04/06/24医療情報ネットワーク基盤検討会 第9回議事録              医療情報ネットワーク基盤検討会                  第9回議事録                医政局研究開発振興課            第9回医療情報ネットワーク基盤検討会                   議事次第                            平成16年6月24日(木)                            15:00 〜 17:00                          経済産業省別館1020会議室 1.開会   厚生労働省医政局研究開発振興課 医療技術情報推進室長 2.議事  (1)e-文書法通則法(案)について  (2)e-文書法通則法案への対応(案)について   ・事務局からの対応(案)の報告   ・合同作業班における検討結果報告(山本委員) (3) その他 3.閉会 ○大山座長  定刻を過ぎましたので、ただいまから「第9回医療情報ネットワーク基盤検討会」を 開催させていただきます。委員の皆様方にはご多忙のところ、もう夏という感じがしま すが、暑い中をご出席いただきまして、誠にありがとうございます。  本日の委員会は公開形式で行います。なお、報道関係者が撮影をされる場合は、議事 に入るまでとさせていただきます。  最初に検討会開催に当たりまして、医政局医療技術情報推進室長よりご挨拶させてい ただきたいと思います。 ○新村室長  一言ご挨拶申し上げます。本日は、お忙しい中、委員の皆様にはお集まりいただきま して、ありがとうございます。昨年6月より8回にわたりご審議をいただいてまいりま したが、今後、夏に向けて最終報告とりまとめの作業をお願いしたいと思っておりま す。診療録の電子保存、医療における公開鍵基盤のあり方につきましては、それぞれサ ブワーキングを設けて、大変お忙しい中、それぞれのサブワーキングで鋭意作業をして いただいているところでありまして、詳細なガイドラインなどの作成に向けた準備をし ていただいております。  本日の議題にかかわることですが、内閣のIT担当ベックスにおきましては、法令に より民間に保存が義務づけられている文書、帳票のうち、電子的保存が認められていな いものについて、近年の情報技術の進展等を踏まえ、原則としてこれらの帳票、文書の 電子保存が可能となるようにする通称「e-文書法」と言われている統一的な法律案の 今後の国会提出に向けた作業をしており、この秋の臨時国会への提出にも向けて作業を しておられると聞いております。この法律案に対して、厚生労働省としても、早急に対 応方針をとりまとめる必要があるという状況になっています。いろいろな課題があり、 後ほどご説明いただきますが、その中で処方せんあるいは診療録のスキャナ読込みによ る電子保存も検討対象になっております。  すでに山本先生以下の合同作業班、あるいはサブワーキンググループでは、非常に詳 細な検討をしていただいているところですが、本日のこの親検討会では、初めてのご審 議となるところです。片や、内閣IT室ではそういうタイムスケジュールもあり、大変 作業を急いでおられるということもありますので、委員の先生方には大変恐縮ですが、 本日、集中的にこの件についてご議論をいただければと思っております。  e-文書法は通則法と言われているように、すべての分野をカバーするものと承知し ておりますが、この検討会においては、医療現場の実情を十分踏まえ、また患者の利益 権利の保護、擁護といった医療に特有な事情も十分考慮に入れて審議をお願いしたいと 思っております。  本日は、内閣IT室から、参事官、井上主幹ほか、皆さんも見えておりますので、後 ほどご説明をいただきます。皆様方、疑問点等も多いかと思いますが、そういった点も 含めて、十分議論していただきまして、後々批判されることのないような対応にしなけ ればいけないので、十分慎重なご審議をお願いいたします。以上、私からの挨拶とさせ ていただきます。 ○大山座長  次に委員の交代等がございますので、本補佐からお願いいたします。 ○本補佐  委員の交代がありましたので、事務局からご紹介させていただきたいと思います。日 本看護協会常任理事の楠本万里子様が菊池前委員と交代され、今回の検討会からご出席 をいただくことになりました。引き続きまして、どうぞよろしくお願いいたします。  なお本日、岸本委員、澤向委員、塚本委員、樋口委員がご都合によりご欠席され、ま た南委員におかれましては、途中からご出席と承っております。  また室長のご挨拶にありましたように、本日は内閣官房情報通信技術担当室から、安 藤参事官、井上主幹にお越しいただきました。安藤参事官におかれましては、ご都合に より途中から出席されます。井上主幹にご挨拶をお願いいたします。 ○井上主幹 いまご紹介いただきました内閣官房情報通信技術担当室の井上でございま す。本日はこのような席にご説明をさせていただく機会を作っていただきまして、どう もありがとうございました。いろいろお世話になりますが、引き続きよろしくお願いい たします。 ○本補佐  なお、事務局の医政局総務課榎本補佐も同席いたしております。 ○榎本補佐  榎本でございます、どうぞよろしくお願いいたします。 ○本補佐  それでは、以降の議事進行については、大山座長によろしくお願いいたします。 ○大山座長  議事に入ります前に最初に資料の確認をしたいと思います。本補佐から特に順番を 確認いただければと思います。 ○本補佐  お手元の資料をご確認いただきたいと思います。「議事次第」の下にネットワーク基 盤検討会の委員の交代もありましたので、参照のためにご準備しております。そのほか 資料1は「e-文書イニシアティブについて−e-文書法の立案方針」、資料2は「e- 文書法通則法案への対応(案)」、資料3は「スキャンした診療関連文書の原本性に関 する論点整理メモ」、参考資料1は「合同作業班及びサブワーキング検討状況」、参考 資料2は「法令上作成保存が求められている書類」、参考資料3は「医療機関等におけ る個人情報保護のあり方に関する検討会について」、資料1の補足資料は「e-文書イ ニシアティブ対象法令リスト一覧」です。不足している資料等がございましたら、事務 局にご連絡を頂戴したいと思います。それでは、引き続きましてよろしくお願いいたし ます。 ○大山座長  それでは、本日の議事に移りたいと思います。最初に、議事(1)の「e-文書法通 則法(案)について」を、内閣官房情報通信技術担当室の井上主幹からご説明をお願い したいと思います。 ○井上主幹  本日はお時間をとっていただきまして、ありがとうございました。いまご紹介いただ きましたとおり、e-文書イニシアティブについて、皆様方のご協力を得て、内閣官房 のほうで今年4月から本格的に作業に入らせていただいているところです。先般、6月 15日に第26回目を数えましたIT本部、戦略本部のほうで今回の方針が了承されたとい う状況で、こちらを受けて進めさせていただいているところです。そのことについて は、皆様方にかなりご認識いただいているかと思いますが、簡単に説明させていただき たいと思います。  資料1に簡単にポイントを整理しております、最初に書いてありますが、座長をはじ め、皆様方からご紹介いただいたとおり、e-文書イニシアティブとして、民間に紙に よる文書保存義務が課せられたものについて、原則的にすべて電子保存を容認するとい う取組みを今回やらせていただきます。  こちらについては、3.にありますように、2月のe-Japan戦略IIの加速化パッケー ジにより、イニシアティブの推進を決定するという話になっており、本年4月に実際に これを法制化するための取組みを内閣官房で進めております。  先にスケジュールを申し上げますと、平成17年4月には施行できるような形でやって おり、本年度中のできるだけ早いタイミングで国会に法案を提出したいと考えておりま す。この過程において、現在、厚生労働省はじめ、皆様方にいろいろご協力いただきま して、この立法の作業を進めているところです。  2.に考え方が書いてありますが、e-文書法については通則法と整備法によって構 成し、電子保存の容認に関する共通事項については、一般的な話として通則法で整備 し、これで手当ができない部分について整備法で手当をするという方向でいま作業を進 めております。  今回、これの対象になる法律が現状で約250本、文書での保管が義務づけられている ものについて電子保存を可能にする形での法制をしたいと思っております。特にIT本 部などでも出てきた話で、一抹の発端になるかもしれませんが、税務関係書類について も、原則的に電子保存を容認する形で税務当局にも検討をいただいているところです。 ただどうしても緊急時に即座に確認する必要があるもの、現物性が非常に高いものにつ いては、電子化がなかなか馴染まないこともありますので、一部対象外となるものが約 50本と考えています。  簡単に資料1で説明しましたが、これを少し詳しく文字で表したのが次の頁以降の 「e-文書イニシアティブについて」です。こちらの狙いは、室長より説明のあったと おりで、実際に電子保存を容認することで民間の文書保存にかかる負担の軽減、簡単に いうと倉庫などでいろいろな書類を保管していかなければいけない人たちにとってのコ ストを低減するというのが非常に大きな狙いです。これについては、いまのような通則 法と整備法の両方の整備をすることで手当をしていきたいと考えております。皆様方と もいろいろ議論があると思いますが、いちばん大きいのは2.(3)にありますとお り、文書の内容、性格などで実際に改ざん防止の措置やいろいろな要請が異なりますの で、実際の電子保存の方法については、内閣府、各省の主務省令において具体的に設定 をしていただくという形にしていきたいと考えています。  2頁ですが、税務関係書類についても、特に今回の発端の民間からの要請が強かった ということもあって、スキャナ方式による保存を容認する方向で税務当局からも回答を いただいており、それにかかる作業を財務省でも進めていただいております。  