04/03/16第5回がん検診に関する検討会議事録           がん検診に関する検討会(第5回)議事次第   日時  平成16年3月12日(金) 10:00〜12:07   場所  厚生労働省共用第7会議室 1.開会 2.議題   ○ヒアリング(米国の乳がん検診の状況について)   ○論点整理 3.その他 4.閉会 ○麦谷老人保健課長  おはようございます。老人保健課長でございます。  お忙しいところ御参集いただきまして、ありがとうございました。御案内いたしまし た時間になりましたので、ただ今より第5回のがん検診に関する検討会を開催させてい ただきたいと思います。  まず最初に、委員の出席状況でございますが、今日は3人の委員があいにく御欠席で ございます。笹子委員、清水委員、渡邊委員のお三方より欠席の御連絡をいただいてお ります。  また、本日は、前々回からお約束しておりました、アメリカにおける乳がん検診の普 及の経緯や実施体制につきましてご発表いただくため、The Susan G. Komen Breast Cancer Foundationと御親交の深い西川参考人に御出席いただいております。  それでは、垣添座長、お願いいたします。 ○垣添座長  皆さんおはようございます。大変お忙しい中、早朝からお集まりいただきましてあり がとうございます。  今日は第5回ということで、これから2時間集中して御議論いただければと思いま す。本日もなかなか難しい局面をわたることになるかと思いますが、いろいろ御協力を いただければと思います。私も今日頂戴したこのバッジをつけて気合を入れて臨みたい と思います。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、議論に入ります前に、まず、資料の確認からお願い申し上げます。 ○椎葉課長補佐  それでは、資料の確認をさせていただきます。座ったままで失礼いたします。  まず、本日の議事次第でございます。資料につきましては、「がん検診に関する検討 会資料一覧」を御参照いただきなから、御確認をお願いします。  資料1「これまでの議論のまとめ」でございます。  資料2「論点整理メモ」でございます。  資料3「これまでの主な意見(案)」でございます。  資料4「西川参考人発表資料」でございます。  参考資料1「斎藤委員提出資料」でございます。  参考資料2「大内委員提出資料」でございます。  委員のみの配付となりますが、「第4回がん検診に関する検討会の議事録(案)」の 未定稿でございます。  また、先ほど垣添座長の方から御紹介いただきましたけれども、西川参考人から各委 員にピンクリボンのバッジをお配りしております。  以上でございます。 ○垣添座長  ありがとうございました。資料はよろしゅうございましょうか。  それから、前回の議事録に関しましては、字句等の修正がありましたら、後程、事務 局にお伝えいただきますようお願い申し上げます。未定稿という形で、委員のみにお配 りしております。  それから、先ほど麦谷老人保健課長からありましたけれども、次回でまとめるという のは、今年度中に女性のがんに関しての報告をまとめるということで、次年度以降もが ん検診に関する検討は引き続き行っていくということでありますので、よろしくお願い 申し上げます。  本日も前回に引き続きまして、乳がんと子宮がんの検診に関して議論を進めていきた いと思いますが、その前にアメリカの乳がん検診の普及の経緯や実施の体制につきまし て、西川参考人に御発表いただきたいと思います。その質疑応答の後に、論点整理メモ に従って議論を進めていきたいと思います。  では、西川参考人、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○西川参考人  皆さん、おはようございます。私、ジョンソン・エンド・ジョンソンウーマンズヘル ス事業部に所属しております西川と申します。本日は、このような貴重な機会をいただ きまして、ありがとうございます。私どもが今回このような機会をいただきました経緯 としては、昨年の日本乳癌検診学会に、今日の発表資料の一部に使っておりますアメリ カ最大の乳がん啓発団体、The Susan G. Komen Breast Cancer Foundationのトップ の方をお招きして、特別講演を依頼しました。その窓口を担当させていただいたという 経緯で、今日は彼女が日本乳癌検診学会で発表した資料を中心に御説明したいと思って おります。  それでは早速、タイトルの「米国乳癌検診率はなぜ高いのか」について、発表させて いただきます。今日は限られた時間になりますので、提供したお手元の資料の要点を絞 って御説明いたします。資料は後から読み返していただいてもわかるような形で御用意 していますので、よろしくお願いします。  今日の内容は主に3つに分かれておりまして、まず1番目、事務局から特にカバーし てほしいと言われたポイントに関して、資料、インタビューなどもした結果を報告させ ていただきます。それから、2番目、先ほど申し上げたとおり、The Susan G. Komen Breast Cancer Foundation代表が去年の乳がん検診学会で発表された資料を抜粋して 御説明します。3番目、弊社で昨年6月に、なぜ日本の女性は検診に行かないのかとい うことで調査を行いましたので、その簡単な結果を御報告させていただきたいと思いま す。  最初のパート、「資料・インタビューのまとめ」ということで、まず初めに、アメリ カの乳がんの死亡率の現況ということで御説明します。最初のチャート(2ページ下段 )ですけれども、三角の矢印で示されているラインが乳がんの死亡率になります。大体 1940年から1980年ぐらいですね、この期間が女性の中でがんの死亡率第1位でした。 1980年代半ば以降は、肺がんが第1位、乳がんは第2位となっております。ここで大き く2つポイントがあるんですが、1つは、1990年を境に死亡率が低下し始めているとい うこと。もう一つは、検診の増加が見られたのは、1982年、乳がんの死亡率が低下し始 める10年前ぐらいだということです。  次に、もう少し細かく歴史をたどって、制度と技術、それから、社会的環境というこ とで、特に社会的環境に関しては一般市民、それから、医療従事者の意識レベルという 面で書いてみました。  制度・技術面ですけれども、1940年代から自己検診が推奨され始める、それは先ほど のチャートにある様に、1940年から乳がんの死亡率が第1位になったからです。それを 機会に乳がんというものにスポットが当たり始めたということだと思います。1960年代 から既に高解像度のマンモグラフィのフィルムが採用されたり、それから、ニューヨー クではマンモグラフィが5年後死亡率を30%下げるというような効果が発表されたりい たしました。  社会的環境に移りますが、具体的に啓発活動、民間レベルでの意識に変化が見られた のが1978年、フォード大統領のファーストレディであったベティ・フォードが、「私は 乳がんです。」とカミングアウトしたところから始まったと言われています。その前ま では、乳がんというのは何か胸に影のようなものがあるとか、そのような形で間接的に しかアメリカでも表現されていなかったということです。それが、徐々にこのような著 名人が発表していくことによって、一般の方への意識、認知が高まってきたということ になります。それ以降、The Susan G. Komen Breast Cancer Foundationが活動して きたことなどを社会的環境としてリストアップさせていただきました。  また制度・技術面の方に戻りますが、徐々に民間レベルで意識が高まってきた1986年 に、ACSとACRが放射線科医・技師の認定プログラムを策定しました。それから、 1992年には精度管理に関する法案が可決されています。1980年代から1990年代にかけて は、マンモグラフィ機器の進化が見られ、2001年にFDAがデジタルマンモグラフィを 認可しております。マンモグラフィに関しては、このような形で推移してきておりま す。  次に、検診を実際にアメリカ人がどのような形で受けているか。これは日本人でも同 じですけれども、乳がんがいかに怖い病気か、検診がいかに大切か、早期発見すること がいかに大切か、ということはみんな理解しているのですが、でも検診に行かないとい う事情があります。そこで、大きな役割を果たしているのがアメリカの場合、かかりつ け医、特に内科・婦人科の役割が大きいと言われています。ちょっと病気になったと き、おなかが痛いとき、風邪を引いたときかかりつけ医にかかります。そのときに「最 近乳がん検診に行ったのはいつ?」「ちゃんと毎月自己検診やっている?」というよう な形で、かなり検診のことについて毎回言われるそうです。例えば年齢、それから、人 種によってこういうふうに違うのよ、ということも説明を受けるそうです。そして、最 後にマンモグラフィの処方箋を渡されて、「近くのマンモグラフィを撮ってもらえると ころはこういうところがあるよ。それが高いと思うんだったら、安いところだとこうい うところがあるよ」という受診先の説明まで受けて帰ってくるという形で、かかりつけ 医に割と頻繁に行く機会が多い、その中で、必ずマンモグラフィがいかに大切かという ことを一般の医療従事者の方もしくは看護師から説明を受ける機会が多いということで した。  それから、もう一つ、医師の教育に関しても日本とは違いがあるのではないかという ことでした。日本でも専門医の方たちは乳がんに関してきっちりと教育を受けている。 でも、内科とか婦人科の医師に関しては、医学部の学生時代を含めて、乳がん検診につ いて学ぶ機会が日本ではないとお聞きしております。アメリカの場合は、必ずBreast Examということで教科の1つになっているということでした。ですので、内科・婦人科 の先生方が、いかに乳がんに対して取り組むかという部分で意識が若干違うのではない かというような話も聞きました。  マンモグラフィ検診を受けるか否かの最も決定的な要因となるのは、かかりつけ医の philosophyである、というようなことをおっしゃっている先生もいらっしゃいます。  次に、検診の運用面、そのほかにも2つ大きなポイントが挙げられると思います。オ プションが多様であること。例えば移動検診バス、これは最近日本でも出てきました。 バスの中にマンモグラフィが設備されている。そのバスがいろいろな場所に行って、簡 単にマンモグラフィを受けることができるような形になっています。もしくはショッピ ングセンターの中にマンモグラフィを受けられるような場所があるという形で、日ごろ 生活する中でマンモグラフィとの接点が多いということです。  それから、オプションの1つとしてCommunity reach programというものがあります。 各州単位で行われているものですが、例えばテキサス州の場合には、州が医療費を全額 カバーする特定のこういう施設がありますよということがオープンになっています。  多様なオプションに加えて、更に機能の分化ということも1つ特徴として挙げられる のではないかということでございました。撮影をする場所、それを読む場所、それか ら、何か異常があった場合にまた行く場所というのがきっちりと分けられているという ことです。あそこで撮影してきて、そのフィルムを僕のところに持ってきてほしいとい うような形で読影医師が依頼するということです。ですので、近くに撮影する場所がた くさんあるということです。  次に、検診の基本ガイドラインですけれども、こちらはAmerican Cancer Society (ACS)のものです。20歳代・30歳代と40歳代以上、その2つの年齢のセグメントに 分かれています。これ以外の医療施設、団体、関係団体というようなところの基本ガイ ドラインも確認しましたが、ほぼ年齢のセグメント分けに関しては、20歳代・30歳代と 40歳代以上の2つ、これはどこの基本ガイドラインも統一されておりました。ただし中 身に関しては若干の差があります。ACSでは、20歳代・30歳代は、毎月自己検診を行 い、3年に一度専門医で視触診を受けることを勧め、40歳代以上に関しては、毎年マン モグラフィ検診を受け、毎年専門医で視触診を受け、毎月自己検診を行うということを 勧めております。特に、ほかの基本ガイドラインと差が見られたのが20歳代・30歳代の 専門医での検診です。3年に一度となっておりますが、そこは例えばM.D. Andersonと いう医療機関に関しては、1〜3年に一度、専門医で視触診を受けるといような形にな っており、若干の違いはあるようです。  また、運用のされ方に関しても、これをきっちりすべての施設が守っているというわ けではなくて、かなり緩やかに運用されているということでした。特に年齢という切り 口だけではなくて、リスクファクター、人種というような切り口で、この人に対しては どういう検診をどれくらいの頻度で行うべきかということを医師が決定しているという ことです。  