04/06/14 労災保険制度の在り方に関する研究会第8回議事録           第8回労災保険制度の在り方に関する研究会               日時 平成16年6月14日(月)                   10:30〜               場所 厚生労働省 労働基準局第1、第2会議室(16階) ○島田座長  ただいまから第8回「労災保険制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。な お、本日は西村先生がご欠席とのご連絡をいただいております。また、当初ご出席の予 定だったのですが、土田先生からも急遽ご欠席のご連絡がありました。  それでは本日の議題に入らせていただきます。議題は前回に引き続いて、「通勤災害 保護制度の見直しについて」です。事務局から資料の説明をお願いします。 ○労災管理課長  前回、通勤災害保護制度の見直しにあたっての論点と、それに対する考え方というこ とで、「たたき台」についてご議論をいただいたところです。そこで、前回のご議論を 踏まえ、また「たたき台」を改定したものを、資料1として用意いたしました。また、 前回ご議論のありました、二重就職者が通勤途上での災害により休業した場合の労災保 険及び健康保険からの給付について整理したものを、資料2として用意しております。 これらの資料を中心に、課長補佐から説明いたします。 ○労災管理課長補佐  資料の説明をいたします。資料1については、前回、論点とそれに対する考え方の 「たたき台」を基にご議論いただきましたので、そのときの指摘を踏まえて「たたき台 の2」を用意いたしました。前回の指摘を踏まえての修正点について説明いたします。  7頁「単身赴任者の帰省先住居、赴任先住居間の移動のうちの保護すべき範囲につい て」ということで、前回お出ししたものについて、水町先生から、保護する範囲につい て、暦日でとらえるのか、あるいは24時間といった時間でとらえるのか、ということを 整理する必要があるのではないかというご指摘をいただきました。同時に水町先生か ら、仮に機械的にスパッと切ったときに、不合理になるような場合もあるのではないか というご指摘もいただきました。それについて、若干この論点を整理し、修正しており ます。7頁の下線を引いている部分が修正部分です。「勤務日当日またはその翌日」 と、表現を直したのは、表現を適正化しただけで、特に大きな内容的な意味はありませ ん。  8頁の(2)帰省先住居から赴任先住居への移動のところの整理ですが、ここについ ては前回、西村先生からご指摘があり、移動の実態としては、帰省先住居から赴任先住 居へ労働者が戻ってきているタイミングは、就労日の前日という実態がある。それにつ いては、例えば当日であれば電車が遅れたりするようなリスクもあるということで、前 日に赴任先住居へ戻り、翌日の業務に備えるというのは、労働者のモラルという点から 見ても保護に値すると考えるべきではないか、というお話がありました。当初の案につ いても、勤務日の当日、または前日の移動について保護すべきであるという前提で案を 作っていますので、結論には影響がありませんが、西村先生のご指摘を踏まえて、結論 に至るまでの理論構成を若干修正しています。  (1)勤務日またはその前日に移動が行われることが大半であるということに加えて、 「特に前日に移動が行われることが多いという実態がある」ということを追加していま す。  (2)については、移動時間が2時間以上かかる場合が8割程度であるということを書 いていたのですが、ここは「大半である」というように修正しています。そういうこと を前提にすれば、勤務日の前日に赴任先住居に戻り、翌日の勤務に備えるという行為に は合理性があると考えることができる、ということで西村先生の前回のご指摘を反映さ せています。  (3)は、前回の水町先生のご指摘に対応している部分です。1つは、暦日でとらえ るか時間でとらえるかという問題です。仮に、時間で退勤後24時間以内に移動する場合 を保護するといったことでとらえた場合、あるいは出勤前24時間以内の移動について保 護するとした場合、例えば退勤時間というのは残業により変わってくるわけで、それぞ れ日によって保護される範囲が変化してくるということが起こってくる。また、出勤前 の24時間とした場合に、例えばフレックスタイム制をとっているような場合、もちろん コアタイムの部分は出勤しなければならないわけですが、フレックス部分については、 どの時間に本人が出勤するつもりであったかは特定されない場合があり得るわけで、保 護される範囲が不明確となるおそれが出てくるのではないか。そういうことからする と、時間で保護される範囲を決めるよりは、むしろ暦日で、当日または翌日、あるいは 当日または前日といった形で決めることを原則とするのが適当ではないか、というよう に整理をしています。  原則としてはそういうことですが、前回ご指摘がありましたように、機械的に切って しまったときに不合理になる場合というのが、確かに起こり得るわけです。それに対応 したのが「ただし」以下の部分です。例としては「急な天候の変化で交通機関が運行停 止となったような場合」ということを掲げています。沖縄に単身赴任をしている方が、 台風がきて飛行機が飛ばなくて帰れないというような場合が起こり得るわけです。そう いう「外的な要因により、勤務日の当日またはその翌日に移動ができない場合、あるい は勤務日の当日または前日に移動ができないような場合については、例外的な取扱いを 検討することが必要である」ということで、前回のご指摘に対応しています。  12頁の逸脱・中断の特例的取扱いの範囲ですが、前回、水町先生から、ボランティア 活動といった社会的に有益と考えられる活動について、どのように取り扱うかというこ とが、問題としてあるのではないかというご指摘をいただきました。その対応として、 (1)そもそも逸脱・中断の特例的な取扱いの範囲を検討しなければならない背景とい うことで書いている部分に「ボランティア活動等社会的に有益であると考えられる活動 に参加する者も増加している」という現在の状況を書き加えています。  (2)は、前回島田先生からご指摘がありましたもので、念頭に置かれていますのが 札幌の事案です。通勤経路からちょっとした逸脱、たしか食材の購入を行うために、少 し逸脱して戻ってくる途中、完全に戻ってきていれば保護の対象になったのですが、逸 脱して通常の経路に戻る直前ぐらいの所で事故に遭ってしまったということで、通勤災 害保護制度の保護は受けられなかったという事案があるわけですが、そういうものにつ いて「その理由いかんによっては現行の取扱いでは逸脱されるものであったとしても、 合理的な経路である等として保護すべきものがあるのではないかという意見もある」と いうことでまとめています。  (3)は、特例的取扱いの範囲について、前回、「日用品の購入その他これに準ずる 行為等」ということでまとめてあったのですが、ここは4つの類型について明確に書き 込んでいます。  (4)については、島田先生からご指摘があった事案に対応して、「併せて」という ことで、「逸脱及び合理的な経路の捉え方等についても検討することが必要であると考 えられる」ということで反映させています。以上が資料1、前回からの変更点です。  資料2について説明いたします。前回、西村先生から、二重就職者が被災して休業し た場合について、労災保険と健康保険からの給付についての整理をしたほうがいい、と いうご指摘があり整理をしたものです。労災保険の場合は、1週間に1時間でも働いて いれば適用されるわけですが、健康保険については、通常の労働者の4分の3以上の時 間を働いているという被保険者の要件があり、すべての労働者についてこの話が当ては まるわけではない、という前提で説明いたします。  1の(1)第1事業場へ住居から向かう場合の被災。(3)第2事業場から住居への移動 中。こういう場合に労災保険、健康保険からの給付についてはどのようになっているか ということですが、この場合については、住居と就業の場所の間の移動ということです ので、労災保険の通勤に当たるということで、通勤災害として保護されるわけです。そ の場合に、休業給付が支給されるわけですが、第1事業場へ向かう途中での被災であれ ば、これは第1事業場から支払われていた平均賃金のみを基礎にして休業給付が支給さ れるわけです。第2事業場から住居へ戻る途中の被災であれば、第2事業場から支払わ れていた平均賃金を基礎に、休業給付が支給されることになっています。  一方、健康保険については、労災保険との併給調整の規定があります。健康保険法55 条1項、資料2頁の下に規定が書かれていますが、被保険者にかかる給付については、 同一の疾病・負傷又は死亡について、労働者災害補償保険法その他の法律に基づき、相 当する給付を受けることができる場合には、健康保険の側からの支給は行わないという 規定になっておりますので、この場合には労災保険のほうから休業給付が支給されるの で、健康保険の傷病手当金は支給されないという制度になっています。資料の中で、健 康保険の後に「同一の疾病・負傷又は死亡について」と書かれていますが、今回は休業 給付のことを問題にしているので、この「死亡について」の部分は削除していただけれ ばと思います。  2の第1事業場から第2事業場への移動中の災害についてです。