04/05/31 労災保険料率の設定に関する検討会 第2回議事録           第2回 労災保険料率の設定に関する検討会                     日時 平成16年5月31日(月)                        15:00〜                     場所 経済産業省別館1107会議室 ○岩村座長  ただいまから、第2回「労災保険率の設定に関する検討会」を開催いたします。本日 は、大沢委員が欠席です。関東学園大学法学部教授の高梨昇三委員は前回は欠席でした が、本日はご出席ですのでご紹介いたします。 ○高梨委員  高梨です。前回は欠席いたしまして大変失礼いたしました。よろしくお願いいたしま す。 ○岩村座長  議題に入ります。本日の議題は、前回決めましたように「労災保険率の設定について 」です。事務局で用意していただきました資料の説明をお願いいたします。 ○数理室長  資料1−1で、労災保険率の算定方法についてです。4頁に算定の計算の流れ図もあ りますので、そちらも併せてご覧ください。労災保険率の算定の手順としては、まず賃 金総額の推計を行っています。ここでいう賃金総額というのは、労災保険率を求めるた めのもので、経済学でいう雇用者所得等とは違っておりますので、その点はご注意くだ さい。  労災保険率を算定するに当たっての分母になるということで推計しています。推計の 方法としては、業種別に過去3年度間、これは平成11年度から平成13年度間ですが、そ れの非業務災害分を除く保険料の収納済額にメリットによる返還金、それと保険料収入 以外に雑収入と国庫補助もありますので、それを考慮した実質的な収入額を求め、その 実質的な収入額を労災保険率で割って賃金総額を推計しているという手順でやっていま す。  その実績の賃金総額から、新料率の算定期間、平成15年度においては平成15年度から 平成17年度ですが、その見込額を求めることになります。平成15年度改定の際には、全 体として賃金の水準が場合によるとデフレという状況でしたので、人件費の増加が見込 めなかったことから、賃金実績値をそのまま見込額としたところです。  給付面は、「業務災害分」と「非業務災害分」に分けてやっています。業務災害分の 関係では、短期給付については「純賦課方式」を用いておりますので、過去3年度間の 給付実績を基に、新料率算定期間の見込額を推計しています。平成15年度においては、 診療費の改定の影響と、全体的な災害減少を考慮し、平均的に3.8%の減少を見込んだ ところです。  その見込額を一部業種間調整しておりますので、災害発生から3年以内の受給者にか かるものと3年を超える受給者分に分けて、後者の部分については全業種一律としてい るために、賃金総額に応じて再配分しています。その再配分した額と、3年以内の受給 者分との合計を短期給付の額として、それを賃金総額で割って、短期分の算定料率を計 算します。  長期給付分については、「充足賦課方式」を用いておりますので、1人当たり充足額 というのは、将来にわたる年金給付に要する費用ということですが、それに算定期間の 新規年金受給者の見込数を乗じて計算されるところです。  1人当たり充足賦課額の求め方については、7頁の資料1−4に「年金充足賦課額算 定の考え方」にまとめてあります。1人当たり充足賦課額については、4行目に算式が あります。1人当たり年間給付額に充足賦課係数を掛けて1人当たり充足賦課額を計算 しています。ここで充足賦課係数というのは、スライド率(賃金上昇率)と現価率を考 慮に入れた平均受給期間に相当するものです。年金の種類としては、傷病補償年金(じ ん肺、せき損、その他)、障害補償年金(1〜3級と4〜7級)、それから遺族の6種 類に分けて年金充足賦課額を算定しています。  具体的な計算方法については8頁の表で説明いたします。年金の種類としては6種類 ありますが、そのうちの1つの例だけ申し上げます。障害補償年金の1〜3級を例にし た充足賦課係数の算出表です。この表の真ん中に「残存数」というのがありますが、こ れは年金受給者が当初10万人いたとして、それが年数を経るごとに減っていく推移を求 めたものです。これは、実際の年金受給者の動向の実績、これは裁定されてから失権す るまでの状況が、いままで実績して残っておりますので、それと生命表を用いて推計し たものです。  いちばん左のA(t)というのが現価割戻率で、次の列がスライド率で、それを用い るわけです。残存数は年度末値になりますので、実際に支払われる分を推計する場合に は年央値を用います。いちばん左の賃金現価率とスライド率と年央値を掛けたものが、 いちばん右の賦課係数です。初年度については、初めは0人から始まって10万人ぐらい までいきますので、賦課係数としては0.5という評価です。2年目以降は、賃金現価割 戻率とスライド率と年央値を掛けて賦課係数を求めています。それを各年計算して積み 上げることにより、充足賦課係数を計算するという手順です。障害補償年金の1〜3級 の場合は、それを全部足し上げると21.119年ということですので、障害年金1〜3級に ついては21年相当分の費用負担していただいております。以上が、1人当たりの充足賦 課額の計算の仕方です。  2頁に戻りまして、長期給付分についても業種間調整をしております。長期分につい ては、災害発生から7年以内の受給者と、7年を超えて支給開始する受給者に分けてお ります。後者の7年を超えて支給を開始する分については、全業種一律ということで賦 課しておりますので、賃金総額に応じた形で再配分しています。その再配分した額と、 7年以内の受給者の額との合計が長期分の賦課額ということで、それを賃金総額で割る ことによって、長期分の算定料率を計算するということです。  「過去債務分」は前回の1回目のときに説明いたしましたが、昭和63年度に財政方式 をいまのような充足賦課方式に変更したということで、それ以前に裁定された年金受給 者に対する給付に必要な費用としては積立不足になっていたということで、それを平成 35年までに均等に賦課するということです。詳しくは後ほどご説明いたしますが、平成 15年度の料率改定時において、その不足額は2,531億円ほどと推計されたところから、 1年当たりの賦課額としては146億円で、それを料率で見ると1,000分の0.1となりまし たので、1,000分の0.1を全業種一律に賦課したということです。  3頁は「非業務災害分」です。「通勤災害」及び「二次健康診断等給付分」からなっ ていて、これは全業種一律に賦課しています。通勤災害分の短期給付については、業務 災害と同様に「純賦課方式」で計算していて、過去3年度間の給付額の実績を基に、算 定期間の見込額を推計します。  長期給付分については、同じく充足賦課方式で計算していて、1人当たり充足賦課額 に新規年金受給者の見込額を乗じて求めています。  二次健康診断等給付についても、基本的には「純賦課方式」ということになります が、これは平成13年度からの制度ですので実績がないということで、平成15年度改正の ときにおいては、予算額を計上したところです。以上の合計額を賃金総額で割ることに より、非業務災害分ということで、1,000分の0.9が計算されたところです。  「労働福祉事業(特別支給金を除く)及び事務の執行に要する費用」については、被 災労働者等を対象とする事業だけではなく、労働災害防止や労働者の健康増進など全労 働者を対象としたような事業をしているということです。事務費においても、全事業場 を対象としていることから、全業種一律に賦課しているところです。  この水準については、昭和63年度の労災保険審議会において、全業種一律に賦課する ということ、及びその水準を1,000分の1.5とされたところで、それ以降その水準を超え ることのないように労働福祉事業等の効率的な運用を図り、料率も据え置いています。 いま申し上げた計算方法の流れが、フローチャートとしてまとめたものが資料1−2の 形になっています。  資料1−3は「労災保険率の業種間調整」の考え方です。短期給付としては、原則と して、災害発生の業種に賦課するということですが、災害発生から3年を超えた短期給 付分については、全業種一律で算定させていただいております。その理由として、労働 基準法第81条で、被災後3年を超えても傷病が治ゆしない労働者については、3年経過 時点で打切補償を行い、それ以降は補償を行わなくてもよいという規定をされているこ と、徴収法施行令第2条、これは料率の算定に係る政令のほうですが、過去3年間に発 生した災害に係る給付等を基礎として料率算定するとされていること、また、個々の事 業主のメリットの算定において、メリット収支率に算入する短期給付については、療養 開始後3年以内の給付に限定されているとの理由から、3年を超えるものについては当 該業種だけに責任を負わせることは適当ではないということで、労働者保護及び産業間 相互扶助の観点から全業種一律とさせていただいております。  長期給付の関係についても、将来給付に要する費用のすべてを災害発生の業種に賦課 しておりますが、被災後7年を超えて支給開始するものについては、当該事業主の賦課 とはせず、全業種一律として算定しております。