こちらの特徴は(2)にありますが、現在も電子書類の保存が一部承認されたところは できることになっており、これを広げる形で、いま検討をいただいおります。先ほど 250本という話をしましたが、その対象法律が3.に書いてあり、今回この場を作って いただいている厚生労働省が本数的にはかなり多いという形でいろいろご協力をいただ いて進めています。タイミングとしては、先ほどのような形で平成16年中に法案を可決 ということで進めています。  3頁に実際の通則法の概要とありますが、基本的に先ほどの話で申し上げましたとお り、一般的に義務がかかっている文書を電子保存ができるようにするための整備をして いるわけで、骨子の(3)にありますが、まず電磁的な保存可能規定を設ける。これは 主務省令で定めた手法によって電磁的な記録により保存を行うことができるようにする ものです。それに付随して(2)で電磁的作成、縦覧、交付等の可能規定をする。こちら については、保存だけではなく、実際の書類の作成、縦覧、交付についても電磁記入を 行うことを容認するというものです。(1)(2)で行われた保存等については、個別法令に 規定する書面により行われたこととみなして、個別法令に適用する旨の設定を設けると いうものです。  4頁ですが、適用除外については、冒頭簡単に話をしましたが、電子化に馴染まない もの、緊急性があるもの、緊急性があった場合にすぐ読めるような状況にしなくてはい けなないものや、そもそもそうやって複製されることが制度として想定されたようなも の、国際条約などによって制約がかかっているものは除外するということです。その中 には、地方公共団体においても、実際にこれを可能とするような取組みを進めていただ くという努力義務の規定が入っており、国としてもこれをサポートしていくというのが 通則法の概要です。  それとパッケージで、5頁に整備法があります。こちらは先ほどの保存や縦覧などを 可能にするという一般的な法律では対応できない部分について、補う法律です。特に何 がかかっているかというと、骨子の(2)の(1)事前承認等の導入による規定の整備。 これは実際に電子計算機を使って作った国税関係の帳簿書類について事前承認で認めら れるとありますが、改正を要するものについては、ここで手当をするというものです。  主務省令にかかる規定の整備ということで、実際に通則法において主務省令とは異な る委任の取扱いが必要なものについて所要の規定を整備するというものです。現在、 我々が方向性として検討しているe-文書法の体系は以上のような形です。 ○大山座長  いまお話をいただき、今日初めてお聞きになる方が多く、質問が多くおありかと思い ますが、ただパッと聞いて理解するのもなかなか大変かなという気もするのですが、い かがでしょうか。  私が補足するような話ではないのですが、ある意味画期的なのです。10年ほど前にこ ういう話をしていたことがあるのです。その当時は、制度見直し作業部会でやっていた ころですが、1995年のころは通則法でやるなどという話は駄目だという感じでした。電 子政府用のオンライン3法が通則法でいろいろやって、うまくいったのがあったのでこ うなるのでしょう。このお話の中で最初に見せてもらって気になるのは、「e-文書イ ニシアティブのねらい」で、法令により義務付けられている紙での保存が、民間の経営 活動や業務運営の効率化の阻害要因となっている、とあって、このまま素直に言うと、 「医療は違う」と思う人が多いのではないかと思います。ほかの皆さん方はどう思われ るか分かりませんが、いままで医療のお話をしているときには、民間の経営活動ではあ りませんという話が出てきたことと、業務運営の効率化の阻害要因になっているという のは、どちらが阻害か、この辺は分からないところです。これは勝手な印象ですが、も しご意見があればお願いします。 ○山本委員  このe-文書法は、民間が対象ですね。医療の場合は官、独立行政法人、民間が渾然 一体となって保健・医療・福祉分野が成立するのですが、その残りの部分に関してはど のような扱いになっているのでしょうか。 ○安藤参事官  文書の電子保存に関しては、行政手続オンライン化法がすでに出来上がっています。 あれで「行政機関等」という形で、行政庁、独立行政法人、特殊法人などという一定の 範囲内の法人が、主体としての対象になっています、  今回、私どもが民間と言っているのは、通常一般的に使っている民間とは少し違っ て、当然法律は定義づけされる予定です。この世の中に存在するすべての主体の中で、 行政手続オンライン化法で切り取っている主体、あとは国会、司法、地方議会で、地方 自治体そのものは行政手続オンライン法に入っています。それ以外のものすべてが民間 という位置づけになっています。国立の病院などがどこに入っているかというのが少し ありますが、いずれにせよ、この中でカバーされる話になってくる予定です。  その中で行政手続オンライン化法のときには、病院という民間がやるものもあれば、 民間ではないものがやるものもある中で、行政機関と主体で切っていて、そのときに本 当は医療についてどういう整理をするのかという議論が当然あって然るべきだったので すが、十分行われている形跡がなかったものですから、今回の法律の基本的なコンセプ トの行政手続オンライン化ほど、この法律プラス司法と立法という部分で、すべての文 書の電子化を可能にするということにあるので、病院がその両方に入るにしても、可能 になるような措置をとっていきたいと考えております。国だから駄目、民間だから駄目 ということのないような形にしていきたいと思っています。 ○大山座長  原則論は確かにそのとおりですね。現場から見ると、ウエルカムなのかどうかという のはどうですか。こういうのが下手をすると束になって止めてあるのも結構あります ね。スキャナでやるというのは、すごいことになるのではないか。1枚ずつめくって取 っていくのかなどと思ってしまうのですが。  これは急に出されても難しいですね。基本はこのように書いて、法律そのものの文章 などが出てくると、全然分からなくなりますね。いまはもうだいぶ出来ていますね。 ○安藤参事官  結構出来ていますが、かなり難しい内容の法律になりそうな感じがします。 ○三谷委員  折角出していただいているので、言葉の問題ですが、「電子保存」という言葉や、別 紙の3頁にある「電磁的保存」、あるいは「電磁的作成」「電磁的給付」というのが出 てきて、「電磁的」と「電子的」とは使い分けをされていると思いますが、どのような 意味の違いがあるのか教えていただきたいのです。 ○安藤参事官  法律上は「電磁的」という表現を使っております。これは磁気媒体も使うという意味 で、そういう文言があり得るということで使っており、「電子的に作成された」とか 「電子保存」という文言は、基本的には使っていません。ただ分かりやすくするためと いうことで、こちらの立案方針などは、去年IT戦略本部で閣僚の方々にできるだけ分 かりやすくという趣旨で作っています。法律用語では電磁的という言葉を使っています が、それにとらわれずにパソコンで作ったものはパソコンで、紙で作ったものをスキャ ナで電子化するというイメージで分かりやすくするということで書いており、あまり厳 密に区別して使っていないということでご理解いただきたいと思います。どういう方法 で保存するのかと言ったら、磁気媒体を使うかどうかについても、省令で決めていただ くことになります。法律では磁気媒体は駄目だということにならないように、広めに作 る形になると思います。 ○原委員  この検討会でもあとで議論に出てくるのかもしれませんが、現場では、電子保存した もののバックアップを取ったりすることも当然考えられます。e-文書法での考え方で、 原本性の取り扱いについての考え方で何か基本的なものがあれば教えていただきたいと 思います。 ○安藤参事官  なかなか難しい話ですが、原本性というか、電子で作ったもの、例えばスキャナで取 ったものが真正に成立した文書と認められるかどうかということについて、電子署名法 などでは、電子署名が付されていれば真正に成立したものとみなすという形になってい るし、訴訟法では署名押印があったら真正に成立したものだとみなされるという規定が あります。  今回電子的な保存を認めるに当たって、真正な成立ということが、裁判上問題になる ような事例について、どう扱うのかということが、かなり大きな問題としてあります。 スキャナで取ったものは、原本が真正に成立したとみなされないかという極端な意見も ありました。要するに、スキャナで保存するときに、スキャナで取ることについて電子 署名を付ける。そうすると、電子署名を付けることによって、スキャナ文書自体の真正 な成立は電子署名法で真正に成立したことがあるのですが、スキャナ文書だけではな く、スキャナで取る前の文書までも真正に成立したとみなせないかという議論もあっ て、これについては最高裁とか法務省に当たってみたら、「それは社会経験上無理であ る」と。当然無理だと思います。スキャナから取った文書は、原本が真正に成立したか どうかという推定は当然働かない。そういう意味では、裁判になったときに、確実にワ ンステップ証明しなければいけないことが増えることになります。ただ、自由心証主義 ですから、その増えた部分でどの程度不利になるか。この部分について不利にならない ように、できる限り技術的な要件なり運用上の条件なりを定めていくことで、できるだ け証明が難しくならないように、ある程度はできるだろう。あるいはそのリスクを行政 なりが侵す、あるいは保存している人が侵す形になるのですが、この話は基本的に電子 で保存するか、書面で保存するかについては、選択性をとりますので、リスクを勘案し て自分が取り切れないのなら、コストをかけて書面で保存してもらうという方法もあり ます。選択性があるということで、リスクとコストとを勘案できるようにしましょう。 行政から見たら、例えば、税などは緩い基準を定めれば損をするのは国になりますか ら、国から見て訴訟で負けないようにきつめに作る。それでもなお駄目だったら、その 部分については書面のまま残さなければいけないというのを維持することを最小限認め るという形で処理していきたいということで、原本性云々ということに関して言えば、 確実に裁判になったときの真正な成立についてはどうしても落ちざるを得ない。