これは、まさに現在 この研究会で通勤災害として保護すべきかどうかを検討している移動ですが、現状、健 康保険の被保険者となっている人、特に第1事業場、第2事業場ともに被保険者である 人についてはどうなっているか、ということで整理したものです。労災保険からは、現 在においては、住居と就業の場所の間との移動ではありませんので、通勤に当たらず、 休業給付が支給されないということになっているわけです。一方、健康保険について は、第1事業場、第2事業場から支払われていた報酬を合算した額を基礎にして、傷病 手当金が支給されるということとされています。したがって、両方とも被保険者になる 場合と限った話ですが、通勤災害ではないとした場合には、双方の報酬を合算した額が 基礎になったものが支給され、通勤災害となった場合には、片方の事業場からの賃金を 基礎にしたものしか支給されないということになる、というのが現状です。以上が資料 2です。  資料3については、前回も実態調査の資料を出し、今回も資料6、7として添付して あります。この中から主要な部分について抜き出して整理をしていますので、説明いた します。  二重就職者についての移動の実態ということで、(1)は、二重就職者のうちの事業 場間移動を行う者の割合です。これについては、第1事業場と第2事業場間を直行する 者のうち、常に直行する者が30.1%、直行することのほうが多い者が16.1%で、現在、 保護の対象とされていない事業場間の移動が相当程度に行われていることがうかがわれ るものです。  (2)事業場間の移動の際の経路、あるいは交通機関については、毎回同じ経路、同 じ交通機関で移動している者が45.5%、ほぼ一定の者が32.4%となっており、多くの者 は一定の移動経路や交通機関によって移動している、という実態がうかがわれるわけで す。  2「単身赴任者の移動の実態」。(1)帰省頻度については、月に2、3回というの が31.2%、ほぼ毎週が29.9%、月1回が28.6%となっており、単身赴任者の大半が、月 1回以上は家族の下へ帰省しているという実態がうかがわれるということです。  (2)帰省の経路ですが、ここに短期休暇と長期休暇とに分けて記述されています が、調査上、短期休暇というのは、法定休日などを利用した休暇ということで、イメー ジとしては週末の休暇になろうかと思います。一方、長期休暇は、ゴールデンウィーク や年末年始などを利用した休暇とされています。帰省経路は、短期休暇の場合、直接仕 事場から帰省するほうが多いという者が32.6%、ほぼ毎回仕事場から帰省する者が26.2 %で、直接仕事場から帰省先の住居へ移動する者のほうが多数という結果にはなってい ます。ただ、ほぼ毎回自宅(赴任先の住居)へ戻ってから帰省するというのが24.6%、 赴任先住居へ戻るほうが多いとする者が14.8%で、赴任先住居から帰省先住居に移動す る者についても一定程度はいるということがうかがわれるわけです。長期休暇の場合、 若干傾向が異なり、直接仕事場から帰省先住居へ移動する者と、赴任先住居から帰省先 住居へ移動するものとの割合が、ほぼ拮抗しているという実態です。  (3)勤務に戻る際の帰省先からの経路で、一旦赴任先住居に戻っているかどうかと いうことですが、短期休暇の場合については、ほぼ毎回自宅、すなわち赴任先住居へ戻 るとする者が57.7%、自宅へ戻るほうが多いとする者が10.2%ということで、一旦赴任 先住居へ戻るという者が多数を占めています。長期休暇についても、割合は若干違いま すが、ほぼ同様の傾向を示しています。  (4)帰省の出発までの行動ですが、帰省の際に一旦赴任先住居へ戻る者が、出発す るまでに何を行っているかということです。短期休暇については、帰省の準備が83.8 %、掃除・洗濯等の家事が35.2%、食事が25.8%、睡眠が16.3%となっており、多数の 者が日常生活上に本当に必要な最小限度のことを行ってから出発していることがうかが われます。長期休暇の場合も、ほぼ同様の傾向です。  (5)は、帰省直後に自宅から出勤するまでの行動で、帰省した後、出勤まで何をし ているかということです。短期休暇については、多数の者が睡眠、出勤の準備、食事、 掃除・洗濯等の家事、日用品の購入といった、日常生活に必要な最小限度のことを行っ ている、という状況がうかがわれます。長期休暇の場合も同様の傾向です。  (6)は帰省に要する時間です。短期休暇の場合は、2〜4時間が50.8%、4〜6時 間が25.1%、2時間未満が16.6%、6〜8時間が5.5%となっています。2時間以上と いうことでとらえると、8割を超えるわけで、4時間以上ということで見ても、3割を 超える時間がかかっているということです。長期休暇の場合も傾向は同様です。  (7)は、勤務先から一旦赴任先住居へ戻る方が、帰省先住居を出発するまでの所要 時間です。短期休暇の場合は、2時間以内に出発する方が71.3%、2〜6時間が16.2 %、6〜12時間が6.7%、12〜24時間が4.6%となっています。これから見ると、勤務日 の当日に出発する者が多数であるということが言えますが、翌日に出発する者も一定程 度はいることがうかがわれます。長期休暇についてもほぼ同様の傾向です。  (8)は帰省先から赴任先住居に戻って出勤するまでの時間です。タイトルが少し不 正確でした。帰省先住居から赴任先住居に戻ってから、出勤時間までの時間です。どの ぐらい前に赴任先住居へ戻るかということですが、短期休暇の場合には、2時間前以内 に戻るのが15.0%、2時間前から出勤同日の間に戻る方が9.0%、つまり1日前に戻る 方が74.4%で、勤務日の前日に赴任先住居へ戻り、翌日の勤務に備える者が多数である ということがうかがえます。長期休暇の場合も、ほぼ同様の傾向にあるということで す。  このように、1日前に74.4%の方が戻るという実態がありますので、これを踏まえて 前回の西村先生のご指摘のように、翌日の勤務に備えて前日に戻るということが、労働 者のモラルとしても保護すべきではないかというご議論が出てくるという実態になって います。以上、資料3です。資料4〜7は、前回お出ししたものと同じですので、説明 は省略いたします。  資料8は、平成15年度に当方から労働福祉共済会に委託研究をしていたものの報告書 です。その中の諸外国の通勤災害保護制度に関する調査研究部分を抜粋して、今回まと めて資料として提出しています。諸外国について、非常に詳細な研究になっていますの で、是非ともご活用いただければと思っています。資料の説明は以上です。 ○島田座長  ただいまの事務局からの説明を踏まえて、自由にご議論いただきたいと思います。い かがでしょうか。どこからでも結構ですが、もし差し支えなければ、検討すべき論点と して資料1、たたき台(2)の中で出ています二重就職者の問題、単身赴任者の問題、逸 脱・中断の特例的取扱いの範囲とありますので、この順番でご議論いただければと思い ます。まず、二重就職者の問題について、いかがでしょうか。 ○山川先生  ここに書いてあることではないのかもしれませんし、前回議論されたかもしれないの ですが、論点1の2で「第1事業場から第2事業場への移動は、第2事業場の保険関係 により処理する」とあります。それを考えていく場合に、「就業に関し」という要件を どう考えるのかという点を伺いたいと思います。特に、第1事業場にしばらく滞留せざ るを得ないような事例が出てくるかと思います。あるいは、どこかで時間を潰すとか。 通常の帰宅の場合は2時間前後を目安として就業関連性を判断するという取扱いだった かと思いますが、それは事業場から自宅に帰る場合の扱いで、第1事業場に滞留するよ うな場合も同じことになるのかどうか、その辺りについて検討がなされたかどうか、お 伺いしたいと思います。 ○島田座長  その点は前回、水町先生からもご質問があったのですが、十分に議論したというわけ ではありません。確かにそこは私も伺っていて、検討しておかなければならないことか と考えています。 ○労災管理課長補佐  基本的には、滞留の場合とその後の、行動の逸脱・中断の場合との話があるのだと思 います。逸脱・中断については、他の逸脱・中断と同じような考え方を基本にする、と いうところが出発点なのだろうと思いますが、おそらく二重就業の場合には、他のもの と違う点があるだろうと思います。その点については、事務局としても現段階で完全に 詰め切れているわけではありませんので、実際にこういう制度改正がなされることにな った場合には、施行までにはその辺は完全な整理をしなければいけないと思っていま す。現時点では、完全な整理はできておりません。 ○島田座長  この点については今、皆さんのご意見を伺えればと思います。特に第1事業場での終 業の時刻と、第2事業場での始業の時刻がかなり時間的に間隔があるという場合、しか し自宅に戻るほどでもないという場合が想定されると思います。 ○保原先生  分からないですね。日本の場合、やはり時間で区切っているというところが1つ問題 がある。例えば、私がやったフランスの場合は、時間で区切らないで就業の目的という ことで、本当に家に帰る途中であったか、あるいは勤務に本当に向かっていたか、そう いう考え方なのです。日本の場合は、就業に関して2時間が限度とか、いろいろありま すから。時間を外すということになると、また大変だし。 ○島田座長  実態としては、二重就職者の場合は、その問題を考えておかなければなりませんね。 ○保原先生  おそらく、二重就職者の場合は、昼間働いて、また夜働くというタイプと、大学の非 常勤講師のように、一定時間でとんどん移っていくという人と、大体二とおりあって、 その場合に1つの事業場に2時間以上いるのがむしろ普通だろうと思いますから、従来 の考え方からいうとそこで切られてしまう。 ○島田座長  第1事業場の終業時刻後のことです。これは私の全く個人的な体験なのですが、かつ てある曜日の非常勤をやっていたときに、1講目があり、その後が非常に離れていたの で、早目にそこの大学の図書館に行くというようなことをやっていたのですが、そうい う事例があるかどうかということです。午前中勤務をしていて、次が4時ぐらいという ことで、一旦自宅に帰ると、またすぐ出なければいけないということになると、おそら くその間、時間を潰すことになる。 ○保原先生  潰している時間を、どちらかの事業場で働いているとみなすのは難しいですね。 ○島田座長  中断で捉えられるのかどうかということになるのだと思いますね。今までの考え方で いくと、事業場から住居に戻って出てきたのが、逸脱・中断で考えるか、あるいは合理 的経路を少し柔軟に考えるか。「ささいな行為」というようなことで考えてきたと思う のですが、時間的経過になりますから、どこかで時間を過ごしているということについ て、逸脱や中断で考えられるのかどうか。 ○保原先生  前の回、休んだので恐縮ですが、現行法の解釈だとかなり無理だから、何らかの新し い規定が必要だというような、そういう方向で考えているのですか。 ○島田座長  私はそういうように伺っているのですが。 ○山川先生  そうだとすると、どういうふうに制度を仕組むかという規定の書き方にも係ってくる ような気がします。就業関連性が切れるということになると、全くその後の移動が通勤 性を失うのですが。例えば、中断的に考えれば、その中断期間中は通勤性はないが、通 勤経路にいるときには通勤性があるということで、逆に就業関連性は、ただ中断とも違 う、いわば起点の問題なわけですね。ですから、あとは仕組みということになるのかも しれませんが、発想として中断的に考えるか、それとも就業関連性の要件に引きつけて 考えるか。  第1事業場をどういうものとして見るか、自宅に類するものと見れば、別に自宅で何 をしていようが、その後出発したら就業関連性があるということなのですが、そのよう に見る、かつ自宅にいる時間を中断と同様のものとするか、それとも従来の就業関連性 そのままで見ていくか。どれだけ滞留する実態があるかによるかもしれませんが。それ と、もし新たなスキームを作るということでしたら、規定の設け方によって、いろいろ 工夫はあり得るのかという感じはしますけれど。 ○島田座長  そうすると、3つの場合が考えられる。第1事業場から第2事業場に一定の時間的感 覚がある場合に、第1事業場に滞留しているというのと、合理的経路の途中で一定の時 間を過ごすという形での過ごし方と、3番目に、第2事業場に早目に行って、そちらで 過ごすという3つが考えられるわけですね。 ○山川先生  新たなスキームではなくて、現在のスキームで、早く着きすぎて就業場所で時間を潰 していたというのは、就業関連性はどうなっているのですか。 ○島田座長  よく分からないのですが、従来の考え方でいくと、合理的な時間の範囲で行くから、 通勤ということになるわけで、あまりに早く行っているのは、基本的には通勤ではな い、就業関連性はないと考えられるという気もするのですがどうですか。 ○山川先生  自発的に間違って2時間も3時間も早く着くということはあまりない。2時間早く着 いたとすれば、そこで何かやっているだろうという、そういう発想になるのですか。 ○島田座長  たしか、裁定例の中に、非常に早い場合は駄目だというのがあったような気がするの ですが。 ○補償課課長補佐  実務的には、出勤前に早く着くという状態は、いま山川先生がおっしゃったように何 か目的があって来たのだろうということで、それが仕事であれば何の問題もないのです が、仕事ではない、例えば自主的なクラブ活動があるので、そのために早く来たという 場合は、その時間によってやはり判断をしています。通達上は、明確には2時間という 規定はありませんが、今までの解釈例がいろいろあり、その解釈例からすると、やはり 2時間というのが1つのメドで、それより長い場合には就業関連性がない、という判断 をしているというのが実状です。 ○島田座長  資料8の2頁に「被災当日の前日から雪もようとなったことから、路面凍結により自 動車による出勤ができない可能性があると判断して、始業時間よりも8時間早い当日の 午前0時に会社に向かう途中に事故に遭った」ということで、これはやはり駄目だとい うことですね。問題は、第2事業場との時間の間隔を過ごすというのを、従来の解釈で 考えるか、あるいは二重就職者の特別な事情というように考えるかということですね。 その場合に、先ほどの3つのパターン全部を認めるのかどうか。 ○保原先生  基本的には、中間で時間をたくさんとっている人については、二重就職者にとって合 理的な行為かという、抽象的に言えばそういう判断でしょうね。 ○島田座長  やはり特別な枠組みを考えるか。 ○保原先生  例えば、先ほど島田座長がおっしゃったように、非常勤講師で時間がたくさん空いて いる。2番目の働き口に3時間、4時間早く行って調べものをしている。それは合理的 行為と見るかどうか。ところが、4時間ぐらい空いていて、途中でパチンコをずっとや っているということになると、これは保護から外れるか、そこまでは保護しなくてもい いという気もしますが。 ○山川先生  例えば非常勤講師の場合で、図書館に行って調べものをしているというのは、就業関 連性ということで、その時間も見るという発想ですね。確かに、途中パチンコで過ごす のは、就業関連性はないので、これは中断になる。その後、経路に復しても、それはも う駄目ということですか。 ○島田座長  まだ、そこは考えていないのです。 ○山川先生  就業関連性のない行為であれば、その時間帯は駄目だというのは・・。 ○加藤先生  ちょっと分からないのは、非常勤講師のような場合は、時間はかなりフレキシブルに 対応できる、早目に行って準備をしておきなさいということも言えそうですが、そうで ない二重就職者の場合に、第1事業場に滞留するとか、第2事業場に早目に行くという のは、そもそも可能なのですか。非常勤講師は何となくイメージができるのですが、そ うでない場合、第1事業場に滞留とか、早目に行くということは可能ではないような気 がするのですが。 ○水町先生  休憩室で休ませてもらって、本を読んでいるというようなことですね。 ○加藤先生  非常勤講師のような場合は、かなり柔軟に対応できると思うのですが、そうでなくて 民間企業の場合、研究室で休ませるなどというのはおよそないでしょう。 ○水町先生  研究室ではなく、休憩室がありますよね。会社の食堂に行って、コーヒーを飲みなが ら本を読んでいるということもあるかもしれないし、また同じ事業場内ということもあ るかもしれません。 ○保原先生  一般論として、大学の教師など特殊な場合は別にして、第1の就業と第2の就業で、 そんなに時間が空いているということは考えられますか。 ○山川先生  その意味では、問題の発生する事案がどのぐらいあるか、むしろ就業時間のほうを調 整するように、パートタイムなどの場合は対応することもあるかもしれないですね。つ まり、時間が空いているから出勤時間自体を早く設定するというように。それも職種に よるかもしれませんが。 ○水町先生  資料1の13頁、「通勤災害の逸脱・中断の特例的な取扱いの考え方」ですが、これは 特に単身赴任や二重就職だけではなく、一般的な考え方ですね。この中で3つ選択肢が あって、やはりパチンコから帰った後は駄目だというのは(1)ではないということにな る。(1)は、パチンコに行った後でもまた戻ればということになるので、そこを入れる とすれば(1)になりますが。(3)で「日常生活上必要な行為」について、追加して定める ということになると、買物はいいが、ボランティアに行くとか、ダイバシティの観点か ら、いろいろなことを社会的な行為として認めていこうという点ではなかなか難しいの で、間をとると(2)の「日常生活行為」以外でも、社会的な行為については逸脱・中断 と認めて、通勤災害の中で射程に入れていこうという選択をとることが、今までの議論 からすると取り得る選択肢かと思うのです。  逸脱・中断の中で、普通の場合の逸脱・中断の場合と、二重就職者が間で逸脱・中断 をするという場合に、特別に考慮しなければいけない点があるかどうか。仕事を終わっ て普通家に帰る場合と、大学の非常勤講師もそうですが、一般の場合にも、場合によっ ては間に6時間、7時間空くことが考えられるとすれば、そのときに家に帰るのは大変 だから、途中で時間を潰したり、社会的な行為を行ったり、本を読んだりしてというこ ともある。その場合、自宅に帰るかどうかという場合と、間に何時間か空くという場合 に、全く同じ枠でいいかというところが問題で、二重就職者の場合には、一般に、普通 家に帰る途中の逸脱・中断とは違う考慮を少ししなければいけないのではないか。その 点でいけば、(2)にどういうものを入れたらいいか。それによって一般の場合と二重就 職の場合を分けて考えていく、それが制度的な枠組みに沿った方向かと思います。  また「検討することが必要である」ということがここに出てきていますが、これはこ れからここで検討していくということなのか、それとも検討するということをここで決 めれば、これは法律改正ではなく政令改正でいけるので、政令については、この後、厚 生労働省として考えて政令改正につなげていくということなのか、これからの検討の進 め方はどういうことになるのですか。 ○労災管理課長補佐  こちらで全部やるということを言っているわけではなく、ここに書かれていますよう に、結局、出勤前、退勤後の労働者の行動の実態を踏まえて、もう1回議論していただ く必要があるのではないかという意味です。 ○島田座長  結論はもちろん、議論してお出しいただくことになるのですが、二重就職者と単身赴 任については前からだいぶ議論しているので、それはかなり早い段階でまとまりがつく のではないか。先ほど言った、最後の「合理的経路の問題」は、制度全体に係わる問題 なので、これと同じペースではできないが、この研究会としては対象にするのはどうか という位置づけかと思います。第1事業場から第2事業場へのタイムラグに関する調査 はないわけですね。一旦戻るか戻らないかというだけですね。ケースとして多いかどう かは別として、もしこの問題を取り上げるのであれば、一応整理はつけておかなければ いけないということですね。 ○山川先生  先ほど水町先生が言われた考えに近いのかもしれませんが、第2事業場を中心に考え るとすれば、住居から第1事業場に行って、そこで出発するまでの間というのは、ある 意味では第2事業場で考えた場合の「中断で合理的な理由がある場合」に当たると言え なくもないわけですね。つまり、自宅・第1事業場で、そこでの就労というのをいわば 無視するといいますか、それを「合理的な理由のある中断」ととらえれば、そこは第2 事業場に関する通勤災害の対象ではないが、第1事業場との関係で通勤災害の対象にな っているということからすると、結局のところ中断のような性格を持ったものが、どこ で終わるかということ、あるいは第1事業場で働いたがゆえの中断に類するようなもの が、どこまで合理的な範囲として認められるか、という整理はできるような感じがしま す。具体的に、ではどこまでが合理的かというとまた別ですが。 ○島田座長  考え方としては、第1事業場の滞留時間を通常と同じように考えると、機械的な言い 方をすれば、2時間ということから出発すれば、それは第2事業場へ向けての通勤と考 えられる。第2事業場についての、先ほどご紹介のあった考え方に即して考えた場合 に、まだ可能性はあるということでしょうね。 ○山川先生  合理的というのを入れざるを得ないと考えるかどうか。 ○島田座長  残る問題は、……という場合は、退勤の場合は結構厳しいですね。通常は1時間ぐら いでもう駄目だということになる。そこについて、何か特別のことを考慮するかどうか ですよね。それと、多少早目に着くということを、二重就職者の特別な事情として、第 2事業場への就業関連性の中で見てあげられるかどうかという、そこでしょうね。 ○水町先生  間で行われる行為について、いわゆる就業的なものと、就業にかかわらないプライベ ートな行為と、その間に社会的な行為として、学校を経由するとかボランティアに行く とか、いろいろなことがあるわけです。間ではなく、自宅に帰る途中でもあるわけです が、大体その3つぐらいの類型がある。今回、制度改正を検討していこうというところ で、根拠として言われてきたことは、通勤や間に行くことも、社会的な行為であって、 社会的な危険なので、社会的な保護を通勤災害保護制度として及ぼそうという趣旨だっ たわけです。  ダイバシティという背景もあるので、具体的にプライベートなものなのか、ソーシャ ルのものなのか、それとも仕事に係わるプロフェッショナルなものなのかというのは、 言ってみれば簡単なのですが、具体的な事例を挙げて考えてみないと、境界線上のもの がたくさんある。そこの議論を具体的に詰めてやっていかないと、この13頁の最後のと ころには結論がつながっていかないし、そこを見ないと二重就職者や単身赴任者だけで 動かそうとすると、全体としての制度のバランスがよくなくなるという気もするので す。 ○島田座長  ですから、一応二重就職者の問題としては、先ほど言った第1事業場への滞留と、第 2事業場に早期に行くことについては、原則は従来の考え方をとって、ただそこに一定 の二重就職者であるがゆえの合理性を加味するかどうかというのが問題だと思うので す。途中については、むしろ全体との議論との関連で結論を出したほうがいい。二重就 職者だけ特別に決めるのは、ちょっと難しい。そういう整理でいかがでしょうか。 ○保原先生  諸外国の状況の資料、23頁のイタリアのところ、(2)で、「1つの仕事場からすぐ に次の使用者の所へ」とある。「すぐ」とあるのだけれど、イタリアの条文だけ見ると そういうことは書いてない。これは解釈なのですか。  この説明をそのまま受け取れば、あまり間隔の空いたのは駄目ということになる。た だ、イタリアの2000年法の条文を見ると、「すぐに」などとは書いてない。「2つの労 働の場所を結ぶ通常の経路」というだけですね。 ○島田座長  これは解釈なのでしょうね。先ほど山川先生がおっしゃったような、出発点を住居で はなく前事業場と考えていくと、この経路も通常の住居と労働の場所の間と同じものだ ということではないですか。 ○保原先生  そうすると、すぐ次の使用者の所へ行くという、この「すぐに」というのが。 ○保原先生  前事業場の出発を、「すぐに」と考えれば。 ○山川先生  時間的な、間隔としての「すぐに」というのと、ダイレクトにという意味で、どこか に寄らずにという読みもあるかと思うのですが。 ○島田座長  住居と労働場所に行くのと、同じようなことで。 ○保原先生  ドイツはどうなっていましたか。 ○島田座長  ドイツも、前に西村先生からお話を伺った限りでは、すべてを出発点、出発点でみ る。第1事業場よりの出発を、第2事業場への起点とみるという、イタリアと同じよう な考え方だったと思います。 ○保原先生  15頁、フランスのところです。フランスは判例で一応片付けたことになっているので すが、この判例には、いわゆる学者はみんな反対です。結論がいいからしようがない と。二重就職者を保護する必要はある、ただ、こういうのは条文に合わないと言われて います。フランスの考え方は、第1から第2の職場に行く途中の事故について、第1の 職場は単なる逸脱・中断である。しかし、正当な理由があるから逸脱・中断でもいいと いうことで、結局、自宅から第2の職場までが通勤の往路だという考え方です。仮に、 その人が第1の職場に向かう途中で事故に遭ったという場合は、普通の通勤災害です が、通勤経路がこの人にとっては2つあるのかということが問題になって、フランスで はこの判例には批判が強いのです。この判例の前にも、いくつか事件があったのです が、この判例以後は、新しい立法や、この判例を取り消すような判決はないので、結局 これが生きているということらしいのです。新しく立法したのはイタリアですね。 ○島田座長  先ほど言いましたドイツのは、24頁に出ています。いま山川先生からご提示いただい た論点については、まだ完全に結論が出ているわけではありませんが、基本的な考え方 は一応整理されたということで、もう少し事務局のほうにもご検討いただくことにし て、その他についてはいかがでしょうか。まず、二重就職者関連で何か。 ○保原先生  給付の問題。 ○島田座長  給付。 ○保原先生  はい。つまり、どこの賃金を基にするのかという問題で。普通は第1の働き場、第2 の働き場、それぞれどっちにかかわるかというので、どっちかの賃金を基にして、労災 保険給付を計算するということになるのだろうと思いますが、ただ、結果は不合理な場 合が多い。例えば大学の非常勤の人は、交通事故に遭った場合、いずれにしてもみんな 働けなくなってしまうわけですから、そうすると、いままでAとかBとかCとかの職場 から少しずつお金をもらっていた人は、働けなくなったために、たまたまBの職場との 関係で通勤していたという場合には、その人が普通働いている賃金の3分の1とか4分 の1になってしまう。こういうのでいいかというような問題があるかと思いますね。 ○島田座長  その点で、もちろん制度は別なのですが、今日ご紹介いただいたように、健康保険の 場合は、双方の報酬を合算した額を基礎とした傷病手当金の支給分というふうになって いるのですが、多分それとの整合性というか、それも考慮するかということです。  これはかつて随分古くから、こういうことに、健康保険については、私もよく知らな かったのですが。 ○島田座長  つまり、休業給付の具体的な額が、もちろんそれは、現物給付のほうは、もちろん労 災保険のほうが有利なのですが、労災保険が適用になると、休業給付については、傷病 手当金より低いというようなことになっていいかどうかということです。 ○加藤先生  そうですね。 ○水町先生  4.,3の1のところで合算するという原案が出ていますが、この合算するという案だ と、健康保険か労災保険かで帳尻が合うというか、バランスがおかしくなるということ はないんですね。 ○労災管理課長補佐  ないです。二重就職者であろうと、通常の人であろうと、同じバランスの給付がされ ることになりますから。 ○水町先生  ボーナス、賞与との関係でも、特に、こっちのほうだと賞与が入って、こっちだと賞 与が入らないとか、そういうところも大丈夫ですね。 ○労災管理課長補佐  基本的には、通常の就職者の場合の、健康保険と労災保険とのバランスが、そのまま 二重就職者にも当てはまるようになるということです。 ○島田座長  これが妥当なのではないかという感じがするのですが。 ○労災補償部長  特別支給金はどこになるのだろうか。そこはちょっと別の話になる。実際上、健保で 2つの保険の被保険者になっているというのは、どれくらいいるのか、よくわかりませ んけれども。実際上、2つの被保険者になっていれば、それは当然それぞれに保険料を 払っているわけですから、それぞれ被保険者なんですね。まあ、何となくあり得る話だ ろうと思いますけれども。 ○島田座長  私もそういうふうには思ったのですが、ただ、もう何か当初からここへきて、どうし て設けたのかなという。むしろ興味としては。 ○労災補償部長  さっき二重就職で、山川先生から問題提起があったことと同じ、それに関連してのこ とでしょうけれども、二重就職者についての通勤の捉え方を第1事業場と第2事業場の 間の移動を通勤として捉えましょうとしたときに、通常、事業場と住居の間の移動で考 えられる逸脱中断とは異なった逸脱中断という概念があるのではないか、こういう問題 提起だというふうに捉えてよろしいでしょうか。  そうすると、その最後の論点の(1)でも(3)でも、なかなか合理的に救えないのではな いか。そうしたら、(2)で逸脱中断というものをもう1回再構成すべきではないかとい うふうな問題提起なんですよね。 ○島田座長  私の整理の仕方が悪かったのかもしれませんが、一応その可能性もあるということ で。それはただ、二重就職者だけ別途考えるのは、いまの段階では難しいので、逸脱中 断については、前半との関連で、論点3のところで、二重就職者のことも念頭に入れて 議論してはどうか。それで、その前後の、第1事業場の滞留と、第2事業場に少し早目 にいくという考え方で。 ○労災補償部長  その辺の話は、おそらく就業との関連性をどこまで捉えるかということだと思うので すが。 ○島田座長  それで、そのときに二重就職者というものの若干の合理性というものをカウントでき るかどうかという。 ○労災補償部長  しかし、おそらく逸脱中断についての現行の法規制なり、解釈をそのままとった場 合、二重就職者についての移動の途中で、例えば本屋に寄るとか、講師でしたら、ほか の所で調べものをするとか、こういう場合、いま、これは逸脱であると考えられたとき に、一旦寄った所から、第2事業場へ行く間は、これは通勤として捉えられないですよ ね。  だから、そこまで何か手当てしないと、第1事業場と第2事業場の間の移動を通勤と は、なかなか十分に保護できないという問題提起なのかどうかということなのですが。  現行の制度なり解釈でも大丈夫だということで。 ○島田座長  先生には後でお答えいただいて、多分私の理解では、問題の調整は後に残るので、も し十全な保護ということであれば、検討の必要があるのではないかと思うのですが。た だ、現状の中で、多分、ほかの一般的な逸脱中断と区別して、二重就職者のことだけを 取り出して、やや広目にして、ほかと整合性があるかという問題が多分残るので、それ は少しこの問題とはまた別個に議論したほうがいいかなというのが、私の意見なのです が。 ○山川先生  私も最初に思ったのは、就業関連性のところが違ってくるかどうかということです。 当初念頭にあったのは、滞留のところ、自宅と就業場所の間ということではなくなるも のですから、第1の事業場と第2の事業場ということになるものですから、その場合に 対応をどう考えるかということで、その通勤途上の中断というのは、確かに特殊性はあ るので、それをどう反映するかという問題はあろうかと思いますが、ちょっと全体にか かわるところかなというふうに。島田先生がおっしゃった整理のとおりですけれども。 ○島田座長  そこまで積極的に考えられれば、いちばんいいのだろうと思うのですが、いかがでし ょうか。  多分3番目で、少し全般的なこととの関連で検討したほうがいいのではないかという 感じはしております。 ○保原先生  一般の通勤災害の合理性というのと、ちょっと違う考え方をしないと、保護の範囲が 狭くなりすぎる恐れがあると思いますね。 ○島田座長  それでは二重就職者の問題については、一応今日はこの程度でよろしゅうございます でしょうか。もしよろしければ、次の論点である、「単身赴任者の住居間の移動」の問 題についてご検討いただければと思います。  おそらく住居間の移動を対象とするということについては、大体議論が尽くされてい るかなと思いますので、特に論点2の2、保護すべき範囲の問題を少しご検討いただけ ればと思います。  前回では、今日議論がありましたように、「暦日か24時間か」ということで、勤務時 間の対応か、フレックスだけでなく、裁量労働なども出てくるでしょうし、これについ てはむしろ、出勤・退勤があったということとの関係で、24時間ということですね。 ○労災管理課長補佐  暦日ということです。 ○島田座長  暦日で考えるということですね。失礼しました。ということが整理されたということ と、そこがメインですね。  あと、むしろこうしたことの保護の範囲に対する根拠を補強する点で、西村先生のほ うから出ていたのですが、むしろ、翌日の勤務に備えるという行為自体というのは、積 極面もあるというふうにも見ていいという点が補強意見として出されたということで す。この点、いかがでしょうか。 ○水町先生  原則として暦日で考えて、あとは例外的な取扱いというので、1つの常識的な考え方 で、これはそれでいいと思いますが、歴日の捉え方の「出勤日」というのは、これは所 定労働時間というか、所定労働日で見るのか、夜中12時を超えて、夜中1時、2時まで 働いていた場合に、それはいつなのかという細かい話もあって。それは所定労働日、所 定労働時間ということになりますかね。 ○労災管理課長補佐  そこの考え方としては両方あると思うのですが、確かに、実際に残業を、仮に1時ま でしていたとした場合に、そういうことについては、当日または翌日ということになる と、ほとんど丸一日、保護される期間が長くなるというようなことになってくるという ことにもなってくることからすれば、所定労働時間で考えるということがあり得るので はないかと思います。 ○島田座長  いまの点、いかがですか。 ○水町先生  この表現からして、残業より退勤時間は変わるよとか、「フレックスタイム制等」と 書いてあったので、実労働時間というよりも、所定日とか所定労働時間で見ているのか なというふうには思ったのですが。それで実際上、非常に変な問題が生じなければ、そ れはそれでいいと思います。 ○島田座長  裁量制などということを前提とすると、所定というのは、あまり意味がないですね。 ○保原先生  もう1つは、やはり残業して、たくさん働いた人は不利益を被るというおそれもなき にしもあらずですよね。 ○水町先生  特に、自宅に帰る前の日は一生懸命残業して、最後まで金曜日、やろうと思ったらも う土曜日のお昼になっていたということもあるかもしれないですしね。例外的な取扱い のところで、少し柔軟に救えればいいのですが、例外的な取扱い、外的な要因というの に限定されているので、そこに限定してしまうと、何か非常にかわいそうなケースは救 えないかなという気もするのです。 ○労災管理課長補佐  外的な要因の部分は、これはあくまでも「こういう場合等」ということで、例示です ので。 ○水町先生  場合等の最後の所に「等」が付いていますね。 ○島田座長  ただ、「外的要因により」と書いてあるのは、勤務にかかわるとまずいのかという、 そういう話が。  もちろんそれは、時間外があまり長いとよくないという側面もあるのですが、ただ、 採用などで、技術開発系だと、やはりかなり裁量に入っているということになると、そ れはやむを得ないですよね。保護の範囲が1日になるか。そう言われてみると。 ○山川先生  以上の話は、原則として暦日した場合に、どこまで柔軟な取扱いをするかという議論 なわけですか。 ○島田座長  この考え方の前提はそうですね。 ○山川先生  確かに、24時間とすると、就業というか、労働時間が一体いつ終わったかということ を、どうやって判断するのかというようなことが、ちょっと技術的に難しそうな感じで すね。 ○島田座長  出勤が何時かというのが。 ○山川先生  むしろ例外をフレキシブルに捉えられるのでしたら、そちらのほうがいいような気が しますけれども、その点について、外的な要因ということと、仕事によるという場合 と、もう1つ最後の、明らかに業務と関連しない目的で、当日または前日に移動する場 合が例外だということですが、具体的にどういう場合に、「明らかに業務と関連しない で住居間の移動がある」ということなのでしょうか。 ○労災管理課長補佐  これは、明らかに業務と関連しない場合の例として出させていただいているのが、実 は論点の2の1のところの6頁で、形としては、赴任先住居と帰省先住居の移動である のは間違いないのですが、そういう移動ですが、実際の目的は、家族と一緒にレジャー 施設に行くための移動であったというような場合というのを、例として出させていただ いています。 ○山川先生  赴任先から仕事に行くというのが、予定されていない、そういう場合ということにな るわけですか。 ○労災管理課長補佐  帰省先から赴任先の住居のほうに戻ってはくるのですが、要するにその近くにある遊 園地に行くという。 ○山川先生  前日に先に行って、そこで翌日遊んでというような場合ということですか。その翌日 には仕事に行くかもしれないけれども、と。 ○水町先生  移動した当日に、レジャーとして遊んで、翌日は確かに勤務日であるというような場 合の移動を、「就業に関する」という評価ができるかどうかという部分ですね。  ただ、暦日の範囲内なら構わないということなんですよね。 ○島田座長  そうです。 ○労災管理課長補佐  いや、暦日の範囲内だったとしても、明確に目的が違う場合ですね。 ○島田座長  そういうことですか。 ○労災管理課長補佐  両方の目的があるという部分はある可能性があるのですが、ただ、違う例示になって くるのですが、確かに赴任先の住居に帰省先住居から、前日には移動する。そのとき に、実は午前中に友人の結婚式に出るための移動で、実はその日、もう1回帰省先のほ うに戻るという予定でいて、それで翌日の朝に、また赴任先の住居に来るというような 場合については、確かに前日、帰省先住居と赴任先住居を移動してはいるのですが、こ の移動は多分明らかに就業に関する移動ではないですね。 ○水町先生  通常前日の夕方に移動してくる予定だけれども、その日のお昼に結婚式が入っている と、それは就業以外で、そのまま。 ○労災管理課長補佐  仮にもう1回帰省先に戻るような場合というのは、明らかにこの4の。 ○水町先生  単身赴任先に、前日の夕方くらいまでに行かなければいけないし、いつもそうやっ て、日曜日の夕方に単身赴任先に戻っていたけれども、日曜日のお昼、結婚式だったの で、日曜日の朝からいく。それで結婚式に出た場合は、結婚式があったから夕方ではな くて、朝帰ってきたのですが、その場合、結婚式があったということで決められるかど うかですね。 ○島田座長  そうですね、多分ね。 ○労災管理課長補佐  明らかに、帰りの切符、往復の切符まで持っているような場合については、おそらく 目的は明らかなんだというふうになるんだと思いますけどね。 ○島田座長  問題は、うまくやるかですよね。要するに、合理的な行動がどうかという話だから、 客観的に判断したほうがいいんじゃないですかね。切符を持っていたか、持っていなか ったかとか、そこまでやると、特定が難しい。  言っていることはわかりますが、要するに。ああそうか、住居間を移動したときに、 逸脱とか中断というのをどう考えるかという話になるんですね、今度また。 ○労災管理課長補佐  住居間の移動をするとして、一応暦日単位で、保護の範囲を定めたときに、目的とし て明らかに業務との関連でない目的の移動について保護すべきかという問題です。 ○島田座長  移動自体の目的だと、結構、さっき言われたような側面が消えないですよね。双方の 目的をもっているという、そこをどう考えるかですよね。 ○山川先生  労災の場合、こんな例とか、例を挙げ出すときりがなくなって難しいのですが、例え ば奥さんが、単身赴任先の住居が汚れているから、大掃除をしましょうということで前 日に来て、仕事は通常どおり出かけて行ったという場合は。 ○島田座長  睡眠、出勤の準備、食事、洗濯、商品の購入とか、こういうものがメインですよね。 資料2で、帰省直後、自宅から出勤までの行動ということで。前日に帰るのか、睡眠… …なのか、行動というのかどうか、よくわからないのですが。マルチアンサーで、いろ いろあったのでしょうけれども。  この、要するに睡眠は別にして、出勤の準備とか食事とか、食事は別ですが、出勤の 準備とか家事とか、日用品の購入ですよね。これは、必要な時間数というものを考える のかどうなのかですね。多分、もし暦日で見て、前の日、何時に帰っても、とにかくそ の経路を通勤として見るというような前提に立って考えると、実際には例えば、掃除、 洗濯、日用品の購入の時間よりも多くの時間があったとしてもいいんだという前提をと ると、その中の逸脱中断の話というのは、何かこことはまた切り離されるかなという気 もするのですが、そこはどうなんですかね。 ○労災管理課長補佐  確かに必要最少時間だけというわけにはいかないであろうということは思いますが、 確かに、電車が着く時間とか、いろんな要因によって、多分時間はいろいろと事案によ って異なってくるでしょうし、そういう意味では、本当に睡眠と日常生活で必要な行為 の時間だけを計算して、その範囲でというわけにはいかないと思います。 ○島田座長  いかないですよね。そうすると、例えば、家に帰ってくつろいでいたという行為と、 そうではなくて、別のことをしたという、私的な行為をしたというのと、どう考えるか ですよね。  おっしゃったような意味で、早く帰って、家でくつろいでいれば通勤で、その前に結 婚式出席だと通勤でなくなるという、この場合に、そこまで考えてしまうかどうかです よね。 ○労災管理課長補佐  おそらく山川先生がおっしゃられたように、その移動については両方の目的であると いうふうな捉え方をするなら、それは就業に関する移動というふうに、移動としても評 価できるのだろうと思います。  ただ、要するに、明らかにそうでないという証拠が出てきてしまったときの扱い、も のの考え方というのを整理しておく必要があるのではないかというのが、ここの明らか に業務と関連する目的でない場合をどう取り扱うかということを書かせていただいたと いうことです。 ○島田座長  難しいんだな。 ○保原先生  前に私のうろ覚えかもしれませんが、ドイツで、トルコの労働者が、トルコまで単身 赴任の人たちが帰る。途中、ポンコツ車で行って事故が起こったりして大変だという話 を、前にチラッと聞いたことがあるのですが、1つの問題は、日本でもそのうち外国人 労働者が増えてきて、自分の家に帰る。例えばインドネシアに飛行機で帰る。それでま た戻ってくるとか、そういうようなこれから起こるかもしれない。  そういうのは、前回議論したのかもしれませんが、そういう問題をどう考えるかとい うことと。 ○島田座長  時間的な長さということですね。 ○保原先生  距離とか時間の長さですね。もう1つは、それと関連して、当日とか暦日というの は、その目的地に着いた日を考えているのか、そうでないのか。  例えば、東京と札幌の間、前の晩に汽車に乗って次の朝に着くという場合に、その翌 日とか当日というのは、どちらを考えているのかですね。 ○島田座長  つまり、出勤すべき日の前の前の日に出発しているということですね。 ○保原先生  着いているのは前の日だと。 ○島田座長  前の日だと。そこは、どうなんですか。 ○労災管理課長補佐  そこはあまりはっきりした整理をしていなかったのですが。 ○保原先生  距離はどんなに長くてもいいかという。 ○労災管理課長補佐  外国人労働者のような場合に、それは。 ○保原先生  単身赴任で帰るという。 ○労災管理課長補佐  法律の適用を、外国人については、要するに別の取扱いを、例えば単身赴任を保護す るというふうな基本ルールをつくったときに、外国人について特別な取り扱いというの は、かなり難しいように思います。 ○保原先生  難しいですね。ですから、そういう場合も想定して考えておかないといけない。  例えば、インドネシアから飛行機で直接やってきて、それで勤務先に直行するんだと いうふうに、これは通勤じゃないのと言われたときに、「違う」と言うのはなかなか難 しいかなと。日本の企業で働いている人ですけれども。 ○島田座長  それは、長期休暇を前提にしてということでよろしいですか。 ○保原先生  まあそれでしょう。 ○島田座長  長期休暇の場合。 ○保原先生  いちばん難しいのは、反対に、日本から外国へ帰った途中の車の事故とかいうのは、 日本では調べようがないですよね。しかしこれは、自宅に戻る途中の事故なんだと言わ れたときにどうするかという。  ドイツでは現実に起こっている問題らしいですけれども。やはり、外国人だけという わけにはいかないでしょうから、全体として、何か。 ○島田座長  ただ、当初、単身赴任者について考えられたのは、週末帰って金帰月来とか、そのパ ターンですよね。 ○保原先生  そのパターンです。 ○島田座長  それはもう、全くなくなってしまったのですか。 ○労災管理課長補佐  なくなったというのは。 ○島田座長  つまり、いまのような、長期休暇から戻ってくるというような場合、例えば、日本人 でも、単身赴任の場合、それもなおいまは見るんですか。 ○労災管理課長補佐  要するに、典型的に想定していたのは週末の移動です。ただ、同じ人が、長期にわた って夏休みなりについても同じルートで移動したということになると、それだけは排除 するという理屈もないのではないかということで。 ○島田座長  そうなると、いまの問題は出てくるわけですね。 ○水町先生  これは、前日自宅というのではなくて、いまの現行法で直接インドネシアから会社に その当日行ったとか、会社から直接インドネシアに帰ったという場合には、その証拠さ え揃えば通勤災害として適用されるということになりますよね。 ○労災管理課長補佐  直接ということになれば、そういうことになりますね。 ○水町先生  だから、それが次の日になったという場合に、その人だけ外すということは、おそら くできなくて、それは現行法でもそう。 ○島田座長  「反復継続性」ということを要件にしているのではないですか。それはどの程度考え るんですか。 ○労災管理課長補佐  国内の場合は、短期休暇で帰る中で、長期休暇で帰る人もいるでしょうから、反復継 続性は、長期休暇の場合でも、その反復継続の中で処理できるのだと思うのですが、確 かにインドネシアに帰る人で、頻度によるのでしょうけれども、例えば、月1回は必ず 帰るような方がいるというような場合があれば、それは問題にはなってくるのだと思い ます。 ○水町先生  自宅かどうかという話ですね。