04/06/28 労働者の健康情報の保護に関する検討会 第3回議事録          第3回 労働者の健康情報の保護に関する検討会          日時 平成16年6月28日(月) 15:00〜          場所 中央合同庁舎第5号館専用第21会議室                    照会先 :厚生労働省労働基準局安全衛生部                          労働衛生課産業保健班                          TEL03−5253−1111                             (内線 5495)                             担当:武末、中野、松井 ○山崎主任  本日はご多忙のところお集まりいただきありがとうございます。それでは「第3回労 働者の健康情報の保護に関する検討会」を開催します。本日は加藤委員、中嶋委員がご 欠席です。それでは座長、よろしくお願いします。 ○保原座長  皆様、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。事務局から資料 の確認と説明をお願いします。 ○山崎主任  第2回の議事録(案)は、各委員に確認をお願いしたものです。近日中にホームペー ジ上に公開します。資料は資料1「論点の整理(案)」と参考資料1から3です。参考 資料1は、「結核予防法(抄)」です。事業者への義務づけ、受診の義務などに該当す る条文です。参考資料2は「産業医の法的位置づけ」、参考資料3は「衛生委員会の法 的位置づけ」に関するものです。  それでは、「論点の整理(案)」について説明します。  これは前回の議論を踏まえて加筆したものです。委員の意見が対立している場合や、 合意しているとは言いにくいような場合は、各委員の意見と記載しています。たとえば 2頁の「収集」のところで、2頁から4頁にかけて各委員の意見を各テーマ毎に整理し ています。  4頁の最後の○、「法定の健康診断において、国が健診項目を定め、また検査値その ものを収集するように運用してきている点をどう考えるべきか」、との論点を載せてい ます。これは前回十分議論できなかったところで、本日ご議論いただきたいところで す。  その上で、「守秘義務」は概ね前回議論が終わっていますので、第5章から検討をお 願いします。  ところで1頁について、個人情報保護法が成立したのでその趣旨に徴して前回の取り まとめなどについて検討を行う、これが今回の検討会の趣旨です。したがって、できる だけ個人情報保護法の文言解釈に近づけた整理をしていくのがよろしいかなと考えまし た。そこで、「目的」について「できる限り特定」の文言解釈として、使用目的のみな らず、事業者内の誰がどういう権限を持って何をするのか、こうした点が特定されては じめて、「できる限り」の文言解釈に忠実であるという整理をしたわけです。  しかし、わかりにくいというご意見があれば、目的については、いわゆる狭義の意味 での使用目的にして、誰が如何なる権限でもってなどという点は、別の章に整理しては どうかと考えています。いずれにしても、これは整理学の問題で、1ページの内容自体 は前回合意されていますので、その内容を変更するとの趣旨ではありません。  9頁の第11章で、「特に配慮が必要な健康情報の取扱いの留意点」についてですが、 例えばメンタルヘルスについて、これは過重労働、メンタルヘルスの検討会であるべき 対応については別途行っているところで、ここでの「留意点」とは、メンタルヘルスに 係る情報が事業者によって取り扱われるに際して、プライバシー保護の観点から特にど ういった配慮が求められるのか。他の健康情報よりも、さらに注意が必要とすれば如何 なる点であって、そのためにこそどういう取扱いが求められるのか。この辺りについて ご議論をいただきたいと思います。  「中間取りまとめ」を各机のファイルに入れてあります。22頁から23頁に前回の考え 方がまとめられています。これなども議論に供していただきたいと思います。こうした ものに加えて、さらにメンタルヘルスについて外の情報以上に取り扱いに注意を要すべ き理由があれば、どういうところにあるのかということも突っ込んで議論していただき たいと考えています。  小規模作業場への対応については、同報告の22頁に記載があります。「論点の整理」 の8頁の第10章、「ルールに盛り込むべき事項」とありますが、情報保護の観点から利 用のあり方について、そのルールとして盛り込むべき事項ということです。得た情報を どのように用いて、例えばメンタルヘルスを進めていくのかといったルールを意味して いるのではなくて、使われる際に健康情報の保護の観点からどうした点に留意すべきな のですか、という観点からのルールという意味です。以上です。 ○保原座長  それでは早速検討に入りたいと思います。ただいま事務局からご説明がありましたよ うに、前回の議論を踏まえて、再度論点の整理をしていただきたいと思います。前回は 大体4までやりましたと思いますので、今日は5頁の「情報の管理・利用体制」から検 討したいと思います。4頁の最後の○に戻っていただきまして、私はここの所は十分議 論していなかったような気がしますので、恐縮ですが、事務局で最後の○についてご説 明をお願いします。 ○山崎主任  健康診断の受診の義務については、事業者に健康診断を義務づけている。このこと自 身について争いはなかったと思います。他方、労働者に対する受診の義務についてどう 考えるのかを前回議論していただき賛否両論ありました。  ここにある論点は、健康診断を事業者が実施する際に、法が一律に健診項目まであら かじめ定めている。このことをどう考えるのか、ということも検討しておきたいという ことです。場合によっては、必要な健康診断をするという包括的な条文があって、必要 な対応というのは、事業者と労働者の合意に委ねられるとの整理もあるのではないかと いうことです。  2つ目は、「また」以降、検査値そのものを収集するように運用してきている。法文 上は、例えば、「健康診断の結果」を記録しておくとされています。「健康診断の結果 」とは、健康診断をした後の結果ですから、検査値に基づく判断を指すとも読めます し、あるいは検査値そのものとも読めるかもしれません。この点これまでは検査値その ものの収集なり保存なりが必要との運用をしてきています。しかし、義務付けるのは検 査の結果に基づく判断結果を事業者が収集するということだけで十分ではないかとも考 えられるので、この点ここを検討いただきたいということです。 ○保原座長  いまご説明がありましたとおりですが、健診のデータそのものを雇い主が収集するか という問題については、前の中間報告で産業医の手元に集めるという方法もあるという ような書き方だったと思います。これに対して国が健診項目を定める必要があるのかど うかというのは、新たな議論、前の検討会ではなかった議論ですが、重要な論点だと思 いますので、この2つの問題についてご意見がありましたらお願いします。  特に後者で、国が健診項目を定める必要があるか。1つの考え方としては、国がしっ かり健診項目を決めて健康診断をやらせないとだんだんルーズになってきてしまうとい う考え方と、反対に国がそこまで手を出さなくてもいいのではないか。例えば、「事業 者は労働者の健康診断をしなければならない」という書き方だけにしたほうがむしろい いのかという議論だと思います。 ○堀江委員  私もこれは初めて議論するような気がします。大変大きなテーマではないかと思いま す。たぶんこの議論をすると、健康情報の取り扱いの観点だけでなく、さまざまな周辺 への影響も考察しなければならないかと思います。しかし、個人情報の取り扱いという 観点から見れば、それでは国が義務づけている目的は何か、ということがいちばん肝要 だと思います。  前回の議論では、目的はいくつか挙がっていたと思います。1つには労使関係で解決 できない第三者の安全、あるいは公衆衛生の観点から、労働者の健康情報を収集するこ とを義務づけるという観点もあったと思います。国が健診項目を義務づけることの意義 はあるように感じますが、単なる労働者の健康保持、増進のためだけであれば労使関係 での契約に基づく健康診断項目の選択という考え方はあってもいいのではないかと考え ます。ただ、周辺への影響は少し考えていかないと、大きな問題ですので慎重にやらな ければいけないと思います。咄嗟に言われましたので、目的が大事だという論点だけ申 し上げました。 ○保原座長  いままでこれはあまり議論していなかったのです。 ○井上委員  やはり、健診項目を国で定めていただかなければ、企業間によって格差が生じてくる のではないか。特に、業績などが良い企業は検査項目をきちんとやるだろうし、任意と か、そういったことでやりますと、中小とか、あるいは理解のない所は検査が十分なさ れなかったり、そういった格差が出てくるのはまずいと思います。