04/06/18 国際協力事業評価検討会(第4回保健医療分野)議事録 1 日時 平成16年6月18日(金)14:00〜16:15 2 場所 厚労省専用第13会議室 3 出席者 【会員】  青山温子会員(名古屋大学大学院)             上原鳴夫会員(東北大学大学院)             中村安秀会員(大阪大学大学院)             小林廉毅会員(東京大学大学院)       【専門会員】行松泰弘専門会員(文部科学省)             國井修専門会員(外務省)             中野滋文専門会員代理(建野正毅)(国立国際医療センター)             中野滋文専門会員代理(仲佐保)(国立国際医療センター)             橋爪章専門会員(国際協力機構)             野崎慎仁郎専門会員(国際厚生事業団)       【事務局】 村木国際課長、福田国際協力室長、             吉田補佐、釜石補佐、岩本専門官、細川専門官、北村専門官 4 議事 ○吉田補佐  定刻になりましたので「国際協力事業評価検討会(第4回保健医療分野)」を開催い たします。まず出席者の確認ですが、長谷川会員と國井専門会員が遅れておりますが、 先に始めさせていただきます。  また今日初めて出席される方をご紹介いたしますと、中野専門会員の代理で仲佐様、 4月からですが、吉澤専門会員の後任として橋爪様です。  事務局は、新しく国際課に来られた細川専門官、北村専門官です。本日はもう1人中 野専門会員の代理で建野様に出席していただいております。  配付資料の確認ですが、資料の一覧に沿って説明いたしますと、本日の「議事次第」 「メンバー表」「席次表」です。資料1は「第3回の議事録」で、すでに先生方の確認 を取り、ホームページ上で公開しているものです。これについては追加があり、最後の 頁に、国際協力事業評価検討会の設置についての要領が付いています。これについては 6で、新しく労働分野の検討会が開始されましたので要領を変更しています。予定では 今年度末を目処に、保健医療分野と労働分野の合同で会議を設定したいと事務局で考え ております。資料2は「事前に提出されたコメント」で、中村先生からコメントをいた だいております。資料3は「第3回検討会における各WG報告に対する意見の概要」 で、すでに電子メール等で先生方の確認を取っております。資料4は本日報告いたしま す「WG3(座標軸)の結果概要」、資料5は「WG2(データバンク)結果概要」、 資料6は「WG1(人材養成)中間報告」です。  資料番号はありませんが、本日配付している資料で左にMDGと振ってある2枚綴の ペーパー、右上に「上原鳴夫」と書いてある1枚紙のペーパー、雛型1、雛型2と両面 にコピーされていますが、ワーキング・グループ2に関係する追加資料で、データベー スの雛形です。もう1つは、ワーキング・グループ1に関係して国際厚生事業団からの 「アンケート調査結果について」です。資料は以上ですが、よろしいでしょうか。  それでは、中村先生、進行をお願いいたします。 ○中村座長  ここしばらく3つのワーキング・グループに活発にやっていただいて、かなり具体的 な成果が出てきているような気がします。今日は2時間という限られた時間で、この3 つのグループの報告を全部するのは非常に大変ですが、ご協力をいただきながら、「議 事次第」に沿って活発なディスカッションをしていきたいと思います。  3、2、1のワーキング・グループが全部、順調にいろいろな成果を出しています が、今日はワーキング・グループ3の座標軸から説明していただきます。ワーキング・ グループ3は初めてで、ワーキング・グループ2、1は前回に引き続き2回目というこ とで報告していただきたいと思います。では、まずワーキング・グループ3の座標軸の 検討結果について、事務局から説明をお願いします。 ○吉田補佐  それでは、資料4のワーキング・グループ3の結果について報告いたします。資料4 は最初の2枚が結果概要となっており、別紙1及び別紙2が添付されています。  ワーキング・グループにおける作業をどのように進めたかですが、まず事務局で過去 3回のこの検討会の議事の記録を基に、各会員及び専門会員の意見をすべて網羅して整 理しました。その際に問題提起型の意見が非常にたくさん出されており、それをクエス チョネアという形で整理をしたものが別紙1です。  これを材料にして、例えば過去のプロジェクトについてどうだったのか、あるいはそ れを未来形に考えた場合に、今後どうするのか、あるいはどうすればいいのかと過去形 を未来形に変換することで仮説を立てられるのではないかと考えた次第です。  それを踏まえてワーキング・グループ3では、クエスチョネアに対する回答を提起す るための議論を行い、各メンバーからの意見をいただき、それを網羅したものが「結果 の概要」になります。いろいろな視点に基づき、非常に幅広く意見が出されています。  これらの意見をさらに「論点と戦略」という形で事務局で整理したものが別紙2で す。ポイントを説明しますと、座標軸の考え方ですが、厚生労働省の責任省庁としての 方向性、すなわち今後厚生労働省がODAにどういう政策的なインプットをしていくの か。そのための軸と座標を決めるということです。  4つ目の○ですが、軸は「目標」「システム」「リソース」の3つに大きく分類しま した。それぞれどういう論点と戦略という形になったかというと、軸の1「目標」です が、論点としては、ワーキング・グループでは大く3つ出されています。  1つは対象国と地域です。具体的にはミレニアム開発目標だけを目標とした場合、あ る程度の発展国は対象から除かれてしまう。あるいはODA大綱を目標とした場合に は、アジア地域が重視となります。一方で、開発が進んでいる国でも国内格差があっ て、水準が非常に低い所もあります。別の視点として、イラク復興支援のように、政府 の外交方針として決定されるものもある。したがって、これらの視点から、対象とする 国のレベルや地域を絞るのかどうかということです。  もう1つが、対象の領域です。これはミレニアム開発目標だけを、仮に目標とした場 合に、保健システムの構築や保健セクターの管理、あるいはリハビリテーション、食品 衛生といった分野は対象から除かれてしまうわけですが、MDGだけを目標にするの か、あるいは保健医療全体を考えるのかどうかです。  3番目が、人材養成との関係です。保健システムの構築をもし対象に入れるのであれ ば、中長期的な政策アドバイザーの養成が必要であるが、もしミレニアム開発目標だけ を目標とした場合には、従来のままの方法で良いことになる。したがって、政策アドバ イザーの養成を考えていくのかどうかです。  これに対して戦略案として挙げられるのは、まず保健システムの発展をどう支援して いくかが保健医療協力の基本目標であるという点、ミレニアム開発目標という目標と、 それ以外のものに分けて保健医療全体を考えるということです。  軸の2番目はシステムです。まずニーズについてですが、これについては論点が2つ あって、1つは途上国の分類、もう1つはデマンドとニーズという観点です。まず途上 国の分類ですが、ニーズがその国のレベルや課題によって国ごとに異なる。またニーズ といった場合にデマンドが一人歩きしやすく、真のニーズとの乖離が生じるのではない か。  これに対して戦略の案としては、途上国をレベルや課題の異なるいくつかのカテゴリ ーに分けて考える。また誰がそれを求めているのか、またどれを選ぶと早く動くのか、 真の必要性は何かということを明らかにするということです。  スキームですが論点としては、外部機関への委託、国際協調の2点が挙げられます。 まず外部機関への委託ですが、直接実施するよりも、NGO等の外部実施機関に委託し たほうがよい場合もあるのではないか。したがって、NGO等への外部委託を推進する のか、あるいはそういう受託機関を育てる方針を持つのかどうかという点です。  次に国際協調です。これは例えばWHOのような国際機関のやり方と日本のやり方に 違いがある場合に、国際機関のやり方に近づける場合、あるいは独自のやり方をとる場 合とがあるが、そういう調整が必要ではないか。したがって、戦略案としては、NGO 等の外部機関への委託を判断するための基準を明らかにする。同時に、委託側のプログ ラム全体を企画する知識・能力を強化する。もう1つは、マルチ・バイ連携、国際協調 にかかる情勢を組織的にバックアップする体制を整備するということが挙げられまし た。  企画・実施体制についての論点は4つ出てきて、まず援助のやり方、評価と広報、援 助側と被援助側の役割、決定権ということです。援助のやり方ですが、日本の援助はプ ロセスを重視し、長期的な計画性をもって実施するが、他のドナーは成果を重視する。 国民の一般意見としては、成果重視を希望しているが、このプロセス重視の方針を変え るのどうかです。  評価と広報ですが、プロセス重視のやり方でも長期的には成果が出るはずであり、こ れをどのように評価していくのか。またそのための国民への説明の仕方をどうするの か。  援助側と被援助側の役割ですが、現地で実施の仕方をどう組むかは、援助側と被援助 側の両方のの問題で、被援助国の各セクターでは、マルチ・バイを統合管理できる能力 が不足しているという実情があります。  4番目は決定権です。誰が決定権を持つのか。どういう決定をするとうまくいき、あ るいはうまくいかないのか。  これに対して戦略としては、誰が決定権を持って、どのような決定をするとうまくい くのかを明らかにする。また被援助国の発展段階に応じて、どういう援助を与えるか。 被援助国におけるセクター間の調整をどのように行うか。そして被援助国ごとに異なっ たアジェンダをどう調整していくかを明らかにする。また目標値を設定して、達成の状 況を広報していく。  3番目の軸として、リソースです。ここで論点としてあったのは財源で、限られた政 府予算の中で、例えば、UNICEFやUNDP拠出金などとの組合せが相乗効果を出 せないかどうか。  これに対しての戦略案としては、マルチ・バイ全体の財源の使われ方を把握して、そ の中で国際機関と拠出金との組合せが相乗効果を出せないかを明らかにする。また緊急 援助費や研究費等との組合せについても同様の検討を行う。  これらの3つの軸とは別に、その他として、必ず考慮しなければならない問題で、 ジェンダー、環境、廃棄物の問題などについては、軸とは別に常に配慮しなければなら ないという意見が出されておりましたので、このように記載してあります。 ○中村座長  大変な作業を簡潔にまとめていただきまして、ありがとうございました。ワーキング ・グループ3(座標軸)で関係された会員や専門会員から補足があれば、是非お願いし たいと思います。 ○青山会員  ワーキング・グループで出されたさまざまな意見を、ここまでまとめていただいたこ とについて、事務局に感謝しています。少し付け加えさせていただきたいと思います。  まず、「軸2・システム」の「1.ニーズ」のところですが、誰のニーズなのか、す なわち、途上国の中にもいろいろなグループの人々がいるので、どういうグループの人 々のニーズなのかを考慮するべきではないかと思います。  次に、「2.スキーム」の論点のところに、NGO等への委託も考えたほうがよいの ではないかとありますが、この際もう一度原点に戻って、ODAの役割、すなわちOD Aではどんなことをするのかを考えるべきではないかと、あらためて思いました。  国際協調に関しては、例えば国際機関の出している世界的戦略がある中で、日本のO DAで独自のものをやるとしたら、それなりの理論武装が必要となると思います。