04/05/27 非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会      第4回議事録   第4回非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会                        日時 平成16年5月27日(木)                           13:00〜                        場所 厚生労働省省議室 ○宮本指導課長補佐  ただいまから、「第4回非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用の あり方検討会」を開催します。委員の皆様には大変お忙しい中ご出席を賜り、誠にあり がとうございます。まず本日の出欠ですが、野見山委員、古橋委員、丸山委員から、そ れぞれ所用のため欠席というご連絡をいただいております。岩尾局長も、本日は欠席と いうことでお願いします。また今回の検討会から、医師会代表の羽生田俊委員に代わ り、雪下國雄委員が就任されておりますので、ご紹介申し上げます。  それでは島崎座長に、議事進行をお願いします。 ○島崎座長  本日はお忙しい中お集まりいただき、本当にありがとうございます。本日の議事は、 報告書骨子(案)の検討についてです。では事務局から資料の確認をお願いできます か。 ○宮本指導課長補佐  お配りしております資料は、「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の 使用のあり方検討会報告書骨子(案)」です。併せて委員の皆様の机上には、報告書骨 子(案)にかかわる参考文献を配付しております。 ○島崎座長  では早速、議事に入りたいと思います。議事次第1、「検討会報告書骨子(案)の検 討について」ということで、事務局より「非医療従事者による自動体外式除細動器(A ED)の使用のあり方検討会報告書骨子(案)」の説明をお願いします。 ○宮本指導課長補佐  これまでの3回の検討会のご議論と、ヒアリングの内容を踏まえ、事務局として報告 書骨子(案)を作成いたしました。委員の皆様に事前に配付した際、字句の修正等につ いてのご意見をいただきましたので、そういったものを反映させた内容となっておりま す。基本的に全体の内容は変わっておりませんが、そういった点で一部変更があった所 については、ご留意いただきたいと思います。内容は皆様、すでにお目通しいただいて いると存じますが、今一度確認として私から、全体の流れを申し上げたいと思います。  全体として、5つのパートに分かれております。第1の「はじめに」には、3つの内 容が含まれております。1つ目が「病院外心停止の発生と医療の状況」ということで、 現在の救急医療対策の状況と心疾患の発生状況、不整脈の原因となるような疾患、電気 的除細動の効果といった内容になっています。  2つ目が「自動体外式除細動器を用いた除細動の医行為該当性」ということで、安全 性等のAEDの説明、使い方によっては危険を及ぼす可能性があるということを基に、 医行為として考えられること、救急救命士に関連して、救急救命士の業務拡大の内容に ついても紹介しております。  3つ目が「非医療従事者によるAEDの使用に関するこれまでの政府の対応」という ことで、構造改革特別区推進本部の決定として、皆様ご承知の4つの条件を基に、それ らを満たす場合は医師法違反とならないものとするという方針について、改めて確認し ております。  最後に、このような状況を踏まえ、本検討会が設置され必要な検討を行い、その考え 方を取りまとめたものであるというまとめ方をしております。  5つのパートの2つ目は、「非医療従事者が自動体外式除細動器を使用する条件につ いての考え方」ということで、3つにまとめております。1つ目が「非医療従事者の参 画による救命の体制強化」ということで、救命の連鎖をその出発点に置いて、より多く の人々の参画により強化していく、そのような参画を図っていくことが重要であるとい うことを明示しております。  2つ目が「傷病者の安全の確保」ということで、時間を争う救急蘇生の直面にあって も、傷病者の安全を確保することが重要であるということを示しております。  3つ目が、既にまとめられているところですが、これまでの法的な整理の検討の中 で、4つの条件を満たした場合においては、一定の頻度で心停止者に対し、応急の対応 を行うことがあらかじめ想定されるものについては、医師法第17条との関係で実施でき るということと、トレーニングを受けていない一般市民についても、反復継続性が認め られず、医師法違反にはならないものと考えられるといった内容を、改めて明示してお ります。  また、そういった状況を受けての基本的な考え方として、特に一般者において法違反 に問われない、損害賠償責任を追求されないという、いわば積極的な安心感を与えるも のに留まらず、医学的知識を含め、救命についての理解に立って、自信を持って救命に 積極的に取り組むことを促すものであるべきというようにまとめております。  3つ目のパートは、「非医療従事者の自動体外式除細動器の使用に当たっての条件整 備」ということで、4つの条件それぞれに対する考え方をまとめております。基本的な 考え方としては、「政府の構造改革特別区域本部決定の4条件について、改めて検討し たところ、概ね妥当であり、これらに比肩するまとまりを持った条件で追加すべきもの はない」という結論に基づき、1つ目の条件である「医師等による速やかな対応を得る ことが困難であること」については、医師の対応を得るように努めることとしつつも、 迅速に開始されるよう務めることが適切であるとしております。  2つ目の「対象者の意識と呼吸がないことの確認について」は、可能性は低いとはい え、そういった確認が必要である、また、そういうことが出来るための方法が、講習の 内容に含まれているべきであるとまとめております。  3つ目の「自動体外式除細動器の使用に関する講習について」は、基本的な考え方と して、救命処置を向上させるためには基本的心肺蘇生処置、迅速な電気的除細動器のそ れぞれが有効であることが明らかになっており、AEDの使用に当たって意識や呼吸の 確認を的確に行う必要がある。それらのことからAEDの使用に関する講習において は、基本的心肺蘇生処置を含むことが適切である。ただし基本的心肺蘇生処置は、一旦 習得してもその維持が容易ではないことなど、難しい点もあること、AEDの使用だけ でも一定の効果があることが認められていることから、基本的心肺蘇生処置の習得の必 要性に力点を置きすぎることによって、AEDの普及が阻害され、国民の参加の意欲を 損なうことのないように留意すべき。こういうことで、その考え方に基づき、以下のと おり具体化しております。  具体的には(1)から(5)まであります。(1)が「講習の内容及び時間数」とい うことで、一連の流れを理解するということと、その中には基本的心肺蘇生処置を含む ということがあります。これらを盛り込みますと、概ね3時間程度で必要な内容を盛り 込み、実施が可能であるということで、いちばん最後に付けている別紙程度のものを履 修することが適当です。  「講師」は、関連する基本的心肺蘇生処置及び自動体外式除細動器の使用に関する十 分な知識・経験を有する有資格者が講師を務めることが望ましい、そのほかにこれまで の実績を踏まえ、AEDの使用に関する教授法を含む指導教育プログラムを終了した者 も講師として活用すべきである、という内容でまとめております。  (3)が「多様な実施主体を通じての講習の質の確保」ということで、さまざまな主 体において、対象者の特性を踏まえた多様な講習が実施されることが期待されるとして おります。  (4)が「講習対象者の活動領域等に応じた講習内容の創意工夫」で、それぞれの活 動領域の特性や、実施の可能性の高さなどに応じた、適切な内容を盛り込んだ講習を行 うことが期待されるとしております。  (5)が「再受講の機会」で、一定の時間の経過とともに、再講習の機会が確保され ることが望ましい、特に業務の中で活動される者については、一定の間隔(2年から3 年間隔)の中での定期的な再講習により、その知識と技術を拡充していくことが期待さ れるとしております。  4つ目の「自動体外式除細動器について」は、誤使用の可能性がなく、簡便な操作で 使用でき、誤使用を防止する観点から、手動での除細動が実施できないものであること が求められる、また、そういった条件を満たすものであることが分かるような表示がさ れることが期待されるとまとめております。そして、こういった管理については、設置 者が確認をもって行うことが必要であるとしております。  4つ目のパートは、「国民の理解の促進と広く社会に普及するための対応」というこ とで、この中に3つの内容を含めております。1つ目が「積極的な普及広報活動の実施 」ということで、国や地方公共団体、関連団体・学会など様々な主体が救命維持の向上 を目指すという基本的な考え方を示し、国民の関心と協力への意欲を高めるよう取り組 むことが必要としております。  2つ目が、「自動体外式除細動器への国民のアクセス向上のための関係者の対応」 で、設置している建物について、そのことを分かりやすくするマークを入口に表示する とか、AEDの存在場所を標識によって明示することなど、様々な工夫があると考えら れます。地方公共団体においては、公共施設の一覧や、公的施設を分かりやすく記載し た地図を作製する場合、AEDを備え付けている施設を明示するなど、こういった工夫 を例示しております。  