その部 分を技術なり制度でどうやって汲み上げるかということで今回やっています。最後は保 存義務者の判断というところで、リスクとコストの勘案をしてもらうという形になりま す。 ○原委員  例えば、電子保存したデータを、一応安全のためにバックアップをとるということ は、同じものであるというのが前提ですが、複数の原本が存在することも現実的には考 えられるということでしょうか。 ○大山座長  紙があって、スキャナで取って電磁的記録ができますが、これは原本とは言わない、 元のものは原本だという解釈ではありませんでしたか。 ○安藤参事官  あまり詳しく覚えていません。 ○大山座長  私が聞いているのは、保存義務を課しているものについて、その電磁的記録、スキャ ナで取ったもので変えてもいい、前のものでなくてもいい。ただ、原本を交換するので はないと聞いた記憶があるのですが、違いますか。 ○安藤参事官  あまり原本か原本ではないという議論はしておらず、裁判になったきときの真正な成 立が推定されるかどうかというところで見ています。 ○大山座長  ただし、原本があるのがいいのかという議論があって、たしか複数原本はない、条約 のは複数原本と言っていたような気がします。 ○安藤参事官  そこは詳しく調べて回答させていただきたいと思います。 ○松原委員  具体的な問題として1つ考えられるのは、電子カルテを導入している病院で、それだ けで保存ができるようになるわけです。問題は紹介状を紙で送ってきたときに、その紙 の扱いをどうするかという極めて具体的な話ですが、そういうことがいまの話につなが るのではないかと思います。紙で送ってきた分をスキャンして電子カルテの中に入れて おき、それでその方の情報の完全なものであると判断し、それを原本とみなすのか、紹 介状だけは別に保管して、そちらが原本で置いておかねばならない。例えば、訴訟のよ うなことが起きたときには両方が一致することを証明することをもって足りるのか、そ の辺の議論をきちんと詰めておかないと、折角電子カルテですべて電子化しても、余計 なものが出てきたときに、それを置いておく手間もかかりますし、それをほかしてしま ったときに問題が起きないのかという疑問も出てきますが、その辺はいかがでしょう か。 ○安藤参事官  紹介状というのは、どういう位置づけなのでしょうか。 ○松原委員  紹介状の位置づけというのは非常に曖昧な点ではありますが、患者の情報の一部です ので、カルテに含まれるものではないかと思います。 ○安藤参事官  カルテの一部になるということですか。 ○松原委員  医療現場では慣習的にはカルテの一部として扱っています。例えば、ある先生がこの ように考えた。それを情報として主治医が受け取って、その主治医はその情報に基づい て患者の治療をするわけです。 ○安藤参事官  紹介状と実際のカルテとの間の相互の突き合わせみたいなことが裁判上、非常に大事 になってくる。 ○松原委員  具体的にいえば、紹介状にどう書いてあったかという話になります。ただ紹介状の場 合ですと、それを発行した所に原本があるわけですから、そういう問題があるので対応 ができるかもしれません。何を問題としているかというと、折角電子カルテ化していて も、外から電子カルテ化していないものがきたときに、それをどのように保存するかを きちんと議論しておかないと意味がなくなってしまう点があるということです。 ○安藤参事官  要するに、複数が違う技術基準なり何なりを作ってしまったら、紙も含めて、いろい ろなフォーマットが出てくるだろうということですね。 ○松原委員  電子保存している病院に、紙のものを送って、その紙のものを電子カルテの一部とし なければならないときに、スキャンして電子カルテの中に置いておけばいいのか、それ だけではなくて、紙も保存しておかなければならないのかということになると思いま す。 ○安藤参事官  それは法律レベルの話というよりは、省令なり何なりで。 ○松原委員  具体的に電子カルテのようにすると、それが問題の最初になるのではないかと思いま す。 ○安藤参事官  そういうことも含めて厚生労働省で判断していただき、技術基準なり何なり運用の仕 方などを決めていただくという形になろうかと思います。技術的には解決がすぐつくの ではないかと思います。 ○大山座長  原則は保存義務がまず課されているというのがあって、それが紙媒体である場合に、 その紙をスキャンしてという手順なのです。いまの話だと厚生労働省の最初の判断があ って、紹介状は出したほうは保存義務があるのは分かっていますが、もらったほうはあ るのかということにかかってきますね。保険点数はもらったほうもあるのですか。 ○山本委員  あります。 ○大山座長  そうすると、そこでかかるのですね。 ○松原委員  出したほうが保険点数として評価されるのです。 ○大山座長  出したほうですね、もらったほうもあるのですか。 ○山本委員  もらったほうもあります。 ○大山座長  それでは、義務があるのだから、いまの話はそのとおりで、そうするとかかります ね。 ○松原委員  電子カルテを折角使っているのに、紹介状をもらってしまい、その紹介状があるか ら、その人の別カルテを作らなければいけないようなことでいいのかという議論が、電 子カルテの議論の中にあるのです。 ○安藤参事官  そういう場合には、電子保存の仕方について、そういうものをもらったときの処理の 仕方という項目を付けていただくしかないのだろうと思います。 ○大山座長  この法律の対象になれば、可能になるということですね。 ○松原委員  スキャンしたものに真正性があるとなれば、簡単な話なのです。ただ、皆さんも懸念 があるように、原本に何かの細工をしてスキャンしてしまえば、全く分かりませんの で、その辺の議論は厚生労働省とよく詰めていただいて、厚労省との見解が合うように していただけたらということですね。 ○大山座長  議事(2)の「e-文書法通則法案への対応(案)」を、厚生労働省側で考えていた だいていることをご紹介いただき、その上でお話をしたいと思います。それでは事務局 側から「対応(案)」の説明をお願いします。 ○榎本補佐  それでは、資料2について説明いたします。1枚目は先ほど説明があり、「e-文書 通則法の概要」で、これについては省略をさせていただき、e-文書法の対応というこ とで、具体的に何を検討する必要があるかを2頁以降で整理をしておりますので、そち らから説明いたします。  具体的に検討しなければならない事項として、私どもとしては大きく2つ検討すべき 対象があるのではないかと思っております。現在の取扱いという観点から見ますと、大 きく分けて「診療録等」と「処方せん等」ということで、処方せん等については、医師 法、薬剤師法あるいは診療放射線技師法といった各それぞれの関係の法律の中で署名押 印などが義務付けられているという種類です。  まず診療録等について、電子保存についてどうするかを検討していく必要がありま す。現行の取扱いにおいては、平成11年に私どもで通知を出し、一定の条件の下で電子 的な保存を現在容認しております。それは電子媒体で作成をし、電子媒体で保存をする という場合で、紙で作成したものをスキャンによって読み取って電子的に保存をするこ とについては、現在のところは○なのか×なのかは未定です。平成11年に通知を出した 段階では、スキャン技術自体がまだそれほど精度の高いものではなかったこともあっ て、その当時としては難しいだろうという判断があったように聞いております。  一方、処方せん等についても議論がいろいろあったわけですが、電子媒体を作って、 電子媒体で保存をすることについては、そもそも処方せんは医師が、医師法に基づいて 患者に交付した上で、患者自身が自分の行きたい薬局を選んで薬剤師に提出して、薬局 の薬剤師が調剤をした上で署名を行うという仕組みになっていますから、電子的に作成 ・保存をすぐにいいという観点はいろいろな論点があるということで、平成11年当時と しては難しいという判断がなされました。  一方、紙媒体で作った処方せんを薬局において電子的に保存することについては、平 成11年当時はまだ難しいという判断もあって、この対応については、現段階では未定と いうことで、まさに紙媒体で作られたものを電子的に読み取って保存をすることについ て、私どもとしてどのように整理するほうが妥当なのかを、本日は是非ご議論いただき たいと思っております。  次の頁ですが、先般この検討会の合同作業班で山本班長の下で、各班の先生方にいろ いろご議論いただき、大まかな方向をいろいろ整理していただきました。そのご議論な どを踏まえて私どもでペーパーとして整理いただいたのが3の「対応方針(案)」で す。  まず大まかにどのような整理方針なのかを(1)の表で簡単に整理しております。診 療録等についてですが、診療録等、処方せん、照射録等のスキャンということで、それ ぞれA、B、Cの(1)の部分で、簡易媒体で作って、電子的にそれを読み取り、保存を するということについては、いずれも一定の条件を満たすことを前提とした上で認める 道を開いたらどうかということです。  電子的に作成して、電子的に保存をする場合について、それぞれどうかということで す。まず診療録等については、現行すでに平成11年通知が出されているとおり、一定条 件の下で可能だということで、もちろんその条件については、さらに現在の技術状況な どを踏まえて精査する必要があるかと思いますが、引き続き認めていったらどうかとい うことです。  処方せんについては、今回いろいろご議論いただきましたが、いろいろな観点からの 懸念材料があって、現時点では、取扱いをさらに慎重に検討する必要があるのではない かという状況です。  照射録等については、一定の署名の真正性が確保できれば、電子的に作成して、電子 的に保存することを認めてもよろしいのではないかという方向です。  なお、e-文書法の適用関係については、最後に書いていますが、内閣官房ともよく 調整をして、実際に法律的には主務省令という形で、もし○という方向が出されるのな ら、主務省令を具体的にどう書いていくのかという辺りを、今後よく相談させていただ きながら、整理をしていきたいと思っております。  