ですから、いまのよ うに定期健康診断において、標準の項目を設けて実施する方が良いと思います。 ○保原座長  その他ご意見はございますか。 ○柚木委員  毎年、厚生労働省が「労働衛生のしおり」などで統計を出していますが、統計を取る 意味でも健康診断の項目を規定されていたほうが取りやすいと思いますので、義務づけ たほうがいいと思います。 ○保原座長  義務づけるべきだというお考えですね。 ○松本委員  繰り返しになりますが、やはり目的との関係だと思います。国として統計データを取 るためということであれば、義務づけたほうがいいだろうというのはもちろんだと思い ますが、労働者の権利という観点、労働者が自分の健康を維持するために事業者のコス トで一定の検査をしてもらって、その情報を自分が返してもらうという権利なのだとい う観点からいけば、国で義務づけるよりはむしろ労使関係の問題としても考えられると 思います。他方、この法律は労働者の義務に構造上なっていますから、そこが義務であ れば国が義務づけることも今度は出てくるかもしれません。これが誰のための制度なの か、国がデータを集めるための制度なのか、労働者のための制度なのか、事業者のため の制度なのかによって変わってくると思います。おそらくどの側面も少しずつ入ってい ますので、議論はそれほど簡単にいかないと承知していますが、そういう意味で、なか なか一律には言いにくいという気がします。 ○保原座長  いま松本委員がおっしゃったように、健康診断は何のためにするのかという議論はあ りますが、私の理解では労働者の健康の維持確保および結核等、職場における伝染性疾 患の防止、予防と言いますか、これが基本的な目的ではないかと思われます。それ以外 に派生的にはいろいろな効果等があると思いますが、ご異論がなければ、大体それに絞 って、それを前提に議論をしていただきたいと思います。 ○中桐委員  これまで経験していることで申し上げますと、例えば雇入れ時の健康診断というのが ありますが、その際に議論としてメンタルヘルスの関連で、問診なりで、うつ病などの 罹患歴を調べて、それによってその後の措置を考えるといいますか、事業主はできるだ けそういう方々を排除したいというか、そういう危険性があるという指摘もあると思い ます。本来、健康診断自体は、その結果で有所見者の場合、事後措置を事業主に取ると いう中で、業務との因果関係というか、それを立証できるという形で項目は作ってある と理解しています。  しかしながら、これまでに起こっているもう1つの問題は、自発的な健康診断制度が あります。これは女子の深夜勤の解禁に当たって、それに伴う附帯決議の中で健康診断 をするべきだということで始めたわけです。その際に、実は我々もその検討会の中に入 りまして、女性労働者が懸念しているような診断項目、例えば乳がん等をいくつか並べ ました。先ほど言った因果関係の中で、そういうものは学会でも証明されていないので 駄目だということで、20数項目出したのですが、結果的には現在の一般健康診断と同じ 項目だけになりました。その結果と言ったら言い過ぎかもしれませんが、受診率は大変 低いものになっており、現在でもそんなに高くない。一部の業界にお願いして一生懸命 やってもらっているというのが実態ではないかと思います。折角、作った制度でありな がら、あまりそこに固執しますと、女性で深夜勤に就いている方で、自分の健康が不安 の中で、乳がんやそういったものを気にされるのですが、実際にはそういう項目は入っ ていないので、現実に同じ健康診断項目を年に3回もしなければいけないという、自発 的に行けばそういうことになります。今後どうしていくかということで、プライバシー の問題ですが、健診項目だけで考えていけば、その辺に何らかの区分があってもいいの ではないか。折角、一般健康診断もありますし、有害の関係、深夜勤もありますので、 それぞれの役割があるわけですから、項目についてきちんと国が定めるべきだと思いま す。これまでの選定の仕方について知恵というか、少し差があってもいいのではない か。その際にメンタルヘルスは大変慎重に扱わなければいけないし、そういう項目はな いほうがいいのではないかと思います。女性の深夜勤の場合には、乳がんといったよう なものも、もう少しフレキシブルに使ったほうが利用者は増える。その結果について、 運用上で事業者責任はとれないわけですから問わないとか、何かそういったものがある のではないかと思います。少し話が逸れるかもしれませんが、検討項目が挙がっている 中にはそういう背景があるのではないかと思います。 ○保原座長  確認ですが、中桐委員のご意見は健康診断項目を国が決めて、もう少し増やしたほう がいいというご意見ですか。 ○中桐委員  そうです。 ○藤村委員  労働者の健康を守るという視点から見ますと、将来にわたって要介護者を何パーセン ト減らすとか、脳血管疾患をどのぐらい減らそうとか、そういう戦略が出ています。そ の戦略と労働者の健診義務が矛盾するようでは困ると思うのです。健診を受けるのを義 務づけることは、大局には自己責任でやれということか、事業所の管理下で行うのか、 そのどちらかの選択だと思うのです。与党の健康フロンティア戦略に矛盾しないように するためには、やはり義務づけは必要ではないかと思います。  過重労働による労働者の過労死はほとんどが脳血管疾患、心疾患なのです。そうしま すと、健康診断は従来の項目でかなりチェックできるわけです。  産業医が過労死の恐れがある労働者、あるいは健康を害する恐れがある労働者を把握 したときに、どういう働きかけをするか。つまり個人にのみ働きかけるのか、事業主に 働きかけて少し休ませなさいよとか、あるいは病院に行かせなさいと言うことまででき るのかどうか。そうすると、守秘義務の幅が広くなってきて非常に難しい問題があると 思うのです。  要するに国民の健康寿命をなるべく長くさせようという、国の戦略は正しいものだ と。そう考えたならば、もっと柔軟に労働者の健康を守るという観点で議論していった ほうがいいと思います。 ○保原座長  結論としては、項目は差し当たり国が定める。 ○藤村委員  そうです。義務化もすると。それは自己責任、自己管理に任せておいては決して十分 ではない。なぜならば、国の健康戦略に矛盾するからです。 ○保原座長  釈迦に説法で恐縮ですが、産業医の仕事の中に有所見者が見つかって、どうもいまの 仕事はまずいという場合には、産業医は積極的に雇い主に言うことができる、という勧 告権が平成8年の法律改正で、いままで施行規則にあったのが法律事項になりました。 そういう訳で、産業医の先生にはむしろ積極的に、健診項目かどうか別にしてやってい ただきたいと思います。 ○藤村委員  守秘義務と絡んでいきます。要するに、情報を共有する範囲が広がりますよというこ とを危惧したのです。 ○柚木委員  先ほどの義務づけしたほうが良いことの追加意見ですが、統計もさることながら、血 液検査の項目1つにしても、毎年変わっていけば、健康診断を受けた個々の経時変化も わからないし、また事業主間で労使が勝手に決め合ったことであれば、その比較にもな ってこないと思うのです。やはり最低の項目は決められたほうがいいと思います。 ○保原座長  そのほか国が健診項目を定めることについてご意見はございますか。いままで出たご 意見の大半は、従来どおり国が健診項目を決めておいたほうがいい、ということだと私 は理解しましたが、違うというご意見の方はいらっしゃいますか。若干のニュアンスは ありますが。 ○堀江委員  私は労働安全衛生法に基づく健診における労働者の健康の確保ということの意味は、 あくまでも業務遂行上の健康影響がないようにということで、使用者が費用を支払って 実施しているものだと理解しています。そこは同じような結果になるかもしれません が、もちろん健康影響がないようにしていれば、将来も要介護にならないということ で、結果は同じかもしれません。やはり、仕事に即した健診項目でなければならない、 というのが本質ではないかと思います。  そう考えたときに、働いている人全員に共通の項目があれば、それは国として強制し てもいいのではないかと思います。そうでなければ、本来、事業場の特殊性に応じて変 わるべきではないかと思います。国が規定するということも、現在は50万円以下の罰金 という罰則規定を設けた強制の仕方ですが、必ずしもそういう形ではなくて、例えば専 門職がおられないような事業場もたくさんあると思いますので、このような業種で、こ ういう仕事があれば、こんな項目がいいのではないかというガイドラインを示すとか、 かえってそういうほうが本来の業務遂行上の健康影響を防止するには役立つのではない かと思います。 ○鳥井委員  前回欠席したので、議論がしっかり見えていないかもしれません。