04/03/30 労働におけるCSRのあり方に関する研究会第2回議事録         第2回 労働におけるCSRのあり方に関する研究会                        日時 平成16年3月30日(火)                           13:00〜15:00                        場所 厚生労働省第24会議室 議題 ・SRI調査機関による評価システム等についての説明 ・労働におけるCSRを検討するに当たっての論点 ・第3回研究会において行うヒアリングの項目(案) 出席者  委員    足達 英一郎 日本総合研究所創発戦略センター           上席主任研究員    阿部 正浩  獨協大学経済学部助教授    安生 徹   経済同友会常務理事    小畑 史子  京都大学地球環境学堂助教授    佐藤 博樹  東京大学社会科学研究所教授    谷本 寛治  一橋大学大学院商学研究科教授  ヒアリング    筑紫 みずえ (株)グッドバンカー代表取締役 厚生労働省    青木政策統括官    草野労働政策担当参事官    中井職業安定局雇用政策課長補佐    妹尾職業能力開発局総務課長    石井雇用均等・児童家庭局均等政策課長    堀江労働政策担当参事官室政策企画官    千葉労働政策担当参事官室室長補佐    矢野経済産業省産業技術環境局標準課課長補佐 ○谷本座長  ただいまから、第2回「労働におけるCSRのあり方に関する研究会」を開催いたし ます。本日の議題は、最初にCSR、SRIのいまの状況について、委員の方々を含め て理解を深めていただく意味合いにおいて、SRIの調査機関からのいろいろな評価シ ステムについて説明をしていただくために筑紫さんに来ていただきましたし、手元に資 料も用意いたしました。そういう評価項目について、特に労働の部分に関して、国内外 でどんな指標で見ているかということは非常に重要なポイントになります。ただ、こん な機関がこんなことをやっていて良いとか悪いとかではなくて、いま求められているも のがあるからこそ、そういう評価の基準が出てくるわけです。全く突拍子もない話でも ないわけです。  次に、事務局から前回1回目の研究会の検討結果を踏まえ、6月を1つのエンドにし てこの研究会はやっているわけですけれども、私どもといろいろ話をして論点を整理し ていただきました。それを説明していただいた後、後半3回目以降について、私たちは どのようにこの問題を位置づけるのか、どう理解していくのかを議論したいと思ってお ります。  最後には、3回目の研究会のヒアリングの質問項目等について若干議論したいと思い ます。日程上、何回もたくさんの方に来ていただいてヒアリングができるというわけで はありませんので、かなり大きな枠の中でこういうことを聞きたいのだということを、 皆様のご意見をいただきながら検討したいと思います。  最初の議題は、SRIの調査機関として、株式会社グッドバンカー代表取締役社長の 筑紫みずえ様においでいただいておりますので、筑紫様から説明をお願いいたします。 ○筑紫氏  皆様こんにちは。株式会社グッドバンカー代表取締役の筑紫です。本日はよろしくお 願いいたします。私どものグッドバンカーというのは、1998年7月14日にできまして、 SRIの専門の投資顧問会社として、日本で最初の独立経営の投資顧問会社として発足 いたしました。  日本のSRIの最初の商品として、日興と日興エコファンドを商品化した会社です。 その後、環境の一部としての人間のあり方ということもあり、もう少し社会的な側面を 加味したような、いわゆるCSR調査に少し受託しております。本来CSRについて は、谷本座長や、日本総研の足達委員が権威ですので、私がこちらでお話をするのは忸 怩たるものがあります。具体的に私どもがしている中でのケーススタディ的にご理解い ただければと思います。  私どもは、エコファンド以外には、東京都の教職員の互助組織の年金に互助年金とい うのがあります。互助年金の運用の中で、年金として何百億円かあるわけですが、その 一部をということで、まず20億円にSRIのスクリーニングをかけて運用してみようと いうことになりました。これはエコだけではなく、会社のコーポレート・ソーシャル・ レスポンシビリティとCSRは何だとか、企業が社会的責任としてこういったことをや ってほしい。でも、それは互助会が教職員の方の互助組織であるという性格に沿ったク ライテリアということで、これはテーラーメイドということです。  本日は、口頭で説明させていただきますけれども、テーラーメイドですので秘密保持 契約を私どもはきちんとやらされますので、書かれたものを外にお配りすることはでき ません。互助会のクライテリアについては、企業の教育訓練、しかもそれが従業員の競 争力につながるような教育訓練をきちんとしているかをとても大事に考えていました。  例えば女性における雇用の差別、トレーニングの差別といったものがないかというこ とで、社内外の教育制度。そして教育制度の中で、クライテリアでは従業員に対する教 育支援制度、キャリア形成・能力向上支援制度、自己啓発支援制度、留学支援等です。 社外に対する教育支援というのは、奨学金、インターンシップなど社外の教育関連の支 援をしているか。  従業員にとっては、仕事と家庭の両立、働きやすさ。教職員が子供を教育の現場で見 ていても、教育をしていく中で家庭のあり方と子供の関係を考えると、仕事と家庭の両 立ができるようなことを従業員に対してすることが社会的責任ではないか。こういうこ とを、私どもと、実際に運用する所といろいろ話をしています。  従業員の支援といっても、いまの中で、どういうあり方が従業員に対してのエンパワ ーメントといいますか、その人たちを強くしていくということなのか。それは、いまの ように終身雇用制が崩れていく中でどうなのか、ということをお互いにいろいろ話をし たり、海外の事例等を差し上げて、クライテリアを作るのは実際に運用をする年金にな ります。その方たちに対して、私どもグッドバンカーとしては、クライテリアを作れる ようにいろいろな情報の収集をしてやるというのが私どもの役割です。  それ以外に、私どもで広い意味でのCSR調査というのは、外国の調査機関、外国の 金融機関、調査機関を通した年金基金から、日本企業のCSRについての調査の依頼が 来ています。そういったものを受けておりますが、それもグッドバンカーとして日本企 業のCSRはこうだ、ということを謳っているわけではなく、実際に運用をするお客様 から見たCSRとは何か。そのクライテリアはお客様から来ます。  その例として、昨年1月から担当している、イギリスのEIRIS社のリサーチについて 資料をお持ちいたしました。私どものCSR調査というのは、東京都教職員互助会のた めのテーラーメイドのもの、イギリスのEIRIS社、それからスイス、オランダ、フラン ス、ベルギーといった所に対してスポットでといいますか、単発的に調査をしてくださ いというものが来ます。あるいは、継続的に、海外のお客様に対してCSRの調査をし ております。  EIRIS社というのは、イギリスの年金運用の上位25社のうち17社に対して、CSRの 情報を提供している調査会社です。こちらは、ファイナンシャルタイムズとロンドン・ ストックエクスチェンジが一緒に創ったFTSE4Goodというのがあります。そちらに対し て、世界中の企業のデータを提供しております。  日本企業に関しては、私どもで調査をしております。日本企業がFTSE4Goodだけでな く、EIRIS社は日本企業の467社をカバーしておりますが、それは私どもで担当しており ます。AIRI社のリサーチに関しては、100以上の評価項目があります。それは環境であ り、企業統治であり、多様なステイクホルダーとの関係、人権、サプライチェーン、そ の他ということです。  EIRIS社の場合には非常に変わっていて、EIRIS社というのはデータベースを販売して いる会社です。ですから、CSRについてのたくさんの項目について、私どもはこれに 沿って日本企業の情報を全部インプットしていくわけです。そこで、私どもがこれがC SRだということではなくて、向こうが、これがCSRとして必要な情報なので、これ を調べなさいということが来るので、それについて私どもは東京からインプットいたし ます。  それに対してEIRIS社は、運用会社や年金といった方たちがそのソフトウェアを買い ます。レベル1だとこういうものといった大項目をちょっとだけ入れます。そうする と、それにふさわしい日本企業が出てきます。レベル2でもっとお金をたくさん払う と、今度はプロファイルが出てきて、もっと詳しいものが出てきます。レベル3でうん と高くなると、すべての情報が出てくるということでやっています。  ですから、人によって自分が考えるCSRはこれだ。例えば50%が環境で、そのほか のソーシャルな、例えば人権の部分が30%で、ほかのエシカルな部分が10%でというこ とを自分でクリックすると、それにふさわしいものが出てくる形になっています。  もちろんここのリサーチの中の評価項目に、どうしてこんなことを聞いてくるのだろ うということが多々あります。その度に、私どもとロンドンの者がやり取りをして、こ れはどういうことを言っているのだということを聞きます。そこで、これは日本企業に ふさわしくないと思うという話はします。私どもも、なぜこういうものがあるのかとい うことについて彼らとのコミュニケーションはあります。私たちは、これは外すべきだ と思うけれども、この情報が欲しいお客様がある限りにおいて、これは調べられれば調 べてほしいということでやっております。  日本企業の場合、ここにこういうものがあって、こういうものを評価してもしようが ないのではないかという話というのは、アナリストがロンドンへ年2回ぐらいは訪問し ます。そしてアナリスト同士で話をしますので、いずれそれは考えるとか、この次はク ライテリアを変えるかもしれないから、そのときにはまた意見を聞きたいということが あります。  しかし、基本的にグッドバンカーのCSRということではなくて、EIRIS社のCSR なのですが、EIRIS社はたくさんのお客様に使ってもらうために、非常に広範なクライ テリアを出す傾向があります。EIRIS社の顧客がFTSE4GoodでFTSEという指数会社で あったり、大手の運用機関、年金基金など約80社と言われております。最近では、アイ ルランドでもいくつかの運用会社がこれを使うようになったという知らせがありまし た。  EIRIS社はこうなのですけれども、フランスのSRIの会社や調査機関が、私どもに 企業の情報が欲しいというときには、「やはりアングロサクソンとは全然違うよね」と 彼らは言います。また全然違って、大事なものは人権や雇用の問題だったりします。フ ランスの調査機関と話をすると、企業の社会的責任のトップに普通は環境なのですけれ ども雇用が出てきます。  