世界 戦略の枠の中でやるのなら、日本のスキームとの調整を考えなければならないかもしれ ません。 ○中村座長  ほかの会員、専門会員の方から何かございますか。それではディスカッションに入り たいと思います。座標軸は、この会議では今回が初めてで、もう少しこういうところを 聞きたいなどというご意見も含めて、どなたかありませんか。 ○上原会員  当然そうだと思うのですが、軸に大きく分けて、目標、システム、リソースと書いて ある、このシステムというのは援助システムということですね。援助システムをニー ズ、スキーム、リソース、その他と区分したと理解してよろしいですね。 ○吉田補佐  目標とシステム、あとリソースという形に分けています。 ○上原会員  目標というのは、システムから取り出して、この目標をやっていくための援助システ ムをどう作るかという、その援助システムを作るためにリソースをどうモービライズす るかという認識で進めておられると理解してよろしいですね。 ○吉田補佐  はい。 ○上原会員  もう1つの質問ですが、目標のところが、私はこの機会にいい形のものが提案できれ ばいいなと大変期待しているのですが、例えば、日本が独自の国際戦略の中に、これを 位置づけていくとしたら、そういうものを作り出していくのは、どこであるべきなのか ということについては、議論の対象にはなるのでしょうか、あるいはなっていくのでし ょうか。 ○吉田補佐  いくつか対象になると思っております。 ○上原会員  その辺は今回の議論ではどのようになっているのでしょうか。と言いますのは、日本 は援助について、日本の国民のどこからかというのは、私は憲法からしか出発できない と思うのですが、どこから起こして、援助というのは日本にとって何なのかをきちんと 押さえて、そういう縛りがないと各省庁にしても一貫性のある計画は立てられないと思 うのです。そういうことをどこがこれだと言い、あるいはそれを担保するかという仕組 みがあるのか、あるいは作れるのか、一応建て前としてあるが、事実上、あと10年ぐら いはそういうのは難しいというのであれば、もう少しプラクティカルなというかセカン ドチョイスをしていかなければいけないと思うのです。私はこのようなディスカッショ ンを踏まえて、ポリシーのコンシスタンシーを維持するようなものを、うまく提案して もらえるといいなという期待があるものですから、質問しました。 ○吉田補佐  回答になっているかどうか分かりませんが、どういう方向を示すかということについ ては、座標軸の考え方の最初の○で先ほど説明したのですが、今後厚生労働省がどうい う政策的なインプットをしていくか。そのための軸を決めるのが今回の目的です。  「もともとこれは何を目標にするのか、何を対象にするのか」という質問に対して、 対象国、地域、領域、人材育成との関係という論点が出て、ここに示したような保健シ ステムの発展を支援していくこと、もう1つが、全体を考えるという方針を、ここに示 したわけです。例えば、システムのスキームにも書きましたが、国際協調で説明しまし たように、国際機関、あるいはほかの機関のやり方があった場合に、そこと協調して合 わせていくのか、あるいは独自の方法を示して、その独自の方法をもって一緒に協調し ていくのかという2つの方向性があるのではないかと思います。そいう課題について、 それをこの中で明らかにしていく、決めていくことが作業として出てくるのかと考えて おります。 ○中村座長  上原会員の言っているのは、いまのだけではなく、そのようにして一応今回ここで決 めたとしても、それがまた刻々変わっていくわけです。ニーズも変わるし、情勢も変わ ります。そのときにまた新しいというか、少し戦略を考えていくブレーンの機関という か、組織なりが要るのではないか。 ○上原会員  それもワン・オブ・ゼムですね。基本は、いま非常に重要な問題が、まだ始まったと ころだと思いますので、この中にも本当に考えなければいけない問題をきちんと挙げて くださっておりますし、アウトプットを期待しています。基本的に軸と考えたときに、 その軸はどこかでアプルーブされるものなのかどうかです。  例えば、ここでこう決まって、これで行こうとなれば、それに従った体制を作らなけ ればいけません。ここではシステムと言われていますのでシステムを作らなければいけ ません。そのためのリソースがきちんとできるようにしなければいけない。従来のもの を少し使い方を変えるだけではなく、根本的にちゃんといくものを作らなければいけな い。  ただ、それがアプルーブされないということであれば、また建て前はこうだが、実態 はこれでやり繰りをしてという従来のことで進んでしまうので、同時にここで出してい く、とりわけ目標のところが、少なくとも10年あるいは15年一貫して、「これで行ける 」ということを固めていく仕組みを同時に作っていかないと、素敵な意見はいっぱい出 ても、実際にはなかなか実用性を持たないのではないかという不安がありましたので、 そういうことも併せて検討していただけるかどうかという質問をしたのです。 ○中村座長  分かりました。 ○國井専門会員  いまの関連で、厚労省と今後の政策的なインプットについて十分煮詰めていないの で、外務省からの情報提供ということで話します。上原会員がお話になっていたのは、 憲法から始まるのでしょうが、ODAの世界では、ODA大綱がプリンシプルとしては あります。これが昨年改定になりました。  その次にあるのが中期政策です。これも今年5年目ということで、中期政策の見直し という話が出てきています。この中期政策というのは、大体5年を目処にした政策です が、保健医療の部分に関しては、以前IDT(International Development Target)に 基づいて書いてあります。ですから、軸の中でMDGをどう考えるか等に結び付いてい く話だと思いますが、MDGと結び付けてどのような形で、中期政策の中の保健部分を 変えていくかに反映されると思います。時期的なところがまだ残るし、十分煮詰めては いませんが、外務省としては、今年この見直しが始まりつつありますので、すでに私の ほうでも考えている部分があり、この意見をいろいろな形で、是非取り入れさせていた だきたいと思っています。  これについて私からのお願いは、もう少し具体的なものをいただけないでしょうか。 議論の段階ではなく、中期政策になりますと明文化して書きますので、そのときにはこ れということで書く必要があると思っています。  非常に個人的な意見ですが、私はMDGに関しては、これは世界目標として非常に重 要な部分だと思います。ただ、この中にもお話がありましたように、最貧国と中貧国、 その中間にいるような国とで疾病構造の違いもありますし、かなりニーズも違うし、援 助体制も違いますし、オーナーシップ、リーダーシップの成熟度も違いますので、例え ば、5つ優先課題を我々としてやったとしても、それはある程度、次の段階でもう少し 細かい戦略の中で分けていく必要もあるのかと思います。  アジア重視ということですが、重視というのはどういうことか。重視と言ったら、そ こにすべてお金をアロケーションして、ほかは無視という、いわゆるアロケーションの 部分を多くしていくという話なのかと思うのですが、150カ国以上援助している日本が、 選択と集中ということで、完全にある程度の所を排除して、どこかに集中させるのか。 課題ごとに集中する国を決めていくのか。その場合にどういう指標を使ってやっていく のか。むしろそういうものを具体的にいただいたほうがいいかと思います。  中期政策は、保健医療だけではないので、ほかの部分も入っています。ですから、中 期政策の中で保健医療の入れられる部分はもちろんまだ決まっていませんが、前回の中 期政策で言いますと、せいぜいA4半分程度の中に収める形である程度の骨子を作り、 それ以下は国別援助計画になってしまいます。  ところが、国別援助計画も保健医療、感染症が重要だという程度で、それをどのよう な形でやっていくかという介入の部分について選択的な介入、戦略的な介入を書いてお りません。これも実はまだ十分に煮詰めていない話ですが、セクター別戦略が必要にな ってくるということで、これはまだ今まで作っていませんので、中期政策と国別の間に セクター別として、例えば保健医療、教育、環境などができればいいなと思っておりま す。 ○青山会員  國井専門会員に質問ですが、中期政策は従来どおり作るのでしょうか。国別計画策定 を進めているので、中期政策はもう必要ないのではないかという議論が出始めていると 思いますが、今回は従来どおり作るというのが外務省の方針でしょうか。 ○國井専門会員  正式にはまだ決まっておりませんが、私が感じているところでは、中期政策の見直し という形で、中期政策は必要だろうという個人的な意見を持っています。  それはどうしてかというと、まず国別はそれぞれの国で重要な部分を書いていくわけ ですが、ODA大綱ですと、非常に粗いというか、重点課題に対してどのようにアドレ スするかという細かいことを書いていませんので、その中間は必要だろうと思っていま す。 ○小林会員  ワーキング・グループ3(座標軸)の見通しに関しての質問ですが、ワーキング・グ ループ2で、データベースの分類項目の中に広い意味での目標として、ODA大綱の重 点課題と、ミレニアム開発目標の2つの項目を立てています。しかし、保健医療分野で はそれらの各項目に当てはまらないものもあるし、グループ3の報告でも、日本的なも の、例えば、プロセス重視などの新しい分類が指摘されていたので、データベースにも う一つ分類項目を設けておけば、将来的に傾向の分析などに役に立つと思います。例え ば人づくりやグッドガバナンスなどの新しい目標の見通しがあれば教えていただきたい と思います。 ○吉田補佐  まさに小林会員がおっしゃったところは、最初の目標の論点に該当する部分だと思い ます。戦略の2つの○に示したように、具体的には書いていないのですが、一応方向と して保健医療全体を考える。したがって、MDGでは分類できないものについても対象 にするという方向は、ワーキング・グループ3では出しています。 ○小林会員  スケジュール的に、分類に使えるような軸は、ワーキング・グループ3で最終的に出 てくる見通しでしょうか。 ○吉田補佐  それはどこまで作業するかということにも関係してきますが、例えば今日検討会が終 わって、たぶんこの次はもう一回ワーキング・グループ3を開いたときに、今日の検討 会の意見を踏まえて、これを精査して、今日出された意見について、もう少し詳しく書 ける部分があれば書いていく作業をしたいと思っております。 ○中村座長  これは叩き台ですので、ほかのワーキングのほうから軸のところで、こんなことをし てほしいという要望を出していただいたほうが、ワーキング・グループ3は助かるので はありませんか。 ○小林会員  要望ですが、ODA大綱とMDGでは目標の分類としては物足りないところがあると 私は感じているので、もう1つぐらい目標の分類の軸を、ワーキング・グループ3で出 していただけるといいのではないかと思います。そうすれば過去の傾向、将来のプロジ ェクトづくりの参考になるのではないかと思います。 ○中村座長  いまもご意見をいただきましたが、ワーキング・グループ3は、今回1回目の報告な ので、質問も結構ですが、時間的なこともあって全部できるかどうか分かりませんが、 要望をどんどん出していただきたいと思います。 ○行松専門会員  質問というか要望です。システムのところで、論点の「外部機関への委託」で、NG O等の外部実施機関へ委託したほうがよい場合もあるのではないかとありますが、この 場合の外部実施機関はどのように定義をされているかということと、それに関して組織 としての大学を、この文脈でどのように捉えておられるのか。