具体的に個別の条件の方向を整理したものをご説明いたします。まずスキャナによる 読み取りの保存です。これは診療録、処方せん、照射録いずれもという共通する部分が ありますので、そちらを説明いたします。1つは、診療に支障が生じることのないよう に、スキャンによる情報量の低下を防いで、原本として必要な情報量を確保するという 観点から、光学の解像度、あるいはセンサなど、一定の規格・基準、技術的基準をこれ からよく精査して定めた上で、それを満たすスキャナを用いるということがあろうかと 思います。  それから患者の立場は、医療の情報について非常に重要な部分ですので、改ざんを防 止する観点から、医療機関の管理者が一定の措置を求めることを条件に付けたらどうか ということです。まず1つは、スキャナによって読み取りを行う際の運用管理規程を定 めるということです。併せてスキャナによる読み取る電子情報と原本との同一性を担保 するという観点での責任者をということで、情報作成管理者を置くことが考えられるの ではないか。  かつ、スキャナで読み取った際に責任を明確にするという観点で、その作業を実際に 責任を持って行った者が電子署名を行うことを担保したらどうだろうかということで す。  4頁ですが、スキャナで読み取る際に、いつ読み取ったのかを明確にするためにタイ ムスタンプを利用する、あるいはシステムの時刻の正確性を確保するための一定の手順 に従った運用によって信頼性のある読み取り時刻を明示するということなどです。  電子的な保存の場合には、真正性、見読性、保存性の3要素の問題がありますが、見 読性を確保するという観点からは、診療上、緊急に閲覧が必要になったときに、迅速に 対応できる必要があります。そのために停電時の補助電源を確保する、あるいはシステ ムトラブルに備えたミラーサーバーの確保などの必要な体制を構築することなどが考え られます。  個人情報ですが、昨年成立した個人情報保護法が来年4月施行で、それを踏まえて、 特に医療分野での対応も配慮しながら、主要の取扱いを講じることが必要ではないかと いうことです。  医療機関外部に電子的に保存することなども検討課題として今後あるわけですが、そ れについては、今後必要な条件をさらに整理をして、その対応を図っていってはどうだ ろうかということです。  今まで申し上げた全体に共通する条件は、スキャナで読み取る場合としては、シチュ エーションとして2通りあるのではないかと考えられます。1つは診療を行う都度、発 生する新たな情報を読み取っていく場合。もう1つはスキャナのシステムができる以前 の過去にすでに蓄積されている診療録などを、1度に読み取っていくようなシチュエー ションが想定されます。前者の診療の都度に発生するものを読み取る場合の条件として 2つ書いています。1つは情報が作成されてから一定期間内に読み取りを行う。一旦情 報を書き起こしたあと、一定の必要な修正などは当然あると思いますが、あとになって あまりにも時間が経ち過ぎてしまうと、改ざんの疑念も出てくるので、一定期間内のス キャンが必要ではないかということです。もう1つは、情報作成管理者として技術的な 基準なり、個人情報保護の観点から求められる要件をしっかり満たした上で実施をする ことが必要ではないかということです。  2番目のシチュエーションとしては、過去に管理媒体で蓄積されているものを電子的 に読み取って保存する場合です。これについて、1つは個人情報保護の観点から、患者 の理解が必要ではないかということです。具体的にはスキャナによる読み取りを実施す る前に、予め患者に対してカルテをスキャナで読み取る保存作業を行うことを情報提供 して、患者から異議の申立てがあった場合に、スキャナによる読み取りを行わないなど 配慮が必要になってくるのではないかということです。  2番目としては、作業を一度に大量に読み取ることになってきますので、作業過程で の個人情報の適切な保護、あるいは改ざんの防止をどう担保するのかが議論になるとこ ろです。このためには所要の実施計画なり、運用管理規程を事前にしっかり作成してい ただき、読み取り作業を行ったあとに、それの適正さを何らかの形で監査をしていくこ となどが必要ではないか。合同作業班などでもいろいろな議論があって、行政機関によ って、そこを担保していったらどうか、あるいは第三者の関与なども含めて、その体制 を考えていったらどうかという議論がありました。  外部事業者に全体の読み取り作業を今後委託することも、将来的には改定された場合 には想定されるわけですが、そういう場合には安全管理が非常に重要になってくるだろ うということで、スキャナによる読み取りを医療機関が外部の事業者に委託する場合に は、当然自らやる場合と同様の措置を担保する必要があるのではないか。技術的な基準 なり個人情報保護の要件なりを満たす事業者を選定して、契約上も担保を図っていった らどうかということです。以上がスキャナでの読み取りの関係で整理したものです。  次に診療録等の電子的な作成・保存の場合です。すでに平成11年通知で一定の基準を 定めた上で認めておりますが、これについても今日における技術状況や個人情報保護法 について、私どもでガイドラインの作成に向けて検討会で先般より検討を開始しており ますが、そこの検討の成果などと平仄をとりながら、検討を進める必要があるのではな いかと思っております。  処方せんの電子的な作成・保存ですが、現在、医師法上、医師の署名押印が必要であ るということで認められているものではありません。1ポツ目はe-文書通則法との適 用関係を整理したものですので、非常にテクニカルな部分で、省略いたします。  2ポツ目は、処方せんの電子的な作成・保存をどう認めていくかという点について は、いろいろクリアすべき課題が多いのではないか。具体的には6点ほど掲げています が、1つは患者による薬局の自由な選択を保証する。いまは紙媒体で交付していますの で、患者はそれを持って自ら薬局を選んでいますが、そこをどう担保するか。医師によ る無診察診療の防止で、電子的にやった場合には、極端な場合、医師が患者を診ないで 処方せんを交付して薬剤を入手することが可能になってしまうのではないかという懸 念。3番目としては、処方せんを持っていくことで対面での薬剤師による服薬指導なり 情報提供が確保されますので、それを担保できるようにする必要があるのではないか。 処方せんの偽造や再利用を防止する必要がある。非常に技術が高度に進歩していますの で、スキャンで読み取ったとしても、あとで加工して、例えば署名を消してしまい、再 利用する懸念もあるわけです。  患者による処方内容の確認を可能とする必要があるということで、処方せんとして交 付する以上、患者に対して情報提供するという意味もありますので、そこをどう確保す ることができるのかという問題。最後に処方せんの期限内での処方ということで、処方 せんは4日間有効期限がありますが、患者の容態によっては期限内に行けない場合もあ るわけで、そういうときに電子的にやってしまったものをまたあとで取り消さなければ ならないという手順などもあります。あるいは状況が変わって、当初の処方では問題が あることも想定されます。そういう不適切な場合にどう電子的に対応できるのかという 問題があり、患者の利便性を向上する一方で、技術的な問題などもいろいろあり、現在 の時点では、なお慎重に検討を進める必要があるのではないかという状況です。  照射録、臨床修練外国医師が臨床修練で診療した場合の診療録に対して、指導医が署 名することになっていますが、そういうものの電子的な作成・保存について、現行法で は署名押印が必要であるということで、法律上禁止されています。これについては、記 入した電子署名などを行うことによって、現行の署名に相当するものが担保できれば、 電子的な作成を普通は認めてもいいのではないかというのが、サブワーキングなどでも ご議論いただいたところです。簡単ですが、以上です。 ○大山座長  これはよく練ってありますね。次に資料3と参考資料1を使って、作業班の班長の山 本委員から説明いただきたいと思います。 ○山本委員  この検討会の合同作業班、そのサブワーキングとして参考資料1にありますように、 かなり頻回に検討を重ねてまいりました。その中で今日の検討会の中心課題であるe- 文書法への適用に関して、榎本補佐からご説明いただいたことがほぼすべてですが、も う少し委員の方々に具体的なイメージを持っていただくためと、合同作業班の議論のイ メージをお伝えするために、資料3で説明させていただきます。  e-文書法が議論になるのとほぼ同時にというか、その前からと言いましょうか、各 医療機関からは、スキャナの読み込みによる保存をしたいという要望が確かに上がって おりました。平成11年に厚生労働省としては、当初から電子的に作成された診療録等に 関しては、電子保存を認めておりましたが、電子保存の対象とした電子保存開始以前、 つまり、もう電子保存をしているのだが、その前の文書が、相変わらず紙、またはフィ ルムで残ってしまう。それの処理に困っているので、スキャナでさせてほしいという要 望です。  2番は、先ほど松原委員からお話がありましたが、電子カルテで運用しているけれど も、外から来る文書で診療情報提供書がその代表ですが、こちらから出す文書も相手が 電子カルテでないと紙で渡さざるを得ませんので、診療情報提供書を紙で書いて、それ をまた保存しなければいけないということで、折角電子カルテで運用を始めたのに、紙 の情報が残ってしまう。そのために別ファイルを作る。別ファイルを作るだけではな く、紙の情報と電子情報が混在する状態は、もしかするとどちらかを見落とす可能性が あるということで、医療の安全性の面からも懸念され、紙の情報をスキャンして扱いた いという要望があります。  平成11年の通知で署名又は記入押印が必要なために対象とならなかったことに関し て、そのためだけに紙を置いているのは何とかならないだろうかという要望がありまし た。  これは今回のe-文書法とは直接関係がありませんが、保険薬局において処方せん・ 調剤記録を法律の中で薬局内と場所を限定して保存を義務付けておりますので、外へ出 すことができないということで、非常に困っています。  