04/06/10 第1回公衆衛生医師の育成・確保のための環境整備に関する検討会議事録                    第1回             公衆衛生医師の育成・確保のための              環境整備に関する検討会 議事録           日時:平成16年6月10日(木)14:00〜16:00           場所:厚生労働省 専用第15会議室(7階)  横尾地域保健室長  ただいまより、第1回公衆衛生医師の育成・確保のための環境整備に関する検討会を 開催いたします。  まず、厚生労働省健康局長の田中よりごあいさつを申し上げます。  田中健康局長  健康局長の田中でございます。本日は、検討会の委員の皆様におかれましては、この 委員を快くお引き受けいただきまして、また、大変ご多忙な中をご出席いただきまし て、大変ありがとうございます。  さて、保健所といいますと、SARSとか新型インフルエンザ等の健康危機管理への 対応とか、地域における安心・安全の拠点として重要な役割を果たしておりまして、ま た、その役割は最近見直されてもいるのではないかと思っております。  その長であります保健所長は、あるいはほかの公衆衛生医師が働いているわけでござ いますが、その保健所の中で中心的な役割を担っております。そして、そのレベルとい うのは非常に高いものが求められていると考えております。  今年の3月に、「保健所長の職務のあり方に関する検討会」におきまして、保健所長 資格要件に関しまして報告書がまとめられたところでございますが、その中でも、公衆 衛生医師の育成と確保というものが今後の公衆衛生の向上に極めて重要であるという指 摘がされているところでございます。しかし、現実をみてみますと、一部の地方公共団 体におかれましては、お医者さんも少ないですし、質のよい公衆衛生医師を確保すると いうのは非常に困難であるという状況もございます。  これに対しまして、国もそうですが、地方公共団体、あるいはその他大学などいろい ろな関係する団体も、必ずしも十分な努力がされていなかったのではないかという反省 がその検討会でも言われたところでございます。  そして、それを受けまして、この「公衆衛生医師の育成・確保のための環境整備に関 する検討会」というものが今般設けられた次第でございます。国、地方公共団体、関係 団体、それぞれが取り組むべき具体的施策につきまして、十分なご議論をいただけたら と考えております。 最後になりますが、委員の先生方のご指導・ご協力を心からお願 いいたしまして、開会のあいさつとさせていただきます。ありがとうございます。  横尾地域保健室長  引き続きまして、本検討会の委員のご紹介をさせていただきます。  大井田隆委員でございます。  角野文彦委員でございます。  篠崎英夫委員でございます。  高野健人委員でございます。  土屋隆委員でございます。  納谷敦夫委員でございます。  なお、小幡委員、末宗委員は、本日欠席でございます。  続きまして、厚生労働省の事務局を紹介させていただきます。  ごあいさつを申し上げました田中局長でございます。  仁木総務課長でございます。  平子室長補佐でございます。  坪郷室長補佐でございます。  野崎技官でございます。  申し遅れましたが、私は、総務課の地域保健室長の横尾でございます。どうぞよろし くお願いいたします。  次に、資料1でございますが、検討会の開催要綱に基づきまして座長を選出していた だきたいと存じます。  自薦、他薦のご発言をお願いいたします。  大井田委員  ここは、公衆衛生、行政、そして衛生法規等に一番詳しい方がよろしいかと思います ので、納谷部長さんにお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。  横尾地域保健室長  納谷委員をご推挙いただきましたが、納谷委員に座長をお願いしてよろしいでしょう か。               (「異議なし」の声あり)  横尾地域保健室長  それでは、座長は納谷委員にお願いいたします。  次に、要綱に基づきまして座長代理を置くことになっておりますので、座長代理を選 出していただきたいと存じます。  委員のご発言をお願いいたします。  角野委員  やはり公衆衛生に関して造詣の深い東京医科歯科大学の高野委員にお願いしてはいか がかと思いますが。  横尾地域保健室長  高野委員をご推挙いただきましたが、高野委員に座長代理をお願いしてよろしいでし ょうか。              (「異議なし」の声あり)  横尾地域保健室長  それでは、高野委員、座長代理をよろしくお願いいたします。  それでは、納谷委員、座長席に移動をお願いいたします。  それでは、座長からごあいさつをお願いいたします。そして、その後の進行は座長の ほうからよろしくお願い申し上げます。  納谷座長  納谷でございます。この4月から全国衛生部長会の会長をやらされております。その 関係でこの会に出させていただきまして、ただいま、座長ということで重責を引き受け ることになったわけでございますが、先生方は私をご存じない方々も多かろうと思いま すので、一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。  私は、大学を出ましてから長い間、精神科の医師をしておりました。その後10年間、 精神保健の行政を大阪府でやりまして、その後、医療対策課という医療法の所管のとこ ろとか、あるいは保健所などを所管しておりました地域保健福祉室というところに少し おりまして、2年少し前に現在の部長になったという経歴でございますので、このお仕 事を引き受けて一生懸命やらせていただこうとは思いますが、いわゆる保健所で長く勤 務をしたという経験は逆にございませんので、その辺はお含みをいただきまして、委員 の先生方からそういった面のご助言なりご意見を出していただきたいと思います。  それでは、座って進めさせていただきます。よろしくお願いいたします。  本日の議題に入ります前に、事務局から資料のご説明をお願いいたします。  横尾地域保健室長  まず、本日の議題は、議事次第に書いてございますように、公衆衛生医師をめぐるこ れまでの経緯について、公衆衛生医師の育成・確保の状況について、公衆衛生医師の育 成・確保の方途についてということでございます。  本日の資料でございますが、  資料1、公衆衛生医師の育成・確保のための環境整備に関する検討会開催要綱  資料2、保健所長の医師資格要件の見直しについて  資料3、保健所及び公衆衛生医師に関する統計資料  資料4、国及び地方公共団体における公衆衛生医師の育成について  資料5、地方公共団体における公衆衛生医師の募集状況  資料6、公衆衛生医師の育成・確保の方途に関する検討項目(案)  資料7、検討会の今後の開催予定(案)  なお、参考資料といたしまして、  参考資料1、保健所長の職務の在り方に関する検討会報告書  参考資料2、平成16年度健康危機管理保健所長等研修会実施要綱  参考資料3、平成16年度地域保健法関連研修((財)日本公衆衛生協会主催によるも の)  参考資料4、公衆衛生医師確保推進登録事業について(案)  参考資料5、公衆衛生医師募集案内(千葉県)  参考資料6、公衆衛生医師(保健所医師)募集案内(東京都)  参考資料7、大阪府公衆衛生医師職員採用ガイド(大阪府)  以上でございます。不足等がございましたら、事務局までお知らせいただきたいと存 じます。  納谷座長  それでは、続きまして、事務局から、この検討会の趣旨と公衆衛生医師をめぐるこれ までの経緯についてのご説明をお願いいたします。  横尾地域保健室長  お手元の資料1と資料2と参考資料1でご説明させていただきたいと思います。  まず、資料2をごらんいただきたいと思います。これは4月23日にプレス等に配布し たものでございます。「保健所長の医師資格要件の見直しについて」ということで、保 健所長の医師資格要件につきましては、一昨年、「地方分権改革推進会議」等より、保 健所長の医師資格要件の廃止を求める要望書等が出されまして、平成15年3月から平成 16年3月まで、合計10回にわたって、「保健所長の職務の在り方に関する検討会」を開 催しております。この中で幅広い議論を行っていただきまして、平成16年3月31日に報 告書がとりまとめられたところでございます。この報告書につきましては、参考資料1 としてお出ししております。  なお、この報告書を受けまして、厚生労働省としまして別紙のとおりの見直しをした ということでございまして、次のページの別紙の「保健所長の医師資格要件に関する見 直し方針(概要)」でございます。これは、「医師と同等またはそれ以上の高い専門性 を有する者に対して、例外を認める」ということでございます。  従来、地域保健法施行令の中で、「保健所長は医師でなければならない」というもの がございましたが、この地域保健法の施行令の改正をして、「医師と同等またはそれ以 上の高い専門性を有する者に対して、例外を認める」ということでございます。  なお、見直しの理由としましては、近年の健康危機管理への対応を初め、地域の安心 ・安全の拠点としてより高い管理能力が保健所に求められており、今後、より高い水準 の保健所長を確保することを目指すということで、保健所長医師を確保するためには、 公衆衛生医師の養成及び確保に積極的に取り組むが、そのような努力を行っても公衆衛 生に精通した適切な医師が確保できない場合には、以下の条件のもと、例外的措置とし て、医師以外の者を保健所長とすることを可能にするというものでございます。  次のページの参考1に、この医師資格要件の見直しの考え方が出ております。  1番目には、「保健所長の職務の在り方に関する検討会」の検討状況と結果を書いて おりますが、検討会の報告書では両論併記ということでございました。