要望としてはそこはきち んと大学も含め得る形でお考えいただければと思っておりますが、いかがでしょうか。 ○吉田補佐  これについては、そこまでの細かい議論は今回ワーキング・グループ3ではまだして いませんが、NGO等を含む外部実施機関ということで、例えばこれについては厚労省 の事業であれば、厚労省からどこかに委託する場合にそれをやっていただける機関とい うことで、その受け皿となるキャパシティーのある所に関しては、すべて対象になると いう前提で考えております。ですから、必要であれば大学みたいな所も当然対象に入っ てくるという想定で考えております。 ○中村座長  ほかにご意見、ご要望はありませんか。私はいくつか思ったことと要望があります。 1つは軸1の目標のところは、國井専門会員からあったように、ここで何をするのか を、かなり具体的にもっと絞ったほうがいいのではないか。目標はあまりきれい事を言 うと、では全部やるのだという話になってしまうわけで、もちろんすべていろいろな要 請でやるのですが、折角これだけのグループの中で議論したら、一応何に重点を置くの かというのは、もう少し突っ込んで出したほうがいいのではないかという気がします。  特に今日などは皆さんの議論で、欧米などがやるように、重点事項を決めたらそれ以 外のは一切やらないとするのか、重点事項を決めるが、ほかのものも場合によってはや っていくという日本式の重点事項なのかは決めておき、でも目標に関しては、もう少し 突っ込んだほうがいいのではないかというのが私の印象です。  もう1つは、システムのところでいうと、上原会員からも話が出たように、ニーズと スキームと企画・実施体制に分けたのはいいのですが、これで十分なのか。もう1つ は、こういうシステム全体が状況の変化で流動的に変わっていくわけてすから、それを 決めていくポリシーメーキングする場所とシステムはどこに置くのか。もちろん国際課 が中心になるとしても、国際課だけではできないわけですから、大学研究機関、外務省 などと一緒になって、どういうシステムでこの状況に合った新しい判断をしていくのか を決めておかないと、1度決めて、あとは各々の実施機関でやると言っていると、また 従来どおりになってしまいそうな気がします。そういう意味では、ブレインをどこに、 どう持つかというやり方を、外務省、JICAも入って決めておかないといけないので はないかという気がしました。  もう1つは、私自身の個人的な感じかもしれませんが、とても大事な指摘がいくつも あります。例えば、戦略としてNGO外部機関への委託を判断するための基準などはす ごく大事で、広報の方法をどうするかという戦略です。これに関しては、私がいま他所 に出ていて思うのですが、国民から見たら、国際協力で最も期待されているのは、教育 と保健医療です。多くの国民に聞いたら、誰もODAで自分の税金を使って、ダムなど を造ってほしいとは思っておらず、教育や保健医療をしてほしいとみんな言っていま す。保健医療でこんなにいい活動をしたという話がほとんど流れていません。緊急援助 だけはみんな知っているのですが、「緊急以外にお医者さんが行っても、何かやってい るのですか」というのが、実は一般の市民が思っていることなのです。根本的に広報の やり方が間違っているというと言い過ぎかもしれませんが、広報の仕方を本気で考えな ければいけません。  広報の方法でもそうですが、研究班を作って、NHKや新聞の人も入れて、我々も入 って広報をどうしたら市民に本当に分かってもらえるのかは別にやっていく。NGOと の基準も、このメンバーで決めてしまったらまずいので、NGOの人をメンバーに入れ て、別の研究班を作って、そこで基準を作っていくという参加型で、広報やNGOは問 題があるというので、今回のこの検討会で指摘して、別の所に落としていったほうがベ ターという印象を持ちました。 ○青山会員  中村座長のご意見を伺っていて思ったのですが、目標、重点項目について、ここで絞 り込んで決めたときに、ODAにどこまで反映できるのだろうか、本当にここでODAの内容 を決定できるのかと、懸念しております。  ODAには政治的に決められるものも少なくないと思いますが、専門家の立場からは、 その場合でも技術的にインパクトのあるものをやってほしいという意見が、ワーキング ・グループでも出されました。まずこんなことはないと思いますが、例えば、現在のイ ラクで高度医療支援をしようという話が出たとして、そのときに、イラクで医療支援を するのはよいが、高度医療ではなくこういった分野に取り組むべきだという縛りを、目 標・重点項目をさだめることによって、どこまでかけられるのだろうか、そこがよく分 からないのです。重点項目を含めてほかのこともやるのか、それとも縛るのかというこ との以前に、厚生労働省の検討会で作った目標で、縛りがどこまでかけられるのかとい うことを疑問に思っております。 ○國井専門会員  答えになるかどうか分かりませんが、いま非常に必要になっているのが、中央として きちんと持つべき戦略や政策もそうですが、もう1つは各大使館およびJICAの事務 所で持つガイドラインだと思います。この辺のガイドラインがほとんどない中で、いま 案件を作っています。企画調査員や政策アドバイザー等、全体の保健医療の援助が見ら れる人、またその計画、案件形成にかかわれる専門家がいる場合はいいのですが、そう でない場合はJICAの保健担当者、と言ってもアフリカのほうに行きますと、保健、 医療、教育の2、3のセクターを持っていますので、1つのことに集中できない。また は大使館の経済協力担当者は非常に手がいっぱいの所があって、本当に現地のニーズが なかなか測れないという中で、ガイドラインがあるとないとではかなり違うのです。現 地はかなり必要としています。そういう中に反映できると、この検討会もいいなと思っ ています。  情報提供ですが、ここに書いてあるいくつかの非常に重要な点で、すでに進行してい るものがたくさんあります。例えば、NGO、またNGO等の外部機関ということで、 まさに大学も入っております。サポートセンター等によってこれから非常に広がると思 うのですが、実際には少しずつ提案型のプロトコルや最近の草の根、人間の安全保障の 部署も、少しずつ戦略的パートナーとしてNGOと大学と議論していこうという話にな っています。これはまだ現実になるかどうか分かりませんが、一緒に案件発掘をしよう という話にまで行っていますので、少しずつ広がっていくと思います。  ただし、問題は戦略的なパートナーとして目標をどのような形で共有化するか、それ に対しての戦略をどのような形で、一種のガイドラインにまで持っていくかという話、 今度は実際にお金を付けるときに、JICAの専門家とNGOでは単価がかなり違うな ど、いろいろな問題がありますので、その辺は具体的にやらなくてはいけないと思いま す。  マルチ・バイの話でUNICEFやUNDP等の拠出金の組合せが相乗効果を出せな いかという話ですが、実際にはマルチ・バイをどのような形で戦略化するかも議論にな っています。すなわち今までは拠出金、分担金、日本の信託基金という形でいろいろ出 していますが、お金は出すが、本当の意味でのパートナーシップがなかなか持ち切れな かった。それはまず人と戦略での対話が十分ではなかったということもあると思いま す。ですから、いまマルチとバイをどのように組み合わせるか。極端な例を言うと、世 界エイズ結核マラリア基金等にマルチとしてお金をあげたら、エイズはバイとしてはや らないなどという極端なこともオプションの中にはあり得るということです。  いろいろなオプションがあると思いますが、そういう所での戦略化も必要ではないか という議論があります。何でもかんでもバイでだらだらやるよりは、世界戦略に対して 協力するというのも1つのやり方だろうということで、むしろマルチの場合にどのよう な形で使い分けるか。どの課題に対しては、どのようなものがあって、どれに対しては 手を引いたらいいのか。先ほど言ったような選択と集中の部分を具体的に、どの課題 で、どういう介入でどうしていくかを作らないとガイドラインにはならないと思ってい ますので、その辺の具体的なものを、できるだけ説得できるような形で書いていただく といいかと思います。 ○中村座長  ほかにご意見、要望はありますか。大体いろいろな意見が出揃ったような気がしま す。ワーキング・グループ3は、随分いろいろなご提言、ご要望をいただいたと思いま すが、これを基にまたワーキングを開いてということでよろしいでしょうか。次のワー キングまでには時間もありますので、帰りがけにいいアイディアを思い付いたら、どん どん事務局に出していただいて、このワーキングで充実した座標軸をやっていくことに したいと思います。  続きまして、ワーキング・グループ2(データバンク)の検討結果について事務局か ら説明をお願いいたします。 ○吉田補佐  資料5ですが、今回は前回の検討会に続いて2回目の報告になります。今回はデータ バンクのTORの具体的な検討を開始しました。その際にTORの必要な情報の整理を 行ったというのが要約になります。  結果概要の1の(1)に使用目的として、次の(i)〜(iii)に大別できます。(i) はMDGの達成についての分析に必要な情報が入手できる。(ii)は、どこに何の案件 があるかを簡単に検索できる。(iii)は、案件の集計、成果物の入手、人材の特定、 政策の提言、政策上の評価、案件の形成、海外援助機関との比較、案件の発掘、国別・ セクター別の援助傾向と援助方針策定への情報提供、援助協調への情報提供ができる、 といった目的を整理して、基本的な考え方としては(i)と(ii)については簡易情報 データベースを主体に、(iii)については、詳細データベースを主体に対応すること を想定しました。これらを踏まえて、両方のデータベースの使用目的とそのために必要 な情報を整理したものが次の表です。  これについては、具体的なTORの全体像を見たほうがいいと思いますので、資料の 後ろから4枚目です。右上に「5月31日(月曜日)WG2結果概要1(4)の作業前の 段階の修正案」と書いてあるものです。データバンクのTOR案で、現在のところ、こ のようなTOR案を作成しています。  まず「目的」ですが、「過去の事業の評価と今後の事業への活用を目的とする。具体 的内容は別表を参照のこと」ということで、これがいま説明した次の頁に記載されてい る別表になります。これを簡単に説明しますと、使用の目的とそのために必要な情報を 各メンバーから出していただき、それを整理したものです。  使用目的では、まずMDG達成についての分析で、必要な情報が国別分類、目標別分 類、成功例、総額コストです。2はこれまで行ったODAの集計とマッピング、情報と してはスキーム、カウンターパートのレベル。3は使えそうな成果物の入手で、これに 対して必要な情報は、他のプロジェクトに使えそうな教材・ビデオ・プロトコール。4 の目的としては、国内外の人材の特定で、情報としては国内委員会、分野別専門家、派 遣可能な人材、研修修了者等です。5の目的としては、政策提言に使えるモデルづくり で、情報としては、政策に取り込まれているもの、国民向けにアピールしたいもの等。 6の目的としては、ODA大綱の重点課題、政策上の評価で、必要な情報としては重点 分野別の分類、ジェンダー・環境に配慮した案件です。  7の目的は案件の形成、情報としては教訓、相手国の持続性・定着への寄与、コス ト、チーム構成等。8の目的は、海外援助機関との比較で、情報としては分野別分類、 スキーム別分類、国別分類。9の目的は案件の発掘で、情報としては国別分類、分野別 分類等。