうと思いま す。この人たちが50歳代、60歳代になっても第一線で仕事を続けられるような仕組みを どう作るかが大事です。  そうすると、1年とか2年の長期の教育訓練機会をどう作るかということで、ある意 味では大学院教育であり、職業訓練ではありません。目の前の仕事に必要な勉強をさせ る、そのための仕組みを整備していくことも必要ですが、長期のリカレントの仕組みの 整備が重要です。先ほど教育訓練休暇などは減っているというお話がありましたが、お そらく長期の教育訓練機会はそんなに増えないと思います。受けたい人が受けられるよ うな仕組みを国としても企業としても、どう整備するかが大事ではないかと思います。 そういう意味では、企業に対して、大学院に行くときには残業しないということもある と思いますが、文部科学省に対して在職者が受けやすい大学院のプログラムをどう作ら せるかということを言ったほうがいいと思います。1年コースを作るなども含めて発言 する必要があるかと思っています。  最初に非典型の人たちの教育訓練が大事だというお話をしたのですが、例えば非典型 の人は正社員の教育訓練を受けていないとか、正社員の中でも、教育訓練当時、受ける 機会に差が出てきているという話がある。しかしデータでの裏付けはない。職業能力の ストックがあるのか、毎年どれだけ人的支援投資をしているのかなどに関するデータが ない。どの程度どういう資格や実務能力を持っているのか、毎年どのぐらいの時間とお 金を、教育訓練に投入しているのか。  インターンシップです。インターンシップというのは、対象となる学生の職業意識の 啓発という議論がありますが、もう1つ大事なのは、受入担当者の教育訓練機会として 位置づけることです。つまり、いま若手で能力開発機会がないのは何かというと、他人 に教えたことがない人がたくさんいるわけです。20代、30代で勤続5年ですが、部下を 持ったことがない。社内で他人に教えたことのない人がたくさんいます。ですから、イ ンターンシップで受け入れるということは、実は受入担当者の教育訓練機会になるので す。インターンシップの助成金があるのか分からないのですが、受入担当者の能力開発 機会になる仕組みを考えてもいいのかもしれません。  インターンシップというと、企業からはお荷物という感じがあるのですが、そうでは なく、受入担当者に教育訓練プログラムを作らせる。1カ月受け入れるぐらいでどう教 えるのか。教えるのが大変だということが分かって、初めて上司がぶつぶつ言うのが分 かるわけです。こういうことを教育訓練として位置づけることも大事だと思います。  資料I−2の9頁で大学院教育が大事だという話をしたのですが、給付金で指定講座 で大学院1,050というのがあります。講座の指定はありますし、文科省のほうで社会人 の大学院生のデータは分かるのですが、給付金を使って大学院へ行っている人はどのぐ らいいるのかというデータがあれば教えていただきたいと思います。 ○諏訪座長  ご質問とご意見が含まれていましたが、質問だと感じた限りでお答えください。足り なければあとで補足してください。  どれが質問で、どれが意見か、最後のところ以外、いまいち分からないところがあり ますが、質問だと感じた限りでお答えください。足りなければあとで補足してくださ い。 ○内田育成支援課長  最後のご質問の教育訓練給付の指定校だと思いますが、おっしゃっているのは受給者 数ですか。 ○佐藤委員  人数は分かりますか。 ○内田育成支援室長  いまは分かりませんが、講座別の人数が全部出ますので、集計をすれば大学院に該当 する講座の受講生ではなく、受給者になってしまいますが、受給者については出ると思 いますので、後ほど集計した上でご説明いたします。 ○諏訪座長  それ以外のところでは、非典型の教育訓練の問題、インターンシップは受け入れた人 の教育訓練の機会にもなるのではないかという、半ば意見ですが。 ○佐藤委員  厚生労働省では、個人の人的支援投資のストックとフローについてのデータ整備を考 えたことがないのかどうか。企業に対しては調査しているのがあります。個人調査は企 業から個人に調査票を配布すると、非典型労働者が落ちてしまうのです。ですから、非 典型労働者の人的資源投資を把握するためには、地域調査でやらないと無理なのです。 イギリスなどはそういうデータがあります。 ○妹尾総務課長  いまの佐藤委員のご指摘にぴったり合うようなデータはないと思います。ただ、この あとご説明する企業のマクロで見た教育投資額がどうなっているかという推移が1つあ ります。もう1つは、行政の支出としてのアクティブ・レーバーマーケット・ポリシー の中の教育訓練投資はどのぐらいの割合になっているか、というデータはお手元の資料 にはないのですが、たしかあったと思いますので、それは分かると思います。それは公 的な訓練とのマクロとしての数字です。いま思い付くのはそのぐらいで、佐藤委員のご 指摘のようなものは足りないのかもしれません。 ○佐藤委員  自己啓発の助成金なども、企業で教育訓練を受けている人が、ますます助成金を使っ て、レベルの高い人は、ますます高くなって、差が広がってしまっているのかもしれま せん。本来は企業からなかなか受けられない人が使うという施策ですが、本当にそうな っているのかどうかというのが分からないのです。ということで、私はデータ整備とい うことも考える必要があるかなと思っています。 ○上西委員  いまの話と関連してデータについて申し上げたいと思います。これから能力開発をど うするかということを考えるためには、これまでどうだったかというデータがきちんと 整備されてないと駄目だと思います。例えば、労働力がいまどういう状況にあるかとい うのは、毎年きちんと調査をして、誰でもホームページで入手することができ、経年変 化も全部分かります。しかし、厚生労働省がどういう施策をやって、どういう実績が出 ているのかは、ここに来ないと分からない。ホームページには出ていませんし、労働行 政に関する冊子でも、こういう制度がありますということはあっても、なかなか数まで 出てきません。基本的にここに出ているような数字は、内部資料というわけでもないと 思いますので、ここにあるぐらいの基本的なデータは、毎年継続的にきちんと公表すべ きではないかと思います。  あとは行政がやっている制度に関する調査です。