保健所長の医師 資格要件を変更すべきか否かについては一致した結論を得るに至らず、変更すべきでは ないとする意見と、例外を認めるべきとする意見の両論併記となったということでござ いまして、一部には、医師資格要件を廃止すべきとの少数意見もございました。  参考資料1の15〜16ページ、(3) 公衆衛生の医師確保と公衆衛生の向上に向けてでご ざいますが、この検討会でいろいろ問題となったのは、兼務による弊害、組織運営の柔 軟性への障害、医師の人事経歴管理上の阻害といった問題は、基本的には、国、地方公 共団体及び関係団体の保健所に適切な医師を確保しようとする努力が十分でなかったこ とに起因すると考えられるということでございます。  公衆衛生の医師の確保の問題は、日本の公衆衛生を考える上で極めて重要な問題であ ることが本検討会において確認されたところであり、優秀で熱意のある公衆衛生に従事 する医師の育成及び確保に努めることこそが、現行制度のもとで生じている問題を止揚 していく道であると考えられるということから、今後の公衆衛生医師確保に向けては、 環境の変化、各種の施策の実施により改善が期待できると考えられることから、次のペ ージにございますように、解決のための具体的な施策として、国、地方公共団体及び関 係団体は、以下のような努力を行う必要があるということでございます。  国のところでございますが、国は、アとしまして、保健所等において公衆衛生に勤務 する医師を必要とする地方公共団体及び保健所等において公衆衛生に従事することを希 望する医師に対する情報提供、マッチング事業といったものでございますが、それか ら、公衆衛生医師需給状況の調査、公衆衛生等に関する研修機会の調整を事業内容とす る「公衆衛生医師確保推進事業」の実施。  イとしまして、医師の臨床研修必修化の有効活用を含め、より効果的な公衆衛生医師 の確保のために、国、地方公共団体及び関係団体が取り組むべき施策について具体的に 検討するということで、この検討会を発足するということが書かれております。  また、ウでございますが、国立保健医療科学院における研修の充実・強化ということ で、国は、そこに書いてございますような努力を行う必要があるということでございま す。それぞれ、地方公共団体、関係団体等につきましても、同じように努力をする必要 があるということから、この検討会を立ち上げたものでございます。  検討会の開催要綱につきましては、資料1に戻りまして、1で趣旨等について書いて ございますが、この内容については省略させていただきます。  2の検討事項としまして、(1) 公衆衛生医師育成のための方途、(2) 公衆衛生医師確 保のための方途、(3) 国、地方公共団体、関係団体に求められる具体的な取り組み等に ついて検討するということになっております。よろしくお願いいたします。  納谷座長  事務局から、資料1と資料2、そして参考資料1について説明がございましたが、何 かご質問はございますでしょうか。  それでは、先に進ませていただきます。本日の検討会では、公衆衛生医師の育成・確 保の状況や保健所及び公衆衛生医師等の概要について、事務局から資料をいろいろ用意 していただいておりますので、それをまず説明していただきたいと思います。  野崎技官  それでは、資料3「保健所及び公衆衛生医師に関する統計資料」をごらんください。  まず、全国の保健所の数でございますが、平成16年4月1日現在で 571カ所の保健所 がございます。都道府県型の保健所が 433カ所、指定都市の保健所が71カ所、中核市の 保健所が35カ所、その他政令市の保健所が9カ所、特別区の保健所が32カ所となってお ります。なお、5月1日の再編によりまして、さらに5カ所再編整備されまして、現 在、 566カ所となっております。  続きまして、保健所の再編整備の今後の予定でございます。平成16年4月1日現在の 予定でございますが、「再編整備が決定している」という地方公共団体が2カ所、「再 編整備を計画し調整をしている」という団体が8カ所、「将来的な再編整備の構想があ る」という団体が12カ所、「予定していない」が 105カ所でございました。  次に、保健所長の兼務の状況でございます。平成16年4月1日現在で兼務のある保健 所の数は28カ所、16県1市でございます。  続きまして、保健所長が兼務をしている保健所の医師の配置状況についてでございま す。「所長の本務の保健所及び兼務先の保健所にスタッフの医師が配置されている」と いう保健所が3カ所、「兼務先にスタッフの医師を配置している」保健所が3カ所、 「本務及び兼務先の医師は所長のみである」保健所が22カ所となっておりました。  続いて、2ページですが、現在の組織の統合状況についてでございます。保健所の数 についてですが、単独設置−−つまり保健所単独で設置をされている保健所が 237カ所 ございました。また、統合組織−−福祉事務所あるいは児童相談所等の組織と統合され ている保健所が 334カ所ございました。  これを自治体の数に直しますと、単独設置をしているという自治体が92カ所、統合組 織を設置している自治体が38カ所となっております。  なお、1つの自治体の中で単独設置型の保健所と統合型の保健所が併存している場合 もありますので、数は足して 100%にはなりません。  続いて、統合組織の形態についてでございますが、保健福祉センター型と地方振興局 型の2つに大きく分かれております。3ページに、保健福祉センター型と地方振興局型 のものの説明を書いてございますが、保健福祉センター型とは、福祉事務所や児童相談 所等との統合によるもの、地方振興局型とは、いわゆるミニ県庁といった組織で、地方 振興局や県民局といわれているものの中に保健所が組織の一部として位置づけられてい るものでございます。  これの割合は、保健所の数では、保健福祉センター型が 200カ所、地方振興局型が 134カ所となっておりまして、これを自治体別にみますと、保健福祉センター型が26カ 所、地方振興局型が17カ所でございまして、これらもいずれの型もが併存している場合 がございますので、足して 100%にはなりません。  続いて、3ページですが、統合組織の長の職種についでございます。集計しました結 果、53%が統合組織の長が医師であり、47%が事務職であったということでございま す。  続きまして、統合組織化の予定についてでございます。現在、単独設置型の保健所を 有しております92団体についての集計結果ですが、「統合組織が決定している」ところ は0、「統合組織化を計画して調整している」ところが4カ所、「将来的な統合組織化 の構想をもっている」ところが4カ所、「予定していない」ところが86カ所でございま した。  続いて、4ページですが、現在、保健所に勤務している公衆衛生医師の数についての アンケート結果の集計でございます。合計しますと人数にしまして 901名で、これを保 健所の数で割りますと、平均して1保健所当たり1.61名となります。  続いて、保健衛生部門に所属する医師の年齢分布についてでございます。こちらの調 査は、平成15年2月1日現在、一昨年度の調査でございまして、ちょっと古いデータで 恐縮でございますが、年齢分布についての説明をいたします。  20歳代が 3.4%、30歳代が22.1%、40歳代が35.7%、50歳代が28.9%、60歳代が 9.8%と、40歳代をピークとした構成となってございます。  続いて、5ページですが、先ほどと同じ調査で、平成15年2月1日現在のデータです けれど、保健所長の年齢分布でございます。こちらも、40歳代が33.2%、50歳代が 41.1%と、50歳代をピークとしてございました。  また、保健所長の平均年齢ですが、全国平均で、こちらも平成15年2月1日現在のデ ータでございますけれど、52.9歳となっておりまして、また、保健所長に昇任したとき の平均年齢は45.1歳であったとのことです。  続いて、6ページですが、保健所長資格要件の該当資格の内訳についてでございま す。こちらは地域保健法施行令第4条の1号、2号、3号の内訳でございます。  1号の3年以上公衆衛生の実務に従事した経験がある者が70.3%。2号の国立保健医 療科学院の専門課程を修了した者が19.7%。3号のその有する技術が前2者に匹敵する 者が11.6%となっております。  なお、要件を複数満たしている者もおりますため、こちらも足して 100%にはなりま せん。  続いて、保健所長の前職についてでございます。地方公共団体に採用される前の職に ついてでございます。臨床医が44.4%、研修医が 2.6%、その他が40%となっておりま して、その他の内訳でございますが、大学教員が73名、なしが45名、その他地方公共団 体が25名となっております。  続いて、7ページですが、保健所長の前職でございます。こちらは保健所長になる直 前の職について聞いてございます。臨床医が16.9%、公衆衛生医が71.5%、その他が 4.1%となっております。その他の内訳としましては、なしが15名、大学教員が3名と なっておりました。  続いて、保健所の常勤職員数でございます。こちらの資料は、「平成14年度地域保健 事業報告」よりの抜粋でございます。全国の保健所の常勤職員は、総数では3万 301 名、うち政令市が1万 2,199名となっております。この中で医師の人数につきまして抜 粋しました数字が全国で 1,027名、うち政令市が 406名となってございました。  以上が資料3でございます。  続きまして、資料4「国及び地方公共団体における公衆衛生医師の育成について」を ご説明させていただきたいと思います。  まず、現在、国立保健医療科学院で実施しております研修についてですが、専門課程 I は、1年間のコースで定員が20名、対象は医師となっております。