10の目的は、セクター別、国別援助方針策定へのインプットで、情報としては 国別分類、目的別・分野別の分類、教訓。11の目的は、援助協調への情報提供で、情報 としては具体的な協調案件です。  このように目的と必要な情報というように整理して、これが前の頁の最後の「活用の 仕方」にそのまま当てはまることを考えています。  次に範囲ですが、まず利用者です。これは厚生労働省がいま説明した1〜11の目的で 使用する。またJICA、文科省、外務省などの他の関係援助機関にも利用していただ く。また情報公開できる部分は公開し、一般に広く利用してもらう。この2つの利用の 仕方を考えています。  入力の対象のスキームですが、ODAとして技協、専門家派遣、研修、緊急援助、無 償、開発調査ですが、有償が抜けています。あとは研究です。  次に形態ですが、簡易と詳細のデータベースの両方を作る。簡易情報データベースと しては、MDG達成についての分析に必要な情報は入手できる。どこに何の案件がある かを簡単に検索できる。詳細情報データベースについては、案件の集計、成果物の入手 等、ここに示したような目的を担っているものです。雛形についてはこのあと別途説明 します。  次に情報の収集・入力・維持・更新方法です。これはまだ検討途中の段階ですが、ま ずどこに置いて、誰が入力・管理するかです。これについては現在のところ、医療セン ター調査課の協力の下で研究班で専門調査員を雇用する。研究終了後は、医療センター 調査課で管理するという方向でいま考えています。  データをどこから、どのように入手するか、情報の入手源ですが、JICAのプロジ ェクト終了時報告書、またはそれに類するものを使用できればというところです。デー タの入力の仕方については、定義や注意事項を考えなければいけませんので、まだ具体 的には記載しておりませんが、ここでは一応現時点での注意事項ということで記載して あります。  まず簡易情報データベースについては、ラジオボックスへのチェックについて、1つ 選択なのか、複数選択なのかを指示する。また誰がチェックするのかを決めておく。詳 細情報データベースについては記載の仕方の雛形を指示する。これはまだこれから決め なければいけませんが、更新が必要になってきますので、どのぐらいの頻度で更新をす るのかを決めなければいけません。  「実施計画」です。目標としては平成18年度に稼働させるという方向で進めたいと思 っています。今年度はデータベースのデザインを行い、翌年度はデータベースのパイロ ット試験を行い、平成18年度に稼働というスケジュールです。またこの計画において は、研究班の分担研究としてリンクさせる予定です。パイロット試験においては互換性 の評価も検討したいと思っています。  最後の2枚に簡易情報データベース、その裏面に詳細情報データベースとあり、雛形 の1と雛形の2を示してあります。これについては今日のお昼にもう一度ワーキング・ グループで作業をして、別途配付している1枚紙の雛型1および雛形2をご覧にくださ い。  本日ワーキング・グループで検討した経過も交えながら、簡単に解説いたします。ま ず雛型1の簡易情報データベースですが、名称があって、期間、援助形態、地域名、国 名とあります。(1)〜(5)の情報は簡易情報データベースには必須であるという認 識です。(3)に「有償」という言葉が抜けておりますので、あとで付け加えます。  (6)と(7)は、会員の皆様から意見がありましたが、定義の不明なものがあっ て、記入困難な場合がある。これについてはどういう定義でチェックをするのかを、こ れから決めなければいけないと考えております。例えば、ODA大綱で言えば、「地球 的規模の問題の取組み」という場合に、どこまで当てはまるのか。またミレニアム開発 目標の場合に、貧困と飢餓の撲滅といった場合にどこまで当てはまるのかといったこと が起きます。ですから、それについてチェックする上での定義を決めなければいけない ということです。  (8)と(9)の分野と主な裨益対象層ですが、これはこれまで事務局で行った作業 の結果をベースにして、このような分類を設けておりますが、これについて1つ言える ことは、プロジェクトの目標やアウトプットをカバーできる範囲のもの、また分類する ときに、主分類と副分類という形でチェックするやり方を考えたらいいのではないかと いうことで、今後またワーキング・グループで議論していきたいと思っています。  今日お配りした左上に「MDG」と書いてあるペーパー、右上に「上原鳴夫」と書い てあるペーパーが、分野あるいは分類、裨益対象層みたいなものを考えるときに参考と なり、ワーキング・グループで今日示していただいた資料になります。このようなもの を参考にして、ここの分類についてはもう少し詰めていければと考えております。  (10)の主な実施施設についても、しばしばドキュメントを見ただけでは選択が困難 な場合もあるので、説明もしくは注意が必要かと思います。(11)主なカウンターパー ト、(12)援助の主な一次目的ですが、ここでは教育の範囲の解釈をどう捉えるかとい う点で指摘をいただいています。(13)データの入手先、(14)総額コストですが、こ れについてはすぐ得られるデータではここまでは測れないので、むしろ詳細データベー スのほうに移すべきではないかという指摘を得ております。(15)国内協力組織につい ては、簡易データベースでは厚労省とその他の省庁、NGO、大学、教育研究機関、学 会、民間企業、病院、地方自治体、その他という分類のチェックにとどめて、具体的な 機関の名称については、詳細データベースで見るという形にすべきではないかという意 見が出ておりました。  (16)のキーパーソンについても簡易データベースではなく、むしろ詳細なデータベ ースのほうで扱うべきではないかという意見が出ていました。(17)政府関係の公表さ れた評価の実施の有無で、それについては簡易情報データベースの中でチェック項目を 設けて、その具体的な評価結果の報告書や名称等については、詳細データベースを見て もらうという議論がされておりました。  次に、雛型2の詳細情報データベースです。これについては、まず名称、期間、派遣 人数、派遣科目、相手国実施機関、他のスキームとの関連ということで、これについて 先ほど、簡易情報データベースから詳細のほうに移すべきだという議論があった事項を 追加して、さらに、例えば相手国のキーパーソンあるいは援助協調の有無、あと関連す るプロジェクトについても加えたほうがいいという意見が出ています。  また文章で記載する目的の概要、活動の概要、成果の概要、Referenceの部分ですが、 これについては最終的なPDMに使われている文章を使用すればいいのではないか。ま た目的のほかに背景を加えて、プロジェクトの成立の背景から結果に至るまで概要がわ かるようにすべきではないか。また(7)のReferenceについては、成果物など具体的な 記載をする上での注意書きが必要なのではないか。こういった意見が先生方のほうから 出されていました。  これについてはまだ作業中のものですので、今日、検討会でまたいろいろな意見をい ただき、さらにワーキングのほうで検討を詰めて、先ほどの実施計画で説明したように 具体的な研究班のほうの作業に入れればと考えています。 ○中村座長  かなり具体的な成果が出てきていると思います。関係された会員の先生、何か追加の コメントはありますか。 ○小林会員  基本的には簡易と詳細を作って、簡易は公開を原則とする。先ほど中村座長が言われ たように、簡易だけではそのプロジェクトが成功であったかどうかはわかりませんが、 公表するということでかなり関心を持ってもらえるのではないかと思います。簡易デー タベースは比較的分類を主としていますので、これを経年で集計するなりすれば、過去 にどんなものが増えたり減ったりしたかの変遷もわかりますし、先ほど私の要望でワー キング・グループ3に出した、別の分類の体系を作り、それに望ましい方向に増えてい くかどうかの確認にも使えるのではないかと思います。あと、そういう意味でNGOと か学会というものを(15)に入れますので、NGOがだんだん増えてきているとか、そ ういう資料にも使えるかと思います。  資料の中に赤字が入っているものでPDMというのは、「Project Design Matrix」 という資料があって、それが非常に入手容易でしたので、それで若干のエクササイズを した結果ですが、本格的なデータベース作成には最終報告書を使いますので、資料に記 載されているPDMでわからないということは別に無視していただいて構わないと思い ます。ほとんどのものは最終報告書で判断できるような項目だと思います。 ○中村座長  ほかに追加はありますか。 ○上原会員  補足ですが、素案を出していただいたものに関してワーキング・グループのメンバー からコメントを入れて、基本的にはデータベースは何に使うかがいちばん重要なので、 厚労省のほうでこういうことに使いたいのであれば落としてもらえば、そのためにはこ ういうデータがいいだろうし、こういうデータが取れるのではないかというのはアドバ イスできる。  ただ、厚労省のほうで幾つかの感触をいただいたのですが、特に固まっているわけで はないということでしたから、とりあえずザッと皆でブレーンストーミングに挙げたの ですが、それは15分ぐらいの短いものですので、これからそれをきちんとやっていく作 業かなと私は思っています。  こういうものを、ある時に誰かが想定した使い方で作ったら、別に必要な人がいた時 にまたそこで作り直せとか、しょっちゅうコロコロ変えたり、あるいはせっかく頑張っ たけれど使い物にならないことがありますので、何に使うのかを明確にしていくことに 少し時間をかけたり、いろいろな人の意見を聞いていくのが大事ではないか。そういう 意味では、この全体の研究会の中でも、こういうデータベースをもし厚労省の主導で作 った場合には、是非こういうことが分かるようにしてもらえないかとか、もちろん厚労 省がいちばんですけれども、あるいは厚労省が一緒にやっていく関連の所に、そういう 要望、調査といったものを掛けていただくのが、意味のあるものを作るのにいちばんで はないかと思いましたので、そういう提言をしました。  それがありますと、具体的にどういう項目でというところまではいけるだろうと思い ます。いまの段階でワーキング・グループのメンバーの中で思ったことについて、とり あえず叩き台として用意しつつあるということで、これは雛型ができたという段階のも のでは全くないと理解しています。  重要なものとしては分野の分類ですが、これも日本がやってきた従来のプロジェクト を、うまくまとめられるようにしようと思うと、これから日本がやっていくであろう保 健医療分野のプロジェクトが、うまくまとまらないことになるのが明々白々ですので、 これこそ先ほどの座標軸のグループや中期目標といったところから、キーワードや関心 事を落としてもらえれば、それがうまくやれるような形の分類をしていくことになるだ ろうと思います。  そういう意味で今回、1つは他の援助機関とのコンペティビリティです。ただ、他の 援助機関もみんなバラバラですので、そう簡単ではありませんが、MDGも含めて統計 的に数をまとめなければいけないことが生じるであろう時に、便利な括り方を考えてお くほうがいいだろうということで、そのためにこのPDMを20ほど皆で見て、どんな括 り方があり得るかのエクササイズをしました。  その時の私からの参考資料が「上原」と名前が入っているものです。もちろん、これ は全く仮のものですが、一応、どういう括り方があり得るかということで検討してみた いちばん最初の案です。  