その理由としては、先ほど打切補償規 定の関係で申し上げましたが、被災後3年を超えて傷病が治ゆしない労働者について は、3年経過時点で、さらに1,200日分の打切補償を行うこととなっております。  被災後3年以内に治ゆした労働者に障害が残った場合には、障害の程度に応じて災害 補償を行うこととなっておりますけれども、例えば最重度(第1級)の場合の災害補償 は1,340日分となっております。労災法の障害年金の額は、第1級の場合313日というこ とですので、それで相当するとほぼ4年と少しということで4年相当となるところで す。不幸にも亡くなられた場合には遺族補償になります。労基法上は1,000日分ですが、 労災法の場合、例えば家族4人の遺族補償年金は245日分ということで、約4年分にな ります。それらの理由から、労基法上で想定しているのは災害発生から最高で3年の短 期給付、治ゆ後最高で4年余りの給付ということで、その分は事業主責任としていると ころです。  したがって、災害発生から7年以内に支給開始したものについては、業種別に賦課す ることにしております。7年を超えて支給開始するものについては全業種にする、とい うふうに算定させていただいております。  資料1−4は先ほどご説明申し上げましたので、次に資料1−5「過去債務分料率の 算定方法」です。この計算は、料率改定時の平成14年の秋に行ったものですので、平成 14年度末の数字は推計値です。平成14年度末に必要な積立金については、平成14年度末 の年金受給者は約22万人、その年金受給者に必要な積立金を推計すると7兆8,500億円 ほどとなりました。  平成14年度末において積み上がるであろうと思われる積立金の推計値として7兆6,000 億円余りと推計されたところです。平成14年度末においては、積立不足額は2,531億円 と推計しました。その額を、平成35年度までの21年間に解消するために毎年徴収すべき 保険料額を3の計算式で計算すると146億円ということです。それを料率表示すると 1,000分の0.1となりました。  資料1−6は、必要な積立金の積算についてです。先ほど、必要な積立金額7兆8,000 億円と申し上げましたが、それの積算の仕方についてです。資料1−6は、平成14年度 末の年金受給者数が確定した後に計算したものですので、資料1−5とは若干推計値が 異なっています。  考え方としては、平成14年度末の年金受給者を基にし、それが平成15年度以降どんど ん減っていくわけですが、その減り具合は先ほど申し上げました残存表に沿って推移す るものとして、各年の年金受給者数を推計しているところです。  年金単価については、平成14年度の実績単価を用いるということで、それ以降はスラ イドします。このスライド率については、平成14年度における足元の上昇率を基にし、 平成18年度までは0.5%、平成19年度以降は1%を前提として置きました。現価率は、 年2%としました。推計に当たっては、年金の6種類ごとに分けて行い、その合計額を 求めたところです。  11頁の表1が、それで計算した積立金額です。表2は、年度末の年金受給者の受給者 数です。表3では障害年金4−7級を例に出し、どのように計算しているのかを示して おります。いちばん左が、年度末年金受給者数で、平成14年度末値が7万9,706が確定 値です。それが、平成15年度以降、残存表に基づいて推計したものが平成15年度以下の 数字です。  積立金を計算する場合に、それぞれいちばん左の数字は年度末値ですので、積立金を 計算する場合には年央値を使うということで、前年度末値と、今年度末値の平均で年央 値を計算していくと、左から2番目の列のような数字で推移していくということです。  年金単価については、平成14年度末値を使いますが、それは同じ額ですのでそのまま 計上しています。スライド率については、先ほど申し上げた前提で計算していくと、各 年度のスライド率は、スライド率の表のようになります。次の列は現価率ということ で、現価で割り戻す率です。年央値、年金単価、スライド率、現価率の数字をそれぞれ 掛け合わせたものが右側の積立金になります。  いちばん上の数字ですが、平成15年度には約2,234億円が必要であるということで計 算されます。それを、各年度ごとに計算して積み上げたものが、表3のいちばん右の計 の欄で、2兆2,800億円という数字が出てきて、これが平成14年度末における、障害年 金(4−7級)に係る必要な積立金です。これを、それぞれ年金の種類ごとに計算した ものが、表1のような形で整理されます。  12頁は、年金受給者数の推計はどのようにしているかということです。いちばん上の 欄は平成14年度末のそれぞれ裁定年度別の人数です。7万9,706人の内訳です。年金制 度は、昭和41年から始まっているということで、昭和41年に裁定の方もまだおられます ので、それぞれ残存表を使って、それぞれ各裁定年度別にどのように推移するかを推計 し、それを積み上げることにおいて、A欄のような形で7万9,000人がどのように減少 していくかを推計しております。そのA欄を使って、11頁の表3のいちばん左の年度末 年金受給者数になるということです。  算定料率の計算方法については資料1−1でご説明申し上げましたが、その計算過程 を表の形にまとめたのが資料1−8の表です。いちばん左の列は賃金総額の推計値で す。次の列は、業種別に推計した短期給付の推計額です。これが、業種間調整をする前 の短期給付の額です。次の列の所要料率(1)と書いてあるのが、所要額を賃金総額で割 った数字を1,000倍しています。それを、3年以下の給付と3年を超える分の給付に分 けていて、3年を超える分について再配分しているということで、全体を賃金総額で再 配分した数字が次の再配分という数値です。(2)の列は、3年以下の数字を賃金総額で 割った数値です。(3)の列は、再配分の数字を賃金総額で割った数字です。  長期給付分についても同様にしており、長期給付分の列については、業種間調整をす る前の数値で、それを7年以下、7年を超え、再配分のため7年以内とそれを超える分 に分け、7年を超える分については賃金総額で再配分するということです。(5)の列は、 7年以下の給付額を賃金総額で割った数値です。(6)の数値は、再配分の結果を賃金総 額で割った数値です。  次の列の過去債務、非業務災害分、労働福祉事業分については全業種一律ということ で同一数字を掲載しています。単純料率というのは、業種間調整をする前の数字です。 左でいえば(1)と(4)の数値と、全業種一律分(*)を加えたものです。「算定料率」は 業種間調整後の数値で、(2)(3)(5)(6)と全業種一律分の*を加えたものです。参考に、 右側に構成比がありますが、短期給付と長期給付分について、業種間調整をしている分 と、していない分についての構成を参考に示したものです。  13頁に戻っていただくとともに、15頁に実際の平成15年度における改定状況と算定料 率と設定料率の関係を示した表があります。15頁には、平成13年度の算定料率と設定料 率を併せて掲載しています。労災保険率の設定においては、14頁で計算されるような算 定料率を基にしておりますが、この算定料率は、災害発生の減少などにより低下するこ とになりますが、その算定料率の低下については、災害防止活動の結果ということがで きます。平成15年度の改定に際しては、事業主の災害防止に対するインセンティブをさ らに喚起するということで、この算定料率の低下という形で現れた事業主の災害防止努 力を評価することとしたところです。  なお、料率の算定期間が3年間ということですので、一時的な要因で算定料率が大き く変動することもありますので、保険料負担の急激な変化を避ける必要があること、全 体としての保険財政の健全な運用を考慮する必要があることなどから、改定幅を一定の 範囲内でとどめました。  具体的な内容は15頁に出ていますが、数が多いものですから一つひとつはご紹介申し 上げませんが、基本的に算定料率が前回の算定料率よりは低下した業種について、いち ばん右のほうで算定料率の差、それと料率の引下げ幅ということで対比していただけれ ばわかりやすいかもしれません。原則として、算定料率の低下幅程度について料率の引 下げをしたところです。  ただ、算定料率と設定料率の関係で、算定料率が設定料率を上回っている例、例えば 上から3つ目については、算定料率のほうが上回っている状況ですので、その場合は設 定料率と算定料率の差を縮小させるということで、算定料率の低下幅の半分程度の引下 げとしたところです。  料率の改定幅の上限については、平成13年度改定と同じ1,000分の4としました。既 に平成13年度において最低料率になっている業種で、前回1,000分の5.5だった業種につ いて、算定料率が前回よりも1,000分の0.5低下したところですので、今回の最低料率に ついては、前回より1,000分の0.5引き下げた1,000分の5となっております。  資料2−1以降は、労災保険の基礎データを最近4年間分について整理したもので す。資料2−1は適用事業場数の過去4年間の推移です。ほとんどの業種で、ここ数年 わずかながらですが減少で推移しています。  資料2−2は適用労働者数の推移です。