3つ目が「成果の検証とさらなる向上のための見直し」で、AEDを非医療従事者が 使用した場合の効果については、救急搬送に係る事後検証の仕組みの中で的確に把握 し、検証していくことが必要である、また、そういった検証結果などに基づき、条件と して示した様々なものについて、適切に見直していくことが必要だろう、とまとめてお ります。  最後のパートが「おわりに」ということで、行政にあってはこの検討会の検討を受 け、非医療従事者がAEDを適正に使用する条件の整備を始めとして、速やかに課題に ついての取組を進められたい。まずは、今回の提言に即した内容の講習が様々な主体に より実施されるよう、関係団体における研究成果等を活用した技術的助言等を含め、取 組が速やかになされるべきという各方面への期待と、今後、少子・高齢化が進展する中 で、我が国社会の安心安全の確保に努めていくに当たり、救急医療の充実による救命率 の向上を図っていくことは、国民的な課題となっている。今回の検討を通じ、非医療従 事者の自動体外式除細動器の使用を「救命の連鎖」の中に有機的に位置付け、整備すべ き条件のあり方等を提示した。今後、一般住民と救急関係者が相互理解の下に協働の実 を挙げ、国民の安心安全の確保に繋げることを期待する。こういうことで、今後の方向 性についてまとめております。以上が骨子(案)です。 ○島崎座長  報告書骨子(案)について、ただいまからご意見を伺いたいと思います。内容が「は じめに」から「おわりに」まで、5つに分かれておりますから、1から順番に分けてご 意見を伺いたいと思います。まず最初に「はじめに」ということで、4頁まででご意見 を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。何かご意見はございますか。 ○竹下委員  1と2については、特別意見はありませんが、(3)の「電気的除細動の効果」につ いて、意見を申し上げます。そこに4つほど項目が分かれていますが、その3番目の中 ほどの「具体的には」以下に、(1)と(2)が書いてあります。「5分以内にCPR 処置が始められず、あるいは10分以内に除細動が行われない場合は、心肺蘇生処置の価 値が失われる」と書いてありますが、もう少し積極的に、「4、5分以内であれば少な くとも3分以内であれば、電気的なリズムがVFである可能性が、85%ぐらいになると 考えられているので、AEDによる除細動のみで効率的に救命できる可能性が高い」と 書いていただくほうが、AEDの重要性というものを一般の方に認識していただく上 で、有効ではないかと思います。 ○島崎座長  VFパルスレスVTは、4、5分以内で心停止の患者のかなりの率を占めるというこ とですか。 ○竹下委員  その通りです。したがって除細動だけで相当の救命率が得られることが示されていま す。4分以内であればおよそ50%ぐらいは救命できると報告されていると思いますし、 3分以内であれば、もっと救命率が高いという報告もあると思いますので、そのことを 書くことが、AEDの有用性をより強調することになるのではないかと考えます。 ○島崎座長  では、どういう文章にすればいいですか。 ○竹下委員  ここには「5分以内」とか「10分以内」と書いてありますので、(3)として「4、 5分以内であれば、心停止の原因としてVFの可能性が高く、したがってAEDによる 除細動のみで、高率に救命できることが示されている」、あるいは「示唆されている」 という表現はいかがでしょうか。 ○島崎座長  「可能性が高く」と言われると、一般の人はほとんどがそうなのかなと思ってしまう と思うのです。心呼吸停止のCPAの患者で、4、5分以内にVFの可能性が高いのは 何パーセントとか、その辺のデータはありますか。 ○竹下委員  3分以内であれば、85%と記載されております。 ○島崎座長  最初からPCの適用でないような形態の心停止に、3分以内はほとんどならないとい うことですか。 ○竹下委員  実際に心停止発生後3分以内に心電図が取られた場合、およそ85%がVFであったと 報告されているということです。心停止発生からの時間が長くなるに連れ、いわゆるス タンドステルの割合が増えてくるのですが、短ければ短いほどVFの可能性が高いので す。そしてVFの可能性が高い時間帯が、救命できる可能性が高いわけです。この時間 がAEDの有効性が非常に高いと考えられますので、そういうことを書くことの重要性 を指摘させていただきたいと思います。 ○島崎座長  3番目の○の2行目、「基本的心肺蘇生法の処置が開始されるまでの時間と、発症か らのDCが行われるまでの時間で、ほぼ規定され」で、いま先生がおっしゃったような ことは読めませんか。 ○竹下委員  4、5分以内であれば、除細動が最も重要であることにあまり異論はないと考えま す。CPRも死亡を防ぐことはできますが、除細動に取って代わるような効果は期待で きません。そのことがこの文章には強調されていないと思うのです。そのことはAED を普及していく上で、非常に大切な事実ではないかと思うものですから、強調してはい かがかという意見です。 ○野々木委員  いまの竹下委員のご意見に賛成するのですが、いまのところ日本のデータが十分ない のです。現在実施されている厚生労働省の「院外心停止の現状と対策」に関する委託研 究で、ウツタイン様式による登録作業の解析が行われ、心電図記録が心停止から5分以 内になされた場合の心室細動率は、5割ぐらいあるのです。院外心停止全体の心室細動 率は、約2、3割と言われています。日本の場合は心室細動が少ないという認識があり ますので、心停止後5分以内の早期であれば、心室細動率が高く、そのような症例には AEDの効果が大きく、救命のチャンスがあるということを、竹下委員のご指摘のとお り強調していただいたほうがいいのではないかと、私も思います。 ○島崎座長  心室細動率が、心電図を撮ったCPAの患者の5割程度というのが、ウツタインの日 本のデータでしたか。 ○野々木委員  心電図記録までが5分以内であればということです。要するに発症から早ければ、心 室細動が維持されているということになろうかと思います。 ○島崎座長  ただウツタインですから、外傷やその他のものは入っていないですよね。 ○野々木委員  外傷は入っていないです。 ○島崎座長  全CPAのアレは何パーセントでしたか。いまの話だと、ちょっと大げさになります ね。 ○野々木委員  内因性の心停止ですね。ですから心停止発症早期にはAEDがいかに効果を発揮する かということを強調していただきたいのです。 ○島崎座長  ここに「内因性の心停止」という言葉を使ってしまうと、もうそれが来て、逆に内因 性だけでいいのかというように、受け取られかねない可能性もあるのではないかと思う のです。 ○竹下委員  この検討会は、あくまでもAEDをできるだけ速やかに、効率よく普及させようとい う検討会だと理解していますが、そういう立場から言えば、AEDの有用性をより分か っていただく、なぜこういうものの普及が必要なのかということを分かっていただくこ とを、まずこの前文で書くべきだと考えます。心停止後短時間以内ではVFが多いとい う場合には心停止の原因が外因性のものは含まれていないと思います。 ○島崎座長  委員のおっしゃることは分かりますが、4、5分以内でVTの可能性の患者が非常に 高いという話になるとアレなので、文章としておっしゃることが分かるようなものとし て、心呼吸停止の患者のうち、AEDで戻る可能性が高い患者も多いという文章が、ど こかに入ればいいのではないかと思うのです。 ○渡延指導課長  竹下委員がおっしゃったお話は、(1)(2)の記述の代わりに、今おっしゃったも のを入れるというのではなく、この下に続けてということですね。 ○竹下委員  そうです。 ○渡延指導課長  ノンメディカルな意見ですが、改めて事務局として読んで見ますと、「除細動の価値 は失われるとされる」とネガティブで終わっているよりは、逆にこのエリアでやれば効 果があるというフレーズで終わったほうが、確かに前向きに訴える気持が出るなと思い ます。ただ座長もおっしゃったように、エビデンスになってまいりますので、(1) (2)の次に具体的なものをコンパクトに入れるということで、書きぶり自体はまた根 拠文献に当たって、最終的に委員と座長に再度お目通しいただくという形で、進めては いかがかと存じます。 ○竹下委員  それでよろしいと思います。 ○島崎座長  私もAEDの普及という意味では、委員がおっしゃる意味もよく分かりますし、その ほうがいいと思います。ただ、どれぐらいの率かとか、可能性が非常に高いという話 で、ではデータはどうなっているのだという話になってくると、その辺のところは私も あやふやなので、そういう意味で課長はおっしゃったのだと思います。よく分かりまし たので、その辺の文章を。 ○丸川委員  いまの文章に関連します。「除細動及び基本的心肺蘇生処置の価値が失われる」とい うことで、学問的にはいいかもしれませんが、「価値が失われる」と表現する限り、現 在やっている患者搬送のときの心肺蘇生は、意味がないということを問われてしまいま す。そうすると、それを説明する覚悟が要ります。そうでなければ「失われる」という 文章を、もうちょっとマイルドにしたほうがいいかと思いますので、いまのお話はいい と思います。 ○島崎座長  もうちょっとポジティブに書いていただかないと、今までやっていること自身が、ち ょっと問題になります。 ○宮本指導課長補佐  参考に申し上げますと、かかる記述は、AHAのガイドライン2000に該当する部分が あり、多分関連する文献から引用しているのだろうと思われますので、そこでの表現を そのまま取ってきたものです。 ○島崎座長  しかし今おっしゃったような意見はもっともですので、文章を考えていただきたいと 思います。 ○五阿弥委員  4頁の最初から4行目に、「米国や英国などの一部の諸国で、講習を受講した一般市 民等にも使用が認められる」とありますが、これだと講習がいかにも義務づけられたよ うに思われます。これまでの発生でも明らかなように、講習を受けていない一般市民 も、実際にやっているわけですし、それはオーケーなのです。ですから、これはやはり 表現を変えていただきたい。 ○島崎座長  確かにそのとおりです。ただAEDには、講習を受けた人が使いますと書いているの です。実際にはそういうのを受けていない人もやっているということで、文章をどうす ればいいですか。 ○五阿弥委員  例えば「講習を受講した」というのを取ってしまって、「一般市民にも使用が認めら れる」とする。もし「講習」を入れるのであれば、国民への理解、普及、あるいは迅速 な使用を担保するためにも、講習というものが制度として整っているということを、後 のほうにくっつける。なぜ私がこういうことを言っているかというと、基本的には「救 命の連鎖」の中に国民にも入っていただくということで、国民の善意を期待するわけで すよね。そのときに、やはり講習が義務づけられているという錯覚を与えてはならない と思うのです。講習を受けたほうがいいかもしれないけれど、受けていない人でもバイ スタンダーとして、倒れていた人がいて、そこに器具があれば実施していただくという 積極的な働きかけを、私としては強調していただきたいと思います。 ○渡延指導課長  いま五阿弥委員がおっしゃった所ですが、講習が認められるというのが、厳格要件み たいな印象を与え、かつ原文準拠でただ今のご指摘を入れるならば、例えば「一般市民 等による使用が普及しており」とか。 ○島崎座長  「米国や英国などの一部の諸国で、一般市民等にもその使用が普及しており」です か。それならいいですかね。 ○杉山委員  市民に対して、実際はこの講習を受けなくてもいいということを、陰で言ってしまわ ないかということがあるのですが、実際このインセンティブというか、モチベーション を上げるためには、やはり当初はこれぐらいのことがないとまずいのではないかと思い ます。 ○島崎座長  おっしゃるとおりです。基本的には最後の頁で、非医療従事者の講習のレコメンドに は、こういうものがありますというのを一応出しております。ではいま言ったような文 章に変えていただけますか。「はじめに」に関して、ほかにはいかがでしょうか。よろ しいですね。  では第2、「非医療従事者が自動体外式除細動器を使用する条件についての考え方」 について、ご意見はございますか。 ○野々木委員  3番目の法的な所の○の2番目に、「関係法令の規定に照らし、免責されるであろう 」という形で、「訴訟はされないだろう」と書かれているのですが、もう少し積極的 に、「訴訟されるべきではない」という文言が入らないかどうかを、ご検討いただきた いのです。実は以前からのディスカッションでも、善意で救命処置が行われたときは訴 訟の対象にならないかどうかが、常に議論になっていましたので、もう少し踏み込ん で、「善意で行った場合は訴訟されるべきではない」というような、積極的な表現がで きれば、国民も積極的に心肺蘇生法ということに踏み込めるのではないかと思うのです が、いかがでしょうか。 ○渡延指導課長  ただいまの○の2点目ですが、最後の3行で刑事の局面と民事の局面というように、 非常に広範な局面を表しております。刑事ですから、国が除細動器を扱った人間の行為 をどう評価するかです。これが民事になりますと、救命された方と、救命行為をやった 方との関係等も出てまいります。国対私人の関係について、何らかの方向性を示すとい うのもあれば、まさに助けられた方と行為した方の間で生じた損害をどう処理するかと いうことになると、これは民民の関係になってまいります。  結局、ここを規制する法律というのは、民法の緊急事務管理の規定にしても、刑法の 緊急避難の規定にしても、ある程度抽象度を持った要件を、具体的にその局面にどう当 てはめるかということになってくるわけです。民民の局面を想定したときに、抽象度が 残っている規定の運用について、かくあるべきだということは、アプリオリになかなか 踏み込みにくいのです。刑事や民事といったマルチな関係者の関係を想定して書くとし ますと、ここら辺が歩留りかなと思っているところです。 ○五阿弥委員  しかし、それは実際に裁判所が判断すべきことです。先ほど委員がおっしゃったよう に、「やむを得ず」とか「免責されるであろう」ということだったら、やはり国民の中 には消極的にならざるを得ない、と考える人が多くなるのではないでしょうか。しか も、これは検討会としての報告書でしょう。そうすると積極的にこういうことにかかわ ってほしい、そのためには「やむを得ず」というような表現も、私は個人的には要らな いと思うのです。「人命救助の観点から行った場合は、関係法令の規定に照らし、免責 されるべきである」と入れて然るべきではないでしょうか。実際に民民になったとき は、裁判所になるわけですから、そこで判断するというのは、それとはちょっと別では ないでしょうか。 ○島崎座長  「やむを得ず」が要るか要らないかというのはありますが、あとは「関係法令の規定 に照らし、免責されるべきであろう」ではなく、「べきである」というのは、別にこち らが思うことですからいいのでしょう。そうではないよとか、そうだろうというのは、 確かに法務省のほうで解釈するわけですから、我々のほうとしては「べきであろう」な ら問題ないですね。 ○渡延指導課長  最終的には裁判所の個別判断にかかっているところです。私どもはあくまでも行政府 の立場で、こういう検討会でご検討をお願いし、子供っぽいことを言えば、行政府の立 場で司法に対し、三権分立の建て前上、どこまでものが言えるかというのはあります。 ただ、いま五阿弥委員のお話を伺って感じたのは、「免責されるであろうし、そうした 事例の積重ねによって一定の考え方が定着していくことが期待される」という言い方 は、ここでも出来るのではないかと思います。 ○島崎座長  私も「免責されるであろう」だと、完全に下駄を預けてしまった感じがします。「善 きサマリア人」という言葉は要らないにしても、「免責されるべきであろう」というの を入れると、やはりきつくなるのでしょうか。 ○渡延指導課長  「規定に照らし」が残っていれば、ギリギリ「べき」でも可能ではないかと思いま す。 ○島崎座長  それは考えていただけますか。その辺のところは実際に現場で行われていて、何回か 繰り返されて、一般国民のコンセンサスを得られるような格好になるのですかね。 ○大越委員  追加発言ですが、乗務員に除細動器を教えると、やはりこのことがいつも問題になり ます。それとある研究会等で、機内の救急医療の問題について、たまたま乗り合わせた 先生方にボランティアで協力していただいているのですが、いつもこの話になります。 ですから、やはりもうちょっと積極的な言い方をすべきではないかと思います。 ○島崎座長  わかりました。では今のご意見もお聞きになって、「べき」を含めて、もう少し検討 していただければと思います。 ○渡延指導課長  ここでは「べきであろう」で仮置きさせていただいて、よろしいでしょうか。 ○島崎座長  納得しておられると思います。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。  続いて3、5頁の「非医療従事者の自動体外式除細動器の使用に当たっての条件整備 」についてです。まず別紙にある、非医療従事者に対する講習案の内容について、作っ ていただいた野々木委員から、ご説明をお願いしたいと思います。 ○野々木委員  先ほどの講習するかどうかの議論が終わっていないのですが、先にこの説明をしても よろしいでしょうか。 ○島崎座長  もし講習するなら、こういうことです。 ○野々木委員  わかりました。  別紙で講習内容の案を作成いたしましたので、ご検討をお願いしたいと思います。い ままでの議論の中で、講習をするならおよそ3時間程度が妥当ではないかということ と、AEDだけでなく、AEDの前の基本的な心肺蘇生法を盛り込んだ形で、提案をい ただいていたと思いますので、それを盛り込んだ形で、3時間で終わるようなプランニ ングをいたしました。そこにお示しした通り、講習の目標として「救命の連鎖」や心肺 蘇生法の処置が実施できる、正しくAEDを作動させ、安全に使用できるということを 明示しました。  基本的には3つのパートからなっております。1つ目が、「救命の連鎖」の重要性を 最初にお話します。  次に基本的な心肺蘇生法を約1時間、実技を加えた形で成人の心肺蘇生法を実技とし てマネキンを使用しトレーニングしていただきます。ここでは、窒息による心停止の処 置に関しては除いております。意識の確認、人工呼吸と心臓マッサージという基本的な ところを押さえていただきます。そして後半に、AEDの実際の使用方法について、具 体的な機器の説明から始まって、マネキンを使ってAEDを実際に使用していただきま す。  最後に、実際の知識の確認と実技の評価として、45分間設けております。全くの一般 の方と、AEDを設置した場所の従業員とを分けて、ここをフレキシブルに使えるよう な形にしております。資格という形でかなり厳格にしようとするのであれば、ここに実 際の実技試験や筆記試験というものが入ってくるだろうと思いますし、一般の方々には それが必要ないとなれば、若干省略できる部分もあろうかと思います。ですから2時間 から3時間ぐらいで終了するという案です。 ○島崎座長  ただいま野々木委員からご説明がありましたが、行うとしたら講習の中身に関して、 何かご意見はございますか。 ○三井委員  確認させてください。いちばん最後のフレキシブルに扱う部分で、「評価」と書いて あるのですが、実際には振返りということでよろしいのでしょうね。