それから、次に、医療保険について御説明します。ここでは4つ取り上げておりま す。これが約90%の費用的なcoverageということでした。  まずMedicare、これは国が管理しているものなのですけれども、対象は60歳以上の女 性もしくは身体障害者の方ということです。検診費用は100%保障されています。  次にMedicaid、これは州が管理しております。低所得者層を対象にしていまして、検 診費用が100%保障されています。  次に、CDCと言われるものがありまして、Center of Disease Control、これ は50州で採用されているということです。他の保険に入っていない女性を対象に検診費 を100%保障するものだということです。  それから、最後が民間の保険です。マンモグラフィ検診を受けた女性の80%がこれを 活用しているということでした。自己負担額としては20ドルぐらいが発生するというこ とです。参考までに、マンモグラフィ検診費を100%自分で持ったとした場合には、大 体65ドルから150ドルぐらいということでした。  ここまでが基本的なポイントについてリサーチさせていただいた結果を発表させてい ただきました。  次に、啓発活動ですけれども、こちらに関しては先ほど御説明しましたThe Susan G. Komen Breast Cancer Foundationの資料を使って説明させていただきます。  The Susan G. Komen Breast Cancer Foundationは、2人の姉妹の約束から始まっ た団体です。姉が37歳で小さな2人の子どもを残して乳がんで亡くなった、その妹が姉 の遺志を継いで、最初に1982年に設立した、と言われています。ここに乳がん撲滅を目 指す主な活動ということで4つリストアップされております。これは時系列的にThe SusanG. Komen Breast Cancer Foundationがどのような活動を行ってきたかというこ とになります。  最初に市場の開拓、それから支持者の獲得、政府・自治体への働きかけ、そして最後 に活動に市民権をということで4つポイントがあります。それぞれ説明させていただき ます。  まず市場の開拓について。乳がん患者の声を伝える。それまでオープンになっていな かったことを伝えていくとか、例えば、私は乳がんを体験したけれども今でも生きてい ますよということをみんなの前で発表するとか、あとは乳がんはこんな怖い病気なんだ よというデータをしっかりと伝えるというようなところを「市場の開拓」とThe Susan G. Komen Breast Cancer Foundationでは呼んでいて、それが彼女たちの活動初期に 最初に取り組んだことだということでした。  例えば、よく乳がんは怖い病気だという説明がありますけれども、それをできるだけ インパクトがある形でわかりやすく説明する言葉として、「世界では30秒に1人が乳が んと診断されている」とか「世界では90秒に1人が乳がんで死亡している」とか、その ようなちょっと衝撃的な言葉を使いながら、うまく啓発につなげてきたという経緯があ ります。  現状のところ1987年から2000年に、どのようにマンモグラフィ検診の受診率が上がっ てきたかというのがこのチャート(10ページ下段)になりますが、人種別にヒスパニッ ク、黒人、白人と別れておりまして、青がヒスパニック、ピンクが黒人、黄色が白人。 順番は大体同じで白人、黒人、ヒスパニックという順番になっておりますが、伸び方と いうのはほぼ同じです。1987年から1992年にかけての伸びが非常に高いです。それ以降 1992年、1998年、2000年と緩やかに伸びているという状況になっております。  それから、マンモグラフィ検診を受けている人の年齢構成は、60%近くが50歳代、そ れから、50〜64歳までということで、御存知のとおりアメリカでは50歳代の罹患率が一 番高いです。ということで、一番意識が高まる50歳代を中心にマンモグラフィ検診を受 けているというような状況です。  以上ですが、まず第1段階、市場の開拓という点に関して日本の状況と比べてみます と、日本では徐々にオープンに語られているような環境はできてきていると思います。 また、患者団体の存在などもありますので、この辺のところはかなり日本でもクリアし てきているところかなと私は考えております。  次に、支持者の獲得に移らせていただきます。具体的には、イベント、教育・啓発、 メディア活動というところが焦点であるということで説明されております。The Susan G. Komen Breast Cancer Foundationの活動の中にはKomen Race for Cureというこ とで、乳がん撲滅を訴える走るイベントを行ってきています。2003年には全米で150万 人の方が参加されたということでした。1983年にテキサス州のダラスで最初のイベント が始まったんですけれども、2003年にはこのように多く、各州でイベントが、1年中を 通してに行われているということです。ランニング・イベントだけではなくて、それ以 外にもっと趣味的な部分を生かした活動、イベント例などもあります。例えば、ボウリ ングが好きな人はボウリングをすることによって基金を集める、それから、スープを飲 みましょうとか、ガーデニングをしましょうとか、ホテルで1泊したらとか、どんな形 でもどんな人でも参加できる、かかわりを持てるような環境になってきているというの がアメリカの大きな特徴だと思われます。  以上ですが、アメリカの方ではこのようにイベントがかなり盛んです。そして、継続 的に行われているということがポイントだと思います。やはり1回きり、例えばメディ アで取り上げられたとかそういうことではなく、年間を通して、もしくは10年前に比べ ると今ではずっと多くのイベントが行われ、メディアの中でも露出がされているという 状況がいろいろな切り口で語られています。この点に関しては、日本はまだ取りかかっ たところだと思います。ランニング・イベントもここ2〜3年になって始まりました。 企業もかかわって、その中で資金を出しながらイベントを運営していくというような形 もでき上がってきました。でも、まだ始まったばかりというような気がします。  次に、政府・自治体への働きかけについて説明します。こちらは、The Susan G. Komen Breast Cancer Foundationが政府・自治体に働きかけることによって、どうい う点で成果が出てきたかということです。大きく分けて教育・啓発面、それから、調査 研究面、それと資金の確保といった3つに分かれると思います。  それから、もう一つ、法律の整備と予算獲得というところでも、各プログラムに関し て大きな成果を出してきています。ここでは2つ御紹介したいと思うんですが、これは 乳がん、子宮がん早期発見プログラムにかかわる予算です。1991年から2001年までの予 算の状況ですけれども、1991年に比べて2001年は約6倍になってきています。予算を大 きく伸ばしてきたその働きかけの中心がThe Susan G. Komen Breast Cancer Foundationということでした。  それから、連邦政府からの乳がん研究調査費用ということで2つ、National Cancer Institute、これが水色、それから、黄色がDepartment of Defense、国防省の予算に なります。国防省の方は1995年に比べて、ほぼ一定の形で予算を獲得しています。一方 で、1995年から2002年にかけて、National Cancer Instituteの方では大きく予算が伸 びているという状況です。  ここまでが政府・自治体への働きかけということで、この点に関しては民間からの働 きかけという点で日本では大きく遅れている部分だと思われます。今後、例えば私ども のような企業、それから、患者団体、メディアの力も借りながら更に働きかけて、大き な成果を出していくべき領域だと考えております。  最後に、活動に市民権をということですが、今までやってきた活動をできるだけ多く の人に理解してもらい、それを主流にしていくためにどうすればいいかというようなこ とで、3つ活動維持の原動力として挙げられています。企業、科学・技術、それから、 政府です。  まず、企業ですけれども、ここにアメリカの非常に有名な優良企業が載っているんで すが、これがThe Susan G. Komen Breast Cancer Foundationへ年間100万ドル以上 寄附している企業の数です。これ以外にも勿論100万ドル以下でサポートしているよう な企業がたくさんあります。ということで、企業も乳がんというところに目を向け、そ して、そこにきちんと資金を提供するという形で社会貢献を果たしているという理想的 な形が、アメリカではあると思われます。  それから、科学・技術面に関しては、治験計画、助成金の再検討といったようなとこ ろ、専門家の育成ということ、調査研究というところで特に力を入れてThe Susan G. Komen Breast Cancer Foundationは働きかけています。特に、いろいろなところから 資金を援助してもらえないかというような働きかけがあるそうですけれども、それに対 してきっちりと専門家によって、この団体に対してはいくらが適当であるということで 精査しているということでした。  それから、最後に政府ですけれども、この写真はブッシュ大統領ともう1人いるのが The Susan G. Komen Breast Cancer Foundationの患者団体の中のおひとりだそうで す。 年間1回はホワイトハウスに患者を呼んで、乳がんについてディスカッションするとい うようなイベントが行われるそうです。政府もそのような形で乳がんに関して、もしく は乳がんの患者に対してかかわりを持つというようなこともあるということです。  以上が、駆け足ですけれども、The Susan G. Komen Breast Cancer Foundationの 活動の抜粋になります。  大きく言えるのが、市民団体、NPO団体なんですが、単に啓発、リーフレット配布 といったような活動だけではなく、キーとなる団体への働きかけというのを非常に積極 的に、精力的に行っています。例えば、私は個人的にはとても驚いたんですけれども、 国防省から何で乳がんの予算が取れるんだろうかと。どうしてなのと聞いたところ、 「戦争で命を失う人よりも、乳がんで命を失う人の数の方が大きいでしょう?」という ふうにかけ合ったそうです。それによって国防省が、「それは確かにそうだ。」という ことで予算が最初についたそうです。そこから伸びてはいないんですけれども、同じ額 をずっと援助してくださっているということでした。ですので、このように大がかりな アクションにつながるような行動を一般市民が行っているということは日本も学ぶべき ところかなと思います。  最後に、私どもで行った調査で、日本の女性がなぜ検診を受けないのかというところ を簡単に御参考までに御説明したいと思います。これは2003年6月に実施したんですけ れども、定性的な調査です。8人が1つのグループになった座談会形式のディスカッシ ョンによる調査なのですが、それを2グループ行いました。  目的は、乳がんが怖い病気である、いろいろな人が乳がんになっていることを知って いる、もしくは早期発見の大切さは知っている、自己検診のやり方は知っている、でも 検診を受けに行かないというような、その裏には女性心理としてどういうところが bottleneckになっているのかということを確認し、きちんとその人たちに検診に行って もらうようなメッセージというのはどういうことなのかということを確認することでし た。  対象者特性としては35〜49歳の既婚の女性に集まっていただきました。彼女たちは最 近1年間に健康診断を受けており、半数が乳がん検診を最近1年間に受けている人た ち、残りの半数は、最近1年間に乳がん検診を受けていない人たちです。その差が心理 的にどういうところにあるのかというのを見るために、お呼びしました。  その中でわかったことですけれども、消極的な理由には主にこの4つが挙げられます (19ページ上段)。特に上の2つが大きく、自分には関係ないと思っている、私はがん にはならないと思っている方が非常に多かったです。それは周りに乳がんを経験してい る方が少ないという方が多かったというのが特徴的でした。  それから、2番目に多かったのが、恐怖です。今、健康的に生活しているのに、わざ わざ検診を受けに行って乳がんだなどと言われるのは怖いということです。頭の中では 早期発見をすることが治療オプションが多様になるとか、命が助かる確率が高いとか、 そういうことは十分に理解しているんですけれども、でも、がんと言われるのが怖いか ら検診を受けないという方が非常に多かったです。  3番目と4番目に関しては、去年6月に行っておりまして、去年8月以降でしたかメ ディアで乳がんがかなり積極的に取り上げられるようになって、「乳がん検診=マンモ グラフィ」のような形で、頭の中にイメージができ上がりつつありますけれども、6月 の時点では「乳がん検診=視触診」だったんですね。