先ほどからの議論 を聞いていて、国が国民の健康を守るという概念と、国が労働者の健康を守るという概 念では随分差がある気がします。国が国民の健康を守るということで、国が国民に対し て一人ひとり項目を付けて受診義務を課すのかといったら、そんなことはないわけで す。  そうしますと、労働者の健康を守るということで、国が受診項目まで決めて義務づけ てまでやらなければならない理由はどこにあるのか。それは業務上、健康影響が起こら ないようにすることがたぶん基本的なところになると思うのです。そうしますと、これ はかなり個別性の高い世界の話ではないかという気がします。そういう意味では、ガイ ドラインという考え方はかなり受け入れやすい話という感じがします。義務づけても受 けない人は受けないわけですから。 ○保原座長  ガイドラインというのはどういうものですか。 ○鳥井委員  こういう職種だったら、こういう項目はやったほうがいいですよという、ガイドライ ンみたいなものを考える必要があると思います。 ○保原座長  そうしますと、国は規則等では書かないということですか。 ○鳥井委員  そう思います。そのほうが現代的だと。人々が自分の責任のもとで生活をしていくの だという、これが正しい方向かどうかよくわかりませんが、少なくともそういう方向で 社会は動いているわけで、それに適しているかなという気がします。 ○井上委員  会社の環境の特殊性というのは、いまでも特殊健康診断等があって、そこである程度 有害業務等で対応しているわけです。今回の問題は過重労働対策であり、特に国が認定 基準ということで、目安として時間外労働などを定めました。対象のほとんどが成人病 関連疾病ですので、今の健康診断検査項目はそれが主体になっており、それでよろしい のではないかと思います。やはり国でいまの項目ぐらいは定めていただいて、特殊性と いうのは特殊健康診断があるわけですから、そこでできるのではないかと思いますがい かがですか。 ○保原座長  プラスアルファで考えればということですか。 ○井上委員  プラスアルファというのは、いまの現行法です。 ○保原座長  現行法で、一般健康診断と特殊健康診断とあるわけですね。 ○井上委員  対応できるというふうに私は思います。プライバシーの問題は別にして、健康診断そ のものの目的というのはそうですから、もしプライバシーのところがあれば、そこで制 限すれば良いと思いますが。 ○鳥井委員  先ほど座長が、2つ目的があるとおっしゃいましたが、職場での伝染を防ぐという、 こういうことが望まれる疾患というのは、かなりたくさんあり、いまでも考え得るので すか。 ○保原座長  そこは二重になっていて、安衛法でやった場合は、改めて結核予防法の検診はやらな くていいことになっているのですね。  大体、いま伝染性疾患というのは結核ぐらいで、結核はほとんどなくなったと思いま したら、最近はどうもそうでもないということです。  国が健診項目を定めるかということで、いまご議論いただきましたが、大方は従来ど おり、健診項目を定めておいたほうがいい。しかし、そうでなくて、もう少し作業の種 類とか、そういうものに応じてもっと弾力的に考えたほうがいいのではないか、という ご意見もあったということで、大体よろしいですか。  次の頁で、5の「情報の管理・利用体制」、「開示」、「第三者提供」、その辺につ いて何かご議論がありましたらお願いします。 ○中桐委員  現在の討議項目に目を通しまして、ほぼこういうことでいいのではないかと思いま す。他の所に入っているのかわかりませんが、「情報の管理・利用体制」の中に「保管 」の概念はどこに入っているのかという気がします。例えば何年保管するというような 議論も少ししたと思いますが、「保管」をここで扱うのかお聞きしたいのですが。 ○山崎主任  保管といいますか、おそらく中桐委員がおっしゃっているのは、情報が化体した物と いいますか、情報をどういう形で、いわば金庫に入れておくのかという意味での保管で すよね。 ○中桐委員  何年とか。 ○山崎主任  紙等に化体されるのは別として、情報そのものは無形のものなので、いかに情報が広 がるのを管理していくか。ここが情報保護の大きな論点になると思うのです。そのため にこそルールが必要になるというのは、中間とりまとめの考え方ではなかったかと思い ます。  そうした意味で、第5章の「情報の管理・利用体制」ですが、組織内で、誰がどうい う権限を用いて何をするのか。ここをルールとして押さえておく必要があるということ です。  その中の1つの内容として、どのように保存しておくのかという点があります。情報 の流れを広く管理していくということからすれば、1つの要素になりますが、大きな論 点としては、いかに情報の流れを管理していくかということだと思います。  年限の話がありましたが、安衛法では健康管理という趣旨、目的のために何年間保存 しておくべきとの規定はあります。しかし、個人情報保護の観点からどのように本人の 意思が反映されるべきかという規定ではありません。  安衛法の66条5項で義務的に収集されるものについては、始まりが義務的ですから、 またその終わりについても本人の意思が反映されるという必要はないとも思われます。 他方、任意に収集される場合、そうした情報の始まりに本人の同意が必要であるなら ば、終わりの段階でも本人の意思が反映されてしかるべきという論点はあるでしょう。 これはこの前議論したところです。  そこで8頁に前回の議論を踏まえ、「収集の際の同意、廃棄等に関すること。停止や 廃棄に関して、いつでも労働者がこれを求めることができるとか、一定期間経過すれば 事業者は当然廃棄するとか複数の方法が考えられるが、あらかじめ労働者との間で具体 的な対応を取り決めておく必要があるのではないか」と記しています。 ○保原座長  初歩的な質問ですが、健康診断の資料というのは、何年間保存義務があるのですか。 ○山崎主任  それは一般的に5年という保存義務があります。 ○保原座長  それは何の法律で決まっているのですか。 ○山崎主任  安衛法で決まっています。 ○保原座長  健康診断個人票は5年、そうすると、5年は取っておかなければいけない。しかし、 それ以上取っておいても雇い主が法律に反するわけではないということですね。最低、 5年間は取っておかなければいけないということですね。例えば何年経ったら廃棄しろ とか、というようなご意見はありますか。あるいは法定健康診断結果について、5年を 過ぎたときに、ある労働者が「自分の分は廃棄してくれ」と言えるのか。 ○堀江委員  現実的な問題ですが、個人健康管理記録票は、毎年同じ頁に書いたりする部分があり ます。5年前のだけ廃棄しろとなると、頁の一部を切り取るような話になりますから、 なかなか実態としては難しいと思います。  いま5年というのは、一般健診と多くの特殊健診ですが、特別管理物質に関しては30 年、電離則関係も30年、じん肺法関係が7年ということで違っています。もし、保存期 間を過ぎたら全部廃棄ということになると、かなり煩雑な事務作業が発生するのかな と。これは本質論ではありませんが。実態としてはかなり丸めて、長く保存している所 が多いのではないかという気がします。 ○保原座長  企業の場合は実際はどうやっているのですか。定年までですか。 ○堀江委員  私が経験した個人的な例では、計算できないので、本人が生年月日から90歳になった ら捨てるみたいなルールは作っていましたが。要するに定年退職してから30年は経過し ているということで、もう絶対に大丈夫という年齢で捨てていました。これは1つの例 です。 ○保原座長  超一流企業ではそういうことはやれるでしょう。 ○井上委員  特に健康管理が行き届いている企業ほど、入社から定年までデータを保存している所 も多いようです。ですから、廃棄とかの場合、逆にどうなのでしょうか。プライバシー 保護に観点からは廃棄できればそれでよろしいのでしょうが、きめ細かい健康管理をし ているところほど、データをすべて保存し活用しているケースは多いと思います。 ○保原座長  ありがとうございました。 ○荒井委員  保管する場所が、紙ベースでやっているとなくなってくるという実態がありまして、 年限がある程度ないと、従業員が多い所では莫大なスペースが必要になってきます。こ れは電子化されればまた別ですが、紙ベースの場合はどこに、それこそセンシティブな 情報なものですから、倉庫に入れておくというわけにはいきませんので、非常にコスト もかかりますし、その辺の所はどんなふうに個人に還元していくのかということも含め て、検討していかなければならない。  義務化されたものであっても、個人の情報であることは間違いないのです。病院でも 実際出せる情報については、相当出していくようにいましているところなので、廃棄と いうよりは個人に返すというやり方もあるのではないかと思います。ただ、これを一律 にやるのは大変難しいのですが、1つの考え方としてはあると思います。  