04/01/27 第3回がん検診に関する検討会議事録           がん検診に関する検討会(第3回)議事次第   日時 平成16年1月27日(火) 10:00〜11:57   場所 国立がんセンター中央病院 管理棟特別会議室 1.開会 2.議題   ○子宮がん検診について 3.その他 4.閉会 ○麦谷老人保健課長  おはようございます。老人保健課長でございます。御案内いたしました時間になりま したので、がん検診に関する検討会を開催させていただきます。  本日の委員の出席状況でございますが、清水委員、土屋委員より事前に欠席の連絡を いただいております。  また、本日は、子宮がん検診につきましての御意見をいただくため、参考人として日 本産科婦人科学会より青木先生、宮城県医師会より佐藤先生に御出席をいただいており ますので、御紹介申し上げます。  それでは、垣添座長、よろしくお願いいたします。 ○垣添座長  皆さん、おはようございます。本日は朝早くからお集まりいただきまして、ありがと うございます。第3回がん検診に関する検討会ということで、御案内いただきましたよ うに、本日は、子宮がん検診に関して御検討いただきたいと思います。前回は乳がん、 それから、第1回が全体の討論ということですが、本日は子宮がんということで、どう ぞよろしくお願いいたします。  議題に移ります前に、事務局から配付資料に関して御説明ください。 ○椎葉課長補佐  それでは、資料の確認をさせていただきます。  まず、議事次第でございます。名簿、開催要綱、今後のスケジュールをつけてござい ます。そして、資料一覧を用意しておりますので、こちらを御参照いただきながら御確 認をいただければと思います。  まず、資料1でございますが、青木参考人からの発表資料でございます。  資料2でございますが、佐藤参考人からの発表資料でございます。  また、委員のみの配付でございますが、12月3日の第1回がん検診に関する検討会の 議事録(案)を配付させていただいております。これにつきましては一度、先生方にご らんいただいているものです。  また、第2回がん検診に関する検討会の議事要旨(案)を配付させていただいており ます。この議事要旨(案)につきましては、趣旨が誤っていると思われる点などにつき ましては、事務局に後ほど御連絡いただければと思っております。  以上でございます。御確認をよろしくお願いいたします。 ○垣添座長  よろしいでしょうか。 ○櫻井委員  議事要旨等で何かある場合は、この場ではなくて後で事務局に言うのですか。この場 ではなくて。 ○垣添座長  何かありましょうか。 ○櫻井委員  第2回の議事要旨案というものがあって、その最後に自己検診に関しての記載がある のですけれども、大内先生からお話をいただいた部分なんですが、ちょっと表現が、後 半の部分が非常に強調され過ぎているような気がするんです。 ○垣添座長  そうですね。前回の席上では、更に十分議論するということで、先に延ばしたはずで すが、これは、要旨ですので、いずれ議事録という形でそれぞれの委員に記録をお送り いたしますので、その時点で御訂正いただきたいと思います。  第1回のがん検診に関する検討会議事録案ということで、これは皆さん方に御検討い ただいたものですので、特に御異論がなければ、これで御承認いただきたいと思います が、よろしゅうございますか。               (「異議なし」と声あり) ○垣添座長  ありがとうございます。それでは、これで確定としまして(案)をとらせていただき ます。  それから、第2回に関しては、今御案内のように、御意見がありましたらお寄せくだ さい。正式な議事録に関しては、近々またお手元にお送り申し上げます。  それでは、議事に移ります。本日は、子宮がん検診についてということで御議論いた だきます。前回同様、本日は、お二人の先生に参考人として御参加いただいておりま す。まずは、青木参考人、どうぞよろしくお願いいたします。 ○青木参考人  ただいま御紹介いただきました青木でございます。本日は子宮がん検診についてのお 話をさせていただきます。私の資料でございますが、私自身がこの検討会でもたびたび 出ております久道班にも少し関わっておりましたので、1つには「新たながん検診手法 の有効性の評価」という報告書の中から子宮がんの部分を持ってまいりました。それか ら、子宮がんについては、その後行われました「がん検診に関する効果的な推進手法の 開発に関する検討」、これは辻一郎先生の研究班でございますが、昨年度のものの中か ら「30歳未満に対する子宮頸がん検診について」ということで取りまとめましたので、 それも入れてございます。そして、平成9年度、東北大学佐藤信二主任研究者のもとで 行われました「子宮体がん検診の有効性評価に関する研究班」、この報告書の中から総 括研究報告を資料として持ってまいりました。  それから、最初のところに、今の検診の動向ということを少し触れたいと思いまし て、幾つかのグラフ形式になったものを添えさせていただきました。子宮がん検診とい うことですので、子宮頸がん検診、子宮体がん検診の2種類あるわけでございまして、 資料の方は御説明する際に少し行ったり来たりする部分があるかと存じますが、御了承 いただきたいと存じます。  最初に、現行の子宮頸がんと子宮体がんの罹患率等々がどういった具合になっている のかということからお話を始めたいと思います。資料の2ページをごらんください。こ れは、厚生労働省がん助成金による「地域がん登録」研究班、いわゆる津熊班というと ころのデータを取りまとめたものであります。子宮頸がん、子宮体がんの罹患率は、こ こに出ているとおりでありますが、子宮頸がんは1980年代ぐらいから急激な減少を見せ ております。しかしながら、最近言われていますように、少し下げ止まり傾向が認めら れるという点が問題になっています。  それから、子宮体がんに関しましては、かつての日本におけます子宮体がんは非常に 少のうございました。しかしながら、最近これが徐々にではありますけれども、増加傾 向というのは明らかであります。  子宮頸がん、子宮体がんの年齢別罹患者数をその下に示してありますが、子宮頸がん は40歳代、子宮体がんは50歳代後半にピークがある。この両疾患は同一臓器のがんでは ございますが、こういった点でも趣が異なる疾患であります。  その次の3ページ、これは年齢別罹患率の推移というものを示してみまた。データは 津熊班からのものであります。子宮頸がん、これは浸潤がんでございますが年齢別に見 ておりまして、「○」の部分が1997年、上の方に飛び出しています「◇」の部分は1977 年、20年前であります。大まかに見ますと20年前から最近に至るまで、徐々に減ってい る傾向が明らかではありますが、ここで注意していただきたいのは、40歳代を境に、そ の傾向が全く逆転しているという点であります。20歳代後半から40歳代に掛けては、以 前から最近にかけてだんだん増えてきているという傾向が明らかであります。  一方、子宮体がんに関しましては、その年齢のピークに関しましては50歳代後半とい うことで各年代とも一致しておりますが、これも以前から最近にかけて、この図で言い ますと「■」から「▲」にかけて、下から上に向かってだんだん増えていくというのが 最近の状況であります。  そして、検診の成績に関して、次の4ページに示させていただきました。子宮頸がん 検診に関しましては、大体350万人から400万人の受診者が最近までほぼ一定の傾向にあ ります。そして、この「■」の折れ線グラフは、がんの発見率でありますが、おおむね 0.07、0.08、0.09といったところでほぼ一定しております。  一方、子宮体がんに関しましては、検診受診者数は徐々に増えておりまして、現在で は20万人台、これは最近までほとんど変わらないと思われます。大体プラトーに達して いると考えます。発見率は、検診開始当初は非常に高いものでありましたが、徐々に低 下傾向を見せておりまして、最近では0.1%とほぼ一定の値を推移しています。  続きまして、検診の概要をお示しするために「新たながん検診手法の有効性の評価」 の中の7ページをごらんいただきたいと思います。要精検率でありますが、図19という ところに各がんとの比較の中でグラフ化されています。これは報告書の中のものであり ますが、子宮頸がんは要精検率が概ね0.1%弱で、ほぼ一定の値をとっております。それ から、子宮体がんに関しましては、要精検率2%弱、1%台で推移して、これもほぼ一 定の値をとっております。  下の図21でありますが、これは陽性反応適中率、検診のスクリーニング検査で要精密 検査と判定された者の中から、がんの見つかる割合ということでありますが、子宮頸が んと子宮体がんでは7%から9%を前後推移しておりまして、これは、ほかのがんに比 べると極めて高い値であります。すなわち、要精密検査と判定する段階でかなりの数を 絞って、極めて効率よくがんを見つけ出すことができていると考えることができます。 これが子宮頸がんと子宮体がんの検診概要でございますが、おのおののがんについて話 を進めていきたいと思います。  まず、子宮頸がん検診でありますが、御承知のように昭和58年の老人保健事業として 取り入れられて以来、現在まで30歳以上の女性を対象として行われております。方法と しては、子宮頸部の擦過細胞診、そして、同時に問診、視診、内診、必要に応じてコル ポスコピーも行うということになっております。このスクリーニングの検査の方法に関 しては、9ページの冒頭に記載させていただいています。  そして、細胞診でありますので、クラスIからVまで分類が行われまして、III以上を 要精検として精密検査に回すという形になっています。  次に、スクリーニング検査の精度に関して話を進めていきたいと思います。13ページ からこのことについて書かれています。子宮頸がん検診の精度に関しましては、日本で は石田らの報告がございまして、感度90.79%、特異度99.45%と報告されています。  14ページに、その一覧表をつけてございます。