別にここで合否が 決まるということではないですよね。 ○野々木委員  合否は考えておりません。実際にAEDを繰り返しする、例えば心停止に遭遇する機 会の多い方々に不十分な点があったら、もう一度振り返っていただいて、例えば再実技 をしていただくところに使っていただけたらいいと思います。合否までは提案しており ません。 ○島崎座長  ミニマムこれぐらいの時間ですか。午前中ぐらいかけて出来るということですね。説 明していただいた3のほかの部分は、いかがでしょうか。 ○大越委員  1番に、「医師等の速やかな対応を得ること」というのがありますね。我々もこうい う条件付きで、客室乗務員を使い始めたのですが、どういうことを速やかに得ることが できないと言うのかが、なかなか難しいと思うのです。実際に医師が早く応援に出てき たからといって、蘇生率にはあまり影響がないと思いますので、これはただ混乱を招く だけではないかという懸念があるのですが、いかがでしょうか。 ○島崎座長  実際にやる現場をある程度イメージしますと、飛行機の中でもいいのですが、私自身 は一応声をかけて、同時並行でAEDその他の心肺蘇生法を行える人が現場へ行って、 その間におられなけばやるということで、全く声をかけずにというのはやはり。一応声 をかけていただくというのが必要だと思います。 ○大越委員  おっしゃるとおりです。機内でも意識がなければ、すぐにドクターコールをしてやる のですが、医師が出てくるまで、いつまで待つのかという問題があります。それと一般 のショッピングモール等で心停止を起こした人を見たら、おそらく救急車を呼ぶと思う のですが、この表現ですと、そのほかに医師を探す必要があるかという誤解を招くので はないかと思うのです。 ○島崎座長  そういう現場で救急車をすぐに呼んで、そばで出来る方がされるよりも、大声でその 周辺で声をかけていただくという程度のことを、私は想定しているのです。もちろん救 急車を呼んでいただくのは当然そうなると思うのですが、一応大声で叫んで、「お医者 様はおられませんか」ぐらいは。 ○大越委員  助けを求めることは当然だと思います。 ○島崎座長  見られた方もそういう形で助けを呼ぶというのは、野々木委員のいちばん最初のオリ エンテーションの所などにも入ってくると思うのです。その程度のイメージでいいので はないでしょうか。わざわざ呼んでじっと待っていて、3分から5分以内で来ないから やるという時間の無駄は、考える必要はないのではないかと思うのです。 ○大越委員  ただ、この文章を呼んだだけだと、そのような理解になるのかというのが心配なので す。 ○島崎座長  「対応しつつも、心停止患者に対する処置が緊急を要することを考慮すると、努める ことが適切である」というのを、むしろ私は逆に取っているのです。医師を待ちなさい というよりも、むしろ医師を待たずにやりなさいというように、私はこの文章を取って いるのですが、逆に取れますか。1の最初の○ですよね。 ○大越委員  はい、そうです。 ○島崎座長  医師の対応を得るように努めるものとしつつも、やりなさいということです。 ○大越委員  除細動をやった後のACLSをやってもらうために呼ぶのは、意味があると思うので すが、この文章ですと、除細動をやるために医師を探しなさいという意味に取られない かという心配があるのです。うちの乗務員も、ドクターコールはすぐしますが、ドクタ ーコールをして、いつの時点まで医師がいるかどうかを確認したらいいのか、という質 問が必ずきます。そうすると、そこだけでものすごく教育に時間を費やしてしまうこと があります。 ○島崎座長  AEDが先か一般のCPRが先かという話になると、パッと見て器械を取ってきてと いうのは、おそらく数十秒から1分はかかりますよね。その間は除細動よりも心肺蘇生 法をやっていただかないと困ります。 ○大越委員  それは異論のないところです。医師を探す必要があるかどうかです。 ○島崎座長  そのときにAED以外の心肺蘇生処置をやるのに、医師を待つ必要はないと思いま す。「心停止者に対する処置が緊急を要することを考慮すると」という文章には、その ことが入っていると思います。 ○丸川委員  いまのディスカッションは、飛行機の中ではそれでいいのですが、市中では医師を探 すのではなく救急隊を要請するのですね。 ○島崎座長  一般にはそうです。 ○丸川委員  ここには救急隊を要請した場合の除細動については、たしか書いてありませんので、 「救急隊を要請しても5分以内には除細動ができない場合」というような文章があった ほうが、一般にはわかりやすいのではないでしょうか。医師による対応が困難な場合は 当然ですが、救急隊の対応が困難な場合も入るべきですよね。 ○島崎座長  もちろん、それは自明の理です。例えば倒れている人を見れば、救急車を呼びなさい というような話は、おそらく講習の中身のイントロダクションや、基本的心肺蘇生のい ちばん最初に入っているのです。それをずっと書き出すと、具体的にかなりいろいろな ことが入ってきますので、今おっしゃっている大筋のところさえ、皆さんがコンセンサ スとして得られていればいいように思うのですが、どうですか。 ○野々木委員  講習のときも、医師を探しなさいという指導は全くしません。むしろ医師を探す努力 を誰かに委ねてしまうと、AEDを取りに行くのが遅れたり、救急車に通報するのが遅 れたりということがあります。院外で心停止が起こった場合、医療関係者を探すこと は、まず必要ないと思うのです。もちろん、そこに医療関係者がいたらサポートするで しょう。医師を探すということをここに書いてしまうと、医師を探す努力を誰かがしな いといけないという誤解を与えますので、AEDの到着が遅れたり、通報が遅れたりし ます。ですから誤解を与えないように、医師を探すという表現は削除してよいと思いま す。 ○島崎座長  いまのお話を聞いていると、医師を探すというイメージが、委員と私とではかなり違 いますね。 ○野々木委員  機内で「ドクターいませんか」と言うのと、同じイメージでいきますと、ドクターを 探す努力をするわけですよね。 ○島崎座長  一応機内でも「お医者さんいませんか」と、アナウスがありますよね。 ○野々木委員  ですから、それと同じ感覚で、客室乗務員が「お医者さんいませんか」と、あちこち 探しますよね。 ○島崎座長  探さないですよ。呼ぶだけ呼んで来るのを待つのです。その間にいろいろな処置をや っています。現場はそうですよね。 ○大越委員  そうですが、うちには訓練をしている乗務員が何人かいますので、手分けしてやるこ とができます。しかし、そうでないショッピングモール等で倒れた場合、発見者が「医 者はいませんか」と探している間に、大事なバイタルサインを取る時間や、救急隊に通 報する時間が失われてしまうのではないかということです。 ○島崎座長  探しません。アナウスするだけです。私のイメージとしては医師を探すというのも、 倒れた人を見て何らかの処置をやるときに、大声で「お医者さんいませんか」と言うの は、普通にあるのではないかというイメージで受け取っているのです。「おられません か」と言うでしょう。 ○丸川委員  この市民は、ファースト・レスポンダーとしての機能を果たすのだということを書く べきです。ですから本来は医師を探すと言う以上に、ファースト・レスポンダーとして 機能しなさいという表現にすべきだと思うのです。それはAEDに関係なく、普通のB LSの教育でもやっているわけですから、それとの整合性を保つようにしては。 ○島崎座長  BLSのファースト・レスポンダーの中身は、まずやりなさいという話ですよね。 ○丸川委員  まず助けを呼びなさいで始まりますよね。ファースト・レスポンダーとして機能すべ きものの1つに、救急隊を呼びなさいというのがある。救急隊を呼んだときに、5分以 内に除細動できない環境なら、AEDを使ってもいいですという表現になると思うので す。 ○島崎座長  「医師の対応を得るように努めるようにしつつも」とあるから、いいのではないです か。逆に、呼ばなくていいという話はないと思うのです。 ○竹下委員  私はその程度のことだろうと思うし、島崎座長がおっしゃっていることはよく分かる のです。ただ、この文章だけでそういうように読めるかどうかです。 ○島崎座長  いまのお話でも同じ文言で、かなりイメージが違いますよね。 ○竹下委員  ここに、「医師等による速やかな対応を得ることが困難であることについて」という のが出てきているのは、最初に4条件があったからでしょう。「医師の対応を得るよう に努めるものとし」の努めるが難しいと思うので、「医師の対応を求めるが、これに時 間を費やしすぎないで、より迅速に除細動を開始することが適切である」というように されてはいかがでしょうか。 ○島崎座長  わかりました。同じようなことですが、文章でかなりイメージが違います。いま竹下 委員がおっしゃったように、その言葉に現場で引っかかってしまわないような文言を考 えていただけますか。この言葉ではそういうイメージになってしまうから困るというご 意見ですので、探す努力にいたずらに時間を費やさないような文言に変えていただかな いと。よろしくお願いします。ほかにいかがでしょうか。 ○小林委員  7頁の講師の所です。「教授法を含む指導教育プログラムを終了している者」、ある いは各団体で「指導教育プログラムを作成し、普及を図ること」となっているのです が、この講師にはある程度のクオリティ・アシュアランスが必要だと思いますので、ガ イドラインとなるようなコアカリキュラムを、どこかで設定するようなシステムをつく っておく必要があるのではないでしょうか。 ○島崎座長  このカリキュラムの基本的な講習の中身という意味ですか。 ○小林委員  これは受講者ですが、そうではなくて講師です。 ○島崎座長  指導者側、インストラクター側という意味ですか。 ○小林委員  そうです。 ○島崎座長  それは後の(2)講師の。 ○宮本指導課長補佐  関連する点としては、7頁の(2)の「講師」の所で、3つ目の○として掲げており ます。「自動体外式除細動器を始めとする救急医療の実情を熟知するとともに、各種の 救急医療関係の講習の実績を有している公的な団体において、関係学会等の協力を得 て、講師養成のための指導教育プログラムを作成し、その普及を図ることが適当」とし ています。 ○小林委員  これは各団体に任せているという文章ですよね。 ○島崎座長  各団体が関係学会の協力を得てやりなさいということですかね。ここに書いているよ うな公的な団体で、そういう実績のある所が、学会の協力を得てつくってはどうかとい うことだと思います。 ○渡延指導課長  いまの小林委員のお尋ねの関係で、補足させていただきます。7頁の(2)の○の3 つ目で、「公的な団体において、関係学会等の協力を得て」と書いてあるだけで、公的 な団体が1つか2つか、別に数は限定しておりません。ただ正直なところ、私どもが救 急医療をやっていてイメージとして持っているのは、救急医療の関係でこれまで関係者 の講習に実績のある団体で、かつその団体は救命士法に基づく試験機関であり、登録機 関にもなっているものです。例を挙げてしまえば、救急医療財団などは、まさに救急医 療関係の各学会の先生方のご参画もいただいている所です。ここでいくつもの団体が乱 立するということではなく、ここにそうしたプログラムづくりを、本来事業という形で お願いしてはいかがかと思って、そのイメージで書いているのです。 ○小林委員  わかりました。そういうことであれば了解できます。 ○野々木委員  6頁の3の「講習について」の所に○が2つあります。その次に先ほどから問題にな っている、講習を義務化するのかどうかが、これでは理解できないだろうと思います。 例えば、『この勧告は非受講者のAEDの使用を妨げるものではない』といった文言を 入れるべきではないかと思います。全く受講しない人が、講習を受けていないとAED が使えないという状況は、AEDをできるだけ早くという救命の観点から避けたいと考 えておりますので、是非とも、講習を義務化することに捉えないような文言を入れてい ただきたいと思います。 ○島崎座長  文章的にはどうでしょうか。 ○渡延指導課長  ただいま議論になっている第3の3の講習は、第3の手前に第2があるのは、これま でのこの検討会の議論を通じて講習の位置付けをどのように見るか、その内容には川 上、川下を含めるか含めないか、それと絡んで長短をどうするかでさまざまなご意見を 承ってまいりました。そうした考え方を整理し、基本的な考え方を第2に提示し3つの 思想で成り立っております。その考え方を第3で、講習なら講習といったものの具体化 に応用していこう、それで議論の錯綜するところはその思想に基づいて整理していこう という考え方です。  したがいまして、ただいまの講習の重みというか、位置付けという点に関して言うな らば、第2の3の所で、特に○の1点目、2点目の所です。上記の4条件は、○の2点 目の所で、医師法17条との関係で示されたものであるといい、その次、救命の現場に居 合わせた一般市民が行う場合は、そもそも反復継続性がないので医師法17条違反に問わ れる局面はないということ。これは前回、当局担当課から資料を出して説明したところ です。こうした法違反に問われないからここは終わってしまうのかというと、そうでは なく、法違反に問われる、問われないといったことを超えて、自分は自信を持って救命 に参画する。そういう意義付けから出ている条件だということで、3の基本思想を受け て第3の講習の中身は、具体化を図るという思想でできているものです。  したがいまして、義務か義務でないかということになって、特にいまご提起のあった 一般市民を想定するならば、これは前回までの議論を通じて一定の整理ができているの ではないかと考えております。その考え方を第2の3の所に集約して述べ、その上で第 3の文が成り立っている。そういう構造だとお考えいただければと思います。委員のご 提起の部分は第2の3の部分に入っているということです。 ○五阿弥委員  それだったらきちんと、義務化ではないのだということを明記すべきだと思います。 なぜなら、AEDを使っている国で義務化をしている国はないです。要するに義務化で はない。もちろん、講習を受けてもらうにはそちらのほうがいいですが、これはAED をできるだけ多くの国民に使ってもらうためにどうしていくかという話です。講習制度 を普及していくことが主目的ではないと私は思っていますので、義務化ではないことを きちんと明記すべきだと思います。講習をどうやって普及していくかというのは、例え ば学校教育とかいろいろなやり方はありますでしょうが、基本的には善意の国民の参加 をできる限り阻まないものであってほしいと思います。野々木委員が言われたことは明 記すべきです。こういう文章の中にそれが含まれているというものではなく、きちんと そこは明記すべきだと私は思います。 ○渡延指導課長  前回の議論とつながる部分がありますが、医師法17条自体、前回の資料でご紹介いた しましたが条文は非常にあっさりした、1行程度で書き終わってしまうようなもので 「業として行ってはならない」と書いてあるだけです。業としてとは何かということに なりますと、一般に反復継続性ということになっているわけですが、ここでは「一般市 民」という言葉を無定義で使っております。どこまでの人が一般市民で、どこから先が 一般市民の範疇を超えるのか。ある程度、職域内活動の特殊性からいって心・肺停止の 方に遭遇する頻度の高い方として、これは連続的に変化していると言えば連続的に変化 しているものではないか。医師法17条があるところで段階を区切って概念を分けている ならともかく、「業として」という漠としたものの中に連続した変化が込められてい る。そうなりますと、あるところは医師法17条との関係で免責の要件・義務であり、そ うでないところはここまでだ、ということは訂正的に書けないわけです。  したがいまして、ここではそうした義務か義務でないか、免責されるかされないかと いうところは、こういう形の整理にして、根底にある思想は五阿弥委員がご指摘になっ たように、より幅広い方に参画していただき、自信を持ってやっていただくという思想 のほうを積極的に打ち出したという構造になっております。 ○五阿弥委員  よく分かりません。義務ではないということをどうして書けないのですか。いまの説 明では全く分かりません。 ○島崎座長  私も心配するのは、五阿弥委員が言われるように義務化を強制するものでもないが、 義務化ではないよと書くと、何もしなくていいのですねという逆の捉え方をされるのと 全く裏腹なんですね、言われていることと。それは両方を考慮しての話なんで。 ○五阿弥委員  座長が言われることはよく分かります。講習会は例えば教育の中で位置付けていくと か普及の方法はいろいろあると思います。講習を受けたほうがいいというのは私自身も 繰り返し必要だと言っています。ただし、それでは講習を受けない人は、してはいけな いのかという誤解を持たれるのがいちばん困るわけです。ですから、講習が必ずしも強 制されるものではなく、たとえその講習を受けていない人でも、こういう場に遭遇した 場合はAEDを使用することは何ら妨げないということを明記すべきだと思います。 ○竹下委員  ただいまのご意見に賛成いたします。講習を受けないとしてはならないとは書いてな いのですが、誤解を生じることを除外できないことに心配です。病院の中でこういう講 習会をやるときに、講習会を受けないでやってもいいかと。病院の中でも、そういう心 配が出てくるわけです。それはない、この検討会でも厚労省の方々も否定しておられる ことを繰り返し申し上げるのですが、しかし、それが出てくるということは、一般にこ の報告書のようなものが出たときに、そういう懸念がいろいろな所で出される可能性が ありますので、講習会を受けないことがこれを妨げるものではない、ということを明記 するのは非常に重要だと思います。  文章は、義務ではないとできればいいのですが、それができなければ、講習を受けな いとできないということではないとか何か適切な文言があるのではないかと思います。 そういう懸念が生じないように報告書を書いていただくほうがいいのではないかと思い ます。 ○渡延指導課長  五阿弥委員がご提起になったのは、この検討会の検討対象である非医療従事者すべて について、義務ではないというお考えではないと思うのです。結果的に業として、ある いは反復継続性があって医師法17条違反に問われる可能性がある方、また、その活動の 内容によって薄い方もあれば、問われる可能性が高い方もおられるわけですから。結 局、この検討会の検討対象の非医療従事者すべてについて義務ではない、という書き方 はできなくなるだろうと思います。そうすると、いわゆる一般市民なのか、いわゆる業 として行わない人なのかについては、医師法17条違反に問われることはないから、その 意味では義務でないということを、もっと積極的にこの検討会の報告の中で触れようと いうご提起と受け止めてよろしいのでしょうか。 ○五阿弥委員  ちょっとよく分かりません。つまり、先ほど言われた非医療従事者は2種類ありま す。業としてそういうのに繰り返し遭遇する方で講習を受けていなかったら、その人し かいなかった場合は、やってはいけないのでしょうか。 ○島崎座長  そういう意味ではないです。あまねく、緊急避難的には誰でもできるのです。