03/05/23 不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第18回)議事録       不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第18回)議事録 1 日時   平成15年5月23日(金) 14:00〜16:00 2 場所   専用第13会議室(厚生労働省5階) 3 出席者 (1)委員(五十音順、◎は座長)   (1)岩村正彦(東京大学大学院法学政治学研究科教授)   (2)菊池信男(弁護士)   (3)毛塚勝利(専修大学法学部教授)  ◎(4)諏訪康雄(法政大学社会学部教授)   (5)村中孝史(京都大学大学院法学研究科教授)   (6)山川隆一(筑波大学社会科学系教授) (2)行政    青木審議官、熊谷労政担当参事官、中原調査官、    山嵜中労委事務局審査第一課長、松本参事官補佐 4 議事 ○ ただいまから「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会」の第18回会合を開 催する。本日は都合により伊藤委員、小幡委員が欠席である。山川委員は10分程遅れて 参加ということである。  本日は前回に引き続き、各論の検討が我々の課題である。前回の議論では、審査手続 の改善についての第1回目の御議論をしていただいたが、本日はその続きで第2回目と いうことになる。最初に、事務局から提出されている資料の説明を受け、その後で順に 議論をしていきたいと思っている。よろしくお願いする。 (事務局より資料No.1-1からNo.3-2についての説明。) ○ それでは、今日の課題からすると、論点が3つ程あるわけであるが、第1番目の団 交拒否事件は特別の性格があるのではないか、特別に急ぐ必要があるのではないかとい うことで、優先処理の問題が1点。それから、2つ目が救済命令の実効性確保に関わる 問題。そして3点目が一定期間経過後の再審査申立て又は取消訴訟提起の特例という、 この3点である。これを順に御議論いただきたいと思うが、問題の難しさに応じて少し 時間配分させていただくと、最初の団交拒否に30分程度、次の救済命令の実効性確保に 50分程度、そして最後の3点目には20分程度の議論というふうに予定させていただく。 これにこだわるわけではないが、ご配慮いただければ幸いである。  では、最初に「団交拒否事件の優先的処理」の問題について意見をお願いする。 ○ なるべく時間を効率的にということであったので。正直言ってちょっと難しいかと いう気はする。初審で扱っていると、団交拒否と言ってもいわゆる駆け込み訴え型の団 交拒否事件というのが結構あって、そうすると、それはある意味で本来の意味での団交 拒否事件ではない。だから、それを優先的に扱うかどうかということになると、それに ついては否定的になるかと思う。それから、一方で団交事件であっても、結構事実認定 と法律判断のやっかいなものもあるわけで、例えば今日の資料にも上がっているが、親 子会社の例であるとか、直接の労使関係の当事者とは言えないようなところを相手取っ て救済の申立てをしているというケースについてということになると、話はそう単純で はない。それなりに証拠調べ等をしないといけないということになるので、そう早急に 命令が出るということではないと思う。ただ、直接の当事者であるにも関わらず団交を 拒否している、つまり単純な団交拒否型だと、私は工夫の余地があるという気がしてい る。誠実団交義務違反になると、ちょっと中身に立ち入って判断しなければならない部 分があるが、組合否認型の団交拒否だと、そんなに中身に立ち入る必要がない。そうす ると、これは私の感じであるが、むしろ今の労働委員会の審査手続の在り方というか、 実務を少し変えるだけで、つまり固定観念を取り払うだけで、対応可能ではないかとい う気がしている。というのは、今の極めて単純な組合否認型の団交拒否の場合も、今の やり方だと審問を開いて双方の証人尋問をやって、それで、という話になって、それを やると必然的に時間が掛かる。だから、審問はやらないといけないとは思うが、固定観 念的に必ず証人を引っ張ってきて、それで証人尋問をやってというのがはずれるだけ で、随分違うのではないか。とりわけ、命令を受ける相手方である使用者から一定の主 張なり弁明を聞けば良いわけであるから、それは審問を開いて書面を出させて、陳述し たということにしておけば、それで良いのではないか。本当に良いかどうかは行政法的 にとか確信を持って調べていないので分からないが、それでも出来るのではないかとい う気もするので、何かそういうことで対応出来るようなものが、その手の事件について はあるという気がする。ただ、そうでない、ある程度実態判断に踏み込まないといけな いものについては、最低で組合一人、使用者一人ということになってしまうと、それで 都労委だと4期日とってしまうので、4回重なってしまうという形になる。そこが解消 出来るとかなり、事件のタイプによって解消してもよろしい、審査委員がそういうやり 方でやって良いというのであれば、かなり変えられるという気がする。 ○ その点、実務的にさらに、例えば今の労使双方が証人を一人ずつ立てたとしても、 1日で、しかも主尋問・反対尋問をいっぺんにやるとすれば、… ○ その中労委方式が出来れば。ただ、実際には中労委の場合だと、初審で証人尋問を やっているので、それが可能なのだと思うが、初審の場合は、1期日でということにな ると、ちょっと難しいかと。 ○ 団交の場合だけ1期日というのは。 ○ 要するに、組合側が証人を立てなければ。それで使用者側で立てて、主尋問・反対 尋問と。 ○ 使用者側だけ立てるということは、要するに団交拒否に正当事由があるかどうかだ けを使用者側に立証させると。 ○ というので、申立人が納得すればということである。 ○ いかがであろうか。しかし、団交でさえも1年も2年も掛かるなど、いかにも不自 然であるわけであるが。 ○ 複雑なものと、簡単な団結否認型の団交拒否事件というのは、比較的簡単に振り分 けられるのだろうか。どういう基準で… ○ そもそも、門前払いで会わないというものがある。それは比較的、要するに単純な 組合否認型である。難しいのは、会うのであるが資料は出さないとか、1時間ぐらい 会っては途中でもう打切りだと言って退席するとか、そういうふうになってくると、 ちょっと話が違ってくる。 ○ 使用者側の対応によって区分けすると。 ○ 変わってこざるを得ない部分がある。 ○ 時間が掛かる原因はやはり審問にあるということであろうか。例えば、中労委の場 合だと初回の調査期日が入るまで日程調整等で時間が掛かるという面もあるかと思う し、あるいは書面が提出される、つまり書面の交換等に時間が掛かるということもあろ うかと思うので、その辺りのどのプロセスを削減出来るかということで、やはり運用の 問題となり、事件の見極めはたぶん、審理計画というこの間の話がきちんと出来ていれ ば、ある程度は出来るのかと思う。 ○ そう思う。あともう1点だけ話をするのを忘れたのだが、団交拒否事件の場合、も う1つは初回の調査が遅れるとかいうことよりも、団交拒否事件の場合はむしろ、参与 委員を使って団交させようとするプロセスが入ることが多い。団交させようというプロ セスを入れることによって、うまく行くケースがあって、それだと良いのであるが、団 交させようと思って参与委員を通して働きかけて、結局うまく行かないということにな ると、そこから審理がスタートという形になって、調査をやって主張を出してという話 になってきてしまうので、そういう意味でも長くなるというのがあるかも知れない。あ る意味で、形を変えた実効確保の措置のようなものを、インフォーマルな形態でやって いる場合がある。それは表には出てこないので、そうすると統計数字だけ見ると、団交 事件ですごく時間が掛かっているというふうに見えてしまうという部分があることはあ ると。 ○ いくつも申立事項があるときに、団交のところだけ取り出して、中間命令みたいな ものを出すということは地労委レベルだと難しいだろうか。 ○ 手続上やろうと思えば、団交だけを切り離して、それでやるということは手続上可 能だと思うが、組合がそういうことを希望するというのはあまりないように思うが。 ○ 切り離して命令を出して、実効性があるか、という。 ○ そういうこともあるし、組合側とすると、団交だけを切り離して先にやってくれと いうのはあまりないような気がする。 ○ 今言われたように、団交でも、特に使用者性が問題になっているものとか、誠実団 交というものは、ありとあらゆることが出てくるので、そう簡単に行かない。ただ、結 論としては団交になってくるので、こんなに長いこと掛かって、今更こんな命令を出し てどうするのかということを、その都度思わせられる。事件の処理として、早めようと して早められる見込みがあるかと思うのは、それは決して容易であるという意味ではな いが、組合否認型である。私は初審をやったことがないので容易に見当が付かないが、 努力をすれば早くなりそうなものの1つの典型が単純な組合否認型ではないかと思う。 そういうものは大体申立ての段階で申立ての背景事情等を聞けば見当が付くのではない かと思う。おそらく、どこまで行くのか当初ははっきり分からないというのは誠実団交 で、次いで、使用者性であろう。やはり事件の振り分けをできるだけ早い段階でやっ て、単純な組合否認などは、運用として、この4の(2)のようなことが出来るのがあ る程度あるのではないか。結局、やはり振り分けと運用の問題で、何か規則の改正で書 けることがあるのかは疑問であろう。  それから、団交についての、命令に何らかの強制力を与える工夫をしても、果たして 実効性があるかということになると、今度は団交拒否事件ではなくて誠実団交事件に変 わってしまうだけの話かという感じがする。 ○ そうすると、ここは振り分けて単純な拒否型、組合否認型に関しては出来るだけ迅 速な対応をする。しかし、それはなかなかルール化するのが難しい。 ○ 難しい。命令を出すことが良いのかどうかも良く分からない。つまり、参与委員を 通して説得してという方が、ひょっとすると実効性があるかも知れない。 ○ だから、団交拒否と命令に対するサンクションを別途考えて、要するに、実際的な 紛争の解決になるかどうかという問題と、迅速処理というのを分けないと、くっついて しまうとなかなか難しいので、ある程度団交事件に迅速処理というのがあるのであれば 分ける形にして、後は実効性のレベルで担保を考える。それは結果的にトータルで見れ ば、果たして現在の紛争解決というのがどこまで進んだか分からないけれども、1つず つ切り分けてやらないと決着が付かない。 ○ おっしゃる通りのところはある。あともう1つ、実際に事件を扱っていて、やは り、これは制度的な問題で極めて前回の話と関係するが、鶏が先か卵が先かという話に なってしまうが、組合側の対応にも問題があるケースがある。そうすると、迅速な解決 ということで、単純に団交応諾命令を出せば良いかというのも、本当は問題があって、 その辺も絡む。 ○ その団交否認型だと、かえって団交命令が出されて負けると意固地になるという、 そちらの可能性もかなり高い。 ○ そういうのもあると思うし、元々のトラブルが起きた原因が組合の対応にも原因が あるというケースもある。使用者側ももちろん悪いが、組合側も、というのもある。そ ういうときに、今のメカニズムだと、極めて単純な団交命令しか出せないということに なってしまうので、その硬直性というか、救済の硬直性の問題もある。いろいろ考え出 すと何も出来なくなってしまうが。 ○ そうすると、この問題も他の問題と関わる。特に救済の実効性その他が関わってく るし、あるいは今現在で考えてみても、団交を実務上それなりに優先しようと思ったら 出来るかも知れないのに、各地労委もやっていないのには、確かにそれなりの理由があ るのだろうと思う。その工夫は、力だけで一片の命令を出しても、紛争の解決にならな いということがあったのだろうと思う。ところが、そうやって紛争そのものを実質的に 解決しようと思って、やってうまく行かないと、何年も経ってから何年も前の団体交渉 をこれからやれという命令になってしまうわけで、それが我々にとっても非常なジレン マであるわけだが、このポイントは繰り返しここで確認されたので、少しここで実効性 確保の問題を絡めてというか、その論点を中心に議論しながら団交拒否における実効性 確保のような問題であるとか、その問題も場合によっては御議論いただきたいと思う。 ○ 今話が出ていたように、紛争の出来る限りの実質的解決ということと、事件の迅速 処理ということの兼ね合いの問題であるが、誠実団交事件で、ともかく問題が起きるた びにほとんど労働委員会に持ち込んできているような労使というのは、たいてい大元の ところの関係改善はなかなか難しい。