自分の健康の情報の推移を退社した後に持っていなくなってしまうわけで、そうする と、折角コストをかけてためたデータを会社が廃棄してしまうとなくなってしまう。本 人はデータとして持っていれば、退社後もデータを利用できるというメリットもあると 考えています。 ○保原座長  堀江委員が勤務されていた企業は、退社した人はその資料を利用できるのですか。例 えば定年退職して5年経ったのち。 ○堀江委員  私が経験したある事業場の例としてはいろいろな有害物質も取り扱っている経緯もあ り、なるべく長く作業環境測定結果、個人のレントゲンフィルム、あるいは書類等を保 存して、本人が退職後、会社に直接来られれば、また改めてそこで「OB健診」という 名前で、健康診断をしてあげるようなサービスまでやっておりました。また、電話等で の問い合わせがあれば、必要に応じて資料をご提供するということもやっておりまし た。実際には会社側からもそういった求めがあって使っていたケースもありまして、こ の辺が実を言うと個人情報としてどうかという問題が生じてくる点だと思います。 ○松本委員  先ほどの議論とオーバーラップすると思いますが、何のための制度かというところが 1つではなくて、いくつか混在しているのではないか。現在働いている労働者の現在の 健康をきちんと把握していないと、生活習慣病等で突然死が起こったりするかもしれな いから、生活習慣病的なデータを把握している必要があるのだと。それが退職後もずっ と必要かというと、個人にとってはあったほうがいいが、会社にとってはおそらく必要 はなくなると思うのです。特殊なじん肺とかですと、責任問題があるから残さなければ ならないが、「血圧がいくら」というのはいらないと。しかし、多くの企業はそういう サービスもして、データも残して返していたりするのだとすると、そこは一般的な労働 者の福利厚生事業的な、つまり個人として普通の開業医さんや病院で健康データを取っ てもらって、アドバイスを受けてもいいのですが、雇用関係の中のサービスの一環とし てそういうこともやっているのだ、という側面も入ってきているのではないか。生活習 慣病の側面になると、おそらく事業者の責任と被用者の責任が分けられないので、法律 上の健康診断の中でやるほうが簡単でいいから、検査項目も義務化して、国民の健康維 持、一般の話とほとんど一致するような部分を、労働関係ということで義務化してやる と、そういう説明はできると思います。後々まで残しておくという部分は、おそらく説 明し切れなくなりますから、そこは別途労使間の合意等をベースにして、エキストラの サービスとし、その分きちんと管理等についての取り決めを行うとか、そういうことを もう1つ別にかぶせたほうがいいのではないかという気がします。 ○保原座長  管理は難しいですね。つまり、法律で最低の年限が決まっていると。しかし、きちん とした企業ではそれ以上保存して、退職後も利用しているとなると、管理の中に「保存 」をどういうふうに位置づけるか。この検討会で結論を出すのは難しいと思います。そ ういう問題があるということで、例えば健康診断なら5年、という最低の年限を超えた 資料の保管をどうするのか、という問題がありますということを確認させるのにとどめ るということで、事務局で少し議論の整理をしていただきたいと思います。長ければ長 いほどいいかという問題もあると思います。その他「情報の管理・医療体制」、「開示 」、「第三者提供」で何かありましたらお願いします。 ○鳥井委員  社会の雇用慣行というのは、随分大きく変わってきて流動化が進んできているわけで す。流動化にはちゃんと対応できているのでしょうか。例えば「第三者提供」の場合 も、労働者のほうが移動して、前の会社にデータがあるというときに、次の会社が開示 を要求できるのか。それとも本人を通してしかできないのか、というところはどうなの ですか。 ○山崎主任  それは前回の中間とりまとめに大よそのことが書いてあるとおり、基本的には本人の 意思だと思います。本人を経由するのが原則で、当然のようにAからBという異なる主 体間で情報が行き交う、ということは排除されるべきという姿勢であったと思います。  問題になったのは、1回目の検討会で派遣労働者の話がありました。派遣労働者は、 安衛法の「労働者」の中に派遣労働者も含まれるという解釈です。そこで、派遣労働者 の健康情報がどのように管理されるべきかという問題がある、というご指摘が堀江委員 からあったと思います。この点、派遣元と派遣先の間に、当然のようにデータが行き交 うのは保護法の解釈上やはり問題があるのではないかと考えられます。この場合も双方 の契約の中で、きちんとその取扱いについて押さえた上で、情報提供側から提供先に対 して管理、監督なされるべきという個人情報保護法の原則が適用されるべきなのではな いかと考えます。 ○堀江委員  派遣ではなく、会社の従業員が移りました。個人を通して次の会社へ情報が移るべき だと考えますと、その個人が嫌だと言ったとします。同意しないと。 ○保原座長  前の健康情報は秘匿しておきたいと。 ○堀江委員  そういうことです。嫌だと言った場合、新しい雇用主は義務違反にはならないのです か。 ○山崎主任  それは、まさに個別具体的にどう判断するかという問題です。AからBに本人が移っ た場合、データは自分で秘匿しておきたいという意思が尊重されるべきであるというの は、おそらく個人情報保護法の意図するところだと思います。これより先にとりまとめ られた中間とりまとめでも、本人の意思が前提となっています。そこで本人が秘匿した ことが原因で、たまたま移った先の事業者が十分な健康管理を営めなかった、遂行でき なかったということで本人に不利益が出てきたら、これはどうしても防ぎようがなかっ たのかどうか個別の判断にならざるを得ないと思います。 ○労働衛生課長  いずれにしても、雇入れ時の健康診断は、当然必要になります。そこで基本的な情報 については入手できると思います。 ○保原座長  労働者は、過去の自分の健康情報を新しい雇い主に開示する義務はないわけですか ら、いま事務局から説明がありましたように、「前の健康診断の書類を持ってこい」と 言われたときに、「嫌だ」と言えると。ただ、労務管理の上で、本当はその人の健康状 態を前から引き続き詳しく知っていれば、防げたであろう病気などが起こったとして も、それは労働者の責任ですよと。労働契約上は、やはりそういうことになると思いま す。 ○堀江委員  5、6、7が適当かどうかわかりませんが、前回の委員会から引き続き課題になって いる点で、産業医も、衛生管理者もいないのにどうやって保存するのかといった大きな 問題があります。  たまたまある本を見ていたら、ドイツでは本の書き方によると、事業所の中にデータ を保存する責任者を専任させて、その人が公的な機関とも連携をとりながら、データの 保存を事業主から独立して遂行しているという制度があるようです。例えば考え方とし て、保存の義務とか、管理の義務になりますが、事業所の中にデータがあるときに、適 切なデータの保存ができるような、もっとも望ましい人を事業場で選任していただく。  鳥井委員からもご指摘のあったような場合には、事業者が直接本人に対して開示して いいかどうかの問合せをすると、労使間で強制されるようなケースもあり得ますので、 例えば事業者とは独立のデータ保存責任者が本人と相談して、開示するかどうかの手続 をするというのは1つの考え方ではないかと思いまして、ご紹介しようかなと思いまし た。 ○保原座長  ドイツの場合、雇い主の意思に反しても、その保存義務者はデータを動かせるのです か。管理だけでなくて開示の場合です。 ○堀江委員  本人は承諾しているけれど、事業主は承諾していないというケースですか。 ○保原座長  例えばよそへ移った人がですね。 ○堀江委員  そこのところは私は不勉強で、本では確認できていませんのでわかりません。 ○松本委員  おそらく、いま堀江委員の言われたのは、ヨーロッパでEUの個人情報保護指令とい うのがあって、各国はその指令を国内法化しなければならないという、その中で個人情 報を保護するための仕組みを各国でどう具体化するか、その1つのドイツバージョンだ ったと思います。その指令の内容を国内法化するのに、幾つかチョイスがあったと思い ます。その1つが一定の資格のあるものを個人情報保護の管理責任者に任命して責任を 負わせるという流れの中での話だったのではないかと思いますので、こういう健康情報 という特殊な情報についての専門家が、雇用主とは離れた立場で何か言えるという話で はないのではないか。もし健康情報固有の問題であるとすれば、何となく産業医のよう な立場の人が企業から独立してということで、わかりやすいのですが、そうでなくて責 任者を決めて責任を持って管理させろという話だとすると、事業者の中できちんと一定 の訓練を受けて、一定の研修も受けた人にやらせなさいというぐらいではないかという 気がします。