1つはメジャーとして、あるプロジェクトに関してこういうキーワードが、このプロ ジェクトの性格と目標をきちんと押さえられるメジャーであるというのと、日本の援助 というのは、今までのプロ技に関してはリソース・オリエンテッドでした。私はプロセ ス・オリエンテッドとは思わないですが、1つのプロジェクトで結構いろいろなことを やっていますので、それはそれで非常に重要なことがいっぱいありますから、メインの プロジェクトを表わすプログラムないし目標名と、サブとしては複数で幾つかを付けて いく形で、いろいろな切り口でやれる形の仕掛けを作ってはどうかということも提案し ました。この会の中から是非、これから厚労省が政策提言できるのではないかという使 い道のアイデアを入れていただけたら、非常に我々は作業がやりやすいと考えていま す。 ○仲佐代理専門会員  データを維持していく立場から、いろいろなデータベースがあると思いますけれど も、多くのデータベースはそのまま使われないのと、使えないのは更新できないという ので、更新することを考えると、できるだけ簡潔なほうがいいのと目的がはっきりして いること。その後のデータのリソースは、定期的にちゃんとできるシステムを最初から 想定していないと駄目なのです。実際、国際教育の場合、JICAが中心になると思い ますが、それを継続的にある時点でちゃんと集めて入力するシステムは、最初の時点で 想定していただきたい。  いま想定されているのは医療センターということですが、そこに来るまでのシステム は是非最初に想定してもらって必ず作るということを、ここでお願いしたい。ワーキン グ・グループとしても考えていたのですが、この場で一言、申し上げておきたい。最初 から出てちゃんと更新していくことによって経年の変化が出て、それが本当の医療協力 につながるのだろうと思うので、それはお願いしたいと思います。 ○國井専門会員  情報提供ですが、実は沖縄感染症対策に対してイニシアチブの中間評価をしていて感 じるところがとてもありました。このデータベースはわかりませんが、私のほうで今ま で集めていたデータで、どういう目的にという中で1つは国際比較です。ECでもDA Cの中で日本の保健がどんなシェアで、人口等に対してどれだけやっているか。その他 にUNDP等では人口でいくのに対して、それぞれの国がどれだけ貢献しているかと か、いろいろな機関で実はこういったデータを収集したいということで、我々のほうに 来ます。私も常日ごろからこのデータベースは完全に必要で、その場合のこういった項 目なども必要だと感じているところです。  例えば、ここに援助形態で「無償技協研究」と書いてありますが、実は無償の中でも 一般無償のプロジェクト無償なのか、草の根、人間の安全保障の無償なのか。技協の中 でも機材なのか研修なのか、人間を派遣するものなのかいろいろです。研究でもヘルス リサーチというのは、ODAの中のどのぐらいのパーセンテージをヘルスリサーチに費 やしているか。こういう比較も国際的なところからいろいろ聞いて、実はこの研究も文 科省と厚労省とに跨っているものですから、我々のほうでは手に入らないということ で、そういうときに右往左往することはあります。  もう1つ、これをまとめるときに非常に難しいのは他のセクターとの関連とか、あと 同じ1つのプロジェクトで幾つにも渡っている場合、それをどういう形で入れるか。二 重に入れて行ってやる場合もあるのですが、実際に1つのパイチャートなどに入れると すると、メインをどこに持っていくかがあります。例えば教育がメインだけれども保健 も付随しているプロジェクトもありますし、逆に保健が中心だけれども教育が入ってい るのもあります。その場合にどういう形でパーセンテージを入れていくか。  あと人口とエイズの両方にアドレスしていく場合に、どちらもポーションをどのよう な形でやるか。別々に取るのだったら、これは人口だよと言って全部入れたり、エイズ だよと言って入れるのは可能ですが、先ほど言ったように1つのパイチャートの中に入 れる場合は、どのような形でパーセンテージを上げていくかも非常に重要です。ヘルス ・リサーチに関しても、最近はマラリアやエイズなどの個別の疾患で、どれだけR&D をやっているかの質問もよくきますので、それもきちんとやらなければいけない。  もう1つは、研修と言っても現地の研修、南々協力のような第3の研修、日本国内で の研修とありますので、それも実は分けないといけないこともよくあります。また日本 のODAのお金なのですが、結核研修所に流れていたり、エイズ予防財団に流れていた りというお金が実はあって、今年などもおそらく管轄が少し違うかと思いますが、そう いったものもどのような形で入れていくかです。  例えばNGOが、いま実は150億円もODAの中にあり、そのうち大体20〜30%が保 健医療なのです。日本国内のNGOに対しても20数億円で、やはり20%から30%が保健 医療なので、これを換算しないのはもったいないという感じになっています。  我々が何に使うのかという話で、1つはそういった国際的な比較等の実績報告です。 もう1つは評価とか今後の計画だと思いますが、計画などの場合は人材リソースで、最 近、人材が足りない、どうするかという話を我々はよくするのですが、その場合に先ほ ど上原会員が言われたように、リソース・オリエンテッドで実際のものをやってきた。 でも世界的な傾向から見ると、どの部分を増やす時にはどのぐらい必要なのか。これは サンプル調査でなく全数調査でやっていかないといけない部分だと思います。つまりど のぐらいのものに対して、これから我々のODAをシェアするために、どういう分野に 何人ぐらいの人が将来的に必要かの計画を立てるためには、まさにこういったデータベ ースが必要になってくると思います。  その場合には、具体的にどのような機関で、どんな人たちを研修として受け入れて、 今後、どのような人たちが国内研修に必要なのか。海外で技協を今後、どのぐらいの形 で増やして、そのうちの人口、エイズ、感染症とか母子保健、それぞれに渡すのを作っ たときに、どういったレベルの、アドバイザー的な人なのか、病院の中でやっている臨 床の人なのか、そういった分類の中で何人ぐらい必要なのか。本来はその辺まで計画の 段階で必要になってくると思います。  最後に、ミレニアム開発目標が1つ1つ書いてありますが、実は妊産婦の健康改善と いう中でも、いわゆるモータリティを下げていくものにするのか、スキルドパスあたり を増やしていくのか。女性のクォリティ・オブ・ライフとかエンパワーメントを引き上 げていくのかで違ってくるので、ここまでは書けないと思いますが、そういうプロキシ インディケーターのどこの部分をやっていくのかも、本当は将来的に必要なのかなと思 っています。 ○中村座長  ほかに何かありますか。ここは質問のところですが、ご意見もどうぞ。 ○小林会員  私もワーキング・グループ2のメンバーなのですが、このデータベースを作成すると きに、いま國井専門会員の話にもありましたように、かなりの部分はJICAベースの 報告書で集計できると思います。他方、文科省ベースの国費留学生が金額としてはかな りの額になると思いますが、資料という点であまり使える形になっていないのではない かと思います。国費留学生を、こういうデータベースに集計していくことは可能でしょ うか。例えば医学部に所属している国費留学生の年間の数とか、いかがですか。 ○行松専門会員  留学生はどういう統計の取り方をしているのか、少し次回に検討してみたいと思いま す。 ○小林会員  国費留学生以外に文科省ベースで、何か国際協力に該当するようなものがあるでしょ うか。そういうものを含めたほうが、日本としての貢献がきちんと評価できるのではな いかと思います。 ○行松専門会員  独自のリソースでやっているという意味では、留学生に尽きると思います。あとは大 学で独自の取組みということで、そこはなかなか補足できないところがあります。 ○中村座長  あとは、おそらく研究プロジェクトみたいなもの。 ○小林会員  科研費です。 ○中村座長  ちょっと大変ですかね。 ○青山会員  開発協力として見るか、共同研究として見るかによって違いますが、研究プロジェク トを含めるのでしょうか。 ○中村座長  その辺は今回、このグループでは、そういう研究だけをやるみたいなのは。 ○小林会員  研究に関しては文科省のほうは分類が難しく、純粋な研究もあると思います。厚生労 働省関係は国際協力の研究費ということで考えています。いちばん困ったのは国費留学 生の人数の把握とか、あるいは金額の把握ということです。 ○青山会員  話は変わりますが、公開方法に関しての提案をしたいと思います。情報公開は社会全 体の流れであり大変重要なことなので、簡易データベースを一般公開するという方針は よいと思います。詳細データベースについては、JICA関係者などに限定されるよう ですが、大学で教えている立場からは、例えば修士論文を書いている大学院生が、詳細 データベースにアクセスして勉強できるとよいと思っています。  ただ、その反面、詳細データベースに誰でもアクセスできるようにすると、必ずしも 善意でデータベースを利用する人ばかりではないことも考えられ、問題が生じる可能性 があります。たとえば、むやみにデータを流出させないなどの規則を守るという同意を 取ってからアクセスできるようにするなど、会員制としたり、あるいは公開できる内容 のレベルを階層化して、ある一定の基準を満たした人がアクセスできるようにするとい うような仕組みを作ったりしてはいかがでしょうか。また、データにインターネットで アクセスできるようにしていただけると、私のように地方の大学にいる者にとっては、 大変ありがたいと思います。 ○野崎専門会員  この会員情報データベースについて単純な質問ですが、例えば、これはJICAにお いても、あるいは私どもにおいても、いわゆる日本に呼んで研修するというのが非常に 大きなことですが、そういったものもこのターゲットに入れるのでしょうか。それとも 現地でやっている、いわゆるプロジェクト方式のものだけをターゲットにしているので しょうか。 ○吉田補佐  これにつきましては、データバンクのTOR案の範囲のところを見ていただきたいの と、あと雛型の(3)の援助形態のところになるのですが、ここでは単純に研修という ふうに括ってあります。ワーキング・グループの中で議論していたのは、今日、指摘が あった点が入るかどうかは別として、個別研修と集団研修というJICAのスキームで 通常やっているのを想定して、ここには書いています。  ただ、当然厚生労働省が作るデータベースということで、もし当てはめられるデータ があるのであれば、そこはスキームとしてODAの予算でやっているものですから、当 然対象になるものと考えています。 ○上原会員  補足ですが、いまお話がありましたように、もともとこれはJICAのスキームで挙 げてくださっているものなので、研修というのは昔、研修事業部がやっていたものとい う位置づけだろうと思っています。私は国内研修、集団研修、2国研修、3国研修を含 んでいるというふうに理解していました。ただ、ここはグループとしてはまだ詰める段 階ではありませんのでディスカッションしていません。  費目ということになると問題になるのは、JICAのほうのスキームが変わってきて いますので、それにどう対応させるのかは考えなければいけないと思いますが、まだ検 討していません。 ○野崎専門会員  あと最近は、医療システムを改革するための研修事業とかプロジェクトが入ってきて いるかと思います。例えば医療経済の問題といったものも、これから議論されて加えて いくという理解でよろしいですか。 ○上原会員  この分野分けの話は、今日の会議の前にみんなが、よそのドナーの資料なども参考に して1回持ち寄って1時間ほどディスカッションし、流れ解散して来ているという状態 ですので、これからです。  