しかしやはり棘というのは1本1本抜いていけば 良いではないかということがある。こういう棘のことも、今まで労使ではどうにもなら なかったので、これはまだ抜けるのであればその分は抜いておこう。根っ子の方のとこ ろが根治出来なくとも、とりあえず棘を抜く。そうすると、棘が1つ抜けたことはやは り、労使関係の健全化との関係で言えば、前進は前進である。当事者双方とそういうよ うな話をしながらやっていって、やはりあるところでは、そういう意味で手続の上では 見切りを付けて、とりあえず今度はここだけにしておきましょうという処理をすること がある。実効性のある解決というのは、結局のところ、双方のこれはこうしようという 合意が得られるようなことでないと、前進になっていかない場合が多い。だから、実効 性ということでも、そういうふうにいろいろな道を探りながら、その中で少しずつ前進 が出来れば、それで大変なプラスであるという感じがする。 ○ 他にいかがであろうか。 ○ 一番手を付けやすいところから言えば、罰金については是非引き上げていただきた いと。これだとほとんど効力がない。 ○ 交通違反でも、一般の犯罪でも、法定刑が重いということよりも、やったら確実に 捕まって処罰されるという、検挙・処罰の確実ということの方が、犯罪の発生抑制に役 に立つのだというのが一般的に言われている。この法定刑を上げるということは結構だ と思うが、処罰された事例はないようだが、これは告発しても起訴されないのであろう か。告発もしていないのだろうか。法定刑を上げるというなら、併せて告発の励行とい うことがないと意味がなくなる。だから、告発の励行も考えてみてはどうかと思う。 ○ 私は不勉強で、労働委員会で、確定判決によって支持された命令に違反した場合、 禁こ又は罰金ということになっているが、他方で確定命令に対する違反だと、作為命令 に対する違反は間接強制で1日に10万円が掛かってくる。これは両方競合するのであろ うか。 ○ 罰金と、ということであろうか。 ○ そうである。確定判決によって支持された命令が作為命令の場合、それに従わない と。 ○ こちらは、労働組合法第28条であるので、確定判決によって支持された場合、その 違反があったときは、行為者に1年以下の禁こ若しくは10万円以下の罰金に処し、又は これを併科すると。これは1日につきというのはない。 ○ なくなってしまうということか。 ○ そうである。それは確定した命令違反と緊急命令違反、この2つということであ る。 ○ それは罰則の方が重いからということであろうか。 ○ 二重処分を避けるということではないか。 ○ そうなのであろう。 ○ 類似の形式犯の法定刑の事例はどうなっているか。 ○ 法務省の方に聞いて勉強しているが、類似の罪との均衡という点からすると、裁判 所の命令に対する違反、最近ではDV法が1年以下の懲役又は100万円以下の罰金という ことである。それから、行政命令に対する違反の例ということだと、独占禁止法が2年 以下の懲役又は300万円以下の罰金というようなことであって、一般的な感想というこ とで聞いているところによれば、1年の懲役であれば100万円ぐらいの罰金の例が多い のではないかと。罰金で10万円というのはいかにも安いのではないかという。今は最低 30万円ぐらいなのではないかと。 ○ だから、昔法律を作ったときは1年と10万円というのが、たぶんちょうどバランス が取れていたのが、貨幣価値が変動した結果として、いまや全然バランスが取れないと いうことなのであろう。 ○ 10万円だと、ご案内のように、まだ罰金等臨時措置法にかかる程低いわけでもない ということで、このままになってしまっているという。 ○ 谷間になってしまったのであろう。 ○ そういうことである。  通知がなされた数とかを先ほどご紹介したが、元々の命令が履行されなかった数とい うのが把握されていないので。 ○ 前に外資系の企業が、10万円だったら払っても構わないという話は良く聞いた。 ○ ただ、一般には確定命令については、結局履行確保の報告を求めて、使用者側から 履行確保の報告があると、もう一方の組合側にそれで良いか一応確かめて、それで良い ということであれば履行があったという、そういう処理をしていると思うので、処罰の 例がないというのは、結局、形の上では皆履行しているという形になっているというこ とであろう。 ○ 法定刑を上げておけば履行の例が増えるということは考えられる。 ○ 履行確保の議論のところで、いくつか57年の報告書を載せているが、労働委員会の 命令が初審なりで出た段階で、もう少し実効性があるような形で若干の強制力が与えら れるかどうかということに関する議論がどの程度されたのか、ちょっと記憶にないの で、その辺はどのくらい詰めたのか。要するに、労働委員会の命令に対する履行確保の 方法というのは工夫の余地がないのかという、その部分なのであるが。 ○ それは、委員がいろいろと行政処分との関わりで発言をされていたけれども、た だ、そこも行政法の分野でも考え方が少し変わってきているということがあって、今ま でやや詰めた議論がされないままに終わっていたと思う。この点は、そのとき委員も何 か発言されていたのを覚えているのであるが。 ○ 私が言ったのは、今日の資料で出ている「これまでの議論の概要」の中で、上から 2番目のものである。執行力を付けたらどうかという話。つまり、普通の行政処分と同 じにしたらどうかと。要するに、本来の行政処分と逆の構造になっているので、それを 元に、本則に戻したら良いのではないかという話をした。 ○ それは罰則か何かということか。 ○ しかし、行政処分の効力というのはあるのであろう。 ○ そうである。命令は交付の日から効力を生ずると書いてあるので。 ○ 執行停止の対象になるような行政処分としての効力は生じているから、強制的な効 力ということできっと執行力と言われているというのだろうと思っているが。 ○ そういう趣旨である。 ○ 行訴の申立てのときに執行停止が例外だというのは一般的な行政処分の効力のこと であるので、それとはまた別の効力だと思う。 ○ 命令を出す労働委員会の方が、同じ不当労働行為事件でも明白だとか重大だという 場合については一般の命令と変えて、特別な強制力を与えるような仕組みというのは出 来ないのだろうか。それで、そういう命令を出した場合には、今度は使用者の方が裁判 所に効力を争うという手続は認めるにしても、何か新しいスキームがないのであろう か。 ○ 行政処分として効力があるにしても、今の仕組みだと命令がそのまま確定したか、 取消訴訟において確定したかのどちらかでないと最終的な強制力はないということに なっている。それの中間的なものが緊急命令ということに… ○ だから、むしろそれをこれだと逆転させるわけである。使用者の方が止めろ、とい うので行くという。 ○ ということは、過料の制裁なりが初審命令の段階でも原則として執行出来るという ことであろうか。 ○ そういうことである。 ○ それは裁判所が非訟事件手続法で過料の制裁を科すことになるのか。 ○ 行政罰として科すと。 ○ ただ、詰めて考えているわけではないので… ○ だから、かなり不当労働行為の程度の問題を考えて、分けてやるという。 ○ 現行制度に近いものとすれば、緊急命令的なものを前倒しに出来ないかということ がある。 ○ それが1つ。 ○ 一番考えやすいのは緊急命令をもっと広げることだろう。 ○ だから、緊急命令を広げるとすると、初審命令が出た段階で、労働委員会が裁判所 に単独で緊急命令を申し立てる。そういう考え方はある。だから、仮処分の認可みたい な感じになる。 ○ 前に言ったかも知れないが、アメリカでは司法審査以前でも緊急命令的なものは裁 判所に申請出来るということになっている。日本でどれだけ出してくれるかというのは あるが、ただ、明々白々なものだけを考えれば、裁判所もそういうものは出すのではな いかと思う。もしそういうのを作れば可能性はあると思う。 ○ これは法令で要件を、こういう場合というような実体的な要件を書いておく方が運 用しやすい。 ○ 地労委命令が出ていればまた別かも知れないが、少なくとも現状を不利益に変更す るようなことはしないとか、救済の中身によっても変わるかも知れない。ポスト・ノー ティスのようなものを暫定的に地労委段階で強制するというのは、ちょっとまずいかと 思う。 ○ 今のだと、取消訴訟に行かないと緊急命令というのは出ない。だから、逆転させる という考え方はあるという気がする。 ○ 不当労働行為制度というのを作って労働委員会にやらせている以上は、それの効力 を担保する制度はあって良いのではないかという気がする。 ○ しかも初審命令も行政処分としての効力があるわけであるから。 ○ そうすると現在では、現行の緊急命令はご存じの通り簡単に出なくなってしまって いるから、それが出なくなってしまった障害物を運用上で取り除くということになろう か。取り除くこととペアにして、もっと緊急命令を広範に、迅速に使えるような工夫、 これが実効性確保のうち1つのポイントだということであろう。 ○ 結局、緊急命令の実体的な判断の要件と迅速性ということについて規定を置けば、 最後まで持ち越さないで早く出るということになるのであろうか。 ○ 判例は、高裁レベルであるが、重大な疑いがあるかないかという基準を用いるもの が有力である。 ○ 現行では取消訴訟で維持されたら、それと一緒に出て来る。 ○ 制度としてはおかしい。 ○ これは制度としては死んでしまっている。 ○ やはり要件と迅速ということを書いておけば良いのではないかという気がする。 ○ 別に出せ、というのは。そういうのを書けないだろうか。出すにしろ出さないにし ろ、その判断を早くということであろう。 ○ そこは確かにポイントである。裁判所が受訴したら、直ちにある一定期間内に判断 をしなさいというのは1つの方策である。では、ここはそういう方向で少し検討してみ るということで、事務局の方に整理をお願いして、今の緊急命令以外の論点で実効性確 保について、他にもいろいろとあろうかと思うので、罰金、過料の額等、それから今の 緊急命令、他に… ○ 一番良く出てくるのは審査の実効確保である。初審の段階では。これも勧告で。こ れもしかし限界がある。例えば、団交拒否で出てきたときに、審査の実効確保の勧告の 申し出で、よく団交せよという勧告を出してくれというのが来て、それは実体判断の先 取りになってしまうので出来ない。結構限界がある。 ○ 履行勧告というのはどの程度用いられているのか。 ○ 少なくとも都労委の運用では三者委員に任せるという形にして、とりわけ使側の委 員がインフォーマルに働きかけて、あまり酷なことはしないようにとか、これ以上紛争 を拡大するようなことはしないようにとか、そういうような形で大体対応しているので はないかと。大体都労委の場合は三者委員に一任という形で、その上で実務上、事務局 と使用者側委員とで使用者側を説得して、あまりあこぎなことはこれ以上しないように と、これ以上紛争を拡大して火に油を注ぐことはしないでくれと、そういう形でやって いる。でも、それで言うことを聞く使用者であれば、あまり問題にならないので。 ○ 実効確保の勧告というので、今のようにインフォーマルでやっていく分には別に問 題ないと思うが、またこれをしっかりやるということだと、これについて時間が掛かっ たりするのではないか。勧告を出すか出さないかで議論しないといけないとか。 ○ しないといけないという話になるとそうだと思う。 ○ 類似制度の比較表をいろいろと事務局が用意しているので、そういうものと照らし 合わせながら皆のご意見をいただけるかと思うが、例えば証人出頭や文書提出命令など では、総会の議決といったような問題が制度の現実的運用に随分関わってきているわけ であるが、結局は公益委員の権限をどのように見直すかということと関わってくるわけ であるが、これら様々な点で皆の意見があるだろうか。 ○ この表を見て、審査中の措置について、むしろ労働委員会のみが実効確保の措置の 勧告権限を持っていて、むしろ他の制度にはないというのを初めて知った。ということ は、前の労使関係法研究会の報告にあるとおり、基本的にはやはり、審査を早めて判断 を早く下すのが本筋だという感じがする。 ○ 行政委員会的なものの命令等に対して罰則や何かが付いたものというのは、全くな いのであろうか。 ○ もう一度言っていただけるか。 ○ 行政罰というものを、ここでいろいろな委員会の例が出ているが、この読み方なの であるが、一審、二審というのは、これは裁判所の係属の話なのであろう。 ○ 委員会の中での話である。 ○ では、今委員が言ったのは、むしろ労働委員会が罰則がないのが… ○ 一番上のところは、労働委員会だけになっている。労委規則37条の2という条文から すると、後から付け加えられたような感じで、ある程度遅延が問題になってきた後に出 来た条文なのであろうか。 ○ 早くやればそんな措置はいらないということで。 ○ 37条の2は昭和27年に出来ている。 ○ それでは、それほど後でもない。 ○ その後改正はされている。 ○ 27年改正のときに、他のと併せて入った。 ○ そうすると、その趣旨はどういうふうに読めるのか。他の行政委員会と比べてこれ があるということの趣旨はどのように理解するのか。 ○ たぶん、1つは労使関係というのは継続していくので、そのためにいろいろと工夫 する必要が起きるということだと思う。海難審判などだと、たぶんそんなに継続性のあ る事件はないであろう。 ○ 事後的な、なるべく一回限りの。 ○ これに罰則を付けると、余計に使われなくなるのであろうか。 ○ たぶん、そうなると慎重になってしまって、余計使えなくなってしまう。だから、 労働委員会の初審で良く来るのは、組合を結成したところ、組合委員長に対して懲戒処 分が来たと。それで、使用者の言動から見てさらに今度は解雇しそうであるというの で、解雇を差し止めるようにしてくれと。そんな感じで出てきたりする。 ○ 例えば、こういう措置をそのときにはサンクションを付けないけれども、履行しな かった最終的な命令段階ではサンクションが付くとか、そういう相手の気持ちを逆なで しないで、なおかつ実効性を与える方法というのはないのであろうか。 ○ ただ、最終的な命令が出た段階では結局救済になってしまうので、そうするとさら に、それ以上に命令の中にペナルティーを書き込むという形になる。例えば、単純な原 職復帰とバックペイというだけではなく、履行確保の勧告に従わなかったから、バック ペイを2倍しろとか。 ○ でも、それは最終的には、仮にあったとしてもおかしくはない。理屈から言うと。 ○ ただ、そうするとたぶん、従来の労働委員会の救済命令についての裁量権の幅とい うのを、今より広げるという形で線引きをするということになる。 ○ 先ほどの団交拒否の場合も、労働関係の紛争はかなり継続的だから、紛争を処理し ながらも必要に応じて履行確保措置、あるいは救済的な措置を取る。そういう整合性は ありうるのではなかろうか。 ○ 確か、家事審判法などだと審判前の保全処分があって、それから破産法も宣告前の 保全処分がある。保全処分というのを作ることは出来ないのではないかも知れないが、 そういう審理をどういうふうに行うのかという問題がある。やはり、そこは家事審判な どとは違うのであろうか。そちらの実態も良く分からないので何とも言えないが。 ○ 典型例だと、例えば社宅から追い出されるのを止めるとか、そういう問題は確かに ある。また、手続をさらに促進するも認められると思うが、本案の仮処分的なものが認 められるかどうかについてはかなり議論がまだあるところである。 ○ 家事審判手続の審判前の保全処分で出来るのは、結局放置すると手続の目的が損な われてしまうような事態になるのを防ぐため、現状を保全し、現状がひどいときにはそ の状態を修復して最後に判断がされるときまで手続の意味がなくならないように、手続 の目的を達成するに必要な範囲の保全の措置だと思う。  規則第37条の2にいう審査の実効確保のために必要な措置というのは、審査を進めて 判断する段階になって、意味がないような状態になっていたのでは困るので、手続の実 効性を確保するための保全の措置をしておくということで、同じようなことであろう。 ○ 先ほどの、申し立てた組合委員長の解雇のおそれがあるなどというのは、労働関係 では割と事例として典型的だと思う。 ○ それは出てくる。あとは、組合員が解雇されて、他の人もどうもやられそうだとい うときに、やるなという勧告をしてくれとか、そういう類のはある。それは、結局今の 仕組みだと、会社側を説得して、当面手続をやっている間は待ってくれという形で。だ から、ここに出てくる労側の議論というのは、それよりももっとやれという議論なのだ と思う。 ○ 本案の先取りというのは、どう考えても… ○ だから、そうすると本案の先取りになってしまう。それはそうである。 ○ 実効性の確保といっても、それを履行してくれるようなことでないと、それこそ実 効性の確保は出来ない。だから、それが出来るぐらいであれば、任意の協力を求めて、 インフォーマルな形でやっていくということでどんどんやっているのであろう。それで やれるのであればその方が良いに決まっている。制度としては運用で良いのではない か。 ○ 裁判の場合であれば仮処分、賃金全部でなくても30万なら30万。実際に裁判所であ れば、それは割と迅速に出ると。労働委員会でも同じようにそれが出来るようにしてほ しいというような労働側の感覚なのであろうか。 ○ たぶん、それだとやはり、命令を早く出すというのがおそらく本筋なので。 ○ でも、実際裁判で、使用者側の弁護士などに話を聞くと、仮処分で負けてしまう と、本案で勝っても結局仮処分で払ったものは戻ってこない。あれは負けだという話に なってしまって、もしそんなものをやるという話になったら、今度はそれの不服を争う 手続を整備するという話になると思う。 ○ もちろんそういうことである。 ○ だから、先ほどの団交事件もそうであるが、紛争拡大というか、処理する範囲をど んどん限定していくという使い方というか、なるべくこじれた労使関係の中の1つ1つ の部分について解決するという使い方を考えないと。 ○ それはだから、むしろインフォーマルにやっている。審査の手続の中で。要するに 定期便で、毎年来るようなものでも、毎年同じ事件で同じ紛争をやっているのがあっ て、そうするととにかくまたかということなのであるが、使側を通して、またやって も、とにかくとことんまではやらないで、紛争を拡大しないでくれということをお願い して、とにかく止めていっているということは実際にやっている。 ○ 不当労働行為制度そのものが大体緊急処分的な性格を持っているし、疎明でやるこ とになっているのであるから、やはり本来の終局的判断を早くやるというのが本筋であ ろう。だから、最終判断にやる実効性確保の措置というのは、そのために必要な最小限 のことをとりあえずやるということだろう。しかも、それはインフォーマルにも出来る ことで、実効性確保という点から行けば協力を得られないと意味がないから、実際には 大体インフォーマルな方法でほとんど目的を達していて、実際にそんな措置をとるとこ ろまではやらないことが多いというのであれば、別にそれでいけないのかという感じが する。 ○ 後は、確信犯的なものは何をやっても駄目である。 ○ そんなものに時間を使う必要はないと思う。 ○ そうすると、実効性確保に関して言うと、今はっきりと出てきたのは、いわゆる本 筋は全体の処理を出来るだけ早める工夫をすべきであって、その処理がどうせ早まらな いだろうというのを前提としたような各種の実効性確保措置や代替措置を考えるのは本 末転倒の議論なのではないかということが皆の考えのようであるので、したがって全体 を早めるという本筋を押さえた上で、なおかつ先ほど出たような、保全処分的な性格の ものであるとか、あるいは緊急命令のようなものであるとか、罰則のようなものはきち んと整備しておく。しかし、その整備の意味は、実効性確保をどんどん整備していけば じっくりゆっくりといつまでも事件を扱っていて良いという趣旨では全くないというこ とであろうと思う。  他に実効性確保との関係ではいかがであろうか。いま、委員から確信犯的な人には何 をやってもどうしようも出来ないというか、だからといってそういう人に大手を振って のさばらせるというわけにはいかないわけなので、その点については先ほどの罰則等の 強化で対応するということで、そして告発などをもっときちんとやっていくということ であろう。 ○ 確信犯的なものについては、やはり本筋は審査の進行を早くして、なるべく早く命 令をもっていくと。それで、命令の実効性をいろいろな手段で高めると。 ○ とりわけ、そういう人に対しては、緊急命令などがもっと途中の段階でうまく出る ようにする。 ○ 出るようにすることが大事だと思う。 ○ 緊急命令は、額が10万円でも、1日につき10万円であるので、それでも払うという 人もいるかも知れないが、1回のみの罰則で行くよりもむしろ効果があると思う。 ○ 確かに、こちらの方が効果があると思う。 ○ これまで引き上げるかどうかという問題はあるかとは思うが、これを引き上げたら 相当の効果があるのではないか。 ○ 相当効くと思う。 ○ 1年だと大体100万円というのは、大体そんなものなのであろうか。 ○ 法務省刑事局の担当者からはそういうふうに聞いている。 ○ 1年刑務所に入るのと、100万払うのとでは… ○ 何となく平均年収で考えると、500万か600万ぐらいでちょうどブレイクイーブンな 感じもするのだが。  それでは、実効性確保はとりあえずこの程度で… ○ その実効性確保に関連する点で1点。今日、せっかく資料を提出していただいたの が、文書提出命令のところで、ちょっとだけ。前回の議論に戻ってしまって恐縮である が、ちょっとこれは良く分からないのであるが、今日のを見せていただくと、証人の出 頭命令というのは他のところで結構やっている。他のところと言っても公取と公害等調 整委員会であるが、14年度でそれぞれ14件、13件やっているということである。ただ、 文書提出命令はないという状況である。ただ、労働委員会の場合、証人というのはあま り問題にならないのではないかという気もするのであるが。つまり、敵性証人とか、あ の人は出さないといった感じで問題になるケースというのは、私の数少ない経験ではあ まりなくて、1回か2回あったが、そのときは使用者側がそれだったら自分たちの方か ら証人で申請するという形で出てきて、問題にならなかったという記憶があるのである が。そうすると、やはり焦点は文書提出命令の方なのかというふうに、ちょっとこの表 を見ながら思っていたので、ちょっと他の行政委員会と状況が違うのかという気がした のであるが。それから、事実上問題になるのは賃金差別だけであろうか。 ○ 懲戒などでも問題にはなると思う。つまり、証言だけでははっきりしないような事 例である。もちろん、勤務成績の関係で賃金差別の事件が中心になるが。 ○ 良くあるのは、賃金差別だと、例えば管理職との間の賃金格差の問題とか。いろい ろ複雑な背景があったとして、会社側が良くあるのは、管理職の賃金というのは、一般 にも出していないと。だから出さないというのはある。あとは、個別の査定内容という ことについても、皆に出していないから出せないのだと言って出さないということにな る。 ○ 裁判所で文書提出命令が何件ぐらい出ているのかちょっと分からないが、実際はそ こまで行かないうちに、裁判所に文書提出命令を出す権限があるから、任意に出してく る、あるいは話し合いでここまでなら出そうとかいうことがあろうし、あるいはインカ メラ手続なども利用出来る。つまり、提出命令まで行かない間に、しかし命令の制度が あるから出しているということがあるのではないかと思う。出頭命令についても、管理 職は任意には出頭しないという事例がありえ、それで脱退勧奨事件などだと、心証の問 題になるかも知れないが、ちょっと困るということはある。 ○ とにかく、この点については、初審命令をやっている側の立場からすると、労働委 員会段階で出さないと言っていたものを裁判所で出してくると。労働委員会の段階では 全然書証が出てきていなくて、こちら側が全く命令のベースにも出来なかったものが裁 判所で出てきて取り消されるという、それだけは何とかしてほしいと思う。書証が出て きて、いわば評価のところとか、事実認定が違うということで負けるというのであれば まだ仕方がないと思うのであるが、そもそも出てきていなくて、それでひっくり返され るというのは、やはりフェアではないし、承服しがたいものがあるので、今回そこだけ は、どういう形を取るにしても検討いただきたいと思う。 ○ ただ、労組法22条では、強制権限というすごく強いものをいち早く作っているわけ である。すごい劇薬だから、簡単には処方しないようにというので総会の議決とした結 果、決して抜けない伝家の宝刀になってしまったということであろう。 ○ あれは何でも出来るような形になってしまっているので。だから、もっと範囲を 絞って… ○ 範囲を限定して、その限定したものに関しては公益委員会議で決定するといったよ うな… ○ 民事訴訟法の文書提出命令のところと同じようなパラレルなところで何か考えると か。あれだと本当にオールマイティーでというふうになってしまっているので。 ○ あれは、要するに旧労組法以来の、官庁がすごくお上として権限が強かった時代の 発想と、それからこういう不当労働行為というものに対するその当時の見方が反映して 出来上がった条文であろうと思うが、それだけに現状では使えなくなってしまっている ところがなきにしもあらずである。