その辺、もう少しお調べいただければと思います。 ○保原座長  ありがとうございました。 ○堀江委員  追加ですが、ご承知のようにドイツでは健康診断の義務づけはありませんが、実際に はやっている企業もあると思います。松本委員がご指摘のように、私も産業医と医療職 がいれば当然、健康情報は医療職が判断して保管し、あるいは場合によっては本人の承 諾がなくても使用すべきときは、きちんと使用する判断までしていかなければいけない と思っています。  ただ、どうしても医療職のいない事例の場合に、どうするかという議論が残るもので すから、その場合の救済策として適当でないかもしれませんが、それでも事業者以外に 1人、独立の立場で責任者を置くという考え方も付加すれば、いかがなものかという考 えでご紹介した次第です。 ○保原座長  いいアイテアをありがとうございました。そのほか5、6、7について何かございま せんか。 ○堀江委員  もう1点、別の議論ですが、6番の開示のところで、特殊健康診断の結果の通知の義 務づけという点があり、私もこれは必要ではないかと思っている立場です。実は健康に 影響を与える情報としては、これ以外にも作業環境測定の結果とか、あるいは最近です と安全衛生マネジメントシステムの中で、事業場に存在することがわかっているハザー ドなどがあります。それを基に評価したリスクの大きさは、マネジメントシステムの中 でも労働者の参加により協議して、どのように制御していくかを決めるようになってい ます。  ただ、実際の法体系としては、ハザードの存在やリスクの大きさ、あるいはそのリス クアセスメントを定常的にやっている、1つの方法である作業環境測定の結果は、現 在、労働者側が教えてもらう権利は、法文上は構造として入っていません。これが開示 というところに当てはまるのかどうかわかりませんが、一緒に考えておく必要がある点 ではないかと思います。 ○保原座長  そのほか、ございませんか。議論があったらまた戻ることにして、次に8の「法律に よる対応」、9の「取扱いのルールの策定と事前の労働者の同意」、10の「ルールに盛 り込むべき事項」について議論したいと思います。どこからでも結構ですので、ご発言 をお願いします。「法律による対応」の1番目は当然のことで、データの数が5,000を超 えない事業場というのはたくさんあるわけですから、それについて労働衛生の分野で手 当をしなければいけないのは確かだと思います。7頁からお願いします。 ○中桐委員  事務局に質問ですが、9番の最初の○で、「事業者と労働者の合意に委ねるほかない と考えられる場合もあり」とあり、「合意に委ねる」というのは何か個別紛争処理みた いな感じで、勝手にやってくれということなのかどうなのかが1点です。その次の○ で、「産業医等や衛生管理者等」とありますが、この「等」が50人未満ですと登録産業 医になるでしょうし、衛生管理者も、50人未満ですと推進者で10人以上ぐらいまでカバ ーできるのでしょうが、そういう意味が込められているという理解でいいのかどうか。 そういった「参画のもと、ルール化をする必要がある」ということですが、これも先ほ どのルール化プラス、運用とか管理とかも議論することになるのだと思います。  その次の○で、「国は事業者がルールを策定するに当たって依拠すべき指針を示す」 とあるのですが、「指針」では少し弱いのではないかと思います。例えば違反をしても 特に罰せられることはない、罰金もないということなのかどうか。とりあえずそのあた りまで気になるものですから、お答えいただければと思います。 ○山崎主任  合意という言葉の問題については、またご相談したいと思います。趣旨は、組織は千 差万別で、どんな権限を持っている人が、その情報を用いて何をするのか最初に私がご 説明しましたが、その辺の特定は国が一律に示すことはなかなか難しいと思われます。 そこで事業者ごとに労働者との間できちっと同意し、ルール化しておくのがいいのでは ないかという意味です。  「等」について、前回の中間取りまとめで産業医等や衛生管理者等というのが決まり ごとのように出ています。前回の議事録によりますと前者のほうの「等」は、50人未満 でも産業医に代わるような医師がやっている場合があります。後のほうの「等」は、た とえば衛生推進者です。  「指針」という表現ですが、法形式が何がいいのかはいろいろ見解があると思いま す。ただ、強制力との問題とか、先ほど述べたように組織も千差万別で一律に難しいこ とについて、どこまで強制的に書くのが適当か。そもそもことの発端は個人情報保護法 のスタートで、個人情報保護法も指針という形で、それぞれの事業者の適切な措置に対 して国が指針を示すという整理にしています。だからそのアナロジーで指針としまし た。  もちろん、いろいろなご意見があることは排除するものではありませんが、個人情報 保護法が一連の議論を経てその整理になったということは、それなりの合理性のある結 論だったと思いますし、このことは特段、労働衛生の分野だから別途の整理があると考 えにくかったものですから、一応こうしました。 ○保原座長  9と10というのは、どういう関係ですか。 ○山崎主任  9と10の関係は、ルールを策定してもらい、具体的にそのルールに盛り込むべき事項 として何がありますかということです。事業者が策定するルールに、どういったことを 盛り込んでもらっておく必要があるかです。 ○保原座長  10というのは9の中身ですね。 ○山崎主任  そうです。 ○松本委員  8と9の関係になりますが、8の部分は法律で手当すべきではないかということで、 これは法律の中に既に守秘義務の規定があるわけですし、それをもう少し対象者を広げ ようかというのが前のほうにも出ていましたから、そういう形での法律の対応で、違反 の場合には一定の罰則です。それでないところで、例えばどれぐらい保存するかといっ た部分については、労使で話し合ってルール化してくださいという切り分けになります か。つまり法律事項としてどの程度具体的なことを盛り込んで、この法律の改正とする べきなのか。それは罰則等で担保すべきことに限られるのではないか。若干、訓示規定 のような努力義務も入るかもしれませんが、それ以外の部分は現場の労使のルール化に 任せて、それを一定のガイドライン等で後押しするイメージでしょうか。 ○山崎主任  大体、そのようなことですが、法律に明文上の規定をするものと、国が指針に謳うこ とを法律上の明文規定として置いておき、その指針の中に具体的なものを盛り込む形を 大体イメージしています。そのときに法律に明文規定を謳う中にも罰則をもって臨むも のと、罰則をもって臨むまでもない規範というのも当然あっていいわけです。したがっ て整理しますと、法律の明文上、是非とも書いておくべきものにも守秘義務のように罰 則を設けて臨むものと、そうでない場合もあるだろうと思っていますし、国が指針を謳 うとして包括的な規定を置いて、その指針の中に労使間の合意に委ねるものを細かく規 定するといったイメージです。 ○保原座長  10と11は中身を見ますと、労使で合意すべき事項と、国が指針と設定すべき事項と、 その中間的なものと、3つぐらいになっているような感じです。そういう理解でいいで しょうか。 ○山崎主任  聞き漏らしましたが、法律による対応で例えば守秘義務もそうですし、予め特定され た目的以外の使用は、認められないということも法律事項としてあり得ると思います。 国は事業者が定めるところの指針を示す、というのも法律事項としてあり得る。その指 針の中身が何かというと、10という意味です。 ○保原座長  9の1つ目の○は、結局、労使で事前に協議して合意すべき事項があるのだという書 き方ですが、3つ目の○では、国が指針を示す事項があるのだという書き方です。 ○山崎主任  事業者が労働者との間で、こういう権限を持った方が何をするかを具体的に規定す る。そして、どういう権限を持った方が何をするということは、ルールの中で決めてお きなさいというのが指針の具体的内容だということです。そして、そうした指針を国が 謳いますということを法律に書いておけばいいという意味です。この構造は個人情報保 護法も、大体そういう構造をとっています。 ○保原座長  事務局ばかりに聞いて恐縮ですが、1つ目の○の事業者と労働者の合意というのは、 どういう形を考えていらっしゃるのですか。つまり普通の合意だと労働協約とか、ある いは合意と言えるかどうかわからないけれど就業規則とか、その他のそういう形にとら われない労使協定とか、1人ずつ合意を取るのだったら個別同意というのがあるわけで すが、あるいはまだそこまでお考えでないか、いかがですか。 ○山崎主任  中間取りまとめの路線は、要するに労働者との間で合意しておく必要があるというこ と、これは終始貫かれている考え方でした。