例えば、いま私が仮に出した案のところには、Policy Law and Institutionalization ということで、その政策支援、制度づくりの支援を含めるものが必要ではないかと提案 しました。 ○中村座長  私から少し意見を申し上げると、特に分野に関しては上原会員から出していただいた ように、私は分野に関しては割と細かく決めた案を出しておいたほうがいいと思いま す。これを今度はまとめて感染症とか言うのだったらまとまるわけで、それを初めから 感染症だけでやっていたら、あと5年後に内訳を調べたいときに絶対できないです。こ れをやっておいて、今度は25でなくて5つぐらいにグルーピングしておいてスッとでき るようにしておく。そういうふうにしておくのがいちばんよくて、こういう形がいちば んいい方法ではないかという気はすごくします。細かい中身は皆さんでまたご検討いた だきたい。  私が思ったことで2つだけ申し上げると、1つは國井専門会員からも話があった、よ そのところからいろいろなリクエストを受ける。私が昔、外務省にいたときもそうでし たが、山のように「こんな資料はないか」と気軽に問合せしてきて、当然、向こうの国 ではそんなものはすぐにある。私が聞いたときは、「この引出しのをコピーしたらいい 」というので3日ぐらいかかるわけです。それがジャパンだったというイメージです。  そういうことで言うと、こういう基本的なデータができるのは大歓迎です。ただ、そ の時によく聞かれるのが人数とコストです。ここでなかなか出にくいとは思いますが、 簡易情報の中でわかる範囲だけでもコストはあったほうがいい。それも大まかでいい。 日本人がコストと言うと2億4,850万円でないとコストにならないとか、そんな細かい のは要らないから、2億なのか2,000万なのか、そこの違いがわかるのがほしいので、 簡単にコストがわかる感じのが少しあったほうがベターです。細かいコストは簡易情報 でない後ろでいい。あとは、これに関与した長期専門家が何人とか、それも何か簡単に わかるように、人数とコストはいつも国際機関では言われるので、何かあったほうがベ ターかなという気がしました。  もう1つは、そう言っていることとまた別になるのですが、仲佐代理専門会員から話 があったように、これをメンテナンスすることを考えたら、簡易情報データベースは絶 対にずっと続いてほしいという意味で言うと、幾つかありましたが、この簡易の中の (9)、(10)、(12)などの難しくて非常に判断に迷うようなところは、この際、デ ータベースから落としてもいいのではないか。これは詳細のところに行ったらわかる。 簡易のところで子供か妊産婦か、この辺を全部分けるのは大変です。使い道がないので 全部なしにして、どんなものを、どこの国で、何年間、大体どんなことをやったかわか れば十分です。その辺はズバッと落としたほうがベターではないか。むしろ簡易情報デ ータベースに関しては素人と言うと変ですが、プロフェッショナルでなくても入力はで きる。昨日雇った秘書でも入力できる形にしておかないと、これを入力するときに、い ちいち「これはどっちですか」と担当者が聞きに来るようだと、たぶんメンテナンスし ている医療センターも大変なのではないか。 ○建野代理専門会員  コストの問題ですが、私がどこへ行っても聞かれるのは、例えばこういうプロジェク トをやるといったときに、幾らのコストかと聞かれるのですが、これが出ないのがまた 日本の特徴でして、本当に出ないのです。だからプロジェクトは大体、年間1億円とか 1億5,000万円ということしか言えない。コストの概念が全然日本は違うのです。その 辺は橋爪専門会員、何かあるのですか。本当に外国では5年間やろうと言ったら、それ で予算は幾らと聞かれるのです。それでいつも答えられないというのが今までの現状だ ったのです。 ○橋爪専門会員  予算を執行する段階ですから、コスト意識なしにやってはいけないわけで、当然のこ とながらプロジェクトを計画するときには総見積額幾らであるというのは、ちゃんと弾 いて内部で手続的に進めていますし、全部プロジェクトが終わったときには、終了時ま でに掛けたコストが幾らであるというのは内部的には弾いて、精算をきちっとやれるよ うにはしています。  ただ、それを積極的に公開するかどうかは情報公開法の時代ですから、この南々のプ ロジェクトについて開示請求がきた場合には、1件1件検討して開示ということになる かと思いますが、コストを公開することでいちばんトラブルが多いのは、公開というの は世界中に公開ですからカウンターパートにも公開してしまう。カウンターパートは、 このプロジェクトに幾らコストをかけたということと、実際に自分のところに入ってい る機材費とかを比較して、結局、日本から派遣した人材も人件費も割合が非常に多いと か、そういうのは当然のことながら気づくのですが、そこでプロジェクト運営が非常に まずくなる場面がよくありますので、そういうことから積極的公開はやっていないのが 現状かと思います。  ですから、コストをどういう形で公開するかというのは時代の流れで、プロジェクト ごとにカウンターパートからコスト公開を要求されているプロジェクトがたくさんある のです。だから、そのときは1個1個本部に問合せが来たりして、実質的なインプリメ ンテーションコストだけ弾き直して公開しましょうかとか、そういうのは公開するコス トの額を相手とのケース・バイ・ケースでやっていますので、実際上、統一的にこうい う考え方で出しましょうというのは、なかなか難しい面が運用上はあります。ただ、コ スト計算はできます。 ○中村座長  大体、意見も出揃ったような気がしますが、データバンクのところはこういうこと で、またご検討のほうをお願いしたいと思います。続いてワーキング・グループ1の人 材養成のほうにいきたいと思います。事務局から説明をお願いします。 ○吉田補佐  このワーキング・グループ1については、今回は中間報告ということで、本ワーキン グ・グループについては、外務省から国際厚生事業団に委託している事業と合同で作業 を進めています。今回は合同で進めている作業の下に作ったサブ・ワーキング・グルー プからの報告ということですので、その事務局の野崎専門会員から説明をお願いしたい と思います。 ○野崎専門会員  前回、3つのサブ・ワーキング・グループと、アンケートの調査をしました。それも ご報告させていただきます。サブ・ワーキング・グループの構成ですけれども、人材育 成をということで学会関係、エイズ予防財団、FASID、それからJICAのほうに もお入りいただいて、人材育成をやっている所の方々にご意見を聞くというのが1つの グループです。  2つ目は人材活用ということで、人材を派遣する所として医療センター、JICA、 それからJBICに声を掛けましたが、JBICは残念なことに担当部局がなく、誰が 出席していいかわからないということで、人材活用のワーキング・グループに参加いた だけませんでした。あと民間セクターということで、コンサルさんが3つ、アースアン ドヒューマンコーポレーション、パシフィックコンサルタントインターナショナル、ア イ・シー・ネットという所にご参加いただきました。  一応、このサブ・ワーキング・グループの役割については、ワーキング・グループの ほうで3つの大きな課題が提起されました。資料6のいちばん最後の頁に、このサブ・ ワーキング・グループの上にあるワーキング・グループの結果概要がありますが、ここ のところで「人材の開拓−定量的なニーズ」「人材の募集と供給−ミスマッチの解決」 「人材の養成とキャリアパス」について、この3つが大きな問題意識であるということ で、それについて更に多くの方々からご意見をいただいたところです。  今日、お配りしている資料6で、それぞれのワーキング・グループについて皆様のご 意見が出ています。ポイントを幾つか申し上げると、人材育成のワーキング・グループ では、JICAのパートナーというかセンターが動き出しましたので、こちらのほうを これから活用していくことが大事なのではないか。これまでいろいろな所で人材育成を していますが、それらをどういうふうに活用していくのかについて非常に難しいものが ある。キャリアパス等々についていろいろ問題がある。要するに、この間、ワーキング ・グループで出たのと同じような意見が出されたわけです。  人材のデータバンクについては、FASIDとJICAを軸にしてデータの蓄積があ るという話も出ていました。人材活用のワーキング・グループでは、いま医療センター の派遣が非常に多く、医療センターの中でのご苦労が非常に多いというお話がありまし た。大学教育の中に国際保健の基礎が入れられている状況ですが、それから国際協力に つながっていくことについて、まだまだこれから考えなければいけない。on the job trainingについての体制整備の必要も、大きなワーキング・グループで出てきていまし た。  民間セクターは、前回、大きなワーキング・グループには民間セクターの方がいらっ しゃらなかったわけですが、毛色の変わったご意見がいろいろ出ていました。ひとつに はJICA、JBICという所が自分たちの知識を生かせる場という認識ではあるけれ ども、実際にそういった所に専門家派遣というスキームで入って行くことについて、企 業側としては非常に無理がある。人件費のみ補填されて出て行くことについて、企業に とって何のメリットがあるのかということが出ていました。  人材の確保あるいは教育について、それだけの経済的余力がない。あるいはそういう 人材を抱えることが、仕事が取れないときにリスクとなってしまう。いわゆる公的機 関、公益法人等々にあまりない経済的問題あるいは商業上の利益といった問題が、国際 協力の中でいろいろな足枷になっている話が出ていました。例えば、PCM研修という のに出たが、そのPCM研修がどういった形でオーソライズされていくのかわからな い。サブ・ワーキング・グループの話は、これから後、またワーキング・グループのほ うで最終的に取りまとめをしたいと思っています。  もう1つは、アンケートを実施しました。357通送って回答数は25という状況です。 回答率7%で大変ショックを受けています。このデータで何が判断できるのかは非常に 難しいことですが、アンケート集計結果の考察を書いてみましたので、参考にしていた だければと思います。この中身についても今後、ワーキング・グループのほうで取りま とめをしていきたいと思っています。 ○中村座長  アンケートの結果で、回答率の低さは問題がありそうな気もしますが、現在、このア ンケート調査の結果もいただいていますので、これに関して何かご意見がありますか。 ○青山会員  このアンケートは機関宛となっていましたが、私どもの講座にも送られて来ました。 しかし、講座に尋ねられれば講座のことしか答えられず、例えば大学全体での取組みに ついては答えられません。このアンケートは、大学全体のいろいろな階層、例えば大学 本部、医学部、それから各講座に別々に送ったのですか。 ○野崎専門会員  実はアンケートを2回出していて、1回目に280通出したのは主に医学部長様宛に出 しています。これは285出して回答は11でした。それであまり来ないということで、今 度は国際保健医療学会の先生方の名簿等を使って出しました。そういった意味では医学 部長さんに出したものもありますが、学部長、学長、教授と3段階で出しているという ことではありません。 ○青山会員  名古屋大学の場合、総合大学ですので、本部でまとめている国際協力があり、各学部 でやっているものがあります。また、医学部にも医学科と保健学科があるし、各講座で 独自にやっているものもあり、それぞれに質問しないと、おそらくわからないと思いま す。