右から2番目が日本における子宮頸が ん検診、すなわち細胞診の精度を表すものであります。そのほかの報告を見ますと、感 度が82%であるといった報告、それから、もっと悪くて56%であるといったような報告 もございます。これは欧米のものでありますので、日本の細胞診の成績はかなりよいと いうことが言えるのではないかと思っております。  こういう精度を持った方法を使って検診をやりますと、どうなるかということでござ いますが、まず、検診そのものは死亡率減少効果というものが重視されるということは 承知しておりますが、その前に検診発見がんあるいは臨床診断がんといったものを比較 しないといけません。子宮頸がんにおきましても、こういったことが確認をされており まして、これが15ページの下の表のところに記載させていただいておりますが、検診由 来のがんというのは、外来の発見がんに比べて、より早期の状態で見つかる。この上皮 内というところを見ていただければわかると思いますが、いわゆる0期の段階で見つか る割合が非常に高いということが確認されております。  それから、次のページの表5であります。これは宮城県の成績でありますが、やはり 5年生存率といった観点から見ましても、検診発見がんの方が外来診断がんに比べて予 後がよいということもわかっております。  こういった点を踏まえまして、次の17ページから示してありますように、死亡率減少 効果の評価というのが子宮頸がんに関しても従来から多数行われております。ただし、 これを証明する最もエビデンスの高い方法、無作為割付比較対照試験(RCT)の手法 でこの子宮頸がん検診の有効性を示した報告は、今のところ皆無であります。これは、 子宮がん検診のように既に普及してしまっているがん検診の評価に、このRCTを実施 することは事実上不可能であるためであります。検診群と非検診群を2つに分けるとい う操作がありますが、ある程度効果を認めておりますので、非検診群に割り当てられた 方の倫理性の問題、極めて不利益をこうむるという形になりますので、こういった介入 研究は行われておりません。したがいまして、子宮頸がん検診の有効性の評価に関しま しては、以下に述べます観察研究によって行われているということでございます。  17ページの表7、それから、次ページの表8−a、そして、19ページの表8−b、表 8−c、各地域におけるコホート研究あるいは症例対照研究について取りまとめてあり ます。表7のコホート研究を見ますと、左2つのカラム、この結果のところを見ていた だくとわかると思いますが、罹患率と死亡率について、いずれも死亡率については72% の低下。それから、デンマークの報告では、50%程度罹患率について低下が認められて おりますし、死亡率も80%低下するという報告になっております。  それから、18ページの表8−aに示してあります症例対照研究も結果のところを見て いただきますと、いずれのオッズ比も0.37、0.44、0.1という非常に低い値を示してお りますし、結論としては、頸がん罹患の減少効果ありと判定されております。  我が国におきましても症例対照研究は2つ行われております。大阪府の一般住民を対 象としたSobueらの報告では、子宮頸がんの死亡率・罹患率を減少させる傾向があるか どうか症例対照研究が行われておりますが、オッズ比0.22、有意差はありませんでした が、罹患率と死亡率を減少させる傾向があると報告されています。  それから、東北大学のMakinoらによりますと、オッズ比が0.14ということで、子宮頸 がんの罹患のリスクの減少効果があるというように結論付けられています。  その他の観察研究としましては、21ページから記載されているとおりでございます が、時系列研究あるいは地域相関研究などが行われておりまして、いずれも罹患率の減 少効果ということが確認されているわけであります。  以上の点から、現時点では子宮頸がん検診の有効性に関しては、ほぼ確立した感があ るわけでありまして、久道班の報告、この検討会でも再三出てまいったと思いますが、 I-a、死亡率減少効果を示す十分な根拠があるといったところに分類されているわけで あります。  次に、26ページに示させていただきましたが、諸外国の現状を見てみました。表9と いうところに北米における子宮頸がんスクリーニングの勧告というものを列挙させてい ただいています。これを見ますと、開始年齢については18歳または初交年齢という非常 に若い時期から検診が開始されています。スクリーニング間隔もまちまちなのでありま すが、何年か連続して行って問題がなければ、少し間を開けるといったようなものが北 米の傾向であるかと思います。これに関しましても、もう少し後で話を進めていきたい と思います。  次に、わが国の子宮頸がん検診の問題点といたしましては、初回受診者が少ない点に 加えて、トータルの検診受診率も地域保健・老人保健事業報告では10%台でありますの で、非常に低い状況であります。検診が有効に働くためには、ある程度の受診率が確保 されていなければいけませんので、この辺りは現在の問題点として考えなければいけな いと思います。  神奈川県を例に取りますと、ピークでは8万人台の受診者がいたということでありま すが、現行では4万人台にまで減少している。この辺りは非常に大きな問題だと思いま す。  以上の点を踏まえまして28ページ、この久道班の報告では、子宮頸部の擦過細胞診に ついて、30歳以上の女性を対象にした細胞診による子宮頸がん検診の死亡率減少効果を 示す十分な根拠がある。したがって、現行の検診を継続することを勧奨する。ただし、 検診を行う適切な対象年齢、受診間隔、更に初回受診者を増加させるための検討を続け る必要があるといった形でまとめさせていただきました。  子宮頸がん検診に関しましては、いずれにしましても若年者の問題が最近クローズア ップされております。そこで、もう一つの資料でありますが、資料50ページ、これは昨 年度のいわゆる辻班の中から、私がまとめさせていただいた部分を持ってきたものであ ります。「30歳未満に対する子宮頸がん検診について」といった形になっています。  51ページをごらんになっていただきたいと思います。これは、子宮頸がん、上皮内が んと浸潤がん両方入っていますが、罹患率の動向を示したものであります。上のライン が浸潤がんです。下のラインが上皮内がんでありますが、浸潤がんはある程度減少傾向 を見せております。最近では、下げ止まり傾向が認められるということも言われていま す。上皮内がんは、いずれの年代を通して見まして、漸増傾向にあります。  それから、図2に関しましては、子宮頸がんの中でも浸潤がんの罹患率の動向を年代 別で見たものです。一番下が20歳代前半、次の「■」が25〜29歳、そして、その上の 「▲」が30〜34歳であります。いずれも増加傾向。浸潤がんが増加しているということ です。  次の52ページは、上皮内がんの罹患率の動向を示したものであります。下から2番目 は25〜29歳、そして「▲」は一番急激に上昇しているように見受けられますが、30〜34 歳、こういった若年者で減っているどころか増加しているということが明らかでありま す。このデータは、先ほどの津熊班のものから引用させていただいています。したがい まして、若年者への子宮頸がんに対する対策が必要だというのは、こういった事情があ るからであります。  次に、先ほど少し触れましたが諸外国の状況を見てみますと、53ページ、先ほどと同 じ表が出てまいります。この中の一番下、米国予防サービス特別委員会、この当時は18 歳または初交年齢が開始年齢ということで勧告されておりますが、これが昨年の段階で 21歳にまで引き上げられました。ただし、21歳未満でも性活動が活発化してから3年が 経過した場合は、細胞診検査を実施すべきであるということになっています。  子宮頸がんの発生は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が引き金になってい るということが言われております。このHPVに感染してから、あるいは、前がん病変 に位置付けられている中等度異形成が、上皮内がんあるいは浸潤がんに進行する時間と いうのは約41か月程度ということが報告されていますのが、この3年引き上げた理由の 1つになっているようであります。  我が国の現状ということで見てみますと、これは日本産婦人科医会のがん対策委員会 でもこの点が問題になりまして、55ページ、医会の提言というのをそのまま記載させて いただきました。ここを読んでみますと、「将来的にはそこまで引下げが求められるか もしれないが、25歳以下の進行がん患者がまだ多くないと予想されることから、現時点 では少なくとも25歳からの検診開始を提言する。若年層の検診拡大により、これまで30 歳以上の浸潤がんとして発見されてきたものが、異形成または上皮内がんとして管理さ れることにより、女性における妊孕性の維持、医療費の削減、ひいては少子化対策にも つながる効用が期待される。また、若年層への子宮がん検診普及を図る方法として、妊 婦のルーチン検査化も非常に有用である」といった提言がなされております。  次に56ページは、東京都予防医学協会のデータであります。老人保健法に基づく検診 でありますので30歳以上のデータしかありませんが、図4、図5、いずれも有所見率に 関しましても、それから、浸潤がんの発見率に関しましても、この一番上のラインは30 〜34歳であります。いずれも増加傾向です。  そして、次の57ページの図6、これは上皮内がんでありますが、これも30〜34歳、検 診対象者の中でも最も若い年代で高く発見されているというのが、東京の現状であるよ うに思われます。  HPVに関して、次に少しお話を加えたいと思います。HPVの感染が子宮頸がんの 発症に強く関与しているということが明らかになっていますが、この検査を検診の場面 に取り入れるかどうか、これはまだ検討段階と感じています。  59ページ、HPVの感染状況についてという表をまとめてみました。これはアメリカ のものと本邦のものですが、右側2列が本邦のものであります。