触診への強い抵抗感と不信感があ りました。特に男性医師がやる場合に非常に恥ずかしい、それから、抵抗感があるとい うこと。それから、本当に視触診で見つけられるのか、というような検診手法に対する 疑問みたいなものもありました。  4番目としては、超音波やマンモグラフィ検診は身近ではないということです。マン モグラフィ検査というのを知らない方も多くいらっしゃいました。「一般の健康診断に 組み込まれていないので有料である。」、「待ち時間が長いし、どこに行けばマンモグ ラフィを受けられるのかということがわからない。」ということでした。  そこで最後に、「何を伝えるべきか」ということをまとめのチャートとして終了にさ せていただきたいのですが、まず、他人事ではないということを理解してもらうことで す。日本では一生を通じてみると30人に1人の割合で発症しており、発生率は年々増加 している、ということをきっちりと説明する。それから、早期発見の意義、これは一般 的な概論としては伝えられてきたんですけれども、もっと具体的にどういう点で、どの ように違うのかというところまで言わないと、なかなか理解してもらえないということ がわかりました。  それとともに、もう一つ、フローを示すことです。例えば、検診を受けた後にもし精 密検査が必要であると言われた場合には、次にどのようなステップになって、そして、 治療にはどういうようなオプションがあって、それを早期発見することによって各時点 でどのように自分が選択できるオプションに差が出てくるのかということがわかること によって、その意義を理解し、また、検診を受けようというような気持ちにさせるとい うようなことが1つ言えると思います。  それから、3番目、安心感を与えるということも重要です。非常に怖いんですね。が んと言われると死ぬんじゃないかと思ってしまう。でも、実はしこりがあっても、その うち8割は良性である、というデータもあります。ですので、むやみに怖がらせない。 「たとえあなたが最初の検診でしこりが発見されたとしても、最終的に本当に乳がんで ある確率というのは2割以下ですよ。」、ということを伝えることによって、「だった ら早期に見つけよう。」、「今、しこりがあるけれども、きちんと検査を受けよう。」 というような形につながるのではないかと思います。  4番目、これが今、私ども企業で活動している中でも一番難しいところですが、どこ へ行けばいいのかということが、なかなかきちんとした情報としてまとまっていない。 信頼できる施設や検診センターというのはどこにあるのか。例えば、検診を受けるため に癌研究会附属病院に行ったり、聖路加国際病院に行ったりというようなことではなく て、検診センターもしくは検診施設に行くというのがプロセスとしては望ましいと思わ れます。でも、一般の女性たちはわからないんです。そのために、がんと聞いて専門の ところに直接行ってしまう、というところがあるので、検診を受けるためにはどこに行 けばいいのかという情報をきちんと整理することが必要だと思われます。  以上、私からの説明になります。  アメリカの例を見ても、同じ道を歩んできているかなという気はしますが、今どこの 時点にいるかというところでは、まだまだ追いついていないところもあると思います。 今後の課題としては、いかに今のアメリカの状況まで早く持ってくるかというところ が、日本にとっての課題かなと私は思っています。  罹患率から申しますと、日本では40歳代が一番高いんですけれども、40歳代の女性と いうのは小さな子どもを抱えている主婦といった、家族の中心となって働いている方が 多いと思われます。ですので、乳がんについては、女性だけではなくて、その家族、男 性も含まれる国民全体の問題として意識を高めていくことが今後望ましいと思います。  以上、ありがとうございました。 ○垣添座長  西川参考人、大変総括的な御発表をいただきまして、ありがとうございました。  ただいまの御発表に関して御質疑がありましたら、まずお受けしたいと思います。 ○大内委員  追加ですが、3ページの「検診の運用:基本的な流れ」の中で、米国においては医学 部の学生にも乳がんについての基本的な教育が行われているということです。従来、文 部科学省で日本の医学部においてどのような教育がふさわしいかということで、3年ほ ど前にモデル・コア・カリキュラムというものが策定されました。その中で、原案で は、乳がんあるいは乳房という項目が欠けておりました。それを私がたまたま医学部教 務委員をしておりましたので、乳がんは極めて重要な疾患であるということから、乳房 という項目を加えております。従いまして、今の医学部のコア・カリキュラムの中に乳 がん検診にかかわることも組み込まれております。ただし、問題点は厚生労働省が策定 しております卒後臨床研修の必修項目の中に乳がんという項目が入っておりません。こ この部分で整合性がとれていないということがありますので、場違いではあるかと思い ますが、今後の国としての乳がんに対する取り組みとしては、厚生労働省で示している 卒後臨床研修必修科のカリキュラムの中に、是非乳がんを組み入れていただきたいと思 います。 ○垣添座長  ありがとうございました。  そのほかにいかがでしょうか。 ○櫻井委員  4ページの検診の基本ガイドラインのところですけれども、西川さんへの質問という より大内先生に、このAmerican Cancer Society(ACS)のガイドラインについての 御意見を聞きたいと思うんですけれども。 ○大内委員  このACSのガイドライン、それから、NCIガイドラインなど、いろいろあります が、本日はACSのガイドラインを示されたものです。この40歳以上へのマンモグラフ ィ導入については当時のクリントン大統領の決断があって、マンモグラフィについての 検診費を保険でカバーするということになりました。私も39歳までについての自己検診 及び3年に一度視触診を受けるということが、保険制度上どのように扱われているのか については、ちょっとわかりません。西川参考人がもし御存知でしたら教えていただき たいと思います。つまり、保険でカバーするように米国の政府として、クリントン大統 領が明言したような形でそれは承知されているのか、あるいはこれはあくまでも自由意 志でやるようにというRecommendationなのか、この違いを確認したいと思います。 ○西川参考人  私もその部分は特に調べたわけではないんですけれども、私がその保険として4つ挙 げている部分に関しては、年齢という切り口ではなく、それ以外の切り口で、例えば身 体障害者であるとか、所得レベルであるとか、そのような切り口で保険の申請が行われ るというようなことでした。ですので、20歳代、30歳代に対して40歳代以上だとこうと いうような基本ガイドラインに合わせた保険の仕組みというものはないと理解しており ます。 ○大内委員  今の櫻井先生の御質問は、恐らく次の5ページの医療保険のところにかかってくるの だと思いますが、私はこのACSのガイドラインが医療保険との調整はされていないと 考えます。 ○櫻井委員  もう一つ、これは西川さんにお聞きしたいんですが、日本での調査の18ページのとこ ろですけれども、確かにこういう貴重な調査を我々もちゃんとやっておかないといけな いなという気もして大変参考になったんですが、とは言いながら、この調査は18ページ に書いてあるように、一応グループ調査で、さし当たってこの調査は1グループ8人、 2グループの16人について聞いたということですか。 ○西川参考人  はい、そうです。これは定性的な調査なので。 ○櫻井委員  かつ、半分は検診を受けている女性で、半分は受けていない女性と御説明があったと 思うので、変な言い方だけれども、16人の人に聞いて8人は、ぴったりかどうか知らな いけれども検診を受けている人で、8人は受けてない人ですから、後ろに書いてある消 極的な理由は、そういう言い方をすれば8人の人の意見だと考えていいですね。だか ら、大変貴重な資料だけれども、まさに定性的というか、どういうふうに選ばれたかわ からないけれども、8人の検診を受けていない人が自分には関係ないとか怖いと言って いらっしゃったということになるかなと思うので、この調査はもう少し、せめて半定量 的くらいか、本当は無作為抽出でやれば一番いいでしょうけれども、我々もこれは非常 に必要だと思ったんです。ただ、この結果だけが独り歩きされると、そう言っては申し 訳ないけれども、極めておっしゃる通り定性的で、しかも16人、8人グループが2人、 しかも、そのうち半分受けていない人がいるというのだから、8人の人の意見がという のは……。 ○斎藤委員  この件に関しましては、大腸がんで我々が全国調査をやった結果と前者の2つは全く 一致しております。それから、これまでの報告でも欧米でもこういったことは挙げられ ていることですので、数は少ないんですが、比較的代表性があるような気がいたしま す。 ○垣添座長  ありがとうございます。 ○櫻井委員  そうすると、どの部分が同じなんですか。触診への抵抗感があるというのは大腸がん ではどういうふうになっているんですか。 ○斎藤委員  大腸がんでは触診はありませんので、前者の2つについて申し上げました。 ○櫻井委員  だから違うのではないですか。 ○垣添座長  がんに対する恐怖とかそういうことだと思いますよ。 ○櫻井委員  それはそうですけれども。 ○垣添座長  8人の結果に基づいてというのは櫻井委員の御指摘のとおりですが、これは是非、医 師会なりあるいは学会なりで、こういった調査も大規模にやっていただければと思いま す。 ○遠藤委員  このアンケートに関しましては、今回の御発表は16人の方たちということでございま したけれども、乳房健康研究会という団体があります。同じように乳がんの啓発活動を している団体でございますけれども、こちらの方でも大規模な調査を行っております。 それから、私どもついこの2月に名古屋で200人を対象にして行いました。その結果も 大筋このような状況でございました。 ○垣添座長  ありがとうございます。  では、先に議論がありますので、西川参考人、御発表をありがとうございました。  それでは、前回からの積み残しについて論点整理メモに従いまして議論を進めてまい りたいと思います。まず、事務局から、これまでの論点と検討会での合意事項を整理し ていただいておりますので、その説明をお願いします。その後、乳がん検診、子宮頸が ん検診、子宮体がん検診の順番に議論を進めてまいりたいと思います。事務局、どうぞ お願いします。 ○椎葉課長補佐  それではまず、前回の論点整理につきまして御説明させていただきます。資料2をご らんいただければと思います。1ページ、乳がん検診でございますけれども、前回御議 論いただいたことで確定したこと、もしくは引き続き議論が必要となっていることにつ いて事務局で書き入れてございます。  1.検診方法でございますが、視触診とマンモグラフィの併用検診については、御議 論いただきまして40歳代の方に拡大するというのは合意を得たものと認識しておりま す。ただ、この中でマンモグラフィ単独検診について50歳以上とするか60歳以上とする かというところが争点でございました。視触診単独検診につきましては、30歳代の取扱 いについて、それから、40歳以上でのマンモグラフィが整備できない場合の取扱いにつ いての御議論はなかったということで、今回御議論いただければと思っております。  2.検診頻度でございますが、前回の御議論で隔年とするということが確定いたしま したが、この根拠となる資料ということで大内委員より御提出いただきましたので、参 考資料2としてお配りしてございます。  3.検診対象年齢でございますけれども、これは1の検診方法と密接に関わるもので ございますので、そこで御議論をいただければと思います。  4.検診の実施体制、これは迅速に整備することが必要で、人材の育成、精度管理も 同様でございます。それから、受診率の向上につきましても、更なる取り組みが必要だ という御意見をいただいております。  次に、2ページ、子宮頸がん検診でございます。まず1.検診の頻度でございまし て、これにつきまして未確定でございました。毎年やるというものと、それから、3回 連続陰性の場合には3年に1回とする、とか諸外国の状況なども踏まえた御議論がなさ れたと思っておりますが、これについて事務局からは隔年ということを今回提案させて いただきたいということで、ここであえて(2)「隔年(→事務局案)」とさせていただ いております。ただ、これにつきましては、斎藤委員から参考資料1として資料を御提 出いただいておりますので、それも踏まえて御議論いただければと思っております。  2.検診対象年齢でございますが、前回の御議論で20歳以上ということで合意を得ら れたと認識しております。  3.受診率の向上につきまして、啓発普及や特に性交渉との関連で性教育の連携につ いても御意見をいただいたと考えております。  