企業が何をやっているのかというこ とに関する調査はいろいろありますが、行政がやっている制度に関して、それを検証す るような調査は、あまり行われていません。私も携ったことがありますが、例えば委託 訓練に関する調査を独立行政法人雇用・能力開発機構から専修学校教育振興会に委託さ れたものにかかわってやりましたが、そういうものをやってみると、受講者がどのよう に問題点を感じているか、あるいは実施者側がどのように問題点を感じているかなど、 いろいろ具体的な状況が見えてきます。それが今後の改善につながっていくはずだと思 いますが、そういうものをやったとしても、実際にそれが施策にどう活かされているか よく分からないし、結果も公表されないという状況だとまずいのではないかと思いま す。  2つありますが、1つは、例えば訓練給付金制度の利用状況のような基礎的なデータ をきちんと公表することと、もう1つは、例えば訓練給付金制度、キャリア形成支援な どの制度にかかわる特定の調査を行い、それをまた公表することが制度改善のためのフ ィードバックの1つの大きな資源になるのではないかと思います。 ○妹尾総務課長  いまの上西委員のご指摘は、将来の規定のご注文ということだろうと思います。行政 の制度に対する評価は、最近始まったばかりで、いくつかの部分について行っているも のもあり、それらについては公表しているものもありますが、全体をカバーするように はなっていないのが現状です。これから行政についても政策評価、効課測定みたいなも のが課題になっていることは間違いなく、その方向で行くことになろうかと思います。 ○廣石委員  質問に限定されると発言しにくかったのですが、前回からこの議論を伺っていて、職 業能力開発と一言で言っても、非常に幅が広いなとしみじみ痛感します。そういう中 で、では職業能力というのは何だろうということを、1回体系化してみることは必要で はないかと思います。そして、その中で現在の行政でやっている所、やっていない所、 もしくは行政がやるべき部分、企業がやるべき部分、自己責任の部分といろいろあろう かと思いますが、その辺の切り分けの議論は今までされていたのかどうかは私には見え ません。  その意味から先ほど佐藤委員からお話がありましたように、ホワイトカラーの職業能 力開発で、例として営業実務みたいに出されましたが、本当はそれ以外のマネジメント 力は必要ないのかと言ったら、絶対必要なはずです。では、これは一体どこが、どのよ うに身に付けるものなのか、本人に任せていいのか。それに対して行政が何らかのサポ ートをしなければいけないのかを、本来は一つひとつ検証すべきだろうと感じました。  その中で今まで出た話題でコメントさせていただければ、例えばキャリア・コンサル ティングと言っても、コンサルティングというのは、それこそ場数の問題もありますか ら、本当に使えるコンサルになっているのか。要するに資格だけ取っても、本当にでき る人がどのぐらいいるのかというのが私にはとても危惧されるところです。  そういう意味では、キャリア・コンサルタントなどと言わずとも、先ほど高橋委員か らお話のあった富士通などは、HPプロフェッショナルズで専門のスタッフを抱えて、 きちんと社内である程度員数があってやっておられる所もありますし、資格があるとい うことでインセンティブになる面はありますが、本当に使えるということになると、今 後の問題なのかと思います。  インターンシップについて佐藤委員からお話がありましたが、私は専修大学の経営学 部で企業研修実施委員長をやっていたこともあって、受入担当者の教育にもなるという 話は非常によく聞きます。これは企業にとっても非常にいい機会ですから、佐藤委員の お話は同感です。  なおインターンシップについては、経済産業省が補助金を出しています。経済産業省 の補助金と職業能力開発について、どのような関係を持たせていくのかも考えどころな のかと思いました。質問ではなく、コメントということで結構です。 ○諏訪座長  質問だけではなく、もちろんご意見も結構です。何なりとお出しください。 ○黒澤委員  技能の実習制度について伺いたいことがあります。資料I−2の3頁ですが、在留資 格の変更があった1年後までは把握されていると思いますが、3年目の最後の実習が終 わった時点までフォローがなされているのか、少なくとも実習が行われた2年までは追 跡調査で請負った企業が責任を持って、この方々をいろいろな面で面倒を見て、不法就 労という形でドロップアウトしていないとか、その辺りの把握はどのぐらいできている のか分かっているのでしょうか。FTAの関係で、これが1つのモデルケースの形で議 論されることもあるのではないかと思いましたので伺いました。 ○妹尾総務課長  技能実習制度の点ですが、表で言う3年のうちの後半2年間について、行政から見る と投げ出しっぱなしということですが、投げ出しているわけではありません。例えばJ ITCOという技能実習を扱う組織がありますが、そういうものを使いながら、ちゃん とした技能実習が行われるような援助はしております。  3年目が終わったときにどの程度の技能レベルまで上がったかという検証ですが、 我々としては、3年目に技能検定を受けて、どの程度までアップしたかという認証をし てくださいとお願いしているのです。しかし、それは義務ではなくてお願いベースなも のですから、企業にとっては負担になるばかりなのです。1年目から2年目に移行する 際の技能検定は、その検定を受けないと在留資格が変更にならないものですから全員受 けるのですが、3年間終わった後の検定はなかなか受けていただけないのが現状です。 ○黒澤委員  技能実習を修了したことやその後きちんと帰国したのかなどについて、調査をしてい るのですか。 ○妹尾総務課長  帰国については当然します。数については、出せるものを用意いたします。 ○廣石委員  基礎的な質問で恐縮なのですが、国際協力において、海外技術者研修協会との関係は どのようになっているのか教えていただきたいのです。あれは外務省の関係団体なので 分からない、と言われればそれまでですが。 ○松野海外協力課長  海外技術者研修協会は、日本の民間企業の技術者をJICAの制度と同じように、国 際協力のODAの一環として出して、それで派遣してやる所だと思います。 ○廣石委員  お尋ねしたいのは受け入れているほう、AOTSのことですが。 ○松野海外協力課長  受け入れているほうも、JICAの在外の受入研修と同じ位置づけで、言ってみれ ば、その経産省版のようなものだと思います。AOTSは、むしろJICAの事業に近 いもので、ODAの予算でやっていると思います。  私のほうにOVTA(海外職業訓練協会)があり、以前は受入れの研修をしていまし たが、現在は行っておりません。海外にこれから赴任する人に対して、現地労働者を職 業訓練するための能力を付与する事業を行っております。OVTAは人材育成の観点か ら、AOTSは、予算もODA予算だと思いますので、ODAという観点だと思いま す。 ○廣石委員  この実績の中にAOTSは入っていないという理解でよろしいですか。 ○松野海外協力課長  入っておりません。 ○山川委員  技能実習終了後の調査ですが、今野先生やJILにいた大木さんがJITCOの委託 で行った、帰国後の状況についての調査報告書が何冊か出ていたと思います。 ○諏訪座長  なかなかご議論の尽きないところなのですが、資料II「職業能力開発の現状」につい て説明していただいた上で議論や質疑応答等先へ進めたいと思います。 ○森川総務課課長補佐  資料IIは企業と個人の能力開発について、前回の資料を更に掘り下げたものです。  1頁。前回計画的なOff−JTなりOJTに取り組む企業割合は下がっていたわけ ですが、平成13年の調査で、重視する経営課題としてどうであるか。選択肢のつくり方 もありますが、6割の企業で人材育成の強化が重視されているとなっています。  次頁は人材能力の確保方法です。中途採用で対応する企業もありますが、能力開発の 強化ということで求められる人材を確保していく方法も見られます。ただ、3頁を見て いただきますと、90年代後半から労働費用に占める教育訓練費用の割合は低下していま す。  教育訓練の方針の中で、底上げ(教育)より選抜を重視する傾向が強まっているので はないかということで見てみました。平成15年のデータで、教育訓練対象者の更新指数 というところがあります。ここでマイナスが大きいほど底上げ重視という指標になって います。これだけ見ると、どちらかといえばまだ底上げ教育に近いのですが、今後のほ うを見ると、底上げ重視よりやや選抜重視に近くなっているのではないかと思われま す。  特に大企業でその傾向は顕著です。次頁で、調査時点は違うものですが、規模が大き くなるほど、より選抜教育重視になる傾向があります。  トータルとして、何で能力開発や人材開発に積極的でないかという理由を次頁に出し てあります。それによると、時間がない、指導人材が不足しているというところがネッ クになっているのではないかということです。  これをもっと積極的にやっていただくために、何かインセンティブになる資料はない かということで探してみました。7頁は製造業系についてのデータですが、人材育成に 力を入れている所のほうが売上高の伸びが高い。因果関係は別にして、そういう相関関 係はあるように見えます。商工会議所が行った、上3つの帯グラフでも同じような関 係、正社員が伸びているほど能力開発に積極的であるという傾向がご覧いただけるかと 思います。  9頁は佐藤委員、玄田委員の資料から抜粋したものですが、競争力を自己評価して強 いと思っている企業のほうが人材育成を重視する傾向があるように見えます。企業の側 からは、こういうことで多少なりともインセンティブにならないものかと考えて用意さ せていただきました。  10頁以降は個人についての問題です。Off−JTを受講したという方が全体の4分 の1程度でした。前回は30代前半ぐらいに受けられるべきではないかという議論もあり ましたが、25〜34歳を見ると、確かにほかの年代よりは高いのですが、あまり変わらな い状況ではないかと思います。  11頁は自己啓発についてです。30代後半のほうが「やった」という回答率は高い状況 です。男女・年齢のクロスデータということで、教育訓練給付を受給している方の性・ 年齢別に見たものがあります。男性で言えば、30代前半が自己啓発をするピークである と言えるのではないかと思います。片や、女性は20代後半がピークで、その後なだらか に減っていくという形です。特に、性別の特徴として、通学制を利用する方は男性より 女性のほうがはるかに多いのです。時間のせいかもしれませんが、そういう傾向が見て 取れるのではないかと思います。  3割程度の自己啓発の状況なのですが、自分の知識・技能を高めたいと思っていない のかというと、そうではなくて、9割近くの人がそう思っている。特に20代から30代に かけてはかなり高くなっているのですが、10代、また、ある意味で当然ですが、高齢者 の方はそう思わない。就業形態別で見ると、臨時(雇い)とかパートの方がそうは思っ ていないところがやや問題なのかと思います。  やる必要がないと思えばそうなのですが、やろうとしたときに何が問題になるかとい うのが15頁です。自己啓発の余裕がない、費用がかかりすぎるということで、それを細 かく見たものが次の頁にあります。  忙しくて自己啓発の余裕がないという方は、年齢別に見ると、30代後半から40代前半 の部分が比較的高いと思います。職種別に見ると、営業、販売、サービス等でそういう 傾向が見られます。また、費用がかかりすぎるというのは、比較的若いところで見られ ます。やるべきことがわからないというのは、典型的に24歳以下で高くなっています。  あとは適当な訓練機関がないのではないかということもあるので、教育訓練機関でど ういうものがあるかを次頁で、学生数も含めて整理しました。★が委託訓練をお願いし ている施設が入っているもの、◎が教育訓練給付の対象となる施設です。社会人で入学 している人は、大学で3,500人程度、大学院等になると3万4,000人になります。  東大の本田先生の調査の中で、大学院教育で身についた能力としてどんなものがある かというものがありましたので、参考までに載せました。課題を理解し設定する能力、 情報を収集し分析する力、幅広い視野を持つこと、人的ネットワークの形成で、より能 力が身についたという結果になっています。ちなみに、これは大学院が主に社会人向け として設定した11コースに在籍している方を対象にした調査で、500人ぐらいから回答 をいただいたものです。  