結果のところを見てみ ると、若年女性全体でなんと40%の感染率だということが報告されています。ただ、注 釈がございまして、特にこのデータに関しましては、の対象が一般人口集団ではない産 婦人科外来受診者であるといった点を考慮する必要があるいうことであります。いずれ にしましても、30歳以上の方に比べると、10歳代、20歳代のウイルスの感染状況が高い ということが報告されておりますので、こういったことが若年者の子宮頸がん増加に対 して影響しているのだろうと現在考えられております。  子宮頸がんについては、このような観点から若年者への検診拡大を強く望むものであ ります。  次に、子宮体がんに関して話を進めていきたいと思います。昭和58年に子宮がん検診 として頸がん検診が取り入れられました。その後、老人保健事業の第2次計画の中で、 やはり子宮がん検診として体がん検診が取り入れられたという経緯があります。子宮体 がん検診は、子宮頸がん検診受診者の中からハイリスク集団を絞り込んで行うというと ころに特徴があります。また、子宮体がんは大部分が腺がんであります。多くが扁平上 皮がんである子宮頸がんとは病理学的に異なる疾患と考えられます。  資料の36ページ、ここにスクリーニング検査の方法といった形で示させていただいて おりますが、我が国で行われている子宮体がんのスクリーニング法は、子宮内膜細胞診 であって、その多くは子宮頸がん検診と同時に行うことができるというメリットがある と記載させていただきました。現状の絞り込みの基準でありますが、高危険群を選ぶと いう観点から、問診等の結果、最近6か月以内に不正性器出血を訴えたことのある者 で、年齢50歳以上の者、閉経以後の者、そして、未妊婦であって月経不規則の者、更 に、医師が必要と認める場合は実施するといった制限がついております。  こういった制限が設定される、高危険群を選ぶという選定が行われるに至った経緯に 関しましては、全例に行うことは検診の効率からいっても、これは検診が成り立ち得な いということがありまして、絞り込むことによって検査の陽性率を1%にまで高めるこ とができるかどうかが検討されています。その結果、ここに書いてある事項、年齢50歳 以降、閉経以後の者、そして、未妊婦であって、月経不規則の者については、陽性率が 1%よりも高くなります。しかしながら、その時点では約9,000例に及ぶ検診結果が検 討されたわけでありますが、そのときに発見されたがんすべてに不正性器出血が認めら れているということから、こういった基準になっております。  スクリーニング検査の精度であります。資料の39ページ、表4にまとめてあります。 この表に書いてありますデータは、同時法で感度・特異度が求められているものもあり ますので、検診の場面に出てくる数字とは一概に比較できるものではありませんが、お おむね感度は良好でありまして、97%あるいは92%、特異度84%あるいは100%、細胞 診の精度は、かなり高いところに保たれているようであります。  子宮体がん検診に関しましても41ページ、検診発見がんと臨床診断がんの比較がなさ れています。また後ほど少し述べたいと思いますが、進行度の比較をしてみますと、検 診発見がんでは、臨床診断がんに比べて、早期がんであるI期の占める割合が多いとい うことも確認されています。  それから、病理組織学的に分化度の高いがん、これは予後のよいがんに属するわけで ありますが、検診発見がんでは臨床診断がんよりも分化度の高いかんがより多く見つか っているということも確認されております。  生存率に関する比較も行われております。これも後ほど述べたいと思います。  次に、平成10年のがん検診有効性評価に関する研究班、最初の久道班の報告書で、有 効性は更なる検討が必要である、現行の子宮体がん検診の有効性は十分に証明されてい るとはいえず、早急に検討する必要があると結論付けられておりますので、それを受け まして、平成9年、子宮体がん検診の有効性評価に関する研究班(主任研究者:佐藤信 二)が組織されております。資料66ページから、その報告書を持ってまいりました。  この中で、67ページの下の方の2番でありますが、検診発見群と外来発見群の生存率 の比較というものがなされています。その結果でありますが、69ページの上の方に書い てございますが、図1検診で発見された子宮体がんの生存率は95%でありますが、外来 で発見された分が85.5%、約10%検診で発見されたがんの方が予後がよかったというデ ータが得られています。これだけで検診の有効性を証明できるものとは考えておりませ んが、少なくともこういった形で生存率の比較で差が出てきたというのが現状でありま す。最初の久道班の報告書が出された時点ではこのデータはありませんでしたが、この 報告が子宮体がんに関する生存率を比較するといった意味での報告としては、世界で初 めてのものになっております。  こういった状況が観察されていますので、佐藤班では子宮体がんの検診の評価に関し て症例対照研究が用いることができないかどうかということが検討されています。しか しながら、症例対照研究を子宮体がんに関して行うには、幾つもの問題点があることが わかりました。70ページから71ページにかけて、その問題点が指摘されています。  その1つは、子宮体がん検診そのものが高危険群を選択して行われているということ であります。当然、オッズ比が高くなるわけであります。それから、子宮体がん検診 は、子宮頸がん検診受診者の中から選別、絞り込まれるので、対象人口に対する受診率 は極めて少なくなるわけであります。対象と症例を設定したときに、それぞれの群で受 診者数が極めて低くなるわけでありまして、低いもの同士を比べるのには非常に困難を 伴うといったことなどが理由で、子宮体がん検診を症例対照研究を用いて有効性を見る ということは非常に難しい、なじまないといったことが結論付けられています。  以上の点から、子宮体がん検診は今後もまだ有効性に関する評価を続けていかなけれ ばいけない検診ではありますが、少なくとも検診の有効性がないといったようなデータ は、これまで得られていないことも事実であります。  最後に、子宮頸がん検診、子宮体がん検診併せまして、まとめてみたいと思います。 子宮頸がんは、従来減少傾向が認められていましたが、これは最近横ばいになっていま す。そして、若年層では明らかに増加傾向が認められているという問題点があります。 一方で、子宮体がんは、明らかな増加傾向が認められるわけであります。  それから、検診方法は、両方とも細胞診という方法を使って行われています。冒頭で もお示ししましたが、精度に関しましては十分高い値を保っておりますし、要精検者率 を低く抑え、陽性反応適中率は、他のがんに比べて高いというのが特徴で、現行では効 率のよい検診であると言うことができると思います。  それから、検査を担当する者は、日本臨床細胞学会という学会の認定する細胞検査士 と細胞診指導医がペアになって担当するかたちで進められております。この学会では、 厳格な資格認定試験を行うとともに、やはり厳格な基準を設けて4年に一遍、資格の更 新作業を続けております。そして、これら細胞診指導医・細胞検査士は子宮頸がん検診 だけでなく、細胞診断学全般に対する知識を併せて持っておりますので、子宮頸がん、 子宮体がんともに同じような割合でトレーニングを受けている方々であります。そし て、最近この学会はNPO化されました。そして、専門医認定団体として昨年暮れに認 められておりますので、細胞診専門医というものが誕生しております。この細胞診専門 医の中から細胞検査士とともに実務を行い、その判定に責任を持つ者に対して学会の中 で、細胞診指導医として認定しているわけであります。  それから、不正性器出血に関しまして、これは子宮体がんのリスクファクターであり まして、これが認められる場合に検診をしましょうということでありますが、これは、 いわゆる閉経周辺期に当たる40歳代後半以降の場合には、受診者が不正出血として認識 していない場合が多々あるわけであります。したがいまして、問診によって初めてわか る場合が多い。したがって、子宮頸がん検診受診者から問診をして、医者が認める不正 出血があったかどうかを判定する。これは大変重要なことではないかと考えています。  蛇足的ではありますけれども、最近、乳がんが女性の死亡の第1位となっているよう でありまして、乳がんで使われるタモキシフェンといったようなホルモン製剤の使用 は、子宮体がんのリスクファクターとして認識されているようであります。勿論、乳が んの再発を防止するというbenefitの方がかなり高いので、このタモキシフェンの使用 を制限するというものではありませんが、タモキシフェンを経口している方に対して も、こういった検診を広げなければいけないと考えています。  以上より、現行では有効性の証明はまだ不十分でありましても、有効性がないといっ たような結論を下すこともできないと考えておりますので、子宮体がん検診は続行した いと考えています。また、有効性の評価に当たりましては、今後もなるべく質の高い研 究を目指して努力していくことが大事ではないか。このためには、いろいろな専門家の 意見も頂戴したいと考えている次第であります。  以上です。ありがとうございました。 ○垣添座長  青木参考人、どうもありがとうございました。  子宮頸がんと体がんの両者に関して、大変広範なレビューをいただきましたが、ただ いまの御発表に対して、何か御質問あるいは御発言等ありましたら、お受けしたいと思 います。 ○田中委員  子宮頸がんに関して、HPVの重感染ということから年齢を下げるということはわかる んですが、そうしますと、上限といいますか何歳まで、例えば、60歳ぐらいで異常がな かったら、その後、sexual intercourseが全くない人にも、検診あるいはそういうこと を続けるということは意味があるかどうか。その上限ということを考える必要があるの でしょうか。 ○青木参考人  諸外国におきましても、上限というのがある程度決められている国が多いかと思いま す。ただし、その年齢はまちまちなのであります。