文部科学省などの国際共同研究に関する調査などでは、学部から各講座に質問状が 回って来ますから、たぶん学部にアンケートを送って、そこから各講座に回してもらう か、あるいは本部に送って学部に回してもらうのがよいのではないかと思います。但 し、文部科学省からの調査のようには、積極的に回答してくれないかもしれません。 ○中村座長  ほかに追加、あるいは何かご意見はありませんか。私からお聞きしますが、第1回が 大学の医学部に全部出して、回答率が5%ぐらいですか。 ○野崎専門会員  287出して11しか回答はありません。 ○中村座長  3%ですか。 ○野崎専門会員  2〜3%です。 ○中村座長  2回目が、これを出して。 ○野崎専門会員  2回目は国際保健医療学会の会員の先生方です。 ○中村座長  名簿をもらいましたが、あの名簿は国際保健医療学会の会員ではないでしょう。 ○野崎専門会員  2回目は国際保健医療学会の会員名簿で、前のは学部の先生方ということでお出しし ています。 ○中村座長  会員だけですか。 ○野崎専門会員  前回お出ししている名簿は、当時のうちの研修の募集をかけているところの名簿で、 あれはあまり意味がないということで、全国の医学部長宛にお出ししたのが第1回目で す。その後に今度は保健医療学会の名簿ということでお出ししています。 ○中村座長  保健医療学会から名簿をもらえたのですか。 ○野崎専門会員  もらいました。 ○中村座長  それにも私はびっくりしたのです。保健医療学会は会員が1,000人ぐらいですから、 それが少しおかしいなと。 ○野崎専門会員  いただいたのは75ぐらいの名簿でした。 ○中村座長  それは評議員だけではないですか。 ○野崎専門会員  もしかしたら評議員の名簿なのかもしれません。 ○中村座長  でも、そしたら75でなくて、いま300とおっしゃった。 ○野崎専門会員  医学部長のほうに80ぐらい出していますので。 ○中村座長  よくわかりません。医学部長に280出したのと、それで80ぐらいが保健医療学会の評 議員に出したということ。同じ内容を出したのですか。 ○青山会員  医学部は280もないと思います。 ○中村座長  280ないですね。医学部は100ぐらいです。 ○野崎専門会員  医学部と、あと主任教授というか、主立った所の例えば内科の教授とかにもお出しし ています。 ○中村座長  アンケートをするときに基本的なことが2つあって、国際保健医療学会のいちばん初 めにいただいた名簿などは、すごく変な名簿だったので、それはまずいのではないかと 私は保健医療学会のことを申し上げたと思います。ただ、こういうアンケートをすると きに2つぐらいあります。1つは、医学部長とかにアンケートするのだったら機関全体 をどう見るか。要するに、そこの機関としてどう関わっているかというアンケートの内 容になるわけです。それで今度、関わっている保健医療学会の会員には機関がどうなっ ているかとは違って、あなたはどう関わっていますかということで、アンケートで聞く 内容が違うと思います。その辺は当然ながら、ターゲットによってアンケートの中身を 分けないと、基本的にアンケートにならないのではないかという気がします。全部一緒 に出したとは私も知らなかったのです。 ○野崎専門会員  時間的な制約がございまして、初めは大学の主立った担当部長さんとか内科の教授と いう方々にお出しして、それである程度集まるのかなと思っていたところ駄目だったと いうのもあり、確かにその辺は座長のおっしゃるように精査ができずに出している状態 でした。 ○中村座長  出してしまったのはしようがないですが、私自身はこのアンケートをもらって回答は したのですけれど、アンケートの内容そのものが、国際協力をやっている一講座に出す アンケートでは全然なかったという気がします。「お宅に何人、こういうのをやってい る学生がいますか」という問いなら、すぐに答えられるのですが、そうでないのが何頁 も続いていたので、これは出す人は少ないのではないかと思って返事を書きましたが、 やはり非常に少なかったですね。 ○青山会員  座長と同じ意見です。 ○中村座長  だから、このアンケートの結果に関してはほとんど使えないと基本的に思います。ア ンケートだけがすべてではないと思うので、このワーキング・グループの人材養成の検 討会としては、今後、どのような人材養成をやっていくかです。アンケート結果は役に 立たないとしても、人材養成のための方法論として何かご意見をいただければと思いま す。 ○國井専門会員  委託調査ですので、外部に委託して基礎資料ということで実はあまり関与していなく て、もともとの思惑は、いわゆる需要と供給をどうマッチさせるかというところで、初 めは、できればバーチャルなものでホームページを作りながらやっていこうと思ったの です。そしたらちょうどパートナーズが去年の10月ぐらいに立ち上がったので、それを やめて、もう少し広く業務も含めて取り組もうということでやっていました。  今後重要なのが、どういうふうにそれぞれの機関を結び付けるかだと思います。全体 的な人材に関する問題意識というのはほぼ出揃っていて、質的な話として大体、共有認 識というのは出ていると思います。今後はこれをどういうふうに具体的に結び付けるか という話なので、おそらくまずは政策的な部分で、これは厚労省、文科省等の省庁でど のような予算づけをするか。人材に対してどういう予算づけをするかというところも、 まず1つあると思います。  全体的な計画を、どのように立てていくかという話もあると思いますが、なかなか全 体的な計画づくりというのが、どうしてもそれぞれの省庁があるものですから、特に外 務省に関しては、ODAのお金で日本国内の人を育てるのはなかなかできなくて、それ ぞれの縛りがある中で、このディスカッションをしないといけないと思います。  あとは結局、キャリアパスを作る場合、例えば先ほど言った民間セクターというのは お金がない。そういう中でどう人を育てるかという話で、例えばODAのお金ですと、 NGOだったらNGOへのサポートの派遣員という枠を設けて、インターン的に少しや っていくとか、もう1つは、最近は提案型のプロジェクトなどになると、もう少しそれ ぞれのNGOを大学等でやり、プロジェクトを作りながら、その中で若い人たちを育て ていくこともあるかと思います。  例えば国連の中にもJPO等を、具体的にどういう形でJICAの中に取り込んでい ったり、ほかの民間セクターに取り込んでいくか。それについてはまた国連機関の窓口 と民間セクター、NGOとの間で話し合う機会も必要だと思います。ですから、少しず つ具体的な話をしていくことが必要かなと思います。  もう1つは、できればこういう人材に関しても、パートナーズのときのようにバーチ ャルな形で結び付けるのも必要なのですが、もう少しアナログ的にいろいろな所へ集め て、需給のマッチングをさせる機会も必要なのかなと思います。これについては私は保 健医療学会にその役割を期待しているところなのですが、まだ具体的な話は出ていない と思います。この辺も具体的なアクションに向けて、やる必要があるのかなと思ってい ます。 ○青山会員  人材活用ワーキング・グループの記録を見て、気づいたことを申し上げます。「人材 の養成とキャリアパス」のところで、大学医学部教育や医師国家試験に国際保健が十分 取り入れられていないことに触れています。  文部科学省は、医学部教育に、「コアカリキュラム」を導入しましたが、その中に は、まとまった形での国際保健はありません。したがって国家試験にも、国際保健とし ては出題されないことになります。また、CBT (Computer Based Test) というテスト を、医学部の基礎臨床の学科教育が終わり臨床実習に入る前に、一斉に実施することに なりました。CBTに社会医学は含まれますが、コアカリキュラムの内容に限られるの で、国際保健としてまとまった形では入れられません。  しかし、コアカリキュラムに加えて各大学独自の教育をすることはできます。名古屋 大学医学部では、私が赴任してから働きかけて、国際保健医療学を必須科目といたしま した。このように国際保健医療学を専門とする教員がいれば教育できるけれど、医師に なるために必須のものではないというのが現状だと思います。  個人的には、国際保健医療はどちらかというと大学院教育で取り組むべきと思ってい ますので、学部教育の状況はそんなに悪いことではないのではないかと思っています。  次の「今後に向けての討議」の中に、Master of Public Health を専門家の必須条件 にすべきではないかとありますが、これには必ずしも賛成できません。私がアメリカに 居たとき、MPHを持ったいろいろな人に会い、そのレベルがさまざまであることに気づ きました。かなりのフィールド経験の後、問題意識を持って学びMPHを取った方は本当 に優秀でした。ところが、大学を出てそのまま進学して、何も現状を知らないまま勉強 だけしてMPHをとったような方もいるのです。  こういう基準を作ろうとするのはよいことですが、資格より内容を考えるべきではな いかと思います。ただし、そうするとまた基準作りが難しくなるとは思います。 ○建野代理専門会員  国際医療センターでも日本人向けの人材養成コースを、ここ7、8年ずっとやってい ます。今まで国立病院の職員だけという縛りがあったものですから広げられなかったの ですが、今年度から民間にもやっていいという許可が出ましたから、一般に広げること になっています。  1つは、いまコースでやっているのは人材養成の1カ月コースと、それに感染症を加 えた8週間コースです。8週間コースというのは、海外の実習も含めという形になって います。我々のはレジデントに対して海外のそれをやろうということで、レジデントの カリキュラムの中に国際協力というのができるようになり、大体3カ月ぐらいで、人数 は4〜5人しかとれないのですが、そういう形でレジデントのカリキュラムの中に入れ ています。  今年から国際協力の研修医というのも認められたみたいで、聖マリアで今年、2人か 3人募集したら10倍以上の応募があったということで、そういう形で国際協力をやる研 修医という形でも可能なようです。まだ医療センターは残念ながらそこまでいっていま せん。 ○小林委員  これはワーキング・グループ1に要望ですが、アンケート結果の12頁を見ると、数は 少ないですが人材情報のデータバンクをどこに置くべきかという質問項目があり、集計 結果を見ると4割弱が政府で、それ以外はほとんど政府以外ということで、個人情報絡 みの少し微妙な問題を含んでいるということだと思います。  ワーキング・グループ1で、例えば政府の組織の中に置く、あるいはその外に出すと いうようなことの長所、短所を論じていただいて、維持する場合にどこがいちばん適当 かを少し検討していただければと思います。そうすればどんな情報を入れるかを、取捨 選択しやすくなると思います。 ○上原会員  人材養成について、この中で重要なことを議論していただいていると思います。そう いう意味で確認ですが、例えば国連機関においてもきちんと伍してやっていける、また リーダーシップをとるような人材を日本が出せるようになっていかないと、いろいろな 援助のどの部門においても、日本はいつまでも10年遅れのことしか出来ないだろうと思 っています。  ただ、現状としてはキャリアパスについても、まだこれから作らないといけないわけ ですし、また社会的にも国際保健に取り組む、例えば医師の社会的なステータスが認知 されているわけでもありませんし、まだ国際保健というのがディスィプリンとして認知 されているわけでもありません。  