労働協約になるのか別に方法があるのか、 あるいは個別に同意を1個1個取っていくのか。最も個人情報保護という観点を貫け ば、個人個人で取っておけという話になるのでしょうが、これが何万人もの企業になっ てくると実際は難しい話かもしれないので、ここでの議論でご意見をいただければと思 います。 ○保原座長  釈迦に説法ですが、労と使が一人ひとり向い合うと労は弱い、だから皆で揃って何か やるのだというのが労働法の基本ですから、一般論としては個別同意に落としていくの は、かなり危険だということは言えるような気がします。 ○安全衛生部長  これは1つ目の○を、2つ目で受けているようにも読めます。 ○山崎主任  はい、ルール化については衛生委員会等で審議して、産業医と衛生管理者等の参画を もってやるというのが、前回の中間取りまとめの結論です。 ○安全衛生部長  合意という言葉が当たっているかどうかはともかく、衛生委員会は労働者の代表が半 数いますので、そういう委員会での了承を得て、事業主の提案が承認されるということ が書いてあるのではないかと思います。 ○保原座長  わかりました。結局、衛生委員会で何か決めるということになると、それは最終的に は事業主が決めたということになるのでしょうね。 ○安全衛生部長  事業主が提案して、衛生委員会で了承するみたいな形です。 ○堀江委員  現在、衛生委員会は審議協議機関で、合意を得るとか決議するという機能を法的にも 持っていませんし、実態としてもそうでなくて、衛生委員会で審議したものは最終的に は経営会議で決定すると思います。 ○保原座長  古い話ですが、安衛法制定のときに大分議論があって、最終的には当時の労働組合の 代表だった総評が、合意をする決定機関とするのは望ましくないという判断だったので す。それは、労働組合が安全衛生についてまで責任を負いかねるということだった。い ま中桐さんがいらっしゃいますが、昔の話で、そのときはそういう話で決定機関にしな いということだったと思います。ルールに盛り込むべき事項はたくさんありますが、ど うでしょうか。これは例示だと思います。 ○堀江委員  例示ということですから、ここに書いていないものは排除されないと思いますが、確 か前回も議論したと思います。8頁の下から2つ目の○ですが、「医師たる産業医等を 信頼して」とまた「等」があり、ここは「医師たる産業医」ですから先ほどと同じ解釈 でいいのかもしれませんが、現場の実態を申し上げると、実際には看護職のほうが医師 よりもたくさんの情報を保健指導等で入手していて、選任されていれば、その人たちの こともルールに入れておくべきかなと思いました。 ○保原座長  その点、今までの議論はどうなっているのでしょうか。何か議論したような気がしま すが、健康診断の関係だけでしたか。 ○山崎主任  中間取りまとめの14頁ですが、中ほどで「また」以下の記載のとおり、それなりの位 置づけをもって捉えていることがうかがわれます。そうした意味でも、ここに入っても いいのではないかと思います。 ○保原座長  対象になるのは保健師、看護師ですか。 ○山崎主任  対象者は、安衛法の衛生委員会の規定では、「衛生に関し経験を有する者のうちか ら、事業場が指名した者」という第4号がありますので、それで読めるんではないで しょうか。お手元に衛生委員会の位置づけに関する資料を用意していますが、18条第2 項第4号に、「衛生委員会は次の者をもって構成する」とあり、適宜入っていただくこ とは可能です。 ○保原座長  そうですね。現行法だと医師、保健師、看護師については、それぞれ別の法律で守秘 義務がある。健康診断については健康診断時に従事した者という規定がある。そのほか に、いま山崎主任が言われたようなことだと、具体的にどういうことになるのでしょう か。例えば衛生委員会の秘密を漏らしてはならないとなると、実際に問題になってくる のは第4号の人ですか。 ○山崎主任  守秘義務の規定について法律上、どのように規定することが可能かというのは検討し ていますが、あまりに無限定で対象範囲が広がってはっきりしないのは問題があります し、他方できるだけ広く抑えたいということの双方をどう満足させるか。検討する必要 があると思っています。 ○労働衛生課長  すべての事業場で衛生委員会があるわけではないので、少し悩ましい問題があるので すが、仮に50人以上の事業場として考えた場合に、私どもは前回のさまざまな検討会の 報告等を踏まえて、基本的にルールを作るのは衛生委員会で、それが中心となるのかな という考えを現在持っています。ただ、あくまでも、それはルールづくりに際して衛生 委員会という場を活用するということであって、個別のさまざまなプライバシーに係る 情報が、衛生委員会の場に開示されることは決してイメージしていないわけです。  実際にルール化の中で、おそらく健康情報と言ってもさまざまな種類があり、例えば 健康診断のように定型化されているものがあります。その一方で、例えば保健師等が個 別の労働者に対してプライバシーに係る細かい相談を受けて、それについて説明したい 場合、あるいは産業医の所に、「先生、ちょっと聞いてください」と労働者が言って来 る。そうした非常にプライバシーに係る話など、さまざまなレベルがあるのだと思いま す。  一方で、作業環境測定のような話もありますし、もちろん特殊健康診断、その他諸々 あるわけです。それらについてどうするかを国が示すというのは、現実的にあまり考え 難い話です。一般的には、考え方について国は指針として示すにとどまると思います。 具体的に事業場内でどのような健康情報があって、それを誰が、どのように管理し使用 するか。それについての細かいルールを、それぞれの企業で作っていただきたいと現在 考えています。このことについて、委員の皆様方のさまざまなご意見をいただきたいと 思っているわけです。 ○保原座長  堀江委員にお聞きします。衛生委員会の18条では何とか対策を書いていますが、具体 的な事情等については衛生委員会には出ないのですか。 ○堀江委員  具体的な何ですか。 ○保原座長  例えば病気が発見されたとか、血圧が高い人がたくさんいるからどうするかとかで す。 ○堀江委員  個人の健康情報は、生のデータとして出てくるのは極めて稀だと思います。考えられ るものとしては安全衛生委員会のような形になっていて、事故を起こした人の加害者、 被害者といろいろありますが、労災事故の被災者の方の健康診断結果がこんなことだっ たので、ひょっとしたら健康問題が事故に絡んだかもしれないという形で、1人の人間 の健康情報がディスカッションになるケースもありますが、そういった例外的なものを 除けば課長が言われたように、通常、衛生委員会は個別の健康診断結果を取り扱う場で はないと思っています。 ○井上委員  いま、私は全社の安全衛生委員会の副委員長と、本社工場の安全衛生委員会の副委員 長を任命され職務を遂行していますが、全社の安全衛生委員会は規定類の改廃や全社の 方針とか、例えばこの前の委員会では、人間ドッグを法定健診代用と認める云々につい て審議しました。いま堀江委員が言われたように、本社工場の委員会においても具体的 に個人名とかは出ませんが、統計上、健康診断の受診率が何パーセントとかで個別には 出ないようにしています。ですから、プライバシーに関することが委員に漏れることは ありません。 ○保原座長  そうすると衛生委員会と守秘義務とは、一応、切り離して考えていいということです かね。 ○堀江委員  先ほど看護職の話を申し上げたのは、個別の健康診断の結果に基づいて、安衛法の66 条の7という法律で保健指導しているケースを想定して申し上げた次第です。 ○保原座長  そのほか、10まで何かございませんか。11と12にいきます。11は「特に配慮が必要な 健康情報の取扱いの留意点」、12は「小規模事業場への対応」、13は「その他」です。 先ほど堀江委員から、小規模事業場についての対応の話がありましたが、そのほかにご ざいませんか。 ○松本委員  質問ですが、先ほど健診項目が法定になっていて、今後も維持すべきだ、あるいは拡 大すべきだという意見がありましたが、メンタルヘルスについては健診項目として既に 義務化されているという話なのか、たまたま知り得た場合についてという仮定的な話な のか、どちらなのでしょうか。 ○山崎主任  いま、メンタルヘルスについては別途検討会を開いていて、どういった形で把握に務 めていくのがいいのかはひとつの議論です。いずれにしても義務的にしろ任意的にし ろ、何らかの形でメンタルヘルスに対して、事業主が取り組むことが求められているの は事実であり、そうした情報が集まっていくことに伴って、どのようにプライバシーを 保護するかが論点としてあるということです。 ○安全衛生部長  現在の定期健康診断の項目でメンタルヘルスと思われるものは、自覚症状及び他覚症 状の有無の検査というのが定められていますが、これも必ずしもメンタルヘルスに特化 したものではありません。