五阿弥 委員は、そういうのを「講習、講習」というと義務化されて、そういうことが通らなく なるから困るよということですよね。いま話をしているのは、先ほども言ったように反 対の裏返しで、講習を受けなければ何もかもやってもいいのかという話と、それからい ま言ったような、反復を行う可能性のある人たちも講習を受けなくていいよという話で はないですよと、講習を受けれれば講習を受けてくださいよという意味なのです。 ○五阿弥委員  私も繰り返しそれを言っています。 ○島崎座長  そのことが書かれているというように私は受取っているのですが。 ○五阿弥委員  ですから、義務化というのではなく、研修を受けてない人がそういうことをやること も妨げない、ということを明記してほしいのです。 ○島崎座長  ここでは義務とか、そういうのはあまり書いてないと思いますが。講習を受けるとし たらこういう中身ですよと書かれているだけで、ちょっと深読みし過ぎていらっしゃる というか。 ○竹下委員  もともと4条件があって、それで「使用者がAEDの使用に必要な講習を受けている こと」とありますから、これに影響される可能性があるという心配なのです。 ○島崎座長  3番目ですね。 ○竹下委員  はい、それで講習が出てきますので。講習にはいろいろな条件を付けても構わないの ですが、決して義務的なものではないということを、どこかに含むべきではないかとい うことです。 ○島崎座長  これは医師法上、こういう形で明らかになっている、法律的枠組みとして、こういう ことだということなのです。例えば、講習を受けていることが望ましいという場合は変 えられるのですか。 ○渡延指導課長  第2の3の所の医師法違反の問題に限らず、刑事、民事の責任についても、人命救助 の観点からやむを得ず行った場合は、免責されるべきであろうと書いてあるわけです。 まさにそのことがここに表現されているわけです。 ○竹下委員  それは分かります。ただ、講習という言葉が出てくる所で、二重になるかもしれませ んが、義務ではないことを明確にしておいた方が良いと思います。 ○渡延指導課長  第2の3で出たところを、2度引きするような形で第3の3の「講習」の所の(1) (2)に入る手前の所に、再度、第2の3の趣旨を引くような表現を入れて交通整理と いうか、2度書きになりますが、それを承知の上で書くほうが国民の正しい理解につな がるという考えですね。 ○竹下委員  そういう意見です。 ○渡延指導課長  五阿弥委員のお考えも、そういうことでしょうか。 ○五阿弥委員  3の講習については、救命への国民の参加の意欲を損なわないよう留意する必要があ ると、一応書きぶりにはなっているのですが、具体的にこれがどういうことなのかとい うことを、もう少しストレートな表現で書いていただくという。 ○渡延指導課長  それでは、6頁の第2の3の2は五阿弥委員が言われた○の(1)(2)の具体化に 入る手前の○の2点目、特に下から3行目以下の所に、いまの趣旨を入れる修文をした いと思います。 ○島崎座長  分かりやすく、いまのご趣旨を踏まえて入れてください。 ○渡延指導課長  はい。 ○島崎座長  そういうことでよろしいでしょうか。 ○五阿弥委員  はい。 ○雪下委員  初めて出てまいりましたので、ちょっとトンチンカンなことになるかもしれません。 特区法から出された4条件自身に矛盾があるのではないかという感じがいたします。緊 急避難的に実際にやった場合、医師がいない場合なので、それが法的違反にならないと いうことは判りますが、それについて、やたらにやってもらっては困るから講習を受け るとか、いろいろな条件を他に出している。そのあたりがちょっと矛盾してはいないか という気がいたします。  非医療従事者の、例えば、それを業としている者ではないと言っております中でも、 実際には機内の乗務員や、あるいは施設、学校等で、より遭遇するチャンスが多い所で の講習の必要性と、全くの一般の人達への講習の必要性では違うような感じがいたしま す。講習の内容も、AEDの使い方ということでもこれは救急医療に対する国民の必要 性という点での理解は認めますが、AEDの使用についての講習会といっても、果たし て国民はどの程度の関心を示すか。それをいま申し上げたような機内乗務員の人たちと 一緒の講習にしていいものかどうか、受講義務があるかないかは別にしても、別の方法 でやっていかなければいけないのではないかという感じがいたします。 ○島崎座長  皆さんの頭の中では一般の方と、反復継続する可能性のある公的立場にある救急隊を はじめとする人たちとは、もちろん緊急避難的に講習を受けていない救急隊員がやって もいいわけですが。基本的に職種で反復継続する可能性のある人は、ある程度は講習カ リキュラム等を関係団体で作って、そういうものをこういう形で講習は受けましょうと いうものは、作るつもりでおります。一般向けのも、当然そういうものをここに示され ているような形でこれから作るわけですが、それプラス・アルファのものを継続する人 たちには、講習を受けていただくような形になると思います。  渡延指導課長が言われるように、一応分けて考えていると思いますが。 ○雪下委員  いわゆる非医療従事者として、例えば、機内乗務員の方も一生のうち1回当たるか当 たらないかで一般国民と同じだと言えば同じですが、それでも、その遭遇する頻度にも 差異があり、立場上いろいろ準備しておかなければならないという点では、一般国民が 全く偶然に、遭遇するのとはちょっと違うのではないかと思います。 ○小林委員  いまの雪下委員のご発言とも関連するのですが、8頁に「講習対象者の活動領域等に 応じた講習内容の創意工夫」の所で、「遭遇する機会の多い職種の人に対しては、別途 適切な内容を盛り込んだ講習を行うことを期待」と、期待で止まっています。いわゆる 一般の人に対する講習・普及はもちろん大事なことは言うまでもないのですが、AED をどこにでも置いておくというわけではないのです。非常にリスクの高いところを選ん でおくわけですから、そこにいる人たち、要するに遭遇する機会の多い人たちへの講習 は重要だろうと思います。期待だけで止まるのではなく、遭遇する機会の多い人たちに きちんとした講習等が行われるような方策を入れる必要があるのではないかと思いま す。 ○島崎座長  それは、例えばそういうカリキュラムを作ったものを各省庁に投げるという形ででき るわけでしょう、将来的には。カリキュラムを作って、いま言ったような反復継続する 可能性のある職種に、それなりの講習を受けてもらうことを何らかの形で表明すること はできますよね。 ○渡延指導課長  私ども行政本体というよりも、関係団体なり、学会のお力を借りて、研究班という形 でやったり、別のやり方もあろうかと思います。関係学会のお知恵を借りて、もちろん 職域というものは遭遇の度合いは原則的に変化していますので、多段階のものを作り分 けられるかどうかの話は別にして、こういう着眼点がいるとか、専門の先生方のご意見 を伺えば一定のものはできるのではないかと思います。 ○杉山委員  将来的にAEDを設置しなければならないと、それを義務化する予定はあるのでしょ うか。それによっては話が変わってくると思います。 ○渡延指導課長  第1回の検討会で、たしかこういう議論があったかと思います。その時点での厚生労 働省の考え方は、もちろんアメリカにおける一定の施設への義務付けの例とか、ヒアリ ングの先生からのご紹介等もありましたが、現時点では、そこまでは考えておらない。 この報告の後ろに「今回の条件を受けての関係者の取組み。それを受けてやった後の成 果・検証・見直し」というストーリーが当面のプログラムとして出されております。A EDは高価なものですから、そうした成果検証を経てから次のステップへ進んでいくも のであろうと考えております。 ○野々木委員  いま議論があったように、これは誤解を受ける点がずいぶんあると思います。非医療 従事者という定義がこの中に入っていないから誤解を生むと思うのです。この講習に関 して、もし具体的に書いていただけるのでしたら、『AEDを設置する施設の従業員に は講習を受講することを期待するとか、すべきである』ということ、それと『国民一般 には受講を勧めて救命の重要性の理解を高める』ということをお願いします。先ほどお 話があったように、この勧告は非受講者がAEDの使用をすることを妨げるものではな いという文言を入れていただければ、いまの誤解はかなり解けると思いますので、もし 書いていただけるのであれば、そのようにお願いしたいと思います。 ○渡延指導課長  非医療従事者の定義については3頁、第1の2の○の3つ目の所です。「自動体外式 除細動器を用いることの医行為該当性を論じた上で、現在医行為に属するAEDの使用 が法制的に認められております、医師、医師の指示を受けた看護師もしくは救急救命士 」を挙げて、「これら以外の者」ということで、ここに非医療従事者の押さえを置いた ということです。3頁に出てきて講習の所は頁数が後ろなものですから少し間があきす ぎておりますが、要はここで、この検討会報告で言っている「非医療従事者の定義」と いうのは、ここでの行政オリジナルの概念であり、本来なら、ここに挙げた資格3種以 外の、医療に従事している方も、この検討会、このレポートの世界では非医療従事者と して扱う。その中身には、その後の第2の講習の人の所に出てきますように、ラフな言 葉でいえば純粋な一般市民の方も、職域内活動領域の特性から一定の頻度で遭遇する方 も、みんな含めて非医療従事者とここでは読んでいるということです。 ○丸川委員  非医療従事者の中で階層分けをするかしないかという問題がある。もし階層分けする としたら、それがどういう人たちをどう分けるかということが議論になっているのだと 思います。これは今後検討するのでしょうね。 ○渡延指導課長  前回までの議論を受けて、この報告書(案)の骨子では、7〜8頁に講習として誰が やる場合でもAEDを操作することの、AEDミニマムといったら語弊があるかもしれ ませんが、その部分を(1)で講習の内容及び時間数として提示し、その内容は具体的 に別紙1の大・中・小項目に示した。これが共通のパートで、それに8頁の(4)にあ るとおり、非医療従事者といっても内容はさまざまであり、その活動領域の特性なり実 際にやることが、いわば無段階変則で変化するような世界であるから、共通部分にどう いうものを加えてやっていくかについては、それぞれの職域なり活動領域の特性に応じ たものを考えなければいけないという思想で、ここで露骨にA、Bとは分けてありませ んが、具体的には講習の内容で分けていくという考え方でまとまっております。 ○島崎座長  丸川委員が言われているようなことは、一応この中では。 ○丸川委員  ありがとうございました。 ○三井委員  6頁の3の2つ目の○の文章の後半部分、この検討会そのものはAEDが主役だとい うことを分かった上で発言するのですが、「基本的心肺蘇生処置の修得の必要性に力点 を置きすぎることによって、自動対外式除細動器の使用の普及が阻害され、救命への国 民の参加の意欲を損なうことのないよう留意する必要がある」、ここまで書かなければ いけない絶対に必要な文章なのかどうか、私は非常にギラつくと思います。 ○島崎座長  この委員会そのものは、AEDの委員会で心肺蘇生法そのものの委員会ではないの で、それで何人かの先生がそういうご意見が非常に強くて、おそらく、こういう文章に なったのだと思うのです。 ○三井委員  かえってギラつくように思います。議論は分かります、私は今まで全部出ていますの で。 ○島崎座長  それを考慮された上での文章だと思いますが、いかがでしょうか。確かにそう言われ れば、何なのという話になりますが、医学的に見ると。心肺蘇生法は必要ですよね、A EDを行うにしても。 ○三井委員  それはあります。 ○島崎座長  これだと心肺蘇生法よりもAEDドミナントになってしまうよということを心配され ているということだと思いますが、基本的に必要性とともにとか、何かそういう文章に 変えたほうがいいように思うのですが。心肺蘇生処置の修得の必要性もあるけれども、 これのAEDも重要ですよと。 ○渡延指導課長  私ども事務局の立場で、前回までの委員の先生方のご議論を汲み上げる形でこうした つもりです。今回は前回と何が違っているかというと、別紙を野々木委員に付けていた だきました。お蔭で、これまで皆さん講習の内容がAEDのみなのか、それに追加する 基本的心肺蘇生術は何なのかと。空概念で議論しているときはそこの交通整理がつかな かったのですが、別紙が付いたことで、ある意味では皆さんの認識が共有できた。認識 が共有できる前の1つの懸念を表現したこの文章、これで解消されたということであれ ば、いまの部分について、落とすことについては構わない。むしろ、サクっと落として しまうことも十分可能ではないかと思います。 ○竹下委員  私は従来からの意見を改めて申し上げたいと思います。この点は4分なのか5分なの か分かりませんが、少なくとも3分とか、そういう時間帯であれば、CPRも大事かも しれませんが、何といっても除細動するということが救命につながる最も大事なことだ という認識においては、どなたも異論がないと思うのです。そのことを強調しておきた いという文章だろうと私は理解しております。  そういう立場から言えば、いまの文章は残していただきたいと思いますし、その上の 文章「迅速な電気的除細動だけを行った場合にもある程度の効果が認められる」と、こ の「ある程度」というところに私は引っかかりを感じます。ある程度ではなくて非常に 大きな効果が短時間であれば認められています。カジノにしろ飛行場にしろ、すべて除 細動を早期に行われたために、50%、70%という救命になっているのだろうと思いま す。  昨年の『サーキュレーション』の8月号に出ているイタリアのコミュニティの成績で もCPRを全く行っていない、AEDだけの成績で3倍から4倍ぐらい蘇生率が高くな っています。3.3%が10何パーセントになっています。これは非常に大きな効果だと理 解したいと思います。 ○鈴木委員  私は三井委員の意見に賛成です。この部分については、いわゆるBLSとAEDが一 体化して進むことが重要だというのが、多分、今までの検討の中での共通認識であった と思います。だからこそ別紙が出てきたのだろうと思います。竹下委員のお話のよう に、CPRをやっていることによってAEDの使用が遅れてはいけないというのはごも っともですが、先ほど三井委員が指摘された6頁の部分は、BLS講習のほうに力点が 置かれてしまってAEDが疎かになってはいけないという書きぶりなので、これは趣旨 が少し違うのではないかと思います。やはりBLSと併せてAED使用の普及を図って いくという基本のことを述べていただくことが妥当ではないかと思います。 ○島崎座長  竹下委員が言われるのは、上にAEDに関わる効果は認められているのだということ ですから、私も、あえて同じことをもう一度強調している、前回までのディスカッショ ンの中で強く言われたことがここに反映され、「そのため」以下の文章になっているの だと思います。私自身も心肺蘇生処置の修得とともに除細動の普及は必要だ、という文 章にしたほうがいいように思います。三井委員、鈴木委員からはそのほうがいいだろう と、竹下委員は、少なくともこれは必要だと。これは考え方ですが。どうでしょうか。 同じものをどちら側から見ることによってかなり話が違っているのですが。 ○五阿弥委員  私は残しておきたいと思っていますが表現が分かりにくい所がある。要するに心肺蘇 生処置の修得の必要性、ここに力点を置かれるのは困るわけです。つまりAEDファー ストではなかったのでしょうか。私たちがこの場でいろいろな発表を聞きましたが、A EDファーストの考え方をいかに定着させるかという話ではなかったかと私は理解して いるのです。講習の必要性というのは、繰り返しますが私も認めています。ただ、そこ にあまり力点をかけ過ぎると本来のAEDファーストがぼやけてしまう。あるいはファ ーストにならないようなことがあっては困ると思っています。ですから、できるだけ多 くの国民が「救命の連鎖」に加わってくれるような報告書にしてほしいわけです。 ○島崎座長  そうなのですが、心肺蘇生法の文章として、修得の必要性が強すぎるからAEDの普 及が阻害されるというのは別の話で、ちょっと理論矛盾があり、関係ないのですが。 ○五阿弥委員  「ある程度の効果が」を「かなりの効果」に表現を直して、その上で、この下にもう 1つ付ける。 ○島崎座長  「ある程度」を取って、それで下の文章、いま言ったCPRも重要だが体外除細動の 使用がそれによって阻害されないように、「力点を置き過ぎることによって」というの は必要ないと思います。「ある程度」の上を取ってもいいですね。「場合にも効果が認 められる」と。 ○三井委員  私は要らないと思います。これがないことで竹下委員が懸念するような心肺蘇生処置 がAEDをすごく凌駕してしまうことはないのではないかと思うのです。 ○島崎座長  私もそう思いますが、意見としてそういう意見がこの前から強く出たのを事務局とし て汲み上げられてこういう文章になったのです。 ○渡延指導課長  3の○の2点目の所、(1)以下の講習の具体化の手前の検討経緯というか、この講 習を具体化するに当たって示された2つの考え方の流れをコンパクトに提示するという 所ですが、この2つ目の所に直接ぶら下がって、「との考え方に立ち、以下のとおり具 体化」になっているものですから、いろいろ障りがあるのかもしれません。あるとする ならば、かつ、五阿弥委員からご提起がありました、ここの所に先ほどの第2の3のヒ ョウシツを引いてくる分が加わるということになれば、例えばですが、2つの考え方の 流れを端的に書くという意味で、○の2点目の所は、これはこういう考え方もあるわけ ですから、力点を置き過ぎることによって、この表現を一旦置くとしても、「意欲を損 なうことのないよう留意する必要があるとの考え方がある」と一旦切って、「以上の考 え方を総合し、かつ、何々何々の要素も含めて以下のように具体化した」と3つ目を起 こしてまとめたらいかがでしょうか。 ○島崎座長  そのほうがいいでしょうね。そういう形での文章に直してもらってよろしいですか。  一度書き直していただいた文章を皆様方にお見せし、それをまた訂正していただくと いうことになると思いますが、一応そういう形にしたいと思います。 ○鈴木委員  この部分はかなり医学的な面が強いと思うのです。私ども救急活動をやっている中で バイスタンダーが心臓マッサージをやっていた傷病者のほうが、除細動をかけた時の心 拍再開率が高い結果となっています。除細動をかけた後、フラットあるいはPEAにな った患者に対しても、やはり心臓マッサージをやったほうが心拍再開率は高いという認 識の下で活動していますが、そうした意味からもBLSと併行してやるべきだと言って いるわけです。これは医学的な立場から見てどうなのでしょうか。 ○島崎座長  それはBLSをきちんと修得した人がやったほうがいいと思いますし、皆さんもそれ で反対ではないと思います。ただ、それに重点が置かれてAEDの普及ができなくなっ ては困るという意見が、こういう形で出ていると思うのです。本当は関係ないのです ね、BLSとAEDの普及。BLSを一生懸命力点置いたからAEDの普及が遅れると いうのは、理論的には無関係だと思いますが、そうは思われないのですね。 ○竹下委員  そのようなことはないと思います。BLSの重要性は十分認識しています。