自宅というか。 ○島田座長  それは、適用しないことはできないでしょうから。ただ、問題はどこまで見るかとい う。調べられないですよね。そこですか、具体的には。  ドイツでは、どの辺が議論になるんですか。 ○保原先生  私は、お茶呑み話に聞いたところでは、トルコの人がドイツからトルコにときどき帰 る。そのとき、ポンコツ車で何人か一緒に帰って、よく事故を起こすんだというわけで す。ところが、事故の認定が難しい。つまり、よその国で起こっているということで。 そういう場合、いまに日本でも起こるよという話です。 ○山川先生  赴任途上災害とか、特別加入の問題とか海外出張中の災害でも、一応対象になるもの ですから、認定ができれば、妨げられないのかなという感じはしますけれども。通勤に 内在する危険の現実化というのを、あえて国内の通勤に内在する現実化に限るという解 釈では、いまはないということでしょうかね。 ○島田座長  むしろ、継続性とか、そういうところについて、当たるかどうか、あるいは特別扱い をする必要があるかどうかという、そっちの議論になるかもしれませんね。 ○保原先生  やはり反復継続か。 ○島田座長  それでは、それは1つの論点ということで考えるということで。 ○保原先生  もう1つは、さっきの遠い人が、前の日とかというのは、目的地に着いたときを基準 にして考えるのか、問題ですね。 ○島田座長  ええ、そっちは大きいですね。 ○労災管理課長補佐  着いた日を基準にしなければ、ものすごく時間がかかって、日をまたいでしか移動が できないような、遠くの島に赴任しているような場合などは、やはり、当日または前日 の、到着の時間で考えないと、結果としては不合理なことになるかと思います。 ○水町先生  帰るときは出発時間。帰るときというか、会社を離れて、戻るときは出発時間で、会 社に来るときは、遠いところを離れた時間。逆か。 ○保原先生  そうじゃなくて、着いた時間、着いたときを考えないと。 ○労災管理課長補佐  来るときは、着いた時間ということにしないと。 ○水町先生  先ほど島田先生が出された資料8の2頁の所に出てきた、8時間早く帰った場合に、 就業関連性はないというのを見ていて思ったのですが、単身赴任だと、前日に自宅に帰 ってもいいということを議論し始めると、やはりこの一般的なところの就業関連性にも 議論が及んできて、例えば前の日に自宅に帰るのはOKなんですよね。で、当日に会社 に直接行くのもOKなんですね。当日に、少し早目に行こうと思って、3時間前に会社 に着くと駄目になってしまうんですね。それは変ですよね。  だから、就業関連性というところを、2時間とか、リジットには切らずに、やはり就 業関連しているかというところを実質的な側面で見ていかないと、新しい単身赴任者の 自宅に前日に帰るという話をしているときに、両方のバランスがとれなくなってくると いうことがあるのかなと。 ○補償管理課長補佐  その関係では、解釈例としては、交通ストの関係があって、前日に出勤するというも のについて、就業関連性を認めた例がありますので、やはり就業関連性についても合理 性があれば、2時間に必ずしも限定されずに認めているという、そういう取扱いはして おります。 ○水町先生  長距離移動になってくると、そこを2時間ではなくて、どれくらい柔軟に、実質的な 観点から判断するかというのは、より。 ○補償管理課長補佐  早く着くというのは、多分交通事情とか、そういうものが問題になって早く着くとい うことだろうと思いますので、それ以外に、何か別の目的があれば別ですが、そういう 事情で早く着くというのは、先ほどの交通ストがあって、前日、夜中に出勤するという のと同列かなという気がしますが。 ○水町先生  外来的な要因を言わなくても、30分前に着こうという人よりは、余裕をもって3時間 前に着こうという人のほうが、保護されて然るべきだと思うので、そういう場合もやは り射程に含めて考えるのかなと。 ○保原先生  もともとね、何で2時間だというのです。私が記憶しているのでは、結局、2時間と いうのは、どこかで線を引かなければいけないからということなのですが、何でどこか で線を引かなければいけないかというと、結局、時間帯が変われば、交通の危険が変わ るだろうということなのです。  6時に帰る人と12時で帰る人は、交通の危険が違うでしょうという。それで、現実に 大阪の梅田の地下とか何かで事故があったりして、そういう、夜は危険が大きいとか、 いろんなことをしているわけで。  だから、そういう議論をクリアできればいい。 ○水町先生  単身赴任で遠距離でもいいという話になってくると、必ずしも危険だけではない要素 も、社会的に考慮するという方向にだんだん移ってきているのでしょうね。特にそうい う事例では。 ○島田座長  そこに広がっていく可能性はあると思いますね。ただ、一応いまのところの考え方と しては、単身赴任について一応整理をして、いまのは多分、逸脱とか中断ということを 考えると、合理的経路とか、それも考えていかなければいけないですね。そこで、かな り全般的に議論をして、じゃあどうかなという感じがするのですが。 ○水町先生  逆に就業関連性が柔軟に運用できるとすれば、二重就職者の間のところも、中断とか いう枠組みではなくて、就業関連性のほうで実質的な判断をするということもできるか もしれないので。 ○島田座長  かもしれないですね。かもしれないですけれども。 ○山川先生  就業関連性を実質的に判断するのはそのとおりだと思いますが、ちょっとやはり、自 宅と違うのは、自宅というのは、赴任先住居にしても帰省先住居にしても、そもそも滞 在する場所なので。それで、就業場所というのは、そもそも滞在する場所とはもともと 捉えられていない。その点の違いはちょっとあるんじゃないでしょうか。  別に自宅なら、何時間いても別に、それは本来の使い方をしているわけですから。全 く自宅に早く着いても、先に早く着いてもいい、もっと就業場所に早く着いてもいいの とは、全く同じではないような感じがしますけれども。 ○島田座長  そうですね。そうすると、もちろんそのことも踏まえて議論可能かと思うのですが、 論点との関係でいって、2つの方向性があって、1つは、水町先生がおっしゃったよう な、わりと全般的に見直すことを通じて、その各論として位置づけるという可能性もあ る。  いままで議論してきた方向というのは、どちらかというと、差し当たり問題のある二 重就職者と、単身赴任者についての、特に二重就職者の議論というのが出てくるのです が、そこをまず一応手当てをして、しかしまあ、それも含めて、第3の論点を全般的に 議論するという方向性でやってきて、できればその後者でいきたいなというふうに思っ ているのですが、いかがですか。  というのは、多分、3番目のというのは、かなり広がりというか、保原先生がおっし ゃったように、制定当初からいろいろ割り切った部分、もう一度議論し直すということ になっていくと思いますので。  そうなっていくと、多分、私も今回初めて裁定例というものを、西村先生に今日お配 りいただいた「我が国における通勤災害の認定」というのを読ませていただいて。どう ですか、通常のレベルをいろいろ考え直したほうがいいのではないかということがたく さんあるので、そこで少し吸収して考えたいと思います。  単身赴任者については、暦日は、先ほど到着時間という整理を一応念頭において、も う1回整理いただくということですね。それから、外国人については、問題点の指摘と いうことを考えておく。  さっきの、住居間移動のときの、自宅に戻る過程、あるいは戻って以降の私的な行為 というものについて、どう考えるか。多分、議論が出てくるであろうものは、山川先 生、自宅に戻った後というのは、プライベートなので、立ち入らないというふうに考え てしまう。ただ、自宅に戻る過程は別なんだということになると思います。  そうすると、極端に言えば、一旦自宅に戻って、それから結婚式に出席しようとしま いと、それはもう立ち入るべきではないということになりますか。 ○山川先生  単身赴任で、早目に、前日に着いたのが2つの目的をもっていた場合と。 ○島田座長  一応戻る。で、もちろん暦日の範囲内に戻った。そこから、そこを起点にして、結婚 式部分については、それはもう全くのプライベートなので。 ○山川先生  一旦戻ってしまったということに。 ○島田座長  全く立ち入らないわけです。そうすると、では家族とどこかへ遊びに行くのでも、一 旦戻れば、もうそれはプライベートだとして。 ○山川先生  戻った後は、プライベートなのですが、問題は、働く目的ももっていて、戻る過程で 事故に遭った場合ということですね。 ○島田座長  それは、そのために早く戻ったんだから別だというふうに考えれば、私はいいと思う のです。そこは多分、論点としては残るでしょうね。 ○加藤先生  それはやはり、翌日の就労のために前日帰ってくるというのは、かなり一般的だとす ると、例えば、東京から札幌まで前の日に帰ってくるまでは、やはり通勤というふうに 見なして、それで、ここからはちょっと2つに分かれると思いますが、札幌駅から結婚 式場に行った場合と、自宅に戻った場合だと、通勤経路はちょっと、多少デコボコが出 てくると思うけれども、結婚式に行ってしまったら、やはりそれはもうプライベートで やるというふうに……。 ○島田座長  だから、結婚式に札幌まで見れば、そこまで通勤と見て、そこからを逸脱したんだと いうふうに考えてしまえば、それはそれで通常どおり整理がつくでしょうね。  