フランスの企業でも、CSRについてプレゼンテーションをするときには、いかに雇 用を守りながら自分たちの経営の効率化を図ったか。ひとつもレイオフしなかったの だ、ということを滔々と言うのがフランスの企業ですから、フランスの調査機関もそう いったところを非常に大事にしたり、細かく聞いてきます。  スイスはまた違いますし、オランダも違うということで、私どもはその都度自分たち のCSRはこうだと言うよりも、あなたにとってのCSRと。それぞれ違う所で、こん な質問をしても意味がないのだ、日本の企業にこんなことをしても、これでは競争力に はつながっていない。つながるとすればこれなのだみたいなことは、コミュニケーショ ン・レベルではやっておりますので、あちらのほうから「今度からそれを見ることにす る」とか、「お客様と話しながら、このクライテリアは変えるかもしれない」というよ うなことはお互いにやり取りはあります。  オランダの調査会社から、あるいは金融機関からCSRが来たら、彼らから自分たち が考えるCSRはこれだというリストが来ます。スイスの場合も、スイスの人たちが自 分たちのクライテリアというものが来ます。そういう意味で、私どもとしてはCSRに ついて、ヨーロッパの中でも一つひとつの国が違うのだ。それから、CSRの考え方が その国の歴史や文化に根ざしているかということが非常に勉強になりますし、考える毎 日です。  私どもは、日本企業に対して何でこういうことを聞いてくるのだ、EIRIS社の場合に はアンケートという形でしていますが、他の所では企業の所へ行ってヒアリングをして ほしいとか、電話でヒアリングをしてほしいということがあった場合には、なぜこうい うことを聞いてくるのかとか、調べているところはこういうところですよ。そして、こ れぐらいのお金を運用していて、この中で日本企業というのはいままでやっていなかっ たけれども、日本企業を入れることになったので、それで調べているのですと。運用が どれぐらいあって、その中で日本株にこれぐらいやっていきたいと言っている。そし て、こういう所ですと。こういう所だから、こういう所にとってのCSRが大事なので す。だから、こういう質問が来たのです。しかし、お答えしたくないとか、こんなのは 馬鹿らしいということがあれば、是非そういうふうにおっしゃってくださいと言うと、 実際におっしゃる所もあります。  例えば、児童労働をさせていますか、強制労働をさせていますかというような、アン ケートの馬鹿馬鹿しさというところに、日本企業は非常に気を悪くするのが多いです。 いまは十把一絡げでこういうものなので、怒らないで「していません」と答えればいい のだということがわかるのですけれども、最初のころは法令遵守していますかと言われ て、していないという所がどこにあると思うんだ。こんな馬鹿な質問をしてくるような 調査会社は馬鹿である。馬鹿とは付き合いたくない。自分たちは忙しいんだ。あなたと 30分なり1時間なり会ったら、自分はあと1時間働かなければいけないのだ。  だから、自分の時間を無駄にするなと言われてしまいますから、そう言われないよう に会っていただくということは、時間を取っていただく、お話を聞くということは、そ の時間を取っていただくということなので、そこの場でこういうふうなことなのです と。御社の同業他社であるヨーロッパの何とか社というのは、こうこうこういうふうに していらっしゃいますということで、少しでも調査を受けていただくお客様(企業) が、調査を受けたことで得をした、世界の大きな流れや、同業他社が何をしているかと いうことが多少わかったので勉強になった。だから調査には応じてあげる、と言ってい ただけるような関係をつくるようにアナリストを育てているつもりです。  EIRIS社の場合のフィードバックというのは、実際に私どもがインプットした後、例 えばこれを見ていただきます。それは英語なのですけれども、御社についてこういうふ うにインプットして、それから以前インプットされているというのもあります。そうい ったものも全部見せて、これは違うということがあれば、これは違うと言っていますと いうことで、それはすみませんでした、これが正しいのですね、これでいいですね、と いうことで向こうには送っております。以上が、私どものCSRの極めて形而下的とい いますか、日々やっていることです。 ○谷本座長  ありがとうございました。いまのご説明で皆様ご理解いただけたと思うのですが、グ ッドバンカーさんは投資顧問会社です。  筑紫さんのお話の中にあった、アングロサクソン系から見たときの労働や雇用に関す る質問項目、それは彼らの前提になる社会があるわけです。もちろん、日本の中にもい ろいろな働き方についてとか雇用のあり方については伝統がある。それは、良い意味も 悪い意味もいろいろ含めてあるわけです。事務局にお願いして作った資料があるので、 この資料の説明をしていただけますか。 ○千葉労働政策担当参事官室室長補佐  資料2ですが、先ほどEIRISリサーチの調査分野の紹介もあったわけですが、全くの 参考までにということで、ほかにもパブリックリソースセンター、日本総合研究所、ス イスのSAMサスティナビリティ・グループ、さらには直接調査会社というわけではあ りませんが、経済同友会においても、これにかかわり合いがあるような事項として企業 評価基準を出されております。それについて、社会の中でも、特に労働に関してどのよ うな項目を打ち立てられているかを簡単にご紹介させていただきます。詳しくは、後で このペーパーをご覧いただければと思っております。  例えば、パブリックリソースセンターにおいては、雇用の維持・確保、人権の保護、 人材育成・キャリア支援、仕事とプライベートライフの両立、労働環境・健康管理、社 員の経営参画、社員のボランティア活動・市民活動への参加促進といったものが調査項 目として掲げられています。  日本総合研究所は、具体的に言えば人材の育成支援として、エンプロイアビリティ、 ファミリー・フレンドリーの関係、安全・衛生や健康の問題、女性管理職比率、高齢者 ・障害者等の取組みといったことが調査項目として掲げられております。グローバル市 場へ的確に対応していく観点から、海外事業場における状況等についても併せて聞かれ ているところが注目されるかと思います。  スイスのSAMサスティナビリティ・グループですが、この調査機関は国内のあるフ ァンドの調査機関という位置づけにもなっています。児童労働、強制労働というよう に、どちらかというと私ども日本から見ると、ちょっと違和感を覚えるような項目も中 には入っています。人材育成、従業員の満足度に関連して不満かどうかを把握している かどうか、満足度が上がっているかどうか、といったことなども項目として挙がってい るところが注目されます。  経済同友会は、人間という項目、社会という項目で、(仕組み)と(成果)に分けて いくつか評価基準を打ち立てられております。機会均等の取組み、社内公募の状況、教 育・研修プログラム、ファミリー・フレンドリーな職場環境を実現しているかどうか、 働きやすい職場環境を実現しているかどうか、従業員のボランティア活動を支援してい るかどうかといったことが評価項目として挙がっています。補足説明は以上です。 ○谷本座長  いま、パッと見てすべて理解できることはないと思うのですが、チラチラと見ていた だきたいと思います。国内の評価機関が2つ、スイスのSAM、同友会の自己評価シー トとして去年出され、年末には集計がなされました。  最初に私が申し上げましたように、SRIの評価の人たちがどんな項目を出している かというのは、彼らの趣味で出しているわけではなくて、その市場社会が求めている項 目を出してくるわけです。いま、そういう目で企業が評価されつつある。彼らがそれを リードするというよりも、そこからすくい上げて評価にしていこう、こんな形で企業の 価値が測られているのだということ。  社会の中で、こういう項目というのは、かつてよりもっと深い意味を持って要求され るようになってきた。グローバリゼーションの問題の中で捉えなければいけないような 問題も出てきている。どんな項目で見ようとしているのか、ということを私たちの中で 理解することが大事だということが1つです。そのことについてもご意見をいただきた いと思います。  もう1つは筑紫さんも言われましたように、海外の評価機関が日本の企業を測るとき に、同じ項目を持ってくることが多いというか、普通はそうなのですが、それをどう理 解していくかということ。労働慣行も契約のあり方も違うのだ、というのはもちろん1 つあります。もう1つは、日本の企業もかなりグローバル化している。海外売上げ比率 を見ると、かなり欧米の市場に依存しているのではないかとなったときに、彼らの言う 指標を、「うちは日本の企業だからいいんだよ」と本当に言えるのかという問題もあり ます。  もう1つ言えば、前回足達委員も、この辺りは注意したほうがいいと言われたのはグ ローバル化の問題です。児童労働、強制労働については、確かに国内事業場において聞 かれると、ちょっと奇異に感じますけれども、いろいろな国の企業に聞いているときに は、そういうものは国内でもやっています。アメリカ国内では、結構スウェットショッ プというのは国内にいっぱいあります。移民とか難民とか英語をちゃんとしゃべれない 人たちがいて、必ずしも途上国の問題だけではなくて、アメリカの大都市の周辺にやや っこしい工場がいっぱいあって、そこでかなりはっきりとえげつないことをやっている 所もあります。  アメリカには、児童労働のスウェットショップはいっぱいあるのだけれども、日本に はないというふうに簡単に切れないこともあります。つまり、グローバルなサプライチ ェーンを展開している中で、海外における現地法人であったり、そこが契約しているサ プライヤーの中でそういう問題があったときに、あれはうちの問題ではないとは言いに くい状況が出ている。そういうこともひっくるめたら、単純に児童労働は違うと言えな いこともあったりします。  いま、私なりの視点を述べさせていただきましたが、そのようなことがあると思うの です。その辺りで特に最初の問題、2番目の問題については筑紫さんは現場で難儀され たり、説明に苦慮されたりしても、仕事の中で日本企業に説明しながらやらなければい けないという苦労をされておられます。委員の方々から、その辺りも含めてご意見、ご 質問をいただければと思います。 ○佐藤委員  いただいた資料で、日本の企業はどのぐらい情報開示しているかを伺います。10頁は EIRIS社で、回答198社、フル回答110とあります。項目は6頁にあるのですが、伺って 調べればわかるということ。ホームページ等で、EIRIS社の100項目でもいいのですけれ ども、回答した企業でいうと企業が公開している情報でどのぐらい埋まるのか。つま り、外から見て集められる情報はどのぐらいあるのか。特に、出ていない情報というの はどういうところなのか。もう1つは、調べに行っても出してくれない、いちばん抵抗 があるのはどこなのか。 ○筑紫氏  EIRIS社についてだけ私どもが調べているということはまだないです。この中でEIRIS 社の考え方としては、答えてくれなくても、公開情報で50%以上となったら、これでリ サーチはできたとみなすと言われます。 ○佐藤委員  6頁に100項目ありますが、向こうからこの会社を調べてくださいということで埋め ていくわけですが、まず公開情報で埋めるのですか。 ○筑紫氏  いいえ、先にアンケートを一斉に送ります。一斉に送っても答えなかったりします。 答えなくても、そちらのホームページを調べてとかいろいろやります。会社で公開して いる情報の中で埋められるものは埋めていきます。それで埋めて、50%以上になったら 調査したとみなしますということが決まっています。 ○佐藤委員  アンケートを送って、答えてくれにくい所はどこかということですね。 ○筑紫氏  それは、まだです。 ○佐藤委員  まだ、やっていないのですか。 ○筑紫氏  ええ。傾向としてはあります。環境などは答えてくれるのですが、人権や倫理といっ たところは答えにくいようです。 ○佐藤委員  アンケートということですが、100項目の中で実際上公開情報でどのぐらい埋まるも のなのですか。どこがより公開されていないのかという感触みたいなものはあります か。 ○筑紫氏  やはり、やっているのは環境です。しかし、人権、女性、障害者になると落ちるとい うのが感触です。そういう意味では、エコで優良企業のところが答えていただけない。 公開しているものでやってみても人権のところは特に女性と障害者のところは、私ども もいままでの経験的に感じたことです。ただし、それを項目別にということはまだやっ ていないです。 ○谷本座長  こういう評価機関が出すのも、環境、雇用、地域社会の関係、消費者対応とか4つ、 5つぐらいあります。かなり専門的になりますので、総務や広報だけでは答えられない ですから担当部署に配ります。いちばん戻りが遅いのは人事部です。ここは、いま筑紫 さんが言われたようなセンシティブな問題がいっぱいあります。日本でも、10年ぐらい 前から環境報告書という形で定着してきたので反応は早いです。 ○佐藤委員  私が関心があったのは、こういうことに先進的な企業というのは、調査が来る前に出 そうと。そういう所についていうと、EIRIS社というのは国際的にどのぐらいかわかり ませんけれども、こういう項目を見るとどのぐらい出しているのか。それでも、まだこ の辺が出していないということがわかると、少し議論の参考になるかと思ったのです。 ○筑紫氏  環境だけではないのですけれども、環境では世界トップレベル。いわゆるブルーチッ プなのに、雇用、労使関係、労働条件とあり、女性については非常に答えにくいです。 私どもは、こちらのお客様のクライテリアはこう、こちらのお客様のクライテリアはこ うということなので、同じ企業に対してたくさんの質問をすることもあります。例えば 女性の問題にしても、女性の担当者が、例えばワークライフバランスということで、育 児休暇をとか、男性も取れるか、実質どれぐらい取っているかというものに対して女性 の担当者が非常に怒って、こんなものは差別である。結婚だけが女の幸せではないと言 われて、私は理解を得るためにわざわざ行きました。それでも私の印象としては、女性 と障害者に対する部分はいちばん出さないという感じがします。 ○阿部委員  いまの点で、日本企業が社会性ということで、女性、障害者、雇用にあまり積極的に 開示してくれないということですけれども、ほかの国はどういう傾向にあるのですか。 ほかの国は、それでも情報公開されているのか、それともそうではないのかということ が気になるのです。 ○筑紫氏  私どもは、特にほかの国は調査していないのですが、一般的に調査機関同士で話をし たときに女性の問題があります。イギリスよりもヨーロッパのほうが雇用を大事にする とか、女性や障害者についてはもっとオープンにしていますし、取組みも進んでいると 思います。 ○谷本座長  基本的にはアファーマティブアクションがあったり、女性の管理職の割合は日本とは 1桁違います。 ○阿部委員  そういうことをお聞きしているのではなくて、実際にどのぐらい回答してくるのかと いうことです。 ○筑紫氏  ほかの外国の企業については、調査機関同士で話をすればわかるかもしれませんが、 それはまだやっていませんのでわかりません。 ○阿部委員  一般的な傾向としては、それに興味を持っている企業が多いということですね。 ○筑紫氏  興味を持っているというよりも、もうやっていて当たり前ということです。 ○足達委員  アンケートの件は非常に個別ですからわかりにくいのですが、報告書での情報開示と いうことで見ると、一部アメリカの先進的な所はそうですけれども、ヨーロッパの企業 は労働問題についての情報開示は非常に進んでいると思います。我々も、社名と何を開 示しているかというリストを過去に作ったことがありましたが、日本企業がマルが入ら ないところでも、欧米の企業はきちんと情報開示している、というような傾向はありま す。 ○谷本座長  アンケートでどれぐらいという話があって、EIRIS社ではなくてダウジョーンズのイ ンデックスで、トヨタという会社がかなり上位に挙げられたのだけれども、実はアンケ ートに答えてなくて、公開情報だけでやっていました。環境は素晴らしいのだけれど も、労働社会は弱いということでした。実際には、公開情報の中にそういう情報があま り出ていないからなのです。 ○佐藤委員  足達委員が言われた公開情報でどのぐらいというのは、アメリカと同じような日本の 企業と比較してどこが落ちているというのは、何か書かれたものがあるのですか。ヨー ロッパのいくつかの主要国で、あるいは大企業でもいいと思うのですけれども、その情 報の出し方がどうなのかというのを少し知っておいたほうがいいと思うのです。 ○足達委員  次回にでも公開できると思いますので、お持ちしたいと思います。 ○谷本座長  どんな形で書かれていますか。例えば、こんな法律があってとか。 ○足達委員  情報開示の項目で、ある・なしで○印と×印だけでやっています。そういう意味では 非常にプリミティブなものです。私も数少ない体験ですが、日本の企業の皆様とお話を させていただいたときに、雇用の問題、労働の問題はどうしても内の問題だと。日本の 企業は内と外を非常に峻別して、身内の問題だという感覚を非常に強く持ちます。 ○筑紫氏  人権などについても、意外とパーセプションギャップというのはものすごくあると思 いました。人権についても、例えば私がある企業を調査したときにある不祥事といいま すか、薬のラベルを間違えていたということで、瓶の中にほかの薬が入ってしまったと いうことがあったので、それをどう見ているか、これからどうするかみたいなことで調 査をしました。  そこの人たちは、もうちゃんとしていると。外国の調査機関の感覚だと、なぜこうい うことが起こったのだ。そういうことが起こったのですぐ外すということはないのです が、なぜそれが起こったのですか、責任者は誰だったのですか、その責任者はどうなっ た、今後これを起こさないためには何が必要か、ということをちゃんとやられましたか ということを質問しました。  誰がということは大体わかりました、誰に責任があったかというのは人事異動があっ たので、それで責任者は処罰されて辞めたかもしれないとおっしゃいます。でも、どこ の部署が責任を持って、誰に責任があったのかということというのは、みなさんにわか るようにするのですかと私が聞いたら、その人は血相を変えて、「とんでもない筑紫さ ん、なんてことをおっしゃるんですか。そんなことをすれば人権問題です」と言うので す。  「誰に責任があるということを明らかにして、みんながわかるということは、その人 に対して恥をかかせることになる。それは人権問題です。だから、組合が黙っていな い、だからこんなことは絶対にありません」と言われたときに私は、そうか人権という のはこれほど違うのだ。確かに人前で恥をかかされるということは、その人にとって は、その会社の中で生きていけないということなのです。私たちにはあまりそういう感 覚はないのです。外国の人は、自分は、ここでこういうふうに間違えた。しかし、人間 はみんな間違いをするのだ。二度と間違わなければいいのだみたいなことがあると思い ます。そのときに、非常に難しいと思いました。それで、こういう話を海外の投資家に フィードバックします。 ○谷本座長  足達委員が言われたように、内の問題だというのはあります。従業員の行動基準も、 最近でこそいろいろ倫理的な問題があったりして公開しています。私たちはこういう倫 理規定を設けましたということがあるのだけれども、従業員の規定というのは、別に倫 理だけではなくて、いろいろなものをひっくるめてコンフィデンシャルであるみたいな ことが結構多いです。日本の企業では、公開していません、見せてはまずいというわけ ではないのだけれども、特に外に見せるものでもないような感覚があります。 ○小畑委員  あまりまとまってはいないのですが、1つは環境については大変公開が進んでいるけ れども、雇用について、もしくは人権については今一つであるというのは、私も常日ご ろそのような認識を持っております。それはなぜなのかということですが、1つは環境 については企業がどのような態度をとっているかについて、社会が情報を欲しがってい る、関心があるということだろうと思います。  それに対して、会社内部の人事制度はどうなっているか、児童労働についてどうして いるかについて、日本の国民はあまり関心を持っていないということだろう。そうなっ てくると、環境については公開が進んでいるけれども、労働や人権についてはそうでも ないということが良いのか悪いのかという問題になって、それを変えるべきであろうと いうことになれば、それについて何らかの方策を考えるという話になっていくのではな いかということが1つです。  もう1つは、評価項目というのはどのような項目が適切であるかということは投資 家、それも世界の中のどこにいる投資家かによって、適当であると思われる項目は違う ということがわかりました。  消費者にとってはどうか、採用に応募する人にとってどうかというようなことを考え ると、適当な評価項目というのは、誰がその項目を見るかによって変わってまいります ので、その点を踏まえた議論が必要なのではないかということです。 ○谷本座長  特に今回のはSRIですから、個人投資家、機関投資家向けではあります。同友会の 評価基準で、特に労働のところがあって、2カ月ほど前にデータを公開されました。人 間のところに関してお気づきになったことがありましたら、皆様に紹介していただける とありがたいです。 ○安生委員  同友会の企業評価基準は、例えばグッドバンカーさんとかEIRIS社がやっているよう な、企業をCSRの観点から評価して格付するというものではありません。