トータルでは平成11、12、13年度と増加した のですが、平成14年度ではトータルで減少しております。中身としては、林業、鉱業、 製造業などでは、全般的に減少傾向です。その他の事業というのは、専ら第3次産業系 については増加している状況です。  資料2−3は徴収決定額です。資料2−4は収納済額です。これは景気低迷の影響 と、平成13年度に料率改正され、どちらかというと引き下げの方向で改正されたところ ですので、両方とも徐々に下がって低下傾向です。資料2−5は収納率の推移表です。  資料2−6は新規受給者数の推移の業務災害分です。トータルでもご覧いただきまし たように、平成11年度では55万人いたのが、平成14年度では53万人ということで、徐々 に減少傾向で最近は推移している状況です。  資料2−7は通勤災害の新規受給者数の推移です。増えたり減ったりということです が、最近は5万人を下回る水準で推移しています。資料2−8は新規年金受給者数の推 移です。平成14年度はトータルで25人増加したわけですが、長期的に見れば減少が続い ています。資料2−9は通勤災害に係る新規年金受給者数の推移です。最近は、1,000 人を下回る水準で推移しております。  資料2−10は年金受給者数の業務災害の年度末の受給者数の推移です。微増が続いて いますが、新規年金受給者が減少しているということで、数年後にこの数字はトータル として頭打ちになるのかと思っております。資料2−11は通勤災害の年金受給者数の累 積の数で、これも徐々に微増が続いています。  資料2−12は保険給付の推移です。これは、本体給付と特別支給金を含む保険給付費 等の推移です。平成11年度では9,557億円が、平成14年度では9,184億円ということで、 災害の減少と賃金の低下の影響もあるのかもしれませんが、減少傾向で推移していると ころです。  資料2−13から資料2−17については、それらを業務災害、通勤災害別、それから短 期給付、長期給付別に分けた内訳です。なお、資料2−15の表は、平成13年度から始ま っている二次健康診断等給付の給付額です。資料2−18は単純収支率で、収納済額に対 する特別支給金を含む保険給付費の割合を示した収支率表です。  参考資料は、社会保険について解説された文献を用意したものです。資料としてはご 承知のものかと思いますが、それぞれ社会保険の特徴につき、民間の私保険と対比する ような形で記述されているものです。社会保険については、一定の政策目的実現のため に保険技術でもって、労働者や国民生活での事故を全体の相互扶助なり社会連帯におい て保障する。同じ保険であるといっても、私保険とは異なる部分があるということで す。通常、私保険(民間保険)の加入の仕方は任意ですし、保険技術的な面では収支相 等の原則なり、給付・反対給付均等の原則なり、リスクに応じた保険料という原則です が、社会保険では、収支相等の原則は保たれるとしても、他の原則については政策目的 実現のために修正が施されているという形で紹介されています。  社会保険については、全体での相互扶助の考え方で行われているということですの で、逆選択防止のために強制加入が原則です。社会政策的な見地から、必ずしもリスク に応じたような保険率にはなっていません。それから、国庫などによる補助がある、と いう特徴が紹介されています。  40頁でベヴァリジ報告を入れておりますけれども、これは1940年代に報告された社会 保険のバイブル的な報告だそうです。これには、社会によって強制力を使って組織され る公的保険ということで、社会保険の特徴については強制的な制度であるということ。 それから、各人が平等にというもので、災害防止の促進という政策目的のため負担に差 を付けるという意味はあるけれども、それ以外危険はプールするものであるとまとめら れております。  労災保険は、不幸にも労災事故に遭った被災者を保護するということで、産業全体と して事業主責任を担保するのが社会保険ということで、強制保険です。場合によっては 未手続事業で労災が起きても給付をする、という形で強制的にやっているところです。 そういう観点で、料率算定においても産業間相互扶助の考え方を入れてやっています。 以上で、本日用意いたしました資料の説明は終わります。 ○岩村座長  詳細な資料をお作りいただき、大変なご苦労だったと思います。資料は詳しく、複雑 な計算等も入っておりますのでいろいろご質問、また本日お示しいただいたことについ てのご意見等もあろうと思いますのでお願いいたします。 ○高梨委員  前回は欠席してしまったのですが、前回の資料2−3に労災保険料率設定における産 業間相互扶助についての記述があり、下のほうに、「短期給付分及び長期給付分につい て業種間調整しています」と書いてあります。ここに書いてあるのは、労働基準法に定 められた事業主の災害補償責任を上回る給付分等について、産業間で相互扶助をやりま す、ということが書いてあります。  冒頭の資料で、労災保険制度において、給付の関係で、基準法上の給付はこうです、 労災法上の給付はこうですと対比している表があります。文字どおり、基準法上の災害 責任の部分と、それを上回る部分との金額が、それぞれについて短期なら短期、長期な ら長期ということで、そういうのは計算できるのでしょうか。  それが本日の資料で出てくる、短期であれば3年ということで区分しているし、長期 でいえば7年ということで区分しているということなのか、そこのところがどうなって いるのか。ここのところは、一定年数を超えるものは産業間調整をするということでは なくて、前回の資料では、基準法の災害補償責任を上回る給付分について業者間調整を すると書いてあります。そこの点で、データが取れるのかどうかという点が1つありま す。  もう1つは、平成15年度はこういうことでやりました、ということがあちこちに書い てあります。平成15年度の改定はここに書いてあるとおりですからわかります。ところ が2年前とか3年前とか、基本的には3年ごとにいままでは保険料率を改定しているわ けですが、そのときにはどういう取扱いをしていたかということは出していただけるの でしょうか。  元の厚生省、現在の厚生労働省が年金改定をするときに、経済前提がこうですという ことで、経済前提をどのように変えてきたかがわかるようにしているわけです。労災保 険の料率を改定するときの賃金をどういう風に見るか。今回は0.5%や1%を使っている わけですが、その前は何パーセントを使っていたのか、あるいは割引率にしても、平成 15年度には2%を使っているわけですけれども、前の改定あるいはその前の前の改定で は何パーセントでやっているのか、それをデータとして示していただきたいのです。過 去のデータですけれども、お願いできるでしょうか。 ○阿部委員  いま高梨委員がおっしゃったことと似ているのですけれども、割引率やスライド率と いったものは、どういうものを前提に考えられたのかという、考え方の面をお聞きしま す。 ○岩村座長  いま、3点ぐらいの質問に要約されたと思うのですが、第1点、第2点が高梨委員、 第3点が阿部委員ですが、事務方で本日お答えできる範囲でいいのですが、もしできな ければ次回料率の問題を扱うときに資料の提出をお願いしたいと思います。 ○数理室長  前回、前々回の詳細なデータについては時間も経っているということで、資料がなく なっていたり整理がされていないこともあり揃えておりません。 ○岩村座長  いちばん最初は、基準法と労災保険の給付とのずれの説明のところということです。 ○労災補償部長  これは、基準法で規定されている補償の内容と、実際の労災保険で補償されている内 容との間で、前回も補償内容については規定上の違いを整理した資料をお配りしまし た。前回の資料で書いてある文章は、ある意味で本日説明したそれぞれの業種ごとの実 際の給付額と、料率に結び付けていく間のプロセスの中で、ある意味ではどの程度当該 業種の負担にすべきか、あるいはほかの業種にも負担をお願いしなければ保険制度とし て十分にやっていけない部分か、というところの切り分けの考え方の拠り所だろうと思 います。  ただ、ご案内のとおり基準法上は、例えば通勤災害というのは全くなく、これについ ては事業主の補償責任はないわけですけれども、労災保険については通勤災害を補償し ています。これは先ほどご説明したとおり、通勤災害にかかわる部分はすべての業種で 平等にご負担を願います、というのは一つの現れだろうと思います。  業務災害にかかわる部分については、物の考え方として基準法を上回る部分について 当該業種に全部負担をお願いするのは正直言って難しいのではないか。そこの具体的 な、ほかの業種にもご負担をいただく一つのメルクマールとして短期給付、長期給付に ついてはこういう風にやっています、ということを今回具体的な算定に当たっての計算 の仕方ということでご説明させていただきました。 ○高梨委員  3年とか7年というのは何で出てきたかだと思うのです。問題はそこで、3年にしな ければならないということでもないだろうし、あるいは7年でなくてはならないわけで もないし、ちょっとわかりませんけれども、6年がいいのか8年がいいのかそこのとこ ろは議論のあるところだと思うのです。