そして、3ページ、子宮体がん検診でございますけれども、これは前回御議論いただ いておりませんので同じように出しておりますが、(1)検診の意義について、廃止か継 続かという簡単なまとめでございましたが、事務局で整理いたしまして、前回の資料よ りも更に少し踏み込んで書いております。  (1)といたしまして、子宮がん検診の場を利用して、有訴者(ハイリスク者)に対し て、子宮体がん検診を同時に実施するという、現行の方式を継続するというもの。ただ し、この実施の選定基準や検査の安定性、検査の精度についてのガイドラインを日本産 科婦人科学会等の関連学会を中心に作成していただくというのが(1)でございます。  (2)といたしまして、有訴者(ハイリスク者)に対して、十分な安全管理のもとで多 様な検査を実施することが可能な医療機関の受診を勧奨するというもの。  それから、(2)対象年齢につきましては、(1)現行の子宮頸がんの検診と子宮体がん検 診の対象である30歳以上ということ、(2)ハイリスクと言われている50歳以上というこ とでお示ししております。  そして、資料3の「これまでの主な意見(案)」は、前回の第4回に提出した資料と 同じでございますが、一部字句を修正させていただいているところがございます。  それから、先ほど申しましたが、参考資料1が斎藤委員、そして、参考資料2が大内 委員からの提出資料でございます。  最後になりましたが、資料1「これまでの議論のまとめ」でございます。これは、最 終的に報告書をまとめる際の骨子のようなものとして、特に今回の検診の見直しに当た りましては、その科学的な根拠を明確にするということで、これまでの議論を踏まえて 整理したものでございます。一部事務局の提案した部分も入っておりますが、これも踏 まえて御検討いただければと思います。  1ページには、乳がん検診について、2ページには子宮頸がん検診のこれまでの議論 を踏まえて整理したものでございます。子宮体がんについては、今回は用意してござい ません。そして、3ページ、4ページが久道研究班の報告書からの抜粋、それから、5 ページが乳がん検診、子宮がん検診の各年代別の実績。そして、6ページ、7ページで ございますけれども、女性の部位別がんの罹患率で、今から約30年前の1975年の罹患状 況と、直近のデータとなる1998年の罹患状況について、かなり様相が変わってきており ますので、このようなことも踏まえながら御議論をいただければと思います。  以上でございます。 ○垣添座長  ありがとうございました。  それでは、乳がん検診のところから入ってまいりたいと思います。前回、議論が不十 分に終わった部分もありますのでそこも確認しながら、併せて前回合意いただいたこと も再確認しながら進めてまいりたいと思いますが、まず、40歳代に関しては前回、マン モグラフィを基盤にして視触診を併用するということで合意をいただいております。そ れから、大内委員から、乳腺組織が発達した乳房が多い年代ですので、できればマンモ グラフィは2方向撮影が望ましいという御意見がありました。40歳代に関しては、それ でよろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○垣添座長  ありがとうございます。  50歳代に関しても同じく、マンモグラフィを中心にして視触診を併用するということ でありますが、よろしゅうございましょうか。これに関しては、本日御欠席であります が、前回、清水委員の方から50歳代あるいは60歳以上に関しても視触診の併用というこ とに関して根拠が十分でないのではないかと。視触診に投入する資源をマンモグラフィ の方に、あるいは検診そのものの全体を底上げするのに使う方が合理的ではないかとい った御意見がありましたけれども、座長の取りまとめとしては、マンモグラフィによる 検診が直ちに日本中で実施できる状況にはならないと思いますので、その間のつなぎの 意味も含めて併用するということで取りまとめをしましたが、それでよろしゅうござい ましょうか。50歳代に関して、マンモグラフィを基盤に据えて視触診を併用するという ことでよろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○垣添座長  ありがとうございます。  60歳代以上に関して、前回でマンモグラフィを中心にするということは決まっており ますが、視触診をどうするかということが結論を出せませんでしたので、この点に関し てもう少し御意見をいただければと思います。  大内委員は、これまでの発表では60歳以上に関しては視触診は要らないという御意見 だったかと思いますが。 ○大内委員  前回、提出いたしました資料の中で、いわゆる検出率、マンモグラフィ単独で年代ご とにどの程度がんが検出できるかという研究がございまして、60歳以上は100%マンモ グラフィで検出できていたというデータがございます。その観点から言えば、視触診を 省略しても可とするということを提案いたしました。ただ、完全に廃止かといいます と、これはまた先ほどの議論と同じで、全国的にマンモグラフィの機器等が行き渡って いないという状況を考えますと、一定の暫定的な期間が必要かと思います。 ○垣添座長  わかりました。  それでは、整理の都合上もありますから、40歳以上に関してはマンモグラフィを中心 にして視触診を併用すると。ただし、マンモグラフィが全国的に行き渡ってきた段階で 視触診に関しては、また再検討するという整理でよろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○垣添座長  ありがとうございます。  それでは、あと、前回全く議論ができませんでしたけれども、40歳未満の乳がん検診 に関して御意見をいただければと思います。  この点に関しては、久道班の検討報告では、視触診単独では乳がんの死亡率減少効果 はないという結論になっていたかと思います。繰り返し申し上げておりますように、こ の検討会で決めていく結論というのは、やはり、これまでの学問的な根拠に根ざして、 科学的な根拠のある結論をうち出したいと思っておりますので、その点是非、再認識し ていただいて、40歳未満の乳がん検診に関して御意見をいただければと思います。  それでは、過去4回の議論、それから、これまで発表されているいろいろな学問的な 内容を総括して、40歳未満の乳がんは検診の対象とはしないという取りまとめをしても よろしゅうございましょうか。勿論、御自分での自己検診は続けていただくということ が前提になっております。それでもし、「しこり」などを発見された場合には医療機関 を受診していただくと。つまり、検診の対象とはしないという整理はいかがでございま しょうか。 ○斎藤委員  資料にありますとおり、これは大内先生から提出されました資料1の最後を見ます と、やはり30歳代の乳がんの罹患率は40歳代より非常に低いですね。それが1つ。  それから、前回までも出てきましたが、やはり発見率も低いということで、座長の今 の取りまとめで基本的によろしいかと存じます。 ○櫻井委員  よろしいですか。今やっているのを廃止する理由はないと思いますので、30歳代につ いては視触診のみで続けることを提案します。 ○垣添座長  ほかにいかがでしょうか。 ○大内委員  「これまでの議論のまとめ」の1ページで、30歳代の乳がん検診の廃止という項目の 中に2点ございます。視触診検診によるがんの発見率が低いということが第1点、今、 斎藤委員も話されました。それから、30歳代に関しての死亡率減少効果については、国 際的にも根拠が示されていないということがございます。それと、先ほどの発見率の問 題と検診で要精密検査となった場合に、その方が結果的に乳がんと診断される、それを 陽性反応的中度と申しますが、第2回の資料にもありますけれども、これが例えば50歳 であればこの陽性反応的中度は2.5あるいは60歳代は3となっていますが、30歳代は0.8 と極めて低くなっております。今までの議論を整理しますと、やはりこの検討会におき ましては、これまで提言されてきた根拠となるようなデータをもってして結論を出すべ きだと思いますので、私は視触診単独による検診というものをこれ以上続けることにつ いては反対いたします。 ○櫻井委員  まず、幾つかあるんですけれども、受診率の低さということが一番問題になっている わけですから、それを上げることをやった上での議論でなければいけないということが 1つです。  それから、死亡率減少効果によって物事を判断する、それはよくわかりますけれど も、特に若い人に関しては、乳がんによる死亡率減少効果だけですべてを判断するのは おかしいと思うんです。QOLの確保であるとかそういう問題もいっぱいあるわけだ し、もっと極端に言えば、それだったらがんを見つけて、もし何かで全部治るようにな ってしまえば、死亡率減少効果の問題はおかしな理屈になるんです。そうすると、死な なくなってしまえばそれでいいかという話ですよね。死にさえしなければいいんだとい うことであったら、検診の意味がちょっとおかしいのではないかなというのがどうして も疑問なんです。ですから、先ほどの40歳以上についてのマンモグラフィと視触診を併 用するのは結構ですけれども、上の方の年齢も視触診をやめるということについては、 きちんとした受診率を上げることとか、死亡率減少効果以外の指標みたいなものをきち んとつくって検討してもらわないと、確かに疫学的に死亡率減少効果はこっちに置いて おいて何とかというのは、私は絶対におかしいと思います。乳がんというのは実際に罹 患率がすごく高くて、死亡順位はまだ上でないということもあるわけですから、死ぬと いうことだけを単に指標で検診の有効性を議論することはおかしいので、もう少しいろ いろな指標を入れて有効性を判断すべきだと思います。  それから、根本的には受診率が低いんですから、その低さでやったのではおかしいと いうことで、8割受けてこうだと言われるならまだわかるんですけれども、そのところ がまだ達成されていないということを忘れないでほしいと思います。 ○垣添座長  櫻井委員御指摘のように、我が国の乳がん検診の受診率が低いということは御指摘の とおりで、これは論点メモの下の方にあります受診率の向上ということで啓発普及とか 費用の問題がありますが、これはこの検討会の役目を超えますけれども、行政を中心に して、今日例えば西川参考人からいろいろ具体的な御提案をいただきましたが、ああい ったことも踏まえて今後、更に努力を続けていかなければいけない、それは事実だと思 います。 ○櫻井委員  先生、私の言っていることは、その低い受診率の結果で効果があるとかないとか判定 しているのはおかしいということを言っているのですから、ここに関係あるんです。今 までのいろいろな報告が実際に検診を受けた人の結果で物事を言っているわけですか ら、受けていない人が8割もいるのにそういうことを無視してやっているのはおかしい ということを言っているわけです。 ○斎藤委員  この検診を施策に導入してやるかどうかというのは、先ほど座長がおっしゃったよう に、やはり基本は久道班で打ち出されたように、死亡率減少効果がある、なしに尽きる と思います。これについては議論の余地はないと思います。死亡率減少効果、すなわち 有効性が示された検診について受診率を上げていくというのが順序であります。ですか ら、この点については、ここで議論をこれ以上する必要はないと思います。  それから、受診率を上げるということに関して言いますと、先ほどの西川参考人の中 にもありましたが、やはり受診者を説得といいますか、受診してもらうためには検診を 信頼していただかなくてはいけない。そのときに、有効性があるということが一番の根 拠であると考えます。 ○垣添座長  ありがとうございました。  それでは、時間の関係もありますのでここで結論を出したいと思いますが、繰り返し 申し上げておりますように、エビデンスに基づいてこの検討会は結論を出したいという ことが1つ、それから、櫻井委員の御指摘になった受診率が低いという問題は、また別 に取り扱うということにします。  それで、死亡率低下だけを取り上げても具合が悪いのではないかという御指摘です が、しかし、検診が有効であれば死亡率は当然下がってくるはずですから、これまでの データでそういうものがないということになると、この検討会としては40歳未満に関し て言えば、乳がんは検診の対象としないという整理が最も妥当ではないかと考えます が、いかがでしょうか。 ○櫻井委員  さっき申し上げたように、例えば、がんが全部薬で治るようになれば、死亡率減少効 果は意味がないですね。そうしたら、検診は意味がないということになるんです。も し、仮にがんが全部治るようになったとしたら、死亡率減少効果はあり得ないですよ ね。いつがんを見つけたとしてもみんな治るんだと。だったら、検診しないで一番遅く なってから見つければいいということだけになってしまって、QOLの確保とか、それ によってどんな手術をするとか、そういうことは無視しようということになりますよ。 