ですから、どこで決めるという根拠 が何ともあやふやなところがあるかと思います。日本におきましては、資料の3ページ の「子宮頸がん(浸潤がん)年齢別罹患率の推移」というところを見てみますと、年齢 が経つにしたがって、若干、上昇傾向も認められているのが現状であります。確かに、 何年か繰り返して異常がないという方であれば、ある程度のところで上限を設定しても いいのかと思いますが、現行の現状を考えると、高齢者の子宮頸がんというのも問題に なっておりますので、上限を設定するということ自体は慎重に考えた方がいいのではな いかと思っています。 ○田中委員  高齢者の子宮頸がんというのは、ほとんど検診歴がない方なのではないかと思います が、検診歴があって、なおかつ、高齢者の方というのはいないように思いますが、どう なんでしょうか。 ○青木参考人  現実問題としては、そのとおりではないかと思っています。ただ、世間一般に検診を 受けなくていいんだということが間違って流れるのは懸念事項と考えております。 ○大内委員  子宮頸がんの検診の方法が細胞診であり、modalityとして大変すぐれています。そう いう意味では、要精検率も低くて済みます。陽性反応適中度も非常に高いということ で、検診そのものは非常にすばらしいと思いますが、今回の最大の議論は、30歳未満に 子宮頸がん検診を拡大するかということです。その場合に最も大事なのは、有病率・罹 患率が社会保健の施策上、がん検診としてなじむかどうかということが、まず大前提に あると思います。先生が示されたデータを見ますと、人口10万人当たりの罹患率が5〜 10、これが果たしてほかのがん検診と比較して十分に高いと言えるのか。例えば、今 回、乳がん検診においては40歳代について検討が集中的にされているわけですが、40歳 代の乳がん罹患率は120〜150名という数です。この25歳前後の5〜10という罹患率が果 たして本当に健康施策の中で、国としてがん検診として進めていくという根拠となり得 るのかどうか、その辺について、まず、お聞かせください。 ○青木参考人  1つは、今後どういうふうに推移していくかという問題があるかと思います。傾向と しては、明らかにこの年代は増加傾向であるという点。それから、もう一つは、検診を やることによって早期に発見できる、これは事実だと思います。子宮頸がんの場合は早 期に発見することで子宮の温存が可能になるという大きなメリットがあります。先ほど 日本産婦人科医会の提言を御紹介させていただきましたけれども、妊孕性の温存という ことが十分図れる、このことがもう一つ非常に大きな付加的な価値ではないかと考えて います。 ○大内委員  異形成、あるいは上皮内がんで発見されて治療されれば、そのメリットが十分にある ことはわかります。私は、若年層での導入について議論する場合には、是非、検診間 隔、これは久道班でも辻班でも勧告の中に書かれていることです。受診間隔について十 分に詰めることとなっています。先生が示されましたように、米国あるいはEUの中で もドイツを除くすべての国が、3年に1回あるいは5年に1回という間隔をとっていま す。これについては先生は言及されていなかったですが、いかがでしょうか。 ○青木参考人  検診間隔については先生のおっしゃるとおりであると思いますが、ほとんどすべての 勧告にその際の条件がつけ加えられています。少なくとも何年かやった後異常がなけれ ばという条件つきであります。この点は確認をしておきたいところです。  それから、勧告の中にはハイリスクの者、何をハイリスクとするかという問題はある かもしれませんが、ハイリスクの者に関しては毎年やりましょうという勧告を出してい るところもあります。 ○垣添座長  では、続けて遠藤委員。 ○遠藤委員  私も、検診間隔に関するデータというものをお聞きしたいということで挙手いたしま した。私どもがずっと検討してきた検診といいますのは、罹患率、発見率、経済効果等 さまざまな面から検討してきたわけでございますが、有効である、よく発見できるとい う観点からだけでは、全体の策を決めることはできないと考えています。非常によく発 見できるという方法論をお持ちの子宮頸がん、子宮体がんなんですけれども、その間隔 を決める上においては、発育速度、予後との関連で物事を考えていく必要もあると思い ます。この間隔についての論文というものを提示していただきたいと考えた次第です。 ○青木参考人  日本のデータとしては、先ほどちょっと紹介させていただきましたが、東北大学 Makino先生らの報告によりますと、一応、症例対照研究で2年までは有意であったとい う報告があります。その辺りまでは保証されているのではないかなと現在考えています けれども、もう1つ、2つこういった事項に関して確認する研究も必要ではないかと感 じていることも事実です。  それから、科学的ではないかもしれませんが、1年に1度検診を受けましょうという ことでこれまでやってきた経緯も無視はできないと思っておりますので、もし、そうい ったことになった場合に、ただでさえ現在、減少傾向の認められる受診者が更に減少す るということが非常に心配であります。その辺りの啓発といいますか、関係各位の協力 といったものを含め十分体制を整えることも非常に大切だろうと思います。 ○櫻井委員  質問というよりも意見ですけれども、有効でとかそういうことの問題とかかる費用の 問題ですが、確かにお金のことを全く無視して検診をやれと私は言いませんが、余りそ こを同じレベルに考えないで、やはり有効性とか、それによって早期発見ができて、先 ほどの例えば若年者であれば子宮が温存できるというようなメリットの方を重く考えて もらって、この場でお金がどうだからという話を同じレベルで議論するのは、私は賛成 したくないと思いますので、一応、意見として申し上げます。 ○垣添座長  ありがとうございます。  それでは、笹子委員どうぞ。それでこの議論は一旦ここで打ち切らせていただきま す。 ○笹子委員  報告では子宮頸がんとHPVの関係を余り詳しく触れていません。私は具体的にどのよ うなデータが出ているのか全然知らないんですが、死亡率とか罹患率に関して感染して いる人のオッズがどの程度高いか、出ているようでしたら教えてください。 ○青木参考人  死亡率まで直結したデータはまだないのではないかと思います。いわゆる前がん病変 あるいは上皮内がんあるいは浸潤がんといったものの中にどの程度感染しているかとい うようなデータは多数あるかと思いますが、言ってみればHPV由来頸がんのprognosisに 関してのデータは、まだないのではないかと考えています。 ○笹子委員  例えば、高齢者でウイルス感染がない人は対象としなくてもいいとか、そういうよう なことに結びつかないのでしょうか。 ○青木参考人  現時点で高齢者にまで一気にそういった考え方を持ち込んでよいかどうか、ちょっと わかりません。ただ、いわゆる検診で異形成が見つけられた方、前がん病変として考え られているんですが、これをHPVの感染状況によってどのようにフォローアップして いくのか決めようというスタディが現在動いているかと思います。ですから、この検査 をやることによってより効率的にフォローアップができる可能性があると考えていま す。ただし、検診の場面で最初のスクリーニング検査としてこれを用いるかどうかに関 しては、まだ当分、エビデンスの集積が必要ではないかと考えていますが、極めて精密 な技術を要する細胞診といったものが普及していないような発展途上国などでは、こう いった検査を一気にやろうという動きもあるように聞いています。 ○垣添座長  青木先生、どうもありがとうございました。  引き続きまして、佐藤参考人に御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いい たします。 ○佐藤参考人  宮城県医師会常任理事の佐藤と申します。よろしくお願いいたします。  私は、参考人としては甚だ不適任ではないかと思っているんですが、御承知のように 宮城県は子宮がん検診の発祥地ということもありますし、以来40年になりましょうか、 かなり精度の高い精度管理をやってきたこともありまして御指名をいただいたのではな いかと思います。  今日は、学問的なことというよりも、むしろ宮城県における子宮がん検診の実施状況 ということを主に御報告させていただきたいと思います。  今日の主要議題でもあります若年者への子宮頸がん対象年齢の拡大と子宮体がん検診 の存続の是非という2つの点についての資料を私から提出しております。  初めに、若年者検診のことについてお話しさせていただきます。お配りしました資料 の1−3というところからごらんいただきたいと思います。これは宮城県内、仙台市を 含めて69市町村がございまして、その中で29歳の以下の若年者に子宮頸がん検診を行っ ている市町村がここに載っております。「○」が若年者に対して検診を自治体としてや っているところです。  資料1−3が平成14年度、資料1−4が平成15年度と2年分が載っております。平成 14年度は16市町村、平成15年度は22市町村で、29歳以下の若年者に対して検診を行って おります。  資料1−3ですが、その中で、まだ受診者数そのものが非常に少ないんですが、平成 14年度でいきますと、子宮頚がん検診受診者が合計236名となっています。そのうち括 弧内は初回受診者です。大半は初回受診者であったということです。29番、古川市とい うところで、子宮体がんも1名発見されています。年間を通じて236例の受診のうち上 皮内がんが2名、異形成が2名という数字がそこに載っております。  資料1−4ですが、平成15年度です。受診者380名と増えておりますが、発見がん、 浸潤がん0、上皮内がん1名、異形成2名。子宮体部のがんも1名検出されています。  それから、検診料のことは0円から6,000円ぐらいまでで、市町村によってまちまち でございます。実施年齢も、19歳からというところもございます。大半は20歳以上を対 象にしております。  資料2−1をごらんいただきたいと思います。