思想として、基準法を上回る部分はみんなで一 律に助け合おう、というのは一つの思想だと思うのです。  基準法を上回る部分の計算方法として、どういう方法がいちばん良いかという当ては めのときに、ざっくりいけば3年ですよ、7年ですよということなのか、それとも先に 3年とか7年があってなのでしょうか。たまたま前回の資料では、「基準法を上回る」 となっているものですから、そこの考え方がどうなのか。  結論を先に言ってしまうとあれですが、私自身は産業間調整は必要だと思っていま す。問題は、産業間調整をする部分といいますか、割合をどうするかというのは、まさ に産業間調整など全くやらないという方法だって、それは医療の世界とか厚生年金や国 民年金の世界ではあるわけです。それは社会保険だということで割り切ろうとするのな ら、そういう考え方だってあるのかもしれません。  ただ、労災保険は労災保険単独でできているわけではなくて、説明にあったように、 労働基準法の災害補償責任が先にあって、それをどうやってみんなで負担していくかと いうふうに変化して、それがさらに給付が上積みになってくるということの中でという 歴史があるわけです。単純に、これは社会保険制度ですよ、だから産業間調整は当然で すよ、ということだけではなくて、そもそもの出発点である基準法上の災害補償責任の 問題と、全体で助け合おうという問題とをどうやって調和したものとして、災害防止の インセンティブを与えていくかということに尽きるかと思うのです。そこのところの思 想がどうなっているか、ということでたまたま前回の資料でそういう言葉を使っていた ものですからお伺いしました。 ○岩村座長  前回の資料は導入だったので、具体的にどうかという話をしたときに、本日のような 形で3年、7年という説明が出てきたのかと。より詳しく説明したものが出てきたのか と理解しております。例えば、3年というのを取ったときにも、ロジックとしてはもう ちょっと入っていて、労働基準法上は個別の事業主の責任なのです。それが、労災保険 が入ることにより、ある意味でこれは業種別保険料を取っていますから、業種集団の責 任というところに転嫁されて、他方で個別の事業主の責任というのはメリットのところ にもう一方でははね返ってくる。その両方があって、労基法は短期なら短期というのを 考えたときには、療養補償などの打切りを考えたときに、一応3年というのがメルクマ ールになるでしょう。それで3年を超えたところについては、今度は業種別保険料の世 界ではなく、むしろ全体で切り分けた、業種間調整をやった保険料で考えましょうとい う整理なのかというふうに、本日伺った限りでは思っていました。  論理的には、それ以外の切り分けの仕方も考えられないことはないのかもしれないの ですが、法律の構造と離れたところで切り分けをするとなると、それはそれでまた別の 説明を考えなければいけないことになるので、また頭をひねらなければいけないという 気がしています。  2点目のデータの点ですが、経済状況等により、それぞれ基になる数が違うことはあ るのだろうと思います。いろいろ困難はあろうかと思いますが、可能な限り遡って調べ ていただければと思います。賃金の見込みを遡るとして、高梨委員はどのぐらいまで遡 ってご覧になりたいですか。 ○高梨委員  労災法ができてからなどということではないでしょうから、バブルの直前ぐらいのデ ータまでわかればいいのではないかと思います。 ○労災補償部長  基本的に現価率やスライド率が問題になったのは、充足賦課方式で計算するようにな ってからですから、どんなに遡っても平成元年度以降しかあり得ない話ですが、もう10 何年経っていますから、どこまで資料が残っているか調べてみます。 ○数理室長  もう一回調べてみます。現価率だと5.5を使っている年度もありますが、今は時勢に 合わせた形で2%ということで使っています。 ○高梨委員  これは、結構難しいと思うのです。賃金にしても、これは必ずしも1人当たり賃金と いうことになるかどうかという問題があります。労災保険はガバッと押さえるわけです から、賃金の低い人も高い人も全部押さえているわけです。  一方、年金制度で使っているのは、厚生年金の被保険者ということで使っているわけ ですから、賃金の低い方などは入ってこないわけです。そういう意味で、スライド率の ときには基本的に今は毎勤を使っているわけでしょうから、毎勤ベースでどうかという ことなのでしょう。それをどのように考えていくかというときに、1%というのは先を 見ているわけです。1%という先をどのように読むかということについて、今は国の中 期展望ぐらいしかないわけです。たまたま、今であれば公的年金の財政再計算で使って いるようなデータが出てくる。これから先の議論になっていくのでしょうけれども、少 なくとも今の段階では、いままでどういう考え方でやっていたかをお伺いしながら、こ れからのことを考えていくということなのかと思っているのです。 ○岩村座長  それは、賃金の上昇率を考えたときに、たぶん厚生労働省なりでいろいろな形での将 来予測をやっている数値を転用して使っていることになるのでしょうか。 ○数理室長  そういう感じがします。平成10年度は足元のデフレの時期で、たしかマイナスの賃金 上昇率だったと思います。ただ、長期的に見通したときに、マイナスがずっと続くのか という問題と、長期的には上昇してほしいという期待というと語弊があるかもしれませ んけれども、そういったことで平成15年度改定においては、長期的にはプラスのほうで 推移するだろうということで、当初においては足元の状況を見ても低いものですから 0.5、それからある程度超えた場合には1.0ということで設定しました。 ○岩村座長  その辺の基本的な思想を、従来どのように考えてきたのかを説明していただきたいと いうことなのだろうと思います。それから、阿部委員からは、現価率とスライド率でし たか。 ○数理室長  現価率は、私どものほうで全部理財に預けて、その利回りがいまは大体2.0、20年物 や30年物が1.9%とか2.0%ぐらいで推移していますのでそれを使っています。そのとき の実質的な利回りも参考にしております。 ○岩村座長  先ほどおっしゃったように、昔は5.5%を使っていたわけですね。 ○数理室長  そのように記憶しているのですが調べ直します。 ○高梨委員  過去のデータは、どれぐらい使っていたかということですね。 ○数理室長補佐  積立金は、財政融資資金に全額預託していますので、財政融資資金に預託した利回り がどのぐらいか、というのが基本的にこの現価率設定に当たっての参考指標としており ます。それ以外の運用はやっていませんので、当然それ以外の要素を加味しての現価率 というのは、私どもの場合はないということです。 ○岩村座長  そのほか、いかがですか。 ○阿部委員  確認なのですが、スライドと賃金の伸び率というのは同じように計算するのですか。 ○数理室長  同じです。 ○阿部委員  そうすると、賃金総額で割ってしまうと、もうキャンセルアウトされるというイメー ジですか。 ○数理室長補佐  スライド率の話は年金受給者の賃金上昇率の話なのです。だから、長期にわたる系列 ですから、労災保険法では年金のスライドについては毎勤統計のこの数字を使いなさい というルールがありますから、そちらを系列で考えるわけです。先生方がおっしゃった ような賃金総額とか、そういうものは結構短期的な賃金上昇や雇用情勢の上昇というも のですから、スライド率で使っているときの賃金上昇と、そちらのほうの賃金上昇とは 意味が少し変わってきます。 ○岩村座長  スライド率のほうは充足賦課方式で考えたときの積立金を計算するにあたって、給付 額、とりわけ年金額を計算するときに使うわけです。賃金の総額の上昇率なり推移率な りというのは、結局賦課ベースになる賃金総額の将来3年分の増加をどのくらいに見る かという、その部分の話ということですね。 ○数理室長補佐  短期給付の話です。 ○岩村座長  だから、多分やや側面が違うので、単純に相殺されてなくなってしまうという話では ない、計算するベースというか、領域が違うと理解しています。 ○阿部委員  そうなのです。だから、何を根拠に決めたかということなのです。 ○高梨委員  資料1−1で賃金総額の計算をしていますが、逆算方式で出しているわけですね。実 際に事業主は毎年5月に精算と概算を出すわけですが、そのときにそこに賃金総額を書 いているわけです。それをトータルしたものということではなくて、逆算方式を使うの は、収納率の問題なのですか。 ○数理室長  それは保険料額での入力しかされていないということで、記述上は賃金総額はあるの ですが。 ○数理室長補佐  ここで使っている意味は、収納率を加味した部分にもしたいという意味も当然ありま すが、それ以上に、建設業などでメリットでお金を返します。その返した部分について も織込済みの料率でなければいけない。そういったときに、どこでそれを整理するかと いう中で、賃金総額でそれを整理して数字を作っていったということなのです。ですか ら、収納済額というのは、そもそも収納率が入っています。そして、それからメリット などでお金を返す部分もここで引き算をして入ってきます。一般会計とかの部分からも 国庫補助という形でお金も入ってきますし、雑収入という形でもお金が入ってきます。 