ただ、いま出ているのは、そういうことをすると、こっちも通勤じゃないという考え 方が。結婚式に行くために早目に来ているんだから、東京から札幌への移動も通勤にな る。  提案されているのはそういうことですよね。 ○山川先生  提案されているのは、働くという目的がないことが明らかな場合ですね。 ○島田座長  そうかそうか、全く関係ないわけ。 ○労災管理課長補佐  明らかにない場合をどう扱うかということで。 ○島田座長  これはまだいま検討しているということですね。 ○労災管理課長補佐  要するに、個別のケースというよりも、確実に暦日中でもあるし、移動としては確か に住居間の移動なのですが、明らかに違う目的があるという。 ○島田座長  それは、かなりある種の例外的な場合で、そういう意味ではあえてここで問題にしな くてもいいようなことかもしれないわけですね。 ○労災管理課長補佐  多くの場合、おそらく先ほど山川先生がおっしゃったように、まあ、就業の目的と、 ほかの何かする目的と、双方の目的を伴う移動だと考えれば、保護することはできるん だと思います。 ○水町先生  そうですか。そうすると、札幌競馬を見たいというと、大体普通のときは、競馬開催 がないときは日曜日の夕方に帰るけれども、札幌記念があって、札幌競馬を見たいとい うときに、日曜日のお昼に着いたという場合は、どちらにしても札幌に行かなければい けないですね。夕方までには着くと言っているけれども、お昼に札幌競馬を見たという 場合は、どちらも。 ○島田座長  それは、二重の目的があるという解釈をすれば。 ○水町先生  見に行ってはいけない。 ○島田座長  行ってもいい。二重の。 ○水町先生  二重の目的であればいい。 ○山川先生  どっちにしても二重の目的があるという。 ○島田座長  その間は駄目だけれども、いまの加藤先生の例で、東京から札幌が通勤だと。その後 は逸脱だという。あとは、時間的経過を過ぎてしまえば、これは通常の対策だと。 ○山川先生  特に悪質であるとか、公序良俗に反してなければよいのでないでしょうか。競馬が公 序良俗に反しているということは多分ないと思いますけれども。 ○島田座長  そう整理すれば、一応は。 ○労災管理課長補佐   原則保護ということですね。 ○島田座長  ですね。あとは通常の逸脱とか中断とかで考えていくということですね。わかりまし た。  それでは、単身赴任について、そのほかはよろしいですか。それではあとあまり時間 がなくて、今日はあまり詳しくは議論できないかと思うのですが、給付基礎日額につい てはいいかと思います。メリット制の適用については、前回は特に議論がなかったとい うか、これで妥当なのではないかというような議論だったかと思うのですが、何か前回 ご欠席の先生で。 ○加藤先生  ちょっとお伺いしたいのは、給付基礎日額の合算をした場合に、この影響は第1事業 者にも第2事業者にも出てくるというふうに考えてよろしいのですか。 ○労災管理課長補佐  影響が出てくるというふうなときの影響の出方ですが、まず合算することによって、 労災保険全体として見れば、おそらく給付額は増えるということになりますね。その意 味では、第1事業場、第2事業場を含む全部の事業場に、その部分の影響はあるという ことが1つですので、あと、個別の事業場の影響として考えられるのが、このメリット 制の問題で、個別の事業場で合算部分ということで、メリット制の収支率を計算する と、明らかにこれまでよりはその個別の事業場が不利になってくるということがあっ て、その不利は、基本的に回避すべきではないかという前提でつくったのが、この論点 3の2です。 ○島田座長  個別事業者の負担にしないということですか。 ○保原先生  基本的なことは、業務災害が起こったところについては、そこで払われている賃金と の関係で、メリット制を適用する。それから、それ以外の二重就職者の事業場は、メリ ット制と関係がない。やはり基本的にはそういう方向でしょうね。それ以外はちょっと 考えられない。  そうすると、まあ、労災保険全体としての支出はやむを得ないということだろうと思 いますね。 ○島田座長  ええ。それでは、あと、残された時間、論点4について。ただ、論点4については、 今日全部詰めた議論というのは到底不可能なので、もしこういう論点があるのではない かということを少し、二重就職者、単身赴任を離れて、各委員の方、常日頃お考えのと ころを、論点提示のような形で問題提起していただいて、詰めた議論はまた少し機会を 見てというようなことにさせていただきたいのですが、いかがでしょうか。若干、前か ら出ているのは、私が言ったというよりは、多くの方からご指摘のある、札幌の事件で すね。食材を購入して戻る途中での、まだ合理的経路に復していないということで、保 護の対象にならなかった。これはちょっと厳しすぎないかといったことです。  そうなってくると、従来の考え方でいくと、行政のほうで捉えてきた、「些細な行為 」というようなことと、それから、合理的経路自体を、少し実質的なところで考えてい くという考え方、あるいはさらに逸脱中断というのをどう考えるかという、3つくらい の論点があろうかと思うのですが。特に諸外国でもアレですが、私、今日お配りいただ いた西村先生がずっと整理されているものを見て、私なりにちょっと感じたのは、どう も、何か全くの私的行為とも言い難いけれども、従来の考え方でいくと、その業務から 外れるような行為といいますか、まあ、労働組合の用務なども、ややそうなのかもしれ ませんし、あと、何か管理職の方が私的に設定した懇親会とか、こんなものも、いまま では外れているのですが、それも、このままでいいのかどうかとか、いくつか。結論は 別にして、従来の裁定例を参考にしても、多様な論点があろうかなという感じがしたの ですが、何か、今日は特に細かい議論もできませんので、こんなことはどうなんだとい うようなことがあれば。 ○保原先生  札幌の事例でいえば、些細なというようなやり方は、やはりやるべきではない、取る べきではないと思います。では、どこへ線を引くんだということが、絶えず残ってしま うということで、あの事件では、たまたま40メートルとか何とかというのですが、それ では50メートル、100メートルの場合はどうかとかということになりますから、むしろ 生活に必要な行為は、通勤災害の範囲でカバーするというふうに考えれば。 ○島田座長  合理的経路のことですか。 ○保原先生  合理的経路ですね。それとも、従来の線でいくかということですね。どちらかだろう と思って。些細だからいけないとか、いけるというのは、やはり際限がないという気が しますね。 ○島田座長  いまさしあたり、これはまず是非というのは、特にないですか。特になければ、では これについてはまた、少し叩き台を出していただくような方向で検討して。 ○保原先生  単身赴任とか、二重就職とか、どういう規定になり得るかということを考えて、それ との関係で、逸脱中断というものをもう1回洗い直してみると、そういうことではない でしょうかね。 ○島田座長  わかりました。まさに水町先生からご提案いただいたようなことが議論になろうかと 思います。  それでは、ほぼ時間になってまいりましたが、前回、労災管理課長のほうからご説明 をいただいたのですが、現在、厚生労働省のほうで、「仕事と生活の調和に関する検討 会議」という場で、やはりここで複数就業者、マルチジョブホルダーの問題が取り上げ られているそうです。  そこですでに、この中でも、働き方に対する中立性という観点から、労災保険を含む 社会保障制度の側での対応の検討の必要性というものが指摘されているということで す。  この問題については、この研究会では、すでに先取り的に、平成14年度からずっと検 討を行って、今日まで詰めた議論を行ってまいりました。そういう意味では、この問 題、つまりさまざまな論点がありますが、二重就職者の問題について、そうした関心が 高い、問題意識が強くなってきているということを踏まえて、そろそろ現時点として、 この研究会としての考え方というものを中間的にとりまとめてはどうかということで す。  この検討会議の報告書は、もうすぐ出るのですか。 ○労災管理課長補佐  おそらく、具体的な日付はわかりませんが、間もなく取りまとめられるというふうに 思います。 ○島田座長  6月内にとりまとめということですので、ある意味ではそこに合わせるような形で、 ほかの問題も、一応ここである程度、単身赴任も含めて方向性が出たものについては、 問題提起として整理するというようなことで、事務局のほうに中間的な取りまとめの案 を作成していただいて、それを次回検討するということにしたいと思うのですが、いか がでしょうか。  もしよろしいようでしたら、そういう方向で処理させていただいて、次回の研究会の 日程等について、事務局のほうからお願いします。 ○労災管理課長補佐  次回の第9回の研究会は、すでに案内させていただいているところですが、7月1 日、木曜日の17時30分から、経済産業省別館の8階の825号会議室で開催させていただ きたいと思います。 ○島田座長  それではどうも、本日はお忙しい中を本当にありがとうございました。次回は場所が 違う点をご留意いただければと思います。どうもありがとうございました。         照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係              電話03-5253-1111(内線5436)