こちらは、広い視 野に立って公衆衛生学に関する精深な知識、技術、技能を授け、公衆衛生分野における リーダーとなるために必要な高度な能力を養うことを目的としておりまして、先ほどご 説明いたしました地域保健法施行令第4条第2号に相当いたしまして、修了者に対して はMPHを授与される研修となっております。  また、各種短期の研修として、特定研修と特別課程とがございまして、その中で受講 資格の中に「医師」が明記されているものがこちらのとおりでございます。  臨床研修指導医養成コース、生活習慣病対策コース、エイズ対策研修(基礎)、エイ ズ対策研修(応用1)、エイズ対策研修(応用2)となってございます。  続いて、厚生労働省で実施しております公衆衛生医師の育成についてでございます。 まず、健康危機管理保健所長等研修会ですが、こちらは年4回・3日間、定員各 100名 で実施してございます。この研修会は平成13年度から、保健所長を対象としまして、健 康危機管理、主に感染症、原子力災害、自然災害、化学災害、NBCテロ等に関する講 義、及びシミュレーションによる図上演習等を行ってございます。  こちらの詳細につきましては、参考資料2といたしまして、平成16年度の健康危機管 理研修会の実施要綱をつけてございます。また、参考資料2の裏に、こちらは昨年度の 資料でございますが、プログラムを載せてございます。  続いて、厚生労働省で実施しております研修としまして、地域保健法関連研修、日本 公衆衛生協会が厚生労働省の委託で実施しているものでございます。  内容は2つございまして、1つ目は、保健所管理能力育成研修で、年4回、4カ所の ブロックで1回ずつ計4回やっております。3日間で、定員35名でございます。こちら につきましては、保健所の管理機能についての基本と実践課題についての認識、保健所 業務全体の進行管理やマネジメントについての研修会となっております。こちらにつき ましても、参考資料3といたしまして、実際の研修の案内のパンフレットを載せており ますので、随時ごらんいただきたいと思います。  2つ目は、地域保健情報処理研修で、こちらは年2回、前期を3日間、後期を2日間 としまして、定員35名で実施をしております。こちらは科学的根拠に基づいた地域保健 の推進のために、情報の把握、解析、また「健康日本21」地方計画等の新しい施策の展 開に対応できる能力を確立するための研修会となってございます。  続いて、資料4の裏面をごらんください。地方公共団体における育成の状況について のまとめでございます。こちらは「保健所長の職務の在り方に関する検討会」の中で公 表させていただいた資料の抜粋でございます。  まず、「保健所に勤務する医師の育成のためにどのようなことを行っていますか」あ るいは「どのようなことを計画していますか」との質問に対して、 127の地方公共団体 にアンケートをとった結果でございます。まず、「研修の機会を保証する」という回答 が66.1%、「調査研究(学会参加)の機会を保証する」が44.9%、「医師の複数配置」 が49.6%、「ジョブ・ローテーション」が24.4%、「年齢を考えた計画的な採用」が 16.5%、「医師の研修要綱の策定」が 6.3%、「国立保健医療科学院専門課程での技能 の習得」が39.4%、「特にしていない」が11.8%、「その他」が10.2%となってござい ました。  その他につきましては、こちらに列記してございますとおり、「保健所マニュアル」 の作成、厚生労働省、国立感染症研究所、結核研究所への派遣等となってございます。  続きまして、資料5「地方公共団体における公衆衛生医師の募集状況」をご説明させ ていただきたいと思います。  こちらの資料も、「保健所長の職務の在り方に関する検討会」にて公表させていただ いた資料の抜粋でございますが、 127の自治体に対しまして、平成15年2月1日現在の 状況ということでお聞きをしたものの集計結果でございます。  まず、保健所の医師ですが、所長以外については、募集については29団体の62人、応 募については25団体の75人、その中で採用があったのは22団体の44人となっておりまし た。応募と採用の人数に差がある場合の不採用の理由について聞きましたところ、「保 健所医師として適材ではなかった」が14.3%で、「リーダーシップ、指導力及び柔軟性 に欠ける部分がある」、「大学に依頼しているが適材(精神科医)がない」との回答で ございます。  また、その他が85.7%で、「応募を辞退されてしまった」、「試験を受けに来なかっ たため」、「大学に依頼しているが適材がなかった」という回答になっております。  募集の時期についてでございますが、「毎年定期的に採用している」自治体は 3.1 %、「毎年不定期で採用している」自治体が 5.5%、「保健所長以外の医師に欠員が発 生したときに採用する」自治体が24.4%となっております。その他についても、こちら に列記してございますとおり、「医師定数に欠員が生じた場合に採用する」、「保健所 長の退職等の動向を見据えて採用募集をしている」という回答となっております。  続いて、2ページですが、募集していない自治体に対しましてお伺いをしましたとこ ろ、その理由についてですが、「充足している」が37.8%、「近い将来、再編整備を予 定しているから」が 5.5%となっております。その他としましては、「都道府県からの 派遣」、「保健所長以外の配置をしていない」、「今後、募集の予定をしている」、 「大学と連絡をとり合っている」等の回答でございます。  続いて、保健所長の確保についての状況でございます。9団体で10人の募集がありま して、6団体で8人の応募、また、これに対しまして9団体で10人の採用が昨年度にご ざいました。  応募と採用の差のある理由、不採用の理由についてですが、「条件面で折り合わなか った」が16.7%。その他としましては、次の3ページに列記してございますが、「派遣 によって対応している」、「現在、内部登用で充足しているため」との理由でございま す。  また、募集の時期についてですが、「毎年定期的に採用している」が 1.6%、「毎年 不定期に採用している」が 2.4%、「保健所長に欠員が生じたときに採用している」が 16.5%となっております。その他としましては、「保健所長が基本的に保健所医師から 内部登用している」、「保健所長に欠員が発生したときには採用するが、必ずしも所長 としてとは限らない」等の回答がございました。  また、今回、募集をしていないその具体的な理由についてお尋ねしておりますが、 「充足しているから」が55.9%、「近い将来、再編整備をする予定であるから」が 2.5 %となっておりまして、その他の意見としましては、こちらも「都道府県からの派遣 」、「原則として内部の職員からの選考によることにしているため」といった回答とな っております。  続いて、4ページですが、「医師確保のためにどのようなことを行っていますか、あ るいはどのようなことを計画していますか」という質問に対しまして、「ホームぺージ で募集」あるいは「医学雑誌で募集」が18.1%、「広報で募集」、「大学での説明会の 開催」、「大学でのポスター掲示」、「病院等への勧誘」、「奨学金の貸与」、「医師 手当の充実」、「調査研究時間の保証」、「自治医科大学卒業生の優先的な確保」等、 ごらんのとおりのパーセンテージで上がっております。  また、「特にしていない」と答えました団体が29.1%、その他として、「医育大学 (公衆衛生学教室)へ依頼している」、「都道府県からの派遣を受けている」、「公立 病院内で募集している」、「職員からの紹介」、「個別のルートによって面接を行って いる」、「医師会に照会している」といった回答がございました。  ここまでが 127の自治体に対して聞いたものでございまして、この中で、保健所長が 兼務をしている地方公共団体についてを抜粋したものが、2以降でございます。  同じ質問でございますが、保健所長以外の医師の確保については、それぞれ募集、応 募、採用はごらんのとおりの人数となっております。  続いて、5ページですが、募集の時期についてでございます。「毎年定期的に採用し ている」が12団体中1団体、「毎年不定期で採用している」が2団体、「欠員が生じた ときに採用している」が2団体。その他としましては、「適任者がいたときに募集をす る」という回答になっております。  また、募集をしていないその具体的な理由をお聞きしましたところ、「充足している 」が3団体、「将来、再編整備を予定している」が2団体、その他としましては、「保 健所医師については所長のみとしているため」、「保健所の行政医師は保健所長で確保 することを基本としており、また、定数管理上、応募があった都度、選考採用すること にしているため」といった回答となっております。  続いて、保健所長の確保についてですが、募集、応募、採用はごらんのとおりの人数 となっております。  募集の時期についてですが、「毎年定期的に採用している」が1団体、「毎年不定期 で採用している」が2団体、「欠員が発生した場合に所長として採用している」が3団 体となっておりました。  続いて、7ページですが、募集をしていない場合の理由についてでございます。「再 編整備等を予定しているために募集していない」が3団体、「専任の所長を配せず、兼 務にて対応することにしているため」が2団体、「募集しても集まらないために募集し ない」が1団体、「決まったルートから採用することになっているため募集しない」が 1団体、「適当な人材がいないので募集しない」が1団体、「配置のめどが立っている ために、現在、兼務のままとなっている」が1団体でございました。  兼務にて対応している保健所があるという12団体、あわせて23カ所について聞きまし た結果、これをまとめますと、保健所長を募集している団体が3団体、4保健所分とい うことになります。  