そういう総収入的なものをここで整理して、無駄な余分なお金をもらわないで、きちん と整理をした形で料率を設定したいというので、そういうものをすべて賃金総額に加味 していますから、通常の雇用者所得といった意味での賃金総額とは、ちょっと違ったも のになってきています。 ○高梨委員  労務費率を使ったりする部分もありますから、賃金総額は出てこないのもあるわけで すね。ですから、そういう意味では生のデータは使えない部分があるわけですね。  3頁のところで労働福祉事業の関係について書いてあって、昭和63年の労災保険審議 会でこれこれと書いてあるのですが、これは当時の労災保険審議会の諮問答申でこうだ ということで、全業種一律、あるいは1000分の1.5ということが決められたというか、 認められているのですか。それとも、当時はやはり料率改定があって、いまの充足賦課 方式の最後のときになるのですか。 ○数理室長  充足賦課方式のいちばん最初のときです。 ○高梨委員  いちばん最初になるのですか。 ○数理室長  そのときに労働福祉事業について、全部1.5という形で全業種一律という、諮問の答 申という形をとられたかどうか、諮問文はちょっとわかりませんが、そのときに一応 1.5厘について全業種一律で審議会の中でご了解いただいたという経緯です。 ○高梨委員  当時のことはよく分かりませんが、最近労災保険料率が決定される場合の諮問答申と いうのは、説明資料で労働福祉事業分が内訳として出てくるのであって、各業種の料率 がこうなるというのが、諮問答申です。労働福祉事業分を一律にするというのはその結 果であって、そこだけを取り出して決めるということは、ごく最近は知りませんが、し ばらく前はそのようなことはしていないです。ただ、説明資料には業務災害分と通災分 と労働福祉事業と内訳は書いてあるのです。この63年のときはこれからは一律でやると いうことの諮問がなされていて、1.5厘にするという諮問がなされているのですか。 ○管理課長  その当時の料率設定についての諮問がなされて、その中での事務局側の説明の中で、 今回からこういう考え方で全業種について計算したという説明を確かしていたと思うの です。ですから、このことを取り出して諮問答申がされたということではなくて、その 結果としての料率設定にあたって、その部分で答申をいただいた中でこういう考え方を 了解いただいたということです。 ○高梨委員  資料の文字だけ見れば、労災保険審議会において、これこれとすることが認められた と書いてあるものですから、そこのところが諮問答申という形で審議会の意思を聞いた ということなのかどうかということで聞いてみたのです。説明ということであれば、そ れは最近はそうしていたと思いますので、それは分かります。 ○岡村委員  それに関連してですが、労働福祉事業のあり方というか、労働福祉事業そのものにつ いては意義は非常にあると思いますが、そのあり方が当時は昭和63年ですから、もう 15、6年経ていると思いますので、随分内容も社会環境も経済環境も変わってきたと思 うのです。それらを踏まえて、料率を1,000分の1.5とするといったことが、現在、ある いはこれから将来にまで固定されていくのか、それともそれをもう少し事業のあり方も 含めて洗い直すなり、見直すなりの動きが労災審議会にあるのかどうか、ということに ついてはいかがでしょうか。 ○岩村座長  そこはとりあえず最近の労働福祉事業についての審議会の議論をご紹介いただいて、 考え方としてどうなっているかということと、例えば労災病院の整理統合の話など、そ ういったことをちょっとご紹介いただきたいと思います。 ○管理課長  前回の第1回のときに、いろいろ規制改革会議等の背景についてご説明しましたが、 規制改革会議の答申の中でもこの労働福祉事業については逐次見直しをするという指摘 がされているわけです。別に具体的にいつ幾日までに何をやれということではなく、逐 次見直しという形になっていますので、我々としてもそこは今後、いまやっている労働 福祉事業について絶えず見直していかなければいけないことになるだろうと思います。  ただ近年の話ですと、未払賃金の立替払事業というのがありますが、最近はずっと景 気が悪くて、それに要する経費が膨らんでいたことがあり、それとの関係の中で、この 労働福祉事業に当てるべき金額をどうするかということが審議会の中でも議論になった ことがあります。そういったところで、今後とも我々としては、いまのままでずっと未 来永劫いくべきだとは思っていませんが、ただ、これを具体的にどうするかというの は、座長のお話にもありましたように、労災病院の見直しの話など、いろいろなそれぞ れの事業について点検を加えながら、見ていくべきことになると思います。また、その 政策事業との兼合いの中で、全体の規模がどのくらいでいいのかということになってい くと思います。そこはむしろ審議会のほうで全体の料率なり、毎年の予算の説明の中 で、ご議論いただければと思っています。 ○岩村座長  私もいつやったか記憶がないのですが、少なくとも私が労災保険の部会の委員になっ てから、労働福祉事業の見直しについての小委員会を設置して議論した、ということが あり、また、いま管理課長がご説明になったように、制度全体の動きの中で労働福祉事 業自体の見直しが行われているところなのです。それで、この委員会の役割としては、 労災保険料率そのもののあり方というのを検討するということになるので、労働福祉事 業のあり方という話を、この委員会の検討事項の外に出てしまって、部会のほうで、親 子の関係にあるかは微妙なのですが、労災保険の部会のほうで労働福祉事業の中身自体 についての検討をして、それが多分1,000分の1.5が妥当かどうかという形で、今後跳ね 返ってくるということはあると思います。ただ、いま管理課長の説明にありましたよう に、このところ労働福祉事業の中でも、未払賃金の確保の支払い事業をやっていたりし て、その支出が非常に膨らんでいるという状況にあって、そのこと自体がいいかどうか というのは、また別途議論があるかもしれませんが、なかなか他の事業議論を仮にやっ て、整理をしてもそちらが膨らむという、そういうような状況にはあります。 ○高梨委員  いまの座長のお話だと、私は前回出ていないから分かりませんが、この検討会におい ては、労働福祉事業の料率のあり方について、検討するのは対象外ということで整理さ れているのですね。1,000分の1.5ということの議論はこの場ではしない。正式な審議会 があるので、そちらですることであって、この検討会ではしないということになってい るのですか。そうであれば、それはそれで。 ○岩村座長  前回高梨委員がご欠席だったので、また後ほど伺おうと思っていたのですが、前回高 梨委員のご提出になった8点のご意見については、前回では特に議論をしていないので す。いま、たまたま労働福祉事業の話が出たものですから、これが高梨委員が前回お出 しになった意見書の第7点に当たるところなのですが、労働福祉事業の保険料率をどう するかという問題というのは、結局のところ労働福祉事業自体をどうするかという議論 と切り離すわけにもいかないということもあって、この部分については今回はこの検討 会の議論の対象からは外させていただきたいというのが座長としての考えです。 ○高梨委員  それであれば、私が出した部分というのは対象外の意見を出したということですね。 ○岩村座長  対象外というか、そのように私としては整理させていただいてと思います。多分、全 業種一律1,000分の1.5をどうするかということになると、労働福祉事業自体をどうする かという議論と切り離してはできないという気がします。そうすると、この検討会が本 来やらなくてはならないことと、かなり遠くなってしまうので、今回はこの検討会の枠 の中での議論というのは、申し訳ないけれどもできないかなと思っている次第です。 ○高梨委員  よく分からないのですが、座長の整理がそうであればそうなのでしょうけれども、要 するに総合規制改革会議で問題になったのは、災害防止のインセンティブを与えるとい う料率の設定があるので検討しろということで、それの受皿としたときに、業務災害の 関係は当然出てくるわけですが、それ以外の労働福祉事業の関係なり、あるいは通勤災 害関係について、それはもう対象外と整理するのか、検討の上、いままでどおりでいい というならその結論だし、見直すべきだというなら、見直すべきだということなので す。そうすると、通災や二次検診のほうの料率設定の問題はこの検討会の対象になって いるのですか。 ○岩村座長  通災とか二次健康診断はお考えいただいてもいいとは思いますが、その辺が事業主の 災害防止努力とどの程度関係しているのか、そこも多分一段議論が必要なのかという気 はします。労働福祉事業と事業主の災害防止努力との関係がどの程度あるのかというの は、ちょっとどうかという気はしますが、少なくとも特別支給金は入るのです。保険料 の中に計算で返ってきますので、その部分は当然かかわってくると思います。それ以外 のところで、果たして個々の事業主の災害防止努力と労働福祉事業というのが、一体ど の程度かかわりを有するかというと、そこはどうかなという気はしています。