それをもう少し、いくつかの事項、とりわけ非常に 重要な部分だけに絞って公益委員会議で出せるようにする。そうすれば、実際にはそれ を発令しなくても、そういうものを背景に審査委員等が出してくれと言えば前よりは出 てくる。 ○ 出てくる可能性はある。 ○ それでもなお、さらに出してこないならば、疎明がないという形で対処することも やりやすくなる。 ○ 結局今でも提出命令に相当するものの発令の根拠はあるわけであろう。ところが、 総会の権限になっていて、手続の中の措置だから機動的にやれないと意味がないのに、 あまり慎重な手続になっているために使えなくなっているので、公益委員会議の権限に してほしい。そもそも不当労働行為事件の審査そのものを公益委員会議でやるわけだか ら、これが総会の決議事項にされている点を再検討すべきではないかという提案をして いけばいいのではないか。それに対して、22条の内容を、このままだと広すぎて公益委 員会議にまかせるのは駄目だという議論が出るのであれば、せめて文書提出に限ってで も検討してみてほしいという主張をするというやり方の方が良いという感じがする。最 初から文書提出命令に相当するものを設けろと言うと根っ子からの議論になってしまう 可能性があるので、そうではなくて今ある制度を使いやすくしてほしいという議論の方 が、仮に通るとすれば通りやすいのではないかという感じがする。 ○ 戻った議論をして申し訳なかった。 ○ 非常に重要なポイントであるので、少しその辺りも考えてみたいと思う。  他によろしいだろうか。それでは今日の3つ目の論点である、「一定期間経過後の再 審査申立て又は取消訴訟提起の特例」といった問題について、御意見をいただきたい。 資料No.3-2に他の措置との対比表が載っているが、そういうものも参照しながら御意見 をいただきたい。 ○ 一定期間の経過後によって却下等が出来るというものの例として、主なものは大体 これだけであろうか。類型として他のものはないのであろうか。これらは全部社会保障 給付であるが、これらは申請に基づいてする処分であるけれども、申請者に利益だけ与 える処分で、給付を受ける権利を主張しているのに、いつまでも給付を与えないとき は、もうそれはもう1つ上の段階の不服の手続の方に移行しても仕方がないというもの である。これは、利害の対立する関係の対立当事者的なものは全然いない法律関係なの であるが、不当労働行為はまさに利害対立の中でやる紛争解決のための処分で異なって いる。せっかく労働委員会で審理しているのに、それが長く掛かったら労働委員会の手 続の段階が飛ぶことになるのであろうか。 ○ その段階ではそうである。次に行くという。 ○ 中労委に行くか、あるいは裁判所に行くか。社会保障給付のときにはそういう手続 をとることにも根拠があると思うが、こちらは労働紛争を広い裁量権を持つ専門的な準 司法的機関に取り扱わせるという制度の趣旨からして、実質的にもどういうものかとい う気がするが。どういうものであろうか。 ○ 結局、労働委員会の手続をどう整理するかということと非常に関係していて、今の ように審査と調整がごちゃごちゃになっているままでは、何とかさせようと思って、事 実上の調整で一生懸命働きかけていると期間が過ぎてしまって中労委に行ってしまうと いう、そういうことになってしまうと。中労委も、これは何とか話し合いでいけそうだ と思っていると期限が過ぎてしまって、次はもう裁判所だと。そういうふうになってし まうと。 ○ 要するに、その段階での労働委員会の判断はあまり大事でないという制度を作ると いうことになる。制度の趣旨からしてそういう手続はおかしいのではないか。 ○ 労働委員会が第一次的な審査権限、判断権限を持っているという前提からすると、 仮に地労委が却下の決定を下したとみなし、それで中労委でも時間が掛かって却下の決 定を下したとみなす場合に、取消訴訟に行けるというのが眼目かと思うが、その取消訴 訟で裁判所は何を判断するのかというと、救済命令を代わって出すということは出来な いわけであるから、もう一度労働委員会に戻せという判決になる。そうすると、同じこ とが永遠に繰り返される可能性がある。この例はちょっと極端であるが。やるとした ら、裁判所が代わりに救済命令を出せるという仕組みにしないと。 ○ 先ほど、緊急命令の仕組みを少し変えて、労働委員会の命令が比較的多く緊急命令 になってドッキングすれば、余分なだぶった審査はなくなる気がするが。 ○ 緊急命令が、初審命令に対して迅速にやれるようになればということであろう。こ れはただ、何となく、不当労働行為制度の中で先に行くということになるので、基本的 に初審が手間取ったときに中労委に行くというようなことが1つかと思うが、それとの 関係では今の緊急命令というのは別の要素になる。いずれにしても、委員が言った通り で、調整と審査が入り組んだ形で進行して、かなり調整的な、和解の試みのようなこと をやっているから長引くというのが相当程度あるわけである。そういうときに、こう やって遅くなったら先へ行くというやり方は、確かに現状とすごくずれる。 ○ だから、これをやるのであれば、審査手続の中で調整的なものを排除して、審査手 続に純化するのだと。そういう交通整理をした上でということになる。あるいは、前に どこかで議論したと思うが、どこかの時点で一度審査手続を止めて、調整手続的なもの で行くと。それは審査手続の中にはカウントしない。 ○ 確かに掛かった日数を審査の期間にはカウントしないという考え方もありうる。資 料No.3-2で、先ほど委員が性格のようなものを言っていたが、これらについてはどう か。 ○ 発想としては、一定のタイムターゲットのようなものを作って、その間に命令を出 すことにするという制度はありえないか。インセンティブというか、むしろ鞭のような ものかも知れないが、この点はむしろ迅速化そのものの問題で、例えば結審してから何 日で出すとか、事案によっていろいろあるのかも知れないが、結審時に言渡し期日を指 定するなどの方法である。昔は判決でも「追って指定」というのが随分多かったようで あるが、最近はないという話を聞いている。そういうことをどのくらい実現できるか は、委員が非常勤であるので問題があるが、言渡し期日というか、命令交付日の予定の ようなものを出すこととしてはどうか。結審してからの遅れというのは、当事者の責に 帰すべきものではないので、むしろ迅速化そのものの方がストレートかという感じはす る。 ○ 場合によっては、和解もその方が進むという可能性はある。ただ、現行体制の多少 の手直しでそれが出来るか。 ○ 審査の充実が出来て初めて言渡し期日が現実の過程で守られるということであろ う。そこは命令の書き方とか認定の仕方にも関わっている。 ○ やはりそこは、結局命令起案とか、そういったものの体制というのが、きちんと構 築出来るかというところにかなり依存していて、とりわけ公益委員が非常勤というのだ と限界はあると思う。 ○ いろいろなものが整備されたら、やはりそれはやった方が良いと思う。現在は完全 なる「追って指定」状況になっているので。 ○ それはやれればというふうには思うが。 ○ 中間整理では、元々初審のことを念頭に置いての議論であったのであろうか。 ○ ターゲットになっていたのはひょっとして中労委であったであろうか。 ○ どちらかというと、一番悪いのは中労委で。最初からそういう認識であるが、その 中労委が抜けている。 ○ どおりで話が合わないような気がしたので。 ○ 中労委なら地労委の第一次的な命令はある。 ○ もう既に出ているので。その場合は、先ほどの緊急命令とセットになってやれば、 それはそれで良い。中労委を飛ばすというのであれば、皆はそれほど反対ではないか。 ○ 中労委を飛ばすと、訴訟をやらないといけなくなる。 ○ 問題はそこである。そうなると、普段は事件があまりない地労委で出た初審命令 が、たまたま難しい事件で中労委において大変時間が掛かってしまい、中労委がそのま ま飛んでしまったら、今度は初審命令を発した地労委が取消訴訟対応もしないといけな くなるということになりかねない。そうすると、何らかのサポートシステムが付かない と大変なことになる。 ○ だから、その場合は中労委が棄却決定を出したのだというふうにみなして、中労委 が対応するというのであれば誰も文句は言わないと思う。 ○ やはり、そういうものとワンセットでないと、中労委を飛ばすというのも簡単には 行かない。 ○ この前の議論は、再審査前置のセットの中でそういう議論があった。中労委を取り 込んだようなものをセットにするというような議論だったと思う。 ○ 不当労働行為制度というのは、専門性を持った労働委員会というものを作って、そ こで取り扱うということとセットになって意味がある。それが時間が掛かるというなら 地労委を飛ばすとか、中労委を飛ばすとかいう方向に制度を持っていくというのではな くて、とにかくどんなことがあっても早くやるという方向で物事を考えていく以外にな いのではないか。充実・強化のための制度見直しなのに、そういう方向を持ち込むとい うのはどうか。労働委員会が判断するということが制度の命なのであるから、一段階に しろ飛ぶというのは、不当労働行為制度や、労働委員会はなくてもいいということにな るのではないか。 ○ 委員が言うように、そうすると今度は裁判所として自分が救済命令を書けるという 方式にしないとやれないということであるので。 ○ そういう場合は、裁判所が不当労働行為の成否だけを判断して、それで取消判決を 書いて、取消訴訟の拘束力で、地労委がそれを前提として救済命令の中身だけを考え る。 ○ 判断と救済を区別すると。 ○ 結局そうなってしまうであろう。 ○ しかし、それも機械的で変だと思う。 ○ そうだと思う。 ○ 実態とそぐわない。 ○ 不当労働行為制度は労働委員会制度とセットになっているところに意義があるので あろうから、それが飛んでも良いというのであれば、やはり裁判所に救済命令に関する 権限を与えるというのではなく、不当労働行為制度そのものをどうするかという問題に なってしまうのではないか。労働委員会でやるというのが制度の生命線なのであるか ら。 ○ というふうに考えていくと、やはりこれは、後ろを設定して急かすメカニズムとし ても、他の方法を工夫した方が良いのであって、安易にこれを使うと制度そのものの生 命線に関わってきてしまうのではないかということであろう。 ○ それともう1つ、使用者側からすると、ずるずる対応していた方が良いということ になってしまう。引き延ばしが一番良いということになる。 ○ 先ほど言っていたように、もちろん中労委の遅れについて迅速化するということは あるが、緊急命令の前倒しが出来れば、その間の遅延をある意味で救済することは出来 る。 ○ それから、そういう緊急命令が早めに出ると、中労委に対してもすごいプレッシャ ーになる。緊急命令がこれだけ早く出ているのに何をしているのだという。 ○ 場合によって、命令に問題があるという話になると、緊急命令が残ってしまうと、 それはそれで問題が大きくなると思うので。 ○ ただ、中労委も前より少し早くなっているということはちょっと付け加えさせてい ただきたい。いろいろ努力していて、審問終結後のスピードはかなり速くなっている。 ただ、従来からの一部事件の処理をやっているので、統計上はいつまで経ってもより長 くなっているように見えるのであるが、新しい事件等は随分早くなってきているという ことだけはちょっと付け加えさせていただく。  そうすると、今日これまでのところの議論、団交拒否の優先処理と、実効性確保と、 それから特例という問題を議論した。何かこれまでの議論で落ちていたところ、あるい はこれらを絡めて議論するとこうした論点がさらにあるのではないかといったことが あったら、御意見いただきたいと思う。 ○ 先ほど遅れてきたので、話があったかも知れないが、資料No.1-1の1ページ目の、 57年の労使関係法研究会の中での「団交事件については口頭で答弁が出来る」という提 案は、既に労働委員会規則が改正になって実現されているということである。 ○ ただ、まだやられていないということであろう。 ○ 15年3月24日施行であるので。 ○ 他にいかがであろうか。それでは、少し早いので、何か事務方の方から今日の議論 であるか。 ○ 特にない。 ○ それでは、今日はここまでとさせていただく。次回は6月17日(火)、朝少し早く て恐縮であるが、9:30〜11:30。場所は今回と同じこの部屋である。忙しいところ大 変恐縮であるが、よろしくお願いする。  それでは、以上をもって終わりとさせていただく。ありがとうございました。                                      以上 照会先 政策統括官付労政担当参事官室 法規第二係 岩崎、朝比奈   TEL 03(5253)1111(内線7752)、03(3502)6734(直通)