これは、宮城県の場合、十数年前から 妊婦全員に対して子宮頸部細胞診をやろうということを決めまして、可能な限りルーチ ンにやっております。その中で、東北大学病院を初め、県内の主な分娩を多く扱ってい る病院7施設を対象にして、その統計データが出ました。これは、今現在、投稿中の論 文を引用させてもらっているんですが、日本産科婦人科学会東北連合部会誌3月号に掲 載予定の東北大学の八重樫教授の論文でございますが、その中の表をここにいただいて まいりました。  表1は1993年から2002年までの10年間の統計でございます。その間のこの7医療機関 で、10年間で2万3,078の妊婦さんに対して細胞診を行ったということになっており ます。そのうち、要精検者が278名、要精検率が1.2%ということで、国内のいろいろな 文献と大体同じ要精検率でございました。  資料2−2は、各年齢層によって要精検率がこのように違うということでございま す。19歳以下では3.19%が要精検になったと。20〜24歳まででは2.12%、25歳以上は39 歳までほとんど1%前後で変化がなかったということです。40歳を超えますと2%とい うことです。参考までに集検群との比較が載っておりますので御参照いただきたいと思 います。  その次の資料2−3ですが、要精検の288例をフォローアップした最終結果でござい ます。288例中25名が何らかの治療を要しました。この中で、浸潤がんが3名、その浸 潤がんというのは23歳、23歳、27歳でございました。それから、上皮内がん16名、この ほかに高度異形成というものも6名ございました。それぞれ治療は一番右側に載ってい ますが、広範全摘から円錐切除まで、さまざまな治療がなされております。  この288例という数字、それから、浸潤がん、上皮内がん、高度異形成の発見率は10 万対にしますと、浸潤がんが12名、CISが60名、高度異形成が24名ということで、浸 潤がんに対しましては一般の検診の数値とほとんど変わっていませんが、CISに関し ましては、約3倍の高率でした。  その次の資料2−4、これは国内で行われています妊婦に関する子宮頸部細胞診の報 告でございますが、ここにありますように、ほとんどが1万例以下という受診者です。 全部合計しましても、やはり要精検率は1.2%ということで、東北大学の研究とほぼ同 一でございました。このことからも、やはり若年者に対する検診というのは是非必要で はないだろうかという結論が、この論文には載っておりました。  次に、子宮体がん検診に関する報告をさせていただきます。資料3−1をごらんいた だきたいと思います。宮城県の場合は、仙台市と仙台市以外とで精度管理を分けており ます。平成8年からで、それ以前は県内すべて対がん協会に委託しておりましたけれど も、いろいろな状況から平成8年以降は、仙台市分は仙台市医師会と宮城県医師会で精 度管理をしています。他郡市群に関しましては、従来どおり対がん協会が一括して精度 管理をやっています。つまり、資料3−1は仙台市分でございます。平成8年から平成 14年度まで、7年間の総受診者数、一番左側ですが、市町村が実施する検診で行われた 子宮がん検診の受診者数です。大体6万人前後。対象人口が少し増えていますので、受 診率が減ってきております。一時30%台を維持しておりましたけれども、現在24〜25% となっております。それにはいろいろな要因があると思いますが、仙台は特に事業所検 診というのが最近かなり多くなっていまして、その分だけ受診率が下がったと言われて おります。  この中で、7年間の合計数を見ていただきますと、一番下ですが、41万人が仙台市で 子宮頸がん検診を受けたということですが、そのうち子宮体部細胞診を受けた人数は、 41万の合計から5つ目の欄に載っておりますが、括弧の中です。2万6,359人というの が41万人のうちの子宮体部細胞診を受けた人数であります。これは全受診者の6.4%に 該当します。この6.4%に関しましてもいろいろ問題はありますけれども、大体5%前 後というのが全国的な趨勢となっております。  その中で、この7年間で発見されたがん、これは右側に載っております。腺がんが32 名、その他のがんというものもありますけれども、下の備考欄に書いてありますが、そ の他のがんの中には扁平上皮がんもありますし、腺がん扁平上皮がん混合型、その他の がんとなっていますが3名、7年間に合計35名の体がんが見つかりました。これは人口 10万対にしますと130ですが、全受診者を対象にした子宮体がん発見率ではなくて、子 宮体がん検診受診者に対しての10万対でございまして、全受診者に対すると9と下がり ます。やはり受けていない人は対象にできませんので、実際に受けた人の中でどれだけ あったかということで、2万6,000の中で35名と考えています。これが10万にすれば130 名ということです。  同じように、異型内膜増殖症、これも非常に問題がありまして、治療の対象になって いるのですが、これも23名、合わせて85名の体部がん、あるいはそれに近い異型内膜増 殖症が見つかっているということです。  次のページは、仙台市以外の宮城県の他市町村の分になります。これも同じように平 成8年から平成14年まで、総受診者が76万2,000人。そのうち子宮体部細胞診を受けた 人数は2万2,000人。受診率が仙台市と比べるとかなり低く出まして、2.9%にしかなっ ておりません。この差というのは、いろいろな要因があると思いますが、今日は割愛さ せていただきます。  そのうち腺がんが見つかった数が43、異型内膜増殖症が32、合わせて75です。この腺 がんの43という数字は罹患率0.19%、先ほど青木先生が御説明されました全国平均0.1 %をかなり上回っております。  以上が、宮城県内における7年間の子宮体がん検診の実施状況でございますけれど も、死亡率が検診群と差がないという報告もあるんですが、実際にこれだけの数の子宮 体がんが見つかった。仙台市と仙台市以外を合わせますと78でしょうか、これだけの数 の子宮体がんが見つかったということでございますので、異型内膜増殖症も含めますと 相当な数になります。これは検診しなければ見つからなかったわけでして、これが果た して死亡率にどのような影響があったかというデータはありませんので何とも言えませ んが、実数値でこれだけの悪性腫瘍あるいはそれに近いものが見つかったということ は、やはり放置できないと考えておりますので、今後とも子宮体がん検診というのは是 非必要ではないだろうかと考えております。  以上でございます。 ○垣添座長  どうも佐藤先生、ありがとうございました。  宮城県における子宮がん検診に関して御報告いただきました。何か御質問等ありまし たら、お受けしたいと思います。 ○櫻井委員  大変宮城県において熱心にやっていらっしゃるということがよくわかったのですが、 単純に受診率的なものというのはわかるのでしょうか。さっき青木先生からも受診率が むしろ低下してしまっている。特に、初回受診者が余り増えてきていないという御指摘 があったので、実情はどうなのでしょうか。 ○佐藤参考人  先ほどちょっと申し上げましたけれども、7〜8年前までは大体30%台を維持してい ました。仙台市も仙台市以外も。仙台市以外は、今でもそれに近い率は保っています が、仙台市がかなり減ってきています。それは先ほど言いましたように、各事業所検診 がかなり普及していまして、そちらの方に大分流れているということがございます。  それから、一般基幹病院、大きな病院などでも、他疾患での受診者に対しましても積 極的に子宮がんの細胞診をやっておりますので、そういうことで市町村が実施する検診 の受診率が下がっている。現在は25%ぐらいですが、これは全国第2位です。ずっと長 い間第1位だったんですが、2位になりました。  ただ、精検受診率は、いまだに98%台を維持しておりまして、この精検受診率が高い ということが、私は非常にいい精度管理ではないかと思っています。 ○垣添座長  ほかにいかがでしょう。 ○渡辺委員  精検の受診率が高いというか、子宮体がんの方が頸がんよりも全体的に倍ぐらいです よね。それで、がんの発見率も高いと思われるんです。大体全体で資料3−2を見ます と、2.78%で、頸部の方が1.10%。これは、対象とされた子宮体がん検診を受診された 方は、例えば先ほどのハイリスクグループの方に対してやったのか、それとも無症状で ランダムに選ばれた方が子宮体部の検診をされたのか、どちらなんでしょうか。 ○佐藤参考人  それは原則としてはハイリスクということで、その条件が、先ほど青木先生もおっし ゃいましたけれども、閉経以後の不正出血のある者、不規則月経の者あるいはホルモン 異常に伴う不妊症、その中のどれかに該当する者と決めております。ですから、ハイリ スクと考えていただいていいと思うんですが、そのハイリスクの判定基準が、施設によ ってかなりの差があることは事実だと思います。平均で仙台市は6%、地方の方は3% ということで、施設によってハイリスクに関する考え方に差があることは事実だと思い ますが、いずれにしましても、6%というのであれば、それほどの問題はないのではな いかと思いますし、施設によってはかなり高率に子宮体部細胞診をやっている施設も一 部あるんですが、そういう施設に対しましては医師会あるいは行政から指導しておりま す。少しずつ改善されてきております。 ○渡辺委員  単純計算でいきますと、そのハイリスクグループに対して検診を行うと、非常に高率 に体がんが発見されると理解してよろしいですか。これは単純に計算すると10万人に 300人以上となりますね。 ○佐藤参考人  そうです。10万人対で300人ぐらいなんですね。ただ、これがもし全症例に対してや った場合にどうかというデータがありませんので比較できませんが、やはり担当医の判 断でハイリスクという選定が正しかったのかなというふうにも。 ○垣添座長  佐藤先生、先ほど市町村が実施する検診の受診者数がだんだん減っているというお話 がありましたけれども、これは例えば仙台市に限ってみて、市町村が実施する検診と事 業所検診、要するに子宮がんの検診を受けている方はどのくらいかというデータはおあ りでしょうか。 ○佐藤参考人  数ですか。 ○垣添座長  数といいましょうか、いわゆる受診率といいましょうか。 ○佐藤参考人  先ほど申し上げましたように、仙台市では24〜25%です。 ○垣添座長  どうも失礼しました。ほかにいかがでしょうか。  では、どうもありがとうございました。青木先生からは、これまでの子宮がん検診に 関する研究のまとめをお話しいただき、佐藤先生からは、宮城県における子宮がん検診 の実態に即した御報告をいただきました。では、青木先生と佐藤先生の御報告をベース にいたしまして、残る時間を使いまして子宮がん検診の全体討論をいたしたいと思いま す。ただ、子宮頸がんと子宮体がんがありますし、時間も限られておりますので、両参 考人からお話しいただいた中で、まず、子宮頸がんに関して少し議論をいただきたいと 思いますが、その中で検診年齢あるいは対象年齢をどうするかという非常に重要な問題 がありますが、まず、この点に関して御意見がありましたら承りたいと思います。 ○田中委員  私は若年者の対象というのは必要だと思うんです。それは先ほど大内委員の方から、 乳がんに比べると明らかに患者の数が少ないのではないかというお話がございました が、実際は今確実に増えております。  それから、もう一つは、若年者におけるHPV感染が、先ほど青木参考人が言われた のは婦人科の受診者でございますが、私は一般の妊婦を調べたことがあるんです。それ も25%ぐらいなんですね。特に若年者、10歳代のHPVの感染率が高いということを考えま すと、将来的にうんとまた増える可能性が高いのではないかと思っておりますし、ま た、こういう国の施策としては、今の乳がんみたいに、うんと増えてから対応を考える ということよりも、増える前に予防的な意味でもって、数の少ないときから施策として の対応を考えるということが重要ではないかと思っております。  以上です。 ○垣添座長  対象年齢に関して、ほかにいかがでしょうか。 ○大内委員  対象年齢に関しまして、論点として恐らく20歳からなのか、25歳からなのかというこ とがあろうかと思います。私自身は、これが保健行政上重要な疾患であるということに ついて異議はございません。ただし、先ほど申しましたように、問題点は導入に当たっ て検診間隔についても十分に議論していただきたい。と言いますのは、例えば米国のU SPSTFが出しているrecommendationの中にも、21歳以上あるいは18歳以上とあります が、3年間検診を受けて異常がなければ、その後3年間隔としてよいとなっています。 ですから、検診間隔を含めて議論されるのであれば、前向きに、導入に向けてこの検討 会で取り上げていただければと思っております。 ○垣添座長  この若年者の検診間隔に関して、どなたか御発言ございますか。 ○櫻井委員  その検診間隔についても、先生方が学問的根拠で議論されることは結構ですけれど も、先ほど申し上げましたように、お金が掛かり過ぎるからどうかということを議論の 中に入れないで是非議論してほしいんです。行政がお金を出すからどうという、行政の 方で予算が組めるとか組めないかというときには、それは行政がお金を考えるでしょう けれども、その話とこの議論を一緒にしないでほしいんです。本当に経済のことを考え るなら、例えば、よくコストパフォーマンスとか言って、1万円掛けて1つのがんを見 つけるのはいいけれども、100万円掛けるのはもったいないとかそういう話が出ますけ れども、そこのところだけ言えばそうですけれども、経済的に言ったらその100万円は ドブに捨てているわけではなくて、100万円掛かるということは、例えばそれによって 検診が10倍になることによって、そこには雇用も増えているし、いろいろなもので経済 活動は行われるんですよね。その100万円は誰かが持っていってしまって、どこかへ捨 ててしまうわけではないわけですから、本当の経済活動というのはそこにあるわけです から。確かにがんを見つけるのにこれは高過ぎるというのは、行政が予算を組むとき に、これは組めませんという話は、それは行政の話ですからそれでいいんですけれど も、それを是非忘れないでほしいと思います。だから、3年間放っておいても大丈夫で すよというなら放っておいていいですけれども、お金が掛かり過ぎるから3年に1回で いいのではないかという議論はしないでほしいし、外国がどうだからという話が医学的 根拠のデータとしておっしゃるならいいけれども、そうでないのだったら、それはやめ た方がいいと思います。 ○垣添座長  ありがとうございました。ほかにございますか。 ○大内委員  青木参考人の資料の19ページに、日本のデータとしましてMakino先生のデータが入っ ていまして、この中に受診間隔が2年でも有効性が証明されるというデータがあります が、櫻井先生、これは学問的によろしいでしょうか。 ○櫻井委員  それは、先生方が学問的に大丈夫だとおっしゃれば。ただし、受診率が全体に低いこ とがすべての検診で問題になっていますので、毎年受けなさいと言ってもこれだけ低い のが、2年に一遍受けなさいと言ったら、更にそれが忘れられてしまったり、受けなく なったりするという、実際に行動するのは人間ですから、機械を持ってきたり、強制的 にやっている話ではないので、その辺のところは是非考えてほしいですね。 ○安達委員  私もその点、一番強調したいと思います。まず、受診間隔というのは前々回も申し上 げましたけれども、産婦人科というのは受診するということに敷居が高いところがあり ますので、2年ごと、3年ごととしていきますと、必ず受診しない方たちが出てまいり ます。先ほども、高齢者でがんが発見される方はずっと受診していらっしゃらないとい う指摘があったんですが、大体妊娠・出産に関係したものが終わると、産婦人科を受診 しないという方もいらっしゃいます。また、毎回きちんと受診していらっしゃった方が 何年もいらっしゃらないことがあるんですが、たまたま1回抜かしてしまうと、次から 来なくなってしまうということがよく見掛けられます。そういう点で受診者の基底面を 増やすという点では、毎年検診されるような仕組みが一番いいわけでありますので、有 効性と併せて検診間隔というのは十分考えていただきたいと思います。  それから、もう一点です。HPVが子宮頸がんでは一番問題の性感染症ではありますけ れども、性感染症全体から申し上げますと、年齢のピークは今20〜24歳ですか、20歳代 前半というところが一番高いんですね。性感染症全体から見ますと、25〜29歳が次とい う形になっているんですが、実は性交経験者の数から考えますと、10歳代の方が20歳代 後半よりも低いものですから、性交経験者だけを対象にしてみますと、10歳代の後半と いうのは場合によっては20歳代前半よりも高い可能性があるんです。そう考えますと、 やはりがん検診の年齢というのは、現行の30歳以上というところから必ず引き下げてい ただきたいと考えております。  以上です。 ○垣添座長  具体的には。 ○安達委員  これは25歳にするのか、あるいは初交年齢あるいはそこから3年にするかといったも のは慎重に考えなくてはいけないとは思っております。25歳が必ずしもいいというふう に考えているわけではないんです。どこで受けやすいか、受けるべきかというようなこ とを考えてみますと、例えば、そういう通知をするとかキャンペーンをするということ になりますけれども、20歳で選挙権が出てきて、あるいは成人式、その他のいろいろな 連絡があるということや、今の性交経験率や性感染症のことから考えますと、20歳でま ず初回検診を受けるということは大切なのではないかと思います。また、前々回も申し 上げましたように、初回妊娠時という点を第2点として置くというのもよろしいかと思 っています。ただ、産婦人科医としては、例えば、妊娠してから子宮頸がんの病変が見 つかるというのは、本当はその前に見つけてほしいというのが切なる願いなんです。し かし、受診率を高めるという方策としては、妊娠というのは非常に大切な点ではないか と思っております。 ○垣添座長  ありがとうございました。  受診年齢は現在30歳以上ということでやっておりますけれども、これを引き下げると いうことに関して、何か具合が悪いのではないかという御意見はございますでしょう か。何歳からということに関しては、もう少し御議論をいただくということはあるで しょうけれども、もう少し若年層に引き下げるということに関して特に御発言はありま せんか。 ○佐藤参考人  先ほどちょっと私は言い逃したかなと思いますが、東北大学の八重樫教授の論文の中 に、2万2,000人の中で浸潤がんが3名、それがいずれも23歳、23歳、27歳。ですから、 八重樫教授にも聞いたんですが、やはり20歳からやるべきではないかということを言っ ていました。 ○垣添座長  佐藤先生、私から質問ですけれども、宮城県では受診対象者に対して検診をどういう ふうに働き掛けておられますか。 ○佐藤参考人  若年者に対してですか。 ○垣添座長  若年者も含めて。 ○佐藤参考人  仙台市はまだ今のところやっていないですね。先ほどお示ししましたように、仙台市 以外のところでも22市町村でやっていまして、それは多分、対がん協会が啓発して、市 町村がそれを受け入れたという形ではないかと思います。 ○大内委員  まず、宮城県の県に設置されています成人病検診管理指導協議会の中で、各部会がご ざいます。例えば、乳がん部会とか子宮がん部会。子宮がん部会の方の議論として、若 年者への検診のrecommendationを出す、それを県の会議の中で正式なrecommendationと しまして宮城県の保健福祉部長名で全市町村にその通達が参ります。その中で20歳代と いうのが入ってきております。 ○佐藤参考人  先ほど私は言い忘れたんですが、資料1−1と1−2の紹介を忘れました。これが、 その対がん協会と各市町村の主管課長として出した若年者への子宮がん検診の拡大の通 知でございます。 ○垣添座長  ありがとうございます。  そうすると、個々の対象者に対して何か連絡が行くという形ではないわけですか。 ○佐藤参考人  ですから、各市町村から住民に対しては、そういった指導があったと思います。 ○青木参考人  先回、辻班に参加させていただきまして、辻先生の方でその点調べておられます。ダ イレクトメールもあり、市町村の広報に載せるだけのものもあり、まだまちまちです。 受診率は決して高くありません。その点は問題だと思います。 ○垣添座長  つまり、受診率を上げるという観点からしますと、ダイレクトメールとか広報とか、 その辺が非常に重要なのではないかと思ってお尋ねしたわけであります。 ○斎藤委員  私が実態を知らないだけかもしれないんですが、この問題は、年齢を引き下げる検討 をしていただくのは勿論結構だと思いますが、やはり一次予防、肺がんで言えばたばこ 対策に当たるコンドームの使用とか、そういうキャンペーンを併せてこの問題をやって いかないといけないのではないかという気がするんですけれども、その辺はどういうふ うになっているのでしょうか。 ○垣添座長  どなたか情報をお持ちでしょうか。重要な御指摘だと思いますが、この場ではデータ がないようですね。 ○田中委員  やはり私はもう少し学問的に、本当に間隔を開けることが可能かどうかとか、そうい うことはやはり一応調査する必要があると思うんですね。実際に、がん発見でも毎年来 られる方はがん発見率が低くて、初診の方が多いということとかを見ますと、もう一度 間隔については調査した方がいいかもしれませんし、また、市町村で節目検診等々、お 誕生日検診等々あるんですけれども、そういうときには結構ほかの検診でも受診率が高 いということはございますので、何らかの機会にもう一度考えるということも大事では ないかと思っております。 ○垣添座長  ありがとうございました。  検診間隔に関して、引き続き御意見をいただければと思いますが。これは、子宮頸が んに関してですけれども、初回受診者の数が少ないという御発言がありましたが、その ことと関連することかと思いますが。よろしいでしょうか。  青木先生にお尋ねしたいんですが、最初何年か、2年か3年か続けて陰性だったら、 それ以降2年に一遍とか3年に一遍というデータがいろいろありますけれども、最初の 何年間か引き続いて陰性ということを確認することがなぜ必要なのかというデータはあ りますでしょうか。 ○青木参考人  これをいわゆる何かスタディをやって科学的にということではないようですね。した がって、各勧告ともその間隔がまちまちなのが、そういったことを表しているのではな いかと考えています。精度の観点から、日本の精度は数字上は極めていいですが、頸が ん検診といえども欧米のデータは決してよくないのであります。その点が考慮されてい るのではないかと考えています。 ○垣添座長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。  それでは、子宮頸がんに関して、全体で何か御発言いただくことがありましょうか。 ○大内委員  30歳未満のデータとして、宮城県のデータを佐藤先生の方から出されましたが、これ は条件がありました。もともと有症状、あるいは経過観察中の女性は除外されています ので、かなり一般女性のデータに近いだろうということがまず1つあることと、それか ら、妊婦検診ということになりますと、日本の女性の初産のデータを調べますと、63% までが出産されているというデータがありますので、妊婦検診を全員に実施しますと、 約3分の2の方がこの子宮頸がん検診を受けることになると思います。この点について は、安達委員の方からも妊婦検診で来られても困るという御意見もありますが、1つの 方策として、そういった妊婦検診を有効に活用できないかと考えます。宮城のデータが 示しますように、かなり早期に上皮内がん等が発見されているわけですので、そういっ たことも考慮に入れて、これは受診率の向上にもつかながりますし、その後の教育にも なるかと思いますので、御検討いただきたいと思います。 ○垣添座長  ありがとうございました。  ほかにございますか。 ○笹子委員  若い人に検診を受けろと言っても、検診受診率が低いというのはよくわかるんですけ れども、自分がハイリスクかどうかということを判定するような情報というのが正しく 伝わっているのかどうかが問題です。今、宮城県で20歳からというのをやられていると きに、例えば、初交年齢が早いとか、複数の相手がいるとか、そういうリスクが高くな るような要因を自分で判断できるような情報というのは、どういうふうに伝達している のかということがあれば教えていただきたいと思います。 ○佐藤参考人  子宮体がんに関しましては、リスク要因が非常に厳しい。子宮頸がんの場合は、リス クなしに受診希望者に対してはやっていると思います。仙台市がまだその受入れに入っ ていないので、他郡市では、先ほど言いました22の市町村がそれに入っているというこ とは、リスクということなしで一般の検診者と同じ条件でやっているはずです。 ○田中委員  私は、ほかのことでもってHIV感染とSTDを少し調べたことがあるんですが、若 年者に関しての、先ほど斎藤委員のお話もそうですが、その啓蒙あるいは知識普及とい うのは皆無に近いのではないかと思っております。 ○垣添座長  非常に重要な部分ですけれども、残念ながらデータがないということでしょうかね。 わかりました。  続きまして、今度は子宮体がんの検診に関して。青木参考人、佐藤参考人のお2人と も、基本的には今までやっている子宮体がんの検診を続行したいという御発表だったか と思いますが、この検討会として子宮体がんの扱いというものはいずれ結論を出さない といけないと思いますが、この場で少し御議論いただければと思いますが、いかがでし ょうか。子宮頸がんに比較すると、子宮体がんの方は少しデータが少ないかもしれませ んけれども、これまで報告いただいた結果からすると続けるべきだという、今日の両参 考人の発表があったかと思いますが。 ○笹子委員  検査の方法論というのは、子宮頸部の細胞診というのは非常に簡単だろうと想像はつ きます。体部の細胞診の方法というのはどこでも同じで、確立されたもの、これがベス トというものはあるのでしょうか。 ○垣添座長  いかがでしょうか。青木先生でも佐藤先生でも。 ○青木参考人  最初の久道班の報告書、がん検診の有効性評価に関する研究班は、細胞診を評価して おります。そして、次の新たながん検診手法の有効性の評価では、新たな手法をという ことで、ほかの方法に関してもレビューをさせていただきました、その中で超音波断層 法が入ってきているわけでありますが、やはり数字上のことだけで比べましても、細胞 診よりもまだ少し劣るということと、データがないということもありますので、本邦に おいては、現在は細胞診がファースト・スクリーニングとして主軸になっていると考え ています。 ○笹子委員  その細胞診自体の方法というのは同じ方法で、細胞の採取率とかその他に関しては安 定した方法論であると、完全に苦痛がないとか、そういったことに対しては問題ないと 考えられているんですか。 ○青木参考人  基本的には、細胞をとる道具、その他に関してはいろいろバラエティがあることは事 実です。ただ、それほど精度に差があるということは聞いておりません。  それから、現時点まで老人保健法の枠組みの中で行われた膨大な数の子宮体がん検診 の中で、これで大きな問題があったというような話は聞いておりません。 ○佐藤参考人  子宮体部細胞診で要精検になる例というのは、大体高齢者といいますか閉経以後とい うことで、高齢になればなるほど頸管が狭くなるものですから、非常に苦痛、疼痛を伴 うという点で小さなトラブルといいますか、受診者からのクレームなどはありますけれ ども、組織診は原則としては外来でひとかき掻爬なんですね。それではなかなか発見し にくいということもありまして、大学病院などはそうなんですけれども、擬陽性、陽性 については入院させて、入院の上で麻酔をかけて全面掻爬するという、それが今は趨勢 になってきています。ただ、それが保険になじまないという問題があって、そういった 細胞診の擬陽性以上の例の組織精密検査を、すべて入院で麻酔のもとに検査するという ことが保険の上で可能であれば、これは非常にいいのではないかと思います。実際問題 として一般の開業医で精検をやろうとしても、なかなか困難な問題があると思います。 特に高齢者ほど非常に難しい。ひとかき掻爬では、なかなか発見できないものがありま す。 ○垣添座長  ありがとうございました。  続きまして、田中委員どうぞ。 ○田中委員  今、子宮体がんが増えている現況から考えまして、やはり検診は必要ではないかと思 っておりますが、有効性評価を行うと同時に検診対象者の選択基準の標準化ということ が言われると思いますが、この場合、症状のある人を対象にするのかあるいは症状がな くてもハイリスクの人にするのか、どのようにこれからの検診対象者の選択基準をした らよろしいかということについて、少しお考えを両参考人にお伺いしたいと思います。 ○青木参考人  生理的な不正出血となかなか区別がつかない、問診で初めてわかる出血も含めまし て、これを選択基準と考えることに関しては余り問題はないのだろうと思われますが、 現時点では医師が必要と認めるものというものも含まれております。今、項目としてき ちんと挙がっているものに関しては、従来からretrospectiveなスタディでリスク因子 となることが確認されていますが、医師が必要と認めるものというのがリスクのある者 を絞り込むところで、かなりあいまいな条項になっていると思いますので、この点に関 しては、もう少し明確な基準を再度、現行の子宮体がん症例を調べまして定めていかな ければいけないだろうとは考えています。  現行の項目として挙がっているものに関しては、このまま続けてもいいだろうと考え ています。 ○垣添座長  ありがとうございます。  佐藤参考人、どうぞ。 ○佐藤参考人  全く私も同感でございます。実は、私も現場で検診をやっておる立場、それから、精 度管理もやっている両方の立場なんですが、平均5%と言いましても施設によって0% から40〜50%までかなりのばらつきがあるということが問題だと思います。