また、「医師確保のためにどのような努力を行っていますか」という問いに対しまし ては、「ホームページで募集」が3団体、「医学雑誌で募集」が5団体、「病院等へ勧 誘」が3団体、「医師手当の充実」が1団体、「自治医科大学卒業生の優先的な確保」 が1団体、「特にしていない」が3団体となっております。その他としましては、「大 学への採用試験実施の周知を文書で依頼」、「地元団体に対する候補者の推薦依頼」、 「大学や県立病院との連携・調整」等となってございます。  こちらは地方公共団体における公衆衛生医師の募集状況でございますが、これと関連 いたしまして、参考資料4「公衆衛生医師確保推進登録事業について(案)」をごらん ください。  こちらは、公衆衛生に従事することを希望している医師及び公衆衛生に従事する医師 を求めている地方公共団体に対して情報提供をいたしまして、それぞれ地方公共団体に おける公衆衛生に従事する医師の確保を支援して、地域における公衆衛生の向上と増進 を図ることを目的としている事業でございます。  お示ししておりますのは暫定版のものでございまして、今、調整をしておりますの で、早急に実施できる体制にするよう現在動いているところでございます。  次のページをごらんいただきますと、この事業のイメージを掲げてございます。  右側に書いてございますのが、保健所等において公衆衛生に従事する医師を必要とす る地方公共団体、左側に保健所等において公衆衛生に従事することを希望している医 師、それぞれが真ん中にあります公衆衛生医師確保推進室に登録をしていただきまし て、これに対して情報提供をそれぞれにしていく。このようなイメージでございます。  なお、次のページ以降も、現在、暫定版でございまして、文言等につきましては調整 中でございますが、参加規約についての案が3ページ分でお示ししてございます。  その後のページに公衆衛生医師の希望登録票が2ページ分、その後に自治体医師募集 登録票も2ページ分で、こちらもまだ暫定版で文言等の調整を現在進めているところで ございますが、このような形で登録をしていただくということで現在進めているところ でございます。  また、参考資料5以降でございますが、こちらは3つの地方公共団体のホームページ からダウンロードさせていただいた案内でございます。  参考資料5は、千葉県の公衆衛生医師募集案内でございます。中に、応募資格、手続 き、試験の方法や採用や給与、勤務時間、業務等につきまして、それぞれ丁寧に書いて ございますので、ご紹介をさせていただいております。  同じく、参考資料6は東京都の募集案内、参考資料7が大阪府の募集案内でございま す。  現在の状況につきましては以上でございます。  納谷座長  ありがとうございました。ただいまの資料の説明につきまして、ご質問やご意見はご ざいますでしょうか。  速く説明されたのでわかりにくいところがあったのですが。それから、平均されます と問題点がならされてしまってわかりにくい、統計上そういう問題がありますけれど、 所長さんが兼務されている保健所は問題だと思いますが、そういうところはもちろんい ろいろご事情もあるのでしょうけれど、医者は所長さん1人でよくて、定期的な採用と いうものはあまり考えておられなくて、所長さんがいらっしゃらなくなったときだけは 採用されているような印象を受けたのですが、そういうことでよろしいのでしょうか。  野崎技官  はい。欠員が出たときに募集をかけているという印象でございます。  納谷座長  ほかに何かございませんか。  それでは、これからの議論をどのようにまとめていくかですが、事務局から、公衆衛 生医師の育成・確保の方途につきまして検討項目(案)を出していただいているようで ございますので、それについてご説明をお願いいたします。  平子室長補佐  それでは、資料6「公衆衛生医師の育成・確保の方途に関する検討項目(案)」をご らんいただきたいと思います。  これは、本検討会におきまして今後議論していただく検討項目について、事務局のほ うでこのようなものを考えてみてはいかがかという案でございます。  大きく分けまして、(ア)公衆衛生医師の育成のための方途と、(イ)公衆衛生医師 の確保のための方途ということで、育成と確保という問題があると思われます。  (ア)育成の方途につきましては、まず、まだ医学生の間の卒前のお話。そして、卒 後、行政等にすぐ入られる方もいらっしゃると思いますが、臨床をしばらく経て入られ る方もいらっしゃると思いますので、卒後の問題。そして、実際に採用された後の育成 の問題。大きくこの3つに分かれると思っております。  前の2者につきましては、公衆衛生のほうに入っていっていただく下地をつくってい くということだと思いますが、その上で、(1)卒前教育としての主な役割としては、1 つ目としまして、公衆衛生学等の講義・実習の中で、どのような形でこの公衆衛生医師 というものが取り上げられていくのかといったことが、1つ重要な点かなと考えており ます。  2つ目としまして、医学生の関心の1つとしては、実際に医師になることでございま すので、医師の国家試験の中でどのようにその問題点をとらえていくのかといったこと も、出題の工夫などはありうるのかなと。  3点目としまして、内科とか外科等さまざまな臨床科等、また、学校の中では基礎を 含めてさまざまな形で進路の説明会等が行われていると思いますが、そういう中にどう いう形で入っていけるのか、または、例えば都道府県、地方公共団体等で実施されてい る募集の内容が、こういった医学生等にも届くような形を積極的にやっていくなどの方 途というのはあるのかなと考えております。  (2)卒後教育ですが、医師として臨床またはその他基礎等に行かれている方についてで すけれど、そういう方々に研修としてどのようなものが行われているのか。また、情報 提供としてこういう道があるということを積極的に知っていただくことが必要です。そ の上で、医師としては、臨床に進まれる方が非常に多いという状況がございますので、 特に現在、この4月から医師の臨床研修が必修化されております。その中に、地域保健 医療の研修が必修として組み込まれておりますので、その内容の充実というのはやはり 重要な点であると考えております。また、そういった研修医の方々が受けられる臨床研 修病院のところにどのような形で広報を行っているのかというのも、一つ重要な点かな と考えております。  (3)採用後でございますが、実際に行政等に入って公衆衛生に携わっていった後、一 定のレベルの水準に達するまでの道筋には、やはり教育・研修というのが重要な点で、 その教育研修のほかに、実際の仕事について学んでいくということも大きな点だろう と。特に地方自治体におかれては、保健所内、本庁その他さまざまな職場等もあると思 いますが、どのような形で育成を行っていくかということが論点になっていくのかなと 思っております。  2ページですが、おおよそそういった形で育成していくということに加えまして、ど のような形でこの公衆衛生の道に入っていただくかということが重要な点だと考えます が、(1)募集方法の工夫、(2)処遇の工夫・改善では、どのような形で宣伝し、システ ム、入る道があるのかを知っていただくか。もう一つは、やはり魅力的な職場づくりと いったことが必要なのかなと考えております。  まず、宣伝の工夫、システムづくりですが、都道府県等では、先ほどのアンケート調 査等でも明らかなように、採用計画をきちっと立てていただいて、その上で計画的な採 用を行っていただくというのは、一つ重要な点かなと考えております。  2点目といたしましては、広報の工夫。多くの人に知っていただく。この場合、ホー ムページで募集されている自治体もあると思いますが、これもアンケートのところで明 らかになっていましたように、やはり一本釣りのような状況等もございますし、そのよ うな形でなく、より多くの方々に知っていただきながら、公衆衛生医師の存在というも のを幅広く宣伝していくことが大事かと考えております。  また、地方公共団体間での人事交流、また、先ほど少し申し上げましたが、マッチン グ事業ですけれど、先ほどの参考資料4でありましたように、例えば国で行うような場 合でございましたら、公衆衛生医師確保推進登録事業のようなものが今後は利用が可能 かと思われますし、また、その他のものもありうるかもしれません。  2点目といたしまして、魅力的な職場づくりとして、採用条件の改善、採用後の処遇 の改善といった経済的な側面が一つ論点になってくるのかもしれませんし、もう一つ は、ある一定の専門的な資格と申しますか、臨床のほうで申しますれば専門医などのパ ターンもございますが、そういったものを公衆衛生の分野においても少し考える必要が あるのではないだろうか。  それから、医師の複数配置の問題ですが、これは実際に仕事をローテーションしてい ただくといっても、お一人ではローテーションのしようもございませんので、また、そ ういった方々がずっと育っていくという環境においては、やはり複数配置されていると いうことは重要な点かなと考えております。  そして、研修・育成の機会というものをほかで準備するとともに、実際に行っていた だくための職場での環境づくり−−これは複数配置等にも絡んでくると思いますが、そ ういったものを確保していただくことが重要かと考えております。  事務局のほうで検討項目案として考えさせていただいた内容については、以上でござ います。  納谷座長  ありがとうございました。今ご説明いただいた進め方の案について、何かご意見はご ざいませんでしょうか。  速めでしたが、事務局からたくさんの資料をお出しいただきました。本日は1回目で ございますので、今、プレゼンテーションがあった資料をもとに、フリートーキングと いう形でいろいろとご意見を出していただけたらと思います。特に、先ほどの現状を踏 まえて、資料6の確保・育成の事務局案についてのご意見はいかがでしょうか。ご自由 にどうぞ。  高野先生、いかがでしょうか。  