スキャンした診療関連文書を原本とすることの問題点を作業班で検討したのがこの4 つですが、どうしても真正性が低下する。つまり、読み取りエラーが起こる場合もあり ましょうし、そもそもスキャンする前に改ざん等の行為が行われた場合に、その検出が さらに難しくなるという問題があります。  医療の場合、紙にボールペンで書いた情報ばかりではなく、アナログ撮影したX線フ ィルム等もかなりボリュームがありますが、これもスキャンを認めるとなると、情報量 が必然的に低下します。  スキャン後の原本というかスキャンしたあと、スキャンする前の紙やフィルムが疎か に扱われる可能性はないだろうか。保存義務上は問題がなくなったとしても、個人情報 としては相変らず非常に重要なものですから、その扱いに関しても十分注意しなければ ならないだろう。  電子署名が言われていますが、ご承知のように、現在の公開鍵基盤を用いた電子署名 は署名の有効期限があって、医療の場合は、例えば生物製剤の投与記録などに関して は、医療機関で20年、提供会社では30年の保存が義務づけられて、20年後に署名が正し いかどうかを検証できる技術を用いなければならないという問題があります。  ここには書いていませんが、若干、真正性というか証拠性の低下はリスクとしてとら えて、リスクとメリットの勘案という話がありましたが、医療の場合、全般にそうです が、リスクは保存をする当事者だけではなく、患者に生じる可能性があって、この場 合、患者から訴えられたら、裁判になるとは言うものの、起こってしまったリスクを取 り返すことが通常は非常に難しく、極めて慎重に対応する必要があるだろうというのが 問題点です。  さらに付け加えますと、厚生労働省としてはグランドデザインを作って医療の電子化 を強力に推進しております。当初より、電子化することによって診療録等の情報が意味 を持って電子化され、それが次の利用に非常に役立つ、本人にとっても有用であるし、 公衆衛生上も利用価値の高い情報にすることが可能なのです。紙の媒体をスキャンした 場合は、単に保管場所の節約にしかならないということで、作業班としても、できれば 当初よりの電子化を積極的に進めたいというスタンスがあります。  その問題点に対する対応の0、これはe-文書法とは関係のない対応になるわけです が、本来、平成14年に「保存の場所について」という通知が出て、多くの診療に関する 文書は医療機関の外部に保存することが可能になっており、医療機関のスペースの負荷 もかなり軽減されているだろうと思われます。ただ、あまり遠くに置くと、診療にも差 し支える、その情報のアクセスにも差し支えるでしょうから、一定の基準を設けて、ス キャンした情報を運用上使う。保存義務であるとか、原本であるとかを問題にしない で、運用上、その情報を用いて診療を続けるということで多くのデメリットは解消す る。ですから、あまり無理に保存義務にスキャンで対応するようなことを進めなくても いいのではないかというのが0です。  1以降は、スキャンした情報で保存をすることに関する考えです。性善説に立てば、 1は同一とみなすことを確認して電子署名で医療機関の責任の所在を明確にし、スキャ ンすることで対応できる。しかしながら、医療において多少は改ざん等の事件もありま すので、患者の権利を保護するという観点からは、これで100%というわけにはいかな いであろう。  問題は大きく2つ考えなければいけないのです。1つは、すでに蓄積してある情報を スキャンして電子化する場合です。これは、危険性という意味ではかなり高い。つま り、紙やフィルムの状態で、何か手が加わっている可能性がないことはない。したがっ て、こういったことをスキャンで保存義務の全うに代えようという試みがある場合は、 相当厳しい条件を付けざるを得ないだろう。さもなければ、患者の権利の保障が難しい のではないかと。  例えば、所轄行政機関等に事前に実施計画や運用管理規定を提出した上で、文書の性 格に応じては承認性を採用したらどうか。保存期限まで置かなくてもいいけれども、一 定期間はスキャン前の情報も同時に置いておいたらどうだろうかという、かなり厳しい 条件の議論がございました。  それとは変わって、受け取った診療情報を提供しよう、ないしは、電子カルテで運用 しているのだけれども、他院に紹介するために、紙で作った診療情報を提供しようと か、そういったものは、情報が作成され、情報が生じてから短い期間の間にスキャンを すれば、ほとんど改ざんする動機も機会も少なくなる。したがって、運用手順等の明確 化は必要ですが、発生した時間から短い間隔でスキャンをするという条件があれば、ス キャンの責任の所在を明確にすることで進めてもいいのではないか。これによって利便 性は向上するであろうと考えておりました。  2は、銀塩フィルム(アナログで撮ったX線フィルム)をスキャンすると、確かに情 報量は低下します。しかし、フィルムも3年間も置いておくと、色が変わって、情報量 は低下しますので、あまり厳しく考えてスキャンを制限することは、かえって情報の保 持という意味ではマイナスになるであろう。一定の技術水準をクリアしたスキャンは、 こういう面からは容認してもいいのではないかというわけです。これには紹介された患 者が持ってくるX線フィルム等があります。  3は個人情報保護からの観点です。安全やリスクを含めて説明して、同意を得る必要 があると書いてありますが、現実には、診療が終了していて患者が来ないときに、同意 を得ることは非常に難しいのです。したがって、これは周知を図ることで代えざるを得 ない。よほど問題がある場合は、IRBのようなものを使って第三者的な正当性を判断 していただくことが必要だろうと思います。もし、患者の同意が得られず、私は困ると 言われた場合に、それを理由に診療を拒むことがあってはならないということも書かれ ています。  4は電子署名の有効期間の問題です。タイムスタンプは必須です。タイムスタンプと いうのはPKIのタイムスタンプとは限りませんが、時刻が信頼できることが必須で す。署名延長技術にはさまざまなものがありますが、将来の証拠性を考慮すれば、一定 の指針が必要であろうと思われます。  最後は、もしスキャンで保存の義務に代えた場合、元の紙媒体やフィルム媒体の扱い については一定の指針をつくらなければいけないだろうと、このようなことを合同作業 班では議論してまいりました。 ○大山座長  利便性の向上とか、さまざまな字句でバランスをとっていくと、こうなってくるのか なという感じがいたします。いまの事務局及び合同作業班からの説明について、ご質問 ご意見があれば承りたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○三谷委員  3頁の上に、対応方針(案)ということで基本的な対応方針がわかりやすく整理して いただいてあります。A、B、Cとあり、診療録等、処方せん、照射録等ということ で、さらに(1)、(2)と分けてあります。電子保存の可否ということで○×が書いてあり ます。診療録等は、紙作成・電子保存が○、電子作成・電子保存が○ですが、処方せん のほうが、紙作成・電子保存が○、電子作成・電子保存が×であるとなっております。 ×になった理由として5頁目の4で、処方せんの電子的な作成・保存については以下の 課題をすべてクリアする必要があるが、患者の利便性の向上や技術的実現可能性などの 観点から尚慎重に検討を進める必要がある、と書いてあります。  この内容はよくわかるわけですが、この検討会の中間取りまとめの「処方せんの電子 化」で、いくつか利点が取り上げられていたかと思うのです。それは患者の利便性の向 上というのもあったわけですが、医療を受ける上での安全、そういうものに寄与するの ではないだろうかということも含めて利点も取り上げられていたかと思うのですが、こ の辺がどのように整理されてきたのか気になります。  e-JapanIIで、加速化パッケージということでこの検討会でも紹介され、電子処方せ んの推進が取り上げられて、今年度中にも何らかの形をということがあったかと思うわ けです。それと関連して、「慎重に検討を進める必要がある」という理由は、いずれも 尤もなのですが、例えば診療録の電子作成が認められる場合でも、当然これと同じよう な配慮が十分必要になってくるわけですが、処方せんの電子作成のほうだけ認められな い、その辺の説明をもう少し伺いたいのです。  当然ながら、医療機関でも同じように配慮すべき点がいろいろあり、こういうものを すべて克服して、そして今の進んだIT技術を最大限利用していくという流れにあるか と思うのです。技術的な可能性を当然展望されるべきだと思うのですが、この辺がここ でいきなり×になっていると、そのような将来的な展望が保証されるのかをお聞きした いと思います。  それから、「慎重に検討を進める理由」の中に、患者による薬局の自由な選択(フリ ーアクセス)を保証する必要があるとあるのですが、薬局の自由な選択を保証する何ら かの規定や法律が現状であるのかどうか、それを確認させていただきたいと思います。 ○榎本補佐  私どもとして、当然中間まとめも前提として考えなければならないという認識でおり ますので、もし言葉が足りない点がありましたら、お詫び申し上げます。  それを前提にしつつ、今回処方せんについては、かねてより非常に大きな議論がある 中で、なかなか容易に結論が出せない。いままでも結論は出てきていない状況であると 思うのですが、今回のe-文書法等の適用関係を考えた際に、いまの段階ですぐに結論が 出せるかというと難しいのではないかというのがあって、慎重に検討する必要があると いうことで、今日の段階の表現としては、こういう形で整理させていただいた状況で す。  委員がおっしゃるとおり、こういうものを技術的に克服する流れというものも、いま の技術状況からすれば当然あり得るのだと思います。私どもとしても、将来の流れとし て電子化という大きな流れはありますので、そういう中で対応ということを考えなけれ ばいけないと思っています。  技術的に可能であると言う一方で、政治的に求められているいろいろな制約条件もあ るわけですので、そういった中でのバランスをどううまく取っていけるのか。