こういった状況にあることに対して、現状で労働者、そして労働者になろうとする方 も含めて、そういう方が教育訓練を行おうとする際の支援措置としてどういうものがあ るかを列挙しました。まず給付としては先ほど来の教育訓練給付があります。あとは融 資として使えるものがいくつかあります。主たるものは本人だけでなくご子息も使える 形になっていますが、例えば独立行政法人雇用・能力開発機構の技能者育成資金は、公 共職業訓練を受ける方向けの融資制度です。そのほか国民生活金融公庫や年金福祉協会 等、いくつか要件があります。いくつかヒアリングしたところでは、本人が使っている 例は少ないと聞いております。  最後は税制についてです。所得控除でなくして、特定支出控除として雇い主の方に現 在の職業に必要な能力開発経費であると認められたものが、特定支出控除の一部として 認められる形になっております。 ○諏訪座長  これらの資料について質問や意見をいただきたいと思います。 ○廣石委員  重視する経営課題に始まって、教育訓練のいろいろな資料で、人材の育成強化という ことが盛んに書かれていますが、企業の中で人材といっても、どの層なのかがわからな いと、本当の処方せんは打てないだろうという感じがします。いわゆる現場なのか、中 間管理職なのか。場合によっては「うちの会社に人材がいない」と言う会社に限って、 経営トップが私の目から見ていまひとつだとか、いろいろなケースがあるのです。そう した中で人材の育成強化と言っても、企業がどのレベルの層の強化を問題意識として持 っているのかが明らかになるようなものがないのかと思ったところです。後からお話が ありますヒアリングなどでその辺を明らかにしようということなのかもしれませんが、 これを見た感想として申し上げました。 ○北浦委員  細かいことを1つ言います。先ほどのOff−JTの受講状況で、これは能開局の研 究会だからサラッと読んだのですが、男女差が随分あるということが少し気になりまし た。これは後の所を見てもよくわからないのですが、どこで男女差が発生しているの か、そういうところを、雇用機会均等の観点もあるので教えていただければと思いま す。 ○諏訪座長  何が原因でこういう差が出るのかと見ているのか、わかればお答えください。 ○妹尾総務課長  男女と職種なり年齢でクロスしてデータが取れると参考になるかと思うのですが、元 ネタの分析でそれができないような調査なものですから、ほかで何かわかるようなもの があるかどうか、宿題にさせていただきたいと思います。 ○佐藤委員  3頁の教育訓練費の割合が落ちていますが、ここ10年間で正社員が減って、それ以外 が増えています。そうすると、パート等に比べれば社員のほうには人的投資をしている ので、比率としても、社員だけ見るとそんなに変わらないのかもわからないので、絶対 額で見たほうがいいという気もしないでもないのです。労務費は、パート等が増える と、比率は落ちていても、もしかすると、社員だけについてみるとあまり変わっていな いのかもわからないのです。それ自体は問題ですけれど。  12頁と13頁について、在職中に受けているとか離職後とかいうのがわかるのかどう か。通学と通信で、夜もあるからわかりませんが、通学は在職中なのか。これは離職後 でも受けられますね。だから女性なんかはそうなのか、その辺がわかれば教えてくださ い。  3つ目は17頁についてです。社会人の大学院生は560人ですが、これしかいないのか と思いました。慶應は昔からでしょうけれど、社会人大学院はたくさんあるし、560人、 こんなものなのかと思ったのです。  教育を受けるときのお金の問題などもあると思うのですが、1つは19頁、国民生活金 融公庫の教育ローンが本人に使えると思っていないのではないか。子どもにしか使えな いとしか思っていなくて、もっと宣伝すると結構利用するのではないか。年間収入が 990万で、(給付)上限200万円でしょう。わりあい使い勝手がいいと思うのだけれど、 本人が使えると思っていないのです。こういう情報を社会人に提供するといいのです。 お金で行けないのか、時間さえどうにかすればいいのかということです。  もう1つお金のことだと、独立行政法人日本学生支援機構で、社会人の大学院生に対 して特別な奨学金をつくるという議論はあるのか。30代、40代というと、子どももいた りしてお金がかかるわけです。ですから、文科省の社会人大学院の教育内容の問題、あ るいは教育訓練を受けやすくするお金の問題などは、厚生労働省だけで考える必要はな い。ほかの役所についても言ったほうがいいと思うのです。こういうものも、例えば社 会人だけの別枠の奨学金をつくれとか。あるいは既にあるのかどうかわかりませんが、 その辺を知りたいのです。 ○内田育成支援課長  教育訓練給付の支給状況のところで、在職者別と離職者別のデータが取れるかという ことですが、これは受給データでやっており、たしか、在職者か離職者かということで は取ってなかったと思います。経験則から言うと、在職者がかなり多い。また、女性で は年齢でかなり差が出ています。  実は、いまは被保険者期間は3年で、3年保険をかければいいのですが、当時の段階 では5年でした。したがって、若い人はまだ、5年間保険を掛けているという実績がな かなかないので受けられない。そういう保険制度としての制約があったと思います。  その後急に増えたのかどうか。このころはいまの講座と違って、若干趣味的なものも 入っていましたので、女性の25〜29歳が多いのは、もしかしたら、失業の危険もそれほ どないという方の場合には、在職しながらこの講座を利用して少し自己啓発しようと。 そういうものが若い女性に多く、急に25〜29歳が増えているのではないかという推測だ けはできます。 ○諏訪座長  佐藤委員の質問に対して、教育訓練費が減ってきたのは、非正社員の比率が増えると 全体として落ちてくるという推測です。確かにいろいろな人がそう思っているわけです が、そういうところを何かデータできちんと捉えているだろうかという質問がもう1つ あると思いますが。 ○森川総務課課長補佐  そこは改めて確認し、整理して提出いたします。  最後にご指摘の融資のところで、国民生活金融公庫のことが出ましたが、聞きました ら、ここは本人のために使われている例は全くないというお話でした。