高野委員  資料6で示されましたこれからのスキームは、全くこのとおりだと思います。それか ら、先ほど説明をされましたように、今、公衆衛生の専門医が求められているというこ とも事実でありますし、また、大学の反省も含めまして、公衆衛生医の重要さ、あるい はその魅力というものを十分に伝えられない時代が一時代あったということも事実であ ります。  そういうことで、この資料6に沿って大いに検討していくべきだと思っております し、同時に、私は、衛生学、公衆衛生学の教育協議会の代表世話人をしておりまして、 この教育協議会の中にいろいろな委員会を持っておりますが、先ほど出ました臨床研修 の義務化に伴って、臨床研修、地域保健、地域医療のプログラムの充実なども手がけて いまして、また同時に、もともと卒前教育の充実ということでは努力してきましたの で、きょうのようなこういう視点をさらに強化して、一つの関連団体として役割を果た すべきだろうと、自戒を含めて、強くそのように感じた次第です。  ここに書いてあることは全部このとおり私は賛成です。それで、こんなことを具体的 に追加したらどうだろうかということであれば、卒前教育で、今、ご存じのように、医 学教育が全面的・根本的に変わっている最中です。文部科学省では、医学教育のコアカ リキュラムというものを導入しまして、従来、系統的に何々学、何々学として教えてき たものを、もう少し現実に役立つようにということで、腫瘍学なら腫瘍として、今まで の専門科目を統一して行うような事業も始めています。それから、実習重視ということ で、オスキーのようなものも取り入れて、実技の重視もかなり進んでいます。  こうしたちょうど医学教育が大きく変わっていくときに、ここで言われましたよう に、公衆衛生学、あるいは公衆衛生の専門家がいかに社会で必要とされているかという ことを大いに学生に教育することは重要だと思います。  そのためには、具体的な話ですけれど、今ありますいわゆる卒前教育というのは、大 学に医学生が入りますと、一番最初の年はあまり医学を教えないんですね。それで、人 文科学を教えたり−−それはもちろん重要なわけですが、それから、高校でやってきた ような延長である科学・物理・生物、入学試験もこのうち2科目とればいいわけですか ら、どこか弱いところがあるだろうということで、こうした一般教養あるいは一般科目 を教えているのが現状です。  ここをもう少し改善すべきだというのが、今、教員側の強い希望でして、各大学で工 夫をして、入ってきた医学生にどうやって医師としてのモチベーションを高めさせるか ということを工夫しています。このモチベーションを高める最初の年である1年生、あ るいは2年生でもいいのですが、低学年に専門としての公衆衛生を教える前に、医師と してのモチベーションを何とか高める、あるいは医師になりたいと思って入ってくる学 生、一番感受性のいい時期に、現役で入ってくれば18歳なわけですから、ここでご説明 いただいたような公衆衛生医師をいかに社会が必要としているかということを教える。  そのための何かモデルカリキュラムなり何なりをどういう形で提示するかは、医学教 育の内容になりますから難しいかもしれませんが、そこの工夫が、資料6の(ア)の (1)の卒前教育では具体的に必要になってくるのではないか。ですから、公衆衛生学の 講義・実習とともに、入ってきてすぐに、一般科目あるいは教養科目をやるときに、そ れについても少し踏み込んで何か書き込んでもいいのではないかと思います。  それから、低学年からの啓発には、今の医学生は社会の風潮というものに敏感ですの で、一般社会において公衆衛生医が望まれているということがあわせて必要で、そうい う風潮、あるいはそういう社会の意識、そういうものを高めていくことが、ドライビン グホースになって教養科目あるいは一般科目も改善されるだろうし、入ってくる新入生 あるいは新しい医学生のモチベーションを高めるのに重要なのではないかと思います。  それから、もう一つ具体的なことでは、「職場に魅力がない」というのは卒業生から よく聞くことなんです。ですから、職場の魅力を高めるということが非常に重要で、そ のためには職場の透明性を高めていく。これは大学の医局も今大きくリフォームしてい ますので、医師の世界における閉鎖性とか、古典的な伝統社会、序列社会というものを 改善していく方向が必要だろうと思います。そのためには、透明性を高めたり、この中 に出てきました地方公共団体間の流動性を高めるといったことも大いに結構ですし、そ ういうものを含めて、キャパシティ・ビルディング−−能力開発プログラムのようなも のが提起できると、新しくそこに入ろうとする医師にとって、非常に魅力ある職場にな るのではないかと思います。  その一環に、そこまでは考えていないということに今回なるかもしれませんが、いろ いろな科では、留学計画も含めて能力開発のプログラムを提示しないといい医師が来な いという時代ですので、職場においても、地方公共団体間の流動性を確保するととも に、ある意味では、途中で留学のような期間も設けてもいいのではないか。そのために は、やはり複数確保、あるいはその人たちの研修の分の医師の確保ということが必要に なってきますが、これだけ国際化が進んでいますので、そういった海外プログラムも入 れてはどうかと思います。  雑駁ですけれど、以上です。  納谷座長  ありがとうございました。それでは、申しわけございませんが、土屋先生から順番に お願いできればと思います。  土屋委員  この公衆衛生の分野を魅力あるものにして、将来的によい人材を育成・確保するとい うことは大事なことで、それが焦眉の急ということなのでしょう。けれど、この公衆衛 生の分野の医師を含めて、果たして日本全体として、先ほど高野先生は社会の風潮とと もにそういう慣習も変わってきたのではないかということをおっしゃいました。それも もっともだと思いますし、あるいは、医学・医療の進歩とともに、制度そのものが古く なってしまっていると申しますか、例えば、法律的な医師の配置基準であるとか、診療 報酬体系上のそういうものから考えますと、今、地方では医師不足ということが言われ ていますね。  一時、大学医学部の定員を削減という話もございましたけれど、その時点と現時点 で、果たして必要なドクターの数が適正であるかどうかということですね。これは制度 とともに、あるいは医学・医療の専門分野に分化していくとともに、これは違ってきて 当然だと思います。そうしますと、これはひょっとして全体として少なくなってきてい るとするならば、この公衆衛生の分野に関心を持って入ってくる人たちもおのずと… …。  そうでなくても今まで少なかったとするなら、これはこの検討会の趣旨とは離れるか もしれませんが、まず、医師の養成数といいますか、今求められている現状のいろいろ な制度を踏まえた上での医師の必要数といいますか、それがこれでいいのでしょうか。 それは偏在しているということになるのかもしれませんし、偏在しているとするなら ば、公衆衛生の分野には逆に少ないということなのでしょうけれど、そうなれば、その ほかの分野に行く人、あるいはいる人を引っ張ってくるということも可能なのでしょう が、トータルとして絶対数が足りないとするならば、この問題をいくら論議して魅力あ るものにしても、私は限界があるように思うのですが、いかがでしょうか。  納谷座長  確かに、小児科医、麻酔科医、精神科医、そしてこの公衆衛生医が足りないというこ とが最近随分言われていますね。一時期、随分減らしましたね。大概は東大医学部から 順番に減らすわけですが、自治医大も減らされて、僻地で困っているというお話がござ いましたけれど。それはどこかで余っているのかどうかですね。これは局を超えた話か もしれませんが、そういう問題もあろうかと思います。  大井田委員  質問ですけれど、資料5の採用の募集状況の資料ですが、私は20数年公衆衛生をやっ ていますと、保健所に勤めて、「やめたい」というので相談を受けることが結構多いわ けなんです。せっかく保健所に入っていただいてもやめていく方、その辺の資料という のはあるのでしょうか。なかなかつかみづらいと思いますけれど、そういう人たちがな ぜやめたのかというのも、私は、魅力ある保健所づくりのためには必要な情報が含まれ ているのかなと思っているのですが。  野崎技官  やめた人数については、こちらではまだ調査をしておりませんので、把握をしており ません。  納谷座長  何かアンケートをやる予定なんですね。その予定をご説明願えますか。  平子室長補佐  後ほどのスケジュールのところで少しご説明させていただく予定にしておりますが、 本検討会の検討に必要な事項につきましては、アンケート調査等を自治体のほうにお願 いするということもありうるのかなと考えておりますが、ただ、今、大井田委員がおっ しゃられた、やめられた方の調査をするというのは現実的にはかなり厳しいのかなとい う感じがしますけれど、そこは検討した上で、またご回答させていただければと思いま す。  大井田委員  そうだと思います。ただ、数はわかりませんか。私は1対1で対応しているものです から、全体がわからないので。都道府県にいくつか聞いたらわかるのかなと思って質問 したのですが。  納谷座長  調査すればわかると思いますね。  大井田委員   ええ、数ぐらいは。  納谷座長  あるいは、どこへ行ったかとか。  では、角野先生からまた順番にお願いいたします。  角野委員  検討項目案についてはこれでいいかなと思いますが、私が思うのは、むしろこの後で す。これは趣旨のところにも、指針としてまとめるということを目的としているという ことですが、その指針となった場合に、果たしてそれぞれの立場のところがそれをどの 程度やっていただけるか。この委員の方々の立場そのものが、この検討項目にそれぞれ かかわるところにおられる方々かなと先ほどから思っております。  