やはり選定 基準というものを再確認して、誰が見ても納得できるような対象者選定というものが非 常に大事ではないかと思います。 ○櫻井委員  青木先生がお出しになった資料の4ページに、上に子宮頸がん検診の受診者数と発見 率の年次推移、下に子宮体がん検診の受診者数と発見率の年次推移という棒グラフと折 れ線グラフがありますね。これは、単純に見ると子宮頸がん検診の受診者数は、大体横 ばいで推移している。勿論、発見率も横ばい。それはそうとしておいて、この子宮体が ん検診は今のお話で、子宮頸がん検診の中からある程度リスクの高い人が選ばれて受診 したということだと思うので、単純に言いますと、最初のうちはものすごく数が少ない から別ですけれども、途中からどんどん増えていくのに発見率は横ばいということは、 逆に、見つかっている実数は増えているということですね。これは、ここの受診者数を 増やさないで、つまり子宮頸がん検診から選んでいるわけですから、総数は同じで、選 ぶのを選んだら同じぐらい見つかっているということは、選ばなかったら、例えば、 1991年ぐらいの十何万人で横にしてしまったら発見率が同じでいくのか、それともこれ は数を増やしても発見率が横ばいなのは、子宮体がんそのものが増えているから同じな んだということなのか、その辺はどういうふうに読むのでしょうか。単純に読めば、ど ういう基準でどうなったかはわかりませんけれども、子宮頸がん検診を受けた人から子 宮体がん検診を実施すると、数を増やすと発見率が同じということは、それだけ子宮体 がんはたくさん見つかったと簡単に読めるんですが、そういうことなのかどうかを教え ていただきたいと思います。 ○青木参考人  基本的には、数字上はそれでよろしいかと思っています。ただ、子宮体がん検診受診 者数に関しては、ここ数年ほぼ横ばいに推移しています。これは95年までで止まってい ますけれども、この後は横ばい。ただ、一貫して発見率は大体0.1%前後、東京都のも のも調べましたけれども、ほぼそういった形で推移していますので、やはり新規発生と いうことでよろしいのではないかと考えています。増えていることも反映されているだ ろうと思っています。 ○笹子委員  かなり症例を絞り込んで、有症状例をほとんど対象にしてやる検診というのは、若干 ほかの検診と異なるわけですが、胃がんの場合ですと、早期胃がんで発見される人の半 分ぐらいは症状があるんですね。症状があって検査を受ける、あるいは症状があったか ら検診を受けるということがあるんですが、逆に言うと半分の人は症状が全くない。子 宮体がんの場合は、発生した子宮体がんで治療を受けられた方の全体から見たときに、 どれくらいの人が無症状、それが更に比較的早期というものになると、どれくらいの人 が無症状であるのかということがわかれば、どういうふうに絞っていいかというのはわ かると思うんですが、その辺を教えていただけますか。 ○青木参考人  子宮体がん、病気の人から見た無症状者の割合ですか。 ○笹子委員  そうです。 ○青木参考人  不正出血を認める者は9割以上と通常報告されていますが、最近の傾向としては、や や若年化する傾向と、それに伴うかどうかかわりませんが、不正出血を認めない症例も やや増えている傾向、これは私どもの単一の施設での傾向では、そういった形になって います。 ○笹子委員  何割かはわかりますか。 ○青木参考人  3割ぐらいは無症状。 ○垣添座長  なかなかハイリスクを絞り込むというのは難しいですね。 ○笹子委員  そうしますと、先ほどの超音波を併用するとか、症状だけで対象とするかを判断して いいかという問題が出てくるかなという感じがします。 ○垣添座長  安達委員、御専門の立場で、この子宮体がん検診に関して何か御意見はございましょ うか。 ○安達委員  私も診ておりますと、大体不正出血とか出血のトラブルのある方に出てくる印象があ ります。しかし、今回の話題と少し違うんですが、先ほど乳がんの問題と絡んで、青木 先生が大変いいことをおっしゃったなと思っております。乳がんが実際に増えてきてお りまして、そういう方にホルモン治療をすることが多く、あるいは今ちょっと副作用の 問題もありますが、更年期やそれ以降の年齢の方で、ホルモン療法等をする方もいらっ しゃいます。そういうことを考えますと、子宮体がん検診の場で、健康な方がやはり子 宮体がんをきちんと調べるということは非常に重要なのではないかと思っております。 私の印象としても、以前は子宮体がんというのは閉経以降のものという感覚があったん ですが、実際に40歳代の方に増えてきているのを実感しておりますので、検診対象者を 年齢あるいはハイリスクに絞り込んでしまうのはどうかなというような印象を持ってお ります。 ○垣添座長  ありがとうございました。  今のハイリスクとか年齢に関して、もう少し御発言いただくことはございましょう か。よろしゅうございますか。  それでは、子宮頸がん、子宮体がんを通じて何か御発言いただくことはございましょ うか。 ○田中委員  子宮体がんの方で、県のレベルの協議会で言いますと、判定保留という数が結構ある んですね。だから、子宮体がんについてはこれから継続するようなことになれば、先ほ ど佐藤参考人も言われたように、もう少し精度管理をある程度徹底するということが必 要ではないかと思っております。 ○垣添座長  ありがとうございました。  ほかによろしいでしょうか。 ○遠藤委員  先ほど佐藤先生の方から、職域で検診を受けられる方が増えたので市町村が実施する 検診の受診者が減っているというお話がございまして、これは乳がんの場合も比較的若 い女性に罹患率が高いということで同じような問題があるかと思うんです。更に、30歳 より若い人たちに対象を広げた場合に、やはり同じ問題があると思うんです。20歳代の 女性の社会進出は非常に高率ですので、市町村が実施する検診だけでは対応できかねる のではないかと考えるんですけれども、その辺りのところの対策というのも必要ではな いか。職域での検診との協力、単に市町村が実施する検診の受診者が減っているから、 それを盛り返さなければいけないという問題ではなくて、総数の問題だと考えます。 ○垣添座長  そうですね。全体としてどのくらいの方が検診を受けているかということが非常に重 要なのだと思います。 ○佐藤参考人  職域での検診といいますか事業所検診、宮城県医師会にも健康センター、検診センタ ーを持っていまして、そこで以前から人間ドックとして婦人科検診、乳がん検診をやっ ています。昨年までは視触診のみ。それから、子宮がん検診は子宮頸部の細胞診のみと いうことでずっと長い間やってきました。もうそれではだめだということで、昨年度か らマンモグラフィ導入、それから、子宮体部の細胞診、勿論ドックですからオプション になりますけれども。そうしましたら、ほとんどの方がオプションとしての子宮体部の 細胞診、それから、マンモグラフィを希望しますね。ということは、ほかの事業所はそ こまでいっていないかもしれませんけれども、いまだに子宮頸部の細胞診しかやってい ないという事業所がかなりあると思います。しかも、事業所の数も、各々の受診者数も 増えています。実数はつかめませんけれども、そういうところに対して何らかの啓発と いいますか指導をしないと、なかなか精度管理がうまくいかないのではないかと思いま す。 ○垣添座長  ありがとうございました。  今の点も重要なポイントかと思いますが、よろしいでしょうか。  それでは、そろそろ時間になりますが、本日は子宮がん検診に関して大変活発な御意 見をありがとうございました。それから、青木参考人、佐藤参考人、どうもありがとう ございます。  一応これで会を閉じたいと思いますが、事務局の方から今後のことで何か御発言があ りましたら。 ○麦谷老人保健課長  先生方ありがとうございました。  次回は2月26日、木曜日の午後2時からを予定しております。これまでの御議論を踏 まえて、論点を事務局で整理して資料として用意させていただきたいと思います。その ときは乳がんと子宮がんをあわせて御議論いただきたいと思います。  それから、お話をお伺いした中で受診率を上げるというお話がありまして、アメリカ 合衆国が非常に受診率が高いということを聞いておりますので、これからコンタクトを とって、アメリカの状況について精通している方にプレゼンテーションを行っていただ くことを考えておりますので、間に合えば2月26日にアメリカの受診率の状況について 資料を提供したいと思います。 ○垣添座長  ありがとうございます。 ○田中委員  ちょっといいですか。最初の会のときも事業所検診について、厚生労働省になったの ですから資料をというお話をしたと思うんですけれども、それについて、いつか事務局 の方から資料とかあるいは情報をお教えいただけるのでしょうか。 ○麦谷老人保健課長  わかりました。事業者で行ういわゆる職域での検診につきましては、労働衛生課長に 相談して、場合によっては労働衛生課長が出席して説明するというようなこと、あるい は資料の提供を考えます。 ○垣添座長  それも是非お考えください。 ○櫻井委員  今の事務局の発言なんですが、アメリカとコンタクトをとって受診率を調べるという のでしたら、受診率だけでなくて、どういう制度でどういうことが行われて、それでど うなっているということをちゃんと出してください。 ○麦谷老人保健課長  わかりました。 ○垣添座長  よろしいでしょうか。 ○櫻井委員  はっきり言えば、誰が金を出してとかそういうことも全部含めて調べて下さい。 ○垣添座長  それでは、第3回の検討会をこれで閉じさせていただきます。どうもありがとうござ いました。                                      以上                         照会先:老健局老人保健課                         担当者:西村泰人                         連絡先:03-5253-1111 内線3946