また、独立行政 法人日本学生支援機構の奨学金については、別に在職者を外しているわけではないので すが、そもそも経済的な理由で就学が困難な者ということで、所得制限等の部分で受け ることができなくなるということです。政策的に何かしなければいけないという気持は あるのですが、この低金利の時代で、何か政策的に支援するというと、教育機会の均等 といった理念が必要であろうとは思います。 ○諏訪座長  奨学金関係は非常に重要だろうと思います。調べてみると、子どもには投資しても自 分には投資しないという傾向はかなりはっきりと出ているのです。元が取れないと思っ ているのか、日本の場合は転職市場が整備されていないということがあるのか、一体何 なのか、ここら辺も非常に重要なところだろうと思います。あるいは、教育訓練という のは会社任せで自分がやるものではないと長い間思われてきたのか。何らかの原因があ るのだろうと思っていますので、もしこの点で意見や質問があったら出していただけれ ばと思います。 ○廣石委員  私も社会人大学院の経験者で、しかも、会社を辞めて大学院に行ってしまいましたか ら、所得制限は全く関係なく、フルに奨学金を頂きました。確かに周りを見てみます と、在職中の者については所得制限がいちばん大きな話です。幸いにも所得制限内であ った場合には、奨学金をフルにもらっていた仲間はおりました。  大学院の場合、社会人で自分のために投資する場合に限るのかどうか、その辺は何と も言えませんが、所得制限のところは大きなポイントであろうと感じております。 ○諏訪座長  大人のための奨学金という部分でほかに意見はありますか。 ○黒澤委員  先ほど、社会人に対する奨学金制度を新たにつくるために、公平性という観点から理 論的な根拠が必要なのではないかという話でしたが、そもそも教育訓練給付制度にして も、金銭的支援という形での公的な介入の理論的な根拠は、貸与であろうが給付であろ うが、全く同じだと思うのです。  その理論的な根拠と言ったらいろいろあるわけですが、資本市場の不完全性、それが いちばん大きなものになるだろうと思うのです。そう考えた場合、給付という形で与え るのではなく、融資の形のほうが、より自分にとってのコストとベネフィットを勘案し た上での投資行動に踏み切るという意味において、同じ費用で支援するにしても、より 効率的に資金が人的資本への投資行為に使われる、という意味では有効になされるので はないかと思います。  1点だけ付け加えて申し上げます。先ほどの説明の中で、確かに現状の訓練給付制度 は失業者、特に長期失業者、また非労働力化した方や新規学卒者は除外されているが、 そういった方々には公共の職業訓練があると。確かにそうなのですが、教育訓練給付制 度があることによって、実は教育訓練のコストが引き上げられている。つまり、専門学 校等で提供されている訓練プログラムの価格が引き上げられていることになるのです。 結局、訓練給付を用いて訓練を行うということから除外されている人たちにとっては、 そういった給付制度がない場合と比べると不利益を被っているわけです。そういったこ とを考えると、給付制度よりも貸与のほうがより望ましいのではないかと理論的には考 えられると思います。 ○北浦委員  政策の方法論として、貸与でいくのか給付でいくのか。現実論として給付を行ってい る中で、貸与制度があるということから考えると、政策的にどういう場合にという整理 は必要だろうと思います。それはこれからの議論かもしれません。  ただ、一般論的に、いままでの政策手法として、事業主向けのものと折衷案的なもの があって、それが利子補助という制度であったわけです。利子に優遇をしていくという 場合の考え方は、基本論として、還元融資の場合であれば、元の所において色がついて いますから、その中で優遇される根拠は1つ出てくるのです。雇用保険に還元融資があ れば、それは1つ理屈があるでしょうが、それはなかなか難しいと思います。しかし、 還元融資という1つの考え方もあると思います。それがもしなければ、利子補給金のよ うな形でやっていき、民間の金利は阻害しないで補給するという方法があります。しか し、そういうことが個人に対してうまくいくのかどうか。それと裏腹に、税制上の措置 をきちっと噛ましておかないと、それは課税対象になってしまうという問題もあるので す。ここのところは非常にテクニカルな問題ではありますが、確かに個人向けの援助手 段を、事業主に対して行ったのと同じぐらいの綿密さで検討する時期には来ているであ ろうという感じがします。 ○諏訪座長  この問題はとりあえずこのくらいにして、山川委員、どうぞ。 ○山川委員  まず別の話ですが、1頁と2頁で、一般には能力開発や人材育成は重要だと言われて いる一方、実績としてはあまり行われていないということでした。助成金もあまり使わ れていないということからすると、その原因の1つは、現実的にどれだけ有効かがわか らないこと。あるいは、具体的に一体何をしたらいいのか、何が必要なのかがわからな いということは、事業主として1つあり得るだろうと思います。  もう1つあるとすれば、ニーズに即したメニューに必ずしもなっていないということ かもしれないし、周知が十分でないのかもしれません。  ニーズのほうですが、最近変化があるとはいえ、事業主主導的な色彩がまだ強いとい うことからすると、1頁と2頁の事業主の回答で能力開発の強化と言っているのは単な る建前の話なのか。また、具体的に何が必要で、どういう能力が重要だと考えているの か。  ここから質問になるのですが、そういうデータがあるのかどうかです。18頁に本田先 生が作ったデータがありますが、そのようなブレークダウンされた能力の必要性に関わ る、事業主からのニーズに関わるデータがあるかどうか。もしそういうものがあればお 伺いしたいのです。  18頁の感想ですが、社会人大学院は顧客志向を身につけるのに役立たないと思われて いるようです。労働者側ズとしては、専門的知識というよりもむしろ一般的な能力、言 葉はあまり好きではないのですが、人間力みたいなところを重視しているのだろうかと 思いますが、それが事業主のニーズとどう関わるのか。それが気になったところです。 ○諏訪座長  いまの質問に関わった部分で何かありますか。 ○森川総務課課長補佐  これについて具体的にブレークダウンしたものはありません。