同友会は経 営者の団体ですから評価をするのが目的ではなくて、むしろ経営者としてどのようにC SRに取り組んでいくのか、どういうところに気づいてやっていかなければいけないの か、それを推進していくために目標を立てるというのが特徴で、同友会の企業評価基準 は、自己評価のためのチェックリストであり、いわば気づきの仕組みですので、一般的 な企業評価機関のものとは性格が違うわけです。  去年の春にそのような評価基準を発表し、夏にそれに基づいて同友会の会員のいる企 業に自己評価の実施をお願いしました。900弱の企業にお願いをして、回答率は26.1% でした。同友会の評価基準は、市場、環境、人間、社会、コーポレートガバナンスの5 分野から構成されていますが、本日の議論に当たるのは人間という部分で、主として従 業員との関係になります。従業員との関係が、なぜCSRの5分野のうちの1つになって いるかというと、同友会ではCSRの取組みをすることによって、企業の競争力が高ま る、他社との差別化につながることが重要なポイントであると考えており、先ほど言わ れましたように、まさに従業員をいかにエンパワーメントしていくかが非常に大切で、 単に終身雇用かどうかという話ではなくて、まさに従業員の能力を高め、いかに活用し ていくかという観点から取り上げているわけです。  自己評価の結果、人間の分野では、大きく2つの特徴・課題が明らかになりました。 1つは、人材のダイバーシティ、特に女性の活用について日本企業はまだまだであると いう点。女性管理職比率などについての目標を見ても、もともとの人数が少ないという こともあるかもしれませんが、なかなか高い数値にはなっていないという結果でした。 ただ、個別の具体的な取組みなどを書いていただいたのを見ていますと、まず人数を増 やさなければ駄目だということで、女性の採用について数値目標を持ってやったり、昇 格のところで数値目標を持ってやったりという取組みをしている企業があることがわか りました。  もう1つの特徴・課題はファミリー・フレンドリーに関する分野で、要するにワーク ライフバランスに関連する問題です。企業はいろいろな取組みをしている、法令を上回 る取組みもさまざまやっているが、自己評価の結果を見ると、それで十分だと思ってい るかというと、まだ十分ではないという評価をしています。これは裏返して見ると、こ れからはもっと取り組んでいきたいと考えていることを示しているのだと思います。  このようなことから申し上げますと、先ほど来お話がありましたように、いままでは 働くということは社内の問題だったので、情報公開もそんなに外に向けてはしていなか った。しかし、最近は働く人たちの意識も変わってきている、企業を選ぶ時も単に給料 が良いというだけではなく、企業を選択する時には、よしんばその企業を離れてもマー ケットで通用する力が付けられるかどうか、仕事を通ずる充実感や達成感はどうか、な ども重視するように働く人の意識が移ってきています。そういう優秀な人材を獲得する ためには、もっともっと自分の企業で働くことについてのポリシーや具体的な取組み を、外に向けてどんどん発信していかなければいけないという認識は、非常に高まって きていると思っています。  そうしたこともあり、環境報告書ということだけではなく、サステナビリティ・レポ ートということで、働くことを含めて積極的に情報開示していこうとする動きがありま す。それから、採用の時にもCSRの取組みを強調するといったことで、これから徐々 に取組みが高まっていくのではないかという感じでした。 ○佐藤委員  社会的責任投資ということで、投資家が投資するときに、その企業を判断するのに環 境や雇用の問題も含めて投資先を決めていく。投資家から見て、雇用について何か一定 の考え方を持って、その情報を得て投資先を選ぶということ。  もう1つは、先ほど小畑委員が言われたように、働く人にとって、つまり投資市場で の選択、そこで必要な情報を出すということですから、働く人たちが労働市場で会社を 選ぶときに必要な情報が全く同じなのか、別の視点が必要なのかということです。  同友会がやられたときの評価基準というのは、あくまでも投資家がということなので すか、それとも資本市場もありますし、消費市場もあるし、労働市場もあるときに、す べて必要な情報開示をしているというような所を評価するという発想なのかその辺はど うなのですか。 ○安生委員  同友会の評価基準には、投資家の市場はこういうふうに変わっています、働く人の意 識はこういうふうに変わってきています、ということを頭に置きながら、企業がそうい う変化にどう対応していったらいいかという面もありますし、さらには変化を少し先取 りして能動的に市場に働きかけていくという面の両方があります。  重要なのは、そういう変化に対応し、あるいは先取りをして、企業が競争力を高めて いくためにはどういうことを考えてやらなければいけないのか、ということです。こう いうことをやると、直接的に採用のところで良い人が集まります、という観点でやって いるわけではないのですが、結果的には同じことになると思います。 ○青木政策統括官  同じことを筑紫さんにお伺いしたいのですが、フランスでもいいのですが、外国で雇 用や労働を頭に描きながらいろいろ質問してくるというのはどういう観点なのか。投資 という意味なのか、あるいは帰依する宗派は高潔なほどいいという仏教を選ぶような観 点があるのか。行く行くはおっしゃったように、労働者を大切にすると、寄ってもって みんながやる気を出して、生産性が上がって投資に結び付きますよ、ということまで考 えて言っているのかどうかその辺を教えてください。 ○筑紫氏  それは、情報なのです。投資家がすごく多様だからなのです。日本の企業の環境対応 度が進んでいるからオープンにしている。環境対応度が進んだのではなくて、投資家が いて、どうもこれは潜在的に大きな投資家になりそうだ、企業は得しそうだからどんど ん開示をしている。それから、言われてみて開示をしたり、質問に答えてみたら、確か に環境対応をやるというのはそこでコストになるから結局損をするのではないかと思っ ていたし、いままでのファンド・マネージャーもそう言っていました。  環境対策はコスト要因だから、投資としてはネガティブだったのが、違う投資家が来 て、とにかくちゃんとやってくれれば投資すると言っている。言われたからちょっとや ってみた。そしたら、本当に省エネになるではないか。同業他社に対して競争力を持っ ていこうとなったときに、自分たちの事業活動の中で、環境負荷の高いところをどうや って減らしていくかということで競争していく。そうすれば投資家が来る。得するから やろうと思ったら、本当によかったというのがSRIだと思うのです。  そういう意味では、特にCSRになったら、これはなんとでも言えます。労働とかそ ういうことをオープンにしていけば得になるというファンドとか、そういう投資家が出 てくればすぐに企業はやります。企業ですから、それをやっているから損をしてもいい ということにはならないだろうと思って、一生懸命真面目にやると、多様性は競争力の 源泉ではないか、ちょっとマネジメントは難しいけれども、女の人がこんなにいる。い ままでと全然言葉も違う、しゃべっている言葉も違うから大変だけれども、ちょっと発 想が違うね。そしたら、ヒット商品ができたねみたいな形で、両方の良いスパイラルで 来たのだと思うのです。  そこのところは、誰が、どんなといったときに、例えばアメリカなどのSRIでは 1996年ぐらいの段階で、アメリカのAFL、CIOという日本の連合に当たる所が、 「キャピタル・ストラテジー・オブ・レーバーユニオン」という小冊子を作り、労働組 合系の年金の資金が、全アメリカの金融資産の3分の1である。自分たちがこの力を使 わないでどうするのだ。だから、労働組合に対して反労働組合的な所には投資をしない と言ったわけです。  そして、こういうことをもっと学ぼうではないか。いままでストばかりしていたけれ ども、もっと違うパワーがあるのだと言って、彼らが学び始めて、労働者を大切にしな がら、でも企業としても生産性を高めていくためにはどういうものがあるのだろうか、 ということで進んでいくのだと思うのです。どちらなのだと言われると、それは投資家 ではないでしょうか。 ○経済産業省(矢野)  いまの関係で私の少ない経験ですが、私は10年ほど前に環境をやったことがありま す。いま、日本の環境報告書は世界でも非常に高いレベルにあると思います。10年前の 日本には、そんなに環境報告書は出ていませんでした。社会も求めなかったし、企業も そういうものを作っても誰も読まないと思っていました。  私は、外資系の企業をいくつか見させていただいたときに、油をこぼしたらちゃんと 報告して、それを記録に残すというのです。どうしてそういうことまでやるのですかと 聞いたら、外資系の企業の方が、「矢野さん、どうしてそういう質問をするんですか」 と言われたのが10年前でした。  その後、日本の電気業界、世界でビジネスをやっている中でいろいろなものを学んで きました。先ほど筑紫さんが言われたように、意外とこういうことをやると省エネルギ ーにもなるし、環境で企業は意外と磨かれるのではないか。彼らも思っていたのでしょ うけれども、そこに気づいて、かつ小畑委員が言われたように社会が情報を求め始めた し、市場も求め始めて動いてきた。それにGRIの報告書などいろいろなものが出てき て10年ぐらいかかったのだと思うのです。  今回のCSRという本は、アメリカでは数年前から結構出ています。アマゾン.コム で検索してみたら結構出てきます。彼らは、わりと早めに企業自身、社会自身が知識社 会に動いていっている。優秀な人材を集めた企業のほうが得だということになります。 ちょっと昔であれば、人が多いほうがよかったのでしょうけれども、そういう社会にな ってくると、そのためにはどうしたらいいのだろうかということで、投資家もいろいろ なことで動いてきた。  特にCSRの場合は、まだまだ社会自身が情報を求めようとする力がまだ弱いような 気がします。特に日本の場合はNGOなりは欧米に比べて弱いです。その辺りが結構効 いているのではないかと感じています。 ○谷本座長  この辺りはもう少し議論したいこともあるのですが、予定の時間を半分過ぎてしまい ました。3回目以降についても、いまの評価項目がどういう内容であって、どういう背 景の中でこういうものが出てきたかを知った上で、次のことを考えていかなければいけ ません。事務局から、前回のことも踏まえて、次の資料として出てくる論点について、 この研究会としてどのような方向に向かって検討していくのかをまとめていただきまし たので説明してください。 ○千葉労働政策担当参事官室室長補佐  資料3、資料4、資料5、資料6についてお話いたしますが、特に中心になるのは資 料4です。最初に、資料3は「第1回研究会における主な御意見」ということで前回の 研究会において委員の皆様方から出された意見を項目ごとに整理したものです。