最初に× と表の中に書いたものですから、いかにも将来的にも一切駄目だと受け取られたとした ら、それは私どもの説明の仕方が悪かったということです。別に、将来的に見て×だと 申し上げているつもりではなくて、必要な条件が整えば○にしていく方向は当然あるの だと考えております。  いまの法律上、フリーアクセスということをどう整理しているのかというお尋ねがあ りましたが、医療保険制度の中で療担規則(療養担当規則)というものがあり、その中 で「患者の薬局の選択を妨げないこと」と明記されております。そういうことがあり、 フリーアクセスということをお願いしている次第です。 ○三谷委員  選択を妨げるというのは、例えば、ある薬局が電子処方せんをやっているがために患 者が行けないとか、そういうシーンを想定されているわけですか。 ○榎本補佐  お医者さんが、この薬局に行ってくださいというような形で不当に誘導するようなこ とがあってはならないという意味なのです。もちろん、やりようにもよるのかもしれま せんが、運用によっては、特定のお医者さんが特定の薬局を名指しして、「こちらで受 け取ってください。もう処方せんも送りましたよ」というようなことがあったりした ら、それは患者の選択権を妨げることになってしまうのではないかという懸念です。 ○三谷委員  医療機関側が薬局等を誘導してはいけないということですが、そういうことはあり得 ないと思うのです。逆に患者のほうに利便がある。サービスを提供する薬局を選べると いう保証もあると思うのです。そして、これはただ利便性だけではなくて、薬に関する 情報が得られるとか、そこに付随してくるさまざまなメリットも当然出てくると思いま すので、メリットとデメリット、両方の点について議論する必要があると思うのです。 フリーアクセスの解釈が難しいような気がしたわけです。 ○原委員  今回の論点整理では、処方せん自体と電子的な処方せん情報のこと、それから、医療 機関の医師が発行して患者に交付し、その患者が薬局に提出するまでのプロセスの問 題、調剤が完了してその処方せんを保存するという、いろいろなことが重なって議論が されている部分があります。そこで、その辺を少しクリアに分けて整理していただけれ ば、もう少し話がわかりやすくなると思います。  いま言われたフリーアクセスは、患者に交付されるものが処方せんですので、そこを 担保することは非常に重要だと思っております。患者は、いろいろな状況において、調 剤を受ける薬局が変わるかもしれません。ですから、そのときにいちばん良い薬局を選 んでいただけることを担保することが必要だと考えております。 ○山本委員  合同作業班、ないしは電子保存のガイドライン作業班での議論で×が付いているの は、あくまでも紙の処方せんを無くして電子処方せんだけで運用するという意味です。 紙の処方せんと電子処方せんを両方併用することはあるかというと、これはあり得ない のです。例えば紙の処方せんしか受け取らない薬局に行って調剤をしてもらうと、その 薬局で、電子処方せんは無効化しなければいけないわけです。紙の処方せんしか扱えな い薬局で電子処方せんを無効化することはできないと常識的には考えられますから、そ の併用はあり得ない。したがって、紙の処方せんは無くすことができない。  そういう意味で、電子的に作成することが×になっているわけですが、これは処方情 報の電子的な扱いに対して制限を加えているものではないのです。例えば、紙の処方せ んに二次元バーコードで処方せんに書かれた処方情報をデジタルで利用できるように書 き込む。また、RFIDを付け、その中に情報として埋め込んで、それを患者が持って いった場合に、それを扱うことができる保険薬局は、それを電子的に扱うことによって 転記や読み間違い等のリスクをかなり軽減することができるでしょう。それから、処方 せんを発行した医療機関の情報を埋め込むことによって、薬局と発行した医療機関の連 携もスムーズになるでしょう。利便性を高める方法は、処方せんそのものを電子化する 以外にもたくさんあるであろうと考えられます。  処方せんそのものを電子化してしまうと、現時点ではこういった問題点がかなり目立 ってしまうので、処方せんそのものの電子化はまだ難しいのではないかと思われます。 もし、これを全部クリアしようと思うと、相当大きなプロジェクトにせざるを得ないと 思うのです。国全体で、保険薬局のインフラストラクチャーはこうである、診療所の処 方せん発行に関するインフラストラクチャーはこうであるというようなことが一定の基 準で整備されるまでは難しいでしょう。  処方せんを電子化するので、それを一気にやろうというのではなくて、処方情報の電 子化を進めることによって、処方せんは紙で運用する。その間に、電子的に扱える施設 が増えてくるだろうと思います。それが患者のフリーアクセスを制限しない程度まで普 及すれば、その時点で、電子化というのはそれほど難しい問題ではなくなるだろうと思 うのです。  したがって、作業班としては、現時点では処方せんの電子的な発行は難しい。ただ、 だからと言って、電子的に扱うことを一切我々が拒否しているわけでも何でもなくて、 処方情報の電子化は、こういう制度とは無関係になりますが、進めるべきである。それ を進めることによって、こういういろいろな条件がクリアできるインフラが社会に成熟 するのを待つのが正解ではないかというような議論になりました。 ○三谷委員  たぶんそういうことだと思うのですが、技術の成熟を待つというのと同時に、いまe- Japanのような整備が促進され、こういう動きを推進しているということに対し社会的 にも認識が高まっているわけです。現実に、日本国内に限らず、アメリカなどを見る と、電子処方せんが、法律で義務化までいかなかったのですが、それを積極的に推進し ようという動きがあります。イギリスにおいても、やはり電子処方せんを国全体として 進めていこうという、極めて前向きな動きがあるわけです。ですから、技術の成熟を待 つというよりも、こういうことができるようにしていくということを、大きな施策の1 つ、国家的な課題としてとらえていただいて、そのための技術をさらに開拓していくと いう方向づけを提示していただきたいと思います。 ○喜多委員  関連して確認したいのですが、第6条の別表で、適用除外は規定する必要はない、と いうところです。作成者と保存義務者が異なるから適用除外を規定する必要はないと読 めるのですが、全般的にe-文書法自身が、作成者と保存義務者が異なる場合は対象と しないという意味でよろしいのでしょうか。 ○安藤参事官  処方せんの関係に当てはめますと、e-文書法で扱うのは薬剤師が処方せんを保存す るところだけなのです。要するに、薬剤師のところに来るまでの話は一切関係しており ません。薬剤師の所に電子で来たら、それを電子で保存できるように、紙で来たら紙で 保存できるようにということをしようとしているのです。  ただ、どういう形で来るかは薬剤師とは関係ない話です。作成のところで電子ではな いのだということになると、必然的に紙でしか来ないのです。電子できたものを電子で 薬剤師が保存するということを確保するために電子で作成してくださいということを、 e-文書法では一切言っていません。あくまでも薬剤師が電子で保存できるということ だけを言っています。電子作成・電子保存が処方せんの世界でないからe-文書法が適 用除外にしなければ駄目なのだというのではなくて、それは適用されているのだという ことをここに書いてあるのです。  保存の場合には、自ら作成して保存する場合があるのです。その場合、保存だけは電 子でいいけれども、作成については書面でなければいけないとなったら、一旦紙にした ものをわざわざスキャナ保存しなければいけなくなる。それはばかげているから、自ら 作成し、保存する場合には最初から電子で作成できるようにしておきましょう、という 規定を置こうとしているだけです。そして、今回はそういったものに該当しないという ことです。 ○喜多委員  作成のほうが適用除外ですか。 ○安藤参事官  作成については、自ら作成するもの以外については触れておりませんので、今回のも のは、適用除外も何も、法律の外の世界になります。 ○喜多委員  例えば保存だと、診療情報提供書も作る人と保存する人が違うということで、それが 対象にならないのだととれてしまうのかと思ったのです。 ○大山座長  この辺の話はいろいろあるのでしょうけれど、いまファックスで先に送る例は、たし か患者の同意をもらえばいいことになっていますね。私が気になるのは、ネットワーク のプリンターというものがだんだん出てきて、出力先をそこにして送ってしまうという のが出てくるのではないかということです。1回紙にして、わざわざスキャンしなくて も、そのまま行ってしまうというのはありますよね。  まだ電子化云々の話なのだけれど、ファックスで来る受信信号をそのまま取っておく と、電子イメージに変わるのです。そういうことは、いまのところ、まだ考えたくない という感じではないかと思うのですが、その辺の話はいろいろあるのです。気持はよく わかるのですが。 ○山本委員  処方せんは、薬局に行って調剤を終わると、薬剤師が判こを押します。ファックスで 送ってきたものは、まだ判こが押されてないから、そのまま電子保存というわけにはい かないのです。 ○大山座長  ファックスに電子署名することは、まだできないのですね。 ○西原委員  ちょっと話を変えます。e-文書法の対応のことで出されたものの4頁、上のほうの (3)に、過去に蓄積された紙媒体等を電子保存する場合の条件ということで、個人情 報を保護する観点から必要な配慮を行うこと、と比較的強い口調で書いてあるのです。 私もそこに出ておりましたが、前の合同ワーキンググループでの山本委員の説明では、 事実上すでに診療が終了していて、ためられているものを除くとなっています。遡って 同意をとったりするのはなかなか難しかったりして、運用上結構難しいという議論もあ って、合同ワーキンググループではそういうようになったと記憶しているのですが、そ こら辺についてのニュアンスをもう少し教えていただきたいのです。  