例えば、公衆衛生学の講義云々のところであれば、このあたりは大学教育の話ですか ら、今後、この委員である高野先生を中心として、この指針に基づいて大学のほうに働 きかけをしていただけるものだと思うわけです。  当然、私は全国保健所長会の会長という立場でもありますので、いわゆる採用後、先 ほどから魅力ある職場という話も出ておりますが、実際に今回の臨床研修で来られたと きに、その研修医の方が何か一つおもしろみを感じていただけるような、少なくとも一 つそういうものがあるような、そういう職場づくりというものを今後全国の保健所には お願いしていきたいと思っておりますし、また、実際に来た若手の医師を育成していく 面でも、我々は頑張っていかなければいけないのかなと思っているわけですが、一番心 配しますのは何かといいますと、採用する側、そしてその後の人事管理等をしていく地 方自治体の姿勢です。  今のこの地方分権の中で、国のほうが自治体に対して「こうせよ」とは当然言えない わけですから、あくまでも指針という形で出るのだと思いますが、従来から、保健所に は医師の複数配置ということがいわれながら、現実には進んでいないところが多いわけ です。また、この募集状況を見ましても、保健所長1人で十分と考えているところがま だあるわけです。しかも、育成なんていうことは全然考えていなくて、なくなったら採 用しようかと。そういう発想でしかない自治体がまだまだある中で、果たして今後この 指針に基づいて採用後の教育の部分などで、研修体系の確立とか、研修を受講できる環 境の確保、あるいは育成に主眼を置いた人事管理、このあたりはどのように自治体に真 摯に受けとめていただいて実行してもらうかということが、実際、この検討会を終えた 後の大きな課題かなと。  それがある程度見通しがないことには、我々は一生懸命検討して指針を出しても、結 局は絵にかいたモチになってしまわないかと、そういう不安が若干ないわけでもないわ けです。もちろん、自治体に対しては、納谷先生が衛生部長会の会長ということで、今 後、衛生部長会の中ではお話はしていただけることかとは思いますが、しかし、現実に は、各自治体の衛生部長さんだけがという話ではなくて、総務部であるとか、県全体、 自治体全体の話となってきますので、そのあたりへの担保というものが非常に大事なの かなと思っております。  納谷座長  おっしゃるとおりでして、私があまりしゃべってはいけませんが、先ほどからの資料 を私もまだ十分そしゃくできておりませんけれど、簡単に言いますと、そんなに困って いるのかなと。私がこんなことを言ってはいけないのかもしれませんが、そんなに自治 体は困っているのかなという印象を受けるんです。  東京都ですと1つの保健所に4人ぐらい医者がいるようなところもありますし、大阪 も3人ぐらいおりますし、もちろん一生懸命努力はされていますし、我々も努力はして おりますが、そんなに困っていないところと、先ほど角野先生がおっしゃいましたよう に、1人でよろしい、2人も要りませんと。そして、研修は考えているかどうか知りま せんが、いなくなったら採用しますと。それで、兼務であるけれど、別に採用する気は ないんですよね。そこは兼務でいいと考えておられるわけですね。今の話でしたら。  そうすると、足りないところもあまり困っていないし、足りているところは、努力し ているけれども、それなりに結構医者はおりますよと。そうしますと、一体何が問題な のかなという気が若干するのですが、その辺、事務局のほうでもう少しご説明いただけ ますでしょうか。  平子室長補佐  前回の「保健所長の職務の在り方に関する検討会」のときに少しご議論があったので すが、兼務だけが足りない、どうのこうのという、純粋に数の問題等はございますけれ ど、そういう数だけでの議論としては、大都市はいいとしても、へき地とか、少し地方 のほうに行くと確保が難しい状況もあるのではなかろうかと。  もう一つは、ただいればいいというのではなくて、今、ご存じのように、例えばSA RSとか鳥インフルエンザとか、さまざまな形で公衆衛生を取り巻く環境がかなり変わ ってきていると。そういう中で、保健所長を初めとした公衆衛生医師に求められる資質 ・能力というものはかなり高い水準が求められてきているのでしょうと。そういったも のを養成していく、またそういう人材が今後日本として確保されるためには、どういう 形がありうるのか。そういうところは現在までの状況だけを見て議論するのではなく て、少し将来を見据えた形でご議論していただくことが重要なのかなと考えておりま す。  納谷座長  ありがとうございます。私は非常に皮肉った言い方をしましたが、確かに現場は、逆 に言うと、ヘルプレスネスといいますか、いろいろやってきたけれど、もうどうしよう もないのだということかもしれませんので、その辺はおっしゃるとおり、資質をどれだ け上げていくのか。医者がいさえすればいいわけではありませんので、非常に大事なこ とだと思います。  そういった公衆衛生医師の資質の問題とか、それから、先ほど高野先生がおっしゃい ました留学とか、あるいは資格をとっていただいたらどうだろうかと、その辺を踏まえ まして、篠崎先生、いかがでしょうか。  篠崎委員  きょう出された資料6の検討項目については、こういう検討項目でいいのではないか なと思います。そして、議論の中で追加するものがあれば、ここにまた追加する形でや ればいいのではないかと思います。  それで、国立保健医療科学院のほうでも、今年からスタートしていますが、今年10 月、ちょうど和光のほうに全部キャンパスが移りますので、来年の4月以降の研修につ いてはさらに魅力のある研修にしていきたいと思っておりまして、今回のこの検討結果 がそれにうまく反映できるように私どもも考えておりますので、皆さん方にもよろしく お願いしたいと思います。  それから、質問ですけれど、これは「公衆衛生医師の育成」という言葉になっていま すけれど、「保健所医師の育成」と同義語なのですか。あるいは、将来のことを考える と少し意味が違うのでしょうか。  それから、資料7に行ってしまうかもしれませんが、この結果を来年度予算要求に結 びつけるとか、あるいはこの結果を具体的にどのように反映させるのでしょうか。  平子室長補佐  まず、1点目ですが、検討対象範囲としての公衆衛生医師とは何かという点だと思い ますけれど、確かに保健所に勤める医師というのはマスとしては多いと考えてはおりま すが、もう少し幅広い形でお考えいただければと思います。つまり、例えば、都道府県 等の地方公共団体の本庁等にお勤めしていただいている方とか、または、地方衛生研究 所等にお勤めしていただいている方という意味で、行政機関の中でも多少ローテーショ ンがあると思われますし、もう少し視点を変えて広げてみれば、例えば国に勤めている 者もおりますし、国の中でも例えば検疫所とかそういったものに勤めている者もおりま すので、少し幅広い視点で公衆衛生に携わる医師という形で、そのマスの中から少し選 んでいく、または養成していくということもお考えいただいてよろしいのではないかと 思います。  仁木総務課長  後半の予算との関連については、私のほうからお答えさせていただきます。先ほどの 角野先生のお話とも関連するわけでございますが、この検討会の最終目標としては、指 針としておまとめいただきたいということでございますけれど、指針としては、国の役 割、地方公共団体の役割、関係団体の役割があろうかと思います。国の役割としては、 ご提言いただければ国みずから最大限の努力をするということでございますが、自治体 に対してはご提言をいただいても、自治体のほうでどれだけその指針に沿って実際の変 化が期待できるかということもあります。角野先生がおっしゃったように、結局、絵に かいたモチに終わりかねない面がございますので、この検討会でのご提言、あるいは指 針をおまとめいただければ、それに沿って、自治体なり関係団体の取り組みを国として どういう形でサポートできるか、場合によっては予算措置で何かできることもあるかも しれない。  そういうことを来年度予算にも反映できるようにしたいと思っております。そういう 意味で、後ほど検討のスケジュールについてご説明いたしますが、最終とりまとめ報告 は11月を目途にさせていただきたいと思っておりますけれど、早く具体的なアイデアを 出していただければ、来年度の概算要求にも盛り込んでいけるものは盛り込んでいきた いと考えております。  納谷座長  ありがとうございます。そういうことでございますので、アンケートも含めまして、 来年度の要求ですので、大きな方向は夏ぐらいにでもこの中で、きちんとした報告書ま ではできなくても、何か提言みたいなことができればと思いますが。  一巡したわけですけれど、それをまた踏まえまして、ご意見がございましたらご自由 にご発言いただきたいと思います。  土屋委員  先ほど大井田先生が、やめた者について追跡調査できないかというお話をなさいまし た。私の先輩や後輩で、臨床医でありながら、逆に保健所に入った人が結構多いんで す。ですから、どこに魅力を感じて、あるいは何か一つの動機づけみたいなものがあっ たのかもしれませんが、臨床から移った人が多いように思いますので、その人たちの本 音を聞いてみると、意外に今後の「魅力ある保健所」ということにどこか役立つかなと 思いますが、いかがでしょうか。  角野委員  仕事がおもしろいとか魅力があるというのは、何か一つ結果が出る、いわゆる達成感 ではないかなと思います。臨床から行政に入られる先生の場合でも、最初はそこまでは 見えていないと思うのです。何かのきっかけがあって来られるかとは思うのですが。そ して、その後、ずっと居つかれる先生というのは、仕事をしている中で、確かに公衆衛 生が本来の目的としているところの結果というのは長いタームが要るわけですけれど、 しかしながら、日々の仕事の中でも小さな結果というのは出てくるわけです。