この調査自体にも、そ このところのきちんとした定義は特にありませんので、何か別の資料で探してみたいと 思います。 ○高橋委員  いまの説明の中で、会社に対して何でやらないのだとか、個人に対してなぜやらない のだとか、いろいろ聞いているわけですが、難しいのは、これに応えて、時間がないか らとかと言って、それを真に受けて、では時間をつくればいいかというと動かない。  これはマーケティング調査でもよくある話で「あなた、何が欲しいですか」と聞い て、そのとおりに物をつくって売れない世の中になってきているということと同じなの だろうと思うのです。ですから、政策評価ということも考えたときに、一体コスト対効 果の高い政策はどこなのかというのは、ある部分でマーケティング発想が必要になって くると思うのです。  私もまだ答えはないのですが、現状はどういう感じなのかと理解してみると、その対 象者として3つぐらいあると私は思うのです。個人と会社ともう1つ、学校等サービス プロバイダーというのがあって、この3つがそれぞれどれに働きかけたらいいのかで す。そのサービスプロバイダーに対して、給付なのか、ローンなのか、あるいは認定制 度なのか、いろいろな働きかけの仕方があります。その働きかけによって、どんな人た ちをターゲットにし、どんなパーティーにどんな方法論で働きかけるのかという組み合 わせが無限にある中で、いちばんテコになって効き目のあるものは何なのか、それを探 す作業をこれからしなければいけないのだろうと思うのです。  私はいろいろな会社と付き合いもあるので思うのは、ターゲット的に言うと、よく1 ・8・1とか2・6・2という言い方をします。ここでも出てきていますが、どうも会 社とお付き合いしていると、2・6・2の上の2・選抜組みの経営幹部候補、リーダー 育成については、そのニーズも高いのです。それから、金はかかるけれども、どうやっ たらそれができるかということを少しずつ企業がわかり始めてきて、コーポレート・ユ ニバーシティー(企業内大学)をつくったりする。本当にそれでうまくいくのかどうか はまだ分かりませんが、相当これだという感じにはなっていて、そっちにお金を使うよ うにはなってきているような感じがするのです。  ところが真ん中の6の人たちに対してはどうかというと、いままでの一律階層別教育 はどうも効果が薄れてきている、やめだと、やめるだけはやめたのだけれども、代わり の効果のあるようなやり方を企業としてもまだ思いついてないということがあるので す。  それをなぜ思いつかないのかというと、人間の能力の中で重要なのは、専門性やスキ ル、知識や経験もあるけれども、コンピタンシーという言葉がバッと出ましたが、行動 特性、思考特性です。例えば、何かを知っているというよりも、自律的に自分で新しい ことを学習し続ける能力がないと駄目だと。  ここまではわかるのですが、それは研修をすれば付くというものではない。どうした ら付くのかという話になるのです。アクションラーニングとかe-ラーニングとか、手 法的には少しずつ出てきているのですが、この部分の人たちに対するコスト対効果の高 い教育訓練のやり方に、世の中が変わってしまって、まだ戸惑っているのです。  下の2の人はどうなのかというと、はっきり言って、いままでは抱えてきたけれど も、もう企業としては対応できない、そういう投げ出しが出てきているような気がしま す。そうすると、下の1とか2の人たちに対しては行政が直接的な支援をせざるを得な いだろうし、真ん中の人たちに対しては、間接的に企業に働きかけるとか、サービスプ ロバイダーに働きかけるような、間接的にレバレッジの利くようなやり方(てこ(レバ レッジ)の原理が働くようなやり方)のほうがいいような感じもしないでもありませ ん。トップのレベルは、放っておいても企業がやるだろうというようなところで割り切 っていくのだろうと思います。企業にはそういう直接的な支援とは別に、間接的なもの があるだろうと思います。  サービスプロバイダーの場合について私が思うのは、先ほどキャリア・カウンセラー の問題がありました。全部の人たちと付き合いがあるわけではないのですが、彼らに 「どんな人が最近来るのですか」と聞いてみると、どちらかというと、マニアみたいな 感じの人、ひとつ間違えば心理マニアみたいな、本人がいちばんカウンセリングが必要 ではないかと思われるような人が来たりすると言うのです。  それ以外で、比較的顕著に我々のMCC(丸ノ内シティー・キャンパス)でも、企業 の人事が出てきているのです。会社の命令で来ている場合と個人の意思で来ている場合 と両方あるのですが、これはそのままカウンセリングをするかどうかは別にして、企業 の人事がこういうものを勉強して人事政策の中に取り込みたいという流れは出始めてい ると思います。もちろん、いま言うのは問題意識が高い企業中心ですけれど。  ところが、本当はいちばん来なければいけなかった所、アメリカでも多いはずで少し も来ていないのが学校なのです。GCDF(Global Career Development Facilitator) の人に聞いたら、最初このプログラムは学校の就職部みたいな人たちのニーズがいちば ん高いのではないかと思ったが、日本でもそういう人たちが来るかと思っていたけれ ど、蓋をあけたら、ほとんど来ないのだと言うのです。  あまり自分の大学のことを言ってはいけないのですが、慶應大学を見ても、学内に キャリアの研究をしている人間はいくらでもいるのに、就職部から相談に乗ってくれと いう話は一回も来たことがないのです。大学や学校の中でキャリアの専門家が、このま まだとほとんど来ない。そもそもその部分の問題意識の低さをどこかで突かないと、ま ずいだろうという感じがするのです。  企業は問題意識を持ち始めているけれど、方法論がわからないとかというのは、どこ かそこを突けばいい。あと、ボトムの人は直接個人に働きかけるしかないのではないか と思います。まだ非常に漠然としていて仮説ですが、そんな感じがいたします。 ○諏訪座長  大変示唆的なご意見でしたが、ほかのご意見なり質問なりをお願いいたします。 ○玄田委員  4頁と5頁に大切なメッセージが随分あるように思います。教育訓練方針の話をしま しょう。先ほど高橋委員が、ボトムの部分というのは個人に働きかけるしかないのでは ないかというお話でしたが、私が見るには、いちばん下の部分には企業が必死で何とか 対応しようとしているように見えて、4頁と5頁と全然違う結果になっているのです。  