それはおかしな理論ですよ。 ○垣添座長  いえ、それはやはりちょっと言い過ぎではないでしょうか。 ○櫻井委員  いやいや、言い過ぎかもしれないけれども、それを考えないといけないと言っている んです。  それから、死亡率減少効果というのは、さっきから言っているように、低い受診率の 受診した人だけを対象にした研究ですから、実際に受けている人というのは既にバイア スがかかっているわけですね。 ○垣添座長  ただ、これは日本だけのデータに基づいているわけではありませんからね。 ○櫻井委員  でも、日本のデータがなければ意味がないですね。 ○垣添座長  勿論そうです。 ○大内委員  死亡率減少効果に関する症例対照研究は、既になされています。前にもお示ししまし たように、視触診単独による効果はなかったとするのが結論ですが、これは受診率とは 関係ないんです。実際に乳がんで亡くなった方々の検診受診歴の有無を検討したわけで す。乳がんで亡くなった方の中で検診受診歴が死亡率減少効果に寄与したかどうかにつ いての調査ですので、その結果として証明されなかったということですから、受診率の 向上とは密接には関係しません。 ○櫻井委員  それは、30歳代で亡くなった人を調べているんですか。後から亡くなった人を調べて いたら、それはおかしいのではないですか。20歳代、30歳代でどうだという話とは。 ○大内委員  それは、30歳代、40歳代、50歳代がすべて入っています。 ○櫻井委員  そうしたら、30歳代で死亡する人たちのものだけを調べてくれないとおかしい話で す。 ○大内委員  先生の御議論といいますのは、例えば、そういったデータが出るまでずっと続けなさ いということでしょうか。 ○櫻井委員  おっしゃるとおりです。データをちゃんと出さないで、例えば外国のデータだとかそ ういうことで言わないでほしいということです。  それから、実際に何年か前に先生たちが報告書を出して、しかも、大内先生などの御 意見で今の方針を決めたのは3年か4年前ですよ。それからあと、何の新しいデータも 出ていないのに、それをなぜひっくり返さないといけないかを是非聞きたい。今のやり 方をやろうということを決めて、何年か積み上げた上で結果を出すべきなのであって、 今のやり方を決めたのは大内先生などの意見で決めたんですよ。それから何か新しいデ ータが出たんですか、出ていませんよ。その前のデータと同じことであなたは言ってい るんです。 ○大内委員  4年前の検討会について、これは50歳以上にマンモグラフィの導入を行ったもので す。その時点において、40歳未満についてのデータが日本においては不足していたと、 それは事実です。今回は40歳代についてのデータが出たということで提案したわけで す。30歳代については、データは今でもありません。 ○櫻井委員  ないということは、やはり証拠にならないということでしょう。つまり、そこがわか らないんです。何年か前に決めてそれでやろうと言って、今ようやく市町村で動き出し たところです。そういうことでは、検診はできっこないですよ。変な言い方だけれど も、先生方の意見は学問の意見として、それを動かすのは行政とか医師会とか実際の現 場で動き出すわけですから、何年かかかります。それを3年か4年か経たないうちに、 それをひっくり返すとやられたら、ごちゃごちゃになってしまうだけですよ。もう少し 何年かやって、きちんとデータをそろえて、その上で反省に立ってやるということで、 その間に当然検診の受診率を上げるということをやっていくということで、そうでなけ れば、とても検診はできないと思います。 ○大内委員  先生にお伺いしたいのは、30歳代において視触診による有効性が確定されるというこ とを先生はお考えですか。 ○櫻井委員  それはわかりません。それは先生方がやることですから。 ○大内委員  そうであったとしても、その結果が出るまでこの件については保留とされたらいかが でしょうか。しかし、エビデンスがないわけですから、今回のこの検討会において30歳 代に視触診単独を継続するという理由にはならないと思います。根拠がないわけですか ら。 ○櫻井委員  いや、例えばさっきのACSだって、これは3年に一度だけれども視触診を勧めてい ますし、自己検診を毎月やりなさいと言っているんです。それは自己検診と視触診によ る検診は少しは意味が違うかもしれないけれども、基本的に自己検診というのは視触診 です。御本人が行う視触診です。それでは、それを認めないんですね。 ○大内委員  それは違います。自己検診も含めて視触診は適宜行うというか、それは御自分の責任 で行うべきだと思います。それから、少なくともハイリスクの方々、例えばお母様が乳 がんとかそういった方については、30歳代であってもあるいは20歳代であっても、こう いったことをrecommendすることは必要だと思っています。これを国の施策として、都 道府県あるいは市町村すべてに通知で30歳からしなさいということについては無理があ るということを言っています。 ○櫻井委員  しなさいということではないんですよ。した方がいいということを言えばいいだけ で、するかどうかは行政が決めることだから。それがおかしいんですよ。 ○垣添座長  ちょっと待ってください。行政としては何か御発言はありますか。 ○櫻井委員  しかも、国はお金を出さないんですからね。これは市町村行政が決めることですか ら。 ○麦谷老人保健課長  特に事務局からそのことで、どちらがどうという意見はございませんが、行政が決め ると言われるのはちょっとつらいものがあります。やはりエビデンスに基づいて、こう いう結果だと言われて市町村あるいは都道府県にガイドラインを示したいと思っており ますので、それはやはり現場で行政の役人が決めるのではなくて、ここで例えば40歳未 満の視触診単独は有効ではないと言われたら、我々は都道府県・市町村に対してはやめ た方がいいと言います。ですから、そこは有効であればやれと言いますし、それを自治 体の選択に委ねることはありません。 ○垣添座長  わかりました。ですから、この検討会として40歳以上に関して言えば、マンモグラ フィをきちんと全国に行き渡らせるべきであるという話になっておりますが、これから 先の結論の活かし方は行政に委ねるということですね。それでよろしいかと思います が、今の40歳未満に関して言いますと、エビデンスがないということであるとすると、 この検討会としてやはり採用するのは難しいと私は思いますが。 ○櫻井委員  今、大内先生がエビデンスがないと言ったのは、無効であるというエビデンスがない と言ったんですよね。 ○垣添座長  有効であるというエビデンスもないのではないですか。 ○櫻井委員  それはでも、乳がん発見したとしても意味がないと言われればそのとおりですけれど も、実際には先ほどの資料に出ているように、若い人の乳がんも視触診で発見されてい るわけです。 ○垣添座長  それはおっしゃるとおりです。 ○櫻井委員  そうですよね。 ○垣添座長  ただ、それが検診でどうかということなんです。 ○櫻井委員  でも、それが無効だというエビデンスがないとおっしゃっている以上は、つまり現状 をやめるためには無効だということがなければやめる意味がないんです。つまり、今や っているわけですから、それをやめさせるためにはこれは無効だということを出してく れなかったら困ります。 ○垣添座長  無効だというエビデンスはありますか。 ○大内委員  それが久道報告のI-cというのが結論になります。 ○垣添座長  そういうことですね。死亡率減少効果がないとする相応の根拠があると。 ○櫻井委員  相応の根拠があるということで、もう一つの区分にしなかったと、これにはそれが完 全に否定できなかったからやったわけで。 ○垣添座長  でも、私どもは積み重ねでやってきていますから、久道班の報告に基づいて現実的な 対応をどうするかというのは……。 ○櫻井委員  いやいや、それでしたらさっきも言ったように、久道班の報告というのは何年も前に 出て、今の制度を決めるときに大内先生の意見でこうやるというのを変更したとき私も 参加させてもらいましたけれども、この方法でやろうと決めたときに既に出ていたデー タですからね。では、何であのとき言わなかったんですか。あのときはそのままにして おいて、何で今になってひっくり返すのか。 ○大内委員  大変失礼ですが、久道班の報告は2001年度だと思います。50歳以上のマンモグラフィ 導入についての検討会は1999年でして、2年前です。2000年の平成12年度から50歳以上 についてマンモグラフィが導入されたわけです。ですから、その時点ではこの久道班の 報告はありませんでした。 ○櫻井委員  いや、ありましたよ。平成だと10年だから、二千何年ですか。I-cを出したのは、た しか2000年ですよね。 ○大内委員  久道班の報告は平成13年度です。 ○麦谷老人保健課長  先生が言われているのはこれだと思いますが、この久道班の報告書は先ほど言われた ように平成13年、2001年3月ですので、2001年度の最終報告です。 ○櫻井委員  その前に1つ出ていますよね。絶対間違いないですよ、私が役員になったのが平成10 年なんだから、そのとき既に……。 ○大内委員  先生のおっしゃっているのは平成10年度、1998年に一旦、久道班の第1の報告がござ います。その中において、マンモグラフィの導入について対応すべきだということが勧 告されています。 ○櫻井委員  いや、そうではなくて、さっきのI-cという判定はそのときに出ていますね。 ○大内委員  いえ、違います。それは2001年です。 ○櫻井委員  今私はここに資料を持っていないけれども、平成10年の何月かに一新聞にがん検診は 無効とかというのが出て、それで問題にしたんですから。平成10年3月に、がん検診の 有効性評価の研究班の報告書が出されたと書いてあります。それを私は言っているんで す。 ○大内委員  その件については、結論だけ私の記憶の中で御説明いたします。平成10年……。 ○櫻井委員  平成10年3月に、この序文に書いてありますけれども、この本は平成13年だけれど も。 ○大内委員  その点について、乳がん検診について私の今記憶しているところで2点ございます。 視触診による乳がん検診の有効性は示されないというのが第1点です。第2点は、有効 性が確認されているマンモグラフィ導入に向けて対策を講ずると、この2点です。 ○櫻井委員  私が言っているのは、平成10年3月のときの話では、ないと言っているんじゃないで しょう、あるんでしょう。平成10年に出ていますよね。これと同じ報告ですよ。 ○大内委員  そのときは全くマンモグラフィは導入されていなかったので、国としての報告書の中 で、1点は視触診の検診は有効性が証明されていないということ、2点目として、その 対応としまして国としてマンモグラフィ導入に向けて検討を開始するということです。 それが平成10年度の報告書です。 ○櫻井委員  いや、I-cの判定をしたのはそのときであって……。            (「いえ、違います」との複数声あり) ○櫻井委員  そうですよ。 ○垣添座長  I-cというのは、先ほどのダークグリーンの本(「新たながん検診手法の有効性の評 価」報告書)の中です。 ○櫻井委員  平成10年のときに出ていないですか。平成10年のがん検診の有効性評価の研究班の報 告書というのがあるんですよね。 ○垣添座長  それは今、事務局で出てきませんか。 ○麦谷老人保健課長  今、探しています。 ○垣添座長  では、ここのところは置いておいて、検診頻度に関しては隔年ということで前回確認 をいただきましたが、大内先生が資料を用意しておられますが、短い時間で御説明いた だけますか。 ○大内委員  2年とした根拠についての論文が幾つかありますが、今日お示ししました参考資料2 の中に、日本乳癌検診学会雑誌からの報告書です。この四角で囲まれたAbstractだけ見 ていただきますと、早期乳がん比率、それから、中間期乳がん発生率から見て何年間隔 が適切かということです。2年に1回の検診による乳がん発見は、継続検診ですね。条 件はマンモグラフィによる検診を何回か繰り返した方々が対象になります。その中で、 その間に何年のインターバルがあったか、1年、2年、3年、4年とあります。それを 追跡調査した結果は、2年に1回ですと7例の乳がんが発見されましたが、それはすべ て早期乳がんであったと。3年に1回では4例中3例が早期乳がんであったということ です。  それから、中間期乳がんの発生率ですが、視触診単独では19.4%、マンモグラフィを 併用しますと4.4%と低下します。  結論としまして、専用機器の処理能力、これはマンモグラフィですが、あるいは放射 線被曝リスクあるいは費用・効果比等を鑑みて、マンモグラフィ検診の間隔は2年が適 切であるという報告です。  以上です。 ○垣添座長  ありがとうございました。  それでは、検診間隔に関しては2年に1回ということでよろしゅうございましょう か。 ○櫻井委員  確認でいいですか。今のまとめのところに諸外国の状況というのが書いてありますけ れども、これは関係なくて学問的に2年に1度がいいということで考えてよろしいです ね。さっきのACSなどは毎年実施を勧めいるわけですけれども。だから、諸外国状況 を参考にするんだったら、必ずしも2年に1回にならないですよね。 ○垣添座長  諸外国ではなくて今のデータは日本のデータです。 ○櫻井委員  いや、ですから、この論点メモのまとめの諸外国の状況がというのは要らないという ことですね。日本のきちんとした先生方の学問的な根拠で2年に1回でいいんだという ことを言っていらっしゃると。 ○大内委員  いえ、これは追加いたします。毎年行っているのはアメリカのみです。ほかの特にヨ ーロッパは2〜3年に1回です。イギリスにおいては3年に1回です。ほとんどの国が 2年か3年に1回です。 ○櫻井委員  でも、先ほどの発表で、アメリカがあれだけ検診率を上げて、これを約10年ぐらいや って、ようやく死亡率が今減少に向かってきているというきちんとしたデータが出てい るんです。それを無視してしまうというのは問題があるのではないですか。少なくとも そういう制度を10年なら10年ぐらいやって、ようやく結果が出てくるんだと思うんで す。 ○大内委員  アメリカのデータは西川さんがお詳しいかもしれないけれども、71〜72%という受診 率が出ていますが、これは2年以内に受けた市民のパーセンテージでして1年ではあり ません。アメリカのデータは2年に1回になっています。 ○櫻井委員  でも、recommendは少なくともACSは毎年と言っていますよね。受けているのが2 年に1回かどうかは別ですけれども、今のは話をずらしているので、どうrecommendす るかの話で費用の話ではない。学問的に2年に1回でいいんだということを言い切らな ければおかしいと思います。 ○垣添座長  私は2年に1回でよろしいと思います。アメリカの受診率71%というのは、過去2年 以内に一度でも受けた人のパーセンテージということで……。 ○櫻井委員  いや、受診率はいいですけれども、さっきのACSでは40歳以上に毎年マンモグラ フィ検診、毎年視触診を勧めているんです。 ○垣添座長  だから、アメリカの71%が毎年受けた人の結果でないということを言っているんで す。 ○櫻井委員  それはわかります。でも、recommendは毎年と言っているんですから、日本だってそ うですよ。毎年と言ったら全部が受けるわけではないし、2年に1回といったら受診率 はますます減るだけだということは……。 ○垣添座長  それに関しては、必ずしもそうでないという議論は前回にされていますから。 ○櫻井委員  だから、recommendとしては毎年としてもいいのかということです。でも、それが学 問的には意味がないとおっしゃるなら別に反対はしません。ただ、費用の問題ではない ですね。 ○垣添座長  費用の問題はここでは出ていないはずです。 ○斎藤委員  ちょっと大内先生に質問があるんですが、大腸がんの場合はアメリカは勧告が複数の 団体から出ていまして、5つか6つぐらい出ているんです。これが必ずしも一致してい ないんです。例えば、ACSと消化器病学会、その他ありますが、内容に少し違いがあ ります。ですから、乳がんの場合もアメリカでこの勧告が一本なのかどうか、どうなん でしょう。 ○大内委員  これは大変重要な御指摘です。アメリカの場合もNIHのガイドラインあるいはNC Iのガイドライン、これもまた違います。今回はACSのみが出されましたけれども、 ほかの団体からは2年に1回ということも出ています。American Medical Association 等もありますが、今回提出されたのがACSということです。  西川さんから追加はございますか。 ○西川参考人  大内先生のおっしゃるとおりで、私はNCI、それから、ほかの医療団体、協会のも のをすべて見たんですけれども、それぞれインターバルに関してはいろいろな見解があ りました。 ○櫻井委員  それを議論するのであれば、申し訳ない、本当は言いたくないことだけれども、今の recommendは単に久道研究班のrecommendですからね。国が金を出してやったから一番偉 いんだみたいな言い方は、非常に不快ですね。ほかの話にずらして申し訳ないけれど も、エビデンスに基づいてやっているいろいろな診療ガイドラインだって、発表された ものに同じ学会からもものすごい文句が出たりしていることはいっぱいありますから、 それだったら乳がんなり何なりの専門家を全員を集めて、幾つか研究班をつくってやっ てみるべきだと思います。1つの研究班の言うことがすべて何でも正しいんだというの はおかしい。言いたくなかったけれども、今みたいなことを言うんだったら言わざるを 得ません。中にはエコーを入れるべきだとか、日本人の場合はマンモグラフィは適さな いと言っている学者はいっぱいいるわけですから。 ○垣添座長  それを言い出すと、この検討会は……。 ○櫻井委員  それを言い出したのは向こうだから……。 ○垣添座長  いや、そうではないです。それを言い出すとこの検討会はもう成立しませんよ。 ○櫻井委員  全くそうです。ですから、ほかのことを言わないでほしいと言ったわけです。私の言 っているのは、諸外国の状況のためではなくて、今、大内先生の言った理由で2年に1 回でいいんですよとおっしゃるなら、それでいいですと言っているのであってね、そう でないことを言うからおかしいと言っているんです。 ○垣添座長  わかりました。  では、検診間隔に関しては2年に1回ということでよろしゅうございますね。               (「異議なし」と声あり) ○垣添座長  ありがとうございます。  それで、資料は出ましたか。 ○椎葉課長補佐  先ほどの乳がんについての評価でございますが、平成10年3月に久道班から報告書が 出ておりまして、そこの乳がんのところでございますけれども「勧告」というところが ございまして、そこを読み上げさせていただきます。「1、視触診による乳がん検診 は、生存率の比較による研究において無症状の場合は死亡リスク低減効果が認められる が、有効性を示す根拠は必ずしも十分ではない。2、マンモグラフィによる検診には有 効性を示す確かな証拠がかなりあることから、マンモグラフィの導入に関して早急な対 応が求められる」というのが勧告で、クライテリアI-cとかそういったことについては、 この研究班では示しておりません。 ○櫻井委員  そのときは出ていないんですね。ただ、言っている意味は同じだね。 ○垣添座長  ということで、一応この検討会で結論を出しますとやはり行政に指示が行きますの で、今までの議論を踏まえますと、私はこの取りまとめとしては40歳未満に関して言え ば、乳がん検診の対象とはしないというのがよろしいのではないかと思いますが、よろ しいでしょうか。 ○櫻井委員  さっきの平成10年とこの間に違うデータが出たということですね。 ○大内委員  1999年に出された勧告は、生存率の比較による研究に基づいています。日本にはそれ しか存在しなかったのですが、先ほど御説明いたしましたが、ちょうどその後1999年に 症例対照研究による視触診乳がん検診の有効性評価が出ました。その結果として確認さ れたということです。 ○垣添座長  では、乳がんに関しては、一応ここまでにさせていただきます。  続きまして、子宮頸がんにまいりますが、前回20歳以上を対象とするということと、 それから、啓発普及、特に性交渉との関連での教育の重要性等は意見の一致を見ている と思いますが、検診間隔に関して非常に議論が錯綜して決まっておりません。これに関 して、今の論点整理メモでは毎年というものと隔年、これは事務局案、それから、3年 ごとというのが出ておりますが、ここに関してもう少し御議論いただければと思いま す。  それに関して、斎藤委員から資料が出ておりますので、簡潔に御説明いただけますで しょうか。 ○斎藤委員  子宮頸がん検診の対象年齢と検診間隔に関しては、これまでも幾つか論文があったん ですが、昨年1年間で2つの重要な論文が出ております。これに前回、少し言及いたし ました。これが資料1にとじてあります。  その2枚目に、私が非常にざっくりと、不正確さを恐れずに要約したものが載ってい ます。1つ目の研究は、米国CDCの検診プログラムを子宮がん検診を1度以上受けた 94万人が対象でありまして、この人たちの以前のPap smearの陰性の回数別に、良性も 含めましてGradeI〜III及び浸潤癌の有病率、つまり発見率を検討しています。そして、 それを年齢ごとに見ているというものです。これが核心となるデータであります。  GradeI、II、IIIというのはそれぞれ異型度が軽度、中等度、高度で、GradeIIIがい わゆる上皮内がんに相当するものかと思います。  問題は、このIIIと浸潤癌なわけですが、結果を言いますと、その表でわかりますよ うに、異型度が増すほど有病率は下がっていきます。それから、年齢が増すほど有病率 ・発見率は下がっていきます。それから、回数が増すほど下がっていくという結果であ ります。問題となりますGradeIIIと浸潤がんを見ますと、30歳以上44歳以下では、3回 以上Pap smearが陰性であった場合は0.04%、浸潤癌については観察されない、すなわ ち、浸潤がんは3万2,000人を観察してゼロだったというようなことであります。  Pap smearを3回以上逐年でやりますと、最後に陰性であったときから3年以上開け た場合も、リスクの上昇は毎年やった場合と比べて10万人対で3しか上がらないという レポートです。  それから、2番目は症例対照研究でありまして、1,305例のがんとその対象で受診率 を比較しています。これを直近の陰性と判定されたPap smear、それから、陽性の判定 も含めた直近のPap smear受診、その両方を指標として、検診を受けることでどれだけ リスクが下がるかということを見ています。表は、その2つ指標で見たものの平均のリ スクの低下であります。つまり、示されているパーセンテージの浸潤癌が防げるだろう ということが年代別に示されています。  これで言えることは、3年あるいは5年あけても40歳以上では70%を超える低下が見 られる。20歳代では、その低下が5年あけた場合と少し怪しくなりますが、それでも効 果はあるということで、結論としましては、各年代に一様なインターバルは適当ではな いのではないかということと、40歳以上の中年以上の検診は非常に有効であるというこ とかと思います。  これら2つをまとめますと、この間隔と年齢に対して、従来の逐年で一辺倒にやると いうことより一歩踏み込んだ基準、フローチャートが書けるエビデンスが示されたので はないかと考えます。  以上です。 ○垣添座長  どうもありがとうございました。  今の斎藤委員の結論は3年ごとで、年齢のことはありますけれども、3年ごとという 整理でよろしいですか。 ○斎藤委員  そうですね。比較性はなかなか難しいところもありますが、概ねそういうことになる と思います。 ○垣添座長  わかりました。  事務局で隔年という提案がありますが、これに関して。 ○麦谷老人保健課長  事務局といたしましては、勿論これは科学的エビデンスに基づく有効性があるがん検 診ということもありますが、もう一つの要素としては、やはり自治体でやりやすいとい うことがございます。例えば、引越しですとか登録ですとかいろいろな面がありますの で、3年ごとというのはなかなか管理しにくいという面があります。2年ということで あれば、先ほど乳がんも2年に一度でしたので、実施自治体としては連絡や登録といっ たことが比較的管理しやすいのではないかということを考えております。しかも、子宮 頸がん検診は対象を20歳以上に拡大しますので、今の斎藤先生の御説明でも、若ければ やはり3年では間隔が長いというケースもあるということですので、やりやすさと捕捉 のしやすさということで、2年がいいのではないかと事務局としては考えました。 ○垣添座長  何か御発言ありましょうか。 ○田中委員  たしか前回の斎藤委員のお話で、40歳以上に関しては隔年で問題ないだろうと。若年 者に関しては余りエビデンスがないということだったと思いますが、事務局の方の手続 の煩雑さは別にして、少し年齢を分けて隔年と通年ということを入れるようなことは不 可能なのでしょうか。 ○垣添座長  これは行政の立場になりましょうかね。 ○麦谷老人保健課長  もし、この検討会で毎年実施した方がいいとなれば、3年というはなかなか仕組みに くいんですが、毎年と隔年に分けるぐらいはよろしいかと思います。 ○斎藤委員  若年層でエビデンスがないのではなくて、効くのですけれども、それが少し中年以上 よりは効果が落ちるということです。それが1つです。  それから、先ほどのデータを見ますと、罹患率から見ますと若年層よりは中年層以上 の方がウエートがあるわけですね。ですから、あくまでも検診でカバーすべきは主に中 年以降で、隔年あるいは3年に1回の検診を受けていただくということかと思います。 