もし、高 梨委員が別途ご意見があれば、それはまたお出しいただければと思います。 ○高梨委員  議論の対象になっているのであれば申し上げますが、対象にならないよというのを申 し上げても、それは場違いですので。 ○岩村座長  私のほうの整理としてそのように考えているのですが、そうじゃなくて、むしろ対象 に含めるべきだというのであれば、その辺はまたご意見があればお出しいただければと 思います。 ○高梨委員  私は意見があるから前回意見として出していたのです。 ○岩村座長  ただ、問題は個別の事業主なり、業種の事業主集団、そういう災害防止努力というも のと、労働福祉事業の特に特支金を除いた部分とがリンクするのかどうかです。もし、 一律ではなくて、例えば業種別にするのだということになると、多分そこの議論だと思 います。 ○高梨委員  いまその問題について、ただちには申し上げませんが、私は労働福祉事業の中には、 少なくとも検討の対象にしたほうがいい事業もあるのではないかと思います。ただ、結 論はまだ整理していません。先ほども出ていた立替払いの制度や職業訓練校の設置のお 金、労働時間の短縮、中央災害防止協会に対するお金などいろいろなものがあるわけで す。そういうものがインセンティブとの関係でどういうものがあるかというと、私もほ とんどないだろうと思っているのです。しかし、いろいろな事業をやっているわけで、 特別介護施設もあるわけです。もし、災害が発生しなければ特別介護施設に入らないで 済むということだってあるわけです。ただ金額的にどれくらいかという問題はもちろん あるわけです。災害防止と絡む部分の労働福祉事業の中には、若干あるのかなというこ とで、その辺の取り扱いをどうするかというのは、議論の対象にしてほしいなとは思っ ています。 ○岩村座長  そこはまた考えさせていただきたいと思います。ほかはいかがでしょうか。 ○小畑委員  資料1−7ですが、平成15年度の労災保険率の改定の方針の2番目に、「事業主の保 険料負担の大きな変動を避けるため、料率の改定幅は、平成13年度改定と同様に±4/ 1,000を上限とした」というように書いています。これは平成13年度の改定を参考にさ れたということで、特にこういう決め方をするということは決まっていなくて、多分、 大体前回に倣うような形でこの数字が出てきていると考えてよろしいのでしょうか。 ○数理室長  以前においては1,000分の4を超えるような改定もされたような状況もありますが、 15年度においては13年度と同じような形でもう1回入れさせていただいたというところ です。 ○岩村座長  これは下がる分には誰も文句は言わないけれども、むしろ上がるのが極端にボンと上 がるのを天井をかけているというか、バランスで下がるのを天井というか、床を付けて いるということですね。  多分、私の知る限りでは、今日の資料の1−8、横長のものというのは、あまり今ま で出てきたことのない資料だと思うのです。とりわけ経済学、保険学の立場から、何か この資料をご覧になって、お気付きのところ等がありましたら、お教えいただければと 思います。 ○岡村委員  そうですね、この表と次の資料1−9との兼合いなのですが、料率の引下げ幅に、か なり差があるようですが、それと設定料率と算定料率の格差との関係でやっていると思 うのですが、一定の基本的なルールみたいなものがそこにあるのでしょうか。そこであ る程度調整して、機械的にやっているわけではなくて、何かルールに基づいて勘案しな がら一応公平さを保つために、機械的にという事がとられているのでしょうか。 ○数理室長  一応公平性を保つためということもあり、今回は算定料率がこういった形で減少した ということもあるのでそれに基づいて、半分は機械的なところはありますが、それで改 定をしたという状況です。 ○岡村委員  この表の見方がいまひとつ理解が百パーセントできないところがあるので、ご面倒だ とは思いますが、もう一度ご説明いただけないでしょうか。何かを例にとっていただい て結構なのですが、お願いします。 ○数理室長  例えば上から2つ目の海面漁業について設定料率と算定料率の環境はこういった関係 で、右に算定料率が−3.7下がったということでしたので、料率の下げ幅は−4とほぼ 四捨五入のような形で−4としたところです。  次の定置網等については算定料率が高いような状況ですので、本来は引上げないとい けないのかもしれませんが、全体的に算定料率が下がっているということがあるので、 −4程度でしたから、その半分程度について引き下げたということです。ですから、そ のように算定料率が設定料率より高いところについては、下げ幅を半分程度に。これは 業種の事業主の災害防止のインセンティブを高めるという、ある程度算定料率の数字が 下がったから、その分を考慮して下げましょうということで下げたということがありま す。ただ、算定料率のほうが設定料率より高いような状況においては、全部はちょっと 見る場合にはどうかということで、その半分程度ということにしたということです。 ○岡村委員  これは特定の業種の産業内に置かれている状況や経済状況等を勘案して、単純に機械 的にやっているわけではないと解釈してよろしいのでしょうか。 ○数理室長  ある程度業種の動向など、例えば産業機構として減少しているようなところですと、 単純にやると、下手をすると料率が上がってしまいます。今回は下がっていますが非常 に高い料率になっているようなところもあり、それにおける災害防止意欲を高める必要 性もありますので、それでいま引下げをしたところです。ですから、ある程度の業種に よっては産業の動向もある程度考慮している面もあります。 ○岡村委員  上がり方が少ない部分についてはそれほど不満というか、クレームは出ないと思うの です。下がり幅が少なくなる場合は業種の中でも事業の規模によって負担能力の問題も ありますので、ある程度公平性のバランスが崩れる可能性が出てこないとも限らないで すから、その点はいかがでしょうか。 ○数理室長  規模の大小による問題については個別メリット制で一応カバーをしていると思ってい ます。一般的に大企業と中小を比べると、中小のほうが割合として災害の発生状況とし ては高いということもあるようですので、それはメリット制によって、ある程度規模以 上についてメリット制の適用になっています。そこで一応カバーしている。業種別の差 異というのは業種別にやはり明らかに災害の発生度合い、割合から、別の言い方をする と業種別メリットという言い方をしていますが、そこである程度カバーして、同じ業種 の中だと大企業、中小企業の差については、個別メリットとしてカバーしているという 考え方で整理をしています。 ○岩村座長  基本的なことを聞き逃がしたのかもしれませんが、資料1−9の算定料率というの は、結局、資料8のものから引っ張ってきているのですね。それでよく分からないの が、設定料率というのが今の15年度改定によって決まっている料率ですよね。今日のご 説明のところでは、算定料率の出し方は出てきているのですが、設定料率がどう決まる のかのご説明がなかったと思います。 ○数理室長  それは1−7です。前回の算定料率、設定料率との関係等は、新しく計算された算定 料率、設定料率の関係で。 ○岩村座長  それは分かるのですが、例えば設定料率と算定料率の関係というのはどのように決ま ってくるのかというご説明がないと思います。例えば資料1−9を見ると、海面漁業の 算定料率が39.0で設定料率が52.0になっています。13年度改定との関係での説明という のはいただいているのですが、10年度の料率で算定料率、設定料率というのも当然ある わけですが、算定料率から設定料率に至るプロセスというのはどういうものなのかとい うことです。 ○数理室長  13年度の場合12年度改定とか、ずっと前の7年度改定というのがありますが、その改 定の流れの中で算定料率、設定料率の関係で、相対的というのが適切なのかどうかは分 かりませんが、その改定の流れでいまは格差が開いているような状況はありますが、例 えば料率改正のときに設定料率を引き上げるような局面で全部を引き上げるのではなく て、ある程度上げ幅を抑制して改定する。過去からの改定の要因が積み重なるような形 で設定料率、算定料率の関係が出てきたと思います。 ○岩村座長  そうすると、いま岡村委員が質問されたことと多分関係してくるのかと思うのです が、つまり算定料率を出す段階で短期は3年超、長期は7年超のところで業種間料率調 整をやっているということで、算定料率が出てきているのですが、そこからさらに設定 料率に至る段階で過去の経緯とかそういったことがあって、こういうようになっている ということなのですか。そこがいま説明を聞いていてもいまいち分からないのです。 ○労災補償部長  15年度改定をやる前提である13年度のときの状況を見ても、算定料率と設定料率との 間に、業種によってはこんなに差があったり、ほとんどなかったり、この差がどうして 出てきたのか。これは決して算定の仕方がどうという話ではなく、過去の長い何回かの 改定の歴史の中で、本来算定上これだけの料率にすべきところを業種が構造変化の中で どんどん小さくなっていって、とても計算されたとおりの料率をかけて設定したので は、業種としてやり切れないという、おそらく長い歴史の中での積み重ねが差として今 日まできている。