4頁は、底上げのウエイトが高まっているという結果になっていて、もう1頁めくっ たほう、主に大企業と書いてあるほうは、どちらかというと選抜教育を重視する割合が 高まっているという結果になっているのです。  これをどう読み取るかというと、1つは、二極化が始まっていて、大企業を中心に選 抜型の教育訓練を進める方向と、一方で中小企業を中心として、そちらはむしろ底上げ のほうに必死になりかけている。今後はますますそれが大事なのだと見るのか。三井情 報開発のものと富士総研のものと、どちらかが間違っていると見るのか。この辺はちゃ んと見ないといけないのではないかと思うのです。  もっと言えば、4頁と5頁でおかしいのは、「これまで」というのを横軸にして「今 後」というのを縦軸にする。そして、いま思っている企業は今後どうなっていくのかと いう推移を見て、急速に底上げを必死でやろうとしている会社や選抜のほうに舵切りし ている会社はどういう会社かをもう少し細かく見たほうがいいのではないかと思いま す。  さっき高橋委員が言われた、ボトムの部分というのは個人に働きかけるというのも大 事だと思うけれど、失業者やフリーターを見ていると、ボトムに行政から働きかけるの はものすごく難しいのです。実際に中小企業の中では、底上げをかなり必死にやろうと していると見ているとするならば、選抜教育を一生懸命にやる所は自分の金でやってく ださいと。そして、底上げ等、もしかしたら社会的にやらなければいけないところを企 業が一生懸命やっているのだったら、そういう中小企業を支援するフレームワークを何 か考えなければいけないのではないかと見るほうが必要なのではないかと思います。  能力開発は、昔は規模間格差で見るのが普通で、規模間格差を是正するために、特に 中小企業を支援するという感じがあったのだけれど、いま規模というのは結果的にそう で、底上げに必死になってやろうとしている所を支援するというほうが必要な感じに見 えるのです。  後でヒアリングの話が出てくるのでしょうが、さっき廣石委員が言われた、一体誰の どういうことを教育訓練しようとしているかというときに、対象もそうだけれども、底 上げ型かボトム型か、さっき言った中間型を必死になっているか。ターゲットをどこに 絞って、どこの部分がいちばん必要性があるのか、社会的にも支援する必要があるのか ということを、4頁や5頁についてもう少し、再集計するなりして、ヒアリング対象の 選定でも考えていくことが大事なのではないかと思います。 ○諏訪座長  いまヒアリング等にも関わる発言がありましたので、今日の3番目のテーマでもある 資料IIIの問題に移ります。ここまでいろいろ我々が視点を変えていくと、随分データ が足りない。これからしっかりと現実を見ていかないと、政策を打ち出そうとしても、 あらぬ方向に弾を打ってしまうのではないかという懸念が委員の皆様の中にかなりある ようです。それを埋めるためにヒアリング調査が非常に重要になります。委員の皆様方 の意見を是非反映していただきたいと思います。まず資料IIIに基づいてご説明をいた だきたいと思います。 ○森川総務課課長補佐  ヒアリングは、来月から2カ月程度の間に2回、場合によっては3回ということもあ り得るかと思いますが、1回3人、1人当たり40分程度で考えております。  大まかに企業、労働者、その他とあります。企業については先ほど来ご議論いただい ておりますが、どういった人材育成のあり方、どういった方にどういうことをするか、 あるいは、それに当たっての問題点を聞いてみてはどうか。併せて既存の施策あるいは 今後必要な施策について意見を聞くことができないだろうかと考えております。  労働者についても、自発的な部分、企業から受ける部分も含めて、その必要性やイン センティブ、受講に当たっての問題点、施策についてのご意見を承れればと思います。  その他ですが、具体的に私どもが考えているのは、先ほど来ご議論のある、キャリア ・コンサルティングを実施している方、実際に教育訓練機関で教育訓練に携わっている 方等です。中身については、是非委員の皆様方からよいご示唆がいただければと思いま す。 ○諏訪座長  中身はまだ詰める余地があるようですので、是非ご示唆をいただければと思います。 先ほど高橋委員は、個人と企業とサービスプロバイダーと言っていましたから、この三 者はヒアリング対象に入れたほうがいいということになりますか。もしお考えがあった らお願いします。 ○高橋委員  社会人教育をやっている所は是非お願いします。どうしたらもっとそういう所に来る ようになるのかという問題意識は、結構そういう所が客観的に持っているかもしれない という気はします。  企業でいうと、いまの玄田委員のお話は非常に示唆があると思いました。私が申し上 げた2・6・2の下の2は、どちらかというとローパフォーマーというイメージなので すが、中小企業の場合でボトムアップとおっしゃるのは、同じ仕事をやっていてローパ フォーマーというよりも、パートタイマーなども含めた職務レベルの低い人。現場のオ ペレーションをやっている人が、スキルが足りなくて現場も回れなくなってしまったと か。これも仮説だからわかりませんが、そういう切実なところもあるような気もするの です。  逆に佐藤委員から、非正規社員の部分も重要だというお話がありました。特に中堅中 小企業ですと、新しいタイプのサービス業がすごく出てきていて、中には主婦やパート タイマー、あるいはフリーターをうまく活用したり、場合によっては教育したりという ところで伸びてきている会社があると思うのです。  私も詳しくはないのですが、いくつか事例でいうと、主婦の使い方がうまいのは、ま ずオリジン東秀です。オリジン弁当というのがあり、主婦の使い方が非常にうまいので す。また、東横インというビジネスホテルでは、主婦を全部店長やジェネラルマネージ ャーに活用しています。  スーパーでも地場の中堅中小のスーパー、例えば私の家の近所、世田谷ではオオゼキ などがありますが、そういう所は大手にない結構ユニークな使い方をしています。さら に、フルキャストはフリーターの使い方がどうだとか。  古いタイプなのだけれど新しい考え方を取り入れている所もあります。