しかし、 除細動だけで救命できる例がたくさんあって、また、除細動でしか助ける手段がない、 除細動が最も効果のある手段である場合がたくさんあるわけです。特に3分、4分だ と、おそらく大部分がそうだと考えるものですから、そのことを強調したいと考えるわ けです。  CPRが先生方のご努力によって日本でも急速に普及してきているということも承知 しておりますし、その重要性を否定するものではないのですが、だけど、それだけでは 救命率がせいぜい5%にとどまっていることも事実です。心停止後短時間であればAE D使用により救命率を飛躍的に高めうる可能性があるわけですから、その点を強調すべ きだと考えます。 ○島崎座長  だけど、逆にCPRを行うことによってスタンドスティールがVFなりに変わること がありますから。だから、それがなしでこれだというのと、全然話が違うものが重心の 置き方によって、いろいろ考え方が変わってきているようなところがあって、本当は文 章自身は関係ないのですけどね。 ○鈴木委員  私ども消防機関でいうならば、年間100万人の救命講習を全国で実施しています。そ のBLSと合わせるというのは、むしろAEDの普及に直結しているものだと思ってい るわけです。これは日赤のやっている内容も同じだと思います。そういうときに、ここ で言っているような「そこの必要性に力点を置き過ぎることによって」という表現にな りますと、一生懸命やっている部分のBLSを、何かこの言葉が否定していないかとい うことの懸念があるわけです。ここは慎重にお願いしたいと思います。 ○島崎座長  別紙に入っていますから。言われることはよく分かりますし、私もそう思います。 ○鈴木委員  是非、そのようにお願いしたいと思います。 ○島崎座長  では、この辺で打ち切りたいと思います。続きまして、第4、「国民の理解の促進と 広く社会に普及するための対応」についてのご意見をお伺いしたいと思います。 ○野々木委員  実際にAEDを発売して購入する場合、公共の施設、あるいは地域のどこに置くかと いう議論になってくると思うのですが、一般の方々が家庭で購入したいということがあ ったとき、ここで「備え付けている施設を明示したい」と、書かれているのですが、一 般の方が購入するということは想定されていますでしょうか。是非とも、ハイリスクの 方には購入していただきたいと私は思っていますが、そこはどう扱いますか。 ○島崎座長  血圧計を売っているように買えるのかどうかということですが、医薬品の許可を受け た者は一般に売り出せることはできるのですか。 ○渡延指導課長  薬事法の承認を取っている医療器具を非医療資格者が購入すること自体は禁じられて いないです。一般の方が買って持つことは可能なはずです。事務局の立場で勝手なこと を申し上げれば、もともとこの検討会自体はAED自体を社会に広げるという思想で始 まった、AEDという機器自体は当然高価なものであるから、実際のところ心疾患が起 こるのは家庭内が多いというデータもあるようですが、より開かれたところで多くの人 に使っていただく、そのために普及をしようという思想で大臣の国会答弁から始まっ て、この検討会も立ち上がっております。正直なところ、一般家庭内での使用はあまり 視野に置いて考えておりませんでした。今回の第4以下の所も、必ずしもいまご提起が あったようなものは念頭に置いておりません。また、ここまでの議論の中でもイメージ 的にも論じられてこなかったように記憶しております。 ○島崎座長  基本的には、それを制限できないということなのでしょうか。 ○丸川委員  PADはAHAのガイドラインの思想に沿ってやっているわけですが、AHAのガイ ドラインではレベル1、2、3に使用者を分けており、レベル3が一般家庭の人になる わけです。この答申の中で、一般家庭の使用者を含めないなら、なぜそうしたかを説明 しないといけないですね。なぜ除外しているかを説明することは難しいと思います。含 めたほうがいいと思います。 ○島崎座長  今まで意見が出なかったし、そこまで考えていなかったからではないですか。 ○丸川委員  最初に非医療従事者の定義の話のところで、おやめになったと思います。 ○島崎座長  いま課長が言われたように、購入するのは法的に間違っていないのなら、それでいい のではないですか。ほかにはいかがでしょうか。  それでは、第5、「おわりに」に進みます。いかがでしょうか。本検討会は4回にな りますが、書かれている内容は一般的なことですが。 ○三井委員  部分的ですが、2カ所「安心安全」という熟語が出てきます。逆もあると思うのです 「安全安心」という言い方も。これはどちらが前になっても言っていることは同じだと 思えばいいでしょうか。なぜかと言うと、私自身「安全安心」という語順をよく見かけ ることが多いものですから。 ○五阿弥委員  論理的に考えると、安全を確保した上で安心が出るわけです。要するに科学的なもの が積み立てられた安全で、それで安心という今度は気持の問題になってきます。 ○島崎座長  それでは「安全安心」ですか。 ○渡延指導課長  高齢化という文脈で論じる場合には、少子化の不安というのは、必ずしもその人の身 体生命に危険が伴うというものではなく、むしろメンタルなところも含めて。文脈で解 き起こすときには「安心安全」というストーリーも当然あり得る。これは官庁文学の1 例として申し上げただけですから、これはこの検討会で、皆さん方の総意でまとめるべ きものです。 ○野々木委員  「おわりに」の所に入れていただきたいのは経済評価、要するにコストベネフィット の観点を今後の課題として入れていただきたいのです。AEDを例えば公共の所に置く ときのコストとか、救命率をいまの5%から10%に上げた場合には非常に経済的なイン パクトが大きいと思うのです。それと講習をし、AEDを設置していた場合費用を費や すこととのコストベネフィットに関しても今後の検討課題である、ということを提言の 中に盛り込んでいただくようにお願い致します。 ○島崎座長  経済的な効果、あるいは、国民全般のメリットというようなことを盛り込んでくれ と、今後検討するということですね。 ○野々木委員  そうです。 ○島崎座長  そういうことも含めたものを今後検討していくと。AEDを導入することによって、 そういうことを検討していくようなものを作ってほしいと。  「おわりに」は、これでよろしいですか。では、今回各委員からいただいた今までの 意見を踏まえ次回の検討会にと。報告書はどういたしましょうか。 ○渡延指導課長  これまでの検討を通じて報告書骨子(案)に対してご意見を頂戴いたしました。事務 局の立場で今まで頂戴したご意見のうち、表現にわたるもので、具体的な書きぶりまで 含めてご意見を頂戴したものは、そのまま取り入れは可能です。エビデンスとの関係で 文献に当たって入れるところ、これは座長あるいはご提起された委員に確認いただくこ とで固めることは可能と思っております。  全体として概ね、この骨子(案)の方向に沿って取り入れる、可能な形でご意見を頂 戴したように考えております。委員の先生方、概ねご意見の集約、寄ったというご認識 をいただけるのであれば、後は修文をし、座長に一度ご点検いただいた上で各委員の再 点検を経て、最終的にフィックスするという形をとれば、お忙しい委員の皆様方に再度 マルチでお集まりいただく労を省けるのではないかと考えております。 ○島崎座長  今回のディスカッションの中身を取り入れていただいたものを私と皆様方にお送りい ただいて、それを持ち回りのような形でチェックし、再度お配りしてという形になりま すね。 ○渡延指導課長  はい。 ○島崎座長  この検討会自身は、これで終了するという形になりますか。  その前に「その他」は、特にありますか。事務局では、その後、特に用意されておら れませんか。 ○渡延指導課長  はい。 ○島崎座長  では、本検討会でご意見いただいたものを、いま言った形で集約し、もう一度委員の 先生方にお送りし、報告書として取りまとめるということにさせていただきます。去年 の11月から長期間にわたって検討していただきましたが、局長がおいでになりましたの でご挨拶をお願いしたいと思います。 ○岩尾医政局長  いま島崎先生のほうからもありましたが、半年にわたりまして、4回にわたり非医療 従事者におけるAEDの使用のあり方ということで、おまとめいただけたようにお聞き しております。この間、体外式の除細動器の問題は社会問題にもなりまして、いろいろ と先生方にも精力的なご意見を伺って、いい方向が出たのかなと思っています。詳細に ついては後で課長のほうからお伺いさせていただきますが、とりあえずは、島崎座長は じめ先生方に大変ご苦労かけましたということと、この間いろいろとご指導いただきま してありがとうございました。御礼を申し上げます。 ○島崎座長  昨年の11月から長期間にわたってご検討いただいて、各委員の皆様方本当にありがと うございました。これでこの検討会を終わらせていただきます。どうもお疲れさまでご ざいました。 ○渡延指導課長  発表の時期については、事務局から各委員にご連絡を差し上げるようにいたします。                   ┌───────────────────┐                   │<連絡先>              │                   │  厚生労働省医政局指導課      │                   │   Tel 03-5253-1111        │                   │    宮本(ex2554)、中田(ex2559)│                   │   Fax 03-3503-8562        │                   └───────────────────┘