今日まできているこの差を前提に、改めて算定上の料率を計算してみ ると、これだけ下がっている。もちろん算定上の料率がこれだけ下がっているというの は、こんなに災害防止努力をした結果でしょう。その努力は新しく15年度を設定する際 の料率の設定にも、それなりに反映させてやりましょう。本来これだけの差があるのだ から、もし、計算上の設定料率がずっと高い業種だったら、そんなものは下げないで、 ずっと下がるまで待っていればいいではないかという議論になるかもしれませんが、そ れはそうではない、という考え方で、今日まできている。それがけしからんと言われれ ばこれまた別な話です。 ○倉田委員  その点についてですが、資料1−7の説明を論理的に理解していくと、前回の算定料 率と今回の算定料率との差を比較して、設定料率のほうも調整するのだという説明だと 思います。その場合に、設定料率というのを±4の幅で押さえるということによって、 保険料の安定を図るという趣旨はよく理解できるのです。そうすると、この作業を平成 元年まで遡って、各業種の算定料率と設定料率の違いみたいなものを、ずっと表にして 仮に出していったとしますね。それでも、最初の段階で設定料率と算定料率の関係がな ぜこうなっているのかという部分が、説明として求められると思うのです。いま座長及 び岡村委員がご指摘になったのはその点だろうかと思うのですが、その点に関しての説 明を頂戴したと理解してよろしいのでしょうか。 ○岩村座長  逆に言うと算定料率と設定料率の乖離はいつからあったのか。いまの倉田委員のどう して生まれたのかという話は、多分部長がご説明になったとおりだろうと思うし、それ が1,000分の4の上限の幅の中での調整といういろいろなファクターが重なった結果と して、歴史的にこういう設定料率ができているのだと思うのです。 ○労災補償部長  労災保険が発足してから、基本的にはずっとあるのではないかと思います。 ○高梨委員  基準法上の給付と労災保険法上の給付と、長期給付というか、年金を入れたことによ って、だいぶ違ってきているのだろうと思います。障害年金にしても、遺族年金にして も、当初よりは長生きしていることもあって、いろいろな事情があると思うのです。15 年度の改定について、とやかく言うつもりはありませんが、これからの方向としては設 定料率と算定料率とが縮んでいくような方向でやるのが望ましいと私は思います。上限 が1,000分の4ということで上下するということですが、前回辺りでは上下ではなく、 下のほうだけが効いてくる形になっているわけです。それではインセンティブが少なく なるということがあるので、あまりにもジェットコースターみたいになる恐れがあると いう心配なのかもしれませんが、それは災害が多くなれば、業界全体が保険料率が高く なるということで、ある程度はやむを得ない。ただ、一挙にそれを解消するかどうかは いろいろ工夫をしていかないと、それぞれの業界がいままで大体労災保険はこれくらい で済むと思っていたのが、突然あるときから大変料率が高くなると、非常にコストの圧 縮をしている中で影響が大きいということもあるでしょう。方向性としては設定料率と 算定料率をできるだけ小さくしていく方向で、上限も果たして1,000分の4でいいのか どうかというと、それよりはもっと幅を大きくする方向で考えていくべきかと思いま す。  その算定料率が出てくるための計算のところなのですが、3年で切っているわけで す。これは基準法上の給付の関係ともかかわってくるわけですが、3年で区分をしてい るということは、3年までの給付の分を計算しているということですよね。基準法上で いけば、3年間ずっと療養していて、そこで1,200日分の打ち切りということは事業主 の負担でやるというのが療養の打ち切りということで、それは事業主分になるわけです が、ここの3年というのは、まさに機械的に3年で切ってしまって、事業主が基準法上 であれば打切補償をする部分というのは、(2)のところはここの中に入っていないとい う理解でよろしいのでしょうか。 ○数理室長  一応計算は、給付実績を基にしてやっていますので、過去3年間の、例えば今回は 11、12、13年度のデータでやりましたので、13年度であれば過去13、12、11年度と、10 年度は半分で、一応3年半分です。13年度であれば年度当初の災害の方、年度末の災害 の方がおられますので、丸3年で切ってしまうと、2年半ぐらいになる方もおられます ので、一応4年前の半分も入れる形で機械的に切っている、給付データを基に分けてい る状況です。 ○高梨委員  基準法であれば打切補償は1,200日分ですから、大体3年ぐらいあるわけです。そう すると、3年間の統計ではなく、5年前から療養給付が始まっている人の分は、3年分 で切って計算しているということになりますね。 ○岩村座長  3年で分けているわけだからそういうことですね。例えば平成10年に災害に遭って療 養を開始した人について言えば、いまはもう計算上は一律のほうに回っているというこ とです。 ○高梨委員  前回の資料にこだわるつもりはありませんが、1つの考え方として基準法上の給付が 課せられている部分というのは、自分の産業で負担をしていくけれども、それを上回っ ている部分は、なかなかそこまでは自分の産業で負担するのはきついので、全業種で負 担をしていくという考え方は、1つの整理かと思います。先ほどの話を聞いていて、3 年ということで切っている理由のところが3つほど書いてありますが、そこは必ずしも 3年というのが、3年を引き出すための合理性なのかもしれませんが、業種間調整をす るのを区分する場合の理由になっているかどうかという点があるのです。どうもそこの ところが私自身は短期について(1)が小さく出ているかなと思う。ところが長期のほう は全部打ち切りは計算して、3年ぐらいということで足しているわけです。それで7年 ということでいっているので、そこのところは基準法上の給付とリンクしているという 大ざっぱな括りみたいな整合性はあるかと思います。 ○岩村座長  私も正確に把握しているかどうか分かりませんが、整理としては打切補償はこれでい くと傷病が治らない場合は3年で打ち切っていい。その代わり1,200日分の打切補償を 行いなさい。その1,200日分の打切補償というのは、おそらく傷病補償年金に転嫁して いるのではないでしょうか。だから、長期補償のほうに1,200日というのはどちらかと いうとかかっているのです。もともと労基法は障害補償しかないので、傷病補償は持っ ていませんでしたから、私もよく分からないのですが、傷病補償年金が出ると打切補償 をしたこととみなすのです。だから、そこでリンクしているのだと思うのです。そうい う意味で打切補償の1,200日分というのを、長期のほうに入れるというのは、一定の整 合性があると思うのです。違いますか。 ○数理室長補佐  そう理解しています。 ○岩村座長  そういうことですね。 ○数理室長補佐  基準法上は基本的にはもう一時金の世界ですから、それを我々の今回の考えの中で、 長期給付というのを基準法の一時金とイコールにセッティングして、3年とか7年とい うのが考え方として出てきたのではないかと私は理解しています。 ○岩村座長  多分打ち切りのところはそういう理解だと思うのです。だから3年で打ち切ってしま っていいということで、多分短期のところは考えていて、1,200日の打切補償というの は、おそらく高梨委員がおっしゃったように、初めて年金を入れたのが長期の傷病のと ころですから、そのときの関係で長期のほうに入れて整理しているのではないか、とい うのが私の推測です。当たっているかどうか分かりませんが。  そこはまたお考えいただくとして、ほかにはよろしゅうございますか。 ○倉田委員  補償の点についてですが、医療保険とのアナロジーが必ずしも適切ではないことを前 提にしてお話するのですが、医療保険の場合、とりわけ健康保険の被用者保険の場合に は応能負担が保険料算定原則とされています。ですが、応能というのも非常に形式的な 説明で、標準報酬に定率を掛けるということで、つまりもらった賃金に応じて保険料の 額が上がったり下がったりするという点をとらえて、応能といっているだけなのです。  逆に国民健康保険の場合は、応益部分と応能部分の2つをミックスしてあります。例 えば、応益部分というのは保険から得られる受益に対して保険料を設定する部分という ことで、世帯内の被保険者の頭割りとか、世帯数の頭割りというのをやって、そのほか に各被保険者の負担能力、所得と資産に応じた割り方をするという決め方をしていま す。  医療保険も基本的には損害保険の一種だと保険学上は分析されていますから、病気に なる確率の高い人は保険から受ける受益が非常に高いので、原則としては保険料が上が る。つまり、保険による受益との関係で保険料が上がると考えるのです。ところがそう いう考え方をすると、高齢者や子供の保険料が高くなってきて、結局それでは現実にう まく合わなくなるというので、どこかで応能的なもので修正しなければいけないという 考え方を普通医療保険では採っています。  