たしか岡山の 百貨店・井筒屋だったでしょうか、パートタイマーにも401kを取り入れたというの ですので、サービス業系も、面白い所をいくつか聞いていただくといいのではないかと いう感じがいたします。 ○佐藤委員  企業については中堅、また、パートやアルバイトを活用している所も是非入れていた だいたらと思います。労働者は難しいですが。それと、教育提供側は是非インタビュー したほうがいいと思います。  1についても、大手などではこういうことをお願いすると教育訓練担当の人が出てく るのだけれども、大企業になると、事業部とか職能別、経理なら経理でやっています。 教育訓練の所だと階層別教育だけで、職能別の所はラインになったりするのです。ま た、大企業だと誰に聞くのかが結構難しいだろうと思います。 ○諏訪座長  難しいのはみんな分かっていますから、知恵のある所でこういう所へ行ったらどうで しょう、というのを教えていただけるとありがたいのですが。 ○高橋委員  大企業だったらコーポレート・ユニバーシティーをつくってある所を聞いてみると か、何か新しいことをやっている所を選ぶしかないのではないかと思います。 ○佐藤委員  ヒアリングの目的は何なのか。現状の実態をマクロ的に把握するためだったら、この 程度のものでは駄目なので、いろいろなデータを持ってきてマクロ調査をやるしかない と思うのです。しかし、それはそれとして、アイディア・ジェネレーションというので すか、どういう政策がいちばん効果的かという直感的な仮説を立てるためにやるのだ。 それを定量的に実証していくのだということであるとすれば、他の違ったり、面白いこ とをやったりしている所ばかりを集中的にいくつか回って、ヒントになるものを得たほ うがいいかもしれません。ヒアリングというのは目的を明確にしないと、大変で終わっ てしまったというような感じになるのです。平均的・代表的な所だけをパッと回って も、平均的・代表的なデータが出てくるだけだと思うのです。  例えば、社内にキャリア・アドバイザーを相当数活用している所。NECでは、まだ 少ないのですが、10人ぐらい専任がいて、年間300〜400人のカウンセリングを社内で行 っています。そういう所では、具体的にどういう人が来てどんな悩みが来ているのか、 少なくともそういう話は聞くことができます。 ○玄田委員  企業名を出せと言われると黙るしかないのですが、ターゲットを絞ったほうがいい。 私は3つ。中卒・中退の子を上手に扱っている会社。それは大きくて、社会的には支援 する必要があって、個人の教育がいままでうまくいってなかった所。社会的なセーフテ ィーネットを厚く敷かなければならないところで、企業が本人とうまくタイアップしな がらやっている会社はヒアリングをやらなければいけないだろうと思います。  2番目は、フリーターの人材育成を非常にうまくやっている会社というのをちゃんと 示さないといけない。フリーターイコール単純労働がずっと続くというのは、あまりに もステレオタイプな見方で、うまくやっているコンビニなどはフリーターをちゃんと育 てているので、そういうことは調査したほうがいいと思います。  3番目は、非常に大規模な事業再編をして、年齢構成などがガラッと変わって、急に 中間管理職が非常に重い責任を持たなければいけなくなっている会社というのは、いま 非常に人材育成とか能力開発を、後悔も含めて、非常にトライしていると思うのです。  それはある意味で2007年以降に起こり得ることの先例でもあるのです。前回も出たよ うに、中間管理職がちゃんと伸びていくためには、結局どういうことが必要だったの か。いま何にトライしているのかということ。事業再編との絡みなどは、いま見るべき ヒアリングの対象なのではないかと思います。 ○廣石委員  ヒアリングはどのような形で行うことを予定しているのかを伺いたいのです。1人40 分で1回3人というと、こういった研究会の場に3人なら3人に来ていただいて順番に 話を聞く、そういうことと理解してよろしいでしょうか。 ○妹尾総務課長  そうです。 ○廣石委員  それで本音がわかるでしょうか。 ○山川委員  ときどきこういう研究会で行われるのは、事務局のスタッフが出向いていただくなり して、小さな単位での補足的なヒアリングをやっていただくこと。仕事が増えて大変か もしれませんが、そういうパターンもあるのではないか。そうすれば、数的にも多少増 やせるだろうと思います。  ついでに言わせていただきます。いままでのお話に非常に賛成なのですが、内部市場 の話が多くなるような気がします。外部市場といいますか、労働力を取り扱う際にどう いう能力が評価され、市場において高く評価されるか。例えば職業紹介機関が、民営の もの、公共のもの等ありますが、そういう所に聞いて、能力評価が市場においてどれだ け有効性を発揮しているかということの現場レベルの話を聞かれてもいいのではないか と思います。 ○上西委員  職業紹介の部分は是非入れていただきたいのです。非典型の部分について、例えば渋 谷のヤング・ハローワークのような所で支援をしているわけです。そのときに何が有効 なのかがなかなか我々には見えないので、どういう支援をすればどういう効果が出るの か。  民間の場合でも、転職支援のような形であると思いますので、民間のものも公的なも のも含めてお話を伺えればと思います。 ○諏訪座長  だんだん予定した時間に近づいてまいりました。お気付きの点等がありましたら、事 務局にお伝えいただく、あるいは事務局からも意見を聞いていただきたいと思います。  今日は大変短い時間の中で、さまざまな有益な意見を頂きましたので、これらを踏ま えて、具体的なヒアリングの対象、あるいはやり方等について事務局でお考えいただけ ればと思います。よろしくお願いいたします。では次回以降の日程について説明してく ださい。 ○森川総務課課長補佐  次回の日程ですが、ヒアリング対象を絞って、先方に受けていただけるかどうか等も ありますので、来月後半ぐらいを考えております。また日程調整等をさせていただきま すので、その際にはよろしくお願いいたします。 ○諏訪座長  お忙しい中大変ご無理を申し上げますが、その節はどうぞよろしくお願いいたしま す。本日もお忙しい中をいらしていただき、大変貴重なご意見を寄せてくださってあり がとうございました。以上をもって第2回の研究会を終了いたします。