それで再三申し上げていますが、若年層に関しては啓発の意味も含めて20歳から始める ということと、それから、やはり教育が非常にウエートがあるのではないかと考えま す。 ○安達委員  私も20歳以上で隔年でよろしいかと思うんですが、もう一つ加えていただきたいの は、初回妊娠の健診時です。これは教育とキャンペーンの問題かと思いますが、20歳で きちんと自分の体を考えるということで検診をしていただきたい。しかし、やはり妊娠 ということでは、皆さん産婦人科を受診します。ですから、受診をするという間口を広 げるという意味で、是非それも入れていただきたいと思います。 ○垣添座長  今の安達委員の御指摘に関しては、特に反対される方はないのではないかと思いま す。よろしゅうございますね。今の説明事項は、附帯のような形でそれを是非つけてい ただきたいと思います。 ○大内委員  第3回の検討会のときに宮城のデータで妊娠を機に検診をやって、相当の成果が得ら れているということと、日本の全女性の中で出産される方が60数%であることを考えま すと、7割ぐらいの方はそこでカバーできるということですね。ですから、安達委員の 意見に賛成いたします。 ○垣添座長  それでは、子宮頸がんに関しては20歳以上で隔年、ただし、初回妊娠時に関しては是 非とも検診を行うという整理でよろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○垣添座長  ありがとうございます。  それでは、前回全く議論ができておりません子宮体がんにまいりたいと思います。子 宮体がんの検診に関して御発言がありましたら、お願いいたします。 ○田中委員  久道班の報告では、子宮体がんに関してはII群という結果で、有効性を示すエビデン スがないとグループ分けされております。その原因はやはり子宮体がん検診の実施数が 少ないことだと。例えば、1988年ですと子宮頸がん検診のうちの約7.3%が子宮体がん 検診の実施率なんですね。子宮頸がん検診が356万人ぐらいの方が受けていらっしゃる 中で子宮体がん検診の受診者は26万人と絶対数が少ないということが原因ではないかと 思います。  また、がん発見率等は0.1%弱ございますので、子宮頸がんと同じぐらいの精度があ ると思います。将来の問題として子宮体がん検診を受ける人の数を増やす、この点がま ず大事ではないかと思っている次第であります。  一方、ここにも書いてございますように、子宮体がん検診は普通の検診と違っており ます。検診そのものが無症状の人を対象にするという観点から言えば、出血等の症状が ある人を対象にした子宮体がん検診とニュアンスが違うのでありますが、その点を考慮 に入れても、子宮体がん検診の受診者を増やすということが大事ではないかと思ってお ります。 ○垣添座長  ここで論点整理メモの検診の意義というところで、1番目は子宮頸がん検診の場を利 用して不正性出血といった有訴者(ハイリスク者)に対して子宮頸がん検診と同時に子 宮体がん検診も実施するという考えですね。ただし、どういう精度でどういう方法でと いうことに関して十分取り決めがないから、これは関係学会等でガイドラインをつくる という話です。  それから、もう一つは、有訴者に対して十分な安全管理のもとで多様な検査を実施す ることが可能な医療機関、つまり子宮体がんに関して言えば検診の対象ではなくて、医 療の対象とするという、その2つで大きく違ってくると思います。ただ、先ほど来、議 論がされております久道班の検討では、子宮体がん検診に関しては有効性を裏付けるよ うなデータはないということになりますが、さて、どういたしましょう。  安達委員、何かこの点に関して御発言ありますか。 ○安達委員  まず、2つの点からですが、子宮体がんが増えてきているということは皆様も御賛同 いただけると思うんですね。今現在働く女性も増えており、いろいろなストレスによる 排卵障害もありますし、外因性のエストロゲン様物質という環境的な問題もあります。 出産数も減っておりますので、エストロゲンにさらされる期間が長いということで、子 宮内膜症等のエストロゲン依存性の疾患や腫瘍が増えておりますから、子宮体がんも50 歳以上と言わず、もっと若年から実際にこれからも増え続けていくのではないかという ことが1つあります。  それから、もう一点は、いつも申し上げているんですが、産婦人科の特殊性です。有 症状又はハイリスクの方が保険診療で子宮体がんの検査を受けるということになります と、少なくとも病院ないしクリニックのようなところに行って、妊娠している方とかい ろいろな病気の方と一緒に待合時間をずっと待って受けるかどうかということなんです が。症状がある程度あっても、産婦人科の機関へ受診するのはためらうということが非 常に多いんです。子宮体がんというのは実際にどういう方法で診るかと言えば、やはり 婦人科の検診のような、内診ないしはそれ準じたものを受けなければ発見されないわけ です。乳がんと大きく違っていると思うんですが、自分で触診するということで何か情 報が得られるということではありません。そうしますと、子宮頸がんの検診という場を 使うのが、最も有効な手段だと私は思っております。  ですので、この(2)のハイリスク者、有症状、その他の方が、これはこういうことで すね、子宮頸がんの検診の場で子宮体がん検診を希望なさっても、それではしっかりし た病院に行ってくださいと言って検診の対象にしないという意味ですよね。やはり私は こうあって欲しくないと思っております。(1)の子宮頸がん検診の場を利用して、必ず しも症状がなくても、前にもありましたように、診断医が必要と認めたものというのが 入っておりましたが、そういう方で、もちろん本人が希望した場合という形になるかと 思いますけれども、検診の場を広げていく、これは継続していただきたいと思っており ます。 ○垣添座長  わかりました。ただ、その場合に、諸外国では子宮体がんは検診の対象にしていない ということに関してはどうお考えですか。受診しにくいというのは現実的な問題に関し てはよくわかります。ですから、(2)の整理というのは現実的でないと。こういうこと になってしまうと、ほとんど受診する人がいなくなるのではないかという御心配だと思 いますが、それはよくわかりますが、ほかの国でも子宮頸がん検診はどこの国でもやっ ています。子宮体がんは検診をやっている国がないというところが私は気になるんです が。 ○斎藤委員  検診を実施する条件として、よいスクリーニングテストがある、それから、治療法が 確立している等々ありますが、その最初の項目、テストがあることが第一ですね。次に 検診というのは基本的に無症状者集団、つまり無症状で病気のリスクが低い集団に対し て、悪く言えば少し大ざっぱで、精密検査よりは劣りますが、そこから病気であるらし い人をすくいとってくるというのが基本なわけです。子宮体がん検診というのは無症状 者に行うスクリーニング法がなく、有症状者が対象で、これはいわゆる「検診」ではな いと考えます。それが世界的なコンセンサスだと思います。  症状がある人を集めますと、そこでの有病率は高くなるわけでありまして、非常にリ スクが高くなるわけです。そこで、さっき申しましたような普通のスクリーニングテス ト、精密検査より精度が劣るテストをやるということは、倫理上も少し問題があるとい うことを言わざるを得ないと思います。つまり、これは診療行為でありますから、こう いう有症状の患者さんにはきちんとした精密検査、診察から入りまして、最終的には必 要に応じて精密検査までいくという診療行為をフルに行うということがやはり妥当かと 思います。それが原則でありまして、検診とは分けるべきだと思います。  それから、もう一つ申し上げたいのは、他の検診もそうですが、無症状者に受けてい ただくと。有症状の方はちゃんと診療を受けていただくという教育が全がんに関して必 要なわけですが、この面で、子宮体がん検診を有症状者にやるというのは、わかりにく いんですね。例えば、私たちは胃・大腸がん検診をやっていますが、症状を全員の方に 聞いています。問診表で症状がある方は、そこで病院の受診を勧めるということを義務 づけています。このときに、やはり症状があっても受診をすると混乱をしていらっしゃ る方がいて、検診の対策を進めていく上では、このがんに限らず、やはり無症状者が受 けるものであるという認識を徹底する必要があるわけでありまして、その面からも有症 状者にやるというのは、混乱を招くという側面もあるのではないかと危惧いたします。 ○垣添座長  ありがとうございます。  ほかにありましょうか。 ○田中委員  垣添座長の諸外国でどうしてこういう検診がされないかというご懸念ですが、1つは 欧米においては、子宮内膜に対しての細胞診という概念がありません。子宮内膜に関し ては必ず麻酔をして組織をとってこなければいけないということで、実際に日本で行わ れておりますような細胞診の道具、吸引細胞診の道具もないということです。日本にお いては、細胞診の診断率が90%以上ぐらいあるのではないかと思っております。  それから、出血の症状に関してですが、通常、出血があっても大体80%くらいは子宮 体がん、子宮頸がんと関係がない出血でありますので、有症状といってもその症状が本 当に子宮体がんと直結しているかということも1つは疑問ではないかと思っておりま す。 ○垣添座長  それから、ガイドライン作成するという件に関しては、どのくらい進んでいるんです か。(1)の後半に書いてあるような。 ○田中委員  学会の中で肺がんの喀痰細胞診におけるAランクで示されるような細胞が載っていな いのは見ないというガイドラインがまだ定められていない現状ですので、判定保留とい うのが結構あります。学会あるいは関連学会の中でのガイドラインづくりが今始まった ところではないかと思っております。 ○垣添座長  そうすると、今のお話からすると、子宮体がんに関してはやはりエビデンスが十分で ないということになりますね。ガイドラインをつくられるというのは非常に結構なこと ですし、是非、早急につくっていただいて、子宮体がんに関して方法と安全性と精度に 関してきちんと取扱法をつくっていただく、これは是非早急にやっておかなくてはいけ ないということになります。現実の問題として、子宮頸がんの検診にいらした方を対象 にして有訴者を子宮体がんの検診の対象者とするかというと、今の御議論とこれまでに いろいろ御発表いただいた参考人の御意見とかあるいは論文発表などを考えますと、現 状では根拠が十分ではないのではないかという気がしますが、いかがでしょうか。よろ しゅうございますしょうか。  それでは、子宮体がん検診に関しては(2)有訴者に対して十分な安全管理のもとで多 様な検査を実施することが可能な医療機関への受診を勧めるということで、検診の対象 とはしないということにさせていただきたいと思います。 ○安達委員  すみません。もう少し御議論いただきたいんですけれども。先ほども申し上げました ように、検診には来ても実際に産婦人科の診療の場に受診しない女性が非常に多いで す。そういう意味では、一番に教育の問題ということがあるかと思いますけれども。実 際の診療の場でも細胞診で診て異常があって組織診にいくというコースをとっておりま すし、細胞診が無効であるということではないと思います。  実際に子宮体がん検診というものは、子宮体がんがこのように増えてきている現状の もとでも、勿論これは全員にするということではありません、あくまでも本人にも同意 をとってすべきことだと思います。また、医師が子宮体がんというものがあるというこ とを実際に検診の場で啓発もしなくてはいけないことですので、もっと検診の場だけで なくても子宮がんが2種類あるということも一般女性に知ってもらわなくてはいけない ことなんです。けれども、この場ですぐ子宮体がんの検診をする必要はないという形に 持っていかれることに対しては、私は異存があります。 ○田中委員  検診を保険診療にした場合に、そのあとの精度管理の問題ですが、このように種々の 資料がありますが、これは老人保健法に基づいて検診を行ってきていたから出てきてい るのだと思います。仮に保険診療に移行しますと、受診率から始まる資料、あるいはデ ータが全く出てこなくなるのではないかと心配いたします。この検討会が求めている学 問的なエビデンスとはちょっと離れたことですが、子宮体がんが増える現状の中で、そ のような精度管理が全くなされないば野放しのような状態を招くようなことはいかがな ものかと。対応する制度をつくらないことには、検診をすぐ保険診療に移すということ は難しいのではないかと思っております。 ○垣添座長  私も、繰り返し御発表いただいているように、子宮体がんが非常に増えているという 事情はよく理解しているつもりです。その中で、検診としてどうするかということで非 常に頭を痛めているところでございますが、もう少し御発言をいただけますでしょう か。 ○田中委員  仮にこれが保険診療になった場合の医療機関の受診率は、多分今よりも非常に下がる と思います。