労災保険の場合は一応労働基準法上の災害補償責任を担保する責任保険としてスター トしていますから、基本的には事故が起きた責任との関係で保険料負担を考えます。で すから、原則は応益的に考えるのだろうと思いますが、その辺りを貫徹していくことに 対する調整として、先ほどの設定料率と算定料率との乖離というのが出てくるのかなと 考えているのですが、それは理解としては間違っていないですか。  つまり、算定料率というのは、この労災保険という制度から、各業種が受けた受益を ベースに、保険料計算をしていると私は理解しています。そうすると、たくさん事故が あって、たくさん給付者がいる業種については、その労災保険から利益をたくさん受け ているので、それに応じた保険料を取るという格好になっていて、算定料率の計算があ るわけです。ところが、それを貫徹してしまうと、業種ごとの負担能力を超える可能性 が出てくるということで、部分的にそれは修正されているという整理が可能かどうかと いう点についてはいかがでしょうか。 ○労災補償部長  算定料率の算定のやり方の中に、いま言われた各業種が保険から受けている受益に応 じた負担をもしやってしまったら、極めて高い負担をしなければならない業種が出てく ることになる。そこは算定料率を算定するプロセスの中でもある程度業種間すべての業 種でご負担いただく部分と、受益を受けた業種で負担をいただく部分と、2つに分けて いるのです。そのことと、もう1つは、それで算定された料率と、実際に保険料率とし て設定する料率との間では、またもうワンステップそれに差が出てくる。このワンステ ップのこの最後の差をどう考えるかというのはなかなか難しいところですが、そういう 面も確かにあると思うのです。そうすると、非常に平たく言えば二重に受益負担の原則 を修正していることになるのだろうと思うのです。 ○岩村座長  よく分からないけれども、おそらく推測としてあり得るのは、昔は大規模災害が多か ったから、ある災害でボーンといく。そうすると、料率がボーンと跳ね上がるので、そ れをどこかで調整する。その料率を計算する際に、算定と設定のところでもやっていた のかなというのが1つあり得る推測です。 ○労災補償部長  確かに建設事業や鉱山は一旦起きてしまうと、極めて多数の死者が発生するようなケ ースがいっぱいありますので、先ほどの業種間調整をやって算定してみたところで、や はりすごい料率になってしまう。それをいきなり設定できるかという点は確かにあった と思います。 ○岩村座長  それが1つの理由かと推測はできますね。 ○倉田委員  それに対して私のアイディアなのですが、医療保険の場合、いま部長がおっしゃった ような形で一旦割り付けたものを、被保険者に課すわけですが、一時的に大黒柱が病気 になって、働けなくなったとか、災害にぶち当たったというときには、さらに免除のシ ステムがあって、割付けの段階での応能の問題と、割付け後の応能の問題という形で、 医療保険の世界では2段階の考え方が一応あります。ただ、ここのところは現在介護保 険料も含めて議論の最中なのですが、後者については一時的な現象に限るという説明が なされていて、恒常的にはならないという考え方が非常に有力です。ですから、この説 明がこの問題に使えるかどうかはなかなか難しいのですが、あくまでも参考までに申し 上げておきます。 ○高梨委員  過去債務分についていろいろ計算して1000分の0.1になっているのですが、しばらく 前に比べて、積立て不足分が非常に少なくなってきています。全体からしても3%ぐら いが積立て不足になってきたと思うのです。日本の産業がこれからどんどん小さくなる のかならないのかというと、少なくともそうならないことを期待しているわけですが、 ここまで積み上がってくれば、わざわざ取り出して過去債務分として埋めるという、充 足賦課ということを続けることはしなくて、永久償却ということで先送りしても、日本 の産業がどんどん小さくなっていけば話は別ですが、著しく急激に産業は小さくならな い。人口減は1億人になるとか、100年後には5,000万人になるということはあるにし ろ、ここまでくれば過去債務分は取らないという選択肢も検討していいのではないかと 思います。これは意見ですが。 ○労災補償部長  今回の改定の際に計算してみたら、1,000分の0.1で、若干まだ積立て不足がある。こ れはあくまでも充足賦課方式に移行した際に、現にすでに裁定された年金受給者方にか かわる話ですので、新規に入ってくる話ではありません。もう、この方たちがずっと生 きている間の話で、結局将来これがどうなるかというので大きく考えられるのは、残存 率はありますが、それがそんなに大きく変わるとは思えません。そうすると、どれくら い賃金が上がるのか、スライド率がどれくらい上がるのかによってだいぶ変わってき て、だんだんネグリジブルになってくることは確かだと思います。次回の改定の際にど うなるか、もう1回やってみないと分かりませんが、だいぶ小さく、ほとんどゼロに近 くなることが想定されます。 ○岩村座長  ちょうど賃金が下がっている状況に入ってしまったということもありますね。  もう時間が押しているので、特にあれば別ですが、前回高梨委員が出した意見の中の データの提供要求については出せるものはご用意いただくということで事務局にお話は いただいています。いちばん最後の第8項で、検討項目について、幅広く全国的な業種 団体に対して意見の提出を求め、これらを踏まえて検討会での議論を進めることが望ま れるというご要望があるのですが、これとの関係で1つの問題は、当検討会に求められ ているのが、専門的な見地からの検討が求められていることが1点、当検討会の求めら れている検討事項との整合性というのでこの第8項目をどう考えるかということなので す。もう1点は仮にこうした形で意見の提出を求めるとして、全国的な業種団体をどの ような基準で選定するかがなかなか難しいかという気がしています。その辺は何か高梨 委員でお考えがおありかどうかを伺っておければと思いますが、いかがでしょうか。 ○高梨委員  いろいろな方法があるだろうと思います。役所で把握している全国的な団体につい て、大ざっぱな形でもいいと思うのですが、意見があるところはどうぞという形にする というやり方もある。そういう形ではなくて、呼びかけて回答を求めるという形ではな く、こういう検討会が始まっているのでご意見があればどうぞ出してくださいというこ とで、意見があるところが手紙なりメールなりで出してくるという方法もあると思って います。できるだけ我々だけで検討するのではなく、意見のあるところの意見はそれも 踏まえた上で検討を進めたということにした方がいいということで、この意見を出させ ていただきました。 ○岩村座長  ただ、他方で、これは料率の問題なのですが、最終的には労災保険をどう考えるかと いうことにも関係してくるので、もし業種団体の意見を聞くという話になると、労働組 合はどうするのかという話にもなるような気もするのです。ですから、ここは事務局と 私のほうで相談させていただき、どのような取扱いをするかというのは考えさせていた だきたいと思います。 ○高梨委員  今回の料率設定は、負担のことなのです。給付のことは我々の対象外です。労働団体 やいろいろな団体があるのでしょうけれども、それは給付のことについてはさまざまな ご意見を持っている可能性はあるかと思います。今回の我々の検討は負担のことですの で、事業主の団体でも足りるかということで私は書いていますが、そこはご検討いただ ければと思います。 ○岩村座長  それではほぼ予定していた時間に達しているのですが、何かほかに今日の議論に関連 して、ご発言はありますでしょうか。よろしゅうございますか。それでは本日の議論は ここまでとさせていただきます。今日いろいろなご指摘等もありまして、まだ、十分に 議論を尽くしたというわけではないと思いますが、開催の回数や時間の制限もあります ので、私の感じでは労災保険率そのものについての議論は一応今日はここまでとさせて いただいて、後日、ほかのことをやって一回りしたところで、もう一度労災保険率につ いて、検討させていただきたいと思っております。それでよろしゅうございましょう か。特にご異存がなければそのようにさせていただくことにして、次回の第3回の検討 会についてどういう議論をするかというテーマについて、事務局からご提案があればお 願いします。 ○数理室長  次回については「メリット制」についてご検討いただきたいと思います。 ○岩村座長  次回はそういうことで「メリット制」について議論をいたしましょう。続いて次回の 日程について事務局からお願いします。 ○数理室長  先生方のご都合を調整した結果、第3回は6月14日(月)4時半から6時半に開催さ せていただければと思います。場所については後日ご連絡させていただきたいと思いま すがいかがでしょうか。 ○岩村座長  それでは次回は6月14日午後4時半から6時半までということで、開催場所について は追って事務局からご連絡をいただくということです。それでは本日の検討会はこれで 終了いたします。どうもお忙しい中をありがとうございました。 照会先 労働基準局労災補償部労災管理課労災保険財政数理室 電話:03−5253−1111(代表) (内線5454,5455)