これで 全部というわけではありませんし、重要な論点が落ちているというようなご指摘があれ ば教えていただければと思います。  労働に関してCSRを検討する視点に関わる指摘として、グローバリゼーションや負 の側面もあって、働き方、地域社会、移民の問題など90年代ごろから今までの大きな流 れを見ることが重要なのではないかということがありました。また、企業が法令以上の 取組みを行うこととした場合、ロジック、メルクマールとするものは何か等について整 理していくことが必要である。あるいは、人材や地域社会との関わり、企業経営の日常 プロセスをCSRという切り口で見直していくことも必要なのではないか。  地域社会との関わり、障害者を多く雇っている企業等社会的に意義のある企業をどう 評価するかといった問題指摘もありました。労働の場においては、障害者等多くの場合 コア人材にならない方がいますが、こうした方々を重視しなければならない。アジアの 国の中では長時間労働が逆に国の成長をもたらすと考えられている所もあり、国によっ て「労働」のとらまえ方はだいぶ違うといった意見。さらには、海外における日系企業 の雇用問題に対処していくことが重要ではないかといったお話があったかと記憶してお ります。  次は労働のCSR推進における政府の役割です。CSRは企業が中心となって自主的 に法令を上回る取組みを行うものであり、政府の役割は企業の自主的な取組みを支援し ていくことにあるのではないかという指摘がありました。それから、EU等ではNGO が規制の強化を迫っている一方で、企業側が自主的にCSRの推進を進めようとしてい て、まとまりがつかないというご紹介もありました。また、2頁。企業の中には法律以 上のことを先取りして実施している所もありますが、働く人や社会がどのように変わろ うとしているかを明確に把握しているわけでもなく、政府の役割は、こうした企業の先 取り対応にヒントを与えることにあるのではないかといった意見もありました。  労働におけるCSRを推進する方策ですが、労働市場におけるミスマッチが増大して おり、これを防ぐためには、求人票に書いてある条件以外のことも把握できるようにす べきである。働く人も企業を選べるよう、企業の情報開示を推し進めていくことは重要 なのではないか。投資市場や消費者市場だけではなく、労働市場においても情報開示が 重要であるといった指摘がありました。  従業員のやりがいに着目した施策はないだろうかということでは、最近は目先のこと ばかりが重視されて夢を持てないような状況になっていますが、やりがいを持って働け れば企業にとってもメリットになるのではないかという指摘がありました。  研究会の今後の進め方については、労働についてCSRを検討する意義を考えていく ことが必要である。取りまとめを行う6月までに、どこまで何を検討するのかを考える 必要がある等の意見がありました。  6月までというのは非常に短期間ですので、その中でどこまで何をやるのかというこ とです。1つにはCSRを労働に関して検討していく意義は具体的にどういうところに あるのか。それは日本社会の向かうべき方向や、そこにおける問題点と裏腹の問題もあ るかと思いますが、そうした点についてまず幅広に検討していただき、その後で政府と して労働のCSR推進に関してどういう役割を負うべきなのかという全体的な流れを検 討する。そして、具体的な方策として何が考えられるのかということになるわけです。 方策は後からいろいろ考えられるかとは思うのですが、個々の方策について細かく詰め ることを6月までにやることは、時間的にはかなり難しいかと思います。したがって、 6月までの段階においては、仮に政府が政策を打つとすればこんな政策の方向性が考え られるのではないかという流れを示していただければ、私どもとしては大変幸いに思っ ています。  以上のような考え方で今回、資料4で3点に分けて論点を整理し、提示いたしまし た。1番目は論点と言うよりも意義ですが、労働に関してCSRを検討する意義はいっ たい何なのかということです。  最初の所は、長時間労働などを背景として、勤労者の健康確保や家庭生活との調和を 図ること、知識社会を支える人材を育成していくこと、女性労働者がその能力を十分に 発揮できる雇用環境を整備していくこと、さらには従業員の社会貢献意識に答えていく こと、こうしたことの重要性が高まっているのではないか。したがって、労働に関する CSRを検討する意義も高まっているのではないかという問題意識です。前回の研究会 でも、海外進出企業が進展してきている中において、進出先においても従業員に対して 十分な配慮をする重要性が高まっているのではないかという指摘がありましたので、こ の点についても併せて書いております。  また、企業の重要なステークホルダーとして従業員、さらには就職希望者が含まれる かと思いますが、最近では就職希望者が各企業の情報をいろいろ集めて、どこに就職し ようかといったことを考えているという実情が強まってきている面もあるのではないか と思われ、こうした方々に対する企業の情報開示が一層進むようにしていくことが重要 ではないかという問題指摘です。  2番目は労働のCSR推進における国の役割です。企業が自主的に社会的責任を果た していくことがポイントになりますが、では国の主な役割は一体何なのかと考えます と、企業が自主的にCSRに関する取組みを進めるための環境整備を図っていくことに あるのではないかと考えております。そのような認識のもと、具体的な施策は何か。具 体的な施策と言うより、施策の方向性と言ったほうがいいかもしれませんが。労働のC SRを推進するための環境整備の方策の所で、CSR推進の主体が企業であることに鑑 みますと、労働におけるCSR規格を国が策定・認証するような施策を講じることは現 状において難しい面もあり、本来的に望ましくない面があるのではないかと考えており ます。  そうは言っても、先ほど申し上げたようなCSRを検討する意義を考えてみますと、 労働におけるCSRそのものは今後とも一層推進していく必要があるのではないかと考 えております。したがって、企業の自主的な取組みを推進していくための環境整備策は 講じていかなければならないのではないかと私どもは思っておりますが、その方策の方 向性として、これから申し上げるような事項を中心に検討を進めてはいかがかというこ とで、いくつかアイディアを提示しております。  1点目は、社会報告書などにおいて企業が労働に関して情報を開示することが望まし いと考えられる項目を提示していくことです。環境報告書は企業もだいぶ出しています が、社会報告書も最近出し始めている状況にあるのではないかと思います。こうした中 で「社会」の項目の1つとして労働というものは大きな要素を占めるかと思いますの で、労働に関してどういう項目が考えられるのかを提言していくことがあるのではない かということです。  2点目は、労働のCSRに関する取組みが実際にどこまで進んでいるのかを、それぞ れの企業が客観的に把握できる自主点検用のチェック指標を作っていくということがあ り得るのではないかということです。これはすでに両立支援指標等、部分部分では厚生 労働行政としての取組みが行われていますが、労働の中でこうした取組みが考えられな いかということです。  3点目は、労働関係の各種表彰制度があるわけですが、この表彰基準が必ずしも明ら かでないという声を聞くこともあります。表彰基準そのものはいろいろな所で個々に公 開していますが、それが体系的に、一覧性を持って提供できる形にはなっていないとい うこともありますので、その辺りを工夫していただくことが考えられるのではないかと いうことです。本日はこのような論点について委員の皆様方のお考えを教えていただけ れば幸いです。  資料5はタイトルが的確ではなかったかもしれませんが、これは企業に関わる義務・ 目標等の例と言うべきものです。前回の研究会で、労働の中の各項目について、企業に 関する義務や目標がどのような規定になっていて、なおかつ、それを推し進めるために どのような施策が講じられ、進捗状況がどうなっているのかを、簡単にでも、まとめた ほうがいいのではないかという指摘があったかと思いますが、それに対応して作りまし た。資料4について検討する際にも若干参考になるかと思いますし、労働のいまの状況 のアウトラインをつかんでいただくという意味でも有益だと思って作ったものです。  時間の関係もありますので簡単に説明いたします。資料5の3頁、労働時間について は40時間制、目標として1,800時間と言われていることは皆様ご案内のことかと思いま すが、これについては助成金の支給、所定外労働の限度基準を遵守するよう指導してい くといった施策を講じることによって推進しているところです。  4頁の現状で、年間の総実労働時間は横ばいの状況です。60時間以上働くような長時 間労働を行っている方については、30〜40歳代において比較的多くなっているという状 況が見てとれます。5頁に労働時間関係法令等ということで、関連する法令の代表的な ものを掲げてありますので参考にしていただければと思います。  労働安全衛生の義務・目標等の例では、労働災害防止や健康診断等を行わなければな らないのですが、事業者は安全衛生法で定める労働災害防止のために最低限の基準を守 るだけではなく、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならな いという規定もあります。  施策例としては、過重労働による健康障害防止のための総合対策を設けたり、メンタ ルヘルスに関して指針を設けたり、快適な職場環境を形成していくための指針を設ける といった策を講じているところです。  7頁で、労働災害の状況は長期的に減少傾向にあり、そういう点では非常に望ましい 方向になっているわけですが、その一方で「過労死」や「過労自殺」の労災補償状況が 逆に増える傾向も見られます。  9頁の障害者雇用ですが、障害者雇用率は法定で、民間企業は1.8%と決められてい ます。これ以上の障害者を雇うことになるわけですが、これについては調整金や報奨金 を支給して、障害者の雇用率が上がるような形でいろいろ手だてを打っています。  10頁で実績を見ますと、障害者の実雇用率の状況は、中小規模の企業でやや低下傾向 にあるということが懸念されるところです。  13頁の職業能力開発について。事業主は労働者に対して必要な職業訓練を行うことは 当然ですが、さらに、自発的な従業員のキャリア形成を援助していくことが柱になって います。そこで、キャリア形成促進助成金といった制度を設けて一部助成を行っていま す。なお14頁で、従業員の自己啓発に対して支援を行っている企業の割合が現状でどれ ぐらいあるかというと、大体8割程度という実態です。  16頁の女性雇用ですが、募集・採用、配置・昇進・教育訓練、一定の福利厚生、定年 ・退職・解雇、すべてのステージにおいて女性に対する差別を禁止している状況にあり ます。  ポジティブ・アクションについて。