個人情報保護法にからみますと、いまここでつくろうとしている、通達の見直しを個 人情報保護的な観点で入れましょうという動きと、たしか一昨日かその前ぐらいに発足 した、個人情報保護法の特別措置としての厚生労働省の動きと、同じぐらいの時間で3 つがグルグルッと動いているのですが、その関係をどのように整理されるのかを教えて いただきたいのです。 ○榎本補佐  スキャナによる読み取りを実施する際の患者との情報提供の関係ですが、山本委員の 資料3の説明でもあったように、患者への説明の仕方についてはいろいろなやり方があ るだろうと思っております。どういうやり方がいいのかという点は、まさにここでご議 論がいろいろあると思っております。そういう意味で、別段私がここでこうだと決めう ちをする話では決してないと思っております。  やり方としては4頁に書いたとおり、院内掲示のような形でスキャナ読取作業を行い ますということを掲示していただくことも1つです。あるいは、資料3にあったよう な、個別の同意を求めていくことも1つの方策だと思います。  ただ、その際にどの程度その実現性が出てくるのか、どの辺りでラインを切っていく のかといった辺りも議論になってくるのかと、感想ですが、そう思っているところで す。  先日、個人情報保護法のガイドラインの策定などに向けて、個人情報保護のあり方検 討会を私どもで進めさせていただいたところです。その際には、できればこの秋ぐらい を目処にガイドラインをつくりたいということで私どもから説明したかと思いますが、 この作業も、まさにそれと同時並行的にやっていくことになるのではないかと思ってい ます。ですので、今回この検討会でいろいろとご議論いただいた成果を踏まえて、私ど ものほうで、いずれ主務省令なりガイドラインを作成していくことになりますが、その 際に、整合性をとりながら、その作業は是非進めさせていただければと思っておりま す。 ○大山座長  いま個人情報保護法の話があったので、個人情報保護について。最近いろいろな所で 情報が漏れている例があります。あれは、表には公開されてないのでしょうが、聞くと ころによると、例えばアルバイトで来ている人や非常勤の方が、ある状況で辞めるよう な状況を会社側がつくった。それを、人によっては逆恨みになって個人情報を持ってい ってしまうと、社長が謝らざるを得なくなる。そっちを狙っているという話が、ぼやっ とですが、あるようです。組織の長の管理責任であることはよくわかるのですが、人に かからないで、組織の長にだけかかる。そういうことになると、たまらないだろうと思 うのです。組織としては、いろいろなことでそういうことがあり得ます。この話はあま り表に出さないほうがいいのかもしれないのですが、そういう人が増えてしまうと、も ちろん罰則等を別の方法でかけることはあり得るのですが、やんわりとした個人情報保 護の考え方だけやっていると、結構大変なことになるのではないでしょうか。これは参 考までです。 ○榎本補佐  いま座長から話のあった守秘義務の問題も非常に重要な問題です。これは、現行では 医療資格者についてかかっているわけですが、従業員等についてどう取り扱っていくの かという点も含めて、検討会でも1つの検討課題として取り上げていきたいと思ってお ります。 ○大山座長  自治体の方に申し上げたのですが、いまような話が起こると、地方選挙ばかりやって いてもしょうがない、たぶんそういうなるわけです。首長の責任問題になったりすると いうことで申し上げたのですけれど。守秘義務が地方公務員にはかかっていますが、そ うではない人もいますので、同じ話になるのは、ここです。 ○山本委員  個人情報保護法に関連した発言です。ここでも、スキャンをするときに、外部事業者 に委託する場合や第三者に監査を依頼する場合に、医療専門職でない人が患者情報に触 れるわけです。しかも委託とか何とかで。個人情報保護法上は、委託をした場合に委託 先を監督する義務があるようなことが書いてありますが、医療機関の中では守秘義務が ありますから、1つ事故があったら、その時点でそれは犯罪なわけです。  それが個人情報保護法では、たとえ委託事業者であっても、一発で罪にはならなく て、改善勧告のような形になる。改善命令に従わなければ初めて罪として成立する、罰 則が加えられるということになるのでしょう。しかし、これが我々医療機関側から見る と安心して任せられないという制限になって、本来なら専門の人たちに委託をしたほう が、経済的にも効率がいいし、うまくいくだろうということが、患者に対する説明が十 分にできないためにできない、そういうことが結構たくさんあるのです。  これについて1つは、個人情報保護法の対象が事業者単位になっていて、医療機関に 対してガイドラインを厳しくつくる、ないしは個人情報保護法の範囲の中で個別法がつ くられるということはあり得るかもしれませんが、診療情報や健康情報に関してどうで あるか。本来、個人情報というものはそういうふうに分けられるべきものだろうと思う のです。どこで扱われようと、その情報が一定の基準で保護されるべきで、その一定の 基準が、診療情報の場合は非常に厳しいのだという整理のされ方がいいのだろうと思う のですが、それができないために、こういうものでも随分書きにくいというのが現状で す。 ○西原委員  いま電子的なものは医療機関またはそれに準ずる所であるとしているのですが、外部 保存は、前の通達では、それでなくてもよいとなっています。今、一応自明的に個人情 報保護法でそれを今後は強化していきましょうという話になるのですが、ご存じのよう に、個人情報保護法では5,000件以上の人を対象にしているので、下手をすると、それよ り小さい所で外部保存とかスキャンをすると、それではないというのもあるのです。そ こら辺もこれに合わせて、保護法の範囲内でできるとは思わないほうがいいと思います し、実は、その辺りの提案も今後の外部保存のガイドラインの中に入るのだろうと思っ ています。 ○大山座長  この話と個人情報保護法は、外に出すようなところは関係するけれど、メインのとこ ろは関係してないですね。そっちはそっちでやるということにしないと、せっかく内閣 官房でもおやりになって、我々がここでも検討しているのに、何かちぐはぐな結果にな ってもよくないし、そこはうまく合わせていくほうがいい。合わせられるものは合わせ るべきですし、駄目な場合には除外しての話になるのだろうし、そこははっきりしたほ うがいいと思います。個人情報保護の話にいっていますが、今日はe-文書通則法に対 してここに示された考え方がテーマです。これについてご意見があれば伺いたいのです が、いかがでしょうか。 ○三谷委員  1点確認したいのです。資料1補足の中のe-文書イニシアティブ対象法令リスト一 覧に、厚生労働省関連のものがたくさんあります。その備考に、処方せんを含む診療に 関する記録の電子保存の可否については7月上旬にとりまとめられる医療情報ネットワ ーク基盤検討会の検討結果を踏まえ、速やかに対応方向を確定させるべく調整中とあり ます。7月上旬というのは間もなくだと思うのですが、これはどういうことを説明され ているのでしょうか。 ○榎本補佐  これはまさに本日いろいろとご議論をいただいている部分です。今日ご議論いただき たかったのは、e-文書法での対応ということで先ほど説明した、スキャンによる読み 取りなどについての方向性について、必要な条件で認めるということであれば、こうい う条件でといった辺りです。こういう条件がないと絶対に駄目だというお話であれば、 そういったお話を含めて、本日のご議論を踏まえて、できれば全体について1つの方向 を出していただいて、私どもとして、それを踏まえて、今度のe-文書法に対して法制 化の作業に対応していきたいのです。 ○三谷委員  この検討結果はどんな形で公開するのでしょうか。それとも、内部作業で、そのよう な今後のスケジュールということでしょうか。 ○榎本補佐  私どもとしては、できれば何らかの形のもので公にできるものを取りまとめていただ ければと考えております。 ○松原委員  ちょっと個人的な意見です。先ほど申しました紹介状の件も、これまであるカルテを どうするかという件も同じ議論ができると思うのですが、先ほどの、正しいかどうかと いうところで非常に問題があるという話があったと思います。原則として考えてみます と、正しいかどうかということは、医療を実際にやっていく上ではあまり関係のないこ となのです。何で問題になるかというと、訴訟が起きたときに、そこにおいて正しいか どうかという問題なのです。医療においては、むしろスキャンをしたものが原本である と判断して、その原本が正しいかどうかを担保するもの、資料として元のものを置いて おくという考え方をとれば、元のものを医師法上で定められている5年間とにかく置い ておけばよろしいのではないかと、私は個人的に思うのです。そうしませんと、実際的 な医療原場において、それもカルテだ、こっちもカルテだとなりますと二重になってし まいますし、非常にややこしくなりますので、ある意味では、検討していただいたよう に、タイムスタンプが押してあって、いくつかの条件が付けてあれば、あくまでスキャ ンして電子データになったものが原本であり、カルテである。ただ、何か問題が起きた ときに原本であることを担保するものとしての資料として置いておくという考えのほう がいいのではないか。そういう立場に立てば、紙からスキャンして電子情報にすること もこの法律の中では可能と判断してよろしいのではないでしょうか。 ○大山座長  いまの外部保存の例から言うと一部違うのは、速やかに問い合わせるという要件が外 れるということでしょうか。 ○松原委員  速やかに問い合わせるといっても、スキャンして、その原本が電子データとして入っ ているわけです。だから、トラブったときにということです。 ○大山座長  残っていると、そっちが原本だから、法律の適用を外しても同じことができるのでは ないかという解釈もあるような気がするのです。 ○松原委員  原本はスキャンをして、いくつかの条件が合って、それを電子データとしたものが原 本である。ただ、その原本が正しいかどうかを担保するものとしての資料として置いて おく。