自分がや ったという達成感がある。そういうことの積み重ねができる保健所といいますか、もち ろんスタッフもしっかりしていなければいけないわけですが、彼らを上手に使う中で、 自分が医師としてそこで一つ何かできたと。それがあれば、おもしろみがどんどん出て きます。  本来あってはいけないことですけれど、端的な例でいえば、危機管理などはそうで す。感染症の何かわからない大きな事件が起こったと。そういうものを解決するのは醍 醐味であることは事実です。そういうことを経験すると、なかなかこれもおもしろい仕 事だなと。これはもちろん起こらないようにすることが本来の仕事ではありますけれ ど、それでも実際に起こることはあるわけで、そういうときには非常にそういうことを 感じることができるかなと思います。  先ほど大井田先生のやめられた方の話にも出ていますが、確かに行政の側に原因があ って、そういう魅力を感じられないでやめられる方もあるかと思いますけれど、私自身 が滋賀県でもう18年ぐらいになりますが、何人か若手でやめておりますけれど、それを 見る限りは、惜しい人というのは極めて少ないんです。やめていただいてよかったな と。  これは私の印象だけですけれど、若い医者はとにかく片っ端から採用しても心配ない かなという気はしているんです。というのは、結局、ちゃんとやめてくれます(笑)。 むしろ心配なのは、45や50ぐらいになって、あとはもうどうしようもない人を採用した 場合です。こういう人は絶対にやめないです。そういう人が、先ほどの保健所長の年齢 の構成のところにも出ていましたけれど、あの中でそういう人というのは結構含まれて いて、そういう人たちが先般のこの「在り方に関する検討会」でもいろいろ問題となっ たところかなとは思っているのですけれど。  大井田委員  やめた人の話になってしまったんですけれど、言われたように、達成感、何か仕事を なしたときの充実感みたいなものを求めているということがあったわけですが、それが 多少満たされれば、確かに私も一生懸命やっていただけるような気がするのですけれ ど、ただ、地方公共団体が地方分権といいながら、何か危機管理があるとすぐ厚生省を 頼るような気がしてならないんです。こんなことを言って先生に失礼な言い方をして申 しわけありませんけれど。  O157 が発生したときも、自治体の首長が「この健康問題を住民のためにやるのだ」 という、全体にそういう意識があまりないような気がしたんです。いいときは地方分 権、悪くなると厚生労働省といったことを私は感じてしまうのですが、そのあたりを保 健所の医師が活躍できる場所が少しでもあればいいなと思います。私は、O157 のとき にそんな感じを受けました。自治体の首長がもっと自分でやるという意識がないような 気がしてならないんです。  納谷座長  私は、O157 のときは大阪府におりまして、堺市は隣でございましたから。ただ、あ あいう事件が起こりますと、もちろん厚生省と現場と、そしてマスコミが、いい悪いは 別にして、リードしていくわけですね。そんなときに、厚生省に何も聞いていないとお しかりを受けますし、聞くことは聞かなければいけないということはあるのかなと思い ます。ただ、堺市の現場も大阪府も、そして厚生省もいろいろやっていただきましたか ら、あれはそんなにどこが何かしなかったということではないのかなと思っております けれど。  高野委員  今の議論とは直接関係はないのですが、少し背景的に私は思いますことは、今どこの 自治体でも、あるいは基礎自治体でも、県にしろ市にしろ、安全・安心な生活の確保と いうことをまず第一に掲げるんですね。そして、国のレベルでは今度は逆に公衆衛生で すから、国の安全保障という面があると思います。国を守るということがあると思いま す。ですから、国の安全保障というところと、安全・安心なまちづくり、安全・安心な 生活の確保というところを、公衆衛生医の確保、あるいはその育成の観点から、何回か で議論の方向としてできるのではないかと思います。  それから、これは風が吹けば桶屋がもうかるみたいなことで、原因と結果があまり歴 然としないのですが、医学教育に携わっていますと、どうしてもアメリカの医療制度と か、アメリカの考え方に非常に影響を受けるんですね。今やっております臨床ができる 臨床医という教育は、これもアメリカの教育あるいはアメリカの考え方で進めていると 思います。ところが、アメリカというのは、安全とか安心というのは自分で守るわけ で、基本的には自分が自分の生活を守るという考え方で成り立っている社会ですから、 日本のような自分で自分を守るということがそれほどなじまないような社会では、もう 少し独自のものを検討する必要があると思います。  ですから、日本独自に、一方では臨床教育で臨床ができる臨床医−−今、マスコミ的 には、いいか悪いかわかりませんが、病院のランキングとかいろいろ進んでいまして、 患者の目から見た病院のランキングのようなことをやっていますけれど、一方では、臨 床で信頼できる医師というものを求めていることは事実で、それに対して、もう一方で は、生活の安全であるとか、住民の健康の保持とか増進−−やはり安全の確保ですね、 保健といいますか制度といいますか、それを求める方向とに、かなり明確に世論もなっ てきていますので、そういう方向からの議論も背景としては役に立つのではないかと思 います。2つのそういう議論軸が、お伺いしていて、あるように思いました。  納谷座長  アンケートの話で思いついたことで、私から申し上げて申しわけないのですが、先ほ どからも出ておりますが、だれにアンケートするかということでしょうね。例えば、問 題のある県の保健所長さんにアンケートをした場合に、果たしてその問題が本当に浮き 彫りになってくるのかどうか。  そこの部長さんなり局長さんにアンケートをしてもそれは出てこないでしょうし。保 健所長さんも、良心的な方は多少自戒を持っていろいろおっしゃるかもしれませんが。 難しい問題だと思いますね。また逆に、大阪府の問題点というのは、大阪府の人間はよ ほど客観性を保持しないとなかなか難しいところもありますので、意外に難しいのかな という気が今しております。  それから、高野先生か大井田先生かにお伺いしたいのですが、特に大阪は自治医大が 公衆衛生医師になりますので、我々は学生時分からいろいろな研修の機会を持ってきて おりまして、本当は海外留学までと言いたいのですが、海外留学につきましては、「お 金は出さない、勝手に行け」という制度を持っております。  ただ、私もそういう担当をしていて残念というか、もっと進めばいいのにと思うの は、大学との連携なんです。保健所長さんが、保健所長同士で、あるいは保健所長会を 通じて、あるいは国のいろいろな制度を通じて勉強する機会というのはありますけれ ど、県内の、あるいは府内のどこかの大学の公衆衛生の教室へ行って、自分が今やって いることをもっと深めるとか、場合によれば、そこで本当の意味の博士号といいます か、足の裏の米粒ではない博士号をとられるということも一つの方法でしょうし、それ から大学を通じて別の職場へと、それはそれなりに展開していくということもありうる と思いますので。  もちろん、時々、大学の教授に来ていただいて、審議会の役員をやっていただいた り、研修をやっていただいたり、講師をやっていただいたりということはありますが、 公衆衛生学教室が、県内の、あるいは府内の公衆衛生学を志している方たちに対する責 任、あるいはお世話といいますか、そういうことをしていただけないのかなと。あるい は、府県としてそれをするためには、どんなことをしたらいいのかなと。それは地方の 一県、一大学などは案外うまくいっているのかもしれませんが、そういうことで何かご 経験なりご意見はございませんでしょうか。  高野委員  全くその視点というのは私もシェアしていまして、もっと連携がとれないかというの は、大体どの先生もお思いではないかと思います。  それで、私立大学、国立大学、あるいは公立大学といろいろありますけれど、今、教 育協議会等で、そうした医学部の学生を教える教育とは別に、コンティニュード・エデ ュケーションといいましょうか、一回専門家になった人に対してどのように教育してい くかということを今議論しております。  ちょっと前までは講座というのが確立していまして、そこの教授のパーソナリティに もよるといったことがあったと思いますが、今はもう制度的に大学というのは地域の資 源であると。そして、地域のために貢献するという視点ができつつあるように思います ので、これからはいろいろあるのではないかと思います。  例えば、大学によっては夜のコースを開いている大学がこのごろふえました。イブニ ングスクールといいまして、大学院などは特にそうですけれど。また、大学によって は、これはまだ試みですけれど、社会人のために土日に開いてはどうかといったところ もありますし、既に確立している制度としては、大学院の制度の中に社会人枠というも のをとりまして、制度的に整備されていると。あとは、内容をどう吹き込むかというと ころですので、教育協議会ではそのための内容を今議論しているところです。  こうしたちょうどいいタイミングにありますので、今回のこの議論とうまくカップリ ングができれば、大学を一つの地域資源として考えていただいて、そこを一つのエント リーポイントにして、その大学だけで完結するわけではなく、その大学でもやるととも に、その大学を通じていろいろな能力開発の部面を提供できる、機会を提供できるとい う方向に、ポジティブシンキングでいけば、行くかと思います。  納谷座長  ありがとうございます。今、大阪府でも、若手は週に2日ぐらい、それ以後も週に1 日ぐらいは、先ほど出ましたけれど、O157 やSARSのような事件が起こらない限り は、研修の機会というのはとれるようになっておりますので、その辺は確かに複数配置 が必要でしょうし。