男女労働者の間に事実上生じている格差を解消す るための企業の積極的な取組みをポジティブ・アクションと呼んでおりますが、こうし たことを講じる事業主に対して相談その他の援助事業を行っております。17頁に企業の 取組みの実態等が書かれております。国際的に見てどうかというところはあるかと思い ますが、役職者に占める女性の割合は近年高まる状況にあるということが見てとれるか と思います。  19頁、職業生活と家庭生活との両立。育児休業と介護休業、それぞれ「子が1歳に達 するまでの間」「連続する3カ月の間」を限度とするということで法定されているとこ ろです。さらには、1歳から3歳に達するまでの子を養育する労働者については、育児 休業の制度に準ずる措置、または短時間勤務制度、フレックスタイム制度等の措置を講 じなければならないということになっています。  20頁で、施策としては両立指標をつくる、あるいは各種助成金を支給して後押しして いるところです。ちなみに男女別の育児休業取得率を見てみますと、女性について、平 成11年度に比べて平成14年度は上がっているという状況が見られます。  23頁は公正採用選考のところです。公正採用選考人権啓発推進員制度を設けており、 一定規模以上の事業所については推進員の設置を図っており、この推進員が核となって 人権啓発を行っているという状況にあります。私ども厚生労働省としても、雇用主に対 して、就職の機会均等を確保するため、公正な採用選考システムの確立を図ることがで きるよう指導・啓発を行っている状況にあります。  24頁のセクシャルハラスメントについては私どもも指針を策定し、相談・苦情への対 応、事業主の方針の明確化等を雇用管理上配慮しなさいといったことをお願いしている ところです。  ミスプリがあります。24頁、企業の取組みを促す施策例の2の(1)は、事業主のセ クシャルハラスメント防止対策についてのパンフレット配布による企業等への「周知」 ですので訂正していただきたいと思います。このような取組みを行っていることを紹介 させていただきたいと思います。  資料6は「厚生労働省における事業所等に対する大臣表彰基準について」ということ で、特にCSRに関わると思われる4つの表彰を挙げてあります。それが安全衛生、障 害者雇用、ファミリー・フレンドリー、均等推進企業です。まず安全衛生に関わる優良 事業場等表彰ですが、職業生活全般を通じて安全衛生教育が徹底されていること、死亡 の度数率が同業種の全国平均値と比較して低いといったこと等が表彰基準として挙げら れています。  障害者雇用優良事業所等表彰については、障害者を5人以上雇っていること、過去3 年間において障害者雇用率を達成していること等が表彰基準に該当します。  ファミリー・フレンドリー企業表彰については、法を上回る育児・介護休業制度を規 定していること等が基準となっています。  均等推進企業表彰ですが、これはほかの表彰制度と少し異なります。点数化している ことが特色かと思いますが、一定の点数を超えた企業について表彰を行うものです。具 体的にどういうところを点数化するのかというと、正社員に占める女性の割合の高低等 いくつかの項目があります。以上、大変駆け足でしたが、論点に関わる資料について説 明いたしました。 ○谷本座長  1回目から2回目までの時間が非常に短くて厳しいところ、こちらがお願いした資料 を的確にまとめていただいて本当にありがとうございました。委員の皆さんはよくご存 じのところもあれば、こんなものもあったのかと私など思ったところもありました。今 日これに目を通してすべてわかるなどということはあり得ませんけれども、これまでこ ういう法令があった、あるいは取組みを促すような施策としてこういうものがあった、 あるいは顕彰制度もあるのだということを確認するための資料として重要なものだと思 います。主に資料4をお手元に置いていただきながら、残りの時間の中で議論をしたい と思います。労働におけるCSRということが今回の研究会での主テーマではあるわけ です。別に労働でなくても、CSRに関してどのようなことを考えていくかというとき に、基本的には企業が自主的にやっていくというスタイルは変わらないと思います。た だ、自主的なものだから、企業に任せれば、こんな所で議論する必要もないのだという ことではないのです。そういう仕組みがうまく動いていくような後押しとか、いろいろ な支援もあるでしょう。あるいは法令に関して、今回の研究会でできると言っているわ けではないのですが、法令を考え直すことが必要なこともあるのかもしれない。ガイド ラインにとどまっているものについて、もう少し踏み込んだものが必要かもしれない 等、そんなことは1回や2回で議論できることではないのですが、そういうことまで引 っくるめた方向性のようなものを考えていければと思っています。基本的には自主的な もので、政府・行政が後押ししたり、いろいろな支援ができるような何らかの枠組み、 そういうことを6月までの研究会の中で考えていきたいと思います。  こういう問題について、こういう対応ができた。あるいは、これまでこういう対応が できていなかったとか。必ずしもすべてについてこの1枚で網羅してもらっているわけ ではないのですが、基本的なことをおさえてもらっていると思います。この辺りについ てそれぞれのご意見を是非伺いたいですし、こういうことをもう少し考えなければいけ ないのではないか等、残り時間の中で議論したいと思います。どなたからでも結構です が、いかがでしょうか。 ○阿部委員  確かにCSRの推進主体は企業ですから、どういう規格を。規格というのはどういう イメージをしていいのかわかりませんが、どの項目をやりなさいとかというのは難しい と思います。ただ、社会全体として、どういう社会貢献をいま必要としているのか、そ れをどう企業に誘導していくのかを考えていく。例えば国が投資家として主体的に企業 を評価し、投資していくというのは、あってもいいのではないかと思います。そうする と、例えば年金基金や雇用保険の基金、そういった財源を運用していく際にCSRを検 討しながらやっていくというのも1つかと思います。これは、社会が国を信頼すること によって、社会全体の方向性というものに企業を持っていくという形で、そういうイン センティブを与えるという仕掛けになるのではないかと思います。ですので、そこまで 議論するかどうかは別として、CSRだけではなくて、SRIとかというのを加えなが ら議論していったほうがいいかと思います。  均等政策課長がいらっしゃるので、私が言うことが間違っていれば後で訂正していた だければと思うのですが、資料5の17頁のベンチマーク事業です。先日、活躍推進状況 の診断表がまとまったということですが、その中で1つだけ気になったことは、株主等 が影響することはあまりないというような結果があったと思うのです。ですから、企業 自体はまだ、株主や投資家がどのように考えているかは別にして、人事制度は自分たち で決めているというようなことが回答としてあったと思うのです。いまのところ、企業 はステークホルダーがどんなことを考えているかを意識せずにやっているのではないか と思うのですが、CSRなりSRIが公的に出てくると、当然企業も意識すると思うの です。そこを利用しながら、社会全体でもし女性雇用というものを注視するのであれ ば、そのように持っていくことは別に問題ではないのだと思います。 ○谷本座長  いまの阿部委員のご質問に何か答えられることはありますか。 ○石井雇用均等・児童家庭局均等政策課長  手元に詳細な数字を持っていないのですが、基本的には阿部委員の認識のとおりで す。いまおっしゃられたのは、ベンチマーク事業の中で企業がなぜ女性の活躍推進に取 り組むのかと、その理由を問うたところがありました。その中で「企業の中での人材の 活性化等」を多く答える方があるのに対して、投資家からの評価が向上するというのは 必ずしも高くなかった。たしか10〜20%の間の数字であったと思います。そのことを指 しておっしゃったのだろうと思いますが、基本的認識は全く一致しております。 ○谷本座長  そういう意識は低い。キーになるステークホルダーとしてのシェアホルダーの視点な どというのは、日本のいまのその企業社会の中ではまだ低いのではないか。だから公的 年金なども低いのかもしれない。それは郵政公社の社債の運用に対しても入ってくるわ けです。 ○佐藤委員  ちょっと確認します。雇用保険のことがどうなっているか私はよくわからないけれ ど、国が投資家として行動し得る余地があるとすれば、例えば勤労者から集めているも のであれば当然、投資先は雇用者のことを考える企業にしなさいという主張がある。も う1つは、企業の自主的な労働分野のCSRを進めるときに、企業はもう少し投資家に ついても労働面の情報を出すことを促進することを考えていいのではないか。資本市場 をうまく使うようなことも考えながら、企業の自主的な取組みが進むようなものは何か ないか、そういうことを考えたらどうかということですか。 ○阿部委員  そうですね、入れてもいいかということです。 ○佐藤委員  それと、雇用保険の財源は運用しているのですか。そういうことを今やっているので すか。 ○青木政策統括官  財投ですが、もしそれで何かあれば、制度を変えればいいのです。ただ、いま議論さ れているように、極めて短期的に変動するものですから、年金と違って、極めて資金の 動きが速いのです。 ○谷本座長  いろいろなものがあると思いますし、それにこだわることはないでしょう。 ○青木政策統括官  中退金とか、ほかにもありますね。兆の単位で、あれも長期的にかなり今後。 ○阿部委員  SRIまで考えてやると政策評価ができるわけです。つまり、この項目を増やせば企 業の競争力が高まって、利益率が上がれば株価が上がる。そうすれば基金の運用がよく なったということになりますから、この中にすべて政策評価も入る形で考えていけるわ けです。 ○筑紫氏  これはオーストラリアの例ですが、労災とかをやっているエージェンシー(公社)の 2年ぐらい前の話です。いまどうなっているかはお調べになられたらいいと思うのです が、ウエストパックという所に対して労災、要するに労働者の安全、働く人に優しいと いうことで、特に労災の件数が少ないような企業に投資をすることにする。そうすれ ば、企業は労災事故を少なくするように努力する。そうすると、労働者の安全が高ま り、なおかつ労災保険をやっている自分たちにとっても得になる。両方得になるからと いうことでウエストパックに依頼して、そういうファンドを公社向けにつくるというこ とをウエストパックの人から聞いたことがあります。いま阿部委員がおっしゃったこと は、そういったことにもつながると思います。 ○谷本座長  いまのオーストラリアの例で、最近のことを何かご存じですか。 ○足達委員  ウエストパックのことを個別には私も存じませんが、保険会社が最近、「タバコを吸 わない人の保険料を安くする」的な発想をSRIと同じように位置づけていこうという 動きは世界各地にいろいろ出てきているところです。 ○谷本座長  政府がそういうものを運用している所はどこですか。 ○足達委員  政府自らの形でやっているのは、公的年金でいいますと、たしかオランダがそうだと 思います。ノルウェー、スイス、スウェーデンもそうです。  これは筑紫さんの所から情報が届いているはずですが、ノルウェーでは、年金以外に ペトローリアムファンドがあって、石油売却代金の国庫収入を運用しているということ です。そのファンドでは、環境問題などをずっと中心に取り上げて運用している。これ は長い間、実は総合的なSRIに行きたいということで、ノルウェーの中で議論がある そうですが、一方での難しさは、企業評価をするときの価値観が入ってきますので、国 の中でも意見が分かれて、それをどう統合するかというところが課題としてあるという ことです。 ○谷本座長  確かにオランダを含めて、北欧を中心に公的年金の運用というのはかなり前からいろ いろ試みられていますね。 ○堀江労働政策担当参事官室政策企画官  年金の直接の担当者は今日来ていませんので、少し漠とした話になりますが、公的年 金は確かに大きなお金を運用しています。その中の年金資金運用基金といいますか、厚 生年金や国民年金そのものの運用というのは、先ほどの雇用保険のように財投の部分に 行っているものもあれば、一部自主運用という格好にしているところもありますが、そ こについてだんだんに自主運用部分を増やしている。そういう中にあって少し注意した いのは、政府がいろいろな株式を直接支配していくことになりはしないかという辺りの ところが論点としてあって、企業と政府それぞれの独立性というようなこともあるので す。  例えばここに石井○○という会社があったとして、そこに投資するか、しないかとい うことはあまりせずに、全体のポートフォリオを包むようなインデックスのようなもの を使っているというのが主になっている。一方で、厚生年金基金の連合会で、例えば一 部年金基金の承継などをしながら運用している所があります。SRIはどうのという所 にどれだけ議論がいっているかはわかりませんが、株主議決権、発言権というものをい ろいろと行使していこうではないかというような鼻息がある。そういう中で、いろいろ なところを注意してくださいというようなことは言っていこうかと。明確に申し上げま すと、そこはSRIとの関連で直接言っているわけではないのですが、単にお金を出し ているだけではいけないのではないか。議決権行使というところまでいく、そういう議 論が多少なされたと思うのです。 ○谷本座長  郵政事業庁のとき、議決権行使に関してどうするかという研究会があったのです。そ れはかなりターゲットの狭い研究会で、私も委員だったのですが、そのときにSRIの 観点でかなり意見を言ったのです。郵政公社になっていくというスケジュールがもうか なり見えていたので、そこで運用のときにこういう基準を考えることもかなり意味があ ることであるとは言ったのですが、いまはまだそんな段階ではないようです。公的年金 をそんな形で運用していくかどうかということも1つの議論ではあると思います。これ をやれとかそんな話はここで決められるものではないのですけれど。  政府がということで関連して言います。政府調達の中で労働の問題に関して何を出す かというのはいろいろ議論があるのですが、その中にこういう項目を入れるという動き は、国によって、進んでやっている所があります。地方の行政府の中でも、そういうこ とをやっている所がある。例えば環境と女性雇用の均等であるとかと3、4挙げてや る。東京では千代田区でもそんなことをやり始めているのですが、そういうことも1つ の考え方かと思います。SRIとか政府調達という問題は政策のかなり細かいところな のかもしれませんが、かなり重要な方策にはなると思います。 ○筑紫氏  よく年金の方は、海外の公的年金がSRIを通して環境や国家の社会的目標、いわゆ る国家目標が市場という力を通して改善されたり実現されたりしていくので、そのとき には税金を使わなくてよいと。結局、こういう形にすると投資家が、個人の投資家や年 金を通して、いままでなら国が税金などで調達して配分してやっていた事業にまで行 く。そして最終的に環境とかそういったものを良い方向に持っていけるということで注 目して公務員年金などが先導してきたことに対して、日本では、年金はどの会社がいい とか言うのは如何なものかということが非常にあるのです。  私はそれがとても不思議です。それなら250兆円の年金で株式投資などするべきでは ないのです。だって、それはその会社がいいと言っているわけです。SRIはここがい いと言っているからおかしい。どこかを応援することになるから不公平である。いいと 言っているのは良くて、ここがいいと言ったら不公平だと言うのはおかしいというのが 私の考えなのです。そういう基本的なところを議論すべきです。  では株式に一切投資しなかったら年金の運用はどうなっていくのか。国債と預貯金だ けで行くのかとなったときに、30年後に年金加入者に対して払えるだけの運用実績がち ゃんと残せるのかとか、そういうことをお話しなければいけない。実際にそこをうやむ やにすべきではないと思います。基本的に年金は誰のものかといったら、別に厚生労働 省のものではなくて、加入者のものなのです。だから、本当にどうしようかと思った ら、加入者は全部わかっているわけですから、アンケートをすべきだと私は思っており ます。実際、ほかの国ではやって、その結果それに行こうと決めたわけです。ですから 日本も、もっとそういう本当に根本的なところを議論していくべきだと思います。 ○堀江労働政策担当参事官室政策企画官  いまのお話はまさにそのとおりです。個人的にも大事な課題だと思っているところで す。考え方の1つとしてそういう点も併せて考えなければいけないという話をいままで してきていたということを紹介させていただきたいのです。  年金資金運用基金で申し上げますと、確かに皆様のお金であるということもあります が、いわゆる特殊法人でやっているというところのあり方からして今、考えをどうしよ うかということを年金改革の問題と併せて議論しているところです。例えばいまの仕組 みですと、運用の基本方針を国で決めて、それに基づいて年金資金運用基金が運用する という仕方がいいのか、もっと独立性を高めたほうがいいのか。それから、いまおっし ゃられた株式の運用というのは、そもそも良いのか悪いのかというところも含めて、ま さに全体の議論を年金改革のほうでしているのだと理解しております。この場かどうか は別として、いままではっきりしなかったではないかというところを、今後議論してい かなければいけないのです。 ○青木政策統括官  いまこの場で議論してもらってもいいわけです。折角SRIの議論をしているのだか ら、年金改革に対して、こういう観点も入れろということを言ってもいいわけです。 ○谷本座長  年金改革の議論で運用とか議決権行使とか、そんなことまで議題に入っているのでし ょうか。そんなふうに聞かなかったのですが。 ○堀江労働政策担当参事官室政策企画官  今回国会に提出している年金改革法というのは例の、負担と給付のバランスをどうし ましょうかという話の中にあります。ただ、それの本質といえば本質なのですが、その 少し横の所に年金の、お金の使い方、運用の仕方が、例えば『グリーンピア』など何か 施設をつくるのはどうだとかいう話があったりする。『グリーンピア』を運用している 所は年金資金運用基金(旧年金福祉事業団)と一緒なものですから、そういう所で、政 府がお金を株式に投資して、平成14年度でしたか、ドーンと穴をあけたみたいなのはお かしいではないかとかいう議論の中で、そこのあり方そのものについても議論をしよう ということで議論が進んでいます。いま統括官が申し上げたように、そこをサポートす るような議論をここでするか、しないかという話なのです。 ○谷本座長  CSRということで議論をしているわけですが、それを進めていく国の施策の1つと して、こういうこともあり得るだろうという項目をいま考えているわけです。公的年金 などを中心にしたSRI運用、そこで労働の基準として、厚生労働省のこの委員会とし てこういうことも言えるのではないか。あるいは議決権行使に関しても、何らかの基準 できちっとやっていかなければいけないということは当然あると思います。そこにどん な項目でと言うときに、労働の問題からの議論もできるでしょうけれど、別に労働だけ ではないのです、年金運用なのだから。ここは「労働における」と頭に付いています が、そうではない。それはこの委員会というより、ひょっとしたらその先の、違う研究 会なのかもしれないけれども、議決権行使は広い項目から考えていくこともあり得ると 思います。  それと、労働だけでなく、政府調達についても議論する。差し当たり労働の問題につ いて議論すればいいのですが、広く項目をあげていくことは重要なことだと思います。  時間がかなりおしていますので、ほかの委員の方から、資料4を見ていただいたり、 いまの議論も敷衍しながらご意見をいただきたいのですが。 ○足達委員  もしこの報告書の中で公的年金のSRI的なことまで踏み込めるとすれば、私も数年 来考えていたことですし、大歓迎です。それは事務局のご判断にお任せすることにし て、それ以外ということで申し上げます。  ベルギーにはソーシャルラベルという面白い制度があります。いま日本でもエコマー クというのがありますが、ベルギーはILOのレーバースタンダードを基準にして、そ れに合うものにラベルを付けるという制度を2002年から進めております。これは政府そ のものがやるのか、外郭団体がやるのかわかりませんが、アイディアとしてはあるだろ うと思います。  情報提供というところではいろいろな事例があると思います。これは環境の事例なの ですが、ドイツの連邦環境省は毎年1万部のSRIのパンフレットを作って、それを国 中に撒いているのです。それはあたかも証券会社の営業の肩代わりを国でやっているよ うなイメージなのですが、そういう環境に対応する投資が国の環境政策自体を推し進め る力があるのだということです。各社のエコファンドなりSRIファンドが一覧表にな っている、素晴らしい冊子なのですが、そんな情報提供をしております。例えば労働と いう観点でこういうクライテリアを入れている投資商品があるということで出していく ようなやり方もあると思います。  またEUには、そういう紹介をしているウェブサイトに対してスポンサードするとい う施策があります。それから、ソフトレギュレーションと言っているそうですが、「労 働と企業の社会的責任」という観点からメニューアップしてみることを研究会の成果に することについて、私は賛成です。そういうアイディアを研究会として最後に採択して いただけるかどうかについては、いろいろ政治的な問題があるのですが。 ○谷本座長  日本でエコに関してはいくつかありますが、ソーシャルラベルのようなアイディア は、これまで具体的には進めてこられなかったのです。ソーシャルラベルに関してはN GOとか政府機関とか、取組み方はさまざまなのです。こういう問題に関して進めてい る例として今ベルギーのことを言われましたが、ILOの基準を組み込んでやってい く。ILOの基準に関して言えば、批准している部分と批准していない部分とか、さま ざまな濃淡があるので、その辺まで考えていかなければいけないのでしょう。 ○安生委員  資料4に関してですが、最初の、CSRを検討する意義が高まっているというのはおっ しゃるとおりだと思います。しかし、どうして重要性が高まっているのかをもう少し明 確にしておいたほうがいいと思います。単にそういう課題があるからと言うよりも、ど うしてその課題に取り組むことが必要なのかということです。繰り返しになりますが、 それは企業の持続的な成長・発展につながるということです。例えば人材について言え ば、男性だけの画一的な人材でやっているから、商品提案力や発想力が落ちている面が あるわけで、そこを多様な人材の発想や価値観のぶつかり合いで高めていく、そのため に人材の多様性が重要なのだということを明確にしておく方がよろしいかと思います。  2番目の国の役割のところは、基本的な考え方としてはこういうことでよろしいので はないかと思います。方策として、情報開示は非常に重要なことだと思います。これは 表彰制度と関連するかもしれませんが、同時にベストプラクティスのようなものをどん どん紹介していくという役割は政府としてもできるという感じがいたします。  これは規格化の問題とも関連するかもしれないのですが、方策を考えるときの難しさ ということでは、CSRはまさに企業の自主的な取組みであって、法令を上回る部分 で、それぞれの企業がどのように取り組むかというところが本質的な部分だと思いま す。そうすると、企業の取組みは当然に多様なものになってくる。企業ごとの考え方、 あるいはどういう企業になりたいか、どういう企業を目指していくかによっても違いま すし、事業内容によっても当然違いますので、取組みは非常に多様になりますし、また 多様であっていいと思います。方策というと、どうしても1つのものになりがちで、1 つの枠にはまりがちです。方策を考える時に、企業の取り組みの多様性とどういうふう にバランスさせるかを考える必要があると思います。 ○谷本座長  問題によってはかなり枠をはめなければいけないこともあるかもしれませんが。 ○安生委員  そうなるのはマストの部分に近いところだろうと思います。 ○小畑委員  グローバル化の中で普遍的な価値観、世界標準で高く評価される企業であることを対 外的に明らかにすることの必要性が、高まっているということを私は感じているので す。大変な労力をかけたであろう資料5でご紹介いただいたものの位置づけを考えてみ ますと、CSRの観点からも重要な項目を法律でも取り上げてきたわけで、法律で強制 しているものもあれば、努力義務とかガイドラインという形で誘導しているものもあ る。また、表彰などで対外的に明らかにするような方策を行政でやってきたということ は、ある意味ではCSRを果たすことを援助してきたと言えると思うのです。そして、 それをより積極的に、あるべき姿に近づこうとする、もしくはそれが明らかになるよう にすることがCSR推進の方策の方向性を考えていく上で重要なのではないか、それが 私の今日の感想です。 ○佐藤委員  労働に関するCSRの意義のところで、ステークホルダー自身、企業自体にとっても 中長期的にはプラスだということを言ったほうがいいかと思います。  3の環境整備の所で、いまの表彰制度というのは「ファミリー・フレンドリー」につ いて、そこについて頑張っている所を褒めるわけですが、もう1つは情報開示。水準は 低いが、情報開示をちゃんとやっているというところを褒めるような仕組みが何かあっ てもいいかと思います。レベルはまだ低いが、情報は積極的に出していて、一生懸命高 い所を目指すと言っている。労働についての情報開示に積極的に取り組んでいて、うま く情報を出しているような所を表彰するようなものがあってもいいかと思います。 ○谷本座長  なるほど、ネガティブ情報なども引っくるめて自分たちの努力目標を定めてね。 ○佐藤委員  ええ。均等についても、それ自体としてはまだまだ低いかもわからないけれども、情 報開示している。それは取り組もうということだと思うので、そういう所を褒めてあげ てもいいのではないかと思います。 ○谷本座長  どうしても、その項目に関して良いところだけという感じになってしまいますから ね。 ○佐藤委員  ええ。 ○谷本座長  時間がかなりおしてまいりましたが、資料7について事務局から簡単に説明していた だきます。 ○千葉労働政策担当参事官室室長補佐  資料8、今後の開催日程については、4月下旬ぐらいを目途にとは考えております が、これから申し上げる団体からヒアリングを行ったらどうかと考えております。1つ は労働者を代表する団体・機関、もう1つは使用者を代表する団体・機関、さらにCS Rに関連して種々活動している団体がありますので、こうした方々のご意見を拝聴する ということもあろうかと思います。そのようなヒアリングの結果を踏まえて、5月初旬 か中旬ぐらいを目途に私どもとして論点をつくり、それに基づいてさらにご議論を深め ていただければと考えております。その後6月に報告書の骨子案、素案という形で取り まとめを行いたい、斯様に考えているところです。  いまお諮りしたいのは次回のヒアリングの事項、資料7についてです。次回1回でヒ アリングを行うということになりますと、スケジュール的にはかなりタイトでありま す。いろいろな団体から聴くということになりますと、項目数もいきおい限られるかと 思いますが、私どもとして、こういう点が重要なのではないかというものを1つの案と して提示いたしました。  労働に関するCSRに関してどのような活動を行っているのか。CSRの構成要素は 「環境」「社会」等多岐にわたるわけであるが、情報を出しにくい等いろいろな問題が ある。「労働」の特殊性として挙げられる問題は何か。経済・社会構造の変革に伴っ て、労働の中で特にどのような分野が重要になってきていると考えられるか。こうした ことを、具体的にどこがとまだ決まっているわけでもありませんし、会議終了後等も含 めて、これからいろいろ相談させていただきたいと思います。これらの事項はどの団体 に対しても共通に重要になってくるのではないかと思い、案として提出いたしました。 ほかにこんなことが考えられるのではないか等、ご意見があると思いますのでよろしく お願いいたします。 ○谷本座長  いま事務局のほうからお話があったように、広い意味で労・使、各種団体やNGOが あり、1つの団体から長く丁寧に聴くというよりも、それぞれがどう考えているかを、 資料なども持ってきていただいてコンパクトに説明してもらったらいいのではないかと 思っております。まだ具体的にここ、あそこというわけではなく、いま調整してもらっ ているところです。調整するというのは、いつ来られるかという話ではなくて、その手 間のことです。「どこを」というのが難しく、悩ましいところもありますが、いまのよ うな趣旨でヒアリングをするということです。詳細に項目をあげて、それでインタビュ ーするということでは必ずしもないかもしれませんが、どういう考え方を持っていて、 何を求めているのかというようなことについて大まかなものが何かございますか。 ○足達委員  普段具体的な仕事をしているがゆえかもしれませんが、ヒアリングが少し抽象的すぎ るかという思いが私の感想としてあります。例えば、すべての団体に同じことを聴くの ではない。経団連は2月17日に「CSRに対する基本的考え方」を出しました。その中 で、自主的な取組みということを前面に掲げています。また環境省が出している報告書 に関する法律の絡みで言うと、ある政府関係の機関ですら、環境報告書を義務化するこ とは反対だとおっしゃったのです。それは、その結果民間企業にも影響が及ぶ、プレッ シャーが来る、それすら反対だとおっしゃった。ではソフトレギュレーション自体をど う考えているのだ。全く政府なりは口を出さないでくれと言うつもりなのかどうか、そ こを聞きたいと思うわけです。  労働のことで言えば、イオンというグループが去年の5月にレーバースタンダード、 そういう評価基準を含むコードオブコンダクトを取引先に要求されました。その中にも 13項目、強制労働のこと等さまざまなことが入っています。そういう項目まで含めて、 なぜ小売りとしてコードオブコンダクトをつくろうと考えたのか。その結果食品メーカ ーのレスポンスはどうだったのか、そんなことを聴いてみたいと思うのです。そのよう に、ここで想定されているものより少し具体的に考えたほうがよいのではないかと思い ます。もしご相談ということであれば、いくらでも相談には乗らせていただきますが、 いかがでしょうか。 ○谷本座長  あくまでも、これだけしゃべれという話ではなくて、こんなふうなことを聴くと。も ちろん個別の団体については個別にある程度聴きたい項目を絞ることになると思いま す。特にこの団体で最近こういうことをやっている。ここについて中心にして話をして ほしいというような感じになると思います。あくまで、こんな枠の中で特にこれをやれ という感じになればいいかと思っています。  2回目の研究会でありましたが活発な、また貴重な意見を本当にありがとうございま した。資料4に関していろいろな意見が出ましたし、具体的な施策案まで出たと思いま す。今日はただ案が出ただけであり、4回目とか5回目にこのことについてもう少し突 っ込んだ検討をしていくことになると思います。そのときに、例えば他国での公的年金 運用の仕方についてはこんな感じでやっているというような資料があったらいいかもし れない。ソーシャルラベルについても、具体的に政府レベルでやっているのはこうなの だということを示す資料が少しあったらいいかもしれません。それはまだ2回後の話で すのでまだ時間的な余裕があると思いますが。全くなしに何となく「そういうのがある んですか。じゃあ、やりましょうか」ということになるのは問題です。具体的な内容は いま委員の間で少し考えております。最後に、次回の日程について事務局から説明して ください。 ○千葉労働政策担当参事官室室長補佐  次回の日程については4月の下旬ごろを予定しております。具体的にヒアリング先が どこになるかということも併せて、委員の皆様方にはメール等で相談させていただきま すので、よろしくお願い申し上げます。決定し次第ご連絡等を差し上げます。 ○谷本座長  ちょうど3時になりましたので、今日の会合はこの辺で終わりたいと思います。筑紫 さん、どうもありがとうございました。また委員の皆様方、本日はどうもありがとうご ざいました。 照会先:  政策統括官付労働政策担当参事官室調整第二係  電話 03−5253−1111(内線7719)