事務局にお聞きいたしますが、各市町村・都道府県で有訴者を医療機関へ 受診するように勧奨した場合、実際にその人たちが受けたかどうか、検査結果の精度管 理あるいはそのあとのフォローできるシステムの構築というのは可能なのでしょうか。 ○麦谷老人保健課長  勿論、詳細に検討してみなければわかりませんが、私の所感では、それは不可能だと 思います。おそらく、データはここでなくなります。 ○遠藤委員  今回、ずっと一連の議論があったわけですけれども、検診ということで私たちはエビ デンスに基づいた検診をどう実施するかということを今回の結論として出すということ で議論してきたと思います。その間に、啓発活動というものの重要性というものがたび たび言われてきたわけですけれども、この子宮体がんあるいは30歳代の乳がん検診にお きましても、「検診をしない=何もしない」ということになるのは非常にまずいという ことで、啓発活動というところに帰結してくるのではないかと思います。いかにこれを 構築していくのかということを考えていくということが必要であろうと思います。 ○垣添座長  それは、子宮頸がんと比較して子宮体がんがかなり増えているとか、そういうことも 含めての話ということですね。 ○遠藤委員  すべてのがんにつきまして、対象にならない年齢層あるいはそういう種類のがんに関 して、そういう取り組みが必要であろうと考えます。 ○垣添座長  わかりました。ありがとうございます。 ○斎藤委員  また、資料1を見ていただきたいんですが、一番最後のデータです。確かに高齢層で 増えてきていますが、なお罹患率は低くて、死亡率はここに示していませんがもっと低 いわけです。大内委員が再三、第3回の当検討会などで発言されたように、やはり検診 を実施するための条件として、1つはやはり非常にdemandが高い、つまり罹患率・死亡 率が高いということがありますが、その条件から言いますと、やはり対象とするかとい うことには疑問があります。  それから、先程の説明の追加になりますが、やはり子宮体がんの場合は有症状を扱う という意味では、まだ無症状者にapplyできるスクリーニングテストができていないと いう位置付けだと思うんです。これが出てきて初めて検診の研究が行われるわけで、次 に有効性評価という段取りだと思います。  それから、先ほど田中委員から御指摘がありました話は、すべてのがんに共通するわ けですけれども、やはり検診よりも臨床の場の、医療レベルの話だと思うんです。これ は学会、その他どこに責任があるかということはこの場では申しませんが、それは私た ちの消化器がんも一緒でありまして、検診でそれを維持するというのはちょっと筋が違 う話かなと感じます。 ○櫻井委員  いろいろな議論はあるんでしょうけれども、さっきの乳がん検診でも言ったように、 この報告書は子宮体がん検診についても確かに十分でないからきちんと検討しろという ことを言っているので、やはりやめるためには、エビデンス、エビデンスとおっしゃる のだったら、完全に無効だというエビデンスがあってやめるならいいですけれども、そ れがないなら、やはりそのエビデンスを出すべく努力をするまではやらざるを得ないだ ろうと思うのです。そこのところをきちんとしてほしいと思います。だから、もう少し やって、今、産婦人科の先生方がおっしゃったようなことでもう少し、無効だというこ とがわかればそれは結構ですけれども、それはどうもはっきりしていないのではないで しょうか。それがはっきりしないうちにやめるのはおかしいと思います。 ○垣添座長  ありがとうございます。  ほかにいかがでしょうか。 ○安達委員  もう一回追加させていただきますが、有症状だけでなくても医師がハイリスクと判断 した場合、例えば月経が非常に不順であるとか、あるいは年齢がある程度いっている、 あるいは肥満であるなど、こういうようなことから考えると思うんですが、そういう方 に対して情報を提供し、受診者が最終的に希望する場合に子宮体がん検診を受診できる というような選択肢を置いていただきたいと思うんです。実際に子宮がんが2種類ある んですよということのお話から、では、受けてみたいと思いますという方もいらっしゃ るのですが、2種類あることも知らない方は多いです。そういう中で、せっかくの子宮 体がんの検診ができるチャンスをつぶすということが、私は非常に残念でならないんで す。ですから、今1年置きというような形で子宮頸がん検診が実施されるのであれば、 もちろん年齢が幾つかという、20歳からやる必要は私はないと思いますけれども、そこ でそういうようなチャンスをつくっていただくということは非常に大切な検診の概念だ と思っております。 ○垣添座長  ありがとうございました。ほかにございますか。  そうしますと、そろそろ予定の時間にかかってまいりましたが、子宮体がんが我が国 で増えているということ、それから、一般の認識として検診を受けに来る方に子宮頸が んと子宮体がんがあることを御存じない方もかなりあるというようなことを考えます と、啓発活動の重要性勿論ですし、それから、学会が責任を持ってガイドラインをつく られるというのは早急にやっていただきたいということはありますが、当面いわゆる症 状のある方に対して希望者にインフォームド・コンセントをきちんととって、希望者に 検査を行うということはいかがでしょうか。これは検診ではなくなりますね。ただし、 医療機関に行くという、中間をとったような形になりますけれども。 ○櫻井委員  でも、検診というのは希望者がやっているのではないですか、もともとは。だからこ そ受診率が低いので、希望者を増やす努力は必要だけれども、希望者が受けているとい うことについては現状ですよ。 ○垣添座長  ただ、子宮頸がんの検診にいらした方の有訴者で、その希望者に子宮体がん検査を… …。 ○櫻井委員  勿論それも希望者ですよね。嫌がる人にやっていないです。 ○垣添座長  勿論おっしゃるとおりです。 ○土屋委員  先ほどの問題に戻るんですが、日本でやっている細胞診と諸外国で麻酔をかけてまで 子宮内膜を調べるのと、正診率にどのくらい差があるのかということですね。と言いま すのは、受診を勧めるということはきちんとした診察をするということになりますの で、その手前の細胞診だけで済ませていいのかどうか。これは有症状者に対しては、当 然診療行為が本来は介入すべきなのが、ただ恥ずかしいということでしないということ で許していいのかどうか、その辺のデータの裏付けがあるのか是非教えていただければ と思います。 ○田中委員  細胞診に関しては、まとまったデータはございませんが、確かに土屋委員が言われま したように、1回だけの正診率は7割ぐらいだと。2回やると90%ぐらい高くなってご ざいますので、そういうことから含めましてもガイドライン等の作成が必要ではないか と思っております。 ○土屋委員  もし、そういうデータであれば、やはりファースト・チョイスが受診を進めるという ことにあって、セカンド・チョイスとして先ほど座長が言われたように、インフォーム ド・コンセントのもとにその場で細胞診をするという選択になるのではないかと思いま す。 ○大内委員  この3ページの提案ですね、(1)と(2)で座長の言われたことはやはり(2)に相当する と私は考えます。その根拠と言うのは、斎藤委員が言われましたように、広く罹患率と しても高いもの、それから、もう一点は、有症状である者に対する、ある意味では診療 行為、ですからこういったものをがん検診の対象とすることに問題があろうかと思いま す。ただし、安達委員が言われるように、何らかの形で、こういった子宮体がんが増え ているのは事実ですので、それに対して情報提供、それから専門医療機関への受診の勧 告。やはりお願いしたいのは、日本産科婦人科学会等の関連学会によるガイドラインづ くりを急いでいただきたいと思います。 ○垣添座長  では、啓発活動とガイドライン作成に関しては、どなたも御異論のないところだと思 います。  先ほど土屋委員から更に御発言いただきましたけれども、子宮頸がん検診においでに なった方の中で症状のある方には、基本的には病院受診を勧めていただくと。ただし、 地方の通院の条件とかそういうことから考えてなかなか難しい方に関しては、更に踏み 込んで子宮体がんのことをお話しして、希望者には検査を実施するという、その間に普 及活動とガイドラインをつくるという整理はいかがでしょうか。これは確かに御指摘の ように本心の本来の趣旨にはなじまない話でありますが、私は子宮体がんが増えている ということと、この検討会の結論が国民にどういうふうに役に立つかということで判断 しなくてはいけないということで、非常に悩んでいるところではあるんですけれども、 今の御議論からいたしますと中間をとったような形で誠に申し訳ありませんけれども、 そういう整理にさせていただいてよろしゅうございましょうか。 ○斎藤委員  先ほどの土屋先生の御指摘の精度ということなんですが、数字に比較性がなくて問題 があるところです。もし、座長のおっしゃるようなことにするのであれば、やはり精度 に関する報告をきちんと整理必要があると思います。ほかの検診と比べて、それがどの くらいreliableなものかということも含めて、その事実をやはり詰めておく必要がある かと思います。 ○垣添座長  それは斎藤委員、御指摘のとおりだと思います。ガイドラインをつくるというのを繰 り返し申し上げているのは、その部分です。 ○田中委員  今、座長のおっしゃったことに関してですが、もし座長のご提言のように実施される のであれば、数年後に見直すという事、実際に、診療所への受診を勧奨した場合どのく らい受診者が減るかあるいは、斎藤委員あるいは土屋委員が言っておられるような精度 管理等がどのように整備されたかをこの会あるいは別の機会でもう一度見直すことをし ていただきたいと思っております。 ○垣添座長  今のような、私が先ほど整理した形にすれば当然数年後に見直しを行うことは必要に なると思います。よろしゅうございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○垣添座長  ありがとうございました。  それでは、大まかな方向は決定されたと思いますので、次回の……。 ○櫻井委員  ちょっとよろしいですか。さっき私は乳がん検診について平成10年の資料のことと平 成13年の報告と、ちょっと混同した部分がありましたから申し訳なかったですけれど も、強いて言うなら、そういう数字とか文字表現にしたのは確かに平成13年だったので 私の勘違いですが、ただ、今一生懸命読み直しても、平成10年の報告と平成13年で少な くとも乳がんの視触診に関しての大きな相違はないし、しかも30歳代についての視触診 についてどうだということはどこにも触れていないと思うんです。だから、そこがよく わからないのと、しかも、かつ平成10年のところでも乳がん検診の第1目的は早期発見 による乳がんによる死亡を抑えることだが、第2の目的はQOLを高く有することとい うことで、ちゃんとがん検診の目的はこの久道報告でも死亡率減少効果だけではないと いうことをちゃんと言っているということは是非御理解いただきたいということと、そ れから、平成13年の方でも先ほど斎藤委員が言ったようなことで、視触診による乳がん 検診は無症状の場合は有効性が示唆されるというところまで書いてあるんです。ですか ら、その辺を是非無視しないでやってほしいと思います。今、読み直しても、ちゃんと そう書いてありますから。 ○垣添座長  先ほど椎葉課長補佐が読み上げられたとおりです。  一応今日、御議論いただいた結論を報告書の形で事務局で取りまとめに入っていただ きます。  次回は3月18日ですか、そこで御提案いただくことになると思いますが、事務局で最 後ご連絡事項などございますでしょうか。 ○麦谷老人保健課長  スケジュールを申し上げます。3月18日まで余り時間がございませんので、今日、最 終的に御議論いただきまして、ほぼ姿形がわかりましたので、私どもで早急に報告書案 を作って、先生方に明日までにお送りいたします。誠に恐縮ですが、週末を狭みますけ れども、土・日・月・火と4日間で見ていただいて、是非16日の火曜日までに、前振り とか歴史なども含んでおりますので、そこも見ていただいて、根幹に触れる部分に、も し齟齬があれば御意見をいただきたいと思います。  私どもはいかようにもお送りいたしますので、例えばメールがいいとか、あるいは宅 急便がいい、郵便がいいというのをお知らせいだたければと思います。 ○垣添座長  それでは、今日の検討会はこれで閉じさせていただきます。  どうもありがとうございました。                                      以上                         照会先:老健局老人保健課                         担当者:西村泰人                         連絡先:03-5253-1111 内線3946