この人材育成に関しては是非とも、どういう人材が必要かをまず明らかにしていただ いた上で、そのためには日本の援助の目標が必要だと思いますが、その上で、できまし たら是非ストラテジックに、こういったものを作るためには、これをしなければいけな いという必要なことを全部洗い出して、その中で他の省庁に依頼することと、厚労省が できることを是非やっていただきたい。こういうのがいたらいいという提示をするだけ では、何も始まらないだろうと思います。  現実問題としては、例えばサマーコースでこういうのを提供したいと思うのがありま す。あるいは東北などは耳学問ができにくい所ですから、関心がある若い医学生がいて もなかなか聞く場所がない。東京へ行くとしょっちゅう、どこかで何かやっていますけ れど、ないわけです。そういうのを我々がやると、青森とか福島からバスに乗って来る 学生もいるわけですが、我々がそういうのをやるのは全部ポケットマネーで、どこから もお金が出ません。東京からお願いして来てもらうと、全部お金を誰かが出さなければ いけないわけですが、もちろん文科省にはそういう費目はありませんし、どこにもそう いうお金をサポートするものはありません。  例えばハーバードから日本に来て1週間、こういうコースをやってあげてもいいよ、 是非行きたいという声があっても、アメリカなどはそういうのをやれば20万円のお金で やるわけですが、我々は1銭もないわけです。日本の場合は国際協力というのは、みん な無料で受けられるものだと思っていますし、コンサルタントにはJICAが質を要求 しないのです。これはコンサルタントがはっきり言っていましたが、JICAは人材の 質を要求しない。またそれを受けても何の役にも立たないと。  これは基本的に要求する人がそれだけの質を持たないと要求できないのですが、質を 要求することによって初めて、ちゃんとした質を備えていなければ仕事も来ないし採用 もされない。そういう状態を作り出さない限り、質は作れない。これは日本の援助の根 本的なところを変えないといけない。そのために座標軸のところに是非、建前と中身が 違うという話でないものを作ってほしい。  それを踏まえて、本当にストラテジックに、そういった人を作っていくために必要な ファンディングであるとか、例えばアメリカなどでも医学生が夏休みに途上国に行って リサーチをやってくるお金は、全部どこからかお金を持ってきて全国規模で付けている わけです。そういうお金が日本は全くありません。そういったことを具体的にどこのソ ースから引っ張り出してきたらいいかを含めて、是非、考えていただけたらありがたい と思います。 ○中村座長  ほかに何かご意見がありますか。このグループは、この後はどういう流れになるので すか。 ○吉田補佐  これにつきましては、今日はサブグループの報告ですので、この後、このワーキング ・グループ1と外務省の委託事業の合同のワーキングを開いて、今日報告した検討結果 をベースに議論を行って、その際には今日の検討会で出された意見を当然参考にして、 何らかの報告書をまとめる作業になると思います。 ○中村座長  わかりました。私もいまの上原会員の意見とかなり近いのですが、具体的にどういう 人が何人いるのかを全部出していったほうがいいのではないか。アメリカなどは大学を 作り過ぎて、インターナショナルヘルスは出たけれども職がないことも結構起こりまし た。日本は幸いそこまでいっていませんが、下手をすれば何年か先にそうならないとも 限らない。 ○上原会員  いまは何もないのではないでしょうか。いまは国際保健の専門でない人が国際協力を やっているわけです。 ○中村座長  将来を考えると、どういう人材が何人いるという基本的なストラテジーを持って人材 育成しないと、少ないのも困るけれども過剰に作るのもまた困るという気がします。そ の辺の具体的なことを出すのが先かなという気がします。あとはたぶん、ここの段階で はまだ具体的な話にならないかもしれませんが、先ほど小林会員からもあったように、 そういう時にどこがこの人材バンクをするのか。どこにやったらどんなメリットがあっ て、どこだとどんなデメリットがあるか。そういう2つか3つのオルタナティブがあっ たときに、メリット、デメリットをきちっと明確にすることも大事だと思います。  せっかく今回、まとめていただいたものは数であまり勝負しないで、むしろいろいろ なご意見とか、今回のアンケートの中にもいろいろ書いていただいていることがあると 思うので、その辺を質的に利用されたらどうかなという気がします。 ○上原会員  思い付きですみません。人材を作っていき、質を高めていくことの1つとして、厚労 省としてどんなことができるかはいっぱいあると思います。そこを是非出してほしいの ですが、例えば援助に関わる人たちの質を担保するための認定、あるいは認定でなくて も認知のようなことを厚労省ができるのと、他ができるのとでは違う面があるのではな いか。例えばAPインフォの講習会を、場所は厚労省はIMCJという立派な専門集団 を持っているわけですから、そういった場所とか、あるいは保健医療科学院でもいいわ けです。そういった所を使ってそういうコースをやって、そういったものをきちんと出 していく。  いまもコースはやっているわけですが、そういうコースをとらなくても何らかの格好 で試験をやって、それを認知するとか。場合によって国際の場合には本当にオンディマ ンド教育を使っていってほしいと思います。青森にいる人が国際のことに興味があって も、東京にいる人ほどのチャンスが全然ありません。勉強するのにお金がものすごくか かる。  そういうのを是非提供していただいて、きちんと認知していくことにより、JICA なりJBIC、あるいは国際機関なりが人材を採っていくときに、日本みたいにその人 を直に知っていないと判断できないのでなく、客観的判断ができるようなものを作って いく。こういうのは、大学もそういう役割ができるかもしれませんが、JICAは専門 分野は難しいところがあると思いますので、厚労省の役割があるのではないかと思いま した。 ○建野代理専門会員  厚労省の役割でいちばんネックになっているのは、実際にやる所は病院部がやるわけ で、国際課がやっている事業ではないのです。先ほど話した人材養成も病院部の事業な わけです。国際課がやっているとなってくれば、もっとうまくいくのですが、なかなか それがうまくつながっていかない。そこの組織をうまくやってもらえるかで非常にうま く動き出すというか、国際が通じる形になると思います。  いま医療センターがやっている事業というのは、国際課の仕事になっていない面が結 構あります。病院部の事業という形で、予算も全部病院部の予算なのです。そこが非常 に大きなネックになっていることがあります。その辺がうまくいけば、もう少しスムー ズに動き出すのではないかという気がします。 ○中村座長  ほかに何かございますか。 ○仲佐代理専門会員  人材育成はいちばん重要だと思うので、座標軸のリソースの中に、これはお金しか入 っていませんが、どうしても人材の評価をすることを入れていっていただいたほうが、 将来、おそらく人材が育つことによって日本の国際協力は良くなるだろうと思います。 ○青山会員  キャリアパスを示すべきと書かれていますが、医師、看護師ばかりでなく、臨床検査 技師とか福祉関係をやっていて国際保健を勉強したい人とか、開発を勉強した人が保健 分野に専門化したいとか、いろいろなパターンのモデルを挙げていただけないかと思い ます。私どもの修士課程には医師でない人が進学しますが、将来どうなるのかと尋ねら れると、頑張っていればチャンスがあるとしか答えようがないのが現状です。 ○中村座長  ありがとうございます。まだまだ議論は尽きないと思いますが、先ほど出てきたワー キング・グループ1の人材養成と、座標軸のワーキングがまたつながっていくというこ とで、今日は3つのワーキングを駆け足でやってきましたが、3つのワーキングが 各々、いろいろな形でリンクしてきたと感じました。今日の会合はまとめはありません が、事務局から今日の議論を踏まえて次の作業と言いますか、その辺で少しお話をいた だきたいと思います。 ○吉田補佐  今日は、いまご説明がありましたように各ワーキングの結果の報告がありました。そ れぞれリンクする部分あるいは共通する部分等、幾つか明らかになってきたのではない かと思います。今日いただいた意見を踏まえて、各ワーキング・グループでは引き続き 残りの作業をやっていただくのですが、同時並行として、この検討会の前半のサマリー の作成をしなければいけないと思っています。  この前半のサマリーについて、差し支えなければ各ワーキングの検討の結果を踏まえ て、事務局のほうでそれぞれの検討のサマリーを作り、それを統合して各委員に諮り、 あと座長とも相談して次回の検討会に報告できればと思っています。また、その際、こ の検討会の後半の会期になるのですが、後半の議題についてその時に議論する必要があ りますので、それについてもピックアップして、どういう議題を議論するかの点につい ても検討していただければと考えています。 ○中村座長  少し付け加えますが、ちょうど3年の中の1年半なので、サマリーというか中間報告 みたいな形と考えてよろしいのですね。 ○吉田補佐  そのように考えています。 ○中村座長  3つのワーキングで今までやったことを、少し中間報告みたいな形で出して、それは 別に大げさなものではなくて、一応、まとめるというイメージでよろしいのでしょう か。 ○吉田補佐  そうです。 ○中村座長  今までワーキングで皆さんがやってきたものを事務局でまとめて、もちろん私も関係 させていただいて、その内容をまた皆さんに示して中間報告みたいな形を出すというこ とです。あと今後に関しては今日は議論しなくていいのですか。 ○吉田補佐  次回の検討会を秋ぐらいに予定しているのですが、その時にいま説明しましたサマリ ー、いわゆる中間報告の案と、それと同時に後半の部分の議題についての議論を一緒に 行いたいと考えています。 ○中村座長  わかりました。たぶんワーキングで出たので今回も何回も出ましたが、単に報告書を 作るだけでなく、それを実施して本当に今までの流れを変えていくものにするにはどう するかが、たぶん後半のひとつの大きなテーマになると思います。その前に前半のとこ ろで議論したことをまとめておいて、次にまたステップしていこうという感じかと思い ます。 ○吉田補佐  もう1点補足しますと、これは3年の会期で進めていますので、できれば最終年度に は大きな国際シンポジウムのような会を、この検討会の結果を踏まえて、幅広く人内外 の関係者を集めて開ければと考えています。まだ計画の段階ですがそういうふうに考え ていますので、おそらく後半の議題というのは、そのシンポジウムを開く際の議題にも なるのだろうと考えていますので、そういう視点からもご検討いただければと思ってい ます。 ○中村座長  そういうことで、よろしいでしょうか。今日はありがとうございました。 ○吉田補佐  ありがとうございました。今後の連絡事項ですが、今日の議事録ですが、いつものと おり速記録ができましたら各会員、専門会員に送付して、必要な修正を得て最終確認し て、ホームページ上で公表したいと思っています。また各ワーキングの作業等も含めて 今後の作業については、電子メール等で皆様に連絡したいと思います。  次回の開催ですが、4半期に1回の開催を目標としていますので、次回は9月から10 月の開催を目処と考えています。追って皆様方に日程の調整をさせていただきます。 ○中村座長  ありがとうございました。 (了) (照会先)  厚生労働省国際課国際協力室   室長補佐 吉田   協力企画係長 吉村   03-5253-1111(内線7305)