この項目が11項目ありますが、ほとんどの事業場でこの項目 以外に問診票というのを作り、最近眠れるか、食欲はどうかというのを聞いているよう です。 ○保原座長  その限りでは結局、メンタルヘルスについては医師の判断ですか。 ○安全衛生部長  はい。 ○保原座長  口頭で聞くわけですから、聞かない場合も聞く場合もあるでしょうけれども。 ○安全衛生部長  自覚症状の生データと、それに基づいた医師の判断、本人の希望等に基づいた面接の 記録等が、メンタルヘルスに関する情報としては含まれてくるのではないかと思いま す。 ○荒井委員  他の病気も同じですが、民間ですと1週間以上休んだ場合には診断書の提出を求めら れますし、その中にメンタルヘルスの障害があると記載がある場合があります。もう1 つは産業医が健康管理措置をした場合に、メンタルヘルス上の問題で就労時間外の労働 禁止とか、就労形態、深夜労働、重労働、出張等々のことについて事業者に勧告するこ とがあると思います。それがメンタルヘルス上の公的な情報として挙げられるのではな いかと思います。 ○保原座長  健康診断項目で、いま部長が言われたように問診を具体的には、メンタルヘルスとの 関係でどういうふうにするのですか。 ○荒井委員  問診は誰がやるかによって変わると思います。看護職がやる場合と医師がやる場合で 違うし、医師の中でも一般身体医がやる場合と精神科医がやる場合で違うと思います。 一般身体医が精神障害を診断してもいいわけですし、その逆もいいわけですが、いずれ にせよ診断という行為が入ってくるか、入ってこないかと、項目についてどう書いてあ るかとまた別なのですが、食べられるか、寝られるかというのは、いま流行の鬱病であ れば主に障害されるところなので、食べられなくて眠れないと書いてある方をそのまま にしておくことは当然いかないので、産業医や看護職はそれに注意を払い、次の方策を 本人と相談することになると思います。  もう1つ、脳心疾患の労災認定の指針が出てから各事業場で対応しているのは、時間 外労働についてのモニターをして、長時間労働者については心身の健康について関心を 持って看護職あるいは産業医が対応しているのが、一般的になってきているのだろうと 思っています。ですから、そこでも時間外労働の多寡でスクリーニングされるわけです が、中には脳心疾患あるいはメンタルヘルス上の問題を持つ人が、入ってくることはあ り得ると思います。 ○労働衛生課長  私の認識ですが、これは全国調査が具体的にあるわけではないので分からないのです けれども、いまの安衛法の定期健康診断に問診という項目が確かにあります。ただ、明 らかにそれは明示的にそれでメンタルのスクリーニングをする、あるいはチェックをす るということを行政が言ってきたことはありません。事業場によっては、そこに精神的 健康状況について把握する観点で、問診項目が入っている調査票を作っている所はあり ますが、すべてにそれが入っているわけでもないし、もともとそういう意図で必ずしも 問診を行っているわけではないのが、おそらく多くの現状ではないかと思っています。 具体的なデータがあるわけではないので、むしろ堀江委員や井上委員からお話を聞かせ ていただければと思います。 ○井上委員  私どもの所では標準の定期健康診断の問診票を作成して、メンタルの部分をある程度 把握できるようにして、定健時に実施しています。メンタルに関心の高い産業医がいま すと、また別途作成し実施している事業所もあります。ただ、共通のものについては本 社の健康管理部門で調整して、データを全部コンピュータに入れています。共通の項目 は「はい」「いいえ」という形で記録し、事後措置の判定材料にしています。当然のこ とながらこれらの判定は全部産業医がやっています。 ○労働衛生課長  問診票にメンタルのチェックを入れるかどうかは、専門家の中でもいろいろ議論があ ったような話を聞いたことがあります。その事情についてご存じでしたら教えていただ きたいと思います。 ○井上委員  学会等で、メンタルの部分の問診票みたいなのを提案したのがありますよね。それを 参考にして我々の所も作ったように記憶していますが、堀江委員、いかがですか。 ○堀江委員  日本産業衛生学会では、そういった問診票は作っていません。産業精神保健学会でし たか、そちらは事情はわかりませんが、むしろ産業衛生学会での議論ではメンタルヘル スと言っても、ここから先という線が引きにくい話で、また切れ味のいいスクリーニン グ指標があるわけではないので、そのあたりはまだ皆さんが一致していて、労働時間、 睡眠時間、疲労といろいろな観点からの情報を集めてきて、最終的に専門家が総合的な 判断をする流れが多いようです。論点が分かれているところは、精神科の専門医が何ら かの形で産業現場に深く関わって対応するのがいいか、あるいは産業医が現場をよく知 っている立場として、多少精神科の観点からも健康管理するのがいいか、そのあたりは 意見が分かれていると聞いています。 ○荒井委員  1997年から5年間、労働省の「産業関連疾患」の予防に関する研究が行われ、そ の成果物が中央労働災害防止協会のホームページに出ています。インターネットでアク セスして、個人の精神健康度について自分で評価ます。それが現時点では職域に関して の、メンタルヘルス上の問題についての日本における大規模な調査に基づいたアンケー トなのです。ただ、その質問紙は多岐にわたりますので、定期健康診断のときに実行で きる時間はまずないし、その情報を持ったときに事業者あるいは産業医に、どんな責任 が発生するか明確にされていませんので、現時点ではどなたもアクセスできるような形 になって、成果物として残っているということだと思います。  それは、本と解析ソフトがセットになって売られていますので、それを用いて産業医 なり事業主の責任でやることは可能だと思いますが、公式のオーソライゼーションがな いのが現状ではないでしょうか。 ○井上委員  うちも独自と言っても、既存のものを参考にしたと思いますが、うろ覚えです。 ○荒井委員  先程述べた質問紙はディマンド・コントロールモデルに基づいた問診項目を選択し、 日本ではその質問紙が標準化されていて、いちばん使いやすいということだと思いま す。 ○保原座長  私は3、4年前に自殺予防の検討会に入ってやっていたのですが、結局、私は何もわ からないで終わってしまいました。そのときに精神科の医師たちが、問診の項目に当然 メンタルヘルスは入っているとおっしゃるのです。私はあまり勉強していませんから、 そんなものかなと思って家に帰って本を見たら、あまり書いていないのです。だけど精 神科の医師は自信ありげに「当然入っています、聞かないといけないんです」と言うか ら、おやおや、そうかと思ったのです。 ○荒井委員  ある特定の産業医は、そういう姿勢で関与するだろうと思いますが、一般的にはメン タルヘルスに特化した質問項目はないのが今の状況ですし、特定の項目のみ聞いてそれ だけに基づいて何かを判断しようとすると、肝機能のデータよりも曖昧なことが起こり ます。また、どのような質問紙を用いてもフォールス・ネガティブ、フォールス・ポジ ティブがあり、健診項目としてメンタルヘルスに関する何かを入れるということは、非 常にリスクがあると思います。ですから、フェイス・トゥ・フェイスの面接の中で得ら れた情報については貴重な情報ですし、逆に言えば個人情報として保護しなければいけ ない情報を、問診の結果として看護師、産業医、その他のスタッフが持つだろうと思っ ています。 ○堀江委員  メンタルヘルスに関して、言葉の定義で捉え方が食い違う点もあると思いますが、1 点だけかなり特殊性があると思われるのは、本人に精神的な障害があって、自分自身の 情報のコントロールをするのに明らかに適さない病状の場合については、非常に特殊性 があると思っています。その場合に現場としては、本人の情報コントロールないしは自 己健康管理を達成するために適切な代理者と言うか、通常は家族だと思いますけれど も、そういう方が誰であるのかを現場として知りたいと思うわけですが、それが実際に は難しいケースがあります。  これは精神保健福祉法との関係なのですが、例えば措置入院された方が復職される場 合、精神保健福祉法の53条というのがあって、なかなか精神科の先生からは産業医は情 報をいただけない。これは医師同士のコミュニケーションの問題ですが、そういったケ ースがあって、守秘義務というよりも健康に関する個人情報の流通の点での問題が生じ て、結果的には本人に不利益が生じてしまうケースがありますので、その点も議論して いただければと思います。 ○保原座長  いま言われたのは、主として本人が情報のコントロールができなくなっている場です か。 ○堀江委員  そうです。コントロールするのに適していない。