法律的にそういう位置づけにしていただければ、粗末にすることもないわけです し、二重カルテ、二重原本にならなくて済むのではないでしょうか。 ○大山座長  委員のおっしゃる話はたぶん皆さんも同じで、非常にまともなご意見だと思うし、論 理的だと思うのです。ただ、法律面から見るとちょっと違う可能性はないかというのが 私は気になるだけなのです。解釈論として、原本であるということを法律が担保する、 でも実態は残っているということですね。 ○松原委員  違いがないということを証明するべき資料であると考えたらいいのではないでしょう か。 ○安藤参事官  制度上、技術的な条件を満たしているものをもってカルテとみなすという形に厚生労 働省がするのであれば、残された紙を廃棄するか、しないかはそれぞれの方々のご自由 な世界だと思うのです。その方々が訴訟のために残しておきたいと言われるのであれ ば、それは残されている。どちらが原本かというのは訴訟上あまり意味がないのです。 ○松原委員  訴訟になったときに、電子データが正しいということを証明するための資料、担保上 の資料になると解釈していただければいい。あくまでも原本は電子カルテ上のデータで す。 ○安藤参事官  でも、訴訟上は裁判官がどう判断するかという話です。2つあれば、それだけ優位に なるかもしれませんので、どちらが原本かということでは、訴訟戦略上の話をすればい ろいろあるかもしれません。 ○松原委員  そこをクリアにしておかないと結局医療現場として混乱しますので、ある程度そこの ところの話をきちっとしてしまえば済むのではないでしょうか。あくまでそれが5年間 にわたって原本であることを担保するための資料という位置づけにしてしまえば済むの ではないかと、私は個人的に思うのです。 ○安藤参事官  それは紙のものはあくまで残しておくべきであるというご議論なのでしょうか。 ○松原委員  あくまでそれが問題となったときに担保する資料である、証明する資料であるという 位置づけであって、もうそれはカルテの一部ではないと考えたらいかがでしょうか。 ○安藤参事官  カルテの一部でないとすれば保存義務はかからないということです。 ○松原委員  医師法上の保存義務はかからないけれども、医師法上の保存義務に準じて置いておけ ばその間は担保できるという資料になる。  ただ、そういうことを言いますと、逆に言えば民事訴訟上のそれを証明しなければい けない期間、それが原本であることを証明するために残さなければいけないという議論 になってしまいますので、医師法に関わるものは医師法に規定して、5年間の保存義務 を資料として解釈すればいいのではないかと思うのです。 ○大山座長  運用上残しておいたほうがいいのではないかという言い方を厚生労働省が言うのでは ない。誰が言ってもいいということですね。 ○松原委員  厚生労働省が言ってくださったらそれで話が済むのだと思うのですが。 ○大山座長  ただ、制度的な面から見れば、廃棄してもいいということは、どちらでもいいという ことです。いろいろなことを心配なさるのならそれを残しておくほうがいい、という言 うことですね。確かにそれだと法律上の解釈はすっきりするかもしれない。 ○松原委員  5年以内に捨ててしまいますから、それが正しいものであるという証明がその医療機 関にできないわけです。 ○大山座長  逆に言うと、そのとき技術基準を出す理由は。逆に、出すと危ないとおっしゃってい ることにもなるのですが。 ○松原委員  簡単に言えば、大きな病院でしたら認定している人が写すとかいう考えもあるのです が、大多数の小さな診療所や小さな病院で、そのような方に来ていただいて、いちいち それをやってもらったら、コストがかかりますので、現実問題としてはなかなかできな いのではないかというところを言っているのです。 ○山本委員  資料3の4に書いたように、e-文書法が適用になろうと、どうであろうと自分たち は電子保存はしない。原本の診療録は外部のどこかに必ず保存はしてある。ただ、保管 すると取り出すのが大変だから、普段の診療ではスキャンした情報を運用上の情報とし て使う。このことに関して現在何も制限はないと考えていいと思うのです。  もちろん診療に差し支えない制度を維持することが重要で、それに対しては一般にわ かりやすい形で多少の指針をつくることが必要かもしれませんが、別に資料として置い ておかなくても、原本として保存しておいて、スキャンしたデータを使うことに関して は、たぶん今、法的な規制はない。つまり、それをやることはできると思います。 ○松原委員  逆に言えば、そのデータを失ってしまったときに、原本であれば医療法上の違反にな るわけです。ところが、ただ単にそれを訴訟のための担保であるという位置づけにして おけば、罰則は加わらない。訴訟が起きたときに、訴訟上に不利になるだけ、そこのと ころが大きく違います。 ○山本委員  ただ、個人情報保護法上の問題が出て、資料であってもそれは患者にとっては個人情 報になりますので、安全管理義務はどうしても、個人情報保護法上生じます。 ○松原委員  どんなものでも個人情報である以上はきちっと管理しなければならないと思うのです が、要するに、その資料の位置づけが法律上どうなのかを議論しているわけです。 ○大山座長  スキャナについての技術基準のような、何か一定の基準の話が出てくる可能性がある のですが、これは認定するつもりはないのでしょう。これ以上のものには配慮してくだ さい、十分考慮してくださいとか、そういう言い方だとすれば、いまの話ですっきりし ているような気がするのですが。 ○榎本補佐  どうすれば真正性を担保できるかという、担保の仕方の議論になるだろうと思うので す。  制度はいくらでも仕組みの仕様はあるのですが、当然、これまでの医療法の世界での 取扱いの仕方なり、あるいは行政としての関与というものがどれぐらいであるべきかと いう議論の中で、どうあるべきかということになると思います。  いろいろな医療安全の確保、あるいは患者への情報提供や情報の保護のところで従来 からお願いしていることは、まず医療機関自身の責任の下で行っていただいているとい うのがいままでの取扱いの流れとしてあるわけです。言ってみれば、それに対して更に 行政が関与していくというのは、これまでの積み重ねの中での整合性という観点からす ると、なかなか難しい側面が多いのではないかという気はしております。 ○大山座長  保存義務だから、どんな形でスキャンしてもいいというわけにはいきません。そこは はっきりしたほうがいいですね。 ○榎本補佐  スキャンする機械なり段取りの基準というものは主務省令の中で整理していくことに なると思います。 ○大山座長  確かに方向としてはそうなのでしょう。あとは中身を現実に落としたときに、使う人 がどれくらい出るかというところは、疑問点も無きにしも非ずです。一応整理されてい るのですが、ほかにはいかがでしょうか。 ○原委員  処方せんに関してなのですが、いままでの議論が処方せん本体の話、中間取りまとめ 以前のことが出ていて、調剤済みとなった処方せんの保存に関しては今回出てきたよう な感じがあります。以前、疑義照会ということで検討していただいたときに、医師によ って処方せんの処方が修正されるということも可能性としてあるという話が出ました。 調剤済みとなった処方せんの保存については、持ち帰って検討したいと思います。 ○大山座長  いまのお話は、調剤済みでもらった処方せんをスキャナで取って、それを捨てられる かということですか。 ○原委員  資料1の補足で、薬剤師法に関して調整中となっていて、その備考で7月上旬取りま とめというのがどういう内容あるいはレベルとして受け止めておいたらよろしいでしょ うか。 ○榎本補佐  具体的なスキャンの条件などは主務省令を定める中で、来年4月が施行予定として見 込まれておりますので、それまでに整理し、具体的な省令なりガイドラインの形で策定 することになります。7月上旬の段階では、大まかな方向を整理することができれば、 とりあえず私どもとしては内閣官房の要請に応えることができるのではないかと思って おります。 ○大山座長  来週いっぱいぐらいでもよろしいですか。急ぎのようですが、原委員はそれでもいい ですか。 ○原委員  持ち帰って検討しますが、法令の関係で、医薬食品局なども当然関係してくるかと思 いますので、それも含めて検討させていただきたいと思います。 ○榎本補佐  スケジュールについて、処方せんに関してはe-文書法との適用関係で、作成段階を どうしていくかという話が議論になってきますので、それとは切り離して整理できるの ではないかと思います。そういう意味で、8月下旬ごろまでに、時間をかけて議論をし ていただきたい。 ○榎本補佐  私どもには医薬食品局、保健局といった関係部局がありますので、そういったところ と相談しながら整理いたします。 ○大山座長  とりあえず意見をいただくには1週間ないし来週いっぱいぐらい欲しい。そして、問 題がありそうだったら、逆にそう言っていただくほうがよろしいのではないかと思うの です。できるだけご協力のほどお願いいたします。皆さん方、ご意見等があれば是非い ただきたいと思います。  今日の議論につきましては私ども合同作業班及び事務局で論点を整理して、再度委員 の皆様にお伺いして、本件に対する検討会としての検討結果を取りまとめていきたいと 思いますが、いまのような対応の仕方を基本的にご了解いただけますか。                 (異議なしの声) ○大山座長  ではそのようにいたします。次回の検討会について、事務局から連絡をいただきま す。 ○本補佐  次回の本検討会は、7月29日(木)午後3時から5時の時間帯で、厚生労働省6階の 共用第8会議室で行います。追って文書でご依頼を申し上げますが、あらかじめ日程の 確保等にご配慮を賜れれば幸いです。よろしくお願いいたします。 ○大山座長  本日は長時間にわたり熱心にご議論いただきありがとうございました。また、内閣官 房のほうから、お忙しい中おいでいただき厚く御礼申し上げたいと思います。以上で閉 会いたします。どうもありがとうございました。 (照会先) 医政局研究開発振興課医療技術情報推進室管理係 03−5253−1111(内線2587)