また、大学から一たん外へ出ますと、また自分の出身大学でない場 合は非常に見えにくいということがございますので、こういう制度があるよということ をいろいろな形で伝えていただく必要があるのかなと思いますが、道ができれば、後は 後輩が行きやすいのかなと思いますので、その辺は非常に大事なところだと思います。  大井田委員  今、高野先生がおっしゃったように、まさに私どもも今年から社会人の大学院制度を まねしてつくって、所長さん方に来ていただくようにして、疫学で学位をとっていただ くように、あるいは所長の経験を大学院生に教えていただくようなシステムをつくって いるんです。ただ、私どもの教室にも行政の方がたくさんいらっしゃいますが、やはり 忙しいですから、来ることが結構大変だなという気がしますね。それでも、少しでも多 くの方に保健所長になる前に医学博士をとっていただきたい、その前に疫学を勉強をし ていただきたいなとは思っております。  角野委員  今のお話は非常にいい考えではあると思います。公衆衛生医師を育成・確保するとい う意味では非常に魅力的だと思います。そういう中で、高野先生がいわれたような、特 に夜です。時間内にそういうことをしようとすると、今のご時世、「医師だけがどうし て」ということで必ず自治体の中でいわれると思うのです。それでなくても、今まで は、少なくとも保健所医師、行政の医師というのは、ある意味優遇されてきているわけ です。それに対する風当たりというのが今非常に強くて、そういう中で、今後また研修 的なものを、この体系の確立は大事ですけれど、あまり露骨にやると、逆に、この検討 会の議論は医者を優遇するためにやったのかということになりかねない。  もっと本当の意味で公衆衛生行政を進めていく上で、医師というのが本当に大事なの だと、これは絶対にキーパーソンですよということが、みんながみんな十分に理解して くれているのであれば、それだけ医師を大切にしなければいけないという思いを持って いただけると思うのですが、例えば、先ほど納谷先生が言われましたように、大阪府と か東京都というのはその意識が強いんです。みんなの合意が得られているところだと思 います。ですから、医師もたくさん確保していますし、今までにそういう努力もされて きたわけです。それは公衆衛生行政をする上において医師がいなければならないという ことがはっきりわかっておられるからなんです。  ところが、そうではない都道府県というのが結構あるんです。そういうところが、先 ほどの結果で、保健所長は1人いればいい、いなくなればひょいと呼んでくればいいと いう発想になってしまうわけです。そういうところにいくら研修、研修と言っても、 「なんで医者だけが。ほかにも保健師もいるし、普通の行政職もいる。そういう人たち の研修体制は何もないのに、なんで公衆衛生医だけが行くのか」ということが逆に言わ れるんじゃないかなということをちょっと心配します。  ですから、私は非常にいいことだと思うのですけれど、それを指針の中に盛り込むと きには、ちょっとやわらかい形でといいますか、ほかの職種も含めた中で、公衆衛生の レベルアップということで、夜あるいは土日という時間外での研修の道もあるので、そ ういうものはみんな大いに利用すべきだと。そして、その中で公衆衛生についても当然 のことながら必要である、という形で考えていただければなと思います。  納谷座長  今の資料で、保健所医師の研修はこれぐらい保証されていますというのは何かありま したでしょうか。プレゼンテーションしていただいたのが、また全部は頭の中に入って いないので。  田中健康局長  参考資料1の72ページの(4) に、この検討会をやったときに随分いろいろな調査をか けたのですが、その中で、医師の育成のためにどのような研修をやっているかといった ことを書いております。  納谷座長  そうですね。ただ、これは 127団体をガシャッとやってしまいますと、野菜をミキサ ーに入れてスイッチを入れたようなことになってしまって、何がどうなのかわかりにく くなってしまうのですが。  医師が本当に足りなくて、医師が欲しいということであれば、非常に特権的なことば かり言っているというのは確かに他の職種から批判を受けると思うのですが、例えば、 週1回の研修とか−−それも危機の場合には当然行けないわけですが、それぐらいは本 当に行けないのかどうかという気はしますけれど。  時間が大分押してきましたので次に進ませていただきますが、事務局で補足をしてい ただきたいのですけれど、次回は委員の先生方それぞれの立場から、国や地方公共団体 や関係団体が取り組むべき施策、具体的な取り組みについて、こういうことをしていた だいたらどうだろうかとか、あるいはこういうことができるのではないかといったご提 言をお願いしたいと考えております。特に、国、地方公共団体、あるいは公衆衛生の学 会とか、我々のような部長会なども含めてかもしれませんが、そういう具体的なご提案 を何か出していただけないだろうかということでございます。そして、6月21日までに 事務局に出していただけたらということです。そういう宿題をお願いしたいというのが 事務局からのお願いでございます。事務局からもう少し補足していただけますか。  平子室長補佐  簡単にご説明させていただきますが、今回、ガイドラインなりをつくるにしても、関 係団体の方にどのような形で取り組んでいただくかということについて、ご提言なりご 意見をまとめたものを少しご準備いただいた形でご議論いただくと、随分違うのかな と。それで、先ほど座長からおっしゃっていただきましたような形で事前にいただける ようであれば、我々のほうで多少全体を整理したものを作成した形でお見せできるのか なと考えております。  納谷座長  ありがとうございます。ですから、きょういろいろ出していただいたものに何かプラ スアルファーしてまとめてということですね。  平子室長補佐  そうです。  納谷座長  それでは、今後のスケジュールについてご説明いただけますでしょうか。  横尾地域保健室長  資料7をごらんいただきたいと思います。「検討会の今後の開催予定(案)」でござ います。  第2回は7月上旬ごろに予定しておりまして、国、地方公共団体、関係団体が取り組 むべき具体的な施策について、国、地方公共団体、関係団体より提案をしていただきた いと考えております。できれば、アンケート調査の素案についても次回にご検討いただ ければと思っております。  第3回は、これは予算要求との兼ね合いもありまして、できれば7月下旬ごろまでに 開催したいと考えております。財務省の予算の要求の締め切りが8月下旬となっており ますので、そういう予算に盛り込む事項があれば、この機会までにおおよその形でも結 構だとは思いますが、何らかの形が見えればということで、第3回の検討会を計画して おりまして、国と地方公共団体、関係団体が取り組むべき施策ということと、アンケー トの調査案についてお願いしたいと考えております。  そして、8月に、夏休みの期間もございますが、この期間を利用してアンケート調査 を実施して、第4回の検討会を9月上旬に考えております。この第4回では、地方公共 団体、関係団体等からのヒアリングということで、先ほどご提案などもございましたよ うに、各地方公共団体の実際の状況について、なぜ保健所の職員として医師が確保でき ないのかといったこと等についても、地方公共団体のほうからヒアリングを行いたいと 考えております。それから、アンケート調査の結果もまとまれば、この機会に出したい と考えております。  第5回の検討会につきましては、10月上旬を考えておりまして、報告書の骨子案につ いて議論をしていただきたいと思います。  第6回につきましては11月上旬ということで、報告書案についてまとめていきたいと 考えております。11月下旬ごろには検討会の報告書のできれば公表を行いたいと考えて おります。  それから、第2回の検討会の予定でございますが、各委員の先生方の日程調整をさせ ていただいておりますが、現在考えておりますのは7月2日・金曜日の10時からという ことで予定をしております。改めて正式な通知についてはお出ししたいと思いますが、 よろしくお願いいたします。  納谷座長  以上の説明について何かご質問はございますでしょうか。  それでは、本日は第1回目ということで、時間も参りましたので、これくらいにした いと思います。それでは、事務局のほうからお願いします。  横尾地域保健室長  大変貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。なお、恐縮ではござい ますが、本日の議論で言い足りないこと等がございましたら、次回までにお手元にお配 りしておりますファックス用紙にご記入いただいて、事務局までお送りくださいますよ うお願いいたします。お配りしておりますファックス用紙にはメールアドレスも記載し てございますので、メールの場合はそちらまで送信をお願いいたします。  また、本日の資料につきましては、お持ち帰りいただいて結構です。次回以降につき ましては、ファイルにいたしまして机の上に置かせていただきますので、よろしくお願 いいたします。  納谷座長  ありがとうございました。言い足りないことと先ほどの宿題と、2つ依頼されている んですね。それが6月までということですので、よろしくお願いいたします。  横尾地域保健室長  6月21日の期限につきましては、7月2日が次回の検討会ということでよろしけれ ば、日程的にはもう少し後でも結構だと思いますので。  納谷座長  それでは、6月21日ぐらいをめどに、7月2日に間に合うようにお出しいただきたい ということでございます。  それでは、本日はどうもありがとうございました。                                     −了− (照会先)  厚生労働省健康局総務課地域保健室  石関(2336) 須藤(2334)