すなわち自分の利益を守るためにど ういうふうに対処したらいいか十分わかっていないケースです。 ○保原座長  9頁で「外部資源の活用」というのは、要するに企業の外の医師ということなのだろ うと思いますが、企業の外の医療機関にかかっているらしいと、本人は十分に情報をコ ントロールできない状態にある。それで産業医としては企業の外の医師にアクセスした い。しかし、その医師が積極的でなくアクセスを受け入れない場合ですね。 ○堀江委員  そうです。 ○保原座長  こういう場合はどうですか。本人はまだ判断能力がある。その場合に産業医が、「あ なたがかかっている医師に詳しい話を聞いていいか」と言うことはあると思います。 ○堀江委員  その場合は当然、本人の承諾で進めればよろしいかと思います。これは現場の対応で すが、そうは申しましても精神科の先生方は情報を開示されないのが通常ですので、例 えばですが開封した書面を本人に渡して、本人が受診するときに自分が納得している状 態で主治医に渡していただいて、その返事を同じルートで戻していただく。そのような 形で対応しています。 ○荒井委員  精神が障害されていて行為能力がない場合に、もちろんここでの議論になると思いま すが、行為能力があっても同等の障害が出てくる場合は当然起こると思うので、特に配 慮が必要というふうにするのがいいかどうかについては、一抹の不安があります。  というのは、先ほど言われたように精神科医が別に秘匿しているわけではなくて、本 人からリクエストがあれば診断書を書くのは医師の仕事ですので書くわけです。例えば 復職に関する意見を書く。本人から申請があればそれは書かないわけにいかない。復職 が無理であれば「無理」と書くわけですが、いずれにせよ主治医が何らかの医学的な判 断を、社会的な文脈でしなければいけないことがあり得るわけです。それを産業医が求 めることは可能だと思います。我々は実際にそうしています。  ただ、形式としてはそれぞれの所で診断書は違うのだろうと思います。例えば相当詳 細な経過と投与薬物等々について記載を求めてくる会社もありますし、病院付きのもの でいいときもあり、さまざまです。ですからその辺については診断書の形式が不統一だ ということが問題としてありますし、産業医が主治医にアクセスしたときに、主治医が どこまで話せるかはなかなか微妙なところだと思います。医師同士だからいいかといっ たら、それは個人情報保護という意味で、あるいは医師の守秘義務をどこまで考えるか は当然出てくると思います。  いずれせよ本人の同意がほしいですし、いま堀江委員が言われたように、患者さんが 中に入って両方の意見が流通するのはいいだろうと思っています。 ○藤村委員  この委員会は、労働者の健康をどうやって保持していくかと、個人の健康情報をどう 保護していくかを検討するためのものだと私は考えていたのです。そうしたらもっと総 合的に考えて、どうやったら効率的にすり合わせができるかを議論しなければいけない と思います。  例えば、健康を守るという立場からすれば、いまのメンタルヘルスの場合でも問診票 によってスクリーニングをする。これはフォールス・ネガティブ、フォールス・ポジ ティブを含んでいたとしてもスクリーニングというのはそういう性格のものなのですか ら、スクリーニングすることが必要だと思います。まず健康をどう守るかを考えて、そ れから個人情報の保護をどうするかとすり合わせていかなければいけない。  健診の結果を見ても、有所見の場合と無所見の場合と全く違ってくると思います。健 康情報の廃棄の問題も無所見のものだったら、法律的に規定のある5年を経過したもの は即座に廃棄すべきだと思います。情報を保護するためには余分な情報は持っていない ほうがいいと思います。有所見の場合は、それに対して事業者や産業医が対応して、労 働者がそれに同意して診療を受けたりする場合と、同意しない場合といろいろありま す。そういうことを考えると有所見の場合をどう取り扱うか。そういう議論が必要だと 思います。  ですから、健康保持を上位に置くか、個人情報の保護を上位に置くかという立場で、 いろいろ検討もしなければいけないと思います。○中桐委員  いまのお話を聞いていて、ちょっと違うと思います。メンタルヘルスの問題に返りま すが、メンタルヘルスにかかっている労働者がいるとして、その方は実際に会社の産業 医のところには行かないと思います。私どもの統計でもそういうのが出てきます。会社 に知られたくないと思っているわけですし、こっそり外の所へ行っている。それは自分 が排除されていることを自覚しているというか、恐れているわけですから、それに対す る配慮が要るのだということで、いろいろなことをしているのだと思います。それは別 の検討会でやっていると思います。  法定の健診項目の中にメンタルヘルス項目は入っていないわけです。要するに問診の 中でやっている実態があるのではないかとか、やるべきだという事業主の集団の提言が ありましたが、それはその方が拒否している内容ですから項目に入れるべきではないと 思います。今回のでいちばん当てはまる、本人が同意してやっているわけではなくて、 それが嫌だということですから法定に入れるべきではないと考えるべき問題だと思いま す。ここだけ私は強調しておきたいと思います。 ○藤村委員  要するに健康保持ということを目的にすると、例えば自殺防止とか事故を防止すると か、そういう具体的な目標、目的があるわけです。そうした場合、問診票をもう少し整 備して、メンタルヘルスの何らかの所見を得られるような問診票にしたほうがよろしい と思います。ただ、メンタルヘルスが障害されているような人というのは病識があると は限らない。病識がない人だっているのです。そういうときに、問診票によってスクリ ーニングができたらば自殺防止にも役立つし、それによって起こるかもしれない事故防 止にも役立つわけです。隠したいことだから産業医に相談しないというのは病識がある ということです。 ○保原座長  それは藤村委員と中桐委員では意見が違うので、ただ、基本的なことを申し上げれ ば、安衛法では健康診断の規定と、労働者の健康を維持確保するために何が必要かの観 点からいろいろな規定があるわけですが、若干、プライバシーの保護に欠けるところが あるのではないか。もしあるとすれば、それはどういうところだろうかという趣旨で、 この研究会は作られていると思います。ですから、今までの議論を踏まえて次回以降、 事務局でもだんだん整理をしてくることになると思います。 ○山崎主任  まさに藤村委員がご指摘のようなことも含め、各委員からいただいた意見を踏まえ て、いま座長からありましたけれども報告書の骨子のようなものをお示しして、ひとつ 議論していただければいいかなと考えています。この論点は、まさに議論していただき たいポイント、ポイントで論点を掲げていますので、若干、こうしたご批判といいます か、ご意見が出るのもあるのかなと思って聞いていましたが、ひとつの考え方で報告書 というスタイルにしていったときに、また議論を深めていただければと思った次第で す。 ○保原座長  時間になりましたので、いま、藤村委員がご指摘の点も含めて、次回以降、まとめを お願いしたいと思います。 ○山崎主任  わかりました。 ○保原座長  特にご議論がなければ時間がきましたので、今日はここまでとしたいと思います。 ○堀江委員  1点だけお願いしたいことがあるのですが、いま無所見、有所見という話が出まし た。無所見の健康診断結果というのは、現在、事業者は産業医に意見を聞くというルー ルになっていませんので、そのほかにも産業医が無所見の健康診断結果を見る機会とい うのは、実は法的には何も書いていない状況になります。そうなると事業者はすべて知 っているけれども、産業医は一部しか知らない形で法律は書いてありますので、これは 私は逆ではないかと思います。その辺、どこに入れるのがいいのか分からなかったの で、ご議論に入れていただければと思います。 ○保原座長  その点、よろしくお願いします。 ○山崎主任  わかりました。 ○保原座長  まだまだご議論があると思いますが、次回に回したいと思います。本日の検討会はこ れで終わりにしたいと思いますが、よろしいですか。今後の日程等についてお願いしま す。 ○山崎主任  次回の第4回は7月28日(水)、午後4時からとします。次々回の第5回は8月6 日、午前10時からとします。開催場所については、いずれの会も委員の皆さんには追っ て連絡します。厚労省のホームページ上においても案内をします。なお今回の議論を踏 まえて事務局のほうで、先ほど申し上げましたが座長とも相談しつつ報告書の原案を作 成して、次回提出したいと思います。よろしくお願いします。 ○保原座長  できれば第5回で仕上げるということですね。 ○山崎主任  そのつもりです。 ○保原座長  今日の議事を終了します。ありがとうございました。